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1962-08-29 第41回国会 衆議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年八月二十九日(水曜日)     午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 臼井 莊一君    理事 鴨田 宗一君 理事 毛利 松平君    理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君    理事 平岡忠次郎君 理事 堀  昌雄君       安藤  覺君    足立 篤郎君       天野 公義君    伊藤 五郎君       岡田 修一君    久保田藤麿君       田澤 吉郎君    田邉 國男君       高見 三郎君    濱田 幸雄君       藤井 勝志君    坊  秀男君       久保田鶴松君    佐藤觀次郎君       田原 春次君    広瀬 秀吉君       横山 利秋君  出席政府委員         大蔵政務次官  原田  憲君         大蔵事務官         (銀行局長)  大月  高君  委員外出席者         議     員 綱島 正興君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局参事官)  羽柴 忠雄君         国民金融公庫副         総裁      酒井 俊彦君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      山際 正道君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 八月二十九日  委員安藤覺君、岡田修一君、田澤吉郎君、藤枝  泉介君及び岡良一辞任につき、その補欠とし  て石井光次郎君、岸信介君、藤山愛一郎君、田  邊國男君及び河野正君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員石井光次郎君、岸信介君、田邉國男君、藤  山愛一郎君及び河野正辞任につき、その補欠  として安藤覺君、岡田修一君、藤枝泉介君、田  澤吉郎君及び岡良一君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 八月二十八日  会計年度暦年制採用に関する請願柳谷清三  郎君紹介)(第四〇七号)  北海道東北開発公庫資金増額等に関する請願  (柳谷清三郎紹介)(第四二一号)  国税庁職員に対する不当な勤務条件の強制及び  不当労働行為の変更に関する請願外一件(中澤  茂一君紹介)(第四五一号)  は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国民金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣  提出、第四十回国会閣法第一三一号)  国民金融公庫の農地被買収者等に対する貸付け  に関する臨時特例法案綱島正興君外六十名提  出、第四十回国会衆法第三三号)  金融に関する件(当面の金融政策に関する諸問  題)      ————◇—————
  2. 臼井莊一

    臼井委員長 これより会議を開きます。  金融に関する件について調査を進めます。  本日は山際日本銀行総裁参考人として出席しておられます。参考人には、御多用中のところ御出席をいただきましてまことにありがとうございます。  まず当面の金融政策について山際総裁から御意見を述べていただき、その後に質疑を行なうことといたします。では山際総裁にお願いいたします。
  3. 山際正道

    山際参考人 私は今年の二月に当委員会出席をいたしまして、当面の経済金融情勢等につきまして所見を申し述べたのでございます。その後約半年余りを経過いたしておりますので、その間における経過等に関しまして概略申し述べてみたいと思います。  今次金融引き締めを総合的にないし本格的に始めましたのが昨年の九月でございます。顧みますれば、自来約一年を経過いたしておるのであります。最近に至りまして、この引き締めの効果は漸次経済の各分野に浸透して参っておるやにうかがわれるのであります。中でも今回の景気調整景気循環において最も大きな要因となりましたいわゆる設備投資行き過ぎという問題も、昨年度第三・四半期あたりを頂点といたしまして、徐々ではありましたが減少の傾向を示し始めまして、また従来は年率にいたしまして二割以上の増勢を続けておりました鉱工業生産も、本年に入りましてからは、月によって高低まちまちではありますが、大勢といたしましては横ばいないし場合によりましては弱含み状態をもって推移いたして参っております。  このような情勢を反映いたしまして、国際収支も昨年の秋ごろから順調な回復の歩調をたどりまして、去る七月には経常収支においても約一年半ぶりに黒字を示しておるのでございます。  また物価につきましても、卸売物価は総じて弱含み状態を続けておりますが、ただ消費者物価につきましては、いまだ騰勢をやめることができないという状態が続けられておるのであります。  このように、景気調整の足取りは現在までのところでは比較的順調に推移いたしておりまして、大体われわれが目標といたしました線に沿って進んでおるものと観測いたしております。この間において、設備投資の圧縮や生産調整を余儀なくせられました業種企業が多いのでありますが、さらに構造的な問題をかかえた業種にありましでは、引き締め影響は一そうそれが重い負担となっておりますことは否定できないところと思います。総じて産業界といたしましては、この引き締め政策はまことに楽ではなかったと思うのでありますが、全体として考えますならば、今日まで経済界に大きな犠牲をしいることなく、比較的円滑に調整を進めて参ることができたものと考えております。特に景気調整過程において、ややもすれば打撃を受けやすい中小企業につきましては、政府及び金融界におきましても比較的早手回しに必要な措置を講じて参っておりますし、本行といたしましても、金融機関の指導におきましてこの点について遺憾なきを期するように努力をいたして参ったのであります。幸いに今回の景気調整におきましては、この方面において特に大きな混乱を生せしめることなく今日まで推移しておりますということは、私といたしましてもまことに喜ばしく思っておる点でございます。  景気調整が比較的順調に進みまして、国際収支均衡を回復しました以上、一日も早く金融政策を転換してもとの状態に返す措置を打ち出すべきであるという説も一部では聞かれ始めておるのでありますが、私といたしましては、この際まだ前途楽観してよろしいというところまでは熟していないように思うのであります。いましばらく様子を見ながら、日本経済がしっかりした基盤の上に将来の飛躍を可能ならしめる状態を実現することに努めて参る必要があろうかと思うのであります。私どもがこの点において特に注目しておるところを一、二申し上げますならば、第一は企業設備投資がかなりの落ちつきを示し、また生産横ばいないし若干の低下を示してきておるにもかかわらず、金融機関に対する資金需要は一向に衰えを示していないという点であります。これらの資金需要の中には、滞貨金融であるとか、あるいは俗に言う減産資金とか、いわば景気刺激要因とはならないものもかなり含まれておるようではありますけれども、反面まだ強気を捨て切っていない企業もかなり多いように見受けられるのであります。資金がつけば再び投資を拡大したいという意欲が、全然懸念なき状態まで参っておるとは思っておらぬのであります。  次に、また国際収支前途におきましても、昨年五、六月ごろの貿易収支赤字が最も大きかったころにおきます状態と比べますと、最近は輸出入両面からの改善ぶりが著しいのであります。中でも輸出の伸張は、特に目立っております。輸出が伸びた理由といたしましては、一つには国内でも引き締めの圧力が、輸出ドライブをかけたことがあげられるのであります。一方においては最大の輸出市場でありますアメリカ景況が、この点においてわが国に幸いしたことが指摘されると思うのであります。従って金融情勢輸出意欲との関係、あるいはアメリカ景況の将来の動き等に関しましては、今後とも注意深く見守っていく必要があろうかと考えるのであります。  いま一つ注意を要する点は、近くその実現を控えております自由化の進展に関連する問題であります。わが国が本格的に自由化を推進し始めましてからすでに二年余に相なっております。今までのところ比較的円滑に進められて参ったと思うのでありますが、今後はいよいよむずかしいものが最後まで残っておるという意味において、むずかしい段階に入ることを覚悟しなければならぬと思うのであります。それによって、従来国内経済のうちに内包されておりました構造上の問題が表面化する場合もあるだろうと思いまするし、また景気調整についても、一そう複雑なる要因が入り込んでくるものと思われるのであります。今後の金融政策の運営にあたりましては、これらのことについて十分考慮を払って参る必要があろうかと考えております。なお国際収支は一応均衡を回復し得たのでありますけれども、ここに至るまでの外貨資金繰りにつきましては米国市中銀行米国輸出入銀行並びに国際通貨基金の支援を受けたところが少なくないのであります。米国市中銀行借款につきましては、外貨繰りの許す限りこれを返済して参りたいのはむろんでありますが、それが今の情勢をもってすれば可能であろうと考えております。これに伴って国際通貨基金のいわゆるスタンドバイ・クレジットを実際に使用するかしないかという問題はなお今後数カ月の推移を見ながら慎重に定めて参ってしかるべきであろうと考えております。  以上、最近の状況と今後の見通しについて私の所見を申し述べたのでありますが、要するに、今後は景気調整のいわば一番大事な仕上げの段階に入って参っておると思うのであります。ここ当分はなお引き締めの基調は堅持する所存でありますが、調整過程において生ずる必要以上の摩擦に対しましては、十分に配慮いたしまして、最も円滑に所期目的を達成し得るように十分配慮して参りたいと考えておるのであります。  以上、概略でございますが、当面いたしまする情勢についての所見を申し述べた次第でございます。
  4. 臼井莊一

    臼井委員長 続いて質疑を行ないます。佐藤觀次郎君。
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 日銀総裁からいろいろ伺ったのでありまするが、現在問題になっておるのは景気の問題でありまして、山際さんは自分所期目的を達したような方向で進んでおるということでありまするが、一体日銀考えておる景気の順調な歩みというのは、どういう点をさして言っておられるのか、どういう要因でそう考えておられるのか、その点を伺いたいと思います。  それから日銀はまだ今は景気楽観はできないというような非常な慎重論のようでありますが、経済企画庁の方ではもう楽観してもいいような見通しを持っておられるようであります。そこで今設備投資の問題が出ましたが、昨年の八、九月ごろから急に設備投資が詰められまして、それがためにたくさんの犠牲者が出たわけであります。総裁は大したことはなかったといわれますけれども、われわれ民間関係のあるものは、非常に大きな被害を受けたということは事実だと思っております。おそらくこの状態で参りますと、今年の暮れごろには、なお相当な犠牲も出るように想像されますけれども、そういう点については、日銀総裁はどういうふうにお考えになっておるのか、お伺いしたいと思うのであります。
  6. 山際正道

    山際参考人 第一にお尋ね、すなわち、最も望ましい状態に持っていきたいといっておるけれども、望ましい状態とはいかなる状態であるかというお尋ねと拝承いたしました。これは私は政策的に外側からいろいろ経済界を指導するとか、そっちの方の行き過ぎを是正するとか、行政力が加えられなくても経済界自身の持つ自律的な、何と申しまするか経済性に即した動きによりまして、平常な歩みを続ける状態、すでにそれが固まって参りますれば、外からの調整はとらなくていいというような状態まで持っていきたいというふうに実は考えております。最近の経済各界様子を見ておりましても、自律的にあるいは生産調整しあるいは設備調整するというような問題が各業界を通じて、それぞれに取り上げられていきつつありますことは、その望ましい方向へ向かう一つの証左が現われて参ったと考えておるのでありまして、この勢いを助長いたしたいものと考えております。  第二のお尋ねの今回の金融引き締めショックが、ある部門については相当手ひどく来たのではないかという点でございます。この年末を控えて再びかかる大きなショックがあることは望ましくないのであるが、この点はどう考えるかというお尋ねのように承りました。むろん金融引き締め犠牲が絶無であるとは申しかねます。極力その犠牲を少なくまた円滑に進めるということのために、多少の時間の経過犠牲にいたしましても、極力努めて参りましたのが従来までの経過でございます。この点については、当初私が最も懸念いたしておりました犠牲瀕出ということが、幸いにして当初最も悪い場合として予想せられましたよりは穏やかに過ぎたというように考えておるのでございます。間もなく年末を迎えますが、その際にどうなるかということでございますが、この点は私は経済界全体の景気行き過ぎが鎮静をして参るという状態を背景として考えて参りまする反面において、資金需要が年末を控えて政府資金の支払いの増大等によりまして、ただいまよりは相当くつろぎを感じて参る状態であろうと考えておりますからして、従前続けて参りました中小企業方面等に対する配意を今後とも怠らず続けて参りまするならば、歳末に際して特に異常なショックを経験せずに過ごし得るのではないか、またぜひそうしたいということで考えておる次第でございます。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 日本銀行中央銀行としてのあり方としてはいろいろ問題があると思いますが、特に戦前と戦後とは日銀事情も変わって参りまして、管理制度の問題なんかもありますが、しかし何といいましても、昨年の金融引き締め以来資金需要が、ただいまも総裁が言われましたように多いけれども、現実には預金が非常に少ない。これは市中銀行に聞いてもらえばわかりますけれども、非常に資金が足りないので、その預金吸収のために血眼になっておるのが現状でないかと思うのであります。そういう中にあって、きのう田中大蔵大臣参議院大蔵委員会郵便貯金利子引き上げをやるということを言っておられますが、預金吸収するために預金金利引き上げというような問題が起きるのかどうか。これは少なくとも日銀総裁としてどういう所見を持っておられるのか。昨年金利を下げられたのでありますけれども、しかし今の情勢ではなかなか預金が集まらぬということは、これはおそらく総裁よく御存じだろうと思うのですが、そういう点についてどういう対処をされるのか、この点について伺っておきたいと思う。
  8. 山際正道

    山際参考人 この際最も必要な事柄である預金吸収を効果的ならしめるために預金金利引き上げ方向考え考え方についてはどう思うかというお尋ねのように思いました。お話しの通り、この際最も必要なことは、いわゆる預金吸収と申しますか、国民蓄積を大いに増進いたしまして、非常な資金需要に対して何がしかでも供給力を増加してその均衡をはかるということでなければならぬことは、おっしゃる通りだと私も感じます。その場合、その預金増強一つの手段といたしまして、預金利子を上げたらどうかという問題は、つとにいろいろ論議がございまして、当業者の銀行協会を初めとしまして、ほとんどすべての全金融機関の当事者はその点を要望いたしておるのであります。この点は私は無理からぬ点だと考えております。ことに物価が一面においてなかなか前途なお問題を含んでおるということを考えますると、預金者のサイコロジーから申しますと、自然それを望むだろうと思います。ただ、御承知のように、金利そのものは単に預金金利だけというわけに参りませんので、各般の金利現象はすべて共通にいっておりますから、一方が上がりますれば、他方また自然にその影響を受けるということは当然覚悟しなければならぬと思う。そこで、国民全体としての立場から大きな均衡上この際どうしたらいいかという観点で考えませんと、一部の預金のみについて処置をとるわけには参らぬと思います。この点から申しますると、私は、今税制調査会等において税制上の優遇を非常に具体的に考究されておりまするが、少なくともそれだけのものは実現せられたいと思います。また預金利子引き上げの問題は、御承知通り現在の法制では政府政策に属する問題になっております。なおよく実情を政府と御相談いたしまして、その吸収について最も効果的であり、しか産業界全体に対して最も影響の少ない方法を今後なお日本銀行としては考案していくべきものと考えております。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 これは大月銀行局長にちょっと伺っておきたいのですが、ただいま日銀総裁からも資金需要が非常に多いと言われますが、民間銀行というのは今相当資金に困っておると思われます。コールが非常に高いので、非常に困難な事情もありますけれども、日銀が大体金蔵を握っておりますから、とりあえずつぶれずに済むと思うのですが、そういう点について銀行局は一体どういうようにお考えになっておるのか。私たちは非常に深刻に考えておりますが、大月さんは大体非常に楽観論の方ですから、この点についてちょっと伺っておきたい。
  10. 大月高

    大月政府委員 銀行を含めまして、相互銀行、信用金庫、郵便貯金、その他全体の資金を総合いたしまして、貯蓄の実績から申しますと、昨年度におきましても、本年度の今の推移におきましても、非常によくないということではないと思います。ただ具体的に金融機関別にいろいろ分析いたしてみますと、郵便貯金生命保険、それから中小金融機関、これらの蓄積に比較いたしまして銀行資金の集まり方が悪い。これは非常に顕著な現象でございます。この問題につきましては、銀行取引先は主として大きな企業でございまして、その大きな企業資金需要が特に強い、銀行に対する資金需要がその面において特に強い面が一つあるわけでございます。それから昨年来の金融調整過程におきまして、企業、特に大きな企業におきまして、資金の不足ということから、自分の持っております預金を引き下げていろいろな事業に使うというような現象もございます。営業性預金が伸び悩んでおる、こういう二つの面がございまして、資金源におきましても、資金需要の強さにおきましても、特に銀行に対してそういう問題が集中的に起きておるというふうに考えるわけでございます。そういう意味で、特に金融界の中でも銀行方面において資金充実の必要を特に痛切に考えておられることと、日本銀行取引先というのは主として銀行でございますので、そういう意味でまた日本銀行の貸し出しに依存する面も多い。われわれの立場から申しますれば、今のオーバーローン一兆五千億というような問題は、やはり金融全体、経済全体のひずみとして非常に重要な問題と考えておりますので、やはり銀行を含めた全体として資金蓄積を促進しなくちゃいかぬ。このオーバーローンの問題をできるだけすみやかに解消の方向に持っていきたい、こういうことでございまして、税制におきましてもその他あらゆる面におきまして資金蓄積についてわれわれとしては万全の努力をいたしたい、こういうふうに考えております。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 山際総裁が先ほど触れられました国際収支赤字の問題がだいぶ解消して、このごろ十六億台に上ったということは、政府池田さん自身も非常に楽観をしておられますけれども、しかしその中の中身は御承知のようにアメリカから借りた。先ほども総裁も述べられましたが、そういうこともあるし、同時に私は、これはつじつまを合わしたような形で参議院の選挙にからまっていろいろやられたように思いますけれども、それは別にして、一体日本のそういう国際収支赤字と同時にドルの問題も非常に問題があるわけです。実は同じ戦後の景気がいいとかなんとかいっておりますけれども、西ドイツのような場合は六十億ドルを持っておる。ところが日本はこのごろやっと十六億八千万ドルくらいのところでありますが、一体こんなような状態で、はたして国際収支楽観できるかどうかという問題になると同時に、これは総裁にお伺いしたいのでございますが、一体日本の今の国際収支のノーマルな所有ドルというものはどのくらいの標準なら安全だということになっておるのか。しかもこの前大蔵大臣も触れられましたけれども、一体日本の現在の金というものはわずか二億八千万ドルしかないわけです。こういう点で非常に不安定だといわれております。戦争前のような銀行——日銀が非常に強いのでそういう心配はありませんけれども、どうも私たちは、日本財務当局やあるいは池田さんなどは非常に楽観論を言われておりますけれども、国際的な現状から見ると必ずしも楽観できないのではないか。少なくとも外貨の問題について私は政府が言うようにそう簡単に楽観できないと思っておりますが、日銀総裁としてはそういう問題についてどのくらいの標準ドルがあったらいいか。これは西ドイツのようなことを言ってもしょうがありませんけれども、日本の安全なドル資金というものは一体どのくらいあれば安全であるという標準を持っておられますか、この点も伺っておきたいと思います。
  12. 山際正道

    山際参考人 日本がいろいろ外国との経済取引を続けて参りまする上に何がしか金準備を持つ場合もしくは外貨準備を持つ場合にどれだけあったらいいか。適正外貨準備保有量というものの問題は、従来といえどもしばしば検討されて参っておるのでございますが、何分にもこれはその当時を取り巻く経済界環境、たとえば国際収支は上向きになっておるのであるか、あるいはなお予断を許さない状況を続けておるのであるか、あるいは相手方の状況が近い将来にどう変わるかといういろいろな内外の取り巻く環境の問題と、それからまた貿易量自身経済発展とともに伸びるわけであります。どれだけの保有量を持てばそれが安心であるか。それはあるいは二十億であるのか、十六億で足りるのか、あるいはまた貿易量の何分の一あればよいかという計算がなかなか容易に出しがたいのであります。従って、具体的に何億ドルが適当ということを申し上げることは、しばしば私も申し上げましたが、ちょっと申し上げるだけの自信がございません。ただ、現在持っておる外貨準備だけで十分かというお尋ねがございますならば、私はもう少しためていきたいと考えております。むろん現在の外貨準備をもちまして、平常の状態が続きます限り、取引にこと欠くことはないと思いますけれども、準備といたしましては、いま少しく手当をふやして参りたいというのが偽らざる心境でございます。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 私は、山際さんは正直な人でありますから、うそも言われぬと思うのですが、しか日銀の力というものは非常に強大になりまして、いろいろ中央銀行のやり方については本委員会でも問題になりましたけれども、相当重要な地位を持っておるわけであります。それだからこそ一萬田法王というものができまして、——今は法王日銀におられませんけれども、そういう問題が出た。法王は絶対権があるわけですが、山際法王ということは言われませんから、その点は無理もなかろうと思いますが、日銀あり方というものは、今日の景気調整及び国際収支のいろいろな点で影響してくると思うのです。そういう点で、先ほど総裁は、財界や経済界の方の自主性にまかすというようなことを言っておられますけれども、日銀は今のような情勢の中で手をこまねいて、知らぬ顔の半兵衛をやっていかれるのかどうか、今直接には大きな問題が起こっておりませんけれども、先ほど総裁も触れられましたけれども、昨年の急激なストップをやられたときの責任も、私は政府だけでなく、日銀にもあると思うのですが、そういう点についてはどういう反省を持っておられますか、伺っておきたいと思います。
  14. 山際正道

    山際参考人 今日の経済界におきまして、その発展なり振興について中央銀行が非常に重要な機能を持つ重要な立場にあるという点は、全く御趣旨ごもっともと私は考えます。われわれもまたその自覚のもとに、十分留意しながら努力をいたしておるのでございます。ただいまお話がございました通り、昨年遂に金融引き締め措置をとらざるを得ざるところに持って参りましたことにつきましては、むろん私どもも責任を感じております。この点は過般の銀行大会の席上におきましても、私は率直にその点を省みて反省しておることを申し上げたのでございます。が、経済界との関連におきましては、現在いろいろな会合の機会もございますし、また直接間接に、金融を通ずる経済界方向づけという問題もルートがあるわけでございまして、常時その考え方で、指導と申しますとあるいは少し言い方が悪いかもしれませんけれども、その方向についてのアドバイスはいたして参っており、また今後も続けて参るつもりでございます。従って、冒頭に申し上げましたように、いつ政策転換をするかという問題に関連いたしましては、それらのルートを通じて十分に状況を見定めた上においてその措置がとられることであろうと思うのであります。決して慢然と手をこまねいて、経済界みずからの進むことのみにゆだねておくというわけではございません。十分今後注意してやって参りたいと考えております。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤(観)委員 これはあとでまた大月さんに伺いたいと思うのですけれども、最近の景気調整の中で重要な役割をしておるのは——私は土地や建物に対して銀行が金を貸すということに、この前触れました。少なくとも私は表向きでは、規則の上においては、銀行が土地や建物を担保にして金をどんどん貸すというようなことはない。これは表向きはそうでありますが、現実はなかなかそうはいかない。少なくともこの数年間に全国の銀行の貸付だけでも、昭和三十一年には二兆円になっております。それからずっと毎年一兆円ずつふえまして、昭和三十六年には六兆をこえておるという現状であります。従って、銀行が金を貸す、金を貸すから担保の値が上がるというような形で、大都市の土地は非常に上がって参りました。今でも銀行の大部分は大都市や中都市にありますけれども、こういう問題は、ややもすると日本生産に非常に響いて、コスト高になり、貿易の赤字ができる結果を招いておる、こういう観点に立って、私は先日も大月銀行局長に質問したのでありますが、私はこういう点も実は日銀に責任があるのじゃないか、日銀もそういうような市中銀行に無批判に金を貸しておるという、一半の責任があるのじゃないかと考えておりますが、こういう点について総裁はどういうようにお考えになっておるのか。これは私たちのような民間の者が考えるだけであって、日銀法王庁などというようなところだから、そんなことは知らないというように考えておられるのか、そういう点について率直な御意見を伺っておきたいと思います。
  16. 山際正道

    山際参考人 過去数カ年の間におきます都市といわず、地方といわず、地価の暴騰につきましては、私といえども、最も心を痛めておる者の一人であります。日本銀行といえども、その点は最も関心を持って、注意深くその成り行きを注目いたしておる点でございます。で、過般も、先ほど申しました銀行大会におきまして、今後における問題の一つとして、地価の騰貴が企業の資本コストを非常に高めておる、その結果として企業の採算なり発展を将来傷つけるおそれがありはしないか、よくこの問題は解決する必要があるという点を指摘したのでありますが、この点に心を痛めておることは全く御同様でございます。その原因の有力なるものとして、金融機関が土地担保に貸し出しをする。そして日本銀行金融機関にその金を貸しておるという関連において、それが土地騰貴の有力な原因になったのではないかというお尋ねがあったのでございますが、これは過般同じような問題が当委員会で繰り返されまして、政府から、金融機関の土地担保貸し出しというものは、数字の上では、統計上はそれほど大きく現われていないという御答弁があったように思いますが、それはまさに統計の示すところだと思います。ただ実際問題として、御承知のように近年土地の売買、土地の移動がふえて参りまして、それを決済するために資金が移動しておるという事実は、これは否定すべくもないことと思います。  しからばその資金がどういう財源によって調達されたかという問題でございますが、不動産取得の問題は、元来は銀行の融資対象といたしましては適当でない物件でございます。本行が直接それを取り扱っておりませんことはむろんでありますが、銀行といえども、それはあまり好ましい担保としては考えておりません。そこで民間の土地の移動等につきましては、多く、たとえば会社を作るとかあるいは投資をするといったような、いわゆる自己資金による金融と申しますか資金の移動が、不動産の売買については相当行なわれておるんだと私は思いますが、これは銀行の貸し出し統計には出て参りません。ただもう一つ裏を返せば、あるいは直接でなくとも、運転資金などの形において、かりにその目じるしはないのであるが、あるいはそういう金が流れておるのかもしれぬとおっしゃれば、あるいはそういうことも中にはあり得ると思います。要するにこの問題は、土地というものの根本においての需給関係に非常な不均衡を生じたことがこういう結果を来たしておるんだと思うのでありまして、この根本が取り除かれない限りは、なかなか根本的に解決することがむずかしい問題だと実は思っておるのでございます。御承知のように、最近わが国経済が高度の成長を遂げつつあります。従って、土地を必要とする産業上の需要は非常に増大いたしております。工場敷地はむろんのことであります。あるいは電気にいたしましても、あるいは交通機関にいたしましても、道路港湾にいたしましても、あるいはそれに伴う民生の向上に伴っての住宅の入手等に関連いたしましても、土地に対する需要は非常に増大して参っております。これが今申しましたように、銀行の統計上は出ておりませんけれども、その他のルートによってはおそらく決済されて、かようにたくさんの取引が行なわれたものと実は思うのでございます。そこで根本的に申しますると、結局において高度の成長をあまり急速に遂げますと、やはりそのひずみの一つとして隘路がそこに出てくるという一つ現象になろうかと私は思うのでありまして、これは今次の景気調整措置によりまして、だんだんとそういう極端な隘路というものは打開されてきて、均衡状態を回復して、最近、あるいは正確な統計は非常にむずかしゅうございますけれども、地価の少なくとも急激な値上がりはやや歩調をおろした感があるということが言われておりまするが、やはりそれは一般の景気調整に連なる問題と実は考えておりますので、その意味からも、なおこの調整措置の今後につきましては十分に配慮して参りたいと実は考えております。
  17. 佐藤觀次郎

    佐藤(観)委員 大体現状を認めておられますし、日銀の責任ということでありませんので、その問題は総裁にはそれだけにいたしておきますが、大月銀行局長お尋ねしたいのは、先日私が質問をしたときに、あなたは、大体一割程度くらいの貸しだから大したことはないというお話がございました。そうしたら間もなく朝日新聞で、大ていにしておけばいい、銀行局長はあまりに日本の実情を知らないという見出しで、いろいろ議論が書いてありました。私は自分の意見じゃないから——第三者の新聞の記事にそういうのが出るということは、私は、少なくとも民間と密接の関係にある世論の代表機関というものはそういう現状をよく知っていると思う。これは政治論になりますから銀行局長にどうこう言いませんけれども、これは外国のような場合は、やはりそういうような、土地を買った場合に、一年か二年の間に建物を建てなければ返させるとか、いろいろな措置がとられておるのであります。それだから、ドイツでも、フランスでも、イギリスでも、アメリカでも、大都市の土地の値段が五倍、六倍、七倍になるというようなべらぼうなことがないわけです。日本では全然そういうことがないためにこの問題が中心となって住宅問題、サラリーマンの住宅問題、また、郊外へ移るというような、いろいろな弊害が大東京に起きておると思う。これは東京だけでなく、大阪とか、名古屋とか、福岡とかいうところにおいてもこういう問題が起きておる。大体日本経済というものは農村でなくて大都市にあるのでございまして、それが今日の日本経済のいろいろなガンになっているように考えられます。  そこで、あなたはこの前は、一割だからいいと言われておりますが、現状はそんなこととは全く反対であって、ただいま日銀総裁も認めておられるように、土地を担保に——土地そものには表向き金を貸さぬけれども、やはり裏金に土地と建物というものが重要な素因になっていると思う。そういう点で、おそらく地方の財務局なんかいろいろと仕事をやっておられることは間違いないと思いますけれども、こういう民間の利潤追求のような仕事についてはなかなかわからぬと思う。けれども、少なくとも大蔵省の銀行局長は、そういうような表向きの実情じゃなくて、現実に実際に行なわれているようなことをもう少し検討する必要があるのじゃないか、少なくともそういう点で、私は全部が全部今日の物価騰貴がこういう土地資本の値上がり、土地建物の値上がりということだけにあるとは思っておりません。けれども、少なくとも大きな弊害の一つになっておるということは、これは事実であります。特に東京都は御承知のようにオリンピックの関係上、建物をこわし、道路を作るために莫大な政府資金が充てられる。またそのために、いろいろな関係で土地に土地を生んで、土地の値段がどんどん上がってきておりますけれども、こういう点について銀行局長はどんなようにお考えになっているのか、この点を伺っておきたいと思います。
  18. 大月高

    大月政府委員 先般私がお答え申し上げました問題は、金融の問題といたしまして、土地の担保貸付がこういう信用インフレの原因ではあるまいか、こういうお尋ねに対するお答えであったわけであります。私は、その問題は、金融問題と土地問題と判然と区別して議論すべきものだと考えております。つまり、現在の金融におきまして信用インフレであるか信用インフレでないかという問題がまず大切でございまして、先ほど日本銀行総裁のお話もございましたように、昨年来の信用の調整を実行して参りまして、卸売物価におきましても、対米為替の状況におきましても、あるいは輸出入の状況におきましても、少なくとも日本の現在の経済が信用インフレであるとは私は信じません。まず現状認識においてさよう考えております。  次に、土地に対する金融というものがそれに対してどの程度寄与しておるかということだと思いますが、統計的に申しまして、事実は先般私が御答弁申し上げましたような数字に基づいておるわけでございます。しからば、正式の担保ではないけれども、実際上土地、建物というものの売買に使われている金はどのくらいあるのかという問題は、これは統計外の問題でございまして、いろいろ、たとえば信用貸しの問題でございましても、あるいはいろいろな手形の貸付の中にも、その売買に使われる金融というものは含まれていると思います。それが現在の金融全般の中に含まれて現在の金融情勢を形成しているわけでございますが、それ全般として、金融面から見る限り不健全であるとは言えない、それは率直に申し上げていいと私は思います。ただ、お話がございましたように、土地の価格が非常に上がりまして、そのためにいろいろな公共事業の遂行であるとか、あるいは庶民の住宅問題に非常に問題を起こしておるとか、あるいは都市計画自体として非常に困っているというような問題があることは、これは事実でございます。そういたしますと、その原因は一体何かということになりますと、経済の成長に比較いたしまして、たとえば繊維品はどんどん生産がふえる、それによって需要が増す、しかし土地は経済の伸びに応じてふえない。そうすると、それをいかにして有効に利用していくかという面においていろいろネックがある。その面から土地の値段が上がっているのだと私は思います。そういうことになりますと、土地の値段とその他の、たとえば繊維でございますとか、あるいは電気洗たく機でございますとか、あるいはいろいろなものとの物価のアンバランスという問題が今度は出てきているのじゃないか。全体の物価現象ということの中における土地というものが特に非常に問題を起こしているということになりますれば、私は、土地政策として別の実態面の政策を推進する必要があると思う。これが今お話がございましたところの、欧米諸国その他においていろいろの手を講じているとおっしゃっているのは、全部金融上の措置ではなく、実態面における措置だろうと考えておるわけでございます。そういう意味におきまして、この土地問題——もちろんこの土地に対していろいろの金が出ているということを私は否定するものではございませんけれども、むしろ金融問題ではなしに、土地政策自体の問題であろうか、こういうふうに考えているわけであります。
  19. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 大月さんは銀行局長であるから逃げるのがうまいけれども、そういうばかな話はないと思うのですよ。そんな、土地問題だから知らぬということではなくて、土地を買うのはやはり人が銀行から金を借りて買っているわけです。結局それはまた、日銀がある点まで銀行を信用して金を貸す、そういう循環がこういうふうになっておりまして、土地がどんどん下がれば当然銀行だって不安だから金を貸さない。政治論にわたることはあなたは政治家ではないので私は言いませんけれども、こういうむちゃなことが非常に行なわれているということは厳然たる事実であります。  そういうことに関連して私はもう一つ大月さんにお願いしたいのでございますが、たとえば相互銀行の貸し出しは一千万円ということになっている。信用金庫もそうなっている。ところが現実には一千万円以上貸しているところがたくさんある。これは違反だろうけれども、現実に行なわれている。それだから、少なくとも大月さんが大蔵省の役所の中で考えているほど、そんなノーマルなものではない。もっと市場は非常に荒い。私どもは、現在の銀行のいろいろなやっておられる現実は、大月さんが考えておられるような甘い考えではやっていかれないと思う。従って、私は少なくとも、そういうような問題で、民間から、たとえば相互銀行でワクを三千万円にしようじゃないか、あるいは信用金庫もそれくらいにしようじゃないかということを言ってきて、初めて、そろそろ調査してやろうじゃないかという考えを持っておられると思うのであります。こういう点については、大月さんは大臣でございませんから、それ以上のことを追及しませんけれども、少なくとも現実は、あなたが考えておるよりはもっと深刻であり、もっと真剣であり、業者というものは、利潤を追求する以上はやはりもっといろんな手を考えてやっておるという現実だけは事実だと思う。土地問題だから仕方がないというお話は、あなたの銀行局長としての立場だけのことを言われるだけでございまして、私は、そういうような甘いものではない、現実にはこういう結果が出てきているのだという事実を指摘しておりますが、そういう点については、現実に信用金庫とか庶民に一番密接に関係のある相互銀行の貸し出しの問題についても、あなたはどのような見解を持っておられるか、これを伺っておきたいと思います。
  20. 大月高

    大月政府委員 相互銀行、信用金庫の貸し出し限度の問題につきましては、仰せのように、今の限度一千万円というものが不自然であるという意見が相当強かったわけでございます。そういうこともございまして、この四月一日から、その限度を三千万円に引き上げたわけでございます。その後、この調整をどうするかということにつきまして、現状調査をいたしまして、全部調査が完了いたしました。そういう意味で、この三千万円の運用につきましてどうするかという問題について、来月早々にも最終的な結論を出したいと考えております。相互銀行、信用金庫からの貸し出し自体につきましても、やはり土地の問題に関係があると思います。率直に申しまして、全体の金融機関の問題として、土地に対する金融あるいは土地を買うための金融というものはあると思います。そういう問題につきましては、先ほど申し上げましたように、金融政策としては、経済が全体としてうまく動くようにという観点から運用されておると思うわけでございまして、私が、土地の問題自体が今別に問題がないということを考えておるわけではないわけでございます。住宅問題にいたしましても、都市計画の問題にいたしましても、あるいは道路をつけるということにしましても、非常な悩みがあるということを率直に考えるわけでありますが、これは、いずれかといえば、私は、土地政策自体、実態的にメスを入れていかなければ、なかなか金融面だけで処理することはできないのではなかろうか、こういう感じを持っておるわけでございます。土地の問題が、金融から見まして何も問題がないという意味ではないということでございます。われわれとしても、また金融面から十分調査もいたしますし、慎重に対策を考えて参りたいと思います。
  21. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 次は物価問題について日銀総裁にお伺いしたいと思うのですが、最近私鉄の運賃値上げの問題も、政府はそろそろやらなければならぬというようなことを言っておりますし、きのうは重政農林大臣が、一割程度の消費者米価の値上げをやるというようなことも言っておられますが、政府はやらぬやらぬと言っても、参議院の選挙も終わったし、そろそろここらあたりで値上げをしようじゃないか、そういう形が出てきております。卸売物価も、一部には反落したようなものもありますけれども、去年の九月から今日まで、一年の間の経過を見ますと、物価が非常に上がってきております。日銀は有力な調査機関を持っておられますし、それから物価問題が国民に与える影響は非常に大きな問題がありますので、そういう観点についてどんなお考えを持っておられるのか、最近の物価値上げムードに対する総裁の御意見を伺いたいと思います。
  22. 山際正道

    山際参考人 物価の動向並びにこれに対する対策という、きわめて困難かつ広範な問題についてのお尋ねでございます。実は私どもは、中央銀行の責任者といたしまして、通貨価値の安定ということを最終的至上の目標といたしまして日夜努力いたしておりますことは御存じの通りと思います。それを裏から申しますと、通貨価値の安定ということと物価の安定ということは相通ずるものでなくてはならぬわけであります。従いまして、最近の物価現象につきましては、直接の関係者といたしまして、人一倍心をいためておるものでございます。ただ私どもの預かっております。そのために行使し得る機能の点から申しますと、製造工業あるいは鉱工業といったような産業界方面に対しましては、金融上のいろんな政策の弾力的な適用によりまして、ある程度は物価の安定に寄与し得ることもあろうかと考えておるわけでありますけれども、消費者物価方面につきましては、中央銀行金利政策なりその他の金融政策でもって直接的な影響を与えるということは非常に困難な点が多いことは、あえて御説明申し上げるまでもないと考えます。要は、私は先ほど土地の問題につきましても申し上げました通り、あまり急速、過度の成長はややもすればかような弱点を生じやすい傾向にあるということは否定し得ないと思いますので、過般の引き締め政策調整政策をとりました趣旨も、その一部には、この趣旨において物価の騰貴を極力抑制いたしまして、そして至上命令である通貨価値の安定に寄与したいという念願があったわけでございます。  この問題は、先ほど申し上げました通り、単に金融上の措置のみで、ことに中央銀行金融上の措置のみでなかなか解決し得ない問題でございまして、むしろ産業政策一般ないしは国民生活の態様その他の問題において総合的に解決されませんと、なかなかむずかしい問題であろうと私は思っております。一面、先ほども申し上げましたが、貯蓄の増強については非常に意を用いておりますのも、その方面に対してはこの手は相当有効にいくのではないかという配慮があるからであります。部分的な方面を担当いたしておりますけれども、最も深く関心を持っております関係上、今後ともあらゆる機会をとらえまして、その安定のために寄与いたしたいと望んでおります。
  23. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 山際さんは慎重な人でありますから、いろいろ考えて、あれこれというようなことを率先して自分がおやりになるということはないと思いますけれども、しか中央銀行あり方として、日本銀行の力でもってやれば相当なことができるのではないか、少なくとも現在の物価値上げムードに対してはある程度までの牽制ができるのではないかということが考えられます。そういう面では、金利の問題あるいは日銀銀行へ圧力をかければ、やはり相当な力があり得ると思っておりますが、一体総裁は、今度田中君が大蔵大臣になったのでありますが、新しい大臣になってから、政府とそういうことで具体的に相談されたことがあるのかどうか、またそういうことをしなくても、中央銀行あり方としては、日銀としての自分政策で独立してやっていけると思うのでございますが、そういう点についての政府との折衝はどんなようになっておりますか、この点も伺っておきたいと思います。
  24. 山際正道

    山際参考人 政府当局と日本銀行との連絡は常時非常に緊密に行なわれております。御承知のように政策委員会がございまして、そこには政府の企画庁の代表、大蔵省の代表も見えておりまして、常時この問題についての各般の緊密な連絡を遂げております。私個人といたしましても、政府要路の方々とは経済問題について常時意思の疎通をはかりまして、その間乖離がないように努めております。のみならず事務当局といたしましても定例的に会合を持ちまして、これらの点について常時話し合いを進めておりますので、両者の間における意思の疎通は十分できておるものと私は思います。ただいかにも担当しております部分が金融問題のみに限局されておりますために力及ばざる点はござましょうけれども、まず連絡上は遺憾なきを期し得ておると考えております。のみならず御承知のように、私は毎月、政府経済報告の経済閣僚懇談会に出席を求められまして、常時意見を求められることになっておりますので、私も及ばずながらこの機会も利用いたしまして所見を申し述べておるような次第でございます。まずその間におきましては遺憾がないかと実は考えております。
  25. 佐藤觀次郎

    佐藤(観)委員 同僚議員が質問がありますから最後にいたしますが、最近、先ほどもちょっと触れましたが、金準備の問題でいろいろ私は大蔵大臣にお伺いいたしました。いろいろドルの引き下げ説とかあるいは金価の引き上げというような点も出ておるようであります。そたで私は先回にも質問したのでありますが、二億八千万ドルくらいの金準備では少な過ぎるのじゃないか。それで各国は、アメリカもイギリスもフランスも西ドイツなんかも、金準備というものをもっと多く持っておるように伺っております。そういう点について日銀総裁はどういうようにお考えになっておりますか、この点を伺っておきたいと思います。
  26. 山際正道

    山際参考人 今日の外貨支払い準備として金が必要であるかないかという問題は、理論上はしばしば検討されておりますが、実際問題といたしましては、世界主要国はやはり金に対する郷愁を捨てかねて、相当準備を手厚くいたしております。これに比べますとわが国の持っております外貨準備のうちの金自体の準備率は割合に低うございます。私といたしましては、従来からそうでございますけれども、機会あるごとにその量を増していきたい、いま少しく比率を高める必要があるとは考えておるのでございます。ただ御承知のように、今世界が割合に金融界は協調態勢に、ございまして、あるいは主要国の通貨価値の安定の問題であるとか、金の流出入の問題であるとかいうことについて、ともにその現状に大きな変更を生ぜしめないという趣旨においての協調態勢をとっております際、日本がことにアメリカから相当の借款を仰いでおりますようなこの際、金をふやしていくということがなかなか実行しにくい点がございます。しかし、今申し上げましたような機会とその時期を得ますならば、極力私は少しでも金準備を増していく方向努力いしたたいと考えております。現に最近におきましても、つい三、四年前でございましたか、適当な時期を得ましたので、ある程度の金を買いまして充実いたした実績もございますので、今後ともその方向で進んで参りたいと考えております。
  27. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 ただいま総裁からいろいろ伺ったのでありますが、中央銀行あり方の問題、また日本金利の問題あるいはアメリカとの関係もあるのでというお話もございますが、しか日本現状といたしましては、やはり日本独特の経済立場から健全な形を持っていくということが非常に重要だと考えます。私たち日銀のやるいろいろな政策の中では、ただいま総裁は非常に控え目にいろいろ申されたのでありますけれども、しかし少なくとも現在の日銀の力というものは、一般の経済界ばかりでなく銀行経済そのほかの方面においても相当の力を持っておって、日本の大きな経済のにない手として私は軽視できないものがあると思うのです。そういう点について今後とも一つ、いわゆる一般大衆が迷惑をしないような、物価などが値上げにならぬような、生活が安定できるような方針で進んでいただきたいことをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  28. 臼井莊一

    臼井委員長 堀昌雄君。
  29. 堀昌雄

    ○堀委員 日銀総裁にお伺いいたします。  ちょっと今の佐藤委員の御質問の中で私もう少し明らかにしていただきたい点がありますので、最初にそれから伺いますけれども、貯蓄の増強ということはもちろん日本現状で必要であろうと思いますが、現在の貯蓄のふえ方というものは私はそんなに不十分な状態ではないと考えております。そこで最近の貯蓄のふえ方について、これでは非常に少ないというふうにお考えなのか。投資との関連で少ないということでございますならば、それは投資が少し行き過ぎておるからの問題であろうかと思いますので、現状段階で、私は資料等を見ましても著しく貯蓄が低くなっておるとは考えませんが、その点についてお答えいただきたいと思います。
  30. 山際正道

    山際参考人 国民所得全体のうちにおいて何がしが貯蓄だろうかという統計は、総理府から発表されております。ただ、しさいに見ますと、あの統計のとり方自身にも技術上いろいろ問題があるようでございます。従って今後統計を基礎に論じますためには、いま少しくその点についての改善方を、なお研究もいたしておりますが、進めたいと思っております。ただ全体の感じといたしまして、決して日本国民の貯蓄率が私は一流国に比べて低いとは考えておりません。それは堀さんも同様のお考えだろうと思います。ただ、御承知のように一面において非常な消費の伸びがございます。また投資の伸びが一面においてございます。その様相を考えますと、その両者の不均衡から生ずるいろいろなひずみが、ついに景気調整措置をとらざるを得なくならしめておるところの原因になっておるように思うのでありまして、それは両方から歩み寄りまして、貯蓄もいま少しく進める、消費も抑制をする、同時に投資の方も行き過ぎを押えるというようなことで、いま少しく資金需給の均衡を回復いたしませんことには、なかなかその調整の効果を最終的に発揮することはむずかしいのではなかろうかということを考えておりますが、何分この大きな国民所得のうちの蓄積の問題でありますから、統計的に数字をもって的確に言うことはできないということは、非常な欠陥かと考えております。
  31. 堀昌雄

    ○堀委員 国民所得統計では問題があろうかと思いますが、日銀のお出しになっておる資料で拝見をいたしてみますと、実は本年の六月は、定期預金につきましては、都市銀行では前年比で約一三%ぐらいの増になっておりますし、地方銀行では二〇%ぐらい前年比で増になっております。それからもう一つ、一体定期性預金を法人と個人に分けて考えてみますと、先ほど税制上の処置をとってもらいたいというお話がございましたけれども、実はこれも日銀の資料をもとにして計算をいたしてみますと、昭和三十五年の三月から三十七年の三月まででは、五十万円以下の定期預金につきましてはその伸び率が六・一%でありますが、一口五十万円以上の定期預金につきましては、伸び率は一八・一%というふうに非常にふえておるわけであります。ですから、今税制上の処置ということによって恩典が得られるのは、この異常にふえてきておる方の五十万円以上の定期性預金について恩典がかぶせられることになるのでありますが、現在必要なのはそうではなくて、全体の定期預金の金額の上で九九・二%を占めております五十万円以下の定期預金がふえるということの方に問題があるのではないか。これがふえるということは、税制上すでに国民貯蓄組合で処理をされておるわけでありますから無税になっているのであって、それをさらにふやそうということであるならば、預金金利でも上げない限りはふえないのではないか。ですから、税制上の処置によって、わずか〇・八%の構成比である一件当たり五十万円以上の定期性預金の増加を期待するということが、私は貯蓄増強にそんなに大きな比重はないと考えるのでございますが、その点についての日銀総裁のお考えを承りたいと思います。
  32. 山際正道

    山際参考人 私も、御指摘のように、何がしか税制の優遇自体が直ちに大きな貯蓄の増強額となって現われるとは実は考えておりませんけれども、そういういき方の態勢自身をとるということが自然にそういうムードを喚起いたしまして大きく貯蓄増強に効果があるのではないか、それほどまでに国民経済は貯蓄増強を要求しておるという一つの表現として非常に有力ではないか、また人を説くにも非常に説きやすいということにもなろうかと思いますので、その効果の方をより大きく期待をいたしておる次第でございます。
  33. 堀昌雄

    ○堀委員 今のお言葉はわかりますけれども、そういたしますと、実は私どもは——これは税制上の問題になって恐縮でありますけれども、一般の国民が勤労所得として納めております所得税と著しく均衡を破るような税制がここに生まれることが非常に心配なわけでありまして、私どもはやはり、今のムードをつくるという程度の必要さであるならば、これは他に方法があるのではないか、こういうふうな感じがいたします。むろん日本銀行として貯蓄増強についてのお考えはわかりますけれども、国民立場として税制の公平化という面から見ても、なおかつそういうムードづくりはそういう手段にたよらなければならないのかどうか伺いたいと思います。
  34. 山際正道

    山際参考人 私どもといたしまして預金の増強について重大な関心を持っておりますことは御承知通りであります。いわば将来の日本経済自身が安定した基礎の上になお力強い発展を遂げ得るかどうかという重大な問題を、この貯蓄増強と輸出増進とにかけておりますこともまた御存じの通りと思います。その意味におきまして、むろん税制上負担の公平等の理論は当然でありますけれども、いわば一種の経済的な必要事態に対応する臨時必要上の措置といたしまして、少なくとも気合いをそこに入れていくという態勢をとりますことが、この際といたしましては最も必要な経済政策の根幹をなすのではないかという意味においてそれを望んでおりますので、税制上従来とられておりますいろいろな理論的な立場というものを否定をいたしておるわけでは毛頭ございません。ただ臨時事態に対応する臨時の強力なる措置ということで要望いたしておるのでございます。
  35. 堀昌雄

    ○堀委員 もう一点だけ、この点について伺いますが、そういたしますと、実質的には税制の優遇処置がこれ以上に講じられることによって、現在構成比では〇・八%しかないものが、幾らふえても知れておるわけでありまして、実際には九九・二%を占める現在国民貯蓄組合が利用できる五十万円以下の定期預金をふやす手段としてはたしてこれで十分かどうか。先ほどは実質的には影響ないかもしれないとおっしゃいましたけれども、ムードをつくったからといって、そのムードは下の五十万円以下の方には影響はないと考えるのでございますが、その点について再度伺って、この部分はこれで終わりたいと思います。
  36. 山際正道

    山際参考人 その点は預金増強の実務に当たっております者の観測から申しますと大へんな力強さになるのであります。事は非常に比率が小さいように思いますけれども、しかし国がそこまで力を入れてやるのかということで進みますならば、これが非常な力強い運動の基盤になることは否定できないと思いますので、ぜひとも私はそれを念願いたしておるわけでございます。
  37. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に、この前の銀行大会でごあいさつをなさいました中で、私ちょっと理解に苦しむお言葉がありますので伺いますが、コストの調整をも含めた広い意味における通貨価値の安定を通じて、新しい発展の基礎をつちかうことは、いよいよ切実な課題となって参ったと存じます。こういうふうにお述べになっておりますが、一体このことは具体的にはどういうことを指しているのでございましょうか。
  38. 山際正道

    山際参考人 内容は各企業の態様によりまして非常に広範な範囲にわたると思うのでありますが、要するに効率の低いものや、あるいは将来の値上がりを予想してある種の物を買い込んでおくというようなことにおきまして、稼働の率の非常に低い資産を割合に多くかかえ込んでおるきらいがあるのではないか、さような際にはそれを適正に整理をいたしまして稼働率を上げると同時に生産性も増して、そうしてこのコスト・ダウンをはからなければ、自由化を控えての日本経済というものが逆境に立つおそれがあるということを申したつもりでありまして、言葉は短こうございますけれども、各企業における当てはまる部分は種々雑多、非常に多様になってこようかと思います。
  39. 堀昌雄

    ○堀委員 前段で物価の問題とコストの問題にお触れになっております。私もこの両点については総裁のお考えに同感でございます。ただそのコストの調整を含めた広い意味における通貨価値の安定ということになりますと、実は相当に抽象的になって参りますので、この前段は通貨価値の安定についてお触れになり、後段ではコストの問題にお触れになっておりますが、現状では実は高度成長のためにコストが上がってきておるのだと私は理解いたします。シェア等の獲得のために必要以上の、過度の投資が行なわれ、そのために先ほどもお話が出た土地の価格も上がり、建設費も上がり、それがコストに大きくはね返ってきておる、こういうような実情だと思いますし、さらにここでお述べになっておりますように、長期にわたる着実な輸出増進の基盤に変化が生じ始めていることと、コスト面の圧力が非常に強くなってきたということにお触れになっておるわけでありますが、これは私は一つの悪循環のような格好になっておるのでどこかでこれを断ち切らなければならないと思うのでありますが、そうするとそれをどういうふうに断ち切ったときに広い意味における通貨価値の安定が生じるのか、その点をちょっと伺っておきたい。
  40. 山際正道

    山際参考人 私がそこで申し述べましたことの意味は、各企業ごとによくその経済性に再び立ち返って考えてみまして、生産性の低いものをいたずらにシェアの関係でかかえ込んでおる、あるいは将来の万一の場合を予想して、直ちに必要でないものを今買っておくとかいうことにおいて、全体としての効率が非常に低下しておる部分があるのではないか、それを整理することによって全体としての、今申し上げました生産性なり操業度を高くいたしまして、そうしてコストの低下をはかっていくことが必要ではないか、かような意味で申したのでありまして、実は何と申しますか、経営全般にわたって合理化が必要だと思うという意味でございます。
  41. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、次に今生産性にお触れになりましたから、先ほども最初にお話がございましたが、日本銀行としては現在の生産の水準、これを一体どうお考えになっておりますのか。過般経済企画庁から改定見通しが出されまして、長官にお見えいただいてここで論議をいたしましたけれども、その際は暫時下がって十月ごろが三〇〇ぐらいでボトムということになるのではないか、その後横ばいということで大体計算がなされておったようでありますが、七月の生産は確かに少し下がりましたけれども、この下がり方は上がったり下がったり上がったり下がったりで、全体としての方向を見きわめますときには、私は下がってきているとは理解ができないわけでございますが、その点は生産は今後下がっていく方向にあるとお考えになるか、横ばいとお考えになるか、いずれでございましょうか。
  42. 山際正道

    山際参考人 その点は判断が非常にむずかしい点でございます。御承知のように業種によりまして態様はさまざまでございます。ただ通覧して申しますと、どうも私どもが見る限りにおきましては、何と申しますか弱含み程度に将来はあるのじゃなかろうか、弱含み程度においてその状態が将来に相当続いていくのじゃないか、いわば弱含み横ばいといった感じの状態がずっと続くのではないかと考えておるのでございまして、それが一体輸入の増加とかあるいは国際収支の面にどういう影響をもたらすか、その点は今後なお最も注意深く注目しなければならぬ点かと存じております。
  43. 堀昌雄

    ○堀委員 大体企画庁は、そこへ参事官も見えておりますが、下がる方向と私はこの間承りました。私は、実はこの一月以来日銀の当時の高木調査局長にお越しいただいたときも下がらないだろうと申しておりましたが、やはり下がらなかったと思います。これは内容的に見ますといろいろと各企業によって問題がございますから、一がいにはどうこうと申せませんけれども、これが下がらない理由は一体どこにあると総裁はお考えになりますか。
  44. 山際正道

    山際参考人 これも企業ごとになかなかむずかしい問題であろうと思うのであります。コストを競争上下げなければならぬためには、合理化されたばかりの設備をフルに使って増産しなければ、そういう結果が出てこないという点がなかなか多いのでございます。そのために、市況からいうと、いま少しく生産を落とした方がいいのではないかと思われても、コストの関係においてなかなかそうはいかぬ、これは一企業立場から申しますれば、そういう計算も成り立とうかと思います。ところが、一種の気迷い状態にあるのでありまして、今申しましたような内部でいろいろな整理整とんがつきますれば、そういう懸念なしに下げるべきものは下げる、市況に応じて適当に調節ができるという状態になるでありましょうし、それをぜひ実現したいものと考えております。
  45. 堀昌雄

    ○堀委員 ただいま市況に応じてというお話がございましたけれども、日銀卸売物価指数を拝見いたしますと、四月、五月、六月、七月、ほとんど一ポイントの差かない状態——四月か一〇四・八、五月が一〇四・五、六月が一〇四、七月が一〇四・二でございますから、ポイントの差のない形で卸売物価推移をいたしております。実は卸売物価がこういうふうに定着をしていて、今のように、生産が相当に下がるべきであるにかかわらず下がらない。在庫等はそういう状態で相当ふえておるものもあるのにもかかわらず、下がらない。しかし、そのもとをたどって参りますと、最近、先ほどもお触れになりました滞貨金融減産資金等そういう資金の放出がこれらの卸売物価の下がるべきを下げないように固定さしておるのではないか。それによって市況が下がらないから、そこで生産も下げないで応じていくというようなことが生じておるのではないかというふうに私は理解をいたしますけれども、そういううしろ向け金融卸売物価との関係、特に七月あたりは鉄鋼、繊維等において顕著に卸売物価の上昇が見られておる等はこれらに関連があると思いますけれども、総裁はどうお考えですか。
  46. 山際正道

    山際参考人 滞貨を生じました場合に、これを保持するために金融が行なわれておりますことは御指摘の通りでございます。ただ、金融機関は、私どももむろんそうでありますが、単純に品物がたまったからそれを目当てに金融するというわけのものではございません。しばらくそのストックをかかえることによって生産の制限が徹底いたしまして、市況がやがて立ち直るという積極的意味を持つ場合に限りまして金融が行なわれておるわけでございます。そういたしませんと、回収上危険もあることでございますから、当然銀行配意としては将来立ち直るという見込みのものについてのみ一時的な措置として行なっておるわけでございまして、これが全体の市価もしくは卸売物価のもっと下げるべきものをささえておるという程度に広く行なわれておるとは実は認めておりません。そうでなしに、より以上の混乱、崩壊を避けるという意味においての一時的な処置でございますから、お話のような意図は毛頭その間にはないはずになっております。
  47. 堀昌雄

    ○堀委員 卸売物価に触れましたからちょっと。これは詳細にお伺いをしてよいのかどうかわかりませんが、実は日銀卸売物価指数を拝見いたしますと、三十五年、三十六年の年度平均で見まして一〇三・六、実は大体三・六%上がっております。経済企画庁も週間卸売物価指数というのを出しておりますけれども、これを見ますと、三十五年、三十六年の年度平均で〇・五%しか上がっておりません。日本経済のいろいろな事情を分析するためにきわめて重要なものである卸売物価指数が、日本銀行の場合には三・六%上がり、経済企画庁のものでは〇・五%しか上がっていないというような実情では、これは一体いずれをとってみた方がよいかという問題が生じてくると思いますが、日銀総裁立場としては、現在の日銀卸売物価指数について、今後ともこういう方向で処理をされるのかどうか、その点を伺っておきたいと思います。
  48. 山際正道

    山際参考人 同じような卸売物価指数を本行と経済企画庁と両方から発表いたしておりますことに関連いたしましては、もう両三年前になりますが、私どもも再検討をいたしました。もし重複するものならば一方をやめた方がよい、さもなければミスリードするということで、専門技術家に集まってもらって検討いたしましたところ、その結論は、おのおの特徴を持っておりまして、これはその特徴を十分のみ込んだ上で利用するならば両者とも存続すべきであるということになりましたものでありましたから、自来従前通り両者とも発表しているわけであります。どう違うかと申しますと、第一に、日本銀行卸売物価指数のやり方は明治から始まっておりまして、非常に長い過去の統計をそろえております。長期にわたりましてその趨勢を観察いたしますのには日本銀行の統計によるのが非常に便利でございます。これに対しまして、企画庁の方の卸売物価指数のとり方は約十年ほど前から始まりましたものでございまして、その統計としての履歴は割に浅いものなのでございます。のみならず、私の方は旬間の指数を発表いたしておりますが、企画庁の方は週間の指数を発表いたしております。それから、扱います商品の種類につきましては、日本銀行の方は卸売段階におけるあらゆる物資の価格を織り込んで、物価に関するいわば一般的な指数というつもりでやっておりますのに対しまして、企画庁の指数は、製造工業に関連のある製品及び原材料を対象として、国民経済全体から申しますとやや工業に片寄った部分の特殊なものについての物価指数を表わしているもののように思うのでございます。日本銀行の指数には自然家庭用の農産物あるいは水産物等も相当織り込んでおりますし、一方企画庁のものはそのようなものは入っておりません関係におきまして——承知通り、最近は農産物の価格が相当騰貴をいたして参りました関係もありまして、現われました結果では御指摘の通り日本銀行の指数の方が企画庁のものより少し高く出ておりますが、その分かれております根本の原因は、品物のカバレージの問題であるように考えております。
  49. 堀昌雄

    ○堀委員 そういたしますと、いろいろな工業生産等の関連については企画庁の物価指数が適当かと思いますけれども、経済全体としての物価指数として見ると、日銀物価指数の方が適正な現実を表わしておる、こういうふうに理解をいたしたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
  50. 山際正道

    山際参考人 両者の特徴といたしましては、概括いたしますと御指摘の通りであります。
  51. 堀昌雄

    ○堀委員 実は政府側では最近の卸売物価についてもっぱら企画庁の低い方の卸売物価指数をお使いになって、卸売物価は上がっていない、こういう使い方をされております。そうなりますと、現在の物価の水準になる尺度は日銀のものの方をたよるのが正しいではないか。そういたしますと、やはり卸売物価は最近必ずしも下がっていない。対前年同期比で見ましても九九・六とか二とかという程度でありますから、そこらのことはほとんど下がっていないというふうに理解をいたしたいと思います。  そこで、物価の問題は非常にむずかしい問題がございますけれども、それと関連をいたしまして、金融に対する態度について実は当面は今の引き締め基調を堅持したい、こういうふうに総裁はおっしゃっておりますけれども、少し金融問題の内部にわたって伺いたいのであります。  現在とられております金融引き締めの処置は、高率適用、預金準備率の引き上げ、公定歩合の引き上げという三つの方法によって昨年九月二十五日以来行なわれておると思います。そこでこれをどうするかという時期の問題等は、これは伺ってもお答えにならないのが筋だと思いますから私は伺いませんが、ちょっと伺いたいことは、現在のこの預金準備率というものは、諸外国等と比較をし、あるいは日本現状においておおむねこれで適正なのかどうか、その点を最初に伺っておきたいと思います。
  52. 山際正道

    山際参考人 準備預金制度自体の持つ意味から申しますと、私はこれは最低だと思います。諸外国の例を見ましても、真に準備預金の機能を発揮させるためには、いま少しく高い率できまるべきものと考えております。何分にもこれは日本では初めての制度を開始いたしました関係上、当初は低くということでスタートいたしますので、現在その程度にとどまっておるのでございます。機会を得ますならば、私は将来の姿としてはいま少し高い率の準備を保有せしむべきものであろうと考えております。
  53. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に高率適用でございますけれども、現在高率適用にかかっております市中銀行は、一次、二次両方に分けて何行ぐらいございましょうか。
  54. 山際正道

    山際参考人 御承知のように、高率適用の問題はそのときの貸出残高のいかんによりまして常時出たり入ったりしております。でありますから、時点をとりまして申しますと、ときに差異がございますけれども、概して申しますと、一次にかかっておりますのは五、六行、二次にかかっておりますのが三、四行というのが昨今の姿であろうと思います。
  55. 堀昌雄

    ○堀委員 新聞で拝見をいたしますと、先般の記者会見で総裁は、二次高率適用については適当な時期にはずしてもいいのじゃないかというお話がございました。高率適用はこの前のときには一次も一二次もあわせて行なわれたわけでありまして、一次が一厘高で、二次がそれのさらに二厘高ということで先般きめられたわけでございますけれども、この高率適用をもし解くといたしますならば、その解き方は二次をまず解いて、また一次を解くというような解き方になるのか。あるいは二次と一次をあわせて解かれるようなことになるのか。それの功罪と申しますか、影響するあり方等について伺っておきたいと思います。
  56. 山際正道

    山際参考人 お尋ねの点は、その実行を適当とする時期における預金状況その他資金の需給関係情勢いかんによってきまると考えます。従って、いずれか一方でなければならぬというほどのものではなかろうと思います。おそらく想像といたしまして、もしその問題に触れ得る時期が来たと考えますならば、順次はずしていくという考え方の方がスムーズにいくのではないかと考えておりますが、今申しましたように当時の状況いかんによることでありますから、一がいに申し上げかねます。
  57. 堀昌雄

    ○堀委員 高率適用を緩和した場合における影響でございますね、その次にその点をちょっと伺いたいと思います。
  58. 山際正道

    山際参考人 高率適用を廃止いたしますと、市中銀行その他銀行日本銀行に対する依存度と申しますか、依頼心と申しますか、その方面にゆとりができるわけでございまして、自然銀行の貸出政策がそのために緩和されるということになり得る場合がある。しかもその資源を日本銀行に求めるということになりますから、これははずしてもそういうおそれはない、銀行はやはり預金を中心に自己の集めた資金において運用を続けていくという見通しが相当立ちませんと、容易にはずせないということになろうと思います。そういうわけでございまして、銀行資金繰りに対する影響は直接起きるものと考えております。
  59. 堀昌雄

    ○堀委員 最初にお話をいただきましたときに、企業設備投資等はだいぶ落ちついてきたけれども、資金需要は依然として衰えていない、こういうことをお話になったわけでございますが、そういうふうにいたしますと、企業資金需要がある程度落ちついてこないとやはり高率適用を解くわけには参らない、それじゃこういうふうに理解をしてよろしゅうございましょうか。
  60. 山際正道

    山際参考人 その点は、やはりそういう措置をとります場合に考慮さるべき問題の一つだろうと考えます。現在の場合は、設備拡張の方は資金の手当がなかなか思うにまかせず、従って進行いたしませんでも、なお資金を得る道あらば再びその計画を実行したいという意思がある場合が相当ございますので、さような場合にはそれをにわかに認めるわけにはいくまいという配慮もあるわけでございますから、そういう高率適用の問題に触れる場合におきましては、やはりそれは考慮せらるべき重要な点だと考えております。
  61. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に、今総裁は、予想される事実として、もしそういう時期が来れば順次行なわれる方がスムーズであろう、こういうお話がございましたが、私は高率適用という問題は結局公定歩合の操作だと思います。二銭の公定歩合、二銭四厘なら四厘、六厘なら六厘という公定歩合が並んでおるというのが実は現在の状態でございますから、もしそういうものがはずされる方向ということになりますと、先ほどの総裁のお考えからするならば、順次行なわれていく方がよろしい。まず二次高率適用がはずされ、一次高率適用がはずされ、その後に公定歩合が下がっていく、こういうことの方が自然な姿だというふうに理解をいたしますけれども、その点についての総裁のお考えはいかがでございましょうか。
  62. 山際正道

    山際参考人 お話のような場合もあり得るかと考えますが、繰り返し申し上げます通りに、その実行いたします場合の情勢いかんによりましては、あるいは二者をあわせて実行することもございましょうし、一つ一つ解決する場合もあろうと思いますので、一がいにどっちがよろしい、どっちの方があり得るというふうには実は申し上げかねるのでございます。事の性質上そればやむを得ないことかと考えております。
  63. 堀昌雄

    ○堀委員 そのときの状態によって、順次やる場合もあるし一緒にやる場合もあるとおっしゃいましたが、それじゃ、これは仮定の事実でございますけれども、一緒にやる場合ということで想定をされるそのときの状態というのは、一体どういう状態の場合でございますか。
  64. 山際正道

    山際参考人 一言で申しますと、たとえば貿易が非常にふえる。輸出が非常に増大いたしまして、資金が相当潤沢になる。あるいは預金が非常に増強いたしまして、日本銀行に対する依存度が相当低下してくる。また全体として資金の需給関係調整をとられまして、日本銀行に対してしいて依存する必要はないという状態がたまたま時を同じうして参りますれば、そういうことにもなろうかと考えますが、一にかかってそのときの情勢いかんということで御判断を願いたいと思います。
  65. 堀昌雄

    ○堀委員 大体今のお話で、今後の情勢の中で今おっしゃるような情勢はなかなかちょっと来ないのではないか。率直に申しまして、輸出アメリカに非常に依存いたしておりますが、アメリカ景気動向については必ずしも先行き楽観を許さないではないかと思いますし、その他預金が急激に増強したりするようなことは、これまたどうも私現在の情勢では考えられませんので、大体における見通しというものについては推測ができるかと思います。  そこでもう一つちょっとお伺いいたしたいのでございますが、この前の談話の中で、貿易外収支の赤字についてお触れになりまして、その問題の中における海運の問題が非常に重要なので、新しい海運政策考えたらどうか、具体策はないけれども、公団等の問題はどうであろうかというふうに新聞は伝えておりますが、この問題についての総裁の御真意を伺っておきたいと思います。
  66. 山際正道

    山際参考人 今後における国際収支の問題といたしまして、いかにすれば貿易外収支の赤字を減らし得るかという点は、私ども最も重要に考えております。その貿易外収支の赤字のうちで多くの部分を占めておりますのが、外国船による運賃の支払い部分でございます。従って、もしこれを自国船によってまかない得る状態になりますれば、相当その支払いを倹約できるということになろうかと考えるわけであります。ただ海運が世界的に低迷いたしております際に、はたして日本がどういう方法をとればそのルートを通じての国際収支の改善に寄与し得るかという点は、実はしろうとでございまして、問題の重要性は指摘いたしましたものの、具体策になりますと私も自信はございませんが、御指摘のような点は実は思いつきとして申しましたことは事実でございます。
  67. 堀昌雄

    ○堀委員 思いつきでおっしゃったと思いますが、ではこの海運問題の一番のネックは一体何だとお考えになりますか。
  68. 山際正道

    山際参考人 これもただいま申しました通りしろうとでございまして、当たっておるかどうかよくわかりませんけれども、私の感じておりますことは、やはり既往の債権債務その他を整理して再出発ということを考えないと、なかなか全体がうまく一斉に立ち上がるという時期は期待することはむずかしいのではないかというふうに考えております。ちょうどそれは石炭その他各種産業におきまして企業整備が今行なわれておりますが、似たような事情がやはり海運関係にも存在するのではないかということを憂えておるわけでございます。
  69. 堀昌雄

    ○堀委員 石炭にちょっとお触れになりましたから、石炭の融資についてはいろいろ問題がございましたが、その際総裁がおっしゃっておりますのは、非常に将来について危険のあるものの危険負担については一体だれがする、政府が相当危険負担を考慮するのならば融資についても考慮されるべきであろうというお言葉のようでありましたし、海運問題についてもやはり将来の危険負担を一体だれがするのかというふうな表現をお使いのようでございますけれども、これは非常に性質が似ておりますが、金融上から見た危険負担の問題等は、実は現状市中銀行ではこれは負いかねる問題になるかと思いますけれども、それらの点についての総裁としてはかくあるべしという方向一つ伺いたいと思います。
  70. 山際正道

    山際参考人 御指摘の点も実は深く検討いたしたことはございませんので、当たっておるかどうか存じませんけれども、おっしゃるように採算ベースを基礎といたしております民間企業の各銀行に、その危険を負担せしめるということにはおのずから限度があると思います。おそらくは今不況の底にありますような企業を広く立ち直らせるための危険負担はちょっと無理だろうと私は考えます。従って、それは直接間接の違いはありましても、結局において財政が負担するという建前でいかぬと、いつまでたっても問題は解決しないのではなかろうか。その場合においては当然その適用を受ける船舶業者、海運業者自身についても、むろん国家と並んで相当の危険を負担すべきことは当然でありますけれども、とにかく直接間接を問わず一般金融機関のルートで解決しようということはむずかしかろうということを実は申したかったのでございます。
  71. 堀昌雄

    ○堀委員 次にもう一つアメリカ国際収支についてお話がございましたけれども、アメリカ国際収支については、依然としてドルは減少を示しつつございますけれども、そこでこれは私はもう今の通貨制度全般の中の問題であって、単に後進地開発等の資金供給だけの問題ではない、こういうふうな判断をいたしておりますけれども、総裁はそういう国際的は通貨問題の一環としてアメリカドルの減少をお考えになるのか、やはりきわめて部分的なアメリカの後進地開発援助、あるいは各種援助等だけがこの問題の中心になるとお考えになるのか、いずれかを伺っておきたい。
  72. 山際正道

    山際参考人 国際金融制度の問題といたしましては、ヨーロッパその他の方面においてちょいちょいいろんな説が現われておることは御存じの通りでございます。私は現在の段階において考えますのに、現在は欧米各国を通じて主要な中央銀行は緊密に連絡いたしております。相互に資金の移動等による激変を避ける仕組みになっておりますので、国際的には私はそれでいい、またその程度にとどめるのが現状に合っていると考えております。ただアメリカ自身国際収支の問題に関しましては、これはむろんアメリカ自身が最大限に心配いたしまして、いろいろ手を打っております。おそらくアメリカとしては、今後なおその努力を続けまして、結局ドルの地位というものは守られると私は見ておりますので、全体として国際通貨をここで制度として考え直すという時期は、現在今日の問題ではなさそうに考えます。
  73. 堀昌雄

    ○堀委員 最後にさっきの減産、滞貨問題に触れて、実はこの前総裁においでいただいたときにも私触れましたけれども、その後とうとう証券担保金融というものは出ておるわけでありまして、すでに二回にわたって行なわれておるようでございますけれども、これはこの方向へいくと、証券担補金融というものは一つの制度となって参るのではないかという気がいたしますけれども、これについて、八月分等については相当に窓口でお締めになっているにもかかわらず、実はそういうものが出ていくという段階は、含み貸し出しで出るのかどうかわかりませんけれども、やはり日銀としてコントロールのきかないうしろ向け金融が相当にあるのではないかという気がいたしますけれども、この問題についての総裁のお考え方を承りたい。
  74. 山際正道

    山際参考人 証券会社も有価証券に関するいわば問屋であり、小売店でございまするから、ある発行された証券を商品としてその店に用意いたしまするためには、相当の運転資金を必要といたします。それがさばかれまして、おのずからその資金は返されるわけでありますが、何らかの事情金融界の変転等によりまして、多少その売りさばきがおくれましたような場合には増加運転資金を必要とすることは、一般の商品を売買するときと異ならぬと考えております。この意味において、私はそれぞれの有価証券会社がそれぞれの取引銀行との間に通常の商品の仕入れなり販売店の関係における取引行為をいたしますことは、これは別に異とすべきことじゃないように思います。ただ従来投資証券担保金融といってはやされておりますのは、何か日本銀行が参加いたしまして、日本銀行の信用によって証券会社の滞貨金融を見るというかのごとき印象を与えられておりますことは、私としてはあまり好ましいことではないと考えますので、通常の商品会社がその運転のために必要とする金融、これが円滑にいく程度のことが望ましいと考えております。
  75. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと今までの中で、企画庁に一つ伺っておきますけれども、さっきの総裁のお話で、企画庁の指数というものは生産あるいは工業、産業関係の問題には非常に適当だけれども、物価の指数という形では日銀の方が適当ではないかというお答えがありました。そこで一つ企画庁も今後いろいろな資料をお出しになるときには、日銀の指数をあわせてその場に出す方がいいのではないか、私はこう考えますけれども、それについて企画庁側の一つ御見解を伺いたいと思います。
  76. 羽柴忠雄

    ○羽柴説明員 ただいまの指数の問題でございますが、これにつきましては、日銀の方では先ほど総裁がおっしゃいましたように、長い昔からの関係もございまして、それからまた景気全体の予測をされるというような見地から見まして、それからまた全般を網羅しておられるというような点から見まして適切だと思うのでございますが、ただ問題は、基準年次の取り方につきまして、日本銀行の指数につきましては二十七年を基準としておられるのでございまして、この点は経済企画庁の方が新しいといいますか、基準年次の取り方が違っておる、そういう意味で、ございまして、一がいに企画庁の数字は全部だめであって、景気調整にも役に立たない、日銀の数字一本にした方がいいということはちょっと言いかねるのではなかろうか、おのおのの特徴があるのではなかろうかと私は考えておるわけでございまして、その意味におきましてやはり二本立も意義があるのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  77. 堀昌雄

    ○堀委員 私の質問していることに答えてもらわないとだめですよ。私はそんなことを言ってないですよ。経済企画庁が資料を出すときに、やはり日銀の指数もあわせて出したらどうか、こういうことを言っているのです。あなたのところで出すやつは当庁卸売物価指数というのだけしか出さないでしょう。私どもはちゃんとどれもこれも見ているから、あなたの方でこう言っても全体はこうだなと思うけれども、やはり企画庁が出すときに、日銀のそういう資料があるのだから、なければともかく、あるのなら両者を並べて出して、日銀の指数ではこうなっておるが企画庁の指数ではこうだ、そういう場合に企画庁でものを考えるときは、その両者をその場その場において判断をいたすように出すべきであって、自分たちに都合のいいところだけを出して、それだけで企画庁でものを判断するというやり方は、企画庁としては少し量見が狭いのではないか。だから私はここで今もちょっと伺ったのですが、生産の問題等についても、いろいろな問題について意見の相違があるのは私はけっこうだと思う。しかしそれを広い立場で、こういう考えもあるということが企画庁の資料を見てもわかるようにするのが、私は企画庁としての国の全般の経済に対する当然の責務だろうと思うので、私はあなたの答えられたようなことを聞いてはいないのです。一本にしろなんて言ってないのですから、その点をどうするかということを答えていただきたい。
  78. 羽柴忠雄

    ○羽柴説明員 調整局におきましては日銀の数字もいろいろ使っておるはずでございますが、今後も状況によりましてはやはり企画庁の数字だけではなくて、日銀の数字もあわせて使うということはあり得ると私は思います。
  79. 堀昌雄

    ○堀委員 あり得るということでなく、あなたのところの「経済月報」を見ると、その中には日銀の指数は出てないのですよ。企画庁の卸売物価指数だけしか出てない。だから卸売物価という項目に日銀の資料もあわせて出すようにしたらどうか、そうしてそれに基づけばこうだというようなものの考え方もあわせて「経済月報」等に表わしたらどうかということを私は言っている。現在は日銀日銀で月報でいろいろとお出しになっておるし、企画庁も月報を出しておる。この二つをつまびらかに読んでみると、やはりいろいろと問題の相違がありますが、それは立場の相違があるからわかりますけれども、原指数等が二つ出ておるというのなら、その二つをその場の適正な必要に応じて利用するような態度が望ましいということであって、あなたの言うように、そういうこともあり得るなどというようなことは、それは答弁にならないと思うのです。ものの考え方ですから、どうですか。統計の使い方というのはそういうものじゃない。自分の都合のいいところだけの統計を使うなんて、統計の使い方としては下の下だと思うのですが、どうですか。
  80. 羽柴忠雄

    ○羽柴説明員 「経済月報」のことでございますが、これは調査局の関係のものでございますが、この問題につきましては今後、これは経済企画庁の内部でございますが、調整局と調査局と両方ございまして、いろいろ使い方も異なっております。その場でどうしてもこれが必要だというような場合にはそちらの方を使うというようなこともございますので、なお今後検討いたしまして、御説の趣旨に沿うようにやっていきたいと思います。
  81. 堀昌雄

    ○堀委員 もう一点。先ほどの準備率の問題、高率適用の問題、公定歩合等の問題については、私は総裁のお考えは十分了解いたしました。  そこで政府側の銀行局長としてのこれに対する見解をあわせて伺っておきたいと思います。
  82. 大月高

    大月政府委員 ただいまのお尋ね準備率の問題、それから高率適用の問題、これは中央銀行の実行いたします金融政策の非常に重要な部面でございます。そのためできるだけ日本銀行の御意見を尊重して、十分御相談してやって参りたいと思います。
  83. 臼井莊一

    臼井委員長 毛利松平君。
  84. 毛利松平

    ○毛利委員 私は問題をしぼりまして、日銀総裁相互銀行の問題についてお尋ねしたいと思います。  内容は三点にしぼってみたいと思います。相互銀行が昭和二十六年に発足いたしまして驚異的な発展をしてきたことは御存じの通りであります。七月の統計によりますと、資金量は一兆五千九百三十八億円になっております。また貸出量を三月末の統計を見ましても、全金融機関十四兆五千三百三十八億円のうち、全国銀行が九兆九千六百十二億円になっております。特に政府機関三行の合計が五千四百四十億、これは中小企業対象であります。相互銀行、金庫、組合の統計が二兆四千八百十四億になっております。そのうち相互銀行が一兆二千七百五十六億円という三月末の貸し出しをしております。これが百パーセント中小企業であることは論を待たないのであります。従いまして全金融機関立場におきましても、特に問題の中小企業金融の対象におきましても、相互銀行の占める地位が非常に大きくなっていることは議論の余地はないと思います。かかる観点に立ちまして、相互銀行日銀取引状況を見ますと、七十二行中日銀の当座預金取引を持つものが三十五行、その内訳は資金量五百億円以上のものが八行、二百億円以上のものが十一行、二百億円未満のものが十六行となっております。  さらに二点は、日銀の歳入代理店をしておるものは十六行あります。その内訳は資金量五百億円以上のものが八行、二百億円以上のものが八行、計十六行であります。さらに日銀との信用取引を認められておるものが一行、日本相互銀行であります。地方銀行の場合におきましては、大小を問わず日銀取引が認められております。かかる観点に立って、相互銀行との間に不均衡があるのではないかという一点であります。相互銀行七十二行中に、先ほど申し上げました二百億円以上のものが二十一行あります。日銀との当座預金取引をしておるものが十九行でありますが、あとの二行に対してもすみやかに当座預金取引をすべきではないか、総裁の御意見をこの点について聞きたいのであります。  次には、代理店取引が十六行でありますが、今申し上げますように、二百億円以上の預金量を持つものは二十一行あります。これに対してもすみやかにふやすべき必要があるのではないか、これが二点であります。  第三点は、信用取引日本相互一行に現在しぼられておりますが、先ほど来申し上げますように、非常に占める地位が大きくなり、さらにまた預金量の増大が予想されるのであります。かかる観点に立って相互銀行の場合にも準備預金制度を適用することが予想されると同時に必要ではないか。さらに相互銀行の運転資金の貸付が総量の八〇%を占めておる、こういう実情に照らして、少なくともいわゆる資金量二百億円以上のものに対して日銀との信用取引の道をすみやかに開くべきではないか、以上三点について率直な総裁の御意見を聞きたいのであります。
  85. 山際正道

    山際参考人 お説の通り、過去の無尽会社が相互銀行と変わりまして、新たに預金業務を始めまして、自来の成績はまことに目ざましい発展ぶりでございます。従いまして、本制度を創設以来、相互銀行に対する取引関係は、本行といたしましても、なるべく実情に応じましてその量を拡大して参りたいという方針でやって参っておりますることは、ただいま御指摘になりました各種の計数によりましても、だんだんその数がふえております。今後相互銀行はおそらく非常な発展を遂げることでありましょうから、その度合いに応じて、やはり日本銀行が信用取引その他の預金取引も当然でございまするが、代理店関係等につきましても、実情に応じて拡大して参るべき趨勢にあると考えておりまして、極力この点は積極的に配意いたしたいと考えております。なお、その半面におきまして準備預金制度を創設して、そして公衆への責任を果たし得るような体制に置く必要がないかという点につきましても、実は私も同様に考えております。これはどういう制度がよろしいか、今なお研究の途上ではありまするけれども、その発展に従いまして、行く行くは実現せらるべき問題と考えております。
  86. 毛利松平

    ○毛利委員 銀行局長の御意見もあわせて。
  87. 大月高

    大月政府委員 日本銀行総裁のお話の通りであります。
  88. 毛利松平

    ○毛利委員 私の質問はこれで終わります。
  89. 臼井莊一

    臼井委員長 これにて、山際日本銀行総裁に対する質疑は終了いたしました。  山際日銀総裁には、御多用中のところ長時間にわたって御出席をいただきましてまことにありがとうございました。厚くお礼申し上げます。      ————◇—————
  90. 臼井莊一

    臼井委員長 次に、国民金融公庫法の一部を改正する法律案及び国民金融公庫の農地被買収者等に対する貸付けに関する臨時特例法案、両案を一括して議題といたします。質疑を続けます。通告がありますのでこれを許します。田澤吉郎君。
  91. 田澤吉郎

    田澤委員 国民金融公庫法の一部を改正する法律案につきましては、前の国会において、相当程度の質疑が行なわれたのでありますが、そのおりには、政府が農地被買収者問題調査会に対して諮問中でありまして、いまだ答申が行なわれていないときであったわけでございます。しかるに、五月二十二日に調査会より答申か行なわれましたので、その答申に関連して、まず質疑を二、三点行ないたいと思います。  調査会の答申には、世帯員のうちから戦死者、戦傷者、引揚者及び抑留者を出した直接の人的戦争被害や、世帯が戦災にあったり、強制疎開にあったりした直接の物的戦争被害については、農地被買収世帯は、買い受け世帯その他の一般世帯に比べて、その比率が高いと述べられておりますが、これに関する具体的な数字が、もし政府におありでしたらお示しを願いたいと思います。
  92. 大月高

    大月政府委員 ただいまのお話の問題は、内閣の審議室におきまして所管しておりまして、われわれは正確な数字は承知いたしませんので、担当の方にお聞き願いたいと思います。
  93. 田澤吉郎

    田澤委員 それでは、この答申をよく理解しておりますかどうか、その点だけを。
  94. 大月高

    大月政府委員 答申の内容については、われわれも承知いたしております。
  95. 田澤吉郎

    田澤委員 綱島先生にお伺いいたしますが、農地改革の当時、外地にあって不在地主として土地を取り上げられ、その後に帰還した人、あるいはまた戦争そのもののために農地を失った人はかなり多いわけでございます。こういうような状態から考えまして、農地被買収者の現在の生活状況やら、そういう状態が、もし詳細におわかりでございましたらお知らせを願いたいと思うのでございます。
  96. 綱島正興

    綱島議員 ただいまの御質問にお答えいたします。実は詳細な調べはございませんが、一カ所々々々わずかなポイントをとって調べたものによると、被買収者は非常に困窮いたしている。特に、いわゆる地主というような大きな所有者でなくて、五反歩とか三反歩とか一町歩以下の地主であった者が、不在地主であったために、しかもそれが軍役に従事しておったというようなことから小作にまかせておって取り上げられた者は、その後非常な苦痛を訴えておる。お国のために出征をいたし、留守中に、自分の家族が手不足であるために、やむを得ず前田まで小作に出した。帰ってみると、それが強制買収されたというようなことのために、自殺した者さえもございます。さようなことで、その悲惨なことは非常なものでございます。現に、この買収総件数は大体二百五十万余でございます。そのうちの二百万というものは、一町歩以下の所有者の買収件数でございますし、実はそのうちの七、八割は不在者が占めている。それは主として海外者であるという事実を御想像願いたいと思います。詳細な数字は出ておりませんが、さようでございます。
  97. 田澤吉郎

    田澤委員 調査会の答申によりますと、解放した農地の転売、転用については、その後の経済情勢推移のために、大都市近郊等にその事例が多いが、これについては、農地買収価格と比較して開きが大き過ぎるので、かなり不満があると答申には述べられておるのでありますが、農地補償の問題がこのように大きくなってきた理由の一半というのは、何としてもかつては反当たり三百円から四百円ないしは七百円から八百円で買収された土地が、最近では、宅地や工業用地として何千倍という高い取引がされているような事実を見るものですから、こういうように起きてきたと思うのでありますが、政府が土地の価格の異常な暴騰に対して、今までも何らの手を打っていない、また抜本的なこれらの対策というものも考えたことがないのであります。私はただいま綱島先生から、貧困の度合いというものをよく聞かされたわけでありますが、このことによって農地被買収者に対しての対策として、今回提案されておりますところの国民金融公庫法の一部改正案によって、あるいはまた農地補償の形において、この際十分考えてやるべきじゃないかと思うのでございますが、政府考え方をお聞かせいただきたい。
  98. 大月高

    大月政府委員 本問題に関する調査は、農地被買収者に関する調査会におきまして御答申をいただいておるわけでございます。その要旨は、御存じの通り大体三点あると思います。一つは、被買収者に対しまして生業資金のめんどうを見たらどうか、それから第二の問題につきましては、育英制度その他の制度の運用について配慮したらどうか。それから第三の問題は、列挙してはございませんけれども、農地被買収者に対して補償の問題はどうするかというふうに、ほぼ三点だと思います。それにつきましてわれわれの政府提案として国民金融公庫法の改正を御提案申し上げておるわけでございますが、この御提案申し上げた時期はこの答申の前でございまして、必ずしもこの答申とは直接の関係はございません。しかし、その後この答申が出て参りましての結果によりますれば、答申の第一点に相応する措置と実際はなっておるというようなことだと思います。そういう意味におきまして、政府といたしましてもこの御提案申し上げている問題につきましては、ぜひ成立させていただきたいというように考えておるわけでございます。  それから、その他の問題につきましては、政府全体としていろいろ検討し、結論を出されるべき問題もございますし、あるいは予算措置を要するような問題もあると思いますので、各省間にまたがる問題でもありますので、十分検討いたさなければならぬ問題であろう、こういうふうに考えております。
  99. 鴨田宗一

    ○鴨田委員 関連。ただいまの田澤君の質問に対します銀行局長の答弁に対しまして、実は昨日私は局長に質問をいたしましたみぎり、局長の答弁の中に、いわゆる議員立法といたしまして提案したものに対しては反対であるやの答弁がございました。ただいまの答弁と比較いたしますと、私は考えまするに、あなたの答弁内容、しかも議員の立法について反対であるということを答弁されました。その内容について、あなたはさだめし先ほど田澤君から質問のありました農業被買収農地の調査会の答申というものを頭に浮かべ、ただいま答弁されましたまず農業調査会の答申としては、一つには生業資金の問題もありますし、また育英資金の問題もある、さらに農地の補償問題がある、こういうふうな問題があるので、それを総合的に考えて、それと党から出ております例の特別法の問題との関連のもとに反対であり、しかも現在総合的に考えておるんだ、こういうふうに答弁したと、こう善意に私は解釈したいのでありますけれども、また昨日のことを繰り返してどうかと思うけれども、一応昨日の答弁の内容を速記録で拝見いたしまして、そういうふうな判断になりましたけれどもどんなものですか。一つお聞かせを願いたいと思います。
  100. 大月高

    大月政府委員 先ほど申し上げましたように、調査会の答申が出たことでありますので、その答申の御趣旨を十分に研究し、検討して、政府全体として善処すべきものであろうかと、こういうふうに考えております。
  101. 鴨田宗一

    ○鴨田委員 解釈を善意にしてそういう意味からいうと、今回政府原案として提出しておる国民金融公庫法の一部を改正する法律案の内容、すなわち生業資金に対して二十億を貸与するという問題は、政府当局としては、昨日局長が言われました通り、予算が通過しておるのであるから、せめてこれだけでも一日も早く通していただきたいという考え方をあなたは熱意を持って話されたと判断してよろしゅうございますか。
  102. 大月高

    大月政府委員 政府提案の法案につきましては、今お話のございましたように予算も通っておることでございますし、こういう被買収者のお立場も十分われわれはわかるわけでございまして、われわれが先般の国会に提案いたしました理由もそういうことでございますので、一日もすみやかに御通過さしていただければ幸いだと思っております。
  103. 田澤吉郎

    田澤委員 ただいま調査会の答申の結論の三点に対して銀行局長からいろいろお聞かせ願ったわけでありますが、問題は、答申そのものを十分尊重して、これからの補償の問題に関しても、あるいはまた育英資金の問題に関してでも、十分それを進めてもらいたい、これを要望するものでございます。  次に、国民金融公庫法の第一条の「国民金融公庫は、」「銀行その他一般の金融機関から資金の融通を受けることを困難とする国民大衆に対して、必要な事業資金の供給を行うことを目的とする。」とうたわれているわけです。ところが、事業資金ということになっていますが、同公庫では普通貸付のほかに更生資金貸付や恩給担保貸付等を行なっており、必ずしも事業資金には限定されていないようでありますが、同公庫が更生資金貸付や恩給担保貸付等を行なうことができる根拠及び生活資金まで貸し付けることのできる根拠をお聞かせ願いたいわけでございます。
  104. 大月高

    大月政府委員 国民金融公庫は、ただいまお話がございましたように、第一条及び第十八条の規定によりまして生業資金を貸し付ける機関として設立されておるわけでございまして、裏から申しますれば、生活資金と生業資金以外の金は貸さないということだと思います。ただいまお話のございました問題は二点ございまして、一つは更生資金貸付をやっておる。これはどういう根拠に基づくものか。それから恩給担保の貸付をやっておるが、これはどういう根拠か、そういうお尋ねかと思いますが、最初の更生資金貸付につきましては、これは消費資金ではないわけでございまして、やはり国民金融公庫法で規定いたしております生業資金でございます。ただ更生資金は、対象が引揚者でございまするとか、戦災者でございまするとか、その他生活困窮者という条件がついておりまして、ただ、そういう方でございますけれども、いわゆる救済資金ということではなく、独立して事業を遂行する意思を持っておりまして、かつ具体的な事業計画を持っており、しかもその事業計画が成業の見込みがある、かつその事業について金を貸しまして返済が確実である、こういうような方にお貸しするわけでございまして、本来公庫の性格に合っておる貸付でございます。それから恩給担保貸付は、実質消費資金に回るべきものでございまして、この点は国民金融公庫の本来の性格とは合わない貸付でございます。ただこの恩給担保貸付につきましては特別法がございまして、国民金融公庫が行う恩給担保金融に関する法律という特別法に基づいて貸しておるわけでございます。ただ性格的に申し上げますれば、この恩給担保貸付は恩給証書を担保にして貸すわけでございます。恩給は、いわば公務員の退職者が生活資金としてもらっていくべきものでございますので、それの前貸しという性質を持っております。そういう意味で、国が当然払うべきものを一時ここで立てかえておくということでございます。そういう意味から、限度も、その受給権の二年半を限度にするという非常に限定的なものになっております。金額は二十万というように、金額も制限してございまして、そういう意味で、特別恩給制度からきた特例、こういうように考えておるわけでございます。
  105. 田澤吉郎

    田澤委員 よくわかりましたけれども、今回の一部改正の場合に、農地被買収者のための育英資金やら生活資金というものをなぜ入れられなかったのですか。ことに答申が出た今日では、やはり十分理解するという段階であれば、当然にある程度考えていかなければならない問題じゃなかろうかと思います。その点をどうして入れられなかったかという点をお示しいただきたい。
  106. 大月高

    大月政府委員 生業資金以外の貸付を実行いたしておりますのは、ただいま申し上げました恩給担保金融が唯一の例外でございまして、これはまた恩給制度からくる特別の性格を持っておる、こういうことでございます。そういう意味で、国民金融公庫本来の性格から申しまして、育英資金の問題につきましては、たとえば文部省の所管に育英会というのがございます。あるいはその育英会の事業として不適当でございますならば、また新しい機関をつくるとかあるいは少なくとも国民金融公庫のワクの中に入れないで、できたならば何らか育英資金を貸すという方向が、今の金融制度全体の建前から適当であろう、こういう問題でございます。
  107. 鴨田宗一

    ○鴨田委員 ただいまの田澤君の質問の事項に関連いたしまして、綱島先生にちょっとお伺いします。  議員立法として提案してあります。被買収者に対する貸付に関する臨時特例法案、これによりますと、ただいま田澤君の質問のございました通り、育英資金までも範囲を拡大しろ、こういうのが議員立法の内容になっておるわけであります。そこで私は綱島先生にお伺いするのですけれども、国民金融公庫法の一部を改正いたしまして、二十億のワクをいただくということになれば、お借りいたします方々は、お札にはしるしはありませんから、特別立法の内容によって使われても事業資金としてお貸しする、こういうふうなことをやっても、あまりかわりがないのじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  108. 綱島正興

    綱島議員 お答えいたします。  なるほど事業資金として、一定の事業計画を立て返済計画を立てして借り入れをいたすものは事業資金として借り受けられましょうけれども、せがれを大学に出すというようなものは、事業計画は立ちませんし、これがはたして入学試験に通るやらもわからぬというようなこともあり得ることで、決して計画書には載らないものでございますから、これはいわゆる事業計画というものが成り立たないわけです。そこで金融公庫法の特に限定しております——決して貧困者に貸すという意味に解釈してはならないという、事業資金の説明のうちに特にそういうことまでございますので、この際は、非常な無理をさせられておる、ある意味においての救済である、解放地主に対する貸付は、その厳密なる範囲を緩和していただかなければ立法の趣旨に合わないと思いますので、かような提案をいたしたわけでございます。
  109. 鴨田宗一

    ○鴨田委員 一つの例として当てはまるかどうかわかりませんけれども、一つの事業計画を立てている被買収者農家の方がおって、二十万ばかり金がほしい。実際はその二十万の金は、事業計画を遂行する上においては預金として持っておる。しかし子供を一つ学校に入れたい。二十万くらいかかるであろう。この場合は、私が申しましたように金にしるしはありませんから、これを国民金融公庫から事業計画で借りまして、自分で持っているのはその事業計画の方に使って、借りた方を回すという手もあるのではないかと私は思う。いかがでございますか、政治的な判断を一つ……。ちょっと局長じゃ無理ですから……。
  110. 綱島正興

    綱島議員 これはなるほど二十万というものは別に持っておって、事業計画が別にあって、それはそれに使うんだが、実は育英資金と両方はやれないから二十万借りる、こういう人には御説がぴったり当てはまりますが、そうでなくて、実は生活資金にここのところ困る、あるいは育英資金に困る、そういうものにも貸してもらわねばどうにもならないという窮境に追い込められておるものについては、国がやった施策から起こった事柄でございますから、これは一つ考慮しなければならぬのだ。国がやった政策があとからリヴァイズする必要のないほどりっぱなものであったら、私は文句を言いません。しかし非常な残酷なことで、ある意味においては世界じゅうの国際立法の歴史に反するようなことをやった、こういうことだから特に御考慮願いたい、私はこう思うのであります。これが妥当なことをやったのならかまいません。  これは財政当局に注意してもらいたいと思うんだが、実際戦争後に敗戦国で一番低下するのは必ず土地の値段であります。これはローマ以来そうなんです。世界じゅうそうなんです。その後経済が安定すると、必ず上がってくるのは土地の値段なんです。この差額の処置によって国家財政を立て直したことは世界じゅうなんです。ローマ以来あるのです。それを日本ではそのうちの一番ひどいところで農地を取り上げて、そして国家がそういう時代に行なう政策もせず、本人たちの非常な不利益を強制買収して押し込めておる。こういうことは国民感情の上からも——一体人はパンのみにおいて生きるものにあらず、大蔵省の目の子算用だけで国がおさまるものならば世話はございません。そういうことでおさまるものなら、古来聖人も君子も必要ございません。それだけでは世の中はおさまるものではなくて、この立法は実は古来の宗教家、聖人等が志した点に妥当する線だと心得ておりますので、どうか一つぜひそのままで御通過を願いたいと私は思うのであります。
  111. 田澤吉郎

    田澤委員 次に、国民金融公庫の農地被買収者等に対する貸付けに関する臨時特例法案によりますと、「農地被買収者等に対する貸付けに充てるものとして出資された資金を限度として、」云々とあります。ですから、二十億円の出資をひもつきにされているわけでございます。ところが大蔵当局の提案理由の説明では「公庫の経営基盤の一そうの強化に資するため、」云々とあるわけでございます。これはどうも矛盾する形になるわけですが、答申がされた今日なおこういう考え方でおりますかどうか、お聞かせ願いたいわけでございます。
  112. 綱島正興

    綱島議員 私から、横からちょっとお答えをいたします。  この二十億というものを予算に計上するということで非常な努力をわれわれやった。元来これは被買収者の金融救済に充てるということでつくったのが、今度は金融の基礎を拡充するとかなんとかいうことですりかえてやられて、実際こういうことが日本の将来の上に非常な不利益を来たすのであります。そういうことでしたのじゃございません。これは元来旧地主に対して金を貸すということで、それこそ一生懸命になって予算をとった、とってみるとすりかえて別な印刷をして出して、麗々しく上手な議論をする、こういうことは国を益する事柄でないから、私はこういうことは正直にものを進めていくようにして、議員諸君だけは少なくともこのことについては正当な御判断を願いたい。従って、政府の出したものだけ通すというのでは、これはすりかえということになる、本ものを先に通してもらいたいということを希望いたしておきます。
  113. 大月高

    大月政府委員 今の二十億の問題は原資の問題でございまして、貸し出し計画といたしましては二十億を被買収者の方々にお貸しするというように考えておるわけでございます。従いまして、この二十億自体が限定されたものとして考えるのは適当でないというように考えております。
  114. 鴨田宗一

    ○鴨田委員 関連して。国民金融公庫法の十八条二項によりますると、銀行その他の金融機関から借りる力のない方に融通するということになっていますね。銀行その他の金融機関というのはどういうのですか。局長さんに一つ
  115. 大月高

    大月政府委員 たとえば信用金庫でございますとか信用組合でございますとか、あるいは農協でございますとか、この銀行は正確な意味の、銀行法及び相互銀行法に基づく銀行ということでございまして、その他の民間金融機関は一切その他の金融機関というところへ入るわけでございます。
  116. 鴨田宗一

    ○鴨田委員 そうしますと、結局信用度が非常にないというのが対象のわけであります。そこへ持って参りますると、国民金融公庫の性質問題になるのでありますけれども、これがある意味におきましては社会保障的な考え方もちょっぴり出ておるわけです。そういうふうに判断しても間違いないですか。
  117. 大月高

    大月政府委員 銀行その他の一般の金融機関から貸し出しを受けるという感じを一般的に申し上げますと、いわゆるコマーシャル・ベース、その金融機関が採算上成り立っていくという判断で、この金ははたして貸しても返ってくるかどうかという判断をするわけでございますので、相当担保もとり、保証人も立て、百パーセント確実である——自分の手金でございますので、非常に慎重になると思います。そういう民間金融機関に対しまして、政府としましては税金その他政府で集めました金を投入いたしまして、一般にそういう金融機関からは借りられない程度の方にも貸していこう、こういうことでございます。  ただ前提は、やはり金はやりっきりのものではなくして、金を貸すわけでございますから、返済は確実である、こういう条件がつきます。ただ民間考えております確実という感じと、国民金融公庫その他政府の機関でやっております確実という問題とは、具体的なニュアンスにおいては相当違いがある。やはり広い意味のコマーシャル・ベースで返済は確実だということは考えますけれども、できるだけそれを幅広く考えて貸すというところに特性があると思います。それを一歩踏み出しますと、事実上救済資金をくれてやる、こういうことになりますので、そこに至らない程度で、とにかく金融の形で考えられる範囲を政府の金で考えよう、こういうことだと思います。
  118. 鴨田宗一

    ○鴨田委員 そうしますと、厳格な意味金融ベースでないということも言えるわけです。それからもうちょっと下がって、救済と厳格な金融ベースの間をいく一つの線が出てくるわけだと思います。その線に目標をつけまして提案されたのが、私の考え方によると、今回の議員立法の中にあるいわゆる特別な処置を講じてくれというところにまたその落ちがあるのじゃないかと思います。先ほどの田澤君からの質問の中にもあり、また局長からも答弁のありました例の恩給担保によりまする国民金融公庫の特別法ということもやはり実現の可能性がないともまだ限らないのでありまして、その点銀行局長に重ねて伺いますけれども、いわゆる議員立法に対する考え方、あれやこれやを勘案いたしまして、まあ実際はその時期によってはやはりそういうところへ踏み切らなくちゃならないんじゃないかという考え方があるかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  119. 大月高

    大月政府委員 今の問題は、国民金融公庫のベースがコマーシャル・ベース、いわゆる貸し出しベースであるかどうかという問題とまた別でございまして、貸し出します金の性格が生業資金であるか、消費資金であるか、育英資金であるかという貸し出し目的に関連があるわけでございます。従いまして、たとえば消費資金でございましてもコマーシャル・ベースという点からは確実に返ってくるものがあるわけでございまして、恩給担保の金融となりますれば一〇〇%返る可能性があるわけでございます。従いまして生業資金に限るという国民金融公庫の性格からいたしますと、コマーシャル・ベースに乗る、乗らないという問題と別の角度においてやはり問題があるのではなかろうかと考えております。
  120. 田澤吉郎

    田澤委員 次に二十億のワクの問題でございますが、大体国民金融公庫としての例からいいますと、二十万から二十五万としますと、大体二十億ですから、八千円から一万円ということになりますが、このワクではやはり満足じゃないと思うのであります。よって将来実施後においてこれを拡大する気持があるかどうか。  また綱島先生にお伺いいたしますが、現在二十億というもので被買収者が満足しているだろうかどうかということをお聞かせ願いたいと思います。
  121. 綱島正興

    綱島議員 実は被買収者の代表ともいうような方々からいろいろ意見を徴しまして、もっとたくさんな希望があったのでございます。しかしかれこれ非常に煮詰めまして、結局一まず二十億ということにきまったのでありまして、これは必ずしも満足な数字ではございません。ただし、農業に対しても従来のベースの貸付もございますので、これは解放地主に対するものだけの特別な数字でございます。従って、今後の解放地主に対する問題の処置によっては、多少数字がまた変わってくる事態もあるかと思いますが、ただいまの状態ではこういうことを妥当として提出いたしたものでございます。
  122. 大月高

    大月政府委員 政府考え方も同様でございます。本年度措置といたしまして二十億ということでございます。
  123. 田澤吉郎

    田澤委員 次に、貸付の対象基準の問題でございますが、農地被買収者に対する貸付でございますので、先ほど鴨田委員からも話がございました、ある程度社会福祉的なものがあるという点からいいまして、貸付を申し込んだ場合においての審査内容は、内容がよかろうが悪かろうが、あるいはまた貸付の能力があろうがなかろうが、当然に貸していかなければならない問題ではなかろうか、こう考えているのでございますが、実際の貸付の基準というものを一体どういうところに置いてこれを進めていくのか、一つお知らせ願いたいと思います。
  124. 大月高

    大月政府委員 この法案が国会を通過いたしましてから具体的な細目が決定されるということであろうと思いますが、ただいまのところ一般の国民金融公庫の貸出ベースによって実行するのが適当であろうかと思います。ただ、金利の問題につきましては、今一般の金利は九分でございますが、こういうような特殊な事情がございますので、六分五厘程度の金利に優遇するのがよかろう、こういうふうに考えております。
  125. 田澤吉郎

    田澤委員 最後にお願い申し上げたいのは、大蔵省はどうもこの法案に対して熱意がないような気がするわけでございますが、これは一体どういう熱意のほどがあるか、一つお示しを願いたい。また綱島先生にお伺いいたしたいのは、綱島先生のうしろには自民党があると思うのでございますが、自民党の同法案に対する決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  126. 綱島正興

    綱島議員 この法案は、提案者及び提案賛成者を加えますと、二百二十名をこえております。ほとんど全員に近い人の賛成でございます。あるいは大臣をしておるとか、あるいはその他の役職についておるとか、従来の党の慣例から提案には参加しないということになっておる者だけを除きまして、あとはほとんど全員が提案者であります。従って党としては断じてこれを通さなければならぬという決意のもとに提出されておることは間違いないと存じております。もしもこれがいいかげんなものなら、民選議員の立場から立法行為について虚偽の行為をなしたということになれば、議員の資格がないものと判断しなければなりません。党は、もちろんこれにつきましては、ぜひとも通さなければならぬと考えております。
  127. 大月高

    大月政府委員 政府提案につきましては、予算もこれを前提にして組まれておることでございますし、前国会以来提案申し上げまして、農地関係の方のお困りなっておることに対しまして、一日も早くこの制度が実施できるように熱望しておりますので、すみやかに成立するようにお願いいたしたいと思います。
  128. 臼井莊一

    臼井委員長 午後二時に委員会を再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時四分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕