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1962-08-22 第41回国会 衆議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年八月二十二日(水曜日)     午前十時十六分開議  出席委員    委員長 臼井 莊一君    理事 鴨田 宗一君 理事 細田 義安君    理事 毛利 松平君 理事 山中 貞則君    理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君    理事 平岡忠次郎君 理事 堀  昌雄君       安藤  覺君    足立 篤郎君       天野 公義君    井村 重雄君       伊藤 五郎君    浦野 幸男君       岡田 修一君    亀岡 高夫君       仮谷 忠男君    川村善八郎君       久保田円次君    久保田藤麿君       正示啓次郎君    田澤 吉郎君       高見 三郎君    濱田 幸雄君       藤井 勝志君    古川 丈吉君       坊  秀男君    山本 猛夫君       岡  良一君    久保田鶴松君       佐藤觀次郎君    田原 春次君       戸叶 里子君    広瀬 秀吉君       藤原豊次郎君    武藤 山治君       横山 利秋君    春日 一幸君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         農 林 大 臣 重政 誠之君         建 設 大 臣 河野 一郎君  出席政府委員         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵政務次官  原田  憲君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      上林 英男君         大蔵事務官         (理財局長)  稻益  繁君         大蔵事務官         (銀行局長)  大月  高君         食糧庁長官   大澤  融君         建設事務官         (住宅局長)  關盛 吉雄君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    松井 直行君         通商産業事務官         (企業局賠償特         需室長)    池田 久直君         郵政事務官         (貯金局長)  金沢 平蔵君         郵政事務官         (簡易保険局         長)      田中 鎮雄君         住宅金融公庫総         裁       師岡健四郎君         農林漁業金融公         庫総裁     清井  正君         日本開発銀行総         裁       太田利三郎君         日本開発銀行理         事       大島 寛一君         日本輸出入銀行         総裁      古沢 潤一君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 八月二十二日  委員宇都宮徳馬君、大久保武雄君、賀屋興宣君、  金子一平君、藤枝泉介君、水田三喜男君及び芳  賀貢辞任につき、その補欠として浦野幸雄君、  山本猛夫君、仮谷忠男君、亀岡高夫君井村重  雄君、久保田円次君及び戸叶里子君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員井村重雄君、浦野幸雄君、亀岡高夫君、仮  谷忠男君、久保田円次君、山本猛夫君及び戸叶  里子辞任につき、その補欠として藤枝泉介君、  宇都宮徳馬君、金子一平君、賀屋興宣君、水田  三喜男君、大久保武雄君及び芳賀貢君が議長の  指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  産業投資特別会計法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一号)      ――――◇―――――
  2. 臼井莊一

    臼井委員長 これより会議を開きます。  産業投資特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑を続けます。通告がありますので、これを許します。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 このエロア資金ガリオア資金について、もう長いこと質疑応答が続いておるのでありますけれども国民の偽らないエロア・ガリオアに対する認識を初めよりたどってみますと、初めは無償であったと思っておったのが、これが常識であります。政府の内部においても、かつて水田さんの記録を見ますと、実際言うともらっておったという発言国会であり、それから池田総理をもってしても、その当時はこういう発言をことしの三月ですらしておる。私はその後いろいろずっと研究をしたあとで、二十五、六年ごろからは債務と心得ますと言っています。こういう発言できておるわけであります。しかし、今政府がそうではないと言い、国民の一部においても、そうだろうかという疑いが生じたゆえんのものは、自由民主党の皆さん政府皆さんが言うておるように、一つには、安くなったではないかということと、もう一つは、この金は私ども希望のように使ってもらえる、こういう二つの問題が説得力を持って手伝ってきたような感じがするわけであります。私はその意味で、この金はこういうふうに使ってもらえるからという政府の言い分について、まずただして参りたいと思います。  第一の問題は、支払金使途に関する交換公文であります。これによりますと、第一には、アメリカ政府は適当な立法措置をとることを条件として低開発諸国に対する経済援助をする、第二番目には、東アジア諸国経済開発のために日米両国協議をしよう、この二つの点から成り立っておるようであります。そこで私は外務大臣にお伺いしたいのでありますが、第一項の適当な立法措置をとることを条件とするその条件が、アメリカで一たん否決をされた理由は一体何であったか、その後どういう経緯をたどっておるかということについて、まずお伺いをいたします。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカ局長から答弁させます。
  5. 安藤吉光

    安藤政府委員 お話の点は、一九六一年対外援助法案審議の際になされた問題の点だと思います。当初アメリカ政府は、一九六一年対外援助法案の原案を提出いたしましたときに、その一部といたしまして、毎年三億ドルずつ何と申しますか、ガリオア・エロア等返還金とかあるいはその他の借款返還金、要するにそういった債務返還金をそのまま歳入に入れることなく、政府権限で自由に開発援助に使い得るような権限を与えてくれということを要求したわけでございます。同時に、財務省から当初の第一年度はたしか十二億ドル、それから第二年度は十五億ドルずつだと――今資料を持っていますけれども、大体そういった金額でございますが、五年間にわたりそういった金額を、これは借り入れとして自由に使わしてくれという二つのことを提案したわけでございます。ところが国会審議におきまして、これはやはり予算審議権の侵害であるというような議論が強くなりまして、その政府の要求したものずばりはそのままでは通りませんでした。しかしながら国会の方ではそれと同等金額、すなわち、最初の年十五億、その中には具体的の金額の数字からいえば、ちょうど対外債権回収金からきた三億ドルを入れたような金額、それと見合う政府の要求しておりました同等金額というものを、新たに国会の方でこれを援助資金に計上することを認めました。そういうような経緯でございます。ところが一九六二年の対外援助法案はこれを改正いたしまして、六百十八条というところに、日本からの対日援助に対する返済金はこれを同援助法案の第一部、すなわち開発援助に使うということを明記いたしました。従いまして、これは明らかにこういった返済金開発援助に使われるということが明記されておるわけでございます。しかしながら、先ほども申しましたように、一九六一年のときにも実質的にはそういったような議会歳出審議権の問題が議論になりましたので、そのままでは認められませんでしたけれども、実質的にはガリオア援助に相当する金を歳出権限として認めておるというわけでございまして、以上でおわかりいただけたと思います。
  6. 横山利秋

    横山委員 そういたしますと、この支払金使途についてはアメリカの通常の歳入歳出以外の特別ワクとして考えられるのであるかどうか。結局これはふえたけれどもアメリカ対外援助が削減をされる、こういうことになるのではないかと考えられるが、いかがですか。
  7. 安藤吉光

    安藤政府委員 一九六二年対外援助法案につきまして、先ほど御説明いたしました。これはさっきもちょっと申し上げましたが、歳出権限法でございます。要するに大統領に、歳出法をつくるにあたってそれだけのワクというか、権限を与えたわけでございます。実際の歳出というものはその後にまた歳出法というものができるわけでございます。予算法ができるわけでございます。アメリカ予算法律でございまして、それに基づきまして具体的な予算ができるわけでございます。そしてガリオア返済金というものは一応国庫に入ります。それで入りましたあとで、いわゆる歳出予算をつくるわけでございますが、それが今申しました権限法によりまして、そのガリオアの金が開発援助の方に使われるということがはっきりうたわれたわけでございます。
  8. 横山利秋

    横山委員 一たんアメリカ国庫にこれが入って、そうしてアメリカ政府の独自の判断によってこの支払金使途がきまる、こういうふうに考えてよろしいのですか。
  9. 安藤吉光

    安藤政府委員 先ほども申しましたように、独自の判断と申しますか、アメリカにおきましてすでに一九六二年対外援助法案というものができまして、権限法でございますが、その中で日本からのガリオア等援助資金対外援助法にいう第一部すなわち開発援助に使うということが明記されておるのでございますから、そのようになる次第でございます。
  10. 横山利秋

    横山委員 私の聞きたいのは、この第一項にしろ第二項にしろそうでありますけれども、きわめてあいまいな文句が書いてある。第一項は「合衆国の計画を促進するために使用する意図を有する。」アメリカはこういう気持があるということをいっているだけであって、その内容、その金額、その方途について日本がチェックをする何らの項目がない。第二項は密接な協議開発援助について行なうと言っておるけれども、それは第一項と違ってお金の問題を含んではおらない。従ってアメリカが勝手に使いますよと、こういうふうに理解できると思うのであります。が、その点はいかがですか。
  11. 安藤吉光

    安藤政府委員 交換公文の第一項には、適当な立法措置を経ることを条件とし云々ということが書いてございます。これにつきましては、この八月一日に成立しました一九六二年対外援助法の六百十八条というところをお読みいたしますと御理解できるかと思いますが、六百十八条には、「日本国に対する戦後の経済援助処理に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定に基づいて合衆国に直接支払われる合衆国ドルは、この法律の第一部の制限内において同部の規定を実施する目的で、そのための歳出に充てられ、または別途いずれかの歳出法大統領の使用に充てられることができる。」これによりまして明らかでありますように、このいわゆる適当な立法措置と、権限法はちゃんとできておりますので、従いまして、日本からの対日経済援助処理に関する返済金は、このようにして開発援助に使われるということがはっきり言えるかと思います。
  12. 横山利秋

    横山委員 アメリカがそういうふうに勝手にやっておるということを言うだけであって、日本政府として支払金使途に関して、この交換公文並びに協定によって日本政府がそれをチェックする何らの方途がここに規定されていないではないか、こういうことを私は言っている。
  13. 安藤吉光

    安藤政府委員 この交換公文の一に「適当な立法措置を経ることを条件として」ということは、アメリカにもアメリカのやはり国内手続というか、国内法規があるわけでございます。従いまして、その国内手続をとるということをアメリカ政府は鋭意努力してきたわけでございます。従いまして、先ほど申しましたような対外援助法第六百十八条というものをアメリカ政府の努力によって国会が承認し、大統領もこれを承認したわけでございます。これはいうなれば、この交換公文の一の趣旨を十分体しまして、アメリカ国内立法措置をとったというふうに言えると思います。
  14. 横山利秋

    横山委員 それはだめですよ。外務大臣大平さん、私の言うことをわかっておると思うのでありますけれども、この交換公文の主文の中で、日本政府が将来この支払金使途について、こういう希望がある、こういうふうにしてくれ、こうするのだという希望について意思の表明をする、そういう協議権というものは何ら含まれていないではないか。単に協議と書いてあるのは、第二項の東アジアについての密接な協議をするということだけであって、それによって、第一項と違う協議の面についての処理は何ら確保されてないではないか。結局アメリカが勝手にやりますということを、どうぞそういうつもりでやって下さいよと言っているにすぎないではないか、こういうことを私は先ほどから言っている。
  15. 大平正芳

    大平国務大臣 これは返済協定によりまして、ガリオア・エロアによる援助資金日本政府アメリカ政府にお返しするわけでございます。そしてアメリカ国庫に入りまして、アメリカが所定の手続を経て対外援助に使うということでございまして、その限りにおきましては、横山委員がおっしゃる通り全的にアメリカ責任で、権限でおやりになることでございます。私どもからそれをどこに使え、かしこに使ってくれということを言う資格はないわけでございます。ただアメリカ国会からアメリカ政府に与えられた権限歳出権限が与えられた場合に、それをアメリカ政府がどの地域にどのようなプロジェクトにこれを使うかということにつきましては、私ども交換公文によりまして日米の間に協議をいたしまして、でき得る限り日本側願望を取り入れていただくように折衝いたしたい、こういうことでございました。一たんお返しいたしました金はただ返すのじゃないのだ、これはこう使うから返すのだというような返し方ではないわけであります。全的にアメリカ責任権限においておやりになることでございまするが、与えられたアメリカ政対の権限の中でそれを具体的にどう使うかということにつきましては、私ども協議にあずかる、こういう建前に解しております。
  16. 横山利秋

    横山委員 どういうふうにお使いになるかについては協議にあずかるということはどこにも書いてないじゃありませんか。それは日本政府願望にしかすぎないじゃありませんか。やはりあなたのおっしゃるようにこれは願望と理解してよろしいのですね。
  17. 大平正芳

    大平国務大臣 それは厳密に申しますとあなたのおっしゃる通りです。ただ私ども相互の理解と信頼の上に立ちまして、でき得る限りわが国願望を取り入れていただくように努力すべきだと考えています。
  18. 横山利秋

    横山委員 それでは次にお伺いしますが、この一項と二項とは全く独立した立場にあるのですか。一項は低開発諸国に対する経済援助、二項は東アジア開発援助、全くこれは違った異質のものであるというふうに理解すべきでありますか。
  19. 大平正芳

    大平国務大臣 横山委員のおっしゃる通りです。
  20. 横山利秋

    横山委員 そういたしますと二項の、特に東アジア開発援助ということが書かれておるのでありますが、この二項については合衆国政府は金を使用する意図を有するということを保証していないわけですね、一項と違いますから。二項はただ東アジア開発援助協議をするということを言っておるだけであって、返還された支払金使途を含まない、それを保証していない、こういうふうに理解してよろしいのですね。
  21. 大平正芳

    大平国務大臣 交換公文解釈でございますので、正確には局長の方から説明させます。
  22. 安藤吉光

    安藤政府委員 御説の通り、一項はアメリカ合衆国が低開発諸国に対する経済援助にこれを使用するということを言っておるわけでございます。これは先ほども申しましたような向こう国内手続によりまして、その筋道がちゃんとはっきりしてきたわけでございます。低開発国と申しますと、アメリカといたしましても、東南アジアとか東アジアとかあるいは中南米とかいろいろ国もございまするが、この二項にいう東アジア諸国ももちろんこの低開発地域に含まれておるわけでございます。特にこの二項を入れましたゆえんは、日本東アジアについては非常な重大な関心を持っておるので、この経済援助のために引き続いて相互に緊密な協議をしてやっていこうということをうたっておるわけでございます。従いまして、この二項の案文からは、結局一項の低開発援助の中に含まれておるところの東アジアについて特にこれから協議をしていこうということをうたっておるわけでございます。
  23. 横山利秋

    横山委員 あなたの解釈と私の解釈とそんなに変わっていない。要するに私の聞きたいのは、一項は低開発諸国に対する経済援助はもちろん東アジアも含むであろう、これは変わっていない。ところが二項は東アジア開発援助についてという経済援助ではなくて開発援助ということを特にうたっておる。開発援助については第一項のような受領する資金の大部分を使用する意図を有するということが保証されていないではないか、従って東アジア開発援助については協議を行なうだけであって資金的な裏づけがない、こう理解すべきであると思うがどうかと言っておる。
  24. 安藤吉光

    安藤政府委員 お説の通り東アジアに幾ら使うということはこの交換公文では縛ってございません。ちょっと余談になりますが、(横山委員「幾ら使うのじゃない、そういうことを保証されていないのだ」と呼ぶ)われわれとしては、交渉の過程におきましていろいろ交渉したわけでございます。しかし向こう向こうのやはり国内的ないろいろな関係もございまして、要するに一項で国内手続を経ることによって低開発地域経済援助に使うということははっきりうたっておる。しかも先ほど申しましたような国内立法措置は着々としてとっておるわけであります。二項に申します東アジアについて幾ら使うかということは、いわゆる向こうの、何といいますかその低開発援助のうちの幾らを東アジアに向けるという問題もございましょう、日本としてもぜひこうこういうものを一つアメリカとしても日本と協力してやってもらいたいということもございましょう、そういったことを今後外交上適当な機会に話し合うことになっておるわけでございます。
  25. 横山利秋

    横山委員 そんな憶測を言っているのじゃない。交換公文解釈を聞いておる。この解釈をすなおに理解すれば、東アジア開発援助については密接な協議を行なうということをいっているだけであって、第一項にいう資金を使用する意図を有するという保証はない、従って、第二項も東アジア開発援助については資金的の裏づけというものはアメリカから保証されていないと解釈するのが至当ではないか。それから先のことは、いろんな日米両国関係もあるかもしれぬけれども交換公文においては保証されていないではないかと私は言っておる。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 対外援助法によりましてアメリカ議会からアメリカ政府歳出権限を与えられるわけです。そこに資金的な保証はあるわけでございますが、わが国アメリカが相談しましてこのプロジェクトにこれだけ出すというような意味における資金的保証はございません。
  27. 横山利秋

    横山委員 話をそらしてもらっては困る。交換公文解釈を私は聞いておる。もう一ぺん言いますけれども、二項では開発援助について協議すると書いてあるだけであって、第一項と違っておる。第一項には資金を使用する意図を有する、アメリカが一方的でありますけれども、やりますよというような意味保証しておるけれども、二項についてはそれは何ら保証されていないのですねと、解釈を聞いておる。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカ対外援助法の財源はひとりガリオア・エロアばかりではないわけでございます。従って一般的に対外援助につきましてアメリカ議会アメリカ政府歳出権限を与えるわけでございます。この交換公文の一条は、このガリオア・エロア返済金に限っていわれておるわけでございます。第二項の方は、第一項の対外援助という中には東アジアも含まれておると当然解釈されるわけでございますが、そればかりではなく、東アジア開発につきましてはわが国関心を持っておりまするから、日米間に広く協議をする機会を持とう、こういうふうに私は理解しております。
  29. 横山利秋

    横山委員 外務大臣、あなたはそらんじられておるかもしれぬけれども、見ながら言って下さいよ。私の聞いておることにすなおにお答えになれば、もうすぐ前に進むのですから、見ずに何とか別な言葉でまぎらわそうと考えられないで、私の言っていることをもう一ぺん言いますが、二項というものは開発援助について協議をするという協議事項をうたってあるだけであって、一項はさらに進んで金を使う気持があると書いてある、二項についてはそういう項目がないから、東アジア開発援助については協議をするということだけであって、この見返資金支払金ここへ投入いたしますという一項のような保証はない、こう解釈していいではないかと言っておる。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 一項にいう低開発諸国という表現の中には、二項にいう東アジア諸国が含まれておる、そう解釈します。
  31. 横山利秋

    横山委員 何べん言ったらいいのですか。一項は低開発諸国に対する経済援助である、二項の方は開発援助である、開発援助については密接な協議を行なう、経済援助については金を使うと書いてある。こんなことがあなたにわからぬのですか、見ておって。
  32. 安藤吉光

    安藤政府委員 くどいようでございまするが、一項の低開発諸国という中には東アジアも含むということ、これがまず第一点でございます。それからただいま御指摘になりました経済援助という字と開発援助というのが、意味が違うか違わないかという問題でございます。これを対外援助法項目にちょっと触れて御説明いたしますと御理解お願いできるかと思いまするが、対外援助法の第一部を大まかに申しまして、開発借款開発贈与開発調査それから投資調査、そういったものがございまして、こういったものをあるいは経済援助と考え、あるいは開発援助と考えるというふうに、何といいますか、これは決して異質のものではございませんで、やはり開発援助が一種の経済援助になる場合もございましょう。従いまして、この一項の低開発地域経済援助というところは広くいっておる次第でございます。  それから二項の開発援助字句は、経済援助の中の一つと考えてもよろしいかと思います。要するに東アジアにつきましては開発援助ということが非常に重要視されておりますものですから、こういった字句で表現したというふうにお考え願いたいと思います。
  33. 横山利秋

    横山委員 そういうことを詭弁というのですよ。あらゆる低開発諸国について経済援助は必要だけれども開発援助が必要なのは東アジアだけである、経済援助の中に開発援助が含まれておる、こういうのは私は詭弁だと思う。それならなぜこの第二項に経済援助という言葉を使わないのか、特に開発援助とうたったゆえんのものは、そこに何かの政治的な意味があるはずです。それをうたいながら、それについては密接な協議を行なうというて、資金的な裏づけ保証字句も挿入されてないことはどういうことだ、私はいい悪いの問題ではない、どういうわけだと聞いておる。さっきから大蔵大臣は、自分は知っていそうな顔をしてすわっておるが、言うことがあったらいいなさいよ。
  34. 田中角榮

    田中国務大臣 大蔵省の考え方といたしましては、この支払金使途に関する交換公文は、すなおに読めばあなたの誤解は直ちに氷解するのではないかと考えます。  御承知の通りこの両国協定は、戦後日本に行なわれた経済援助その他に対しては、二千八十五億円の金を十五カ年で返します。アメリカも受け取りますということが前段において協定になっております。しかもその金の一部は日米文化の問題に使い、大部分は他の低開発国の援助、開発等に使うという趣旨で行なわれております。そしてなおその金は国内的にはどういう処置をするかというと、日本が返済をきめた場合にそれを一般財源として受け入れをして、対外援助法に基づいて支出をし、その内訳としては、第一においては交換公文によって低開発国の援助におおむね使います。こういうことを日米両国が確認をし合うために交換文書を出しているわけであります。ですから特に第二項は第一項と関連がないというのではなくて、全く一体のものを文章の上で分けたにすぎないのであって、特に東南アジアについては第一項を引用する経済援助はもとよりのこと、開発を必要とする東南アジアについては、日米両国相互に密接、緊密な協議を行なうという念を押した条文であって、第一項は第二項に含まれ引用せられる、こういう考えでありますから、東南アジアに対し経済援助及び開発援助も当然行なわれる、こう読むべきだと解釈をします。
  35. 横山利秋

    横山委員 そうすると大蔵大臣は、開発援助についても資金の大部分を使用する意図が適用される、こういうふうに御解釈ですか。
  36. 田中角榮

    田中国務大臣 経済援助開発援助に当然適用せられると考えております。
  37. 横山利秋

    横山委員 それでは外務大臣にお伺いしますが、私どもが今日経済援助を近くの国の問題としていろいろ議論して参りますときには、必ず東南アジアといっておった。今回初めて東アジアという文句が生まれた経過、経過といってもあなたはその当時私どもと一緒でございましたからなんですけれども外務大臣として東アジアという意味の範囲、それからそれが生まれた経緯、それを一つ御報告願いたい。
  38. 大平正芳

    大平国務大臣 正確を期する意味条約局長から説明させます。
  39. 中川融

    ○中川政府委員 この交換公文東アジアという字句が出てきておるのでございますが、これは従来東南アジアと申しますとやはり東南のアジアということで、南の方に実は重点が置かれるわけでございますが、日本として経済開発援助に非常に緊急な必要性を認める地域は、必ずしもいわゆる南の方の東南アジアだけでなく、東北アジアと申しますか北の方の日本に近い地域、これも当然日本として関心を持つべきはずでございますので、この交換公文でこの両方を合わせまして、東アジアという字句を使ったのでございます。従って、日本に比較的近いアジアのうちの東の部分、これの開発援助日本としては関心を持つ、こういう意味でこの東アジアという字句を使った次第でございます。
  40. 横山利秋

    横山委員 私が今言いましたように、具体的には何国を東南アジアと言い、何国を東アジアと言うかということをお伺いしたい。
  41. 中川融

    ○中川政府委員 東アジアと申しますとインド、セイロン島から大体東のアジア諸国全部を実は含むと考えておるのでございます。従来東南アジアと申しますと、それではどういう地域であったかということになりますが、大体フィリピンあるいはカンボジア、この辺から南の方、インド、セイロンまでが東南アジアであったわけでございます。そればかりでなくてそれより北の方のアジア、日本に非常に近い地域、これもやはり入れるのが適当であるという意味東アジアという字句を使ったわけでございます。
  42. 横山利秋

    横山委員 新たに東アジアによって入って参ります国々を一つ列挙してもらいたい。
  43. 中川融

    ○中川政府委員 東南アジアに対しまして東北アジアということを申します。際には、やはり韓国、台湾それからある場合にはベトナムとかカンボジアとかラオスとか、こんなところが入ると思うのでございます。しかしこれは、ここに書いてありますことは、要するに東アジア全体をさしておるのでございまして、特にその中の特定の国を意図しておるわけではないことはもちろんでございます。
  44. 横山利秋

    横山委員 このガリオア・エロア返還金を低開発諸国に対する経済援助東アジア開発援助に重点を指向するにあたって、特に韓国、台湾、ベトナム、カンボジア、フィリピンも入るでしょうが、それらの国に特に中心を置いた理由はいかがなものでありますか、いかなる理由でございますか。
  45. 大平正芳

    大平国務大臣 今列挙されたような地域に特に重点を置いたわけじゃないので、東アジア全体について考えよう、そしてこれは歳出権限を与えられたアメリカ政府が今から計画を立てまして、これについて私ども協議を受けるということになると思います。
  46. 横山利秋

    横山委員 そうはおっしゃっても、今日一般の常識としてわれわれが国会議論いたしますときには、あらゆる援助資金も一般論として東南アジアといわれておった。それが今回この膨大な金額が、国民の非常な苦しい中から出したお金が――新たな国々がここに包含されて、その新たな国々に関心が集まるのは当然なことである。政府が新たな国々を、どうしても加えてもらいたい。もらいたいという気持の政治的な感覚というものを見のがすわけにはいかぬのです。重ねて聞きますけれども、この支払い金の使途に関する日米両国の交渉の中で、東アジアと言い出したのは日本側でありますか、アメリカ側でありますか。
  47. 中川融

    ○中川政府委員 交渉の経過でございますので、私から御答弁いたします。  東アジアという字句を使ったのはどちらかというお尋ねかと思いますが、これはどちらからということではないのでございまして、日本アメリカ双方からやはり東アジアが重要であるということで意見の一致を見た次第でございます。
  48. 横山利秋

    横山委員 おりしも交渉の経過の中で日韓交渉というものが常にアメリカ日本との交渉の関心の焦点であった。それに裏づけされるがごとくに、今の韓国、台湾、ベトナム、カンボジアと並べてみますと、日米両国関心の焦点はまさに韓国である。きのうきょうの新聞で大平さんは三億ドルですか、案を出されたというのであります。が、この支払い金の使途について、韓国問題が両国の交渉の爼上に上らなかったということは私は常識的に考えられないと思うのであります。韓国の問題というものが、あなたの在任中ではないにしろ、その経過において話が出たであろうし、あなたが今、日韓交渉をされている過程において、この支払い金の使途について韓国を頭の中に描いておられるのではないかと私どもは率直に考えるのでありますが、大臣の御所見を伺いたい。
  49. 大平正芳

    大平国務大臣 東アジアにはもちろん韓国が含まれておるというように解しておりますが、このことと日韓交渉とは全然別な問題です。
  50. 横山利秋

    横山委員 ちょっと一番最後が聞き取れませんでした。
  51. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま進行中の日韓交渉とこの問題とは全然別個の問題でございます。
  52. 横山利秋

    横山委員 それは百も二百も承知しておりますが、政府の韓国に対するものの構想というものはいろいろあるだろうと思う。湯川康平氏における問題もあったし、あるいはまたアメリカのたび重なる要請もある。さりとて日本として韓国に対する賠償がたくさん出られるはずがない。そうしますと、落ちてくる先がここにあるという感じが私はいたす。現に低開発諸国に対する経済援助についてはいろいろな方式がある。われわれが国会審議したやり方もあり、開発資金も準備されておるけれども、あなた方が痛切にお考えになったように、韓国や台湾その他いわゆる新しく参加した国々については十分な措置がない。そうでしょう。そこでこの問題が当然出てくる。偶然か、あるいは作為か不作為かは別といたしまして、ここに東アジアというものが出てきて、その中に新たに参加する国が出てきて、そうして日韓交渉が峠に、さしかかったときに、これが第一回に適用される可能性を私は考えざるを得ないと思う。そうでなければ、あなたはここでこの支払い金を使途について韓国は適用しないつもりであると言い切られますか。いかがですか。
  53. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカ政府議会から権限をいただいて歳出計画をお立てになるという場合には、私ども協議にあずかって、できるだけ私どもの意向も組み入れていただくように努力すべきだと考えます。
  54. 横山利秋

    横山委員 アメリカ政府との交渉はどのように進んでおりますか。あなた方としても意向を言われるであろうけれども向こうから言ってきてからこちらで相談をしてということはないであろう。この問題について、これは有償で経済援助をするのだとか、無償でやるのだとか、あるいは低利でやるのだとか、無利子でやるのだとかいうようなあれもあるだろうし、あるいはどの国に貸してやろうという意向もあるであろう、そういう点についてはいかがですか。
  55. 大平正芳

    大平国務大臣 まずアメリカがそういう計画を作案されるわけでございまして、それで、私ども日米間の外交チャンネル、あるいは近く予定されております日米合同委員会等の場におきまして今御指摘のような問題が討議されるというように了解しております。
  56. 横山利秋

    横山委員 私は、この協定及び交換公文議論するにあたり、また国会で長日月審議するにあたって、これらの使途について日本政府の構想が全然ないということは考えられない、信じない。今あなたがそれを言ってよいかどうかは別としても、政府としても何らかの構想を抱いて交渉に当たったであろうし、今の次元においてもそういう構想がないはずはないと思います。何にもないとおっしゃるのですか。
  57. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう場合に備えて、私どもといたしましても、日本側の見解は調整いたしましてつくり上げるべきものと思っておりますが、まだ日本側の案ができておりません。
  58. 横山利秋

    横山委員 時間がありませんから、それでは次に移りますけれども、今度は経済援助処理に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定の第三条2項で、この間予算委員会でも話があったそうでありますが、この2項には、連合国最高司令官と琉球との間の清算勘定の残高に関し、今後はいかなる請求権をも合衆国政府に対し提起しないことに同意するとあります。琉球との間の清算勘定の残高はどういうふうになっておるか、まずそれからお伺いします。
  59. 安藤吉光

    安藤政府委員 韓国との清算勘定は、日本の輸出超過によりまして四千七百十二万五千二百七十八ドルというものがこげついていたわけであります。これはマーガット声明によりまして、ガリオア・エロア援助のときに処理するということがちゃんと約束になっております。従いまして、今度の対日援助処理のときにこれを反対請求権として、反対債権として控除いたしたわけであります。琉球勘定につきましては、百六十二万九千三百三十八ドルという毛のがやはり同様に清算されておりませんでした。これもまた韓国に対する反対債権と同様に、このガリオア・エロア処理のときにこれを反対債権として差し引いたわけであります。
  60. 横山利秋

    横山委員 その百六十二万ドルの琉球との関係の最終の時期はいつでありますか。――お調べになるならあとでよろしい。  外務大臣にお伺いいたします。先日予算委員会においてそれ以降の問題についての質疑応答がありました。この百六十二万ドルの反対債権についてはもう請求権を提起しない、その最終以降のアメリカの琉球に対する経済援助、この点については、池田さんがアメリカに参りましたときにも琉球に対する経済援助を求められておられるわけです。この求められ、そうして行なわれております経済援助の性格というものを、エロア・ガリオア資金と関連をして国民は非常に不安に思っている。この点について御見解をお伺いいたしたい。
  61. 大平正芳

    大平国務大臣 それは先般の予算委員会で私御答弁を申し上げましたが、施政権者がその施政権下にある住民の安寧福祉のために支出した金というものにつきましては、施政権者が負担すべきものだと私どもは解しておるのでございまして、特別の合意がない限り、日本側の負担になるというふうには考えておりません。
  62. 横山利秋

    横山委員 あなたのお答えになった答弁を予算委員会の記録から拝見をしまして、施政権者が住民の安寧秩序のために行なっておる経済援助は、われわれは債務と心得ないということでございますか。そういう議論ならばエロア資金ガリオア資金だって、――占領軍司令官というものが施政権者以上の絶対権を持っておるものである。しかりとするならば、この理論はまさにエロア資金ガリオア資金においても援用なさるべき理論ではないかと考えるのですが、いかがですか。
  63. 大平正芳

    大平国務大臣 特別の合意がない限りという前提でお答えしたつもりです。
  64. 横山利秋

    横山委員 特別な合意といいますのは、沖繩においては沖繩の民政府アメリカ政府のことでありますか、沖繩が返還された後における日本政府アメリカ政府の間でございますか。
  65. 大平正芳

    大平国務大臣 もとより日本政府とアメリが政府の間です。
  66. 横山利秋

    横山委員 沖繩の民政府アメリカ政府との間に合意がされた場合にはどうなりましょう。
  67. 中川融

    ○中川政府委員 沖繩の現在あるあそこの政府アメリカ政府との間に、何か講和発効後のガリオア援助について、合意がなされた場合に、将来沖繩自体が日本の施政権に復帰した場合に、その今の合意というものが、今度は日本政府を何か拘束するかどうか、こういう問題だと思うのでございます。これはやはり沖繩が復帰する際に日米間で特別の合意がない限り、必ずしも現在ある現地との合意が日本に引き継がれるということにはならないと思うのでございます。先ほど大臣の言われました通り、何か特別の合意が日米政府間にない限り、そういう問題はこの日本にはかかってこない、こういうふうに考えております。
  68. 横山利秋

    横山委員 そこで仮定の問題だというお話があったのですが、こういう議論はわれわれがこのエロア資金ガリオア資金を今審議をするにあたって、仮定の議論をもっともっと前にやっておけば、こういう問題はなかったと思うのでございますから、今日のエロア資金ガリオア資金審議にあたって、沖繩に対するアメリカ経済援助の性格というものを明確にしておかなければならぬと私は痛感をする。外務大臣は特別の合意がない限りという前提条件であるという。私の前の議論、つまり沖繩の状況は施政権者があって、それが住民の安寧福祉に対してやっておるものについては、これは支払う義務は、特別の合意がない限りはないという考えである。しかりとするならば、やっぱりエロア資金ガリオア資金においても前段にある占領軍司令官が安寧福祉のためにやったことについては、日本政府の特別な合意がない限りにおいては支払う必要がない、こういう議論もまた同一であると考えてよろしいですね。
  69. 大平正芳

    大平国務大臣 さよう心得ております。
  70. 横山利秋

    横山委員 それにもかかわらず、まさに同一にもかかわらず、日本においては、日本政府が沖繩の現状については合意する意思はないとおっしゃる。いかなる理由です。あなたが言った言葉にかかわらず、沖繩の現状については沖繩民政府日本政府も合意するつもりはないと言っておられる。そうでしょう。沖繩民政府だって合意しないであろうと言っておられる。ところが同じ条件の、しかももっと高いレベルにある占領軍司令官のやった安寧秩序の段階については日本政府は合意する、した、だから銭を払う、こうおっしゃる。その違いはいかなる理由でございますかと聞いておるのです。
  71. 大平正芳

    大平国務大臣 ガリオア・エロアの場合には、先方でこの処理は後刻やるのだという約束であったわけでございます。今度は沖繩援助につきましては、何らそういう先方からの申し出もございませんし、私どもは今後日本政府が合意しない限り、私どもの負担になるものとは考えておりません。
  72. 横山利秋

    横山委員 約束があるとおっしゃる。日本政府は占領軍司令官からそういうものをもらったときの約束というものは御存じの通りないわけですよ。占領軍司令官が安寧秩序でやった、アメリカの施政権者が安寧秩序でやった。こちらの方は、沖繩の民政府も将来返還された場合の日本政府も、その経済援助に対して払う気持はない。特別な合意がない限りというのは、払わないという意味でしょう。そうでしょう。確認しておきますよ。その立場でいいですね。――こちらの方は払う意思がないと言う。こちらの方は今約束があったとおっしゃるけれども、約束はない、スキャッピンで将来これはきめると言っておるにすぎない。それに対してこちら側は、当時物をもらった場合において、払うといった約束をしていない。従って、私は政府としては理論の大きな矛盾を犯しておるのではないか。もう一つは、沖繩の民政府がかりに承諾をしても、将来日本に返ってきたときに日本政府はそれに同意する意思はない、こういうふうに理解してよろしいのですか。既成事実というものほどこわいものはない。沖繩の民政府がかりに同意をした場合があるとする。あり得ないことではないです。これは日本政府の過去の現状からいって、それにもかかわらず同意のない限りというのは、最終的には日本政府だといたしますならば、沖繩の政府が同意をしたとしても、返還された沖繩を持った日本政府としては、これに同意をする意思はない、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  73. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいまそういうことに同意する意思は持っておりません。
  74. 横山利秋

    横山委員 後段の方はわかりました。前段の方はわかりません。前段の方は同一条件で、しかももっと過酷な立場にある占領軍司令官が、同じ安寧秩序の中で行なった問題については、これは債務と心得ないというのは正しいのではないか。沖繩の条件をもって比較をするならば、日本の状況においては、さらに債務でないと理解するのが正しいではないか。あなたは今独立国の日本国政府外務大臣として、沖繩の問題についてはきぜんたる立場をとられた。そうであるとすれば、今日のこのエロア・ガリオアについても同様の理論が適用さるべきではないかと私は考える。いかがですか。
  75. 大平正芳

    大平国務大臣 占領中のスキャッピンの発出以来、アメリカ国会におきましても数々の証言がなされておりまして、日本政府は終始債務であると心得るという態度で参ったわけでございまするが、先般の国会で、所定の手続をもちまして債務を確定したということになったわけでございます。
  76. 横山利秋

    横山委員 経過をお伺いしておるのではないです。沖繩との比較論をお伺いしている。あなたは沖繩についてきぜんたる態度を持たれた理由は、この問題についても同じ理論が展開されるのではないか。こう言って沖繩との比較論をお伺いをしておる。
  77. 大平正芳

    大平国務大臣 沖繩に対しましては、ガリオアの場合のようなスキャッピンはございませんし、アメリカが施政権者として、責任を持って住民の福祉と安寧について考えておるという立場にございますので、ガリオア・エロアの場合とは趣を異にしておると思います。
  78. 横山利秋

    横山委員 沖繩問題について、もう一つ最後に確認をしておきたいと思うのでございますが、そういうあなたの意思というものは、アメリカ政府に、沖繩に対する援助を日本政府が要請をされる場合に、その意思というものをお述べになり、アメリカ政府もこれを了承をした立場において要請をなさっていらっしゃるのですか。あいまいな状況になっておるのですか。何も言っていないのですか、どうですか。
  79. 大平正芳

    大平国務大臣 日本側の負担になるべきものではないという当然の前提に立ちましてやっておりますので、わざわざ申し上げる必要はないと思っております。
  80. 横山利秋

    横山委員 次は支払い円の一部円貨払いに対する米国政府の要請の通報並びに受領の確認及び協定の第五条の総額二千五百万ドル、これを合衆国日本国との間の教育及び文化交換の目的のために使用されることになっておるわけでありますが、これはかりにこの産投が通過をいたしますと、どのような支払いの順序になっていきますか、具体的にどなたかからお伺いをいたしたいと思う。第一回分、第二回分総額九十億円くらい、この順番でいきますと、いつ支払われ、いつ第二回が支払われ、九十億円はいつ完了するわけでありますか。
  81. 稻益繁

    ○稻益政府委員 お答えいたします。現在できております協定、取りきめの範囲内では協定発効後六カ月後に第一回の賦払いが行なわれる予定になっております。その中で千二百五十万ドル、第二回の賦払いがそれから六カ月後に参るわけでありますが、その第二回分、この第一回と第二回の中で二千五百万ドルを払う、こういう計画になっております。現在のところでは。
  82. 横山利秋

    横山委員 そうすると、予算の中では一年以内に約九十億円が支出をされるのでありますが、それは本年度予算ということになっておりますか、来年度と二回にわたるわけでありますか。
  83. 稻益繁

    ○稻益政府委員 御承知のように、先般議決をいただいております三十七年度予算におきまして約七十九億円の支払いをする、こういうことになっております。
  84. 横山利秋

    横山委員 全額……。
  85. 稻益繁

    ○稻益政府委員 第一回の半年賦の支払い約二千百九十五万ドル、それ相当の円貨を支払う予定にいたしております。
  86. 横山利秋

    横山委員 最終は、それで全部ですか。
  87. 稻益繁

    ○稻益政府委員 三十七年度はそれだけであります。
  88. 横山利秋

    横山委員 三十八年度は。
  89. 稻益繁

    ○稻益政府委員 これは来年度の予算でまた御審議いただくわけであります。が、現在のところはきまっておりません。
  90. 横山利秋

    横山委員 その二千五百万ドルの金額日米の教育及び文化の交換の目的にしては非常に莫大な金額だと思うのです。これだけの金額をただ教育及び文化の交換の目的のためというについては日米間に相当の抱負というものがおありになるだろう。その内容を、ただ五億か六億だというなら別としても、これだけの金額でございますから、九十億円になんなんとする金額でございますから、おそらくその使途及び内容、具体的な計画がおありになるだろうと思いますが、それをお伺いいたします。
  91. 大平正芳

    大平国務大臣 この方はまだきまっておりませんが、九十億円が過大じゃないかという御感触もあるようでございますけれども、これはたとえばシンキング・ファンドにしておいてその利子で仕事をするとかいうようなことも考えられると思うのでございます。
  92. 横山利秋

    横山委員 私は必ずしも過大だという意味で御質問をしておるわけではない。これだけの金額を別ワクにしてやるというのであるならば、たとえば一つの機構をつくるとか、たとえばこういう点に重点を置いて使用するだとか、そういう抱負というものが何か議論があったのではないか、ないとするならば、政府はこれに対して要望というものがあるのではなかろうか、こう思うわけであります。しかもライシャワー駐日米国大使の通報によれば、ただアメリカがそういった気持があるということを言っておるだけであって、別に日本政府がこれまた同様にこうしてくれという発議権というものもなければ協議事項ということにもなっておらない。全くこれまたアメリカが勝手におれの方でこうやるといって、アメリカ的な教育をやる、アメリカ的な情報宣伝を日本にやるというふうな、いかに池田内閣がアメリカと仲よしであったにしても、日米の教育及び文化の交換ということについては対等の立場というものがあってしかるべきではないか、こう考えるのでありますが、抱負は何もないし、計画も何もない、これからやはり相談だ、こういう程度ですか。
  93. 大平正芳

    大平国務大臣 今具体的な案が固まっておりませんけれども、今横山さんがおっしゃったような趣旨もできるだけ体しまして、私どももりっぱなものをつくり上げるように協力したいものと思っております。
  94. 横山利秋

    横山委員 私は、りっぱななんということは言っておりませんよ。何か機構をおつくりになるとかなんとかいう抱負があるのかないのか、これは全然ないのですか。それだけ、九十億円をぽっと積み立てて、そして何でもアメリカさんどうぞ使ってちょうだい、アメリカさんの言うことなら、教育なり文化なり受け入れますから、こういうことですか。これは一体実施官庁としては将来どこが主管されるのでありますか。
  95. 安藤吉光

    安藤政府委員 この二千五百万ドルというのは円をもってアメリカに返済するわけでございます。だから、理論的に申し上げますと、これは一応アメリカの金でございますが、この円で返すという意味日本で使うということでございます。実際問題といたしまして日本で使うのでありますから、アメリカ日本の意見を聞き、あるいは協議を経るということは当然かと思います。それはさきのフルブライトの基金を使ったときも同じようなことでございました。そしてこの二千五百万ドルがどういうふうに使われるかということにつきましては、この協定ができました上でアメリカ側とも、まだ時間もあることでございますから、いろいろと意見を交換したり、われわれの希望を申し述べたりすることが当然あるわけでございます。その教育文化に対する向こうの基本法というものがございます。それは一九六一年の相互教育文化交換法というものがありまして、向こうといたしましてはこの法律を基といたしまして、この二千五百万ドルを国務長官が使用し得ることになるわけであります。その法律を読みますと、使用目的という中には教育交換だけに限定しておりませんで、研究助成とか、専門家、芸術家、スポーツマンの相互訪問、国際的会合、展覧会の参加、文化学術資料の交換、学術研究機関ないし文化、技術センターの設置、いろいろうたってあるのであります。大体こういったような種類のものに使われると思いますけれども、具体的内容につきましてはこの法律が成立いたしました上でアメリカ側にもわれわれの意見を述べたい、そういうふうに思っております。
  96. 横山利秋

    横山委員 時間がございませんから次に移りますが、このエロア資金ガリオア資金というものは、そのほかに準援助物資といいますか、いろいろな項目が含まれておるようであります。が、たとえば行政再教育関係の映画等、あるいは余剰報奨物資、第八軍の払い下げ、国務省の清算委員会の物資、あるいは英連邦軍の払い下げ、この中で私がお伺いしたいのは、アメリカの軍の払い下げ物資と、それから英連邦軍の払い下げ物資との取り扱いの問題であります。まず最初にお伺いしたいのは、両国の軍の払い下げ物資はそれぞれ幾らでありましたか、総額。
  97. 安藤吉光

    安藤政府委員 昨日の大蔵委員会でも御説明がございました通り、英連邦軍BCOFからの払い下げというのは、スキャッピンによりまして、売却または無償で得たものでございます。当時貿易会計に基づき、その運用としてこれを購入したわけでございます。その金額は八十五万八千九十九ポンドでございます。アメリカの払い下げ物資というのは、要するにわれわれがクォーターマスター・グッド、QMと呼んでおるものでございます。これはやはり支払い条件及びその経理については後日決定するというような了解のもとにもらったのが七千三百十万六千三百六十ドルでございます。
  98. 横山利秋

    横山委員 その性格は、アメリカの方は今日引き続いてエロア資金ガリオア資金の中に含まれ、そして英連邦軍の方は、その当時から金額が明確にされておるから、外務委員会における政府の答弁によれば、これは商業物資と、こういうふうに答弁がなされておりますが、その前提でよろしゅうございますか。
  99. 安藤吉光

    安藤政府委員 ちょっと先ほどの御質問に関連いたしまして、国務省、いわゆるOFLCのことをちょっとお触れになったようでございますが、これは全然ガリオアとは別個でございます。これはやはりBCOF物資と同様、アメリカの国務省に属します在外清算委員会から売買契約として、貿易会計の中からこの運用で五億円買っておるわけでございます。これは別でございます。先ほど私が申しました、わざと英語を使わしていただいたのは、全然別個なOFLC、いわゆる国務省の在外清算委員会から買ったのは、これはガリオアとは別でございます。それで今度の対日処理に含まれておりますこの米軍払い下げ物資、クォーターマスター・グッドというのは、先ほどもちょっと申しましたように、ガリオア同様支払い条件及び経理について後日きめるというような了解のもとに得まして、これが七千三百十万ドルというわけでございます。
  100. 横山利秋

    横山委員 きのうの質問にもありましたが、私なりに整理してみますと、米軍の七千三百十万ドルの方は貿易特別会計から対日援助物資特別会計へいき、見返資金会計へいき、産投会計へ移ってきておる。それからBCOFの方は米軍のものも含めて、貿易資金特別会計から平和回復前後処理費にいき、一般会計の賠償特殊債務処理費の中に含んできておる、こういうふうに理解してよろしいですね。
  101. 中川融

    ○中川政府委員 御指摘の通りの扱いになっております。
  102. 横山利秋

    横山委員 BCOFの方は、これは商業物資というような見解が外務委員会でございましたが、そう理解してよろしいのですか。
  103. 中川融

    ○中川政府委員 ええ、その通りでございまして、初めの出発点が違う関係上、あとの扱いも違ってきたと、こういうことになっておるわけでございます。
  104. 横山利秋

    横山委員 そういたしますと、米軍の方は今日ここまできて国の議決を要する、英連邦軍の方は国の議決は要しない、こういう取り扱いになってきておりますが、これもその通りでございますね。
  105. 稻益繁

    ○稻益政府委員 その点は昨日お答え申し上げましたように、英連邦軍の払い下げ物質は売買契約という形で買い取ったものでございます。一方ガリオア物資は、援助物資として今回法的な債務が決定した、こういう性格の違いからきておるわけでございます。
  106. 横山利秋

    横山委員 しかしながらその一方では、BCOF物資の方はこれが一般会計のうちの賠償特殊債務処理費として支出をされたというのは、いかなる理由に基づくものでありますか。
  107. 稻益繁

    ○稻益政府委員 英豪軍の払い下げ物資は、当初、ただいま申し上げましたような貿易物資でございますので、貿易資金の特別会計の運用としてこれを買ってお金を払った、こういうことでございます。その貿易資金がその後なくなりまして、一般会計に承継されたということで、その一般会計で処理をした時期がございます。それからさらにその後におきましては、三十一年にいわゆる賠償等の特別会計ができまして、これで支払いを行なった、こういうことでございます。
  108. 横山利秋

    横山委員 最も合点がいかないことは、その商業物資であり、純商業的なベースであるというものが平和回復善後処理費になり、賠償特殊債務の中で扱われたということであります。どういうふうに考えても、これが理解がいかない。
  109. 稻益繁

    ○稻益政府委員 賠償等会計の第一条にありますように、占領に関連して負担した債務の支払い、これに該当するということで、これから支払いを行なった、こういうことでございます。
  110. 横山利秋

    横山委員 しかしそうは言っても、これは私は明らかに詭弁だと思う。賠償はあくまで賠償で、国の債務として正規の国会の議決を得るという段階になったわけであります。そうでしょう。初めのうちは政府の行政権の範囲内だと言って適当にやっておって、さあ今度は平和回復善後処理費だ、賠償だというふうな取り扱いをしたところに、私は全く矛盾撞着がある、こう考えるのですが、いかがですか。
  111. 田中角榮

    田中国務大臣 きのうお答え申し上げました通り、英豪軍の払い下げ等につきましては、貿易物資として明らかにそういう指示があったのでありますから、これは貿易物資として取り扱うということでありましたから、貿易会計でもって受け入れ、支払いをいたしたのでありますが、その後御承知の通り同特別会計が廃止になって、その権利義務は一般会計に移されたわけでございますから、一般会計の中の特別勘定で一部を第二回、三回払ったわけであります。その後賠償等特別会計が新たに設置をせられたわけでありまして、三十一年の四月一日からと思いますが、設置をしまして、今度は賠償及び占領軍の占領行政に関連をするような問題はそこから払おうという特別会計ができましたので、今まで一般会計で四回にわたって払っておったものを、残余の二回は賠特会計で支払った、こういう関係であります。
  112. 横山利秋

    横山委員 戸叶委員から同様な質問があるそうでありますから、しばらく譲ります。
  113. 臼井莊一

    臼井委員長 関連を許します。戸叶里子君。
  114. 戸叶里子

    戸叶委員 横山委員がまだ質問がおありのようでございますが、ちょうど私関係した問題について質問をしたいと思っておりましたので、しばらくの間その時間を譲っていただきたいと思っております。  私も実は外務委員会、大蔵委員会でガリオア・エロアのいろいろな問題を聞きましたけれども、納得のいかないことだらけでございました。そして資料を要求しておりましたが、その資料の中でどうしても出していただけなかった大事な資料が、実は産投会計が衆議院の段階で通ったとたんに出していただいたわけでございまして、それを照らし合わしてみますと、私の委員会での質問等が非常に未熟なものであったということを非常に汗顔の至りに思っております。その意味から申しましても、わからない点をこの際念のためにはっきりしておいていただいた方がいいのではないか、こう思いましてお伺いするのでございますが、土曜日の日に武藤委員が英連邦軍の払い下げ物資、BCOF物資は貿易ではないというふうな意見を出されたのに対して、これは貿易であるということを政府が答え、その後ずっと伺っておりますと、これは貿易だ、貿易だと言っておられます。私はどうして貿易であるということを言われるのか、どうも納得がいかないのでございますが、一体昭和二十二年ごろは貿易というものがあったのかどうかということをまず伺いたいと思います。  それからもう一つは、英連邦占領軍であるのにもかかわらず、占領軍と日本との間に貿易というものが行なわれたかどうか、この点を非常に疑問に思いますので、御答弁を願いたいと思います。
  115. 中川融

    ○中川政府委員 もちろん終戦直後の事態でございますから、通常の意味にいう貿易はなかったわけでございます。が、要するに占領軍の管理のもとにおける政府レベルでの貿易、これは商業ベースでやった貿易というものがあったのでございまして、あくまでもそれは司令部を通じて貿易をやっていたということでございますが、そのよって立つそこは、やはり通常の貿易と同じ売買契約によって物の輸出入が行なわれた、売買が行なわれた、かような事態になっております。  また英占領軍と貿易ということができるかということでございますが、これは四七年三月十四日、スキャッピンが参りまして、そのスキャッピンによって英連邦軍司令官と日本の当該官庁との間で売買することができる、そういう権限を英連邦司令官に与えた。こういう指令が出てきておるのでございまし七、その指令によってはっきりとそういう売買を行なう権限が認められておるわけでございます。
  116. 戸叶里子

    戸叶委員 今大へん苦しい答弁をされましたが、そして同時にスキャッピンの英連邦軍と日本の貿易庁との間に売買ができるという権限を与えられて、そうして売買をしたのだということでざごいましたが、ここに書かれておる言葉の中ではっきりしておることは、そのときの価格というものは英連邦軍によって見積もられた価格でございます。日本政府は何も言えなかったのです。それで、そういうふうに売買なりあるいは貿易というからには、日本でも一応その価格については何らかの話し合いの余地があるはずではないかと思う。ところがこのスキャッピンを見てみますと、英連邦軍の言うなりの見積もられた価格に対して、日本は黙ってレシートを出しているわけです。こういうことが一体売買貿易と言えるかどうか。この点も私はふしぎに思うのですが、明快に御答弁を願いたい。
  117. 中川融

    ○中川政府委員 御指摘の通り、その当時のスキャッピンによりますと、売買の権限を与えられておりますが、その売買が行なわれた際には、受け取りを出せ、その受け取りには、記録のために価格を書くということになっております。形から見ますれば、先方のいわば言い値を書くということのように見えますけれども、現実の扱いは、調べてみますと、先方の言い値をそのまま書いたのではないのでありまして、やはりこちらと相談した価格を書いたということであるようでございます。なおその指令の中にも、もしも腐敗品があるとか全然価値のないものがあれば、その分も書くようにというようなこともございますので、十分そのとき検討して書いたものと思うわけであります。なおその後一九五一年になりまして、英連邦軍と相談いたしました結果、はっきりとすべての売買が幾らあるかという集計をいたしまして、先ほど答弁になりました約八十六万ポンドというものが間違いのない価格だということを確めたわけでございまして、その意味で価格においては誤差はない、かように考えております。
  118. 戸叶里子

    戸叶委員 今の御答弁でございます。けれども、私は今の条約局長の御答弁は満足できません。なぜならば、相談をして書いたようであるというふうに、非常に自信のないお言葉でありますし、それからもう一つは、腐敗したもの等もあった、そこで腐敗したもの等に対して値を引いたとかどうとかこうとかおっしゃいましたけれども、あの当時のアメリカ局長の御答弁によりますと、このBCOF物資の中には売ったものとただのものと両方あった、セール・オア・ディスポーザルというものがあったんだ、だから両方あったんだということを答弁されておる。従って腐敗したものなど、あるいは役に立たないものなどは当然ただになったということは、これは事実だと思うのです。従って今条約局長がおっしゃったように、相談して書いたものであるということの証拠はどこにもないわけであって、この指令書にははっきりと、英連邦軍によって計算された、見積もられた価格ということが書いてあって、どこにも日本が相談を受けたという言葉がございません。それともどこかにございますか。
  119. 中川融

    ○中川政府委員 もちろん普通の、通常の場合におきます売買でありますれば、当然その際には価格を相互の合意できめる、こういうことになるわけでございますが、占領直後のことでございます。全部司令部の管理のもとに貿易が行なわれた時代でございますので、やはり指令に基づいて売買が行なわれたということはいたし方がないのでございますが、しかし現実の扱いは、日本の意向も聞いて、腐敗品等はこれを除外いたしまして、そうして価格をそこに書いた。しかもその後五一年になりますと、それを全部再び振り返ってみまして、価格が確かなものであるかどうかを確かめて、双方でそれを確認しておるのでございまして、そういう点から見ますとこれはやはり価格について間違いはないものである、かように考えていいものであると思うのであります。
  120. 戸叶里子

    戸叶委員 私まだ五一年のことは言っておりません。またあとからこのことは質問しようと思いましたが、そういうふうに答弁をそらさないでいただきたいと思います。  そこで、お伺いをいたしたいのは、それではその当時、アメリカの管理のもとにあった貿易というふうに今政府はおっしゃっていらっしゃるわけです。が、それでは払い下げ物資というふうなものと政府の管理のもとにあった貿易というものとは同じですか違うのですか。
  121. 中川融

    ○中川政府委員 払い下げ物資というのは、あるいはSIM、QMということかと思いますが、SIM、QMにつきましてはこれは英連邦物資とはだいぶ扱いが違っておりまして、要するにSIM、QMというものはどう解決するかは将来きめるという、ガリオアと同じような条件日本側に払い下げられたものでございます。従ってそのときの売買契約があったという性質のものではない。要するに債務と心得るというような事態で出発しておるものでございまして、扱い、性格はやはり違っておる、かように考えます。
  122. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、SIM、QMは払い下げ物資であとでその価格をきめる、こういうことで払い下げられたとおっしゃるのでしょうか。そうするとSIM、QMは払い下げである、BCOFは払い下げでない、こういうふうにお分けになるのですか。簡単でけっこうですから、イエスかノーかだけおっしゃって下さい。
  123. 中川融

    ○中川政府委員 払い下げという言葉の定義の問題にもなりますが、ただいまおっしゃった通りBCOFの方は売買契約に基づいて渡されたものであり、SIM、QMの方はガリオアと似たような状態で渡されたものであって支払い条件等をあとできめる、こういう形で渡されたものである。こういうふうに考えます。
  124. 戸叶里子

    戸叶委員 私はそういうふうな詭弁ではどうしても納得がいかないのです。と申しますのは、最初のころ外務省でもはっきりとBCOFは英連邦軍からの払い下げ物資であるという答弁をしております。もしその証拠がほしいというのでしたら、私は速記録を今持っておりませんからあとから提出いたしますけれども、はっきりと英連邦軍の払い下げ物資であるということを言っておるわけです。従って、このBCOFとQM、SIMとの違いというものは、私はどうしてもはっきりわかりません。今の御答弁によりますとSIM、QMはあとから値段をきめるんだということでもって払い下げをされた。しかしBCOFの方は一応そのときに値段はきめた、しかし五一年になってから総計を照らし合わせてきめたのだ、こうおっしゃるのだったら、ちっとも変わらないじゃないですか、どこが変わっているのでしょうか。
  125. 中川融

    ○中川政府委員 違っているのは初めの出発点の指令が大体違っているのでございまして、英連邦の物資につきましては、売却、そのほかにディスポーザルというのもございますが、要するに売却の対象とする、こういうことで渡されたと申しますか、申し入れがあったわけでございまして、それを受けたわけでありますから、従ってこれは売却である、こういうことになるのでありまして、SIM、QMの方はそういうことが書いてないのでございまして、これはガリオアと同じような性質のスキャッピンがきていることは、戸叶委員御承知の通りであります。それから始まっているわけでございます。
  126. 戸叶里子

    戸叶委員 これお聞きになった方、おわかりになるでしょうか、こういう答弁で。私だけがわからないのならば頭が悪いから仕方がないと思うのです。けれども皆さんどこが違うかわからないのじゃないかと思う。  それでは私もう少し具体的に証拠をあげてみたいと思いますけれども、昭和二十七年度の予算の説明、「国の予算」という中を見ますと、このQM物資とかSIM物資とか、こういうものとBCOFとは同じということが説明されております。五百九ページをお読みになりますと、駐日米軍または英豪軍から払い下げられる物資と書いて、前者はQM物資、つまりアメリカから払い下げられたのがQM、後者はBCOF物資と書いてあるわけでございまして、この内容についてはBCOF物資もQM物資と同じであると書いているわけです。この国の予算書にもそう書いてあるにもかかわらず、今これが違う。そして片方は貿易で片方が払い下げ物資ですか、何とかとガリオア・エロアと同じような性質のものだというふうにおっしゃる理由が私はわからないのですが、その点をもう少し明確にしていただきたい。当時は大蔵省と外務省との間は違った考えを持っておられたのですか。
  127. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。アメリカ軍から払い下げられたものと、それから英豪軍から払い下げられたものとは同じ、同じものをどうして違うケースで決済をしたのかという御質問でありますが、これを日本の現在のような平常の立場で考えると同じ払い下げのものであるから同じ特別会計で処理すればいいじゃないか、また同じ認識で考うべきだと言われるのでありますが、御承知の通り、このBCOF物資は駐日英豪軍から払い下げられたものでありますという答弁をしてきております。もちろんそういうことなんです。ただこの代金の処理方法においてどういう会計経理をやった方がいいかという問題については、当時は占領軍の治下にありまして、日本が、日本はこういう経理をやりますということを言ったのではなく、ガリオアや米軍から払い下げられたもの、報奨物資から払い下げられたものは、あとから、ただいま御審議を願っておる対米債務の一環としてやりましょうということをきめでおりまして、当時支払い等の要求を急いでおった英豪軍側と占領軍最高司令部の間では、英豪軍から払い下げられるものは貿易物資として取り扱う、日本も貿易物資として受け入れること、こういうことがきめられております。それでその占領軍の意思に基づいて、昭和二十六年でありますか、連合軍総司令部の経済科学局長日本政府との間に交換文書をつくって、この物件に対しては貿易特別会計の中で処理をいたします。こういう取りきめをしたのであって、これはむろん結果論から見ますと、同じ筋のものを別々の会計で勝手に分けておるのじゃないかということも言えますが、その当時の問題としては、この英豪軍の払い下げ物資に関しては占領軍はこのように処理すること、日本側はそれに異議がなければ協定をしてやろうということで、経済科学局長との間に協定をして処理をしたというだけにすぎない、こう考えます。
  128. 戸叶里子

    戸叶委員 今大蔵大臣は英連邦軍の方の清算は急いだから、そして英連邦軍の方に早く払わなければならないし、こういう支払いでもってするようにというような指令があったために会計が違ったのだ、こういうふうに御答弁なさいます。そうすると、もしそれをその通りに受け取ったといたします。ならば、それでは米経済科学局長マーケットさんと池田さんとの間にその取りきめがあるまでは英連邦軍の物資も払い下げ物資でSIM、QMと同じであったのだ、同じであったのだけれどもここではっきりと貿易に扱うようになったのだ、こう理解してよろしいわけですか。
  129. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えをいたします。  米軍から払い下げられたものとか、それから余剰報奨物資というようなものは明確な根拠はなかったので、日本アメリカの間のものはあとから払うということで、これは全部今回の対米債務の中で片をつけております。一部のものは別に処理をされたものはありますが、おおむね今度の対米債務の中で片をつけております。  それから英豪軍からの払い下げの問題に対しては、確かに日本人側から見ると同じことじゃないか、払い下げだというふうに考えておりますが、その当時の占領軍としてはこれは払い下げということではなく、英豪軍と日本の間に貿易を行なったという処理をしてもよろしい、しかも英豪軍と日本との間には貿易をなし得る、しかも払い下げ物資という今われわれが議論をしておる問題に対しては、英豪軍から日本に売り渡したのだ、こういう考え方が明らかになっております。でありますから、日本もそれを確認して、貿易物資の代金として支払いをなした、こういうことであります。
  130. 戸叶里子

    戸叶委員 私、大蔵大臣に伺いましたのは、あとになってそういうふうにしたのだけれども、少なくとも二十六年にアメリカ池田さんとの間に書簡が取りかわされるまでは貿易としては扱っていなかったのですね、ということを最初に申し上げました。それに対する御答弁がいただいておりません。  それからもう一つ時間の関係で伺いますが、ただいま大蔵大臣はイギリスと日本との間に貿易がなし得るということがきめられたのでとおっしゃいますけれども、昭和二十二年には貿易がなし得るということがきめられておりません。それはどこにきめられているのでしょうか、それもはっきり根拠を示していただきたい。
  131. 上林英男

    ○上林政府委員 お答え申し上げます。  今の英連邦軍の払い下げ物資につきましては、スキャッピンによりまして英連邦軍司令官に日本政府の担当官と、当時は貿易庁でございましたが、それと取引をする権限を与えられまして、かっこれはセールという言葉が使われておりますが、もちろんセール・オア・ディスポーザルでございます。が、ただのものもあったわけでございますが、セールをする権限が与えられた。従って、これを受けまして、貿易資金特別会計で買い入れたわけでございます。従いまして、その物資を買い入れました債務負担はその当時なされたわけでございまして、その後池田・マーケット書簡でその負債しました債務につきましての支払い条件を取りきめたという格好になっておるわけでございます。
  132. 戸叶里子

    戸叶委員 私、さっき伺っていることは二十六年までは同じであったのだけれども、六年からは変わってきた、こういうふうに考えてもいいのですかということを伺っているので、その点をはっきりさせていただきたいと思うのです。
  133. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。英連邦軍の物資については二十二年の何月かにスキャッピンが出ておりますので、その当時から貿易会計で処理をする、こういうことになっております。
  134. 戸叶里子

    戸叶委員 それではお伺いいたしますけれども、英連邦軍の物資は二十二年から出ていて、そしてこちらの方で一方的にレシートを出していたわけです。ガリオア・エロアの援助の場合にも、この前の委員会で、たしかこの委員室でお答えになったことは、どれがもらったもので、どれが有償であるかわからないから、一応レシートを出していたのだ、こういうことを答えていらっしゃる。そうすると、この場合、ガリオア・エロアの貿易レシートを出していた、しかも同じ貿易庁で扱っているのです。余剰報奨物資だって同じだと思うのです。そういうものとどこが違うのでしょうか。
  135. 池田久直

    池田説明員 事務的なことでございますので、当時の実態をちょっと御説明いたしますと、おわかりになられるかと思います。これが一般の売買行為であったということは、今まで御説明がありました通りでございまして、片一方のSIMとかQMにつきましては、支払いの方法は後日決定するということでございまして、それに対してレシートを出しておりました。しかし今度のこのBCOFの場合におきましては、一枚々々のレシートに価格を記載いたしまして、しかも日本政府とBCOFとの協議によりましてブランケット・プライス、包括価格と申します価格、これは標準価格のようなものでございますけれども、そういうことでいろいろ価格が決定されておったわけでございます。それから、二十五年六月三日以後は、個々のケースにつきまして両者間で交渉して価格を決定した。それからまた物資の引き取りにつきましては、事前に現品を点検いたしまして、その物資に対する価格が不当に高過ぎると思われるときには値引きの交渉を行なう、あるいは当方の申し出によりまして置き場渡し入札を行ないまして、その落札価格を受け入れ価格とするというような取引の形態がQMとSIMと非常に異なっております。これはいわゆる商業の取引、こういうことでございます。そういうことで商業取引というように考えておったということでございます。
  136. 戸叶里子

    戸叶委員 今の御答弁を伺っていますと、BCOFの場合には一枚片々のレシートを出したということと、それから二十五年になって双方が話し合って価格をきめた、そういうふうにおっしゃるわけですが、それではこういうのとどう違うのでしょうか。ガリオア・エロアの場合にも、私どもが伺っておりますのは、やはりこれだけのものをもらったのだというレシートを出しているわけです。もらっている場合にも、買っている場合にも、初めのうちは商業ベースか何かわかりませんから、レシートを出しているわけです。レシートを出しているということは違わないと思うのです。それから、二十五年になってお互いに話し合って、そうして総額をきめたという。それは向こうが急いだからです。ガリオア・エロアの場合には、債務とか債務でないとか、今日になって諸般の情勢から初めていろいろ援助のものとか、有償のものとか、無償のものとか、話し合ってきめた。それでどこが違うのでしょうか。
  137. 田中角榮

    田中国務大臣 私も、先ほどあなたに申し上げたように、日本人側からすなおに見ると、あまり内容が違っておらないということを言っておるわけですが、同じようなものを別々の会計で処理をして一体どこが悪いのか、こういう議論になるわけですが……。
  138. 戸叶里子

    戸叶委員 大蔵大臣は大へんすなおで正直におっしゃっているのですが、だれの感覚でもそうだと思うのです。ただ、支払いの会計が違ったことに対してあとからつつかれると大へんだと思って、予防線を張って皆さんいろいろ答弁されていると思うのですが、今大蔵大臣のおっしゃった通りだと思うのです。そのことは確認してもいいですね。
  139. 田中角榮

    田中国務大臣 日本人側から見ての感覚からいって同じことだと思います。
  140. 戸叶里子

    戸叶委員 今大蔵大臣おっしゃった通りだと思うのです。SIM、QM、それからBCOF、これは違うということは少しおかしいのであって、これはみな同じなんです。だからこれは貿易ではない、同じものであるというふうに理解してもよろしゅうございますね。
  141. 田中角榮

    田中国務大臣 どうも戸叶さん特定の目的をもって答弁を引き出されておられるようだと困りますから、私から申し上げると、私はあなたの御発言に対して、すなおに、今から考えれば同じことじゃないか、それに理屈をつけてやっただけじゃないかということ、日本人的な感覚からいえばまさにその通りであります。しかし英豪軍の物資に対しましては、先ほど事務当局が答えましたように、占領軍の中の問題として、英豪軍のものに対しては、初めから払い下げ物資としてやるのではなくて、お互いの協定によって、代金は後刻精算をするにしても、これは貿易物資として取り扱うということが指令として出ておりますし、またわれわれもそういう立場を堅持しながら受け入れて受取書を出しておる、しかも貿易特別会計で支払っておるという事実はあくまでも厳然としておるのでありますから、すなおにその事実を認めていただきたい、こう考えます。
  142. 戸叶里子

    戸叶委員 大蔵大臣がああいうおっしゃり方をすると、何とも言えなくなっちゃいましたね。  それでは私はもう一つ伺いたいのですけれども、対日援助物資等処理特別会計というのがございますね。これを審議したところの説明では、BCOF、QM、SIMは同じである、こういうように大蔵省でおっしゃっているのです。だから今になって、払い方が違ったからこれは貿易だとおっしゃることは、どう考えたっておかしいのです。はっきりとこれは同じであるということを言っているわけなんです。大蔵省いかがでございますか。
  143. 上林英男

    ○上林政府委員 払い下げ物資と申しましても、要するに払い下げと申しまするのは、何と申しますか、事実的な、受け取ったといいますか放出をした物資という意味でございまして、従って法律的にその物資が売買であるか、あるいはガリオア・エロアのように後日支払い条件をきめる債務と心得てきて、それを債務といたしまするためには別途国会の議決を得る種のものであるかどうかということを含めました払い下げという言葉でありまする場合と考えました場合に、かつ当時の情勢におきまして、物資不足を補うために、英連邦軍あるいはアメリカ軍からもらったというような性格におきましては、確かに御指摘の通り似ているわけでございますが、これを法律的に見ました場合に、今申し上げましたような性格上の相違があるわけでございまして、それに従いましての処理をいたした、こういうことでございます。
  144. 戸叶里子

    戸叶委員 一体違うか同じかわからなかったです。何かぶつぶつといろいろおっしゃったのですが、私にはわからなかったのです。  それではちょっとほかの方へいきましてお伺いしたいことは、今回アメリカの対日援助額として決定されたものの中から余剰報奨物資分といたしまして返還している分、千五百六十五万七千七百六十九ドルというものがあるわけですね。これは日本金に直すと五十六億三千六百七十九万六千八百四十円、こういうものがあるわけですが、これはSIMですか、QMですか、どういうものでしょう。
  145. 安藤吉光

    安藤政府委員 ちょっと御質問を聞き漏らしましたのですが、返還分の全額だと思いますが……。
  146. 戸叶里子

    戸叶委員 そうです。返還分の余剰報奨物資としてありますね。
  147. 安藤吉光

    安藤政府委員 この余剰報奨物資、いわゆるSIMからは千五百六十九万ドル相当分を返還しております。
  148. 戸叶里子

    戸叶委員 これはSIMですね。
  149. 安藤吉光

    安藤政府委員 SIMでございます。なおQMからは六十八万ドル余を返還しております。
  150. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで、この三十二年度のころの予算書を見てみますと、余剰報奨物資代金というところに、これは占領中米軍及び英豪軍がわが国に対して報奨した余剰報奨物資代金であるが、米軍の分は五十億五千二百万円、その代金は二十四年以降、三十一年度までに数回にわたり分割支払い済みである、こう書いてあります。この予算書を見てもわかりますように、日本予算の中の二十四年から三十一年度までに五十億五千二百万円、米軍から払い下げられた余剰報奨物資に対して、数回にわたって払っているわけでございますね。その分は一体今回引いたんでしょうか、引かないんでしょうか。当然引くのがあたりまえですね、ガリオア・エロアの中から。そうですね。
  151. 中川融

    ○中川政府委員 御指摘の物資はいわゆるSP物資というものだと思います。が、これはガリオア・エロアとは全然別で、ただいまの英連邦軍物資と同じような性格のものを別にアメリカ軍から日本が売買によって買っているものがあるのでございまして、これの方の決済はすでに数回にわたって、御指摘のように支払いをして、片づき済みのものでございます。いわゆるガリオア・エロアとは関係のないもので、従って、その中には入っておりません。
  152. 戸叶里子

    戸叶委員 ガリオア・エロア関係ないでしょう。この余剰報奨物資というのはSIMなりQMでしょう。だったらSIMなりQMというもので日本アメリカに何度かにわたって払っているものは差し引いたわけじゃないんですか。
  153. 中川融

    ○中川政府委員 SIM、QMは、これはガリオアと同じ性格のものでございまして、ガリオア援助の支払いの中に計算に入れてやっておるわけでございます。ただいま御指摘のありました数回にわたってすでに支払いを了しているという分は、SIM、QMではなくて、在外精算事務所の財産と称せられる別扱いの余剰物資であると考えられます。従って、それは全然このガリオア援助とは別の問題でありまして、この中には勘定には全然入っていない、もうすでに片づき済みのものでございます。
  154. 戸叶里子

    戸叶委員 それはそんなこと言えますか。占領中米軍及び英豪軍がわが国に対して放出した余剰報奨物資代金ですよ。そう言っているんですよ。私としては――もっと先を申し上げましょう、なぜ私がそれを不思議に思ったかと申しますと、国の予算書で五十億五千二百万円で、その代金は二十四年以降三十一年度まで、数回にわたり分割支払い済みである、こう書いてあるわけなんです。その差し引いた金額、払った金額は五十億五千二百万円です。ところが今回余剰報奨物資として返還分として引いたのが五十六億円以上あるわけですね。そこに約六億円の差があるわけです。差額は五億八千四百七十九万ほど余分に引いてあるわけなんです。だからアメリカの方から余分に引いたということはけっこうなことなんですけれども、これほど数字がずさんであるということを私は申し上げたい。何の根拠でこれがありますかということを伺いたいのです。
  155. 稻益繁

    ○稻益政府委員 ちょっと誤解を防ぐ意味で申し上げますがQM、SIMのほかに、これはガリオア類似の債務と心得た、そのほかに先ほど来いろいろお尋ねのありました、いわゆるBCOF――これは英豪軍であります。当時の米軍からBCOFと同じような形で売却されたもの、日本が買ったものがあるわけであります。これがSP物資であります。それが五十億ばかり支払われたということであります。
  156. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、今私が申しました余剰報奨物資代金として政府の方から二十四年から三十一年までに五十億五千二百万円を払った、これはどこの会計から出ているのでしょうか。念のために伺っておきたい。
  157. 上林英男

    ○上林政府委員 SPの支払い場所でございますが、これは二十四年及び二十五年は貿易特別会計で支払いをいたしております。なお二十六年には、御存じのようにその特別会計が廃止されましたので、一般会計の貿易特別会計残務整理費で払っております。それから二十八年、二十九年、三十年、これは一般会計の平和回復善後処理費で払っております。それから三十一年は賠償等特殊債務処理特別会計で支払いをいたしております。なおSPの債務額は五十億五千二百万円でございましたが、朝鮮事変の勃発後、米側に返還した分がございましたので、それを差し引きまして実際の支払い額は四十九億四千二百万円でございます。
  158. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほど私が、返還分として余剰報奨物資と書いてあるのは何ですかと伺いましたら、SPではなくてSIMなりQMであるということをおっしゃったので、それで私は不思議に思って今聞いたわけです。今のようにおっしゃればその点はわかったわけでございますが、そうすると国の予算書と、ここから差し引いた分との違いの約六億円というものは何になるわけですか。
  159. 上林英男

    ○上林政府委員 たびたび御答弁申し上げておりますようにSIM、QMとSPとは違うものでございます。SIM、QMはガリオアと一緒に処理さるべきものとして扱われておるわけでございます。SPは同じく貿易資金特別会計におきまして買い入れをいたしたものでございます。その買い入れをいたしましたものをその後、先ほども申し上げましたように支払いを分割して行なったものでございます。
  160. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますとSPとBCOFとは同じようなものですか。
  161. 上林英男

    ○上林政府委員 支払いの方法と申しますか、買い入れました点につきましては同じでございます。
  162. 戸叶里子

    戸叶委員 その予算書の中の説明の方で、英連合軍分の八億六千五百万円、これは英連合軍に払ったものであるけれども、二十六年以降三十一年度までに七億五千万円を支払っているので、残額は一億一千五百万円である、その他の特殊債務の未解決のものすなわちガリオア援助やイタリア特別円などがある、こういうことを説明しておるわけです。ここにおきましてもはっきりと、これは英連邦軍のBCOF物資は貿易ではない、この余剰報奨物資代金として扱っておるわけであります。けれども、それでもなお大蔵省は貿易であるということをおっしゃるわけですか。
  163. 田中角榮

    田中国務大臣 お答え申し上げます。今度の対米債務の対象になっておりますのは、御承知の通りガリオア、それから米軍の払い下げ物資いわゆるQM、それから余剰報奨物資のSIMというものがあわせて対象になっております。しかし向こうからの要求と日本側のリストをつき合わしたときに、この中には明らかにもらったものだと書いてあるもの、無償援助だと書いてあるものがありますからそういうものは引かなければならぬということで、最終的な数字をつき合わした段階において引いたわけであります。そのほかに、先ほどから申されておるところの米国国務省の在外物資精算委員会から日本側が受け取ったトラック、繊維製品、化学薬品、食糧その他の品物がありますが、これはSPということで処理をいたしております。それからもう一つは英豪軍のいわゆるBCOF物資ということでありますが、このSPとBCOFは先ほど申した通り最高司令部でこのものに対しては貿易物資としての取り扱いをすることができる、いわゆる貿易特別会計との間に売買契約を結んでやるのだということでありますから、一々受け取りを出してその後清算をいたしたわけでありますが、未清算になっておるQMそれからSIM、ガリオアというような問題が今度の債務の対象として新たに協定によって債務を確定いたしたということであります。
  164. 戸叶里子

    戸叶委員 私の質問がちょっと整理されてなかったかと思いますので、大蔵大臣の今のような御答弁になったと思うのですが、もう少し整理して申し上げますと、今私が申し上げたこれは三十二年の国の予算書にもはっきりしているように、BCOFもそれからアメリカ軍からの払い下げ物資も同じ会計で扱われているということでございます。それはどこかと言いますと、対日援助物資等処理会計で扱っているわけです。対日援助物資等処理会計というのはどういうふうにしてできたかといいますと、一番初めに援助物資の代金の項目があって、そこから今度は貿易資金が分かれて、それから今度は貿易会計が分かれて、その援助物資資金からまっすぐに対日援助物資等処理会計になって、ここで扱われているわけであって、これは一般会計というのとは違うわけなんです。ところが一般会計で扱われていないにもかかわらず、貿易の残務処理として一般会計へ移したのだということをきのうは答弁をしていらっしゃるわけです。それで私はどうしてもわからなくなってきたわけなんです。
  165. 田中角榮

    田中国務大臣 対日援助見返資金特別会計ではSPとそれからBCOFの払い下げ代金、国民に払う払い渡し代金は受け取っておりません。これは先ほどから事務当局が申し上げておりますように、貿易特別会計で貿易物資として扱いましたので、貿易特別会計で品物も受け取り、それから日本人に対しての払い下げもその会計から行ない、その日本人からの代金も貿易特別会計で受け取り、その貿易特別会計の中からSPとそれからBCOFの代金は払っておりますが、その後それは全額払っておるのではなく一部しか払っておりません。その後貿易特別会計が廃止になって一般会計に引き継がれておりますので、一般会計の中の特殊勘定の中から残余を払った、こういうことになります。
  166. 戸叶里子

    戸叶委員 今のは私の予算書で調べたのとは違うわけなんです。と申しますのは、予算書に書いてあるのは対日援助物資等処理、この中からBCOFも出ているわけなんです。ちゃんと書いてあります。それが一体どういうことかということなんです。一般会計ではなくて、この対日援助物資等処理会計、これはどこから変わったかというと、援助物資代金から変わってきているわけですね。援助物資代金が貿易資金になって、今度は貿易会計になって、そこからこっちへ分かれてきている。こっちから使われているわけなんです。ところが政府のおっしゃるのは、この貿易会計がなくなってきて貿易特別会計になって、そして今度は一般会計になった。ここから出ているとおっしゃるわけなんです。ところが私が予算書で見ますと、こちらの方の対日援助物資等処理会計から出ているわけなんです。BCOFの物資は。だからそこいら辺が私は違うと思うのです。
  167. 上林英男

    ○上林政府委員 ただいまのBCOF及びSPは、これは米国対日援助見返資金特別会計へは繰り入れられておらないわけでございます。従いまして、それの売買代金と申しますか、それはあくまでも貿易資金特別会計、さらにそれを引き継ぎました貿易特別会計を経まして一般会計において整理をされてきた、こういう格好になっておるわけでございます。
  168. 戸叶里子

    戸叶委員 それじゃ、そうおっしゃいますけれども、三十二年度「国の予算」の三百三十二ページをごらんになっていただきたい。そうすると余剰報償物資代金という項にはっきり書いてございます。その中に書いてあることは、アメリカの援助されたものに対して、余剰報償物資代金に対しては、二十四年から三十一年度まで数回にわたってここから返した。それから英連邦軍の分は八億六千五百万円で、二十六年以降三十一年度まで七億五千万円払って、その残額は一億一千五百万円余っておるとはっきりここに書いてある。ここの会計から出ておるということが書いてあるのですけれども、お調べになっていただきたいと思う。あとで調べておいていただきたい。――今調べていただきたい。
  169. 田中角榮

    田中国務大臣 三十二年の予算書にそう書いてあれば、今調べてみます。が、事実を申し述べますと、先ほどから事務当局も申しておりますように、SPとBCOFの受け入れも、それから支払いも、見返資金特別会計からは一切払っておる事実はありません。貿易特別会計から払っておるというのが事実のようであります。しかしその間の関連がどこかにあるかというと、貿易特別会計の余剰資金を一時見返資金に預託をしたことがあるそうであります。しかしこれとても、ただ次期貿易資金特別会計に返しておるのでありまして、少なくともこのSP及びBCOFの相手方に対する支払い代金の一部でも見返資金特別会計から払ったという事実はないそうであります。
  170. 戸叶里子

    戸叶委員 あとからその点調べてはっきりさしていただきたいと思いまして、先に進んで参りたいと思います。  そこで、私、きょうは林さんが来ていらっしゃらないようですけれども、林さんのために、一言速記録を取り消しておかれた方があとのためになると思いますので、親切な御忠告を申し上げておきたいと思いますが、林さんの御答弁ではBCOFの会計につきましてはこういうふうに答えています。二十六年度以降、五、六年にわたって少しずつ払っていたのでございます。そして各年度、たとえば二十六年度は貿易特別会計でございます。二十七年度からは、貿易特別会計はなくなっておりますので、一般会計に引き継がれていると思います。とこういうふうにおっしゃっておられますけれども、二十六年度はもう貿易特別会計がないわけでございますから、これは林さん感違いされていたと思いますので、これは速記録をお直しになっておいた方が林さんのためになると思います。念のために申し上げておきたいと思います。  そこで、この間出していただきましたマーケット経済科学局長から池田勇人大蔵大臣にあてた一九五一年六月二十三日付の書簡ですけれども、この書簡を見まして、私はこの議論はこの前の委員会でもいたしましたからもういたしませんけれども、念のためにもう一度はっきりさしておきたいことは、この書簡の中では、日本政府が英連邦軍との間に了解事項を結んでいるわけです。その了解事項の中で、この書簡が認められてから一週間のうちに英連邦軍に一億五千万円を払う。そうして二番目には補正予算日本国会が承認したときには一億五千万円を払う。それからそのあとは、六億円の残高があるけれども、それは一億五千万円を最初に払って、そのあとから一億五千万円以上を年賦額で払う、こういうような契約をしたわけで、数年にわたって財政を支出するということを書簡の形で約束したわけです。こうなってみますと、国の債務を長年にわたってする、一年だけでなくて何年かにわたってする場合は、私は当然憲法八十五条によって国会の承認を得べきであるということをこの前申し上げましたが、こういうはっきりした資料がなかったのでばく然とそれを申し上げましたけれども、これを見ますと、さらになぜこれを国会の承認を得なかったかということが疑問になってきたわけでございます。この辺をもう一度はりきりとさせていただきたいと思います。
  171. 上林英男

    ○上林政府委員 本件につきましては、この前の御質問につきましてもお答え申し上げましたが、憲法の規定によりまして、国が債務を負担いたします場合には、国会の議決が要るわけでございます。このBCOF物資につきましては、先ほど来御説明申し上げておりますように、貿易資金特別会計法を御議決いただいたわけであります。が、それによりますると、貿易資金というものは、貿易物資の売買及びこれに伴う請求権に運用する、こういうふうに書いてあるわけでございます。従いまして、貿易資金といたしましては、貿易物資の売買を行なっていくという権限が与えられているわけでございます。従いまして、貿易資金として物資の売買をする、それに伴う債務負担をするという権限が認められておるわけでございます。さらに憲法の規定によりまして、現金を支払います場合には、予算をもって国会の御議決を経なければならないわけでございまして、今のこのBCOF物資につきましては、貿易資金の運用といたしまして債務を負担し、さらにその後の支払いにつきましては、そのつど予算をもって国会の御議決を得まして支払いをなしていった、こういうわけでございます。
  172. 戸叶里子

    戸叶委員 今の御答弁を伺っておりましてはっきりしたことは、貿易資金で何とかこれをやりくりして払うということによって、国会の承認を得ないで通してしまったことをごまかすために、今回BCOF物資は貿易であるということで一生懸命答弁をし続けているというふうにしか私には考えられない。この手紙に合わせるために、BCOFは貿易である、こう言わなければ筋が通らないのでそう言い続けている、こういうふうにしか考えられませんが、そのように考えてよろしゅうございますか。それだけを見ましても、非常にごまかしが多いということを私は指摘せざるを得ないわけです。そこで、このBCOF物資に対しまして払った総額は、安藤局長が三月二十三日の外務委員会で私の質問に答えていられますが、「これらのものは円で後に払われました。その購入しました総額は約八十五万ポンド余でございました。」そうしてあとからもっと詳しい数字を出されて、八十五万八千九十九ポンドと述べていられるわけでございます。これを円で支払ったわけでございますが、そうすると、ここの交換公文には英連邦占領軍の代表者及び日本国政府の代表者は英連邦占領軍が提出した計算、すなわち五十八万五千九十九ポンドが正確かどうかを決定するため計算書を照合し、必要と認める場合には調整を行なうものとする、こう書いてあるわけです。そうすると、この日本が払ったお金は八十五万八千九十九ポンド、そして交換公文では五十八万五千九十九ポンド、こうなっているわけです。その差額は二十七万三千ポンドの差があるわけでございますけれども、これは一体どういうことになっているわけですか。イギリス軍と話し合いをしたときには五十八万五千九十九ポンドで大体いいという話がついているにもかかわらず、日本政府がそれ以上に二十七万三千ポンドもよけいに払ったというのはどういうわけでしょうか。
  173. 上林英男

    ○上林政府委員 あるいはお手元の資料にミス・プリントがあるのかもしれませんが、池田・マーカット書簡に書いております金額は八十五万八千九十九ポンドでございます。実際に支払いましたのは八十五万七千八百九十九ポンドでございます。
  174. 戸叶里子

    戸叶委員 ちょっと待って下さい。おかしいですね。そちらのもちょっと見せて下さい。    〔上林政府委員戸叶委員に資料を示す。〕
  175. 戸叶里子

    戸叶委員 今見せていただきました資料には、こういう間違いがございませんけれども、私が要求していただいた資料には、はっきりとここに五十八万五千九十九ポンドと書いてあります。しかも英文の方にも、そういうふうなことがちゃんと書いてあるわけです。私は英文と日本文と両方照らし合わせてみましたら同じでしたから、それを根拠にして質問したわけなんです。こんな大きな問題を、こんなに軽率な形でお出しになるということは、私は大問題だと思います。こういうことに対して、どうか今後お気をつけになるようにしていただきたいということを厳重に抗議を申し込んでおきたいと思います。  そこで次の問題に入りたいと思いますが、最初この交換公文が交換されましてから一週間以内に一億五千万円を払う、それから次に一億五千万円と六億円を分けたわけですけれども、その予算が何日にどこから出ていったかということをきのう大蔵大臣がおっしゃったようでございますけれども、ちょっと聞き取れませんでしたので、もう一度説明をしていただきたいと思います。
  176. 上林英男

    ○上林政府委員 英連邦軍払下物資でございますが、昭和二十六年度におきましては、二度支払っておりますが、一億五千万円ずつ二度一般会計の貿易特別会計残務処理費で支払っております。日にちを申し上げますと、先ほどの二十六年度と申しましたのは第一回が二十六年の六月二十八日でございます。第二回目は二十六年の十二月十五日でございます。それから二十九年の三月三十一日に一億五千万円支払っておりますが、これは一般会計の平和回復善後処理費でございます。それから三十年の四月二十八日に一億五千万円支払いましたが、これも平和回復善後処理費でございます。それから三十一年の四月三十日に一億五千万円、三十三年の三月三十一日に、端数がございますが一億一千四百万円を支払っておりますが、これは賠償等特殊債務処理特別会計で支払っているわけでございます。
  177. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、今の御答弁は、四月の四日の外務委員会で宮川政府委員が答弁されたのと同じでございます。ところが四月の二十日の大蔵委員会では、同じ宮川政府委員の御答弁が違っているわけです。それはどういうふうに違っているかといいます。と、一回目は「日本政府は総司令部書簡受領後一週間以内に第一回分として一億五千万円の支払いをする。第二は、第二回分一億五千万円は昭和二十六年秋の補正予算に計上して支払う。第三に、昭和二十七年度以降は、毎年一億五千万円を下らざる金額を支払う。第四に、占領終了後においては、平和取りきめの一部として取りきめられる条約に従って支払う。こういうように合意があったわけであります。」こう答えておられる。そうすると、今御説明になりましたのは、一回目と二回目は一般会計の中の貿易特別会計残務処理費から払ったというふうに言っていらっしゃるのです。ところが大蔵委員会で宮川政府委員が説明されているのは、二回目は補正予算から出したとおっしゃっておられる。一体どっちがほんとうなのでしょうか。
  178. 上林英男

    ○上林政府委員 宮川政府委員が当時、第一回目の支払いは書簡の交換後一週間以内に支払うということを申し上げておりますが、この書簡は六月二十三日付でございまするので、実際の支払いをいたしましたのは六月二十八日ということで、実際の支払いの日と、今申し上げました書簡は、一般的な原則を言ったわけでございます。なお、二回目の一億五千万円は、私の記憶によりますと、補正予算を提出いたしまして、補正予算により歳出権の御承認をいただいて支払ったということであると記憶いたしております。
  179. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、もう一度念のために申し上げておきたいことは、第一回目は一週間以内に一般会計の中の貿易特別会計残務処理費から払って、そうして二回目は補正予算を組んで補正予算から払った。三回目はさっきおっしゃった通りだ、こういうふうに了承していいわけですね。そうすると今この場でおっしゃった、二回目も一般会計貿易特別会計残務処理費で払ったのではないということですね。補正予算でお払いになったということですか。
  180. 上林英男

    ○上林政府委員 先ほど申しました一般会計の貿易特別会計残務処理費というのは予算の項でございますので、同じ項で補正予算をもって支払った、こういうことでございます。
  181. 戸叶里子

    戸叶委員 それではちょっと伺いますけれども、昭和二十六年の秋に補正予算として組んだのは、何の目的でお組みになったのですか。足りなかったからでしょうけれども、名目があったはずですよ。
  182. 上林英男

    ○上林政府委員 ちょっと、調査をいたしておりませんので、調べまして後刻お答え申し上げさせていただきます。
  183. 戸叶里子

    戸叶委員 時間の関係上私が申し上げます。私は調べてきましたけれども、なるほど二十六年の秋には補正予算として百億円組んでおります。ところがその百億円の目的は何であったかといいますと、平和回復善後処理費の名前で出しております。しかもその補正予算は全然お使いにならないで、次の予算の方に繰り入れております。全然出しておりません。百億円そのまま次の会計に回しております。――それでは調べていらっしゃる間に私はもう一つの質問に入りたいと思いますが、第一回目にお払いになった一億五千万円というものは、これは一般会計の中の貿易特別会計残務処理費の中からお払いになったとおっしゃるのですが、二十六年のころの予算書を見ますと、一般会計の中に貿易特別会計残務処理費という項目がないのですけれども、一体この一億五千万円はどこからお払いになったのでしょうか。
  184. 上林英男

    ○上林政府委員 ただいま調査をいたしましてから正確なところはお答えいたしますが、手元にございます資料でとりあえず申し上げますと、この二十六年度におきまする三億円は、一般会計通産省所管、産業経済費、その当時は部款項目がございましたが、それが部でございまして、商鉱工業費が款、貿易特別会計残務処理費が項、賠償償還及び払戻金が目、この項目より払っております。
  185. 戸叶里子

    戸叶委員 それは幾ら出ていますか。
  186. 上林英男

    ○上林政府委員 三億円でございます。
  187. 戸叶里子

    戸叶委員 それはおかしくないですか。というのは、最初にこの書簡が交換されて一週間以内に一億五千万円、一般会計の中の貿易会計の残務処理費から払ったというのですから、そういう項目があるべきはずです。第二回目は補正予算から払ったとおっしゃるから、私は補正予算を見てみたら、補正予算は百億組んであるけれども、それは翌年に全部回してしまって、使ってないのです。それを今三億円足しちゃって、通産省と何とかから出したというのは、少しこじつけじゃないかと思うのですが、もう少しわかるように説明していただきたいと思います。
  188. 田中角榮

    田中国務大臣 米国物資の分割払いの年度、款項目、その他に対しては、今事務当局で調べて、正確のものを御答弁申し上げます。(「今法規課長が言ったのは何だ」と呼ぶ者あり)法規課長は、後ほどつまびらかにしたものを、正確なものを提出いたしますが、しかし今手元にあるものを基礎にして申し上げればということでありますので、私はその問題に対しては、今私といたしまして、事務当局として調査をいたして提出をいたしますということを明らかに言っておるわけでございますから、御了解を願います。
  189. 戸叶里子

    戸叶委員 大蔵大臣の誠意とあとの方に御答弁になったことはよくわかりますけれども、さっき今手元にあるものを資料としてこうだとおっしゃったのですが、それは納得できない。もしそれがうそのものであれば、今手元にあるのを基礎にしてこうだという理屈にはならないと思います。それは一応取り消していただきたいと思います。
  190. 田中角榮

    田中国務大臣 今せっかく調べておるのでございますし、しばらくすれば正確な数字が出るのでありますから、今の御発言等でしばらく御猶予を賜わりますようにお願い申し上げます。
  191. 戸叶里子

    戸叶委員 今お調べのようでございますので、私は実は休憩していただきたいのですが、時間の関係もあるようでありますから、その先を一、二問伺いまして、あと横山議員にお譲りします。私の質問に対する答弁は、どうぞはっきりと明快な答弁をしていただきたいと思います。  そこで、次にお伺いいたしますのは、第三回目の支払いは、二十九年三月三十一日に一般会計の中の平和回復善後処理費から払っていらっしゃるわけでございます。そうすると、平和回復善後処理費というのは、当時の説明を見ますと、この経費は、対日援助費の返済、外貨債の償還、その他対外債務の支払い、連合国に対する補償等に充てることを予定して計上したものである、こういうふうに書いてあるわけでございまして、貿易等に対して払うというようなことは書いていないわけです。従って、もしも今までのように、このBCOFが貿易であるとのお考えの上に立つならば、この平和回復善後処理費の中からお出しになるということは、まことに私は不可解で、論理が一貫しないということを言わざるを得ませんし、平和回復善後処理費が、あとに賠償等特殊債務処理特別会計になったときにも同じことが言えると思うのですが、この点はいかがでございますか。平和回復善後処理費の目的と反するものである、ここから貿易の資金を払うというのはおかしいじゃないかということです。
  192. 上林英男

    ○上林政府委員 平和回復善後処理費と申しまする項は、正確に記憶いたしておりませんが、要するに平和の回復に伴い、善後処理を要する費用のために支出するものであるというふうに、予算におきまして項に目的を定め、御議決を経たものであると思っております。従いまして、この英連邦軍の払い下げ物資につきましては、占領軍がおりましたことに関連いたしまして負担いたしました債務でございまするので、平和の回復に伴う善後処理に要する経費として、当時平和回復善後処理費で支払うということにいたしたものでございまするし、その決算につきましても、国会におきまして御承認をいただいておるところでございます。なお、この平和回復善後処理費は、御存じのように賠特会計がつくられましたときに、賠特会計法の附則によりまして、平和回復善後処理費、それから昭和三十年からは、平和回復善後処理費が賠償等特殊債務処理費に変わっておりますが、いずれも一般会計の支出残額を賠特会計に引き継いで、その賠特会計におきまして、同じような債務の支払いを一般会計と区分して経理していとう、こういう制度をつくったわけでございまするので、それに従って支払いをなしていった、こういうわけでございます。
  193. 戸叶里子

    戸叶委員 当時の予算の説明を見ましても、平和回復善後処理費は、なるほど平和のための善後処理に使うということはわかっておりますけれども、その項目といたしまして、対日援助費の返済、外貨債償還、その他対外債務の支払い、連合国に対する賠償等に充てるということが書いてあって、そういうふうにはっきり項目別に書いてあるのですけれども、この貿易のために充てるのだということは一言もないわけであります。しかも目的が全然違うのじゃないか。貿易をここで扱うということになりますと、結局この中で何でも扱えばいいということになるのじゃないか、こういうふうに思うのですが、いかがでございましょう。目的が非常に違うというふうに考えるわけです。
  194. 上林英男

    ○上林政府委員 平和回復善後処理費の予算書におきまする説明は、平和回復に伴い条約の履行、その他善後処理に関し諸般の施策を講ずる必要が生ずるので、その処理のため必要な経費であるということを説明いたしております。なお、これが具体的にどういう項目に当てはまるかというようなことは、予算の説明などで当時の人たちがいろいろ考えたと思いまするけれども、この平和回復善後処理費の目的は、今申し上げましたような目的でございます。従いまして、この目的に沿うものといたしまして、英連邦軍払下物資も、占領軍の駐留に伴いまして負担することになりました債務でもございましたので、平和回復善後処理費で支払う、こういうことにいたしたものでございます。なおその後の経過は、先ほど申し上げました通りでございます。
  195. 戸叶里子

    戸叶委員 これは平行線になると思うのです。平和回復善後処理費から出したということを、何とか理屈をつけようと思えば幾らでも理屈がつけられると思うのです。けれども、私どもから考えてみれば、一回、二回目までは政府のおっしゃる通り、BCOF物資は貿易とみなして、そして貿易特別会計の残務処理というものがあるならば、そこから払っていったということは了解したとしても、今度三回目から払っていったことは、全く別な性格のものを払っている。ですから池田さんとマーケットさんとの書簡を納得させるために、何とか理論づけるために、今日の答弁をつくっているとしか私どもには思えない。非常に筋が通らないと思う。あっちの方から出してきてみたり、違う性質の方から出してきてみたり、これでは筋が通らないのであって、金曜日わが党の武藤委員が、これは貿易ではないということをはっきり言ったときの答弁、議論と少しも前進しておらないので、私は納得ができません。こういうふうにガリオア・エロアの問題は多くの問題を含んでおりますし、研究していけばいくほど多くの問題がある。しかも、それを質疑を打ち切って無理やりに通して、今度は産投会計から返そうというのですから、これは非常にむちゃくちゃ過ぎると思うので、ぜひこういうふうな行き方は、後世のためにもしていただきたくない。その意味から、今度の産投会計から支払うということは撤回をしていただきたい。こういうことを要望いたしまして、あとからの御答弁を保留して、私の質問を一応打ち切りたいと思います。
  196. 上林英男

    ○上林政府委員 先ほどの御質問でございますが、調査の結果をとりあえず御報告申し上げますと、当初予算におきまして、先ほど申しました貿易特別会計残務処理費、項でございますが、それが二十七億七千万円あったわけでございますが、補正をして三億一千七百万円増をいたしております。それが昭和二十六年十二月三十日に成立をいたしておりまして、結局、結果的に見ますと、補正予算で支払ったということに相なるかと考えております。
  197. 戸叶里子

    戸叶委員 ちょっと、今の補正は幾らお組みになったのですか。三億ですか。その三億の目的はどうなっておるのですか。
  198. 上林英男

    ○上林政府委員 ただいま御説明いたしましたように、貿易特別会計残務処理費を三億一千七百万円増額いたしたわけでございます。
  199. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、その補正予算というのは、二十六年の十一月ですか。
  200. 上林英男

    ○上林政府委員 昭和二十六年十一月三十日に、この補正予算は成立いたしておるようでございます。
  201. 戸叶里子

    戸叶委員 そうなりますと、私ちょっとわからなくなったのですけれども、第一回分として払うのは補正予算じゃないわけで、一般会計から払ったわけですね。一億五千万円というもの、それは一体どこからお払いになったのですか。一回分はどこからお払いになったのですか。二回分は補正予算からお払いになって、しかも補正予算の中で三億円というものが計上されたわけなんですけれども、一回分一億五千万円は、この書簡が交換された一週間以内に払っているわけですね。それはどこからお払いになったか。補正を組む前です。
  202. 上林英男

    ○上林政府委員 先ほどから申し上げておりますように、当初予算におきまして貿易特別会計残務処理費は二十七億七千万円あったわけであります。従いまして、その中から支払っておったと思います。なお、その買付が足りなかったのだと思いますが、それによりまして補正予算を三億一千七百万円増をしておるわけであります。
  203. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、二十七億七千万円の内訳の中に、一億五千万円出たということが、決算なり予算書の中に書いてございますか。
  204. 上林英男

    ○上林政府委員 予算書は、御存じのように具体的に款項目等でやっておるものでございますから、先ほど申しましたように、支払いの目といたしましては、「賠償償還及払戻金」で支払っております。なお、こういう点につきましては、決算書等においては明らかにされているものと考えておりますが、具体的には、予算の編成の項目は、今申し上げた通りであります。
  205. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、予算書の方にはそういうことは現われていないけれども、決算書の中には一億五千万円の数字がはっきりしるされておるというふうに了解してよろしゅうございますか、御答弁を願いたいと思います。
  206. 上林英男

    ○上林政府委員 もちろん、御存じのように決算書もこの款項目節に従ってやるわけでございますから、決算書に一々支払いました明細が書いてあるかどうかわかりませんが、もちろん決算等を調査、検査をいたしますときには、何々に支払ったかということを見ていただけるわけでございますので、そういう面も含めまして、もちろん決算等におきましても審査をされたものと考えているわけでございます。
  207. 戸叶里子

    戸叶委員 何に幾ら払ったかということが当然議論されたはずだから、大体においてはっきりしているだろうという御答弁でございましたが、私はどうもその点がはっきりいたしません。私の粗雑な調べ方によりますと、はっきりしておらなかったわけであります。従って、はっきりと御説明のできるような書類を午後に出していただけたら、私はしあわせと思いますので、このことを要望いたしまして、横山委員に譲りたいと思います。
  208. 臼井莊一

  209. 横山利秋

    横山委員 今の戸叶さんの質問に引き続いて総括的な問題を質問いたしたいと思いますが、結局そうなります。と、このBCOFは、これは国の債務として取り扱って、ずっと決算をしてきた、こう考えてよろしいか。
  210. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほども申し上げましたように、全額支払ったのでありますから、債務として支払ったわけであります。
  211. 横山利秋

    横山委員 きわめて明確で満足いたします。大蔵大臣はきわめて明確で、先ほどからの私どもの質問に対しましてもきわめて常識的でよくわかるわけであります。一番最初に明確になりましたのは、まあ常識的ではあるけれども、米軍の払い下げも、英連邦軍の払い下げも、常識的に日本人的感覚から見れば同じである。そうして、結論として両方とも同じ債務である。その意味においてはエロア資金ガリオア資金も同じような性格のものとして常識的に考える、こういうようなのが一貫した大蔵大臣のお考えのように判断されるわけでありますが、それでよろしゅうございますね。
  212. 田中角榮

    田中国務大臣 何か意図を持たないで御質問をいただいて、私の答弁もすなおにおとりになっていただければ、あなたの言う通り、今考えればいろいろな条件はあったにしろ、同じ払い下げ物資というような性格のものとみなされるじゃないかということは、私もそれは認めておるわけであります。しかし、返済をする場合とか――支払いをする場合とか――債務の場合は返済でありますし、貿易の代金の場合には代金支払いというふうに、いわゆる経理上どういうふうに処理されたかという経理処理の観点から見ますと、英豪軍のものについては司令部との申し合わせもあり、またその後経済開発局長大蔵大臣との協定もあり、それによって処理をされておるので、経理上からいうと明らかに今度払われるであろう対米債務と英豪軍のものと、それからアメリカのものではありますが、アメリカのSP分は別に処理をされておるというふうにおとりになっていただければおわかりになると思います。
  213. 横山利秋

    横山委員 私は意図があるのでなくて、常識的に聞いているのですが、国の債務というものの性格というものは、別に開き直って言うわけではありませんけれども、憲法八十五条によって国が債務を負担するときには国会の議決に基づくことを必要とする。その意味エロア資金ガリオア資金が今議決を求められておる、こう考えるわけです。  さて、BCOF物資及び米軍の払い下げのものもBCOF物資に準ずるわけでありますが、これが占領下において、特殊事情において商業的な感覚でやられたのは、まだ百歩も二百歩も下がってやむを得ないにいたしましても、講和条約が発効された後における国の債務としてのあり方については別の観点が生ずるのが当然だと思う。その点はいかがでしょう。それにもかかわりませず、BCOF物資の支払いについては、引き続き講和条約発効前とあととに何らの関係なく、ただここへ移しました、ここのあれに移しましたというのはいかがなものかと思うのでありますが、どうですか。
  214. 田中角榮

    田中国務大臣 対米債務のようなものは、憲法の規定によって国会の議決を仰ぐべきことは当然でありますから、現在その手続をとっております。しかし同じような性格だと認められる英豪軍の払い下げの問題とSPのものに対しては、占領軍の治下にあったときは別として、その後独立を回復した後、なお国会の議決を経ないで出しておるじゃないかという御質問でありますが、その問題については、何も政府が一方的にやったわけじゃなく、先ほどもるる申し述べておりますように、英豪軍の問題とSPの問題に関しては、貿易物資として取り扱うということを占領軍からも意思の発表があり、またそういうことに対して政府当局との間にも協定があり、それによって平和回復の日までは処理をされてきたわけであります。しかしその時点までにおいて全額完済しておりませんので、その残務をその後独立が回復した後払っておるわけでありますが、これはずっと前からの引き継ぎであります。し、引き継ぎだから国会の議決を必要としなかったというのではなくて、予算を当然国会に提出をして、予算決算の面から国会の議決を得て、残務に関してはその通りの支払いでよろしいという院の議決を得て支払っておるのでありますから、違法でもなく妥当性がなくもない。適法であり妥当性を有するものと考えます。
  215. 横山利秋

    横山委員 きわめて苦しい答弁だと、ありありと御苦心のほどがわかるのであります。前からの引き継ぎだから、これは憲法が発効してもいいのだという理屈は、全然憲法違反の考え方であります。それは、明らかに占領下という特殊事情から憲法が発効して国が独立国としての体裁を備えるならば、新たに国民債務になる、国の債務になるものについては、当然これはやるべきである。もしもその理論が適用せられるとするならば、このエロア資金ガリオア資金だって同じことが言えるじゃないか。同じことですよ。従って、今るるやって参りました貿易資金特別会計から、平和回復善後処理から、賠償特殊物資の処理から、この一連の形態それ自身もおかしいと思うけれども、それ以前に憲法八十五条が全然無視されておるという点については違憲の疑いがあると私は考える。
  216. 田中角榮

    田中国務大臣 その当時におきましてもあなたのような考えも実はあり、また議論もされたと思いますが、最終的には継続のものでありますから、そういう支払いでよろしい。とにかくこの支出には院の議決を経ておるのでありまして、今度の対米債務に関してだけは両国協定でありますから、協定国会の承認を得て、産投会計法の改正もまた御審議をお願いしておるのでありまして、憲法のいう通り、また命ずる通りの処置をとっておるわけです。今まで払いましたBCOFやSPの問題に対しては、国会で最終的に議決を行なって支出を行なったものでありまして、現在、支払ったものに対して追認を求めるというような段階ではありませんから、憲法違反の疑いはごうまつもありません。
  217. 横山利秋

    横山委員 院の議決があったというのは、いかなる性格の院の議決があったのでありますか。
  218. 田中角榮

    田中国務大臣 申すまでもなく、この残務に対しては、補正予算を組みますときも、予算書として明らかに、事務当局が申したように、院にその使途を申し述べて、その予算及び当該年度に支払われた決算が二カ年後には院の承諾を得ておりますから、私は院の議決を得ておると申し上げておるわけであります。
  219. 横山利秋

    横山委員 あなたは憲法を御存じないようです。八十五条の「国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決」を求めることを必要とするということは、予算だけ通せばいいということではないですよ。これは明らかです。さればこそ協定というものは単独で国会の議決を要し、一方ではそれに裏づけする予算を通す。別々のものであって、こちらが本体である。あなたの言うのによれば、院の議決は予算を通したからいい。その予算も今の説明によれば、款項目云々云々の一番下の、目にもとまらないスズメの涙のようなところで議決がされたというのはおこがましいじゃありませんか。これをもって院の議決だと、憲法八十五条に照らして言えますか。
  220. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えをいたします。先ほどからお話しをしておりまして、私もあなたの非常に御明快な御発言に対してつり込まれておるように、また私自身もそういう気持でありますから、だから今考えてみますとSPやそれから英豪軍から受け取ったものも、見ればどこも大して違わないじゃないかというお話でございますから、私も日本人ですから、その通りでございます。こう言っておるのですが、憲法上の問題とか、それから国会と行政府の問題等に対しては法律違反も憲法違反も犯しておりません。なぜかといいますと、BCOF及びSPに関しては、その後政府と占領当局及び当該者との間に協定も行ない、しかも貿易としてこれを認め、貿易会計の上で貿易事項として処理をする、こういうこれになっております。しかも貿易会計が一般会計に引き継がれておりますので、その後一般会計の予算書も、在来に引き続いてこの通り支出をいたします。しかもそのためにはこれだけの財源を必要としますという予算書を提出して国会の議決を得ておりますので、今しいていえば、その当時大蔵大臣経済科学局長との間に協定をしたものを外交文書としてでもいいからこれを国会の議決を経なければ、憲法八十五条に背反をするか抵触をするかはっきりせぬぞ、こういうふうに言われておりますが、私は、先ほども言った通り、もうこう二件に関しては貿易上の事件として貿易の中で処置をするという態度を国会でも認められて、予算の議決をしておられるのでありますから、憲法背反の疑いはない、こういうふうにに申し上げておるわけであります。
  221. 横山利秋

    横山委員 納得しません、これは。これは私はもう百歩も二百歩も下がってものを言っておるのですが、大手を振って言うならば、この貿易だ、あるいは商業物資だということは認めないのですよ。当然これはエロア資金ガリオア資金と同性格のものである。何となれば、日本がイギリスと直接やったわけではない。まん中にアメリカがおる。そのアメリカが自分の払い下げをやっておる。全部日本アメリカとの直接交渉なんです。イギリスからアメリカへ出して、アメリカ日本とやっている、こういうことなんで、性格にはちっとも変わりがない。日本国民はそれに対して代金を払っておることも変わりがない。ただ、それが随時払われたということである。しかもその中の八十五万ドルから二十万ドルについては、エロア資金ガリオア資金の方で今度は受けとめてやっておるわけですね。そうでしょう。八十五万ドルの中で二十万ドルだけはエロア資金ガリオア資金議論をしているのですけれども、実際この中身というものは同じものじゃないですか、こうあなたが日本人的感覚で考えるのは当然のことであって、きわめて常識豊かな大臣だと思っておる。その大臣が、憲法の解釈についても私と同調しながら、いざ最後になりますと、債務を負担するということについては何ら手続について異論はないというのはおかしい。私は今日の問題について、別にこれがどうだからひっくり返すというわけではない。憲法解釈というものは明らかにしておかなければいかぬ。少なくとも占領下における特殊事情という点については私も認めるにやぶさかではないけれども、しかしながら講和条約が発効して、国が債務を持つときには必ず国会の議決を要するとなっておる。しかも予算は単年度予算である。単年度予算であるならば、これが微々たる額であっても、しかも国と国との債務関係する、となれば、当然これは憲法解釈として国会の議決を求めるべきではないか、こう考えるのは、どこが私が悪いのでありましようか。あなたも率直に、私は今これがこうだから憲法違反だからどうするべきだというふうなことを言ったところで、もう金の決済は一応は済んでいるのでありますからどうしようもないけれども、憲法解釈としては明らかにすべきだと私は言っておる。
  222. 田中角榮

    田中国務大臣 憲法の各条章は厳密にこれを解釈すべきは言うを待ちません。しかも国と国との間の債務に関しては多少の議論があっても、憲法を厳密に解釈する以上国会の議決を得ておくにしくはないと思うのです。私は、そういう意味からあなたの御発言に対してはしごく同感でありますがしかし、あくまでも現実の問題でありまして、SPとBCOFとの問題二件に関しましては、これは当時の事情もありましたし、また、貿易物資としての取り扱いを政府は認めて、しかもその後の支払いに関しては貿特会計が一般会計に移りました関係上、予算書にもそういう意味で、先ほど戸叶さんが言われた通り国会予算書には出しているのでありますから、私はその事実を申し上げておるのでありまして、その当時貿易のものとして処理をしないで、協定案件として出すべきであった、もしくは現在のガリオア・エロアと同じ状態において解決すればよかったじゃないか、国会に対して承認を得ればよかったじゃないかという議論はあると思いますが、政府がやった行為が違法であり、憲法違反であるなどということは全然考えておりませんし、しかもそれに対しては国会予算書を出して議決を得ておるのでありますから、私は、今までこの二件に関して行なった処理は適法である、こういうふうに考えております。
  223. 横山利秋

    横山委員 大臣、一体何をあなたは言っておられるのか、全然私にはわからぬ。大原則は私の言う通りであるとおっしゃる。しかしながら、のあとがどういうことを言っておられるのか全然わからない。院の議決を得ておられるという、その院の議決論については、先ほどの私の追及で、その議決論は成り立たないことがもうすでにわかった。そうするとあとは今までの引き継ぎであるからかんべんしてくれよ、こういうことにしかすぎないわけである。そうでしょう。そうでなければ――私はさらに進みますけれども、賠償処理特別会計、この一般会計の中の賠償の特殊処理という、賠償という言葉の中に入るはずがない。賠償ですよ。これはいかに詭弁を弄しましても、一般会計として国の債務を扱う、賠償として取り扱っているのですよ。賠償となるものは全部国の議決を得、国会の議決を得て順当に整理してあるじゃありませんか。そのころからもうすでに賠償についてはいろいろと議論をして、この国会で割れ返るような議論をして、一つ一つけりをつけていったじゃありませんか。このBCOFやそれから米軍の払い下げるものについては、この国会の目をかすめて、もうそれは済んだやつだからいいじゃないかというわけで、国民と憲法に隠れて実行したと言って過言ではないであろう。まさにその通りじゃありませんか。なぜそれをやらなかったかということについて、何ら明確なあなたの答弁はないじゃありませんか。
  224. 田中角榮

    田中国務大臣 私は、あなたの思想と法律解釈に対し、非常に共鳴しているものに対してはすなおに申し上げているのですが、あなたも私の立場を十分御了解になっていると思うのです。なっておるけれども、なかなか立場が違うので私が困るようなことばかり仰せられておるのでありますが、それはすなおな考え方から言いまして、初め申し上げたのは一般論であります。一般論として憲法の条章をより厳密に解釈しなければならないことは、これはけだし当然でありますということを申し上げて、ここで切ってあります。それではそういうふうに考えておる政府が、問題が存する、とにかく議論が起こり得る可能性のあるこの二件に対してはなぜ貿易でやったか、こういうことでありますが、これはあなたも今お認めになった通り、当時の特殊事情もあるのだからということで、また特殊事情の中においては、政府と当事者との間で協定もつくり、しかも払い下げ物資として一方的に要求されたものではない。ケース別に一枚ずつ伝票に対して物件も当たり、また値引きをさせるものは値引きをさせる、あらゆる角度から、貿易物資の精算を行なうと同じ配慮をして、しかる後に貿易特別会計で取り扱い、これを払ったという事実はお認めになっておるわけであります。なおその後なぜ一般会計で払ったかという問題になると、貿易特別会計が廃止になって、その権利義務が一切一般会計に引き継がれておるという新しい事態に対処して、払わざるを得なかったということでありましょう。それじゃ一般会計でもって全部払えばいいじゃないかというときには、賠償等特別会計、いわゆる賠償を含めた戦後処理、平和処理に必要なものは、一つ一括してこの会計でやろうという考え方を政府がきめ、国会の御審議を願ってあったのでありますから、最終的な支払いはこの賠特等特別会計から支払われて、この件に関する支払いは完了した、こういうことを申し上げておるのでありまして、この事実をつまびらかに御認識願えれば、これは憲法違反だとか、どうもこれから非常に憲法を守ろうとしておる姿勢に相反するじゃないかとか、そういう議論には結びつかないと考えておるわけであります。
  225. 横山利秋

    横山委員 それは迷い答弁というのです。私にそう文句を言われてもひどいじゃないかという点については人情的にわかるけれども、あなたは今大蔵大臣で、この問題の責任の衝にある人でありますから――それは昔の人を呼び出して聞いてくれというなら、ほんとうに出て下さるなら、それでもいいのですよ。いいけれどもそうはいきません。やむを得ぬですから、あなたに突き詰めざるを得ない。私は、BCOF物資や米軍のBCOF物資と同様の五十億についても同じことでありますけれども、これが商業物資だ、貿易物資だとどうしても言い張るというなら、なぜ賠償の特別会計で処理をするかというところへいかざるを得ない。しかしながら、これがエロア・ガリオアと同じ性格だというならば、私は、これは賠償の方で認めてもいい。けれども、それを認めるというならば、何でエロア・ガリオアを産投で出すか、こういうことになってくる。どちらにしたって、政府のやったことについて矛盾撞着もはなはだしい。私どもは、このエロア・ガリオアについては出す必要はないといっているけれども手続論としては産投で出すべき必要は絶対ない、これは撤回をすべきだ、こういうことを本委員会に提出をしたいと考えておるわけでありますが、それにしたって、あなたの方のBCOF物資や米軍の五十億になんなんとする金を、憲法八十五条に当然抵触すべき段階でありながら、これを何ら国の債務として確認もしない、国民に対して理解も求めないで、そうして今までのを引き継いだといって、たくさんの価格を、税金の中からこれを支払われた。税金といろと、あなたの方、また異論があるかもしれませんけれども国民の代金から支払われた。こういう点については、あなたは率直に、適当でなかったなら適当でなかったとはっきり言うておくべきですよ。占領下のことであり、戦後十分でなかったかもしれぬけれども、これは憲法第八十五条の精神でいうならば適当でなかった、これは後世のために残しておくべきだ。この発言こそ、将来かかることを――たとえば先ほど私が外務大臣にお願いをしたように、確認をしたように、沖繩の問題も含めて、今日、このエロア・ガリオアのような轍を二度と再びしてはならないという意味において、この取り扱いについては憲法八十五条に沿うべきであったという発言くらいはあってしかるべきだ、こう考えるが、いかがですか。
  226. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。  これは少し原則論になって恐縮でありますが、別な角度から申し上げます。と、賠償特別会計というものをどこの国でつくるにしても、これは賠償という、大体一般会計を財源として払わなければならない、敗戦国が負わなければならない対外的な支払いを行なうために、経理区分を明らかにするために賠償の特別会計をつくっておると思うのであります。そういう意味で、日本も、現存する賠償特別会計は、一般会計のみから財源を仰ぐようになっております。しかし、このBCOFもSPも、品物は、今国会に出されておるガリオア・エロアと同じような性格に見えるじゃないか、確かに私もそう見えますと言ったのですが、これは見えるにしても、いずれにしても、どこにいってしまったかというようなものでもないし、また戦敗国が賠償条約によって無形のものに対して賠償を払えというような性格のものじゃない。少なくとも車両とか被服とか医薬とか、いろいろなものを日本側が受け取ったのであります。受け取って、これは今政府が積んでおるのじゃなくて、安い値段でやったか、適正価格でやったか、マル公価格でやったかはわかりませんが、国民にこれを渡しておるわけであります。渡せば当然一部でも代金は入る、全部入るか、とにかく代金の回収はあるわけであります。代金の回収は、この問題を貿易として受け取りましたから、日本と英豪軍との間は貿易の取りきめをして代金決済をするような形式をとっておりますし、受けたものは貿易特別会計から日本国民にこれを渡して、代金は同特別会計で受けておるのであります。これは余剰農産物に関しましても余剰農産物処理特別会計というものがあって、そこでもって余剰農産物の代金は全部受け取って、これをアメリカにその窓口から払っておる。今度のものも、車にしろ何にしろ、全部受け取ったものは貿易特別会計で受け取って、国民からの代金もその会計で受け取ったのですから、ここから貿易資金として払う、こういうことをとっておるわけです。でありますから、これを一般的な貿易として処理したことは憲法違反でも何でもないし、また今のガリオア・エロアという問題に対しても、ガリオアやエロアは国会の議決を憲法八十五条によって求めておったのであり、産投会計法の改正案も出しておるのであるから、英豪とSPの問題だけを貿易として認定したことは妥当性がないし憲法違反だ、こう言われるのですが、当時の状況や、私が振り返って、この処理が貿易として相互間の話し合いによってきまったことは適法だと考えておりますから、当時国会に貿易物資以外の払い下げ物資の代金返還に関する協定というような外交案件として出さなかったことは違法ではない、こういうふうに考えております。
  227. 横山利秋

    横山委員 しかし大臣、これは明らかに国の債務ですよ。私は、占領下において特殊事情もあったことは認めると言っている。こういうこともやむを得なかったであろうと思う。しかもエロア・ガリオアとの違いというものは何もないじゃないか。結局代金支払いの方法が違っておるだけだ。あとに払うか、そのときに払うかの違いがあるだけだ。あとに払ったからエロア・ガリオアで国の議決を得なければならぬ、前に払ったから国の議決を得なくてもよろしい、こういう理屈はどこにあるのですか。そんな理屈を探してもあるはずがない。そいつを強弁して、エロア・ガリオアは商業物資ではない、こっちの方は貿易の商業物資だという理屈がどこにつきますか。こんなものはつくはずがない。私は、講和条約が発効されたあとにおいては、国の債務としては明確にすべきだ、こう言っている。あなたもその憲法の理論についてはうなずくところ多いと思う。従って私が言いますことは、適当な方法ではなかったということを、あなたも当然お認めになってしかるべきではないか。そこまで認めながら、それを言うと何かあとがあるだろうと思っていらっしゃるだろうが、残念ながら一時半でわしはしまいになる。決して心配は要らない。あなたがそう言ってくれれば、私はここで一応満足して下がるけれども、そう言ってくれなければ、時間はまだ延長せざるを得ぬ。これが質問の最後になる。あとの質問はないのですから、適当な方法でなかった、こうおっしゃっていただきたい。
  228. 田中角榮

    田中国務大臣 お答え申し上げます。  ガリオア・エロア債務につきましては、両国間の協定をつくって、憲法の条章に基づいて国会の議決を経たわけでございます。なおその支払いの実際問題として産投会計法の改正をお願いをいたしておるわけであります。同じような趣旨だと見なされる物資でありながら、貿易特別会計で貿易物件として処理したことはいかがかという問題に対しては、るる申し述べまして、憲法違反でもなく、私たち政府のとっておる考え方が適法であるということを申し上げておるわけであります。これに対して少し法理論になって恐縮でありますし、またこういうことを言うことによって議論が分かれたら私取り消してもなんでもけっこうなんですが、これは三権の一つの制約の問題もあると思うのです。いずれにしても政府が行なうものに対しては、外交案件に対しては、外交の案件として憲法上国会の議決、承認を経て批准手続を行なわなければならぬという規定がございます。予算に対しては、年度予算国会の議決を経て総額が決定されない以上、勝手に財源等を得てもいけないし、支出もできないという建前になっております。しかしおのずから三権の憲法上の建前からきめられた予算の範囲内において行ない得るもの、また政府が行政権の範疇で解決でき得るものがあることは私が言わなくてもお話の通りであります。そういう意味で、先ほど申し上げた英豪軍の問題及びSPの問題に関しては、政府が貿易の取りきめとして貿易特別会計の中でやるものとして、当時の占領軍もそうすることを認め、それに対しては軍人というものから払い下げたという事実、形式から見ても、どんなに書類上のものがあっても、向こうから余剰物資を払い下げたのだろうという論は存するところでありますが、少なくとも占領軍も英豪軍と日本の貿易特別会計の間では自由に貿易ができるという明らかな論拠を示しておりますし、その論拠に沿って日本政府と英豪軍との間に取引をきめて処理をしたのでありますから、私は貿易特別会計で払うべきものが、貿易特別会計が廃止になって一般会計に移った場合、この一般会計の財源をきめてもらうときには国会の議決を経ておりますから、あなたが言われるのには、その国会予算としての議決以外に現在のガリオア・エロアと同じように英豪駐留軍及び日本との間に受け取りを出した物資の代金の支払いに関する協定を当然出すべきだったろう、もしくは出さなければ今度のガリオア・エロアと一緒に処理すべきであった、こういう御議論であろうと思いますが、私たちが考えておりますのは、SPと英豪軍からの品物は貿易物件なりと認定をして、そして貿易取引の中でもって決済をし、最終的にはこれを引き継いだ一般会計、それよりも新しく生まれた賠償等特別会計で支払ったのでありますから、遺憾ながら適法である、――遺憾ながらというのは、あなたの言う通り――これはちょっと間違うと悪いですから……。あなたの言うようにならぬことを、はなはだ遺憾ながら、私の方の言う通り適法である、こういうようにお答えいたします。
  229. 横山利秋

    横山委員 遺憾ながら満足できません。これはあなた今汗をおふきになっていらっしゃるけれども、ほんとうに御苦労の存する答弁だと思う。私は同じことを何べんもやっても何ですから、意見だけ申し上げて終わりたいと思うのでありますけれども先ほどから、きのう及び戸叶委員のいろいろな御質問と答弁を通じてみて、どうしてもこの取り扱いについてはおかしい。この取り扱いからさらにエロア・ガリオアに発生する政府の取り扱いについては矛盾撞着もはなはだしい。私は今この点だけにしぼって憲法違反の疑いを提起しておるわけでありますけれども、あなたがここまでくると、商業物資だから、貿易物資だから、国の債務にならないのだ、国の債務にならないから憲法八十五条は援用はできないのだ、こういう理屈は林さんでもおっしゃらないと思います。ほんとうにこういう言い方というものは、何といいますか、あなた自身としても、これで私どもを説得する力はないと思っておりながら、答弁をしておかぬと、あとで差しつかえるから、おっしゃっておるにすぎないと思う。私はこの意味におきまして、憲法八十五条に抵触するこのような取り扱いについては、政府の措置は間違っておった、しかのみならず、このものを賠償という名前に関する会計で処理をしたことは、明らかに国の債務として確認をしておったことだ、国の債務として賠償で確認をしてやっておるという先例を開いておるならば、当然エロア・ガリオアもまた産投でやるべき筋合いのものではない、ここまできますと、もう一番最初に戻るわけでありますから、ここで私の質問を終わるわけでありますが、くれぐれもかかる事態というものが今まであってもいけなかったし、今後あっては憲法に違反し、矛盾し、撞着をするおそれのあるところでありますから、厳に政府を戒めて、私の質問を終わりといたします。
  230. 臼井莊一

    臼井委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後二時十分まで休憩いたします。    午後一時三十七分休憩      ――――◇―――――    午後二時十七分開議
  231. 臼井莊一

    臼井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  産業投資特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑を続行いたします。有馬輝武君。
  232. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 私、最初に農林大臣のお時間があるようでございますから、農林大臣からお尋ねをいたしたいと存じます。  私たちよりはるかにはるかに大先輩である農林省の重政さんですから、各般の事情については十分つまびらかにしていらっしゃると存じますし、また事務的な問題については食糧庁長官が見えておられますから、食糧庁長官にお伺いしていきたいと存じます。  なお、私がただいまから質問しようとする焦点はガリオア・エロアの中で食糧について、あとの余剰農産物協定による受け入れの問題等と関連いたしまして、私たちはガリオア・エロア債務でないという立場に立って現在まで論議を進めて参りましたので、やはりこの問題についてもそういう角度からお尋ねをいたしますので、十分お聞き取りをいただきたいと思います。  まず最初に事務当局にお尋ねいたしますが、昭和三十六年末におきます政府関係外資導入のうちで、ガリオア・エロアを除きまして余剰農産物借款、世銀借款開発銀行保証の分、外債について三十六年末でどのようになっているか。ただしMSA資金については除外したものについて、数字の面で事務当局からお知らせをいただきたいと思います。
  233. 稻益繁

    ○稻益政府委員 ただいまお尋ねがございました、余剰農産物関係からまず申し上げます。二回にわたって受け入れておりまして、最初が二百九億、次が百七十七億、この二回であります。次に世銀借款でありますが、借り入れの契約額で申し上げますると、総計で四億八千七百九十万、これは大へん恐縮ですがドルでございます。それから第三点の外貨債の発行額であります。が……。
  234. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 政府債と開銀債に分けて。
  235. 稻益繁

    ○稻益政府委員 政府債は長期債と中期債、合計で申し上げますると、政府債が三千万ドルでございます。それから電電債、開銀債のいわゆる政府保証債でありますが、これが電電債で二千万ドル、開銀債二千万ドル、これは今年に入りまして、第二回の開銀債がさらに千七百五十万ドル出ております。このほかに外債として、例の大阪府市債として西独で発行されましたものが一億マルクであります。以上が外貨債の合計であります。
  236. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 開発銀行の保証分は、ワシントン輸銀から入っておるものがあるでしょう。
  237. 稻益繁

    ○稻益政府委員 これは、開銀が発行しましたものだけを申し上げたのであります。
  238. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 次に、これは食糧庁長官に尋ねますけれども、今の余剰農産物と若干関連いたしまして、ガリオア・エロアの中で食糧の占める比率、トータルでけっこうですから、どの程度になっておりますか、量とそれからパーセンテージでお示しをいただきたいと思います。
  239. 大澤融

    ○大澤政府委員 これは直接私の方の調べでございませんで、資料として通産省から御提出があったと思います。が、ガリオア物資関係で見返資金を積み立ていたします前は、全体の援助額が八億四千五百万ドルのうち六億三千四百万ドル、それから見返資金を積み立ていたしましたあとでは、八億四千七百万ドルのうち三億八千百万ドル、締めまして十六億九千二百万ドルのうち十億一千五百万ドル、これが食糧の援助額であります。
  240. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 今お伺いいたしましたように、積み立て以前のものが、食糧関係が六億三千四百万ドル、それから以後のものが三億八千百万ドルで、約十億一千五百万ドルで、ガリオア・エロアの中に占める比率というものは非常に高いわけであります。  そこで私は農産物の性格について、この際お伺いをしたいと思いますが、その前に、三十五年五月の第一次並びに十月の第二次の、いわゆる余剰農産物協定、これはアメリカの国家資本を受け入れるという、そういった本質的な問題においては、ガリオア・エロアとちっとも変わらないと思うのであります。ただ受け入れる側の日本の情勢というものには大きな違いがあったことは、これは農林大臣も御承知の通りであります。すなわち、国内ではこの余剰農産物協定を受け入れる時期においては大豊作が続いておった。それで私がここで大臣にお伺いしたいと思いますのは、その協定の内容はどういうものであったか。これは長官でけっこうですが、その協定を成立させた日本側としてのねらいというものはどこにあったか、この点をお伺いしたいと思うのであります。
  241. 大澤融

    ○大澤政府委員 先ほど大蔵省の方からお話がございましたように、円貨で買付をするということで、そのうち第一次協定の際は、ドルで返済いたしますものが七〇%、円で積み立てるものが三〇%、また第二次では、ドルの返済が七五%、円での積み立てが二五%というようなことでございまして、国内の開発に使われるということがねらいだったように記憶しております。直接私の所管でございませんので、その程度で。
  242. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 この目的ですね。どういうところにねらいを持って、日本側としてはこれを受け入れたかということについて、あとの質問との関連面がありますから、大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  243. 重政誠之

    ○重政国務大臣 その当時の事情は、私も的確につまびらかにしておりませんが、おそらく余剰農産物を当方において受け入れて、そしてそれを売り払って、その金でいろいろ内地の開発事業をやるというようなことで、余剰農産物を受け入れたのではないか、こういうふうに考えております。
  244. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 今の財政投融資の源泉をここに求めるというのも、大臣の御答弁の通りその一部でありますが、それとさらに、日本国内の農産物の価格に及ぼす影響、逆にいいますと、日本の国内産の農産物の価格を押えようとする意図が十二分にあったのじゃないか。意図があったというよりも、結果的にはそうなってきたのじゃないかという工合に考えておるわけです。この点についてはあとでまた触れさせていただきますが、さらにこの余剰農産物協定に伴うところの援助の受け入れというものがガリオア・エロアとどういう点で違っておったか。ガリオア・エロアで受け入れた食糧、これとこの余剰農産物協定によって受け入れられたものとの違い、性格的な違いについて大臣の方からお聞かせをいただきたいと思います。
  245. 重政誠之

    ○重政国務大臣 ガリオア・エロアの農産物の受け入れた、これは御承知の通りに、当時は非常に食糧事情が日本では逼迫をいたしておったのであります。これを援助する、こういう建前で日本側においては受け入れたものと思うのであります。それから余剰農産物の場合は、先ほどのお話のように、私は内地の農産物の価格を抑圧するためにこれを入れたとは考えておりません。そうでは事実なかったろうと思うのであります。日本で小麦等を入れるのに、当然これにかわるような作用もあったのではないか。同時に先ほど申しました通りに、これによって内地の産業の開発をやる、これがねらいであったのではないか、こういうふうに考えております。
  246. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 次に、第三次以降の協定日本側の意思によりまして結ばれないで終わっておりますが、その理由はどこにあったのか、これについてもお聞かせをいただきたいと思います。
  247. 重政誠之

    ○重政国務大臣 その間の事情を私つまびらかにいたしておりませんが、おそらく内地の食糧事情、それからさらにはその条件等も関係しておったのじゃないかと思うのですが、よくその間の事情は承知いたしておりません。
  248. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 確かに条件の問題もありましたけれども、問題は財政投融資の原資としての魅力を失ったというところに一番大きな原因があったと思うのですよ。やはりそういった点について私どもは見のがすわけには参りません。  そういう意味で次にお伺いしたいと思いますが、これが一番問題でありますが、ガリオア・エロアの援助を受けた一九四六年からしばらくの間のアメリカの農産物の市況がどうであったかということが、私たちには非常に関心の深い問題であります。ただこの点につきましては、大臣もお時間の関係があるようでありますから質問を簡単にして、問題の焦点を明らかにするために私の方から逐一申し上げますので、その点について違った点があれば御指摘をいただくし、同感であれば同感ということでけっこうでありますが、少し冗長になるかもしれませんけれども、やりとりをしておるよりこの方が早いと思いますので、申し上げます。当時の状況、これは国会図書館の立法調査局で調べておりますので大体間違いのないものだろうと思いますが、一九四〇年、販路のみつからなかったアメリカの小麦ストックが大体二百三十万トンをこえまして、それが四八年には五百三十万トン、それから四九年には八百万トンにふえております。これは小麦だけに限りませんで、あとの飼料穀物その他についても同様でありますが、トウモロコシのストックが、四九年七月一日で前年と比べて二・八倍にも増加する。大麦や燕麦のストックも、同一期間内に二倍に増加する。綿花のストックも増加する。四八年には綿花のストックが六十九万九千トンで、四九年の同じ七月には、それが百十九万八千トンにもなっております。この異常なストックに対しましてアメリカ政府が非常に手を焼いておったことは大臣も御承知の通りであります。そのためにとられましたのが、まず第一に作付制限をさせる。そうしてまた一方では食糧に薬をまぜて――まさかコレラ菌を入れたわけじゃないでしょうけれども、食糧として役に立たないような措置さえ講じさせておるのであります。そうして、こういった具体的な措置に伴いまして、戦前からアメリカでは農業均衡論といいますか、そういったものに基礎を置いたマクナリー・ホーデン法案とか、あるいはその後のこれに基づいた農産品市場売販法とか、あるいは一九三三年には農業調整法という工合に、逐一農業法を改正して、価格の安定と需給のバランスをどうとらせるかという点に非常に意を注いで、しかも膨大な財政的な支出をやってきております。そういう状況の中で、このガリオア・エロアの援助が行なわれておる。また余剰農産物協定が結ばれておるという事実を私たちは見のがすわけにはいかぬと思います。確かに戦後日本の食糧事情は非常に困難をきわめまして、私どもも、当時農林省の食糧を預かる分野で下働きをいたしておりましたけれども、その事情たるや非常に惨たんたるものでありました。そういう国内事情であったかもしれませんけれども、そうしてそれを回復させるに大きく役立ったことを私たちはいなむわけではありませんが、問題は、アメリカではこの処理に手を焼いて、今申し上げましたように薬をまぜたり、作付制限をさせたり、あらゆる手を尽くしておる事実は見のがすわけにはいかないのであります。そういった意味から、私どもはこれについて、むしろ日本の市場が見つかったということは、これは船賃を払ってもいい方法だということで、無償でも喜んでやりたいという空気があったんじゃないかと私は思う。このように考えておるのでありまするが、この点についての大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。
  249. 重政誠之

    ○重政国務大臣 アメリカの当時の事情は、今お述べになりました通りであったろうと思うのであります。しかし、ただいまもお話しになりました通り向こうでは非常に農産物が余っており、いろいろの法律も制定せられ、政府は相当強力な措置もとっておったことは事実であり、そこにまた日本の市場がそのときにちょうど見つかったということもアメリカとしては都合がよかったことであろうと思うのであります。しかしながら、日本としては、何といたしましても、あの当時の食糧事情は今お述べになりました通りでありまして、食糧が非常に足らない、実に惨たんたる事情であったわけでありますから、先方の事情がどうありましょうとも、これを持ってきてもらったということは非常にありがたいことであります。さらにいうならば、アメリカの事情がそうであったことが当時の日本の食糧事情に対しては非常に幸いをしたものであると私は考えております。
  250. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 大臣、非常に人のいい御答弁をなさるのでありますが、しかし、これは人間的には人のいいことに越したことはないのでありまするけれども、やはり彼我の状況というもの、これを十二分に考えて国際間の取りきめなり、いろいろなものの進め方というものはいたさなければ、自分が困っておるからということだけで、そういった尺度だけでものを判断すると大きな間違いを起こすのじゃないかと私は思うのであります。そういう意味で、私はアメリカのこのガリオア・エロアあるいはその後の余剰農産物協定におけるところの援助衝動というもの、これに問題があると思うのです。その一つは、やはり日本という有力な市場を確保する、一つは、今申し上げましたようなアメリカにおけるところの農産物の需給とそのバランスをとる、そこに目的があったのであります。私たちが涙を流すことはけっこうだし、ありがたがることはけっこうですけれども、やはりそこら辺に目的があった事実を見のがすわけにはいかないし、そういった意味で、これはあとでまたほかの問題と関連して外務大臣にもお尋ねをしたいと考えております。が、こういった状況の中で、大臣並びに外務大臣はやはりこれについても債務としてどうしても考えなければならないのだという工合にお考えなのかどうか、この点についてお二人からお聞かせをいただきたいと思います。
  251. 重政誠之

    ○重政国務大臣 有馬さんの立論と申しますか、今考えておられるその立脚点と申しますか、そういうものは、商取引をやる場合には、それは向こうが非常に困っておる、こっちがそんなものは要らぬといっても、向こうはただみたようにそれは払うだろうということも、これは今考えれば考えられぬことはない。しかし当時の事情からいえば、幾ら先方が余っておっても、こっちは飢え死にせぬならぬようなときだから、幾ら高くふっかけられても仕方がない、買わざるを得なかったというふうにも考えられるわけです。であろうと思うのです。しかし、いろいろ当時の、今お述べになりましたような事情からして、普通の値段で日本へそれをもらって、それを払うということには、ガリオア・エロアの先国会で成立しました協定ではなっておらぬと承知をしておるのであります。二十億ドルに近い総額であるが、その四分の一足らず、四分の一くらいのものでよろしいということになっておるのでありますから、そこらの辺はやはり妥当なところにいっておるのではないかと思われるのですが、いかがなものですかね。
  252. 大平正芳

    大平国務大臣 今農林大臣がお答えしたように私も考えております。    〔「名答弁、二重マルだ」と呼ぶ者あり〕
  253. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 二重マルではない。ガリオア・エロアの場合には、その積み立ての使途について細目にわたって干渉を受けたのですよ。余剰農産物の場合には、御承知のように事前にある程度の了承を受ければ、これはもう日本側の自由な採択によって使うことができた。こういうことが余剰農産物の場合とガリオア・エロアの場合には大きく違う。今商取引というようなことをおっしゃいましたけれども、私どもはそういった点についても、ガリオア・エロアがどうしても払わなければならないものだと今大臣が簡単におっしゃったようには受け取れないのです。が、その点についていま一度御答弁をいただきたいと思います。
  254. 重政誠之

    ○重政国務大臣 事情は、ただいま私が申し上げました通りに、こちらは取引ならむしろ幾ら高くふっかけられても買わねばならぬという、命に関係するわけですから――あるわけでありますが、それは、だからといって法外な値段で買って、その借金を払うということにはなっておらないわけであります。後の、ただいまのお話もあります。余剰農産物の場合は、これは平常なときの問題であります。でありますから、両者協定をいたしまして、やはり普通の売った買ったの場合より、向こうの農産物が非常に余っておるのでありますから、向こう側は非常に譲歩した条件で、日本でこれを買い付ける、そうして日本はそれを何年か回して日本開発をはかるというふうな条件でやったわけであります。でありますから、これはやはり当時の事情に立脚して考えていかなければならぬ、こう私は考えておるわけであります。
  255. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 当時の事情に立脚してということでありますが、最初に申し上げましたように、日本国内の事情だけに立脚しちゃいかぬということを申し上げておるわけですよ。アメリカの事情についても、そのときの農産物の市況がどうなっておったか、それに対して政府はどのような手を打ってきたかということも考えあわせてみなければならぬと思うのです。とにかく作付制限のためにそれぞれ資金を出して、減らした分について見合うだけを政府の膨大な資金を投入しているのです。ですから、それを処理してくれた有効な市場としての日本、これは船賃だけではなくして、日本における輸送賃から保管料、加工賃までアメリカで払ってくれてもいいくらいに私は考えておるわけであります。いい処理場だったわけですよ。やはりそういう状態を見てものの折衝には当たるべきだ、私はこう考えるのでありますが、この点について、これは水かけ論に終わるきらいがありますので、これ以上申し上げませんけれども、やはり立脚点というものは常に彼我を見てやらなければいかぬ、このことをこの際強く申し上げておきたいと思います。農林大臣は漁業法の問題があるそうでありますから、以上で終わります。  次に、外務大臣にお尋ねをいたしたいと存じますが、それは池田・ロバートソン会談の経緯についてであります。もとより外務大臣としてその間の事情についてはつまびらかにしていらっしゃることと存じますし、そういう点で会談の経緯と内容についてお伺いしたいと思うのであります。ただ、昭和二十八年十二月七日と、それから昭和二十九年二月四日、大蔵委員会におきまして、井上良二、春日一幸両委員から、当時の小笠原大蔵大臣並びに河野次官との間で質疑が行なわれておるのでありまするけれども、その間やはり、その質疑を通じてみましても明瞭でない点が残っておりますので、その点についてお伺いをいたしております。とにかく池田総理はその際はっきりと債務として確認したのかどうかという問題であります。この点について今までしばしば触れられておりますけれども、この今申し上げました論議を通じても明瞭になっておりません。少なくとも私が見る限りにおきましては、明瞭になっておりません。それといま一つ池田総理はそのときにそういった相互返済の話し合いをすべきまだ段階ではない、ただ、近い将来においてこの問題については話し合いをいたしましょうということを言っておるようでありますが、当時としては、近い将来というものはどの程度を予想しておったのか、また現在今度の産投の改正法案として出してこられて、その間にどのような情勢の変化があったのか、この三点についてお伺いをいたしたいと思います。
  256. 大平正芳

    大平国務大臣 債務の有無を確認するというようなことはできないわけでございまして、これは先国会の議決を経て初めて債務になったわけでございます。政府債務と心得るという態度に終始してきたわけでございます。で、あとほどこれは話し合うということを申した場合に、どの程度の金額を考えておったかということにつきましてはつまびらかにいたしませんが、おそらく日本の財政経済の状況が、ガリオア債務の返済に耐え得るようになった暁という意味であったろうと私どもは考えております。その後の経過は、消長はございましたけれども、幸いにいたしましてわが国経済が回復して参り、財政の状況も充実して参りましたので、折衝を始めまして御案内のような経過をたどって、先国会協定の承認を得たというように私ども理解しております。
  257. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 次に、外務大臣に重ねてお伺いをいたしたいと思います。が、前国会で産投会計が流産になったに、ライシャワー大使が外務省に来られて云々という問題については、平岡議員から質問があり、これに対して外務大臣の答弁があったわけであります。けれども、その間で経緯を説明しただけだという外務大臣の御答弁でありましたけれども、新聞に伝えるところによりますと、その際ライシャワー大使は一九六三米会計年度中にぜひとも二回分の半年賦返済を実現するように申し入れている、そういう事実があるやに伝えておりますが、この点についてはそういうことがあったのか、あったとするならば、それに対して日本政府としてはどのような態度で話し合いを進められたのか、この点について明らかにしていただきたいと思います。
  258. 大平正芳

    大平国務大臣 その点につきましてはライシャワー大使の方からは二千五百万ドルの教育文化の交流計画を早くやりたいという希望を表明されたと承っております。当方としては日本におきまして日米間の交流計画に使う金につきましては関心もあり、またなるべく早くそれが実現することを日米両国の利益であると考えておりますので、できることならばそのようなことが予定通りできるような工合に配慮したいものだ、しかしこれとても明年度予算に関連することでございますので、予算の成立ということを前提条件といたしまして、そのように配慮したいものだというような希望を、前大臣が申されたということを承っております。
  259. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 それに関連いたしまして大蔵大臣にお伺いしたいと思うのでありますが、第一回の支払い分を大蔵省としては全額円払いする、そしてそれについて早期に日米教育文化交流の基金を設立して、具体的に推し進めるという構想を固めているやに聞いておりますが、そういったことがあるのか。それと同時に具体的にこの文化交流の問題等については、構想を固めておって、午前中の横山委員の質問等に対しては、東アジアの援助計画等については、まだ何ら具体的になっていない、十一月ですか十二月ですかに予定されておる日米合同委員会その他を待たなければならないというような答弁でありましたけれども、一方では具体的な構想を固め、一方ではまだ海のものとも山のものともわからない、こういうことはない思うのでありますが、もし日本側の構想として東アジアの援助計画について具体的な構想を持っていられるとしたならば、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  260. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。午前中の御質問にお答えをいたしましたように、東アジア開発計画援助等につきましては、これは条件にはなっておりませんが、アメリカ側も日本から支払われるものがきまれば、これを一般財源として繰り入れをなして、対外援助法の規定に基いて援助計画を立てるわけであります。この問題に対しては、日米両国間においていろいろな相談をし得るということになっておりますから、われわれも国会の議決がきまりまして支払うという段取りになれば、アメリカ側にも日本側希望や意見を申し入れて、なるべくこれが実現するように努力をいたして参りたいという考えでございますが、現在の段階ではまだ国会の議決も得ておりませんし、国会の議決が得られてから六カ月以内に第一回の支払いがなされるわけでありますから、議決がきまりましたら、皆さんの御意見等もまたしんしゃくをしながら、これからの態度を決定して参りたいというふうに考えておるわけでございます。  それから教育交換計画に対して大蔵省の内部で、第一回の七十九億五百万円を全部円払いにするというようなことを言われましたが、御承知の交換協定には第一回及び第二回の定時払いの中から千二百五十万ドルずつ二回分合計二千五百万ドルに当たる金額を円貨で支払うことができるということになっておりますので、いずれになるか、まだ折衝もいたしておりませんし、第一回までの分全部を払うことになるのか、それから第二回目と第一回目に千二百五十万ドルずつを協定通り支払うかということは、この法律が議決をせられて支払うまでの間にまた折衝する問題だと存じます。
  261. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 私の質問の第一点は、第一回分について全額円払いにしたいということが大蔵省の構想として巷間に流れておるわけです。その事実があるのかどうかということ、それから第二の問題としては、文化交流については大蔵省の構想あるいは日本政府の構想として、きわめて具体的なものが、これまた巷間に流布されておるのに、一方では東アジアの計画についてもそのとき検討するんだというのでは、わからないということなんです。
  262. 田中角榮

    田中国務大臣 第一問につきましては、現在まだ第一回分を全額円貨払いにしてもらうというような考え方は全然きめておりません。  第二の問題につきましても、先ほど申し上げた通りまだ支払いも国会の議決を経ておらない現在でありますから、とやかくこちらが言う問題ではなく、支払いが決定してから日本側の考え方も先方に申し述べる機会を持ちたいという考えでありまして、現在具体的な計画は持っておりません。
  263. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 それでは次に外務大臣にお尋ねしたいと思いますが、この問題については何回も繰り返されて質問がされておりますし、私も同じ質問を繰り返すことは好まないのでありますが、しかし本会議におきます佐藤議員の質問に対する総理並びに外務大臣からの答弁でも明確になっておりませんので、最後という意味合いで私はお尋ねをしたいと思うのでありますが、それは西独が初めから債務と認めて供与を受けたのと日本の場合とは違うのではないか、こういう質問に対する政府の答弁は、いろいろあげられておりますが、二十一年の総司令部の覚書あるいは極東委員会の決定、あるいは予算獲得のために米議会へ送ったマッカーサーの書簡、そういったものをあげておられるのでありますけれども、これはあくまでアメリカの一方的な意思によるもので、決して合意の上のものではない。こういう点で西独の場合とは違うと思うのです。ですから、今私があげましたような、そうして政府側の常に答弁としてあげておられます。こと以外に、債務として合意の上でこういった点から確認できるのだという点がありましたならば、その点を明瞭にしていただきたいと思うわけであります。
  264. 大平正芳

    大平国務大臣 西独の場合とわが国の場合とは若干事情が違うことは御指摘の通りです。特に西独の場合は、アメリカ側からの援助は各地方政府に渡されておりまして、アデナウアー政府になりましてから政府が引き継いで処理をしたという事情、それからアメリカ予算面で、ガリオアの場合と西独の場合とでは若干支出項目も違っておる個所もあるやに聞いております。全部が全部同一であるとは承知いたしておりません。  それから債務性の問題につきましては、ずいぶん長い間論議が重ねられたわけでございますが、従来のスキャッピンの問題でございますとか、議会における先方の各要人の証言とか、それから歴代の政府債務と心得ておるという態度で終始して参りましたことは、有馬委員御承知の通りでございまして、日本政府が合意するという行為は先国会における日本国会の議決を待ってそういうことになった、そう私は理解いたしております。
  265. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 われわれの反対にもかかわらず、前国会であなた方だけが同意されたんで、それ以前に合意に達したというような何か具体的な事実があるかどうかをお尋ねしておるわけです。その点についていま一度御答弁いただきたいと思います。
  266. 大平正芳

    大平国務大臣 国会の承認を得なければ、そういうことはできません。
  267. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 前提として、西独の場合と日本の場合は、そういう意味で違うのではないかという角度から、経緯についてお伺いをしておるわけです。その角度から御答弁いただきたいと思います。
  268. 安藤吉光

    安藤政府委員 先ほど大臣よりも御説明がございました通り、西独の場合には確かに一九五一年三月にアデナウアー書簡によってこの債務を確認しております。しかしながら、このガリオアと申しますか、アメリカからの西独に対する援助は、ずっとその前から、あすこは御存じのように英仏その他のいわゆる占領地区に分割されておりまして、当時地方政権がずっとその援助を受けておったわけでございます。統一政権としてアデナウアー政権ができますときに、それらの地方政権が受けていた援助を債務として引き継ぐという合意がなければならない事情にあったわけでございます。ところが日本の方は、御存じの通りずっと終戦以来政府は、統一政権と申しますか、一本でございまして、そうして前国会でも申し上げましたけれども、この政府アメリカから援助をもらいますときには、プレ・ガリオア時代を含めまして、支払い条件及び経理については後日決定するということを書きましたスキャッピンによりまして、こういう物資がきておるわけであります。日本政府は十分それを承知の上で受け取り、また受取書を出しておるわけでございます。のみならず、当時の最も権威のあります極東委員会が決定しておりまして、いわゆる極東委員会の降服後の対日基本政策というものがございます。その中では、日本の輸出代金は、占領に必要な非軍事的輸入であって、降服以来すでに行なわれているものの費用に対して使用することができる、いわゆる対日援助弔含んだこういう非軍事的輸入に対しての代金として使用し得るという、いわゆる占領軍といいますか、極東委員会の決定がございます。その他先ほど大臣も申されましたマッカーサーの証言、これは二十二年二月に行なわれておるわけでございますが、これは日本に対する援助は日本債務となるということをはっきり証言しておりまして、これは御存じの通り当時総司令部からも発表されておりますし、新聞にも主要紙には全部出ております。これらの事実を承知の上で、政府ガリオア援助等を受けたわけでございます。当時の事情をさらに申しますと、具体的には、当時の歴代の政府日本の食糧事情が非常に困難であるというので、これに対処するために、総司令部に輸入食糧の確保ということを懇請しておるわけでございます。それに対して総司令部の方からは、援助というものを渡すというスキャッピンがあって、そのスキャッピンに、くどいようでございますが、先ほど申しましたように支払い条件及び経理は後日きめるということが書いてあって、それを承知の上で政府は受取書を出しておるという事情でございますので、こういう関係は、そのスキャッピンそのもので援助がすべて債務となるわけではございませんが、後日何らかの形において処理されなければならないもの、いわゆる債務と心得らるべきものであるということは当初から性格がはっきりしておったと言えると思います。
  269. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 きのうの春日委員の質問じゃありませんが、当時党が政権の座にあったかもしれませんが、私若輩にして、まだ地方でうろちょろしておりましたのでわからないからお伺いしておるわけです。というのは、私がお尋ねしておるのは、今あなたがあげられた、これは今までずっと繰り返しておるだろうと思うのですが、その中で西ドイツのように合意に達した経緯があったならば、今あげられたことのほかに具体的な経緯でもあったならば、証拠があるならお示しいただきたいということをお尋ねしておるわけです。
  270. 安藤吉光

    安藤政府委員 形式的に申しまして、この対日援助に対する債務をはっきり確認したという、言うなればアデナウアー書簡のようなものはございません。しかしながら、先ほど申し上げましたように、アデナウアー書簡がなぜ必要であったかというドイツの事情、これは地方政権があって、それをずっと受けてきた、これを統一政権が、債務というか、継承しなければならないという事情が日本とはいささか違っておるわけでございます。従いまして、この新しくできた統一政権が、前の地方政権の受けた債務を承認したという関係でございます。日本の方では特にこういうれっきとした、先生おっしゃいますような契約とかあるいは協定とか、そういったものはございませんけれども、ただ、後日何らかの形において支払うというか、処理しなければならないというような経緯にあることは、先ほど申し上げた通りで、ことにスキャッピンに書いてあります。後日支払い条件及び経理についてきめるということを日本政府は承知の上で、そしてそれに対して請書を出しておるということで、やはり同じような関係にあるというふうに言えると思います。
  271. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 そういった合意の契約がなかった、ただ今お話しのような経緯からやったんだ、日本政府の意思である、こういう工合に私は受け取っておきます。これは今の問題を繰り返してもまた同じですから、次に大蔵大臣にお尋ねをしたいと思います。  ちょっとわき道にそれるかもしれませんが、お許しをいただきまして、実はけさの新聞に私鉄運賃、消費者米価、電力料金の値上げを九月下旬までに認める方針を関係各省が大体確認して、その内容についても引き上げ率を大手の私鉄運賃と消費者米価については一〇%以下、それから東北電力の場合には一五%以下という工合にきわめて具体的に出ておるのであります。私がここでお伺いしたいと思いますことは、予算委員会や本委員会におきまして大蔵大臣は、慎重にこの問題については検討いたしたい、運輸省も大体同じような答弁だったと思うのであります。委員会ではこのような答弁をしておきながら、一方では具体的にこういって進めていく、そして国会が終わった九月下旬ごろにぱっとやるんだというその行き方について、政府国会に対する態度として大蔵大臣としてはどのように考えられるか。それから少なくとも昨年の東京電力や都電や教科書、入浴料、こういったものの値上げが物価騰貴の大きな原因をつくった、その経緯にかんがみまして、この前の大臣の所信表明の中にも引き締め政策の基調を堅持していくというようなことを言明されながらこういった事実が出てくることについて、政府の物価政策に対する基本はどこに置かれておるのか、私は疑わざるを得ないのであります。この二点について大蔵大臣の所見を承りたいと思います。
  272. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えをいたします。  私もけさ新聞を見て非常に驚いたのでありますが、私が就任をしてから一カ月になりますが、この間において私鉄運賃及び公共料金の問題に対して正式に協議をしたことはありません。これだけは明確に申し上げておきます。  それから私たちが今度の改造で大臣に就任する前は、これらの問題に対して政府与党はどういう態度をとっておったかといいますと、御承知の通り参議院の選挙前にこれに対する態度をきめておりまして、私鉄の運賃につきましては抑制の方針をとり、この線に沿って総理に一任をすることに経済閣僚会議ではさまっておったわけでありまして、その後閣議で別な、これを変更するような決定も行なわれておらぬことをはっきり申し上げておきます。  それから私鉄及び電力等を含めて公共料金を上げるということに対しては、参議院の中間選挙以前の考えと同じように、物価に及ぼす影響等非常に重要な問題でありますので、慎重に行なうべきであり、できるだけこれは抑制の方向を堅持すべきであるという考え方も現在は私変えておりません。  それから物価問題につきましては、特に消費者物価の抑制ということに対して具体的に努力をしておる現状でありますし、これと公共料金との関連性は密接不可分でありますので、十分検討すべきだという考えでございます。
  273. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 十分検討すべきだ、一応の答弁になるだろうと思いますけれども先ほどお尋ねいたしましたように、私たちはこの物価の問題についてやはり院の意思というものを明らかにしておかなければいかぬと思うのであります。先ほどの質問で申し上げましたように、一方では、さあ国会が終わったころにはということで進められておるように伝えられておる。今の御答弁ではこの関係については前の決定を全然変更してないというような御答弁でありましたけれども大蔵大臣として意思を、この際上げるのか上げないのか、物価抑制策との関連において明瞭にしておいていただきたいと思うのであります。
  274. 田中角榮

    田中国務大臣 私鉄の問題、電気料金については、予算委員会等でまた本会議で、総理が端的に政府の意見を申し述べておる通りでありまして、私もこの総理の御答弁と同じ考えを持っております。ただここで、きょうも新聞に出たのでありますから、そういうことに対して議論をしておらないというならば、また過去の考え方が変わっておらないということであったならば、明確に上げるのか上げないのかということを答弁するようにという御要請があります。が、これは総理の答弁通りということを申し上げたのは、私鉄、公共企業の持つ社会的な責任、非常に大きいものもありますし、しかしといってこの経理内容その他によって合理化ができないのか、また一部に考えられておりまた検討せられておるように、現在行なわれておる税制上の優遇措置プラス・アルファというものが一体どの程度料金の値上げ抑制になるのか、その他長期低利の金融ということでこれらのものがまかなっていけるのかどうかというような問題等に対し、皆さんからも御質問があるように、この問題は内容をよく検討して、国民の理解を得られる状態、時点においてのみ解決をせられるべきだという総理の考え方を私もそのまま堅持をいたしておるわけでございます。
  275. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 あげ足をとるわけじゃないのでありますが、去年も国民の大部分の意思が反対であったにもかかわらず、その経理状況その他をしんしゃくすることによってということで、先ほど申し上げましたような諸公共料金の引き上げが行なわれて、それが物価体系をくずしていく大きなキーになった、というよりも最も大きな原因をこの引き上げによってつくっていっておる。そういう経緯から見まして、上げないのだ、事情によって勘案するんだ、ここでぴちっとしておかないと、私は政府の物価政策はどこに焦点があるのかわからなくなってしまう。その点についての蔵相の決意をお伺いしておりますから、そういった角度から御答弁いただきたいと思います。
  276. 田中角榮

    田中国務大臣 どうもまことに御理解願えるように端的に表現できないことをはなはだ遺憾といたしますが、基本的な態度としては、公共料金の抑制に努めて参るという考え方は従来しばしば申しておりますし、現在もその通りであります。しかしここで、上げないのだ、こういうことを言うには、じゃ私鉄がラッシュ・アワーに輸送力を増強しなければならないしスピード・アップをしなければならないという問題に対して、上げないならば最小必要限度のものを何で一体まかなってやるのかという財源措置を当然考えてやらなければならないわけであります。しかしそれは税制上の特例がそのような大きなものをカバーできるのかどうか、これは東北電力の例をとることは必ずしもいいか悪いかわかりませんが、東北電力は現在二割何分の値上げ要請のようでありますが、年間を通じては百三十億にもなるという、一つの電力会社でもその通りでありますので、一体これを抑制するには、経理内容の改善によってまかない得るものが幾ら、その他のものでまかなえるものが幾らというようなことを十分検討して、絶対に上げないと言明をする以上、上げないでも社会の要請に、国の要請に、国民の要請にこたえ得るという自信を申し上げなければならないわけでありますので、今私にここで、電気料金を上げないのだ、私鉄の運賃は一年間押えますということを端的に答弁を求められても、私は先ほど言った通り公共事業に近い非常に重要な企業でありますので、その必要性を十分認識しながら、しかしこれがもし値上げによってすべてをまかなうとしたならば、物価政策に及ぼす影響はなはだ大なることも考えまして検討をいたしておる段階でありまして、現在申されたように端的に申し上げられないということを申し上げておるわけであります。しかし公共料金に対しては、基本的な姿勢、態度としては、抑制に努めるという原則的態度をくずさないということを申し上げておるのであります。
  277. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 歯切れのいい田中さんが歯切れの悪いことおびただしい。そういう政府の態度が、私もこの前の夏の国政調査で東北電力の新しい設備を見てきましたけれども、そういったムードがつくり出されていくから、勢いもう近い機会には上げてもらえるのだという前提でいろいろな設備をやっていく。そして政府はそれに引きずられていく。指導性なんか何もありはしないじゃないですか。物価対策にただ作文としてはきめるけれども、きめたことをみずから実行しない。こういう形に、今の大臣の御答弁を裏返して言えばまたそういうことになりますのだということを表明しておるようなものだ、私はこう思うのでありますが、そう受け取ってよろしゅうございますか。
  278. 田中角榮

    田中国務大臣 例をあげて申し上げますと、東北電力の例をとってみます。と、一体二割五分も上げられて、北海道、東北、裏日本というようなところの肥料産業、その他重要な産業が一体持つかと言ったら、これは持ちません。今でさえも大都市に過度集中しておる産業を分散しなければならないというのに、現在ある工場さえも動かなくなることは、これはもう全くその通りでありまして、これは言う通り上げ得ないという一つの大きな原因でございます。同時に、では税制でもって何かしてやれるかということでいろいろ検討もしてみたわけでありますが、これは今もうすでに税法の特例でいろいろな控除を認めておるわけでありまして、これ以上にやることが一体新しい税制の体系上どうかという問題も十分検討しなければなりません。では一体東北電力の赤字というものが何によってできたのかと言えば、――私は、どうもそのくらい知っておると、大蔵省で検討しているのだというふうにお考えになるかもしれませんが、そうじゃなく私は新潟県人だものですから、非常に身近な問題としてよくわかるのでありますが、百三十億円という大きな値上げに対して、一体これはどこからしわ寄せしてきたのか。火力発電所という大きな資本投下を要請されたものや、大きなビルをつくったとか、いろいろな資金上の需要もあるでしょうし、絶対的に発電コストが高くなっておるという問題もあるのですが、一体企業の合理化やいろいろな問題で百三十億のうち幾らまかなえるのかと言っても、半分もまかなえるものではないのであります。だからそういう問題を考えるときに別な法律的処置とか、財政資金を入れるとかいうようなことが一体東北電力だけでやれるということにはなりませんから、電力企業全般に対して将来どうするのかという問題も当然考えなければならぬと思います。では広域企業がどうしてできないのか、九電力の再編成も一体考えておるのかという御質問もありましたが、もちろんそういう問題まで十分検討すべきだと思います。それだけではなく、やむを得ざる場合には、一回もし電力料金を上げるとしても、それで一体何年持つのか、石炭と同じように五年もたたないうちにまた非常に大幅な値上げを必要とするというような場合、電源開発との間にどういうふうな吸収策をとって肩がわりができるものがあるのかないのか。そういう問題は、石炭問題や金属産業について今われわれがお互いに考えておると同じように、より深刻に公共料金の問題に対しては検討しなければならないのであります。でありますから、国鉄に対しては昨年値上げを認めておるわけでありますが、同時に出された私鉄運賃の値上げを約一カ年にわたって押えておる。一時は参議院選挙が終わったら直ちに上げるのだろうというふうなあれがありましたが、今日まで上げておりません。新しい内閣ができたら直ちに上げるのだろう、こう言われたが、私どもは今依然として、一カ月たっても上げないという基本原則の方を強く、そういう方面にウエートを置いてやっております。国会が終わったらすぐ上げるのだろうというようなお考えがあるかもしれませんが、それほど公共料金はせっぱ詰まった問題だと思います。がしかしそれだけにこの国会を通じても物価問題というものが一番大きく取り上げられておる事実から考えましても、これは端的にただ上げれば済むのだ、上げなければ永続的に経営上まかなえないのだなどという割り切った考え方でこの問題に対処すべきでないという考えを持っておるわけであります。
  279. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 だいぶ苦しいようでありますから、伺っておきたいと思います。  次に、わき道にそれて恐縮でありましたけれども、本題に返りまして、大蔵大臣は、八月十五日の参議院本会議におきますわが党の成瀬幡治君の質問に答えまして、ガリオア・エロアの返済については開銀の貸付に支障を来たすことはない。このために産投国債の発行も考えていないというようなはっきりとした答弁をしておるわけです。ところが、本委員会におきます質疑を通じて、どうもそのはっきりとした言明が打ち消されたかのような印象を受けるのであります。こういう印象を受けたとすれば、私の聞き違いかもしれませんけれども、それでお尋ねをいたすのでありますが、この産投国債を発行する意思があるのかないのか、私はやはり国債発行にはいろいろな条件があると思うのです。金利の問題もそうでありましょうし、また財政需要の問題もあるでしょうし、いろいろな問題がからんでおりますために、そういう立場からお伺いしておるのでありますから、この点明確にしておいていただきたいと思います。
  280. 田中角榮

    田中国務大臣 参議院の本会議で、私は現在の段階において産投国債は発行する意思はないということを申し上げたのでありまして、現在も産投国債を発行する意思はありません。この間の委員会で私が答弁をしたのが、歯切れが悪かったので、新聞には産投国債というのが何か三段くらいで出たようでありまして、私もいつの日にか私の意思を明らかにしておく必要があると感じたわけであります。ただいまの御質問で明らかに私の意思を申し上げておきたいと存じます。  予算委員会か第一回の大蔵委員会の発言がそのように誤解を受けたのは、財源の問題につきまして見返資金特別会計から引き受けたものだけを財源としておるのではなく、産投会計法の第一条第二項の規定を見れば、かくかくの財源が書いてありますので、このような中から適宜財源を求めることができると思いますから、ガリオア・エロアをこの会計の負担として払っても原資が足らなくなるということにはなりません。こういうことをお答えしたわけでありますが、私は越後人で語尾がはっきりしませんので、そういう意味でお間違いがあったと思います。あらためてはっきりいたしておきます。
  281. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 次に、大蔵省では明年度の予算編成に関連して開銀のあり方について再検討するやに伝えられております。この点についてもちろん現在の開銀の業務内容それ自体が当初よりも幅が広くなっている問題、あるいは財源の問題、いろいろあると思いますが、そういう考え方があるのかないのか、あるとすればどのようにしようとしておるのか、この点をお聞かせいただきたいと思います。
  282. 田中角榮

    田中国務大臣 お答えいたします。  開銀の改組等に対して正式な議題として取り上げたことはありません。しかし私が常に申しておりますように、開銀も時代の要請によってだんだんと窓口が大きくなっており、業務の内容に対しては、ただ開発銀行の組織、機構その他に対して拡充整備をはかるというだけではなく、新しい観点から検討を必要とするということは私自身認めているわけであります。御承知の通りこの前の国会で地方開発法の資金をどうするのか、北海道開発法、東北北陸開発法、四国九州開発法がだんだんと実行せられておりますので、相当膨大な資金を必要とするわけであります。一体この場合、東北、北海道は特別の開発公庫がございますが、西日本開発公庫のようなものをどうするのかという問題が議論になりましたときに、いずれにしても開発銀行を窓口にしてこれを行なうということになって、現在開発銀行でも取り扱っております。そういう意味からいっても、これから低開発地の開発とか、産炭地事業団とか、新産業都市とか、いろいろ新しい法律上の要請が出て参りますので、開発銀行の窓口を整備し、開発銀行自体を新しい法律構成に対応せしむるように拡充するか、新しい機関をつくるべきかという問題にも直面をしておるのでありますから、当然に慎重に、かつ誠意をもってこれが検討に当たるべき時期にきておると考えます。
  283. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 急ぎますので、次から次へ簡単に質問をしていきますが、政府保証債なんかの民間資金調達が窮屈になったというようなこともあって、三十七年度の財政投融資計画を再検討すべき時期にきておるのではないかと私は思うのでありますが、そういうのがあるか、そしてまた資金運用審議会はいつごろ開くのか、この点を明瞭にしていただきたいと思います。
  284. 田中角榮

    田中国務大臣 実際開銀の資金が非常に必要であるにもかかわらず、開銀債等の消化がうまくいっておらぬということはおっしゃる通りであります。し、またこれが原資の問題に対して格段の配慮を必要とすることもお説の通りでございます。今年度の財政投融資の計画そのものに対しても、要請も各省から出ておりますし、また引き締め基調の問題等も十分勘案をして、今年度の財政投融資の姿をどうするというよりも、来年度以降の問題に対しては慎重に対処をして参らなければならぬというふうに考えております。  資金運用審議会の日取りその他については、事務当局から答弁申し上げます。
  285. 稻益繁

    ○稻益政府委員 資金運用審議会でありますが、現在のところまだ三十七年度の財政投融資計画の改定を予定いたしておりません。通例でありますと、災害がありまする場合とか、あるいは中小企業の年末対策、そういった問題が起こりまして、改定の必要があるということになりますれば、その必要な時期に開く、かようになろうかと思います。
  286. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 さっき私が質問したように、また今大臣から答弁があったように、私は再検討すべき時期はもうきておると思うのに、そういう考え方はないということはどういうことなんですか。
  287. 田中角榮

    田中国務大臣 通例の状況において、一体検討しておるのかといえば、いつ出すのか、こういうことになるものですから、今のような御答弁になったと思うのですが、私は、現在の段階においては、大蔵省として財政投融資のワクをどうするとかいうことを正式に検討はいたしておりませんが、社会情勢から考えて、石炭の問題、その他いろいろな問題があります。先ほど申された通り開発銀行に対する問題、資金需要の問題については、中小企業に対する問題も、資金運用部からだけというわけにもいきませんし、いろいろな問題もありますが、ただ、これは、それではそういう問題に対して臨時国会を開くのか、通常国会まで待つのかというようなことが一緒に論議をせられるおそれがありますので、事務当局としては、そういう答弁を申し上げたと思いますが、財政当局としては時々刻々に移り変わる資金需要に対しては、十分対処できるような状態を常に検討しておくのがあたりまえでありまして、またそれが務めでありますから、そういうものに対しては慎重に検討して参りたいと考えております。
  288. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 午前中から僕の言うことを逆に勘ぐって、ポーズをつくって答弁するので、話がなかなか進みにくいのですが、重ねて質問いたします。これは違った問題です。明年度償還期限のくる外債はどの程度あるのか、これを聞かしていただきたいと思うのです。
  289. 稻益繁

    ○稻益政府委員 正確な資料は取り寄せますが、私の記憶では、三十八年度で満期の参ります戦前からの外貨債、それから先ほど申し上げました戦後の産投債、こういうものの合計が百二、三十億だったと思います。
  290. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 今の償還期限がきておるものは、大体六千万ドルですよ。こういった大幅な、償還期限がきておるものがあるということで、大蔵省として、外債政策を強化するということが考えられておるようでありますけれども、その目標として、たとえば三十八年度においてはどの程度を見込んでおるのか、またその推進策はどのようなものを考えておるのか、これは大蔵大臣からお聞かせ願いたいと思います。
  291. 田中角榮

    田中国務大臣 数字的な問題は後ほど事務当局からお答えをいたします。が、今年度は電電債を二千万ドル、それからこれから発行する予定にしております開銀債が千七百五十万ドル、その他にもあるかと存じますが、事務当局をして答弁せしめます。
  292. 稻益繁

    ○稻益政府委員 今年度は、先般開銀債が千七百五十万ドル発行済みでありまして、今後の計画としましては、近く電電債を予定いたしております。さらに、米国の市場等を勘案いたしまして、できますれば年度内に開銀債をさらにもう一回発行いたしたい、かよな予定でおります。
  293. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 あわせて、条件の整備という意味で、推進策について……。目標を立てておられるならば、その目標に近づける推進策としては、どのようなものを考えておられるかという意味です。
  294. 稻益繁

    ○稻益政府委員 現在のところ、考えておりますのは、以上申し上げただけでございます。
  295. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 次にお伺いしたいと思いますのは、大蔵省の「国の予算」二十八年度版で、見返資金の収入実績を見て参りますと、この積み立ての利殖金、これは二十四年度で十四億六千百万円、二十五年度で四十七億五百万円、二十六年度で六十四億四百万円、二十七年度で六十四億七千六百万円になっております。総理が口ぐせのように利殖だけでということを言われるのでありますが、この数字から見て参ります。と、この総理のものの言い方というのはちょっと食い違っておるのじゃないかと思うのでありますが、この点について大蔵大臣の所見を伺いたいと思います。
  296. 田中角榮

    田中国務大臣 ガリオアの際も御議決賜わったならば六カ月後から払うわけでありますが、十五カ年間三十回、大体利益金だけで払えるのか、こういうような御質問だと思いますが、これに対しては、総理が答弁をしておりますように、また私も申し上げておりますように、開銀の納付金及び返済金、利息収入でまかなえるという計算をいたしておるわけであります。計算上は二千八十五億に対して二千二十二億の収入を見込んでおりますので、この通り実行していけば、元金はそのまま残るという計算でございます。
  297. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 次に、きのう春日委員の質問の過程で、とにかくその余沢を国民全部が受けておるのだというような話に、大蔵大臣を見ておりますと、同感だ同感だというようなことでうなずいておったようでありますが、最後に私がお尋ねしたいと思いますのは、昭和二十四年から二十七年末までの見返資金特別会計支出の実績を見て参りますと、部門別に、公共企業部門が三〇・二%、それから私企業の分野、これが三七・三%で、中でも電電公社、国鉄、あるいは電力、海運、石炭、こういった私企業が非常に高いのであります。これに比べて、中小企業の分野への投資額はわずか一%にすぎません。これじゃとても国民全部が余沢を受けておるというのはとんでもない話でありまして、この点についての大蔵大臣の、春日さんの言うことはもっともだ、もっともだ、これはとんでもない話だと思いますが、その点についての御所信を伺いたいと思います。
  298. 田中角榮

    田中国務大臣 見返資金特別会計は、御承知の通り産投に引き継がれて、これが開銀を通じて各分野にその影響を及ぼしておりますことは御承知の通りであります。なおそのほかに公共事業や国鉄とか住宅金融公庫とかその他のものにも出資をせられておりますものは、数字にして四百億近いものが出資金としてあると存じます。しかしただいま申された通り中小企業三公庫のような特別なものに対する投資、出資は非常に少ないのであります。これは中小三公庫にでももっと出ておれば、私も非常に喜ばしいと思ってはおりますが、いずれにしても十九億五千万ドルと先方が言い、こちらは十七億九千五百万ドルというふうに押さえましたけれども、これは今各方面にどのように投資をせられ、どのように価格差補給金に使われておるかという全貌を明らかにいたしますと、非常に長い期間でありますので、これを複利計算式なものでもし計算をすると仮定する場合、相当膨大もない金額になります。し、これがわれわれが戦後十六、七年間の生活の中にとけ込んでおる面を十分勘案をいたしますと、相当広い範囲に影響を与えておるというふうに考えております。
  299. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 いつもの大蔵大臣らしいものの言い回しで、結論はわかったようなことを言っておられますけれども、数字ははっきりしておるわけなんです。まあ以上申し上げましたように、この余沢を受けたかいなかというような問題に関連しましても、また一つの例として先ほど農林大臣、外務大臣からお伺いしました食糧の問題等にいたしましても、私たちはとても本問題については債務なんだ、こういうことで合点するわけには参りませんので、この点を明瞭にいたしまして、私の質問は終わりたいと思います。(拍手)
  300. 臼井莊一

    臼井委員長 堀昌雄君。
  301. 堀昌雄

    ○堀委員 建設大臣は時間が一時間ぐらいでというお話でございますから、まず建設大臣からお伺いをいたしたいと思います。  この前の衆議院本会議におきまして、同僚議員の質問に住宅の問題が出ました。そこで建設大臣にお伺いをいたしたいのでありますが、公営住宅、公庫住宅、公団住宅と、このように政府の費用の入っておりますものがありますが、これらについての大臣のお考えを承りたいと思います。  公営住宅が必要であるということは、これはもう当然でありますけれども、現在公営住宅の中にはいわゆる公営住宅と住宅金融公庫の融資によるところの住宅と公団住宅と三通りのものがあります。そこでこれらについて、公営住宅というのは政府の一般会計からの費用で補助を受けてできるものでございますし、公庫住宅は出資及び借入金、同様に公団住宅も出資及び借入金でありまして、公庫住宅は自己の住宅であり、公団住宅は賃貸部分が多いわけでありますが、こういうふうな住宅に対して一体いずれを優先的に考えておられますか、そしてその全体に対しての住宅政策という考え方、こういう問題を含めての考え方をお伺いいたしたいと思います。
  302. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御承知のように、私まだ就任早々でございまして、目下勉強中でございますから、そういう詳細な話になりますと、私からお答えするよりも――また私の考えはどうかということでしたら、いずれ勉強いたしまして御答弁申し上げます。
  303. 堀昌雄

    ○堀委員 就任早々のようでそういう御検討が十分でない点はわかります。が、最近私ども新聞を拝見しておりますと、道路の政策については建設大臣は非常に御熱心にやっておられるようで、私も大へんけっこうだと思っております。しかし道路の問題も重要でありますけれども、やはり住宅問題というのは今庶民の一番悩みの種になっております。消費者物価の値上がりの中で見ましても、一番値上がりをしておる中で庶民が苦痛に感じておりますのは、食料費の値上がりとともに、この家賃、地代あるいはその修繕費等の住宅に関する部分が非常に大きな悩みの種であります。そこで今大臣にはっきりお答えがいただけませんでしたけれども、公営住宅をどんどん建てていかなければならない、あるいは住宅金融公庫の資金等もふやして、できるだけこれらの資金を必要とする人には貸してやるようにしたい、あるいは住宅公団は、場所によりましては何百倍というようなところもあると聞いておりますが、これらの公団住宅等もたくさん建てた方がいいということについては、おそらく私と同じ御意見だろうと思いますが、その点はいかがでしょう。
  304. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御承知のように、ただいまお示しになりました各種の住宅は非常に負担が軽くて済む。一般の自己資金でやりますものに比べますと問題にならない。もしくは他の資金によって普通の民間のアパートを借りることと比べますと、問題にならなく負担が少なくて済むようになっておりますから、これに対する需要が非常に多いことは御承知の通りでございます。そこで私といたしましては、この段階まで参りましたならば多少そこらの点に施策を加えて、一般の――今抽選でやっておるようでございますが、この抽選に当たる、はずれるということの開きをなるべく少なくするように何らかの方法はないだろうか。たとえて申しますれば、家を建てて貸すということ、部屋をつくって貸すということ、それもけっこうでございます。しかしそれだけでなしに、できれば宅地の造成に重点を置いて、宅地を取得せしめることによって他は金融の道を開く、そうしてそれぞれ一般の自己負担もある程度加えてその恩典に浴さしめるようにするということにしますれば、さらに水割りができて、多数の住宅ができていくのじゃなかろうか。そういったようなことを一つあんばいしてやってみたいと考えておりますが、いずれにいたしましても、需要の多いことは御指摘の通りでございます。
  305. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、これは大蔵省の方でお答えをいただいた方がいいかと思いますけれども、今一体日本国民の所得水準といいますか、所得分布で月収二万五千円以上の国民と、月収二万五千円以下の国民との割合は大体どのくらいになっておるか、一つお答えできるところでけっこうですからお答えを願いたい。
  306. 田中角榮

    田中国務大臣 これは主税局長が来ればおおむねの数字がわかるのです。が、今おりませんので、呼んで資料で答弁いたします。
  307. 堀昌雄

    ○堀委員 あと政府側の正確な様子を伺いたいと思いますが、実は昨年の予算委員会でも私ちょっとこの問題に触れましたが、実は各省統計が非常にまちまちで、実際どれが正しいのかよくわかりませんが、概数で言いますと大体半分くらいが二万五千円以下で、あと半分が二万五千円以上ではなかろうかと思います。これは企画庁あるいは総理府統計局、厚生省、大蔵省の税金等みな誤差がありましてわかりませんが、あとで正確なのを伺うといたします。  そこで、ちょっと建設省にお伺いをいたしますけれども、公営住宅の入居に関する所得基準それから公庫住宅の場合は頭金の問題でありますから、必ずしも所得基準が問題になるとは思いませんけれども、現実の実態の中で、大体公庫住宅を申し込める者の所得水準の線があろうかと思います。公団住宅はこれはルールがあるようでありますから、これらについて建設省側の事務当局からお答えをいただきたいと思います。
  308. 關盛吉雄

    ○關盛政府委員 お答え申し上げます。公営住宅につきましては、第一種公営住宅では、基準といたしましては三万六千円から二万円までの間、第二種公営住宅につきましては二万円以下の月収というのが基準になっております。  なお公庫住宅につきましては、現在利用の状況は公庫の全体の中で二万五千円以下が二〇%、四万五千円から二万五千円までの階層が五五%、四万五千円以上が残りの二五%、こういうような状況になっております。  公団住宅につきましては、今ちょっと資料を持っておりません。
  309. 堀昌雄

    ○堀委員 公団住宅は建設者の基準でその家賃に見合って入居水準がきめられておるようでありますが、今のお話で聞きましても、公然住宅については二万円以下、一種と二種があるわけでありますが、公庫住宅は大体二万五千円以下の者は二〇%しか入れない。公団住宅は、私が手元に持っております資料で見ますと、大体二万五千円以下では一%ぐらいしか入っていないようであります。もしそちらでお調べになって間違いがあれば訂正をしていただいてもけっこうです。  そこで、今私がこのことを特に申し上げておりますのは、国民の半分は二万五千円以下の所得しかない。その二万五千円以下の所得の中で、特に若い人は賃金の低い方にたくさんあります。から、新たに結婚して世帯を持ちたいという人にとりては、これは大体私は二万五千円以下の方に属するものが多いのではなかろうかと思います。そうなりますと、ここで入れますのは、公営住宅が一番入りやすいわけでありますが、残念ながら公営住宅は必ずしも十分建設されておりません。公庫住宅は比較的数が多いわけでありますが、これもやはり二〇%程度しか入っていない。公団住宅に至ってはほとんど入れないというのが現在の実情だと思います。  そこで私がこの産投会計に関連をしてなぜ今この問題を取り上げておるかと申しますと、住宅金融公庫及び住宅公団に対しては産投会計からこれまでずっと出資がされておるわけでございます。一体現在の資金供給の状態で、今私が申し上げたような比較的低所得の若い人たちがたくさんいて、それが民間の非常に割高なアパートに住んでおる。所得が少し上がって三万円くらい以上になればきわめて安い公団住宅等に入れるという、こういう矛盾を解決するためにも、もう少しこれらの出資金等をふやす必要はないのかどうかというということをお伺いをいたしたいと思うのでありますが、その点について住宅金融公庫から見えておると思いますから、現在の資金状態で満足なのかどうか。そうして出資についての、あなた方の考え方を少し伺っておきたいと思います。
  310. 師岡健四郎

    ○師岡説明員 お答えいたします。本年度の事業計画によりますと六百二十三億の契約をいたすことになっております。ことしの資金の必要量は五百八十億ほどになっております。この資金の調達でありますが、これは自己資金と――自己資金と申しますのは回収金でございますが、それが五十億ほどございます。そのほかに今の出資金と借入金でまかなっておるわけでございます。今年度は出資金が九十五億、それから借入金が三百九十五億となっております。これによりまして大体ことし十二万五千戸の仕事をしておるわけでございますが、また利子等も公庫の創設以来、公庫の利用者の大半を占めまする個人住宅につきましては五分五厘ということになっております。その程度の事業量のもとにおきましてこの程度の出資をいただけますれば大体在来通りの仕事はやれるものと考えております。
  311. 堀昌雄

    ○堀委員 住宅金融公庫の総裁のお言葉としてはどうもきわめて消極的で、住宅を求めておる国民の立場はあまり耳に届いておらないような感じがいたします。今のお話でちょっともう一ぺん伺っておきますけれども、今五分五厘とおっしゃいましたけれども、住宅金融公庫全体としての利回り実績を三十二年から三十六年までお答えをいただきたい。
  312. 師岡健四郎

    ○師岡説明員 三十六年度だけで申し上げますと、大体五分七厘に回っております。うちの貸付は五分五厘ものは大体六五%くらい回っておりますが、そのほかに六分五厘、七分、七分五厘となっておりますので、その平均が五分七厘くらいになっております。
  313. 堀昌雄

    ○堀委員 先ほど大臣もお答えになりましたが、家を建てて貸したりいろいろするのもいいけれども、土地の取得等にもっと金を出してみたらどうかというお考えがありましたが、これは私は住宅金融公庫の現状でやれると思いますがいかがでしょうか。
  314. 河野一郎

    ○河野国務大臣 住宅公庫にやらしてみたいと思っております。
  315. 堀昌雄

    ○堀委員 今大臣からそういうお答えがありました。私どもも今土地が非常に高くなっておることが民間住宅の建築を阻害しておると思いますが、そういうことになると今の総裁のお話のような消極的なことでは問題は解決しないのじゃないか。特に土地についてはかなり低利の金を借りるのでないと、これは高い利子ではなかなか借りられないと思います。そこで、今資金需要についてこのくらいでいいのだということですが、大体五分五厘というものの部分をふやそうとするならば、借入金の部分はおそらくこれは資金運用部資金と簡易保険、郵便年金からお借りになっておるようでありましておおむね利率は六分五厘でありましょうから、この部分をふやしていくとすれば、当然出資金はふえなければものは始まらないと思いますが、総裁いかがですか。
  316. 師岡健四郎

    ○師岡説明員 お答えいたします。事業量をふやすということになりますれば、どうしても借入金が多くなければなりません。今の利率のもとにおきますれば、先ほど申し上げましたように六百億ほどの事業に対しまして大体借入金と出資金の割合が一対二・四八くらいになっておりますが、そういう比率で出資をいたさなければならぬわけであります。かりにただいまお話しのありましたように利率を下げるというような問題が出ますれば、これはまた今の出資の割合ではまかないきれぬことになるわけでございます。
  317. 堀昌雄

    ○堀委員 どうも私、住宅金融公庫総裁のお答えを聞いておりますと、何だかいやいやながら事業量がふえたらこうしなければならないというような感じがしてなりません。今庶民は非常に住宅を望んでおるのでありますから、やはりもっと積極的に政府に対しても要求を出していただくようなかまえをとっていただきたいというふうに思います。  それから住宅公団の問題であります。けれども、住宅公団の方がおいでになっておりませんから、建設省で十分お答えいただけるかどうかわかりませんが、大体、財政資金が相当多額に入っておる住宅公団の借家が、相当今家賃が高いように思います。所得制限もあって、家賃が上がるにつれて所得が高くなければはいれないということになっておるようでありますけれども、これをもっと家賃を安くして、さっき申し上げた二万五千円以下の所得の者でもはいれるようにする工夫はないのかどうか。これは建設省の大臣からお答えいただければけっこうです。が、事務当局でもけっこうでございますからお答え願います。
  318. 關盛吉雄

    ○關盛政府委員 住宅公団の住宅の建設に要する資金の利回りは四分一厘の資金を回して建設をしております。  先ほどお答えいたしませんでした、住宅公団の入居にあたりましては、家賃の大体五倍程度を入居の資格者といたしまして選考いたしておる次第でございます。
  319. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると家賃が最近どのくらいか伺わなければわからないのですが、一DK、二DK、三DKといったような規格があるようですが、その規格についての最近の家賃を一つ伺いたい。
  320. 關盛吉雄

    ○關盛政府委員 正確な資料は今取り寄せますが、家賃につきましては場所柄いろいろ幅がございます。ここでお答え申し上げますと、まず一DKにつきましては、幅がございますが四千円程度、それから二DKにつきましては七千円程度というのがごく最近建設されました公団住宅の家賃の状況でございます。
  321. 堀昌雄

    ○堀委員 四千円でございましたら家賃自体はそんなに高くないわけでございますけれども、ところがどうも全体の中で安いものの比率が少ないのじゃないか。少し高いものの方が多くて、安いものが少ないために、さっき私が申し上げた資料のように、これは日本住宅協会と住宅公団が共同でお調べになった資料のようでありますけれども、所得水準で見ますと二万四千円以下はわずかに一%、二万四千円から三万二千円のものが一五四%、三万二千円から四万円までが三五・八%、ここらが一番多いような比率になっておりますけれども、どうももう少し家賃の安い、そうして比較的収入の少ない、新しく結婚をして世帯を持つ人たちがはいれるような工夫ということのために、私はやはり出資部分が相当にふえてそれに上って全体もたくさん建つし、同時に少し安い家賃の部分もふやすような工夫はできないものかどうか。やはりどうも今の日本の住宅政策というのは三万五千円から四万五千円くらいの所得の人たちには非常に都合がいいようになっておりますけれども、それ以下の人に対しては、どうも不十分なような気がいたしますので、公団に対する最近の産投からの出資の経緯を見てみますと、毎年大体七十億から七十五億ぐらいの出資をされてきておりますが、これがもう少しふえてくれば、もっとうまくいくのではないかと思うのでありますが、建設省の方ではいかがでしょうか。
  322. 關盛吉雄

    ○關盛政府委員 産投会計からは公団、公庫それぞれ出資金を受けておりまして、これが民間資金と入れまして政府施策の住宅建設の重要な支柱になっております。従いまして、公団住宅の住宅建設そのものにつきましては、先ほどお答えいたしましたように四分一厘の利回りになるような方針で堅持をいたしております。宅地問題につきましては、今後そういう点について一そう検討いたしていきたいというふうに考えております。
  323. 堀昌雄

    ○堀委員 大体産投会計がこれまで出資をいたしておりますものは、これまでで一番大きいのは輸出入銀行でございまして、その次は農林漁業金融公庫、そうしてあと公団と公庫、これらの四つで大体産投会計の出資の過半を占めておるように思います。昭和三十七年度で見ますと、五百三十二億円の産投出資の中で四百九十億円、三十六年で見ますと、四百七十八億円の出資の中で四百四十億円と、いずれも大体九〇%ぐらいをこれらの四つのもので占めておるわけであります。  そこで今、私が特に建設大臣の御出席を願ってこの住宅問題を取り上げましたのは、日本の今置かれておる情勢の中で、消費者物価の値上がり等のいろいろ困難の中で国民が要望しておる公営住宅を含めての公庫住宅、公団住宅というものをもっとたくさんつくってもらいたいという要求が片方にあると思います。そうなると、当然これらの金利は、今お話がありましたように、住宅公団については大体四分一厘でいきたい、住宅金融公庫では五分七厘くらいでありますか、そこらを目安にしていきたい、そうして需要があるから資金需要がそれに伴ってふくらんでくるとすれば、当然その利率を固定していこうとすれば、政府の側の出資に待たなければその利率を安定さしていくことはできない、こういう論理が出て参ると思うのであります。  そこで次に、住宅関係の方は以上で大体、今後の施策としておそらく政府としても現状でいいというお考えではないだろうと思うのです。当然もっとふやしていくということになるだろうと思いますから、そこではこういうような政府の出資についても、今までよりはさらに増額が必要になるのではないか。住宅金融公庫で見ますと、出資金は昭和三十二年に三十億であったものが、三十四年は四十五億になり、三十五年が五十億、三十六年が九十億、三十七年が九十五億と、だんだんふえてきておる経過があるわけであります。し、公団等は最近ほぼ七十億から七十五億に一定しておりますけれども、これだけで十分だということにはならないのじゃないかと私は思います。  で、時間をお急ぎのようでありますから、建設大臣に最後にもう一回だけ伺って、お帰りをいただきたいと思いますが、今私が申し上げております。庶民が住宅をふやしてもらいたいという声を、何とか一つ建設大臣が、非常に政治力を持って御就任になったことですから、道路の整備も大へんけっこうでありますけれども、庶民の生活に非常に密着しておりますこれらについても一つ大幅な増額をして、たくさんの人たちがもっと楽な形で入居できるような施策をとっていただきたいと思いますけれども、これについてお答えをいただいて、建設大臣に対する質問は終わりたいと思います。
  324. 河野一郎

    ○河野国務大臣 私も御趣旨全く同感でございまして、できるだけ異常な熱意を持って一つ住宅の緩和に努力いたす考えであります。
  325. 堀昌雄

    ○堀委員 次に、ガリオア・エロア債務であるということを政府はおっしゃっておりますけれども、この債務の性格でありますけれども、この債務は戦争遂行に関連して負担する債務でございましょうか、それとも連合国の軍隊による占領に関連して負担する債務でございましょうか、このいずれであるか、一つ外務大臣の御見解を承りたいと思います。
  326. 大平正芳

    大平国務大臣 どう申しましょうか、日本に対するアメリカの援助に関する債務だと心得ます。
  327. 堀昌雄

    ○堀委員 もちろん、それは援助に関するでありましょうが、それは戦争の遂行があってそれに関連するか、あるいはアメリカの軍隊が日本を占領しておったという、そういう事実の中で援助を必要としたから、そこで援助が行なわれて、そしてそれに関連して債務となったか、戦争なり占領というものを度外視して、私は単なる援助ではないと思うのであります。ですから今の表現は、その援助という問題についてはいずれにもかかると思います。そうではなくて、そのもとになっておるものは占領に基づく、アメリカが占領しておるということに関連する債務なのか、あるいは戦争を遂行した結果起きてきた債務か、そのいずれか、どちらかでなければならないと思うのです。が……。
  328. 大平正芳

    大平国務大臣 事実上関連はいたしますけれども、かりに日本が非常に恵まれた状況であったら、そういう援助は要らないわけでございますが、窮迫いたしておりました場合にアメリカから援助を受けた、それに関連して出てきました債務だと心得ます。
  329. 堀昌雄

    ○堀委員 戦争がなければ窮迫はしないと思うのです。ですから窮迫を非常にしたということは、その主たる原因は戦争じゃないですか。そうすると、それはやはり戦争の遂行に関連して負担する債務ということにならないのですか。私が今伺っておるのは、戦争ということに関連しておるだけなのか、アメリカの占領ということに関連しておるのかどうかという、このいずれかを伺っておるわけです。占領中に起きた事実なんですから……。
  330. 大平正芳

    大平国務大臣 全部に関連いたしておるわけでありますが、(笑声)援助を受けたという事実に関連して起こった債務だと心得ます。
  331. 堀昌雄

    ○堀委員 もちろん、それは戦争に関係がなければ占領は起きませんから関係はありますけれども、今のお話で連合国の軍隊による占領にやはり関連して負担する債務だと理解してよろしゅうございますか。
  332. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうように関連がないとはいえないと思います。
  333. 堀昌雄

    ○堀委員 言葉で、今おっしゃったのは、関連がないとはいえないと思います――関連がないとはいえないということは、関連があるということでしょうね、どうですか。言葉じりをつかまえておるわけではなくて、やはりこれは意味をはっきりいたしませんと、ものが前に進みませんので伺ったのです。が、そうすると、ではもう一ぺん私は申し上げますが、連合国の軍隊による占領に関連して負担する債務と私は理解いたしますが、大体それでよろしいですね。
  334. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうふうに関連して起きたとは言えると思います。    〔「賠特だよ」「早く種あかしをしろ」と呼ぶ者あり〕
  335. 堀昌雄

    ○堀委員 今、正示さんからちょっとと声が出ておりますが、賠償等特殊債務処理特別会計法の第一条には、「本邦が連合国(本邦と戦争状態にあった国及びその領域の一部をなしていた国をいう。以下同じ。)との間に締結する条約に基いて行う賠償及び財産の補償その他本邦が連合国その他の国及びこれらの国民に対し、戦争の遂行の結果又は戦争の遂行若しくは連合国の軍隊による占領に関連して負担する債務(国債に係る債務を除く。)で平和の回復に伴いその支払を要するものの処理(以下「賠償等特殊債務処理」と総称する。)に関する政府の経理を一般会計と区分して行うため、特別会計を設置する。」こういうふうに賠償等特殊債務処理特別会計法の第一条の設置の項に書かれておるわけでして、だから私がこれを言わないで質問をしたのはちょっとずるいような感じもいたしますけれども、しかしこれは常識的に、そういうお尋ねをすれば、私は大平さんが今、それに関連しておると思いますとお答えになった通りの答えが出ると思うのです。私がなぜそういうことをやったかと申しますと、まともにこれを出せば大てい何とかかんとかおっしゃるだろうと思ったので、ちょっとここの部分だけを二つに分けてお伺いをしたら、その通りだとおっしゃったわけです。だから、これは外務大臣にだけの質問を先にしたいと思いましたから間にはさみましたけれども、この設置の条文から見て、少なくとも現在のガリオア・エロア債務だ、その債務は援助だ、その援助は今の戦争という結果に関連し、あるいは占領という行為との関連した援助だということは、今あなたがここで明確になさったわけでありますから、賠償等特殊債務処理特別会計の適用をしても差しつかえはないということは、私はこれで非常に明らかになったというふうに理解をいたします。これで外務大臣の御出席はけっこうでございます。  農林漁業金融公庫の方にお伺いをいたします。農林漁業金融公庫法の第一条、目的には、「農林漁業金融公庫は、農林漁業者に対し、農林漁業の生産力の維持増進に必要な長期且つ低利の資金で、農林中央金庫その他一般の金融機関が融通することを困難とするものを融通することを目的とする。」こういうふうに書かれております。そこで今お伺いをいたしたいのは、農林漁業金融公庫の三十五年度の利回り実績はたしか五・九一%だと思うのであります。が、最近の利回り実績をお伺いいたしたいと思います。
  336. 清井正

    ○清井説明員 ただいまの御質問でございますが、三十六年度の決算の利回りは五・四九%となっております。
  337. 堀昌雄

    ○堀委員 最近の資金需要の状態について少しお伺いをいたします。
  338. 清井正

    ○清井説明員 私どもはただいまお話がありました通り、主として公共的な目的の貸付をいたしておるわけでございまして、本年度は七百十億の資金でございますが、二百五十億ばかりが土地改良の資金でございまして、残りのうち重要なものは自作農創設維持資金の二百億、この二つが最も大きな資金でございまして、その他造林、漁船等にもお貸しいたしておりますし、あるいは北海道あるいは九州の特殊地帯に対する等、いわゆる先ほどお述べになりましたような公共的色彩の強いものに貸付をいたしておる、こういう状況でございまして、本年度の貸付ワクは七百十億と先ほど御説明申し上げました通りでございます。
  339. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで現在七百十億で、これはちょっと私資料を拝見して驚いたのですが、一般会計からわずか七億くらいしか入っておりませんね。産投会計からは本年度は百二十億出資があるようでありますが、これは一般会計からも入っておるし、産投会計からも入っておるということになっておりますが、これはどうしてこういうふうになっておるのか、ちょっと……。
  340. 清井正

    ○清井説明員 お話の通り、これは原則といたしまして産投会計からの出資でまかなって参ってきておったわけでございますが、最近ここ二、三年前から造林資金の需要が非常に拡大をいたしておるような見合いもございまして、国有林野特別会計等の財源が見合いとなって一般会計から一部融資がある、こういうことになっておるように私は記憶しておるのであります。従って、当初は六億だと思いましたが、ここ二、三年来ふえておりまして、今年度は十三億というふうな金額が一般会計から別に融資をされておる、これは特別な事情に即応するものだと私は考えております。
  341. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、今年度は七百十億でございますが、農業構造改善等、いろいろおやりになっているのでありましょうが、今後の資金需要の見通しとしてはいかがですか。現状のままくらいでといいのですか、やはり多少はふえていかざるを得ないのではないかと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  342. 清井正

    ○清井説明員 私ども資金は、おかげをもちまして毎年相当金額ふえておるわけでありまして、三十六年度六百億のワクでありましたが、本年度は七百十億、しかしこれは相当農家の需要の多い資金でありまして、ある程度これは県別ワクをきめまして貸付を実施しているようなわけでございますので、今後七百十億のワクにいたしましても相当民間からの貸付需要は高くなるのではないかというふうな考えを持っております。今後七百十億のワクもある程度増額をしていかなければ需要に応じ得ない状況ではないかというふうに私は率直に考えている次第でございます。
  343. 堀昌雄

    ○堀委員 農林漁業金融公庫の総裁は率直に、ふやしてもらいたい、私その通りだと思います。そこで現在三十七年度は予算で百二十億、三十四年七十億、三十五年七十億、三十六年八十億、三十七年百二十億と産投出資はふえて参っておりますけれども、やはりこれも金利をある程度今お話になりましたような五分幾らかに平均をさしていこうとすれば、出資金もやはりふやさなければならないだろう、資金需要がふえればふやさなければならない方向にあるということは間違いがないと思いますが、いかがでしょうか。
  344. 清井正

    ○清井説明員 私どもの公庫ができましてから九年目でございまして、公庫の貸付資金は非常に長期でございますので、あるいは十年、十五年というものも普通でございます。従って、返還資金たる自己資金でまかなうところの度合いがまだ十分でございません。従って、政府からの出資、それから借入れ資金、この両方に当分の間は依存しなければならないかと思います。従いまして、利回りも非常に低い状態でございますので、われわれといたしましては政府からの出資と政府からの借り入れということの歩合いと申しますか、分け方と申しますか、どの程度の分を出資に仰ぎ、どの程度の分を借り入れに仰ぐかということについては、われわれの貸付が低利資金である関係上、重大な関心を持っておるようなわけでございます。
  345. 堀昌雄

    ○堀委員 大体私が試算をしてみます。と、借入金全体に対する出資金の割合は約三八%ぐらいで、現状のままで金利を固定していこうとすれば、やはりこの比率を動かすわけにはいかないでしょうから、出資も増加するであろう、こういうふうに私は、理解をいたします。その次に、輸出入銀行の方にお伺いをいたします。輸銀は最近の輸出増強のために資金ほこれも多々ますます弁ずということになるだろうと思います。輸銀は資金コストがたしか四%前後ではなかったかと思いますが、そういう平均利回りの問題と、今後における資金の需要の問題についてお答えをいただきたいと思います。
  346. 古沢潤一

    ○古沢説明員 三十七年度の平均利回りを申し上げますと、資金コストが四・一八%、運用利回りが四・四二%でございます。それから資金需要について私の感じを申し上げますと、御承知のように、ことしは千二百五十億の資金計画でございますが、これはもっとふえていくものだと考えております。
  347. 堀昌雄

    ○堀委員 大体四・四%ぐらいの利率でいこうとするならば、輸出入銀行も運用部の借り入れが相当大きな比重を占めているわけでありますから、どうしてもこれもやはり出資をふやしていかなければこの需要に応じ切れないであろうというふうに私も考えます。  そこで、以上、輸銀、農林漁業、住宅金融公庫、住宅公団合わせて昭和三十七年度で四百九十億円、産投会計から出資をしております。産投会計の出資全体が五百三十二億円でありましてその比率は九一・一%になっておるわけであります。これについて今度は大蔵大臣にいよいよお伺いをしますけれども資金の需要については、今各関係者それぞれ、減る可能性は一つもないということは明らかになりました。この点については大蔵大臣もこれらの出資に必要とする資金はふえる方向である、こういうふうにお考えになるかどうか、承りたいと思います。
  348. 田中角榮

    田中国務大臣 ただいま御発言がありましたように、ふえていく方向にあると存じます。
  349. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで皆さんのお手元に配っていただいた「産業投資特別会計歳入額推移」というのをちょっとごらんいただくとわかりますけれども、実はこの中で収入の部の中心をなしておりますものは運用収入でございます。ところが運用収入はこれで拝見をいたしましてもわかりますけれども、だんだん少しずつ減りつつあるように、この資料だけで見ると出ておるわけでございます。三十五年度が二百三十三億九千九百万円、三十六年度が二百二十億二百万円、三十七年度が百九十六億一千九百万円、運用収入はここ三カ年間だんだんと減ってきているわけであります。そうしてそれを補うために一般会計からの受け入れも資金の取りくずしによって大体これを補っておられる、こういうのが現在の実情だと思いますけれども、開銀総裁がお越しになっておりますからちょっとお伺いをいたしたいのでありますが、この中で少し内訳をつけて書いていただきましたが、どうも減り方の中で影響が強く現われておるのは開銀納付金の減り方、開銀貸付金の利子が減っておる減り方、この二つが運用収入の減っておるものの主要なる原因だと思いますけれども、これはどういう形でこういうふうに減りつつあるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  350. 太田利三郎

    ○太田説明員 おもな事情は貸し出しの時期によりまして、その年度に貸し出しが非常に早く進捗いたしまして、年間に資金の稼動と申しますか、貸付期間が長くなるような場合は利息収入が多い、そうでない場合は割合に少ない、こういうことが過去の例では一番おもな原因になっておるように思います。
  351. 堀昌雄

    ○堀委員 この資料で拝見をいたしますと、昭和三十五年の開銀の貸付金利子は三十億五千九百万円、三十六年は二十七億三千八百万円、三十七年は二十四億九千六百万円、大体毎年三億ぐらいずつこれが下がってきております。今お話のような運用の時期等の関係があるならば毎年々々三億円下がるということはどうも私理解ができないのでございますが、何かその他には理由はございませんか。
  352. 大島寛一

    ○大島説明員 御説明いたします。  ただいまお話の数字でございます。が、これは開発銀行の方から見まして、政府から拝借しておりますものに対する利子の支払いの数字ではないかと思うのでございますが、開発銀行の立場から見ましての利息収入の方から申しますと、これはお手元の資料にもございますが、歴年むしろふえておる状態でございます。
  353. 堀昌雄

    ○堀委員 どこがふえておりますか。一つもふえてないでしょう。
  354. 大島寛一

    ○大島説明員 ただいま三十二年度から歴年開銀貸付金利子が減っておるではないかという御趣旨の御質問でございますが、これは開銀の方から見ます。と、政府から借りておりますものに対しましての利息を政府に対して支払う金額でございます。政府から借りております額が減りますに伴いまして、開発銀行から政府に支払います利息の額が減ってきておる、こういう理由によるものでございます。
  355. 堀昌雄

    ○堀委員 まあどっちから見たって、私どもは別に開発銀行の側からものを見て論議をするわけではなくて、産投会計の歳入の方から見ておるわけでありますから、産投会計の歳入として見ると、あなたの今のお話によれば、そうすると、この開銀貸付金利子というのは昭和三十二年が三十八億九千二百万円、三十三年が三十六億一千九百万円、三十四年が三十三億四千万円と、平均約三億円ずつのベースで下がっていくということは、今後もこの線を伝って下がると理解してよろしいわけですね。
  356. 大島寛一

    ○大島説明員 御説明いたします。ただいまの御質問でございますが、ただいまおあげになりました数字は、開発銀行が産投会計から借りております借入金に対する利子でございまして、これは年々産投会計に対しまして償還して参りますので、従いまして、元本の残高が減って参ります。従いまして、それにつれまして毎年産投会計に対して払う利子は減ってくる、その限りにおいてはそういうことになるわけでございます。ただ一つ申し添えますけれども、調発銀行と産投会計との関係におきましては、お手元の資料にもう一欄納付金もございますので、ただいまの御質問は貸付金の利子についてのことかと存ずる次第でございます。
  357. 堀昌雄

    ○堀委員 別にほかのことを聞いてないのです。運用利殖金収入ということで、うち開銀貸付金利子というのが年年大体三億ぐらいずつ下がってくる。その理由は今わかりました。上の、うち開銀貸付金回収というのが大体毎年四十九億ぐらいずつ回収をされてきておる。だからこれに見合うものだということはわかりました。そこで、これで下がる。そのあとのそれでは納付金の分について今私が伺ったその三十五年度が百三十億、三十六年度百二十四億、三十七年度百四億、ここでは最初の年は六億減り、今度は二十億減っておるわけですが、これもだんだん減りつつある傾向にあるのですが、これの理由は今の総裁がおっしゃったような運用貸付の時期のズレだというだけではちょっと理解ができないのですが、どうでしょうか。
  358. 大島寛一

    ○大島説明員 御説明申し上げます。ただいまお話のございましたように、開発銀行から産投会計に対しまする納付金は、三十五年度百三十億、三十六年度百二十四億とこうなっておりまして、三十七年度はこの表におきましては百四億とございますが、私どもの現状の見通しにおきまして、三十七年度分としまして納付金を予定しておりますのは百三十億でございます。ただ納付金を政府に納付いたしますにつきましては、毎年概算であらかじめその八割程度を納付いたしまして、年度が済みました後に精算をいたしまして差額をさらに納付することになっておりますので、この表におきまして百四億となっておりますのは、おそらくその概算、つまり精算前の納付金の八割に当たる金額を計上されたものと存ずる次第でございます。  次に、三十五年度と三十六年度を比較いたしまして、若干納付金が減っております。その理由につきましては先ほど総裁から御説明した通りでございまして、三十六年度におきましては、やや貸付が時期的におくれた事情がございましたために百二十四億という結果に相なっておりますけれども、私どもとしましては先ほど申し上げましたように、三十七年度におきましては百三十億余の納付金が予定できる、このように考えておる次第でございます。
  359. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵省の方に伺いますが、今のこの資料、私の方は資料を請求してこの資料だけで見ておりますからわかりませんが、今の開銀の理事の方のおっしゃったような計数でこれは出されたのでしょうか。
  360. 稻益繁

    ○稻益政府委員 ただいま開銀理事から説明のありましたのと全く同じでありまして、三十七年度で百四億とありますのは、八〇%の概算収入分だけこれを計上したわけであります。
  361. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、実はこれまでの産投の収入の部分で見ますと、以上のような経過で、たとい開銀納付金が大体一定になっておりましても、これまでの開銀貸付金の回収が今のようにコンスタントに行なわれておる限りは、毎年三億円ずつ産投会計の収入が減ってくるということになるので、この前に私ども皆さんの方と論議をさしていただいたときには、産投会計は毎年納付金等を含めて五千万円ずつはふえるんだというお話で、それで百三十億から毎年五千万円ずつふやして支払いをする、こういうような説明を聞いておるのに、現実には、これでどう見ても三億円ずつ減る要素がはっきりしておる。先へ行けばおそらくこれはなくなってしまうということになるんだろうと思うのです。この点についてはこれまでの説明とここに食い違いがあると思いますが、いかがですか、大蔵大臣
  362. 稻益繁

    ○稻益政府委員 従来の説明で若干ずつでありますが増加すると申し上げておりますのは、開銀からの納付金の方であります。貸付金の方は約定通りに返って参りますので、逐次減少いたします。それに伴いまして開銀の利子収入の方も逐次減少して参る、こういうことであります。
  363. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、産投会計自体としては、貸付金が非常に多額にならない限りは、納付金は五千万円ずつふえるという、このことは、借入金がふえるからという前提に立っておるだけであって、産投会計自体としては、当分の間は減る。まだ現在の貸付金の利子が二十四億ありますから、三億円ずつ減っても、産投会計として見れば八年間はまだ減り続ける、こういうことになると思いますが、それでよろしいですね。
  364. 稻益繁

    ○稻益政府委員 ただいま申し上げましたように、ふえる要素は納付金で五千万円程度、それから減ります要素は開銀への貸付金の回収、それからその利子収入、これが逐次減って参ります。
  365. 堀昌雄

    ○堀委員 産投会計自体としては、ですから向こう八年間は減る方は三億、ふえる方は五千万円、こういうふうに理解してよろしいですね。差引二億五千万円ずつ産投会計の資金は毎年減っていく……。
  366. 稻益繁

    ○稻益政府委員 ちょっと正確な計算は今ここに持っておりませんが、三億に近い額が減る、一方で五千万円程度ふえる、こういうことであります。
  367. 堀昌雄

    ○堀委員 だから、結局大体二億五千万円ずつぐらいは今後八年間ぐらい減るというふうに確認いたしますが、大臣いいですね。
  368. 田中角榮

    田中国務大臣 よろしゅうございます。
  369. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、まず第一点で明らかになりましたのは、これまでは、私どもに対して納付金ではふえるんだ、ふえるんだというお話でした、しかし、実は納付金等の問題がありますけれども、これは部分的な問題で、やはり産投会計全体として見ると、今後の見通しとしては向こう八年間産投の原資というものは大体二億五千万円ずつ減る、減る中で今度は毎年百三十億ずつ対米支払いをしていかなければならない。そのほかに、さっき触れましたけれども、実は昭和三十七年度について見ますと、産投会計の出資が五百三十二億円ありますけれども、この中に、一般会計から、ただいま論議されておるところの産投会計法の一部改正に伴う歳入繰り入れが二百三十億、それから資金からの取りくずしが百五十億、都合三百八十億というものは一般会計からこの中へ入ってきておる。ですから五百三十二億の中で三百八十億というのは一体幾らになるかといいますと、七一%というのは産投会計から出してはおるけれども、事実はこれは一般会計からの資金がいっておるということになるわけであって、これが本年度はわずか七十九億の対米返済に伴って起きた現象なんです。今度の二百三十億の特別会計の組み入れば、これは何ら偶然に出たことではなくて、これは明らかにこの対米債務の返還を本年度七十九億支払うに伴って、その資金計画のバランスをとるために二百三十億一般会計から繰り入れる。私どもはこれまでいろいろ論議をしてきましたけれども、すでに三十七年度のこの産投会計法の一部改正の中に、一方において対米債務を支払うという問題があり、それに関連をするところの一部改正として二百三十億の一般会計からの繰り入れがある。これは何ら別個のものではなくて、一体のものとしてここに頭を出してきておるわけです。そこで昭和三十六年、三十五年という時期の状態を見ると、三十六年は産投の出資は四百七十八億円であります。その中で出資されておるものは、一般会計から参っておりますものは、資金の取りくずしが二百六億円、そうだと思いますが政府事務当局いいですか。二百六億円でありますから、それの比率を見てみますと大体四三%ぐらいにしかなっていない。だから、これまで四三%程度の一般会計の財源を入れていてよかったものが、七十九億入れるために七一%にはね上がってきたということが非常にはっきりして参ったわけです。そうすると今度は百三十億来年度は対米債務を払わなければならない。来年度は産投会計自体としては二億五千万円減る。そうしてさっき申し上げたように、資金需要はふえる、こういうことになって参りますと、まあこれは私が大体の概算で計算をしてみたのでありますけれども、比率としてみますとほぼ八五%ぐらいの一般会計の繰り入れをしなければ産投会計というものは成り立たないような形になってくるのではないか、かように思いますけれども、来年の産投会計のアウトラインを一つ頭に浮かべて、事務当局では一体百三十億の対米債務を支払って、そうして今は資金はもうこれで終わりだと思いますが、幾らか資金は残っておりますか、残っておれば資金の残額を入れて、あと一般会計から入れて、そうして三十七年度の輸銀、農林漁業金融公庫、住宅金融公庫、公団に対する出資が本年と同額の四百九十億であったと仮定をしても、一体どのくらい一般会計から繰り入れなければならないか、ちょっとお答えをいただきたいと思います。
  370. 稻益繁

    ○稻益政府委員 三十八年度のお尋ねでございます。実は先ほど来いろいろお話しはございますが、需要がどの程度かということはまだ確定いたしておりません。相当額であるということは言えようかと思います。  ところで財源でございますが、今先生御指摘の通り、来年度は不払い分二回払うわけでありますから、この協定が発効いたしますると、三十八年度としましては百五十八億、これだけの支払いを要するわけであります。従いまして、御指摘のように固有の財源というものはかなり縮小されて参ります。この不足分をどういう財源に求めるか、これは先刻来大臣がいろいろお話しをしておられますように、まあ何らかの形でこの財源の確保をはかるということは考えなければならない問題ではございますが、ただいまのところ一般会計から幾らというような予定はまだ計算いたしておりません。
  371. 堀昌雄

    ○堀委員 計算はしておられぬが、大体一つ目の子算で今私が本年度のベースで資金の需要があったとして、そして支払いはアメリカの対米債務を払って、現在の産投会計の収入の見通しはおおむねここに出ておりますから、そうしてみると今度一体どのくらい一般会計から繰り入れなければならないか。今もうすでに大臣は産投国債は発行しないとおっしゃったんですから、そうするとあと残っておりますものは特別減税国債の発行による収入金、これはなし。産業投資特別会計の貸付の財源に充てるための外貨債の発行に関する法律云々、外貨債はお出しになるかどうかわかりませんが、これはすぐには間に合わない。米国対日援助見返資金特別会計からの承継資産から生ずる収入金、これはもうこの中に入っております。特定物資納付金処理特別会計からの繰入金、これも入っております。第三条の上に規定する資金からの受入金、これは資金はもうないのじゃないかと思います。が、残額が幾らかあれば教えていただきたい。附則第十三項及び第十四項の規定による一般会計からの繰入金となると、先ほど大臣がおっしゃった各項々々という中にはもう一般会計以外にはないのじゃないかと思いますが、ちょっとそれについて……。
  372. 田中角榮

    田中国務大臣 あなたの御説明に近い状態でありまして、取りくずし得る財源は四十億ちょっとだと思います。
  373. 堀昌雄

    ○堀委員 そういたしますと、ほとんどあげて一般会計から繰り入れなければならないということになると思いますが、いかがでしょうか。
  374. 田中角榮

    田中国務大臣 来年度の産投の予算ワクをどう組むかという問題はこれからの問題でありますが、今年度ベースで五百三十二億組むとしても、相当財源が不足するということはその通りでありまして、一般会計から繰り入れるかその他の財源処置をとるかはこれから慎重に検討いたしたいと存じます。
  375. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと今その他とおっしゃるのですが、法律の、ここでさっきからこれこれでやりたい、こうおっしゃった中を今一つずつ詰めてみたわけですけれども、詰めて残っておるのは外貨債がありますね、これはあなたはまだお答えになっていない。一体外貨債は発行なさるのかどうか、それからお答え下さい。
  376. 田中角榮

    田中国務大臣 どうも一つずつ詰められて参りますとなかなかあれでありますが、しかしこれも産投会計の持つ重要性という問題で、外貨債を発行した方がいいか、また受け入れ態勢があるか、先ほど外貨債の問題に対しては電電の問題や開銀債の問題も申し上げましたからそういうものとの関連もございますので、慎重に取捨選択すべきでありますが、しかし産投の要請せられるウエートの強さによって一般会計から繰り入れる額が多くなるだろうし、また別な方法が取り得るとすれば調整はできると考えます。
  377. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでここで私問題になってくると思いますのは、この順序であります。2はこの会計においては前項に掲げる目的、目的の第一条は「経済の再建、産業の開発及び貿易の振興のために国の財政資金をもって投資を行うため、産業投資特別会計を設置する。」というのが、設置の目的でございます。そのための資金としては減税国債といのが一番最初に書いてあります。昭和二十八年でしたか一ぺんやってうまくいかなかった。それが第一に書いてありますが、順序からいくとこれが非常に重要だ。その次は今お話しが出ました外貨債、その次は今の米国対日援助見返資金特別会計からの承継資産から生ずる収入金、特定物資納付金処理特別会計からの繰入金、これはここにあるのです。第三条の二に規定する資金からの受入金、資金はない。そうするとあとは一般会計からの繰り入れということで、順序からすると一番最後のものですね。一番最後のものにたよらなければならなくなったということは、私は今のこれらの法律を調べて感ずるのでありますけれども、住宅金融公庫法も住宅公団法も政府の出資は認めておるのですから、何らこれは産投会計から入れなければならぬ理由はないと思うのです。昭和三十年までですから。産投会計から入れないで、一般会計から出資をしておるわけですから、はずしてしまっていいわけです。まず端的に言えば、産投に資金がなければ、わざわざ産投の中に置いておいて、一般会計から入れて産没から出すということをしなくても、これらの法律に明記してあるものは、ストレートに一般会計から出せばよろしいということになるのですが、その他の輸銀あるいは農林漁業金融公庫等、一般会計からストレートに出すことによって法律的な制約――ちょっと私今全部拾うのがあれですから、事務当局にお答えいただきたいのですが、抵触しますか。
  378. 上林英男

    ○上林政府委員 一般会計と産投会計の投資の区分の問題でございまするが、これは産投会計法にございますように、産投会計の財源としてきめられましたものをもって、一条に書いてありますような投資を行なうおけでございまして、どこの会計から投資をするかは、一般会計予算及び産投会計予算によって御審議をいただくことになっておりますので、法的にはもちろん一般会計から投資をするということで、予算でおきめをいただくことになりますれば、そういうことに相なるものでございます。
  379. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、大体八割も九割も、わざわざ一般会計から産投に繰り入れて、そしてその産投からもう一ぺん出さなくても、法律的に可能であるし、過去においても、年度でいろいろありますけれども、一般会計から出ておる時期があるのだから、そうして見ると、これらをそういう複雑な手続を経ずして、一般会計から出していけば、産投会計の資金が足りるとか足りないとかいう議論は、非常に減ってくるのじゃないか。今私が申し上げたように、輸銀それから農林漁業など公庫公団、全体の九一%を占めておるのです。あとはもうわずか一割足らずですから、あとのものくらいは、そうそう追加資金をしなくても、一〇%程度は固有の産投会計の資金でやれるでしょう。そういうことになるならば、何もそんな複雑な手数をけて、一般会計から九割水産投に入れて、またその入れたものを産投から出さなければならないという理由はないと思いますけれども大蔵大臣いかがですか。これはストレートにやったらどうでしょうか。
  380. 田中角榮

    田中国務大臣 ただいまの御発言ではありますが、三十八年度の予算を組むときに、立法上の措置が必要であるか、またストレートでやった方がいいのか、産投会計の在来の方法を踏襲すべきかは、これから慎重に検討して参るつもりであります。
  381. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと伺いますけれども、このものを産投会計を通さなければならない積極的な理由があるかどうか、お伺いをいたします。
  382. 上林英男

    ○上林政府委員 先ほどのお答えに、若干舌足らずがございましたので訂正を申し上げます。開銀法などの若干の法律におきましては、産投会計から投資を行なうという旨が規定をされております。なお、一般会計と産投会計の投資の区分の問題でございまするが、これにつきましてはいろいろの議論もありましようが、産投会計におきましては、収入が将来期待できるようなものは、できるだけその会計で投資をし、それによりまする運用収入をまた回転をして、産投会計から投資をしていく、いわゆる昔の政府投資特別会計というような思想があったわけでありますが、そういう思想をもってできておるわけでございまするし、さしあたりましては、産投会計から現実に投資をいたしておりまするものの中には、もちろん利益を生じましたるときには国に納付すべしという、いわゆる納付規定がある法人のみに出資をいたしておりますけれども、さしあたり益金を出しておらないようなものにつきましても、将来そういうことが期待し得るようなものにつきましては、産投会計から投資をしていくというような運用もいたしておるわけでございまして、一般会計から投資をするか、あるいは産投から投資をするか、それにつきましては、今までの運用方針等も考え、あるいは予算編成の事情なども考えまして、そのつど予算等におきまして御審議をお願いするということになっておるわけでございます。
  383. 堀昌雄

    ○堀委員 今の政府委員の話ですと、産投会計を通す積極的な理由というものは、その投資をしたところから運用収益が上がってきて、将来これをもとにしてまた再投資ができるようなものを目的として選んでおるので、そこで、そういうものについては産投会計から投資したい、それが一つの積極的な理由だ、こういうふうに理解してよろしいのですか。大蔵大臣どうですか。
  384. 田中角榮

    田中国務大臣 一般会計から直接ストレートにやってもいいじゃないかという議論は、確かにあります。しかし、この産投から投資を受けているものは、多かれ少なかれ事業を営んでおるのでありますから、事業面に対する投資に対しては還元せられるものが予想せられるのであります。そういうことを前提にして投資をしておるものでありますから、これは一般会計から単年度予算の中で、切れ切れにそのつど期限を付して投資をするというよりも、産投会計のような法律に基づく機関を通じて、ここで経理を明らかにしておく方が、より合理的だと考えます。
  385. 堀昌雄

    ○堀委員 今大臣が非常に重要な発言をなさったのですが、経理を明らかにしておくために産投会計に入れて、それから出し方がいいというふうな御発言がございましたね。
  386. 田中角榮

    田中国務大臣 一般会計からの直接出資等は、過去において例もあったと思いますが、しかし先ほど申し上げた通り、出資を受けるものは企業を行なっておるわけであります。このようなものに対して、一般会計の単年度政策の制度から考えますと、補助金等でもって交付をするものは別にしまして、運用収入が生まれ、それを回収し、また納付金も受け、それを合わせてまた別の角度から次に投資を行なっていくという事実を考えますと、産投会計のような特別の投資会計の中で処理する方が、より合理的だと申し上げたのであります。
  387. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、中小企業信用保険公庫は、三十三年には一般会計から八十五億、三十四年は産投から二十億、三十五年産投から十八億、三十六年産投から二十億、三十七年は一般会計から二十五億、一体これはどういうことになりますか。
  388. 上林英男

    ○上林政府委員 中小企業信用保険公庫につきましては、最初一般会計から出しましたのは、御存じの経済基盤強化資金の一部を出資いたしたわけでございまして、これは法律をもって、一般会計からまっすぐ中小企業信用保険公庫に出資することを定められたものでございます。その後しばらく一般会計で出資をいたしておりましたのは、御指摘の通りでございますが、その後中小企業信用保険公庫に納付金の規定を挿入いたしましたのを機会に、産投会計から出資をいたしましたが、さらにその公庫の収支状況を見て参ります。と、ここさしあたり納付金も期待できないというような状況でもございましたので、三十七年度におきましては、一般会計から出資をするということにいたしまして、予算書におきましても、そういう御審議を経、御承認をいただいたという格好になっておるわけでございます。
  389. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは、農林漁業金融公庫は、一体今幾ら納付金が入っておりますか。
  390. 上林英男

    ○上林政府委員 ただいま、御存じのように納付金はいたしておりません。
  391. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは、一体いつごろから入るのですか。今のあなたのお話で、中小企業信用保険公庫の場合は当分入る見込がないから、そこで三十七年度は一般会計から入れた。それでは農林漁業金融公庫も当分入る見込みがないにもかかわらず、産投でやっているのは筋が通らないじゃないですか。積極的な理由を言って下さい。でたらめじゃだめですよ。あれはあれ、これはこれでごまかそうと思ったってだめなんだから。筋は筋でものを考えていただかないと困る。
  392. 上林英男

    ○上林政府委員 確かに御指摘の通りの御議論はあると思います。中小企業信用保険公庫につきましては、そういう意味の何と申しますか、例外的な取り扱いになった感もなきにしもあらずかと思いますけれども、運用の心がまえといたしましては、今申し上げましたようなことで運用をして参っておるわけでございまして、ことに中小企業信用保険公庫の場合におきましては、過去におきまして赤字も出ておりまして、資本金も若干ながら取りくずしたというような例もあるわけでございまするし、事柄の性格から言いまして、保険でございまして、相当危険度の高い保険もいたしておるというようなこともございますし、また農林漁業金融公庫の方も確かにその性格にかんがみまして、当分はおそらく納付金を期待するという段階には至らないと思いますけれども、そこの点におきましては若干似たことがあるかもしれませんが、今申し上げましたような保険公庫及び農林公庫にかんがみまして、そういう取り扱いをすることといたし、予算書におきまして御審議を願い、御承認を得たという格好になっておるわけでございます。
  393. 堀昌雄

    ○堀委員 どうも今のは私がこういうふうに尋ねるからこうというふうに、先々尋ね方によって答え方が変わるということで、これは仕方ございませんけれども、それで私はどうこうというのではないのです。要するに今これだけ九割ものものを一般会計からわざわざ産投会計に入れなければならないかどうかということには問題があるし、大体産投会計は先ほど大臣もお話しになったように、産投会計から投資をしたものが、やがてそこから回収金なり、納付金なりを上げてきて、その上げてきた結果それが産投会計の中で回転をしながら再投資が行なわれるというようなことが産投会計の本来の趣旨だと私は思うのです。だからそういう形であるならば、私は産投会計がそのまま置かれていていいと思うんです。が、今さっき申し上げたように対米債務を一年に百五十億か幾らか払うようになりますと、ほとんどあげてその原資は一般会計の繰り入れによらなければならない。納付金等によってそれを再回転させることができないということになると、産投会計の本来の趣旨というものは、今回のこの対米債務を産投会計から払うということの決定のために本質的にその性格を変えてしまっておる。ここに私どもは非常に重要な問題点があると思うのです。九割ものものが一般会計から入るということになるならば、あとの今の納付金その他回収金等による運転というのは全体の一〇%に満たざるような状態で、産投会計という名がその一〇%でささえられるかどうかということになれば、私は率直に言うならば、そういう取り扱い方は産投会計のためにとらない、こういうふうに私は申し上げたいわけです。そこで、そうならばいっそのこと、この産投会計は縮小されてもいいから産投会計というものの中ではやはり今の納付金、回収金等で再投資されるこじんまりしたものでも、少なくとも対米債務を十五年払う間はそうやっていって、その後にまた資金ができたら本式におやりなさい。あとのものは一般会計からストレートにやっていけば、私はそれなら産投会計が産投会計らしい体面を、スケールが小さくても保てるのじゃないか、こういうことを私は申している。  そこで、その次に問題になりますのは、先ほど外務大臣との論議でちょっと火をつけておきましたところの賠償等特殊債務処理特別会計法との関連の問題であります。そこでさっきの議論ですでに大臣もお聞きになっておりましたからおわかりだと思います。が、賠償等特殊債務処理特別会計法でガリオア・エロアを払ってはならないという積極的な理由はあれで私はなくなったと思うのですが、大臣いかがでしょうか。
  394. 田中角榮

    田中国務大臣 昨日来申し上げているように、賠償等処理特別会計でも払えるとは思いますが、しかし今お出しをしておりますように、今度の対米債務は産投会計の負担として払いたい、払うことが合理的だ、こうお願いしているわけです。
  395. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでこれは私百歩を譲って――しかし私は国の会計法の精神、財政法の精神を私どもはその場その場で御都合主義、便宜主義で変えてはよくないと思う。だからこれを与党、野党であるとか、そういうふうな立場を離れて、少なくとも公平な立場から見て私は一つの考え方を申し上げるわけでありますけれども、賠償等特殊債務処理特別会計法の中に一つ問題がありますのは、第四条で「賠償等特殊債務処理に充てるため必要な金額は、予算で定めるところにより、毎会計年度、一般会計からこの会計に繰り入れるものとする。」こういう項目があるわけです。賠償が主体になっておったからおそらく当然これは一般会計からの繰り入れということがここに書かれておると思う。しかし、私はあなた方が今の対米二重払いということに恐怖するのあまり、産投会計の性格を踏みにじって、あの中で問題を処理しようというその意気地のなさについてはきわめて遺憾だと思いますが、どうしてもそれをしたいという執念の姿でございますから、もしそうするならば産投会計の負担にするところまでは仕方がない、そういう考えで産投会計からここに賠償等特殊債務処理特別会計にもう一ぺん繰り入れる。一般会計から繰り入れるのをそこに一つ第四条を一部修正をして、そうして産投会計からこちらに繰り入れてここから出すというのが、これは私はさっき合理的な経理を区分したいということを産投会計でおっしゃったわけですが、同じことを賠償等の問題についてやはりこれは払っても差しつかえがないのではなくて、これは大体そういうものを払うためにある会計なんです。ほかのものをやるためにあるのではないのだから、当然ここで賠償等特殊債務処理特別会計法で処理をするということが財政法が明示しておるところの特別会計のあり方だと私は思う。そこはどうですか。だから私はあなた方がもう執念になって産投の負担にしたいというならば負担に一応しなさい、そうしてそこから第四条の一部改正をして産投会計からも繰り入れを受けられるということにしておきさえすれば、経理上はきわめて明確になる、こういうふうに思います。が、一体大臣それについて、これは私が野党の立場ということではなくして、第三者的な、少なくとも財政法というこの問題の面で産投の会計経理を明確にするという精神が非常に重要なるにもかかわらず、方便的にあれこれ使うことは誤りだという私の判断の上に立っての考え方ですが、一つ大臣の御見解を承りたい。
  396. 田中角榮

    田中国務大臣 あなたが今御発言になられたことも一つの筋だと思います。私もきのう来御答弁申し上げておりますように、産投から賠償等特殊債務処理特別会計に財源を移すように法律改正案を出して、そして賠償等特殊債務処理特別会計法の改正を行なった後に個々の支出として支払うこともできますが、私たちは日米間のこの協定案と一緒に窓口をきめるべくお出しをしましたときにはいろいろ考えたのでありますが、産投会計法の負担としてこれを窓口にして出す方がやはりよろしいのだ、しかもそれが財政法の基本的精神をくずすということではない、こういうことでお願いをしているわけです。なぜならばと申しますと、賠償等特別会計は書いてある通り賠償とか、平和処理に関するものとか、いろいろなことが書いてありますが、やはりこの賠償等特別会計の持つニュアンスの法の精神というものは、賠償というものをまず第一義にし、それに関連するようなものに対しては列挙したと見るべきだと思います。私はそういう意味で賠償という問題は御承知の通りこれは戦敗国が戦勝国との間に外交交渉を行なって協定が成立した場合払わなければならない国の債務でありますから、これはおおむね支払いの財源、運用の財源等があるというものではなく、一般会計を財源として払うということだと思います。そうでありますから、この賠償等処理特別会計は、一般会計からの繰り入れをもって財源とするというふうに局限をしておるわけでございます。だからそういう意味から考えても、この対米債務が賠償というものと同じ性格のものであるから一般会計でまかなえという議論が出るとするならば別でありますが、御承知の通り見返資金特別会計はもうすでに昭和二十四年から積み立てられており、その運用収益だけでも非常に大きなものになっており、産業投資特別会計の中で現に運用しつつあるのであります。でありますから、これを来年から百五十八億ずつも払えば産投会計の原資がさなきだに苦しいのにもつと苦しくなるじゃないかということとこの問題を一緒にして、産投特別会計から払うことが財政法の精神を踏みにじるものだというふうには全然考えておらないわけであります。
  397. 堀昌雄

    ○堀委員 財政法第十三条は「国の会計を分つて一般会計及び特別会計とする。国が特定の事業を行う場合、特定の資金を保有しその運用を行う場合その他特定の歳入を以て特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合に限り、法律を以て、特別会計を設置するものとする。」とこう書いてありますね。じゃ一体、これのどれに今あなたのおっしゃった産投から払うというのが該当するのですか。
  398. 田中角榮

    田中国務大臣 産投会計法の第一条第二項にも書いてございます通り、一般会計からだけ財源を得るようになっおりません。一般会計からだけではなく、いわゆる特別の減税国債とか外債とかいろいろな例示がございます。現在はそういうものは受けておらないということでありますが、先ほどいろいろな資金的な措置を具体的に検討しなければならないでしょうということを申し上げた通り、別にこの条文の通り、また条文に別に財源を追加するような修正案が可決せられた場合等を予想した場合には、この会計で受けた債務に対しては、これをこの会計の運用によって支払っていくということは当然起きてくる問題だと思うのです。現在そういう特別会計はございます。この余剰農産物融通特別会計においては七〇%のものを受けてこれを運用しておりますが、これが返済もこの会計で行なっておるということであります。し、特にガリオア・エロアの問題は国民の理解を得たいということもきのうからるる申し述べておりますし、現在運用しておる資産が非常に大きいのでありますから、この会計の負担としてこの会計を窓口にして支払うことがより合理的だ、こういう考えを堅持しておるわけでございます。
  399. 堀昌雄

    ○堀委員 今の「特定の歳入を以て特定の歳出に充て」ということにあなたはおっしゃりたいと思うのですが、特定の歳入があって特定の歳出に充てるというのは、歳入歳出一つの形で見合いになっているものをいうと思うのです。そうすると、特定な歳入というものはそもそも見返資金からの果実として出てくるものがありましよう。だからその果実があって、特定の歳出というのは今度は二つになるわけですね。対米債務の支払いという特定の歳出と、それから一般に対する産業投資という、これも特定の歳出――一体特別会計の中で、私寡聞にして勉強が足りませんが、歳入は特定が一つであって、歳出二つの特定になっておる特別会計があるかどうか一つ教えていただきたい。歳入が特定一つ歳出は特定二つ、はっきり別個のものである特別会計があるかどうか。
  400. 田中角榮

    田中国務大臣 これが的確なものになるかどうかわかりませんが、ただいま申した余剰農産物資金融通特別会計は、この代金のうちアメリカの取り分を除いた七〇%、残余のものに対しては各機関に貸し付けて、その運用収益を得ておりますが、その運用収益の中からこの会計の負担において、条文上明文があります。この会計の負担において返済をする、こういう特別会計があるのでございます。  もう一つ、これはちょっと蛇足でありますが申し上げますと、この産業投資特別会計が成立をしましたときには、これはもう皆さんも十分おわかりであろうと思いますが、ちょうどそこに見返資金特別会計というものがあったわけです。見返資金特別会計というものは当時、対米債務であって、必ずいつの日にか返すんだという意思が確定しておれば、その返す日までの間運用するために、この産業投資特別会計の財源としてこれを引き継ぐ、しかし条文には明らかに、ただしこの見返資金特別会計の財源になった返還はこの特別会計において行なうという、いわゆる余剰農産物資金融通特別会計の中に、明らかに返済の条文を置いたと同じ規定が、二十八年に設けられておると思うのです。しかしその当時の日本アメリカの間には、双方がまだ協議する段階でもなく、また確定的な状態でもなかったために、ただ現存をする見返資金特別会計の資産をそのまま受け継いでこれを運用する。これを返すときの条件を法制上具備しなかったにすぎないと私は考えるのでありまして、現在返済を確定的にする場合に、この会計の負担とすることは一向差しつかえない、こういう考えであります。
  401. 堀昌雄

    ○堀委員 今のは余剰農産物資金融資特別会計法でございましょう。そうですね。今、私、なかなか全部読むひまがありませんが、余剰農産物資金融通特別会計法というのは資金を融通するのが主体の会計であって、それを初めからそういう目的のためにつくられておる特別会計じゃないですか。あとから余剰金ができたから、それを、こういう出資をしたり外へ出すようになったのではなくて、初めからそういうルールじゃないでしょうか、そうでしょう。初めからそういうルールになっておるなら、これは私は議論の余地がないと思う。今私が言っているのは、特定の歳入歳出一つにつながっておる形でできておる特別会計というものは――その他全部大体そうだと思うのです。その中で特定の歳出二つもくっつけるということは特別会計の精神じゃな、ということを申し上げておるのです。
  402. 田中角榮

    田中国務大臣 私が申し上げておるのは、財政法上の規定にガリオア・エロア債務支払いということ、いわゆるこの会計の負担とするということが、財政法の議論と背反をして二つの目的に使われるというふうには、私は考えておらないのであります。これは先ほど申し上げておる通り、余剰農産物の資金融通に関する特別会計におきましては、これは確かに余剰農産物の代金七〇%に関するものを融通をして利殖をはかる、運用収益をこの会計がはかるということになっております。が、その原資になるものに対しては、この会計法をつくるときに、あらかじめ、この金は借りた金であるから返すんだということが前提であります。前提でありますから、これに対しては、この原資に対する返済の負担はこの会計において行なう、こう明らかに書いてあります。でありますから、この余剰農産物と同じ立場と制度でもって産業投資特別会計法を当時つくるとすれば、これはもう当然対米債務――この原資となった見返資金特別会計から引き継いだものの返済はこの会計の負担とすると書かれたと思うということを、あとから私は引続いて申し上げたわけなんです。ただそのときは、見返資金特別会計の資産運用という面をこの法律は大きくうたっておって、これをいつ返すのかという、返すめどとか状況というものを容易に予測できない状態であったから、返済業務をこの中から除いたにすぎない、私はこういうように承知しておるのでありまして、現在返済の義務が出たという現実に対しては、これをこの特別会計の負担にするということは財政法違反ではない、こういうように考えます。
  403. 堀昌雄

    ○堀委員 やはり今度のこの問題が一番混乱をしておるもとは、この前以来論議になりましたけれども皆さん方が二重払いになると言われることをおそれるのあまり、私どもは筋道を間違えておると思う。これは公平な第三者が見ればだれでもすぐわかることです。だから私が今申しておるように、それほどのノイローゼであるならば、そのノイローゼはやむを得ないから、しかし筋道だけを通す方法を私がここに明らかにしておるわけです。だからこれは今すぐにここであなた方に賠償等特殊債務処理特別会計法の一部改正を出させるわけにはいかぬと思うのですが、すみやかにこの第四条の一部改正をして、やはりだれが見ても常識的に筋が通ったというような運営をすることこそ、大蔵当局、特に田中さんのような非常にすなおな大蔵大臣のとる正しい道だと思いますが、いかがですか。
  404. 田中角榮

    田中国務大臣 非常に激励をしていただいてありがたいのでありますが、こんなような債務は敗戦の非常に特殊事情で起こった最後のケースでありまして、私はこういう問題が将来間々起こっては大へんだというふうに考えます。こういう問題に対しては財政法の精神等も十分生かして姿勢を正していかなければならぬことはけだし当然でありまして、あなたの御意見にも賛成であります。が、その対米債務に関してだけはこの産投会計の中で運用せられておるのでありまして、その収益だけでもって払って元金には手をつけないという非常にわかりやすいことでありますので、あえて御承認をいただきたい、こう考えます。  それから、さっきちょっと申し上げなかった例の月間二万五千円の問題を申し上げますと、政府でも今各省とずっと話をしてみましたが、三十三年の統計しかないそうであります。非常に古いのですが、年間所得三十万円以下のものが千二百万世帯あります。三十万円以上が千万世帯、計二千二百万世帯、ここであらためてお答えをしておきます。
  405. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと最後に、産投会計の問題にやはり重要な関係がありますのは、財政投融資全体に対する原資の問題であります。財政投融資原資の中で、来年度以降に急激に減少するものの一つに簡易保険及び郵便年金資金があると思います。これは簡保局長が出席しておると思いますが、ちょっとこの原資の減り方について説明してもらいたいと思います。
  406. 田中鎮雄

    田中説明員 お答え申し上げます。  今から十年ないし十五年前に締結いたしました簡保の契約がここ四、五年の間に集中的に満期になりますので、保険金、還付金あるいは分配金、こういうものが多額に支払われるわけでありまして、その影響を受けまして、簡保の資金は本年度は千六百四十億でございますが、来年度以降、特に三十九年度に急激に減少する傾向にございます。
  407. 堀昌雄

    ○堀委員 幾らになるのですか。
  408. 田中鎮雄

    田中説明員 この減少をカバーするためには、新規契約を大量に獲得するということに今努力をしておるわけでございます。昨年から本年度にかけまして、相当新契約の伸びは順調でございますが、あまりにも支払い金額が多額でありますので、来年度の予算が決定いたしませんとはっきりしたことは申し上げられないいろいろな条件がございますが、私どもの方で事務的に計算いたしましたところによりますと、来年度は百億ないし百五十億減少する、三十九年度には五百億程度減少する、かような傾向にございます。四十年度に至りますると、若干この減少の傾向は緩慢になりますが、やはり幾分減少する、かような状況でございます。
  409. 堀昌雄

    ○堀委員 実は財政投融資の原資は、産投もなくなる、簡保も減るで、まさに四面楚歌の状態であり、非常に困難な状態が今後は生じてくるだろうと思います。私どもは今まで産投会計の論議をして参りましたけれども、この中で直接には、さっき私が触れましたように、本年度の二百三十億の繰り入れがやはり対米債務処理のために必要になってきたということは、一般会計にそれだけの負担をかけることになるわけであり、来年度は、はっきり大臣はおっしゃらなかったわけですが、おそらく五百億程度の一般会計からの繰り入れをしなければ成り立たないのではないか。そういうような実情になってきたもとは、やはり私どもは現在のこの処理の仕方が適当でなかったのではないかということを申し上げて、さらにもう一つは、財政当局というものは、いろいろと世間の話に右顧左眄することなく、財政法が正しく定めておる方向を正しくまっすぐに歩いてもらいたい、そういうことを一つ信念として田中さんに守ってもらわなければ、これはやはりわれわれは重大な問題に発展すると思うのであります。その点を特に強調して、このようなやり方は適当ではないということを私はここに明らかにして質疑を終わります。
  410. 臼井莊一

    臼井委員長 先刻戸叶委員の質問に対し答弁を保留した点について政府より説明を求めます。上林法規課長。
  411. 上林英男

    ○上林政府委員 戸叶委員の御質問につきましては、先ほど申し上げましたように、通産省所管の歳出予算として支出いたしたわけでございます。その歳出につきましては、先ほど御説明申し上げました経費は、通産省におきまして調査をいたしました資料に基づき御説明をいたしたわけでございます。が、その資料につきましてただいま通産省で調査をいたしておるそうでございますので、その結果がわかりましたならば御報告を申し上げます。     ―――――――――――――
  412. 臼井莊一

    臼井委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。  有馬輝武君より発言を求められております。これを許します。有馬輝武君。
  413. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 私は同僚の諸君十一名の賛成を得まして、次の動議を提出いたしたいと思います。    産業投資特別会計法の一部を改正する法律案の撤回を求める動議  (主旨) 本委員会は、政府提出にかかる産業投資特別会計法の一部を改正する法律案の撤回を求める。  右の動議を提出する。   昭和三十七年八月二十二日  (理由) 本法律案の前提となつている「日本国に対する戦後の経済援助処理に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定」は、ガリオア・エロア援助を債務とみなしてアメリカ合衆国に返還することとしているが、ガリオア・エロア援助は債務とみなすことはできない。かつまた、本法律案は、右の債務を産業投資特別会計の負担とすることとしているが、これは、この会計の設置の目的および特別会計についての財政法の規定に違反している。したがつて、政府は、本法律案をただちに撤回すべきである。  本動議提出の理由につきましては、ただいま読み上げましたもので明らかでありますが、若干これを敷衍して申し上げます。  政府ガリオア・エロアを正当な債務と言っておりますが、日本国民が援助物資を買った金は輸出入補助金として使われ、これは米国の業者を不当にもうけさせておるのであります。その上援助物資の大宗をなす農産物は異常なストックをかかえたアメリカの需給状況解決の手段でさえあった事実を忘れることはできないのであります。その上援助の二倍にも当たる四十億ドルの終戦処理費を日本は負担しているのであります。さらに、米国の潜水艦によって撃沈された阿波丸の損害についても賠償請求権さえ放棄している事実を忘れることはできません。  第二に、西ドイツがガリオアを支払っているのは、ポツダム宣言に認められ、また米英西独地区の協定に基づいて双方合意に基づく債務であることは判然としているのでありまするが、日本の場合は、その根拠として政府の説明する二十一年の総司令部覚書を初め、極東委員会決定や、予算獲得のためのマッカーサーの報告等いずれも米側の一方的主観的な意向表明にすぎなく、合意の上のものではないのであります。  第三に、この債務返済を、一般会計によらず産投会計で支払うがごときは財政法違反もはなはだしいことは、ただいままでの論議できわめて明瞭になって参りました。あらゆる角度から検討して、ガリオア・エロアは援助であって債務ではないことは明瞭であります。  これが本動議を提出する理由であります。(拍手)
  414. 臼井莊一

    臼井委員長 ただいま有馬輝武君外十一名より産業投資特別会計法の一部を改正する法律案の撤回を求める動議が提出されましたので、これについて議事を進めることといたします。     ―――――――――――――
  415. 臼井莊一

    臼井委員長 討論の通告があります。ので順次これを許します。毛利松平君。
  416. 毛利松平

    ○毛利委員 私は自由民主党を代表して、ただいま有馬輝武君外十一名より提出されました産業投資特別会計法の一部を改正する法律案の撤回を求める動議に対し反対するものであります。  今回、本改正法案が提出されたしたことの妥当性につきましては、後刻、本法案の討論に際し同僚委員より詳細なる論述が予定されておりますので、これに譲ることといたしますが、ただいま提案者において理由とされている点につきましては、いわゆるガリオア・エロアに関する債務はすでに前国会において国会の意思決定を見ているものであり、また、野党の主張してきた財政法違反の疑いありとの論についても、前日来の質疑応答を通じ、時宜に適した処置であって、かつ、余剰農産物資金融通特別会計の前例もあり、財政法に違反しないことは明白でありまして、本動議は何ら根拠のないものといわざるを得ません。  以上、簡単に反対の意思を表明いたします。(拍手)
  417. 臼井莊一

    臼井委員長 武藤山治君。
  418. 武藤山治

    ○武藤委員 ただいま社会党委員十二名より提案をいたしました動議に対しまして、賛成の意を表したいと存じます。ただいま自由民主党の代表の方は、ガリ・エロ返済は当然であり、しかも産投会計から出すことは正しい方法であるというがごとき、まことに国民を欺瞞する討論をいたしておりますので、以下私は幾つかの具体的な、私たちが債務でないと心得る理由を申し述べ、さらに、財政法に違反する疑いの点を指摘して、本動議に賛成の意を表したいと思うのであります。  第一は、アメリカの占領地救済支出予算、一九四七年五月にアメリカ議会で議決をされましたその内容を見てみますると、米国の責任と義務に応ずるために占領地に経費を支出することができるとなっております。しかも、その決議の中には、返済や使用については何ら規定をしておらないのであります。すなわち、国際的道義の上から、人道上からも、被占領国が占領国に借款を求める資格はないということは明らかでありまして、その点からも、純粋の援助であって、無償であるということは国民多数が承知をしておったところであります。これを歴代の保守党政府は債権として承認をする傾向に事実を積み上げようと努力をして参り、さらに、かように無償で占領国に対する援助をすべきアメリカが、その道義を無視して、人道的な立場をも無視して、今になってこれを払えということは、私は、アメリカのためにも惜しみても余りがあるのであります。特に第一に、国民は援助とは無償贈与と見て米国に非常な感謝をしてきたところであります。無償であったからこそ、人間の食べられないようなものまでもありがたがって感謝決議をした事実もあります。  第二には、国民感情から見ても、米国は援助によって日本アメリカの影響下に置くことができた。今日も、そのアメリカの影響下に日本を入れたという、その代償から見ても、当然このガリ・エロくらいは無償であるべきであると私は思うのであります。  第三点は、ヘーグ条約から見ても、占領国は被占領国民を保護する義務があると規定をされております。あの敗戦の混乱、原子爆弾の洗礼を受けた当時の日本国民の心情からいけば、このヘーグ条約の条項に基づいてアメリカは当然その道義的義務を果たしたものと国民は思っておるのであります。  第四に、しかも為替レートが設定されるまでの間の貿易関係を明らかにするならば、日本は非常に不利な条件に品物の取引をされ、日本の損害は莫大であり、アメリカの業者の利益は莫大であったということも、この国会における討論を通じ、審議を通じて明らかであります。  第五に、ガリオア援助は二十一億ドル以上になんなんとすると言われておりまするが、われわれは終戦処理費を四十七億ドルも支出をし、負担をしておるのでありまするから、当然これらの観点からガリ・エロは相殺をすべきものと断定をしてはばからないのであります。  さらに第六には、援助資金債務ならば、日本は当然自由に好むものをアメリカにいただく要求をしてもよかったはずであります。人間の食べられないようなものまでも一方的に授与されておりながら、これを債務として今さら払うがごときは、まさに国民を欺瞞し、国民をだまし、瞞着をするものと言わざるを得ないと思うのであります。かかる点から、今回はガリオア・エロア返済は全く債務性のない、保守党歴代内閣とアメリカとの交渉の弱腰から、かかる結果になったと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  第二の、動議に賛成をいたしまする理由は、産業投資特別会計法なるものの法の目的と精神というものは、この大蔵委員会において十分究明をされ、原則的には田中大蔵大臣もそういう原則的な考え方には賛成の意を表明しておる。だがしかし、その産投会計の沿革論にのみ立脚して、積み立てたのが見返資金だからといって、会計原則をことごとく踏みにじり、せっかく三十一年に制定をした賠償等特殊債務処理特別会計があるにもかかわらず、それに対して忠実に法の精神を守ろうとしない態度は、まさに会計原則に反し、財政法の原則をじゅうりんしておると断ぜざるを得ません。しかも、先ほど戸叶委員から指摘がございましたように、イギリス連合軍が払い下げた物資に対しては、これを貿易と陳弁これ努め、しかもその支出科目を見るならば、三項目にわたって六回にこれを支払い、そのつど御都合主義に支出科目を変更するがごときに至りましては、まさに財政法紊乱と断じられても私は弁解の余地がなかろうと思うのであります。私ども国民の負託にこたえる政治を担当するものとして、国の財政というものが国民に明快に指摘されるような予算の明瞭性というもの、経理の明瞭性というものを求められておるからこそ財政諸法律があると思うのであります。そういう点をじゅうりんしておる今回の産投法の改正というものは、多数をもってするならばいかなる法律といえども、いかなる制度といえも、これを異質なものに変えても何らはばからぬという、まさに今日の自民党政府の性格そのものを現わしておると断じまして、本動議に賛成の意を表するものであります。(拍手)
  419. 臼井莊一

    臼井委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。  有馬輝武君外十一名提出の産業投資特別会計法の一部を改正する法律案の撤回を求める動議に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  420. 臼井莊一

    臼井委員長 起立少数。よって、有馬輝武君外十一名提出の産業投資特別会計法の一部を改正する法律案の撤回を求める動議は否決されました。     ―――――――――――――
  421. 臼井莊一

    臼井委員長 次に、産業投資特別会計法の一部を改正する法律案について討論に入ります。  通告がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  422. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題になっております産業投資特別会計法の一部を改正する法律案に反対の討論をいたします。  ただいままで同僚議員がるる述べましたように、本来ガリオア・エロアの問題につきましては、日本国政府においても当初はこれが債務であることを少しも明らかにいたしませんでした。そのことが当初においてこれら日本政府の代表者といえども積極的にこれを債務と確認をするだけの理由に乏しかったことは、客観的な条件の中で明らかでございます。その後対米従属の度を深めるにつれてこれらの取り扱いはだんだんと変わって参りました。阿波丸協定の付属了解事項等の中で明らかになったことでありますけれども、西独においてはこれがクレームであるとかデットであるとか言われておるにもかかわらず、わが方ではクレジットとなっておりまして、これらの解釈について西独における問題と、われわれ日本の問題は明らかに別個のものであったと了解せられるにもかかわらず、吉田首相は、これをもって有効な債務であると了解をするなどということで、対米債務を支払う方向に踏み切って参ったわけでありますが、これらの経過は、日本がその対米従属を深めるにつれてそのほどを強め、ついには今回の処理になったわけであります。われわれはただいままでの同僚議員が申しておりますように、当時の情勢の中で、これはアメリカ占領軍が、当然なすべき行為をなしたにすぎないのであって、これはただ単なる援助として理解するのが当然のことでありまして、今日に至ってその当時を思い起こして、その金を返せなどというこのやり方こそ、ドル不足に悩むアメリカが窮余の一策として考え出してきた方策と考えざるを得ないのであります。われわれはこの問題に対しては、よりきぜんたる態度で政府が善処をすることを要望して参りましたけれども、遺憾ながら今回の法律の提案に至ったことはまことに遺憾でありまして、先ほどの撤回動議を提出をした次第であります。  最後に、特別会計の問題につきましては、ただいま私が質疑の中で明らかにいたしましたように、これは公平なる第三者が見ても、納得をする処理をしなければならない責任が財政当局にあると私は確信をいたしますけれども、残念ながら二重払いをするという国民の声におそれて、自分たちの正しからざる部分を補おうとするのあまり、財政法をまげて、今回の取り扱いをいたしましたことは、まことに遺憾しごくでございます。われわれはこのような観点から、二つの立場に立って、債務は不当であり、この取り扱いも不当であることを明らかにして反対の討論とする次第であります。(拍手)
  423. 臼井莊一

    臼井委員長 細田義安君。
  424. 細田義安

    ○細田委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、産業投資特別会計法の一部を改正する法律案に対し、賛成の討論を行なわんとするものでございます。  ガリオア・エロア等の対米債務につきましては、前国会においてすでにその協定が承認され、第一回の賦払金の予算も通過しておるのでございます。また、当時財源の一部として、一般会計から産投会計へ繰り入れます二百三十億円につきましても、前国会におきましてすでにその予算を通過さしておるのであります。従って、本改正案も、本来当然に前の国会において御承認を願う、御議決を願うということになる筋合であったのであります。かくいたしまして、その内容もまたこれらの支払いに対する経理の手続等に関します必要な規定の整備にとどめてあるのであります。  本改正案をめぐる最大の論点は、対米債務を産投会計から支払うのがいいのか、それとも賠償等特殊債務処理特別会計から支払うのがいいのかという点にあると考えられるのであります。この点につきまして、私は次の理由によりまして、産投会計から支払うべきであるという政府案に対しまして、全面的に賛成するのでございます。  すなわち、ガリオア・エロア等の米国援助に見合のところの資産は、昭和二十四年以降見返資金特別会計に積み立てられまして、昭和二十八年度以降は、これが産投会計に引き継がれておりますことは、諸君御承知の通りであります。当時その引き継ぎ資産は、総額が二千二百九十四億円の巨額に上りまして、その運用収入等は開銀納付金、貸付金、回収金及び同利子収入を含めまして来年度においては約百五十億円に達する予定で、開銀納付金は今後とも若干増加を示すものと考えられます。従って、この運用収入等を財源として、ガリオア・エロア等の対米債務を支払うこととするのは、いわゆる二重払い論を否定するためにも一番妥当でありまして、国民にとりましてもわかりやすいやり方であると確信するのでございます。もしこれを野党の諸君の主張するごとく、賠償等特殊債務処理特別会計から支払うこととするときは、これがため返済財源を一般会計から繰り入れまして処理しなければならぬということに相なるのであります。この点は適当ではないとわれわれは確信をいたすのでございます。  なお、政府は、海運企業の整備をはかるため、開銀の造船融資について利子の半額を五カ年間たな上げする法案を別途提出いたしておりまするが、この措置によりまして、五カ年間開銀の納付金が若干減ることになります。しかしながらたな上げの利子は五カ年後におきましては当然返済されることとなりますので、返済財源に欠陥を生ずるようなことは決して起こらないと、かように存ずるのであります。  最後に、投資財源の一部を補充するための二百三十億円の繰り入れ措置につきましても、産投会計の投資財源は何も運用収入等だけに限られておるものではありませんので、本年度に必要な投資を行なうための財源措置として、きわめて適切妥当なものと認める次第であります。  以上の理由によりまして、私は、本改正案に対し満腔の賛意を表して私の討論を終わるものであります。
  425. 臼井莊一

    臼井委員長 春日一幸君。
  426. 春日一幸

    ○春日委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、産業投資特別会計法改正案に対して、ここに反対の意思を明らかにいたします。  本案は、第一に、ガリオア・エロア債務の支払いをこの会計の負担とすることとし、また第二に、一般会計から二百三十億円を受け入れて、日本輸出入銀行、農林漁業金融公庫等に投資するための資金といたそうとしておるのであります。私ども民社党は、前国会におきまして、ガリオア・エロア返済協定に関する政府案に反対の態度を表明しておりますので、その反対したる返済協定に基づく国内処理法たる本改正案に対し反対することは当然のことであります。しかしながら、最近におけるわが国産業事情の推移に徴し、この産投会計がになう財政投融資の使命がますます重要性を加えつつある現状を重視し、この際は産投会計そのものの機能を確保するためと、しこうして法体系を擁護し、政策秩序を確立することを論拠として、ここに反対の理由を明確にいたしたいと存じます。  わが党がこの改正案に反対する第一の理由は、本改正案は財政法の規定に違反し、財政法の精神をじゅうりんするものであるからであります。ここに産投会計法こそはもっぱら経済の再建、産業の開発及び貿易の振興のために、国の財政資金をもって投資を行なうための制度であるのであります。しこうして、財政法第十三条二項の規定するところによれば、「国が特定の事業を行う場合、特定の資金を保有してその運用を行う場合その他特定の歳入を以て特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合に限り、法律を以て特別会計を設置するものとする。」と規定しておるのでありますから、従ってこの産投会計は、産投会計法第一条が明示するその目的を純粋に遂行するために確保せらるべきものであり、かつその条件のもとに制定されておると思うのであります。しかるに本会計に対して、ガリオア・エロアの対米債務の支払いを行なわしめんすることは、全くこの産投会計のと目的と何ら関係のない異質の任務を押しつけるものであって、このことは限られたる本産投会計の資金力の中において、当然二律背反の相剋を生ずることは明瞭であります。この意味におきまして、本改正案は明らかに財政法の規定に全く違反し、財政法の精神をじゅうりんするものでありますから、国会は財政制度の秩序を確保するために、このような悪例を設定することは絶対に避けなければなりません。これが反対する第一の理由であります。  反対する理由の第二は、すなわち、この改正案は、当然の帰結として、対米債務返済額をこの産投会計の資金から減殺することになり、そのことはおのずからこの産投会計の機能を著しく阻害することになるからであります。ここに産投会計の運用の実態を見ますると、この会計は出資が中心となっており、収入は開発銀行よりの納付金が主体となっております。従って、開発銀行よりの納付金が計画通り納付されたといたしましても、それは本産投会計の使命たる産業投資を行なうために必要欠くべからざる資金として、これは産投会計の運用のために確保されなければ相なりません。特に海運、石炭産業等、開銀に莫大な債務を持つ基幹産業に対しては、それら各企業の経理を建て直し、これを再建整備するために、今後開銀の機能は大幅に増大されなければなりません。現に、海運事業に対する債権利子の一時たな上げ法案が提出されておりますが、このような政策の方向は今後海運、石炭、非鉄金属の三業種に限っても、今や国はこれらの産業に対し、根本的な施策を講ぜざるを得ない必至の段階に立ち至っておると思うのであります。すなわち開銀の機能はますます強化されなければ相なりません。かくのごとき産業の現状と政策背景の中において、この産投会計に対し、事あらためて対米債務支払いの負担を負わせ、二千八十五億の資金力を削減せんとするがごどきは、国民世論とその政策の動向に逆行するの最もはなはだしきものであって、まさに無定見にして無責任きわまる態度と断ずべく、かくのごときことはわが党の断じて容認し得るところではありません。これが改正案に反対する第二の理由であります。  本改正案に反対する第三の理由は、この改正案は法の体系を乱し、政策の秩序を混乱に陥れるおそれが甚大であるからであります。申すまでもなく、産投会計は投資を目的とする会計であります。しかるに対米債務をこの会計の負担とするという改正規定は、この会計の目的に背馳し、かつそれは両立しがたいものであります。およそ法律秩序は厳然として首尾一貫したものであるべきであります。よってもって法の体系は厳粛に確保されなければ相なりません。これは立法府が国民に負う至大の責務であるのであります。もしそれここに、対米債務ありとして、これに対し、これを処理するための法律秩序を求めるといたしますならば、それは当然賠償等特殊債務処理特別会計法によるべきであると思うのであります。すなわち、賠特法第一条は、本邦が連合国に対し、連合国の軍隊による占領に関連して負担する債務で平和の回復に伴いその支払いを要するものの処理に関する特別会計を設置する云云と明記しておりますことは、ガリオア・エロア債務のごとき債務処理する場合のために用意されたものであることは、いささかも疑いの余地のないところでありまして、この賠特会計法第一条に明示されておる性格の債務を、ことさらにこの賠特会計によって処理しないということは、むしろ賠特会計法に違反する処置と申さなければなりません。  かくて、この産投会計改正案は、二重、三重に法の体系を混乱せしめ、法律の機能を幾重にも重ねて阻害する希代の法秩序破壊の立法であるのであります。かくのごときは、議会主義を至上の政治方針とし、法秩序の維持を最高の党是とするわが党の断じて容認し得ざるところであります。  以上主たる反対の理由を申し述べました。すべからく政府に猛省あって、本改正案については深甚なる考慮を加えられ、さらに善処あらんことを強く要望いたしまして、私の反対討論を終わります。(拍手)
  427. 臼井莊一

    臼井委員長 これにて討論は終局いたしました。  続いて採決に入ります。  採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  428. 臼井莊一

    臼井委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決いたしました。(拍手)  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  429. 臼井莊一

    臼井委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。  田中大蔵大臣
  430. 田中角榮

    田中国務大臣 この際一言ごあいさつを申し上げます。  衆議院大蔵委員会は、前国会より長い間御審議を仰いでおりました産業投資特別会計法の一部改正法律案を御可決賜わりまして、深く感謝をいたします。  酷暑の中をもいとわず、本法案審議に御協力賜わった委員各位に対して、深い敬意を払い、ごあいさつといたします。(拍手)
  431. 臼井莊一

    臼井委員長 次会は公報をもって御通知することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時十三分散会      ――――◇―――――