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1962-10-24 第41回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年十月二十四日(水曜日)    午前十時十八分開議  出席委員    委員長 上林山榮吉君    理事 有田 喜一君 理事 岡本  茂君    理事 神田  博君 理事 岡田 利春君    理事 多賀谷真稔君 理事 中村 重光君       有馬 英治君    木村 守江君       藏内 修治君    齋藤 憲三君       周東 英雄君    綱島 正興君       中村 幸八君    濱田 幸雄君       井手 以誠君    田口 誠治君       田中 武夫君    松井 政吉君       渡辺 惣蔵君    伊藤卯四郎君  委員外出席者         通商産業技官         (大臣官房審議         官)      久良知章悟君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      八谷 芳裕君         労働事務官         (職業安定局         長)      三治 重信君         参  考  人         (石炭鉱業調査         団団長 東京大         学名誉教授)  有澤 廣巳君         参  考  人         (石炭鉱業調査         団 国民経済研         究協会会長)  稲葉 秀三君         参  考  人         (石炭鉱業調査         団 早稲田大学         教授)     中野  實君         参  考  人         (石炭鉱業調査         団 日本開発銀         行副総裁)   平田敬一郎君 十月二十四日  委員澁谷直藏君、濱田正信君及び滝井義高君辞  任につき、その補欠として濱田幸雄君、綱島正  興君及び田口誠治君が議長指名委員選任  された。 同日  委員濱田幸雄君、綱島正興君及び田口誠治君辞  任につき、その補欠として澁谷直藏君、濱田正  信君及び滝井義高君が議長指名委員選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭対策に関する件(石炭鉱業調査団答申に  関する問題)      ————◇—————
  2. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  石炭鉱業調査団答申について、前会に引き続き質疑を行ないます。  本日、参考人として石炭鉱業調査団団長有澤廣巳君、経済部門稲葉秀三君、技術部門中野實君、金融部門平田敬一郎君に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。参考人各位には、御多用中のところわざわざ御出席下さいまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げておきます。  質疑の通告がありますので、これを許します。井手以誠君
  3. 井手以誠

    井手委員 調査団答申に対して、若干お伺いをいたしたいと思います。  最初に申し上げたいのですが、あれほど苦心なさってつくられた答申が、どうも私どもには、経済合理性雇用社会政策というものと妥協があったというふうに考えられてならぬのであります。答申にあるように、財政資金が膨大な金額に上る、それほどのものであるなら、なぜ企業形態にメスをお入れにならなかったのかという点について、私は非常に残念でならないのであります。  まずお伺いしたいのは、エネルギーの中における石炭地位でありまして、四月の五日、社会党や炭労に対する政府の、池田総理の回答は、雇用の安定と資源安全性安全保障国際収支という三点を前提にしてあったと私どもは記憶をいたしておるのであります。私は企業の安定なくしてはという調査団答申、わからぬこともございませんけれども、この一番大事なエネルギー国内の重要な資源である石炭というものを一国の安全保障の立場から考えますならば、四十二年度には私の計算によりますと、私の聞いたところでは、二〇%を割ると考えるのであります。一九%幾らかになると思うのでありますが、この冷戦が緊迫しておる世界情勢の中で、この大事な国内資源石炭地位というものものをどの程度でよろしいとお考えになっておるのか、二〇%を割ってもよろしいとお考えになっておるのか、国際収支を含めて、その点をお伺いいたしたいのであります。私はここで、西欧における国内資源地位が非常に高いということを申し上げようとは思いません。けれども、私は石炭がわずか一九%でよろしいとは考えがたいのであります。この点をまずお伺いいたします。
  4. 有澤廣巳

    ○有澤参考人 エネルギー全体の中においての石炭地位、それを何十%くらいが妥当であろうか、二〇%程度では少ないじゃないかという御質問でございますが、この問題はエネルギー安全保障という観点から考えますならば、エネルギー全体においてどれくらいを国内資源でやっていくべきであるか、こういうふうに問題を考えなければならないと思います。その観点から考えますと、まあいろいろシェアといいましょうか、割合はいろいろな割合がはじき出されると思いますが、調査団の方では、何十%なければ安全保障は確保できない、これをきめることはなかなか容易でありません。おそらくどの国もそういう決定はしておらないと思います。ただ、これは私個人考えでございますけれども、昨年の秋に石油調査団ヨーロッパ諸国をずっと歩いて調べたときの感じから申しますと、大体において三分の一あるいは三割以上、少なくとも三分の一程度は確保しておくべきではないか、実はこういうふうに考えております。日本の場合で考えますと、水力と石炭というものを考えますと、昭和四十五年度においてたしか三六、七%になろうかと思います。そのほかにはだんだん原子力も、発電その他におきまして発達をして参ると思いますので、私は、全くこれは私個人考えですが、その観点から言って、まあまあ安全保障の点からもやっていけるのじゃないかと思うのです。  なお石油の問題につきましては、ヨーロッパ諸国考え方では、ことに最近のOECDの考え方から申しますと、やはり貯油をしてかなければならないであろう、その貯油の費用は、これは一般財政から補てんすべきものであって、エネルギー消費者にはその犠牲をおっかぶせるべきものではない、こういうふうな考え方になっております。まあ今のエネルギー安全保障という面から考えますと、そういうふうに私考えております。
  5. 井手以誠

    井手委員 企業とかあるいはそういった問題よりも、私は一国の重大なエネルギー安全保障というものは、もっと高い次元で考えなくてはならぬではないか、経済合理性とか何とかいうものよりももっと重大であると私は考えておりますので、さらに御検討が願いたいのであります。  次にお伺いしたいのは、雇用の安定の問題です。すでに何回も質問もございましたし、御答弁もいただきました。私は物よりも人間の、国民の生活安定がもっと重大であると考えておりますので、その前提でお伺いいたしますが、団長はしばしばこういうことをおっしゃっておるのであります。閉山計画に見合って必ず雇用計画を立てる、これがなければ閉山が制約される、とことんまでめんどうを見て、失対にはやらぬようにいたしたい、こういうことをおっしゃっておるのであります。これは答申の中にもその意味が織り込まれておりますし、また安定した職場というものが強調されておるのであります。安定した職場とは、従来のようにどこかに広域紹介をして、そして半年か一年たたないうちに首を切られるという、そういう職場ではなくて、相当期間職場が安定するものでなければならぬと考えております。そこで答申の中には、まず第一には企業内あるいは関連産業吸収するのが第一、第二には広域紹介、第三に政府機関やあるいは産炭地事業誘致事業に対して吸収しようというのであります。すべて安定職業だという前提でありますが、その中で企業内あるいは関連産業吸収され得るというものは、私は従来の実績からいたしましても、あるいはその企業が努力をいたしましても、一定の限界があると思う。また広域紹介は、従来の実績によりますると、これは労働省の調べですが、十万人に近い今日までの離職者に対して広域紹介、これは安定したものじゃありませんけれども、ともかく広域紹介を受けた者は一万二、三千人、一割二、三分にしか当たっていないのであります。ところが今日のようなだらだら不景気、来年も、経済成長は五%程度だといわれておる。私はそこまでいかないと思いますが、広域紹介はあまり見込みがないということになりますと、それでは国が大部分責任を持たなければならぬという結論になって参るのであります。そこでお伺いしたいのは、こういう雇用計画がなかなか見込めないときに、政府が大部分責任を持つのかどうかという点であります。そういう雇用計画が立たなくては閉山計画はできないかどうか、雇用計画閉山計画がぴったり合わなくては合理化は進行しないということになるのか、まずその点をお伺いいたしたいと思います。
  6. 有澤廣巳

    ○有澤参考人 御質問通りでございまして、スクラップ・アンド・ビルド計画と、それによって出てくる整理人員、その人員と見合う雇用計画がなければならないと思います。
  7. 井手以誠

    井手委員 そういたしますと、安定した職場がたとえば三十八年度に、仮定でございますけれども、二万人の離職者が予定される場合に、その二万人の安定した職場が立てられなくては閉山計画もできない、いわゆる合理化計画も進められないということになるのでありますが、念のためにもう一回お伺いいたしておきます。
  8. 有澤廣巳

    ○有澤参考人 雇用計画の中には、今御指摘になりましたように、企業の造出するところの職場、これもいろいろあろうと思います。関連企業の中に収吸する場合もあれば、その企業が新しい事業を起こして、そこへ吸収するというふうな場合もありましょう。それからまた政府が造出する職場、第三には職業紹介に乗せ得る職場。一番問題なのは職業紹介に乗せ得る職場の問題でございますが、これはお話通り景気のいいか悪いかによりまして、ある場合にはかなり多くの人を十分あっせんできるという場合もありましょうし、またしからざる不況の場合には、そうはいかない、こういうこともありましょう。そこで政府企業がどれくらいの職場を造出し得るか、それから時の経済情勢いかんによりまして、安定職場として職業紹介でどれくらいのものを紹介し得るか、これらの審議は、いずれも石炭鉱業審議会スクラップ・アンド・ビルド計画と突き合わせて検討されるわけでございますので、もしスクラップ・アンド・ビルド計画において、今お話のように二万人も一応整理人員が出てくる、ところが不況広域職業紹介では五千人くらいしかないとか、あるいは会社の方も二、三千しかないということになりますれば、政府の方でやはり残りの分を造出するか、それもなかなか政府としては予算その他の関係ですぐできないということになりますれば、スクラップ・アンド・ビルドの方をスロー・ダウンしなければならない、こういうことになろうかと思います。ですから、お互いにこれは関連しておる問題であるのでございますから、そうしてまた、そのときの経済情勢いかんにもよっておるところでありますから、その関連においてスクラップ・アンド・ビルドを進めていく、このことが新しい方式といわれておるスクラップ・アンド・ビルド実施において最も重要な点だと私は考えております。
  9. 井手以誠

    井手委員 ただいまの御説明で明らかになりました。  そこでもう一つ明らかにしてもらいたいのは、安定職場とは従来のような広域紹介ではなくして、やはりそれが二十年、三十年という保障はできませんけれども——実は私の近所の千名でしたかの炭鉱離職者のうち、四百五十名が広域紹介を受けまして、北九州その他に行きました。これは実は昨年七月に閉山したのでありますが、今日ではその四百数十名の者のほとんどが整理を受けておるのであります。ほとんど臨時工でございました。そうしますと、安定した職場とは、数十年の安定保障ということはございませんけれども、一応常識的にかなり期間は、本人がまじめに働けば、そこで勤務ができるという職場であると理解してよろしゅうございますか。そうしてまた、道路工事に行った場合、その道路建設が終わったならばそこで終わりということではなくて、その道路建設が終わったらば次の道路建設に従事することができるという、かなり期間安定した仕事ができる職場であると理解してよろしゅうございますか。
  10. 有澤廣巳

    ○有澤参考人 職業紹介の場合の職場がきっと問題であろうかと思います。これはいろいろの筋があろうと思いますが、ことに今お話のありましたような臨時工の場合におきましては、確かに景気変動ということによりまして、まっ先に、不況に見舞われた企業では臨時工を解雇するというような形になろうと思います。それで広域職業紹介によってあっせんしてもらう場合におきましても、できるだけ臨時工というものは除いた方が私はいいと思います。ただ、職業紹介の場合でございますから、最初臨時工のような形で紹介があっても、そのうちには本工に採用するという場合もしばしばあり得ると思います。私のところに、この調査の間にあっちこっちからいろいろなお手紙をいただきました。そのお手紙によりますと、これは約三百人ばかりの炭鉱離職者を引き受けた会社なんかでございますけれども、そこでは再就職後約一割程度のものが離職をいたしておりますが、しかしその離職をした者の中の約三分の一は他の職業に移っていった、こういうふうになっております。   〔委員長退席有田委員長代理着席〕 一方御指摘のような場合も、これはまた他の人々からも私大いに指摘された点でございます。それで炭鉱離職者の再就職の場合につきましは、広域職業紹介に乗せる場合におきましても、できるだけ安定した職場を選んでもらうということが必要だと思います。  それから土木建築業の場合に、道路建設その他についてのお話がありましたが、これは私非常にキー・ポイントの御質問だと思います。私たちも、政府かなり大規模な公共事業をやっておるのでありますから、この公共事業の中に何かうまい形、形式といいましょうか形態考えまして、そこに常用雇用としての炭鉱離職者職場をつくり出すような方法はなかろうかということをかなり検討したのです。ただ御存じのように、土木建築労働におきましては、その雇用形態とか雇用組織というものがかなり複雑であるのでありまして、私たち調査でいきなりこうこうすべきである、こういうふうな結論をすぐさま出すまでには至らなかったのでありますが、私ども考え方といたしましては、雇用対策審議をする石炭対策関係閣僚会議建設大臣にも入っていただきまして、政府のつくり出す雇用の場というものについても、十分その方面からも御研究、御検討を願いたい、こういうふうに実は考えております。でありますから、たとい土木建築の方の事業離職者が再就職する場合におきましても、いずれもこれは常用雇用として、ただ臨時雇用じゃなくて、常用雇用として再就職のできるような形のものをつくり出してもらいたい、こういうふうに実は考えておる次第でございます。
  11. 井手以誠

    井手委員 広域紹介を受けた場合に、全部が初めから本工ばかりというわけには参りません。それはわかります。試用期間とか訓練期間とかいうものがあるでしょう。しかしそれを経たならば、特別の場合を除いては本工に引き直してもらう、そういうのが私は安定職場だと考えるのであります。  そこで、ただいま団長から御説明がありました土木建築関係でありますが、それの常用というお話がございましたのでお伺いします。私は常用にするということであるならば、名前はあるいは変わっても差しつかえございませんが、炭鉱離職者建設労務公団というようなものをつくる必要がありはしないか。常用というならば、そういうものをつくって、その道路建設が終わったならば次の道路にかかるというような、常用であるならば、私はそういう組織が必要ではないかと思うのでありますが、そういういわゆる建設労務公団などというものについて、あらためてさらに政府に要望なさるお考えがあるかどうか。常用という意味を確保するためにはその構想が必要であると思いますが、いかがでございましょうか。
  12. 有澤廣巳

    ○有澤参考人 土木建築の部面におきましては、常用雇用として、政府公共事業関連せしめて、かなり大きな職場を開拓することができると私は考えておりますが、それをどういう形態で、今のお話の中の建築公団といいましょうか、そういう形でそれをするか、それとも特殊な会社、民間の会社をつくってもらって、それで政府の指導のもとにこれを行なっていくか、あるいはその他の形式をとって、常用雇用の形で雇用の場を造出するか、そういうところは、これは十分検討してみなければならないわけでございますので、実は私どもの間で議論はいたしましたけれども、先ほど申しましたように、まだ一定方向を打ち出すまで、具体的な方向を打ち出すまでにはいかなかったのでありますが、私どもは、この面において相当の雇用者に対する職場の開拓が行なわれ得る、こういうふうに考えておる次第でございます。
  13. 井手以誠

    井手委員 土木建築に関する常用ということを確保するためには、さらに一つ検討が願いたいのであります。  くどいようですけれども、この雇用の安定はきわめて重要でございますので、もう一回念のためにお伺いいたしますが、第一年目の雇用計画では、大体これなら間違いなかろうというので計画をした広域紹介、あるいは企業内あるいは関連産業内の吸収、あるいは国の機関吸収計画閉山合理化計画とをマッチさせて実行に移すわけですが、それがうまくいかなかった場合に、今団長お話しのように、二万名の場合に五千名と三千名、二千名くらいしがなかったという場合には、一万名は残るのであります。残るけれども、それはいわゆる予約制度と申しますか、三年間の失業保険とそれに類したものがございますから、やってやれるといたしましても、その残った一万人は次の年の雇用計画に出てくるわけであります。そうしますと、片一方合理化計画はその分だけおくれてくるわけです。スロー・ダウンになるわけであります。  それからもう一つ伺いたいのは、どうしても広域紹介がうまくいかない場合、あるいは企業内、関連産業がうまくいかない場合は、片一方は次々に閉山が実際問題として起こってくる、それを閉山させないというお考えですか。あるいはそれが食いとめられるかもしれませんけれども、結局今後六万人前後、今まで四月からの者を加えますと七万五千人、もし不幸にして広域紹介関連あるいは企業内吸収がうまくいかなかった場合は、これは最終政府責任であると考える。政府吸収をしなくてはならぬのでありますが、その点をもう一ぺんはっきりと団長から確約をいただきたい。これが非常に大事なんです。政府が必ず安定職場を提供するということであれば、私は問題は緩和されると思うのですが、それが保障されないと、これは大へんなんです。関連産業ができない、広域職業紹介ができない、そして大事な国策によって炭鉱労働者が路頭に迷うということでは大へんでございますので、この雇用最終責任政府にある、広域職業紹介でできない場合は政府機関でこれを雇い入れるという、その責任があるかどうか、これを団長にもう一回お伺いをいたしたいのであります。
  14. 有澤廣巳

    ○有澤参考人 ことしの雇用計画スクラップ・アンド・ビルド計画とが突き合ったものとして、石炭鉱業審議会で一応これならよろしいというので、政府もまたその計画実施をするわけですが、一年間の間にだんだん経済変動もあり得ると思います。たとえば企業がつくるべき事業会社も、予定しておったより建設がおくれる、あるいは一般広域職業紹介に乗せていき得ると考えていた人数も予定通りにはいかなかったというようなことで、若干相互の計画がずれるということも実際起こり得ると考えられます。そういう場合には、むろん翌年度雇用計画には、前年度にうまく就職をあっせんできなかった人々は優先的にこれを乗せていくわけでございます。ですから、翌年度スクラップ・アンド・ビルドによる整理人員と、前年度から繰り越してきた離職者と、この両方を合わせて雇用計画というものが立てられなければなりません。そのときに、このときの経済事情がどういうふうになるかにもよりますけれども一般広域職業紹介並びに企業の造出する職場でどうしても十分埋まらないという場合におきましては、むしろやはりスクラップ・アンド・ビルドの方がスロー・ダウンされる、こういう形に相なろうと思います。雇用計画というものは、スクラップ・アンド・ビルド計画と同様に、一応石炭鉱業審議会審議を経ての上でありますけれども、これはいずれも政府の策定する両計画であります。ですから、両計画実施につきましては、私は十分政府責任を持っているものだと考えております。
  15. 井手以誠

    井手委員 お答えでございますが、やはり政府にそこを実効あるようにしてもらうことが答申の一番のねらいであると私は考えるのであります。大体わかりました。雇用計画が立たねば合理化計画は、閉山はできないというお答えでございますので、それで一応了解をいたします。その点についてはわかりました。  次に、政府資金についてお伺いをいたします。少し数字にわたりますので、一つ平田さんも数字お答えをいただきたい。簡潔でけっこうです。  今度の答申は、財政支出があるかどうかに実効がかかっていると言われております。また、あなた方の答申も、大事な点は全部政府財政資金にたよっておられるようでありまます。私はあの答申を読んで参りまして、設備資金千七百億、整備資金八百億、その中に財政資金が幾ら必要であるかについてはこの前御説明になりましたが、しかし、私は、そのほかに多額の政府資金が必要であると考えるのであります。私はちょっと内容を読んで参りましたが、住宅八千戸、これは三十八年度までにつくらなくちゃならぬが、八十億から百億の金が要る。道路建設には別ワクとして八十億、これはできれば三十八年度ということで八十億、どこかで説明をされております。ボタ山対策で、通産省の計画では三十六億は必要だと言われている。それから、電力その他の長期取引あるいは石炭火力発電負担増などが二百七十五億と百億、それから離職促進手当が、二、三十億、これは毎年かかるでありましょう。離職金が十万円となっておりますが、二万人の離職で、今の買い上げでは退職金はあまりもらえないのでありますから、二万人離職になりますと二十億必要になってくるでありましょう。これらを考えて参りますと、あなたの方ではこの整備計画合理化計画の全般に政府資金が必要である、重点がかかっているとおっしゃっておりますが、労働省関係においてだけでも、今日は五十億出ておりますが、私は、少なくとも二百億以上なくては三十八年度はやっていけない、あなたの方の答申をまかなうことはできないと思うのです。この間、大蔵大臣田中さんがこう言っておられる。もう炭鉱の問題は、市中銀行融資にたよるような段階ではないと言われておる。開銀の副総裁、私はどうも政府財政資金にたよる金額が少ない、甘く見られておるような気がいたすのでありますが、千七百億の設備資金、大手は千四百億台でしょうが、あなたはその中に二百五十億か三百億あればよかろうという話をなさったが、これは甘いと思う。金繰りができぬために今日閉山しておるのがかなりあると思うのです。この答申が出たから、市中銀行が簡単に融資をするとは私は考えません。特に優秀な炭鉱であれば別ですけれども。そう考えますと合理化資金設備資金というものは、二百五十億、三百億の金ではないと思うのです。私は倍も要りはせぬかと思うのです。そこであなたの方も、この答申決定版だとおっしゃる。政府にこれを迫って実行するのは大丈夫だとおっしゃっておる。   〔有田委員長代理退席、岡本(茂)委員長代理着席〕 四十二年を過ぎると、六十億黒字になるとおっしゃっておる。それまで計算されておるならば、政府財政資金が一番必要な三十七年、三十八年には、どのくらいの政府財政資金が必要とお考えになっておりますか。言いにくいかもしれませんが、大事な点ですから、これをあなたがここで言うと、政府もこれに縛られて実行しなければならぬ、あなたが数字を述べられることが、答申を生かすかどうかの道になりますから、あっさりお答えを願いたい。
  16. 平田敬一郎

    ○平田参考人 井出先生大へん多角的に数字をお述べになっておられるようでございますが、先般申し上げましたことに関連しまして、若干それに言葉の趣旨を正確に申し上げておきたいと思います。  まず、中小の場合は若干推定が入っておりますので、大手の場合につきまして申し上げますと、設備資金が約千四百億要るだろう。これは大体近代化、合理化をビルド山を中心に、あるいは一部維持山を中心にやるために五カ年余、ことしの追加まで加えますと五カ年強になりますが、その五カ年強の中で必要とする総資金だろう、これは報告の前の方にいろいろ載せております数字と見合った数字でございまして、ほぼ間違いない数字であろうということでございます。それから先般、二百五十億ないし三百億ほど、正確に申しまして、追加しまして、何とかしなくちゃならぬ資金を必要とするだろう、こう申し上げた。従いまして、その追加しまして何とかしなくちゃならぬ金を出す前に、現在出しておる資金はそのまま継続するとしてということを申し上げた。合理化事業団から今大手だけで二十億程度設備資金を出しております。近代化資金です。それから、開発銀行から七十億ほど毎年出しております。これは今後もやはり継続して出すものとしまして、そのほかに何とかしなければならない資金が二百五十億ないし三百億くらい要するだろう、こう申し上げたわけでございます。従いまして今出しているものと一緒にしますと、財政資金としてはもっと多額なものを必要とするということになります。  それからさらに、それでは二百五十億ないし三百億がそのまま全部財政資金に依存しなければならぬかと申しますと、必ずしもそうとも言えない。と申しますのは、やはり今までのように、企業によりましては会社も実情がだいぶ違っておりますことはおそらく井出先生御存じだろうと思いますが、市中調達などでできる会社も相当ございます。数が多いとは申し上げませんが。何と申しましても、石炭鉱業の自立というものは、最終的には私企業として何とか自立の道を開いていこうということでございますので、やはり会社自体がみずから一生懸命になって資金についても努力して資金調達をはかるということは当然でございますし、それからまた金融機関も、御承知の通り、いろいろ今までのいきさつ、取引の関係、それからいろいろな系列の関係等もございますから、今まで貸付も相当やっているわけでございまして、そういう関係からいきましても、返済の見込みが立たなければ市中から協力を求めるということは無理だと思いますが、返済の見込みが立つということになってきますと、やはり市中としましても、そのときの金融情勢にもよりますが、十分の協力はしてもらわなければならぬ、その趣旨のことを報告にも盛り込んでいただいております。しかし大体今のような状況でございますと、なかなかそれも多く期待することは無理だろうということは、私十分認識しております。従いまして、そういうところをよく検討しました上で、最終的には必要な資金を政府が確保してやる、こういう考え方をきちっと書いているわけでございまして、そういうことでいきますと、予定の設備資金につきまして、会社として必要な事業ができるようになるだろう、こう見ているわけでございます。従いまして二百五十億ないし三百億というのは、今やっているものの上乗せにそれくらいの資金を何とか市中調達と開発銀行あるいは事業団等の資金でまかなってやる必要がある、こういう次第でございまして、さらにその内訳を、財政資金が幾らかということまで申し上げますのは、かえって無責任と申しますか、非難を受けますので、そういう趣旨をよく申し上げまして、その趣旨に即応して政府に善処してもらうということを考えておるわけでございます。  それから整備資金も同様でございまして、これは大手だけ見ますと六百八十億ぐらい要るだろう、これは五カ年間におきまして人員が大体十二万人台になるということと見合いまして、この整備資金の大部分は退職資金でございますが、これもほぼ前の見通し通りにいきますと、資金的にはそういう資金が必要になってくるだろう。こういう数字でございますので、これはそう動きがない数字ではないかと思います。ただ、これにつきましても、追加しまして何とかしなきゃならぬというのが、三百億前後おそらくあるのではないか。この方はまだ本年度から始めまして、合理化事業団が約四十億出すことになっております。しかもこれは返済期限が比較的短いので、三百億出す際には三年分ぐらいを見まして、不足分を、追加対策分を見ておる。市中から相当今まで借りておりますが、これは何回か切りかえいたしますけれども、四十二年度あたりでは、市中の方は今までの分が大部分なくなるだろうという前提で計算しますと、三百億前後になってくる。これも今申し上げました趣旨で、三百億全部財政資金に依存する必要はないのではないかと見ております。会社によりましては整備計画なり、あるいは会社合理化計画ができますと、これもある程度市中から協調融資の形で融資できる部分が出てきますし、これはまたある意味においては、今までの石炭業と市中銀行との関係からいきますと、そういうことで市中も極力協力すべさ場合には協力しなければならないと思いますので、そういうこともやりまして、整備資金に不足を来たさないようにしょう。しかしこれは今申し上げますように、最後はやはり、すべてスクラップ・アンド・ビルド計画もそれから雇用計画もあわせてやりまして、その際に資金の計画につきましても合理化事業団で計画を立ててやるようになりますから、その辺のところは、ビルドの方も整備の方も、所定の計画通り進行するにつきましての債務は、やはり政府が資金の面で確保をはかっていく、こういうことに相なろうかと思うのでございます。従いまして、そういうところにつきましては、今後は今までよりはもっと正確な形で資金対策も講じられていく、こういう考えでございます。  それから、さらにその二つにつきまして申し上げますと、前半にその資金がいずれにしろよけいに要るだろうということは申し上げた通り、なかんずく三十八年から九年あたりにかけまして相当多額の資金を要するのじゃないか。しかしこれも年々どの程度にどういうふうにやっていくか、やはり具体計画と相待ってきまることでございますので、この資金量を、井手委員のお尋ねでございますが、今私から幾ら要るということを申し上げることはちょっと無理な話でごいますので、私ども、要するに答申の趣旨に即応しまして政府が誠意をもって実行に移すということが何よりも重要なことだと考えまして、そういうことにつきましては報告のあちこちに実は強調いたしておりますので、御了承願いたいと思います。それが会社に対する、企業関係の資金でございます。  そのほかに住宅につきましては、率直に申し上げまして、内情話を申し上げますが、私個人考えですけれども、あちこちの会社にだいぶ私は炭鉱離職者の再就職状況を聞いてみたのです。そうするとやはり広域の、場所を離れたところにおきましては、まことに少し御年配の方ですと、住宅が一番やはりボトル・ネックになっている。会社も住宅まで世話をして全部やってやるのは大へんだ。俗な言葉ですが、住宅つきだと大へん喜んで受け入れられます。きていただいております人は、大部分非常によく働いていただいているということでございますので、広域職業紹介において、私はやはり住宅問題というのが最大の問題じゃないかと私個人として考えたわけであります。そこで作文につくります場合には、大量にするとかなんかいうことは各所から意見が出たのです。それは率直に申し上げて、大量というのじゃわからないし、われわれは重視しているのだから八千戸という数字だけはぜひ答申に盛りたいのだというので、実は何回か八千戸という数字を載せるだけでも苦心いたしまして載せまして、それをしかも三十七年度の追加と三十八年度中に完成するということで入ったような次第でございますが、これはまとまりまして、お話通りに、建築費の単価が幾ら要るとかいうことをそこまで詰めますと、政府の仕事がなくなってしまうのじゃないかと思いますが、百万円じゃちょっと一戸当たりできそうにないという話を聞いておりますが、百万と仮定しましても八十億円ということを申し上げたわけです。しかし、そういう金は惜しむべきではない。と申しますのは、住宅は社会全体としても非常に不足しておる。そこで炭鉱労務者のために集中的、重点的につくるということは、社会全体の見地からも住宅の不足の一つの補てんの一翼をになうわけでございますので、これはいいことだと思いまして、実はこれは団長初め調査団全員も寄ってたかりまして住宅の戸数は計上したような次第でございます。その資金が幾ら要るか、こまかい計算は、これは当然政府がそれにふさわしい住宅の計画をつくりまして、計画を立てて国会の御承認を求めるということに相なるべき筋合いのものじゃないかと考えます。  それからボタ山整理につきましては、いろいろ途中で新聞記事等に出ておりましたが、これは率直に申し上げまして、いろいろな案がございます。私どもの趣旨は、この報告に書いてありましたような趣旨で、これは政府並びに事業団等が行なうことになりますが、適正な計画を立てて、適正な計画ができますれば、それに対する資金措置は十分講じてやるようにという趣旨でございます。中間に伝わりました数字は必ずしも正確なものではなくて、検討資料として出ましたのが新聞、雑誌に非公式に伝えられたものであるかと思いますので、その点は政府が具体計画を立てまして出してきた数字によりまして御判断願いたいと思います。  それから炭産地振興にはその他道路の問題も、実は私ども細目は報告文にそこまで最終的に詰めることもなかなか簡単でございませんでしたので、入れてないのでございますが、炭産地振興には、何と申しましても、交通条件をよくしてやって、広域的に炭産地の振興をはかっていくということが基本的には一番大事であると思うのでございます。これは私の個人的な考え方も若干入っておりますが、従いまして、特に筑豊地帯につきましては北九州と福岡を結ぶ、飯塚あたりから田川、それから裏門司でございますね、あの辺を結ぶ道路、この道路はどうせいずれつくらなくちゃならぬ、計画もあるようでありますから、それを少し繰り上げまして、しかも道路計画最初計画より少し規格をいいものにして、それからショート・カットなんかもできるだけ取り入れまして、できるだけ早くつくるということにいたしますと、少し言い過ぎかもしれませんが、東京の労務者の通勤距離のことを考えますと、筑豊地帯から工業地帯への通勤距離はそう遠いものじゃない、オートバイで通勤できるのじゃないかと思います。そうすると工場もまたおのずから、下請工場等でがたがたしたところから筑豊地帯に出てくる工場もあるでしょうし、そういう点には政府はあまり金を惜しまないで、ぜひ道路計画をつくって、いい道路をつくるようにしてほしい。その他、工場の誘致その他につきましても、金融機関、私ども銀行なんかもできるだけ全面的、積極的に御協力申し上げたいと思いますが、そういうことをやりまして炭産地の振興に努めていこうという考えでございます。  それも項目の上で実は多数に分かれておりまして、建設省の予算から出る分、あるいは府県から出る分とか、一部市町村から出る分とか、あるいは事業団から出る分とか、あるいは融資事業団とか、あるいは政府金融機関とか、いろいろ分かれておりますので、その辺のところは政府が趣旨に即応しまして、しっかりした計画なりあるいは数字をはじき出しまして、これも大部分国会の御承認事項になるかと思いますが、国会に提出されまして、そこで御審議を願って進めていただくということに相なるかと思います。そのことを申し上げまして御了解を得たいと思うのでございます。
  17. 井手以誠

    井手委員 平田さん、親切に二十分ばかり御答弁いただきましたが、私が聞いたことにはあまりお答えになりませんでした。大蔵省出身でございますからいろいろお考えだろうと思いますけれども、もっと決意を持って、あくまでも政府にこれだけは実行させるという気魄が大事だと思います。もうこれ以上はお伺いいたしません。時間がございませんのであとは簡潔に結論だけをお答えいただきたいと思います。  まず第一に、この石炭鉱業の問題について、物価をお考えになっているかどうか。これが一つ。それは政府買い上げについて、先日滝井委員質問に対して千百円というお話がございましたが、これは昭和三十二年の単価と同じでありまして、今の事情から考えますと千五百円以上、あるいは二千円くらいに買い上げなくては私はいけないと思う。私の近所で最近閉山いたしました炭鉱は、退職金が半分しか回ってこないのであります。千百円で買ってもらうと、半分しか回らないのであります。鉱害は五億五千万円に対して、一億円くらいしか回らないのであります。それほど単価が安いのですから、これを改めて、本格的な答申には政府に引き上げを要望なさる御意思があるかどうか。  それからもう一つは、買い上げられる炭鉱はともかくとして、買い上げられない零細炭鉱はどう処理なさるか。買い上げできない小さな炭鉱、百とか百五十とか、納付金を納めていない炭鉱で、おれの方はもう買い上げてもらわぬでもいい、借金ばかりだからどうでもいいという炭鉱が方々にございます。私の近所にもございますが、そういうのはどういうことになるか。  それからもう一つ。千二百万トンの閉山計画に対して、本年度予定されている四百三十二万トンは入っているかどうか。千二百万トンの中に四百三十二万トンは入っておるかどうか、その点をお伺いいたします。結論だけでけっこうです。
  18. 平田敬一郎

    ○平田参考人 買い上げにつきましては、買い上げ単価の見方をどうするかという問題、いろいろ検討いたしましたが、これは現在、御承知の通り千百円になっておりますが、今後実情に応じて適正な評価をするとなりますと、千五百円くらいになるだろう。それに必要な資金は十分確保してほしいということを強く言っております。それから離職者交付金については、御承知の通りでございます。  それから買い上げにつきましては、これはやはり会社が意思決定をしまして、買い上げの申し込みをするということがすべての場合に重大な前提でございまして、それをしない会社の場合に、こっちから進んで会社のしりぬぐいをするということは、なかなかむずかしかろうと思います。経営者であるからには、やはり最後の清算をつけます場合に、政府がちゃんと一定の方式で買い上げを認めておるのでございますので、それによりまして買い上げをしてもらって処置をつけるということは、経営者としまして当然の責任ではなかろうかと存ずる次第でございます。  それから本年度の分につきましては、たしか前回の委員会で私からも補足して申し上げましたように、伺ってみますと、いろいろ政府とあるいは組合、あるいは社会党の間にも話し合いがあるらしくて、本年度の分につきましては、調査団があまり深入りして、どうしろ、こうしろ、こうした方がいいと言うことは適当じゃないので、調査団としましては、本報告の趣旨に従ってすみやかに必要な措置をとってもらう、そのほかのことは政府がやはり責任を持って措置すべきものだ、こういうことを申し上げたわけでございまして、そういったようなことに関連していろいろ問題があるかと思いますが、それはそういうことで話し合いを進められまして、適正にお願いしたいと思っておる次第でございます。
  19. 井手以誠

    井手委員 非常に大事な点ですが、何も私の方に気がねなさる必要はないと思うのです。千二百万トンの整備が必要だという答申でございますから、千二百万トンの中には本年度整備予定の四百三十二万トンは入っておるかどうか、その点だけです。
  20. 稲葉秀三

    稲葉参考人 現在までの買い上げ分の予定の四百三十万トンのうちで、旧方式の対策によるものが二百万トンくらいございます。百九十万トン……。
  21. 井手以誠

    井手委員 百万トンは……。
  22. 稲葉秀三

    稲葉参考人 それは入っておりません。
  23. 井手以誠

    井手委員 それでは、新方式による百二十万トンと追加の二百万トンの三百二十万トンは千二百万トンに入っておる、こういうことですか。
  24. 稲葉秀三

    稲葉参考人 大体その通りでございます。
  25. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 関連して。千百円の買い上げ炭価が、実際上計算をすると千五百円程度になる。これはおそらく、鉱区の閉鎖でありますから、鉱区すなわち鉱量を主として調査をされる、そうすれば、鉱量の買い上げということになるから千五百円くらいになる、こういうお考えでしょうが、私はこの考え方それ自体が問題だと思うのです。というのは、スクラップをする炭鉱の鉱量を判定しても何も意味がないのです。問題は事後処理なのですから。それをどういう基準で算定するかということは非常に問題だけれども、事後処理なんですから、たとえば鉱害の量が多いとか、あるいは、未払い金ということになると、これは途中でサボる傾向がありますから、なかなか私も言いかねるのですけれども、まあ退職金が多いとか、未払い金が多いとか、要するに事後処理が困難であるという方をむしろ基準の算定の基礎に入れるべきだと思うのですよ。具体的にそれをどういうように入れるかということは困難でしょうが、今の考え方は非常に問題を起こしている。なぜかといいますと、今保安勧告による閉山方式がとられておるわけですね。ところが中小炭鉱の方は、保安勧告の方が合理化の買い上げよりも有利であるという状態になっておるのです。現在の数字がそうなっておる。ですから、合理化を申請するよりも、保安が悪いというので閉山の勧告を受けた方がいいという業者が相当多いのですよ。それは鉱量を中心とした、そういう扱い方をしておるからです。今、保安勧告は六百円ですね。その六百円の方が有利であるという状態が出ておるということは、これはものの考え方が、事後処理としての金でなくて、あくまでも鉱量中心主義で買い上げの単価がきまっておるところに問題があるのじゃないか。ですからむしろ、事後処理にどれだけ金が要るか、鉱害の量がどれだけあるかということの方が中心ではないか。あえて言うならば、その業者に金をあげないで、別に政府が鉱害の処理をやったらいいのです。そうすれば、その目的は達するのです。この点を一つぜひお聞きしたい。  それから旧方式と新方式の関係で、実は鉱区を閉鎖する、いわばそういうものについての担保物件の問題は一応解消されるかもしれませんが、坑外の施設その他は勝手に売却する、その代金で支払えばいいじゃないかとおっしゃるけれども、これは実はほとんどが抵当権か担保になっておる。ですから、金融機関にはその方で何とか負債の返済ができるようになっておるのですよ。ところが問題は、今申します鉱害であるとか、あるいはまた未払い、あるいは退職金が払えないというのが現状です。これについてどういうようにお考えであるか、お聞かせを願いたい。それでも千百円でけっこうであるかどうか。
  26. 平田敬一郎

    ○平田参考人 今の買い上げ方式につきましては、実は私どももだいぶ検討してみたのですが、御承知の通り、ことしから新方式と称されておりまする方式に切りかわりまして、それでスタートするばかりになっております。しかも買い上げ方式は、実は最初のスタートからずっと歴史的に変革をたどってきておりまして、これを実は、新々方式というものがほかにないかということで検討してみたのですが、検討に入れば入るほど、率直に申し上げまして、うかつなことをやりますと、前の人とあとの人、あるいは今後の者と変な関係になって、かえって正しい結論が出てこない。従いまして結論として私どもは、ことしから切りかわりました新方式、これはもうそのままにしておこう。ただ、だんだん実態を調べてみますと、今までは中小が比較的多い、どっちかというと悪い中でも悪い、ところが今後は悪い中でも悪さの程度がだいぶ違うので、坑内のたとえば本坑道あたりにいたしましても、鉱量なんかにしましても、今度の新方式を、さっき申しましたように、実情に即して正しくやっていく。その場合、資金がないからというので無理な査定を加えたら困るので、そういうことはないようにしてほしいということを、実は私どもは注文をつけておるのですが、平均しまして千五百円ぐらいの単価になるのじゃないか、その資金的な措置は十分とってほしい。そうして、資金的な不足から非常に不親切な査定になるようなことはなくしてほしい、それを早くしてほしいということをやったわけであります。  その際にもう一つ研究しましたのは、地上施設を買い上げに入れるかどうかという問題だったのですが、これは率直に申しまして、これも今までもいろいろな問題なり弊害があって、結局新方式に切りかわりまして、これはそれぞれの企業企業責任で適切に処分できる、できるだけ有利に換価して、何とかいろいろな過去の債権債務の関係、その他整理の際に確保させよう、こういうようになっておりますので、議論はしてみたのですが、これはどうも無理ではないかというので、地上施設については買い上げないということにいたしたわけでございます。ただ、そうなりますと、問題がございまして、例の無資力認定とか、これも実際聞いてみますと、どうもやはりやり方が、とことんまで無資力だということがわかってからでないとやらぬでしょう。だから、その実際のやり方を一応無資力認定でやっておいて、あとで最終的にきめるといったような手続上の改善をやって、迅速な処理をはかるようにしてほしい。それはあまりこまかいことまで一々こっちが指図するわけにいきませんが、そういう趣旨でベストを尽くしてほしい。そうすると、きまらないために手続がおくれて、その間に非常にいろいろ未払いとか無理なことがないように措置をするようにということも、これも抽象的に書いておりますが、うたっております。これはおそらく各省が実行案をつくりまして、趣旨に即応するようなことにしなくちゃならないと思います。  それから一番大事なのは離職者交付金でございまして、この方は率直に申しまして、住宅と同じように、私ども最もそれに関連して力を入れた一点でございまして、今までの交付金のほかに、退職金が少ない場合には十万円まで出せるということにいたしておりますので、中小炭鉱の場合に非常に社会的に無理な状態になっているのが、それによりましてよほど緩和できるんじゃないかということを期待いたしておるわけでございます。そういう関係は今までよりもよほど、今度の勧告通りいきますと、スムーズにいく。それは実行問題になってきますと、現地の問題になってきますから、特に九州なんかにつきましては、書いておりますように、臨時石炭対策本部を置いて、現場の関係の連絡その他不十分でうまくいかないのをそれぞれほんとうにめんどうを見て、早く片づけるようなシステムをつくり上げて、作文倒れにならぬようにしようということにいたしておる次第でございますので、その点御了承を願いたいと思います。
  27. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今の鉱害の問題ですが、調査団の鉱害対策の報告によると「閉山炭鉱の鉱害処理については、民生安定上の配慮からする無資力鉱害に対する措置の充実および認定手続の迅速化」云々と書いてございますが、これは今平田さんのお話ですと、いわば政府といいますか、あるいは復旧事業団といいますか、こういう公的機関が代執行をして、そしてあとは無資力でやるか、あるいは、資力のある部分については鉱業権者からとる、残りの分については無資力認定をする、こういうように緊急なものは代執行をするというような考え方をお述べになった。代執行という言葉はおっしゃらなかったけれども、そういう考え方をお述べになったようですが、そういう含みで答申をされたかどうか、これをお聞かせ願いたい。
  28. 平田敬一郎

    ○平田参考人 今お話しのように、私ども代執行という制度的にきちっとしたところまでは実は考えていない。もちろんそういうことも、どうにもうまくいくかぬ場合には、一つの研究課題だろうと思います。今聞いてみますと、認定するまでに相当の期間を要しておる、これをもう少し簡易認定と申しますか、そういうようなことで手続を早く進めるということができるのではないか。そういうことで検討いたしまして、具体的な手続のことは政府のやることでありますから、この趣旨に即応して目的を達成するようにしてほしいということで、調査団としては一応打ちとめているということでございまして、それを法制的に代執行というところまでいきますのがいいかどうか、私そこまでは、率直に申し上げまして申し上げかねると思います。   〔岡本(茂)委員代理退席、委員長着席〕
  29. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は今代執行の制度があるわけです。鉱害について緊急な場合に、人命があぶない場合には代執行ができることになっておるわけです。これと無資力との関係を法制的に何か連携を持たすという意味では——今おっしゃいましたけれども、簡易に認定するなどといっても、あなたは大蔵省の出身ですけれども、大蔵省は簡単に判をつきませんよ。簡易に認定すると口では言いますけれども、これはやれるものかやれないものか、簡単にはいかないですよ。ですから認定手続の迅速化ということは、文章には書いてあるけれども、制度的に法律的に何か制度をつくってやらなければできないのです。これが一番大きい問題ですよ。ですからむしろ政府が、あるいは復旧事業団でも何でもいいのですが、それは一応復旧させていく。そして資力がある範囲についてはそれを負担させる、資力のない部分については無資力でやる、こういう制度か何かお考えになっておられるかを聞いたわけです。最初はどうもお考えになっておられるような答弁だったのですが、あとは逃げられたという感じで、依然として政府答弁のような形で終わったわけですが、これはやはり今後の大きな問題として十分配慮願いたいと思います。
  30. 平田敬一郎

    ○平田参考人 実は私検討の途中では、幾つかのこういうやり方もあるじゃないかといって参考にした考え方はあるのでございますが、これは今お話しのように、行政手続の非常にこまかい問題になりますので、やはり最終的には政府がこの趣旨に即応して迅速化をはかるようにするということがいいのではないかと思いまして、こういうことになっているわけでございます。こういう点につきましては、率直に申しまして、実際上そういうことがやはり重要なことだと考えまして、今後私も若干考えまして、なおさらに必要なことがあったら関係のところに意見を申し上げてもいいと思いますが、これで御了承を願いたいと思います。
  31. 井手以誠

    井手委員 時間がございませんので、あと一問で終わりたいと思います。  平田さんにお伺いいたしますが、買い上げの場合には千五百円にしたいということでありますが、それはそれで、調査団答申としては数字の表には出ていないが、千百円を千五百円にしたいという調査団の意思であるかどうかという点を確認したい。これが第一点。  二番目には、今、閉山を予想される炭鉱の鉱害の業者負担は、私が聞いたところでは百二十六億に上るといわれております。これはよほどの決意がなくては、鉱害復旧はできないのであります。積極的な促進であるとか充実であるとかいう言葉が盛られておりますが、臨時鉱害復旧法のあの補助率の引き上げその他について調査団はお考えになっておるかどうか。ただいまの多賀谷委員質問関連して、法の改正までお考えになっておるかどうか、その点を第二番目にお伺いいたします。  第三番目には、団長にお伺いいたします。産炭地からのいろいろな要望なり悲痛な意見が多かったと思うのです。お聞きになったと思うのです。ところが、この答申は非常に抽象的であって具体性がないというので、どこの産炭地も非常に不満の色が強いのです。これは事実です。どこでも産炭地の大会を開いて、意見を中央に持ってこようといたしておりますが、あれほどの熱望に対して、調査団答申には百五十字しか書いてないというふうに言われておる。私の聞いたところでは、市町村財政は四十二年度までに七十億の赤字が出るといわれておるし、関連産業を含めると三十万人の失業者が予定されておるといわれるのでありますが、この産炭地の悲惨な状態に対して答申は抽象的であっても、これは大綱でございますから、さらに近くお出しになるほんとうの答申書には、もっと産炭地を振興させる具体的な措置を盛られる御用意があるかどうか。第三番目にその点を団長に特にお伺いをしたのであります。答申が出てから方々から私どもにも希望がありますので、私の質問に対する答弁というよりも、産炭地に対する調査団の熱意をこの際一つ聞かせていただきたい。
  32. 平田敬一郎

    ○平田参考人 最初の二点の問題をお答え申し上げますが、現在千百円の単価が将来は千五百円くらいになるだろうということは、重ねて申し上げますが、相当細密に検討した結果申し上げるので、いいかげんの数字ではございません。  それから第二点の問題は、鉱害復旧の業者の負担に関連した資金だと思いますが、これは率直に申し上げまして、そのためにいろいろ苦心をしてやっておるようでございますが、御承知の通り、本年度から合理化事業団から退職資金のほかに鉱害復旧の整備資金の貸付ができるようになっておるのでございますが、まだこれは実行されていないようでございます。こういう問題もやはり特別の資金措置を講じて、そういうことにつきまして円滑にいくようにということで答申には書いております。やはりこれは整備資金一つといたしまして、そういうことにつきましても、政府がみずから負担するだけではなくて、企業の負担する分についても必要な資金の供給をはかっていくということによりまして、できるだけ鉱害復旧事業自体が業者の非常な一時的な金融負担にならないで適正な実施ができるようにしようということでございます。これも簡単な字句でございますが、当然そういうことを十分検討した上で実は書いておりますことを御了承願いたいと思います。
  33. 有澤廣巳

    ○有澤参考人 産炭地の振興の問題と産炭地の市町村の問題、これにつきましては、答申には、今百五十字というお話でございますが、実は私どもは、雇用の安定の問題と同列において産炭地振興の問題が重要であるという意識を持って答申は書かれておると信じております。具体性がない、従って文章も短くなっておるということであろうと思いますが、これにつきましては前回もお話を申し上げましたように、一言では産炭地ということになりますが、各産炭地ごとに非常に事情が違っておると思います。といいますのは、どういうなやり方をもってすれば最も当該産炭地の振興をはかり得るかということは、具体性を持たして検討するということになりますと、非常な特殊性を持って現われて参りまして、これを一々こまかに書くということは非常に困難であったものでありますから、従って最も産炭地として荒廃しておる筑豊、西九州という方面を一つの例示として取り上げたわけであります。考え方といたしましては、これは答申にはっきり出ておりますように、産業基盤を造成する、これは、産炭地が非常に強く、どこへ行ってもほとんど要望されました道路建設と工業用水の開発、それから工場用地の造成、これは答申にもその通り書いてあります。しかしそれだけはむろん振興という話にはならないのでありますから、さらに、政府自身がその直営工場なり、あるいは政府関係機関の工場なりをそこに率先して持っていきなさい、こういうことも書いてあります。私はこれが大きな誘い水になるだろうと思いましたので、そのことをぜひ実現してもらわなければならぬというのでそういうことを書いたのです。そのほかになお、数千人の機械工場をそこに作れ、作ることについては政府が十分めんどうをみろ、こういうふうに書いてあります。ボタ山整理などというのはあと回にしましても、そればかりでなく、そこへつくる民営の工場であっても、官需のものにいてはそれを確保してやるように政府でめんどうをみろ、こういうことまで書いてあります。私どもの熱意はそういうところに十分表われていると私は確信しておる次第でございます。ただしかし私どものあげましたのは、これは全部を網羅してあげているわけではむろんありません。サンプルをあげているわけでございますから、政府が、あるいは皆さん方の御努力でこのサンプルをもっとふやすということになれば、私どもの趣意にもっとよく適合していると私は思います。
  34. 上林山榮吉

  35. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 まず最初に、有澤調査団一行に対して、当面する非常な困難な、また非常にうるさい石炭問題を長期にわたって御苦労されたことを感謝をいたしたいと思います。すでに同僚各位からかなり広範にわたって相当具体的に質問をされておりまするので、私はできるだけ重複を避けるようにして、ここに五、六点だけ、どうしても調査団一行に内容的に伺っておきたい。それからまた、政府に対してのせっかくの答申でありますから、必ず実行でき得るような点などについてどうお考えになっておるか、こういう点について一つ伺いしてみたいと思います。  最初にお伺いしたいと思いますのは、調査団は、昭和四十二年までに石炭の現状のカロリー・ベースで五千五百万トンの需要確保が十分できる、こういうことを非常に強く答申をされ、また、同僚の質問に対してもお答えになっていますが、この点が私実は非常に不安というか疑問に思っておるのです。というのは、御存じのように、需要家が選択の自由を持っておる原則の上に立って、そして自由主義経済下において、需要家と供給者の間に自由契約というもので取引が行なわれておる、こういう形をそのまま状態にして五千五百万トンというものがはたして保障されるだろうかという点が、非常に問題であると思っております。  というのは、たとえば政府もしばしば国会などで答弁しておる点におきましても、大口需要家に長期契約の七割をやれば必ず安定化ができる、こういうことを相当強く強調してきております。ところが、それが一つも守られておりません。守られておらないから、今一そう石炭が深刻な問題になってきておるわけであります。というのは、たとえば、電力会社が大口の一番代表的なものですが、大口需要家の電力会社も契約通り石炭を引き取っておりません。おらないという証拠は、たとえば、九電力会社は今石炭代金として、渇水準備金という名のもとにおいて三百何十億円の金を持っております。これは石炭代金なんです。ところが雨の量が多くて、出水量が多くて、電力会社は水力電気でまかなっておる。従って石炭を買わなくてもいい。そういうところから石炭代金の、渇水準備金というそういう膨大なものが残っておる。ところがこの三百何十億円の金というものは、依然としてこれは電力会社の金です。これは石炭代金でありますから、本来なら政府がしかるべくこの金を貯炭その他に対して使うというようなことで持っておれば別ですが、そんなことはできません。さらにセメント会社ども長期契約をしておりますけれども、御存じのように、最近大部分が重油に切りかえてきてしまっております。国の機関である国鉄しかり。その他の大口需要家を見ましても、長期契約をしておりましても、やはり油が安ければ油に切りかえる。あるいは天然ガスが豊富になってくれば、これに切りかえていく。そういうことで切りかえていっても、供給者の方がそれは契約と違うじゃないかといって訴えても、どうすることもできません。従って調査団がつくられて、四十二年までに五千五百万トンを安定させようとするなら、万一貯炭ができた場合には国が責任を持って処置する、処分するというような形を法律制度の上で明確にされない限りにおいては、私はせっかくの調査団のこの五千五百万トンも依然として不安が続いていくと思っております。それからまた調査団は、四十二年までには在籍一人当り一カ月四十トン以上の石炭を出せ、それから炭価もこれこれ引き下げてこうしろということを言われておる。能率においてそういうことを指示し、価格においてそれを指示し、政府もこれを従来から言ってきておるわけです。そういうことを炭鉱側に指示命令する以上は、国がやはり責任を持つというのは当然じゃないでしょうか。それでなければ私は非常に片手落ちだと思いますが。これは重大な将来に対する問題だと思いますから、こういう点について団長の見通しの上に立たれたはっきりしたところをお聞かせ願いたいと思います。
  36. 有澤廣巳

    ○有澤参考人 五千五百万トンの需要の確保につきましては、原料炭の方は外貨の割当を行なうことによりまして、国内炭の弱粘結はこれをほとんど全部と言っていいほどのものを鉄鋼業に引き取っていただく方針であります。これは鉄鋼業が将来成長しないということになりますと、なかなか鉄鋼業といえどもこれを使うことができないのですけれども、私ども日本経済とともに鉄鋼業もまた成長すると考えておりますので、その需要の千五百万トンばかりのものをはじき出したわけであります。ですからこの方面の需要は、私はほとんど確保できるものだと考えます。この面には石油との競合ということはほとんどないのでありますから、その措置でやれるものと思います。  電力につきましては、これは昨年ですか一昨年になりましょうか、電力会社と長期引取の契約をしまして、四十二年度に二千三百万トンを引き取ってもらうという方針のもとに、今電力会社には所定の炭量を引き取ってもらっておる、こう私は信じております。なおこまかいことは、あとで稲葉委員から御説明を願うことにいたします。  それからもう一つは、今、私どもの方で能率を四十トン、それから在籍が十二万台ということを指示するというふうにお話になりましたが、これは何も私どもが指示をするわけではなくて、私ども考える構想から申しますと、昭和四十二年度ごろに私どもの描いておる構想、石炭産業の自立の構想が実現したときには、在籍が十二万台になるだろうし、また能率の方も全国平均で三十八・六トンという程度のものになるだろう、これは両方とも結果として出てきた数字でございます。私ども石炭産業の安定、自立、そういう状態を実は描いておるわけでございます。それが大体のところ私どもの計算では、昭和四十二年度ごろには実現の段階になるのではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。けれども、何と申しましても、石炭産業の安定、自立化のためには、政府がそれが必要である、そうでなければ石炭産業の安定も、従ってまた雇用の安定も、産業の自立もできないから、その方針のもとに国が施策を行なっていくというのでありますから、その意味におきまして、政府はこれから発生してくるいろいろな問題につきまして、十分の責務を持っておると信じます。それですから、いろいろな点においてそのことを答申の中で指摘してあるのであります。貯炭が出てくるかどうかというふうなことも、実は毎年々々のスクラップ・アンド・ビルド計画できまってくることだと思います。むろん年度中に急激に景気が悪くなって貯炭が出てくるというふうな場合も考えられますが、そういう場合には、石炭鉱業審議会においてそれに対する建議をすることもできましょう。むろん調査はいつもやっておりすまし、スクラップ・アンド・ビルドの年々の計画実施のトレースもやっております。雇用計画の場合も同様でございますが、計画通り実施されているかどうかという調査もやります。その調査とトレースのもとにおいて、石炭鉱業審議会がある場合には建議をする。政府が貯炭のための融資をすべきであるという建議にもなりましょう。でありますから、必ず法律がなければやっていけないというものではないと私は思います。石炭産業の安定と自立のためには、むろん政府がそれだけの責務を持っておるわけでございますし、その責務のある安定化と自立化について政府が施策をするのであります。その場合に石炭鉱業審議会の役割、機能というものが十分発揮できるものと私は存じております。今申しましたように、五千五百万トンの需要の確保につきましては、なお稲葉委員から御答弁を願うことにいたします。
  37. 稲葉秀三

    稲葉参考人 それでは私、需要の算定をやりましたので、そのことにつきましてお答え申し上げたいと思います。  先ほど伊藤先生がおっしゃいました、四十二年度に現状カロリー・ベースで五千五百万トンの需要を確保するということは、実はそのままにしておいても自然に四十二年度にそれだけの需要が出るということではございません。でき得る限りの方途を尽くして、それだけのものを最小限確保していかなければならない、こういったような構想で需要見通しと、それに対する政策を立てたわけであります。答申大網の中にもうたってございますが、かりに重油ボイラー規制法がなくなり、エネルギー選択の自由が発揮される、また電力や原料用炭につきましてもやや自由選択が進んでいくと仮定をいたしますると、昭和四十二年度はおきまして、大よそ三千万トンくらいの石炭の需要しかないだろう。現状の長期引取契約を延長しましても、四十二年度におきまして約五千万トン前後くらいしか需要が見積もられないだろう、こういったような前提の上に、さらに全体のエネルギー・バランスを大きく変えない、また、エネルギー価格に大きな変動を及ぼさない——ある程度変動というのは起こってくるだろうと思いますけれども、そういったような構想の中で石炭の需要を確保するという線が、この答申に出ているわけであります。  まず電力用炭でございますけれども、私たちは先ほど有澤団長が申されましたように、現状の長期引取契約に加えまして、毎年電力用炭を増大をしていただくという措置をとっております。さらにそれと並行いたしまして、現在長期引取契約というものがやや不明確になっております。それを法律までは参りませんけれども、もっとはっきり基礎づける、こういったようなことを推進をしていかねばならない。さらに電力用炭につきましては、将来一般炭の八〇%までが電力用炭になってしまいますので、共販機関とまでは申しませんけれども、清算機関をつくっていく、流通機構の改善もしていく、また価格の騰落といったようなものも調整をする、そういったような組織をとっていかねばならない、これに対する政府の協力が得られれば、この線は確実に引き取れるのではないかと思っております。  それから鉄鋼その他原料用炭でございますけれども、鉄鋼用炭につきましては、強粘結は日本にほとんどない、しかし弱粘結は日本で生産できる、こういったようなことでほとんど全部の弱粘結を国内生産でやっていこうといったようなことで、そして先ほど言われました、まだ輸入制限というものができる状態にあるわけでありますから、その政策と政府の措置をもちまして、この引き取りはほんとうにやろうという気があれば十分可能ではなかろうかと思っております。  問題になりまするのは、実は一般炭の中の電力を除きましたそのほかの石炭であります。実はそれが昭和三十六年度では約二千八百万トンでありましたが、三十七年度では二千六百万トンをやや下回る、つまり二百万トン以上一年にその部面の需要が下がっております。私たちも今後それが下がっていかざるを得ないだろう、こういうふうに想定をいたしました。そして自然にそれが下がっていくと仮定をいたしまして、四十二年度では三十六年度の半分の千四百万トン、四十五年度では九百万トン見当まで落ち込むのではなかろうかと考えます。そこでそれらを前提にいたしまして、可能な措置によってそれをいかに上げていくかということにつきまして、私たちは、セメント用炭でございますとか、一般ボイラー炭でございますとか、さらに家庭用暖房用炭でございますとか、こういうことに対する選択的な措置を実行していただく。さらに重油ボイラー規制法の延長とか、また重油消費税を財政措置とのにらみ合わせでとっていただくということにいたしまして、その傾向線よりは百五十万トン程度アップするようにするという線を出しているわけであります。問題になりますのは、電力や鉄鋼用炭が今後の日本経済の発展あるいは一般情勢との関連におきまして、はたして鉄がそれだけ生産されるか、また電力がそれだけ要るのかという問題がございましょう。その場合におきましては、先ほど有澤団長がおっしゃいましたように、今度の私たちの構想は、石炭鉱業審議会の中に需給部会というものをつくりまして、そして年度あるいは年度の途中におきまする需給調整というようなこともしていこう、こういうような構想を立てております。従いまして、この目標はやろうと思えば達成できるというふうに確信をいたしておる次第でございます。
  38. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 この将来に対する石炭の安定化の問題については、これはどうも見方の相違になって参ります。従って議論になりますから、これはより以上質問をすることは省きますが、しかし、そういう貯炭の場合に法律制度の上において政府責任を持つというようなことをやらなければ、なかなか安定は困難であろうということを一つ調査団にお含みを願っておきおす。  それから、先ほど調査団答申についての指示命令、これは私は調査団に対して申し上げたのではなくて、従来から政府がたとえば在籍一人当たり昭和三十八年度までに二十四トン出せ、炭価を千二百円下げろということを強く指示命令しておったのでありますから、調査団から在籍一人当たり四十トン以上というものが出されて参りますれば、政府は、おそらくこれを鬼の首でもとったようにして、従来のように非常にこれを強く指示するだろうことは、火を見るよりも明らかだと思っております。おそらく政府は、調査団答申の中で自分に有利なものならこれをとり、不利なものはこれを不問に付す、こういうことをとることもきわめて明らかだと思いますが、不問に付せられる点などについては、調査団から一つ監視をしてやっていただきたい。これを要望しておきます。  それから、価格の問題でございます。価格もやはり安定化をさせねば石炭の安定、数量の安定というものも結局不可能になってくるのじゃないか、こう思うわけでございます。先ほど申し上げ、お聞きしましたように、能率をこれまで上げろ、それから油と競争するためにはここまで炭価を下げろというようなことが出て参ります場合には、石炭の価格というものをどこかで安定化するというものがないと、なかなか維持できぬのじゃなかろうか。たとえば油の問題でありますが、なるほど今油は確かに共食い競争をしておる、確かに安いということを言われております。けれども御存じのように、油の原油というものは、みんな外国資本による輸入でございます。うわさによれば原油を持っておる外国石油資本は、この日本の製油、それから販売、こういうものもあわせて一手に握ろうとしておる。共食い競争をやらしめて、そして漸次倒していって、製油、販売、これまで握ろうというようなところから、たとえば丸善などを一つの例にあげておりますが、そういう点から、まず油が上がるということは今の場合なかなか考えられないのじゃないか。いな、あるいはもっとその計画で下げられてやるという可能性もあるのではないか。そういうことになりますと、これと競争する意味において、今つくられてある炭価というものは、はたして維持ができるだろうか。これはおそらく調査団でもそういうことをお話し合いになっただろう、私はそういう気がするのでございます。でありますから、たとえば三十八年までに千二百円下げる。そうすると油と競争ができると言われたのは、当時一キロリットル八千四百円の油の値段についてでありました。ところが、今は御存じのように六千五百円、いな六千円を割る、こういうことになってきておるわけでございます。そうすると、油と石炭と競争さすという上に立って石炭炭価を見るということは、これは全くむちゃじゃないか。だから、油がどうなろうとも、これこれの能率を上げていけばこれこれの炭価は妥当であるというものをどこかでやはり国が見る、安定炭価を見るという形をつくらなければ、私は石炭の安定化というものはあり得ない、こう思います。調査団でそういう点が具体的にされていないようでありますが、こういう点について一つお聞かせ願いたいと思います。
  39. 稲葉秀三

    稲葉参考人 今伊藤先生の御指摘になりました点は、非常に重要な点だと思っております。まず、石炭調査団で今度の需要見通しを立てますときに、一体重油の価格を幾らに計算してやったのかということになりますが、私たちは、おおむねC重油六千五百円の価格が維持される、こういったような想定に立って参りました。ところが今御指摘のように、重油につきましては六千五百円を現実に割っている価格も出て参っております。従いまして、それではもっと石炭が、自由選択の場合については需要が減る。また、需要を今の線に持っていくためには、もっと強力な措置が必要ではなかろうか、こういった問題も出てくるわけでございます。  ところで、私たちは今回の答申案におきましては、石炭の値段と重油の値段を並行させるという手はとっておりません。ただ従来の線からいたしまして、長期引取契約を可能ならしめるために、三十八年度までの千二百円引きは実行していただく、しかしその後におきましては、四十二年までは、価格は原料炭も一般炭も据え置きにしていく、こういったような線で推算をいたしております。その限りにおきましては、重油価格がどのような形になるか、はっきりした推定は立っておりませんけれども、重油が石炭に比べて消費効率が高い、また自然ほうっておきますと、自由選択が実行される、そういう条件のもとにおきましても、なおかつ五千五百万トンの供給を確保していくといったような線で案がつくられておるわけであります。その限りにおきまして、もとより政府の措置というものも必要でございますけれども石炭の五千五百万トンというものを維持するために、やはり他の産業や国民も御協力をしていただくといったような線が出ておるわけでございます。ただ重油の値段ということになるわけでございますが、私たちはその間重油の値段と石炭の値段についていろいろ討議をいたしました。しかし現在の重油の値段というものは、すでに先生が御指摘になりましたように、輸入原油の値段と見合いますと、どうしても値下がりし過ぎておる値段だ、このように感じております。従いまして、今後につきましては、建値制にするとか標準価格制をとるとかいうことにいたしまして、少なくとも現在の輸入原油に見合った重油値段というものが日本で確立さるべきだというふうに感じております。実はこの調査団委員のうちの三人は石炭審議会の委員でもございますので、そういったようなことに対する要望をいたしまして、今現実にそれが討議をされ実行されるようになっております。詳しいことはなかなかわかりませんけれども、私個人の推算では、その場合におきまして、それは油間のいろいろなバランスということがございますけれども、その線が確立をされますと、現在の輸入原油の値段に見合いましたC重油の値段は七千円を若干上回るというところになるはずだと考えております。さらに問題は、私たちの措置がどのように実行されるかということにあるわけでございますが、その上に、何もドイツでやっておりますように二千二百五十円とか二千五百円とかいう重油消費税をかけろとは言いませんけれども、重油消費税がかかるということになりますと、それがさらに上積みされるということになるかどうかわかりませんけれども、やはりそれにプラス・アルファする油の値段が実現をしてくるのではなかろうかと思います。従いまして、先のことは確実には判定はできかねますけれども、油の値段はこれからもどんどん安くなっていく、その結果石炭に大きな撹乱作用が起こってくるということをここ二年、三年、四年、五年に、わたって想定するということは必ずしも必要はなかろう、しかし調査団としては、おおむね現状ペースで維持をするといったような場合におきましても、なおかつこれだけの需要をつくっていかねばならない、そのための措置をとっていかねばならない、こういったような線を出しておるのだ、これを私は申し上げておきたいと思います。
  40. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 すでに答申されてありますように、四十二年までに千二百万トンの非能率炭鉱を買いつぶすということがつくられておるわけでありますが、このつくり方についてであります。ビルド山に対して近代化資金をつぎ込んで、それでこれを発展させていくということのみに重点を置いておられるのか、あるいは一トン当たりの炭価というものを相当お考えになって取り扱われておるのかどうかという点についてでありますが、ビルド山すなわち一トン当たりの炭価が安いとは断定できません。スクラップ山にならすとするような山におきましても、一トン当たりの炭価にすれば、たとえば一方は在籍一人当たり四十トン出ておるのに、片方は二十五トンしか出ておらぬ、十五トンの開きがある、しかし石炭一トン当たりの炭価は四十トンすなわち安いとは言えないところも相当ございます。さらにスクラップ山にならんとするようなところでも可採炭量が相当ある、同じ炭質である上に炭価も安いということであるなら、調査団としてのこの辺の見方をどういうところに置いておつくりになっておるのかということでございます。もう何でもいいからビルド山中心だ、炭価が高くても、近代化して能率さえ上げていけばいいんだということだけで見ておられるのか。いやそうではない、やはりせっかくの貴重な国内地下資源であるから、できるだけそれはとっていこう、ついては能率もここまで上げさせる。しかもトン当たりの炭価がビルド山より安い、であるなら、これは掘り尽くすまで相当掘らしていこうというようなことも含まれて扱われておるのかどうかという点でございます。たとえば一例をあげますと、最近大手会社が第二会社にどんどん落としていっておるところがあります。これはなぜ落とすかというと、親会社がやったのでは赤字でやっていけぬ。第二会社に落として、その炭だけを親会社がとれば、赤字をしょうよりもむしろは経営は楽になってくるというところから第二会社に落として、第二会社の炭だけを親会社がとって販売しておる。そういうところが最近非常に多くなってきておることは、御存じの通りであります。以上のような点等もございます。そういう点と、それからさらに今度、改正鉱業法が来たる通常国会に出て参ります。そうなりますと、お取り上げになっておりますように、鉱区の整理統合の問題が非常にやりやすくなってきます。こういう点等もございますから、そういう点をどのようにごらんになって、この千二百万トンの買いつぶしの根本的な見方、立て方というものをおつくりになっておるか、こういう点を一つ伺いしたいと思います。
  41. 有澤廣巳

    ○有澤参考人 ビルドするにいたしましても、スクラップするにいたしましても、ただ能率さえ上げればいいという関係でこれを考えているわけではありません。山ごとの炭層、炭質、埋蔵量可採炭量、それから立地、こういう面からその山について、ビルドまたはスクラップについて検討をしたわけでございます。でありますから、例をあげてはどうかと思いますけれども、常磐あたりではおそらくその能率はとても全国平均の三十八・六というふうなところにはいかないと思いますが、しかし、あすこは立地の条件もあります。それから共同火力との関連もあります。これは単に炭の販売先ということばかりでなくて、その火力で使った灰がまた山元に返ってきて坑道の充填になる。その間においては非常に複雑な要素があって、その結果能率は必ずしも全国的の水準には達しなくても、その山としては十分やっていける、こういう山もむろんあります。しかしまた、ビルドする限りは可採炭量がある程度なければ、ここに巨額の設備投資をかけて近代化するというわけにも参りません。ですから、そういう面においてはやはり可採炭量といいましょうか埋蔵炭量、こういうことを考えなければならないことになります。それからまた事業の構造が違いますので、一般炭よりはやはり原料炭の方のビルドの方がウエートが重くなってくる、こういうことも考えなければならない点でございます。  そういうわけでございますから、何も能率であるとか、あるいは価格とおっしゃいましたけれども、おそらくコストの問題でございましょうが、この採炭コストといいましょうか、出炭コストといいましょうか、あるいは山元の操炭原価とでも申しますか、これにはいろいろの要素が作用しております。今申し上げましたような自然的な条件、これがかなり大きく影響しておるわけでございます。そのほかには、まだ機械化が十分でないとか、そういうことのために、自然的条件はいいにかかわらず、割合に操炭原価が高くなっておるという山もむろんあります。そういう条件を一々検討いたしまして、そして大体スクラップ・アンド・ビルドの方針をはじき出してきたわけです。しかし現実には、私ども考えておるスクラップ・アンド・ビルドの方式に乗って実施されていくわけでございますから、そしてその実施にあたりましては、毎年々々その年のスクラップ・アンド・ビルドの方針を政府が策定いたしましたものを、石炭鉱業審議会に諮るわけでございます。その諮る方針に従いまして、ある山はスクラップし、ある山はこれだけビルドするという形に相なろうと思います。そうでございますから、今の御質問にありましたように、能率一点張りで、全国平均の能率に達しないからどう、あるいは達せしめるようにどうとかいうわけではなくて、もっぱらそういう自然的条件やあるいはその自然的条件とかみ合った設備状況、そういう観点からこれらの方針を打ち出したわけでございます。もしもっと技術的にこまかいことをお答えするということになりますれば、技術団の方でお答え申し上げることになろうと思います。
  42. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今団長から言われましたこまかい技術的な点は、対政府との間で政府施策を論議するときに一つ申し上げることにいたします。  さらにお尋ねいたしたいと思いますのは、非能率炭鉱の買いつぶしの点についてであります。先ほどから申し上げておりますように、四十二年までに千二百万トン、スクラップ山を買いつぶすということの、この資金の問題であります。たとえば合理化事業団というものが昭和三十年から発足いたしておりまして、今日まで非能率炭鉱を買いつぶした総トン数は、五百四十万トンであります。この買いつぶし資金がどういうところから出されているかと申し上げると、御存じのように、この資金の大部分は、残存炭鉱から出炭トン当たり二十円ずつ取っておるわけでございます。その金額が八十四億円でございます。それから開発銀行の利ざやから出してやっておる金が二十四億円でございます。政府が予算から補助しておる金が五億円でございます。政府が法律によって非能率炭鉱を買いつぶすことを制度としてやりながら、あしたは買いつぶされて葬式を出さなければならぬような山が、一日早く買いつぶされたために、自分が葬式の費用者を出さなければならぬ、こういうことは、これだけの国の経済力を持っておる日本としては、いささかどうかと実は私は思うわけでございます。五百四十万トンも買いつぶすのに、国は予算としてたった五億円しか出しておらぬのです。大部分は、とにかく今申し上げるように、きょうあってあすない山がトン当たり二十円ずつ出してやっておる、こういうことはあまりにこそくなんです。そこで調査団といたされては、この千二百万トン、スクラップ山を買いつぶそうという答申、それを実行されていくのに、従来のこの形のままでよろしいとお考えになっておるのかどうか。もしそうだとしますならば、これは大へんな間違いだと私は思います。従来のやり方は、あまりにこれは政府が無責任である。こういうことでは結局買いつぶし代金も安いから、従って第一に労働者に対する諸支払い、あるいは鉱害あるいは公租公課、その次に炭鉱等で商売しておった、そういうところに払う金がございませんから、お調べになったと思いますが、福岡、佐賀、長崎だけでも、買いつぶされた山が安く買い取られたために自分の方に支払われる金がないというので、百億円以上も売掛代金がとれないでいるという悲痛な訴えを私ども聞いて参りました。こういう点などもあるわけでございますから、従って、千二百万トン買いつぶせということを答申されましたその資金の出し方について、どういうところから金を出してこれを買いつぶそうとされておるのか、そういう点に対して一つお聞かせを願いたい。
  43. 平田敬一郎

    ○平田参考人 今のお話は、過去に関する限りは伊藤先生のお話のように、主として業界のお互いの共助組織と申しますか、そういう組織でできていた結果、そうだったと思いますが、たしか本年、三十七年からだと思いますが それがだいぶ変わりまして、業者の負担は大体二割ぐらいで、あと八割は政府が支出するということに変わっておると思います。私ども、場合によっては業者負担をなくしてやるというところまで踏み切れるかどうか、これも検討してみたのですが、そこまで行くのはちょっと行き過ぎだろうというので、そういうことでいたしておるわけでございます。従いまして、その点は過去に比べますと大幅に改善になるということで御了承願いたいと思う次第でございます。
  44. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 時間の関係等もややなにしてきておるようですから、もう二点だけちょっと簡単なことでお伺いします。  離職者雇用の安定の問題、これはもう同僚各位から非常にこまかくお尋ねをしておりますから、蛇足になると思いますが、ただ一点しぼってお伺いしておきたいと思います。御存じのように、今日までの離職者の世話、再就職のあっせん、こういう点が非常にばらばらでございます。いわば政府としての一本の強力な筋を通して、責任を持って政府がこの離職者の世話、再就職のあっせん、こういうものはやられてないわけで、全くばらばらです。ばらばらであるというところから、実は御存じのように、今日この収拾のつかないような状態が依然として残っておると申し上げなければならぬわけであります。でありますから、この点については調査団も相当こまかく答申を書かれておる。また相当注意深くいろいろ問題をこまかくお取り上げになってやられておるという点を、私ども大いに多とするわけであります。答申案の中に、実務ということをお書きになっておられるようであります。この実務ということは、そういうばらばらのものを統合して、そして法律、制度として政府がやらなければならないのであるぞという、そういう強いものを含んだ意味において実務とお書きになっておられるかどうかということでございます。今申し上げるように、ばらばらの状態では解決ができないわけでありますから、従ってこれを統一するためにはどうしても雇用の安定化に対する法律、制度を作って、政府責任においてやるということ以外には、私はこの問題の解決の方針が立たない、また不安を一掃することもできない、こう思うのでありますが、こういう点に対する実務の解釈、それから今私が申し上げておるような点等について、どういうような調査団として御議論をされ、せっかくたくさんお取り上げになっていますから、これを百パーセント成果を上げるためにはどうなければならないのだということ、結論として、そういうことをお出しになって、そして政府にこの点は強く答申して行なわしめなければならぬということなどについて、一つそういう点等非常に重大な問題でありますからお聞かせ願いたい。
  45. 稲葉秀三

    稲葉参考人 ちょっと伊藤先生にお伺いしたいのですが、実務じゃなくて責務というところじゃないでしょうか。
  46. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 そうでしたか、私ちょっと——責務です、責務でけっこうです。
  47. 稲葉秀三

    稲葉参考人 御存じのように、今度の石炭調査団におきましては、雇用の安定の問題と石炭産業の安定の問題をどのようにうまく処理をしていくかということにつきまして、一番苦労をいたしました。そこで離職者問題につきましては、過去におきまして十分それがうまく処理をされていない、こういう現実を私たちは無視をすることができませんでした。しかし今後、先ほど申し上げました私たちが勧告をいたしました線を実行いたして参りますと、スクラップ・アンド・ビルドによりまして相当離職者が出てくるということは避けがたいように感ぜられます。そこで、その離職者に対しましてどのように責任のある処置をするか、企業もしていただかねばなりませんが、政府ももっと責任をとっていただかねばならぬ、こういったようなことから、責務という言葉を使わしていただいたわけであります。  まず第一に、私たち組織の問題といたしましては、石炭対策関係閣僚会議というものを強化していただきたい。それから今度はその下部機関におかれまして、毎年度また年度の途中におきまして、どれだけの離職者をお世話できるのかという計画をつくっていただきたい。そしてそれを改組されます石炭鉱業審議会雇用計画としてお出しを願いたい。そして他方において、私たちが今度答申をいたしました線におきます年々の合理化整備計画、こういうものとにらみ合わせて御検討願う。そしてそれによりまして、現実の場合におきましては炭田別、地域別に作られます計画に従って、それぞれの会社、鉱山で問題が処理されるわけでございますが、この中で、会社が内部で配置転換をするとか、また会社がつくりまするところでお世話できる人たちとか、さらには政府政府関係機関におきまして処理をされる人たちとか、こういったような者を除きましては、広域職業紹介で処理をしていただく。そのために、手帳をお渡しいたしましたり、さらには訓練を受けていただく。そしてその人たちに対しましては、責任のある安定職場をつくっていただく。こういう線を出しております。私たちは、これによりまして炭鉱離職者安定職場の供給は可能だと思っております。しかし、それができ得ないという場合も想定をいたしまして、ここにございまする雇用促進手当制度というものを要望しているわけであります。大体大まかに申しますると、以上のような措置で現実に実行に移されると思います。  なお、九州におきましては、臨時石炭対策本部というものを設置いたしまして、そして関係機関、また関係のいろいろな方たちとの機動的な運営、こういったようなものを進めていかねばならない、このような線を出しておるわけでございます。
  48. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 先ほど責務を実務と言ったのは、実は私の方で印刷しましたものに誤植がございまして、はなはだどうも……。  最後に、これはお伺いするということよりも、むしろお願いしておきたいことでございます。それは同僚各位からも非常に質問を繰り返されておることでございますが、例の炭鉱がなくなったあとの市町村財政、あるいはまたその市町村の再建の問題でございます。このことはもうずいぶん申し上げられてありますから、また御答弁されてありますから繰り返しませんが、聞くところによれば、調査団としては、大綱の答申はされてあるけれども、それぞれについて詳細な説明書はまだお出しになっておらぬということを伺っております。それが事実とすれば、説明の中にでも強く出していただきたいというのが私のお願いでありますが、御存じのように、炭鉱の盛んなときの市町村というものは、それによって持てておったといっていいわけであります。ところが、炭鉱がこうしてだんだん買いつぶされてなくなってきてしまったそのあとの市町村というものは、御承知のように非常に悲惨でございます。よくこの市町村の代表が、炭鉱がなくなったあと、鉱害と失業対策事業と生活保護と、被害を起こすボタ山と貧乏神だけを置いていかれてしまって、いかに悲惨で悲劇であるかということを強く訴えております。そういうところから産炭地振興事業として炭鉱にかわるものを興そうといって今後やられるわけであります。しかし、何はさておいても、こういう産炭地振興事業をそれぞれ興そうとする場合に、やはり一番大事なのは鉱害の問題だと思います。鉱害が完全に復旧されてその地盤が固まりませんと、工場も出て参りません。また、住宅団地をつくるとしても、高層建築などはできません。そういう炭鉱にかわる新しい事業を興そうとする場合に、やはり何といっても鉱害を一日も早く復旧して、炭鉱にかわるものを迎え得る条件をつくってやっていくということが根本の問題だと思います。ところが、この鉱害の問題はなかなか入り乱れておりまして、あの地区はAの鉱害だ、いやBの鉱害だ、いやCの鉱害だというので、そういう争いのために何十年も見捨てられておるものもたくさんございます。それから、最近は特に業者負担というものがなかなかできないで、結局無権者鉱害として国がやらざるを得ないというようなことになってきております。しかし、完全に国がやるのではありません。やはり自治体の負担もございます。そういう点等で鉱害の復旧事業というものは、なかなか思うようにやれないでおります。そういう点等は非常に重大な問題でございます。これは炭鉱にかわる産炭地振興のための非常に基礎的な条件でございますし、市町村財政の確立あるいはその他炭鉱のなくなったあとの悲惨な状態を明るく解決するために非常に重要な点でございます。そういう点に対して、さっき井手委員も、こんな大きな問題に百何十字しかないじゃないかということを強く申されておりましたが、まことにそうだと私も思います。でありますから、でき得れば炭鉱のなくなったあとの悲痛なる訴えを、調査団として説明書の中にでもおつけになって、政府側に、これを取り上げてやらなければならぬ、炭鉱の再起の道はこれよりほかにないぞというような点等強くやっていただきたいということを、これは御答弁していただいてもけっこうですし、何でしたらしていただかぬでも、これは強くお願いをすることでございます。
  49. 有澤廣巳

    ○有澤参考人 大綱でございまして、私ども政府に要望する事項だけを一応書いてありますので、そういう事項を私ども考えました背景につきましては、本報告書の中に十分記入するつもりであります。御要望のあった事柄も、おそらくそのときに十分配慮でき得ることだと思います。
  50. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 中村重光君に発言を許します。  なお、調査団の方に、恐縮ですが、時間の関係で昼飯を抜きで審議を続行して、大体二時ごろ済ませる予定にしておりますから、御了承願います。
  51. 中村重光

    中村(重)委員 有澤先生外調査団の諸先生、長い間の御苦労に感謝いたします。エネルギーの事情は、まだまだ先生たちもなかなか釈放されるような情勢でないと思いますから、一つよろしく御協力をお願いいたしたいと思います。  二日間にわたって、石炭事情に非常に詳しい同僚委員から詳細に質問がありましたので、私お尋ねする面はほとんどないと思います。ただ具体的な問題で少しくお尋ねしたいと思いますが、その前に基本的な点で一、二お伺いしてみたいと思います。  御承知の通りに、四月五日、池田総理は炭労の代表に回答したわけであります。その回答の内容としては、まず雇用安定を第一義にする、さらに国際収支、第三には安全保障、この三つの問題を中心として有力な調査団検討してもらう、そして石炭政策を確定していく、こういうことであったわけであります。それに基づいての取り組みをやっていただきまして、先日有澤先生から基本的な考え方、また具体的な考え方については御説明もいただきましたし、答申大綱も私たち配付を受けておるわけであります。ところが現実の問題といたしましては、炭労の諸君は、雇用を第一義とするという四月五日の炭労に対する回答は、七万以上の首切りという形になって現われた、これは全く裏切られた、この答申は受け入れられるべきものではない、こういったことで、御承知の通り現在三千名以上の動員が行なわれ、雇用安定を第一義とする総理の炭労に対する回答を生かして、そして石炭産業の安定をはかってもらいたい、こういう要求をして戦っておることは御承知の通りであります。調査団といたしましても、この答申に非常に長い間苦労されて取り組み、また大綱を示されただけに、いろいろ複雑な感情もあろうかと思うわけであります。そこでこの三つ、国際収支雇用安定さらに安全保障という問題は、一つ一つ切り離されておるものではないのであって、これは密接不可分の関係にある、この点をどのようにお考えになり判断をされておられるのか。あまり私からくどく申し上げる必要はないと思いますが、雇用の安定ということは、やはり石炭労働者は山元において雇用を安定してもらいたい。もちろん自然減耗ということを否定することでないことは、炭労の諸君もるる言っておるわけであります。国際収支ということは、やはり外国から輸入する石油、そういうものよりも国内の地下資源を十分生かしていくという考え方というものが、池田総理の頭を支配して、そういう回答をしておるのだと考えるわけです。安全保障ということは、これはまた当然外国より輸入するエネルギーというものは、安全供給という面においては安全性というものがない、こういうことに一応考えられると思いますので、従ってこの炭労に回答された三つの問題というものは、今炭労の諸君が総理に要求をしておることに対する総理の回答という面において、当然その要求自体が生かされてくる。調査団に対して調査を依頼し、そして石炭鉱業の安定をはからせる政策を打ち出してもらいたいということは、すなわち炭労の要求が生かされるということでなければならなかったのじゃないか。そうなって参りますと、まことに残念ながら、この答申大綱は、いわゆる経済合理性企業合理性ということに重点が置かれ、そしてほんとうの意味の総理の回答というものが生かされていないといううらみがあるのではないか、このような感じを私は受けるわけです。従いまして、この点に対しましての考え方一つ聞かしていただきたい、こう思うわけであります。
  52. 有澤廣巳

    ○有澤参考人 四月六日ですか、閣議決定、並びに総理と炭労の幹部の方との会見の席上で、今御指摘になりました三つの問題が話し合いの中心であった、総理もそういうことを申されたということを私ども調査を始めるに先立ちまして政府から知らされております。でありますから、この三つの問題につきましては、私ども常に念頭において調査を続けたと申し上げることができます。  それで第一義的な雇用の安定。私ども実際現地を回ってみましたときにも、安住して山とともに生きたい、こういう労務者の非常に切実な声を聞きましたし、それは今もって胸に長く残っておるところであります。そこで私ども考え方といたしましては、できるだけ山で多く雇用を維持しよう、こういう考え方から出発いたしました。この場合何が何でも全部のものを、自然減耗はともかくとして、全部のものを山で雇用を維持するというふうな考え方をとろうとすればとれないことはないと思いますが、しかしそれでは国民の方がそのままでは承知をしないのではないか。あるいは国民経済的に考えますと、どうも大きな犠牲を他の産業にかけるのではなかろうか。総理大臣とのお話の間にも、国際収支という問題があります。国際収支の問題は、むろん石油はこれは海外から入ってくるエネルギーですから、これが多くなれば、国際収支に大きな影響を持つ。国際収支を悪くするということでありましようけれども、他方から申しますと、高いエネルギーを使う産業にとりましては、今度は輸出がなかなかむずかしくなる。セメントにいたしましても、陶磁器にいたしましても、みなそうであります。今日陶磁器、セメントあたりがほとんど全部といっていいほど石炭から石油に転換しております事情を、業者の方々や経営者の方々から承ってみますと、とても石炭をたいておったのでは国際競争ができないのだ、こう言っております。また事実二割とか二割五分燃料コストがアップする、こういうことであります。そういうふうに考えて参りましたので、私どもは、それではどうしてもこの場合石炭の需要を確保する、できるだけ需要をつけてみよう、しかしその需要をつける場合にも、そう著しく経済性を害しないように、むろん多少は害しますけれども、著しく害しないように、そしてまた技術的進歩にも著しく逆行しないような形で需要を最大につけてみるような考え方で出発してみよう、こういう調査の態度をとったわけであります。  これはドイツでも、やはり石炭問題が日本と同じような問題になっておりまして、ドイツ政府は学術顧問団、つまりドイツにおけるエネルギー方面のエキスパートを集めまして調査団をつくって、そしてこの調査団答申をドイツ政府は待ったわけでございます。この調査団は、約一年半かかって調査報告をことしの五月作成いたしましたものを公表しました。政府にも提出いたしました。この調査報告によってみましても、やはりドイツにおける全エネルギーの中に占める石炭の位置づけという一つの項目があります。この石炭の位置づけ、ちょうどこれは日本でいえば総合エネルギー政策における石炭の位置づけというのと同じねらいかと思うのですけれども、この位置づけを決定していくにあたりまして、このドイツ調査団はやはり需要の想定から出発しております。いろいろ需要について分析をいたしました。そしてできるだけ安全供給、安全保障の立場も考え、また国際収支観点をも取り入れて、需要の想定をやっておるのであります。その想定の仕方は今申しましたように私どももとりました。経済性を著しく害しないように、そしてまた、技術的進歩にあまりはなはだしく反しないような形において、国際収支安全保障という見地を加味して需要をつける、こういう形で結論を出しておるのであります。その結論は大へんどもにとりましては意外なことでありますけれども、ドイツの石炭の需要、従って石炭の確保は、一九七五年をめどにしておりますけれども、一九六〇年の一億四千三百万トンから場合によっては一億二千万トンないしは八千五百万トンばかりに減るんだ、これがこの学術顧問団の調査報告における石炭の位置づけになっております。従って場合によりましては、ドイツにおいての石炭は、一九六〇年に対しまして六〇%程度にまで生産が落ちる、こういう結論になっております。  しかし私どもはそうではなくて、むしろ石炭は少なくとも今の外貨の収支の問題や安全保障の問題から申しまして、できるだけもっと石炭をつけるように考えたわけでございます。それだからこそ、今まで二千三百万トン電力に引き取ってもらおうと考えておりましたものを、さらに七百万トンより多く引き取ってもらう、この限りにおいてはそう著しく経済性を害しないし、また、技術的進歩にそう大きく反することにはならない、こういう考え方から七百万トンをさらに追加してみたわけであります。その他の産業における石炭需要の減少に対しましても、私どもは、いろいろの政府の措置をもってこれを減らさないようにしてもらおう、こういうふうな考え方をとったのであります。ドイツの場合におきましては、そういう直接的な需要確保の措置はとるべきではない、これがこの報告の一つ結論になっております。むしろ関税であるとか、消費税であるとか、そういうプライス・メカニズムを使って競争させるんだ。しかし競争するといいましても、とにかくこのエネルギー革命の中でありますから、石炭はどうしても減っていく。そういう形で今申し上げましたような減少をドイツにおいては余儀ないものと見ておるのでありますが、私どもはそうじゃなくて、価格の点はともかくとして、需要を確保するんだ、そしてまた輸入数量につきましても、石炭については輸入制限をするんだ、こういう建前をとっておるのでありまして、この点におきましてはドイツの場合と日本の場合では全く違っております。われわれはプライス・メカニズムについては、これをもってしては石炭需要を確保できないのは明らかであるから、従って直接的な需要確保の仕方並びに輸入数量の制限、こういうことを打ち出したのであります。そういうふうにして需要を計算いたしました結果が、私ども最初に予想しておりました六千万トンには達しなかった。まことに私どもはこれは遺憾に思うのです。しかし一般産業における需要の減り方というものが、先ほど稲葉参考人からお答えいたしましたように、著しい減り方になります結果、ついに実トン数で五千七百万トンという数字に相なったのであります。その点から申しますと、私ども最初、山でなるべく多くの雇用者を維持したい、こういう非常に強い希望を持っておったのでありますけれども、それがこの需要のワクによりまして制約を受けざるを得ないという結果に相なったのであります。これは私は非常にいい結果だとは思っておりません。まことに情ない悲しい結果だと思うのでありますが、しかしとにかく需要がなくてはこの石炭の生産ということを行なうわけには参りません。一方、貯炭の山を築きながら生産を行なう、そういう産業はあり得ないと私は思います。そこでそういう結果に相なってきましたので、私もなお念のために総理大臣に連絡いたしまして、あなたのお考えになっている雇用の安定というのは、できるだけ全部山で雇用を安定するというお考えですかと実はお伺いいたしたのです。そうしたら総理大臣のお答えは、必ずしもそうではないのだ、しかしその点は君たちの最善と考える道を進んで調査をしてもらいたい、こういうお答えでありました。そこで、私どもは今までの調査の作業を進めました。その結果在籍十二万台という結論になりました。そこで、かなり大ぜいの離職者がどうしても出る。山でもっと人を維持しようとするためには、あるいは第二会社をつくるということも考えられるかもしれません。しかし私どもは、第二会社をつくったり、あるいは労働条件を引き下げて山で大ぜいの人をかかえていくというのは、必ずしもいい方策だとは考えなかったのであります。十二万台の在籍者ということになりましたので、離職者かなり大ぜいの数に上るので、従ってこの離職者については他の産業、他の場所において十分な安定職場をつくり出さなければならないのだ、こういう考え方になったのであります。それも、そう安定した職場を一年間にたくさんつくるということは必ずしもうまくいかないこともあり得るだろうから、このスクラップ・アンド・ビルド実施の方式については十分計画的に、そしてこの離職者の問題がうまく解決がつくような方式をここに打ち出さなければならないということ、一つはその方式を考えなければならないということ、方式を考えるばかりでなく、今度はその方式によって、実際離職される方々に対しましては十分の安定した職場をここに用意をしなければいかぬということ、しかし経済のいろいろな事情の変動もありましようから、全部その計画通りいかない場合に、多少の落ちこぼれがありましても、それを受けとめ得るような措置まで考えなければならない、こういうふうに考えまして、答申に書いてありますようないろいろな離職者対策考えたわけでございます。でありますから、私ども最初の出発は、できるだけ山元に多くの雇用者を引きとめたい、こういう点から出発はいたしたのですけれども、しかし日本経済の場合におきましても、石炭需要の確保ということ、あるいはそれの拡大ということはなかなかむずかしい。私どもの努力にもかかわらず、これを一そう拡大せしめるところにまでいき得なかったことはまことに残念でありますが、しかしドイツの場合はむしろ石炭は少し減るという形で石炭問題を調査団考えておる。これは私はむしろ一つの撤収作戦であろうと考えます。私どもは少なくとも五千五百万トン以上に石炭を持っていかなければならない。それがためには需要を直接に確保をする、需要を保障する、輸入の数量制限もやる、こういう考え方を根本にとっておりますところが、むしろ私は、あえて日本においては石炭の防衛作戦をとっておるのだ、こういうふうに実は考えておる次第でございます。  言葉の足りない点がまだたくさんあろうかと思いますが、基本的な考え方は以上のようであります。
  53. 中村重光

    中村(重)委員 私の割当時間が一時半までなもので、ただいまの御答弁に対してなお突っ込んでお尋ねをしてみなければならぬが、しかしそのお尋ねは結局議論になって参ります。もうすでに大綱は出されております。その後のいろいろな場において、なお一つこういった問題については御意見も伺ってみなければならぬ。  いろいろ外国の例もお出しになりましたが、やはりこのエネルギー事情というものは、日本と外国との相違というものがある。今、日本におけるエネルギーの大宗とする石油の輸入というものは、日本の場合非常に安定性がないということ、そういう面において外国の例を日本に実際当てはめるという場合に、異なった考え方のもとに取り組まなければならぬという面があるということは私は否定できない、こう思うわけであります。もちろんまた日本と事情を同じくするという諸国もこれはなきにしもあらず。ヨーロッパ諸国におきましても、エネルギーの自由選択、いわゆる競争というように有澤先生が今おっしゃったような面に進められておるということは、これは否定できませんけれども、やはり安全保障ということをこの基本的な方針にしておるということは事実である、こう思うわけであります。  なおまた、いろいろと経済合理性といったようなことについてもお話がございました。五千五百万トン以上の需要はないのだ。この答えは、先生方がお出しになった答えは、現在の五千五百万トンの計画というものと数字が結局同じだということになったわけで、このことは非常に残念であると、数回にわたって有澤先生からもお話があったわけであります。私どもは、この五千五百万トンということは、先日岡田委員からも御指摘があったと思うのでございますが、三百万トン拡大生産をするという場合に、八千名という炭鉱労働者が山で働くことができる、こういうことを考えてみますと、経済合理性とか企業合理性ということは、単に炭を生産し、この需要がこれ以上伸びないのだという、石炭だけを切り離して、経済合理性、いわゆる企業合理性ということを考えるべきではないのではないか。ただいま貿易の問題もお話がございました。この日本の貿易が伸びないということも、そのエネルギーの消費量というものがその生産の中でどれだけ占めるかといったような問題を切り離しては考えられない。日本の貿易が伸びないということはいろいろな要素がある、こう思うわけです。  こういったような問題は別といたしまして、石炭の需要をもっと拡大してくるという場合に、非常に節減される経費というものが出てくる。国民経済という問題は、このことを離れては私は考えられない。先ほど来各委員から御指摘がございましたように、この答申大綱に基づいてスクラップを強化していく、こういうことになって参りますと、産炭地は非常に疲弊をしてくる。従って、産炭地の市町村を救済するためには、いわゆる財政的な援助というものをしていかなければならない。このための国の出費があるわけでございます。また、この答申大綱の中にございますように、失業保険というものを出さなければならない。さらに、就職ができない場合に就職促進手当というものも出さなければならない。しかもこれは三年間を保証するのだ。もちろんこれは三年間そのまま就職をしないということは考えられないということも言えるかもしれませんけれども、現在の日本経済事情雇用事情ということを考えて参りますと、楽観できない面が私はあろうかと思う。そういったいろいろな諸経費というものが相当膨大になってくることも考えてみますと、国民経済という面から、石炭の需要五千五百万トンをふやすということは、これは国民に対して非常に不利になるんだ、国民経済的に無理だという断定の仕方というものには、私は問題があると思う。国民経済というものはやはり総合的な、全体的な立場の上に立って判断をしていかなければならないんじゃないか、そのように考えるわけであります。しかし、こういった問題をいろいろと議論をして参りますと、先ほど申し上げましたように時間がございません。私は、ただいま申し上げましたことに対しての異論なり反論があるということは、答申をお出しになっておるのでございますから、よくわかります。しかしこれは他日に譲りたいと思っております。  そこで具体的な問題でお尋ねをいたしますが、この答申大綱に基づきましてこれを実施していきます場合に、法定化しなければならぬということがたくさんあろうかと思います。この点に対して一つ伺ってみたいと思うのでありますが、法定化しなければならぬというのは大体どの程度のものであるか、それを一つ伺ってみたいと思います。
  54. 有澤廣巳

    ○有澤参考人 法律事項はかなりたくさんあると思いますが、第一は石炭鉱業審議会の改組という問題、これが一つの法律事項になろうと思います。それから就職促進手当の制度をつくるということ、これも法律事項だと思います。あとは、鉱区調整の問題もそうでございます。それから会社の規制法も法律化しなければならぬと思います。それから手帳制度、手帳を交付して、この手帳を持っている方のめんどうをずっととこんまで見ていくという手帳交付制度も、あるいは法律事項になるかもしれません。まだたくさんあるかもしれませんけれども、今思いついたものをあげたわけでございます。
  55. 中村重光

    中村(重)委員 それでは参考までに伺っておきたいと思いますが、私がこの答申大綱から法律事項として大体こういうものが必要になってくるのじゃないかと思っておりますことを申し上げてみたいと思います。重油ボイラー規制法の延長、それから重油消費税の創設、これはそのいずれかをとれ、こういったような答申になっております。最低賃金制の実施、求職手帳制の実施、それから就職促進手当の支給、石炭鉱業審議会の改組、それから石炭対策本部に対する法律事項、それから需要の一手清算機関の新設、鉱区調整、それから石炭鉱山整理促進の交付金の問題、ただいまお話がございました会社経理法の規制、それから保安法の改正、臨時鉱害復旧法の改正、産炭地振興並びに産炭地域振興事業団法のの改正、こういった問題は、これは当然法律事項として必要である、こう考えるのでございますが、そのように考えてよろしゅうございますか。
  56. 有澤廣巳

    ○有澤参考人 大体そうだと思いますが、一手買い取り機関、あれは法律を要するかどうか、ちょっと疑問だと思いますが……。
  57. 中村重光

    中村(重)委員 それは清算機関というのがございます。このことに対して、これも他日いろいろお尋ねしたいと思います。  それから、この重油ボイラーの規制法と重油消費税、これはいずれかということをいっておるのであります。ところが、これは同じようであって必ずしも同じではない、異質のものだと考えられます。しかも先日有澤先生の御答弁の中には、重油消費税というのは石油が非常に安いから、これを消費税をかけて高くするといったような御答弁がございました。そうなって参りますと、これは非常に規制法の問題と異質の形になって参ります。これはどういう考え方からそのいずれかとおっしゃったのか、二つともこれは必要になって参りましょう。二つともとはっきりおっしゃるか、そのいずれかとおっしゃるならば、それを消費税なら消費税ということをはっきりおっしゃることが必要ではなかったのか、むしろ私はいずれも必要である、こういう態度でお取り組みになる必要があったと思う。ここらあたりはもう有力な調査団でございますから、はっきりとなさることが私は適当じゃないか、こう考えるのでございます。まずこの点に対して伺ってみたいと思います。
  58. 平田敬一郎

    ○平田参考人 今の点につきましては、実はだいぶ調査団としましてはいろいろ検討してみたわけでございますが、重油ボイラー規制法も、先ほど有澤団長からお話がございましたように、鉄鋼と電力につきましては少なくとも、これは将来の大事な需要の大部分を占めるものでございますので、原料炭については輸入規制と申しますか、これを少なくとも四十二年までは続けよう、その裏づけのもとに需要を確保しよう。電力につきましては、御承知の通り長期引取契約、その裏づけのもとにやる。鉄鋼用炭につきましても長期引取契約を結んで裏づけよう。電力につきましては、主として長期取引契約、それをバック・アップするために契約ができるような必要な措置を政府はとってほしい。それから発電所の計画その他につきましては、政府計画が相当入って参りますので、石炭火力の発電所をどういうふうにつくっていくか、その辺もできるだけ政府の直接的方法で確保していこう。ところが一般のその他の電力と原料炭以外の需要確保対策につきましては、実は報告にもいろいろ載せております。たとえばそこに書いております幾つかの方法をあげておりますが、率直に申し上げまして、直接的にやるという手段があまりない。結局考えますと、ボイラー規制法と、それから石油消費税による間接的な需要確保になろうかと思います。ボイラー規制法は実際上運用の実情を見てみますと石油の方が値段が安いのみならず、さっき団長お話しになりましたように、技術的進歩と申しますか、経済的進保の条件にかなっておるものが多いものですから、結局認可せざるを得ない。これはおそらく続けましてもそういうことになるだろう、従って、これに大きく期待するわけにいかぬ。しかし私どもとしましては、一般産業の需要がだいぶ減りますので、そういうことについても若干の減少の速度を緩和する、こう私いつか申し上げましたが、そういうような役割を果たし得るのじゃないか。しかしこれはどの程度まで実施態勢がいけるかということにも関連してきますので、調査団として、断定するよりも、やはり結論政府に出してもらった方がいいのじゃないか。  それから石油消費税につきましては、これも先ほど話がありましたように、たとえば三千円くらい——石油消費税はドイツは二千二百五十円ですか課税しておりますが、二千五百円から三千円まで課税しますと、これはおそらく間接手段として相当のブレーキになると思いますが、そこまでいきますと、一般産業が貿易自由化にさらされて国際競争力を強化しなくちゃならぬ、こういうときに、そういう方式を日本で適用するのは著しく無理だ、それは、有澤団長から経済合理性に著しく反しない限りとか、技術進歩を著しく阻害しない限りとかいうお言葉がありましたが、そういうことの当てはまる一つの例だと思いますが、従って私どもといたしましては、そういうことにならぬ範囲内において、軽度と申しますか、ある程度石油消費税を課税することによって、石油の価格が異常な値下りをするということに対する一つのチェック材料と申しますかになり得るのじゃないか、そういうことも考えて、この問題に対しては私どもは、政府がよく検討した上できめてほしい、こういう考えであります。なお、石油消費税に関しましては、もう一つ実はほかのところにも書いてありますが、御承知の通り、この石炭対策では相当大きな財政支出を必要とするわけでございます。従いまして、そういう財政支出は、おそらく類似なことが他の産業についても、程度の差こそあれあり得ると思いますが、石炭の場合は特にこれが、先ほどから議論になりましたように、雇用の安定の上においてきわめて重要な問題をはらんでおる、それからもう一つは、エネルギーとしましては、何といいましても日本では石炭が重要な産業だと私思うのです。そういう二つの点からいきまして、石炭についてそれぞれ必要な財政支出、財政負担を政府が惜しむべきでない。先ほど井出さんの質問に抽象的にお答えして恐縮ですが、趣旨としましてはあくまでも必要な資金は出すべきだ、確保すべきだということは当然書いております。言わなかっただけです。そういうことに関連しますと、財源対策としても石油消費税を課税して、それによって必要な対策をしていく、ほかの産業よりも手厚い対策政府はしていくということになりますので、そういうことをやるにつきましても、石油消費税から財源を求めるということは考え方としていいのじゃないか。しかしそうなると、問題は産業に及ぼす影響とか税制全般の問題あるいは財政全般の問題になりますので、そこまで調査団が断定を下した答申をやるのはどうだろうということで、趣旨は十分話してございますが、報告としましてはそういうことをよく検討して政府できめてほしい、こういう趣旨になっておりますことを、趣旨だけ申し上げまして……。
  59. 中村重光

    中村(重)委員 伺っておくにとどめます。  次に、鉱区調整のことで伺います。この前有澤先生からも同僚委員質問に対してお答えになったのですが、このことは「生産構造を大規模化、集約化して石炭資源の合理的な開発を行なって行くために必要な鉱区調整」云々、こういうように書いておるのであります。これも千二百万トンのスクラップをする、こういうことに、今当面している問題、この鉱区の調整、整理統合をやっていないことが非常なガンになっておるというようなことで、今日鉱区の調整、整理統合が当面打開するために必要であるということは常識になっております。現在ボーダー・ライン層にある山が、この鉱区の調整をやる、整理統合をやるということでボーダー・ラインを脱出することができるということは、私は現実であろうと思います。大手もそういう問題がありますが、中小は特にこのことに対して法の改正を求めておるわけであります。それにもかかわらず、当面大きな壁になっておるこの鉱区の整理統合を積極的にやれということを答申なさらないで、将来生産を大規模化、集約化していくために必要ならばやれというようなことは、どうしても納得いかないのであります。このことに対して一つ考え方を伺ってみたいと思います。
  60. 平田敬一郎

    ○平田参考人 さっきのお尋ねの「または」というのは、及びまたはということで、いずれかでなければならぬということでなく、これは二つの場合でも一つの場合でもいずれでもいい、そういう意味で使っておりますことをつけ加えて申し上げておきます。  それから今の鉱区統合の問題につきましては、実は簡単な言葉でございますが、二つの非常に重大な字句が入っておることをさらにつけ加えておきます。一つは、現行法を改正してということ。今の臨時の措置法でございますが、これは御承知の通り消極的な意味の一種の鉱区の調整はできるようになっておりますけれども、改良とか改善とか積極的な意味の鉱区の調整は、できないことはありませんが、そこまでできるような法律改正をしまして適正化をはかろう。それから法律を改正しましてもなかなか促進しませんので、これは石炭鉱業審議会でそういうことを専門に扱うのをさらに強化拡大しまして、実際の要望に沿ってそういうことが実現できるようにしようということでございまして、非常に専門的なところはなかなか複雑でございますので、通産省が案をつくりました上で御説明するかと思いますが、その二つの点を押さえまして積極的な合理的な鉱区の調整ができるようにしよう。これは調査団としましては実は相当強く要望している一項目であるということを、私からもつけ加えておきたいと思います。
  61. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 時間がきましたので、もう一問ぐらいにお願いいたします。
  62. 中村重光

    中村(重)委員 次に保安体制の問題についてお尋ねをいたします。  このことは、人命尊重という立場からきわめて重要な問題であると考えております。このことは特に専門委員であられる、いわゆる権威者であられる中野先生にお尋ねをしたいと思うのでありますが、先生も御承知の通りに、最近大手炭鉱の重大な事故が続出をいたしております。時間がございませんから一々申し上げませんが、通産省の保安局から私の方にいただきましたこの表を見ましても、三十七年八月までに、もう例年に近いような、年間災害に匹敵するような形の事故が発生いたしております。しかもその事故の内容は、これはもう全く常識で考えられないような、落盤であるとか、先般長崎県の高島鉱で発生をいたしましたのは、むしろ通産省が奨励ということを申し上げると語弊があるかもしれませんが、これは差しつかえないとして使わせておるビニール管が爆発するといったような、全く常識では判断できないような事故が発生をいたしております。そのことを考えてみますと、調査団もこの保安問題に対しましては相当慎重に取り組まれたものだと考えておりますが、しかし、先ほど産炭地の問題で井手委員から百五十字だというような御指摘がございましたが、この保安体制の強化に対しましては非常に月並みな答申になっておる、非常に抽象的である、こういうように私は判断をいたします。  この保安の問題というのは非常に重要でございますが、現在どうしてこういう事故が発生するのかということは、生産技術というものが非常に伸びてきた。ところがこれに対して保安技術というものは非常に立ちおくれてきている。さらに、鉱業権者の保安に対する理解と認識がない、言いかえると、人命尊重ということに対しての十分な考え方を持っていない。ある人はこう言ったおります。災害にかかって人命が失われたとしても、これは鉱業権者自体に対しては迷惑にならないのだ、いわゆる損失という形になってこないのだ。今日の石炭不況の中において、首切りが行なわれておる段階において、むしろそういったような事故が起こることは、これは歓迎という言葉は使っておりませんが、そう大して問題と考えていないんじゃないか、それほど鉱業権者というものが人命尊重ということに対しては全く重大な問題として考えていないということを極言する人すらおるということでございます。従いましてこういったような重大事故が特に大手炭鉱において発生しておるという原因はどこにあるのか、これを除去するためにはどういう態度でもって取り組まなければならないのかといったような問題を解剖する必要があるんじゃないか。従って今度の答申に際しては、そういった問題に対しましては当然保安のあり方に対しての答申がなされなければならなかったんじゃないか、こう思うのでございます。しかし、ここに書いておることは簡単でありましても、相当突っ込んだ検討がなされておると思います。従いまして、その保安のあり方ということに対して中野先生から一つお答えを願いたいと思います。
  63. 中野實

    中野参考人 ただいま非常にいいお話伺いました。私この前も衆議院の委員会、せんだって参議院の委員会に呼び出されまして、今度で三回でございますけれども、組合出身の方もおられましたが、かつて保安の問題は一回も出ておりませんでした。今御指摘になりましたのは非常にりっぱなことだと思いまして、敬意を表する次第でございます。  御質問の第一点でございますが、経営者が保安のことをちっとも考えていないという面でございますが、確かに生産に追われておりますと、保安の方がおろそかになりまして、セーフティ・ファーストでなくてセーフティ・ラストという言葉もよく聞くわけでございます。しかし、鉱山保安局関係には私も関係がありますが、決して努力をしていないわけではございませんでして、この調査団答申はまことに短い文句で書いてございますけれども、中身はかなり急所に触れているはずでございます。それは、御指摘の大手炭鉱のいろいろな炭害が大きくなってくる、この問題につきましては、そこに触れてありますように、現場の保安教育を徹底すること、それから頻発災害を防止すそ、この二点に、表現は簡単でございますが触れております。それは私どもかなり長い間かかりまして大手炭鉱のそういうものについて分析等をして参りましたし、また現地へも行って調べてみました結果によりますと、どうも落盤のような、そういうけが人あるい死者が多いということは、結局仕繰夫の技能と申しますか、そういうものがかなり低下しているんじゃないか。そこでどうしても保安教育をしなければならない。しかも今まで官庁関係あるいは石炭協会その他連合会等で取り上げておりました保安教育の方法というのはかなり抽象的でありまして、実際に鉱山労働者に保安教育をする時間的余裕がないわけであります。表現は非常によくできておりまして、現場に即して係員が指導をして保安の教育をするということになっておりますけれども、先ほど御指摘がありましたように、係員も人数がだんだんと少なくなって参りますと、確かに生産に追われまして、ガスをはかる場合でも厳密にガスをはかっていないというように言われている場合もあります。そこで、現場の中で保安教育をするということは一面必要ではございますけれども、やはりその場を離れましてかなり徹底的な保安教育をしなければならない。そういうことで、これは年次計画のようなものでやってもらいたいということを私は保安局にもお話をしている次第でありまして、そこに簡素ながらうたっておるわけであります。  それから、頻発災害と今申し上げましたけれども、これは落盤、そういうようなものでございまして、これは御指摘のように大体四七、八パーセント、最近五年間でも毎年四〇%から五〇%ぐらいの間に入っております。去年からことしにかけましてかなり多いわけであります。この頻発災害を、これは非常に冒険ではありますけれども、かりに半分ぐらいにいたしますと、保安成績というものはかなり上がるわけであります。そこで、重大災害はむろんそうでございますけれども、このじみな頻発災害の防止ということにかなり力を入れなければならないんじゃないか。この辺、関係方面でもかなり論議はされましたけれども、それがなかなか現場に浸透していないわけでございまして、この辺は今後とも十分実際的な対策をしていかなければならない。ところが、国家としても保安に金がつかないわけでございますね。そういう保安教育に必要な施設とかそういうものは、私ども考えではなるべく強化していただいて、そうして先ほど御指摘がありましたような、合理化の過程で死者を出してもわれわれはちっとも損をしないといいますけれども、実際はきびしくなって参りますと、死人を一人つくりますと、物心ともにえらい痛手をこうむるわけでございます。その辺は御承知だと思いますけれども、だから、ラストではなくなったような傾向がございます。今後ますますラストではなくなると思いますが、ファーストにするために国の予算をつけるように御尽力を願いたいと思います。  以上でございます。
  64. 中村重光

    中村(重)委員 これで終わります。産炭地振興のことについてはお尋ねしたいのですが、委員長からおしかりを受けますので、これでやめますが、中小企業の売掛金の問題に対して、非常に大切なことでございますから、考え方一つ伺っておきたいと思います。  今中小企業の売掛代金というのが、福岡県だけでも九十七億、全体では百五十億くらいございます。ところが売掛金というのは大きな企業でなくて、中小企業者がほとんど物を納めておるということであります。それだけにこのスクラップ化というようなことは、ほとんど中小企業が中心になって参りますので、納品した中小企業者というものは非常な脅威に今さらされておるということであります。ところが、銀行その他債権者に対しては救済の方法はあるけれども、この零細な中小企業者に対しては、今日の法律の中におきましても救済の道はありません。この調査団といたしましても、この点には触れてないのであります。ただ炭鉱があまって中小企業者が他に転換しなければならないときは、国民公庫から金を借りなさい、こう書いてあるだけです。そうした現在の売掛代金という当面している重要な問題に対しましては触れていない。従いまして、この点に対してもいろいろと検討されたことと思いますので、まず考え方一つここで聞かしていただきたいと思います。
  65. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 要点だけお答え願います。
  66. 平田敬一郎

    ○平田参考人 現在は御承知の通り、たとえば炭鉱整理になりましたときにも、退職金にも追われている。従いまして、結局寄せ寄せしまして、売掛金等にしわが寄っているというのが実情だろうと思います。しかし今度は、間接的に買い上げるにしましても、それから整備資金の供給にいたしましても、適切にやりますので、今お話しのような点は間接的にはそれほど深刻な事態にならないで済むんじゃないか、こう思います。ただ問題は、そういう場合にそれじゃ直接しりぬぐいをどこかですることができるかということになりますと、これを一定組織できちっとした形でやるというのは、私なかなかこれはいかにお考えになっても無理じゃなかろうか。結局そういうものはその際に実情に応じまして、それぞれできるだけそういうことがないように、みんなも協力しましてやっていくというよりほかないのではないかと思います。そのほかの場合もいろいろあろうかと思いますけれども、私ども一番重要なのは、閉山によりまして、あるいは事業の縮小に伴って、中小企業が直接今後得意先を失う、そして商売を転換しなくちゃならぬ、こういうものに対しましては、今御指摘のように、国民公庫等から必要な資金を出していくということが重要なんで、未払いの際もどこかで全部何か整理するといいましても、率直に申して、なかなか私すっきりした形で片をつけるということはむずかしいことではなかろうかと思いますが、なお御意見ございますれば、別に承ってもいいと思いますけれども、そういうように考えております。
  67. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、もうこれ以上申しませんから、あとで十分検討して下さい。
  68. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 藏内修治君。
  69. 藏内修治

    ○藏内委員 有澤団長以下諸先生、大へんお疲れであろうと思いますので、できるだけ質問を簡単に、かつ具体的な問題にしぼろうと思います。  そこで一番最初に有澤先生に伺いたいのでありますが、今度の答申案は、要するに石炭が私企業としての限界ぎりぎりのところで考えておられるように私は読んでおるのでありますが、答申案の二十七ページのところに、「以上のような手厚い財政金融上の助成を講じて行くのであるから、これに伴い、石炭鉱業の経理の適正化と経営の合理化のため、臨時立法措置をとり、利益金の処分の制限、経理監査、事業計画および資金計画に対する改善勧告等、所要の規制を行なうものとする。」こういう文句が入っております。たとえば今ここに掲げられております「利益金の処分の制限、経理監査、事業計画および資金計画に対する改善勧告等」は、これは一体この石炭企業に対して金を出す金融機関がするのであるか、今後新たに制度的に設けられるその他の機関がなさるのであるか、それによって非常に変わってくると思うのであります。  それから、さらにもう少し申しまするならば、この事業計画というものの中に、いわゆるビルドの山の施業案まで含むということになりますと、それはもうすでに私企業としての限界を越えると思うのでありますが、この私企業としての石炭の今後のあり方と、それから財政措置を非常に膨大に巨額に行なわれる、行なわれた際の石炭企業の性格、そしてこういう監査を受けるときの石炭企業の性格が、はたして私企業でとどまり得るかという点について一つ説明を願いたい。
  70. 平田敬一郎

    ○平田参考人 この趣旨は、前々から御説明がありますように、石炭業につきまして財政的金融的にも、それから年々の計画自体でも、政府が大幅な援助をして再建させようということになりますので、政府といたしましても、やはり一定の必要な範囲内におきましては、経理や企業計画に対しまして、内容を見まして必要な指導監督を加えていくということでございます。おそらく、審議会はあくまでも諮問機関でございますので、そういうことに関連して必要なことを調査いたしまして、あるいは政府調査に基づきまして意見を政府に具申する、政府はそれに応じましてそれぞれ必要な措置をとっていくということに相なろうかと思います。もちろん金融機関は金融機関といたしまして、別途資金を供給するものといたしまして、必要な措置はとっていく、こういうことに相なるかと存じます。
  71. 藏内修治

    ○藏内委員 そこで、こういういろいろ手厚い財政金融上の措置が講ぜられた結果、昭和四十二年度において石炭企業の安定化と自立の目標を達成しようということになっておりますが、はたして昭和四十二年度にどういう形で安定と自立ができていくのであるか。私どもの郷里のことを申して恐縮でありますが、三井田川という山がございます。これはいわゆる三井の何山かある山のうちで、スクラップになるのではないかとうわさをされている山であります。三井さんとしても、できるだけ早くしたいけれども、いろいろ雇用対策やら整備資金関係でできないというのが現状であるというようなことを私も聞いております。そういうことで、かりに三井という日本石炭企業の中で相当なウエートを占めている大きな石炭企業が、この三井田川であるとか、あるいは山野であるとか、あるいは北海道の美唄であるとか、こういう悲能率炭鉱は逐次これをスクラップしていって、そして三池、芦別、砂川というところにビルドを集中していきたいということでございます。今かりに、そういうことが今後の一つ企業体の方針でもあり、これがまた石炭鉱業審議会に認められたものとして軌道に乗って参りますと、この三山だけで、石炭によっても違いますが、百六、七十億の閉山資金を必要として参ります。現在でもすでに三井鉱山というものは、繰り越しの欠損を五十億もかかえておる。さらにこれに三十六年の残で申しますと、相当ないわゆる不良債務と目されるような債務もあり、すべて合計いたしますと二百数十億の債務になってきておる。結局スクラップされた山はこれで終わっていくけれども、これらの残された債務が全部ビルドの山の重荷になっていくのではないか。これに対して、この三山全部合計いたしまして、大体年間二百六、七十万トンの出炭でございますから、トン千百円円の交付金といたしまして、二十七億ぐらいのあれしか出てこない。そうすると、四十二年に一応このビルドの山は黒字の軌道に乗るかもしれぬが、それからあとこれがしょっていく要するに会社の債務というものは、欠損というものは、相当年度、十年も二十年も会社の負担になってくる。これをある時期においてたな上げされるか、何らかの措置が講ぜられないと、働く人間も希望がないだろうと思うのであります。やはりそうなって参ったあとでも経営の合理化も必要であろうし、すべての維持管理費もかかって参りまするので、結局そうなった暁でも、働く人たちの賃金のベース・アップであるとか、福利厚生施設というところになかなかこれは実際回りにくいのじゃないか。そうなってくると、ますます若い者は働かなくなるし、やっと債務を十年か二十年たって返したと思ったら、十五年も二十年もたっておったというのでは、ますますそこに働こうという人間がなくなってくるのではないかという気がするのでありますが、こういう繰り越しの欠損なり債務に対して何か特別の措置が講ぜられなければならぬと思うのであります。そういう点について一つ調査団の御見解を承りたい。どなたからでもけっこうでございます。
  72. 平田敬一郎

    ○平田参考人 私も、どこの会社ということで申し上げがたいと思いますが、会社によりましては、企業努力を普通以上に要する会社があろうかと思います。お話しのように、特に整備を多くしなければならぬという会社の場合におきましては、やはり整備にからまりまする負担というものが重なって参りますので、特にその問題が多いんじゃないかと存じます。従いまして、そういう会社につきましては、特別に計画をつくってもらいまして、それに応じまして必要な措置をそれぞれとっていく。整備資金の供給等につきましても、六分五厘に金利を下げることにいたしましたが、できるだけ手厚くしてやるとか、あるいは、計画がちゃんとできますれば、一項目設けておりまするように、既往の債務の返済につきましても、新しく負う債務と同時に全部総合して計画を立てまして、返済のめどがつく場合におきましては、長期に条件を変更してやるとか、いろんな措置を加えまして、会社が何とかひどい運命に陥らないで済むようにいたしたい。これは会社自体、あるいは、ことに会社経営者並びにその従業員の努力ということがそういう場合には大へん重要なファクターになってくるということはつけ加えざるを得ぬのですが、そういうことを前提にいたしまして、ひどい目にあわないで済むようにいたしたいというのが、そうすべきだというのが、大体調査団の勧告の要旨だろうかと存じておりますので、個々の場合につきましては、やはり実情に合うように適切な措置をとっていくことが必要じゃないか、こう考えておるわけでございます。
  73. 藏内修治

    ○藏内委員 まさにその通りではあろうと思うのでありますが、実際の場合、企業体がスクラップ・アンド・ビルドの資金を調達するについて一番困るのは、やはり担保の設定じゃないかと思うのです。これはやはり答申にも書いてあります通り、できるだけ自己資金を調達することをまず主眼として、自己資金並びに市中銀行、国の資金はそのあとになっております。そういうことでありますが、国の資金を借りるという場合には、国の資金が必ず担保を上に乗せてくるのです。そういうことになってきますと、これが市中銀行と国の機関との悪循環でなかなか実際に金が回らないということで、整備資金なり設備投資の資金が会社に入手できないというのが従来の経過であります。この点は御承知の通りだと思いますが、これらの金融の関係の実務について、やはりもう少し調査団としては行き届いた、一つ政府に対するワクをはめる——というとおかしいですが、こういう方法という格好を一つ出していただかないと、実際のところなかなか整備も増強もできていかないのじゃないかという工合に私は感じておるのですが、そういうことをはたしてお考えに上りましたかどうか、その点を一つ伺いたいと思います。
  74. 平田敬一郎

    ○平田参考人 お話の点は、個々の会社なり企業によって実情がだいぶ違ってくると私は思うのでございますが、整備資金関連いたしましては確かに担保等の問題がございますので、そういう点につきましては会社がいい計画をつくってきちっといたしますれば、そういうことのために必要な資金が調達できないようなことのないように工夫していこうということで、報告には若干触れておりますが、具体的な実施にあたりましては、お話のような点も十分工夫を加えまして、必要な資金が供給されていくようにいたしたいし、またいたすべきものだ、こう考えております。
  75. 藏内修治

    ○藏内委員 先ほどもちょっと数字をあげて申し上げたのですが、かりに今三井の山のような、田川であるとか、山野、あるいは美唄というような、相当の規模を持つ山がスクラップされていきまして、これの合理化の交付金がわずかに二十七億ないし三十億前後のものなんですね。これではもうほんとうにほとんど焼け石に水のようなことで、なかなかこの交付金の効果というものが私は出ないのじゃないかと思うのです。この交付金というのは、買い上げ基準のいかんによって交付金が違ってくるわけでありますが、最近石炭以外に行なわれましたいわゆる国の買いつぶしとしては、塩田がございます。塩業整備というものがございます。この塩業整備の買い上げ基準を見ますと、塩田は海岸地帯に近いので、産炭地に比べますと立地条件は確かにいいとは思いますが、比較にならぬ高い基準で買っておるわけであります。現在の千百円という、その買い上げ基準というものは、まさにこれは実情に適さないのじゃないか、千百円で妥当なところだと納得させ得るという根拠がどうもはっきりしないのでございますが、そういう点はどうお考えでございますか。
  76. 平田敬一郎

    ○平田参考人 まず、その買い上げ基準の千百円の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、大手がだいぶ入ってきますので、千五百円くらいになるだろう、千五百円よりも高いところも出てくるかもしれないと思います。それから今ある会社の例をお出しになりましたが、個別な会社につきましては、こういう際にいろいろ申し上げるのはいかがかと思いますが、やはり会社によりましては相当、経営者初め自己努力を必要とする。それに応じましてそれぞれ政府財政資金等も必要な援助をいたしていく。なかんずく、その整備資金の負担が私は相当だろうと思いまして、これにつきましては金利を六分五厘に下げるとか、あるいは今までは二年据置、三年償還ということになっておりましたが、これは少し長期に切りかえまして、三年据置、五年償還、こういういろいろあの手この手でやるべきこともやりまして、企業自体もベストを尽くしてもらいまして、まあ何とか変なことにならぬようにやっていただきたいものだ、こう考えておるわけでございまして、私、率直に言って、相当企業の努力も最大限必要とし、それからいろいろ必要な政府並びに政府機関等のめんどうを見るのも一そう手厚くしなくちゃならぬといったような会社が、やっぱりあるのじゃないかと思いますが、これは個々の際に十分よく検討いたしまして、できるだけいい方向に行くように努むべきものだ、かように考えております。
  77. 藏内修治

    ○藏内委員 それから今後の新しく合理化された炭鉱においても、やはりこの炭鉱に働く労務者の質の問題が非常に重要な問題になってくるだろうと思うのであります。この労務者を確保するという点については、その他いろいろな条件がたくさんありましょうけれども、やはり一番基本的な問題は賃金であろうと思います。この炭鉱の賃金体系ないし賃金機構といいますか、そういうものが非常に古めかしくて、これはいささか近代産業のいわゆる賃金体系という形になっていないのじゃないかという感じが私はするのであります。従来賃金については質問をなさった方がございませんでしたけれども、大体かなり新しい合理化炭鉱でも、賃金というものは採炭夫の賃金が基準であって、これを基準として各職種の賃金が格差を持って刻まれてきておる。そうして採炭賃金というものは結局石炭の格づけによってこれがまた違ってき、その格づけでまた大手、中小の賃金量というものが変わってくる、こういう形になっておるわけです。そして賃金の総額というものは、結局商品となる石炭の歩どまりの量いかんに今なっておるというのが実情であろうと思うのです。そういうことではやはり近代的ないわゆる鉱業賃金というものの体系には入らぬのじゃないかと私は思うのであります。この際、やはり炭鉱合理化すると同時に、いわゆる炭鉱の賃金のあり方というものについても新しい体系を打ち出そうという形が私はぜひ必要じゃないかと思うのでありますけれども、この答申にはいわゆる賃金のあり方について触れておられないように私は覚えているのですが、こういう賃金のあり方についてどうお考えになるか、この点について御説明願いたい。
  78. 稲葉秀三

    稲葉参考人 実は皆様御存じのように、この調査団と並行いたしまして、それよりちょっとさかのぼりますけれども労働省の中でこの石炭労働者のための最低賃金制度がいろいろ取り上げられ、また議論をされて参りました。実は私はその最低賃金制度の方の委員であり、同時に専門部会の委員も仰せつかっております。確かにおっしゃいまするように、現在の石炭鉱業の賃金制度は、よそと比べますると非常に違っております。従いまして、今後この面におきましていろいろ改善が行なわれる必要があるだろうということを申し上げたいのでございますが、賃金をそちらの方で論じておられるということもございまして、石炭調査団といたしましては、大体これの案をつくり上げまする場合に、一人当たりの賃金は毎年五%ずつ上がっていく、こういったようなことを算定しておるのと、それから標準作業量の設定の場合においてもっとその趣旨を一つ生かしていただく、こういったようなことをしていく、こういったようなことを想定いたしております。従って、今後この問題をどのように推進していくのか、すでに最低賃金制度につきましては答申が出まして、そしてその答申の線によって、大手の炭鉱は来年の四月から、また中小炭鉱におきましては二年の猶予をおいて、坑内夫一万六千円、こういったような形で行なわれており、またそういうささえの上に、石炭産業の安定と相待ちまして、若い人たち炭鉱にも将来お入り願う、また若い方々が希望を捨ててお去りになる、こういったようなことを防止したいし、また中小炭鉱につきましても、低賃金制度ではなくて、合理的な運営によってやっていただきたい、こういうふうに考えております。確かに石炭調査団は、賃金問題につきましてそれほど詳しい検討をする時間的な余裕がなかったのです。そういったようなことも一つ御了承になっていただきたいと思います。
  79. 藏内修治

    ○藏内委員 基本的な問題の方は、もう時間がございませんから省略をいたしまして、今度は具体的に一つ産炭地の問題についてお考えをただしておきたいのは、産炭地の基本的な今後の政策を推進する事業体といいますか、そういうものとして、産炭地域振興事業団というものができているわけでございます。ところが、この産炭地域振興事業団がやらなければならない事業というものは、今後ますます非常に複雑多岐にわたる事業でありまして、制度的にも、通産省の石炭局の監督下に置かれる立場では、これは総合的な施策というものがなかなかこれからできていかないのじゃないかという気がいたします。そういう点全般から、産炭地に対する従来政府においてつくられましたいろいろな事業団というものをながめてみますと、まず第一に石炭鉱業合理化事業団というのがあります。それから鉱害復旧事業団というものがあり、さらに雇用促進事業団というものがあります。少なくともこれら四つの事業団を何らかの形において総合的な一つ機関に統合するか、あるいはまたそれも非常にむずかしいということであるならば、たとえて申しますならば、ボタ山などの問題は、鉱害復旧事業団も関係があり、また産炭地域振興事業団も関係がある。また首切りの問題につながってくれば、これは合理化事業団も関係があり、雇用促進事業団も関係がある。そういう合理化事業団、雇用促進事業団、鉱害復旧事業団、産炭地域振興事業団、これらの機能を何らか有機的に結びつける必要がありはしないかという感じを私は持つのであります。答申を拝見いたしますと、すべてこれは現状のままの機構でおいきになるように見受けられますが、はたして、今後産地振興を行なっていく上において、これらの四つの事業団がそれぞれの形においてやっておることが高能率であるか、そういう点は調査団としてはいかにお考えであったかを承りたいと思います。
  80. 有澤廣巳

    ○有澤参考人 その点は、私ども現地を調査いたしましたときに非常に痛感いたした点でございまして、いろいろそういう事業団がありますし、そのほかにも、労働省職業安定所ですか、そういったものもある。それから通産省の通産局もある。たくさんの機構がありますけれども、それが有機的に統合されていない。従って、仕事がてんでばらばらに行なわれていて、鉱害の被害者にしても、あるいは離職者にしても、あるいは経営者にしても、どうもてきぱきとした措置が講ぜられないといううらみを非常に強く持っておるように思いましたので、答申の中に、臨時石炭対策本部というものを最初一つ九州に置いてみる、そこでそういう仕事を統合してやる。別の言葉で言えば、問題を持っておる人々、これは退職手当がもらえぬという人もおりましょうし、あるいは鉱害を十分復申してもらえぬというような、いろいろ苦情を持っておる人がたくさんあると思いますが、そういう人々が、窓口を一本にした形でそこへ行って陳情するなり訴えるということにすれば、いろいろな問題をてきぱきと解決してもらえる、そういう石炭対策本部というものを一つ設ける。そしてまた、いろいろな事業団のやる仕事もお互いに関連しておりますし、そこに関連をつけて仕事をやらないと効果が十分確保できませんので、そういう趣旨をもって臨時石炭対策本部の設置を考えたわけです。これは九州に考えておりますけれども、場合によっては北海道にもあるいはその他の区にも、規模はいろいろありましょうけれども、そういうものを考えてしかるべきじゃないかと思っておるような次第であります。
  81. 藏内修治

    ○藏内委員 官制上でどうも臨時石炭対策本部というものの性格がよくのみ込めないのですが、いずれにしても、総合的な施策を最も効率的にやりやすいという形をとるならば、少なくともこの合理化事業団以下四事業団をそれぞれの所管官庁のもとに置いておったのでは、私はどうもこれはいかぬのじゃないかと思うのです。この点は、もし産炭地域を、実際スクラップの荒廃した地点から、またビルドの山、あるいはそれを背景にして今後建設していくべき臨海工業地帯というような広い地域にまで考え及ぼすならば、何かここでもう一つ大きい意味での地域開発という大きな統制力を持った機関というものが必要じゃないか。そういう機関がないと、産炭地振興というものはなかなかできないのじゃないか。たとえど雇用対策一つにしても、出先の一労働事務官あたりにひねられるようなことであり、また合理化業務にいたしましても、石炭局の一事務官に簡単にチェックされるような機構ではいかぬのじゃないか。やはりこの産炭地振興という責任は、各官庁よりももう一段高い、内閣なら内閣というようなところの統括に置いて、そして総合的な政策が進められるという形がいいのじゃないか、私はこういうように考えるのですが、私の私見に対していかがでございましょうか。
  82. 稲葉秀三

    稲葉参考人 私たちは、今度石炭対策実施体制の強化ということを要望しておりますが、それをごらん下さればおわかり下さいますように、従来も石炭対策関係閣僚会議というのがございました。しかし、この機関は、少なくとも昭和四十二年までは、特にここ一、二年はほんとうに活発に運営をしていただいて、そしてこれがやはり全部の総合調整とか行政の元締めになっていただく、これが先決ではなかろうか。またこの閣僚会議の下部機関として、各省の次官からなる連絡会議がございますが、これも同様に機動的に動いていただかねばならぬ。特に雇用対策の立案というものは、その石炭鉱業審議会雇用計画の原案をお出し下さるに先立って、今度郵政大臣、建設大臣もお入りを願いたいというふうに私たちが要望いたしましたのは、その意味におきまして事前にやはりどれだけの雇用というものを政府責任において創造できるのか、こういったようなこともきめてお出し願いたいと、こういったようなことによるのであります。  それから第二に、石炭行政機構の強化ということもございます。これは石炭局を石炭庁にしろとか、また通産省から切り離して動力省にしろとか、こういったようなこともございましょうけれども、むしろ、要は、やはり行政機構が強化をされ、機動的に動いていただくことではなかろうか。それから有澤先生がおっしゃいましたけれども、この四つの公団というものにつきましても、やはりこの石炭関係閣僚会議の機動的な運営と相待って、そしてやはりもっと協調した形において動いていただく。さらに、それを私たちは出先で、特にとりあえず九州においてチェックをしていく、こういうことによって可能ではなかろうかと思います。石炭対策をどうしても推進をしていかねばならぬという形になりますと、今先生のおっしゃったように、公団を一緒にするとか、あるいは産炭地域振興事業団に特別にその任務を負わすとか、こういったようなこともございましょうけれども、国会の決議を経て産炭地域振興事業団というのを設けられた、それを改組拡充して、そしてほかの仕事と有機的に相待って動いていただく、こういったようなことが、今私たちが申し上げました実施体制の強化というものに即応して実行されるとするなれば、現状は比べて相当改善進歩が達成できる、このように確信をいたしております。
  83. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 藏内委員に申し上げますが、結論をお願いいたします。
  84. 藏内修治

    ○藏内委員 大体時間になりましたので、あと一問で終わるつもりでございますが、この一問がなかなか複雑なものがあるのでありまして、日陰にありまして実際のところ忘れられておる問題であろうと私は思うのです。  それは産炭地の農村問題でございます。この産炭地振興法ができましたときに、産炭地振興については、石炭産業にかわる鉱工業等ということで、等の字の中に、その他幾つかのものとともに含まれておるということで、農ということはこの中に入れていないのであります。ところが、実際には、産炭地の大量のスクラップ化に伴いまして、地方の財政やら、あるいは地方の中小企業、これも先ほどから同僚委員が心配しております通り、非常な不安にさらされておることは事実でありますが、これよりもはるかに大量の人間が、そうしてはるかに零細な規模の生業を営んでおる農民というものが、非常に深刻な段階に追い込まれておることは事実でございます。今度のスクラップの方式にいたしましても、これはよほど政府の手厚い措置が鉱害対策に対してなされませんと、この鉱害のしりの持っていき場所もないという状態になっておるわけでございます。また、この鉱害地をかかえた農村に今後構造改善事業をやっていこうといたしましても、これがまた、他の豊沃なる農村地帯よりも非常に劣悪な条件のもとに構造改善事業を推進していかなければならぬところが非常にたくさんあるわけでございます。さらにまた、炭鉱離職いたしまして、相当多数の人間が農村に帰農してくることも考えられます。こういう者に対する受け入れ態勢ということもまた、農村にとっては非常に大事な問題でなかろうかと思うのであります。ところが、農村というものは、とかく石炭対策の陰に今まで忘れられておりまして、鉱害対策というような面でわずかにときどき問題があるという程度でありまして、従来日陰の存在になってきたのであります。こういうものについて私どもがやはり今の制度上の欠陥をいろいろ感じますのは、鉱害問題で訴えようと思いましても、訴える先は通産局の鉱害部であり、結局それが回り回って中央にきても、通産省の問題である。この資金を出すにいたしましても、農林省としては鉱害対策費というものを組んではくれるけれども、これは石炭鉱業事業団でやってくれ、要するに、農林省という、農家を保護すべき立場にあるべき官庁が、この産炭地の農業問題については決して前面に出ていないのであります。こういう機構のあり方で、はたして円満な、農村を含めた産炭地の施策ができるかどうかという不安がございます。こういう点についても、私どもは先ほどから申しましたように、これらの事業団を統括し、さらに臨時石炭対策本部というものが九州あるいはその他の各地に設けられるにいたしましても、この石炭対策本部というものの中には、相当広範な各種の機構を含むものでなければできぬのではないか。今度の石炭対策関係閣僚会議の中にも農林大臣は入っておられないと私は記憶しておるのですが、そういう状態でございまして、結局これらの鉱工業の陰に隠れた農村という問題について、今後とも調査団としての格別の政府に対する一つ示唆を与えていただくと同時に、これまでどういう討議が農村問題についてなされましたか、お聞かせを願いたいと思います。
  85. 有澤廣巳

    ○有澤参考人 産炭地の農村の問題につきましても、私ども陳情も受けております。現地でも受けましたし、また東京におきましてもそういう陳情を受けました。これは特鉱ポンプのごときものは取り上げてありますが、その他、社有地の開放というような問題も考えております。その他いろいろ農村の鉱害復旧の問題にいたしましても、あるいは農産物の販売の問題にいたしましても、終閉山ということになりますと、いろいろ事情が違ってくるのでありますから、そこにこまかい施策を必要とするのでありますが、そういう問題を処理するために実は臨時石炭対策本部を設けることを考えたわけです。何もこれは四つの公団ばかりでなくて、市町村の問題もございますので、自治省の方も入りますし、農林省の方も、各省の人々がこの対策本部の中に入っていただいて、そうしておそらく本部長になるような人は、大臣とまではいかぬかもしれませんけれども、少なくとも局長クラスのような人がその上にすわって、そして今の石炭対策関係閣僚会議と連絡してやっていただくという方針を考えておる次第でございますから、その機関が中央と連絡をとりながら活発に動いていただけるようになりますれば、そういう私どもなかなか気のつかないような問題も、この機関で相当うまく処理できていくのではないかと思う次第でございます。なお、その対策本部の活動が実際地に即した適切な活動をしておるかどうかということにつきましても、石炭鉱業審議会の方で、その実施について調査し、かつトレースしていくわけですから、一方において政府にやってもらうわけですが、その政府のやり方については、むろん国会でお取り上げになると思いますけれども、日々といっては少し言い過ぎでありますけれども、経常的なトレースは石炭鉱業審議会でやっていくように考えておる次第でございます。
  86. 上林山榮吉

    ○上林山委員長 この際、参考人各位に一言あいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用中にもかかわらず、再度にわたり本委員会に御出席いただき、答申について、昼食抜きで長時間にわたって種々御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時十三分散会