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1962-11-09 第41回国会 衆議院 商工委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年十一月九日(金曜日)    午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 逢澤  寛君    理事 小川 平二君 理事 岡本  茂君    理事 中村 幸八君 理事 田中 武夫君    理事 松平 忠久君       海部 俊樹君    神田  博君       齋藤 憲三君    始関 伊平君       田中 榮一君    田中 龍夫君       山手 滿男君    北山 愛郎君       久保田 豊君    小林 ちづ君       多賀谷真稔君    田原 春次君       中嶋 英夫君    中村 重光君       山口シヅエ君    伊藤卯四郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         通商産業大臣  福田  一君  委員外出席者         公正取引委員会         委員長     佐藤  基君         経済企画政務次         官       舘林三喜男君         外務政務次官  飯塚 定輔君         外務事務官         (経済局長)  関 守三郎君         大蔵政務次官  竹内 俊吉君         大蔵事務官         (銀行局長)  大月  高君         通商産業政務次         官       廣瀬 正雄君         通商産業事務官         (繊維局長)  磯野 太郎君         通商産業事務官         (鉱山局長)  川出 千速君         国民金融公庫総         裁       石田  正君         中小企業金融公         庫総裁     森永貞一郎君         参  考  人         (日本紡績協会         委員長)    原  吉平君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 十一月九日  委員西村力弥辞任につき、その補欠として田  原春次君が議長指名委員に選任された。 同日  委員田原春次辞任につき、その補欠として西  村力弥君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商に関する件(日米日ソ日中貿易問題)  中小企業に関する件(中小企業金融に関する問  題)  工業に関する件(紡績に関する問題)      ————◇—————
  2. 逢澤寛

    逢澤委員長 これより会議を開きます。  通商に関する件について調査を進めます。  まず、日米通商に関する問題並びに日中貿易及び日ソ貿易に関する問題について質疑通告がありますので、これを許可いたします。田中武夫君。
  3. 田中武夫

    田中(武)委員 たしか十月の十一日の委員会だったと思っていますが、当委員会において、板川正吾君が日米友好通商航海条約の問題で質問をいたしたのですが、そのときは局長大臣次官もいなくて、一参事官が出てきておって、これは御承知のように説明員でありますから、政府の考えておるところを述べることはできない。そこで、あと文書をもって考え方を明らかにしてもらいたい、こういうことを言ったのです。文書をもらったのですが、あまりにも簡単といいますか、板川君なりわれわれが聞きたいと思っていたことが出ていなかったので、その点について文書回答がありました三行ばかり、これをもう少し具体的に聞かしてもらいたい。
  4. 関守三郎

    関説明員 日米通商航海条約は、来年の十月三十日に有効期限が一応終了するわけでございます。終了と申しますか、これは自動的に延長できるものでございまして、もしこれを廃棄するためには、一年の予告を必要とするわけでございます。従いまして、本年の十月三十日以降は、いつでもこの廃棄通告をいたすことができるということになっておるわけであります。そしてその予告をしたあとに一年たてばこの条約廃棄することができるということになっておるわけでございます。しかし現在、日米通商航海条約に関連いたしまして、いろいろの問題はございますけれども、これが条約そのもの改定するということによって解決する以外に方法がないのかどうかということについては、これらのいろいろの問題について、十分検討をいたした上でないと、結論は出せないということになっておりまして、目下着々その検討を進めておるという段階でございます。従って、その調査研究が済むまでは、廃棄通告をする必要があるかどうかということについては結論が出かねる、こういうのが、この書面で御回答申し上げた内容でございます。
  5. 田中武夫

    田中(武)委員 今局長が言われたことは、条約最後の二十五条の条文の解釈のようなことを言っている。少なくとも今に意思表示をしていないということは、当初結ばれた条約が、十年たったときに、なお効力を存続するということは認めたということになるのです。そうなのですね。
  6. 関守三郎

    関説明員 ことしの十月三十日に廃棄通告をいたしますれば、そして、その間にいろいろ話し合いをいたしまして、話し合いができない場合には、来年の十月二十九日には条約終了するということになるわけでございますが、その廃棄通告をしないでおるわけであります。歯が悪いので発言が明瞭を欠きまして大へん申しわけございませんが、ごかんべん願いたいと思います。つまり十月三十日から今日に至るまで——きょうは十一月の何日でございますか、この期間だけは条約有効期間は自動的に延びる、こういうことになるわけでございます。
  7. 田中武夫

    田中(武)委員 そこでこの十月末日までに書面による意思表示をしていなければ、この条約でいうところの二十五条三項「最初の十年の期間満了の際」ということはなくなった、こういうことなんですね。いわゆる満了の際に効力を失うということはもうなくなったわけです。そうでしょう。そうすると、あらためてまだやっていないということは、十年を過ぎて本条約を存続せしめるという政府部内における意思決定はあったのですか。
  8. 関守三郎

    関説明員 これはここに書いてございます通りに、「その後いつでもこの条約終了させることができる。」わけでございまして、たとえば本日廃棄通告をいたしますれば、話し合いがつかない限りにおいては、本日から一年たったあとには、この条約廃棄させることができる、こういうことになっておるわけであります。
  9. 田中武夫

    田中(武)委員 それはわかっているのです。最初条約を締結したときの有効期間十年というのは、今言ったように、二十五条三項に、「最初の十年の期間満了の際」ということがある。従って、満了の際に効力を失わしめるのだということはすでに済んだわけです。従って、効力に関する三項の今言った最初の十年の期間満了ということは、もうすでになくなった、こういう。そうするならば、逆に言うならば、政府部内において、本通商航海条約期間満了してもなお存続せしめるんだという一つ積極的意思決定といいますか、それがない限り、今日までの、いわゆるここ十日あまりですが、期間を延ばしたということになるのです。それはどうです。なお存続せしめるんだ、たとえ一日でも三日でもいい、期間満了の際でなく、なお存続せしめるんだという積極的な意思決定があったのか、こう聞いておるのです。
  10. 関守三郎

    関説明員 御承知通り、非常に多くの条約協定につきましてこの種の同様な規定があるわけでございますが、特にその関係当該条約、ないしは協定廃棄させなきやならないという積極的な理由が生じまして、それに基づきまして廃棄することが必要だ、廃棄することをしなければならぬという場合のほか、つまり一般の場合におきましては、この種の条約終了期間に関する規定、つまり自動的延長規定でございますが、一年の予告をもって廃棄できるというこれの類似規定のある条約協定につきまして、特別の問題がある場合は別といたしまして、通常の場合におきましては、ただいま御指摘になりましたように、特にそれを延長させるんだというような閣議決定等は通例なしに、自動的に延長さしてあるというのが従来の慣行でございまして、この日米通商航海条約の場合も、今御質問のございましたような積極的にこれを存続させるべきであるとか何とかいうような政府意思決定というものがあったということは私は承知しておりませんが、同時に他の多くの類似条約協定の場合と同様に、これは自動的に延長させるということになってきておる。他面これにつきましては、先ほどもお断わり申し上げましたように、若干の点につきまして問題点がございますが、これをどういうふうにしたらいいかということにつきましては、まだ政府なり私ども事務当局の間において、なおせっかく調査中でございまして、はっきりした結論はまだ出ておらないというのか実情でございます。
  11. 田中武夫

    田中(武)委員 実情はそうであるということはわかる。しかしそれがいけないというのです。何もこの条約だけでなく、たとえば一年以前に積極的な意思表示がなければそのまま効力を存続するというのは、いろいろあると思うのです。だからといって何もやらないということは——閣議決定といっても一々わからないのです。所管はあなたのところでしょう。あなたのところで何らかの意思表示をしてもらいたいということをすべきなんです。そうでしょう。そうでなかったら、少なくとも条約にうたう期間満了して、なお効力が存続しておるでしょう。存続せしめるなら存続せしめるという意思表示をすべきなのです。それはアメリカに対しては存続せしめないときに意思表示をするのであるから、対外的には意思表示をしないにしても、国内においてはそういうような取りきめが必要だと思うのです。かりに今言われておるように改正というか改定というか、これはむしろ新たに結び直すということになろうと思うのですが、いろいろ問題もあろうと思うので検討しておるということなのです。検討しておるならなぜ十月末日結論を出さなかったか。十月が済めばいつでも通告ができる、通告をすれば一年後にできるんだ。こういうだらだらしていいものなのですか。条約を結んだときに、一応の条約効力は十カ年なんです。そうするならば、その一年以前に文書をもって云々ということであるならば、一応けじめのある態度をとるべきでなかったですか。
  12. 関守三郎

    関説明員 お答え申し上げます。やはり特にこういう基本的な大きな条約になりますと、よほど積極的にどうしてもこれを改定しなければ問題が解決しないということになって初めて改定のための廃棄通告というようなものをなすべきであって、問題が改定によらなければ解決できないということがはっきりしない限りは、軽々改定を申し出ないというのが通常国際慣例であるというふうに私どもは考えているわけであります。従いまして、この場合におきましても、若干出ておる問題が条約改定しなければどうしても解決できないかどうかという点につきまして、まだ煮詰まっておらぬという以上は、これはやはり軽々にはできないということになるのではなかろうかというふうに考えるわけです。
  13. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたは物事を混同しちゃいかぬ。今言っておるように十年をもって終了さすという意思があるならば、当然文書をもって相手国通告しなければいけない。それをしていないのです。従って、国際慣例云々ということはその点なのです。私の言ったもう一つ国内的な問題。いいですか、国内的な問題です。ということは、そのときに意思表示をしなかったことは、これは国際慣例によってそうだとかあなたはおっしゃるけれども国内的にはとにもかくにも十カ年をこえてこの条約効力を持たしめるということなのです。そうするならば、なお効力を持たしめるんだそれから改定の点があるからこういう点は今検討しておる、それができ上がったときに通告するんだというような国内的決定は当然必要だと思うのです。いかがですか。
  14. 関守三郎

    関説明員 お答え申し上げます。十年の有効期間がございますが、実は有効期間が十年ということではないのでございまして、何と申しますか最低期間としては十年ということで、十年たったらどうしてもこうしても一回けじめをつけなければならぬということにはなっておらないというふうに私は考えるわけです。たとえば「この条約は、十年間効力を有し、その後は、本条で定めるところにより終了するまで効力を存続する。」と書いてあるわけでございます。決して十年で一応切らなければならないということにはなっておらないと思うのでございます。ただ十年という期間は、一応それを切ろうと思えば切ることができる最低期間ということになっておるわけでございまして、この点はほかの条約協定にもたくさん例があるわけでございます。そういうものにつきましても、特に非常な必要がございまして、改定申し入れをしなければならないという場合のほかには、やはり一応十年ないし五年の期間がありましても、特別の必要がない限りは流しておくというのが、条約解釈から見てもけっこうではなかろうかというふうに考えるわけでございます。
  15. 田中武夫

    田中(武)委員 最低十年だというのは、その通りなのです。少なくともこの条約のできるときの有効期間は十年であったはずですよ。それは間違いですか。十年でしょう。従って、けじめをつける、これは国内的に必要ですよ。もしこれの改廃の必要あり、こういうことであるならば、この十月の三十日までに通告すべきである。それをやらないということは、自動的延長ということを頭に置いての上でしょう。そうするならば、自動的に延長さすことがいいかということについては、一応部内において検討がなされなくてはうそだと思う。国際慣例がこうのああのといっても、それほど外務省はぼんやりしておるのですか。この法律は三十七年十月三十日に通告しなければ、その最初の十年をこえて存続するということは、結んだときにわかっておるのです。それならば、今現に検討しておるならば、なぜもっと早くやらないのです。そうして検討が終わらなければ終わらなくていい。しかし、一応まだそこまで固まっていないから、これが固まるまでは自動延長をやらねばならない、こういうことぐらいは腹をきめるべきである。黙ってほっておいていいというものではないでしょう。どうですか。
  16. 関守三郎

    関説明員 御指摘通り、この条約に関しまして若干の問題点がありまして、この問題点をどうしても条約改定によって解決しなければならぬかという点につきましては、もうかなり以前から研究をいたしております。研究いたしておりますが、調べてみますと、なかなかこれにつきましては、各国類似条約、それからそれに伴う議定書、さらにはそれに伴います交換公文というようなものがあるわけでございまして、そういうものを徹底的に洗います。各国政府にこの点はどうかということを聞きましても、相手国政府は、たとえばドイツといたしましょう。それはやはり向こう側としても答弁しにくいということがありますので、あまりしつこく聞きましても、最後のところになるとなかなか返事してくれないというような問題も出て参りまして、そういうところから調査もわれわれの思うようには進んでおりません。しかしながら、これは何とかしてその辺を詰めなければならぬということで、目下鋭意努力中でございますが、今申しましたような事情から、せっかくもう半年以上前から始めておると思うのでございますけれども、その調査研究の結果が出てきておらない。従いまして、その調査研究が一段落して、ある程度のはっきりした成算ができるまでは、やはり破棄するというのは見のがした方が——十月三十日で一応最初の機会と申しますか、そういうものは残念ながら見送らざるを得ないということに、一応関係省事務当局間では意見の一致を見たわけでございます。従いまして、それを延ばしておる、こういうわけでございます。
  17. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたの言っておることはわからぬことはないです。その関係事務官というか事務当局としてそういうことをやっておる。一番いい方法は、十月の三十日までに結論が出ることなんです。また出すべくやったと思うのです。それでなかったら意味がないと思うのです。ところが、いろいろな解釈問題等々あって、十月三十日までに結論が出なかったというならば、当然自動延長になるのです。そうすると、こういうことをやっておるが、なお結論に達していないので、こめ際あらためて破棄の通告はしない、従って自動延長になるのはやむを得ないだろうという結論は出すべきなんです。あなたの話では、事務当局ではこういうことがあったと言っているが、事務当局がやったからといって、それは国の意思にはならないのですよ。なぜ関係大臣に相談して、一応そういった国としての——少なくとも国家間の条約なんです。国家間の契約なんですよ。なぜ内閣等において、たとい十日でも二十日でも延びざるを得ないのなら、それを確認しなかったか。事務当局においてそんなことが話し合いが出ていたといったって、事務当局はあくまで事務当局でしょう。そうでしょう。どうなんです。だから、大臣に報告したかどうか、そして関係大臣、たとえば通産大蔵外務、この間においてどういう話がなされておるのか、それが聞きたいのです。
  18. 関守三郎

    関説明員 御指摘通り、十月二十日までに問に合うよに努力しました。しかし間に合わなかった。これはわれわれとしても大臣に御報告申し上げてありますし、これは私の方からはっきりは確めてございませんけれども、やはり関係省では、そういうことになったということについては、大臣の方に上がっている。従って、問題は起きておらないというふうに了解しておりますが、この点ははっきり申し上げまして、各省に大臣までこの問題が上がって念を押してくれたかどうかということは確かめておりません。その点は私確かに怠慢だと存じますので、ここであらためてそういう処置をとりたい、こういうように考えております。
  19. 田中武夫

    田中(武)委員 結局前の委員会において板川委員が尋ねたのはその点だと思います。そこで私から、大臣がいないので、外務大臣のちゃんとした書類をもって報告せよ、こう言ったところが、先ほど言ったような、あなたも知っているが、ここへ出してきたのは三十ばかりぽかぽかと書いたものだ。私の言っているのは、条約期間が一応来ておる、それを意思表示をしないということは、自動的延長を認めるのです。自動的延長を認めるためには、外部に対する意思表示は必要でないとしても、政府においてそのくらいの主張はやる必要があると思うのです。それを、私は大臣に報告しましたが、それから先は知りませんという。なぜ、十月三十日以前にあたって、ああいっておりますが、内閣としてはどうですかとあなたは聞かなかったのか。それであなたは経済局長として十分に任務を全うしたといえるか。少なくとも国家間の意思表示国家間の契約、これに対して一事務官がそういうことをする権限はないですよ。
  20. 関守三郎

    関説明員 お答え申し上げます。大臣に報告いたしまして、この問題は現にこういうことになっておりますということを申し上げて、やむを得ぬだろうということで御了承をはっきり得ております。私はこれが閣議でどうだとかということははっきりしたことは知りませんけれども、先ほど申しましたように、大体その線で関係大臣の間でもそういう話が出ておる、ある程度の了解ははっきり出ておる。特にその間のはっきりした閣議決定というものがあったかどうか、私は先ほど申し上げましたように、申し上げかねる次第でございますが、私一存でもってこういうことをきめたものではございません。大臣からは、やむを得ぬ、もう少し早く研究して結論を出せ、こういう指示をいただいておるわけであります。
  21. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、大臣に申し上げて、やむを得ぬと言ったのは、本年の何月何日、それからこれに関係のあるところといえば、通産運輸大蔵であろうと思いますが、通産次官、それから大蔵省からだれが見えておるか知らないが、運輸はきょうは呼んでいないが、それぞれの部内においてはどうしておるか。それから、そういうことに対して各大臣間において、やむを得ないというか、話が固まるまでは一応自動延長を認めざるを得ないということの合議があったのかなかったのか。あったとすれば、どういう方法合議をしたか、その月日を知らしてもらいたいと思います。
  22. 関守三郎

    関説明員 私は大臣にそういう報告をして、そういう御許可と申しますか、得ました日付については、はっきり覚えておりませんが、それはもっと前であったということを申し上げられると思います。日付ははっきりしたことは私は覚えておりません。また閣議でどういう話が出ておるかということは、私からはちょっと今ここで申し上げかねます。
  23. 田中武夫

    田中(武)委員 お聞きの通りなんですから、やはり大臣に来てもらわなければ話がつかぬですよ。だからこれはこの程度にして、やはり外務大臣出席を要求します。
  24. 逢澤寛

    逢澤委員長 ちょっと速記をやめて下さい。   〔速記中止
  25. 逢澤寛

    逢澤委員長 速記を始めて下さい。
  26. 田中武夫

    田中(武)委員 今の質疑応答をお聞きになったと思うのです。少なくとも国と国との条約なんです。その有効期限に関する問題であります。それは一事務官のもとにおいて左右できない問題だと私は思うのです。今まではそういうことが行なわれたというならば、けしからぬ話なんだ。少なくとも国の意思というものは事務官がきめるものではありません。内閣でめるきものです。従って、それについて内閣においてどんな決議ができたのか、これをあくまで追及し、もし今できなければ、文書関係大臣の名前を書いて出して下さい。  ちょっと私はこれで休憩します。
  27. 逢澤寛

  28. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私のきょう質問申し上げようとする問題は、大臣でなければ答弁が困難でありますから、事務当局ではおそらくお答えができないと思いますが、またあらためて大臣にお聞きするとしても、問題の所在だけでも明確にしておきたいと思いますので、大臣の来るまで事務当局なり何なりにお聞きいたします。  第一の問題は、例の去年のいわゆる箱根会談の第二回目ですね、これがアメリカでもって行なわれることになっておりますが、これはいつからいつまで行なわれるようになっておるのか、あるいはその場合の取り上げる問題点といいますか、これの合意もすでに事務的にできておると思いますが、これらの準備の進捗状況にいて御報告願いたいと思います。
  29. 関守三郎

    関説明員 第二回目の日米経済貿易合同委員会は十二月の三日、四日、五日の三日間にわたってワシントンで行なわれることになっております。これに関しまする議題につきましては、日米間で打ち合わせ中でございまして、まだ最終的には確定いたしておりませんけれども、大体におきまして、昨年度の議題と同じような議題が取り上げられるというふうに話し合いは進んでおる次第でございます。
  30. 久保田豊

    久保田(豊)委員 これは事務当局では困難なので、それできょう実はぜひ大臣においでをいただきたいと思っているのです。というのは、会議が終わってからあとで幾ら突っついても何にもならぬ。ですから、会議の前に日本側としてはどういう議題をどういうふうに話をしょうかということを明らかにする必要があると思う。またわれわれの方も、その点について少なくともこういう点についてはこういう話を向こうとしてもらいたいというやはり国民的な要望があるわけですから、これについてこれから逐次御質問をいたします。  そこで第一の問題は、日本側政府としては、日米経済貿易合同委員会、これはどういう性格のものとしてとらえられておるのですか。というのは、一般的な日米間の経済貿易の問題についてのお互いの理解を深める、こういう性格のものか、あるいは安保条約の第二条に基づくいわゆる合同会議なのか、私ども理解からすれば、これは安保条約第二条に基づく会議理解している。この点について箱根会談のときには、政府は見解を明らかにしなかった。むしろ国民に対しましては一般的な問題であるかのごとく言っておったが、どっちか、どういうふうに理解しているか。
  31. 関守三郎

    関説明員 お答え申し上げます。この会議を始めるときに、特に安保条約の第二条というものに基づいてやるとかなんとかということは、何も両者の間で合議ができておらぬわけであります。従って、そういう意味におきましては、安保条約の第二条そのものとは関係がなく、ただいまお話しになりましたように、一般的な性格のものということが言えるのではなかろうかと思うわけであります。
  32. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そうすると、安保条約第二条はどこへいった、それに対するネゴシエーションなりなんなりどこでやっているか、どういう形でやっているか、この点をはっきり……。
  33. 関守三郎

    関説明員 日米間の経済協力という問題は、常時民間でもいろいろお話をおやりになっておりますし、また人事の交流を通じましてもいろいろお話は行なわれておるでございましょうし、また政府ベースにおきましても、これはたとえば昨日ホッジス商務長官が来まして、いろいろな話が行なわれておる、こういうところから、お互いだんだん理解を深めまして、そして両者の協力を推進するということで、日米間の経済協力に関する話し合いの場というものは実にたくさんございますし、また常時行なわれておる、特別にそのためにどうこうするという必要はないのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。ただ合同委員会が行なわれますと、日米間の経済協力についていろいろな場でいろいろな話が行なわれておって、やはりそのうちの一つとして、大きな役割を果たすと申しましょうか、そういうことが結果的には出てくると思われるわけでございます。しかし、それを特に目的として、安保条約第二条に基づいてその会議を開くとかなんとかいうことではないわけであります。
  34. 久保田豊

    久保田(豊)委員 これはちょっとおかしいと思う。それは国と国とがあれば、経済上のいろいろな問題を始終いろいろな関係において話し合うということは、これは一般関係でも行なわれることなんです。特に日米安保条約第二条をああいう形でもって規定をしたという意味はどこにあるのか。これは一般的な国際関係でそういう経済的な会議をやる、民間としてももちろんやる、そんなことはわかり切ったことだ。特に第二条を規定したのはどこに意味があるのか。それは具体的にどうするかというようなことは、日米間にああいう安保条約がなくても当然行なわれることだ、当然行なわれることを特に第二条にああいう明確にした以上——文章の表現はきわめてばく然としております。一般的なことをやっておるから、あれに基づいたことではないのだという、そういう不必要なああいう規定は置かない方がいい、それを特に置いたというのはどういう意味があるのか。
  35. 関守三郎

    関説明員 私は安保条約の担当局長でございませんので、必ずしも決定的なことは申し上げられませんけれども、私の了解しておる限りにおきましては、安保条約というものは、必ずしもそういう政治面でなくて、やはり経済面においても協力していくということは大事だということで第二条を設けた、それを実施するにあたりまして、特に特別な機関をつくる必要はないだろう、そういった意味からお互いの経済協力というものを進めていくのだということで、それ以上に特にどうこうという必要は、必ずしも特別な機関を設けて——歯の工合が悪いので申しわけございませんが、特に正式にどうこうという機関を設けてどうこうしなければならぬということにはならないでもよいのではなかろうかというふうに私は解釈しております。これは私も記録をよく見てみませんとわかりませんが、大体そういうことである、これはおそらく間違いなかろうと思うわけであります。
  36. 久保田豊

    久保田(豊)委員 担当局長でないからわからないというのでは、個人的な見解を聞いてもしょうがありませんから、この問題についてはこれ以上追及することはやめます。  そこで具体的に経済局長としてあなたの所管になりますから聞きますが、政府はあの箱根会談で、御承知通り、表面は非常に日米間の経済協力あるいは協調ということについて一般的な合意に達したということを、当時終えた直後、片方はラスク、片方は小坂さんでしたが、両方で堂々と声明を出されたわけです。その後政府間においても、いろいろのいわゆる会合が持たれており、民間でも非常にひんぱんにいろいろな会合が持たれておる、これをどう評価しておるか。そういうふうにして非常にうまくいったというが、私どもがこれから質問するように、それから後の日米間の経済関係は必ずしも実態的にはうまくいっていないというふうに私どもは思う。確かに貿易は今年まで相当に実績は上がって、少なくとも輸出入の均衡という点については相当に実績が上がってきておる。しかし、これは内容がどうかといえば、輸出が三八%ないしは四〇%近くふえておる。ふえたけれども、これといったはっきりしたものはありはしません。いわゆる一般的にはあっとふえたというだけである。そして均衡がとれてきた。どっちかといえば輸入が一五%減ってきている。このために帳じりが大体合ってきたというだけの話です。積極的な意味というのはそうありはしない。こういう点から見て、民間、政府ともどもに、あの箱根会談を土台にして、出発点として、いろいろとこういう会合というか合同委員会というような会議がいろいろの線で持たれた。しかしながら具体的な問題については私はあまり実績が上がっていないように見るが、政府としては、外務省の経済局長ですから、この点については責任のある答弁ができるかと思うが、どう評価しているか、この点をまず第一にお聞きしたいと思う。
  37. 関守三郎

    関説明員 これは貿易という問題を取り上げてみましても、今御指摘通り、やはり両国の経済の動きというものによりまして結果は出てくるわけでございまして、今御指摘のございましたように日本の景気が沈静をしておるために輸入が一五%減った。そうして同時にその反面において対米輸出が三五%も伸びたということは、これは一がいに合同委員会の成果で伸びたということは私も決して主張できないと思うわけでございますが、やはりそれによってああいう合同委員会でお互いに相互の理解を深めたということによりまして、たとえば具体的に申しますと、最近の通商拡大法というようなものができまして、そうして米国がヨーロッパの国々と関税引き下げをやるというような場合におきましても、やはり日本のことは忘れてはいけないんだということで、常に日本を念頭に置きまして、そうしてアメリカ自体の施策にも日本の重要性というものを織り込んでやってきておるという点に、やはりかなりの成果が上がってきておる。これはもちろん合同委員会があったからこそそれをやった、合同委員会があったからアメリカの日本に対する経済評価がそれだけ変わった、そういうふうに百パーセント因果関係をつけるということは私は必ずしも適当ではないと思いますが、やはり合同委員会というような機会を利用いたしまして、アメリカの閣僚に日本の経済を見せて、日本の経済というものを十分に説明して理解させていくことが、結局アメリカの全般の経済施策におきましても日本を常に念頭に置かせる、日本に対する好意的な配慮を加えさすということになるわけでございまして、私はやはりこの合同委員会というものは、そのために直接どういう効果があったということは別といたしましても、全般的にかなりの効果を来たしておる、従ってそれはそれなりに大きな意味があるのであるというふうに考えて差しつかえなかろうと存ずる次第であります。
  38. 久保田豊

    久保田(豊)委員 この点も深く触れてもしようがないのですが、具体的に少し問題に入っていきたいと思います。  今度の合同委員会ではいろいろの議題等もぼつぼつ固まりつつあるということでしょうが、日本側として持ち出す問題の一つに、当然持ち出さなければならない問題の一つに、例の特需の問題がある。これはことしは輸入が非常に減ったからいい。ところが輸入が減らないということになればどういう実績になっておるかというと、特需については最近の実績をとってみても、六一年度は約四億四千五百七十七万ドルですね。こういう実績が出ている。それから六二年度はどうかというと、一月から九月までとっても二億七千万ドルの実績が出ている。ところが六二年度の一月から九月までの実績は、通産省からとったもので、これは少し甘いのかもしらぬが、とにかく非常に少なくなって、これで見ると一月から九月までで八千しかいっておりません。八千三十何万ドル、こういうことで激減をしているわけですね。そういう中で、先般来問題のありました例のトラックやジープの発注がはずされたという問題が出てきた。この際に、まず第一にこの問題については私は政府にお聞きしたいが、大体外務省はこういう情報をつかんでおって、向こうの国会でああいうことが堂々ときまる前に、なぜ手を打たなかったか。きまってからあわを食って、外務大臣がたまたまあそこにおったから、向こうの政府高官に対して文句を言ったが、あとの祭りだということで泣き寝入りだ。大体において、今まででも、日本の自動車工業の発展にはあれが相当の大きなささえになっておった。それをとにかく簡単にはずされて、そうしてしかもあの経緯から見ると、どうも外務省はぼうっとして何もしておらぬ。情報もこちらの本省の方に送らなかったというのが実相じゃないか。こういうぼやっとした外務省がアメリカさんの顔色だけ見ていればいいという態度だから、こういう問題が次々に出てくる。もちろんアメリカ側にはいろいろのドル防衛の見地から、こういう十億ドルの切り下げという切実な事情があったとしても、さっき言ったように、今度も商務長官ホッジスさんが来て、盛んに日本のことを考えている、考えているという。考えているけれども、具体的にはこういう問題が出ているじゃないか。政府なりなんなりから、日本に対する一言の事前相談があったのかないのか。さらに、日本の外務省としては、出先を含めてこれに対する情報を明確につかんでおったのかどうか。さらに、この情報をつかんでおったとすれば、これに対してどういう手を打ったのか、こういう点が一つも明らかでない、この点はどうなんですか。
  39. 関守三郎

    関説明員 非常にぼやぼやしておって一切情報をとらなかったのじゃないかと言われますけれども、この点は必ずしもそうでございません。御承知通りこれは議員立法でございまして、政府の立法ではございません。従いまして、アメリカ政府自体としても行政府でありますから、こういうものができたのは遺憾であったとはっきり言っておりますが、議員立法で、政府としてもこれはちょっととめることはできなかった。とめることができなかったというのは、結局、御承知通り通商拡大法を通すための一つのバーゲンと申しますか、えさであった。しかしながら、われわれは事前にキャッチいたしておりまして、これは当然朝海大使を通じまして強硬な申し入れをいたしたわけであります。またそれに対する返事もあったわけでありますが、不幸にして、やはり米国の国会の内部の事情もございまして、これを阻止することはできなかった。できなくて、あるいは通過したあとにおきましては、機会あるごとにこの問題については抗議いたしておるわけでございます。そこで、私の現在承知いたしております範囲におきましては、六二年度、つまり去年からことしにかけての米国の予算で、残った注文は、これはずっと続けて注文通りに受け取りまして、それから部品は年に千万ドルをこえるはずでありますが、これはやはり続けて注文いたします。そのほかにこれでは足りないということを申しまして、今実はまたちょっとほかのことで折衝いたしておりますので、あるいはそのうちにまたさらにそれより以上のいい結果が出てくるかとも思っております。これはまだはっきりしたことを申し上げる段階には至っておりません。
  40. 久保田豊

    久保田(豊)委員 事前にちゃんとつかんでおったというが、これはどうもあの当時の日本側政府の動きからすれば、実に寝耳に水なようなわけで、そうしてなるほど六二年度は予算の余りのものは注文する、部品は注文するという程度の話をアメリカ政府の方は持ってきた。ライシャワー博士が来て、どうもこれは国会でやることですから、政府の思う通りにはいきませんでしたというあとで言いわけがあったけれども、こういう態度ではだめだ。そこで、先に進みますが、これは今度の日米合同委員会議題にして、どういう話をするつもりかどうか。これと同時に、特需関係全体にはもう一つAIDの問題がありますね。特にこのAIDの問題については、最近のアメリカの傾向は、肥料とか繊維とかいう、こういうアジアにおける日本の固有市場をAID資金によるアメリカ品の買付によって次々にくずしていくという傾向が出てきている。これに対して日本側としては、少なくともこういう行き方についてはやめてもらいたい、重工業品その他については、これはある程度やむを得ぬかもしれないが、少なくとも日本固有の軽工業品の市場であるところにAIDの資金を使って、そうしてバイ・アメリカンを持ってきて、日本の固有の市場を欠々にくずしていく、こういうことがアメリカの基本の政策であるならば、どこに協調の余地があるのか、この点も私どもには納得ができない。この特需に関係するアメリカの買付の問題それからAID問題、これを今度の合同委員会日本側としては当然取り上げて、これはアメリカ政府の意向によって変わるわけですから、アメリカ政府の方針の変更を求むべきだと思うのですが、その用意があるかどうか。
  41. 関守三郎

    関説明員 今御指摘のございました二つの点は、これは当然日本政府としては——日本政府と申しますか、今度の合同委員会でも取り上げられるということは間違いない。必ず取り上げて、向こうの考えをできるだけ改めるところに持っていかなければならぬというふうに考えております。その点はもうはっきりきまっておると申し上げてもさしつかえないと思います。
  42. 久保田豊

    久保田(豊)委員 この点については、今通産大臣がおいでになったから、通産大臣からもお答えを願いたい。問題の焦点はこういうことです。アメリカとの今度の合同委員会の中で、先般問題になった特需についてAIDについての問題が非常に鋭く出ておるわけです。一つは自動車が御承知のようにああいう格好になっておる。これをこのまま続けておかれるということは、日本の自動車工業の育成についても相当大きな影響があろう。それからもう一つは、AIDでバイ・アメリカンが最近は肥料だけではない、繊維その他の軽工業品、こういうものにもだんだん及んできている。その結果は、いわゆる日本の固有のアジア市場というものを根本からくつがえすような態勢になってきている。少なくとも撹乱をする態勢になってきている。こういうAIDの運用方針というものは、日本としては黙っているものじゃないと思う。これに対して明確な話を今度の合同委員会では出すべきだと思うのですが、この点については通産大臣としてはどう考えるか。
  43. 福田一

    ○福田国務大臣 お説の通り、自動車の問題にいたしましても、バイ・アメリカンの問題にしましても、最近そういう事態が起きております。これについては日本側として当然一つそういう事態をなるべく改めてもらいたいということを要請することになると思うのであります。向こうは向こうでやはり向こうなりの事情があるように言っておりますけれども、われわれとしてはそういうことで、私どもの弱い経済性がますます弱化されるということは困るわけでありますから、そういうことについては特に主張をいたすつもりで考えております。
  44. 久保田豊

    久保田(豊)委員 これはもう少し突っ込んだ話をしたいのですが、時間がありませんから、次の問題に移ります。  箱根会談以後において、日本の対米輸入品についていろいろ日本から見れば不当だと思われるような輸入制限が次々に出てきておる。その一つは、御承知通り綿製品の問題について、特にズボンとブラウスの自主規制の問題が出てきておる。さらに鉄鋼に対するダンピング法の提訴という問題が出てきておる。こういう問題が出てきておるのですが、これらは私ども日本側から見れば、日本が相当自主規制をやっておるのにかかわらず、しかも国際的な協定をしておるのにかかわらず、アメリカが一方的にこれをやってきている。向こうの業者から言えば日本のものが入らないことはいいことにきまっている。きまっているが、そういう行き方では経済協力もへちまもあったものではない。そのほかの問題でもこれが響いてくるということになるので、こういう点については当面のズボンなりブラウス、鉄鋼についての問題だけでなく、全般的なこれに対する政府の明確な方針を出すべきだと思う、こういう点については日本政府としてはどのような問題をかかえて、どのような話し合いを今度の合同委員会でするつもりか、この点を明確にお答え願いたい。
  45. 福田一

    ○福田国務大臣 お説のように、ズボンとブラウスの問題につきましては、問題が起きまして九月から一時輸出をとめて話し合いを進めておる段階でありまして、一応向こうからも案が出てき、こちらからも対案を出して交渉しておるという段階であります。これなど私はかなり日本側の主張に理があるのではないかというふうに考えております。もとより経済のことでございますから、これは要するに商売のことですから、こちらの都合のいいことが場合によっては向こうに都合の悪いこともあり得ることは明瞭です。しかし、そこをお互いが理解し合って、そして適当なところで話し合いをつけていく、こういうことではないかと私は考えておるわけでありますが、しかし、ズボンとブラウスの問題なんかはいささか向こうに無理があるように実は考えておるのでありまして、こういうことは一つ強く主張いたしたいと思っております。ことに問題によっておのおの度合いが違うと思っておりますけれども、言うべきことは私は十分言うつもりで、きのうもホッジスさんが通産省へ来られましたので、特に日本の事情について、日本の経済はそうアメリカほど整備したわけではないのだから、対等なつもりでこっちへやって来られては困るというような意味のことを実は強く言っておいたわけなんですが、今後といえどもそのような考え方で、言うべきことは言う、そのかわり向こうも言うでしょう。私はそれでいいと思うのです。それでなければほんとうの親交はあり得ないと思うのでありまして、そういう建前に基づいて、今御質問がありましたように、どういうようにしていくのだということであれば、われわれはわれわれの立場をやはり十分述べ、向こうも述べるでしょう。しかしこちらもこちらで十分述べ、そして互いが理解をし合うという建前においてどこかで折れ合って話をつける、こういうことに相なろうかと考えております。私は遠慮はしないつもりでおります。
  46. 久保田豊

    久保田(豊)委員 基本的な態度の最後の問題については、私は一括して御質問しますが、その次の問題は、何といっても今度の日米会談でやはり一番大きな問題は、アメリカが今度通った通商拡大法の運用を日本との関係でどうするかという問題だろうと思います。これは御承知通りEECとの間にすでに交渉を始めつつある。アメリカ側は盛んに、日本を忘れないから、日本を置いてきぼりにしないから、こう言っているようですけれども、ホッジスさんがあなたと話したいろいろの内容を新聞を通じて見ますと、結局これはEECなりあるいは通商拡大法が現実に発動されるようになってきた場合に、EECとアメリカとの関係がはっきりした場合には、ざっくばらんに言いますと、日本もこれに均霑をしていくということについては、日本も一律関税の引き下げをしろということだろうと思う。その点で協調していけば、いわゆる一つの大きなブロックの中へ日本も入れてやる、こういうふうな印象が非常に強く出るわけであります。こうなってくれば自由化はどんどんやれ、アメリカ側はそう言っているわけですね。そしてしかも今度は関税一律引き下げをやれということになれば、日本の弱い産業というものは貿易為替の上での保護もなくなれば、関税の上での保護も薄くなる。こういう関係になって、それで日本が立っていけるかと言えば、日本の産業でこれで立っていけるというものは非常に少ない。特にこれから問題になるこれからの自由化の対象、いわゆる八十八以上のものになってくると、その観がますます大きい。これらの点について、アメリカ側は、自由化もどんどんやれ、そして通商拡大法を中心とするEECとアメリカとのいわゆるブロックに日本が入ってきたならば、日本もそれに相当する犠牲を負担しろ、その犠牲というのは何かといえば、いわゆる関税の商品群別引き下げという格好でこれに参加するのが一番根本じゃないか、こういうふうな主張のようにわれわれにはとれます。これでは日本の産業というものは成り立っていかない。しかもそうする中で、アメリカの方はどうかというと、御承知通り、EECを通す場合の一つの条件として、エスケープ・クローズの問題がそのまま残っております。これを発動されれば日本はアメリカの市場にも入れなくなってくるという危険がございます。こういう点を考えてみた場合は、日本としてはこれについてどういうふうな基本的な——盛んに池田内閣は、EECにも接近しろ、アメリカにも接近しろ、自由陣営だからと言う。これはけっこうです。けっこうだけれども、対策なくただ向こうさんにぶらさがって、お恵みというと語弊がありましょうけれども、向こうの好意にすがってうまい汁を吸おうなんといったって、国際的ないろいろな関係からいえばできるものじゃない。これに対して今度の話し合いでどういうふうに持っていかれるつもりか、私ははっきりお聞きをしたいと思うのです。当然この問題が一番大きな問題になると思います。
  47. 福田一

    ○福田国務大臣 この問題は確かに大きなテーマでございます。しかし、アメリカが言っているのは、何もEECとだけ話し合いをするからお前の方は入ってきたらどうかというような程度ではないのでありまして、今アメリカの感触として言うておることは、やはりお互いが関税を引き下げて、そうして自由な貿易をするというやり方が世界の経済を繁栄させる一番いい方法と思うので、そういうような意味で一つ日本も仲間に入ってはどうか、こういう建前でありまして、EECの方を重んじてやるから、だから日本はつけたりでもいいから入ってこいという態度ではございません。まずそれが第一点でございます。  それから今度は、その場合に、そういうアメリカの態度に対して日本としてどうあるべきか、どういう態度で臨んだらいいのか、こういうお話でございますが、私は、日本としても、基本の線ではそういうような考え方に反対すべき理由はないと思います。しかし、アメリカ通商拡大法を見ましても、そういうふうな関税をうんと引き下げることによって国内の産業に非常な影響があった場合には、その産業に対しては経営者に対しても労働者に対しても国が一定の補償をしてやるというか、何らかの手を打ってこれを救済するのだというような方法も考えてあるようであります。だから私たちがこれに踏み切って、それに参加していくという以上は、これはそういうふうに話がついても、それから五年の間にという期限もついておりますが、しかしその場合において私たちが何も言わないでその中に入っていけるか、それだけわれわれに自信があるかということになると、これは産業によってはなかなか問題があるでしょう。そこである一定の年限の間に、その産業を、たとえば五年なら五年の間にもっと強力にし、世界の各国の産業に比してちゃんとやっていけるというようなふうに体質改善をしていくということが、日本の国内のこととしてはこれから非常に大きなテーマとならざるを得ないと思うのでありまして、これは私たちがその会に入ってこれを処理するという場合においては、まずこの問題から考えていかなければならない。しからば、その場合において、おのおのの産業が世界の産業に伍して今どの程度の力を持っておるかという基本的な問題をよく考えて、そうしていよいよその会議が開かれる段階になった場合においては、日本の産業のこういうものは、——一応の原則はきまるでしょう。たとえば毎年だんだん減らしていって、五〇%なら五〇%関税引き下げをするのだ、五年間にやるとかなんとか、会議がきまってからこうやるんだということがあっても、実際の日本の具体的な産業について、それはそこまでいかないという場合には、たとい五年ということであっても、これはうちの方は七年ということにしてもらわなければ困りますということは当然主張しなければならないのでありまして、具体的に私は申し上げておりますが、何もアメリカさんがそう言われたから、何でもアメリカさんの言う通りに御無理ごもっともでございますといって私たちがそれを納得をする、そういうことではないのでございまして、会議に加わって御相談をいたしましょうという大局的な立場はもちろんわれわれはとっていった方がいいとは思っておりますけれども、それだからといって、何でも向こうさんがおっしゃることは御無理ごもっともという、かよな考え方で会議に臨むというのではありません。これはアメリカ国内自体においてさえ、そういうふうに、このやり方によって産業が影響を受けた場合には、やはり国がある程度補償をするということさえ考えておるわけでありますし、またそれぞれの国を考えてみると、おのおのの国にそれぞれの事情がある。これは決して日本だけではございません。おそらく会議を開いたら、それぞれの国がそれぞれの立場において自分の産業のことを考えてみると、にわかにそう簡単に話がまとまるように持っていけるかというと、問題があると思います。しかし、大きな考え方からいって、私はやはりそういう考えでやることに何も反対すべき理由はないんじゃないかと思うのでありまして、こういう意味で、外に対してはわれわれの産業の実態をよく理解してもらって、そして日本の経済がそれによって大きな影響を受けないように努力すると同時に、内においては日本の産業のいわゆる力をつける政策をぐんぐん推進していくということに努力をいたすべきではないか、こういうような感触でこの問題に対処していきたい、こう思っております。
  48. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今の問題はそんな程度の抽象論のお答えを聞いてもしようがないわけです。もう少し突っ込んだお話を聞きたいと思ったのだけれども、時間がありませんから、またの機会にして、これはちょっと話が飛びますけれども、私は、日ソ貿易について、貿易協定改定期がきて、きょうたしか政府の代表がモスクワへ出発するはずです。そこで、これに対する日本側の基本的な考え方について政府の方針をお聞きをしたい。  その一点は、御承知通り、今シベリア開発というようなことで、この前のミッションの結果を見ましても、それから後に業界に入っている話し合いの、発注といいますか、発注とまでいかないが、今話が出ている商品は、主として日本が売りたい重工業品が中心で、これは非常によけいに出ております。いわゆるアイデア商品といいますか、そういったものが、今出ているものだけでも約十億くらい出ております。十億くらい業界の方であげております。十億ドルです。ところが問題は、日本に入れるものがない。向こうでは売りたいけれども、こっちでは買うものがないということです。十億ドルに見合っているものは約一億ドルくらいのものです。しかも、それらの石油にしましてもあるいは鉄鉱石にしましても、いわゆる政策限界というものに一応みなぶつかっている。これ以上ソ連ものの鉄鉱石を入れる、あるいは石油を入れる、あるいはそのほかのものを入れるとすれば、少なくとも日本の輸入政策というものは根本的な変更をしなければもう物が売れないという段階にきている。今までの日ソ貿易は、あなたもよく言われるように、日本側からいえば、いつも入超々々です。御承知通り入超がずっと続いてきておる。この入超の幅がだんだん小さくなってきて、ことしあたりはおそらくパーです、今の見通しでは。こういうことになってきておる。ところが、これから先は逆で、今度日本側が大出超になる。こういう大勢で、基調が変わってきておる。しかし、貿易である以上、売るだけ売って、買うものは買わないということでは長続きするはずがない。この対ソ貿易の基調が基本的に変わりつつある。あるいははっきり来年度あたりから変わる。従って、日本側として一番売りたい重工業品の売れどころといったら、まずあの辺でしょう。ほかには大してろくなところはありやせぬ。従って、これに対して日本の政府としては、私は少なくとも全般の輸入市場政策の根本の変更をする。この腹がまえがはっきりできておらなければ、今度の貿易協定改定というものは私はうまくいかぬと思う。ところが今見ておりますというと、日本側政府は、日中貿易についてももちろんでありますが、日ソ貿易についてもいつも及び腰だ。及び腰で半分逃げっちりで、へっぴり腰でかかっておる。こういうことでは、日本の重工業の市場というものは、とうてい少なくともしっかりしたものはできない。この点はどう考えるか。よくあなたや池田さんが言う、いわゆるソ連は大国でこっちより大きいのだ、要するに二億三千万円の延べ払いの債権がある。これじゃしようがない、こう言う。しかし考えてごらんなさい。今船やプラントを売るところに延べ払いをつけぬで買う外国がどこにありますか。そういうものがたまったからといってそれがマイナスだというように見るあなた方の見方というのは、そこにへっぴり腰の土台がある。私ははっきり言っていいと思う。船を売ったりプラントを売る場合には、外国では少なくとも五年、七年、イタリアあたりの対ソのいわゆる延べ払いの債権総額というのはもっと大きいのです。欧州各国はみなそれでやっておる。しかも日本のすぐ近くにこういう市場があるなら、これらについての政府の根本的な腹がまえというものを変えてかからなければ、いわゆる今度の交渉というものは意味がないと思う。時間が短いですから私はあえて基本的な条約改定まで、あるいは締結までしろとは言いませんけれども、少なくともこの問題については少なくとも貿易協定の変更だけでも、この点がはっきり割り切れておらなければ、はっきりしたいものは出ない、私はこう思いますが、この点はどうですか。
  49. 福田一

    ○福田国務大臣 日ソ、日中の貿易の基本的な考え方についての御質問だと思うのでございますが、私は、欧州諸国がどういうやり方をされておるか、また日本が今までどういうふうなことをやってきたかということ等を考えてみますと、いわば国々によってそれぞれおのおの事情が違っておるのじゃないかと思うのであります。延べ払いといいますか、いわゆる掛売りみたいなものでありますが、そういうことをいたします場合には、御承知のようにそれに見合うところの輸出入銀行の資金というものが、ここでワクがうんと拡大しなければならぬというようなことが起きるでしょう。それは、たとえば会社がソビエトへ物を売った場合に、資材も買わなければいけないし、労働賃金も払わなければいかぬ、それでソビエトの方から金が来ないのだ、しばらくの間、延べ払いで五年も六年もかかって払うのだということになると、どうしてもその会社は持ちません。だからどうしてもやはり輸出入銀行へたよって、一つその金を貸して下さい、こういうことになる。そこで輸出入銀行がそれに耐え得るやいなや。その輸出入銀行の力がどれだけあるかということが、実はこういう今おっしゃったような問題をきめていく根本になると思うのであります。そこで輸出入銀行にうんと金を積んでおいて、どんどん貸してもいいようにやれ、こういうことではそういうことにも相通ずると思うのでありますが、その力があるかどうか、輸出入銀行はどれだけ金を持っていけるか、日本の財政でそれだけ立てかえ払い、日本の国の予算でどれだけの立てかえ払いをする力があるかどうかということが、実は問題になってくるわけでありまして、積極的に貿易をやらなければいけないということについては、もうわれわれ全面的に賛成でありますが、しかし、そういう輸出入銀行の自分のところの財布の方も考えてみるというと、そう立てかえはできない。そうするとある程度でやはり押えないわけにいかない、こういうことが起こるのであります。そこでその財布がふくらんでいるかふくらんでいないか、その国によって違うと思う。日本は御承知のようにまだまだそうそう財布がふくらんでいる国ではございません。予算編成のときにお考え合わせ願ってもわかりますが、公共投資その他についてはどんどん金を使えと言われます一方において、輸出振興のために輸出入銀行の資金を潤沢にしなければならぬということでありまして、なかなか輸出入銀行にそうたくさん金を積むということは日本の今の経済力からして無理がある。そういうところから出発しまして、今度はどの程度に見ていったらいいかという観点でやっていくわけであります。でありますから、私たちとしてこれは商売でありますから、できるだけよけいやる方がいいが、ふところ勘定も考えながらやる、こういうことに相なろうかと存じておるわけでございます。池田さんがどういうことを言われたか、私はまだよく了知いたしておりませんけれども、総理がもし、ソビエトは大国なんだから日本から借金するほどのこともないじゃないか、何とか決済してもらえたらいいじゃないかというようなことを言われているとすれば、そういうことも一つの考え方じゃないでしょうか。何と言ったって日本とソビエトと比べてごらんなさい。今世界じゅうで一番大きい国はアメリカとソビエトということになるので、そのソビエトが日本から借金して自分の国を再建するなんということは、ある意味において恥じゃないでしょうか。こんなことを申し上げたらソビエトの方に怒られるかもしれぬけれども、私はなるべくならお支払いを願いたと思う。しかし、そう言ってそれじゃ事は済まぬ、あまりにべなくなりますから、そういうことは言わないで、まあまあある程度のことは、将来大いにいいお得意さんにもなってもらわなければならぬのですから、少しくらいはしておきましようやというくらいのところで話を進めていって、私その決済の問題も聞いてみるといろいろほかに手があるようなことを言うておる人もあったのですが、こういうことは今後研究したいと思います。しかし久保田さんが言われる、もっと積極的にやったがいい、そうすることによってまた日本の産業も潤っていくんじゃないかという、そのお考えの根本にある思想に対しては、もちろん敬意を表しておりますが、実際の貿易の問題ということになりますと、今言ったようなふところ勘定の面もございまして、なかなか十分に行き届かないのをわれわれは残念に思っておるわけであります。
  50. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そんないいかげんな話をしちゃ困りますよ。私の今聞いたのは、日本はどんどん売りたい、ところが日本は向うから買う物がないのだ、だから輸入市場政策というものを、一年じゃすぐはできないでしょうけれども、基本的に変えるという、この基本的な政策がなければ、これからの対ソ貿易というようなものはほんとうに伸びない。そういうかまえの上に今度の協定をつくらなければだめだということが一つ。あなたがいつも問題にしているいわゆる二億何千万円の延べ払いの債権の問題、これは確かにあなたの言うようなことも一つのあれですけれども、しかしこれはどこの国も各国がやっているわけです。そして日本でも方法がないかといえばあるのです。輸出入銀行だけでなくて、一般市中銀行だって、二割ですか、残の何かの協調融資をやっているでしょう。そういうところをもっと金融制度の変更をある程度やっていけば、まだ延べ払いをつけられますよ。そういう点は一つも考えずに、ただ輸出入銀行だけにやっておるということでは、これから・売る以上はいかぬ。しかも売るものは大がい船でしょう。船で日本で延べ払いのついていないものがどこにありますか。ほとんどが全部延べ払いつきです。プラントにしたってそうです。ほかのところへ売るときだってそうじゃないですか。ソ連がよけい買う、またそこに売らなければ日本の船台は遊んでしまいますよ。そういう段階にきているときなんだから、日本としても輸出入銀行と一般市中銀行との協調関係等についても、政府で措置する余地が幾らでもあるじゃないですか。しかしそれだけで片づく問題ではないから、やはり輸入市場政策というものを根本から変えてかかる、この基本のかまえがなくてこの交渉をしても意味がないじゃないか。この二点については、政府として十分に検討し、腹がまえを固めておるのかどうかということを聞いておるのです。あなたのおっしゃるように、大国と小国だ、だからそこらは適当に、常識的にやれということを私は聞いておるのじゃありませんから、どうかはっきりお答えを願いたいと思うのであります。
  51. 福田一

    ○福田国務大臣 ただいま仰せになりましたように、向こうから買う品物についても十分努力をして、そして輸出入を大いにふやすようにしなければならないというお説でございます。その点につきましては全く同感でございまして、そういうものが日本の経済に有用であり、しかもソビエトから買う方が得なものがあれば、もちろん今にでも買った方がいいわけでありますし、それから今後二年、三年、四年の後を目途といたしましても、そういうような日本の買った方がいいようなものがあれば、それに合わせるようなやり方をしておくということも、これは決して悪いことではない、むしろ望ましいことでありまして、お説の点につきましては、一つ十分考えさしていただきたいと思っております。
  52. 久保田豊

    久保田(豊)委員 時間がありませんから、もう一点だけお聞きします。そうおっしゃるが、政府のやっておることは、それと矛盾することを考えておられるように私らは心得る。御承知通り、今、池田総理が欧州へ行っております。アデナウアーさん、エアハルトさんといろいろ話をしている。そこで何を頼んでおるかといえば、OECDに日本も入れてくれと一生懸命頼んでいる。ところがOECDは何を今やっておりますか。つまりソ連石油が、欧州市場に安いものが出るというので、アメリカを中心としてソ連石油のボイコット政策をきめようとしているのがあれです。ソ連と日本との貿易を拡大する。特に日本側でもって輸入するものが非常に少ない。出したいものがうんとあるが、買うものが少ない。それで一番問題になるのは何かというと、石油です。片方ではOECDに参加して、ソ連石油の締め出し協定に加えてくれと言っておりながら、片方でもって大いに買いたいものは買いましょうというのでは、話がとんちんかんでしょう。私は、政府として輸入市場の転換ということは、こういうところを筋を通して、はっきり腹をきめてやらなければだめだということを申し上げているわけです。御承知通り、ソ連石油というのは非常に安い。そして向こうでも相当売りたがっている。そのかわり、日本のものでは、見返りで、外国に売りたいものはどんどん買う、こういう態勢です。ここらを見きわめなければならぬ。この点について、福田さん自身はどうか知らぬけれども、少なくとも政府としては統一ある行動をとっていないように思うがどうか、この点が一つ。  もう一つお伺いいたしますが、当面の問題。これは非常に事務的な問題で、むしろ外務大臣に聞かなければならないことですが、ソ連と日本との貿易協定改定の交渉がこれから始まるわけですね。そこで一番私ども心配するのは、向こう側は長年この問題にタッチしておるベテランです。日本側はそのつど、外務省のお役人、それに通産省の人が少し加わってやるということだけで、事務的なベテランはおりますけれども、実態のわかった人がいない。ですから、当然ソ連に対して主張すべきことも具体的に主張しないような例が相当多い。私は、ソ連だって遠慮する必要はないと思う。たとえば貿易勘定をする場合、例の協定をする場合、当然これは金額の表示等はシフでやるべきだと思う。FOBでやっているじゃないか。こんなばかなことはやめさせることが必要ですよ。同時に、協定をする場合に、すでに契約ができておるものは新しい協定の中に組み込んでいる。こんなばかなことはやめたらいい。前年契約ができて、それからまだ向こうへ品物を渡していないというようなものを組み込むというばかなことは、やめたらいい。そうすれば、日本側としてはそういう点だけでも——まだいろいろ問題がありますけれども、有利になる。こういう点のごときは、一つ——向こうはベテラン、そう甘くはないのですから、私が考えるのは、民間の商売人で相当な専門家がおるわけです。そういう点について、実情も少なくともお役人より詳しわかっており、向こうの内幕もよく知っている連中が相当おる。これを日本側の代表に加える。加えることが困難ならば、これの何らかの委員会をモスクワなり東京なりにつくって、交渉団の交渉を有利に導く、バック・アップをしてやるということが必要じゃないか。漁業協定の交渉のときには、御承知通りお役人だけでなくて、民間のベテランもみんなこれに参加しております。ですから、必ずしもソ連側に押されるということはない。こういう点も、当面の問題としては政府として当然考えていいことじゃないか、こう思うが、この二点についてだけ一つ伺いたい。あとは、田中委員質問もあることですから、まだ聞きたいことがありますが、保留します。
  53. 福田一

    ○福田国務大臣 まず初めのお話でございますが、もちろんソ連の油も問題でありますが、しかしソ連だけが商売の相手ではないのでありまして、欧州各国も商売の相手ということになれば、やはり欧州の国々から買うものについてもその話し合いが出るのは、これはやむを得ないことだろうと思うのであります。なおまた油の問題につきましては、御承知のようにアラビア石油の問題等々もございまして、それからまた値段等の問題もいろいろありますから、これはいろいろの面からまた考えてみなければならない点もあると思いますが、しかし後段の点について、一つ大いに民間人を起用するとか、あるいは言うべきことは言ったらいいじゃないかというようなお話につきましては、十分また考えさしていただきたいと思う次第であります。      ————◇—————
  54. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、中小企業に関する件について調査を進めます。  中小企業金融に関する問題についての質疑通告がありますので、これを許可いたします。田中武夫君。
  55. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣、時間がありませんので、一言だけでけっこうです。実は最近の事実でありますが、明石の方で、五十数名を使用しておる町工場、ここが金融逼迫のために、社長が服毒自殺をやった——明石市の大久保町です。その社長は、両親の墓の前に行って服毒した。それで、取引関係その他に三十通ばかりの遺書を残しておる。この遺書の中に従業員あての遺書がある。それは、従業員に給料が払えなかったにもかかわらず、今までよくやってもらって大へん済まなんだ、そういう意味のことを書いて死んだわけです。これは金融逼迫のための一つの犠牲というか、悲劇なんです。ことに政府の昨年来の金融政策というか、経済調整政策が、今中小企業に大きくしわ寄せになってきておって、中小企業がほんとうに金融の面において苦しんでおるということは御承知だと思う。  ことに年末を控えて、政府としては、中小企業の年末融資あるいは来年度に対しての中小企業金融、こういうものについてどう考えておるか、いろいろ聞きたいが、時間がありませんから、  これだけを伺っておきます。
  56. 福田一

    ○福田国務大臣 私、そういう事実は今初めてお伺いしたのでありますが、まことにお気の毒にたえないと思う次第であります。ただ、事業がうまくいかないというのには、田中さんも御承知だと思いますけれども、いろいろの理由もございまして、金融面だけで事業がうまくいかない場合ももちろんございますが、経営の方針が間違っておったとか、あるいはまただんだん、かわるいい品物を作る商売が出てきたとかいうような、いろいろなことから出てくると思いますから、それに至りました事情を、金融面だけにしぼって考えてお答えをするというわけにいかぬかと思うのでございますが、しかし、いずれにいたしましても、そういうように責任をとられて、しかも従業員のためにまでそういう丁重な遺書を書かれたというそのお方の気持になってみると、まことにまじめな、りっぱなお方であったと私は考えざるを得ないと思います。  これに関連して、いわゆる政府中小企業の金融対策はどういうふうになっているかという御質問でございますが、私は実はこの九月ごろからそれを非常に心配いたしまして、九月の末に、例年よりはうんと早い、二カ月ほど早いのですけれども、百九十億ほど中小企業へ金を回しまして、それから今度また十月になりまして、十月の上旬でございましたけれども、四百億の金を中小企業金融年末対策として決定をいたしました。そして、これは例年より約一カ月ほど早いのでございますが、できるだけそういうことのないようにしなければいかぬということで、そういう手を打ったのでありますが、しかし、なおかつ今中小企業に非常にしわ寄せがあるということを心配いたしておりますので、この月末にでも事情を見まして、場合によってはもう一ぺん手を打とうと考えて処置をいたしておるというようなわけでございますので、御了承を願いたいと思います。
  57. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣、もういいのですが、今あなたの言われた、金融だけにしぼってその犠牲が金融のためだ、こういうことも云々と言われたのですが、仕事はあるのです。一生懸命仕事をしておる。結局が従業員の給料も払えなくなって死んだ。私は、これを言っているのじゃないのです。一つの例を言っただけです。そういう事実があるという一つの例なんですが、そういう中小企業の金融対策について真剣に考えてもらいたいということを申し上げて、大臣、けっこうです。  今、通産大臣から、時間がないので一言だけ政府の気がまえというようなものを伺ったのですが、これはあくまで気がまえの、抽象的な態度であって、大臣、時間の約束がありますから帰ってもらったのですが、廣瀬次官一つ年末金融に問題をしぼって、通産省としては中小企業金融の年末の問題をどういうように解決していくのか、きょうは中小企業庁長官がおりませんので、一つ通産次官からもう少し具体的にお伺いしておきたいと思います。
  58. 廣瀬正雄

    ○廣瀬説明員 中小企業が年末に資金が非常に困っておられる、一つには越年資金でございますし、また一つには、不況の克服というようなこともございまして、資金的に難渋していらっしゃるということにつきましては、通産省といたしましては非常な関心を持ちまして、先刻大臣が答弁されましたように、ことしは相当早目に手を打って参ったのでございます。そこで、中小企業関係の三金融機関に二百五十億の特別融資をいたしたのでありまして、さらに市中銀行の金融債を百五十億、買いオペレーションをいたすことにいたしております。こういうようなことと合わせて四百億という資金の確保をいたしておりますけれども、それでもなお不足だというように考えざるを得ませんので、その点につきましてはさらに今後も努力重をねて参りたいと思っております。なお、今年の年末は市中銀行の全銀連でありますとかあるいは相互銀行さらに信用金庫、信用組合というような民間の金融機関におきましても、昨年に比べましてきわめてことしは協力的であります。こういうような民間金融機関の中小企業に対する格別なる協力につきましても、大いに期待を持っておるわけでございます。現在考えておりますのは、そういう程度でございます。
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 国民金融公庫と中小企業金融公庫と見えておりますね。それでお二人にお伺いするのですが、今、次官から年末金融について大体の考え方が出されました。そこでおのおのあなた方のところで、一体年末にあたって特に中小企業が申し込むであろうという金融の予定及び政府の今言ったような態度といいますか、その程度で応じ切れるかどうか、そういうあなた方国民金融公庫、中小企業金融公庫の年末対策といいますか、そういうものについてはどのような用意があるのか、あるいはそれに対して今、次官が言われたようなことでやっていけるかどうか、そういう点を一つお伺いいたしたいと思います。
  60. 森永貞一郎

    ○森永説明員 第三・四半期の資金についてお答えいたしたいと思います。先ほど七十億の追加をいただきましたので、三十七年度第三・四半期の融資規模は三百五十二億ということに相なります。前年度の実績は三百五十九億でございましたので、それに比べますと九八%ということで若干減少するわけでございますが、ただ前年度の貸付の中には災害関係の資金が二十五億、石炭関係の緊急融資が九億ございました。これらはいわば特殊のものでございますので、それらを除いた姿で考えますと、前年度よりは若干増加ということに相なっております。この程度の資金量で中小企業の年末資金需要に遺憾なく対処できるかどうかという問題でございますが。御承知のような金繰り難、それに加うるに昨今は受注減、売り上げ減あるいは賃金の上昇といったような事情が加わって参りますので、中小企業の困難はますます増加していくのではあるまいか。そういう状態のもとにおいて、市中金融機関の中小企業向けの融資は昨今停滞きみでございますので、なかなか中小企業金融全体としては苦しいことに相なるのではあるまいか。需要に対する充足率は、大体六割ぐらいのところで推移いたしておるのでございますが、今後の情勢いかんによっては、さらに資金の御追加をぜひともお願い申し上げなければならぬのじゃないかというようなことで、通産大臣大蔵大臣にもせっかくお願いを申し上げておる、まだ具体的な数字の問題までは申し上げておりませんが、ぜひもう一度お考え願わなければならぬのではないかということをお願い申し上げておるというのが現状でございます。
  61. 石田正

    ○石田説明員 大体第三・四半期に対します見通しにつきましての感触は、今中小企業金融公庫の総裁の方からお話があったと同じような感触を持っております。特に私の方は商業関係が相当大きな部門を占めております。この商業関係というのは、従来は割合に苦しい中でもよいような傾向がありましたけれども、最近はその方面におけるところの苦しみがだんだんと広まりつつあるのではないかという点を特に心配いたしております。数字で申し上げますが、昨年の第三・四半期は四百九十六億円の貸し出しを実行いたしたのであります。その中で、先ほど中小企業金融公庫の総裁からも申されました災害関係でございますが、二十三億ございます。これを差引いたしますと、去年の災害関係以外の貸し出しは四百七十三億ということになっております。ことしは、先ほどお話がございました資金の追加七十億円というものを第三・四半期に注入いたしまして、大体今のところでは五百十一億の貸し出しができるのではないだろうか、かように考えておるわけでございます。この五百十一億という数字は、先ほど申しました災害除きの四百七十二億に対しまして、大体一〇八%くらいの数字に相なるわけでございます。そこで、これでもってこの年末金融が滞りなくできるかどうかという一番大切な問題でございますが、私の方に対する申し込みは、まず十月の数字を申し上げますと、上半月は前年に比べまして二五%増というような数字を示しております。こういうことでもし推移いたしますならば、今申しましたところの五百十一億ではとてもまかない切れないのではないか、こういう心配をいたしたのでありますが、このほど十月中の直扱いだけの数字がまとまりました。その数字で申しますと昨年の一〇%増ということに相なっております。これは別に安心すべきことではないのでございますが、一二五%でずっといくということを考えますと、あるいは少し増勢が緩和されてくるのではないかという感じも実は持っておる状態であります。ただ問題は、御承知通りに、私の方は、一番申し込みが多いのは十一月でございます。十一月の申し込みの状況が第三・四半期で一番大切なのでございまして、この十一月がどのような申し込みの状況になるかということを最も心配いたしておるというのが現状でございます。われわれといたしましては、実は各理事がそれぞれの地方に出張いたしておりまして、今週から来週にかけて現地の事情をもう一ぺん目で見てくるということと、それからまた十一月の数字の出工合をこれから十分見て参りまして、その模様によりましては、さらにどれくらいの資金の追加を政府にお願いするかという腹を固めまして、具体的な数字としてもし必要がありまするならばお願いをいたしたい、かように思っておるのが実情でございます。
  62. 田中武夫

    田中(武)委員 その前にちょっと委員長に申し上げますが、実はきょう、石油関係及び丸善の外資提携の問題、こういう問題をやりたいと思っておったのですが、時間もどうやらなさそうですし、それに石油には特に小委員会がございますから、そういう面でやりたいと思うのです。そこでそのときに譲りたいと思います。  ただ一言だけ。これは大蔵省の為替関係になるのか、でなかったら次官でけっこうですが、この次に実は予定としては十一月の二十六日に小委員会をやることになっております。それまでに今の丸善の問題が進展しないようであったらきょうはやらない、こういう考え方を持っておるのですが、どうですか。
  63. 竹内俊吉

    ○竹内説明員 御質問の内容は、どういうことかわかりませんが、丸善問題の外資導入の件だろうと考えますが、これはまだ関係省の中で検討中でございまして、結論が出ておりません。従って、まだ未決定と申しますか、そういうことだと思います。
  64. 田中武夫

    田中(武)委員 私が言っておるのは、今、小委員長と打ち合わせまして、石油小委員会を十一月二十六日に別にやるということになっておるので、それに質問を譲りたいと思うのです。しかし、外資審議会等がそれ以前に結論を出すような情勢なら今やっておく必要があるし、そうでなければあとに譲りたいので、そういことをお伺いしておるのです。
  65. 竹内俊吉

    ○竹内説明員 外資審議会の今後の動向につきましては、今いつごろまでに結論が出るということを申しがたいと思います。従いまして、二十六日前にどうなるかということは、画然とは申しがたい、こういうことであります。
  66. 田中武夫

    田中(武)委員 ちょっと問題が途中にはさまったようなことになるのですが、きょうやらないとすれば、関係者以外の人は帰ってもらっていいと思って言っておるのです。二十六日にこれを取り上げたら、すでに結論が出ておるとか、あるいはそういうことに対してもうすでに手おくれだということになるのなら、きょう私は意見を十分に述べておきたいと思います。
  67. 竹内俊吉

    ○竹内説明員 審議会の日程は、十三日に一回ありますが、これにはかからない予定であります。そのあとの審議会は二十七日でありますから、今お尋ねの二十六日前には、従って結論が出ないもの、こう考えております。
  68. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは石油関係で来てもらっておる人、それから大蔵省の為替局関係の人、それから公正取引委員会委員長、これは質問は二十六日にいたします。  それでは引き続いて、先ほどの質問を続けていきたいのですが、政務次官もお聞きのように、国金民融公庫も中小企業金融公庫も、現在の政府のワクといいますか、増ワクでは乗り切れないだろう、こういうように見解を述べております。そこで、ここで直ちに幾らなくてはならない、こういう計算を立てるのは無理かもしれませんが、そういう点を国民金融公庫と中小企業金融公庫は直ちに見通しを出して、政府その他に資金の確保方を折衝すべきだ、こう思っておるのですが、それを受けて立つ用意がございますか、どうですか。
  69. 廣瀬正雄

    ○廣瀬説明員 これは中小企業の金融の情勢を見まして、適切な措置を講じなくてはならぬと思っております。
  70. 田中武夫

    田中(武)委員 それはそういう情勢を見て適切な方法をとって、少なくとも首をつったりなんかしないような状態になるような施策を望みたいと思うのです。  それから中小企業金融公庫なんですが、中小企業金融公庫に対して、借りる側が一番不満と申しますか、考えておることは、何回かここで申し上げたと思うのですが、いわゆる代理貸しが多くて直貸しが少ない、直貸しの場合は手続がうるさいのと、調査が長くかかって仕方がない、こういうことなんです。  そこで、私は去る五月八日に、中小企業金融公庫に対して二つばかりの資料を要求いたしました。その一つは、いわゆる直貸しの場合にどの程度の期間でやられておるのかということ、もう一つ中小企業金融公庫の資金が、規模別に見てどういう方向によけい行っておるのか。言うならば、中小企業のうちでも一零細中の零細というものは国民金融公庫の対象になろうと思いますが、いわゆる金融ベースに合うと申しますか、大きなところに集中しておるのではなかろうか、そういうことで、そういう資料の提出を求めました。ところが、その後、実は提出がなかったわけです。最近になりまして私のところへ小山副総裁ですか、参りまして、一応資料をもらいました。しかし、委員会で要求したものは直ちにつくってもらわなければ困ると思うのです。それと同時に、私のところに持ってきたって、私は個人としてここでものを言っておるのではないので、これは委員会に直ちに出してもらいたい、このように思います。その点はいかがですか。
  71. 森永貞一郎

    ○森永説明員 問題の二点でございますが、まず第一点は、直貸しの処理に時間がかかり過ぎるという点でございますが、去る五月の当委員会におきましてもいろいろおしかりを受けました。私どもも、実は昨年の第三・四半期から資金需要が非常に殺到いたしまして、資金の量から申しましても五カ月分くらいの手持ちがございました。また、処理能力から申しましても、いささか申し込みの方がオーバーいたしまして、これをいかにしてこなすかということに非常に苦慮いたしておりましたところに、五月の委員会での御注意をいただいたわけであります。その前からいろいろ心配いたしておったのでございますが、御注意もございましたので、その後鋭意処理期間の短縮に努力をいたして参っております。第一・四半期におきましては三カ月以上四カ月くらい残しておったのでございますが、昨今の実績によりますと、九月の実績では平均大体六、七十日では上がるというふうに改善することができまして、やっとほっといたしておるところでございます。今後も処理期間の短縮につきましては引き続き努力をいたして参りたいと存じております。  また、第二点の代理貸しの問題でございますが、御指摘のように、必ずしも私どもの趣旨が下部まで浸透しないと認められる事例が皆無ではございません。それは対しましては、従来、監査を強化し、厳重なる注意を加えると同時に、目に余るものに対しましては、資金ワクの配分を停止する等の強硬措置も昨年度来講じて参っております。それらのことと相待って逐次向上をいたしつつあるものと考えるのでございますが、今後におきましてもなお鋭意代理店の監督には十分力をいたして参りたいと存じております。なお、大きな方向といたしましては、代理店の機能も、これを全然使わない、これを捨て去るには忍びないのでございますが、しかし趣旨の徹底を期するためには漸次直貸しの比重を増加して参ることが必要であると存じまして、これまた昨年度来鋭意努力いたして参りました結果、着々直貸しの比重が増加して参っておるような次第でございます。  なお、資料の提出が大へんおくれました点につきましては、はなはだ遺憾でございまして、今後は御要求の点につきましては、できるだけ早く提出いたしますように努力いたしますから、御了承願いたいと思います。
  72. 田中武夫

    田中(武)委員 これは同じことを何回も繰り返しておるのだから、こちらもいやなんだけれども中小企業金融公庫の代理貸しが多くて直貸しが少ない。その直貸しの場合は、調査期間が長過ぎて、いざという間に合わない、これはしょっちゅういわれておる。そこで、二年ほど前ですか、私はあなたに少なくとも国民金融公庫程度に、フィフティ・フィフティまでに持っていく計画を一つ立てなさいと言って、その計画ももらった。今それを持っておりませんが、そういうような計画に従って運営しておられるかどうか。それなら現在において直貸しと代理貸しの比率はどのようになっておるのか。と申しますと、私、代理貸し必ずしもいけないと言わない。だがしかし大体代理貸しということは、そこの取引関係を持つものでないと借りられない。しかも本来ならばこの市中銀行ないし相互銀行とか信用金庫とかいったようなところが、本来自分の資金でも貸してやるというようなところが中小企業金融公庫の金を使っておる。こういうことで、いわゆる中小企業金融公庫ができた趣旨に十分合いかねておると思う。そこでそのように言っておるわけなんで、現在の比率はどのようになっておるのか。  それからもう一つ、先ほどだいぶ期間については努力してきたと言われた。なるほど資料をもらうと、努力したというか、数字的にはそういう結果もわかりましたが、結局これは人員の問題だと思うのです。人員の問題になると、これはやはり予算定員ということになる。そういたしますと、大蔵省との関係も出てくると思うのですが、そのような点についてこれは大蔵省も考えてもらわなければいけないと思うのですが、大蔵次官及び総裁、どうですか。
  73. 森永貞一郎

    ○森永説明員 漸次直貸しに重点を移行することにつきましては、かつて当委員会におきまして大体の予定を申し上げたことがございます。大体その予定通りに進んでおります。三十五年度末の残高での直貸しの割合は、わずかに二三・八%でございましたが、三十六年度にはそれが二八・五%になっております。三十七年度にはこれが三〇%、今後三カ年のうちに五〇%に残高において到達する見込みでございます。なおこれは残高でございますが、年度間の貸付高で申し上げますと、たとえば四月から九月までの上半期の直貸しが三五・九%、漸次その比重が増加いたして参っておりますことを御了承いただきたいと存じます。  なお、お説のように、直貸しを増加いたして参るにつきましては、店舗の増設も必要でございます。また人員の増加も必要でございます。本年度は三カ店の増設をお願いいたしまして、人員として百五、六十人の増加を認めていただきました。来年度は融資規模は千六百億くらいの要求をいたしておりますが、それに伴いまして店舗の数は六カ店の増設の要求でございます。また人員はそれに伴いまして、はっきり記憶いたしておりませんが、四、五百人の増加をお願いいたしております。これは要求でございますので、大蔵省の査定を受けるわけでございますが、できるだけよけい認めていただくようにお願いをいたしたいと思っておるところでございます。
  74. 竹内俊吉

    ○竹内説明員 中小企業公庫の直貸しの分量がふえるに従って、人員の増加を要することは当然だと思います。従来もその線に沿うて予算の折衝間に認めて参ったわけでありますが、今総裁からお話があった点は、三十八年度の予算の交渉の段階で十分実情に応ずるような考え方で見て参りたい、こう考えております。
  75. 田中武夫

    田中(武)委員 この際ですからもう一つ関連したことを申し上げたいと思うのですが、前に政府機関関係といいますか、いわゆる公庫等の職員組合の代表といろいろ懇談したことがあるのです。そのときの話では、われわれ労使というか、管理者側、使用者側は自主性を持ちません。ということは、ベース・アップの問題にしても定員の問題にしても、結局煮詰めれば、理事者側としても、大蔵省の許可というか、予算がなければどうにもならない、こういうことで、いわゆる公庫内における双方の話、団体交渉といいますか、これでは解決しないんだ、むしろ相手は大蔵省だ、こういう話を聞いたことがあるのです。従って、こういう公庫あるいは政府機関等の職員の定員の問題あるいはベースの問題等については、大蔵省としても十分考えてもらわなければならぬ。今言ったように、労使双方——労使という言葉が当たるかどうか知りませんが、当局と職員の間に自主性がない、双方とも自主性がないということになるわけです。そういう点はどう思っておられますか。大蔵省が動いてもらわなければ仕方がない、われわれの交渉相手は大蔵省でなければならないんだ、こういうようなことを言っておりましたが、どうですか。
  76. 大月高

    ○大月説明員 労使の問題は基本的には当事者の問題でございますが、結果において全部政府の予算に関連して参ります。特に政府機関となりますれば、政府の全体の職員のベースとの関係と無関係にきめるわけにもいかないというような問題もございまして、結果においては御希望の通りには行ってないというのは事実だと思います。それは全体の政府の職員についてどの程度の自主性があるかというような問題と同じようにお考え願わねばしょうがないのではないか。ただ、考え方としては、できるだけその中の給与の体系でございますとかについて、どの程度の考え方をしたらいいかというような問題については、財政当局としては、やはり予算の面で全体として見るべきだというような態度をとっております。できるだけその措置をしたい、こういうふうに思っております。
  77. 田中武夫

    田中(武)委員 政府のいわゆる国家公務員とはちょっと違うのだから、少なくとも労使が自主性が持てないということでは困るので、公庫等の機関の必要なものは優先的に認めてもらわなくてはならぬのじゃないか、こう思いますので、一言申し上げておきます。  次に、国民金融公庫です。これも同じことを何回も言うのですが、今、年末に対しての大体の見通しの話を伺ったけれども、あなた方のところに対する一般の不満は何かというと、まず第一が五十万円申し入れて五十万円借りられたことがない。大てい六割くらい、ひどいときには三、四割の場合もある。そうすると、ほんとうに帯に短し、たすきに長しで、せっかくの金融が十分効果を発揮しないという例が多いのです。そこで気のきいた者は頭からサバを読んで、五十万円のところを七十五万円といって、削られても五十万円が手に入るというやり方をやっておるということは、あなた方も御承知通りだと思うのです。とにかく貸すには貸すが、半分程度しか貸さない、これが今常識になっているのです。あなたが、今、年末に対する見通し、資金ワク等について申されましたが、それは申し込んでくる者に対して、今までのような六割ないし五割くらいの貸し付けだということで出された金額ですか、いかがですか。
  78. 石田正

    ○石田説明員 国民金融公庫のお申し込みに対しまして貸し出し得るところの資金のワクというものは、ある意味におきましてきまっておるわけです。従いまして、もしこれを申し込みに対してまんべんなくやるんだということになりますれば、そこにただいまお話がございましたような工合に、一〇〇の申し込みに対して六〇ということで六割、こういう仕事のやりっぷりもあり得るわけです。私、特にやかましく最近言っておりますることは、一つ一つの個々の案件について全額を出す場合があることはもちろんでありますし、それから同時に工合が悪いところは全然出さぬでもいい。従来きておりますところの国民金融公庫のいわゆる可決率というものは、初めから可決率がきまるべきものではなくして、一つ一つのケースについてやった結果、どういうような可決率に相なるかということを考えなければならない、こういうことを申しておるわけでございます。それから質問の要点の、どのくらいの申し込みに対する割合かという点につきましては、大体六〇%というようなところに計算はなっておりますが、これにつきましては各支所ごとにみんな申し込みと、そうしてそれに対して大体これくらい貸すであろうというところのものをとりまして、その結果が今申しましたような平均したことになるのでありまして、所によりまして違いがあり得るわけなんです。実際あるのです。しかし、また可決率の問題につきましては、私は結果的に可決率が出るように、それから資金と申し込みとの関係は、結論的に申しますと、お金がないから出せないというのは、私の方から申しますると繰り越し申し込みでありますが、繰り越し申し込みの日数、いわゆる手持ち日数、お金が足りないために出せないところの率がどのくらいになるかということによって、ほんとうに資金需要に応じているか応じていないかということを判断するようにしていかなければならない、こういうことで実は指導いたしておるわけです。ただ、従来のマンネリズムもありますので、一挙にすっかりそういうふうになるというわけにはいかぬと思いますが、気持はそういうふうなことで指導しております。繰り越し日数をもちまして政府の方に資金の要求をいたす、こういう方式でやっていくつもりでございます。
  79. 田中武夫

    田中(武)委員 そういう実情のあることは総裁も認められたようですが、要は絶対ワクが少ないということにある。絶対ワクの少ないところに、多くの人に少しでもという気持が半分とか六割になるのだと思うのですが、私は何も国民金融公庫だからといって、申し込んだら必ず貸さなければならぬとは言っておりません。しかし、必要なものと認めた場合に、百分の六十とか五十ということならば、これはせっかくの金が生きてこないのです。国民金融公庫の一番悪いところはそこなんです。それはよくわかっておると思うのです。従って、今後はそういうことのないようにしてもらわなければならぬ。従って、資金計画もそういうことがないという前提に立ってつくってもらいたい。そうでなかったら、これは悪くすると先ほど言った六十万円ほしい人が百万円と出す、削られても一〇〇%になるような出し方をてしおる人もあるのです。そういうこと自体は、国民金融公庫に対する不信というか、そういうことになりますから、そういう点は十分に心得ておいてもらいたい。またそれを受けて立つ大蔵通産等においても十分考えてもらいたい、このように思います。
  80. 石田正

    ○石田説明員 田中先生から申されたことは、確かにそういう弊害があったと思います。私は、先ほど申しましたような工合に、これから改善すべき点はその点であろうと思っておるわけです。可決率の問題は、これは先生も御承知でございますが、資金量にもよると思います。三十五年度のいわゆる可決率は五四%くらいであります。三十七年度、ことしになりましてから九月までの実績は六〇%ということになっております。しかし、これは全体の申し込みと可決率の割合でございます。実際はもちろん貸し付けされた分につきまして査定したのがどのくらいの率かということがポイントだろうと思います。その点につきましては、われわれの方として特に重点を置いて調べるように努めております。三十六年度において調べたところによれば、支所によって違いますが、大体六八%から七七%、こういうふうになっております。私は支所ごとに、また各申し込みの人ごとに違うのがあたりまえだ、そういうことを重点に置いてこれからやっていかなければならぬということで、今後その面について御指摘のように努力いたしたいと思います。
  81. 田中武夫

    田中(武)委員 国民金融公庫や中小企業金融公庫に対する一般の要望といいますか、不満といいますか、そういう点は今言ったような点にあるということを両総裁は十分考えてもらって善処していただきたい、こう思うわけです。  そこで話題が変わるのですが、銀行局長はもう十分御承知ですけれども、六月一日の当委員会において私が貸金業の問題を提起した。そこでその具体的な兵庫県の問題については警察の手入れがあり、しかもあのとき私が言っておったように、背任横領で逮捕せられた者も出てきた。それはそれとして、あの問題からこちら、私はいろいろと貸金業のことを調べてみたのですが、一番魅力だというのは手っとり早いということなんです。もちろん少々利子も高いし、ちょうどアヘンのようなものであって、一度食いつけばもう浮かばれないということがわかっておっても、なおかつそういう人たちから金融を受けるというのはどこが魅力だというと、手っとり早いということです。ということは、逆に言えば、国民金融公庫とかあるいは中小企業金融公庫が十分にその役割を果たしていない。その結果こういう貸金業者、いわゆる高利貸しに飛びつくということになるのです。それが先ほど言ったように悪循環でそこから抜けられない、こういう状態になってつぶれていくという企業もたくさんあります。そこで一番問題になるのは手続の問題であります。もちろん国民金融公庫にしろ中小企業金融公庫にしろ、これは政府の金であり、国民の血税である。こういうものを使う限り、そう簡単な書類では出せないと思うのです。しかしながら、いろいろとむずかしい書類の要求がある、そういう点が一つだと思うのです。それから申し込んでから借りられるまでの日にちがかかり過ぎるという点です。そういう点でああいうところに申し込んでくるのだと思います。そこで、政府機関が資金上の絶対ワクが足りないということ、それから手続がもう少し何とかならないかということ、あるいは必要な書類はこれだけ必要だからどうにもならぬということであるならば、本人に書かさずして、何か窓口において適当な指導なり作成なりをしてやるというようなサービスができないのかどうか。そういう点について関係者にお伺いいたしたいと思いますが、どうですか。
  82. 森永貞一郎

    ○森永説明員 手続の簡素化、重複いたします書類をできるだけ最小限度にとどめるということは、私就任以来終始心がけて参った点でありまして、調書につきましても比較的簡単な調書で済ますようにということで能率の促進を期しておる次第でございます。  ただ、私どもの融資にあたりましての根本問題になるかと存じますが、長期の資金でしかも設備資金が多い、従いまして、融資に際しましてはあくまでもこれを利益によって償還する、単なる金繰り償還でなく、利益を上げて償還していただくという建前をとっております。しかいたしますと、やはり企業がそれだけの設備をして、それだけの償還利益を生み得るかということがポイントになるわけでございます。ただ担保があればいいというわけにも参らない場合が多うございます。従いまして、大なり小なり企業診断みたいなことが伴わざるを得ないわけでございます。中にはまた私どもが融資に際しましてそういった企業診断的なことを申し上げたことについて、業者の方から、自分でもはっきり自分の企業のポジションがわかったといってお礼を言われたことも実はあるぐらいでございます。しかし、それにいたしましてもできるだけ簡素に、しかも早く、そしてそういった企業診断的な目的も達し得るようにという三者をかみ合わせて、いかにして能率を上げるかという点でございますので、今後もそれらの点につきましては引き続き努力をいたしたいと思っておりますが、ただいま申し上げました収益償還というその可能性があるかどうかということを見ることが一つのポイントでございますので、右から左にというわけにも参らぬという点だけは御了承いただきたいと思うのでございます。
  83. 石田正

    ○石田説明員 まず第一に借り入れ申し込みの書類の点でございますが、これはできるだけ簡素なものにいたしたいと極力努力いたしております。それからお話がありましたように、特に零細な方でございますので、なかなかそういう書類にもなれない、だからかわって書いてやったらどうだというお話でございます。この点につきましては、やはり申し込みは当該の方がされるのでありますから、建前としてこちらが書いてしまうというわけにもいかぬと思います。で、問題は、ふなれでありましたり、あるいはどうしたらいいかというような御相談、これに対して適切に、こういうふうにお書きになったらどうですかということだと思います。われわれの方も、率直に申しまして、人員についても必ずしも十分だとは申せませんし、また必ずしもベテランばかりおるわけでもございませんですが、できるだけ融資相談係のところにベテランの人を置きまして、書き込み得ないところのブランクについては、こういうふうにお書きになったらよろしいというふうなことでさらに努力を続けて参りたい、かように思っておる次第でございます。
  84. 田中武夫

    田中(武)委員 問題は窓口だと思うのです。金を借りるのは、やはりひがみがあるのかしれないが、おそるおそるいくわけです。あなた方はきわめて民主的な発言をしておられるが、それぞれの窓口はやはり役所と同じような感じを受けるというんですよ。それはそうでないと言おうがどう言おうが、事実はそうなんです。そこに私は問題があると思う。従って、そういったサービス精神をいわゆる窓口にまで十分に徹底させてもらいたい、このように思うわけなんです。  そこで銀行局長、こういった貸金業もやはり一つの業としてあるわけなんですから、これを頭から否定してしまうということもいけないと思うのですが、やはり今言ったようなことで、高利と知りながらも借りにくいということになると私は思うのです。それに対して銀行局長は何らかの対策というようなことを考えられていますか。
  85. 大月高

    ○大月説明員 やはり基本的には金融全体の逼迫の度合いの問題だと思います。昨年来金融の引き締めをやりますと、どうしても一般の金融機関それから政府機関から供給する資金には限界がございますので、背に腹はかえられぬということで貸金業者の高い金利に依存される方が多くなってきた。これは率直に申しまして事実だろうと思います。ただ、幸いに国際収支の方もだんだん改善されて参りますし、先般日本銀行で公定歩合を下げる、また準備率を下げる、高率適用の運用も緩和する、こういうような方向で考えておりますし、さらに財政の国庫収支の関係から申しましても、第三・四半期、昨年は二千六百億の散超でございましたのが、ことしは五千二、三百億にもなろうかというようなことでもございます。そういう点でやはり基本的には、全体の金融の情勢が緩和されていくということが基本である。そういう基本的な問題を解決しながら、できるだけ政府機関としては簡素に、しかも早く借りられるように、またある程度資金も充実するというようなことを考えていきたいと思っております。貸金業者の方に直接どうするということは、率直に申しましてなかなかむずかしい問題であろうと思いますので、基本的に正常な資金の流れの中で、できるだけ一般の事業家の方に金を借りていただけるようにというのがわれわれの考えているところでございます。
  86. 田中武夫

    田中(武)委員 御承知の例の近畿商事の問題ですが、あれが今問題になっているのは、やみ預金といいますか、この点なんですが、警察の調べが進むに従って、その帳簿のずさんさ、これがはっきりしてきたわけですね。それから浮き貸しというか、ともかく預けた金、貸し出した金、いわゆる債権と債務の関係が全然わからない。集めた金は三億五千万円ないし三億円ぐらい。ところが七千万円しか資産がない、こういう状態なんです、調べが進むに従ってそれがわかった。私は貸金業が金を集めるということ自体が間違っていると思うが、私は大なり小なり今日の貸金業者が自己の資本でやっておるのは少ないんじゃないか、何らかの方法によって金を集めた、それをまた貸しをしておるという格好だと思うのですよ。そこに出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律を改正する必要がある。こういうことは私前もって前の委員会で十分申し上げたと思うのですが、たとえば検査報告、こういうような点を強化するとかあるいはその貸金業自体を、これは憲法に問題があると言われるかもしれぬが、許可制にするとか、そういったような改正は考えておられますか、いかがですか。実は私はもう改正案もつくっておるのです。あなた方が出されなければこちらで出したいと思っておるくらいなんです。私の手元には私のつくった改正案があるのですよ。どう考えられますか。
  87. 大月高

    ○大月説明員 ただいまお話のございましたように貸金業自体は、基本的には一般の大衆から金を預かったり借りたりしてはいけない。これが貸金業法を貫いている基本原則でございます。そういう意味で、かりに帳簿がずさんでございましても、それは貸しておる立場においてだれに貸しておるのかわからないということで、本人の損害はあるかと思いますが、一般大衆においては何ら損害がないというのが制度の精神でございます。今度のように法に違反いたしまして、一般の人から金を預かるというようなことがございますならば、これは当然、司法権の発動でもってこれを禁圧する。今、兵庫県でやっておりますのがわれわれの基本的な考えでございます。そういう意味におきまして、一般の大衆の金を預かってもいい機関と預かってはいけない機関というものを峻別いたしまして、少なくとも大衆から金を預かる機関につきましては、政府が責任を持って監督をしあるいは検査をする、あるいは報告をとるという措置をとっておるわけでございますが、それ以外のものについては、一切預かり金をやってはいかぬということを徹底したい、こういう意味でございます。そういう意味で、この貸金業者につきましても、法律を改正いたしまして、政府の監督を強化する意味というものはないわけでございます。違法行為をやれば、これを粛正するという態度がわれわれとしては最善である、かように思います。
  88. 田中武夫

    田中(武)委員 あなた方の考えておるというか、法が考えておる貸金業ならそれでいいんだ。ところがそうでないところに問題がある。それを警察が摘発するまでは何もできぬということはおかしいと思うのです。それと同時に、貸金業というものが、与党間においても何らか構想が練られておるそうなんですが、そういうようなことについて何か考えたことがありますか。
  89. 大月高

    ○大月説明員 これはたびたび具体的な問題になりまして、貸金業者の方から、一つ立法をして大蔵省の監督下に入れてほしいということであります。しかし、われわれの具体的な考えといたしましては、今申し上げましたように、預金を預かり得る機関とそうでない機関とは峻別いたしたい。それから貸金業者自体は、実は数が非常に多いわけであります。しかしこれは現在直接都道府県の管轄下にあるわけでございますが、届出の面から見ましても、毎日新しいのができ、毎日やめておるというようなことでございまして、われわれが監督するといたしましても、実際に目が届かないという問題もございます。そういう意味において、これを預金を受け入れ得る機関あるいは大蔵省が直接これは安心してつき合ってもいい機関というような、一つのレッテルを張るということはかえってよくない。貸金業者というのは、ただ高利をとらないで金を貸す機関であるということに割り切る方が、社会に対する害毒も少ないであろう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  90. 田中武夫

    田中(武)委員 この問題については、まだ議論があるのです、しかし外務大臣が見えましたから、問題を変えていきたいと思います。  その前に一言だけですが、今あなたが言われた金利の面をと言うが、これは昭和二十九年に本法ができたときに、日歩三十銭ときめた。今日この日歩三十銭という最高限度が正しいのかどうか、あるいはこの日歩三十銭というのは、どういう上に立って三十銭というものが出たのか、二十五銭ならなぜいけないのか、二十銭ならなぜいけないのか、こういう検討はなされたことがありますか。
  91. 大月高

    ○大月説明員 この日歩三十銭をきめるにつきましては、当時相当議論がございまして、われわれ、法務省及び今の自治省の関係の方といろいろ慎重な検討をいたしたわけでございます。特に今抽象的に貸金業という話になっておりますが、この法律は一般に業として金を貸す場合の規制でございまして、質屋さんが入るわけでございます。現在質屋さんの金利につきましては、当時からやはり日歩三十銭あるいは三十五銭という金利がございまして、この正常である質屋業が現にとっておる金利をさらに下げろということは、やはり庶民金融という立場からどうであろうかというような議論がございまして、結局三十銭がぎりぎりの線だ、こういうようなことできまっておるいきさつがございます。われわれといたしましては、金利は安い方がいいと考えますけれども、この三十銭は、いわば社会悪というような感覚で、これをこえた金利をとることに対しましては罰則があるわけでございます。そういうようなものについては、ぎりぎりの一般の金利水準でもって刑罰を課するというわけにはいかない。一般の常織からいえば、相当高い金利になっておるわけでございますが、そういう実情を考えまして、今の金を貸すという実態の上でそう無理がない、これをこしたものは相当高利のものだという線で、各方面で慎重に検討いたしました。
  92. 田中武夫

    田中(武)委員 これも残しておきましょう。しかし二十九年にきめた三十銭が妥当であるかどうか。先ほどおっしゃった質屋営業とも関連して、ことに公定歩合を二度、三度下げなければならないという今日の状態から見て、そういう点を検討する必要があると思うのです。これは外務大臣が見えたので、もうこの程度で打ち切って後日にあらためてしますから、あなた方ももう一度この利息制限法と関連して、これは検討してもらいたいと思う。  それから委員長にお願いしておきたいのは、六月一日に今言っている金融業の問題を取り上げたときに、法務省に対して、いわゆる利息制限法をこえたものは自然債務である、裁判所の請求ができない、法律上の請求ができないにもかかわらず、それを入れたもので、しかも民事訴訟法五百七十三条違反の差し押えをしておる執達吏に対してどうかということと、それから公証役場があまりにも権威のない公正証書をつくっておる、そういうことに対してどうするということを、公証人及び執達吏の名前まであげて僕は言っておった。それに対して何ら答弁がありませんから、これは委員長の方から法務省に答弁を求めて下さい。
  93. 逢澤寛

    逢澤委員長 承知しました。そういうように処置いたします。      ————◇—————
  94. 逢澤寛

    逢澤委員長 外務大臣出席されましたので、先刻の通商に関する問題について、質疑を許可いたします。田中武夫君。
  95. 田中武夫

    田中(武)委員 外務大臣は時間がないようですし、私のあと久保田委員からも質問があるようですから、私は、もう一言だけ確かめておきたい、このように思うのです。  これは経済局長から話を聞きましたでしょうか、日米友好通商航海条約なんですが、それの十年間の期間といいますか、これが来年の十月末日なんです。そこで、本年の十月末日までに意思表示をしなければ、引き続き効力を有すということになっておるわけです。ですが、その意思表示がしてないその間の事情については経済局長から聞きました。聞きましたけれども、引き続き効力を有するというためには、事務官段階でなく、政府内において一応こういうことを検討し、そういったことに対する意思決定が必要であったのではないかと思いますが、外務大臣、日本とアメリカとの友好通商航海条約効力の問題あるいは申し入れの問題等について、どういうようにお考えになり、関局長からどういうような相談を受けられましたでしょうか。
  96. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日米通商航海条約につきまして、改定の必要があるかどうかということにつきましては、前々から政府部内検討をいたしておるわけでございます。問題は、条約面の改定問題とあわせて、運用面につきましても、過去十年間の経過を十分振り返り吟味してみる必要があろうということで、部内において今検討中であるという状況です。
  97. 田中武夫

    田中(武)委員 部内において検討ということは、この条約の期限が来るのだ、従って改定というより、これはむしろ現在のやつを破棄して新たなものを結ぶという格好になる。そういうことについて検討しておられると思うのです。できるならば本年の十月三十日までに、それを終えて、新たなる意思決定する必要があったと思うのです。ところが、実際問題としては、その検討に手間取ったりなんかして、今日までそれがずれておるということです。そうすると、十月の三十日までにアメリカに対して文書をもって意思表示をしなければ、自動的に本条約延長になるのです。そこで何もやらなかったわけです。だから、もうすでに延長になっておるのだ。そのことについて政府として——少なくとも条約は国と国との問題なんです。そうするなら、国の意思表示閣議その他できめる必要があろうと思うのです。あるいは言うならば、憲法七十三条ですか、ちょっと忘れたが、あとで見て下さい。七十三条だと思いました。延長ということについて、国会の承認をも求めなければならぬではないかということまで議論が出てくると思うのです。それについて、何もしなくてみだりに時日を経過したために延長になったということ、これは許されぬと思うのですが、どうです。何か公式に時間切れになるから、やむを得ぬから次の決が出るまでは本条約延長になってもいいんだ、こういうような話し合い政府部内でやりましたですか。
  98. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日米通商航海条約は、田中委員承知のように、日米間の経済関係の基調をなしておる大事な条約でございまして、先ほど申しましたように、その条文の上からはもとより、運用面につきましても検討を重ねておったわけでございまして、今御指摘のように、十月末日をもって意思表示をする期限が切れたわけでございまするが、関係各省との話し合いを通じまして、この条約改定しなければならないという結論にまで至らなかったのでございまして、従って自動的にこのような決定を認めるということになっておる次第でございますが、冒頭に申しましたように、この運用面につきましても検討を続けておりますので、私ども日米経済の基調を維持しながら、逐次改善の方途はあらゆる角度から、あらゆる機会に努力して参らなければならぬと思っております。
  99. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣はあまり知っていないのじゃないか。僕の質問とずれておるのだと思うのですよ。申し入れの期限が過ぎたのじゃなしに、十月の三十日に期限が到達するわけなんです。そこで意思表示をしなければ、なお効力を持続するわけです。そのときに意思表示をしておけば、来年の十月末、すなわち条約を批准してから、成立してから十年という期間満了するわけです。それをやっていないということは、検討はしておるが、間に合わなかったということ、その検討が十月末までにでき上がって、その上に立って改定意思表示をすることが一番よかったと思うのです。しかしそれができていない。そういうことになれば、改定について、運用についていろいろ討議をした、検討をした、しかし十月末日までには間に合わなかったから、やむを得ぬから次の——これは国内的の問題ですよ。国内的の問題として一次にこの問題が、今検討しておるものの結果が出るまでは、やむを得ず延ばさなければならないじゃないか、こういうことになろうと思うのです。その条約を延ばすについては、政府部内において国家意思としてきめる必要があったんではなかろうか。だから、そういうことについて何か政府は態度を特にきめるという方法をとらなかったのか。もし態度をきめなかったとするならば、だらだらと延長に入ってしまった、こういうことになるのです。それを外務大臣が認められるかどうか、そういうことですよ。
  100. 大平正芳

    ○大平国務大臣 関連した問題が十月末までには必ずしも煮詰まっていなかったということでございまして、従いまして条約二十五条は自動的な延長を認めるということにいたしておる状況であります。
  101. 田中武夫

    田中(武)委員 煮詰まっていなかったから、煮詰まるまでは延ばさねばならないということは、この条約締結のときの精神からいって、十カ年をこえてなお効力を存続せしめるということなんです。だから、それを十カ年をこえてなお存続せしめるということであるならば、それに対して確認をなさったかどうか、国家意思として確認をせられたかどうかということです。
  102. 大平正芳

    ○大平国務大臣 まだ確認というアクションはとっておりません。
  103. 田中武夫

    田中(武)委員 これ以上聞きません。聞きませんが、それはよくないと思うのですよ。少なくとも、条約というものは、外務大臣には釈迦に説法かもしれませんが、一国と一国の意思表示によってできたものです。それで、自動延長といいますか、その規定があるわけです。そうすると、自動延長せしめるのには、この段階においては自動延長もやむを得ないじゃないか、こういうことを一応討議をする必要があったと思います。それがなされていない。そういうことになれば、関係省といいますか、関係者は怠慢であった。結果的にはアメリカに対しては何も言わなくていい、言わなかったらそのまま延長するのだから。しかし、延長しなければならないじゃないかということは、国内的な一つ意思決定というものが必要ではなかったか。今聞くと、それはやっていないということを正直に言われたのだから、もうこれ以上責めるわけにいきませんが、すべての条約がそんなたよりないことだったら困るので、やはり自動延長にしても、延長がやむを得なければやむを得ないということについて、一応の国家意思というものはきめる必要があると思うのです。こう思うわけです。それ以上外務大臣に私が申し上げてもしょうがないから、そういう特別な意思表示をしていなかった、意思決定をしていなかったということですが、私はその必要があると思いますし、今後もそういうようにやってもらいたい。さらに本条約につきましてはいろいろと問題があります。従って、今検討しておられるようでございますが、それはわれわれからも注文を出したい、こう思っておるので、まあ時間もないからきょうはこのくらいにしておきますが、できるならばどういうような点を検討しておるかというようなことも知らしてもらいたいと思うのです。
  104. 大平正芳

    ○大平国務大臣 あらゆる角度から検討いたしております。
  105. 逢澤寛

  106. 久保田豊

    久保田(豊)委員 あまり時間がないから、私は、日ソの貿易協定改定がいよいよ問題になっておりますので、この点について先にお伺いいたしたいと思います。  この貿易交渉につきましては、私が最初政府にお伺いしたいのは、基本的にはどういう態度でいかれるかということであります。具体的にお尋ねいたしますと、日ソの本格的な通商航海条約を結ばれるつもりかどうかという点が一点。それから、本格的な通商航海条約の問題は今度は取り上げないのだ、だから現在行なわれておるところの貿易協定だけの改定を考えておるのか、どっちですか。この点をまず第一番に伺いたい。
  107. 大平正芳

    ○大平国務大臣 今次の交渉に際しまして、私どもの基本的な態度といたしましては、従来通り拡大均衡の立場を維持して参りたい。従って、本格的な条約締結というよりは、新協定によりまして、輸入規模を現行協定に比しまして可能な限り拡大するような方向で、今まで通りのやり方で拡大均衡に持っていく道はないかということで、今検討いたしておるわけです。
  108. 久保田豊

    久保田(豊)委員 本格的な通商航海条約を結ぶか結ばないかの問題については、きょうは時間がありませんから、私はこの問題に深く入ることをやめておきます。  そこで、従来の日ソ貿易協定改定をする、こういう御意思だ、こう見るわけですが、それについての基本的な態度はどうかということをお聞きしたい。それはどういうことかといいますと、今までの日ソ貿易協定の実績というのは、あなたもよく御承知のことと思いますが、日本側から見て常に入超であったわけであります。それが、そのしりがおそらく六千万ドルないしそれよりちょっと増しているのじゃないかと思います。ところが、ことしあたりは大体往復二億七千万ドルくらいが実績になるのじゃないかと思います。しかもそれはパーです。現在のところを言いますと、八月末の実績で見ますと、日本から見て輸出の方が九千七百六十万ドル程度、輸入の方が九千六百五十万ドル程度であります。ほとんどパーです。こういう状態です。ですから、ことしはパーになるわけです。ところが、ことしの実情を見ましても、内容がすっかり変わって、これからは貿易の基調が日本から見ると大幅な出超、いわゆる出過ぎる、こういう態勢になってくることがはっきりしているわけであります。と申しますのは、これからの大体輸入商談、つまりこっちの方で入れるものからいうと、品物がないのであります、日本の方で。おそらくこれは、全体としては大体六千万ドル程度が今後ふえればふえるものだと思うのです。ところが、出る方はどうかといいますと、向こうで現に引き合いないしは照会がきておるものだけを集計してみましても、大体において今十億ドルくらい向こうが日本から買いたいというものがある。これは全部商談がまとまっているものではありますん。ありませんけれども、そのくらいあります。そのうちで、すでに先だって行ったミッションがまとめたものが、船を中心として一億ドル程度あります。近くまた、大体において船を中心とした一億ドル程度の商談が進んでおるようであります。しかも、年末ないしは来年早々になれば、もう少し大量の買付商談がくるというふうな見通しであります。これは業界の専門的な見通しであります。従って、今までは人超であったものが、今度は大幅な出超になるという態勢になっておる。もっと具体的にいえば、日本としては重工業品、たとえば船とかプラント、こういうようなものとしては、ソ連が今一番いい売れどころなんです。将来またここに売るよりほかない。ところが、買う方のものはどうかといいますと、たとえば石油にいたしましても、あるいは石炭にいたしましても、鉄鉱石にしても、木材にしても、日本では、一つは不景気ということと、今まで取り結んでおりました輸出市場のいろいろの制約がありまして、今の見通しでは、まず一億ドル以上はむずかしいだろうというのが、大体の業界の見方です。売りたい方は、引き合いのあるのは十億ドル、ところが買いたいものは一億ドル、これでは、どんな貿易協定を結んでも、本格的な貿易の発展ということはできないわけです。ですから、ここで通産大臣にも申しましたが、そういう意味においては、共産圏全体とは言いませんけれども、少なくともソ連貿易を発展させようというには、日本のいわゆる輸入市場政策というものを根本的に変更しなければだめだということであります。こういう点について、私ども見たところでは、政府部内では根本的な検討一つもしてないのじゃないか。ですから、この前ミッションが行ったときも、河合さんをここへ呼んで聞きますと、売るだけのことで、買う方のことはごめんこうむりたいと逃げてきた、こういうべらぼうな態度では——べらぼうと言いますと話弊がありますけれども、こういう態度では、これは日本のほんとうの輸出振興、特に重工業品を中心とした輸出振興ということはできない。私はこういうことになろうかと思うのです。これについて政府では今まで検討をしておるのかどうか。輸入市場の変更ということを基本的に検討されておるのかどうか。この心がまえがないと、いわゆる貿易協定が及び腰になってしまうわけです。これでは何にもならぬと思うのです。この点の検討を経済関係の閣僚会議なり何なりでしっかりやっておられるのかどうか。その上で今度の協定に臨まれるのかどうか。この問題が、たとえば初年度の協定で、今大体において往復三億ドルということがいわれております。あるいは期間を三年にする、五年にするという問題にひっかかってくる。この点についての検討をされたのかされないのか。あるいはかりに検討されないとしても、この協定の当事者として、外務大臣としてはこの点をどうお考えになっておるのか、これをお聞きいたしたい。
  109. 大平正芳

    ○大平国務大臣 久保田委員が御指摘された問題は、御指摘された通りの問題があると思うのでございまして、政府部内におきましても、もとり輸入計画というものにつきまして検討いたしておることは事実でございます。ただ問題は、一つには対ソ関係の輸出が、今御指摘のように重工業品、船舶等が多い関係で、信用供与が現在すでに相当の水準に達しておるわけです。それで、政策の問題として、外貸が不足しておる、低開発圏に対してもっと力を入れなければならぬのじゃないか、特定の国に信用供与がだんだん大きくなって参るというようなことは、一応もう少し考え直してみる必要がないかという声もありますので、その点も検討いたしておりますし、それから、今国内での需要から申しまして、国内の需要態勢を変えないと、なかなか思うような輸入ができないじゃないかという御指摘はごもっともでございまして、国内の貿易の事情、他の諸国との貿易の事情等も勘案いたしまして、一体どの程度まで伸ばすことが可能であるのか、そういうようなことはもとより検討中でございます。当初私が申しましたように、何とか拡大均衡の方向に持っていけないものかということを根本の方針といたしまして、せっかく今問題を詰めておる段階でございます。
  110. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私は、ぜひこの輸入市場政策の根本的な変更と結びつけてやらぬと、うまくいかぬと思う。この腹は、きょう出発の予定だそうですから、まだきめられていないにしても、この問題に必ずぶつかる。政策としてはもう少し突っ込んだ態度をとってもいいのじゃないかと思うのです。シベリア開発は御承知通り四割くらいあそこに入れる。しかも、ソ連のやり方を見ておりますと、ほんとうに提携のできる国には、たとえばイタリアやフランスのごとく、シベリア開発のある部面を全般的にまかせるということまでやっているわけです。日本の関係でも、向こうの腹もそこまできめさせる。同時にそれについては日本側も腹をきめる。その腹をきめるということとなれば、今申しました輸入市場政策の根本的な変更ということを考えなければ、この問題のほんとうの前向きの解決にはならないということを、政府としてはもう一度具体的に考えていただきたい、こう思うのです。  それから、さっき通産大臣も、また新聞等で拝見しますと、池田首相も言われてるそうですか、つまりソ連に対します延べ払いの債権が現在たしか大体二億三千万ドルちょっと出ていると思います。これをただマイナスというふうにだけ見るということは、政府の考え方がおかしいのじゃないか。この大部分は御承知通り大体船舶とプラントであります。今船舶やプラントを外国に出します場合に、延べ払いの債権付でないなんというものはほとんどありますん。こういう点から見て、ソ連関係だけをこういう点からマイナスだというふうな御理解はちょっと変ではないか。それからまた、たとえばイタリアとかその他の欧州各国は、ソビエトに対してはもっと多額な延べ払い債権を認めてやっておるのであります。そういう点から見ても、私は、この点は政府としてそれにこだわってやるということはおかしいじゃないかと思う。国内の措置としても、なるほど輸銀が一番中心になります。外貨が基礎になることは明らかですけれども、今の程度の外貨をを持っておれば、国内措置としては、単に輸銀だけに政府がやらせなくても、ほかにまだいろいろの方法——現に市中銀行等の協調融資もやっておるのですから、協調融資との関係もある程度変更してくれば、まだ債権の供与力は相当あるわけでございます。ですから、こういう点をもう一度検討して、二億三千万ドルの延べ払い債権にばかりこだわってやるということは、また私が言いましたような政府の及び腰、一つアメリカに遠慮しているんじゃないかと思いますけれども、そういう態度の表われではないかというように思うのですが、この点については大臣としてはどうお考えになりますか。
  111. 大平正芳

    ○大平国務大臣 対ソ関係におきまして、延べ払いがふえることは絶対的に悪いということは思っていないのです。ただ、先刻申しましたように、特定の国に信用供与がふえるということは、他の国に対して輸入ファンドの関係もございまして、それだけ他の国に伸びるのが制約を自動的に受けることになりますので、むやみにふえるととはいかがかという反省が一つあるということ。  それから、国内の輸出円金融の関係から申しましても、これはひとりソ連ばかりでなく一延べ払いで資金を食うということになりますと、現金輸出分にも支障を来たすということもございますので、そこらあたりを勘案いたしまして、逐次拡大均衡に持っていくにはどういう工夫がいるかということを考えておるのでございまして、頭からこれはマイナスのファクターとして見ておるというような考えじゃ毛頭ないわけでございます。
  112. 久保田豊

    久保田(豊)委員 この点は、政府としては、特に低開発国に対する問題等も含めて、根本的に御検討いただくことが必要ではないか。そうでないと、本格的な——本格的と言うと語弊がありますけれども、しっかりした協定の内容はできないのじゃないかというふうに思います。  そこで、それに連関する二、三の問題をお尋ねするわけですが、入れる方のものが非常に少なくて困っているということなんですね。出す方は向こうも買いたいし、こっちも出したくてうずうずしておる。しかし何を入れたらいいかということが問題になる。そこで一番当面問題になるのが石油の問題です。ことしは三百四十万キロリットルですか、これが協定量。実際には、協会等で聞いてみますと、四百万キロリットルまではいくだろう、大体においてこういう話のようであります。この程度はいい。しかし問題はこれから先にあるわけです。ソ連としてはぜひ日本には石油を売りたい。これをどう扱っていくかということが一番大きな問題になる。これは同時に日本の石油政策全体、エネルギー政策全体にひっかかってくる問題です。この点についてどうも政府の考えておるところがはっきりわからぬ。と申しますのは、片方にそういう問題をかかえながら、今度は池田さんが欧州に行って、アデナウアーやエアハルトに対しまして、盛んににOECD入れてくれと頼んでおる。これはおそらくそう簡単に参加できるものとも思いません。しかし、今欧州ではOECDが中心になりまして、御承知通りソ連石油の締め出しの協定をつくろうというのが今日の実情です。こういうふうにそれに入ってくるということになりますれば、OECDのソ連石油の締め出し政策に同調しなければならぬということになろうと思うのであります。そこらも承知でああいうことを言われておるのか。そういうことになりますと、一番大きな品目である木材は御承知通りの状態です。ことしは二百五万トンですが、実際の実績は百五十万トン来ない。日本が小便したんだからしょうがない。河野さんが行って盛んに二百五十万トン、三百万トン切れ切れと言って切らしておいて、引き取らぬというのはおかしいわけです。ですから、当面の見通しとしてはちょっとずうずうしい見通しになると思います。そうなってくると、一番手っとり早いのは石油という問題になります。これに対して政府全体としてはどんなお考えを持っておられるのか。この辺がわからない。おそらく今度のソ連との石油貿易協定の中でも、この問題が私は相当シリアスな問題になって出てこようと思いますが、これに対する政府としてのお考えはどうであるか、ぜひ伺いたいと思います。
  113. 大平正芳

    ○大平国務大臣 英米系石油の問題とか、カフジ原油の問題とか、ソ連石油の問題とかをどのような工合に輸入して参るかということは、今御指摘のように、石油政策の問題として非常に大事な問題だと思います。そこで、今私どもの態度といたしましては、カフジ原油もそうでございますが、民間におきましてそれぞれ石油業者が話し合って、ことしはこの程度というようにお取りきめがあるようでございまして、あえてそれを変更するという意思はないわけでございます。従って、今与えられた条件のもとにおきまして、そうして年々歳々原油の需要はふえていっておる傾向はございまするが、そういう状況のもとにおきまして、どの程度確保することが可能かということが今の課題になっておるわけでございますし、今度の交渉におきましても、御指摘のように、この問題が一番シリアスな問題になろうと思います。しかし、逐次健全な確保の方向にいく、しかもそれは、石油業界といたしまして、円満に問題が受け取られるような状況においてやっていきたいと思っておるわけです。
  114. 久保田豊

    久保田(豊)委員 どうも外務大臣になられてから答弁がうま過ぎて要領がわかりません。これじゃ困ると思います。  もう一つ私がお伺いしたいのは、どうも日ソ交渉ということになりますと、向こうの役者とこっちの役者を比べてみますと、向こうはくろうと、こっちはしろうとという感じが非常にするのであります。そのために、半分は及び腰であると同時に、当然日本としては要求してやらなきやならぬことまでもやってないように思うのであります。その一つとしては、当面今までの貿易の出超分が六千万ドルくらいあるでしょうが、これは来年度の貿易協定の中に日本として当然主張していいことじゃないかと思う。これは基調が変わっているからやっていいことじゃないか。この点についてはどう考えているか。  もう一つの問題は、御承知通り金額協定である。金額協定の場合にはすべてFOBでやっておられるようです。しかしこれはおかしいと思う。当然CIFでやるべき性質の問題だと思います。こういう点についても今まではほとんどやっていない。年々の交渉でもやっていない。  もう一つは、やはり、金額協定で年々やる場合においても、既契約分を協定の中に入れておる。こういうばかなことをやっておる。私は、なぜ、日本政府としては、もっと自主的な態度でソ連側に強硬に交渉しないのかという点で疑問に思います。ことしはこういう点をやられるのか、やられないのか。  もう一点は、貿易交渉代表の中に民間人を入れたらいいんじゃないかと思うのです。日ソ漁業協定は、御承知通り政府だけじゃ不十分ですから、民間人を日本側の代表に正式に入れております。ですから、どうも向こうが非常に専門家がそろっておって、裏も表も知っておる。日本の方は、外務省のお役人さんが非常に御勉強をなさっておるようですが、どうも向こうと比べると、そういう点については腹がまえも不十分だし知識も不十分だ。関さんを前に置いてこんなことを言っちゃ済みませんが、そんな感じがいたすのであります。そこで、そういうことの裏に十分通じております。実情に通じております日本のその方の貿易業者もたくさんおるのですから、そういう連中を代表に入れるか、いろいろの都合で代表に入れないとするならば、こういう民間の専門業者なり学識経験者を含めた何らかの委員会をつくって、そうして日本側のいわゆる交渉の場合の裏打ちをしてやっていくということが必要じゃないか。こういう点は当面の問題ですからお考えになっておると思うが、これはどうか。この二点を大臣からお答えをいただきたいと思うのです。
  115. 大平正芳

    ○大平国務大臣 代表団に民間の人を入れるという問題は、今度の交渉では、ただいまそういう用意はないわけでございますけれども、今、御指摘がございましたので、私もとくと考えてみたいと思います。  前半は、貿易の技術上の問題でございますから、経済局長から答弁さしていただきます。
  116. 関守三郎

    関説明員 六千万ドルの回復の問題は、この前のことしの交渉でも言っておりまして、御承知通り計算では一千万ドルこっちの受け取りがふえるということになっております。今度の交渉でも当然それをやりまして、ただ一挙にそれを取り返すということは、やはり向こうに金を、何と申しますか、クレジットを出しておりますから、向こうはそのクレジット償還にある程度の準備金をとっておきたいという。こっちはその問題はその問題で別に考えてやろうということで、とにかく返すものは返してもらうという話し合いになりまして、一千万ドル受け超になるということにしたわけであります。今度の交渉でもやはりそういう態度をとって、できるだけ受け超になるようにしてきたい、こういうふうに考えております。  それからCIFとFOBの問題は、これは長い間の懸案でありまして、幾らやりましてもなかなか話がつかない。しかし、船の方は、これは日本の船会社があまりもうからないところには行かないというところに出てくるわけであります。かりにCIFにいたしましても、日本の船賃が、日本の船会社があそこへいって配船するということになれば別でございますけれども、そうでない限りは、自然外船とかそっちの方へいくわけであります。日本の船会社がそこまではっきり決心するということになりましたら、別な状況になってくると思いますけれども、現在の状況においては必ずしもそういう機運にありませんので、輸出するというところまではちょっとどうかというふうに考えておる次第でございます。  それから、先ほど大臣から御答弁いただきましたように、民間人の問題も、これはちょっと誤解があってはいけないと思うのであれしますが、やはりそういうことになりますと、通産、農林のエキスパートが話に当っておるわけです。ですけれども、現実に商売をやっておる方ほどよくはわかりませんので、今後どうなるかわかりませんけれども、やはり民間人を入れてほんとうの商売人同士の話し合いをやるような機会を、これも協議会にするとか、そういうものをやはり並行してやって、改善さしていく必要があるだろうということで、そういうことも具体的に考えている次第でございます。
  117. 久保田豊

    久保田(豊)委員 ソ連問題については、日ソ貿易協定についてはなおいろいろの点をお聞きしたいのですが、あまり具体的に聞くと交渉に支障があるでしょうから、これ以上は聞きません。しかし、いずれにしましても、最初申しましたように、大きく貿易の基調が変わっておる。この基調の変わった上に立って、これを前向きに発展させるということになると、日本全体の輸入政策というものの基本を変更するという構想の上に立たなければうまくいかないという点を、一つ根本的にお考えをいただきたいということです。  それから、今度は日米経済貿易合同委員会が来月早々から開かれるわけです。これについて私は一つお伺いをいたしたいと思います。これも時間がありますんから、特に重点だけをお聞きします。  それは、一つは特需関係の問題です。御承知通り、今問題になってきておるのは特需関係ないしはAID関係で、向こうの国会で例のチェンバレン修正というものが行なわれまして、今まで入れておりました日本のトラックやジープが全部締め出しを食った、こういうことですが、これはあなたも何かあっちにおられて、あわ食って向こうに交渉したが、あとの祭りでしょうがなかった。ライシャワー大使も、政府はああいうふうに考えてはおらなかったのだが、いかんせん向こうの議会の方がきめてしまった、きわめて遺憾だということをあとで言いわけに外務省に来られたようです。しかし、私は午前中にも関さんに聞いたのですが、そこまでいくうちに、政府としては的確に情報も取り、そして政府に対しても、あるいは議会に対しても、外務省として打つべき手は打つのが当然ではないか。どうも、われわれ見ておりますと、関さんは、それはやったのだけれどもだめだった、こういうお話ですが、あなたが向こうにおって、たまたまあわ食って向うにぶつかることをやるというようなこの道行きを見ますと、本気にやっておらなかったのではないかというふうに思うのです。  そこで、もう一つ、AIDの問題については、御承知通り当面は大きくは肥料の問題、それから今度繊維の問題が出てきております。バイ・アメリカン政策——向こうとしてはそれぞれ理由はあるでしょう、理由はあるでしょうが、アジアのこの軽工業品については日本の固有市場です。その固有市場にAIDの援助という形でアメリカ製品がどんどん入っきて、そして市場撹乱ということをやられることは、これは私は日本として黙って見過ごしておくべきではないと思う。少なくともこの点について、同じようにAIDの運用についても、たとえば向こうのAIDであるためには、重工業品であるとか、あるいは公共事業投資とか、こういうものに整理をしてもらって、少なくとも軽工業品ないしはそういったものについては、日本の基本市場を撹乱しないという程度のアメリカ話し合い取りつけができなかったはずはないと思う。  この二点について、今度の会議について日本としてはどういうふうにこの問題を取り上げるのか、取り上げないのか、取り上げるとすればどういう角度からこれに対して交渉されるのか、話し合いをされるのか、この点をお伺いしたい。
  118. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日米貿易経済委員会のことでございますが、目下日米両国で議題の相談をいたしまして、これは内定いたしました。そして内定いたしました議題につきまして、今日米双方でトーキング・ペーパーの作成を急いでおります。これはおそらくこの十七日ごろには双方手交しようという心組みで急いでおるわけでございます。それで、議題は十六日に発表さしていただきたいと思っております。そして、それに基づくトーキング・ペーパーは十七日に手交し合う。これは発表いたしませんで、双方で勉強の材料にいたして、われわれがどういう心組みで臨むか、そういう点をきめなければいかぬ資料になるわけでございます。従って、今久保田先生から御指摘になりましたような問題を取り上げるのか取り上げないのか、取り上げ方はどうするのだというような具体的なことは、今私が申しましたような了解で今準備を進めておりますので、この段階では、私がそれに言及することは、大へん恐縮でございますけれども、差し控えさしていただきたいと思います。  ただ一点私が申し上げて御了解を得ておきたいのは、今あなたが御指摘になりましたように、問題が起こってあたふたやってはいかぬじゃないか、前もって十分そういう理解を深めておかなければならぬという御注意でございますが、これはもうごもっともでございまして、それゆえにこそ、こういう会合を設けまして、非常にフランクな話し合いを日ごろからやっていこうというのが、ほんとうはこの委員会の眼目でございますので、そういった理解の基調というものをできるだけ日ごろからつくり上げておこう、こういうことが私どもは一番力点を置いておるところでございますので、こういった会を続けていく過程におきまして、今御指摘された具体的な問題ばかりでなく、今後起こってくるいろいろな問題を消化して参る上において、非常に貴重な基礎ができると思います。またそれをでかさなければならぬというような趣旨で当たっておるわけでございます。
  119. 逢澤寛

    逢澤委員長 久保田君、時間の関係がありますから、一つ御了承いただきまして……。
  120. 久保田豊

    久保田(豊)委員 たくさんお聞きしたいのですが、時間がありませんから、一点だけ。  これも、今の御答弁では、ここで大臣が言及されることは差し控えたいということになろうと思いますが、やはり一番国民が大きな関心を持っておるのは、通商拡大法の適用に連関したこれからの日米関係であります。御承知通り通商拡大法が通って、それからEECとアメリカとは、これからこれによる、つまり貿易関税の一律引き下げの交渉が始まる。この際に、日本としては、アメリカは盛んにホッジス長官あたりが来ていろいろ言っておりますが、結局下手をすればこれから締め出しを食う、均霑をするとしても、これに対する相当の要するに日本としては代償を払わなければならぬということが心配をされるわけですね。当然この問題が今度の議題の一番大きな問題になろうと思います。そういう点で、代償とはどういうものかという点ですね。これが日本の産業としてたえられるものかどうか。せんだっての通商会議あとでは、関さんの御意見としては、日本もガットに上る関税の一律引き下げに参加するほかないんじゃないかというような御意見も述べております。しかし、そういうことになりますと、日本の産業としては大へんなことになる。ですから、ここらについてどういうお考えを持っておるのかということ。それから、もう一つは、通商拡大法に連関しまして、この成立のときに、アメリカの方は、国内産業保護という保護主義の立場から、これは主として業界を背景にした議会の圧力によってできたと思いますが、免責条項がちゃんとそのまま残っておる。関税だけはやっても、日本が今度アメリカに出そうという場合に、この免責条項を発動されるということになりますと、一律関税引き下げ、これも相当問題ですが、関税は下げた、しかし今度は安いものがいけばどんどん免責条項を発動される。今まですでにカーペットとか板ガラスとかあるいは体温計とか、これでもって日本としては手痛い苦汁をなめておる。このほかにもいろいろあるのですが、こういう点を総合して、日本としてはこれらに対してどういう対策を立てていくのか、そうしてこれらの問題をどういうふうに今度の日米合同委員会でこなしていくのか、これからの方針を私はお聞きしたい。こういう点が一番大きな心配の点になろうかと思う。これについて政府としてはどうお考えになっておるかと言っても、それは今発表の段階ではない、こういうお話になろうと思いますが、この点ももしきまっておれば、ここで明らかにしてもらいたい。もしこれが今お話しのように、まだはっきり議題がきまらないから、外務大臣としてはこれに言及できないとすればやむを得ませんが、この点はどうでしょうか。  もう一点、これに連関して会議全体の性格について一つお伺いしておきたい。それは、この合同委員会というものは、安保条約第二条に基づく日米間の会議なのか、あるいは一般的な日米の経済関係を調整するための合同委員会なのか、どちらなのか、これによって、今のところはすぐには出てきませんけれども、先々は相当大きな差が出て参りますので、この点だけは今はっきりお答えができるのじゃないかと思うので、この点をはっきりお答え願いたいと思います。
  121. 大平正芳

    ○大平国務大臣 前段の方の通商拡大法の運用を基点にして今後展開される関税一律引き下げの問題、そして日本がそれにどういう態度をとるかという問題は、御指摘のように非常に重要な問題であると思います。そして、今度の委員会におきまして、これをどういうように取り上げるかというようなことになりますが、これは、先ほど申し上げましたように、具体的な問題については、この段階では今申し述べることを差し控えさせていただきたいと思いますが、久保田先生が御指摘された問題点というものは、私どもよく承知しておる次第でございます。  それから第二点の、この委員会性格の問題でございますが、これは先般アメリカに行かれた池田総理とケネディ大統領の間の共同声明でできた会議でございます。日米共通の関心を持っておる経済問題について総合的に相談をする機関でございます。しかし、安保条約は、御承知のように、安全保障の問題と同時に、経済協力という精神が第二条にあるわけでございます。従って、安保条約第二条に基づいてこの機関ができたのだというようなことを私どもは申しておりませんが、安保条約にはそういう二面性がある。そうしてそういう精神でできた条約だということは当時すでに政府が申し上げた通りでございまして、それと全然無関係であるというように私ども理解いたしておりませんが、この委員会そのものは池田訪米の成果としてできた機関で、御指摘のように、日米共通の経済問題につきまして隔意ない懇談を遂げよう、こういう趣旨のものだと了承いたしております。  大へん恐縮でございますが、ちょっと宮中に行かなければなりませんので、あと経済局長から御答弁いたさせます。      ————◇—————
  122. 逢澤寛

    逢澤委員長 それでは先刻の中小企業金融問題について質疑を続行することにいたします。中村重光君。
  123. 中村重光

    中村(重)委員 時間の関係もありますから、簡単に御質問いたします。  ほとんど先ほど田中委員質問しましたので、それに関連することになりますが、先ほど、両公庫の総裁から、年末金融に対する見通しというか状況について伺ったのでありますが、言葉の表現というのか、そういうことを取り上げて申し上げるのではないのでありますが、金融調整、金融引き締めによって相当金詰まりが生じておることは御承知通りであります。そのことが結局中小企業というものに相当しわ寄せされておるということは事実であります。大企業が金詰まりということになって参りますと、これは下請の場合に明らかになっておりますように、手形の期間を長くするとか、現金払いを延ばすとか、いろいろな面で結局大企業は中小企業にしわ寄せをしてくる。そのことが中小企業の倒産という形で現われておることは統計が明らかにしておるところであります。そういう面からいたしますと、先ほどの年末金融の見通しに対しては、私どもが直接中小企業の実態を知っておるという面からいたしますと、もっと深刻な状態ではなかろうかという感じが、先ほどの御答弁の中から率直に感じられるわけであります。従いまして、大蔵省として、中小企業金融対策、特に年末金融に対しての考え方というものが、具体的なものとしてあろうかと思いますが、従来取り扱われて参りましたオペの問題にいたしましても、いろいろと問題はございました。従いまして、中小企業金融の金詰まりによる金融対策特に年末金融に対する対策というものを伺ってみたいと思います。
  124. 大月高

    ○大月説明員 年末の中小企業金融に関しましては、例年政府の資金でもっていろいろ措置いたしておるわけであります。本年度の特色といたしましては、やはり昨年の秋以降実行いたしております金融の引き締め政策、国際収支改善のための政策の跡始末という問題がポイントになってくるのじゃないかと思っております。つまり昨年の年末におきましては、ちょうど九月の末に公定歩合を引き上げまして引き締め政策を強化いたしたわけでありますが、その影響がだんだん年末に影響を強く及ぼしてくる、大体こういう見通しを持っておりましたので、積極的に例年にない大幅な金融措置を講じたわけでございまして、御存じのように年末及びその年を越しました一−三月全部含めまして、政府機関に対する資金の供給及びオペレーション合わせまして一千六十億という、大量の政府資金の手当をいたしたことは御存じの通りでございます。幸い本年度におきましては、国際収支の問題が一応めどがついたという判断でございまして、そういう意味で、先般来われわれが実行いたしております金融上の措置というものは、国際収支改善問題について一応のめどはついたけれども、その裏といたしまして、国内経済の面にむしろ問題が起きておる。国際均衡という問題のほかに、国内均衡の問題をどういうように処理するかという問題に次第に問題が移ってきておる、こういうような感覚で考えておるわけであります。  そういう観点からいたしまして、まず去年以来の金融引き締めの結果、御存じのように大企業の方に特に金詰まりが正面からきたわけでございまして、その結果現在におきましてもまだいわゆる企業間信用というものが十分にほどけ切っておらない。その結果、大企業同士の問題もございますが、大企業が中小企業に対して相当の未払いを持つという関係が特にあるというように認識いたしておるわけでございます。経済の調整が進んで参っておりますので、これに対しましてある程度の金融上の措置を講じましても、逆に国際収支上の問題にまではね返ることはあるまい。むしろ現実に起こっておる金融上のしわに対して、積極的に手を打っていく必要があるのではあるまいか、これが基本的な考え方でございます。そういう意味で、年末の中小企業金融対策の前におきましても、六月−九月の対策といたしまして三百億の政府資金の手当をいたしたわけでございますが、さらに具体的に年末に近かづきまして、例年よりやや早目でございますけれども政府関係の三機関に対して二百五十億、中小企業向けの買いオペ百五十億、合計四百億という手当を決定いたしまして現在実行中でございます。昨年の対策の中には、特に災害に対する対策と石炭に対する対策を含んでおりましたので、それを除外いたして考えますと、大体において昨年よりも八%程度の資金の供給の増加を来たし得るような配慮を持って手が打ってあるわけでございます。  なお、この中小企業金融の問題につきましては、御存じのように、政府資金の占めておる割合が大体九%程度でございます。そのあとはもっぱら民間の金融機関に依存するわけでございますので、民間金融がどういうように推移するかということが非常に重要な問題だと考えております。  そういう意味でこの年末の一般の情勢から申しますと、一般の需要自体は、昨年に比べて相当落ちてきておる。これは中小企業からの資金需要という意味ではなくして、全体の経済としての需要自体としては落ちてきておると思います。ただ先ほど申し上げましたような企業間信用が伸びておるという問題からくる資金の需要がまだ残っておりますが、それを除きましたいわゆる実態面の需要というものは落ちておると思います。  それに対しまして資金の供給面におきましては、昨年の財政資金の払い増が二千六百億でございます。ことしは御存じのように米の値段が上がりましたほかに、さらに収穫も多いという問題、それから、こういう景気の情勢でございますので、法人税その他、税収の面において昨年と情勢が違っておるわけでございます。それから、さらに基本的な問題は、国際収支がいいわけでございますので、その面からくる外為からの払い増、こういう事情が全部昨年に比べまして、財政資金の面からいたしまする散超が全部多くなるということになるわけでございます。それらを総合いたしまして今考えておりますところでは、大体五千二百億円前後の散超になろう。そういたしますと、昨年の二千六百億の散超に比べまして、おおむね倍くらいの散超になる、こういう意味で、実需の方が去年に比べて弱くなっておるというのに加えまして、資金の需要供給両方考えますと、ことしの年末は、民間金融の面においては相当楽になる、こういう計算でございます。  現に民間金融界におきましては、銀行協会におきまして第三・四半期の資金増加を大体二千億円というめどを立てまして、現に申し合わせをいたしておるわけであります。それから相互銀行におきましては、千五百億の増加、それから信用金庫におきましては、二千億見込んでおります。これを合計いたしますと五千五百億という数字になるわけであります。昨年のこれらの機関から出ております第三四半期の資金の増加がおおむね四千五百億くらい、そういうような見通しからいたしまして、必ずしもこの数字通りいくともわれわれ思いませんけれども、大体において三十六年度のそういうような見通しに比較いたしまして、民間から出ます中小企業の金額というものが相当大幅にふえる、こういうふうに考えられるわけであります。  それから、そういうような中小企業自体に対する手当のほかに、最初申し上げました大企業の未払いが中小企業に影響があるだろうという基本的な認識を持っておりますので、先般電力に対しまして開発銀行の資金を五十億繰り上げ融資をする、そのほかに興長銀債を資金運用部において引き受けまして五十億、合計百億電力に対して手当いたしたわけでありますが、これは電力業界が特に資金不足のためにその取引先に対して支払いが遅れておる、こういう実態がございますので、むしろ上から金を流すことによって中小企業の対策を講じようという意図があったわけでございます。その他鉄鋼につきましては、政府の対策ではございませんが、この夏以降特にこういう減産資金という意味におきまして、金融面の協力を得まして、二百億をこえる金が民間金融として出ておるわけであります。  それから、具体的な問題といたしましては、個々の問題としまして造船の問題がございますが、これは予算的には十八次造船五十万トン、八十五億という金額がついておりますにもかかわらず、いろいろな問題から現にとまっておる、これが鉄に対する実需を押えるということにもなり、その下請に対する実際上の金融上の問題にも困難を起こしておりますので、政府資金の割合を変更いたしまして、従来、定期船については政府資金七、民間三という割合を八、二にいたしまして、その他の船におきましては、これを七、三というようにまた引きげまして、これを実行する。これによって具体的な金も出ていく、こういうような考えでございます。  なお、こういう基本的な問題につきましては、石炭の問題もございますし、これは次の臨時国会においていろいろ措置をするというように、われわれといたしましては、引き締めの結果生じております中小企業に対する融資は、それに対する手当をいたしますとともに、基本的なそういうような問題につきましても、財政金融上の措置を講じておる。こういうような全体の金融の情勢を考えますと、大体ことしの年末につきましては、われわれはそう大きな問題なしに経過し得るのではなかろうか、こういうように考えておる次第でございます。
  125. 中村重光

    中村(重)委員 詳細な御答弁があったわけですが、局長が答弁されたような形で推移して参りますといいのですが、事実は相当深刻であろうということが考えられる。買いオペにいたしても、あるいは政府の出資貸付にいたしましても、これが短期資金で相当進めておるという関係がありましょうし、また、繰り上げ使用をやっておるといったようなことから、数字としてはこういう形になりましても、実際にはそうした面で効果というものはきわめて薄いという形が出てくるのではないかということが考えられるわけであります。  私が相当深刻だということを申し上げる一つの例としては、十月三十一日に東京商工会議所が発表いたしておりました中小企業一千億以上の負債、中小企業の倒産、これを件数にして百五十三件、負債額にして百六十一億七千万円、比率は二七・二%の増だということが明らかにされておったのであります。一千億以上の負債でございますが、かりにこれが五百億程度に落として参りますと、件数にいたしましても、相当多くなって参りましょうし、負債額も相当大きいのじゃないか。こういうことを考えてきますと、中小企業の金詰まりというものは、やはり相当深刻だ、いろいろ最近は手当をいたしておるようではございますけれども、なかなか簡単には立ち直りはできないのじゃないか、こういったような感じを強く持っております。  時間の関係もありますので、そういった問題について突っ込んでいろいろと質問したいのでございまけれども、そういった点は次の機会にまたお伺いすることにいたします。  そこで、具体的な問題として、先ほど田中委員質疑の中で、国民金融公広総裁並びに中小企業金融公庫総裁の方で御答弁になっておられたことは、貸付の場合に申し込み金額を貨し付けるということでやってもいいのだ、あるいはまた、その申し込みが拒否されるということも、それは差しつかえないじゃないか、こういったような答弁でございました。また、中小企業金融公庫の森永総裁の御答弁の中には、代理貸しの問題に触れて、代理貸しを今直ちに打ち切るということも忍びないことだ、こういったような御答弁があったわけであります。  それはそれぞれごもっともであるというように感じますが、そこで私どもが考えることは、現実がそれではそういう形で行なわれておるかということになって参りますと、国民金融公庫の問題にいたしましても、私はそうじゃないと思うのです。なるほど申し込みを拒否するという例は非常に多いのであります。しかし、申し込みが金額そのまま貸し付けられるという例は、ほとんどない、皆無だと申し上げても過言ではないのではないか、こう思います。従いまして、あなたの御指導が、現場においてはそのまま生かされていないというところに問題があると思うのであります。これはどこに原因があるのかということになって参りますと、これはいろいろあろうと思います。私の考えておりますことを明らかにしていきたいと思うのであります。  また、森永さんの御答辞の中に言われました、忍びがたいのだ、これは従来の関係もありましょうし、それからまた、代理店が相当中小企業金融公庫の貸金を取り扱ってきたという実績、そういう面からもこれを直ちに打ち切ることはできない。しかし、最近だいぶ変わってきたということは、これは原資がふえてきた。その原資がふえてきたものをできるだけ直貸しにして、従来の資金原資というものは、代理店が扱っていったワクは、それを縮少するのでなしに、それはそのまま認めていくのだという形が現実には行なわれておるのではなかろうか、こう考える。  こういったことをずっと考えて参りますと、どうしても私は人の問題というところに原因があるのではないか、こう思っております。中小企業金融公庫の場合にいたしましても、もっと直貸しの場合に貸付申込みから貸付実行までの期間を縮める、こういう委員会の要求に対しましては、できるだけそういったことにいたします、こういうようにきれいな答弁でございますけれども、私は、現在の人員が非常に少ない、ここに大きな原因があるのではないか、こう考える。従いまして、原資がふえてきましても、貸付の件数をふやしていくということよりも、一口の貸付の金額を大きくしていくということに現われていると思います。さらにまた、直貸しをできるだけ多くしようといたしましても、直貸しの場合には、調査員というものが調査していかなければなりません。また、それに伴っての事務量というものも非常にふえてくる。こういうことで、結局人が不足をしておる。職員が不足しておるから、現実には期間の問題もなかなかそう縮まらない。また、代理貸しも、これを縮めようとしても、忍び得ないのだというような御答弁でありますけれども、その面もございましょうけれども、現実には直貸しでは消化できない。従いまして、代理貸しをやらせなければならないというような面があるのではなかろうか、こういった感じを持つのであります。  従いまして、こういう委員会質問に対しては、卒直に答弁をしてもらわなければ困ると思うのです。期間が長いからということで追及される、現在はそういった趣旨に沿って改められております。こうは言っておりますけれども、より根本的な問題で、何かこういうことを卒直に、勇敢に一つ明らかにしてもらうということが大切ではなかろうか、こう思うのです。従いまして、この点に対して再度両公庫の考え方を明らかにしていただきたいと思います。
  126. 森永貞一郎

    ○森永説明員 私どもの代理店の数は、現在七百五ございまして、全国五、六千の店舗網を張っておるわけであります。いろいろ問題もあることは御指摘通りでございまして、鋭意監督を強化いたしておるわけでございますが、何と申しますか、全国五、六千の店舗を張っておりますこの組織は、やはり中小企業者にとりましても、手軽に手っとり早く資金をお貸しする意味での一つの私どもの貴重な財産ではないかと思っておるわけであります。もちろん直貸しに比べますと、私どもの趣旨の普及その他の面において、ややもすれば徹底を欠くきらいがございますので、ウエートといたしましては、直貸しにウエートを逐次ふやして参りまして、五割ということを目標にして着々進んでおりますが、やはり五割程度の代理店のウエートもこれは残すことが中小企業者の皆さんのために御便宜ではなかろうか。もちろん今後一そう監督を強化して参らなければならない、かような考えで、代理貸しの組織は捨てがたいということを申し上げたわけでございます。  直貸しにつきまして、人員の不足がいわば直貸しの一つの隘路であるということは、お説の通りであります。近年、予算におきましては、百人から百四、五十人の増員を年々認めていただいております。その増員の中で、大学卒業生を昨年、一昨年六、七十人ずっとってきております。本年度もそのくらいとっております。ただ、これはとりましても、すぐに第一線の役に立たない。訓練期間が要るわけでございます。その意味で、今が一番直貸し伸張のために人員の問題が隘路になっている時期かと思います。しかし、過去におきまして、こういうふうに継続充足いたしました大学出の諸君が、間もなく熟練して参りますと、これは非常に私どもの強みにもなるのではないか。審査の要員といたしましては、非常にたくさんの陣容を整えておるということにもなるわけでございまして、二、三年のうちにはそういう若い諸君が第一線で相当活躍できることになるのではないか。その意味で非常に期待をいたしておるわけでございます。今後も、やはりさような人員の増加は、ぜひとも政府にお願いをしなければならぬ、かように考えておるわけでございます。  なお、金がふえても、金額が大きくなるだけで、一向件数はふえないのではないかという御懸念もございましたが、そんなに一口当たりの金額は大きくなっておりません。直貸しは三十六年度が千二百十一万でございましたが、今年度は上半期の平均が千二百三十六万、少し大きくなっておりますけれども、まずまず大口の貸し出しに偏するということではなくて推移してきておると思っております。代理貸しの方も二百七十三万円が二百七十七万円というようなことになっております。また、一口三百万円以下の貸付の割合でございますが、大体口数で直貸しでは一割前後、代理貸しでは七割三、四分を維持しておるわけであります。決して小口の融資に門戸を閉ざさないようにということで指導いたしておるわけでございます。  ただ、昨今中小企業もだんだん育って参りまして、近代化、合理化ということになって参りますと、やはり近代的な機械を入れる必要が出て参りますので、旋盤一台入れましても、一台で一千万円というようなことも間々あるわけでございまして、大きなものもふえて参っております。その意味で一千万円の貸し出しの限度に対する例外的な運用をことしから若干ゆるめていただいております。その結果が直貸しにおける若干の一口当たり平均貸付金額の増加というふうになっておるわけでございます。これまた必要なことではないだろうか、さりとて小口の零細の方面にも決して門戸を閉ざさないようにということで指導をいたしておるわけでございます。
  127. 石田正

    ○石田説明員 お話しの点は二点あるかと思います。一つは、国民金融公庫が全体的に資金が足りない、従って、仕事がマンネリズムになって、申し込みに対してみな査定して貸しておるではないか、これが一つだと思います。もう一つの問題は、人が足りない点でもって非常に仕事がおくれるという面があるのではないだろうか、こういう御質問だと思います。  私は率直に申しまして、基本的にそういう問題が現在ある、理想的な状態にはなっておらぬということは認めざるを得ないと思っております。ただ、私が特に今努力いたしております点は、前の問題につきましては、申し込みと貸し付け得る資金というものを各支所ごとにある程度のワクが示されるわけでありますから、それと比べてみて、それからある率をはじき出して、まんべんなくそれでやるということはもうやめてもらわなければ困る。結局一つ一つの件数を具体的によく見て、そしてどれくらいの金を出したらいいのだという判断を支所においてやってもらいたい。全額出して事業がうまくいくものなら全額出してもらいたい。これはそういうことをお求になりましても、とても仕事がうまくいきそうにありませんということであれば、場合によってはお断わりするケースがあってもやむを得ないのではないか。ことにわれわれの方は、零細な方があれでありまして、お金を貸しさえすればそれで能事終われりというのではない。お金をお貸しするということは、返していただくということもまた考えなければならぬのでありまして、そのときに、大体このくらいならお返しできるであろうかどうかというそこのところの判断もむずかしいけれども、個別々々のケースについてやってもらわなければならない、こういうふうに考え方としていたすようにいたしております。  もう一つ、実際にお金が足りなかったらどうするのだという問題がございますが、先ほど田中先生にもお話し申し上げたのでありますが、そういうふうに一つ一つの案件をそれぞれ審査し、そしてその結果お貸しするという金がきまるわけであります。そのきまったお金と、実際に各支所が持っておりますお金と比べて見て、こういう状況になっておるということを私どものところに言ってきてもらう。われわれの方は、今九十二の支所ごとに毎日見ております。そしてこれはお金をつけなければならぬということで、回すことを実際やっておるのが実情でございます。そういうことで努力をしておるつもりであります。  それから、申し込みをしましたものについて全額貸すようなケースは、ほとんどないのではないかというお話でございますが、大体国民金融公庫というのは申し込みと資金量を比べて見て、大体の率がどれくらいになるかということで貸すんだということが徹底いたしますと、やはり水増しとかなんとかいう問題が起こってくる。これはほんとうにそうだと思います。そういうことのないようにしてほしいというのが私の念願でありまして、そのように支所にも話をいたしまして、支所からお客さんにも話しまして、大体全額お貸ししているケースは皆無ではない、私はこういうふうに思っております。  第二の人の方の問題でございますが、実は私も頭を悩ましておる問題でございまして、毎年大蔵省に人員増強の要求をいたしまして、ある程度査定を受けてやっておるのでございます。私は現状でもって満足だということは決して申しません。ただ一つ考えなければなりませんことは、昨年など困ったのでございますが、だんだんとわれわれの仕事に携わる適格者というものがなかなかわれわれの方に来てくれない。予算のワクがあってもなかなか人がないというような問題に、これからだんだんとなってくるのではないかということを心配しておるわけであります。そういう場合にはどうして対処するかというような問題があるわけであります。これはいろいろな方面からこれだけやればよろしいという点はないので、よほど工夫しなければならぬと思っております。  先ほど来お話しいたしておりますことは、要するに普通貸付でありますが、そのほかにわれわれの方は恩給担保貸付とかいろいろなことをやっております。こういう問題につきましても、たとえば機械の導入と申しますか、こういうようなものによりまして、恩給関係の事務が非常に楽になるという面があるわけであります。それからまた、回収関係の問題につきましても、機械化によりまして非常に楽になるということで、そこのところで多少手がすいてくるというような努力をすべきだと思いますし、そこであいてきたものをほんとうの貸付審査と申しますか、そういうことに回すということをしなければならぬと思いまして、目下努力をいたしておる過程でありまして、一挙には参らないかと思いますが、やっております。  それからまた、われわれの審査の仕方でありますが、全部同じような式でやっていくということでは、なかなかやれないという問題が起こってきておると思います。従来お貸しいたしまして、その成績がよかった方については、マンネリズムにまたもう一ぺんやり直すということではなくて、ある程度まで危険を考えて、そしてリスクを追って簡素化する。金額が少ないものにつきましても、ある程度まで調査の手続を簡単にするというようなこともやっていかなければならぬのではないか、かように思っております。これらのことは、そういう方向でいかなければならぬということを各支所とも話をいたしまして目下やっております。しかし、その効果が上がるということにつきましては、率直に申しまして、やったからすぐにできるという問題ではない、私はこれはだんだんと努力していかなければならぬ問題だというふうに思っておる次第であります。
  128. 中村重光

    中村(重)委員 いろいろ御答弁を聞きますと、なるほどそういう点もあるだろう、こう考えられる点もあります。しかし現実の問題としてそうした御答弁の通りほんとうにいっているかどうか、また無理がないかどうかということをただしていかなければならない。いろいろ今、貸付の問題にいたしましても、全額申し込みの通り貸し付けておることは皆無ではないとおっしゃいます。私は皆無だと思う。しかし、そういうことで議論をしようとは考えません。私がこういうことをお尋しておることは、また指摘をしておるのは、今のような人員でもって、原資がずっとふえていく、件数もふやしていかなければならなぬ、現在の人員で消化できないと思っているから申し上げている。それでは国民金融公庫の場合、申し込みから貸付実行までどのくらいの期間がかかっているのですかということを、いろいろ質疑の過程で明らかにしたいと思いますが、時間を節約しなければなりませんから、さきの四十一回通常国会で、大蔵委員会で横山委員質問をした議事録を私は見まして、これは確かに無理だ、こう感じております。そのときは大月局長、御出席であったろうと私は思うのでありますが、国民金融公庫の場合、酒井副総裁が御答弁になっておる中で明らかになてっおるのは、まず二十七、八日ぐらいですね、申し込みから貸付の期間までは。それは適当であるという御答弁になっている。それでは一人の調査員が月にどの程度消化をしているのか。これに対しては、全国平均は九十件、地方では月に百二十、東京都周辺では八十だ、こう言っている。地方で百二十、東京都で、これは交通もきわめて便利なところです、そこで八十というのは、私はどうも解せないのでございますけれども、それはいろいろ事情はあるでございましょう。これは副総裁が答弁しているのですから間違いはないと思います。一人で九十ということになって参りますと、日曜、祭日がございます。そうなってくると、一日に四件ないし五件を消化しておるということになります。申し込みが来た、受付、さらに受付の審査もしなければなりません。調査にも行かなければなりません。調査の結果のいろいろまた取りまとめ等もしなければなりません。こう考えてみると、これは相当な作業なんです。ところが一日に四件、五件を消化するということになって、八時間労働ということになって参りますと、どうなりますか。一人の申し込み、この一件を処理するのに所要する時間は一時間もありません。そういうことでほんとうの調査ができるであろうか、適切な貸付ができるであろうか、さらにまた、そういう無理をして、あまりにもひどい労働強化、過重労働という形にはならないだろうか。もろもろのことを考えてみると、これは常識的に非常に無理だと思います。だから、マンネリ化した貸付になって参ります。あなたの御方針は私は間違っていないと思うのです。全額申し込みの通り貸し付けることもけっこうだ、これを全額申し込みを拒否することもあり得る、やむを得ない、それはその通り、それでいいと思います。しかし、そういうあなたの御方針を生かすというやり方は、やはり精密な、適切な調査という形において現われてこなければなりません。やはり時間がないということになって参りますと、出された書類、それに書いている数字、そういうことを基本にして、まずこれを審査しなければならぬという形になって参ります。しかし、申し込みをする人は正直な人ばかりはおりません。いろいろ擬装もするでしょう。帳簿も二重帳簿等、いろいろなことをやろうと私は思う。そういうことになって参りますと、私はすべてが問題だとは言いませんが、非常に適切な調査というものが行なわれないという面があるのではないか、そういうふうに感じます。従って、時間がないので、申し込みが来た、それで二割か三割か五割か、カットをする、そうしてこれを貸す、こういう形になってくるのではないか。そこにあなたの御方針の通りに現実は行なわれていない。行なわれておらぬところに弊害が生じてくるという形が私はあると思う。ですから、この期間の問題にいたしましても、あるいは一率カットという形で行なわれておるということにも、これは非常な間違った形がここに現われておる。先ほど田中委員指摘しましたように、国民金融公庫には非常な不評がある、これが悪いんだという、あなたとしてはいただきたくない一つの何というか指摘を受けるという形に私はなってくると思う。ですから、こういう点に対しては、率直に、そういう無理は無理として明らかにしてもらわなければならぬと思うのであります。先ほど大蔵政務次官の御答弁で、実情によって人をふやしてくる、こういう御答弁がございました。貸付件数も相当ふえている、原資もふえている、取り扱い件数はそこでふえておりますが、それでは人はどれだけふえておるのでございましょうか、そう反問せざるを得ないのであります。ここで実情としてはどうかということに対しては、副総裁が御答弁になっておるのを私は書いてきましたが、こういうことでいいのか、ふやさなければならぬというふうに考えられなければならぬのは、こう副総裁が答弁しております。「率直に申しまして、一人当り月に百件も持たされて、これじゃかなわぬ、うちへ持って帰って、ねじりはち巻でやらなければいかぬ、」「しかしこれは、われわれ庶民金融を担当する政府機関の職員といたしまして、どんなことがあってもお客さんに迷惑をかけてはいかぬということで、自分らはもちろん相当手間はかかりますが、それが使命であるというふうに考えてぜひやっていただきたいということを、職員の方々にもよく申し上げておるのであります。もちろん超過勤務手当その他のペイの点につきましては、それ相当の待遇をするわけであります。」こう言っている。非常に大切なこの金を貸すということは、精神的に非常な作業があるのです。従って、肉体的にもその作業は、非常に過酷になってくると思う。それが家に帰って、ねじりはち巻でやらなければならぬという実態、そうしてあなたの方の副総裁がこういうことをしろといって指導しているんだ——お気持はわかります、しかし、現実にそういうことをやらなければならぬということをそのまま見通して、こういう指導だけでこれを改善するという形をとらないということが適当であろうかどうか、ここにおいて総裁はどうお考えになっておるのであろうか、さらにまた、大蔵省としては、こうした問題対してどうお考えになっておるのであろうか、まずこれらの点に対して考え方を一つ明らかにしていただきたい。伺いますと、従業員組合が六百五十二名かの定員の増の要求をしておるということも私は開いておる。そういう要求は不当であるとお考えになっておるのであろうか、なるほどふやさなければならぬというようにはお考えになっておらぬのであろうか、お考えになっておるとするならば、どういうふうに大蔵省その他関係省に対しまして、定員の増に対する要請をしておられるのか、まずそれらの点を明らかにしていただき、また大月局長としましても、これらの問題に対してどうお考えになっておられるか、その点を聞かしていただきたいと思う。
  129. 石田正

    ○石田説明員 私、先ほど申しましたような工合に、現在の人員で十分であるということは、決して申しておるわけではございません。それからまた、例年大蔵省に対しまして要求をいたしております。それについて査定を受けておることも事実でございます。ただ、人員要求を何人あったらよろしいかということは、これは実はそろばんだけはじいてこうだ、これは確定の数字だということは、私はできないものだと思っております。いろいろな勘定の仕方がございます。たとえば超過勤務手当というものは一切なしにする、超過勤務をしないという前提で何人要るか、こういう考え方もございましょう。それから御承知通りに、われわれの方はいつも第三・四半期というのは非常に仕事が立て込むときであります。その仕事が立て込むときを基準にいたしまして、そうしてそのときにだれも超勤しないでよろしい、それからしてほかのときには、何と申しますか、多少遊んでいると言うと語弊がありますけれども、割に楽だという計算の仕方もあろうと思います。いろいろ計算の仕方がございまして、この数字でなければいけないということは、実は私はなかなか出てこないだろうと思っておるわけであります。ですから、例年から率直に申しまして、組合の要求としては六百何十人、われわれの方からいえば四百何十人、そこで実際の査定は二百何十人、こういうふうになってくるのが実情でございます。  そこで、問題は、審査の問題につきまして——これは件数だけでやりますと非常にむずかしい問題がございますが、同じ件数の中でもいろいろあるわけでございます。御承知通りに私の方の貸付につきましては、いわゆる現貸し決済といいますか、三分の一だけの残高になればまた貸し増しをするというようなこともございます。また貸付の完済というような問題もあるわけであります。これらのものは、いわゆる新規の申し込みに対しましては、前に調査がございますので、その後の変化がなければ割合に簡単に済むというような面もございます。  それからいわゆる実行の問題にいたしましても、一つの申し込みがありました場合に、その一つの場所に、方々離れたところへ行くという場合と、いろいろ協力団体等がありまして、まとめて申し込みをしていただいて、あらかじめ調べておいて、そして一ぺんに行って片づけるという場合もございまして、普通の金融機関の場合のように、みんなまるっきり離れたところを一つ一つ処理しなければならないというような問題とは多少達う面もあろうかと思うのでございます。特に審査の問題でありますが、審査の問題につきましてどういうふうな実情にあるかということが一番のきめ手になるんだろうと思うのでございます。審査が、また仕方が足りないという点が確かにあると思うので。新規の問題にいたしましても、ほんとうから言いますと、できるだけ審査の方へ回すことが理想でございますけれども、しかし、現実問題といたしまして、審査のことに携わるのには、入った人がそのまますぐやるというわけにはなかなかいかないというむずかしい問題があるわけです。何年か訓練をして初めて審査ができる、こういう問題でございます。  先ほど来私が申しておりますことは、人員の増加はできるだけ実情に即して大蔵省に認めていただく、それからまた、できるだけ有能な人に来ていただくようにお願いをする。来た上におきましては、みんな勉強していただいて、なるべく多くの件数を処理し得るような工合にだんだんと勉強していっていただく、こういうことが大切だと思います。それからまた、先ほど申しましたように恩給とか回収とか貸付契約とか、こういう定型的なものにある程度人が要りますが、そういうふうな面をなるべく減らして審査の方へ回す、こういうことでいかなければならぬ、こう思っておるわけでございます。  来年度の人員要求の問題につきましては、まだ大蔵省から査定ワクが来ておりませんけれども、できるだけ多くの人員を確保いたしたいと思っておりますし、それからまた、それと同時に、われわれとしてもできるだけの内部処理をいたしたい、かように思っておる次第でございます。
  130. 大月高

    ○大月説明員 ただいま総裁からお話がございましたように、国民金融公庫の仕事というものは、中小企業金融の非常に典型的なものだと思います。一般の金融機関におきましても、中小企業に対する金利は高い、手数がかかる、非常に危険率が多いというようなことで、基本的な問題があるわけでございますが、そのうちの中小企業の一番むずかしい部門だけを担当してやっていただいておるわけでございいますから、その職員に対して相当の無理がかかっておるであろうということは、われわれとしても基本的に承知いたしておるわけであります。今国民金融公庫の予算定員三千三百二十二人で、三千人をこえた人間がおられまして仕事をやっていただいておるわけでございますけれども、毎年大体二百五十人前後の増員をやっておるわけでございます。これは、一つは支所がふえるという問題もございますけれども、やはり仕事の分量が大へんふえているということに応じて増員いたしておるわけでございまして、先ほどの総裁のお話にもありましたように、いろいろと計算の基礎にも問題があると思います。また、十分にこれだけというようなところまで予算をつけるということも、財政上の理由があって、なかなかむずかしいと思いますけれども、われわれといたしましては、十分公庫の方でいろいろな仕事の仕繰りにつきまして合理化をはかっていただきますと同時に、やはり一人の仕事について、一般の基準をそう著しくこえないように、できるだけわれわれとしても注意して参りたいと思っております。
  131. 中村重光

    中村(重)委員 人員が年々若干ふえてきているということは事実です。しかしそれは、今あなたが後段でお答えになりました、支所あるいは出張所がふえているということですね。それから、国民金融公庫の金融というものが、それだけ多くの人に利用されるいうことになって参りますと、相当遠隔の地からの貸付の申し込みという形がある等々で、これは当然ふやして参らなければならぬということになると思います。ところが、現実は無理だということは、先ほど私が副総裁の大蔵委員会における答弁を読み上げたことにおいても明らかです。家に持って婦ってねじりはち巻でやらなければならぬという実情にあることは私は間違いないと思う。これは副総裁が明らかにしておるところであります。また総裁も、先ほどいろいろあるんだ、簡単に済むものもあるということでありまして、なるほどそういうこともありましょう。しかし、いずれにしても、審査という非常に大切な仕事を、一日四件五件消化するということは非常に無理なんです。私どももよく地方に参りまして、公庫なんかの仕事をしておられる状況を見せてもらうことが非常に多いのです。中小企業金融公庫の場合もしかりであります。これは非常な多忙をきわめておるのが実情であります。従いまして、人員をふやすということは、単に過重労働を緩和するということだけでなしに、先ほど申し上げました、適切な貸付をする、総裁が一つの指導方針として明らかにされたことが現実に生かされていく、そういうことが顧客に対しても大きなサービスとなり、中小企業金融を緩和するという面からいたしましても非常に大切なことだ、こういうことを実は私は申し上げておるのであります。従いましてその面に対しては、大蔵省とも十分な折衝をして、また大蔵省も、特にそういう点を配慮されて、人員をふやすということに一つ努力してもらいたい、こう強く要望いたしておきたいと思います。  それから、出張所の問題について伺っておきますが、先般も私は、このことに対してはお尋ねをしたのであります。一つの例として私は長崎県の離島の例をとりました。長崎県に壱岐、対島という地域がある。これは佐賀県福岡県を通っていかなければならぬ。そういったような離島で地方銀行としても一行しかない。地域独占という形になっております。その上に政府金融機関の出張所もない。従って、すべて代理店はその一つの銀行にやらせている。こういうことが非常な弊害をかもし出しておるのであります。ところが、これに対して、出張所を設置するということに対しては、実績が非常に少ない、実績が少ないから出張所をつくるまでもない、こういう考え方が実はあるようであります。私はこのことは問題であると思う。そういう遠距離であるから、利用する人も、海を渡っ福岡県を通り、佐賀県を通り、長崎県に入るということになって参りますと、相当費用がかかる、時間がかかる。そして、貸してもらえるか、もらえないかわからない。こういうことで実績が少ないという形になっておろうかと思う。そういう実績のみにとらわれることなしに、政府金融機関というその性格からいたしましても、その人口の数はどの程度であるか、中小企業者の数はどの程度あるのであるか、地方銀行は何行あるのか、そういったような問題を一つ一つ調査をして、ほんとうに実情に即するような取り扱いをされるということが私は適当であると思う。そういうことをやることにおいて実績というものが上がってくると思います。これらの点に対して、大蔵省並びに公庫の総裁としてはどうお考えになっておられるのか、まず考え方を聞かしていただきたいと思います。
  132. 大月高

    ○大月説明員 現在国民金融公庫の支所は九十二、出張所二、代理所数八百、こういうような現状でございます。そういうことから考えますと、この支所の数の九十二は、府県数で割ってみますと大体二つくらいの数で、お話のございました長崎県は、現在長崎市とそれから佐世保と二つに支所がございます。それで、そういう管轄から申しまして、壱岐、対馬というところを具体的に考えて参りますと、人口五万程度だと思いますが、そういうことで、それでは国民金融公庫の支所を無限に置くかというようなことになって参りますと、これはまた具体的な問題としてはなはだむずかしい。そういう意味で、われわれといたしましては、所要のところには支所を置きますが、あとは代理所によってその地方をまかなうという考えを持っておるわけでございます。具体的に壱岐、対馬につきましてどの程度の金融機関があるかということになりますと、今多分十八銀行の支店が一つ、こういうことであろうかと思います。それが独占的になっておるならば次にほかの銀行の支店を置くかということでございますが、民間の機関につきましてはそれぞそ採算の問題もあり、産業の状況もありということで判断をいたしておるわけでございます。その目的に対しまして、われわれとしてはほんとうに必要な場所であるのか、あるいは逆に少ない、経済の弱い——弱いと申しますか、資金量の少ないところにたくさん店が出まして、むしろ過当競争になったり、あるいは共倒れになったりしても困るというような観点から審査をいたしておるわけでございます。今の具体的なお話につきまして、支所を置いて参るということにつきましては、そういう意味からいって、なかなか具体的な事情としてはむずかしいのじゃないか、多分私の考えますところでは、壱岐、対馬にございます十八銀行の支店が今代理所になっておるのではないか、そうすれば、そういう僻遠の地でございますので、その代理所ができるだけ活発に動きまして、公庫としての間接的な機能を十分果たし得るように十分心がけてもらうことが必要かと考えております。今お話しのございました現地の方のわれわれの財務局の系統もございますので、注意をいたしまして、業務の適正を期して参りたい、こういうように考えております。
  133. 石田正

    ○石田説明員 中村先生からお話のございましたいわゆるその地域におけるところの経済が相当盛んであって、そして中小企業の数も多い、そういうところにだけ支所を置いて、そして非常に遠いところには置かないという考え方はおかしいじゃないかというお話でございますが、私はそういう点、後の点も考慮に入れるべきだと思っております。たとえてみますれば、本年度延岡に支所を置いたのでございますが、これは延岡の奥の方は従来非常に不便であったと思いますが、支所を置くことによって、だいぶ楽になってきたという点もございますので、私はそこに置いたら、要すをに一番相手が多くてそして借り出しの資金量が多いところだけ出すという考え方ではなくて、やはりお客さんの利用を考えるべきだと思っております。  そこで、具体的な問題といたしまして、壱岐、対馬に代理所ないし支所、出張所を置くかどうかという問題でありますが、これは今、銀行局長のお話にありましたように、具体的な問題とてほかにもいろいろと支所要望がございまして、率直に申しましてなかなかそこまで回らぬと思っております。ただ、私これから国民金融公庫の支所の仕事のやり方につきまして少し考え直す必要があるのではないかと思っておる点があるのでございます。それは、従来の行政区画に従いまして支所の管轄をきめておるわけでございます。私は経済の交流関係とかあるいは交通関係とかいうことから考えますと、反省をする必要があるのではないだろうか。具体な場合から申しますと、私の方では、大体壱岐、対馬の場合におきましては、福岡、佐世保、長崎、この三つを見ました場合に、長崎で取り扱うことが一番不便である。それから佐世保は一番近距離であるけれども、船の関係において、船が始終通るか通らぬかという必酒がある。そういうことから考えますと、福岡の方が長崎よりも近くして、しかも船も大型のものが来るということになりますれば、行政区画とは別として、私の方の支所の取り扱いとしては、壱岐、対馬はむしろ福岡でやった方がいいのではないか。これはほかの地域にも幾らもそういう問題がございますが、そういう問題も真剣に考えなければならぬかと思っております。私は福岡支所長及び長崎支所長とよくその点の相談を実はさせたのでありますが、大体、中の問題といたしましては、壱岐、対馬は福岡支所で扱うことが適当ではないだろうか、こういう一応の結論を出して参りました。ただ問題は、私どもの方の仕事といたしましては、いろいろと府県当局と連絡の多いこともございますし、特に災害等の場合におきましては、府県のいろいろお助け、あるいは連絡をしなければならぬという問題もございますので一そこらの点につきまして、私個人の考え方といたしましては、今申しましたような考え方を県の当局とそれぞれお話を今するようにさせたいと思っております。御了承が得られれば、福岡支所の管轄というようなことでわれわれの方も仕事をやらせていただきます。われわれの仕事の上だけの問題ではなくて、お客様の便利になるのではないか、こんなことも実は研究しているわけであります。
  134. 中村重光

    中村(重)委員 時間がありませんからまた次の機会に譲りたいと思いますが、私が今たまたま長崎町壱岐、対馬の問題を取り上げたのは、一つの例として申し上げたので、離島振興という立場から十分大蔵省並びは金融機関としてもお考えにならなければならないのじゃないか、こういう考え方で申し上げるのであります。支所設置に直ちに踏み切れなければ、出張所ということもありましょう。さらにまた、その出張所が今すぐつくられないということであるならば、一カ月に何日ときめて、的確に何日から何日までは駐在する、そういう駐在員制度といったようなこともありましょう。ともかくそうした人口が相当多い地域、離島に対しては、特に政府金融機関としては金融上のサービスをする、そしてその地域の振興をはかっていく、離島の振興をはかっていくということを十分配慮していただきたい、このことを実は申し上げておるわけであります。今申し上げた長崎県の例もそういうことでございます。それらの点に対しましては、関係の町村等から陳情等もありましょう。そうした具体的な問題に対しては十分一つ取り組んで、そして実情に即するように配慮していただく、こういうことを希望しておきたいと思います。それではきょうはこれで打ち切ります。
  135. 田中武夫

    田中(武)委員 どうもきょうは大臣が出たり入ったりというような関係質問が飛び飛びになって恐縮なんですが、大蔵省の銀行局長にもう一点だけ。  その一つは、年末融資を考える場合に、労働金庫をどう考えるか、これはだれかやったならよろしいのですが、労働金庫は業者じゃなしに労働者対象ですが、結局は賃金との問題がからんできて、労働金庫に対する年末融資、これも多いので、年末融資のワクを振りつけるとかなんとかいうときに、労働金庫を一つ大きく——今までも若干なさっておったと思いますが、やはり考えてもらいたいということが一点。  もう一つは、きょうは議論はいたしません、あらためて議論をいたそうと思っておりますが、社内予金の問題です。これは一時金等のときに特に現われるのですが、会社も組合の要求で出さざるを得ないのですけれども、実質的には少なくて済むというようなことを考えての上だと思いますが、そのうち何割かを、これはもちろん強制すれば、労働法の関係が出てきますが、とにもかくにも労働組合との話し合いで一時金幾ら出すうち二割なら二割、あるいは幾ら社内予金にする、こういうことがほとんどの企業においてなされておるわけであります。そうすると、これも業としては言えないまでも、やはり一定の法律で定められたもの以外は預金を扱うことができないという問題に抵触するのじゃないか。それからもう一つは、労働金庫より少し上回った利子をつけることによって、労働者の方からも進んで社内預金をするようにし向けておるわけなんです。これが金融というか銀行法その他の預金関係の法律その他との関係の問題、それから金利の問題等に関係があると思います。あるいは、今度やるときには労働基準局にも来てもらいますが、基準局との関係もある、こういうふうに思うわけなんです。もしそうであるとするならば、各企業の定款を変更しなければいけないと思うのです。定款に定めなき事項をやっていくということになると、商法違反です。こういう問題もありますから、これはきょうは議論はいたしませんが、必ず年末一時金に関連して、各企業内において労使の問題において上がる問題であります。そこで御検討して、一つ勉強しておいてもらいたい。この次の機会にこの問題を大々的にやりますから……。
  136. 大月高

    ○大月説明員 第一の、労働金庫に対して政府におきまして何らかの資金手当をするかどうかという問題については、昨年十億の資金手当をいたしたわけでございますが、本年度におきましては、この問題はどの程度になっておるかというのを今検討いたしておるわけであります。ただ労働金庫自体の資金繰りを見ますと、御存じのように相当資金に余裕が毎年あるわけでございまして、ほかの金融機関にやるからつり合い上やるというようなことでは、われわれとしてはどうも政府資金も窮屈なわけでございますのでいけない、そういうような意味で実情調査いたしまして検討いたしておるところでございます。  それから第二の問題は、仰せの通り非常にむずかしい問題でございまして、われわれとして一定の見解を持っておりますが、次の機会に申し上げます。      ————◇—————
  137. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、工業に関する件について調査を進めます。  本日は紡績に関する問題についての実情をお聞きするため、参考人として日本紡績協会委員長の原吉平君が出席されております。  原参考人には、御多忙中のところ御出席いただき、ありがとう存じました。どうぞ忌憚のない御意見をお述べを願います。  それでは、原参考人から紡績業界の現状についての意見をお聞きすることといたします。日本紡績協会委員長原吉平君。
  138. 原吉平

    ○原参考人 今、委員長から御紹介のありました日本紡績協会委員長をしております原吉平でございます。  本日は、わざわざ当商工委員会におきまして、わが国綿業の実情についてお聞き下さる機会をお与え下さいましたことに対しまして、厚くお礼を申します。  私が本日申し上げようといたします趣旨は、日本の綿紡績業はわが国の最も重要な輸出産業としまして、戦後の日本経済復興の上に大きな役割を果たしてきたばかりでなく、今後におきましてもわが国の貿易拡大のために貢献する重要な輸出産業であるということでございます。それにもかかわりませず、今日の綿紡績業は、昨年の下半期以降の深刻な不況によりまして、大きな困難に見舞われました。もしこのままの状態に放置しておきますならば、ひいては日本の経済を混乱に陥れ、やがては輸出産業の根幹であり、また自由化に最も強い産業といわれておりますところの日本の綿業が、だんだんと衰微して参りまして、長期的に見ますならば、いわゆる第二のマンチェスター、または第二の石炭産業になるおそれがあるのではないかということを憂えるものでございます。  もちろん昨年以来の不況は、ひとり綿紡績業だけではございません。他の多くの産業に対しまして、また国民生活の多くの面におきましても、非常な深刻な影響を与えておるのでございます。そのために政府におかれましても、これが打開策につきましていろいろな政策がとられておりまして、日銀公定歩合の引き下げを初めといたしまして、景気回復策をおとりになっておるようなわけでありまして、私は、それらの政策が効果的に行なわれて、景気回復の成果を一日も早くおさめられることを期待しておるものであります。しかし、これから私が御提出申し上げるところの「構造的不況下の綿紡績業について」というパンフレットがございますが、この資料に詳しく述べておりますように、今日の綿業界の不況は単に周期的な景気循環であるばかりでなくて、綿業自体あるいは繊維産業自体の中に内在するところの幾つかの構造的な要因によりまして、より大きく、より深く影響せられておるということを私は特に申し上げたいわけであります。一般景気の回復とともに、綿業における不況もある程度は改善せられるでありましょうが、それらの構造的不況要因は、景気の変動にかかわらず、いつまでも綿業界の内部に介在いたしまして、そのために綿業界は今後一般景気のいかんに関係がなく、常に不安定な状態に置かれまして、輸出産業としての使命を達成する上にも、大きな困難を生ずるであろうことを心配するわけでございます。  時たまたま繊維工業設備臨時措置法の改廃が問題となっておりまして、政府におかれましても、繊維工業設備審議会におきまして、この臨時措置法改正の問題のために小委員会が設けられ、私自身といたしましてもこの小委員会委員といたしまして、それに私の私案を提出して御検討を願っておるようなわけであります。問題はもちろん多くの異なった見地から検討されなければならないことでございますが、私の考えによりますと、この際繊維産業安定振興法ともいうべき基本的な事業法をもって現行の臨時措置法にかえていただいて、それによってひとり設備の規制だけでなく、繊維産業構造の合理化とかまた輸出振興体制の確立というような根本的な問題を解決してもらいたい、こういうふうな考えであるわけであります。  従来、綿製品は戦前わが国最大の輸出商品でありましたばかりでなく、昭和八年から第二次大戦にかけましてわが国は世界最大の綿織物の輸出国でございました。戦争の結果、われわれが多年開拓して参りましたところの世界各地の市場はすべて失われて、特にインドとかパキスタンの綿業が戦争中に発達し、また中国におきましては革命が起こりまして、これらの大市場が永久に失われてしまったわけでございまして、これはわが業界に非常に大きな打撃をこうむったわけでございます。しかし、戦後におきますところの官民の努力によりまして、綿製品の輸出は最も早く回復いたしまして、特に昭和二十六年からはわが国は再び世界最大の輸出国となったのでございます。  綿業が戦後におきます経済の復興、発展にいかに貢献したかということは、今提出します資料によりましてごらん願いたいのでございますが、これを一口に申しますならば、昨年一年間の綿製品の輸出は約四億六千万ドルで、総輸出四十二億ドルのうちの実に一一%を占めております。単一種類の商品グループといたしましては最大のウエートを占めておるわけでございます。  綿製品輸出の将来につきましては、いろいろな悲観論も行なわれております。その一つは、わが国の綿製品輸出の六割以上を占めておるところの後進地域市場においては新興綿業国との競争が激化し、あるいはそれら諸国の自給度が向上していることを指摘する人もございます。また他の一つは、米国、欧州、大洋州などの先進国市場では、それらの諸国にある既成綿業との競合によってあるいは輸入制限を受け、あるいは輸出の自主規制をしなければならないことを言う人もあります。それらの理由は確かに日本綿製品の将来の輸出が数量的に見て大幅に伸びることは困難だということを物語っております。  しかし、国際競争力強化のためにわれわれが不断に続けておりますところの努力の結果、われわれの輸出しますところの綿製品は、はるかに労働条件の低い新興綿業国の製品と競争して市場を維持しておるわけでございます。また先進国市場向けの輸出につきましては、先般成立しました長期の国際繊維協定によりまして、われわれが秩序ある輸出を維持する限り、輸入国はその輸入制限を漸次廃止しまして、また輸入数量を漸増することになっております。その成果はすでに西欧諸国の対日綿製品の輸入ワクの拡大となって現われておるわけでございます。しかも今日までの輸出振興の努力の結果、資料に示しますごとく、輸出綿製品の加工度は年々向上し、その単価は上昇しております。  今や世界の貿易はEECの発展、米国の通商拡大法の成立、日本の自由化などによりまして見られるごとく、拡大かつ国際分業の方向に向かっておることは御承知通りでございます。ただ、この際注目しなければならないのは、英国その他EEC諸国の先進国におきます綿業の著しい合理化の進捗でございます。英国について申し上げますならば、英国は一九五九年に綿業法という法律を制定いたしまして過大設備を処理縮小し、残存設備の近代化、合理化を補助する。そうして第一段階といたしまして一九五九年の四月二十四日より一九六〇年の三月三十一日までにスクラップにしましたものは実に紡機四九%、一千二百四十四万錘、より糸が三六%、五十七万錘、織機四〇%、十万四千台、こういうような膨大なものが処分されました。もちろんこれには政府の補助がございまして、約千百八十四万ポンド、約百十八億円の補助をして、かくのごとく過剰設備が処理されております。そして第二段階といたしましては、再設備の合理化に関するものでございまして、五九年の四月二十四日より六四年の七月八日までに行なうものにつきましては、機械設備価格の二五%までを政府より補助するということになっております。去る七月七日に締め切られましたところの再設備補助申請は約一億ポンドに上ったということが伝えられております。その他機械だけではありません。いろいろな会社の統合等が活発に行なわれておるということが新聞紙上にも報じられております。  またフランスにおきましても、一九五四年以降五カ年間の計画として据付紡機の五四%に当たる四百六十万錘を廃棄、織機は六二%に当たる十万五千台を廃棄、その半数を新規機械に置きかえようという計画がございます。費用は、新規紡機一錘二万一千五百フラン、織機一台九十万フランとして、新設のみで一千億フラン、その他の経費を含めて千二百億フランと推定されておるわけでございまして、資金は自己資金、銀行の中期融資、国家の長期貸付等で調達するというようなことを言っております。さらに一九五三年三月には、フランス綿業連合会内に転業あっせん部が設けられて、銀行協会協力のもとに一九五五年末現在で百七十二工場が閉鎖されております。また最近では七つの銀行及び綿業連合会の出資で綿業構造改革研究会社というものが発足いたしまして、合理化に助成しょうとしております。  それからオランダにおきましては、企業の大幅な統合が行なわれておりまして、現に一九五八年に二社が合併、さらにその後多くの会社を合併しまして、非常に大きなニイベルダン・ペンカートという会社ができております。それから一九六二年の六月には四つの紡績と三つの織布会社が合併して、ネーデルランド・テキスタイル社というものができております。そのほかアフリカ向け織物のために二つの会社が合同して、汎プリゲェン・アングロシュミット・エクスポート社、こういうような会社ができておる。こういうふうに欧米の先進綿業国におきまして非常に顕著な合理化が進んでおるわけでございます。  従いまして、このような客観的な条件のもとにおきまして引き続き綿製品の王座を維持していくというためには、企業個々の努力だけではなかなか不十分でございまして、この際どうしても法律または税制の改正によりましてこの構造的合理化をはかる必要があるのではないかと考えておる次第でございます。  次に、紡績の構造的不況要因について御説明申し上げますと、戦後におきます綿業の不況は、すでに二十七年、三十年、三十二、三年に次いで今回の不況で第四回目でございます。これらの不況の推移及びその影響が漸次深刻さを増してきた事情につきましては資料の中に詳しく説明しておりますが、これらの不況の経験を通じましてわれわれが特に痛感いたしますことは、綿業の不況はもとより一般景気変動の一環ではございますが、他方幾つかの綿業独自の不況要因を持っており、しかもそれらの不況要因は日本綿業の構造自体の中に深く根ざしておるということでございます。その根本的な問題は、近年におきます綿業の不況は、需要の減退によって供給過剰が起こるのではなくて、輸出内需の需要は、むしろ増加しており、あるいは横ばいであるにかかわりませず、供給力そのものが生産性の著しい向上と相待って、絶対的に過剰であるということ、すなわち綿紡績業の過剰設備は構造的なものであるということでございます。これを今回の不況について申しますと、昨年秋に不況が始まって以来、相場の低落や在庫の増加は著しく、昨年の十二月には二十番手綿糸の三品当限相場は百二十四円、三十番手の当限が百四十円というような戦後最安値を記録いたしまして、本年五月末には綿糸布の在庫が七十九万八千コリというような記録的な滞貨が生じました。これは昨年八月末の在庫に比べますと十万コリの激増でございます。しかし、昨年じゅうの輸出内需の合計は二百九十四万コリで、一昨年の二百八十八万コリに比べまして明らかに増加しております。この在庫増加の主要な原因は、本年一月に操短の強化を行ないますまで、三十三年以来綿糸の生産が一貫して増加し、特に、一昨年は二百九十九万コリ、昨年は三百四万コリと戦後の記録をつくっているからでございます。しかしながら、このような過剰供給力や過剰生産は、決して政府や業界の自由放任によって生じたものではないことを御記憶願いたいと思うのでございます。日本の紡績業の生産設備の過剰が初めて問題となりましたのは、昭和二十七年の不況時のことでございますし、政府の綿紡増設に対します確認打ち切りは二十七年末でございます。そして昭和三十一年の十月一日からは、繊維工業設備臨時措置法による設備規則が行なわれております。過剰生産の著しかった昨年じゅうにも、臨時措置法に基づいて、長期、短期を含めまして二四・五、輸出用別ワク生産を差し引きましても一実質一四・八%ないし一七・二%の格納を行なってきたのでございまして、他産業の場合のごとく設備投資の過剰が今日の不況を招来したというような事実は、綿紡績業界には全くないわけでございます。しかし、貿易の自由化に備えまして行なわれました各企業の合理化努力は、需要の増加を上回る生産性の向上をもたらし、その結果、供給力の過剰、在庫の増加となったわけでございます。  近年におきます生産性の向上がいかに目ざましいものであるかということは、この一年間に二十番手一日一錘当たり出来高が〇・七七ポンドから〇・九六ポンドへと、約二割五分方増加、同じく一コリあたりの所要人員が六・六九人から五・九二人へと一二%方減っておることからも知ることができるわけでございます。このような生産性の向上は、自由化に対処するわが国の綿業としてはもちろん望ましいことには相達ありませんが、紡績業における過剰生産力を構造的なものとして固定したことになっております。  以上の事態に対処いたしまして、われわれは現在三六・三%という高率の格納によりまして、ようやく需給の均衡を維持し、在庫も九月末現在では七十一万コリ台に低下して参りましたが、このような高率操短を長期にわたって継続することは、自由化後におきまする国際競争力を維持するゆえんではないし、特に金融的に薄弱な中小企業にとっては、大きな負担となるわけでございますので、この構造的な過剰設備に対しましては、単に当面の糊塗策だけではなくて、根本的な対策を考えなければならないわけでございます。綿紡績業の過剰設備は、単に登録精紡機九百二万錘のうち、長期格納が百万錘、短期格納が二百八十万錘に上っておるという量的な問題だけではございません。この過剰紡機が少数の大企業と並んで、多数の中小企業によって保有せられておるということは、きわめて重要な問題だろうと思います。紡績業は通常大企業が中心となっているというようなふうに考えられておるわけでございます。しかし、綿紡績工場の経済単位は大体五万錘というのが常識でございますが、現在の綿紡績会社百三十九社のうちの百七社、約七七%はこの五万錘未満の企業でございます。特にそのうち一万錘未満の小規模の会社が四十三社、すなわち全体の三一%にも達しておるわけでございます。このほかにいわゆる特綿とか特繊紡績とかいうような専業が百十四社でございます。さらに綿スフ織布専業者一万三千、縫製業者約八千、メリヤス製造四千六百、こういうような多くの企業は全部が従業員百人未満の小企業でございます。このような多数の中小件業を主体とする綿業の構造が、金融引き締めの当初におきまして、綿糸布が換金材料として投げ売りせられて、綿業不況を促進した原因でございます。綿業におきます需給調整がとかく乱れがちな原因でもあるのでございます。また労働者に対する不当な労働条件も、これら小規模企業において起こりがちなのは自然の傾向であろうと思います。もちろん中小企業の中には、その製品もりっぱで、その経営においても大企業に比べて少しも遜色のない企業も少なくありません。しかもこれらの多数の中小企業の存在は、日本綿業の現実でありますので、この構造を無理に変更するということは困難でありましょう。また一部業界の中には、現在の不況を克服し産業の合理化をやるためには、経済の原則に基づいて自由競争をこのまま続けたらいいじゃないか、こういうような議論をする人もございますが、もしもこれをそのまま放置いたしますならば、まっ先に犠牲をこうむるのは、これら幾多中小企業であろうと思います。また世界的に経済変動が激しい現在におきまして、そのままに放置しますならば、多大の整理に時間を要するということは明らかであろうと思うのであります。そして貿易自由化後の日本の綿業にとりましては、どうしてもこの際はまず過剰設備というものを処理して業界を安定せしめて、そうして国際競争力を維持し、合理化を進めていきつつ、また企業規模も統合ないしは系列化によってだんだんとこれを合理化していき、さらに激しい競争力に耐え得るように育成指導していくことが、日本綿業全体のためであろうと考えております。  私は、また特に日本綿紡績業の持つ構造的不況要因、中でも設備の構造的過剰の問題を解決し、紡績業界の安全合理化をはかることは、同時に紡績業につながるところの幾多の織布業者を初めとする中小企業者の経営安定をもたらすものであろうということを、特にこの際強調したいわけでございます。  次に、綿紡績業の設備過剰を一そうはなはだしくしておるものとしまして、多数の無登録精紡機が存在し、そのうちに繊維工業設備臨時措置法の制限に達反して、綿糸のやみ生産を行なっておるものがはなはだ多いということを申し上げたいわけでございます。それらのやみ紡機は通産省の取り締まりにもかかわりませず、毎月約三万コリ正規の生産の約一割五分にあたる三万コリがやみ紡機で生産せられておると推定せられておるわけでございまして、法に従って正直に設備規制を行なっておる業者の需給調整を混乱せしめておるわけでございます。このようにやみ紡績の弊害が増大しておりますのは、通産省の取り締まりが徹底しないからだとの非難もありますが、根本的には現行の臨時措置法が事業法でなくて、単なる物の法律でありまして、無登録設備の設置そのものを禁止してないからでありまして、この点を改めることなしには、やみ紡績の問題はなかなか解決できにくいのではないかと考えております。  次に臨時措置法の問題に移りますと、繊維工業設備臨時措置法の改廃が問題になりましたのは、このような背景のもとに生じたわけでございまして、臨時措置法の期限が切れますのは昭和四十年六月でございますが、昨年の秋以来の客観情勢は、それに先だって、この法律の改廃を検討することを必要ならしめておるわけでございます。そのために、先ほど申しました繊維局におかれては小委員会を設けて、本年の三月以来種々検討されまして、この十一月十二日をもって第九回目の小委員会を迎えることになっておりまして、この小委員会におきまして、いわゆる原私案、土屋私案というようなものを基礎として検討を行なっております。私の提出いたしました原私案は、貿易自由化後の日本繊維産業のあり方を想定しまして、これに対処するために多年にわたる私の理想を描いたものでございまして、具体的な問題やこまかい点につきましてはさらにさらに検討、調整しなければならないと考えておりますが、この際繊維産業ないし綿紡績業の現在の状況から申しまして、少なくとも次のような諸点だけはぜひとも実現していただかなければならないと思う次第でございます。
  139. 逢澤寛

    逢澤委員長 参考人に申し上げまするが、だいぶ時間がかかっておりますから、なるたけ簡潔にお願いいたしたいと思います。
  140. 原吉平

    ○原参考人 その一つは、過剰設備の処理によりまして綿業界の構造的供給力過剰という要因を取り除くことでございます。それは過日繊維局からも示された試案のごとく、登録精紡機につきましては現行措置法のもとにおいても過剰設備廃棄の共同行為という形で考えられることでありますが、現行法におきましては、登録設備を持つアウトサイダーを規制することもできないし、まして最も肝心な無登録精紡機の廃棄を行なうことは全然不可能でございます。しかもせっかく廃棄を行なっても無登録設備の設置が自由に許されておる現状では、登録、無登録を問わず、一切の過剰設備の廃棄ということは全く無意味となります。過剰設備の廃棄を効果的に行ないますためには、従来の臨時措置法のような物の法律という考え方を改めて、設備許可制によって無登録設備の設置を実質的に禁止するというような事業法を制定することが絶対的に必要な根本条件であります。その際、綿業界の構造的不況要因の一つでありますところの小規模企業の乱立という問題も過剰設備処理と関連しまして解決できることが望ましいのでございますが、企業の整備統合という問題ははなはだ微妙でありまして、法律によってこれを強制することは適当でございません。しかし、中小企業実情を聞きますと、今のような状態に放置すれば、半年を出ずして倒産するおそれがあると訴えている人が少なくないわけでございます。それで、私は、過剰設備の処理にあたりましては、ただいま述べましたような法律改正はもちろん前提条件でございますが、その実施については、綿紡、梳毛、スフ紡などの場合は、登録区分ごとに過剰設備廃棄の共同行為によりまして、政府は長期低利の資金を貸し付けることによりまして処理するにしましても、中小企業のみからなる特綿、特繊等の紡績につきましては、政府資金によって過剰紡機の買い上げを行なうことを考えなければならないのではないかと思っております。また、過剰精紡機の廃棄に伴いまして、無登録紡機をなくす必要があります。現行の措置法のもとにおきまして合法的に存在し、自由糸だけを生産しておる無登録紡機は、せいぜい全体の一割ぐらいと推定するのでありますが、私は、それらの人々は希望する登録区分に登録して、その他の無登録設備は何らかの形で買い上げを行なって、その後においては一切の無登録精紡機の設置を許さないような法律をつくってもらいたいと考えておる次第でございます。また、今日、中小企業が経営困難に苦しみながらも、なお転廃業できない有力な理由は、設備や権利の売却代金が課税対象になるからでございます。従って、過剰設備の処理に際しましては、設備廃棄に伴う補償金や設備処理に関連しまして、転廃業する場合の補償金については、特に非課税の措置をとることが必要である、こういうふうに考えております。このように過剰設備の処理や企業の整備に際して、政府が財政支出をしたり、税制上の特例を設けたりすることは、当然国家に負担をかけるわけでございます。国家的に見ても、そのような負担をする価値があるかどうかは当然問題となる点だろうと思います。しかし、私の提唱しますところの過剰設備の処理は、綿業界におきますところの過当競争を防止し、輸出綿製品の価格の安定を目的としております。  日本の綿製品の輸出は、現在年間約四億六千万ドル、日本の円に換算しますと一千六百五十六億円の巨額に達しておるのでございますから、日本の綿製品は国際的に見てまだ相当に割安でございます。もし国内における過当競争を防止しまして価格安定をはかりますならば、これを平均一割ぐらい引き上げることは、決して困難ではございません。そのことは、年々わが国の外貨取得が百六十億円以上の増加を示すことを意味するわけでございまして、過剰設備の買い上げに必要な政府の負担のごときは、一年分の輸出額増加をもって軽くカバーできるのではないかと考えるわけでございます。当然こういうふうになりますと、政府への税金も年々ふえて、政府にも還流するということになるのでございますから、大局的に見て、国家の負担とならぬばかりでなく、外貨による企業整備資金の振りかえとなるということもいえるわけでございます。  過剰設備処理と並んで実現しなければならぬもう一つのことは、輸出振興体制の確立ということでございます。輸出振興策といたしまして、経済外交の推進とか、税制上、金融上の対策など、外からの振興策もいろいろございます。しかし、業界自体の実質的な共同行為によりまして、輸出綿製品の価格の安定、輸出綿製品のコスト引き下げのための各種の合理化、過当競争を防止し、秩序ある輸出を可能にするための輸出生産者協定などを行なうことは、輸出振興の努力として最も必要でございます。特に国際繊維協定ができましたから、秩序ある輸出を行なうということは、輸出漸増の絶対的条件となっておりますところの綿業にとりましては、これは最も重要なことでございます。それにもかかわりませず、これらの輸出振興のための共同行為は、今日では独禁法や輸出入取引法によって厳重に制約せられております。繊維工業設備臨時措置法にかわる新しい法律として、私は期限十年の繊維産業安定振興法を提唱しておりますが、新しい法律は、設備規制のほかに、これらの共同行為に対する独禁法適用除外を規定する必要があるわけでございます。  日本の紡績業は、御承知のごとく、明治初期の数年を除きましては、戦後復興に際しましても、教府の直接援助を受けることなく、業界一致の協力によって今日まで来たわけでございます。今月の構造的不況から立ち直りにつきましても、一部の中小企業に対する措置を除きますならば、われわれの望むところは、政府の直接補助ではなくて、業界の共同行為によって立ち直りたいと考えておるわけでございます。このような業界の自主的努力が、独禁法やその他の既存の法律によって拘束せられておるので、そういうことがないように、新しい法律や新しい行政措置によって、綿業界の新しい産業構造をつくり出すことが最も重要ではないかと考えておる次第でございます。  以上で私の陳述を終わらしていただきます。(拍手)
  141. 逢澤寛

    逢澤委員長 以上で参考人の方の陳述は終わりました。     —————————————
  142. 逢澤寛

    逢澤委員長 次に、質疑通告がありますので、これを許可いたします。田中武夫
  143. 田中武夫

    田中(武)委員 時間がおそいから、質疑というより、私の意見を申し上げます。それについて参考人に意見があれば、聞かしてもらってよろしい。  先ほどからだいぶ長々と聞かしてもらったのですが、その一つは、現在の繊維工業設備臨時措置法、これだけではなまぬるい。従って、単独の恒久立法かと思ったが、期間十年といったから臨時立法を希望しておられると思うのですが、それを希望される。御承知のように、繊維工業設備臨時措置法は、三回にわたって改正になっております。しかも一番最近の改正は、御承知のように、提案理由は貿易自由化に対処するためということであって、まず期間延長、それから一部合理化カルテルの容認、罰則の強化です。先ほど来のお話では、無登録織機が云々と言われておるが、これは法律が不備ではなくして、運用が不備なのです。たとえば繊維工業設備臨時措置法の四十七条では、無登録の織機を使ったときその他には罰金をもって臨むということが掲げてある。従って、あなたの言っておられるのは、設備を制限するということを主としたところの臨時措置法ではいけない、事業そのものについての事業法がほしいのだ、こういうことなんですが、その事業の構想についてはまだ具体的に伺っておりませんし、今日伺おうとは思っておりません。しかし、法律を改正するだけで私はよくなるとは思っていないのです。しかも三回にわたって改正した中に、今言っておるように、合理化カルテルの容認、あるいは罰則の強化、すなわち使用停止の問題等もあるし、アウトサイダーの規制ができないといっても現にできるようになっておるのです。そういうような問題をどう考えておられるかということ。  もう一つは、最後に独禁法の問題に触れられました。この資料でも黄色い方の四ページの最後ですが、私はこの考えには賛成できかねる。従って、特別法をもって独禁法の除外規定を設けることは、ある意味においては必要かもしれません。しかしながら、企業の自主的努力が独禁法で拘束せられるようなことのないように、基本的な独禁法がじゃま者であるという考え方に私は賛成できないのであります。  いろいろ申し上げたいと思いますが、時間がありませんから、これは参考人との間でなく、政府委員との間においての問題については論争してみたい。このように思います。
  144. 松平忠久

    ○松平委員 ちょっと補足して聞きたい。無登録で過剰だというお話だったと思いますが、一体どの程度の過剰であるか。日本の繊維は、今も参考人が述べられましたように、一つはやはり合成繊維の進出、いわゆる後進国における紡織産業の発展ということにあるわけであって、いわゆる繊維産業の中の紡績というものは、エネルギーの中の石炭と同じような工合というか、それほどでもないにしても、一つのシェアをあくまで守っていくということはなかなか困難な実情があるんじゃないか、こういう工合に見られるわけであります。従って、日本の現在の内需並びに輸出というようなものを前提とするならば、その中で占める紡績業はどの程度のシェアを今後十年なら十年の間に占めていくべきであるかという一つの見通しがおありであるから、こういうような提案をなさっておるだろうと思うのですが、今言いました精紡機、これを過剰だという過剰分はどのくらい過剰なのか。日本の現状はどのくらいあればちょうど適正なのかということをちょっと私は伺いたい。
  145. 原吉平

    ○原参考人 まず最初の先生の御質問にお答え申し上げたいと思うのでございますが、独禁法で十分じゃないかということでございますが、もちろん私は独禁法の根本精神を変えようなんていうことを言っておるのじゃございません。ただ、この前の改正のとき存在しなかった対外需要、それはこの間ジュネーブで締結されました繊維の国際協定でございます。あれは御承知のように市場撹乱と秩序ある輸出の拡大ということをきめております。これによりますと、どうしてもわれわれといたしましては秩序ある輸出の拡大をやらないことには、これから日本の綿製品の輸出は伸びない。あるいはまた市場を混乱して低価格の物が外国へ輸出されるようになる場合には、直ちに市場撹乱というようなことで相手国から輸出の制限をやられるおそれがあるわけでございます。それで、こういうようなことに対処するためには、業界を安定することが必要である。それがためには、やはり共同行為をもってアウトサイダーを規制しなければできないわけでございます。先ほどアウトサイダーの規制ができるじゃないかというようなお話しでございますが、これはここへ繊維局長もおいでになっておられますから、いずれ御答弁になると思うのでございますが、われわれの方といたしましては、紡績協会の加入脱退は自由になっておるようなわけでございまして、これが、なかなかわれわれが共同行為をやろうと思ってもできないような情勢になっております。  それから、今の日本の紡機は過剰であるが、どれくらいが適正規模であるかということは、この中にも書いてあると思うのでございますが、現在綿紡は三割六分三厘の操短をしております。そのうち長期格納が約百万錘、それから短期格納が二百八十万錘、それだけやっておるのでございますが、そのうち長期格納の百万錘余りのものは過剰じゃないか、われわれはそういうふうに考えておるようなわけでございます。しかし、これも実際問題として、今お話しのように、日本の綿業が不振になってきたのは合成繊維が非常に発達してきたからだ、そのために蚕食されているんじゃないか、こういうような御意見でございますが、しかし綿の使用の絶対量はふえておるわけでございます。ただ過剰になりましたのは、今のやみ紡機の生産とそれから先ほど申しましたように能率が二割五分も上がってきております。これはだんだんと綿業の紡績の労働者の賃金が上がってきまして、そしてそれを克服するためには、能率のいい機械にかえて、生産量を上げて、コストを少しでも安くしようというような企業努力の結果、そうなっておるわけであります。それで、今の合成繊維の出現は、これから伸びようとする綿業の需要が多分にじゃまされているということでございまして、絶対量からいきますならば、われわれとしてはそう大して問題にする必要はないわけでございます。以上でございます。
  146. 田中武夫

    田中(武)委員 これは局長に聞いてもいいのだが、第三回目の改正で、過剰設備に対するアウトサイダー規制命令が私は出せるようになっておったと思っておるんですがね。それから無登録織機の方が問題だと言うけれども、この臨時措置法四十七条第一号で第二十一条第一項違反の罰則を定めている。二十一条一項というのは、二条を受けておる。すなわち無登録織機の使用の問題なんです。それは法律によって罰則があるのです。だから法律の問題じゃなしに、運営の問題じゃないのですか。  それから委員長に申し上げますが、なるほどいろいろおっしゃっていること、紡績業界の実情はわかります。わかりますが、現在の法律を変えるという意見をここで吐いてもらうまでには、もっと適当な方法があったと思います。なるほど閉会中の参考人は委員長にまかしております。まかしておりまして、委員長の方で参考人として招聘されたのだから、それはけっこうです。しかしあまり軽々に法律改正の問題を打ち上げたり、独禁法をじゃま者扱いするようなことは、もっと経過を経てからやってもらいたい。たとえばこの臨時措置法にいたしましても、繊維工業審議会ですか、こういうのがあるわけです。そういうところで一体どういうことをやっているのか。そういうところから出ていくべきが問題じゃないかと思うんです。そういうぶっつけ本番のことをやられるということは、別に国会法上疑義があるかどうかは調べぬとわかりませんが、どうも少し軽率だと思います。
  147. 逢澤寛

    逢澤委員長 ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止
  148. 逢澤寛

    逢澤委員長 それでは速記を始めて下さい。
  149. 磯野太郎

    ○磯野説明員 簡単にお答えいたします。  この前の臨時措置法の改正で、ただいま御指摘のございましたように、アウトサイダーに対する規制命令が入っております。  それから問題は、法律の規定ではなくて、運用ではないかというお話でございますが、数字をちょっと申し上げますと、私ども調査によりますと、七月の数字でございますが、無登録の精紡機が大体八十五万錘あるということでございます。それからこれもよく御承知でございますけれども、自由糸は無登録でよいということになっております。自由糸と申しまして、スフが九〇%以上の糸は登録してない設備で引いてもよい、こういうことになっておるわけでございます。その自由糸を引いておると思われますのは、約十五万錘ございます。それから今参考人がお述べになっております法律違反の糸を引いておる、つまり無登録の機械では引けない糸を引いておるのではないかというような、いわゆる制限糸を引いておりますものが二十九万錘程度あります。それから御指摘の法律の運用として格納をさせておりますものが約十六万錘、こういうような数字になっております。従いまして、これは私どもの方の一つの立場から行きますと、もちろん無登録の精紡機で制限糸を引くのは違反でございますから、これは徹底的に取り締まりをやらなければいかぬわけでございますけれども、その発生の原因でございますとか、あるいは非常に零細企業であるとか、あるいは取り締まりの方が人員その他これは十分でないというようないろいろな事情がございまして、万全にはいっておりませんが、大体今申し上げました通り約十五、六万錘は格納させておる、こういうような状況になっております。
  150. 田中武夫

    田中(武)委員 いわゆる法律の規定の制限外のものがある。だからこれをやるために広げる必要があるかということは、私は一つの議論だ、それはわかります。しかし、そうでなく法律のワク内にあるものが現にあるということがわかっておりながら、取り締まらないというのは運営の問題です。しかも先ほどから言っておるように、この法律四十七条にははっきり罰則を持って臨んでおります。罰金がわずか五十万円程度だからかけたって意味ないのだ、こういうことで、それは覚悟の上でやっておるというなら何をか言わんやです。しかし、法律がだめだと言う前に、私は法律の運営がどう行なわれておるかということを第一検討すべきだと思う。それはあなたは専門家なんだから、私どもより臨時措置法はよく御存じだと思うんです。アウトサイダー規制命ができないじゃない、できるのだ、それはできるのだけれども、ある一定部分しか残されていないからもっと広げてくれということ、あるいはまた合理化カルテルも容認しておるのです。しかもそれがこの事態になって、自由化に対処するために、もっとやらなければいけないというのなら、またそれは問題です、しかも法律をやめて新たな立法を望むのだ、こう意見が飛躍すると、われわれは一言言わざるを得ない。同時にあなた方が言っておる中には、今、次官がおられますが、通産省で、ことに企業局でやかましく言っておる協調態勢の問題とも関連してくる。それでいけぬことはないと思う。自主努力、いわゆる自主規制の問題で努力するのが独禁法がじゃまになるというが、自主努力に対して独禁法がじゃまになるという、こういったような考え方には私は賛成できかねます。
  151. 原吉平

    ○原参考人 今のあれでございますが、中小企業安定法は設置制限なんでございます。これは御承知だろうと思うのですが、織機そのものを制限することをとめておるわけです。ところがこの臨時措置法は紡機を備え付けるのはかまわぬわけです。だから紡機を備え付けるのは自由糸を引くのだということで備え付けるわけです。そうして実際はそれで十八種類以外の糸をその紡機で引いたらよいわけでございます。ところが実際はそうではなくて、そんなものは利用価値が非常に少ないわけですから、もっともうけの多い綿とかスフとか毛とか、そういうものを引くわけです。それでこれを取り締まるのは通産省もお取り締まりになっておるわけでございますけれども、それがなかなかできないわけです。そこで、こういうふうでわれわれは三割六分三厘の高率な操短をやっておりまして、そしてそういうところは全然操短をやってないということになりますと、いわゆる正直者がばかを見るというようなことになるわけであります。だからこういうようなことはなかなかできないものですから、われわれは中小企業安定法でそういうような設置制限ができるのだったら、この際ぜひ一つ設置制限をやっていただきたい、こういうふうな希望を持っているわけです。  それから今おっしゃいました私は繊維設備審議会の小委員になっておりまして、そこでこの案を、私は今の単独法みたようなことをやってもらいたいという意見を出しておるわけです。それで今こういうところでぶっつけ本番でやるのはけしからぬじゃないか、こういうことをおっしゃったのですが、私は商工委員会の構成とかそういうものを知らぬものですから、言論の自由はいいんじゃないかと思って、私は考えていることを率直に申し上げたようなわけで、えらいお気にさわって申しわけないと思いますが、どうぞ一つお許しを願いたいと思います。
  152. 田中武夫

    田中(武)委員 二つあなたは答えたけれども、前段の方、これはいかに法律を直せばとて、やはり網の目をくぐるものはできますよ。問題は、現在法の不備でなく、適用の問題です。中小企業安定法云々と言われましたが、これは法律がなくなっている。だから、それだから、それにかわるものを入れてくれということなら、頭から否定するのじゃなしに、運営の面においてこういうことをやってもらいたい、そういう問題ではなかろうかと思うのです。  第二の点ですが、言論の自由、こうおっしゃいますが、少なくとも国会の委員会において参考人として来てもらうのは、一つの目的を持って来てもらうことです。従って、国会法を見ていただいたらよろしいのですが、参考人は委員質問を受けるけれども委員に対して質問はできないという規定があるわけです。そういうことからいっても、国会議員でないあなたは、いかに言論の自由だとはいえ、この委員会においてあんまり勝手なことは言えないという、これは頭から国会法の精神があるのです。従って、少なくとも参考人に来てもらう以上は、参考人がいかなるものを参考意見として述べるかということ、少なくともこれは推薦した人、あるいは委員長等において一応聞いてもらって、ある程度のコントロールをしてもらわないと、ぶっつけ本番で、まだ少なくとも通産省あるいは繊維局すら考えてないような単独立法云々を直ちに打ち上げられると、はなはだもって委員会としては迷惑しごくだ。できるならばその点は取り消してもらいたいくらいに思っております。
  153. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今、原さんからお話がありまして、要するに綿紡の国際協定ができた。これは新しい要因だから、輸出振興上共同行為をもっと強くやるようにしなければならぬ。現在でも、ある程度の共同行為ができるわけです。それを強くするために、法改正なり新しい法が必要だ、こういう御意見のようです。ところで今問題になっている、おそらくあなたも御出席されたであろうと思うが、かりにああいう国際協定ができても、アメリカのように次々にこの国際協定をそれぞれの立場でぐらぐら自分の方に都合のいいように変えて、ブラウス、ズボンの問題でもやってしまえば、幾らこっちが規制をしてもしり抜けじゃないかという点があるわけです。それに対して午前中も通産大臣に聞いたのですが、まだはっきりしたお答えがない。何とか善処すべくアメリカと交渉を始めている。これは今のところアメリカです。しかし、ほかの国とてもそういう措置をとらない限りではない。ということは、当然これからの市場競争が激化する中では考えられる。こういう問題についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  154. 原吉平

    ○原参考人 御承知のように、日本の紡績は、国際綿連というのがありますが、これに入っておりまして、これは約五年前からやっておりまして、昨年の五月には大阪で大会をやりました。紡績業者あたりでいろいろな問題を取り上げて、互いに意思の疎通をやっておるわけです。それによりましてだんだんと日本の綿業の実情なんかは各国とも了解して参りました。最初におきまして日本の低賃金などについてやはり文句が出ておったわけでありますが、だんだんそういうようなものが解消して参りました。それでわれわれとしましても、こういうような国際協定に参加するということは、結局日本綿業自体としても得じゃないか、そういうふうに考えてやっておるようなわけでございますから、あの規定に日本が違反さえしなんだら、あの条項は守ってもらえるものだ。それでEEC諸国あたりにおきましても、だんだんと輸出はふえていくようになるのではないかと考えておるわけでございます。今の問題はブラウスやズボンの問題でございます。これはまだ国際協定の適用じゃありません。国際協定は来年の一月から適用されるわけでございます。二国間の協定になっているわけであります。それに対して、政府としては、あれはどうもけしからぬじゃないかということで今坑議しておられるのでございますが、ああいうようにきまりました国際協定に、日本からそういうような口実を与えないようにしたならば、十分に相手国においても実行し、また守ってくれるものだと考えておるのでございます。
  155. 逢澤寛

    逢澤委員長 他に御発言もないようでありますので、参考人の方に一言ごあいさつを申し上げます。  原参考人には御多忙中のところおいでをいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、厚くお礼を申し上げます。     —————————————
  156. 逢澤寛

    逢澤委員長 この際お諮りいたします。さきの国会並びに今国会の閉会中に行ないました委員派遣の派遣委員から報告書が提出されておりますので、これを会議録に参考のために掲載することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり。〕
  157. 逢澤寛

    逢澤委員長 御異議ないと認めます。よって、さよう決しました。次会は公報をもって御通知することといたし、本日はこれにて散会いたします。   午後三時五十八分散会      ————◇—————