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1962-08-31 第41回国会 衆議院 商工委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年八月三十一日(金曜日)    午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 逢澤  寛君    理事 岡本  茂君 理事 首藤 新八君    理事 白浜 仁吉君 理事 中村 幸八君    理事 板川 正吾君 理事 田中 武夫君    理事 松平 忠久君       浦野 幸男君    齋藤 憲三君       始関 伊平君    田中 榮一君       田中 龍夫君    中川 俊思君       南  好雄君    村上  勇君     早稻田柳右エ門君   岡田 利春君       北山 愛郎君    小林 ちづ君       中村 重光君    伊藤卯四郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君         国 務 大 臣 近藤 鶴代君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    山本 重信君  委員外出席者         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   島村 武久君         通商産業事務官         (公益事業局長塚本 敏夫君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 八月三十日  輸出の拡大振興対策等に関する請願田中伊三  次君紹介)(第七九五号)  物価値上げ反対に関する請願外二件(川上貫一  君紹介)(第八六三号)  同外二件(志賀義雄紹介)(第八六四号)  同外二件(谷口善太郎紹介)(第八六五号)  同外一件(川上貫一紹介)(第九一四号)  同(志賀義雄紹介)(第九一五号)  同(谷口善太郎紹介)(第九一六号)  公共料金及び諸物価引下げに関する請願外六件  (川上貫一紹介)(第八六六号)  同外七件(志賀義雄紹介)(第八六七号)  同外七件(谷口善太郎紹介)(第八六八号)  同(川上貫一紹介)(第九一八号)  同(谷口善太郎紹介)(第九一九号)  新鶴見変電所新設及びこれに伴う道路工事反対  に関する請願高橋等紹介)(第八八八号)  同(小枝一雄紹介)(第九六四号)  同(渡邊良夫紹介)(第九六五号)  公共料金等物価抑制に関する請願川上貫一  君紹介)(第九一七号)  東北電力株式会社電気料金値上げ反対に関す  る請願外四件(西村力弥紹介) (第九六六  号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公益事業に関する件  (電力に関する問題)      ————◇—————
  2. 逢澤寛

    逢澤委員長 これより会議を開きます。  公益事業に関する件について調査を進めます。  電力に関する問題について質疑の通告がありますので、これを許可いたします。田中武夫君。
  3. 田中武夫

    田中(武)委員 まず最初に電力再々編成の問題につきまして、宮沢長官にお伺いしたいと思うのですが、八月二十四日の閣議の席上で、河野建設大臣から、東北電力値上げを行なう前にエネルギー総合政策の上に立って現在のあり方は検討すべきである、また篠田大臣からは、それに賛成言葉が述べられて、九分割制度占領のなごりである、従って、非能率的だから再々編成問題等に取り組まなければならぬというようなことがあって、その後の記者会見であなたはそれを肯定するような発言をせられて、そのあとで、東北電力値上げは一時的な救済束にすぎない、従って、電力再々編帆、ことに東京、東北は合併を考える時期ではなかろうか、こういったような意味記者会見での発言があったよりに新聞で伺っておるのですが、その間の事情一つ話していただきたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 閣議でどういう議論かあったということをそのまま申し上げることは適当でないと思いますが、私がそういうことを申しました考え方について御説明いたしたいと思います。  東北電力値上げ申請は、目下通産省においてその可否、程度等を検討しておられるわけでございます。私ども役所は正式にはまだ協議を受けておりませんが、事実問題として協力態勢に入って一緒に検討しておるわけであります。と申しますのは、かねて公共料金決定についての閣議決定もございますし、聞くところによりますと、申請の幅が相当大きなものでありますので、小口の電灯使用者、大口の電力使用者等にかなりの大きな負担を与える結果になり、国民生活の面からもまた国の生産の面からも相当大きな影響があると考えておるからであります。そのような大幅な申請をどう扱うかという場合に、かりに申請内容が、もっともであると仮定いたしましたときに、その影響が相当大きいのでありますから、できるだけ消費者に対する影響の波及を小さな限度にとどめるべきであるというふうに私は考えておるのであります。そのためには、場合によりましては、国として、総理所信表明演説にありましたように、財政第を通じてこれに手助けをするということが必要になるかもしれません。この点は最終的には閣議決定をいたすべき問題でありますから、今そういうことをいたしますということを申し上げておるのではございませんが、そういう可能性があると考えます。これはここにそういう例が非常に乏しいだけに、もしそういうことになれば相当思い切った処置であると考えますが、国としてそういう思い切ったことを考えます以上は、経済界全体として、あるいは電力事業界全体として、今日の電力企業あり方について、つまり電力生産とその送電と消費について全然問題はないものであるかどうか、国としても消費者保護立場から相当思い切ったことを考えてみようと思うについては、業界においてもそういうことを一ぺん考えていただけないものであろうか、政府はこれを強制する立場にはないのでありますが、そういう意味発言をいたしたのであります。
  5. 田中武夫

    田中(武)委員 話の本題に入る前に、今、宮澤長官が言われたことについて一言確かめますが、閣議での問題をここで明らかにすることは適当でない、そのような発言がありましたが、閣議でどういう話になったかということを国会で言ってはいけないのですか。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 閣議における具体的なやり取りについて、この人がこう申しましたこれに対して、これはこう申しましたということを申し上げるのは適当でない、こう申したのであります。
  7. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、閣議決定事項については言えるが、その過程は言えない、こういうことですか。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一般論として申し上げておるのではなくて、ただいまの場合適当でなかろう、こう申し上げておるのであります。
  9. 田中武夫

    田中(武)委員 今の場合適当でないということは、これはどういう意味なんですか。結局は電力再々編成の問題は財界あるいは業界に及ぼす影響が大きい。そういう筋の動きをおもんぱかっての言葉なんですか。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私が最も大切だと考えておりますのは、この問題について政府が強権的にああしろ、こうしろと言う立場にはないのでありますから、その点について誤解を生ずることがいけない、こう思っておるのであります。
  11. 田中武夫

    田中(武)委員 まあそういう問題について、なるほど現在の規則の上では私企業という形をとっておるからできない、こうおっしゃっておるのだと思うのですが、われわれは違った観点を持っております。これは質問の途中からそういう問題にも入りますが、しかし、いわゆる公益性の強い、従って公益事業としてのいろいろな規制があるわけです。そういう問題について、ことに現実の問題として東北電力値上げの問題が出ておる。それが閣議において論議せられた。その一部は新聞に報ぜられておるわけです。それを委員会において言えないということはどうなんです。われわれには了解できませんですな。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどのお答えを繰り返せば十分だと思います。
  13. 田中武夫

    田中(武)委員 これは委員長一つお伺いいたしますが、こういう閣議話題になったことを委員会で言えないということは、今までの委員会の慣例でどうですか。もしあなたが言えないというなら、国会法に従って言えるようにしたいと思うのですがね。
  14. 逢澤寛

    逢澤委員長 田中君にお答えしますが……。
  15. 田中武夫

    田中(武)委員 議事進行——これは委員会要求決定すれば拒否できないと思います。そして拒否する場合は、文書でもって言えない理由を明らかにしなければいかぬ。おそらくそういうふうに国会法はなっていると思うのですが、委員会においていかがでしょうか。言うてもらうように取り計らってはいただけませんか。
  16. 逢澤寛

    逢澤委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  17. 逢澤寛

    逢澤委員長 速記を始めて。
  18. 田中武夫

    田中(武)委員 これは委員会決議をしなくちゃいけないのに、与党の諸君がそう言っておるのなら決議にならぬと思うのであります。従って、言わぬというものをここで要求はできないと思いますから、そこでとにもかくにも二十四日の閣議でそういうことが話題になった。それ以来業界にも一般にも電力再々編成という問題が大きく浮かび上ってきたのです。これは何も突如として出てきたわけではなくて、今まででも電力料金改定が問題になったときには必ずといっていいほどこの再々編成の問題が出ておるが、いまだかってそれを実現に移そうとした大臣内閣もなかったわけなんです。電力と鉄鋼にメスを入れ得る政治家はいないと言われた。それをともかくこの内閣で取り上げたということは勇敢だと思うのですが、ただこれがはったりであれば、そういうことでないことを望みたいのです。聞くところによりますと、宮澤さんはすでに業界を小当たりに打診をしておるというようなことも聞いておりますが、打診の結果はいかがでしょう。これも言えませんか。
  19. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 本来が、第一義的には私の役所の仕事ではございませんわけでありますが、いろいろな問題があるようでありますから、学識経験者意見は努めて聞きたい、こう思いまして、多少ずつ意見を伺っております。
  20. 田中武夫

    田中(武)委員 伺った結果はどうなんですか。
  21. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もとより私も私的な資格において、先方も私見として言っておられるのでありますから、それをここで御紹介するのは差し控えたいと思います。
  22. 田中武夫

    田中(武)委員 プライバシーには触れぬことにしましょう。  そこで、新聞によると、この再々編成のことが閣議話題になった。先ほど言った河野篠田あるいは宮澤大臣はそれに賛成といいますか、そうやるべきじゃなかろうかという意見を持っておる。ところが、福田通産大臣には難色があると伝えられているのですが、福田通産大臣は、電力再々編成、の問題についてどのように考えておられますか。さらにゆうべ五時半から二人はこの問題について会談をせられたそうです。その結果、新聞によると、東北電力値上げ再々編成は別に考えるのだ、こういうことのようであります。言えないことを無理に言えとは言いませんが、差しつかえなければ、福田通産大臣考え方ゆうべ両者会談の結果を知らせていただきたいと思います。
  23. 逢澤寛

    逢澤国務大臣 私に関する部分が先にございましたので補足させていただきますが、先ほど申し上げましたように、私は再編成をすべきであるということを申したのではありませんので、政府でいろいろなことを考えておるので、業界もこの問題を検討してみてはもらえないだろうか、こう申したのでありますから、誤解のないようにお願いいたします。
  24. 福田一

    福田国務大臣 電力編成の問題は、田中さんからただいま御説明がありました通り、これはそもそも占領行政が始まって電力を九分割したときから起こっておる問題でありまして、今日までずっと続いておる問題でございます。従って、あらゆる時代、また電力料金等値上げが起こった場合には、必ずこの問題が取り上げてこられたことは当然だと思うのであります。そういう意味からいいますならば、電力の再編成問題というものは常に検討されてきておった問題であり、また今後もこれが再編成がなるまでは常に続でであろう問題だ、私はこう考えておるわけでございます。その理由等は、私が申し上げるまでもなく、法の不備とか態勢自体内容とかいろいろございますが、これは今後も大いに研究すべき課題である、かように考えるのであります。しかし、その問題と今度のこの東北電力料金の問題とをからみ合わせて考えるということになりますと、ここにいわゆる電力行政の根本問題、差しあたりの問題という二つの問題をどう調和させるかということが出てくるわけでございまして、根本問題が解決しない場合は、料金の問題は考えないというわけにはいかない、政治というものは事実問題が伴いますから、それはなかなかむずかしかろうという意味合いにおきまして、東北電力料金の問題といわゆる再々編成の問題は切り離して考える。しかし、いわゆる再々編成の問題については昔からずっとあったことであり、これからもずっと続くであろうことだ、われわれとしても当然考えることに相なろうかと思うのであります。なお、この問題については、御承知のように、ことしの四月から電気事業審議会をつくりまして、これにも諮問をしておるようなことでございますが、その答申が出てこないうちは考えないのかということになりますと、そういうわけではございません。当然担当の官庁としては、そういう問題については、諮問の問題もありますが、これとは別に考えていくということは当然なことであろう、かように考えておるわけでございます。
  25. 逢澤寛

    逢澤委員長 関連質問がありますので、これを許します。板川正吾君。
  26. 板川正吾

    板川委員 再々編成の問題で宮澤長官通産大臣の間でどうも受け取り方に違いがあるように思うのです。これは宮澤企画庁長官は、料金値上げ申請された、この問題も解決しなければならないが、この料金値上げを解決したところで根本的に今の態勢のままでは結局同じことを繰り返すのだから、この際料金値上げ考えるときに再々編成のことを政府が指導したらいいのじゃないか、こういう気持通産大臣の方は、再々編成の問題は前からあるんだから、当面料金値上げはこれと切り離して、料金値上げの方を解決して、それはそれであと意見を聞いて善処したい、こういうふうにお二人の間でどうもこの扱い方に対する考え方が変わったものじゃないか、こう思うのです。宮澤長官の方は、これはガン手術だから、いずれなおらないんだから、この治療をする機会手術をしてガンをなおそうというふうに考える。通産大臣の方は一つ病気をなおしてからあとガン手術しよう、根本を手術しよう、こういうようにお二方の考え方がどうもこの処理について差があると思うのですが、この点どうなんですか、一本にすべきじゃないですか。われわれの方とすれば、やはり一番いい機会でありますから、料金問題を解決する機会にこの手術も同時にやるべきじゃないか、こういう考え方を持っておる。いかがですか。
  27. 福田一

    福田国務大臣 お答えを申し上げます。宮沢長官と私の間に意見の食い違いがあるのではないかという御質問でありますが、われわれ二人としては、実は何ら意見の相違がないということでございます。という意味は、今例をあげてお話がございましたが、病気をなおしてからあとガン手術をしようとするのが私の立場で、ガン手術と同時に病気もなおすのだという考え方宮澤長官考え方のように御質問があったと受け取るのでありますが、いずれにいたしましても、ガン病気があり、ほかにも病気があるということになれば、これはいいお医者さんだったらガン手当もするだろうし、その病気手当一緒にしなければならない、こういう意味においてはちっとも考え方が変わっておりません。再々編成の問題はもうすでにGHQが九分割したときから始まっており、今日においてもずっと続いております。私は通産大臣になっておらないときでも、電力の問題についてはいつも関心を持っておりまして、そういうことについては私自身も個人的には勉強しておったつもりであります。しかし、その再々編成ということになりますと、あるいは法律をつくらなければならない場合もあるでしょうし、いろいろの問題がたくさんございまして、一ぺんにそれをやってしまうというには、時期の問題その他を考えてみても、なかなかむずかしいということもございます。それらのことをいろいろにらみ合わせてみますと、まずこの場合においてももちろんそういうような再々編成電力行政あり方電力事業あり方、こういうことをいろいろ研究すべきでありますけれども、それと同時に、一方においてこの電気料金の問題は一応解決せざるを得ないであろう、こういうことを申し上げておるのでありまして、私は、宮澤長官も大体においてその措置に当たっておられる、かように考えておるわけでございます。
  28. 逢澤寛

    逢澤国務大臣 その通りでございます。
  29. 田中武夫

    田中(武)委員 今そうおっしゃっておるが、実際は食い違っておったのでしょう。だからこそゆうべ二人で相談したんでしょう。そうじゃないんですか。ガンのたとえで言えば、ガン病気二つじゃないですよ。ガンがあるから現象的な病気が起こっておるんです。従って、宮澤長官がこれは新聞に出ていることだから、あなたが言えないと言えばそれまでですが、ともかく料金値上げ東北に認めたとしても、それは一時の救済にすぎない。やはり電力あり方を、この九つに分ける姿、このままにおいておく限りは、まだ次々と同じような問題が出てくる。これはあなたのおっしゃる通りなんです。そこでもちろん私はこの電力再々編成が二カ月や三カ月ではできない。従って、それができ上がるまで、一方を押えるということはできないから、切り離すということはわからぬこともない。わからぬこともないが、値上げのときには必ず言うけれども値上げが終わればまた再々編成の問題はなくなってしまう、消えてしまう、これが今までの実情であります。そこで、この際全部再々編成ができるまで値上げ考えないということもできないと思うが、値上げ前に少なくとも閣議とでもいいますか、政府再々編成に対する方針くらいは打ち立てる必要がある。総理参議院予算委員会で、三年も四年も前から考えておると言われ、福田通産大臣は、これは九分割が発足した二十六年からの問題である、こう言っておられますが、俗に下手な考え休むに似たりといいますが、考えただけでは何にもならぬでしょう。少なくとも一つはっきりした方針を打ち立てて、その上に立って一応電力料金考えていく、そういうような方向はとれませんか。
  30. 福田一

    福田国務大臣 仰せのように、電力編成をするのだという考え方をきめておいてこれに着手することも一案でございましょう。しかし、われわれはそういうことではなくて、研究をいたしまして、適当な案ができたときにこれを閣議決定にするというのが至当であろう、かように考えておりますので、その方法によっておるわけでございます。
  31. 田中武夫

    田中(武)委員 その通りでございますか。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その通りでございます。
  33. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、それではわれわれの考え方をまず申し上げて、その線に従ってお考えを聞いていきたい、このように考えます。われわれの考え方は、電気のような公益性の強い、そして基幹産業であるものを私企業という形態の上に九つに分けておる現状では、地域開発とかいろいろな点においてもうまくいかない。従って、地域ごとに安い電気料金のところと高いところが出てくる、しかも御承知のように、電力会社地域独占であります。お前のところが高いからこちらで買うということはできないわけです。そこで、全国国土総合開発といいますか、地域開発あるいは全国の水その他の資源の利用、こういう点からいいましても、一本の姿で、しかもずばり言えば、われわれは公営の格好でやるべきじゃないか、こういう考え方を持っておりますが、現在のような電力業界あり方で、ほんとうに国土の総合的な開発地域開発ができるかどうかいあるいはまたその地域ごとにおける電気料金のアンバランスをどうして直していくか、こういう問題にぶち当たると思うのです。お考えはいかがでしょうか。これは宮澤長官がいいと思います。総合開発の問題にも関係がありますから……。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに中央、地方の格差をなくしますために、総合開発地方開発をいたしていくというのが政府一つ方針でございますが、そういうときに電力事情がその地方で不安定であるということは非常に困ることでございます。そこで広域運営というようなこともやっているわけでございます。ただ私どもは、公営、国営というようなことに、どうもイデオロギーの問題ばかりでなく、その効果に信用を置けないような考え方でございますので、やはりこれは私企業でやっていってもらって、うまく運用してもらいたい、私企業のいいところを出していってもらいたい。それについてはこのような問題が起こりますと、やはり私企業ではまずいのではないかという御議論が世の中に出て参りますので、そういう考え方がそうでないということを示すためにも、電力業界としてはいろいろ考えてほしい、こういった気持でおるわけであります。
  35. 田中武夫

    田中(武)委員 私企業でするか公営でするかということは、保守党の諸君とわれわれとの意見は違うだろうと思います。しかし、その前提として、まず九つでなく、一本の姿でなくてはいけない、こういうことだけは言えると思う。  そこで、他の方面から電力編成、ことに一元化公営が必要である。そういう面について尋ねてみたいと思うのでありますが、先日の参議院予算委員会総理はいわゆる所得倍増計画は堅持するとおっしゃっているんです。そうすると、この所得倍増計画を達成していく上において、現在のような電力業界あり方でやっていけると思われますか。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御質問の概括的な意味はわかるのでありますが、恐縮でございますが、もう少し具体的にお尋ね下さいませんか。
  37. 田中武夫

    田中(武)委員 総理所得倍増計画は堅持していくとおっしゃっているんですね。それならば、その四十五年の目標年度は早くなるとも言っておりますが、この四十五年の目標年度におけるエネルギー目標は、石炭換算で、三億三百万トンですね。そのうち電気は二千三百五十億キロワット時、これが所得倍増計画における十年後のいわゆる目標年度エネルギーの推定なんです。それをやる上において毎年電力会社は四千億ないし五千億の設備投資といいますか、資金を必要とするんです。その資金調達の面からいって、現在のようなあり方でやっていけますかどうか、そういう自信がありますか。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は各会社増資なり社債を発行をして、従来はやっておるということもございますし、政府財政投融資あるいは開発銀行からの融資をするということもございます。電源開発会社もございますので、その点はできないと考える必要はないと思います。
  39. 田中武夫

    田中(武)委員 それじゃ、過去十年間の九電力会社工事資金は一体幾らで、そのうち自己資金といいますか、自己の能力によって集めたものは幾ら他人の力にたよったものが幾ら、こういうことについてお聞きいたしたいと思います。
  40. 塚本敏夫

    塚本説明員 総工事資金で申し上げますと、二十六年度から申し上げますが、二十六年が……。
  41. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、総括でよろしい。——それでは時間がかかるから僕の方で言います。工事資金全部で一兆五千七百八十億円なんです。そのうち減価償却費を中心とする内部留保といいますか、これが二九・五%、増資が二%、合計四〇・五%が自己資本です。そうして社債が二〇・一%、開銀、世銀などの外資が一六・八%、その他の借入金が二二・五%で、その過半を自分の力以外のところにたよっておる、他人資本にたよっているというのが実情なんです。公益事業局長、どうです。数字は合っておりますか。
  42. 塚本敏夫

    塚本説明員 今の数字、全部合わせておりませんが、大体合っているのじゃないかと思います。
  43. 田中武夫

    田中(武)委員 大体合っているということは、その言った数字のなにはともかくとして、もう自己資本において調達するというところには限界が来ているのじゃないか、これを言おうとしておるわけなんです。そうするなら、あとはどこでその資金を調達するか、こういうことになるなら、これは国の資金でめんどうを見るか、さもなくば外資にたよるほかはないのです。外資にたよった場合、必ずと言っていいほどひもがつきます。ひもつきでない外資というようなものはほとんどないと思っていいと思うのです。そうするならば、この基幹産業であり、公益性の強い独占産業である電力が、外資にたよったためにいろいろとひもをつけられるということは望ましくないということは、あなたも同感であろうと思うのです。そうするならば、結局は国の資金でめんどうを見なくちゃならない。十カ年計画の推計は先ほど申しました数字でありますが、あるいはそれを上回るかもわからない。それの需要に応ずるためには、やはり多くの資金を入れなくちゃならないのです。それを消費者に転嫁さすというだけではおさまらない。そうならば、外資か国家の援助か、こういうことになるのですが、その面からいっても、私は、ここで一元化ということが必要になってくるのじゃないだろうかと思うのですが、いかがですか。福田大臣、首を振られましたが、ちょっと飛躍がありますか。
  44. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 金を貸す方が借りる方にいろいろ条件をつけるということは、これは普通にあることでありまして、従来、電力会社が外資を借りましたために、そういう通例にある慣行以上の何か条件をつけられる、ひもつきという言葉を仰せでございましたが、そういうことはなかったと考えます。  それから、自己資本が寡少のために、外部資本にたよらざるを得ないというのは、非常に残念ながら、現在わが国企業全体がそういう姿にあるわけでございますが、そのことは、企業の所有権の問題とは直接に関係がないと思います。
  45. 板川正吾

    板川委員 ちょっと関連して。——宮澤長官は、そういった建設資金工事資金は、増資なりあるいは開銀融資なりで調達をすべきだ、こうおっしゃっておる。まあ宮澤さんは、池田総理の意を受けて、この問題を非常に熱心にやっておられるようであります。しかしそういうことを言われると、今の実態からいって、ちょっと常識外だと言われるのじゃないですか。増資といいましても、額面を割っているものにそうそう増資ということを期待するわけにいきません。それから、九電力の全部株を、これは九電力の資本金全部では何千億というものになりましょうが、半額増資あるいは倍額増資しても、これは膨大な、証券市場において大きな圧迫を受けますから、株がさらに暴落するかということになって、増資をもっての資金の調達ということは、なかなか困難な面が私はあろうと思う。  それから、開銀の融資ということを考えておりますが、開銀の融資は、昭和二十六年のときに工事費が、規模が小さいときでしたが、四百七十四億円のときに、百八十七億円開銀が融資をされておる。その総工事費に対する開銀の融資割合というのは三九・五%です。ところが、現在は、昭和三十六年でありますが、工事費が三千三百五十七億円に対して、開銀融資八十九億円、わずか二・七%で、三九・五%から二・七%に減っておるのですね。開銀の電力に対する工事資金の融資の割合というのは、年々非常に減っております。これで毎年四千億から五千億平均工事資金を調達しなければ、電力の需要に応じられないという状態なんです。そうすると、これは一体どうするのか。料金収入の六〇%以上を工事資金にかけておる。そういうことで自分の自己資金から出しておっても足らない。そうすると、電力会社からいえば、料金を二倍にもしなければとってもやっていけないという状態なわけです。料金を二倍にしたならば、これこそは日本の産業というのは重大な影響を受ける、こういうことになるのじゃないですか。ですから、どうしてもこの電力問題を私企業にまかしておくという形態が私は問題だろうと思うのです。これは基幹産業公益事業として政府がもっとこれに対する積極的な資金の援助なりあるいはそういう面におけるものをしなければならぬと思いますが、同時に、これを私企業の形態に放置することは、私はこれはあるべき形じゃない。われわれの税金をどんどん出すのはいいけれども私企業で自由にやれるという形じゃないわけです。通産省は最近、新産業秩序を考えておって、企業の集中なりを行なっていく、合理化をしていく、過重の投資、二重投資を避けていく、計画性を持たせる、こう言っておる。だから、その方向からいえば、こういう電力のような基幹産業公益事業、こういう面はもっと政府が介入すべきだろう、資金的な援助もすべきだろう。そうでなければ、これはもう電力料金は、何回値上げしても問題の解決にはならぬ、こういうふうに考えるのですが、この点長官どうですか。
  46. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 増資社債、外部からの借入金、開発銀行、市中銀行、それから財政投融資、外部からは外国からの借り入れでありますが、そういうふうにしてやってきておるわけであります。それで、確かに株価が低うございますから、そうでない場合に比べて増資がやりにくいということは、現実の問題としてそうであると思います。ただ、今問題になっております東北電力なんかの場合はことにそうでありますが、相当地方団体も株を持っておそ、そうして一定の配当をしておりますので、そういう立場から申せば、株の売買を目的にして株を持っている人ばかりでございませんので、増資が不可能であるというふうには考えておりません。御指摘のように、相当むずかしいことは確かでございます。  それから、私企業の形では無理であろうという御指摘に対しては、これはいずれにしても国民経済のどこかから金が出てくるわけだと思います。ですから、その点は同じことなのであって、国民経済の中と国民経済の外、すなわち外資でありますが、そのどこかから金が出ることは変わりがないのでありますから、私は、そのことが企業の所有権の問題とは直接の関係があるとは考えないのであります。御指摘のように、建設のために国がもっと金を出してやるべきではないかという点については、私どもそういうことであろうと思っております。
  47. 田中武夫

    田中(武)委員 宮澤長官に対する質問は、ちょっと中止します。いろいろ疑義を持っていますが、あとでやります。  近藤長官が何かお急ぎのようですから、近藤長官の分を先にお伺いいたします。御承知のように、三十二年ですか、原子力発電株式会社が設立せられたときの経過は御承知だろうと思う。当時の閣僚であった河野さんは公社方式を主張した、当時の長官であった正力さんは純然たる民間企業を主張した、その妥協の産物ということで、たしか電発が二〇%、それから九電力が四〇%、それからあと四〇%が原子力グループ、一般民間となっておりますが、これは一応民間として、二・四・四、この割合で百億の資金ができたことは御承知だと思うんです。そこで近藤長官にお伺いしたいのは、この原子力発電のその後の経過と将来の見通し及び当時われわれは原子力発電の、ことに原子力基本法の平和、自主、民主、この精神にのっとっても当然公社方式であるべきである、こういう主張をいたしましたが、今言ったような形態になっておりまして、商法によるところの純民間会社として発足をしておるのであります。将来総合エネルギー考えていく上において、こういう原子力発電所のあり方でいいのかどうか。  それから宮澤長官福田通産大臣、どちらでもけっこうですが、かりにこれが十年先になるかもっと先になるかわかりませんが、原子力発電が現実のものとなった場合には、現在の姿の電気企業のあり方は根底から飛んでしまうわけだ。こういうことも考え合わせて、将来の原子力発電のあり方及び九分割制度あり方、こういうことについてどう考えておられますか。近藤長官及び二大臣にお伺いをいたします。
  48. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 昭和三十二年に原子力委員会決定をした線に沿って、閣議了解で、その趣旨によって成り立っておる企業でございますので、私といたしましては、今の段階ではこれでいいのではないかと思います。しかも原子力基本法の中に含まれておりますところの一番大事なことは、その利用があくまでも自主的であり、民主的であり、しかも公開でなければならないという線にきわめてこの機構がよく沿っているのではないかと思います。従いまして、将来いろいろな事情において検討される機会があるといたしましても、原子炉の利用とか活用とかそういうような面において、私は今の段階ではこのままの機構でよいのではないかと思います。従いまして、法人の形態はこのままで、ただ政府がこれに対しまして、原子力平和利用という面について重要な役割を持っておるという点において十二分に指導もし、またこの推進のために十分努力をして参らなければならない、このように私の立場では考えておる次第でございます。  将来どのような事態が起きるかということにつきましては、私のただいまの考え方において、その場合にはこうだ、ああだということを申し上げるわけに参りません。
  49. 田中武夫

    田中(武)委員 将来の見通しといっても、私の言っているのは原子力発電が現実のものとなるのは一体いつごろを見越しておられるのか、そういうことになった場合に、片や原子力発電株式会社がこのような形態でいいのか、また片や現在の電力の九分割、こういったことでいいのか、ことに原子力発電がほんとうにどんどんやり出したら、現在の電力界のあり方は根底からくつがえる、そういうことについて伺っておるのです。いつごろになったら現実の送電ができるようになるのか、そういうれとが一つ。  もう一つ、先ほど大臣は原子力基本法の自主、民主、公開の原則、それに平和利用、こういう点から見ても現在の方がいいのだ、こういうことでありますが、純然たる商法上の会社ですよ。ただ、原子力平和利用という建前から若干の意見が述べられるかもしれませんが、できておるのは純然たる民間会社ですよ。それに対して科学技術庁としてはどの程度の発言権があるのか、また、強い発言をするならおかしいということになる。そういう点、どうなんですか。
  50. 近藤鶴代

    ○近藤国務大臣 大体どのくらいの年数たったら原子力の利用が十分できるかというお話でございますが、これに対しましては、大体昭和四十五年くらいには、相当の発電を利用することができるようになると思います。  それから、ただいまおっしゃいました原子力基本法の民主、自主、公開の原則について、現在の段階でどれほど科学技術庁がこれに対して意見を言うことができるかというお話でございますが、私は、これがきまりましたときに原子力委員会決定をしているという一つの役割を果たしておりますので、これは考え方によっては相当の意見を言うことができる、こう解釈いたしております。
  51. 田中武夫

    田中(武)委員 僕は近藤大臣、今さら議論を吹っかけるという気はないのです。しかし、そう言われると言わざるを得ないのですが、原子力委員会がきめたからといって、たとえば商法の規定を越えてどれだけのことがやれますか。相当の発言ができると言うが、経営の上において、商法の規定を越えて何がやれますか。
  52. 島村武久

    ○島村説明員 私からお答え申し上げます。  私企業でありますと、商法に基づいてできました株式会社に対して科学技術庁として商法上のいろいろな監督をいたすという意味で長官は申し上げたわけじゃございません。たとえば原子炉を置くというような問題につきましても、これは田中委員よく御存じの通り、原子力委員会の定めるところの国の原子力開発に関する計画に沿って行なわれるものである限り、これの設置を許可するというような法的な問題もございます。また原子力委員会あるいは科学技術庁といたしまして、原子力の開発利用の推進という立場から、これに実質的に協力し、実質的によく見守っていくという趣旨を申し上げたものでございます。
  53. 田中武夫

    田中(武)委員 それば一般の他の企業においても、あるいは監督あるいは行政指導等をやるのは一緒なんですよ。一般の発電所をつくるのでも、やはり許可が要るのです。原子力発電だけじゃないのですよ。私の言っておるのは、この原子力発電といったような、将来に大きな想像もつかないようなことが行なわれるであろうというこういうものを、純然たる民間企業でいつまでもやっておっていいのか、こういうことなんです。それをあえて経営内容まで立ち入るということならば、これは商法の規定を越えることになります。そのところを言っているのですよ。
  54. 福田一

    福田国務大臣 ただいま原子力会社がやっている仕事が、今のいわゆる商法の規定に基づく姿でいいかどうか、原子力はもう飛躍的にふえていくじゃないか、こういうような御質問かと存ずるのでありますが、われわれの立場から考えてみますと、今、御承知のように、原子力は必ずしも安くございません。一キロワットアワー四円二十五銭、四十五年ごろになりましても、今の一応の数字で進んでいくといたしまして、まだ二円二、三十銭ということになります。ところが御承知のように、ただいまのところでは原油のなまだきをすると二円ぐらいになるでしょう。それから重油をたく方法でございますが、このやり方も実は今ナフサに分解してガソリンをとったりいろいろやっておりますが、あのやり方を少し変えますと、これも二円前後につくようになる数字は出ているわけです。まだそこまで研究は進んでおりませんが、そういう数字が出ておるわけであります。そういうことを考えてみますと、四十五年ごろになったときに、それじゃどれくらい原子力というものが実用化されるだろうかという観点が一つあろうかと思うのであります。そういう観点から見ますと、エネルギー全体の中において占める地位というものは、それほど大きいパーセンテージにはその時代ではならない。ただ私は、技術の進歩とか科学の進歩というものは日進月歩といいますか、はかり知れませんから、今考えていることがそのまま当てはまるかどうかわかりませんが、一応の見通しとしてはそうなるということを申し上げたわけであります。  それから、商法の問題にに関連いたしまして、原子力会社をこのままの姿にしておいていいか、商法の規定した会社にしておいていいかどうかというお話でありますが、これはあなたにお言葉をお返しするようで恐縮でございますが、しかし、商法の会社である以上は、原子力の発電をした以上は売らなければならない、売るということになれば、買手は高いものは買わないだろうと思うのでございます。そうすると今のような一応の推定で、いわゆるエネルギー源としてまだそれほど実用的といいますか、効果的なものじゃないということになれば、もうしばらくの間このような形にしておいて、しかしその姿を、いわゆる原子力がだんだん利用されていく、すなわちこれはわれわれの予定よりは早くなるかもしれない、そのときにはまた考えなければいけませんが、今この時限において考えた場合においては、一応原子力というものは平和利用という建前においておるのだから、やっぱり民間企業としてやっておいた方がいいじゃないか、こういう観点から今のような姿が出ておるのだ、こういうふうに御理解をしていただきたいと思うのであります。
  55. 田中武夫

    田中(武)委員 ほんとうの事業化をするまでは、原子力の方がコストが高くなる。だから私は国営か公営でうんと研究したら、そうして早くしたらいいじゃないか、こういう議論なんです。それが一つなんです。  それから言葉じりを拾うわけじゃないのですが、平和利用という観点から考えて民間の方がいいんだということになると、政府は平和以外のことを考えておるのですか。  それから四十五年度のエネルギー想定ですね、その中では原子力発電をどの程度に考えておるのですか。今の話では四十五年ということですが、三億三百万トン石炭換算の総エネルギーの中における原子力発電の占める割合、そのときにおけるコスト、これは今から推定できないのだろうが、こういうものは実用化すればうんと下がるわけですが、そういう点についてはいかがでしょうか。
  56. 塚本敏夫

    塚本説明員 四十五年におきまして、供給能力としましては大体八十一万キロ、発電設備としましては九十六万六千キロ、これだけを大体今のところ予定いたしております。コストは大体今大臣から申しましたように、四円二十五銭程度です。ただし、四十五年ぐらいになりますれば三円ぐらいには下がるのじゃないか、これは非常にむずかしい問題でありますが、大体そういうような予想をいたしております。
  57. 田中武夫

    田中(武)委員 これ以上議論をいたしませんが、私は大臣と同じことを言っておるのです。だからこそ公営でいかなくてはいかぬじゃないか、こういうのが私の意見なんです。だからここはこの程度にしておきたいと思います。近藤長官、どうも御苦労さんでございました。  そこで宮沢長官ですが、あなたは先ほど外資にたよらざるを得ないのはあに電力だけではない、日本の企業のすべてがそうである、こういう発言をせられておる。
  58. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 外部資本です。
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 外資じゃなしに外部資本と言ったのですか。——それからもう一つは、外資にはひもがつくというが、それはいわゆる貸付の条件であって、今まで電気にそういったじゃまになるようなことはついていない、こういうことですが、いつまでもそうであるとは言い切れないし、現にひもつき融資を受けたために石油が今困っておるのと違いますか。一つエネルギーの大きなもとである石油が、政府がめんどうを見なかったために、ともかく外資あるいは外国系の資本を入れた結果が今日のような状態で、現在石油業界が困っておるのと違いますか。またそれに対して政府は前国会で石油業法を作ったが、それがうまくいかぬので困っておるのと違いますか。そういう観点に立って、電力会社が外国資本にそうたよっていくということについては、私は問題があると思うのです。外部というのは自己資本以外という意味だろうが、先ほど来言っているように、国内における自己資本以外のいわゆる社会資本といいますか、民間資本といいますか、これを調達する上においては、もうある程度の限界が来ておるのじゃないか。四千億ないし五千億が毎年要るというのでしょう。そうするとやはり国がめんどうを見ねばいかぬ、こういうことになる。そこで、いっそ国がめんどうを見るならば、公営にしてしまったらどうか、こういうことが私の議論なんです。そこで私がそう言ったからといって、別に改める必要もないと思うのです。たとえば、日立とか東芝といったような、こういう会社公営にしようと言っているのじゃないのですよ。こういう会社は、少なくとも自由競争の中にあって、企業努力で今日の大をなしてきたのです。ところが現在の電力会社はどうなんですか。先ほど話がありましたように、占領下強い力によって九つに分けられた。そして地域独占の上に立って、この独占のあぐらの上に立って、国の保護、国民の血税によって大きくなってきたのです。この電力会社をそのような状態でほっておくのはよくないのではないか、こう言っているのです。いかがでしょう。
  60. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 社会主義でない国においても電力を国営にしておる国は確かにございますから、御質問もそのような意味には私も別段とっておりません。ただ、先ほど申しましたように、いずれにしても、国民経済全体のどこかから金が出るわけでございますから、そのこと自身は企業の所有権の形態自身とは直接に関係がない、現在のような状況にあれば、これは私企業で十分やっていける、こういうふうに私は思うのであります。
  61. 田中武夫

    田中(武)委員 私企業でやっていけると思うのであります。いやそれはだめだと言ったところで、これは水かけ論ですから、法律の条文をつきつけるようにいきませんので、やめておきます。  そこで、次にお伺いしたいのは、石炭問題で通産大臣もいろいろと御苦労なさっておることについては、われわれも敬意を表しております。しかし、エネルギー懇談会が石炭対策の一つとして考えたいわゆる産炭地発電、これも結局は九電力会社という関係において実現できないのと違いますか。少なくとも産炭地発電ということをやるならば、それが電力再々編成の橋頭堡になることを電力会社はおそれておる。ここに電力会社のエゴイズムがある。石炭対策の上からもその他のエネルギー源、先ほど原子力発電のことを言いましたが、石油その他のものとあわせても、今のままじゃいけないということは結論として出ると思うのですが、いかがでしょうか。もう一つ、さらに技術の発展は今までは最高二十七万五千ボルトでしたかの送電線、ところがもう今日では四十万ボルトの超高圧線で全国をつなぐことも可能なんです。そうするなら、産炭地発電ということによって石炭問題と電気問題を一度に解決していくという手はあるんですよ。それをじゃまをしておるのは現在の九つ分割制にある電力業界であります。そう思っておりますが、どうでしょうか。
  62. 福田一

    福田国務大臣 お説のごとく、石炭を電力にかえていくというものの考え方で石炭問題を解決するという構想については、一つのりっぱなお考えであると私は考えております。ただし、これをやります場合に、産炭地においてこれをやったがいいか、あるいは荷揚げをいたしましたところでやったがいいかということにつきましては、これは経済の問題でございますから、それぞれの場合においてまず研究をいたさなければならないと思います。今までのあれでは荷揚地の方が安い。お説のように、四十万キロの送電線というものをつくるということは可能になりました。しかし、それをつくると経費が非常によけいかかります。そこで、むしろ荷揚地でやった方がいいという結論も出ております。しかし、それは問題によるのでありまして、お説の通り、たとえば九州が産炭地ですから、九州で非常に電力需用がふえるという見込みでありますならば、九州におきまして火力発電をどんどんやってやるということは可能でございましょう。そしてまた送電が可能であるという限度においてはやれると思うのであります。こういうことでございまして、もちろん電力会社がこれについてどういう考えを持っておるかまだ聞いてはおりませんけれども、しかし、やはり電気というものはいわゆる公共性を持った事業でございますから、そんなことについて電気事業者がそれほど頭がかたいとも私は思っておりません。私はそういうふうな感じです。従って、その問題が非常に無理だというふうには今のところ私は考えておりませんが、いずれにいたしましても、お説のように、石炭問題については、これは相当研究をすべき問題ということについては同じような考えを持っておるわけでございます。
  63. 田中武夫

    田中(武)委員 石炭の問題もさることながら、すべてのエネルギー対策という上からいっても、電力再々編成といいますか、電力の今のあり方、これは検討の時期に来ている、私はそう思うし、そのことについては大臣も異論がないと思うのですが、どうですか。
  64. 福田一

    福田国務大臣 いろいろの考えてみるべき問題があるということについては、私は同意見でございます。
  65. 田中武夫

    田中(武)委員 次に、電気料金のことでちょっとお伺いしたいのですが、前に電気料金制度審議会ですか、こういうのが答申を出しています。これがまず一番に掲げているのが原価主義を貫くということです。そういうところから今まで九州、東京、東北と、こう値上げ申請が出てきたわけなんです。そこで、通産大臣及び宮澤長官は、電気料金あり方、これが原価主義、こういう上に立って行なうのがいいのか、それとも政策料金といいますか、そういうようなものをきめていくのがいいのか。これはまた土台として私企業公営かということにつながってくるわけですが、そういう電気料金あり方、これは理論としてどう考えられるかということ。  もう一つは、かりに原価主義の上に立って九州なり東京なり、そして今度東北申請してきているのです。ところが今腹の中もそうだろうと思うのですが、申請通りにやらない。しかし、ある程度上げなければいけないということで、中をとって、二つ足して二で割るというような中労委のあっせんのようなものが大てい出るのです。ほんとうに原価主義に立って、これでなければやっていけないということであるならば、半分の値上げを認められたということならば、経営は成り立たないはずなんです。実際はそうではなくて、削られることを覚悟の上でサバを読んで出してきておる、こういう考え方も成り立つのです。電気料金あり方、過去並びに今問題になっておる電力料金申請との関係においてどう考えられますか、お伺いいたします。
  66. 福田一

    福田国務大臣 電力料金を、今仰せになりましたように、私企業立場で原価主義でいくべきかどうかというお話でありますが、これは一応私企業立場といいますか、独立採算制ということを基準にして九分割がなされております以上は、現在の形においては、私はやはり原価主義ということを貫かざるを得ないと思います。しかしながら、一方において電気というものが非常な公共的な要素を多分に持っておるという面から考えてみますと、それだけでやっていいかどうかという問題が当然出てくるわけであります。お説の通り、そこには若干の矛盾があり得るわけでありまして、そこら辺を勘案していくというところにまた一つの行政のうまみが出てくる、こう思うのです。私はいわゆる公共体に全部してしまった場合の欠陥というものも相当あろうかと思う。私企業にした場合の長所も全然ないとは言えないと思います。そこら辺を言うと、今の姿はある意味で調和さしておるというような形で一応こういう姿になったのですが、しかし、その場合において公益事業令というものがはたしてそれに当てはまっているかどうかということになりますと、ここにまた問題が出てくるので、これはあなたの御質問なさるお気持も私たちはよくわかるのであります。しかし、今現実の姿というものを基準にして考えてみますと、やはり公共性のあることも考えてわれわれとしては措置していく面がある、こういうふうに感じておるわけであります。
  67. 田中武夫

    田中(武)委員 電気料金値上げ申請がサバを読んでおりはせぬか。
  68. 福田一

    福田国務大臣 さあ、これは調査をいたした上でありませんと、今検討中でございますので、調査をした上でお答えをさせていただきたいと思います。
  69. 田中武夫

    田中(武)委員 これは大臣と私とは立っておる立場が違うのです。出発点が違うから、電力料金の問題になっても最後は食い違ってくる。しかし、電力料金一つ考えても、現在九つに分かれておるということは地域差がある、そういうところからやはり一方では良質の電気を安く供給できる会社がある、ますます優位に立ってもうかる会社もある、一方ではそうでないのがある、そこに値上げの問題が出てくる。そうすると、値上げをしなければほんとうにやっていけないのなら、それを出して出てこなければ——社長がやめたらいいのです。それを半分くらいは聞いてもらえると思ってサバを読んで出してくるのは事実ですね。そうでなければ、九州電力も東京電力もあれがぎりぎりならやっていけないはずなんです。こう考えてくると、ずばり言うと、一人の社長でいいものを九人の社長を置いているという以外に、現在の九分割は何の意義もなくなる。そして、こういう問題をカムフラージュするために、三十三年からですか、電力界で広域運営というのをやっている。ある程度有無相通じておる。これがなかなか大へんです。ということは、この九つ電力会社がやはり地域独占の上に立っておって、自分たちの持っておる既得権、送電線を固守しておるところにほんとうの広域運営はできない。たとえば関電と中部電力一緒に使うという御母衣幹線ですか、これなんかでも電発を入れて三つ、この三社がそれぞれ違う別個の名前をつけておる。こういうような姿なり、九つを土台にして広域運営をやって有無相通ずるのかということも、これは限界がある。こうなってくると、私はもう割り切る時期じゃなかろうか、こう思っております。これ以上答弁を求めても同じことになろうと思うので、そういう観点から公営、社会化ということについては第二義といたしましても、一元的運営ということは考えねばならぬときが来ておる。あるいは松永構想たる四ブロック制というのがあるようです。私はこれも聞きませんが、宮沢さんが東京と東北一緒になってはどうかという意味発言をしたのは、松永さんの発言と相通ずるものがあるのじゃないですか。まあそういうことは一々聞かぬことにしましょう。  そこで最後に、先ほど大臣も言われたが、この電気の法律です。これは私が今まで何回もこの委員会でやっておるし、大臣も御承知でしょうから一々あげませんが、ともかく一回または二回死んだ法律を二十七年の臨時措置法で生かしておるのです。そうして時代の先端を行く電気業界というか電気は一度または二度死んで、すべて上に旧がつくのです。旧公益事業令、旧電気事業編成令、旧電気事業法、こういうふうに旧がつくのです。これはもう何回も繰り返しておるからわかっておるので言いませんが、二十七年に臨時措置法を提出するときには、一年ぐらいの間に恒久立法をつくると言ってきた。それが十年そのままほうってあるのですよ。今ようやく四月になって電気事業審議会が発足した。実は佐藤さんとは次の通常国会に出すかどうかとうい議論をやったのです。そのときも電気事業審議会でもつくって云々ということを言っておりました。それがようやくことしの四月になって発足したということ、いわばもう二回も死んだのが臨時措置法で生き返ってうろうろしておるということは、ちょうど総理官邸に白昼幽霊がうろちょろしておるのと同じ状態なんです。こういう状態を早くなくさなければならぬ。早く言えば、十年間通産省は一体何をしておるのか、こう言うと、目下電気事業審議会において鋭意検討中でございますので、そのうち答申を得まして、こうくるんだろうと思うのですが、そんなことではだめですよ。これは電力再々編成の問題ともうらはらになると思うのです。従って、恒久立法、仮称新電気事業法の国会提出は一体いつになるのか、これと同じ時期に、いわゆるこの恒久立法をつくるためには再々編成というものに対する考え方もはっきりしなければ出てこないと思うのです。そういうようなこともあわせて、お二人の大臣の間で相談してもらってけっこうですから、一体いつごろに出せる予定か、はっきりしてもらいたいと思う。
  70. 福田一

    福田国務大臣 お答えを申し上げます。いい案ができればもう次の国会に出したい。今の見通しを言えと言われますと、一応審議会にかけておりますので、それを無視するというのもいかがかと思います。しかしほんとうにこれだというきめ手があれば、それを審議会にも諮ってやれると思いますが、一応の考え方としては、やはり次の次ぐらいに相なろうかと思うのであります。
  71. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると一年半ということになるのですが、佐藤さんも同じことを言ったんですよ。それが今まで来ておるのです。十年も何もせずに——いや、しておったのだとこう言うかもしれないけれども、実際は出てきていないんです。そうすると、通産省は何だか電気業界に弱いんじゃないか、弱味がある原因があるんじゃないかと勘ぐられますよ。だから今たまたま話題として大きく出てきたのですから、電力再々編成の問題と新電気事業法、これをあわせてほんとうに真剣に、これは通産省だけでなく、経済企画庁もあるいは全内閣の問題として取り上げてやってもらいたい、そう思います。  実は十二時までに終わりたい、それでなかったら仁義に反するので、そう思ったのですが、五分過ぎましたので、まだまだたくさんの質問したい点がありますが一応やめます。しかし、最後に一言言いますが、気を悪くしないでおってもらいたい。池田さようなら内閣、こう言われておるのです。池田さよなら内閣——これは何も私が言うておるのと違う。言った人はその辺にもおるのです。文芸春秋の九月号の座談会で与党の各派代表、若手のチャンピオンというのですか、大したことばない、この連中の座談会に出た言葉なんです。とにもかくにもさよなら内閣と言われておるこの内閣で、再々編成の問題に一つ大きな足跡を残してもらいたい、こういうように希望いたしまして終わります。
  72. 逢澤寛

    逢澤委員長 始関伊平君。
  73. 始関伊平

    始関委員 私は、私の立場から若干のお尋ねをしたいと思います。  料金値上げは、これは企業形態が悪いからだ、企業形態が変われば料金値上げはしなくてもいいのである、こういう考え方がもしあれば私は反対です。反対の論拠を私は申し上げたいと思います。新料金の計算は具体的な特定の電力企業というものを前提とするわけですから、私は料金というものを考える場合に、企業形態の問題を考えてみるというのは理由のないことじゃないと思います。いわば再編成が行なわれましてから十年あまりたったわけですから、この辺でもう一ぺん振り返ってみようというのは相当理由のあることだろうと思います。特にあの当時福田さんは自発解体の電力編成反対の一方の旗頭だったし、宮澤さんは当時の池田通産大臣一緒に司令部と折衝の衝に当たったと記憶しております。非常に古くから関係がおありだし、深い造詣がおありだから、いろいろお考えになるのはもっともだと思います。私は議論の出発点として、先ほど田中君などからもいろいろ批判があったのですが、電力編成というものによってでき上がった現在の九電力中心の電気事業の企業形態というものをどういうように考えておるかということを最初に伺いたい。私の考えでは、従前は申し上げるまでもございませんが、発送部門と電力部門とが分離しておったわけです。これを一元的に管理することになったのですから、企業としては初めて自主的な責任体制を確立できた、これが電力事業の健全化あるいは合理化に相当資してきたと思います。私も記憶しておるのですが、日発当時は送電ロスが多過ぎるというので非常にやかましかったのですが、当時はどうしても直らない。最近はこういう問題も解決していると思います。元の場合は日発というものが中心になって、九つの配電会社がその下にぶら上がって、これは全体として一種のプール計算をやっていたわけです。ですから、たとえば配電会社が合理化をやる、配電コストの切り下げをやるということになりますと、今度は日発の卸売料金が役に立たなくなるという態勢だったのですから、これは責任のとりようがない。こういう情勢のもとで電産というものも非常に行き過ぎた労働運動をやっておったが、責任体制の確立と一緒電気産業労働者の労働運動というものはきわめて常識的な、現実的なものになってきた、こう思います。それから電気開発の問題ですが、これも日発という一人の手でやるより九人の手でやる。その後電発というものもできて、これは特に大きな電源開発なんかはこれでやっておるわけですが、一人でやっておったところを十人でやる。それから資金の調達ができないというお話ですが、それぞれの地方で、たとえば米の代金から電力会社に出資してもらって、増資新株を引き受けてもらうというようなこともやっておるようで、やはり資金の調達という面でも相当効果があった。結局私は今日の非常に急激に増大する電力需用に追いつけていけたというのは、やはり私は今の運営形態の方が少なくとも日発当時よりはよかったと思います。それから当時料金の地域差ができるということが一つの難点であったわけですが、これは最近ではむしろ料金が非常に接近して参りました。東北電力の問題も、むしろ地域差があるという問題ではなくて、地域差がなくなってしまうということの問題なんですね。従来と逆になってきたと思います。そこで、この点は両大臣、特に東北電力と東電との合併を考えてみたらどうかということを提唱された宮沢企画庁長官にお尋ねしたいのですが、あなたは一体現在の電力企業形態のどんな点に一番大きな欠点があるとお考えになったか、どういう構想で再編成の方向をきめていこうとしていらっしゃるか、これをちょっとお尋ねしたいと思います。
  74. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 東京と東北の合併を提唱したというのではございませんで、これは先ほど申し上げましたが、その点だけ要約して簡単に申し上げます。所管の通産大臣がおられますので、私の申し上げることは、ある意味で、一人のあまりくろうとでない者の意見ぐらいの値打しかないかもしれませんが、やはり基本的には最近大火力というものが可能になって、熱効率も昔に比べると非常によくなった。それからハイ・ボルテージにより、送電、配電によるロスも昔に比べると非常に小さくなってきたというところまでは事実だと思うのであります。そこで、そういう基本的な一つの違いが十年前と比べてあるのではないか。それから、たまたま東京と東北のお話が出ましたが、東北がそういう意味で非常に恵まれない不幸な地位にある地域であると考えますのは、やはり需用者の構成が非常によくない。ことに人家がまばらであるというところから、配電のコストというものはずいぶんかかると思います。そういう観点から見ますと、北陸などに比べて送配電線が四倍くらいあるのじゃないかと思います。それに対して、東京の場合には、こういう地区でございますので、人家が密集をいたしております。そうして、具体的には、夕刻時のピークに相当多くの電力が要る。東京はピーク時の電力を必要といたしますし、東北はむしろアワーを必要とするといったようなことから公域運営の必要ということがいわれるのだと思いますが、東北の場合には、そういう観点から見ますと、需用者の構成が非常に片寄っておるといったような点もあるのじゃないかと考えております。
  75. 始関伊平

    始関委員 先ほど田中君と板川君が現在の電力事業私企業であるということについていろいろ論及されました。これは私の立場からもどうしても取り上げなければいかぬ問題ですが、先ほど宮澤さんは、私企業としてこれを適当に監督し助成してやっていきたい、こういうお話でございました。私はそれでよいと思うのですが、宮沢さんの御意見では、私企業ではだめだ、だから国民の意思として公営ないし国営に移せという意見も出てくるから、電力会社の特別な自重といいますか、あるいは努力といいますか、これを促す必要があるという御意見ですが、私は実はその点逆に考えておりますので、御意見を伺いたいのです。旧日発は電力の国家管理、こういう考え方で、特殊会社です。ですから、相当長い期間料金の補給金というようなものを出されておったと思います。国の政策、あるいは今度東北の場合問題になっているような地域開発の要請、あるいは特殊な産業を助成する、こういったことから政策料金を押しつけるというようなことからいいますれば、旧日発のやり方が都合がよいにきまっている。私はむしろそういうことではなしに、全く違った私企業という建前をとっておるにかかわらず、その辺の考え方があいまいで、私企業であるにかかわらず国家管理時代の日発のような考えが頭にあって私企業に対して無理な要求をしている。これは今の宮澤さんの発言をつかまえて言うわけではありませんが、世間全般の空気はそうであると思う。東北地方からきている陳情あるいは東北の衆参両院議員なども言っておりますが、そういうのを見て、そういう感じを強くする。そういう中途半端ではいかぬと思う。私企業であれば補給金を出すこともできない、一割程度の配当はいたしますが……。ですから、かりに国が援助するといっても、国の援助にも限界があると思うのです。従って、私企業に対して政府が政策上の要請をするといいますか、無理を言うのもやはり限度がある。電力業者がコストが上がってやっていけないのに何のかのといっていつまでも押えておくということは不都合で、私企業として認めていくことに根本的に矛盾するのではなかろうかと思います。いろいろ勝手にやってよいとは申しませんけれども会社から申請があってそれが合理的だということになれば、少しぐらい反対があっても、責任大臣たる通産大臣としては急速に処理すべきである。そうでないと全くわけのわからぬことになると思いますが、大臣、いかがですか。
  76. 福田一

    福田国務大臣 お説は、私企業でありますから申請があればもうそのまま認めるのがよいのじゃないかというお話かと思うのです。しかし、私企業であるけれども電気というものは非常に公共性を持っておる事業であると思うのであります。従って、その面においては政府の政策としてやはり内容も十分検討する、また影響するところ等も考えていくことが穏当であろう、かように考えているわけでありまして、私企業という立場を貫いてすぐやれ、こうおっしゃっても、そこにいろいろ政治的な問題というものも加味して考えていいんじゃないか、われわれはそういう解釈のもとにただいまやっておるわけでございます。
  77. 板川正吾

    板川委員 その点で、質問者の了解を得て関連質問いたしますが、政府電力事業に対する認識不足、これが今、政府電気行政が混乱している一つの原因だろうと思う。一方において私企業だという。だからきょうの新聞等によると、電気事業者が、私企業政府が介入するのはけしからぬ、こう言う。私企業ならば値上げもどんどんしてやったらいいじゃないかという始関委員意見も出てくる。私企業だといっておって値上げもさせないというようなことは、どうも政府の行政に矛盾があるのじゃないかと思います。現在は私的な経営方式をとっておりますけれども、しかし公益事業としてやっておる。なぜ公益事業としてやっておるか。これはその料金を勝手に値上げしたり何かすると国民生活影響を及ぼすから、政府は私的経営はそのままにしておいて、認可事項としておる、こういう形だろうと思う。ところがわれわれの考え方はそうじゃない。電力の八割は電灯関係よりも電力関係です。産業にほとんど八割は使われておる。だから、これは国民生活という以上の国の基幹産業という性格を持つべきじゃないか。基幹産業という性格でこの電気事業というものを考えるべきじゃないか。   〔委員長退席、白浜委員長代理着席〕 八割は産業のために使われておるという現状ですから、某幹産業とするならば、電力を供給するということは、産業の維持発展に大きな基盤をなしておるのですから、これに対して政府がもっと強く干渉することも必要だ、同時に政府がこれに財政的、資金的、税制的な援助をすることも当然だ、なぜなら、これは国の経済全般の基幹産業であるから、こういう認識をすべきじゃないか。ところが政府は、私的企業だといいながら、消極的な統制の仕方しかしてない。こういう形をとっておるのはアメリカだけでしょう。どこの国でも電力はみな基幹産業として国家の干渉を強くし、国家統制下に置かれておるのです。今まで、戦後分割しておって、ばらばらに私的な経営方式でやった方がうまくいった、これは甘いものが好きか辛いものが好きか、その人の判断によるでしょう。世界の先進国家で、みんな戦後の経済発展をしました。経済発展をしました。経済発展している国が全部電力を私的企業でやっていないですね。アメリカ以外はやってない。そういう国でも経済発展しているのですよ。だから私は、分割したのがよかった、だからうまくいったとかいかないというのは、じゃ国家管理をしている、国営でやっているところがまずくいっているかといえば、まずくいってはいないです。だからそれは大した議論じゃないと思う。今後の電気事業の性格を考えた場合に、今までのように公益事業として私的な経営をそのまま生かしておいて、そして電気料金だけでチェックをする。政府の多少の発言権の場を持つ、こういう形では、これからの電力需要、電力開発、さらに将来原子力発電等を考えた場合には、今までの私的の経営形態じゃない方がいいのじゃないか、公益事業というよりも、基幹産業という認識の上に立って政府の政策を立てるべきじゃないか、私はこういう考え方を持っておるのです。その点は、政府電気事業の性格に対する認識というのがどうもあやふやじゃないか、こう思うのです。
  78. 福田一

    福田国務大臣 両先生の御質問お答えすることになるかと思うのですが、電気事業に対しましては、確かに私企業としていわゆる株式会社の形態をとらしておりますけれども、しかし地域独占ということを許しております。これは大へんな国家的な保護なのであります。しかも電気自体が、民間の人たちの生活の問題あるいはまた産業の問題に大きな影響がある以上は、独占形態を許しておる以上は、これを全然独立採算制とかあるいは私企業だけの立場で処理していくというのは問題であろうという感じで、実は先ほど来のことを申し上げておったわけであります。また一方、私がそういうことを言うておると、今の形態をそのまま認めるという形になって答弁するようにとられると非常に困るのでありますけれども、しかしながらまた、こういうふうに私企業にしたことによって、たとえば自分の会社を何とかよくしていこうとか、あるいは会社経営も責任を持ってやっていこう、あるいはうちはよそよりは発電を大いにやったのだ、あるいはまた新式の火力発電もどんどんやったのだというような、いわゆる企業意欲を大いに奨励したというかそういうものが出ておることも、事実個々の問題について見てかなりあったように私は考えておるわけでございます。そこら辺をどういうふうに調和していくかというところに今後の電力編成の問題があろうかと私は考えておるのでありまして、お二人の意見にどっちにも全部賛成申し上げてなにするというわけにはいかないと思います。
  79. 始関伊平

    始関委員 福田大臣のお話、よくわかるのです。私も、公益事業として監督を受けているのだから、そうむやみやたらと勝手に値上げを認めていいとは言ってない。ただ私企業であるという根本の建前と著しく背反するような押え方をするのは不適当だ、こう申し上げておるのです。大臣、大へんいい論点にお立ちになりましたから、私も一つ申し上げたいのです。それは地域独占と供給義務の関係がある。私は、今度の場合、事情をよく知りませんが、東北電力で一番困っておりますのは、アルミとかフェロアロイとか、電気を動力として使うのではなくて、電気を原料として使う産業、この問題が一番です。  そこでその問題について申し上げたいのですが、大臣承知通り、一定の地域独占が許されておる。これに見合って料金なんかの監督があるんだと大臣はおっしゃいましたが、それもそうでしょうが、私は、地域独占というものに見合う一番大きな問題は供給責任、供給義務という問題だと思う。この問題にメスを入れないと、今後の問題は片づかない。地域独占と供給義務とは見合って当然だというふうに考えられておるのでありますけれども、私はここに大きな問題があると思う。家庭用電力あるいはパワーとして使う産業用電力、こういうものは地域独占ですね。それから供給義務、この原則でいかなければならぬと思いますが、しかし、さっき申し上げたようなアルミ、フェロアロイあるいは化学肥料のように電力の多量消費産業、こういうものは、地域独占の中に含め、従って供給責任の中に含めるということが、そもそも私は無理だろうと思います。なぜかとい、いますと、東北電力で問題になっておるのは——私はよく知りませんが、電気が安いからということで方々から呼んできた。ところがだんだん上がってしまった。その場合に、私は通産の事務当局にも伺いたいのですが、電力一般的に値上げする場合に、ある特定の用途のものだけはもとのままに据え置くというやり方があるのかどうか。これはおそらく公平の原則から非常に困難だと思う。そこで、そこからくる私の結論は、電力というもの、しかも量だけではなしに、一定の料金水準での電力の供給がその産業の存立の不可分の前提になるんだ、こういうものがありますね。しかもそれが一般電力会社の供給にまかしておいたのでは一あとで申し上げますが、電力料金は上がる要素が大きいと見ておりますが、だんだん上がってくる。根本的に矛盾するわけですね。そこで自家発電あるいは共同火力のような自家発電、こういう場合には新鋭の重油専焼火力を認めてもいいのではないか。あるいは昔東北地方でありましたように、東北振興電力といったような国策会社をつくる。場合によっては、現在の電発ですね、電発は水系別の原価でやっておるようですから、電発式でやるということも考えられる。宮澤さんは、東京電力との合併を提唱したのではなくて、研究しているというふうにおっしゃったわけですが、そういうような方向にいってもあまり実益はない。私は、多少のスピードの違いはあっても、東京電力の方でもまだ値上げの要因が大きいと見ておりますが、それはあと議論したいと思いますが、そういう方向を考えますと、どうしても料金が上って困るような特殊な産業に対しては、地域独占の原則からはずして、従って供給責任からはずして、自分でおやりなさい、こうやるのが一番いい。電力会社がそれに対して文句を言うはずはない。また値上げをするたびに文句ばかり言う業者は自分でやってみたらいいと思う。そこにむずかしい問題の解決策を求むべきであって、東京電力との合併というのはいささか方向が違うのではなかろうか、こう思っておりますので、この点両大臣の御見解を、簡単でけっこうですからお尋ねしたい。  もう一つ、これは特に宮澤さんにお尋ねしたいのですが、今日の段階では、安い電力というものを売り買いして東北地方の振興をはかろうという時代は過ぎた、これは根本的に間違いじゃないか、東北の振興は賛成ですが、もっと違った観点からやるべきじゃないかと思いますが、その点もあわせて御答弁願いたいと思います。
  80. 福田一

    福田国務大臣 お説のいわゆる自家発、特に電気を原料としてよけい使うような産業について自家発を認める、そしてその区域内における独占という原則をその意味で例外をつくってはどうかというのも一つの研究すべき課題だと思っております。それからまたそういう場合において、あるいは電発等を通じて電源開発をやらせるという形においてあまりその地域の電気料金に響かせないような工夫を考える、これも一つ考え方であろうと私は思っております。こういうことは今後いわゆる再々編成といいますか、あるいはまた事業令の改正というようなときに当然考えてしかるべきことであると私は考えておるわけでございます。それからそういうこともございますけれども、これは私への御質問ではないと思いますが、それでは四分割とか五分割というのはメリットがないじゃないかということになると、私は四分割にも五分割にもまた一つのメリットがあろうかと思っておるわけでございます。しかし、それをどういうふうにしたらいいかということについては私ども一つも結論を出しておらない、あらゆる観点から見て研究をさせていただきたい、こういうふうにお答えを申し上げておるわけでございます。
  81. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前段につきましては通産大臣の言われた通り考えます。  それから後段の最後の部分でございますが、確かに水力というものは経済的なものはもう開発をし終わって火力に移っていかなければならないというときに、東北電力が安いという利点はだんだんなくなっていくことは事実であると思います。ただ現存しております各企業が、電力が将来とも安いであろうと申しますか、当時少なくとも安かったという事実の上に操業を始めまして、その採算というものが今日狂ってきた。政府東北振興の意味からそういう企業が東北に行くことを実際問題として推進してきたような事情もございますし、また東北が依然として低開発地域であることも現在事実でございますから、そういう点も考えていかなければならないと思っております。
  82. 始関伊平

    始関委員 それは先の問題ですし、ゆっくりお話を聞く機会もあると思いますが、十年前国会電力編成の問題を議論したときに、あれは過度経済力集中排除という建前でやった。ところが東電という非常にでかい会社ができた。発送電と配電が一つになりましてこういう会社をつくって、どうしてこれが過度経済力集中排除になるのかという議論も出た。従って、東京電力をこれ以上ふやすということについても伺いたいのですが、あと回しにして、最後に問題のポイントのようなことを一点だけ伺って、両大臣ともお急ぎのようですから、きょうはやめておきたいと思います。  それはこういうことなんです。電力料金を構成する要素のうち、たとえば燃料費がだんだん下がっていくという傾向がございますね。私は石炭や重油が下がることは、別の意味から問題があって、必ずしも望ましくないと思っておりますが、とにかく燃料費が下がる。それから設備機械がだんだん近代化して大型になると、キロワット当たりの建設費が下がるという一般の傾向がある。日本でも下がっておる格好ですが、そういったように値下げに働く要因があります一方、値上げに響く要因もあるわけです。値上げに響く要因というのは何かというと、一番顕著なものは水力、火力を問わず、昔からあって建設費が安くついている、従って発電コストの安い施設と、最近につくって発電コストが高くつく施設との比重ですね、それが一番大きな原因だと私は了解しております。たとえば新旧のそういう率が三〇対七〇になれば上がらざるを得ない。この点は東北電力にしても東電にしても、これはコストが高くつくにしても、新しい発電施設というものを操業せざるを得ないと思う。従って、東北電力の方にも東電の方にもそれぞれまだ値上げの要因があると思う。これはひまがあれば事務当局に聞きたいが、しまいに古い設備の方の比重が一割とか一割五分という問題になるところまで下がってくれば、そこからあとは、一般物価のはね返りがない以上は同じだということがいえるかと思いますが、まだそこまでいってなくて、東北電力のままでいこう、東京電力のままでいこう、あるいは一緒にしてみたところでやはり上がる傾向は否定できない。これは社会党の諸君が言うように、国営にしても同じだ。ただ一つのやり方は、ソ連から河合さんが帰って報告しておりますが、償却は一切必要でない、金利も要らないという極端な立場をとれば別ですが、イギリスのやっておりますような国営では同じだ。企業の形態は必ずしも原因がないので、そういう高くつく電力、発電設備との比重がだんだん上がっていかざるを得ない、そこに根本の原因がある。その点は、東北だけでいく場合と、東京電力だけでいく場合と、両方一緒にした場合では、多少スピードに違いが出てくる。東北がかりに五年持つといったところで、一緒にしたら五年半も持つ。東電の方は六年も持つと思ったら五年半になったということで、東北は得をするけれども東京は損をする、そういうことになると私は思う。電力料金を安定させるという立場から合併を考えるということは、あの程度の利益と申しますか、メリットがあるということは認めざるを得ないと思いますけれども、しかしそれだからといって古い設備と新しい設備との比重がだんだん違っていくという前提に立つ限り、根本的な解決にはならないと思っておりますが、この点いかがですか。
  83. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま御指摘になったことは、東北電力の場合に特にそうでありまして、昭和三十二年に、東北では、火力によるところの発電電力量三百万キロワットでありましたが、三十七年には四百億キロワットでありまして、倍率にいたしまして千倍で、これは明らかに資本費の増加ということであると思います。のみならず、東北もそうでありますが、多くの電力会社は修繕費を十分に計上しておりませんし、償却にいたしましても定額でぜいぜい一〇〇%、いわゆる定率償却というようなものをいたしておらないというような状況でございますから、なおさら始関委員もおっしゃったようなことが顕著である。そういう傾向であると思います。御指摘のように、総理大臣も所信表明で申し上げましたが、経済が先進国型に移行する現在の何年かの経過的過程において、そういう新しい資本投下の資本費が消費者にはね返ってくる。この成長がある均衡点に達しました場合には、そういうことはなくなる筋合いのものだと思います。何年かの経過的な現象とは考えますので財政なり税制なりがその間特段のことをしてはどうかという考え方が生まれてきておるわけであります。大体おっしゃいましたことは、私もそのように考えております。従って、東京と東北がかりに一緒になれば目先それでことがよくなるかといえば、目先よくなるというふうには必ずしも私ども考えておらない。そのことはおっしゃる通りだと思います。
  84. 始関伊平

    始関委員 最後にちょっと希望を申し上げます。  日本経済の高度成長でいろいろな産業が繁栄を競っておるわけですが、ただこの中で非常に気の毒な産業がある。石炭が一番だと思います。これはエネルギー革命の影響だということですね。エネルギー革命で石炭を打ち負かす立場にある石油はどうかというと、これまた御承知通り非常な窮境にあるわけです。これは過当競争でいくのですから、自業自得でしょう。それから電力会社というのは、石炭と石油と見比べて、両方はかりにかけてこれを買いたたくということで、なかなか手ごわい相手だと思いますが、この電力会社そのものもまた御承知通り非常な窮境にある。言葉をかえて言いますと、日本の産業の発展というのは資源産業、エネルギー産業を犠牲にして、その基礎の上に成り立っておるというふうに言っても過言ではないと思うのです。これは私が申すまでもなく、そういういびつな産業政策をやるのは間違いで、長く続かない。いろいろな弊害が起こると思いますので、この辺は特に今後一つ深甚なる、また有力なる御配慮を各立にお願いいたしまして、私の質問を終わりといたします。
  85. 白浜仁吉

    ○白浜委員長理代 次回は明後九月二日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十二分散会