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1962-11-10 第41回国会 衆議院 社会労働委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年十一月十日(土曜日)    午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 秋田 大助君    理事 小沢 辰男君 理事 齋藤 邦吉君    理事 柳谷清三郎君 理事 小林  進君    理事 五島 虎雄君       生田 宏一君    倉石 忠雄君       佐伯 宗義君    田中 正巳君       中野 四郎君    松田 鐵藏君       松山千惠子君    米田 吉盛君       赤松  勇君    淺沼 享子君       河野  正君    島本 虎三君       田邊  誠君    滝井 義高君       吉村 吉雄君  出席国務大臣         労 働 大 臣 大橋 武夫君  委員外出席者         防衛施設庁長官 林  一夫君         防衛庁事務官         (防衛施設庁労         務部長)    沼尻 元一君         労働事務官         (労政局長)  堀  秀夫君         労働事務官         (職業安定局         長)      三治 重信君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  和田 勝美君         参  考  人         (一橋大学教         授)      山中篤太郎君         参  考  人         (立教大学教         授)      大内 經雄君         参  考  人         (大阪市立大学         教授)     近藤 文二君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 十一月一日  委員赤松勇辞任につき、その補欠として矢尾  喜三郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員矢尾喜三郎辞任につき、その補欠として  赤松勇君が議長指名委員に選任された。 同月九日  委員大原亨辞任につき、その補欠として堂森  芳夫君が議長指名委員に選任された。 同日  委員堂森芳夫辞任につき、その補欠として大  原亨君が議長指名委員に選任された。 同月十日  委員渡海元三郎辞任につき、その補欠として  松山千惠子君が議長指名委員に選任された。 同日  委員松山千惠子辞任につき、その補欠として  渡海元三郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件(失業対策に関  する問題及び駐留軍労務者に関する問題等)      ————◇—————
  2. 秋田大助

    秋田委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  本日は、失業対策問題調査研究報告に関する問題について、参考人として一橋大学教授山中篤太郎君、立教大学教授大内經雄君及び大阪市立大学教授近藤文二君の方々に御出席をいただいております。  参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  参考人には、御多忙のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本問題につきましては、各方面に広く関心が持たれておりますが、当委員会におきましても、この機会に、本問題の調査研究に当たられましたあなた方から忌憚のない御意見を伺い、調査参考といたしたいと存じます。  なお、議事規則の定めるところによりまして、参考人が発言なさいます際には委員長の許可を得ていただくことになっております。また、参考人方々委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、以上お含みおきを願いたいと存じます。  それでは、まず山中参考人より簡単に御意見をお述べ願いたいと存じます。山中参考人
  3. 山中篤太郎

    山中参考人 お指図によりまして、簡単に、私ども研究会でいたしました仕事につきまして御説明申し上げたいと存じます。  最初に申し上げたいと思いますことは、私ども研究会は法律に基づく審議会等とは違いまして、学界の研究者の集まりでございまして、当初、先般なくなりました藤林慶大教授メンバーに入っておったのですが、病気で参加できなくなりました。私のほかに江幡清大内經雄大河内一男近藤文二の四人の方が御一緒研究に従事したわけであります。そのほかに、専門的メンバーとしまして一橋大学教授石田忠君にも参加を願ったわけでございます。従いまして、通常審議会のように、会を代表いたします代表者というようなものはございませんで、私も、ただいま便宜上だれか一人が説明しなければなりませんので、簡単に説明の衝に当たらせていただいておるという形でございますので、これもお含みを願いたいと存じます。  それから、私どものいたしました仕事失業問題についての研究ということでございまして、私どもそれぞれ、みなかねてから多少やっております仕事もございまして、労働省の委嘱もございましたけれども、この夏を含みましての約数カ月の間だけしか時間の使用が不可能でございましたので、その間に研究するということで、広く失業問題についての分析をすることを取り上げたわけでございまして、ある特定の何か結論がありまして、それをどうしたらいいかということを取り上げる、あるいは委嘱されるということは当初からございませんでした。この点もお含みをいただきたいと存じます。  それから第三点といたしましては、失業問題の研究でございまして、いわゆる失対事業研究も含まれるわけでございますが、しかしそれは、失業問題の研究の中で出てくるという形で失対問題の研究をいたしたわけでございまして、そのような意味合いからいたしまして、できるだけ具体的に、現在の日本失業の問題が現実にどうなっているであろうかということの調査現実の把握ということを中心にいたしました。従いまして、短い時間でございましたが、私どものグループの研究仕事通常のほとんどすべての部分というのは、事実の調査に費やされました。従いまして、それは報告書といたしましても、正式の研究報告というもののほかに参考資料を別に添えてございまして、その参考資料部分が、実を申しますと私どもとしましては大へんに大事な部分を占めるわけでございまして、私どもが把握することのできました事実を基礎にいたしまして、その中からおのずから比較的簡単にまとめてございます調査報告というものの結論が出てきたという形を持っております。印刷が別々になっておりますので、多少その点お見にくいかとも存じますけれども、私どもとしましては、その参考資料の方が非常に大事な立論根拠になるのでありまして、そういうものは別につくりましたので、一々これを本報告と申しますか、短くまとめました方には引用してございませんけれども、その立論根拠は全部そちらにあるわけでありますので、これを一体としてごらんいただきたい、こういうふうに存ずるわけであります。  それから、もう一つ御了承いただきたいと思います点がございますが、それは、繰り返しますように失業問題の研究でございまして、要するに、働く力も意思もあるわけでありますが、残念ながら通常職場に、職安等のあっせんを通じましても就労できない失業者を、どういうふうにして近代の社会経済政策の中で取り扱ったらいいかということが中心問題対象になるわけでございまして、その意味で、私ども研究は、現在の日本失業問題全体ということを取り扱わなければならないわけでございます。ただ、その日本の現在の失業対策のいろいろな仕組みの中で失対事業という、これは非常に特殊なものでございますが、とにかく全国で三十五万人、その家族にいたしますと大体百万人をこえると思われます方たちのために失対事業というものが行なわれておりますので、つまりこの日本失業問題の非常に特殊な実態がその中に現われておりますので、これを分析するということを通じて全体の失業問題をうかがう、こういう手続をとることが実際的でもあり、一番手っとり早かったということがございますので、おのずから、事実上の結果といたしまして、失業問題全体の分析が私ども対象であったわけではございますが、それをながめます一つ手続として、失対というものを大へん重要に見たという結果になっておりますので、これも御了承を願いたいと思います。これは手続上の過程があったわけでございますが、いろいろの研究上の便宜もそのために出て参りましたことは、否定できないと存ずるわけであります。  大へん前置きが長くなったようでございますが、こういうような幾つかの前提の上で私ども仕事をいたしました。率直に申しますと、私どもはいずれも研究者でございますので、研究上の習性と申しますか、たといどのように些少なことでございましても、意見が一致しない場合は意見が一致しないと言うのが私どもの習慣であるわけであります。そういう意味で、この仕事が始まりましたときに、参加しました私一員として、おそらく最後結論というのは幾つかに分かれるのだろう、こういう予想を持っておりましたところが、ただいま申しましたように、五月ごろから始めまして九月の終わりに結論を出したわけでありますが、八月ごろまでは各地の実地の調査なりいろいろな資料の整理、それから聞き取りなり、いろいろな調査を行なったわけでありますが、その調査のデータを整理する、あるいはそれを集めるということが仕事の大部分でございましたので、その間、われわれの仕事の進め方としては、ほとんど意見というようなものは、どういうふうに対策を立てたらいいかということは全く触れずに仕事を進めて参ったわけであります。そして私ども、この仕事を始める前から、多少とも日本失業問題の実態その他につきましてそれぞれの立場から研究はしておったわけでありますが、最近の新しい事実というものは、もちろん十分まだ手元になかったわけであります。そういうものが、ただいま申しましたような調査過程でかなり蓄積されました。これを整理して最後に、ではどうしたらいいだろうかという話をする段階になりました際に、非常に私どもの予期に反しまして、かなり意見の一致がそこでおのずから生まれてきたわけです。それが結果として「失業対策問題調査研究報告」というものになりましたわけでございまして、ここでおのずから一種の、共同に到達した一つの見方と申しますか、それを簡単に申しますと、失業問題というものを取り上げた場合の重要な中心問題は、それは失業者に対して、働く場所をいかにして確保するかということに帰着するわけでございます。そういう点から見ますと、現在、ずいぶん前から、御承知のように職業安定行政というものがございます。それから特に最近のことを考えますと、世界的に行なわれております社会保障の一環でございますが、失業保険制度というものもある。それから沿革的には、それと相前後いたしまして、現在まで十数年続きました、いわゆる失業対策事業というものも行なわれておるわけであります。それからそのほかに、最近だいぶ熱心に取り上げられるようになりましたが、全体としてはやはり多少おそかったと思いますが、いわゆる職業訓練というものがつけ加えられてきておる。これが、ごく大ざっぱに申しまして、現在行なわれております失業者に対する働き場を与える与え方としての対応の仕方というふうに見ることができると思うわけであります。  これらのいろいろのやり方というものは、それぞれの特色がありますことは私があえてここで申し上げるまでもないと思いますが、その幾つかの方策の中で失対事業というのは、これは一番直接的に、働き場のない人に積極的に働く場所をつくり出して与えるというやり方を取り上げておるわけでございまして、それは失業保険とも違いますし、それから職業訓練とも一応は違いますし、もちろん政府のいわゆる一般職安行政とも違うわけでございます。この失対事業というのは、これも申し上げるまでもないことでございますけれども、いわゆる低賃金原則というものを取り上げまして、実際ここで働かれる方は、ただ通常職場での雇用がないので、しばらくここで働いて正当な雇用の場を発見する、こういう意味で、つまり外へ出ていくのが建前ということで、低賃金原則というものが制度上とられてきたわけであります。それからまた、就労したい方に就労させるという意味合いの上で、多少社会保障的な考え方、つまり救済的な考え方が初めから入りまして、それがいわゆる現行法できめております適格要件というものになりまして、単に失業者でなく、世帯の主たる担当者という要件がつきまして、それからまた、土木事業を一本でやる、そのほかのものはやらないということがつきましたり、いろいろの仕組みがそこについて今日まできたわけであります。ところが、実際上の効果を見ますと、これは報告書の中にございますので一々申し上げる必要もないと思いますけれども、いろいろと実際上の効果を生んでおることは否定できないのですけれども、それにもかかわらず、各種の批判がだいぶ最近は強まってきておるというのも事実でありまして、さらに、その当初の目的から申して、その営んでおります作用を見ます。どうもその作用の方についてもいろいろとその当初の目的にこたえ得ないような状態も生まれておる。特に失対の調査をいたしまして私どもとして非常に強く感じられましたことは、現在の失対就労者のうちの半分は前職雇用者の方ではないのであります。そして業主あるいは無業者の方が失対就労者の中に入る。そして残りの半分の前職雇用者の方を見ますと、その五〇%ほどの雇用者の中で、三〇%ぐらいしか失業保険受給者であったということもないのであります。つまりここには、日本の現在の労働市場のむずかしい特色と考えられますものが非常にはっきり出ている、こういうようなことを感じたわけでございまして、そういうようないろいろ複雑な事情を考え合わせますと、十数年前に始められましたシステムのそのままで推移し、しかも内容の性格がはっきりしておりませんでしたために、いろいろとまたあとから複雑した要素がくっついて参りまして、そのためにいろいろとやりにくい点、それから成果のうまく上がらない点も生まれておるのではないだろうか、こういうふうに考えたわけでございます。  そして現在の失対の就労者の中身の示します失業者層を見ますと、ごく一部分には——少数でございますけれども、一部には、私どもが考えましても、そういう方が土木事業屋外作業に従事しておるということは、これは人道的にもどうも看過し得ないのではないか。つまり身体障害者の方でございますとか、それから年令の非常に高い方、記録によりますと八十三才になる方が現在失対で働いておられるそうでございますが、もちろん元気でおやりになっているのだろうと思いますけれども、しかし、とにかく現在の日本社会保障制度が不十分でございますために、そういう方が、一体失対就労者として屋外土木作業に従事しなければ暮らしていけないという事情がありますようなことは、私どもとしましても、何とかこれはそうでない道をとるべきではないか、こういうふうにも思われる。そういう方も中にありますが、しかし非常に多くの方は一応就労の可能な方であり、それからまた、一部分の方は一般民間事業に従事いたしましても十分活動できる方が中に含まれておるのではないか、その割合は必ずしもはっきりいたしませんけれども、大多数は比較的にその技能は低うございますし、年令も高い方でございますが、しかし、とにかく一応御本人たちも働いてみずからの生計も立てたい、こういう希望を持っておられる方であります。ただ、そういう方たち通常職場がなかなか得られないというために、失対就労者として働いておられるということがかなりはっきりして参ったわけでございまして、そういう方たち中心にいたしまして、とにかく今までの実情から見ますと、外部へ出て常用化される方も相当ございますし、そういう希望をお持ちの方も決して少なくないわけでございますけれども、現在の通常労働市場状態でありましては、現在失対事業の中で発見されます非常に多くの部分失業者方たちには、やはり容易に雇用の場が発見できないのではないか。そこでこのような事実の指さします方向は、これらの人々のために、やはりある程度その就労の場というものを、救貧制度でなく、つくり出すべきではないか。現在の適格条件とかあるいは低率賃金原則というようなものはやはり不適当であって、そういうものを除きまして、そしてこの就労の場をつくり出す。現在、十年選手というふうな言葉で呼ばれておりますような方もすでに相当おるわけでございますので、そういう事実を率直に受け入れて、その失対事業を有効に行なうべきではないか。ただ土木事業だけに限りますことはいろいろの支障もございますので、これはやはり地方自治体自主性をできるだけ生かしまして、労働者能力を生かしますような配置、従いまして、その配置も考えまして個々の方の能力を十分生かして、ちょうどあの戦時中の護送船団のように、一番能力の悪い方に全部右へならえをさせられてしまうような状態が起こらないように、いろいろと工夫をしてやっていただくような道をこの際考えるべきではなかろうか。もちろん、そのためには国も財政的な援助を怠ることはできないであろう。地方自治体の方からもいろいろの御議論があるのでございますが、しかし、この失業の問題は国も取り上げなければなりませんけれども、やはり地方の、何と申しますか、社会がこれを取り上げて改善の責任をとらなければならない問題でございますので、そこはやはり積極的に問題に対面していっていただきたい、こういうふうに考えるわけであります。  ただ、御承知のように、たとえば北九州のように失業者が多発いたす地帯もございます。それらの地帯をその地域だけの責任において、あるいは主としてその地域がこれに立ち向かうというようなことは実際上できない面も相当ございますので、それらの特別な地域につきましては、もちろん他の地域とは違いまして、国が相当肩入れをしなければならないということは申すまでもないと思うのでございます。しかし、この失対就労者実情を通じまして私どもが痛感いたしますことは、失対事業だけで問題を解決するというようなことは、これは本来初めから無理なことでありまして、失業問題に対応いたしますためには、現在の職業安定行政というものを根本的に立て直す必要があるのではないかということも、一つども共通結論といたしました点であります。  それからもう一つは、先ほどもちょっと簡単に触れましたが、本来雇用者については強制加入というのが建前であるはずの失業保険というものが、失対に流入して参ります就労者の方の実情を調べますと、全数のうちの半分は無業者であったり、あるいは自営業者でございますから、本来失業保険にかからぬわけでありますが、せめて残りの半分が、全員失業保険にかかっておれば多少事情も違ってくると思われるにもかかわらず、そのうちのわずか三〇%、従いまして、失対就労者全数からいたしますと、一五%しか、失業保険というこの非常に合理的なものがあるのにその作用を受けていないという実情などは、私どもとしては、やはりどうしても看過するわけに参らなかった実情でございます。のみならず、失業保険だけでも、ただいま申しましたように失対就労者の層から理解されます失業者数の半分、つまり自営業者とか無業者、これらの方々には、失業保険というものすらも実はなかなか適応できないような層でございまして、そこに日本社会における雇用問題の基本的なむずかしさがあるというようなことを、やはり十分考えて対応していただきたい。  それからまた、私ども通常考え方からいたしますれば、これだけ高度に発達した日本社会であるとするなら、社会保障制度によって老後を一応曲がりなりにも過ごすことができる、あるいは身体障害者等の方で、働かないでも何とか済ませられるというような社会保障制度があるべきだと思うのでございますが、そういうものが不十分でございますために、失対就労者の中に、私どもがあることを予期しなかったような、そういう方が、少数ではございますけれども発見できるということは、これは失業保険を含めまして、日本社会保障制度が著しくやはり足りないところがあるのではないか、そういう点をそのままにしておいたのでは、この失業問題、もちろん、それからまた、その中の失業対策というようなものも十分にはできないということになるのではなかろうか。ことに一部の地方に参りますと、失対の賃金でも非常に自分たちにとっては割合に有利な賃金だというふうにおとりになる方があるので、これは日本のやはり最低賃金制度というものが、一般的に確立されてないということからくるのではなかろうかということも考えないわけには参らないのであります。  そのほか、全般といたしましては、完全雇用というものが日本では十分にまだ実現されていないのではないか。公の統計によりますと、いわゆる顕在失業者失業率というものは少なうございますけれども、しかし、やはりいろいろと問題が実際はあるのでありまして、そういう点につきまして、完全雇用、それから最低賃金制度の確立というようなことも、他方においては十分に行なっていただかなければならないのではなかろうか、こういうようなことを失対事業の周辺において発見いたしましたわけであります。  ただ、申し添えますけれども、たとえば社会保障制度問題等につきましては、幸い私ども研究仕事が行なわれておりましたときに、並行いたしまして社会保障制度審議会の方の詳しい答申も出ましたので、そういう方面の問題はもちろんそれらにこまかいことは譲りまして、あえて一々こまかくは触れないということを報告書ではいたしておきましたのですが、その問題の性質から申しますと、非常に関係が深いそれらのものと見合わせて、全体の日本失業問題の対策は立てられなければならないであろうし、失対事業というようなものもその中で考えられなければならないであろう、こういうようなことを、私ども仲間共通結論として取り出したわけでありますので、この報告書には、先ほど申しました、あらかじめお断わりしましたような点は特に取り上げませんでございました。それを主として簡単に、私ども仲間報告の御説明を申し上げたわけであります。  当初に申し上げましたように、私は代表ではございません。ただ、たまたま便宜上私から御説明申し上げたのでございますが、本日は、私ども関係しております学会が名古屋大学において今明日開かれておりまして、大河内さんはそちらの方へお出かけになって、きょうお見えいただけませんでしたけれどもあとお二人がここに私と一緒に来ていただいておりますので、どうぞ私だけでなく他の方のお考えをお聞きいただきたい、これをつけ加えさしていただきたいと思います。  なお、もう一つつけ加えさしていただきたいのでございますが、江幡委員は今、日本にはおりませんので、きょうはここに御一緒願うことができなかった、これも御了承願いたいと思います。  非常に簡単でありまして、もしまだ申し上げ足りない点がございましたならば、時間の範囲内で御説明申し上げさしていただきたいと思います。     —————————————
  4. 秋田大助

    秋田委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。吉村吉雄君。
  5. 吉村吉雄

    吉村委員 山中先生以下参考人方々には、非常に貴重な意見を拝聴いたしまして、ありがとうございます。この失業問題、特に今問題になっております失対事業をどうするかということについては、各方面から大へん注目をされておるわけでございまして、本委員会でも再三にわたって取り上げられておったわけでございます。この失対事業の中に、現在の就労者が非常に滞留をしておる、あるいは婦人が多くなったとか、あるいは能率が上がらないとか、いろいろ現象面ではたくさんの問題が指摘をされておるわけでございますけれども、失対事業の中に起こっておる幾つかの現象面だけを取り上げてみても、本質的な解決にはならないような気が私はいたすわけでございます。この失対事業の内部、あるいはその周辺に現われている諸問題というのは、日本が今日まで進んできたところの政治、経済、そういったものが縮図的にここに現われているというところに、非常に深刻にして重大な点がひそんでおるように私どもは考えておるわけでございますので、そういう点から考えて参りますと、この解決策というものについては、一体なぜ失対事業の中に就労者が滞留をしてしまったのか、あるいはまた、なぜ婦人の労働者が多くなってしまったのか、あるいは非能率だと言われることが事実だとするならば、その原因は一体どこにあるのか、こういったもっと根本的な問題を掘り下げていかなければ、本質的な解決にならないように考えるわけです。そのことは、私が言うまでもないと思いますけれども、盛んに経済成長ということが喧伝されておりますけれども、しかし中高年令者を含めて雇用状態は非常に悪い。改善されたものは年少の労働者雇用状態だけである。こういうことになりますから、従って私どもは、この失対問題については、失対事業をどうするかということと同時に、そこに日本全体の中高年令者の雇用問題をどうするかという問題が端的に含まれているのじゃないかというように考えられます。また、貿易が自由化になり、あるいは産業構造が変わっていく、こういう過程では当然に失業者が予見をされるという状態でございますから、こういう中でこの失対事業対策なり改善の方向をどうするかということは、今後の雇用問題あるいは経済政策、あるいは労働政策、こういったことについての政府の方向を示すものにもなろうかというふうに考えておりますので、特に当事者はもちろんでありますけれども、広く関心を持って見られている問題でございますので、私は以下各委員方々意見等をお聞きすると同時に、なお労働省の考え方もあわせて聞きながら今後の審議の参考にしていきたい、このように考えるわけでございます。  まず第一に、これからの審議にも非常に影響があると考えられますので、この点は前回あるいは前々回の本委員会でも少しく議論をされたわけでございますが、幸いに山中先生雇用審議会委員でもございますので、この雇用審議会研究調査会の関係について、少し疑問と考えられる点を明らかにしていきたいというふうに考えるわけです。御承知のように雇用審議会は、日本失業問題をどうするかということをやるために設置されたわけでございますけれども、今回の場合には、雇用審議会を飛び越えてといいますか、雇用審議会にかけられる以前に調査研究会の皆さん方に労働省が委嘱をして研究された、こういうことでございますが、この問題の扱い方は、私は大へん問題だというふうに思うわけです。なぜならば、雇用審議会の設置法には、明確に、失業問題はここで審議をし、あるいはその諮問に応じていくというふうにきめられており、しかもその中には専門委員会も設置をしてもいい、こういうふうに書いておるのでありますけれども、今回は先ほども申し上げたように、そこにかけられる以前に、労働省の中で独自の立場で調査研究会というものを発足させたわけでございます。このことは前回あるいは前々回の労働大臣あるいは事務当局の答弁によりますと、労働省の雇用審議会にかける原案を一つくるために知恵を拝借したのだという答弁の仕方が一つ、それからいま一つは、対大蔵省との関係で、予算を獲得するのに、有力なメンバー方々に参加を願った方が予算獲得上非常に都合がよいという趣旨の答弁が一つ、大体要約して二つの答弁があったように議事録には出ておるわけです。私はこの点は大へん問題だというふうに考えるわけですけれども、まず山中委員は幸いにして雇用審議会委員でもございますから、私としては、本来雇用審議会がやるべき仕事というものが、雇用審議会の中の特定のメンバー方々が、雇用審議会にかけられる原案を作成するにあたってこれに参画をするというふうな運営のあり方は、今後の各審議会の運営についても大へん問題を与えるのじゃないかという気がいたしますので、この点は一つ労働大臣の方からいま一度その経緯について説明をしてもらうと同時に、雇用審議会委員の山中委員としては、こういう運営のあり方についてどういうふうに考えられるかをまずお聞きしておきたいと思うわけです。
  6. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 労働省といたしましては、雇用審議会に諮るべき原案を作るために、この問題の実態調査研究するという立場で今まで取り扱って参った次第でございます。従いまして、この調査研究会と雇用審議会とは、メンバーは同じ方にお願いいたしておりますが、しかし、その原案につきましての立場は全然違ったものだというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  7. 山中篤太郎

    山中参考人 私の名前が出ましたので、一言申し上げさしていただきます。  私は、雇用審議会の方でこの問題をもし労働省の方で具体的にする場合には、当然審議をそちらへ持っていくのだということをあらかじめ聞いて、これをお引き受けいたしました。というのは、私ども研究者の立場にあるものですから、私どもが多少研究をする。労働省は労働省の案をもとにしていろいろ考えるわけでありましょうが、それが雇用審議会に出た場合に、またさらにそこで検討される。ですから、いきなり雇用審議会へ出て検討されるよりも、何べんでも検討の機会があった方がいいんじゃないかというような、研究室におります人間のような、しごく簡単な考え方でお引き受けをしましたようなわけでございまして、大蔵省の方に対する予算請求の便宜上、私どもが利用されると申しますか、何かそういうようなことがあったかなかったか、そういうことは全く存じません。
  8. 吉村吉雄

    吉村委員 私が雇用審議会調査研究会の関係というものを冒頭に問題にしますのは、憶測が過ぎるかどうかわかりませんけれども雇用審議会では、今まで失対事業の問題について数回にわたって意見具申あるいは答申を行なっているわけです。今問題になっております就労者が滞留しているとかいうことでも、急にこれは問題になったわけではないのです。昭和二十九年に、すでに就労者の固定化について雇用審議会が注意を喚起しておる。それから三十年には、もっと事業種目を拡大していかなければいかぬじゃないかという趣旨の意見を出しておるわけです。あるいはまた、一般就労に対しての道をもっと積極的に開くように考慮すべきだということも三十年に出しておりますし、三十一年、三十二年という工合に、再三にわたって雇用審議会の方から、失対事業ないしはその周辺に起こっている問題について意見具申あるいは答申が行なわれておるわけです。ところが、これらが今日大へん問題になっているかのごとくいわれて、何とかしなければならないといっているのでありますけれども、その雇用審議会というものは、今日問題になるようなことを十年も前からいっておる。いっておるのにもかかわらず、これらについて適切な対策というものが立てられなかったから、今日このような事態になっているのではないか、こういうふうに私は考えるわけです。そうなってきますと、労働省が雇用審議会なり何なりの答申あるいは意見というものについて、実施できなかった理由なり原因なりというものはいろいろあろうかと思うのです。従って、労働省は労働省としての失対事業に対する改善策、対策というものを持っておったでありましょうけれども、それを実現するために雇用審議会からいろいろな意見があったのに、これをなかなか実行していなかったという経過からしますと、調査研究会という制度といいますか、調査研究会というものを新たに発足させたという趣旨は、そういった雇用審議会意見具申と異なったような対策を本来持っておって、そういうものを実現する手段として調査研究会というものを発足させたのではないかというふうに憶測されますし、この点について私としては非常に疑問を感じておったのでお尋ねをしたわけであります。こういうような経緯を考えてみますと、今日起こっておる失対事業の内部の問題については、いわば雇用審議会の今までの意見を採用しなかったという労働省のあり方、政府の対策、そういうところに根本的な原因がひそんでおるように考えられますけれども、この点は、一体労働省としてはどういうふうに考えられておりますか、お答えを願いたいと思います。
  9. 三治重信

    ○三治説明員 御指摘のように、この審議会からたくさん答申なり建議がなされておりまして、それぞれにつきまして、私の方としては、政府として最大の努力をしておったのですけれども、なかなかその成果が十分でなかった。従って、事業主体側からもいろいろ意見が出、そのほか関係方面からいろいろ出まして、雇用審議会からの答申、建議を、さらに労働省として具体的に、もっと根本的に思想と申しますか、対策を立て直す必要があるのではなかろうか。従って、われわれの方として、政策的な立場は別にして、従来の雇用審議会のいろいろの御意見の線に沿って、しかも具体的にどうしたらいいかという問題を役所としてやる必要がある。そのために、そういうことを客観的によく分析していただいて、問題点をさらに深くしていただくために調査研究会をつくったわけでありまして、その点、私どもの方は、別の対策を立てる、そっちにもっとほかのものを持ってくるというような考え方でしたわけではございません。  もう一度申し上げますが、雇用審議会のいろいろの御意見を、われわれの方としていろいろ努力をして参りました。たとえば、高度失対をやれということで特別臨就をやってみたのですが、しかしそれが、初めはうまくいきそうに見えたが、また途中でどうもうまくいかなかったというような問題、その他就労の現場の改善の対策についても、われわれの方としてはできる限りの手は打ったつもりでございます。非常な高度経済成長とともに、また失業者の質も問題になってくる、滞留の状態も問題になってきたということで、やはりそういう線に沿って、もっとわれわれ自身として根本的な問題と取り組む必要があるということで調査研究をお願いした、こういうことでございます。
  10. 吉村吉雄

    吉村委員 今、三治局長からの答弁にもありましたように、労働省としては、雇用審議会意見をできるだけ実現するためにやってきた、こういうお話でございます。しかし、先ほども例をあげて申し上げましたように、失対事業の内部で、今労働省あるいはその関係者が問題にしている諸点は、ほとんどといっていいくらい、雇用審議会意見の中にすでに含まれていたはずです。ですから、それらのことが今日までなかなか実現でき得なかった、もっと抜本的な対策ということで調査研究会にお願いをして、それで労働省の原案というものが今度できたようでありますけれども、それを現在雇用審議会の方にかけられている、こういう状態です。私はこの点から考えてみますと、今まで雇用審議会からの意見でなかなか実現でき得なかったことが、調査研究会という、そういう作業を経たことによって、それが実現に一歩近づいているという考え方をあなた方がとっているのかどうかということが疑問なんです。雇用審議会にかけられて、最終的には雇用審議会であなた方は事をやっていきたいというふうに言っておるわけですから……。今までは雇用審議会からも、同じような問題が再三にわたって警告的に意見が出されておる。それが実現できないで今日に至っておる、こういうことなんですから、それをさらに調査研究会にかけてやっていっても、正直言って、労働省としての考え方だけでこの問題は解決し得るという、そういう状態になっていないのではないか、ここに問題があるような気がするのですが、この点についての認識はどうですか。
  11. 三治重信

    ○三治説明員 失業問題は、おっしゃる通り労働省だけでなかなか解決できない問題でございますが、しかし、現実の失対事業は労働省の所管になっておりますので、これらの改善につきまして、今までは審議会の方からいろいろ御意見を出していただたいたわけですが、今度はわれわれの方も、それを具体的に自分たちの方でこうやってみたいというふうな案をつくって、そして御意見を伺った方がもっと前進になるのじゃないかということで今日に至ったわけでございます。
  12. 吉村吉雄

    吉村委員 それでは、今の問題について、再度ですけれども雇用審議会の有力メンバーの一人でありますところの山中先生にお伺いします。先ほど申し上げましたように、雇用審議会からはこの問題について再三にわたって意見が出されております。これらがどうも実現をしていかないというところから今日のような事態を招いているというふうに私は理解をするわけです。雇用審議会委員の一人であるところの山中先生は、こういう経緯についてどのようにお考えになっておられるか、一つお聞きしたいと思います。
  13. 山中篤太郎

    山中参考人 きょうはあまり雇用審議会関係なしに、研究会の方の御報告に伺いましたのですが、私がそちらの方に関係しておりますことも事実なので、沈黙を守るのも失礼だと思います。実は、大へんお勉強いただいておりますように、雇用審議会の方で今まで何回か失対事業に触れる答申が出ておりまして、私自身、実は何年前になりますか、その答申の原案になります小委員会の起草を、小委員会委員長としてやったのでございます。いろいろ政治上の問題は私はよくわかりませんけれども、今度私どもが失対事業だけをかりに取り上げてみます場合に、やはり従来の雇用審議会で触れなかったこともございますので、その点を一つ含み願えれば幸いだと思うのです。たとえば、現在の失対事業の中にありますいわゆる適格条件でありますとか、低率賃金原則というようなものは、雇用審議会では今までそれをよせという発言はなかったわけです。私ども仲間は、それはよした方がいいのではないかということを申しておるわけです。それから、これはぼつぼつ方々で行なわれておるようでございますが、これは私自身が関係したのでよく覚えております。失業者失業保険も切れるために、それからことに九州の炭鉱の離職者の方などを考えました場合に、どうしても必要だと思って失業手当——これは仮称でございますけれども、そういうものを——これは訓練手当とかなんとかとはまた違うものでございますが、そういうものをやはり制度としてつくるべきではないかということを考えたのでありましたが、雇用審議会で答申を三年ほど前につくりました際には、それをつくるべきだというところまで言い切れませんで、そういうことを検討すべきではないかと言っておったのであります。今度はもう踏み切りまして、待期手当という言葉を使いましたが、失業者の再訓練の場合に職業訓練というような名前を使いますけれども、そういう場合には待期手当というようなものをこの際つくるべきであるというところまで私ども意見は前進したわけであります。今まで雇用審議会でも、基礎調査に基づくなかなかりっぱな結論が出ております。それに加えました意見の前進が多少ともあり得たわけでございまして、それを御了承願えれば幸いじゃないかと思います。  なお、雇用審議会で現在労働省の諮問案が議論され、私も委員として末席に列して審議に加わっておりますが、もちろん私は、研究会で私どもの得ました現在までの結論をそこでも主張するつもりなのであります。労働省の案がどういうふうになりますか、これは労働省の考え方でありますが、この報告書に盛られております限りのことは、よほど新しい事態でも起こりまして考えを変えなければならぬということにでもならない限りは、さしあたっては私ども意見は別に変わらない。雇用審議会になりましても同じようなことを主張いたしたいと個人としては考えておるわけであります。
  14. 吉村吉雄

    吉村委員 山中先生にはちょっと迷惑みたいになったと思うのですが、私がなぜそういうことを再三申し上げるかといいますと、前回並びに前々回の労働省の答弁によりますと、調査研究会のメンバーの中には雇用審議会委員方々も含めてやっておるのでございますからという答弁が再三あったわけです。従って、私としてはむしろそのことの方が問題だというふうに考えておったので、そういう意味で申し上げたわけですから、御了承願っておきたいと思います。  次にお伺いしたいのは、今回の調査研究会の結論は、非常に重要な問題に触れておりますけれども、現在の失対に従事しているところの労働者は大体三つに区分してそれぞれの対策を立てろ、こういうふうに言っておるわけです。簡単に申し上げますと、ABCの三層がある。A層については一般雇用に転換できるように、あるいはB層については、B層のうちの上層部はA層と同じようにしなさい、下層部については別な手段を講じなさい、さらにC層については、社会保障によって救済するのが建前だけれども、今日の社会保障制度は完備していないので、従って、どちらを選択するかを本人にまかせた方がよいじゃないか、そういう趣旨に書かれておるわけでありますけれども、こういうような調査研究会の結論が出た。これに対して私がお尋ねしておきたいのは、労働省は労働省なりに失対事業をどうしたらよいかということについての構想なり対策というものが当然あったはずで、なくてはならないと思うのです。そういうことについての対応策を立てるのが労働省の仕事のはずでありますから、今回調査研究会の結論が出されたが、これと労働省の従来考えておった対策とは一致するのかどうか、こういう点について労働大臣の考え方を明らかにしてもらいたいと思います。
  15. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 労働省といたしましては、この調査研究会の研究報告を基礎といたしまして、一応この問題に対します労働省の考えをまとめたわけでございます。それをただいま雇用審議会に諮問をいたしまして、その諮問の結果を待ちまして労働省の確定的な案をつくり上げたい、こう思っております。
  16. 吉村吉雄

    吉村委員 私の質問している趣旨は、調査研究会で結論というものを出してくれました。これはこれで別なものだと思うのです。労働省は労働省として失対事業に対する対策というものが当然あったはずだ、ないとは言えないと思うのです。発表されているかいないかは別としまして、まだ聞いていないわけですけれども、そういった構想と今回の調査研究会が出した結論というものは一致しているのかいないのか、こういうことをお聞きしているわけであります。これからの問題ではないのです。
  17. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ただいま雇用審議会に諮問をいたしております厚生省の案のほかに、別の案というものはこしらえておりません。
  18. 吉村吉雄

    吉村委員 労働大臣、この点は労働大臣としては少しく無責任な話だと思うのです。調査研究会がこういう結論を出していただいたことについては、それはその通りです。だけれども、労働省自体として失対事業をどうしたらいいのかという考え方対策はあってしかるべきだったと思うのです。ないとは言えないのじゃないか。だから私の質問していることは、そういう今まで労働省自体として考えておった対策というものがあったというふうに私は考えますから、その対策と今回出された結論とは一致しておりますか、一致していませんかということを聞いておるのです。
  19. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 労働省といたしましては、調査研究会の報告を待って労働省の考えをきめよう、こういう考えで進んで参ったわけであります。
  20. 吉村吉雄

    吉村委員 そういたしますと、との失対事業を管轄する労働省の最高責任者としては、全く無定見と言われてもしようがないと思うのです。これは今日急に問題になったことではないのです。これは、先ほども言いましたように、雇用審議会の方からも再三にわたって指摘をされている事項であるし、現実に各市長会なりあるいは知事会の方からも、あるいはその他の団体の方からも、あるいはこの委員会でも再三にわたって取り上げられてきた問題なんです。ですから、そういうことについて労働省がこれはこうしなければならないという対策が全然なかったということは——なかったというお話ですからやむを得ないと思うのですけれども、全くこれは無定見であり、無責任だというふうに私は考えます。そういうことだから今日こういうふうになって、ああでもない、こうでもないと言って大騒ぎしなければならないと思うのですよ。今の労働大臣の答弁は、全然白紙のままで今日まで臨んできたのだ、これからは結論に従って労働省の案というものもできましたから、こういうお話でございますけれども、そうならば、労働省としては全く何の対策もなしで来たということについては、私はどうも納得ができかねるのですけれども、事務当局としては何らかの対策があったと思うのですが、その点はどうですか。
  21. 三治重信

    ○三治説明員 失対の問題を処理する場合には、毎年予算でいろいろの案を出してやってきたわけです。その線は、先ほども説明しましたように、雇用審議会からの建議や答申の線に沿って、私どもの方としては毎年予算措置と関連して改善に努力してきたわけです。その改善に努力してきた跡が、結果としてますます問題が複雑になり、改善を叫ばれる結果になったということは、われわれとして不明を恥じざるを得ないわけなんですが、しかし、そうかと言って、その根本的な案についてわれわれ独自でこうしよう、ああしようということで総合的な案をつくっておいて、それを調査会をつくってこういう意見はどうでしょうというふうな考え方で進んだわけではない。どうもいい知恵がないために、われわれもいろいろ今まで考えるし、またやってきたけれども、十分よくいかないから一つ白紙で調査会にお願いして、いろいろ調査分析をしていただいて、その上で一つ総合的な改善案をつくろう、こういうことでことしは参ったわけでございます。
  22. 吉村吉雄

    吉村委員 大へん調査研究会オンリーみたいな答弁でございますから、そういうことで来たのだとするならばやむを得ないと思いますけれども、しかしそれでは、失対事業あるいは失業問題というものをどうするかということを担当する労働省としては、少し無責任であったと思うのです。私は、必ずしもあなた方の答弁のように、全然対応策を持っていなかったという趣旨ではないというふうに考えます。なぜならば、調査研究会に提出をされました失対事業をめぐる問題点、こういうものをあなた方の方としては提示をしておるはずでありますけれども、この中には、あなた方として当然考えられるような、いろいろな対策に近いようなことまでも含めて提示をしておるように私は考えます。ただ、今の中でそのことに触れたくないのだろうと思いますけれども、いずれにしましても、全然白紙のままで来たということについては無責任きわまりない、こういうふうに言わざるを得ないと思います。  その次にお尋ねを申し上げたいのですが、これは報告書の問題でございますけれども、私は、今の失対事業の内部に起こっている問題、それから周辺に起こりつつある問題、こういうことは、冒頭に申し上げましたように、今日の日本がかかえているいろいろな問題を縮図的にこの中に包含をされている、こういうふうに考えているわけです。従って、この報告書を読んで考えましたのは、今日の失対事業の中に起こっている問題というものは、どういう理由によってこうなったのかということについて、深く触れられていないというふうに私としては読ませていただいたわけでございます。この点は、参考資料、付属資料ですか、これについて十分読んでいない関係かどうかわかりませんけれども報告書だけで見ますと、まずそのものずばりに失対事業についてどうすべきかということに触れられておって、失対事業が現在包含している諸問題がなぜ一体起こってきたのかということについては、ここにはあまり突っ込んで意見が述べられていないと思うのです。との根本的な原因を追及しなければ、正しい対策は私は生まれてこないような気がいたしますので、この点について一つ先生方の意見を聞かせていただきたいと思うわけです。
  23. 山中篤太郎

    山中参考人 お答えを申し上げます。  ただいまの御質問の趣旨は、失業問題というのは起こるべき基本的な問題があって起こってくるのであって、その点を分析しないで結論を出すことは不可能である。そして私どもの出しました報告書はその点に触れていないではないか、こういう御注意であったかと思います。おっしゃる通り、失業がなぜ起こるかということについての具体的な分析なしに、失業問題の理解は不可能です。従いまして、失業問題並びに失業に対するいろいろな対策の中での、たとえば失業保険とか失業対策とか、その他いろいろな対策につきましての意見を立てることもまた不可能だと存じます。それでこの問題は非常にむずかしい問題でございまして、多少私ども、それぞれの研究分野の中で日本雇用失業の基本問題についての分析等はいたしておったわけであります。御承知参考資料の方では、今の失対事業の中に滞留しておる失業はどういう層から生まれてきたのか、それからまた、それがどういうふうにして失対事業の中に滞留しておるのであるかということは、私どもの手に入ります資料の許す限りでは一応分析をしたつもりでおります。もちろん、理論的に申しまして、私どもめいめいの個人個人もそれぞれ学問上の立場を持っておりますので、こまかい点に入りますと、理論的に失業とはどう考えるかというような基本問題につきましてはもちろん議論はいたしませんで、与えられた限りの現実の中で問題をできるだけつかみたいということから、参考資料の中ではできるだけの努力をしてみたわけです。それが、先ほど御発言の中にもありましたが、日本の縮図を示すような失業——ヨーロッパでありましたならば、出て参ります失業者失業の条件も、それから失業者の質も、かなりはっきりわかるのだと思うのですが、それが非常に複雑な形で現在の失対就労者の中にも現われている。これは失対就労者であるがゆえにそうであるというのではなくて、やはり日本の現在の就業構造というものが、非常な特色を持っておるためにそういうことが現われておる。従って、従来の雇用者中心にいたします失業の理解の仕方では日本の場合は非常にむずかしいのではないか、こういうことは少なくとも共通の見解として出て参っておるわけであります。従いまして、対策を考えるという点になりますと、なお非常に多くの問題が残っておるわけでございます。さしあたって現実にいろいろなことが行なわれておることから手をつけていけばどういうことになるであろうか、その点は、私どもとしては割合現実的にものを考えてみたつもりでおるわけであります。まあなかなか力は及びませんでしたけれども、おっしゃりましたような趣旨で問題は考え、そして可能な限りそれに接近するデータを集めてから考えをまとめるという努力は、したつもりでおります。不十分ではありますが、その点は参考資料の方にありますので、ごらん願いたいと思います。
  24. 吉村吉雄

    吉村委員 それから、この報告書の内容の中で気がついたことでありますけれども、いずれにしましても雇用問題でございますから、今後の日本の産業動向等から考えてみて、一体雇用状態というものはどういうふうな見通しが立てられるのか、こういう推測なり測定、策定というものがなくては、正しい意味での失業対策というものは生まれてこないという気がいたします。その点について、現在の状態では、石炭産業に見られるように、あるいは地下産業に見られるように、貿易自由化なりあるいはその企業の機械化、近代化、こういうことによって相当失業者が多くなるのではないかというふうに私としては予測されるわけです。これを裏書きするかのごとく失業保険の受給実人員というものは、この一月ころから相当ふえておるようにも見ておるわけです。こうなって参りますと、今後の雇用の状況というものについてどのような見通しというものがあるのか、これなくしては正しい意味での失業対策というものは生まれてこないだろうし、失業対策一つの重要な問題である失対事業についても正しい対策は生まれてこないのじゃないかというふうな気がいたします。この点は、調査研究会の先生方の将来の雇用動向についての判断はどういうものであるか、お聞きしておきたいと思うのです。
  25. 山中篤太郎

    山中参考人 ただいまの御質問に簡単にお答え申し上げます。  今後の雇用情勢がどうなるであろうかということは、私どもも非常に知りたいことなんですけれども、残念ながら現在の私どもの持っております学問的方法では、こういうお席で研究室の人間が、次の瞬間にこうなるだろうというような予測を申し上げることの力がないことを、はなはだ恥ずかしく思います。そういうことを判断いたしますデータといたしましては、たとえば、もう皆様御承知のように、日本の現在の生産年令の人口の動向はある程度までわかります。これは今から十五年過ぎくらいまでのことはわかりますが、それから先は、御承知のようにわかりません。十五年くらいまではかなり確実に予測できるのじゃないかと思います。それで皆様御承知のように、生産年令人口の構成も非常に変わりつつある。これは私どももわかっております。しかし、数年前に、私が炭鉱離職者の問題を雇用審議会で考えておりました時分に、生産年令分析をやりまして、人口問題審議会の方でも同じようなことが問題になっておりましたが、年平均にしまして百万余の生産年令の人口の増加が起こるだろうということの予測をしましたときには、はたしてこれが吸収できるものかどうだろうか、非常な憂慮を抱いたわけでございます。いろいろな機会にも私はそういう意見を——これは私個人の意見でございまして研究会には関係ございませんが、発表してきておった。ところが、日本というのは不思議な国で、統計を見ると、これをこなしているのです。そのこなし方に私は問題があると考えております。こなし方に問題がある。その程度のことしかまだ私どもにはわかっておりません。ただ、私どもとしては、議論を立てます場合の一つのよりどころがあるのです。それは、現在の政府が続いております限りには、国民所得倍増計画という公約がある。日本では、従来経済政策が考えられます場合は、大体生産力の増大ということが中心になっておりまして、必ずしも完全雇用ということは問題にならなかった。ところが、もう御承知のように、国民所得倍増計画というものは、その一番初めのところで、本計画の終局の目標というのは完全雇用の達成にあるということを掲げられておる。これは第二次大戦後の世界の、西欧社会実情から考えますと、おくればせながら日本の公の政策というものが西欧的な社会と同じようなことを目ざすようになったという意味で、私は非常に高く評価しておる。もしその政策がその通り行なわれるのでありますならば、今申しましたような生産年令人口の動きもあることでございますし、これはだれでもわかっておることです。あまり正確な統計はわかりませんから、どういうふうになるのかも、これはわかりませんけれども、やはり技術革新とかあるいは自由化ということで雇用市場がよくなるかもしれませんし、悪くなるかもしれませんが、とにかく動きがあるということだけは確実である。その際に、経済の成長を通じて完全雇用を終局の目標とするという政策が掲げられておりますことは、私どもにとりましてはこれは非常なよりどころである。そういう建前の中で、一つの先を、政策の原理としては、今の政策のある限りは行なわれるであろう、これはそう考えてよいのではなかろうかというふうに考えたわけでございまして、それ以上、これは政府といたしましても、その将来の雇用市場がどうなるであろうかというような具体的なデータ、私どもから言わせますとなかなか出せないのじゃなかろうか、こういう感じがいたします。これは自然科学と違いまして、私どもの学問分野ではそういう点が正確にわかりませんで、いろいろ言われておりますのは一つの推測にすぎないのであって、あるいは推計にすぎないのであって、そうなるかどうかは、これは学問上の十分な論拠は与えられていないのではないか、こういうふうに思います。私個人としましては、とてもそこまでまだ自分の意見をまとめますだけの力はございません。
  26. 吉村吉雄

    吉村委員 時間が制限されていますから、最後に一点お聞きしたいのですけれども、今回先生方がおつくりになりましたところの結論に従って、労働省が原案をつくって現在の雇用審議会の方に諮問をいたしておるわけです。この諮問案というものは、調査研究会の方々といたしまして今まで検討し、その結論というものを出されたその趣旨に沿ったというふうに御判断をなさいますかどうか。
  27. 山中篤太郎

    山中参考人 それでは、また私から簡単にお答え申し上げますが、私どもが見ておりますのは、雇用審議会に出されましたあの要旨のようなもの、それがどういうふうに具体的な対案になりますか、必ずしもあれだけではまだよくわかりません。それから私は、不幸にして具体的な説明を聞く委員会出席しそこないましたので、これからいずれ考えたいと思います。その点で、もう少しこれについては時間が必要じゃないかという考え方をしております。しかし、示されました限りでは、私ども結論と違って何かやっておるというのは、あまりないような気がするのですが、これも私ども意見が全部は生かされてないように思います。全部があそこにそのまま出ておるという形ではないと思いますが、しかし、私ども意見と対立するものがあの中にあるかと言われますと、こまかいことはわかりませんけれども、あのペーパーの限りではまだ——まだと言うとおかしいですが、そういうようなものは、私個人としましてはない。ところが、この答えは、きょうのお答えの趣旨にちょっと違うので、私個人の考えでありますが、もう研究会は解散してしまっておるものですら、ほかの方がどうお考えになりますか、これを一つお聞きになりませんと、私の発言だけで全部をおとりいただくということは、私都合が悪いのですが、とにかく私個人としましてはその程度の考え方であります。
  28. 吉村吉雄

    吉村委員 同じような質問ですけれども、各先生方の御答弁をお願いします。
  29. 大内經雄

    大内参考人 今の労働省が雇用審議会に出しておる案につきましては、今山中委員から申し上げたのと私全く同感でございます。ただ、それでなくて、先ほど御質問の点について、ちょっと私申し上げたいと思うことがあるのでございます。  それは、将来の雇用情勢がどうなるかという問題につきまして御質問があったわけでありますが、山中委員から申し上げたように、日本雇用情勢が非常に好転をしておる。それは皆さんもよく御存じの通りだと思います。ただし、その雇用情勢の進展が非常な片寄りを持っておる。つまり技能者であるとか、あるいは年少者であるとかいろようなものに非常な片寄りをしまして、中高年層が排除されておるということが今後の一つの大きな課題じゃないかと思います。われわれの扱っておる失対の問題も、それが非常に大きな焦点になったわけであります。そこで、これが一体どういうわけでそうなのかということをいろいろ考えてみますと、むろん一つは技能の問題であります。技術がそぐわない、それに対するだけの能力を持っていないということが非常に大きな問題だと思います。従って、これに対しては再訓練その他によりまして、できるだけ新時代の技術に沿うようにやってもらうということがまず根本の問題だと思います。しかし、さらに一方、賃金の問題で、つまり日本の従来の慣行の年功序列的な賃金というものが、彼らの職場を狭めておるということが考えられるのであります。従って、どうしても今後、これは強制的にやることはできないにしても、漸次職務給的な方向に向かって、そうしてその足りない点といいますか、年配になって職務給では足りないというような点は、社会保障とかその他の面でもってカバーするような対策を漸次お考えになってもらいたい、私個人としてはそういう希望を持っておるのであります。そういう二つの難関を突破しない限りは、どうしても将来の雇用情勢に対して楽観をするわけには参らないというふうに私考えております。
  30. 近藤文二

    近藤参考人 簡単に申し上げますが、今両先生がお答えになりましたように、私も、大筋において私たち報告の線で労働省の諮問案はできているのではないかと思います。ただ、しかし、私たち報告の中では、周辺の問題といたしまして、たとえば生活保護制度の問題、失業保険の問題、最低賃金の問題、雇用全般、公共事業等の問題を含めておると判断しておるのですが、そういう労働省の中の他の部の御関係の問題とか、あるいは厚生省、建設省あたりの問題をも含めて多少意見を述べておるのでございます。その辺をどのように扱われるかということ、あるいは今後の進め方を見ませんと、私たち報告の線に沿うておるか沿うていないかという返事が正確にはできないんじゃないか、こういうふうに考えます。
  31. 吉村吉雄

    吉村委員 実は私もその点が大へん問題だというふうに思うのです。先ほど冒頭に山中先生からも意見の発表がありましたが、この中で強調されているのは、やはり失対事業周辺の問題をどうするか、こういうことが対策として樹立されなければならぬということを強調されておったわけです。ところが、今回の労働省から出されました諮問案というものは、そういうことについて一言半句も触れられていない。もちろん、失対事業の問題についてどうするかという諮問案でありますから、触れられないのは当然かもしれません。しかしながら、今日までの労働省の考え方あるいは政府の政策、こういうものを見たり、あるいは将来のことを予測してみますと、社会保障の問題にしましても、これは労働省直接ではございませんけれども、遺憾ながら、とうてい調査研究会の先生方が期待するような方向に向いているというふうには言えない。しかも、完全雇用の問題についてもしかり、あるいは最低賃金制の問題についてもしかり。こういうことについて抜本的な改正なりあるいは対策を立てるという前提なくしてこのような原案を出されるということは、労働大臣が再三言っていましたけれども、失対事業は打ち切りはしない、改善をするんだ、こういうことを盛んに言っておりましたけれども現実的には、あの原案で推し進められるならば、A層の方々は民間の方にやる、あるいはB層の大部分は軽作業ということでやっていく、こういうことになってきますと、失対事業就労者の人数は相当数減らしていくという結果にならざるを得ない。減っていった結果、そこでほんとうの意味で常用雇用人として安定する、そういう条件に今日の社会があるかどうかということが大へん問題だと思うのです。そういう意味完全雇用も必要でありましょうし、あるいはどうしても年令が高くなって就労上困るというような人については社会保障という道が開かれなければならない、こういった問題について総合的な、前提となるべき対策を全然度外視して——度外視しておるかどうかわかりませんけれども対策を並列させないでおいて、そうして失対事業についてはかくあるべきであるという考え方は、本末転倒していると言わざるを得ないのであります。この点は、今の諸先生方も言われましたが、社会保障の問題あるいは最低賃金制の賃金法の抜本的な改正あるいは完全雇用、こういうことについて労働大臣は一体前提条件をどう立てられようとしておるか、この点をお聞きしておきたいと思います。
  32. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 諸先生の仰せられましたことについては、私どもも同感に考えております。しかし、これにはいろいろな問題があるわけでございまして、これらの点を頭に置きながら、さしあたり失対事業を改善いたしたい、さように考えております。従いまして、社会保障その他との関連において直ちにはっきりした解決策は得られない場合もあろうと思います。しかしながら、漸次そういう方向に努力を続けることによりまして失対事業の改善をはかっていきたい、こういうふうな基本的な考え方で進んでおります。
  33. 吉村吉雄

    吉村委員 これで終わります。この前の委員会で、労働大臣は、同僚の島本委員からの質問に対して、社会保障あるいは最賃、完全雇用、こういった問題についての対策を樹立しない限りは、失対事業の打ち切りはしないと明言をしております。失対事業の打ち切りをしないということは、打ち切る気持はないというように言うでありましょうが、しかし、現実の問題は、今の労働省の原案でいきますと、当然縮小されていくということにならざるを得ない。しかも、その失対事業からはみ出しておる人たち雇用が安定する、そういう政策はまだ前提として確立をされていない、こういうことから考えてみますと、これは今の労働大臣の答弁によると逐次整備をしていきたいというお話です。これは前提にならなければならない問題だ、こういうように諸先生方も言っておりますし、この前の島本委員の質問に対して労働大臣は、その点に対してはそういう趣旨の答弁をしたはずだと思うのです。従って、この点は、答弁してもらえば多分、打ち切りはしないと言って逃げるでしょうから、答弁を必要とはしません。しませんけれども、本来の意味で言うならば、失業問題あるいは失対事業の問題を解決していくためには、何といっても社会保障なり完全雇用なり、あるいは今大へん非難の的になって、むしろ混乱を生ずる原因になっておるところの最賃法なり、こういった問題を抜本的に改正するなり、そういう根本的な対策というものを樹立する。その上で初めて、この失対事業の問題についてどうするかということを考えていくというのが本筋だと思うのです。失対事業だけをとらえてやっていこうとするのは、どうも本末転倒したやり方であるというふうに言わざるを得ないし、言うまでもございませんけれども、非常に貿易の自由化とかあるいはオートメーション化とか、こういうことによって大へん中高年令者というものの就労状況というものが悪くなっておる。そればかりではなくて、政府の現在の農村対策というものを考えてみただけでも、ここから輩出されようとするところの失業者群というものは相当多数に予見をされ、現実にそれは弔う半農民的な、半農半労的な仕事をやっておる者が非常に多くなっておる。こういう状況のもとでは、何といっても失対事業というものは縮小するという方向よりも、それらの失業している人たちを迎え入れて、これをほんとうに維持的なということになるかもしれませんけれども、やはり雇用の道というものを与えていくということなくしては、暫定的な方向というものは生まれてこないように考えます。  最後に要望しておきますけれども、失対事業の改善ということに藉口して、そうして今働いておる人たちにかえって今以上の苦しみというものを与えるようなことをしないように、しかもまた、前提としての最賃法なりあるいは社会保障なりあるいは完全雇用なり、こういうものについて、もっと責任を持って対策を出してもらうように特に要望しておきたいと思うのです。
  34. 秋田大助

    秋田委員長 田邊誠君。
  35. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 失業対策問題について九月末に調査会から報告が出されまして、引き続いて十月三十日に労働省が雇用審議会に対するところの諮問が出されましたので、その両者が現実の失対問題に対するところの対応策として浮かび上がってきている二つの案でございますから、これをかみ合わせまして、簡明に御質問いたしたいと思います。  今、吉村委員がいろいろと全般的な問題に対して質問をいたしましたので、私はこの内容に触れていろいろとお伺いしたいのでありますけれども、一点だけ吉村委員の質問に引き続いて確かめておきたいことは、何といっても日本の経済の動向、これと見合っての雇用の見通しでありますけれども、政府の雇用審議会に対する諮問案の中においても、今後において長期的に見た場合には労働力需要の改善というものは一段と進むものと考えるというふうに言われておるのでありますが、私は現在の池田内閣の所得倍増計画による経済高度成長というものがどういうような変転を遂げるかははかり知れませんけれども、しかし、労働力が確かにふえている、そして労働力のふえるのと相見合うというところまでいきませんけれども、いわゆる雇用の需給力というものも、ある程度これはふえるのが当然だろうと思います。しかし、何といっても高年令に至るところの労働が、非常に現在傾向としてはふえているという状態、あるいは大企業に比較をして中小零細企業の雇用というものが非常に鈍化しておるという状態、そして昨年までの間は、労働省の調査によりましても、確かに雇用の数がふえておることは事実でありますけれども、しかし残念なことに、これは昨年からことしの春までにかけての話でありまして、今年の三月以降におけるところの雇用状態というものは、労働省の労働白書にちょっぴり触れておりますように、これは以前と違う状態に来ておる、こういうことでございます。こういったことを私どもが見た場合には、この雇用状態が改善されるという労働大臣と労働省の見通しというものはあまりにも楽観し過ぎておるのではないか、こういうふうにわれわれは考えざるを得ないのです。これは私どもが言うだけでなくて、聞くところによりますと、雇用審議会が開かれた際においても、労働代表なりあるいは学者の方々なり、そればかりでなく、一部にはいわゆる経営者陣営の中からも、この政府の見通しに対して批判があったではないかということを漏れ聞いておるのであります。そういった点からいいまして、私どもは、この楽観し過ぎるところの見通しの上に立って失業問題を論ずることはきわめて危険な問題がある、こういうようにわれわれは考えるわけであります。この点は、一つ調査会の先生どなたでもけっこうでありますから、この問題に対するところの御意見を簡単に承りたいと同時に、大臣の所見を承りたい。
  36. 山中篤太郎

    山中参考人 ただいまの御質問につきましては、先ほどの吉村さんの御質問の中で答えました以上のことを私としては申し上げかねますので、御了承を願いたいと思いますが、今労働省がどういうようにお考えになるか、どうぞ労働省の方からお聞きいただきたいと思います。
  37. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 現在までの統計といたしましては、毎月の雇用は減少をしておるということはございません。ただ、今年になりましてからは、伸びる率が多少鈍化しておるということは言えると思います。  それから今回の失対問題に対する対策でございますが、これは一応雇用が伸びつつある。現在の時期は、この問題を取り上げるのに最も適当な機会であるとは考えております。しかしながら、この対策雇用が伸びるということを必ずしも前提にして立てるわけではございませんので、今後の雇用の情勢いかんにかかわらず、現在の失対事業は改善する必要がありますし、またその改善につきましてはおのずから道があろう、こういう考え方のもとに進みたいと思っております。
  38. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 今雇用の見通しに対する見解がありましたけれども、今回の失業問題に対するところの研究会からの報告にも、あるいは政府の諮問案にも、いわゆる雇用の増大ということを見越して、現在の失対事業に従事しているところの労働者のうちの、いわゆるA層といわれるかなり労働に耐え得るところの層は、常時的な雇用にこれを振り向けていくという、こういう意向のようでございます。これは雇用政策の面からいって当然の話でございます。しかし私は、雇用の見通しに対して一応おくといたしましても、一体それならば、現在までの時点におけるところの常時的な雇用というものの観念をわれわれは変えていかなければならぬ、こういうように実は考えておるので、先ほどの山中先生のお話にもありましたように、失対労務者の中におけるところの、いわば従前雇用されておった者の中で失業保険を受けておる者がわずかに三〇%であったという、こういう事態までも今までは生じておったのであります。そういたしますならば、私どもは一体常時的な雇用というものの観念をどこに置くか、これをもっと私どもは厳格に、実は規定をしなければならぬ時代に来たのではないかと考えるのであります。  そこで実はちょっと調査会の先生にお伺いいたしたいのは、調査会の報告の中ではできるだけ常用雇用にこれを転じたらいい、こういう文句が使われておるのであります。はたしてこの「常用就職の可能性のあることを示している。」というこの常用というのは、一体どの面をさしておるのか。たとえば失業保険対象者であるというものをさしておるのか、あるいは通例臨時工というものも含まれておるのか、この点が実はわれわれとしては心配になる点であります。日本雇用政策の中でもって一番悪い点は、本工よりも臨時工がどんどんふえておるという現状でございます。従って、これはあくまでも常用雇用という部面には属さない、こういうふうにわれわれは考えておるのでありまするけれども、この点に対するところのお答えをいただきたいと思います。  あわせて大臣に、労働省の雇用審議会に対する諮問案の中では、今度は常用という言葉ではなくして、「通常雇用」という文句を使っておるのであります。これはまた新しい言葉でございまするけれども、はたしてこの通常雇用というのは、今言ったような観念からいいまするならば、一体常時的な臨時工、あるいは事業場からいいまするならば、五人以上のいわゆる失業保険対象となるところの事業場、こういったものに限定しておるのかどうか。この点が、われわれとしては、将来この失対労務者とほんとうの意味におけるところの雇用群の中に入れるという、こういった考え方からきわめて重要な点だろうと思いますので、お聞きしたいと思います。
  39. 山中篤太郎

    山中参考人 ただいまの御質問の常用工の常用就職の可能性というのは、この報告書の五ページのところの御質問であろうかと思います。この点につきまして、実を申しますとある傾向が見られるだけでありまして、その就職先がこの臨時工というようなものであるかどうかということについての確実な資料は、実を申しますと必ずしもはっきりいたしません。と申しますことは、臨時工という言葉自体を正確につかまえますことも、よほどよく調べませんとわからないわけでありますけれども、ただ、従来の失対就労者の方の流出面を見ますと、非常に十年選手ができるほど滞留しているということが強く見られておりますけれども、その全体から見ますとそれは少ないわけでありますけれども、しかし、常用就職の可能性と考えられますものがありますこともまた事実でありますので、それを私どもとしては一つの可能性と考えたのです。これはただこういう点が得られました限りで、中身の上での特色がございます。その一つは流出面で、職安が中に入った流出というのが案外少ないということです。これは私どもにとりましては、やはり重要な事実である。それからもう一つは、当然のことでありますけれども報告書にあげておきましたように、やはり雇用のチャンスが非常に多いところ、東京とか大阪のようなところ、そういうところでやはり多い。ですから、地域的な差がある。けれども、とにかくそこらに行きますと失対へ戻ってこないのです。ある場所へ参りますと失対へ逆戻りするという数字がかなりある。それは統計的にそうなっているんじゃないかと思われるような、つまり統計的というのは、実際は失対就労者の方なんだけれども、何か定期的に還流しているというような場合があるんじゃないかと思われる資料があるのであります。そういうのは別といたしまして、とにかく失対へ戻るということが割合にないということが、一応より通常雇用に近いところへ来ているんじゃないかということを、多少ばく然と「常用就職の可能性」という表現を用いましたわけでございます。
  40. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 労働省といたしまして、通常雇用と申しておりますのは、これは特に限られた意味雇用を申しておるのではございませんので、失業者のために特別につくり出されたというような、いわゆる失対事業等でなく、一般の民間の雇用という程度の意味で用いたつもりでございます。
  41. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 この失業問題を論ずる際に、実は常にそれにまつわりつくのは失業保険の問題でありますけれども、先ほどの山中先生のお話にもありましたように、失業保険受給者が非常に少ないことは、実はわれわれとしては非常に遺憾であろうと思うのでありますが、この際一つ失業保険対象というものも拡充し、その期間の延長をはかり、その増額をはかるという、こういった筋道がとられませんと、これは失業対策事業に投入をするという、こういった事業が円滑にいかなかった場合における措置といたしましても非常に私は重要ではないかと思うのでありますけれども委員のどなたでもけっこうでありますから、この際一つ失業保険制度というものを変えていく、こういうことが、先ほどの御発言の中から必要性が叫ばれるのではないかと思うのでありまして、これに対する一つの御意見を承りたいと同時に、一つ労働省としても、今の調査会の報告に基づいて、失業保険制度の改正もあわせてやはりやることが、この失業対策の問題と関連する重要な事項として浮かび上がってきたのではないかと思いますけれども、大臣の御所見を伺いたい。
  42. 近藤文二

    近藤参考人 失業保険の問題につきましては、私、社会保障制度審議会にも関係しておりますので、今お話のございました五人未満の零細企業における失業保険の適用の問題と、これはぜひやっていただきたいと思うのですが、いろいろ事務的な問題等があり、今多少事務組合のようなものをつくって、失業保険にそういった任意適用の人たちを入れるように労働省は御苦労なさっておるようでございます。それから給付内容その他期間等についても、いろいろ労働省の方でお考えになっておりまして、新聞等を拝見いたしますと、相当われわれの要望しておるような線に向いて進んでおられるようでございます。ただ、今までの人たち失業保険に入っていなかったというのは、考え方を変えますと、自営業者であるとかあるいは家族従業者であるような方が失対の中に入り込んできておられる。それからその中において、零細企業から入ってきておられるというような方も当然あるわけでございますが、失対に入る前の失業保険の問題と、それから入ってから後になりますと、日雇いの失業保険の問題に関係して参ります。それから私は、大体失業保険というものの給付期間をどんどん延長していけばいいという主張がございますけれども失業保険というのは、御承知ように、その方の収入とか資産というものを全然考えずに保険給付がなされる。そこでイギリスの例を考えてみても、一定の期間までいきまして後に生活に困られるという場合には、失業手当制度というふうに、いわゆるミーンズ・テストをやりまして相当生活を守るという制度もつくるべきであって、そういうようなことをも将来はやはり政府としてはぜひお考え願いたい、こういうふうに考えておりますので、私たち意見というよりは、そういう方向にぜひやっていただきたい、こういう念願でございます。
  43. 三治重信

    ○三治説明員 失業保険の問題につきましては、近く職業安定審議会に改善案を諮問する予定であります。今近藤先生からもおっしゃいましたように、やはり零細の五人未満につきましては強制適用までまだ踏み切れぬわけでございますが、任意組合で失業保険組合をつくっていただいて、団体として入っていただくことを大いに奨励していこうということ、それからなお、やはりなかなかそこは実施できない部面もあるわけですから、今後は失対事業の改善の中で、そういう一種の失業手当、われわれの方で就職手当という線でやろうと思っておりますが、そういう失業保険の未適用の方には、求職者について再就職をお世話するにあたって就職手当の制度をつくろう、そうして失業保険の未適用者について補完をしていこうというのと、多発地域につきましては、現在も制度がさいますが、失業保険の給付を延長する制度、これを実施面で活用していこうというふうに考えておりまして、今直ちに全部の雇用者失業保険の適用というものは——やはりこれは社会保障制度全般として事務機構というもの、また保険でございますのでその間の保険料の徴収、被保険者の利益の保存というものになりますと、私たちとしては、失業保険だけでそれだけの事務機構ができるかということになると非常に疑問があるわけです。今後この五人未満の零細雇用者についての適用という問題は相当大がかりな実験と申しますか、やり方を考えていかないと、今のままではなかなかできないというふうに考えております。これはもちろん、そういうふうになりますと電子計算機とか、もっといろいろの保険料の徴収のやり方というものを根本的にやり直さなければいけない。そういう意味において、今度の社会保障制度の答申の中でも、政府の根本的なやる方向として指示していく。当面やる面につきましての失業保険の改正につきましては、ただいま申し上げましたような方向で今案を練っておりますので、近く職業安定審議会に諮問いたしたいと思っております。失対事業等の改善と関連しては、そういう失業保険の未適用者、また全然適用できない人たちに対しての再就職のあっせんにつきましては就職手当で臨んでいきたい、さらに訓練を受けられる方には、訓練期間中には訓練手当を支給していく、こういう体制で改善に努力していきたいというふうに考えております。
  44. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 調査会の報告にはかなり前進的な問題が含まれているわけですけれども、特に賃金の問題については、今までの低率賃金原則というものがきわめて不合理であり、すでにその機能を失ってきている、こういう現実の事態の中から、賃金というものは、やはり通常賃金がきめられるところの原則と性格を貫くべきであるということを指摘されていることは当然のことであろうと私は思うのでありまして、そういった点で非常に御研究の成果がわれわれの前に現われてきておるわけですけれども、そういたしますならば、賃金率の決定というのは労働大臣がきめることが望ましいというふうに言われておるわけでありまして、最終的な決定は労働大臣がするという形のようでございます。これについてもいろいろ議論のあるところでありますけれども、一応この建前というものを含むといたしましても、今発言いたしましたように、賃金通常賃金の性格を貫くべきであるという報告、そして労働省の諮問案の中にもありますように、今後の失対事業事業種目というものの決定は、事業主体にまかせるというふうになっております。そうしてまた、調査会の報告の中の紛争処理が非常に多いわけでありますけれども、この紛争処理は労働委員会を活用することも一つの方法ではないかというような点、こういった点から考えまするならば、この賃金の決定というものは、やはり通常賃金の決定の原則というものが貫かれるという建前に立つならば、たとえば労働大臣が決定をし、あるいはその前に賃金審議会等の機関が経られるにいたしましても、やはりこれはその場で働くところの労働者意見というものが十分反映される機会がなければならぬと思うのでありまして、いわば事業主体の意見なりあるいは働く労働者意見を聞く機会というものを持つことが望ましいのではないかと考えられるわけでございまするけれども、その点に対しては、調査会の方々はどうお考えでございましょうか。
  45. 山中篤太郎

    山中参考人 ただいまの御質問にお答え申しますが、その点は、率直に申しまして、私どもにとりましても非常にむずかしい点なんでありまして、つまりその雇用の場の性質を考えますと、私どもとしては、できるだけ働く方の労働力を生かし、かつ生産的であるような通常雇用の場というものに性質をだんだん持っていくべきではないかと考えております。そうしませんと、例の社会保障関係とごちゃごちゃになりまして、働かないでお金をもらうという考え方がやはりここで出て参りまして、これは非常に混乱を起こして参ります。といって、通常雇用の場のように、雇いましょう雇われましょうという約束が成り立ってできる雇用の場でございませんので、通常の団体交渉による賃金交渉というものがちょっと考えにくい、通常の場の労使関係と非常に違うということがございますので、私どもとしましては、やはりその働く方の御意見なりあるいはその他の御意見を聞くということは、これはできるだけそういうチャンスがあった方がよろしいだろうと思いますけれども、基本的には、やはり労働大臣の方できめるというような形をとらないわけにいかないのではないか。もしその給与ではいやだといって働かない場合どうなるかといいますと、失業対策でなくなってしまうのです。そこが大へんむずかしいところでありまして、もし通常の交渉ができるような場所でございましたら、もうそれは失業対策ではなくて、普通の雇用の場として労使関係が成り立つ、こういうふうに考えるわけでございます。そこにいかないところに大へんやりにくいところがあるのではないかと思いますが、しかし、やはり問題の性質は賃金ということで、働く方に対してそれに応じた賃金を払い、低率賃金原則というものを立てておいて、わきへ出ていかせるというような体制はもうやるべきではないのではないか、こういう考え方でございます。
  46. 島本虎三

    ○島本委員 関連して山中先生に一言だけ伺いたいと思います。  いろいろとやった期末手当についても、わかったようなわからないような、ちょっと困る現象になっていますが、そのほかに現在、北海道では冬になったら六カ月間石炭手当という制度が——まだなりませんが、補完的に石炭手当に見合う額として支給されている額が三十円あるのです。こういうようなものに対しては全然言及されておりませんが、この問題に対してはどういうようにしようとする御意向でしたか、伺いたいと思います。
  47. 山中篤太郎

    山中参考人 これはそこに書きましただけでございまして、期末手当というものは、現在では就労者であるというだけで給与されているので、基本的には賃金ではないかと私ども思うのです。ですから、十二月まで渡さずにおくということはけしからぬではないかという気が多少しておるのであります。それは私も公務員の端くれにおりまして、いつも期末手当をもらうのでありますが、あれは賃金ではないか、それがどうして十二月まで支給が延ばされておるのかということの矛盾が多少そこに出てきたというようなわけでございまして、地方自治体が単独で支給いたします地方住民対策というものは、これはおのずから別のものだと思いますが、そうでなく、どう考えましても賃金の一部分だと考えられるものは、これはあとになってから支給するのではなく、働いたときに支給するという方がほんとうではないか。金利のことなんか言うのはこまか過ぎますけれども、そういう趣旨のことが出ましたので、率直にそういうことを書きましただけでございます。先ほどの北海道等のお話は、つまりこれと同じ趣旨で考えて下さればよいのではないかと思います。結論としましては、現行を改めるということをするためには、基本的には、何か期末ではなしに賃金に加えて早く払ってしまう方がほんとうではないかという気がするのでございますが、これはいろいろ支障がございますし、同じ問題がほかにもございますので、ここだけでもって解決するというのも無理でございますから、それで一応言及したという形でございます。
  48. 秋田大助

    秋田委員長 参考人方々には、種々の参考意見をお述べいただき、本問題の調査に多大の参考になりましたことを厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。
  49. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 賃金の問題は今参考人から御意見を拝聴したのですが、政府もこれにのっとって今までのPW方式を改めて、いわばこれは法律の改正になると思いますけれども、新しい決定の仕方をするということを打ち出しておるわけであります。  そこで今度の政府の諮問案には、いわゆる失対事業というものを大きく分けて、就労失対と福祉失対というふうに二つに分けておるわけでありまして、賃金の形態なりそのめき方も、この二つの部門に対してはそれぞれ異なった様相を示してくるのではないかと考えておるわけであります。そこで、いわゆるB層を中心とした就労失対に対しては今までのPW方式を改めるという形になりますから、おそらくは、これからどのぐらいかかりますか、あるいは一年くらいかかりましょうか、地域別、業種別にいろいろ調査をして賃金審議会で答申を求める、こういう格好になるかと思いますけれども、この賃金一つの性格というものは、もちろん通例の場合におけるところの民間の賃金形態と全く同じだと私は申しません。申しませんが、しかしあくまでも、これはかなり経済的な効率も考えて仕事をさせ、そしてまた、その考え方から言うならば賃金もそれに見合うものが支給される、こういうものでなければならぬと思うのでありまして、就労失対の場合の賃金というものは、そういった性格的に言えば、やはり一般通常雇用労働者が受けておるところの賃金と性格的には同じようなものではないか、こういう方向に行くのではないか、こういうふうに実は考えるわけでございますけれども、その点はいかがでございましょうか。  あわせて、福祉失対の方がこれまた非常に問題でございますけれども、今までもらっておる平均四百二十五円という賃金は、今の物価の上昇や経済の趨勢から言いまして満足すべきでないから、おそらくは来年度以降において、これ以上のものを労働省は、この諮問案がいずれになろうとも予算でもって仕組まなければならない、こういうことではないかと思うのであります。しかし、この福祉失対の持つ意味というのは、社会保障的な色彩がきわめて多いということを言っておるのであります。しかし私は、現在の生活保護基準を中心としたところの日本社会保障がきわめて不十分な点から言いますならば、それと見合って賃金がきめられることが非常に危険なことは、この前の委員会でも滝井委員等から指摘された通りだと思うのでありますけれども、一体この福祉失対の場合におけるところの賃金をきめる一つの基準といいましょうか、どういうところにこのもとを置いてやろうとするのか。まさか生活保護基準と比較してこれをきめよう、こういうようなことではないと思いますけれども、私は、との持つ意味というものが失対全般の底上げになるのかレベル・ダウンになるのか、非常に大きな分かれ目ではないかと思いますので、これに対するところの政府の当面する考えをお聞きしておきたいと思います。
  50. 三治重信

    ○三治説明員 賃金の問題につきましては、非常に重要であるとともに実際問題として、理屈はどうあろうと、現実に支給されている賃金を、そう理論通りに変えられるものではないと思います。従って、連続的にいかなければいけないというふうに考えております。それからその福祉事業方面につきましては、これは私の方としても、十分その基準なり何かは一応そういうふうな方向を出しておりますが、具体的な賃金の額の決定という問題につきましては、賃金審議会にも十分お諮りしますし、またそれまでにデータを、われわれの方としてできる限り詳細に集めてみたいと思います。またさらに、実際問題としてそれが発足いたしますのは、私たちの方では大体来年度でなくて、それ以降のときというふうに考えております。
  51. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 大臣にお聞きしたいのですけれども、今座をはずしておりますから……。そういたしますと、賃金に関連をしていわゆる福祉失対、まあ簡易失対といいましょうか軽労働、これに入る人々、これは賃金とも関連をしますから非常に重要でありますけれども、一体この区分というのはどこに置くのか。何か労働省は、雇用審議会の中でまだ具体的な案を持たないから逐次これをきめていきたい、こういうふうに言っておるそうでございますけれども、諮問する以上は、年令区分にいたしましても一つ考え方をお持ちじゃないかと私は考えるのでありまして、この点が実は分類をする場合の非常に大きな要素になるのでありますから、年令区分を一体どこに置くのか、お考えを承りたいと思います。
  52. 三治重信

    ○三治説明員 その福祉関係につきましては、現在の方につきましては、新しい基準をつくりましてもそれを強制的に分類するということはとらないつもりでございます。将来新しくその事業に入られる方につきましては、いろいろ民間紹介をやる、また現実に民間紹介なり訓練ができない方たちには福祉事業のごく軽易な作業、従って相当の高齢者、それから虚弱者ということになるわけでありまして、その基準につきましては、われわれの方として雇用審議会で十分議論をしていただきまして、もしもその基準なり何なりについてある程度の結論が出されればそれに従うし、それがもしもよく研究してということになりますれば、われわれはそれによってある程度具体的な案をつくっていこうじゃないかという考えでございまして、今のところその点につきまして、はっきりした基準をまだつくってはございません。
  53. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 いろいろと質問をしたいのでありますけれども、時間がございませんので、各項目に対する質問は保留をしておきますが、委員会が開かれておりまするこの際でございますので、一言だけ簡単にでけっこうでありますから、ILOに対する政府の決意をお伺いしておきたいと思うのであります。  御承知の通り、ILO理事会が、再三にわたって日本の八十七号条約の国会批准ができ得ないことに対して強い勧告をいたしてきておりますけれども、今月八日のILOの理事会総会におきましても、第十二回目の対日勧告をいたしたのであります。しかもこの勧告は、今までの再度にわたるところの勧告以上の強いものが含まれておることは御承知の通りでございまして、これがもし次期国会において批准がされない場合には、この内容を公表するなりあるいは調査委員の派遣も考慮するという労働者側の意思表示もされておる状態でありまして、これはもう日本国政府にとっては、きわめて重大な関頭に立たされておると私は思うのであります。大臣は、聞くところによりますと、現在与野党の間でいろいろと折衝は進められておるから、この推移を見て考慮したいという、こういうお話もありますけれども、要は政府のこの問題に対するところの決意いかんであろうと思うのでありまして、私は、今や事態は瞬時の遷延も許さないところまで参ったと思うのであります。実はいろいろな思惑やちゅうちょ逡巡や、あるいは国内法との関連等のいろいろなことが政府部内にありましょうけれども、しかし、今や国際的な問題としてこの問題がここまで参ったのでありまするから、政府はこの際にこそ一つ決意を固めて、次期国会の冒頭においてILOの八十七号批准に踏み切るべき事態ではないか、こういうふうにわれわれは考えるわけでありますけれども、労働大臣は、政府を代表して今時点における勧告を受けた状態の中でもっていかなる決意をお持ちであるか、お伺いしたいと思います。
  54. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 政府といたしましては、ことしの春以来、特に自民党並びに社会党両党の間で、この問題の国会内における取り扱いの御相談が進行をいたしておりまするので、この折衝の結果を期待いたしておるような状況でございます。この折衝は、なお引き続き進行をいたしておりまするから、私どもは、次期国会におきまして解決の目途が立ち得るものと確信をいたしております。
  55. 秋田大助

    秋田委員長 河野正君。
  56. 河野正

    ○河野(正)委員 私は、今日いろいろ問題を提起いたしておりますたとえば給与体系の問題、あるいはまた賃上げの問題、そういういろいろな権利闘争を中心として展開されておりまする駐留軍基地の諸問題につきまして、若干御質問を申し上げたいと考えております。  そこで、まず第一番に取り上げてみたいと思いまする点は、御承知のように、福岡の板付基地におきまして、燃料補給所でございますが、POLにおいて七名の解雇の通告が行なわれたわけでございますが、もちろん解雇そのこともきわめて重大でございますけれども、私どもは、この解雇というものは単純な解雇ではない、本質的に、その背景におきましては非常に重大な面を内包をしておる、こういう立場に立って実はいろいろお尋ねを申し上げたいと考えるわけでございます。と申し上げますのは、すでに御承知だと思いますけれども、昨年暮れにおきまする賃上げをめぐりましての闘争が展開をされた、その際、特に全国におきまする重要基地、かつ基地の中におきまする重要職場、国内におきます重要基地の重要職場ということで指定をされましたPOLにおいて、このたび解雇の通告が行なわれた。このことは、だんだん発展をいたして参りますと、重要拠点だと指定すれば解雇をして、従業員を兵隊に切りかえてしまう、こういうことになりますと、今後、将来組合運動というものが全面的に抑圧されてしまう、抹殺されてしまうということになるわけでございますから、私どもはそういう意味でこの問題をきわめて重要視して、いろいろと折衝を続けて参っておるのでございます。そこでそういう点について、私どもは特にこの際政府の所信を承って参りたいと思いまする点は、給与体系の問題にいたしましてもなかなか思うように前進をしていかない、あるいは解雇その他いろいろな問題が発生いたしましても、今日まで、駐留軍従業員の諸問題につきましてはなかなか思うように前進する方向での解決ができなかった。このことは、今日におきまする政府の姿勢そのものにも私は非常に大きな問題がございましょうし、そういう意味から、今度のPOLにおきますところの解雇をめぐって、特に政府に対してその間の態度というものを私は明確にしてほしいというふうに考えるわけでございまするが、まずこのPOLをめぐりましての解雇について、どういうふうに政府が御理解をいただいておるのか、理解いかんによりましては、私どもは重大な考慮を持っておるわけでございますので、まずこの解雇の問題について政府としてはどういう所見をお持ちでございますか、一つ明らかにしていただきたい。
  57. 林一夫

    ○林説明員 ただいま御指摘のように、板付基地におきまして、十月一日付でPOLの職場の従業員七名が解雇されたのであります。この整理の理由でございまするが、私ども軍側についてよく当った結果、軍側におきましては、最近、航空機の給油作業というような軍事行動に直接関係ある業務におきましては、日本人従業員の一部を軍人に切りかえるというような措置をとっておるのであります。そのようなことからこの人員日本人従業員の定員の削減をした。その結果、人員整理が行なわれたということでございます。今御指摘になったような昨年の賃上げ闘争に伴い、同基地が重要拠点、重要な拠点ストの対象職場として指定されたから、その報復としてこのような措置が行なわれたのではないかというようなことはないのであります。そのことは全然関係のない、ただいま申しましたような理由で整理したこういうふうに私どもは考えております。
  58. 河野正

    ○河野(正)委員 おそらく長官としては、そういう御説明をお答え願うであろうというように私どもはあらかじめ察知をいたしておったわけです。ところが、私どもがそういうお答えで納得できぬ点はいろいろございます。そこで私は、この首切りというものが単なる解雇ではなくて、今長官が言われたような、直接軍事行動に関係のある職域については一部軍人と切りかえるというような単なる理由ではなくて、その背景として非常に本質的な問題が含まれておるというような理由が若干あるわけです。そこで、私はそういう理由の諸点についてここで御指摘を申し上げて、さらに一つ政府の所信を承っておきますし、さらに望むことは、大臣も十分お聞きを願って、労働大臣も国の行政の最高責任者としてどういうようにお考えになるか、そういう所見も一つ承って参りたい、かように考えております。  そこで、納得のできない第一の理由として一つあげてみたいと思いまする点は、それは今度の実力行使が十月三十一日から七十二時間のストライキというような形で行なわれました。ところが、その実力行使、スト中のことでございますけれども、十一月一日の午後九時五分、このピケ隊の眼前でピケ破りの従業員が基地を脱出しようとした。そこでピケ隊の従業員が誰何をいたしましたところが、アメリカ軍が発砲するというような事態が起こりました。もちろんアメリカ軍の方では、脱走兵がおったので、その脱走兵に対して逮捕するために威嚇射撃をしたというふうなお答えのようでございます。しかし、この二名が鉄柵をくぐって、もうすでに一名は基地外に出ておったそうでございまするが、出ておった。そういう状態でございますから、私はどうも今アメリカ軍が言っておるような理由では納得できない。むしろいやがらせと申しますか、不当に組合を弾圧するという意味で威嚇的な発砲が行なわれたのではないか。特に私どもが指摘をいたしておきたいと思います点は、そういうようなピケの行なわれておりまする使用者側と労働者側、従業員側と非常に対決しておるような、緊迫しておるような情勢の中で発砲が行なわれたというようなことについては、われわれは納得することができない。こういう点についてどういうふうに御理解願っておりまするのか、一つ承っておきたい、かように思います。
  59. 林一夫

    ○林説明員 ただいま御指摘のありました発泡のことでございますが、これは、今度のストによりまして、十月三十日から七十二時間ストに入ったのであります。十一月一日の午後九時ごろ、就労を終えて帰途についた従業員の二名が飛行場の正門から出ようとしたのでございまするが、外にピケを張っておった組合員にとめられた。そういうことで正門から出ることを断念しまして、正門の近くのさくから脱出しようということを試みたのであります。その二人のうちの一人が脱出しまして、他の一名の脱出を援助しておったところをピケ隊が見つけまして、懐中電灯をもってそれを照明した。そのときそこを通行しておりました憲兵が、これは施設内への不法侵入ではないかというように誤認をしまして、他の憲兵に応援を求める意味において合図のための発砲を上空に向かってしたということでございます。このようなことでございまして、別に組合活動を威嚇するとか、あるいは組合員を威圧するために発砲したというふうには考えておりません。
  60. 河野正

    ○河野(正)委員 実は今長官の答弁を聞いて非常に不可解に感じましたことは、今まで、この米軍の基地報道部の発表によりましても、あれはアメリカ兵が無断外出をしてそうして脱出を試みたので、その脱走兵を逮捕するために威嚇射撃をしたのだ、実はこういうふうに基地報道部も発表いたしておりまするし、私どもも県の当局からそういう報告を受けているわけです。今、長官の報告によりますと、私どもが当時言っておりましたように、基地従業員でピケ破りの諸君であったということになりますと、これはもう全く事情が相反しておって、アメリカ軍の社会一般に対しまする報道も捏造の報道である、それからまた、県当局に報告されましたと思いますが、県当局が理解しておりまする点につきましても全く誤った内容であるということになりますと、私どもはどっちを信用していいかわかりませんが、特に今のように、私が先ほど指摘しましたように、当初から私どもは、このピケ破りの諸君が脱走しようとした、そういうことで今までいろいろと責任を追及してきたわけですけれども、アメリカ軍の方も県当局の方も、あれはアメリカの脱走兵である、こういう報告を受けてきた。私どもが最初から追及いたしておったような内容であるというようなことになりますると、これは非常に重大な問題だと思いまするが、今長官がここで、国会の席上で答弁された内容というものが真相であるのかどうか、この際一つ明らかにしていただきたい。
  61. 林一夫

    ○林説明員 ただいま私が説明いたしましたのは、県からの報告に基づいて申し上げたのでございます。これが真相であると私どもは考えております。
  62. 河野正

    ○河野(正)委員 ところが県の方は、私が先ほど報告を申し上げましたように、あれは脱走兵だというような報告を受けているわけです。そこで、その真偽は別としても、時間がございませんからいずれまた別な機会に明らかにするといたしましても、当初私どもが言っておりましたように、あれはピケ破りだという私ども考え方が間違いではなかったということをここで確認できたことは、私どもの要求というものがいかに正当であったかということになるわけです。  そこで、私が特にこの問題を今回取り上げて参りましたのは、それは、今までもしばしばいろいろな問題をめぐりましての実力行使がございました。ところが、福岡の板付基地においては、過去二回にわたって争議中に、ストライキ中に組合の赤旗をアメリカの兵隊が破って問題を起こした。そういう事例が過去二件ございます。この問題も国会でいろいろと追及いたしたのでございますが、三度目の正直という言葉がございますけれども、今度は、今申し上げまするようにピケ中に発砲するというようなことで、どうもこういうような傾向が全国的にあるのかどうかわかりませんけれども、少なくとも板付基地においては、今申し上げまするように組合に対するいやがらせ、あるいは威圧、あるいはどうかつ、こういう行為というものがしばしば繰り返されてきた。そこに私は非常に大きな問題があると思う。そこで、今度の発砲もきわめて重大でございますけれども、単に今度の発砲に限らず、今までもストライキ中にアメリカの兵隊が組合旗を破り、とうとう軍司令官が陳謝をして赤旗を組合に贈呈するというようないきさつもございました。そういうようにたびたびそういうことが繰り返される、一体そういうことでいいのかどうか。どうも私は、アメリカ軍の組合に対しまするところの認識というものが非常に誤っておりはせぬか、そのために繰り返さないでいいような基地関係の紛争というものが起こってくるのではないかと思う。そういうことになりますというと、この問題は、今度の問題に限らず、事は重要な要素を持っている、かように私は理解するわけです。そういう意味で、今度のピケ中における発泡というものはきわめて重大な意義を持っておるというふうに私は考えます。この、過去のストライキ中における、組合の象徴でございまするところの、組合のシンボルともいわれておりまする組合旗を兵隊が破るという問題と今度の発砲事件ということとは、一連のアメリカ軍側の底流として、私どもはその問題は軽視することができない。そういう一連の事象、現象というものをどういうようにお考えになっているのか、またそれに対しては、今後アメリカ軍に対してどういう処置をとられようとするのか、その辺を一つ明らかにしていただきたい。
  63. 林一夫

    ○林説明員 今回の発砲事件につきましては、真相は先ほど申し上げました通りでございまして、発砲したのは組合員を威圧するというような意図のもとにやっているのではないのでありまして、先ほども申し上げましたように、不法侵入と誤認しまして、他の憲兵に連絡する意味において、その合図として発砲したのであります。もしこれが御指摘のように組合活動あるいは組合員に対する威圧、威嚇のための発砲、あるいはその他の行為であるというようなことがはっきり確認できるのならば、これは当方としましても米側に厳重に注意をいたすつもりでおります。現在のところ、この事案は、先ほど申しましたような理由によって発砲したものと考えますので、別に組合に対する不当な威圧あるいは威嚇行為とは考えておりません。さよう御承知を願いたいと思います。
  64. 河野正

    ○河野(正)委員 どうもそういう認識をされるという政府側の姿勢に私は非常に大きな問題があると考えております。そういう姿勢というものが、今日まで非常にもたもたいたしております給与体系の問題の解決の前進をはばみ、あるいはまたPOLにおきます首切りの解決の前進をはばんでいる。私は、政府のそういう姿勢が非常に大きな問題であろうと考えます。と申し上げますのは、先ほど申し上げましたように、なるほど今度のピケ地における発砲というものはどういう理由であったかわかりません。しかし、過去においても、先ほど申し上げましたように、スト中にしばしばアメリカ軍の悪意によって起こってきた紛争がたび重なっておる。そういうことから関連いたして参りますと、どうも今度の場合も、今私が指摘をいたしましたような、どうかつ、威圧が行なわれたのではなかろうか。私も現地の事情をつぶさに調査をいたして参りましたが、ふだんは基地の出入りは非常に厳重である。ところがストライキが始まりますと、どうもピケ破りの諸君が基地内に出入りしやすいように、警備がピケ破りの諸君に都合のよいようにできておる。たとえばゲート以外の周辺では、ピケ破りの連中がどんどん自転車、オートバイを置いたまま鉄条網をくぐって入っておる。ピケ破りをいかにも歓迎するかのような警備状態である。そこで自転車やオートバイを捨てておりますから、それを拾得物として警察に届けるというふうな事情もあるようでございますけれども、今度の場合のいわゆる二名の従業員にいたしましても、どうもMPと打ち合わせをして出たのではなかろうか。ピケ隊員が発見をして誰何をいたしたところが逃げ込んだ。逃げ込んだら発砲したわけですから、大体従業員二名が脱出しようとしたところに向こうの警備員もおったのではなかろうか。そうすると、今度の発砲事件というものは単なる発砲ではない。どうも底意があるのではなかろうか。そのことを、先ほどの、今日までの再度にわたりまする争議中に赤旗を破る、こういう事件とも関連をして考えざるを得ない。真偽はわからぬといたしましても、そういう印象を持たざるを得ない。そういう印象を持たざるを得ないという点については、どういうふうにお考えになりますか。   〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕
  65. 林一夫

    ○林説明員 この問題につきましての私ども考え方は、先ほどからるる説明申し上げた通りでございまして、米側が特別に威圧、威嚇をするというような意図をもってやったのではないと私どもは考えております。もちろん、このような事故が起こるたびに当方では詳細に調査いたしまして、そのような不当な意図のもとに行なわれておるということがはっきりするならば、そのときは厳重に警告もし、注意を、いたしたい、こういうふうに考えております。
  66. 河野正

    ○河野(正)委員 その点は、私が申し上げるように、どうも単なる発砲ではないというふうな印象を強く受けるわけです。そこで今長官も言われたように、十分調査をなしてそういう傾向が強い場合には、厳重にアメリカ側に対して警告を発してもらいたい。警告を発するとおっしゃいましたから、そういうことで善処を願っておきたい、かように考えます。  そこで、先ほど申し上げましたPOLの解雇は単純な解雇ではなくて——長官は、直接軍事行動に関係のある部署については漸次軍人を入れかえたいという理由でありますけれども、私どもはそういう単純な理由として受け取りがたい、そういう理由の二、三について、ここで御指摘を申し上げて所見を伺って参りたい、かように考えます。  そういう意味で第一にお伺いをしておきたいと思います点は、今回のPOLの馘首が成規の手続をとってやられた行為であるのかどうか、この点についてまず伺っておきたい。
  67. 林一夫

    ○林説明員 成規の手続を経て行なわれております。
  68. 河野正

    ○河野(正)委員 私は、またここにも一つの問題があると思う。というのは、私どもは、今度の通告は必ずしも成規の手続をとっておらないというふうに理解しておる。それを長官はむげにも成規の手続だとおっしゃるとするならば、私はそれを反駁する理由の一、二をあげてみたい、かように考えます。  そこで、その理由として申し上げてみたい点は、労務基本契約の人員整理の項を見て参りますと、この人員整理は最小限度にしなければならぬ、そのために両当事者は、人員整理が予想される場合には、その人員整理を最小限度にとどめるためにできるだけ調整を行なうものとする、こういうことに労務基本契約では明示をされておるわけでありますが、それでは一体どういう事前調整が行なわれたのか、この辺が私は問題だろうと考えます。その点に対するお答えを願いたい。
  69. 林一夫

    ○林説明員 ただいま御指摘の事前調整でございますが、これは県において事前調整をいたしまして、当初十名整理というところを七名に縮小いたした、このような事前調整は十分県においていたしておるのであります。
  70. 河野正

    ○河野(正)委員 そういう認識の欠けておるところに私は非常に問題があると思うのですが、事前調整を行なったとするならば、この解雇を正式に通告いたしまする少なくとも前日までに、その解雇いたします。名の職種あるいはまた職種に基づきまする人員数、そういうものが十分明らかにされなければならぬ。ところが、数は示されましたけれども、職種についても、また職種に基づきまする人員についても一向明示されておらぬ。そういう格好で、ほんとうにこの事前調整がなされていると理解されるのかどうか。もしそのことを事前調整がなされたというように理解されるとすれば、私は日本政府に対して非常に大きな問題があるというふうに考えるのであります。そこで、そういうことを、この労務基本契約で明示されておりまする事前調整というふうに御理解になっておるのかどうか、ここで明らかにしていただきたい。
  71. 林一夫

    ○林説明員 ただいまの職種別の人員の指名でございまするが、四十五日以後において職種別の人員を通告いたしました。
  72. 河野正

    ○河野(正)委員 そばの入れ知恵でお答えになるのですから、そういう御答弁しかできぬかと思いますけれども、事実はそういうことではない。今私が指摘いたしますように、七名の職種、数、あるいはまた、いつから馘首するかという期日、そういう点も明らかにされておらぬ。そういう内容がわからぬ事前調整というものがありますか。私はここで長官に問題としたいと思う点は、具体的な内容については労管でというような話でございましょうが、ただ、そういうわけもわからないような格好にしておいて、そうして労務基本契約の中の事前調整というのはどうやったのかと追及されますと、事前調整はいたしましたと言う。ところが、したかどうか中身を検討いたしてみますと何もしておらぬ。ただ、したと言う。したと言うならしたで、それ相応の根拠がなければならぬ。ところが、その根拠というものは一つもない。そういうことをさして事前調整と言われたならば、労務基本契約というものは全く絵にかいたもちであり、から念仏であって何ら効果がない。今日まで、この労務基本契約についてはいろいろ問題がございます。日本の従業員側にとって非常に不利だということで、この委員会におきましても、今日までいろいろ追及が行なわれて参りました。ところが、契約そのものにも非常に不備な面があると同時に、今申し上げますように、日本側の政府自身の姿勢においても今のような姿勢でございますから、不利な契約で、しかも姿勢が悪いわけですから、そういうことで日本の従業員の権利が守られるはずがない。そういうことじゃ困る。やはり日本政府の姿勢というものは正してもらわなければならぬ。これは相手がございますから、できることとできぬことがございます。私どもは、そうむちゃを言う気持はございません。ございませんけれども、今申し上げましたように、何もやらぬでおいて事前調整をいたしましたと言う。やったらやったで、根拠がなければならぬ。その根拠というものはきわめて希薄である。そういうことを称して事前調整が行なわれたというふうに理解される政府自身の姿勢に、私は非常に大きな問題があろうと思う。そういう姿勢については、直ちに直してもらわなければならぬというふうに考えまするが、その点はいかがでございますか。
  73. 林一夫

    ○林説明員 今回のPOLの整理につきましては、県において、ただいま説明いたしましたように事前調整をやっておるのでございます。なお十分調査いたしまして、足らない点がございましたら今後十分注意いたしたいと存じております。
  74. 河野正

    ○河野(正)委員 私が申し上げたのは事実でございますから、いずれ御注意を願うことになろうと思いますけれども一つ厳重に注意をすると同時に、政府の姿勢を正していただきたい。  それから単純な解雇でないという次の理由を申し上げます。報復的な解雇であるという次の理由を申し上げます。その理由の一つとして、特殊手当の問題があるわけでございます。この特殊手当が十月から支給されないようになりまして、そのために二千円から三千五百円の収入減となりました。それではなぜこの特殊手当を支給しないようにしたのか。私は、そういう手当を支給しないということになった点については、どうも報復的なねらいがあると思う。あるいはまた、先ほど長官が言われたような単純な理由としては解釈しがたいという理由の一端としてあげているわけでございますが、その特殊手当についてはどういうようにお考えになっておりますか、一つ伺っておきたい。
  75. 林一夫

    ○林説明員 特殊手当につきましては、ただいま軍と労管とが協議中でございますが、そのうちにはっきりいたすつもりでございます。
  76. 河野正

    ○河野(正)委員 目下交渉中である事実も承知をいたしております。ところが問題は、交渉されます政府の姿勢だと思います。そこで私は非常に具体的な論拠を提示して、そうして政府のお考えを承りたいと思います。  それは、御承知のように、この労務基本契約におきます諸手当の問題がございます。この諸手当の中の特殊作業手当を受けまする受給資格の決定についてでございますが、労務基本契約によりますと、その資格の決定については次のような点が明示をされております。その点を明らかにして参りますと、「特殊作業手当の受給資格の決定は、その都度両当事者間のいずれかの一方の要求に基づき、双方の合意によって行なわれるものとする。」それからさらに、決定の基準については次のように明らかにされております。「受給資格を決定する基準は、次に定めるところによる。ただし、両当事者のいずれかの一方の要求に基づき、調達庁長官及び契約担当官の合意により、さらに基準を追加、決定することができるものとする。」このPOLにおきます特殊作業手当というものは、今申し上げましたような諸手当の項の決定の基準に基づいて実は昭和二十八年に追加、決定されたものでございます。それで両当事者の合意によって追加、決定されたそれに対して、一方的にその権利を剥奪するということが不当であることは、これはもう労務基本契約によっても明らかでございます。それでもうこれは交渉の余地はないと私どもは思う。それにもかかわりませず、これをもうすでに十月から剥奪したということは、どうも今度の問題を報復的に取り扱っておるという一つの論拠として私ども考えているが、そういう点についてはどういうふうにお考えですか、一つお答えをいただきたい。
  77. 林一夫

    ○林説明員 特殊作業手当につきましては、ただいま申し上げましたように、目下軍と地元労管とが協議いたしております。当方としましても強い態度で話を進めており、近いうちにはっきりいたそう、このように考えております。
  78. 河野正

    ○河野(正)委員 この決定をする場合には合意をする。この場合には、毒物を取り扱うということで合意によって追加、決定をされた。それを一方的にやったということでございますが、そういう権利を剥奪する場合には、やはりこの労務基本契約によりますと合意によらなければならぬというふうに私どもは理解をいたしますが、その点についてはどういうようにお考えですか。
  79. 林一夫

    ○林説明員 特殊作業手当の設定、剥奪等につきましては、軍と政府が協議をしなければならないということになっておるわけでございます。その規定に基づきまして、現在労管と軍とが協議をいたしておる次第であります。
  80. 河野正

    ○河野(正)委員 合意によって決定をされるということで実は決定をされたわけですね。それを取り消した場合ですから、その取り消す場合にも、当然労務基本契約の明文によりますと、合意によって取り消さなければならぬというふうに理解いたしますが、その点はどういうふうに御解釈なさいますか。
  81. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 答弁の前に河野君に申し上げますが、最初から一時半という約束で、まだ残っておられる方もありますので、一つ結論に入って下さい。
  82. 林一夫

    ○林説明員 ただいま申し上げましたように、特殊作業手当の取り消しというようなことにつきましても、両者の協議が必要でございます。地元の軍並びに労管との意見が一致しない場合には、さらに上部機関に持ち上げて、そこで協議をするということになる次第であります。
  83. 河野正

    ○河野(正)委員 時間もありませんから、簡単でけっこうでありますが、合意によるべきだとお考えですか。どうですか。合意によるかよらぬか、それだけ一つお答え願いたい。
  84. 林一夫

    ○林説明員 ただいま申し上げましたような手順によりまして上部機構に持ち上げ、そこで協議して、やはり意見の一致を見るということが必要であると考えております。
  85. 河野正

    ○河野(正)委員 合意によるというふうにお答えでございますから、その点は了承いたします。  そこで、時間がございませんからだんだん結論に行きたいと思いますが、もう一つ、今度の首切りが単純な首切りでない、報復的だという理由の一つをあげてみたいと思います。それは立ち入り禁止の問題があるわけですが、今度の馘首が行なわれますPOLの職場関係で、十四名の従業員がおるそうでございますが、その中の七名が馘首の通告を受けたと同時に、その職場については、他の七名も立ち入り禁止が行なわれた。もちろん、それについては直接軍事上関係があるというような御答弁があると思いますけれども、そういうことでは納得できない理由がございます。時間がありませんから私の方から申し上げますが、他の修理工とか機械工とか、そういうものはその職場に出入りをしておる。ところが、この同じ職場の七名については立ち入り禁止をしておる。これは軍事上のいろいろな問題があるから日本人の従業員は全員出入りできないということであるならば、それはそれで納得する理由になるかと思いますけれども、ところが、その職場だけの残された七名についての立ち入り禁止をしておる、こういう納得のできない理由がもう一つあるわけです。こういう点についてはどういうようにお考えになりますか、一つ承りたい。
  86. 林一夫

    ○林説明員 ただいま御指摘になったような事柄の実態は、実は私まだ詳細に承知いたしておりません。詳細に調査いたしまして、後日また御報告いたします。
  87. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで最後に締めくくりとしてお尋ねを申し上げ、そして労働大臣からも一つ所見を承りたいと思いますが、それは、今申し上げますように、調達庁長官の方では非常に単純な理由によって解雇の通告をしたというようなお答えでありました。   〔小沢(辰)委員長代理退席、委員長着席〕 ところが、今私が三、四の理由を申し上げましたが、納得できない理由がある。単純な首切りだというふうに納得できない理由がある。そういうことは、昨年の暮れ、たまたま全国における重要拠点だ、重要職場だと指定をした、そういう意味からどうも軍側が報復的に今度の首切り、解雇を通告したのではなかろうかというふうに考えなければならぬような理由がある。と同時に、もう一つ申し上げておきたいと思いまする点は、この基地関係では、約三千名近い従業員がおるわけです。しかも、十二月には停年退職で退職する方が十数名おる。あるいは欠員もございます。さらには、軍側としては人員要求書を出しておりますが、その人員要求書によりましても、十数名の増員が必要だといわれておる。三千名の従業員がおって、そうして十二月には停年退職が十数名出てくる。欠員がおる。また軍側から十数名の人員が必要だという人員要求書が出されておる。そういう事情があるわけですから、何も改まって七名の解雇を通告せぬでも、その補充は十分できるわけです。にもかかわらず、あえて昨年の暮れ、全国の基地における重要拠点だ、重要職場だと指定しておるところに、ことさらにわずか七名の首切りを通告してきたというところに非常に大きな問題があると思うのです。そういう理由から今度の解雇は単純な解雇ではない、不当な弾圧だ、不当労働行為だ、報復手段だというふうに私どもは考えたわけです。そういうような事情でございまするので、どうも今回の首切りについては納得できない。いろいろございますけれども、時間がございませんから、私はそれで結論を出したいと思います。  そこで、そういう一切の事情を聴取されて、今後政府当局は大いに姿勢を正してもらう。姿勢を正す中で、このPOLの問題についてもそういう解雇であると同時に、その背後におきます本質的な考え方についての追及を行なって参りましたが、そういうような点を十分御理解願わぬと、今日問題になっておりますし、後ほど島本委員からもいろいろ言われるでありましょうけれども、給与体系の問題だって思うように解決できない。基本は同じです。給与体系の問題だってこのPOLの問題だって、基本は同じだと私は思う。そういう意味で、私は、調達庁長官としても防衛庁長官としても、政府として姿勢を正すの要があるだろうと思う。そういう点について、一つ長官の明快な御答弁を最後にお願いしたい。と同時に、労働大臣は、今までいろいろ私が申し上げましたような事情のもとに不当労働行為、組合弾圧、不当介入というような傾向があるような印象を大臣も受けられたと思う。こういう労使の労働慣行については今後大いに改善するように、大臣からも御努力願わなければならぬと思うが、そういう点について一つ大臣から最後にお答えをいただきたい、かように考えます。
  88. 林一夫

    ○林説明員 今回のPOLの七名の整理につきましては、その理由は、先ほど申し上げましたように、要するに、軍の活動に直接関係する作業に従事しておる日本人の従業員の一部を軍人にかえるという方針に基づいて行なわれたということは、私ども信じております。御説のような組合に対する不当弾圧行為として、報復行為としてとのような整理を行なったというふうには考えておりません。けれども、私どもとしては、こういうような事態には十分注意しましてその真相を把握し、よく事情調査しまして、もしその間において不当の点がありますれば、そのつど十分に軍側に注意をいたしたい、このように考えております。
  89. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 米軍によりまする解雇処分の行なわれました動機につきまして、明確でないというようなお話がございました。私もその点をよく承った次第でございます。これに関連いたしまして、日本政府において、こうした問題について姿勢を正すべきではないかという御所見については同感でございます。私どもといたしましても、労働の保護という立場から努力をいたしたいと思います。
  90. 秋田大助

    秋田委員長 島本虎三君。
  91. 島本虎三

    ○島本委員 大臣の時間だけは制限されておりますが、私の場合は、ほんとうは大臣と防衛庁長官と林長官の三人だけはぜひいてほしい。それでないとこの問題の解決になりませんので……。これは私どもの方では前からの懸案でありますが、公務員方式による新賃金体系案についての解決が何のためにできないのか。それに対して今まで言っていた答弁が絶対間違いなかったのか。われわれの方としてはもう解決しておったはずだというのに聞くところによりますと、本日また全駐労では重大な決意をする段階にあるということも聞いているわけです。こういうようなことを見ます場合に、私ども、なぜこういうようになるのか、はなはだわからない点がたくさんある。  それでまず聞きたいのですが、今までの交渉の過程、何のために妥結できないのか。この公務員方式による新賃金体系案に対して、組合と十分なる協議を遂げなければならないし、遂げておると思うのです。こういうような点についての経過をまず長官から承りたい。
  92. 林一夫

    ○林説明員 この新給与体系の切りかえの問題でございまするが、これは来年の一月一日から実施するという方針のもとに、今その給与体系の内容につきまして組合と協議をいたしております。組合としましては、御承知のように、この管理者の提示した案につきまして二十数項目にわたる修正要求を出してきておるのであります。その修正要綱につきまして、現在組合と協議を進めております。組合と協議し、さらに修正を要求すべきものについては米側と折衝しまして、さらにいいものにしようということで努力をいたしておるような次第でございます。この組合に提示しました管理者案につきましては、十分協議を進めていくという態度は変わりはないのでございます。現在十分協議をいたしておるのであります。また、一方において米側とも折衝を続けておるということでございます。
  93. 島本虎三

    ○島本委員 十分協議をしているならば、話し合いによって、これはもう最終的に結論の出る段階まで来ているのじゃないかと思う。おそらくそれに対しては、口ではそのようなことを言っても、具体的にはそういかない点があるから話が進まないのじゃないかと思う。かりに管理者間で決定したことであるからこれに服せだとか、また全体のバランスがくずれるから部分的な修正はできないとか、管理者側のやり方もあるのだから組合の要求はのめないとか、また、既得権剥奪は法律違反ではないからこれは何でもないとか、こういうようなことにこだわる場合には話が進まないということは当然わかる。こういうような事態は全然なかったのですか。今でもまともに話し合いが進んでいるのですか。進んでいないとすればどのような点で進んでいないのですか、具体的にお話し願いたい。
  94. 林一夫

    ○林説明員 この切りかえ案につきましては、現在組合と協議をいたしておるのであります。協議は、この案をまとめるように前向きの姿勢で協議をしております。米側との交渉も、やはりよきものにしようという前向きの姿勢で折衝いたしておるのであります。そういう現状でございます。
  95. 島本虎三

    ○島本委員 従って、今のような答弁は、おそらく長官は私に十回ぐらいしたのじゃございませんか。前向きの姿勢、誠心誠意やっている、こういうような言葉で、おそらく私に十回ぐらい答弁していませんか。私はそう思っている。ところが、依然として進んでいないから、その内容はどうなんだというのが私の質問なんです。うしろ向きに交渉しているなんということは、私は考えておらないわけなんです。従って、前向きにやっても進まない理由はどこにあるのだということなんです。私の方としては、もっともっとこれに対して具体的に少し進めますけれども、労働大臣に一つだけこの点について伺っておかなければならない点があるのです。私どもの方では、この問題についていろいろ全駐労が重大な決意をしているもこういうようなさなかに、これを解決するために労働大臣を交えて話し合いをしたことがあるわけですが、その場合に、やはり米軍と日本政府との共同管理である場合にはいろいろなもんちゃくも起きやすいから、従って、軍と共同管理にしないで政府が自主的にきめられる体制をつくった方がいいし、そうしなければならないと思いますということが労働大臣の考えとして述べられたので、私どもは、こういうような体制でいったならば、林長官を先頭にしてもうりっぱに米軍と対等の地位に立って、また米軍がやらない場合には、日本政府が責任を負って、こういうような話し合いはとっくについていたのじゃないかと思うのです。しかしながら、依然として前向きだ、誠心誠意だと言われながら、何ら話が進んでいないということになりますと、これは労働大臣としては誠心誠意——私はあなたの人格を崇拝していますから、こういうようなことは、おそらく詭弁ではないということも私は信じています。はたして今は、こういうようなことが自主的にきめられる体制であるのかないのか、これは大臣いかがでございますか。
  96. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 現在の制度といたしましては、なかなかむずかしい点があるのじゃないかと思います。
  97. 島本虎三

    ○島本委員 以前から、賃金その他労働組合の問題については日本の国内法によるということは、労働省からいろいろ答弁があったわけです。しかし、国内法によれない部分も出てきているわけです。そういうような場合でもむずかしい点があるということになって、そのまま引き下がっておるということになりますれば、法を守り、法を実施するその最大の責任者が、法の前にすっかり萎縮してしまっていることになるわけです。これは私どもは、そういうふうにはとりたくはございません。ことに、もう少し具体的に申し上げておいて、話の中で進めていきたいと思うのですが、時間の関係もあると思いますから、一つだけ先に摘出いたします。  それは、この話の中で、これは林長官の名前で「新給与体系問題にかかる仲裁申請について」というのが全駐労に発せられております。それによると、これは雇用に関する経費は、米国の政府または米国歳出外資金が負担するという特殊事情もあり、労働委員会の仲裁に付託することは遺憾ながら同意できない、こういうようにはっきり答弁しているわけです。それは間違いないと思う。そういたしますと、こういうような紛争が起きてしまったあとに国内法によってこれを行なうとしても、労調法の適用も受けない、全部アメリカの意思の通りに従うのだ、こういう考えだとすると、駐留軍は国内法によって規制されるという言葉が直ちにうそだということになってしまうのです。この通達は林長官から出されておるはずですが、これは林長官、今後はやはりこれと同じ立場ですか。この点は長官からはっきりしてもらいたいし、そのあとこれでいいのかどうか、大臣の方から御所感を承りたいと思います。
  98. 林一夫

    ○林説明員 この新給与制度の問題につきまして、組合の方から、中央労働委員会の仲裁裁定を申請するから同意する用意があるかどうかという照会があったのです。この照会に対しまして、駐留軍従業員の雇用に関する経費が、全額米国の政府または米国の歳出外資金が負担するという特殊事情もあることであるから、遺憾ながら同意できないということを返答いたしたわけでございます。この駐留軍労務者雇用に関する経費というものは、御承知のように、現在全部米側がこれを負担しておるのでございます。そのような関係で、調達庁といたしましては、米側に折衝する場合において、経費の問題についてはなかなか当方が要求する通り意見が一致しない場合があるのでございます。こういうような特殊事情下にありますので、現在行なっておりますところの賃金体系の切りかえの問題につきましても、十分米側に説明し、説得をするのでございますが、やはり経費の持ち主である米側と、どうしても意見の一致しない点があるわけであります。そういうようなことで現在米側と折衝を進めておりますが、まだ一致しない点があるというような結果を来たしておるようなわけでございます。この切りかえ案につきましては、組合と十分協議し、また米側と今後十分折衝して早く解決したい、こういうふうに考えております。
  99. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 現在の労働関係調整法の運用といたしましては、防衛施設庁のような調停拒否の回答が出される場合もやむを得ないと思います。
  100. 島本虎三

    ○島本委員 それでは長官に立ち入ってお伺いいたしますが、駐留軍労務者は労調法の適用除外であるというふうに、はっきり解釈しなければならないのですか。
  101. 林一夫

    ○林説明員 労調法の適用はございます。
  102. 島本虎三

    ○島本委員 適用があるということは、はっきりしているのです。除外であるなんてどこにも書いてない。それだのに、除外と同じようなことしかできないでしょう。そういたしますと、調達庁は雇用主としての自主性を持たない米軍の出先機関だ、こういうようなことになるのですか。はっきり言って下さい。
  103. 林一夫

    ○林説明員 調達庁は、法律上の雇用主としての立場にあるわけであります。米側の出先機関ではございません。
  104. 島本虎三

    ○島本委員 従って、労調法の適用除外ではない、はっきりこれを受ける立場にある。出先機関ではない、自主性も持っているのだ、こういうようなことも、あなたの答弁によって以前からはっきりしていることなんです。そういたしますと、米軍に対して今まで対等にあなたが交渉しているという、その内容というものはどこにあるか、おそらくあなた自身、はっきりしたものを持たないでやっているから、言葉は悪いけれども、中間的なあっせん役くらいにしかならないから、こういうような質問が出るのじゃございませんか。自分ではっきりした信念を持ってやって、対等なんですから、それを言ったって差しつかえないじゃございませんか。これを持たないからこそ、今のような解決ができないままに放置されるのです。おそらく、今はっきりあなたが言ったように、調達庁は雇用主としての自主性を持たない米軍の出先機関ではない、はっきりした意思を持っております。こういうようなことになっている。それから労働関係においては国内法の適用を受けます。これもはっきりしている。そうだとすると、これに対して米軍の方が無理なのか労働組合の方が無理なのか、あなたの方ではっきりした考えがあるはずだと思うのです。なしに、ただ黙っていたって遷延するだけですから、はっきりした考えを持って交渉に当たっておりますか。言葉は悪いけど、ただ単にあっせんする程度で歩いておるだけなのか、メッセンジャー・ボーイの役しか果たしてないのか、まことに私は不可解千万だ。あなたはどうなんですか。
  105. 林一夫

    ○林説明員 いつも島本先生に御指摘を受けるところでございますが、法律上の雇用主として自主的な考えのもとに、対等な立場に立って米側と堂々と折衝はいたしておるのであります。ただ、この駐留軍労務者雇用に関する経費というものは全部米側負担であるということで、そのような経費のことにつきましては、やはり双方が折衝し、協議してきめるということになっております。その折衝につきましては、当方の自主的な意見を述べ、堂々と折衝いたしておるというわけでございます。
  106. 島本虎三

    ○島本委員 そうしたならば、そういう話し合いがはっきりつくまでの間は、一方的にこれを実施しないということなんですか。
  107. 林一夫

    ○林説明員 この切りかえ案につきましては、十分組合と協議しまして調印に持ち込みたい、こういうふうに考えております。
  108. 島本虎三

    ○島本委員 協議未成立の場合は、一方的にこれを実施しないということなのかということなんです。
  109. 林一夫

    ○林説明員 十分協議しまして調印するということでございます。
  110. 島本虎三

    ○島本委員 これは労働大臣、どういうふうに解釈したらいいのでしょうか。今の答弁は、協議ができない以上、一方的に実施しないというふうに解釈しておきたいのですが、大臣、これはそういうふうに解釈していいですか。
  111. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私としては文字の通り承っておりまして……。
  112. 島本虎三

    ○島本委員 私の文字の通りですか。
  113. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 いいえ、長官の言葉につきましては、長官のお答えの文字の通りに承っております。
  114. 島本虎三

    ○島本委員 私の考えに対してはどう思いますか。協議が成立しない以上、調印は急いでしないんだというふうに私は今の答弁からしたので、そうですかと言ったら、一月のそれまでに十分話をして調印するというように、うらはらなんです。従って、私の言う通りに、協議が成立するまでは調印しないんだとはっきりしている、そういうような意味に私は解釈しておいていいか。長官の意思はわかった、じゃ、裏の方の私の意思はわかりますか、大臣。
  115. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 裏の点につきましては、はっきりした長官のお答えがなかったように承っております。
  116. 島本虎三

    ○島本委員 そこなんです。大臣もこの問題は知っておられる。これは最後には形式だけは整えて協議するようにしておいて、協議未成立の場合、一方的にこれを実施するという強力なかまえがあるから、今のような言葉になるんじゃございませんか。そういうような考えで今あなたは答弁したのですか。
  117. 林一夫

    ○林説明員 私が先ほどから申しておりますのは、十分協議いたしまして調印するということでございます。現在も協議を進めておる段階でございます。
  118. 島本虎三

    ○島本委員 これは水かけ論にならないようにしなければならないのですが、賃金の切りかえ案によると、組合の方では、千円だけ下がるということははっきり言っているでしょう。長官の方では、千円の賃下げにはならないというふうに言っているでしょう。お互いにこれはもっともっと話をしなければわからない問題を含んでいるはずなんです。従って、こういうような問題について話し合いを十分つけた以後でなければ実施してはいけないし、されないはずなんです。そうでしょう。しかしながら、この話が十分つかなくても、一方的に、協議したのだからこれを実施するということは、形式だけは民主主義を唱えながらも、その裏には、ファシズムの元凶を隠しているようなものじゃございませんですか。ですから、そうじゃなくて、ほんとうに誠心誠意話をするのだ、こういうようなことであるならば、私も話はわかるんですよ。千円切り下げになるのだ、これはならないのだとあなたは言うのでしょう。もしなるのであるならば、何らかの形でこれを補償するからそういう心配は絶対ないんだと言えば、全部安心するでしょう。それがないままに、一方的にいって強行しようとするから心配しているのでしょう。そのために、きょうまた全駐労は重大決意をせざるを得ないというところまで追い込まれているでしょう。それは全部あなたの詭弁によるものじゃございませんか。今のようにして、千円切り下げである、あなたはそうではないと言う。そういうようになった場合には、具体的に他の方法によってもそれを補償しますから安心なさいというように言えば、問題ないんです。こういうような点については、あなたはどうなんです。
  119. 林一夫

    ○林説明員 この切りかえ案の内容につきましては、組合にも詳細に説明をいたしまして、十分協議を進めておるわけであります。十分協議を尽くして調印をするという手順でございます。
  120. 秋田大助

    秋田委員長 速記をちょっととめて下さい。   〔速記中止〕
  121. 秋田大助

    秋田委員長 速記を始めて下さい。
  122. 島本虎三

    ○島本委員 こういうふうにして大事な要素もはらんでおるわけなんです。従って、私の方でもいろいろ危惧しておる点は、今までの質問やいろいろな答弁で、だいぶ大臣も具体的にわかってきていると思うのです。しかし、あくまでもこれは双方対等な立場で交渉し、労使関係については日本の国内法の適用によるということは、はっきりしていることなんです。ところが、国内法の適用によるということははっきりしていながらも、その内容としては、米軍の干渉という言葉が今までありますけれども、米側の都合によって、日本が単独できめられないような状態に追い込まれてしまっている。しかしながら、そういうような場合には、日本政府がかわってこの措置をしなければならないし、政府が自主的にやるとするならば、そういうような腹がまえと、そういうような責任において全駐労に対処しなければ、この問題の解決にはならないと思っている。今のような答弁では、林長官のような考え方では、言葉が悪いですけれども、永久に双方を取り持つ茶坊主的な役目しか果たさないから、全然解決の方に進まないのです。これは大臣も十分知っておられると思う。そうだとすると、先ほどあなたがはっきり言ったように、軍、それから日本政府の共同管理にしないで、政府が自主的にきめられる体制をつくるというようなことは、あと一歩のところでできるじゃございませんか。ほんの一歩です。その一歩というのは何だ。米軍がイエスと言わない限りは日本政府が責任を持つ。責任を持つ代表は内閣総理大臣であるけれども労働関係は、大臣、あなたなんだ、これではっきりするのじゃないかと思うのです。林長官はそこまで言わないから、この人は何だかわかるようなわからないようなことを言って、前向きだ、うしろ向きだ、誠心誠意だ、何だかんだというようなことを言って逃げて歩いている。これは米軍の態度がはっきりしない以上きめられないのです。これで、はたして対等だと言えますか。完全にあなたは従属している。言葉は悪いけれども、それと同じ結果になってしまっている。これでは労使関係は対等とは言えないと思う。私は、ここにおいて大臣には重大な決意を持っていただかなければならないと思う。この点は自主的な解決をはかる、またはかる態勢をとらなければならないというふうに考えておった労働大臣も、今のままでは私は解決しないと思いますので、進んでこれを解決する方法について、まず大臣から所見を承りたいと思います。
  123. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 これは制度上の問題があるので、当面のこの問題の具体的な解決につきまして、直ちに理想的な議論もいたしかねるのじゃなかろうか。そこで、やはり現在の制度としてきまった軌道がございますので、この軌道によってすみやかに解決をはかりまするためには、先ほど来施設庁長官の言われたような線で進むほかはあるまいと思います。
  124. 島本虎三

    ○島本委員 従って、そうなりますと、この決定権を持っている軍側、またそれと対等の立場で雇用主として存在する日本政府、こういうようなものに対しては労働者は対等に考え、皆さんの方も、法の建前上その立場を固執しておられる。しかしながら、あくまでも軍側が不出席ということ、また軍側の意向がそうじゃないということで、交渉が形式的には成り立つけれども、実質的には何ら進展しないということは、形を変えた不当労働行為じゃないかと思うのです。これは大臣、どう考えますか。
  125. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 不当労働行為というわけではないと思います。
  126. 島本虎三

    ○島本委員 その問題についての考え方がまたちょっと残ります。私の方では形を変えた不当労働行為である、こういうように考えられても差しつかえないだけの理由が十分あると思っております。これを解決しなければならないのをしないのだ。また対等であると言いながらも対等じゃないのだから、そうなった場合の責任は全部日本政府にあるわけです。政府にあるのにかかわらず、依然としてそれをやらないでおることは、決して分裂支配だとは申しませんが、少なくとも、それを進んで解決するだけの努力はしていないということは、はっきり言えるのじゃないかと思います。私は、林長官がこういうような問題に前向きになっていると言いながらも、何らそれに対して進展を示さないということはまことに遺憾です。それと同時に、先ほど言ったように、双方協議の上で決定しなければこれを実施しないのだとはっきり言いながらも、そうでないかのような節も見えるということは遺憾ですから、言葉の通りこれは誠心誠意これに対して話し合いを続け、協議をし、これがきまったならば実施するのだということ、これもまずはっきりしておいてもらいたい。それと新賃金の切りかえによると千円だけ下がるのだ、あなたの方は下がらぬと言う、この点だけでもまだはっきりしない。これはもしそういうようなことがあったならば、何らかの方法によってこれを補てんするから心配ないのだ、この二点だけははっきりさしておいた方が、明日からのいろいろな交渉のためにはまことにいい結果になるのじゃないかと思っているのです。こういうような点を強く私は考えておいてもらいたいと思います。  公務員ベースによるところの問題や新賃金体系の内容の問題、それから中労委の裁定申請拒否のこの態度について、また同時に、管理者としての具体的な管理態度について、この三点について私はもう少し質問をしたい、こういうように思って準備しておりますが、そこまで入れません。まことに残念です。これについて一応所感を承って、私の質問はそれを聞いた上で保留にしておきたいと思います。
  127. 林一夫

    ○林説明員 この切りかえ案につきましては、十分組合と協議を尽くしまして調印いたしたいと思っております。その内容につきまして、組合からはいろいろの修正要求が出ております。その修正要求を取り上げて米側と折衝をしまして、その修正を得るように努力を続けて参りたい、こういうように考えております。
  128. 秋田大助

    秋田委員長 小林進君。
  129. 小林進

    ○小林(進)委員 大臣にお伺いしますけれども、いよいよILOの理事会の本会議で、十一月の八日に結社の自由委員会報告書を審議して、結社の自由委員会の、もう一度非常に強い失望をしたとの報告書が、そのまま理事会の本会議で採択になった。その採択になりましたものを、一体正式な通知を受けられているのかどうか承りたい。大臣にお伺いするのであります。
  130. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 政府の出先機関から公電を受け取っております。
  131. 小林進

    ○小林(進)委員 その内容を見ますならば、八十七号を批准するための約束を、やります。やりますということを日本政府が何回もしておきながら、なお実行してないことに対する非常な不信感がにじみ出ているわけでありますが、これに対して大臣は一体どのようにお考えになっておるのか。この理事会の決定、この日本政府に対する公約違反の追及をどうお考えになっておるのか。
  132. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 その点はまことに残念に思っております。従って、政府といたしましては、できるだけすみやかにILO条約を批准いたしまして、そして十分理事会に満足してもらえるような態勢を早くつくりたい、こう思っております。
  133. 小林進

    ○小林(進)委員 日本政府が約束を果たさないことが非常に遺憾であるということが一点。それから第二点には、これは厳格に期限を切ってある。すなわち次期の国会までにこの批准をおやりなさい、こういうことを繰り返し述べられているのであります。次期の国会までに一体おやりになるのかどうか。そういうすみやかだとか早目にだとかいう言葉でなしに、次期の国会にこれをおやりになるのかどうか、一つ責任ある御答弁を願いたいのであります。
  134. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 政府といたしましては、すみやかに批准をすべきである、こう考えております。
  135. 小林進

    ○小林(進)委員 ILOの理事会の決定の中には、いわゆる自由委員会のモリ正委員の陳述の中にもまた同じく述べられてありますけれども、次期の国会にこれを批准せい、批准してくれということがいわれているのであります。もし次期の国会にそれをしなければ云々という具体的な処分ではありませんけれども、具体的なそれに対する対応策までも述べられて、実に厳重なる通告が行なわれているわけでありますが、この次期の国会ということを履行せられる意思があるのかないのか、おやりになる考えがあるのかないのか、承っておきたい。
  136. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 希望はよくわかっておりますが、これに対しましては、なるべくそれに応ずるようにいたしたいとは思っております。しかし、まだ政府といたしまして方針を決定したというわけでは、ございません。
  137. 小林進

    ○小林(進)委員 ジュネーブにおける青木代表の談話の中にも、ILO理事会では、この批准を延期する点に日本政府に対して同情者はもはや一人もいない、日本の政府代表みずからがこういう発言をしている。世界の舞台において、こういう延期していることに対して一人の同情者もいない、青木代表が言っているじゃありませんか。そこまで追い詰められているにもかかわらず、まだあなたのようななまぬるい返事で、それで一体了承させることができるのか。これは政府の責任であります。その政府の責任の主体たる地位にあるものは労働大臣じゃありませんか。あなたの仕事じゃありませんか。いま一回明確にお答えを願いたいと思います。
  138. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 先ほど来申し上げましたごとく、理事会の勧告の次第もございますので、できるだけ勧告の趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  139. 小林進

    ○小林(進)委員 その勧告の趣旨に沿うようにしたいということは、次の国会にこれを批准をするということでございますか。もう一度、次の国会にこれをおやりになる具体的な対策が進んでおるのかどうか、お聞かせを願いたいのであります。
  140. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 これは、状況が許せば次の国会に提出したいという考えは持っております。
  141. 小林進

    ○小林(進)委員 今朝新聞の伝えるところによれば、何かいよいよ十一月の半ばごろから自民党内部におけるILOの特別委員会、倉石委員会でありますか、その倉石氏と、社会党におけるILO特別委員会委員長である河野密氏との間におけるこの問題に対する話し合いがまた再開される、こういうような記事が載っておりますが、労働省、政府自体としてこの問題にどう取り組むかという何らの情報もニュースもない。今お尋ねしますと、何かできれば次の国会にやりたいというようなばくばくとした御答弁だけでありまして、努力の跡が一つも見えないじゃありませんか。一体政府は、自民党の特別委員会社会党内部における特別委員会、そういう話し合いができ上がるまでじんぜん日を送るというのかどうか、この点をもう一度御回答を願いたいと思うのであります。
  142. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 前国会の終末におきまして両党間の申し合わせの次第もございますので、政府といたしましては、この申し合わせに基づきまして、次の国会までに話し合いが進行いたすことを期待いたしておるわけであります。
  143. 小林進

    ○小林(進)委員 両党の話し合いはやはり話し合いで、政治の舞台における責任は政府なんでありますから、両党の話し合いというものは、それは道義的な責任があろうとも、法律上あるいは国際慣習上における何らの拘束力も責任もあるわけではないのでありますから、ここはやはり政府みずからが積極的に動いて、政府の責任においてこういう国際舞台の非難に対する答えを打ち出してもらわなければならない。この問題もいろいろありましょうけれども、ILO八十七号を批准するのに困難も何もないのです。ILOの青木理事が国際舞台において、前の臨時国会は非常に期間が短かったから手続上困難であった、これは私は人を非常に愚弄するものだと思う。何もILO八十七号を批准するのに手続も日時も要らない。公労法四条三項を削除すればそれでりっぱに批准ができる。あと一体何の期間、何の手続が要るか。やはり公労法四条三項、地公労法五条三項を削除して、一切の悪法の制限を取り去って批准するためには、私は大体一週間から十日あればよろしいと考える。その気持でおやりになる意思があるかどうか。大臣の胸の中には、あるいは団交権だとか、あるいは地公労法だとか、何だかんだとILO八十七号批准に名をかりて法律の改悪、今までやってきたよろしき慣行まで剥奪するような改悪をあえておやりになろうとするから、手続も必要だし、期間も必要になってくる。一体そういうことまでおやりになるのか、早くすなおに八十七号批准のために障害になっている法律だけを改正して、これをすみやかに次期国会でおやりになるという意思があるかどうか、いま一度承っておきたいのであります。
  144. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 政府といたしましては、昨年以来、ILO条約の批准につきましては、国内関係法の改正案の同時提出ということをやって参っております。従いまして、この路線に沿うて一応進みたいと思っております。また両党間の話し合いも、これを基礎としてこれをいかに処理するかという点にあるのではないかと、かように思っております。
  145. 小林進

    ○小林(進)委員 時間がきたのでやめますが、私は次期の国会は十二月八日からの臨時国会であると了解しまして、この臨時国会中におやりになることを強く要望いたしまして、これにて終わります。
  146. 秋田大助

    秋田委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後二時二十一分散会