運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1962-08-23 第41回国会 衆議院 社会労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年八月二十三日(木曜日)    午前十時四十分開議  出席委員    委員長 秋田 大助君    理事 小沢 辰男君 理事 齋藤 邦吉君    理事 澁谷 直藏君 理事 藤本 捨助君    理事 柳谷清三郎君 理事 小林  進君    理事 五島 虎雄君 理事 八木 一男君       井村 重雄君    伊藤宗一郎君       浦野 幸男君    加藤鐐五郎君       田中 正巳君    中野 四郎君       中山 マサ君    楢橋  渡君       松田 鐵藏君    松山千惠子君       森田重次郎君    米田 吉盛君       渡邊 良夫君    淺沼 享子君       大原  亨君    河野  正君       島本 虎三君    田邊  誠君       滝井 義高君    中村 英男君       吉村 吉雄君    井堀 繁男君       本島百合子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 西村 英一君  出席政府委員         厚生政務次官  渡海元三郎君         厚生事務官         (大臣官房長) 熊崎 正夫君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      尾村 偉久君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      五十嵐義明君         厚 生 技 官         (医務局長)  尾崎 嘉篤君         厚生事務官         (薬務局長)  牛丸 義留君         厚生事務官         (社会局長)  大山  正君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君         厚生事務官         (年金局長)  山本 正淑君         厚生事務官         (援護局長)  山本浅太郎君  委員外出席者         参議院議員   鹿島 俊雄君         参議院法制局参         事         (第一部長)  中原 武夫君         厚生事務官         (児童局長)  黒木 利克君         厚 生 技 官         (年金局数理課         長)      坂中 善治君         社会保険庁長官 高田 浩運君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 八月二十二日  委員藤枝泉介君辞任につき、その補欠として井  村重雄君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 八月二十三日  医療法の一部を改正する法律案滝井義高君外  十一名提出、第四十回国会衆法第二八号)  医療法の一部を改正する法律案藤本捨助君外  五名提出、第四十回国会衆法第四三号) は、委員会の許可を得て撤回された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律  の一部を改正する法律案社会労働委員長提出、  第四十回国会衆法第四九号)  栄養士法等の一部を改正する法律案参議院提出、  第四十回国会参法第一七号)  医療法の一部を改正する法律案滝井義高君外  十一名提出、第四十回国会衆法第二八号)及び  医療法の一部を改正する法律案藤本捨助君外  五名提出、第四十回国会衆法第四三号)の撤回  の件  医療法の一部を改正する法律案起草の件  厚生関係基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 秋田大助

    秋田委員長 これより会議を開きます。  栄養士法等の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。
  3. 秋田大助

    秋田委員長 提案理由説明を聴取いたします。鹿島俊雄君。
  4. 鹿島俊雄

    鹿島(俊)参議院議員 栄養士法等の一部を改正する法律案提案理由説明をいたしたいと思います。  ただいま議題となりました栄養士法等の一部を改正する法律案について、その提案理由を御説明申し上げます。  まず、栄養士法の一部改正について御説明申し上げます。  栄養士法改正につきましては、現行栄養士の免許についてはそのままとし、新たに管理栄養士制度を設けることといたしたことがその主たる内容であります。  最近、社会生活発展向上に伴いまして、栄養指導に関する業務であって複雑または困難なものがますます増加の傾向を示しておるのでありますが、このような業務につきましては、栄養士のうちでも特に多年の経験を有する者とか、または高度の知識技能を修得した者がよくその職責を全うして参ったのが実情であります。この点にかんがみ、かかる業務を行なう適格性を有する栄養士管理栄養士として登録する制度を設けますことは、まさに社会要求にこたえるものと考えられるのであります。従いまして、この際、管理栄養士制度を設けることとし、これに伴いましてこれが登録資格管理栄養士試験制度実施及びその受験資格等につきまして所要の規定を設けることといたしたのであります。  管理栄養士登録資格を有する栄養士といたしましては、厚生大臣の行なう管理栄養士試験に合格した者であるか、または修業年限が四年である栄養士養成施設のうち、学校にあっては文部大臣及び厚生大臣が、その他の養成施設にあっては厚生大臣が、指定したものを卒業した者といたしたのであります。  これらの施設の指定は、管理栄養士たるに必要な知識及び技能を修得するに必要な課目修習時間を有するものとして政令で定める基準により行なうものとしておるのであります。  管理栄養士試験は、毎年少なくとも一回、栄養指導に関する高度の専門的知識及び技能について行なうこととし、その受験資格は、栄養士であって、修業年限が二年である養成施設を卒業した者にあっては厚生省令で定める施設において二年以上栄養指導に従事したもの、修業年限が三年である養成施設を卒業した者にあっては同様の施設において一年以上栄養指導に従事したもの、修業年限が三年である養成施設であって、学校にあっては文部大臣及び厚生大臣が、その他の養成施設にあっては厚生大臣が、前述の基準に準じて政令で定める基準により指定したものを卒業したもの、または修業年限が四年である養成施設を卒業したものといたしたのであります。これは栄養士がその卒業した養成施設について修業年限の長短または同一の年限であってもその課目修習時間に差があることにかんがみ、これに対応して実務経験年数につき多少の差を設け、相互の均衡をはかることといたしたからであります。  次に、栄養改善法の一部改正について御説明申し上げます。  現行栄養改善法では、栄養士を置いていない集団給食施設におきましては、その給食につき都道府県等に置かれる栄養指導員指導を受けなければならないこととなっているのであります。ここに集団給食施設と申しますのは、特定かつ多数の者に対して継続的に一定数以上の給食を行なう施設をいうのでありますが、国民栄養改善が強く要望される今は、かかる集団給食施設には、単に栄養指導員指導を受けるべしという段階を一歩進めて、その施設栄養士を置き、また、集団給食施設中でも特に多数の給食を行なう施設に、これらの栄養士のうち少なくとも一人は管理栄養士でなければならないようにすることが望まれるのであります。この場合、これら集団給食施設について栄養士必置規定することが望ましいのでありますが、学校給食関係等における栄養士設置状況等から見ても、必置規定するについてはなお多少の日時をかすことが妥当と認め、この際においては、一応、集団給食施設における栄養士設置及び特定規模当該施設における管理栄養士設置につき努力規定とするにとどめたのであります。  次に、都道府県等に置かれる栄養指導員たるべき者の資格につきましても、管理栄養士制度が設けられたことに伴い、従来、栄養士資格とあった部分管理栄養士資格と改めました。ただし、すでに栄養指導員である者については、直ちにその地位を失うものではないとの救済規定を設けております。  最後に、今回の改正前の制度によってすでに栄養士となっている者等が五年の実務経験を有することとなったときは、管理栄養士試験の全部または一部を免除することができること等の経過措置を講じました。  なお、栄養士法改正部分昭和三十八年四月一日から施行し、栄養改善法改正部分昭和三十九年四月一日から施行することといたしました。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  5. 秋田大助

    秋田委員長 本案に対する質疑は後刻に譲ることといたします。      ――――◇―――――
  6. 秋田大助

    秋田委員長 厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。八木一男君。
  7. 八木一男

    八木(一)委員 厚生行政基本施策について、厚生大臣に御質問を申し上げたいと思います。  まず、今度御就任になりました厚生大臣並びに厚生政務次官に、この重要な任務に当たられますことにつきまして心から敬意を表したいと思います。その任務を完全に果たされるために非常な御努力をお願いをいたしたいと思います。それにつきまして、厚生大臣はどのような御決意でこの問題に対処されようとしていられるか、厚生大臣のお気持をまず伺わさせていただきたいと思います。
  8. 西村英一

    西村国務大臣 私、はなはだ微力でございまして、しかもこの厚生行政についてはしろうとでございます。しかしながら、今後福祉国家を建設するということがわれわれの目標でありますので、この厚生行政内閣にとりましても最も重要なことだと思っております。どういう気持で引き受けたかといいますが、私は、微力ではございますが、自分の信念に基づいて全力を傾倒して厚生行政に尽くしたい、かような気持でございます。
  9. 八木一男

    八木(一)委員 どういう気持でお引受けになったかと申し上げたわけではありません。お引き受けになった以上、どのような気持でその責任を果たそうかという点についてお考えを伺ったわけですが、それにつきまして一々厚生大臣のお考えを伺って私ども考え方を申し上げても時間を浪費いたしますので、大臣気持をそんたくしながら、私どもからどんどん具体的な問題に触れまして進めて参りたいと思います。  まず、厚生大臣は、この非常に大切な任務、特に大切な時期にこれを果たされるにあたりまして、全力をあげて当たられるそのやり方でございまするが、それにつきまして、もちろん国会のこれからの論議、また以前に行なわれた論議について非常に御研究になり、それを尊重されることがまず第一であろうと思うのであります。それとともに、関係審議会答申勧告というものを非常に尊重されなければならないと思います。第三に、直接に国民の世論を聞かれることをなさって問題を把握し、国民要望が那辺にあるかということを吸収されていかなければならないと思います。実際の計画にあたり、また行政実施にあたって今までの公務員の人々を指揮されるわけでありますが、非常に練達有能な厚生省の陣営ではございますけれども、そこには官僚主義ほんとうは直すべきところがあるのを――厚生省の全部とは言いませんけれども、ありきたりの今までの考え方に固着して、国民要望なりその問題のほんとうの筋に合わないような方策がとられているようなことがあります。そういう問題を大臣としてやはり解決していかれる必要があろうと思うわけであります。このような私の申し上げましたことについて御同感であるかどうか、簡単でけっこうでございますから、一つお答え願いたいと思います。
  10. 西村英一

    西村国務大臣 まず厚生行政を預かる私といたしましては、どちらかと言うと貧しい方々を預かるのが一これは貧しい方々のみならず、一般にも関係しますけれども、なかんずく貧しい方々のことについてわれわれは中心に考え行政でございます。従いまして、その行政に当たる第一の心がまえは、私はやはり親切丁寧に行政をやっていく、民意をよくつかまえる、民間の事情をよく把握するということではなかろうかと思うのであります。今、役所のことにつきまして御注意がございましたが、実は私も官僚でございまして、長く役所におったのでございます。私も代議士に出て世の中に出てみますと、やはり官僚官僚としての特色がありまして、これはよしあしは別として、やはりある種の形を持っておるものでございます。これが大衆から非難をされる点でございますので、その点は十分皆様方の御注意を承りまして、役所として改正すべきところがあれば思い切って改正をしたいつもりでございます。
  11. 八木一男

    八木(一)委員 厚生省は全部がいけないというわけではなくて、一生懸命やっておられる方もあります。一生懸命やっておられる部門もあります。また同じ方でも、この部門では一生懸命やられても、ほかの部門では批判に値するような行政をやっておられる方もあるわけです。局、局で違います。その問題は今後具体的な問題に触れて申し上げますが、総括的な問題で昨日の問題があります。  昨日、社会保障推進協議会というものに結集した団体の二千名ないし三千名の人が、非常に切実な要望について厚生省陳情に伺いました。その団体大臣なり局長に早いこと御連絡しなかった点は、これはそうでない方がよかったと思います。御連絡はその前日でありましたから、その点において連絡が急であったから時間的に間に合わなかったという理由はある程度わかるわけでございますが、その団体要望が、大臣並びに八人の局長にお会いしたいという要望でございます。大臣はお会いになりませんでした。八人の局長もお会いになりませんでした。一つ一つ伺えば、何々の用事があったから、何々の会議があったからという理由は、一つ一つは少しずつ弁解理由は御準備になっておられると思いますが、大臣と八局長が一人も会えない。またそのことについて連絡に当たりましたけれども、それについて連絡が非常に迅速でなかった。不親切であった。きのう曲がりなりに、政務次官が御努力になってお会いになりましたから、それ以上申し上げませんけれども連絡が非常に不十分であり、非常に不親切だ。われわれが中に介在しておってもそうであります。  ところで、聞いていただきたいことは、厚生行政は多くの貧困な、生活に苦しむ人、あるいは病気に苦しむ人の問題を担当していられる省であります。非常に解決のしがたい、いろいろの悩みを持っておる人の問題を解決しなければならないところであります。ですから、恵まれた人あるいは相当高地位の人がそのいすにすわっただけでは、その問題の実態を把握できない。時間的に許せば、大臣から局長まで全国民に当たって、どういう悩みを持っているか、どういうふうにしてほしいと思うか、どういう要望があるかということを聞かれてもよい、そのような配慮までして行なわるべき行政であります。それにもかかわらず、そういういろいろの悩みを持っておる人たち気持を集めて大ぜいの代表が集まって、こういうことについて実現をしていただきたいという要望に来た数千人の人を置き去りにして、大臣局長が会わない、そんなことではほんとう厚生行政はできません。もちろん、その要望をする人たちがいろいろの要望を持っておられる。厚生省が今やっておることについてその不手ぎわの点を指摘をされる、今まで不十分であったことを指摘をされることは、小さな次元から見れば愉快なことではないでございましょう。それを強力に指摘をされると、さらに愉快ではないでしょう。従って、そういう人たちに会いたくないという気分が厚生省にある、そういうことではいけないのであります。そのような追及をされるようなものを持っておる以上は、特に会わなければならない。そういういろいろの団体陳情のときに、中にたくさん入るとか入らないとか、時間が一時間と思っていたところが一時間半になったとか、いろいろ役所側弁解理由も私どもは知っております。しかしながらその根本は、気持よく代表者に会うという態度がないために、そういうことが起こるわけであります。大臣がみずから会おうじゃないか、局長が会おうじゃないかといわれましたならば、そういう問題の紛擾は起こって参りません。なるたけ逃げて会わない、なるたけ話は聞かない、そのうちにくたびれて帰るだろう、そういうような態度でおるからそういうことが起こるのであります。そうではなしに、大臣みずから国民の声を聞く、局長にも聞かせる、そのような態度でやっていただかなければならないと存じます。厚生省には、最近数年、特にこのように陳情者に会いたがらない、しかも会うときには人数を極端に制限する、しかも社会党の議員が同席しなければ会わないというような条件をつける、そういうことではいけません。あっさりと、そのような国民が非常な要望を持っておるときには会ってあげられる、そのような風習をつけていただきたいと思います。そういうような意味で、大臣自体がそのような気持で今後対処される必要があろうと思いまするし、また省内を大臣がそのような気持で引き締めて、各局長あるいは次官以下、全部がほんとう国民の声を聞くという態度になる、このように指導していただかなければならないと思いまするが、それについても大臣の御答弁を伺いたいと思います。
  12. 西村英一

    西村国務大臣 八木委員の御意見もっともでございまして、そのときどきによって一々応じられるかどうかわかりませんが、十分あなたの御意見を承りまして、将来さようにやっていきたい、かように申し上げる次第でございます。
  13. 八木一男

    八木(一)委員 大臣の前向きの御答弁でありますから、それがほんとうに実際にそのように、あしたから、きょうからなるように期待をいたしまして、この問題はこれだけにとどめたいと思います。  次に、大臣も昨日総理官邸の会場までおいでになりましたので十分御承知でございまするが、社会保障制度審議会から、社会保障制度総合調整に関する基本方策についての答申及び社会保障制度推進に対する勧告が昨日出されました。この問題についての大臣のお考え、御決意を伺わせていただきたいと思います。
  14. 西村英一

    西村国務大臣 この諮問相当前からやっておったのでございまして、それと申しますのもやはり日本の社会保障制度というものがばらばらの形であるから、この際やはり調整する必要があるからというようなことで、あの審議会諮問いたしたのであろうと思うのであります。従いまして、あの審議会相当長い間かけて、皆さんそれぞれ専門方々が非常な努力を傾倒してでき上がったものでございまするので、私自身はまだ十分研究はいたしておりませんが、答申を熟読翫味いたしまして、十分その答申に沿うようにできるだけ努力して今後の行政をやって参りたい、かように考えておるものでございます。具体的にどの事項をどうするかということは、相当広範囲になりますので、八木先生も御承知通りですが、私の気持といたしましては、相当専門方々が、力作と申しますか、非常な努力を傾けてやったものでございまするから、十分答申内容は尊重して参りたい、かように考えております。
  15. 八木一男

    八木(一)委員 まず今、大臣おっしゃいましたけれどもばらばらのものをいろいろと調整していくという総合調整のほかに、先ほども表題をわざわざお読みしたのですが、社会保障制度推進に対する勧告、両建に一括になっておるわけです。その点を御理解をいただきたい。これは昭和三十四年九月二十六日でございますから、大体三年前であります。岸内閣総理大臣から諮問がございました。それに対する答申調査をして、研究をしている間に、所得倍増計画なるものが推進して、いろんな格差が非常に出てきたというような状況もからまりまして、推進に対する勧告もあわせてしなければならないということになっていたしたわけであります。熟読翫味いたしまして、できる限り努力するとおっしゃいましたことは非常にけっこうでございますが、答申勧告が出まして初年度――大臣が十年間厚生大臣でおられるか、あるいは二年間大臣でおられるか、これは先のことだからわかりませんけれどもスタートが非常に大事であります。スタート部門で、社会保障審議会答申勧告のおもな対象事項厚生省であります。厚生省が全部ではございません。おもな対象事項厚生省です。その主管大臣としては、しかもその出発点主管大臣としては、これは非常に重大な決意で当たっていただきたい。できるだけということではなしに、それは絶対ということは今言えないことですけれども気持として絶対に、どんなことがあってもそのような趣旨を実現するために第一年度から強力なスタートをする、このような決意をぜひ御披瀝したいと思います。
  16. 西村英一

    西村国務大臣 答申にこたえるためには、端的に申しまして予算獲得でございます。従いまして、私も、その点につきましては、これはやり方の問題もあります。どういうふうにして社会保障制度を進めるかというと、機構、やり方の問題もありますけれども、まあ実績を上げるのはしょせんやはり予算の問題だ、かように思っておる次第でございますので、これから予算期にも向かわれます。皆様方の御協力を得まして、でき得るだけと言うよりしょうがないのですが、全力を傾倒してやるつもりでございます。
  17. 八木一男

    八木(一)委員 その予算獲得であります。ことしの閣議で、大蔵省の方から、予算要求について各前年度の五割増し要求にとどめてもらいたいという要望があって、閣議でそのような討議をされたそうでございますが、それについて閣議の一員である西村さんから伺いたいと思います。
  18. 西村英一

    西村国務大臣 予算概算を八月一ばいで出す。その場合に、閣議大蔵大臣から、その概算ワクは前年度の五割程度にしてくれ、これは大蔵大臣の立場でものを申せばそういうことになるのですが、ただし、やむを得ない場合はそれを限っておるわけでございませんので、概略的な話だ。それをどこの省も二倍も三倍も四倍もこれは出し放題にすれば、やはりこれを集計する、あるいはこれを査定すると申しますか、これは大蔵省としてはやりにくいと思うのです。従って、その概略の範囲をそう申したので、特例のものについてはそれをあらかじめ五割で押えるのだ、こんな査定はありませんから、私はそういう意味において、その五割増しということを聞いておるのでございます。必要に応じては、それは決して守ることができない場合も当然ある、かように感じております。
  19. 八木一男

    八木(一)委員 そういう御解釈をしておられる。そういう御解釈で、もうちょっとこまかいことで伺っておきたいのですが、それは厚生省の総予算概括要求額が五割をこえることは平気だという意味でございますか、それとも厚生省の各部局担当一つ一つ要求額が、五割増し以上になる場合も十分にあるというような意味でございますか、どっちですか。
  20. 西村英一

    西村国務大臣 厚生省役所としての総ワクで言っておるので、名部局ごと制限はしてないようであります。その中でもって調整をすることはけっ  こうでございます。
  21. 八木一男

    八木(一)委員 そこで厚生大臣はやや強い気持で受け取っておられるから、ややましでございますが、そういうときには閣議でそれに対して断じて反対をいたしていただかなければならない。と申しますのは、厚生省担当をしているすべての部門、特にその社会保障部門は、今これから非常に拡大をしなければならない部門と思うのであります。すでに大体においてでき上がってしまった制度、それとの予算膨張率はおのずから非常に違うわけです。大蔵大臣田中君、政策に通暁しているはずの田中君が、大蔵省主計局官僚に押えられて、そのような通り一ぺんのことをしていることは非常に不満でありますけれども西村厚生大臣が、政治というものはそういうものではないということを総理大臣並びに大蔵大臣指摘をして、そのような制限を取っ払っていただかなければならない。これから拡大しなければならないもの、そのままにしておいていいもの、防衛庁の予算のようにゼロにするか急速に削減をしなければならないもの、そういうものと同じような扱いにするということは非常な間違いであります。そういうことで、今度の閣議で、そのような問題についてその予算の概括制限を取っ払うように要求していただきたいと思います。それについての厚生大臣の御決意を伺いたい。
  22. 西村英一

    西村国務大臣 そういう五割というものは、私がさいぜん申し上げたような意味で受け取ったものでございまして、五割を取っ払えということを言うと多々ますます弁ずということであるので、やはり必要なものにつきましては、今私が申しましたように制限をかぶせておるわけではありませんので、従ってそれを総体的に大蔵省に取り消せということを言うのはどうかという気持がいたすのでございます。
  23. 八木一男

    八木(一)委員 五割ということであれば、必ずしもそれはその制限が、完全な形に制限がされるものではないという解釈をしておられる。しかしその文言でいけば、確実に、それでは五割が厚生省要求が十五割になっても大蔵大臣は文句を言わないかというようなことをあなたは言われたわけではない。勝手に五割をちょっと上がっても、そう文句は言わないだろうと解釈されるような弱いことであります。そういうことではいけないのであって、五割というような概括制限があれば、そういうようなことが、また大臣から省でそういうような話があったということは各局に言えば、各局長、各局においてもやはりそれを大幅には上回らないであろう、ただしこっちのところが七割になってもこっちのものは三割くらいにやって、その局としては大体五割になるから、それほどこの点についてはしかられないだろう、あるいは猛烈ないろいろなことが起こらないだろうというようなことで、イージー・ゴーイングに予算要求をきめてしまう。それは国民要望とは違うわけです。ですから、五割というようなものを取っ払わなければ、社会保障制度の前進はございません。この前の灘尾君にもそれを申しました。灘尾君は、それについて至らないことをわびられました。今後はそういうことをしないということを誓われたわけであります。灘尾厚生大臣があなたにその申しつけをしなかったとすれば、灘尾さんのその責任は非常に大きいものでありますので、しようがしまいが、厚生大臣としてはそのような心がまえでおられなければならないと思うのであります。今後閣議においてそういうものを取っ払うということ、厚生省要求に対してはびた一文も大蔵省から査定をさせない、このような決意でやっていただかなければならないし、各局長には、そういう決意でやるから国民のために厚生省としてなすべき予算を組んで大臣のところに持ってこい、そのような決意でこれからやっていただかなければならないと思いますが、それについての厚生大臣の御決意を伺いたいと思います。
  24. 西村英一

    西村国務大臣 私は自分として必要であるというものであれば、自分の信念に従って必要なだけの予算を組むのでございまして、そういうものにその制限されるわけではない、私はかように思っておりますから、どうぞ一つその点につきまして支持していただきたい。その制限があるから予算が組めないのだというような気持は持っていないつもりでございます。
  25. 八木一男

    八木(一)委員 非常に強い御決意で非常にけっこうでございますが、局長、部長、ここにおられる方は、大臣がそのような決意を示しておられるので、十分に補佐の任を果たすように、局自体で予算を縛るとか、それから大臣がそれを内閣で主張するのについて、いろいろのありきたりの理論立てではなしに、根本的な理論立てをしてそれが通るように、そのような補佐を各局長がされなければならないと思います。その局長代表して山本君に一つ答弁を願いたいと思います。
  26. 山本正淑

    山本(正)政府委員 予算につきましては、ただいま大臣のお考えの御披瀝がございましたが、私ども十分大臣の意を体しまして、特にただいま八木先生のおっしゃられましたように、社会保障予算につきましては、御指摘の面は多々あるわけでございますから、その趣旨に沿って予算も十分獲得するよう最善の努力をいたしたいと存じます。
  27. 八木一男

    八木(一)委員 そこで社会保障制度審議会答申勧告の問題にちょっと戻るわけでございます。賢明なる大臣は十分御承知通りでございますが、この答申勧告は、内閣総理大臣諮問に対する答申であり、勧告もそれに対する勧告であります。従って、この答申勧告は、もちろん関係はありますが、西村さん、大橋さんに出されたものではなしに内閣総理大臣の池田さんに出されているものです。従って総理大臣が、この答申勧告を実現するために十分な推進をなさらなければならない。その内閣の一員である田中角榮大蔵大臣は、その趣旨に従わなければならないわけであります。大蔵大臣が何と言われようとも、総理大臣が果たすべき任務を果たすために、厚生大臣が労働大臣とともにその補佐に当たって大蔵大臣に対処し、大蔵大臣あるいはその下僚である主計局の連中のつまらぬことを圧倒してこの問題が通るように、どんどん第一年度から推進するようにやっていただく必要があろうと思う。池田内閣総理大臣には来週にでも、もちろんその問題を質問いたしまして、その問題についての決意を固めていただきたいと思いますが、きょう厚生大臣に最初にお会いをいたしましたから、その点で厚生大臣からも強く総理大臣決意を固めさせていただいて、また大蔵大臣に対してはこれに対する十分な協力を誓わしめる、そのような方向をとっていただきたいと思いますが、それについての御決意を伺いたいと思います。
  28. 西村英一

    西村国務大臣 この問題は、一厚生大臣とかなんとかよりも、池田内閣の問題でございます。そこであの勧告は、日本といたしましては、福祉国家を建設するためには社会保障というようなものがはなはだ貧弱じゃないか、それを大いにやらなければならぬ、こういうことをうたってあるのがその主眼でございますので、これは池田内閣全体としても責任をとる。私たちは最もそれに対しまして重要な役割を持っておるのでございますから、池田内閣全般の問題ではございますが、厚生行政を預かる私としても、十分総理に対しては強くこの点を申し入れるつもりでございます。
  29. 八木一男

    八木(一)委員 日本の社会保障は、いろいろな形だけは整っておりますが、その実額からいたしますと、イギリス等に比べますと、学者あるいは調べる官庁によっては違いますが、一人当たりの金額は二、三年前に十分の一、少し伸びて八分の一程度であります。よくその点を御理解いただきたいと思います。名前だけの制度は大体整いました。しかしながら、一人当たりの社会保障費というものは、二年前、三年前においてイギリスの十分の一、ただいまの現行の数字を持っておりませんけれども、少し伸びたとして、向こうがとまっていたといたしましても、せいぜい甘く見て八分の一程度であります。厚生大臣、この数字を御承知であったかどうか存じませんけれども、一般には御存じのない方が多いわけであります。国民皆保険ができた、国民皆年金ができた、日本も社会保障がずいぶん整ったと思っておられる方が多いけれども、実額はそのように乏しい。しかも日本においては貧困が非常に多く、疾病が非常に多く、失業が非常に多い。二、三年前から雇用状態はちょっとよくなりましたけれども、中高年令層の失業は非常に多い。またこれから不景気で失業者がふえようという傾向にある。これは労働省の担当でありますけれども、貧困と疾病が猛烈に多い。そういう問題は、厚生省として非常な関心を持たなければならないところでありますから、異常な決意を持ってやられる必要があろうと思います。  この社会保障制度審議会は、厚生大臣承知通り四十名の委員からなっております。各省の次官は全部その中のメンバーであります。それから衆参両院の国会代表がおる。冬団体代表がおります。この答申勧告は、そういうところで一生懸命に討議された問題であります。しかもこの答申勧告は、そういう状態にある日本の社会保障調整すると同時に、推進をしなければならないという態度で出しましたけれども、政府がなかなかに答申勧告を百パーセント尊重していない従来の経緯にかんがみて、ほんとうにやるべきことをすっぱりと出しても十分にやられないのではいけないというので、具体的にどんなことがあっても最小限これだけはやらなければならないというところを出しているわけであります。与党の議員が参加し、各省の次官が全部参加し、従ってそのような状態でございますから、これについては、金に換算すればびた一文負けることは許されない。またそれについて年次的にずらすことは許されないわけです。お読みになったら十分わかりますけれども、そのような内閣の能力を考えて、最小のものでありますが、現在の厚生省予算から見れば相当膨大なものをつくり上げなければなりません。それはもちろん十年間の目標はそうでありますけれども、第一年度、第二年度にその問題について強力なスタートをしなければ、その問題は結局果たされないということになるわけです。従って、本年度の予算は非常に重大であります。このような、日本の全国民要望であり、三年の間、あらゆる関係の人が一生懸命に延べ百回に余る会議審議し、年配の大内会長が夜の十時ごろまで原稿を書かれて、そのような状態でつくり上げられましたものをほごにしたら、非常に申しわけないことになるわけでありまして、そのほんとうの実際の推進力になる厚生大臣は、このスタートをりっぱに切るだけでも、厚生大臣の政治家になられた任務は百五十パーセント果たしたということになろうと思います。それは西村さんが総理大臣になるよりも、あるいは衆議院の議長になるよりも、そういう空名よりもずっとりっぱな業績であります。日本のすべての貧しい人がその憂いを捨て、悩みを捨てるという道を切り開く、これは平和を完全に確立する問題とともに、重大な問題であろうと思います。そのような意味で、非常に強い決意を固められまして、そのような最初のスタートがもしおくれるようなことがあったり曲がるようなことがあったら、厚生大臣は常に辞表をふところにされまして、とやかく言う者がたとい大蔵大臣であろうとも実力者であろうとも、正面を切ってそれと論争する、そのような決意で当たってこの推進をしていただきたいと思いますが、強いお覚悟のほどをぜひ示していただきたいと思います。
  30. 西村英一

    西村国務大臣 非常な激励の言葉を受けまして、私も十分やるつもりでございます。今の段階におきましてこれ以上具体的なことは申されませんが、八木先生の意のあるところは十分理解ができるわけでございますので、どうか一つ御了承を願いたいと思います。
  31. 八木一男

    八木(一)委員 それでは具体的な問題に少し入りたいと思います。この答申勧告は、えんえん四万字にわたるものでございます。しかもそれを非常に省略した端的な言葉で書いて四万字になります。それをしろうとわかりするような文言にしようとするならば、数十万字になるわけであります。それでもまだ書き切れない問題がございます。でございますから、ここで三時間、四時間、たとえばきょうの十時までやったところで全部に触れることはできませんが、十分お読み願ってから焦点について逐次御質問をいたしますけれども、その中の二、三項目について、一項目については十も二十も御質問を申し上げますけれども、これから御質問をいたしたいと思います。  今度の答申勧告の中で、非常に格差があって、非常に底辺の人たち社会保障が及んでいないという問題が大きく取り上げられているわけであります。問題は、各項目別に今まで討議をされてきたのを、貧困階層と低所得者階層と、それから一般所得階層、また各階層に及ぶ政策というものに分類して考慮し、考察をし、そのような答申勧告がなされております。しかしながら、もちろんこのことを実際にやるときは、一つ一つそれを分けて、横に分けてやるべきものだということを言っているわけではありません。縦の各制度において、その低所得者階層に対処すべき社会保障がどのように具現されるかということを、皆様方がこれから具体的に準備をされなければならないわけでございますが、今までそういう考え方で考慮された傾向が少ないので、そういう考え方で考察をして低所得者の問題にはこういう問題があるということを指摘して、それをその縦の制度の中において実際にそれにどのように対処するかということを書いているわけであります。そこを一つお取り違いにならないように願いたいと思います。  ただ、そこで一つ制度的にも、考え的にも一応分離された考え方で、論議をしやすい問題として公的扶助の問題、この社会保障制度審議会の中では貧困階層となっておりまするが、そこの問題があります。公的扶助の問題について非常に指摘がしてございます。そこで、直ちにその保護基準を上げなければならない。十年後には昭和三十六年度の三倍になるようにしなければならないということが書いてございます。そのほかに、この制度のいろいろの立て方の問題について書いてございます。それについて厚生大臣が御存じでございますならば、またそれについてのいろいろの御抱負がございましたならば伺わしていただきたいと思います。
  32. 西村英一

    西村国務大臣 私が申すまでもなく、今までの社会保障は、そのときどきに臨んで老人が困れば老人のこと、日本の置かれておった特殊な事情にもよるので、結局散発的に発達いたしたので、この際に観点を変えて、いわゆる横断的に物事を見ようかというようなことから出発いたしておるようにあるのでございまして、私たちにもそうあるべきだと感じられる点が非常に多いのでございます。なかんずく、今の低所得者の生活保護を受けておる非常に貧しい方々につきましては、これは従来もわれわれとして意を注いで参りましたが、従って、たびたびの機会に基準を上げて参ったのでございまするが、やはり今後につきましても、これは一般国民生活水準が高まるので、今でも相当に格差があるのに、ぐずぐずしていればなお格差がある、少なくとも格差を現在以下にぜひ縮めたいという意味でありまして、当然のことであります。従って、そういう意味におきまして私は理解をいたしておるのでございまするが、生活保護者の方々ほんとうに貧困者の方々をまず救うというのが第一優先的である。しかもそれは、相当なてこ入れをしなければ、国民の一般の生活水準にますます格差が出てくるというふうに理解しておるので、この点につきましては私もせっかく努力をいたしたい、かように考えております。
  33. 八木一男

    八木(一)委員 来年度において基準をどのくらいに上げることを予算要求として出されるお気持でありますか。
  34. 西村英一

    西村国務大臣 今せっかくいろいろ研究中でございまするが、ちょうど予算時期でございまするので、数字の点ははなはだ申し上げかねるのでございます。これは何も秘密にする必要も折衝その他に――まあ公の席としては今その数字を言う段階ではございませんので、御了承を願いたいと思います。
  35. 八木一男

    八木(一)委員 おかしな話でないですか。そういうことをおっしゃってはさっきのと違うじゃないですか。そうすべきことだったら、大蔵省がなにワクをはめても取っ払うと、さっき厚生大臣みずから言われた。内閣がどう考えようと、大蔵大臣がどう考えようと、厚生省担当者として、要求が最後に通らなければ総理大臣と大げんをしておやめになればいいじゃありませんか。要求をどれだけすべきかというような考え方は、持っておらなければならないと思う。生活保護にはこまかいいろいろな問題があります。こまかいことを一つ一つ何%というようなことは、政治家が全部把握していただいていいことですけれども、必ずしも把握できないこともあります。御就任直後でございますから、把握の時間もないと思います。おおよそについてどのくらいにするか、たとえば倍にするのか、九割増しにするのか、あるいは十五割増しにするのか、あるいは七割増しにするのか、そのくらいの見当、事務当局が何と言っても、厚生大臣としてはどのくらいにしなければならないと思うか、またすぐ数字が出ないとしたら、今はどのくらいからどのくらいまでに上げなければならないと思うか、こまかい数字は今事務当局に検討さしているとして、大まかな見当はつきませんか。
  36. 西村英一

    西村国務大臣 答申の線にもありましたように、十年後におきまして現在と、そういうふうな答申もありますし、私たちはそういうようなことを一応標準にいたしまして、今ここで、現在より予算要求として三割やるのだとか、あるいは二割五分やるのだというような数字を申し上げたくないというのでありまして、答申の全体の計画に合うような数字において予算要求をいたしまして、その線に向かっては、努力をしたいと、かように申し上げておるわけでございますので、御了承を願いたいと思います。
  37. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣は、常に国会の方でも、社会保障推進にバックアップをしていってもらいたいということを言って、私個人にも言われました。そのあいさつの中にもそれに近いものが書いてある。事実を知らさなくて、どういうバック・アップができますか。厚生省は完全な要求をする。それを大蔵大臣がブレーキをかけているようだったら、大蔵大臣のその不明をわれわれがさましましてやらせるようにします。厚生省自体がどのくらいやるかわからないのにやりようがありますか。逆に考えれば、厚生省自体がその数字によって決心がないことが明らかで、大蔵大臣でなしに、厚生省自体がなまけておるということが明らかになって、直接追及を受けることを避けるつもりでありますか。数字をはっきり、今なかったらなかったでよろしい。しかしどのくらい以上にやるくらいの決意でやっている、また今数字を聞かれればわかるなら、聞いて下さい。
  38. 西村英一

    西村国務大臣 数字を今こういうふうにやるということについて、ただいまここで言いましても、これは検討中の数字であるからということなんで、そういう意味において申し上げておるので、何も秘密にして――協力を得なければならぬ問題ですから、これをあえて秘密にしてどうということではありません。検討中であるから、大臣として責任を持って今幾らにするのだということを申し上げられない、かように申し上げているわけであります。
  39. 八木一男

    八木(一)委員 それならば、検討中ならどういう方針で検討しておられるか、大臣がわからなければ所管の局長でけっこうです。どういう方針で検討しているか、それを明らかにして下さい。
  40. 大山正

    ○大山政府委員 まだ予算につきましての最終的な省議が済んでおりませんので、具体的な数字を申し上げる段階でないと思うのでございますが、私ども所管事務当局といたしましては、最近の物価値上がりをカバーしながら、さらに、実質的な改善をしなければならない。それから一般の国民所得が向上するにつれまして、さらにその格差を縮めていきたい、かような観点から考えまして、現在いろいろ検討いたしておるわけでございます。社会保障制度審議会の今回の答申勧告によります三倍といった場合に、年率どの程度の上げ方をすれば大体三倍になるかということを一応試算はいたしております。従来は、これも御案内の通りでございますが、厚生省で一応試案をつくりました長期構想によりますと、三十一、二、三年の基準年次に対しまして三倍といった場合の試算は年率約一〇%であったわけでございますが、今回度を基準にして三倍というように置き直しますと、生活扶助基準におきましては大体一二%の年率をもって上げなければならぬという計算に相なるように私ども試算しております。そのような点を考慮しながら、目下検討しておるような段階でございます。
  41. 八木一男

    八木(一)委員 制度審議会の文言をそのままちゃんと読んでいきたいと思う。十年後に三倍になるというのは年率ですね。同じようなパーセンテージで上げるということに縛っておるわけではない。十年後に三倍にならなければならないような状況であるならば、現在の程度は、当然あるべき姿から非常に低いということになる。極端に言えば、来年三倍にして十年はそのままにしておいてもいい。そんなものを年率一三%というような物腰でやっていたら、大蔵省に大なたをふるわれるのはあたりまえである。そうではなしに、もっと本腰でかかってもらわなければならぬ。今物価の差を言われましたが、厚生大臣、一緒にお聞き願いたいと思います。そのほかに所得格差ということを言われた。所得格差についてどのような時点から考えておられるか、それを伺いたいと思います。
  42. 大山正

    ○大山政府委員 所得格差につきましては、従来、昭和二十六、七年当時は生活保護家庭の生活基準と一般勤労世帯の生活基準とを比較しまして、大体五四ないし五五くらいの格差である。それが逐次低下いたしまして、昭和三十五年度にはたしか三八まで下がっておるわけでございますが、その後三十六年度、三十七年度と引き上げて参りましたので、三十七年度の推計では、たしておるわけでございます。私どもは、今後の三倍ということ、それによりましてさらにこの差を逐次縮めて参りたい、かような観点から実質的な改善をはかりたい、かように考えておるわけでございます。  なお、先ほど年率と申し上げましたのは、一応平均して考えればそういうことになるということでございまして、その年々に幾ら上げるかということが、一つの判断の問題になると思うのでございまして、そのような点を考慮しながら来年度の引き上げ率をきめていただくようにしていただきたい、かように考えておるわけでございます。
  43. 八木一男

    八木(一)委員 一つ技術的なことを伺いたいのですが、昭和二十六年、七年と並べて言われましたが、二十六年、二十七年、二十八年の一般階層の平均とのパーセンテージを一つずつ明確におっしゃっていただきたい。たしか六〇というのがあったはずです。
  44. 大山正

    ○大山政府委員 実は今確かな資料を手元に持っておりませんので、資料に基づいたお答えができませんが、私の記憶しておりますところでは、昭和二十七年度に五四・八という数字であったように記憶いたしております。
  45. 八木一男

    八木(一)委員 私の調べたところでは六〇をこえたものがあります。とにかく数字はちょっと違います。局長の方も五四、五というところですが、六〇を示した数字は、必要があれば私の方から御連絡を申し上げてけっこうでありますが、一昨年が三八に下がった。ことしは推定で四一、二%になるということであります。そういうこととは、昭和二十六、七年の六〇に対して四二くらいになっておるわけです。毎年絶対額は上がっておりますが、比較的に見てそれだけ下がっておるわけです。ほかの階層に対する政策はとられたけれども、不幸にして一番気の毒な階層に対しては置き去りにしたという状態にあるわけです。従って、物価の点はもう一つ別に加えるとして、この問題についても少なくとも五割上げてずっと昔の比率に返る。しかも物価は変わっておりますから、実質的にそうならなければなりませんから、物価の方はそれだけ上げなければならない。そうなれば、とにかく六割か七割くらいは来年上げなければならないと思う。それが厚生省の原局で検討しておるのは、年率にして一三%ということなんだ。厚生省の公務員の人も有能練達な人がいます。しかしながら、国民に対しては相当強い態度をとられますけれども大蔵省に対してはそう強くないですから、そのくらいやってもなたで切られてはつまらぬということで、最初から計画がぬるい。それではいけないと思う。それから大臣としては、どんなことがあっても大蔵大臣とは論争して通してみせる、だから各局はそんな遠慮がちな予算を出すな――予算の丁一の項目に当たることまでしていただきたいけれども大臣はお忙しくてなかなか無理でありましょうが、局長にそのような弱腰ではならないということを言明されなければならぬ。これは社会局だけではなく、各局に言明をされるかどうか。
  46. 西村英一

    西村国務大臣 八木先生の意のあるところは十分わかります。数字は今検安易な気持でやるつもりはありません。どうぞ御了承願いたいと思います。
  47. 八木一男

    八木(一)委員 一割三分を複利計算にして十年間でどういう数字が出来ますか。だれか数理に明るい方はいませんか。複利計算をしなければすぐ出るのですけれども、どのくらいになりますか。
  48. 坂中善治

    ○坂中説明員 複利表を持っておりませんから正確にはわかりませんが、大体十年で三倍になると思います。
  49. 八木一男

    八木(一)委員 数理課に、複利法できっちりどの程度の数字になるか、質問している間に出してもらえませんか。合計で幾らになりますか。  次に、そのほかに、金額だけではなしに制度でありますが、制度自体の中で、今度制度審議会答申勧告の中には、生活保護の対象をこの文言の中では世帯と書いと書いてございます。私どもの主張は個人単位にいこうという考え方ですが、具体的には、夫婦と未成熟な子供を単位とした生活保護を適用させるということが書いてあるわけであります。厚生大臣はそれについてどのような御意見を持っておられるか。
  50. 西村英一

    西村国務大臣 今までの厚生省態度といたしましては、あくまでも世帯ということを言っておるようであります。しかし今度は勧告の線もございますので、あらためて検討をし直していきたい、かように私ども思っております。
  51. 八木一男

    八木(一)委員 勧告意味厚生大臣にはどのように御理解になっておられますか。研究はいたしておりませんけれども、夫婦と未成熟者の子供を世帯の単位にする、そのほかのものは個人単位で考える、かように思っておるのですが、もし間違えましたら訂正します。ちょっと拝見しただけでございますから…。
  52. 八木一男

    八木(一)委員 御就任間ぎわの方ですから、ちょっとその効果を御説明申し上げたいと思います。  というのは、五人の家族があって、長男が十八才で、ある職場で働いている。それからあとの弟妹が九才と五才である。老人の父親がせき損で骨がやられて、からだじゅうがぶらぶらである。お母さんが結核で寝ているというような場合であります。そういう場合に、今十八才の人が、おやじに孝行したい、弟妹もかわいがりたいと思って一生懸命働いております。ところで、生活基準は地域によって違うし、年令によって違いますから、一括して申せませんが、たとえば五人の生活保護家庭で一万二千円といたします。厚生省はいつも大都市の東京を例にとって、いやに高いようなことばかり宣伝していますから、それに近いところですけれども、いなかの方に行くとぐっと下がるのです。そういうことですが、そういうことで一万二千円といたします。一万二千円で五人、これは年令によってみな違うのですが、まるまる平均にして、月一人二千四百円ずつの生活をしておる。そのときに、その十八才の子供は八千円の給料をもらっている。一生懸命働いたので翌年は千円月給が上がったというときでも、御承知通り、今の生活保護法では一万二千円がその基準になっている。八千くれない。だから一万二千円の生活しかその家庭ではできません。その次の年に九千円に上がっても、くれるものは三千円、やはり一万二千円の生活しかできない。だからいつまでたっても生活が上がらない。そうなると、若いみそらの人が、自分の将来のためにも、自分の生活のためにも、また親孝行のためにも、弟や妹をかわいがるためにも一生懸命働いても、現在の生活保護の世帯の単位では一つも実効があがらないわけです。それではならないから、個人単位にすべしという主張を私どもは持っております。表現は違いますけれども制度審議会は世帯単位という言葉を用い、その世帯は夫婦と未成熟の子というふうに限定しました。現象として同じであります。ですから、そのときにはお父さん、お母さん、幼い弟妹たちが一緒になって四人の生活保護をもらう。数字は、こまかいところでは少し食い違いますけれども、今の例で申し上げますと、月に二千四百円の四倍、九千六百円の生活保護費が入る。そして片っ方の十八才の青年は自分の賃金八千円をもらう。それが引かれない、九千六百円プラス八千円、一万七千六百円で暮らすことができるというふうに、このような制度やり方をすると変わるわけでございます。従って、その青年は一生懸命働いたら働いただけの報いがある。月給が上がったら月給が上がっただけ自分も生きがいがある生活ができるし、またその金も、実際に親孝行のために、弟妹をかわいがるために使われるということになるわけです。そういう点で非常に重要な点でございます。この点については、私ども通称生活保障法と称した生活保護法の一部改正案というものをこの前から出しております。重要な改正点がたくさんございますが、その中の基本の一つであります。前から私どもはこういう点を主張しておったわけでございますが、政府のお役人も全部入り、自民党の議員の方も入り、そして各団体代表者の方が入り、学識経験者が研さんこれ努めた結果において、断じてこれをしなければならないという結論に達したわけであります。この問題は幾分予算にも関係がございますが、全体的な基準の問題ほど大きく予算には関係ございません。こういう制度の問題は、十年間で果たすという問題じゃない。直ちに切りかえなければならない問題です。生活保護法の改正点はまだまだございます。今度の答申としては、将来の社会保障全体の姿としては大きな姿があります。しかし、この十年間で力を入れるべしとなって、一番の焦点はここであります。まだ二つ、三つございますが、そういう点を盛った生活保護法の改正案を出さなければ任務を果たしたことにならない。もしそれを出される御準備がなければ、日本社会党は十分にそれを盛った案を今出しておりますから、厚生省みずからそれに賛成であるというような意思を表示せられまして、与党の方も賛成の方がたくさんおられますから、西村先生の政治力を生かして、社会党案が今国会で可決されるような努力をされる。社会党の案の百のうち九十九はいいけれども、一つの方は池田内閣西村厚生大臣は、そこまでいいことはやりきれないとおっしゃるならば、九十九だけでも盛った政府案を出される、そういうことをなされる必要があるわけであります。まだほかの点がございます。生活保護法の改正案を、これから申し上げることすべてを含めて、少なくとも通常国会には提出をされなければ、この社会保障制度審議会答申勧告には全然忠実でないということになりまするし、また国民要望に沿わないということになります。賢明な厚生大臣はそのようなことはなさらないと思います。それよりもむしろ厚生行政を積極的に推進する西村厚生大臣としては、積極的にみずから出す、社会党に言わなくても出してみせるというようなお気持を持っておらなければならないと思います。あと数点申し上げますが、その点厚生大臣は、そういう重大な生活保護法の欠点を直すべき改正点を盛り込んだ生活保護法の改正案を提出されるかいなか。準備は整っていなくても、これから急速に準備を整えて提出されることを誓われるかどうか、この点についての御答弁を願いたいと思います。
  53. 西村英一

    西村国務大臣 世帯主の点につきまして、今まではいろいろ議論もあったわけでございますが、答申にもありまするので、また今の御説明で私はよくわかりましたので、生活保護法の問題について次の国会に出すか、こういうことについては、検討いたしますが、おそらくそういうことになるんではないかと思っております。十分検討してこの答申に沿うようにいたしたい、かように思っております。
  54. 八木一男

    八木(一)委員 大体そういうことになるだろうと思いますということは、厚生省社会局でも、もちろんそういうことが必要であると考えていなければならないと思います。十分この問題については、そういう事態を知っておって、そういう事態に対処するにはそういう方法がいいということを当然研究していなければならないし、内閣自体を拘束すべきこういう答申勧告が出たのですから、これは絶対に出さなければならないわけでございます。この問題はあと数点申し上げますけれども、そういう問題について、厚生大臣は、生活保護の改正案を出すと言い切られていい立場ではないかと思います。答申勧告を尊重する立場から当然出されなければならない。そういう問題は、今指摘したことを、心あたたかい厚生大臣には、そんなものはほうっておけという気持はこんりんざいないと思います。ありますか。ないと思います。なければ答申勧告があろうとなかろうと、それを推進されることが厚生大臣任務であります。内閣総理大臣大蔵大臣は、厚生大臣の当然のそのような推進に対して、きん然としてこれに賛成をなさるべき立場にあるわけであります。池田さんは、初めから社会保障は一生懸命やる社会保障全部一生懸命やってもらいたいけれども、池田さんの方も、何かそこから一生懸命やることを重点に考えておられるらしい。厚生大臣の所信表明にもそれが載っておる。そうなれば、生活保護法の改正案、その内容はこれから数点申し上げますが、その点について全部入るかどうか、どういうふうに入るか、それは御検討があってもいいけれども、少なくとも生活保護法は非常に実態に合わない点がある。それから基準が乏しい。そういうものを変えるために、生活保護法の改正法案を出すということは絶対なされなければならない時点に達している。従って厚生大臣としては、通常国会には生活保護法の前向きの改正案を出すということを明言なさる必要があろうと思う。ぜひそれをしていただきたいと思う。これをなさって、異議を申し立てるような総理大臣ではないはずです。そういう総理大臣であったら、国民は直ちに池田さんにやめてもらう運動を起こすと思う。池田さんを信頼なさって元気よく、このような生活保護法の改正案を通常国会には必ず提出するというような決意をもっと明確に披瀝していただいたと思う。
  55. 西村英一

    西村国務大臣 私はそのあいまいなようにとられることを言うのも、非常にまだ研究ができていなくて、ここで私としてこれは出すのだと言い切るには、かなりの自信があって、内容も知って、こうこうだから出すのだ、これならその意味はわかりますけれども、まだ十分私としては検討する段階であるから、出ずようになるであろうというようなあいまいなことを言ったのでありまして、決して私は逃げ口上で、あるいは出さないのじゃないかというような気持で言っておるわけじゃございませんので、どうかその辺はそういう意味で御了承を願いたい、かように思っております。
  56. 八木一男

    八木(一)委員 それでは、言葉の表現が個人々々に特性がございますけれども厚生大臣の表現は、私どもは、この生活保護の改正法案を通常国会に出される気持である、それについて百パーセントの努力をされて、自分の政治生命をかけても出される気持である。ただし法案が現在条文までまとまっていないから、この問題をそういうふうに表現された。厚生大臣の政治生命をかけて生活保護法の改正案を出される気持であるというふうに理解したいと思いますが、それでよろしゅうございますか。
  57. 西村英一

    西村国務大臣 政治生命をかけて云々ということでございますが、今申しましたように、まだその辺の検討は私十分できておらないので、出すのだ、こういう言明をするということを申し上げにくいというので、前向きの姿勢でこれはいくということで、そういうふうになるであろう、こういうことで御了承を願わないと、政治生命をかけて云々と申しましても……。やる気持は十分あるのでございますから、どうぞその辺は御了承をお願い申し上げたいと思います。
  58. 八木一男

    八木(一)委員 言葉の表現はいろいろございますけれども、とにかくやるという気持で出されるという気持であるということと理解をいたします。違ったら御発言を願いますが、違わなければ、それを名委員の前で確認をいたしておきたいと思います。生活保護法の改正案を出すつもりであるかどうか。
  59. 西村英一

    西村国務大臣 出すのであるということを一方的にそう言われても困るので、検討したいということで御了承願いたいということでございます。(「出す決意で検討するのか」と呼ぶ者あり)出す決意で検討するということであります。
  60. 八木一男

    八木(一)委員 出す決意で検討をされる。それを実現するためには、ありとあらゆる努力をされるということでありますか。
  61. 西村英一

    西村国務大臣 あらゆる努力をいたします。
  62. 八木一男

    八木(一)委員 生活保護法の問題については、検討が少ないと言いますので、それではこの国会論議をもって検討していただかなければならないと思います。あとの具体的な問題に少し触れますが、まだまだ時間の許す限り、何十時間でも国民要望をお伝えしますから、厚生大臣はその心組みをなさって、国会厚生大臣をお呼びしたならば、直ちに来られるように準備をしておいていただきたいと思います。  次に、先ほど申しましたように、保護基準を三倍に引き上げるというのが制度審議会勧告であります。私はこれでも少ない、実はもっと多くしなければならないと思う。制度審議会は最小限を言っておるわけです。「少なくとも」と言っておるわけですから、厚生省がこれを三倍半になさってもちっともしかられるものではない、もっと熱心にやった方がいい。これは局長も聞いておいてもらいたい。三倍としてそんな数字をはじかしておられるけれども厚生省は四倍を要求されてもかまわぬ、五倍を要求されてもかまわない。これは最低限度です。だから三倍でなければいけないという腰では大蔵省にやられます。そういうことで、大臣もそういう決意でやっていただきたいと思います。  それからもう一つは、そういうことのほかに、昭和二十六、七年ごろに国民生活水準の六〇%であったのが、一昨年は三八、それから二回、三回と手直しをしたと自民党さんや政府さんはさんざん宣伝しておる。これは事実であるけれども生活保護法をよくしたことにはならない。昔のそのころから比べれば、比較的に言って五割ぐらいいっておる。昔六〇というのが、今は四〇、そういう状態では少しも誇れることにはならない。それをぜひ六〇をオーバーするように来年ぐらいは変えられて、ほんとう意味で、池田内閣西村厚生行政はこれだけやりましたとおっしゃっていただきたい。ほんとう意味において自民党はこれだけやりました。ちょっぴりやって、実際に役に立っていないくらいやってたくさんやったというような、国民の判断が間違えるような宣伝は絶対になさらないように……。去年二十数%要求して、ことし二二%になった、二一でも少なかったのが一三になった、まことに申しわけがない、わが内閣の欠点である、わが政党の欠点であるというぐらいに、正しく正直にそういうものを報告しなければいけない。そういうことであります。  それからその次に、生活保護法の自立の助長であります。生活保護法の第一条を御承知だと思いますけれども、「自立の助長」ということが最後に書いてあるわけでございます。ところが、今の制度の中では、自立助長制度がほとんどございません。生業扶助というものが、ただ一つあります。これは金を貸すというようなことなんであります。そういうようなことでは役に立たない。ほんとう意味で自立を助長させなければいけない。その自立を助長するということは、いろいろな点で言わなければなりませんが、まず第一に、補足性の原則ということが第四条にございます。あらゆる資産、能力を活用した上でなければ生活保護の適用を受けられないというふうに書いてございます。これが冷酷むざんな条文であります。厚生省の方があたたかい心をお持ちでございまして、この規定があるけれども、その条文を最大限度に解釈をして、実態に合うように努力をしておられます。私は先ほど厚生省の公務員の方に少しつらく当たりましたけれども、こういうふうにいいところもあるから、厚生省のいいところをどんどん伸ばしていただきたい。最大限に活用しておられますけれども、何分にも法律の条文に縛られて配慮ができないわけです。具体的には厚生大臣十分御承知でございましょうけれども、時間の関係もありますから、私から申し上げます。ありとあらゆる資産を活用しなければ適用が受けられないので、たとい親の形見があった、夫婦の記念品があった、御主人がなくなってただ一つ――貧乏になりましたけれども、昔そうでもなかったときの婚約の金のかまぼこの指輪があった。ところが、これが金でありますがために、そういうことで生活保護が受けられない。その場合、条文通り言えば、この行政解釈がことしから変わっているかどうか別ですが、それを売って処分したお金を生活費に充てたあげくでなければ生活保護は受けられない。その人にとっては、命の次ぐらいに大事なものであります。金という名目であっても、かまぼこの指輪では売ったって大した金にならない。ところが、そういうふうになっておる。その人が何かで昔品物をもらったことがある。一生涯でただ一つ何か業績があって、それを生涯の誇りにして死んでいこうという人なんです。その人がそのものを金にかえて、生活費に充てなければ生活保護は受けられないということが一つあります。これは国民慣習を非常に無視しておる。夫婦の情愛、親子の情愛、それを無視したようなやり方になるような条文になっておる。  もう一つは、今はだんだん変わって参りましたけれども、数年前は、自転車があると、古自転車で安いものであってもそれを売らなければその適用が受けられない。今は厚生省のあたたかい解釈によって自転車を持ってもいいことになっておりますけれども、昔はそうじゃなかった。自転車で商売をして暮らしている人がある。その人が病気になって医療扶助、生活保護を受けるというときになって、それを売らなければ受けられない。そうなると、今度病気がなおった、働いてどんどんやっていきたいと思ったときに自転車が買えない。古い自転車をたたき売りされて、新しい自転車は高くて買えないわけです。買えないと、前のなれた商売ができない。そうなると、収入がないから生活保護を依然として続けていかなければならない、そういうことになるわけです。ただ自転車は今はよくなりましたけれども、時代は変転をいたしております。スクータやオートバイは、依然としてやはり処分をしなければならない。オート三輪は処分しなければならない、そういう問題があるわけであります。それからもう一つ、たとえば家屋とか何かも処分しなければならない条文になっております。それをたたき売る、あるいはそれを人に貸して収入を得る、その収入分だけで生活をして、足りない分は生活保護を受けるというふうになっております。しかし、これも非常に実態に合わないことがある。それを処分したならばどうか。農家の人でそれを処分したならば、今度働く状態になったときでも家を建て直すのは厄介。商売の人も、一回そういうものを人に渡してしまったら、健康が回復して働きたくなっても、そういう働く基盤がなくなってしまう。そういうことで自立ができないわけであります。そういうことを規定している第四条というものは、非常に冷酷むざんな法律であります。たとえば失対事業に働いておられる人たちに対しても、今その冷酷むざんなことを直そうと思って、厚生省では勤労控除という制度を設けておる。その人が失対の賃金を得ておる。一人当たり、地域によって違うけれども、二千四百円でしたか、毎年々々ちょっとずついじくるから全部その数字は覚えられませんけれども、賃金が少ないために、そういうものは収入と認定しないで控除して生活保護の適用を受ける。ですから、控除するから実際その生活基準より上のものは、生活費に充てられるわけです。しかしこの過酷な条文ではそれはできないので、この二千何百円は必要経費を補てんするという意味、そのような意味でそれをやっておるわけです。働きに出たら汗をかく、タオルが要る、石けんが要る、エネルギーも少し要るというようなことで解釈をしてやられるから、その条文通りにいけば、働きに行っていろいろな要るだけのものをカバーするだけだから、実生活は上がらないわけだ。そういうような窮屈な範囲でせいぜい努力をしておられる。ところが、この勤労控除というものは、家族が何人合っても同じだ。未成年の子供が何人その世帯にあろうが、三人あろうが、その人一人であろうが、勤労控除は同じです。そういう建前ですから、未成年の子供を五人かかえたお母さんが失対で働いているときでも、一人で働いているときでも同じです。二千四百円は六人分になるわけではない。そういうことになれば、働いても家族に均霑して回ってこない。働いて疲れるだけなら、物質的に子供に少しでも甘いものを食べさせてやれるのでなければ、お母さんがそのそばにいて、せめて精神的におとぎ話でもして慰めでもしてやろうか、年とった老人にいろいろ介抱して、孝養を尽くそうという気持になります。働いたってそれは差っ引かれるのでは何にもならぬ。差っ引かないものがちょっとあっても実効が上がらないということになれば、せめて疲れることはやめて、年とった老人に、小さい子供たちに、そばにいて精神的な慰めを与えようということになる。収入の道は全然出てきません。働いてその仕事になれる、商売をしてお客ができる、そういうことになってこそ、ほんとうの自立助長の道ができるわけです。ところが、働いても商売をしてもその苦労が増すだけで、疲れが増すだけで、実収が実収にならない。厚生省がわずかに考えたことも、実効はそれほどあがらない。ほとんど実収が上がることにならない。実生活が向上することにならないということになれば、自立ができないことになる。第一条に自立助長をいいながら、実際には自立助長ができないような規定を第四条に規定しているわけです。そのような条文を直さなければ、この法律が生きて参りません。自立助長は抹殺されてしまいます。改正すべき第二点としてこのような問題があることを御理解いただきたいと思いまするが、厚生大臣としてその問題についてのお考えを伺わせていただきたいと思います。
  63. 西村英一

    西村国務大臣 生活保護法の各条項のことは、そうつまびらかにいたしておりませんが、その法律の目的がどこにあるか、生活保護法の目的がどこにあるかということを十分に理解して、そうして行政をやらなければならぬのでありまして、今言いましたように、行政をやる者といたしましては、その法律ほんとうの目的を解してやれば、そう不都合なことは起こらないと思うのでございます。今生活保護法の条項を各条文について改めるかどうかということにつきましては、検討いたしますが、行政やり方といたしましては、法律の主眼点はどこにあるのか、貧しい者を救うということにあるんじゃないか、こういう法律の主眼点を十分心得て、それを行政に反映させなければならぬ、かように私は考えておりまして、条項それ自身についてつまびらかにいたしませんので、一々その条項をどうする、こうするということは申されませんが、さよう考え行政はやっていきたいと思います。
  64. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣率直に気分をおっしゃっていただきました。その気持を忘れないようにしていただきたいと思う。非常に気の毒な状態で、貧しい状態で苦しんでいられる方に対処をしていただきたい。  それからもう一つ、お気持はそうでありましょうが、言われませんでしたが、その人たちが、ご自分達の努力生活を立て直していこうということについて援助をしなければならない、そういうお気持であろうと思います。もう一回それを一つ。
  65. 西村英一

    西村国務大臣 さような気持でございます。
  66. 八木一男

    八木(一)委員 そのお気持は非常によいお気持で、大切なことだと思います。みんながそうなんですが、この法律が、そのお気持がうまくいかないようにできているわけですから、その法律を直さなければ――厚生大臣が正しい信念をお持ちであり、国民がそれを要望している、池田内閣も全部そうであろうと思う、だから池田さんも、ほんとうを言えば、そういうお気持で政治に対処していかれるべきだと思います。そうなると、内閣自体もそう思い、厚生大臣もそう思い、そうして国民要望しておるのが、へ理屈をこねて間違ってつくってしまった法律のために動きがとれない。それがあまり実態に合わないから、極端に言えば法律解釈を拡大し、法律に抵触するような行動までもとって、実際に厚生省方々努力しなければならないことになる。西村さんの部下である厚生省の方が、法律を最大限に解釈をして、理屈を立てて実態に対処しなければならぬという苦労をしている。その苦労のもとは間違った法律にある内閣の方針にも、厚生大臣の方針にも、国民要望にも、対処する公務員の人たちにもブレーキをかけているのがこの第四条、それを直さなければみんな迷惑です。そういう点をぜひとも直していただかなければならない。従って、そのようなありとあらゆる資産、能力を活用した後に生活保護を適用するという第四条の第一項の条文に、国民慣習上必要であると認められるもの、また将来の自立のために必要であると認められるものを除くということを一項入れさえすれば、それができるわけです。また、そのこまかい認定は、厚生大臣がまかせられる部分があってもいいと思う。一つ一つ事柄自体に対処されていいわけです。そういうような操作をすれば一ぺんに直る。これ一点でも、もちろんさっきの厚生大臣のお気持からも、生活保護法の改正案を出さなければならない、そういう意味でも出されるかどうか、一つ伺いたい。
  67. 西村英一

    西村国務大臣 ただいまも申しましたように、行政をやる場合には、そういう気持で、法が何を期待しておるかということでやるということでございます。今申されました条項それ自身のことにつきましては、やはり法律をつくり、そういう生活保護、貧しい人を救うといいましても、一つのワクというものがあるわけなんで、いろいろな制限が置かれておるのだと思います。だからそのワクをどうするかという――条項それ自身につきましては私知りませんので、もう少し検討さしてもらいたいと思いますが、しかし法の目ざすところをあくまでも考えてやらなければならぬ、かように私ども存じておるのでございます。
  68. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣は運輸行政の権威者でおありになりますけれども厚生行政についてはまだおなれにならないので、それで必要以上に、いい言葉で言えば控え目に、悪い言葉で言えば憶病に御答弁になっていますが、大事な仕事で、急速に、迅速にやらなければならない仕事ですから、勇敢に御答弁を願いたいと思う。私どもの質問は、意地悪い質問をしておらないつもりです。厚生大臣の御解釈を願っていただかなければ、われわれの方から時間を省略するように、それで申し上げているわけです。今申し上げる点は、私どもの方で提出をしている生活保護法の一部改正法案、通称生活保障法案の条文の中に盛ってあります。これについては与党の方も質問をされております。これについて異議がある質問はありません。与党の方からも相当の質問がありました。まだ質問をしてもらいたいと思います。しかし、これはおかしいじゃないかということはありません。しかも権威のある法制局で条文にちゃんと書いているわけです。やろうと思えば条文に必ず書ける。衆議院の法制局で、完全にあらゆる法律体系を調べて書けるということで書いた。その審議にあたって、与党の方はこの点についていささかも異議を言っておられない。おせじかもしれませんが、なかなかいい法案だというおほめの言葉まで最初いただいた。別に社会党は功績をとらなくてもいい。政府がやっていただいても、その通りそっくりまねされてけっこうだ。西村さんは検討しておられないけれども国会においてはそういう論議がされているし、あらゆるところで検討がされているわけです。そういうことが要望されているわけです。西村さんが運輸行政の権威者で、厚生行政にまだおなれにならないということでこれが延びては困る。ですから、急速に御検討になって、急速に第四条についても直されるということにしていただかなければならないと思います。どうか直されるという前向きの気持で急速に御検討になって、生活保護法の改正案もこの点を盛っていくというふうな前向きの御決意を披瀝していただきたい。
  69. 西村英一

    西村国務大臣 十分前向きの姿勢でもって改正すべきところは改正いたしたい、かように考えております。
  70. 八木一男

    八木(一)委員 時間が足りなくなって参りましたから、おもな点だけにしぼります。  その次に、基準の決定であります。基準の決定については、今も、非常に熱心な有能な社会局長でありますけれども、あのようなティミッドな案を検討している。一三%だ。とにかくさっき申し上げておったように、六〇%ぐらいは少なくとも厚生省としても要求をされなければならない。ですから、厚生省自体が、これからはもちろん大臣の御督励によって、また社会局長の熱心な御努力によって、少なくとも六〇%以上の第一回の要求をされて、びた一文も値切ることは許さぬという態度でやられるだろうと思いますけれども、必ずしも西村厚生大臣社会局長がいつまでも在任するわけではありません。また、それより熱意の少ない厚生大臣が来ないとも限りません。でございますから、厚生省だけでそういうことをやっていたら工合が悪い。もっと権威のある非常に強力な審議会、あるいは行政委員会の人でもけっこうです。そういうところで、生活保護基準はどのようなものでことしはあるべきかということで算定をして、それを内閣連絡をして、内閣がこの問題に関する限り、その通り予算を組まなければならないというような制度をつくらなければならないと思う。それについてどうお考えになりますか。
  71. 西村英一

    西村国務大臣 非常に重要な問題でありますので、いろいろ検討してみたいと思います。また、今回の答申の中にも、社会保障を進める機構について考えたらどうだというようなこともあったと思われますので、十分検討をしてみたいと思います。
  72. 八木一男

    八木(一)委員 と申しますのは、生活保護基準というものは、一般の生活状態の向上に従って、物価はもちろんですが、上がっていかなければならない。その意味では相対的なものであります。ところが、社会の一定の時点においては、これはこういうものであるという具体的な、絶対的なものがあるという考え方に立たなければなりません。そういう点で、毎年日本における、あるいは東京都における、あるいは宮崎におけるというふうに一々分けてもけっこうでありますけれども、一定の時点においてどのくらいの基準にならなければならないということがあるわけです。それをそういうような機関で学理的に、また実際的に出して、それに従ってやらなければならないということにしないと、憲法二十五条の精神が益られない。憲法二十五条は、国民はすべて健康で文化的な最低の生活を保障されるということになっておりまして、非常に不十分ではありますが、それに対処すべき最低の制度として生活保護法があるわけです。ところがその基準が、昭和二十六、七年からぐんぐん下がっている。こんなものでは健康で文化的な最低の生活は保障されません。健康で文化的な最低の生活というものは、ただ生存するだけというような状態ではないわけです。今の生活保護法の基準は、分類が一つ一つ非常にむずかしいから一ぺんに申し上げられませんが、一日の食費、それから生活保護法の中の食費を割ってみますと、年令と地域で全部違いますが、場合によっては一食二十円以下のところが出てくるわけです。これは朝飯と昼飯と晩飯と割って、場合によっては二十円以下のところもあります。厚生大臣はこの点あまり御存じなかったではないかと思いますが、一食二十円。二十円をこえても二十二円とか二十三円。年次によって違いますけれども厚生省に聞きますと、これだけのからだだからこれだけというようなことを言われますけれども、そんなことは問題ではなくて、総体として二十円前後ということであれば、だんだんからだが弱ります。すぐ死にはしませんけれども、八十まで生きられる本来の寿命のある人が六十五くらいで参ってしまう。自分の生命を食っているわけです。自分の健康を悪くしながら生存しているにすぎない。それが政府の言う健康で文化的な生活ということになっている。ですから、今の生活保護法の基準は憲法違反である。われわれ国会議員は、憲法をほんとうに実践する責任がありますから一生懸命話しているが、国務大臣は同等あるいはより以上の責任があるわけである。従って、憲法をほんとうに尊重される国務大臣として、あるいは西村さんが国会議員としての職責を果たされるためならば、今社会局長の言ったような、そんなものではないはずである。前の厚生大臣も憲法違反をしている。西村厚生行政は憲法違反は断じてしない、そのような覚悟でされなければなりません。今直ちには無理であろうとも、少なくとも来年度の予算においては、憲法で述べているような生活保護の基準をやられるようにやられなければならないが、憲法違反のような厚生行政をしてきた厚生大臣がたくさんいる。そういうふうにやらせないように、憲法を守るような水準にするような民主的な行政委員会あるいは強力な審議会をつくって、そこでつくったものは大蔵大臣などに、ましてや主計局長などに一言も言わせない、その通り予算を組むという体制をつくる必要があると思う。そのようなことについて、強力に推進をしていただかなければならないと思います。もう一回強い御決意を示していただきたいと思います。
  73. 西村英一

    西村国務大臣 八木先生の御趣旨の点は十分わかるのでございます。また、われわれも憲法の趣旨を十分守っていかなければならぬのでございまして、十分趣旨はわかりますが、その具体的なもの、どういう調査会をどうしてつくるか、どういうふうに権威を持たせるか、こういうようなことにつきましては検討も要ろうかと思うのでございます。どうぞそういう意味で御了承願いたい。
  74. 小林進

    ○小林(進)委員 生活保護法の問題について、関連で一問お伺いしたいのですが、これは去年も私は予算委員会で、水田大蔵大臣から灘尾さんから全部質問いたしましたけれども、どうもまだこの点が納得のいかないところがある。それはほかでもありませんけれども、今の生活保護法には、生活保護基準厚生大臣がこれを定めることになっています。ところが厚生大臣は、毎年やはり物価水準その他をながめながら、今年おきめになった基準を二二%引き上げるとか、あるいは何か一八%引き上げるとかいう、引き上げのパーセントは忘れましたけれども、私ばそういう法律に基づいて厚生大臣が、今日ある基準の中から、かりに二二%なら二二%上げて三十六年度の予算要求されたとしたら、その二二%加えたものが、私はすなわち今年度における保護基準ではないか、このように解釈するのです。これが生活保護法でいう厚生大臣のきめられた保護基準ではないか。ところが、その保護基準大蔵大臣はほかの省の予算要求と同じように扱って、それは二二%の増加はできない、ことしは一八%だ、一七%だといって適当にこれを削っていられる。これはすなわち厚生大臣生活保護の基準を定めるということの法律違反を大蔵大臣がやっていることではないか。少なくとも生活保護基準の最低の標準が一万三千何ぼ、これが人間の生き死にの最低線なんだから、ほかの予算のようにアルファをつけて要求して、大蔵省からこれだけは削られるだろうなんという甘っちょろい予算要求と違うのだ。生活保護法の最低の基準厚生大臣がきめるということは、人間の生きる最低ぎりぎりの線をきめたのだから、これをほかの予算要求のように大蔵大臣総理大臣や何かが、風船玉のようにふくらませたり縮ませたりするということは、重大な生活保護法の違反行為ではないか。くどく言うけれども、どうも大蔵大臣の御返答も厚生省の御返答もはっきりしないのだが、この生活保護基準厚生大臣がきめるということが法律通り行なわれていないと判断するが、一体どうするのです。これは大臣はこんなことお知りにならぬだろうから、社会局長どうですか。
  75. 大山正

    ○大山政府委員 御指摘のように、生活保護法によりますと、第八条によってその基準厚生大臣が定める、こういうことになっておるわけでございますが、この厚生大臣はあくまでも政府を代表する厚生大臣がきめるというわけでございますので、やはり政府としてこれを正式にきめたものを厚生大臣が政府を代表してきめる、こういうように考えますので、やはり予算その他におきまして、すべての問題が決着したあとで厚生大臣がきめる、こういうことに相なると思うのでございまして、予算決定前に厚生省が一応の予算要求をしたという場合には、まだ厚生大臣として決定したものではないというように考えております。
  76. 小林進

    ○小林(進)委員 僕はその解釈がどうも誤りだと思うのだ。あなた方、新聞紙上を見ると、三十六年度の保護基準に三十七年度は二二%かあるいは一八%加えたものを要求せられる、こういうようなことを新聞に書いている。それは、あなたの答弁によれば、厚生大臣がやはり保護基準の申請をして、それを大蔵大臣に削られて、一〇%か一二%できめられたものが厚生省へ戻ってくる、それがあなたの説明によると厚生大臣のきめた保護基準だとおっしゃるのでしょう。そうすると、厚生大臣が、保護基準はことしは去年に比較して二二%引き上げるのが至当であると大蔵省要求せられたものは、それは何ですか。保護基準じゃないのですか。それは思いつきの予算ぶんどりの政治的折衝の単なる資料であって、それは厚生大臣が保護基準をきめたことにならないのですか。一体その点はどうですか。大山さん、その点を一つ明確にして下さい。
  77. 大山正

    ○大山政府委員 厚生省として概算要求大蔵省に出したという段階におきましては、まだこの法律にいう厚生大臣がきめた基準とは解せられないと考えるのでありまして、やはり厚生大臣が定めますためには、政府としても予算その他の点も検討いたしまして、正式にきめたものについて厚生大臣基準として決定する、こういう段取りを持つべきである、かように考えます。
  78. 小林進

    ○小林(進)委員 関連ですから私はこれで終わりますが、今の御答弁は学者の通説じゃないんです。学問的にはそんなことは間違っていますよ。そうしてそんな生活基準で最低の基準予算概算だなどと言って要求されて、そんなに勝手に二二%や二六%要求して大蔵大臣から削られて、あなたは多いの悪いのと言って省内交渉をやっておきながら、最後に一二%くらいに落ちついたら、これが厚生大臣のきめた最終的な今年度の生活保護基準であるというような答弁をされるということは、生活保護法の立法の精神を全部踏みにじった実に三百代言的な答弁です。あなた、帰って自分で胸に手を当てて考えてごらんなさい。自分のきょうの国会答弁がいかに三百代言的であったか、あなたはきょうはきっと眠れないくらい、良心の苛責に耐えられないものが出てくると思う。そんなことではいけません。生活保護法の基準についてわが党の言うのは、生活保護法の特別の審議会制度を設けて、そこできめるべきだと言っておるのですよ。今のように各省や総理大臣や、そういう政治折衝にまかすべきではない。この保護基準だけは人間の生きる最低線をきめるのだから、政治によって予算概算要求のように上げたり下げたりする性質のものじゃない。これはいわゆる生活保護法の立法の精神ですよ。だからこれだけは政治的なかけ引きや予算要求の場面とは別にして、厚生大臣が諸般の事情を全部一括して、全部含めてきちんときめて、そのきめた基準は、総理大臣といえども大蔵大臣といえども、いたずらにそれを削ったりしてはいけないというのが生活保護法の立法精神です。それが少しも行なわれていないということは、私は慨嘆に耐えない。あなたが何と言われたところで了承できませんから、私の質問の場所がきましたら、またあらためて徹底的にこの問題についてお争い申し上げます。
  79. 八木一男

    八木(一)委員 今、同僚の小林委員の言われたことを厚生大臣はお聞きになったと思う。今までの厚生大臣は、いろいろな点で、有能な人があったけれども、こういう点では非常に無力であった。非常に不誠意であった。不熱心であった。だから六十億から四十億くらいに下がってきた。憲法二十五条の精神がじゅうりんせられてきたということであるので、将来そのような無力な総理大臣がまた出てくるおそれがあるから、厚生大臣がきめるのではなしに、民主的な行政委員会あるいは強力な権限を持った審議会が決定をして、その通り予算を組む必要があるということを申し上げたのであります。そのことを推進されると同時に、残念ながらできない間は――今、局長の話によると、来年のことは厚生大臣ということになると、実際は内閣がきめるのだということを言ったことになる。それは小林さんの言うように間違いであります。厚生大臣がきめて、大蔵大臣なり総理大臣がそれをやろうとしなかったならば、池田総理大臣なり田中角榮大蔵大臣は、これは憲法違反をする政治家である、そういうことでは厚生大臣としての責任がとれないと国民に宣明しておやめになるくらいの決意を持ってやらなければ、こういうことはできない。また総理大臣大蔵大臣も、こういう問題については少し勉強が足りないから、ほんとうは憲法を守る気持がありながらそのくらいのことしかできないのだというふうに思っておられる可能性もある。そういう点について歴代の厚生大臣、ことに歴代の社会局長が補佐の任に当たっていない。そのためにそういうあやまちが起こってきている。多くの国民が人権をじゅうりんされている。ですから、厚生大臣は、そのような社会局の連中の誤りを断じて即刻今から改めさせる、厚生大臣に対する補佐の任を完全にやらせるという厳重な指令をされる。そんなことを言ってもできませんよ、大臣あなたはしろうとですから、というようなことを言う局長があったら、一切そのメンバーをかえる、そのような決意でやっていかれる、そして厚生大臣はそのような基準をきめる、その予算の裏づけに対しては、総理大臣大蔵大臣が何と言われてもそれを完全に百パーセント通す、そのようなことで対処せられなければならないと思います。そうでなければ西村厚生大臣の国務大臣としての、国会議員としての憲法を尊重する義務は果たされていないということになるわけであります。どうかそのような決意で強力に当たっていただくとともに、強力な御決意を御披瀝願いたいと思います。
  80. 西村英一

    西村国務大臣 いろいろな国の施策があると思いますが、それは全般的には国の財政が最終的に支配することになる。こういうことは一つあります。しかし今さ小林んや八木先生がおっしゃることは、事が人間の生きるか死ぬるかの生活の問題じゃないか、今やっておるような方式、つまり厚生大臣はこれが生活の最低水準だということで出しても、それを大蔵省で査定され、いろいろなものによってあまりに権威のないものじゃないか、もっと権威のある機関をつくって、そうしてそれにやらしたらいいのじゃないか、生活保護というものはそうあるべきじゃないかという趣旨は、私も十分わかるのであります。しかし、これは私が今ここでそういうものをつくるとかつくらぬとかいうことを言っても、私だけできめられる問題ではございませんし、十分検討をする値打もあろうかと思われますので、その辺で、事柄が重大であるからという意味で私も十分わかるわけでありますので、検討をいたしたい、かように考える次第でございます。
  81. 八木一男

    八木(一)委員 大臣、機関の方は至急に検討して実現をする。来年度の予算要求はもう始まっているのですから、検討じゃ間に合いません。一つ社会局長に言明をされなければならない。社会局長も有能な公務員でありますけれども、一二%なんというティミッドな見解を持っているようでは、こんな者は交代をしてもらう。厳重に、この委員会が終わったら、この問題について、この審議の経過について、そのようなほんとう国民の最低生活が憲法二十五条の精神に従ってやられるようにやらなければならないということを言明されなければならない。その補佐を十分尽くせ。それは、そんなことをおっしゃってもできることじゃありませんと言うような社会局長だったら、直ちに解職をしてほかの者にかえて下さい。それについてお答えを願いたい。
  82. 西村英一

    西村国務大臣 社会局長が御説明を申し上げましたのは、今の制度のもとにおいてはこういうふうにやっておるんだということを申し上げましたので、社会局長生活保護の引き上げについては十分努力をいたしております。しかし、今の制度におきまして、予算の都合によって大蔵省がいろいろ査定をするということは、現状を申し上げておるのでありまして、さらに皆様方が一歩を進めて、それじゃ食うや食わずの人のことをするにはあまりに矛盾じゃないかという気持はわかりますので、十分検討したいと思っております。しかし、このことが、私だけでできる問題では決してないのでございまして、皆様方意見は十分考える、かように申しておる次第でございます。
  83. 八木一男

    八木(一)委員 それから今予算々々と言われましたけれども予算についてはもちろん国会が最終的にきめます。ですから、予算提出権というものは、ほんとう国会が持つべきだけれども、今間違った制度内閣が持っているということはありますが、それをきめられるのは閣議であります。ですから大蔵省がきめるのじゃない、ましてや主計局なんかがきめるわけじゃない。だからあなたは予算をきめるのに参画されるわけです。重要なところです。予算がありますと言うけれども予算をきめるのは、あなた方国務大臣がきめるわけです。主計局がきめるわけじゃない。こういうような憲法の条章に従った最低の、絶対に必要なものを削減するような大蔵大蔵臣であったら、大蔵大臣の退職をあなたから内閣要求して下さい。それで予算というものはつくれる。予算はその気になったらつくれる。端的に申しますと、増税をしても公債を発行してもつくれる。増税とか公債ということはしない方がいいです。しかし極端に言えば、予算の制約があったらできないという理屈にはならない。たとい増税をしても生活保護を上げる必要があれば、しょうと思えば増税をすればできる、公債を発行すればできる。その問題が、ほかの国民生活、ほかの開発の問題について影響があると考えられるならば、ほかの予算を、防衛費を全部削ってしまえばできる。そうじゃなくて増税も全部できないならば、ゴルフをやっておるような連中から、かけようによっては一年に百億ぐらいわけなくとれる。国民の大切な国家の土地を、住宅地にも農地にもなる土地を、一部の連中が利用して、おとなが子供に荷物を持たせてたまころがしをして遊んでいる、そんな連中から猛烈な税金をとれば一つの大きな財源になる。そういうようなことについて、西村さんは財政的に発言ができるわけです。予算があるからというような消極的なことでなしに、少なくとも生活保護の予算は確保する、それでほかの予算が足りなくなればそのようなゴルフ税か何かでやる、あるいは防衛費を削ってやる、そういうことを主張なさらなければならない。財政は主計局のものじゃありません、大蔵大臣だけじゃありません、閣議できめるものであります。ですから、どんなことを大蔵大臣が言おうと、これから逐次申し上げる社会保障予算については絶対に通す、そのような決意でやっていただかなければ、社会労働委員会論議厚生大臣から、予算がありますから、そのような弱腰を言われるようなことでは困る。断じてそれを実行するという決意を披瀝していただきたい。
  84. 西村英一

    西村国務大臣 予算の決定でございますから、もちろん内閣全体の責任でございます。私といたしましては、大蔵大臣云々の言葉も出ましたが、それはそれとして、もしその点において不都合がありますれば、私、力の足らないというおしかりを受けるわけでございます。内閣全体の責任においてやることでございます。私としてはできるだけできるだけという言葉はまた悪いですが、全力を傾倒いたしましてやるつもりでございます。
  85. 八木一男

    八木(一)委員 一生懸命やっておって下さるそうですから……。私は違うところで池田さんに猛烈な批判を持っております。しかし現在の日本の総理大臣ですから、国民のためにあたたかい総理大臣であってほしいわけです。政党の競争は別としまして、現在の国民のために池田さんがそういう人物であることを私は期待しています。ところが池田さんも人間で能力に限りがありますから、すべての問題はわからない。厚生省はこのような決意であるということを強く披瀝して十分に説明されたならば、池田さんがかりにあたたかい政治家であって、有能な政治家であったらわかる。そういう気になるはずです。それをやらせないのであれば、これは厚生省努力が足りないということになる。その点でどんなことがあろうとも、厚生省が池田勇人氏を理解させて、前向きに、より以上にやろうという気持に持っていく。大蔵大臣も持っていくというふうにしていただきたいと思います。  時間が制約されておりますかりほかに参ります。今生活保護のうちの大事なことの一部のみを申し上げました。そのほかに、不服申し立て機関というものが必要であります。これは今厚生省生活保護の予算をしばる、地方行政団体もそういうようなまずいやり方をする。それでほんとうは、対象者から見たらこれくらいもらえると思っているのに、収入の認定をしたりいろいろなことをして、実際にもらえると思っている金額がもらえないことがある。それはもちろん対象者の思い違いもあるけれども、その中には、役所の方が非常にそういうような予算ワクから考えた意地の悪い、無理やりにこじつけて、出せるものも出せなくしたような事例もあるわけです。そういうものに対して国民は泣き寝入りであります。特に生活保護対象者はそうです。そういうことをちゃんとやるために、不服申し立て機関をつくるということは絶対に即時必要であります。こういうことも改正案に即時盛って入れていただきたいと思います。どういうような構成でいいかということについては私ども具体案を持っておりますが、他日または臨時国会が終わりましたならば、御必要だったらいつでも私ども考え方を申し上げます。そういうことであります。  それからそのほかに扶養義務の点であります。扶養義務が追及されるので非常にまずいわけであります。北海道に兄さんがいる。だからそっちに先に養ってもらってからにしろ、九州に弟がいるというようなことが行なわれている。実際に対象者については、あたたかい配慮をやっておられるところもあれば、非常にあたたかくない、冷たい配慮をやっておられるところもあります。これは役人々々の個性にもよりますし、それからそのときどきの社会局の締めつけ方、あるいはゆるめ方、それにもよろうと思いますが、そういうことがある。非常に冷たいところがかなりあるわけです。そういうことでこれが実態に合わないわけであります。たとえば片方が急に病気になって扶養を受けられる、それは扶養義務者として二等親でございますから、今の法律上でいくと、その片一方もぎりぎりの生活をしてやっているときに、人情は厚くてもいきなり生活を切りかえて、そっちに金を持ってくれということは、なかなか実際上できないことであります。ですから先方の方は困る。そういう困ったときには大丈夫なようにしてありますとおっしゃるかもしれませんけれども、実際にそれを問い合わせたり、そういうことをごちゃごちゃしてからでなければ適用しない。実際に負担能力がなくても、あるはずだ、それだけ出させろ、それまではしないということが行なわれておるわけであります。こういうことは非常にいけないことでございまして、扶養義務というものは、これは夫婦と未成熟の子と親との間、それだけに限るべきだと思います。扶養義務について今やっておりますが、そういう点について先ほどの単位の問題とも関連があるわけでございますが、現状非常にそぐわないものがあるので直すような生活保護法の改正案を出していただきたいと思います。まだまだございますが、以上の主要点を加えて、さらにこれから申し上げますようなことを加えた生活保護法の改正案をお出しになるという気持で前向きに検討されて、厚生大臣のお気持としては出されるというような先ほどの御決意を伺いましたので私どもは見守っておりまするし、さらにその具体的な計画がいつ固まったかということを随時々々、毎月の休会中の審査でお伺いいたしますので、特に急速にこの案を固めていただきたいと思うわけであります。  生活保護だけで時間がつぶれましたが、制度審議会答申勧告はいろいろな点について申しております。たとえば年金制度についてても、医療保障についても、あるいは社会福祉についても、公衆衛生についても、すべての点についても改善されなければならないことが非常にたくさん言われておるわけであります。その点で、国民年金法の改正、厚生年金保険法の改正、その他国民健康保険法の改正等、それから健康保険法の改正というようなことがすべて必要になってくるわけであります。そして、ことに年金の問題について少しく申し上げてみたいと思いますが、国民年金法が昭和三十四年に審議をされましたときに、徹底的に論議をされまして、その内容がありとあらゆる点で不十分であるということを時の厚生大臣坂田道太君ははっきりと認められました。時の総理大臣岸信介君も認められたわけであります。ただし、とにかく最初であります。最初であるから、とにかく不十分過ぎるほど不十分であるけれどもこれを発足さしてもらいたいということをで、あれが発足を見たわけであります。私どもは、あまりに不十分であり、またその組み立ての中にあまりに社会保障の精神に相反した間違った点がございますので、わが党の完全なる法案をもって、それをよしとして対決をいたしました。われわれの反対にもかかわらず、多数決でこの不十分、不合理な法律が通ったわけであります。不合理な点は多々あります。不十分な点がございますけれども、しかしながら、たとえば福祉年金等におきましては、その対象者は喜んでおります。喜んでおりますけれども、まことに不十分であります。その不十分な点を直すべきことが、もう毎年々々直すと言われておりますけれども、直す点については非常にまだ不十分だったわけであります。それは歴代の厚生大臣、歴代の総理大臣が、できるだけ早く直すということを言っておられるわけでございます。それが非常にちょっとしか果たされておらない、少しずつ直っておるという時期であります。今回は、今までたまったものを大幅に前向きな前進を遂げなければならないときでございます。その問題点はたくさんございますが、端的に一、二点だけ申し上げますと、福祉年金の金額、この金額については開始以来一回もいじられておりません。年寄りについては年一万二千円、月千円、しかも老夫婦そろっているときには値切られて、二割五分減ということになっております。それから母子福祉年金、また準母子福祉年金について、それに見合うべき児童手当、これはほんとうの児童手当でなしに、生別母子世帯をおもな対象にしたものでございますが、そういうものについては、母子年金については千円を単位として扶養加算が途中で幾分ふえましたけれども、基本金額はふえておりません。障害については一級障害、特に外科的な外から見えるような障害については、月千五百円という低水準でございます。千円とか千五百円というようなものはほんとうのつまみ金である。ほんとう社会保障意味を持っているおるものが具体的にそれほど役に立たないということは、厚生大臣、実感からおわかりだろうと思います。私どもは倹約をいたしております。厚生大臣はわれわれよりいい生活をいたしておられると思いますが、倹約している、私どもですら千円という金額はまたたく間です。知らず知らずの間に飛んでしまう金であります。そういうようなことで、これは大幅に今回は変える時期に達しております。すべて変えなければならないことでございますが、日本政府の低いベースでは、ほかのことをいじくって、この金額が置き去りに今までされてきました。しかもその間には物価が高騰しました。物価の高騰分は絶対に引き上げないと、実質的に給付は減ってくるわけでありますが、そんなことではならないわけであります。物価高ということを大蔵省は言いかねないので、厚生大臣は腹の中によくたたき込んでおいていただきたいのは、最初から千円では少ないのです。最初から三千円、四千円にならなければならぬ。そういう努力をすることを政府は誓ってやってもらいたい。ほかのところをいじくり回してとめ置かれていたが、いよいよ今度はその金額が変わらなければならない時期に達しているわけであります。厚生省もそう考えていることでございますから、この金額を大幅に引き上げる、そういう時期に達しておりますので、年金局長に厳重な督励をして、そのような大幅引き上げのための案を至急つくらせて、強力な要求をさせるという決意を固ためていただかなければならないと思います。金額だけではございません。福祉年金の中の中枢である老齢福祉年金の場合には、七十才からしか開始されておりません。今の国民の平均年令は六十七才です。ですから、その前に死ぬ方がずいぶん多い。残念ながら非常に政府の施策よろしきを得ないために、苦労をしてきた国民の人々、そういう人々は早く老衰をする、残念ながら寿命がほかの人よりも短い。でございますから、年金に不可避的な欠点でございますけれども、しあわせな人の方にそういうものが回ってしまうという、その欠点があるわけであります。それを最小限度にするためにも、現在のほんとうに恵まれなかった年寄りの人々に対処するためにも、この七十の開始年令は断じて下げなければなりません。これを同時にやらなければ、金額だけ上げたのでは、厚生大臣は年金については何もしなかったということになろうと思う。金額の方は上げる大勢にあって、上げなければならない時期にございますから上げるのはあたりまえ、これを完全にしていただければ、厚生大臣は年金について努力していただいたということになりますが、それとともに、年令を下げるということが必要であります。  それから所得制限についても、いろいろな点で緩和しなければならない点があります。特に年寄りが二人いるときは二割五分削減とか、所得制限というもの中の配偶者所得制限というような問題については、断じて即時これを取り去らなければならない問題であります。時間がありませんから説明はしませんけれども厚生大臣、御自分で全部御理解でございますからよろしゅうございますが、そうでなければ、山本君に即時今名前だけ申し上げましたから、その点について御研究を願いたいと思います。それから配偶者所得の制限というようなつまらぬものは、即時撤廃をしなければならぬ。それから障害者については、一級、二級、三級というようなことが普通いわれておりますが、一級障害しか対処がされておりません。政府の年金は、年金の主体は老令ですから、年令が一番多くなって一番論議の中心点になりますけれども社会保障の精神からいえば、障害、母子の方が先になります。両手両足がない人、片手片足がない人、そういう人たちは、自分が暮らすほかに子供を養わなければならない。また二十にして両足がなくなったら、自分の生涯が続く限り、その状態で過ごさなければならない。そういうことを考えると、親孝行むすこさんを持っている老人よりは、はるかに所得保障の必要があるわけです。対象者が少ない、対象の団体が力がないということのために、これが置き去りにされております。上級障害でも三級障害でも年金をつけなければなりません。一級障害の千五百円なんか問題になりません。直ちに五千円か七千円くらいに上げる必要がございます。ことに外から見た障害だけで、肺が半分なくなったとか心臓がどうしたとか、そういうような内科障害が、労働能力、所得能力から見て外の障害と同じ程度に悪いということがわかっているのに、それについては、一切、一級であろうと一文も支給をしない。そのような間違ったことが行なわれておる。年金局長が何を言おうと、これは間違いであります。山本君は熱心でありますから、それは間違いという意見具申をするだろうと思いますが、厚生大臣は、もしそんなことは必要ないということを山本君が言いましたならば、そのような不適任な局長はすぐ解職をしていただきたい。  そういうことで、年金について国民年金法案の大幅な一すべての点にまだありますよ。たとえば国庫負担だけでは足りない。免除者に対しては国がすべての保険料については充填をして、保険料を支払う能力のない人が年をとったときに特に年金が必要であるという現象を十分に把握をされて、そういう人たちの年金が、ほかの払える人たちと同じようでなければならない。少なくとも同額でなければならない。そのような社会保障の基本原則、ここにもそういうことが書いてあります。よく御勉強になって、社会保障というようなものとは違う、必要な人に必要なものがいくのだ、負担の方は能力のある者は負担して、能力のない者は負担させるべきでないということがちゃんと書いてある。そういうことをよく読まれて、そういう方向に年金を変えていくということのために、国民年金法の抜本的な改正案を出される必要がございます。なまいきな話でございますが、その完全な手本はわれわれが用意をしております。事務的な必要はございません。それをお読みになったらそのままお出し下さってけっこうです。そこまで一〇〇%いったら、九八だけやるというのならその点だけを御研究になったらよろしい。そういうことであります。でございますから、来国会国民年金法の改正案を出される。  それからもう一つ、厚生年金保険については、改法案を出さなければならない時期に達しているわけであります。これについては、この答申の中に一番大事なことが書いてある。この年金額をぐっと上げなければならないということと、定額部分をふやさなければならないということと、上げた場合に、昔損をした今支給をされている人々の分も上げる、その分の原資は国家が絶対全額持たなければならないということが書いてあります。これは絶対にやらなければならないことにしてあります。これをちょっとでも曲げることは、民主的な審議会国民の世論をじゅうりんし、社会保障の精神をじゅうりんすることになります。これは絶対にいかぬ。厚生年金保険法や国民年金法の改正案を来国会に必ず出される、そのことの御決意を示していただきたいと思うのであります。
  86. 西村英一

    西村国務大臣 国民年金の問題につきましては、問題をたくさん含んでおるのでありまして、それでありますから毎年今までも改正してきたのであります。さる七月の末日、国民年金制度審議会からもいろいろ私に対して答申がありました。今八木委員の言われておることも、その答申の中に若干あるわけでございます。十分研究をいたしまして、御趣旨に沿いたいと思っております。一々項目につきましては政府委員から説明させます。
  87. 八木一男

    八木(一)委員 項目についてはと言いますが、最初項目の概略は申し上げた通り、金額を大幅に引き上げる、大幅に引き上げることにならなければ直ちに老令年金を三千円にする、ほかのものを三千円にしてあっちを四千五百円にするという御答弁はできないと思いますから、その具体的な金額は少しお待ちしてもいい。ひょっとすると四千円にするという御答弁があるかもしれませんから、それは具体的にすぐおっしゃらないことは今日の時点においては控えてもけっこうですから、大幅ですよ。物価に対処して二割か三割上げるというような、そんなものが値上げであると思ったら大間違いだということ。どんなになまけていても二倍半くらいに上げなければいかぬということです。大幅な値上げを含んだ年金法の改正案を出される、そのことについて前向きにまっしぐらに全力を傾注して努力されるかいなか。そしてまた、七十才開始の老令福祉年金を年令を下げる、そのことを含んだ改正案を出されるかいなか、そのことについて最善の努力をされるかいなかについての御答弁を願いたいと思います。   〔委員長退席、柳谷委員長代理着席〕
  88. 西村英一

    西村国務大臣 数字の点につきましては今検討中でありますから、御趣旨の点に沿うて努力したいと思います。年令の点につきましては、その引き下げの点はほかの関係もあろうかと思われますので、今七十才を六十五才ですか、に引き下げるということにつきましては、もう少し検討さしていただきたいと思うのでございます。
  89. 八木一男

    八木(一)委員 御努力の向きありましたけれども国民年金の拠出年金の方が六十五才、そうなれば、無拠出年金と学問的に言います福祉年金が七十才というのでは意味が通らないわけです。両方六十に下げていただくことが一番けっこうだが、両方六十三に下げていただいてもけっこうであります。しかし、少なくとも福祉年金を六十五才に下げることだけは絶対にやられなければ、政府並びに厚生省の年金政策はゼロであるということが言えるわけです。六十五才以下に下げる。あとはおまかせします。これを六十才に下げていただけば、私は厚生省の善政を非常に外に宣伝して回りますが、少なくとも六十五才以下に下げることについての案を出されるということについて全力的な努力をせられまして、決意を持たれまして当たられるという御決意を表明していただきたい。
  90. 西村英一

    西村国務大臣 今申しましたように少し検討してみたいと思います。努力はいたします。
  91. 八木一男

    八木(一)委員 あまり簡単過ぎて……。六十五才のことですよ。金額の方はさっきの方にありましたからね。六十五才以下ということについて前向きに実現するように全力努力をされる、そういう御決意を表明していただきたいと思います。
  92. 西村英一

    西村国務大臣 年令の引き下げの点については、他との振り合いもあったりいたしまして、私としてそれは他とのバランスにおいて七十才のものを六十五才に下げるのが適当であるかどうかということについて十分のあれを持っておりませんので、もしそれが納得いきますれば、年令を下げた方がそれはいいとは思われまするが、ほかとのバランスの関係もありまして、十分検討して前向きの姿勢で考えたい、かようにお答えする次第でございます。
  93. 八木一男

    八木(一)委員 でございますから、バランスを申し上げているのです。日本の年金制度は五十で始まるものもあります。五十五で始まるものもございます。ほかのより一番おそいので国民年金の六十五なのです。ですから、バランスの点だけを考えられるというのだったら、六十にしていただいてもいいのです。最少限度六十五にしなければ、バランスを考えたいという厚生大臣の趣旨に合わないということを説明申し上げているのです。私もかなり社会保障を勉強しています。ほかにそんな七十才というようなものは、国の政治としてはありません。県の敬老年金みたいなものは別です。そんなものはありません。ですから、バランスを考えられるならば少なくとも六十五才以下にはする。六十五才がいいか、六十才がいいか、五十五才がいいか、それについては検討されるという話ならばわかります。六十五才以下にはするという決意を表明していただかないと、厚生大臣のバランスを考えられるという趣旨にも合わないことになります。それでぜひ六十五才以下になるように最大の努力をされという決意を、ただいま即刻固めていただきたいと思います。
  94. 西村英一

    西村国務大臣 私がバランスと言ったのは、年令のみをずっと比べるという意味じゃなしに、国民年金ですから、やはり拠出制、無拠出の問題というような、そういうことも考えなければならぬので、そういう意味で、バランスということを言ったのでありますから、少し検討させていただきたいと思います。
  95. 八木一男

    八木(一)委員 勧告の中にもちゃんとこれは出ておる。それからほかのバランスは、国民年金の拠出年金をうんと上げるべきだ、厚生年金の方もうんと上げるということを書いてある。少なくとも七千五百円と六千円以上。けれども、それを一万円と八千円にされてもちっともかまいませんよ。少なくともそういうことになっている。ですから、これは上げるのはそのバランスもとれるわけです。ですから、これはぜひ厚生大臣厚生行政にまだおなれじゃありませんけれども、私はひっかけで言っているわけじゃない。事実そういう状態を申し上げているのですから、御研究になっても私より以上の結論が出ないはずです。大幅の値上げ、六十五才というようなことについても、前向きにがんばっていただく御決意と御覚悟を表明されたと解釈して、もう時間がありませんから、この問題は終わりたいと思います。  それから、実は厚生大臣、いろいろな問題――生活保護について申し上げることの一割も申し上げておりませんし、年金に至っては百分の一も申し上げておりません。あと医療保障の問題もあります。社会福祉の問題もあります。公衆衛生の問題もあります。結核の問題もあります。いろいろな問題がありますが、厚生大臣には、私ども社会保障を前進させるために一生懸命考え考え抜いて申し上げることについて、御質問したいと思いますので、いつも国会のときには百パーセント待機をされていただきたいと思います。どこへ行った、ここへ行った1民間の民主的な陳情を受けられるのはいいですけれども、つまらぬ宴会に行ったというようなことのないように、待機していただきたいと思います。社会労働委員長にもお願いしてございますが、国会の中のいろいろな要求が重なった場合には、衆議院の、第一院の社会労働委員会にまっ先に来られて、予算委員会などはあとにしていただくということになっておりますので、そのような御決意で出ていただきたいと思います。大へん大きな声で、なまいきな声で申し上げまして、先輩に対してその点は大へん失礼であったと思います。熱心なあまり申し上げましたので、その点は御了解いただきたいと思います。厚生大臣は非常に先輩の練達な政治家でございますけれども厚生行政については、率直に申し述べられましたようにまだおなれになっておられませんが、国民厚生行政に非常に要望しておりますので、厚生大臣が急速におなれになっていただくことが必要でございます。またおなれになるためには、われわれが率直にひっかけでなしに与野党ともに言っていますことを、そのまま率直にお受け取りになって、それを御信頼になって推進されることが一番早道である。何といいますか、各局の進言ももちろんお受けにならなければなりませんが、厚生省全体が大蔵省に対して非常に憶病になっております。それから今までほんとうに熱心に取っ組まれた方も、何回も大蔵省の鉄の壁にあったから意欲をなくしている方がある。先ほどの答弁中にもそういうことがありました。そのような有能な公務員の方が意欲をなくされないように、また責任の問題をぼやっと考えられないように厚生行政について強力な補佐を大臣に対してされる。原案はほんとう社会保障の精神に従って、憲法二十五条の精神を実現する精神に従って強力な態勢をとられ、それを指導されることに、大臣閣議その他で、先ほど御公約になりましたことを完全に果たすためにやっていただきたいと思います。しばしば辞表をふところにしてと申し上げましたけれども、なかなか大蔵省の壁というものは厚いようでございます。ただし、国民要望大蔵省になくて厚生省にございます。でありますから、それを通すためには厚生大臣任務は非常に重いので、やはり辞表を年じゅう懐中にされるような、田中角榮大蔵大臣意見が合わないときには、猛烈な勢いで論戦をされるような覚悟でしていただかないと、なかなかこれが十分に果たせないのではないかと思いますので、先輩の厚生大臣に失礼でございましたけれども、そのような決死的な覚悟でこれを実行していただくことをお願いいたしたいと思います。その点について、最後に総括的に強力な御決意のほどを御披瀝を願いまして、この御決意が私の納得のいくものであれば、私の質問はきょうはこれで打ち切りたいと思います。
  96. 西村英一

    西村国務大臣 いろいろ有益な話を聞きまして、私ども皆様方のこれから協力を得る上におきまして非常に助かったわけでございますが、御承知のように、私が先般所信表明をした最後にちょっと申したのですが、非常に厚生行政は問題が山積いたしております。今いろいろ予算の点等につきましても出ましたが、何もやる、かにもやると申しましても、実際問題はなかなかたくさんなことが山積いたしておりますので、その辺につきまして、八木委員からなかんずく重要な問題を拾い上げていって御質問があったと思うのであります。私も十分心がけまして、予算その他につきまして、今後少なくとも厚生行政が円滑にいくように、皆様方の御協力を得ましてやっていきたい覚悟でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げる次第でございます。
  97. 柳谷清三郎

    ○柳谷委員長代理 滝井義高君。
  98. 滝井義高

    滝井委員 今、八木さんからいろいろ御質問がございましたが、時間がございませんから、当面大臣の言われるように山積をしておる問題の中で、特に早急に片づけなければならない二、三の問題について、大臣の見解をお伺いいたしたいと思います。  聞くところによりますと、七月の十八日に新しく池田内閣が改造をされます際に、われわれは灘尾厚生大臣は留任をするんではないかという新聞のうわさその他を聞き及んでおったわけです。しかし、灘尾さんはついに留任ができずに、多くの山積する問題を残したまま、おそらくうしろ髪を引かれる思いで去っていったのではないかと思います。その後新聞を見ますと、厚生行政はむずかしいから実力者の河野さんを厚生大臣にしようという情報が流れました。聞くところによりますと、河野さん、非常に厚生行政はむずかしい、何でおれをばかにする、そんなところにいってけんかをさせるつもりかといっておやりにならなかったらしい。新聞記者会見等で見ますと、池田さんの今夜の組閣で意の通りにならなかったのは、水田大蔵大臣を通産大臣に横すべりができなかったことと、河野前農林大臣厚生大臣にすることができなかった点が、自分の意向と実は違っておったのだという、新聞記者会見における発表がございました。これは池田さんみずからの口でわれわれは聞いたのです。その実力者が忌避された厚生大臣のポストを敢然としてお引き受けになった西村英一厚生大臣について、私は満腔の敬意を表したいと思います。それだけにお引き受けになるからには、この職責の重大さを痛感をし、身をもって難局を打開する決意をお持ちになってきたものだと考えておりますが、そう理解してさしつかえありませんか。
  99. 西村英一

    西村国務大臣 組閣のときのいろいろな話が出ましたが、私は組閣のときは実は全然ああいう状況は知らないのであります。全く正直なところ、私には寝耳に水で、実際突然なことであったのであります。従いまして、今のお尋ねでございますが、河野さんが初め当てられて、後に実力者がやるべき位置をお前が引き受けたのはどういう気持かという、こういうお尋ねかもしれませんが、私も考えました。考えましたが、政治家でありますから、自分の全力を尽くしてやるつもりでお引き受けをしたわけでございます。今後も私は自分の政治家としてでき得る範囲の努力をいたしたい、かような気持でございます。その当時のいきさつにつきましては、全然私は知らない。それで思惑も何も全然なくて、自分の気持で引き受けたような次第でありまして、今後も努力いたすつもりであります。
  100. 滝井義高

    滝井委員 全身全霊を傾けて厚生行政の難局打開に努力をせられるというそのお気持に敬意を表します。  そこで大臣の所信表明の中にも、「厚生行政が的確な長期的視野のもと、着実な前進を遂げていくよう全力を傾け、」云々ということがあったわけです。問題は、厚生行政が長期的な視野に絶えず立っておるかどうかということなのでございます。大臣、事務の引き継ぎのときに、厚生行政の長期計画ができつつあるということをお聞きになっておりますかどうか。
  101. 西村英一

    西村国務大臣 実はその点を事務当局からいろいろ聞きますと、厚生行政について昭和三十六年度を初年度といたしまして、四十五年度最終の十カ年計画というもの、所得増倍計画に合わせた厚生行政の構想というものを一応立っておるのだ、しかしそのことは厚生行政全部にわたることではありませんので、計画的にいかないものと――計画的にいくものは十カ年計画を立ててあったのであるが、ただいまの状況では社会的、経済的に非常に変化が多いから、この計画をことしから五ヵ年計画というものに立て直そうと今考えておるところでございます。中にはその何カ年計画というようなものに載らないで、やはりそのときの社会情勢に応じてやるものもありますが、とにかく今度社会保障制度審議会答申がありましたように、目安は長期的に持っておらなければならない。ものによってはぴしっと数字をきめて、それを実行していくような計画が要ると思うのでありまして、今せっかく五カ年計画としてそれを検討中でございます。
  102. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、古井厚生大臣時代にお立てになった厚生行政の長期構想、いわゆる十カ年計画というのは、あまり長期のものでは変動が多いので、五カ年計画に変更しておやりになる。そうしますと、何かその青写真でもおありになるのでしょうか。五カ年に変更するからには、何か青写真がなければならぬと思うのですが、そういうものがあれば、ここで大ざっぱな構想ですね、古井さんのときには各地で新聞発表をされました。それからその後灘尾さんもやっぱりおやりになったのです。また大臣も五カ年計画があるのなら、おそらく近く新聞発表をされるかもしれませんが、そういうものがあれば、新聞発表をされる前にここでその輪郭を明らかにしておいていただきたいと思うのです。たとえばこれから十カ年の間に生活保護を三倍にします。そのためには年率一二%ずつ上げていかなければならぬという答弁がさいぜんあったようです。これは十カ年計画です。そうしたら五カ年だったらどうなるという問題があると思います。社会保障制度審議会は十カ年といっておるわけです。しかし内閣は、制度審議会がいろいろ出したってこれを尊重したためしがない。審議会審議会、それは参考にしていただいてけっこうでございますが、大臣として政党内閣の自由民主党の西村厚生行政推進される場合に、十カ年を五カ年に変更される、それを推進していくということになれば、そのあらましの構想というものは、日本保障の四本の柱である公的な扶助、年金、医療あるいは公衆衛生、こういうようなもので、一体どういう形に大ざっぱな構想はなるのか。それをできれば一つ簡単に御説明願いたいと思います。
  103. 西村英一

    西村国務大臣 まだここで発表するような段階に至っておらないのでありまして、ことしを初年度として今後つくっていこう、非常に変化の激しい時代であるから、十カ年というような目標があっても五カ年に縮めて強力に推進していこうということで、これから徐々に固めていく次第でございます。できましたら皆様方に発表をして、御協力をお願いしたいと思います。
  104. 滝井義高

    滝井委員 実は今から七、八年前の川崎厚生大臣のときから、私は大臣が就任するたびごとに、厚生行政の長期計画というものをお聞きしておるわけです。みんな大臣と同じことを言うのです。今度私が就任したからには、長期計画をつくりたいと思います。今から推進してみたいと思いますと、みな型にはまったように言うのです。大臣もやはり何人かの例に漏れなかった。同じことを言っているのです。そうすると、今からつくるというのなら、厚生省は長期計画は何もないということなんですね。
  105. 西村英一

    西村国務大臣 ないということじゃなくて、これからつくっていこうということで、大臣がかわるたびに同じことをいつも言うじゃありませんか、こう申されるかもしれませんが、それはやはりその人々によって、新しい観点で考え直していこうという方もありますし、いろいろ考え方があると思います。しかし私の場合は、昨年、昭和三十六年度を初年度といたして十カ年計画をつくっておったけれども、今度の答申の問題もありますし、また世の中の変化が非常に進んできた、これは社会保障の環境衛生にいたしましても非常におくれておる面があるわけであります。そういうものを、今までの状況ではいかぬから一つの目安をつくりたい、それを一つ五カ年計画でまとめよう、こういうことを考えておるのでありまして、いつも同じようなことを言う、計画はできてもさっぱり実行ができないじゃないかというおしかりはあるかもしれませんが、それにいたしましても、目標を持つということはぜひ必要じゃないか、かように私は考えております。
  106. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、厚生省にはそういう計画はおありになるのですか。大臣はさいぜん五カ年計画をつくっていこう、こうおっしゃった。しかし実際は計画はあるんだ、こうおっしゃるのですが、あるのならばそれを出していただきたい。たとえば十ヵ年計画でもかまいません、実は、われわれが、十ヵ年計画みたいなものができたときに、その資料を下さいと言ったら、なかなかくれなかったのです。これはまだわれわれが検討しておるもので、厚生省としては何もありませんということだったのです。ところが三月十九日に、厚生行政五カ年計画というのを、これは灘尾厚生大臣が、どこか旅行か何かに行かれて新聞に御発表になっているわけです。発表にはなっておるが、大臣個人の意見で、別に省としての方針はきまっておるわけではないような姿のように、今の大臣の御答弁では見受けられるわけです。一体厚生省には、五年でも十年でも三年でもいいです。何か長期計画らしいものがあるかどうかということです。あるならある、ないならないと、これをまず一つはっきりして下さい。
  107. 西村英一

    西村国務大臣 昨年つくったその十カ年計画というのは、正直なところ、これを閣議にかけましてオーソライズされたものでありませんので、厚生省行政をしていく上の一つの目安としての試案なんです。そういうものをつくっておったから公に発表しなかったのかもしれません。それを五カ年計画に灘尾前大臣が切りかえようとしたかどうかということは、私は知らないのですが、変化があるから十カ年計画じゃいかぬだろう、今後は一つ五カ年計画ぐらいで目標を立て直さなければならぬのじゃないか、こう考えてせっかく今検討しておる、こういうことで、これが私たちが行政をしていく上の一つの目標だけにとどまるか、あるいはもっと権威のあるように権威づけられるか、これは今後の問題でございます。その案のでき方によってやはりきまると思うのでありまして、あるかないかと申しますと、今こういうものにはこういう五カ年計画があるんだということをはっきり申し上げるあれを持っておらないのであります。
  108. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、実は三月の十九日に発表した案というのは、相当具体的になっておるのですね。厚生年金制度改正生活環境整備、医療保険制度改正、疾病予防行政推進、児童手当制度の創設というように、一つ一つの項目について割合具体的に発表しているのです。歴代の大臣は、長期計画をつくりますということを言ってきたのです。川崎君が厚生大臣のとき以来言ってきた。そして、どの大臣も六カ月か八カ月の任期の終わるときには、何も言わずに去っていくのです。そして新しい大臣になったとき、また判を押したように質問をすると、判を押したように答弁をするのです。今から私はつくりたいと思いますと言う。大臣の言われるように、それが目標となるか、それとも権威あるものとなるか、それによってどうするかきめたいと、きわめてあいまいもこなんです。これだから厚生行政は、風の間に間にゆれていくことになる。八木さんがさいぜん言われておったようなことになるのです。ちょうど日本で店に行って、くつ下を下さいと言うと、日本の店員はどうするかというと、赤や緑色や黒や、いろいろな色のくつ下を出すでしょう。ドイツに行くとどうするか。まずくつ下を下さいと言うと、あなたのサイズは幾らですかと、サイズを聞いてそれから出すのです。幾らくつ下を出してくれたって、サイズの合わぬくつ下を百足出したって、これは買えぬわけです。厚生行政はそれと同じですよ。とにかくあれもやろう、これもやろうと言うだけで、大臣のかわるごとに十年計画だ、五年計画だと、こう言うのです。しかし、ちっとも一貫をしていないのです。一体どこに重点があるのかわからぬ。だから、環境衛生のことを言って申しわけないけれども、どうも保険や医療に力が入って、環境衛生に力が入らぬから、参議院議員を出して力を入れなければならぬというので聖成さんを出して、大した選挙違反をやって迷惑をこうむるということになる。そういう役人が参議院に打って出て、そして修正させようという気持を起こさせないように、歴代の大臣がきちっとした計画を立てるべきだ。金の回らない環境衛生には、必ず三年目か五年目にはこれだけの金が回る、それだけのことをやらなければならない。そうしないとチーム・ワークがとれない。そういうことをおやりになっていない。一事が万事です。これから質問する点も、そういう点の核心をえぐっていくわけです。だから大臣は、五年計画をあなたの在任中におつくりになって、そして半年か一年の後に大臣を去られるときには、この通り自分はこれをつくりましたと国会に報告するだけの自信を持って、今大臣は五年計画と言いましたが、五年計画をおやりになる所存があるのかどうか。少なくとも五カ年を長期というならば、その長期の計画をほんとうに心魂をつぎ込んでおやりになるのかどうかということです。これをまず第一にはっきりお答えを願いたいと思います。
  109. 西村英一

    西村国務大臣 やはり事を進めていくのでございますから、ある目標はどうしても持っておらないといけないのであります。従いまして、私としては、前大臣がどう言いましたか知りませんが、一応の目標はつくりたい。しかもそれは十カ年計画というような長い目で見るものもあるでしょう。ありましょうが、やはり急がなければならぬというものもありますので、五カ年計画くらいにして事をちゃんときめていく。その計画が少しも間違わずにやれるかと申しましても、多くの官庁でやっておる年次計画と申しますのは、達成率がやはり問題になるので、百パーセントやるとかいうようなことは、これははなはだ残念ですけれども、非常に少ないのです。しかし目標は持っておらなければならぬ、こういうことですが、あるいは事柄によっては目標のできないものもございましょう。しかしでき得るだけ目標を持って進みたい、かように思って、今その点についてはいろいろ検討いたしておるところでございます。どうかそういう意味において、長期計画の五カ年計画というものを御了承願いたいのであります。それを立てたら、それは絶対にびた一文も違わぬようにいくかというと、ほかのところでやっている年次計画というものも、決してそういうものでございませんが、目標を持って進むということでいきたい、かように思って検討中でございます。
  110. 滝井義高

    滝井委員 私は幾分数字が違っても、それでとやかく言おうとは思いません。たとえば鳩山内閣以来、それ以前にもそうですか、政府は経済計画を立てた。池田さんの所得倍増計画もそうですか、当たった数字は一つもない。当たったのは何かというと人口増加で、人口増加の推計だけは当たった。あとは何も当たっていない。だから、それはけっこうなんです。あの三十五年十一月の選挙で、所得倍増計画で十カ年たったら所得を二倍にしますという池田内閣のスローガン、あのキャッチフレーズというものが国民を魅了して、池田さんは天下をとることができた。それは間違っておったにしても、やはりあなたの言われるように目標を与えることは必要です。それは今までいつも日の当たらない公衆衛生や環境衛生関係にも、これだけ予算がいきますよという、それは事実いかないかもしれないけれども、それがいくということになれば、所管の局長なりそこに働く人たちも張りが出てくる。そういう点で一つぜひ、その数字がたとい将来、今のように経済変動が激しくて、しかも貿易の自由化を前に控えている日本経済ですから、その的を射抜くような工合にはいかないと思いますけれども、近くまでいけばそれでけっこうだと思いますから、ぜひ一つ大臣の在任中に、できれば権威ある五カ年計画をつくっていただいて、そして、少なくともこれから五カ年間くらいの厚生行政の指標を打ち立てる、この決意だけは一つぜひ持っていただきたいと思います。  次は、今問題になっております社会保険診療報酬支払基金の理事の問題です。これはちょっと見ると、一支払い基金の理事の問題ですから、大した問題のようではないようでございます。しかし眼光紙背に徹する眼をもってこれを見ると、日本の厚生行政の中に非常に重要な地位を占めている医療保険行政というものは、いわば、今やこれを扇のかなめにして展開するかしないかというせとぎわにきておるのです。大臣も就任してから、おそらくこの問題に鋭意取り組んでおると思います。八月二十六日だと記憶しておりますが、支払い基金の理事の任期が切れるわけです。これを大臣は、一体どういうようにして処理されていく方針なのかということです。七月二十日大臣就任の後わずか二、三日にして、大臣はあれだけ天下を騒がせた臨時医療報酬調査設置法を、間髪を入れず臨時国会提出しないという勇断を下された。池田さんは今度の施政演説で、前とあとで二つ勇断ということを言った。池田内閣の中で河野建設大臣に次ぐ勇断を下したのはあなたです。私に言わせるならば、ナンバー・ツーですよ。このナンバー・ツーの大臣が、今や扇のかなめに当たるところの基金の理事の問題にぶち当たっている。今度もう一ぺん勇断を下さなければならない。これは、あなたが間違いなく勇断を下しさえすれば、あなたの行政は展開します。ちょうどわれわれが富士の胸突き八丁を通って、そして九合を登り、頂上に達して、はるか東天に浮かぶ後光を仰ぐと同じ気持が、あなたの厚生行政の前に展開してくる。もし大臣がこの人事をやりそこなえば、あなたは即座に富士の頂上から奈落に転落する状態になる。今せとぎわです。そこで、もう日にちも二十四、二十五、二十六と三日しかない。これは一つの行政的な機能を持っている委員会ですから、そのままほおかぶりで長くいくというわけにはいかない。これはどうしても決断をしなければならない。決断をするならばぎりぎりになって決断するよりか、間髪を入れず臨時報酬調査会に示されたあの勇断をもう一ぺんここで下す必要がある。その勇断の仕方がどうなるかによって、今後の厚生行政の、少なくとも西村厚生行政の運命がきめられるのです。これを一つ率直に歯に衣着せずに、われわれも、大臣がこういうところに難関があると言うならば、全力をあげて御協力を申し上げるにやぶさかではないのです。そこで、これを一つこの機会に明白に表明をしていただきたいと思います。
  111. 西村英一

    西村国務大臣 私以上に事を詳しく知っておられる滝井さんに私がいろいろ答えることになるのですが、もう御承知のように、非常にこの医療関係と支払者団体との今までのあつれきといいますか、いろいろ複雑な経過をたどっておるのであります。先般の臨時医療報酬調査会の問題は別といたしましても、今度支払い基金の役員の選任の問題でございますが、これは一つだけの考え方ではいけないので、ある程度のずっと関連を持ったことで考えておるのでございます。しかし、とにかくこの役員は、今御説のように日にちがあることでございますので、それまでに変えなければならぬということになっておるのであります。従いまして、私ももう厚生大臣に就任以来、この問題につきましては一番頭を悩ましております。と申しますのは、医師会側の意見を取り入れれば、支払者側がそれに対してあまり賛意を表せぬ。支払者側の意見を重く見れば、また医師の方が結局うまくいかない。厚生大臣はせっかく厚生行政をやろうとしても、厚生大臣としてもその中に立ちまして、これは両方が納得がいかなければならぬという苦しい立場に立っておることは、もう滝井さんも十分御承知のことであります。そこで私といたしましては、この根本的な解決と申しますか、そういうことは別として、とりあえずこの支払い基金の役員については、従来の方式でやってくれないかというような気持を持って関係者と折衡をいたしておるのでございます。その間私は、将来に向かってはある程度こういうことを考えておるというようなことで、いろいろ関係者にるる話をいたしておるのが現状でございます。非常に抽象的になりますが、実は昭和三十三年と昭和三十五年と二回これをやっておるのであります。そのときからのいろいろ問題がありまして、うまくいかない。最後のどたんばにきて、ようやく曲がりなりにも解決したという経過をたどっておる。しかしその当時において窮余の一策でありましたが、今日まで両者の間が円満な理解に到達しておりません。今日やはり従来方式をとって何とかできないだろうか、かように考えまして、ただいま関係者と折衝をいたしておる最中でございまして、何とかそういう点で一つ今回はやりたい、かように考えて、今せっかく努力中でございます。
  112. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、社会保険の臨時報酬支払基金の理事の任命については従来の方式を踏襲をいたしたい、こういう御意見のようです。実はだれが一体こういう種をまいたかということです。そもそも大臣が今になってこれほどまでに苦しまなければらぬというのは、大臣自身ではないが、大臣のずっと前の前任者が健康保険を改正された当時の大臣が種をまいた。なぜなら、甲、乙二表をつくったからです。甲、乙二表をつくったから、日本病院協会と日本医師会と分かれたんです。甲表と乙表と。従って、まいた種はみずからが刈らなければならぬ。橋本大臣が、やはり同じように三十三年に自分のまいたのを自分て刈らなければならぬことになってしまった。めぐりめぐって因果の小車がめぐって今度は西村さんのときになって、苦しい立場で、あなたの先輩がやったことをあなたが刈り取らなければならぬことになった。それば甲、乙二表をつくったからです。しかも甲、乙二表は、三十四年十一月に国会は、少なくともこの衆議院の社会労働委員会は、全会一致をもってすみやかに一本化をやれという決議をしておる。厚生省はやらないのです。三十四年、三十五年、三十六年、三十七年、足かけ四年間やらないのです。私は何をしているかと、何回もこれを言うのです。やらないのです。やらないから苦しむのです。方針は従来通りの方針でやっていきたいという大臣気持はわかりました。気持がわかれば、それから先は、それをいかにして政治家として実現をしていくかということにおなりになると思う。大臣気持がわかれば、われわれも大臣気持について考えてみます。ところがそういう人事の問題は、今度はもう一つの山積している重要な問題にからまってくる。それは中央社会保険医療協議会委員です。これは日本社会党として大臣にすでに申し入れをいたしておる。大臣も御存じの通り昭和三十六年の十一月に社会保険審議会及び社会保険協議会法という法律改正をされて、与野党一致して修正をされて国会を通った。そうして公益委員の四名については国会の同意を必要とする人事になってきた。もう臨時国会も九月二日までというと十日しかない。一体今度の国会に、四名の公益委員の任命を承認人事としてお出しになるのかどうか。前の灘尾さんあるいは池田総理に質問をいたしましたら、できるだけ早くやるようにする、こういうことだった。灘尾さんはあの法律が通るときには、この法律が通れば大丈夫ですから、こう言っておった。ところが、それが動かないのです。もう十カ月ですよ。法治国家で法律が十カ月も動かぬなんという、こういう行政の怠慢は、怠慢でも最たる怠慢です。これ一つでももしあなたが動かし切らなければ、私ども西村厚生大臣不信任案を出していいくらいに値するわけです。これはどうされるつもりですか。一つはわかりました。もう一つは、基金の理事については所信を貫く、了承いたしました。わかりました。それならば一体この四名の委員については今国会に出すかどうか。
  113. 西村英一

    西村国務大臣 この中医協の法律を制定して、今日までそれが施行されていない、これは行政を受け持つ者としてまことに皆さん方に申しわけないのであります。これは何と言われてもおわびをするより仕方がないのであります。そこで厚生大臣がやり得るものは、そのうちの中立委員の任命はやれるじゃないか、国会に出したらいいじゃないか、もっともでございます。従って、私としてもいろいろ考えておるのでございますけれども、またその反面に、現在のような状況でこの委員をどういう人が受けてくれるだろうかということも、これは一つ考えてみなければならぬのであります。要するに、せっかく臨時国会があるのだから、この人選がうまくできて、しかもこの人選というもの、今度の中立委員というものは、この中において相当なウェートを持つと思うのであります。この中医協の医師あるいは支払者側の円満な運営ができる肝心かなめのところではないか、かように考えておるのでありまして、大いに私は中立委員のことに対しましても考えておるのでございますが、この短い国会の間にそういう段階までいきそうにないのが現状でございます。従いまして、私はこの国会に出さぬ、そういうことではなしにいろいろ考えておるけれども、出すに至らないだろうという気持でございますので、さように御了承を願っておきたいのでございます。
  114. 滝井義高

    滝井委員 どうも私はわからないのですが、公益委員の四名というのは支払者側なり受け取り側のアグレマンを得る必要はない、国会の同意を得ればいい。人選さえきまれば、国会はいつでも同意をするのです。九千万国民がおるのですから、その中から四人をお選びになるのはやさしいですよ。もう雲のごとく、きら星のごとく、優秀な局長さんが並んでおるのですから、その人たちに御相談されれば、四人くらいすぐ見つけてきますよ。もう小山さんのごときはなれたものです。今までおやりになってきているのですから。保険局次長も経験済みです。それから総務課長をおやりになっておるし、官房長だけはやっていないようですけれども、総務課長から人事の問題はみんなやっておる。最優秀の保険局長がおられるのですから、四名をあなたはこの国会にお出しにならぬという理屈はないと思う。この法律は、御存じの通り、六カ月に一回は必ず開かなければならぬのです。基金の理事については前の通り所信を貫いていきたい、こうなんですからね。そうでしょう。それをおやりになのるならば、これをできぬはずはない。問題はここにあるのですよ。一つも計画がない。行き当たりばったりでしょう。基金の理事は前の通りにやってこらえて下さい、何とかこれでまとめて下さい。くつ下を買いに行って緑のくつ下をもらう。しかしサイズは言わない。サイズを言わないから、赤ん坊の緑のくつ下を出してくれるかもしれませんよ。少なくとも基金の理事は、解決する一連のものだとあなたは言われておる。西村さん、あなたは命をなげうって厚生大臣になったんだから、ここで七、八年こうして停滞している厚生行政を九州男児の意気をもって打開をするなら、あなたは日本の厚生行政の歴史に残りますよ。戦後十幾人か厚生大臣が続いたけれども、その歴史に残る厚生大臣はいない。   〔柳谷委員長代理退席、委員長着席〕しかし、もしあなたが、間髪を入れずに、二十日に調査会をきちっとやったあの決断と同じような形でこの二つのものを同時に決断をされてごらんなさい。これはもう拍手かっさいですよ。新聞はおそらく、西村厚生大臣は河野建設大臣以上に決断ある大臣だと賞賛されるだろうと思う。ところが、一方については意思表示をしたけれども、一方については何かぐにゃぐにゃとなる、これではいかぬと思う。だから私は四名を一つぜひこの国会に出していただきたい。もし人がおらぬというなら、われわれ野党も協力して探してきますよ。ほんとうに日本の医療行政推進する中立の人を探してくる、どうですか。もう療養担当者は八人は出るのですから、そうすると支払い側の方も全部出ないとは言っていないのですよ。相当出る。そうしてやはり孫子の兵法を読まなくても、物事は各個撃破ですよ。一城々々落としていく以外にない。まず四名を落とす。それから療養担当者の八人を落とす。それから支払い側の八人のうちから一人々石落としていく以外にない。あなたが今、何もかにも一ぺんに、八方美人的にものを片づけようと思ってもとてもだめです。片一方からなぐられれば、なぐられた方の頭を押えながらもう一つやるのです。両方なぐられると思えば済むのです。八方美人になるから困るのです。六方美人くらいになって下さい。その決意さえあれば、厚生行政というものはやさしいのですよ。そしてやり始めてから勢いをもって所信を貫いていく、歴代の厚生大臣はこれがないのです。古井さんもなければ、灘尾さんもない。だからぐずぐずしてこういう状態になってしまった。深みに落ちた、泥沼に落ちた。これを泥沼というのです。今くらいに日本の医療行政が泥沼に落ちたことはない。しかしそこにあの蓮のようなきれいな花を咲かせるのは、やはり灘尾さんのあとに見込まれたあなた以外にない。大臣どうですか。基金の理事については、前回通りにやりたいという意思表示をされたのです。そうすると、四人について任命をするとどうして言えないのですか、この国会でやると。これをここで言明をいただきたいのです。そうじゃなければ、一体何のためにわれわれに法律をつくらしたかということです。そうして十カ月もわれわれを待たして、国会のたびごとに、すぐやるすぐやると言って野党をいいかげんに引きずり回されるのは、われわれは承知できないのであります。どうですか。四名をこの臨時国会で任命してもらいたいのです。
  115. 西村英一

    西村国務大臣 私がこれが最善であるんだからこう進もうということで一方的に今きめたといたしましても、やはり両者がそれを納得してその場に臨むということでなければ、元も子もないわけであります。そこの見通しが私の立場としては大事なところでありまして、一方で自分は最善の策であるから中医協を開くのだ、こういう策がいいからといって一方的にきめて一方が賛成しても、他の方が反対すればやはり場ができない。いかにしてその場をつくるかということに実は苦心があるわけでございまして、それは滝井さんも十分わかると思う。そこで今の中立委員の問題でございます。それは多くの人間ですから、四人ぐらいは、だれでもということになれば選ぶことはできましょう。できましょうが、そこは深い考慮がないと、この問題はなかなか容易じゃないんじゃないか。決してこの国会に出さぬでというつもりはないのです。けれども、その人選、それからその客観的見通しというようなことを考えつつ進まなきゃならないのじゃないか。さような気持で今やっておるのでございまして、医師会対支払者側からこういうような状況になったのも、もとをただせば、あなたがおっしゃいましたように甲乙二表に発しております。だから根本的な策は策として、また実際問題は、甲乙二表の一元化は私たちもぜひしなきゃならぬと実は思っておりますけれども、その問題をかけることすらもどうしたらいいか、その場ができないのですからね。その場をどうしてつくるかということに今苦心をいたしておるのでございまして、臨時国会を開いておりながら委員をどうして出さないかと申されますると、しばらく考えさしていただきたい。決して出さないつもりはないが、慎重な考慮をいたしてやって参りたい、かように考えておる次第でございます。
  116. 滝井義高

    滝井委員 お言葉を返すようですが、それなら基金の理事は、前の方針の通りでうまくいくとお考えになりますか。自信がありますか。それであとの展開がうまくいくという確信がおありになりますか。
  117. 西村英一

    西村国務大臣 うまくいかしたい。これは私も、将来のことも考えて、そうしてうまくいかしたいといってせっかく今努力中でございます。しかし、私が努力するにもかかわらず、うまくいかないという場合もあるかもしれませんが、うまくいかしたいといってせっかく今努力中であります。
  118. 滝井義高

    滝井委員 それと同じです。基金の理事も、法律では一カ月前にこれをやらなきゃいかぬ。しかも二十六日が任期です。二十六日には何とかしなければならぬ。それと同じですよ。四人を任命して、あとの八人と八人で十六人ができないならば、しばらく足踏みする以外にない。まず一つ一つやって下さい。徳川家康の故事じゃないけれども、まず外堀を埋めたら内堀を埋めて、それから天守閣を落とすようにして下さい。外堀に当たる四人のものをまず国会で任命するということです。そうでしょう。だから前のものについては見通しが立たない、願望なんだ、やりたいと思う、それと同じです。四人任命したら、あとの十六人は全力をもってやりたいと思う。これなら同じじゃないですか。一方については言うけれども、一方については言わないというところが、われわれは気に食わないのです。それを片手落ちというのです。行政が片手落ちであればうまくいかない。だから私は初めに言うように、やはりボタをかぶる気でなければいかぬ。いわゆるどろをかぶる、きれいに厚生大臣をやめようなんて思うからうまくいかない。八方美人になる。私はまだいろいろありますが、その点だけどうですか。四人をこの国会にやらぬとあなたが言うのなら、われわれも考えなければなりません。われわれは法律をつくっておって、そうして十ヵ月もそのままにしておくというなら、あなたを信任するわけにいかぬ。どうですか、全力をもってこの国会に四人をやる。とにかく前の方は今まで通りやるとおっしゃるのだから。あとの方も法律があるのですからね。与野党一致でつくっておるのですから。だから四人にやることについて全力を尽くす、これでいい。全力を尽くしてできなければやむを得ません。あとは国会にこれをお出しになれば、われわれはもろ手をあげて、りっぱな人ならば賛成するのです。悪ければわれわれは反対します。よければ賛成する。国民の最高の機関であり、国権の最高の機関である国会が賛成して通したものを、支払い側あるいは療養担当者が文句を言うことは民主主義の原則に反する。どうですか、大臣
  119. 西村英一

    西村国務大臣 私も滝井さん、その通り考えております。中立委員をおくからしでいいなんて、そんなことは考えておらない。しかし、中医協を成立せしめるのに、肝心かなめのところであるから、これを誤るとうまくいかない。さような意味で、それはだれでもいいじゃないかというふうにはいかないのであります。そこに私の慎重さがあるのでございまして、前の基金の役員の問題とこれは同じ論法で、前はやるが、これは決してやらないというつもりじゃない。またこの点につきましては、滝井委員も、これは長い間の問題ですから、一西村厚生大臣を責める意味で言っておるのじゃなかろうと思う。早く中医協を成立せしめたいという意味で言っておるのだろうと思う。その点につきまして、今日のような状態で長く置くべきではないが、どういう手がよいかということは、これは与野党を問わず一つ私に知恵をつけていただきたい。私は何も八方美人になりまして医師会からほめられる必要もありませんし、支払い団体からほめられる必要もありませんが、私の務めといたしましては、事を仕上げなければならぬ。けんかをするのが私の能ではない。仕上げなければならぬという気持でございます。その場合の中医協における中立委員の役目というものはまことに重要なものであるから、これは人選において相当慎重に考えなければならぬ、客観情勢を見て、こういうので、今せっかく臨時国会が開かれておるのだから、できるなら皆さん方と御相談して出すことはやぶさかでありませんが、その段階には立っていないという状態でありますから、どうかそういう意味におきまして御了承を願いたいと思うのであります。
  120. 滝井義高

    滝井委員 これで終わりますが、四人任命してどこに隘路があるのですか。四名は八名の八名にかかわるところではない。あなたが見て、この人ならば公平で、日本の社会保険診療報酬の額を決定するのに最も権威ある人であるというあなたのめがねにかなった四人を国会に出すと、国会がまたそれを見て、めがねにかなわなければ国会は返すのです。あなたのめがねにかない、国会のめがねにかなったものを任命した場合、支払い側と受け取り側にどこに文句がありますか。これを支払い側と受け取り側の同意を得なければだめだとやるから、八方美人だと私は言うのです。先に任命しますと四人があなたに加勢しますよ。四人が二人ずつ手分けをして、支払い側と受け取り側に行って話してもよいではありませんか。何もこれは隘路がない。任命できる。勇往邁進しなさい。あなたが勇往邁進せずに、今の集金の理事のようにずるずるやっておったら、あなたの行政は二十六日でおしまいです。私の忠告にあなたが幾分でも真実味があって耳を傾けるというなら、お出しをいただく。もしあなたがおお出しにならぬというならば、私は何回でもこの委員会でやらしていただきます。まだ厚生行政その他たくさんありますが、これだけで一応やめておきます。それだけの忠告を申し上げておきます。
  121. 秋田大助

    秋田委員長 本会議散会まで休憩いたします。    午後一時五十五分休憩      ――――◇―――――    午後三時五十八分開議
  122. 秋田大助

    秋田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律の一部を改正する法律案及び栄養士等の一部を改正する法律案の両案を一括議題とし、審査を進めます。
  123. 秋田大助

    秋田委員長 環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律の一部を改正する法律案は、先国会委員会においてその成案を決定し、委員会提出法律案とすることに決したのでございますが、今国会に継続され、本委員会に付託されたものでありますので、本案の趣旨につきましては十分御承知のことと存じます。この際、趣旨の説明を省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 秋田大助

    秋田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  両案に対する質疑の申し出がありますので、これを許します。河野正君。いは栄養改善法改正につきまして、若干当局あるいは立案者の所信をただして参りたい、かように存ずるのであります。  まず、第一にお尋ねを申し上げたいと思いまする点は、それはなるほど今般栄養士法改正にあたりましては、最近国内におきます社会生活発展向上等に伴って栄養指導に関する業務というものがだんだんと複雑化し、あるいはまた困難性を来たした、そういうことで改正されるという御趣旨でございます。もちろん私ども基本的に申し上げて、今日日本の国内におきまする経済情勢に伴って、日本人の食生活が非常に向上いたして参りました。そういうふうな国民の食生活が向上される、そういう点に伴っていろいと情勢が複雑になったり、あるいはまた困難な事情が伴ったりということにつきましては、私どもも認めるにやぶさかでございません。ただ、今までもこの栄養士法に基づきまして栄養士という名称が認められ、そうして日本の国民栄養改善のためにいろいろと御尽瘁を願ったわけでございます。  そこで、まず第一にお尋ねを申し上げたいと思いまする点は、今日までも、だんだんと社会生活発展向上に伴いまして、そうして国民栄養に関しまする情勢というものが複雑化し、あるいはまた困難性を帯びてきた。そういう道を開くにあたって、今日までの栄養士の諸君というものが非常に御活躍、御努力願って、実はそういう社会生活の向上発展に非常に大きな寄与をされてきた。私はむしろ今までの栄養士諸君が、そういう力量の点においも社会生活の向上発展に追従できなかったというふうには考えないわけです。もちろん私は、今の栄養士諸君の力量なり、手腕なりあるいは業績なりというものに対して敬意を払う、こういう立場をとるわけであります。そういたしますると、今度栄養士法というものが改正をされて、そうして御案内のように管理栄養士というものが誕生するということになりますると、なるほど言葉の上では栄養士諸君の身分の向上と申しますか、あるいは将来の発展のためにそういう一つの管理職的な栄養士が誕生するということでございますけれども、言葉を返して裏から見ると、もう少し研さんを積んでもらわぬと、今の社会生活発展向上には追従できぬぞというふうな意味にもとれるわけです。そこで私がまずお伺いをしておきたいと思いまする点は、今度改正をされまする真のねらいというものは一体どこにあるのか。これは身分の向上ということがかえって逆に、現在の栄養士の諸君の身分というものを卑下するというようなことにも通じますので、ほんとうのねらいというものは一体どこにあるのか。そういう点について、まず一つ立案者の精神をお聞かせいただきたい、かように思います。
  125. 鹿島俊雄

    鹿島(俊)参議院議員 ただいまの御質問にお答えいたします。  結論は、国民生活の最近におきまする状態、また今後食生活を通じて国民の体質改善という重要な立場を持っておる栄養士でございますので、その内容につきましては御研さんを願い、またそのためには教育年限等の延長もして、実質的に栄養管理を行なっていいます。
  126. 河野正

    ○河野(正)委員 今若干、改正の趣旨について御所見を承ったのでございますが、それではもう少し突っ込んでこの際お伺いをいたしておきたいと思います点は、「この法律管理栄養士とは、前項に視定する」、前項とは、「栄養士の名称を用いて栄養指導に従事することを業とする」ということだと思いますが、「前項に規定する業務であって複雑又は困難なものを行なう適格性を有する者として登録された栄養士」を管理栄養士というということだと思いますが、それでは具体的に、「複雑又は困難」な指導というものは一体どういうことをおさし願っておるのか、この辺も一つ聞かしていただきたい。
  127. 鹿島俊雄

    鹿島(俊)参議院議員 お答えいたします。  いわゆる従事者の指導監督あるいはその科学的な諸施設等の運営管理または治療食等の取り扱い、またその高度の企画性を持つことを栄養管理というわけでありまして、これらを処理し、これらに対する行政監督業務を遂行し得るような立場の者を考える、かようなことが管理栄養士としての趣旨であります。
  128. 河野正

    ○河野(正)委員 私がお尋ねしておるのは、具体的に、「複雑又は困難」な条件というものは一体どういうことをおさしになっておるのか。というのは、それをお示し願わないと、今までの社会生活の向上の中で複雑困難はなかったのか、こういう意見が出てくるわけですよ。ですから、そういう複雑性や困難性というものをここで具体的うものがなかったから、新しく唐突として社会生活の中でそういうものが出てくるのかというふうな感じも出てくるわけです。それが具体的にどういうことをおさしになって、管理栄養士でなければいかぬ、これを明確にしておかないと、せっかくつくっていただいても屋上屋を重ねることになってしまう。私は、つくっていただくならば、名実ともに管理栄養士としての適格性があるということでなければならぬと思うのです。そういう意味で聞いているわけですから、卒直にお聞かせいただきたい。
  129. 鹿島俊雄

    鹿島(俊)参議院議員 質問者にお諮りいたしますが、きわめて専門的な突っ込んだ御質問でございまするし、また的確な状態の把握を御要求と思いますので、御必要がありますれば局長の方からお答えいたさせます。
  130. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 お答えいたします。  現在でもそういう仕事があるわけでございます。これが逐次給食の発達とともに漸増しておる。その中で従来一本であります栄養士で、監督者として古い経験を有する人等が現実にそれに当たっておる、こういうことになっておりまして、それは具体的に申し上げまして一番わかりやすいのは、相当大きな給食場たとえば病院とか工場等に付属するいわゆる栄養課長とかあるいは栄養主任という形で、二名とか三名の栄養士並びにそれに協力しております調理上等を掌握いたしまして、いわゆる販売、購買の品物の栄養学的な吟味から始まりまして、一般的な集団の栄養向上あるいは給食管理というような内容、さらに、それらの若い人ある栄養を充実させるために指導する、こういうような任務に現実に当たっておりまして、これらの方々が今のいろいろな制度下におきましては、栄養士一本ではそれぞれ適当な待遇も非常に明白に設けられない、こういうようなこともございまして、こういうふうな新たな世の中で、そういう需要が現にある、これに十分将来多数の人々が向上心を持って当たっていただく、これをはっきりしよう、こういうことでございます。
  131. 河野正

    ○河野(正)委員 実は栄養士法の第一条を伺いましても、「この法律栄養士とは、栄養士の名称を用いて栄養指導に従事する」ことを業とする」こういうことですね。栄養士そのものが栄養指導に当たるわけですね。だから、指導指導ということになって、どうも屋上屋を重ねたような印象を受けるし、さらには別な角度から見ますと、社会生活の向上に、どうも今の栄養士の実力では追随できぬというふうな印象を受けるわけです。本法の第一条では、一般の栄養士そのものが栄養指導に当たるということを規定しておるわけですね。それがまた一つ指導しなければならぬということになりますと、その一般の栄養士そのものの地位がかえって下げられるというふうな印象を私は受ける。私は地位を上げることには賛成ですよ。ですけれども、そういう屋上屋を重ねるというような形式をとることが、はたして一般の栄養士そのものの地位を上げることになるかどうかということについては、率直にお聞かせ願わぬと、単に処遇の点だけ――今局長がおっしゃったけれども、待遇改善のための管理栄養士というふうな答弁の中からもそういう印象を受けるわけですから、そういうために一般の栄養士地位がかえって逆に下がる。たとえば今集団給食の問題も出て参りましたけれども、それなら今の集団給食の中で一般栄養士指導できぬのか。その集団給食の問題が非常に重要視された、そこで管理栄養士を置かなければならぬというなら、今の一般栄養士では集団給食指導ができないのかということも出てくる。そういう意味でお尋ねしておるわけですから、やはりきちっと、これでなければならぬという一つの明確な論拠を示されておかぬと、結局こういう改正をやられても実質的には一般の栄養士の方が地位が下がった。もともと管理栄養士があたりまえで、一般栄養士地位が下がったという結果にもなりかねない。出た当初はいいけれども、だんだん国民はなれてきますと、今度は管理栄養士があたりまえであって、一般栄養士は今の地位よりも低いんだ、こういうふうになると、この法改正というものは、必ずしも栄養士の諸君の期待に沿っておるかどうかということに若干問題があろうと私は思う。そういう意味でお伺いしておるわけですから、一つ的確にお答えを願いたい。
  132. 中原武夫

    ○中原参議院法制局参事 先生おっしゃいました段階の問題ですが、外国の制度を見ますと、同じ栄養指導業務をやるのですが、やはり二段階に分かれておるわけです。たとえば栄養指導のうちで行政事務のような高度のものをやる人、それから先ほど公衆衛生局長が説明しましたように、非常に大きなところで栄養指導をやっている栄養士をさらに指導するような、そういう仕事をやる栄養士、そういったものと、それから現実に栄養指導栄養管理をやるものと、こう二段階に分かれておりまして、それを上の方の段階ではニュートリショニストと呼んでおります。下の方はダイエティシャンと呼んでおります。日本でも今申し上げましたような仕事は現実にあるわけであります。ありますが、日本の栄養士制度は、高校卒二年の資格を終えた者はともかく、栄養士にしますと、ただ一本でございます。そうしますと、非常に高度のそういう技術、資格要求する側からいいますと、ただ栄養士ということだけですので、一体どの程度に高い栄養士なのか、どの程度の力がある栄養士なのか、その区別が実はよくできておらない。そこで卒業したての若い人も栄養士です。それから官庁におる、官庁で指導行政をやります課長の職にある栄養士もやはり栄養士です。その実態と名称とのギャップというものをここで区別をつけた方が、これが実際の要求にも即するのではないか、そういう意味管理栄養士というものをつくったわけです。ですから、御心配になります。そのためにそれでは現在の栄養士資格がずっと評価が下がってしまうのではないかということには、必ずしもならないように感じます。
  133. 河野正

    ○河野(正)委員 というのは、この改正五条の四の中に、「管理栄養士試験は、栄養士であって次の各号の一に該当するものでなければ、受けることができない。」という中で、これこれこういう場合には受験することができるということになりますと、かなり多数の管理栄養士ができるということですね、これは経験じゃないのですから。これはある程度の経験を経なければならぬということになると、管理栄養士になる人は少数ですね。ところが、これこれこれの養成施設を出たり、あるいはまた文部大臣が認めます学校を出たり、そうしますとその管理栄養士になるわけですね。そうすると、将来はかなりの管理栄養士が出てくると思うんですよ。そういう問題があるから、私は一般の栄養士というものの地位が逆に下がってきはせぬだろうか。それでたとえば十年なら十年経験をしたら管理栄養七だという一つのシステムであれば、これは非常に貴重な存在ということになるでしょう。ところが、今のようにとにかく若干修業年限は長いけれども、要するに二年じゃない、三年あるいは四年の修業年限を経る施設を出れば管理栄養士になれるとなると、かなりたくさんの管理栄養士が出ると思うんですよ。そういう将来の展望に立つと、かえってそういうものをつくったために一般の栄養士地位が下がりはしないだろうか。要するに、ある程度の希少価値というものがなければならぬ、ある程度の希少価値は必要です。これは一般の栄養士管理栄養士と同じだけおったのでは、別に管理栄養士の価値というものは私は認められないと思うのです。と同時に、私はいろいろこの栄養士の諸君の実態も若干知っておりますが、これは必ずしも栄養士の中で、あと二年養成施設に行けば、自然発生的に受験資格ができるわけですから、管理栄養士になる。ところが、たまたまそういう施設に行くと職の問題がある、食うことができない。やはり現在の栄養士諸君というものは就職しているわけですね。それが管理栄養士になるために養成施設に行かなければならぬということになると、現在の職というものを離れなければならぬ、そういうことばなかなか困難だと思うんですよ。ところが、現実に実態を見ておりますと、やはり長いこと経験、体験をされた栄養士の諸君は、卓越した技量というものを発揮されております。そういう体験、経験というのは非常に貴重なものだと思うのです。そういう面が多く出てくれば、今の栄養士については三年以上の実績があれば経過措置の中に認められるということであるけれども、将来は必ずしも経験を多年積まれたからといって管理栄養士になるわけじゃない。ところが、現実に職についてやっている人が、管理栄養士になるためにあらためて施設に行くということはなかなか困難ですね。そういう面も私は重要視しておるわけです。これはたとえば医務局長も来ておられますけれども、今の看護婦についても、準看を正看にするために一つの道を開いたらどうかという意見も出ておりますけれども、なかなかやはりあらためて一つの施設に入るとなると困難です。職をやめなければならぬ。そうすると、今度はその職をやめて再就職する場合に、今までの栄養士でなくて管理栄養士になれば、今度はやはり高い処遇をしなければならぬ。そうすると簡単に復帰できるかというと、なかなか問題があろうと思うんです。そういう点の問題もあって、私はいろいろ今お尋ねを申し上げておるわけです。そこで、そういうふうな多年の経験あるいは貴重な体験というものについてはどういうふうにお考えになるか、この点を一つあわせてお聞かせいただきたい。
  134. 中原武夫

    ○中原参議院法制局参事 先生がおっしゃいますように、栄養士の仕事、栄養士知識というものが経験を積むことによって非常に深くなっていくことを期待するのか、それとももう一つ別個に学問的な、科学的な教育によってそういうものを深めていくのか、両方の道があると思います。経過的には、すぐにそういった職をやめて養成施設に入ることは不可能でございますから、そういう人たちについては経験を主として見ていってあげましょう、それから今後出てくる人たちについては、その長い経験を待って初めて高度の栄養士ができるというようなことでなくて、もう少し短期間に科学的な養成の道があるのじゃないか。それで先ほど外国の例を申し上げましたが、外国の高度の方の栄養士相当いたしますものは、大学の学部を出まして大体一年間のインターンを経てなっておるようでございます。そういうような方向でこれからの養成は考えていく方が早道ではないか、そういうことでこの案ができております。  それから、先ほど先生おっしゃいました。今就職しておる人たち管理栄養士になるのには、もう一ぺん養成施設に入らなくちゃならぬということにはしてございませんで、二年の経験がありますと、試験を受けて合格すれば管理栄養士になれるようにしてございます。
  135. 河野正

    ○河野(正)委員 私が言っておりますのは、この栄養士も調理師も同じことですけれども、これはやっぱり経験を経なければ、単に机上で科学的な教育をしたからそれがイコール高度なものだというふうには私どもはなかなか理解しがたい。これは医師にしてもそうだと思う。これは今の医学部の年限を一年延ばしたらより高度な医師ができるか、なかなかそうはいかぬと思う。なるほど高度な科学的な基礎をつけていくということは私ども否定することではございません、肯定するにやぶさかではございません。ですけれども、やっぱり現在栄養士の諸君がやっている力量からいうと、私は今の二年でもそう社会生活の向上に追従できぬというふうには考えられない、しかし、それより高度なものが行政上も必要だし、あるいはまた、現場における指導上からも必要だとおっしゃるとするならば、私はそれを認めるにやぶさかではございませんが、今申し上げるように、今までの二年間の教育では幾ら体験を積んでも――もちろん試験という問題もありましょう、試験というような問題は一つの技術がありまして、その能力の判定ということはいろいろ問題があろうと思うのですが、いずれにしても、そういう体験なり経験というものをもっと尊重すべきではなかろうか。もちろん私は科学的な基礎をつけるという点について否定はいたしませんけれども、それだけで管理栄養士だ、それがむしろ長い体験なり経験を積むよりもより以上のものだ、ベターだというふうには理解しにくいと思うのです。一般の現場の経験というものをもっと重視すべきではなかろうか。やはり今の社会生活の向上に追従していくためには勉強しなければだめです。今の大工場、大病院の中で勉強しなければそういう栄養士の存在は正直言って認められません。もう大病院へ行ってごらんなさい、つまらない献立なんかしたって患者が受け付けませんよ。小さい病院ならいざ知らず、大病院では受け付けませんよ。ですから、長い経験の中で勉強しなければならぬということです。そうすれば、私はある程度の経験を積めばそういう人たち管理栄養士にしてもよかろうと思う、管理栄養士を肯定するとするならば、そういうことを私は言いたいわけです。もちろんこういう現場に主としておらなければならぬ、現場の陣頭に立って指揮しなければならぬ人は、ある程度そういうような体験を尊重すべきではなかろうかということを、蛇足ながら申し上げておるわけです。
  136. 中原武夫

    ○中原参議院法制局参事 先生がおっしゃいますことは非常によくわかるのです。わかるのに、なぜそれでは取り入れなかったかということを言われると思いますが、現在の栄養士の就業率を見ますと、これは昭和二十七年からずっと十年間大体三分の一なんです。三分の一が就職率です。そうすると、三分の二の方は大体家庭におられるわけです。そういう状態で、そういう前提で、今の実務経験ということだけを要件にいたしますと、運のいい人はうまくその線に乗れます。ところが、運のいい人は全体を見ましても三分の一しか今はございません。それで、その就業率をさらに拡充すべきだという問題はこれは別にございますけれども、そういうことはすぐに実現するかどうかということになりますと、ちょっと制度的には不可能だと考えます。そうなりますと、今の非常に運のいい人だけが伸びていくような道を特につくっていくことについてはいかがであろうか、やはり機会身等、平等の原則ということから考えて、おっしゃいますことはよくわかりますが、制度に乗っけることは多少渋ったわけでございます。経過的にだけその問題は取り入れたわけでございます。
  137. 河野正

    ○河野(正)委員 ただ栄養士になって三分の一が現場に進出して、三分の二が花嫁さんのアクセサリーではないけれども、そういうために制度の改善をやるべきではなくて、そういう点はむしろ行政指導に問題があると私は思うのです。これは今まで調理師の問題でいろいろ厚生省の方とやり合って参りましたけれども、調理師の場合もそういうことをおっしゃっておる。どうも調理師の免許を取っても現場になかなか進出しない。それだから、あまり高度なものでなくともよろしいという意見が出ておるのです。それはむしろ行政指導上の問題であって、そうだから、そのために、そういうことを論拠にして制度の改変をはかっていくのはむしろ邪道ではなかろうかというふうに考えますけれども、ただ私が言いたいのは働きながらもこれは試験を通ればよろしいではないかとおっしゃるけれども、これは試験技術がありまして、実力があってもなかなか通らぬと思います。ですから、私は、働きながらもある程度の経験なり体験を積めば管理栄養士としての資格が当然出てきはしないか、特にこれは働きつつ資格を取ることは、私ども働く者の立場から非常に重要なことだと思う。これはそういう人たちは非常に真剣に考えていると思うのです。そういうことから、蛇足でございますけれども、党の方針もきまっておりますから、以上、一応御意見を申し上げておきます。  そこで、もう一つ関連して、この際ぜひ厚生省の根本を流れる思想について私はお伺いしておきたいと思いますが、御案内のように、今私が申し上げましたように、日本国民の食生活というものがどんどん改善されていき、社会生活も向上していくということですから、従って、それらの業務に携わる従事者の質的向上をはかっていかなければならぬということは、私どもは基本的には大賛成です。そこで、一つこの際お伺いをしておきたいと思います点は、それはこの栄養士法の、管理栄養士の点もそうでございますけれども、第一条では、栄養士栄養士という名称をもって栄養指導に従事する。指導ということが主たる目的になっておるわけですね。それから調理師法、この調理師法の目的の中では、国民の食生活の向上に資することを目的とするということがその目的の第一にうたってあるわけです。そうすると、栄養士法と調理師法との関連を考えて参りますと、実際に食生活に現場で直接タッチするというのが調理師の一つの目的である。それを高度の立場から指導していくというのが栄養士の主たる目的だろうというふうに、私はこの法律の条文の中からそういう理解をするわけです。そうしますと、社会生活というものが向上していく、国民の食生活というものが向上されていくということでございますから、従って、それらの業務に従事いたしまする従業員というものは、いずれの場合におきましても、質的に向上せられることが私は非常に望ましいと思う。ところが、今日まで厚生省の御意図を承って参りますと、私は栄養士については今度初めて聞いたわけですけれども、事、調理師に関しましては必ずしも高度のものは求めない。極端に言うと、調理師というものは低級であってよろしいというような意味の御発言を実は承っておったわけです。ところが、たまたま今度栄養士法の改善で、栄養士というものは高度でなければならぬ、国民の食生活というものは、社会生活も向上していくから、それに追随するためには栄養士というものの身分の向上をもっとはかっていかなければならぬ、私はその点は非常に賛成です。ところがこの両方の法律をながめてみますと、日本の国民の食生活においては非常に大きな関連がございます。そうだといたしますならば、私は栄養士だけを向上させて、調理師は向上させぬでもよろしいという理屈は成り立たぬと思うのです。ところが、まことに残念なことには、私はそういう発言を今日まで厚生省から承ってきた。そうなりますと、今の厚生行政というものはこういう国民栄養ないし食生活に対しても、一貫した考え方が流れておらぬのじゃなかろうかというような感じを実は強く持つわけです。私が一番この栄養士法に関心を持ったのはその点なんです。それは基本的には、栄養士法の言わんとするところについては私は賛成です。ところが、どうも厚生省の腹のうちは、今ちぐはぐな思想というものが根本に流れておる。こういう点は一体どうですか、この点は、きょうは大臣おらぬですから、渡海さんどうでしょうか。
  138. 渡海元三郎

    ○渡海政府委員 ただいまの御質問、実はまことに申しわけないのでございますが、質問の内容につきまして全部を聞いておりませんので、答弁にあるいは違うところがあるかもしれませんが、御質問の点は国民の食生活向上を一本に考えるのが当然のことではないか、御趣旨まことにごもっともであろうと思います。万一法においてちぐはぐの点がありましたら、私まだ着任早々でございますから、今後よく研究いたして善処いたしたいと思います。厚生行政といたしましてはかくありたいと考えますので、いろいろこれから検討をいたして参りたいと思います。
  139. 河野正

    ○河野(正)委員 私は、少なくとも厚生省の方針としてはそうあるべきだというふうに実は理解しておった。ところが、少なくとも次官以下の段階では、今の精神とは反対の方向で行政指導が現実には行なわれておる。もしそうでないとおっしゃるなら、ここで反駁していただきたいと思う。たいていでやめぬかというお話もありますから議事には協力いたしますが、そういう思想については、私はこの際徹底的に是正していかなければいかぬ。一方においては向上しなければならぬ、一方においては向上せぬでもよろしい、こういうちぐはぐな矛盾した行政指導というものは許されぬと思うのです。私が今この問題について一番強く強調したい点はその点です。やはり行政指導をする以上は、一貫したものでなければならぬ、この点は今渡海次官から明快に厚生省の方針が示されたと思うけれども、しかし少なくともそれ以下の方々は、そういう思想でおらぬということは明らかです。これは事実です。この点は将来の行政上の問題でもありますから、一つ局長の所信のほどを明らかにしていただきたい。
  140. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 ただいまの栄養士のことは、私が直接の責任者になりますが、私自身も次官と全く同様な考えをもとから持っております。従いまして、もし先生おっしゃるように、今までの栄養士、調理師の技術指導にそういうふうな印象を与えたとすればわれわれの方の手落ちでありまして、私どもの方の非常な不徳でございます。要は、こういう点じゃないかと考えます。栄養士法は、実は戦後二十二年にできまして、もうすでに十五年たつのでこういうふうに一貫した向上の時期もきた、それから調理師法は、実は三十三年にこれが初めて法律体系になったという形で、向上の方は世の中が進むとともに向上さすべきだということで、決して別な考えを持っておりません。そういう意味で時期的に差ができて、栄養士法が現在こうなったということであろうと思います。今後も調理師についても、技術的な部面の担当でありますから一そうおいしいものをつくっていただく、それから栄養をより多く摂取できるようなものをつくってもらうということは、だれもが望むところでございます。これはもう逐次そういう方向で今後も考えていきたい、今後もそういうふうに行政指導をいたしますので、何とぞ御了承をお願いしたいと思います。
  141. 河野正

    ○河野(正)委員 この栄養士法の改善に伴って、栄養改善法改正提案されておるわけです。その中で、やはり私はもう少し積極的な意見を持っておるわけです。というのは、これはいろいろございますけれども、もう時間がございませんから端折って申し上げます。それは集団給食施設におきます栄養管理、時間があるとこの際いろいろ具体的に聞きたいと思いますけれども、時間がありませんから私は意見を若干申し上げてお答えをいただくということにしたいと思います。それは九条の二には「一回百食以上又は一日二百五十食以上の食事を供給する施設」あるいはまた二項では「一回三百食以上又は一日七百五十食以上の食事を供給する集団給食施設設置者」、こういうものは前段には栄養士、後段には管理栄養士を置くように努力しなければならぬという努力目標が示されておるわけです。そうしますと、一回が百食から二百五十食までは栄養士が要る、それ以上は管理栄養士を置かなければならぬという論拠についてもいろいろ聞きたいけれども、それは時間がございませんからやめておきます。ただ百食以下の場合は示されておらぬわけですね。これは基本的には、一人でもと言ってはおかしいけれども、これは財政上の負担がありますからそういう極端なことは別としても、努力目標としては、五十食であろうが、七十食であろうが、できるだけ栄養士がやった方がよろしいだろうと思います。これをかちっとやられますといろいろな問題があろうが、どうせ努力目標を示すならば、百食ということはかなり大きな給食施設ですね。特に最近コレラがはやってみたり赤痢がはやってみたり、いろいろございます。それから体位の向上のためにも、食生活の改善ということが非常に強調されておる面もございます。努力目標を示すならば、私はもう少し積極的な方針で改正をせられるべきではなかったろうか、やや消極的でなかったろうかというような印象も持つわけです。この点はいかがですか。
  142. 中原武夫

    ○中原参議院法制局参事 百食以下のところは、栄養指導員というのが保健所におります。その栄養指導員が定期的に参りまして、そこの栄養管理の状況を検査して指導する建前になっております。それは次の条文に書いてございますが、一応百食以下のところはそういう体制になっております。努力目標であるから全部に網をかぶせたらいいではないかということでありましたが、努力目標でも、法律に書きますと、実際に指導に参りまして栄養士を置け、管理栄養士を置け、こういうことをある程度勧奨するわけです。勧奨するためには、一応その勧奨を聞いて設置できるだけの力のあるところでないといけないだろうということで、百食以上ということに一応いたしたわけでございます。
  143. 河野正

    ○河野(正)委員 最後ですが、今の答弁を聞くとちょっと気になるわけです。というのは、私どもはどこまでも努力目標だというふうに理解しているから、そういうことを申し上げている。ところが、置けと勧奨されることについては、これは一般の人も非常に関心を持っているわけです。そういうことがあっては大へんだということです。しかしながら、今回の法の改正の中では、努めなければならぬということだから、みんな了承しているわけです。要するに、企業の経済情勢等もございましょう。そういうことに応じてやられるということで私どもも認めておりますれども、今ちょっと提案者の説明を聞きますと、置けと勤奨しなければならぬ。そういう強い意味でやられたら、これはまた事ですよ。それはやはり望ましいということで指導していただかぬと、置けと望ましいとではずいぶん違うと私は思う。今の精神でしたら、この法案の通過ということはちょっと事ですよ。議事録に残りますからね。これが将来生きて行政指導に移りますから、その点はもう少し、誤っているなら誤っているように御訂正願わないといかぬ。
  144. 中原武夫

    ○中原参議院法制局参事 今のところは、確かに私の言い過ぎでございまして、先生がおっしゃる通り、望ましいということでございます。
  145. 秋田大助

    秋田委員長 小林進君。
  146. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、環境衛生法について、これは三党の共同提案でありまするから、この法案そのものについて御質問を申し上げるのではないのでありまして、この法律が施行せられたときに、その運営実施その他は、やはり政府、厚生省行政官にお願いしなくてはならぬ。行政の運営の面においてこの環境衛生法が間違いますると、被害者が大へん出て参りまするので、その運営実施の面から一つ厚生省の御見解を承っておきたいと思うのであります。  実は今度改正法の六十二条の二に、「厚生大臣は、営業者が第五十七条第一項の規定による命令に違反したときは、二箇月以内の期間を定めて、その営業の全部又は一部の停止を命ずることができる。」という、この命令に違反した員外者に対すす規制の問題について私はお伺いしたいのでありまするが、その中に生活協同組合法に基づく生活協同組合が一体含まれているのかどうか、それから農業協同組合法に基づく農業協同組合が一体含まれるのかどうか。これはわれわれはこの法案を提出するときには、各党の間に慎重審議をいたしました結果、この法律の中には生活協同組合法に基づく生活協同組合は含まない、農業協同組合法に基づく農業協同組合は含まないという理解のもとに本法案を実は満場一致で提出をいたしておるのでありまするが、その点を行政府の立場から明快に御答弁をお願いいたしておきたい。
  147. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 ただいまの御質問の、罰則に伴う法の運営の問題でございますが、この環衛法の一部改正の運営上、生活協同組合あるいは農業協同組合がどのような規制を受けるかというお尋ねでございますが、この点に関しましてはもちろん員外者の規制については、励告並びに規制命令というような順序を踏みまして、行政指導も含めて手の届いた指導の上で、最悪の場合に罰則の適用ということに相なるわけでございますが、この勧告及び規制命令の適用をどういう員外者が受けれか、どういう員外者が受けないかということが五十六条の二並びに五十七条に同じ趣旨で書いてあるわけでございますが、これは三つの要件がございまして、一口で申しますと、職域の組合で当該従業者以外の者がこれを利用していない、しかもその施設の事業活動が組合の事業活動の健全な経営に対して阻害するとか影響がないというような場合には、この規制命令並びに勧告を受けないということに相なるわけでございまして、そういう意味で先ほどおあげになりました生活協同組合等が、このようなただいま申し上げましたような要件に合致して運営されております限りは、この規制を受けないということに相なるわけでございます。
  148. 小林進

    ○小林(進)委員 この問題は実に重要な問題でございまするから、いま一回念を押しておきまするが、この五十六条の二の規定は抽象的でありまするから、これをいま少し具体的に、一体厚生省政令などでこれを具体的に明確にされる意向があるかないか。われわれは法律はつくりまするけれども政令以下はあなた方のお仕事でございまするから、政令をもってこの環境衛生法から除外をせらるる生活協同組合等を明記せらるるようなお考えが一体あるかどうか、それが一つ。私はその意味において生活協同組合に対するあなた方の明確な御返事を承っておきたい。  時間がありませんから、いま一つ申し上げますが、農業協同組合の問題につきましては、三十七年五月七日、私ども三党の間にこういう申し合わせをいたしました。  食肉販売業に対する環境衛生関係営  業の運営の適正化に関する法律の適  用については、将来十分検討する。   右申し合せをする。こういうことを三党の間に申し合わせておりまするから、これは厚生省の方にこの申し合わせを厳重に尊重してもらわなければならないということを再確認しておきたい。
  149. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 第一点の、政令でただいまの勧告並びに規制命令の適用の具体的な問題をきめる考えがあるかという点に関しましては、御提出の案の中に政令の委任事項がございませんので、これは法文の示すところに従いまして、ケース・バイ・ケースで最も忠実にこれを運用して参りたい、かような考え方であります。  第二点の御申し合わせの点につきましては、これが私どもに示されますならば、その趣旨に従いまして適切な運営をして参りたいと考えております。
  150. 小林進

    ○小林(進)委員 それでは今の前段、政令で明記はできないわけであります。そうすると、やはりこの法の運営によって処置してもらわなければならない。なおさら皆様方注意を喚起しておく必要があります。それであえて申し上げますが、生活協同組合の中にはいわゆる職域、職場ででき上がっている協同組合、それから地域ででき上がっている地域協同組合と二つございますが、職域の、職場ででき上がっている生活協同組合は、どう考えましてもこの環境衛生法五十六条の二項に該当するおそれはありません。まれには部外者が職域の中に入ってきて組合員らしい顔をして物を買うときもある。それは区別困難でありますけれども、まず被害はないものと思いまするから、この法律の趣旨から見ても、職域の生活協同組合は除外せられるとまず判断して間違いはないと思う。問題が残るのは地域の生活協同組合であります。これはやはり五十六条の二に該当して、あるいはここに言われている適正な衛生措置の確保に支障を生ずるとか、あるいは営業の健全な経営が阻害せられるというおそれもあるかもしれませんけれども、だからこれを二通り考えていただきまして、第一番目の職域の生活協同組合には、この法は明らかに除外せられる。これを一つ再確認をしていただきたい。このように職域協同組合については、生活協同組合の範囲において正しく運営されている場合には、あえてこの法の関与するところではない。五十六条の二項に該当する場合には法の適用があるいはあり得るかもしれない、こういうふうに再確認をしていただきたいと思うのであります。
  151. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 職域の生活協同組合につきましては、一般論としては先生のおっしゃる通りでございまして、この法文の示すところに従いまして組織され、運営される限りにおきましては、この条文の通りに規制を受けるわけでございます。その他につきましては、個々にケースバイケースで判断をしていくことに相なろうかと思います。
  152. 秋田大助

    秋田委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  153. 秋田大助

    秋田委員長 これより両案について討論を行ないますが、討論の通告がありませんので、採決を行ないます。  まず、環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案について賛成の諸君の御起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  154. 秋田大助

    秋田委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決いたしました。(拍手)  次に、栄養士法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の御起立を願います。   〔賛成者起立〕
  155. 秋田大助

    秋田委員長 起立総員。よって、案は原案の通り可決いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  156. 秋田大助

    秋田委員長 この際、お諮りいたします。  滝井義高君外十一名提出医療法の一部を改正する法律案及び藤本捨助君外五名提出医療法の一部を改正する法律案の両案について、それぞれの発議者全員から撤回の請求がありました。つきましては、両案の撤回を許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  157. 秋田大助

    秋田委員長 御異議なしと認め、両案の撤回を許可することに決しました。     ―――――――――――――
  158. 秋田大助

    秋田委員長 この際、医療法の一部を改正する法律案の起草の件について議事を進めます。  小沢辰男君より発言を求められておりますので、これを許します。小沢辰男君。     ―――――――――――――
  159. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員 私は、自由民主党、日本社会党及び民主社会党を代表いたしまして、医療法の一部を改正する法律案の起草の件について御説明を申し上げたいと思います。  すでにお手元に配付いたしました試案がございますので、その内容説明は省略させていただきまして、この試案をごらんいただくことにより本試案を成案とし、これを本委員会委員会提出法律案とせられんことを望みます。  右、動議として提出をいたします。
  160. 秋田大助

    秋田委員長 ただいまの小沢辰男君、滝井義高君及び本島百合子提出の動議に対し、政務次官より発言を決められております。これを許します。厚生政務次官渡海元三郎君。
  161. 渡海元三郎

    ○渡海政府委員 ただい司の医療法改正につきましては、政府といたしましても、目下臨時医療制度調査会において鋭意検討をいただいておるところでございますその答申を待って措置する所存でございますので、本改正案につきましては、遺憾ながら賛意を表しかねる次第でございます。
  162. 秋田大助

    秋田委員長 他に御発言はございませんか。     ―――――――――――――
  163. 秋田大助

    秋田委員長 なければ、次に動議について採決をいたします。  小沢辰男君外二名提出の動議のことく、お手元に配布した試案を成案とし、これを委員会提出法律案とするに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  164. 秋田大助

    秋田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     ―――――――――――――
  165. 秋田大助

    秋田委員長 なお、本法律案提出手続、及び先ほど可決いたしました環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律の一部を改正する法律案及び栄養士法等の一部を改正する法律案委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  166. 秋田大助

    秋田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  本日はこの程度にとどめ、次会は来たる二十八日、火曜日、午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後四時五十六分散会      ――――◇―――――   〔参 照〕  環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律の一部を改正する法律案社会労働委員長提出、第四十回国会衆法第四九号)に関する報告書  栄養士法等の一部を改正する法律案(参議院提出、第四十回国会参法第一七号)に関する報告書   〔別冊附録に掲載〕