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1962-11-14 第41回国会 衆議院 外務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年十一月十四日(水曜日)    午後三時三分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 安藤  覺君 理事 正示啓次郎君    理事 松本 俊一君 理事 岡田 春夫君    理事 戸叶 里子君 理事 森島 守人君       宇都宮徳馬君    椎熊 三郎君       田澤 吉郎君    森下 國雄君       稻村 隆一君    黒田 寿男君       田原 春次君    穗積 七郎君       松本 七郎君    受田 新吉君       川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  委員外出席者         外務政務次官  飯塚 定輔君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 十一月十四日  委員帆足計君及び西尾末廣君辞任につき、その  補欠として田原春次君及び受田新吉君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員田原春次君及び受田新吉辞任につき、そ  の補欠として帆足計君及び西尾末廣君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件(日韓及び中印問題)      ————◇—————
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。穗積七郎君。
  3. 穗積七郎

    穗積委員 最近の日韓会談経過並び問題点について簡潔にお尋ねをし、われわれの意見も聞いておいていただきたい。  第一に、あなたは、最近、金何がしという、どういう出身の人か私もよく知りませんが、おそらくは憲兵隊長みたいな出身の人じゃないかと思いますが、金情報部長と、先月、一昨日と二回にわたって、日韓会談の問題について相当立ち入ってお話しになった。これらの経過並び問題点報告をしていただきたい。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 日韓の間の交渉は両政府代表予備折衝という形で続行されておりますことは御案内の通りでございます。それで、金部長と私が会いましたのは、予備交渉に側面的に協力するということでございます。第一回、先月お目にかかりましたときには、日韓交渉というものについて相互の理解を深めて参るという意味で、一般的な話し合いをいたしたわけでございます。第一回の会談によりまして、双方の考え方立場、そういうものにつきまして相当程度理解が深まったと考えております。一昨日行ないました第二回目の会談におきましては、先方から問題になっている懸案につきましてあらましの考え方が示されたわけでございまして、私は、そういう先方の御提案予備折衝におろしまして、そこで両代表の間でこれを煮詰めていただくようにいたしたいと考えておる次第でございます。あくまでも予備折衝の側面的な援助という形で行なわれたわけでございます。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 それらの話された重要な懸案の問題についての経過についてちょっと具体的にお尋ねしたいのですが、請求権問題を第一にお話しになったようだけれども、これは一体今のところどういうふうになっておりますか。すなわち、先方からどういう要求があり、こちらはどういう提案をなさいましたか。まだ合意には達しないという新聞発表になっておりますけれども合意に達しない経過並びにその内容について伺いたいわけです。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 先方から御提案がありましたことは事実でございまして、これによりまして先方考え方というものをつかむことができて、私どもの見解との間にある程度の開きがあるということを確認いたしたわけでございまして、それが具体的にどういう金額であるかというようなことにつきましては、今折衝中でございますので、どこにも申し上げないことにさしていただいておるわけでございます。
  7. 穗積七郎

    穗積委員 先方は第一の無償供与について三億五千万ドルを最低の線として要求をされたということは事実のようですが、そう理解してよろしゅうございますか。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 具体的な金額につきましては、大へん恐縮でございますが、私から申し上げるということは差し控えさしていただきたいと思います。
  9. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、先方のことはわれわれの推測にしておきましょう。  そこで、日本側ですけれども、これは、この前あなたの御提案は、一億五千万ドル、それから経済借款が一億五千万ドル、大体こういう大平構想をお持ちになって交渉に当たられた。そのとき、この前の国会中にそのことを私がお尋ねいたしました。それで、従来の池田朴会談積算からいくと七千万ドル見当のものがなぜ倍額以上に急にはね上がったのかという点も第一にお尋ねいたしましたが、それは請求権積算ではなくて無償供与だ、高次の政治的な立場に立っての判断だ、こういうことであったわけです。その一億五千万ドルなるものについては、政府としてはこれ以上もうふやしませんねと言って、われわれ一億五千万ドルも不当なものだと全面的に思っておりますけれども政府立場を伺ったときに、一億五千万ドル以上はふやさない、国民納得しないものには相手からどういう要求があっても応じないつもりです。こういうふうにあなたは委員会で私を通じて国民に明言しておられます。それが、漏れ承るところによると、それからはるかにまたふえて、二億五千万ドルないし三億ドル見当のものが今あなたの構想の中にあり、しかも一昨日の金会談の中で数字まで出たようですけれども、どうせこれは出ることです。しかも、これは、再々われわれが言っているように、国会のみならず国民全体の了解なくしてこの協定なり条約の批准というものはできないわけですし、もうそういうふうに話をしておられて、推測ながら当たらずといえども遠からざることが国民の間に流布されておるわけですから、交渉に何の妨害がございましょうか。ですから、一億五千万ドルよりはね上がっておるのかおらぬのか、それ以上お出しになるつもりで交渉に当たっておられるのかどうか、もしあるとするならば、一昨日すでにあなたは言葉出しておられるわけだから、その点、日本側政府のお考え交渉の事実をこの際国会に明らかにしていただきたい。それがもし交渉に差しつかえがあるならば、秘密会にしていただいてもけっこうです。私はその必要を認めませんけれども交渉中だからという口実、エクスキューズによってそれをわれわれに秘しておるということは不当であり、それはかえってあなたの方もつまらぬけがをされる結果になりますから、御忠告もいたしておきましょう。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 重ねて恐縮でございますが、交渉中の案件でございますので、具体的な金額につきまして言及することは御遠慮さしていただきたいと思います。ただ、いずれにいたしましても、国民に御納得いただくような形で処理いたしたいという所信は貫きたいと思います。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、前の国会の当委員会におきまして、無償供与一億五千万ドルは、それ以上不当に相手要求があっても出さないつもりだ、これは国民納得してもらわなければならぬことであるから、それ以上多額にどうするという考えはありませんから御安心下さいとあなた言ったことを覚えておりますか。覚えておられるでしょう。それでは前言はお取り消しですかお取り消しでないか、それだけ伺っておきましょう。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 委員会におきましても、国民納得のいくところでやりたいということを申し上げ、それ以上申し上げてないつもりでございます。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 一億五千万ドルはいかがでありますか。動きますか動きませんか。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう具体的な金額につきましては言及することを差し控えさしていただきたいということをこの前も申し上げてあるはずでございます。
  15. 穗積七郎

    穗積委員 いいえ、そうではございません。一昨日の会談で何億何千万ドルという数字をお出しになったようですけれども、一歩譲ったにしても、それを言われないことはおかしいと思う。だから、私は、前に返って、一億五千万ドルという数字がこの前国会に出ているのですから、一昨日お出しになった数字をあなたが答弁しないというのを私は無理に答弁させようとは言っていないけれども、前の御答弁になった言葉責任がありますから、それが変わりますか変わりませんかということを聞いておるのです。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 いずれにいたしましても、その金額はこの際は遠慮させていただきたいと思います。
  17. 穗積七郎

    穗積委員 そうじゃない。あの一億五千万ドルという数字は、あなたの方からおっしゃっておる。だから、その数字より上にいきますか下にいきますかということを聞いておるのです。
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうことも遠慮さしていただきたいと思います。
  19. 穗積七郎

    穗積委員 それは不当で、国会の審議はいささか軽視されたような感じがいたしますが、あなたにしてははなはだ遺憾な御答弁ですね。昔の官僚出身岡崎さんくらいなら、岡崎官僚出身でわからぬ男だからよかろうということを世間は言うかもしれないが、あなたがこの段階に来てお隠しになるのは了解しかねる。さっきのお話でもそうだが、池田書簡をあなたはお渡しになった。その中でも、大体峠を越したとか、金部長も昨日帰るときに峠を越したようなことを言っておるのですから、何もお隠しになる必要はないのじゃないか。だから、あえて一昨日お出しになった数字をこまかく聞こうとは言わない。前に国会を通じて国民に示しました一億五千万ドルをこえるかこえないかと聞いておるのです。そのくらいはお答えになった方が、国会のためにも、国民のためにも、あなたのためにもいいと思うのです。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 大へん頑迷なようで恐縮でございますが、具体的なことは今ちょっと差し控えさせていただきたいと思います。
  21. 穗積七郎

    穗積委員 具体的じゃありません。はなはだしく抽象的です。一億五千万ドルでとまりますか、それより上にいきますか下にいきますかということだけ聞いておる。それをよく答えて下さい。前言との関係がありますから聞いておるのです。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほども申しました通りでございます。そういう一定の金額基準にして、上がったか下がったかという具体的なことは、この際といたしましては遠慮させていただきたいと思います。
  23. 穗積七郎

    穗積委員 おかしいですね。一億五千万ドルということはあなたがおっしゃったのですよ。それより上がるか下がるか、それでとまるかということを、一般的、抽象的に伺っておるのですよ。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう具体的な金額に触れた覚えは私にはございません。
  25. 穗積七郎

    穗積委員 そんなことはございません。そんなおかしな言いのがれをされるのは卑怯ですよ。国会侮辱だと思うのです。ちゃんと言っておられますよ。それを肯定しておられるのです。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう記憶はございません。  いずれにいたしましても、穗積先生理解されますように、政府意思がまだきまらぬときに国権の最高機関である国会に申し上げるなどということは、私は慎むべきことだと思います。
  27. 穗積七郎

    穗積委員 これは押し問答ですから、はなはだあなたは不当であると非難して、前に進みましょう。  四千五百何がしという焦げつき債権がございますね。この種の問題についても一昨日かにお話しになったようですが、これはどういうふうにお取り扱いになるつもりでありますか。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 いずれにいたしましても、そういう取り扱いにつきまして具体的に言及して参るということは、この際差し控えさせていただきます。
  29. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、これに関連してお尋ねいたしますが、事の経過を見ますと、この前のあなたの国会における御答弁、一億五千万ドルは、それをこえて、不当なものは相手要求があっても出さないと言われたことがおそらくは豹変して、それの倍額近いものが出てくるであろう、お出しになるであろうと、われわれは、邪推じゃない、具体的に推測しております。そういう不当なものが、一体何を基準にして、何を原因として出てきたかということが問題なんです。本来無償供与というものがどういうものであるのか、それに対する日本側の義務がどうであるのか、こういう点です。額はどうせきめなければならぬ。それはお答えにならぬでも、事実もう話をしておるから、どうせきめなければならぬ。そのときに一体何を根拠にしてその額がきまってくるかということですが、これもおそらくは根拠のないことですからお答えになれないでしょう。ばく然としたものだと思う。お祝い金とか、あるいは高次政治的立場に立って判断してとか、国民には納得できない御説明だろうと思うけれども、私は経過を聞いておるわけです。  そこで、お尋ねいたします。九月二十四日にあなたはアメリカラスク長官とお会いになっておられます。その中で日韓会談に関した話し合いが出ておるはずですが、それはいかがでございますか。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 すべては今交渉中のことでございますので、交渉妥結いたしまして、政府意思がきまりました上で、国会に、今御指摘になりましたような理由づけはよく御判断いただくべく、その段階になりますと調理いたしまして御判断を願うつもりでございますので、今せっかくキッチンの方で用意しておりまして、今どのようにしつつあるかという過程につきましては、政府意思がまだきまっていない段階でございますので、ここで私が申し上げるということは、重ねて非常にしつこいようでございますが、お許しをいただきたいと思います。  それから、九月二十四日にラスク国務長官とお目にかかったわけでございますが、日韓交渉につきまして関心を持たれておるということは言われましたけれども、それ以上干渉がましいことは一切私には申されませんでしたし、また、そういうことを申されるはずもないと思います。
  31. 穗積七郎

    穗積委員 そんなことは間違っていますよ。私は、そういうことをおそれたので、そのときの委員会において、今度あなたはアメリカに行くけれども、その席上で日韓会談に対しての日米会談はなさいますかなさいませんか、してはいけませんよと申しましたら、ラスク長官と会うかもしれぬが、そういうときに日韓会談については触れません、そういう御心配は全然要りませんという御答弁をなすっておられる。ところが、あなたは、にもかかわらず、行かれて、向こうからそういう話が出たときに、これに応答しておられるわけですね。しかも、冒頭に出てきておるのは、われわれの漏れ伺っておるところでは、これは大体間違いないと思うけれどもアジア情勢を彼が説いて、そして、アメリカとしては日韓会談早期妥結を強く希望している、そうして、続いて彼は、その場合に、この請求権問題でいろいろあるようだけれども、三億ドル台ならば韓国も応ずるようだというサゼスチョンともディレクティヴともつかぬような圧力をあなたに加えたわけです。それであなたの態度は変わったのでしょう。これでは、日韓会談じゃなく、日米会談です。それで、われわれが言うように、韓国との間に安定性合理性を見て懸案解決して云々ということじゃなくて、不合理で不安定であるからこそ、むしろ、伊関前アジア局長言葉ではないが、不安定であるからこそ日韓会談を急いで、日本アメリカがてこを入れなければならぬ、こういうことになってくるわけでしょう。その会談を九月二十四日にあなたはなすってお帰りになったじゃありませんか。そのときに冒頭に出たのが、今の請求権問題で三億ドル。七千万ドルが一億五千万ドルになり、国会を通じてあなたは一億五千万ドル以上に上げませんと明言をしておったにかかわらず、そこで話が出て、今一ぺんに三億ドルにはね上がろうとしておるわけです。それであなたは自主性国民の前に誇ることができますか。お話しになったでしょう。そういうことについて、あなたは干渉としてお聞きにならなかったかもしれぬが、言葉づかいは、今申しました通り、三億ドルならば韓国は大体妥結する可能性があると思うというサゼスチョン、これはお話はありませんでしたか。日韓会談ではない、日米会談ですから、お話しになってもいいでしょう。
  32. 大平正芳

    大平国務大臣 日韓の問題は日韓間でやるわけでございまして、アメリカの区処を受けてやるものではございません。不敏ではございますけれども日本外務大臣でございますから、私は自主的にこの問題は解決していく所存でございます。
  33. 穗積七郎

    穗積委員 日本外務大臣、しかも日本人民によって選ばれ日本国民から手当をもらって国民利益のために働くべき外務大臣が、むしろ今までアメリカ利益日本国民に押しつける、日本国民の犠牲において押しつけるという傾向が従来見えたから、国民は常に危惧と不安を持っているわけです。だから、私は、あなたはまさかそういうことはなかろうと思って、事前に念のために御注意しておいた。自主的であるかないかは、それはあなたの主観の問題です。だから、私が今聞いておるのは、九月二十四日のラスク会談の中で、ラスクから三億ドルという言葉が出たでしょうということです。これは交渉じゃない。もう済んだことですから、報告として言ってもいいじゃありませんか。三億ドルならば韓国妥結するとわれわれは判断しておるし、それでやったらどうだというサゼスチョンを含んだ発言ラスクからあったでしょう。その事実を聞いているのです。自主性の問題については、お互いの主観の問題だと言えばそれだけですから、国民の見るところでございます。ですから、自主性の問題を私はここで言っておるのではなく、事実を伺っておるのです。
  34. 大平正芳

    大平国務大臣 日韓交渉につきまして関心を持たれておるという発言がございました。それで、このような交渉過程に今ありますということを申し上げただけです。
  35. 穗積七郎

    穗積委員 それに関して、三億ドルならば解決する可能性があるということで、示唆を含んだラスク発言があったでしょう。その事実を聞いているのです。
  36. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、関心を持たれておるということだけでございます。
  37. 穗積七郎

    穗積委員 そんなことはありません。続いて、おそらくは、妥結の時期についても、民政移管前においてこれをやるべきだ、——これは私がちょうど旅行中でございましたけれども、先月十五日に川上委員がその点についてはちょっと指摘しておられます。これも、あったかないような、そういう話がなかったようなことを言って逃げておられるけれども、この二点について、時期、すなわち年内または少なくとも来年に越しても民政移管前に妥結すべきだ、それで一刻も早くてこ入れをすべきだという、意見が二つ出されておるはずです。そんなことを隠す必要はないじゃないですか。それによってあなたの意見が変わる変わらぬはあなたの主観の問題であり、自主的に判断したと言えばあなたはそれで済むわけだ、国民がそれをどう判断するかは国民の自由です。それで、私は、ラスクからそういう話があったという事実を伺っているのです。何の秘密が必要でしょうか。済んだ話です。これから日韓問題で日米交渉するわけじゃありませんから、今のように、交渉中だから話ができないという逃げ口上は許されませんね。訪米の経過報告をわれわれは国会の権威のもとで伺っているのです。与党には答えられるが野党には答えられないということでは、国会に対するあなたのお考えが間違っていますよ。
  38. 大平正芳

    大平国務大臣 今御指摘なさるような事実はございません。
  39. 穗積七郎

    穗積委員 事実はないことはありませんよ。
  40. 野田武夫

    野田委員長 政府並びに委員の方に申し上げますが、発言されるときには委員長の許可を得て下さい。秩序を保たなければいけません。
  41. 穗積七郎

    穗積委員 以後注意いたします。感謝いたします。  それは、あなたは心中不自然なお気持をお感じになりませんか。大平さん、人間としていかがですか。そんなことは隠す必要はないことじゃありませんか。それで、事実の経過を見れば、われわれの見るところでは、そのラスク会談のためにあなたは一ぺんに変わった。大平というものが、今まで、日韓会談に対しては、国民の世論も見ながら、無理にやろうということでなくて、慎重に合理的にやろうというお考えを持っておられたことを、私どもはそれまでは多少期待しておった。そう推測しておった。ところが、あなたはそれによって一ぺんに変わった。いわばラスクのなべの中に入ってしまって、それから、あなたは、お帰りになって、何でもかんでも、幾ら出しても相手納得のいくところまで背伸びをして妥結しようというお考えに豹変しておられるわけですね。だから、今私が最初に聞いたように、この前の国会答弁で、日本外務大臣日本国会に対して責任があるわけです。その責任ある日本国会における答弁において、一億五千万ドル以上不当には上げませんと言っておったのを、倍額にあなたは今上げようとしておるわけでしょう。根拠がないです。根拠はどこかと言えばラスク会談です。それに求めるほかにない。あるなら説明していただきたい。自主的に判断をお変えになるのは自由でございますからお変えになってもいいが、それなら、一億五千万ドルが三億ドルにはね上がりつつあるその原因と理由は一体どこにありますか。合理性はどこにありましょうか。それを御説明いただきたいのです。
  42. 大平正芳

    大平国務大臣 ラスク会談前後を通じまして、私の心境にちっとも変化はないわけでございまして、終始、慎重に合理的にやりまして、みなの御納得を得るようにやりたいということで一貫いたしております。
  43. 穗積七郎

    穗積委員 この問題は、きょう時間が、あとまだ質問者もありまして何ですが、非常に政治的にはこれが大事な焦点です。そこで、日韓会談政治的性格というものが国民に明瞭になっていく焦点一つですから、私は軽視すべき問題ではないと思っている。今の御答弁もまた、従来のあなたと違って、非常に、何と言うのか、官僚的、独善的、秘密的で、不当なものだと思って、遺憾に思うし、ふんまんを感じます。しかし、時間がありませんから、これ以上押し問答しても、あなたが答えないというならしようがないから、前に進みます。  続いてお尋ねします。竹島問題について、金情報部長は、国際司法裁判所に提訴するのはやめようじゃないかという提案をしたということを彼ははっきり新聞発表しておるわけです。これはお話がありましたか。金の方は発表しておりますよ。
  44. 大平正芳

    大平国務大臣 韓国側から一つ提案がありましたことは事実でございまして、それを私ども検討させていただいております。
  45. 穗積七郎

    穗積委員 これについては従来の方針をお変えになるつもりですか。あるいは変えないで従来の方針が正しいとしてお押しになるつもりであるか、それを伺いたいのです。
  46. 大平正芳

    大平国務大臣 目下そういう点で検討中でございます。
  47. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、従来の方針でいくのか、あるいはそれを一ぺん白紙にして再検討するのか、それもきまってないということですか。
  48. 大平正芳

    大平国務大臣 さようです。目下検討中であります。
  49. 穗積七郎

    穗積委員 この問題は非常に重要な問題でございます。あとで、私は、あなた方ですら認めておる三十八度線以北朝鮮人民共和国政府のこういう問題に対しての態度というもの、方針というものをお伝えしますけれども、竹島問題は、いやしくも国交正常化をやる場合、領土条項というものは、特に懸案の問題がある場合には、これは解決を要する重要なる問題です。今、金の問題、請求権の問題だけが山で焦点であるかのごとく言われていますけれども、これは非常に大事な問題です。そういう意味で、今の金情報部長提案というものは、これは国際的に見て非常に不合理のものであり不当なものであるし私はごまかしだと思うのです。すなわち、あなたはこの前、大平構想というものを提案されたときに、請求権問題だけでなく、竹島問題、季ライン並びに漁業問題、法的地位問題等については全部未解決でたな上げをしての解決はしません、正常化をはからないということをわれわれに言明しておるわけです。ところが、今度の金の提案というものは、たな上げなんですよ。しかも、国際司法裁判所に提訴するということすら、われわれは、不当で、これは事前に関係両国の間で自主的に解決してから正常化をはかるべきものだと思う。国際司法裁判所へ提訴することすら、私個人の判断では、一種のたな上げであって、不当だと思うのですけれども国際司法裁判所であるならばまだかすかにやや何%かの合理性もないことはない。ところが、第三国、すなわちアメリカにまかせるとは、一体何ごとですか。未解決ですよ。これはごまかしです。しかも、その結果については、未解決のまま、たな上げのまま国交正常化をやろうということだけではなく、結果についても、これはまるで不当なる結果が生まれてくることは火を見るより明らかでございます。そういう態度で、沖繩問題にいたしましても、北方領土の問題にしても、解決するはずがありませんよ。正しい原理こそが国際的に粘り強くやれば必ず通る原則だと私は思うのです。そんな国際常識上許されないごまかしで通ろうとしても、韓国は武力をもって世論を押えるかもしれぬが、日本ではそれではおさまりませんよ。そういう話があったのかないのか、その点についてのあなたの基本的なお考えを伺いましょう。
  50. 大平正芳

    大平国務大臣 交渉相手のあることでございますから、先方提案がありましたことは事実でございまして、検討させていただいているという段階です。
  51. 穗積七郎

    穗積委員 検討はよろしゅうございますが、少なくとも、今のたな上げ方式の、しかも不当な、第三国にまかせるなんという、第三国というのはアメリカのことですが、そんなごまかしで不当な不利なことはやるべきではない。それ以外の、もっと合理的な、日本国民利益になる方法をとらなければならぬ。この領土問題というのは、あと沖繩・小笠原の問題あるいは北方領土と関連のあることです。この原則を誤ったら、他の問題についてすべてごまかされますよ。竹島自身は無人島の岩ばかりのつまらぬ島だ、利用価値はないというふうに言って国民をごまかそうとしておられるかもしらぬが、そういう言論が薄々すでに自民党の内部で出ておる。ところが、この原則がゆがめられた、それを日本が承服したということになると、これは他の問題に直ちに響くことでありますから、これだけは絶対にやるべきではないとわれわれは思うのです。それだけを伺っておきたい。こういう不当な方法はおやりになりませんね。
  52. 大平正芳

    大平国務大臣 すべての懸案解決するということで国交の正常化に踏み切りたいと思っておるわけでございます。従来申し上げ通りです。
  53. 穗積七郎

    穗積委員 懸案の問題の同時解決はけっこうです。その原則はここでもう一ぺん確認されたわけですから、その形は変わっていない。その中の一つである領土問題については、今のような、解決にならない、しかも不利になるそういう金提案というものは、取り上げ検討する対象にならない。アウト・オブ・クェスチョンの問題である。われわれは強く要求いたします。そういうことは再検討される場合にお考えにならないようにしていただきたいのですが、それはどうですか。
  54. 大平正芳

    大平国務大臣 せっかくの御提案でございますから、私どもの方で検討させていただいておるという段階でございます。
  55. 穗積七郎

    穗積委員 われわれの理屈にかなった意見、少数といえども理屈にかなったことは聞くべきでしょう、民主主義の原則ですから。その理屈にかなった私の立論に誤りがありますか。金提案の方が合理的ですか、有利でございますか。これを伺いましょう。その提案をあなたはどうお考えになりますか。解決するのはあたりまえのことです。同時解決はあたりまえなことでございましょう。その解決するときに、領土問題については、今のような日本にとって不合理で不利な金提案というものは問題にしない、その点だけははっきりしていただきましょう。
  56. 大平正芳

    大平国務大臣 穗積先生その他の方方の御意見も常に私は伺っておるわけでございまして、いろいろな御意見を頭に置きまして検討させていただいておるわけでございます。
  57. 穗積七郎

    穗積委員 この問題は大事なことです。時間がありませんではなはだ遺憾なことですが、これまた御答弁にはなはだ不満の意を表して、次の問題に移ります。しかし、今まで申しました点について、最近あなたは、アメリカから帰って、ラスクに押えられたのかしらぬけれども、一ぺんに言うべきことも言わなくなって、何でもかんでも力でやらなければ義理が悪いというようなひもをつけられてきたことに対して私ども遺憾に思うが、それでは国会としてのわれわれの責務が果たされませんから、もう少し情勢が進んだら、もう少し政府構想が進んだら、事前に国会において方針を明らかにして臨んでいただきたいと思いますが、それは約束していただけますね。
  58. 大平正芳

    大平国務大臣 国会との関連でどういたしますか、政府の方でとくと相談をしてみます。
  59. 穗積七郎

    穗積委員 きょうはみなどうも御答弁がよくありませんね。だから、ますます。私がさっき言ったラスク会談というものが日韓会談の非常な圧力になってきておる、これにしても客観的事実をもって証明されると思うのです。あなたのきょうの態度は、とにかく合理性も何もあったものじゃない、やらなければならぬという何かに押えられているということです。私どもはそういう印象です。あなたのためにも、日本国民のためにも、はなはだ遺憾なことですから、ぜひこれは、だんだん具体的検討が進み、交渉が進む過程において自主性を取り戻されて、日本外務大臣になって、日本の自主的かつ日本国民利益になるように処置されんことを強く、これは国会立場要求いたします。
  60. 野田武夫

    野田委員長 稻村隆一君から関連質問の要求がございますから、これを許します。稻村隆一君。
  61. 稻村隆一

    ○稻村委員 それでは、簡単に竹島問題についてお尋ねいたします。  今穗積委員からいろいろ御質問がありましたが、竹島問題は、四十国会で、森島委員の質問に対して、小坂外務大臣は、「私は、日本国民に対しまして、竹島を解決しないで日韓交渉正常化はあり得ない。政府としては国民に対してそういうことは言い得ないという信念を持っております。」と、何度も繰り返して言っているのです。竹島問題の解決なくして日韓交渉妥結はあり得ない、こういうふうなことが従来の政府態度だと思っておったのです。幾ら軟弱な政府でもですね。あなたは、大平さんは、やはり小坂さんの見解と同一ではないのですか。それをお聞きしたいのです。
  62. 大平正芳

    大平国務大臣 全く同一の見解を持っております。
  63. 稻村隆一

    ○稻村委員 わかりました。それでは、先ほど穗積さんから言われた、金情報部長国際司法裁判所に提訴しないで第三者の調停によってやる云々ということに対して、あなたはむろん譲歩するようなことは絶対にないでしょうね。それをお聞きしたいのです。
  64. 大平正芳

    大平国務大臣 新しい提案を受けたばかりでございまして、今検討中でございます。
  65. 稻村隆一

    ○稻村委員 そんなことをはっきり言えないことはないと思うのです。領土問題です。  それでは、もう少しお尋ねしますが、前の外務大臣が言ったことは政府方針であるということをあなたも認めているのだから、あなたもそうであることは間違いないでしょうね。それなら、金情報部長の言ったことにあなたは譲歩するようなことは絶対にないでしょう。そんなことはないでしなう。もう一つあなたにお聞きしたいのは、あなたが新聞に、韓国国際司法裁判所に応訴すればこれは解決とみなして妥結をするというようなことを、はっきりしませんが、たしか言っておられるように思うのですが、そういうことを言われましたか。
  66. 大平正芳

    大平国務大臣 小坂前大臣がああ言われたことは、私も全く同一見解を持っております。同一の見解を持っておるということは今申し上げ通りでございます。韓国側から提案がございましたが、それは検討中であるということでございます。
  67. 稻村隆一

    ○稻村委員 それじゃ、あなたの解釈は、やはり、小坂外務大臣と同じように、前外務大臣と同じように竹島問題の解決がなければ国交正常化はあり得ない、あなたの考えをそうであるという断定をして差しつかえありませんですな。そう解釈しても私いいと思うのです。あなたの答弁によって。それはどうです。間違いないでしょうな。
  68. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申し上げ通りです。
  69. 穗積七郎

    穗積委員 その次に問題になりますのは、実は、私は最近、先月でございますが、北京を訪問いたしました。そういたしましたら、朝鮮民主主義人民共和国から歓迎をしたいということでございましたので、平壌を訪問いたしました。そうして、かの国の政府責任者並びに指導者、人民の代表の人たちともいろいろお話をしたわけです。その中で重要な点は、朝鮮民主主義人民共和国の側の政府並びに人民の方々が日韓会談についていろいろ深刻な見方をしておられるわけですが、そのすべてを報告すべきですけれども、きょうは時間がありませんから他の機会にいたしまして、ただ一点だけこの際申し上げてお尋ねをしたいのは、日韓会談の陰にひそまされた日韓間の軍事的な提携といいますか握手ですね、協力、そういう計画が両方から出されて、そうして、日韓会談の陰で、先ほど来の請求権、竹島、李ライン、漁業あるいは法的地位問題以外の問題として重要視され、その陰で進められて計画が立てられつつあるという点が、実は朝鮮側の政府並びに人民の非常に重要な関心一つになってきております。これは、五〇年の三カ年間にわたる戦争の深刻な経験を持っておるかの国の人としては当然なことだと思うのです。  そこで、この前の十五日の委員会で、その問題について当委員会川上委員が触れられて幾つかの御質問をなすっておられる。あなたは、それに対して、NEATOは結ぶ考えはないし、そういう話はしていないということだけは、否定をして言明しておられますが、その他の、京城に日本の防衛官を常駐させること、あるいはかの国の飛行機その他の武器の補修、補給を日本の工場で引き受けること、さらに、韓国の軍人の技術的訓練を日本の基地においてやること、あるいはバッジ・システムの話し合いを進めること、それから、もう一つは、対馬海峡の共同封鎖の問題、こういうような、その他あるかもしれませんが、すでにわれわれが情報として明確につかんでおるのはそれらの問題です。これについては、あなたが政府代表されて明言をしておられぬ。そういうことをやるともやらぬとも、あるともないとも、将来断じてやらぬとも言っておらぬし、やるとも言っておらぬ、実は、きょうは、防衛庁長官、あるいはそれにかわる責任者に来ていただくつもりでしたけれども、志賀長官はアメリカに行っているし、それから、きょう何か日本航空自衛隊の飛行機が二機か三機墜落して、てんやわんやの大騒ぎをしておって、きょうは来れないから、他の機会にしてくれということですから、防衛庁の御答弁は次の機会にいたしますけれども、この交渉の正面の責任者であるあなたは、こういう問題が並行して、または今後進められることについて、どうお考えになっておられるか。あなたの日韓会談に臨む責任者としての最高方針を伺っておきたいと思うのです。NEATOの問題ではありません。
  70. 大平正芳

    大平国務大臣 日韓交渉でそういうことは一切問題になっておりません。
  71. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、もし防衛庁の方でそういう提案があっても、交渉責任を持っておる日本外務省はこれに対して反対をなさるというふうに伺ってよろしゅうございますか。
  72. 大平正芳

    大平国務大臣 日韓交渉には全然そういう問題が出ていないわけでございまして、防衛庁がどういう御関係を持たれておるのか、私よく承知いたしませんけれども、私の取り扱っております日韓交渉におきましては、そういう軍事的な面は一切関係はございません。その点は誤解のないようにお願いしたいと思います。
  73. 穗積七郎

    穗積委員 もしそういうものが妥結前またはあとに出て参りましたときはどうなさいますかと伺っておるのです。
  74. 大平正芳

    大平国務大臣 私は全然伺っておりませんし、出てきておりませんし、何とも答えようがございません。
  75. 穗積七郎

    穗積委員 出たときはどうするか聞いているのです。本来から言えば、これは池田総理大臣に伺うべき性質のことですけれども、あなたが会談の当面の責任者であるし、そしてあなたは政治目標を持って会談をやっておられるわけでしょう。その政治目標の立場からごらんになって、こういうものがあとから個別の交渉であろうと防衛庁同士の交渉であろうと出てくることを好ましいと思っておられますか、好ましくないことであるとお考えでございますか。それを聞いておるのです。
  76. 大平正芳

    大平国務大臣 寸毫も、軍事的な関係、色彩を持ったものでございませんし、そういうものに持っていくつもりは毛頭ございません。
  77. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、将来そういう問題が出たときには、外務省はあくまでこれに反対をなさいますね。
  78. 大平正芳

    大平国務大臣 どういう問題でございますか、御提案を受けて判断しなければならぬのでございますけれども日韓交渉はあくまでも平和的なものである、軍事的な関係は一切ございませんということをこの国会を通じてはっきり申し上げておるわけで、御信用をいただきたいと思います。
  79. 穗積七郎

    穗積委員 そういう問題が出たときは、これは間違った政策であるとして、今の外務省は反対の態度でございますね。それを聞いているのです。あなたが交渉の中でやらぬでも別の窓口で、あるいは妥結した後にそういう問題が出るという場合はどうですか。それについて好ましいとお思いになりますかどうですか。
  80. 大平正芳

    大平国務大臣 ただいま出ていないのでございます。答えようがございません。
  81. 穗積七郎

    穗積委員 出ていないのじゃない。出ているのです。もうすでに。だって、あなた、防衛庁の計画の中に出てきておるじゃありませんか。さっき私が最初に言ったことです。それで、あなたの方は、そういうことは好ましくないということを言っているじゃないですか。新聞発表もしていますよ。防衛官がソウルに常駐するというようなことは外務省としては迷惑だ、好ましくないと言っているじゃありませんか。どうですか。
  82. 大平正芳

    大平国務大臣 防衛駐在官のことにつきましては、今申し上げたように答弁いたしました。
  83. 穗積七郎

    穗積委員 それであれば、それ以上にさらに深刻な、侵略的な政策、すなわち、形の上ではNEATOではなくとも、実質的なNEATO体制で進もうとしている。すなわち、日韓会談の目標は、独占資本の進出ということもあるでしょうが、それよりさらに重要な問題は軍事的進出です。軍事的結帯をつくるということです。それが問題なんですよ。だから、当然、それ以下の、われわれが情報として伺って、今私が説明をして申し上げました他の四つの問題、これについても当然反対ですね。同じ態度で臨まれるべきでしょう。
  84. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう問題はこちら側に提案がございませんので、私ども日韓交渉とそういうようなものとは関係がないと思っています。
  85. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、かりに切り離しても、これは日韓会談政治的性格と目的を根本的に変えるものですよ。あなたが国会を通じて国民に説明しておるのは、四つの問題を解決することが目的だということですね。ところが、こういうことがあると、軍事的関係なんか毛頭考えていないという説明の仕方を根本的にくつがえすものです。従って、そういうものが出た場合には、あなたの日韓会談の政治方針なり目標とは違うわけですから、当然反対すべきでしょう。そのことだけは、お答えできないのはおかしいじゃありませんか。
  86. 大平正芳

    大平国務大臣 私のやっております日韓交渉というのは軍事的なものは一切寸毫も含んでおりませんということをたびたび申し上げておるので、それを御信用いただきたいと思います。
  87. 穗積七郎

    穗積委員 それで、具体的な問題が出たときには反対なさいますか、それを今聞いているのです。
  88. 大平正芳

    大平国務大臣 どういうような御提案か存じませんが、まだ出ていないわけでございますので、(「出てきているじゃないか」と呼ぶ者あり)出てきたときには、今私の申し上げたような立場から判断すべきだと思います。
  89. 穗積七郎

    穗積委員 私は逆を言いましょう。あなたがそういうことで答えられないということは、すでに日韓会談の中にその問題が含まれておるということですよ。そういうことがもう目標の一つとしてあなた方の心の中にあるということです。日韓の反動勢力の中にあるということを証明しておるじゃありませんか。われわれはそのことを国民に訴えますよ。それでいいんですね。あなたの今の答弁は、それが否定できないんだから。現にあるから否定できないのです。ないないとごまかしておりながら、あるから否定できないのです。それ以外の目的はないというなら、平和目的だけだというなら、否定できるはずです。原則として聞いている。(「証拠がない」と呼び、その他発言する者あり)——そんなことない。方針です。
  90. 大平正芳

    大平国務大臣 軍事的な関係は一切ございません。
  91. 穗積七郎

    穗積委員 それはおかしいですね。これは最も重要な問題ですよ。盛んにみんながわめき出すのは、一番痛いところをついておるからわめき出す。あなたは口を緘して言わない。方針としてなら言えるでしょう。(松本(俊)委員「ばかばかしい」と呼ぶ)——松本さん、あなたはそんなことをおっしゃるが、ばかばかしくありませんよ。現に今の交渉の中に出てきているんだから。どうですか、もう一ぺんその点はっきり……。
  92. 大平正芳

    大平国務大臣 軍事的な関係も軍事的な意図も毛頭ございません。
  93. 穗積七郎

    穗積委員 私どもはそういう御答弁もまたはなはだ遺憾なことですが納得いかない。方針すら明らかにできないということでしょう。  そこで、次にあと二つだけお尋ねして、時間が参りましたからやめますが、簡潔にお尋ねいたします。  それは、あなた方は、今度交渉にあたって、韓国というものは三十八度線以南だけを支配しておる限定政府であるという建前で交渉に当たっておられるわけですね。そして、さらに池田総理もあなたも進んで認めておられるのは、三十八度線以北には朝鮮民主主義人民共和国というオーソリティを認めて交渉に当たっておられる。さらに、岡田委員の質問に対する答えだったと思いますが、北の政権がもし日本との関係において懸案の問題解決をしようと言ったときには交渉に応ぜざるを得ない、国交問題についても交渉に応ぜざるを得ない、しかし今は考えていないけれども、論理的に言えば当然これは拒否するわけにはいかぬ合理性があるということを、池田総理はこの前の国会委員会お答えになっておられる。私もこの耳で聞いております。その関係を確認した上で、朝鮮民主主義人民共和国の政府はこういうふうに明言しておるわけです。すなわち、たとえば、今日韓交渉の中で問題になっておる請求権問題、それから領土の問題、それから李ラインの問題は、五五年に金日成首相が、われわれはそんなものは認めない、日朝間における公海の原則は相互尊重をしたいという態度を表明しておる。このいわば公海自由の原則の問題、李ライン問題、それから法的地位の問題、そのほか今の軍事的な問題以外のものも含めればさらにそうですか、そういう今あなたがお話しになっておる四つの問題は、限定政府だけの問題ではないわけですね。これは、今度の戦争が済みまして、国連が朝鮮というものを日本の支配から解放して独立国にするということを日本も承認をし、そうしてサンフランシスコ平和条約二条でもそのことが規定されておる。そういう関係にあるのです。そうすると、その全人民に関係のあることです。現在は二つの政権になっておるが、両政権に共通して関係しておる問題を、全人民を代表しない一部の限定政府、あるいは南の人民の意思すら代表していない軍事政権、そういうものとの間で、全朝鮮の基本的な問題を日本政府との間でいくら話をされても、それは国際法上の常識に反することだから、議題にすることは初めからおかしいし、もし、それに対して、不当な取り扱いであるけれどもそれを無理にやって、いかような取りきめをしても、これは朝鮮民主主義人民共和国政府としては全然認めるわけにいかぬ、認めないのみならずこれを排撃をしたい、こういうのが、あなた方が認めておられる朝鮮民主主義人民共和国の態度であります。これは正確にお伝えをいたしておきます。しかも、これは、一方的な要求ではなく、合理的な主張であり、国際法上あるいは国際政治の常識上当然な論理であると私は思います。それに対してあなたはどうお考えになりますか、伺っておきたいと思います。
  94. 大平正芳

    大平国務大臣 たびたび国会を通じて申し上げております通り韓国が支配する領域の問題と心得ておりまするし、北鮮には一つの権威があるということを頭に置いておりますということは、申し上げ通りであります。今北鮮の政府の見解ということであなたを通じて表明されました御見解は、承っておきます。
  95. 穗積七郎

    穗積委員 承ってどうお感じでございますか。これは客観的に一般的に正しい原理であるというふうに私は思いますけれども、あなたはどう御理解になりますかと伺っているのです。
  96. 大平正芳

    大平国務大臣 承っておきます。
  97. 穗積七郎

    穗積委員 承って、それが正しいとお思いになりますかどうでございますか。
  98. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほども申し上げましたように、一応承っておきます。
  99. 穗積七郎

    穗積委員 これでは国会を開いて審議をしても意味がないじゃないでしょうか。これは全然ナンセンスですよ。国会というものを認めておられないで、民主的に国民納得のいくようにと言ったって、納得しようがないですね。  それじゃ、もうこれらの問題を押し問答いたしましても他の方に迷惑ですし、次にまた時間の余裕のあるときにさらに伺いましょう。これは打ち切ったのではありません。はなはだ遺憾の意を表して、留保して、もう一点だけ最後にあなたの外交政治家としての御所感を伺いたいことがあるのです。  朝鮮というものは、今まで日本が半世紀にわたって支配をしておって、今度の戦争に日本が敗けて、初めてこれが独立国になってきた。従って、朝鮮の問題については、実はわれわれはああしろこうしろというようなことは発言権がないわけです。そこで、われわれが受け取っておるのは、統一朝鮮というものに対してその原則を受け取っておるわけですね。そうであるならば、われわれがかねて言うように、またこの前の国会で河上委員長も具体的に提案をしたように、懸案のビジネス・ライクの問題は、遺憾ながら二つに分かれているのだから二つの政府との間でやって、全朝鮮に関連のある国交問題、その中に含まれる領土その他の問題等については、これは統一政権の樹立を待ってやるべきであるという提案をわれわれは具体的にしておるわけです。朝鮮との関係をいつまでも不自然・非正常的な状態に置けということを言っておるのではありません。これは社会党の主張ではなく、日本が終戦後国際的な取りきめあるいは条約等で承認して受け取った朝鮮に対する原則というものはそうでなければならない。ところが、あなた方は、統一ができないということを無理に理由とされて、そうして、やむを得ず南とやるのだ、こういうふうに言っておられるわけですが、実は、私どもがちょうど平壌に滞在中、御承知のように、十月八日に、朝鮮の国会、すなわち最高人民会議の総選挙がありました。その最初の総選挙後の国会が十月二十三日と四日にわたって平壌に招集されました。その最初の日に、金日成首相が政府代表してこの朝鮮の統一問題について方針を明らかにして内外に訴えたわけです。その要点を簡単ですから申し上げます。現状すぐ統一が困難であることは、これは不本意ながら事実を認める、そこで、金日成が提案をいたしておりますのは、二つの政府の間での連邦制を暫定的にまずやろうじゃないかということです。非常に具体的ですね。その場合においては、両国の政府の間でまず平和協定を結ぼう、そうして、軍備については、お互いの不信をなくすために、停戦協定十三条は停戦時の兵力をふやさないという約束になっておりますが、それをさらに、両国政府並びに人民の相互信頼、安心のために、十万以下にお互いに軍備を減らそうではないかということです。そうして、さらに、内政は不干渉のままで、そこで両国の人民によって選ばれた連邦会議を持とうではないか、同時に、両国の間における経済委員会を合流してつくって、そうして、その連邦制で相談をしながら、内部的には経済・文化の交流を合意に達したものだけからでもやろう、無理にやろうとは言わない、南の方が拒否すればそれはできないが、合意に達したものだけからでもやろうじゃないか、そうして、対外的な問題はこの連邦制の機関でやろう、両国の国会ではなくて連邦会議でやる、全朝鮮人民に関連のある重要な国際問題はその連邦会議で相談をして、連邦政府折衝に当たろうではないか、その過程をとって、相互信頼ができたときに民主的にして最も平和的な方法で総選挙をやろう、そしてそこで連邦ではなくて統一の政権をつくろう、その内容がどういうものになるかは人民のきめることである、こういう提案です。そうして、それをやるためには、外国の軍隊は撤退をしろ、北には外国の軍隊は一兵もいない、基地は一つもない、南における軍隊も撤退をして、自主的に民主的に平和的にやろうという提案です。これは私は非常に現実的でありかつ合理的な提案であると思います。そうであるならばできるわけです。今不幸にして南北朝鮮に分かれておりますけれども、あれは国境でなくて武装解除の軍事境界線にすぎないわけです。ですから、われわれが朝鮮問題について努力すべきことは、やはり、その統一を促進して、国際会議で決定され平和条約二条でも規定してわれわれが原則を認めておるように、統一政権が早くできるようにわれわれは協力をする、これを支持するというのが、日本政府並びに日本人民のとるべき正しい態度であると私は思うのです。そのときに、あなた方が言われるように、李ライン問題とか、漁業問題とか、その他の問題について解決がつかぬのじゃないのです。そういう懸案の問題は、貿易問題でも、両国の政府と公平平等に解決していく。共通の問題については、今の連邦会議、連邦政府で、できるならばそこで過渡的段階においても交渉妥結ができるわけです。私はこれを日本政府並びに人民は支持すべきであると思う。南朝鮮の多くの人民もこの統一方式というものは支持しているわけです。ただ、それが弾圧されていますから、言論の発表も結社も全然できないものだから、黙っているだけでございます。こういう基本的な立場で私は進むべきだと思うのです。これはあなた方も認めておる。これを無視することはできない。それとの接触もあればしなければならないと認めでおられる朝鮮民主主義人民共和国の全朝鮮人民に対する訴えであり、外国に対する提案でもあります。これについて外務大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
  100. 大平正芳

    大平国務大臣 先に国会の論議について言及されましたが、私は、国会を尊重するがゆえに、政府の方で成案ができまして、国会で御審議をいただく十分の材料を整えた上で御審議をいただくということにいたしておるわけでございます。これは国会を尊重するゆえでございまして、その途中の過程におきまして私がべらべら国会でものを申し上げるなんということは、むしろ穗積先生からおしかりを受けるのじゃないかと思うわけでございます。その点は御了承いただきたいと思います。  それから、今お話がございました南北の統一の問題でございますが、もとより、私どもといたしましても、半島全体の統一を希求するものでございますが、今まで伺っておるところでは、これをどうして統一するかという統一方式につきまして御意見の違いがあると伺っておるわけでございますが、この統一の問題はあくまで半島全体の問題でございまして、日本政府としてとやかく申し上げるべき性質のものではないと思います。
  101. 穗積七郎

    穗積委員 これは、今の提案を支持すべきだと思うのですが、どうですか。客観的に正しい議論だと思うのですが。
  102. 大平正芳

    大平国務大臣 これは朝鮮半島全体の問題だと思います。
  103. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだ不十分ですが、時間の関係がありますから、次に譲りまして、これでおきます。
  104. 野田武夫

    野田委員長 岡田春夫君。  岡田君に申し上げますが、外務大臣は時間が非常に迫っておりますから、そのつもりで御質問願います。
  105. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私も少し伺いたいのでありますが、今委員長の御注意のように、時間がありませんので、簡単に伺って参ります。  国会を軽視しないという御答弁が今あったのですが、これは交渉中の問題じゃありませんから、すでに書簡の往復があったわけですから、これは交渉中だという理由で御答弁を避けられることのないようにお願いをいたします。  その点は、中国とインドとの国境問題で紛争が起こっております。この点について、先月の末にインドのネール首相から書簡が来て、これに対して日本池田首相としては今月の四日付で書簡を出しております。この池田書簡という回答の書簡は、インドのネール首相の書簡を全面的に支持する、そういう意味の書簡として解釈してもよろしゅうございますかどうですか。
  106. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもの見解は、領土紛争を含めまして、国際紛争というものは武力に訴えずに平和的手段によって解決さるべきものである、そういう確信に立っておりますということ、そして、インドがこの問題の解決を平和的にやろうという目的のために努力を尽くされる、その努力に対しては全面的な全幅の協力を惜しまない、こういう趣旨の御返事でございます。
  107. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 しかし、私はここに書簡を持っておるのですが、この中に、インド政府が払われるいかなる努力に対しても日本政府国民は支持を惜しまないことを貴閣下に対して確言したいと思いますということは、インドの政府が今とっておることを、いかなる努力に対してもこれは全面的に支持する、そういうことを明確にしたことなのでございましょう。そういう意味なのでございましょう。
  108. 大平正芳

    大平国務大臣 今申しましたように、平和的に解決するという目的に寄与すべき努力、そういう努力に対してということでございます。
  109. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 この書簡に書いてあることは、いかなる努力に対してもこれに対して全面的に支持をする、こういうことを書いているのですから、このネール首相から来た書簡に対して、日本政府は全面的にこれを支持します。そういう意味だと解釈していいですかと聞いておる。
  110. 大平正芳

    大平国務大臣 それは、今申し上げておる通りに、「日本政府は、この紛争が平和的手段によってなるべく早く国際正義に基づいて解決されるよう心から希望するものであります。私は、この目的のためにインド政府が払われるいかなる努力に対しましても」ということでございます。
  111. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、伺いますが、インドがそういう立場をとる限りにおいてこれを支持するということですが、このネール書簡の中に、中国が侵略した云々ということがたくさん書いてありますが、日本政府がこの書簡を出されるにあたって、中印国境を中国は侵略したという解釈に日本政府は立っておるのですかどうですか。
  112. 大平正芳

    大平国務大臣 国境紛争の問題は、たとえばマクマホン・ラインと申しますけれども、何本もあるようでございまして、事実、これを日本政府がどちらの線が正しいかというようなことを責任を持って申し上げるような材料は、日本政府としては持っておりません。従って、そういうどちらが正しいかということにつきまして軽率に判断すべきものではないと思います。
  113. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 しかし、あなたの方で言っているじゃないですか。時間がないから私は簡単にやりますが、中国が貴国との国境紛争の解決の手段として大規模な軍事行動に訴えていることはきわめて遺憾であります云々と、大規模な軍事行動をとっておるのは遺憾だ、こう言っているでしょう。しかし、軍事行動をとっておるのは、あなたも御存じのように、中国だけではないでしょう。インドだってとっているわけですね。それに応じて、とっているとかあるいは何とかという考え方がなくちゃならないのだが、われわれの解釈では、これは三年前からインドがやっておる。こういう点についてなぜ触れないのですか。軍事行動が悪いというのなら、あなたの方のインドも軍事行動をとっておるのは遺憾です。そしてあなたの言うように平和的解決をするのはいいと思います。そういう筋を書くなら筋が通るじゃないですか。インドの問題について触れてないのは、これはどういうわけですか。
  114. 大平正芳

    大平国務大臣 前段に書いてございまして、今御理解いただいたように、国際紛争処理にあたって平和的手段によって解決さるべきものであるという信念を持っておる、で、今度この事件が起こりまして、中国が大規模の軍事行動に訴えているということは、このわれわれの確信から申しましてきわめて遺憾であるということでございます。
  115. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 しかし、あなたは、大規模であっても小規模であっても、軍事行動はいけないのでしょう。あなたは大規模と強調されたけれども日本政府は小規模だったらいいということを言っているのではないでしょう。軍事行動は困るということを言っているのでしょう。その軍事行動は困るということは、インドだって三年前からやっているのですよ。それについてなぜお触れにならないのですかと、こう言うのです。あなたは大規模な軍事行動云々ということを言われている限り、これは書簡にあるからこう書いたんだというような無責任なことを言うことは許しません。日本政府が書いたんです。大規模な軍事行動がいけないというなら、インドの方だって大規模な軍事行動あるいは小規模であっても軍事行動がいけないとなぜあなたお書きにならないのですか。こういうことを聞いているのが一点です。  もう一つの点は、この書簡によると、中国の侵略というものを日本政府が認めているということになるのだと私は解釈をせざるを得ない。時間がないから簡単に二つ一緒にやるのですが、中国の侵略があったと考えているのですか、中国の侵略はなかったと考えているのですか。この点は政府が見解を統一しているはずだと思うのだが、この二つの点について伺いたいわけです。
  116. 大平正芳

    大平国務大臣 前段の方は、この返書の三項にあります通り、「この紛争が平和的手段によってなるべく早く国際正義に基づいて解決されるよう」ということを希望いたしてございまするから、日本の意図するところは先方に十分伝わっておると思います。  それから、第二点は、先ほど申しましたように、国境紛争はなかなか紛糾した問題でございまして、政府として正確な判断をするという十分な材料を持っておりませんし、軽率にそういうことはすべきものでもない、こう考えております。
  117. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それじゃ、もう時間がないから、二、三分で終わりますが、もう一問だけ。あなたとしては、平和的解決を希念するということが日本政府の大原則である、こういう点は間違いないのですね。
  118. 大平正芳

    大平国務大臣 さようでございます。
  119. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、中国が平和提案をしておりますが、これは賛成されますか。
  120. 大平正芳

    大平国務大臣 これは中印両国の問題でございまして、この問題が当事者によりまして平和的手段によって解決されるということを希求いたしております。
  121. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 ですから、私が伺っているのは、十月の二十四日にも中国は三項目をあげて平和交渉をやろうという提案をしているのです。ここにあります。時間がないから私は読まないのです。七月以降、私の調べている限りで、中国は五回平和交渉提案をやっている。これに対してインドが拒否しているのです。インドが断わっておるのです。あなたの話のように、日本政府が平和的な話し合いによって解決をすることを望むという大原則でおられるならば、インドでなくて中国が提案しても賛成すべきでしょう。日本政府としては当然です。そうじゃありませんか。日本政府として、インドが提案したときには賛成する、中国が提案したときには平和的な話し合い提案にも賛成しない、こういうようにはお考えにならないものだと思うのだが、中国が提案したこの事実について、もしあなたはおわかりにならないというお話なら私は読んでもいいのですが、十月二十四日ほか四回にわたっての中国の平和交渉提案について、こういう平和的な話し合いにあなたは賛成をされるかどうか。日本の外務省として賛成をされる、日本政府代表して賛成をされるかどうか。特に、あなた方の与党の中でも、ここにもおられる野田委員長松本俊一両代議士、その他たくさん中国にも行っておられるのですから、まさかあなたがここで敵対的な言葉を吐かれると思いませんが、一つはっきり御答弁を願いたいと思います。どの国が平和的な交渉提案をされようとも、あなたはそのような提案に対しては歓迎をする、日本政府は平和的な話し合い妥結されることを歓迎するという態度くらいやはりお出しにならないと、先ほどから一時間有余にわたって何だかわけのわからないことばかり言っているということだけでは、外務大臣の職責が勤まるかどうかわからないわけですから、むしろはっきりと御答弁を願うことが、われわれの衷心から期待することです。そういう点一つ率直に御答弁を願いたいと思います。
  122. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しました通り、この中印の国境紛争の問題はまず両当事国の問題でございますから、私どもは、ネール首相の書簡に対しまして、平和的になるべく早く国際正義に基づいて御解決されるように希望しますということを申し上げておるわけでございまして、中国側の御提案をどう受け取るかという問題は、まず当事国の御見解によることだろうと思いますが、インドに対しましては、そういう日本国民の希求するところを申し上げておるわけであります。
  123. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなた、そういうことはあいまいにされない方がいいんじゃありませんか。平和的な話し合いをするということを提案しているこのこと自体については歓迎をするとかしないとかお話しにならないと、誤解を招く。私がさっきから口を長くしてしゃべっているのはそのことなんです。中国がそのような提案をしていることに対して日本政府はこれを歓迎するのかどうか、このことを伺っているのですから、あなたはそういうことについてあいまいな答弁一つ避けていただいて率直にお答えいただきたいと思います。
  124. 大平正芳

    大平国務大臣 その点につきましては、岡田委員も御承知のように、インド側からも停戦の申し入れがあるようでございます。私どもは、平和的な解決をはかるという限りにおきましては、あらゆる努力を歓迎いたします。
  125. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これで終わります。中国の提案の場合でもこれを歓迎する、このように解釈してよろしゅうございますか。
  126. 大平正芳

    大平国務大臣 その問題が平和的に解決するのに寄与する限りにおきましては、いずれの国の提案であろうと、そういうことは望ましいことだろうと思います。
  127. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 新アジア局長にさっそく御答弁願いますが、今インド側の提案があったように耳打ちをされておりますが、いつあったのですか。
  128. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 十月二十四日の中共の声明に対しまして、直ちにインド政府は、中共側が九月八日以前の線まで撤退すれば、緊張を緩和しかつ中印国境の原状回復の措置を協議する目的で会談に応ずる用意があるということを返答しております。
  129. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それは回答でございますね。
  130. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 そうでございます。
  131. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 話し合い提案ではなくて、回答でございますね。提案と言ってもいいのですが、それ以外にございますか。
  132. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 インド側からの提案といたしましては私の承知する限りこれだけでございますが、ほかに、御承知の通り、アラブ連合からも一種の停戦に関する提案が出ております。
  133. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 中国の方から話し合いについての提案があったことを先ほど申し上げましたが、この提案があったことは事実でございましょう。私は日にちを申し上げてもよろしいのですが、八月八日、九月十三日、十月三日十月二十四日、十一月六日、この五回の提案があったと私は記憶しておりますが、この点はどうですか。
  134. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 その日にちの全部は私まだ寡聞にしてはっきりと確かめておりませんが、最後の中共側からの提案は、十一月七日の北京放送によって、周恩来首相の書簡の形で送られておると承知しております。
  135. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、今言われました十月二十四日の提案もございましたね。
  136. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 ございます。十月二十四日の中共政府の声明によって三項目の提案が行なわれたように承知しております。
  137. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、大体において私の言っている五回の提案は間違いないようです。十月七日の北京放送というのは、日付は十一月の六日です。これについては、一応インド側は、八月八日、九月十三日を除いて、十月の三日、十月の二十四日、十一月六日の提案に対しては、九月八日現在の線に戻って交渉しようという回答ですね。そうでございましょう。
  138. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 インド側の回答は終始その線に沿った回答になっておると承知しております。
  139. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 九月八日というのはどういうことですか。
  140. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 インド側の見解によりまして、それまでいろいろ小ぜり合いはありましたけれども、九月八日から中共側の大規模の軍事行動が始まった、それ以前の状態に返すというのがインド側の回答の趣旨であろうと解釈しております。
  141. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 今何かはっきりお認めになったように、ともかくも、それ以前にも軍事行動があった、小ぜり合いという形で軍事行動があったということをはっきりお認めになったのですが、それならば、小ぜり合いのなかったときに戻って話し合いをした方がいいのじゃないですか。
  142. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 これは、先ほど大臣がお答えになりましたように、この小ぜり合いの原因がどちらの正当な権利に基づいての小ぜり合い、軍事行動かということは、ほんとうは第三者ではわかりませんので、それに対して、どちらが正しかったかどうか、あるいは権利関係に基づいての小ぜり合い、軍事行動をしかけたかどうかという判断を差し控えたいというのが総理書簡の趣旨だというふうに了解しております。
  143. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私は、どちらが悪かったかどうですかということはあなたに聞いておりません。なぜなら、あなたは日本政府の役人ですから、なかなかそこはどう思っても言わないでしょう。私の言うのは、九月の八日に戻るのなら、もっと前の小ぜり合いのなかったときに戻ったらどうですかということです。そういう方針をお出しになった方が日本政府としてよかったのじゃありませんか。九月八日の線を支持するというのが池田首相の書簡です。そうではなくて、もっと前まで戻ったらどうでしょうか、こういうことを伺っておる。
  144. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 領土紛争、国境紛争の場合の停戦の線をどこに置いて、いつの線を基準にして停戦するかは、非常に両方の利害関係に影響するところが重大なものでございますから、大臣御答弁の趣旨の通り、その点についても軽々たる判断を避けたのが今度の回答の趣旨でございます。
  145. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなたは軽々たる判断を避けてと言うが、九月八日ということにしたのでは、(松本(俊)委員「違う、三年前」と呼ぶ)そういう書簡を支持するということになればその通りですよ。それでは御意見を伺いましょう。ここに大先輩の松本俊一さんが激励しているから、だいぶ勇気がついてきたかもしれませんけれども、ともかくそれじゃ伺います。小ぜり合いがあったという事実をあなたはお認めになった。小ぜり合いのなかったころ、一九五九年十一月四日に戻ったらどうですか、三年前です。松本さんの言う通りです。
  146. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 総理書簡の御趣旨は、とにかく、大規模な軍事行動の始まったという点のことを基準として、それを遺憾としておられるようでありまして、その前の小ぜり合い時代のことについては判断を差し控えられたわけでございます。
  147. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなたの御答弁を伺っていると、小ぜり合いならいいんだと言わんばかりの答弁なんです。それはいいとして、私は伺いますが、話し合いをするということならば、中国の提案は非常にはっきりしているじゃありませんか。小ぜり合いのなかった一九五九年の十一月四日に戻って、そのときの話し合いでそれぞれ二十キロ撤退をして、そこで総理会談をやってはどうかという提案を、ことしになってから七月以降五回もしておる。しかも、そればかりでない。一九五九年以前からもこの点について再々にわたり提案をしておる。これについて、日本政府はこのような提案についてはどのようにお考えになっておられるのか。それから、大平さんが何かあいまいな答弁をされたのだが、十月二十四日の提案というのは、日本政府の方ではっきりつかんでおるのでございますね。この点を含めて一つ答弁を願いたいと思います。
  148. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 一応、この両方の提案は、インドにおける在外公館からの連絡及び外電等によって承知しております。
  149. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、提案問題ばかりやっていてもしようがありませんから、もう少し伺いますが、中印国境の国境線というものは確定されているのですか、確定されていないのですか。
  150. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 これにつきましても、中印双方で意見の相違があるようでございまして、中共側では、協定によりはっきりした国境の確定はないという立場をとっておるように承知しておりますし、インド側では、歴史的、伝統的な国境線が確定しておるという立場をとっておりますし、要するに、国境線が確定しておるのかどうかという点についても、まだ双方の意見が一致していないというふうに承知しております。
  151. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、両方の相互間の状態はわかりました。そういう状態に対して日本政府の見解はどうなんですか。
  152. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 両当事国でもわからないような複雑な問題ですので、第三国から軽々に判断を下さない方がいいという態度をとったわけでございます。
  153. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、国境線は確定していないというようなことも言えるし、国境線は確定しているということも言えるし、この点については日本政府としては明確ではない、このように解釈してもいいわけですね。
  154. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 要するに、国境線の確定についてはっきりしておらないというのが、日本政府の見解でございます。
  155. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 その点がはっきりすればいいのです。国境線ははっきりしておらない、こういう点がはっきりしているならばそれでいいのですが、そうなると、マクマホン・ラインとかいう国境線が確定しておるかの前提に立って、世上新聞等にいろいろ書かれており、報道されておりますが、こういうことはその前提自体が日本政府から言うと間違っておる、そういうように解釈すべきだと思いますが、それでよろしいのですか。
  156. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 マクマホン・ラインその他について第三国から若干の見解が提出されておることも承知しておりますが、日本政府といたしましては、最初申しました通り、領土問題、国境紛争そのもののどちらにどの理屈があるかという点については、複雑な問題でございますから判断を差し控えたい、また、両当事国間で国境が確定しておるかどうかについても意見の一致を欠いておるような状況において特にしかり、そういうふうに思っておるわけです。
  157. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 その点重要な点ですが、特にこれは日本の場合でも先ほどから竹島とか領土の問題が出ております。領土の問題というものは、主権に関する、国家の成立に関する最も基本的な問題です。少なくとも国家の成立に関するようなことが相手国との間に話し合いがついておらない場合においては、これは確定しているものとは言い切れない。これは国際法上もそのように言い切ることができると思う。通例においては、条約を結んで、その条約において両者の合意があって初めて国境線なり領土の確定というものがあるのだと思いますが、この点はいかがですか。
  158. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 領土確定の方法といたしましては、条約による場合もあり、もう全然疑問の余地もない場合は歴史的・伝統的な国境線がそのまま認められる場合もあり、いろいろな場合があると思います。
  159. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 疑義をはさむ余地がない場合は歴史的・伝統的というように御答弁になった。ですから、疑義がある場合には、歴史的・伝統的なものもこれは国境線として確定できない、このように解釈せざるを得ないと思うのですが、そうですね。
  160. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 一つの領域を複数国で争います場合は、一方の国の言い分だけを一方的に通すわけにはいきませんので、国際的合意あるいは何らかの方法によって両当事国の合意する国境線というものが必要になるだろうと思います。
  161. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これで終わりますが、それでは、中印の今日の問題では、両者の合意が成り立たないのですから、どういう事態であれ、これはすでに国境線というものは確定されておらないというのが政府の見解である、中印の具体的な問題についてはそのような解釈に政府は立っている、このように私は拝承したわけでありますが、その点は間違いないでございましょうか。
  162. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 さっきの答弁言葉があるいは不足しておったかもしれないと思いますので、念のため補足さしていただきますと、中印国境間におきましては、両当事国の間において国境が確定しているかどうかについて意見の一致をまだ見ておらない、こう申し上げたのであります。
  163. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 だから、さっきから言っているように、両当事国間において紛争が解決していない限り、両当事国間の国境ですから、従って、国境の確定はない、こう言わざるを得ないわけでございましょう。そうでしょう。違うのですか。
  164. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 論理的にはそういうふうになるだろうと思います。
  165. 野田武夫

    野田委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十二分散会