○帆足
委員 私は、本来ならば
日韓会談並びに中日
貿易促進の方策につきましてさらに具体的に
政府に問いただしたいこともあるのでありますけれ
ども、時間が限られておりますから、きょうは、主としてキューバとの通商問題並びに
沖繩の
経済援助の問題についてお尋ねし、また、お尋ねするだけでなくて、われわれの要望をも述べておきたいと思います。
日本は海の国、船の国でありますから、
貿易の問題は党派を越えた
国民共通の重要案件でございます。インフレーションと申しましても、物価騰貴といいましても、この国は狭い国土に一億近くの
国民が生きていかなければなりません。幸いにして、古来豊葦原瑞穂の国と言われておりまして、湿気が強いことは日常生活には重荷でありますが、また、台風も、これが対策が、治山治水のことが必要でありますけれ
ども、台風と湿度は
わが国に豊かな植物の繁栄をもたらしまして、食生活におきましてはまれに見るほど恵まれた国でございます。従いまして、この国でインフレーションといえば、結局、原材料の輸入がむずかしくなること、すなわち、外国為替が逼迫することに問題があるわけでありまして、
貿易の問題が
国民生活にとって超党派的課題であるというゆえんのものは、ここにあるのでございます。たとえば、ホウレンソウのインフレーションとかてんぷらのインフレーションとかいうことは、一時の干ばつでホウレンソウが育たないというようなときはありますけれ
ども、まず平年の天候の
状況ではそういう心配はない。けれ
ども一たび重油が欠乏し、ガソリンが欠乏する、すなわち外貨が不足してそういう手当が困難になるならば、漁船は自由に動くことができず、トラックの燃料はやみ相場となって、初めて野菜が高くなり、魚の値が高くなって、そうして、おすしのインフレーション、てんぷらのインフレーション、物価騰貴となって
国民の生活に響くということになるのでございますから、重油やガソリンの輸入ということがいかに重要なことであるか。それと同じように、台所では、米、みそ、しょうゆと言いますけれ
ども、大豆や砂糖、塩の確保ということがいかに重要であるかは、戦時中痛感した
通りです。しかし、その中で、塩は、数量は大きいですけれ
ども、値段はわずかのものでございますから、戦時中の海運の封鎖というようなことがない限り、わずかの外貨で買うことができますから、それは大した問題でありませんけれ
ども、砂糖は、とても値段の高いもので、貴重なものでございますから、やはりゆるがせにすることはできません。
キューバとの
貿易につきましては、
国民の
方々はキューバのことはあまり御存じないが、キューバと
日本の砂糖の取引というものは非常に大きな要素を占めておる。過去においては
日本の砂糖輸入総額の過半を占めていた。今ずっと減っておりましてもなおかつ三割なり三割数分を占めておる、非常に大きな
日本の
貿易相手の
一つでございます。キューバの砂糖は、御承知のごとく、規格も統一され、たとえば台湾の砂糖が一年、二年、三年生ぐらいだとすれば、キューバの砂糖は、気候に恵まれて、五年、六年、長きにわたっては七、八年も多年生の砂糖ができるわけでございます。
カリブ海の空は紺碧に晴れわたって、
旅行をしますと、まるで紫外線が金砂子のように落ちてきまして、砂糖はキューバでは一人当たりの産額が一トンをこえております。後進国の中ではキューバは最高の生活水準の国でありまして、クリスマス・ケーキのような豊かな国であります。これがバチスタという無学な一軍閥のために押えられて長い苦しみをなめました。古くは、スペインのきわめて中世期的な封建的土地所有のために苦しめられ、それをただ漫然と
アメリカがやすきについて安易に引き継ぎまして、
アメリカの属国としてさらに今日に至りましたのが、だれが見ましても李承晩をはだしで逃げさすほどの悪政を行なったところのバチスタはついに追放されて、そのあと
アメリカがこれに対する合理的、理性的な
理解を持てば、あるいはキューバはメキシコのように保守政党の側から見ましても中道の道を歩むという体制でとどまったかもしれませんけれ
ども、このキューバに起こりました、インドの革命、インドネシアの革命、またはナセルのアラブ連合の革命と同じような自然発生的な、すなわち植民地支配から離脱して民族国家をつくろうという、だれが見ても
理解しやすいこの革命に対して残念ながら
アメリカの
政府当局の一部が十分な
理解を持っていなかった。
ノーマン・メーラーという有名な作家が、キューバ音楽も
理解せずにキューバの対策を立てたところに若いケネディ大統領の失策があった、こう論じておりますが、御承知のように、キューバはマンボ、パチャンガ、チャチャチャと、ダンスの本場でありまして、このくらいのことを多くの
日本の青年は知っておりますが、その
日本の使う砂糖の大部分が少なからざる部分がキューバに依存しておる。キューバ糖なくしてお汁粉を安心して飲むことはできない。キューバ
貿易を粗末にするならば、やがて問題はお汁粉に響きキューバ
貿易が女性のやさしき心理に重大なる影響を与えて、次の総選挙においてはこのキューバ
貿易を粗末にした議員は女性の票を得ることは困難であると私は思う。このくらい重要な
貿易相手の国の
一つです。
バチスタにいじめられていたこのクリスマス・ケーキのような愛らしい国が、バチスタの悪政に反逆して、たとえて言えば乳腺炎を起こした。その乳腺炎に対して、乳腺炎というのは放射性の病気でありまして、非常に病後の大切な病気であるのに、ケネディ大統領は、これをにきびと間違えて、キューバはこのごろ少し色気づいてにきびができた、お乳ここきびができるはずはないではないかというわけで、それなら水虫かというのでサリチル酸を塗りたくって、そして石油を遮断し、ついに砂糖を封鎖してしまった、こうなれば、もうどんなに考えても乳腺炎は乳ガンに転化せざるを得ない。私は、あの
アメリカの誤った政策がキューバをして
最後の断交に追い込めたのではあるまいかという一部の批評家の批評は、
アメリカとしても大いに反省せねばならぬ問題ではなかろうかと思っておる次第でございます。
さて、
アメリカから
日本が砂糖を年々二百億円近く買っております。その大部分は全部ドルで払っておりました。それはニューヨークに支払われております。そういうふうに、
日本からの見返りの
貿易は一割か二割が商品輸出でありまして、八割までは全部ドルできわめて安易に払っている。砂糖産業は甘やかされて、
自由化といっても
最後に回すという約束もできておるようで、非常に一時的にはもうかる。そのもうけは納付金として国庫に納められておるというような安易な状態を続けて参りました。しかし、今後一ドル、百ドルの金でも最も節約して上手に合理的に使って
日本経済を安定させねばならぬ、これは長きにわたる今後の課題でございます。
こういうときに、キューバとの
貿易を考えますると、
日本政府はいち早くキューバとの通商条約を検討いたしまして、昨年の四月、超党派的に、
日本・キューバ友好通商条約を満場一致議会で通過せしめました。私はこれは
貿易の国として適切な
措置であったと思っております。その直後に、
国会の御了解を得まして、私は一カ月キューバを視察して参りました。今度も、ブラジルの万国議員
会議のあとに、同僚議員の尊敬する福田篤泰氏その他の議員各位も時間があればキューバを視察してくるということでございますが、キューバについては、
日本経済の安定という点から見ても、慎重に対策も考え、
経済の
状況を視察して、誤りない対策を講ずるに値する重要な
貿易相手の国であると思うのでございます。私がゲバラ国務大臣に昨年会いましたときに、
日本に行って見て、
日本にはあらゆる商品があるのを見て驚いた、懐中電灯でも、ラジオでも、薬でも、虫下しでも、ペニシリンでも、ストレプトマイシンでも、ないものはない、だとするならば、
日本が砂糖を買った代金のすべてをドルで払う必要はないのであって、八割までは適当な為替銀行に、たとえば東京銀行にコンヴァーディブルの円として預金しておいて、二割だけドルをいただけばいい、全部ドルをいただくとついやすきについて使ってしまうということもあなたの方で心配でしょうし、八割までは円を積み立てておいて、そして
日本の雑貨を買う、また
日本の機械工業品を買う、そうすれば
日本の国際収支も非常に楽になる、こういうことでした。私はこのことを帰りましてすぐ牛場
経済局長に連絡いたし、また東京銀行の堀江常務にも連絡いたしまして、御
両者ともそれは
好意的であった。外務
委員会の皆さんといえ
どもこれに反対する人はなかろうと思うから、そういう点ならば
日本・キューバ通商条約の裏づけとして為替協定の準備をぼつぼつ研究しょう、こういういきさつでありました。ところが、残念ながら、牛場局長が職をかわられましてカナダの大使に移られましたので、技術的にもこの問題がちょっと延び延びになっているうちに
国際情勢がまた激変いたしまして、遺憾ながら
アメリカとキューバとの対立が一時的に激化しておるというのが今日の事情のようでございます。
アメリカのキューバに対する対策を見まして、思い起こすのは
英国のことです。常識ある
英国ですらが、スエズ運河が沸き立ち、ナセルが決起いたしましたときには、さすがに理性を失ってあそこに爆撃機を向けましたが、ブルガーニン元帥からの警告によって、もしスエズ河畔の原住民たちをイナゴのように爆撃をもって脅かすならばテームス川のほとりの文化水準の高い民族に対してロケット並びに放射能というものをもってそれに対して警告を与えるという天の声が下ったならばあなたは何と答えるであろうか、史上未曽有の書簡がマクミラン首相に発せられまして、ついに、大局を考える大脳の力をまだ持っている
英国は、無念残念やる方ない思いをしながらも、貴族の時代、帝国主義の時代はもはや傾陽を浴びている、植民地であった民族が独立の趨勢に向かうことはこれは歴史の運命であるから、
英国は秩序整然として退却した方がよかろうということで、ナセルに対して必要なる退却を上手に行なったことは御承知の
通りです。六十男の
英国はそのような聡明にしてかつ冷静な判断に立っておりますが、四十男の
アメリカは、懐の中にあるドルにものを言わしてまだ血気盛んでございまして、
英国のような冷静な判断に立つことはできないで、裏切られたと、四十男が小娘に裏切られたときのような嘆きを繰り返しまして、そして、いろいろな小細工をもって、ギャング進攻作戦をもってキューバを取り込もうとした。確かに、マイアミの乳ぶさの下にあるキューバが
アメリカの心持から去ってしまったということは
アメリカにとって不愉快なことであるということは察するに余りありますけれ
ども、同時に、キューバが
アメリカにとって目の上の小さなほくろぐらいのたんこぶであるとするならば、キューバにとってはまた
アメリカはさぞかし不愉快な存在であろう。私はこれはお互いさまではあるまいかと思う。従って、そういうことを言い合うよりは、やはり合理的に
理解し合うことの方が必要である。
あるいはまた、ニューヨーク・タイムスなどの記事によりますと、何ぼ何でも
アメリカの乳ぶさのまっ下の国がソ連、
中国の影響下に立つことはがまんできないことであると言っており、その
気持もよくわかりますけれ
ども、それならば、
中国、ソ連のちょうどあごの下にある台湾や朝鮮や
日本が、単に自由
諸国とよい
関係というだけではなくて、その軍事基地になっておるということは、はたして北京や上海の人たちにとって頭痛の種にならないかどうか。論理というものは普遍妥当なものでありますから、
外交というものを論理に根ざして考える限りにおいては、私は、
アメリカがキューバのことのみに固執して、
自分はキューバに対するソ連、
中国の
態度以上のことを台湾や朝鮮や
日本において行なっておることを思えば、とにかくソビエトは今日キューバに軍需品を送っておるようでありますけれ
ども、しかし、軍事基地は断じて作らないということをたびたび声明しているようでありますから、いわば軍事的には中立に近い
立場をまだキューバはとっているわけでございます。そういうことを思うならば、たとえばメキシコも中立をとっております。従いまして、
アメリカも、この辺で冷静に考えて、やはり国際条約の論理をみずからはずすようなことをすることは、私は、
アメリカの良識のためにとらざるところである。私のような議論は、
英国のマンチェスター・ガーディアンをお読みになっても、また、
英国労働党の機関紙をお読みになっても、また、
英国保主党の一部の議論の中にも、そういう批判は
アメリカの性急な
態度に向かって向けられておるわけでございます。
今日、この数日の新聞を見ますと、
アメリカはさらに一歩を進めてキューバに対して
経済封鎖に類似のことをしようとする。今日びょうたる島国に対して
経済封鎖を行なうことは、昔ならば、ここいう言葉は絶対に使いたくない言葉でありますけれ
ども、宣戦布告の前夜のような脅威を人に与えると言われても私は反論できないような手段であろうと思います。
経済封鎖のような深刻な対策を
アメリカがとることに対して
一体国際連合の精神から見てそれが妥当であるかどうか。たとえば、軍需品の仕向けに対して
アメリカが反対の声明をする、軍事技術官の派遣に対して反発をするというならわかりますけれ
ども、日常生活物資の
貿易に対して
アメリカが他国に干渉する、そして、そういうことをした国に対しては、
自分のところの港では水と石炭を供給せず、また、停泊の港を供給せずということになるならば、私は、
英国のロンドン・タイムス・マンチェスターガーディアンなどが
アメリカに反省を求めておると同じように、
アメリカとしては行き過ぎであると思う。これは、単に社会党の
立場からではなくて、党派を越えて、良識ある今日の国際的論理の
立場から見まして
アメリカの
態度は行き過ぎである。この行き過ぎは結局かえって
アメリカに
世界の
世論が同情しないことになってくるのではなかろうか。これは
アメリカとして大いに自粛してもらわねばならぬ。すなわち、国際連合及び国際的論理の許す範囲においてキューバに警告を発することは、
アメリカの利害のためにおいて発するならば何らわれわれは
発言すべきことではないけれ
ども、万国通商のその論理を破ってなさるならば、私は、
日本としては
英国と同じ
態度に立つべきではなかろうかと思う。しかも、
日本とキューバとの
関係は、先ほど申し上げましたように、砂糎の
貿易においては二百億円をこえる大きな
貿易相手である。しかも両国の間には友好通商条約が結ばれておる。
従って、ここにお尋ねいたしたいことは、
アメリカは
世界諸国に対して、キューバと
貿易をするものに対して具体的にどういう妨害を加え、干渉を加えようと通牒を発したか、そういう通牒はどういう経路を経て外務省に通達されておるか、そしてまた、それに対して外務省当局はどういう見識ある
態度をとっておられるか、また、これに対する
英国その他の反響について詳細にお調べになって、そして自主的
態度をもって臨まれておられるかどうか、そういうことにつきましてまず御
報告を求めたいと思います。