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1962-10-15 第41回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年十月十五日(月曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 菅  太郎君 理事 正示啓次郎君    理事 松本 俊一君 理事 岡田 春夫君    理事 戸叶 里子君 理事 森島 守人君       伊能繁次郎君    宇都宮徳馬君       笹本 一雄君    稻村 隆一君       勝間田清一君    黒田 寿男君       帆足  計君    川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  委員外出席者         防衛庁参事官         (教育局長)  小幡 久男君         外務政務次官  飯塚 定輔君         外務事務官         (アジア局長) 伊関佑二郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (経済局次長) 中山 賀博君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 十月十五日  委員愛知揆一君及び古川丈吉辞任につき、そ  の補欠として笹本一雄君及び伊能繁次郎君が議  長の指名で選任された。 同日  委員伊能繁次郎君及び笹本一雄辞任につき、  その補欠として古川丈吉君及び愛知揆一君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件(日韓及び日中問題等)      ————◇—————
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  大卒外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。大平外務大臣
  3. 大平正芳

    大平国務大臣 私は、去る九月十五日より約三週間にわたりまして、国連の第十七回総会に出席いたしますとともに、パリにおいて開催されました在欧公館長会議に出席し、かつ米英両国並びにEEC加盟各国を歴訪いたしまして、これらの諸国外交首脳者意見を交換して帰って参りました。その概要を御報告申し上げます。  国連におきましては九月二十一日に一般演説を行ないまして、世界が当面する諸問題につきましてわが国見解を表明いたしたのでございますが、その内容につきましてはすでに御存じと思いますので、省略させていただきます。ただ、国連に出席いたしまして感じましたことは、世果平和維持機構としての国連をますます強化しかつ育成して参らなければならないという感を強ういたしたわけであります。国連におきまして具体的な平和を維持して参る措置手ぎわよくとられておるかどうかということにつきましては、もとより評価を異にする見解もあろうかと思いますわけですけれども、しかし、外交首脳国連に集合しておるということ、そして、集合した以上そこでいろいろな接触が持たれておるという現象は、世果の平和がともかくも維持されておる一つの証拠であろうと思うのでございます。しかし、そこに外交首脳が集まるというためには、国連運営が公正でかつ建設的でなければならぬわけでございまして、一部大国の宣伝の場になり終わってしまったのでは国連に人が集まるということも所期できないのではないかと思うのでございます。今回の国連は比較的静かな国連でございますけれども、そこに例外なく各国首脳が集まっておるという事実は注目しなければならぬことだと思います。国連平和維持機構として当初予見されたような機能を十分果たしておりますかどうかということにつきましては、先ほど申しましたように疑問がございますけれども、最近のコンゴ問題の処理にいたしましても西ニューギニアの問題の解決にいたしましても、国連が果たしつつある役割、また、軍縮交渉におきまして国連が鋭意努力しておる役割、さらには、開発十年という計画を掲げまして後進国家援助国連が果たしつつある役割、そういったものは相当高く評価していいのではないかと思っておるわけでございます。そこで、私どもは、日本政府といたしまして、国連育成強化ということを従来から基本方針にしておりますことは間違いでないばかりでなく、今後一そうこの方向努力していかなければなりませんし、国連自体がその機能を果たす上におきましては、その財政力が充実してこれをまかなって参る必要がありますわけでございまして、財政の充実ということにつきましても一般演説において触れたわけでございます。  それから、もう一つ国連感じましたことは、普通在来の二国の外交といいものはそれ自体として大切でございますし、国連がありましても二国間の外交というものは鋭意進めて参らなければならぬことはもとよりでございますけれども国連一つの鏡になりまして、世界世論の鏡になっておるという事実、従って、国連の鏡にみずからの姿を映しまして外交を進めて参る、外交主体態度を見直してみるという意味における国連役割というものも決して看過してはならぬことであろうと感じられたわけでございます。  それから、国連におけるわが代表部の活動でございますけれども、諸先輩のただいままでの営々たる努力によりまして、私どもがひいき目でなく見ましても、国連におけるわが国評価というものは漸次高くなってきておる。従ってまた責任も重くなってきておるということを感じたのでございます。  ニューヨーク滞在中、私はアメリカラスク国務長官会談する機会を持ちました。この会談におきましては、国際情勢並びに日米間の問題について忌憚のない意見を交換いたしたのでございます。  今少し概要を申し上げますと、まず、ベルリン問題につきましては、ラスク長官は、西側基本的権利を堅持しつつ平和的な解決をはかるよう努力を重ねておるということを申されました。また、核実験停止問題につきましては、有効な管理制度を伴う協定の成立努力を重ねておるという経緯について説明がございました。  経済問題につきましては、米国では通商拡大法成立がま近に迫っておりました段階でございましたので、私の方から、通商拡大法の運用、そして、それを基盤として、今育成途上にあるところのEECとの関係をどのように処理するおつもりであるか、そして、その場合にわが国の利益に対して十分の配慮を払うよう要請いたしました。同時に、米国内の対日輸入制限動き、バイ・アメリカン政策展開等に伴いまして、わが国の受けておる問題につきまして善処方を要望いたしました。これに対しましては、先方は、ドル防衛の必要もございまして、個々の問題につき必ずしも日本側の要望に沿い得ないところもあるかもしれけせんけれども日米間の貿易のバランスというものはわれわれも終始念頭に置いて善処したい、それから、米国EECとの交渉につきましては、日本側関心のある問題につきましては十分協議を遂げて参りたいということを申されました。しかしながら、日米貿易経済委員会が御案内のように十二月の初旬に予定されておりますので、具体的に経済問題個々につきましては立ち入ることは差し控えたわけでございます。  それから、沖繩の問題につきましては、ちょうど私が参りましたころ米国国会内の動きが非常に悪い段階にございまして、せっかく池田ケネディ会談を具体化する途上におきましてこういう事態になったことはきわめて遺憾であるし、日本国民感情といたしましてもきわめて不満であるという趣旨のことをるる申し述べ、米国政府がせっかく提案されたものでございますから、その線に沿って鋭意努力を要請いたしたわけでございます。これに対しましては、日本側希望自分もよく承知いたしておるし、上院に対しましては政府としては最善の努力を払うというお約束をされたのでございます。しかしながら、その後の経過は、上院段階におきまして若干の復活が認められておるわけでございますけれども米政府並びに日本側要求から申しますとほど遠い感がすることはきわめて遺憾でございます。しかしながら、政府といたしましては、沖繩住民の福祉と民生安定を重視しておりますので、今後とも、米国政府に働きかけまして、米国と協力いたしまして、その向上に努力いたしたい所存でございます。  日韓問題につきまして先方からお尋ねがございましたので、私から、これまで日韓国交正常化をはばんでおりましたいろいろな原因、そして、その原因を消化して参る上において日本政府としてはどういう考え方で臨んでおるかという最近の交渉状況説明いたしましたところ、ラスク長官より、日韓両国関係調整には米国も多大の関心を持っておる、交渉早期妥結を祈るという意味希望が表明されました。  それから、ヨーロッパの方に参りまして、英国におきましては、主として今最終の仕上げにかかっております日英通商航海条約の問題につきまして、グリーン貿易大臣話し合いをいたしました。ただいま最後に残っておる若干の問題点につきまして、当方の要求をそのまま強く要請いたしてきました。先方からは、十月の自由化のリストを十分拝見した上で考慮しようということでございます。私どもは、この日英通商航海条約の締結ということにつきましては、目下のところ明るい希望を持っておるわけでございます。  それから、ヒース国璽尚書との話は、あの方が英国EEC交渉の立役者であるという意味で、EECに対する英国加盟のスケジュールはどうなっておるか、そして、そこに横たわっている問題点は何かというようなことについて、先方の所見を伺ったわけでございます。私の印象では、英国政府としては命運をかけてEECと取り組んでおるという感じを強くいたしましたし、また、EEC英国加盟するということは、EEC加盟国である他の国々もそのように見ておるのでございまして、EECも全体の運営が開放的にリベラルになっていく大きな役割を果たすものであると思うわけでございますし一ヒース自身も、EEC運営はそうあらねばならぬという決意を表明されておりました。  それから、フランスにおきましては公館長会議に出席いたしまして、最近のEECの内部の動き英国加盟問題、中立国東欧諸国の反応、そういった問題を中心に、有益な意見の交換を行なうことができたのでございます。そうして、フランス、イタリア、ドイツ、ベルギーオランダをごく短時間訪問いたしました。  問題の焦点は、一つは、EEC問題についてこれらの国々一体どういうかまえで臨んでおるかということを確認いたしたかったわけでございます。私の印象では、すべての国が例外なく、EECは閉鎖的なものではない、EEC自体の内部的な理由からもEECは開放的な方向運営さるべきであり、また、そうしなければEEC自体も持たないのだということにおいては意見の一致はあるように見受けられましたし、英国加盟につきましてはもう時間の問題であるというように各国首脳はみな見ておる状況でございました。  それから、ベルリン問題、核停問題等につきましては、私どもが歴訪いたしました国々見解に大きな相違は見られなかったわけでございまして、少なくとも西側権利を守りつつ平和的な解決をはかっていくという基本線には何ら不一致がないと認められたわけでございます。  それから、第二点として、現在、英仏ベネルックス三国は、御案内のように、わが国に対しましてガット三十五条の援用をいたしておる国でございます。私は、これに対しまして、日本はすでにもう国際社会におきましても、御案内のようにIMFのレンダーズ・クラブの一員となりまして、DACを通じて後進国開発に応分の寄与をいたしておる先進国なので、こういう先進日本を差別待遇するというようなことは、これは戦争の結果であったといえども、今なおこういうことが残っておるということは、日本国民のプレスティージにかかわる問題でございますので、われわれとしては看過できないのだということ、それから、日本経済近代化が、政府が予想いたしたより早く進んでおり、賃金水準もこのように向上しておる段階におきまして、なお依然としてこういう空気があるということは、何としてもフェアでないんだということを極力訴えて参りました。幸いに英国日英通商航海条約におきましては三十五条の援用を撤回するという基本方針に踏み切ってくれておりますし、ベネルックス三国も、私がベルギーに参りましたときに、閣議で援用を撤回するということの前提に立って対日交渉を始めるという決意をしていただきました。それを同時にEECにも通告し、オランダにも通告していただいたわけでございまして、その前提に立って今対日交渉が行なわれておるわけでございます。従って、問題は、フランスがまだ公式に援用撤回方向に踏み切られていないわけでございますが、しかし、こういった空気フランスに伝えましたところ、相当ショッキングなことであるという印象を私は受けたのでございます。しかし、問題は、対日三十五条援用が撤回されましても、まだ依然として一部の商品につきまして輸入制限輸入規制ということが残ることは、当面やむを得ないことでございます。私どもの目標は、ともかく三十五条援用撤回ということ、撤回させて、全部をガット関係に持ち込んで、そこで公正に処理して参る、と同時に、日本の方におきましても、近代化が進みまして、今問題になっておりまする二重構造の解消というようなこともほこを進めまして、それと相待ってできるだけ早く完全な国際貿易における自由を回復いたしたいという念願で努力いたしておるわけでございます。従って、センシティヴ・リスト、セーフ・ガードの問題にいたしましても、われわれとしては、これは無制限に許されて困る、無期限にされて困る、一定の期間をどうしても置いてもらわなければならぬということを交渉の超重点にいたして努力いたしておるわけでございます。方向といたしましては、そして、空気といたしましては、漸次わが方に対する認識がやや好転してきておるということは申し上げて差しつかえないかろうと思っております。  あらまし以上のようなことでございますが、私の旅行を通じましての感じといたしまして、特に国会の各位に御報告しておきたいのは、このヨーロッパという国はいわば非常に遠い国という感じでございます。先方は、日本の研究を相当深く専門的にやっておる少数の方はおられますけれども一般方々は比較的関心が薄い地域でございます。しかし、日本側では、西欧文明を摂取するのに相当努力しておりますし、翻訳書もたくさん出ておるということでごごいますけれども、一方、先方におきましては、それほどに関心を持っていないということでございます。問題は、日本関心を持ち、日本好意を寄せる方々が多くなってもらわなければならないと思いますし、そうい観点から見ますと、今まで乏しいながら官民を通じまして欧州と日本との間に接触が保たれてきておりますけれども、これをもう少し活発にして、日本に対する理解を深めていく必要が特に感じられたわけでございます。ただいままで日本に参りました方々は、例外なく、日本に対する理解好意と、それから愛情を持ってくれておるわけでございますし、こういった人的交流は特に私どもも鋭意努めなければならぬ課題であろう、かように思ったわけでございます。  以上、簡単でございますが、今度の旅行を通じましての大要と感想の一端を述べまして、御報告にかえさしていただきます。(拍手)      ————◇—————
  4. 野田武夫

    野田委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。戸叶里子君。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務大臣、どうも御苦労さまでございました。  ただいま、国連総会に出席され、そして西欧諸国を訪問されたいろいろな情勢について御説明があったわけでございますが、私ども、もう少し深く伺いたいと思うような点につきましてはお聞かせ願えなかったような感じがいたすわけでございます。そこで、個々問題等につきましてはいずれ時をあらためてもう少し詳しく伺いたいと思いますが、きょう二、三点だけ伺いまして、あと日韓問題に入っていきたいと思います。  まず最初にお伺いいたしたいことは、外務大臣国連の第十七回の総会で二十一日に日本代表としての演説をおやりになったわけでございますけれども、その演説の中で特に強調された点、そしてこの点はやはり世界各国が納得をしてくれたと思われる、こういうふうに思われる点がおありになったかどうか、あったらその点をお聞かせを願いたいと思います。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 特に国連演説手柄を立てようなんという気持は毛頭私にはございません。今の世界情勢に即して、日本としては、今問題になっておる国連外交上の問題点につきまして、公正な意見を申し述べるということに終始したつもりでございます。先ほど申しましたように、日本意見見解というものは、私どもは比較的傾聴されておるという感じをいたしました。
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私も、別にこういう点で手柄を立ててきてほしかったというようなことは望んでいるわけではございませんが、ただ、国連演説の中で、一体中国問題に対してはどういうふうな態度で臨まれ、そしてまた、舞台裏の話として、この中国問題についてどういうふうな話をされたかということは、国民の最も知りたいところではないかと思います。一体国連中国加盟させるべきであるというようなその努力を多少なりともなすったかどうかということをまずお伺いしたいと思います。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 この前の国会におきましても私から申し上げました通り、この問題は、ひとり東亜の問題ばかりでなく、世界平和全体につながる重要な問題であるということは考えております。従って、長い間続きましたたな上げ措置から、この前の総会におきまして重要事項に指定すべきであるということも提案者になってやりました。そして、今日の時点におきまして、われわれの態度は変改する必要があるかどうかと申しますと、世界世論動きから見まして、それに若干批判的な国もございましょうし、また、逆に、重要事項に指定すべきであるという御見解になった国もあるようでございます。大勢としては、ただいまのところ、世界世論としてこのような措置を変えねばならないという新しい事態は発見されていないと存じましたので、一番最後に、去年の態度を確認するということを申し述べたわけでございます。このことに関連して二、三の国から問い合わせがございましたことは事実でございますが、私どもはこういう態度でございますということをお答えした経緯は二、三ございましたけれども、特別に論議を呼ぶというような状況ではございませんでした。
  9. 戸叶里子

    ○戸叶委員 中国国連加盟問題について特別に変えなければならないような事態は何も発見されなかったからという御答弁でございましたけれども中国国連加盟というものは、そういうふうに、みんなが冷静なといいますか、ほうっておく態度でいては促進されるものではなくして、むしろ日本がこの機にやはり国連加盟を促進すべきであるというその信念のもとに努力をしていかなければならないと思うのでございます。努力をしないで、ただ批判的な立場にばかり立っているというようなあいまいな態度ということであっては、いつまでたってもそれは前進しないと思うのでございます。私どもが非常に心配をいたしますのは、いずれあとから他の委員から触れられると思いますが、中国との貿易問題等も、前進したかと思うと、アメリカの方でハリマン国務次官補がちょっと何か言うと、すぐにそれが後退してしまうというような、こういうふうな情勢の中にあるときでございますので、一体日本外交というものの基本的な考えがどこにあるのかということを私どもは最近疑わざるを得なくなってきたわけでございます。これまでは、一応、アメリカに対しても好意的な立場をとり、そしてまたAAグループ一員であるというような、矛盾したようなことを言われておりましたが、一つのそういうふうな言い方をされておりましたけれども、何らアジア・アフリカのグループ一員であるというような外交政策が少しも出されておらないところに私は問題があるのではないかと思うのでございます。今の外務大臣の御報告の中にも、国連総会に行ってみて考えられたことは、国連の鏡に自分たちの姿を映して見直してみてやる、出直すといいますか、見直した形でやっていく役割日本がしなければならない、こういうような報告をされたわけでございますが、この内容意味するところは一体どういうことであるかを、念のために伺っておきたいと思います。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、二国間で本来外交があるわけでございます。これが在来の型でございましたけれども国連というものがここまで育って参りまして、世界世論をスクリーンにいたしまして、当面の世界平和あるいは経済という問題につきまして発言力を持って参りました段階におきましては、二国間の外交も、もう一度国連という鏡に照らして、双方の当事者が世界世論というものを見きわめた上でやっていくようになったのではなかろうか、そういう意味国連役割は大きいものであるというふうに感じた、こう私は御報告を申し上げたわけです。
  11. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私どもは、中国の問題についてもっともっと積極的に国連の場で働いてほしいということを念願し、また、そういう気持外務大臣にも行っていただいたわけでございますが、どうもそういうふうな積極性が見られなかったということは、まことに残念だと思います。また、植民地政策などに対しましても、日本が積極的な発言をしないでむしろ何かじっくりと考えてやった方がいいのではないか、こういうふうな表現をされているようでございますけれども、そういうことが二国間の外交というものを新しく鏡に照らして国連という場でいろいろ考えなければならないというふうに解釈するとなると、やはり今後においていろいろ大きな問題が残るのではないかというふうに私は考えるわけでございます。これらの問題につきましていずれあらためていろいろお伺いしたいと思いますが、時間もないようですので、日韓の問題に入っていきたいと思います。  先ほど、外務大臣は、ラスク国務長官とのお話し合いの中でいろいろ触れられた問題について説明されました。そして、その一番最後に、日韓問題について先方から尋ねられたので、これまでの日韓間の正常化をはばんだ理由等を話し、日本はこのはばんだ問題等をなくしていくためにはどういうふうな方法でいかなければならないかというようなこと等を最近の情勢とからみ合わせて御説明された、こういうふうに言われたわけでございますが、私どもは私どもなりの解釈はいたしますけれども外務大臣としてラスク国務長官お話しになった、これまで正常化をはばんだ理由というものはどういう点についてお話しになったかを伺いたい。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 御承知の通り李承晩政権は終始対日国交正常化ということに反対の立場であられたということも一つ原因でございますけれども、それと同時に、この国交正常化の問題につきましては、この前の国会におきましても御論議になりましたように、対日請求権という問題が解決されない限り正常化はないのだというお立場先方はとられておったわけでございます。この問題につきましては、池田朴会談で合理的な根拠のあるものにしようじゃないかということで同意を得まして、いろいろ検討を進めて参りましたが、両者見解は依然として非常に隔絶したものであると認められます。私どもは、しかし、こういう状態をいつまでも続けておったのでは正常化ということはなかなか所期できませんので、請求権問題というものを請求権のレベルで論議解明しようといたしましても、これは両者の間に隔絶した間隔があったわけでございますから、なかなかむずかしい、この問題は一つ新しい工夫をしようということで、請求権問題は、こういうことができれば一つ主張しないようにするとか、あるいは解決したものと認めるとかいうような工合にならぬものかというようなことで目下鋭意折衝いたしておるということを申し上げたわけでございます。
  13. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務大臣の慎重な考え深いお言葉はよくわかりますけれども、その内容がときどきわからないような表現をされるので、やはり私どもにわかるようにしていただきたいと思うのです。お話し合いの中で、請求権の問題が非常に日韓会談を促進させる妨げになっていた、そこで、今までのようなレベルでは請求権の解明はできないから、請求権の問題は解決したというようなことを認めた上でできないものかどうかというようなことなども話して、こういうふうなことで話したということですけれども、そこら辺、もう少しはっきりさしていただけないものでしょうか。ちょっとわからないのですけれども……。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 つまり、請求権の具体的なアイテムにつきましては、法的根拠あるいは事実の検証が乏しいものもございますし、推定の要素もたくさん加えなければなりませんので、これではなかなか国民も承知しないし、そういうことは今までの折衝を通じましてはっきりして参りましたので、私どもとしては、問題は国交を正常化することであるということが目的であるとするならば、こういったことをはばんでおりました請求権論争というようなものは、一つ新しい工夫を加えまして、韓国が将来友邦としてりっぱに復興の道を歩んでいかれるということを希求する意味におきまして、すでに欧州におきましても旧宗主国が分離地域に対しましてそれぞれ財政援助をやっておる事例もございますし、私どもとしては、新しい観点に立ちまして、韓国の復興について日本政府の誠意を示すということを実行することによりまして、請求権の問題というものは解決したというような工合にならぬものかというわけで、先方にオファーしてお考えを願っておる、しかし、これについてまだきまっていないのだ、そういうのが今の段階でございますということを申し上げた次第でございます。
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、この委員会でも一応この問題は議論されまして、たとえば、岡田委員が、この平和条約の四条の(a)項に請求権というものは規定されているけれども、無償供与とかあるいは借款という形はここからは出てこないのだというふうに言われましたが、それらのことも含めて、条約では一応請求権解決ということになっているが、それではいつまでも進まないから、条約はある程度ほおかむりをしてもらって、日本と韓国との間の正常化のためには今おっしゃったような形でしていくより仕方がないというような段階である、こういうふうに御説明になったわけでございますね。平和条約の四条の(a)項にあるようなこともあるけれども、それでは進まないから違う形でいくんだということを了解を得た、こういうふうに私ども了解してよろしいわけですか。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 日韓交渉につきましてラスク長官に了解を求めなければならぬ筋合いのものではないのです。今こういうような経過で進んでおるということを、先方の質問に対して答えただけでございます。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は別にラスク長官に了解を求めなければならないなんと思っていないので、外務大臣がそういうことまでアメリカとなぜ話さなければならないかと逆に私どもは考えておるわけですけれども、そういう問題に触れられたので、やはり、日本政府態度としてどういうふうに話されたんだろうという疑問を解決していただきたいと思って伺っておるわけです。今私が伺いましたことは、日本政府態度としてやはり大事なことだと思うのです。平和条約の四条の(a)項にははっきり請求権とあるけれども請求権でなくともこの際は仕方がないのじゃないか、正常化のためにはこの条約を無視しても仕方がないのじゃないかという立場で、やはり正常化に中心を置いて進めていこうとされるわけですか。
  18. 大平正芳

    大平国務大臣 請求権というものはどうでもいいというようなことは、韓国側も私どもも考えておりません。ただ、問題は、今御指摘のように、国交の正常化ということが大事なことであるから、この問題を解決する方式は一つ工夫をこらしてみようじゃないかというのが、今私どもの当面しておる焦点なのでございます。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、その工夫をこらすということは、やはり請求権ということにはこだわらないというふうに了解してよろしいわけですね。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 何か両方とも非常にこだわった問題でございますから、従って、何か工夫はないものかという気持で今努力いたしておるわけでござ  います。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今までいろいろ議論されましたけれども、核心に触れての議論はしていないと私は思うのです。一体請求権ということで話し合いをしておるのではなかなか進まないから、請求権ということにこだわらないわけではないけれども、そういうことを入れながら何か工夫をこらしていくんだ、こういうことでございますか。請求権ということも内容に含めながら、今出されているいわゆる無償供与とか借款とかいうものの中には請求権も含まっているということなんですか。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 つまり、請求権というものを分解しましていろいろな請求項目につきまして詰めておったのでは、請求権問題の解決に実りある結果がなかなか得られないというのが、今日までの折衝の経緯でございます。従って、請求権問題を解決するために新しい工夫はないものかというのが、今の時点における私どもの苦心しておるところでございます。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 請求権問題を解決するために新しい工夫はないものかというふうに苦労をされておる、それはわかったのですが、そうすると、請求権問題を解決するのにということになると、やはり、請求権というものが、今度のでき上がってくる全額の中にはある部分占めるわけでございますか。それとも占めないわけですか。もっとふくらんだものになるわけですか。請求権というもので一応問題がこじれておるわけですね。先方請求権を固執しておるわけです。それじゃ困るから何かの工夫はないかということで今前進しょうとしておられる。しかも、講和条約の四条の(a)項では、はっきりと請求権ということが書いてあるわけです。それ以外のことは書いてないわけです。ところが、それを、工夫するという形で、請求権をも含めての無償供与なりあるいは借款ということなんですか。請求権というものはこちらの方に置いて、新しい形でまとめ上げていこうかということなんでしょうか。その辺の関係がどうもはっきりしないのです。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 請求権問題というのが日韓交渉における一つの非常に骨のある問題として厄介な問題であるということは御承知の通りです。それで、これを解決することが日韓国交正常化の道を開くゆえんのものである。ところが、請求権自体の中まで入りまして、いろいろな具体的な検証を遂げておったのでは、双方の懸隔がございますので、何か新しい工夫をして、請求権問題は非常に大事な問題だが、一つこういうことで解決したということにならぬかという、ものは相談だがというのが私ども気持なんです。
  25. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、そのものずばりで伺いますが、この講和条約の四条の(a)項にいう請求権というものは、そのままの形ではまずいから、何かそれをごまかした形でいくというふうにきめていこうということなんですね。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 ごまかそうとかなんとかいう気持は毛頭ないのです。非常に大事な問題でございますから慎重にやっているわけでございますが、請求権問題は解決されなければならない。今度もし国交正常化ということになりますれば、請求権問題はちゃんと始末がついたことにしないと申しわけないわけでございますから、そういうことで、請求権問題はこれで解決したという格好にどうして持っていくかということが最大の関心事であるし、私どもも苦心いたしておるところでございます。
  27. 戸叶里子

    ○戸叶委員 その苦心をしているとおっしゃることはわかるのですけれども、その内容はどうしても私たちわからないのです。結局、今言われているように、無償供与が一億五千万ドル、これを二億ドルにするとか、二億五千万ドルにしてまとめるとかなんとか、いろいろ伝えられておりますけれども、そういうふうに伸びたり縮んだりするということは、結局この講和条約の四条の(a)項に基づいた形での請求権解決ということじゃないから、私はそこにいろいろな問題が出てくると思うのです。もし法律的なものに基づいての解決であるならば、そういう問題は起きてくるはずがないと思うのです。いかに工夫をされるにしても、こういうふうな平和条約というものを無視した形でいくというようなやり方は、私は今後において非常に大きな問題を残すと思うのです。ですから、そういう点から考えても、私は、今の大平外務大臣の答弁では、日韓会談がまとまったとしても、これは大へんな問題になるのじゃないかと思うのです。この点を私はもう少しはっきり伺いたいのです。  それでは、この点はどうなんですか。今度ある程度の総額がまとまる、まとまった中には、まあ数字が出てきますが、請求権の問題も解決をいたしました、経済の復興のためにも協力をして上げましょう、それから借款もその中には含めましょう、こういうふうな形で、何というのですか、ごまかすという言葉を使っては悪いのですけれども、体よくふっくらとやっていこうという腹なんですね。その点だけを伺いたい。そういうふうな立場をとっておられるから、三億ドルが四億ドルになるとかなんとか、いろいろな金額が出てくるのじゃないかと思うのですけれども、この点をもう一度伺います。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 平和条約に請求権がうたわれてありますことは事実でありますし、それは解決しなければならぬことであります。従って、解決しなければならぬことであるがゆえにどうして解決するかということで工夫しておるというわけでございます。決して、ごまかそうとか、講和条約に何するとか、そういう気持では毛頭ないわけでございます。
  29. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは、今のような御答弁だとするならば、どうして一億五千万ドルの無償とかいう数字が出てくるのですか。法的根拠に基づいたものだけを支払うということを池田さんと朴会談ではっきり認めているのじゃないですか。そうして、そのときの金額というものは、少なくとも一億五千万ドルという金額ではなかったはずでございます。ところが、急にそういうふうに伸びてきたということは、やはりそこに大きな問題があるのじゃないですか。今の大平大臣のような答弁をされると、そう言わざるを得ないと思うのです。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 金額という問題は、まだ私どもも折衝中でございまするし、ここで今の段階で申し上げるわけに参りませんが、基本は、先ほどもるる申し上げました通り請求権という問題が最大の問題である。そして、それは、御指摘のように、平和条約にもうたわれておることでございます。従って、これをきちんと処理しないといけない。これが至上の命令でございまするから、これをどう解きほぐしていくかということについて新しい工夫を加えております。すべての問題は請求権問題の解決ということに通じておるわけでございます。そういう考え方で私どもは進んで苦心いたしておるわけでございます。決して、これをごまかそうとかたな上げしょうとか、講和条約に違反してまでこうやるんだ、そういうつもりは毛頭ございません。大事な問題でありますがゆえに、慎重に、しかもそれはどうしたら具体的な解決ができるかという点に苦心の焦点があるわけでございます。
  31. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はこれ以上いろいろ言いませんけれども、ただ、問題は、講和条約違反ではないとおっしゃいますけれども、あるまとまった線を出して、これで請求権の問題も解決したことにしようじゃないかというようなことで工夫しているんだという先ほどの御答弁から見ますと、そういうふうな含みのあることは平和条約四条の(a)項には書いてございません。はっきり書いてあることは請求権ということでございます。これが条約違反でないということは、私は少しおかしいと思うので、大卒外務大臣の御答弁を伺えば伺うほど、ますます何か平和条約に違反というふうになってくると思います。この問題をもう少しつきたいのですが、そうしておりますと時間がなくなりますので、先に参ります。  そこで、先ほど、アメリカラスク長官話し合いをしていたが、この日韓問題に対しても非常に関心を示して、早期に妥結した方がいいだろうというような意味の表明をされたという御報告があったわけでございますが、そういうふうに解釈してよろしゅうございますね。
  32. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう希望を持っておられます。
  33. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そこで、伺いたいと思うのですが、アメリカ日本に対して、韓国との会談早期妥結しろというようなことを願っている。大平外務大臣でさえもそれをはっきり感じてこられたわけです。ところが、アメリカ側が韓国に対してどういう態度を持っておるかといいますと、韓国で非常に多くの問題を駐留軍がいるために起こしているわけでございまして、婦女子が非常に迷惑をこうむったとか、ちょっとしたことで裁判にしようとしてもなかなかそれではうまくいかないというような問題等で、米韓の行政協定というものを急いでやってほしいということは、韓国からアメリカに要望していることでございます。この点は外務大臣も御存じだと思うわけです。ところが、アメリカ側のこれに対する答弁はどう言うかといいますと、来年民政移管をするのだから、民政移管してからこの問題を解決してもいいじゃないか、行政協定は来年民政移管になってからでいいのだというふうな形で、韓国との米韓の行政協定さえも結ぼうとしておらないわけです。一方日本においては民政移管の前に日韓会談を進めろと言いながら、自分たち態度はそういうふうな態度をとっているわけでございます。なぜ、日本だけが、アメリカのこういう態度にもかかわらず、たとい今の皆さんの立場としても、——私どもは、この南北朝鮮の統一ということが行なわれないうちに、これをじゃまするような形には反対でございますけれども、なぜ、今の自民党の立場としても、この民政移管というようなことをも見ずに急いで日韓会談を進めようとしているのか、アメリカでさえもこういう態度をとっているのに、日本がなぜ急がなければならないのか、この点を伺いたいと思います。
  34. 大平正芳

    大平国務大臣 日韓交渉は、御承知のように、十年も続いているわけでございまして、われわれにとって最大の懸案になっているわけでございます。私も、外務省へ参りましてからこの懸案に取っ組みまして、誠意をもって努力しなければならないということで、今日まで一貫して努力してきているわけでございまして、この基本方針はすでに政府におきましても決まっておるわけでございます。韓国政府が御承知のように軍事的な暫定政権である、そして明年には民政移管が予定されておということでございまして、その事実は率直にそのまま私ども見ておるわけでございますが、今日の韓国政権は、日韓正常化にきわめて熱心でございますし、国内にもいろいろな事情がございましょうけれども、鋭意促進に当たられておるわけでございます。これを相手といたしまして私どもが誠意をもって努力を続けておるわけでございまして、それ以上のものではございません。すべての外交案件がそうでございますように、私どもも、終始相手の立場を尊重し、相手の意思を信頼いたしまして、誠意をもって交渉を続けるべきものだと心得ておるわけでございます。     —————————————
  35. 野田武夫

    野田委員長 ただいま、衆議院へ御招待しましたチリ−共和国ハコボ・シャウルソン下院議長がお見えになりました。御紹介申し上げます。   〔拍手〕     —————————————
  36. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は、今外務大臣が答弁されたようなことを聞いているわけでなくて、今アメリカでさえも非常に慎重な態度でもって協定なり何なりを結ぶのに考えているのに、しかも来年の民政移管の後にしたいという態度をとっているのに、日本だけで会談を進めるのはおかしいじゃないかということを質問したわけでございます。それに対して、大平さんは、日韓関係がどうとかこうとかと、いろいろおっしゃったのですけれども、そういうことを私は伺っているのではなくて、それじゃ、アメリカも、例えば韓国からそういう要望があったから、民政移管後なんていうことは言わないでやった方がいいのじゃないか、やるべきじゃないかと思うのですが、その点はどうなんですか。
  37. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカと韓国の問題につきまして私がとやかくコメントすることは適当じゃないと思います。
  38. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私も別にアメリカと韓国の問題をどうこう言うわけじゃないのですが、日本との比較においてそういうことを申し上げたわけなんです。日本には早くやれと言って、自分たちの方は、情勢を見てやらないとどんなふうになってくるかわからないのだ、こういう立場で、日本を試金石に使うというのは少しおかしいじゃないか。こういう点はやはり慎重に考えていただきたい。日本だけがやってみなさい、私の方は、そっと見ていて、成功するかしないか見ていますよ、そういう形でやられるということは、非常に不服だ、非常に私たちは残念だと思うのです。その点、大平大臣、何ともお思いになりませんか。
  39. 大平正芳

    大平国務大臣 日韓交渉の問題は、今日出て参った問題じゃないので、十年間もの長い交渉でございます。私は、その流れにさおさして、今当面お預かりしておるという立場なのでございます。新しく出てきた問題ではないのです。  それから、アメリカ側がどのような態度をとりますか、そのことは、先ほど申しましたように、私がコメントすべきじゃないと思います。しかし、アメリカ側が日韓正常化希望しておるという希望を持たれておっても、別に悪いことではないと思います。
  40. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私の伺ったのは、さっき意見を申し上げましたように、アメリカ日本とだけ急がしておいて様子を見ているという態度に対して、私どもは非常に不満である、こういう点も外務大臣はよくお考えになって慎重にしていただかなければ困るということを申し上げて、この問題だけで時間をとっているわけにいきませんから、次に進みたいと思います。  それでは、次の問題といたしまして、日韓会談のまとまる条件として、李ラインの問題をあげているわけでございます。それはもちろん当然のことでございますが、その前に私どもが言いたいことは、最近漁船の拿捕が非常に多くなっていると思います。新聞の報道だけでも、三日と十三日に拿捕されたということが報道され、そうして、十三日には、逃げる人をつかまえて殴打して、そうしてピストルの何か銃の手が折れたとかなんとかというようなことまで報道されているわけでございますけれども一体、なぜ今日韓会談の進められている最中にこういうことをするのでしょうか。この分析はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。こういうふうなことをすることによって日韓会談自分たちに有利にしようとする、人質を取って日韓会談を有利に展開しょうというふうにでも考えているのでしょうか。この点の分析を外務大臣としてここで表明していただきたいと思います。
  41. 大平正芳

    大平国務大臣 今仰せの通り交渉が進行中にそういう事件が間々惹起するということは遺憾なことでございまして、私どもといたしましても、そのつど韓国側に抗議いたしまして、善処を求めておるわけでございます。
  42. 戸叶里子

    ○戸叶委員 抗議を申し込むのは、やっていらっしゃると思いますが、これは当然のことだと思います。でも、そんなことではやめられずに、向こうの方が相変わらず拿捕して乱暴しているのですから、もっと何らかの手を打たなければならないと思うのです。たとえば、日本としては、会談の中で、そういうことをするならもう会談をやめましょうぐらいの強い態度に出られないのでしょうか。この点をお伺いいたします。
  43. 大平正芳

    大平国務大臣 国交正常化ができないためにいろいろなことが起きていますので、そういうことのないようにするためには、根本的にも正常化をできるだけ早く急がなければならぬものだと心得てやっております。
  44. 戸叶里子

    ○戸叶委員 国交正常化ができないからいろいろなことが起きるというふうな考え方だから、足元を見すかされると思うのです。こういうふうなことをやるような野蛮な国とは自分たちはとても国交正常化ができないという、そういう態度でなぜ会談に向かうことができないのでしょうか。そうじゃないから、向こうは幾らでも拿捕してくるのじゃないですか。一体会談の中でそのくらいのことは発言していただいているのでしょうかどうでしょうか。この点をまず伺いたいと思います。  それから、時間がないのでその次に進みますが、もう一つお伺いしたいことは、李ライン問題の解決というのは、漁業協定を結んで、そうして、拿捕されたりしないで、魚族の保護というようなことを話し合うんだというように、これまでの国会答弁ではされておりますけれども、李ライン問題の解決というのは、一九五二年の一月十八日に李承晩が宣言した李ライン宣言というものを取り消すんだ、こういうことだと思いますが、この点はどうなっておるのでしょうか。
  45. 大平正芳

    大平国務大臣 前段の方は、交渉のつど強く私どもの方から、今先生が言われたようなことにつきまして申し入れをいたしております。  それから、第二点の漁業問題につきましては、今御指摘の通り、私どもも、漁業協定、李ラインの撤廃を前提といたしまして、魚族保護という建前に立ちまして、日韓双方の漁業者が最大限の利益を受けるようにという基本の精神にのっとって解決すべくいたしておるわけでございます。
  46. 戸叶里子

    ○戸叶委員 李ライン宣言の撤廃ということが条件だというので、それでは、そうしなければならないと思っております。  竹島問題につきましては、国際司法裁判所に提訴して、それに応訴する、そうなれば半年ぐらいで問題は解決しますというふうに外務大臣はこの前私に答弁されております。ところが、この国際司法裁判所に提訴する場合の合意というのには二通りあると思います。その一つは、単なる原則的な合意であるか、それから、もう一つの点は、提訴に対して合意書をつくって、これに対する合意であるか、両方あると思うわけです。ただ単なる合意ということはできると思います。提訴いたしますよ、では応訴しましょう、というだけならできると思います。ところが、実際にやる場合にあたって、こういうふうな内容で提訴しますけれども、それに応訴するかどうかということを話し合うと、なかなか応じてこないような場合があるのじゃないか。このいい例は、アラフラ海の真珠貝の採取にあたってオーストラリアに対して日本が国際司法裁判所に提訴をする、応訴をしますという原則的なものは一致してもその内容を見て、それに応じてきておりません。これと同じような形がやはり内容の合意ということになると出てくるのじゃないかと思いますが、この点は一体どういうふうにお考えになって解決をしようとされておりますか。
  47. 中川融

    ○中川説明員 ただいま御指摘の通り、国際司法裁判所に提訴する場合に、合意書というものをつくって、それでその提訴の条件等お互いにきめて提訴するということが通常のやり方であるわけでございます。従って、韓国側との間にこの国際司法裁判所提訴の問題について合意するという場合には、必ず国際司法裁判所に提訴するのだということがはっきりするような形で合意を取りつけることが必要であろう、かように考えております。
  48. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、解決という場合には、今のアラフラ海の真珠貝採取のときに起こしているような問題、今日本が提訴しても向こうが応訴してこない、そういうふうなことがないということが前提になっての合意書に対する応訴である、そこまで話し合うのだというふうに了解してよろしゅうございますか。
  49. 中川融

    ○中川説明員 具体的の合意書まで合意する、一字一句まで日韓間で合意するということは必ずしも必要でないと思いますけれども、重要な要点、要綱と申しますか、そういうものについては、やはりその条件について合意することが必要であろうと考えております。
  50. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そういうふうに簡単におっしゃいますけれども、なかなかこの問題は重大な問題であろうと思うのです。日本側の書き方によって、向こうが応訴するかどうかということは問題になると思いますけれども、もし日本が簡単にこれは国際司法裁判所の判断にまかせましょうということになれば、応訴してくるでしょう。けれども日本の古来の固有の領土であるということで主張すれば、向こうもうんと言うかどうかわからないと思うのですけれども、その点、解決の方法というものは、一体日本はあくまでも竹島は日本のものであるという主張に立っての提訴であるかどうかということを伺いたいのが一点です。  それから、時間がないから続けて伺います。もう一つは、だいぶ宣伝されておりますが、金情報部長が二十日に来られると日韓会談はぐっと前進するのじゃないか、大体まとまる方向へいくのじゃないかということが報道されております。金情報部長が来られるのはMRA大会に出席するためアメリカへ行く途中であるというふうに言われておりますが、何か会談をまとめるに都合のいいような内容的なものを持ってくるということになると、ある程度のそこに日本との話し合いをする正式代表という形にもなるのじゃないか。ついでだけではその話は進まないのじゃないかと思いますけれども、そのときの身分的な問題、あるいは何か話し合いを前進させるようなものを持ってこられるであろうかどうか、こういうような点もあわせてお伺いしたいと思います。
  51. 大平正芳

    大平国務大臣 提訴の問題は、私つまびらかにいたしませんので、条約局長から御説明願います。  それから、金情報部長の来日が伝えられまして、お見えになりましたら、私もお目にかかる予定にいたしておりますが、どういうことを御提議されるのか、まだ会ってみなければわからないのであります。
  52. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私まだ質問がありますけれども、時間がないようですから、これで次に譲りたいと思います。
  53. 野田武夫

    野田委員長 森島守人君。
  54. 森島守人

    ○森島委員 日韓問題については、今、戸叶委員との応酬において、外務大臣は非常に慎重なる表現方法をとっておられたと思うのですが、私は、この点につきましては、前国会における池田総理大臣の所信表明演説を承りますと、日韓問題についてはきわめて上手な言い回し方をしておると思う。諸懸案の解決を通じて正常化をはかる、通じてというお言葉を使っておられるのですが、これは一体何を意味しているのか、もう少し私は具体的に承りたいと思います。
  55. 大平正芳

    大平国務大臣 諸懸案の解決がなければ正常化はあり得ないという考え方であります。
  56. 森島守人

    ○森島委員 それでは、もう一つ伺いますが、諸懸案が完全に解決した後で国交の正常化をはかる、こういう趣旨と承って差しつかえございませんか。
  57. 大平正芳

    大平国務大臣 同時に諸懸案が解決されるということになろうかと思います。
  58. 森島守人

    ○森島委員 従来事務当局からもお話があったことがございますけれども、諸懸案解決の見通しがついたら正常化をはかることもあり得るというのが事務当局の答弁として再三行なわれたことは御承知の通りだと思う。伊関君もその通りおっしゃったと私は信じておりますが、そこで、私がお伺いしたいのは、正常化をするということになりますと、一体どういう形式で正常化をおはかりになるのか。この点につきましては目下研究中だというのが従来外務当局の説明だったのです。その点について、その後何らか構想をめぐらされたことがあるかないか、この点明らかにしていただきたいと思います。
  59. 大平正芳

    大平国務大臣 目下検討中でございます。
  60. 森島守人

    ○森島委員 そういう御答弁しかないだろうと思ったので、私はそれ以上つきませんが、たとえば、宣言方式とか、あるいは条約の締結とか、はなはだしいのになりますと、大使交換だけでも正常化ができるのだということも事務当局としては御説明になっている。その辺は、非常にお急ぎになっているのなら、もうすでに相当の成案があってしかるべきだと私は思う。それも検討中ということでございますか。その辺、もう少し、はっきりした御答弁でなくてもいいですから、大体どういう方向で考えておるかということくらいはこの席で明らかにしていただくことが、私は国会を通じて日本外交を進める道だと信じておりますが、この点に対する御所感を伺いたい。
  61. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのように大使交換だけして云々というようなことは毛頭考えておりません。私どもといたしましては、先ほど申しましたように、今問題になっている諸懸案を同時に解決するということ、また、それを保障するに足る措置が同時に行なわれなければ、国交の正常化ということに踏み切るわけには参らぬと思います。
  62. 森島守人

    ○森島委員 大使交換だけということはやらぬ、こう明確に御答弁になった点、私は非常に満足に思います。  もう一つお伺いしたいのは、諸懸案が解決いたしますと、どういう格好をとるか私は知りませんが、国民権利、義務に影響を及ぼすことは当然である。これと一緒になって国交正常化をはかると言われる以上は、やはり、条約のような形式をとって、国会の審議に付することが私は絶対に必要だと信じております。ことに、十年間も交渉を続けた重要案件だとおっしゃるのですから、国会の審議に付せないで、ただ行政的な取り扱いだけで国交の正常化をはかるというふうなやり方はやめていただきたいというのが私たちの立場でございますが、その通りお取り計らいがあるものと期待しておりますが、その通りで間違いございませんかどうですか。
  63. 大平正芳

    大平国務大臣 その通りと心得ております。
  64. 森島守人

    ○森島委員 それじゃ、国会の審議に付するという御確約だけは得たものと私確信して議論を進めたいと思います。  もう一点私が伺いたいのは、これは総理に来ていただく方がいいのですが、昨年の一月の江田書記長の代表質問の際に、江田書記長は借款を許すのか許さないのか、与えるのか与えないのかという質問をいたしましたら、総理は、借款は与えませんということを明白に答弁しておられる。しかるに、このことが予算委員会の問題になりました際に、総理は、これを取っ違えて、国交が正常化した上は借款を与えることもあり得るということを言っておられる。しかし、江田書記長の質問は、今度行なわれておる交渉に関連して借款を与えるのか与えないのかという点を明確に聞いておる。それを先生故意に取っ違えて、正常化した上は借款を与えるのは当然じゃないか、東南アジア等もその通りだというふうな答弁をしておられますが、私は、これは非常に重要な点だと思います。今度の交渉に関連して、長期か短期か知りませんが、有償か無償かも知りませんが、韓国に借款を与える、そうして請求権問題をそれでもって取りつくろうというのが政府の企図しておる意図じゃないか、こういうふうに私は信じておりますが、借款を与える意図があるかないか、総理のその答弁で間違いがないかあるか、一つ明白に御答弁を願いたい。
  65. 大平正芳

    大平国務大臣 世上いろいろ借款の問題が論議されておりますけれども、私ども、少なくとも、借款ということは、国交正常化の条件ではないと思います。従いまして、この問題は、政府におきましても、民間におきましても、将来韓国との間に経済交渉を通じましてそういう事態があり得るかもしれませんけれども、少なくとも、今の段階における交渉におきまして、そのことは国交正常化への条件であるというような形で取り上げるべき性質のものではないと考えています。
  66. 森島守人

    ○森島委員 はなはだあいまいな御答弁で、具体的にはどういうふうにやるのかという点になりますと、私理解できないのですが、借款を別にやって、それと一緒に交渉解決したということにやるのじゃないかと私は疑っておるのですが、条件ではないけれども、事実上条件になることは、これは当然だと思うのです。その点については、私もっと明確な御答弁を願いたいのですが、時間もありませんので、先へ一、二問進めてみたいと思います。  松村さんの中華人民共和国訪問、それから高碕さんの訪問等については、ここにおる委員長も松本君も同行されるようですが、新聞の報ずるところは非常に空で取りつかみのないような報道しか出ておりませんが、私は、必然、陳毅それから周恩来等が言っております通り、中共としては、政治の三原則、貿易の三原則、政経不可分の点等を固執しておるものと考えております。それに間違いないと思っております。松村さんのごときは、しいてこの点に触れないで、何とかいい方法をというふうに御検討になっておるように私聞いておりますけれども、この政治の三原則、貿易の三原則、政経不可分の点につきましては、私は政府においても十分考え得る余地があるのじゃないかというふうに考えておりますが、政府としては、これらの原則等についていかなるお考えを持っておられるか、私承り得れば幸いに存じます。
  67. 大平正芳

    大平国務大臣 共産圏といえども貿易の機会が開拓可能であれば、それは開拓していくべきものと心得ているわけでございまして、私どもは、既定の政府方針にのっとりまして、政治と経済は別なものと心得て、経済交流は可能な限り進めていこう、そういう気持で対処して参りたいと思います。
  68. 森島守人

    ○森島委員 そこで政経不可分と申しましても、これはものの見方の問題であって、政府の考え方一つによって、政経可分にもなれば不可分にもなると私は思っておる。そこにやはり日中問題を解決するかぎがあるんじゃないかというふうに私は感じておる。そうはっきり、政治は政治、経済経済というふうに区別して考えるところに前進をはばむゆえんがあるんじゃないか。たとえば、アメリカのごときは、国交はまだ回復しておりません。しかし、ジュネーブにおいて米国と中華人民共和国との大使の間において引き続いて交渉をやっておることも事実なんです。松村さんとか、あるいは高碕さんとか、政府の意図を受けて行かれる行かれぬは別といたしまして、政府としても、池田総理が政権をとられました後の演説において、日中問題は非常に接触をやるべき問題だと言って、前向きの姿勢をとっておられたのですから、政府としてもいま一歩進んで中華人民共和国との間に交渉をお始めになってはどうか。文化交流にしても、経済問題にしても、話し合いをすることは政治と経済が一緒になっておるのですから、そういう見解のもとにお話し合いを始められる意図があるかないか。この点もお伺いしたい。
  69. 大平正芳

    大平国務大臣 今当面しておる問題は、松村先生の訪中、そのあと経済の交流につきましてどのように進めて参るかという問題でございまして、私どもは、先ほど申しましたように、この問題につきまして、政府はどこまで踏み切れるか、どれだけが可能でどれが不可能か、そういった点をちゃんと政府態度としてはしておくべきだと思いますが、本体といたしましては、あくまでもこれは民間の交渉でございまして、政府関係して参る部面につきまして政府態度ははっきりさしておきたい、こういう今態度でおります。
  70. 森島守人

    ○森島委員 私は、もっと直接に政府間で話し合いされる方が誤解を避けて一番いい方法だと思っておりますが、私、事務当局に一つお伺いしたいのです。中華人民共和国を承認しないで現に通商協定を結んでおったり、あるいは通商代表部を置いておるという国はどこどこでございますか。お調べがありましたらお示しを願いたい。私は、フランスがそうだろうと思います。
  71. 中川融

    ○中川説明員 中共につきまして経済代表部を置いている国があるかどうか、私、実は承知いたしておりません。しかし、中共ではございませんが北ベトナムにつきましては、数カ国がここに通商代表部を置いておる、また、北ベトナムから通商代表部のようなものを出しておる、あるいは、東ドイツとの間に、東ドイツを承認はしないながらも通商代表部を置くというような例があることは承知しておるのでございますが、中共につきましては、私、遺憾ながらそういう事実を承知しておりません。従って、今のところないのじゃないかと思いますが、詳細には存じません。
  72. 森島守人

    ○森島委員 私は、今の条約局長の答弁には満足しない。いやしくも中国問題を真剣に取り上げるという段階に差しかかっておるこの際、特に松村さんや高碕さんが行って実質的に何らかの取りきめをしようというやさきに、事務当局としてそれくらいの調査ができておらぬのでは、私は非常な怠慢だと思う。お帰りになったらお調べになって、この席へ一覧表を出していただきたいということを要求しておきます。  私は、時間がありませんからこの程度でやめまして、また次回に機会がありましたら質問を続けさしていただきます。
  73. 野田武夫

    野田委員長 二時三十分より再開することとし、休憩いたします。    午後零時一分休憩      ————◇—————    午後二時三十四分開議
  74. 菅太郎

    ○菅委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長所用のため、理事の私が委員長の職務を行ないます。  質疑を続行いたします。帆足計君。
  75. 帆足計

    ○帆足委員 私は、本来ならば日韓会談並びに中日貿易促進の方策につきましてさらに具体的に政府に問いただしたいこともあるのでありますけれども、時間が限られておりますから、きょうは、主としてキューバとの通商問題並びに沖繩経済援助の問題についてお尋ねし、また、お尋ねするだけでなくて、われわれの要望をも述べておきたいと思います。  日本は海の国、船の国でありますから、貿易の問題は党派を越えた国民共通の重要案件でございます。インフレーションと申しましても、物価騰貴といいましても、この国は狭い国土に一億近くの国民が生きていかなければなりません。幸いにして、古来豊葦原瑞穂の国と言われておりまして、湿気が強いことは日常生活には重荷でありますが、また、台風も、これが対策が、治山治水のことが必要でありますけれども、台風と湿度はわが国に豊かな植物の繁栄をもたらしまして、食生活におきましてはまれに見るほど恵まれた国でございます。従いまして、この国でインフレーションといえば、結局、原材料の輸入がむずかしくなること、すなわち、外国為替が逼迫することに問題があるわけでありまして、貿易の問題が国民生活にとって超党派的課題であるというゆえんのものは、ここにあるのでございます。たとえば、ホウレンソウのインフレーションとかてんぷらのインフレーションとかいうことは、一時の干ばつでホウレンソウが育たないというようなときはありますけれども、まず平年の天候の状況ではそういう心配はない。けれども一たび重油が欠乏し、ガソリンが欠乏する、すなわち外貨が不足してそういう手当が困難になるならば、漁船は自由に動くことができず、トラックの燃料はやみ相場となって、初めて野菜が高くなり、魚の値が高くなって、そうして、おすしのインフレーション、てんぷらのインフレーション、物価騰貴となって国民の生活に響くということになるのでございますから、重油やガソリンの輸入ということがいかに重要なことであるか。それと同じように、台所では、米、みそ、しょうゆと言いますけれども、大豆や砂糖、塩の確保ということがいかに重要であるかは、戦時中痛感した通りです。しかし、その中で、塩は、数量は大きいですけれども、値段はわずかのものでございますから、戦時中の海運の封鎖というようなことがない限り、わずかの外貨で買うことができますから、それは大した問題でありませんけれども、砂糖は、とても値段の高いもので、貴重なものでございますから、やはりゆるがせにすることはできません。  キューバとの貿易につきましては、国民方々はキューバのことはあまり御存じないが、キューバと日本の砂糖の取引というものは非常に大きな要素を占めておる。過去においては日本の砂糖輸入総額の過半を占めていた。今ずっと減っておりましてもなおかつ三割なり三割数分を占めておる、非常に大きな日本貿易相手の一つでございます。キューバの砂糖は、御承知のごとく、規格も統一され、たとえば台湾の砂糖が一年、二年、三年生ぐらいだとすれば、キューバの砂糖は、気候に恵まれて、五年、六年、長きにわたっては七、八年も多年生の砂糖ができるわけでございます。  カリブ海の空は紺碧に晴れわたって、旅行をしますと、まるで紫外線が金砂子のように落ちてきまして、砂糖はキューバでは一人当たりの産額が一トンをこえております。後進国の中ではキューバは最高の生活水準の国でありまして、クリスマス・ケーキのような豊かな国であります。これがバチスタという無学な一軍閥のために押えられて長い苦しみをなめました。古くは、スペインのきわめて中世期的な封建的土地所有のために苦しめられ、それをただ漫然とアメリカがやすきについて安易に引き継ぎまして、アメリカの属国としてさらに今日に至りましたのが、だれが見ましても李承晩をはだしで逃げさすほどの悪政を行なったところのバチスタはついに追放されて、そのあとアメリカがこれに対する合理的、理性的な理解を持てば、あるいはキューバはメキシコのように保守政党の側から見ましても中道の道を歩むという体制でとどまったかもしれませんけれども、このキューバに起こりました、インドの革命、インドネシアの革命、またはナセルのアラブ連合の革命と同じような自然発生的な、すなわち植民地支配から離脱して民族国家をつくろうという、だれが見ても理解しやすいこの革命に対して残念ながらアメリカ政府当局の一部が十分な理解を持っていなかった。  ノーマン・メーラーという有名な作家が、キューバ音楽も理解せずにキューバの対策を立てたところに若いケネディ大統領の失策があった、こう論じておりますが、御承知のように、キューバはマンボ、パチャンガ、チャチャチャと、ダンスの本場でありまして、このくらいのことを多くの日本の青年は知っておりますが、その日本の使う砂糖の大部分が少なからざる部分がキューバに依存しておる。キューバ糖なくしてお汁粉を安心して飲むことはできない。キューバ貿易を粗末にするならば、やがて問題はお汁粉に響きキューバ貿易が女性のやさしき心理に重大なる影響を与えて、次の総選挙においてはこのキューバ貿易を粗末にした議員は女性の票を得ることは困難であると私は思う。このくらい重要な貿易相手の国の一つです。  バチスタにいじめられていたこのクリスマス・ケーキのような愛らしい国が、バチスタの悪政に反逆して、たとえて言えば乳腺炎を起こした。その乳腺炎に対して、乳腺炎というのは放射性の病気でありまして、非常に病後の大切な病気であるのに、ケネディ大統領は、これをにきびと間違えて、キューバはこのごろ少し色気づいてにきびができた、お乳ここきびができるはずはないではないかというわけで、それなら水虫かというのでサリチル酸を塗りたくって、そして石油を遮断し、ついに砂糖を封鎖してしまった、こうなれば、もうどんなに考えても乳腺炎は乳ガンに転化せざるを得ない。私は、あのアメリカの誤った政策がキューバをして最後の断交に追い込めたのではあるまいかという一部の批評家の批評は、アメリカとしても大いに反省せねばならぬ問題ではなかろうかと思っておる次第でございます。  さて、アメリカから日本が砂糖を年々二百億円近く買っております。その大部分は全部ドルで払っておりました。それはニューヨークに支払われております。そういうふうに、日本からの見返りの貿易は一割か二割が商品輸出でありまして、八割までは全部ドルできわめて安易に払っている。砂糖産業は甘やかされて、自由化といっても最後に回すという約束もできておるようで、非常に一時的にはもうかる。そのもうけは納付金として国庫に納められておるというような安易な状態を続けて参りました。しかし、今後一ドル、百ドルの金でも最も節約して上手に合理的に使って日本経済を安定させねばならぬ、これは長きにわたる今後の課題でございます。  こういうときに、キューバとの貿易を考えますると、日本政府はいち早くキューバとの通商条約を検討いたしまして、昨年の四月、超党派的に、日本・キューバ友好通商条約を満場一致議会で通過せしめました。私はこれは貿易の国として適切な措置であったと思っております。その直後に、国会の御了解を得まして、私は一カ月キューバを視察して参りました。今度も、ブラジルの万国議員会議のあとに、同僚議員の尊敬する福田篤泰氏その他の議員各位も時間があればキューバを視察してくるということでございますが、キューバについては、日本経済の安定という点から見ても、慎重に対策も考え、経済状況を視察して、誤りない対策を講ずるに値する重要な貿易相手の国であると思うのでございます。私がゲバラ国務大臣に昨年会いましたときに、日本に行って見て、日本にはあらゆる商品があるのを見て驚いた、懐中電灯でも、ラジオでも、薬でも、虫下しでも、ペニシリンでも、ストレプトマイシンでも、ないものはない、だとするならば、日本が砂糖を買った代金のすべてをドルで払う必要はないのであって、八割までは適当な為替銀行に、たとえば東京銀行にコンヴァーディブルの円として預金しておいて、二割だけドルをいただけばいい、全部ドルをいただくとついやすきについて使ってしまうということもあなたの方で心配でしょうし、八割までは円を積み立てておいて、そして日本の雑貨を買う、また日本の機械工業品を買う、そうすれば日本の国際収支も非常に楽になる、こういうことでした。私はこのことを帰りましてすぐ牛場経済局長に連絡いたし、また東京銀行の堀江常務にも連絡いたしまして、御両者ともそれは好意的であった。外務委員会の皆さんといえどもこれに反対する人はなかろうと思うから、そういう点ならば日本・キューバ通商条約の裏づけとして為替協定の準備をぼつぼつ研究しょう、こういういきさつでありました。ところが、残念ながら、牛場局長が職をかわられましてカナダの大使に移られましたので、技術的にもこの問題がちょっと延び延びになっているうちに国際情勢がまた激変いたしまして、遺憾ながらアメリカとキューバとの対立が一時的に激化しておるというのが今日の事情のようでございます。  アメリカのキューバに対する対策を見まして、思い起こすのは英国のことです。常識ある英国ですらが、スエズ運河が沸き立ち、ナセルが決起いたしましたときには、さすがに理性を失ってあそこに爆撃機を向けましたが、ブルガーニン元帥からの警告によって、もしスエズ河畔の原住民たちをイナゴのように爆撃をもって脅かすならばテームス川のほとりの文化水準の高い民族に対してロケット並びに放射能というものをもってそれに対して警告を与えるという天の声が下ったならばあなたは何と答えるであろうか、史上未曽有の書簡がマクミラン首相に発せられまして、ついに、大局を考える大脳の力をまだ持っている英国は、無念残念やる方ない思いをしながらも、貴族の時代、帝国主義の時代はもはや傾陽を浴びている、植民地であった民族が独立の趨勢に向かうことはこれは歴史の運命であるから、英国は秩序整然として退却した方がよかろうということで、ナセルに対して必要なる退却を上手に行なったことは御承知の通りです。六十男の英国はそのような聡明にしてかつ冷静な判断に立っておりますが、四十男のアメリカは、懐の中にあるドルにものを言わしてまだ血気盛んでございまして、英国のような冷静な判断に立つことはできないで、裏切られたと、四十男が小娘に裏切られたときのような嘆きを繰り返しまして、そして、いろいろな小細工をもって、ギャング進攻作戦をもってキューバを取り込もうとした。確かに、マイアミの乳ぶさの下にあるキューバがアメリカの心持から去ってしまったということはアメリカにとって不愉快なことであるということは察するに余りありますけれども、同時に、キューバがアメリカにとって目の上の小さなほくろぐらいのたんこぶであるとするならば、キューバにとってはまたアメリカはさぞかし不愉快な存在であろう。私はこれはお互いさまではあるまいかと思う。従って、そういうことを言い合うよりは、やはり合理的に理解し合うことの方が必要である。  あるいはまた、ニューヨーク・タイムスなどの記事によりますと、何ぼ何でもアメリカの乳ぶさのまっ下の国がソ連、中国の影響下に立つことはがまんできないことであると言っており、その気持もよくわかりますけれども、それならば、中国、ソ連のちょうどあごの下にある台湾や朝鮮や日本が、単に自由諸国とよい関係というだけではなくて、その軍事基地になっておるということは、はたして北京や上海の人たちにとって頭痛の種にならないかどうか。論理というものは普遍妥当なものでありますから、外交というものを論理に根ざして考える限りにおいては、私は、アメリカがキューバのことのみに固執して、自分はキューバに対するソ連、中国態度以上のことを台湾や朝鮮や日本において行なっておることを思えば、とにかくソビエトは今日キューバに軍需品を送っておるようでありますけれども、しかし、軍事基地は断じて作らないということをたびたび声明しているようでありますから、いわば軍事的には中立に近い立場をまだキューバはとっているわけでございます。そういうことを思うならば、たとえばメキシコも中立をとっております。従いまして、アメリカも、この辺で冷静に考えて、やはり国際条約の論理をみずからはずすようなことをすることは、私は、アメリカの良識のためにとらざるところである。私のような議論は、英国のマンチェスター・ガーディアンをお読みになっても、また、英国労働党の機関紙をお読みになっても、また、英国保主党の一部の議論の中にも、そういう批判はアメリカの性急な態度に向かって向けられておるわけでございます。  今日、この数日の新聞を見ますと、アメリカはさらに一歩を進めてキューバに対して経済封鎖に類似のことをしようとする。今日びょうたる島国に対して経済封鎖を行なうことは、昔ならば、ここいう言葉は絶対に使いたくない言葉でありますけれども、宣戦布告の前夜のような脅威を人に与えると言われても私は反論できないような手段であろうと思います。経済封鎖のような深刻な対策をアメリカがとることに対して一体国際連合の精神から見てそれが妥当であるかどうか。たとえば、軍需品の仕向けに対してアメリカが反対の声明をする、軍事技術官の派遣に対して反発をするというならわかりますけれども、日常生活物資の貿易に対してアメリカが他国に干渉する、そして、そういうことをした国に対しては、自分のところの港では水と石炭を供給せず、また、停泊の港を供給せずということになるならば、私は、英国のロンドン・タイムス・マンチェスターガーディアンなどがアメリカに反省を求めておると同じように、アメリカとしては行き過ぎであると思う。これは、単に社会党の立場からではなくて、党派を越えて、良識ある今日の国際的論理の立場から見ましてアメリカ態度は行き過ぎである。この行き過ぎは結局かえってアメリカ世界世論が同情しないことになってくるのではなかろうか。これはアメリカとして大いに自粛してもらわねばならぬ。すなわち、国際連合及び国際的論理の許す範囲においてキューバに警告を発することは、アメリカの利害のためにおいて発するならば何らわれわれは発言すべきことではないけれども、万国通商のその論理を破ってなさるならば、私は、日本としては英国と同じ態度に立つべきではなかろうかと思う。しかも、日本とキューバとの関係は、先ほど申し上げましたように、砂糎の貿易においては二百億円をこえる大きな貿易相手である。しかも両国の間には友好通商条約が結ばれておる。  従って、ここにお尋ねいたしたいことは、アメリカ世界諸国に対して、キューバと貿易をするものに対して具体的にどういう妨害を加え、干渉を加えようと通牒を発したか、そういう通牒はどういう経路を経て外務省に通達されておるか、そしてまた、それに対して外務省当局はどういう見識ある態度をとっておられるか、また、これに対する英国その他の反響について詳細にお調べになって、そして自主的態度をもって臨まれておられるかどうか、そういうことにつきましてまず御報告を求めたいと思います。
  76. 大平正芳

    大平国務大臣 今御指摘のことは、第一には、アメリカ政府が対外援助法案の第百七条を改正いたしまして、NATO諸国並びにわが国に対する禁輸要請、米州機構のボイコット措置などを通じて、キューバに対する経済封鎖を強化しつつあることは事実でございますが、ただ、問題の対外援助歳出法百七条の改正というのは、御案内のように議員立法でなされましたので、それの細目の解釈がまだ私どもにはまだはっきりしないのでございます。アメリカ政府からこのことに対してNATO諸国には要請があったようでございますけれども日本政府にはまだ公式に要請はございません。  それから、この経済封鎖措置に対する自由諸国家の反応でございますが、これは私どもも注意深く在外公館を通じまして調べておるわけでございますが、ただいまのところ、きまった反応というのは得ておりません。今御指摘のように、イギリスにもいろいろ議論があるような状況でございますが、今の段階におきまして、私どもとしては実はこの事態の成り行きを注意深く注視しておるというような情勢でございます。
  77. 帆足計

    ○帆足委員 数日前の新聞に、砂糖業界の一部及び輸入業者の一部が、アメリカの政策に事前に追随して、アメリカから正式の通牒が来る前に追随して、そしてキューバとの砂糖貿易はやめるつもりであるというような申し合わせをしたように伝えられておりますが、日本とキューバ国との間に友好通商条約があります今日、相当のカルテルなり業者の懇談会がこういうことを発言することは、私は、通商条約の精神に反するし、もしまたこれが政府の一部の御指示にでも基づいたものであるならば、これは明らかに条約違反となって、貿易の国としては好ましからざる失策として弾劾されねばならぬということになると思いますが、まさかこういうことは外務省が関与して起こったとは私は想像もできないことでありますが、事態の真相はどのようでございましたか、多分お調べになっておると思いますから、お答え下さい。
  78. 大平正芳

    大平国務大臣 政府としてはそのような要請をいたした覚えはございません。砂糖業界におきまして、キューバの政情が不安定なので、より安定した市場を考えつつあるという情報は得ておりますけれども、しかし、御指摘のように、日本の所要原糖は、より安定した市場をほかに求め得るといたしましても、キューバ糖に依存しなくていいという状況ではないと私ども考えています。
  79. 帆足計

    ○帆足委員 外務大臣のただいまの御答弁で、これは外務省の真意に基づくものでなかった、また、砂糖業界の意見も、私は電話で問いただしましたが、これは一部の新聞に流れた誤報であった、こういうことで、両者符節を合わするごとくであることは、まことに御同慶の至りでございますが、それならば、もう一つお尋ねしておきたいのですが、今日アメリカが幾つかのキューバに対する封鎖政策を発表しておるようでありますが、その中で、たとえば、軍需品を送った国に対してはこういう制裁をする、または、ココムをキューバに適用したりする。しかし、こういうことでは、それはそれなりに、賛否は別としましてまだわかるのでありますけれども一般的な民需の日常生活品の貿易をキューバとする国に対してもアメリカは港を提供せずという項目がその中に入っておりますが、もちろんこれはまだ実施されているものではなかろうと思いますけれども、かりにこういうことが正式にきまるとするならば、これは重大なる国連憲章違反であり、万国通商の精神に反するものであると思いますが、外務大臣はどのようにお考えでしょうか。
  80. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、この改正立法が議員立法でなされた関係もございまして、一体どういう運用になって参りますのか、今私どもは研究中でございますので、ただいまの段階で明確にお答するという用意はございません。
  81. 帆足計

    ○帆足委員 私が今お尋ねしたのは、アメリカが実際にこれを採用し、国会を通過させるなり行政府で正式にきまったときのことを言うておるのでなくて、いかに恨みがあろうとも、特定の島国に対して日常生活物資を貿易した第三国に対してアメリカが差別待遇をするということが、国連憲章なり今日の万国通商の原則から言って是認されるべきことであるかどうかという原則について、外務大臣の所信をお伺いしておるわけです。
  82. 大平正芳

    大平国務大臣 好ましい事態ではないと思います。私どもはこの問題が早く平和的に解決されることを希求いたします。
  83. 帆足計

    ○帆足委員 私は、好ましくない事態というようなことをお尋ねしているのではなくて、国際的な論理として、プリンシプルとして、そういうような種類の報復措置はもはや今日万国において認められない措置ではなかろうか、こういうことを外務大臣にお尋ねしているわけです。
  84. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう原則に即して、ただいま起こっているような事態は好ましくないと思います。
  85. 帆足計

    ○帆足委員 よく了解いたしました。こいねがわくば、外務省としてはそのような見識を持って善処をされることをわれわれは切望する次第でございます。問題の推移によりましては、残念ながらアメリカの当局は今の原則を離れようとする傾向がありますことについては、私は、アメリカの信用のためにも、そういう小乗的な方法は望ましくないと思います。  また、びょうたる人口六百万のキューバに対して、二億三千万の人口を擁しているアメリカが少し騒ぎ方が大きくはないか。  最近は、プエルト・リコからまたギャングが現われまして、英国船を襲撃し、英国はこれに対して厳重なる警告を発していることは御存じの通りでありますが、プエルト・リコという国は、今日の一般の常識ではアメリカの保護国のように言われている国でありまして、植民地解放特別委員会におきましても、これを植民地の範疇に入れるか、またはかろうじて植民地の範疇からはずれた国に入れるか、今問題になっている国でありまして、ここにアメリカの勢力が及んでいることは衆目の見るところです。そこから武器弾薬を持ったギャングが進出するということになれば、それは火のないところに煙は立たない。当然アメリカが疑いを受けると私は思う。こういうことも、そういう卑劣な手段をアメリカがとったりするようなことのないように、私は日本の外務委員として希望したい。言うべきことがあるならば、国際連合を通じて堂々とアメリカアメリカの言いたいことを主張なさればいいのであって、こういうギャングを使嗾して事を行なうような卑劣なことは、私はやっていただきたくない。われわれは、世界の平和を求めるために、それだけのことを発言し、世論に問う自由はあるわけで、あえて申し上げるわけであります。  大平さんは保守政党の中ではとにかく見識のある外務大臣と今日のところ世評は言っておりますから、やはり、保守政党は保守政党なりに見識のあるところを示していただきたい。時間が経過しましたから、一言だけ沖繩の問題につきまして伺います。  ケネディ大統領が三月に声明いたしました線については、私ども野党の立場から見ますと不満でありますけれども、それはそれなりに一抹の期待すべき要素もあった。沖繩日本の領土である、将来国際緊張の緩和とともになるべく早く施政権は戻す、そのときに沖繩経済日本経済の落差が大き過ぎたのでは返還も不可能になるし、現在の沖繩住民の苦しみも確かに見るにしのびないから、沖繩経済の自立、民生向上のためにアメリカ経済援助額をもっと増加する、こういう論理に対しては、これを現状固着と見、不満と見る者も、なおかつその論理自体には一抹の期待は持てるという印象をだれしも得たと思うのです。しかるに、あれはことしの三月でありましたが、一カ月ごとにケネディ大統領の声明の線はどんどん後退いたしまして、どこの国でもそうですけれども、目前の現象に目を奪われる国防省の職業軍人の諸君の戦略的論理と、アメリカ両議院の、世界情勢を知らない、オクラホマかどこの州か知りませんけれども、州の中だけしか知らない独善的ないなか者の政治家諸君も相当おられるようでありまして、そうして、チェスター・ボールズ氏やスチブンソン氏のようなアメリカ合理主義派の意見は後退いたしまして、プライス勧告案はついに八百九十万ドルにまで削られてしまった。こういうことで一体五カ年計画が可能であるかどうか。大平さんは、アメリカからお帰りになって、援助額はだいぶ減らされたけれども、それでも若干ふえたから何とかやっていけるであろうというお答えをしておられるけれども、何とかということは、それは勘ではそう言われるでしょうけれども経済的な数字として、私は、従来の日本の援助のワクではそういうことは不可能であると考えます。沖繩の祖国復帰を要求しながら、なおかつことごとくアメリカにたよってやろうというその奴隷根性が、私は、今にして言えば、やはり期待すベからざるものに期待したと言えることであって、みずからいやしめれば人これをいやしむという言葉がありますように、沖繩の復興は、私は、日本国民の協力によって行なうべきであると思う。現に、池田さんは、私どもがその必要はないと思っておるのに、韓国に対して賠償金に類似のものを払おうとしており、また、タイに対してもその必要がないと思うものを払って、それの言いわけとしては、出世払いというような軽率なことを言っておられる。出世払いをなさるほどの実力があるならば、なぜ沖繩の九十万同胞に対してもう少し手厚い援助を施さないのか。  従って、私が外務大臣にお尋ねしておきたいことは、とにかく、プライス法修正案の線はもう著しく後退してしまった。かくなる以上は、やがて日本に返還される、また、返還を要求している沖繩に対して、いたずらに一般の援助までをアメリカに求めようとすることに期待せずに、出世払いと言われるほどわれわれの実力がまだあるわけですから、通産省と、また農林省と相談なさって、そして、われわれ日本政府の手によって沖繩の復旧五カ年計画を助けないのか。それに対して、従来アメリカは、余分なことをするなと言って断わったわけですけれども自分が金を出さないときまった以上は、私は、大平さんに対して余分なことをするなとはアメリカはよもや言えまいと思います。従いまして、この削減された部分については、日本政府として真剣にこれを補う交渉アメリカにし、日本国民として沖繩同胞に対して手厚いことをする意思があるのかどうか。その論理を大卒さんはどのようにお考えであるか。私は、このことをこの際問いただしておくことは、外務委員会としてきわめて必要なことであると思う。それでお答えを願いたい。  時間が参りましたから、お答え次第によって一分以内でお尋ねしまして、それで終わりにいたします。
  86. 大平正芳

    大平国務大臣 今御指摘のように、今回の対外援助法案の沖繩関係の削減は、私どもとしてもきわめて遺憾でございました。従って、その善後措置をどうするかの問題でございますが、御承知のように、沖繩の計画は、沖繩の住民の地元の負担と、米国の援助と、日本の協力と、三つの柱からなっておるわけでございます。これの負担の割合がどうなるかということは、住民の負担能力も吟味しなければなりませんし、それからまた、計画それ自体の大きさも、沖繩経済の成長率をどのように見て参るか、沖繩政府の行政的な消化能力をどう評価するか、いろいろなファクターがあろうと思うのであります。これは、今から私ども近く対米折衝もやらなければなりませんし、過去三回の調査団が出ました調査の結果も持っておりますので、来年の予算編成期に、可能な限り日本側で援助をふやしていただくように、関係省庁に極力働きかけて御同意を得るように努力して参るつもりでございます。
  87. 帆足計

    ○帆足委員 あとの質問者もございますから、これでかわります。
  88. 菅太郎

    ○菅委員長代理 川上貫一君。
  89. 川上貫一

    ○川上委員 私の質問は、いつもの通りにきわめて単直であります。しかし、時間の関係もありますから、質問は四つしたいのでありますが、前の三つを一括して外務大臣にお尋ねしたいと思うのです。そこで、一括でありますから、その中の私の質問の要点について、外務大臣の方では漏らして下さらぬように、その一つ一つをやはりまとめて御答弁を願えればしあわせだと思います。  まず第一点でありますが、第一点は、防衛庁の第二次防衛計画草案というようなものを見ますと、これに情勢を分析してありますが、その中に、韓国の政情不安が注目される、こう書いてあります。さらに、局地戦争もあり得るという分析になっております。これは草案の情勢分析のところでありますが、それを前提として、防衛庁では、すでに、日韓会談の妥結、これを踏まえて、次のような計画を具体的に検討しておるようであります。次のような計画と申しますのは、第一に、昭和四十一年末までに、自衛隊は、バッジ・システム、すなわち半自動防衛管制システムと言うたらいいかと思いますが、これを装備して、このシステムを韓国、台湾のバッジ・システムと連結をして、共同作戦の体制を整える、これが第一であります。  第二は、非常の際には対馬海峡の封鎖を日韓共同で行なう。  第三は、航空機は現在でも国連機の名目によって日本で修理をしておるのであるが、それをさらに艦艇やその装備までも日本で修理補給するようにする。第四は、韓国の操縦士の養成をする。そのほかあるのでありますが、ともかく、政府はこういう計画を進めながら日韓会談の妥結と国交回復を急いでおられると思うのであります。そこで、私は外務大臣にお聞きするのですが、今私の申しましたような計画を防衛庁がやっておる。防衛庁がやっておるというのは、政府がやっておるのでありますが、これはアジアにおける局地戦争を想定をした軍事同盟の計画ではないか。韓国にはアメリカ軍が駐留しておるばかりではなしに、韓国軍の作戦行動の最高指揮権はアメリカ軍の最高司令官が持っておるのでありますから、これを考え合わせてみるというと、この計画は、明らかに、日本アメリカ、韓国の軍事同盟の計画であるに違いない。この点について外務大臣のお答えを願いたい。   〔菅委員長代理退席、委員長着席〕 さらに、これこそが、今日政府が推し進めておる日韓会談国交回復の最大の目的ではないのか。私は答弁にあげ足なんか取りませんから、外務大臣の率直な答弁をお願いしたい。これが第一の質問です。  第二の質問は、防衛庁は明年の予算に防衛駐在官を韓国に派遣する費用を要求するようであります。その防衛駐在官というものは、どういう目的で何をするものであるのか。また、現在防衛駐在官を派遣しておるのは台湾であると思いますが、今度防衛庁が駐在を計画しておるのは韓国であります。これを思い合わせるというと、この計画は、言うと言わざるとにかかわらず、日本、台湾、韓国を結ぶ軍事同盟の想定以外ではない思う。形式的の問題は別です。事実上の同盟の方向、これをとっておるのであるということは弁解する余地が私はないと思う。このことについて、外務大臣は、それはまだきまっておりませんというような返答をしてもらいたくないのであります。するかもわからぬが、もし、確定しておらぬのだ、こういうことを御答弁なさるのならば、今後そういう要求があった場合に、外務大臣は賛成なさるか反対なさるか、これだけは完全に言えるはずでありますから、ここではっきりと答えておいてもらいたい。これが第二点です。  第三点は、自衛隊は、去る十月の三日から六日にかけて、対馬海峡で大演習をやっております。それと同じときに同じ海域で韓国が演習をしておる事実があります。これは合同演習です。しかも、韓国軍の演習には在日第五空軍が参加しておるはずでありますから、この点から考えれば、まさしく日本アメリカと韓国との合同演習でありましょう。一方では日韓会談の妥結を急いでおる。一方では日・米・韓の合同演習をやっておる。一体この演習はだれが発意したものであるか、何の目的でどのような演習を行なったのであるか、これについては詳細な御答弁をお願いしたい。  これとちょっと関連しますが、アメリカの第七艦隊は同じ時期にフィリピン海軍と合同演習をやっております。また、アメリカとタイ国と南ベトナムとは、これまた同じ時期にシャム湾で合同演習をやっておる。この一連の合同演習はもちろん偶然の一致でないことは明瞭です。アメリカのさしがねによるものでなかったら、こういう一致とこういう合同演習ができるはずはない。すなわち、アメリカアメリカのさしずに従うアジアの反共国といわれるものが、ほとんど全部アジアの各海域で同じように合同演習をやっておる。外務大臣はこの事情をお知りにならぬはずはありません。そこで、この一連の演習について、日本政府アメリカからどういう連絡、交渉を受けましたか。どういう手続になっておりますか。これも私は答弁の片言隻句をとらえていやな質問をしようと思うておりません。正直にお答えを願いたい。  日韓会談の最中にこのように事実上の東北アジア軍事同盟が着々実現しておるのです。これは外務大臣がどうしても留意せられない問題ではないと思う。こういう一連の事実と、日本の平和と安全、アジアの平和という問題と、どういう関係になると外務大臣はお考えになっておるであろうか。これまた、外務大臣のお考えを、国会答弁だからというので、とにかく言いのがれさえすればいいというのではなしに、真に心胆を吐露したお答えをお聞きしたい。国民はこれを要求しておる、こう思います。  以上が、私が一括をして質問をさしてもらった全部であります。
  90. 大平正芳

    大平国務大臣 第二次防衛計画に基づく第二次防衛計画案ができた想定として、今御指摘のような事実が、文言があるが、そして、それを演繹して参りますと、日・韓・台の軍事同盟に通ずるような思想でないかという御指摘でございますが、たびたび本議場を通しまして政府からも申し上げております通り、われわれがNEATOの結成など毛頭考えていないということは、繰り返し申し上げておるところでございまして、防衛庁がどのような想定をされておるか存じませんけれども、私どもといたしまして、政治指導に当たる者の立場から申しまして、そういうことが論議の種になったこともないし、全然考えていないことであるということは御信用いただきたいと思います。  それから、第二点の防衛駐在官の問題でございますが、これは私ども非常に迷惑に存じておるわけでございます。防衛駐在官の韓国への派遣、これは正常化があったあとでどうするかという問題だと思うのでございますが、私ども、ただいまのところ、そういうことが必要であるとか、そうなければならぬとかいうようなことは考えておりません。  それから、第三点の演習の問題でございますが、私は、寡聞にして、自衛隊の演習の御相談にあずかっておりませんので、これは、せっかくの御質問でございますけれども、防衛庁の方からお願いいたしたいと思います。
  91. 小幡久男

    ○小幡説明員 対馬海峡の演習についてお答え申し上げます。  対馬海峡で十月三日から十二日まで海上自衛隊が演習をやったことは事実でございます。そのための実働の兵力を申しますと、護衛艦が十隻、航空機が七ないし八でございますが、演習の目標は、潜水艦による対馬海峡の隠密なる通過に対していかにこれを防衛するかという点が主眼であります。この間韓国と共同演習という事実はございません。また、この演習は数年に一度従来もやっておりました演習の一つでありまして、海上自衛隊ではこのような演習を津軽海峡とかあるいは要所々々で巡回して毎年やっております通常の演習の一環として考えておりまして、御指摘のような韓国と共同してやったというふうな事実はございません。
  92. 川上貫一

    ○川上委員 外務大臣のお答えもありましたが、今防衛庁の方の答弁がありましたからちょっとこれを質問しますが、今まで日韓合同演習をやっておるということは国会で答弁しておる。やったことがないことはない。これは私の質問に対して答えておる。だから、この演習が、従来もそういうことはないし今度もそういうことはないということは、了解できない。  そこで、ここで時間もないのに押し問答してもつまらぬ。それですから、私はここにあらためてこの演習の内容について次の資料をこの委員会に政府から提出してもらいたいと思いますから、これを委員長において適法に御処理を願いたい。  それは、この演習に参加した日本の艦艇数と名前、それに参加した航空機の数、参加した人員の数、それから目的とそのやり方を詳細に掲げたもの。同時に、第五空軍が韓国の演習に参加しておりますから、これの詳細なる状態、その数。それから、日本の自衛隊と韓国の自衛隊が、同じ海域ではなしに、——政府の答弁によるとそうなんだから、完全に別々の海域でやったということであれば、その証拠を出してもらいたい。同じ海域でやっておるのですから、この詳細な資料提出を求めます。  それによって、きょうは時間がありませんからこの問題はこれでけっこうですが、あらためて質問をさしてもらいたい。これを合同演習でなかったというような答弁はよろしくない。そういうことは率直に答弁された方がよろしい。  それから外務大臣のお答えでありますが、私はNEATOをつくるのじゃないかという質問をしておるのじゃない。それは、政府の方じゃ、つくらぬつくらぬと言うておるのであります。つくるまでつくるとは言わぬと思う。今から、日韓会談をやっておりまして、そうして済んだらNEATOをつくるなんと言う、そんな外務大臣はちょっとおかしい。それは言わぬにきまっておる。そうではない。事実上の軍事同盟計画をしておるではないかということを私は質問したのです。この事実上のが問題なんです。今私があげたアジアの各区域でやった各合同演習、これも、そのことごとくが軍事同盟という形式のもとにやったのではない。やはり、事実上軍事同盟と同じような演習、同じようなことをやっておる。戦争というものは法律の条文じゃないのです。具体的事実が問題なのです。われわれが危険じゃと言うておるのは、条文にこんなことをつくったからという問題ではなくて、事実上こういうようになってしまうのだということの方がわれわれには問題なんです。そこで、外務大臣のお答えが、NEATOは考えておらぬ、よくわかりました。だいぶ考えておるのだと思うけれども、考えておると言えとは言いません。そうではなくて、やはり事実上の軍事同盟計画をやっておるのであります。この計画はありませんというなら、これでまた話はわかります。そういうことは全然考えておりません、防衛第二次五カ年計画の内容にこんなものはないです。作業もしておりません、検討もしておりません、第二次防衛計画の草案というものは、あれはうそです。ありません、こうおっしゃるならわかるのです。これは外務大臣の答弁は一時のがれの答弁でよくないと思うのです。  それから、駐在官の問題ですが、これはそういう答弁を外務大臣はするだろうと思うのです。僕が外務大臣でもひょっとしたらするかもしれぬ。そこのところを言いなさいと言いよるんじゃない、将来、もしそれならば、防衛庁がそのような要求を出した時分に、外務大臣は外務省予算にこの費用を計上しますか、絶対に反対して計上しませんか、それをこの際に言うておいて下さい、こう言うのです。この答弁がないのです。これを願います。
  93. 野田武夫

    野田委員長 川上委員にちょっとお答えいたします。  先ほど資料の御要求がございましたが、御意見通り委員長といたしましては適当にこれを処理することを了承いたしました。
  94. 大平正芳

    大平国務大臣 事実上のことでございますが、事実上も形式上も、私どもは、軍事同盟というようなことは、検討いたしたこともございませんし、そういうことを考える意図は毛頭ございません。  それから、防衛駐在官につきましては、その必要を私は認めておりません。
  95. 川上貫一

    ○川上委員 これ以上外務大臣に聞くのは無理だと思うのです。事柄はわかっているのだから。これはそれ以上言うたら全く外務大臣はかぶとを脱いでしまうことになるのだから。  そこで、次に聞きます。非常に時間が少ないので残念ですけれども外務大臣は、今度アメリカにお行きになって、ラスク国務長官にお会いになっておるはずであります。その時分に長官は、日韓会談を即時に妥結せいということを要請しましたかどうですか。その点を一つお聞きしたいのです。
  96. 大平正芳

    大平国務大臣 先方からそういうことの要請は受けておりません。
  97. 川上貫一

    ○川上委員 何も聞いておられませんか。
  98. 大平正芳

    大平国務大臣 アメリカとしても関心を持っており妥結を希望するということは申されましたけれども、要請がましいことは一切ございません。
  99. 川上貫一

    ○川上委員 そうではないでしょう。こういうことを言うたでしょう。ラスク長官は、民政移管をしても朴政権は続く、これ以上の変動はどうしても避けなければならぬ、そのためには日韓会談の妥結が一番重要である、日韓の国交回復があればアメリカの対韓関係も大へん都合がよくなる、日本はすみやかに会談の妥結をはかるべきである、こう言うておるじゃないですか。これはどうですか。
  100. 大平正芳

    大平国務大臣 今川上委員の言われたのは、どなたの作文か存じませんが、私との会談にはそういうことはございません。
  101. 川上貫一

    ○川上委員 あったのですよ。(笑声)間違いありません。それですから、あった、ないという押し問答はここで大平さんとはしませんが、このことは重要なんです。というのは、今日、国民日韓会談に反対し、民族の運命を憂えて、いろいろな学者、文化人もこの将来を危惧しておるわけです。それはどういうことか。それは、単に日本と韓国が軍事同盟で戦争体制をつくるだろうということだけではなくて、その背後にアメリカがある。終始一貫アメリカの強要によって日本政府日韓会談を推し進めておるということはまぎれもない事実である。こういう状況のもとにこの会談を進め、国交を回復し、事実上の同盟形態をつくるということになれば、これは単に日本と韓国との問題ではなくて、アメリカ日本と韓国との同盟の問題なのだ。こういう同盟の形は、ほんとうに考えれば、かつての防共協定と同じ性格である。日独防共協定がどういう結果を日本民族にもたらしたかということは、国民の胸にこたえております。これと同じような性格、しかも、これをアメリカアジア政策、アメリカの対日政策の線に乗って日本政府はやろうとしておられる。この危険ですよ。ここのところに、われわれが最もこれを危惧し、民族の運命を憂える国民が反対をしておる基礎があるのです。日韓会談というものは単に日本と韓国との交渉ではないのです。アメリカ日本と韓国の交渉であり、極端な言い方をすれば、日韓会談ではなくて、これは日米会談ではないかという意見さえあるのです。外務大臣はこの点についてよくよく知っておられると思う。今度アメリカにお行きになっても、この点について日本立場をはっきりさせるのじゃなくて、今私が読み上げましたようなこういうアメリカの要請をお聞きになって、これに盲従して帰っておられるのです。  私はこれ以上いろいろな質問はしませんが、どうか、外務大臣は、日本の民族の運命をになう外交責任者として、この日韓会談の問題については、将来を憂える国民の声に耳を傾けるようにしてもらいたい。日本の独立と平和、アジアの平和の方向に向かってほんとうに貢献をするような態度で臨んでもらいたい。極端に言えば、日韓会談を即時打ち切ってもらいたい。これがわが党の意見だ。これは川上が言うておるのだと思わないようにして下さい。良識のある国民がことごとくこれを憂えているのだ。アジアの平和人民がこれを願っておるのです。願わくは、大平外務大臣が、緊褌一番、日本人の外務大臣たる根性を明らかにして善処されることを私は要求して、時間がありませんから私の質問は終わります。
  102. 野田武夫

    野田委員長 これにて散会いたします。  次会は公報をもってお知らせいたします。   午後三時四十分散会