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1962-09-02 第41回国会 衆議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年九月二日(日曜日)    午前十時十一分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 安藤  覺君 理事 菅  太郎君    理事 正示啓次郎君 理事 福田 篤康君    理事 松本 俊一君 理事 岡田 春夫君    理事 戸叶 里子君 理事 森島 守人君       宇都宮徳馬君    川村善八郎君       田澤 吉郎君    古川 丈吉君       森下 國雄君    猪俣 浩三君       黒田 寿男君    中村 重光君       楢崎弥之助君    帆足  計君       穗積 七郎君    細迫 兼光君       受田 新吉君    川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         内閣法制局長官 林  修三君         内閣法制局参事         官         (第一部部長) 山内 一夫君         総理府総務長官 徳安 實藏君         外務政務次官  飯塚 定輔君         外務事務官         (アジア局長) 伊関佑二郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (経済局長)  関 守三郎君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         厚生事務官         (社会局長)  大山  正君         厚生事務官         (援護局長)  山本淺太郎君         水産庁長官   伊東 正義君  委員外出席者         総理府事務官         (恩給局長)  八巻淳之輔君         総理府事務官         (特別地域連絡         局長)     大竹 民陟君         検     事         (入国管理局次         長)      富田 正典君         外務事務官         (大臣官房審議         官)      宇山  厚君         外務事務官         (国際連合局         長)      高橋  覚君         通商産業事務官         (通商局次長) 宮本  惇君         専  門  員 豊田  薫君     ――――――――――――― 九月二日  委員稻村隆一君、勝間田清一君及び西尾末廣君  辞任につき、その補欠として楢崎弥之助君、猪  俣浩三君及び受田新吉君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員猪俣浩三君及び受田新吉辞任につき、そ  の補欠として中村重光君及び西尾末廣君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員中村重光君及び楢崎弥之助辞任につき、  その補欠として勝間田清一君及び稻村隆一君が  議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 八月二十九日  日中国交回復及びアジア太平洋地域核武装  禁止地帯設置等に関する請願外三件(川上貫一  君紹介)(第六〇七号)  同外三件(志賀義雄紹介)(第六〇八号)  同外三件(谷口善太郎紹介)(第六〇九号)  同外三件(川上貫一紹介)(第七六一号)  同外一件(志賀義雄紹介)(第七六二号)  同外四件(谷口善太郎紹介)(第七六三号)  台湾に残置した私有財産返還補償に関する  請願楢橋渡紹介)(第六一九号) 同月三十日  日中国交回復及びアジア太平洋地域核武装  禁止地帯設置等に関する請願外一件(谷口善太  郎君紹介)(第八九七号)  同外二件(川上貫一紹介)(第八九八号)  同外二件(志賀義雄紹介)(第八九九号)  同(川上貫一紹介)(第九八七号)  同(志賀義雄紹介)(第九八八号)  同(谷口善太郎紹介)(第九八九号)  日中貿易締結に関する請願川上貫一紹介)  (第九〇〇号)  同(志賀義雄紹介)(第九〇一号)  同(谷口善太郎紹介)(第九〇二号)  全般的軍縮協定締結等に関する請願外一件(川  上貫一紹介)(第九〇三号)  同(志賀義雄紹介)(第九〇四号)  同(谷口善太郎紹介)(第九〇五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 八月二十九日  日韓漁業協定締結促進等に関する陳情書  (第三七三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会審査に関する件  国際情勢に関する件(日韓及び沖繩問題)  請願  一 日中国交回復及びアジア太平洋地域の核   武装禁止地帯設置等に関する請願川上貫一   君紹介)(第七四号)  二 同(志賀義雄紹介)(第七五号)  三 同(谷口善太郎紹介)(第七六号)  四 同(川上貫一紹介)(第一三八号)  五 同(志賀義雄紹介)(第一三九号)  六 同(谷口善太郎紹介)(第一四〇号)  七 同(川上貫一紹介)(第一七〇号)  八 同(志賀義雄紹介)(第一七一号)  九 同(谷口善太郎紹介)(第一七二号)  一〇 在日朝鮮人帰国協定の第三次更新に関す   る請願田中彰治紹介)(第七七号)  一一 日中国交回復及びアジア太平洋地域の   核武装禁止地帯設置等に関する請願川上貫   一君紹介)(第二〇五号)  一二 同(志賀義雄紹介)(第二〇六号)  一三 同(谷口善太郎紹介)(第二〇七号)  一四 同(川上貫一紹介)(第二三四号)  一五 同(志賀義雄紹介)(第二三五号)  一六 同(谷口善太郎紹介)(第二三六号)  一七 同(川上貫一紹介)(第二七三号)  一八 同(志賀義雄紹介)(第二七四号)  一九 同(谷口善太郎紹介)(第二七五号)  二〇 同(川上貫一紹介)(第二八四号)  二一 同(志賀義雄紹介)(第二八五号)  二二 同(谷口善太郎紹介)(第二八六号)  二三 同(川上貫一紹介)(第三一五号)  二四 同(志賀義雄紹介)(第三一六号)  二五 同(谷口善太郎紹介)(第三一七号)  二六 同(川上貫一紹介)(第三三七号)  二七 同(志賀義雄紹介)(第三三八号)  二八 同(谷口善太郎紹介)(第三三九号)  二九 沖繩船舶日本国旗掲揚に関する請願(   山中貞則紹介)(第二〇八号)  三〇 海外移住の推進及び援護対策に関する請   願(江崎真澄紹介)(第三五六号)  三一 日中国交回復及びアジア太平洋地域の   核武装禁止地帯設置等に関する請願川上貫   一君紹介)(第三八一号)  三二 同(志賀義雄紹介)(第三八二号)  三三 同(谷口善太郎紹介)(第三八三号)  三四 同(川上貫一紹介)(第三八四号)  三五 同(志賀義雄紹介)(第三八五号)  三六 同(谷口善太郎紹介)(第三八六号)  三七 同(川上貫一紹介)(第四二七号)  三八 同(志賀義雄紹介)(第四二八号)  三九 同(谷口善太郎紹介)(第四二九号)  四〇 同(川上貫一紹介)(第四三三号)  四一 同(志賀義雄紹介)(第四三四号)  四二 同(谷口善太郎紹介)(第四三五号)  四三 同外二件(川上貫一紹介)(第四五二   号)  四四 同外二件(志賀義雄紹介)(第四五三   号)  四五 同外二件(谷口善太郎紹介)(第四五   四号)  四六 アメリカ核実験反対等に関する請願(   川上貫一紹介)(第四三六号)  四七 同外一件(志賀義雄紹介)(第四三七   号)  四八 同外一件(谷口善太郎紹介)(第四三   八号)  四九 同(川上貫一紹介)(第四五五号)  五〇 同(志賀義雄紹介)(第四五六号)  五一 同(谷口善太郎紹介)(第四五七号)  五二 日中国交回復及びアジア太平洋地域の   核武装禁止地帯設置等に関する請願外三件(   川上貫一紹介)(第六〇七号)  五三 同外三件(志賀義雄紹介)(第六〇八   号)  五四 同外三件(谷口善太郎紹介)(第六〇   九号)  五五 同外三件(川上貫一紹介)(第七六一   号)  五六 同外一件(志賀義雄紹介)(第七六二   号)  五七 同外四件(谷口善太郎紹介)(第七六   三号)  五八 台湾に残置した私有財産返還補償に   関する請願楢橋渡紹介)(第六一九号)  五九 日中国交回復及びアジア太平洋地域の   核武装禁止地帯設置等に関する請願外一件(   谷口善太郎紹介)(第八九七号)  六〇 同外二件(川上貫一紹介)(第八九八   号)  六一 同外二件(志賀義雄紹介)(第八九九   号)  六二 同(川上貫一紹介)(第九八七号)  六三 同(志賀義雄紹介)(第九八八号)  六四 同(谷口善太郎紹介)(第九八九号)  六五 日中貿易締結に関する請願川上貫一君   紹介)(第九〇〇号)  六六 同(志賀義雄紹介)(第九〇一号)  六七 同(谷口善太郎紹介)(第九〇二号)  六八 全般的軍縮協定締結等に関する請願外一   件(川上貫一紹介)(第九〇三号)  六九 同(志賀義雄紹介)(第九〇四号)  七〇 同(谷口善太郎紹介)(第九〇五号)
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  まず請願審査を行なうことといたします。  本委員会に付託されました請願は、本日の請願日程に掲載いたしました通り、七十件であります。本日の請願日程第一より第七十までの全部を一括議題といたします。  これらの請願趣旨については文書表によってすでに御承知のことと思いますので、趣旨の説明及び政府所見等は省略し、直ちに採否の決定を行ないたいと思います。  ただいま議題といたしました請願日程中、第二九及び第三〇は、いずれもその趣旨が妥当と認められますので、議院の会議に付して採択の上内閣に送付すべきものと決するに御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 野田武夫

    野田委員長 御異議ありませんので、さよう決定いたします。  なお、ただいま審査いたしました請願報告書の作成につきましては委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  5. 野田武夫

    野田委員長 なお、本委員会には二十件の陳情書が送付されておりますので、参考までに御報告したします。      ————◇—————
  6. 野田武夫

    野田委員長 次に、閉会審査に関する件についてお諮りいたします。  本委員会といたしましては、今国会閉会になりましても、国際情勢に関する件について調査をいたしたいと存じますので、この旨を議長に申し入れたいと存じますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 野田武夫

    野田委員長 御異議がありませんので、さよう決定いたします。  なお、閉会委員を派遣し、実情調査をする必要が生じました場合におきましては、その人選、派遣地、日数につきましては委員長に御一任をいただきたいと存じますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 野田武夫

    野田委員長 御異議ないようでございますから、さよう決定いたします。  午後一時再開することといたしまして、休憩いたします。    午前十時十四分休憩      ————◇—————    午後一時九分開議
  9. 野田武夫

    野田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。宇都宮徳馬君。
  10. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員 本日は、外務大臣に対しまして、私がかねがね御質問申し上げようと思ってしばらくできなかったことを、まとめて少し御質問申し上げたいと思います。  私は与党の代議士ですからあまり質問などほんとうはしたくない。また、現在の自由民主党のあり方から申しますと、外国の政党等では、外交問題につきましては非常に自由な討議をし、採決等においても自由な態度をとるということが多いのです。そういう場合もしばしばありますけれども、わが自由民主党の最近の外交問題に対する態度は、安保問題等経過を見ましても、党議というようなことで縛りまして、そうして、条約等がすでに締結せられますと、その条約国会において承認する際に、その政府決定に従わない場合には党にいることがなかなかむずかしい、こういうような状態です。よしあしにかかわらず。ところで、今般、あなたの新しい方式によりまして、日韓交渉がだんだん煮詰まってきております。そうして、私はかねがねこの日韓交渉進め方とかあるいはそれが日本にもたらす利益あるいは損害について非常に実は心配いたしておるわけで、この日韓交渉が妥結をいたします前に十分政府方針等を聞きたいと思うわけです。ですから、私の質問はある意味では野党質問より真剣とも言える。野党はそれに反対であれば採決において反対投票すればいいのですけれども、私が反対投票をする場合には相当重大な決意をもって対処しなければならぬ、こういうことになりますから、そのつもりで一つなるべく親切に答えていただきたい、こう思います。  私は外交はしろうとの方ですけれども、特に日韓問題というのはあまり詳しくは調べていないのですけれども、しかし、どうも疑問が多いものですから、最近一年ほどの外務委員会あるいは予算委員会等質疑応答を一応見てみたわけですが、依然として十分に納得することが私はできないわけです。特に、最近になりまして、あなたはなかなか官房長官時代から新しい言葉政界に持ち込むことがうまくて、その中には、非常に的確でニュアースに富んで含蓄に富む言葉も非常に多いのですが、非常に含蓄があり過ぎてわからぬようなことが実はしばしばある。それで、近ごろあなたは、請求権レベル交渉ではもうどうにもならない、高い次元からやり直す、こういうことを言っておられますが、そもそも、日韓交渉というものは、向こうが請求権主張してきて、そうして、請求権カタに、極端に申しますると、李ラインを設定したり、竹島を占領したりしているとも言えるくらいであって、請求権というものが日韓交渉の本質をなしている問題であると私は思うのであります。そうして、この韓国請求権に対する対日請求要項という八カ条が発表せられており、国会においても政府から発表されておりまするが、これが韓国請求権に対する主張基礎をなしておるわけです。そうして、池田朴会談におきまして、おそらく韓国請求権要項基礎に、その中の法的根拠のあるものを取り上げて、そうして両者の一致点を見出していこうということになったと思うのですが、まず、韓国側請求権主張のうちで、法的根拠があるものということはどういうことなのか、法的根拠というものは国際法的な根拠かどうか、このことをお尋ね申し上げたいと思います。
  11. 大平正芳

    大平国務大臣 請求権ということは、請求権と俗に言われておりますけれども、これは国際法一つ要求でございまして、相手方がそれを承知して初めて実体を持ってくる、実体というか、権利化すると思うわけでございます。従って、韓国側の言う請求権というのは、韓国側要求というものだろうと思うのです。わが国の方でそれを承知したときに初めて請求権になるというように私どもは見ておるわけでございます。  それで、池田朴会談におきまして、法的根拠のあるものという了解がございます。それで、韓国側の方は、今御指摘の要求の中に、これが法的根拠があるのだという御見解をお持ちになっておられると思うのであります。それから、当方におきましては、今までの折衝の経過を通じまして、法的根拠のあるものというのはどういうものかということにつきましていろいろ検討を加えて参りましたことは事実でございますが、これがいわゆる法的根拠があるものに該当するのであると自信を持ちまして申し上げられるようなものは何かということにつきまして、今までのところは日本政府部内におきましても必ずしも意見一致を見ていないわけでございまして、今、御質問に対しまして、韓国側要求のうち、これだけは法的根拠があるもの、あるいはこれこれでございますと申し上げるまでに問題が煮詰まっていないという状況でございます。
  12. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員 請求権という言葉について今お話がありましたが、要するに、韓国側請求権と思っているものでも、それは日本にとっては単なる請求である、単なる要求である、権利じゃないというものがあると思うのですね。しかし、韓国側は、請求する権利があると思うから、対日請求要項というものをつくって、日本との交渉でそれを言っているわけだと思うのですが、要するに、請求する権利に対する解釈が違うわけですね。韓国は、おそらく、この八カ条、最後の項目はこれは手続みたいなものですけれども、この八カ条は請求する権利がある、法的根拠がある請求権だ、こう言っているのじゃないですか。日本側はその八つのものが法的根拠があるとは認められがたい、というところに問題があるのじゃないですか。この点、一つもう一度御説明願えませんか。
  13. 大平正芳

    大平国務大臣 今申された通りと心得ております。
  14. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員 池田朴会談におきまして、法的根拠のあるものに限るということにおいて一致したということは、しからば一体どういうことなんですか。
  15. 大平正芳

    大平国務大臣 双方とも法的根拠のあるものは認めようじゃないかという了解でございます。しからば、どの項目がどの範囲において法的根拠があるものと言えるかという見方につきましては、両国の間はもとより、当方政府部内におきましても、まだ意見が煮詰まっていないという状況であります。
  16. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員 おかしいと思いますのは、朴さんが政権を取る前のことかもしれませんが、ともかく韓国代表部請求権に対する主張の総括として八項目あげているわけですね。ですから、韓国側にとってはこれは当然法的根拠のある請求権として日本に申し入れているのじゃなかろうかと私は思うのです。だから、朴さんが韓国側の立場を承認すれば、当然、池田朴会談においても、韓国側が今まで主張した請求要項というものは韓国側としては法的根拠あるものとして主張しなければおかしいわけですね。あるいは、この対日請求要項というものは以前の政権の問題であるから、この要項にこだわらないのだということになったのかどうか、これを一つ御説明願いたいと思います。
  17. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 朴・池田会談は十一月でございまして、そのころはまだ請求権委員会における論議というものはそれほど進んでおりませんでした。従いまして、どれが法的根拠あるものとしてお互い一致し得るかという点についてはまだ明白でなかった時代でありまして、ただ、概念的に、法的根拠あるものにしよう。もちろん、それまでの委員会におきましてもかなりお互いの議論がございましたから、韓国の言うもの全部を日本側根拠あるものと認めるものではないということは、朴議長も十分知っておったと思います。しかし、韓国側範囲が広くてこっちの方が厳格だというふうな状況のもとにあの会談は行なわれまして、原則的に法的根拠のあるものというふうになっておりますが、それはその後の委員会で煮詰めるということになっておったのであります。その後、委員会をやりましても、煮詰まらぬ点が多々あり、法的根拠ありと認めましても、今度は証拠の関係で計算のしにくいものも出てくるというのが現状であります。
  18. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員 伊関局長に承りますが、あなたが法的根拠あるものとしてその八項目のうちで容認し得るものはどれですか。
  19. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 その点は、まだ交渉中でございますので、個人のものが主になるであろうという点以上に、詳しいことを申し上げるのは差し控えたいと思います。
  20. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員 その点が明白にならないと、日韓交渉の全経過というものはほんとうはわからないわけです。  これは外務大臣に申し上げたいけれども、私ども外交問題というものを非常に重視するのは、外交失敗というものは、そのときは大して感じなくても、非常に大きな影響を後の国民に与えるわけです。私は、あの安保条約の騒ぎのときに、安保条約進め方について実は非常に疑問を持っておったわけです。そのせいか何か知りませんが、当時私のところに大島浩という元駐独大使が見えまして、そうして、自分日独伊軍事同盟を推進した責任者の一人であるけれども、私は、この同盟は非常に失敗で、日本の国家及び国民損害を与えたと思っている、だから、自分はその責任を感じて、政界等へ出たいとは思わないが、現在の安保条約進め方を見ていると、日独伊軍事同盟進め方に非常に似ているような気がするから、——この意見には必ずしも私は同調しませんけれども一つあなたは十分注意してもらいたいということを、私は大島浩大使から言われたことがありました。とにかく、そういうふうに失敗を感じて言う人は後世の戒めになるのですけれども、そういう人ばかりじゃないわけです。どっちかというと、ごまかす人の方が多いわけでありますけれども外交上の失敗というものは、そのときの国民だけじゃなしに、そのあと国民にも非常に迷惑を与える。この日韓交渉のごときも、当時の外交的な失敗一つ跡始末である。全部の跡始末じゃありません。これは一つ跡始末であるわけです。ですから、外交問題というものは、やはり非常に慎重に取り扱わぬと、あとになってあれは失敗だったというようなことになるわけです。しかも、その結果は、全国民あるいはわれわれの子孫にも影響するわけですから、私は、非常に慎重でなければならぬ、かように思っているわけです。  今請求権の問題で伊関アジア局長が答えられましたけれども、これは、確かに、両国の間に請求権レベルで議論していたのでは、一体どれが法的根拠があるかということはなかなか一致しないと思う。韓国側は、少なくとも請求権に関する要項というものを日本側に突きつけまして、これが法的根拠のある請求権だと思っているわけですが、われわれが見て、この中で根拠のある請求権というものは、今伊関局長が言われたように、個人に対するものを中心としてごくわずかなものであろうと思います。ですから、なかなか一致するはずはないので、そこで、請求権レベルではだめで、あなたの言う高い次元からということになるわけです。それはけっこうだと思うのですけれども、しかし、韓国側にとりましては、われわれが高い次元解決したと思っても、そして、現在の政権との間では腹と腹で請求権問題は一切解決したのだという結着がつきましても、おそらく韓国政権は今後いろいろ変わるわけです。少なくとも現在の独裁的な形が改められるということはすでに約束されているわけですから、これは政権に対して何らかの変化があるということは間違いないわけです。今次の交渉におきまして、あなたは高い次元において解決したいと言われる。これは、今度一応請求権という言葉はたな上げするということだと思いますが、たな上げにして話し合いがついた、そして、李ラインの問題、竹島の問題、これが日韓交渉においてわれわれが解決しなければならない問題だと思うのですが、この問題は一応解決がついた、そして、無償供与とか何とかいう形で、請求権という言葉は用いないで、そして解決がついたと仮定します。その場合に、韓国側法的根拠ありと考えている請求権は少なくとも七つ主張しているのですから、後になって、そういうものが解決されていないのであるということを他の異なった政府によって主張されたのでは、これはとんでもない迷惑になるわけです。現在、李ラインとか竹島とかいうものは、非常にはっきりした言葉で言うと、請求権というもののカタにいわば取られているような形にもなっているのですから、だから、もしも、いや請求権解決していないのだということになって、そして韓国政府のあり方としては再びカタとして何らかのものを取るというような乱暴なことをやらないとも限らないわけでありますから、請求権という言葉を使わないで韓国請求権に対する主張というものを終局的に引っ込めさせることができるかどうか、これは重要なことだと私は考えますが、これについて承りたい。
  21. 大平正芳

    大平国務大臣 何事によらず慎重にやらなければなりませんが、特に外交につきましては非常な慎重な態度をもって当たれという御忠言に対しましては、その通りにお受けいたしまして、私どももそういう心がまえで対処いたしたいと思います。  それから、請求権問題をたな上げしてということは私ども毛頭考えていないのでございまして、請求権問題はもとより、その他の懸案も一括同時に解決がつくというふうにいたさなければ、問題をあとに残すようなことではいけないと考えておるわけでございまして、請求権レベルで云々の問題と、それから請求権をたな上げするのだということとは別問題でございまして、客観的に請求権の問題はこれで最終的な解決を見たという保証のない限りは、この結末をつけることはできないと考えております。
  22. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員 それは当然そうあるべきで、はっきり答えられて、安心いたしました。韓国が、請求権という問題を非常に強く、日本から考えますと不当のような主張をする、それから李ライン等に対しても明らかに国際法を無視した不当なことをやっておるということなんですが、私は、これは韓国の立場から見ますると十分同情すべき点がある、こう思う。というのは、韓国政権は非常に不安定だ、李承晩が悪政をやった、張勉がでたらめをやった、あるいは現在の朴が独裁者だ、いろいろ韓国に対する批判がありますけれども、しかし、韓国の経済状態というものを見ますと、なかなか、韓国にノルマルな政治、ノルマルな外交要求することは無理であるというようなことに考えられるわけです。外務大臣もよく御承知と思いますけれども韓国の経済は、北の半分をちぎられて、どっちかというと北の半分に内臓のいいものがあったと言ってもいい。ですから、南半分の経済というものはいわば半身不随のアンバランスの経済になっているわけです。農民が七百万くらいいて、それで七〇%くらい労働人口を占めているわけですが、その所得が、韓国政府の発表によると、国民総所得のパーセンテージからいくと四五%弱。そうして、商業とか、公務員とか、軍隊ももちろん入っているでしょうけれども、それから金融業とか、そういう直接生産に携わらない不生産的と言ってもいい層の国民総所得において占める比率がやはり四五%弱、農民の総所得より少し多いくらいの状況なんです。そうして、製造業の国民所得というのはわずか七%という状態です。これは一九五八年ごろの韓国の内務部で発表した統計ですから間違いないと思いますが、そういうものです。それで、われわれが特に韓国との経済交流等の際に当てにしなければならないものは地下資源だと思います。鉱業、マイニングだと思いますが、こういう鉱業に従事する層の国民所得において占むる比率というものはわずか〇・七%ですよ。ですから、南韓国の経済というものはどのくらいアンバランスであるかということがわかる。そうして、これを補うものはアメリカの経済援助である。これはフルブライトが向こうの上院で発表しておりますが、もうすでに四十五億ドルくらい入れておる。そのほかに軍事援助、これは発表されておりませんけれども、おそらく相当なものが入っている。朝鮮戦争のときにはそのほかにアメリカは二百億ドルぐらい使った、こういわれておるわけであります。韓国においてアメリカはうんと金を使ったのですが、韓国の今言った経済の非常なアンバランス、これは、これをそのまま放していたならば死んでしまうような、子供で言えば超重症心身障害児童と言うことができるわけです。日本韓国と今後ほんとうに親善をするという場合には、この重症の韓国経済を手放さないというしっかりしたアメリカの保証がない限りは、日本もなお十分強くない経済力で、大へんな子供を背負い込むということになるわけですが、こういう点について十分お考えになったことがあるかどうかということを承りたいと思います。
  23. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもは、隣国である韓国の方々が平和のうちにその安寧と福祉の水準を上げて参ることを希求いたしております。それで、今宇都宮委員の言われたように、韓国が資源賦存の状態から申しまして非常に恵まれていないということも承知いたしております。しかし、この資源に恵まれる恵まれないの問題は相対論でありまして、日本の国なんというものも、そんなに資源に恵まれた国ではないと思います。問題は、やっぱり、あそこにおる二千数百万の方々が、十分のそれに適したそれぞれの職場を与えられて、その労働力を有効に動員発揮していくということにならぬと、なかなかあの国の経済の安定とかあるいは成長とかということは望み得ないのじゃないかと思います。今、世界をあげて、低開発圏に対する経済協力という意味で、先進工業国がいわゆるコンソーシアムをつくりましていろいろ工夫をいたしておりまして、わが国としても応分のそれに対する協力をしようじゃないかということで、すでに投資を始めておることは御承知の通りでございまして、私は、低開発圏という領域の中に韓国も考えられてしかるべきだと思いますし、また、それに対して先進国がその経済開発ということに協力し合って参るということもけっこうなことだと思うのでございます。そういう意味で、しかも現在、御指摘のように、アメリカは、韓国条約を結び、国連軍の名においてたくさんの軍隊を置いておりますし、これに関心を持たれて、韓国の経済の開発につきまして非常に大きな役割を持っておることも事実でございますし、また、そういう有力な協力者がないと、御指摘のように、韓国の立ち上がりということもむずかしいと思いますので、これはそういう世界的な機運でもございまするし、私どももそういうお互いの経済協力をもちまして低開発圏の開発に当たるという基本の筋はその通り心得て参りたいと思うわけでございます。アメリカ韓国に対する政策をどうされるかということは、将来のことはよくわかりませんけれども、しかし、世界的には今そういう潮流にあるということ、そして、そういう筋に私どもも参加いたしまして応分の協力をするということは当然なすべきことだと心得ております。
  24. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員 もちろん、韓国を低開発国として世界の有力な国家が開発の対象にする、そして韓国の経済状態が改善し国民生活が上がるということも、これは非常にけっこうなことでありまして、私どももともに希望するところですけれども、しかしながら、韓国の場合、普通の低開発国問題と違いまして、すでに何度か経済計画等も立てられまして、アメリカが相当大きな投資をして、そして失敗した。その失敗責任というものが、常に、李承晩であるとかあるいは張勉であるとか、まだ朴政権責任を負っていませんけれども、そういう政権責任とされているわけですけれども、しかしながら、韓国の経済の実態、北鮮とはっきり分かれている経済の実態、特に南朝鮮の方の状態を見ますと、これは、簡単に低開発国開発というような方向で解決し得るほど、それほどのん気な状態ではないというふうにわれわれは考えているわけです。先ほども申し上げましたように、ああいう国家は珍しいですよ。国民所得の四五%弱が農民の所得である、それから商業とか金融業とか公務員とかあるいは不動産売買業とか、そういう全く不生産的な層の国民所得が四五%弱という国家は珍しい。私の統計は一九五七年か八年の統計で、根拠はいつでも示しますけれども、そういう国は珍しいわけですね。そういう四五%の不生産的な層というものは、今京城に二百八十万の人が集まっているといわれますが、その中にはもちろん失業者があるでしょうけれども、しかし、今言ったような層の人が多い。そういう人たちの所得をまかなっているのが今までのアメリカのいろいろな形の援助だったわけです。ですから、これから一体どう産業を興していくかという問題はきわめてむずかしい問題です。日本との経済交流の場合に、一番簡単なのは、米を買ってやる、農産物を買ってやるということが一番いいし、それから、工業を興す場合でも、軽工業などをどんどん興してやればいいのですけれども、そうなると日本の農業とか中小企業との競合もあって、日本との経済交流というものはうまくいかない。宿命的に日本との経済関係には問題があって、南韓国というものはむずかしい。だから、われわれはこれに対してはよほど慎重に臨まないと、とんでもないお荷物を背負うことになる。そうして、アメリカでは、ハンフリーあるいはマンスフィールドなんという人が、どうも金ばかりかかってしょうがないから何とか考えなければならぬ、それで何とか南北を統一してオーストリア風の中立国家にでもしたらいいじゃないかというようなことさえ言ったことがございます。現在はどうか知りませんが、そういう意見アメリカ政界に出ている状態であります。だから、われわれは、日本韓国に深入りする場合には、アメリカ韓国の経済状態を絶対に見捨てない、もうドル防衛でどんどん減らしていくのだというような心細い態度アメリカがいって、それに日本が乗るというようなことになると、これはアメリカがある意味では過去の経済をさんざん甘やかしたあとですから非常にむずかしい。今言った四五%の国民所得の中の不生産的層の所得を何とか変えていくまで養わなければならぬということにもなるわけなんです。われわれの心配するのはそこなんでありますが、特にそういう点においてアメリカ政府によく念を押されたことはありますか。
  25. 大平正芳

    大平国務大臣 宇都宮委員の御心配するところはよくわかりますが、そういう韓国が非常に困難な状況にあるということもよくわかるわけでございます。しかしながら、われわれはそれを背負い込むほど力がございません。私が申しましたのは、日本が応分の協力をするということでいきたいということでございます。それ以上のことをやれという議論がありましても、日本の実力はなかなかそんなにないと私は思うのでございます。その前提としてアメリカがどう考えるか、今後の対韓政策をどのようにするつもりかということにつきまして十分御懇談を申し上げた機会はございませんが、そのことと今私どもがやっております日韓折衝ということとは別問題でございまして、この問題は私どもはあくまでも自主的にやるべきものと心得ておるわけでございます。アメリカと対韓政策につきまして十分の協議をしたかということにつきましては、まだそういう機会は持っておりません。
  26. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員 伊関局長に伺います。ここに外務省の文書があるのだけれども、この中に、あなたが、去年の何月でしたか、駐日韓国代表部李東煥公使に対して、日韓交渉を始めるためには、日韓交渉を十分軌道に乗せるためには、日本としてはどうしても韓国の流動するあるいは不安定な経済・政治情勢を把握しなければならぬ、だから、日韓交渉を妥結させる前提として、京城に日本代表部を置きたいということをあなたは申し出られたことがありますね。そして、それについてあなたは現在どう考えておられるかということを伺いたいと思います。
  27. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 交渉をいたします上からいたしましても、また、隣の国でございますし、常に韓国の内部情勢を的確に把握しておきたいという気持は同じでございます。そのためには代表部を置くということが一番望ましいことでございますが、これは先方がいろいろな理由でまだ早いということを申しておるのでありまして、それにかわる措置といたしまして、随時外務省の者あるいは関係各省の者を出張させるというふうな方法をとっておるわけでございます。
  28. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員 外務大臣は、アメリカにかわるような大それたことはしない、——もちろんできないからですね。しかし、応分のことをやるんだ、こういうことを言われておるんです。しかし、日本外交ですから、ただ近所づき合いみたいに応分のことをやるというわけにはいかない。それが日本の国家、外交国民にとってプラスになるということが条件だと私は思います。プラスということのうちには、マイナスを消すということもプラスですね。そういうことを含めてプラスになるということが条件だと思う。そのためにも、漫然とただ韓国に幾らか力をつけるということでなしに、向こうの政情とか経済状態とかをよく把握してやるということは絶対条件であると思う。特に、無償供与その他を出す場合には、これは韓国国民に対する援助になるわけですが、直接にはその政権、その政府に対する援助になるわけであって、その政権、その政府国民に非常に不人気であるというような場合には、かえってそのお金はその国民日本との間を離す結果にならないとは限らないわけです。ですから、伊関局長が、韓国の政治及び経済情勢を把握するためには向こうに代表部を置いてそれを交渉の前提にしたいということは、私はきわめて当然だと思うのですが、外務大臣はどうお考えになりますか。
  29. 大平正芳

    大平国務大臣 漫然と応分の協力をするということでなくして、日本の国のマイナスにならない、あるいはマイナスを消し、あるいはプラスになるという方向で考えなければならぬというおさとしでございますが、その通りと心得ております。従ってまた、韓国の政治経済の状況について特に十分通暁しておるということも大切な前提条件だと思うわけであります。そういう話し合いが過去においてありましたが、今局長が御説明申し上げましたように、先方がまだそれを応諾していないということも事実でございます。従って、私どもとしては、あらゆる手順を尽くしまして、常時韓国の状態を把握することには努めておるわけでございます。今御指摘の問題は、せっかく予備折衝に入っておりますので、その過程におきまして私ども主張は先方に納得していただけるように努力をいたしたいと思います。
  30. 宇都宮徳馬

    宇都宮委員 それでは、もう時間があまりございませんから、韓国問題について一つ希望を申し上げますが、ただいま申し上げたことも同時に希望にもなるわけですが、さらに二、三点希望を申し上げたいと思います。  われわれは自由主義陣営ということを言っております。共産主義が悪いのは独裁だから悪いと言っておるわけですから、もし自由主義陣営の一員として韓国を支持する場合には、韓国政権が可及的すみやかに自由な国民の意思の基礎の上に立った政権になるように、日本が友好関係を自由主義国家として結ぶ以上は、そういうことを推進する責任日本国民に対しても私はあると思います。私は何も朴政権が独裁だからつき合うなとは言いません。私は、ソ連とも中共とも、いわゆる平和共存の原理で、政権、政体、やり方が違っても、国民的利害があちこちで錯綜するのだから大いにつき合って相互利益を増進した方がいいと思うので、李承晩政権なり今の朴政権がどんなに独裁的であっても、それゆえにつき合うなという主張は申しませんけれども、これを反共の拠点であるとかあるいは自由主義陣営の有力な一員であるとかいう立場から支持するならば、その限りにおいてはかの政権をもっと自由な形をとらせる責任が、日本自由民主党の政治家の日本国民に対する道義的責任として私はあると思います。そうしないと、日本自由民主党は何を言っておるのかわからなくなりますから、そういうことを一つ私は希望したいと思う。  それから、もう一つは、現在アジアには、朝鮮、中国、ベトナムという三つの分裂した国家があるわけです。世界の分裂した国家としてはドイツがそうですが、このアジアにおける分裂をこの交渉が促進することはない、つまり、緊張の激化という言葉で言ってもいいでしょう、そういう方向に追いやらない、日本外交がそういう責任を負わないような注意を持ってやっていただきたいということです。  それから、もう一つは、これは巷間のうわさに関連するようなきわめて卑俗なことになるわけですが、日本は戦争の跡始末としてあちこちだいぶ賠償を払いました。この賠償はだれそれのポケット・マネーではなくて、国民の税金によって払っておるわけです。ですから、これは戦前の外交の誤りの責任国民が負って現在清算しておるということなんですね。国民は損をするのだけれども、しかし、フィリピンにしろインドネシアにしろ、その賠償を多くは物の形で納めることになるわけです。そうすると、国民の税金で政府なり向こうなりが物を買って、そしてその物を買う相手は日本の商社とか日本のメーカーというものです。そういうものから買って向こうに送る。日本政府が買う場合よりも向こうが買う場合が多いのですが、そういう形になるわけです。フィリピンのこの前のガルシア大統領なんかは賠償をめぐる汚職によって倒れたということさえいわれた。これは事実でしょう。そういうことがあったけれども日本国民は税金を払うわけだ。いくさに負けて、外交失敗責任を負って、そして今度は現在の外交において賠償を払うことをきめて、そして自分の税金を払って、税金が、たとえばフィリピンなりそのインドネシアなりあるいは朝鮮なりとのほんとうの親善増進に使われずに、ただ業者がもうけちゃったり、その間で何か取引があったりということで疑惑を生むということは、私は国民としては耐えられないと思いますから、そういう国際的な賠償とか請求権とかという資金の出し入れに関して業界的利益に左右されないようにお願いしたい。国民は税金を払うんだけれども、その税金で何でもいいから物を買われどこかへ持っていく、業者の方はこれはもうかるのですから、そういう業界的利益に日本がお金を払うという外交外務大臣は絶対に動かされないように私はお願いしたいと思います。これは私は単なる危惧として言っているのではなくして、日本の保守党の正義、あるいは日本の政党政治の正義のために、あなたは政党出身の大臣として、この点は一つしっかりして、そういう業界的利益によって外国にお金を払うというようなことがないように、この点は国民にはっきり申しわけが立つようにやってもらわなければならぬということを申し上げる次第です。  まだちょっと時間がありますので、最後に伺いますが、この前池田首相のところへ石橋さんと一緒に行きまして、中国貿易を大いにやりたい、大体こういう印象を私は直接総理大臣から聞いたわけです。詳細はここでは申しません。そういうことを聞いた。そこで、今の中国は、政経不可分などとやぼなことはおそらく言わぬだろうと思います。しかし、片方の手で横びんた、をしておいて、片方の手で握手するというようなことはなかなか外交上できないことであります。ですから、朝鮮問題なんかも、やり方によると中国に対する横びんたということになるけれども、これは日本と別の国との外交ですから、一応別として、ただ、中国に対する外交において、例の中国の国連加盟の問題があります。去年は、それを重要事項に指定するという方式で、いわば日本外交は逃げたわけですね。それも、しかし、単に逃げるだけではなくて、あのとき岡崎国連代表に政府は指命を出しまして、それで日本政府は多少新しい態度を示したわけです。それはどういう態度かというと、まあ一口に言えば、中国大陸の現実を否定するわけにはいかない、今までの台湾一辺倒というような態度じゃなしに、中国大陸において六億五千万なり七億なりの国民を現実に統治している政府のあるというその現実を否定するわけにはいかないということをその岡崎発言の中で政府は言わしているわけですね。ですから、あれは単に重要事項方式という形でごまかしただけなんではない。やはり日本政府としては一歩前進したところがあるわけです。その前進を、無理な形でもっと前進しろということは、これはむずかしいでしょう。あなたは、無理のない形でその前進を継続するつもりがあるかどうかということを私は最後に質問申し上げたいと思います。
  31. 大平正芳

    大平国務大臣 日韓問題に対して三点にわたって御注意がありました。十分戒めてかかりたいと思います。  それから、中国代表権の問題につきましては、ただいまのところ、去年私どもがとりました態度を変えるという意図を持っておりません。
  32. 野田武夫

    野田委員長 帆足計君。
  33. 帆足計

    ○帆足委員 最初に、人物論をいたすわけではありませんけれども、前の外務委員会におきましての外務大臣は、多少大臣疲れをなさったのか大臣ずれをなさったのか、御答弁が軽薄で、私どもは次第に満足感を持たないようになって参りました。今新大臣を迎えまして、新大臣は芒洋たる性格のお方のように見受けられますが、御答弁を伺いますとなかなか慎重で、そうして含蓄が深いというか、この含蓄が深いために私どもに多少聞き取れぬ個所もあるようでございます。私どもは、この国会質問いたしますのは、長い間の悪習で質問という言葉を使っておりますが、質問ではなくして、政府ほんとうに考えていること、一般の国民各位が知ろうとして知り得ない点を国民にかわりまして国民の前に問いただして、そうして、あわせてわれわれの要望も聞いていただく。従って、私どもは相撲部屋の呼び出しやっこではありませんから、ただ政府の言うことを拝聴して聞き流すというわけには参らないのでありまして、何千万の支持を得ております野党の言うことも一つよく聞いていただきたいわけです。  きょうは、私は、時間も限られておりますから、今まで必ずしも論じ尽くされていない日韓問題と沖繩の問題につきまして、きわめて常識的に、平凡な、日本国民がだれしも心配している点について重ねて問いただしたいと思うのであります。  第一は、例の請求権の問題でありますが、ただいままで請求権の解釈についてたびたび伺いましたが、それがどうも、いろいろ資料不足等のため、また、朝鮮側の要求が必ずしも論理的でないために、無償供与というような形のオブラートをつけて、さらに経済借款、この三つで問題をおまとめになるように新聞は伝えておりますけれども、ただいま宇都宮君の質問もありましたように、こういう問題に政治的配慮は多少は必要かもしれませんけれども、あまり無原則になりますると国と国との関係が乱れるもとになるわけでございます。たとえば、請求権の問題にいたしましても、十分な統計も不足だとすれば、北朝鮮についての部分と南朝鮮についての部分はどのようにお考えになりますか。あるいはまた、南朝鮮へ相当額それを供与するということになれば、当然同じ論理で北朝鮮も要求いたしましょうし、戦争もなかった朝鮮がそれだけのものをこまかく要求し、それにオブラートまでつけるということになると、——新聞ではそれを祝い金と書いてありますが、私ども国民としてはこれを非常に不愉快に思っているわけであります。お隣で新築でもしたなら祝い金もいいでしょうけれども、御自分のポケット・マネーでもないものを、国民の膏血をただほしいままに一内閣、一政党が祝い金としてオブラートに包んで差し出す、そのような印象を与えたのでは、また、そういう内容と論理を持ったのでは、釈然としないと思います。戦争がなかった朝鮮にそれほど出すならば、二十年にわたって苛烈な戦争をやり、一千万をこえる死傷者を出したといわれる中国大陸の方から、同じ論理で、すなわち普通の自由主義的論理をもってこれに適用してもらいたいというような連鎖反応にでもなったら、どうなさるのですか。目前の小事にとらわれて、そういう大局についての考慮がないのではないか、これは国民のだれしもが心配しているのです。外務大臣はどういうような論理と見通しを持っておられるか、伺いたいと思います。
  34. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど宇都宮委員からのお話にもございましたように、請求権というものを究明し、その上で懸案の解明をはかっていこうと努力して参ったわけでございますが、法的根拠の解釈論、事実関係の認証その他におきまして、なかなかこの問題をそういう方法において解決して参るということは効果的でないのではないかという判断をいたしておりますことは事実でございます。しからば請求権問題の解決はどういう方法によるかということにつきまして、若干工夫をこらしてみていることは事実でございまして、あらまし先方にも私どもの考え方をお伝えいたしまして、考慮を願っておるという段階でございます。世上、新聞等を通じまして、この問題はいろいろ取りざたされておりますけれども政府として公にいたしたことはないのでございます。たびたび予算委員会等におきましても問題となりまして、非常にかたくななようでございますけれども、今の段階はしばらく政府の方に一応おまかせいただきたい。しかしながら、今帆足委員から御注意がございましたように、一政府、一政権、一政党が勝手気ままにやるというわけではなくて、たびたび申し上げておりますように、国民の方々に御納得がいくように始末をつけなければならぬということが、日夜私どもの念頭を離れないことでございます。十分心して当たるつもりでおります。
  35. 帆足計

    ○帆足委員 私が御質問した肝心のところを御答弁願わなかったのですが、これは国の利益とも関係がありますから、その連鎖反応が中国から同じ論理を突きつけられたときにどうお考えになるかということを深くお考えいただき、今御答弁願いますことが一体日本の国としていいことであるかどうか、多少私も疑問に思いますから、一つ厳重にこの点は自粛自戒して、保守政党なら保守政党なりに論理の範囲内でやっていただきたい。  それから、先ほど宇都宮委員の御論議を拝聴して、日独伊防共協定に私どもが十分国際情勢を認識せずに迷い込んだのは大きな迷いの道の第一歩であったことを大島前大使が述懐したというお話を伺いました。アメリカの背景として、南ベトナム、台湾、朝鮮、日本を結ぶ一つの軍事戦略が進んでおる。これをNEATOの線とも申しておりますが、これは、アメリカ国防軍、すなわち、アメリカ国務省の世界政策というよりも、もっと端的に言えば、アメリカの職業軍人の、政治的というよりもアメリカの肉体的な要求から出た一つの戦略というものがあるわけです。肉体の道に巻き込まれることは私は危険であると思う。精神の道ならば国連で話し合う余地がありますけれども、肉体の門はどうもあぶない。従いまして、野党からたびたびこの質問が出るのに対して、そういう考慮はないと言われるのですけれども、それを背景といたしまして、きょうの新聞を見ますと、日韓交渉がうまくいかぬならば、その差額の請求権、向こうの要求が満足できないでいるその差額は、ガリオア資金等で日本から返してもらった金で穴埋めをしようという議論が出ております。まさかそういうことに日本政府がタッチしたとは思いませんけれども、それではまるでアメリカアジアにおける二つの州に地方交付金をうまくくれてやって調整してやろうというような感を受けるわけでありまして、万一そういうことがあるとすれば、私は内政干渉もはなはだしいと思う。アメリカ韓国に対して適切な援助をしたいならば、独自の立場で、われわれと関係なく援助すればよいことであって、われわれの請求権の査定の金額が多いとか少ないとかいうことを横で観察しておって、われわれより早く情報を知って、その差額はガリオア資金で穴埋めしてやるからこの辺で妥結してやったらどうかというようなことが新聞に出るということは、まことに不愉快しごくなことであると思いますが、外務大臣はその情報についてどのようにお考えになりますか。
  36. 大平正芳

    大平国務大臣 NEATO云々というような考え方も、構想といたしまして政府としては全然考えていないことは、たびたび申し上げておる通りでございます。  それから、今の情報でございますが、私どもといたしましては全然関知いたしておりません。
  37. 帆足計

    ○帆足委員 今のようなことは全然御関係がないというふうに承りましたが、李承晩ラインの問題と並んで、朝鮮人の国籍の問題、竹島の問題も、朝鮮側としては、いわれなき理由をつけてなかなか承知しない。李承晩ラインに至っては国際法無視もはなはだしい。この二つの問題の解決なしには朝鮮との間に妥結には至らぬというふうに今まで伺いました。しかし、新聞には、そういう問題の一部が未解決でもたな上げして共同声明方式で結局朝鮮は食い逃げしてしまうであろう、日本アメリカからいろいろな干渉を受けて、食い逃げをされても、目前の安きについて、そうして代表部の設置くらいでお茶を濁しはしないかということがしばしば伝えられておりますが、李承晩ライン、竹島ラインの問題等を未解決のままにしておってなおかつ国交回復に進むおつもりはないという御答弁は、われわれはそのまま信用してよいかどうか。  それから、国籍問題につきましては、日本に六十万人朝鮮人がおりまして、うち四十万は北に向いておる。国籍選択の自由は国際連合における基本的人権の一つでございます。従いまして、国籍の差によって南北の差別待遇をなされはしないかという不安を朝鮮の諸君は非常に抱いております。また、南から来ておる多くの朝鮮の方々も、今の過渡期のちょっとした誤解のためでも投獄され死刑になるというような、善意に解釈しても過渡期の混乱の朝鮮をおそれまして、自由主義的独自の言論、思想を持っております者は、必ずしも社会主義的思想を持っておる者でなくとも、普通のラジカル・デモクラット、アメリカ国務省のような考え方を持っておる学者諸君も、日本に来て勉強して、ふるさとに帰るのをしばらく延ばしておるというような人たちも多いわけです。国籍問題を種にして南北差別待遇があり、あるいはまた、それを種にして南に強制帰国を命ずるというようなことが起こりはしないかということを、南北ともに居留民は心配しておるようであります。それに対する大臣の御見解なり、また、専門の立場から言えば伊関さんの御見解を伺いたい。
  38. 大平正芳

    大平国務大臣 前段の、懸案をたな上げにしたまま国交を回復する、打ち立てるということは、全然考えていません。諸懸案一括して最終的な解決を見ない限り、今後国交の正常化というのはやるつもりはございません。  それから、後段の国籍問題につきましては、アジア局長から答弁いたさせます。
  39. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 国交が正常化しました際に韓国への強制帰国があるかどうか、こういうことは全然考えておりませんし、また、問題になったこともございません。協定ができました場合に、要するに、韓国籍として取り扱われることを希望しない人たち、あるいは北鮮系もございましょう、あるいはいずれにもつかない人たちもおるのじゃないかと思いますが、こういう人たちがどうなるかという点は、まだ韓国系の人の扱いがはっきりきまっておりませんので、それがきまりました上でこういう問題についても考えなければならぬと思っておりますが、結果的には、実質的には、特にその間に差別がないようにいたしたい、こう考えております。
  40. 帆足計

    ○帆足委員 今の伊関局長の御答弁は一応そのまま信用するといたしまして、しかし、いずれにいたしましても、あと十年もすれば人類の平和の日が来ようとだれしも期待しておる。現在は世界の一つの端境期であります。ただ一つ心配なのは、部分戦争のあらしに巻き込まれはしないかということであります。正義がどちらの側にあろうとなかろうと、そういう歯車に日本を巻き込ませないように互いに努力しなければならぬ、私はこういう時期であると思うのです。その点において、理由のいかんを問わず、沖繩と日韓問題、この二つの問題は、日本の国際問題の焦点である。取り扱いを一つ誤れば、むしろ国際緊張の激化の方に引きずり込まれるし、また、その責任を追及される。これらの問題については、現在の保守政党が取り扱わないというわけにはいかない。しかし、取り扱わざるを得ないときは、大臣としては、国際緊張緩和の方向で取り扱うように暫定措置でもしていただきたい、せめて次善の策としてそのようにお願いしたいというのが私どもの気持であるが、しかし、現在の政府の行き方を見ると、岸内閣と五十歩百歩であって、いつしか追い詰められて、国際緊張激化の方に、火中のクリを拾おうとし、それが連鎖反応して、せっかく緊張が緩和されつつあるときに新しい無用のこぶをもう一つつくることになりはしないかということが、野党か今日韓交渉に絶対的に反対している理由であることは一つ御理解願いたいのですが、外務大臣は、日韓交渉の持って行き方次第でこれが逆に国際緊張の激化になるということについて深く考えていただきたい。この点について御感想を一つ……。
  41. 大平正芳

    大平国務大臣 国際緊張が緩和する方向に外交を進めて参るのは当然でございます。十分そういう心がけで参りたいと思います。今の日韓交渉を進めて妥結をはかることが国際緊張を激化することだときめてかかられますと、私どもそう必ずしも考えていないのでございまして、現在韓国に対しまして五十一カ国が承認をいたしておりますが、それが五十二になるということで基本的な東西の関係がそんなに激化するというように見る見方に対しまして、私ども必ずしも賛成いたしていないのでございます。東西関係の問題、国際緊張の問題というのは、非常に根が深い、腰の重い問題でございまして、日本といたしましても、あらゆる場で応分の協力をやって参らなければならぬことでございますが、その角度から見て、今私どもがとっておることがその緊張関係を激化さすというような種類のものとは私ども考えていないのでございます。
  42. 帆足計

    ○帆足委員 私は、きょう並びに今国会における外務委員会において野党が問いただし、政府が答弁なさったことを政府側が誠実に実行に移そうとなされるならば、おそらく日韓会談は今の朴政権の性格のもとでは困難であろうという見通しを持っておりますが、しかし、いずれにしましても、それが妥結されることは各種の連鎖反応を持ちますから、やはりこれには賛成しがたいと考えております。といって、政権を担当しておられる保守政党としてほうっておくわけにいかないとなれば、事務的関係にとどめていただきたいということを切望しておるわけです。幸いにして、——私ともの方から見れば幸いにして、これは妥結しない方がよかろうと思っておりますが、妥結しないでお困りであるならば、あとの収拾策は事務的関係にとどめておいても、与野党ともそれほど支障のないやり方もあろうと思いますから、一つ外務大臣もお心を広く持たれまして、いちずに、無理をしてまで、この外務委員会におけるお約束を破ってまで成功させようなどというようなことはお考えにならないようにお願いいたします。  それから、沖繩のことにつきまして、本年一月のケネディ声明はまことに不満足でございましたけれども、二月に沖繩の立法府が施政権返還の満場一致の決議をしましたことは、非常に大きな影響を世界に持ちました。同時に、わが国会におきましても、それを間接に援護し、祖国復帰を推進する決議をいたしました。また、ケネディ大統領の弟の司法長官も、日本に来て、沖繩の復帰についての日本国民国民的感情の熱烈なことを知って、ワシントンに帰りまして、お兄さん、日本の沖繩復帰の要求国際法的に見ても正当であるし、国民感情としても根強いものであるというようなことで、とにかく返還のスケジュールくらいは立てておくべきであろうというような結論になったかのごとく、三月のケネディ声明は、とにかく日本の領土権を再確認する、漸次沖繩住民の施政権は拡大しよう、そして、経済の自立、民生の向上に協力しよう、こういう過渡期の案を出された。これを前向きと見るか単なる現状固着と見るか、人によって違いましたけれども、とにかく沖繩住民もこれに対して大いなる期待を置いたことは御承知の通りでございます。先日も前の外交委員長である床次さんと話し合ったのですが、最近国防省がまたこの線から後退しつつあるようですけれども自分はケネディのラインを信ずる、こういう床次さんのお話でした。これは座談会の席のことでありますが、とにかく、三月のケネディ声明の線を一歩前進させる方向に向かうことは国際緊張の緩和になりますから、それはそれなりにおいて半歩前進になるでありましょうけれども、プライス勧告案の審議の過程を見ますと、最近外務省関係の外廓団体から資料が出て、希有なる沖繩の戦略的価値という表題のもとで、上下両院における外交論議の全速記録が掲げられております。私はこの速記録を読みまして肝をつぶしました。国がかわれば、立場がかわれば、これほどの認識不足があるか。これは全国会議員の必読の書であると思います。アメリカ上院、下院議員の中にも、このくらい無知文盲のやからが多いか。また、中には、目を開いて日本の立場をよく認識して、これはアメリカがとにかく国際法的にも国際連合の形からしても無理があるから、二千五百万ドルくらいの金がどれほどのものかといって説得している議員もありました。アメリカの今日の政界の一幅の歴史の絵を見るような思いのする速記録でございます。ところが、最近におきまして、この委員会においてだんだんお流れになりそうだという報道が入っておりまして、せっかく政府から派遣いたしました第一、第二経済調査団も、それではプライス勧告案の審議の方向と歩調が合わないというようなことを心配いたしておりますが、政府は、ただいまの情報でこの問題についてどのような見通しを持たれておりますか。これはこの臨時国会におきまして実は第一に外務大臣にお尋ねせねばならなかった問題でありましたが、今日までその機会がありませんでした。一つ政府の見通しのほどをお知らせ願いたい。
  43. 大平正芳

    大平国務大臣 本国会におきましてたびたび申し上げたわけでございますが、今、下院を通りまして、上院の方で御審議があるようでございます。いろいろな論議がありますことは私どもといたしましても承知いたしておりますが、私どもといたしましては、アメリカ政府も懸命に努力をされておるようでございますので、近くプライス法の改正案は成立するものと期待いたしておりますし、それは従来の対沖繩援助計画を相当大幅に前進したものになるであろうということを期待いたしております。
  44. 帆足計

    ○帆足委員 この調査団が参るにあたりまして、その前に沖繩立法府の議長さん、並びに各党代表がこの外務委員会に見えまして、参考人として陳述されました。その提出されました沖繩住民の要望というものは、実に着実な御要望でありました。与党、野党の区別なくこの要望書に私どもは納得して賛意を表したのでございます。そのときの要望の第一は、祖国に復帰するということと、自治権の拡大ということ、それを前提として、一切の民生の向上、経済の安定をしてもらいたいということ。しかるに、調査団が参りましたときは、祖国復帰、または祖国復帰までいかなくても、自治権の拡大ということについては全然触れないでやろうではないかということで、現地と摩擦を起こしておりましたことを見まして、私はまことに残念だと思いました。ケネディ大統領は日本に領土権があることを認めまして、その領土権から演繹して自治権の拡大に進む、自治権の拡大はやがて国際緊張緩和の暁には施政権返還への道程となる、そのために沖繩の民生の安定、経済の復興をはかろう、こういう論理でケネディ声明は構成されておる。しかるに、アメリカ国防軍が最近力を盛り返してきて、潜在主権とは第三国にこれを譲らないことを期待する権限だ、期待権だというような、いまだかつて国際法上ない言葉を発明、発見いたしまして、速記録にとどめておるのでございます。まことに不可解なことでございますが、このダレスが言うた潜在主権という言葉の解釈について、一体日本政府アメリカ政府が打ち合わせたことがありますか。そういう技術的な点に触れると外務大臣として御答弁しにくければ、専門家から伺っておきたい。
  45. 中川融

    ○中川政府委員 いわゆる平和条約第三条で日本に残されておる潜在主権の具体的内容ということにつきまして、日米間でその内容を特に打ち合わせたということはないのでございます。その平和条約第三条で、立法、司法、行政の三権を全部アメリカが行使するということを認めております結果として、日本としては、要するに、主権はあるけれども、主権の行使のうちの一番大きな実体をなすいわゆる施政権、立法、司法、行政の施政権アメリカ側にある、こういう事態でございますので、それ以上さらにその内容を特に突き詰めて打ち合わすということはいたしたことはありません。
  46. 帆足計

    ○帆足委員 三権ことごとく外国の手に移りまして、東京では友好と言っているが、沖繩では治外法権です。こうなっておれば、世にこれを植民地と言う。ライシャワー・アメリカ大使が、まだ今の御職業にお着きにならないで、多分カリフォルニア大学で先生をなさっておられたときでしょう、「太平洋の彼岸」という名著を出された。非常にすぐれた本です。これで沖繩のことに触れまして、率直に述べて、これを植民地的状況である、こう書いております。前の外務大臣は、わざわざ、それを言いたくないために、沖繩は植民地でないとがんばりましたけれども、私は、植民地という言葉より、少なくとも植民地的状況であるということはほんとうだと思います。主権から離れて三権ことごとく他国のもとに帰属しているという状況は植民地的状況であると思いますが、外務大臣はどのようにお考えになっておられますか。
  47. 大平正芳

    大平国務大臣 今条約局長から説明のあった通りだと思っておりまして、それを植民地状態であるというように帆足委員は規定されますが、私どもは、そういう三権の実体を行使できない潜在主権を持っておるわが国としては、そういう地域だというように思っております。
  48. 帆足計

    ○帆足委員 こういうことに対してはきはきしたことが言えない歴代外務大臣の御心境というものは、私は、明治は遠くなりつるかなという、すなわち、民族の論理について正確な土性骨をいつしか稀薄にしているというところでないかと思います。  そこで、沖繩の住民は、今まで、ボリビアの問題などで、だれがこれを保護するか、沖繩住民の福祉についてだれが保護するかということについて、過渡期にいろいろな苦しみをなめました。最近は、国外にあっては、日本大使館、公使館、領事館が保護に任ずるというふうにきまったと聞いておりますけれども、そのように明快な解釈をなさって、各大使館、領事館、公使館に通知を発して、海外にある沖繩県民に対してはわれわれと全く同じに保護するようになっておるかどうか、これが第一。それから、第二に、インドネシアの沖合いにおいて例の流弾に当たった事件がありましたが、その後船の国旗問題はどのようになったか。それから、沖繩住民の福祉に対して、私どもが関心を寄せ、その福祉を守る義務があると思うのですが、外務大臣はそのようにお考えかどうか。義務があってもそれを行使いたします権限が今奪われておるとしても、できるだけその義務を尽くすだけの誠意を持たねばならぬ。これは、政府として、また国会としての義務であると私どもは思いますが、外務大臣はどのようにお考えですか。その点を伺って、あと一問で終わりますからお許しを願いたいと思います。
  49. 大平正芳

    大平国務大臣 事務当局から答弁いたさせます。
  50. 宇山厚

    ○宇山説明員 沖繩につきましては、先ほどからお話が出ておれますように、日本は潜在主権を持っておりますし、また、沖繩住民は日本国民でござますので、この人々が沖繩及びアメリカ以外の地域にあります場合に、日本政府外交保護に当たるべき責任及び国際法上の権利を有することは当然でございます。ただ、沖繩におきます施政権は、沖繩の地域及びその住民に対してあるわけでございます。従いまして、アメリカも沖繩の人々を外国において保護すべき責任もあるわけであります。従いまして、外務省と申しますか、日本政府といたしましては、在外公館長に対しまして、その任国における沖繩出身の日本国民に対しては、米国と共同で保護に当たるようにという訓令が出ております。それから、第三点の、たとえばインドネシア水域で起こりましたような漁船及び漁民についての問題がありましたときには、さっそくただいま申し上げましたような趣旨で保護に当たっております。
  51. 帆足計

    ○帆足委員 現在はどうなっておりますか。
  52. 宇山厚

    ○宇山説明員 現在もそのようになっております。
  53. 帆足計

    ○帆足委員 漁船の国旗問題は。
  54. 宇山厚

    ○宇山説明員 漁船の国旗問題につきましては、以前より国会の御審議の際に質問にお答えして御説明申し上げましたように、現在沖繩に籍のあります船に日本の国旗は掲げておりません。掲げておりませんが、その問題が起こりました際に、直ちにその保護に応ずる措置をとっておりまして、最近においてはそういう問題は起こっておりません。ただ、この船の旗につきましては、それがはたして外国によく周知されておるかどうかということが問題でございまして、その点を調べましたところが、戦後直ちにそれを周知徹底するような措置がとられておることを確認いたしました。ただ、そういうことが、通知を受けた人たちにはわかっておって、通知を受けない人たちには十分徹底していないじゃないかというお話がございましたけれども、その点につきましても、ただいまのところでは特に問題は起こっておりません。ただ、今後もそのままにしておいていいかどうかという問題につきましては、ただいま対策を検討中でございます。
  55. 帆足計

    ○帆足委員 私ども大いに主張したいことがあるのですが、時間がなくてまことに残念です。  ただいまの国籍問題につきましては、外国ではこれは日本責任である、従って、アメリカと協力しながら保護に任ずる、そういう通知を発したということですが、外国すなわちアメリカがこれに対して比較的冷淡であったような場合、——アメリカ人はいなか者ですから民族的偏見というようなくだらぬものを持っている人がなかなか多い。われわれもあまり自慢できないのですけれども、そういう偏見を持っている人もある。持っていない人も少数ある。そこで、アメリカ側があまり熱心でないときには、日本政府の全責任において保護に任ずるというだけの一貫した態度をお持ちかどうか、それをもう一ぺん調べて、いずれまた臨時に外務委員会がありますから、そのときただしますから、もっと明確にしていただきたい。  それから、国籍の問題は、沖繩から外に出たら日本政府責任というならば、領海外に出た沖繩の船に日本の旗を掲げるという問題は、それに日本の船長さん、日本の乗組員が乗っていることでございますから、その人たちを守れるような措置について、原則的にもまた技術的にももう少し検討していただきたい。事が起こってからあとでうろたえたのではよろしくありません。これも御答弁で満足できませんから、もう少し突っ込んで責任を持っていただきたい。  最後に、沖繩の状況が植民地的であることは明らかであります。それをどうして日本政府が認めないのかわからない。与党の立場から言えば植民地的と言えばいいと思うのです。そこで、植民地解放宣言の趣旨は適用され得るところである。従って、施政権返還だけでもせめてしておいてくれ、こういうふうに歴史の流れに沿うた外交をなさるべきだろう。一体、沖繩のような状況に置かれておって、三権ことごとくなく、そうして治外法権になっているというところが幾つあるでしょうか。よく、英国にも軍事基地があるじゃないかと、まことにばからしいことを言うのですが、英国では治外法権になっておりはしないのです。従いまして、沖繩の状況は、私はこれはアメリカの恥だと思うのです。人民の手による人民の幸福のための人民の政府、こう言って独立したアメリカ、南北戦争を行なったアメリカが、沖繩で民主主義教育をするといっても、教育のしようがない。それは女郎屋のおやじが貞操を説くようなものです。ですから、沖繩の住民に自治権を与えておいて、そうして、対等の資格で、基地のこの範囲のものだけは一つ練兵場に貸してくれ、せめてこういうことでなければならぬ。ところが、新日本憲法というものがあって、核兵器直接出撃は事前協議を必要とするという、このように沖繩の住民の福祉に対し責任を持っている日本政府が、沖繩基地における核兵器の問題、海外出撃の問題等について責任に任じようとされておって、そして日本外務大臣が沖繩の基地に核兵器が入っておるということを言われたのに対して、私は現地で聞きましたが、キャラウェー弁務官はそれをよく知らない。それから副主席もそれをよく知らない。それをよく知らないようなことで沖繩の住民の福祉が守れるかどうか。きょうは時間がございませんが、そういう問題が残っておりますから、一つ野党の言うこととお聞き流しにならないで、おうちに帰って奥さんなりお嬢さんに相談なさって、きょうの野党質問は的を射ておるから、与党として何とかいたしてそういう不合理は少しは緩和しようじゃないか、そういう心持でやってもらいたいと思います。  時間があれば徹底的にこの沖繩について国際法上の基礎がないというところをぎゅっというまで私は明確にしたいと思いますけれども、時間がありませんから、これで終わります。
  56. 野田武夫

    野田委員長 戸叶里子君。
  57. 戸叶里子

    戸叶委員 私は日韓の問題について簡単に二、三点お伺いしたいと思いますが、おいでいただいた水産庁長官が、参議院の関係で大へんお急ぎのようでございますから、その方だけまず先に聞いておきたいと思っております。  水産庁にお伺いいたしたいと思いますが、李ラインの付近あるいはその中等におきまして、これまで拿捕された船がどのくらいであるか、そしてまた、そのときにこうむった損害はどのくらいであるか、大体説明していただきたいと思います。
  58. 伊東正義

    ○伊東政府委員 李ラインの付近で操業しておりました船が拿捕されましたのは、昭和二十二年ごろからでありますが、現在までに約二百九十隻ぐらいだと思っております。帰ってきておりませんのが百七十隻前後帰ってきておりません。乗組員につきましては、三千五百人ぐらい拿捕されましたが、現在残っておりますのは二十七人ということになっております。  損害の問題でございますが、これは漁船そのものの被害がどのくらいかということでございますが、それに限定して申し上げますと、これは、先生御承知のように、現在漁船保険に特殊保険制度というのがございます。拿捕を特殊保険事故にした漁船保険がございまして、昭和二十六年からやっておりますが、これで国が支払いました保険金額が約六億六千万ぐらいになります。これは当時のものからずっと通算したものであります。ところが、これは、国が払いますのは九割ですから、あと一割は組合が払うということで、九割の金が六億六千万ぐらいでございます。そのほかに、実は保険に入りませんで拿捕された船がございます。これは、どっちかというと、小さい船、木船が多いのでございますが、これの数字が約五億前後あるのではないかということをやっていきますと、先ほど先生に申し上げましたように、国が払うのは九割であり、また、漁船保険につけますのが船価の八割程度が平均でございますので、そういうことをやっていきますと、十五、六億前後が船そのものの被害ではなかろうかというふうに推定いたしております。
  59. 戸叶里子

    戸叶委員 今三十三人残っている人たちに対しては、どういうふうなことをしていらっしゃいますか。
  60. 伊東正義

    ○伊東政府委員 これも、昭和二十八年から始まったのでございますが、閣議決定で、抑留されておる人の留守家族につきまして見舞金を出すというようなことが始まっております。その後数次これを改正いたしまして、そのほかに差し入れの金を出すとかいうようなことを、法律ではございませんが、閣議決定を実はいたしております。御承知のように、これにつきましても、実は二十七年から乗組員の給与保険というのが実は行なわれております。   〔委員長退席、福田(篤)委員長代理着席〕 給与保険に入っておる人と入っていない人で相当の差がついているのでございますが、給与保険に入っていない人につきましては、これは実質抑留六十日以上ということになりますと、月一万円という見舞金を出しております。それから、給与保険に入っている人につきましては、一万五千円と漁船乗組員給与保険の内訳保険金額との差額につきまして、その三分の二につきまして、それをまた抑留されておる月の期間払うということで、見舞金をやっております。そのほかに、差し入れの金につきまして、年間としますとたしか九万四千円か六千円になりましたか、そういう差し入れの金も補助するというようなことを実はやっておりまして、今までに大体韓国関係ではそういうものを入れますと二億五、六千万を政府から出しております。
  61. 戸叶里子

    戸叶委員 私の聞き方が悪かったのですが、その三十三人の人はどうしているかというのは、その補償の問題もですけれども、それよりも、一体韓国に対してどういうふうなことをしているかということを伺っておるわけです。これは外務省との関連もございますのであとから大臣には伺おうと思っておりましたけれども、水産庁としてどういうことをしていらっしゃるかということが一つと、それから、今おっしゃったように、全般的に非常にたくさんの金額を政府として負担しているわけでございますが、これは、水産庁として、将来といいますか、今交渉されております日韓会談にこういうようなものを当然賠償として要求してもらいたいという御希望がおありになるかどうか、その点を伺っておきたいと思います。
  62. 伊東正義

    ○伊東政府委員 御質問の点でございますが、第一点の、水産庁としてどうしているかというお話でございますが、これは、私の方としましては、直接韓国交渉するということではございませんで、あくまで外務省にお願いして、外務省から向こうに早期に送還してほしいということで、外務省を通して交渉してもらっております。いろいろ留守家族の人の問題等もございますので、なるべく早く帰してほしいということを機会あるごとに外務省にお願いするというようなことで実はやっておる次第でございます。あとの見舞金その他の問題につきましては、これは、閣議決定でも、賠償の内払いとしてというようなことで、実は二十八年でございましたかに閣議決定したときに書いてありますので、そういう意味で私どもは考えております。
  63. 戸叶里子

    戸叶委員 私、そのことを伺ったわけです。それでは、内払いとして閣議決定しているということは、当然、水産庁としては、日韓会談の中でこれは差し引いてもらう、賠償として請求権利があるのだから何らかの形で補償を取るというふうに了承している、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  64. 伊東正義

    ○伊東政府委員 直接交渉は外務省でやっていただいておりますが、私どもの考え方としましては、今申し上げましたように、閣議決定の場合にも内払いというようなことがちゃんと書いてございますし、われわれの態度は、そういうことでやってもらうというつもりでおります。
  65. 戸叶里子

    戸叶委員 今水産庁の方がおっしゃいましたのを外務大臣お聞きになったと思いますが、船だけで十五、六億円前後ということで、抑留者あるいは帰ってきた人その他の補償金等を合わせますと相当な額になるわけですけれども、それは賠償として当然請求する権利がある、そのうちの内払いとして日本政府が立てかえておるのだ、こういうふうなお話でございましたが、外務省としてもその通りであると了解してよろしゅうございますか。
  66. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 その閣議決定が、何と言いますか、要するに、韓国から補償をさせるものの内払いということになっておるかどうかという点につきまして、私はちょっと記憶がございませんが、いずれにいたしましても、この拿捕漁船の問題は、請求権委員会の中に船舶委員会というものがありまして、その船舶委員会議題一つにあげて、そこで議論することになっております。
  67. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、当然、今後において金額がまとまったときには、この金額は差し引かれる、こういうふうに考えてよろしゅうございますね。これはくどいようですけれども、ちょっと私聞いておきたいと思いますので、伺いたい。
  68. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 船舶の委員会には四つの議題があります。置籍船、置水船、それから韓国に貸した船、それから拿捕漁船、今までの議論は置籍船と置水船というその二つまでやりまして、あとの二者につきましてはまだ論議いたしておりません。今後やることになっております。
  69. 戸叶里子

    戸叶委員 私が伺っているのは、今後やるということは、こまかく申し上げることは時間の関係で省きますけれども、今までのことを含んだ上でおやりになるんですね。その辺だけ伺っておきたいのです。
  70. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 もちろん、その問題を取り上げますときには、拿捕されたことによる損害というものを頭に入れて交渉するわけであります。
  71. 戸叶里子

    戸叶委員 当然のことだと思いますけれども、私がなぜこの問題を取り上げて質問申し上げたかといいますと、この間の予算委員会で、社会党の質問に対して池田さんが、そういうふうな拿捕の船舶あるいはそういう人に対する損害賠償、補償というような問題は、あえて過去のものは問おうという考えは持っていませんということを、はっきりお答えになったわけです。時間の関係で、社会党の議員はそれ以上聞いておりませんけれども、私は、これを見て、おや、これは大へんだということを感じたわけです。と申しますのは、五月十七日に拿捕された場合に日本が抗議口上書を韓国に出して、そして、そのときにはっきりと、日本にはこれに対する賠償請求権利があるのだ、留保するのだという抗議文書を渡しているわけです。ところが、それにもかかわらず、池田さんが、一国の総理でありながら、過去のことに対しては問題が解決すれば問う必要がないということをおっしゃいましたので、私はこの点をはっきりさせなければいけないと思って今聞いたわけです。そうしますと、今の点をはっきりいたしますならば、当然この問題は今度の日韓交渉において解決しなければならない問題だ、賠償請求として要求するのだ、こういうふうに了解してよろしゅうございますね。池田さんのおっしゃたのは間違いであるというふうにとってよろしゅうございますか。外務大臣にお伺いしたい。
  72. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうもろもろの懸案を処理いたしますことが今度のわれわれの交渉の目的でございます。いずれにいたしましても、そういうものにけりをつけなければならぬと思います。
  73. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、池田さんのおっしゃったのとは食い違いがありますけれども池田さんよりも外務大臣の御答弁の方が正しいというふうに了解してよろしゅうございますか。
  74. 大平正芳

    大平国務大臣 総理から予算委員会でそういう御発言がありましたことは、私も聞いております。総理大臣の御意見として承っておきます。
  75. 戸叶里子

    戸叶委員 ちょっと待って下さい。これは非常に重大な問題だと思うのです。日本の国が当然請求することができる権利であり、金額でございます。総理の答弁は違っておりますよ。総理大臣の御意見として承っておきます。こうなりますと、総理大臣の御意見外務大臣の御意見とこういう重要な問題で違ってもいいのかどうかと国民はびっくりすると思うのです。総理のおっしゃることはあれは間違いであって、やはりこれは当然請求権として要求するのだ、今までの答弁はそういうふうに私は了承いたしますが、この点総理大臣にきょうの答弁をはっきりさせておいていただきたいのですが、この意見をどういうふうに私了解したらよろしいのですか。
  76. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう問題は、先ほど申しましたように、今度の交渉を通じまして処理しなければならぬ問題である、その処理の仕方として、総理大臣が予算委員会でああいうふうに言われましたけれども、これは、今そういう懸案の処理にかかっておるわけでございますので、ただいまの段階におきましては、総理がそういう御意見を持っておられるということを私どもは頭に置いておく以上に、この問題についての結論を今出すわけに参らぬ。それで、懸案と一緒に今から討議、処理すべきものだと思うわけです。
  77. 戸叶里子

    戸叶委員 ちょっと待って下さい。これは非常に重大だと思うのです。日韓会談というものをそういうふうなあいまいな形で進められれば、非常にあとに問題を残すと思う。この一つのことをとりましても、私どもは非常に了解に苦しむわけでございます。今外務大臣のお話を伺っておりますと、外務大臣は大へんに御答弁は熱心なんですけれども、何というか、センテンスが非常に長いものですから、わからなくなってしまうのです。もう少しセンテンスを短くしていただいた方がはっきりするように思うのですけれども、総理大臣がそういう御意見を持っているということを私たちは頭に置いて今後の交渉を進めていきたい、そういう問題の解決にも当たりたい、こういうふうな御答弁ですと、どっちにもとれるわけなんですね。一国の総理大臣のおっしゃったことを頭に入れておいてわれわれの態度としては要求したいのだ、一体どっちに重きを置かれているかわからないわけですが、当然、これは、総理大臣がおっしゃったのはまあ間違いともおっしゃれないでしょうけれども、総理大臣はそういう考えを持っておるでしょうけれども、われわれとしてはそういう態度じゃないのだ、こういうふうにこの委員会においては少なくともおっしゃったと思いますけれども、いかがでございますか。結論的なことをちょっとおっしゃっていただきたい。
  78. 大平正芳

    大平国務大臣 結論的なことを申し上げる段階ではないのでございまして、いろいろな懸案を今どうほぐしていくかという工夫をいたしておる段階でございます。今過程でございます。従って、そういう過程におきまして卒然と総理がああいう発言をされたわけでございますが、それはそれとしてわれわれは念頭に置いておきますということでございます。
  79. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣の御答弁をそのまま承ることにいたしましても、これは日韓交渉に向かうときのこちらの態度だと思うのです。基本的な問題だと思うのです。その基本的な問題で、総理と外務省、水産庁、こういう方々が違った意見を持っていらっしゃるということでは、私は納得ができない。やはりそこは統一しておいていただかなければいけないと思う。一体どういうふうな態度をもって臨まれるか。今外務大臣のおっしゃったような態度をもって臨まれるか、あるいは、総理大臣がおっしゃったように、過去のことはあながち問いませんという態度でもって臨まれるのか、あるいは、閣議でかつてきめたということを水産庁の方がおっしゃいましたけれども、それと同じ態度でもって臨まれるのか、そこはやはりはっきりさしていただきたいと思います。まだ過程中とかなんとかいうことではなしに、どういう態度で臨むかという、その交渉をするにあたっての考え方を述べていただきたい。
  80. 大平正芳

    大平国務大臣 国交の正常化にあたりましていろいろな懸案がある、その懸案の中で一番厄介なのは請求権問題という問題であるということはお話の通りでございます。私どもは、それをどうほぐしていくかということを今工夫いたしておるわけでございます。おっしゃるように結論が出たらこの交渉は終結点に行っていることなんでございます。今そういう過程でございますので、それで、その過程におきまして、総理大臣がこの問題についてたまたまああいう御意見を持たれておるように拝聴いたしたわけでございますが、それはそれとして承っておきますけれども、まだすべては過程でございますから、最終的なことを申し上げるという段階ではございませんと、そう申し上げておるわけです。
  81. 戸叶里子

    戸叶委員 どうもそのままでは私は進めるわけにいかないのです。と申しますのは、閣議でもちゃんと損害賠償として請求をするんだということがきめられたということをおっしゃった。ところが、総理大臣はその閣議の決定を無視した発言をされているわけですね。総理大臣が閣議の決定を無視した発言をされるということは、これは重大な問題だと思うのです。そのことがまず一点。それから、まだ決定をしておりません、そういうことをも含めて話し合っているというふうな御答弁でございますが、それなら、一体、重ねてお伺いしますが、外務省としての態度は、総理はああおっしゃったけれども、あれはどうも間違いであって、われわれとしてはやはり閣議の決定の線で請求をしていくのだ、話し合いを進めていくのだ、総理はああおっしゃったけれども、しかし、われわれとしては閣議の決定通りに話を進めていくのだ、こういう態度で臨んでいるのだ、こういうふうに了承してよろしゅうございますか。
  82. 大平正芳

    大平国務大臣 これは、池田総理がいろいろたくさん懸案がある中でわざわざその問題を取り上げてどうして言われたのか、実は私も、皆さんの御質問がお上手だから、うまく引き出されたのかもしれませんけれども、私が申し上げておりますのは、いろいろな懸案がありますが、その中で請求権問題が一番厄介でございます。その請求権問題というのは、いろいろたくさんの問題がございますが、今戸叶委員が御指摘になったようなことも、その請求権問題の中の一つだと思うのです。こういう問題を本委員会におきましてもいろいろ論議をいたしまして、法的根拠あるものに限るのか、それとも何か工夫をこらすのかということでございますが、この問題全体の処理の仕方として今工夫をしておるわけでございまして、今その中の一つだけ取り上げて、これについてはこうだということを申し上げられる段階までに煮詰まっていないわけでございます。ですから、そういう趣旨で申し上げたわけでございます。
  83. 戸叶里子

    戸叶委員 私これ以上進めませんけれども一つ一つについては、今交渉中だから、これについてはこうだこうだということは申し上げられませんということなんですけれども、きまっていることをそういうふうにおっしゃるのは、池田さんを弁護するための御答弁なのか、それとも、実際問題として、日本政府としては、閣議の決定はあるし、当然これは賠償の要求をしたいのだが、どうも言うことを聞いてくれそうもないから言いたくないのだというふうなおつもりでおっしゃっておるのか、ちょっとその辺のところがわからないのです。外務大臣の御答弁は、大へん上手なものですから、どこをつかんでいいかわかりませんけれども水産庁長官にお聞きをしますけれども池田さんの予算委員会でされた答弁は今お聞きになった通りだと思いますが、それでもよろしゅうございますか。あなたのおっしゃったことと違うと思うのです。
  84. 大平正芳

    大平国務大臣 私から申し上げますが、池田総理がああ言われたことは、一面非常にフランクでいいと思うのです。しかし、ああいう時期にああいうことを言われたのは、私どもにとって若干迷惑だ、そういう心境であります。
  85. 戸叶里子

    戸叶委員 国民の皆さんから何というわけのわからないことだろうというふうに突っつかれそうですけれども、これ以上追及しませんが、先ほど水産庁からもはっきりとお話がありましたし、閣議の決定もありましたから、池田さんがあのときにああいう迷惑な答弁をされたことに対して、外務大臣としてどうか厳重な抗議を申し込まれて、そうしてやはり態度を改めるようにおっしゃっておいていただきたい、こういうふうに思います。これ以上こういうことを押し進めてもいたし方ないと思いますので、次に、進みますが、何かの機会に池田総理とよく御相談なさっておいていただきたい、こういうことを私は要望して先に進みたいと思います。水産庁はけっこうです。  二十九日に第三回の日韓予備折衝が行なわれたようでございますが、私どもは新聞で了承する程度で、あと正式にはわかっておらないわけですが、何か今までよりも進展があったでしょうか。何か新しい話がございましたでしょうか。
  86. 大平正芳

    大平国務大臣 私が申し上げました通り、若干新しい工夫を御相談申し上げておるのでございますが、それに対しまして十分な反応があるとは申し上げ得られない段階でございます。
  87. 戸叶里子

    戸叶委員 伊関局長の新聞での談話を伺っておりますと、   〔福田(篤)委員長代理退席、委員長着席〕 何か、新しい提案はなかったけれども、フォーミュラ、方式について多少歩み寄られるのではないかというような感じがしたということをある新聞では言われ、また、ある新聞では、請求権としての解決をあくまでも望んでいる韓国と、無償供与と借款の形で出そうとする日本との間で、表現さえうまくいけばあながち名前にとらわれないというところまで来た、こういうふうなことをおっしゃったということが載っているわけです。それからまた、韓国日報に出た新聞の記事などを私聞いてみますと、何か名目の問題とかそういうふうな問題である程度話し合いができつつあるというようなことを聞いておるわけでございますが、そこで、この表現さえうまくいけばとか、フォーミュラ、方式についての歩み寄りとか、こういうことはどういうことを意味するのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  88. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 私が発表いたしましたのは、考え方について歩み寄れる措置があるのじゃないかというふうな感じが少しした、こう申したのであります。これがもう発表できる最大限であったわけであります。
  89. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、その歩み寄れる措置があるのじゃなかろうかというのが、つまり、そのフォーミュラであり、表現の方式ということになるわけでございますね。
  90. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 交渉中でございますので、発表し得る最大限を申し上げたわけでございまして、あれ以上は申し上げかねるのでございます。
  91. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、私伺っておきたいのは、国交正常化の話をするにいたしましても、話がまとまるにいたしましても、条約の中で多少でもあいまいな言葉を使う、たとえば、日本はこういうふうに解釈をする、しかし韓国の方はこういうふうに解釈をする、そういうふうな条約の結び方というものは、私は許すべからざることであると思いますが、この点はどうですか。私たち日本国民は最近において非常な苦しみを味わっております。それはタイの特別円の協定をめぐってです。九十六億円は借款であると日本は初めから言っておるのに、初めからタイの方は、あれは借款だけれどもまあもらったと同じようなものだということで解釈をしていたわけです。こういうような問題を起こさない意味から申しましても、条約の解釈の中であいまいに思われるような内容において条約が締結されるということは、絶対に許すべからざることだと思いますけれども、その点はいかがでございますか。外務大臣にお伺いしたいと思います。
  92. 大平正芳

    大平国務大臣 今御注意のようなことがあってはいけないと思っております。
  93. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、今外務大臣がおっしゃったように、そういうことはない、こういうふうに了解をいたします。そういうことが絶対ないようにしないと、今後において問題が起こると思います。  それでは、お伺いいたしますけれども日本政府としては、この請求権というものは大体認めないで、無償供与の形あるいは長期借款という形でいく、しかし、韓国は、この線だけはどうしても譲れない、請求権というものをどこまでも主張してくる、こうなって参りますと、そこに何かの表現方式なり歩み寄りがなければ、この会談は私はまとまらないと思うのですけれども、どうですか。
  94. 大平正芳

    大平国務大臣 ですから、考え方を提示して先方の反応を待っておるわけでございます。まだそういうことについてどうするという向うの反応はないわけなんです。
  95. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、先ほど私ちょと了解に苦しんだのですが、宇都宮議員が請求権問題について質問をされておりました。今速記を見ている時間がないので、正確に言えるかどうかわかりませんが、あのときの大平外務大臣の御答弁は、請求するしないは別にしても、請求できてもそれは権利にはならない、そして権利の発生するときは請求権になるのだ、こういうふうな意味のことをおっしゃったように思いますけれども、そうでございましょうか。
  96. 大平正芳

    大平国務大臣 それは、予算委員会におきまして、木原委員の御質問に対してであったと思いますが、外務省の方から請求権というものはどういうものだという見解は申し上げたわけでございます。すなわち、これは、請求権というものは初めからあるわけではなくて、外交交渉の上におきまして一つ要求がなされたというように了解し、そして相手方がこれに応ずるということになって具体化してくるというような趣旨のことを申し上げたので、当然のことわりを申し上げたにすぎないのです。
  97. 戸叶里子

    戸叶委員 初めから請求権というものがない、そして請求をすることによってまとまっていけば請求権になる、こういうことでございますか。
  98. 中川融

    ○中川政府委員 請求権の意味ということにつきまして最近御質問がございまして、政府側で答弁いたしましたが、ここで繰り返して申し上げたいと思います。  平和条約請求権という言葉が出て参りますが、これは外国語の原文ではクレームスという言葉が使ってあるわけでございます。そこで、これがはたして普通われわれの考える意味での権利であるかどうか。請求権と、権という字を使っておるが、クレームスが権利そのものであるかどうかということが問題の焦点であったわけですが、これに対しまして政府側がお答えいたしましたことは、クレームというのは、権利がありという主張主張することであります。従って、権利と関係はあるのでありますが、しかし、主張それ自体が当然にすぐ権利であるかどうかということは、これはやはり相手が納得しなければ権利にはならない。従って、権利ありとして主張する地位と申しますか、そういうふうにでも表現したら一番いいのではないか。相手が納得いたしましてそれで話がまとまれば、それで初めて国内法で言う権利になる、こういうことを申し上げたわけであります。大体、四条の請求権というものは、そういう意味でのお互い請求権、クレームをお互いに相談してきめるということだと思います。
  99. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、四条の請求権というのは、納得していないのですか。
  100. 中川融

    ○中川政府委員 お互い請求権、クレームスを相談によってきめる、どういうふうに結着をつけますか、きめるということ、そういうことが四条に書いてあるわけです。
  101. 戸叶里子

    戸叶委員 お互い請求権としてきまっていないわけですね。四条の場合には納得していないわけですか。
  102. 中川融

    ○中川政府委員 具体的の内容につきましてはまだきまっていないわけでございます。お互いに相談して初めてそこにはっきりした権利がきまってくる、かように考えております。
  103. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、この請求権の処理というのはどういう意味ですか。お互いにきまっていない請求権を処理するというのはどういう意味ですか。
  104. 中川融

    ○中川政府委員 お互い要求する権利ありとして要求するものを、お互いで相談して、そこで最終的な処理をする、解決をする、こういうことを書いてあるのです。
  105. 戸叶里子

    戸叶委員 おかしいですね。私ちょとそれでは了解できないのです。では、クレームスというのは請求権じゃないのですね。では、今おっしゃったような納得した請求権というものは何と言うのですか。
  106. 中川融

    ○中川政府委員 請求権が四条によりましてお互いの相談で解決いたしましたときに、おそらくそれは条約か協定になるでありましょうが、そのときに具体的に、たとえば、日本が支払う場合であれば、どういうものを支払うということがきまるわけでございます。そうなれば、これははっきりした権利になるわけでございます。それまでの間は、要するに、一方的な相手側の要求するものを、こっちはそのまま認めるというわけには必ずしもいかないわけでありまして、相談ずくで、はっきり納得のいったところで、初めてそこで話し合いができて、そこで権利が発生するのであります。
  107. 戸叶里子

    戸叶委員 請求するということは、一つの金額に向かって相談するということのようですが、請求するということと相談するということとは違いませんか。今おっしゃるのを聞いておると、たとえば、だんだん相談をしていって、まとまったものが請求権といいますか、それじゃ何も請求という言葉を使う必要はないじゃありませんか。  それから、もう一つは、請求権を放棄するということは、請求する権利を放棄することと違うのでしょうか。
  108. 中川融

    ○中川政府委員 権利といいますと、やはり、たとえば一番はっきりした例で申せば、債権あるいは物権でありますとか、その権利の内容がはっきりしておる場合が大体国内法上の権利であると思うわけでございます。従って、請求権と、権という字をつけて訳しておりますが、それ自体が万人の認める権利というなら、これはそれ自体を払わなければいかぬわけでありますが、やはり、請求権として主張するものでも、たとえばわれわれとしては承認し得ないものが幾らもあるわけでございます。従って、それは話し合ってはっきりきまらなければ内容が確定しないものである。こういう意味で、それ自体を権利とはっきり言い切ってしまうことはやはり適当じゃないのじゃないか。むしろ権利ありとして主張し得る地位である。勝手に根も葉もないことを主張する請求権というのは行き過であり、もちろん根拠ありとして主張するのであります。従って、そういう主張し得る地位はあると思うのでございますが、その具体的内容それ自体は必ずしも客観的な意味で万人を全部納得させるものではない。地位であるということでございます。
  109. 戸叶里子

    戸叶委員 今岡田委員に関連質問をお願いしますけれども、今までいろいろな国との関係、そしてまたいろいろな条約を読んできた場合に、請求権という字が出てきました。しかし、私は、請求権請求権だというふうに考えていたわけです。今おっしゃるような請求権主張する地位なんということは、私は今まで全然知らなかったわけでございます。そうすると、今適当な例が見出せないのですが、これまでのお互いに結んだ条約、阿波丸請求権とかそういうようなものは、それじゃ権利じゃないわけですね。どうにでもくつがえせるわけですね。われわれがもし納得しなければ権利として認めなくてよい、納得ずくで権利になるのだということになれば、これは非常に問題が起きてくる。国際法上そういうような解釈は私は初めて聞いたわけです。無学ですから仕方がないにいたしましても、初めてそういうことを聞いたのですが、これまでの条約請求権として使われていた言葉というのは、単に請求主張する地位である、こういうふうな形でやってきたわけなんですか。
  110. 中川融

    ○中川政府委員 大体そういうことだと考えます。阿波丸協定の例が出ましたが、あれも、交渉の経緯あるいはその前のバックランドを振り返ってみますれば、日本で安導券をちゃんとアメリカからもらった阿波丸が不当にも撃沈されたわけでありますから、アメリカが間違ったわけであります。それに対しまして日本が抗議をいたしまして、アメリカは、戦後、そのときの政治情勢がいかがであるにかかわらず、これに対して適当な補償をするよう交渉する意向であるということをはっきり返事してきたわけであります。従って、外交上の意味におきましては、アメリカは戦後日本に対して補償すべく交渉することを約束したわけであります。しかし、これはまだ債権というものが発生しているわけではない。要するに、交渉する義務がある、交渉するという政治上の行動をとる義務は約束しております。しかしながら、その内容はきまっていないわけでありまして、交渉して初めて協定ができて、幾ら幾らを払うというところでほんとう国際法的な意味におけるいわゆる債権というものが発生するわけでございます。従って、阿波丸請求権を放棄したというのは、そういう請求をし得る地位、これは外交交渉上認められている地位でありますが、その交渉し得る地位を放棄した、こういうふうに考える。大体、請求権についてのいろいろな折衝が行なわれ、解決が行なわれるのは、みなそういう事態であるというふうに考えておるわけであります。
  111. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 関連。  関連ですから一問だけ伺いますが、今中川さんが言われているのは、債権は権利ですね。
  112. 中川融

    ○中川政府委員 さようでございます。債権は権利でございまして、平和条約第四条でも、請求権というところにカッコして、債権を含むと書いてある。これは木原委員の御質問に対してもお答えしたのでありますが、要するに、この請求権というのは、いわゆる債権よりは広い観念である。それじゃどういうことであるかということは、今御説明したような経緯であります。
  113. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 その点ですが、それでは、あなたのおっしゃる請求権の中には、四条の中では債権も含まれておる。そうすると、請求権の中でも、あなたのお話ですと、請求権一般は請求する地位である、その中に債権という権利の部分もあるということですか。
  114. 中川融

    ○中川政府委員 そういうことでございます。
  115. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そうすれば、債権の場合と請求権とどういうふうに概念的に区別しますか。
  116. 中川融

    ○中川政府委員 債権というのは、その権利の内容がはっきりきまっておるわけでございます。請求権の中には、それ以外のものも含まれるわけでございます。要するに、韓国側がいろいろ請求した、たとえば、日韓交渉で、平和条約四条に関連して言えば、韓国側自分の方に権利ありとして主張する、これは債権もありましょう。それ以外に、いろいろ、たとえば今まで四十年間の日本の圧政云々ということで請求するものもある。いずれも韓国側権利ありという根拠主張するわけであります。しかしながら、日本側は、それがほんとうに債権であれば、たとえば公文書の入っておる債権であれば、権利として当然承認しなければならないが、そうではないものは、必ずしも日本から見て法的根拠がないものでありまして、これは承認する必要はないのであります。そういうものを一括いたしまして、韓国側請求権日本側はまたそれに対応する日本側請求権がある。これらはお互い交渉によって納得したところで初めて権利が確定する、それがいわゆる協定の中で内容がきまってくる、こういうことになると思うわけであります。
  117. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これは関連ですからもうこれでやめますが、そうすると、請求権というものの中に、債権は権利があるわけでしょう。請求権一般の中では、向こうの立場から言えば、これだけのものを請求する権利があるということを四条(a)項の中で権利ということを言っておるわけですね。ここでは、ちょっと長くなりますが、日本国及びその国民の財産で第二条に掲げる云々の国民請求権、この中に債権を含むということについて、これは最初に戸叶さんが言われたように、この請求権の処理というのが今行なわれておるので、向こうの国自身としては請求権権利としてそれを見ており、日本の国は日本の国として請求権権利というものはこういうものだと見ておる。そうして、今の交渉は、その権利の処理をどうするかという処理の問題で、権利それ自体の規定ではないわけです。その点はやはりはっきりしておいてもらわぬと、いや、請求権ではなくて請求であるとか、請求の地位であるとかなんとかいうことになりますと、解釈論は実際にもっともっとわれわれやらなければならぬ。関連質問ではこの程度以上やりませんけれども大平さん、こういう点は、はっきりここで一つよくお考えいただいて、あいまいにしないで進めていただきたいと思います。この点を希望しておきます。
  118. 戸叶里子

    戸叶委員 私もあまりこの問題だけを追及しませんけれども、もう一つ念のために例をあげて伺いたいと思います。私が外務大臣に五千円お貸ししたといたします。そうすると、ちゃんと五千円お貸ししたのですから、私には請求権があるわけです。ところが、外務大臣の方で、五千円ではなくて三千円だというように言ったときに、ほんとうに五千円貸しておるのだけれども、話し合いがつかなければ私には請求権はないのですか。請求権はあるわけでしょう。
  119. 大平正芳

    大平国務大臣 りっぱにあるわけであります。
  120. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、そういうときに話し合いがつかなければ請求権にならないということは当たらないじゃないですか。おかしくはないですか。
  121. 大平正芳

    大平国務大臣 その関係は今条約局長の御説明申し上げた通りであります。
  122. 戸叶里子

    戸叶委員 この問題だけであとで一ぺん委員会をやったらいいと思います。  それで、私は、そこにそういう解釈をなさる政府は、今度の条約の中に、やはり何といっても何らかの表現方式を用いなければならない苦しみがあるのではないかと言わざるを得ない。と申しますのは、韓国の方は請求権と言っており、日本の方は無償供与なり長期借款と言っていて、なかなか話がまとまらない。ところが、ある程度の金額が、お互いが話し合ってまとまってくる。まとまってきたときには、それは請求権だと向こうが主張してきて、請求権の場合は金額がまとまれば請求権であるということですから、韓国の方では、これは請求権ですというふうに了解する。日本の方は、そうではなくて、無償供与でも金額がまとまったのだ、向こうが請求権として解釈するのは、これはまとまった金額だからいいではないかというふうに逃げる。こういうところから条約の内容をごまかすのではないかというので、私はさっきから表現方式であいまいな方式をお使いにならないようにして下さいというふうに申し上げておるわけです。  そこで、伺いますけれども日本としては、請求権という言葉は一応使わないで、高い次元に立って今交渉を始めておられる。そうすると、内容が表現方式において絶対まぜこぜにならないような形でやるとするならば、韓国が、この程度は請求権、そしてこれは無償供与というふうな言葉を使わなければ納得をしないならば、日本もやはりそれと同じ言葉を使うことにやぶさかでない、違う言葉は使わない、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。請求権無償供与と、同じ言葉を使わなければならないというふうに了解してよろしゅうございますか。
  123. 大平正芳

    大平国務大臣 条約とか協定というものの文言とかその解釈、それがあいまいであってはいかぬと思います。練達堪能な皆さんにごらんいただくわけでございますから、私どもそういう点を間違いないようにやらなければならぬと思っております。
  124. 戸叶里子

    戸叶委員 この問題はあとでもう少し質問したいと思いますが、最後にもう一点だけお伺いしたいのは、この委員会でも予算委員会でもたびたびおっしゃっていられることは、今度の日韓交渉がまとまるためには、李ライン竹島の問題も漁業の問題も話し合いがついてから日韓交渉が妥結されるのだということをおっしゃって、それがある程度の前提条件であるようにおっしゃったわけです。そこで、お伺いしたいことは、この竹島解決ということですけれども竹島解決ということは、一体、日本が国際司法裁判所に提訴した場合に、それに対して韓国が応訴するということが解決というふうにみなしておられるのか、そうでなくして、竹島日本の領有のものである、日本に領有権が確認されたときに初めてこの交渉が妥結するというふうに私たちはとっていいのか、どちらか、私はちょっと迷ったのです。今までの答弁を伺っておりますと、あたかも、応訴することで解決というふうに読めるようなところもあるし、また、領有権が日本にはっきりと認められたときに解決というふうに言っているようにもとれるのですが、この辺はどういうふうに解釈したらよろしゅうございますか。
  125. 大平正芳

    大平国務大臣 予算委員会で申し上げたように、こちらは提訴し、先方が応訴するという状態になれば、一応の解決というように私どもはとっておるわけです。
  126. 戸叶里子

    戸叶委員 それじゃ、念のために伺いますと、私どもは、解決ということは領有権が日本のものであるとはっきりしたときに解決というふうに了解するわけですが、政府では、ただ応訴した場合だけをもって解決というふうに考えていらっしゃるわけですか。
  127. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう応訴するという状態になれば、今国交を開く場合の要件として、ある程度そこまで参ればまずよろしいのじゃないかと考えております。
  128. 戸叶里子

    戸叶委員 これはちょっと問題だと思うのです。竹島日本のものであるということを確定した上で日韓交渉を妥結するというのならわかるのですが、そういうことを提訴して、応訴しただけでもってこれを日韓会談解決一つのめどにするといいますか、日韓交渉がそれできまるのだ、解決したのだというふうにするのは、これはちょっと日本国民が納得しないと思う。解決というのは日本に領有権がはっきりしなければいけないと思うのですが、もう一度その点をはっきりさせていただきたい。
  129. 大平正芳

    大平国務大臣 こちらが提訴して、先方が応訴する。そうすると半年か一年たてば結論が出るわけでございますから、そういう状態になれば国交を開く場合の要件として満足すべき状態ではないかと思っています。
  130. 戸叶里子

    戸叶委員 提訴して応訴すれば相当時間がかかるのです。そうして日本の領有権が決定するということ、日本に領有権が決定するということ、これを交渉が妥結する一つの条件にするというふうにしなければ、提訴して応訴して、あと何年かかかるのですね。それではこの問題の解決にはならないと思うのです。やはり、ほんとう解決というのは、日本に領有権が戻るのだということをはっきりさせるのだ、再確認させるのだというところに解決のめどを置くものだと私たち日本国民は考えているのですが、今のようなことではおかしいでしょう。
  131. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほどお答え申し上げた通りです。
  132. 戸叶里子

    戸叶委員 私はこれは非常に重大な問題だと思います。竹島の問題の最終解決になりません。今まで、竹島の問題も李ラインの問題も、いずれも解決をした上でなければ日韓会談がまとまらないとおっしゃっておりました。その言葉が非常にあいまいなものである、そうして、そういうことでは私たちは納得しないということを申し上げまして、この次の機会にさらに追及したいと思います。
  133. 野田武夫

  134. 受田新吉

    ○受田委員 私、最初に沖繩の問題を中心にお尋ねしたいと思います。  それより先に、大平さん、あなたは今度九月十五日に祖国を立たれてアメリカに行かれるのでありますが、今度行かれるのは、国連総会に出席される目的と同時に、アメリカにおいて日本アメリカの間にひそんでいる幾つかの懸案についても外交交渉をしようとするのではないかと思うのです。今度の渡米のあなたの目的の中にはそういうものを含んでいるかどうか、御答弁願います。
  135. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せの通りです。
  136. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、沖繩の問題についても、また第二次長期防衛力整備計画についても、お話をしますね。
  137. 大平正芳

    大平国務大臣 防衛問題につきましては、私どもの方でそういうトーキングをやる用意はございません。
  138. 受田新吉

    ○受田委員 ちょっと最初にお聞きしますが、あなたは、この間八月一日から開かれたいわゆる安保協議委員会と申しましたか、そういう会議議長を勤めておられます。この議長をお勤めになって、この会議で、外交上の秘密にわたることは別として、どういう問題が討議されたのか、御答弁願います。
  139. 大平正芳

    大平国務大臣 当時協議委員会が終わりましてから発表いたしました通りアジアの軍事情勢につきまして先方からのお話を聞きました。それから、こちらの防衛庁当局の方から、自衛隊の現状というようなものの説明をいたしました。以上です。
  140. 受田新吉

    ○受田委員 その程度のことですか。新聞の報道するところによれば、志賀防衛庁長官の発言が外務省の忌諱に触れて、秘密が漏れたような批判が出ているわけです。私、有力な新聞の報道でありますから、それが単なる憶測記事とは思っておりませんけれども、相当うがった、たとえば極東の情勢に非常な緊迫感、危機感を持った見解を向こうが述べている、こういうような話も出ているわけでございますが、大体そういうような意見が出ておったわけですか。
  141. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうことは全然ございません。
  142. 受田新吉

    ○受田委員 全然ない。そうしますと、単なる意見の交換ということであって、日本の防衛について日米の間におけるいろいろな基本的な話し合いということはなかったわけですね。全然なかったのですか。ただ単に集まっただけですか。
  143. 大平正芳

    大平国務大臣 ちょうどフェルト大将を除いて全部メンバーがかわりましたので、あの方がたまたま東京にいらした機会に一応顔合わせをしようということで開いたわけです。特別の問題があったわけじゃございません。
  144. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、安保協議委員会というのは大した意味を現状では持っていない、ただ集まって懇談するというだけで、ほかに大した意味は現状においてない、かように了解してよろしいですか。
  145. 大平正芳

    大平国務大臣 現在特に御相談しなければならぬような問題はありません。
  146. 受田新吉

    ○受田委員 その際に、いわゆる軍事専門小委員会といいますか、専門家同志が向こうもこちらも集まって話をする、あるいは情報交換会、どういう名前でもよろしいですが、そういうものを一そう強化しようというような話はありましたか。全然そういうこともないですか。
  147. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう話はございません。
  148. 受田新吉

    ○受田委員 これは現実にあなたが知っておらなければならぬのですが、日本の防衛当局とあちらのそういう軍事専門家とが適当な話し合いをしているということを御存じであるかどうか。これは、かつて安保条約の討議の際にも、なたの前々任者の藤山さんから軍事専門小委員会のようなものを設けたいと言明しておられるわけですから、その後継者であるあなたとしても、前々の大臣から声明されているその機関が必要なのか、あるいは必要でないのか、現実にそういうものがあるのかないのか、それはお心得になっていなければならぬと思います。
  149. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうものはございませんし、そういうものを設けようじゃないかというお話も出ておりません。
  150. 受田新吉

    ○受田委員 現実に全然あなたは関知しておりませんね。そういう専門家同士がいろいろと意見を交換するような会合を持っていることは全然ないと断言できますか。
  151. 大平正芳

    大平国務大臣 安保協議会の場においてそういうお話は一切ございませんでした。
  152. 受田新吉

    ○受田委員 もう一つ、沖繩の問題に関係するのですけれども、あなたは、近く、小坂・ライシャワー大使の六月の会合に続いて、二回目の日米会議を持とうという計画を持っておられるかどうか、御答弁願います。
  153. 大平正芳

    大平国務大臣 今せっかく三つの調査団の報告が最終の取りまとめの段階に入っておりますので、でき得れば私が渡米の前に日米折衝の糸口をつけていきたいと考えております。
  154. 受田新吉

    ○受田委員 この会合は、三回にわたる現地調査団の調査報告をもとにしてされるか、あるいは調査報告が出なくてもやるというのであるか、いずれであるか、御答弁願います。
  155. 大平正芳

    大平国務大臣 調査報告をもとにしてやりたいと思います。
  156. 受田新吉

    ○受田委員 総務長官、あなたの前任者及び副長官が団長で三回にわたる調査をされたわけです。結論がいつまでに出ますか。
  157. 徳安實藏

    徳安政府委員 最後に調査団が帰って参りましたのが八月の八日でございます。そこで、いろいろ事情もあったようでありますが、非常に急ぐことでございますから、早く結論を出していただくようにということを数回督促いたしまして、ようやく、先月の末、ちょうど末日までに調査報告が出て参りました。非常に長文なものでありまして、謄写にいたしますと約千ページにもわたるものだそうでございますので、そこで、ただいま、これを取りまとめまして、大体の総括といったようなものも添付したいというようなことで、事務当局で一生懸命にやっておりますが、五日、六日ごろまでには大体の見当をつけまして、そうしてその報告を総理並びに外務大臣等に提出いたしたい、かように考えております。
  158. 受田新吉

    ○受田委員 その調査報告が五日か六日に出るということで、そうするともうすぐですね。すぐ結論を出したい、それに基づいて大平氏が渡米される前に会議をしたい、こういう運びであることを一応了承します。  そこで、この沖繩の問題は、これは、大卒さん、あなたがあちらに行かれたら、特に真剣にやっていただかなければならない。これは国連総会に対する重責とあわせて、日本国民の不幸な状態を一刻も早く解消するための熱意を、この機会にあなたが懸命に米国政府に訴えて、これは米国だけで解決する問題ですから、ほかのお国の御厄介になる必要はないのですから、真剣にあなたの熱意を示してもらいたい。それは、単なる熱意でなくて、これが実行に移されるようにしてもらいたい。  そこで、具体的に聞きたいのです。あの調査団の報告の内容について、徳安さん、ある程度は輪郭がつかめておるでしょうね。輪郭さえもつかめぬはずはないのです。あなたが懸命にまとめておられるのに、どういう方向に調査の結果がいきそうであるかぐらいは、それがわからぬようでは総務長官を勤められるはずはありませんから。
  159. 徳安實藏

    徳安政府委員 事きわめて重大な事柄でございますので、事務当局で慎重に取りまとめ中でございます。今申し上げましたように、長くはかかりませんで、五日、六日ごろには提出の運びになろうと思います。それまでは、関係筋の調査に行きました諸君との話し合い等もまだ完全についておらぬわけでありますから、内容については、ちょっと今私が片りんや断片的なことを申し上げることは差し控えたいと思います。
  160. 受田新吉

    ○受田委員 プライス法の問題が未解決であるという現段階において、少なくとも米国の民政府が計画しておることは、あなた御存じですね。沖繩に対する政策は、あなたは総務長官であるだけに、ある程度の構想は御存じだと思う。それに基づいた調査がされておるのですから。
  161. 徳安實藏

    徳安政府委員 第一回にこちらの方から調査に参りましたときに、先方から、非公式ではございましょうが、まだアメリカの案というわけではなくて、一応こういう構想を持っておるのだというようなことを非公式に聞かされたそうであります。しかし、それはアメリカ側においてもまだ確定の案でございませんで、向こうの方に沖繩の弁務官の方からお話があって、そして最後の決定を見る、あるいは大きくなるか小さくなるかわかりませんが、それには相当時期がある、しかし、私は少なくともこんなことを考えておるのだという、あまり責任のないお話はあったそうでございます。しかし、そういうことが伝わっておるだけでございまして、正式に向こうの方からそういう書類はちょうだいいたしておりません。  そこで、先ほどお話がございましたように、日本外務大臣アメリカ大使とお話しになり、かつては総理と向こうの大統領とお話しになって共同声明等が出ましたのをきっかけにいたしまして、日本でも協力してくれというような話で、そこで、協力するとすればどういうものをやるべきかというようなことにつきましては、現地を知らぬでは話にならぬわけでありますから、ぜひ一つ現地を見てくれというような話も向こうからございますし、日本の方では、できることなら一どきに参りまして、早く案もこしらえたいという希望で、最初そういう気持も持っておったようでありますけれども、琉球政府の方では、一どきにたくさんの役人がどっと入ってこられましたのでは、説明役や案内役や、いろいろな人に対して人手が足らぬ、だから三つに分けてくれというような要請がございまして、そこで、向こうの要請も聞きながら、そうした各役所々々に向いたような仕事について調査をしてきておるそうでございます。
  162. 受田新吉

    ○受田委員 その調査の結論によって日本の援助の額等もきまるわけですか。
  163. 徳安實藏

    徳安政府委員 これは政府自体がきめることでありますから、私は軽々に申されませんが、先ほどお話がございましたように、向こうの方でも沖繩に対する援助の額等が今度改正されますかあるいは修正されますか、とにかく  一つの方向が変わっておりますので、その金額等がはっきりいたしませんと、おそらくは日本の方でもその額に対応した協力というようなことが具体的には進まないのではなかろうかというようには考えますが、これはまだ私の考え方でございまして、政府ではさように決定したわけではございません。
  164. 受田新吉

    ○受田委員 それはどこで最後にきまるわけか、外務大臣同士、あるいは外務大臣とライシャワー大使の間で最後にきまることになるわけであるかどうか。
  165. 徳安實藏

    徳安政府委員 私の考えでは、先ほども申し上げましたような書類ができましたら、総理、外務大臣等に提出いたしまして、政府の腹をきめていただいて、外務大臣から折衝していただく、結局最後のそうした大きな問題は外交関係で御決定を願うものと考えます。
  166. 受田新吉

    ○受田委員 私は、この沖繩の問題は、いずれにしても、日米共同で、現地の責任も含めて、積極的に経済援助をやるのだという方式が出ると思うのです。その援助ということにつきまして、援助する以上は、沖繩に対する日本復帰への一つ一つの積み重ねが実現しなければならないわけです。大体、日本に施政権のない形で援助するのが実際は変な話なんだから、日本に復帰する前提で援助しておるということでなければ援助の意味はなしませんよ。そうじゃないですか。
  167. 徳安實藏

    徳安政府委員 私どももさように考えております。
  168. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、沖繩の祖国復帰ということは全国民の悲願であり、政府は命がけでこれにぶち当たらなければならぬ問題である、これも了解ですね。
  169. 徳安實藏

    徳安政府委員 私どももさように考えております。
  170. 受田新吉

    ○受田委員 そこで、具体的に現地の人から、日本の援助を機会に、米軍の施政下においても、現在は大田主席ですけれども、主席は現地人の自主的な公選によるべきだという主張も出ておる。また、裁判権、司法権の問題におきましても、軍と民というふうに分かれておりますけれども、少なくとも、沖繩民の純粋な裁判のみでなく、沖繩に関係を持ったアメリカさんの事件などについては、民主的な立場で司法権を現地の沖繩に移管する、こういう形をとるような努力を積み重ねていかなければならないと思うのです。そうした自治権の拡大というものを要求していることについて、具体的に現地の要望にこたえるような交渉をされるのかどうか、御答弁願います。
  171. 大平正芳

    大平国務大臣 今度の調査団の主たる目的は、経済、民生の状況日本人の目で直接調査するということで、報告が近く出ることになっておるわけであります。自治権の問題につきましては、直接の課題ではございませんけれども、今受田委員のおっしゃるような空気がよく看取できますので、私どもといたしましても、私どもの立場から建設的な提案をいたさなければならぬと考えております。
  172. 受田新吉

    ○受田委員 今自治権の拡大の具体的な例を指摘してお尋ねしたのですが、それに対して建設的な提案をしてみたいという大平大臣の答弁でありますから、それを一つ強引に推し進めてもらいたい。そうして、その行政方式なども、漸次日本に復帰するような形で、日本式の行政機構にだんだんと変わっていくような努力を積んでいく、こういうふうにして、だんだんと日本へ近づいておるんだということで現地民に安心を与えてあげなければなりませんね、大卒さん。  そこで、大平さんがそういう点にまで踏み切って提案されるということでございますから、もう一つ、積極的な沖繩への愛情を示すために政府に御努力願いたいのは、沖繩は、法律的には、平和条約の第三条で、今施政権が米側にあり、またやがて信託統治にされるという運命になっておる。こういうことも、一つ政府の力で、沖繩に対する非常に強い愛情を示すために、この国際条約を改めて、だんだんと日本へ戻してくる努力を積み重ねなければならぬと思うのです。この間予算委員会でお伺いしたら、お答えにあいまいな点があったので、きょうはその点を掘り下げてお尋ねしたいのです。私、法律論と政治論の両方からお尋ねします。  平和条約第三条の前段、後段の規定ですが、現在、国連憲章の十二章、十三章に規定されている信託統治制度というものはもう意味をなくしている。この意味をなくしている段階において、——削除の問題はあとにします。法律的に見て、平和条約第三条の前段の規定は、信託統治制度が削除されるということになった場合には、後段の暫定的な施政権アメリカにあるという規定が消えるかどうか、法律論として御答弁を願いたい。
  173. 中川融

    ○中川政府委員 この点については、もとより、その前提としての国連の信託統治制度がなくなるかという実質問題があるわけでございます。これは実質問題として当分なくなることはないのではないかと考えます。しかし、その問題を離れまして、仮定の問題として、純理論的な問題として申しますと、第三条の前段の信託統治制度というものがなくなる、前段が実現するということが全然あり得ないという場合に、後段の、アメリカが施政権を行なう、こちらの方が無効になる、あるいはこれが全然意味のないもので、要するに実施できないものになって無効になるかという問題につきましては、どうも必ずしもそうは言えないのじゃなかろうか。これはもちろん詳細な検討を必要とする問題でございますが、その前提がなかなか今見通しもつかない前提でありますので、そう実は深く検討したわけじゃございませんが、一応の感じといたしましては、やはり、第三条は二つのことを規定しており、一つは、合衆国が信託統治に付する提案をした場合には日本はこれに異議を唱えないということでございまして、第二段は、要するに、こういう提案が行なわれて可決されるまでの間は合衆国が施政権を持つということの規定でありまして、もしもこういう提案が行なわれなければ別ですが、それが否決されれば第二段になるわけであります。そういうものがいかなる理由によるにせよ実現しない間は、要するにアメリカは施政権を持っておるというふうに解釈する方が妥当、あるいはそういう解釈の方がもっともじゃなかろうかというふうに一応考えております。しかし、そう実は深く検討した結果でもございませんので、一応従来までの考えを申し上げれば、そちらの解釈の方が歩が強いのではなかろうかというように考えております。
  174. 受田新吉

    ○受田委員 どうも、法律論として、条文の中に前段と後段の規定があって、後段は前段によって生まれておるものです。その前段がないという場合に、後段が生きるということがあり得ますか。法律の専門家であられる法制局長官、御用学者の説でなくして、法理論としてはっきり答弁していただきたい。同じ条文の中に、前段の規定と後段の規定があって、前段によって後段が生まれておる場合に、前段の根っこが切れておるのに後段が生きるというばかなことがあるのかどうか。
  175. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは、今条約局長がお答えしましたように、実は、もとになると申しますか、底にあります信託統治制度自身、そう急になくなるかという問題が根本にあるわけであります。従って、それを切り離して平和条約第三条を論ずることは、実は、私ども、理論的には成り立ち得ても、ほとんど無意味じゃないかと思っております。また、信託統治制度がかりに国連憲章からはずされるというような場合には、当然、平和条約の規定についても、その際に何らかの関連的な問題が起こってくると思います。そういうことから考えまして、今条約局長から理論的に切り離した点についての御答弁がございましたが、理論的に切り離すこと自体はできるにしても、実際上は、国連憲章の規定の改正と切り離してこれを論ずることは、私は理論的にもほとんど無意味だと思います。従いまして、三条の規定のみをそういう場合に仮定して論ずることは、実はあまり問題にならぬと思います。従って、今条約局長が申しましたように、私どもも詳しい検討はいたしておりません。いたしておりませんが、今おっしゃったように、前段と後段の関係でございますが、これは法律あるいは条約の条文によることでありまして、前段と後段が不可分の関係で関係しておるものもございますし、前段と後段がそう不可分で関係してない条文もございます。単に前段と後段という理由ですぐ関連するということにはなりません。要するに条文の内容の問題でございます。条文の内容問題になりますと、これは私どもも結論を今検討した結果ではございませんから、ここでちょっと申し上げられる段階ではないし、また、自信もないわけでございます。また、この前予算委員会でお答えいたしました通りに、これは日本として今見解を言うことが日本にとって有利か不利かという問題が私はあると思います。そういうことから申しまして、私ども断定的な結論は申し上げる段階にないし、また、申し上げるだけの検討もできておりませんけれども、今条約局長の申しましたような考え方、これはやはり、極端に仮定的な議論として言えば、前段と後段というのはあの条文の体裁から言えばそれほど純粋に結びついておらない。これは国際法学者もその点は指摘しております。従って、そういう点から言いまして、当然になくなるとは断定できないのではないか、かように考えます。
  176. 受田新吉

    ○受田委員 あなたに一つどうもはなはだあいまいな点があるが、これを読んでみたらわかるじゃないですか。前段と後段は、「このような提案が行われ且つ可決されるまで、」となって、前段がなければ後段が生まれないことになっておるじゃないですか。これはそういうきわめて密接不可分な規定じゃないですか。国際法学者でこれは分離できるのだと言うのはだれですか。名前をあげてもらいたい。名前をあげてもらえばすぐ電話して交渉してみるから。
  177. 林修三

    ○林(修)政府委員 これはお読みになればわかります通りに、平和条約では、国際信託統治のもとに置くという提案が可決されるまでというわけです。までということは、要するに信託統治制度のもとに置くという提案が国連総会になされ、しかも可決されない間は、逆に申せば、いつまでも実は施政権が行使できるというふうに読めるわけであります。従って、そういうふうに読めるじゃないかという議論はあるわけであります。そういうことを日本として内部で言うことが日本にとって有利か不利かは別問題です。しかし、条約の条文としてはそういうことが言えるということが読み得るわけであります。学者の名前を言っていいか悪いかわかりませんが、実は、今おっしゃったような信託統治制度がなくなるという前提ではありません。そういう議論ではございませんが、(「今その議論で答えた」と呼ぶ者あり)——そういう御議論についての学者の議論はございません。そういうことを論じた学者はございません。しかし、ただいま、田畑茂二郎教授のごときは、やはり前段と後段とそれほど結びついた条文じゃない、これは非常にうまくできた条文である、そういうことを言っております。
  178. 受田新吉

    ○受田委員 それが非常にあいまいなのです。あなたの信託統治についての議論としてでなく、田畑氏の話だということでごまかしなさんなよ、法学者が。これは、だれが見たって、ちょっと法律を学ぶ人から見たら、この前段と後段が密接不離不可分の関係にあることはきわめて明瞭なんです。従って、信託統治制度が今はまだあるので当分消えそうにないから仮定の質問には答えられないという外交官では困る。やはり、信託統治制度を、十二章、十三章を削除する、そういう提案をして実現した場合には、前段が消えて後段も消えるのだ、そういう順序を踏んだ用意がない限り、沖繩を日本に帰すという熱意がない政府とはっきり言えるじゃないですか。こういういかにもアメリカ側に立ったような発言をしてアメリカの手先のような説明をする法制局長官がおる日本政府では、とても沖繩復帰ということはむずかしいです。大平さん、あなたは重責をになって多難なる国際情勢の中に日本を生かそうとしておるのです。今度の総会にあなたが十五日に出られるまでに、よく考えていただきたい。信託統治制度というのは、現にナウル島とニューギニアの一部と旧日本の南洋群島の三つしかないのです。人口が全部で百二十万。どこかの国に一緒にひっつけて、自主的な道を開いてやったら解決できる問題です。それが解決すれば、西イリアンのような方式でもどの方式でもいいから、一応これは解消してやらなければいかぬですよ。いつまでも信託統治に置くのは意味がない。独立国になる見込みがなければ、どこかと一緒に一州として誕生させればいいのです。そういう努力をされていく。この信託統治の章の七十七条の規定には、「現に委任統治の下にある地域」、「第二次世界戦争の結果として敵国から分離される地域」、「施政について責任を負う国によって自発的にこの制度の下におかれる地域」と三つあるが、どれにだって信託統治制度存続の意義はないですよ。この際は一つ国連に対して信託統治制度を削除する提案をするいいチャンスです。どこの国に反対があるのですか。むずかしいところがあるとおっしゃった。どこの国が信託統治を廃止するのはむずかしいと願います。
  179. 中川融

    ○中川政府委員 信託統治はだんだん減っていることは事実でございます。今御指摘になりましたような三つの地域が今残っておる。従って、この三つの地域がいつ信託統治を解除されるか、今のところは予定は立っていないわけでございます。ことに、われわれ考えますのに、いわゆる日本の昔の南洋、アメリカの信託統治地域になっておるところ、ここをアメリカ自分の領土に吸収してしまうということは、ちょっとその精神から見ておもしろくないようでございます。あそこだけが独立するということもちょっと実際的でないように考えます。ほかとくっつけるといっても、くっつける相手もちょっと見つからないようでございます。どうも、あれは、いつ信託統治を解消するか、われわれちょっと見通しがつきかねておりますので、従って、あれは相当残るのじゃないかというふうに実は考えておるわけでございます。
  180. 受田新吉

    ○受田委員 それが一つだけ残る。ナウルも解決する、ニューギニアも解決するが、日本の旧南洋群島だけが残る。解決の道は幾らでもありますよ。名案は幾つもあるじゃないですか。そういうところでこれを解決する努力をまずしなければならぬ。やはり日本の国の政府の提案でこれを解決しなければいかぬですよ、西イリアン方式など採用して。  そして、もう一つの問題は、国連憲章の改正について大卒さんは全体会議の問題ばかりを取り上げておられるが、全体会議でなくて第百八条の個別の方式をもってやれる手があるのじゃないですか。第百八条は信託統治制度を削除する提案の条項に当てはまるのかどうなのか。これは敵国条項の削除と同様に日本が提案しておかなければならぬ。
  181. 高橋覚

    ○高橋説明員 ただいまの御質問は、国連憲章第百八条でこの改正の提案ができるのではないかという御趣旨のようでございますが、第百八条は、「憲章の改正は、総会の構成国の三分の二の多数で採択され、」、ここまでは、総会の三分の二の多数があれば憲章の改正は一応の手続は済むわけでありますが、「且つ、安全保障理事会のすべての常任理事国を含む国際連合加盟国の三分の二によって各自の憲法上の手続に従って批准された時に、すべての国際連合加盟国に対して効力を生ずる。」、従いまして、安全保障理事会のすべての常任理事国がこれを批准しないと、一向に効力を生じないわけであります。御承知のように、ソビエト連邦は、中共が国連に座席を占めない限り、実際の憲章の改正には応ぜられないという態度をはっきりしておりますので、従いまして、各加盟国ともこの条章を援用して早急に憲章の改正が行なわれるということは期待できないような現状でございます。
  182. 受田新吉

    ○受田委員 ちょっと今特定の国をおあげになったようです。もう一ぺんちょっと……。
  183. 高橋覚

    ○高橋説明員 ソビエト連邦は、従来から、中共政府が国連に座を占めない限り一切の憲章改正に反対だという態度を明らかにいたしております。
  184. 受田新吉

    ○受田委員 これはもっと最近の情勢を分析してみられないといけない。最近当たってみられたかどうか。反対をしている国を今ソ連と指摘をされたようですが、別の国があるのじゃないですか。一つこういう提案をしてごらんなさい。敵国条項五十三条の削除と信託統治制度の削除、これは全世界の平和を願う国々に偉大な共鳴を呼ぶ問題です。この旧時代的な植民地的な考え方に対して、植民地解放宣言などと違った大へんな功績を日本国は負うことになるのです。大平さん、今時間が迫っておるのだし督促を受けておるからなるべく早く切り上げるが、この信託統治制度というものはもう有名無実になっていて、しかも沖繩の問題についてはこれを削除することで自然に施政権というものは消えてくるという、このことを思ったときに、あなたは一つこの機会に沖繩に対する愛情を示し、その一過程としても、国連の総会に一つこれを持ち出してもらう。信託統治制度の廃止と敵国条項の削除、いいですか。これをあなたは総会で努力をしてみるというくらいの熱情をここで示してもらいたい。やろうという熱意を持っているかどうか。これは、あなたのような若くてたくましい外務大臣のときにやらなければ、右顧左眄する外務大臣ではだめです。外務官僚を抜きにして、あなたの決意を伺いたい。
  185. 大平正芳

    大平国務大臣 信託統治制度の廃止、削除という問題でございますが、これは今三地域百二十万の処理がつくまであの規定は要るわけでございますが、この地域が狭い、人口が少ないといっても、いわゆる、受田先生も民主主義者である以上、百二十万の人間の処理は、それ自体は非常に大事な問題だと思うのです。従って、そういった処理がちゃんとつくまではこの規定は要るのではないかと思います。この前にも本会議でお答え申し上げました通り、敵国条項につきましては私どもは賛成でございます。そういったわずかに残された地域の処理がつけば、信託統治制度が廃止されることも賛成でございます。従って、今国連局長が申されたように、国連の状況がそういった状態で、全体の会議を開催するという状況にあるのかどうなのか、そういった事態について検討いたしてみたいと思います。
  186. 受田新吉

    ○受田委員 検討をしながら、同時に、あなたが国連総会に臨まれるにあたって、この敵国条項の削除と信託統治の廃止というものについては何らかの形で一刻も早くこれが実現できるように努力をする決意だけは示してもらいたい。
  187. 大平正芳

    大平国務大臣 十分問題について検討いたしたいと思います。
  188. 受田新吉

    ○受田委員 何ですか、ちょっとはっきりしないのですが、その努力する決意を示すことを要求しておるわけです。
  189. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう熱意を持って検討してみたいと思います。
  190. 受田新吉

    ○受田委員 熱意を持って検討するというのはどういうふうなことですか。あなたのときでないとこの問題はなかなか解決しませんよ。あなたは、しろうと大臣であって同時に党内の実力者である。そのあなたによってこれを総会で何らかの形で努力してみようという、それがなければ、またことしも何のおみやげもなくてお帰りになるということになって、中共代表権の問題などにおきましてもみなアメリカの息をうかがってくるようなことではこれは大へんなことですから、この二つの日本の運命を決する大事な問題について、大平さん、どうぞ一つやって下さい。熱意を持って努力する、どうですか、熱意を持って努力しますね。いいですか。熱意を持って努力するということで、あなたは私の質問に対して肯定しますかしませんか。
  191. 大平正芳

    大平国務大臣 今申しましたように、国連をめぐる状況をとくと熱意を持って検討してみたいと思います。
  192. 受田新吉

    ○受田委員 熱意を持って検討し、実現に努力する、さように了解していいですね。いいですか、外務大臣。そのお答えを……。
  193. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうことが可能な景況にありということを把握いたしますれば、そういう方向に努力いたします。
  194. 受田新吉

    ○受田委員 時間が来たようでございますから、これ一問で終わります。  では、おしまいに、外務大臣、今度の日韓会談です。一つだけで終わりますが、日韓会談の過程において、今、戸叶さん、それから帆足さんがお尋ねされたこととは別に、私はちょっと一問だけ聞きたいことがある。今度の交渉の中で大事な問題が一つ残っているのです。韓国で預貯金その他を銀行や郵便局にやっておった人が、今、保険、郵便貯金、銀行預金等について、閉鎖機関令とか金融機関再建整備法とかいうようなものである程度の救済はされているけれども、本格的な処理がなされていない。そういうものは一体どういうふうになるのか。もう一つは、在日韓国人、北鮮を含めて南北朝鮮人の国内において今暮らしている人の中で、日本軍人として戦死した人に対して、今度恩給や扶助料が問題にされて、向こうが要求した中にそういうことがあるようだが、それに対して現実に何らの手当をしておらない。本人は日本軍人として戦死しておる。本人は戦死してその家族は日本で貧乏しておるけれども、扶助料も恩給も出してない。こういう者に対しては、やはり、政策的に人道的立場から、日本軍人として戦死した遺族に対する扶助料、身体障害者に対する戦傷病者としての処遇、こういうものは当然もう請求権とは別にこっちでやっておいて、そうして向こうとの交渉をするならば、将来北鮮の問題も含めて、日韓会談などはもっとスムーズに、人道的な日本の政策に共鳴した結論が出ると思うのです。そういうものは全然放置してある。この点について、こういう者の恩給、扶助料というものを日本は今出しておいてもだめなんだ、日韓会談の結果で向こうが適当にそれは支払うことになるんだということになるのか、あるいは日本がこれを出しておけば、別の方で筋が通った結論が出るのか。私は、今直ちにこの分だけは出すべきだと思う。外国人などということは言わぬでもいい。日本軍人として戦死しておるんだから。アメリカだって外国人に保険など払っているんです。そういうことについて、在日韓国人に対するそういう処遇、もしそれができない過程では、生活保護等でどういう措置をしておるか、そういうものは、今度の請求権処理にあたって、日韓会談の処理にあたってどういうふうになるのか。この二つを含めて御答弁いただければ、質問を終わります。
  195. 大平正芳

    大平国務大臣 それも請求権問題の一環でございまして、請求権問題の処理において解決いたしたいと思っておるわけでございます。
  196. 受田新吉

    ○受田委員 請求権問題で解決するのですか。具体的に今の韓国における預貯金の問題、日本における恩給・扶助料の問題も請求権の中へ入るのですか。処理の中へ入るのですか。具体的な数字として出るのですか。
  197. 大平正芳

    大平国務大臣 請求権問題の処理の一環でございまして、請求権問題の処理を通じてそういうものの解決をはからねばいかぬと思います。
  198. 受田新吉

    ○受田委員 非常にあいまいな点があるんですがね。請求権処理の問題の一環として考えると言われが、これは平和条約二条と四条の問題で、これは根本的な問題として私は別の機会に時間をいただきたい。会談の結論がついたら始末がつかぬようになるから、会談の始末がつくまでにもう一度この問題は討議しなければならぬ。そういうことにしますが、今大臣の答弁はあいまいな答弁がありますので、恩給局長、厚生省の局長から今の問題について実際に扱っていることをごく簡単に説明していただいて、次の機会に質問を留保しておきます。
  199. 八巻淳之輔

    ○八巻説明員 韓国人の恩給でございまするが、これは、平和条約発効と同時に国籍を喪失するということによって、恩給権が国内法では消滅しているわけでございます。しかしながら、その以前の恩給の問題あるいはそれをひっくるめまして、ただいま日韓会談交渉議題になっておるというふうに承っておりますので、その交渉経過によりましてその問題が解決されるだろう、それだけ取り出して別建で解決することはできないという段階になっております。
  200. 野田武夫

  201. 猪俣浩三

    猪俣委員 久しぶりで外務委員会に出て参りましたが、請求権の問題について、あるいは信託統治の問題について、よく言えば特色がある政府委員の御意見、悪く言うと奇怪なる法律論を拝聴いたしました。私も大いにディスカッションをしたいと思うのですが、私の問題はそういう問題じゃなかったので、時間がありませんから単刀直入に質問に移ります。  実は、隣国の韓国に朴政権というクーデターによって生じた独裁政権、ファッショ政権ができまして以来、日本に参っております韓国人の立場が非常に微妙になって参りました。ここに国連のいう難民問題として処理しなければならぬような事象が起こりつつある。ことに、日本の各大学に学んでおります韓国の留学生が三千人からありますが、その大半は、朴政権反対であり、南北統一、民族独立運動をやっておるのであります。これが今の朴政権下においてどういう立場にあるか、非常に大きな人道問題として登場して参っておるわけであります。そこで、私は、それに関連して二、三御質問を申し上げたいと存じます。  国連におきましても、この難民問題は非常に重要な人道的問題として幾多努力が払われてきておるのですが、難民の地位に関する国際条約というものが成立しておる。これは一九五一年七月にできたものでありますが、これに日本が参加しておらない。先般、法務委員で、何がゆえにこの高邁なる理想に燃えておる国連の条約、しかも国連中心の外交を唱えている日本がこの難民の地位に関する国際条約に入らないのかと質問いたしましたところ、条約局長中川さんは、これは難民という定義が非常にあいまいであるから入らないというような答弁をされましたが、これは私ども納得いたしかねるのであります。今申しましたように、この第二次大戦後、国連が中心となって幾多の難民問題を処理してきた。非常に偉大なる働きをして、いろいろの機関が今までできてきたわけであります。そういう沿革を持っている。ことに、一九四八年の八月には、国際難民機関が正式に国連に成立いたしました。IROと称します機関ができて、IROの規約というものができた。これにも難民の定義が出ている。次に、一九五〇年十二月十四日には、国連難民救済弁務官に関する規約というものができて、これにも難民の定義が出ておる。なお、今申しました難民の地位に関する国際条約は、一九五一年七月にできて、これにも難民の定義が出ている。のみならず、一九五七年十一月、及び一九六一年十二月には、それぞれ、国連総会において、難民の定義をできるだけ広範囲に解釈してやろうじゃないかという決議が出ている。そういう際におきまして、難民の定義がよくわからなかったので国際条約に入らなかったという御答弁は納得いたしかねる。そこで、ほかに何か理由があるのじゃなかろうか。たとえば、ソ連及び共産圏の大部分が、ユーゴは別でありますが、入っておらないのであります。なお、私よく理解できないのは、一九五一年七月の難民の地位に関する国際条約がスイスのジュネーブでできましたときには、国連の代表が二十六カ国集まってこの条約を締結した。その中にはアメリカが入っておるわけです。しかるに、その後だんだんこれがふえまして、各国の批准と承認を得てこの国際条約に参加するものが三十四カ国になった。その中に、私の資料のミスプリントかどうかわかりませんが、アメリカが抜けているのです。発起人みたいになっておったアメリカが現在の三十四カ国の中には見当たらないのですが、はたしてアメリカが現在この条約に入っていないのかどうか。そこで、日本が国際条約に入らないのは、アメリカが入らないようなことが起こったので、日本も右へならえでやったのかどうか。その辺のこと。こういうことは、条約局長あるいは外務大臣、どちらの御答弁でもよろしい。  私は立ったついでに時間を省くためにみな言ってしまいます。現在、中国の政権あるいは台湾政権、あるいは北朝鮮、韓国、その他東南アジアにおきましても、いろいろな政治問題、いわゆる国連の難民と称するものが発生しておる。こういう谷間みたいなところにある日本におきまして、こういう難民の地位に関する国際条約のようなものにあらためて入る考えがあるのかないのか、これは外務大臣から御答弁いただきたい。  以上であります。
  202. 中川融

    ○中川政府委員 現在この条約に入っております国は三十数カ国あるのでございますが、その中にアメリカは入っておりません。日本がこれにまだ加盟していないことは、ただいま猪俣先生の御指摘がありましたように別にアメリカに追随しておるわけではないのでありまして、日本政府部内では、主として法務省が主管でありまして、法務省と御相談しておりますが、いろいろ条約の解釈等につきまして若干不明確な点がある。また、これに加入いたしますと、日本はこれを完全に実施する意欲を持って入らなければいかぬわけでありますが、そういうことも考えまして、もう少し的確な判断をつけてから入ることにしたいということで、まだ加盟していないわけでございます。
  203. 猪俣浩三

    猪俣委員 さような答弁は私ども納得できないのです。これは国連ができましてから長い間の国連の努力なんで、今さら難民の定義がはっきりしないなんということで入らないのは理由にならぬと思いますが、そういう答弁をされるならそれでいいのです。外務大臣、どうなんです。
  204. 大平正芳

    大平国務大臣 一九六〇年から難民救済の年で、このときには日本政府としてもある程度財政的な貢献をいたすことができたわけでございます。条約の問題につきましては、今条約局長が御説明申し上げましたように、政府部内の意見がまだそういうふうに至っていないようでございます。しかし、私どもといたしまして今までこの問題に深くタッチいたしておりませんでしたので、大へん恐縮でございますが、時間的にもう少し勉強をさす余裕をちょうだいしたいと思います。しかし、根本は、猪俣先生のおっしゃる通り、こういう問題の処理はあくまで人道的な精神によって対処しなければならぬと思います。
  205. 猪俣浩三

    猪俣委員 一九五八年十二月には国連の総会がありまして、日本からも藤田たき女史が代表として出席した。これにはイギリスが音頭をとりまして、一九五九年六月から、この国際難民救済年というものについて各国に働きかけて宣伝する、ことに政府並びに民間からこの財政拠出を要求しようじゃないかということを提案せられて、日本の藤田女史はこれに賛同せられてきたわけであります。現在まで、この難民年の運動によりまして、国連難民救済基金の執行委員会では年額約千六百万ドルが集まったというのでありますが、日本は一九五八年に出てこれに賛意を表された。最初金を出すことも、難民運動をやることも賛成だということで、藤田たき女史が出た。先般の法務委員会における中川局長の答弁は、これは日本政府の意思なんだということでありますが、そうしますと、こういう難民救済の世界的運動に対して政府としては何か拠出金を出しておられますか。そこを承りたい。
  206. 高橋覚

    ○高橋説明員 お答え申し上げます。一九六〇年の難民年にあたりましては、わが国として一万ドルの拠出をいたしました。これは、国連におきましては、アラブの難民の救済事業と高等弁務官の事業と半々に分けて使ったということになっております。
  207. 猪俣浩三

    猪俣委員 それ一回でありますか。その後はお出しになっておるかいないか、あるいは本年度は、来年度はどうなるか。
  208. 高橋覚

    ○高橋説明員 この拠出は一九六〇年の難民年のために一回限りの拠出でございます。そのほか、高等弁務官の事業の拠出は、従来一度もまだ出しておらないのであります。ただ、わが国といたしましては、パレスタインの難民救済の事業の方には毎年一万ドルずつの拠出を行なっております。
  209. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、国際難民救済に関する高等弁務官の費用というものは日本は出しておらないわけですか。
  210. 高橋覚

    ○高橋説明員 先ほど申しました難民年の分がそちらに半分参った以外には、出しておりません。
  211. 猪俣浩三

    猪俣委員 法務大臣の答弁によると、何か三十八年度には予算に計上したようなことを聞いておりますが、どうなっておりますか。
  212. 高橋覚

    ○高橋説明員 外務省といたしましては、予算の要求は毎年実は行なっておるわけでありますけれども、いろいろ財政当局との交渉の結果、いまだ計上されたことはないという実情でございます。
  213. 猪俣浩三

    猪俣委員 法務大臣は外務大臣と話し合って三十八年度の予算には組み込んだというのですが、それはどうなっておりますか。
  214. 大平正芳

    大平国務大臣 この間御相談いたしまして、三十八年度の予算要求をいたしましょうということで、概算要求をいたしました。
  215. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこで、私は、外務大臣に対しまして、この国際連合の高等弁務官を韓国の難民調査に派遣するよう国際連合に請求する意思がないかというお尋ねをしたいと思うわけであります。これは、一九六〇年にはカンボジアに入りましたラオスの難民について調査要求があり、調査しておる。なおまた、同年にはチベットの難民がネパールに入って、これまた調査しておる。アフリカ各地の難民も要求によって調査せられておるわけであります。今、朴政権ができましてから、韓国におきまする人権の問題として非常に大きな問題が起こっておるわけでございまして、その実情を訴えまして、私はこういう要求を国連にしてもらいたいと思うわけです。なぜかと申しますと、この張勉内閣時代には、南北統一、民族独立運動が自由にできたわけであります。そこで、日本における各大学の留学生なんかが先頭に立ってやった。どこのところでも学生というものはそういう進歩的な先頭に立つものであります。ところが、そのリーダー格になっている者は朴政権にそれぞれ皆どうもリストに載っておるらしいのであります。そうして、これらが何らかの機会において帰られますと、大体逮捕、監禁されることは必至の勢いのようでございます。そこで、日韓問題が進むにつれまして非常に動揺しているわけであります。それで、朴政権ができましてから、一九六一年、昨年の六月六日には韓国に非常措置法というものができまして、これの内容を見ますると、驚くべきことがある。非常措置法の第三条を見ますると、国民の基本権は革命事業に抵触しない範囲で保護されるとある。革命事業というのは何を言うんだかさっぱりわからぬ。革命事業に抵触すると思うと基本権は一切ないんだ、これが非常措置法第三条に規定されておる。なお、六月二十一日には特殊犯罪処罰特別法というものができておる。これまた驚くべき法律であります。そうして、死刑、無期、十年以上の懲役に処しておる。政党、社会団体の重要な職にいた者で、国家保安法第一条に規定された反国家団体の事情を知りながら、その団体あるいはその活動に同調し、その他の方法でそれを助けた者は、死刑、無期または十年以上の懲役に処する。そうして、南北統一運動をやるような者は、これはみな反国家的団体だ、こう見なされておりまして、死刑をもって臨まれている。なおまた、越えて六月二十二日には有名な反共法というものができた。これは、共産系列という、何をいうかよくわかりませんが、こういう団体の首魁はことごとく死刑。その五条を見ますと、そういう団体のところへ普通のはがきを出した者は七年間の懲役、そういう団体に所属している者に何か通信すると、それだけで、内容のいかんにかかわらず、七年の懲役、こういう反共法というものができている。なおまた、昨年の九月ころには集合臨時措置法というものができた。第三条によると、一切の民主的な運動というものはできないような法律になっておるのであります。こういうものが朴政権の中に出てきまして、そうして、現に南北統一運動なんかをやっておりまする朝鮮の学生が相当処罰されております。昨年の九月二十五日には、九人の大学生、各種の大学生が処罰されておりますが、これは何であるかというと、南北統一運動をやったということであります。そうして、重いのは無期になり、十五年が一人、七年が六人、こういうふうに、民族独立運動をやっただけで、大学の三年生ですが、相当の学生が処罰されている。いわんや、日本におきまして、これらと気脈を通じて日本で運動している者はみなリストに載っている。そういう実情でありまするから、日本に留学しておりまする者たちが自分の身の不安を感じているわけであります。こういう実情でありまするので、私は、やはり日本政府から進んで国連に対していわゆる韓国の難民の調査請求してもらいたい。そうして、国連が難民の処置をとるようにしてやることが高い人道主義の日本としてのとるべき態度じゃないか。すぐ隣の韓国でありまして、政変がありましたがために彼らの身分がそのような危険に瀕するような状態になった。これは、国連の高等弁務官に関する規約あるいは難民の地位に関する条約等の難民にまさに当てはまる様相を呈してきておるわけであります。こういうことに対しまして、政府が難民調査要求を国としてする意思があるかどうか。  なお、私は時間を省くためについでに言いますが、こういう難民救済には、政府の機関のほかに、国際赤十字社が活動しておりますが、日本からも国際赤十字社の世界大会にやはり代表者が出ております。そして、これは一家離散防止原則というふうに国際連合では言っておるようでありますが、たとえば、甲は韓国におり、乙が日本におる。一家がみんな離散してしまう。それをなるべく生活の立つ者のところに集める。たとえば、日本における韓国人が生活能力があってやっておるならば、韓国におるじいさん、ばあさんを引き取って、一家をそこに形成させる。一家離散を防止し、そこにあたたかいホームをつくる運動をやるということをこの国際赤十字社で決議しておるわけであります。これにも日本の代表が参加して賛成しておるのでありますが、先般の法務委員会における答弁におきまして、中川局長は、これは国際赤十字社の決議であるけれども政府はその決議に賛意を表した、こういう答弁がありましたが、日本にもそういう実情が大へんあるわけです。もう韓国なり朝鮮なりに生活のできない者がおる。日本におる者は何とかやっておる。こっちへ引き取ってやれば一家が生活できるようになる。ことに、若い者が日本におって老人が韓国におる、あるいは北朝鮮におるというような事例が相当あるわけですが、この国際赤十字社の決議によれば、こういう者がまたあたたかいホームをつくることができるよう国際連合の高等弁務官は努力する、赤十字社もこれに協力する、そういうふうな決定をしているわけでありますが、日本政府といたしましては、そういう国際精神にのっとった処置をとる考えがあるかないか、これもお尋ねいたします。
  216. 大平正芳

    大平国務大臣 せっかくの御質問でございますが、難民高等弁務官の仕事は、本国から政治的あるいは宗教的な理由で逃げ出した者の救済というものがその仕事でございまして、韓国で人権が尊重されているかどうかというような調査は、この高等弁務官の権限の外にあるのではないかと思うわけでございます。  それから、法務省の方の話によりますと、現在大村で収容中の方々は、不法入国をいたして来ており、大多数は、今猪俣先生がおっしゃったように、生活上日本の方が安易だという意味で来ておられるのでございまして、政治的亡命というようなカテゴリーに入るものではないようでございます。
  217. 猪俣浩三

    猪俣委員 現在大村収容所に入っておりますのがどういう理由で日本へ渡ってきたのか分析を入管局長に説明を求めていますが、ただいま答弁できないからいずれ答弁するということになっておりまして、今入管局長の答弁のできないことをあなたが答弁したわけなのです。  それはそれでいいといたしまして、私どもの心配するのは、今日本に来ている学生について、滞在期間が切れかかっておるわけです。その滞在期間が切れて帰らなければならぬようなことが起こった場合に、相当の学生が帰ると逮捕せられるという心配がある。朝鮮にどういう法律ができたかということは高等弁務官の委託事項ではないような御説明がありますが、そうじゃない。高等弁務官の委託権限というのは、難民を委託する。難民というのは何であるかと言えば「人種、宗教、国籍、政治的思想などの理由により迫害を受けると信じられる充分な根拠があるため、現在母国を離れており、帰国してその国の保護を受ける事が不可能かまたは帰国を望まぬ人々を含む」、これが高等弁務官の取り扱う難民なんです。そうして、一九五七年十一月二十六日の国連の決議では、「国連加盟国、救済民間機関ならびに各専門機関は香港に居る中国人難民の苦痛を緩和させる為のあらゆる可能な援助を与えるよう訴える。国連難民救済高等弁務官はこれら救済事業の為の拠出金を奨励しあっせん便宜の機能を遂行する権限を付与する。」、これが香港のいわゆる難民と称するものに適用するようなことになっておる。それから、一九六一年の十二月には、「高等弁務官の委託権限下にある難民は勿論、あっせん便宜を提供する対象となっている難民に対して、その救済活動を遂行するよう要請する。」、広く救済活動あるいはあっせん、そういう便宜を与えるようにというふうに、だんだん難民の定義が拡張されている。高等弁務官を見ましてもそうです。今まで朝鮮でそういう民主運動としてやってこられたものを、この法律によって処罰せられ、死刑から無期、十五年、七年というような重刑を科せられております。南北合同運動なんというのは、張勉内閣のときには自由にやっておった。ほとんど全部こういうものが弾圧せられる。そういう状態ならば、まさに、ここに入っておるところの、本国へ帰っても保護を受けられない、保護を受けることは不可能だ、そうしてまた帰国を望まぬ人々、これに当たる。「現在母国を離れており帰国してその国の保護を受ける事が不可能か、または帰国を望まぬ人々を含む」と書いてある。だから、この難民というのは、経済的困窮者を言うのではない。政治的亡命者みたいなものも含んでおるわけです。だから、朴政権ができる以前まではよかったかもしれませんが、その以後というものは、高等弁務官の委託事項になります難民の定義が当てはまってきておる。これは大へん多くおるのです。これは学生のみならず一般の人もおる。朝鮮統一新聞を日本で発行しておる人がおりますが、この人の後輩で、韓国日報ですか、民族日報ですか、その社長は死刑になったじゃありませんか。だから、この人なんか帰れば当然死刑になってしまう。日本から帰る時期が迫ってきておるわけです。こういう状態なんです。だから、まさに高等弁務官の委託権限の難民に入っているわけですから、そこで、こういうことをもう少し日本政府も考えてもらわなければならない。  一体、日本国民政府もこの難民ということにあまり今まで関心がなかった。しかし、今や、朴政権ができてから、この難民が大へん日本の内地にいるのです。朝鮮統一新聞の社長なんかは、もう帰る期限が来ておる。帰れば死刑になることは明らかなんです。大体、弟分が先般死刑になったじゃありませんか。日本のあらゆる文化人、世界のあらゆる文化人が延命運動をやったが、死刑になってしまった。そうして、三人のうち一人は死刑が執行されて、二人は無期になった。また、朝鮮の社会党の党首も死刑になっておる。こういう状態ですから、常識で判断できない政権ができている。日本政府はそういう政権と今交渉なさっている。交渉はいいでしょうが、一体どういう内容の交渉をするだろうかということを非常に心配している。韓国人の地位に関する条約というものができはせぬか、そうして、韓国人と朝鮮人とを区別したり、あるいは統一運動をやるような者に対して何か特別の取引をするようなことをやるのじゃなかろうか、こういう心配を大へん持っております。  そこで、私は、今やまさに高等弁務官の調査要求する事態が日本に起こっているのじゃないかと思う。あなたはそれは高等弁務官の職権の範囲外みたいなことを言うが、まさに職権なんですよ。この規約を読んでごらんなさい、明瞭に書いてある。そういう意思はありませんか。
  218. 富田正典

    ○富田説明員 一応密入国者の処遇を参考までに申し上げたいと思います。現在、韓国からの密入国者の大部分は、学校に入って勉強したいというような希望の者であるとか、あるいは別れておる家族と一緒になりたい、あるいは韓国の経済状態が非常に苦しいので日本に行って楽な生活をしたいというような者が大部分でございまして、政治的な亡命を主張して逃げてきた者はきわめて少ない数であると承知しております。この密入国者に対しましては、御承知のように、出入国管理令によりまして退去強制をしなければなりません。また、学生などにつきましては、特に大学で勉強する期間特別在留許可を認めてやろうじゃないか、しかし、その勉学の期間が済んだら、これは一つ密入国者であるからお帰り願わなければならぬということで処理しておりますが、そういう学生が日本に在留中に、ただいま猪俣先生のおっしゃったような運動に参加し、あるいは参加しなくてもそういうような嫌疑を受けた、そうして韓国に帰されれば迫害を受けるというような事案につきましては、これはもう人道的な立場で十分な考慮をいたして処理しております。出入国管理令でも、大体その者の国籍または市民権の属する国に送還するというのが建前ではございますが、その送還が、ただいま申し上げましたような人道主義的な配慮によって、どうしても送還することができないということになりますと、居住順序が書いてございますけれども、それぞれ自分のすきなところへ行くという道は講ぜられておるわけでございます。これを日本で居住を認めるかどうかということまで踏み切るかどうかは、これは、御承知のように、いろいろな事由で大勢の難民が流入して参りますと、人口問題ということもございますし、簡単に国内的に踏み切れない事情もございます。また、外交上も、そういう者に特別在留を押し切って認めるということは、及ぼすいろいろな影響もございますので、本人が行き先を見つけるまで何らかの形でしばらく置いておくというような便法を、特殊事情のある者については講じておるような事情でございます。十分人道主義的な配慮をいたして処理しておりますので、その点は御安心願いたいと思います。
  219. 猪俣浩三

    猪俣委員 この韓国人の地位に関する条約が何かきまりまして、韓国人と朝鮮人民共和国の人間との間に非常に差別待遇ができるのではないかということをそれぞれ非常に心配しているのですが、そういうふうな内容の条約が考えられているのかどうか。  それと、いま一つは、おもに学生なんかですが、南北統一運動を盛んにやっている学生なんかに対して韓国に引き渡してくれというような要求があるというふうなことを心配している向きもある。それから、韓国の国籍を有する者には永住権を認めるが、北の朝鮮人には一切それを認めない、そういう交渉を今やっておるということを韓国の新聞に盛んに書いているそうでありますが、そういうことについての外務大臣の御意見を承りたい。
  220. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど御質問の、難民調査で、国連の高等弁務官の方に要請する気持があるかどうかの問題でございますが、それは、日本でさばき切れないとか、日本の手で負えないというような事態になればそういうことも考えられましょうけれども、今の段階では、入国管理局の方から申し上げました通り日本の手で始末がついておることでございますので、特に国連に持ち出すというような段階ではないと思います。  それから、今の最後の御質問でございますが、その点につきましてはアジア局長の方から説明をさせます。
  221. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 日韓の間に、在日韓国人の法的地位の協定ができました結果として、今御質問にございましたような、学生等、あるいは政治的な理由による者を韓国に送り返すというふうなことは、だれも問題にもいたしておりませんし、考えてもおりません。それと離れまして、韓国人の法的地位がきまった場合に、自分韓国人でないという者の地位がどうなるかという問題は確かにございます。これは、韓国人の方の地位がきまりました上で、台湾の人たちの問題などもあわせながら考えたいと思っておりますが、実質上差別待遇になることを避けたいという方針ではおります。
  222. 野田武夫

    野田委員長 穗積七郎君。
  223. 穗積七郎

    穗積委員 実は、きょう私は日韓会談の問題と東西貿易の問題についてお尋ねしたいと思ったのですが、時間がだいぶ予定よりおそくなりましたから、日韓会談に対する質問は次の機会に譲りまして、簡単に東西貿易の問題について二、三お尋ねしておきたいと思います。私の質問も具体的にかつ簡潔にいたしますから、政府当局の御答弁も簡潔にしていただいたらお互いによかろうと思いますので、あらかじめ申し上げます。  先月の二十九日に内閣は河合訪ソ経済ミッション報告をお聞きになったようですが、この前から正確に聞いた上でこの問題に対する政府の考え方をお答えいただくことになっていたのですが、その後いかがでございますか。
  224. 大平正芳

    大平国務大臣 河合ミッションの方から御報告を承りまして、具体的な成約に至りましたものは船舶関係だと承知いたしております。ただいままで私どもが聞きました限りにおきまして、政府としてあの成約は特別に支障はないものと思います。具体的な申請が出て参りますれば善処いたしたいと思います。
  225. 穗積七郎

    穗積委員 なお、繊維とか機械等も、一部は成約ができ、あるいは進行中のようですが、これらについても支障はないと私どもは思っておりますが、いかがですか。特に、繊維は話が長期になっておりますね。
  226. 大平正芳

    大平国務大臣 私が伺っておるのは、成約ができたのは船舶関係だけと承知いたしておりまして、ほかに木材、繊維等は話があったということは聞いておりますけれども、成約までには至っていないと思います。
  227. 穗積七郎

    穗積委員 それじゃ、当事者からまだ正確な報告がないようですが、これも成約のできる見込みであると思います。これは三カ年間の長期になっておりますが、これも支障はないと思いますが、いかがですか。
  228. 大平正芳

    大平国務大臣 具体的なケースの成約によりまして、伺った上で判断いたします。
  229. 穗積七郎

    穗積委員 繊維または機械について、予想される障害は特にございましょうか。
  230. 大平正芳

    大平国務大臣 ミッションからそういう成約ができたという話を聞いておりませんから、これは具体的なケースをはっきり伺わなければならないと思います。
  231. 穗積七郎

    穗積委員 それは個々の具体的なものに対する態度については別ですけれども、私の言っておるのは、一般的に言って、繊維、機械等についての輸出成約について障害が特に予想されるものはございますかどうかということを聞いておるのです。
  232. 関守三郎

    ○関(守)政府委員 キャッシュで決済される限りにおいては、繊維、機械は別に差しつかえないと思います。
  233. 穗積七郎

    穗積委員 延べ払いの場合も、この前の御答弁ですと、債権の保全あるいは貿易の発展の可能性等を見て、差しつかえなければこれも初めから一般的な制限を設けないつもりである、原則としては延べ払いも不可ではない、こういう御答弁があったわけですが、それについてはどうですか。
  234. 関守三郎

    ○関(守)政府委員 繊維については、一般的にも延べ払いという例はほとんどございません。非常に困っておりますインドネシアにちょっと一、二——これは米綿の委託加工できわめて例外的なケースでございます。それがあっただけでございまして、繊維につきましては、今申し上げましたように、延べ払いというものを認めているケースはほとんどございませんので、全然新しいケースとしてこれは考えざるを得ないでしょうが、関係事務当局の間でもまだそういうことについて研究した例がございませんので、従来の例から見ますと、繊維について特にソ連のような強大な国に対して延べ払いの先例を開くということにつきましては問題があるのではなかろうかと考えます。  それから、機械につきましては、金額その他によるでございましょうけれども、原則として、ほかの国に出しておる限度内、つまり、ほかの後進国に出しておる限度内であり、かつわが国と競争するヨーロッパの国が出しておる取り引きの延べ払いの条件と申しましょうか、その程度であれば、——これは五億も六億も多くなりましてはとてもだめでございますし、第一金がございませんから、日本の資金の限度、それから債権の保全というようなことを、まだほかに何かあるかもしれませんけれども、それらをにらみ合わせまして、適当な限度であれば、当然これはそうしなければ売れませんから、つまり、西欧との競争に必要であると認められる条件であれば、これはおそらくいいことになる。大体、従来の慣例からいたしますと、従来も一定の限度内ではそういうことをやっております。将来もそういうことでやっていきたい、こういうふうに考えております。
  235. 穗積七郎

    穗積委員 延べ払いのことにつきましては、この前もちょっと御注意申し上げておきましたが、たとえば、先般三菱が落札をしたものが南アメリカで延べ払い条件のために敗北して非常なショックを受けた。この問題は、あまり近視眼的に考えないで、できる範囲で、やはり今おっしゃったようなEECまたはアメリカとの関係を考慮しながら、前向きで少し検討されることを要望いたしておきます。  次にお尋ねいたしますが、例の石油のことです。これはまだ成約に至っておりません。この事情は私もよく知っておりますが、これについては一般的に言って障害がいろいろ予想されますけれども、外務省あるいは通産省としてはどういうお考えを持っておられるか。この点については、まずもって貿易発展の問題でございますし、この前言いましたように、重化学工業、特に石油化学と製鉄の長期計画というものが中心になるもので、これはもうすでに計画ができておるわけです。ソ連との関連で見ますと、私どもの考えでは、こまかい説明は釈迦に説法ですからきょうは申し上げませんけれども、これはどうしても近い将来において具体的にしかも積極的に日本側からも問題を提案しながら検討して前向きに処理すべき問題ではないかと思っております。まず、その立場で、外交とか政治的な条件の問題を抜きにして、一つ純粋に通産省のお考えをこの際伺っておきたいと思います。
  236. 宮本惇

    ○宮本説明員 実は、この前商工委員会におかれまして河合団長からお話を承ったのでございますが、そのときの河合団長のお話では、一千万トンの石油を買うならばパイプ・ラインを考えるというようなお話であったように承りました。  そこで、ソ連石油の輸入の問題でございますが、御承知のように、現在わが国の石油精製会社は資本関係その他でいろいろすでに既存の外国石油会社との関連が密接でございます。また、貿易の自由化によりまして、原油の輸入ということがある程度コマーシャル・べースで入ってくるということになりますと、今直ちにソ連石油が大幅に入るかどうかといった点は今すぐには予想できないと思います。御承知のように、ソ連石油と申しますのは、成分からいたしますと、非常に軽い油、軽質でございます。従って、現在の日本の重油の消費傾向から言いますと重質性を重んじておりますために、ソ連石油単体で使うということはむずかしいので、一応、ブレンド、混ぜております。そういうような点からいたしまして、現在一千万トン買ったらどうかというお話については、御承知のように、今年度は三百数十万トンということになっておりますが、現在の状況から申しますと、これが今すぐ画期的にふえるということはわれわれとして考えられませんし、また、ある程度の自由化、コマーシャル・ベース、過去のいろいろないきさつから、すぐこれを画期的にわれわれとしてふやそうという考えは現在持っておらないわけでございます。
  237. 穗積七郎

    穗積委員 もとより、日本の消費需要がないのに買う必要はないわけです。しかし、将来需要が生じた場合、そしてしかも国際的なコマーシャル・ベースで検討した場合にその方が有利である場合には、他の政治的あるいは資本の系列の関係から見て通産省としてはこれを拒否する理由はない。その点の一般的かつ基本的なお考えを聞かせていただきたい。
  238. 宮本惇

    ○宮本説明員 もちろん、通産省として特にソ連油を入れてはいけないというようなことをする権限は何もございませんが、しかし、今私が申し上げましたのは、現在のいろいろな実情、それから、さっき申し上げましたような特殊性から言って、これが一挙に画期的にふえるということは、コマーシャル・ベースの面から言っても考えられませんということを申し上げたわけであります。
  239. 穗積七郎

    穗積委員 いや、現在はコマーシャル・ベースで見て必要性がないということですけれども、それが必要性を生じた場合には、それ以外に他の障害になる条件は考慮する必要はない、こういうふうに僕は思うのですが、いかがでしょう。
  240. 宮本惇

    ○宮本説明員 現在すでに他の障害があるというふうに考えておりませんし、要するに、コマーシャル・ベースでよくなれば、これはけっこうなものであるということだけでございます。
  241. 穗積七郎

    穗積委員 外務省、それでよろしゅうございますか。
  242. 大平正芳

    大平国務大臣 いずれにいたしましても、これはソ連との間の貿易協定の相談の中からやるわけでございまして、そのときに慎重に対処いたしたいと思います。
  243. 穗積七郎

    穗積委員 一般的に言って、予想される障害はございませんね。
  244. 大平正芳

    大平国務大臣 通産省の申し上げた通りに考えております。
  245. 穗積七郎

    穗積委員 申し上げていただいたのは、そのときになって検討するということですけれども、それは経済的条件において検討するという意味ですね。政治的な理由はありませんね。
  246. 大平正芳

    大平国務大臣 さようでございます。
  247. 穗積七郎

    穗積委員 次に、入管局長においでをいただいておるようですから、お尋ねいたしますが、現在まで、世界の諸国から日本へ入国を希望する者の中で、国交未回復国であっても、朝鮮人民共和国の人に対してのみ、個人のいかんによらず、または入国の目的いかんによらず、すべてこれが禁止されておるわけです。これは入管の立場から見れば法律家ですから公平が一番大事なことですが、これはちょっと私ども、片手落ちというか、不公平というか、その判断に苦しむわけですが、入管としては、別にこれは区別すべき理由は法律上はございませんね。
  248. 富田正典

    ○富田説明員 入国管理行政を適正にやっていくかどうかという問題よりもさらに高次な問題、より高次な外交上、政治上の観点から規正されておると承知いたしております。
  249. 穗積七郎

    穗積委員 そういたしますと、その言葉を返せば、要するに、北朝鮮の国籍のある人は、人のいかんによらず、入国の目的いかんによらず、これが禁止されておるのは、一に高次すなわち外交的かつ政治的な理由によるものであって、法務省の法の解釈や取り扱いの運営の立場から見れば、その次元においてはこれは差別されるべきものではない、こう解釈されるわけですね。そういうふうに、法務省としてはそう取り扱ってもいいんだが、結局、いわば外務省が日韓会談において韓国側から文句を言われるのがこわいから待ってくれということで待っておるだけであって、法務省側の積極的な理由によってこれの入国が拒否されているわけではない、今の御答弁を私どもは類推解釈いたしますと、そう解釈するのです。それで間違いないように思いますが、いかがでしょうか。
  250. 富田正典

    ○富田説明員 法務省もやはり政府一つの行政を担当しておる部局でございますから、政府全体のそういった高次の判断のもとに立って入管行政を処理していくということになるのではないかと思います。
  251. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、要するに、外務省も法務省も一体だから、外務省の日韓交渉の立場から、その情勢の中から入国を拒否せざるを得ないことになっている、こういうことであったわけです。  そこで、外務大臣にお尋ねいたしますが、そういうことが予想されて現在までも不当に行なわれておりましたし、今後交渉にあたって、アメリカが最近だいぶ日韓会談に圧力を加え出しておりますから、それをかさに着て韓国側日本に対して北朝鮮との関係について不当なるいろいろの条件を持ち出したり、それから、あるいは妥結の後においてもさらに北朝鮮を敵視する政策を要求してきたりする危険性があるというので、あらかじめ日韓会談交渉にあたる日本政府の御意向をその点についてお尋ねいたしまして、それに対して、あなたは、交渉の過程、また妥結後においても、日本の自主性を妨害されるようなものは受け付けない、   〔委員長退席、菅委員長代理着席〕 そして、わが国としては、公平に、特に朝鮮人民共和国だけを特別優遇するということはできないけれども、他と同様に公平に対処していくつもりであるという御趣旨のお話があったわけですね。今度の交渉は、言うまでもなく、三十八度線以南の限定政権としての朴政権を相手として交渉しているわけですから、朝鮮人民共和国政権との関係は無関係だと思うのです。別個の問題であると思うのです。そういう点からいきますと、この前ありましたような、日本からプラントの輸入をする、それを受け取るために技術者が来てこれを検分して受け取る、それ以外の目的は何もない、しかも、滞在期間とか旅行地域は、これもその目的以外にはどこも考えていない、そういうような状態のもとにおいてもその入国を抑圧するということは、公平でないのみならず、日本の利益にならない。国際の貿易、東西貿易を発展せしめるという基本方針であるならば、これは常識なんですね。何も不当なオーバーな要求ではないわけです。どこの国との取引においても、国交回復国であろうと未回復国であろうと、取引をする場合には当然な条件であると思うのです。それすら実は今まで小坂外務大臣の当時にはこれが抑圧されてきたわけです。あなたのこの間の御方針によると、これは思い過ごしの取り扱いであったように解釈さるべきだと思うんですね。私は、今申しました通り、人により、入国の目的によって、それが合理的であるものならば、朝鮮人民共和国国籍の人の入国もこれは拒否すべきではないと思う。特に、貿易なり文化の交流等については、国交回復前においても積極的にやるという建前になってきている。東西貿易の場合において朝鮮だけを区別するという理由はないわけですから、そういうことでありますならば、むしろ積極的にこういうような行政措置はこの際再検討すべきではないかと思うのです。一度よくその点を検討していただきたいと思うのですが、いかがでございましょうか。
  252. 大平正芳

    大平国務大臣 特定の国の圧力に屈するとかなんとかいうようなことでやるべきではないのでございまして、あくまで自主的に、日本の置かれた立場から日本の利益を判断して措置すべきであると思います。
  253. 穗積七郎

    穗積委員 自主的に考えましたときに、東西貿易は発展せしめるべき必要が日本側にもある。そういう場合に、この入国が当然かつ必要である場合には、特に他の国と区別をしないでできるだけ前向きに再検討をするということが、私は最近の東西貿易発展の過程の中において日本政府がとるべき態度ではないかと思うのです。そのことを期待いたしますが、いかがですか。自主的に判断すれば日本の利益になることです。
  254. 大平正芳

    大平国務大臣 日本の利益になることを自主的に判断して措置すべきものと思います。
  255. 穗積七郎

    穗積委員 そのときに、自主的にかつ日本の利益の立場から見て、朝鮮と日本との貿易を促進するために必要にして正当なる朝鮮からの入国は、これは朝鮮であるからといって拒否するということは不利益であると思うんですね。だから、その問題は、新たなる情勢の中において、情勢は変化しつつありますから、過去の陋習にとらわれないで、これは白紙に返して一ぺん検討すべき問題であると思いますが、いかがお考えでしょうか。
  256. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほどお答え申し上げた通りの考えでございます。
  257. 穗積七郎

    穗積委員 それは私の意見と同意見ですか。
  258. 大平正芳

    大平国務大臣 日本の置かれた立場から申しまして、日本の利益を考え、自主的に考えるべき問題であります。具体的なケースにわたりまして、そういう考え方で措置して参りたいと思います。
  259. 穗積七郎

    穗積委員 具体的に自主的に考えてみて、日本の利益になり、かつ公平であると思われた場合には、朝鮮人民共和国国籍を持っておる人であるからという理由だけによってこれをすべて拒否するという態度はとりませんね、それでは。
  260. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申し上げました通りの気持でやっていきたいと思います。
  261. 穗積七郎

    穗積委員 その気持は、私の気持とどうでしょう、私の気持と大体一致していますね。先ほどのお気持は私の気持と一致しておるように思いますが、どんなものでしょうか。
  262. 大平正芳

    大平国務大臣 何が利益かという判断であるいは若干の相違があるかもわかりませんけれども、具体的なケースにあたりまして自主的に処置していきたいと思います。
  263. 穗積七郎

    穗積委員 わかりました。そうすると、もう一ぺんちょっと総括しておきましょう。食い違いがあると、また、言った言わぬとかで何ですから。すなわち、自主的に判断をし、かつ日本の利益の立場に立って判断をしたときに、それが利益であると思われる場合においては、朝鮮人民共和国の国籍を持っておるという理由だけでこれを拒否しない、これは具体的に取り上げて検討する、イエスかノーか両方あるわけですけれども、検討する、それでよろしゅうございますね。
  264. 大平正芳

    大平国務大臣 日本の利益本位に考えたいと思います。
  265. 穗積七郎

    穗積委員 利益本位に考えるというのは、ノーだけでなくて、イエスの場合もノーの場合もあり得るけれども、それは具体的ケースに従って検討するという意味ですね。イエスの場合も含んで検討するという意味ですね。
  266. 大平正芳

    大平国務大臣 さようでございます。
  267. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、はっきり残しておいていただきたいと思います。  もう一つ具体的にお尋ねいたしますが、これは通産省へ最初お尋ねいたします。実は、私の記憶では、この四月十日に強制バーター地域というものは大体取り扱いとして解除されたわけですけれども、私の記憶に間違いがなければ、朝鮮人民共和国だけが強制バーター地域としての指定からまだ解除されてないように記憶いたしましたが、これはいかがなっておりますか。
  268. 宮本惇

    ○宮本説明員 四月に解除されたかどうか、私あれでございますが、現在残っておることは事実でございます。強制バーターとして北朝鮮が残っております。
  269. 穗積七郎

    穗積委員 残っておりますのは、朝鮮のほかにどこかございますか。
  270. 宮本惇

    ○宮本説明員 北朝鮮のほかにはございません。
  271. 穗積七郎

    穗積委員 その理由はどういう理由でございましょうか。これも政治的理由でしょう。
  272. 宮本惇

    ○宮本説明員 これは先ほどお答えのありましたような通りでございますが、内閣としても……。
  273. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、外務大臣、簡単にお尋ねいたしましょう。国交未回復国でも、もうすでにほとんどすべてどこの国も全部強制バーター地域の指定をはずしてしまったわけです。そうして朝鮮人民共和国だけが残っておる。これもまた、さっき言ったように、私は特に優遇しろということを言っているのではない。正当にかつ公平に、一切無差別に取り扱うべきだと思うのです。これについても今の入国問題と同様に一ぺん検討していただけませんか。
  274. 大平正芳

    大平国務大臣 検討してみましょう。
  275. 穗積七郎

    穗積委員 しかも、その検討は、東西貿易発展のためという立場に立って前向きで一つやっていただきたいと思うのだが、そういう御答弁と理解してよろしゅうございますね。
  276. 大平正芳

    大平国務大臣 うしろ向きの方向に検討するつもりはありません。
  277. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、最後にもう一つだけ、通産省にお尋ねし、それからあと大卒外務大臣にお尋ねしたいと思うのだが、   〔菅委員長代理退席、委員長着席〕 今度の自由化、——これは東西貿易ではなくてアメリカとの関係になりますけれども、例の通商航海条約が来年十月で切れるわけですね。あれの規定によりますと、この廃止または変更、改定の場合は一年前にということになっておる。この十月になるわけです。そこで、経過からお尋ねいたします。  先に関局長にお尋ねいたしますが、その改定問題について、アメリカと事前折衝をなさったようにわれわれは漏れ承っておりますが、折衝されたならその経過、そして、私どもは重要な問題点が三つあるように理解いたしておりますが、その問題点だけちょっと経過報告をしていただきたいと思います。
  278. 関守三郎

    ○関(守)政府委員 お答え申し上げます。私は日米通商航海条約の改定ということでアメリカ側と折衝したことは一度もございません。新聞に出ているのは、あれはうそでございます。ただ、新聞に改定の考えが政府の一部にあるようなことが出ておるがこれはほんとうかいと聞いて参りますから、いや、これは大へんな問題だから私は何も言えぬ、とにかく、みな研究しているけれども、改定の必要があるかどうかということさえもはっきりせぬ、具体的にそういう実情でございますので、従って、これはまだ検討した上でなければ何とも言えない、こういうふうに返事をいたしております。それだけでございます。それ以上のことはございません。
  279. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、続いてお尋ねいたしましょう。たとえば、資本取引に対する制限であるとか、それから内国民待遇の問題について株式の取得あるいは制限業種、この三つがだれが見ても重要な問題になりましょう。ところが、あなたは、この問題については、今まだやはり中進国の立場に立っている日本として自由化を前にして相当問題がある、場合によれば改定の必要があるというふうにお考えになりませんか。もう必要な時間は迫っているのですよ。いかがですか。交渉がなければなくてもいいけれども、あなたのお考えはどうです。
  280. 関守三郎

    ○関(守)政府委員 これは、具体的に申しますと、大へんこまかいところまで調べませんと、はたして改定の必要があるかどうかということは実ははっきりしないのでございます。これは、ほんとうに、研究いたしておるのでございますが、今日まだはっきりいたしておらぬわけでございます。改定ということは、これはなかなかむずかしい問題でございましょうし、また、やっかいな問題にもなりましょうから、一体、改定しなければ日本の自由化に際して起こるありとあらゆる問題を処理できないのか、また、どの程度までできるのかという点は、これは、正直に申し上げまして、現在なお関係各省で盛んに検討しているところでございます。事務当局の間自身ですら、はたして改定の交渉が必要があるのかどうかという点は、一向はっきりいたしておらぬというのが実情でございます。私自身も、従いまして、その検討の結果を待ちまして初めて、どうこう、右するか左するかということが言える段階になるわけで、現在まだとてもそこまで来ていないというのが実情でございます。
  281. 穗積七郎

    穗積委員 私ども野党ですから、直接行政上の執行の責任はないわけですけれども、一年前というと、予告期日はもうこの十月で、すぐ迫っております。それにまだ検討がしてない、これからやるのだというようなことで、一体間に合うでしょうか。心配なんです。おそらくは、日本の財界の意向も、業種によってまた違うでしょう。それから規模によっても違うでしょう。その意向をサウンドしながら、同時に、あなたかだれかが、アメリカに対して、ネゴシエーションではないが、ちょっとサウンドしてみた、あるいはアプローチしてみた、そうしてみたら、どうも向こうがかたいというのでへこたれているのではないですか。そうでないというと、これは政府としては非常に怠慢じゃないでしょうか。無責任じゃないでしょうか。やらぬのならやらぬでいいのですよ。やらぬならやらぬで、どういう理由でやらぬという自信があるというならいいけれども、やるかやらぬかもわからないでは、あなた、もうすぐですよ。しかも、自由化はどんどん作業が進んで、この上旬中には大体の見当をつけようと言っておるときに、これは非常に失礼ですけれども、心配です。いかがなものでしょうか。
  282. 関守三郎

    ○関(守)政府委員 先ほども申し上げましたように、公式のサウンディングというようなことはやっていません。と申しますのは、繰り返して申しますけれども、一体ほんとう条約そのものを改定しなければ日本の必要とする保護手段がどうしてもとれないのかどうかという点は、これはIMFの八条国移行の判定が絶対的なものであるかどうかという点が現在まだはっきりいたしておらぬわけであります。従いまして、また、それをやった場合に現在の条約をどうしても改定しなければ所要の保護措置がとられないのかとれるのか。この点は、たとえば八条国に移行いたしましたヨーロッパの各国がどれだけの保護手段を現在においてもとっているかということをしさいに調べまして、日本としてもこれだけのものはとれるのじゃないかということになりますれば、わざわざ条約の改定をするまでもないということになるわけであります。従いまして、その場合においては必ずしも条約の改正は必要でないというような結論になるわけであります。そういう点を今まで全然勉強してないというわけでございませんで、今最後の詰めを一生懸命やっている、こういうのが実情でございます。
  283. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、手おくれにならぬように要望しておきます。
  284. 野田武夫

    野田委員長 穗積委員にちょっと御注意しておきますが、時間が予定よりも三、四十分過ぎていますから、あとの方に御迷惑にならぬように願います。
  285. 穗積七郎

    穗積委員 わかっています。承知しております。  最後に通産省にこの点を一つ。私は今の話を伺って非常に心もとなく思うわけですが、通産省としては必要をお感じになっているのじゃないでしょうか。問題点は別として次に譲りますけれども
  286. 宮本惇

    ○宮本説明員 検討していることは事実でございます。ただ、これが、先ほど関局長のおっしゃいましたように、条約の改定までいくかどうかの点は検討中でございまして、しろという結論はまだ出ておる段階ではございません。
  287. 穗積七郎

    穗積委員 通産省としてはどうですか、一般的に言って。
  288. 宮本惇

    ○宮本説明員 ですから、いろいろな問題点はございます。しかし、それを日米の通商航海条約の改定に結びつけるかどうかの点は、今外務省も検討中でございます。われわれとしてまだそこまで至っておりません。
  289. 穗積七郎

    穗積委員 それは次の機会に伺いましょう。これはどうぞ具体的にしっかり勉強しておいていただいて、悔いを残さぬように一つ願います。
  290. 野田武夫

  291. 中村重光

    中村(重)委員 時間がありませんから簡単に質問いたします。外務大臣は答弁のベテランだから、どうも聞いておるとわかったようなわからぬようになってしまうのですが、素朴に質問しますから、一つ素朴に答弁してもらいたい。  先ほど戸叶委員質問されたのですが、むし返しになりますけれども、非常に問題が重要でありますから、重ねて一つ伺っておきたいのです。  八月二十一日の予算委員会において、野原委員質問に対して、韓国に拿捕された漁船の損害賠償を要求するかということに対しては、池田総理は、漁業資源の確保あるいは共同利用というようなことができるならば、過去のそういうことに対しては請求をしない、そういった答弁がなされました。これに対して、西日本の関係の業者あるいは労働者は非常な不安を持っておる。先ほど水産庁からの答弁もございましたように、昭和二十二年以来二百八十七隻の拿捕、現在でも百七十三隻は残っておる。抑留された漁船員も、水産庁の報告では、最近は若干数が減っておるのですが、それにいたしましても二十七名が現在も抑留されたまま帰っていない。そういったことで、拿捕された漁船の船主並びに漁船員にいたしましても、先ほどいろいろと水産庁は何か国としてもよほどめんどうを見ておるといったような答弁でありましたけれども、留守家族に対しては、給与保険に入っているのがわずかに月に二万円から二万五千円の支給である。県にいたしましても、あるいは市にいたしましても、ほんのスズメの涙といったような程度の、ただ一回だけの見舞金等を実は出しておるというにすぎない。損害にいたしましても、先ほどの報告によりますと約十五、六億だ。それも保険に入っておるといいますが、保険に入っておるのは、これは本人の意思によって入っておる。保険に入っていない漁船が相当拿捕されておる。大きな損失であるわけです一従いまして、今度の日韓会談に対しては、西日本の水産業者としては、日韓会談の中においてこれらの問題が解決されるのではないかという非常な期待感というものがあった。ところが、池田総理がこれを請求しないのだと言う。請求しない場合において、それでは国がこれに対して損害補償をしてくれるかということになってくると、現在の国家賠償法によってはその損害補償というものはなかなかむずかしい。しかし、国が当然韓国に対して損害賠償を要求する義務を励行しないという場合におきましては、それは、政治論としては、当然そのような被害をこうむった者に対してはその損害補償してやるという義務が起こってくると私は思いますけれども、なかなかそういう法律上の点からは疑問がある。現に、国家が補償しろという要求に対しては、補償はしない、見舞金は若干やろうというので、大蔵省では今わずかに三千万円の見舞金を予算化しょうとしているにすぎない。そういったような事情の中においてあのような池田総理の答弁がなされた。これに対して、先ほど来外務大臣は、われわれはああいったような答弁に対しては若干迷惑だ、さきの閣議決定の線を頭に入れて交渉を進めていくといったようなことでありましたけれども、少なくとも一国の総理大臣が損害補償要求しないのだといったような答弁をして、今外務大臣がここでそれを修正するような答弁をされたといたしましても、この問題はそれで問題の解決にはならぬと私は思う。やはり、総理と外務大臣が意思を統一され、総理の答弁を責任を持ってこれを訂正をした形においての意思表明というものがなさるべきだ、このように考えるわけであります。従いまして、外務大臣としては、総理と意思を統一して、さきの閣議決定の線に沿うて、損害の賠償を要求する、そういう交渉を進めるということをあらためて答弁をされる意思を持っておられるかどうか。私はその必要があると存じますので、その点に対する考え方を一つ伺いたい。
  292. 大平正芳

    大平国務大臣 政府一つでございますから、政府の意思は一つであるべきで、二つであってはいかぬと思う。総理大臣が突然とあの場合にああいうことを言われたのですが、これは、御指摘のように、私ども十分打ち合わして御発言いただいたわけではないのでございます。突然ああいうことを言われたので、先ほど申しましたように、多少迷惑を感じておりますが、御指摘のように、政府部内でよく打ち合わせまして意思統一をはかって参らなければならぬ課題であると思います。
  293. 中村重光

    中村(重)委員 意思統一をはかっていかなければならぬことは当然であります。しかし、予算委員会においては、総理はああいう答弁をしております。外務大臣としては、この委員会におきまして、先ほど戸叶委員に対する答弁、また、私に対するただいまの答弁があります。しかし、この答弁は食い違っておる。従って、これを統一してあらためて適当な機会に政府の考え方をはっきりさせなければならぬので、その意思があるかどうか。
  294. 大平正芳

    大平国務大臣 さよう心得えます。
  295. 中村重光

    中村(重)委員 李承晩ラインの問題でお尋ねをいたしますが、今度の日韓会談の中において、竹島問題、李承晩ラインの問題、そうした懸案の問題は、これを同時に解決をしていくのだ、こういうことであります。竹島の問題に対しましては、私どもは納得いきませんが、先ほどああいったような答弁がありました。  李承晩ラインの問題ですが、これは、池田総理の予算委員会における答弁は、漁業資源の確保であるとか共同利用、こういったような形において問題が解決されるならば、こういうことでありますし、また、従来何回かそのような形においての答弁が行なわれておるわけであります。李承晩ラインにつきましては、一九五二年、李承晩大統領の宣言においてこのラインというものは設定をされた。そして、このラインを越えたもの、あるいは時によってはラインに入らない漁船までこれを逮捕するというようなことが現実に行なわれたわけです。これの解決というものは、このラインそのものを撤去する、こういう形にならなければ、私は李承晩ラインの解決ということにはならぬと思う。外務大臣が先ほど来御答弁された李承晩ラインの解決の方法は、具体的にはどういうような解決の仕方をしようとされるのか、まずこの点を伺っておきたいと思います。
  296. 大平正芳

    大平国務大臣 李承晩ラインを前提にいたしまして懸案を解決するなんという意図は毛頭ございません。総理が申されたように、的確な漁業資源に立脚いたしまして、その有効な活用によりまして両国の漁業関係者が共栄の実をあげるような方向で漁業協定を結んで解決するという方式にいたしたいと考えております。
  297. 中村重光

    中村(重)委員 漁業協定を結んで解決をする、こういうことになりますと、先ほどちょっと答弁を聞き漏らしたのですが、大統領宣言によって設定されたこのラインは撤去させる、こういうことになりますか。
  298. 大平正芳

    大平国務大臣 当然そのようにしなければならぬと思います。
  299. 中村重光

    中村(重)委員 ところが、そうなって参りますと、この李承晩ラインの前に、マッカーサー・ラインに続いてクラーク軍事ラインが設定をされました。一九五三年八月であったかと資料で記憶いたしますが、これは一応その効力を停止いたしておると思います。停止しておりますが、このラインそのものはなくなったということにはならないのである。李承晩ラインがなくなるという場合におきまして、クラーク・ラインとは本質的にこれは違うのだということにはなりましょうけれども、やはり、朝鮮水域の防衛をするためのライン、こういうことになるわけでありますが、このクラーク・ラインというものはどうなるのか、まずその点をお尋ねいたします。
  300. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 日本に関します限りは、今漁業の関連においてのみ李承晩ラインというものがあるわけでありますが、その以外には何もございません。
  301. 中村重光

    中村(重)委員 クラーク・ラインのことを尋ねたのですが、それ以外に何もないというのですが、李承晩ラインと若干ラインは違いますけれども、クラーク・ラインがあるわけですね。このクラーク・ラインにおいて、さらには李承晩ライン、そのいずれのラインにおいても、日本の漁船が出漁するということに対して制約を加えられておっということは事実であります。だから、事実問題として問題に取り組んでいかなければならぬと私は思う。従いまして、李承晩ラインがこれで撤去されるとしても、今日のこの情勢の中において、今停止されてはおるけれども、完全になくなっていないのではないかと思われるこのクラーク・ライン、いわゆる朝鮮水域の防衛、こういう形においてこのラインが再び活動される、いわゆる国連軍、これと統一的な行動をするところの韓国軍がここを哨戒する、こういう形が起こってくるのではないか。私が今質問いたしておることは、漁業問題の解決を非常に期待しておる西日本の水産業者が、さらには漁業労働者が、防共ラインというのか、いわゆるそういったようなラインが設定をされるということになるならば、かつてはこれらのラインにおいて出漁を制約された、再びそういう形になるのではないかという不安を持っておるというわけでありますから、従いまして、その点をお尋ねをしておるわけです。
  302. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 いずれにいたしましても、漁業は漁業協定によってのみ規制されるという事態に持って参るつもりであります。
  303. 中村重光

    中村(重)委員 漁業は漁業協定においてまず制限を加えられるとかあるいは出漁をするといったような一つ権利というものが生まれてくる、これはわかります。しかし、現実に、そういった朝鮮水域にいわゆる防衛という形においてこれを設定されてきて、それにおいて制限を加えられてきた。李ラインはなくなったけれども、いわゆる防衛という形において出漁が制約されるということになってくると、これはやはり問題は残ると私は思う。従って、この点に対しては、はっきりと解明がなされなければならないのじゃないか、こう私は思うからお尋ねをいたしておるのであります。おそらくアジア局長も十分御承知であろうと思いますが、日本の漁船が拿捕されると同様に、中国の船も拿捕され、北鮮の漁船も拿捕されております。しかも、これらの漁船は武装をしており、撃ち合いが行なわれておる。中国の漁民は抑留をされるとやみからやみに葬られておるといわれておる。もちろん拿捕された船は返されない。こういうことが現実として行なわれておる。ここで日韓の国交正常化が行なわれたといたしますならば、これは当然南北統一の中において行なわれた朝鮮との国交正常化ではありません。従いまして、中国や北鮮というものを刺激してくるということは当然だろうと私は思う。そうなって参りますと、現在静かである東海あるいは黄海のこの海上は今日のようには私は静かではないと思う。そういった問題がいろいろ起こって参るでありましょう。非常に険悪な情勢が生まれてこないという保証はないと私は思う。従いまして、この漁業問題が解決をし、漁業資源の問題あるいは共同利用といった形で漁業協定が結ばれたといたしましても、これが何らかのものによって制約を加えられるということは起こってこないのか、李承晩ラインと違った形の何らかのラインというものが防衛水域という形で設定をされるということになってくる懸念はないのかどうか、まずそれらの点をはっきりしておく必要がある、私はこう思いますから、その点をお尋ねするわけです。
  304. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 クラーク・ラインというものが現在どうなっておりますか、私はよく存じませんが、李承晩ラインをやめた、そのかわりに別のものが出てくるということでは解決になりませんので、今後漁業に関する限り一切そうしたものがないように解決するつもりでおります。
  305. 中村重光

    中村(重)委員 ただいまのアジア局長の答弁ですが、その点は非常に重大な問題でありますので、外務大臣一つ答弁をしていただきたい。
  306. 大平正芳

    大平国務大臣 今アジア局長が申された通りに考えております。
  307. 中村重光

    中村(重)委員 この李承晩ラインが撤去されるということになって参りますと、日本政府としては、李承晩ラインはいわゆる国際法違反である、公海侵犯であるという形でこれに対して抗議をして参りましたのに対し、韓国は、日本のそのような抗議というものを否定をして、韓国の当然の主権という形においてこの正当性を主張して参りましたが、そうすると、韓国はその従来の主張というものを撤回するという形になるのかどうか、この点も一つくどいようでありますけれども念のためにお尋ねいたしておきます。
  308. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 過去において李承晩ラインがあったことが間違いであったということを認めるか認めぬかということになりますと、これはその点まで議論はいたしておりませんが、いずれにいたしましても、将来には何ら問題がないようにするということになっております。
  309. 野田武夫

    野田委員長 ちょっと中村君に申し上げますが、実は理事会の申し合わせよりも約一時間近く延びておりまするから、大体六時で打ち切りたいと思いますから、そのお含みで一つ御発言をお願いいたします。
  310. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、あとに楢崎委員もおるようでありますから、もう時間の関係で私は打ち切りますが、ただいまの答弁によって、李承晩ラインの問題は、当然漁業問題の解決という形において撤去される、こういうことでありますが、ただいまの答弁は、こういった問題が、すべて解決されなければ、日韓会談の妥結、いわゆる国交正常化という形のものは起こらないということなのかどうか。いわゆる将来に漁業者がここに出漁をする、こういう場合において、何らの制約を加えられない、何らの懸念も起こらない、こういう問題は、日韓会談の妥結の前提として、いわゆる同時解決という形においてこれが行なわれるものであるかどうか。重ねてその点を念を押しておきます。
  311. 大平正芳

    大平国務大臣 同時解決いたしたいと思います。
  312. 中村重光

    中村(重)委員 この日韓の漁業の問題、このことに対しましては、私どもがかねて主張いたしておりました通り韓国が一方的に李承晩ラインというものの設定をして、それによって日本の漁船あるいは漁船員を拿捕する、あるいは抑留するといった海賊的行為を行なってきたというこの事実を十分頭に置いて、日韓会談、いわゆる請求権、そういったような問題とからみ合わせて解決をしなければならないものだという考え方をこの際私は払拭してもらいたいと思うのであります。そういう不当な行為に対しては、きぜんたる態度をもって交渉をやってもらいたい。かつて日本が北鮮に対して帰還の問題を解決をした、あるいはソ連との間に国交の正常化をはかっていく、そういう場合において、韓国はどのようなことをやったか。拿捕を強化し、経済断交という形まで韓国がとったという事実を私どもは忘れておりません。これに対しては、韓国は、最終的には、自分が困って、経済の断交を取り消す、こういったような態度をとって参りましたが、でたらめなことをやっている、不当なことをやっている韓国ですら、報復的にああいうようなことをやっておる。従って、今日までこの李ラインの問題を解決せず、多大の迷惑を漁船員や漁業者にかけてきたというこのことに対しての責任を十分痛感され、この問題だけは、今進められておる日韓会談とあわせて解決すべき筋合いのものではない、経済断交をあえて辞さないという断固たる態度をもってこの問題の解決に当たってもらいたい。そのことを強く要望いたしまして、私の質問を打ち切ります。
  313. 野田武夫

    野田委員長 楢崎弥之助君から関連質問の申し出がございますから、これを許可いたします。  楢崎君に御注意申し上げますが、あと六、七分でございますから、そのおつもりで一つ
  314. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 最初にお伺いをいたします。現在進められております日韓会談が、一応、俗称南鮮、韓国を対象として行なわれている。そこで、北の方の国があると思うのですけれども、どういう性格の国であるというふうに考えておられますか。いわゆる北鮮です。
  315. 中川融

    ○中川政府委員 北の方に朝鮮人民共和国という政府があることはわれわれも認めておるわけでございます。しかし、これをいわゆる朝鮮における合法政府あるいは正統政府として認めているかということになりますと、そうは認めていないのでございまして、やはり、国際連合で認めていると同様に、オーソリティである、つまり、そこに実際上の政権がある、こういうことでわれわれは考えておるわけでございます。
  316. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では、政府としては、朝鮮に対する考え方は、二つの朝鮮があるという考え方ではないのですか。その点はどうですか。
  317. 中川融

    ○中川政府委員 要するに、朝鮮半島に二つの国家があるというふうには考えておりません。
  318. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 考えられておらない根拠をもう少し御説明いただきたいと思います。
  319. 中川融

    ○中川政府委員 日本はサンフランシスコ平和条約で朝鮮が独立したことを認めたのでございますが、この日本が認めた朝鮮というのは、やはり一つの国家として認めておる。また、世界の各国も、今、あるいは韓国を認め、あるいは北鮮を認めておりますが、いずれもこれは朝鮮という一つの国家にあるところの政府というふうに認めておるわけでございまして、朝鮮を二つの独立国になったと考えて認めている国はまずないのでございます。従って、日本も同様な立場に立っておるわけであります。
  320. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、中国に対する政府の考え方と、朝鮮に対する政府のそういう一連の考え方ですね、それはどういう関係になっておりますか。
  321. 中川融

    ○中川政府委員 中国につきましても、やはり、いわゆる中国というものは一つであるというふうに考えている。その意味では朝鮮と同じでございますが、御承知の、日華平和条約、これはいわゆる限定条約であると普通言われておりますが、実は、あの中には全中国に適用する意味で書かれている条項もあるのでございます。しかし、今われわれが韓国に対して考えておりますのは、韓国は朝鮮という国家の政府であるけれども、その施政というものはいわゆる三十八度線以南に限られておる、かように考えておるわけでございます。その間にやはり少し違いはあると言わざるを得ないのであります。
  322. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は時間を限られておりますから討論的なことはきょうは差し控えます。疑問点、わからぬ点をただすだけにとどめます。  せんだっての委員会で問題になったと思いますが、確認をしたいと思うのですけれども、現在進められておる日韓会談の相手国は国家として認めると外相は言われました。憲法も従って認めるという立場で言っていらっしゃるのか、もう一ぺん確認をしておきたい。
  323. 大平正芳

    大平国務大臣 そのように心得ております。
  324. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、せんだっての委員会で問題になったような点が実は出てくるわけです。  時間がないからそれは後日に譲りたいと思うわけですが、そこで、現在進められております日韓会談のこの交渉というのは、せんだっての委員会における戸叶委員質疑の中にも触れられておりましたが、結局、今から煮詰めていって、その内容いかんによって形式をどうするかは考えるんだというような御答弁があったようです。そうすると、今なさっていらっしゃる日韓会談というものは、憲法七十三条の二項の関係からやられておるのか、三項の関係から進められておるのか、ちょっとその点はっきりしておいていただきたいと思います。
  325. 中川融

    ○中川政府委員 外交交渉をやっております間は第二項の関係で外交案件としてやっておるわけでございます。その結果条約ができます際には、これは当然第三項になりまして、条約を結ぶにあたりましては国会の御承認を必要とする、かようになると思います。
  326. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 宣言方式になった場合はどうなるでしょうか。
  327. 中川融

    ○中川政府委員 いわゆる俗に宣言方式と称せられておりますが、それは、どういう内容を盛るかによって、条約であるかあるいは条約にならないか、内容によって判断すべきものだと思います。
  328. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、今から進められる交渉の内容いかんによって条約的なものになるかそうでないものになるかきまると言われる。そうすると、今からの進め工合いかんによって、でき上がったものが国会の承認を経る条約的なものになるか、あるいは単なる外交上の処理になるか、それはやってみないとわからぬということですか。
  329. 中川融

    ○中川政府委員 今、日韓間で交渉しております内容は、請求権、法的地位、あるいはその他いわゆる李ライン問題等実質的な問題がございまして、これらを解決するには、これはどうしても条約でなければいけないと思います。従って、当然国会の御承認を経る条約ができることは明らかでございますが、そのほかに何か共同宣言というものが要るかどうかということが共同宣言の問題だと思います。その共同宣言、つまり、国交回復の内容を盛った文書、これが一体国会の御承認を経る内容を持つものかどうか、それはその内容いかんによってきめなければいかぬと思います。しかし、実質のことをきめる条約、協定等につきましては、これは当然国会の御承認を経る条約になると思います。
  330. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ちょっと私は意外に思ったのですが、事と次第によっては国会の承認を経る必要のないようなものになるかもしれない。しかし、今のところは国会の承認を経なければならないような内容のことを考えておる、しかし、結果を見てみないとわからない、国会に承認を求めるような必要のない宣言になるやもしれぬということですか。
  331. 中川融

    ○中川政府委員 そうではないのでございまして、日韓間の交渉が妥結いたしますと、四つか五つか数はわかりませんが、おそらく数個の文書ができると思います。その中の大部分は国会の御承認を必要とする内容を盛った文書になると思います。それから、いわゆる共同宣言というのは、国交を回復すると申しますか、国交を樹立する、正常化することをきめる内容の文書があるだろうと予定されるわけでございますが、それがはたして国会の御承認を経る内容を盛ったものになるかどうか、ここが実はまだわからないわけでございます。従って、その一つだけ、あるいはまだほかにもあるかもしれませんが、一部国会の御承認を必要としない文書があるかもしれない、こういう意味で申し上げておるわけでございます。
  332. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その点はもう少し論議を深めたいと思うのですけれども、国交回復の文書のうちで国会の承認を経ないようなものとは、一体どういうことなんでしょうか。外務大臣の御答弁を願います。
  333. 中川融

    ○中川政府委員 順次私から説明させていただきますが、国交樹立と申しますことは、要するに、外交関係を樹立するということでございまして、端的に申せば、大使館を相互につくる、大使を交換するということでございます。これは、新しくいろいろな国が独立してできるのでありますが、これに大使館をつくる際には、通常、ほとんど公文も要らない、要するに、了解で、いつからつくるということでやるのが大体の例でございます。あるいは、公文を交換いたしまして、いつからお互い大使館をつくる、これが普通のやり方でございます。従って、日韓間に国交が樹立される、正式な大使が交換されるということも、それだけから言えば、普通のやり方で、いつから大使館をつくろうという政府限りの了解のもとに、お互い了解してくれればいいわけであります。しかし、その前提として、漁業問題であるとか、請求権であるとか、法的地位とか、これをきめなければいけないわけでございますから、その関係から実質的な条約になる、国会の御承認を経る文書がどうしてもその際必要になる、こういうことでございます。従って、その大使館をつくるかどうかというようなことをこの文書に書く際に、それを国会の御承認を経るかどうか、これはその実質によるわけでありまして、それ以外のものをその文書に盛れば国会の御承認を必要とすることでありますが、単に大使館をいつから開くだけという文書であれば、必ずしもそれを一緒に国会の御承認を経る必要はないのじゃないか。これは研究中でございますが、その関係から、共同宣言というようなもし形をとった場合は、これは国会の承認を経るかどうかということはその内容によって判断することになると思います。
  334. 大平正芳

    大平国務大臣 同じ意見でございます。
  335. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ただいまの局長のお話によりますと、まだそういう点は研究中であるということで、それは条約局長個人のお考えを述べられたわけでしょう。どうでしょう、その点は。
  336. 中川融

    ○中川政府委員 外務省、主として条約局が中心になって研究いたしております。今までのところを、暫定的といいますか、今までのところとして申し上げたわけであります。
  337. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その点は私はずっと論議が発展していくと思うのです。それで、時間の関係もありますし、関連質問なさる方もあると思いますから、私は問題を残したままにしますが、先ほどの李承晩ラインの問題、これと現在進められておるいろいろな日韓会談の中の問題点がありますね。それで、たとえば請求権の問題と李ラインの問題二つだけを取り上げてみた場合に、李ラインの問題が解決しなければ日韓会談というのは成立しないと思いますが、請求権の問題が解決しないでも李ラインの問題の解決はあり得るのでしょうか。
  338. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうことは考えておりません。一括して解決しなければ正常化はあり得ないと思います。
  339. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、先ほどの中村委員質問とも関連いたしますが、李ライン解決ということは、外相の答弁によりますと、漁業協定を結ぶことだ、漁業協定が結ばれれば李ラインの問題は解決するのだという解釈でしょうか。
  340. 大平正芳

    大平国務大臣 李ラインの存在を前提にしてというような考えは毛頭ございません。先ほど申しましたように、漁業資源というものに立脚いたしまして、両国の漁業が共栄するような内容を盛った漁業協定ができれば、それで解決したい、そう思っておるわけであります。
  341. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、その漁業協定の内容についてすでにもう交渉が進んでおるのでしょうか。
  342. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 本年の三月の初めをもちまして資源論を終わりまして、三月の末から漁業協定の中身について討議するということになっておりましたところ、第一回の政治会談というのが三月中旬に行なわれまして、これで非常に意見が食い違って、その後日韓交渉はとだえております。今度また予備折衝をやりまして、これがうまくいきそうになりましたならば、各委員会が再開されまして、再開されました漁業の委員会でもって協定の中身に入るわけであります。
  343. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その漁業協定の日本側が考えておる中身の構想について御説明いただけますか。
  344. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 あまり専門家でございませんけれども、要するに、資源を保護する、資源の持続的な保持という観点に立ちまして、ですから、資源を枯渇させないように漁獲につきましてある種の規制措置をとるというのが一つでございます。それから、それに違反した場合に何らかの規制措置が設けられ、禁止区域とかあるいは制限区域というふうなものができてこようかと思います。それに違反した者の処罰をどうするかというふうなことが一つになると思います。それから、もう一つは、これはまだそこまで入っておりませんけれども、ほかの協定から見まして、おそらく合同委員会というふうなものができまして、これが引き続き資源の調査ということをやり、そして資源の状況に応じて規制措置というものを随時協議する、これは、日ソの関係と同じじゃないか、常識的にそういうものじゃないかというふうに考えておりますが、これは今後討議するわけであります。
  345. 野田武夫

    野田委員長 楢崎君、ちょっと御注意します。あと一問で質問を打ち切りますから、そのつもりで御質問願います。
  346. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大体日ソ漁業協定の方式だ、それから、あるいは日米加漁業協定の方式、そういうものを考えておるように聞こえたのですが、そうですが。それが一つ。それから、その漁業協定は、どういう人たちによって、どういう小委員会といいますか、どういうメンバーで行なわれて、それが成立するときの形はどういうことになるのでしょうか。その三つをお伺いします。
  347. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 日ソ、日米とどういうふうに似ておりますか、いずれにいたしましても、大体、資源保護という観点から、資源保護のための漁獲に関る規制措置が入り、それから、違反した場合の処罰のあれが入り、それから、おそらく合同委員会が入るだろう、この三つの点が大事な点だと思います。  委員会は、日本側の主任は水産庁次長がやっております。それから、韓国側は、これはどういう地位を持っておりますか、また今度かわるかもしれませんが、いずれにせよ専門家が参ります。  それから、成立の形と申しますと、これはおそらく、漁業協定といいますか、条約と申しますか、いずれにしろ国会の承認を得る一種の条約の形をとろう、こういうふうに思います。
  348. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 今度は質問じゃありません。先ほどの条約締結の方式は、これはお伺いしただけですから、まだ意見を言っておりません。それから、今の漁業協定の内容についても、お伺いしただけです。いろいろさらに内容を深めたいという問題がございますが、委員長が時間を制限されましたから、制限された責任上、この次に必ずやらせていただくことにして、終わります。
  349. 野田武夫

    野田委員長 かしこまりました。   本日はこれにて散会いたします。    午後六時十三分散会      ————◇—————