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1962-08-29 第41回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年八月二十九日(水曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 安藤  覺君 理事 菅  太郎君    理事 正示啓次郎君 理事 福田 篤泰君    理事 岡田 春夫君 理事 戸叶 里子君    理事 森島 守人君       宇都宮徳馬君    北澤 直吉君       田澤 吉郎君    森下 國雄君       木原津與志君    黒田 寿男君       帆足  計君    穗積 七郎君       細迫 兼光君    松本 七郎君       受田 新吉君    川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         内閣法制局長官 林  修三君         内閣法制局参事         官         (第一部長)  山内 一夫君         外務政務次官  飯塚 定載君         外務事務官         (アジア局長) 伊關佑二郎君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         郵政事務官         (郵務局長)  佐方 信博君  委員外出席者         外務事務官         (経済局次長) 中山 賀博君         大 蔵 技 官         (関税局関税調         査官)     柴崎 芳博君         農林事務官         (農林経済局経         済課長)    枝広 幹造君         農林事務官         (水産庁生産部         長)      大口 駿一君         通商産業事務官         (通商局次長) 宮本  惇君         専  門  員 豊田  薫君     ――――――――――――― 八月二十九日  委員勝間田清一君及び西尾末廣君辞任につき、  その補欠として木原津與志君及び受田新吉君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員木原津與志君及び受田新吉辞任につき、  その補欠として勝間田清一君及び西尾末廣君が  議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 八月二十七日  日本国オーストラリア連邦との間の小包郵便  約定締結について承認を求めるの件(条約第  三号)(参議院送付)  日本国カナダとの間の小包郵便約定第四条を  改定する議定書締結について承認を求めるの  件(条約第四号)(参議院送付) 同月二十四日  日中国交回復及びアジア太平洋地域核武装  禁止地帯設置等に関する請願川上貫一君紹  介)(第二〇五号)  同(志賀義雄紹介)(第二〇六号)  同(谷口善太郎紹介)(第二〇七号)  同(川上貫一紹介)(第二三四号)  同(志賀義雄紹介)(第二三五号)  同(谷口善太郎紹介)(第二三六号)  同(川上貫一紹介)(第二七三号)  同(志賀義雄紹介)(第二七四号)  同(谷口善太郎紹介)(第二七五号)  同(川上貫一紹介)(第二八四号)  同(志賀義雄紹介)(第二八五号)  同(谷口善太郎紹介)(第二八六号)  同(川上貫一紹介)(第三一五号)  同(志賀義雄紹介)(第三一六号)  同(谷口善太郎紹介)(第三一七号)  同(川上貫一紹介)(第三三七号)  同(志賀義雄紹介)(第三三八号)  同(谷口善太郎紹介)(第三三九号)  沖繩船舶日本国旗掲揚に関する請願山中貞  則君紹介)(第二〇八号) 同月二十八日  海外移住の推進及び援護対策に関する請願(江  崎真澄紹介)(第三五六号)  日中国交回復及びアジア太平洋地域核武装  禁止地帯設置等に関する請願川上貫一君紹  介)(第三八一号)  同(志賀義雄紹介)(第三八二号)  同(谷口善太郎紹介)(第三八三号)  同(川上貫一紹介)(第三八四号)  同(志賀義雄紹介)(第三八五号)  同(谷口善太郎紹介)(第三八六号)  同(川上貫一紹介)(第四二七号)  同(志賀義雄紹介)(第四二八号)  同(谷口善太郎紹介)(第四二九号)  同(川上貫一紹介)(第四三三号)  同(志賀義雄紹介)(第四三四号)  同(谷口善太郎紹介)(第四三五号)  同外二件(川上貫一紹介)(第四五二号)  同外二件(志賀義雄紹介)(第四五三号)  同外二件(谷口善太郎紹介)(第四五四号)  アメリカ核実験反対等に関する請願川上貫  一君紹介)(第四三六号)  同外一件(志賀義雄紹介)(第四三七号)  同外一件(谷口善太郎紹介)(第四三八号)  同(川上貫一紹介)(第四五五号)  同(志賀義雄紹介)(第四五六号)  同(谷口善太郎紹介)(第四五七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 八月二十七日  核兵器実験反対に関する陳情書  (第二〇四号)  在日朝鮮人帰国協定延長に関する陳情書  (第二五五号)  同(第二五六号)  同(第二五七  号)  同(第三〇七  号)  非核武装宣言及び非核武装化に関する陳情書  (第二五八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  千九百六十年及び千九百六十一年の関税及び貿  易に関する一般協定関税会議に関する二議定  書等締結について承認を求めるの件(条約第  一号)  日本国オーストラリア連邦との間の小包郵便  約定締結について承認を求めるの件(条約第  三号)(参議院送付)  日本国カナダとの間の小包郵便約定第四条を  改正する議定書締結について承認を求めるの  件(条約第四号)(参議院送付)  国際情勢に関する件(日韓問題)      ――――◇―――――
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  千九百六十年及び千九百六十一年の関税及び貿易に関する一般協定関税会議に関する二議定書等締結について承認を求めるの件、日本国オーストラリア連邦との間の小包郵便約定締結について承認を求めるの件及び日本国カナダとの間の小包郵便約定第四条を改正する議定書締結について承認を求めるの件、以上三件を一括議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。戸叶里子君。
  3. 戸叶里子

    戸叶委員 ただいま議題となりました関税関係の問題について少し質問をしたいと思いますが、それに先立ちましてちょっとお伺いいたしたいことは、欧州経済共同体との交換公文正文フランス語日本文ですか。
  4. 中川融

    中川政府委員 この交換文はフラ  ンス語で行なうことになっております。
  5. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、日本文のはどういうのですか。正文じゃないのですか。
  6. 中川融

    中川政府委員 日本文翻訳でございます。
  7. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、翻訳として日本国会だけに出されたということ  になるわけでございますか。
  8. 中川融

    中川政府委員 翻訳文はただ国会にだけ出してあるわけでございます。正文フランス文交換することになっております。
  9. 戸叶里子

    戸叶委員 英語あるいはフランス語のものと日本文のものと両方正文にする場合と、今回のように翻訳だけの場合と、どういうときにその区別があるわけでございますか。
  10. 中川融

    中川政府委員 これは、通常、御承知のように、相手国言葉を使う場合、日本語も同時に使い、それから必要によっては第三国語をも使うということでございますが、相手国の国語を使わない場合、つまり、第三国語を初めから使う場合は、その第三国語だけを正文とするという例も相当多いのでございまして、今回は、EECというのは六カ国でございまして、いずれの言葉正文ということもちょっと言いかねますので、便宜上フランス語をもって正文とする、かようなことにいたしました。なお、交換公文の形といたしましても、ごらんになってお感じになると思いますが、要するに、普通の条約とか協定とかいう格好とはよほど違いまして、交換公文ということでございますので、これは、通例、外国交換公文交換をいたします際には、大体日本語は使わないことが相当多いのでございまして、本件も、これはスイスで交換いたしますので、従って、必ずしも日本語は使わない例が従来も多いのでございます。さような関係から、フランス語だけで交換する、こういうことにいたしております。
  11. 戸叶里子

    戸叶委員 今回の交換公文というものはフランス語正文で、日本文が先方に行かなかったからいいようなものの、交換公文の中には非常に大きな間違いの文字がここにあるわけでございまして、交換公文の中の三ページに、「貴使が前記の点に事項についての」というようなことがございますけれども、これは、私どもが読んでみて、一体何のことかしらと思って疑問になるわけでございます。外務省の方は、これはミスプリントと言っておしまいになれば、それで済んでしまうかもしれませんけれども、いやしくも国会に出す書類として、こういうふうな間違った書類をお出しになるということは、私は国会軽視もはなはだしいと言わざるを得ないのでございますが、この点についてどういうふうにお考えになるでしょうか。
  12. 中川融

    中川政府委員 実は、この翻訳文を最初に出しました際には、つい急ぎましたのでミスプリントが二カ所ほどございまして、さっそくその訂正の手続を引き続いていたしております。正誤表がお手元に配付されておると思いますけれども正誤をいたしておる次第でございます。
  13. 戸叶里子

    戸叶委員 これは正誤表出したから済むという問題ではないと思うのです。なぜかと申しますと、この前の国会におきましても、私は、原住民という言葉英語においては同じ言葉を使っておりながら、日本語翻訳としては違って翻訳、原という字と現在の現という字を用いているというふうな、そういう間違いを指摘いたしました。そのときはそのままで済みましたけれども、しかし、やはり、国会に出される書類が、こういうふうなミスプリントと申しますか間違いをするということは、非常に不注意ということだけでなくして、国会を重要に考えていないというような責任は免れないのではないかと思うのでございます。  さらにもう一点私は指摘したいことは、この前の大蔵委員会、ちょうどこの委員室で行なわれましたあの委員会におきましても、マーケットとそれから池田さんとの間の書簡の中で、数字上の間違いをミスプリントとして国会の資料に出しておりました。そのときにも、八十五万ポンドというような説明があったにもかかわらず、その書簡は五十八万ポンドになっていた非常に大きな間違いがあるわけでございまして、私はそのことを調べるためにずいぶんな時間を費しました。まさか外務省がお出しになる書類というものに間違いがあろうとは思いませんでしたので、そのことを、五十八万ポンドと八十五万ポンドと一体どうして違うんだろうということを調べるために半日以上も費して、結果的には何もわからなかったのですが、ここに来てみると、それはミスプリントでしたといって片づけられるのでは、私どもはとてもやりきれたものではないと思います。  従って、こういう問題については十分今後におきましても私は注意をしていただかなければならないと思います。こういうふうな考え方で安易な外交政策をやられるのではたまらないと思いますけれども外務大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 非常に精緻な御審議を通じまして、私どもの方の不用意な誤りを御指摘いただきまして、まことに痛み入るわけでございます。国会に提出申し上げる文書につきましては十分の検討を加えまして正確を期さなければならぬことは仰せの通りでございまして、私ども今後一そう戒心を加えまして、そのようなことがないようにいたしたい決意でおりますので、御了承いただきたいと思います。
  15. 戸叶里子

    戸叶委員 御了承をと言われても……。ついでに御指摘いたしたいのですが、千九百六十年及び千九百六十一年の関税及び貿易に関する一般協定関税会議に関する二議定書等締結について承認を求めるの件の中の理由というところに、これは「関税」の間違いでしょうが、「国税及び貿易に関する」となっておる。関税国税とはだいぶ違います。私どもが読めば好意的に関税と読めますけれども、しかし、普通の人が読んだときに、これは何だろうという疑問を抱かざるを得ないと思うのです。これはやはり関税の間違いでございましょうね。
  16. 中川融

    中川政府委員 戸叶先生指摘通り、それは間違いでありまして、ミスプリントがありましたこともまことに申しわけないと思っておりますが、その方も正誤手続をいたしてあるところでございます。
  17. 野田武夫

    野田委員長 この際一分間休憩いたします。    午前十時十四分休憩      ――――◇―――――    午前十時十六分開議
  18. 野田武夫

    野田委員長 休憩前に引き続き開会いたします。  大平外務大臣
  19. 大平正芳

    大平国務大臣 今御指摘されましたように、従来たび重なる過誤がございまして、まことに申しわけなく、つつしんで陳謝いたします。今後、厳重に戒心を加えまして、このようなことのないように精一ぱい努力いたします。
  20. 野田武夫

    野田委員長 この際外務当局に御注意申し上げます。  ただいまの戸叶委員ミスプリントに関する御発言はきわめて重要なことでございまして、委員会といたしましてもまことに遺憾に存ずる次第でございます。今後こういうあやまちがないように、外務当局は十分御注意を願いたい。特に委員長として私から外務当局に対して御注意を申し上げます。
  21. 戸叶里子

    戸叶委員 ただいまの問題に対しまして、委員長からの御注意もあり、そうしてまた、外務大臣からの陳謝の言葉もあったわけでございますので、私はこれ以上申し上げませんが、きょうのような言葉、私どもから読んで読めないことはないような間違いである場合には仕方がないにいたしましても、これが、先ほど申し上げましたような英語の訳を間違えるとか、あるいはまた数字を間違えるということに至りましては、これは非常に大きな問題になるわけでございまして、ことに日本外国との関係もあることでございますから、どうかただいま外務大臣がおっしゃったような趣旨を今後必ず実行していただきたい、こういうことを要望いたしまして、質問に入りたいと思っております。  まず第一にお伺いいたしたいことは、今回日本欧州経済共同体との交換公文をかわしたわけでございます。が、欧州経済共同体というものは、将来におきましても現在までに見られたような発展可能性があると考えておられるかどうか、この点を外務大臣にお伺いしたいと思います。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 この欧州共同体が発足以来、関税同盟といたしまして今までなし遂げて参りましたこと、並びにその速度は、一般に予測されておりましたより早目にいって、今第二次段階に入っておるようでございます。で、この実態は、ここ数年間共通政策を打ち立てるという努力を続けておるわけでございますが、私どもは、過去の実績がそうでございまするように、今後のその進展速度相当早いものと予想いたしております。
  23. 戸叶里子

    戸叶委員 進展速度が早いというふうなお話でございましたけれども、結論的に言いまして、欧州経済共同体というのは、第二の市場というようなものであって、その本質は、一般考えられているように開放的な性格ではないんじゃないか、形を変えたアウタルキーというような考え方をしてもいいじゃないかというように考えられますけれども、この点はどういうふうに政府としてお考えになっていらっしゃるか。もしそうだとするならば、そういう意味で、この欧州経済共同体は将来経済的にあるいは政活的に内部的に行き詰まるというようなことも来るのではないかとも考えられますけれども、こういうふうな点についてはどんなお考えを持っていられるでしょうか。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 戦後の世界経済の動きといたしまして注目すべきことは、一つ自由化方向でございまするし、そしてまた、関税率を引き下げて貿易の拡大をはかっていこうという大勢でございます。EEC諸国といたしましても、こういう背景を考えて、EEC共通政策を打ち立ててこういう大勢に対処して自己の生存と発展を希求して参るということでございまして、御指摘のように、これがアウタルキー方向に行くというように私ども考えていないわけでございます。自由化方向に対してEEC諸国が新しい姿勢をとっていくというものであるように見ておるわけでございます。
  25. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、政府としては、相当過大に評価されて、今後においてもおそらくどんどん発展して、行き詰まるような場面には直面しないだろう、こういうふうな見通しを立てていらっしゃるわけでございますか。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 EEC諸国内部におきましても、もとより利害の対立はございますし、EECをめぐりまして圏外の経済圏がどのような姿勢をとって参るかということにつきましてもたくさんの問題があるわけでございます。が、非常な忍耐と努力によりまして、そういった問題が逐一解決の方向に行っておるように見られるわけでございますので、その努力を通じましてますます充実した方向をとって参るのではないかというように私どもは見ております。従いまして、そういう頭でEEC対策を私ども考えて参らなければいかぬのじゃないかと思います。
  27. 戸叶里子

    戸叶委員 EECがますます発展していくだろうという考え方日本としてもその対策考えていらっしゃるということでございまして、それも一つ方法として大事だと思いますけれども、やはり、EECなしでは日本経済発展しないというような見方は、少し過大な評価をし過ぎるわけであって、日本としては、将来もっとも有望な市場として、アジア地域とか、中共とか、それからソ連とか、ラテン・アメリカ地域にその貿易なり経済のもとを求めていかなければならないというふうに考えるわけでございまして、いたずらにEECだけに血道を上げるよりも、日本の国の立地条件をも考えると、将来、私が述べましたような地域において市場を穫得していかなければならないんじゃないかと思いますが、そういうふうな点についてもお考えになる御意思はないかどうか。EECだけに対しての過大評価にとどまるのでは非常に危険ではないかと私は考えますが、この点についてお伺いしたいと思います。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 EECを過大に考え、そしてEEC対策血道を上げるというつもりはないのでございまして、あらゆる貿易機会はグローバルに私ども獲得して参らなければならぬわけでございます。今御指摘のような地域に対する進出につきましても、十分の配慮を加えて参るつもりでございます。
  29. 戸叶里子

    戸叶委員 私が申し上げましたアジア地域あるいは中国ソ連、そうした国々との貿易の点、そうした市場の獲得も大いに考えていらっしゃるということでございますので、その点特に今後において力を入れていただきたいと思うわけです。今のEECの方でも貿易自由化というようなことがだんだん発展していくようでございまして、日本においても貿易自由化ということが言われているわけでございますが、政府発表等を見ましても、貿易自由化によって非常に打撃をこうむる中小企業なり何なりの対策というものがまだ十分に考えられておらないときにどんどん自由化を進められていくということは、非常に危険だと思いますけれども、そういう面において、何らか中小企業なり何なりの打撃をこうむらないような方法考え自由化を進めていくというような具体的な方法通産省で持っていらっしゃるかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 もうすでに七〇数%の自由化かでき、この十月には九〇%を目標に努力いたしているわけでございまして、今政府が鋭意検討し実行いたしております政策は、この自由化に備えての対策でございます。従って、無理やりに何が何でも自由化するというのではなくて、そういう自由化に耐えられる状態、体躯をつくりまして自由化に持っていこうというじみちな努力をいたしているわけでございまして、どうしても無理であるというようなものにつきましては、たびたび申し上げておりますように、政府もその無理を押し切ってまでやろうという、そういうことではないと承知いたしております。
  31. 戸叶里子

    戸叶委員 今の外務大臣の御答弁では、自由化に耐えられるような対策考えての上でということでございましたが、そういうふうでないからいろいろな問題があっちこっちに起きているわけで、また、中小企業人たちが不安におののいているということも知っておいていただきたいと思います。これは経済的な問題でございますので、あと機会によく質問をさしていただきたいと思っております。  もう一点お伺いしたいのは、さきごろ外務省としてEEC対策について見解を表明されましたけれども、それに対して通産省で反撃をしたということを新聞で拝承したわけでございます。そのあと外務省は今までの考え方撤回して出直すというようなことを言われたということでございますが、その後この問題はどうなっているのか、外務省通産省両方からお伺いしたいと思います。
  32. 中山賀博

    中山説明員 お答え申し上げます。  EECに対する対策として通産省外務省との間に大きな対立があるというふうに伝えられておりますが、実質的にはEECに対するやり方の問題でありまして、要するに、左の道から行くか右の道から行くか、目的とするところは同じでございますが、ただ、通産省外務省との間にやり方について若干考えの違いがあり、また、これについて大きな誤解を生んで新聞紙上で取り上げられたのだと思います。それで、われわれは、EECに対して日本商品の無差別待遇を要求する、日本商品EEC市場に十分入っていくことを大前提として今後とも交渉を続けたいと思います。この点につきましては、外務省通産省意見の相違は全然ないわけでございます。そういう無差別の待遇を確保する、EEC市場日本商品が自由に入っていくということを確保するための具体的な問題の一つとしましては、三十五条援用撤回ということ、現にEECの中で対日三十五条援用をしておる国に対して撤回を要求するという問題があるわけでございます。その具体的な国としましては、フランス、それからベネルックス三国、これが三十五条援用をしておるわけでございます。これに対しましてどうしてもその三十五条援用撤回してくれという交渉をいたします。ときに、EEC側としましては、日本商品競争力について、あるいはまた時として日本商品が非常な低価格でヨーロッパの市場にはんらんする、その際のことを考えまして、一種の防衛的な措置を認めてくれということをEEC側が要求している、EECと申しますか、フランスあるいはベネルックス等諸国も要求しているわけでございます。この要求に対しまして、そういうことは不必要である、日本経済のものすごい成長ふり、あるいはまた漸次国内体制も整備して輸出体制も整備されるのであるから、そういうものは不必要であるということを申す、その点についても外務省にも通産省にも意見の不一致はございません。日本国内の実情、経済実態を証明しまして、そういう猜疑心を取り除くように努力するという点においては変わりはないのであります。ただ、そういうときに、ちょうど時あたかも近い将来十月の自由化を控えまして、これを武器にしてわれわれは向こうの自由化あるいは差別待遇をおろさしていくという手順を考えているわけでございます。そこで、若干、その点のいろいろの手だてにつきまして、外務省通産省との間に、どういう方法でいくかということにつきまして意思の疎通しないところがあり、また、内部で、ごく内部限りでいろいろ意見の調整をいたしました。そこで、結論的に申します。と、現在の状態におきましては、外務省通産省との間に意見の扞格はございません。ということは、要するに、十月の自由化EEC諸国に対する交渉武器としてば十分にこれを活用していく。ですから、われわれとしてこの武器をみずから放棄するというようなことはしない。ただ、しかし、その自由化の適用の問題は、これを武器として争うのでありますけれども、具体的にそれじゃ差別待遇をするかしないかという場合には、具体的なケースを見て、そうして、それがまた日本の輸出の伸びにあるいは貿易の伸長に役立つかどうかというととも十分検討し、大局的な利害をも考慮した上でそれをやっていこうじゃないかというところに両省の合意を見まして、現在のところ両省の間には意見の扞格はございません。
  33. 宮本惇

    ○宮本説明員 通産省の見解を申し上げます。  結果から言いますと、今中山次長のおっしゃった通り、われわれとしても、今後、EEC、特にEEC諸国の中におきまして日本に対して相当差別待遇の程度のひどいものに対しては、そういうときの交渉に十月自由化の均霑を留保することもあり得る、この点は、今中山次長の言われたように、ケース・バイ・ケースで、そのつど慎重に検討しよう、こういうことで今一致しております。ただ、話がそれまでにいく過程におきまして、御承知のように、九〇%自由化というものが日本の産業にも相当な影響を与える、こちらが自由化するのに相手が依然として日本差別待遇をしているというような場合は、当然、向こうがしないならばこちらも留保する、というようなことでいろいろ議論をいたしましたけれども、結局、最後は、今中山次長の言われましたように、そういうことはケース・バイ・ケースに、場合によってはあり得るというようなことで、ただしその実際の適用は個々に御相談の上きめる、こういうふうになりましたので、現在のところは食い違いはございません。
  34. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、通産省外務省の言われるような形で納得をしていくというふうに了解してよろしいわけでございますね。  それでは、あとこのEECの問題についてはほかの機会にゆっくり伺ってみたいと思いますので、きょうは私の質問はこれで終わります。
  35. 野田武夫

  36. 穗積七郎

    穗積委員 この前、外務大臣日本貿易構造の行き詰まり、矛盾、あるいは孤立化といいますか、それは表現はいろいろありまして、日本の高度成長政策貿易構造の構造的な矛盾の中に相当根本的な問題があるということを私指摘をいたしました。その問題については外務大臣も大体大局的な考え方においては同感、同じお考えのように承ったのであります。きょう、この前宿題として申し上げて提案しておいた問題について外務大臣が御検討の上でここで御答弁いただくことになっておりますが、その御答弁をいただきます前に、失礼ですが、ちょっと今の戸叶委員の御質問に関連しておりますから、先にそれを済まさしていただきます。  外務省通産省に対EEC問題について今の点を少し具体的にお尋ねいたしますが、三十五条援用撤回するということについては、これは共通の目標でございましょう。ただ、問題は、その場合に、EEC諸国に、セーフガード、保護条項、あるいはセンシティブ・リスト、訳せば輸入制限品目表といいますか、そういうものを与えても、ある意味ではそれを条件にして三十五条の適用をやめさせる、こういう考え方外務省の従来の考え方だったのですが、それを撤回されたわけですか。外務省のお考え方を具体的に伺っておきたい。
  37. 大平正芳

    大平国務大臣 この前に穗積委員の御質問でも申し上げたのでございます。が、私どもは、根本の方針は、ガット関係にとにかく入るということ。そうしないと、将来関税の率が引き下げられるという場合に、われわれは均霑する土台を失いますから、ガット関係にまず入るということが大前提でございます。入っておいて、今指摘されたようなセーフガードの問題でございます。とかあるいはセンシティブ・リストの問題はございますけれども、これはものによりましてそういう国によりましてそういうことを考えなければならぬと思いますが、大前提は、ガット関係にともかく入るということに力点を置いておるわけでございます。  それから、通産省外務省との間に意見の相違はいろいろな問題でございますし、また、なければならぬと思うのでございます。両省ともそれぞれのお立場で熱心にやられておるわけでございます。過程におきましてはいろいろな論議がなければ政策は発表せぬと思うのでございます。しかし、政府といたしましては最終的には一つにまとめて外に臨むということにいたしております。
  38. 穗積七郎

    穗積委員 通産省にお尋ねします。が、私の考えでは、ガット三十五条の援用をやめさせるために保護条項であるとか輸入制限品目のリストを相手に一方的に供与してもかまわぬということになりますと、名前はなるほど三十五条援用がやめさせられたということですけれども、実は、内容が、そこである意味ではもっと重大な制限がしかも一方的に与えられるという危険をわれわれ感ずるわけです。そこらは、外務省の今までの立場から見れば、とにかく名目的にガット三十五条援用撤回せしめるということをやれば、外務省としての立場では一つの戦果をあげたようにお考えになるかもしれぬけれども通産省として、ないしはわれわれ国民として、このようなものは名目上の問題ではないのであって、貿易発展の実質、実効をねらっておるのですから、そういう点で、今おっしゃったような外務省のお考え方では、私は、花をもらって実を捨てた、こういうようになる危険を非常に感ずるわけです。しかも、セーフガードだとかあるいはセンシティブ・リストというものを相手に一方的にしかも無期限に与える、期限を切るとか制限をつけるとかあるいは協議の上でなければやらぬとか、そういう条件、制限がつけば別ですけれども、そういうことを相手は許すはずはないわけですね。その点について、通産省としては貿易の実質という点をねらってやはり主張してもらわぬとわれわれとしては困るわけです。その点を簡明直截に御意見を聞かしてもらいたいと思います。
  39. 宮本惇

    ○宮本説明員 お答え申し上げます。  産業官庁と、折衝されました外務省との立場の相違というものはございます。われわれ事務当局の立場から言いますと、やはり、この前いろいろな新聞に出ましたのも、通産省の立場から言いますれば、名よりも実を取りたいというのがわれわれの立場でございます。たとえば、イタリアの話でございますが、イタリア側は三十五条はすでに援用撤回をいたしておりましてガット関係にあるのでございますが、しかしながら、相当大幅な対日差別をやっておるわけでございます。従いまして、結局その点で先般来からいろいろ議論いたしまして、先ほどお答え申し上げましたように、あまりひどい場合には、こちらもそういう自由化の均霑を留保することはあり得るということで意見が一致しまして、個々の国別の交渉に入るときに十分御相談の上、通産省の立場から言えば、できるだけ、名もさることながら実を取りたいということでいろいろお話をするつもりでおります。
  40. 穗積七郎

    穗積委員 それでは一致しておらぬじゃないですか。これから交渉してみて、それでまず三十五条撤回交渉してみる、そのとき向こうがセーフガードとかあるいはセンシティブ・リストを出してきたときに、それを見た上で去就を決定しよう、賛否を決定しようということですから、それはもう統一したといって一生懸命弁解されますけれども、一致していない。われわれは通産省外務省とのささいな意見の食い違いを指摘して喜ぶのじゃないのです。そんな子供じみたことを言っているのじゃないのです。政府内の意見の違いというものを、ささいな意見の違い、戦術上の違いというものを指摘して言っているのではない。だから、名を取って実を捨てるようなばかばかしい交渉をするなということをわれわれは心配して言っているわけであります。今お話を伺えば、何も一歩前進していませんよ。前進していないじゃないですか。中山さん、どうですか、前進していませんよ。ガット三十五条の撤回を各国と全部交渉してみて、向こうから出る二つの条件に対して、通産省はそのときに無視しないというのでしょう。すなわち、われわれは通産省側である。今の貿易の問題の交渉については実を取らなければだめです。そういう立場からいけば、向こうから条件が出てきたときに、そのときに両者で相談をしてみようというので、意見はまだ一致していないのだから、大事な食い違いが残っていますよ。  そこで、外務省注意したいのは、通産省の答弁についてはきょうは時間がないのでまたこの次やりますけれども、今の御答弁の態度から見れば、通産省は名を捨てて実を取る、われわれと同様の立場でおりますから、通産省に対してはそれほど疑問を持まちせん。具体的に問題が起きたときにあとどれだけがんばるかが問題だ。ところが、外務省は、先ほどから意見の一致を見たというのは、貿易拡大の意見の一致を見ただけであって、そんなことは与党も野党も外務省通産省も大蔵省も同じことですよ。外務省がガット三十五条の撤回を要求して、向こう側からセーフガードとかセンシティブ・リストが出たときにどうするかということです。それについての外務省のお考えを伺っておかないと心配でしょうがない。大臣であればなおけっこうでございます。
  41. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、第一前提はどうしてもガット関係に入らなければいかぬということでございます。セーフガードの問題もセンシティブ・リストの問題も、ガット関係の中に織り込みまして、それから料理していくわけでございます。今、実益、実利ということで、私の方も実利がほしいわけでございますが、今の時点において、生きた企業に直接タッチしておりまする通産省としてはそういう考慮があるということは当然なことでございますが、長い目で見て、ともかくガット関係に入っておかなければ、将来われわれはわれわれの利益を守り貿易を伸長させていくという機会を失うおそれがあるから、そういうタイミングも長い目で見ていかなければいかぬじゃないかと思うわけでございまして、今御指摘のような点は、具体的に折衝の過程で、セーフガードの問題にしろリストの問題にいたしましても、出て参りましたときは、もとより通産省と十分な協議を遂げてやるつもりでございますが、くれぐれも、私ども考えておりますことは、ともかくそれはガット関係の土俵に乗せなければいかぬじゃないかという点も私どもは力点を置いているのだということでございます。
  42. 穗積七郎

    穗積委員 さっぱり説明にならない。大卒さんは大体が経済官僚出身だから大体通産省やわれわれと同じ考えだと思ったら、外務大臣になられたら、外務官僚のペースに乗せられて、外務省としてガットにだけ入り込めばそれで交渉は済んだ、貿易は伸びなくても、あるいはあと向こうから一方的にセーフガードの条項やあるいはセンシティブ・リストで非常に不当な――これはこっちが承諾を与えたやつですから不当なとは言われない。交渉のときにしっかりしておらなければ、こっちが承諾したんですから、押せないですよ。それでもかまわぬというのは、それでは、あなた方政治家として、経済もわかっておる、経済外交をやろうというのに、少し私は心配になってきた。私はもっとあなたを高く評価しておるんだけれども、何とか入り込めさえすれば、あと貿易が伸びても伸びぬでもそれは通産省の仕事だというようなことで、いわば無条件降伏か条件降伏かは知らぬけれども、それではだめだ。われわれ心配するのは、今までも、ヨーロッパの帝国主義諸国、あるいはその独占の態度というものは、一ペン取った権益というものはそう簡単に離しませんよ。しかも日本が承諾を与えているんだから。ガット三十五条の問題は、国際情勢自由化の問題なり、それから経済の動きで、撤回問題は真正面から押すことができるでしょう。ところが、その交渉でこっちが承諾を与えて無期限に無条件にセーフガードやセンシティブ・リストを与えておいたら、これはあなたの方が承諾をしてやったんだからというので、何ぼでもこれは食い下がります。その点は、われわれ今までの長きヨーロッパとの経済外交なり外交の歴史を振り返ってみても、がめついヨーロッパのことですから、この二つの条項を認めるということは、うかうかと名前だけもちって、あとはこの日本の中に租借地ができたように日本の外交の中に租借地を与えるわけですから、その点はしっかりしてやっていただきたいと思う。これは実は大事なことですから、まだ続いて御意見を伺い議論をしたいのですけれども、特に外務省にその要望を強く申し上げまして、またその交渉が始まったときには、われわれもそういう無条件降伏や条件降伏を承諾するわけにいかぬから、またあらためてお尋ねしますけれども、あらかじめ申し上げておさます。  続いて、関連して、ついでですから伺っておきますが、延べ払い問題は今貿易発展の大きな条件になってきているわけです。この間ブラジルの鉄のプラント輸出の問題でも、日本側が落札しておきながらこの延べ払い問題でヨーロッパに取られてしまった。日本の政界も財界もぎくりとしたわけですね。延べ払い問題というのは、この前私が伺うと、対共産圏貿易についての延べ払いについては同様に公平に認める、すなわち、第三国の保証というものは必ずしも必要としない、そういう御意向で、われわれの要望にこたえて答弁があったわけですね。それはいいとして、そこで、きょうは大蔵省からも柴崎さんお見えになっておられるようですから、事のついでに伺っておきますが、そうすると、輸銀がこれを保証するわけですが、そのワクについて、あらかじめ延べ払いのワクについては国別または地域別にワクを置かれるかどうか。さらに具体的にお尋ねすれば、中国、ソビエト、朝鮮人民共和国あるいはベトナム等々との延べ払い問題と自由主義諸国に対する延べ払いとで、まん中で境を引くのか引かぬのか。余裕があればいつでも、自由主義諸国と共産圏との貿易に延べ払いを許容するワクについて、初めから固定をしないで、そのときどきの状況を見て、スライディングというか、イラスティックというか、伸縮性をもってこれに当たられるおつもりであるか。大蔵省、通産省外務省の三者がおられますから、三者の結論だけちょっとお尋ねしておきたい。延べ払い保証について、輸銀に初めから固定したワクを置くか置かぬかということです。
  43. 宮本惇

    ○宮本説明員 延べ払いにつきましては、あらかじめ国別にワクを設けてリジッドに運用することは現在もやっておりませんし、大体年間で世界的に見てこのくらいという、これは国家財政の見地からもきまりますが、その範囲内で弾力的に運用して参りたいと考えております。
  44. 穗積七郎

    穗積委員 それは、これから共産圏諸国に対して延べ払いを認める場合でも変わりはありませんか。
  45. 宮本惇

    ○宮本説明員 その点は、中共問題なんかは、御承知のように延べ払いの問題が出てきておりますが、これはまだ具体的なケースが出てきておりません。それから、この間ソ連へ行かれました訪ソ・ミッションのあれでも、船舶延べ払いというものは、御承知のように、今年度分の船舶契約が非常にできが悪かったわけでございます。今度あれだけできたわけでございまして、これは当然今までの予定のワクの中に入っておりますから、その点は御心配ないと思います。
  46. 穗積七郎

    穗積委員 私の質問は、中国なり北朝鮮なり、それからベトナム、これらとの間に新たに延べ払い制度が確認された場合でも、今おっしゃった通り、初めから固定したワクは置かない、そう理解してよろしゅうございますね。
  47. 宮本惇

    ○宮本説明員 ケース・バイ・ケースで運営していきたいと思っております。
  48. 穗積七郎

    穗積委員 ケース・バイ・ケースということは、初めからワクを置かないということですね。従来通りですね。
  49. 宮本惇

    ○宮本説明員 そうでございます。
  50. 穗積七郎

    穗積委員 それで通産省の御答弁はわかりました。外務省、大蔵省がそれと違った意見をお持ちならば御答弁をいただきたいと思うのですが、それでよければ御答弁はいただきません。同様に理解してよければ、これは政府の統一した方針とわかればけっこうですから。
  51. 中山賀博

    中山説明員 われわれといたしましては、もちろん輸出の増進ということは非常な眼目でございますが、しかしながら、同時に、他方では債権の保全ということも十分考えなければならぬ。それからまた……、
  52. 穗積七郎

    穗積委員 それはわかっております。初めからワクを置くか置かぬかということを聞いておるのです。
  53. 中山賀博

    中山説明員 これはケース・バイ・ケースできめていく問題であり、将来の先方の市場の動向、あるいは債権の保全の可能性等も考えていかなければなりませんので、今からそれでは将来全然置かないというようなことも言えないのですが、従来は少なくともケース・バイ・ケースに決定して参りました。
  54. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、政治的配慮はしないで、経済的、すなわち債権の安全性という見地に立ってケース・バイ・ケースに検討する、初めからこの東方諸国に対してはこれ以上は認めないというワクを置いて固定して制限をつけない、こう理解してよろしゅうございますね。
  55. 中山賀博

    中山説明員 その通りです。債権の保全あるいは将来のマーケットの有望性をも勘案して、ケース・バイ・ケースできめていくということでございます。
  56. 穗積七郎

    穗積委員 大蔵省、それでよろしゅうございますか。その理解でおられるでしょうね。恐縮ですが、時間がありませんから、総理が見えるとまた変わりましてこの問題でなくなりますから、簡単に結論だけ一つ
  57. 柴崎芳博

    ○柴崎説明員 今の御質問に対する責任あるお答えができる者が本日来ておりませんから、大蔵省としてはこの意見を保留さしていただきたいと思います。私は関税問題だけと思って参りました。
  58. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、お伝えいただいて、この次の機会にお答えいただくように。  続いて、この前外務大臣に宿題としてお願いししておきました、河合ミッションが帰られてから、向こうと交渉をし、あるいは提案をして、あるいは妥結した内容について、もうすでにお聞きになりましたか。
  59. 大平正芳

    大平国務大臣 きのう河合さんにお目にかかりまして、きょうからミッションの代表の方々と私どもの事務当局と会い、詳細に向こうの事情を聴取いたしているので、この間お約束申し上げました通り、今国会中にはあなたに御返事申し上げようと思っております。
  60. 穗積七郎

    穗積委員 会期が済んでからも外務委員会は開けますけれども、会期中というと、次回の本委員会は三十一日の予定ですが、できればそのとき御答弁いただくようにお願いしたい。  通産省にお尋ねいたしますが、この間河合ミッションが行きまして、今あなたからもお話があったように、船舶輸出についての交渉が妥結して、帰られました。これに対して通産省は非協力の態度をとられますか協力の態度をおとりになりますか、伺っておきたいと思います。
  61. 宮本惇

    ○宮本説明員 お答え申し上げます。船舶輸出につきましては、これは十分好意的な配慮をいたしたいと考えております。
  62. 穗積七郎

    穗積委員 もう一つ、これは成約にまでは至りませんでしたが、すでに懸案であり、この間も河合団長とミコヤンあるいはフルシチョフ首相との会談の中で出ております。向こうから原油を買う話です。それに対してはイルクーツクからナホトカまでのパイプ・ラインを日本から輸出をするという問題が、ペンディングのままあるわけです。これは、この前私は外務大臣に申し上げましたが、実は日本の今後の重化学工業の原料確保とコスト・ダウンのために、日本にとっては非常に有利で、かつ重大な問題です。現在は重化学工業も腹一ぱい食い過ぎの状態ですから何ですけれども、こういう問題については通産省は歓迎の態度をとっておられますか反対の態度をとっておられるか、基本的に前もってちょっと伺っておきたいと思います。
  63. 宮本惇

    ○宮本説明員 お答え申し上げます。石油の輸入につきましては、御承知のように、これは非常に大きな問題がございますので、現在としては慎重に検討中でございまして、まだこれをどうするということをお答えし得る段階ではないと思います。
  64. 穗積七郎

    穗積委員 思いますということです。けれども、大体のアウト・ラインはどうですか。具体的に、たとえば一千万トンあるいは二千万トン常時買うような長期契約を結ぶとか結ばぬとか、そんなことを聞いているのじゃない。その段階ではないから。原油の確保と、それからコスト・ダウンのために、現在でもソ連から少しは入っております。けれども、今後の日本の重化学工業のあなたの方の発展計画から見れば、これは当然足りないわけです。それで、コスト・アップで悩んでいるわけですから、そういう点では、私ども日本経済のためにこれは当然歓迎すべきだと思うのです。それについての通産省の基本的なお考えを伺っておきたい。御感想でけっこうです。
  65. 宮本惇

    ○宮本説明員 まだ現在その結論を申し上げることはできませんので、そのお答えだけはちょっと留保させていただきたいと思います。
  66. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだ意外なことです。重化学工業の長期計画を立てながら、原料、材料の確保の計画すらまだ立っておらぬ、展望すらできていないということは、おかしなことです。それは、あなたは、政治的配慮で、ここで答えてはちょっとまずいと思ってお逃げになったと思う。だから、今度順序として、あなたが答えられやすい条件をつくりましょう。すなわち、これは相当問題になるわけですから、この次に大平外務大臣から御感想を伺って、そのときに御苦労でも出ていただいてお答え願いましょう。それまでに予備討議の期間が二日間ありますから、省内で一つ意見をまとめてから来ていただきたい。私はきょうの答弁では満足できません。そんなばかばかしい答弁で、そうですかと言って引き下がるわけにはいきません。重化学工業の長期生産計画というものがなければいいですよ。あっておって、鉄鋼についても石油についても国際市場というものは検討してあるはずです。それで、見通しすらない。意見すら述べられない。年間どれだけの契約をするというようなことを具体的に聞いているのじゃありません。その基本方針さえきまらぬで、長期建設計画などというものを立てられて国民に示しても、そんなことでわれわれ納得して引き下がるわけにいきませんから、あらかじめ申し上げておきます。御答弁はこの次の機会でいいですから、納得のいく御答弁を期待いたしまして、きょうは留保いたしておきます。  続いて通産省にもう一つお尋ねいたしますが、実は、先般来と同じく、今の御答弁によりますと、対ソ船舶輸出は賛成だ、これは前向きに協力したいという御意向でございまして、けっこうです。続いてお尋ねいたしますが、同じく共産主義圏に属します朝鮮人民共和国との間に今の船舶輸出の問題が交渉の過程にあり、あるものは契約妥結したものがあるわけです。これに対しては同様に歓迎協力の態度を示すべきだと思いますが、貿易発展の立場から見た通産省の御意見を念のために伺っておきたいと思うのです。
  67. 宮本惇

    ○宮本説明員 ちょっと、その前に、船舶輸出は、今回の分だけがけっこうであると、こう申し上げまして、将来の問題はまだ態度は差し控えさせていただきたいと思います。  それから、北朝鮮への船舶輸出の問題は、目下外務省その他とも慎重に検討中でございまして、まだその具体的問題を申し上げる段階じゃないと思います。
  68. 穗積七郎

    穗積委員 通産省の御意向はどうですか、御内意は。貿易発展の責任を持っておられる通産省ですから。
  69. 宮本惇

    ○宮本説明員 これも非常に微妙な問題がございますので、ちょっと私から今ここでお答えすることは……。
  70. 穗積七郎

    穗積委員 微妙な問題とは、たとえばどんな問題でしょうか。
  71. 宮本惇

    ○宮本説明員 微妙な問題と申しますと言い過ぎかもしれませんが、現在の韓国との関係だと思います。
  72. 穗積七郎

    穗積委員 水産庁の方、来ていただいておりますね。実は今の問題について水産庁としてのお考えも伺っておきたいと思うのです。敬意を表して来ていただいたわけですから、あしからずどうぞ。  その前に申し上げますが、この前の大平外務大臣と私との質疑応答の中で、こういうことが問題になったわけです。今、日韓会談をやっておられる相手の韓国政権は李承晩政権以来非常に非合理的ながむしゃらなことを常に言う。特に、何が出てくるかというと、今度の交渉では、あなた方の属する池田内閣も、朴政権は三十八度線から南の限定政権であるということを確認しておるわけです。従って、三十八度線以北の人民共和国のオーソリティがあるということは十分頭に入れておく、同時に、さらに進んで、そのときに韓国政府から、日本と朝鮮人民共和国との国交回復とか経済・文化交流、人事の交流その他のことについて、交渉の過程並びに交渉妥結後に日本の外交の自主性を侵すような不当な言いがかりや条件を持ち出してきても受けつけない、それが外務省交渉に臨む基本的態度であると外務大臣から確答されているわけです。宮本さんもよくお聞き下さい。それが外務省の今の交渉における態度なんです。わかりましたね。そういうことからいきますと、あなた方が答えようとして答えられない、すなわち、外交上のことは念頭に置かないで、通産省であるならば貿易発展の立場、水産庁で言うならば日本の漁業の安全を確保する立場で御答弁をいただくことが国民に対して忠実なゆえんであると思いますから、お答えをいただく前にあらかじめそのことを御説明申し上げておきます。あなた方政府部内のことですけれども、私の親切心であらかじめ御説明申し上げておきますから、その点をお含みの上で、今朝鮮人民共和国から来ておる船の輸入、こちらから言えば輸出のオファーなり交渉、中には成約のできたものもありますけれども、これに対する水産庁のお考えをこの際伺っておきたいと思います。
  73. 大口駿一

    ○大口説明員 お答え申し上げます。  船舶の輸出につきましての根拠法規につきまして簡単に申し上げますと、輸出貿易管理科に基づきます通産大臣の輸出承認並びに海上運送法に基づきます運輸大臣の許可、この二つの手続を経て船舶の輸出が行なわれておるわけでございますが、漁船の場合につきましては、従来とも、これらの所管官庁が水産庁に事前に意見を求められて、われわれの意見を申し上げた上で今申し上げた手続がとられているというのが現状でございます。  水産庁といたしまして漁船を輸出いたします場合の基本的な考え方と申しますのは、輸出されました漁船が先方において漁業活動をする結果日本の水産業にどのような影響があるであろうか、これは主とのて漁場の競合の問題あるいは漁業形態が競合するとかいうような見地からケース・バイ・ケースで判断をいたしまして処理いたしているのであります。
  74. 穗積七郎

    穗積委員 今の朝鮮人民共和国への輸出問題はどうですか。
  75. 大口駿一

    ○大口説明員 まだどのような船型のものが具体的な商談の内容になっておるか、詳細に承知いたしておりませんので、ここではっきりと申し上げるわけに参りませんが、水産庁としての従来の考え方は今申し上げた通りでございまして、水産庁といたしましては、今後とも今申し上げましたことを基本といたしまして態度をきめて参りたい、かように考えております。
  76. 穗積七郎

    穗積委員 スタンド・ポイントはわかりました。すなわち、漁船なら漁船を輸出することによって日本の漁業の利益のためにどういう影響を与えるか、一口に言えばそれが水産庁としての基準になっておる。そこで、申し上げますが、水産庁が日本の従来の漁業の利益を守っていこうという態度については了といたします。ところが、ジュネーブにおいて公海の国際会議が行なわれまして以来、しかも、具体的には、従来とっておった公海における漁業の自由無制限ということがだんだん成り立たなくなって、御承知の通り、今問題になっているように、アメリカカナダの要求によって太平洋のまん中に制限ラインが引かれ、北はソビエトの関係、それから今の朝鮮海峡は不当なる李承晩ラインがあり、南シナ海、オーストラリア、至るところにそういうものができてきているわけです。従って、言葉はちょっと不適当ですが、農林省全体で言えば、とにかく農本主義的な古いものを守っていくというような態度では、今までの漁業の利益は守れないと思うのです。従って、全公海の利害関係ある諸国の間で資源の保護をまず共同の責任としてやろう、そして、われわれ現存の世代の者だけが勝手にとって食ったらいいというのじゃなくて、孫子の代までこの水産資源というものは保護して、長期にわたって計画的に漁掛を発展せしめていかなければならぬという立場に立ちますと、今おっしゃったような言葉の中で私が心配することは、たとえば日本から漁船を出す、そうすると、朝鮮の方も漁業の力がついて、日本でつけさせないでおけば日本の漁船が行って勝手にとれるべきものがとれなくなるというふうな古いセクト主義では、もう日本の漁業の安定性、計画性というものは守れなくなっているわけです。のみならず、そういう立場に立って輸出しないようにしても、朝鮮が漁船を輸入するのは何もわが国だけではないわけですから、北ヨーロッパなりからどんどん輸入すれば、それは同じことです。何も変化はないわけです。従って、この漁船の問題というのは、同時に、北朝鮮沿岸における漁業の合理的な解決、いわば政府間でできれば漁業協定というちゃんとした合理的なものを結んで、共同調査あるいは資源の共同確保あるいは相互の計画的な毎年の漁掛計画というものを立てて、漁掛の方法まで立てて、そういう漁業協定が一括してできることが望ましい。そういう立場に立ってものを考えていただきたいと思うのです。いいですか。あっちの力をつけなければこっちが行ってたんととれる、それでとりっぱなしでいいという考えではいけないと思う。その点は私の考え方に間違いがありましょうかどうか、御所感だけ伺って、時間がありませんから、きょうは途中ですがこれで打ち切っておきます。
  77. 大口駿一

    ○大口説明員 簡単にお答えいたします。  公海自由の原則というものは、資源保護の見地から関係国が十分話し合った上で漁業の規制を行なうというふうに現在考え方が変わってきておることにつきましては、御指摘通りでございます。現在、日本と大韓民国並びに朝鮮人民共和国との間で近海の資源保護について両方共通の立場で話し合いを行なう場がまだできておらないのでございますが、ただいま申しましたのも、いたずらに既存の業者の保護のみを考えて本件を処理しておるわけではございませんので、その点は、御指摘通り、今後資源保護の問題を中心といたしまして両国が共通の基盤で話し合いができる場ができましたあとの問題につきましては、将来の問題として私どもも総合的に考えて参りたい、かように考えております。
  78. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、要望を申し上げておきますが、政府間の漁業協定ができることを私どもも促進したいし、望んでおります。しかし、できないでも、事前に民間ベースでもある程度の可能性はあり得るわけですね。そういう情勢が出てきておる場合においては、問題を具体的にわれわれ提案しながら御相談に上がりますから、前向きでお話し合いをいただくことを要望いたしておきます。よろしゅうございますね。ちょっとお答え下さい。
  79. 大口駿一

    ○大口説明員 ただいまの御意見、十分拝聴いたしました。今後検討いたしたいと思います。
  80. 野田武夫

    野田委員長 これにて、千九百六十年及び千九百六十一年の関税及び貿易に関する一般協定関税会議に関する二議定書等締結について承認を求めるの件、日本国オーストラリア連邦との間の小包郵便約定締結について承認を求めるの件及び日本国カナダとの間の小包郵便約定第四条を改正する議定書締結について承認を求めるの件に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  81. 野田武夫

    野田委員長 これより右各件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。千九百六十年及び千九百六十一年の関税及び貿易に関する一般協定関税会議に関する二議定書等締結について承認を求めるの件について採決いたします。  右件を承認すべきものと決するに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次に、日本国オーストラリア連邦の間の小包郵便約定締結について承認を求めるの件及び日本国カナダとの間の小包郵便約定第四条を改正する議定書締結について承認を求めるの件について採決いたします。  右両件を承認すべきものと決するに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  この際お諮りいたします。ただいま議決いたしました三件に関する委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議はありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  85. 野田武夫

    野田委員長 これより国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。岡田春夫君。
  86. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 きょう池田総理に御出席をいただきまして、日韓会談について、きわめて限定された時間でございますが、質問をいたして参りたいと思います。  私の質問の中心になりますのは、昨日の衆議院本会議におきましてわが党の河上委員長質問いたしました。これに対して池田総理から御答弁があったのでございますが、この御答弁に対してはわれわれは了解ができないわけであります。従いまして、河上委員長質問の点を具体的な点で私はもう一歩掘り下げて、われわれの納得のいくまでお伺いをいたして参りたいと考えます。  第一点は、昨日の池田総理の御答弁によりますと、私速記録を調べて参りましたが、このように御答弁になっております。これは日韓会談の基本点である点について、このように言っております。「もちろん三十八度線以北に韓国政府の支配力が及んでいないということはわれわれも考えておりまするから、そういう考慮のもとに、今韓国との正常化をしておるのであります。三十八度線以北の問題は、われわれ十分頭に入れております。」、このように答弁をされております。この点につきましては、日韓会談の最も中心的な問題でありますだけに、この外務委員会においても再三われわれは質問をして政府の答弁をいただいておりますが、今までの答弁によると、韓国は三十八度線以南の地域限定政府であるということが再三にわたって答弁をされているわけであります。そこで、お伺いしたい点は、それならば、現在交渉をいたしております日韓会談において請求権の問題も三十八度線以南に限定をして交渉しているということになるが、そのように解釈してよろしいか。この点は、今までに外務省の局長関係からはそのような答弁、肯定的な答弁をいただいているわけでありますが、この点は重要でございますので、総理大臣から御答弁を願いたいと思います。
  87. 池田勇人

    池田国務大臣 韓国の支配力が三十八度線以北に及んでいないということは事実でございます。われわれはこれを頭に置きまして交渉いたしております。
  88. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、私が今お伺いをしたように、請求権の問題は三十八度線以南に限定しているということになるのだと私は思いますが、さようでございましょうか。
  89. 池田勇人

    池田国務大臣 個々の問題につきましての折衝のあれは外務当局から御説明させますが、私の考え方は今申した通りでございます。
  90. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私は、現実に三十八度線以北に韓国の支配は及んでおらないのですから、及んでおらないところの請求権を交渉しようといってもできないわけでありますから、これは、ただいま総理の答弁は、三十八度線以南のものについて交渉している、このように私は解釈したいと思います。それ以外に解釈できないわけであります。しかもこのことは局長がすでに答弁をいたしておりますので、私はその前提によって進めて参りたいと思います。  そこで、もう一点別な角度から伺いますが、サンフランシスコ条約、いわゆる対日平和条約の第四条(b)項並びに昭和三十二年十二月三十一日の合意議事録などによって、日本の対韓請求権は放棄しております。この対韓請求権を放棄しているということは、当然三十八度線以南の対韓請求権を放棄していることだ。その内容でございますから、その点は言うまでもなくその通りだと思いますが、総理大臣、いかがですか。
  91. 池田勇人

    池田国務大臣 平和条約第四条につきましての請求権放棄は、やはり韓国に対してのあれと考えておるのであります。しかし、北鮮の方と統一になれば、そちらの方にも及ぶことは当然でございます。
  92. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それは、総理大臣、お考え違いだと思います。四条の(b)項には、そうではなくて、アメリカが支配している地域ということになるわけですから、たとえばあなたのおっしゃったことを一応譲って認めたにしても、北の分まで含むということにはならないわけです。現実に合衆国が支配しておった地域でございますから、三十八度線以南だと思いますが、間違いではございませんか。
  93. 池田勇人

    池田国務大臣 今のアメリカ出したヴェスティング・デクリーの及ぶ範囲は、アメリカ軍の占領している三十八度線以南であることは当然であります。ただ、平和条約全体の問題といたしますと、何も南朝鮮、北朝鮮と私は区別していないと思います。
  94. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなたは条文をお読みになっているかどうか知りませんが、そこに平和条約があったらお読み下さい。四条の(b)項には、「第二条及び第三条に掲げる地域のいずれかにある合衆国軍政府により、又はその指令に従って行われた日本国及びその国民の財産の処理の効力を承認する。」、従って、合衆国の軍隊は、いまだかって三十八度線の北をいわゆる有効的に管理し支配したことはない。朝鮮戦争の場合は別ですが、そういう形以外はないじゃありませんか。それでは三十八度線の南じゃありませんか。はっきりしているじゃないですか。
  95. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほどお答えした通りに、平和条約全体の問題としては南北を分けておりません。しかし、ヴェスティング・デクリーの問題につきましては、お話の通り、米軍の支配している範囲に適用になることは当然でございます。
  96. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 ですから、私は四条の(b)項を言っておる。そのヴェスティング・デクリーはこの四条(b)項から出たのではありませんか。それ以外のことができますか。それの具体的な規定が合意議事録ではございませんか。それは三十八度線以南にきまっているじゃありませんか。北に及ぶのですか。法律論争じゃないですよ。総理大臣が答弁した問題です。総理大臣、どうですか。
  97. 中川融

    中川政府委員 条約の解釈につきまして私から御説明いたしますが、岡田委員指摘通り、四条(b)項のいわゆるアメリカ軍司令官のいたしました日本財産に対する措置ということは、アメリカ軍司令官の要するに管轄内だけに効力のあった指令でございますから、従って、南鮮に限られるということは当然と考えます。
  98. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 条約局長の答弁は正しい。総理大臣の答弁は間違っておる。御訂正になりますか、総理大臣。
  99. 池田勇人

    池田国務大臣 私は間違っていないと思います。
  100. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなたはさっき、第四条(b)項は、南北朝鮮が統一した場合は北の分まで入るんだと言ったじゃありませんか。その点は取り消されるのですかと言っている。違うなら違うと言ったらどうですか。この点は重要ではあるけれども、あんまりそんなところに我を張る必要はない。私だったら我を張りません。間違っているのだったら、間違っていると言いますよ。
  101. 池田勇人

    池田国務大臣 平和条約全体から見ると、南北を分けておりません。ただ、ヴェスティング・デクリーの問題は、アメリカ軍の支配しておる範囲にしか及ばないということは当然のことであります。
  102. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 ですから、総理大臣、速記録をお調べ下さい。私は四条の(b)項と最初に言った。しかし、その点いつまでもしつこく言っていても時間がなくなりますから、続けます。それでは、総理大臣、お伺いいたします。が、三十八度線の南の日本の対韓請求権は放棄しておるが、三十八度線の北における請求権は放棄しておるのか放棄しておらないのか、この点はどうです。
  103. 池田勇人

    池田国務大臣 放棄しておりません。
  104. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、三十八度線以南の請求権が日韓会談によって解決されるとしても、今度は対日請求権の場合、向こうから日本に対する請求権、今の御答弁ともう一つ別な角度ですが、三十八度線以北の対日請求権は、日韓会談の解決によっては解決できないと解釈すべきだと思うが、どうですか。
  105. 池田勇人

    池田国務大臣 その通りでございます。
  106. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、先ほど総理大臣の御答弁のありましたように、三十八度線から北の部分については、日本が持っている請求権、対朝鮮請求権、並びに朝鮮の方で要求する日本に対する請求権、この二つの請求権は、今度の日韓会談が妥結したとしても、この点については解決したことにならないと思うが、この点はいかがですか。
  107. 池田勇人

    池田国務大臣 お考え通りでございます。
  108. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、私は総理大臣にお伺いいたしますが、今度の日韓会談の交渉では請求権の問題については最終的な解決ができないということになる、南に関しては解決ができたとしても、北に関する限りは、請求権の問題は解決できないことになるということになるんだと思うのです。きのうの総理大臣の御答弁では、今度の日韓会談で請求権その他一切のものを最終的に解決するという意味の御答弁があったわけでございますが、これは最終的な解決ではないというように私たちは理解したいと思います。よろしゅうございますか。
  109. 池田勇人

    池田国務大臣 韓国との間におきましては全部一括して解決する考えでございます。
  110. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、続いて伺いますが、総理大臣はやはりきのうの本会議の御答弁で、速記録にはこうなっております。総理大臣のお答えは、「お話のごとくに、北朝鮮につきましては、国連からオブザーバーとして招待いたしましたが、遺憾ながら北鮮は国連の権威を承認していないじゃありませんか。従いまして、国連に参加できないということは御承知の通りでございます。」、このように御答弁になりましたですね。私は、総理大臣は何かお考え違いがあったのではないかと思う。これはおそらく六一年の春の第十五回国連総会のことだと思いますけれども、この総会の際には、朝鮮民主主義人民共和国は声明を発表して、国連のとりました措置の中で、特にアメリカの措置について非難をして、――アメリカの措置ですよ。国連の措置じゃない。アメリカの措置を非難している。そして、全文もここにあります。原文をそのまま読みますが、「国連における朝鮮問題の審議に関してもこの原則ば守られなければならないが、国連で本件が審議される限り、わが政府は代表を送るであろう。わが政府は、自国代表の参加と承認なくして国連において採択されたいかなる不当な決議も認めないであろう。」、このように参加する意思を明らかにしております。ところが、そのあとにキューバの事件が起こって、この問題の審議ができなくなった。ですから、その問題については審議が進められなった。国連へ代表を参加させるという政府の声明に基づいて、参加する意思を明らかにしたわけです。ですから、総理大臣の、北朝鮮は国連がオブザーバーとして招いても国連の権威を認めようとはしなかったという意味の御答弁は、私は明らかに間違いだと思いますが、この点はいかがですか。
  111. 池田勇人

    池田国務大臣 私は外務当局よりそう聞いておるのであります。従いまして、この具体的な説明外務当局よりいたさせます。
  112. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 外務当局が総理大臣に間違って教えるということになると、外務当局の責任はきわめて重大で、総理大臣しっかりしてもらわないと、あなたを陥れるために外務当局がうそを言ったかもしれないので、御注意を願いたいと思いますが、外務当局、はっきり御答弁を願いたいと思います。
  113. 中川融

    中川政府委員 岡田委員がただいまお述べになりましたことは十五総会のいきさつだったと思いますが、十五総会のいきさつは、ただいまお述べになりましたように、結局時間切れになりまして、実質的な討議も行なわれないままに終わってしまったわけでありますが、第十六回総会におきまして、昨年の十二月でございますがやはり同じような問題が起きたわけでございます。そのとき朝鮮問題を討議しておりましたのは第一委員会でございます。が、ここでやはり韓国と北朝鮮と両方の代表を招請しようという議題が起きまして、結局韓国については代表を招請する、北朝鮮につきましては、韓国と同じように、朝鮮問題に関して要するに国連の権威を北鮮当局が認める、こういう条件をのむなら招請しよう、こういう決議が採択になったわけでございます。その結果、そういう条件のもとに北鮮当局にも招請が出されました。北鮮当局は国連事務総長あてに、自分らとしては代表を出すことは出したいけれども、しかしながら、従来国連というものは米国によっていろいろ指導されておるはなはだけしからない状態があったという、十五総会と同じようなことを電報で言って来たわけであります。それがはたして国連の権威を認めたことになるかどうかということでさらに議論が起きまして、表決をとりました結果、国連の権威を認めるかどうかという条件は満たしていない、こういう裁決が下りまし、その結果北鮮当局は招請されないということになったのでございまして、池田総理が昨日言われましたのはその間の事情を申し述べられたと考えております。
  114. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 その間の事情といっても、朝鮮民主主義人民共和国を出席させなかったのはアメリカであるということがはっきりしておる。それは中川さんの今の答弁で明らかであります。国連自身がそれをどうしたというのではなくて、アメリカの指導によって出席させなかった。国連の権威を軽視する形をやっているのはアメリカなんです。この点は今の答弁でもだんだん明らかになって参りましたから、次に進んで参ります。  これも総理大臣よりも条約局長の方がいいかもしれないが、国連は、一九五三年八月の第七回国連総会以来、朝鮮民主主義人民共和国というものを国として認めております。特に第十五回、第十六回の決議においては日本政府もそれに賛成いたしております。支持している。従って、朝鮮民主主義人民共和国というものは少なくとも国連の場においては国として認められていると解釈すべきであると思うが、いかがでありますか。
  115. 中川融

    中川政府委員 国連といたしましては、やはり、韓国政府が朝鮮半島におけるいわば自由な選挙によって国連の監視下に行なわれたこの種の成立された唯一の合法政府であるという立場は変えていないと私ども考えております。もちろん、北鮮当局にオーソリティというものがある事実は当然認めておるところでございまして、北鮮にそういうオーソリティがあるということはいろいろの決議にも出ております。  なお、国家として認めた云々というお話がございましたが、これは、朝鮮休戦協定ができます際に、やはり朝鮮民主主義人民共和国政府という名称を用いた決議等が国連で行なわれておることは事実でございます。これは、しかし、必ずしも国家として認めたということではなくて、やはりオーソリティであるという意味で認めている態度を変えるものではないと私ども考えております。
  116. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そういうことを言っちゃいけないと思うのです。あなたは、最初の点では、唯一合法の政府ということを言われましたが、文書はここにもありますけれども、あなたが御存じのように、国際監視委員会の監察し得る地域、その中の部分における唯一合法の政府だと言っているのですよ。だから、実際に監視しているのは三十八度線以南じゃありませんか。それなら、北の方まで含めての唯一合法の政府だということは言い得ないことは条約上明らかでしょう。それから、休戦協定もそうですが、十五回総会、十六回総会において日本も賛成している。あなたは、朝鮮民主主義共和国というものは単なる符号だ、国ではないのだということをお話しになるが、それでは、日本の態度は、符号であるという何らかの意思表示を国連においてその当時の松平代表がしたのですか。そんなことはないでしょう。インドネシアの代表が修正して、民主主義人民共和国という国の名前を入れたのですけれども、それに対して賛成したのじゃないか。日本は認めたのじゃありませんか。違いますか。
  117. 中川融

    中川政府委員 朝鮮民主主義人民共和国という名前を持ったオーソリティがあるということは国連としても認めておるわけでございまして、日本がその決議に賛成したというのは、われわれそういう名称を持ったオーソリティという意味で賛成しておるわけであります。
  118. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それじゃ、前段の方はどうでございますか。三十八度線以南というものの合法政府でしょう。それ以外にないのですね。
  119. 中川融

    中川政府委員 これは、一九四八年の国連決議自体の書き方は岡田委員のおっしゃる通りでございまして、要するに、国連の監視下で自由な選挙が行なわれて政府ができた、それで韓国政府は要するにこの種の唯一の合法政府である、朝鮮半島における唯一の合法政府であるということを国連決議で言っておるわけであります。従いまして、はたしてそれが、朝鮮半島ではそれ以外に合法の政府がないという意味で言っているのか、あるいは、そういうところまで言わないという意味で、要するに自由な選挙が国連の監視下で行なわれた唯一の合法政府はこれであるということで言っているのか、これは国連の決議そのものからは出てこないのでありますが、しかし、北鮮当局を合法政府と言ったことは一回もないのでございます。ないのみならず、これが事実上のオーソリティといいますか、そういうオーソリティが北にあるということは国連決議でも言っておるのであります。そういうことから、われわれは、やはり北朝鮮をオーソリティとして考えておる、かように判断しておるわけであります。
  120. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 この条約問答をやっていると、私、あと三十分しか時間がないので、続いて進めますが、たとえば、あなたはオーソリティというそういう符号として認めましたと言うが、日本の態度はそうでございますと国連総会で言わない限り、世界の人はだれも知りませんよ。中川さんがなんぼここでがんばったってしようがないですよ。私はそういう提案は認められないが、しかし、ともかくも、百歩譲ったとしても、三十八度線の北においてはオーソリティがある、しかも、その北のオーソリティの地域においての請求権というものは両方とも未決定であるとするならば、未決定の請求権の解決のためには北との交渉をしなければ解決できないと思いますが、この点は総理大臣いかがですか。
  121. 池田勇人

    池田国務大臣 北との折衝は、その機運がまだ盛り上がっておりません。
  122. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、北との折衝はおやりになるつもりはある、しかし現在は機運が盛り上がっておらない、こういうことでございますか。
  123. 池田勇人

    池田国務大臣 国連関係におきましても、今説明した通りでございます。また、いろんな国際情勢から申しまして、今北と交渉する段階に立ち至っておりません。
  124. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 しつこいようで恐縮でございますが、現在はその段階に至っておらないという答弁は先ほどでわかりました。請求権の問題を最終的に解決するためには北との話し合いをしない限り解決できないというのならば、解決するためには北との交渉をいずれやらなければならない、こういうお考えに立たなければならないのだというように私は解釈しているわけです。総理大臣の御答弁はそれでよろしゅうございますか。
  125. 池田勇人

    池田国務大臣 ちょっとお話の前提がはっきりしないようで、ございます。が、先ほど来申し上げた通りでございまして、われわれは韓国と今国交正常化につきまして、請求権あるいは漁業権、法的地位の問題を審議しておるのであります。韓国の支配力の及ばない北鮮地区につきましては、今そういう段階に至っていない、こういうことでございます。
  126. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、私も、あなたのお話はよくわかりました。韓国と今交渉しているその相手は三十八度線以南という点は先ほど明確に答弁されました。また、北の方の請求権の問題は未解決だということもお話しになりました。ですから、北の方の解決のためには、現在は違うということをお話になっているのだから、いずれはおやりになるのでしょうねと私は伺っているわけであります。
  127. 池田勇人

    池田国務大臣 いずれはそういうことになって参りましょう。しかし、われわれは早く朝鮮が統一されることを望んでおります。
  128. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いずれはそうなることでありましょうというのは、いずれそうなるであろう、そうしたい気持を持っている、そういうことだと思いますが、具体的な例でもう一つ伺いましょう。きのうの御答弁によると、日韓会談の問題では、一切の懸案の解決をしたい、こういうふうな御答弁でございましたね。李ラインの問題も含めてやる、日韓会談では日韓関係の懸案の問題を解決したい、それと一緒にやりたい、その中には李ラインとか竹島の問題も入っている、こういう答弁でございましたね。しかし、李ラインの問題も最終的な解決にならないのじゃございませんか。
  129. 池田勇人

    池田国務大臣 交渉の方針としては先ほど申し上げた通りでございます。最終の決定が行なわれるように、今話し合いをしておるのでございます。
  130. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いかなる交渉をされても、最終解決はできないのではございませんか。
  131. 池田勇人

    池田国務大臣 日韓間におきまする懸案は今回の交渉で解決をする考えで進めております。
  132. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 総理大臣、李承晩ラインというのは、韓国は三十八度線の北までも全部線を引いているのですよ。三十八度線以南を有効に管理し支配している韓国が、三十八度線の北までも、勝手なことを言って、これは李ラインだと言っている。この点を日韓会談で交渉して、たとえばあなたのお考えのように漁業協定を結ぶというようなことになったとします。李承晩ラインの解決方式としてもしその漁業協定が結ばれた場合には、朝鮮民主主義人民共和国の沖合いの漁業問題まで日韓会談できめる、そんなばかな話はありませんよ。たとえば、沖合いの問題をきめたとしたならば、あなたは韓国とともに朝鮮民主主義人民共和国の沖合いの問題をやったのですから、北の国の内政干渉をあなたがやったということになる。それを認めるということによって韓国の不当な要求で日本の漁民が北の方の部分の漁業についても制限を受ける、従って日本の漁民は犠牲になるということですよ。そういう結果になるじゃありませんか。これは解決のできない問題ですよ。
  133. 池田勇人

    池田国務大臣 李ライン自体の問題について交渉するのであります。今のあなたのお話は、その一部の問題でございます。そういうものを含めて交渉しなければならぬと思います。
  134. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 自体ということは何でございますか。李ライン自体の中には、三十八度線から南もあるし北もあるのであります。私は南のことは問題ないから言わなかったのであります。北の問題が問題になるから私は言っているのです。それも自体の問題ですか。その点を解決するのじゃありませんか。
  135. 池田勇人

    池田国務大臣 だから、李ラインそのものについて交渉をいたしておるのであります。もし李ラインを撤廃するということになれば、あなたの心配は要らないわけです。だから、李ライン自体について今交渉しておるのであります。
  136. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、撤廃するということで、三十八度線の以北の問題についても撤廃して、そのようなことをやらないようにするという趣旨である。しかし、この点は、大体三十八度線の北のことを日韓問題で交渉すること自体が間違っているのじゃありませんか。どうですか。
  137. 池田勇人

    池田国務大臣 そこで、私が申し上げておるように、李ラインの設定がいいかということについて今話をしておるわけであります。だから、李ラインそのものがなくなれば、あなたの心配はなくなるでしょう。そういうことでわれわれは今交渉を続けておるのであります。
  138. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 総理大臣、韓国に北の問題を話したって始まらないじゃないですか。あなたは三十八度線以南の地域の問題を話すと言った。北の問題を言ったって始まらないですよ。李ラインがそこまで線があるなどと韓国が言っておること自体が間違いなんですよ。この点ばかり言っているとあれですから、進めます。  そこで、最終的にもう一つ在日朝鮮人の法的地位の問題もあるわけです。この法的地位の問題については、たとえば日韓会談が妥結するということになると、結局それに対する何らかの協定なり両国間の取りきめによる保護が生まれる。あるいは特別の措置が生まれる。そうなると、在日朝鮮人の中で、いわゆる韓国人と朝鮮民主主義人民共和国を国籍とするという人との間に差別待遇が生まれる。この点についても、いわゆる国籍選択自由の原則から言って、差別待遇をやるということは問題だと思うのです。人権宣言の点から言っても問題だと思いますが、この点についても北朝鮮と交渉をしなければ最終的な解決はできないと思うのですが、この点はいかがでございますか。
  139. 池田勇人

    池田国務大臣 そういう点を含めて、今法的地位の問題も検討、交渉いたしておるのであります。
  140. 野田武夫

    野田委員長 岡田君にちょっと注意しますが、総理は時間に制限がありますから、一つよろしく。
  141. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 せっかく池田さんの熱の入ったところですから、もう少しやります。  次にお伺いしたいのは、日韓会談を三十八度線以南の線で交渉をするということで、そういうことから起こっている、今申し上げた在日朝鮮人の問題、それから李ラインの問題、このほかにも船舶の籍の問題もあるわけです。し、請求権の問題もある。こういう問題が一切出てくるだけに、しかも、先ほどから御答弁のありましたように、これによって朝鮮全体の問題として最終解決ができるものじゃございませんから、そうすると、たとえば、あなたのおっしゃるように、北朝鮮を含めた南北が統一された場合において、――どちらが統一するか別ですよ。抽象的な話をしますが、もう一度この点について交渉しなければならないでしょう。
  142. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど来答えた通りでございます。それは、今のヴェスティング・デクリーの適用範囲が三十八度線以南でありますから、いろいろな点は残りましょう。統一された場合にも、その統一された状況によっていろいろ問題が起こると思います。
  143. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、この点だけは総理大臣も御同意いただけると思いますが、そういう点が明確であればあるほど、今度の日韓会談の妥結において取りかわされる文書、これは基本条約であるか平和条約であるか共同宣言であるかはともかくとして、文書においては、今度の交渉は三十八度線以南の地域のものであるということの趣旨を明文上はっきりしなければ、条約が明確にならないと思うが、これはどうですか。
  144. 池田勇人

    池田国務大臣 今せっかくそういうことを頭に置いて相手と話をしているのであります。明文をどうするこうするというようなことは、話し合いが済んでから後の問題であります。
  145. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 頭にお入れになっているなら、文章にお書きになるのがあたりまえだ。その点をあいまいにするということは、内容を文章の表現であいまいにするということは、これは許されないと思う。ところが、これはあいまいにしようとしている心配があるから私は言っている。たとえば、韓国の方では、全朝鮮を管轄するということの精神と思想と文章を明確にしろと、こういうことを言っているわけですから、この点については日本政府はどういう態度をおとりになるかということを聞いているわけです。この点ははっきりさしていただきたいと思います。
  146. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれは、韓国の支配が三十八年度線以南であるということを頭に置いて今折衝中であります。向こうの言い分も、新聞その他においては見ておりますが、今向こうの言い分がこうだからこっちはこうするのだというような交渉の腹づもりとか仕方をどうこうここで申し上げるとか、あるいはできた場合の形式をどうするかということは、私は、ただいまのところ申し上げかねます。
  147. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなたは、事志と違うという言葉は御存じのはずですが、頭の中ではこれを考えました、行動は別でございます。まさかそうではないと思いますが、言行一致をもっておやりになる方であろうと思いますが、私は心配なんです。総理大臣、率直に申し上げますが、今までの池田内閣のとって参りました行動は言行不一致が多いわけであります。そういう点でわれわれは信用できないわけです。  私は、もう時間もあれなんで非常に残念ですが、もう一点請求権の問題に戻って、最近は、無償供与と長期借款にして、請求権はやめたんだ、こういうことを言われている向きがだいぶあるのですが、この点、外務大臣どうですか。請求権はもうやめて無償供与と長期借款だけにするのですか。
  148. 大平正芳

    大平国務大臣 それは、たびたび申し上げておりますように、そういう新しい工夫をこらす余地がないかということで先方に考え方を提示してある段階でございまして、そういう折衝が今始まったばかりでございますので、いましばらく、そういう内容にわたりまして申し上げることは御遠慮さしていただきたいと思います。    〔発言する者あり〕
  149. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 今そこで言われたように、韓国の側、政府側は発表していますよ。あなたはわれわれにないしょにされたって、われわれは知っているわけです。日本の国民は知っている。そこで、無償供与と長期借款だけにするということで、請求権をおやめになるということであるのかどうか。この点は、請求権は入っているのか入っていないのか、この点だけぐらいは言明をされたらどうですか。無償供与、長期借款だけにするということが答弁しにくいならば、請求権の問題はおやめになったんですか。
  150. 大平正芳

    大平国務大臣 いろいろのところで論議になっておりまするし、新聞もいろいろ御推測の記事を出されておるようでございますが、いましばらく内容の点につきましては御遠慮さしていただきたいと思います。
  151. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 だって、あなた、内容の点とおっしゃったって、請求権が入っているか入っていないかということぐらい言えるでしょう。無償供与の問題あるいは長期借款の問題については、私はあえて伺わないにしても、請求権の問題が入っているか入っていないかなんということについては、御答弁いただかなければ、それはあなた国会軽視というものですよ。あなたは先ほど条約の誤植問題で陳謝されたんですが、国会軽視の問題については、あなたはどうお考えになるのですか。それは明らかに請求権は入っております。とか入っておりませんぐらいのことは答えられないということないじゃありませんか。
  152. 大平正芳

    大平国務大臣 逆に、交渉の過程のことを私が国会で申し上げるということをいたしますと、国会の方から、そういう軽率なことをやめろという御注意があるだろうと思います。国会を尊重するがゆえに私どもは今こういう態度をとっておるわけです。
  153. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなたの論理は非常に飛躍していますね。何だか足の方を洗って頭を洗ったようなつもりでいるんじゃないですか。国会を尊重するなら国会で言うのがほんとうですよ。国会で言うなというのは、国会を尊重するなということですよ。国会を尊重するためには、請求権は入っているか入っていないかということくらい言えないということはない。あなた、請求権の交渉をやっているというのは、入っているんでしょう。入っていないのですか。
  154. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうことが政府としてきまりましたら、政府の責任において国会に申し上げるわけでございます。きまらない段階におきまして申し上げるということは、国会に対する非常な非礼だと思います。
  155. 野田武夫

    野田委員長 関連質疑の申し出がありますので、これを許します。木原津與志君
  156. 木原津與志

    ○木原委員 今度の会談で、請求権のほかに借款が含まれておるということについては、日本新聞その他韓国の新聞・ラジオがその点をはっきり明らかにしている。特に請求権と借款を含めて三億ドルという線が出ておるということを明らかにしているのですが、この国会でその点について総理大臣並びに外務大臣からもはっきりしたことをどうしてもおっしゃらないから、私は次の点だけ確認しておきたいと思うのです。  と申しますのは、去年の昭和三十六年一月三十一日、参議院の本会議におきまして、わが党の江田三郎書記長が総理の施政方針演説に対して質問をいたしました。その質問の中で、江田氏は、総理は朴政権を安定政権と認めるか、さらにまた、この会談の妥結途上において朴政権に長期の借款を考えておるかという点を特に質問をしておる。それに対して池田総理は、その答弁でこう答えておる。速記録を読み上げますが、「次に、韓国に対しての問題でございまするが、わが国といたしましては、一衣帯水の間でございますので、韓国と国交の平常化をしていきたいと考えております。」、その先、これが大事だ。なお、お話の韓国への借款とか、あるいはNEATOへの参加、こういうことは考えておりませんと、はっきり、借款を朴政権に与えるということは考えておらぬと言っておられる。それをさらに、再質問に立った江田議員が、その韓国に借款を与えるということ並びにNEATOの参加を考えていないということは特に記憶にとどめておくということを念を押しておることが議事録ではっきりしております。一年半前の参議院の本会議において、韓国に借款を供与するということは考えておらぬのだと言っておられる。この点は今日においても変わりはないと思うのです。わずか一年半たった今日において、あのときはこう言うた、今度は別だというようなことをよもや総理はおっしゃるまいと思うが、この点だけ、将来ともに、この江田質問に対して答えた、借款を考えておらないということは今日も変わらないということを確認してよろしいかどうか、総理のお答えを願いたい。
  157. 池田勇人

    池田国務大臣 速記をよくとられて詰問されるのですが、速記につきましては、質疑応答全体から考えてもらわなければならぬと思います。また、長期借款というものを韓国との国交が正常化できないときにやる考え方はもちろんございません。しかし、国交が正常化した場合におきまして韓国に長期借款をすることは、これはインドネシアやあるいはその他の国と同様でございます。だから、あの国交正常化ができない、また、できるかできないかわからぬというときに、借款いたしますかと言ったら、借款いたしませんと言うのは当然のことじゃございませんか。国交正常化ができた暁におきましては、やはり、日本と韓国、――あるいはソ連とでもやっておるわけなんでございます。それは、鳩山さんが行かれる前にソ連と長期借款しますかと言うたら、しませんと言うのと同じことです。情勢の変化で、国交正常化の暁におきましては、われわれは、韓国の利益のみならず、日本の利益の上から言っても、長期借款するのがあたりまえじゃございませんか。これは経済の原則です。国際経済の原則です。
  158. 木原津與志

    ○木原委員 私は、経済の原則を問題にしているのでなくて、しかも質問と答弁の一部分をとらえてあなたに聞いているのじゃない。その質問の全趣旨は、朴政権は不安定政権だからこれと交渉するのはやめろというのが江田議員の質問の趣旨であり、その質問の中で、日韓会談を、請求権が当時いろいろと行き詰まっておるときであったから、それにかえて借款という形をもって妥結する意思があるのじゃないかということを、特に質問全体の趣旨においてあなたに尋ねておる。それに対してあなたははっきりと、韓国と国交の正常化をしていきたいと考えております。なお、お話の韓国への借款あるいはNEATOへの参加というようなことは毛頭考えておりません、こうおっしゃっておるのですから、これは国交の正常化後の問題じゃない。正常化前の、今の韓国との交渉妥結の過程の中において借款というようなことを考えておるか考えてないかというのが質問の趣旨なんです。それに対してあなたは考えておらないということを言っておられるのでありますから、今まだ日韓交渉が始まったばかりでございますから、この点が私どもは心配になるのです。一年半前に総理がはっきりおっしゃって、借款で問題を片づけようということは考えておらぬという趣旨であるということを私どもは承知しておったから、今度の予備会談に臨むいろいろな条件を見てみると、その中に長期借款あるいは無償供与というような問題が出ておるから、総理の考えられることは一年半前と今とは変わってしまったのじゃないか、もし変わったとすればどういう心境の変化で変わられたか、その点を明らかにしていただきたい。
  159. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほどからお答えした通りでございまして、日韓会談が成立するかしないかわからないときに、NEATOの問題あるいは長期借款ということはいたしませんと、こう答えております。しかし、今や交渉が妥結して日韓の国交が正常化する場合におきましては、これはほかの国でやっておると同じようにやるのが私は常識だと思います。あのときにああ答えて、今正常化したあとの見通しで交渉している、それが違っているということは、国民は納得します。情勢の変化を知らぬ人は言質をとらえてとやかく言うでしょうが、時代の流れというものはそういうものなんです。
  160. 木原津與志

    ○木原委員 何も言質をとらえておるわけではないのですが、それでは、国交が正常化した暁においては借款を考えることはあるかもしれぬ、しかし、国交正常化の交渉の過程において、平たく言えば、国交正常化と借款とを同時に振りかえるというような形で、借款と同時に国交正常化をやるというようなことはよもやあるまいと思います。が、どうです。
  161. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問がちょっとわからぬのでございますが、われわれは国交正常化の場合を想定していろいろな話をしているのであります。正常化すれば、長期借款――隣国に対して、あるいはまた遠い国でもそうでございます。日本経済上のあれから言って、お互いに繁栄するという場合におきまして、長期借款は私は当然じゃないかと思います。
  162. 木原津與志

    ○木原委員 あなたの考え方はどうもちょっと変わっていると思う。この日韓会談というのは、国交正常化の問題とははっきり別ですよ。請求権の問題あるいは国籍の問題、国境の問題、こういうような懸案の解決ということは、国交正常化とは別個の問題だと私ども考えるのです。この今の懸案というのは、平和条約においてあなた方が韓国の独立を承認された、この独立承認ということによって当然この問題は不可分的に交渉して解決しなければならぬ問題なんです。これは国交正常化とは別なんですよ。そういう意味において、北鮮との国交、この請求権に対する関係につきましても、まだ客観的な情勢が煮詰まっておるとか煮詰まっておらないとかいうようなことをさっき岡田委員質問に答えられましたが、客観情勢が煮詰っておるとか煮詰まっておらぬとかいう問題ではない。少なくとも相手方をオーソリティとして認めるならば、朝鮮の独立を講和条約において承認した、その承認したことから、当然不可分にこの問題だけを交渉をしなければならぬ。そのあとで北鮮とは国交正常化をするのはいやだから交渉するのはいやだとおっしゃるならば、それは時の政府の選択によってどうにもなるでしょう。しかし、いやしくもこの請求権の問題、国籍、国境といった問題は、講和条約の独立承認と同時に不可分にこれは解決しなければならない懸案じゃありませんか。そのあとで国交正常化の問題が起こってくるわけなんだ。だから、あなたのおっしゃることは、どうも私にはふに落ちない。この今の過程は、この独立承認に伴う不可分の案件を交渉する過程であって、今その過程をやっておられる。その過程においての質問に対して、あなたは借款は与えないと言うのですから、この点は何もあなたがしぶられることはない。一年半前のあなたのはっきりした答弁ですから、これを確認されるかどうかという点についていま一度お答え願います。
  163. 池田勇人

    池田国務大臣 国交正常化のために今交渉しておるのであります。正常化した暁におきまして両者の利益増進のために、われわれはいろいろの問題を提起して相談しておるのであります。
  164. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 もう少し続いて伺います。  長期借款の問題、無償供与の問題、こういう点については今言えないという御答弁が先ほど外務大臣からあった。しかし、非常に重要なのは、請求権が入っておるのか入っていないのかということです。先ほど総理大臣がだいぶ答弁しましたね、請求権は三十八度線以南に限ると。それは入っておるという考えで言っておるのかどうか、入っていないなら、そんな話をしていたならおかしいことになるが、どういうことですか。当事者の外務大臣が答えられないから、総理大臣の方がいいですよ。
  165. 池田勇人

    池田国務大臣 請求権問題を解決すべく努力いたしておるのであります。その請求権の問題につきましていろいろ問題が起こってきますので、どういうふうにしたら両者の意見が一致点を見出すことができようかと、今工夫をして交渉しておるのであります。
  166. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それじゃ、外務大臣、請求権は入っておるわけですね。
  167. 大平正芳

    大平国務大臣 御案内のように、請求権問題というのは今度の交渉におきましての焦点であるということは御指摘通りでございまして、従いまして、総理が今申し上げました通り、この問題をどう解きほぐしていくかということにつきまして工夫をこらしておるというわけです。
  168. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 外務大臣に伺います。が、請求権の問題は交渉しておると言うのだが、それじゃ無償供与とか長期借款の問題というのは、平和条約第四条(a)項の問題ではありませんね。そうでしょう。
  169. 大平正芳

    大平国務大臣 さようです。
  170. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 今非常に重要な答弁をされましたが、無償供与並びに長期借款はサンフランシスコ条約第四条(a)項の問題ではない、(a)項の問題というのは請求権の問題だけである、こういうことになると、今新聞紙上に伝えられておる無償供与、長期借款だけで交渉をするというのは、第四条(a)項の問題以外のことについて交渉している。従って、請求権の問題は、これは別途の問題であるか、あるいは交渉しないか、こういうことになるのだとわれわれは解釈しますが、よろしいですか。外務大臣
  171. 池田勇人

    池田国務大臣 私が指示しておるのですから、私から答えます。  この無償供与とか長期借款とかいうものはまだ確定的のものじゃございません。新聞に出ておるだけでございます。無償供与とは何ぞや、請求権と関係のないようにお考えになるのはどうかと思います。われわれ、無償供与というものがあるかないかということをまだ公表しておりません。ただ、今回の日韓国交正常化の問題の焦点は、重要な点の一つは、やはり請求権の解決でございます。それを中心にしてやっておるわけなんでございます。この請求権の問題をどういうふうにほごしていくかというところで今話し合いをしておるのでございます。今度の日韓会談の問題は、外務大臣が答えたように、請求権の問題が焦点の大きいものでございます。
  172. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そんなことは、総理大臣、聞いていないのですよ。だから私総理大臣に答弁してもらいたくなかったのだ。外務大臣に聞きたかったのですよ。私は、(a)項の中には無償供与、長期借款は入っておらないと言うから、だから、請求権の問題に関しては交渉してないのだということになると言っている。あるいは交渉しているならいるでもいいでしょう。しかし、そういう点が(a)項の問題であって、長期借款あるいは無償供与の問題ば第四条(a)項とは全然別途なものであるという答弁があったから、それは重要であるから実は伺っている。総理大臣は全然別なことを答弁している。大平さん、答えて下さい。
  173. 大平正芳

    大平国務大臣 問題は国交の正常化ということなんでございます。従いまして、それにいろいろな懸案があるわけで、その懸案をどうほぐしていくかということでございまして、条約解釈としては岡田さんが言われた通りでございますが、われわれは正常化に持っていくために諸懸案をどう解決するかについていろいろ工夫をこらしておるということでございます。
  174. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなたの方のそれこそ腹が見えるのですよ。はっきり読めるのです。請求権という名前を使わないで、無償供与と長期借款でいこうというのがほんとうの腹でしょう。内容は請求権だというのでしょう。タイで、悪いけれどもその手口といいます。が、その手口を使ったのですよ、総理大臣。われわれはそういうこは知っています。それと同じ筆法なんです。手口という言い方が悪ければ、筆法と言いましょう。そういう手なんですよ。あなたがおっしゃいますが、しかし、請求権ではないのです。あなたの答弁された通りです。長期借款と無償供与は請求権ではないのです。請求権は別ですよ。請求権の交渉はしておられると先ほど総理が言われたけれども、おそらく別途の問題としてやられているのでしょう。その点ははっきりしておいていただかなければ、そういうことも言えないという話では問題にならないわけです。私たちは、請求権の支払い方式として、無償供与、長期借款というようなごまかしは絶対に認められません。これは四条の(a)項をはっきり使うべきですよ、あなた。四条の(a)項に基づいて、しかも、池田さんがきのうも本会議で答弁されたように、池田・朴会談によって合法的な数字的な論拠のある明確なものを基礎にすること、あなたが今まで交渉されてきたそれなんです。それは第四条(a)項にのっとっているからです。それに基づいての交渉をなさるべきですよ。請求権以外の無償供与、長期借款という言葉で言いくるめた話をつけようといったって、それはだめです。それは、あなたは条約違反を犯すことになるのです。この点はできないというこははっきりしておいていただきたいと思います。が、外務大臣、いかがですか。
  175. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、国交の正常化にからまるいろいろな懸念をどうほぐしていくかということをしないと、われわれの目的とする国交の正常化が庶幾できないわけでございますので、そういう目的を達する上におきまして諸懸案の解決について工夫をこらしておるということでございます。
  176. 野田武夫

    野田委員長 岡田委員に申し上げます。総理大臣の約束の時間が参りましたが、外務大臣が少し残りますから……。
  177. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、できるだけ総理大臣に伺って、外務大臣のはあとにいたします。  先ほど総理大臣の御答弁をずっと伺っていて、非常に重要なことが幾つか出て参りました。請求権の問題、李ラインの問題、それから船の籍の問題もあるわけですが、これは時間がないから残念ながら私きょう省略するのです。それから、在日朝鮮人の法的地位の問題、これらの問題は、三十八度線以南、現実に施政が南朝鮮にしか及んでおらない、この地域の問題として交渉されておるわけですが、韓国側はこれを日韓会談の交渉にあたっては全朝鮮として交渉をしているのではございませんか。日本に要求しているのではございませんか。
  178. 池田勇人

    池田国務大臣 それは交渉の内容でございますから、私から申し上げられません。外務大臣が答えるでしょう。
  179. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、外務大臣、答えて下さい。
  180. 大平正芳

    大平国務大臣 今予備折衝に入ったばかりでございますので、大へん恐縮でございますけれども、そういった点につきましては御辞退させていただきたいと思います。
  181. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 しかし、そういう点が明確にできないでは困ります。あなたは先ほどから再三国交正常化と言いますね。この点については、この間の外務委員会であなたにはっきり伺いましたね。国交の正常化というのは、相手は国だということは認めるのだということでしょう。国だということを認めるならば、国の領域はどこだということになるでしょう。三十八度線以南しか実際に施政が及んでおらないから、三十八度線の問題としてやっているのでしょう。だから、そこの点は条文上その他ではっきりしておいてもらわないと、その点があいまいで国交回復をやりましたなんといったら、問題をあとに残しますよ。三十八度線以南の問題であるということを、南朝鮮の政府当局が何と言おうと、その点は明文上明らかにしてもらいたい。そうでなければ日本の国民は納得しませんよ。その点をはっきりしてもらいたい。
  182. 大平正芳

    大平国務大臣 この間の外務委員会で申し上げた通り、妥結いたしました場合の姿を見まして、どういう形式のものにするかということは考えるべきこと思います。
  183. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、私まだ問題がだいぶ残っているのですが、関連質問があるそうですから、これで終わりますが、今申し上げたように、三十八度線以南の問題、それから請求権の内容の問題、こういう点から言っても、国民は非常に疑惑を感じております。池田さんや大平さんは、何だか今ならばどさくさまぎれにうまく日韓会談をまとめても日本国内で押し切れるだろうというおつもりかもしれませんが、そうはいきませんよ。日韓会談については安保闘争と同じような反対闘争をわれわれはやります。これは日本の将来のために正しくないからです。池田さん、お考え願いたいのだが、韓国というのは、あなたがどう言われようとも、今朴正煕がいつ倒れるかわからない。そういうものを相手にしていいかどうかは知らないが、民政移管というのは来年の夏になる。そういう事態というのを目の前にしながら、今軍事政権と妥結をして、そのあとでつぶれてしまったなどということがもし起こったならば、池田さんは百年の日本の大計の中で恥をさらすことになりますよ。十分この点は御注意願いたいと思う。あなたは岸さんのような汚名を重ねて着ないように、私は強くあなたに要望いたしておきます。安保闘争と同じような戦いの起こることを、あなたは十分御存じ下さい。これを申し上げて私は終わります。
  184. 野田武夫

    野田委員長 穂積君に関連質問を許します。
  185. 穗積七郎

    穗積委員 いろいろお尋ねしたいことがたくさんありますけれども、今継続中の日韓交渉について総理とお目にかかる機会が少ないので、政策問題について一点だけお尋ねしておきます。  今岡田委員からもお話がありましたが、問題がいろいろある中で重要な点は、今の朴政権の安定性の問題です。ね。これはすでに当初以来合法性が疑わしいし、安定性は非常に弱かったわけでありますけれども、最近になりまして、特にわれわれ注意したいのは、経済的並びに政治的な危機がだんだん累積されて、ますます安定性は弱まってきているという非常に危険な状態です。経済については、御承知の通り、この六月にやりました通貨改革が完全に失敗をして、元に戻っただけではなくて、あと非常な混乱とインフレを招こうとしておる。従って、経済五カ年計画というものは初年度から完全に御破算にせざるを得ない段階に来ているわけです。もう一つは、政治的には非常な内部対立がひどくなって、昨日のあれでも、張勉元首相すらこれを無期に処罰をせざるを得ない、こういうような非常な不安な状態が出てきている。韓国日報におきましても、あれだけ言論を抑制されながら、最近朴政権の経済政策あるいは政治的弾圧については非常な批判的意見というものが出だしてきているわけです。そういう中で、今度の新しいいわゆる供与方式による交渉というものは、ある意味では、交渉の時期としては、相手の弱みにつけ込んで、そこで相手が下りてくる可能性がある、七億ドルの要求が下がってくる可能性がある、向こうはわらでもつかみたいときであるから、ここで一挙に解決したいという胸算用なり商売的な打算もあると思いますけれども、最後に今岡田委員指摘したように、われわれ指摘したいのは、この朴政権の安定性が全く累卵の危うき状態になっております。そして、従来あなたの言われた請求権の合理的解決からいけば七千万ドル以上はどうしても見込むことができないと言っておったのに、無償供与自身についてもその倍額以上に一挙にはね上がってしまっておる。こういうものを長期借款とともに向こうに供与いたしました後に元も子もなくなる危険性があると思うのです。そういうような危険な道をなぜお選びになるのか、なぜ民政移管を待たずしてこういうことに無理やりに突っ込むか。伊關局長も今の朴政権の不安定性については十分御承知のはずです。にもかかわらず、だからこそ急いでやるということは、われわれは大所高所から見て政策的にとるべき道ではないと思う。特に、今までアメリカが終戦後五十数億ドルの金をつぎ込んだ。今度日本が三億ドルつぎ込む。五十億ドル以上つぎ込んでもなおかつ民生の安定、経済の成長は全然できなかったわけです。それをあえて選ぼうとする大所高所に立っての政策は、われわれ国民としては、非常な無理をしている、すなわち、反共軍事体制をここで強化するためだ、日本経済的な行き詰まりの時期に日本の独占資本が韓国に対して再び進出をする、そういうことをねらった日韓交渉だというふうに政治的な性格は受け取らざるを得ないわけですね。どういうお考えでこういう危険な道をお選びになるのか。アメリカは五十億ドル泥沼に捨ててしまったわけです。そして、政治は腐敗し、民生は安定しない、経済はさっぱり伸びない。その同じあやまち、それ以上のあやまちをあなたはここで繰り返そうとしておられる。大所高所に立っての外交方針ということに対して、われわれはこの際確かめておかなければならぬわけです。この点をこの際率直に国民に納得のできるようにあなたのお考えを示していただきたい。われわれは、この交渉を打ち切るべきであると、そういう点から見ても思うわけです。なぜお急ぎになるのか、その点に関するあなたのお考えをこの際承っておきたいと思うのです。一点だけ関連してお尋ねしたいと思います。
  186. 池田勇人

    池田国務大臣 たびたび申し上げておりますごとく、日本と韓国との関係は、歴史的、地理的、また文化的に申しましても、また将来の経済関係から申しましても、国交正常化は非常に重要なことでございまして、一日も早くこの実現を期するよう、十年来努力してきたところであります。たまたま、今の政権になりまして、正常化に対して非常に努力、誠意を見せてきておりますから、この機会をとらえてほんとうに両国の国交を正常化し、ともに繁栄の道を歩いていきたいというのが私の念願でございます。(「合理的ではありませんよ」と呼ぶ者あり)――もちろん、合理的にやるのに努力しておるのであります。それを不合理とかなんとか言うことは早過ぎます。結果を見てからでなければ言えぬ。ただ、ここで私ちょっと申し上げておきたいことは、七千万ドルとかなんとかいう請求権を日本考えているとか、それ以上一歩も出ないとかいうことは私の口から言ったことはございませんし、今外務省に聞きましたら、そういうことは発表したことはない、こう言っておりますから、そういう既成事実はつくらないようにしてもらいたいと思います。従って、われわれは、国民が納得いく、しかも両国民が納得をして、そうしてりっぱな国交が今後発展していく土台を今つくろうとしておるのであります。いろいろな問題があると思いますが、われわれ、日本の外交上最も重要なものとして取り扱っておるのであります。  それから、朴政権の安定性とかどうこうということは、いろいろな見方がございましょうが、朴という人はりっぱな政治家と私は考えております。しこうして、国際的に見ましても、きのうも申し上げましたごとく、朴革命政権ができる前は、一九四九年から十年間、これを認めた国は三十五カ国でございます。しかし、朴政権ができてから、十六カ国、ここ一年半、二年の間に認めております。こういうことにつきましても、朴政権のいわゆる国際的の信用は私は高まりつつあると考えておるのであります。外国のことについていたずらに安定性がないとかどうとか言うことは、私は総理として慎しむべきことであり、私は、りっぱな政治を行なうべく努力を続けておるということを認めておるのであります。
  187. 野田武夫

    野田委員長 ちょっと御発言前に総理に御了解を求めておきたいと思います。総理のお約束時間が十分ぐらい過ぎておりますが、せっかく川上委員から質問の申し出がありますので、あと五、六分ほど御猶予を願いたいと思います。  その含みで、川上君、御発言を願います。
  188. 川上貫一

    川上委員 時間が非常になくなったので、ことに総理もお見えになっておりますから、私は単直に聞きますから、御答弁も単直に願いたい。  総理は、きのうの本会議で、朴政権は平和的南北統一を達成することを国是としておると言われ、きょうも、朴政権は非常に安定をしておって大へんりっぱだと言われておる。同時に、朝鮮民主主義人民共和国は朝鮮の平和的統一を望まぬ、これを妨害しておると言われた。これは一体何を根拠にしておられるのであるか、これをお聞きしたい。簡単でけっこうです。
  189. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれは国連中心主義でございます。国連の決議によって合法的唯一の政府と認めた韓国と今交渉しておるのであります。  北鮮の問題につきましては、先ほど来私並びた条約局長が答えた通りであります。
  190. 川上貫一

    川上委員 これはお答えになりませんけれども、朝鮮の平和的南北統一を国是としておる、こう総理は言われたのだ。そこで、李承晩が没落の時分に南朝鮮の人民は決議した、これは総理御承知の通りです。その時分のスローガンは、南北朝鮮の人と経済の交流、南北協商、平和的統一、こういうスローガンだったと思う。これは朝鮮民主主義人民共和国が提唱したものである。板門店で話し合いましょうというところまでこれが発展をして、李承晩はつぶれた。これは世界周知の事実です。この朝鮮人民共和国の呼びかけに応じて、南北協商、平和的統一に奔走した朝鮮の人民を武力で弾圧をして、平和的な統一を唱えた人を逮捕し、投獄をし、死刑の宣告までしたのは、まさしく朴一派とアメリカ軍だと思うのです。滅共統一を唱えるこの朴一派を、平和的統一の真心があるなどと首相は言うのです。私は、爪のあかほどもそんな考えはないと思う。世の中に盗人たけだけしいということわざがあります。このことわざは、内閣総理大臣池田さんにあてはまるとは言いませんが、朴一派には完全にあてはまると思うのです。こういう事実が実際あるのに、どうして総理は朴政権は平和的統一を望むなどと言われるのですか。これはあまりひどいと思う。御意見を承りたい。
  191. 池田勇人

    池田国務大臣 三十八度線を鴨緑江の線に持っていくという考え方云々のお話がございましたので、今の革命政権は、やはり朝鮮の統一は国連監視下における自由選挙によってやるということを内外に宣明しておりますと、こういうことを申し上げたのであります。李承晩のときも、武力でやるとは初めから言っておりませんが、やはり、何と申しますか、国連監視下の自由な選挙によって統一をはかりたい、しかし、どうしてもできなければ云々ということは李承晩は言っております。しかし、朴はそういうことを言っておらず、新政権の外務長官が世界に宜明し、また、私の前でも言っております。ケネディとの共同会談にも出ております。私は、朴政権は平和的に朝鮮の統一を念願しておる、こう申し上げただけであります。
  192. 川上貫一

    川上委員 それは、総理大臣はやはり慎重に言われた方がいいと私は思う。北朝鮮人民民主主義共和国は平和的な統一を希望せず、妨害しておると言われた。そこで、私は事実で聞きたい。第一にアメリカ軍の韓国よりの撤退、第二に朝鮮人民自身の手による民主的選挙、第三に南北の平和的統一という基本的な方針を宣言して、これを今日世界の各国に訴えておるのは、朴政権ではありません。明らかに北の人民共和国であります。この訴えは、日本国会も受け取っておるはずです。すなわち、南北の平和的統一を妨害しておるのは、人民共和国ではない。まさしく朴政権であります。同時に、これ以上に、国連軍の名を僭称するアメリカや駐留軍だと思うのです。これが事実だと思うのです。このお考えを承りたい。今の私の質問をどう考えるか。
  193. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、先ほど申し上げましたごとく、国連におきましては、国連監視のもとで自由な選挙で統一政府をつくろうと言っておるのであります。われわれは、国連のあれとしてもっともなことだと考えております。しかるに、北鮮におきましては、この国連の決議によらず、国連監視のもとの自由選挙はいかぬ、中立国のものならばいいとか、国連の気持に合っていないことを私は言っておるのであります。
  194. 野田武夫

    野田委員長 時間が参りましたから、あと一問にして下さい。
  195. 川上貫一

    川上委員 私の質問にはどうも正確な答弁をしておりません。  それでは、具体的に聞きますが、国連軍と名をつけたアメリカ軍は、何のためにおるのですか。今日の時点において、どういう必要があって、何の目的で韓国にがんばっておるのですか。これは総理大臣から、国交正常化をいろいろ努力しておられる直前でありますから、聞いておきたい。
  196. 池田勇人

    池田国務大臣 国連の決議によって国連軍が出ております。
  197. 川上貫一

    川上委員 今の時点で、何の目的で膨大なる兵力と核武装をした国連軍が韓国に駐留しておらなければならぬか。国連の決議でというようなことではいけないですよ。日本の総理大臣としてはこの点について考えがなければならぬです。
  198. 池田勇人

    池田国務大臣 世界並びに極東の平和のために国連軍は進駐することを決議してやっておると考えております。
  199. 川上貫一

    川上委員 それなら、池田さん、具体的に聞きます。鉄砲を放してどこか競うところがあるのですか。核武装をして韓国に国連軍が駐留しておらなければならぬ危険があるのですか。これがおらなければ平和が乱れるのですか。われわれはこれがおるから平和が乱れると思うけれども、具体的に言うて下さい。どうして核武装までした膨大なる国連軍が韓国に今日までがんばっておらなければならぬか、これです。
  200. 池田勇人

    池田国務大臣 今の状態は休戦状態であります。そうして、また、朝鮮事変の発端の事情をお考えになったら、北鮮はどうしておりますか。これが私の答えです。
  201. 野田武夫

    野田委員長 それでは、総理大臣、よろしゅうございます。  外務大臣が残っておりますから、ありましたら……。
  202. 川上貫一

    川上委員 総理に質問ができませんでしたので、池田総理のもとでの外務大臣でありますから、大平外務大臣に続けて質問さしてもらいたい。  今の総理の御答弁では納得できない。一体、アメリカ軍が核武装までして今日の時点で韓国に駐留しておらなければならぬというこのわけ、これを外務大臣として一つ言ってみてもらいたい。
  203. 大平正芳

    大平国務大臣 国連の決議によりまして負託された責任によりましてやられておることだと承知しております。
  204. 川上貫一

    川上委員 そういうことを聞いておるのじゃないのです。国連の決議は知っております。昔の話です。今日現在の時点において、どういう必要があって、国連軍と称するものが膨大なる兵力と核武装をして韓国にがんばっておらなければならぬのか、これを聞いておるのです。この点について日本外務大臣はどうお考えになっておりますか。これを聞いておるのです。
  205. 大平正芳

    大平国務大臣 国連の決議によりまして負託された責任をアメリカ軍が果たしておると思います。
  206. 川上貫一

    川上委員 それは答弁になりませんよ。具体的に、そうすれば、核武装までした膨大な国連軍が今韓国におらなければならぬそのわけをどう考えておるかということを聞いておるのです。国連で決議をしたからおるのだ、こんなのは日本の外交担当者の答弁ではありませんよ。現時点で、どういう目的で何の必要があると日本政府考えておるか、これなんです。
  207. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど御答弁申し上げた通りです。
  208. 川上貫一

    川上委員 こういう答弁だから日本の外交というのはだめなんですよ。これは全くのコンニャク問答になりますから、それ以上は言いませんが、どういう理由をつけましても、朝鮮の南北の平和的統一ということは朝鮮人民の願望であり、また、世界の平和を望む人々の願望であります。これはアジアと世界の平和の一つのいしずえです。この南北の平和的統一のじゃまをしているものは何だと思いますか。これは大平さんにお聞きいたします。
  209. 大平正芳

    大平国務大臣 韓国にいたしましても、北鮮の政府にいたしましても、半島の平和的統一を希求されている点におきましては一致いたしていると思います。ただ、この統一方式をどのように選ぶかという問題につきましては、先ほどから御答弁がありました通り、違った立場をとられておるということでございまして、私どもといたしましては、こういった統一方式というものが一致いたしまして、南北の平和的な統一がなるように希望いたしております。
  210. 川上貫一

    川上委員 そういうお答えを望んでおるのじゃない。南北統一をじゃましておる根本は一体何か、これを聞いておるのです。
  211. 大平正芳

    大平国務大臣 これは、背後に微妙な国際情勢もございまして、なかなか困難だと思いますけれども、しかし、私どもといたしましては、一日も早くそういう平和的な統一ができますように希望いたしております。
  212. 川上貫一

    川上委員 まさにコンニャク問答ですが、これは、率直に言いまして、朝鮮の人民は、アメリカ軍さえおらなければ、自分自身の手でりっぱに平和的な統一をやってのける力量と識見があると思います。これを妨害し、じゃまをしておるのは、国連軍の名を僭称するアメリカ軍だと思います。これが膨大に駐留をして核武装までしておる。この根本問題ということを、政府は今のような答弁をしておるが、ここのところをふまえずに、部分的な、たとえば請求権、たとえば李承晩ライン、こんなことだけをほじくっておって、一体日韓関係の基本問題というものが明らかになりますか。ならぬですよ。われわれは請求権の問題が重大でないとは言いません。また、李承晩ラインの問題が重大でないとは言わない。こんな問題にからんであれやこれやの論争を幾らやってみたところで、この根本の問題についてふんまえぬ限りは、朝鮮の平和的な統一も、アジアの平和も、日本人民と朝鮮人民との真の友好親善もできないと思います。ここをふまえていくのが日本の外交じゃないでしょうか。ここの立場をはっきり立てておるのが外務大臣の立場じゃないですか。国連がきめたからおるんだろう、こんな答弁では、外交を担当する資格がないと私は思う。  これもあらためて聞きますが、大平さん、韓国に国連軍の名を僭称する――僭称するとあえて言います。このアメリカの軍隊があるということが南北の統一のじゃまになるのかならぬのか。われわれはなると言うておるのです。アジアの平和の利益になるのかならぬのか、この点をもう一ぺんお聞きしたい。
  213. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほど申しましたように、今の南北統一を妨げておる国際的な背景というものは、今川上委員川上委員の立場からの御見解がございましたので、私は拝聴いたしました。ただ、この問題は、抜きがたい、非常に腰の重い問題であろうと思います。この国際情勢の推移につきましては、私どもとしても注視を怠ってはならぬと存じまして、今川上委員から与えられましたいろいろな御忠告はつつしんで拝聴いたしておきます。
  214. 川上貫一

    川上委員 拝聴して下さるのはいいのですが、そうしたら、もっと具体的に、日韓交渉のこの過程で、また国交回復の過程で、国連軍の名をかぶった膨大な軍事力と核武装をしたアメリカの軍隊が韓国に半永久的な形で駐ももしていることは、よいとお思いになりますか、困ると思いますか。
  215. 大平正芳

    大平国務大臣 南北の統一を妨げております国際的背景というものは、きわめて根の深いところから出ておると思うのでございまして、それの是非の問題よりも、そういう現実があるということをよく私どもは認識してかからなければいかぬと思います。
  216. 川上貫一

    川上委員 答えになりません。世界の情勢を聞いておるのじゃない。アメリカの膨大な軍隊が韓国にがんばっておることがよいとお考えになっておるのか、困った問題だと思っておるのか、これだけ聞けばいい。
  217. 大平正芳

    大平国務大臣 そういうことがなく、平和的に事態が解決されれば一番いいと思うのであります。それは願望でございますが、現実はこのように参っていない。従って、私どもは現実を直視して当たらねばいかぬと思います。
  218. 川上貫一

    川上委員 平和的に解決すればいいんだというようなことは、これは子供が言うようなことを言っておる。この平和的な南北の統一解決というものを妨げておるのがアメリカ軍ではないかという質問をしておるのです。そうではありませんならありませんと、はっきり言いなさい。そうでありますならそうでありますとおっしゃってもらいたい。ここを聞いておるのです。世界の情勢など聞いておるのじゃない。
  219. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほども申しましたように、国連監視下で自由選挙が行なわれて、そして統一されるということになれば、先生の御心配はないわけでありまして、そういったことができるような機運をつくっていくべきだと思います。
  220. 川上貫一

    川上委員 先に私が言いましたように、北朝鮮民主主義人民共和国は、アメリカ軍が撤退しさえすれば民主的な選挙をやりましょう、平和的な統一をやりましょう、これをこの国会まで訴えてきておるのです。これをどう考えるかというのです。平和的にできさえすればいいというような抽象論ではあかぬ。それでは外交というものはできない。北の朝鮮が言っておるのはあれはいかぬのじゃ、あれは間違いなんだとか、国連軍ががんばっておらなければこうこうこういう危険があるんだとか、だから日本政府は韓国に膨大なる国連軍を僭称するアメリカ軍がおってくれなければいかぬのじゃとか、ここをはっきり聞きたいと言うのです。これをごまかさぬようにしてもらわなければ、問題の根本に触れないと私は繰り返して言うておるのです。請求権は大事じゃ。漁業問題も重要でないとは言わない。しかし、そこのところだけ幾らほじくっておっても、この南北の平和的統一を妨害しておる妨害物の問題、ここのところに根を据えて問題を解明していかないというと何にもならぬということを言っておる。日韓会談の問題の中心がここにある。それだから、アメリカがいる方がいいんならいいんだと言って下さい。これを私は外務大臣に要求しておる。
  221. 大平正芳

    大平国務大臣 川上先生のお説は私も拝聴いたします。ただ、先ほど申しましたように、南北朝鮮の平和的統一の方式におきまして南北が合致していない。そして、北の方は国連監視下の自由選挙ということについて御反対であるということでございまして、両方とも平和的な統一を希求しておることには変わりはないが、方式が異なっておりますから、こいねがわくば、北側におきましても、そういう国連で認められた方式に同調していただくということが望ましいと思います。
  222. 野田武夫

    野田委員長 川上君、時間もだいぶ過ぎましたから、あと一問にして下さい。
  223. 川上貫一

    川上委員 外務大臣、朝鮮民主主義人民共和国の最高会議の手紙をあなたはお読みになりましたか。
  224. 大平正芳

    大平国務大臣 不敏にいたしまして、まだ拝見いたしておりません。
  225. 川上貫一

    川上委員 読んでおらぬ。それさえ読んでおらぬようなことで外交ができますか。日本国会にも来ておるのです。世界各国へ訴えておるのです。これは人民共和国の最高会議の宣言です。外務大臣はこれも読んでおらぬ。それで、政府は、北の朝鮮は統一を妨害しておる、韓国は平和統一を国是にしておる、こういうことを言う。これはちょっとひどいではないですか。何にも調べておらぬ。何にも研究しておらぬ。こんなことだったら外務大臣は要らぬのと違いますか。ほんまに読んでおりませんか、外務大臣条約局長、読まれましたか。
  226. 中川融

    中川政府委員 どういう手紙であるか存じませんが、国連の事務総長に出した向こうのメッセージは私読んでおりますが、日本に特にあてた何かメッセージというのは私読んでいません。
  227. 川上貫一

    川上委員 最後にもう一つだけ。現在の日本と韓国との国交の状態では、公然と政治、経済、軍事の取り組みをすることにどういう支障がありますか。これが一点。国交の回復をしましたら、政治、経済、軍事について公然と提携することができるようになるのでありますか。わかり切ったことのようでありますが、外務大臣のお答えをこれだけ聞いておきます。
  228. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもは、今のような不安定、不自然な状態でなく、自然な国交が結ばれるということを考えておるわけでございまして、軍事上どうしよう云々というような考え方はございません。
  229. 野田武夫

    野田委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十二分散会      ――――◇―――――