運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1962-08-30 第41回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年八月三十日(木曜日)    午前十時九分開議  出席委員    委員長 寺島隆太郎君    理事 安倍晋太郎君 理事 佐々木義武君    理事 中曽根康弘君 理事 松本 一郎君    理事 岡  良一君 理事 山口 鶴男君       赤澤 正道君    天野 公義君       小沢 辰男君    前田 正男君       石川 次夫君    三木 喜夫君       内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣 近藤 鶴代君  出席政府委員         科学技術政務次         官       内田 常雄君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   森崎 久壽君  委員外出席者         原子力委員会委         員       兼重寛九郎君         原子力委員会委         員       駒形 作次君         原子力委員会委         員       石川 一郎君         原子力委員会委         員       西村 熊雄君         科学技術事務次         官       鈴江 康平君         総理府技官         (科学技術庁計         画局長)    杉本 正雄君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   島村 武久君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局次長)  村田  浩君         参  考  人         (社団法人日本         原子力産業会議         副会長)    大屋  敦君         参  考  人         (電気事業連合         会理事長)   石原 武夫君         参  考  人         (東京工業大学         教授)     武田 榮一君         参  考  人         (名古屋大学教         授)      伏見 康治君     ――――――――――――― 八月二十九日  科学技術基本法早期制定に関する陳情書  (第三九六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会中審査に関する件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興対策に関する件(原子  力発電に関する問題)      ――――◇―――――
  2. 寺島隆太郎

    寺島委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。  すなわち原子力発電に関する問題について、社団法人日本原子力産業会議会長大屋敦君、電気事業連合会理事長石原武夫君、東京工業大学教授武田榮一君及び名古屋大学教授伏見康治君を参考人と決定し、意見を聴取したいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 寺島隆太郎

    寺島委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中にもかかわらず、わざわざ本委員会調査のため御出席下さいまして、まことにありがとうございました。  それでは、本問題についての調査を進めます。すなわち、去る七月三十日日本原子力産業会議長名をもって、内閣総理大臣初め関係方面に対し、原子力発電開発促進について、原子力発電推進のための要望原子力産業振興のための要望及び研究開発のための要望等がありましたが、これらを中心に忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと存じます。  まず最初に、原子力産業会議会長大屋敦君よりこれらの要望の概要について御説明を承り、他の参考人各位にはこれらの要望に関し、それぞれのお立場から御意見を承ることにいたします。  なお、参考人各位の御意見の御開陳はお一人約十分程度にお願いいたしまして、その後委員各位の質疑にお答え下さいますようお願い申し上げます。  それでは、最初大屋参考人の御意見をお願い申し上げます。大屋参考人
  4. 大屋敦

    大屋参考人 私はただいま御紹介にあずかりました日本原子力産業会議の副会長大屋敦であります。  今お言葉にありました通り原子力開発長期計画をどうして実現したらいいかという問題につきまして、原子力産業会議の会員が約数カ月の間相談をいたしまして、電気事業あるいは製造業者、その他原子力関係のあります民間の総意を一まとめにいたしまして、要望書をつくって、それを今お話のありました通り七月三十日に関係方面に差し出した次第であります。  それの要点を申し上げますと、原子力開発利用のうちで、最も規模が大きく、また国民経済に一番重要な関係を持っておるという意味合いにおきまして、原子力発電推進するということをもってこの要望書主眼にいたしまして、従って、名前も原子力発電促進に関する要望書ということにしておるのであります。  それの大要を申し上げますと、原子力発電というものが、今お話ししましたように原子力利用の根幹をなすものでありますので、これを推進するにあたりまして、国家がエネルギー政策の一環といたしまして重点的にお考えを願って、そうしてこれを国策基本にし、根本的の国策ということに御決定を願いたいということが第一であります。  そうして、この政府国策に基づきました原子力発電推進するためには、いろいろ政府にも施策が必要でありますと同時に、民間側も最大の努力、また犠牲を払ってこの推進に協力するというか、みずから推進の衝に当たるというのでありますけれども、その政府並びに国会に対する要望といたしましては、まず第一に、当分の間は原子力発電というものが相当設備がよけいかかりますので、その意味から申しまして、原子力発電基礎をなします研究開発に対して、できるだけ政府の助成をしてもらいたい。  第二には、資金の面でございますが、資金面は、国から出資してもらうということは、現在の日本原子力発電会社政府が二割持っておりますので、その二割の増資払い込み以外には別段に出資の御要請をしておりません。それでありますけれども、資金のできるだけ円滑な供給をしていただく。たとえば開発銀行からの借入金というふうなものを、もっともっと増していただきたいとか、あるいは外国から資本を導入する場合にいろいろごあっせんを願う、御援助を願うということ、それからまたいろいろ設備に対する税制上の問題がありますから、その税制上の問題についても特に今後御留意願いたいということが第二であります。  第三には、最近国会で御承認を得ました原子力損害賠償に対する法律があるのでありまけすれども、その法律が今の国際観念から言うとやや改正を要する点があるのでありますから、この法令につきましても適当な改正をしていただきまして、民間業者が当然負うべき責任の限度というものをきめていただきたいということであります。  なおそのほかに、たとえば原子力発電に使います燃料に対して貸借料を無料にしてもらいたいとか、そのほかいろいろ原子力発電についてのこまごましたお願いがあります。なお、原子力発電と直接の関係はありませんけれども、たとえば原子力船であるとか、あるいは材料試験炉であるとか、燃料再処理の設備であるとかいうようなものにつきましても、一つ政府が大幅な予算を計上していただきたいというようなことが書き添えてあるのであります。  そこで、今の要望書関係いたします二、三の問題点を、この際ついでに申し上げたいと思うのであります。  まず第一に、一体原子力発電というものの経済性はどうなのであるか。近ごろは原子力発電のスロー・ダウンといいますか、中だるみというものがよく報ぜられておるので、エネルギーの問題の論議にも原子力というものがちょっと放置されがちになっておるけれども、原子力発電の実際の経済的値打ちはどうであるかということの問題であります。それにつきましては、諸外国の例をこまごま申し上げる必要はないと思うのでありますけれども、先日日本に参りましたイギリス原子力公社総裁メーキンスという者は、明らかに反対意見を言っておりました。反対というのは、中だるみということは間違っておる、やはりイギリスは当初計画通り政策変更はせぬということを言っておるのであります。  なお、皆さんの頭のうちには、東海村の日本原子力発電所というものがどうしてもファースト・インプレッションになって入っているのでありますが、これは相当設備費が高くかかっております。規模が小さいとか、あるいは途中からしばしば設計の変更を余儀なくされるとかいうようなことがありまして、割高になっております。一キロワット設備費というものが二十万円程度になっておるかもしれませんが、これは全く異例でありまして、これからできます今の新しい原子力発電日本に持ってきてやるといたしますと、日本のそろばんでもって約一キロ十二万円でできるということを予定しておるのであります。イギリスが最近に注文をいたしました八十万キロのウイルファという大きな原子力発電所では、一キロワット十万円でできるという予想であります。そういうことで、原子力発電設備費というものはだんだんには下がっていきますけれども、まだ十万とか十二万とかいう線以下には下がっておりません。それが火力の一キロ五万円前後というものに比べますと、まだ倍くらい設備費が高いということが大きな悩みであります。しかしながら、水力の例をとるまでもなしに、やはり原子力というものは高くかかっても燃料が安く済めばいいのでありまして、今の計算によりますと、原子力の場合にはウラニウムの値段が一キロワット時で約一円と思われるのでありまして、従来の油の火力でありますと、それの倍の二円くらいかかるのでありますから、燃料においては画期的に安いのであります。それからなお、将来の問題でありますけれども、今しきりに研究しておりますプルトニウム利用が工業化されまして、増殖炉すなわちブリーダーというものが原子力発電に使える時代がきますと、ほとんど問題にならぬ何十分の一あるいは百分の一というふうに燃料費が減るのでありますから、前途を考えますと、原子力発電というものは火力発電所よりもはるかに望みが多いということが言えると思うのであります。それが第一の問題であります。  第二の問題は、それではそういうふうにして勘定した場合に、キロワット・アワーの発電単価はどうなるかということになりますと、発電単価は、各種各様の数字が今まで出ておるのでありますけれども、最近われわれが勘定いたしましたところによりますと、外国の最新のものを日本にこの際建設するということであれば、大体一キロ時三円二十銭程度でいくだろう。従来の火力でありますと二円八十銭、それで四十銭くらいの違いになりますが、日本の場合には、日本でやったといたしまして、今のところはそれだけ値段が高いのであります。しかしながら、この値段はだんだん下がって参りますので、十年後と申しますか、昭和四十五年にはその値段というものが火力原子力というものが全く同じで、コンビートすることができるということは、これはほとんどみなが同一の意見を持っておるのであります。キロワット発電単価につきましてはそういうことになっておりますが、アメリカのパフィック・ガス・アンド・エレクトリック・カンパニーという、一番大きな日本の東京電力に次いで、世界で二番目に大きな会社が最近に太平洋沿岸につくり始めましたボデガ・ベイという発電所は三十六万五千キロでありまして、そのキロワットアメリカ流に勘定しますと二円三十銭でできる、こういうことを言っておるのであります。  経済上の問題はそういう予想になりますが、またこの予想について各方面、にいろいろ反論があります。原子力発電にけちをつけたいという面からはずいぶん手きびしい反論があるのであります。その反論を一、二ちょっと御紹介いたしますと、まず第一に、原子力発電というものは何もこの際急いでやらぬでも、外国でもって十分安くなってから始めたらいいじゃないかという議論がなかなか有力であります。それからもう一つは、原子力発電が何円でできるということは、それはあくまで机上の空論で、机上計算であるけれども、火力の場合には実際の実績によるのであるから、その二つのものを比較して原子力発電を軽々にやってはいかぬという議論をずいぶん言っておるのであります。  あとの問題から申しますと、原子力発電はペーパー・プランだというような、そういう頭を持ってこの新しい仕事に臨みますと、あらゆる産業において新しい革新的の仕事はできないということになります。新しい仕事はいつでも机上の推測の値段を過去の実績と比べてやるのでありますから、そういう議論を言っては新しい仕事はやれぬということになるのであります。  それから第二には、安くなったらやったらいいじゃないかという議論は、それは産業を経営する場合に、産業に従事しておる者が自己の力で開発して、これを改良する、その気魄と経験がなければ仕事というものはできないものであります。外国がよくなったらそのときにやったらいいじゃないかという議論は、その点から言いましても、魂が入らない仕事になるばかりでなしに、またそういうことをやりますと、どうしても国産目標にしなければなりません。国産目標にするためには、関連産業がそれぞれ準備しなければなりませんので、今のような考えでは、いよいよというときに関連産業が全く責任を負うことができない立場になるのでありますから、どうしてもそういうような反論というものに重きを置きましたら、日本経済は進歩せぬということになるのではないかと思うのであります。  また、もう一つ議論は、自由化の際であるから、できるだけ安いエネルギー源に乗って、そして高いものはあと回しにしたらいいじゃないか。外国の現に安いエネルギー源を優先するという考えが多いのであるから、原子力は二の次にしたらどうかという議論もなかなか有力であります。これにつきましては、私は長い目で見て、一体そういう安い外国からの油の上にあぐらをかいていていいのかどうかということは、ことに公益事業関係のあります人は非常に考えなければならぬ問題であります。そういう点から考えましても、安い油というものを考えまして、原子力発電推進をちゅうちょするということは、理由にならぬような感じがするのであります。いずれにしましても、こういう仕事というものは、そうあしたにすぐできるものではないのでありまして、前もって十分の準備をする必要があると思うのであります。かれこれの意味合いで、原子力発電というものは、予定通りこの際十年間百万キロの計画推進をするということが、将来の長きにわたりましても非常に大事なことだと思います。  なお、こまかいことは、御質問がありましたらお答えを申し上げます。失礼をいたしました。
  5. 寺島隆太郎

    寺島委員長 次に、石原参考人にお願いいたします。石原参考人
  6. 石原武夫

    石原参考人 私は、御紹介をいただきました電気事業連合会理事長をいたしております石原と申します。  本日の主たる議題になっております原子力発電推進に関しましては、ただいま大屋参考人からお話があった通りでございます。われわれ九電力の団体でございますが、原子力産業会議に参加いたしまして、先ほどお話ございました要望書は、一緒に出さしていただきましたし、その趣旨につきましては、先ほど大屋参考人からお話ございましたので、これを申し上げますと重複をいたしますから、もしこまかい点がございましたら後ほど御質問に応じて答弁をさしていただきたいと存じます。  それで、ただ私はこの機械に、原子力開発利用長期計画に対応いたしまして、電力会社側としてどういうふうに考えておるかという点だけを申し述べさせていただきたいと存じます。今後原子力発電推進して参らなければならぬ点につきましては、先ほど大屋参考人からお話があった通りでございますので、その点は省略さしていただきたいと思います。  現在電力事業は、需要の増大に応じまして、非常に大規模開発を進めておることは御承知通りでございますが、水力につきましては、漸次有利な開発地点が少なくなっておりまして、最近の電源開発は、主として火力で行なわれておる現状でございます。従いまして、最近は、経済性から申しまして重油専焼火力というものが非常に大幅に行なわれておることも、これまた御承知通りでございます。従いまして、このままで将来の電気事業をどうしても火力発電によってまかなっていくということになりますと、相当膨大な重油燃料とするということになるのでございますが、先ほどお話ありましたように、電気事業としては、公益事業でもございますし、できるだけ低廉でありかつ安定的な電力供結を行なわなければなりませんので、さような意味におきましても、経済性ができますればぜひ、相当の数量のものをこの原子力によって発電をしていくことにいたすべきだと考えております。それで、ただいまのところは、先ほどお話ありましたように、重油専焼火力に比較いたしますと経済性はございませんが、今の見通しでございますると、十年後には——今から申しますと十年ございませんが、昭和四十五年ぐらいには、重油専焼火力とほぼコンビートできる経済性が持たれるという見通しでございますので、その後におきましては、現在ございます火力発電の一部を原子力発電に代替していくということに相なろうと思います。ことに、御承知のように、原子力発電は、電力のあれといたしましてもベース・ロードに当然なるものと考えます。九電力といたしましても、さような時期になりましては、それぞれ従来開発しております火力にかわりまして原子力相当大幅に取り入れていくということになろうかと思いますので、それに至ります前段階の十カ年間におきましても、非常に重大な関心があるわけでございます。  この十カ年間に約百万キロの原子力発電を行なうというのが、長期計画に出ております。御承知のように、現在一号炉原子力発電株式会社でやっておりますが、引き続きまして二号炉も同会社でやることは大体決定しているように伺っております。それで、その先をどうするかという問題でございますが、九電力会社といたしましては、次の三号炉と申しますか、その次からは東京と中部と関西の三電力会社におきまして、大体四十五年を目標にいたしまして一基ずつつくっていきたいというふうに計画をいたしております。もしさようなことになりますれば、原子力発電会社の現在の一号炉、二号炉をあわせて百万キロになろうかと思います。現在のところ、九電力会社としてはその三社がさしあたり出発をいたすわけでございますが、一基ずつを四十五年を目標にしてつくっていくというふうに考えております。ただ、民間といたしまして、それらの原子力を進めて参るにつきましては、いろいろ政府の方にも御援助願いたい点があるわけでございますが、その点につきましては、先ほど大屋参考人からお話をいただきました通りでございますので、さように御了承をいただきいと思います。  なお、御質問がございましたら、後ほど申し述べさせていただきたいと思います。
  7. 寺島隆太郎

    寺島委員長 次に、武田参考人よりお願い申し上げます。
  8. 武田榮一

    武田参考人 東京工業大学武田と申します。  大屋さんからお話のありました原子力産業開発長期計画推進協議会の勧告といいますかは、全般的に見ましてまず妥当なものであろうと私は考えています。原子力委員会原子力開発利用長期計画というものを昨年二月に立てられて、それが比較的希望的な目標というものをつくられて、われわれ研究者としてはかなり長い目での長期的な先に見通しを持って、それに沿っての研究というものを今まで考えておるわけでございますが、昨年からことしという比較的短い間にも多少のズレが出てきておる。そのズレをなるべく埋めていこうという考え方から出発したものだと思います。  ただ、原子力産業会議中心としてつくられた案というものは、比較的目前の問題といいますか、前期十年間に百万キロワットを実現する、そういうことに大きな主眼があると思います。そういう前期百万キロワットを実現するための研究開発ということに関して、安全に対する研究であるとか、材料試験炉の導入であるとか、あるいは燃料技術を進めるとか、そういう問題をかなり前面に取り上げまして、そのあと多少つけたり的に国産動力炉プロジェクトをつくる、あるいは原子力船プルトニウム利用、あるいは大学等教育訓練基礎研究というものを取り上げているように思われるわけです。私たち研究者という立場からいいますと、産業会議の方としてそういうウエートをつけられることには、その理由をよくそんたくすることはできるわけでありますが、国産動力炉開発していくという努力、もっとそういうことにもウエートを置いて進めてもらいたいという感じがするわけです。  時間があまりありませんので、詳しいことは省略いたしますが、結論的に申しますと、今考えておりますコールダーホール型の原子炉、あるいはこれから二号炉あるいは三号炉として取り上げられようとしておる軽水型の原子炉というものは、われわれ第一代目の原子炉動力炉時代考えております。それは現在の予想では、先ほどお話がありましたように、一九七〇年、昭和四十五年ごろにはフル・スケールのプラントとしては火力と十分競争できると私も考えます。そういうことに対して、そういう動力炉国産化するための研究開発ということを強力に進められようとしているわけでありますが、一方われわれの希望というものは、第二代目の原子炉というものに向けられております。われわれと申しますのは、私は大学の人間でありますし、それから原子力研究所にも関係しております。そういう意味で、外国からほとんどのものを知識を借りてきてそれを国産するということだけではなしに、もっといい原子炉を、将来もっとコストの安くなるような原子炉国産的に進めていこう、そういう研究を現在たくさんの人たちと力をあわせて考えつつあります。  その原子炉として可能のタイプのものはいろいろあるわけでありますが、われわれとしてはまず重水減速原子炉であるとか、あるいはアドバンスト・ガス・クールというコールダー・タイプのものを改良した型の原子炉、そういう二つくらいにしぼって、そのいずれかを一九七〇年、昭和四十五年ごろまでにプロトタイプ、大体電気で数万キロワットぐらいのスケール国産動力炉開発し、そういうプロジェクトをつくっていきたい、そういうふうに考えております。  それから、さらにもう少し長期的に考えますと、第三代目の原子炉というものが考えられるわけでありまして、各国がそういうものとして最も注目しておりますのは、先ほど大屋さんのお話にもありました高速の増殖炉であります。そのほかにも、今まで原子力委員会でも取り上げております半均質炉でありますとか、あるいは水性均質炉というふうものもおそらく三代目の範疇に入るのではないか。その三代目のものとして考えますと、おそらくそれはもう十年くらい先、昭和五十五年くらいにようやくプロトタイプのものが建設できる段階になってくるのではないか、そういうふうに考えております。そういうものに対しては、現状では基礎的な研究という面で努力すべきであって、まだプロジェクトまで持っていく段階ではないのではないか。  そういうようなことで、われわれ現在考えましたときに、第一代目の原子炉というものに対して、おそらくウエート電力会社というようなものが最も大きなウエートを背負うべきものであろうと思いますし、第二代目の原子炉に対しては原研が中心になって、その他各メーカーさん、それから大学その他の研究機関が力を合わせてやるのがよろしいと思います。第三代目の原子炉に対しては、もう少し基礎的な、もう少し前の段階にありますから、やはりここでは原研とか大学とかの研究機関がぼつぼつやるのがよろしいのではないか。  大体、国産でそういう研究開発をするのにどのくらいの費用が要るかということを概略考えてみますと、プロトタイプ原子炉をつくるまでに、これはスケールにもよりますけれども、大体百五十億前後。これはかなり基礎的なところから始まりまして、プロトタイプのものをつくるまでに要る研究開発の費用としては百五十億、あるいはもう少しふえるかもしれませんが、大体そんな見当で済むのではないか。それはむずかしい原子炉を対象に選びますと、もっと金がかかると思いますが、比較的今まで基盤のある原子炉開発していけばその程度でできるのではないかと考えております。大体以上であります。
  9. 寺島隆太郎

    寺島委員長 最後に、伏見参考人よりお願い申します。伏見参考人
  10. 伏見康治

    伏見参考人 武田先生と同じことを申し上げる二とになると思いますが、少し個人的なことにわたって恐縮でございますが、一九六二年はある意味で私にとっては大へん記念すべき年でございます。と申しますのは、ちょうど十年前、五二年の秋に学術会議の総会の場におきまして、茅誠司先生と一緒に、日本でも原子力開発に手をつけるべきであるという提案をいたしました。ちょうど十年目に当たりますので、そういう日にここでお話をする機会を与えられましたことは非常に感慨の深いものがあるのであります。しかし、御承知だと思うのでございますが、その十年前に私が原子力のことを申し上げましたときには、全くの四面楚歌の声でありまして、右側からも左側からも猛烈な反対を受けました。左側の反対は皆さんよく御承知通りだと思うのでございますが、右側からも猛烈な反対を受けたのでございまして、原子力といったようなものは全く夢のようなものであるというような御意見電気工学者の間から非常にたくさん出ておったわけであります。  その後、だいぶ世の中が変わって参りまして、逆向きになりまして、大へん原子力ブームといわれるような時代になって参りました。話がずいぶん変わったいうことが私の印象に強く残っておるわけでございます。しかし、こういうことを申し上げたからといって、私が何か先見の明があるという意味で申し上げているのではなくて、むしろ先見の明のないことを非常に恥じているわけであります。そのときの十年前の四面楚歌の声といったようなものを全然予想していなかったということがまず先見の明のない第一でございまして、その後も見通しのつかないことをたびたび繰り返しておりまして、日本原子力のために、はたして役に立ったのか、あるいはマイナスのことをしてきたのかということを反省させられているわけであります。  私が、特に今日でも印象深く見通しがきかなかったということを強く感じましたのは、原子力研究開発利用という、当時アメリカの文書に出ておりますリサーチ・デベロプメント・アンド・ユーチリゼーションということをそのまま翻訳して日本で使っておったわけなんでありますけれども、そういう順序で実はものが進行するものであると考えておったわけであります。まず研究があって、その次に開発があって、その次に利用が行なわれるものである。そういうふうに考えております。ところが、そういう考え方が根本的に非現実的なものであるということをいやというほど思い知らされたわけでございます。つまり一番初めに世間で原子力に対して反応があったのは何かと申しますと、まず貿易商社の方々が反応なさったわけです。まず原子炉を輸入するという話から物事が始まりまして、それから電力界の方々が動き出されまして、それからいろいろなメーカーの方々が、大学は一番あとになって原子力ブームに乗り出したという感じがいたします。研究開発利用という順序が、全く逆転した形でもって日本では進行していたように思われたわけです。これが私の予想しておったのと全く正反対でありまして、いまだにそれが私の頭から離れないわけであります。  しかし、先ほど大屋さんも言われましたように、ほんとうのところはどこにあるか知りませんが、世間では原子力というものは近ごろスロー・ダウンして、中だるみの状態にあるというふうにいわれておりますので、こういう中だるみの状態の中において、もう一ペん原子力の一番初めの時期に立ち返って、全体のことを見渡してみるということが必要な時期になってくるのではなろうかという感じを受けるわけです。十年前に原子力のことを申したときに、一番私の心を強く支配しておりましたのは、日本の従来の科学技術の体制というものがいろいろな欠陥をはらんでおる。その欠陥をいわば是正する一つの絶好の機会であるというふうに考えたわけであります。日本は科学技術に関する後進国でございますために、いろいろなものを外国から輸入して参りまして、その取り入れたものをよく消化いたしまして、そうして独自の文化を築き上げていったということは、私たちの先輩の大した功績であろうと思うのであります。しかし、追いつくということに非常に忙しかったために、日本の内部において、いろいろな分野の科学技術の知識が渾然として熟成するといったような面が非常に欠けておったわけであります。工学者は工学者として向こうの工学を勉強し、理学者は理学者として向こうの理学を勉強してきておる。向こうの母国、科学技術の生まれた国におきましては、理学と工学というものが完全に融合した形で進行しておるにもかかわらず、日本においては別々に輸入されたまま、理学と工学というものは全然別々に動いておる。産業界と大学との間の関係といったようなものも、そういう傾向が非常に強かったわけであります。幸い原子力というものは、いろいろな領分の技術というものを結合した技術であるということがございますので、原子力ということを旗じるしにするならば、そういういろいろな科学技術の分野というものが一つにまとまって仕事ができるのではなかろうか。そういう意味での日本の科学技術のいろいろな分野におけるセクショナリズムを打破する一つの絶好のチャンスではなかろうかというふうに私は考えます。それが一つ。  それから、原子力の魅力というのは一体どこにあったかと申しますと、原子力の根本原理というものがまず先に発見されまして、いわば非常に原理的な、理論的なものが先にあって、その根本原理を現実化していくというその過程がいかにもみごとであるということが、多くの方々に対する魅力であったと思うのであります。その魅力を日本でも実現するということが非常に大切なことであろうと思ったわけです。今まで日本の科学技術は、先ほど申しましたように、それぞれのセクションの中で外国のものをよく消化してきたという意味においては、非常にりっぱな功績があったと思うのでありますが、その原理的なものから現実的なものへだんだんに発展さしていくという、そういう経験が非常に乏しかったわけでございますので、そういうことができるまた一つの絶好のチャンスである、そういうふうに考えたわけであります。  ところが、そういう考え方は今までのところは大体夢に終わってしまっていて、やはり昔ながらのやり方というものが大勢を支配してきたというふうにしか思えないのが残念なわけであります。もし、原子力開発一つの曲がりかどにきていて、いろいろな意味考え直さなければならないとするならば、今後の原子力開発計画は、武田さんの言われたような線で、自分みずからの手で技術を開発していくということを主眼にしてお考えになるのが適当であろうと考えるわけであります。それを育てるためにはまた付帯的にいろいろなことをやらなければならないと思うのでありますけれども、中心となるべき考え方は、日本の技術者が自分の手で理論的なものを技術化していく、現実化していくという、そういう経験を経ていくということが主眼であって、それをいろいな意味の周辺的なもので補っていくということでなければならないと思うのであります。原子力がある意味ではスロー・ダウンされているということは、そういう意味合いのことを行なうにはむしろ絶好のチャンスを提供することになるわけです。つまり、もはや原子力というものが完全に安くなりまして、従来の火力発電と十分競争できるようなものになるといたしますと、そんなにゆっくりはしておられないという気持になるはずなんでありますが、幸いにして現在原子力発電のコストが高過ぎるということは、むしろ今日じっくり腰を落ちつけて仕事を進めていくのに非常にいい機会だと思います。  それで、ここに提案されておりますのには、いろいろいいことが一ぱい書いてあるわけでありますが、この中のウェートの置き方は、私は武田先生に大いに同調したいと思うわけであります。  一般的にはそういうことでございますが、もう一つ、私にいささか関係の深い面だけを申し上げておきたいと思うわけであります。それは原子炉の安全性に関する事柄でございます。原子力の安全性というものが非常に問題にされまして、その対策のために東海村の原子力発電所が非常にコスト高になっているということは、皆様よく御承知通りであります。この安全性に関する政策を樹立することが大事であるということを言われまして、基準部会で安全性に関するいろいろな基準を早く確立せいという御要望をたびたび受けているわけであります。この前の機会に、この同じ公聴会で申し上げた通りに、基準というものはそうあわててつくるべきものではないということを申し上げた次第であります。その考えの根拠はどういうところにあるかと申しますと、原子力技術というものがどんどん進化いたしますのに、ある時いておいて安全性の基準を人為的に引点にしまいますと、それで安全性の技術の進歩に対するくぎづけをしてしまうようなことになる。絶えずその安全性についての技術を改良していく、より高い安全性を確保していくような技術的な改良を加えていくということをむしろ進めるためには、ずさんな、少なくともあまり早まった基準をつくるべきでないというのが私の考えでございました。その根本方針において私はそういう哲学は正しいと思っているわけなのであります。  しかし、その哲学を裏づける努力というものが、はたしてなされたかと申しますと、残念ながらあまり進行していないわけです。つまり、原子炉は安全になるものではなくして、安全にしなければならないものなのでありますが、安全にするという努力日本でどのくらい行なわれたかと申しますと、ほとんど皆無に近いような状態でございます。幸い東海村の場合には、あのむずかしい原子炉の耐震性を増加するために、日本の学者が大いに創意を発揮されまして、りっぱなお仕事をされたのですが、それ以外には、そういう安全性に関する具体的な研究は進行はしていないわけであります。こういうものはごく意識的に、安全性ということを目標にした研究計画をぜひ推進していただきたいと思います。この文章のどこかにも書いてあったはずでありますが、そういう面には特に重きを置いてやっていただきたいと思うわけであります。  一般的に申しまして、日本原子力の進め方というものには、何か主体性が欠けているような感じがいたします。原子力発電のコストの高いとか安いとかいう議論がされましても、そのうちに安くなるだろうというような御意見はあるのでありますが、安くしてみせるという方の御意見がない。そういう意味の主体的な意欲というものが感ぜられないのは、私自身をも含めて非常に残念なことだと思っております。     —————————————
  11. 寺島隆太郎

    寺島委員長 質疑の通告があります。これを許します。岡良一君。
  12. 岡良一

    ○岡委員 今、大臣参考人伏見参考人、このお二人の御見解を承っておりますと、全く反対の御意見とも受け取れるわけであります。伏見参考人は、いわば現在原子力発電は曲がりかどに来ておる、スロー・ダウンという状態である、この時期をいわば禍を転じて福となすという意味で、正しい日本原子力政策を進める上において、国産動力炉というふうな構想のもとにまず基礎研究を積み上げていくべきではないかというような御意見であり、一方大屋参考人は、スロー・ダウンはしておらないというふうな御意見もございました。とりあえず原子力発電は、国のエネルギーの総合的な需給計画の中においても高く評価すべきものでもあるから、この原子力発電を進めやすいように、税制上の問題、資金の問題等においても政府としては積極的な考慮を払うべきだという御主張であります。非常に御見解が食い違っておるようでございます。  これについて、今ここで参考人の御両人の討論をお聞きするということも失礼でございますが、原子力委員会としてはどのようにお考えになっておりますか、石川原子力委員は一番長くやっておられますので、御見解を一つ……
  13. 石川一郎

    石川説明員 二つの面は予盾しているようにお聞き取りになったようでありますが、私はそう考えておりません。と申しますのは、原子力委員会では、今まで研究炉を初めいろいろな種類の炉について、まだ初歩的なことでございますが、研究をしております。しかし、日本のわずかな熟練者、あるいはまた予算でもって、そう多くの研究をすることは非常に困難じゃないか。どうしてもこれは一つ目的を定めて、国産炉を自分でつくる、われわれの手で炉をつくった方がいいのではないかということで、最近政府でもまとまりまして、新しく特別の委員会を設けまして、特に若い人に出てもらって、一つ日本の新しい国産動力炉をつくることについての研究を、どういう方向でやるかということをきめていただくような段取りを今やっております。それはしかし、御承知通り一つの炉を開発いたしますのには長い年限がかかります。また、先ほどお話のございましたように、百億、百五十億という相当の金がかかるわけでありますし、十年くらいかかるのが、ほんとうにつくり上げるつもりでやってみようということで、始めるつもりでおります。  また一方、大屋さんのおっしゃったことは、十年後には相当動力炉をつくらなければならないことになるだろう。もちろんそれには国として長期計画が必要であります。原子力エネルギーの重要なる一つのソースであるということをお認め願いまして、それに向かって参りますが、十年くらいたちますと相当安くなるだろう。これは、私どもも、皆さんのお説から考えておるのであります。そうなったときにあわててやろうとしてもいかないから、今から外国炉、たとえば第二号炉アメリカの方の水をもってやる炉を入れようとしているのでございますが、そういうことによって経験を積んでおいてやっていこう。そして十年後に、ずっとよけい原子力発電所をつくらなければならぬ場合に、間に合わせるように両方でいこう、こういうような考えでおりまして、やはり両方並行的に、後進国としてはやっていかなければならないのじゃないか、こんなふうな考えをしておるのでございます。
  14. 岡良一

    ○岡委員 両方並行でいけるお話じゃなかったように、私は両参考人の御意見を承っておったのです。私ども、石川さんは特に御存じのように、日本原子力の政策は、やはり学界の意見産業界の意見というものを、双方公正に傾聴しつつ進めてもらいたい。いわば原子力委員会は、学界と産業界という二つの手綱を持って、誤らざる軌道をまっすぐに進めてもらいたいということをいつも申し上げておったはずでございます。ところが、今、参考人の御両所の御意見を承りますと、どうも手綱が少しずれて参っておるようであります。いわば学界と産業界のレールの上にしっかり乗っておるべきものが、双方のレールが少しずれて、車が少しがたぴししているような感じがする。そこで、原子力委員会としては、ある意味では窮余の一策として、おそまきながら国産動力炉にも取りかかろうというふうな、いわば妥協的な構想もお示しになった、われわれはそういうふうな感じがいたします。  そこで、石川さんは長く原子力委員をお勤めでございますが、実は私ども、原子力産業会議要望書を拝見いたしまして率直に感じましたことは、原子力発電というものを、もっと公共的な管理でやるべきじゃなかったか、やるべきだということを、私どもは早期に主張したことは御記憶だと思うのです。まだ研究をやり、さらに新しい技術を生み出しというふうな研究段階なので、やはり国が責任を持ってやるべきじゃないか。研究開発というようなものは、特に原子力のような新しい分野では、非常に資金がかかる。とてもそれは民間でたえられない。しかも、国際的には、原子力のタイプといっても、燃料そのものにしたって、また何年後にどう変わるかわからない。そうすれば、せっかく燃料の成型加工その他について非常な資金民間産業がつぎ込んでも、それが間に合わないというような事態も起こり得る。だからして、やはり原子力発電をも含めて、もっと国の、あるいは公共的な管理で、国の責任で私どもはやってもらいたいということを当時主張しておった。私は今産業会議の御要望を拝見して、私どもの主張が正しかったような気が実はするのです。税金をもう少し負けてもらいたい、燃料の貸与料を免除してもらいたい、あるいは資金の融通云々ということになりますと、なぜ国がやらなかったか、なぜ原子力発電研究開発段階というものを公共的な管理の上に国が責任を持って進めなかったかと私は言いたくなる。この点、私どもは石川さんとこの席上でよく問答をかわしたわけでございますが、実は私どもの主張が正しかったような気がするわけです。今どういう考えをお持ちでしょうか。
  15. 石川一郎

    石川説明員 原子力基礎研究並びに応用研究の初歩という問題に対しましては、政府の方で相当のめんどうを見ておるつもりでございます。また今御注意の、学界あるいは産業界との調子が合っていないじゃないかというお話でございますが、われわれはできるだけそれに努めております。  実は原子力基本法ができましたときに、大学研究についてはくちばしを入れることができないというふうに解釈されたのですが、あれをよく読んでみますと、予算の配分その他についてのことでございまして、そうでないというふうにわれわれは感じております。大学あたりとももう少し連絡を密にするようにやろうじゃないかということを考えておりますし、また、それによりまして産業界と学界との連絡もうまくいくようになるのではないか、そういうことを考えておるわけであります。  なおまた、新しい原子炉開発につきましては、大学の先生方も、あるいは試験所の方も、民間の方も、皆さんに入っていただきまして、十分討議していただくようなことで現在やっております。  それから、発電所をつくるときの体制の問題でございますが、実は昨年長期計画をつくりましたときには、でき得るだけ民間電力会社の協調のもとにやってほしいということを書いておりました。そこで、そういう方向で今われわれは考えておるのでございます。また、この前日本原子力発電会社をつくりましたときに、相当事情が変わってくれば何とかここで処置を講ずることをしなければならぬじゃないかということもありますので、そういうことも考えに置いてやっていかなければならぬということは考えております。長期計画におきましては、民間電力会社が協調してやっていただきたいということを、相当の人数の方にごめんどうを願いまして、そして長期計画をつくったのでございます。しかも、それは何回もやり、期間をいただいて結論を得たものでございますので、今のところはそれでいいのではないかと考えております。ある時期がきた場合においては、数年前に原子力発電会社をつくりましたときのこともございますので、考えてみる必要があるかとも考えております。
  16. 岡良一

    ○岡委員 私は別に、今ここでいたずらに死児のよわいを数えようとは思いません。しかし、やはり原子力研究開発利用というふうな、世界でも新しい未開拓の分野でございますし、もろもろの科学を総合した上に築き上げられていく開発でありますから、今日のこの事態を一つ率直に原子力委員会も反省していただいて、今後の政策をお進めになるにあたっても十分参考にしていただきたい生きた教訓が、原子力産業会議が切実な要望を出されたこの中にくみ取り得ると私は思うのです。  たとえば「経済面からみた原子力産業の実態」という書物を見ると、産業界が原子力のために投資された費用が約三百七十何億ですか、それに対して売り上げが、三十四年、三十五年で七十億ですか六十億ですか。いずれにいたしましても、相当な費用を民間の方でつぎ込んでおるが、それに見合う売り上げがない。これは一つには、日本民間産業が、少なくとも原子力産業においては財政的に非常に苦境にあると私は判断するわけなんだが、いま一つは国の努力が足りない。原子力委員会原子力行政の予算の配分をし得るんだし、また原子力政策の企画をし、決定できるんだし、それに対しては内閣総理大臣も尊重するし、各省大臣にも強く意見を出せるんだから、これが足りないんじゃないか。おととしあたり、民間原子力産業のグループが投資しておる費用と国が出しておる費用は大体半々くらいのところ、大体似たり寄ったりというようなところだった。これはイギリスとかアメリカとかフランスとか、やはり原爆というふうなことを目的として国が非常に手厚い保護を加えておる国においても、それらの国々の平和需要だけの部門を見ても相当予算的な努力をしておる。ところが、日本では民間にまかせっぱなしで、国が努力をしないというような傾向が数字において非常に顕著に出ておる。こういう点は原子力委員会としても十分に注意をしてもらわなければならぬと思うが、具体的に、たとえば来年度予算等においてもそのような御努力をなさるおつもりなのか、お聞きしたいと思います。
  17. 石川一郎

    石川説明員 その黄色い冊子でございますが、これはこちらでも一応申し上げたことがあると存じます。いろいろ民間で損をしておるというお話があるのでございますが、その中にはわれわれが見て、そういうところに入れてはいけないと思われるような項目もずいぶん入っております。  それから、どうも、これは日本の他の産業でもそうでございますが、とかく新しい仕事になりますと、イタリアの繊維の問題にいたしましても、産業界がウォーミング・アップをしないで、やたらにかけ足をやってしまうというような傾向がある。現在の設備投資の行き過ぎも私はそうじゃないかと思うのであります。それをこちらへ断わってくれて、こうするがどうかというお話があるならいいが、自分でかけ足をやる。われわれはできるだけそういうことにならないように、実は五グループの問題も、初めはそうたくさんグループをつくらないで、一緒におやりになったらどうかということをお勧め申し上げたこともあったのであります。それからまた、最近においても、たとえば燃料研究その他につきまして、いろいろ競争をするのはむだだから、一つ原子力研究所中心に、二、三の皆さんがお話し合いなさって、研究を分担していただいたらどうかというようなことで、一、二そういう例もできております。そういうようなわけで、政府が、新しい投資をする場合、去年あるいはおととしの、とめることができないと同じような状況と私は考えておりますが、できるだけの努力はしております。  また、来年度の予算につきましては、だいぶ委託費補助費等が、金額についてはそうふえませんけれども、今までそういう方面に出していたものを、理化学研究所という新しいものができましたし、また新しい計画ができまして、そちらに振りかえたものでございますから、金額は総体的にはあまり上がっていなかったように思っておりますが、内容はだいぶ違えておるつもりであります。来年度はそんなふうにやって、来年度の予算もまたお願い申し上げるつもりになっております。
  18. 岡良一

    ○岡委員 大屋参考人にお尋ねいたします。今、原子力発電に関しては民間産業がウォーミング・アップなしにかけ出した、これはまことにたくみなる表現だと私は思うのです。大屋さんはその若い情熱を燃やして原子力発電のことに一生懸命になっておられることは、私は百も承知でありますが、あなた御自身も少しウォーミング・アップなしにかけ出したような傾向はないでしょうか。(笑声)
  19. 大屋敦

    大屋参考人 私個人に対する大へん手きびしき御批判でありますが、勇み足というか、ウォーミング・アップなしに突入するということは、なかなか産業人はやれないものでございます。少しウォーミング・アップなしにやったらどうかということを言わなければ日本のような国はなかなか新しい仕事はできないのであります。これは時と場合によってみな考え方が違うべきものであって、一般的にウォーミング・アップを十分にやって仕事をやれといえば日本仕事は興りませんし、あまりウォーミング・アップなしにやれば、今度はやり過ぎるということになります。それは個々の問題であって、一般的に批判すべき問題ではないように思いますが、私自身の御批判はどうぞ御自由に……。(笑声)
  20. 岡良一

    ○岡委員 どうも失礼いたしました。ただ、大屋さんは日銀のポリシー・ボードの有力なメンバーでもいらっしゃるわけです。そこで、昨年度の設備投資が四兆億ある。どうも、所得倍増十カ年計画の最終年度の設備投資を、第二年度でもうやってしまうというようなことでは大へんだということから、国際収支の事情もあったりして、資金の引き締め等においては、特に銀行の立場からは相当手きびしい警戒警報もあげられて、実施に移されておる。この原子力産業が幾つかのグループに分かれて発足して、これがやはり設備投資、あるいは過当競争というような状態を原子力産業界の中に起こしておりませんか。現状でよいと思われますか。民間産業でありますから経理というものが大事ですが、それで立ち行くものでしょうか。率直に一つ、その道の当事者の方の御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  21. 大屋敦

    大屋参考人 五グループが需要の少ない原子力産業に向かって同時にスタートしたということにつきましては、私も石川委員と同じように多少心配をしております。しかし、それでは、それを一本にしてやればその方がいいのだということがいえるかどうかということも問題でありまして、われわれは機会があるたびに、漸次その五グループ間の提携、連絡と申しますか、そういうものをできるだけやっていきまして、いつとはなしに一つのまとまったところでもって、そのまとまった団体に公的な仕事をやるというふうな体制に持っていくことがいいと思いますが、この際としては、やはり長い歴史を持った五グループのバックでありますので、それをある程度競争させるということも原子力産業を発達させる一つの種にはなっておりますので、石川委員の言われたことをわれわれも頭の中に十分持って、今後の調整に乗り出すことが必要だと思います。
  22. 岡良一

    ○岡委員 この産業会議で出しておられる「経済面からみた原子力産業の実態」の結論でございますが、「原子力関係企業の深刻な経理状況にあることである。」このため、「最近の新技術に対する民間産業界の積極的研究開発意欲が原子力の分野でも今後維持されるためには何らかの方策が不可欠となりつつあるように見受けられる。」という結語がついておるわけであります。また、研究投資にいたしましても、ここ数年停滞をしておるということも数字に示されておる状態であります。  こういう状態を見るにつけましても、これは何年前のことでございましたか、英国で原子力発電計画を、総出力も六百万キロを五百万キロに落とし、また年次も一カ年繰り延べるというようなこと、外国のAGRに対する発注も当初の見込みよりは減るのではないかというような事情もあって、五つの原子力グループが三つの原子力グループにみずから再編成をする。これはいわば英国流に非常に賢明な措置ではなかったか。  ところが、日本ではそうではない。依然として、住友とか三井とか三菱とかいうような古い昔の財閥を中心として、しかもその構成を見ると、原子力会社の構成は、土建屋さんから、銀行から、貿易屋さんから、電気の重機器メーカーから、いわばコンツェルンのような形をしておる。こういう状態と英国のそれとを比較してみた場合、原子力産業界も、大屋さんのような聡明な指導者がおられるのだから、このごろはやりの言葉で言えば、われわれが申さない先に、もっときぜんたる自主調整があってもいいではないか。原子力委員がしばしばその旨を申されたというならば当然なことであるが、原子力委員会としてもやはりもう少し強く将来の見通しの上に立って日本原子力民間産業の自粛を促すべきである。そういうことが重なって、今こうして要望書が出されるような事態が起こってきたのではないか。そう私は判断せざるを得ないわけなんですが、私の考えは間違っておりましょうか。原子力委員なり、あるいはまた大屋さんなりから、率直な御批判を承りたい。
  23. 大屋敦

    大屋参考人 非常に適切な御注意をいただきました。日本産業が系列化しておるということは、確かにガンであります。それであればそれを切開して単一のものにできるかどうかということも、なかなかそう簡単にいかぬのでありまして、さらに一歩進んで、それじゃ全部国有にしたらいいかというと、日本の国有組織はイギリスあたりの国有組織とは違っておりますことは御承知通りでありますので、そういう問題はわれわれがやはり十分頭のうちに入れて、今後適切に自主調整をするということの必要は感じております。現に原子力産業のうちでは、適当のものはもう五グループの間で手を握り合って、そして一つのものとして運転されているものもあるのでありますから、だんだんに岡委員の言われましたような、そういう方針に自主的に進めていくがいいのじゃないかというように思っております。
  24. 岡良一

    ○岡委員 官民の協力ということが、この要望書にも書いてある。ところが、卑近な例で申しますと、たとえば燃料の精製錬なり成型加工について、やはり二つ原子力産業グループが別々に、片やAならば片やBの会社という形で、外来技術を導入している。燃料公社はまた別なところから技術導入をやる。ロイアルティなんというものはわずかでしょうが、それにしても私はきわめてむだな話だと思う。  ということは、実はこの間、私が外来技術、特に甲種導入のリストを調べてみましたところが、オーストリアの純酸素吹上転炉の導入に対しては、日本鋼管だけが技術導入している。ところが、富士鉄へ行っても八幡へ行っても、転炉がちゃんとあるわけです。こういうふうに、非常に賢明に鉄鋼はやっておる。燃料公社というものがあるのだから、燃料公社がやはり外来技術を導入する窓口になって、その上で、燃料公社がさらにそれを土台にして研究をし、もちろん研究の過程においては民間の方々も参加してもらって、そしてこれならという開発技術がそこに得られたならば、それを民間産業の諸君に返すというような体制で、もっと合理的能率的にやれないものか。これからますます原子力に関する外来技術の導入があり得ると思うのですが、そうやれないものかどうか。当然やるべきだと思う。原子力に関する外来技術の導入については、大体どういう方針を持っておられますか。外資法の改正も取りざたされておりますので、原子力委員会の御方針を承りたい。
  25. 石川一郎

    石川説明員 前の方の問題でございますが、実は今回、先ほど申し上げた根底から日本の技術でもって新しい発電炉を作っていこうということにつきましては、まだ諮問は出しておりませんが、こういう心持で皆さんに御研究願うようになっております。それは先ほども申し上げた通り、若い技術者、学者の方々にお集まり願いまして、そして原子力研究所中心民間の方がみんな集まっていただきまして、それがきまったならばそれを実行する、研究に従事するという方向でいって、できるだけ御研究が各社ばらばらにならないような方針でいこうじゃないかという方針を立てまして、これから始めるつもりなのです。そういうことによって、五グループの幾らか密接な関係もできますし、また、学校あるいは学者の方面とも連絡ができるのじゃないか、こう思っております。  なお、技術導入の問題につきましては、私実はあまり関係しておりませんで、兼重先生が外資導入の方の委員をなさっておられるので……。
  26. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 私はごく近ごろ外資審議会の委員をするようになりましたけれども、岡先生の御質問は、外資導入全体あるいは技術提携の全体の問題ではなくて、原子力に関するものというふうに承知しております。従って、私がお答えするのは適当かどうかわかりませんけれども、これまで原子力委員会ではいわゆる甲種の技術援助契約というものは相当長い間これをとめておりまして、乙種の一年未満で終わるいわゆる技術の勉強をするというようなものを、なるべく多くの知識を得ることが広い目からながめて日本原子力に対する技術を高める一つの手段であるとして、これを認めております。しかし、甲種のものがそれじゃこれまで一つもなかったかと申しますと、私の今知っております範囲では、富士電機製造株式会社が、イギリスの方の会社原子炉製作その他の技術援助契約を持っております。それから、三菱電機あるいは三菱原子力工業であったかもしれませんが、それがアメリカのウエスティングハウスと技術提携を持っておることは御承知と思います。そういうものもあります。ですから、そういう甲種の、あとで生産に結びつくようなものは認めないといっておった時代は現在では過ぎておるかと思います。  従って、そのときに、どういう方針であるものは認め、あるものは認めないかということになりますと、やはりある程度、いずれは日本でそういう技術援助契約によって実際に原子力発電所が建設されるときに、それが役に立つであろうという見通しを持ったものについてはこれを認めるというふうにしておるわけであります。しかし、実際問題といたしまして、法の建前からは、あるものは認めないというふうにすることができませんので、いわゆる内面の行政指導という形でそういうことをするわけであります。ほかの分野における技術援助契約に比べて、その採算がまだしばらくは見られないということも大きな理由とは思いますけれども、それほどたくさんの甲種の援助契約を結びたいという申請が出てくる状況では現在ございません。従って、原子力委員会としては、そういう点について非常に技術援助契約を契励しておるということも実はないばかりでなく、むしろ現在は消極的な結果になるような方針でおるわけであります。
  27. 岡良一

    ○岡委員 この問題は、先般の委員会でも近藤長官にも申し上げたのですが、特に技術導入ということになると、やはり科学技術庁の判断が大きくウエートを占めるようになってもらわなければならないと思うわけです。ところが、現に科学技術庁内における機構もあまり十分でないようだし、御意見はしばしば申されるようだが、結果においてはやはりイエス・マンに終わるような結果がなきにしもあらず。また、科学技術庁の方から意見を伺いにいくある教授なんかのお話として、もう一年あれを入れなければあの技術の国産化はできるのだというような述懐をしておられた方もあるということを私は聞いておる。特にこの原子力の場合には、やはり日本人の持っておる科学的なペテンシャルというものをもっともっと引き出して、もっともっとこれを育て上げていくという高い見地から、特に原子力委員会はいわば力強く外来技術の導入についても立ち入ることのできる権限があると私は思いますので、ぜひ今後ともこの点については御配慮願いたいと私は思う。  それからなお、先ほど来、経済性の問題についてもいろいろ御意見がありました。大屋参考人の御意見では、経済性は間違いないと言われたのであります。それから、伏見参考人の御意見では、実際にやってみたのではないのであるし、それからやろうという意欲もあるかどうかというふうな御批判もあったように聞いておりますが、私も数字のことは弱い方でございますから十分わかりませんが、御存じのように、昨年の暮れ、アメリカ日本で行なわれたフォーラムの席上で、濃縮ウランの提供については相当長期の契約をしよう、しかし使用済み燃料の引き取りに対しては、これまでのような野放しな楽観は許されないというような状況になってきたように私は承知しておるのです。燃料サイクルのコストというものは、やはり発電コストには不可分な重要な因子だと私は思う。事もなげに燃料コストは非常に安いんだと、いま日本の場合、単純にアメリカの例を引いて言い切るわけにはいかない事情がある。  そういうことから考えてみますと、これまでの日本原子力委員会の進められた原子力政策というものは、いわば炉ばかりに依存している。しかし、燃料の一貫した体系をつくるということには非常に顧慮が足らなかったのではないか。そういうようなことを私は痛切に感ずるわけでございます。この点、やはり原子力委員会としても、燃料サイクルのコスト、あるいはまた英国の場合、持っていけるかどうかもわからない。さて、持っていけたにしたところで、輸送賃がプルトニウム・クレジットよりも高くつくのじゃないかということもこのごろいわれております。そういうことになれば、使用済み燃料の処理なり、プルトニウムの化学処理なりを含めた、やはり一貫した燃料体系というものを国産化するという方向に向かって努力していかなければならない。炉ばかりをつくっている。炉多くして功少なしというように、笑声全く炉ばかりをつくっている。これはまた日本原子力政策の、いわば皮肉な不幸だと私は思う。そろそろ今度は立ち上がって、この燃料サイクルというもの、これは経済性と不可分なものですから、原子力委員会としても取り上げなければならぬ。何か構想を持っておられるかどうか。
  28. 石川一郎

    石川説明員 燃料の再処理問題につきましては、今から数年前から、どういうふうにやっていったらいいかということを考えておりますし、また専門部会等もつくりまして、昨年、あるいはことしだったかと思いますが、答申を得ております。それで実は、今までプルトニウムをいろいろ御議論なさるのですけれども、プルトニウムをほんとうに取り扱った人があるかというと、全くない。ほとんどミリグラムとか何グラムといだうけであって、もっと大きなことをやるだけの設備もございませんでしたし、それから知識もない。ただ本で読んだだけという状況でございました。昨年あたりから、だんだんとプルトニウム研究プロジェクト化いたしまして、みんなで総がかりで分担して、そうしてこれを進めるような方向に進んでおりまして、現在実験室は建てられつつある、あるいはまた一部分建ったものもございます。それを今度実行していく上におきまして、どうしたらいいかということで、プルトニウムのもう少し進んだことを知っていただかなければならぬ、そういうふうな科学者、技術者に。それで実は来月、プルトニウムのみを専門に見ていただく方を出しまして、そして将来の計画を立てていく、こんなふうなことをやっております。すでにつくっておりますけれども、さらに相当大きな装置をつくらなければなりませんので、そのときに遺漏のないようにやれるように、全力を注いでおります。  それからまた、再処理の問題につきましては、来年度予算にこれを計上いたしまして、ことしは幾らか外国の例を知るために金を払っておりますが、もう少し進んで大きなものをつくるようなエンジニアリングの指導を得たい。新しいプルトニウムを取り扱った人が日本にほとんどないといってもいいくらいですから、それでそういう方の指導を得まして、そうして約二年間にまとめたい。今のプロダクツのお話もございましたが、あるいはまたアメリカ燃料を送り返すことについても疑問がございますので、これに間に合うように——約六年かかると思っております。コールダーホールの第一回のものが入って、コールダーホールのものはイギリスに返すつもりでおりますが、何か故障があった場合には日本に置いておいて、一年か二年はたまると思います。〇・七トン・パー・デー、あるいはまた〇・一トン、実はもう少し小さいものでやってもいいんじゃないかという考えもあったようでございますが、あの装置は非常に金がかかるのでございまして、キャパシティが小さく、パー・トンなりパー・キログラムあたりのコストが非常に高くなるのです。それで、比較的にゆとりのある、私らは一トン・パー・デーくらいがいいかと思っております。そのくらいのものをつくる計画を立てまして、日本だけではできませんので、向こうの技術者を相当の金を出して招聘して、そうしてデザインにかかろう。こういうふうなつもりで、来年度はいこうと思っております。ことしも、少しやります。また、小さな実験室の方はどんどん建っておりますけれども、大きな建物については相当研究しなければならぬ。たとえばアメリカあたりでも、連続的にやる——連続的といってもいいかもしれませんが、ずっと押していくやっと、それからパッチでやるやっと、二つ方法がございまして、アメリカの内部におきましても、まだその特徴がはっきりわかりませんものですから、そういうことを調べまして、相当のものを六年がかりぐらいでやっていきたい。まずことし、来年からは詳細なディテールの設計をすることにしたいと思いますが、日本ではわかりませんから、あちらの新しい知識を吸収して完全なものをつくりたいので、予算の方もよろしくお願いいたします。
  29. 岡良一

    ○岡委員 新聞で見ると、プルトニウム専門部会とかいうところで諮問されるということが最近出ておったようであります。一体、前期十年間、後期二十年間で、前期十年間にどれくらいのプルトニウムが出てきますか。そうして、使用済み燃料がどれくらい出てきますか。そうして、後期二十年間でどれくらいのプルトニウム、それからまた使用済み燃料が出てきますか。化学処理をして、日本でやるとすれば。
  30. 石川一郎

    石川説明員 後期の方は、どういう炉を使うかということは、まだ決定しておりません。前期十年の方は、コールダーホールが一つと、もう一つ水冷却の方の炉をつくろうということはきまっておりますが、その先はまだ明確になっておりません。ただ、電気事業者あたりのいろいろ御意見を伺うと、私も同じ意見でございますが、先ほどお話のありましたボデガ・ベイ、あれはまだAECのほんとうの許可を得ておらぬように伺っております。それが出てきますと、相当はっきりしたデータが得られるだろうと考えております。そういうふうなデータも見ます。なおまた、ヤンキーなり、ドレスデンなりが動きましたけれども、まだ一年くらいですか、これをつくったときとその後の運転状況等を調べまして、それによって将来のものを決定していってもいいんじゃないかと思います。それについては、原子力発電会社ができ得るだけ早く一つアメリカの炉を買うことになっておりますから、水冷却の方のほんとうの見積もりをつくって、注文するかしないかというところまでいっていただくと、いろいろのデータがとれる。それを待っておるような次第でございます。
  31. 岡良一

    ○岡委員 私ども、特にいつかの委員会でも申し上げましたが、プルトニウムを買ってくれなければ日本で原爆をつくるというようなことを、不用意に言ったりする人もあって、非常に困るわけです。原子力委員会が、平和利用に限るという立場に立っている限り、やはりプルトニウムの問題の解決には、よほど誠意と責任を持って当たってもらいたいと私は思う。今お話を聞けば、今度調査団が出られる、あるいは原子力委員会の専門部会も設けられるということだが、若干手おくれじゃないかとさえ私は申し上げたい。しかし、いずれこれらの物質は、民有じゃなく全部国有になっておるのですから、国の責任において再処理なりあるいは化学処理をやってもらわなければならぬ。ハンフォードを中心調査団が行かれるという話もお聞きしておるが、私は技術的なことは十分存じませんが、ハンフォードあたりも、非常に基礎的な研究から始めておるということを聞いておる。単にうわべだけ見てくるのじゃなくて、研究体制そのものを、やはり真剣に見てもらいたい。それは大へんな予算を使っておるように聞いております。いずれにしろ、日本にしても、いわゆる増殖炉の方も、炉の工学、燃料工学の方面から見て、世界的にも相当時日がかかることになる。一方、ハンフォードあたりの研究の成果として、仄聞すれば、やはりプルトニウム二四〇が、有効な分裂性物質を生み出す親物質として、その平和利用研究相当進められておるという報告も聞いております。そういう点の研究体制、どの程度の金をかけているかというようなことを、ぜひとも調査団はほんとうに見えてきてもらいたい。ただ、うわべだけの結果を聞いてくるだけにとどまらないで。ぜひ一つ、これは、私は強く要求いたしたいと思います。  ただ問題は、プルトニウム・クレジットというものがないということになると、それだけ発電コストにかかってくるわけですが、どうですか。今東海発電所で、英国が輸送の道がない云々というような事態が起こってきた場合、プルトニウム・クレジットは、一キロワット・パー・アワーで一体どれくらいになりますか。
  32. 石川一郎

    石川説明員 一キロワット当たりにして、大したことはございませんが、あれは一トン五千ポンドで買ってくれるということになっております。ところが、このごろ天然ウランの値段が下がったものですから、どうもそれじゃ少し買いにくいというので、今値段を交渉しているようでございます。まだ詳しくは存じませんし、一キロ当たりどうなるかということは、まだ計算しておりませんが、少し下がるのじゃないかという心配を原電ではしております。今までは、第一炉のものは送り返すということになっておりますが、それが送り返せないということを、われわれはひそかには考えておりますけれども、それを表向きにするのがいいかどうかというのは、考えものでございます。やはり送り返す約束で買ったのだから送り返す、こういうふうに言っている方がいいのじゃないかと考えておりますが、この点は一つお含み置き願いたいと思います。
  33. 岡良一

    ○岡委員 これも私は、この委員会でしょっちゅう、どうして送り返すのですかということを、根掘り葉掘りお尋ねをしておる。しかし、結論としては、これを送り返すことはできないと私は思っているのです。さて、英国が買ってくれないから、政府が肩がわりして買うというわけにも私はいかぬと思う。だから、そのプルトニウムなり、あるいは使用済み燃料をいかに評価するかということは、そこに含まれるプルトニウム二四〇なら二四〇の平和利用の価値が決定されなければ、私どもは評価を決定できない。国民も納得しないだろうと思う。であるから、そういう意味からも、やはりプルトニウムの平和利用という問題にぜひ一つ取り組んでいただいて、納得し得る正しい評価が出るものなら出してもらわなければならない。この点はぜひお願いしたいと思います。  それから、産業会議からいただいた「原子力海外事情」を見ると、アメリカのヘンリー・D・スマイスというプリンストン大学研究審議会の議長、この方が議長になって、「対IAEA政策検討のための特別諮問委員会が国務省に設けられた。」それは昨年のことであって、先般その諮問委員会の答申が出た。その答申の中では、「次の十年間に、原子力発電所は世界の各所で、相当数が建設されるであろう」、「この開発に精力的に参加することはアメリカにとって有利である」、「多くの場合、このような参加は、IAEAを通じて行なうのが最もいい」云々というような結論が出ております。そしてまた、それに加えて、「現在、アメリカが二国間協定にもとづいて行なっている活動は、可能ならばすべて、IAEAに移管すべきである」こういうこともこの答申の中にうたってある。この問題も、私はよくこの委員会で申し上げておいたが、双務協定の成文にもうたってあるのだから、やはり早く国際原子力機関と日本が直結すべきじゃないか。単にわずかばかりの天然ウランをもらって、お義理が済んだなどと思っていたら、とんでもない話じゃないかということを私は申し上げておったが、アメリカ自身が、双務協定をIAEAに移管をしようということを、はっきり諮問委員会が出してきた。御存じの通りアメリカの諮問委員会の答申というものは、割合行政に反映する。これまでの慣例から見て、日本の審議会とは違うと思う。こういう意向であるとすれば、このIAEAに移管する話をしておるということが、ことしの春の御答弁にもあったのですが、その後どうなっておりますか。
  34. 西村熊雄

    ○西村説明員 話し合いは、ワシントン並びにウイーンで行なわれておりますけれども、前回委員会に御報告申し上げました以後、具体的な進展を見ておりません。
  35. 岡良一

    ○岡委員 これは、私はやはり原子力委員会の熱意が足りないと思うのです。この原子力の平和利用研究開発というものは、これは人間の英知の大きな進歩のメルクマールです。東西両陣営のそういう対立を越えた、大きな国際協力で進めようという立場から、せっかく平和利用のために生まれたIAEAを、日本理事国として責任を持って育て上げようという立場からは、相手国でさえも双務協定はIAEAに移すと言っておるのだから、原子力委員会というものは、もっとこれに誠意を持たなければいけない。日本原子力委員会といえば、すぐアメリカ一辺倒ということになってくるというようなことは、私はやはり好ましくないと思う。この点、今後ともぜひ誠意を持っていただきたい。  これに関連して、これは石川委員からいつか御発言があったと思うが、プルトニウムの問題あるいは使用済み燃料の処理の問題です。これはヨーロッパでは、ユーラトムではございませんが、原子力共同研究のための共同体のようなものが、モルに再処理施設を作ったということになっている。大体使用済み燃料は、五、六年前に当時者からお聞きした話では、英国でもやはり一千トンくらいの年間処理をしないとペイしないということです。そうすると、日本のこの使用済み燃料というものは、とてもとてもペイするどころじゃない。ところが、インドあたりでは、やはり原子力発電のために相当の力こぶを入れているが、どの程度のものができて、どの程度の使用済み燃料が出るかは私は存じません。今度原子力平和利用のためのアジアにおける会議を開こうということになって、昨年の予算にも出ておった。本年度予算にはもう議決されておる。こういう問題もやはりIAEAの協力を得て、アジアで使用済み燃料の解決あるいはその平和利用への共同研究というような体制を私はつくってもいいと思う。これはアジアの国々にとって非常にけっこうな話じゃないかと私は思うのだが、原子力の平和利用会議と、このアジアにおける諸国のこうした共同処理関係などについての腹案なり構想なりがないかどうか承りたい。
  36. 西村熊雄

    ○西村説明員 前回の御質問の補足かたがた申し上げたいと思います。前回は二国間協定による安全保障、IAEA移管関係の御質問でございました。一番関係の深いアメリカの方で、バイラテラルの関係をIAEAに移管することを今後の方針としたがよろしいという考え方をはっきり打ち出してくれましたから、今足踏みになっておるアメリカ、カナダその他との三国間交渉は進展を見やすくなる、こう思うわけでございます。  なお、私が先生に御了解をいただきたい点は、IAEA理事会の最近の議事録などを見ますと、IAEAが安全保障措置を実施するために規則などをもうすでにつくっております。しかし、それに対して、それを実施するにつきましては、有力なメンバーであるインドなどは、インドとしては平和利用に徹するけれども、IAEAによる安全保障の適用は絶対に受けないというような、非常な強い反対立場をとっておりますと同時に、ソ連初め共産圏諸国全体は、IAEAがこういう義務を受け継ぐことに必ずしも積極的ではございませんで、過般六月の理事会の議事録を見ますと、共産圏三国の理事は全部、かかる規則は眠れる人形として寝かしておけ、というようなことを発言いたしておりまするような状況で、IAEA内部での思想は必ずしもわれわれほど積極的に固まっていないという情勢がありますから、この点はあわせて補足的に御説明申し上げておきます。  今御質問の、アジア会議におきまして、再処理問題もアジアに特に関係のある問題として取り上げたらどうかというような貴重な御示唆がございましたが、現在考えられておりまするアジア会議では、その問題は取り上げる予定はございません。と申しますのは、アジア諸国の実情を見ますと、各国ともまだ研究開発の初歩段階にありまして、再処理問題というものは具体的に問題とならない段階にありますので、将来は別として、現段階においてはまだ適当な題目になっていない、こういう認識になっておるからでございます。
  37. 岡良一

    ○岡委員 西村委員の前段のことですが、私もそれは承知をしておる。なればこそ、なぜ日本努力しないかということを私は申し上げておる。それが外交というものだと私は思う。ただ、あれがこういった、これがこういったといって、議事録を見てそのままに責任を回避しておるということでは、私は原子力外交というものの推進にならない。そういう重要な会議があったら、原子力委員の諸君が行って、十分に働いてこなければならない。現地の人々にまかしておいたのでは、オーストリアの大使さんも外交のことは熟達して、りっぱにやっておられるかもしれないけれども、原子力問題のことはどうかと思うし、若干のスタッフがついていらっしゃっても、原子力委員会責任において行動してもらう、これだけの責任感に徹してもらいたい。  それから、アジアにおける平和利用のためには再処理の問題は当然私は日程に上るであうろし、また上させるべきであろうと思う。今直ちにどこでいつから再処理工場を始める、日本でさえもまだ海のものとも山のものともわからないときに、そんなことを具体的に私はきめて下さいと申し上げておるのではない。しかし、遠からず起こってくる問題として、それに対する検討をやるくらいの機会を、せっかくアジアの方々が集まるのですから、持ジアたれるということは、これはやはりア地域における原子力平和利用のためには非常に大事な問題です。従って、ぜひ一つ御考慮願いたい。  これで私の質問を終えますけれども、とにかくきょうは四人の参考人の方から御意見を承りまして、非常に教えられるところがありました。私どももさることながら、原子力委員会の委員の方々も、やはり十分伏見先生ほか学界の御意見、あるいはまた産業界の御意見を吟味せられて、誤りないようにすることをお願いして私の質問を終わります。
  38. 寺島隆太郎

    寺島委員長 石川次夫君。
  39. 石川次夫

    石川委員 私の質問しようとすることは、実は原子力発電と密接な関係がありますけれども、直接な関係はないので、参考人の方においで願って御答弁をいただくようなことではないのですから、簡単に質問だけ申し上げて見解を伺って、意見はありますけれども、問題だけを提起して、あらためてこの点については質問をしたいというふうに考えております。  実は今のプルトニウムのことに関連いたしまして、原研の菊池理事長が団長となって九月十一日にアメリカに行かれるということを伺っている。それにちょうど符合するのではないかと思うのですが、CP5というのが導入されましたときに、いろいろな問題が出ております。これは一万キロの臨界実験が、それに至らない。いろいろな材料等の問題がありまして、国会の決算委員会等でも非常に大きな問題になりましたことは耳新しいことでありますが、その当時菊地理事長といたしましては、当時は九〇%の濃縮ウランを使って一万キロまでの臨界実現をぜひとも実現さたい、こういう意欲を持ってこの委員会でも答弁されておったわけであります。三メガワットの二〇%濃縮ウランというものは一応軌道に乗って、今まで事故なしにきました。ところが、九月十一日に向こうに行かれるということの前に、アメリカに対する面子の問題もあり、あるいは原研自体、科学技術庁自体の面子の問題もあろうと思いますが、その前に何とかして九〇%濃縮ウランを使って一万キロワットの臨界実験をやりたい、こういう非常に積極的な態度で臨んでおるわけでありますけれども、原研自体の体制というものは、この従業員ではこれを受け入れる体制にないということは、おそらく皆さん方も御承知だろうと思います。これはもちろんいろいろ問題があります。はしなくも、原子力研究に対する体制の基本的な問題が、集約的にこの問題に出ておるのではないかという感じを受けるのであります。従業員の言うこと全部が全部正しいとは私は思いません。しかし、原子力という科学は非常に若い科学でありますから、若い科学者の意見というものは尊重されなければならぬというのが、基本的な態度でなければならぬというふうに私としては考えております。いろいろな問題がありますけれども、ここでは別に申し上げませんが、安全性の問題にも不安がある、あるいは運転巡視員が現在三交代のものが特殊の勤務であって、これは労務者の単なる運転員とは違うというようなことで、いろいろなむずかしい問題もあるから、これを四交代にしなければ無理ではなかろうかという、これは一つの例でありますが、こういう問題も出ております。それに対する原研の理事者としての態度は、四班に分けて四交代にすることは不可能だ、今の技術者の体制といたしましては、これは二交代、二班編成でなければならぬという逆な回答をされておるというようなことが非常に従業員を刺激いたしまして、もうその十メガワットの臨界実験には協力しないという体制で、九月十一日はおろか、その前にも当分臨界実験はできないというような体制に追い込まれておるというような事実を、原子力委員あるいは科学技術庁の原子力局として御存じかどうか。御存じであるとすれば、それに対して一体どういうふうに打開をするか、解決策をお持ちになっておるかというようなことを、これは原子力発電には直接の関係はないので参考人の方には御迷惑かと思いますけれども、非常に重要な問題をはらんでおると思いますので、見解だけを伺いたいと思います。これに対する私の見解、意見、あるいは質問は、次回に保留したいと思いますが、その点について何か御意見があれば承りたいと思います。
  40. 島村武久

    ○島村説明員 石川委員の御指摘になりましたように、CP5の出力上昇ということは、予定の期日がだいぶ過ぎておることは事実でございます。その原因は幾つかございましたけれども、最近におきましては、いわゆるCP5を動かす従業者と原子力研究所理事者との間に種々話し合いが行なわれました。従いまして、その話し合いの結果がまとまっておりませんために、上昇試験を延期しておる。理事者側といたしましても、無理をしてこれを動かすことをやりませずに、従業員の十分な納得のもとに行なうという趣旨から延期しておることは事実でございます。その件に関しましては、原子力研究所側、特に理事長から最近も報告を受けておるわけでございます。現在の段階といたしましては、理事長が非常な責任感のもとに従業者との間の話し合いを進めておられるわけでございまして、直接原子力局なり委員会というものがその中に立って、あるいは直接にどうこうという話し合いをするとか、解決をつけるとかいうような段階考えてはいないわけでございます。せっかく理事長が今話し合いをつけるために努力しておられるのを見守っておる状況でございます。先ほどお話もございましたように、CP5を動かすというような問題は、非常に簡単なほかの機械を動かしますとか何とかいうことと違いまして、慎重に考えなければなりません問題もございますと同時に、原子力研究というようなものに携わる人々の気持も十分考えまして、それらの上に立って解決が得られることを、私どもといたしましては期待しておるわけでございます。
  41. 石川次夫

    石川委員 これは先ほども申し上げたように、実はこの件について意見はありますけれども、きょうの参考人がおいでになった趣旨とはちょっとはずれますから、申し上げません。結論的に言いますと、三メガワット、CP5二〇%濃縮ウランという実験の中に含まれているいろいろな問題が提起されているわけです。それが全然解決されないままに、問題が出なかったらいいのじゃないかということで、十メガワットの実験を強行しようとしても、現実に現場の体制としては、現在自体もサボタージュするものが出ているというような状態でありますので、この点はよほど慎重に対策を考慮されないと、なかなか問題が解決されないのではないかという心配をわれわれとしては持っております。この点については、あとでまたあらためて機会を得て意見を申し上げたいと考えております。  あと一つの問題は、安全性の問題であります。先ほど伏見教授の方から適切なお話がございましたが、伏見教授も言われているように、研究開発利用という段階を一足飛びに乗り越えておるというのが現在の実態で、これはいわば勇み足をとられておるというようなことになっておるのです。日本産業界というものは私もよくわかっておりますけれども、勇み足があったからこそよく今までついてきた。基本的な研究体制というものをなおざりにしても、勇み足で開発々々、応用ということに集中的にエネルギーを使ってきたということが、先進国によく追いついてきた一つの原因だというような功績を認めることにやぶさかではありません。しかしながら、今申し上げましたように、原子力だけは日本の特殊事情ということも関連いたしまして、安全性というものが伴わない限りは、絶対に飛躍的な発展は望めないという実情に置かれていることは、これまた私から申し上げるまでもないと思います。東海村でも、原子力損害賠償法というものができまして、それに伴っていろいろ検討を重ねた結果、村民の間では、最近はまた三菱の研究炉が設けられるということになりまして、一体これでいいのだろうかというような不安が徐々に頭をもたげてきております。今まではほとんど無条件に受け入れているというような情勢でございましたが、最近の情勢はそういうふうな情勢におかれておりません。ほかの土地でこの安全性というものが、絶対に大丈夫であるという確約がない限りは、これ以上発電炉を設けるということがなかなか困難な情勢におかれていることは火を見るよりも明らかであります。一つ一つの炉の安全性については部会を開いて慎重に検討するということを言っておられますが、その一つ一つについてすらもいろいろな意見がなきにしもあらずであります。しかし、そのことについては私はここで申し上げようとは思いません。しかし、東海村のように、あれだけ集中的に研究炉あるいは発電炉というものが設けられるということになりますと、その集中した限度というものは一体どこらに置いたらいいのかいうことについては、これはおそらく世界でも定説がないと思います。  実は、去年イギリスに行きましたときに、イギリス原子力研究所でフーバーさんという方が有名な安全基準を一応つくっております。これはもちろん英国だけで、ほかの国に適用するものではないと言いましたけれども、その安全基準が東海村に全然適用できないものであるということはよくわかっております。最近におきましては、アメリカのペック博士でしたか、熱出力に適用する一つの安全基準を設けましたけれども、これはシビヤーなものです。これを日本に適用されたら大へんなんです。日本だけではなくて、ほかの国からも異論が出て、これは一応保留されたという格好にはなっておりますけれども、最近ではそれと大同小異の結論が出されたように伺っております。これは翻訳を急がしておりますので、翻訳がはっきりできてから、あらためてそれを土台にして質問したいと考えております。もちろんこれもアメリカの国土に合わせて作られた条件であって、ほかの国に適用さるべきものではないというふうな注釈はおそらくついておると思います。ついておるとは思いますけれどもフーバーさんのものを見ましても、今度アメリカで発表されたものにいたしましても、科学というものは国土、風土状態にある程度の制約を受けるかもしれませんけれども、それはやはりインターナショナルなものだろうと思います。科学の基準というものはそう大きな変わりはないと、こう考えざるを得ないわけです。  そうすると、一体この安全性に対する、安全基準準というものに対して、通産省ではこの間一応の発電炉を求める立地条件としての基準を設けられております。これは科学的なものではなくて、一応の目見当みたいなものでつくられたものであろうというふうには思いますが、とにもかくにもそういう一応の基準を設けて、それに基づいてやろうという意欲だけは一応買わなければならぬと思っております。原子力委員会としては、一体これについてどうお考えになっておられるのか。これは何回となく繰り返しておることでありまして、今さらという気もいたしますけれども、この安全基準、特に集中の限度というものは、一体どこら辺に置いたらいいものか。私は足を引っぱる気持は毛頭ございません。原子力発電は大いにやらなければならぬという原則は是認はいたしますけれども、これが解決されない限りは、先ほど申し上げたように、原子力発電の発展というものは望めないという意味で、私はどうしてもこれを急いでもらわなければならぬと思う。いつまでたってもこれがきまらぬということでは、いかに経済性がどうのこうのということを強調いたしましても、これは不可能だということを前提として、原子力委員のお考え、及び伏見さんの集中の限度についての御意見を伺いたいと思います。
  42. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 原子炉の集中の限度につきましての御質問は、前にもこの委員会で伺いまして、そのとき私はお答えしたと思うのでございます。現在の建前は、一つ一つの炉について審査をする建前でございますけれども、いつもその前に設けましたものについてのことは、あとでやりますときに必ずそれを振り返っておりまして、そのときそれも含めて差しつかえがあるかないかというような判断のもとに答申をつくってもらっております。ところが、このやり方でいきますと、早い者勝ちということになりまして、あとで非常に重要なもので、ぜひそこに置かなければならないというものが置きにくいということになる場合は非常に困ることでございます。幸い東海村の原子炉というものは、大部分が原子力研究所の東海研究所、一つの限定がございますけれども、原子力研究所でございますから、たとえばそういうものに非常に大きな影響を持つであろうと予想されておりますのは、今検討を進めております五十メガワット程度材料試験炉であります。その材料試験炉などがこの上にあそこに置けるか置けないかということは、かなり境目であろうというような個人的意見も耳にしないではございません。しかし、それは置けないというふうな意味のものではありませんけれども、そういうふうなことも問題にしながら審査しております。せんだって、三菱の炉も、そういうことをもちろん考えまして、支障がないと認めたことでございます。  それで、今までのような考え方をしながらいいとか悪いとかいうことを判断する限りは、やはりものさしのようなものを持っていなければいけないわけでございますが、それをさっき伏見参考人が申されましたように、こういう基準というふうなはっきりした形でつくるのが、どうも現状では専門家の御意見によりますと、困難のようでありますから、私どもそれにもかかわらず、それをぜひ急いでつくってもらいたいというふうにまで強く要望をしておる状況ではないわけでございます。実際問題として、そういうことは全然念頭に置かないで審査をしておる、そのために現地の住民が迷惑をこうむるようなことがあるかもしれぬことも無関心でおるわけでは決してございませんから、その点はどうかよく了解をしてもらうように私どもの方も努力をしたいと考えております。
  43. 伏見康治

    伏見参考人 たくさんの原子炉が同一の場所に置かれる場合のお話は、兼重先生がおっしゃったことに尽きております。それ以上のことをただいま考えておりませんので、それについてはさらに申し上げることはございません。  基準をつくるという方のお話については、先ほど申し上げたことをもう一ぺん繰り返すことになると思います。原子炉の安全性を考えます上におきましては、その原子炉がどのくらい安全であるかということを評価しなければいけないのでございます。つまり、原子炉に起こり得る事故といったものを想定いたしまして、その事故が起こってもなおかつ付近住民に実害を与えないためには、たとえばどれだけの距離を置けばいいかとか、どれだけの保護設備を置けばいいかといったような、そういう事故を想定した上でのいろいろな計算をやってみるわけであります。問題は、その事故の大きさをどの程度のところに置くかという目安が非常にあいまいであるというところにあるわけであります。このあいまいなものを合理的にきちんときめることができればけっこうなのでございますけれども、アメリカの資料をいろいろ検討いたしましても、それを何か客観的な資料に基づいてきめたということではなくして、要するに、ある程度の長い間のいろいろな模索的な試行法といったものの中から一種の平均値的な考え方というものが打ち出されてきて、それに基づいて、よく言われておりますマキシマム・クレディブル・アクシデントというような考え方が、いろいろな事故評価をする上での一番大事な概念にされてきております。そのマキシマム・クレディブル・アクシデントに対して、われわれ日本人の学者の間では考え方が相当違ってきておるわけであります。アメリカ考え方と変わってきておるわけであります。これは、個々の今までの安全審査の過程の中でもって、一つ一つのものの安全の度合いというものを判断なさる上においての過去の集積があるわけです。そういうものを一覧してみますと、平均値的に、アメリカののいわばおうような考え方でないわけでありまして、もう少し日本としての立地条件のせせっこましさというものから出てくる要請があるせいかもしれませんが、考え方が少し違っておるわけであります。そういうようなところをどうするかについては、長い間議論していただいたのでございますが、ようやく最近少し皆さんのお考え方が凝結しつつあるように思いますので、たとえばこの春にできましたアメリカの基準と申しますか、概念と称せられておるものに相当することを日本でやるということは、近い将来できるものだろうと思っております。しかし、そういう概念の意味というものは、あくまでもある一つの目安をきめるということでありまして、それはただ物理的な定数だけでなくて、論理的に計算できるといったようなものでないということだけは、重々御了解願いたいと思っておるわけでございます。
  44. 石川次夫

    石川委員 時間も立っておりますし、これは何回も言い古されたことですから、あまり追及はいたしませんけれども、安全性の基準というものが明確にされておりませんから、不安、動揺ということが原子力の発展を阻害しておる非常に大きな原因に今後ますますなるのじゃないかということを、われわれとしては非常におそれておるわけであります。特に集中の限度ということについては、明確にこの線をきめるということはなかなかむずかしいかもしれませんけれども、しかし、これをきめてもらわないと、今後困る事態になるのじゃないかというようなこともあわせ考えていただきたい。この安全基準の問題は、もう原子力委員会ができたときからやかましく繰り返していることです。徐々に科学が発展することに伴いまして、いろいろ安全の基準というものも変わってくるであろうということは想像できますけれども、現時点における一応の基準というものを早くきめてもらうことを、ぜひ急いでもらわなければならぬということを繰り返し申し上げまして、私の質問はこの程度にしておきます。
  45. 寺島隆太郎

    寺島委員長 ただいまの石川委員の質疑に関連いたしまして、三木委員の関連質問を許します。
  46. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 石川さんの質問に関連というよりも、最初の岡さんの質問に関連さしていただいて、非常に素朴な質問ですが、幸い学者の方がおいでいただいておりますので、ぜひ聞かしていただきたい、このように考えます。  プルトニウムの平和利用研究については、資金的な裏づけがあれば、日本でも世界に先がけてこれを研究することが可能であるということが言われておるわけでありますが、学者の立場として、どのような方向、見通しで平和利用研究が可能であるかというような点について、お聞かせいただきたい。あるいは大屋さんとか、石原さんとか、それぞれの立場からも一つお聞かせをいただきたい、このように考えます。
  47. 大屋敦

    大屋参考人 先ほどから岡委員の御指摘のあったように、プルトニウムの問題が日本原子力発電開発には一番大事な問題であることは、われわれもとうに承知しております。ただ残念なことには、日本にはプルトニウムがないということです。私が六年ほど前にイギリスのハウエルの研究所へ行きましても、もうプルトニウム研究をするための施設というものは非常な完備したものでありました、そしてまた、規模も大きなものであったのであります。日本では、プルトニウムがほとんど手に入らぬという状態でありましたために、なかなか思うにまかせない。そこで、外国が自由に買ってくれたものでございますが、しかし、これからだんだん外国へ売るということにつきましても問題が起こるものでございますから、今度はこの九月にプルトニウム調査団というものをアメリカへ出す。これはアメリカの方の合意のもとに向こうへ出すのであります。それから、次いで一人または二人の常駐の者を向こうへやりまして、向こうのプルトニウム研究と絶えず接触して、それを日本に連絡する。そのために常駐員を出すことにしております。  そういうことで、私がプルトニウムの問題はだんだんに解決の道に近づいてきておるというふうに感じましたのは、現にプルトニウムは爆薬のほかには荷厄介に思われておりましたものが、近ごろでは平和利用の方に、プルトニウム値段アメリカあたりでもだんだん上がってきたような情勢でありますので、見通しとしてはプルトニウム利用というものはだんだん好転をすると想像しておるのであります。しかし、相当時期がかかります。原子力発電所の建設も、御承知通り四、五年かかるのでありまして、多少並行的に研究を進めることはやむを得ないと思います。金さえあれば日本プルトニウム利用がでさる、あるいは増殖炉というふうなものの研究日本でできるのだというふうに、そうなまやさしいものとは思いません。イギリスでも、アメリカでも、非常な金を使って今研究している最中でありますので、ある意味においては、向こうの研究の成果をちょうだいするということもやむを得ないと思っておるのでありますが、プルトニウムの問題は、われわれといえども決して無視をしておるような次第ではありません。
  48. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 あとのお三人も大体同じような御意見かと思いますが、一つお聞かせいただきたいと思います。
  49. 武田榮一

    武田参考人 プルトニウムのことについてちょっと意見を述べさせていただきます。  プルトニウムは、先ほど質問がありましたように、私の推定では大体前期十年間で約一トンの程度、それから後期の十年間を考えますと大体十トンというオーダーだと思います。それは、かなり先のことはフラクチュエーションが非常に大きなものですから、後期十年間で十トンという数字は、あるいは二、三トン一数トンであるかもしれないし、あるいは二、三十トンになるかもしれません。とにかくそういう程度のものだと思います。そのプルトニウムをどういうふうに使うかという道を開いておかないといけないと思いまして、その使い方についていろいろ考えているわけであります。プルトニウムを高速増殖炉に使うとしますと、おそらくプルトニウムの増殖が行なわれますので、普通の今までの原子炉のようにはたくさんのプルトニウムを消費しないわけであります。それで、高速炉のイニシアルのインベントリーとして使うという考え方では、もし後期十年間の十トンというオーダーのものを考えますと、おそらく余るのじゃないか。高速炉をつくるとしても、それだけは使い切れないのじゃないかという感じがするわけであります。あわせてそういう高速炉を先に描くと同時に、プルトニウムを熱中性子の燃焼する炉といいますか、コンバーターあるいは燃焼炉というふうな形で使う道も考えていかなくてはいけないだろう。それで、先ほど国産動力炉の話が出たときに、それをどういうカテゴリーで考えたらいいかということをいろいろ考えたわけであります。それには、たとえば先ほどの第一代目の原子炉よりももっと安いパー・コストの原子炉開発することも一つ考え方であります。またもう一つは、その一代目の原子炉というのは相当根強くこれからも成長していくということが予想されますので、そうすれば必ずプルトニウムの生産がそれに伴う。そのプルトニウムを処理するといいますか、燃やしていく、そういう原子炉考えたらどうかということで、現在のところでは、大体プルトニウムを燃焼することのできるような型の原子炉を、日本国産の技術で開発していくということを考えたらいいのではないか。そういう考え方に立ち至っております。そういう意味で、先ほどの重水炉あるいはグラファイト炉というようなものを考えていきたい。ただ、その場合に、プルトニウム燃料というものは濃縮ウランあるいは天然ウランの原子炉よりも安く発電できるかどうかという点については、まだはっきりしない点が非常に多いし、おそらくウランを使うよりは大体の原子炉では高くなるのではないかという見通しが現在のところ立てられております。プルトニウムの加工費というものはウランの加工費よりもおそらく高くなる。そのためには、一度加工した燃料を長く燃やして、長い燃焼率の原子炉というものをつくっていく。そういう燃料開発し、そういう原子炉をつくっていく。つまりプルトニウムの燃焼炉というものは、安全性という点も考えますと、なるべくキャンニングした燃料を使い、そのキャンニングも長い燃焼に耐えるようなものにし、加工費の高い点を燃焼率の長いことでカバーして、そうして安い電力を発生する。そういう方向に持っていくべきではないか、そういうふうな考え方で進めております。
  50. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 大体ほかの方も同じような御意見だと思いますから、時間もたちますので、私の申し上げたいことを申し上げて、一つ方面からお答えを願いたいと思うのです。  今のお話では、プルトニウムができるまで、それに対しての使い方の道を開いておかなければならない。まことにごもっともな御意見でございまして、先がたの岡委員の質問の中にも、アジアにおいて共同研究のやり方を考えてみたらどうかというお話がありましたのも、全くこのことに起因しているのです。  私は、今情勢として二つあると思うのです。これはよく言い古されておって、しかも日本としては十分考えておいていただかなければならない問題だと思いますので、あえて申し上げたいと思います。  一つは、先がたからずっと言われておりますように、アメリカプルトニウムをもう購入しなくとも飽和状態になっておるというその情勢と、それから、イギリスにおいてこれを買い付けるという問題も、早晩飽和状態になるのではないかという見通しに立った場合が一つ。それからもう一つは、西ドイツの核武装ということが、これも時間の問題になり、中国もそういうことが行なわれるだろうというような情勢の中で、産業界においても原爆をつくってもいいじゃないかというような考え方が出て参っておる。  なお、吉田元総理大臣が、中共とかあるいは北鮮の攻勢に対しまして、やはり核武装をしていかなければならないという情勢なら、せにゃいけないじゃないか、するべきじゃないか、というような発言が出て参りました、この情勢。この二つの点に起点を置いて考えてみましたときに、学者の立場、あるいは産業界の立場、あるいは原子力委員会立場、あるいは政府の科学技術庁の立場で、こういう政治情勢、こういう危険な方向をたどっておる情勢に対して、しっかりした覚悟を持っていなかったら非常に危険じゃないかと思うのです。  そこで私は、この情勢の動きと、それからこれに動かされる政治的の動きというものをにらみ合わしたときに、日本としてはしっかりした思想的な根拠を持たなければならぬ。それは、どうしても平和利用に徹するのだという考え方を、原子力委員会としても、もう基本法にはそううたってあるからそうしますという公式的な考え方でなく、どのように情勢が動こうとも、われわれとしては平和利用以外に絶対に出ないんだという、そういう覚悟を持ってやっていただけるかどうか。先がたこの二つの情勢を申し上げましたが、この情勢下ではそういうお覚悟は、もちろん言葉としては大へんだろうと思いますけれども、どうかということを一つお聞きしたい。非常に失礼な聞き方かもしれませんけれども、私たちとしては、こういう情勢になればなるほどこのことが心配でならない。一つスイッチを切りかえたら、やらぬよというのが、やるんだ、産業界の要請が非基に強くなったからやりますというようなことを食言されても困ると思いますので、この機会に、一つ原子力委員会としてもこういう情勢をにらみ合わして、プルトニウムはダブついているんだ、あるいはそういう中共あるいは西ドイツの様子から、国内の要人または財界の枢要な人がこんなことを言いだしたという中で、どういうお覚悟か、聞かしてもらいたい。原子力委員会の方から。
  51. 石川一郎

    石川説明員 どういうふうな御発言がどういう方面であったか、詳しくは存じませんが、原子力委員会といたしましては、また国民の悲願でもございましょうし、平和的利用以外には絶対使わぬ、こういうふうな決心でもってやっております。そのために、今度はどうしても平和利用の方を急がなければならぬということで、せっかくいろいろお話のあったような方面に対して研究を進めていきたい、こう存じておる次第であります。
  52. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 次官が見えておりますが、先般の科学技術特別委員会で近藤長官に私も申し上げ、近藤長官からも御返答をいただいたのですが、各政治的発言が違っておるわけなのです。吉田元首相は、これは責任ある地位の方でないからいたし方がないという逃げ口上もありますけれども、他国がそういうことをやってきた場合防ぎようがないから、やるべきだ、やるべきじゃないか、というような言い方。それから、池田総理大臣は、池田内閣が続く限り核武装はしない。それでは続かなかったら核武装するかどうか。それから、近藤長官の話では、日本が続く限りこれはやらないでしょう。やらないということは言い切れない。やらないでしょう。科学技術庁の責任者として次官がお見えでありますが、一体、この中にあるどれをとったらいいのですか。今、原子力委員会では、悲願だから絶対われわれはやらない、産業界がどう動こうと、世界がどう動こうと、日本の政治情勢がどう動こうと、やらないというように私たちは力強く聞き得たと思うのですけれども、政府関係ある方々の表現が非常にまちまちです。従って、私たちはこの中から非常に危険なものを感じます。いわゆる思想的な危機、精勢的な危機や政治的な危機もすでに足元へ参っておりまして、今学者の方からは、この機会に使用の道を開いておかなかったら非常な危険なものがある、いわゆるうっせきしたものが原爆製造という方向にいく危険が私たちはあると思う、そのように聞いたのであります。道を開くというようにおっしゃっておりました。これは非常に学者的な、あるいは実地に携わっていられる方の良心的な言葉だと思うのであります。政府のお言葉では、必要ならば核兵器を保有する決意をせねばならぬという吉田発言をめぐって、池田内閣続く限り核武装はしない、一方では、原爆をつくってもいいんじゃないか、採算がとれぬから、あるいは寸足らずの言葉だったといって、あくる日また訂正しておりますけれども、しかし、周の情勢によってこういう言葉の修正というものは持たれておるのですか。原爆をつくる、また核武装する、このことについて、責任ある立場から一つ御返答いただきたいと思います。長官がおられたら、長官に再度その点をただしておきたかったのです。
  53. 内田常雄

    ○内田政府委員 長官にかわりまして、私からお答え申し上げます。科学技術庁の長官も原子力委員の一人でございまして、原子力委員会がよって立つところの基礎であり、またわが国の原子力開発研究利用の憲法でありますところの原子力基本法の第二条には、これは平和目的に限るということが明記してあるのでございまして、このことはウランを燃料とする原子炉だけの開発ではございませんで、使用済み燃料の処理、あるいはそれから抽出されるプルトニウム研究利用開発につきましても、すべてこの原子力基本法の二条の適用を受けるものと私どもは解しまして、私ども原子力関係に携わる者の憲法といたしまして、もう平和利用を絶対守り通す、こういう決意でございますから、重ねて申し上げておきます。
  54. 寺島隆太郎

    寺島委員長 三木委員に申し上げますが、関連質問の範囲内において所論をお進め願いたいと思います。
  55. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 今御発言で、原子力基本法のある限り、ということですね。これは変えようと思ったら変えられるのです。私の申し上げるのは、その信念と思想性を申し上げるわけです。それがおありになるかどうか。それでなかったら、あるでしょう、という近藤長官の発言になったり、せねばならぬという発言になったりするところに不安があるのです。先ほどの岡委員の、アジアにおいて云々の話も、この不安の上に立ったお言葉だと私は思うので、再度お願いしてあるのは、そういう意味合いなんです。これがあるからこうという考え方ではなくて、これは変えようと思ったら変えられるのです。多数の承認さえ得れば変えられるのです。私の聞いておるところはそういうことではなくして、その思想性あるいは確信、こういうものです。失礼ですけれども、再度お願いしておきたい。
  56. 内田常雄

    ○内田政府委員 科学技術庁の長官は、ただいま申し述べましたように、原子力委員会である立場はもちろんでありますが、同時に政府を構成する閣僚の一人でありまして、私どもが現長官の考えとして伺っておりますところによりましても、政府の一員として原子力基本法を変える意思もなければ、また原子力に関連するいかなる開発研究利用が進みましても、今の原子力基本法の定めるところを政府としても守り通すように総理大臣に対しても女性大臣として進言しておるということはいつも承っております。また、私も自民党議員の一人といたしまして、国会におきましても原子力基本法の建前をくずすことには、少なくとも私どもはその側に立つ者ではございませんことを申し上げておきます。
  57. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 もう一点お伺いいたします。  先ほど原子力委員の方からの御答弁だったかと思うのですが、IAEAの内部の思想として、眠れる人形は眠らせよというような御答弁がありました。これはプルトニウムをさして言っておられたと思うのですが、こういう考え方に対して肯定しておられるかどうかということをお聞きしたい。あるいは私の聞き違いかもしれませんけれども……。
  58. 西村熊雄

    ○西村説明員 決して肯定しているのではございませんで、委員会としましては、二国間協定による安全保障措置を、従来からたびたび御説明申し上げております根本方針に従いまして、IAEAに移管したいという政策を徹底させようと努力しているわけでございますが、そのために目下交渉を進めております。こういうふうに説明をしておるのでございます。特に補足的にIAEA理事会内部の各国の動きを御紹介申しましたのは、どうも交渉がわれわれの努力にかかわらずはかどらない、どこにその原因があるか知らぬが、というのが今日までのわれわれの心配であったわけです。幸いアメリカの方では、ことしになりましてからスマイス報告で、二国間協定による安全保障措置をIAEAに移管することにしようという政策を打ち出して参りましたから、今後は交渉はもっとスムーズにいくだろうと考えております。IAEA内部の空気には、どうもその理由はそんたくに苦しみますけれども、共産圏諸国はIAEAが作った安全保障措置を一切適用させないでおきたいというような言説があります。これはちょっとふに落ちません、という趣旨で補足的に御説明申し上げました。そういう内部の動きにかかわらず、原子力委員会、また政府としましては、IAEAに移管するという根本方針に従って交渉せ進めることは、従来と少しも変わりはありません。あらためて申し上げておきます。
  59. 寺島隆太郎

    寺島委員長 山口鶴男君。
  60. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 時間がなくなっておりますので、まくら言葉は一切抜きにいたしまして、質問だけを申し上げますので、一つ明確にお答えをいただきたいと思います。  大屋さん、石原さんから、いろいろそれぞれのお立場でのお考え方が述べられたのでありますが、先ほど石川委員からこの安全性の問題についてお話しがありました。これについて、将来はいろいろ検討されておるようですが、今のところは明確なものはございません。大屋さんのお話でございましたか、現在の国家賠償法を改正して民間責任限度をきめてもらいたいという御希望がございました。この点は、現在の法律では青天井の賠償が規定をされておるわけで、これに対して、民間企業の負担能力に限度があるという場合に国が援助をするという建前になっております。そういった御希望がございますが、原子力委員会は、現在の賠償法を変えるおつもりがあるのかどうか、この点をお聞きしたいと思います。  それから次には、石原さんから、第三原電炉、三号炉ですか四号炉ですか、これについては電力会社云々という御希望がありました。先ほど岡さんからもお話があったのでございますが、われわれは原産側からもいろいろ御希望が出ているように、税制上の援助をしてもらいたい、あるいは基礎研究の助成をしてもらいたい、あるいは海外技術を導入する場合の関税についても考慮していただきたい、いろいろな御希望がありました。確かに初期の開発はお金がかかるでしょう。だから、われわれとしては、ある程度初期の段階における開発の機構というものは、当然一つの姿があるべきなんだという主張を今までやってきたわけであります。これに対して、電気事業連合の御希望としてはそういう御希望があるそうでありますが、これについて原子力委員会は一体どうお考えになりますか、この点をお聞きいたしたいと思います。  それから第三番目は、プルトニウムの問題です。いろいろお話がございましたが、私は三木さんのお話を繰り返して聞くつもりはありません。ただ、プルトニウムの問題について、現在日本でも研究炉等で、若干でございますが、できつつあります。十年計画でどのくらいできるだろうか。武田さんから武田さん個人の一応のお見通しは聞きましたけれども、初期十年に一体どのくらいできるか、後期十年にどのくらい、それに対して引き取るとか引き取らぬとか、そういうあいまいな話ではなく、原子力委員会としては、このプルトニウムについては大体このような量ができる、そしてこれをお返しするなら、アメリカなりイギリスに返す——返すというか売るというか、どうするか、あるいは国内としては一体どうするか、そういう御計画というものは責任を持ってお示しあるべきだと思う。そういうものについてお示しいただく用意があるか、この三点をお尋ねいたします。
  61. 西村熊雄

    ○西村説明員 私から、第一点の損害賠償法に関して産業界から出ております要望、それに関連をしての御質問であるのでお答え申し上げます。  損害賠償法が制定されてからわずか一年そこそこであります。あの法律を制定する段階におきまして、今産業界から取り上げられておりますように、責任に一定の限度を置いて、その限度を越える損害については国家が補償するような体制に持っていかない限り民間原子力産業の発達は困難になるという御議論が強くあって、その点は法の制定当時いろいろな御議論の末に、現在のように限度を越えるものにつきましては、原則として民間業者の方で責任はありまするけれども、国家において民間産業の安全なる発達を阻害しないように、また他方被害者の補償が完全に行なわれるに必要な援助をいたすこと、ということに法はなっているわけでございます。なおかつそれでも責任の本体が産業側にあるから、なかなかこれでは安心ならないという御懸念でございます。法が制定されてわずか一年そこそこでございまするが御懸念の点は一制定当時熱心に国会におきましても、また国会外の法案の用意段階におきましても、慎重に議論議論を重ねた結果到達したのが現在の法制でございます。でございますから、委員会としては、御心配はごもっともだと思いながらも、しかし御懸念はなくて済むような体制になっておりますと、こう申し上げたいところでございます。  とは申しましても、なおかつ改善すべき点があるとするならば、改善した方がよろしいと考えまするし、同時に、原子力産業に関連いたしまする損害賠償制度の問題は、他面国際的な関連事項が多うございまする関係上、IAEAその他を中心にして国際条約の締結が具体化しつつあるわけでございます。従いまして、この方面の動きともにらみ合わしまして、産業界から提出されてあります御懸念がないようにする方向において委員会としては検討していきたい、こういう方針でおります。
  62. 石川一郎

    石川説明員 電力会社の方々のお話は、先ほど石原さんからお話がございました通りです。しかし、実は私は、直接一つぶつかった方がいいだろうということで、先般も三社の方にお目にかかりました。ただ、先ほども申し上げた通り、今のサンフランシスコのあれはちょうど地震帯の上にあるそうであります。そういうところでやっていいというようなAECからはっきりした許可がおりれば、一つ乗り出して、そうすれば計算が楽になる。それからまた、原電が第二号炉を、先ほど申し上げましたが、あれでほんとうに見積もりをとってやって、また今までのヤンキーとかドレスデンの動き方もこの中に込めて観察いたしましてとった場合に、これでいけるということがあれば、それで進みたい。しかし、それが少しあちらに参るのがおくれておりますけれども、来年のうちには、春には行って、半年間もおればはっきりわかると思うので、そうしたら乗り出したい、こうした意思を持っておるようでございます。ただ、御承知通りの金融逼迫のときでございますから、たとえばクレジットを外国からもらうような場合においては、何とか保証をやってくれるようなことはないか。たとえば開銀で保証するとか、あるいはまた開銀の融資で幾らか、半分なら半分くらいやってもらえないかというような希望はございました。それはやはりデータを見まして、なるほどこれだけ金がかかる、それじゃこれくらいやったらいいだろうということは、われわれが考えまして、そうするつもりになっております。ただ、法人税の減税等の問題、これは非常にむずかしいので、大屋さんの方からお話がございましたけれども、まあ実際そう初めから非常にもうかっていくことでもないだろうから、非常に法律上もむずかしいから、その点はもう少し考えたい、こんなふうな考えを持っております。
  63. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 第三の御質問プルトニウムの量のことでございますが、御存じのように、炉の型式などによっても生産量が違うのでありますし、いつごろからどのように運転するかということによってもまた生産量は違うわけでございます。昨年の二月に出しました長期基本計画が、あそこに予想されておるようなふうに進むと、それから前期の十年については、現在欧米ですでに実験になっておるような、そういうタイプのものがおそらく採用されるであろうというような見通しもありますので、天体八百キログラムから九百キログラムという程度予想しております。先ほど武田さんは一トン程度と言われましたけれども、非常にそれに近い、それより幾らか少な目でございます。後期については、同様に炉の形もなお推定が困難であります。また、実際に建設される発電所のものも、計画よりも下回ることもありましょうが、上回ることさえあると思いますので、武田参考人もずいぶん幅の広いことを考えております。原子力委員会では、後期で三ないし五トン程度というふうに一応の数字を出しまして、それをどうするかというようなことになるわけでございます。もちろん、現在すでにこういうふうに使えるというふうになっておるわけではございませんけれども、そう遠くないうちにこれが動力炉に使えるようになるというふうに考えておりますので、これに使うという建前であります。  時間のないところを申して恐縮でございますが、実はこのプルトニウム動力炉燃料にするということにつきまして、別に最近ではございませんが、私は二、三年前からこれに注意しておりまして、昨年はイギリスの方、ことしの五月アメリカに行きましたから、ついでにハンフォードにも行ってみたのでございます。これは現場の人の言うことを聞くのでありますから、もちろんその人たちが自分の仕事を善意に解釈し、また楽観的な意見とは思いますけれども、イギリスでは、熱中性子炉にも使うことはできるけれども、経済的にはあまり意味がないから、今ドンレイでやっております高速増殖炉を使うことがまず第一だということで、それを一生懸念やっており、それも見通しは立っておるというふうな話をいたしました。それに対して、アメリカのハンフォードの方は、熱中性子炉に使うことは技術的にも可能だし、自分たちはもう今でも経済的に使えると思う、というくらいに申しております。もちろん、それを一〇〇%とるのはあまり甘いとは思いますけれども、全然見通しがないことをそういうふうに言われるのではないだろうと思います。  そこで、今度私が多少悲観的になりますことは、その状態になっておるプルトニウム燃料に使う研究を、これから日本が幾ら金をつぎ込んでやったとしても、それを日本独力で追い越して先につくるということは、なかなか容易でない。そういう意味からいえば、これももっと早くから手をつけておいたらよかったなというふうに私は痛感するのでございます。それにしても、今急いでこういうことをやるようになりたことは、大へんいいことだと思っております。そういう意味で、これを持て余すというふうなことになるとは考えておりません。ただ、経済的にどうであるかという点は、もちろんまだ問題は残ります。
  64. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 時間がありませんから、もう再質問はやめます。ただ、アメリカがどうとかイギリスがどうとか、プルトニウム利用について云々ということではなくて——もちろんそういうことも参考にしていただいて、原子力委員会としては、いろいろ議論のあるプルトニウムでありますから、平和利用の方針だということをはっきり言われたわけですから、その上に立って一体どうするのだという明確な御計画を、やはり原子力委員会自体として責任を持って明らかにしていただくということを希望しておきたいと思うのです。  それから、第三、第四の原電炉の問題でありますけれども、要するに、今電力の再編成等についてもいろいろ議論をされているときであります。われわれとしては考えはありますけれども、これもどういう形で、今こういういろいろ経費のかかる、民間にまかすとしても相当の援助をしなければならない、こういう段階において、この前期における原子力発電開発の方向というものはどうあるべきかという、その基本的な考え方というものが、私は当然ありてしかるべきだと思うのです。あらためてまたいろいろお聞きをしたいと思いますが、本日はこれで終わります。
  65. 寺島隆太郎

    寺島委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。参考人各位には長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、本委員会調査のため多大の参考になったものと存じます。委員会を代表いたしまして、私から厚く御礼を申し上げます。まことにありがとうございました。      ————◇—————
  66. 寺島隆太郎

    寺島委員長 閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。  まず、閉会中審査申し出の件についてお諮りいたします。  本特別委員会は、閉会中もなお科学技術振興対策に関する件について審査をいたしたい旨議長に申し出を行ないたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕
  67. 寺島隆太郎

    寺島委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  68. 寺島隆太郎

    寺島委員長 次に、閉会中の委員派遣に関してお諮りいたします。  閉会中審査を行なうについて、委員を派遣して実地調査を行なう必要もありますので、その場合は、派遣委員の数、その選定、派遣地及び期間並びに議長に対する承認申請の手続等は、すべて委員長に御一任願っておきたいと存じますが、これに対して御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 寺島隆太郎

    寺島委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  70. 寺島隆太郎

    寺島委員長 次に、現に設置されております科学技術の基本問題に関する小委員会は、閉会中もなお存置することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 寺島隆太郎

    寺島委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  72. 寺島隆太郎

    寺島委員長 次に、閉会中における理事並びに小委員の辞任及び補欠選任につきましては、委員長に御一任願っておきたいと存じますが、これに対し御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 寺島隆太郎

    寺島委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  74. 寺島隆太郎

    寺島委員長 次に、閉会中審査のため、委員会または小委員会において参考人より意見を聴取する必要が生ずるととも考えられますので、その人選その他所要の手続等につきましては、あらかじめ委員長に御一任願っておきたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 寺島隆太郎

    寺島委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  76. 寺島隆太郎

    寺島委員長 本日の請願日程、鳥取県中部地区にウラン鉱粗製錬所設置に関する請願につきましては、理事会の協議に基づき、その採否の決定を保留いたしたいと存じますが、御了承を願います。  なお、本委員会に参考送付されました陳情書は一件でございますので、念のために申し添えておきます。  本日はこれにて散会いたします。   午後一時三分散会