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1962-03-28 第40回国会 参議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月二十八日(水曜日)    午前十時三十二分開会   —————————————   委員の異動 本日委員柏原ヤス君辞任につき、その 補欠として市川房枝君を予算委員長に おいて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    主査      杉原 荒太君    副主査     山本伊三郎君    委員            太田 正孝君            川上 為治君            櫻井 志郎君            下村  定君            村山 道雄君            羽生 三七君            田畑 金光君            市川 房枝君            須藤 五郎君   国務大臣    外 務 大 臣 小坂善太郎君    国 務 大 臣 藤山愛一郎君   政府委員     総理府特別地     域連絡局長  大竹 民陟君    警察庁刑事局長 新井  裕君    経済企画庁長官    官房会計課長  川村 鈴次君      経済企画庁      調整局長  中野 正一君     経済企画庁総     合開発局長  曾田  忠君    外務大臣官房長 湯川 盛夫君      外務大臣官      房会計課長 佐藤 正二君     外務省経済局     経済協力部長 甲斐文比古君    外務省条約局長 中川  融君      外務省情報      文化局長  曾野  明君    建設省道路局長 河北 正治君   説明員      外務省アジ      ア局審議官 宇山  厚君       外務省経       済局次長 中山 賀博君      大蔵省主計      局主計官  田代 一正君      農林省農地      局管理部長 丹羽雅次郎君      通商産業省      通商局次長 山本 重信君    運輸省鉄道監督    局民営鉄道部長 佐藤 光夫君   —————————————   本日の会議に付した案件昭和三十七年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 杉原荒太

    主査杉原荒太君) ただいまから予算委員会第二分科会開会いたします。  昭和三十七年度総予算外務省所管を議題といたします。  まず、政府から説明を求めます。小坂外務大臣
  3. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 外務省所管昭和三十七年度予算について大要を御説明いたします。  予算総額は百七十一億九千五百二十八万七千円で、これを組織別に大別いたしますと、外務本省七十九億八千五百九十五万九千円、移住あっせん所三千七百二十二万円、在外公館九十一億七千二百十万八千円であります。  ただいまその内容について御説明いたします。外務本省、第一、外務本省一般行政に必要な経費十四億七千四百五十五万五千円は、外務省設置法に定める本省内部部局及び付属機関である外務省研修所外務省大阪連絡事務所一般事務処理するため必要な職員一千五百三十二名の人件費及び事務費等であります。  第二、外交運営充実に必要な経費六億七千万円は、諸外国との外交交渉により幾多の懸案の解決をはかり、また各種条約協定締結する必要がありますが、これらの交渉わが国に有利に展開させるため本省に必要な工作費であります。  第三、アジア諸国に関する外交政策樹立及び賠償実施業務処理等に必要な経費二千六十八万三千円は、アジア諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整並びに賠償の円滑かつ統一的な実施をはかるため必要な経費であります。  第四、欧米諸国等に関する外交政策樹立に必要な経費三千六百九十五万五千円は、北米、中南米、西欧、ソ連東欧、中近東、アフリカ及び英連邦諸国に関する外交政策企画立案及びその実施に必要な経費社団法人ラテンアメリカ協会補助金一千九百三十万六千円、社団法人アフリカ協会補助金二百五十万円等であります。  第五、国際経済情勢調査及び通商交渉準備等に必要な経費二千六十八万八千円は、国際経済に関する基礎的資料を広範かつ組織的に収集し、これに基づいて国際経済を的確に把握するための調査及び通商交渉を行なう際の準備等に必要な経費であります。  第六、条約締結及び条約集編集等に必要な経費四千八百十七万九千円は、国際条約締結、加入及び条約集等編集条約典型作成条約国際法並びに内外法規調査研究のため必要な事務費であります。  第七、国際協力に必要な経費二億四千四百八十四万円は、国際連合等に対し協力するため国際連合機関との連絡、その活動の調査研究等に必要な事務費及び諸種の国際会議わが国代表を派遣し、また、本邦国際会議を開催するため必要な経費財団法人日本国際連合協会補助金一千三百九十万五千円、社団法人日本エカフェ協会補助金七百六十四万四千円、財団法人日本ユニセフ協会補助金二百七十一万七千円であります。  第八、情報啓発事業及び国際文化事業実施に必要な経費三億六千六百八十四万六千円は、国際情勢に関する資料の入手、海外に対する本邦事情啓発及び国内広報並びに文化交流を通じて国際間の相互理解を深めるため必要な啓発宣伝資料作成購入及び文化人等海外より招聘または海外へ派遣するに必要な経費と、財団法人国際学友会補助金三千七百六十万六千円、財団法人国際文化振興会補助金四千九百十二万八千円、財団法人国際教育情報センター補助金六百七十三万四千円及び啓発宣伝事業委託費五千七百五十二万一千円であります。前年度に比し六千七百五十八万七千円の増加は、宣伝啓発費及び啓発宣伝事業委託費等増加によるものであります。  第九、海外渡航関係事務処理に必要な経費二千九百二十九万六千円は、旅券の発給等海外渡航事務経費と、その事務の一部を都道府県に委託するための委託費一千三百四十八万七千円であります。  第十、海外経済技術協力に必要な経費十三億五千九百三万七千円は、海外との経済協力に関する企画立案及びその実施総合調整を行うとともに、コロンボ計画等に基づく技術者の交換及び各種技術センターの設立、経済技術協力実施並びに海外技術協力事業団(仮称)に出資する等のため必要な経費で、海外技術協力実施委託費十億六千百五万八千円、海外技術協力事業団出資金二億円、交付金八千四百十七万円等でございます。  第十一、国際分担金等支払いに必要な経費二十三億千五百五万四千円は、わが国が加盟している国際機関各種分担金及び拠出金等を支払うため必要な経費であります。前年度に比し三億四千三百六十万九千円の増加は、国際連合分担金後進国経済開発技術援助拡大計画及び国連特別基金拠出金国連食糧農業機関分担金等増加によるものであります。  第十二、移住振興に必要な経費十三億八千六百八十四万一千円は、移住政策企画立案及び中南米諸国等に移住する者一万一千人を送出するための旅費、事務費及び移住者渡航費貸付金七億千八百五十八万六千円、財団法人日本海外協会連合会補助金五億二千十万円、移住者支度費補助金四千四百八十八万三千円、社団法人農業労務者派米協議会補助金千八百十万四千円、移住促進費補助金四千六百八十七万八千円等移住事業振興をはかるため必要な経費であります。  第十三、旧外地関係事務処理に必要な経費九十八万五千円は、朝鮮、台湾、樺太、関東州等旧外地官署職員給与、恩給の支払い、その他残務整理に必要な経費であります。  第十四、旧外地官署引揚職員等給与支給に必要な経費千二百万円は、三十七年度中の旧外地官署引揚見込職員五名と未引揚職員百三十一名の留守家族に支払う俸給その他諸給与等であります。  移住あっせん所、第一、移住あっせん所業務処理に必要な経費三千七百二十二万円は、外務省設置法に定める付属機関である神戸及び横浜移住あっせん所事務処理する職員五十名の人件費移住者送出の万全を期するため、本邦出発前に健康診断、教養及び渡航あっせん等業務を行なうため必要な経費であります。  在外公館、第一、在外公館事務運営等に必要な経費七十七億四千四百三十四万円は、既設公館百一館二代表部八百三十四名と三十七年度新設予定の在クウェイト大使館のために新たに必要となった職員三名並びに在フィンランド、在パナマ、在エル・サルヴァドル各公使館、在ダマスカス総領事館大使館昇格、在ダッカ領事館総領事館昇格及びこれらを含め既設公館職員増加三十二名、計八百六十九名の人件費及び事務費等並びサンパウロ日本文化センター建設費補助金三千五百万円であります。  第二、外交運営充実に必要な経費七億三千万円は、諸外国との外交交渉わが国に有利な展開を期するため在外公館において必要な工作費であります。  第三、輸入制限対策等に必要な経費一億七千三百九十五万六千円は、外国におけるわが国商品輸入制限運動等に対処して啓蒙宣伝運動実施する等のため必要な経費であります。  第四、対外宣伝及び国際文化事業等実施に必要な経費一億四千七百四十二万八千円は、わが国と諸外国との親善に寄与するため、わが国政治経済文化等の実情を組織的に諸外国に紹介するとともに国際文化交流を行なう等のため必要な経費であります。  第五、在外公館営繕に必要な経費三億七千六百三十八万四千円は、在トルコ大使公邸新営(第二年度)、在インドネシア大使館事務所新営(第一年度)、同大使公邸増築(第一年度)、在インド大使公邸増築(第一年度)、在ビルマ大使館事務所用土地購入国際連合日本政府代表部大使公邸建物購入、在ジュネーヴ国際機関日本政府代表部事務所使用(無期限)に関する無体財産権購入費及び在外公館事務所及び館長公邸建物補修費等であります。  以上がただいま上程されております外務省所管昭和三十七年度予算大要であります。詳細御審議のほどお願いいたします。
  4. 杉原荒太

    主査杉原荒太君) これより質疑に入ります。  通告に従いまして発言を許します。山本君。
  5. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 きょうはひとつ総括質問とか、一般質問のような、ああいう肩のこるようなことでなくて、私も質問をすわってやりますので、大臣もひとつすわったまま、ひざを交えたような空気でいろいろと御説明願いたいと思います。  まず第一にお尋ねしておきたいのは、先日、韓国襄義煥代表がこちらに参られまして、大臣といろいろ請求権の問題で相当折衝されたようでございます。いろいろ新聞でも若干拝見しておるのですが、先方言い分と、わが国請求権に対する言い分についてどういう点に大きい食い違いがあるのかということを詳細にひとつ御説明願いたい。
  6. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先般、崔外務部長官が参りまして、私、約五日間折衝したわけでございますが、今その内容をこの席で申し上げますことは、交渉中の案件でございますので、非常に残念でございますけれども、そういうことをせぬ外交慣例になっておりますので、差し控えさしていただきたいと存じますが、要するに、請求権問題についても相当考え方が大きく食い違っておるという感じを受けまして、また次に会うときまでには、よく先方でも、日本考え方というものを考えてみてくれと、こういうことを言って別れましたようなわけでございます。
  7. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いわゆる外交問題であるから、そう詳しくは言えないと言われますが、やはり請求権については向こう主張はこうだ、こういう点を言っておるのだ、わが国はこうだということくらいは国民に知らさぬと、まとまってからこうだということでは、その際になって問題が起こっても、これはもう仕方ないということですから、一応向こう主張しておる点はこういう点である、こちらのほうはこうだという概要くらいは国民に知らす必要があるのじゃないですか。もちろんそれがきまれば、やはりわが国一つの負担になるのですから、そういう点までも話がきまるまではできないのだということでは、われわれ国会に席を置くものとしては、どういう工合に国民に了解さしていいか。ガリオア・エロア問題については、もう向こうのほうははっきりと、こういうものだと言っておるのですが、日韓請求権の問題は、そういう態度ではわれわれとしては納得できないのです。
  8. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは交渉過程でそういうことを申し上げることはせぬことになっておりますので差し控えておりますわけでございますが、もとより私は、日本のわれわれの考え方というものは議会でいろいろ申し上げているわけでございます。したがって、われわれの考え方に違う点で先方が歩み寄ってくればけっこうでございますし、そうでない点で、われわれはこう考える、先方はこう考える、したがって、こういうふうな点で双方歩み寄りにくいという点がございましたら、それはまたそのときに申し上げて御了解を得るという方法も考えられると思うのでございますが、今の食い違っている段階で、こっちはこうだ、向こうはこうだと言いますと、先方が全くその線よりおりられないことになるわけでございます。したがって、これは国同士交渉でございまして、先方国民の面子もあるわけでございますから、どうも先方は、こういったことをあまり早い段階で言いますと、今度それをおりることができなくなる、そういう意味で、せっかくのお話でございますけれども申し上げられない、かように思うのでございます。
  9. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは、こちらのいわゆる考え方、当初から日本政府が考えているその点について、ひとつ聞かせていただきたいと思います。
  10. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この点については、いろいろな機会に申し上げているわけでございますが、私は請求権の問題というものは、まず韓国の施政の及ぶ範囲が三十八度線から北に及んでないと——三十八度線といいますか、いわゆる停戦地区から北に及んでないということを頭に入れて交渉しているわけでございます。それから、わが国韓国において非常に膨大な資産を持っておったわけでございますが、これが軍令三十三号で処理されまして、米韓協定でこれが韓国側に渡されたわけでございます。この処理の効力というものについては、これはいろいろ議論があるところでございますが、一九五七年の十二月三十一日のアメリカ解釈というものが出まして、日韓双方がこの解釈をのんだわけでございます。こののんだということが請求権問題を処理するにあたって関連がある、こういうことを言っているわけでございまして、関連があるということは、これは韓国側で考えているんじゃなくして、日本においても考える、どれくらい関連があるかということを双方で合意しなければならぬだろうし、そういうことで対処する。それから、われわれは、これはあくまで平和条約第四条(a)項によるところの請求権処理であって、この問題を議する場合には賠償というような性格のものではない、こういうようなのが基本線でございます。
  11. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 交渉内容については、今、大臣が言われたように、交渉過程では言えないということは一応わかるが、韓国代表が今回来て、やはり向こう考え方というものを言われたと思うのです。向こう考え方について——交渉内容ではなしに、政府に申し入れたその内容についてはどういうことであるか、それくらい言えるでしょう。
  12. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私の受けました感じを率直に申し上げますと、どうも日本考え方というものを十分に考えた上で韓国側考え方を練ったというふうには思えない、そういう感じでございまして、そういう考え方ではなかなか会談がうまくいかぬだろう、こういう印象を受けましたので、そのことは率直に申し上げておきました。
  13. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 きわめて抽象的で何もわからないのですが、やはり韓国側請求権について、今まで新聞紙上なんかでいろいろいわれておりますが、今度は相当はっきりしたものを、朴軍事政権になってからのいわゆる向こう考え方というものを持ってきたと思うのですが、具体的な額なんかは話は出なかったのですか。
  14. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は、そういうような事前の情報もいろいろ伝えられておったわけですが、話してみますと、非常に基礎が、考え方基礎が大きく隔たりがありまするので、やはり具体的な請求権の数字というものを出し合うというのは、その前提になるいろいろな考え方というものがある程度一致して、その上でどうだということが筋道なんで、こういうふうに話し合って、五日間会談をやってみた結果、いろいろ話しているうちに、どうもその差が非常に明らかだということが認識される段階で、そういう具体的な額というものは出しても無意味じゃないか、こういうことを申しまして、私は結局何にも聞いておりませんわけです。
  15. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大臣が両院でいろいろ日韓問題で発言されておるところから想定しまして、今度の会談相当政府の立場としては前進するような見込みでおられたと私は見ておったのですが、今、外務大臣の言われることを聞くと、全く五日間の会議というものはもう何ら意味がなかった、両者の言い分に非常に隔たりがあったので、ただ懇談的な話をしたというような程度で、前進ということは全然見られなかったという、そういうことですか。
  16. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私はあとで記者の皆さんに申し上げたのですが、会談の直後に申し上げたのでございまするけれども、それも一つの道程じゃないか、そういう過程もあっていいのじゃないか、お互いに全然、何かいろいろ持って回ったような情報みたいなもので、前進するとかしないとかというようなことよりも、責任者が会って、この段階で両方の考え方はこういうふうに現状においてはあるのだということを認識することは、やっぱり一つ前進ともいえるということを申し上げたのでございますが、そういうような感じでございます。
  17. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 池田総理は、総括質問の場合でも、日韓のこの問題は早期にやはり解決しなければいけない、両国に対しては非常に不幸である、そういう意味において、政府としては非常に積極的にやっているような印象を与えるような答弁をされておるのです。そうすると、何ですか、今の外務大臣の話では、この問題というものはもうだいぶ遠のいていってしまって、本年に問題の解決ということは、おそらくもう見通しがないというような印象を与えておるのですが、そうですか。
  18. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先の見通しを私申し上げるのはちょっと今できないと思うのでございますが、少なくとも日韓国交正常化する必要がある、この必要性、それからそのことの意義といいますか、そういうものについては、これはもう私どもはぜひそうすべきものだ、こう考えておるのであります。しかし、それにはそれでやはり踏んでいく過程があるので、あまり日本国民においても納得できないような形で妥結するということは、これはもうとてもできない。やはり合理性を積み上げた上で政治的に解決せねばならぬといいますか、大所、いわゆる高度の考慮から解決せなければならぬという段階もむろん必要なわけでございますけれども、そういう時期がいつ熟するのかということも、やはりわれわれとしても十分考えながらやっていかにゃいかぬ、何もかにも、目的が一つであるなら手段はどうでもいいのだというような行き方ではいけないというのが、私どもの持っている今の率直な気持なんでございますけれども、それが将来どういうふうになっていくかということは、今申し上げることは差し控えたいと思います。
  19. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 本年初めごろから、政府新聞なり、あるいは国会発言されておる、そういう発言内容と、今の外務大臣発言から見ると、非常に与える印象が変わってきておると思うのです。昨年の暮から、ことしの初めごろの政府の対韓問題に対する態度というのは、もう政治折衝段階になれば、もう解決するんだという印象を与えておったと思う。それをもう今日では見通しすら話しすることはできない、こういうことであれば、この問題は、もう相当隔たりがあって、解決するといいますか、話が妥結するということは相当困難であり、至難であるという、こういうわれわれ受け取り方でいいですか、これだけ確かめておきます。
  20. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は、今解決見通しを申し上げる段階でないということは、非常にそれが困難であるとか、非常に遠いとか、そういうことはまあ別の意味で申し上げておるわけでございます。やはりわれわれとしては努力すべき点は大いに努力しなければなりませんし、その努力の結果が、日本国民において十分納得される結果において日韓国交正常化ができるならば、それはできるだけその努力を重ねたいと思います。しかし、これはやはり相手のあることでございますし、政治会談だから、何でもかんでも不合理な点を政治だといって、その点まで乗り越えていってしまうということはできないという気持なんでございます。
  21. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 われわれの受け取り方は、一応事務折衝では解決の点はまあむずかしい、もうあとは腹と腹とで、いわゆる政治折衝で一気にやってしまうのだという印象を受けておったんです。ところが今度の会談政治折衝段階に入っている。相当両国の間に、単に請求権の額の問題だけでなくして、考え方自体に大きい開きがあると、こういうことですか。
  22. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあ何と申しますか、考え方基礎になる考え方でございますね、請求権の及ぶ範囲であるとか、そういうような問題をもう少しやはり煮つめにゃならぬという感じでございます。
  23. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 今まで相当長い期間ですね、単に朴軍事政権になってからの問題でなくして、張勉政権のときからいろいろと問題を重ねてきておって、ようやくまあ杉代表も、日本代表も一応きめて、すでに本年の、少なくとも国会開会中でもこれはやるんだという、こういう総理の要するに答弁もあったんですが、どうも今の外務大臣の話を聞いておると、何だかもう問題は元に帰って、それよりももっと遠くに帰ったような印象を受けるのですが、見通しは言えないといいますが、政府の腹として、一体いつごろまでに、まあ、向こう相手方のあることだが、日本政府としての腹はどうなんですか、向こうが応じてこなければ、こちらのほうは向こうのくるまで待つという態度であるのか、この点をひとつ聞いておきたい。
  24. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私どもの希望は、できるだけ早く国交正常化したいということであります。しかし、さればといって、こちらの主張をおろして、あまりわけのよくわからぬ形で妥結するということは、これはもう絶対に困る、こういうことなんでありまして、こちらの見通しといいましても相手のあることでありますし、やっぱり交渉がもとでございますから、あまりこちらの腹をあけすけにするということもいかがかという点で答弁を差し控えさしていただきたい。
  25. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこまで聞いておけばいいのです。わが党としては、最初から日韓会談に対しては不賛成である。今日これをやること自体に問題があるというのがわが党の主張なんです。南北両朝鮮に分れておる現段階で、おそらく話が私は進まないというのが、これが本筋だと思っておるのです。それが具体的に今度の会談で出てきたということは、むしろわれわれの予測するところだと思うのであります。今、小坂外務大臣がいろいろ言葉をかえて説明されておりますが、私はそうだと断定してもいいと思うのです。今日、日韓会談を急いでやるということは、問題は、やはりわが国にも問題があります。季ラインとか、あるいは竹島問題がありますから、われわれも一応それを注視しておったのだが、それほど食い違いがあるということは、これはもう当初から私はわかっておったと思う。そういうのを今となって、いろいろ言葉をかえて説明されておりますが、当然私はその問題は、そう簡単には片づくものではない。基本的に今日、日韓会談をやること自体に問題があると私は思っておったのですが、今の外務大臣説明で、おそらく私の今言っておることと相違ないと思うのですが、それに対する何か反駁的な、われわれの思いどおりであることに違うのだという、そういうことの説明ができたらひとつしていただきたい。
  26. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は会談をやること自体がいかぬということはないと思うのでございます。やはり会っていろいろ話してみて、だんだん韓国側においても日本主張というものの根拠を知り、そうしてよく考えてみれば、なるほどと思う点もあろうと思うので、やはりこれは会談そのものに対して、これはいかぬことだというふうにきめつけられることは、私はいかがかと思っておるのです。しかし、会ってみて、何回も会っているうちに、だんだん当方の主張もわかり、韓国側においてもやはり合理的な主張というものはのんで、しかも、大局的に日韓双方が手をにぎり合って行くということがいいことだということを考えておるならば、その方向でやはり進んで行くのがいいのだろう、かように思っておるわけでございます。
  27. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 きょうはひとつ、ひざをまじえて、肩のこらぬ話のような形で意見を聞きたいと思ったのですが、依然として、もちろん公式な立場で話をされることは無理がないと思いますが、どうも私はきょうの外務大臣説明では納得できないし、三十八度線で分断されておるその状態の中で、在韓の日本人が残した資産の問題を考えても、おそらくそういう話の一致するということは私はないと思うのですが、そういうことをわかりながら日韓会談を進めて行こうという方針を立てられたところに、私は政府見通しのあまかったことがあったと思うのです。そこで、そいつはそれとしまして、日韓会談について、尹大統領と今後の進める上においての何か問題点がないですか、変わった意味の問題点は出てこないですか。
  28. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この問題については先般の委員会でも申し上げましたことですが、特別これといって変わったことはないと思っております。
  29. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もう一つ聞いておきますが、今後政治折衝は続けられると思うのですが、これは韓国側から申し入れてくれば応ずる、わが国からそういう政治折衝の促進というものは考えておらないのか、その点聞いておきたい。
  30. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあ双方でいろいろ考えてみたあげく、もう一度またやったほうが効果があると思う段階がきたら始めるのがいいのじゃないかというふうに思っております。
  31. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この前の会談の終わったときには、今後の会談の予定については何ら話し合いがしてないのですか。
  32. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ございません。できるだけ早く会談をしよう、こういうことだけであります。
  33. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 できるだけ早くというのは、あなたが会談に当たられた当事者として大体いつごろの考え方ですか。もう無制限に、もういつでもいいという考え方ですか、その点ひとつ……。
  34. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 文字どおりできるだけ早くというだけで、別にいつということは今のところきめておりません。
  35. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと関連して。それはうるさい国会が済んでからということですか。
  36. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) いや、別に国会というものを特別に意識しているわけではない。とにかく一般的、抽象的にできるだけ早くというだけでございます。
  37. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 できるだけ早くということですがね、そうすると、相当それは問題点を含んでいると思うのです。たびたび池田総理が、年が明けてから、かわってから、日韓問題でいろいろと国会なりあるいはその他の報道機関の中で発表されておりましたがね。おそくとも七月ころまでにはこれを解決——解決と申しますか、妥結と申しますか、そういうところに持っていくという印象を与えるようなものがもう国民の間に一般にあったのですが、今の外務大臣の話では、できるだけ早くだが、おそらくもう年度内といいますか、三十七年の間には無理ですね。どうですか。
  38. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあ無理ということもないと思うのです。それはもうできるだけ早くやったほうがいいと思いますが、やはりこっちの言っていることもずいぶん言っているわけで、それに対し先方がどういう反応を示してくれるか。また、先方も言っていることはあるわけですから、こっちもそのことについては考えなければいかぬわけですが、それを双方で考えて、もう一ちょうやろうということをできるだけ早く考えよう、こういうことなんでございますが、今のところなかなか先方考え方もわかりませんし、すぐと言われても、ちょっとできにくいような気もするわけです。  私は、この間も申し上げたように、やはり日本のほうで代表部向こうにありませんので、全然先方の事情が、人づてでなければわからぬので、これはやはり置かしてもらって、これはもう相互主義でいけばあたりまえのことなんですから、そのことくらいは早くやってくれたらいいのじゃないか。その上で、またこっちからソウルへ行くことだってそうなればできるわけです。今の段階でソウルへ来いと言われたって、とても電報一本打てないような状態では会談になりはしない。そういうことを申しておるわけであります。そういう問題がどういうふうになりますかというようなことも考えなければならぬと思っているわけでございます。
  39. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 先ほどからいろいろと外務大臣はしっぽを出さないように答弁されておりますが、大体わかってきたのですがね。今の話をずっと最初から総合してみますと、日本政府の言うことはこれはもう言ってしまったのだ、ひとつ考え直すのはお前のほうから考え直してこい、そうすれば会談を開いてみてもいいんじゃないか、こういう総合的の答弁と受けたのですが、それで、何もそうだとは言わなくてもいいんですが、間違いないですか。
  40. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあ私も政治家でございますし、外交を承っているのでございますから、そこはそのあまり先方に対して失礼なことも申せませんわけでありますから、十分こちらとしては意見を申し述べまして、先方におかれてもいろいろお考えになることでございましょうし、それこれ、私のほうもいろいろ向こうから言われたこともよく考えてみます。それこれ考えてみたい、こういうのが現状における、現段階における実情でございます。
  41. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは、禅問答のようなことはこれでおきますがね、日本代表部向こうが認めないというのは、外交上のいろいろの問題、どういう点ですか。
  42. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 当初、平和条約あとにわがほうの代表部を置くということに合意しておったわけでございます。ところが、御承知のように、李承晩政権時代で、非常な排日ということが先方の根本施策であった、そのときのことでございますので、代表部を置いても生命身体の安全を保しがたい、だから、危険だから置かぬほうがいいだろうというような話になったというのが、一つ段階であったわけです。私、一昨年参りましたときにその話をいたしました。そうしたら、当時張勉内閣の時代でしたが、これはもうまことにごもっともで、当然置くべきものだ。ただ、置きますと、これは代表部を置いたら大使館というものは当分できないという印象を与える。で、われわれ——というのは韓国側が言いますには、われわれは至急日韓会談を妥結させて、日本の大使館を迎えたいので、ちょっとの間だからしんぼうしてくれと言われているうちに、政権がかわってしまったわけです。で、今度の段階になりまして、また同じようなことで来ておるわけでございます。先方は、日本韓国人が、たくさん朝鮮人があるということで、その事務等を見るために必要なのである、こういうことでこっちのほうは置いておるわけでございます。私は、もう当然相互主義で置くべきだ、こういうことを言っておるわけです。しかし、まあ韓国側も昨年の八月下旬から、日本政府の係官が韓国へ出張されるということはいつでもけっこうだ、代表部というものは今までの行きがかりでなかなか置きにくいけれども、それにかわるような考え方で、いつでも日本の官吏の方においで願うというのはけっこうだというので、その後二回くらい行っておると思っております。そんな段階になっておるわけでございます。
  43. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 今度の会談で、請求権の問題でそれほど考え方が隔たっておったんだから、李ラインとか竹島問題については、わが政府のほうからはそういう話を出されなかったのですか。
  44. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは交渉内容でございますから、出したか出さなかったかということは申し上げることを差し控えたいと思うのですが、ただ、私は李ラインというものは——私の考え方でございます。私は、李ラインというものは、これは国際法上違法のものである。だから、これは当然撤回すべきものだと私は思っております。竹島問題も、これはやはりおかしなことを向こうは言っておると思っているのでありますが、そうかといって、両方で同じことを主張し合っていてもしようがないから、やはり国際司法裁判所に出してその判定を求めるということがいいだろう。これは韓国側においても、現状においては国際法上の慣習に従うということであって、別に何でもないことなんだから、当然そのことぐらい受けてもいいじゃないか、むしろそうすることによって李承晩時代の妙な政策に対する日本国民の持っておる感じが非常に変わってくるのだから、そういうことをすることは非常に賢明な策じゃないかというふうに、私は思っておるわけです。会談で言ったか言わないかということは申し控えたいと思います。
  45. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 うまい説明をされましたが、内容を、どういうことになったかということは言えぬとしても、こっちからこの問題を出したかどうかということすら国民に知らせないというような、そういう外交では、全く秘密外交のような形に受け取れるのじゃないですか。この問題、請求権の問題を出したということははっきりわかっておるわけですね。しからば、李ラインの問題も出したかどうかということすら言えないというようなことでは、これは納得ができないんですね。出したけれども内容はそれは言えない、今の説明、私個人の意見だからといったやつは、それは言われたのですね。
  46. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあ、外交をやっておりますと、十のことをやっても一つぐらいしか言うことができないので、うまいことやったと思っていると、自分は何にもやっていないと思われて、つらいことがずいぶん多いわけであります。しかし、これはやはり慣例に従わなければならないと思いますが、言ったか言わないかは、私の話で御想像願うほか仕方がないと思います。
  47. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まあ想像しておきます。言わないという人に対してどれくらい言ったって、言わないんですから。  次に、ひとつ沖繩の問題にちょっと触れておきたいと思います。アメリカの対沖繩新政策が発表されて、これに対して日本政府も協力するということになっておりますが、念のために聞いておきますが、三十七年度で沖繩に対する民生安定と申しますか、そういう予算はどれくらい組まれておるのですか。
  48. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 昨年の約二倍になりまして、十億二千万円でございます。  なお、所管の総理府から御答弁申し上げます。
  49. 大竹民陟

    政府委員(大竹民陟君) ただいまの大臣の御答弁のとおりでございます。本年度の沖繩援助関係の予算は約五億四千万円でございます。三十七年度におきましては十億七千万円ということになっております。
  50. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これは主としてどういう方面の施策に使われるのですか。
  51. 大竹民陟

    政府委員(大竹民陟君) 沖繩の産業の振興あるいは国土開発というふうな関係に使われます経費が、そのうち大体半分ぐらいでございます。それから、医療関係その他社会福祉関係に使われます費用が組まれております。さらに教育あるいは技術の援助というふうな関係に使われる経費。大別いたしまして、そういうことになります。
  52. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 社会保障、教育関係は幾らですか、ちょっと聞こえなかったので。
  53. 大竹民陟

    政府委員(大竹民陟君) 数字を分けて申し上げますと、農業振興、国土開発関係の経費が四億四千二百万円でございます。それから、教育文化向上関係の経費が二億七千七百万円でございます。それから、医療と福祉関係の経費が一億一千七百万円、そのほか民生安定に関する経費、と申しますのは、消防施設でございまするとか、気象観測でございますとか、そういった方面の経費でございますが、これが一億六千三百万円。そのほかに、沖繩関係十億七千万円と申し上げましたが、いろいろな事務費等を含めておりますので、十億七千万円でございます。以上申し上げました合計は十億約二千万円でございます。
  54. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 総理府のほうに入って、ちょっと脇へ行ったようですが、農業なり産業の振興の四億四千二百万円、これは沖繩の農業というのは、どういう方面の——農業改良といいますか、どういう方面に置かれておるのですか。
  55. 大竹民陟

    政府委員(大竹民陟君) 四億四千二百万円の内訳でございますが、御案内のように、農業が非常におくれておりまして、この方面の改良の余地が非常に多いわけでございます。事項として取り上げておりますのが、日本の技術を導入して沖繩で模範農場を経営する、こういう項目がございます。それから、沖繩の土地改良事業でございます。内地と同様な組織で土地改良が行なわれておりますが、それに援助したい。それから、一般農業関係の資金を援助いたしたい。低利長期資金でございます。それから、沖繩の港湾事業、あるいは道路事業、あるいは護岸事業、大体内容的にはそういうふうな割り振りになっております。
  56. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これはどういう形で援助をされるのですか。沖繩政府に対する補助金とか、それともそのおのおのの農業団体なりあるいはそういう団体に対する補助金とか、あるいは各市に対する補助金とか、どういう方法でやられるのですか。
  57. 大竹民陟

    政府委員(大竹民陟君) 一部は沖繩の団体に交付するというものもございます。こちら側に南方同胞援護会という会がございますが、南方同胞援護会に政府から渡しまして、南方同胞援護会から向こうの民間団体に渡すという仕組みになる部分もございます。その他の大部分は日本政府から沖繩の琉球政府に直接渡し、向こうで一般会計に繰り入れまして使っておる、こういうことになっております。
  58. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 琉球政府に渡すということですが、それは何か日本政府との間に、これは日本政府は直接干渉するわけにいかぬのですね、向こうの行政に対して。そうすると、特別勘定で向こうに渡してしまう、こういうことでやってもらいたいということだけをいって向こうへまかすと、こういうのですか。
  59. 大竹民陟

    政府委員(大竹民陟君) 日本の施政が直接及んでおりませんので、内地と同様な意味合いで琉球政府を監督したり指導したりということは、現在のところできないことはお話のとおりでございまして、しかし、一面からいいますと、こういう項目を定めまして援助をした、その援助がどういうふうに使われておるかわれわれとして確認できないということも、これは非常に困ることでございます。従来のやり方を大体御説明いたしますと、沖繩琉球政府と私どもの間で約束を結んでおります。これはこういう目的で渡すものである、こういうふうに使用してもらいたい、あるいはこういうふうに使うのだというような、大体内地で各府県を国が指導いたしましたり補助金を交付いたしましたりする場合とほぼ同様な内容の約束ごとをいたしまして、その効果を確かめますためには、場合によって私ども直接出かけていってそれを確認する、あるいはまたそれが目的どおりになりません場合には、その後の援助においてこういう点は十分に考慮するというふうな内容の、相互の取りきめを行なっておるわけであります。日本の会計検査院法なりあるいはその他行政指導が直接に及んでいきませんことは、現状につきましてはやむを得ないわけでございますが、それをなるべくカバーすることができますように、そういった意味合いを含めましたいろいろな取りきめを交換いたしまして、その取りきめに従って仕事をやっておる、こういうことでございます。
  60. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと関連して。対沖繩政策の是非は別として、今度の新政策で、沖繩に対する六百万ドルの援助が三倍ないし四倍にかりになるというようなことになり、それに見合うわけではないが、とにかく日本としても、本年の十億余の対沖繩援助額を相当大幅な増額をして、まあできれば私は修正がいいと思うのだけれども、時期的には補正予算ということになると思うのですが、そういうことで今の山本委員の御質問関連して、南方連絡事務所の機能を拡大をしない限り、そういう調整は非常に困難になってくると思うのですが、その点はどういうふうにお考えになるのですか。
  61. 宇山厚

    説明員(宇山厚君) 三十七年度から沖繩に対する援助が大幅に拡大いたしますので、したがいまして、那覇の現地にあります南方連絡事務所で行ないます業務もかなり増加して参ると思います。それから、現地で援助業務の施行にあたりまして、琉球政府側、米民政府側と協議することも多くなってくるだろうと思いますが、はたしてどういうふうになっていくかということは、まだこれからの推移を見なくてはわかりませんけれども、大体の傾向としては、ただいま羽生先生のおっしゃいましたとおりじゃないかと思っております。したがいまして、那覇の南連事務所の権限を拡大することにつきましても、やがて適当な措置をとらなくてはいけないじゃないか、そういうふうに考えております。
  62. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ、時間が迫ってきたから、もう一問だけこれについて。過去——今度は相当増額されたが、やはり三十六年度には五億ほどやっておられます。その成果、今までの成果はどうですか。
  63. 大竹民陟

    政府委員(大竹民陟君) 実は沖繩に対する援助は昭和二十七年度に始まったわけでございます。その当時の金額は約二百万円見当であったと記憶いたしております。今日までだんだん増加いたして参りましたが、本年度までの援助の方法、これは主として技術援助あるいは医療の援助というふうなものがほとんど中心でございます。沖繩におります技術関係者を内地に呼びまして研修をする、あるいは日本の技術関係者を向こうに出して援助を与えるというふうな、人の交換によるものがほとんど大部分でございます。本年度になりまして初めて、模範農場を設置するというふうな仕事が一つ新しく出てきたわけでございます。従来は人の交換ということがほとんど全部であったというふうな状況になっております。一部は南方同胞援護会を通じまして向こうに医療施設などを作っておりますけれども、人の交換という、医療の交換あるいはまた技術者の交換援助というものが中心になっております。これは沖繩側におきまして最も欠けておる点でございます。日本内地と文化の系統が同じでございますから、日本内地の本土の文化の状況に、文化に追いついていきますためには、当然そういった交流が必要であるわけでございます。数年にわたってこれを行なっておるわけでございますが、最も基本的な点について私ども援助して参ったというふうに考えております。
  64. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは、次にもう一つだけ外務大臣に。海外経済協力の問題ですが、本年度予算で十三億五千九百三万七千円出ておるんですが、海外技術協力事業団、これはどういう内容になるんですか、ちょっとその構成または事業の内容を簡潔にひとつ説明を願いたい。
  65. 甲斐文比古

    政府委員甲斐文比古君) 技術協力事業団のまず目的を申し上げますと、アジア地域その他開発途上にある海外の地域、これは中近東、アフリカ中南米を含むわけでございます。これらの地域に対しまして条約その他国際約束に基づく、いわゆる政府ベースと申しておりますが、この技術協力の実施に必要な業務を効率的に行なうことを目的としてこの事業団を設立いたしたいと思っております。今申しましたように、実は民間ベースでも技術協力をやっておるのでありますが、この事業団が取り扱いますものは、本来政府がやるべきものを政府の委託を受けてやるということであります。資本金は国から二億円出資することになっております。なお、将来必要があるときには追加出資ができるようになっております。  事業団の構成でございますが、役員といたしまして会長一名、理事長一名、理事が四名以内、監事が二名以内、なお役員といたしまして前項の理事のほかに、今申し上げました四人の理事のほかに非常勤の理事、無給でございますが、四人以内を置くことができるようになっております。  事業の内容と申しますか、業務は次のようになります。まず、技術研修員を海外から受け入れまして、これに対しまして技術の研修を行なうということが一つ。次に、先方からの要請に応じまして、専門家を派遣して現地で技術協力を行なう。それから、第三に、アジア等の地域に技術協力センターというものを設置いたしまして、必要な人員を派遣し、また必要な機械設備の調達を行ない、さらに設置された後にはその運営に必要な業務を行なうということでございます。それから、第四に、公共的な開発計画に関して基礎的な調査を行なう。これは一名投資前基礎調査といわれておるものでございます。さらに、ただいま申し上げました研修生を海外から受け入れますこの受け入れ研修生のための研修施設及び宿泊施設を設置し運営するということが、業務内容になっております。おもな業務はただいま申し上げたものでございまして、そのほかにこれに付帯する業務その他の業務も、外務大臣の認可を受けて、先ほど申し上げました目的を達成するため必要な業務はこれ以外にも行ない得る、そういうことになっております。
  66. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ、あとの人の時間もありますから、ずいぶんたくさん質問したいことがあるんですが、一応私はこれでおいておきます。   〔主査退席、副主査着席〕
  67. 田畑金光

    ○田畑金光君 最初にお尋ねしたいことは、国会に対する予算説明の第七に、「国際協力に必要な経費」として二億四千四百八十四万円、それからからもう一つは第十一に、「国際分担金等の支払に必要な経費」として二十三億千五百五万四千円と、二つの項に分かれておりますが、国際連合に対する負担金とか、あるいは国連の諸機関に対する分担金、拠出金、これはこの二つの項目のどれに入るわけですか。さらにまた、国連に対してわが国が負担しておる負担金ですか、これはどの程度なのか、これをひとつ御説明願いたいと思います。
  68. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 便宜私から申しまして、あと会計課長から補足説明いたします。  第七のは、現実に支払い経費でございます。それから、第十一のは分担でございます。こういうことになっているわけであります。国連におけるわが国の分担金は、今回はまた比率が上がりまして二・二七%ということになっております。
  69. 田畑金光

    ○田畑金光君 昭和三十五年ないし昭和三十六年の分担金と申しますと、具体的に金額にすれば三十五年は幾らになり、三十六年度は二・二七%と、こういうことですが、金額に表わすとこれは幾らになるわけですか。
  70. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 三十六年度は、国連そのものに対する分担金は三十六年度は八億五千八百万円、それから三十七年度になりまして十億三千八百万円でございます。
  71. 田畑金光

    ○田畑金光君 そうしますと、三十七年度の分担金が二二・七%で十億三千八百万円だと、こういうことですか。
  72. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) さようでございます。
  73. 田畑金光

    ○田畑金光君 さらに国連のいろいろな機関があるわけですね。たとえば問題になっているILOの機関とかいろいろありますが、そういう国連の各種機関に対する分担金というのはどの程度負担されるのですか。
  74. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 国連関係の分担金の全部の額が先ほど大臣から御説明になりました二十三億一千五百万円でございまして、その中に十億三千八百万円の国連そのものに対する分担金がございますから、差し引きました十三億ばかりのものがほかの機関の分担金になるわけでございます。
  75. 田畑金光

    ○田畑金光君 国連そのものに対する分担金は十億三千八百万なんです。ですから、残余は国連のいかなる機関に幾らずつ分担しているのか、個別に説明してくれと要求しているんです。
  76. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 非常に多くの機関でございますが……。
  77. 田畑金光

    ○田畑金光君 おもだったものでいいです。
  78. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) 国連食糧農業機関、これはFAOでございますが一億五千九百万円、大きいのを拾いますと、ユネスコ一億一千九百万円、それからガットでございますが、これが千三百万円、それから後進国経済開発技術援助拡大計画、それから特別基金、スペシャル・ファンドでございますが、これが七億三千六百万円、大きいところは大体そんなところでございます。
  79. 田畑金光

    ○田畑金光君 外務大臣にお尋ねしますけれども、例の国連がスエズの問題やコンゴの問題で相当の出費があり、それが原因で財政逼迫を来たしている。特にソ連圏やら、あるいはコンゴの問題ではフランスやベルギーが負担金を納入しないこと等が手伝って、国連に財政的な危機が来ている。そこで、国連債二億ドルの発行ということになって、そのうちわが国としても応分の協力をするということで、五百万ドルを引き受けることになったということが伝えられておりますが、事実かどうか、政府の方針を承りたいと思います。
  80. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) コンゴの問題、あるいはスエズの問題に関連いたしまして、国連軍経費が拠出されるわけでございますが、この不払いは、今お話しになりましたような国が経費を分担いたしません関係もありまして、昨年末には八千万ドルの巨額に達しましたわけでございます。で、十六回総会におきまして、ウ・タント暫定事務総長が二億ドルの国連公債を発行するということを提案しまして、これが決議されたわけでございます。この公債の買付は本年末までに行なうことになっております。米国政府は一番の大口でございますが、目下一億ドル分の買付について議会の承認を求めようといたしておりますし、それからカナダとかオランダはすでに自国の国連分担率相当分の買付を表明しているわけでございます。わが国としましても、国連協力の立場から応分の分担をしたいと考えておりますけれども、まあ一方、この国連の今のスエズあるいはコンゴ経費の分担につきましては、国連の拡大援助計画というのがございまして、エタップと言っておりますが、これの援助をわがほうは一方受けているわけでございます。これは具体的に申しますと、御承知のように、大阪地区の築港等の視察、あるいは技術的なアドバイスいたしているわけであります。そういうことがあるからというので、これは半額負担するということにしているわけでございます。そういう経緯もございますから、幾ばくのものを負担するかということは今いろいろ考究中でございますが、一部に伝えられましたようなことはまだきめておりません。五百万ドルの額にきめたというような説もございますけれども、まあそれは数字は確定いたしておりません。
  81. 田畑金光

    ○田畑金光君 これはそうしますと、アメリカとか、その他カナダ、オランダ、東南アジアの国々等でも、すでに応分の負担をきめている。そこで、日本政府としても国連における立場あるいは東南アジアに対する立場上負担するということは方針としてきめられたと、こう聞いておりますが、それは方針としては応分の負担をするということだけは政府の方針としてきまっているわけですね。
  82. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) さようでございます。方針としてはそういうふうにきめております。しかし、幾ばくのものにするかという具体的な数字はまだ未決定ということでございます。
  83. 田畑金光

    ○田畑金光君 先ほどのお話のように、国連に対する負担が二・二七%とした場合に、二億ドルの中で負担するとすれば、結局やはり四百四、五十万ドル——五百万ドルになりはしませんか。   〔副主査退席、主査着席〕
  84. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 大体四百五十万ドルぐらいになるわけでございますが、さっき申しましたように、こういう特別分担の負担額は半額にしておりますので、それともにらみ合わせて考えたいと思っておるわけです。なお、公債は二分の利子で二十五年償還、一般の負担経費から差し引く、こういうことになっております。
  85. 田畑金光

    ○田畑金光君 これは当然政府として幾ら幾ら負担をしようという方針がきまるとすれば、国会の承認ということにもなりましょうし、また、今年の秋の国連総会までには政府としても最終態度を金額についても出さなければならぬ、こう思いますが、そういう節は国会の承認、こういうことになるわけですか。
  86. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) ちょっと聞き漏らしましたが、財政支出が必要かという御質問でございますれば、何と申しますか、投資の形になりますので、財政支出は必要ないと思います。
  87. 田畑金光

    ○田畑金光君 投資の形になるので、国会の承認は必要でない、政府だけで処理できるということになるわけですか。先ほどの、たとえば、これはアメリカと日本とは違うのでしょうけれども、アメリカでも現に今議会に要請をして、一億ドルの公債を引き受けるについては議会に諮っておるということですが、日本は議会に諮らないで、政府部内だけでできるわけですか。
  88. 田代一正

    説明員(田代一正君) お答えいたします。実は先ほど外務大臣の御答弁があったと思いますが、国連公債の問題は確かに問題になっております。それで政府内でどうするかという問題につきましても、いろいろ議論はしておると思いますが、しかしながら、それにつきましてそれに応募するという工合にきめたことは、全然ございません。目下検討中ということが真相かと思います。  もう一点、じゃあそれでもしそうなった場合にどうなるかということだと思いますが、その場合におきましては、さっきお話がありましたように、現在提案されております国連公債と申しますのは、たしか二%の金利で二十五年間という期限だと思います。そういたしますというと、現在国がもしそういったものに応募するという場合にどういう手段、手立てがあるかということでございますが、これにつきましてもまだ態度がきまっておりませんので、どうするかということは実は詳しく検討したことはございませんが、今国にある制度としましては、たとえば外為特別会計、これでそういった債券を買うという形になるか、あるいは、日本銀行でそういったものを買うということもできましょうし、いろいろな方法があると思います。そういったことは検討の段階でございまして、しかも全然例のない事態でもございますので、目下態度をきめるということ自身がきまっていない段階でございますので、そういったことに関連いたしまして今後研究されるという工合に考えております。
  89. 田畑金光

    ○田畑金光君 今の主計官のお話は、先ほどの外務大臣の御答弁とニュアンスの点において、あるいは内容の点においても相当開きがあると思うのですが、外務大臣の御答弁は、国連の発行する債券を政府としても応分の協力をするという方針についてはきまっておる。政府において方針もきまっておるという、実は今直前にお聞きのとおりに答弁があったわけです。われわれといたしましても、これは国連を強化するという従来の政府の方針から見ても、あるいは今日の国連の国際平和の確保に占める地位から見ても、当然協力するという立場で、この問題には取り組むべきだと、こう思うのです。基本的な方針については、小坂外務大臣は応分の協力をするという政府の方針はきまっておるというお話、ところが今主計官の御答弁は、それも含んで今検討中であるなんていうことになってくると、ちょっと大蔵省は少しなにじゃないんですか。独善というか、思い上がっていませんか。いや、これは外務大臣の御答弁でいいでしょう。あなたは外務大臣の先ほどの答弁を否定するわけですか。
  90. 田代一正

    説明員(田代一正君) どうもまだ部内で話がきまらん問題について、それぞれ各省の意見を求められたわけで申しわけないと思いますが、この問題につきましては、これは大蔵省の考え方になるかと思いますので、たいへん恐縮に思いますが、こういうことがなぜ胚胎したかということだと思うのです。国連の財政危機という問題だと思うのですが、さっき外務大臣が申しましたように、あるいはコンゴのためにあるいはスエズのために金が要るということで、しかも、それに対して各国の拠出金が少ない。全部で六割しか入っていないと思います、特別な分担金というのは。そんな関係で出たものでありますが、ひるがえって考えますと、わが国では、一応国連の分担金はもちろんのこと、その他特別の分担金、コンゴの分担金にいたしましても、スエズの分担金にいたしましても、それ相応に払っている国の一つだと思います。そういったことも考えなければならない。それからまた、やはり日本国際収支のいろいろの問題もからんでくる。そういったことを彼此勘案いたしまして、大きな立場でどうきめるかということじゃないかと思います。外務大臣の御意見と全然違うということでもないと思いますが、ただ、とにかく政府段階としてはまだきまっていないということだけは申し上げます。
  91. 田畑金光

    ○田畑金光君 外務大臣、それでいいのですか。あなた、一主計官の答弁で、あなたが私に答えた先ほどの基本的な線というものは、まるっきり無視された答弁だが、外務大臣、どうですか。
  92. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 外務大臣であり、国務大臣である私の答弁をひとつ……。
  93. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は外務大臣であり国務大臣である小坂さんの答弁を信じておりますけれども、どうもしかし、同じ席に並んで主計官がまただいぶ違ったことを言うというのも、これはおかしなことですな。主計官に申し上げてもこれはしようがないですけれども、ひとつ今外務大臣答弁されたことだと思うので、これは予算委員会等においても、政府の方針は一貫してそういう立場で答弁なされているのだから、あまり財政的な技術的な面のみからこういう問題を考えて、とかくブレーキをかけるというようなことは、これは十分ひとつ反省すべきだと、私はこう思うのです。  そこで、今の主計官の答弁関連してお尋ねしますが、結局、この国連債の二億ドルの発行というのは、ソ連あるいはその他の国々が分担金を負担しなくなったので、その赤字を埋めるためにこれを発行しなければならなくなったのか。この国連の財政危機というのは、当然負担すべきソ連その他の国々が負担しない結果、この二億ドルの国連債を発行せざるを得なくなったのか。その辺の事情をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  94. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 国連の分担金の任意拠出のものにつきましては、コンゴが非常に大口であるわけでございますが、コンゴに国連の緊急措置として関係国が軍隊を出すということは、これは国連の当時のハマーショルド事務総長の時代にきまったわけでありますが、そのきめ方について、ソ連が非常に異議を言って、そういうものには経費を負担しないということを言っているわけであります。一方、フランス等においても、国連の従来なされた決議その他の関係もあって、特別分担金の拠出を拒否している。しかし何といっても大口は、共産圏の国が出さんということが、非常に大きなファクターになっているわけです。一方、コンゴの情勢もだんだんよくなってきておりますが、まだこれから相当経費が要る。ことに昨年末の決算尻では八千万ドルでございますけれども、まだ決算しておらないものを寄せてみると、一億数千万ドルになるのじゃないかというようなことまで言う説もあるくらいでございまして、お説のとおり、このコンゴ並びにスエズの問題ですが、ことにコンゴの問題をめぐって非常に国連が財政的に困難な立場に立っている。これが国連公債を出している動因でございます。わがほうといたしましては、これは国連協力の趣旨もございますが、ことにわが国海外派兵というようなことは全然考えぬわけでございますから、他の部分でやはり国連を盛り立て、これに協力していくということは非常に必要なことだと考えておるわけでございます。しかし、いろいろな意見もございますので、半額分担ということを今までやっておりますから、その分についてまあ二・二七%にそっくりいけば四、五百万ドルになるわけでございますが、これを他のものに準拠してどう持つか、これを半分にして持つか、あるいは何ぼにして持つか、こういう点は、これからの研究問題と思いますが、これは出さぬというようなことは、これは考えられるものではなく、政府としては協力して出す、そういう気持でございます。
  95. 田畑金光

    ○田畑金光君 これは出すという前提で私も質問しているわけですが、その場合もやはりこれは国会の承認事項というようなことになるのが常識じゃないかと、こう思うのです。先ほどの主計官のお話のように、日銀に引き受けさせるとか、外為特別会計で買わせるとかいうようなことになってくれば、またこれは国会に付議しなくてもできるでございましょうが、しかしやはり私は、この種問題は重要な一つの国連外交、あるいは国連強化の大事なかなめであるとするなら、私はやはり国会にこれを付議して、国会の承認を求めるということが本来の筋道じゃないかと、こう思うのですけれども、この点はどのようにお考えでしょうか。
  96. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは御意見十分承りまして研究さしていただきますが、まあこの日銀とか外為とかいう方法もございますし、あるいは予備費支出という場合もございますし、補正予算というものを出しまする場合があれば、そのときに一緒に考えるという方法もあろうかと思います。そういうことになりますれば、かりに補正予算でありますれば、この予算の承認をもってこの歳出の内容を御承認願うということになりますから、それも一方法かとも思います。とにかく今後よく関係各省間においても連絡させて、研究さしていただきたいと思っております。
  97. 田畑金光

    ○田畑金光君 それから私は二、三沖繩の問題でお尋ねしておきたいと思うのですが、きょうはむずかしい条約の問題とかいうことは抜きにいたしまして、ひとつ近くアメリカの新沖繩政策をめぐりて日米会談も持たれると聞いておりますので、まあそういう節に、ひとつ小坂外相から特にお話を願いたい、こう思う二、三の点だけをひとつお尋ねしておきたいと、こう思うのです。  その第一は、この間、私予算委員会のときでもお尋ねしましたが、沖繩の代表国会に参加させるかどうかというこの問題です。これに対して小坂外相の御答弁は、要するに、沖繩にはアメリカの施政権が厳然として行使をされておるので、公職選挙法を沖繩に施行することはできない、「したがって沖繩を全部または一部とする選挙区を設け国会議員を選出するということはできないと思われます。なお、」、その次ですが、「国会議員としてではなく、オブザーバー等の資格で国会に参加させることができるかどうかは、国会法の問題でございまして、国会自体が決定すべき問題でございますが、憲法上は必ずしも不可能でない、かように思っております。」、そこで、この立場は私たちもいろいろ研究してみますと、憲法上は、国会法の改正等を通じて、オブザーバーとして沖繩の代表を参加させることは一向差しつかえない、こう私たちも解釈しておりますが、この御答弁政府の方針あるいは政府の見解と承ってよろしいかどうか。
  98. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) さように政府としては考えているわけでございます。憲法解釈としてさように考えているわけでございますが、ただ、技術的にオブザーバーというものを国会に出席を求めるという場合に、いろいろな手続的な問題がそこにあるわけでございますし、もう一つは、沖繩の立法院議員は、アメリカが平和条約第三条によって有する沖繩における立法上の権力のもとに立法権に参加するものでございまして、したがって、この議員を日本国会に参考人として呼んで、米国の沖繩統治について陳述を求めるということは、対米考慮上適当を欠く面もある、こういうこともあるわけでございます。さような実際問題としてこれを行ないまする場合に、技術的なそういう問題があるということを頭に入れて、国会において御決定をいただくということがよろしいのじゃないかと思います。
  99. 田畑金光

    ○田畑金光君 そのような顧慮ということも、当然対アメリカの関係では考えられると思いますが、そういう話し合いこそ、今後の日米会談等において十分ひとつ取り上げられるべき問題だと、こう思うんです。また、国会としては、国会独自の判断において、憲法、国会法の建前上、沖繩の施政権返還以前に、住民代表がたとえオブザーバーであっても、日本国会に参加して、沖繩の事情が常に日本国会に反映させられるということは、今後の経済援助の増大その他から見ましても、最も妥当な措置じゃなかろうか、こう思うので、国会自体の問題は、今後それは各会派の話し合いで問題の促進をはかっていかねばならぬ、こう考えております。  それから、もう一つ、私関連してお尋ねしたいことは、この間私は出版の自由という問題でお尋ねしたわけですけれども外務大臣の御答弁は、出版の自由は保障されているというような御答弁でございましたが、特連としましては、そのように現地の情勢を把握しておられるわけですか。
  100. 大竹民陟

    政府委員(大竹民陟君) 沖繩で現在どういう形になっておるかということでございますが、現在のところ、出版については許可を取るということに定めがございます。しかし、実際問題といたしましては、沖繩側で許可を申し出まして許可されなかったという実例は、実は一つもないわけでございます。最近まで政党の機関誌が許可されないという形で残っておったのが一つございますが、昨年の暮れでございましたか、あるいは本年に入りましてからでございますか、これも許可を取っている、昨年問題になりましたものは。もう一つ「うたごえ歌集」というものが一つあったと思いますが、これもその後許可されて出ている。政府といたしましては、許可を要するという制度になっておりますが、今申し述べたとおりでございまして、なお、この許可制を改めるかどうかということについては、沖繩側でもかねて検討が進められておりまして、先般の法律改正のときには届出制に改めるというふうな一応の案が出ておったというふうに承知しております。
  101. 田畑金光

    ○田畑金光君 特連局長の御答弁で、昨年の末あるいは今年の初めに、政党の機関誌等の発行についても、許可制がなくなったということならけっこうでございますがですよ。私の聞く限りにおいては、政党の機関誌発行は、全部許可制であり、あるいはまた沖繩教職員会等の発行する教育新聞等も同様に厳重な許可制をとっておる。こういうことをわれわれ聞いておりますが、ひとつこれらの点は、さらに現地の実情を確かめて、その上に立って、もしそのような制限等があるならば、この際私は出版の自由等の保障についてアメリカ側と十分交渉していただきたい。このことを私は外務大臣に強く要望しておきます。  次に、渡航の自由でございますが、これもこの間のお話ではたいして問題がないような御答弁でございましたが、毎日の新聞を見てもおわかりのとおり、この新政策が発表されたあとでも、沖繩においては出入国管理部ですか、その門前には朝早くから百数十名の人が常に列をなして許可手続に狂奔しておる、これが実際の姿であるわけです。ことにまた、日本から沖繩に行くについても、これは政府の公務員の人方は自由に、あるいは手続をとれば拒否されないで行けるようですけれども、しかし御承知のように政党関係の、たとえばわれわれが沖繩に行こうといっても、なかなか行けないでしょう、事実問題として。また沖繩から日本に旅行したいといっても、いわゆるマークされた人方については、なかなかこれは補助申請書という手続によって相当これはチェックされておる。幾ら申請を出して幾ら拒否されたかということは、ちゃんと私も資料持っておりますが、こういうことは、やっぱり渡航制限の撤廃については、特に私は小坂外相に今の点を日米折衝で取り上げてもらいたいと思うんです。大臣としてはどうお考えですか。
  102. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) さらにこの問題については、実情を私も一そう詳細に検討いたしまして、改善すべき点等をよく研究いたしました上で、よく先方とも話してみたいと思っております。
  103. 田畑金光

    ○田畑金光君 国旗を掲げる自由が許されたというんですが、これはどの程度の自由なのか、特に、まず特連局長から御説明願いたいと思います。
  104. 大竹民陟

    政府委員(大竹民陟君) 昨年のワシントンでの会談の結果、国旗の掲揚が許されたということでございます。一般に沖繩で日本の国旗を掲揚するということには何ら差しつかえがないわけであります。一般の民家は自由に国旗を掲揚する、従来もそのとおりでございます。ただ一部に制限がございまして、政府の建物あるいはその構内、こういうふうなものに日本の国旗を掲揚いたします場合には許可を要するということになっておったわけでございます。昨年の話し合いの結果、それが改まりまして、沖繩の祝祭日には、今申しましたような場所にも自由に国旗が立てられる、許可を要しない、こういうふうに改定をされております。
  105. 田畑金光

    ○田畑金光君 祝祭日には、国旗の掲揚が官公衙等でも許されたというのですが、一年のうちに何回ぐらいですか。
  106. 大竹民陟

    政府委員(大竹民陟君) 日数をはっきり記憶しておりませんが、日本の内地の祝祭日よりも、向こうの祝祭日のほうが若干日数が多かったというふうに記憶しております。
  107. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は特連局ですね、現地には出先の機関を持っているんだから、一体祝祭日に官公衙で国旗の掲揚の自由が認められたんだが、何回ぐらいだろうかということぐらいは、あなたのほうで調査し、承知しておくぐらいの親切がなければ、あなた方の仕事というものの現地末端に対する親切さというものがどの程度かということが疑われますよ。年に何回ぐらいそのような自由が確保されたのか、それを調べてひとつ別の機会に御返事下さい。
  108. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) たしか十五回か十六回だと言っておりました。あとでまた申し上げます。
  109. 田畑金光

    ○田畑金光君 十六回と言っておりましたね。特に、私はまだ現地に行ったことはないし、わかりませんが、沖繩には琉球政府ビルというのが、どまん中にりっぱなやつができているそうです。この琉球政府ビルの屋上には、毎日星条旗が立っている。しかし日本の旗は立っていない。こういうことは、やっぱり私は国旗の掲揚が自由といっても、十分これは考えてもらわなければならぬ問題だとこう思うのです。特に私感銘深く読んだのですけれども、「沖繩新政策をこう思う」ということで、三月二十六日、二十七日、両日にわたって、毎日新聞が現地各界の人の座談会を載せておるわけです。その中に、沖繩婦人連合会長の竹野さんという人がこういうことを言っているのですね。ちょっと読み上げますが、「内地のお母さん方には理解できないかもしれませんが、沖繩の母親や父親には、日本人としての誇りが子供たちになくなるのではないかという心配があるのです。祖国があってなきがごとき現状では、ただばく然と″よい人になる″″社会人としてりっぱな人になる″といった注文しかできません。″日本人になれ″と言っても、もともと日本人ですから、そんなこと言うのは変でしょう。しかし沖繩の立場ではそれがあえて言いたいのです。ところが米国の支配下にあるため、子供から反撃を受けるので思い切ってそうは言えないのです。先生方のつらさも母親の立場のつらさもここらにあるのではないでしょうか。ともかく、日の丸も自由に掲げさせてもらいたい。日本人ですよという子供への注文をあらためて言わなくてもよいだけの環境ができるといいと思います。」私はやっぱり国旗の掲揚の自由などということは、毎日へんぽんと、沖繩琉球政府ビルの屋上には星条旗しか見られないということでは、これは日本人としての感情あるいは日本人としての意識というものが、だんだんだんだん消えていく。あるいは正しい日本人としての意識を持たす上において、これは非常な問題だと、こう思うのですが。小さいようだが一番大事な点だと、こういうように思うのです。私はこういうような点について、外務大臣が国旗掲揚の自由を祝祭日にはできたから、もうこれで十分だというような考え方ではなくして、もっと熱意を持って取り上げていただきたい、こう考えておりますが、御所見を承りたいと思います。
  110. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 御議論は私も感銘深く承りました。日米協議の際には、広く各般の問題について協議を遂げたいと思っております。
  111. 田畑金光

    ○田畑金光君 これは特連局長でいいかどうか、布令百四十五号は、これはもう完全に撤廃されたのですか、どうですか。
  112. 大竹民陟

    政府委員(大竹民陟君) 布令百四十五号と申しますのは、沖繩の労働組合が成立いたします際に、アメリカ側の特定事項の承認を要するということをきめました布令であると思いますが、これは昨年の暮れでございましたか、ことしの初めでございましたか、はっきりした日どりを今忘れましたが、完全に撤廃になっております。
  113. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は時間の関係もありますので、これで質問を終わりたいと思いますが、布令百四十五号は撤廃された、これは喜ぶべきことだと思うのです。ただ問題は、軍労働法の適用が非常にきびしいということです。私は小坂大臣に特にこれはひとつ取り上げてもらいたいと思うのですが、布令百十六号、いわゆる軍労働法による労働権の剥奪と、それから忠誠を誓うというこの忠誓宣言の問題です。沖繩には本土と同様に労働三法があるが、しかし軍に働いておる、しかも軍に働いておる労働者が大半でございますが、五万といわれております。この米軍労務者は布令百十六号によって、別な法規で規定をされておるわけです。この労働者の労働権というものが全く認められていないわけです。ことにこの軍労務者が軍で働くときは忠誠を誓わされると、こう言うておる。忠誠の義務をまず第一に誓わねばならぬ、こう言っておるのです。米国市民としての保護もない、合衆国憲法の保障を受けていない沖繩の人々が、アメリカに対して忠誠の義務があるというのは私はおかしいと、こう思うのです。それは単に一例にすぎませんが、そういうことが結局労働権等に対して、労働組合活動とか自由とかいう面になってきますと、軍労務者についてはほとんど顧みられていない、これが実情だと伝えられております。布令百四十五号については、その他の労働者の労働組合結成の自由等については、布令百四十五号が撤廃されたことによって大幅に自由が認められた、許されたということになりましょうが、軍労働者についてこのような問題が残っているということは、私はまことに遺憾なことだとこう考えておりますが、この点外務大臣はどのようにお考えになっておられるか承っておきたいと思います。
  114. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 布令百十六号につきましては、これは各労働者が米国政府に対して、暴力をもって米国政府の転覆を唱える団体の一員でないということを宣誓した供述書を提出せねばならないという旨を規定しておるのでございます。しかし、今お話しのように米国憲法の保障を受けていない人が忠誠を誓う義務というのはおかしいではないかということで、いろいろ実はこちらでも話をしておりまして、大体高等弁務官はこの改廃について考慮中であるということを、東京にありまする米大使館から通報を受けております。したがって、これも協議の際に十分検討さしていただきます。
  115. 田畑金光

    ○田畑金光君 終わりました。
  116. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 小坂外務大臣にお尋ねしたいのですが、池田総理は共産圏貿易を拡大していきたい、これは国会で何度も繰り返して答弁していらっしゃるわけですが、外務大臣もそのようにお考えになられますか。
  117. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私も同意見でございます。昨年の一−十二の統計でございますが、一九六〇年度では共産圏全体につきまして往復で一億九千八百万ドルでございましたですが、一九六一年度になりますと、これが三億二千万ドル、六割方増加しておるわけでございます。ただここに問題は、非常に日本のほうが入超になっておるという点なんです。入超の点で申し上げますと、六〇年度が五千百万ドルの入超、六一年度が一億一千四百万ドルの入超、全体で三億ドルのうち、一億一千万ドルの入超、こういう点が問題だと思います。
  118. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 総理大臣外務大臣も、共産圏貿易を拡大していきたいという熱意を示されておるようですが、それはまことにけっこうなことだと思うのですが、しかしあなたたちは、口でそう言うが、ほんとうにやろうとしておるのかどうかということについては、私たちはいささか疑問を持つわけなんです。口でそうおっしゃるならば、何で日中貿易について、今直ちに政府間貿易協力を結ぼうとしないのですか。中国自身は道を閉ざしていないのです。いつでも政府間貿易協定を結ぼうと言っておるのです。中国の周総理は、北京の飛行場はいつでも池田総理のために滑走路をあけて待っておると、こう言っておるのじゃないでしょうか。中国のほうは、政府間貿易協定を望んでおる、望んでいないのは池田内閣のほうではないだろうか、なぜ今直ちに日中両国政府間貿易協定を結ぶことができないのか、この点。それに現在鋼材、肥料、人絹糸の取引が多くなるにつれまして、延べ払い等日中両国の中央銀行の間に支払協定を結ぶことが、差し迫った問題だと考えるわけです。これを解決するためには、政府間貿易協定を結ぶ以外には、貿易発展の方法はないと私は考えるのですが、口では貿易の発展を希望せられる外相として、この問題をどう処理なさろうとするのですか、伺いたい。
  119. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 実は御承知と思いますが、この対中央貿易も非常にふえてはおるのであります。一九六〇年度が二千三百万ドル、これは往復で言っております。六一年度が四千七百五十万ドル、四千七百万ドルといいますと、中共のこの貿易が全体減ってきておりますので、イギリスそれから西独それから日本というくらいになってきておりまして、例の長崎国旗事件以前の状態に比べれば、まだまだ非常にいまだしの状況ですが、全体としてふえてきておるということは、いわば何にもしないということじゃなくて、できる限りの道はあけておるためにこうなっておるのだと思うのであります。ただ政府間貿易協定といいますと、どうしても現段階では政府承認の問題がからませられる、こういうのが国際解釈上の通念でございますので、これにはなかなか踏み切れないという問題があるわけです。ただ私どもとしまして、やっぱり貿易というのは、互恵平等の立場に立たなければならぬと申しますか、例の友好商社貿易という形じゃなくて、やっぱりもっと広い基盤でものを中央側においても考えてもらえぬものかと、こういうふうに思っておるわけであります。
  120. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 中国貿易がだんだん発展の過程にあるということは事実ですが、しかし、これは政府の骨折りでなっておるのじゃないですよ。外務大臣の骨折りで中国貿易が発展しているというように考えたら、これは少しうぬぼれ過ぎると思うのですがね。それで、もちろん今の貿易状態は正常でないと思います。しかし、正常化するためにはどうしたらいいか、そのために政府が乗り出して政府協定にいかれなければ正常化しないので、今の姿は好ましくないとあなたはおっしゃっても、ただそう言っているだけで、何だか今やっていることにけちをつけているようなことになって、口ではいろいろな拡大とか、希望するとかというようなことを言っても、実際は本気でやろうとしていない、こういうことが暴露されるにすぎないと思うのですよ。デリケートな、国際情勢が何であるかということは、あと質問したいと思いますが、佐藤通産大臣は、三月一日の衆議院の予算委員会答弁で、現在の日中友好民間個別取引の方式が何か好ましくない、何か悪いことのように言っておるのです。しかし、この個別方式が一体どこが悪いのか、何が悪いのか、それについて外相のお答えをいただきたいと思います。通産省のだれか出ておったですか。
  121. 杉原荒太

    主査杉原荒太君) 今呼んでおります。まだ来ておりません。
  122. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まだ来ていない……。きょう通産省の通商局長の出席を求めておったのです。ところが、局長は会議の都合で出られない、こう言うのです。私は国会が優先するものだと思うのです。それで、次長を代理に出したいから、こういうことを言ってきたのですが、その次長もまだ出てきていないのです。こういうことは、私は、はなはだ不愉快に思うことなのです。この点委員長のほうで善処していただきたいと思います。
  123. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 中共との貿易は、バーター決済というのはやめまして、現金決済になっておるわけでであります。その意味で、非常に取引はやりやすくなってきているのじゃないかと思うのでありますが、まあ通産大臣の今の御答弁でございますが、何といいますか、こちらの気持を言ったのだと思うのであります。すなわち、日本人全体は、別にこの中共の人民を敵視しているわけでも何でもないのでございますが、ある一部の人だけが友好的である。したがって、この商社とだけは取引する、そういうふうに区別されることがどうも実情にそぐわないのじゃないか、こういうことだろうと私はまあ答弁を聞いておりましたが、そういう印象を受けております。
  124. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私たちも、先ほども申し上げましたように、今行なわれておる友好取引という取引ですね、これは正常な貿易関係であるとは私たちも考えていないのですよ。何とかしてこういうことじゃなしに、ほんとうの正常な形にこれを持っていきたいと思っておるのです。大国中国と大国日本の間に、経済交流を一日も早く正常化する必要がある、こういうふうに私たちも考えております。政府はなぜもっと堂々と中国との間に正常な貿易ができるような措置をとらないのか。岸内閣以来、政府は、表玄関も裏口も一切遮断してきたんじゃありませんか、どうですか。池田内閣になっても、この方針は変わらなかったと私は理解するのです。しかし、日本国民は、中国と心からの親善を打ち立てたいと念願して参りました。また、中国も、日本国民との親善を念願しておるわけなのです。だが、池田内閣が中国と国交正常化しないので、せめて貿易だけでもやろうという国民の要望にこたえて、熱心な商社が、圧迫と干渉を排して中国と取引をやったのです。これが現状です。その結果、現在の貿易方式になったのは、全く私はあたりまえのことではないかと思うのです。友好商社はだれにも頼らず、苦労して、細々ながら中国と交渉し、それを通じて日中両国の視善関係をかろうじて維持してきたのだ、こう考えます。これは日中両国人民の心からの要望にこたえたものだと思うのです。一体妨害ばかりしている政府に非難する資格があると思いますか。この個別貿易を非難する資格は、私は政府にはないと考えるのです。政府はけちなどつけずに、もっと堂々と国交正常化と、政府間貿易協定を結んだらどうですか。これが私の意見です。それに中国は友好商社とばかり取引をやろうとしているとおっしゃいますけれども、中国の気持はそうではないのです。その証拠に、最近はだんだん取引商社の数もふやして参りました。大商社も取引をやっているではないでしょうか。池田内閣さえ国交正常化政府間貿易協定を結べば、貿易方式はあすにでも正常化し得るのです。正常化さない責任は日本にあるのです。どうですか、政府間貿易協定を結ぶのですか結ばないのですか、はっきりとお答えを願いたいと思います。
  125. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 政府間貿易協定の問題は、先ほど申し上げたように、中共承認の問題に連なる問題でございまして、この問題が今日非常に国際政治の大きな流れの中で考えられなきゃならぬということを私どもが常々言っておりますことは御承知のとおりでございます。したがいまして、そういうことでなくて日中間の貿易をふやしていくということは、もう非常に私ども歓迎することであって、やはり貿易というのは、必要になって双方が貿易するのでございます。そこにあまり政治的なものをからませないで貿易を相互に伸ばしていくということをわれわれ希望いたしております。
  126. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 外務大臣、逃げ口上を言うのは、もうやめていただきたいと思うのですよ。その答弁は、僕らは聞きあきた答弁なんです、今日まで。責任を中国のほうに転嫁するようなことは、私はすべきでないと思うのです。私は、昭和二十八年から二十九年、三十年と民間貿易協定調印のために中国へ参りまして調印した一人ですが、その調印に当たって、その貿易の責任者はこういうことを言っているのです。今はまだ微々として、日中貿易は、金額においては、たいしたことではないのだ。しかし、日本が将来ほんとうに貿易をする腹をきめるならば、中国はもっともっとたくさんの貿易をやりたいと思っている。日本の置かれている国際的な立場にも、中国はよく理解と同情を持っておるのです。だから、日本の品物の値段、質がヨーロッパ諸国と同じであるならば、ヨーロッパ諸国の物よりも、優先的に日本の品物を大量に買いたい、こう思っておるのですと、こう中国の責任者は言っておりました。先ほど外相は入超になっている、こういうような話ですが、この入超の責任を作っているのは、むしろ私は日本じゃないかと思う。日本さえもっと発展さす方途を講じていくならば、私は実にすばらしい成果が得られるのではないだろうか、こういうふうに考えます。中国と日本との間に政府協定が結べないほんとうの理由は一体なんなんでしょうか。政府も、内心は政府間貿易協定を結び以外に日中貿易の拡大はあり得ないと思っておるに違いないと私は考えます。ほんとうの理由は、アメリカ政府の圧迫を受けて、やろうにもやれないのではないでしょうか。アメリカ政府は右翼や台湾ロビーを使って政治的、経済的に日中貿易の正常化と発展を押えようとしている。外務大臣はその事実を知っていらっしゃいますか。
  127. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私はそういう事実を存じません。特に私どものほうから中共貿易をしたいのだというようなことを言っていることも存じませんし、これは国と国とのつき合いでございますから、相互の立場はやはり相互に尊重し合って、そうしてつき合っていくということがよろしいのじゃないかと思います。
  128. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、アメリカがこの妨害をしている事実はあなたは知らぬ、こうおっしゃるわけですね。それなら私のほうから少し申し上げたい。ライシャワー大使は去る一月大阪に参りまして、神戸製鋼、大日本紡績の工場を見学したわけです。そのときに何を話し合われたか、あなたはお考えになりますか。まさか天気のあいさつだけで終わったわけじゃないのです。ちょうど中国から引き合いのあった鋼材と人絹糸の商談をぶちこわしにライシャワーはこの二つの工場を訪問したのです。今、鉄鋼業界では訪中使節団の人選が行なわれております。八幡製鉄の副社長稲山氏に対しまして、するところから圧力がかかったのです。これはアメリカ大使館からです。肥料を中国に輸出するメーカーに対しまして、台湾政府から圧力がかかったこと、数をあげればきりがないほどあるわけです。この程度のことは、貿易商社の間では、だれ一人知らぬ者もないほど日常ふだんに行なわれていることだと考えます。外務大臣は知らないと言っていらっしゃいますが、ほんとうは知っていながら知らないふりをしているだけにすぎないと思います。結局日中間の貿易、政府間貿易協定ができないというほんとうの原因は、池田内閣がアメリカに従属し、二つの中国を認めたことにあるのではないでしょうか。  次に、日朝貿易について政府の方針を聞きたいと思いますが、朝鮮民主主義人民共和国との間に発電プラントの引き合いがありました。最近は放送設備などの大量引き合いがありました。これらの中に、すでに契約も終わり、製品も完成しましたが、政府朝鮮民主主義人民共和国の技術者の入国を許可しないために、輸出できずに倉庫に積んであるということがほんとうかどうか、伺いたいと思います。なお、NHK方式の放送設備を輸出するにあたりまして、この取引の技術者日本に来ることに関連して、アメリカと日本政府との、特に小坂外相の不当な態度について、ここで私は明確にしたいと思うのです。この放送設備の取引について、政府——池田首相と小坂外相はアメリカ大使館からの圧力でこれを妨害しておりました。しかし、これが道理に反するものであり、経済貿易関係にとって、誤った政治介入であることは、あまりにも明らかなことなんです。池田総理や小坂外相が渡米して留守のときに、時の総理大臣代理佐藤榮作通産大臣と、外務大臣代理の川島正次郎氏は、この設備の輸出と、これに関する朝鮮民主主義人民共和国の技術者日本への入国を了承したわけです。これによって事態は一たんは好転しました。ところが、あなたが執拗な妨害をいたしましたために、再びこれがくつがえされて今日に至っておるわけです。小坂外務大臣、一体あなたはどういう考えでこのような極反動の態度をとられるのか。外相自身が日本国際関係を悪化させていると言われてもいたし方がないと思うのです。全く言語道断なことだと思いますが、外相はどういうふうにお考えになりますか。
  129. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その件なら私も存じております。何か芝電気といいますか、会社の施設を北鮮に輸出する。その際、北鮮側からは技術者を入れて、その技術者によって試験をして、そしてその機械を輸出するということでなければ、もうその機械の輸出ができないというようなお話であったかと思います。今北鮮側との間には、人的交流の問題は非常に慎重に扱おうということになっておりまして、この問題は、経済問題をこえて、非常に政治的な分野にいろいろ及ぼす影響もあるということで、慎重に扱うことになっておるわけでありますが、そういう段階におきましては、機械の輸出でございますから、これを先方に据えつけて、十分ノーハウ等は先方にも教えて、そして機械が出ていくわけなんでございますから、そこまでせぬでも方法はないものか。今の段階でそういう方々が日本に入って来るということになると、北鮮間の人的な交流というものが、それを機会に完全に自由になるということになるので、今の段階ではそれは困ると、こういうふうに申し上げたわけであります。機械輸出の方法は別に御工夫が願えるのじゃないかというのが私の考えであります。
  130. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 通産省の方が出席しておりますか。この問題について、通産省の考え方を述べてもらいたいと思います。
  131. 山本重信

    説明員山本重信君) ただいまの北鮮向けの輸出問題につきましては、通産省といたしましては、輸出許可をおろします際には、そうした条件がついていることは実は知らなかったのでございます。その後になりまして、会社のほうからそういう話がございまして、いろいろ貿易振興の観点と、現在の北鮮との外交問題、あるいは日韓との関係等を総合的に判断いたしまして、外務省、通産省両省の間で、現在の情勢のもとにおいては認めることは適当でないと、こういう結論に達したわけでございます。
  132. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 たとえば通産省は一たん認めたでしょう。出すことを認めたでしょう。それが外務省の意向によってくずれてしまったのでしょう。どうなんですか。
  133. 山本重信

    説明員山本重信君) 通産省で輸出承認をおろしますときには、契約条項の内容一々について全部検討いたすわけでもございませんので、その当時はそういう条件があるということを実は承知いたさなかったのでございます。あとになって会社のほうからそういうことを聞きました。貿易促進という立場から申しますれば、できるだけ貿易ができる限りで行なうことが望ましいのでありまして、通産省としては、ほかの事情が許せば、できるだけ輸出ができるように取り運びたいと考えておったわけでございますけれども、諸般の情勢、特に外交的な観点からの外務省の御意見がございましたので、通産省としても、最終的にはそれに同調するということにいたしたわけであります。
  134. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 だから、通産省としては、貿易振興の立場から、そうすることに対して賛意を表しておったのでしょう。だから、賛意を表したから、業者は製品を製造したのです。ところが、後に外務省から横やりが入って、そういうことはしてもらっちゃ困るということで、それで通産省はこの貿易をとめたわけであります。被害を受けたのはだれですか。通産省と外務省との見解の相違でその被害を受けたのは、実際は業者じゃないですか。この業者は毎日大へんな金を使って倉敷料を払って倉庫の中に置いていたわけです。外務省と通産省の見解の相違がこういう結果を来たしたのじゃないですか。通産省は、最初貿易振興の立場でそれを認めたというなら、あくまでもそれをなぜ突っぱねなかったか。貿易振興の立場からそれをやることが正しい、外務省がとめることが間違っておる。何で外務省は朝鮮民主主義人民共和国との貿易をそういうふうに妨害しなければならぬのか。なぜ日本の貿易発展のためにそれを認めようとしないのですか。通産省と外務大臣の見解をもう一度聞かして下さい。
  135. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先ほど私申し上げましたような事情でございますし、今、通産省の次長の答弁を伺っておりましても、最初北鮮の技術者日本に入れて、試運転をその技術者によって見させなければ輸出はできないのだ、そういうような条件を通産省においては御存じなかった、こういうことなんでございます。しかし、現実にはそういう条件がついておって、それはどうしても今の建前で困る、こういうことでありますので、やむを得ないということに通産省もお考えになっておる、こういうことでございます。
  136. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 外務大臣、貿易の振興のために、今、日本が赤字で困っておるときに、なぜそういう商売で北のほうの人を日本に入れることができないというのか。そういうことは、僕ら考えたらおかしなことです。日本人は北へ行っておるのですよ、日本人は。何で朝鮮民主主義人民共和国の人を日本に入れることができないか。しかも商売、これはビジネスです。政治の意図を持って来ておるわけじゃないのです。ビジネスで来る人を、なぜそういういい商売相手でありながら、朝鮮の人が日本へ来ることを拒否しなければならぬか。どこに気がねしておるのですか。
  137. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は、貿易がふえることを望んで、いろいろそのような措置をしておるわけでございますが、北鮮で伸びますこともけっこうでございますし、そういうことを歓迎しておるわけでありまするが、今のような点に触れて参りますると、今度はそれだけのものが北鮮にふえるより以上に、今度は韓国側において減る、そういうことになりましたら、プラスマイナス、マイナスのほうが大きいということになってしまう場合もあるわけでございます。特に韓国との間には、日韓会談を進めるという、こういう立場で非常に微妙になっている状態でございまするし、そういう際に、ことさらに好んで波乱を呼ぶということは、どうも私としては避けたい、こういうことなんでございます。
  138. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あんた韓国々々とおっしゃるけれども韓国は斜陽国ですよ。しかも、もう大統領は辞職したり、軍人がファッショ内閣を作ったりして、世界もう衆目の一致するところの斜陽国ですよ。不安定で、いつくずれてしまうかわからぬような国ですよ。そんな国に気がねして、これからどんどんと発展していこうというよいお得意に門戸を閉じてしまうというようなことは、これは日本外務大臣としておかしいじゃないですか。もっと大きな腹でやったらどうですか。これと同じようなことは最近にもあるということを聞いたのですが、四月初旬に予定されている大阪の見本市に、朝鮮民主主義人民共和国から出品するため入国するという話がありまして、それに対して政府は入国させなかったという話があるのですが、これも事実ですか。
  139. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は、まだそういうことは聞いておりません。存じません。
  140. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それじゃ外務大臣よりも僕らのほうが精通しているということで、何かおかしなことだと思いますが、もしもそういう申し入れがあったら外務大臣どうなさいますか、入国を許可しますか。
  141. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 従来ずっと入国問題については許可いたしておりませんので、その方針を変えるような情勢はまだございません。したがって、お断わりするということになろうかと思います。
  142. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 政府は、人の交流を見ないというだけではないと思うのです。朝鮮民主主義人民共和国を強制バーター地域に指定して、直接決済を認めないなど、最もきびしい差別措置をとっている。このことは、事実上貿易をやらせないということになるが、政府の方針はそうなのかどうか、こういうことはすぐやめるべきだと私たちは考えますが、政府の見解を伺います。
  143. 中山賀博

    説明員(中山賀博君) 仰せのとおり、北鮮につきましては、支払い関係については直接決済を認めず、また、強制、バーター地域に入っております。同時に、今、外務大臣がおっしゃいましたように、韓国との外交関係、ことに韓国に対します輸出は、昨年におきましては一億二千九百万ドルというような、非常に大きな貿易をしておりますので、そういう点も考えて、支払いは直接決済は認めず、また、強制バーター地域になっております。しかし、最近はわがほうの輸出も漸次増加する傾向にありますし、有無相通のこの状態でも、ある程度伸びていくのではないかというように考えております。
  144. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 韓国のほうが非常に貿易金額が多いから、その韓国に気がねして北朝鮮には強制バーター方式をとっているのだと、こういうことになりますが、それでは強制バーター方式をはずしてしまえば、もっと朝鮮民主主義人民共和国との間の貿易も発展する。おそらく近い将来、僕は韓国の貿易を上回る貿易ができるようになると思うのです。それでもはずさないのですか。金額によって韓国のほうが今比重が大きいから、そのごきげんを損じるといけないから強制バーター方式をとっているのだ、だから、北のほうがもっとふえれば強制バーター方式をはずすというのですか、どうなんですか。
  145. 中山賀博

    説明員(中山賀博君) 須藤先生御承知のごとく、この通商関係が中共との間に断絶いたします前には、御承知のように、バーター・システムをとっておりました。それから、初めのころは直接決済方式をとっておりましたことは御承知のとおりでございます。それで、そのときにも、貿易は、御承知のように、あの不幸にして断絶になります前は、かなり順調な伸びを見せておったことは先生御承知のとおりでございます。ですから、もし商売の条件さえ合いますれば、必ずしもこれがこのために伸びないというものじゃなくて、中共のあの断交の前の状態を思い起こしていただけば、この条件の中でも、商売の条件がもう少しよく合いますれば、私は輸出は伸びていく、それから輸入もふえていくと、こういうように考えております。
  146. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そういう目標が立つならば、いっそのこと、やはりこういう差別待遇はしないのがいいのですよ。しなければもっと早くもっと多くなるのですよ。差別待遇があるために伸び悩んでいるということも言えると思うのです。だから、こういう差別待遇はとめるべきであるし、そうしてもっと自由な立場に立ってどんどんと貿易を発展さしていく、これが私は日本政府のとる方針だと思います。何で北朝鮮に限ってこういう扱いをするか、それを質問すると、あなたは韓国に気がねしている、こういうことなんですね。それはおかしいですよ。韓国なんて、あなたもう見ていなさい、ここ数年たたぬうちにどうなるかわからぬ国ですよ。そんな国とあなた仲をよくして、将来性のある国をそでにするというのはおかしいと思う。だから、そういうことは早くやめて、せめて中国並みにやはりしていくべきじゃないか、こういうふうに私は考えるのです。  そこで、次には北ベトナムとの貿易について政府の方針を聞きたいと思うのです。日越貿易拡大のために、最近貿易代表者が来日を希望しましたが、政府は入国を許可しなかったため、やむなく香港から引き返さざるを得なかったという話がありますが、事実ですかどうですか。
  147. 中山賀博

    説明員(中山賀博君) お答えいたします。北越から民間人、それから政府の官吏を含めた若干の人々が来日を希望されました。しかし、その中に官吏の方がおられるということは、まあ日本と北越との現在の外交関係、それから北ベトナムに対する関係等より、非常にわれわれとしては許可しがたいというように考えたわけでございます。それで、その点におきまして、まあもめて、そうして香港で若干待機をされたという事実を承知いたしております。
  148. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それじゃ朝鮮民主主義人民共和国と同じく、政府が貿易をさせないというのと私は同じのような感じがするわけです。なぜ北ベトナムとの間に政府間貿易協定を結んで貿易拡大に努力しないのか。南ベトナムのような崩壊寸前の政府相手にして経済的に何の利益があるのか、この点外務大臣お答えを願います。
  149. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今、中山説明員からお答えしたような事情でございますが、南越政府とは相当額の大きな貿易を行なっておりますし、まあこの方針を進めていくと……。
  150. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 日本のさし水じゃないですか。日本賠償金でじゃないですか。
  151. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) いや、そうでもないのですよ。
  152. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 二百億のさし水でじゃないですか。それでいいのですか、お答えは済んだのですか。
  153. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) それじゃもう少しやりましょうか、一応。わが国の南ベトナム貿易は、輸出が年額約五千六百万ドルで、そのうち、一九五九年まではAIDの資金によるものが非常に多かったのでありますが、一九六一年には輸出額六千五百万ドルというふうに、手持ち外貨による輸出が若干伸びております。ただ、わがほうが南ベトナムに対するところの輸入でございますが、これはバラエティが少なく、かつ、数量が少ないため、増大はあまり期待できませんで、大体二、三百万ドルにとどまっている、こういう状況でございます。わがほうの輸入品としましては、農産物、塩、鉄くずというようなものがおもでございます。こういう状況でございますが、まあ従来南ベトナムとの間に非常に友好に貿易関係を続けておりますので、かような状況で続くものと考えます。
  154. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 次に、ソ連貿易の見通しについて、通産省並びに外務大臣の意見を聞いておきたいと思います。
  155. 山本重信

    説明員山本重信君) ソ連との貿易は、一昨年からことしの十二月末までの三年間の貿易支払協定ができておりまして、この協定ができましてから、きわめて順調に拡大の道をたどっております。先般、本年の一月から十二月までの貿易計画につきまして、両国代表間で討議を行ないました結果、本年の両国間の貿易は、日本側から見まして、輸出を一億二千万ドル、輸入を一億五百万ドルというふうに一応の目標を設定いたしたわけでありまして、毎年かなり急ピッチで増加をいたしております。基本的には、ソ連側は日本に対して石油、木材等の原材料を輸出する立場にございます。日本側は、ちょうどソ連がシベリア開発に必要とする建設資材、工場設備等の機械類を輸入する立場にございまして、経済的には有無相通ずる関係にございます。しかも、ソ連との関係は、国交も回復いたしておりますので、ただいま問題になりました中共とか北鮮との関係に比べますと、国交も安定いたしておりますので、そうした経済的に有無相通ずる背景がございますので、今後もかなり順調に拡大していくことが期待されるわけでございます。なお、来年度以降につきましては、ことしの九月に日ソ間に新しい長期協定を結ぶ予定になっております。見通しといたしましては、両国間の貿易は、経済的に見ますと、さらに相当に拡大していく可能性がある、このように考えております。
  156. 中山賀博

    説明員(中山賀博君) ただいま通産省側から申された見通しについて、若干つけ加えたいと思います。と申しますのは、今、山本次長が話されましたように、今度の貿易交渉においては、トレード・プランはどちらかというと、こちら側が出超ぎみにして、そして従来のわがほうの入超傾向、あちらからいえば出超傾向を是正する意味でプランを立てたわけでございます。しかし、ごく最近のLCの傾向を見ましても、やはりこういう入超傾向が強いということは、今後政治問題を離れまして、純粋に経済貿易の問題としてこれは考えていかなければならぬ問題だと思います。  それから第二は、やはりそれとも相関関係でございますが、延べ払いというものがやはりかなり大きくなってきておる。したがって、クレジットが、私のごくラフな計算では、スタンディングが一億ぐらいあるんじゃないかと思います。こういうものがやはり大きくなると、この傾向は直らないということも考えられます。
  157. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 入超が続くというのはどういう原因なんですか。
  158. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この点、私ども非常に強調いたしまして、ソ連側においても考えてもらいたいというふうに言っておるわけなんですが、こちらから売りますものは延べ払いで買われるわけです。こちらが向こうから買いますのは現金払いということで、LCベースで非常にアンバランスが出てくるわけです。そこで、やはりなかなか商売のやり方の違いといいますか、こっちから売ろうというものは、いざ売ろうという話になると、話はいいのですけれども、なかなか売れない、こっちは気がいいのですか、過当競争のせいですか、とにかくどんどん買い付けてしまう、こういうような点でどんどん開くわけです。現状のように入超が非常に多いのは困ったことだというので、先ごろ貿易取りきめをやりました際には、ソ連側は非常にこの点理解をしてくれまして、今の額面では非常にこの点は是正されることになっております。
  159. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 いよいよ最後になるわけですが、これはちょっと外務大臣も困った問題であろうと思いますが、僕は、最近中国に対する日中貿易において、政府並びに各政府機関、つまり内閣調査室、公安調査庁等々が、貿易業者に軍事情報並びに各種情報を要求し、友好業務を妨害しておる事実があるわけです。外務大臣に、日中貿易に関して、このようなことについては、一体政府の方針なのかどうか、どう思います、こういう事実。
  160. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私ども、それは全然聞いておりません事柄でございました。一切存じません。
  161. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そんなこと知らないと言ってもだめですよ、事実あるのだから。確証も握って、事実ここにはっきりした証拠も持っておるのですから。これは外務大臣政府機関がやっておるのですよ。こういうことをやらしておるのですよ。日本政府こそ、経済貿易を利用して政治陰謀を行なっておるのです。ここに外務大臣が、幾ら中国的政策をとらないとらないと百ぺん申されても、こういう事実があれば、それは通らないと思う。はっきりと敵視政策をとっておるということがわかるのです。そこで、私は、具体的にその事実を明らかにしたいと思うのです。ここに三月五日に発行されました「日中貿易」という機関紙があります。日中貿易業者で出しておる機関紙であります。そこで船舶委員会が申し合わせをしておるわけですが、こういう字句がここに出ております。「この拡大に伴い最近、中国向け就航日本船に好ましくない問題が急増している。中国の港湾規則、航行規則に対する違反、例えば領海侵犯、港内でのレーダー使用などから、政治三原則に対する違反、例えば海図などに「支那」あるいは「中華民国」の記載が発見されるなど、数多くの問題が報告されている。」こういう記事が出ておるのです。こういうことが現実に行なわれておるわけなんですね。これが友好貿易にとってどうにもならない障害となる、これが事実なんです。最近非常に妨害になってきておるわけです。そこで、業を煮やした船舶委員会が次に読み上げるような申し合わせをした、ここにちゃんとあるのです。この船舶委員会の中には東邦海運、第一中央汽船、日正汽船、大同海運、日本海汽船、富士汽船、国光海運、川崎汽船、三菱海運、山下汽船、東京船舶その他十三社です。この二十四社が名を連ねて申し合わせをしたわけです。この申し合わせの内容を私は読んでみましょう。五項目ありますが、第二項から読みましょう。「現在、日中間の友好配船に従事する船会社並びに関係者に対して経済交流並びにその拡大のための業務に必要な範囲を越えた情報提供及び調査の依頼が、関係当局によって行われている事実がある。三、このような要求に対して協力することは、現在不正常な両国関係のもとで運航している日中間友好配船を停止させてしまうおそれを十分にもっているものである。四、もしこのような事態が発生するならば、国際的、国内的にも日中貿易が重要性を増してきている現在、船舶関係者の責任は極めて重大なものであるといわねばならない。五、以上の重要な責任を果している全船舶関係者は、かつて船舶委員会において決議したことであるが、船舶会社は勿論乗組員に至るまで、この種の情報蒐集及び調査に協力しないことを再確認し、これを厳格に守ることを申合せる。」こういう申し合わせがなされた。ここに明らかに当局からこういう指示を受けてスパイ行為を日本の船舶にさせておるという事実があるのです。外務大臣はこのようなことを政府の責任において一切やらせないと、ここで約束することができますか、どうですか。現に行なわれている事実なのでありますから、あいまいな態度をとらないで、もしも外相があいまいな態度をとるなら日本政府が容認しておる結果になることを頭に入れて明確に私は答弁してもらいたいのです。どうですか。
  162. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今申し上げましたように、私は事実は全然存じませんので、さらに研究してみたいと思います。
  163. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 これは重大な問題ですから、外務大臣もっと責任ある答弁がほしいのですが、こういう事実をよく調べて、あなたは知らないとおっしゃるからよく調べて、こういう事実があるならば、そういうことは今後一切やらせないということをここではっきり答弁しておかれる必要があるのです。そうでないと、うやむやにしておけば外務大臣知っておりながらうやむやな答弁をしておる、知っておって答弁しないのだ、こういうような理解になるわけです。だから、知らぬなら知らぬでよろしいから、これは重大ですから今後よく調べて、はっきりそれがわかったなら、一切そういうことはやらせないということをここで明言される必要があると思うのですが、どうですか。
  164. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) そういう、あるとおっしゃいますけれども、全然存じませんので、どういうことか、それはどういう新聞でございますかも知りませんけれども、それを見た上でないと何とも言えないわけですから、あとで研究させていただきます。
  165. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 だから、見た上で事実が、そういうことが明らかになれば、そういうことはもう一切やらせないように善処すると、こういうふうに大臣が答えれば僕は釈然とするのですよ。ただ、うやむやに答弁しておるだけでは、これは工合が悪いですよ。こういう事実があるといって、この新聞が事実発表しているのですから、船会社当事者が発表しているのですよ、船舶委員会が。だから、ないものはそういうこといいませんよ。船舶委員会で二十四の船会社が名前を連ねて、これをいっているのですよ。だから、事実あるにきまっていますよ。だから、そういうことはさせないようにすると大臣答えたらいいのですよ。
  166. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) いや、その事実を実は知らないものですから、そういう事実があればどうこうと、その先のお話は今この段階で申し上げられませんが、とにかくそれはお話がございましたから、調べてみることにいたしましょう。
  167. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そういう答弁をしていると痛くない腹をさぐられるのですよ。
  168. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 事実があるかないか、事実いわれることが何なのか、それをもっとよく調べませんと何とも申し上げられません。
  169. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 事の内容は、僕が今読み上げたからよく理解されたろうと思うのです。船会社に、こういう、当局がスパイせいというような指図がくるのだ。それで不心得な人がそれをやるのだ。そういうことがだんだんわかってきて、日中貿易に対して悪影響を及ぼしておる。こういうことなんです。だから、今後一切そういうことはさせないようにしよう、しないという申し合わせをしているわけですよ、船会社が。だから、とんでもないことだと思うのです。だから、あなた今それは事実でございますと答えることは非常にむずかしいでしょうけれども、あなたの立場として、しかし、事実があるならばよく調べて善処しましょう。このくらいの答えはできるでしょう。
  170. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) よく調査さしていただきまして、事実があれば善処いたします。
  171. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうして、ここでそういうふうに約束されたことを念のために、明らかになったら、閣議でこれを明確にすることを私は約束してほしいのです。内閣調査室、公安調査庁などはとほうもない悪いことばかりやっておる。実に、現に日韓問題でもそうなんです。だから、閣議で私はこのことを事実が明瞭になったら明らかにされるように要求したいと思うのです。  もう一点このスパイの問題がありますが、これはもう多少古くなっている問題だと思うのですが、南ベトナムの国際電電ケーブル敷設工事に従事している日本人が、現地でアメリカ軍のために破壊活動をやって向こう国民解放戦線軍につかまって、スパイ行為を白状して釈放されたという報道がありますが、これは事実ですかどうですか。外務省もっと勉強しなさいよ。こういう本にもちゃんと載っているのです。
  172. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 存じませんが、事実でないだろうと思います。
  173. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、この週刊読売に出ている記事もうそだということですか。
  174. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私の知っておる限りではさようなことはございませんけれども、なお、調査いたします。
  175. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この問題は、僕は信憑性があるように思うのですよ。というのは、私が国会に参りまして逓信委員をやっておりますときに、日本の電電公社から南ベトナムに二十数名の電電公社の社員が参りまして、マイクロ・ウエーブの敷設に従事したという事実があるのですよ。マイクロ・ウエーブの敷設に。それは電電公社の総裁も、副総裁もはっきり認めました。そのときの調査書、あらゆる資料が全部私たちの手に握られているわけです。それをつきつけ私がやったので、とうとう泥を吐きましてね。そういう方がありましたと答えておるのですよ。それとこれは事実関係があるのですよ。このつかまった人の名前は深井茂之助という人です。これは電電公社に関係の人なんです、国際電電公社の工事を。私はこういうことが起こるのは、国際電電公社が外国へ出向いていって、日本の公社の人が外国へ出ていって、軍の施設工事なんかに参加するというような、こういう憲法違反になるような行為をしているからこういう結果ができると思うのですよ。そしてぶざまにとっつかまって、アメリカ軍のスパイやって、とっつかまって、そうしてスパイを自白して最近釈放されたのですが、そういうばかげたことをしているというのはおかしい。
  176. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今その深井何がしという名前を聞いて、私それならば知っておるのです。それはダニム・ダムの建設で現地で工事をやっておるわけです。三井物産が主としてこれを請け負ってやっておるわけです。そこの集金をやっておる人です。この人がベトコンにつかまったので、私ども非常に苦労をいたしまして、何とか本人に被害がないように思いまして非常に苦労したので、その名前なら覚えておりますが、今お話のようなことは全然ございません。私ども非常に邦人の身体生命が危険に瀕するかと思って、実は非常にそのとき苦労したのであります。これはダムの建設のために行っておった、工事の金を扱う、これがジープごと拉致されまして、非常に心配しておったのです。それは違います。
  177. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 中国貿易にすらもスパイを送り込んだり、こんな下劣なスパイ行為というのはさせるべきものでないし、これはもう当然即刻やめなければならぬことだと私は考えるのです。外務大臣も善処したいと言っておりますから、私もこの追及はこの程度にしますが、こういうことを一切やめさせるように外務大臣から強い指示をしなければならないと思います。こんなことは隠してやっておっても、ソ連でも中国でもちゃんと見抜いておることなんですね。また国民の利益にならない。船舶会社の共同声明のように、国民から反撃されることも、また私は明らかなことだと思います。そうして失敗することは、世界の歴史を見れば明白になっておると思うんです。それよりも、ソ連、中国、朝鮮民主主義人民共和国、北べトナム等、社会主義国と正常な貿易をはかることが私は急務だと考えます。これらの国々と正常な貿易をはかっていくならば、私は前途は洋々たるものがあると思うのです。池田内閣はEECのしりを追いかけ回したり、韓国、台湾、南ベトナムのごとき崩壊寸前の国を相手に貿易をしても、前途は全く暗く、それ自体が、私は非常に危険なものだと考えます。東南アジアの共同市場プランも、中国、ソ連を除外した共同市場プランは、全く私は意味がないと思うんです。池田内閣も、大国日本を常に口にするなら、洋々たる共産圏の発展と正常に結びついて、日本を繁栄させるくらいの大きなプランを持ったらどうでしょうか。もっと大きいところに目をつけていただきたい。それが国民の心から望んでおるところなんです。もしも池田内閣がやらないとするならば、国民自身がやるでしょうし、また共産党と国民が手を握ってこれをやらなければならない、こういうふうに私たちは決意をしておるのです。  私の質問を終わります。
  178. 市川房枝

    市川房枝君 たいへん時間がおそくなりましたが、十分か二十分ぐらい、簡単にお伺いをいたしたいと思います。  この間、アメリカの国務省の広報担当の、国務副次官補という肩書きでありますが、ミセス・ロックハイムという方がおいでになりました。大臣はお合いになりましたか。
  179. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お見えになりまして私も夕飯を一緒にいたしたのでございますが、取り立てて私が御報告するようなことはございません。私の家内が何か坂西志保さんと御一緒に応接したわけであります。
  180. 市川房枝

    市川房枝君 閣僚の奥様方とお会いになったそうですが、私ども婦人議員、それから婦人のジャーナリストあるいは婦人団体の幹部とか、婦人の文化人もそれぞれお目にかかったのですが、広報担当というのですけれども、お目にかかっていろいろ伺ってみますと、ケネディ大統領が外交上においても婦人の御意見を非常にお伺いになっておる。今度初めてこういう役割をお置きになり、広報担当というけれども、実際は婦人を通してのアメリカの外交を推進する、こういうことだそうでありまして、この方は民主党の婦人の活動部長をやったり、あるいは民主党の全国委員会の副委員長なんかをなすったそうでありますが、国連に今来る各国の婦人代表なんかを大統領に引き合わせたり、あるいは各国から来る婦人たちの応接といいますか、そういう問題なんかもやっておられるそうでございます。こういうところに私は目をつけたアメリカの外交というのに非常に感心をするのですが、日本は外務省に婦人外交官が一人しかいないのですが、日本も、しかし外務省としては、ほかの国から婦人を招待されておることは私も承知しておりますけれども、そういうときなんか一体外務省のどこでなさるのか。そのとき特別にでもそういう人を御採用になったらどうかと思いますが、アメリカのそういう一つのやり方に対して、日本外務大臣としてどんなふうにお考えになりますか。
  181. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私も当日はチェスター・ボールズ氏とハリマン氏とロックハイムさんと御一緒に食事をしたのでありますが、非常にりっぱな方だと思います。私は市川先生のお話のとおり、これは婦人の方に大いに外交面で御活躍願うことはけっこうだと思っております。そういう婦人の方々をお呼びしたりする場合には、外務省では情文局でいたしておりますので、情文局長からお聞き取りいただきます。
  182. 曾野明

    政府委員(曾野明君) 外務省の情報文化局では、御承知のように外国に関する事務を扱っておりますのは、文化とそれから海外広報です。文化のほうは文化人、学者、そういう方々を毎年相当数お招きしております。海外広報のほうは、外国新聞記者、そういう方々を日本にお招きしております。その中でも、今までの例からいいましても、御婦人もかなり入っております。特に担当記者の中にも御婦人が入っております。先般もスイスから特にテレビ関係の御婦人の方を呼んでおります。こういう御婦人が参りますときには、やはりそれにふさわしいスケジュールを組みまして、十分日本の実情を知っていただくように努力いたしております。
  183. 市川房枝

    市川房枝君 外務省のお招きになったときのいろいろなこと、これはひとつ意見がありますけれども、それは省きまして、前にロックハイムさんの会合でライシャワー夫人がしきりにあっせんをなさいましたけれども、これは大使夫人が日本人であるというのではなくて、大使夫人という資格でなさったといいますか、これもアメリカの今度の一つの新しい外交問題に対する対策として、アメリカの駐在国の大使の夫人がその国のやはり婦人たちと連絡をとり、働きかけるという公の任務を今度は与えて、そうしていろいろな報告をミセス・ロックハイムのところへ送るのだそうですよ。そうして世界的にそういう婦人を通しての外交を促進する、こういうことを実は伺ったのですが、これもなかなかいい考えだと思いまして感心したわけですが、日本の外務省の在外公館の奥様たちはずいぶん優秀な方がおいでになるようにお見受けをするんですが、ところが、そういう方々が駐在国の婦人たちといろいろな交流をするというようなことはあまりなすっていないというか、むしろそれは日本はいわゆる昔流に望ましくないというのですか、というような気風があるのじゃないかしらというように私思うのです。それで、奥様の中には、ことに駐在国の婦人たちと連絡をとるということでなく、在留の日本人の婦人との間にもあまり交流をおとりにならないというようなことも聞くんですけれども、もっとそういう方たちをお使いになったらいいんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  184. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は非常に賛成でございます。そうあるべきことだと思います。ただ、外務省の公館長あるいはその次席等の奥さんで非常に語学のよくできる方がおりまして、場合によっては主人よりよっぽどうまい方もおられるので、そういう方々がいろいろ接触されて、人によっては編みものや刺しゅうで向こうの要人を集めて一週に何回かやっておられる。非常にいいことをしていただいておる方もおると思いますが、そういう方々がそういう間で得られた情報というものは、やっぱり一括いたしまして在外公館からとるようにいたしております。これは若干最近そういう点心配りをいたしておるつもりでございます。
  185. 杉原荒太

    主査杉原荒太君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  186. 杉原荒太

    主査杉原荒太君) 速記を始めて。
  187. 市川房枝

    市川房枝君 御存じの、なくなりましたけれども、西春彦氏の奥さんはずいぶんよくなさいまして、オーストラリアあるいは英国でも、婦人たちから聞きますというと、非常に今でもその影響が残っておりますけれども、そういう能力を持っておる方はお話のようにたくさんおありになるので、ただお茶とお花の宣伝、まあこれもいいにはいいんですけれども、もう一歩進めてなさるようにむしろ外務省のほうからひとつ促進をして下さるといいと思うのです。  それから、在外公館のついでの問題ですけれども、私二、三年前にヨーロッパや東南アジアに参りましたとき、たいへんお世話になりました。その点は感謝をしておりますが、しかし、公館の方々はまるでツーリスト・ビューローみたいで、ずいぶん案内なんかでお忙しそうで、だいぶそのことも伺ったんです。私は個人として行ったんですけれども、しかし、まあ議員として調査のお手伝いはお願いをしたんですけれども、見物は私は御辞退をする、お願いをすべきじゃないと思って自分で歩いたのですが、あるところでは、どうせお役人の方が来ておいでになって、そうして一緒に案内するんだからいらして下さいということで、お言葉に甘えたこともあるのですけれども、これはそういうことのために本来の任務がおろそかになるといいますか、あるいは多忙になるということは問題なんで、何とかそれに対する対策といいますかということがあっていいんじゃないかと思いますけれども、これは今でもそうだし、今はもっときっとそういうことが忙しくなっているんじゃないかと思いますが、いかがですか。
  188. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあ、在外公館としては、いろいろな方がおいでになるのにできるだけ御便宜を計らうようにするという方針で努めておりますようであります。私もそのように訓達しておるわけでございますが、最近は場所によりまして非常に片寄るわけでございます。たとえばロスアンゼルスなんか、昨年一年で三千三百何人とかお世話申し上げた。これはお世話をしただけがそうなんですね。なぜこちらから行ったのより多いかというと、往復だ、行きに来られてまた帰りに寄るから倍になるんです。そんな無理なことをしなくてもいい、しかし、十分御視察の目的が果たされるようにするという範囲で十分やればいいじゃないかと言っておるのでございますが、なかなか不案内な方が来られて他に適当な依頼する者もございませんければ、これは在外公館でお世話するより法はないわけでございます。また、そのお世話している間にいろいろ国内の事情等もお聞かせいただくので、その点ではまた逆なよい効果もあるわけでございます。
  189. 市川房枝

    市川房枝君 外国に行きましたときにお手伝い願ってとてもありがたいんですから、そこは親切にやっていただくことはありがたいですけれども、ただ、そういう情勢で本来の任務が欠けては困る。何とかそこはひとつ適当な方法をしていただきたい。もっともそういうお忙しいからでしょうか、私ども参りましてそこの国のことで知りたいことが、やっぱり公館ではわからないといいますか——まあ、ある程度はそこの国の問題は公館で調べておいていただくといい。ところが、その点は少し足りない。まあ、望むほうが無理かもしれませんけれども、そういう感じを持ったのでございます。それから、特に婦人に関することはおわかりにならない。これは無理がないかもしれませんけれども連絡もないという情勢らしくて、これはイタリアで私出会った話なんですが、イタリアのYWCAの総幹事が私に言うのに、原田大使のときには日本の会合のときに呼んで下すったんだけれども、大使がかわったら何にも連絡がない、だから日本のことは何もわからないと、こうおっしゃっておりましたけれども、やっぱりその国の婦人団体の有力な人たちに対しては公館で連絡をつけて、適当な機会に呼んだりする、レセプションなんかするということが日本を紹介することにもなるので、そういう点何かの心づかいといいますか、お忙しくてそこまでできない——いや、男の方々ではそこまで気をつけていただくことは望むほうが無理かもしれませんけれども、だから、私なんかは、望むらくは、おもな公館には文化といいますか婦人関係のアタッシェのような方がおいで下さればたいへんによくはないか、まあこういうように考えるんですが、そのアタッシェの程度でいろいろして下さる婦人だったら、相当にその国の言葉ができる人はあると思うんですけれども、それはどうなんでしょう。
  190. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ただいまのところ、そういう御注意を承りますと、それはまさに欠けておると思うのでございます。しかし、今後予算もだんだんふえて参りますし、ぜひさらにふやしましてそういう面での遺漏のないようにいたしたいと考えております。
  191. 市川房枝

    市川房枝君 それじゃ、まだありますけれども、これで。
  192. 下村定

    ○下村定君 時間がございませんから、二つだけお伺いいたします。  第一は、日米安保条約の結ばれました際に日本側から提議した安全保障協議委員、この下部機構の軍事小委員会、この軍事小委員会が必要であるということにつきましては、私はこれまで二回国会外務大臣にもお尋ねした。そのときのお答えでは、それはあるに越したことはないが、二国間のことであるから、しいてそういうものを常続的に作らなくてもやっていける、こういうふうに伺った。間違いございませんか。——私は、そういうことでございましたから、実質的にそれがうまく運営されればけっこうだと考えておった。その後ずっと防衛庁関係のほうを見てみますと、どうもそれではやはり物足りないように思う。もちろんおえら方が四人お集まりになってときどき御会合になるんでしょうけれども、これは性質が性質でございますから、どうしても常続的に専門家が絶えず額を集めてやらなければ実際役に立たんと思う。一例を申しますと、アメリカの潜水艦が入ってきた。核兵器を積んでおるのじゃないかというような問題が起こったときに、ふだんからやっておれば、そんなことはもう事前にわかっておる。また、条約の事前協議ということもよほど手数が省けると思う。平時はそういう点もあります。  それから、これは不幸なことでありますけれども、かりに日本が侵略を受けてアメリカと共同防衛をやるというようなときには、これはもうふだんからどうしてもやっておかなければ、ほんとうに防衛はできないと思う。早い話、アメリカのどれだけの兵力が開戦後何日ごろに来るのかということぐらいのことははっきりわかっておりませんと、日本自体の防衛計画も立てられないと思う。その点、私は、僭越な申し分でありますけれども、欠陥があると思う。そういう点につきまして、今後、この軍事小委員会につきましては、外務大臣としてはどういうお考えでございますか。
  193. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 安保協議委員会につきましては、これはなかなか、国会がありましたりして、その後開いておりませんのでございまするが、一段落つきましたら、適当な機会に開くようにする必要があると思っております。  ただいま御指摘の軍事小委員会の点でございますが、これは安保協議会のときにもその話が出たのでございますけれども、どうも特に、そういう専門家会議が行なおうと思えばいつでもできる状態にあるんだし、また、現に連絡さえ密にしておれば特別にその軍事小委員会というようなものを作る必要はないじゃないかというような気分で、今、まだ作っておらないわけでございます。しかし、なお、この点についてはよく研究させていただきたいと思います。
  194. 下村定

    ○下村定君 先ほども申しましたとおり、これがなくても実質的にぴしっと緊密な連携が平、戦、両時を通じてとれておればもう文句はないわけであります。どうもそれがあやしい感じがいたしますので、なおひとつ御検討をいただきたいと思います。  次は、防衛庁の自衛官が外交官の身分でもって在外公館に駐在しておるわけです。その任務と申しますか、それは外務大臣がお与えになりますか、防衛庁長官がお与えになりますか。
  195. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 防衛庁から在外公館に出向しておられる員数は全部で十人おられるわけでございますが、これらの方々は一応外務省の職員になっていただきますから、まあ私の指揮監督下にあるわけでございます。しかし、もとより十分に防衛庁の御意見も聞いて、常時、防衛庁のほうにも御連絡しながらやっておる、こういうことでございます。
  196. 下村定

    ○下村定君 防衛庁からは本来のその人たちの任務にあたって訓令なり指示がされるのだと思いますが、たまたまこの人たちが職務に忠実な余りに、度を越えて、いわゆるスパイ行動をやるというようなことは大問題であると思う、そんなことがありましては。そういうようなことを取り締まると申し上げますか、予防するということについては、外務省の御監督が必要だと思うのでありますが、これに対しては何か処置がとられておりましょうか。
  197. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ただいま御指摘のような点については、そういうことを絶対にしてはならないという訓令を出しておりまして、出向しておられる職員においてもその気持は十分わかって、御了解しておられる、こういうふうに存じております。
  198. 下村定

    ○下村定君 次は、ただいま申しました自衛官の待遇のことでございますが、これは在勤俸とか、本俸とかというものは、外務省から出ておるのでございますか。
  199. 湯川盛夫

    政府委員(湯川盛夫君) 外務省から出ております。
  200. 下村定

    ○下村定君 それは在勤俸、本俸だけでありますか。あるいはこの人たちが仕事をするための事務費と申しますか、そういうものはどうなっておりますか。
  201. 湯川盛夫

    政府委員(湯川盛夫君) 外務省職員の身分で活動しておられますので、本俸、在勤俸それから必要な活動費、そういったもの全部、外務省から出しております。
  202. 下村定

    ○下村定君 そこなんでございますが、先ほど市川委員からもお尋ねがありましたが、これは一つの公館にたった一人でございますね、二人のところもあるようでありますが。これが手足もなしに働くということになりますと、御承知のようにこちらが一人でも向こうで接触する関係の人は相当あるわけであります。のみならず、これも市川先生がお話になりましたように、とかく外地におります者は、旅行者の案内とか、そういう雑務でもって非常に追われて、本職がやむを得ずおろそかになるという点があると思います。そこで、在外公館としてこの防衛駐在官の職務を容易にしてやるために、何か処置がとられているかどうか、人をつけるとか、あるいは事務的に援助をするとか、それを伺います。
  203. 湯川盛夫

    政府委員(湯川盛夫君) 防衛庁から来られた方も、ほかの省から出向された方も、これはみな一様に外務省の身分になられて、一体となって活動しておりますので、文書とか電信とか、会計とか、いろいろな意味で全部外務省のそういった職員がお世話することになっております。また、自衛官として派遣せられた方は、アメリカのような場合には三人、在ソ連大使館が二人、それ以外は大体一人ずつでございますが、アメリカの場合は駐在官が三人おります。また、アメリカの場合は、なかなかいろいろな関連した仕事も広いので、このたび二名またそのアシスタントを増員することにいたしました。これは今度新しい年におきましては、各省から非常な増員の要求がございまして、全部で六十数名の要求がございました。これが最後に査定されまして五人になりました。そのうちの二人を特に防衛庁のほうに充てることにいたしました。
  204. 下村定

    ○下村定君 これも防衛庁のことを言ってははなはだ恐縮なんですが、どうも昨日あたり防衛庁の方が出られて、私ども質問したのですが、軍事情報というものの把握が十分じゃないのじゃないか、もうこんなことはすぐ即帝に答えられるようなことがちょっと答えが出ない。むろんこれは防衛駐在官が少ないからというのではありませんが、そういう意味におきましても、常駐的に数年間にわたってそこにおって、腰を据えて調べるという人があるということは、これは非常に大事なことじゃないかと思う。それにつきまして、もし今後防衛庁から、この防衛駐在官の組織拡充の問題が出ましたときは、外務省としてはどういうふうなお扱いをなさいますか。
  205. 湯川盛夫

    政府委員(湯川盛夫君) まあ、各省から毎年在外公館に出向する職員を増員してほしいという要求はたくさんございます。ところが、実際予算等の関係で、増員される数というものはどうしても制限されます。したがって、そういった様子も見ないとわかりませんが、先ほどお話しましたように、新年度におきましては五人増員したうち、特に二名防衛庁に充てた次第でございます。十分できるだけ考えたいと思っております。
  206. 下村定

    ○下村定君 ごもっともだと思いますが、このほかの方面の、部門のほうは、公館内におられる方が一人であっても、少なくとも民間から行かれた方、あるいは商社の方、それらによって職務を援助してもらうこともできるのですが、防衛駐在官に至っては、そういうものは目下のところどこにもないのです。この点は特にひとつ考慮していただきたいと思うのであります。それだけ申し上げておきます。
  207. 杉原荒太

    主査杉原荒太君) ほかに御質疑はございませんか。——御質疑もございませんようでございますので、外務省所管に関する質疑は、これをもって終了したものと認めて御異議ございませんか。   (「異議なし」と呼ぶ者あり)
  208. 杉原荒太

    主査杉原荒太君) 御異議ないと認め、さよう決定します。  午後は三時に再開いたし、経済企画庁所管の御審議をお願いいたすこととし、暫時休憩をいたします。    午後一時四十九分休憩      —————・—————    午後三時二十一分開会
  209. 杉原荒太

    主査杉原荒太君) ただいまから第二分科会を再開いたします。  昭和三十七年度総予算経済企画庁所管を議題といたします。  まず、政府から説明を求めます。藤山国務大臣
  210. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま議題となっております経済企画庁予算案について御説明申し上げます。  歳出予算の要求総額は八十一億七千二百十三万円でありまして、これを前年度予算額五十九億七百二十八万二千円に比較いたしますと二十二億六千四百八十四万八千円の増額となっております。この増額となったおもな理由は、離島振興事業費において十億七百三十三万七千円、国土総合開発事業調整費において二億円、水資源開発事業費において九億二千九百四十万六千円増額となったためであります。  次に、経費の内訳を申し上げます。第一に、経済企画庁の項では、要求額は四億九千四百四十万円でありまして、前年度の四億五千二百五万七千円に比較いたしますと四千二百三十四万三千円の増額となっております。この要求経費内容を御説明申し上げますと、人件費三億一千六百九十八万八千円と事務費一億七千七百四十一万二千円であります。この事務費は、一般庁務の運営経費並びに次に申し上げる内容のものであります。  一、わが国経済に関する長期計画及び年次計画の策定、海外経済協力の推進、基本的経済政策の企画立案、物価の安定並びに経済審議会その他各審議会、調査会の運営等に要する経費として一千八百六十六万二千円を要求しております。このほか、低開発諸国に対する経済協力の一そうの推進をはかるために、海外経済協力基金の運営資金を充実するための経費として六十五億円を、大蔵省所管政府出資金の項において要求しております。  二、国民生活の向上をはかるための基本的な政策を企画立案するために必要な経費と、国民生活向上対策審議会を運営するために必要な経費として一千三百二十四万六千円を要求しております。このほか、消費者行政を推進するために必要な総合的な調査研究機関として、社団法人国民生活研究所を特殊法人へ組織がえの上、その育成、充実をはかるために必要な経費として一億円を大蔵省所管政府出資金の項において要求しております。  三、河川、湖沼、港湾、沿岸海域等の公共の用に供する水域の水質の保全をはかり、あわせて水質の汚濁に関する紛争の解決に資するため、水質審議会を運営し、公共用水域の調査に関する基本計画による水質の調査及び水質基準の設定並びに紛争処理事務を行なうため、これに必要な事務費二千八百六十六万三千円を要求しております。  四、わが国内外の経済の動きを的確に把握し、また経済白書等の報告書及び統計指標を作成する等、経済動向の調査分析に必要な経費は、三千四百四万九千円であります。  五、国土の総合開発に必要な経費は三千九十二万九千円でありまして、前年度の三千四百八十九万三千円に比較いたしますと三百九十六万四千円の減額となっております。この減額となったおもな理由は、地方開発計画を樹立するために必要な調査が一部終わったこと等により減額することを得たことによるものであります。この経費は、国土総合開発法、電源開発促進法、特殊土じょう地帯災害防除及び振興臨時措置法、離島振興法、東北開発促進法、九州開発促進法、四国開発促進.法、中国開発促進法、北陸開発促進法及び台風常襲地帯における災害の防除に関する特別措置法等の各法律に基づきまして、地域開発の推進と、災害の防除を促進するための諸施策を樹立するために要する経費と、国土総合開発審議会、電源開発調整審議会等、法律に基づく各審議会の運営に要する経費であります。この経費のうちには、特に開発のおくれた地域の工業開発を促進して国民生活の均衡ある発展をはかるための施策、産業と人口の都市集中を防止し、地域格差の是正をはかるため、新産業都市の建設を促進するための施策並びに産業の発展と都市人口の増加に伴う水需要の増大に対処して、水資源を確保するための施策などを樹立するに必要な経費として、五百二十四万四千円が含まれております。なお、昭和三十七年度におきましては、水資源開発公団の発足に伴う公団の監督事務及び水資源開発促進法に基づく水資源開発計画の作成並びに水資源開発審議会の運営業務を適切に推進するため、新たに水資源局を設置することとなり、その機構を整備するに必要な経費として増員経費などを含め一千一百二十二万三千円を要求しております。また、水資源開発公団の業務を円滑ならしめるために、公団の所要資金の一部として三億円を大蔵省所管政府出資金の項において要求しております。  第二に、土地調査費の項では、要求額は三億六千二百五十九万四千円でありまして、前年度の二億六千八百七十九万七千円に比較いたしますと九千三百七十九万七千円の増額となっております。この増額となったおもな理由は、地籍調査に対する補助金が九千三百七十九万二千円増額となったためであります。要求額の内容を申し上げますと、基準点測量に要する経費として二千四百五十四万四千円、国土調査法の規定によって、地方公共団体土地改良区等が地籍調査を行ないますときの補助金として三億三千六十九万三千円、土地分類調査と水調査については七百三万円となっております。  第三に、経済研究所の項では五千四百三十八万九千円を要求しておりまして、前年度の六千二百四十二万四千円に比較いたしますと八百三万五千円の減額となっております。この減額となったおもな理由は、昭和三十五年度の国富調査事務が本年度で終了することとなったためであります。経済研究所の経費内容を御説明申し上げますと、人件費三千六百八万五千円と事務費一千八百三十万四千円であります。この事務費は、経済研究所の一般庁務の運営費と研究調査費でありまして、わが国経済の構造と経済の循環その他経済の基本的な事項を調査研究するために要する経費であります。  第四に、国土総合開発事業調整費の項では十一億五千万円を要求しております。国土総合開発法に基づく開発事業は、各省各庁によって、それぞれ実施されるため、開発事業相互間の事業進度に不均衡を来たし、総合的な効果が発揮せられない場合があります。このような場合に、この経費によりこれを調整いたしまして、総合開発の効果を上げようとするものであります。調整費使用の対象地域としましては特定地域及び調査地域並びに東北地方、四国地方、九州地方、中国地方、北陸地方及び首都圏地域で、これら地域における開発事業を対象といたすものであります。  第五に、地域経済計画調査調整費の項では五千万円を要求しております。この経費は、地域経済計画の策定のための調査に関し、各省庁の調整をはかり、これを総合的に行なうためのものであります。  第六に、離島振興事業費の項と揮発油税財源による離島振興道路事業費の項では、合わせて五十一億三千一百三十四万一千円を要求しておりまして、前年度の四十一億二千四百万四千円に比較いたしますと十億七百三十三万七千円の増額となっております。この経費は、離島振興法に基づきまして、離島振興対策実施地域において、国または地方公共団体が実施しますところの治山治水、道路整備、港湾、漁港、空港、農業基盤整備の公共事業等及び電気導入事業、簡易水道事業等に必要な事業費またはこれを補助するための経費であります。この経費は、経済企画庁に一括計上し、実施に当たっては各省に移しかえ、または特別会計に繰り入れて使用するものであります。  第七に、水資源開発事業費の項では九億二千九百四十万六千円を要求しております。その内容を申し上げますと、水資源開発公団が建設する水資源開発施設のうち一、工業用水道事業の負担に関する部分の事業費の一部を補助するに必要な経費として六千六十万円、二、治水事業の負担に関する事業費の財源を公団へ交付するために必要な経費として、八億六千八百八十万六千円を要求しております。この経費は、経済企画庁に一括計上したもので、その使用に際しましては、実施に当たる各省に移しかえ、または繰り入れるものであります。  以上で経済企画庁予算説明を終わりますが、なお、御質問に応じて詳細御説明を申し上げたいと存じます。何とぞよろしく御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願いいたします。
  211. 杉原荒太

    主査杉原荒太君) これより質疑に入ります。通告に従いまして発言を許します。村山君。
  212. 村山道雄

    ○村山道雄君 経済企画庁長官にお伺い申し上げます。  「全国総合開発計画草案」というのが、昨年の七月十八日に閣議了解になっております。ところで、その了解事項の中に、「さしあたり別紙「全国総合開発計画草案」を策定、公表し、各方面の意見、批判を聞き計数等について調整を行なった上、おおむね昭和三十六年末を目標として、計画を作成決定することとする。」と書かされておるわけでございます。それで、昭和三十六年度末も迫っておりまするので、今までに大臣のお手元にどのような意見や批判が、この閣議了解に基づいて出て参っておりますか、お尋ねをいたしたいのでございます。
  213. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) こまかい点については事務当局から御説明申し上げますが、出てきております主要な意見は、第一は、拠点開発方式の明確化、拠点の選定基準、具体的配置計画を明確にし、拠点開発方式の実現方法を明らかにしてもらいたい。それから第二は、関東地方でありますとか、近畿地方でございますとか、この計画では、関東、近畿両方地方を、臨海と内陸に分けておりますが、これを一体として総合的に施策してもらいたいという意見が出ております。それから第三には、農林漁業の発展の方向を明確にしてもらいたい。特に農業の多角的開発方針につき、具体的な方策の確立をはかってもらいたい。第四には、観光資源開発の方策でありまして、後進地域開発と関連して観光資源の積極的開発が必要じゃないか。したがって、国土総合開発計画の中に、その点をひとつ重く取り入れてもらったらどうか。それから地方計画との調整について意見が出ております。計画策定に当たっては各地域の特殊性を十分考慮するとともに、地方地域計画との合理的な調整をはかってもらいたい。それからその地区には公共投資の地域別配分の再検討をしてもらいたい。後進地域の産業開発をはかるためには、後進地域に対する公共投資の配分を、もう少し拡大しなければならぬのじゃないか、そういうことについて再検討をしてもらいたい。それから生産所得の再検討と申しますか、計画策定に当たっては、たとえば東北の人口を、現在減少しておりますが、減少することなく、一人当たりの生産所得を、目標年度におきまして、全国平均の九一%を下回らないような措置をすることを十分考慮に入れてもらいたい。そういうようなのがおもなところの意見でございます。それらの意見を十分取り入れまして、四月中旬には審議会を開きまして、出て参りました意見を取りまとめまして、十分それによって草案に手を入れまして、そうしてはかっていくと、こう考えております。
  214. 村山道雄

    ○村山道雄君 この拠点開発方式というものに反対する意見は出て参っておりませんか。
  215. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ないように思っております。
  216. 村山道雄

    ○村山道雄君 この「全国総合開発計画草案」は、全国を十一の地区に分けまして、それぞれの中心地に拠点を置きまして、これを中核といたしまして、漸次中規模または小規模工業地帯を形成、発展させようという、いわゆる拠点開発方式を採用いたしておられるのであります。との方式は、未開発地域を開発する方式といたしまして、一応是認できると考えるのでございます。ところが、最近民間事業家の団体などが、はっきりとこの構想に反対しておられる記事が新聞や雑誌にも出ております。また通産省の企業局で、ことしの二月に出されました「わが国工業立地の現状」という白書がございますが、この中にも、よく読んでみますと、こういうことが書かれております。「諸外国の地域開発は、雇用対策であったり、社会政策的なものであったり、または国防的見地に立ったりしたものも少なくない。しかし、おくれて資本主義経済の世界に登場した日本の場合、資本蓄積の少ないことは蔽えない事実であり、立地政策においても上述諸外国のような目的を一義的に追求する程の余裕はなく、企業の合理化に徹して輸出競争に勝ち抜かねば、その経済の維持発展は不可能である。かくて、わが国においては、地域開発といい、工業の地方分散といっても、それがなによりもまず、徹底した産業政策でなければならないこととなる。」、この考え方は、経済企画庁で言っておられる拠点開発方式だけではなくして、未開発地域の開発そのものも軽視するような思想が頭を出しておるのではないかというふうに考えられるのであります。ここに現われておりまするような考え方は、国民所得倍増計画が閣議決定の際に、それ以前のいわゆる太平洋ベルトラインを重視して、未開発地域の開発を無視する考え方の巻き返しであるというふうに私には考えられるのでございます。政府国民所得倍増計画を閣議決定する際に、特にこの点が非常な問題になりましたので、国民所得倍増計画の構想という前文をつけられました。その中に、後進性の強い地域の開発促進並びに所得格差是正のため、すみやかに国土総合開発計画を策定し、その資源の開発に努めると言われておりまするし、また、産業の適正配置に当たってはわが国の高度成長を長期にわたって持続し、企業の国際競争力を強化し、社会資本の効率を高めるために経済合理性を尊重していくことはもとより必要であるが、これが地域相互間の格差の拡大をもたらすものであってはならないというふうに、はっきりと規定されておるようなわけであると思います。それで、ただいまお尋ねしましたのでは、この拠点開発方式に対する反対意見はないと言われておるのでございますが、経済企画庁で草案を再検討される際に、この未開発地域を開発するという基本的な方針をゆるがさずに、それを目的とするところの拠点開発方式はぜひ堅持していただきたいと考えるのでございます。この点について大臣のお考えを伺いたい。
  217. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私どもといたしましては、むろん開発計画を進めて参ります上において拠点開発方式をとる。そして地域格差の是正ということをやって、全国的な総合開発計画というものに重点を置いてやっていく、むろん太平洋ベルト工業地帯というものが十分な経済的効果をあげるように、一面力を入れて参りますことはこれは必要でございますが、御承知のとおり、太平洋ベルト地帯と申しましても、もう東京とか大阪とか、ある場合には中小も入れておりますが、過大都市防止化という問題にすでに引っかかっておりまして、これ以上東京とか、あるいは大阪に工業を集中するということが起これば、むしろ経済的効果を失なうのではないか。したがって、そういうところ自体をいわゆる太平洋ベルト地帯の中にも分散させなければなりませんが、同時に、今お話のような拠点方式を採用いたしまして、いわゆる必ずしも行政区画とは申しませんが、それぞれの地方の経済圏の中心になるような拠点があり得ると思う。これは現地の行政機構の上からいって、行政区域にとらわれないで考えるべきだと思います、だいぶ経済情勢が違っておりますから。そういう意味で拠点開発方式というものを進めて参りたい、こう思っております。
  218. 村山道雄

    ○村山道雄君 そこで、私はこの閣議了解に対しまする私の見解を申し上げまして、これに対する経済企画庁長官の御意見を伺いたいのでございます。草案の結びといたしまして、昭和四十五年度における地域別及び就業人口一人当たり生産所得が表示されております。これは資料といたしまして、ただいまお配りをいただいたものでございますが、この表に表われておりまする数字を見て参りますと、草案の本文が後進地域の開発を強調しておられるにもかかわりませず、その内容がきわめて低調なものであるということを、私は非常に遺憾に存ずるのでございます。就業者一人当たりの生産所得の全国平均は、この表にございますように、昭和三十三年には二十一万五千円でございました。昭和四十五年には四十七万二千円になることになっております。ところで東北地方を例にとりますると、昭和三十三年が十六万二千円でございましたのが、昭和四十五年には三十八万二千円になるのでございます。そこで所得格差を計算をしてみますと、昭和三十三年に全国平均よりも五万三千円低かった東北地方の所得が、昭和四十五年になりますると九万円低いということになるのでございまして、格差は三万七千円大きくなるのでございます。もちろん二つの地域の所得が倍増をいたしますれば、格差もそのままならば一応は倍増するのはこれは当然のことであると思います。しかしながら、後進地域の開発を熱望しておりまする私たちのせめてもの念願は、格差が縮小するということでございます。四十五年度になりましても格差が拡大をするという草案は、われわれを非常に失望させておるのでございます。これは前に申し述べました国民所得倍増計画の構想の閣議決定の精神にももとるのではないかと考えられる次第でございまして、草案を本案とされる場合には、ぜひこれらの点についても再検討をお願いいたしたいのでございまするが、これに対する大臣の御見解を承知いたしたいのでございます。
  219. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) このいわゆる所得倍増計画でもってそのまま倍にしていけば格差は拡大するのでありまして、それをできるだけ縮小して参らなければならぬのは当然のことでございます。したがって、そういう努力をして参るわけでございますが、御承知のとおり、この低開発地域と申しますか、あるいはまだ開発が十分でない地域におきましては、相当な力を入れていきましても効果がそう上がりかねるような点もございます。しかしそれだけに、今そういう方面には力を入れて参らなければならぬのでございますが、しかし御承知のとおり、かりに拠点開発方式をとりましても、あるいは臨時国会で通過していただきました低開発地域の工業促進法によりまして中小都市の産業を振興するといたしましても、やはり相当期間産業を移動していくためには、諸般の設備等も進めて参らなければなりませんし、そのタイム・ラグというものを相当見ざるを得ないのでございまして、そういう点から申しますと、力を入れて参りましても必ずしもその効果がすぐに出てくるというわけには参らぬ点もございます。特に東北地方は第一次産業が非常に多いのでありまして、これもいわゆる選択的拡大その他によって収入の拡大をはかっていくというふうな問題もあわせ関連して参るわけでございますから、その点についてわれわれも心を痛めておるのでございますが、できるだけの努力はいたして参らなければいけませんので、御希望のような点については十分御意見を尊重しながら、すぐにこれを計数的に直してこう縮められるのだとまで数字的に申し上げることができない場合もあろうかと思いますけれども、計画自体はそういう気持で十分な留意をしていきたい。ただ、現在非常に過大都市自体の問題が多いものでございますから、これを急速に解決しなくちゃならぬという命題が一つ、おととしこれを策定いたしたときよりも、かなり去年の秋、あるいは暮れからことしにかけては勢いづいてきているので、この過大都市自体の問題にも相当疎開の問題を考えなければならぬ、そういうような点から見ても若干時間的なあれは起こらざるを得ない場合があるだろうと思います。そういう点は心配いたしておりますけれども、御意見のような点については、できるだけ努力をいたして進んで参りたいと思います。
  220. 村山道雄

    ○村山道雄君 御趣旨はよくわかるのでございます。ただ三十三年に全国平均の七五%だったのが、この計画では八〇%になるに過ぎないのです。で、一〇〇%までいかなくても、もう少し上げていただきたいという趣旨ですから、よろしくお願いいたします。  次に、東北開発促進計画の問題でございまするが、昭和三十三年の八月十五日の閣議決定によりまして、昭和三十三年度から四十二年度までの東北地方に対する道路、港湾、治水、農地、漁港、鉄道、電力、この七つの公共公益事業に対しまして、一兆二千四百八十億の投資をすることとして出発をいたしたのでございます。その後、昭和三十四年十一月二十六日の閣議で、前五カ年の投資額が五千六百十億と定められたのでございます。で、配付していただきました資料によりますと、昭和三十七年度の投資額推計が千三百十三億であることが明らかにされたのでございます。そこで、昭和三十三年度以降昭和三十七年度予算まで、すなわち前五カ年において投資される総額は、この資料によりますと五千五百九十八億でございまして、計画に対して九九・八%に達しておるのでございます。公共公益事業別の内訳は、道路が一一四・七%、電力が一〇四%、漁港が一〇三・三%、港湾が一〇〇%、農地が九六%、治水が八四・七%、鉄道が一番少なくありまして七七・七%となっておるのでございます。お役所の計画がその目標の九九・八%の実績を上げたということは、これは一見すばらしいことでございまして、感謝をいたしておるところでございます。しかしながら、これをよく考えてみますれば、昭和三十三年の八月十五日の閣議決定以後におきまして、わが国経済が著しい成長を遂げました結果、また道路五カ年計画その他の計画がどんどんと実施されまして、全国的に公共公益事業が大きく行なわれましたので、東北開発促進計画も、もう昭和三十三年のものさしでは、特に未開発地開発促進計画としての意味をなさなくなっておるということを示すものでもあるというふうに考えられるのでございます。このことは閣議決定されました計画書にありまする目標が、昭和四十二年度の東北地方の生産所得を昭和三十一年度の一七四・一%としておるのに過ぎない、所得倍増にはなっておらないということによりましても明らかであると考えるのでございます。そこで、この東北開発促進計画の目標は早急に改定をしていただかなければならない。このことは昨年の予算委員会におきましても、当時の迫水経済企画庁長官質問をいたしたのでございますが、全国総合開発計画をまず策定した上で改定をするという趣旨のお答えがあったのでございます。そこで、全国総合開発計画草案がもうでき上がっておりますので、その決定も近いことであると考えられます。その内容につきまして不満の点があることは前にも申したところでありまするが、それはともかくといたしまして、早急に東北開発促進後期五カ年計画の目標をあらためて決定をしていただいて、昭和三十三年の八月十五日の閣議決定にある目標を改定をしていただきたいのでございます。私の委員をいたしておりまする東北開発審議会におきましても、すでに案を具して政府に改定方の要望をいたしておるような次第でございます。そこで、いつごろまでに御決定がいただけますか。昭和三十八年度——後期の五カ年計画の始まる年度の予算編成期に間に合いますように、ぜひ改定をお願いしたいのでございまするが、藤山経済企画庁長官の御見解を明らかにしていただきたいのでございます。
  221. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国土総合開発計画ができますと、東北の開発計画もそれとの調整をはかりながら改定をすることに企画庁としてはいたしております。そうして大体の目標は六月中にそれを策定するということになっておりますので、審議会等にもそのころまでにいろいろ御相談申し上げたい、こう思います。予算に間に合うようになっております。
  222. 村山道雄

    ○村山道雄君 東北開発促進計画の中で、その根幹をなすものとも申し上げるべき東北開発縦貫自動車道に対しまして、昭和三十七年度に二千万円の公共事業費としての調査費を計上されましたことは、東北開発十カ年計画の第五年目に入ろうとするときに、まことに適切な政府の措置であると存ずるのでございます。これが竣工いたしました暁には、東京−青森間を時速百キロのトラックによりますれば六時間半で走ることができるのでございまして、果樹とか、酪農の振興を初めといたしまして、東北開発の諸政策も、これができて初めて完全に目的を達成するということができると考えるのでございます。   そこで、建設省の道路局長さんにお伺いいたしたいのでございまするが、第一に、昭和三十七年度の二千万円の予算は主としてどういうことにお使いになるのか。第二に、この調査昭和何年ごろに完了する見込みであるか。第三に、工事に着工されるのは昭和何年ごろであるか。第四に、工事の完成するのは大体昭和何年ごろのお見込みであるか。第五に、全体の工事費はおよそどれくらいに見積もっておられるかという点について御説明をいただきたいのでございます。
  223. 河北正治

    政府委員(河北正治君) 東北自動車道につきましては昭和三十七年度における公共事業費の調査は御指摘のように二千万円でございます。私どもといたしましては、この二千万円をもちまして空中写真の撮影とか、それから図化、計画線の調査を行ない、その成果を利用して引き続き候補路線の技術的検討を進めると同時に、経済調査を行なう予定でありまして、道路整備五カ年計画におきまして重要な事項の調査を完了さしたいと考えております。なお、現在の段階におきましては、まだ御質問の三点、四点、五点という概算建設費その他の建設計画につきましては、具体的にお示しができるほどにまだ資料が整っておりません。
  224. 村山道雄

    ○村山道雄君 資料が整っておらないということでございまして、これは調査が進まなければはっきりしたことはおっしゃれないんだろうという点で了解をいたします。しかしながら、私が要望いたしますことは、東北開発促進計画は昭和四十二年度で終わりになるのでございます。この仕事が東北開発の実際の効果が上がるか、上がらないかという非常に基本的な根幹をなす計画になっておりますので、われわれといたしましては、その時期までにできれば工事を完成さしていただきたい、このことを強くわれわれ東北住民一同が念願いたしておるのでございまして、この点を十分御考慮いただきまして、全国的にいろいろとお仕事もあると思いますが、特に東北開発促進計画に見合った工事の早い完成を強く要望いたしまして、私の質問を終ります。
  225. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 村山委員質問されましたので、ちょっと順序を変えて、それに関連する問題を先にひとつ長官にお伺いしたいと思いますが、後進地域の開発、拠点開発、こういう意味から、今国会に対して新産業都市建設促進法という法律案が出されておりますが、これに対する来年度の予算措置は、まあここに出ておる五百二十四万四千円という、これに当たるんですか、ちょっと聞かしていただきたい。
  226. 曾田忠

    政府委員(曾田忠君) お答えいたします。今お示しの金額は主として審議会関係の経費でございまして、その中に、新産業都市の法案がもし通過いたしますれば、現在、昨年成立しておりまする低開発地域の工業開発促進法と、それに基づきます審議会ができておりますが、その審議会等を吸収いたしまして新産業都市の審議会ができるわけでございまして、その部分の審議会の経費が入っているわけでございます。それからなお、予算的の問題といたしましては、先ほど大臣が御説明されました地域経済の調整といたしまして五千万円が計上されてございます。これは必ずしも全部が新産業都市に関係の調査費でございませんけれども、主として新産業都市建設関係の調査の調整に投じたいと考えております。
  227. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この新産業都市建設に対する法律案はここにあるんですが、政府としてはどういう構想でこれを出されたのか、それをひとつお考えをお聞きしたいと思います。
  228. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 全国総合開発計画もできますし、それぞれの地域開発法も成立いたしております。が、しかし、われわれの考え方といたしましては、全国総合開発計画を策定いたしますと同時に、先ほど村山委員にもお答えいたしましたとおり、その拠点開発の方式としてこれを採用していくということを考えておるのでありまして、全国の開発計画をやります場合に、つまり三本建と申しますか、総合開発計画及び新産業都市による総合開発計画の中の拠点開発をする、そうして臨時国会において通過していただきました低開発地工業促進法によります低開発地域の工業確立という問題によりまして地域開発をやっていくという、三本建でやって参る考え方でございまして、これを総合調整しながら進めて参るつもりでございます。
  229. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この法律案によると、基本的にはこの当該府県知事からの申請で指定地域になると、こういうことになっておるんですが、これは単にこの精神からいくと、各地方の知事とかそういう人々にまかして、国の考えるような国土全体、後進地域の全体の開発という目的が達成されるかどうかという疑問を持っておるんですが、この点はどうですか。
  230. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) その点は、法律にも書いてございますように、地方長官からの申請によりましても指定することができますが、同時に、中央においても指定をすることができるようになっているのでございまして、内閣審議会を設けまして、各省の意見等も総合いたしまして、その審議会の決定によって地方からの申請が適当と思えばそれを決定いたします。また、中央において必要とする地点を指定するということもできるように、両建になっているわけでございます。地方からの申請ということは、やはりこうした新産業都市を作ります場合に地方の十分な熱意をくみ入れることも必要でございますし、また地方当局と十分な連絡協調がなければならぬ点もございますので、そういう道を開いておきますことも必要だと考えているので、二本建にいたしたわけでございます。
  231. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、今の説明から考えていくと、一応この新しくできる新産業都市建設審議会、これに諮問をして、どこに拠点地域を置くか、そういうものをきめよう、そういう構想ですか。
  232. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) そのとおりでございます。
  233. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この審議会に対して諮問されるのですが、いずれの調査会でも審議会でもそうだと思うんですが、ある程度の政府の構想、こういうものは具体的に持って審議会に諮らなければ、白紙でどうするのかというような不見識なことはないと思うんですが、各地方では相当指定区域にしてもらいたいという希望が私はあるように聞いているんですが、そういう場合に、政府としてはある程度、たとえば東北であれば仙台を中心にした拠点、また中国であれば山陰地方のどこそこ、こういうことで低開発後進地域の大体目ぼしいものは政府としても持っておられるのじゃないか、企画庁としても大体そういう想定をされているんじゃないかと思うんですが、その点どうですか。
  234. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) もちろん、企画庁といたしまして、新産業都市としての資格がどういう点においてあるか、またどういう地域においてあるかということの調査は、企画庁自身当然いたしまして、一定の考え方を持って、そうして地方からの要請もこれを判断して参りますし、また審議会等に対しての御審議に際しても、企画庁としてのある原案を出す場合もございますし、あるいは地方から来たものに対して企画庁としての考えを述べる場合もあることは当然でございまして、そういう考え方で進められることになろうと思います。
  235. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これが指定区域になった場合に、その地方におけるいわゆる地方公共団体、府県、市町村、これらの財政負担が強化、重くなるというようなことはございませんか。
  236. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 事務当局より御説明申し上げます。
  237. 曾田忠

    政府委員(曾田忠君) お答えいたします。この新産業都市建設促進法案におきまするわれわれの考えを申し上げますと、この法案にもございますように、要するにまあ数府県のブロックとなっております地方々々の開発発展の中核となるべきものを考えておるわけでありまして、相当大規模な新産業都市として将来形成する可能性あるものということを考えておるわけでございます。したがいまして、いわゆる道路、港湾等の公共投資といいますものも相当大規模のものに相なるかと考えております。これは個々具体的ないろいろ地域によりまして特殊事情がございますので、一がいにはどのような金額かということは申し上げにくい段階でございますか、いずれにいたしましても、相当な公共投資が必要であるというふうに考えております。これに対しまする国の財政負担と、それからまた地方の財政負担といいますものが、大きな問題として取り上げられなければならないというふうに考えております。特に地方財政につきましては、具体的に大規模な工場が進出して参りますと、それ自体の税収入によりまして地方財政は相当程度伸びるのじゃないかというふうな考えを持っておりますけれども、それまでの過渡的な期間におきまする地方財政の負担といいますものは、これは相当何らかのめんどうを見てやらなければいかぬ。いろいろ自治省当局とわれわれは相談いたしておるわけでありますが、たとえば相当なつなぎ融資といいますものが、長期低利なつなぎ融資といいますものが必要になるのじゃないかというような考えで、自治省当局といろいろ打ち合わせをいたしております。
  238. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 将来のことであるから、はっきりそういう措置も考えておられないと思いますが、この法律案全般を見まして、相当地方財政に及ぼす影響は私は大だと見ておるのです。今言われたように、その産業都市が建設された後における固定資産税とかそういうものをいろいろ言われましたが、現在でもすでに各地方で、工場誘致でそういう工場ができておるところはたくさんあるのです。しかし、必ずしもその財政がそれでよくなっておるとは言えない。そういう工場が来たためのいろいろな設備というものが必要であって、その土地に住む市民に対するサービス行政は必ずしも向上しておらない。したがって、決して私は市町村の財政がよくなっておるとは見ておらないのです。  しかし、それはまあ一応それとしましても、建設途上におけるこの財政措置というものが、今めんどうを見ると言われましたが、おそらく起債なんかで見られると思うのですが、そういう点はまだはっきりと企画庁では考えておらないのですか。
  239. 曾田忠

    政府委員(曾田忠君) お答えいたします。現在におきましても、たとえば臨海地域の埋め立て事業に対しましては起債のワクが認められておりまして、今後はこういう土地造成に対しまする起債につきましても、大幅な増額が必要になるのじゃないかという点も考えておるのでございます。それからまた、工業用水道、これにも補助金のほかに起債がついておるわけでありまして、こういう方面の起債の大幅な充当という点につきましては努力して参りたい、かように考えております。
  240. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 起債ということは、要するに利子補給なんかをして相当有利にやられるとは想像するのですが、起債とすれば、やはりその地方公共団体のこれは負債に、債務になっておると思うのです。いずれ償還しなければならない。現在でも赤字の団体も相当おるのですが、われわれの考えでは、国の施策としてこういう拠点開発をするならば、それに要する費用も大部分は国が持つべきであるというわれわれは観点に立っておるのですが、そういう考え方ではないのですか。いずれ起債とかそういうことで都市建設というものをやっていこう、こういう考え方ですか。それをちょっとはっきり聞いておきたい。
  241. 曾田忠

    政府委員(曾田忠君) 現在、後進地域に対しましては、御承知かと思いますけれども、後進地域におきまする公共事業の国の負担割合の特例という法律が出ておりまして、新産業都市もそういう後進地域に重点を置いて建設されるというようなことも考えておりまして、そういう既存の法律をもちろん活用するということは当然だと思っております。それ以外におきまして、まだ最終的な結論に到達しておりませんけれども、いろいろの問題はあるかと思いますけれども、現在の段階といたしましては、そういう既存の法律の活用、それから起債のワクの拡大、そういうものをとりあえず考えているわけでございます。
  242. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 今までの説明で、時間がないので詳しく掘り下げられませんが、私らの過去の経験から見れば、今までのような総合開発によるものはお茶をにごす程度で、大々的にこういう法律案を出されても、私はそういうところに行き詰まってしまうと思うのです。今言われたように、低開発の地域地域における特別の措置なんかの財源措置を見ましても、そんなに大きいものでもない。今度のやつは、そういう大きい政府の施策として拠点地域を大都市が計画をして立てよう、こういうことだと思うのです。そうすると、相当地方公共団体の財政負担というものは私は重くなると思う。政府がそれによほど力を入れなければ私は実現しないと思うのです。この点について長官は、政府として財源をつぎ込むという腹があるのかどうか。この点ひとつ聞いておきたい。
  243. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 新産業都市や国土開発計画の拠点地域として必要であって、したがって、この法案を提出いたしました以上は、政府としてもこの拠点開発構想が順調に成立していくように考えて参ることは当然でございまして、そういう意味において既存の法律の活用もいたしますし、あるいは既存の計画の中でも、ある程度その活用がきくと思いますし、また新しく地方財政を圧迫しない何らかの方途を見出だすことも、将来は考えていく必要があろうかと思いますし、今後の推移に応じまして十分な努力をいたしていきたいと、こう考えております。
  244. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もう一点、うらはらの関係のある趣旨でもいわれているが、現在の既成の大工業地帯、いわゆるこれを太平洋ベルト地帯といわれておりますが、こういう既成の大工業地帯に対して、人口の集中とかそういう大工場の集中することをある程度避けなくちゃならぬという趣旨ですが、法律上何ら規制するような法律を作らずに、単に拠点都市を建設するという方向に重点を置くことによってこれが防げるかどうか。これは長官御承知のように、現在の経済組織というのは、まずその事業の収益ということを考えているのですから、やはり立地条件がなくちゃ建てないと思うのですが、われわれとしてはこういうものが出されても、依然として既成大工業地帯に集中される傾向というものは、ある程度の、何といいますか、度合いは低くなっても、集中されることはやまないというわれわれは感じを持っているのですが、この点の見通し、どうですか。
  245. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) もちろん、過大都市化を防止するという意味におきましては、直接過大都市をどう扱っていくかという問題があることは申すまでもないのでございまして、たとえば東京におきましては、首都圏整備の法によって、工場の制限であるとかあるいはそういうことも考えていかなければならぬと思うのでありまして、別個の法体系の中で現在の過大都市の防止というようなものについては考えるべきで、今度の新産業都市ではそのうらはらとなる新しい都市の問題に主点を置く。したがって現実に過大都市の防止というような問題については別個の法体系に譲るということになろうと思います。
  246. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはよく了解できるのですが、今の長官が言われた、ちょっと気になることですが、何かそういう過大都市を避けるために工場の集中することを法律で規制するということも必要だと、こう言われたのですか、間違いないですか。
  247. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現在そういう法律が出ておりまして、ある程度施行されておるわけでございます。詳しいことは事務当局から申し上げます。
  248. 曾田忠

    政府委員(曾田忠君) お答え申し上げます。東京都の二十三区と一部の東京都内の地におきましては、現在指定されております。大体約、現在の規制の対象になっておりますのは、工場の面積は五百坪以上のものでございますが、それを今度の改正で三百坪に制限を強化するというようなことになっております。それから、もう一つは、工場立地の調査等に関する法律というものが昨年改正されまして、通産大臣が必要がある場合におきましては、工場立地につきまして勧告権を持って勧告ができるというような法律もございます。
  249. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 現在、実は全国の工場の発展する実情を見ますと、やはりこの太平洋ベルト地帯に集中されておる。具体的にいうと、東海道線あるいは山陽線の方向にほとんど集中されておる。先ほど私が過大都市と言いましたが、こういうところに集中されるという傾向というものは、これは必然的にやまないという私の趣旨なんですがね。それを、東北とかあるいは山陰方面にこれを持っていくという、そういう構想でこれを出されたという私は考え方をしておったのですが、そうでないのですか。その点ひとつ伺います。
  250. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) もちろん、太平洋ベルト地帯が、現状までの経済の発展のために立地条件として適当な地域であるからこそ発展もしてきたし、また将来もそういう立地条件を活用するという希望がありますことは、これは当然なことだと思います。が、しかし、同時に、やはり広く日本のいわゆる低開発地域と申しますか、地方開発を考えてみますると、最近の科学技術の進歩なり、あるいは経済圏の——行政圏とは別でごさいますけれども経済圏の情況等から判断いたしますと、地方に拠点都市を作るような新しい構想を打ち立てますれば、その方面における経済の中心として経済発展に貢献し得る立地条件の獲得なりということが考えられないことはないと、また考えられるようにしなければならぬということでございまして、そういう点については十分な力を入れていきたいと。これは例でございますが、たとえば港湾等についても、従来からいえば天然自然の条件を備えた港湾でなければ港湾にならぬような感じでございましたのに、たとえば苫小牧でもって新しい港湾を作るといえば、これは砂丘地帯を掘さくする。新潟市の近郊においても同じような計画がございます。そういうような科学技術の進歩によって存外その港湾というものも、必ずしも天然の良港でなくとも、工業地帯としての港湾として整備し得るような条件が新たに科学技術の進歩によって出てきております。あるいはトンネル等の掘さくというものが比較的、昔とは違いまして簡易にできるというような条件もございます。したがって、あるいは水を引いてくるというようなことも、昔は非常に困難であったけれども、今後は割合に簡単に、簡単と申してもあれでございますが、しかし科学技術の進歩に対応して経済的な効果が生み得るようなことが考えられもするわけでございまして、そういう意味において、現在太平洋工業ベルト地帯が現状において非常に適当な経済立地を持っておりますけれども、それでは他の地方が全然今後だめだというような結論を下してしまうのは、私はまだ早いし、また政府としては、総合開発の見地から見て拠点構想をもって、そういう新しい技術的なあるいは新しい経済的な観点に立って地方開発の目的も達しながら、それを遂行していくべきだ、こう考えております。
  251. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ、ずばり一つ聞きますがね。なければないと言ってもらったらいいんですが、現在太平洋ベルト地帯のいわゆる既成工業地域以外に、たとえば東北であれば、政府としてはこの審議会の答申を待たぬといかぬと言われるかもしれませんが、どの地方が東北の拠点地域として指定される見通しのところがあるか、中国であればどこ、山陰地方であればどこ、九州であればどういう地域であるか、こういう点、それはもう全然白紙ですか。法律が通って、審議会ができて、それまでは一切ところは考えておらない、こういうことですか、それだけ聞いておきたい。
  252. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、政府としましては、いろいろな調査研究をいたしておりますけれども、今日の段階においては、どういう地域あるいはどういう都市という特定のものを指名し、あるいは申し上げることはまだ早いと思います。
  253. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これは、実は仙台市長の選挙のとき、私向こうの地方に行ったんですがね。あなたの党の何かある程度有力な人が、とにかくわが党の市長が実現すれば、この地方の拠点地域として当然仙台はそうなるところである、それがためにはわが党の——わが党というのは自民党の市長は出るべきである。これはそういう人のことですから、別に言いませんが、相当地元では、そういうことを別にしても、非常にそれに対して関心を持っているんですね。したがって、政府はあるいはそういうところを内々、政府でなくても、自民党でもいいですが、ああいう方面はある程度想定しておられるんじゃないですか。どうですか。
  254. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私どものほうでは、まだ、ただいま申し上げたような、審議会等に提案しあるいは基本計画を策定する資料を十分整備しなければなりませんので、どこということを申し上げるわけには参りませんし、また特定もいたしておりませんが、なかなかこれは非常にたくさんの都市ができるような誤解も若干この法案の提案以来ありまして、各方面でいろいろの御要望もあり、またそれぞれいろいろと地方的な御要求もございます。われわれは、まだしかし決定する段階には、政府として諮問するあるいは材料を整えてその良否を検討して出すというところの段階までには、至っておりません。
  255. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 この問題はこれでおいておきます。  それじゃ、一般質問なり総括質問相当論じられたのですが、その際にはなかなかひざをまじえた答弁ももらえなかったのですが、物価の問題ですが、相当藤山さんも力を入れられているようですが、今度具体的に物品税の減税の分は店頭に表示をして、それだけ物価を下げさすということをちょっと新聞で見たのですが、それはほんとうですか。
  256. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私どものほうにおきましては、総合対策を作り、また物価引き下げについて十分各省にお願いをいたさなければならぬわけでありまして、この間接税の引き下げにあたりましては、大蔵省に対して強く右の処置を要望いたしたわけでございます。そうして大蔵省もそれに同意をされまして、そうして先般二月の二十七日、これは四月一日から実施されるという前提のもとに、総合対策の前提とし、二月二十七日の閣議に大蔵大臣から了解をとられて、こういうことをやる。したがって、ただいまお話しのような点その他について大蔵大臣からの御報告がございました。でありますから、そういう措置もとられるのではないかと考えております。
  257. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そういう間接税、いわゆる物品税の減税によったやつはそれだけ値段を下げよう、価格を引き下げようということを、私が尋ねておるのは、どういう方向でやられるのかということなんです。
  258. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) これは間接税の減税に関する直接の官庁としては大蔵省及び通産省等がございます。したがいまして、それらの通産大臣、大蔵大臣等がそれぞれ業界の代表者等と懇談をされまして、そうして話し合いをして、その趣旨達成にただいま努力しておられるわけでありまして、たとえばプライス・カードまたはカタログに減税分を引き下げてある旨を表示する、または店頭にその旨を掲示するというような方法等について、それぞれ業界と話し合いのすでについた点もあるように承っております。この点は詳しい話し合いがついたというようなところは、大蔵省もしくは通産省から聞いていただくほうが適当と思うのでございますけれども、この線に沿ってただいま進められておるわけでございます。
  259. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはどこまでも業者団体との話し合いで、強制することはできませんね。その点はどうですか。話し合いで向こうが応じれば値下げはするけれども、応じなければ、それは別に値下げをせよという政府からのそういう強制権はないと思うんですが、その点どうですか。
  260. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 強制権がないものが大半だと思います。したがって、十分今日の物価情勢その他をあれすると同時に、間接税を引き下げるという意味を十分話して協力を求められ、それぞれの業界においても相当協力して下さるような態勢に進んでいるということを大蔵省もしくは通産省から私ども承っておりますが、最終的に業者と通産省なり大蔵省との間に、この商品とこの商品についてはこういう話し合いがついたという最終的な点は、私どものほうとしてメーカーに御説明するわけに参らないのですが、両省からお聞き取り願うのが適当だと思います。
  261. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 実際問題で、一時、減税された当時はそういう措置も業者としてはとるかもわからないと思うんですが、実際日にちがたてばもうそういうものは、今までの例からいくと、減税された分だけ引いておけばもう業者はそれだけもうからないのですから、おそらくまたやがてはすぐそれがもとに返ってしまうと思うんですが、今度は大蔵省とか何とか言わぬと、物価に対する総合対策の元締めとして、そういうことはないかどうか。一時は下げたけれどもまたすぐもとへ返してしまう、こういうことはないという確信を持たれますか。
  262. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 減税分が業者にとってマイナスになるという関係はないわけでございまして、したがって減税分だけを価格を引き下げるということは当然のことかと思いますが、しかし、御指摘のようなことが、ある期間を置いてぼつぼつ考えるというようなことがあっては相ならぬのでありますから、減税分だけは確保していくということについて、物価対策の上から極力やって参らなければならぬことは当然でございます。ただ、むろん将来別個の理由で、原料が上がるとかなんとかいうことの理由があれば、それは主管官庁そのものが十分それらについて検討されることだと思います。少なくとも減税分を理由なく、ある時期を置いて上げていくのだということについては、それは厳重に主管官庁が監督をしていただかなければならぬと思います。
  263. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もう一つだけ聞いておきますが、私鉄運賃の値上げについて、閣議でも相当まとまらないように聞いておるのですが、この私鉄運賃の料金の引き上げは、これはもう今年中に実現するのですか。
  264. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 運輸省からわれわれのほうに私鉄運賃の問題について御相談がございました。ありましたのは昨年の十月ごろであったと記憶しております。その後十分な検討をわれわれもいたして参っておるんでありまして、最終的結論をまだつけておりませんけれども、過渡的に申し上げれば、単純な赤字だけでもって値上げを認めることは必ずしも適当ではないし、また十四社のうち数社の赤字の非常に多いというものだけを考えてみましても、その経営の内容がいいか悪いかということは非常に問題でございます。経営が放漫だから赤字が出たという場合もありましょうし、赤字だけで問題を取り上げることは私は危険だと思います。したがって、ただいま企画庁としては、将来の輸送力拡充に対してそれぞれ各私鉄が施設をしてもらわなければならぬのではないかと思うのでありまして、改良工事あるいは改善工事をやっていく、輸送力の拡充をはかっていく、またあるいは踏み切り等の整備をする、あるいは効果的な設備に変えていかなければならぬとか、いろいろな輸送力拡充、あるいは車体を増車する、時間上の間隔を減らすというようなことで、安全運転をし得るような状況、そういうような整備をするための費用を得るために、ある程度値上げをしなければならぬものには、これは私ども考えて、認めてやっても適当であり、あるいは認めなければ将来輸送は行き詰まる、ことに都市交通問題としては重要でございますから、そういう点も勘案して考えていかなければならぬという、ただいまそういう見地に立ちまして検討をいたしております。
  265. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 前段に説明されたやつは、もうたびたび実は聞いておるのであります。これは私鉄だけじゃなくして、都市交通も全部、都電なりあるいは市電の値上げを申請しておるのですね。バスなんかもやっていますが、私尋ねておるのは、これは非常に通勤者、一般の市民に及ぼす影響が大きいのですが、いつ上がるのだろう、こういうことで、今そういういろいろの私鉄の施設を改善することは必要だ、これはたびたび聞いておるのですが、閣議でも上げるべきだという主張の人と、少しは待てという意見の人とあるらしいのですが、私の聞いておるのは、一体それがいつごろやられるのか、こういうことなんです。本年中と、はっきりいいますと昭和三十六年度中にはそういうことはまだ無理だ、できない、こういうことは検討はしておるけれども、やがて夏ごろまでに何とかしなければいけないのか、こういうことを私は聞いておる。
  266. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のとおり、この問題については相当な、昨年の秋からの問題でございますから、途中でいろいろ検討して方針を今のようなふうに変えてさらに検討を進めておるところでございまして、私は結論がつけば、私どもの立場からすれば、これは運輸大臣直接の問題でございますけれども、今申し上げたような輸送力増強、将来の輸送確保、安全運転というようなことのために必要なら、これは堂々と国会中であろうと説明ができることでありまして、何か国会が済んでからないしょで上げるとか、あるいは参議院選挙に有利だとか、不利だということでなしに、ちゃんと理由のあるものは理由を説明して、納得をしていただきながら上げるべきだという考え方を私は持っております。
  267. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いろいろその当事者から私も聞いておるのですが、先ほど長官が言われたいろいろの条件というものは全部そろっておるのだ、すでにそれは了解されておるのだ、しかし今言っているように、政府のほうでは、現在国会開会中とは私は言いませんが、物価問題が非常に世論の中の問題点になっておるときだから、今やると、政府と池田内閣としては、非常に国民の反発を受ける。したがって、どうせ上げなくちゃならぬことはわかっておるけれども、時期を少し延ばしておるのだ、一般はそう受け取っておるのです。今言われたようにその値上げした次元で、設備の改善なんかやらなくちゃならぬというデータはほとんどそろって私も聞いたんですが、持っておるのです。そして政府も運輸審議会も大体認めておるのです。ただ政府の都合でこれが延びておるのだということを、当事者からも言われておる、そういうことはないのですか。
  268. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 事務的に申しますと、今最終的な検討の段階で、そういう点で運輸省からの書類をいただいて検討をいたしておるのです。近くおそらく企画庁としては、そういう意味における事務的検討はできると思うのです。そうしてそれを扱います企画庁の態度としては、私は今申し上げたような態度で望んでおるわけでございますから、これは運輸大臣所管のことでございますので、私は物価政策の見地から見て、今言ったようなことを申し上げておる。参議院選挙がどうのこうのという見地からものを言っているつもりはございません。
  269. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もう一問必要ですが、企画庁長官としては、おそくも、長い間申請されて、検討されておるのですから、私鉄の経営状態、都市交通の経営状態、そういう面から見て上げなければ、ならない実情であるか、それとも上げずに経営は続けていかれるのか、そういう考えであるか、まだそれも全然検討していないということか、その点だけ聞かして下さい。
  270. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) たとえば都電、市電の問題等につきましては、東京都電は昨年臨時国会中に実は上げることになりました。その後大阪市電、名古屋等の経営内容を見まして、地方公共団体としても、経営としては相当な困難な経営の状態にございます。あのまま放置いたしておきますことは適当でないと思います。改良等をしてもらわなければなりません。そういう意味でわれわれも認めていったわけでございまして、そういう点については私どもの立場からすれば、むろん物価政策というもの全体を考慮して参ることは必要でございますが、しかし輸送の円滑化と確保が将来できませんければ、そのこと自体がまた物価水準にはね返ってくるのでございますから、そういう見地に立って許すべきものは許すという立場をとっております。
  271. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、大体今の私鉄の経営状態、また将来の施設の改善その他から見ると、経済企画庁としては今の申請されておるのは無理でない、こういうことですね。
  272. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 数学的に何%がいいかどうかということについては、まだ最終的検討が終わっておりませんし、したがってそういう点についての最終的意見は運輸省に出しておりません。しかし近くそれは出すつもりでおりますが、方針としては今申し上げたような方針でできるだけ事務的な進行をはかっております。
  273. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ幾ら上がるか、その率は別として現状ではいかない、いずれかの運賃の引き上げということは認めざるを得ない、こういうことですね。
  274. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、これについてはそういうことでなしに、他に何か財政措置をしたらどうだという議論もございます。しかし、今日の状態において私鉄企業に対して、私鉄企業といえども学生割引あるいは定期割引等、相当な公共的な立場をとっておりますから、そういうことも考えられないことはございませんけれども、現在の段階でそういうことを論議するわけにも参らないのでございますから、そういう意味において、私どもの立場をはっきりさしてきておるわけでございます。
  275. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 はっきりさしておると言いますが、私もそういう理解をしておるのですが、やはりわれわれは上がることには反対ですが、政府としては、率なり時期については、まだ結論出ていないけれども、ゆくゆくは、やはり運賃の引き上げというものは不可避である、こういうことですね。
  276. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) さようでございます。
  277. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ時間過ぎましたから、僕はこれで終わります。
  278. 田畑金光

    ○田畑金光君 最初にひとつ企画庁長官に、昨日でしたか、日銀の政策委員会での高木調査局長の報告を見ますと、依然として生産は高い水準にあり、国際収支もさほど改善されていない、輸出はふえているが、しかし輸入が予定したほど伸びない、経済の強気な態度と最終需要の根強さというものが、なかなかどうも政府の考えておるような景気調整というものを困難に追い込んでおる、こういうようなことを言っておりますが、景気調整の中だるみといわれておりますけれども、現在の経済の動きに対処されて、政府はどういう方策で景気の調整ということを推進していかれるのか、その点ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  279. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お話しのように、一月に御承知のとおり生産は、季節調整の問題は、若干季節調整のやり方について問題があると思いますけれども、一応そのやり方を認めますると三・八くらい十二月から上がった。で、十一月から下降傾にあると思いましたのが上がった。二月には、本日あたり発表されると思いますが、通産省のほうの統計では、季節調整を加えて、まあ一月よりは一・何%か、若干下がると思いますけれども、しかしやはり一月に三・八%上がったやつが一・何%程度下がる程度でございますから、高水準を続けておるということがいえると思います。それから輸出のほうにつきましては、三十六年度末、三月末大体四十一億という数字を申し上げておったのでありますが、たいていこれはいくと思いますが、輸入のほうについての四十八億八千でございましたか、正確な数字がもし必要でございましたらあと事務当局から申し上げますが、それが今の三月の輸出の残りの数字から見ますと、若干オーバーするのじゃないか。四十九億台に、二、三千万にいくのじゃないか、四、五千万予想より上回ることになるのじゃないか、こういうようなことでございまして、大体九月にやりました総合抑制政策というものがきいてはきておりますけれども、しかし、何か思ったほどきかないような点もあって、いわゆるちょっとした安心感と申しますか、中だるみ的な傾向があるのじゃないかと見られる節もございます。したがってそういうことであっては相ならぬと思うのでありまして、われわれといたしましては、やはり従来の引き締め政策をできるだけ堅持をしていく、そうして所要の目的を達するように努力していくということが、ただいま当面の問題でございます。なお、設備投資につきましては、例年六月に産業合理化審議会の資金部会におきまして、設備投資のこれは通産省でやっておいてでございますが、出してもらって査定をするのでありますけれども、本年はそういう六月ということを待っておったのでは適当でございませんので、産業合理化審議会の資金部会において四月にはこれを出していただいて、そうして設備投資の資金需要計画等について通産省においても十分審議をしていくという立場をとっていただいておりますので、現在の段階においては、少なくも九月の引き締め政策を十分完全に実行していく、ゆるみなく。ゆるみがあればそれは締めながら実行していく。その上に立ちまして、なお今後の状況を見て、もし努力目標を達成するのに困難であれば、さらに新たな何らかの措置を加えなければならない必要もある場合もあろうかと思いますけれども、現在の段階では、今申し上げたような九月の総合対策が中だるみ的なゆるみがなく続けていくという努力をすることによって進めておると、こういう段階でございます。
  280. 田畑金光

    ○田畑金光君 それは簡単に申しますと、何ですか、設備投資をことしは早く資金需要等も見て規制を強化していきたいということと、さらにまた、資金の需要等に対して日銀等の窓口規制を通じ強化していきたい、まあこういう二つが今いわれておる景気の調整の一番大事な柱のように、こう見るのですが、そう理解していいのですか。
  281. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) お話しのように、今までの総合対策においては、そういう窓口規制の強化その他一連の金融上の措置をいたしたわけであります、たとえば日銀の準備預金制度を確立するとか、そういうふうな。それを何といいますか、気のゆるみといいますか、そういうものなしにやはりあのときの気持で続けていく。ここで気がゆるんで、何かあのときの気持が落ちていくのではいけないから、そのつもりでいく。しかしそれでもなお将来むずかしい問題があれば、新しいことを考えていかなければならぬということは起こるかもしれませんが、それが起こらないようにするためには、あの措置をゆるみなく実は続けていきたいと、こういうことです。
  282. 田畑金光

    ○田畑金光君 九月に方針をきめたのが今ごろになって大きく計画とずれてきておる。その最大の理由を、経緯というか、どうしてそういうようなこういう今日のような事態に、政府の当初考えていたこととずれたような事態というものが生まれたのか、それはどこに最大の原因があると長官はお考えですか。
  283. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のとおり非常な勢いで去年の八月ぐらいまで伸びてきた経済でございまして、設備投資にしろ生産にしろ、あらゆる面において非常な勢いで伸びてきた。そこでそれをスローダウンするということに相当政府がきつく考えましても、すぐに移っていく、何といいますか、民間にそのまま移っていくという形は相当に困難なところもございます。で、そういう意味においていろいろ気持の上からくるずれということも若干ございましょう。むろん九月にやりましたたとえば貿易対策のような問題は、どうしても輸出にしても輸入にしても、信用状の面では四、五カ月先の問題を扱っておりますものですから、どうせ九月やりましても、一月か二月にしかきいてこないのは当然でございますが、そのきき方がやはりずれてきたという、それはやはり何かの気持の上からいうて、自分のところだけは、締められてもやっていく、みんな締められても、それだけやはり自分の商権拡張の上でいいという考え方もございましょうし、いろいろあったと思います。また、あるいは金融を引き締めておりますために、原料で持っているよりも製品にしてそうして持っているほうが、金融化はやさしいという点もございましょう。原因としては、われわれもただいまできるだけその調査をして、正確な原因をつかんでいきたいと思っておりますが、そういうような気持が動いておるのではないかと思うのでありまして、若干の予想したよりもずれているということは、申し上げざるを得ないのじゃないかと思います。
  284. 田畑金光

    ○田畑金光君 長官、たとえば地方で工場誘致というのが非常に盛んですが、先ほどの質問の中にありましたように、そこで工業用地を造成して工場を誘致する、地方団体もそれに大きな補助を出したり、あるいは誘致に積極的な協力をして会社を持ってくるというような、いろいろな動きがあるわけですが、たとえば地方で、ある製紙会社が地方に進出する、あるいは機械工場が設置される、あるいは石油化学工場が地方にいく、いろいろなこういう事例がありますが、こういう場合は、なんですか、一々それは経済企画庁なり、あるいは通産省等が工場の設置等について認可するとかしないとか、そういうようなことをやっておるわけですか。
  285. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 経済企画庁としては、具体的行政をやっておりませんが、その点は、たとえば農地の転用、工場誘致のための。これは農林省が扱っておられます。そこで、あの引き締めをやりますときに、農地の転用等について、それまではかなり無条件で許可をいたしておったわけでございますけれども、しかし、これは通産省等とも相談の上で、通産、農林の間で、この仕事はどうしても今日の状況において必要である、また合理化のためにも工場を作ることが適当じゃないか、転用を認めてもらいたい、そういう話の上に立って、そうして農地の転用等を許可していく。また造成された土地等におきまして、御承知のとおり通産大臣としては各業界別に、それぞれの業界の代表者を呼んで、そうしてそれぞれ懇談をしておられまして、そうしてそういう懇談を通じて設備拡張なり、あるいは新設工場等について、ある程度ひとつ延期をしてもらいたい、あるいは繰り延べを若干してもらいたいというような指導もしておられるのでございます。また、大蔵省等方面から、やはり地方のそうした産業進出等につきまして、金融面から融資等の点について、やむを得ないものについてはこれはやらなければならぬ。しかし、若干、不急不要とまでは申しませんけれども、若干繰り延べてもいいものについては、そういう措置をとってもらいたいということで、それぞれの行政官庁で民間と懇談、指導をしておられる状況でございます。
  286. 田畑金光

    ○田畑金光君 一番今地方で問題が起きているのは、最初に長官がお話しになりました農地の転用の問題だと思うのです。農地を転用することについて、特に最近規利が強くなってきたわけで、このことは即設備投資の規制にもなりまするし、また、金融引き締めにも通じましょうし、これが相当地方にとっては、現在大きな問題をかもし出しているんじゃないかと、こう思うんです。この農地転用の問題ですが、昨年の九月以降、政府が引き締めに移ってから、農地の転用等についてどの程度の申請があって、それに対してどの程度これを押えておられるのか、それをひとつ。農林省のほうからだれかいらっしゃっているのでしょう、農林省としては、どういう方針をとっているのか説明願いたいと思う。
  287. 丹羽雅次郎

    説明員丹羽雅次郎君) 農地の転用に関しましては、先ほどお話もございましたように、昨年の九月の設備投資抑制の閣議決定の際に、設備投資をなるべく抑制ないしスロー・ダウンするという政府の方針の意を体して農地の転用許可行政を運用するようにという閣議決定がございまして、その線に沿って現在やっております。そうして御質問の今までの経過はどうかという点でございますが、昨年、三十六年の四月から本年の二月までに、本省に知事及び農地事務局長の意見書がついて参りましたものが百五十八件、うち承認いたしましたものが八十一件でございます。
  288. 田畑金光

    ○田畑金光君 農地の転用については、知事の権限、それから農林省の出先の農地事務局長の権限、さらに農林大臣の権限、それぞれ三段階に分かれているはずですが、どういう区分になっているのですか。
  289. 丹羽雅次郎

    説明員丹羽雅次郎君) 法律上は、五千坪未満が知事、それから五千坪以上が農林大臣ということに相なっております。そうして役所の内部規定で、役所の出先官庁でございますところの農地事務局長に、一昨年には農林大臣の権限を全部委任いたしたわけでございます。したがって、五千坪以上は全部地方の農地事務局長ということに相なっておりました。そこへ九月の引き締めの問題がございまして、設備投資につきましては、中央段階で通産省の御意見、各方面の御意見等も承りつつ調整をする必要があるという立場で、一万坪以上につきましては、地方事務局長が許可をする前に、農林本省の意向を聞いて許可をする。そういうふうな運用をいたすことに相なりましたので、現在は五千坪未満が知事、五千坪から一万坪未満は事務局長、一万坪以上は事務局長でございますが農林大臣の、これは内部関係でございますが、承認を受けてやる、こういう運用に相なっております。
  290. 田畑金光

    ○田畑金光君 一万坪以上は何ですか、実際の取り扱いでも、一々本省に行って、農林大臣に許可を得なければできない、こういうことになっているのですか。事実上の取り扱いは。
  291. 丹羽雅次郎

    説明員丹羽雅次郎君) 農林大臣の承認を得て事務局長が許可書を出す、こういう取り扱いになっております。
  292. 田畑金光

    ○田畑金光君 先ほどの説明によりますと、本年の二月までに百五十八件ですか、この申請のうち幾ら承認されているのですか。
  293. 丹羽雅次郎

    説明員丹羽雅次郎君) 八十一件でございます。
  294. 田畑金光

    ○田畑金光君 残余の、たとえばそうしますと七十七件ですか、というものはどういう内容の申請案件であるのか。また、これについては、当分の間許可できないという内容のものであるのかどうか。また、今日まで八十一件については、引き締め前後を境にして、引き締め前後を含めて、八十一件はこれは認めているのだから認めるとか、認めないとか、そういう場合には、農林省としては通産省と相談するのか、相談しないのか。先ほどのお話しでは相談しているというお話しだが、どういう程度の話をなさっているのか。必要であるのかいなかを認める主体というか、指導権というか、中心は農林省なのか通産省なのか、どちらですか。
  295. 丹羽雅次郎

    説明員丹羽雅次郎君) 農地法上の許可でございますから、農林省の権限でやっております。それでただ、御承知のとおり、不許可をするという考えではなくて、許可をする、ただし設備投資について各官庁が協力して繰り延べて逐次やっていこうという情勢でありますので、不許可ということではないが、もっと先にできないかという立場で、申請者に対して御相談をいたしているわけでございますが、現在、公共事業、それから輸出産業、あるいは住宅というようなものにつきましては、そういう問題とは別個の問題として処理をいたしておりまして、大体月に二十件ないし三十件程度を現在は許可をいたしているわけでございます。
  296. 田畑金光

    ○田畑金光君 農林省としても、このような事態が発生していることを御存じかどうか。ということは、地方的にも、私が冒頭に申し上げたように、工場誘致の非常な空気というものが強く盛り上がってきて、市町村当局が先頭に立って工場誘致を宣伝し、あるいは促進する運動を進める。まあそういうわけで、農家の人たちと土地の話し合いをして、大体話もまとまってきた。問題は値段を幾らにするかというようなことで、交渉がだんだんと長引いているうちに、今度は農林省の土地開発に対する強い権限の発動というものが出てきて、現実に農家の人たちはもう土地を手放すということで、次の職業も考える、生活設計もする。そういうようなところでは、多く農業の生産意欲というものを失って、ほかのほうに新たな生活の道を求めていくと、こういうことで、さて今度は、最近になってくると、急に引き締めが及んできて、それで、もうすでに農機具も売ってある、こういうような事例というものが地方的にあるわけですね。私はこういうことを、やはり単にこれは農林省の問題じゃなくして、政府のこの引き締め政策というのが、引き締めるのか、締めないのか、あるいは設備の投資等についても、これはゆるめるのか、ゆるめないのか。そういう経済運営の方針というものがしっかとしないから、私は、地方末端にこのような問題を引き起こしておると、こう思うのです。こういう問題等については、これは政府としてももっと考えてみる必要があろうと思うのだが、藤山長官としてはどういうお考えなのか。さらに農林省のほうとして、今、私の申し上げたような事例等、あなた方の耳に入しませんか。
  297. 丹羽雅次郎

    説明員丹羽雅次郎君) 御指摘の工場を誘致いたしまして、事態が非常に進んでおるので非常に困るという個所、地区については、いろいろ十分承っております。ただ、実は過去におきまして、現実に農民なり農家と話をきめて、あるいはある程度きめまして、農地の許可申請を出されました。非常に許可行政上不都合がございましたので、現在は本申請書を出す前に、事前申請書を出すように取り計らっておるわけでございまして、先ほど申し上げました数字も、実は事前申請書の数字なんでございます。事前申請書の段階におきましては、あまりに事態を進めて既成事実を作って農地転用を申請されますと、いろいろと不都合の点があるという立場から、一昨年から事前申請の制度をとった次第でございますので、私どもの立場からいたしますれば、少なくとも事前申請の見通しをつけた上で、農家なり、村なりとの話し合いに入っていただきたい、こういう立場でございますので、こういうケースについては、むしろそういうケースが起こらないように、事前申請の制度をとった次第でござまいすので、事前申請制度の運用によって、そういう事態をできるだけ回避したい、かように考えておる次第でございます。
  298. 田畑金光

    ○田畑金光君 今の点ですが、事前申請によって、私が質問したような事例をなくするんだ、そのために事前申請という方針をとっておるというお話しですが、そういう農林省の方針というのは、県府や市町村に対して正しく指導されておるのかどうか。たまたまこの引き締めが起きたので、府県や市町村というのは初めて、なるほどそんな強い農林省の方針があったのかと知ったというのが、私は真相じゃないかと、こう思うのです。おそらく私は、こういうような事例というものは、単に一県や一市だけじゃなくして、全国的な事例として起きているのじゃないかと、こう思うのです。われわれも現に見ておるし、聞いておるのですね。あなた方は一体、事前申請などという親切な行政指導というものを、どういう手段、方法で府県、市町村に徹底周知させておるのですか。
  299. 丹羽雅次郎

    説明員丹羽雅次郎君) 出て参ります書類そのものは、事前申請書でございまして、事前申請書に関係者が拇印を押して出て参りますわけでございますので、どうしても御存じにならないと、書類そのものができないという意味におきましては、徹底をしておると存ずるわけでございますが、事前の問題としてこの制度を作りまして以来、市町村の農業委員会、大体農地転用は農業委員会にまず相談があるものですから、農業委員会に周知の徹底をはかった次第でございます。ただ、御指摘のように、自然に動いております段階では、あまりに問題にならなかったものが、経過的に引き締めが、ある時点から行なわれましたので、やはりあちこちに御指摘のような問題があることは、私どもは重々承知をいたしております。そうして、かつ、絶対に許可をしないということでなく、逐次許可をして参ろういうと考え方でございますので、そういう具体的なケースについては、順次、そういう点も加味いたしまして判断をして参りたいという心がまえで行政はやっておる次第でございます。
  300. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は、こういう問題もあるということを、長官としても承知をなされて、今後のまあ景気調整にあたっては、十分ひとつ景気調整の目的を達成しなければならぬというのが、今日の国民経済として重大な課題でありますけれども、やはり、それをなされる上においては、いろいろ政府としても慎重の上にも慎重な配慮を加えて進めていかれることが必要である、こう思うのですが、そのことだけ、ひとつ要望として申し上げて、時間の関係もありますので、次に移りますが、幸い、警察庁から新井刑事局長がお見えになっておりますので、私、ひとつ、ここで、東北開発株式会社が内部の汚職の問題で盛んに最近の新聞をにぎわしておるわけで、前理事あるいは現職の理事が逮捕されるというような事態が起きておるわけで、先ほど村山委員から、東北総合開発について、大いにこれを推進してもらいたいという質問等がございましたが、私は賛成でございます。ただ問題は、一番大事な、東北開発の総合機関としての東北開発株式会社というものが、今日全く内部において汚職事件の連続発生で、身動きもできないような始末になっておるわけです。まず私は、これを正していくことが、東北総合開発の出発点だという気持を持っておりますので、そういう角度から、私は一、二、大臣質問したいと思うのですが、その前に、捜査の現状はどうなっておるのか、これからどういう発展をたどっていこうとするのか。しかも、今、逮捕されでおる理事の人たちは、どういう疑いで、あるいは事件にからまって逮捕されておるのか、簡略でけっこうでございますので、ひとつお話し願いたいと思います。
  301. 新井裕

    政府委員(新井裕君) 目下、捜査の過程でございますから、詳しいことを申し上げられませんが、今まで取り調べました主たる被疑者は、贈賄十三名、収賄七名、計二十名でございます。その犯罪事実は、三十四年、三十五年、三十六年、おのおのにわたっておりますが、一つは、セメント工場の建設にからまる資材の納入、それにからまる贈収賄、もう一つは、セメントの販売あるいは代金の支払い等にからまる贈収賄、もう一つは、土地の造成にからまる諸工事の契約に関しての贈収賄、第四が鉱業権の譲渡その他にからまる増収賄、大きく分けましてこの四つでございます。で、現理事は富塚という理事が一人逮捕されております。前の理事は雲野という理事が一人逮捕されております。そのほかは、それぞれ部長、課長、補佐役という人たちであります。現在の捜査はどうか、先行き見込みはどうかというお話でありますが、これは目下お話はできないのであります。まだ終結はいたしておりません。もうしばらく捜査をしなければならない状況だと思っております。
  302. 田畑金光

    ○田畑金光君 私、地方に旅行しておりまして、三月二十四日の河北新報を見ましたところが、富塚理事、この人は現職理事ですがね、この人が逮捕されたという記事を見たんですが、これによると、近く渡辺前総裁も出頭を求めて取り調べられる予定だ、ただ病気中なので、医者の診断を待って逮捕するかどうかの態度をきめる、こういうような記事も出ているわけで、私は、これはほんとうかうそかなんというようなやぼな質問はいたしませんが、総裁並びに前総裁にまで問題が波及してきておるとなれば、これはほとんど大事な理事とか、あるいは前理事とか、あるいは幹部職員というものは、ほとんどこれ連座しておると見ても差しつかえないと、こう思うのですが、これは今後捜査については相当継続され、また、発展すると思うのですけれども、その辺の事情は刑事局長どのように見ておられるのか。さらに私は、これはどうも政党に対する献金などというものは、これは法に触れる触れないは別にして、まだ出てきやせぬかという心配もあるのですが、そういうふうな点は、まあ捜査の過程において浮かび上がってきたりはしておりませんかどうか。
  303. 新井裕

    政府委員(新井裕君) 将来の見込みをここでお話をするというのは、やや不謹慎なそしりをまぬかれませんと思いますので、申し上げかねるのでありますけれども、ただ、ただいままでの捜査の進展の状況から見まして、これで終結というわけにはいくまいというふうに考えておるわけであります。今お話のありました後者の点でございますけれども、これはわがほうの今捜査をやっている限りにおきましては、全然浮かんでおりません。
  304. 田畑金光

    ○田畑金光君 これは衆議院でも質問をされて、そうして今こちらにおられる藤山長官御答弁なされておられるようですけれども、東北開発推進協議会に、やはり会社のほうからも、これは負担金なのか分担金というやつか、あるいは単なる運営費というのかわかりませんが、出ておるようで、それについては長官がもう認めたのか認めないのか知らぬが、望ましいことではないというような趣旨の御答弁もされておるわけです。各党にも、党開発特別委員会というのはあるようですが、やはりそういうようなところにも、私は、会社としてもそれぞれ応分の協力をしておるんじゃないかと、こういう見方もしておるのですが、その辺はまだ浮かび上がってきておりませんか。
  305. 新井裕

    政府委員(新井裕君) 先ほど申し上げましたように、四点の贈収賄に関係することだけがわれわれの捜査で明らかになったことでございます。それ以外の点は全然浮んでおりません。
  306. 田畑金光

    ○田畑金光君 まあそれはひとつ新井刑事局長、きょうはこの程度で、私はこれ以上質問いたしませんから、あなたに対してはまた別の機会に御質問いたします。  それで、藤山長官に、ひとつこの事件についてどのようなお考えになっておられるのか、それをちょっとお尋ねしたいと思うのです。
  307. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この事件が起こりましたことは、まことに残念でもあり、遺憾でもあり、私としては非常に申しわけない事件が起こったというふうに痛感いたしております。
  308. 田畑金光

    ○田畑金光君 遺憾に思うだけじゃ済まされぬのじゃないですかな。私は、これは非常に大きな問題ですから、あれこれとお尋ねするにしても、これはなかなか時間もかかりますから、簡単にできませんので、ただ一つ、私は砂鉄事業ですね、いや、その前に私はお尋ねしますが、役員の構成等について、この役員を見ますと、まあ総裁という最高責任者、これは財界の出身、経済界の出身ですから、この種会社の人事としては、これは当然であるかもしれませんけれども、その他の役員の方々を見ますと、これは相当諸官庁出身の人もいるわけですね。ことに前役員の一覧表を見ますと、副総裁の加藤祐三郎という方ですか、この人は前歴は自由民主党党開発特別委員事務局長、こういうような立場の方です。それからまた、理事あるいは監事の中には、官庁関係の人方が非常に多いわけですね。私は、官庁の人を適任でないとか適材にあらずと言いませんけれども、しかし、この種会社の運営というものが国策会社であるがゆえに、いつも経理、経営がまずくて、そうして赤字を出しておるわけです。ついこの間の商工委員会でわれわれの審議いたしました北海道地下資源開発株式会社、これを見ましても、やっぱり同じ特殊法人、特別な任務を目的とした会社です。これは北海道の地下資源を目的として作った国策会社、半官半民、これもまた昭和三十五年末現在において一億四千二百万の赤字を抱えておる。この赤字を解消するためにどうするか。そこで、今までは北海道内だけの炭鉱事業をやっておったが、今度は赤字を埋めるために、北海道のみならず、内地にまで手を出してくる、あるいはまた北海道、内地を通じ、地質調査をやる、こういうわけで、当時北海道地下資源開発株式会社のできた目的と、今日はまあ目的は全く反するというか、目的は拡大されてこの会社の運営というものを考えなければならなくなってきた。これも同様に半官半民、特殊会社です。政府の出資、政府の資金によってほとんどこれは運営されておると思うのですね。東北開発株式会社を見ましても、全く同じ性格と内容と経緯を示しておるわけですね。私は、この点等については、もっと経済企画庁長官としては、財界の御出身でもあるし、この道の大家でもあられるのですから、どうすべきかということ等について、私はこの機会に根本的に反省と検討を加える時期じゃないかと思うのですが、どうお考えですか。
  309. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この種の国策会社の運営につきましては、今お話のように、やはり相当反省と検討を私は加えるべきではないかということを考えておるのでございまして、幸いにして伊藤新総裁は、財界に長い間の経歴もあり、非常にりっぱな人物を得たことでございますから、会社の内容を正直に洗っていただく。それが汚職問題とは別に、会社経理の上で相当な赤字を出しておるのでございます。必ずしも従来の経理運営が適当であったとはわれわれは思いません。伊藤新総裁に対しましては、私は、この際、新総裁御就任を機に、徹底的に会社の整理と、それから将来の方針を確立していただきたいということを要望いたしておきます。総裁も就任されまして、その決意をもってやっておられますので、われわれとしては、過去のそうした状態に反省をしながら、さらにこうした国策会社のあり方等についても検討をしていかなければならぬと思います。むろん国策会社のことでございますから、東北開発のために、ある程度ある時期に、ある仕事に若干の赤字が出ていくということは、これは育成過程でやむを得ないことでございましょうけれども、それが今までの東北開発の赤字のような原因から出てきたのでは、これは相ならぬ。地方産業を育成していくために数年間は赤字が出る、これはやむを得ないことであり、しかし、それがりっぱに育って、将来黒字になっていって育成の目的を達すれば、それぞれの地方の方々にそういうものをまかすことが適当じゃないかと思うのでございますが、そういう点について、十分な検討をし、また、今後の運営等についても、新総裁と話し合いをしながら、新総裁の意見も尊重しつつ、新しい立場に立って運営を考えていきたいと、こう思っております。
  310. 田畑金光

    ○田畑金光君 私も、赤字が出たことについてとやかく言っておるわけじゃありません。また、この種会社というものは、民間の企業では危険を冒さねばできないような仕事を対象として考えておりますから、それだけに、ある期間、ある程度の赤字が出ることも、これは予想してもよろしいと、こう思うのです。ただ、東北会社の開発の場合は、だんだん会計検査院の検査の結果を見ても、あるいは捜査段階から、捜査機関が調べておられる。そして新聞を通じ発表されるその内容を見ますと、あまりにもでたらめ過ぎはせぬかと、こういう感じを持つわけです。これは、昭和三十五年度の営業報告書ですが、第一の事業概況の冒頭にどう書いてあるかというと、「昭和三十五年度は、国内経済情勢の好況と、全社挙げての経営努力により、業績は着実に向上し、総販売高においては前年度より三割強の増加となり、六千八百万円の利益を計上し得ました。」、冒頭からこんなに喜びたたえ、会社がいかによくなったかと宣伝しながら、実はこれはうそであった、実際はこれは三億の赤字を隠して、六千八百万の利益を計上したといわれておりますが、こういうことはあまりにも国策会社としてだらしがなさ過ぎる、こういう気分を感ずるわけです。だから、そういう点において、監督官庁として、もっとこの種会社については、公正に正しく監視して指導してもらいたいと、こう思うのです。  それから、あわせて私はお尋ねいたしますが、今度逮捕されました前理事の雲野さんという方は、東北開発会社の重要な理事でありまして、同時に、東海運会社の社長をやっていたそうじゃございませんか。東北開発株式会社法の第九条によれば、「理事ハ他ノ報酬アル職務又ハ営業ニ従事スルコトヲ得ズ但シ内閣総理大臣ノ認可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラズ」となっているのです。しかし、この種重要な国策会社の理事、しかも、この雲野さんというのは、最も大事な理事として、実力者として、大事な仕事を担当していた方ですね。この人が、一方において東海運会社の社長をやっていた。こういうようなことを承知でこれは任命されたわけですか。
  311. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 雲野さんが任命されたときの経緯については、実は私存じないのでございますが、私といたしましては、そういうことは必ずしも適当だとは思いません。ただ、聞いてみますと、当時報酬は受けていないでやっていたというようなことでございます。
  312. 田畑金光

    ○田畑金光君 報酬を受けているとか受けていなかったとかいうことじゃ問題はないはずです。東海運の現実の現在の社長で、社長としての仕事をやっていた。さらに私は、衆議院の決算委員会の質疑応答を見ますと、東海運の社長として、あれはいつの災害のときでしたか、この東北開発のセメント事業とは競争相手である小野田セメントの現物を送って、そうして東北開発の理事としての職務に相反するそういう行為を現実にやっている。私は、もちろん現大臣のころ雲野理事が任命されたとは考えておりませんし、それは万々承知しておりますが、いずれにいたしましても、長官は歴代内閣におられ、あるいはまた党の枢要な地位におられたわけですから、この種人事の取り扱いということは、まことにこれは遺憾なことだと思うのですが、ほかにもこんな事例があるのですか。
  313. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) はなはだ遺憾なことでございまして、他に同種の事例があるかどうか、私も存じませんけれども、しかし、こういうことは国策会社の場合においては避けなければならない、こう考えております。
  314. 田畑金光

    ○田畑金光君 こういう人事は二度と考えてもらいたくないし、もちろん今後これを機会に、政府としても、この種人事の取り扱いは慎重を期されると思いますが、そう理解してよろしいですか。
  315. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) もちろん今回のような事態に顧みまして、一そう慎重な取り扱いをして参りたいと、こう思っております。
  316. 田畑金光

    ○田畑金光君 同時に、私は、少しこれに関連してお尋ねいたしたいのは、東北開発株式会社法の第二十三条を見ますと、「会社ノ業務ヲ監視セシムルタメ別ニ法律ノ定ムル所ニ依リ東北開発株式会社監理官ヲ置ク」、同第二十四条は、「東北開発株式会社監理官ハ何時ニテモ会社ノ金庫、帳簿及諸般ノ文書物件ヲ検査スルコトヲ得東北開発株式会社監理官ハ必要ト認ムルトキハ何時ニテモ会社ニ命ジ業務ニ関スル諸般ノ計算及状況ヲ報告セシムルコトヲ得東北開発株式会社監理官ハ株主総会共ノ他諸般ノ会議ニ列席シ意見ヲ陳述スルコトヲ得」この第二十三条、二十四条の「監理官」というのは、これは企画庁におられるのでしょう。
  317. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 企画庁にいる者でございます。
  318. 田畑金光

    ○田畑金光君 こんなにりっぱな職務権限を持っておいでの監理官は、こういう東北開発会社の経営、あるいは経理の運営についてお気づきにならなかったのですか。会計検査院の検査等がなければ実態の把握ができなかったのですか。私は、まことにどうもこんなにりっぱな職務権限を持った管理官がおいでにかかわらず、そのために常に東北開発会社の事情等については検討もされ、調査もされ、立入検査もできるわけですから、そうなれば、私はもっと管理官等において積極的な努力を払うならば、あえてここまで大きな事件にならなくても、事前の指導によって、最小限の問題で処理できたんじゃないかと、こう思うのですが、これは大臣どのようにお考えになりますか。
  319. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) もちろん管理官が権限を持ちまして、十分な権限上の活動をすることができることは法律に明記されておるとおりでございます。ただ、企画庁の役人の立場におきまして監督いたす場合に、必ずしも会社経理全般について十分な知識がない場合もございましょうし、総合的にこれを見るという立場に立って、若干の遺憾の点があったこと等もあろうかと思います。今後こういう問題につきましては、十分管理官が責任を果たせますように、私どももできるだけ部内を統轄いたしまして、そうして将来再びそういうことの起こらぬように、十分なひとつ努力をして参りたいと、こう存じております。
  320. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は、あえて現在の管理官の人が能力あるとかないとかいっておるのではございませんから、そこはひとつ管理官の地位にある方は、この法律に基づいて、最も厳正公平にという気持を持って、ひとつ会社の内容等も平素から見まして、誤りのないように指導していただきたい、こういうことを強く希望として申し上げておきますが、ただ、それに関連して感じますことは、私の資料によると、前役員の略歴調べを見ますと、監事の中には、たとえば前監事として山中徳二さんがおられるですね。あるいはまた中村清英さんが監事として就任していますね。山中さんは行政管理庁の事務次官をやられた方、中村清英さんは経済企画庁の東北開発室長をやられた方ですね。そうして現在の役員を見ますと、やはり監事として経済企画庁の東北開発室長をやった中村清英さんが、現在も監事としてやっておる。やはりこういうことになってきますと、先輩が大事な監事役なんかにすわっておると、少し遠慮ということが人間ですから出てきやしませんかね。長官どういうふうにお考えになりますか。
  321. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん管理官として、先輩がおるためにやりにくいという点もあろうかと思います。が、しかし、管理官としての立場から申せば、先輩がいようといまいと、厳正に監査をし、監督をして参ることは当然でございますけれども、人情おのずから若干の遠慮が出てくるし、先輩が監事としている限りにおいては、そう心配ないじゃないかというような気持にもなりがちだと思う。これはまあやむを得ぬ点もあろうかと思います。したがって、そういう点については、管理官としての苦衷のあるところだと思いますけれども、今後は十分そういうことについては注意をして参ります。
  322. 田畑金光

    ○田畑金光君 私はこういう点を指摘いたしましたが、人事の問題等については、ひとつ慎重に配慮されて、この種の運営がほんとうに東北開発の母体として、中心として、しかも、地域の人人から信頼の持てるような会社として今後運営されることを強く要望しておきたいと思います。  なお、私は、実はいろいろな問題について持っておりますけれども、これはまた別の機会に、日をあらためて商工委員会等でお伺いすることにいたします。
  323. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 この国会、特に本予算委員会で、たびたび物価問題が取り上げられました。特に消費者物価につきまして議論されてきたと思うのです。物価問題の根底、基本は、独占カルテル物価を押えることであると考えます。この問題を解決しないで消費者物価の抑制を論じても意味がないといっても過言ではないと私は考えるのですが、経企長官は、カルテルは幾つあるかも、直接やっていないのでわかりませんなどと予算委員会で答えておられたわけですね。しかも、一がいにカルテルを解体するということには相ならぬとまで答弁されております。これでは物価抑制などを本気で考えているなどとは言えないと私は思うのです。特に私鉄運賃の値上げなどは、国鉄の国家独占と相待って、私的独占価格の典型であると私は考えます。先ほどから山本委員も、私鉄運賃問題についていろいろ論議されましたが、私も、私鉄運賃の値上げについて、もう少し討議を深めるために、もう少し質問したいと思います。  そこで、私鉄運賃の問題についてお尋ねいたしますが、まず内容に入る前に、運輸審議会についてお聞きすることにいたします。私鉄運賃値上げについて、今まで何回開いたんでしょうか。
  324. 佐藤光夫

    説明員佐藤光夫君) 運輸審議会は、私鉄運賃の申請は、御承知のように、昨年八月に申請を受理いたしまして運輸審議会へ諮問いたしたわけです。自後数回にわたりまして、その内容説明し、検討していただいたのです。
  325. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 審議会の諮問に対する答申はどうなっておりますか。答申はすでに出ておるはずだと思いますが、なぜその答申の内容を公表しないのか。審議会を尊重するなら、その答申を発表すべきだと私は思いますが、発表しない理由はなぜですか。
  326. 佐藤光夫

    説明員佐藤光夫君) 運輸審議会からは、まだ答申をいただいておりません。
  327. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 これは確かですか、審議会から答申が出ていないということは。
  328. 佐藤光夫

    説明員佐藤光夫君) 先ほど申し上げたとおりでございます。
  329. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その運賃値上げの問題につきまして、運輸大臣も藤山経企庁長官も、検討中と、こういうふうにおっしゃったんですね。池田総理は、値上げは選挙後というふうにおっしゃっておるが、政府はこの答申をどう処理するつもりでおるのか、答申案どおりにするつもりであるか、それとも、その政府自身で値上げを考えてやるのか、どうなんでしょうか。
  330. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように、運輸省がこの種の問題を取り扱いますのは、審議会の答申を得て、それを中核として各省に御相談があるわけでございます。われわれのほうは事前に運輸省から——まだ審議会の答申がないのでございますけれども、事前審査の意味でいろいろな書類をいただいて、そうして調査検討いたしておる、こういうことでございまして、審議会の答申を得て運輸大臣としても関係官庁と連絡される。そうして、それを待って閣議等に諮られて決定をされるというのが筋道になっております。ただいまそういう関係で、われわれのほうにおいても、資料等を運輸省からいただきまして検討をいたしておる、こういうところでございます。
  331. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まだ審議会から答申が出ていないというから、やむを得ない思うのですが、答申が出た場合は、その答申の精神を尊重なさるつもりですか、それとも、政府独自の考えで、答申は答申として、別個に考えてやられるつもりですか、どうなんですか。
  332. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) その点は、運輸大臣としてその答申をどう扱われるかという運輸省関係の問題でございまして、運輸大臣としてその答申を尊重されてわれわれのほうに話がありますか、その答申について意見を付してわれわれに御相談がありますか、それは運輸省自体の問題だと思うのでありまして、われわれのほうとしては、直接運輸審議会に、何と申しますか、運営に関係しておりませんので……。
  333. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 過去におきましてね藤山さん、値上げ答申をどのように取り扱ってきたのか。今度はまだ答申案が出ていないからいけませんが、過去において答申をどのように取り扱ってきたのか。今度の私鉄値上げについて答申案をどうするのか、はっきり私はここでおっしゃっていただきたいと思うわけです。私が持っておる資料によりますと、過去においては、答申の線を〇・二%から〇・五%程度下げて値上げを決定しておるわけです。非常に機械的にやられておると思うのです。今度もこういう線でなさるのか、こういう機械的な扱いをなさるのかどうかという点を伺っておきたい。
  334. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この審議会の答申をどういうふうに扱われて、そうしてその原案としてどういうものを作られるかということは、これはまあ過去の例等を運輸省から御説明をいただくことが適当だと思うのであります。われわれは、そういう運輸審議会の答申、そうして運輸省としての意見をいただきまして、それに対して諸般の経済政策の上からいって、それに同意すべきであるのか、あるいはそれについて訂正をするほうが適当じゃないかというように、意見を運輸省に開陳をいたす立場におるわけでございます。したがって、運輸省が原案を作成され、審議会の答申をどういうようにあれするかということは、運輸省のほうからひとつ……。
  335. 佐藤光夫

    説明員佐藤光夫君) 運輸審議会の答申に対しては、おおむね答申内容を尊重した処理が過去においてなされております。ただ、他のいろいろな観点から、若干の内容の修正がされた今お話のような例もございます。
  336. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 あのね、若干の手直しじゃないですよ。私の知っている資料によりますと、各会社とも〇・二%から〇・七%まで、全部審議会の答申とは違った線が打ち出されておるんです。だから、今後は審議会の答申を尊重するのか、それとも、政府が自主的な立場で判断して、答申の線によらないのかどうかということをもう一ぺん伺っておきます、くどいようですが。
  337. 佐藤光夫

    説明員佐藤光夫君) それは、私が申し上げるのはあるいは若干適当でないかもしれませんが、事務当局としては、答申の線に沿って事務的な処理をすべきであるというふうに考えております。
  338. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 藤山さん、どうなんですか、どういう扱いをするんですか。
  339. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 運輸省としては、運輸省の審議会の答申を尊重され、また、運輸行政の上から意見を述べられると思います。私ども経済企画庁の立場からいえば、経済全体の運営の点から、ただ単に行政というだけでなしに経済全般、つまり現在でいえば物価問題がございます。そういうような観点から運輸省に意見を申し上げるので、それがある場合には運輸審議会の運輸行政だけの立場と違う場合があることは、これは単に鉄道の問題ばかりじゃない、他の各省の問題についても同じことが言えると思います。ただ、それをどこまで採用されるか採用されないかということについては、やはりそれぞれの官庁の主務大臣としての責任において考えられることだと思います。
  340. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まだ審議会の答申が出てないのだから、審議会の答申を検討する段階にないと思うんですね。しかし、審議会の答申で、値上げせいとも、するなともしようともいう答申は出てないときに、政府部内で値上げをするとかせんとかいう意見が出ているということですね。これ自体審議会の答申を無視しているということになりゃしませんか。大体審議会は飾りものにすぎないというふうにわれわれ受け取るわけなんです。昔は、少なくとも、一応審議会の答申というものを尊重するかのように見せかけだけでも扱ってきたと思うんですが、最近の政府は少し露骨過ぎるのじゃないでしょうか。それほど審議会を無視しているように私たちは受け取るわけです。その証拠に、運輸省の審議会のみならず、公選法の審議会のあの決定に対する政府態度、それから米価審議会、農地買収問題、皆そういうふうな印象を受けるわけです。なかんずく運賃値上げは、答申案の発表もしないほど——これは現在答申がきてないというから、発表しないということは当然でしょうけれども、一体答申案の出てないときに、すでにもう運賃の値上げをするとかしないとか、こういうことが論議されること自体が、いわゆる審議会の無視になるのじゃないだろうかと思うんですが、どうですか。
  341. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 運輸省としては、審議会に出し、また、審議会の答申を待つということになりましょうが、こうした問題について審議会の答申があった後にわれわれに御相談がありますか、あるいはこういう経済上の行政でございますから、運輸省としても若干事前審査的にわれわれの意見を聞かれるという場合も、こういう状態ではあり得るかと思います。が、しかし、それはやはり運輸大臣として、運輸審議会の答申を当然尊重されながら、運輸審議会としても、むろん交通事情、あるいは運輸そのものの実態の上から考えられましょうけれども、まあこういう時代に、若干の今の経済社会の問題、物価の問題等も考慮しなければならん立場に運輸大臣としてもおられましょうししますから、他の審議会の例はとにかくといたしまして、この場合には、運輸大臣としても、相当尊重をしながらも、おそらく慎重であろうということであろうと思うのであります。われわれの段階では、事前審査という意味で審査をいたしておりますが、したがって、審査についての態度は、先ほど山本委員からの御指摘のあったときに申し上げましたように、われわれとしては、単純な赤字だけではなしに、将来の輸送関係の改善をそうして円滑化とまた危険の防止というような問題、前向きの問題として、膨大な資金も要るし、それに対する利払いが必要でございましょうし、それらの改善のために必要な値上げはこれはやむを得ない値上げであるというふうに考えておるのでございます。単純な赤字の値上げというものは、経営上いろいろな、何と申しますか、経営が不良なものは赤字が多い、赤字が多いから上げてやろうというようなことでは経営者がなまっていくというようなことにもなるので、そういう点については、われわれとして、この時代にはいわゆる前向きの姿勢で値上げを認めていくという立場をとっておるのでございます。
  342. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 藤山さんにもう一言率直に意見を伺っておきますがね、藤山さんとしては、審議会の意見を尊重をするという立場に立たれるのか、それとも政府の独自の考えに立ってやっていこうと言われるのか。最近の、まあ藤山さんも、運輸審議会のことはまだ結果が出ないからわかりませんけれども、要するに公選法の問題などを見ておると、政府は、審議会というものはもうほんとうに飾りもののようにして、隠れみののような扱いをして、審議会の意見を尊重してないという例がずっとここ出てきているわけですね。そこで今度、運輸審議会の意見がまだ出ていないから仕方がありませんとして、出た場合は、それを尊重する方針なのかどうなのか、という点をもう一言伺っておきたい。
  343. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん運輸審議会が、運輸行政上からの見地で、交通輸送の円滑化という立場から、あるいはその経営内容という立場から答申をされると思います。ですから、これはその立場においてわれわれは尊重しなければならないことむろんでございます。が、しかし、今のように経済の総合対策というようなものを立てまして物価の安定をはかろうというような立場になりますと、単に運輸行政だけの立場からの御意見については、こういう点もあるのじゃないかという意見を申す立場にある企画庁としては役所じゃないかと思いますので、そういう意味の意見は運輸大臣に当然伝えなければならぬと、こう思うのでございます。しかし、審議会の答申を、審議会は慎重に内容等についても審議をされるわけでございましょうから、その答申を尊重して参るということについては私ども特段の異存はないわけでございます。ただ私どもの立場からいえば、そういう見地からやはり意見を申し上げるということは、運輸審議会そのものが経済界全般の動向を全然無視されて運輸行政だけということではないと思いますけれども、まあわれわれの立場からいえば、そういう御注意も申し上げていかなければならぬ役所の立場でありますから、そういう意味で申し上げているわけです。
  344. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 運輸審議会は運輸省設置法の第五条で、「公共の利益を確保するため」運輸交通に関する重要な事項について民主的方法による「公平且つ合理的な決定をさせるため、」と、こうなっておりますね。政府は、運賃値上げの判断基準をどこに求めているのか。この点。それから、公平かつ合理的な根拠をどこに求めるのか。政府は個別企業経営という問題を値上げ決定の根拠にしているのか。それとも政府の交通対策など、いわゆる政策的問題を根拠にしているのか。この点伺いたい。
  345. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) その四つの場合の多くのものは、これは実は運輸省から御答弁願うのが確かだと思います。企画庁としては先ほど申し上げたような立場から意見を申し述べるということでございます。
  346. 佐藤光夫

    説明員佐藤光夫君) 今お示しのとおりに規定されておるわけでございまして、運賃自体について公平、合理的でなければならぬ。しからば具体的にいかに処理するかということでございますが、これは個々の運賃値上げで申請内容を詳細具体的に検討いたしまして、それぞれの事態に適合した判断をそれぞれ事態に応じて処理するという従来のやり方をしておるわけでございます。法律には特に具体的に処分基準はうたってございませんですが、それぞれの申請内容を詳細に検討いたしまして、まず第一に、その運賃のあり方が著しく片寄ったものでない、負担が各人に公平均等である、あるいはその決定された内容が原価その他の事情に応じて合理的であるというような諸点から検討するわけでございます。
  347. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 会社の収支のみによって値上げ問題は決定するのではなく、もっと違った交通対策の立場からもいろいろ判断して決定するということでございますか。
  348. 佐藤光夫

    説明員佐藤光夫君) お話のとおりに、単に赤字の均衡ということでなくて、その他の諸要素を総合して判断をするという方法をとっておるわけでございます。
  349. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 政府はほんとうに真剣に値上げ問題を検討し、公平かつ合理的な決定を行なおうとするならば、個々の企業の経営内容にまで具体的に立ち入ってしなければ私はいけないと思うのです。そうして万が一赤字であって、値上げを認めたにしましても、値上げした結果、またもうけ過ぎたというような結果が生まれた場合には、このもうけは国民に返すために私は何らかの形で取り上げなきゃいかぬと思うのです。赤字だといって、値上げさしてそうしてうんとこさもうけるならば、これはもう取り過ぎだと思うのですね。公平かつ合理的な立場に立てばそういう……。そこで政府は、いろいろいいましても、結局は東急、西武など私企業の立場に立って値上げを決定しようとしているのではないだろうかと、こういうことなんです。人民の立場に立たないで、やはりこういう私企業の立場に立って、しかも、収支といいますけれども、この会社は、私ここにたくさんの例を持っていますが、全部非常な利益を上げておる。三割から四割、三割五分から四四割以上の利益を上げておるのですね。ですから、会社の収支の立場に立ったら値上げするということはおかしいと私は思うのですが、政府考え方は、要するに、結局会社の利益の立場に立って、人民の利益の立場に立たないで値上げ問題を決定しようとしているのではないかと、こういうことです。
  350. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) もちろんわれわれはこの利用者の立場を十分尊重しながらこの問題を考えていきますことは当然でございまして、したがって、将来利用者が、いわゆるもうすし詰めになって立っちゃって、役所や会社に着けばくたびれてのびてしまうというような状態をまあ放置しておくわけには参らぬと思います。したがって、そういう見地に立って改善を加えていくと、新しい車を作る、あるいは輸送力をつける。また、現在のような状況でありますれば、道路交通の関係からいたしまして踏み切り等の整備等もしてもらわなければならぬわけでございまして、そういうようなかなり公共的な性質を私企業といえども持っております。あるいは割引等についても、ある場合には公共的な性格を持った割引率をやはり設定しなければならぬという点もございます。そういう点も考慮しながらわれわれとしては、今日の経済情勢に対応して、そうした問題が解決できていくような立場でこれを考えていかなければならない。でありますから、先ほど申し上げましたように、そういう面について必要のある場合には値上げをしなきゃならぬということであれば、することが私は利用者のために——いわゆる須藤先生の言われる人民のため、ということになるのではないかと、こう思っておるのでございます。
  351. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 藤山さん、あなたはそういうふうに考えますけれども、あなたは電車に乗った経験がないんですよ。いつも自宅から役所へ自動車で乗り歩いてるから何もおわかりにならないんですが、私は小林一三さんの作った京阪神急行の沿線に住んでるんですよ。豊中という所に住んでるんですが、大阪へ出るのに毎日電車へ乗るわけです。これはもう実に殺人的な混雑を来たすんです。運賃が値上がりしたからといって、この殺人的な混雑は少しも解消されないんですよ。同じなんです。もう飽和状態に入ってるわけですね。もう車が五分間に一台ぐらい来るわけなんです。それでも満員なんです。ですから、これ以上値上げしたら会社はもうかる一方で、何にも施しようがないんです。乗客のためには施しようがないほど一ぱいなんです。それで、見ますと確かに車の車体は古い車体がなくなって、新しい車体になってますよ。最新式の車体になってます。しかし、それは会社の財産がふえたということでありまして、人民の立場に立ったら、何らたいしたことじゃないわけなんですね。ですから、混雑は緩和されるだろうとかなんとかいうことは藤山さん、あなた一ぺん電車に乗って一カ月ぐらいどこか通ってみないとわからぬことですよ。それは僕らよくわかってる。それで、京阪神の例をあげても、株の値段は約三倍ですよ。それから配当は一割ですけど、しかし、もうけはもっとありますから、会社はだんだんと資本蓄積してますよ。どんどんとよくなってるわけです。それに今運賃を上げるという理由などは私はないように思うんです。まあ、その点これから少し質問したいと思います。  運賃値上げの認可申請には収支予算書を添えることになっておりますが、どんな収支予算となっておりますか。
  352. 佐藤光夫

    説明員佐藤光夫君) 運賃値上げの申請は今、先生お話のようにいろいろな資料がついておるわけでありますが、現在、内容を検討中でありますので、今、先生がお話になりました京阪神急行の一例について若干御説明を申し上げさしていただきたいと思います。  で、先生のお話の京阪神急行の宝塚線でございますが、お話のように現在、朝のラッシュ一時間の乗車効率が二八五%という最高の乗車効率から、この状態をこのままおきますと、現在の平均二二四%が三十八年度には二五八%の乗車効率になるという危険がございますので、現在あります三国——十三間の通過車両を増強いたしますとともに、この中間の輸送力をつけまして、現在ラッシュ一時間に一万五千七百五十人という輸送力がついておりますのを、一万九千九百人程度の輸送力を三十八年度にはつけたい。したがいまして、これに要します建設費総額が約百八十三億という計算をいたしておるわけでございます。したがいまして、これに必要な経費の積算を具体的にはじいているわけでございます。
  353. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そういうふうに会社の事業をだんだん大きくしていくならば、これは増資でやったらいいのですよ。その会社のそういう施設を広げていくこととかそういうことを運賃の値上げによって解決しようというのは、これはおかしいと思うんですよ。これは会社の財産をふやしていくのを人民から取り上げていくことによってふやしていこうということです。もしもそれなら増資したらいいのじゃないのですか。藤山さん、どうですか。
  354. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん会社の資金の調達方法といいますか、それは借入金もあり、あるいは今の増資の方法もあると思いますが、しかし同時に、やはりそういう資金を借りたり、あるいは増資をするということになれば、今の経済界の現状からいえば相当な利息を払って参らなければならぬわけでございまして、そういう点からいえば、全部をそういう増資等でまかなうということも経営上は非常に困難な場合が出てくる。あるいは借入金でまかなうために相当な困難が出てくるということも、これは一般の通例もあることでございますから、そのある部分を運賃値上げ等によって埋めていくということも、これはまたやむを得ない場合があるのでございまして、その辺はやはりある程度は認めなければならぬと思います。
  355. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 藤山さん、すべて会社の施設のこととかそういうことを——その運賃値上げのほうに比重は私は多いと思うんですよ。だから言うわけですがね。決してその運賃値上げによってそういう問題は解決しようとしないで、借入金なり、増資なりの形をもってそういうことはどんどんやっていく。できるだけ国民の負担は少ない、公正かつ妥当な少ない負担によってやはりこういう公共事業は私はやっていくべきだと、こういうふうに考えるのですが、そういう方針ではいっていないという点で私は不満なんですね。  で、質問いたしますが、昨年八月の申請当時ですね、運輸省、昨年八月の申請当時の予想と今日の実績とはどういう関係になっておりますか。
  356. 佐藤光夫

    説明員佐藤光夫君) 先ほど申しましたように、申請のときには収支予想をつけるわけでございますが、若干の時日の経過がありますので、それは事態の変化に応じて内容を修正の上で検討するといういたし方をいたしております。
  357. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 申請当時の予想と今日の実績は同じなんですか。食い違いがあるでしょう。どうなんですか。
  358. 佐藤光夫

    説明員佐藤光夫君) 先生お話のように、当初予想した状況といろいろ変わっている点がございますので、そういう点は事情をよく調べてそのつど修正をいたしております。
  359. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その予想と実績とが食い違った理由は何ですか。できれば私は昨年八月の申請当時の予想とそれから実績とを数で出してもらいたいのですよ。それで違った理由はなぜかという点を説明してもらいたいのです。
  360. 佐藤光夫

    説明員佐藤光夫君) 御説明申し上げますが、予想につきましては、先ほど来申しておりますように、いろいろな方法を用いましてやっているわけでございますが、時日の経過によりまして、内容が、実績が徐々に出てくるわけでございまして、そういうものを総合して行なったわけでございまして、具体的の一々の数字は用意してございませんが、そういう内容を常にその時点に応じて検討している、こういうことを申し上げているわけでございます。
  361. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その検討しているというだけで私の要求した違いが数字として示されないし、予想と実績との違った理由はどこにあるのかという説明にはそれではならないと思うのですが、運輸省、どうでしょうか。検討している、検討しているというだけでは説明にならぬじゃないですか。
  362. 佐藤光夫

    説明員佐藤光夫君) 現在、そういうような数字的な点についていろいろ政府部内において御検討願い、また、われわれも検討している段階でございますので、これがある程度政府として内容的に固まったときにはあるいは具体的に申し上げる機会があるかと思いますが、もうしばらく時間をいただきたいとわれわれとしては考えております。
  363. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 これは一体作為的な資料と違うのですか、どうなのですか。
  364. 佐藤光夫

    説明員佐藤光夫君) われわれとしては、決算報告その他によりまして、先ほど来申し上げておりますような公平、合理的な検討をいたしておるというふうに考えております。
  365. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 検討中、調査中というふうにおっしゃいますが、具体的にどの点を調査しようとしているのか、具体的に言っていただきたいと思います。電鉄業と自動車、不動産、遊園地及び広告業、百貨店などの付帯事業の関係もこまかく検討していらっしゃいますかどうか。営業収入や営業費についてこまかく検討を加えていらっしゃるかどうか。その点伺いましょう。
  366. 佐藤光夫

    説明員佐藤光夫君) お話のような点は検討をいたしております。
  367. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それも目下検討中なんで報告の段階ではないわけですか。
  368. 佐藤光夫

    説明員佐藤光夫君) 先ほど来申し上げておりますように、まだ検討の段階であることは事実でございます。
  369. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 大体私鉄大手十四社の営業報告書、有価証券場告書のどれを見ましてもみな実はもうかっておるわけなんです。その点は大臣も認められるだろうと思うのですが、損などしている会社は一つもないのです。値上げしなければならないという会社は一つもないのです。ここに、私先ほど申しましたが、どの会社を見ましてもみんな三割から四割程度の利益を上げておる。どこも損をしている会社は一つもありません。藤山さんはその点どういりふうにお考えになりますか。どこも損をしていない。みんな三割か四割利益を上げておって、値上げをしなければならないというふうな理由は、会社の収支から見ましても実は成り立たないですよ。藤山さん、どういうふうにお考えになりますか。
  370. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今運輸省からいろいろな資料をいただいてわれわれも検討をしておるところですが、先ほど来お話のありましたように、たとえば新線の輸送改善のために設備をすると百数十億の金がかかるといえば、今日おそらく利息から申しても割近い、九分何厘、優良な会社でも——というような金利を払わなければならぬと思います。私どもはそういう前途の、前向きの姿勢でそういうものを払っていくという場合には、ある程度これはやはり運賃でも、むろん会社の利益があれば賃利益の中から出してもらう、ある程度そういうものを運賃でもまかなうということは私はやむを得ないのではないかと、こう考えております。
  371. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そこの見解が私たちと違うのですね。藤山さんは資本家だ、だから、資本家の利益になるような方法を考えますよ。そんな会社が新線を作る、土地を買って新線を作るというような場合、運賃値上げにそれをたよって、その買った土地や線路が運賃を払った人間のものならばともかく、それが全部会社の収入になるんでしょう。会社の所有物をふやすのに運賃値上げでこれをまかなっていくというのは、これは私は考え方としておかしいと思うのです。それからもう一つ問題がありますよ。会社はこの電鉄会社などのもうけた金を、これを傍系会社にずいぶんつぎ込んでおるのですよ。そういうことをやめて、実際電鉄会社一本でどんどんとやっていくならばそういうことをしなくても済むのですが、傍系会社にたくさんの金をつぎ込んでおる。私はここで一つ例を詳しくあげてみようと思うのです。ひとつ例をあげて読んでみましょう。東急です。東急電鉄について先日、岩間君が予算委員会で具体的に営業内容につきまして追及しましたですね。政府は実のある答弁をしていないのです。そこで今度私は京成電鉄のひとつ例をとってみたいと思うのです。京成電鉄の本業を傍系事業の関係は一体どうなっているのか。いわゆる本業の鉄軌道業の固定資産額は三十三年九月の二十七億五千万円から三十六年九月には五十六億四千八百万円、二十八億九千八百万円の増加になっておるわけです。こういうふうに太っているわけです。ところが、本業に比べまして傍系投資額は三十三年九月の十七億二千八百万円から三十六年九月には六十三億一千五百万円、こういうふうに太っているのです。実に四十五億八千七百万円の増加です。本業を一〇〇としまして傍系会社の投資額は実に一五八%です。傍系会社の投資増加額のほうが大きいのですね、本業のほうよりも。こういうふうにもうけた金を傍系会社にどんどんどんと投資しておるわけです。この京成電鉄の傍系会社をいいましょうか。業種として旅館、輸送関係、トラック運送関係、海運関係、観光開発関係、興行、遊園地関係等です。一体、これで電鉄会社ということがいえるでしょうか。傍系会社への投資額の増加額は常総筑波鉄道一億二千万円、増加率二九%、新京成電鉄一億円、八三%、小湊鉄道五千万円、五九%、鹿島参宮鉄道三千三百万円、一九%、九十九里鉄道四百万円、一〇〇%、成田観光自動車五百万円、二三%、水郷観光交通二千万円、一〇〇%、これはほんの一例にすぎませんです。大臣、これじゃ全くめちゃめちゃではないでしょうか。本業のほうに投資せずに、傍系会社にものすごく投資しているんです。それでもって、本業のほうの設備投資の資金が足りないからといって、今申しましたように、本業の設備投資をするために運賃値上げするという理由になりますか。私はならないと思うんです。一体政府はそこまでこまかく調査し、ほんとうに値上げしなければならないと判断して値上げをきめたのか、そうじゃないだろうと私は考えます。それじゃ、政府は私鉄の言いなりになっているといわれても仕方がないだろうと思うんです。国民はすべて政府の物価対策を信用することができないというのが今日の段階だと思いますが、ひとつ藤山さんの御意見を伺いたいと思ひます。
  372. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) われわれといたしましても、先ほど申し上げましたように、将来の輸送の改善に対して、借入金等で相当大きなまかないをして参らなければなりませんから、その利息の支払い等当然いたしていかなければならないのでありまして、したがって、そういう意味で、ある程度の必要な値上げは認めざるを得ないと思いますが、むろんそれらの値上げをしたものが借入金の利子になり、その借入金がいわゆる輸送改善に十分な効果を発揮するということに使われなければならぬのでありまして、その点は企画庁としても、そういう立場に立って運輸省に意見を申し上げ、運輸省がそういう意味において指導官庁として監督をしていくという立場でものを考えておるのでございます。
  373. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私鉄は、藤山さん、公共事業だ公共事業だといいながら、設備投資に要る金を国民のふところにおんぶしてくる、国民の肩にかかってくるということは、不合理なことじゃないでしょうか。ほんとうに設備投資はやはり借入金とか、増資とか、そういうことにたよるべきで、私はそれを運賃値上げにたよることは間違いだと思うんですよ。現に私は京阪神急行に小林さんのもとで三十年働いていた男なんですよ。ですから、京阪神のずっと成り立ちをよく知っておるわけです。どんどんと会社は太ってますよ。戦争で犠牲を国民は受けましたけれども、電鉄会社は犠牲も受けないんです。戦後のほうが戦前よりもうんと太って、会社内容がよくなっているんです。それは何によるでしょうか。皆運賃、いわゆるそれが乗客のふところからしぼられた金によって太っておるといわなければならないんです。しかるに、今日なお運賃値上げをするということは私は不当だと、どうしても賛成することができません。
  374. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まあ、私個々の内容の検討をいたしたわけではございませんから、今運輸省のいわれることからあれしてみまして、また須藤委員の言われますように、たとえば京阪神でございますか、新京阪ですか、それがまあ非常な過度の輸送をやっている。もう限度以上に達している。危険だ。そういう状況で輸送力を改善して、そして一車当たりの乗客数を減らしていくといいますか、輸送のやり方をするいうような場合を考えます場合に、むろんそれによってある程度の乗客数がふえないとは申しません。が、しかし、今のように限度がきております。乗客数を基礎にしてそうして若干はふえるかもしれないけれども、その基礎の上に立って、新しく百数十億の投資をするということになりますと、そのこと自体は乗客自身の便宜になりますと同時に、従来の乗客数が特にそれによってふえないとすれば、会社の利払いというものは、主としてやはり借入金の利払いというものは大きな負担になろうということはこれは当然考えられることですし、おわかりいただけることだと思います。でありますから、それはやはり他の収益からも埋めていく必要もあろうかと思います、もしあるとすれば。が、しかし、ある程度それを乗客に負担していただきますことも私はそれほど不合理なものじゃない。私自身あるいは資本家的立場からそう考えるというので立場が違うからかもしれませんが、私の立場から申せばある程度やはり乗客に負担していただく、それがかりにそういうような百八十億かけて今の乗客の倍もふえるのだということになるなら、すぐにもふえるということになるなら、それはそういう利払いは簡単にできるだろうということになりますけれども、そうでない以上、もう限度にきている人がそれを楽に乗せていくといえば、従来の運賃収入というものがそれを百八十億かけたからといってふえるわけじゃないのでございますから、それに対する利払いの負担というのはやっぱり見てやらなければ、ある程度は見て、それを他の面から埋めていけるというならそれは望ましいことでございますけれども、ある程度それを見てやるということは、これは私は立場が違うからあるいはあれですが、やむを得ないことじゃないか、こう存じておるのでございます。
  375. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 まあ、これ私水かけ論になりそうですからやめますが、藤山さん、これも過去の前例でいきますと、運賃値上げになっても決して楽になっていないのですよ、現実が。それでもうけるのは、会社のもうけがふえるだけで、乗客は何にも楽になっていないというのが現実です。というのは、もう今乗客と運送力とがマキシマムにきておるのですよ、どうにもならぬところまで今日きておるのですよ。これは小林米三君ですね、今の社長は。よっぽど考えなきゃならぬ点だと私は考えるのですが、そういうマキシマムの状態にきておる。そこで運賃値上げして、はたして運賃値上げした効果が乗客に現われるかどうかということですね。現われないと私は思うんです。それがてきめんに現われて、これまで立ちずめで、押し合いへし合いで行っておったものが腰かけられるようになるというんなら、これは乗客も多少運賃値上げしても、それは承認するかもしれない。そうじゃないのです。運賃は値上げしたが、やっぱり立ちん坊だ、こういうわけです、現実は。その現実をあなたは知らぬからそんなことを言っているけれども、そうじゃないのです。だから、今度の運賃値上げに関してよく検討して下さい。そうして判断を下してもらいたい。まあ、それだけ私申しまして終わります。
  376. 杉原荒太

    主査杉原荒太君) ほかに御質疑がなければ、経済企画庁所管に関する質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  377. 杉原荒太

    主査杉原荒太君) 異議ないものと認め、さよう決定いたします。  明二十九日は、午前十時に開会いたし、科学技術庁所管を議題といたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後六時三十七分散会