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1962-03-26 第40回国会 参議院 予算委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月二十六日(月曜日)    午前十時二十五分開会   —————————————   委員の異動 本日委員大森創造君、北村暢君、占部 秀男君、向井長年君、牛田寛君及び岩 間正男君辞任につき、その補欠として 豊瀬禎一君、安田敏雄君、山本伊三郎 君、田畑金光君、柏原ヤス君及び須藤 五郎君を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     湯澤三千男君    理事            川上 為治君            鈴木 恭一君            平島 敏夫君            米田 正文君            加瀬  完君            藤田  進君            田上 松衞君            千田  正君            加賀山之雄君    委員            植垣弥一郎君            小沢久太郎君            太田 正孝君            金丸 冨夫君            小林 英三君            櫻井 志郎君            下村  定君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            野本 品吉君            山本  杉君            亀田 得治君            木村禧八郎君            佐多 忠隆君            戸叶  武君            羽生 三七君            矢嶋 三義君            安田 敏雄君            山本伊三郎君            赤松 常子君            田畑 金光君            市川 房枝君            柏原 ヤス君            奥 むめお君            須藤 五郎君   国務大臣    法 務 大 臣 植木庚子郎君    外 務 大 臣 小坂善太郎君    大 蔵 大 臣 水田三喜男君    農 林 大 臣 河野 一郎君    建 設 大 臣 中村 梅吉君    自 治 大 臣 安井  謙君    国 務 大 臣 藤山愛一郎君   政府委員    法制局長官   林  修三君    経済企画庁調整    局長      中野 正一君    外務省欧亜局長 法眼 晋作君    外務省条約局長 中川  融君    大蔵大臣官房財    務調査官    松井 直行君    大蔵省主計局長 石野 信一君    通商産業政務次    官       森   清君    建設省道路局長 河北 正治君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    大蔵大臣官房財    務調査官    佐竹  浩君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十七年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) これより予算委員会を開会いたします。  委員の変更について報告をいたします。  本日、大森創造君、向井長年君が辞任せられ、その補欠として豊瀬禎一君、田畑金光君が選任せられました。   —————————————
  3. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 昭和三十七年度一般会計予算昭和三十七年度特別会計予算昭和三十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  質疑を続けます。亀田得治君。
  4. 亀田得治

    亀田得君 最初に農林大臣にお伺いいたします。  自民党農地問題調査会は、三月二十二日の総会で、世論の非難の的となっている農地買収者に対する交付金法案中身としては四千億とか六千億といったようなことがいわれておりますが、こういう法案議員立法として提案することをきめました。これにつきまして、三月二十四日の自民党役員会では、河野農相らの発言もありまして、今国会には提出しない、こういうふうにきめ、扱っておるようでありますが、その経過なり真相はどういうふうに扱われておるのか、明らかにしてほしいと思います。
  5. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 私も国会のほうが忙しいものですから、党のほうにあまり参りませんので、せっかくお尋ねでございますが、党のほうでどういうふうにいっておるか詳細にいたしておりません。ただ、たまたま二十四日でしたか三日でしたか、幹部会に用事がありまして出席いたしました。その際に、ただいまお話しの旧地主に対する補償問題を幹部会で相談をされたあとに私は行き合わしたようでございます。幹事長政調会長等から、今旧地主に対する問題の取り扱いをどうするか話したのだが、農林大臣既定方針どおり農林大臣の従来答弁せられておるとおりの方針でいっていただきたいということでございましたから、心得ましたということで、私は御返事をして帰って参りました。したがって、党並びに政府としては今申し上げましたように、従来の方針どおり進むことにいたしておるわけでございます。
  6. 亀田得治

    亀田得治君 大臣発言につきまして、新聞でいろいろ書いてあるわけですが、非常に重要な問題でありますから、従来の方針どおりという点の中身をもう一度明らかにしてほしいと思います。
  7. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) この国会におきましては、ただいま御審議願っておりますとおりに、国民金融公庫を通じて二十億の融資をいたすという具体的にはことでございますし、私としては、この政府のやっておることで旧地主に対する取り扱いは進めて参る、こういうことでございます。党の方針決定したらば、党の方針に従って私は善処するということが既定方針でございます。
  8. 亀田得治

    亀田得治君 前尾幹事長が旧地主団体から陳情を受けた際に、この農地問題調査会の結論を待ってからこの問題についての扱い方をきめたい、こういう意味のことを申して説得しているようです。こういう考え方なんでしょうか。
  9. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 政府方針は、この委員会で総理から御答弁がありましたとおりに、さしあたっては二十億融資あと調査会決定を待って政府は善処するのだということが方針でございます。
  10. 亀田得治

    亀田得治君 私は、交付金法内容を見ますると、これは明らかに被買収農地に対する補償、この考え方であることは明確なんですね。決して社会保障的な意味のものではない。したがいまして、こういう交付金法案の扱いといったようなものは、もう断じていけないのだということを明確にすべきなんじゃありませんか。今国会では出さぬとか、調査会の結果を待つとか、そういう性格のものじゃなかろうと思うのです。どうでしょう。
  11. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 調査会決定を待って善処せいということは社会党さんの御趣旨でございます。それを、私たちが二十億出したら、早まっているじゃないかとおっしゃるが、私たちは、二十億は、さしあたって二十億出して貸し付けすることであって、あと調査会決定を待って善処するのだ、こういうふうに申し上げておる。初めからそのとおりでございます。調査会決定を待って善処する、これが基本的な態度でございます。
  12. 亀田得治

    亀田得治君 私は今二十億の問題を申し上げているのじゃない。被買収農地に対する補償、たくさん解放した人にはたくさん金を出す、そういう意味交付金法案です。これが問題になっているのです。こういうものは論議の余地はないはずです。従来これは、もうずっと調べてはありますが、政府はもう何回も、そういう意味補償は出しませんと、これははっきりしているわけですから、その点をお尋ねしている。社会党は、そんなものについて調査会の結果を待って善処せよなんて、そんな考え方は持っておりません、そんなものは全然問題にしておらぬわけですから。今問題になっているのは、交付金法案について、何かあとに含みが残るような発言が見られるわけですね、新聞等を通じて。そういうことをしますると、旧地主もやはりそういうところに要らざる希望というものをつなぐわけでして、こういうものははっきり否定すべきじゃないか。その点を申し上げている。二十億の問題はまたあとで別に聞きます。
  13. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 御承知のとおり、調査会にお願いしてあるわけでございます。したがって、調査会答申を待つ前に、調査会を制約するような発言は適当でない。したがって調査会決定を待って善処するということで問題を御了承いただきたいと思います。
  14. 亀田得治

    亀田得治君 えらく調査会を尊重されるようなことを言いますが、二十億の問題については、明らかに調査会を無視して問題を起こしておる。ところがこの交付金法というような関係の問題は、これは調査会問題外なんです。だから、調査会答申を待つまでもなく、こういうものははっきり否定すべきじゃないか、それを申し上げている。なぜかといいますと、調査会農林大臣諮問されておるのは、「社会的な問題及びこれに対する方策の要否」、これを諮問されておるわけです。さらに生活あるいは生業上の問題と趣旨説明に書いてある。これを諮問されているわけなのです。そんな買収された農地に対するその補償、こういったような関係のものは考えられないということがこの諮問事項の中自身に書いてある。「農地改革は正当な法律に基いて正当な補償をもって行われているので、これを是正する意味における補償考えられません。」と、政府自身調査会諮問事項を出すときに何を諮問するかということははっきり書いておるわけなのです。だからこういうような点は、これは調査会むしろ範囲外の問題であって、そんなことについて調査会も何も必要以上に尊重される必要はない。ちょっと矛盾しませんか。調査会範囲内のことについては調査会を無視したということで問題を起こしておいて、範囲外のことまで何も待つ必要はない、おかしいじゃないですか。
  15. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) なかなか議論はデリケートでございますから、なるべくそばに近寄らぬほうがよいと思って、遠くのほうでお答えしているわけでございまして、無視しておる、無視しておるとおっしゃいますけれども、無視しておるつもりはないのでございます。というのは、調査会答申を待ってやることは当然でございますけれども、その前に緊急に、世上こういうふうに物価も上がってきましたし、いろいろな仕事もいたしたいというようなことでございますので、しいて言えばつなぎ資金というような意味で出していく必要があるであろう、こういうことでいろいろ、政治問題化しておりますからやった、こういうことでございますので、まあ二十億の問題についても、厳密に議論があれば、ある余地はあると私は思いますけれども、そういう意味でいたしたのでございます。したがって本調査会の結果を、早晩答申があるわけでございますから、その答申を待って、その上でその答申を見て政府としては善処して参りたい、こう思うのであります。
  16. 藤田進

    藤田進君 議事進行。ひとつ御協力いただきたいのですが、今亀田委員がポイントとしているのは、諮問されるときに政府はしかじかのことを付託したという文書で、資料提出委員会になされているわけです。その一部分を読み上げて、そういった補償についてはすでにしかじかの処置もしてあることだしということなんだから、これは諮問以外のものでないのか、どう理解しているのか。農林大臣お答えではそのこと自体諮問の中に入っていると、ここでは言われるように聞こえますけれども、資料提出されているものではそうなっていない、そこら辺の所信を明らかにされる必要がある。
  17. 湯澤三千男

  18. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 私のお答えが行き過ぎるかもしれませんが、私は前回農林大臣をいたしました当時に、補償すべきものにあらずというはっきり答弁をいたしております。ところがその後農業事情農村事情が相当に変化して参っております。これは御承知のとおりであります。ことに今御審議を願っておりまする農業基本法関係二法、この農地に関する法案内容といたしましても、これは決して私は農地法に抵触するとか何とかいう、従来の基本方針に抵触する、しないというまでは行っていないと考えておりますけれども、しかし明瞭に考えられる点といたしましては、従来は不在地主は一切認めぬという方針であった。したがって、それが一反であろうが五反であろうが、一切それは被買収地になっておるわけであります。したがって終戦当時にはずいぶん、三反、五反の所有者でお気の毒に、またずいぶん無理だなと思われる人もあったわけでございます。しかし、これらもその当時の法を実施する上において一律に実行いたしております。ところが、今回政府提案いたしておりますところのものは、御承知のとおり一時的に信託といいますか管理といいますか、で預けて置くことができるというようにいたすわけでございます。そういうふうにいたしまして、農地に対する行政の感覚も順次変えていかなければならぬ情勢にあるわけでございます。で、時代は常に固定停滞いたしておりませんで、変わって参りますると、その変わっていくその変わり方について、物の考え方を変えんでよかろうかどうだろうかということも、私は考慮の余地は実はあると思うのでございます。そういう点について、むろん私一存で、これは変えるべきものだとか、変えられないものだとか、きめるべきものじゃないと考えておりますから、これらについては、広く世論帰趨を待って善処いたしたいと私自身考えております。そういうふうに、大方の人の見るところも、この調査会諮問いたしました当時は、確かに諮問の程度でむろん片づいたと思いますけれども、その後行政の面が今申し上げるように順次変更しつつある。また、われわれよりもさらに飛躍して、社会党さんのほうは、大規模経営でいけ、なるべく合わさるようにしていけというようなことを言っていらっしゃるわけでございます。そういうふうになりますと、ますます当時の考え方と、農地法実施当時の考え方と違った角度で、農地に対する考え方をしていかなければならぬ場合が起こって参ると私は思うのでございます。そういうことでございますから、この農地に対する扱い方、物の考え方につきましては、むろんその当時のものを補償するとかいうようなことまでいくことがいいか悪いか、これは非常に議論があると思います。今なお私はそういうことを考える必要はないんだという、率直な私の気持では思います。思いますけれども、これは世間の受け取り方、各農村における受け取り方は、それぞれ非常に違うと思います。したがって、広く世論帰趨に待って決定することが一番公正である、こう思っておる次第でございます。したがって、私はこの問題に関する限り、私一存意見をなるべく申さぬようにいたしまして、党の意見決定、もしくは世論の動向というものを十分見定めて今後いくことが、農村の平和のためにいいことじゃないだろうかと思っておるわけでございます。しかし、今私の申し上げた答弁は、さっき議事進行その他でおしかりを受けましたから、協力をしてはおるつもりではございますけれども、私はぼやけておる答弁をしているのは、そういう私に考えがあるので、それはなるべく慎重にお答えをしようということで、ぼやけた答弁をしているということを御了承いただければ望外のしあわせでございます。
  19. 戸叶武

    ○戸叶武君 関連質問議院内閣制のもとにおいて、政党内閣であるから、党の意思決定というものを尊重するということは、これは当然なことだと思いますが、問題はそのけじめだと思います。政党内閣のもとにおける議院内閣制であるからといって、内閣自体が、統一された見解を持たないでこの国会予算委員会に臨んできて、そして予算委員会において質問が行なわれたときに、国務大臣としての答弁の職責を果たし得ずして、党の決定に従わなければならないから、慎重を要するからといって、十分なる答弁ができないという状態では、これは党と党の最高幹部間における話し合いですべて国会が運営されなければならないことになってしまって、この議場において、国会内閣とが、一つの問題を中心として十分なる審議を尽くさなければならないという機能が麻痺することになるのではないかと思いますが、この点に対して河野さんは、との官僚の多い池田内閣の中においても異色のある党人ですけれども、ややもすれば、内閣が非常に官僚的に運営されるときに、こういう問題に対して河野さんあたりがはっきりとした見識を持たないと、池田内閣、そうでなくてもいやがられているのですから、あなたまで巻き添えを食うおそれがあるので、一つ明快な答弁を伺いたい。
  20. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 予算決定当時に、党と政府の間において決定いたしました問題においては、明確にお答えいたします。ただ、今お尋ねのように、その後において党で取り上げた問題、取り上げようといたしておる問題等についてのお尋ねにつきましては、私は、今お答え申し上げたように政府においてはお答え申し上げるより仕方がないじゃないか、こう思うのでございます。決して一々党に帰って相談しなければ答えられないというようなことを考えておりません。政府において決定した問題については明確な、政府独自の立場においてお答えをするということはいたすつもりでございます。
  21. 戸叶武

    ○戸叶武君 それでは、そういうふうな国務大臣態度では、ここの審議は進まないのです。したがって内閣は、党のそういう決定がおくれることによって、慎重な態度をとり、発言もできない、事実上において国務大臣としての機能を果たしてない、そういうものを相手——われわれは自民党相手にものを言っているのではない、内閣国務大臣相手にものを言っているのですから、その答弁十分意を尽くせないという場合においては、こういう問題に対する議案は、今国会においては提案できないというふうに私たちは認めていいですか。これは、一つ議案に対する問題は、内閣の中に発案権なり発議権が、憲法以外のものはあるとしても、国会審議権というものを尊重しないで、そういうふうに内閣だけの意思によって独走するということは許されないのですから、ひとつその問題に対して御答弁を願いたい。
  22. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 今、この予算の中にあります二十億の問題にしても、この問題については、明確に先般来お答え申し上げているわけでございます。たまたま御質問のあります問題は、その後に起こってきた、党のほうにおいて農地補償をどうするかという問題についての御質問が主眼のように心得ます。これを補償するかしないか、補償という言葉を使うのが適当である、ないという問題、これは今後に予想される問題についての御質問でございますから、今後起こってくると予想される問題については、党と御相談申さなければお答えできません、こう申しておるのでございます。現実にわれわれが提案いたしている問題については、明瞭にお答えをいたすわけでございます。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 農林大臣の先ほどの藤田君の質問に対するお答えの中で、現在では、自分としては補償すべきでないと考えておる、こういうことを申されましたが、現在の心境としては、この点は確認しておいてけっこうですね。
  24. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) それは私自身個人としては、——個人というとおしかりを受けるかもしれませんが、今そういうふうな御質問でございますから、補償という段階には至っていない。今後農地法改正、もしくは土地に対する取り扱い等を変更して参る場合に、また新しい社会上の問題が起こってくるかもしれず、そういう場合には、また新しい問題として考える場合があるかもしれませんが、現在の段階においては、補償のことを考え段階ではないというふうに私は考えております。
  25. 亀田得治

    亀田得治君 それから、農地問題調査会に対する諮問事項というものは、変更されているわけでしょうか。もとのままでしょうか。
  26. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) この委員会に対する諮問は、変更いたしておりません。
  27. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますると、補償問題をどうするかということについて答申を待つということは、これは必要ないんじゃないでしょうか。
  28. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 必要の有無という点も、委員会独自の立場において、その後の農地に対する取り扱いの変化、もしくは地方における各種の問題、政治問題化しております旧地主運動等に対して、調査会がどういう御意見をお持ちになるかということは、われわれとしては申し上げるわけにはいきません。
  29. 亀田得治

    亀田得治君 調査会法律で、旧地主の「社会的な問題を調査審議する。」、こうなっているのです。諮問事項もそうだし、法律もそうなっているわけです。そんな法律以外のことを調査会がやるわけがないし、やったところで、それは内閣として受け取る筋合いのものでもないでしょう。どうなんです。法律すらがそうなっているわけなんです、出発点が。
  30. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) その今お読みになりましたとおり、社会上の問題という言葉は、一応諮問には説明はいたしておりますけれども、非常に広範な問題でございます。その解釈上についてどういう答申が出てくるのか、答申の出てくるところを待ちたい、こう思っております。
  31. 亀田得治

    亀田得治君 いたずらに時間をとってもいけませんから次に移りますが、農林大臣は先ほど農地に対してものの考え方が違ってきている、こういうまあ発言をされ、これは同じようなことが昨年あたり農林大臣ときどきおっしゃったようです。ところが、そういう発言というものが旧地主の要求というものをあおっているわけです。農林大臣は現在ではこの交付金を押えるような立場にせんだってはお回りになったようですが、実際にあなたのそういう以前の発言というものが大きな影響を及ぼしているんです。そこで私お聞きするわけですが、たとえば今度の農地法一部改正において農地信託制、これは認められます。しかし、これは結局農基法でいう自立経営をできやすくするそのためのこれは措置にすぎないわけなんです。あるいはまた保有面積拡大という問題にいたしましても、農基法にいう自立経営、そのための合理的な規模拡大、そういう趣旨からこれは出ているものでありまして、そういうことが決してその古い不在地主につながるそういう性格のものではこれは断じてないわけなんですが、これは非常に大事なものであります。どういうふうにそこはお考えでしょうか。
  32. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 終戦の当時に家の若い者が出征しておりまして、手不足であるからということで、一部小作、もしくは極端な例を申しますと隣のおじさんに作ってもらった。帰って来た。返せと言ったけれども、返らぬという場合も例はあります。それから戦争の都合で勤務地が非常に遠隔の地に行かざるを得なかった。その場合に自分の村を離れるために田は作れないということでそれを預けて行った。それが戻らないという場合、そういったような中小の自作農、しいていえば小作の中にもそういうものが当時あったわけでございます。これと今度の信託の場合と比べますと、これはその間に一体どうしてこれを説明してよろしいのかということになりますと、なかなか説明が困難な場合があろうと思います。そういうものは農村において社会問題化してくるおそれがあるというようなこと等を考えますと、そういった問題は、今お話のごとく確かに自立経営の達成のため、自立する農家はけっこうでございますけれども、そのために一方においてそれを信託制というふうに信託を認めますということを言っておりますけれども、まあこれはまだ不十分である。一体兼業農家がどんどんできていく。実は自立経営といってもなかなか集まらない。依然として土地に対する執着が非常に強いというようなものがあるわけでございます。こういうものを、ほんとうに日本の農村経営の改善、改造という場合には、一体将来どういうふうに考えているかというような問題も、これから将来の問題として、予想できるのじゃなかろうかと思うのでございます。そういうようなことをいたしますと、一体今までの扱い方、これからの扱い方というものの間のいろいろな問題が、想像できるのじゃなかろうかと私は思うのであります。したがって、よほど慎重にこの問題は取り扱っていかなければならぬじゃないかと考えているわけであります。
  33. 亀田得治

    亀田得治君 どうも論旨がはっきりとのみ込めないわけですが、この農地信託制度なりあるいは保有面積拡大、そういうことがなぜ農地補償をしなければならない一つの理由になるのか、農林大臣はそういうふうな含みで、農地買収者の問題に関連してそういう発言をしているわけなんです。そこの理論的な関係を納得のいくように説明してもらいたい。私はそんな説明はおそらくできないと思うのです。そこをお尋ねしたいわけです。
  34. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) ただいまも申しましたとおりに、終戦後におきましては非常に、原因のいかんを問わず全部これは取り上げた、そのために非常に今日困窮しておられる人がおられるわけであります。ところが、今日自分が職場を変えていく場合には、今日の場合には信託制度を認めて、そうしてそれはもう頂けておけばいいのだ、お前さんの所有権はそのままでいいのだということと、終戦の当時と比べると、あまりにおかしいのじゃないかという問題が、説明がつきかねる問題がある。これらを説明のできるように扱わなければならない、同じ農村でそれらが割り切れるようにしてあげることが必要じゃなかろうかということを申しているのであります。
  35. 藤田進

    藤田進君 委員長ちょっと……。私疑義があるのであります。私の理解するところでは、農地関係法につきましては、当時からいろいろ軍へ召集された人たちが復員した場合、あるいは学業という場合、選挙によって公職に就職した場合、こういう例外が設けられて、何でもかんでも一たん預けたら戻ってこないという法制ではない。私はそう理解するし、またそういう取り扱いをして参っているわけですが、その間に私はどうも疑義を持つわけであります。この際明確にしていただきたい。
  36. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 特例を認めておった場合もあります。ありますけれども、それは実際町村において実行した場合は非常に複雑でございまして、今でもいろいろ調査いたしておりますが、なかなかそれがうまくいっていないというようなことであります。何さま扱いを農地委員会にまかしておりますので、それぞれの農地委員会において適当にやりましたので——私もその当時村におりましたが、私は村におって、私自身地主の一人としてそれを扱いましたが、特例を認めたらきりがないからみんな同じようにいこうじゃないかというような自分自身も経験があるわけであります。そういうことがいろいろ問題を起こす危険がある、こう申しておるのであります。
  37. 亀田得治

    亀田得治君 農林大臣農地改革に対する基本的な考え方をちょっとこの際明らかにしてほしいのです。どうもその辺に少し動揺があるような感じを受けますから。私たちの見方では、戦後の農地改革というものは、一部の世間の人が言っておるような、決してこれは単なる終戦処理ではないのです。農村の民主化なり農業生産力を引き上げていく、こういう立場からこれは当然なさるべき政策なんです。そういうふうに私たちは理解しておるわけです。この点どうでしょう。
  38. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 私もこの法案が議会を通過いたしましたときには議席を持っておりました。当時私は記憶がありますが、与党の幹事長をしておりまして、自分で討論いたしました。私自身はそのときには、耕作権の確立をすれば足れることである、所有権の移転まで必要がないという答弁を、私した記憶があります。したがって、私は明確に申し上げますが、その当時、耕作権を確立すれば足りるんで、所有権までいく必要はなかったんじゃなかろうかと思っております。しかし、それがよかったか悪かったかという議論をここで今しようとは思いません。同時に、これは明瞭に亀田さんの言われるとおり、私の記憶が間違いないとすれば、ディレクティブによって実行されたことであるのです、内容的には。その当時、今お示しになりましたような増産であるとか何とかいうようなことも、むろん、多年、自作農創設ということを意図しておったのでございますから、それは、そういうこともこれによって実行できなかったことはない、確かに効果を上げたということも私はよく認めますけれども、内容としてはそうばかりではなかったと考えます。
  39. 亀田得治

    亀田得治君 まあ農林大臣は、当時、耕作権だけというふうに考えたかもしれませんが、農民としては、やはり農地解放を要求していた。これは戦後に始まったことじゃないわけですね、戦前からもその声があったわけです。ただ、当時は弾圧されてなかなかそれがものにならなかっただけなんです。だからその基本的な農地解放の評価というものをぐらつかせては、農林大臣としてたいへんな問題が次から次と起きてくると思う。それでお聞きしたわけですが、現在でも農林大臣は所有権は与える必要がなかったと、そういうお考えでしょうか。たいへんこれは重大な問題になるわけですが、各国どこでも民主化の過程においては、やはり農地解放というものがほとんど御承知のようになされておるわけです。農林大臣が、まあその当時、大臣としてでなしに、党の重要な役員としてでも同じことだと思いますが、そういう考えでおやりになり、現在もそういう考えだということになりますと、いろいろこれは波及するところが大きいと思います。はっきりその点お答え願いたいと思います。
  40. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 私は国会決定をみた問題について、今とやかく申すことはございません。
  41. 亀田得治

    亀田得治君 それから次に、大蔵大臣にちょっとお伺いいたしますが、三月の十三日の総会におきまして、農地買収者問題調査会は、国会で国民金融公庫法の改正法案が成立しましても、その融資を一時中止してくれ、調査会答申が出るまで一時中止してもらいたい、こういう決定をして政府に申し入れをしたわけですが、大蔵大臣としては、これはどういうふうに取り扱われるつもりでしょうか。
  42. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 内閣の総務長官のほうに申し入れがあったということは聞いております。で、まだ国民金融公庫法に出資する問題も国会を通過しておりませんときでございますし、またこれが通過しましても、実際にどういうふうに融資をやるかという具体的な問題も検討中でございますので、相当まだ予算が通ってもひまがかかることと思っておりますので、この具体案ができればこれは私は実施してもいいと、政府の政策でございますから、これは調査会と無関係に、前から説明申し上げましたように、国の施策としてやっておることでございますから、準備ができれば私はやってもいいことだと思いますが、まあそういう申し入れがございましたので、一応これは私どもはその申し入れを聞いてはおりますが、それによって延ばすとか延ばさないとかいうようなことを別に今考えておりません。
  43. 亀田得治

    亀田得治君 はなはだ何ですね。調査会を無視した私は態度だと思うのです。単に聞いている程度だ、そうして政府のほうで貸し出しの具体案がきまったから、さっさとやっていくと言わんばかりのお答えです、ところが、先ほど農林大臣にもお尋ね申し上げましたように、この調査会には社会的な問題の諮問をしておるわけなんです。しかも社会的な問題とは、生活上並びに生業上の問題であります、こうちゃんと諮問を出しておるわけなんです。これは正規のものなんです。もし調査会が生業上の問題としても、そのような特別な融資は必要がないと、こういう結論を出したらどうするのです。可能性もあるのです。なぜ、待つことだけくらいは、私は当然の調査会としてのこれは要求だと思うのですが、正規のこれは諮問事項の中に入っておる問題じゃないですか、どうなんです、そこは。
  44. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まだ調査会からどういう結論が出るかわかりませんが、前から説明しましたように、それとは無関係にこの程度の処置をとることは政治的な配慮として妥当であろうという考えから、私どもはその考えをきめて国会の御審議も願っておる問題でございますから、延ばしてくれと言われて、それじゃ延ばすという性質のものでもないと最初から考えておりましたから。しかし、事実上においては、これの実施というものは相当時間を要する問題ですから、実際的にはその要望に沿うようなことになるだろうと考えます。がしかし、延ばしてくれと言われたから、これは政府がやめるという性質のものじゃないという、その性質を私は述べただけでございます。
  45. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、実際上は答申が出てくるまでは貸し出しをしないということになるわけですか。
  46. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まあそうするのが私は円満だと思いますが、それによって延ばすとか延ばさぬという性質のものじゃない、こう考えております。
  47. 亀田得治

    亀田得治君 調査会が、この二十億の融資のごときものは調査の結果必要ないと考える、こういう結論を出しましても、政府方針を変えないでやりますか。
  48. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 調査会が、もし予算編成の前にいろいろ答申があったり、あるいは御意見があったという場合は、これを無視して政府がやるということは妥当でないと考えております。しかし、調査会のそういう意見は事前にございませんで、政府が独自の判断でこういう施策をするということをきめて国会の御審議を願っておる事項でございますから、これが認められることでしたら政府はそのとおりにやるのがほんとうである、あとから、予算編成をやって政府方針国会説明しておいて、あとからきた問題に、そう理論的に拘束されるということのほうが私は問題じゃないかと思っております。しかし、そういう希望がございましたから、それに沿うような立場でやるつもりでございますが、政府方針というものはもうすでにその前にきまったのでございますから、この既定方針は私はそのまま貫いていきたい、こう考えておる次第であります。
  49. 亀田得治

    亀田得治君 調査会がきまらぬうちにきめたことが世間の非難を受けておる。しかるに、調査会あとから出てきたとおっしゃるのですが、あなたのほうが先に出たことが問題です。紛糾さしておるわけなんです。前後逆ですよ、これは。  もう一つお聞きしますが、自民党のやはり農地問題調査会では、二十二日の総会で、例の二十億の融資につきまして、生活資金にもこれが貸し出しできるような、そういう特例法を作りたい、こういうことをきめて、そうして執行部のほうに申し込んでおります。交付金法案のことは先ほど来御説明がありましたが、この点についてはどういうふうに党の中ではなっておるのか、あるいは大蔵大臣としては、そのようなやり方、考え方に同調的なのかどうか、そこら辺を明らかにしてほしい。
  50. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 党の方ではそういういろいろな意見調整が行なわれているということは聞いておりますが、政府としては正式にこのことを今知っておりません。ですから、私はこの生業資金についての貸し付けの道を開くということは今考えておりますが、そのほかに融資範囲拡大するというようなことについては私は同調しないつもりでございます。
  51. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、大蔵大臣としては反対ですね。
  52. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは予算編成のときのいきさつを申しますと、党とも政府ともそういうことで了解がついて踏み切った措置でございますから、これは私は変更すべきじゃないというふうに考えております。で、この責任は実際には全部私にあるわけでございますが、予算編成のときにはいろいろ金額についての要望も党からございました。それからこの貸し付けの性格についてのいろいろな御要望もございましたが、それは政府として簡単に承知できない。で、さっき農林大臣からいろいろ実情についてのお話がございましたが、あの当時、不在地主は認めぬというようなことをやりましたために、農村の実際を見ますというと、土地を全部取られてしまうのは困るということから、せっかくりっぱに東京に就職しておって働いておる人も、そのためにわざわざ職場をやめて郷里に帰って、一定の土地を確保しようとしたような人が旧地主の中には相当ございますが、さて帰って実際にやってみると、ごく少数の土地だけを不在地主にならないというようなことで確保してみても、農業になれていないそういう人たちがやっていけないというようなことが現在たくさん出てきておりまして、生業資金の貸し付けさえあるなら、この際こういう方向でいきたいというような希望者がたくさん出てきている。こういうような実情がございますから、私は生業資金の貸し付けの道というものは、旧地主に対して政治的配慮として妥当だろう、そのほかの性質を持ったものでは政府としては引き受けられない、それから金額も全部まかせてもらいたい、それからどの金融機関をもってこれに対処するかということも一切政府にまかせてもらいたい、そうすれば、私どもはその旧地主についての配慮も、この際正当と思われる、妥当と思われる配慮はするということで話がきまりまして、そこで閣議を開いて、こういういきさつであるから、こういう形の施策をとりたいということを報告しまして、全閣僚がその程度の配慮は妥当だということを認めて閣議でこれを承認してもらった、こういういきさつでございますから、交渉の責任やこの制度をとる責任は、あげて私が持っていると言ってもいいことだと思いますので、私はそのときにきまった範囲内においてこの施策をする、それ以外のものはこの際つけるというようなことは私としてなかなか承知できない、こういう立場でございますので、もうたびたび国会においても政府考え方を言いました以上は、これをこの国会で私は変更するという考えは持っていません。
  53. 亀田得治

    亀田得治君 時間がありませんから、大体この程度に農地問題はいたしたいと思いますが、ともかく生活あるいは生業上の問題、社会的な問題から発展して、さらにいわゆる地主補償、こういう問題まで火がついてきているわけです。私は、これは新聞等にもいろいろ出ているわけですが、参議院選挙等にからんでいると思いますが、自民党国会議員の方がたくさんこれに署名をされている。しかし普通は自民党意見などを支持されるような人でも、これは筋が通らない、こういうことで非常に世論の反感を買っている問題なんです。しかし、こういうものが絶えず話題になりますと、農地解放を受けた農民に対しては、その財源の裏づけとして農地に対する特別な税金とか、そういったような問題等もからんで参りまして、非常なやはり要らざる不安を起こすわけですね。だから私はそういうことのないように、はっきりこういうことはやはりしてもらわなければならぬのじゃないかと考えているわけです。理論的にも御承知のような最高裁の判決もちゃんとあるわけですし、また昭和三十年に農林省が調査をされ、あるいはまた昨年、今度の調査会が調査をされた結論等も出ている。決して地主はそんなに他の農民以上に困っていない。はっきりしている、これは。政府もまたそういう補償はしないと、これは再三、総理大臣以下言明されてきたことなんです。だからひとつ、本日は不十分ではありましたが、ぜひこういう問題で世間を騒がすということのないように、明確にひとつされることを要望いたしておきます。農林大臣質問はこれくらいにいたします。  あと外務大臣お尋ねいたします。まず最初に、外務大臣の朝鮮問題に対する基本的な態度を御説明願いたいと思います。われわれからみておりますと、韓国に対しましては、ことさらに理屈をつけてその立場が立つように弁解している。北朝鮮の共和国に対しては筋の通ったことでもなかなかそのとおりすなおに受け取らない。そういう感じがありありとするわけですが、朝鮮問題全体というものに対して外務大臣はどういう態度で取っ組んでいるのか、明らかにしてほしい。
  54. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) わが国は平和条約の第二条で朝鮮の独立を承認しているわけです。この朝鮮の問題につきましては、第二回の国連総会、すなわち一九四七年の総会におきまして決議がございました。すなわち選挙をしろ、こういう決議でございます。その後一九四八年になりまして韓国南の部分だけにおいて選挙が行なわれました。四七年の国連決議ができたわけでございます。私どもはその国連決議の趣旨に沿ってこの朝鮮問題というものをみているというのが基本的な態度でございます。
  55. 亀田得治

    亀田得治君 事実上、北朝鮮があることについての考え方はどうなんです。今一方だけしか説明されておりませんが。
  56. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 四七年の国連の決議では、この人民の意思というものと政権というものは切り離せないのだから、自由な人民の意思の表示によるところの投票を行なって選挙をやって、そして政権を作れ、こういう決議でございます。四八年に選挙をやりましたのは南鮮部分だけでございまして、すなわち国連では、その地区における人民の自由に表明された意思によってできているこの部分における事実上の合法政権である、合法政府であるというふうに韓国は認められているわけであります。北鮮の側におきまして、国連の言葉で申しましてオーソリティがある、こういうことを言っております。一国に二政府は認めないという立場でございますから、韓国の政府を認める。これに対して交渉をしている。北鮮のほうは、オーソリティがあるという国連の決議どおり私どもは考えております。
  57. 亀田得治

    亀田得治君 南鮮が事実上三十八度線以下だ、韓国が。こういうことはあなたもたびたびおっしゃっておるわけです。私はその観点からのことを聞いておるわけなんです。全然無視されるような答弁をされておるわけですが、そういうことで実際問題としてスムーズにいくものでしょうか。
  58. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 実際問題としまして、やはり韓国の施政を及ぼしている範囲は停戦協定でいたしました地区より南側にある、それしか及んでいないということで韓国との間の話しをするというのが、現実に即した考え方だろうと思っております。
  59. 亀田得治

    亀田得治君 私が基本的態度というふうにお聞きしますと、今最後におっしゃったことは言われないわけなんです。最初の二回の答弁のようなことであれば、これは韓国が主張していることと一緒ですよ。あなたは、日韓会談のときには、韓国は三十八度線以下だと、請求権の対象としては。これは私は本質的なやはり問題に触れておる問題だと思う。だから、そういう点を基本的な問題の中の一つの大きな柱として考えておらぬところに、やはりこじつけが出てくる。  こういう抽象論はこの程度にいたしまして、次に具体的にお聞きしたいのは、朴政権の合法性と継続性の問題です。これは衆参ですでに相当議論はされておりますが、今まであまり出なかったような点について政府の見解を若干聞きたいわけです。それは、昨日のソウルからの報道によりますと、二十四日に韓国の国家再建最高会議は国家再建非常措置法十一条に第二項を設けることを決議し、それに基づいて、憲法五十六条を回避して、そうして朴議長をして大統領の権限を代行させる、こういうふうに決定したことは御承知のとおりです。そこで、外務大臣にお聞きするわけですが、非常措置法第十一条二項は、大統領が実質的にやめた後、すなわち一昨日二十四日に作られたものです。外務大臣は、大統領も認めた非常措置法第十一条、こういうことを非常に今まで強調してこられたわけなんです。ところが、十一条二項は全く尹大統領とは関係なくできたものであるわけでして、その第二項に基づいて朴議長が大統領の権限を行使する、こういうことになったわけですから、私は今までの外務大臣答弁では通用しない、こういうふうに考えるわけです。朴政権の合法性、継続性について、あなたは、尹大統領が認めた十一条、このことを強調しておった。それが唯一の根拠であります。その点、どういうふうにお考えでしょうか。
  60. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 外国に政変がございましたる場合、これは共産主義の政権になった場合がございますし、一般的なクーデターによる政権の変更もございますし、ないしは民主的な方法による、選挙による政権の交代もあるわけであります。それについて一々わが国からそれを批評するということは、これは外交慣例上はない。やっておらないのでございます。で、これはほかにもそういう国はたくさんございますわけなんですが、いたしておりませんので、韓国のみについて、いろいろ韓国の法律あるいは憲法というものをわが日本の国会でこれを中心にして議論するということは、私の立場からはできるだけ差し控えたいことであるわけなんであります。  しかし、せっかくの御質問でございますから、この点だけについて申し上げますると、韓国憲法五十六条は、大統領がやめました場合その後任を選挙する、こういうことになっておりまして、直ちにそのあとでさような手続をとるということになっております。国家再建非常措置法の第十一条は、大統領の事故あるときにはその次のだれがやるか、国家再建最高会議議長がやる、こういう規定があるわけです。したがってこれについては何ら問題はないというふうに私どもは考えております。
  61. 亀田得治

    亀田得治君 他国のことを必要以上にかれこれ言うわけじゃありませんが、外務大臣が私が指摘したような説明国会においてされておるから、それは非常措置法十一条の第二項がつけ加えられたことによって論拠が薄れたじゃないか、そういうわけなんです。あなたのほうで説明されたから、その点についてお尋ねしておるわけなんです。ところが、ただいまのお答えではどうもはっきりしないわけですが、朴議長は第二項によって大統領の権限を行使しておるのですよ。今、あなたの説明は、相変わらず十一条の第一項によって説明しておるじゃないですか。それはおかしい。
  62. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私が先般来申し上げておるのは全部、御質問がありますので、それについてお答えしておるのでございまして、私が積極的にそういうことを申しておるわけでもございません。  ただいまの点でございますが、国家再建非常措置法の十一条にそういう新たな項目を加えて、それに対してどうかということでございますが、実はこれは私のほうでまだ詳報を得ておりませんので、実際にそれについての詳しい御答弁を申し上げる資料を持ち合わせておりません。
  63. 亀田得治

    亀田得治君 そんなことは、しかし、すぐ確かめるべき大事な事項だと思います、あなたの答弁にも関連あることでありますから。それじゃ、お聞きしますが、一体再建措置法の第十一条の第一項ですよ、今までは第十一条だけであったのですが、今度は第一項になっておるわけですね。そこにおける、大統領欠位の場合における議長の権限の代行ですね、これは短期的なことを意味しておるわけですね。長期にわたって権限を代行するというような意味まで、何としても含んではいないわけなんです。それを、あなたの考えは、長期でも短期でもみんな含むのだというふうな考えで一昨日まではおられたようなんです。そこに矛盾があるわけなんです。その点はどういうふうなお考えなんですか。
  64. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 現在までありまする十一条によりますると、特別の長期の場合とか短期の場合とかいう規定はないようであります。一般的に事故ありたるときの次の代行者をきめるということだろうと思います。  それから、先ほどのお話ですが、これは韓国の問題を離れて一般的に申しまして、こういうことではございませんでしょうか。ある機関が次の者をきめる場合に、そのきめる規定は前からきまっておった。そこで、この規定によって代行者がきまって、その代行者が今度はまたその議決機関の議決によって新しい者をきめるということは、一般的にできることであろうと私は思います。
  65. 亀田得治

    亀田得治君 そういうことじゃないのですが。男前大統領が認めた十一条によって朴が代行するのだ、だから続くのだ、こう説明されておる。ところが、今度は尹大統領がいないわけですね。規定によれば、そういう場合には明らかに選挙によって大統領を選ばなければならぬわけです、憲法五十六条によって。その間の欠位の間の代行です、他までの十一条というものは。そういうふうな解釈しかできませんよ。長期にわたって代行するというのは、事実上は新しい大統領ができたことになる。そんな重大なことは古い十一条からは出てぐるものじゃない。だから、そういうこまかい問題は別として、少なくとも今まであなたが朴政権の合法性、継続性の一つの根拠として認めておりましたところの尹大統領と朴との間の関係、つながり、これはスムーズにいっている、平たい言葉でいえば。その関係というのは、今度のことによって相当疑問が出ておるということくらいは、これは普通の解釈として外務大臣として認められると思うのですが、どうでしょう。
  66. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) どうも私はそう思いませんのでございまして、先般来お答え申し上げておるとおりでございます。ただ、一般的に申し上げますと、クーデターをやりまして憲法を全く停止してしまっている国もあるわけでございますし、そういう場合に、その国の継続性というようなことを実はあまり言っておらないのですが、御審議の過程でございますので、御質問お答え申し上げておるわけでありますが、そういう場合にも比べますれば、さらにその間の継続性というものは明らかなものではないかというように私どもは思っておるわけでございます。
  67. 亀田得治

    亀田得治君 次に、もう一点お尋ねしたいのは、この今回の非常措置法第十一条の改正によりまして、朴議長が大統領の権限を代行することになったわけですが、私は、これを契機にして韓国の政治というものはもっとファッショ化する、来年は民政移管ということを約束しておるわけですが、それと逆行する方向をとるのじゃないかという観察をするわけですが、外務大臣はこの点をどういうふうにお考えになっておるのでしょうか。
  68. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 韓国における不正腐敗を一掃して経済を再建するという趣旨で、朴政権というものができたわけでございます。その方向に向かって努力するであろうというふうに思うこと以外、その他のことについてはとやかく論評、推測というものは差し控えたいと思います。
  69. 亀田得治

    亀田得治君 来年の民政移管がうまくいくかどうか、こういうことが政府が日韓会談を進めるための一つの大きなやはり考え方に結びついておるわけですね。必ず民政移管がうまくいくという前提に立って進められておるはずです。したがいまして、これは外務大臣としてやはり重要な関心事だと私は思う。  そこで、もう少しこまかくお聞きいたしますが、今回の大統領と朴議長との衝突は政治活動浄化法に関連して起きたわけですが、この政治活動浄化法というものを外務大臣はどういうふうに評価されておりますか。
  70. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 政治家の資格審査みたいな、われわれの受けたパージでございますね、あんなようなものなんじゃないかということであります。いいか悪いかというようなことは、これは外国でやっておることですから、批判は差し控えたいと思います。
  71. 亀田得治

    亀田得治君 私は、そういう形式的な説明じゃなしに、価値判断をお聞きしているわけです。結局は民政移管後の政治家の選択というものを国民がみずから直接やらないで、軍事政権がそれにあらかじめワクをかける、そこに問題があるわけですね。そういうことが一体好ましいかどうかということをお聞きしておるわけです。
  72. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 外国の指導者がよかれと思ってやっていることでございましょうから、私はこの場でそれがいい悪いという価値判断は差し控えたいと思います。
  73. 亀田得治

    亀田得治君 ともかく、その問題を契機にして尹大統領がやめた。これは民主主義的な最後の抵抗線の敗北なんです。これは重要な問題です。  それから、第二点としてもう一つお聞きしたいのは、今度の非常措置法によりますと、朴議長が大統領権限を代行することによりまして、大法院院長並びに大法院の判事ですね、日本の最高裁判所の機構、この任命権も朴議長が事実上持つことになります。今日までの軍事政権でありましても、一応司法だけは最後の一つの問題として、これは朴議長が任命しないで、伊大統領の手に残っていたわけなんです。それをも今度は朴が握るわけですね。完全に三権というものを一人の者が掌握するわけなんです。私は、こういう格好というものはもう明らかにファッショ化、独裁化、こういう傾向を進めるものだ、こういうふうに理解するわけですが、そういう大きな変化が今度の事態によって起きているわけなんです。どういうふうにそれを評価されますか。
  74. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 韓国の国家再建非常措置法の十八条の二項によりますと、大法院長と大法院判事は国家再建最高会議の推薦で大統領がこれを任命する、こういうことでございまして、従来も国家再建最高会議が推薦して、そうして大統領が任命するという形になっております。今度は朴議長が大統領を代行するのでございますから、別にこのことに関しては変わっていないというふうに了解されます。
  75. 亀田得治

    亀田得治君 それはそういうことになりません。非常に大きな変わりがあるわけです。従来でありますと、尹大統領が、たとえ国家再建最高会議朴議長がこの人も大法院院長にしてくれ、こう言うてきましても、それはいかぬ、こうがんばれば、それはできない規定になっている。今度は一人でどんどんやれるじゃないですか。どうして変わっていないのですか。おかしいですよ、今の説明
  76. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は機構的に申し上げているので、大統領というものがおって、これは尹であるかだれであるか、その人は予定していないわけですね、この条文からすれば。そこで、人が朴にたまたまかわった、こういうことだということを申し上げているのでございますが、外国の法令を一々私どもがここで解釈したりするということは、どうも私にははなはだ心苦しいのでございます。外国のことは外国のことで、やっていることを総合的に判断いたしまして、わが日本の考え方としてこれとどういうふうな条件でどういうふうにするがいいか、こういう判断をするほうが、私の立場からすればありがたいのでございますが、御協力いただけるとありがたいと思います。
  77. 亀田得治

    亀田得治君 外務大臣に協力するわけには参りませんが、あまりこまかいそういう点をつつくのも何ですが、しかし、これは三権に関する基本的な点にだけ私はちょっぴりお尋ねしているだけで、外務大臣もそれは内心じゃ大いにこういう点は関心を持っているはずです。  そこで、それじゃ結論的にお聞きしますが、来年の民政移管ですね、これは予定どおりいかぬのじゃないか、あるいは行なわれたとしても、それは非常に形だけになるのじゃないか、お膳立ては全部朴軍事政権が作って、そのワク内のものになるのじゃないか、こういう有力な意見、心配というものが出ているわけなんですね。朝日新聞の社説等にもそういうことがすでに意見として載っております。私は、これは当然だれでもが持つ疑問だと思いますが、外務大臣は、この点に関しましてどういうふうな考え方を持っておりますか、率直にひとつ答えてほしい。
  78. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) いろいろの研究をされる方があって、いろいろの御意見を持たれることは、これはけっこうなことだと思いますけれども、韓国においては、来年民政移管するということを世界に公約いたしました。しかも、国連でもさようなことを言っているわけでございます。私どもは、その行き方を見たいと考えております。
  79. 亀田得治

    亀田得治君 まあはっきり民政移管できると思うと、きちっと言われぬところが疑問を持っている証拠だ。そこで、もう一問この問題に関連して、結論的にお尋ねしますが、最近の政府答弁を聞いておりますと、先だっての外相会談では、日韓間の開きが相当大き過ぎる。また、今度は大統領の辞職という紛糾があった。こういったようなことで、日韓問題について相当消極的なニュアンスを私たちが受けております。おそらく外務大臣も、今度の日韓交渉は少し早まったのではないか、こういうふうに腹の中では考えておられるのじゃないかと思うのですが、私は、あまり不明朗な気持のままでぐずぐずいろいろなことをやっておることは、かえって事態を紛糾させると思いますので、はっきりとそういう点を明確にして、一時中止するならする、きちっとするほうが日韓双方のためにいいのではないかと思うのですが、あなたの腹の中をきちんとひとつお聞かせ願いたいと思います。
  80. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 日本と韓国は非常に近い間柄でございますし、歴史的にもいろいろないきさつがあるわけでございます。そこで、こういうような状態にあることは、これは両方にとって不幸なことでありまして、日本と韓国の国交が正常化することがいいことだと私は信じております。そう信じるならば、先方との間にいろいろな意見を交換して会談をするということ自身は、これはけっこうなことだと思います。しかし、会談をしてみた結果によって、わがほうの主張と先方の主張が開いているならば、それが合一するまでは、これは話がまとまらないのが常識だと思います。そういう意味で、私は会談をやること自身、別に悪いこととは少しも思いませんけれども、会談をまとめるという段階になりますれば、これは十分にわがほうの主張に先方も耳を十分かすという状況がなければいかんし、わがほうとしても、何も自分の言うことが十から十全部いれられるというものでなければいかんということにもいかんでしょうけれども、少なくとも、わが国民感情からいたしましても、政府のやることが納得されるという段階において妥結するのでなければいかんというふうに考えております。
  81. 亀田得治

    亀田得治君 時間がありませんから、最後に北朝鮮との関係の問題について一、二点お聞きします。それは、政府は、事実上朝鮮民主主義人民共和国、こういうものが三十八度線以北にあって、韓国はそこには手は届いておらない、こういうことを認めておるわけですね。また、昨年の四月からは、日朝間の直接の貿易も政府は認めているわけだ。そういう事実関係を認めておりながら、日朝間の直接の人事交流ですね、これだけはどうしても政府はいまだに許さぬわけなんです。これは一体どういう理由なのか、いつまでこういうことをお続けになるのか、とれを明らかにしてほしい。
  82. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 北鮮とわが国との間の経済的な交流をこえまして、人事交流ということは、それ以外に、いわゆる非常に政治的な含みも出てくるわけでございまして、こういう点にかんがみますると、非常にこの問題は慎重に扱わなければならんと思っておる次第で、したがって、大挙北鮮に渡航したいというような御要請もあるわけでございますが、この問題については慎重に扱わしていただきたい、かように考えておるわけでございます。
  83. 亀田得治

    亀田得治君 日朝間の貿易は年々増加しておるわけですね。具体的に、たとえばテレビ放送施設なり人絹のプラントなり、こういう注文なども北鮮からはきておるわけですね。ところが、日本からそういう品物を買うためには、向こうの技術者が来て、施設なら施設を見なければならない。そういう問題で来たいという問題がありましても、外務省は許さないわけです。これは一体どういうことなんです。貿易を許しながら、貿易をするための最小限度の技術者の渡航すらも許さない、こんなことは筋が通らないじゃないですか。
  84. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 北鮮との貿易は、一九六〇年度でございますと、総額で往復で申しますと百十四万六千ドル、それから本年でありますと、非常にふえまして七百九十一万六千ドル、こうふえております。今のようなおあげになりました点をしませんでも、これだけふえておるわけでございます。人の往復ということをそこで許して参りますると、先ほど申し上げたように、非常に大きな政治的な含みを持った人の動きが出て参りますることは、この際といたしましては慎重に扱わなければならない、かように考えておりますので、お断わりを申し上げておるわけです。
  85. 亀田得治

    亀田得治君 これは韓国側から何か横やりでも入っておるんでしょうか。
  86. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 諸般の状況を考慮いたしましてさように申し上げておるわけです。
  87. 亀田得治

    亀田得治君 いや、横やりが入っておるのか入っていないのかということ。
  88. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 例の北鮮帰還の問題等の際にも、非常に大きな関心を韓国が持っておるということは事実でございますが、私は、そのことがあるからどうこうという横やりがあったかどうかということが、特別横やりというふうに感じるほどのものはまだございませんけれども、諸般の情勢を考慮いたしまして私どもはお断わりをこの段階においてはせざるを得ない、そのほうがよろしいと、こう判断しておるわけでございます。
  89. 亀田得治

    亀田得治君 ともかくこの問題は、北ベトナムなども、現在では人事交流をやっておりますし、北朝鮮だけなんですね。これは非常な差別扱いだ。また、北朝鮮に行こうとする日本人に対しては、非常な人権侵害です。旅券法の十三条の一項の五号ですね。「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある」、これは相当はっきりしたものでなければいかんわけです。現在北朝鮮に渡航したいという希望が、政治家、学者、文化人、経済人、青年、婦人、たくさんいろいろあるわけですが、どうしてそれらのりっぱな人がこの条項に当たるのか、これをひとつきちんと説明してほしい。
  90. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ただいま北鮮においでになりまして、まあむろんこれはレシプロケイトするものでございましょうから、先方からもまた来る。こういうことになりますことは、どうも諸般の情勢からいって、現在のところではどうも困りますということを申し上げておるわけであります。
  91. 亀田得治

    亀田得治君 そういう諸般の情勢から見て旅券を出さないといったようなことは、明らかにこれは憲法二十二条に違反した旅券法の解釈です。これはもう了承できない。ばく然と人民の正しい要求を断わり続ける、こういうところに朝鮮問題に対する非常なへんぱな態度というものが、冒頭私が申し上げた点が現われておるわけでして、ぜひこういうことは一日も早く是正してもらいたいことを要求しまして、ちょうど時間がきましたので、これで終わります。(拍手)
  92. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 亀田君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  93. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 委員の変更について御報告をいたします。  本日、岩間正男君、北村暢君、占部秀男君及び牛田寛君が辞任せられ、その補欠として須藤五郎君、安田敏雄君、山本伊三郎君及び柏原ヤス君が選任せられました。  十二時五十分に再開することにいたしまして、休憩をいたします。    午前十一時五十一分休憩    ————————    午後一時九分開会
  94. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) これより予算委員会を再会いたします。  この際、報告をいたします。  昨日委員長に御一任いただきました分科会担当委員の選定につきましては、お手元にお配りしてございまする刷りもののとおりに決定いたしましたので、御了承を願います。   —————————————
  95. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 休憩前に引き続き質疑を行ないます。安田敏雄君。
  96. 安田敏雄

    安田敏雄君 まず農林大臣にお伺いいたしますけれども、農業構造の改善の問題について、実は農林水産委員会でこの問題を小笠原委員初めその他の委員から質問されたのでありますけれども、たまたま大臣の出席がないので、予算委員会の席をおかりいたしまして、あらためて質問をしたいと思う次第でございます。  そこで、前国会で成立いたしました農業基本法に対して、その考え方とかあるいはかまえというようなものの是非は別といたしまして、農業基本法は一般に農業憲法とも言われておりますけれども、この点についてのまずお考えをお聞きしたいと思うわけでございます。
  97. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) そのとおりでございます。
  98. 安田敏雄

    安田敏雄君 憲法という考え方を持つならば、当然基本法の定める各章に規定せられておる条文に沿って、具体的な施策を進めるための法制上の措置を講じなければならないと思うわけでございます。しかるに、前国会から提出されておりますところの法案を見ますと、選択的拡大の方向といたしまして、畜産、果樹の振興については、根幹となる畜産三法、あるいはまた果樹振興法がすでに提出され、成立しております。しかしながら、最も農業構造の重大な問題といたしましての農業構造の改善については、特にこれからの農業にとって重大な課題がたくさん含まれておるわけでございますけれども、農地法の一部改正と農業協同組合の改正案が提出されておるのみでありまして、それだけで農業構造の改善を推進していくかというようなことにつきましては、少しく了解に苦しむ点があるわけでございますが、この点についてお伺いしたいと思うわけでございます。
  99. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) ただいま御指摘になりました二法は、経営規模拡大することに必要な法律でございます。もちろん、それだけで構造改善がすべてできるわけじゃありませんのでございまして、各般の条件を順次整えて所期の目的を達したいと、こう考えて鋭意努力をいたしておる次第でございます。
  100. 安田敏雄

    安田敏雄君 たとえば、今後の農業の実際問題のあり方といたしまして、私どもは農業の経営の共同化という問題を取り上げておりますけれども、基本法では、農業の助長、こういうことをいっておりますが、これに対する具体的な取りきめが全然ございません。さらに第四章の内容におきましては、「教育の事業の充実」であるとか、「就業機会の増大」であるとか、あるいは「農業構造の改善と林業」との関係、こういうような問題について、今国会において立法化の措置がとられておりません。したがって、今やっておるところの構造改善は、わずかに政府が掲げておるところの構造改善対策の一部であるというように考えられますが、以上、私が申し上げました点につきまして、今後立法の措置を講ずる用意があるのかどうか、お伺いしたいと思うわけでございます。
  101. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 御承知のように、これからの農業といたしましては、お話のように、新しく畜産でございますとか、果樹、園芸でございますとか、いろいろ成長部門がございます。しかしながら、これらはいずれも普遍的にこれを育成助長して参るべきものじゃない、主産地を形成して需給の関係を調整しつつ持っていくべきものだと考えるのであります。これを要するに日本農業は、従来のように、米麦を主体とした経営の重点をそこに置いてやって参りました過去の農業の助長奨励の方策と多少方向を変えまして、もちろん米麦に主体を置かないわけじゃございませんが、それに、今申しましたように、新しい成長農業、これを取り入れた主産地を形成する等、いろいろの角度から自立農家を育成するという方向におきまして、各地各様の経営状態が生まれてくるであろうと思うのであります。そういうようにして、一律に全国一元的に指導していくという部面が少ないものでございますから、一応まず全国的にどういう構造のものにして参るかということから手をつけまして、必要な所要の法律案もしくは必要な経費等は漸次補給をして参るというつもりでございます。
  102. 安田敏雄

    安田敏雄君 ただいま主産地形成であるとか、あるいはまた自立農家の育成というような問題に触れてきたわけでございますけれども、今日の産業の状態を見ますというと、工業におきましても、あるいは商業関係におきましても、その企業というものがマンモス化してきている、あるいはコンビナート化しておる、そういうような問題をあげましたときに、農業を単に自立経営というような小規模の問題で解決していくということにつきましては、非常に疑問が出ているわけでございます。そういう意味合いからいきまして、構造改善というものは、従来の宿命ともいうべき農業の零細経営の打開あるいはまた経営規模拡大するため、耕地あるいはまた草地の造成を拡大し、改良して、そうして農地の集団化をはかり、あるいはまた農道の整備であるとか、水利条件というようなものを整備していくということに重点的な、いわば観点を置きまして計画を進めていくということが大事であると思います。しかしながら、政府は構造改善の推進と称しまして、本年度九十二地区の指定をいたしまして、これをパイロット地区に指定した。さらにまた一般市町村につきましては、二百カ所に総花的に補助金を出していくようでございますけれども、これは単なる適地適作による主産地形成であって、農業基盤の整備というような問題につながっておらぬというような感を深くするわけでございますが、こういう点についてお伺いしたいと思うわけでございます。
  103. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 問題は、私は、今後の農業経営のあり方というものが、経営規模拡大ということにあることは同感でございます。ただし、経営規模拡大することがいいのだから、それは社会党さんのおっしゃるように、共同経営でなければならない、共同経営でなければ経営規模拡大はできない。経営規模拡大はけっこうなんですが、それが、わが党の申しますように、共同経営までいかなくても、その仕事の性質によって協業していけばいいんじゃないかという程度のものもあろうと思いますし、また個人でも相当規模を大きくやっているものもあれば、それもいいんじゃないか。何も一律にこれでなければならぬと言って全国を指導するということは、少し行き過ぎじゃないかというところに、議論の分かれ目があると思うのでございます。さればといって、私は共同経営を否定するものじゃございません。共同経営のできるところは共同経営をおやりになったらけっこうでございます。その各地各様、人情風俗が違いますから、それを無理にこれでなければ奨励しないぞ、これでなければ政府はやらないぞという行き過ぎは、私はどうも無理がありはせぬか、こう考えているのでございます。したがって、その点において、多少の意見のズレがあるかもしれませんが、ただし、経営いたしまして、そこにできたところの農産物というものの販売もしくは原料、資材の購入等につきましては、どこまでもこれは共同して、そうして強力な協同組合によってやることが必要であるということは、全く私も同感でございます。
  104. 安田敏雄

    安田敏雄君 本年九十二カ所のパイロット地区と二百カ所の一般市町村を、構造改善の農業基盤の整備だということで指定しておりますが、こういう新しい画期的のことをいたすにつきましては、やはり立法上の措置というようなものを講ずることがよいと思うわけでございます。しかもこの計画は、今後十カ年間に三千百市町村を対象としていくのだと、こういうことになっておりますというと、今度の指定につきましては、少しく私どもといたしましては疑点があるわけでございまして、こういうような問題につきましても、やはり何らかの根幹となる、あるいはまた基準となるものを作って、そしてそれを法制化することのほうが妥当ではないか、こういうふうに思いますので、この点についてお伺いしたいと思うわけでございます。
  105. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 私も最初は、ある程度の法制化の必要があるかというようなことも考えましたが、三千数百の農村が全然実情が違う場合がありますので、これを法制化して一つのものさし、一つの規格の中に入れることはどうかというように考えまして、今後必要があれば法制化をお願いすることもあると考えますけれども、さしあたりは現状のままで進んでいく。で、中央地方一体となって研究して、りっぱなものを、青写真を書き上げまして、その上で考えていいんじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  106. 安田敏雄

    安田敏雄君 今度の三十七年度において講じようとする農業施策を見ますというと、大体この事業は、市町村長が事業計画を作成して、そしてこれを県が指導して農林省が地域指定をする。しかも、予算的には、従来のいろいろこまかく出しておったところの補助金をこれにできるだけまとめていこう、こういうようなことで、むしろその画期的な構造改善というのは名ばかりで、まあ新農村建設計画というようなかってのものにも似ておる感じを受けるわけなんです。そこで、今回指定された市町村についても、何ら法制的な根拠がない。したがって、実は先日、新聞で農林省から発表されたわけでございますが、私どもはその指定された地区を見て、初めてどういうところが指定されたということがわかったわけであります。こういうようなことから考えましたときに、構造改善という大看板を出した以上は、そういう指定の問題につきまして、与党側のほうにおいては知ってるかもしれませんけれども、野党側のわれわれのほうにおきましては、全然知らない。全体的に国会というものを軽視しているではないか、こういうように判断するわけでございますけれども、この点についてのひとつ御回答をお願いしたいと思います。
  107. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 先般新聞に出たかどうかは知りませんが、今、各府県から政府のほうへの要請を取りまとめましたものは、その候補になるべき市町村をまとめたのでございます。したがって、これは市町村から県に要望、要請があり、県において一応調査をした上でそれを農林省に申請して参る。それを農林省のほうで見まして、各府県において適当な数に候補地をきめたということでございますが、これは与野党を通じて、別にこの町村を指定するのに与野党の御意見を承ってやるというほどのことではないと考えましていたしたわけであります。
  108. 安田敏雄

    安田敏雄君 実は、これが農林省で地区指定を受ける際におきましては、いわば地方の有力者であるとか、あるいはまた、その政治につながりを、関係を持つ、こういう方々が市町村長の計画を推進して、そして農林省に持ち込んでいく、そういうようなことにおいてこの大事業を推進していくというところに、私としては、大きな弊害が出てくると思うわけなんです。これは過去の農政を見ても、よく経験しておることでございます。そういう意味合いからいたしましても、当然この立法化措置が講じられなければいかぬ。特に指定地区、パイロット地区につきましては、四千五百万円の国の補助がつく、あるいは一般地区につきましては、三千万円の補助がつく、こういうようなことでございますから、非常にそういう点について疑問を持つわけなんです。しかも今回、せっかく指定された市町村でも、農民の立場ではこれを今返上するというような動きが出てきておるわけである。長野県におきましても、たとえば養蚕地帯において、指定を受けた地域におきましては、繭価が二千円を保つということの保証がなければ、これはどういう形においても借金が出てしまう。神奈川県の、あなたの地元である津久井郡でも、返上の動きが出ておるということを聞いております。そういうわけでございますから、私どもはやはりこういう問題を推進するときには、単に主産地形成というような問題でなくて、価格の問題も十分考慮してやらないと、今後重大な問題が生じてくる。特に政治的か配慮、動向の中から、大きな弊害が出てくるということが想定せられるわけでございますけれども、十分ひとつこういう点について配慮を願いたいと思うのでございます。
  109. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) どう申し上げたらよろしいか、今度やることは、この前の新農村と同じようなものじゃないかということを第一に指摘して御批判のようでございますが、私は、前回行なわれました新農村建設運動につきましても、全国に、非常にこれを徳として、このために非常によくなっておる村があるわけでございます。これは、全国のその会合に出ましても、これを基盤にして新しい農政に進むということの意欲が非常に出ておるわけでございます。したがって、これが失敗であるからまた失敗を繰り返すなというお話は、ちょっと私とは意見を異にするわけでございます。で、今回の計画は、前回はまだほんとうに緒についただけであったが、今回はもう農業基本法の精神にのっとって、しかも、新しい国際的な動きを勘案しつつ、日本農業はここに大規模の構造改善をしなければいけないという御自覚が、各農村に非常に私は多いと考えます。で、その各町村の自覚、要望に沿って、政府はこれに協力をして参るということでございますから、今、お話のように、私の県の津久井郡にそういうものがあるというお話は聞いておりません。長野の場合にも、いやだというなら、それはどんどんおやめになったらよろしいのであって、要望が非常に強いのでありますから、それを選考するのに第一次選考として、今、相当数のものをあげておる。その中からほんとうに計画が立って、確かに初年度においてやる能力があるものから指定をして参ろうということで、今準備、調査の段階にございますから、それはそれでいいのじゃないかと私は思うのでございます。  なおまた農産物の価格についてお話でございますが、これは、この問題とは別個にも、農産物の価格安定については、別途十分に努力をして参らなければいかぬ、それが農業経営の基盤になりますことは、お話の通りでございますから、われわれとしては、可能な面においては、努力する必要があると考えておる次第でございます。
  110. 安田敏雄

    安田敏雄君 構造改善の指定につきましては、今後三千百市町村を対象にする、こういうようなことから、必要があれば立法の措置を講じていく、こういう御答弁があったわけでございますが、そのように解してよろしゅうございますか。
  111. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 大体はそのとおりでございますが、三千百という数字もふえると私は考えております。それから、一両年実行いたしてみまして、立法の必要があれば立法しなければいかぬだろうと考えております。
  112. 安田敏雄

    安田敏雄君 次に、農林大臣お尋ねしますが、農林大臣は、ただいま答弁に述べたようなことを先ごろ、十一日ですか、京都でもって第二次の農業改善の構想を述べまして、「今後東南アジアの共同体の中で日本の農業は考えなければならない。このためには、米作を一、二割減らし、他の農作物に置きかえ、米の輸入は続けて、アジア各国と競合しないという農政が必要である。」こういうことを述べられております。しかしながら、三十九国会におきまして、わが党の小林孝平議員の質問に答えまして、小林議員はこう言っておりますが、質問の中で、「政府は、河野構想で自由米を認め、肩の荷を軽くし、一方では、さらに外米の買付を進めようとするのではないかと、農民は不安を抱いております。」こういう質問に対しまして池田総理は、「東南アジアに行くのは米の買付をするのではない、」こういうことを言っております。さらにまた農林大臣は、「もう今日、わが国の食糧事情は、外米に依存しなければならぬような数字に実はなっておりません。現に今年度の数字にいたしましても、おそらく七十万石以下の数字でございまして、」こう言っておりまして、「米の生産は、天然現象でもあれば別でございますけれども、減産するようなことはない。」というような答弁をしておるわけでございます。したがって、当時の国会答弁と京都の発言とでは非常に何か食い違いがあるのではないか、こういうような印象を受けるわけでございますが、この点についてはどうお考えですか。
  113. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) たいへんいい機会をお与えいただきまして、私は感謝にたえません。実は、京都で私が講演をいたしましたのが一部新聞に誤り伝えられまして、これをどこかで訂正いたしたいと考えておったのでございますが、この機会に、私は明瞭にその点を申し上げて、御了解を得たいと思います。京都の私が発言をいたしました講演会は、ただいま申し上げました新農村建設に関する全国の推進母体ともいうべき各府県の大学の先生方、それに、各府県の新農村建設運動推進顧問という方々の、いわばわが国内における農村の有識指導階級の方々のお集まりでございます。東大の茅先生と私が講師に頼まれて出たのでございます。その際に、世界がだんだん変わってくる。EECの問題もある。たとえば、東南アジアと日本との経済提携の問題がある。これらについてどういうふうなことかということに私は論及いたしまして、そうしてだんだんEECの問題が発展しておる。世界の貿易も、ものの動きも変わってくる。日本としても大いに考えなければならぬ場合に立ち至ると思う。そのときに、日本はまた、二面において東南アジアと日本との経済提携という問題が取り上げられてこようとしておる。これはどういうふうに変わっていくかしらないけれども、万一この問題が非常に円満に進行いたしまして、そうして日本と東南アジア各国との間に経済提携が進行するようなことがあるならば、日本の農業と東南アジアの農業との関係はどうなるだろう。もしそのときに、日本農業が今日のままの姿を続けておって、東南アジアと日本農業とは全面的に競合するというような立場であるならば、おそらく日本農業は東南アジア農業に対して非常に大きな期待を失することになるだろう。また、日本農業自身も非常に苦境に立つようにならないと保証できない。たとえば、ということで、私はたとえばという言葉を言うておるのであります。たとえば、現在のように穀類のすべてを国内で自給ができるという態勢であれば、東南アジアの後進農業国において、生産するものを日本としては何ら買い入れることができない。買い入れることができないとすれば、日本の工業製品が東南アジアに売れるということができないだろう。そういう問題が起こったときに、日本農業がどうあるべきかということは、EECの各国における今日の農業問題も十分研究してやらなければだめだと、私は論旨においてお話を申したのでございます。で、そのときにもし、もし万一、日本の国内において生産費の高い穀類を生産している地方が、他の成長農産物、成長農業によって置きかえられることができて、そうして東南アジアのものを買ってやるというようなことができるとすれば、東南アジアと日本との結びつきは非常によくなるだろうというようなこと等を勘案して、今後の農政も考慮する必要があるのじゃなかろうかと思いますということを申したのでありまして、現実を私は申したのではございません。現実は、私が小林さんにお答えしたとおり、農林大臣としてわが国内においての現実は申し上げたとおりでございます。それをそういうふうにかえるか、かえないかという大きな国策は、今後に待つべきものであって、決して私は、現実に、穀類、米の生産を減して、そうして意識的に他に置きかえ、東南アジアの米を買ってやるというようなことは、わが党の政策でもございませんし、現に私が考えている考えでもないのでございます。
  114. 安田敏雄

    安田敏雄君 新聞報道の誤りだというようなことが前提になっておりますが、しかしながら、こういう問題を何らの用意もなく、PRもなくて報道されますというと、またあなたが発言しますというと、農民のほうは非常に迷惑するわけなんです。今日、農作物の中で米の生産に携っていることが農家経済を一番安定させている現状を見ましたときに、非常に農民が不安に思うわけなんです。ですから、こういう問題については、相当注意をして今後発言されるよう慎んだほうがいいと、こういうように思うわけでございます。  最後に、農林大臣にお伺いいたしますが、やみ米を自由米にするという食管構想の問題ですが、その後、一応この問題が全国の農業団体あるいは農民から非常な反撃を受けたことは、あなたも御承知のことと存じますが、その後どういうようにこの問題は進んでいるのか。処理されているのか。あるいはまたお取り上げになっているのか。お聞きしたいと思います。
  115. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 決して私はお言葉を返すわけではございませんが、あの翌日の新聞をごらんになりましても、ただ一社だけがそういうことを誤って書いており、全部の新聞が書いているならば、これは新聞が誤りだなどということは申し上げません。しかし、他の新聞は正しく伝えているわけであります。たまたま一社の新聞が間違って伝えたことで、その責任が全部、それで私に言葉を慎めとおっしゃいますけれども、これは私は、そういうふうなことを発言しなければならない場所に、私としても職責上講演をいたさなければならない場所においていたした講演でございます。したがって、注意はいたしますけれども、その点は御了承いただきたいと思います。なおまた、もし誤解をしていらっしゃる農民諸君がおありでございましたら、本日ここで申し上げたことについて、ひとつ皆さんからよろしくお取りなしをいただきたいと思います。  それから第二に、今お話の米の問題でございます。米の問題については、かねて新聞で御承知のとおり、私は私の考えが間違っているとは思っていないのであります。間違っているとは思いませんけれども、しかしこれは、世論の支持がなければ実行してはいけないということは、かねて申し上げておるとおりでございます。そこで私は、世論の支持を得るためには、なるべくわが国の有力な権威ある方々のお集まりの決定に従って実行することが適当であるという意味におきまして、私は、私の先輩、同僚の権威ある方々のお集まりを願いまして、これらの方の十分意見の交換の結果しかるべき御意見を拝承いたしまして、その結論に従って善処いたして参りたいと考えております。
  116. 安田敏雄

    安田敏雄君 権威ある方々との間において、あなたの御意見が、構想が支持されたというならば、今後それは推進していくということなのですか。
  117. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 米穀懇談会の結論が私の考えておるようなことで、そうやったらよかろうということであれば、むろんそのとおり実行いたしますし、お前の考えているようなことでなしに、別の方法で行けというなら、そのとおりに私はするつもりでおります。
  118. 安田敏雄

    安田敏雄君 今まで、米は政府だけが買い上げておった。農民の側から言えば、政府にだけ米を売っておったんです。したがいまして、結局やみ米を自由米とするということは、農民が売り渡す米は、政府にも民間にも、両方へ売るということになってくるということになりますと、これは食管の根本問題に触れてくることになるわけなのです。そうしますというと、今後あなたがこれを推進するというようなお考えになりますというと、やはり食管問題を根本的に改めていくんだということに通じていくということになるわけでございますが、との点について、どういうお考えを持っておりますか。
  119. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 今申し上げましたとおりに、食糧懇談会の結論に従って私は政治をやって参るということにいたしておるわけでございまして、その結論がどういうふうに出るか、そう遠くもないと考えます。したがって、その結論の出るまで御猶予をちょうだいいたしたいと考えております。
  120. 安田敏雄

    安田敏雄君 時間がありませんから、農林大臣はこの辺にして……。  次に通産政務次官にお伺いしますが、昨年九月以来、金融引き締め政策によって非常に中小企業の黒字倒産が多くなっている。東京商工興信所の調べを見ますと、負債総額一千万円以上千二百件、それから、負債総額が八百三億円というように、戦後最大の黒字倒産が出ておりますけれども、この黒字倒産の原因をどういうようにお考えですか。
  121. 森清

    政府委員(森清君) お答えする前に、一言おわび申し上げますが、通産大臣が突然けさほど来発熱いたしまして、私が代わりにお答え申し上げます。  今の質問でありますが、私どもといたしましては、御質問のように、昨年中小企業が非常に倒産がふえたといわれておりますけれども、私どもが調べました結果によりますと、むしろ十月、十一月に倒産が多くて、十二月にはやや落ちついた感があるんじゃないかと思っております。その原因は、申すまでもなく、九月以来の金融引き締めにもあるでしょうが、しかし、しさいに検討してみますと、倒産した会社は、主として長い間のひびが直接の原因になっている例が非常に多いのでありまして、もちろんそればかりではございませんで、たとえば、大企業が発行する手形が非常に長期にわたるために、そのためにしわが寄っているという例もございますが、主として長い間のひびがこの金融引き締めによって影響しているというふうに見るべきじゃないかと考えております。
  122. 安田敏雄

    安田敏雄君 昨年の不渡り手形の発生状況でございますが、東京だけで、十月を最高として六万五千枚ぐらい出ておる。届出金額は、十一月が最高で八十億五千万円に達しておる。こういうようなことで、枚数の問題はともかくといたしまして、金額では戦後最高を示しておるわけです。年間におきまして、七百三億円以上の巨額の額が不渡り手形として発生しておるわけです。しかも、金融引き締め以来、こういうような状況の上に、さらに手形が非常に長期化されて、地方の弱小企業は二百十日というような長期の手形を持っているわけです。非常に企業をやっていく状態の中でどうにもならないという現象を呈しておる。私はこういうような問題を聞きましたときに、確かに景気のいいときには一番いなかの弱小企業は恩恵の受け方もおそいわけでございますが、金融の引き締めの影響を受けて悪い状況は直ぐに一番早く発生するのです。そういうようなことで、こういうような現象の原因というのは、当然池田内閣の高度成長政策によるところのいわゆる所得倍増の計画の矛盾というものがそとへしわ寄せされておる。大企業は繁栄しておるけれども、中小企業は行き詰まり、倒産、こういう結果が出ておるわけでございますけれども、この成長政策のしわ寄せがそこへ来たというように思いますけれども、この点については、どういうお考えでございましょう。
  123. 森清

    政府委員(森清君) 私どもといたしましては、池田内閣のとっておる倍増計画、成長政策というものがこれにしわが来たとは考えておりません。現実に、この中小企業対策といたしましては、御存じのように、千六十億の財政投融資もしくは買いオペレーションを行なって、何とかしてこのしわが来ないように、われわれは努力をし続けてきたつもりでございます。
  124. 安田敏雄

    安田敏雄君 私は、あとの対策の問題を聞いておるわけでない。そういう黒字倒産になったというその原因が成長政策の矛盾の中から来ておるのだ、こういうふうに思っておるわけなのです。したがって、その点を聞いておるわけなのです。対策は対策でお聞きしたいと思うわけでございますが、そういう点について、もう一度お伺いしたいと思います。
  125. 森清

    政府委員(森清君) 確かに、安田さんの言われるように、手形の不渡り等を見てみますと、十月、十一月は一番大きな数字を示しております。しかしながら、十二月になりますと、これがやや減っておる状態になりましてこの結果は、いわゆる池田内閣の成長政策が原因であるかどうかという御質問でございますので、私は、それが原因をしておるものでないと考えておるのでございます。
  126. 安田敏雄

    安田敏雄君 まあ水かけ論になりますから……。そうしますと、政府の政策の矛盾のしわ寄せでないということになると、どこかにその原因がなければならないはずだ。単に長い間の弱小企業のひびがそこへ来たのだということでは、これは納得できないわけですけれども、何が原因でしょうか。
  127. 森清

    政府委員(森清君) 御存じのように、池田内閣成立以来、高度の成長政策をとって参りました。参りましたけれども、だからといって、ただいまも申し上げたように、それが直接の原因をして、こういうふうに不渡りが増加をしたというふうにはわれわれは考えておりませんで、むしろこういう成長期には、従来経営上の多少の不備があったとか、あるいはひびが入っていたというふうなことが、直接の原因になっておると思うのでございます。
  128. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今の問題ですが、私も通産政務次官の言うとおりだと思います。と申しますのは、不渡り手形が一番多く出た——比率で多いときは三十二年でございましたが、三十二年、三十三年に手形交換枚数と不渡りの枚数の比率が一・二五%、一・二六%という比率を示しています。それから昨年、三十五年度の非常に好況時代でも一・〇七%という比率を示しておりますが、三十六年度になって〇・九何%というので、好況のときの不渡り比率のほうが三十六年の引き締め政策をやったときよりはまだ多かった。引き締め政策後減っておる、比率は減っておるという数字でございますので、これはやはり昨年の年末から、御承知のとおり、引き締め政策をやっても、中小企業にはしわ寄せさせないというような、いろいろな施策をとった結果だと思いますが、したがって、引き締め政策をやったために中小企業にこういうしわ寄せをしたというよりは、さっき政務次官がいわれましたように、やはり従来からの不健全経営をやっていたものが、ここへきてその過去のきずのためにいろいろな問題を起こしているというふうに見べきじゃないかというふうに思います。倒産件数を申しましても同じようでございまして、非常に倒産が多いように思われておりますが、倒産の一番多かったときは、やはり昭和三十一年がその前と比べて倒産件数は六百五件に対して千百二十三件、倍近い倒産があり、三十二年には千七百八十六件、これが過去の最高でございますが、三十三年、三十四年と減って、一昨年の三十五年の好況時において千百七十二件というのですが、三十六年に入ってこの倒産件数は千百件前後で、件数は三十六年中は減っておる、こういうことでもございますので、したがって、引き締め政策のために特にここで倒産と不渡りが激増させたというふうには統計の上では見られないのじゃないか。やはりその前の累積したいろいろな経営の不健全性というものがたたった結果じゃないかというふうに私はやはり見べきじゃないかと思います。
  129. 安田敏雄

    安田敏雄君 中小企業の不健全性ということは、これははっきりわかっておることなんです。それでもどうにかこうにかやってきたわけなんです。ところが、昨年引き締め以来倒産が多くなってきたんだから、どこかに直接的な原因がなければならないわけです、自然現象ではないわけですから。やはり政府の経済政策というものは、結局中小企業の層に恩恵がない、年末対策としてもそれに対する恩恵がない、そういうところに原因があるのではないかと、こういうように判断するわけなんですけれども、単にこれを中小企業の不健全性に求めていくということは、これは少しく私は、かつて池田さんが中小企業の五人や十人死んでもかまわぬ、こういう意思に通ずるではないか、こう思うわけなのですけれどもね。
  130. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今御承知のように、中小企業の一般金融機関からの金融というのは六兆円をこしていると思います。で、その間における政府の三機関の資金量というものはこの一割ございません。ですから市中の金融機関の貸付量のほうがはるかに多いのでございますから、私どもは政府関係機関の資金強化をやることも必要で、これはやりましたが、それよりも一般市中銀行の貸出比率を落とさないということが重要で、これが一%落ちても中小企業は大へんなことになりますので、この貸出比率を落とさないということに、実は昨年来から引き締め政策をやるについては、特にその点を注意してやったわけでございますが、現在に至るまでこの比率が落ちておりません。市中銀行も非常に協力しまして、貸出比率をあれ以後落としていない。むしろ信用金庫とか相互銀行というようなものの貸し出しは三、四割もふえているというような状況でございますので、その点から、あの引き締めの政策をとって以来、特に中小企業へ金融しわ寄せということは、ある程度私はこの指導によって避けられているというふうに思っています。しかし、自信もございませんので、日本銀行その他にもお願いしまして、倒産は確かにある、あるが、これは引き締め政策によるものかどうか、不渡りの発生の状況がどうかということも全部調査を依頼して、私どもも相当神経質にこの問題の検討をやっておりますが、やった結果は、今申し上げましたように、むしろ昭和三十五年度の好況のほうが多かった、その前のほうがみんな多くて、この点においては三十六年において特に多くなったという数字はないので、三十六年度のほうがその点はむしろ改善をされている。で、具体的に倒産したものの内容の調査も商工会議所でやった調査によりますと、やはり不健全経営のたたりということが原因であって、金融引き締めのためにつぶれなくて済むものがつぶれたという件数はほとんど見当たらないという、これは極端な報告で、見当たらないということ——これも調査不十分じゃないか、何かと引き締め政策が若干は響いているのじゃないかというふうに私どもも疑って、いろいろ調査をお願いしたのですが、今まで集まってきた調査によりますというと、そういう点は割合にうまくいっているというのが、これは報告でございますので、あるいはそうじゃないかと見ております。
  131. 安田敏雄

    安田敏雄君 それでは、一月ないし三月の危機が実現されないで、それが四月ないし六月ごろに繰り延べられたというようなことをいっておりますけれども、この点についてお伺いします。それからなお、一体その経済危機というのはどういうことをいうのか、その点についてもひとつ御説明をあわせて願いたい。
  132. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 経済危機というのはどういうことをいっておるか、一時言われましたが、私どもにもよくわかりません。というのは、これは増資の計画をみましても、資金需要の強さを見ましても、資金が非常に要り用だということはわかっておりますが、その時期に政府の揚超というものは非常に大きいということもわかっておりますので、この金融梗塞が経済に大きい打撃を与えるだろうということを予想した危機説ではなかったかと思います。私どもももしそういう意味の危機であるとするなら、この危機は避けなければなりませんので、したがって、この政府の揚超の多い時期に大口の増資集中がないようにとか、それから、各企業も、この期間相当設備計画もこれを先にずらせるだけずらして、この期間に資金需要を集中させないようにというような、いろいろと指導をしましたために、この言われておった一−三月そう大きい問題を起こさずに今推移しておりますが、そのかわりまだ四月、五月に増資を繰り延べさせている大口の問題もございますし、設備需要というものはまだまだ民間が強いときでございますから、この金融逼迫というようなものは、まだ四月、五月に残されているというふうに私ども考えております。
  133. 安田敏雄

    安田敏雄君 一−三月の危機が実現されずに済んだという点については、どういうようなお考え方を持っているのですか。
  134. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 現に需給関係において、これは日銀の貸し出し増加とか、いろいろの点はございますが、一応大きい問題なく、とにかく三月の末まで済んできたことは間違いございません。
  135. 安田敏雄

    安田敏雄君 先ほど政務次官は、政府融資五百六十億と買オペで千六十億、これを出したためにきびしい金融引き締めをしなかった、そういうところで年度末の対策をして、一−三月の危機が実現されずに済んだというようにも答弁されておるわけですが、そういうように解してよろしゅうございますか。
  136. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 民間に対しては、さっき申したような指導をやりましたし、同時に、政府関係機関につきましては、十二月から千六十億円の財政投資の追加を行ないましたので、これが大きく中小企業金融の円滑化には役立ったと思います。また、この期間には日銀の買オペも相当の幅でやりましたので、こういうことも相待って一応金融難を切り抜けてきたことだと思います。
  137. 安田敏雄

    安田敏雄君 次に、手形の割引について質問いたしたいと思いますが、地方銀行、相互銀行、信用金庫等で大体二銭六厘なり三銭くらいの金利をとっておるのでございますが、金利の標準というものは、指定した標準というようなものはあるわけでございますか。あったならばお示し願いたいと思います。
  138. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) お答え申し上げます。ただいまの御質問、金融機関の貸し出し金利について基準のようなものがあるか、こういう御趣旨でございますが、現在、金融機関別に申し上げますと、都市銀行それから地方銀行、相互銀行、信用金庫、各種の金融機関があるわけでございますが、そのうち都市銀行につきまして、まあ中央銀行も含めてでございますが、大体普通銀行でございます。普通銀行におきましてはいわゆる一種の標準金利という考え方がございます。これは大体日本銀行の公定歩合と一定の関係を持ちまして動いて参るものでございますが、そういう標準金利的なものが一つございます。そのほか、相互銀行、信用金庫におきましては、いわゆる約定金利と申しまして、現在相互銀行におきましては大体二銭六厘をもって約定金利といたします。信用金庫におきましては大体二銭七厘程度でございますが、そういう約定金利というものがございます。なお、都市銀行におきまして、ただいま標準金利と申しておりますのは、大体日歩二銭一厘もしくわ二厘というところでございます。なお、そのほかに、一般的に、金利調整法という法律がございまして、ここで金利の最高限度というものを押えておるわけでございます。
  139. 安田敏雄

    安田敏雄君 手形を割ってもらう際に、そういう標準金利以外に大体それと同額の歩積みといって、窓口で融資額を凍結されてしまうという例が地方には非常に多いわけなんです。さらにその上に担保物件といたしまして、融資額の何割かを定期積立にさせるというようなことになってしまう。こういうことでは非常に、特に弱小企業は金融の面で非常に逼迫してくるという問題があるわけなんですが、こういう点について、歩積みであるとか、定期積立というようなもの、これは公然と許される問題なんですか。そういう点はどうなっているのですか。
  140. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは今までの取引の慣習的な面もございますので、やってはいかぬとなかなか禁止できない問題でございます。しかし一時本人の意思に反して、これだけすれば貸してやるが、こうしなければ貸さぬというようなことが、そういう機関で行なわれておったということがございますので、これにつきましては、厳重な監督をいたしまして、両建て、歩積みの、本人の意思に反したことは一切やってはならぬということでやっております。実情を聞きますというと、こういう金融難のときでございますから、金融機関側からの要請というよりも、どうしても資金を借りたいという人のほうから、これだけ貸してくれればこれだけはひとつ一部使わないで定期にしておくからとか、あるいはどうというふうに、金利を最近はあまり問題にしなくて、量の確保さえできればいいというようなことで、需要者側からそういうことを申し出て借りよくするというようなためにやることだと思いますが、そういう傾向も非常に今見られております。そのために、相互銀行とか信用金庫の預金が一般銀行に比して今非常にふえておるという情勢でございますので、私どもは特にこの際、歩積みというようなものは自粛してもらいたい。ことに本人の意思に反するようなことは絶対にやってはならぬという監督を相当厳重にやかましくやっておりますが、情勢から見ますと、預金がふえて、ほかの一般と比べて少しふえ方が多いようでございますから、さらに厳重な監督をしたいと思っております。
  141. 安田敏雄

    安田敏雄君 そうしますと、銀行のほうでは許されておらないのだけれども、運用上、金融機関の運用上は最小限度認めておる、こういうことになるのですか。
  142. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) たとえば手形を割引したときに、余裕のある一定金額は銀行へ積んでおくというようなことを強制されない形で、これがやられるところについて一切積んでならぬとか、あるいは借り入れを受けたときに一部を定期にしておいてはいけないとか、禁止というものはむずかしいので、要するにこれが本人の意思に反してやられるということが一番弊害のある問題でございますから、私どもとしましてはこの問題を中心に今厳重な監督をしておるわけでございます。
  143. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと関連して。先ほど大蔵大臣は両建て、歩積みですか、そういうものは金を借りるほうの人からそういう要求をして、歩積みなんかが行なわれる傾向が多いということを言われましたが、しかし私はむしろ銀行が日銀の高率適用を免れるために、預金の量をそういう形で多くするという傾向があるんじゃないんですか。それで日銀が高率適用するときに、預金のそういう点についてどういうふうにそれを調査するのですか。預金については、過去の預金の量によって、それをこえた場合に高率適用になるのですね。ですから両建てとか歩積みで預金量を一時的にふやせば高率適用を免れる、こういうことになるのです。ですから銀行のほうからそういうことをかなり積極的にやっているように私は思うのでありますけれども、その点はどうなんですか。
  144. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 一般の市中銀行については、今、私どもが相当厳重な監督をやっておりますので、その傾向は減っておると思います。むしろほんとうの中小企業専門の金融機関のほうにこの傾向が今多く見られましょうが、特にその方面に注意をしておりますが、一般の銀行においては、需要者に対してこうしろああしろということを銀行側から言うということは、おそらく今は絶対ないと思っております。
  145. 安田敏雄

    安田敏雄君 歩積みをやりますと、たとえば二銭六厘で借りても結局五銭二厘の利息になるんです。ですから地方へ行きますと、個人の金持から四銭なり五銭で借りたほうが安いわけです。裏口その他のいろいろの行為をしなくても済むわけです。ですからいつまでたっても個人のやみ金融というものがあとを断たないわけなんです。むしろそのほうが弱小企業は借りるに非常に楽だというようなことで、やみ金融が依然として横行をしておる、こういう状態があるわけなんです。これは正常の状態じゃないわけなんですよ。したがって今後歩積みについては相当厳重な監督をして、中小企業、特に弱小企業の金融に役立てるようにしなければならぬ、こういうように思うわけなんでございますが、今後の決意をひとつお伺いいたしたい。
  146. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この問題は再三厳重な取り締まりをやっておりますが、今後はさらにこれの取り締まりを強化したいと思っております。
  147. 藤田進

    藤田進君 関連。安田委員の求めているのは、大蔵大臣、現実にそういう事例がかなり多数ある。その実例を身をもって知っているがゆえにかなり強く要望もし、その答弁の具体的なものを求めていると思うのです。不渡りあるいは非常に手形の長期化といったようなときのとりやりを聞いていると、非常に資金上あるいはまたその資金ワクといったようなものがバランスをとっているように御説明になりました。はしなくもこの問題になりますと、かなりそういった正常ならざる金融方式がとられているということを認められ、かつこれには再三の警告も発し、今後も強力に監督を進めたいということになるわけであります。およそ今の金融制度なり政府の政策なりということからいえば、金融市場における法則として、あるときは銀行が床柱になり、あるときは資金需要者が床柱になっていくということは、もう過去何回か繰り返えされてきた。今は借手市場でなくして貸手のほうの市場だということを私は意味するものと思う。要するに資金ワクが引き締め等のために窮屈になっている。需要は大きいということで、あたかも表面は自由意思によって、いな積極的に、銀行ではなくて借手のほうからいろいろな条件を持ち出して積極的にその方法をとっている。これについては手のつけようがないということを言われているが、その本質は決して借手がそういった不札な条件をのむはずがない。そんなはずはない。そういうことでありますから、根本的な問題はさることとして、もっと具体的にこの現象、事実を解消するには、どういう方法をとるか。大村委員の指摘されたのもその一つの理由だと思います。その点を明らかにされないと、安田委員としても、そうでございますかと、大蔵大臣を信用しながらも、なお不安が残るということのようでありますから、持ち時間がないので私、関連でそのことを催促をするわけです。
  148. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは銀行局からたびたび通達の形で出ていることと、それから業界の機関に出席いたしまして、自主的にするよう、そういう要望をするということもしばしばやっておりますし、それとこちらは銀行の検査権を持っておりますので、定期的に検査をやっておりますので、検査の過程において、この疑いのあるものについては十分私ども調査をして、そして具体的な指導をするという形で、今後は検査を相当強化するつもりでございます。
  149. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連。大蔵大臣は再三そういう警告や行政指導もしているのだけれども、なかなか直らない。ですから何かここでもう少し具体的に、今後の措置について新しくどうすればいいかということについて、御意見を伺わなければ、やはりまた検査は厳重にしても、これまでどおりということになるとわれわれとしてはどうも考えざるを得ない。これでは何か実際の効果があがらないと思います。もう少し具体的に今後の措置について伺いたい。これまで再三やったけれどもだめだった。それじゃ今後どうするかということを伺いたい。
  150. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私のほうではいろいろ訴えも聞いておりますし、相当の事例も持っております。たとえば五百万円借りるというときに、定期に五十万円とられる、今まではそうだった。今度はどうしても五百万円借りたいだが、五百万円借りても四百五十万円しか手取りにならなくて、五十万円は定期に積まされるというのでは差しつかえるというので、六百万円借りておけば百万円だけ定期にしても、あとまるまる五百万円使えるということになる。今は資金需要の強いときですから、需要者のほうから自分でそういういろいろなことを考えて、条件を出して貸してくれと申し込むというものが非常に多いというようなことで、そういうものに対してどうするか、それは本人の意思だといっても銀行として貸すほうから見たら、実際幾ら入用なんだということがわかれば、余分に借りる必要はないということで、これはもっと親切な指導もするし、別に歩積み、両建てこれだけはできるだけなくしてくれという、相当具体的な指導も今やっているところでございまして、これがあまりに直らない傾向がむしろひどくなるということでしたら、相当検査権と、またあわせて強い態度をもってやらなければならぬと思っております。これはできるだけこれだけは避けさせるように私ども努力したいと思います。
  151. 安田敏雄

    安田敏雄君 その歩積みに対して、日銀を通じて地方銀行に対する保証という問題は、具体的にどう考えておられますか。
  152. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) 歩積みに対して日銀に保証をさせるというふうに承ったのでございますが……。
  153. 安田敏雄

    安田敏雄君 政府のほうで考慮してもいいんですよ。
  154. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) 政府のほうでございますか、……この点につきましては、ただいま大臣から申し上げましたように従来とも自粛につきまして、特段の実は努力を払って参っておるわけでございます。ただここで一口に歩積みと申しましても、中をよく分けて考えてみますと、いわゆる債務を弁済いたします、つまり弁済の資力として一気に返すことはなかなかむずかしい、そういう意味で若干ずつそれを積んでいくといったような、一種の債務弁済に便ならしむるというような性格の部分も若干ございます。したがってもちろんそれだけではございませんけれども、そういうような部分もありまして、ある程度取引の慣行と申しますか、一般の取引の慣行としてある程度行なわれている部分も一部にはございます。しかしその程度をこえてこれが行き過ぎるというところに実は問題があるのでありまして、その分についてはただいま申し上げておりますように、従来とも取り締まり監督を強化しておるわけであります。これに対して日本銀行が保証をする、もしくは政府が保証するということは、事の性質上、市中金融機関と一般の債務者との間のいわゆる債権債務の関係でございますので、これに対して国が保証するというようなことは、これはちょっと考えられないと思うわけでございます。要はそういったような行き過ぎの歩積みなり両建たりというものを逐次解消していくということでございまして、それにつきましては今後とも十分努力をいたして参りたい、かように考えております。
  155. 安田敏雄

    安田敏雄君 手形割引の金利の総領について、結局政府なり日銀を通じて保証じゃなくて、それならば何がしかの特別の措置を講じて地方銀行をやはり健全に育てていくという、こういう手が考えられるわけです。それを一方的に手形割引者のほうに歩積みでかけていくということは、どうも中小企業者の金融問題上非常に問題があるので、こういう点についてひとつ考え方はあるんですかどうか、お聞かせ願いたい。
  156. 佐竹浩

    説明員(佐竹浩君) これにつきましては、市中金融機関の融資を円滑にするために、いわゆる信用保証協会の制度があることは御存じのとおりであります。信用保証協会制度、これはさらに国の信用保険公庫につながるわけですが、この保証協会の保証機能というものを今日まで着々拡充に努めて参っておるわけでございます。現在なおまだ十分とは申せませんが、毎年若干ずつでも保証料を引き下げるといったようなことでこれの利用度を高める、こういう方法によって債務の担保力をつけ、市中からの金融の出やすいようにということで努力して参っておるわけであります。
  157. 安田敏雄

    安田敏雄君 最後にお聞きしますが、政府の国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫の窓口、あるいはまたこれの代理事業をやらせる地方銀行等で選別融資をするわけなんです。そのために弱小企業はほとんど金が借りられないという状態があって、むしろ、金利が安いから借りたほうが得だというので、安定性のあるところが借りている場合が多いわけなんです。こういう問題がやっぱり解決しないと、政府の弱小企業に対する恩恵というものがないわけなんですけれども、こういう点につきましても選別融資をあまり強化しないようにひとつ配慮する道はないかどうかお聞きしたいと思います。
  158. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この問題もやはり監査を通じて指導いたしておりますが、一番代理貸しを多くやっているところは、御承知のように中小公庫で七四%ぐらいが代理貸しになっている。それから国民金融公庫は二〇%、二一%弱でございますが、これが代理貸しの比率でございまして、商工中金はもうわずか三%前後が代理貸しということになっておりますので、中小企業公庫に対する問題が中心になろうと思いますが、これはやはり公庫の金融の目的から見まして、その代理貸しの窓口がある程度選別融資的にならざるを得ないように、もう性質上そうなるんじゃないかと思いますが、しかしりっぱな健全な設備資金である以上は、資本の大小にかかわらず末端において融資されてしかるべきものでございますので、こういう問題は結局監査を通じて指導するよりほかに仕方がないのじゃないかと思います。
  159. 安田敏雄

    安田敏雄君 経済の動向やあるいは日本の雇用問題との関連からして、弱小の中小企業がふえて行くということは情勢として明らかなんです。したがって中小企業というよりも零細企業に対する金融の専門公庫を設けることも考えられますが、この点について将来どういうようにお考えですか。
  160. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 小口の営業資金を貸すというために国民金融公庫というものがございますし、さらに組合金融の商工組合等の協同組合金融をやる機関として商中がございますし、それから中小企業の設備資金というようなものを中心に中小企業公庫という機関がございますので、中小企業金融が大切であると申しましても、そのほかに一般の金融機関も当然これを貸付の対象とすべきものでございますので、政府関係機関としては大体これ以上複雑な金融機関は要らないのじゃないかと。小口の営業資金の貸付の機関もできていることでございますから、このいずれかの機関にも乗らないという企業はまたそれ自身が相当問題であろうと思いますので、機関としてはこの程度で私はいいじゃないかと思います。
  161. 安田敏雄

    安田敏雄君 まだ金融問題については、いろいろお聞きしたいのですが、時間がございませんから、次に建設大臣にお伺いいたします。  去る三月二十三日、国土開発縦貫自動車道建設審議会で東京−富士吉田間の路線、大月線を採用することに決定したようでございますが、大体総工費はどれくらいでもって、昭和何年ころまでに完工の基本計画でありますか。概略をひとつ説明をお聞かせいただきたいと思います。簡単でいいです。
  162. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 東京−富士吉田間の総工費は約九百億円くらい見込まれると目下算定をいたしております。現在の五カ年計画におきましては、御承知のとおり四百億円の配分をいたしておりますので、この範囲において、最も有効に建設を進めて参りたいと、こう思っております。
  163. 安田敏雄

    安田敏雄君 完成はいつごろですか。
  164. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 完成は、大体全線を完成いたしますには、昭和四十二年までかかるであろうと思います。
  165. 安田敏雄

    安田敏雄君 富士吉田までですね。
  166. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 富士吉田までです。
  167. 安田敏雄

    安田敏雄君 建設に際して何か障害が生じた場合、たとえば最も困難な問題として、甲州街道の方向における土地の値上がりというものは激しいものがあろうかと思うわけでございます。したがって政府予算でもって、その土地の買収ができないというような場合がひんぱんに生じたというような場合におきましては、その路線を変更するような場合があるのか、そういうことでも、やはり路線を変更しないでやっていくのか、こういう点についてお聞きしたいと思います。
  168. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) すでに去る二十三日、この縦貫道の審議会に付議いたしまして、路線部会等、その他も開いていただいて、基本計画並びに路線の決定をいたしましたから、実測の結果、多少の変化は起こり得ると思いますが、経過地につきましては今後変更はあり得ないと、こう思っております。
  169. 安田敏雄

    安田敏雄君 通過県の東京都、神奈川、山梨県が、土地買収について主体的に責任を持っていくのかどうかということです。そこで、この問題が中央道の重要性、あるいは特に最近東京都が非常に行き詰まりを生じて参りまして、交通、文化、一切の面に行き詰まりを生じて参りましたが、そういう中で、むしろ東京都は、もとの首都圏整備というような消極的な問題の解決よりも、広い地域、すなわち広域首都圏の建設をして、積極的に問題と取り組んでいくというような問題を考えますときには、特に中央道の意義は深いと私は考えておるのです。  そういう点からいって、通過県に、これは土地買収について責任を持たせるということでなくて、あくまでも政府の、建設省の指導権の中で、これが先頭に立って、政府の責任で解決していくということでなければならないと思うわけでございますが、こういう点についてのひとつ考え方を明らかにしていただきたいと思います。
  170. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 五月のうちに基本計画がきまりましたら、日本道路公団に対しまして、建設省から工事施行命令を発したいと思っておりますが、この工事施行命令が出ますと、実施機関は日本道路公団。したがいまして、主体としては日本道路公団が、用地取得等の作業を進めておるわけでございますが、現在、山梨県のごときは、県のほうに、路線をきめて測量をしてまかしてくれれば、県が各市町村と連絡して円満に買収のできるように協力をしてやるというありがたいお声がかりもございますが、これらを今後どういうように取り扱っていくかということは、日本道路公団の責任に移りまして、施行段階におきまして、よく地元の意見等を参酌いたしまして、最も適切で、地元の協力も得られ、効果も上がるような方法で進めて参りたい。目下のところ、われわれとしては、かように考えておるわけです。
  171. 安田敏雄

    安田敏雄君 最後に、中央道が富士吉田まで、かりに実現いたしましても、その目的は達成されたとは思いません。そこで富士吉田−長野県の飯田市付近、岐阜県を通りまして愛知県の小牧、これを完工させなければ、真の役割は果たせないと思うわけです。特に関西と関東の経済を結ぶということは、非常に重大な問題なんです。  そういうことを考えましたときに、この計画は即刻にもう取り上げて、そして具体化するような方向で作業を進めなければならないと思っておりますが、こういう点についての構想をひとつ明らかにしてほしいと思います。
  172. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 私どもとしましては、すでに縦貫自動車法できめられておる方向に向かいまして、政府は当然努力をすべきものであると思います。ただ問題は、この事業を実施いたしまする投資規模というものがきまって参りませんと、基本計画の着手ということはできませんで、もっぱら今後道路特定財源、あるいは一般財源等の余裕なり力を見ながら……、そうした道路投資規模というものとの関係が非常に深いと思うのです。いずれにいたしましても、そういう時期が、できるだけ早いことをわれわれ期待するわけでございますから、その時期がいつきょうとも間に合うように、基本的な調査だけは完了しておきたい。こういう意味で年々調査費を投入し、着々調査を富士吉田−飯田を通り−中津川−小牧というふうな路線につきまして、準備を進め、調査を進めておるような次第でございます。
  173. 安田敏雄

    安田敏雄君 富士吉田まで五カ年で完工する予定である。しかしその富士吉田から小牧までの間が間に合わなくなりますというと、距離も相当長いことですし、十年、十五年の年月がかかってしまうし、したがって、富士吉田に着工していく以上は、当然中央道の完工という大筋に立てば、これはすぐにでも、第二次以降の計画を推進していかなければならぬわけなんです。  そういうような観点からお聞きしたわけでございますが、できるだけ着工の年限をこちらのほうに縮めて、そして小牧間のほうまでを早急に計画すべきである。こういうように思います。時間がございませんから、以上申し述べまして私の質問を終わりますが、それについてお考えをお願いいたします。
  174. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 先ほど申し上げましたように、投資の予定金額というものがきまって参りませんと、実施計画を立てるわけには参りませんが、いつでも実施計画を立てられるような調査だけは進めて完了をしておきたい。問題は、それから特定道路財源、その他財政上の事情もあろうと思いますが、われわれとしましては、準備だけは十分整えておきたい。こう思っております。
  175. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この問題につきましては、建設大臣お答えどおりでございまして、ただいま調査を進めておりますから、それによって調査が済めば、今後この問題についての予算の問題も当然起こると思います。
  176. 安田敏雄

    安田敏雄君 建設省で実施計画を立てれば、それに応じて財政支出の用意がありますか。
  177. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) それは、一般道路計画との関係でございますので、全体を見た予算配賦をするよりほかには方法はないだろうと思います。
  178. 安田敏雄

    安田敏雄君 時間がありませんから……。
  179. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 安田君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  180. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 次に戸叶武君。
  181. 戸叶武

    ○戸叶武君 今週あたりから衆議院ではガリオア・エロア返済協定と、タイ特別円処理の問題をめぐって、与野党の激突が予想されると新聞は報じておりますが、こういう場合にいつでも国会で問題になるのは、議院内閣制のもとにおける内閣と、それから国会のあり方だと思うのでありますが、政府与党のほうでは、多数の力でもって、そうして強引に押し切ろうとするし、少数派はこれに対して、力の限りの抵抗をやっていくというところに、国会正常化というものが幾たびか言われているけれども、から念仏に終わっている。こういう点を新聞の論説等においても、きょうあたりは反省しなければならないといっておりますが、今、私たちが一番心配するのは、衆議院を通過してくるところの予算案にしろ、あるいはそういうガリオア・エロアの問題にいたしましても、結局参議院には、ぎりぎりのところへ追い込められて、政府は自然成立をねらっているということが言われておりますが、自然成立という言葉は非常によいのですけれども、事実上において、この参議院における審議権というものを極端に制約するわけです。三十日の最低期日間に審議を制約せられている、こういう形で、しかもそれだけでなく、その間に、いろんな慎重審議をなるたけさせまいというようなやり方が、与党側においては常になされるのでありますが、こういうことは、ほんとうに私は国会の権威の喪失になると思うのです。  そこで、今度大蔵大臣質問いたしますが、池田内閣がやった仕事の中で、ただ一つだけよいことをことしやった。それは、私にほめられるとびっくりするかもしれませんが、昭和三十三年の三月に岸内閣のときに、私は、予算案の編成権というものは内閣にあるのであるが、国会審議権を侵犯しないためには、やはり内閣が年内に予算案を編成して通常国会の初頭において、やはり年初めにおいては印刷して、それを出さなければならないということを主張したのでありますが、岸内閣はそれを行なおうとしても、事実上なかなか行なえなかった。ところが今度あなたが、大蔵大臣が非常に熱心だった関係もあるかと思いますが、とにかく今回やったということは、何でもないことだが、画期的なことだと思います。ところが、これによって衆議院は相当の期間予算案の審議ができたけれども、参議院には相変わらず三月三日ぎりぎりのところへ押し込められて、三十日以内にそれ上げろといった旧態依然としたやり方であって、国会といっても衆議院のほうにおいては十分な審議期間というものが置かれたけれども、参議院は相変わらず最低期間でもって、せき立てられているわけでございますが、いずれにしても、これは今度できたことはよい慣例でありますが、大蔵大臣としては、今後この慣例をゆがめるようなことがないかどうか、そのことを承りたい。
  182. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 予算編成は、年内に了して、そして国会の再開と同時に提出する、この慣行は、今後もこれは守りたいと思っております。  それから昨年よりも非常に早く予算案が提出されたわけでございますから、この審議日程は衆議院、参議院、これは十分相談されて同じような審議日数をとるようなことが、国会自身において、これは十分調整されていいものだろうと思います。私どもは、今回できるだけ衆議院の審議を二月一ぱいにお願いしたいということでございましたが、御承知のように年初に各党もいろいろ大会が相次いで何日間か行なわれておりました関係で、その間は審議ができないということで、提出は早かったのでございますが、審議は相当おくれたというような事情が、今回はあろうかと思います。
  183. 戸叶武

    ○戸叶武君 そこで、次に問題になるのは、この予算案の問題と、憲法改正の問題は、異なるものであるにもかかわらず、池田内閣総理大臣及び林法制局長官等は、この議院内閣制の運営をたてにとって、非常に憲法違反の言動を行なっておるのでありますが、これは、きょうは高柳さんは呼ばなかったのですが、それは学者は、さまざまな意見を出してもよいのです。しかし、この間静かに聞いておき、あとで速記録を読んでみても、これはゾルレンの問題を論じているのであって、日本の議院内閣制というものが、イギリスの議院内閣制のように持っていきたいという意図のもとに御意見を展開しているのであって、現実の日本の現行憲法のもとにおけるこの運営とはそぐわないものを論じている傾きがあるのですが、その中で最も問題になるのは、憲法改正発議権内閣にない、発議権ありとするならば、これは憲法違反である、しかしながら発案権はあるというような、このちょっと奇妙な理論を展開し、林法制局長官も、池田さんも、これに従っておるのでありますが、今まで幾つかの例をあげることができますけれども、池田さんは、しばしば内閣発議権ありという発言を速記録に残しておりますけれども、この憲法違反の言動に対して取り消しをやっていないのであります。この発案といい、発議といい、表現によっては提案権、あるいは提出権という言葉もありまするが、明確な回答をきょうは林法制局長官にお願い申し上げます。
  184. 林修三

    政府委員(林修三君) 先日のこの委員会で、高柳憲法調査会会長が答弁されたところでございますが、いわゆる内閣に憲法九十六条第一項でいう意味の、いわゆる発議権、「国会が、これを発議し、」という意味と並列する意味で、あるいは内閣が発議しと、そういうふうにもしも読んでいるならば、これは憲法違反である、そう言われたと思います。  しかし、その国会に憲法改正議案をだれが出すかという問題、これは国会議員も出せるし、内閣も出せる、そういう意味の、これは国会法では発議という言葉は使っておりますが、それを区別する意味で提案権、提出権、あるいは発案権と言っているのです。これならば、別にこれは何も憲法違反ではない、学説は、御承知のように三つばかりあるわけですが、私ども内閣あるいは高柳会長がとっておられます学説は、要するに、国会にそういう議案を出す、提案をする権限は、これは内閣も、国会議員にあることは当然であるけれども、内閣も持つ、こういう考えであります。その基礎はいわゆる議院内閣制、現在の憲法がとっております議院内閣制にある、こういうことでございます。高柳会長が、いわゆる内閣が憲法九十六条第一項にいう意味の「国会が、これを発議し、」それと同じ意味内閣がこれを発議し、国民に向かって内閣が直接に発議する、そういうことをもし池田首相が言ったとすれば憲法違反だ。そういうことを高柳会長が言われたのでありまして、そういうふうなことは一ぺんも言ったことはないわけであります。そういう点について何も取り消すことはないと思います。
  185. 戸叶武

    ○戸叶武君 きょうは時間がありませんから、あとで具体的に池田総理大臣、あなたが何回言ったかということを調べて報告しますが、問題はその発議権発案権の区別が事実上つかなくなっているじゃありませんか。どういうほんとうに正確な概念規定をやって下さい。
  186. 林修三

    政府委員(林修三君) これも実は発議とか、発案という言葉自体の問題ではないので、結局憲法九十六条でいう「国会が、これを発議し、」という意味の発議とは何ぞや。それからたとえば国会法五十六条でいう発議とは何ぞや、こういうことになってくるわけであります。それで憲法九十六条第一項でいう発議、これは九十六条第一項をお読み下されば当然それから出てくると思いますが、要するに、国会が衆参両院それぞれ三分の二以上の多数で議決して、賛成を得て国会がこれを発議し云々とあります。これはいわゆる国民投票に向かって発議するという意味で発議という言葉を使っておる。これを国会議員が国会に対して憲法改正議案を発議する、そういう意味に使っておるとはとうてい考えられないというわれわれは解釈でございます。で国会法では、たとえば第五十六条で議員が法律案その他の議案を発議するという言葉を使っております。この場合の発議は国会に対して国会議員が議員の資格で議案を出す。そういう場合に憲法九十六条一項でいう同じ言葉を使っておるわけでありますが、意味はこれは全然違うと思います。その場合の混同を避ける意味で、発案権議案国会に出すについての発案権提出権、提案権といっておりますが、国会法では発議権、しかし、国会法五十六条でいう発議、いわゆる議案の発議と、憲法九十六条一項で国会が国民投票に向かって発議するということとは、同じ言葉を使っておりますけれども、意味が全然違う、かように考えておるわけであります。
  187. 戸叶武

    ○戸叶武君 私が聞いておるのは、九十六条の発議の意味なんです。あなたが言っておるのを聞くと、ごろ合わせみたいに発案と発議と言っておるけれども、内容は同じじゃないですか。内閣が発案し、国会が発議すというけれども、発議権のないものが発案して国会に出すのはやはり発議権の行使じゃありませんか。発案権じゃありませんか。
  188. 林修三

    政府委員(林修三君) これは憲法九十六条一項をよくお読み下されば、私は文理解釈上出てくると思いますが、あそこで言っております「国会が、これを発議し、」、国会国会議員、これは違うわけであります。国会は衆参両院の合議体としての国会、この構成員としての国会議員、こういう二つの観念は当然分けねばなりません。九十六条一項でいっております「国会が、これを発議し、」云々、あれは、これについてはいろいろ説はありますが、あの文理解釈としては「国会が、これを発議し、」ということをどう考えても、国会議員が国会に向かって発議する、提案するというふうには読めない。これは国会が衆参両院のそれぞれの特別多数で議決して、国民に向かって発議する、こうしか読みようがないじゃないか、こう考えます。御承知のように、学界においても美濃部、宮沢、佐藤功、あるいは清宮、田上、相当多数の人がそういう説をとっております。つまり「国会が、これを発議し、」と憲法九十六条でいっておりますのは、国会議員がこれを発議し提案するという意味は含まれない、あそこ自体としては。結局国会がこれを国民に向かって発議する前提となる議案の提案権あるいは発案権という意味であり、国会法五十六条でいえば発議権、そういうものは結局だれが持つかということは、憲法全体の条章から判断すべきでありまして、国会議員がそういう議案発案権といいますか、あるいは国会法五十六条でいえば発議権、これを持つのはこれは国会が唯一の立法機関であるということからこれは当然でございます。しかし、内閣もまた持つということは七十二条の規定、あるいは憲法全体でとっておりますいわゆる議院内閣制の規定、考え方、これに基づいて当然認められてしかるべきじゃないか、かような考えでありまして、九十六条一項でいっております「国会が、これを発議し、」という言葉は、あそこでいっている特殊の意味にこれは使っているのであります。国民に向かって発議という意味にしかとりようがない。それと並行する意味で、いわゆる内閣があそこでいうような意味で、国民投票に直接、国会の議決も得ないで内閣が国民投票に憲法改正議案の発議をする、こういうことは九十六条からは、どこからも出ない。もしそれを言ったとしたならば、それは憲法違反のことを言ったのだと高柳会長が言われたわけであります。それは政府も与党も学者のだれもそういうことを言っている人はございません。
  189. 戸叶武

    ○戸叶武君 あなたは、国会内閣機能が異なるということを今の答弁において明確化いたしましたが、九十六条以外に憲法改正の条項はないのです。憲法九十六条の中に、内閣が発議しというのはどこにありますか、ないのをどこからあなたは引っぱり出して解釈しているのですか。
  190. 林修三

    政府委員(林修三君) 実はこれは今も何回も同じことをお答えしたことになるのですが、九十六条一項でいっている「国会が、これを発議し、」というのは、つまり国会が、いわゆる合議体の国家機関としての国会が国民に向かって発議する、そういう意味に使っているものとわれわれは解釈するわけであります。したがいまして、いわゆる国会が、たとえば法律案その他予算と同じように、国会がもし憲法の議案を国民に向かって発議されるときには、その前に議案が審査されるわけです。その審査される過程においては三分の二の特別多数の議決を要する、普通の法律案とか予算案のように単純過半数ではいけないということになってくる。そういう特別多数をもって議決すべき案件、つまり議案、憲法改正議案、これをだれが出すかということは九十六条直接にはどこにも書いてない。だから、結局は、憲法全体の解釈からくる、これは結局今そういう意味の憲法改正議案の提案権、これは戸叶先生御承知ように、学説は三つございます。つまり国会議員が出せることについてはだれも異論はございませんが、第一の説は、政府がとっておりますように、内閣も出せるという考え方、第二の説は、法律案については国会議員、内閣、両方出せるが、憲法改正議案は出せないという説、第三の説は、法律案についても内閣は今の憲法では出せない、もちろん憲法改正議案も出せない、こういう三つの説がある。この三つの説は別に九十六条を根拠にして解釈しているわけではなくて、憲法全体のいろいろな条章を根拠にしてそういう議論を導き出しているのです。私どもの解釈としては、やはり憲法七十二条あるいは議院内閣制の建前から法律案が出せる。これは出せるということは、それは内閣法も認めています。また、これが出せるということは学界の多数の意見でもございます。また、国会においてもすでに十五年、これの実際の扱いもできております。これを今さら憲法違反と言う人はおそらくないと思う。第三説をとる鈴木安蔵氏も憲法上の習律であるということを言っておりますが、そういうことで法律案が出せるということはおそらく動かしがたい。しからばそれと同じような意味で、法律案が出せるということは、議院内閣制の建前できたので、議院内閣制の建前でそういうものができるとするならば、憲法改正議案についてもそれを別に解釈すべき根拠はないのじゃないかというのがわれわれの解釈でございます。
  191. 戸叶武

    ○戸叶武君 これは、日本の憲法学者が、国家生成の新しい段階におけるもののつかみ方ということができないで、国家学や政治学を新しい形において学びとっていない関係からして、各国の憲法を研究して三つの学説があるということを紹介しているにすぎないのでありまして、日本憲法に関する限り第九十六条の規定以外に憲法改正の条項はないのであります。イギリスの憲法やイギリスの慣習やイギリス型の内閣制と同じような形で解釈したいというのはあなたたち一つの意欲であって、それは事実の日本の憲法から離れているんです。このことは、私はこの前に主張したように、数年前の自由党の報告書でも、改進党の報告書でも、現行憲法の改正は九十六条以外にできないんだと、しかも三分の二以上の議員のこれは支持を得なければこれを発議できないんだ。発議できないんです。それがむずかしいから、今度は切りかえて内閣で提案して国会へ発議しようというんだ。国会議員以外に発議権のないことを九十六条で規定しているのに、いつの間にか議院内閣制ということで切りかえて、内閣ができるということを言うんですか。国会内閣とは違うんです。国会から内閣は生まれたが、おれは国会から生まれたんだからおれが主人公だと言うことは国会が許しません。主権者としての人民も許しません。私はそう思います。
  192. 林修三

    政府委員(林修三君) この点は、もうさっきから何回かお答えしていると思いますが、要するに憲法九十六条の手続、国会における三分の二の多数を要するという手続、それからさらにそれを国会が国民に向かって発議して国民投票を要するという手続、この二つをだれも否定する者は、これはおりません。これはもう憲法に厳然として書いてある。で、内閣がかりに憲法改正議案国会に出すといたしましても、これは議員がお出しになるのと同じように、当然衆参両院の三分の二の多数が要るわけでございます。それを成立させるためには、衆参両院を三分の二の多数で通過したものを国会が国民に向かって発議する、この手続に対して何びとも異論はないわけでございます。それについては私ども何も異論を言っているわけではございません。その前提としての議案をだれが国会に出すか、そういうところで問題を提起しているわけでございます。
  193. 戸叶武

    ○戸叶武君 この間、高柳憲法調査会長は良心的な答弁をしておって、やはり発案権と発議の問題で、この発案という問題はいつごろどこで生まれたかはっきりしていないがという表現でしたが、これほど重要な問題になった以上は、林法制局長官が十分調べて、いつの段階において政府はそういう見解をとったかを明らかにする資料あと提出してもらいたいと思うんです。これはさっきの予算案の問題にも関連するんですが、フランス革命が行なわれたばかりのころにおけるところの国会というものは、やはり予算案の発議権も持ったのであります。しかし、それが内閣行政を運営していく上において都合が悪いというので、だんだん修正がされていったのですが、アメリカにおいても同様であります。しかしその百五十年や二百年前のことと違って、日本にできたこの憲法というものは非常に進んだ憲法なのであります。今の日本の古ぼけた政治学者なり憲法学者が、国会が国の最高機関であると規定されているのは行き過ぎだとか、あるいは唯一の立法機関であるというのはけしからぬとか、いろいろ、さまざまな議論をやっておりますが、あそこに意味があるのです。この唯一の立法機関であるというのは、何もかも、一般法律案なり予算なりを指さしているのではないのです。やはり「最高」の言葉を使ったから次に「唯一」というのを使ったので、国の大事としての憲法改正のような国家性格をも変えるような重大事は国会がこれを行なわなければならぬということを、憲法前文を読めば——あなたに丁寧にこの前、はなはだ失礼でしたが、読んでもらった中に、憲法前文の中に、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、」この憲法を確定したんです。そうして国民の厳粛な信託によって、この主権者としての国民から「権力は国民の代表者がこれを行使し」という規定があるのです。一番進んだ憲法でありまして、この憲法を、明治憲法の亡霊並びに各国のおくれているところの旧態依然のモナーキーなイギリスのこの国家性格における慣習等を持ってきて、日本憲法を無視してこれを改正しようとするのは越権行為です。間違いです。国会で十分こういう問題は慎重に論議しなければ、今の憲法調査会というものは憲法改正をねらう反革命学者の巣くつと化しておるのであって、ほんとうに日本の憲法を擁護する勢力が政権を握っていれば、あのような反革命行動というものは容赦しないのです。公然として反革命の牙城を作り、PRを行ない、そうして徐々に日本憲法をくずそうとしているのですが、私たちは安保条約の戦いどころの騒ぎじゃないのです。このことは人民の名によって守られなければならない。この憲法を国会においてほんとうに私たちは命をささげて守らなくちゃならないと思うので、それがためには剣をふるって戦うわけにいかぬから、与党の人に迷惑かもしれぬけれども、慎重審議が必要で、今後憲法論争は最低十年以上は国会でなされなければなりませんから、どうぞそれに必要なやはり審議資料としての、いつどこで政府がそういう考え方に変かったか、私たちがわかる資料をを提出願いたいと思います。
  194. 林修三

    政府委員(林修三君) 今の資料の件でございますが、国会においてその議論が出ましたのはそう早くのことではございません。で、したがって、国会における答弁、質疑応答、これはそう早くからは行なわれておりません。憲法改正のときの衆議院、貴族院では、ほとんどその点に触れた議論はないわけでございます。しかし学説としては、今の憲法ができましてから以来、先ほど御紹介のような三つの説はあるわけでございます。それから、政府がそういうことを申しましたのは、実は昭和二十九年のたしか三月だったと思います。あれは、当参議院の委員会において、私の先任者の佐藤達夫氏が言ったことが一番初めだと思います。それからその翌年三十年、三十一年において、憲法調査会法案が当時の自由党あるいは自民党から出ましたときにその点が議論された。その際は、私も今申したと同じような答弁をしているわけでございます。大体国会において議論になりましたのは、今申したように、二十九年、三十年、三十一年だったと思います。その三回だと思います。
  195. 羽生三七

    ○羽生三七君 私の質問法制局長官に聞いて片づくかどうか知りませんが、私聞いておって不思議に思うことは、どうして内閣発案権なり発議権があるかという議論をそんなに政府がなさるのかということが私はふに落ちない。議員で出したらいいでしょう。池田勇人、大野伴睦、その他幾らでもおるのですから、その他何がしかで、この解釈がいいかどうか私はしろうとでわかりませんが、もしそういうことで非常な疑義があるならば、あえて内閣がどうのこうのなんていうことを言う前に、議員で出せば一向問題なしに片づくのを、こういう議論をやるということは、こういう——つまり議論のための議論なのか、あるいはそういうことをしておかないと内閣で都合が悪いのか、その辺伺っておきたい。
  196. 林修三

    政府委員(林修三君) これは別に私政府のほうで好きこのんでそういう議論をしているものとは思いません。今まで御質問があったことによって答えているのです。これは二月でございましたか、衆議院の予算委員会でも私は何回かお答えしたと思いますが、これはいわゆる政治論的に、内閣が出すことがいいか悪いか、これは別問題でございます。純粋の法律論としての議論であるべきである、こういうことは考えます。そう言ってお答えしているつもりでございます。
  197. 戸叶武

    ○戸叶武君 聖徳太子の憲法十七条に、やはり、大事は衆とともに議すべしというあとに、小事はこの限りでないことも明記しているのです。憲法改正なんていうのは、これは国家の大事です。イギリスにおける議院内閣制をたてにして例を引きますけれども、十八世紀におけるプライム・ミニスターとしてのウォルポールの二十一年政権の時代なり、あるいはビクトリア王朝におけるグラッドストンとヂスレーリの時代なり、そういう時代にすでにイギリスは必要とせらるるような、あなた方が今憲法改正を必要とするような大なたをふるうようなことは、幾たびか流血を経て片づいている問題なんです。イギリスの歴史が築き上げたところの慣習と日本の今日当面している問題とは別なんでございまして、イギリスの例をやたらに引くのは御迷惑ですから、もう少し聖徳太子のあかでもせんじて政府は飲んでもらいたい。そうでないと、あの十七条の立法をくずしたあとにおける一つの武力革命が起きてきた。大化の改新という形で起きてきた状態をも想起して、この国の基本法というものをいたずらに小細工するとえらいやけどをするから、池田内閣も少し気をつけておけということを私は警告したいんです。  それで、次には物価の問題に入ります。当面する日本の一番大きな問題は、憲法問題を除いてはやはりこの物価の値上がりと外貨不足の問題だと思います。特に外貨の不足というものが著しい状態でありまして、この状態で行くと、手持ち外貨というものが二月末現在約十億ドルということになっているが、その中で金が三億ドルあり、その他外国からの借金その他で間に合わしているのでありますが、自由に運営できる金はわずか一、二億ドルかなくなっているというのが実態のようですが、この状態で行ってはたしてやっていけるのでしょうかどうでしょうか。大蔵大臣は割合に正直ですから、正直なところ御答弁願います。
  198. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 一、二億ドルというようなことはございませんで、二月末で十五億一千四百万ドル、そのうち金が二億八千七百万ドルでございますが、そのあとは全部預金もしくは短期証券となって流動性の高いものでございますので、この資金繰りに今の見通しで困るというような事態は全然ございません。
  199. 戸叶武

    ○戸叶武君 その外国から金を借りているのやなんか十五億ドルの内容を洗いざらいお話しを願いたい。
  200. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 借りているわけじゃございませんで、外貨準備高としてこちらのほうで十五億一千四百万ドル二月末で持っているものでございますので、どういうふうに持っているかと申しますと、金で持ち、預金で持ち、短期証券で持っている。いつでもこれはくずして使える金で、こちらの準備高でございますので、借金ではございません。
  201. 戸叶武

    ○戸叶武君 その金以外の、短期証券なりあるいはその他のものを全部詳細に御報告願いたい。
  202. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 各国ともごの内訳は、証券幾ら、各銀行に対する預金幾らというのは、各国とも発表しないのが通例になっておりますが、先般参議院の御要求がございましたので、資料では大体私のほうで黙って書いてお出ししてあることでございますが、十二億何千万ドルというものは、いつでも現金にかえられるものになっております。
  203. 戸叶武

    ○戸叶武君 政府や日銀名義で外国銀行に預けてある定期預金は七億ドル前後でしょうか。
  204. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今言いましたように、内訳についてはあまり言わないことになっておりますが、大体その程度だろうと思います。
  205. 戸叶武

    ○戸叶武君 米国政府の短期証券が二億ドル見当、東京銀行が政府から預託されているのが一億ドル、あとの二億ドル余りが最近日銀が米国の市銀から借りた短期の借金であると言われておりますが、大体当たっておりますか。
  206. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いや、借金ではございませんで、日銀の預金があるかもしれませんが、借金ではございません。
  207. 戸叶武

    ○戸叶武君 われわれ俗人の見方とだいぶ違うのですが、やはり私は外貨事情は政府がらっぱを吹いているほど楽観的なものでないからこそ、財界をあげて私は警戒警報を今出しておると思うのです。問題はここで輸出の伸びの問題でありますが、それはどうなっておりますか、今後の見通し。
  208. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 輸出の見通しは、御承知のように、昭和三十七年度は四十七億ドルという見通しを立てておりますが、今輸出の状況を見ますというと、御承知のように、昨年の十月から十一、十二、一月を見ますというと、対米輸出は平均二〇%前年度に比べて増加となっておりますし、今年の二月、先月は前年同期に比べて四割近い対米輸出の伸びを示しておりますので、この調子で米国景気の回復というものにつれて対米輸出が今のそういうような足取りでふえていく、それからそのほかの地域への輸出のふえ方も政府の予想どおりいくということでしたら、私は今年度に四十七億ドルの輸出はこれは確実に達成できるのではないか、今の様子からはそういうふうに考えております。
  209. 戸叶武

    ○戸叶武君 エカフェの会議を通じて見ても、アジア地域にはEECのような形のものはできない。むしろ日本の貿易の振興は、第一に日米間の貿易の不均衡を是正し、それからEECに積極的に調整を行なう努力をし、それとともに日中貿易の打開をはからなければならないということになっておりますが、経企長官はどういうふうに見ておりますか。
  210. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大体EEC地域方面に対する貿易を促進さす、あるいはアメリカに対する貿易を促進さすということが非常に垣要でございまして、東南アジア方面、エカフェ地域というものに対する貿易もむろん進めて参らなければなりませんけれども、御承知のような経済事情でございますから、必ずしも多きを期待できないかと思いますので、来年度一四・六%ぐらい、四十七億ドルぐらい目標にした場合におきましても、欧州でございますとか、北米でございますとか、あるいは大洋州方面の貿易を盛んにしていく、ふやしていくというようなことが非常に大きな目標になっております。
  211. 戸叶武

    ○戸叶武君 最近日本を視察して帰った「エコノミスト」の記者が、日本のこの驚異的な経済成長というものを批判して、過去十年間日本の実質国民生産は年平均八・二%の増加を続けてきたが、その原因の一つは、生産性よりも労賃の上昇が低いこと、生産力と労賃の差が企業の高度の資本蓄積を可能にしていた。そこに高度の資本投資も可能であったというふうに指摘しておりますが、経企長官並びに大蔵大臣はこれに対してどういう御見解を持っていますか。
  212. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 過去におきまして、生産性の伸びと賃金の上昇というものが必ずしも並行はいたしておりません。ただ三十六年度になりまして、これはまだ速報でございますからわかりませんけれども、賃金の伸び率のほうがやや生産性よりも上回っておるんじゃないか、こう考えられます。
  213. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 生産性の伸びと賃金の伸びは、今企画庁長官が言われましたように必ずしも一致していなかったということは言えると思います。それと、御承知のように、日本の蓄積性の非常に高いということは世界で一番でございますが、この中には分析してみますというと、国民消費の問題と設備投資そのほかの問題がございますので、消費というものがある程度犠牲になっておったというような問題はあろうかと思います。
  214. 戸叶武

    ○戸叶武君 これは経企長官の答弁のような発表を政府はしておりますが、中小企業における非常に低い賃金であった人たちが上がってきたのは認めますけれども、全体として物価の値上がりについていけないほど労働階級は窮乏しつつあることを、やはりエコノミストの記者は冷静に言っておりまして、やっと今まで日本の労働者も貯金をするようになった。ところが、もう貯金も物価の値上がりによってできなくなってしまったという不健全な状態に対しても警告を与えております。これは、政府の出す統計が、非常にこのごろは何かの政府の政策の裏づけをやるような、都合のいいようなところばかり出しておりますが、現実において物価の値上がり、生活必需品としての生鮮野菜、魚、肉というものの値上がりは非常にはなはだしいものがあるので、河野農林大臣にお伺いしますが、ほんとうに国営市場を作るつもりかどうか。作るというふうに発表しておりますが、なかなか市場の問題はたいへんな問題で、袋だたきになる危険性もあるんだが、まあ河野さんはなかなか腹のできている人だから、やると言ったらやるでしょうが、これは私は、この生産と消費との直結を考え、流通機構の改革というものをやることが今の日本では非常に大切だが、政府はうたい文句だけでほんとうにやっていない。私は最後に一番こまかいところから聞きますけれども、牛乳だけを問題にしますが、牛乳はこの間河野農林大臣が言ったように、一合六円ないし六円五十銭で農民から買われているのです。ところが、メーカーから小売に渡されておるときにはこれが十一円になり、末端では十六円で売られているのです。事実上はこれは二十一円で売られておりますが、こういう過程をずっと見ればわかりますが、どこに問題があるかということを正確に私は検討してもらいたいと思うんです。私は数年前淡路島でデータをとりましたときに、淡路島は遠隔の地でありますが、農家から一合四円五十銭で買い上げられ、そうしてメーカーまでの輸送費その他がかかるから、六円でメーカーのところに入り、メーカーのところで低温殺菌とびん詰をやって九円で小売にいく。小売から神戸、大阪にいって十円、十五円で売られておるという流通過程のデータをとってみて驚いたのでありますが、世界各国の統計を農林省は具備しておると思いますが、生産農民から買われた値段の倍で末端の消費者に渡っておるところは、日本以外にどこにも私はないと思います。こういうようなところに問題点があるのであります。牛乳一つでもいいからこういう問題を私は片づけてもらいたい。今度のビールの問題でもそうですが、あれほどビールが大衆に、とにかく値下げしてもらえるだろうというムードを起こしながら、新聞を見るとやっと五円ぐらいか、これはビールのあわを負けてもらうぐらいのところで、話にならない。みんなそういうところにでたらめがあるのです。私はそういうところに対して具体的な……。
  215. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 戸叶君、あまり長いので御注意申し上げますが、時間を経過すること三分でございますから御注意申し上げます。
  216. 戸叶武

    ○戸叶武君 具体的に御答弁願います。
  217. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 私に対するお尋ねは二つあります。一つは中央卸売市場についてどうするか。これはたびたびお答え申し上げましたとおりに、現在の中央卸売市場法は多少時代的に改正をしなければならぬ点があるのじゃないか。そこで当然、改正をするとすれば東西両市場——価格形成が二つの市場によって行なわれておりまするので、事実に徴して東西両市場を作るほうが適当である。これを行なうことによってぜひ、卸、仲買い等、市場の中の機構もしくは実態を整備することが必要であるという意味からいたしまして、早急にこれを実行いたしたいという考えのもとに、農林省においてもせっかく調査をいたしておるわけであります。できれば次の国会までに何とか案を出して、ひとつ御審議に供したいと考えております。  第二の点は、牛乳その他卸、小売の点が非常によくない、こういうことでございますが、牛乳を例にあげて御質問があったのでございますが、牛乳の場合には、わが国の現状から見まして、私が先般もお答えいたしましたとおりに、生産者価格六円前後、それに卸の段階で十一円前後、それを小売の段階において十六円、これは容器が外国と違いまして御承知のとおり、一合ずつ取引されている。アメリカ等の例によりますと、だいぶ向こうは値幅が縮まっておりますけれども、取引の事情が違うというようなことがありますので、わが国でももう少し大量に消費するようになるとか、もしくは冷蔵庫その他が備わっていて、そこに貯蔵ができるというようなことになりますと、もうちょっと合理化されると思いますけれども、何分、毎日一合ずつ配られておるのでありますから、非常にその間に労賃その他の関係で値幅がある。たとえば同じ生鮮食料品を調査いたしてみましても、都市の周辺でできるものは生産者と最終消費者との間の値幅が、四〇%が生産者で六〇%が消費者。最終消費者の取得します価格の四〇%が生産者の手取りという程度になっているものも相当にございます。ところが、これが消費者と遠隔の地になりますと、順次その値幅が大きくなって参ります。これらの点が、まだ、輸送、荷作りその他の関係において改善する余地があると考えて、そういう点にできるだけひとつ協力して参りたいと考えておる次第であります。
  218. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 戸叶君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  219. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 次は木村禧八郎君。
  220. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、三十七年度の歳入予算に焦点をしぼって質問したいと思います。  三十七年度の歳入予算の特徴は、第一に、非常に多額の自然増収を見積もっておること。第二は、非常な多額の自然増収を見積もっておりながら減税幅が小さい。そのために予算規模か非常に拡大した大型予算になった。その結果として国民の税負担が軽くならないと同時に、景気に対してはやはり刺激的な影響を与えているわけです。大蔵大臣は三十七年度の予算の中で一千億円くらいは繰り越されて実際に使われないのだと、こう言われますが、しかし、税金の吸い上げ超過は三十六年度も同じでありますが、日本銀行の貸し出しによってカバーされておるのでありますから、景気調整にならないのであります。時間がございませんから、こういう点のこの論争はいたしませんが、こういう意味から、この三十七年度の歳入予算の特徴からいいまして、一番三十七年度の歳入予算の重点は、減税を非常に小幅にとどめたという税制改正だと思うのです。そこで、私はまず第一に伺いたいことは、総合官庁としての経済企画庁長官に、今の日本の税負担の実態、税制改正をやる場合に一番重要な問題は税負担の問題である。この現在の税負担をどういうふうにお考えになっておるか。今度の税制改正にあたってこの減税でよろしいと思ったかどうか。それから今後についての税負担との関連でもっと減税をすべきであるかどうか、こういう点についてまずお伺いいたしたい。
  221. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今度の予算編成にあたりまして、御承知のとおり、税の負担が二〇%以上になっているというような一つの問題、しかし、三十六年度からいいますと、三十七年度は二二・八%が二二・二%になりましたので、まあ下がっておるわけです。そこで所得倍増計画は、三十五年を基礎に出発いたしましたものですから、当時の比率により二〇・五%前後ということであり、あるいは税制調査会は二〇%程度というふうに考えられておりましたが、しかし、問題は、私は外国の例を見ましても、経済の相当発展しておりますところについて相当税負担が多いというところもございます。問題は、結局税の内容ではないかと思うのでございまして、経済が成長していくと、そうして消費者及び低所得者層に対する基礎控除であるとか、減税であるとかいうようなもの、あるいは間接税の問題等があるが、ある程度行なわれていく、高所得者層のほうにはそう減税が行なわれない、そういうような関係において税負担がたとえば高くとも、問題はそう経済進展の上に大きな影響を与えない。そこらの内容であって、ただ単に二〇%とか二一%とかいう数字だけではないのではないかと、そういうふうに私は考えております。
  222. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 経済企画庁が、この税制調査会の第一回の答申をするときに意見を徴されておるわけです。経済企画庁はどういう意見を具申されましたか。
  223. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 第一回と申しますと、税制調査会の一昨年の総会だと思うのでございますが、当時私は企画庁におりませんし、存じておりませんけれども、調べてみて申し上げます。当時所得倍増計画の基礎になりましたのは、二〇・五%というくらいのところを標準にして倍増計画も三十五年に立案しておりますので、おそらくそういうような意味において企画庁も考えておったのじゃないかと、こう思います。
  224. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その二〇・五%につきまして、大蔵大臣は、税制調査会の税負担率二〇・五%にはとらわれる必要がないということをあなたは言われるに至ったのです。今度の税制調査会答申で二〇・五%上回ってもいいという答申をしておりますか。私は、大蔵大臣は税負担率について今度の税制調査会答申を尊重していない、無視しておると思うのであります。それから経済企画庁が答申した場合、二〇・五%というのは、これは外国の税負担に比べても、戦前に比べても高いから、当分の間この程度の税負担でいくべきであるという答申になっているのです、当分の間は。その点から見ると、大蔵大臣が二〇%以上でも差しつかえないということは、これは税制調査会答申に違反しております。その点いかがですか。
  225. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 確かに税制調査会からは、一ぺんそういう答申が出ました。これは非常に問題でございまして、私どもいろいろその後税制調査会の人たちとも議論をしました。これが正しいということで、全部今後の日本の歳入のあり方もこれを中心にしてやらなければならぬ性質のものだと——われわれはそうは思わないということを言いましたが、あの当時においては、二〇%前後に一応押えるのが妥当だということを考えたけれども、その後経済がこういうふうに急速に伸びてきますというと、いろいろな社会格差、そのほかの格差が出て参りますし、この解消策には相当財政の役割が重大になって参りますし、この予想したときよりも経済が伸びて国民所得がふえるという事態になっても、これにこだわるものではないというのが税制調査会の各委員意見でもありますので、これはもうあのときの答申を今固執して、この比率でなければいかぬと言う税制調査会の方は今はおらないと私は承知しております。
  226. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今度の答申においてもそういうふうに答申されておりますか。
  227. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 税の負担率についての発言は、今度はございませんでした。
  228. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今度の答申にはありますよ。三十七年度の予算についてございますが、どうしてそういうふうに答申がないと言われますか。
  229. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 間違いました。前の答申は確認する、しかし、諸外国の例もあるし、いろいろなことからある程度これが動くこともこれはやむを得ないというような趣旨答申があったそうでございます。
  230. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは正確ではございませんから、もう一つ聞いて正確に答えて下さい。そんな答申じゃありません。重大な問題ですよ。税制改正において税負担率の問題が一番基本じゃありませんか。その一番重大な問題について答申をしておるのですよ。大蔵大臣考えとは違うんです。大蔵大臣はその答申に違反しておるのです。その点正確に答えて下さい。(「答申を読め」と呼ぶ者あり)答申ここにありますよ。(「大臣に読ませろ」と呼ぶ者あり)
  231. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 答申を読みます。  「われわれは、さきにも述べたように、国民所得水準の増加や歳出内容の変化にもかかわらず、国民所得に対する税負担の割合が常に一定でなければならないとは考えていない。むしろ税負担が適正に保たれているかぎりは、国民所得が増加すれば、国民の担税力も増加し、税負担の割合も上昇していくことも当然と考える。しかし、われわれは、今まで述べてきたように、わが国の税負担がなお相当に重いと考えているのであって、そのような認識のもとに、少なくともここ当分の間は、国民所得に対する税負担の割合をおおむね現状程度にとどめるよう努めていくことが適当であると考えた次第である。」  こういうことでございます。
  232. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それに対する大蔵大臣の御意見……。
  233. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そこにありますとおり、これは私どもも相当税制調査会議論しましたが、税負担の割合が一定でなければならぬということはない、要するに、国民所得がふえるに従って担税力は出るわけでございますから、率は若干上昇していくというのが当然だろうと、しかしまだ、日本の今の国民所得の水準から見ましたら、日本の税負担は重い、これは確かでございますので、これを急激に上げることのないように努めるべきであるということでございまして、これは私どももこの点においては賛成でございます。
  234. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 賛成ならば、答申を尊重してないじゃないですか、三十七年度の減税においては。
  235. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 御承知のように、三十六年度の当初予算のときの税の見込から見ましたら、当初予算のときの見積もりから見ましたら、三十七年度の歳入見積もりは四千八百億円確かにふえておりますが、しかし、三十六年度において当初予算のときの見込みが変わってしまいまして、それより三千三百億円近く多かったと、こういうことでございますので、三十六年度の税金と比べましたら、三十七年度はわずか私どもは千五百億円しか増収というものは見ておりません。ですから、そう大きい私どもは見込みだというふうにも考えておりませんし、三十六年度の実績から見まするというと、税の負担率は二二・八%になるということになりますので、ここで三十七年度は減税をやらなかったら二三・二%になる、こういう数字が出て参りましたので、ここで減税をやって二二・二%にするということは、三十六年度の実質負担よりも比率を下げたということになりますので、三十六年度現状はもう大きいのですから、これより下げるという減税をやったわけでございまして、従来よりも特に税負担率を今度上げたということにはならないと思います。
  236. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはごまかしですよ。税制調査会が、先ほど大蔵大臣が読まれたように、一応国民所得がふえるに従って税負担の率が上がっていくことは認めているのです。しかしながら、日本の今の税負担の現状は、諸外国に比べても、戦前に比べても、非常に重いから、そこで当分の間は前に答申した大体二〇・五%程度でいけということなんです。これははっきりここにも書いてあるのです。前の答申で、大体二〇・五%でいけということがちゃんと書いてあるのですよ。今のは、大蔵大臣、それはごまかしですよ。三十六年度は、当初は二〇%以下であったけれども、最終的には二二・八%になった、それに比べれば低いと言いますけれども、今の税負担は、諸外国に比べても、戦前に比べても、著しく高い、だから当分の間は大体二〇%でいけという答申なんですよ。よくごらんになって下さい。今のは詭弁です。答申を尊重していません。答申の中の一番重要な点は税負担率にあり、これを強調しております。この点いかがですか。ごまかしですよ。
  237. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういう答申は出ておりましたが、それなら税制調査会がどれだけの減税をやるのが至当かということを答申で見ますというと、御承知のような答申になっております。私どもは、ほとんどあの答申どおりの今度減税をやった次第でございますので、税制調査会の言うとおりの減税をやっても、税負担率は今のような形になるのでございますから、税制調査会も当分という希望は述べておりますが、この程度の減税はすべきである。私どももその程度の減税をしたわけでございますが、税の負担率は二〇・五%よりもむろん多くなりましたが、今の実情から見まして、二年前の税負担率に必ず返さなければならぬということを税制調査会も言っているわけではございませんし、できるだけこれを急激に上げないような配慮が必要だということについては、私どもも意見は同様でございますが、これは昨年——三十六年度の実績から見ましても、とにかく税負担率を下げることはやっておりますので、この点も、税制調査会に対する答申の違反というのじゃなくて、下げる幅も税制調査会意見を大体取り入れたということになっておりますので、私どものほうにはあまりそう大きい矛盾はないだろうと思っております。
  238. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣、税制調査会答申をよく読まれたのですか。そんなごまかしてはいけませんよ。大体今後当分は二〇%程度の負担でいけと、そういうふうに規定して、それは三十七年度の税改正基本方針においてこういうことが述べてあるのですよ。三十六年度においてもかなり大きい自然増収があると、しかし年度内減税は困難であると、であるからなるべく税制調査会答申した千七百億円の前年度程度の減税をすべきであるということが答申されておるのです。前年度程度の千七百億の減税ではないじゃありませんか。
  239. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは、この間この委員会説明しましたように、税制調査会答申と実質的な違いは二十五億円しか金額ではなかった。
  240. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 平年度で……。
  241. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そうです。
  242. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 平年度で、今度の初年度で……。
  243. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 平年度を初年度に直してみた場合と今度の初年度の私どもが減収額に立ったものとの比較をしてみますというと、二十五億円しか食い違っていない。それは、この間御説明しましたように、ビールをもう少し減税せいというのを、ビールを十円の減税にしましたために、ここで七十億円の狂いが出ました。減税幅が減りましたが、そのほかの点において税制調査会答申よりも多い減税を私どもはやりましたために、差引二十五億円の食い違いが出た程度で、全部税制調査会答申どおりの筋に乗ったものが今度の減税案でございます。
  244. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃ千七百億くらいになりますか。
  245. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 平年度を初年度に直せば、そういうことになります。
  246. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 本年度ですよ。
  247. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 本年度で——三十七年度の減収千四十億の減税ということは。
  248. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 増減を差っ引いてですよ。
  249. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 増減を差っ引けば、税制調査会の言った数字と、さっき申しましたように二十五億円の食い違いしかございません。
  250. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そんなことはない。違う。そんなはずはありませんよ。私時間がありませんから、よくあとで調査して下さい。そんなはずがございませんよ、増減差っ引いて。
  251. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 政府の今度の減税額は、平年度で申しますと千二百四十四億円、税制調査会でいう平年度は千三百八十二億円。
  252. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 平年度——千七百億ですよ。
  253. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 国税において千三百八十二億円です。そうしますと、百三十八億円ここに違いがございますが、それが実質的には、さっき申しましたように、税制調査会と私どもの少し違いますところは、計数整理の段階で税制上から見た問題と、たとえば間接税にしましても、これによって若干の消費増というような三十七年度の見込みを私どもで立っておりますから、その分だけは差引になってきますので、そういう点の食い違いと、それから税制のほうで出ました食い違いは、酒税で七十一億円政府のほうが減税額が少ない。所得税で十二億円生命保険の保険料の控除の拡充をやっているのと、物品税で十二億円、入場税で十五億円、通行税で七億円、こういう税制調査会よりは減税の幅を大きくしましたために、これを差引しますと、実質的には二十五億円くらいしか税制調査と違っていない。
  254. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 国税、地方税を通じてですよ。
  255. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 地方税のほうも、同じ平年度ベースに直しますと、四百何十億かの地方税の減税でございますから、今度の二百何十億になっても、税制調査会答申とは実質的にほとんど同じであります。
  256. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは違いますよ。
  257. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは同じですよ。
  258. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 違う。それじゃあとでまた、時間がありませんから、大蔵委員会質問いたします。  次に伺いますが、この税制を通じて格差の解消をどういうふうに措置されたか、企画庁長官に伺いたい。さっき企画庁長官は、低所得層に対して減税が多くなり、高所得層には減税をしないというような形なら、格差が縮まっていくような御答弁がありました。私は、今度要求しまして、五分位の勤労世帯の階層別の所得内容を調査してもらいました。これを見ますと、前に池田総理に私質問したのですが、所得倍増計画を始めてから格差が拡大してきている。特に低所得層は赤字であります。それで、この赤字になる所得層に対しては税金をかけるべきではないと思うのでございますが、いかがでございますか。
  259. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 格差を是正しますことは、他の面からもそうでございますけれども、税制の面からも当然考えて参らなければならぬことでございまして、そういう意味におきまして、特に地域格差の場合には、中央、地方を通じて格差の是正が行なわれ、あるいは所得の面においては、格差の是正の面においてもやはり税制面において配慮されなければならぬのは、これは当然だと思います。
  260. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ところが、そうなっていないのです。政府がわれわれに出した資料において、倍増計画を実施してから格差が拡大しているのですよ。  時間がないのは非常に遺憾でありますが、ただ具体的に申しますと、たとえば五人家族の場合に、三十六年度においては、一番低所得層が——一万九千円の月収の層が九・六%しか伸びてないのに、月収八万円の階層は一四・四%も伸びているのです。それで、低所得層と高額所得層の伸びの格差は四・八%。ところが、三十五年度におきましてのその伸びの格差は一・六%なんです。私が前に指摘したとおりに、所得倍増計画を実施してから所得格差がこのように拡大してしまっている。税制面においてどうしてこれを是正しないのかというのです。ことに、一番低所得層の家計は赤字であります。たとえば、個人について、一万六千円程度の所得の人は二千九百八十八円の赤字なんです。ところが、一万六千円程度のこの人には税金がかかりますよ。したがって、今度の改正案によっても、独身者の低所得層で課税最低限は十三万九千円、大体十四万円なんであります。平年度においても十四万二千円です。これでは、この赤字のような人にも税金がかかるのであります。少なくとも二十万円くらいにしなければ、赤字の人も税金がかかるわけです。この点をどう措置されますか、どう考えるか、企画庁長官にも、大蔵大臣にも、伺いたいと思う。これでは格差解消にならぬのです。
  261. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 大村君の持ち時間は経過いたしました。
  262. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 実は、資料として総理府から出ました五分位のこの資料は、企画庁にまだきておらないので、私はここで実はちょうだいをしたわけなんで、十分検討しておりませんけれども、一見いたしますと、今のような三十六年度におきまして格差が出ていることは事実でございます。なお、これらについては、十分調査いたしまして原因等も究明する必要がございまするし、将来の問題として考えていかなければならぬ点があるだろうと思います。
  263. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 税金についてはどうなさるんですか。
  264. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) したがって、税金につきましても、今後の問題としては、やはり格差の是正という面を相当税金にも織り入れて考えて参りますことは、これは当然のことでございまして、そういうような点について、あらゆる面から、あまりに高度に成長して参ります場合の格差がひどく起こって参りますれば、やはり基本的には、安定的な成長をもって、そうして格差の是正を、その他の方法——つまり地域格差の問題、あるいは今のような所得格差の問題等については、税制その他で配慮していかなければならないが、基本的には、あまりにも急激な成長そのものを抑制していくことが必要だろう、こう思います。
  265. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) その前に、先ほどの国税のほうは間違いございませんが、地方税のほうを申し上げますと、調査会答申は、地方税の減税が平年度で三百六十三億円の調査会の案でございまして、政府が今度やります地方税の減税は、平年度四百二十二億円でございますので、これは税制調査会よりも政府の減税のほうが五十九億円多い、こういう数字になっております。  それから、ただいまの問題でございますが、これは昭和三十六年、七年、二カ年の減税を一体として私どもは考えいただきたいと思っております。この二カ年の減税によって、納税者が、現に今まで税金を納めておった人たちが、この二カ年にわたって三百八万人納税しなくても済む、非課税者に入るということでございますから、それによりましても、私どもはこの減税は格差の解消にりっぱに役立つだろうと考えております。
  266. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう時間が過ぎておりますので、簡単に質問いたします。  格差の問題につきまして、今所得格差につきましては経済企画庁長官から非常に私は重要な御答弁をいただいたと思うのです。一番その基本は行き過ぎた成長にあるのだということをはっきり言われましたですね。これは私は、今後の物価対策とも関連して、重要だと思うのです。また、その一番の行き過ぎた基本は高度成長ムードにあったと思うのです。このムード的なものは、かなりそれは池田さんの高姿勢にあったのです。池田さんが、高度成長、高度成長と言った、そのムード政策的な環境ですね、そういう環境、雰囲気を作ったのでありますから、これが私は物価の騰貴の原因でもあるし、高度成長の一番行き過ぎた原因である、またそれを可能ならしめたのはやはり今の管理通貨制度のもとにおける財政金融政策にもあったと思うのですが、そこで私はひとつ、今後の問題について伺いたい。大蔵大臣、まだ私は税金は高いと思いますし、また格差も非常に拡大されておるわけですね、実態が。まだまだ私は減税すべきだと思うのです。ですから、今度の減税は、私は税制調査会の基本的な線に沿うているものと思いません。ここ当分は大体二〇%でいけと言っている。ですから、今後はどうされるか。来年度において減税を具体的に考えられるか。また、たばこの減税もございます。その点が一つです。企画庁長官にもこの点伺いたいです、今後の減税につきまして。
  267. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私どもは、今後もこの減税は、いつも言いますとおり、ほとんど年中行事的にやるべき性質のものだと考えておりますので、税制調査会の期限が参りましたが、私は引き続きこの税制の審議に当たっていただきたいというふうに考えております。
  268. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現在のような、非常にある意味からいえば、財政収入の多いときにこれを還元するということは必要でございまして、むろんこういうような場合に社会保障その他に対する要求もございます。これはまた低所得者を保護する立場でもございますから、それとこれとにらみ合わせながら減税の問題は考えていきたい、こう思っております。
  269. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 自治大臣に伺いたいのですが、今度の税制改正によりまして、われわれの計算では、非常に地域格差があると思うのです。自治体が増収分になるのもありますね。府県税、たばこ等がそのために減税をやります。平均しては大体地方自治体は百三十三億の減税になると思うのです。出入りを入れまして百三十三億。これは平均でありますが、しかし、府県別に見ますると、これは非常に私は格差があると思うのです。これを交付税でみるといっても、交付税は全部みるわけじゃありませんから、基準財政需要額の八割程度をみるわけであります。そうしますと、非常に格差が出てくると思うのです。その点はこの前一応伺ったのですが、府県別に私は格差が出てくると思うのですが、その点、前に忠告してございますので、今の時点でわかるだけ府県別に——市町村別はとても無理だと思いますから、御調査なさったならば、その点伺いたいと思うのです。
  270. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) この前も申し上げましたように、府県別の調査というものは、今まだ減税あるいは交付税の配分等できておらぬわけでありますが、ただ、これを今全体の格差の問題にからんで考えますと、大体府県をABCDと四つのクラスに分けて考えますと、いわゆる基準財政需要額というものは、やはりDという一番低い階層のほうが需要額はふえている。だんだん上にいくに従って減っていく、大体平均しまして二〇%前後の基準財政需要額の増になりますが、その二〇%を前後してDからAまで逆に低い水準のほうが需要額がふえておる。したがって、これに対する財源手当でございますが、大体交付税が八百十億ですか、これがふえます。それから、地方税が全体を通じまして減税、それから自然増、差し引きまして千七百億くらいふえます。この千七百億と八百億のうちの三分の二が府県税、府県の財源になるというもので勘定いたしますと、今の基準財政需要がふえる額は大体七千億程度ということで、これに対しましてこの十分な財源手当はできるというふうに私どもは考えております。府県別の格差というのは、今のABCDの標準別以上のものはちょっと無理だと思います。  それから、この前関連してお話がありました、たとえば御指定の岩手県、青森、茨城、新潟、富山、三重、高知と、こういう県につきましては、大体地方交付税と地方税と地方譲与税、こういうものを一応現在組んでおる予算で想定いたしますと、実は青森県と岩手県は現行法でやっておりまして、あと茨城県以下改正法でやっておりますが、大体青森県が二三%の増、それから岩手県が二六%の増、茨城県が一九%の増、新潟県が二四%の増、富山県が一七%の増、三重県が二三%の増、高知県が二三%の増、これが今の、この前ちょっとお話がありました交付税と地方税と譲与税を総合的にしまして、今出得る数字を集計しますと、こういうものが出ております。
  271. 加瀬完

    ○加瀬完君 関連。今、大臣の御説明の数字は、ふえる分だけを合算して、減る分を差し引いてないじゃないですか。
  272. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 差し引いてあります。
  273. 加瀬完

    ○加瀬完君 それを具体的に説明して下さい。どこの県でもいいです。
  274. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) どの県にしましても、たとえば茨城県を取り上げましても、交付税が、たとえば十四億三千五百万円ふえて、それから地方税におきましては十一億六千三百万円ふえて、それから譲与税におきましては、これは御承知の入場税が廃止になるものですから、三億一千五百万円減る、こういうような計算の結果、差引いたしまして一九%の増、こういうふうな格好に出ておるわけであります。(「九州はどうなっておる」と呼ぶ者あり)九州までは調べが届きません。これはこの前もお話を申し上げましたとおり、今予算を組んでおるところ——国会提出しておるところで、それを一々検討することはできないのですが、たっての御要望で、この県だけ総括的に調べをやったわけです。
  275. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最後に、物価対策について簡単に伺います。これまで物価問題についていろいろ論議されてきたわけでありますけれども、政府答弁は、どうも納得いかないのです。今まで政府答弁を要約いたしますと、それに対して、これは私は間違いと思うのですが、その点についてはっきり御答弁願いたいのです。  まず第一に、政府の今まで答弁されてきたことは、物価騰貴は、経済が成長していく場合に、それにひずみが生じてきた、その結果として現われてきたというそういう考え方一つあります。また、物価が上がっても、それ以上に所得がふえるから家計を圧迫しないだろう、こういう答弁もあったわけです。また、卸売物価が安定していれば、消費物価は上がっても心配ないという、そういう説明もあったわけです。あるいはまた、消費者物価の値上がりは一時的である、特に生鮮食料品等の値上がりがひどかったが、これは一時的のものであるから、やがては安定するであろう。要するに、この物価値上がりはあまり心配がないのだ、それから、これは経済が成長していくときには不可避の現象である、そういう御答弁なんです。そうしますと、要約して、これはいたし方がないというような結論にならざるを得ないのです。そこで伺いたいのは、経済が成長していく場合に、労働賃金が上がっていく、そのためにサービス料金が上がる、そういう価格の騰貴は、かりに認めるとしましても、それだから必ずしも物価水準が上がらなければならぬということはないと思うのですね。他方において生産性の向上したものを下げれば、物価水準は上がらないで済むと思うのです。そこで私は、政府はそういう価格対策と物価水準対策とを、これは二つ区別して考えなければならぬと思うのです。需給関係から、また、経済の成長に伴って不可避的に上がるものもあります。これはわれわれも認めざるを得ない。それまでも私は反対するわけじゃないのです。しかし、一般家庭としましては、そっちのほうが上がっても、生産性が向上したものがそのまま下がれば、物価水準としては上がらなくても済むわけですから、家計を圧迫しなくて済むのです。たとえば電車賃値上げに反対の人はたくさんおります。これに対して、今交通が非常に混雑しておるから、混雑を緩和するためには、どうしても私鉄が料金値上げをして混雑を緩和しなければならぬ、こう説明されれば反対できないわけです。しかし、家計には響くわけですから、政府のほうで、料金値上げすれば家計には響くでしょうから、他方においてもっとそれに見合う減税をするとかあるいは他方において物価を、生産性の向上した鉄の値段を下げるとか、その他の物価を下げれば、平均してそれは家計に響かないのだ、こういう政策をどうして打ち出さないのですか。こういう政策をはっきり打ち出せば納得すると思うのです。国鉄の運賃だって、上げた場合、他方においてこれだけ下がるのだから、物価水準としては上がらないのだ、こういう説明をすれば納得いくのです。なぜそういう説明をされ、また、具体的な政策の裏づけをされないか。政府のほうは、鉄道運賃は上げる、私鉄運賃は上げる、そのほかのほうは下げないのです。そこに問題があるのです。これは物価水準に対する根本的な物価対策です。今度の打ち出された十三項にはそういう点がないので、物価水準に対する対策はないのですよ、個々のものにいろんな対策がございましても。ですから、学者の意見を聞いても、世論も、政府は物価対策を出したのだけれども、なかなか物価はこれで安定するだろうという安心感は国民にないのです。政府が打ち出しても、また私鉄運賃は上がる、この前と同じじゃないか、こういうふうに理解しておるのであります。この点について私は最後に伺いたいのですが、物価騰貴の根本原因はどこにあるか、この点をはっきり私はしていただきたい。これは今までの高度成長政策からきていると思うのです。部分的には賃金が上がったり野菜が上がったりなんかしておりますけれども、一番根っこは高度成長の行き過ぎにあったと思うのです、根っこはですよ。これを直さなければいけないと思うのですよ。ここに触れた対策を講じなければいけません。その前提としては、池田さんの高姿勢のああいう政策態度をやめなければいけないのです。十分反省して、今までの高姿勢の政策は間違っておったと、こういうことを池田さんがはっきり言われると、成長ムードというのはここで安定すると思う。池田さんは、依然として高度成長は間違いでない間違いでないと言うから、やっぱり行き過ぎが是正されないのであります。私は、時間がございませんから、個々に具体的に伺いたいのでありますけれども、一番基本的な今の問題について……。
  276. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 木村君にちょっと申し上げます。時間がないのじゃない、経過しておるのですが、それで、その辺でなるべく早く打ち切っていただきたいと思います。
  277. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 わかりました。それじゃ私の意見は大体述べましたから、私、今、委員長が言われましたとおりに、もう時間が経過しておるのであります。ですから、これ以上また反論して質疑を深めるというわけにいきませんので、総合関係から、企画庁長官にひとつ十分その点で納得のいく御答弁を、今の物価の騰貴の根本原因、それから対策、それから今後の見通し、それに対する措置ですね、これをひとつ。それから大蔵大臣は、今後の財政金融政策ですね、物価対策と関連しまして、財政だけをかりに締めても、日銀でそれを貸し出してしまえば景気調整はならぬですよ。そうでしょう。輸入超過になると、赤字になった場合、金融は締まる。あるいはまた税金を吸い上げるけれども、銀行から金を借りて税金を納めるでありましょう。ですから、金融のほうを、これを締めなければしり抜けであります。大蔵大臣は、三十六年度約二千億たな上げして三十八年度に繰り越すから景気調整になると言いますけれども、その分は日銀は貸し出している。だから、日銀の貸し出しは一兆三千億にもなっておるのであります。三十七年度にしても同じであります。千億繰り越していますけれども、その分は日銀が貸し出しするのでありますから、これでは景気調整にはならないわけです。ですから、財政だけで考えられません、景気との関連は。財政と金融を引っくるめて今後の……。
  278. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 木村君、非常に御熱心ですけれども、十分ぐらい経過しましたから、御注意します。
  279. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 景気調整と関連して、財政金融のあり方について、ことに物価問題と関連しておりますので、この点について大蔵大臣から、十分御所信のほどを懇切丁寧にひとつ御説明願いたいと思います。これで私は終わります。
  280. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 政府として、決して物価が上がった、当たりまえだ、したがって、それは自然的成り行きだから仕方がないのだというふうには考えておりません。したがって、総合的な対策も作り、今お話のように、こういう経済状況でございますと、ある程度将来のことも考えて上げざるを得ないものもあるが、合理化によって、そうして価格を低下させる問題もあって、今のように両方相互に関連さして、そうして一つの物価水準を上げないようにしていこうというのがむろんわれわれのねらいとしてやって参るわけであります。ただ、明年度においては、本年度より二・八%残念ながら上がらざるを得ないが、その水準以内でもってできるだけ——上がるものもあり、下がるものもあって、その水準内に押えていこうという努力をしなければならぬのですが、それが総合対策をいたしたわけでございます。池田総理にいたしましても、むろん無条件に今日の状況を考えておられるわけではないのでありまして、御承知のとおり、総合対策を昨年九月に立てて、そうして設備投資の行き過ぎその他を押えていこうということでございますから、そういう面において全体の成長を十分に頭に入れておられるので、私はその点疑わないのでございます。そういう意味におきまして、政府としても、物価対策そのものに対して、十分な個別的物価対策と同時に、今お話のございましたような、物価水準そのものを低目に維持していく、あるいは横ばいにしていく、あるいは将来はむしろそれを下げていくというふうな努力をしていくべきことは当然と思います。
  281. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 根本原因についての御答弁がございません。根本原因です、今の。
  282. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 根本原因は、申すまでもなく、非常な勢いで、昨年のような状況で設備投資もふえ、経済活動もあまりにも旺盛であった、いわゆる成長が相当早過ぎたという点にあると思います。それが私が申しておるひずみというものが各方面に出てきたゆえんだと思うのでありまして、むろんそういう面について、したがって、総合対策で押えていこうということでございますから、その点について、総理においても十分留意をして努力をしておられるわけでございます。
  283. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 根本原因じゃないのです。成長の行き過ぎた原因をもっと言ってくれないと——根本原因じゃありません。なぜ成長が行き過ぎたか。何かみんな政府の責任でないように言っております。
  284. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 別に政府の責任でないようなことを言っているわけではないわけでありまして、全体としてとにかく成長が行き過ぎておることだけは事実でございます。したがって、その点について抑制政策を昨年九月出したのはそのことなのでございますから、ですから、それで押えていこうというのであって、総理も、そういう意味においては、十分そういうことについて関心を持って、また、努力していかれるということを私は信じておるわけであります。先ほど木村さんの、無条件でもってそれでいいのだと総理も思っておられるわけじゃないと思います。
  285. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まあ国際収支の均衡ということが、やはり安定成長のこれは前提でございますので、物価の対策にいたしましても、基本的には、やはり行き過ぎがなくて、安定成長の線に経済を戻すということが物価対策のやはり私は基本だと考えますので、そういう意味から、私どもは行き過ぎを押えて、国際収支の均衡を急速に回復しようという方針でやっておるところでございますから、財政の運用も金融政策も、その線に沿った運用の仕方をしたいと考えます。
  286. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 木村君の質疑は、以上をもちまして終了いたしました。  一般質疑通告者の発言は全部終了いたしました。一般質疑は終了したものと認めます。  明日より分科会に入りまするので、次回の委員会は、二十九日午後零時三十分に開会いたします。  本日はこれにて散会をいたします。    午後四時十九分散会