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政府委員(大月高君) 前段の、違法に払い戻しを受けたというような事実はないと思います。
それから、停止についての法的の根拠は、いろいろ変わっておりますので、若干詳しく申し上げますと、
最初昭和二十年の八月の二十日におきまして、樺太の引揚者の預金の支払いは内地において許可されておるのでございますが、これは銀行等資金運用令という総動員法に基づく勅令に基づき、預金の便宜代払い制度があり、
昭和二十年八月二十日付の通達により、同日から樺太引揚者にも適用されることになりました。それから、引き続きまして八月の二十五日から、朝鮮、台湾、関東州からの引揚者についても、同様の措置がとられたわけでございます。
最初許可されました根拠法規はそれでございますが、次いで同年、
昭和二十年の九月二十二日付で、連合軍指令部から金融取引の統制に関する件という覚書が出まして、これは御存じのように
日本政府に対する命令でございます。その命令の
内容は、「金、銀、在外資産、外国為替等に関する取引は、大蔵省が許可した場合を除き、一切禁止すべし。」、こういう指令でございます。この指令に基づきまして、大蔵省からは、「当省から何分の指示があるまで外国為替その他これに準ずる取引は停止する。ただし、一般引揚邦人については、さしあたり千円の範囲内でこれに応じてもよい。」という通達が出ておるわけでございまして、その根拠法規は、今申し上げました連合軍司令部からの覚書でございます。次いで、十月の二日に至りまして、この千円の限度につきましても、これを禁止するということになりまして、大蔵省から
日本銀行にこの旨を指示いたしました。
日本銀行を通じて各銀行に対し通知をいたしました。その結果、樺太からの引揚者に対する預金の支払いも中止された。これは必ずしも北拓だけでなしに、あらゆる銀行であったわけでございます。
次いで、
先ほどの覚書に基づきまして、国内における立法措置が講ぜられまして、
昭和二十年十月十五日の省令でございます。金銀有価証券等の輸出入等に関する金融取引の取り締りに関する省令(大蔵省令八十八号)が公布されまして、その結果全面的に預金の支払いが禁止されたわけでございます。その根拠は今の大蔵省令八十八号でございます。
それから、
昭和二十五年の一月二十五日に、大蔵省告示第六十二号によりまして、その当時ございました樺太預金の四分の一以下について支払ってもいいという告示が出たわけでございますが、これは
先ほど申し上げました省令八十八号に基づく許可でございます。ところが、その根拠法規がその年の六月三十日に廃止されまして、その告示
自体毛失効いたしたわけでございます。その結果、再び樺太
関係の預金の支払いは停止されたということでございます。次いで、
昭和二十九年五月、金融
機関再建
整備法の一部改正がございまして、在外債務に関する債権の支払いの許可ができるようになったわけでございます。その結果、樺太
関係の預金の支払いを開始いたしました。で、結局最後に、
昭和三十一年六月末までに必要な支払いを行ないました。その結果残りましたものは、樺太
関係の預金といたしまして千百八十三万円が預金として現在残っております。それから、申告のなかった市町村預金と、申告のなかった一般の債務でございますが、これが五百二十五万別にある。こういう格好でございまして、その後その預金の格好になりました千百八十三万円は、普通の預金と同様に現在支払ってきておる。
これが法律及び行政措置の概要であります。