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1962-03-10 第40回国会 参議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月十日(土曜日)    午前十一時十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     湯澤三千男君    理事            川上 為治君            鈴木 恭一君            平島 敏夫君            米田 正文君            加瀬  完君            藤田  進君            田上 松衞君    委員            植垣弥一郎君            小沢久太郎君            太田 正孝君            大谷 贇雄君            金丸 冨夫君            上林 忠次君            小林 英三君            下村  定君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            苫米地英俊君            野本 品吉君            一松 定吉君            村山 道雄君            山本  杉君            横山 フク君            亀田 得治君            木村禧八郎君            久保  等君            坂本  昭君            高田なほ子君            戸叶  武君            藤田藤太郎君            矢嶋 三義君            山本伊三郎君            東   隆君            市川 房枝君            白木義一郎君            奥 むめお君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    外 務 大 臣 小坂善太郎君    大 蔵 大 臣 水田三喜男君    厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君    通商産業大臣  佐藤 榮作君    運 輸 大 臣 斎藤  昇君    郵 政 大 臣 迫水 久常君    労 働 大 臣 福永 健司君    自 治 大 臣 安井  謙君    国 務 大 臣 藤山愛一郎君    国 務 大 臣 三木 武夫君   政府委員    法制局長官   林  修三君    法制局第一部長 山内 一夫君    総理府総務長官 小平 久雄君    総理府恩給局長 八巻淳之輔君    警察庁刑事局長 新井  裕君    経済企画庁総合    計画局長    大来佐武郎君    外務省アメリカ    局長      安藤 吉光君    外務省欧亜局長 法眼 晋作君    外務省条約局長 中川  融君    外務省移住局長 高木 広一君    大蔵省主計局長 石野 信一君    大蔵省主計局法    規課長     上林 英男君    大蔵省銀行局長 大月  高君    厚生省援護局長 山本浅太郎君    通商産業大臣官    房長      塚本 敏夫君    通商産業省通商    局長      今井 善衛君    郵政省貯金局長 荒巻伊勢雄君    労働省労政局長 堀  秀夫君    労働省労働基準    局長      大島  靖君    自治省選挙局長 松村 清之君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   参考人    日本銀行理事  福地  豊君   —————————————   本日の会議に付した案件昭和三十七年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) これより予算委員会を開会いたします。  昭和三十七年度一般会計予算昭和三十七年度特別会計予算昭和三十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き質疑を行ないます。藤田藤太郎君。
  3. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、一番最初総理並びに関係閣僚にお尋ねしたいことは、ILOの問題でございます。  御承知のとおりILOの歴史は、私が申し上げるまでもなしに、一九一九年にでき、五一年に日本は再加盟をしている。ILO憲章は非常に大きな意義を持っております。特に一九四四年のフィラデルフィア宣言において、今後の問題について大いにやっていこうじゃないかという決意宣言をして、これを含めて、日本はこのILOに再加盟を非常に熱心にされ、そして常任理事国になられた。ところが、とのILOのきめておりまする条約勧告決議、この精神に沿おうという努力政府には足らない、私はそう思うのでございます。きのうからきょうの新聞に大々的に報道されていますように、これは今日始まった問題ではございません。ILOの八十七号条約の問題でございます。国民の皆さんは、この新聞の報ずるところによっても明らかなように、政府ILOに十回も八十七号批准をするという約束をしているのに、まだその批准手続批准日本ではされていない、これはどういうことなんだ、こういうことを非常に強く非難をいたしているところでございます。条約勧告適用委員会においてもこのような意見が非常に各国に出まして、そして日本に対しましては非常に強い、早く批准せよという要求をしているのであります。政府は、この八十七号の批准について今日どう考えられているかということをまずお聞きしたいのであります。
  4. 福永健司

    国務大臣福永健司君) かねがね政府が申し上げておりますように、ILO八十七号条約批准はできるだけすみやかにこれを行ないたいという考え方に、ごうも変わりはないわけであります。このたびまた御指摘のように、ILO理事会わが国に対しまして、御承知のようなことを言って参ることになったのでありますが、こういうことを考慮いたしますにつきまして、なお一そう私どもは従来の考えを進めていかなければならない、こう考えておるわけでございます。ただ、従来提出いたしましても、入口でいろいろ論議があって、あまりそれ以上に論議が進まずして、審議未了等の結果になっていること等にかんがみまして、私どもは、今度出せばぜひ仕上げをいたしたい。仕上げをするには、そのめどをつけなければならぬ、こういうことに苦慮いたしておる次第でございます。
  5. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今労働大臣の発言では、仕上げとか内容ということを言われておりますけれども結社の自由ということ、団結権擁護ということは、ILOの大原則でございます。大原則でございますから、今この結社の自由、団結権擁護に、何が国内法で触れているか。具体的にいえば、公労法の四条三項と、地公労法五条三項、これをはずせば、ILOの八十七号は批准できるのであります。政府はこういうものを、この条約批准することによって、より以上に国内法を改悪しようという、ILO精神にもとった考え方政治的にあるから、今のような答弁になる。ですから、ILOの一九四四年の宣言を読んで、ILOというものを総理以下は理解されているのかどうか、大問題でございます。外務大臣は、出先では、外務省出先国際会議、あらゆる会議に出ている。このILO会議にも出ている。ほんとうILO憲章宣言を意識して出先機関会議に出ているのか、これも私はお聞きしたい。根本的には、このたびのILO理事会政府側から人を派遣して、まあまあということを言われたそうでありますけれども、この新聞に載っているように、十一回目の約束に来られた、今回で十一回、それにまだ日本政府機関はこのILO八十七号を批准しようとしてない。どういうことなんだということを非常に強く各国の代表が非難をしている。ですから、この国会に出すつもりがあるのかどうか、このような状態の中で、今まで理事会を見ていただいても、日本だけがこの問題に対して反対するか、保留するか、ほんとうに恥ずかしいとは思われないのかどうか、総理の御見解を聞きたい。あとで私は触れたいと思いますけれども、こういう八十七号を初めといたしまして、ILOに対する日本政治をやっている方々、中心になっている政府の理解がない、そういうことでありますから、日本労働保護ということを度外視して政治経済をやっている。だからガットの三十五条援用というような問題が各国議論される。これは非常に私は残念なことだと思うんです。ですから、お尋ねしたいことは、ILO憲章宣言というものを十分理解してILO常任理事会に参加されているかどうか、どういう意識で取り組んでおられるか、八十七号条約をこの国会批准をするという決意を持っておられるかどうかを総理からお聞きしたい。
  6. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) すでに御承知のとおり、政府はさきにILO条約批准案並びに国内関係法案提出いたしたのでございます。しかるところ、国会内でこの審議の方法その他につきましていろいろ議論がございました。そういうことから考えまして、私は今国会ILOをぜひ出したい、こういう気持で、事前国内関係法規につきましての検討を加えつつ、できるだけ早く提出する気がまえで準備をいたしております。
  7. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この国会に出すつもりですか。——始まっているじゃないですか、いつ出すんですか。
  8. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) できるだけ早く出す考えでございます。
  9. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 できるだけ早くでは……、この国会は五月までなんです。この五月で国会は終わるんです。ILO理事会からもこの国会批准するようにという非常に強い意見が出て、きめられている。この国会いつお出しになるか、たとえば一週間以内にお出しになるとか、十日以内にこれの手続をとられるということについての明らかな御返答を願いたい。
  10. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私としては、できるだけ早く出すように労働大臣その他に申しておるのでございます。
  11. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 総理の答えられたるごとく、私も一日も早く……、こういうように考えます。ただ、先ほども申し上げておりまするように、仕上げ関連してのめどということ等も考慮に入れておりますので、いまだ提出するには至っておりませんが、すみやかに出したいという考え方においては藤田さんなんかと同じように、私も最も熱心な一人でございます。  なお、先ほど御質問のありましたILO憲章前文の点でございますが、わが国は再加盟にあたりまして御承知のような考え方の表明をいたしております。もとよりこの前文に忠実でなければならない。こういうように考えておりますが、この前文は、まあ八十七号自体とは、同じような表現はしておりますが、むしろ前文の方が精神でございます、八十七号のほうはこれの批准に伴いまして具体的の義務を生じるというような、そういう差はあろうと思いますが、いずれにいたしましてもそういうことを考えてすみやかに前進をいたしたいと考えております。
  12. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 八十七号の条約批准提案をいつ国会にするかということをまず私は返答してもらいたい。それからあとの問題に入りましょう。八十七号の条約をいつ国会批准手続政府はするか、一週間以内か、十日以内にするのかどうか、はっきり労働大臣からお答え願いたい。
  13. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 先刻来お答えいたしておりますごとくめどがつきますればもとより今お話のように、何日以内ということ等も申し上げられると思うのであります。そこまで至っておりませんので、総理の言われるごとく、できるだけすみやかにと、こういうことでございます。もとより今国会提出したいと考えておる次第であります。しかも、今国会においていつかということになれば、できるだけすみやかに、こういうことでございます。
  14. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 関連
  15. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 藤田君、よろしゅうございますか。——矢嶋君。
  16. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 総理に伺います。藤田委員が熱心に聞かれているわけですが、もう一二月十日ですよ。国会は後半戦に入っているんですよ。いまだにめどが立たないでどうするんですか。その点を藤田委員は追及しているんです。この通常国会の開会された早々であれば、できるだけ早く、あるいはめどが立ち次第、そういうことで了承できますよ。もうすでに衆議院予算案は通過して当院に回り、後半戦に入っているじゃないですか。この段階でまだめどがつき次第というようなことでは、藤田さんとしては下がれないと思うんですね。少なくとも一週間以内とか、あるいは長くとも十日以内とか、幾らかでも数字が入らなければ、この段階に入っては答弁になりませんよ。総理内閣を代表してお答え願います。
  17. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今お答えしたとおりで、政府といたしましては、今国会で議了いたすべく、いろいろ努力を今しているのであります。提出以前におきまして、関係法案内容その他また各方面の意向等を今検討いたしているのでございます。
  18. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この国会に議了するということを言われて、準備労働大臣総理大臣の話を聞いているとまだできていない、こうおっしゃるのです。しかし、この八十七号の問題が国会議論されたのはことしからじゃないのです。もう三年も四年もこの問題は国会のベースで議論されてからたっている。今時分まだ準備ができないなんということは、これは聞こえない話です。私が先ほどから申し上げていますように、公労法の四条三項と地公労法五条三項だけですよ、抵触するのは。結社の自由と団結権擁護というのはILO基本原則なんだから、この基本原則の何かにつけて、その精神にもとるようなものの考え方から工作しようというところに問題があるのじゃないですか。だからそのILOの八十七号条約を今時分まだ準備段階とかなんとかいうことは、私は聞こえない話だと思うんです。めどをつけたいというけれども、そのめどはそれじゃどういうことなんですか、めどとは。
  19. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 私は条約批准いたしたい、それにつきましては、これと関連する国内法整備を行ないたい、こういう表現をいたしております。藤田さんは今公労法地公労法だけをおあげになって、これだけやればいいんだとおっしゃるのでありますが、わが政府及び与党はそう考えておらないのであります。で、この条約と矛盾するものは除かなければならぬし、またこの条約精神をより徹底せしめるための国内法整備をしなければならぬというので、他にも考えているわけでございます。従来すでにそういう考え方のもとに法案提出等もいたしましたので、もとより藤田さんよく御存じのとおりでございまして、ところが私が今申し上げておりますように、案件を過去において提出いたしましたが、審議それ自体がなかなか進まない。先ほども申し上げましたように、入口でいろいろ論議されてそれ以上に進まないというようなことが今までしばしばありましたので、こういうことも関連いたしまして、今度出せば何とかうまくいくようなことに相ならぬか、進行するようなことに相ならぬかというような意味においてのめどでございまして、内容等について私ども考え方が固まっていないとかなんとか、そういうことではないわけでございます。国会審議関連してのことでございます。これも最初でございますれば出しさえすれば、あとは何とか相談ができるじゃないかというお考えもあろうかと思うのでありますが、過去の経緯にかんがみまして、同じようなことを幾度か繰り返すことはいかがかと、こういう意味でのめどでございます。
  20. 加瀬完

    加瀬完君 関連。それでは今の労働大臣の御説明によりますと、与党国内法整備結論が出なければ出せないということなのかどうか。それが一点。  それから、このように何年間も引きずって渋滞させていることによって国際的に非常に不信を買っておる。この点をどうお感じになっておるか、この二点。
  21. 福永健司

    国務大臣福永健司君) しばしばILOがああいうように言ってきておりますのに批准が進まないということにつきましては、私は非常に残念に思います。したがって、すみやかにこれの結末をつけたいと、こう考えておる次第でございます。  与党の内部において法案内容等について話がまとまらぬから出せないのかというお話でございますが、これはそういうことでないのでございまして、私は先ほども申し上げましたように、提出後の審議進捗等関連いたしまして、同じようなことを繰り返してはいけないので、先ほど総理お話にもありましたように、この審議結論を生むようなことを望みつつ、そういうことにするためにめどをつけなければならない、こういうことでございます。
  22. 藤田進

    藤田進君 関連総理に念のために、議事を進行させるためにも御答弁をいただきたいのですが、腹から、国際機関であるILO理事会わが国の今開かれているこの国会でその批准を望んでいるということの現実に立って、総理としては先ほどの御答弁のように、できるだけ早く国会提出をしたい、かつ提出したものはその批准を完了したいという趣旨であろうかと思うのであります。その点を再度念を押しておきます。もしそうであるとすれば、あと所管大臣である労働大臣が、これをすみやかに総理の意思を受け、内閣方針に従って提案するのが至当であろうと思う。ところが今聞いていると、事務的、技術的な問題、党内の折衝調整の問題ではなくして、それはすでに解決しているが、残っている問題はこの国会の中の、つまり国会対策上の問題が残っているように聞こえるのであります。しかしだれが、どんなしろうとが見ても、おそく出せばスムーズに早くこの批准案件なるものが議了するということは考えられない。一刻も早く出すほど私ども議会人としてはこの審議日程が立てやすい。こういうことは福永労働大臣は多年国会対策委員長もされていてわかっているはずです。おそく出すほどいいなどということはあり得ない話です。今の憲法上の百五十日の会期でさえもっと長くしたらいいというふうなことは、要するにこの議会日程が長いほどとりやすい、対策上もやりやすい。したがって、この後半に入っている国会としては、会期も残りわずかでありますから、すみやかに出すということは当然な話で、出す出すと言いながら結局議了し得ない時期に出して、そして関連する不当な法案、これとの抱き合わせで批准ができなかったという、議会責任を転嫁しようとしているようにしかとれない。この点について総理としてはどういうお考えか。事務的、技術的に完了しているが、国会対策上の問題としてなのか。明確に答弁をいただき、かつその上で、もう少し腹を割って——この議論というものは、その日に各国当該関係機関にも反映すると思う。国際信用はさらに失墜すると思う。大臣答弁は非常に重要であると私は思うのであります。もつとめどの立った、めどとはいつごろ——何月何日何時何分までは要らないけれども、いつごろ——ここ二、三日とかということは言明される必要がある。所管大臣がこれについてちゅうちょすべきではない。その点についてもっと明確に藤田委員は求めておるはずでありますから、お答えいただきたい。
  23. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 早く出せば早いほどいいという、これはまあきわめて素朴に考えればそう思います。私も当初そういう意味でできるだけ早く、すでに今までに提出したかったし、そういう主張もいたしましたので、これは正直に申し上げます。ただしかし、考えなければならないことは、これは最初の問題でないので、従来も出しましたけれども一向に進まなかった。たなざらしになったということがございましたので、今度もまた早くは出したが、結局たなざらしということになっては、これははなはだ望ましからぬということ等も考えまして、したがって、めどをつけなければならぬ、こういうことも同時に特に考えなければならない。ことに御承知のような事情で、すでにILOでも重ねてああいうようなことを言って参りましたこの段階においては、ますますもってぜひ仕上げをしなければならぬというようなことで、早く出せばいいということだけではないと思うのでございます。なかなかその辺のタイミングが、早く出し過ぎたために、また、たなざらしになった——もっと事前のいろいろの折衝等が必要であったんじゃないかというような過去の経緯等にかんがみても、いろいろの批判があるのでございます。その辺を苦慮いたしておるわけでございます。
  24. 亀田得治

    亀田得治君 委員長先ほどからのめどという、中身というものが少しも明白にされないわけですが、私がお聞きしたいのは、こういう段階まで来れば、やはり総理大臣のほうで一つの方針というものを明確に持つべきではないか。これは私の提案でありますが、公労法なり、地公労法関係は、これは矛盾する部分でありますから、これを直すということは当然であります。ILO批准を早くしろ、こういうことは再々勧告が来る。だれもこれは認めておる点——そういう完全に意見の一致しておるところだけをまず処理する、この腹をきめるべき段階ではないか。政府考え方を私たちは聞いております。政府考えでいけばそれだけでは足らない。しかし、その部分は与野党間において相当やはり議論の懸隔があるわけなんです。しかしこれは切り離して、あとから国内立法をやるということも、これはできるわけなんです。やれとは私は申し上げませんが、それくらいのことは、一方の国際的な関係というものを重く考えるならば決断を下すべきじゃないか。政府としては、残りの国内法部分について放棄することは、あるいはできないかもしれない。それはそれとして、保留しておって私はいいと思う、政府の立場からいくならば。だから、とりあえずきちっとまとまって、スムーズにやれるという部分だけやるというなら、これは簡単にいくわけですから、そこの決意を私はすべき段階だ、これは労働大臣だけではできない、総理がやはりそれこそ大所高所、内外の状況というものを大きく判断して決断を下す。そういう時期だと私は考えます。私は、具体的に今指摘してお尋ねするわけですが、それに対する総理のひとつ考え方をお聞きしたい。
  25. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この問題については、労働大臣も申しておりますとおり、地公労法、あるいは公労法だけではございません。私は国家公務員法地方公務員法も同時にやるべきだ、こういう信念に立っております。したがいまして、この前の、以前の国会におきましてこれが問題になった。これの取り扱いにつきましてやはり地固めと申しますか、いろいろ情勢等考え、そうしてめどがついてから、しかも早くその通過のめどをつけよう、つけてやれというふうに指示いたしておるのであります。あなたのように、ILOとあるいは公労法地公労法だけにやって、その他のものはあとにしろ、私はその方針をとらない、とらないから問題が起こるのであります。
  26. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ILO憲章から見ますと、その総会で条約がきめられる。で、このきめたという道義的責任日本が再加盟をしたときには、今日まできめられた条約勧告決議、これは何としても実現していくという制約のもとに再加盟が許されておるわけです。ですから、この今まで批准していないいろいろの問題についてはまず批准をする。それから先、一年以内の間に国内法整備するという手続がちゃんと憲章に書いてあるわけです。ですから、問題は、私はもうひとつ話を進めますなれば、ILOの八十七号を批准するけれども、今までの、結社の自由と団結権擁護原則にもどったような国内法を、輪をかけてまた国内法でその自由を縛っていこうというようなものの考え方政府にあるところに、第一問題があるのであって、この考え方をとらない限り、私は、この八十七号の批准というものを国際的な各国日本批准をいたしましたと言うてみたところで、中身は何にもないという結果に終わる。これならILOに参加しても、この憲章宣言を守っていくんだという制約とは違った方向で日本ILOと取り組んで、そういう考え方常任理事国の一員であるということは、なおさら恥ずかしいことである。こういうことが続く限りは他の問題に影響してくる。日本を見る目が、日本という国はそういう国か——だから、今問題に少し出てきているように、ガットの三十五条の問題まで議論の中に出てくるというのも、これに関連してきているということを政府によく考えていただかなければならぬと、私はそう思う。そういう意味において政府の、さらにこのILOとの取り組み、そうして八十七号を総理は今国会で議了すると言われましたけれども、片一方の労働大臣意見を聞くと、めどをつけるために一生懸命やっていると、めどがつかなければこの国会に出さないような口吻を漏らされる。これでは私はここで議論を、私が質問をして国民の前に明らかに政府の態度をしてもらいたいと思うても明らかにならないわけです。ですからその点の食い違い、それからもう一ぺんひとつ、いつ時分に出すかということを、はっきりしていただきたい。
  27. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 私は、総理の言ったことと全然食い違っておりません。総理が今国会に出すということを言われたのは、私にとってもたいへんいいことを言ってくれたと、こう思っておるのであります。しかも、今国会において仕上げるということと関連しては、できるだけ早いにこしたことはありませんけれども先ほどから申し上げるように、また重ねてたなざらしになるようなことになってはいかぬということと、あわせ考えておるから、先刻来の表現になるわけでございます。
  28. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 肝心なところに来ると、そのめどがつくまでとか、はっきりしてこない。最終のところは、おおまかにこの国会で議了する考えだということなんですけれども、それならもうきょうは三月十日なんですから、いつ出すかということをはっきりしなければ、この問題は議論できないじゃないですか。
  29. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 先刻来申し上げておりまするような事情によりまして、いつということは申し上げるわけには参らないのでございます。いつということは申し上げられませんけれども、しかしおのずから限界があるのであります。今国会出しますと言っておりますし、今国会で成立をさせたい、こういうことでございますから、そこらからわれわれといたしましては、まあただいま懸命の努力をいたしておる、こういうことでございます。決して、いいかげんにこれを、漸次あとに送っていってやるというような事態ではございません。
  30. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ちょっと、そのいっこの国会で、わかっているじゃないかというような言い方では私はわからぬから、もう日は幾ばくもないから、おおまかにいつ出すということを答えて下さい。労働大臣政府で相談して答えて下さいよ、総理と。
  31. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 私は、できるだけ早く出したい一念でございます。しかし先刻来申し上げておりまするように、過去の経緯にもかんがみまして、政府与党間で完全に意見の調整もしておかなければならぬし、また与党国会対策的考慮からいたしまして決心をいたしまするには、国会全体の運営からいっての見通しもつけていかなければならない。これは政府といたしましても無視するわけに参らないのであります。そういう点から何日までということが、まあはっきりは言えないのであります。できるだけ早くと、こういうふうに考えております。
  32. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 藤田君、これ以上押し問答いたしましても、どうも限界がきているように思うのですが。政府答弁最初から一貫しておりますから、それ以上お尋ねになりましても、あれ以上の答弁は得られないと私は思いますので、他の質問にお移りになったらいかがでしょうか。
  33. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連委員長は、ただいまこれ以上質疑を重ねても同じことを繰り返すにすぎないから進行しないじゃないかと言われましたが、私はそうじゃないと思うのです。まだ納得のいかない点がどうしてもあるわけです。というのは政府はなるべく早く出したいと言っておるわけです。しかし、それにもかかわらず、いつごろという時期について明言できない理由がはっきりしないのです。そのめどと言われますのは、さっき総理は、国家公務員法あるいは地方公務員法についても改正しなければならぬ。そこに問題があって、その点のどういうところを、どういうふうにしようというので、おそらく問題がはっきりしないのじゃないかと思うのです。ですからもっと具体的に、めどがつかないという、まだついてないというのは、どこのところのめどがつかないかという、もう少し具体的に説明されなければ、納得がつかないわけです、われわれとしては。ですからお伺いしたいことは、もうすでに各委員も指摘いたしましたように、早く出すといっても、また今国会で議了するといいましても、もうすでに会期も幾ばくもないのでありますから、そこで、幾日ごろという時期について明言できない具体的な理由ですね。ただばく然と国会運営上ということだけでは納得いかないのです。ですからもう少し具体的に、どうして明言できないか、その理由を具体的に御説明願いたい。そうしませんと、これは水かけ論になってしまうわけですから。そこのところがまだ解明されてないと思うのです。これを具体的に解明されなければ納得できないわけです。
  34. 福永健司

    国務大臣福永健司君) よく御存じになった上で御質問になっていらっしゃるのでありますが、具体的にと申しましても、この種のことは党内でも非常に重大問題といたしまして、内容的にはすでに結論に達しておるのであります。ただそういうことではありますが、そういう姿のままで過去において提案いたしました結果審議が進まなかった。審議の方法等についても、特別委員会をどうするとかどうとかというようなこと等で、これは政府の関与するところではございませんけれども国会でそういうことを御協議になるのに過去においては御承知のようなことでございます。したがって、今具体的にと申されましても、どの法案について内容的にどうというようなことは、これはもう私どもは申せないわけでございます。申し上げられることは、すでにそれもきまっておるのではありますが、しかし、そうではありまするけれども、そのままで出していけば過去にああいうことであったが、それでいいかという問題がある。したがって、きわめて具体的でないようでありますが、これはもう考えようによっては非常にはっきりしておる。どうぞよく御存じの上でお聞きになっておるのですから、この辺で御了承いただきたい。
  35. 藤田進

    藤田進君 関連して。労働大臣はなかなか良心的なところがあるものだから、質問があるたびにしどろもどろになっているわけですが、少なくともあなた自身の御発言で、速記をとるまでもなく、まあそうは言っても、限界がありますということを先ほど言われた、そうでしょう。五月七日、限界があるとあなたは思っておる。だから、私はあなたの腹の中には限界というものを予想しながら一つの目標を立てて努力をされるはずであります。努力目標があるはずです、そういう問題、何かあるとするならば。言葉をかえて言いますが、あなたはこの会期中に出す、しかもすみやかに総理の命によって出すということについては、所管大臣としていつごろまでを目途に努力をする、今よくわからないけれども、言われている諸般の調整が要るならばいつごろまでにこの努力を実らせたい、その努力目標はあるはずです。あなたは限界という言葉でその限界線を明らかにしておられるわけです。その努力目標についてでもまずお答えをいただいて、そうして質問がスムーズに先に進めるように協力をいただきたい。
  36. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 私の本来の考え方は、もう今国会傍頭に出したかったのであります。しかし、先ほどから申し上げておりますようなことで、仕上げということと関連いたしますと、単に早く出すことのみがいいかどうかということには確かに疑義があるのであります。そこで今度のILO理事会でああいうことがきまりまして、さらにわがほうへ申し越しがあったのであります。この時点において考えますと、私は先ほどから重ねて申し上げておりまするとおり、ぜひ仕上げをしたい。そこでその仕上げ関連してただ出せばいいということではないという意味から申しますと、何日までということはなかなかむずかしいのです。努力目標は先ほどからおっしゃいますように、これは一日も早くということでございまして、何日までということを私がここで申しますと、かえって事がなかなかうまくいかないのです。これは実際はそういう意味なんです。そこでせっかくのお言葉ではございますが、私はいいかげんにここで申し上げておるのではない。早く出して進めようということについてはほんとうに一生懸命でございまして、そういうようなことにまだなっていないことを残念に思う点においては、また両藤田さんを初めとして先ほどからいろいろ御発言なさいました皆さんと変わりはないのでございます。一生懸命ひとつ努力いたしますから、何日までという目標につきましては、先ほども申し上げておりますとおり、総理は今国会出して今国会に結末をつけたい——それにはそう国会が終わるまぎわではとてもだめなんであります。だからそこに良識的に考えまして限界があろう。どうぞひとつその辺で御了承いただきたい。(「了解々々」と呼ぶ者あり)
  37. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうも私は今のようなことではどうももひとつすっきりしない。だから私は、これはどうも納得がいかないので前に進めることはできませんから、ひとつ理事会で相談してもらって、その結末を明らかにしていただいて、次の質問を進めたいと思います。
  38. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 藤田君、ちょっと申し上げますが、どうも先ほども申し上げましたように、政府側におきましては最初から一貫して、いつ幾日ということはこの際としては明言できない、しかし、最善の努力をして今国会に通過するように努力したい、こういう御答弁でありまして、理事会で協議をいたしましても、今のこのいつ幾日ということを明確に答弁をさせるということはちょっと私は困難なことだと思うのですが、やはりその程度で御了解なさって、政府側が一生懸命やろう、こういう点は私は非常に誠意のある点だと思いますので、その意味においてひとつ他の質問にお移りになったらいかがでしょうか。
  39. 加瀬完

    加瀬完君 議事進行。そうおっしゃいますが、できるだけ早く出すとおっしゃるのだから、それならば会期の最終はいつときまっておるのだから、早ければ何日ごろ、おそくとも何日ごろには出さなければならないという見当は政府自身においてついておるはずなんです。ですから具体的に聞きますが、三月二十日までにお出しになりますか、おそくとも三月一ぱいにはお出しになるお考えがございますか。進行上このことを伺います。(「委員長」と呼ぶ者あり)
  40. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 答弁を聞きましてから許します。福永労働大臣
  41. 福永健司

    国務大臣福永健司君) これはまあ政府が争ういうことを考えておるとか、私がそういうことを考えておるとかいうことじゃございませんけれども、たとえば先ほどから藤田さんがおっしゃるような条約公労法地公労法だけでということになりまするならば、これはあまり日数は要らないということにもなるかと思います。これは仮定の問題。しかし、政府及び与党が一貫して申し上げておりますることは、そういうわけではない。国家公務員法地方公務員法等についても、このILO八十七号条約の趣旨を徹底せしめるために改正を行なう、こういうことなんです。したがって、どれだけの法案をどういうようにして出すかということによって、審議日数と関連して、これはまあかなりの違いが生じてくるわけでございます。そういうことでまあ先ほどから申し上げておりまするように、政府与党考え方は一貫しておりまするけれども、それにしても過去においてああいう経緯があるし、このままの方法で従来どおりのことではまた同じことを繰り返さないかということで、これは何度も申し上げて恐縮でございますが、政府与党大いに苦慮いたしております。こういうことです。したがって、先ほどから申し上げておりまするように、今の考え方で参りまする限りにおいては、そんなに会期末にというわけには参らない、こういうふうに私は思うのであります。話が変われば別でございますが、これはしかしそういうことを私が望んでいるとかいうことを示唆するのでは決してございません。念のために重ねて申し上げておきますが、政府与党考え方は変わっていないのでありまするけれども、いろいろそういうことを考えますので、何日までということをはっきり申し上げることができないことはぜひひとつ御了承をいただきたいと思います。
  42. 一松定吉

    ○一松定吉君 議事進行。社会党の諸君の御質問を承っておりますと、社会党の諸君のお立場からすれば、なるほどごもっともであろうとは私考えますけれども、しかしながら、総理答弁労働大臣答弁を聞いてみると、あるいろいろな条件があるんだ、その条件が成就するという見込みが十分に立てば、なるたけ早く出すんだ、しかしながら、その条件が十分に成就しないとあれば、今、何日にこれを提案するということはここで言明ができないということであれば、その程度でもう私は御理解ができなければならぬと思う。それ以上のことを言えというのは不能を責めるということであって、そういうようなことをもって追及して、そうして答弁ができないということであればどうなさるのですか。あるいは政府に不信任を出すなり、労働大臣の不信任をするなり、ほかに方法はありましょうが、政府が、これ以上答弁はできません、私の考えはかようかようでありますといえば、もうその程度でひとつ社会党の諸君も御理解賜わりませんと、それ以上、どうしても言えないことを無理に言えということは、それは不能をせいということになるから、その点はひとつ十分に御理解の上で、議事の進行を円満にやっていただくことが私はいいと思う。これ以上幾らやったって、答弁ができないということになれば、どうなさるのですか。それ以上は不信任の決議をするほか道がないでしょう。それをしいて——しいてということは、私どもは議事進行の立場から、はなはだこれを黙視するわけに参りませんから、私は自分の所感を申し上げて、皆様のひとつ御反省を求めたいと思うのです。
  43. 藤田進

    藤田進君 一松さんの議事進行に関して……。
  44. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 議事進行ですか。藤田君。
  45. 藤田進

    藤田進君 議事進行。前段、もっとものように一松さんの議事進行を承ったのですが、私どもが申し上げているのは、無理を申し上げているのじゃないのです。総理内閣を代表せられまして本国会出しますと言明されておりますことは、御承知のとおり。一松先生言われるように、ある条件が解決すれば出します、解決しなければ出せません、こういう総理の御答弁であるならば、これはまた場合が違うと思う。出すことがきめられていることはお聞きのとおりであります。出すことをきめられている以上、およそいつごろまでには出すように努力したいということが、われわれ議会人としては審議日程等の関係もあり、それを迫って御答弁をいただくことは決して無理はない。これを、努力目標も持たないで、漫然と与党か、あるいは閣内の事情か、そういうものの調整をはかってみたい——しかし、総理答弁が間違いないとするならば、この国会に出すという限界がある以上、一つの目標がなければならぬはずです。出せるか出せないかはその条件の解決次第だという答弁ならば、これはまた別です。そうではないのでありますから、どうかひとつ私どもの無理のないところは内閣におかれても御考慮いただきたい。  なお、これ以上どうしようとするのかというお問い、もっともだと思うのでありますが、私どもとしては、ただいまのこの審議を聞きまして、感ずることは、たとえば所管大臣である福永労働大臣が言われるのに、総理が今国会に出すということを言ってくれたことは非常に自分としてはありがたいと思う、今総理が出すということを言明されたのは初めてであり、かつそれが所管大臣としてはよかったというふうに受け取っているのです。だとするならば、今この席で総理が言明されているとするならば、閣内もはたしていつごろまでにどうというところまでの御相談は、そこまではいっていないようにも感ずるので、ここで若干時間をお与えして、しからばこの問いに対して、いつごろまでに努力してみようというようなことも、総理あるいは労働大臣間、あるいは閣僚間に御相談をなすってしかるべきじゃないだろうかというような、ちゃんと時間もお与えしてお答えできるようなゆとりを私どもは持ちたい、かように思っておるわけでございますので、御了解いただきたい。
  46. 湯澤三千男

  47. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 今、藤田さんが、総理がそういうように言ってくれてありがたいというように私が申し上げました、ということ、そのとおりでございます。しかし、これは別にきまってなかった方針が急にきまったとか、従来の方針が変わったというのではなくて、従来一貫して政府はそういう考え方できておるのでありますが、しかし、ILOでああいう考え方の重ねての採択があり、また、皆さんから強いこういう御意見が重ね重ねありますその上において、それを拝聴いたし、また、ジュネーブの事情を理解した上で、さらに総理がこう言われたということは、従来言っておりますことと同じではありますけれども、私にとりましては、たいへんありがたい、こういうことなんです。したがって、急に政府方針が変わったとかあるいは今まで言っていないことを初めてというようなことをおっしゃいました。確かにあのILO理事会以来は初めてであります。そういう意味において、私は非常にありがたいと考えておるのであります。そういう気持で、皆さんから重ね重ね言われております点について、私は揮身の努力をいたしたいと思います。(「努力目標から言いなさい」と呼ぶ者あり)目標はできるだけすみやかにということでさっきから何べんも申し上げて恐縮でございますが申し上げられないのであります。
  48. 一松定吉

    ○一松定吉君 私の発言に対しまして、藤田君から御意見がございました。私、今の藤田君の御発言を承っていますと、出すことは出す、それならいつ出すかということがきまらなければならぬじゃないかという——それは不能です。条件がいつ成就するか不明であるから、何月何日に出すということは言えない一これは当然の理論です。それならば、今、総理大臣なり、労働大臣がいつ出すということを言えば、想像の日を言うだけで、想像の日を言うて、後日、お前方、こういうことを言ったではないかと言って、また責めるようなことがあっては、それではどうも何日に出すという想像が何も意味をなさないことになる。ですから、確定をするについては、条件が成就したならば早急に出す、これで十分なんだから、それ以上に何月の何日に出すということの、想像を言わせるということは、想像で聞くということならば、政府答弁も別の考えがありましょうけれども、想像ではないでしょう。あなた方の聞くのはいつ出すかということを確定的に言明せよということであれば、条件が成就しない今日においては、その確定的な言明はできないということが、いわゆる総理なり、労働大臣意見であるならば、その程度で十分御理解にならなければならぬじゃないか。それを確定的に言えということは、条件の成就することが未定であるときに確定的に言えということは言えない、不能でしょう。不能を責めるということはよくないから、その点はひとつ、社会党の諸君の意思はよくわかりますけれども、十分に御理解の上、議事進行をはかりたい、これが私の意見です。
  49. 加瀬完

    加瀬完君 議事通行。一松先生のお話はよくわかるのですけれども、ちょっと前提をはっきりさせなければならないと思うのです。勧告を受けているわけですね。ですから、与野党の利害関係とか、政府の面子とかいうことでなくて、国際的信用を維持するために出さなければならない、こういう場に追い詰められているわけです。しかし、総理は早急に出すとおっしゃるけれども国会もだんだん会期末に追い詰められている。しかしながら、この国会中にこれを成立させなかったならば、国際的信用はゼロになる。政府も大きな不信用になるし、日本全体の国際的信頼をも失うことになる。ですから、いつごろという目途をつけておっしゃっていただかないと不安だし困る。そういう点を申し上げているわけです。(「議事進行」と呼ぶ者あり)
  50. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) ちょっとお待ち下さい。議事進行について委員長の見解を申し上げたいと思います。  政府の御答弁を伺い、また、皆さんの御質問を伺いまして私の感じまするところは、政府は今国会中に出したい、また、その出したいということは、通過をはかり得る目的を持って出したいと、ただ出せばいいというようなことではない、こう私は承っております。しかして、その時期を非常に皆さんがお問いになるのでありますが、それは政府側におきましては、この条約関連する国内法の調整をできるだけ早く整えてそうして出したいと。つまり努力目標というふうなお問いがございましたが、その点は国内法の調整を整えて、そうしてできるかできないかというような考え方ではなく、これを整えて、そうして今国会にこの条約提出いたしたい、こういうことでございますから、大局から申しまするならば、この条約の通過し得る期間を眼中に置いて努力しておる、こういうふうに私は考えてよいと思うので、この辺でひとつこの質疑の意味は御了解を願って、他の質問にお移りになったらいかがでございましょうか。(「議事進行」「必要なし」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  皆さんにちょっと申し上げますが、すでに御意見のあるところは十分にわかったと私は思うのであります。でありますから、これ以上論じましても同じことを繰り返すにすぎないと思いますから、藤田さんにひとつ先にお進みを願ったらいかがでしょうか。
  51. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 委員長の発言について。議事進行について。
  52. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 矢嶋君は、私の今の発言に対するお尋ねによって議事を進行さしていきたい、こういうようなお考えのようですからお述べ下さい。
  53. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 先輩に言葉を返すわけじゃないのですが、普通の場合ならば一松委員がおっしゃるとおりだと思うのです。これは私は、答弁できませんと言ってもそれは答弁になるのですから、それはけっこうだと思うのです。しかし、今起こっておる問題は、これは与野党の問題じゃないと私は思うのです。日本国会が行政府に対してどういうように対処していくかということは、このニュースというものはジュネーブに届くわけですから、ILOの問題の経過——ごく最近に労働大臣から言われたように、理事会が意思表示をされたその経過から、少なくとも本日のこの委員会では、私は内閣は、行政府は立法府の構成員である藤田さんの質問に対して、少なくとも一歩前進したなと、あの理事会の意思表示は日本政府に影響したなというように印象づけられる程度の答弁が出なければ、日本内閣内閣だが、一体日本の立法府はどういう考えであるかと、こういうことになってくると私は思うのです。それでまあ委員長はああおっしゃいますが、それはなんですよ、気持はどうかわかりませんが、答弁に関する限りは前進しておりませんよ。できるだけ早く成立さしたいというのは、過去数年来と同じで前進しておりません。  そこで委員長にお伺いいたしたいことは、日本国の国権の最高機関のこの委員会で、藤田委員の質問であれだけしか出ていない。それで立法府は行政府に対してそれでいいという、立法府としての決定はそれでいいのか、はたしてこの問題は、経過からいって。ですから私は藤田委員から、ちょっとお休みになって協議して、前進した答弁がいただきたいという要求があれば、私は湯澤委員長としては、もう少し前進した御答弁はできませんか、二、三分相談していただきたいと、かようにとられるのが委員長として適正じゃないか、かように思いますので、議事進行として申し上げます。
  54. 湯澤三千男

  55. 福永健司

    国務大臣福永健司君) ただいまのお話を伺いまして、私は重ね重ね申し上げるようではございますが、決して前進していないというのではないと思うのでございます。御注意もございましたので、そういうことを念頭に置いてさらに私から申し上げたいと存じます。  従来の経緯もあり、ことに今回のILO理事会においてああいう決定がなされたことにかんがみまして、より一そうの努力をしたいし、その努力につきましては、先刻来、総理大臣及び私が申し上げているとおりでありますが、私どもは、今度の理事会の決定につきましては、大いに関心を持ち、この決定に対して私どもがおのずから何をしなければならぬかということは、強く感ずるところがある次第でございます。さような点を申し上げて、ぜひ御了解をいただきたいと存ずる次第であります。
  56. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 私から矢嶋君のお話に対しましてお答え申し上げますが、私は、大局的に見まして、政府側といたしましては、十分にこの案件が通過する見込みをもってこの国会提案をいたしたい、こういうようなことでございまするから、はっきりいつ幾日と言わないでも、大局的に見まして政府の意のあるところは十分了承できると私は思いますので、まずこの程度にして、この質疑はこれをとどめて、藤田君に申し上げますが、他の質疑にお移り願いたいと思います。
  57. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 会期が五月七日にきまっているわけですね。きょうは三月の十日なんです。出すと言われますけれども審議というのは、これくらいの重要法案でありますから、私は非常に簡単だと思っておりますけれども先ほどから御意見伺っていると、いかにも重要な法案のように政府は言われているわけです。そうなってくると、出すという、今日三月十日だのにめどがつかないということでは困りますから、それで大体いつ時分に出すぐらいの目標、審議期間はどれくらい置く決意があるくらいのことは、おっしゃっていいのではないか。それを私は言っているのです。それが明確でありませんから、ひとつ先ほど申し上げたように、理事の人が集まっていただいて、相談をしていただいて、この問題の結論をつけていただいたらどうかということを私は申し上げたのでありますから、ただ出すと言っても、会期の終末がきまっているのに、ただ出したいということだけじゃ話のつかない問題でありますから、重ねて労働大臣は、そういうものを含めて、いつ時分目標ということの限界。——審議は、政府考えておられるようなことを聞けば重要な案件になりそうですから、それなら幾ら幾らの審議期間を必要として出すなら出すということを目標にしているということをひとつお答え願いたい。
  58. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 藤田君、私の意見を重ねて申し上げますが、政府側といたしましては、皆さんの、ことに社会党の諸君の熱意のある御質疑です。いつ出せるかということについては、つまりなるべく早くこの案件を片づけたい、こういう御熱意のある点は、よく政府側も了解されたところと存じますので、私は今、あなたの御質問がありましたから労働大臣に御答弁願いますけれども、御答弁ができましたら、ひとつ他の案件に御質疑を移していただきたい。こう存じます。
  59. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 私は、終始一貫すみやかにということを考えてきておりますし、今もそうでございます。今もそうというより、むしろ先ほどから御注意いただきましたように、ILOでああいう決定が重ねてなされた以上、さらにそうである、こういうように申し上げるのが当然でございますし、私はそう考えております。ただ、私がそう考えております感じからいたしまして、いつ出しますと申しましても、これだけではいけない。内閣の確たる方針等も一緒にそう考えて、そうしなければならぬ、こういうことなんでございますから、そこで私はこの点について、慎重を期しての答弁を申し上げているわけでございます。しかし、先ほどからのいろいろの御論議もあり、ことに一昨日のILOの決定もございますので、この段階においてさらに一そう最善の努力をいたし、できるだけすみやかに提出いたしたいと存じます。どうぞ御了承いただきたいと思います。
  60. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それだけですか。ちょっと委員長、相談ですがね、こういう状態なんですよ。委員長のお気持はよくわかります。よくわかりますけれども会期末がきまっておって、私がさっきから主張しておりますように、この問題は、条約批准公労法四条三項と、地公労法五条三項だけ除けばいいと私たちは考えております。そうなれば非常に簡単なんです。しかし、先ほど総理その他からのお答えを聞きますと、そうでもないようでございますから、そんな重要な法案ですと、それは二カ月ないのですから、いまだにいつ出すかのめどがきまらないということでは、私は非常に問題があるのじゃないかということを申し上げているのですね。だから、そういうところを、私は今後の手続として、この予算委員会の進行について、それじゃ、いつ時分にこの問題を明らかにするとか、なんとかいうことは、議事の運営は、理事会理事でやるのですから、そこは相談していただいたらどうですか。そうすれば私は次に入りたい。私はこう思うのです。
  61. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 藤田君に申し上げますが、私はさっきから皆さんのお話を承っておりますと、つまり大体質問と、それから答弁の限界が来ているように思っております。ことに政府は誠意をもって、皆さんの御意見をよく承って、ことに労働大臣も今回のILOの総会の決定にもかんがみて、ぜひ今国会提案し、通過させたい、こういう熱意がございますのですから、それを了として、ひとつ藤田さん、先にお進み願いたいと思います。
  62. 藤田進

    藤田進君 ちょっと議事進行について。藤田委員としては、この席でそのお答えを求めたいという熱意のようでありますが、しかし、この状況を見ておりますと、議事進行の声もありますので、次のように政府のお約束というか、御答弁がいただければ、他の質問に質問者も入っていただきたいように私は思うのです。それはこの総括質問、あとまだ若干、日ございますので、この総括質問が終わります日までに、およそのめどを立てられてお答えをいただくようにぜひひとつ御努力をいただきたい。そういうことでこれにつきまして保留をいたしまして、それまで他の質問を進めて参りたい、かように思います。
  63. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 藤田君の御意見は何ですか、総括質問はまだおしまいのほうにもあるわけですね。
  64. 藤田進

    藤田進君 終わるまでに、いつごろまでに出せるというめどをつけるように努力していただきたい。そしてお答えをそのときにいただきたい。
  65. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) そういうことで本日は他の質疑に移る、政府側、いかがですか。総理大臣
  66. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 総括質問というのは、十二、三日のそれまでにめどをつけるように努力はいたします。めどがつくかつかないかはわかりません。そうしないと、はっきりしておかないとなんだから、ともかく私は正直に申しまして、一日も早くめどをつけて出したい。これで私は国民はおわかりいただけると思います。めどをつけるように努力するというのなら、今も努力しておるのでございますので、どうぞ、そういうふうに……。
  67. 藤田進

    藤田進君 今の答弁は、今の趣旨がどうも徹底していないので……。ほかの質問にも入りますので、まだ数日あるから、その際の質問者があるいは藤田君ではないかと思いますが、お尋ねしたときには、めどがいつごろだというふうにお答えができるようにですね、努力をしてもらいたい。努力は今もしておるんだから、そんなことは、ということのようにも聞こえるわけでございますから、重ねてその際にはお答えができるように努力をしていただく。その結果、そのときの御答弁があると思います。
  68. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 藤田君の御発言は、別に政府側答弁を要求するわけじゃない。あなたの御希望を述べられたことは、よく政府は了承されたと思いますから。
  69. 藤田進

    藤田進君 政府答弁を聞いておきましょう。
  70. 湯澤三千男

  71. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 今いろいろ促進についての御意見があったわけでありますが、努力をしろというお話でございます。これは十分努力をさせていただきます。そして先ほどのようなことで、めどについで一そうの努力をいたすわけでございますが、明確にお答えできれば、これは私最もいいと思いますが、まあひとつ一生懸命努力させていただきますから、よろしく。
  72. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そういうことで政府努力をして結論を出すということでございますから、それじゃ、皆さん方の御意向に従いまして、私は質問を進めたいと思います。  これに関連して外務大臣に一言お聞きしておきたいと思うのです。外務大臣はこのILO出先機関会議には、外務省出先がみな出ておられるわけでございます。今度のように十回も八十七号については約束をしておって、まだものになっていないというようなことで、その出先は非常に困っておられるのじゃないかと私は思うのです。ですから、外務大臣としては、このような労働関係ILO会議に出る前には、どういうことなんだ。それからどういう認識でこの会議に臨ましているか。今度の問題について、出先はどういう工合にあなたに報告をしているか。このような点をお聞きしたいのであります。なぜ私はこういうことをお聞きするかといいますと、ILO審議を始めましたのは昭和三十三年でございます。当時外務省出先の代表に来ていただいて、私はILOに対する認識を質疑をしてみたわけでありますけれども会議に出ておられる主体者である外務省ILOに対する認識がてんとないということを私は伺っておる。ですから、外務省はこのような形で出先国際会議に臨んでおられるということは非常に残念だと思いますから、今どうやっておるということを外務大臣から明らかにしておいていただきたい。
  73. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今度の勧告は、御承知のように、ディスアポイントメントを再びアファームするということでございます。これはここにおいて文書として言われておるのですが、九回の機会において何か八十七号条約批准約束したと思われるものがございます。今回のものは十回目ですが、これをどうするかということについては、先ほど総理大臣の御答弁関連して考えられるわけでございますが、今まで九回、一九五九年の間に三回、一九六〇年に三回、一九六一年に三回あったのでありまして、九回と思います。そこで、私どものほうのジュネーブにおりまする青木公使をILO理事者にしておるわけでございます。御承知のように、労働省からも専門の方が来ておられますし、それからイギリス、ドイツからも来ておるわけであります。もとより私もかつて労働関係の役所におりましたのでございますし、十分ILOの目的その他については承知しておるつもりでございます。青木公使においても、十分ILOの目的また理念、また、その中において寄与すべきわが国の立場というものについては十分承知をいたして、熱心に仕事をやっておる、こう私は考えております。
  74. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それではもう一つ、外務大臣にお尋ねしたいのですが、このような問題がILO理事会で非常に議論になって、そして十回も政府約束しながら、会議のたびに日本だけが保留とかなんとかいう態度でやっているということで、ガットの三十五条援用の問題にまで発展しているという議論になっているわけです。こういう格好で、その外交がほんとうに進められるのかどうか。今日、経済外交だといわれている外務省としては、こういう格好で実際にやっていけるのかどうか。国内でどうこの問題について努力されているのか。
  75. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) かつてILO結社の自由委員会の勧告の中に、労働権の侵害をやっておる事実があると認められるというような、非常に手きびしい勧告を受けた国がありますことは、藤田委員承知のとおりであります。これは三つの国がそういう勧告を受けております。それから見ますれば、今度のディスアポイントメントを表明するということは、若干軽いかもしれませんけれども、決していいことではございません。それで私どもはそういうことにもかんがみまして、何とか総理大臣も言われたように、早く八十七号条約批准を完了したい、こういうことで考えておるわけでございますが、総理大臣も言われたように、国内法との関係もございまして、公労法あるいは地公労法のみならず、国家公務員法あるいは地方公務員法とか、あるいは他にもあるような意見もあるようなわけでございますし、それらの調整を早くつけて出したいという気持は、私宅、外交関係を見る者からしても、同様なことを考えておるわけであります。
  76. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それでは他の問題に移りたいと思うのでありますが、第一の問題は、総理の御意見を聞きたいのであります。政府はこの高度経済成長と所得倍増を進めておいでになります。ところが、この前も議論したと思っておりますが、生産と消費のバランスをとっていくということ、これが、景気変動をなくして、そして国民生活を引き上げるということが経済発展の基礎である、私はそういう工合に思うわけでございます。総理もそういう御見解を発表されたことがあると思っているのでありますけれども日本の今の現状を見てみますと、生産指数は急角度に上がっております。そしてその基礎をなしているものは、何といってもここ二、三年の設備投資の問題、こういうもので設備拡大が行なわれて、主として日本の経済の発展していく中心というのは、大企業を中心に発展をしていくという格好になっていると思うのであります。そこで、池田総理としては、生産と消費のバランスをとりながら、日本の経済を発展させていくというものの考え方、今日の現状についてどう理解をされておられるか。また、具体的な面にもお聞きしたいのでありますが、たとえば今年の設備投資はどのくらい予想されているのでありましょうか、こういう点についてお聞きしたい。
  77. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 高度成長下におきましても、生産と消費はバランスをして、そして国際収支が健全であるということ、この三つを組み合わせていかなければいかぬと思います。最近の設備投資は、御承知のとおり、非常に旺盛でございまして、三十六年度のなんかほっておきますと四兆円くらいになりそうだというので、実は押えて三兆七千数百億円と見込んでおるのであります。今年は大体横ばいか、ちょっとくらいそれより低目にしたいという考えでございます。
  78. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そういたしますと、池田総理としては、今のような経済の中で生産と消費のバランスがとれていると、こういう工合にお考えですか。
  79. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) むずかしい問題でございますが、ちょっと去年のような状況では消費の伸びが早過ぎる。これは絶対的によその国に比べて消費が多いかといったら、そうではございません。よその国よりも、消費は先進国よりは割合に少のうございますが、伸び方が非常に大きい、生産の伸びより。国民所得の伸びとほとんど同じような消費の伸びがある。片っ方では設備投資があるということになりますと、設備投資を押えながら、そしてまた個人消費のほうもある程度の伸びを、たとえば一四%をこえるような伸びを八%くらいに押えてしかるべきじゃないか、こういう気持でおります。
  80. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 まあそういう概念論じゃなしに、具体的な問題で私はお聞きしていきたいと思うのです。そしてことしの予算の面から見て、中小企業がどうなっていくか、どういう状態にあるかという問題について、総理の御意見をお聞かせいただきたいのでありますが、ことしの予算は、昨年に比べて二四・三%という財政的には膨脹予算をとられた。しかし、金融では引き締めをやって、そしてその金融の引き締めの影響はどこへ来ているかというと、中小企業がその犠牲になっている、こういう工合に、それがまた昨年の十月ごろから急角度に中小企業で倒産や不渡手形の数がふえてきている。金詰まり、そして非常な中小企業自身は深刻な状態に追い込まれていると私は思うのであります。ですから、これに対する手当をどうしておられるか。今後中小企業が今のような金詰まりの中で事態を進められるとすれば、中小企業はどういう工合になっていくか、これをお聞かせ願いたい。
  81. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 高度成長下における急激な引き締め政策が中小企業にしわの寄ることは皆御承知のとおりでございます。しかし、こういうことは、政府はそのしわの寄るのをできるだけ寄らないように、また、寄っても少なくしよう。緊急措置をとりますと同時に、中小企業対策をやったのであります。年末の特別融資の問題、そしてまた金利を引き上げましても中小企業の金利は引き上げない。政府の資金のみならず、金融機関の資金も中小企業向けを確保する、こういうふうにいたしております。それで一体に大銀行あるいは地方銀行にいたしましても、貸し出しの全体における中小企業への貸し出しは従来よりも相当割合がふえております。ことにまた最近では中小企業相手の相互銀行とか、信用金庫の預金のふえようは、都市銀行よりうんと上でございまして、私は年末危機とか、あるいは一−三月危機とかいっておられますが、しかし、これはうまく切り抜けたのであります。九月、十月ごろはちょっと不渡手形も多いようでございましたが、十一月、十二月、一月には、十月ごろの不渡手形に比べまして非常に少なくなっております。二月はある自動車製造会社の整理がございましたのでふえておりますが、傾向としては、十月ごろをピークにしまして、十一、十二、一、二と不渡手形が漸減しておるという状況にあるのであります。
  82. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうも、今の総理の、不渡手形が少のうなっているというような統計は、出てきていないわけであります。「中小企業の現状」という報告を見ましても、むしろ中小企業の現状というのは、非常な金詰まりで、去年の三月、七月、十月という工合に調べているのを見ると、非常に深刻になっているという報告がされているわけでありますから、今の総理のお答えは少しどうも理解ができない。通産大臣にその現状をお聞かせいただきたいと思います。  それからもう一つつけ加えて、私はこの前通産大臣に質疑をいたしましたときに——中小企業の金融機関は中小企業金融公庫でございますが、この中小企業金融公庫が千五百億も融資しておって、そして代理貸しが千二百億だ、この代理貸しのところに三分二厘の手数料を与えながら、市中銀行から中小企業が借りる金というのは、それにつけ加わって実質的には九分三厘ですかの——利子が五割増しとか、倍以上で中小企業の手に金融がされているという実態があるわけであります。ですから、政府がせっかくやるとするならば、直接貸しの制度を早急にとらなければ、今のような悪弊というものは続くわけであります。これを質問いたしましたところが、十分のお答えがなかったわけでありますから、これとあわせてお聞かせ願いたい。
  83. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) ただいま総理がお答えになりましたように、不渡手形をどこで押えるか。昨年の十月、十一月、これがピークでございまして、十二月以降やや減少しております。その数字を申しますと、東京については、十月は、枚数にいたしまして六万五千枚、金額にして七十八億五千万円、十一月が、枚数にいたしまして六万五千七百枚、金額は八十億六千万円、十二月は五万七千四百枚、金額が七十三億七千万円、一月は五万五千五百枚、六十四億四千万円、こういうように金額なりその他が減っております。これは、御承知のように、年末金融に対しまして政府が特別な処置をとりました。そういう事柄が好影響をもたらして、むしろ中小企業は、心配されました年末の状況は、比較的大きな動揺なしに推移することができた、こういう数字が出ております。また、整理会社の発生状況の推移を見ましても、金額は、ただいま総理が注意されましたように、最近のものには某清算会社が入っておりますので、金額がちょっとふえておりますけれども、件数は順次減っております。数字を申せば、整理会社のほうも、件数は、十月が百三十五、十一月百十二、十二月百五十九、一月が百二十七、こういうような状況であります。
  84. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 中小企業の今後の見通しは、どんなに見ているか。
  85. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 今後の見通しにつきまして、もちろん、この年度末の状況等について私ども注意いたしておりますし、また、絶えず中小企業に対しては、しわ寄せがないように特段の注意をいたしまして、随時適切な措置を講じて参りたい、かように考えております。金融機関の貸出残高の中でも、先ほど総理から申されましたように、中小企業向けの貸出残高の比率は、三十二年、三十三年当時に比べまして、よほど残高の率はよくなっておる。一番低かったのが三十三年の三月時分でありますが、貸し出しの状況は四〇・五%——四〇・五という数字でありますが、三十六年以降は、三月が四三・七、六月は四三・四、九月は四三・八、十二月は四四・四、こういうように残高もふえております。これは、金融の実情が、十分私どもが注意した、その結果、中小企業には比較的しわ寄せを大ならしめないで済んだ、かように実は思います。  それから、その次に、ただいまお話のありました代理貸しの問題でございます。本来、代理貸しではなしに、直接貸しができれば、それにこしたことはないのでありまするが、地方の実情等は、代理貸しでもなお中小企業の方に便宜を与える、かように考えられますので、代理機関を使っておるところがございます。これはまあ、随時金融の実態等に合わせて今後指導していかなければならぬ一つの問題だ、かように考えます。
  86. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 池田総理にお伺いをいたします。  経済の成長において、国民生活が向上している、特に生産と消費のバランスがとれているというお話がございました。しかし、私はここで具体的な例をあげてお尋ねをしたいのでありますが、国民総支出中の構成比を見ますと、生産者耐久施設が昭和三十年の九・四から三十五年が二二%に拡大いたしております。同じ年度で、個人消費は六二・一%から五三・六%に下がっているわけでございます。たとえば法人の付加価値の労働者への分配率を見ますと、過去十年間ぐらいで五二%から四〇%に低下をいたしておるわけでございます。また、政府の今まで言われて参りました成長の問題から言いますと、たとえば、三十三年を基礎にして、三十四年、五年、六年の法人所得、勤労所得の比がどういう工合に動いてきているか、これをとってみますと、法人所得は、三十四年には一五九・六、三十五年には一四六・三、ことしの実績見通しは一一四・七になっております。勤労所得で見ますと、実績見通しと実績というものはほとんど変わっていないですね。一一三、一一五、ことしは一一八と、こういう工合に言われておるわけでございますけれども、法人所得の面を見ますと、実績見通しが三十五年一二九・九が、実績では一四六・三といって、非常に少額に見られておるわけです。この三十六年の実績を見ても、一一四、一一八と見ておられますけれども、結果はどうなるか、これはわからないという状態でございます。  それからもう一つは、生産性とそれから賃金上昇の面を見ますと、生産指数が非常に上がっておって、それから労働生産性も上がっておる。しかし、賃金は、名目賃金ではとても生産性に追いつかないし、それに物価の値上がりによって実質賃金は下がっている、こういう事態でございます。総理はこの前のときにコスト・インフレの心配があるのではないかというような御発言があったわけでありまして、私は、外国のこの数字が出ておりますけれども、何といっても、生産性と賃金上昇率を見てみますと、賃金上昇率のほうがみな高い、——みな高いとは言いませんけれども、大体基本には生産性と賃金上昇率を同じにして、物価横ばいという原則で完全雇用の道を開いていく、そうしてプラス社会保障の値上げ、こういうことをやっておるわけですが、日本はこれとってみますと、生産性だけは実は上がる。賃金の上昇は追っつかないですね。物価は上がる、そして社会保障は上がらない、こういう悪循環で、結局生産過剰という格好の答えが出るようになる。そしてそこから痛められるものは、一つは、今お話しいたしましたように、中小企業にまず参ります。それから順次、労働者、農民という工合に順次、経済が成長したといわれているけれども、順次そういうところにしわ寄せが来ている。これでは私は生産過剰になって、生産と消費のバランスでのほんとうに経済の繁栄の道というものの筋道とは少し違うのではないか、こういう工合に理解をしているわけでありますが、総理の見解を聞きたいと思います。
  87. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 二つ質問がございましたが、初めのほうの質問の要点が私はわからなかったから、藤田さん、二つ質問がございましたが、初めの質問をずっと並べられましたので、御質問の要点がわかりませんでしたから、もう一回言ってもらって、あとでお答えいたします。  第二段の問題の、生産性の向上と賃金の上昇、そうしてコスト・インフレの問題、これについては御質問でよくわかりました。生産性の向上は、お話しのとおり、ずっと上がっていっております。昭和三十年を基準としますと、一五八くらいであったかと思います。それから、賃金のほうは、やはり昭和三十年を基準といたしますと、一五〇になっております。五割程度上がっております。そうして見ますと、一五八と一五〇、生産性の向上は一五八、賃金が一五〇、これは劣ってはおりますが、大体いいところじゃございますまいか、まあつり合うので。しかし、昭和三十六年度には非常な賃上げがございましたから、前年に比べますと、生産性は九%ですが、賃金は一〇何%になっておると思います。それを私は言っておる。で、お話のように、これから設備投資で生産が過剰になってくる。完全雇用とは言いませんけれども、完全雇用になって、労働賃金が相当上がってくる。ことに最低賃金が上がってくる。そうして物価が、消費者は別でございますが、卸売物価が下がってくる。賃金は今までのように上がっていったならば、これはコスト・インフレになる。もう失業者はあまりない。これは昔の四、五年前、三、四年前の、何ですかイギリスの状態、また最近のドイツのような、お話にもありますように、イタリアのほうは生産性の向上ほど賃金が上がっていないと思います。こういうことから、私はこういう生産性の伸びよりも賃金の伸びが多くなってきた、去年は、三十六年には。そうして片一方は生産過剰の心配がむしろあるというようなときに、これはコスト・インフレを私としては心配はいたしておりませんが、そういう方向に行かないような方法を講じなければいかぬというのが先般来の私の答えであります。大体生産性が六年間に一五八、五割上がっている、賃金が五割上がっているということは、私は世界にその例がないと思います。そうしてこの上りをずっと続けていこうというのが高度成長であるのであります。
  88. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 前段の質問を繰り返すのはあとにしますが、今の生産性の問題です。これは三十人以上の企業だけしか捕捉していない。今の二千五百万の雇用労働者の中で、それに捕捉されるのは千五百万くらいでございます。その中で、今一五〇と言われましたけれども、実質賃金は一三二でございます。各月の生産性を見てみますと、三十六年の十一月、十月、ここらあたりを見ますと、一二〇くらいでございまして、実質賃金は。名目賃金にしたって一二〇幾つということでございます。ですから、この捕捉されている期末手当やそこらでなっているところは、それは今一五八対一五〇、実質で一三二という非常に低いのでありますが、それに捕捉されていない方々は、全体の生産性の面を見てみても、非常に低いということを指摘したわけでございます。いや、総理はこの前の国会で、生産性に見合って賃金を引き上げていくということを言われました。だから、私は賃金の上がり方が足らぬ、実質生活の向上が足らぬということを言っているのであります。そういう主張でございます。  もう一つの、先ほど申し上げたのは、所得の面ででございます。ですから、その所得の面で、生産者耐久施設というのが倍以上になっている。それで、国民消費というのが下がってくる。個人消費というのは六二%から五三%に下がった。それから法人と勤労所得税の所得のふえ方で見ると、片一方一五九対一一五、三十五年は一四六対一一五という格好で堅持している。だから、私はその意味からいって、労働省における生活の改善というものが今ここでぜひ必要ではないかと、こういう工合に、そうでなければ生産と消費のバランスがとれないのではないかということを申し上げているわけでございます。それに対する見解を承りたい。
  89. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 生産性の向上と賃金の上昇はバランスすべきものでございます。ただ、御承知のとおり、高度成長して参りますためには、一時的にやはり設備投資をして、将来の賃金の上昇、雇用の増大をやっていく必要があるのであります。生産性が上がったなら、それをすぐ賃金の上昇ばかりにやっていくかということになりますと、これからの新しい労働者の雇用の場面等々がございますので、私は、生産性の向上によりましては賃金の上昇もやらなければいかぬ、そうして、将来の生産拡大、雇用増大の措置もとらなくてはならぬ、そうしてまた、これを消費者にも均霑さす、こういうふうなことに分け合っていくべきだと考えております。お話のとおり、総生産に対して国民消費が六二%だ。今は五二、三%になっている。三十六年は五二くらいに行っていると思います。それが、生産が急激に伸びますと、消費の伸びがどうしてもおくれます。消費の伸びが半年ないし一年おくれる。そういうところのギャップなんでございます。消費金額自体というものは一人当たり相当ふえている。一年にやはり七、八%から、去年はたとえば名目で一四%、こういうことでございます。個人消費も相当ふえております。ただ、生産性の伸びよりも個人消費の伸びは半年あるいは一年のギャップがあるということと、急激に伸びた場合におきましては、それが低下するのであります。
  90. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 しかし、日経連は、私が先ほど申し上げた指数のように、生産指数も今年の十二月で三〇七だ、こういうふうに三十二年を基準にして上がっている賃金を押えようとしているじゃありませんか。これはどういうことですか。
  91. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、経団連の政策につきまして、いいとか悪いとかいうことはないと思います。これは労使の間でおやりになることで、ただ、方向としては、生産性の向上に見合って賃金の上昇は当然のことだ。しかし、片一方において将来の生産性の向上をはかるための資本支出も必要である。それが将来の雇用の増大で、新規労働者のためになる、そうして物価の引き下げも考えなければならぬ。この原則を私は申し上げておるのであります。  ただ、私、心配しておるのは、去年のように賃金が前年に比べて一〇%以上も上がるというふうなことは、生産がずっと二〇%とか、二二・三%伸びるときならよろしゅうございますけれども、鉱工業生産が。そういうことでない場合において、賃金というものは前年に比べて一割以上伸びるものだという考え方でいかれると、ことしは相当生産が減るから、そして設備投資を押えたりなんかしているのですから、今までのような考え方でいかぬということは、全般的に経済学的に言っておるのであります。経団連や日経連の方針に対していいとか悪いとかいうことは、私は差し控えたいと思います。
  92. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 しかし、製造業だけの指数を見ても、去年は生産性が一五%上がっておる。賃金のほうはどうかというと、先ほども私は結論的に政府の見通しを申し上げましたが、法人のほうはサバを読まれて、勤労所得のほうは非常にシビアに見られておるということになりますと、去年は法人が一四六でことしは一一四と見ておるけれども、私はもっと大きな数字になると思う。設備投資が横すべりだ、こういうお話でありますから、そういうことになってくる。賃金のほうはそんなにふえない。だから、あなたのおっしゃるように、生産性に応じて賃金が上がる。それは物価が上がることのないように、あとで物価の問題を少し話をしますが、そういうことだと私は理解します。  そこで、もう一つ総理に聞いておきたいのですが、労働大臣にも関係して参りますが、労働時間の問題です。これはことしのILOの総会で四十時間労働制というのがかかりました。昨年三分の二にならなくて流れましたけれども、ことしの総会にはこれがかかるわけであります。大体、外国は土曜、日曜休みで、四十時間制をとっている。まあオーバー・タイムの問題が少しあって四十二、三時間になっておりますけれども日本の労働時間を見てみますと、年末とか、そういうときははずして参りますと、去年の九月あたりでどれくらいになっておるかというと、六十時間以上働いている労働者が千二百万ある。四十九時間以上働いている人が二千五百万もおる。こういうことで、八百万という潜在失業者がおるというこの現実はどうなる。先ほどの個人消費の下がっているという。表に出ていることだけはいいけれども、少し上がっているけれども、しかしそうした下積みの皆さん方の生活というものは上がっていない。長時間働いて低賃金でやっていく、こういう現状でございます。  最低賃金の問題がございますけれども、最低賃金も業者間協定が主でありまして、六百何ぼのうち業者間協定がほとんどを占めて、それに横すべりの最低賃金が見られる。中心を見ますと、二百四十円から五十円でございます。たとえば二百五十円の賃金としても、一カ月二十五日働いて六千二百五十円、こういう方が非常におる。この最低賃金百七十何万という適用になったといわれますけれども、そういう賃金の状態は低いのである。ですから、私はその生産と消費のバランスをとり、そして現在の生産性に見合って賃金を引き上げていくという池田総理の見解とは、具体的にこうして掘り下げていきますと、違った答えがみな出てくるわけであります。これについての御所見を伺いたい。
  93. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 労働時間四十時間ということは、理想としては私は賛成でございますが、しかし現実の問題としては、やはりその国の経済の事情、そして社会慣行等を考えまして、にわかに私は日本に取り入れることはむずかしいのじゃないか、こう考えます。しかし、徐々には、やはり労働者の保健の上からいっても、文化生活の上からいっても、そういう理想は持って進まなければならぬと思います。そして最低賃金制の問題も、いろいろ御不満はございましょうが、三、四年前の状態と今の状態を比べますと、よほど最低賃金も改善されたと思う。だから、過去の状態と、そうしてこれから将来に向かってステップする進歩の状況をごらん下されば、私は、われわれの完全雇用、そうして賃金の上昇というのは、徐々に、しかもほかの国に比べまして急テンポで進んでいるものと考えるのであります。
  94. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで伺いたいのですが、四十時間労働制のことしのILO総会でこの勧告を出されると思うが、政府はどのような態度でこれに臨まれるのか、それが一つであります。  もう一つは、最低賃金の業者間協定という横すべり的賃金、実はこの前の国会で、これを労働大臣がここでも、至急審議会に諮問をして、将来ということでなくて今すぐそういういう点についてやりたいということでありましたが、まだそれが明らかになっていない。これは政府としてはどう考えられているか。  それから、最低賃金の額の引き上げをしなければ、これは最低生活の保障ができないわけでありますが、たとえばアメリカやフランスやフィリピンがとっているように、全体に一律に生活の底を上げるということでなければ、今の働いている人の生活が守られないのじゃないか。基準法違反の何十万というのをほっぽらかしておくということでは、この最低賃金の一律引き上げということが必要じゃないかと思いますが、この三つの問題についてお聞きしたいと思います。
  95. 福永健司

    国務大臣福永健司君) まず第一点の労働時間短縮、ことに一週四十時間にするというILOの総会での問題の取り扱いについて、わが政府がどういうようにするか。これはおそらくこれに出席する政府代表にどういう態度をとらせるか、こういう意味だと思うのであります。今も総理からお答えいたしましたように、方向といたしましてはこれはけっこうなことでありますが、現実の国情をよく考えなければならないことも当然でございます。そこで、世界の大勢等についても、われわれはおおむね認識いたしておりますので、いろいろそういうことを考えて善処したいと思います。現実にまだこの会議が始まっていないときに、この次にこうするということはまだちょっと申し上げかねるのであります。  それから、最低賃金が業者間協定のものが大部分を占めている。——確かにそうでございます。しかし、漸次労働協約に基づくものもふえつつあるわけであります。この上とも、私どもは目的の達成に、三十八年度夫までには二百五十万ということを言っておりますが、ぜひそういうようにしたいし、できればさらにそれ以上のことを期待しているわけでございます。これらのことを実施していきます過程において問題点が出て参っております。それにつきまして、今お話しのように中央最低賃金審議会で今御研究をいただいているわけでございますが、これらの成果につきましては、これを尊重して善処していきたいというように考えております。  それから、藤田さんのほうの強い御主張であります最低賃金を全国一律に大幅に上げよ、こういうお話でございますが、日本の実情は一気にそういうことにはなかなか今直ちに参らぬと私ども考えているのであります。理想的な方向として、それは私どももよく認識はいたしているのであります。現実はそこまでというのは少し無理がありゃしないかというように存じているわけであります。なお、低いものに対しましてお話がございましたが、着々これを改定しておりまする傾向もございます。一段とそういうことの促進をはかっていきたいと存じます。
  96. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうも国会予算委員会約束されたことが実施されていないということは、非常に残念でございます。しかし、私は、よく肝に銘じて労働大臣は引き継がれたのでありますから、最低賃金法の九条の改正については、ここで前の労働大臣が言明されておるのに、今のような状態では困りますということだけを強く申し上げておきたいと思います。それから、四十時間労働制の勧告については、会議が始まらなければわからぬというようなことでなしに、去年の総会であれだけ議論をされてことしに持ち越されているということをよく頭の中に入れて返事をしてもらわなければ困るということを付言しておきます。  それから、次に、物価の問題ですが、きのうの閣議で、物価の対策政府はおきめになったということですが、藤山長官、二・八%だといわれておるのですが、どういう工合にして消費者に負担がかからないように物価対策をやっていくかという方針をお聞かせ願いたい。
  97. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 昨日閣議でもって、かねて検討をいたしておりました物価の総合対策をきめることにいたしたわけであります。この総合対策は、政府が物価政策を取り上げていこうという決意を示しますとともに、それに対して、各省がそれぞれ考えるべき施策、現在の物価問題の起こっております原因、要点等を一応検討して、総合的に集めたものでございます。したがって、これを中心にいたしまして今後具体的な諸般の政策が打ち出されてこなければならぬのでございまして、したがって、昨日の閣議におきましても、この線に沿って各省がそれぞれの施策を今月の三十日ぐらいまでに出していただくようにお願いをいたしたわけでありまして、物価、特に消費者物価の対策政府としても第一歩を踏み出したというところでございます。
  98. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、ここに一昨日ですか、政府の閣議にかける前の案が出ておりまするが、まあこれできめられたのだと思うのであります。しかし、今の物価対策というのは、私は、池田総理お話にも関係してくるわけですが、何といっても機械化、オートメーション化の時代ですね、そして各産業ごとの生産力を少数の会社で握っている。この独占価格を、独占禁止法というものがあるんですから、いかにこれを生産に応じて下げさすかということが物価対策の根本ではないかと、私はこういう工合に思うのであります。この問題についてどのようにおやりになるか、具体的にお話を願います。
  99. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 物価対策の一番の根本問題は、やはり私は、今の高度の成長と申しますか、そういうようなところから起こってきているものだと思います。そうしてその対策をやります上において、いろいろございます。しかし、今、藤田さんの御指摘になりましたような協定価格その他の問題について、十分な政府が監督もし、監視もし、それらのことについての検討をいたしていかなければならぬ、それが不当に消費者の利益を害するようなものであっては当然ならぬわけであります。そういうようなものについては、公正取引委員会等の運用というものが、もっと厳格に行なわれるようにわれわれは期待をいたしておるのであります。
  100. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そういう抽象的な答弁では私は話にならぬと思うのです。物価対策についてあなた見てごらんなさい。薬の問題一つ見てもおわかりでしょう。定価の何割引きというようなことで乱売されているじゃないですか。そうでしょう。それからテレビや電気器具にしたって、何分の一でできていると世間ではいわれているじゃないですか。農民の肥料にしてもそうでありますし、あらゆる生産力を少数の会社で握っている。独占価格で、高い値段で国民からしぼり上げて、そうしてそれが次の設備投資やそういう資金にしているじゃないですか。そういうことを一つ一つ具体的にどうするのだ、公正取引委員会というものが具体的にこれをやっていくという方針をなぜ政府はお立てにならないのか。
  101. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほども申しましたように、昨日策定いたしましたのは、そういう物価対策を総合的にやらなければならぬという政府決意と、各省がやるべき大きな筋の方針をきめたのでございまして、ただいまお話のような点になりますと、それぞれその指導監督をいたしております各省がそれらに対する対策を三月三十日までに出しまして、そうしてその線に沿ってこれから施策をしていこう、こういうふうに相なるわけでございます。したがって、きのうのところでは、そういうこまかい点はまだ打ち出しておらぬのでございます。
  102. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連。ただいま独禁法の問題に物価対策とからんで触れられたわけですが、国民は物価対策について非常な関心を持ち、政府はこれにこたえられつつあるようですけれども、従来、経済企画庁のただいまの御答弁でもわかるように、公取の適用を厳格にしたい、こういうようなことは、この独禁法の適用を厳守さしていくのだ、こういうような方針だというふうに私受け取りたいと思う。これに対して通産省のお考えは、一部新聞の報道によると、新しい産業体制に呼応するために、独禁法の適用除外を拡大して立法措置を講ずるかもしれないというような報道がされております。独禁法の適用を、これを排除を拡大していくということは、これは消費者にとって非常な問題点だろうと思う。同じ政府部内の中で、この独禁法の適用についての意見がまっこうからこのように対立することであれば、せっかく出発したこれらの糸口が初めから乱れるのじゃないか、たいへん私は心配するわけです。今日までも独禁法の改正については、これはもう私ども非常に反対してきた。もしどうしても適用除外を拡大したいということならば、これは今日消費者の代表意見というものが的確に反映されなければならないはずなんです。こういうような点について、通産大臣、そうして企画庁長官からの御答弁をわずらわしたいと思います。
  103. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 物価対策、ことに消費者の利益を擁護する、こういう意味、また、事業者の過当競争を防ぐ、こういうような意味から独禁法のあることは御承知のとおりであります。したがいまして、私ども今回の物価対策に対しましても、物価の安定、消費者並びに業界の生産も確保したい、こういう観点に立って物価対策、総合施策を講ずるわけであります。その意味から各産業のいろいろ特殊性がございます。一般的な原則論としては、これはどこまでも独禁法を今日どうこうするという筋のものではない。これは私予算委員会を通じ、あるいは他の委員会等を通じて、政府の所信を明確にいたしております。ただ、今御指摘になりましたようなことは、いわゆる企業はだんだん大きくなっていくんではないかということを指摘されましたが、最近の国際経済の状況など見ますると、あるいはドイツにおいて自動車製造会社が合併するとか、あるいはフランスとイタリアとの大会社が技術提携をするとか、さらに経営の提携をする、あるいはイギリスにおいてもアメリカにおいても、そういう業界の合同の機運がございます。この合同の機運が、はたして今ある独禁法に合うのかどうか、こういう点がただいま論議をされておると思います。しかし、しばしば私ども委員会を通じて声明しておりますように、今日の経済界が発展し、変動の時期におきましては、一、二の事例等から、この経済の憲法とも申すべき独禁法、これについての改正なぞ軽卒に論ずべきではない。だから、在来の態度を堅持して、さらに情勢の推移を十分検討して参りたい、こういうことを実は申しておるわけでございます。ただいま高田さんの御指摘のとおり、今日の段階におきましては、独禁法を十分尊重し、その運用の適正を期している。こういうことで消費者並びに事業者の利益を確保して参りたい、かように考えて一おります。
  104. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 独占行為の禁止という、これは占領軍が財閥の解体、独占行為の禁止ということを日本政府に言って、そこから独禁法が始まった。これは恥ずかしいことであって、日本のわれわれの手で独占行為の禁止をして、そして国民生活を引き上げる、守っていく、これが本筋ではなかろうか。ところが、今日は独禁法の適用については、次から次へと除外的にそれがくずれていっているという事態を非常に悲しむものであります。それだけこの問題について、政府はほんとに真剣に取り組んでいただきたいということを、独占行為の禁止についてお願いしておきます。  それでは、時間がありませんので、次は雇用問題についてお尋ねをしたいと思います。今日の完全雇用の問題というのは、ほんとに政府がいつも方針を出されておるわけですけれども、非常に重要な問題でございます。中学、高校の学卒の方々の求職、求人の関係は、今の状態ではよろしゅうございます。しかし、三十五才以上の殺到率と就職の面を見ますと、一五、六%しか就職ができないという状態でございます。この対策をどうして立てるかということが質問したい第一点でございます。  それからもう一つの問題は、殺到率を見てみますと、全国に非常に地域格差がございます。たとえば東北では三倍、九州では三・三倍、それから北海道という工合に、殺到率が非常に高いのであります。四国も高いほうであります。そういう工合になって参りますと、政府は地域開発をおやりになると言っておられますけれども、何といっても労働力の移動というのは、これは社会主義国も資本主義国も同じでありまするが、なかなかむずかしい問題であります。ですから、最近アメリカも地域開発法を昨年の六月作り、イギリスは地域雇用法というものを作って、その地域で労働力を吸収して、ノーマルな労働力配置をする、こういうことに施策をやっているわけでございます。ですから、このような問題をやるとすれば、何といっても、政府が相当の援護をやらなければできない問題ではなかろうか。特に農村府県でありますから、農業基本法から五百万の十年間の離農者を計画にちゃんと書いているんですから、それをどう吸収するかということとあわせて、重大な問題であります。これは藤山長官にお伺いしたいのでありますが、昨年の国会でそのような具体案を研究して作って、そうして国民の皆さん方に批判をしてもらうんだ、早急に作るというお約束でございます。これは完全雇用の方策の一つとして、方策の柱として——先ほどの時間短縮もそうですが、このような方式について経済企画庁はどのような案をお持ちになっているか。労働省の見解も承りたい。
  105. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 地域開発が促進されなければ、お話のように労働力の移動ということが非常に困難である、移動がスムーズにいくことができればその問題は解決しますけれども、そうでない。移動が困難であって、特に住宅問題その他、あるいは日本人の性格からいたしましても、ある意味からいえば、自分の生国からなるべく離れたくないということもございますし、そういう意味からいえば、やはり各地の地域開発というものが総合的に行なわれて、そうして地域格差をなくしていくというようなことがなされなければならぬと思います。御承知のとおり、政府としても総合開発計画を立てまして、昨年の七月草案ができましたので、その後世間の批判を仰いでおりますが、今月末にはその最終的な結論を打ち出して、そうして提案ができると思います。また、低開発地域の開発につきましては、先般の臨時国会で御決定を願いまして、ただいまその進め方をいたしておるわけでございます。また、今度の国会におきましては、新産業都市の法律案を出しまして、そうして御審議を願うことにいたしておるわけでございます。そういうふうに、各地における地方的開発によりまして、労働力の移動なしに、その地方の繁栄によってそれが吸収されていくという方策をまず根本的に考えなければならぬと思います。その上に立って、なおかつ、やはり労働力の移動を必要とするとすれば、やはり一番最初の問題は住宅問題にあろうと思いますが、そうした問題についての施策があわせて行なわれ、あるいは高年令層等につきましての移動につきましては、相当な準備も必要でございますし、あるいは移動に伴います技術修練というような問題も必要でございまして、それらのものをあわせて考えていくことが必要だとわれわれは考えておるのでございます。そういう点につきましては、労働省においてもそれぞれ予算等を取られまして施策を進めておられるのでございます。
  106. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 前段の御質問の中高年令者の雇用の問題でございますが、広域職業紹介、あるいは転職訓練、こういったものをますます強化するという考えのもとに、予算的にもいろいろの措置を講じておるわけでございますが、従来ともやっておりますが、中高年令者で間に合うとか、ないしは中高年令者がむしろいいというような職種を選びまして、労働省においても、そういう職種については、できるだけそういう人を差し向けることに行政的な措置を講じておるわけでございます。また、炭鉱離職者等につきましては、中高年令者の雇用奨励のために新たなる措置を講じておる。これも御承知のとおりであり、また、今度新たにそうした人々の雇用促進をはかるための融資制度も創設いたしました。ぜひこれらも活用していきたいと存じます。しかし、根本的な問題といたしまして、日本の年功序列型の賃金体系このままでは、なかなか中高年令者が、今、藤田さん御指摘になりましたような状態から脱却することが容易でないというようなこと等もございます。これらのことについても、労働省はさらに検討を進めていきたい、こういうようないろいろの施策全体をすみやかに強力に推進して御指摘のようなことの解消に努めたいと存じます。  二番目の点につきましては、藤山長官が答えられたのであります。労働省も今答えられたような考え方において、ぜひ労働力の、ことに中高年令者の滞留するような地帯に地域的な措置が講ぜられること、これに深い関心を持ち、そういうことの促進がされるように私ども努力をしていきたいと、こう考えております。
  107. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今の企画庁長官、国会約束をして一年もたってまだできていない、アウト・ラインもできていないというようなことでは困ります。そういうことでは責任政治とは私は言えない。不満を申し上げておきます。  時間がありませんから、次に社会保障の問題でございます。社会保障というのは、経済の発展に応じて社会保障を引き上げるというより、むしろ経済が発展するためには社会保障が必要なんだ、私はこういう見解に立っております。外国の例を見てもそのとおりでございます。ですから、そのような格好で社会保障というものを進めていただかなければ社会保障というものは前進をしない。経済の余り分を社会保障してやろうなんというようなことでは、私は第二の国家体系の政治の姿ではないと思うのでありますが、総理と厚生大臣の御意見を承りたい。
  108. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私が高度成長を唱えて、それを実行いたしておるのも、社会保障制度の拡充を大きい目的にいたしておるのでございます。
  109. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 総理がお答えになりましたとおり、社会保障制度の拡充ということは、申すまでもなく、国民生活、ことに低所得階層、かような人たちの生活の安定をはかり、保障をしていくということが主眼をなしておると思います。それをやっていくということは当然のことでございますが、経済の高度成長、国民所得の増大ということを通じて、この社会保障の整備、改善、向上をはかっていかなくちゃなりませんし、同時にまた、お説のように、経済の高度成長をはかりますためにも社会保障の整備、拡充を必要とする、私は両々相待っていかなければならないものと考えておる次第でございます。
  110. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今の具体的な問題を聞きたいのですが、時間がありませんので、次の問題に移ります。  次は、最後に、石炭の政策の問題についてお聞きしたいのであります。石炭政策の問題は、今、日本で非常に重要な問題の段階に入っております。政府は、三十八年度までに千二百円のコスト・ダウンをやって、五千五百万トンの生産計画を立ててこられた。ところが、炭鉱の労働者は今日まで八万、それ以上首を切られて、将来も三十八年度までに八万人の首切りが出ると、こう言われておるわけです。それで、三十八年度の姿には三十何万おった炭鉱労働者が十五万ぐらいになる、こういう数字になるようでございます。これは非常に残念なことで、経済成長の将来のエネルギーの問題について二億三千万トンですか、石炭概算で。そういう目標を立てておられると聞きます。その中で石炭が五千五百万トンですね。自由競争だから石炭より油のほうが安いのだから、ですから石炭はこれぐらいだという格好で、そして、結局だれが犠牲になっておるかというと、石炭の労働者だけが犠牲になっている、こういう答えになっているわけでございます。私はこういう政治というものが外国にあり得るかと言いたいのでございます。どこの国を見ましても、石炭の値段と油の値段を比較すれば、平生のときには油の値段のほうが安い。安くても国内資源でありまする石炭を守る施策を大胆に立てて、石炭というものを国内の産業のエネルギーとして、重要なエネルギーとしてこの石炭対策を立てておるというのが、今日の外国を見てみましてもそのような格好でございます。ところが、日本はそうでなしに、とにかくしまいは労働者だけ首切ったらいいのだということに落ちつくような計画というものは、これはどこへ持っていっても聞こえない話ではないかと私は思うのであります。そこで、私はお聞きしたいのでありますが、具体的に一つ一つ聞きますが、目標年度に五千五百万トンの生産目標というものを動かさないのかどうか、これが一つでございます。それから、目標年度のエネルギーを今の五千五百万トンの関係よりして、二億何千万トンかの計画が立てられておるのと関連して、どのように計算をされていくかということをひとつお聞きしたいと思います。それから、その次の問題は、石炭業者というのは、何といっても日本の経済が歴史的に発展してきたエネルギーの中心でございまして、ですからそういう意味では、石炭業者というのは、まあ、勝手なことをしておったとも言えると思います。しかし、そのしわ寄せを全部労働者に持っていくということは、私はやっぱり問題があるのではないかと思う。それからその次は、石炭を国の管理に移すというようなことはできないか。大口需要は電力でございますから、電力はイギリスもフランスもイタリーも国営でございますが、その覚悟で石炭対策を計画的に立てるということが……。
  111. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 藤田君、ちょっと御注意申し上げますが、三分経過しておりますから、簡単にひとつ。
  112. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 もう終わります。  そういう石炭対策——労働者を犠牲にしないという石炭対策をどういうふうに立てておられるか、これをお聞きしたいと思います。
  113. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 石炭対策はこれはたいへんな経済上の問題ばかりでなく、社会問題であり、さらにまた政治問題でもある、かように考えておりますので、私ども第二次池田内閣ができて以来、さらに積極的にこれが対策を進めておることは御承知のとおりでございます。また、この国会を通じましても、幾つもの対策法案提出されておりまして、いろいろ御審議をいただくことになっております。いずれそういう機会に詳細についてのお話をいたすつもりでございますが、ただ、今、藤田さんが御指摘になりました五千五百万トン、千二百円下げ、この基本的な考え方にゆとりがあるかどうかという第一の問題でございます。私は、将来、国内資源の開発等がいわゆる近代的産業として十分合理化された暁におきましては、これはもちろん五千五百万トンの必要はないと思います。外国から原料炭をわざわざ買ってくるまでもないことだと思いますので、これはぜひとも国内資源の開発を、そういう意味において、合理化を進めた意味において、いわゆる採算性のある産業にするということ、その第一段としては、やはり五千五百万トンの生産目標と同時に、また千二百円下げ、この目標はぜひとも達成したい、かように思います。これは第一段の問題であります。将来、十分、国内のエネルギーというものがどんどん増加して参りますから、そういう場合において、合理化された石炭産業がやはり一翼をになっている、こういうことであってしかるべきだと思います。そういう意味から石炭産業を安定産業にする、同時にまた国の基幹産業として育成強化していく、こういうことにも実は取り組んでおるわけであります。これが安定産業になり、基幹産業として十分認識を受けることになれば、必ずここで働いておられる方々も将来に対して十分のその期待を持ち得る、安定して従業し得るということになるだろうと思います。問題は、当面しておるこの段階において一体いかにあるべきか、いかに処理すべきか、ここに全部のしわが寄せられておるわけであります。私、就任いたしまして以来、またその前に大蔵大臣当時、ただいまの総理が通産大臣当時に石炭産業と取り組まれて一応の方向をきめられましたが、しかし、なかなかその後の情勢では労使とも双方の協力を得るという状況にはなっておらなかった。ところで、一面自由化が非常に進んで参りまして、また最近の石油が国際的にも余剰的な傾向にある、または乱売されておる、こういうようなことからエネルギー源に対しては非常な熾烈な競争が展開されております。これらの事柄がいわゆる石炭産業の合理化へ非常に拍車をかけておるというのが現状だと思います。この拍車をかけられました結果が、私どもが想像したより以上の問題が経営の面あるいは労働の面等に出てきておるのじゃないか。これに対しての対策をそれぞれ立て、ただいま国会でも御審議を願っております。これはもう重大な問題になるということについては、十分私ども認識をいたしておりますが、やはり産業が基幹産業であり、安定産業であるためには、幾ら国内資源だというその理由からだけその採算制を度外視してもというところまではなかなか困難であり、それは踏み切りかねることであります。そういう意味において、政府政府として、この石炭産業を採算性のとれる産業にするのだ。その意味においての政府の財政資金その他を使うことも考えましょうし、金融の面でもめんどうを見ていこうし、また、経営者並びに労働者もこれを安定産業にすることについては積極的な御協力を願いたい、これがただいまの私ども考え方であります。したがいまして、十分関係者の方々の了解を得るというか、理解を得るというか、そういう方向へこの問題を盛り上げていかなければならぬと思います。また、その経済性、いわゆる合理化を進めていく、その途上においての経営者に対して総合的見地からこれに対する対策を立てていくということが必要だろうと思うのでございます。そういう意味におきまして、私どももさらに努力して参る考えでございます。
  114. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 労働大臣、石炭離職者の今のような状態について労働大臣はどう考えるかということですよ。
  115. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 根本的には、われわれはできるだけ離職者ができないような事態、これをひたすら望むわけであります。でございますが、やむを得ず出るものに対しましては、御承知のように、今度一連の新たなる施策を講じておるわけでございます。不幸にして職を離れることになりました者に対しましての措置について、できるだけの措置を講じていきたい、こういうように考えるわけであります。また、石炭産業における最低賃金につきましては、いろいろの産業の中でも特にここに重点を置いてわれわれは考慮を払っておるわけであり、ただいま中央最賃のほうで御検討をいただいておるわけでございます。これの進捗につきまして、いろいろ御注意等もいただいておるわけでございます。熱心に御検討をいただいておりまするから、私は遠からずその進展を見て、成果があるものと、こういうふうに期待をいたしておるわけでございます。
  116. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 藤田君の質疑はこれをもちまして終了いたしました。  審議の進行をはかりまするがために、はなはだ御迷惑でありまするけれども、午後二時三十分に再開することにいたしまして、休憩をいたします。    午後一時四十七分休憩    ————————    午後二時四十七分開会
  117. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) これより予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き審議を行ないます。東降君。
  118. 東隆

    ○東隆君 私は、やるせない引揚者の立場に立った質問をしようと思うので、首相初め関係閣僚その他のあたたかい思いのこもった答弁を期待いたしております。  まず最初にやるせない引揚者の立場を認識してもらう必要があろうと思うのです。昭和十六年の二月、三月のころ、私は満州に旅行をいたしました。そうしてつぶさに各地を回ったのでございますが、そのときに会った人々は壮年血気の人々でございました。そうしてきわめてアンビシャスの人々でございます。あれから二十年、生活の基盤を失って引き揚げた人々のよわいはもうすでに六十代になろうとしているのであります。職場から後退をしてこれからの老境の生活をどうしようかと、こういうふうにやるせない思いにおると、こういうふうに考えるのでありますが、この点、総理はどういうふうにお考えでございますか。
  119. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 敗戦によりましていろいろ御苦労な立場に立たれた方は多いわけであります。軍人遺家族の方あるいは引揚者の方、あるいは内地におきまして戦災を受けた方々等数多いのでございます。われわれはまことにお気の毒だと考えまして、できるだけの措置は今までもとってきておるのであります。
  120. 東隆

    ○東隆君 厚生大臣、今首相はできるだけの措置をとられてきたと、こういうふうにお考えでありますが、今後引揚者に対して積極的に法的な措置をお考えになるような意思はございますか、お伺いをいたします。
  121. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 引揚者の方方に対しましては政府といたしましても心から御同情申し上げておるところでございます。引き揚げられまして以来、あるいは住宅の問題あるいはまた生業の問題等につきまして、住宅の供与ないしは資金の貸付等について鋭意努力して参りましたつもりでございます。できるだけ社会福祉の面等を通じまして、お世話を申し上げたい気持でおりますが、ただいまのところ格別の立法措置は考慮いたしておりません。
  122. 東隆

    ○東隆君 私はきょういろいろ引揚者の問題について質問をいたしますが、それには法的な措置が十分に必要な問題がたくさんあるのでありまして、この点について積極的なお考えがあるかどうか、その点をお伺いをいたしたわけであります。もう一度お答えを願いたい。
  123. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 引揚者の方方に対しまする御協力という点につきましては、十分考慮して参るつもりでございますが、特に格別の立法措置をしようというような考えは、ただいまのところ持っておりません。
  124. 東隆

    ○東隆君 厚生大臣は、非常に冷酷な考え方のように考えますが、私は厚生大臣は積極的に社会保障その他の面で考えるのが厚生大臣の仕事だと、こういうふうに考えますが、その点についてはなはだ消極的な態度のようでありますが、この点はなはだ遺憾に思います。  そこで大蔵大臣に伺いますが、いろいろなこれから法的な措置その他ができた場合に、大蔵大臣はどうも財布のひもを締めるほうばっかりお考えのようでありますが、りっぱな法的措置ができた場合に、大蔵大臣はどんどんお出しになる心がまえがございますか。その点をお伺いいたしておきます。
  125. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これから法的措置ができた場合というお話でございますが、これは御承知のとおり、引揚者の問題は非常に長い間むずかしい問題として論議されておりましたが、この問題を解決するために、在外財産問題についての審議会ができまして、そこでいろいろ審議が重ねられたのですが、法律上の補償責任政府が持つという結論にはこの審議会はとうとう達しませんでした。しかしそのまま放置するということは妥当ではないので、長年生活の根拠にしておった土地を強制的に引き揚げさせられたのですから、これに対しては何らかの措置をとるべきものだという答申が、昭和三十一年に初めて出まして、その答申に基づいて政府は引揚者給付金等支給法というものを制定しまして、それによって全部の引揚者に対して同じような措置をとって、一ぺんここでケリをつけるという措置をとった次第でございますので、この問題をまたもとへさかのぼっていろいろやる、何らかの法的措置をとるというようなことも私は事実上むずかしい問題だろうと考えております。
  126. 東隆

    ○東隆君 大蔵大臣は財布のひもを締めることばかりお考えになっておるので、引揚者給付金等支給法ですか、それでもってもう引揚者に対する補償は終わったようなお話でございます。しかしまだまだ私は大きな問題が残っておると思います。それで、そういう考えでは、引揚者の問題に対するあたたかい措置、そういうようなものが生まれてこないと思いますので、考えをひとつ変えていただかなければならぬと思うわけで、そこで伺いますが、最近の国家予算を見ますと、平和産業は民間のほうにおまかせになって、そして軍需産業の方面には、だいぶ間接、直接に予算をお出しになっておるようである。私は、平和産業を発達させるのに一番いい方法は、低所得者に購買力をつけることが一番いい方法だと思う。そこではじめて需要が喚起されて、そうして平和産業が発達をする。こういうように考えるのですが、この点、総理はどういうふうにお考えですか。
  127. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 考え方の方向としては正しいと思います。しかし程度の問題、時期がございます。
  128. 東隆

    ○東隆君 低所得者の典型的なものは、私は先ほどから申しましたように、全生活の基盤を失った引揚者のうち、これから老境に入って働けなくなる人々だと、こういうふうに考えるわけで、そこで典型的なものは、私は引揚者の人々でないか。それは生活基盤をほんとうになくしてしまった人である。こういう考え方にならざるを得ないわけであります。その点はお認め下さいますか。私は総理、大蔵両大臣に……。
  129. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 引揚者のその後の実態、更生の状況というようなものを、私はまだ調査ができておるかどうか存じませんが、やはりこれは根拠を失って引き揚げて来られて、そのために生活が立て直らないという人が、一番これが苦しい人たちだろうと考えます。
  130. 東隆

    ○東隆君 もう戦後ではないと言う人がおりますが、戦争の傷あとはますます大きくなっているんじゃないか、賠償から始まって、日ソの国交回復、こういうようなことを考えますと、前途まことに遼遠なものがある。こう考えます。そこで私は、このようなことを考えますと、果てしなく国民の負担が大きくなるのでありますが、しかし金がかかるのだと、戦争というものは非常に金のかかるものだ、戦争中はもちろんのこと、戦後も非常に金がかかるものだ、こういうことは、国民が頭の中にはっきりと持っておることが、平和が日本を建設する基本になる。私はこういう考え方を持つのですが、この点はどういうふうにお考えでございますか。総理大臣にお伺いをいたします。
  131. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 金がかかるから平和でいこうという考え方もありましょう。また金のかかる、かからないにかかわらず、われわれは平和を進めなきゃならぬという人もありましょう。いろんなことでございますが、とにかく戦争というものはばからしいものだということは、私は各方面からそういうことが言えると思います。
  132. 東隆

    ○東隆君 次は、これは農林大臣にお聞きをしようと思いましたが、農林大臣、お出かけでありますから、総理にお伺いをいたしますが、日本の戦後の農地改革は、第一次欧州戦争後における東欧の農地改革に比較すると、非常に地主さんたちに対しては過酷なものではなかったと思う、それから自作農維持の立場に立ってやった農地改革は非常な成功でなかったか、こう考えております。最高裁判所も適法だと、こういう判決を下しております。ところが旧地主に対して資金の融通のワクを二十億お取りになったようで、旧地主諸君の中には百年ぐらい貸してもらうんだ、こういうような考え方を持っておる人もあるんじゃないか、こう考えるわけであります。私は先ほど言ったように、日本の農地改革はりっぱに進められたもんだ、こういう観点から考えて、そういうようなものよりも引揚者その他に対して、大きく国が補償をする考え方のほうが優先的に進められんければならぬものだ、私はこういう考え方に立ちます。そこで今度の農地改革、旧地主に対する補償的な関係で融資をされるようでありますが、その中身、その趣旨、そういうようなものについて御説明を願いたい。
  133. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今のところ補償的な考えではございません。旧地主の生活の実情調査とか、これに対してどういうことを考えるかというような調査会は、御承知のとおりできておりますが、これとは私ども関係で、長い間この問題も一つの政治問題になっておりますので、今回私ども政治的な配慮として補償とか、貸して、それを将来に返済しなくてもいいとかいうような考えからではなくて、純金融ベースにおいて、生業資金が一般の銀行からも、金融機関からも借りられないで困っておるという旧地主に対して、生業資金を貸す道ぐらいは開くことが適当な施策であろう、こう考えて、その道を開こうということは考えておりますが、今あなたのおっしゃられたような考えと結びついた考えじゃございません。
  134. 東隆

    ○東隆君 政治的な配慮という言葉を使われましたが、その中身をひとつもう少し詳しく御説明を願いたい。
  135. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) たとえば引き揚げてこられました方については、更生資金というようなものを一つのワクを作って融資の道を開いたというようなことも過去にしておりますが、旧地主に対しても生業資金について貸し出しのワクを作って金融の道を開くことも妥当と考え、今のところは大体二十億円のワクを予定しております。金利はいろいろの他の金利との均衡を考えました結果、今のところ六分五厘程度の金利が妥当ではないかというふうに考えております。
  136. 東隆

    ○東隆君 今の大蔵大臣お話から考えてみましても、それ以前に引揚者について考えなければならぬ気が一そうするわけでありますが、この話はこの程度にしまして、外務大臣総理に所見を伺います。  それは引き揚げ問題はとにかく外交に非常に関係があるので、私は弱腰外交では問題にならぬと思う。それで政府はアメリカに対して非常に弱いし、社会党はどうも中共やソ連に弱いような気がしていたしかたがない。そこで私はアメリカに対しては基地を返しなさい、沖縄、小笠原を返しなさい、これぐらい強硬に言えば、私はソ連に対しても歯舞、色丹を返せ、千島を返せ南樺太を返せ、こういうようなことが言えると思う。で、そういう強力な自主的な外交の立場に立たなければ、ビキニのこの前の問題一つを考えましてもすぐ補償問題にひっかかる、そうすると、その補償問題が進められておる間に、軌を一にしてソ連は北洋漁業の制限を始めるというような事態が発生をいたしておるのであります。で、今日はもうすぐ直ちに影響して、そして反応があるのでありますから、私はあくまで今回のアメリカの核爆発実験の問題についても強硬な立場をとっていただきたい、こう考えるわけであります。で、こういう関係から私はいろいろな問題を考えてみますときに、樺太はソ連の領土ではない、こうアメリカが言っておるのでありますから、私はこの際、樺太に対しても強硬な考え方を持っていく機会じゃないか、こういうふうに考えますが、北方領土の問題について衆議院のほうの決議等もございますが、樺太等についてどういうお考えか、外務大臣にお伺いいたします。
  137. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 樺太につきましては、サンフランシスコ講和条約の第二条で、わが国は「千九百五年九月五日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部」、それはいわゆる南樺太でございます、「に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。」ということをいっておりますので、この規定によって、わが国は南樺太を放棄しているわけでございます。しかしながらこの規定は、この地区が最終的にどこに帰属するかということはきめておりませんわけで、したがって、南樺太の帰属は国際法上は未確定のものであると言わなければならぬと思うのであります。ただしわが国としては、これに関する権利、権原、請求権一切を放棄しておりますので、この帰属についてわが国が発言するというわけにはいかない、この点は私ども常々主張しております歯舞、色丹のみならず、国後、択捉、これは固有の領土であるから、これはわが国の領土である、こういう主張とは若干趣きを異にしておるわけであります。
  138. 東隆

    ○東隆君 樺太の引揚者の立場に立つと、明治七年の千島樺太交換条約は、どちらも日本の領土であったものを交換したので、明治政府が非常に当時北方に対して関心が薄かった、弱かったからああいうことになったと、こういうふうに考えておりますが、この点はどういうふうにお考えですか。
  139. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 千島樺太交換条約というものは、これは千島におきましてもわがほうの同胞が行っておった、それからソ連側からも人が来ておった、いわゆるここは両国民の混住の地であったわけでございます。そこでこのポーツマス条約によって、樺太においてもそういう状態でございます、それを南樺太は日本の領土としたわけでございますが、これにつきましては、わがほうは今次戦争の結果として権利、権原、請求権の一切を放棄している、こういう立場でございますので、まあこの条約上はっきりわが国が放棄しておるものでございますから、わが国としてはこの帰属については何も言えませんわけでございますが、帰属の最終的なものは、これは将来いずれかの機会に国際会議が開かれ、そこで最終的に法的には決定される、こういうことと考えているわけでございます。
  140. 東隆

    ○東隆君 国民感情というよりか、樺太からの引揚者の感情は、南北樺太はもともと日本のものだった、こういう考えがあるわけです。だから、これはやはり相当強く主張をしてもらわなければならぬ点だと、こう思うのです。  そこで、もう一つ外交関係で、引揚者の給付金等支給法は、これは在外資産を政策的に考えて、そうして引揚者の在外財産に対してこれでもってピリオドを打つようなお話先ほど大蔵大臣はされた。ところがこれの根本になるのは、外交がやはり弱腰であったからそういうことになったのだと思う。それで在外資産を没収をされるというようなことは第一次の世界戦争のときにはなかったわけでありまして、今回こういうような問題が新しく起きて来た。で、この弱腰になった根本その他もやはりアメリカに対して弱腰、そういうふうなことで大国から圧迫を受けたのではないか。ソ連の関係その他の関係については、そういう問題はまだないはずでありますから、その点についてはどういうような立場でもって主張をされるのか、この点を明らかにしていただきたい。
  141. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ソ連との関係におきましては、日ソ共同宣言があるわけでございます。これは日本国もしくは日本国民の在ソ財産の放棄を規定してはおりません。この宣言第六項後段には、日ソ両国が、それぞれの国その団体及び国民に対する、戦争の結果として生じたすべての請求権を、相互に放棄することを規定しておりますが、この趣旨は、財産権に関しては、共同宣言発効以前に、ソ連政府によって、引揚者の在ソ財産に対してとられました措置の結果として、生じた損害に対する補償請求権を放棄することを意味するものでございまして、引揚者の財産自体を放棄したものではない、かように考えております。
  142. 東隆

    ○東隆君 引揚者の財産を放棄したのでない、こういうお考えであります。しかし、今までアメリカ関係のものは引き揚げ財産を放棄したような形になっておる。  そこで、ドミニカが移住者の土地をなんか没収したとかなんとかいう、そういうことが新聞に載っておりましたが、これも私は軟弱外交の結果、そういうことになるのではないかと、こう心配をいたしておるのでありますが、その辺のところはどういうふうになっておりますか。
  143. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ドミニカにおきまして邦人の財産が没収されたということは、私ども公電によってはそういう知らせを受けておりません。おそらくこれは何かのお間違いかと存じます。
  144. 東隆

    ○東隆君 先ほど大蔵大臣が説明をされたところによると、どうも在外資産については引揚者給付金等支給法によって帳消しにするようなお話をされたのでありますが、私はこの在外資産に対する答申からいって、政府がとったところのやり方は法的な基礎によってやったのではなくて、法律的義務に基づかない措置でもってやったんでないかと思う。したがって、依然として残っておる問題はあると思う。ことに物的な有体あるいは物的な方面の資産、そういうようなものを中心に考えておられるようでありますが、私はそれ以外に無体財産的なものが非常にたくさん、ことに新しい憲法のもとにおける生活権の保障というような問題を一つ考えてみましても、引揚者に対する補償の問題は数限りなく出てくると思うのですが、この引揚者給付金等支給法によって在外資産その他の補償を打ち切る、帳消しにするお考えですか。これをひとつ総理並びに大蔵大臣からお聞きをいたします。
  145. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) さっき申しましたように、この在外財産についての問題は審議会で長いこと論議しましたが、補償責任というようなものの結論が出ませんでしたので、したがってああいう法律によって支給金を出すということにして、一応本問題を解決しようという趣旨に基づいて、あの法律が審議されたいきさつから見まして、一応この問題はあれによって片付いたものと私ども考えております。
  146. 東隆

    ○東隆君 先ほど外務大臣は、樺太に遺留した在外資産は、今外地になっておりますから外地扱いでありますから、それは没収をされてはおらないのだと、こういうお話でございます。そこで私はそれは当然だとこう考えるのでありますが、樺太庁は、北海道庁あるいは樺太庁と、こう同じようで、戦前には内務省の管轄になっておった。それで非常に性格が違っておるところでありますが、遺留財産に対して当然大きく補償をしなければならぬではないか、こういうふうに考えますが、この点どういうふうにお考えですか。
  147. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 目下のところ、これが没収されておるかどうかということはわからないわけです。知るに由ないわけであります。没収されておるとすれば、この請求権というものは放棄いたしておりまするので、これはどうにもならぬと、こういうことでございます。
  148. 東隆

    ○東隆君 今の外務大臣のお言葉ですと、没収されておるとこれは請求権がないとかいろいろななにで、困るのは日本国民の樺太の引揚者が困るのでありますから、その補償あるいはその他の方法はどういう形でもってお考えになるのか、それをお伺いいたしたい。
  149. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この点に関しましては、先ほど大蔵大臣が答えられましたように、審議会において、補償というような性質のものを出すべきでないという結論が出ましたので、それに従いまして同様に引揚者給付金の措置をとったということでございます。
  150. 東隆

    ○東隆君 千島の漁業権に対して法律を出されて措置を講ぜられたのでありますが、樺太の漁業権あるいは農業その他の問題についても、そういう措置をとってしかるべきでないかと、こういう考え方を持ちますが、この点はどういうふうにお考えですか。
  151. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 樺太、北千島等における、いわゆる日本が放棄した土地につきましては、補償はいたさないのであります。択捉、国後、歯舞、色丹は日本の固有の領土でございます。そういう点から引き揚げた方々、そうしてそのために非常にお困りの方々に対して額面十億円程度の補償をいたしたのでございます。樺太、北千島と違いまして、択捉、国後はわが国の領土でございますから、そういう措置をとったのでございます。
  152. 東隆

    ○東隆君 択捉、国後は固有の領土、こういうお話でありますが、樺太も先ほど申しましたように、内務省の管轄で、そうして外地ではないのです。明らかに国後、択捉と同じような位置に置かれておる。ソ連が占拠しておるだけなんです。で、国後、択捉に対してはああいう措置を講ぜられたが、樺太に対しては何らの措置を講じない。こういうことではこれは非常に片手落ちだと、こう考えますが、この点はどういうふうにお考えですか。
  153. 林修三

    政府委員(林修三君) 昨年の国会で成立いたしました御承知の北方協会の問題でございますが、あれはやはり歯舞、色丹あるいは国後、択捉の地位と、それから樺太あるいは北千島とは、やっぱりサンフランシスコ平和条約以後の地位が異なるが、それ以前はもちろん樺太、北千島がわが国の領土であったことは間違いないのでありますが、先ほど外務大臣から御説明がありましたとおりに、サンフランシスコ平和条約によりまして、北千島あるいは南樺太というものには、日本としては一応主権を放棄した格好になっておるのであります。そういう事情もございますので、昨年の法律ではその取り扱いを異にいたしまして、一応択捉、国後あるいは歯舞、色丹というようなものの漁業権等を一つの対象としてああいう措置を講じたわけでございます。これは御承知のように厳密な意味での補償ではございません。一つの、北方協会というものを作って、あそこに金を出したわけでありまして、厳密な意味での補償ではございませんが、そういう特殊な地位にある、日本はなお主権を持っておると、そういう考え方から出たものと考えております。
  154. 東隆

    ○東隆君 樺太は放棄をしていますけれども、所属はきまっておらないはずであります。それから、戦争前は内務省の管轄であったと、そこに住んでおって引き揚げた人は日本人と、こういうのでありまして、何ら違いがないのであります。国後、択捉には補償するけれども、樺太にはやらない。これははなはだへんぱな措置でないかと、こう考えております。これは何とか救済をしてもらわなければならぬと思うのですが、この点、もう一度一つお答えを願いたい。
  155. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申し上げたごとく、択捉、国後、歯舞、色丹と、南樺太と北千島とは建前が違っております。樺太からの引揚者に対しましては、これは先ほど大蔵大臣の言った引揚者に対する特別措置によってやっているのであります。択捉、国後、歯舞、色丹にはそういう措置をとっておりませんので、したがいまして、北方協会というものを設けまして、そういう措置をとったのであります。
  156. 東隆

    ○東隆君 国後、択捉はこれは固有の領土だと、こういうふうに主張されるのでありますけれども、今ソ連に占拠されている。樺太も固有の領土なんです、そして占拠されている状態は同じなんです。だから北方地域の関係の法律でもって補償をされるならば、樺太のものに対しても補償をするのが当然だと、こういう主張をしている。ただ、条約その他でもって放棄されているから、それで違うのだ、こういうお話ですが、そうじゃない、日本国民なんだ、相手は日本国民なんだから、日本国民に対して補償するのはあたりまえじゃないかと、こう言っているわけです、この点どうなんでしょう。
  157. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 先ほどお答えがありましたように、択捉、国後は立場が違いますが、そのほか日本の放棄した地域は台湾がございますし、朝鮮がございますし、樺太だけではございませんで、まあみな一様に先ほど申しましたような措置で処理をしているということでございます。
  158. 東隆

    ○東隆君 台湾、朝鮮等は外地なんですよ。それで樺太は内務省の管轄だったんです。そして外地とは言っておらないのです。だからはっきり違うのです。だからその点を私は言っているのです。今のお答えでは満足できないですから、もう一度。
  159. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 結局は行政区域をどこに帰属させるかという問題であって、それと、今言った日本が放棄した地域という考え方は、また別の問題であろうと思いますが、内務省であろうと、拓務省に所属の管轄があろうと、これは行政区域をどこに帰属させるかという問題で、内務省にあったからこれは別に扱うべきという性質のものじゃなかろうと思います。
  160. 東隆

    ○東隆君 先ほど外務大臣は、樺太の遺留財産は認めておられる。そして日本の固有の領土で、そうしてそこに住んでおったのは日本人、そうして引き揚げた。千島、国後、択捉と同じように引き揚げて、そこに差別をつける必要は毛頭ない。朝鮮、台湾は総督府でやった。樺太庁、北海道庁はみんな内務省管轄です。そういうふうに、同じ条件のもとに置かれているのですから、こんなへんぱな扱いをするべきでない、こういうのが私の主張なんですから、この点はひとつ、何回も言うようですけれども、お考えを願わなければならぬ、この点、もう一度お答えを願いたい。
  161. 林修三

    政府委員(林修三君) まあこれは一つの立法政策の問題にもなりますが、昨年北方協会についてのああいう措置がとられましたのは、やはり択捉、国後、歯舞、色丹、これはわが国が主権を持っているという建前で、ソ連に対して主張をいたしておりまして、また平和条約においても放棄しておらない、こういう地域についての特殊性という事柄の問題でございまして、樺太、あるいは北千島、これはなるほどまだその帰属国は明白でございませんけれども日本が主権を放棄した点においては、朝鮮、台湾等と同じでございます。したがいまして、その取り扱いに多少差があるということは、これはやむを得ないことだと思うわけでございます。
  162. 東隆

    ○東隆君 これは樺太関係のものは、千島の関係のものと同じような形のものを作り上げなければ承知できない。こういう考え方で強力な希望をいたしておきますから、この点はひとつお含みを願って、私のここの点の質問はこれで終わります。  その次に、引揚者の墓参の問題であります。これは昨年ハバロフスク戦没者のお墓参りをしたようでありますが、あれでもってだいぶ刺激をされて、今度はわれわれのところもお参りをすることができるのだ、こういうような考え方を持っております。そこで政府は、どういうような交渉をされておるか、その後の経過と、これからやろうとすること、そういうことをひとつお答えを願いたい。
  163. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 政府といたしましては、過去数年来、シベリア地区に所在する、主としてわが旧軍人軍属の墓地訪問方に対して、ソ連政府に申し入れをしておりましたが、その結果といたしまして、昨年これが実現を見ましたことは御承知のとおりでございます。すなわち、チタ、ハバロフスク地区に、報道関係者、政府関係者をも含めまして四十三人の方が墓参関係で行ったわけでございます。遺族は三十名。この際、特に南千島、歯舞、色丹の引揚者連盟から、親族の墓参及び墓地修理等に関して、訪問の希望地名並びにこれに要する経費見積り等を添えて、具体的な要望を繰り返し表明されて参りましたので、政府としては、つとにこれが実現方をあわせてソ連政府に申し入れて参りました。しかしながら、遺憾なことでありますが、この申し入れには、ソ連は今日まで同意しておりません。樺太に関しては、何分にも引揚者の数も多く、地域も広範囲にわたっておりまする上に、墓地の所在や現状等も明らかでございませんために、関係者としても具体的な墓参の計画を取りまとめることがきわめて困難と思われますが、ソ連においても今日まで樺太地区の墓参には同意いたしておりません。もとより政府といたしましては、今後とも関係者から統一的な墓参の要望が提出されれば、さらにソ連に対して申し入れを行なって参りたいと考えておりますが、何分にもソ連政府は、樺太を外国人の旅行禁止地域ということに指定しておりますので、そうした関係から、これはなかなか困難であろうと思われるのでございます。今年は一回に三十人以内ということにいたしまして、ソ連の全地域について、七カ所墓参を許すということを言ってきております。一回三十人でございますが、これが重複せざる限りにおいて、三十人の団体で七カ所を墓参させる。こう言ってきております。樺太については、今申し上げたようなことで、外国人の旅行をこの地区には禁止いたしておるという関係で、これは目下のところ困難かと思います。
  164. 東隆

    ○東隆君 ソ連は一方的に外国人の旅行を禁止をしておる。こういう状態で、政府は交渉することはたいへん困難なようでございますけれども、私は、米ソの対立という、ややともすると発火しそうなドライな外交の中で、日本人が果たし得る人間的な潤いのある外交手段、これが僕は墓参であろうというふうに考えるのですが、これをひとつ強力に進めてもらいたいと思います。それについてお考えをお聞きしたい。
  165. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 墓参問題につきましては、数年来の話し合いが実りまして、昨年からこれが開始を見たわけでございます。今後とも引き続きまして努力いたしたいと考えております。
  166. 東隆

    ○東隆君 樺太引揚者の残酷物語の中に、もう一つあるのですが、それは帰国の途中のときに、八月二十二日、国籍不明の潜水艦によって、小笠原丸が増毛沖で、七百二名中六百四十一名が死亡をいたしておる。それから第二新興丸というのが苫前沖で三千六百名の乗船員中四百何名か、これが死亡または行方不明になっておる。それから泰東丸は、増毛沖で乗船者七百八名のうち六百六十七名が死亡をいたしておる。これは、終戦の当時、樺太長官の緊急引揚指令によって帰ってきた、そうして故国を前にして沈没をしたのでありますが、これに対する調査、そういうようなものはどういうふうになっておるか、明らかでございません。国籍不明の潜水艦というのはほぼ見当がついておるのですけれども、それが明らかになっていない。それから補償の道はあまり講ぜられておりません。そこで、これに対して、今までどういうような措置を講ぜられ、今後どういうふうにおやりになるのか、その点をお聞きいたします。
  167. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 御指摘になりました引揚の途中で海没せられました方々に、まことにお気の毒に存じております。これらの方々の遺族に対しまして、引揚者給付金等支給法によりまして、遺族給付金を支給をいたしましたような次第であります。そのほかは、現在のところ、新たな措置を講ずることはただいまのところ考えておりません。
  168. 東隆

    ○東隆君 この問題は、実はあとでまた出て参りますけれども、ことしの八月ごろ合同の慰霊碑ができるようになっております。したがってそれには、千七百名の死んだ人があるわけでありますから、この人たちの霊にもう少しあたたかい報告をしたいと思うのです。先ほどの支給法によっての金額というのは、最高が二万八千円、これははなはだ少ない金額ですね。それから、国籍不明の潜水艦とかそういうような問題、あるいは樺太長官が指令をして、そうして送り返した。これはみんな男は除いて女、子供ばっかりが乗っている。そういうような事態のときでありますから、私はもう少し調査をして、そうしてもっとあたたかい方法を講じなければこれは済まない問題じゃないかと、こう思っているわけです。もう一度お答えを願いたい。
  169. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 樺太長官の命令によりまして疎開をいたす途中の事故でございます。ああいう際のことでありますから、非常にお気の毒なことと私どもは存じておりますけれども、これに対する措置といたしましては、先ほどお答え申し上げました以上のことを、ただいまのところは考えておらないのでございまするから御了承願いたいと思います。
  170. 東隆

    ○東隆君 次に私は、引揚者の有体財産については、支給法でもってお考えになったようであります。しかし、それは法的な規則でやったのじゃない、こういうふうに答申の中なんかを考えますと、そういうやり方でありますが、私はまだ大きく考えなければならぬ問題があると思う。それは無体財産に対する国家補償、これを考えなければ、これはほんとう意味の国民の生活権、そういうようなものを補償することにはならぬと思う。日本国の憲法のもとにおける基本的な人権、そういうような点から考えても、私は無体財産に対するところの補償をこの際考うべきである、こう考えます。  そこで第一番目に、国家公務員及びこれに準ずるもの、これはどういうふうに措置をされているのか、これをお伺いをいたします。
  171. 小平久雄

    政府委員(小平久雄君) 日本の公務員で満州国等の公務員に転出しまして、また日本に帰って参って公務員になったという人、あるいはあちらで公務員であって、こちらに引き揚げてから公務員であった人、それについては、すでに恩給法の適用をいたしておるわけであります。
  172. 東隆

    ○東隆君 おそらく恩給制度でもって向こうに勤めているものだの、その他についてお考えになったのは、これは前の恩給法から考えれば非常に異常な措置である。それで、この点については私は非常に進んだ考え方だ、こう考えます。  そこで、それならば満州あるいはその他朝鮮、どこでもいいのですが、国策会社ですね。満鉄、満拓あるいは満州糧穀会社だとか、その他たくさんございます。こういうようなところに奉職しておった人たちは、これは国家の国策会社でありますから、したがって恩給制度に準ずるような制度を作り上げなければならぬ、こういう気がいたしますが、この点は、どういうふうにお考えですか。
  173. 小平久雄

    政府委員(小平久雄君) ただいま御指摘のような特殊法人に勤務されておられた職員の方の取り扱いにつきましては、内地におきますやはり同種の法人の職員との均衡問題もちろんございまするし、もともと恩給は言うまでもなく国の公務員に対する給与の一部でありますので、そういう関係からして、公務員と異なる関係にあるこういう特殊法人の従業員の方々には、これを適用いたしますことは困難である、かように考えております。
  174. 東隆

    ○東隆君 公務員関係にはできるけれども、国策会社あるいはその他これに準ずるようなものは今できない、こういうお話なんでありますけれども、しかし、国家公務員だけが、その恩典に浴して、そして当時国策会社として勇躍向こうに行って働かれた人たちに対して、その人たちの生活権がおびやかされている、こういうような場合に、それに補償を考えることは、これは当然やらなければならぬことでないか、こう考えるが、それで、これについては私は総務長官のほうで十分にお考え下さって、そして案を作るべきでないか、こういう考え方なんであります。これは総理は、どういうふうにお考えですか。
  175. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 総務長官がお答えになったとおりでございまして、公務員関係は引き継ぎまするが、それが国策会社であろうと、これは筋が違う。公務員とは関係が違うと思います。そういう措置はとる気持はございません。
  176. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 関連。それでは総務長官に伺いますが、たとえば満州の満鉄なんかに勤めておった人は通算しますね、それはいかがでしょう、そうじゃないですか。
  177. 小平久雄

    政府委員(小平久雄君) 通算いたしておりません。
  178. 東隆

    ○東隆君 私はかつて公務員であって、そうして満鉄あるいは満拓等に勤めたときのその通算をしてほしい、こういう請願者がたくさん出ていると思う。これは私は当然の引揚者の要求だろうと思う。だから、これに対しては筋違いだと、こういうようなお答えで、これは国民が満足しないと思う。主権者である国民が満足するはずがないのだ。  したがってこういうような要請が出たときには、これに対しては措置をするのが、これは当然なはずです。それを首相は、簡単に筋違いだから、そういうことはできませんと、こう答えておりますが、これは間違いだろうと思いますが、どうですか。もう一度お答え願いたい。
  179. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 満鉄とか満拓の職員と国家公務員とは、その立場が違います。したがいまして、国家がこれを恩給その他でみるべきものではないと私は考えております。
  180. 東隆

    ○東隆君 私は、国策会社その他に働いた人たちに対しては、特に引揚者に対しては当然国が、新しい日本の国が、これは補償をしなければならぬものだと、こういう考え方です。これはますますそういう方面の人の世論が大きくなって参りますから、私はそれに油をかけるようにやりたいと思いますけれども、その点はお考えを願いたいと思います。  その次に、私は台湾、朝鮮、樺太等の農業会あるいは漁業公社、漁業会、それから農会、産業組合あるいは合作社、こういうようなものは、これは営利を目的としない団体であります。そして向こうで終始そこに住んでおった人たちを相手に、一緒になって仕事をした人たちです。この人たちに対する補償は何らない、ところが新しい日本の国では、農林漁業団体も年金制度、そういうようなものも、共済年金制度というようなものもできているわけです。だから、これに私は当然通算をすべき筋合いのものではないか、こういう考え方を持っているのです。これは筋違いではなくて、ちゃんと筋ができているのですから、ひとつこの点はお答えを願いたい。
  181. 小平久雄

    政府委員(小平久雄君) 先ほどもお答え申し上げましたように、恩給法の関係から申しますならば、国の公務員ではない、こういう関係からいたしまして、満鉄の職員と同様に通算は困難であろうと思います。
  182. 下村定

    ○下村定君 関連。ただいま引揚者の問題、それから満鉄と国策会社に勤めた人に対する処遇の問題が出ておりますが、私は大体におきまして、東委員の御意見に同意であります。  と申しますのは今の恩給法というものは、古くできたものであって、これまでの日露戦争ぐらいまでのところは、あれでよかったのであります。このたびの支那事変、並びに大東亜戦争は、戦争の規模が非常に違います。前には引揚者とか、国策会社の勤務員とか、そういうものはなかった。また戦犯の問題についてもしかりであります。ところが、現在の恩給法並びにこれに関連する政府の措置は、やはり公務員ないし軍人、軍属及びその遺族という方面は着々整えられておりますけれども、この多くのこぼれる者——まだほかにもあります。たとえば赤十字社の救護員で、軍人と同じに働いて、そうして何ら処遇を受けていない者もある。こういう者を拾って、そうして適当な処遇を与えるということは、私は国家として大事な仕事じゃないかと思います。申すまでもなく、一般公務員につきましては人事院がありまして、適宜適切の勧告をされて、その待遇が改善されているのでありますけれども、目下のところ、政府においては、ただいま私が述べましたようなこぼれた人に対する処遇を調査する機関はありません。しかも、これらの人たちは数が少なくて、大体において謙虚な人たちです。みずから自分の権利、権利といって飛び歩く人ではないのであります。そういう人であればこそ、ますます国家はあたたかい手をのべなければならぬと思う。  これにつきまして、私は昨年の恩給制度の改正がありましたときに、内閣委員会において、当時の総理府総務長官藤枝さんに対して、このことを申し上げました。ぜひ政府は、これについて措置をしていただきたい。なお、その委員会におきましては、そういう意味の附帯決議がついております。藤枝長官は、そのときに、これは大事な問題だから検討する、善処するというお答えがあっております。この意味におきまして、私はこういうこぼれた人、しかも自分が団体を作って申請するという力のない人々に対して、国家として何らかの措置がとられてしかるべきと思うのでございます。  これについて総理大臣並びに総務長官の御意見を伺います。
  183. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 下村委員お話と東さんのお話は違うと思います。東さんは通算しろ、こういうお話でございますから、これは身分が違うのだから、通算はできない、こう答えておるのでございます。  それから下村さんのほうは、そういう方々について、満鉄に勤めた人が、あるいは今公務員でなかった場合、あった場合、いろいろの場合がございましょうが、そういう満鉄とか、国策会社、あるいは赤十字社に勤めておった人の処遇について考えろ、通算というのじゃございますまい。だから、話が違うのであります。だから、私は通算ということは、身分が違うからできません、これは筋が違うから……。下村さんのように、そういう気の毒な方々に対して、政府考えないかということになれば、それは前の総務長官のように研究してみましょうという答えが出ます。筋は、私はお二人のは違うと思います。
  184. 下村定

    ○下村定君 今、総理がお述べになりました通り、私は国策会社の人の処遇を通算せよと申したのではありません。大体において、東委員のいわれた御趣旨に同意だと、申したのであります。
  185. 矢嶋三義

  186. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 矢嶋君。
  187. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 総理に伺いますが、身分が違うから通算をしないというと、満州国に勤めた人は、どうして通算なさるのですか。あれは他国じゃないですか。
  188. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 昭和十八年にこういう法律がございまして、——すなわち、日本政府から満州国に派遣になりまして、これは満州国が、建国なさるために優秀なる官吏を日本から派遣しなければならない、そのときには、まだ恩給がついていない、しかしまあ行ってくれ、こういうことで満州国に派遣になり、そうして、その方が満州の仕事をやって、日本政府に帰られた、こういう場合には、その間のサンドイッチの期間を通算するという特例法があったのであります。これも非常に厳格な規定でありまして、満州国で二年以上勤めなければならぬという限定がございますし、また日本に帰ってきてからも一年以上勤めなければならぬ、そうしてまた満州政府においては、官吏と同じような身分でなければならない、こういうような厳格な規定がございます。こういうふうな場合だけに限って、戦前におきまして外国政府職員の期間を通算したのでございます。  したがいまして、異種の公務員と申しますか、異種の職員の期間というものを恩給法の上で通算するということは非常に例外的でございます。で、この満州国政府の職員の期間を通算するという措置ができましたところが終戦になりまして、満州国が解体し、その方々が内地に帰って、それぞれの本属庁に復職するということになりましたけれども、復職ができない、こういう事情があったのでございます。そこで、そういう方々につきましても、日本政府に復職しなくても、その満州国時代を通算し得る、こういう措置を昨年の法律改正でやったわけでございます。  で、こういうふうに異種の公務員の通算につきましては非常に限定的に措置いたしておりますものでありまするから、ただいまお話のございましたような満鉄等、その他の特殊機関の、いわゆる終戦でもって勤務の母体を失ったことによるところのハンディキャップを、どっかで埋め合わせようじゃないか、こういうような考え方から、単純なと申しますか、便宜的に恩給法を適用したらどうか、こういう問題といたしましては、非常にむずかしい問題である、こう考えております。
  189. 東隆

    ○東隆君 先ほど筋違いとかいう——でも、いろいろ問題であります。私は下村さんがお話になったようなつもりでお話をしておるのでありまして、新しいやり方が、制度ができれば、これに越したことはない。しかし通算をしてもいいような組織が新しい日本の国にできておるじゃないか、だから当然考えるべきじゃないかと、こういうふうに申したのですから、この点は、ひとつ誤解のないように願います。  そこで、恩給制度というのは、これは天皇の官僚時代のもので、主権が国民にある今の時代と違うのでありますから、これはもう当然考え方をかえて、そうして引揚者の公務員、その他国策会社その他のものに対しても臨まなければならぬ問題だろうと思う。だから、この点はお考え方を、古い考え方で便宜に措置をするとか何とか、そのようなことでなくて、基本的な考え方を違った立場でもってやらなければ、それは問題にならぬと思う。  そこで、樺太の市町村吏員の身分保障の問題であります。これは町村長は官吏でありますから、これは通算になっておるわけであります。恩給その他の措置になっておりますけれども、吏員の方面は、恩給組合なんかができておるのであります。しかも到達をしておるのでありますけれども、帰ってきて、何らその恩典に浴しておりません。そこでこの樺太の町村吏員の復権の問題、これは当然考えなければならぬ問題だと、この考えますが、この点をひとつ明らかにしてもらいたい。
  190. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) ただいまのお尋ねの点は、樺太のもとの市町村の職員——吏員でございまして、そういう方々が、まあもちろんその樺太の市町村にはそれぞれの、まあ内地の市町村と同じように退職年金条例、退穏料条例と申しますか、そういうものがあったわけでございまして、それに基づいて恩給証書をもらっておる人、あるいはもらうべかりし人、これからもう少し勤め上げれば恩給証書をもらえる人、そういうような方々があったと思う。  そこで、終戦でもって、そういうものが解体いたしまし七、せっかくもらっておった恩給証書というものがふいになった、こういうことだろうと思います。結局そういう問題は、地方経済に対する債権というものが終戦によってふいになってしまったという、それをどうするかという問題だろうと思います。で、御要望の点は、そういうものを恩給に肩がわりして、恩給の上でこれを解決しよう、こういうことだろうと思います。  しかしながら、その問題は、やはり地方庁とその所属団体との間の問題、先ほどの満鉄とその所属職員の間の問題というような処理を、全部恩給にしわ寄せすることになりますので、なかなかむずかしい問題であろうと思います。
  191. 東隆

    ○東隆君 むずかしい問題でほうむられたら、これはたいへんなことになるのですが、総理、どういうふうにお考えですか。
  192. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 満鉄やあるいは石油会社に勤められた方々、そうしてまた樺太の方々……
  193. 東隆

    ○東隆君 そうじゃないのです。
  194. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) いや、そういう樺太における市町村に勤務された方々の恩給と申しますか、恩給に相当するようなものの解決は、なかなかむずかしい問題だと思います。
  195. 東隆

    ○東隆君 これはもう、恩給の年限に到達した人も、全部実はそのままになっておる。そうして、そこに住んでおった公務員だけは継続になっておる。通算になっておるわけです。これはもう、とんでもない冷酷なやり方です。だからこれについては、できないというような、そういうなんでなくて、内務省管轄の樺太庁、そうして、そこにあった恩給条例、そういうようなものによって権利を持っておるのですから、恩給を請求する請求権を持っておるものなのですから、それがとれないということになりますと、これはとんでもないことになる。日本国民です。これを簡単にむずかしいのだとほうむられたら、今のような総理のお答えでは、なかなか満足できるものではないのです。  もう一度総務長官のほうからお願いいたします。
  196. 小平久雄

    政府委員(小平久雄君) 先ほど総理並びに恩給局長から御答弁申し上げておるとおりでありますが、第一には、市町村の吏員でありまして、国家公務員でない。したがって、恩給法で処理するというわけにいかぬということになるわけでありますが、御承知と思いますが、政令でさきに設けられておりました臨時恩給調査会が、三十二年に答申いたしまして「恩給法の対象外にあるものを戦争犠牲のゆえに恩給法の枠内にとりいれることは、一般戦争犠牲者との関係もあり適当でない。」こういう答申をいたしております。今、お話の樺太におきます市町村の吏員も、一種の戦争犠牲者には相違ないと思いますが、これを恩給法の中で処理するということは適当でないと、こう解釈いたします。
  197. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ちょっと関連して。  先ほど池田総理から、国策会社については、これは公務員でない。したがって、通算の措置はできないと断定的に言われましたが、これは将来、自民党の皆さま方も御迷惑されると思いますので、はっきりとそう言われると困るので、例外があることを認めてもらいたい。昭和二十二年法律第百五十一号国際電気通信株式会社だとか、日本電信電話工事株式会社、これが一応国策上買収したという理由で、恩給に通算する措置が特例で認められております。満鉄とかそういう問題は、いろいろ問題があるけれども、断定的に公務員でないから絶対いけないということでないということだけ、一つ認めていただきたいと思います。その点はいかがですか。
  198. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国際電気通信会社の特例は、あれは公務員から行った場合をいっていると思うのであります。これは沿革的にいろいろ問題がございますが、原則としては、今の特別の関係の分だけを今までやっておるのであります。今お話の樺太の市町村の問題、これは、相手方がなくなったのです。公務員は、国家という相手方が残っておる。しかし、満鉄にいたしましても樺太の地方団体にしても、恩給を請求すべき相手方がなくなった。したがって、これが無体財産なるがゆえに、これを補償するということになりますと、これが有体財産を補償しないという場合との権衡その他考えて、だから特殊の例を、満州とかあるいは国際通信社等特別な沿革ある特殊な法律に基づくものと、相手方のなくなった分が、有体財産というものは放棄されたけれども、無体財産なるがゆえに特別の措置をとるということにつきましては、なかなかむずかしい問題がある。これが総務長官が今言っておりますように、戦争犠牲者との関係等がございますので、私はむずかしい問題と申し上げたのであります。
  199. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 公務員であった者が復職すれば、これは通算措置は当然考えられると思うのです。この場合、総務長官、恩給局長、公務員でない者が絶対そういう通算をされてないということは、言い切れますかどうか。その点いかがですか。
  200. 小平久雄

    政府委員(小平久雄君) ただいまお示しのケースは、国際電気通信会社を政府の経営に移した場合に、電気通信会社の職員の勤務年数を公務員としての勤務年数に通算をした、こういう場合であります。いわば会社が吸収、合併のような場合でありまして、しかも合併したほうは、吸収したほうは国家であります。そういう関係からして通算をいたしたのであります。そのかわり電気通信会社のほうでは、別段退職金等も支払いをしなかった、こういう関係でございます。
  201. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 だから、その事情はわかっているのです。しかし、先ほど池田総理は、公務員でない者は、それはいけないのだという断定的な答弁をされましたから、やはりそういう、いろいろ事情はありますし、強制買収等事情はあるけれども、公務員でなかった者は、そういうケースにおいて買収された場合には、公務員でない者も通算されておる例があるということをひとつ認めてもらいたい、こういうことです。
  202. 小平久雄

    政府委員(小平久雄君) 今申したとおり、そういう例があることは認めておるのでございます。法律でちゃんときめたわけでございます。
  203. 東隆

    ○東隆君 今の樺太の吏員の問題でありますが、これは公務員として町村固有の事務ももちろんやったけれども、国家事務を、これはほとんどやっておるわけであります。だから、質的に言って、ほかの団体とこれは非常に違っておると思います。だから、性格は前の恩給制度、そういうようなものにこれは非常に近いので当然考うべきことだし、それからケースとしては、これが一つ残されておるわけであります、樺太の町村吏員の問題だけが残されております。この問題は、ひとつ特にお考えになってしかるべきじゃないか、こう考えるのです。筋違いだから、それはだめだ、こういうお答えでは満足ができないのですが、もう一度、ひとつ総理のあたたかいお答えを願います。
  204. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) あたたかい気持を持ちたいのですが、やっぱり理論的のことも考えなければなりません。今お話の樺太のお話でございますが、台湾にもあるわけであります。そういう点をよく考えないと、樺太ばかりどうこうということは、それが、台湾は外地だった、樺太は内務省の所管だったというので私は区別はできない問題だと思います。いかにあたたかく、あたたかい措置をとろうと思っても、やっぱり国民も、みな見ておられるのでございますから、私は合理的なことから出発しなければならぬと思います。
  205. 東隆

    ○東隆君 樺太の吏員については、まだ言うべきことがたくさんございますが、時間がだいぶたちましたから、これは言いません。これは新しい観点から、日本国民としての公務員に対する考え方が違った考え方で進められておるのですから、その考え方で判断をすべき筋合いのもので、私は古いものと考え考え方からは、これはできるはずがない。戦争という大きなできごと、そうしてそれの犠牲で、こういう問題が起きておるのですから、新しい観点から見ていかなければならぬ問題なのです。  それでは、時間が非常に経過してしまいましたから……。  これは、樺太引揚者の預金が昭和二十年の七月三十日現在で二億一千七百二十九万円となっております。これ以外に、北海道拓殖銀行には樺太庁の扱いの公金、それから〇〇工事と称した軍の飛行場、それから軍用道路建設費、逓信国債、こういうふうな関係の預貯金が私はあったろうと思う。ところが、これは閉鎖機関になりませんでした。したがって、その当時の状況は、あまりはっきりいたしておらぬと思うのですけれども、しかし預金の支払いを停止をするという行政措置をとられた。したがって、行政措置をとられるからには、十分に預貯金の調査、それからその後の経過、そういうふうなものについてお調べになっておると、こう思いますので、その預貯金の内容、その経過、そういうようなものについて御説明を願いたい。
  206. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 終戦時現在の預貯金額は、帳簿書類が御承知のとおり全部ございませんので、一切不明でございます。ただ、終戦直前の七月末現在の預金総額、これが報告書によって先ほど指摘されましたように二億一千七百二十九万四千円、七月末の残高報告はございますので、これ一つがはっきりわかるだけでございまして、あとはほとんど不明でございます。
  207. 東隆

    ○東隆君 その二億一千七百二十九万円というのは、樺太の引揚者の預貯金になっておるわけです。したがって、それ以外に私が申しておるのは、樺太庁扱いの公金、それから〇〇工事と称した軍の飛行場、軍用道路の建設費、逓信、鉄道国債等の金がどれぐらいあるか、それをお聞きをいたしておるわけです。
  208. 大月高

    政府委員(大月高君) 昭和二十年七月末におきます樺太における預金の総残高が二億一千七百万円でございまして、その中に日銀代理店預かり金勘定、つまり国庫金でございます、これが百二十三万二千円、これが中に入るのであります。
  209. 東隆

    ○東隆君 〇〇工事だの、公金その他の関係はおわかりになりませんか。
  210. 大月高

    政府委員(大月高君) 樺太におきます終戦前後の国庫金の支払いにつきましては、手続といたしましては、日本銀行から国庫金を送金いたしまして、樺太にございます日本銀行代理店、具体的には北拓の支店であると思いますが、そこへ払い込みます。それに、その預金のうちから正当なる支出官の振り出しました小切手に基づきまして、これを払っていったわけでございますけれども、残念ながら終戦後の混乱によりまして、かつ現地の支店が、ソ連のほうに接収されて証拠書類その他全部今ございませんというようなこともございまして、幾ら預金がございまして、幾らその中から払い出されたかということは、一切不明でございます。
  211. 東隆

    ○東隆君 実は、軍関係だと思うのですが〇〇工事というのは。ところが、これは、〇〇工事といったのは、日ソの不可侵条約その他の関係で、軍事施設ができなかったから〇〇工事、こういうような表現をされておったものと、こう考えますが、その請負の金だの何だのは、実は預金の支払いを停止した後において、札幌に引き揚げた請負業者が北拓から金を受け取っておるわけであります。これは私は非常な間違ったことをやっておるのじゃないかと思う。というのは、樺太の引揚者の預金に対しては、本土に帰って、そうして本店が札幌にある拓銀から支払いが停止されておるそのときに、もう軍は解体をしておるのにかかわらず、軍の関係の請負をした人が、樺太に引き揚げて、そうして支払いを停止していたときに銀行から受け取っておる例を知っておるわけです。  そういうような事態はどういうふうに解釈をされますか。これの説明を願います。
  212. 大月高

    政府委員(大月高君) 終戦後におきます国庫金の支払いは、先ほど申し上げたような手続で行なわれるわけでございますので、当時の銀行サイドにおきましては、その金がいかなる目的で、いかなる人に支払われたかということは、つまびらかにいたしません。  で、もしその金が、何らかの請負業者その他の軍関係の方に払われたといたしまして、その人が、その金をかりに北拓の、まだ樺太にございます支店に、今度はその人の預金としてやっておったといたしますと、それは当然一般の樺太における預金の取り扱いに関する規制に従いまして、内地において支払われたわけでございます。で、内地における樺太の預金の支払いにつきましては、御存じのとおり終戦直後、八月の二十日から自由になりましたが、すぐその月の二十九日から一千円を限度といたしまして、それ以上の金は支払い停止になりました。それから引き続きまして、十月の二日におきましては、全面的な禁止になっておる。それからまた昭和二十五年でございますか、一月から六月ごろの間に若干の、預金額の四分の一以内の支払いが許可されまして、それからまた、これが停止になりました。最後に金融機関再建整備法に基づきまして、これを払うという手段が法的に講ぜられまして、その後その状態において続いておる、こういうことでございますので、そういう時期的に一部支払われ、あるいは全面停止になり、あるいは全額支払われる、そういうような制度の変遷に従いまして、もしその間に支払いを受けられたとすれば受けられたはずでございまして、違法にやられておるという事実はないと思います。
  213. 東隆

    ○東隆君 私のところにある例は、はっきり人を申してもいいのですが、支払いが停止をされておるときに北拓から請負者が金を受け取っておる。こういうようなことは、それは当然違法な行為だと思いますが、それをあえてやりながら、引揚者に対しては停止をした、しかもその停止の法的根拠ですね、これをはっきりひとつ伺いたい。
  214. 大月高

    政府委員(大月高君) 前段の、違法に払い戻しを受けたというような事実はないと思います。  それから、停止についての法的の根拠は、いろいろ変わっておりますので、若干詳しく申し上げますと、最初昭和二十年の八月の二十日におきまして、樺太の引揚者の預金の支払いは内地において許可されておるのでございますが、これは銀行等資金運用令という総動員法に基づく勅令に基づき、預金の便宜代払い制度があり、昭和二十年八月二十日付の通達により、同日から樺太引揚者にも適用されることになりました。それから、引き続きまして八月の二十五日から、朝鮮、台湾、関東州からの引揚者についても、同様の措置がとられたわけでございます。最初許可されました根拠法規はそれでございますが、次いで同年、昭和二十年の九月二十二日付で、連合軍指令部から金融取引の統制に関する件という覚書が出まして、これは御存じのように日本政府に対する命令でございます。その命令の内容は、「金、銀、在外資産、外国為替等に関する取引は、大蔵省が許可した場合を除き、一切禁止すべし。」、こういう指令でございます。この指令に基づきまして、大蔵省からは、「当省から何分の指示があるまで外国為替その他これに準ずる取引は停止する。ただし、一般引揚邦人については、さしあたり千円の範囲内でこれに応じてもよい。」という通達が出ておるわけでございまして、その根拠法規は、今申し上げました連合軍司令部からの覚書でございます。次いで、十月の二日に至りまして、この千円の限度につきましても、これを禁止するということになりまして、大蔵省から日本銀行にこの旨を指示いたしました。日本銀行を通じて各銀行に対し通知をいたしました。その結果、樺太からの引揚者に対する預金の支払いも中止された。これは必ずしも北拓だけでなしに、あらゆる銀行であったわけでございます。  次いで、先ほどの覚書に基づきまして、国内における立法措置が講ぜられまして、昭和二十年十月十五日の省令でございます。金銀有価証券等の輸出入等に関する金融取引の取り締りに関する省令(大蔵省令八十八号)が公布されまして、その結果全面的に預金の支払いが禁止されたわけでございます。その根拠は今の大蔵省令八十八号でございます。  それから、昭和二十五年の一月二十五日に、大蔵省告示第六十二号によりまして、その当時ございました樺太預金の四分の一以下について支払ってもいいという告示が出たわけでございますが、これは先ほど申し上げました省令八十八号に基づく許可でございます。ところが、その根拠法規がその年の六月三十日に廃止されまして、その告示自体毛失効いたしたわけでございます。その結果、再び樺太関係の預金の支払いは停止されたということでございます。次いで、昭和二十九年五月、金融機関再建整備法の一部改正がございまして、在外債務に関する債権の支払いの許可ができるようになったわけでございます。その結果、樺太関係の預金の支払いを開始いたしました。で、結局最後に、昭和三十一年六月末までに必要な支払いを行ないました。その結果残りましたものは、樺太関係の預金といたしまして千百八十三万円が預金として現在残っております。それから、申告のなかった市町村預金と、申告のなかった一般の債務でございますが、これが五百二十五万別にある。こういう格好でございまして、その後その預金の格好になりました千百八十三万円は、普通の預金と同様に現在支払ってきておる。  これが法律及び行政措置の概要であります。
  215. 東隆

    ○東隆君 今の説明と私は違うのですが、問題は、閉鎖機関に拓銀がならなかったわけです。ところが、閉鎖機関に関する覚書を援用されておるように考えられておるのですが、その点はどうなっておるのですか。
  216. 大月高

    政府委員(大月高君) 北海道拓殖銀行は閉鎖機関に指定されておりません。そういう意味で、閉鎖機関に関する覚書の適用を受けておらないわけでございます。先ほど御説明申し上げましたような金融取引の統制に関する覚書、そちらに基づきまして支払いを停止された、こういうことでございます。
  217. 東隆

    ○東隆君 樺太の引揚者の預金は、これは外国為替ですか。
  218. 大月高

    政府委員(大月高君) その覚書に「外国為替」という定義がございまして、その中に含まれております。また、これは別に、この覚書の中に「在外資産」という定義がございまして、その在外資産には、外地にございます預金を在外資金と言っておりまして、その二つの面から禁止されたわけでございます。
  219. 東隆

    ○東隆君 樺太の引揚者の預金は、銀行からいえば債務、それからこちらからいえば、預金者からいえば請求権で、為替じゃない。しかも、引揚者はその停止されない前に日本に帰ってきて、そうして本店はしかも札幌にある。こういう関係なんです。しかも、樺太における預金というものは大部分札幌に送り返した。そういう関係の中で問題が起きたのですから、この点は通牒その他で援用されておるけれども、それには該当しない。
  220. 大月高

    政府委員(大月高君) 銀行預金の関係におきましては、各店舗における預金者がその店の債権者と、こういうことになっております。したがって、この一連の措置における考え方は、樺太における預金は樺太の支店の債務でございまして、それを内地にある支店において払いますときには為替関係が起きる、こういうことでございまして、そういう一連の徹底した観念でこの法制ができておるわけであります。
  221. 東隆

    ○東隆君 本店と支店との関係は、これは本店は札幌にあるのですけれども、その関係は、私は今の考え方は間違いだと思う。  それから、樺太の支店に預けたものは特定のものを預けたのではないのです。そうしてそれの請求権は、預けた金は、全部現物は札幌のほうに来ておる。そして、その日本人としての引揚者は札幌に来ておるわけですから、それに対して停止をする根拠はないです。
  222. 大月高

    政府委員(大月高君) 今の関係を法律的に申しますと、内地にある銀行の支店が樺太にある支店にかわりまして預金を払うということは立てかえ払いになるわけでございまして、立てかえますと、その内地にある支店は樺太にある支店に対して債権を持つ格好になるわけでございます。これは同一銀行の場合には、法人格が同じでございますので、その関係はもちろん民法あるいは商法上は一緒になるわけでございますが、為替取引という観点から申しますと、これは明らかにほかの店の預金をかわって支払うと。で、それに対して、ほかの店に対して債権を生ずるという関係で為替関係を生ずるわけでございまして、これはまた、今の代払いの問題は、必ずしも北拓の預金に対して北拓の内地支店が払ったわけじゃございませんので、たとえば第一銀行でございますとか、富士銀行でございますとか、そういう店でみんな払いまして、で、それを当時の機構といたしましては、日本銀行が全部責任を引き受けて、あとでそれを北拓からまた請求する、こういう機構になっておったわけでございまして、当然債権債務の関係も第三者との間に起こっておりますし、為替関係から申しますれば、当然資金の流れは為替として取り扱われるものでございます。
  223. 東隆

    ○東隆君 この問題は、私は、いかに説明をされても、本店が札幌にあって、閉鎖された関係でない。ほかのいろいろな朝鮮、台湾銀行その他とは全然性格が違うわけですから、したがって、しかも樺太における預金は大部分札幌に引き揚げておる、こういう状態のもとで、樺太における——しかも引き揚げのときにはみんな貯金をしなさい、こういうふうに指令をして、そして集めて、そしてそいつをとめるわけですから、これほど残酷なやり方はないのです。だから、その当時の情勢その他をもう少し私はつまびらかにして、そうして——この問題は私は時間がございませんから、これ以上やりませんけれども、ひとつ日本銀行からおいでになっているはずでありますから——十月の二日に日本銀行の札幌支店の鈴木某なる者が書いた手紙でもって支払いの停止をやっておるわけです。これは当時としてはいろいろな事情があったろうと思うのですけれども、はなはだ間違ったことをやっておる。到達主義は、その当時は当然でなかったと思いますが、到達もしないものをたてにしてやったのでありますから、その手紙は完全に公文書偽造みたいなものだと、こう考えておりますが、この点明らかにしてもらいたい。
  224. 福地豊

    参考人(福地豊君) ただいま御質問ございました、私のほうの札幌支店から出しました文書の件でございますが、当時の私どもの記録を調べますと、先ほど大月政府委員から答弁申し上げましたように、二十年の十月の一日に、大蔵省の当時の金融局でございますが、金融局から私のほうの本店に、外地関係の預金者の便宜代払いは今後何分の通知あるまで停止するように指示がございました。それに基づきまして、私どもの本店から、これは札幌だけでございませんで、全支店に指令いたしまして、それに基づきまして、本店並びに全支店から関係の金融機関に通知したその一つでございます。で、ただいま鈴木という名前を御引用になりましたが、鈴木君と申しますのは、当時札幌支店の支店長代理なので、こういう文書に捺印する責任者の資格にあった次第でございます。したがいまして、私のほうから申しますと、これは当然の公文書であると考えております。
  225. 東隆

    ○東隆君 その文書の中には、「今般聯合国に於ては殖民地銀行、外国銀行に対し閉鎖命令相成候については」と、こういうように書いて、そうしてそういう冒頭で書いておどしをかけておる。それについての責任をお持ちになりますか。
  226. 福地豊

    参考人(福地豊君) ただいまの事情でございますが、これは私、昔のことになりますので、若干推測が入るようなことになるかと思いますが、当時の記録を調べますと、大蔵省あたりからの連絡におきましてもそのような趣旨が書いてございましたので、おそらくそれを引用したのだろうと、こういうふうに推測いたしておる次第でございます。
  227. 東隆

    ○東隆君 これははなはだ何ですけれども、ごらんに入れますが、読み上げて、そうしてそいつについての感想をひとつお願いします。
  228. 福地豊

    参考人(福地豊君) では読み上げます。    昭和二十年十月二日          日本銀行札幌支店   北海道拓殖銀行殿  今般聯合国に於ては殖民地銀行、外国銀行に対し閉鎖命令相成候については外地(樺太も含む)関係並朝鮮台湾両銀行の内地店舗の預金の便宜代払制銀行に於ける預金等各店払及預金小切手制の取扱は今後何分の通知ある迄一応猶予する様取扱相成度、而して大蔵省に於ては之が善処方について目下努力中に付預金者に不安の念を起さしめざる様、努めて慎重を期せられ度 こういうことでございます。これは私のほうから出しました文書でございます。
  229. 東隆

    ○東隆君 先ほどの銀行局長の説明とこれとは全然違うのです。閉鎖銀行に云々の何ではない。そういう行政措置を大蔵省のほうでおとりになっておるのですか、ひとつ御答弁願います。
  230. 大月高

    政府委員(大月高君) ただいまの問題の法的な根拠は私が先ほど申し上げましたとおりでございまして、閉鎖機関に関する覚書に基づいたものではなくして、外国為替その他取引に関する覚書に基づいたものでございます。  そういたしますと、今お読み上げになりました文書がおかしいじゃないか、こういうことだと思いますが、これは実は今いろいろ御説明がございましたように、日本銀行札幌支店から出ました文書でございまして、これに対してわれわれのほうから指示いたしましたことは、「ついては」という言葉ではなかったわけでございます。で、日本銀行からも各ほかの銀行に対してもいろいろこの関係の通達は一斉に行っておるわけでございまして、そういう通牒を参考のために調べてみますと、そういうように書いてない。で、閉鎖機関に関する覚書と外国為替取引に関する覚書というようなデリケートな問題につきましては、末端の支店においては十分その関係がわからなかったと思います。当時早々のことでございまして、わからなかったのじゃないかと想像するわけでございまして、そういう意味で、この言葉として「ついては」という言葉が誤解を招く言葉になっておる、そういうことだろうと思います。そういう意味で、実体は私が御説明申し上げましたようなことでございまして、中身について預金の支払いをとめるということについては間違いないわけでございまして、御参考のためにほかの銀行に参っております通達をちょっとここで御披露いたしてみますと、「外地銀行閉鎖並ニ外地及内地間資金移動ノ禁止ニ伴ヒ当分ノ間標記ニ関シテハ左記ノ通り取扱相成度旨日本銀行営業局ヨリ通牒有之候」についてはというような表現になっておりまして、札幌支店における若干の言葉としての不正確さである、こういうふうに御了解願いたいと思います。
  231. 東隆

    ○東隆君 この札幌支店から出た手紙は、これはどちらが責任をお持ちになるのですか。大蔵省ですか、日本銀行ですか。
  232. 大月高

    政府委員(大月高君) 日本銀行札幌支店から出ました文書自体については、日本銀行の責任において出されたものだと思います。しかし、その基礎法規の関係については大蔵省が責任を持っているわけでございます。
  233. 東隆

    ○東隆君 日本銀行。
  234. 福地豊

    参考人(福地豊君) ただいま御質問ございました札幌支店の通知でございまするが、閉鎖機関云々の文句をリファーしてございますけれども、大体内容といたしましては、預金の代払い停止が主眼でございまして、この閉鎖のほうをはっきりした理由にうたっているというふうには読めないものと思っておりますので、その辺のところは御了承を願っておきたいと思います。
  235. 東隆

    ○東隆君 これは日本銀行と拓殖銀行が話し合いをしてこういう手紙を書いて、そうして拓殖銀行にそれを持ってきて支払いの停止をさしたのです。そうして、そのあと日本銀行その他のほうで、これは大へんなことをしたと……。
  236. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 東君、ちょっと御注意申し上げますが、あなたと、それからあなたの御関係の民社の持ち時間が経過いたしましたから、御了承の上で簡単に願います。
  237. 東隆

    ○東隆君 あとから通達が出たと、こういうもっぱらの評判があるのですから、この点は私はもう少し今後においては明らかにしたいと思いまするので、きょうはこの程度にとどめます。今までの政府においても、もうすでにそういうむちゃなことをやられておるのですから、この点はひとつ十分にお考えおきを願いたい。  実は、はなはだ何ですが、もうちょっと時間をいただきたいのですが……。
  238. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 簡単にひとつ。
  239. 東隆

    ○東隆君 それは残ですね。市町村のものも支払うことができませんし、それから個人のものも、もうたいてい死んでしまった人だから、通帳を亡失したものばかりです。それが千数百万円ばかりあるわけでありますが、これは私は簡単に言えば、新しく制度をこしらえて返して、樺太の人たちの福利厚生の道に合うような制度を作るべきだと思うのです。ざっと三百倍いたしますと三十億円になりますし、それの金利をかりに考えますと、一億八千万円ほどになりますから、これは残酷な扱いをされた樺太の引揚者を私は優遇することができるのじゃないか、こういう考え方を持っております。これはなかなかむずかしいだろうと思いますけれども、残っておる金は、これは永久に私は拓殖銀行営利の目的に使われるかもしれませんけれども、涙のこもった金だ、こう思いますので、これはひとつ何らかの措置をとって、法律的な措置を作って、そうして財団法人その他を作って、そうして樺太の引揚者の福利厚生の方面にでも使われることができれば、私は、これはたいへん罪滅ぼしになるのだ、こういう考え方でございますが、この点について大蔵大臣のお考えをお聞きします。
  240. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 本邦外の居住者には預金の支払いはできませんが、本邦内の居住者がこちらへ帰って来るというときには、請求があればこの預金の支払いをするというようなことになりますので、まだまだこの問題は今後どれだけの請求があるかわからないときに、この金の処理を、今おっしゃられるような方向に使うということは、私はむずかしいことだ、こう思っております。
  241. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) これをもちまして東君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  242. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 次に、白木義一郎君。
  243. 白木義一郎

    白木義一郎君 質問に先立ちまして一言申し上げたいと思いますが、あるときイギリスの有名な三人の政治家がおりまして、一体、政治家として大事なことはどんなことだろうという話になりましたときに、一人の政治家は、それは誠実である、このように答えました。また、次の政治家は、政治家としては弁論が大事である、このように答えました。ところが、三番目の政治家は、それらの素養も大事であるけれども政治家として最も大事なことは忍耐である、こう返事をいたしましたところが他の二人の政治家もそれに賛成いたした、このような話がございますが、そのようなことを含んでこれから大臣に御質問申し上げますので、元気でひとつ御答弁をお願いしたいと思います。  そこで、まず最初に、わが国の経済並びに将来を決する外交問題についてお尋ねをいたしたいと思います。御承知のとおりに、最近の国際収支の悪化から、設備投資の削減、公定歩合の引き上げ、市中金利の引き上げ、貸出資金の縮小、金融引き締め等を強化されておりますが、そのためにわが国の大中小企業を問わず、金詰まり、倒産、不渡手形の激増に、国民はその将来に戦々きょうきょうとしておる現状でございます。かつて総理は、経済のことは池田にまかせろ、このようにおっしゃったことがございますが、国民というものは、一国の指導者の一言一句に非常に敏感なものでございます。いまだに国民は、このあなたのキャッチ・フレーズを忘れてはおりませんが、再び国民に向かって、総理は、このキャッチ・フレーズを自信を持って宣言する御確信があるかどうかをまずお伺いしたいと思います。
  244. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本の経済というものを、単に国際収支の赤字ということだけで判断すべきではございません。それには赤字がどういうふうな理由で、あるいは原因で出てくるかということを究明しなければなりません。そうして金詰まり——もちろん金詰まりでございます。どこでも金詰まりのところなんでございますが、日本の経済が急激に伸び過ぎたから金詰まりなんで、それを直そうとして、また、直っていくような方法を講じておるのであります。一部の現象を見てから、全部がもう行き詰まったのだ、こういうふうにやっちゃいかぬ。そうして、またいろいろな経済的のことも、ムードというもの、不渡手形が激増した、私は、そう不渡手形が激増してどうこうということではない。激増して、とても経済の運営がつかぬというのではない。日本の経済がどうなるかということは、われわれ自身が考えると同時に、やはり外国が日本の経済をどう見ているかということも、これは国際的に非常に大切なんであります。私は、日本の外貨が十五億ドルを保っているということは非常な信用であると考えております。しこうして、また、日本の今まで出しておりまする国債あるいは公社債等の動きを見ましても、私は、世界の人々も、経済が、今あなたがおっしゃったように、もう危殆に瀕して大へんだというふうに世界の人は見ておりません。したがいまして、伸び過ぎた経済を調整しながらいけば、私は、日本の経済の将来は明るいし、外国の人もこう見ているということを確信を持って言えると思います。
  245. 白木義一郎

    白木義一郎君 再びまかせろというような御確信の言葉がなかったことを残念に思います。  そこで、御承知のとおり、科学の非常な脅威的な発達のために、われわれは第三次の世界大戦の恐怖を日々感じておりますが、しかし、その戦争に相当するものが、別の形で世界に現われてきております。それはいわゆる経済競争、あるいはまた経済戦争という形で現われてきております。この経済競争というものは、一見非常に平和的に見えますが、時によっては戦争以上に重大なもので、この競争に破れた場合、その国は非常に衰微し、困窮しなければならなくなるからであります。そこで、経済競争に勝利をおさめるということが国の最も大事な命題であると思いますが、その点、総理の御見解をお伺いしたいと思います。
  246. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) われわれ自由民主党、そうして私は自由民主党の総裁といたしまして、国政全般をまかしてもらっておるのであります。したがいまして、私は、その責任と、そうしてわれわれの希望と、これによって毎日を過ごしておるのであります。  次に、国際経済競争と申しますか、これはなかなか熾烈でございます。われわれも、この国際経済競争にほんとうにりっぱな力を持って、技能を持って出ていこうと、今自由貿易の立場に帰りまして、そうしてその力をつけておるのであります。先ほど申しておりますごとく、日本が今国際経済競争に立ちおくれするだろうと見ている外人は、私はないと思います。日本は、自由主義国家内におきまして高度成長の選手だと、そうして昔の日本の品物は安かろう悪かろうだった。しかし、このごろは悪かろうじゃなしに、非常にいいものであります。そうしてあまり安くもない。そうして競争力が相当あるということを各国の人は思っておるのであります。われわれもそういう自信を持って今努力を続けておるのであります。
  247. 白木義一郎

    白木義一郎君 そこで、御承知のごとく、わが国の経済の現状では、アメリカ経済との関連なくしては、日本の経済を考えることはできない状態であります。いわゆるアメリカ経済の景気不景気によってわが国の経済が左右される。これをいわゆる対米依存の経済と呼ばれるゆえんであると思っておりますが、アイゼンハワー大統領の末期から起きたアメリカの不景気も、ケネディ大統領の経済政策によって上昇してきておりますがゆえに、当然日本からの対米輸出が伸びていかなければならない。しかし、それがなかなか思うようにいってない。この点について今後の総理方針をお述べ願いたいと思います。
  248. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 最近の日米貿易は非常に伸びております。去年の十一月ごろからアメリカとのLC関係は一億ドルをこえまして、前年に比べまして相当な伸びであります。一割あるいは一割五、六分、あるいは二割近い月もございます。そういうふうな状況で、アメリカの景気上昇によって相当伸びておるのであります。昨年の十一月ごろからの実績でございます。  それから、アメリカとの関係日本ばかりではございません。東南アジアのほうの国々におきましても、アメリカの生産の増強、景気の上昇は、東南アジアの経済にもよほどいい影響があるのであります。そうして、また、ヨーロッパにおきましてもそういう状況でございます。われわれは、この機会を利用いたしましてアメリカへの売り込み、そうして、また、最近非常に伸びてきておりまするEEC共同体との関係も、もっともっと伸ばしていきたい。たとえば先般、今こちらへきておりますオランダとの貿易なんかは、一昨年に比べて、昨年は五割ふえているのであります。だから、EECのあの発展は、日本の輸出貿易に非常な好影響があるという気持で私は進んでおります。
  249. 白木義一郎

    白木義一郎君 総理からお答えがありましたが、現実の問題としては、日本の国民は、アメリカがみずからの繁栄を維持するためにドル防衛政策をとり始めたということを心得ております。アメリカ自体が国産品を奨励し、また、域外買付の緊縮などもその政策の一端の現われであります。バイ・アメリカン、そしてシップ・アメリカン政策、有名な綿製品の賦加金の問題、このように、アメリカ国内で保護貿易論者が非常にふえてきている。ゆえに、将来の対米貿易が非常に心配である、このように大衆は論じもし、また、語ってもいる現状でございますので、その将来性について、確固たる御答弁を天下に示していただきたいと思います。
  250. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) いろいろな見方もございましょう。そして、また、金融、財政につきましては、世界のどこの国よりも日本議論が多いようでございます。だから、いろいろな議論があることはいいのでございますが、一がいにアメリカが日本との貿易をバイ・アメリカンで非常に押えようとしているという、全体的にそうだとごらんになるのは、私はいかがなものかと思います。もちろん綿製品の問題がございましょう、あるいは合板の問題、あるいは金属食器の問題、いろいろな問題があります。体温計の問題、しかし、アメリカ自身も常に言っておりますごとく、日本の商品が流れ込んで困る。しかも、価格が不安定で向こうの業者が因る、しかし、全体的に見てごらんなさい、アメリカと日本との貿易はふえるべき筋合いのものだ、二年前には一年に五割ふえました。そして、去年は横ばいでございました。しかし、ことしは今申し上げましたように、相当今ふえつつあるのであります。だから、個々の問題につきましての交渉、あるいは難関はございますけれども、全体として見たらふえるべき筋合いのものだ。アメリカも、バイ・アメリカン、シップ・アメリカン、こう言っておりますが、アメリカだって、自由貿易主義でなければ立たないということはケネディ大統領が言っておるのであります。関税を引き下げる、そして自由貿易主義でいこう、こういう建前をますます強くしていこうとしておるのであります。そうしなければ自由国家群がもたない、私は、そういう意味におきまして、お互いに分業的にやって、そして貿易を拡大していくところに、世界の進歩、各民族の福祉が持ちきたされる、こういうことはどこの為政者もそういう気持でいっておると思います。したがって、向こうの神経をいたずらに刺激しないように、合理的なりっぱな方法で貿易をやっていくことが一番必要だと思っております。
  251. 白木義一郎

    白木義一郎君 総理大臣が最も悩んでいらっしゃる問題は、国際収支の逆調という問題じゃなかろうかと想像をしておるのですが、本年度は輸出四十七億ドル、輸入四十八億ドルの目標を立てて、そして、下半期には国際収支をりっぱに建て直して改善してみせるということを発表されておりますが、その具体的な建前といたしまして、また、政策は政策といたしまして、国民が安心して、それならば何とかいけそうだというような具体的な政策、また、貿易拡大政策の計画書といいますか、青写真を国民の前に披瀝をしていただきたいと思います。
  252. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 昨年の十一月ころは一−三月危機とか、あるいは三月末の外貨は十二億台だろうというふうなことを言っておられましたが、そうはなりません。御承知のとおり、二月末も十五億一千四百万ドル、十五億台を維持しております。まあアメリカのほうから二億借りましたが、先月はやはり四千八百万ドルの外貨を償還しておる。こういうような格好でございまして、私は昨年の十一月、十二月、池田何をしているのだ、今に日本は破産するぞというような雑誌も見たことがございますが、しかし、まああなたのおっしゃるようにいろいろな議論に対しては、私は忍耐をしてきまして、大体十五億ドルの線を維持しているわけであります。それはもちろん借ります。借金はいろいろいたしましたが、しかし、片一方では輸入原材料の在庫が相当まだあるということから考えまして、私は今後今までの引き締め政策を堅持すると同時に、そうして日本の設備投資の合理化を早く手を打って、従来六月ごろにやっておったのを、私は四月の初めに合理化審議会にかけて三十七年度の設備投資をどうやっていくか、どういう方面の設備投資をうんと広げるか、あるいはどういう方面は自由化のためにある程度やむを得ない、こういう計画を四月の初めに立てまして、そうして片一方では世界の上向きの経済にマッチするように各国別に輸出計画を立てていく。そうして輸入のほうはできるだけ押えるというふうにしていけば私はいけると思うのであります。国際収支の均衡、ことしの秋、こういう大目的に向かってあらゆる手を打って私は進んでおるのであります。いずれにいたしましても、世界の日本に対する信用、これが一番でございます。その点におきましては、去年の暮れのいろいろな言論界におけるようなことは今は起きておりません。今後も起こさないように私は考えていっておるのであります。
  253. 白木義一郎

    白木義一郎君 今お答えになったようなことを一応私たちは了承して、今後の方針をながめていきたいと思います。私はこれらの国際収支の逆調というものが、あるいは経済危機といわれていくような心配のもとは、単にこれは一時的な現象でなくて、終戦後の長い間から続いている何といいますか、対米依存といいますか、そういったような貿易構造そのものの欠陥が、ここへきて世界的な立場に立った日本に現われてきておるように思っているわけでございます。そこで、この赤字続きの国際収支を改善するためには、そろそろアメリカ一本やりの貿易の機構を、またそのゆがみを立て直して、大きな視野に立った貿易ないしは外交に進んでいくのがいいんじゃないかと思っておりますが、いかがでしょうか。
  254. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) やはりその国の置かれた産業状態その他によって違うのでございます。輸出の点につきましてはアメリカが三分の一、そして東南アジアが三分の一、そしてその他の国が三分の一、こうなっております。この傾向はずっと前からの状況でございまして、今急にアメリカより輸出を、おととしは五割ふえましたけれども、急激に四割も五割もというわけには参りませんが、今申し上げたような状況で、アメリカの経済の発表と同時に日本の輸出はふえていくと私は確信を持っております。ただ、輸入の点におきまして、アメリカからの輸入は多いのでございます。これは四割程度輸入いたしております。アメリカの輸入を、よそのほうに切りかえようといっても、なかなかそれが切りかえられないのです。なぜかといったら、東南アジアのほうから必要な原材料を入れようとしても、ないのです。たとえばインド綿にしても、パキスタン綿にしても、これを入れようと思いましても、その品質、価格の点からいってアメリカと競争できない。だから、私はインドに参りましても、ネール首相に、綿花の品質を改良して、日本がインドから買えるようにしてくれ、パキスタンの大統領に、パキスタンの綿を日本が買えるようにすべきじゃないか、大体のそういう方向を言っております。タイにつきましては、御承知のとおり、米がほとんど不要になりまして、そのかわりトウモロコシを作っておりますので、アメリカ、豪州から買うトウモロコシを、東南アジアから買おうというやり方にだんだん成功して参っております。こういうように相手方を切りかえ、それが日本のために、すなわち、東南アジアがほんとうにアメリカに匹敵するようないろいろなものを作ってくれるように指導していかなければならない。しかし、スクラップを入れるにしても、東南アジアではスクラップがない。やはりアメリカからスクラップを入れるということよりほかないのであります。徐々に原材料のアメリカ依存を変えていくように持っていかなければいかぬ、こう思っておるわけであります。
  255. 白木義一郎

    白木義一郎君 今の御答弁を伺っていますと、アジアの方向へ貿易政策を伸ばしていくことは非常に至難である、むしろ御答弁内容によっては、無理だ、むずかしいのだ、できにくいのだというような感じを受けますが、われわれはアメリカのドル防衛政策また、欧州のEEC、このような立場に挾まれた日本の将来を心配するわけですが、この東南アジアに対する貿易というものに対して熱意をもってやらねばならないと思いますが、今後、日本責任者として、そのむずかしい問題をあくまでも積極的におやりになるかならないのか、その点をはっきり伺いたいと思います。
  256. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申し上げましたように、タイなんかにつきましても、タイから言えば、ちょうど日本で、今言ったように、日本はアメリカの経済に依存だ、こう言っておりますが、タイに行きますと、タイは日本経済に依存だ、輸出入とも日本が一番多い。タイの人は喜んで日本経済に依存する、こう言っておりますが、われわれもそういう期待に沿うように、タイの開発をはかろう、こういたしております。たとえばトウモロコシのごとき、また、鉱物資源につきましては、タイは一切外国人に調査を許しておりません。しかし、今後、日本に地質資源調査を依頼してくるのであります。そういうふうにいたしまして、東南アジアの経済開発にできるだけ努力し、しこうして、日本の東南アジアに対する輸出は年々ふえております。東南アジアに対する輸出は、日本の全体の輸出に対して占むる割合は年々上昇しておるのであります。決して私は悲観すべき状態ではない、洋々たる前途があると思います。EECにつきましても、先ほど申し上げましたように、だんだんガット三十五条の制限を撤廃しておる国もあります。また、ガット三十五条の援用撤廃をしようとする国もあります。また、いろいろな方向で日本とEECの関係は逐次改善されていく。そうして日本のEECに対する輸出も相当ふえていく。そうしてまた、日本のいろいろな機械その他につきましても、アメリカからの輸入をEECのほうからの輸入に変えていく等、いろいろな方法で世界全般的の、ことに東南アジアあるいはヨーロッパ、アフリカのほうに日本は輸出入両面に力を入れていくべきだと思って一おるのであります。
  257. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 関連総理、白木委員に対する答弁を承っていますと、ほんとう池田さんについていったらいいという感じを国民が起こすような御答弁ですが、藤山経企長官が、自粛警戒ムードを作るべく一生懸命努力されている。その姿と、何か総理は、経済拡大にいざ進まんという邁進の態勢とは、どうも私は合っていないような気がするのですね。で、総理のそういう自信満々たる言動はけっこうですが、はたして何でしょうか、経企長官から業界に対して、警戒心を持って指導されているような、そういうコントロールというか、自主規制というようなものをやって、業界のほうがついてきてくれるでしょうかね。また、この輸出問題についても非常に総理は楽観論で、洋々たるという言葉を述べられておりますけれども日本を取り巻く輸出情勢はそんな甘いものじゃないと思いますがね。また、東南アジアに日本は隆々と栄え伸びつつあるんだと言うけれども、共産圏にしても自由国家群にしても、東南アジアへの経済的な触手というものを伸ばす熱意というものは、日本を凌駕するものがあるのじゃないですか。日本は、白木委員が指摘しているように、今一段とやらなければ、東南アジアに自由国家群あるいは共産国家群の経済的基盤の進出を許すような事態がくるのではないかと、私はそういうふうに懸念するのですが、どうも総理答弁を承っていると、どうも経企長官の答弁なんかと、私はしろうとですが、いろいろと考えている点に相当ズレがあり、日本の産業界、経済界への影響が……。
  258. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 矢嶋君、簡単に願います。
  259. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 心配な面が出てくるわけですが、それとあわせ、今エカフェの会議が開かれておりますが、あの報告でも、日本の経済界が伸びたということは非常に驚異的に伸びているけれども、と同時に、非常な物価高がきて、やはり注意を要するという警戒気味の報告をエカフェの事務当局ではなされているようなんで、どうも総理が国民に吹っかけられるのは、少し楽観し過ぎるのではないかと私には感じられますが、いかがなものでしょうかね。
  260. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 楽観ではないのであります。そういう努力目標でやっておる、こういうのであります。あなた、先ほど答弁をお聞きにならなかったかもしれませんが、日本の経済の行き過ぎを押えることを早くやらなければいかぬというので、これからの設備投資をどうしていこう、これにつきまして相当早目に手を打っていこう、みんなとるべき策はやっておる。今の分は、外国への輸出の見通し、努力もやっておる、こういうのであります。しかも実績を加えながら、東南アジアに対する輸出の割合は、日本の全体の輸出に対する東南アジア向けの割合は、おととしは二八%くらいでしたか、去年は三〇%をこえております。こういう状況でございまして、東南アジアの方面は日本が力を入れれば入れるほどふえる。EECなんかもそうであります。年々EECはふえております。アメリカは去年は横ばいくらいですが、EECその他のほうはふえているわけです。その事実は事実としていますが、国内体制をどうするかということは、さきの分でお答えしたように、行き過ぎがあるから押えなければならない、こう言っておるのであります。何も私は国際収支十五億一千四百万ドルで安心しちゃいないのですよ。ただ、非常に悪く言う人がおったけれども、そうはならなかった、こう私も言っておるので、何も事実を曲げて、むちゃな希望を言っているわけじゃございません。事実は事実として、国内においては緊縮政策を持続している、設備投資の過剰を押えなければならないと言っておる。
  261. 白木義一郎

    白木義一郎君 総理の御答弁を伺いまして、私も矢嶋さんと同じように非常におおらかな気持に実はなったわけですよ。今のお答えで幾らかそれがさめましたけれども、さらに質問を続けていきたいと思います。  昨年発表されました通商白書にはこのように出ております。日本の経済の緊急課題は、重化学工業製品の輸出市場の確保と輸入市場を近接地域に求め、安定した原料の供給源の確保をはかり、あわせて安定した経済圏の形成にある、このように出ておりますが、この輸入市場の近接地域、この近接地域についてどのようにお考えになるか、お伺いしたいと思います。
  262. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私が初め設備投資なんかのことを言ったから、しゅんとされたのでしょうが、そのあとの輸出貿易などで少しほがらかになってもらったわけであります。これは全般的に考えなければ、初め言ったお答えについてしゅんとし、その次に聞いたことでおおらかになる、そのように動かないで、自信を持っていただきたいと思います。昨年の経済白書に言っておるとおりで、これはやはり船賃ということを考え、そうして日本の輸出市場、東南アジアに対する輸出市場の重要性を考えたら、そのとおりであります。そのとおりにしていかなければならないと思います。このことは、タイのトウモロコシを入れる、それと同じで、あるいはフィリピンの鉄鉱石、フィリピンの非鉄金属の原料、それからマレーその他の鉄鉱石の輸入、もう近いところから取ることが一番便利がいい。今の日本の輸出入について、昭和二十七年ごろでしたか、三十年ごろを基準といたしますると、日本の輸出というものは、そのころを一〇〇にいたしまして九五くらい。輸入の原材料というものは八五、六。これはなぜかというと、その当時に比べて船賃が非常に安かった。世界の物価は別に動いてはおりませんが、日本の輸入は船賃が安いために非常に原価が安くつく、このことから言いましても、できるだけ近いところを取る、しかもその近いところが資源が相当ある。そうして今後伸びていく、伸ばしていかなければならない。東南アジアの国民のために私はどうしても近いところがらやっていくのが原則でございます。
  263. 白木義一郎

    白木義一郎君 その近いところの国々をあげていただきたいのですが、具体的に……。
  264. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういうことはあまり総理が答えるより……、通産大用いませんから、どこの国との関係がどうだとおっしゃっていただければお答えいたします。今私はパキスタン、インド、ビルマ、タイ、フィリピン、インドネシア、あるいはイラン、こういうことを言っておりますと、たいへん長くなります。あなたが特定の国でどうだという御質問なら、知っているだけお答えいたします。
  265. 白木義一郎

    白木義一郎君 大臣は過日の施政方針演説でこのようにお述べになっております。「政府としては、日米安保体制を堅持しつつ、引き続き、国力と国情に応じ防衛力の自主的整備をはかるため、国民の防衛意識の高揚を期待しつつ、さきに国防会議において決定した第二次防衛力整備計画にのっとり、防衛力の内容充実に努めたいと思う」とお述べになり、さらに続けて、外交と内政は一体不可分であるとの確信を披瀝しておいでになります。この方針は、わが国の軍事力の増強を言うように聞こえるのでありますが、もしこのような考えを持ち、今あなたがおっしゃったような、アジア諸国の一員としての立場から、アジア諸国への経済協力として進めていくとするならば、それは中国及び民族独立をなし遂げていく東南アジアの諸国に対して、日本がアメリカを中心とし、またタイ国等を中心として、そして韓国、台湾を含めたアジアにおける軍事同盟を拡大していくのじゃないか、これにわが国が組み込まれて、そうして経済協力が、実はきわめて危険な軍事体制への変形であると非難をする人々もおります。中国を明らかに敵視した立場をとっているではないかと反撃されるおそれがありますが、この点はいかに釈明をされますか。またわれわれは、かつてこのような立場から、東南アジア諸国との経済協力を進める考えは毛頭ないのでありますが、世界経済の視野に立ったときに、そのような非難を受けるような外交政策はまことに不手ぎわと言わざるを得ないと思いますが、総理の御所見を伺いたいと思います。
  266. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私のその演説で白木さんはどうお考えになりますか、これは人の口には戸が立てられぬという言葉がございますが、私は、今のようなことをお考えになる人は、日本の憲法とか国民の気持を御存じない方だろうと思います。あるいは別の気持を持って言っておられると思う。私は、日本の国の防衛ということは、やっぱり考えなきゃいかぬということは、わが党の従来からの基本政策でございます。経済の進展とともに、ある程度のやはり自衛力増強はやっていかなければいかぬ。しかし、そう言ったからといって、ほかの国と軍事同盟を結ぶ、われわれは日本の国を守るために自力では十分でないから、守ってもらうために安保条約を結びましたが、他の国と一般の軍事同盟を結ぼうという気持は毛頭ないのみならず、憲法で許しておらない。それを憲法を守ろうという人が——われわれはそんな気持はない。これは悪宣伝にすることです。私はためにする議論だと考える。これは、東南アジアの人は全部わかってくれる。日本は他国を信頼して、他国と戦争しようというような気持を持っていないということは、世界じゅうの人々がほとんど大部分が、一、二の国は別でございますが、大部分はそう思っておると考えております。  今、ちょっと外務大臣が言っておけという話でございますが、エカフェの報告に、日本は物価高だ、危険だということは一切言っていないそうでございます。矢嶋さんにお答えしておきます。そういうことは一切言っておりませんという外務大臣の報告でございますから、私は、あそこに行っておりませんから、よく存じませんが、世界の人々、東南アジアの人々は、日本ほんとうに信頼して、日本と手をつないで、ともに働こう、日本の貿易は、東南アジアの繁栄がなければできないということは、よくわかってくれておると思うが、日本が他の国と軍事同盟を結ぼうと考えておるということは、東南アジア、世界の人は、例外的にはあると思うけれども、あまりないと思う。
  267. 白木義一郎

    白木義一郎君 世界じゅうの人々が、だれもが、戦争するかと言えば、絶対に戦争はしないと、このように答えると思うのですが、いろいろ過去の歴史の上から心配をしているわけでございます。  そこで、国会答弁において、大臣は、共産圏貿易については非常に熱意を持っているのだ、中共貿易を行なうには何らやぶさかではない、大いに願うところだ、こうおっしゃっておられますが、はたして現在までに、その促進に対してどんな努力をお続けになってきたか。また、日中貿易についてのあなたの根本理念をあかしていただきたいと思います。
  268. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、政治的理念が同じであろうと違おうと、経済の交流、貿易の発展は心から望むところでございます。たとえば、ソ連と日本との貿易は非常な勢いでふえていっておる。これは、ソ連もその気になり、日本もその気になっておるからであります。私は、中共に対しましても、ソ連と同じように、貿易を伸ばしていきたい。いろいろな方法、たとえば、前の輸出入組合の補助金も、今一年ほどたっておりますが、来年度の予算には、輸出入組合ができれば、これに対して補助金を出すように、予算にも計上しております。また、中共への見本市も計画しております。こっちはあらゆる方法でやっていこうとしているのでありますが、なかなか中共のほうではそうはいかぬようでございます。しかし、外貨が非常に窮屈であるにもかかわらず、最近は相当の勢いでふえております。これはいい傾向でございます。また私のところに、肥料の輸出はどうだ、これはけっこうでありましょう、肥料の輸出は私は大賛成。ただ、延べ払いということになりますと、これは一般のプラント輸出等とは違いますから、そう三年も五年もということにはいかぬ。やはりこれは一、二年ということにしなければいかぬ、こういうような答えをしております。また、向こうの大きい設備、黄河の発電設備は、あるいはまだ一台も発電機械はないのじゃございませんか。あったにしても一台くらい、あとは水をむだに流している。こういう発電機械の問題もございますが、ほんとうにソ連が日本に対すると同じような気持で中共が対してくれるならば、これはソ連も中共も同じ、ことに中共は近いのでございますから、ソ連以上に私はやっていきたいという気持はあります。ただ、いかんせん、日本の財界には、長崎事件直後に、相当の契約をしておりましたけれども、あの中共の国旗事件があってから、ぴしゃっととまってしまって、そうして日本の業者は相当迷惑しております。一方的に破棄してしまう。これじゃなかなか話をしてもあとが不安だというので、二の足踏むのも多いのじゃございませんか。ソ連につきましてはそういうことはない。もう去年の六千万ドルに対して、来年は一億二千万ドルですか。これはもう倍近くが輸出されようとしております。また、私の気持は何ら変わりません。近いのですから、中共ともっとやっていきたいと、こういう気持を私は常に言っておるのであります。
  269. 白木義一郎

    白木義一郎君 相当詳しく、また具体的に、日中貿易については、池田総理は非常に積極的である。熱意をさらにつぎ込んでいきたい、このような御回答がありました。  それに続きましてお伺いしなくちゃならないことは、世界の大きな流れといたしまして、この中共を国連の中に組み入れて、国際社会の一員としての責任と義務を分担させるのが、国連のためにも、また国際関係の安定にも資するという認識が強くなりつつあるように思います。六億五千万人の国民をかかえたアジアの大国の存在を無視できないのだ、こういう意見について、総理はどのようにお答えになりますか。
  270. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 中共政府、シナ大陸を無視できないということは、これは、もう世界の人は一様だと思います。厚薄はありましょうが、無視できないという事実は同じだ。しかし、無視できないから、国連への加入をどうしようかという問題、一昨年までは、中共のそういう問題を棚上げしてしまった。こういう状態を無視しておりませんが、棚上げしておる、国連に関する限り。しかし昨年から、中共問題が重要な問題だから、国連でそういう問題について討議しようということになったのは、一つの前向きの方向だと思います。だから、中共に対する関心は、年とともに強まってきております。こういうことは言えると思います。
  271. 白木義一郎

    白木義一郎君 いわゆる重要事項指定方式の共同提案国になった。そうして世界の世論を見きわめ、また国連において、重要な問題だから審議を進めていってもらいたい、そういうような御見解でございますが、この方向の中に、首相として、腹の中に二つの中国を考慮に入れておるということを想像してよろしいでしょうかどうか。
  272. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 思想と予測は勝手でございますから、予想されるのもけっこうでございましょう。しかし、二つの中国ということは、中華人民共和国におきましても、中華民国にしても、絶対にこれは許せぬ、こう言っておるのであります。われわれは両方の間におります。両方とも密接な国でございまするから、そういう二つのものが絶対にいかぬというものを、いいというふうなことをあなたに想像してもらう——あなたが想像してもいいということは、私は非常にむちゃなことだと思います。私は、両方の国がそう言っておりますから、こういう問題の結論を出すのは、やっぱり国連で十分討議して、しかる後にわれわれとして決意すべきじゃないかと思います。したがって、想像してもいいか悪いか、それはあなたの御勝手でございますが、想像が私の気持だと言って外にあなたが言われるような想像は私は困ります。
  273. 白木義一郎

    白木義一郎君 そのように、御答弁のように思いたいのでございますが、やはりいろいろ考えますと、たな上げ論ということも考えなくちゃならないんで、それでお伺いした次第です。  で、今、三年前の長崎事件をお話になりましたが、その中断中に、西ドイツやあるいはイギリス、フランス等が、中共貿易の有力なセールスマンとして進出している。これに対して傍観しているような感じをわれわれは受けるのですが、先ほど総理は、積極的にやってもいるし、また、将来もやっていくんだという所信をお話になりましたけれども、どうもその辺がはっきりとわれわれに感じられない。この点をお伺いしたいと思います。
  274. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私がいかに熱心に中共の貿易の拡大を唱えましても、相手のあることで、相手の人がやらなかったり、そしてまた、こちらのほうでやっても、またひどい目にあうのじゃないかという気持を持っておるということでは伸びないのでございます。最近、イギリスが飛行機を売るとか言っておりまするが、西ドイツ、イギリスあるいはイタリア——フランスは大したことはございませんが、一昨年まではイギリス、西ドイツ、五、六千万ドルぐらい、あるいは、多いときは七千万ドルというようでございましたが、外貨の非常に窮屈なために、昨年ぐらいからは、それが半分以下、三分の一ぐらいに落ちておるようでございます。まあ日本は去年はちょっとふえてきておりますが、私は自分らが、私自身がそう思いましても、相手がそういう情勢になってこないと、なかなかむずかしい、こう考えておるのであります。
  275. 白木義一郎

    白木義一郎君 先ほどから盛んに、相手国の出方についてお答えになっておりますが、そこを国の最高責任者として切り込んでいくのが外交であり、また、政策じゃなかろうかと思ってお伺いするのです。向こうを向いているのを、あくまでも近接地域としてこちらへ向けていくというのが、大きな外交の妙味じゃなかろうかと思うわけです。そこで、今、東南アジアの貿易についていろいろお話を伺いましたけれども、大体大企業を中心としたお話であったように伺ったのでございますが、日本の非常に恵まれないこの経済界のあおりを食っておる中小企業の育成強化という問題と、東南アジアへの貿易ないしは経済協力について、今後大臣としてどのようにお考えになり、また、どのようにして育成強化のために力を注がれるか、お伺いしておきたいと思います。
  276. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本の中小企業と東南アジア貿易との関係でございますね。
  277. 白木義一郎

    白木義一郎君 はあ。
  278. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これはやはり東南アジアの各国も、向こうの中小企業を育成強化することに力を入れておるのであります。で、私はやはり筋としましては、プラント輸出、大企業が向こうへ行くのが先だ。で、向こうの東南アジアにおける中小企業能力、こういうものの発展は、今の各地のセンターを通じてやっておるのでございますが、今、日本の中小企業というものを持っていくだけの受け入れ態勢、経済力がございますまい。やはり貧困な経済を上へ伸ばすには、ちょうど敗戦後の日本でやったように、まず、やはり大企業ということを向こうの為政者も考え、大企業がずっと伸びて、経済の進度ができて、どんどん進み出して中小企業の発達、こうなりますから、向こうが要求するのは、日本の中小企業の作ったものを要求するよりも、大企業のフラント輸出等を要求することが多いと思います。
  279. 白木義一郎

    白木義一郎君 そうしますと、東南アジアに対する経済あるいは貿易については、当分中小企業は無理だ、中小企業の進出は無理だ、このように御判断になっておられるわけですね。
  280. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 中小企業といっても、いろいろな種類があるのでございまして、それはライターなんかは行きましょう、そうしてまた、テレビはまだ行くだけの段階になっておりませんが、ラジオは行きましょう、それから雑貨につきましても、まあ行きましょう。だから中小企業と単にいいましても、答えがなかなかむずかしいのでございます。私は、総体のあれとしては、やはりプラント的なものが先になるという傾向はございます。
  281. 白木義一郎

    白木義一郎君 先ほどのお答えでは、中小企業の進出は当分全般的に無理だ、まず大企業が進出して、そしてその国の経済を豊かにする、それから中小企業の進出が順序である。このようにお答えになったように伺ったのですが、まだまだ御配慮の余地があると思うのです。  で、次には、現在二つのドイツ、また、事実上二つの中国、また、南北ベトナム等の悲劇を世界の国民は、人類は見て、また心を痛め、こりごりとしている次第です。事、外交交渉については、二つの日本があってはならないと思うのです。内政問題については、主義主張の立場から、対立ないしは紛争があるのは、これは考え方によってはやむを得ないと思うのですが、現実に日中貿易を促進している社会党に対して、外交政策は一本化の理念でやっていかなくちゃならぬ、こういうようなことを政府はおっしゃっているようでございますが、当然外交という問題は、事、外交については、日本政治家がよく理解をし、また、方向を見きわめ、相談し、打ち合わせて、そうして団結して外国にぶつかっていかなければ、決して有利な外交はできない。現在のように、手のうちを見すかされているような立場から事を起こそうとすると、これは向こうを向いたものをこっちへ向けるということは容易じゃなかろうかと思うのでございます。外交に関する限り、日中共同の敵だとか、また、社会党は容共一辺倒だとか、互いに非難し合うということは、まことにまずいことになると思っております。表面は相争うにしても、国家の方向については、同一歩調をとる努力をされるのが現在のこれからの政治であると思うのですが、御意見を伺いたいと思います。
  282. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 昔から外交は水ぎわまでといわれておりますので、私は、あなたの御意見全く賛成でございます。しかし、現実はそうなっていないことを遺憾といたしているのでございます。
  283. 白木義一郎

    白木義一郎君 貿易に非常に積極的にやっていくのだ、これからもやるのだという御決意を貫くために、いろいろと作戦もあり、また政策も、また方針もあると思うのですが、ここで日中貿易促進ということについて、政府は、あるいは自民党は、社会党が実践をしておりますが、その実践のルートを利用し、また、それを活用し、ときには社会党を立てて、そうして日本方針、方向を切り開いていくというようなことをおやりになったことがありますか、あるいは、おやりになるお考えがおありでしょうか、お伺いしたいと思います。
  284. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 社会党がどんなことをおやりになっているか、私は存じません。一部配慮物資とかいうことでは、私は解決できるものではないと思います。以前輸出入組合がございまして、いろいろ努力しておりましたが、三年前ごろからだんだんすぼんで参りました。今またある程度復活しかけておるのでございます。したがいまして、社会党さんの中共貿易とかなんとかというのではなしに、私は今まであった輸出入組合を拡大し合理化していって、党派をこえて商売は商売としてやっていくのが本筋だと思います。
  285. 白木義一郎

    白木義一郎君 外交に関して大きな寛容の態度をもって社会党とともに、社会党をあるいはかかえていくようなことも心配をし、考慮をしておるわけでございます。  次に、外務大臣にちょっとお伺いしたいのですが、中国の国内状況、特に災害状況について御報告を受けていらっしゃると思いますが、その概略でけっこうですから、お知らせ願いたいと思います。
  286. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 御承知のように、まだ国交がございませんので、確たることがわかりません。したがって、この席であまり具体的なことを申すことはかえっていかがと思いますので差し控えさせていただきたいと思いますが、先ほどからお話のございまする中共貿易についてだけ申し上げますと、一九六一年には総計で往復四千七百五十六万ドルと非常に大きくなっております。ただ、やはりそれが片貿易でありまして、輸入が三千八十八万五千ドル、輸出が一千六百七万五千ドル、すなわち約倍近い入超にこちらはなっております。しかし、先ほど総理お話のように、ここのところになりまして、急にイギリス、ことにベルギーなどが非常に大きくなっておりますが、それぞれの国からの中共輸出が減っておるわけです。したがって、これは非常に地理的に近い関係にある日本に対して中共側が物資を買うという場合が非常に出てきているのだと思いまして、先ほどからお話のあったように、われわれは互恵平等の立場に立って、一部の友好商社取引というのじゃなくて、もっと全体の国のレベルにおいての商売は商売という形においてこの貿易を伸ばしていきたいと思うのであります。
  287. 戸叶武

    戸叶武君 関連。一九五七年に岸さんが言われた、アメリカに行かれたときも、岸さんは堂々と日中貿易を輸出輸入おのおの一億ドル程度にまで発展したい、そのときの輸出が六千万ドル、輸入が八千万ドル、これをその程度に伸ばしたいということを訴えたのですが、その後、政府は長崎国旗事件を契機といたしまして、中共だけの責任に転嫁して、日中関係を混乱さしておりますけれども、私は一昨年私たちの団体としての正式な代表として北京を訪れましたが、中国の指導者というのは、日本、ソ連並びにアメリカが誤解しているようなものでなくて、ほんとうにこれは友好商社というような変則的な貿易でなくて、政府間協定に持っていこうという悲願を持っておるのが事実です。私はもっと、日中関係は非常にむずかしいけれども、この日中関係は今白木さんの言うように、与野党を問わず、ずっと問題を煮詰めていけば、ある一致点は私は見出し得るところまで来ていると思うのです。それを積極的にやるのが政府責任ではないかというのが白木君の聞こうとするところであって、われわれ野党の政府に対するきびしい批判の本能がありすぎるかもしれませんが、政府は現実に政権をとっていながら、政治を担当しておりながら、もっと日中関係の打開に対して責任を持って積極的な打開をするかどうかという決意を白木さんは聞いているのだと思いますが、だいぶ池田さんもほぐれかかってきたようですが、まだ固くなっているところがあるようですが、もっと大所高所から日中関係政府は打開するという施策を出していただきたいと思います。池田さん答弁願います。
  288. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) われわれは、政経不可分という考え方には賛成できない。したがいまして、貿易は貿易としてやろうという向こうの態勢ができるならば、私は何らこれに乗っかっていくにやぶさかではあません。ことに私は、郵便とか気象とか海難とか、こういう実際の両国民があれするについては、いつでも協定を結ぼうとこう申しましても、私が言っても、それは通らない。私は、政治と経済は分離できる、それで行こうという建前なら、あなたの言うようにずっと進んでいけると思います。いろいろな問題がありまして、私は政経分離のあれで、向こうとの拡大につきましては非常に熱意を持っておる。これは肥料の問題で申し上げたのであります。今も十五万キロの発電機十台前後のものがありますが、こういう問題につきまして、さらに日本の業者がどうするかというときに、前のことを思い出しますとたいへんなことになりますから、そういうことをはっきり保証ができるようにしなければなかなかむずかしい。私は先ほども言っているように、ソ連と日本の間をごらん下さればおわかりでしょう。
  289. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 戸叶君、簡単に。
  290. 戸叶武

    戸叶武君 政経不可分の問題にこだわっておりますが、私は、政経は不可分だと思います。不可分だけれども、日中の国交正常化と並行して、貿易における政府間協定というものを並行していくならば、政府間協定が現実的に先にでき得るような場合もあり得ると思います。この新しい国家を作った国が国旗を侮辱されるということは非常に大きなことで、そういう感情的なものに対しては、先進国と思われる国は思いやりあって、感情論にしないで、それを超越していくだけの雅量がなければ、私はこの友好関係というものは作ることはできないので、むしろ日本側がその点は謙虚な形で日中関係を打開すべきで、先ほど総理大臣の話を聞いていると、だいぶ寛容で、ソ連と同じようなことになれば中国との関係も打開できるのだと明るい発言をなさいましたが、あのことが中共に伝わると、中共もずいぶん変わると思いますので、もう一番池田さん御決意のほどをお示しして、そういう政経不可分ということにあまりこだわり過ぎないようにしてもらいたい。
  291. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ソ連との貿易をそのつもりでやっていきたい。これはまあ、ソ連は国連にあれしておりますが、片方では国連の問題につきまして、こういうものがなければ政経不可分とか可分とかということをあまり強く問題にすべき筋合いのものではございませんが、今国連との関係がありまして、重要問題で議せられておるのでございまするから、これを日本が先にこれを認めるんだというふうな格好は今のところはとれないのでございます。したがいまして、政治とは全然違う格好で貿易だけの拡大ならば私は喜んでやってしかるべきだと考えておるのでございます。
  292. 白木義一郎

    白木義一郎君 どうしても向こうがああだからできないのだというように受け取られてはなはだ残念でございますが、まだまだ、あるいは一国の責任者として大きく私どもには蒋介石政権に呼びかけ、あるいは中共に使いをいたし、あるいはネールを動かし、いろいろと積極的になさろうという意欲があれば、あなたはできないはずはないと思うのでございます。その点を実はお聞きしたかったわけです。  そこで、われわれは、中共は今三年間の連続した大災害を受けて非常に中共の人民が塗炭の苦しみにあえいでいるというようなことを風聞をしておる次第でございますが、この日中貿易もあまり軍事的なあるいは防衛的な意味を表面に出し、あるいは経済々々、もうかるから、もうかればやるのだというようなことを表面に現わしていこうとしてもなかなか促進は無理であろうと思うのです。そこで隣の国といたしまして歴史的に、また、いろいろな過去の民族の関係からしても、今隣の中国の人民が非常に苦しみを受けているとするならば、日本の国としてその中国人を慰安する、救済するという大きな大義名分を立てて施策を練って、中共貿易促進の道を開くことは、あながち不可能なことではないと思うのでございますが、それが私たちの日中貿易促進の根本理念として考えているわけでございます。そしてわれわれは、地球上の各民族は本来一体であり、ともに平和と繁栄と幸福を享受すべきで、相争うべきものではない、このような、いわゆる地球民族主義という理念に立って、この日中貿易促進の今こそそのチャンスである、時である、このように考えて、今後の日中貿易促進を強く主張していきたいと思います。  次に、時間がなくなりましたので、引き続いて国内問題に移りたいと思いますが、青少年の対策といたしまして、総理方針演説の中に、「青少年こそは祖国の生命力の聖なる源泉であり、民族の純潔と勇気を代表するものでありますから、遠大な使命感とゆかしい学問教養を身につけていただきたいと思います。」と演説をされておりますが、全く同感しごくに存じておる次第でございます。この件について、最も主力を注がれた施策は一体どういうものがございましょうか。
  293. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 中共の方々がお困りになっておることはわれわれも存じております。昨年でございますか、日本から穀物をおあげしようと、赤十字を通じて申し入れましたところ、断わられたような状況でございます。われわれとしては、中共の飢饉に対して心から同情いたしておることだけを申し上げておきます。  青少年に夢を持たせ、またりっぱな青少年として将来の日本を背負うということにつきまして、私はやっぱり文教行政が第一だと考えております。文教行政は、ソ連も言っておりますように、教育内容の改善あるいは教育施設の拡充、あるいは教育の機会均等、ことにそれは学校教育のみならず、社会教育方面に力を入れていくべきである、そうしてりっぱな人格と技術を身につけるということでいっておるのであります。どの方面へどれだけのお金ということは……。
  294. 白木義一郎

    白木義一郎君 それはけっこうです。
  295. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういう方向でいっております。
  296. 白木義一郎

    白木義一郎君 文教政策については、まだまだ物足りないものがたくさんございますけれども、特に、日本の青年は国の柱であり、また、太陽であり、また、宝物と、このように考えておるわけでございますが、その青年に夢と希望を与えよと仰せになっていることは、まことにごもっともなことでございますが、現実として、その夢と希望を抱けないのが現代の青年でございます。少なくとも、今まじめな青年は結婚をしたくても家がない。また、家があっても自分の収入で家庭を持てないという非常に気の毒な現状でございます。日本全体の住宅問題もございますが、このような格調の高い演説を天下に発表されたならば、総理大臣として、このたよりにする青年の将来にあたたかい思いをいたして、せめてまじめな青年の結婚に際しては住宅を結婚祝いのプレゼントにしてあげよう、このくらいな気持を実現に移していただくべきじゃなかろうかと思うのでございます。さすれば、ごくわずかであっても、日本の青年は希望に満ち、また、夢を抱きつつ世界に雄飛をしていくであろう、このように思っておりますが、いかがでしょうか。
  297. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 住宅問題も重要な施策でございますので、年々力を増して建っております。私は、ここ四、五年内に住宅の不足問題はおおむね解決するのじゃないかという気持で進んでおります。
  298. 白木義一郎

    白木義一郎君 あえて青年に住宅を与えよということについては御答弁がありませんでしたが、そのような考え方も将来強く御考慮に入れていっていただきたいと思います。  次に、最近の報道によりますと、われわれが長年主張しておりました、叫び続けておりました移住問題、また、技術移民の問題について報道されております。非常にわれわれとしては、長年の願いがかないつつあると、非常に喜んでおります。そこで報道によれば、外務省は、政府は移住基本法の立案を急いでおられるように聞いておりますが、事実でしょうか。
  299. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) そのとおりでございまして、移住は実は関係する省がだいぶあるものでございますから、そのそれぞれの関係省の意見を出すように今求めております。また、移住審議会におきましても、これは構想を新たにいたしまして、最近厳選をしておりますし、これにかけまして、できれば本年じゅうにでもこれをまとめ上げたいというふうに考えております。
  300. 白木義一郎

    白木義一郎君 しかし、報道によりますと、いろいろな関係があって早急にはできないと、今年一ぱいに立案、草案をし、来年度の国会提出したい、このように言われておりますが、もしその基本法の内容がおわかりであれば、ちょっと御説明を願いたいと思います。
  301. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 基本法は今意見をそれぞれ求めている際でございまして、これといったきまったものはございませんけれども、要しまするに、私どもは、志を持った人が海外に出ていく、そうして、それを国ができるだけ援助する、国が丸がかえで出すという思想じゃなくて、今述べたような方向で考えたいということが一つ、それから移住地において中産階級としてあらゆる方面に、政治、経済、社会の面で活躍できるような人材を移住させたい、そのことが結局移住した国とわが国との間の政治的な、経済的な結びつきを強化することになりまするので、さような方向で考えたいというふうに思っております。
  302. 白木義一郎

    白木義一郎君 今御答弁いただいたようなことをわれわれは長年主張をして参ったわけでございます。  そこで、また再び総理にお伺いいたしますが、この青少年に希望と夢を与えよ、大きく若々しい生命力を世界に発展せしめるには、どうしてもこの技術の移民、優秀な人材を海外に雄飛する希望と夢を与えるには、どうしてもこの移住基本法を根本として、熱心な努力が必要であると、確信をしておりますが、従来ややもすると、移住問題、移民問題は選挙の票にならないから、だれも手をつけないのだ、非常に等閑視されるというような、残念な風聞も聞いておりますが、このようなことのないように、大いに国家百年の計の立場から推進をしていただきたいと思いますが、総理のお考えを伺っておきたいと思います。
  303. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 全く同感でございます。私は、移民は日本の百年の大計ばかりでなく、世界の百年の大計、そうしてまた、国でなしに個人、行かれる人、また、受け入れの国民に対しても百年のりっぱな計だと思います。
  304. 白木義一郎

    白木義一郎君 次に、運輸大臣にお伺いしますが、現在、御承知のとおり、御苦労されている交通問題、その交通問題も、交通戦争と言われるくらい逼迫しております。いろいろ議論もございますが、私は、交通事故、人命保護の尊重の立場からお伺いをしたいと思いますが、現在交通事故者に対する賠償保険金、これが非常に五十万円という少額になっております。もちろん、一昨年改定をされ、増額をされたわけでございますが、この保険の内容について概略お知らせを願いたいと思います。
  305. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 御承知のように、自動車事故によりまする損害賠償保障法によりまする最高限度は、死亡者に対しましては五十万円、重傷が十万円、軽傷が三万円というのが限度になっておりますが、これは損害賠償額の限度をきめておるのではなくて、保険が保障をする額をきめておるわけでございます。それをこえる部分は加害者の負担ということでございます。実際問題といたしまして、死亡に対する保障の最高限度を五十万円に引き上げまして以来、一件当たりの平均の賠償金額は三十万円を少し今日上回って参っておるわけでございます。
  306. 白木義一郎

    白木義一郎君 いずれにいたしましても、ひき殺されて五十万円というのは、非常に保険とも言えないような金額なので、総理大臣、また大蔵大臣にも、将来このほうの推進施策を考えていただきたい、このように考えております。  次に、この交通問題の中で、緑のおばさんというのがあるのですが、これは非常に拝見しまして私どもは胸を痛めておる次第でございます。また、オリンピックなどがありますれば、外国人なとが参りまして、中年過ぎた婦人が最も危険な仕事に携わっているというようなことは、まことにみっともないように思います。そこで、いろいろ申し上げながら話を持っていきたいと思うのですが、忍耐の限度も参ったようでございますから、端的に申し上げますが、自衛隊員を緑のおばさんに転用して、そうしてPRをかねてやっていく。これは、災害等で非常に自衛隊員の評判がよくなっている。防衛力を増すということについては、いろいろ意見がございますが、上野駅等でぽん引きみたようなことを防衛庁がやっているなんというのは、実に政府としみっともないと思いますので、訓練を兼ねて自衛隊員を街頭に出して、そうして民衆と深い接触を保っていくというようなことも考えてみたのでございますが、総理大臣、また運輸大臣、いかがでしょうか。
  307. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 緑のおばさん、あるいは黄色いママというのは、これは都道府県がそれぞれ自主的に交通整理に当てるために採用している制度でございます。数年来これをやっておりまして、いろいろそういった御批判もあろうと思いますが、非常に成績は上げていると思います。そこで、今全国で千六百人ぐらいおりますが、ただ、服装であるとか、あるいは訓練の仕方といったようなことは、これからもさらに改良してやっていきたいと思っておりまして、今急にこれをやめるつもりはございませんし、また自衛隊をそういうものに直接使うということは、自治体としても、警察としても、いかがなものであろうと思います。そのつもりはございません。
  308. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 公安委員長が答えたとおりであります。
  309. 白木義一郎

    白木義一郎君 最後に、選挙のことについてお伺いしますが、選挙制度の改正については、これからますます論議が白熱し、展開されて参りますが、参議院の選挙も近くなって、国民はその成果を注視をしておる現状でございます。ここでは私は、公明選挙運動の推進の立場から、自治大臣、警察庁長官に若干お尋ねをしておきたいと思います。  最初に、本年度の各種選挙に要する予算の概略についてお示しを願いたいと思います。
  310. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 大体、選挙の取り締まり関係と申しますか、そういった運営の関係の三十七年度の予算は七億円でございまして、前年度——三十六年度と比べまして二億円ふえております。そのうちの一億円が特に参議院の選挙対策費用、そういうふうに考えております。
  311. 白木義一郎

    白木義一郎君 たいへんな税金を使って、選挙を公明にしていかなければならないという運動でございますが、その運動について、自治省の選挙当局の発行のプリントを拝見しますと、その第八項に、「買収供応追放運動の展開」という項目がございます。で、従来の選挙の実情にかんがみ、買収供応のような悪質な選挙違反を徹底的に追放するため、活発な買収供応追放運動を全国的に展開すると、この趣旨はまことにけっこうなことでございますが、どのような具体的な方針で進められるか、お伺いしたいと思います。
  312. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 大体、国が中心になりまして、一つのルートとしましては、各都道府県、市町村の自治体の選挙管理委員を動員いたしまして、そのほうで大いに啓蒙運動をやっていく、それが一つと、それから一つは、民間の公明選挙の推進団体、そういったようなものへ補助金、委託料等を出しまして、それによって講演会をやるとか、あるいはパンフレットを配るというようなことで、一般の関心を盛り上げていく。さらに、政府自体としましては、テレビ、ラジオ、新聞、そういったものを動員いたしまして、全面的に呼びかけをしていく。そういったような形で現在やっておるわけでございまして、さらに映画等もでき得れば使って、ことに参議院選にはそういう公明選挙をさらに徹底さしていきたいと考えております。
  313. 白木義一郎

    白木義一郎君 そういう運動を強力に展開する御計画を承れば、自治省は本年度の選挙はさらに従来よりも悪質化していくというような見通しを持っておられて行なうのかどうかお伺いします。
  314. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 私は、今度の参議院の選挙は、格別悪質化していくというふうな徴候は特に見られるとも思いません。しかし、これは従来の例にもかんがみまして、事前運動といったようなものにつきましては、十分警戒をし、また取り締まりも厳にいたすつもりであります。
  315. 白木義一郎

    白木義一郎君 では、警察庁長官にお尋ねいたしますが、選挙を目前にして、事前運動の実情、またその内容、あるいは検挙数、もしわかりましたらば、党派別の内訳と、今度の選挙違反の見通しについてお答えを願います。
  316. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 警察庁長官にかわりまして、警察庁刑事局長
  317. 新井裕

    政府委員(新井裕君) お答え申し上げます。今回の予想されます参議院議員の選挙に関しまして、警告を発しましたものは六十八件ございますが、検挙になっておるものはございません。今後も、選挙の事前運動の取り締まり並びに選挙運動期間中に入りました後の取り締まりは、従前どおり厳正公平にやるつもりでおります。
  318. 白木義一郎

    白木義一郎君 次に、五項目として、「学校教育との連携」というところに、小学校の児童に対してまでも副読本を与えて、そうして公明選挙の運動をするんだと、このように書かれておりますが、天真らんまんな児童までこのおとなの世界へ巻き込まなきゃならないか、それほどまでしなきゃならないかと、私は心配をしておるわけでございますが、この副読本の内容等についてお知らせ願うと同時に、この問題について、総理大臣はどのように子供についてお考えになっているか。
  319. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 白木君、持ち時間が終了いたしましたから、御注意を申し上げておきます。
  320. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、そういう内容をまだ聞いておりませんので、警察庁あるいは自治大臣のほうからお答えさせます。
  321. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 選挙の公明運動、あるいは選挙に関しましてのことは、学校教育でも必要なことだと思っておって、そういったことも考えちゃどうかという腹案を持っておりますが、まだ具体的にどうしようということまで具体化はいたしておりません。
  322. 白木義一郎

    白木義一郎君 最後に簡単にお伺いいたします。
  323. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 簡単に願います。
  324. 白木義一郎

    白木義一郎君 この推進運動に非常に多額に費用を使って推進をしていこうということは了承できるのでございますが、あまりべからずべからず——いわゆるべからずムードもけっこうでございますが、そういうようなお金がございましたならば、ほんとうに公明選挙を実施してきている人々に対して、手本とし、また参考として表彰していく、大いに協賛を与えていくというようなあり方も、将来の大きな促進の運動になりはしないかと思います。これについて御意見を伺います。  もう一点、自治大臣安井さんは、国家公安委員長としても、また公明選挙運動推進の最高責任者、また帝都の治安維持の責任者として、近く選挙に立たれるわけでございますが、国民は非常な関心を持って、あなたの帝都における公明選挙ぶりを注目をしておるわけでございます。ですから、あくまでも推進運動の責任者として、公安委員長としても、りっぱな将来の歴史に残るようなみごとな選挙をやっていただきたい。私も、大阪の地方区でりっぱな選挙運動をやっていきたいと、このように決意をしておりますので、大臣決意と、表彰についての、そういうような方向についてのお答えを願って、私の質問を終わりたいと思います。
  325. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 公明選挙を推進しておる方々に対する表彰といったようなものは、従来も考えて、それぞれ適当な方法でやっております。  なお、私は帝都の治安維持の責任者じゃございませんが、この責任者は、御承知のとおり、東京都公安委員会に属する警視総監ということになろうかと思います。しかし、そういうことは、いずれにしましてもりっぱな選挙をやらなければならない。御忠告は十分伺いまして、御期待に沿うようにいたしたいと思います。
  326. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 白木君の質疑は、これをもって終了いたしました。  明後日は、総括質問をぜひ完了いたしたいと思いまするので、まことに御苦労でございまするが、定刻にお集まりを願い、またおそくまでひとつ御努力を願いたいと存じます。  明後日は、午前十時に開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時十三分散会