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1962-03-09 第40回国会 参議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月九日(金曜日)    午前十時五十分開会   —————————————   委員の異動 本日委員近藤鶴代君、塩見俊二君、成 瀬幡治君及び大谷瑩潤君辞任につき、 その補欠として一松定吉君、上林忠次 君、久保等君及び奥むめお君を議長に おいて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     湯澤三千男君    理事            川上 為治君            鈴木 恭一君            平島 敏夫君            米田 正文君            加瀬  完君            藤田  進君            田上 松衞君            千田  正君            加賀山之雄君    委員            植垣弥一郎君            小沢久太郎君            太田 正孝君            金丸 冨夫君            上林 忠次君            古池 信三君            小林 英三君            櫻井 志郎君            下村  定君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            苫米地英俊君            野本 品吉君            一松 定吉君            村山 道雄君            山本  杉君            横山 フク君            亀田 得治君            木村禧八郎君            久保  等君            高田なほ子君            戸叶  武君            羽生 三七君            藤田藤太郎君            矢嶋 三義君            山本伊三郎君            東   隆君            田畑 金光君            市川 房枝君            白木義一郎君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 植木庚子郎君    外 務 大 臣 小坂善太郎君    大 蔵 大 臣 水田三喜男君    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君    農 林 大 臣 河野 一郎君    自 治 大 臣 安井  謙君    国 務 大 臣 川島正次郎君    国 務 大 臣 藤枝 泉介君    国 務 大 臣 三木 武夫君   政府委員    法制局長官   林  修三君    法制局第一部長 山内 一夫君    公安調査庁次長 関   之君    外務省アメリカ    局長      安藤 吉光君    外務省条約局長 中川  融君    外務省国際連合    局長      高橋  覚君    大蔵省主計局長 石野 信一君    文部大臣官房長 宮地  茂君    文部大臣官房会    計課長     安嶋  弥君    文部省初等中等    教育局長    福田  繁君    文部省社会教育    局長      斎藤  正君    文部省管理局長 杉江  清君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    憲法調査会会長 高柳 賢三君    外務省アジア局    審議官     宇山  厚君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠互選の件 ○昭和三十七年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件   —————————————
  2. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) これより予算委員会開会いたします。  この際、政府側に申し入れます。開会の時刻より関係大臣の御出席がはなはだおくれておりますることは、まことに遺憾にたえません。あらためて注意を喚起いたしたいと存じます。   —————————————
  3. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 委員の変更につきまして報告をいたします。  本日大谷豊潤君が辞任せられ、その補欠として奥むめお君が選任せられました。   —————————————
  4. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) また、本日理事田畑金光君から都合により理事辞任いたしたい旨の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 御異議ないと認めます。  この際、理事補欠互選を行ないます。互選は、先例により、委員長の指名をもって行ないたいと存じまするが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 御異議ないと認めます。  それでは、田上松衞君を理事に指名いたします。   —————————————
  7. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 昭和三十七年度一般会計予算昭和三十七年度特別会計予算昭和三十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き質疑を行ないます。亀田得治君。
  8. 亀田得治

    亀田得治君 私は憲法問題を中心に質問するのでありますが、初めに農林大臣に対しまして若干御質問いたします。  去る六日の閣議におきまして、農林大臣の発案により、ことしから米価審議会公開しない、こういうふうにきめたようでありますが、これは全国の農民に非常に大きなショックを与えております。なぜこういう決定を突然におやりになったのか。その理由を明確にしてもらいたいと思います。
  9. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 御承知のとおり、昨年度の米価決定にあたりまして非常な物議をかもしまして、委員諸君が相当多数辞任せられたような経緯がありましたことは御承知のとおりであります。これらはかかって公正な審議がしにくい、われわれは委員としてこの委員はお受けできない、こういうことに原因があるようでございます。私考えますのに、政府といたしましては、生産者米価決定は法の定めるところ、これによって基準は明確になっております。ただ算定の基礎でありまして、どういう要因を取り入れるとかいうようなことに対して、専門家それぞれの立場諸君意見農林大臣としては徴しまして、これらを十分参考にして最終的に決定すべきものであって、大よそ何万何千何百何十何円という具体的な米価決定審議会審議に付するということではないと私考えております。ところが、従来審議会経緯農民諸君は最終的に審議会でこれを論議するというようなふうに誤認せられておる向きも一部にあるやに私は了承いたしますので、この点を今回の審議会運営にあたりまして、また新たに委員をお願いするにあたりまして明確にいたしまして、十分委員諸君にも発言を願い、その委員諸君のお考え農林大臣としては十分拝聴いたしまして、意のあるところを十分参考にして、尊重して、私は最終的な米価決定農林大臣としていたしたい。こういう所存でいたしたのでございます。御承知のとおり、審議会は元来私は秘密会でやるべきものと心得ます。公開で個々の委員諸君意見大臣として拝聴いたさなければならぬ理由は私はないと思います。その意味におきまして、従来公開——いろいろ物議をかもしました審議会でありまするがゆえに、特に委員諸君をお願いいたすに必要な処置をとったものであります。
  10. 亀田得治

    亀田得治君 農林大臣から、米価審議会に諮問する仕方を変えよう、米価そのものはしないんだ、こういうお考えのようですが、この点はまた、時間もありませんから、別個な機会に問題にいたしましょう。ただ、会議の持ち方自身は、今まで昭和二十四年にこの制度が始まって、ずっと公開でやってきておる。十年以上たっておる。きのうやきように始まった問題じゃないわけです。昨年の事態を見ましても、混乱しているのは、何も公開だから混乱しているのじゃない。私もずっと米審には傍聴等もいたしておりますが、米価そのものがむずかしい問題があるから混乱しておる。それを公開の責任であるかのごとく、そちらにしわ寄せをされる。こういうことは私は間違いだと思う。十年以上もずっとやってきた制度、十年と言えば、これはもう法律上、いろいろな既得権もできる長い期間なんです。そういうものをまだ委員もきまらない段階で、農林大臣のほうで一存でこうきめておる。私はこれは非常に高圧的なやり方だと感ずるわけです。二十四年以来そういう制度がずっとやられてきておるわけですが、しからば過去十何年間の農林大臣のおやりになったことは一体間違いであった、こうおっしゃるのですか。あなたもその間に農林大臣をおやりになっているわけです。そんなことは私は言えないと思う。紛糾の原因というのは、決して公開だから紛糾しておるわけじゃないのです。その点どういうふうにお考えでしょうか。
  11. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 私は、今まで委員の大多数の諸君辞任をせられるというような事態はなかった。その委員諸君が、公開では、ああいう騒ぎの中では審議をすることは不適当であるという意見が多いので、私といたしましては、今回、委員として適当な委員諸君に御協力いただくのに必要な処置として非公開とするということをいたしたのであります。御承知のとおり、大多数の委員会、全部審議会公開でございません。全部秘密会でございます。ただ、たまたま米価審議会がそういうことがあるのであります。他の委員会は、農林省におきましても公開でやっているものはないのであります。
  12. 亀田得治

    亀田得治君 まあ、その秘密会原則であるかどうということはまた一般論にもなりますし、別にしましょう。必ずしもあなたのおっしゃるような状態ではないと思うのですが、ただ米価の場合には、ともかく農民としては、現在でも収入の一番大きなこれは部分を占めているわけなんです。関係者も多い。非常に大きな関心を持ってきているわけです。そういう中で公開をしていく慣習というものが成り立っているわけなんです。農民としては、当然米価というものは自分たちの目の前で公然と、具体的な金額だけでなしに、その基本的な要素につきましても論議されるものだと、これは一つの希望というものを持ち続けているわけなんです。この農民気持を踏みにじるようなやり方ですね、今度のやり方は。大体これは議事規則に関する問題です。新しい委員がきまってから、その人たちに相談してきめてもいい問題ですね。それを早々と何かワクをかけてしまったような格好でおぜん立てを作る。私はこれは総理大臣考え方も聞いておきたい。農民としては、これは当然公開してもらえるものだと今までの例から思っているわけなんです。そこの気持ですね、そういう農民気持というものをどういうように総理大臣としてはお考えになっておるか。
  13. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 亀田さんも御承知のとおり、たとえば肥料審議会につきましても、ずいぶんやかましく公開々々ということをおっしゃる人があります。また、組合諸君の一部の人は、審議会の出入口を、しいて申せば全部ふさぐように、肥料審議会の場合に、審議会をどこで開いたらよろしいかというような事態もあるわけでございます。米の場合におきましては、御承知のように、傍聴者の制限もできないというような事態で、喧騒の中で会議を続けていくならば、委員自分たちはお断りだということで、私がぜひ参考にして適正な意見を拝聴いたしたいと思います中立委員諸君が、御承知のとおり、全部辞表をお出しになっているというような事態でございますので、これはどうしても秘密会でその中で十分意見を拝聴することのほうが国家のためになるというつもりでやったのでございます。今お話しのように、これは農民の期待に反するとおっしゃいますけれども、米価そのものをきめるのではない、米価決定要因となるべきものをきめる。それについて審議会の議は、これは必ずしもこれを一切発表しないというのではないのであります。審議会で、こういう条件でこういうふうにせよということがあったということは、後刻発表してもいいのであります。それによって農民諸君十分意見を承るということで、農林大臣は適正な方向に従って決定するという措置をとって参って一向差しつかえないのではないかと考えるわけでございます。
  14. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 非公開とすることに決定いたしました理由は、農林大臣の申し上げるとおりであります。私は米価問題についての良否については、国会その他で十分論議をいただきまして、また審議会のおもな事項は、後日農林大臣が発表してもけっこうだと、こういうことから私は賛成しているのであります。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 農林大臣の言い方によりますと、今までの長年の慣習は間違いだと、こういうことですか。
  16. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 間違いとは申し上げませんが、私この前農林大臣をいたしておった当時には、どなたも委員辞任されるような事態ではなかった。平穏のうちに審議会は進行した。ところが、それがとみに最近やかましくなって、ああいう事態になって、みながおやめになるということでございますから、あらためて委員選任いたしますにあたりましては、公開では委員選任に支障を来たすということで、非公開原則を明確にいたしまして、そうして委員選任に入る、こういうことでございます。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 ともかく静かに会議をやるということは当然必要なことでしょう。しかし、それはそれとして工夫すればできることなんです。だから、私はぜひこういうことは再検討願いたいと要請しておきます。  それからもう一つは、生産者側委員というものを数を減らす、こういう発言農林大臣記者会見等でされておるようですが、一体これはどうしてそういうことをされたのか。
  18. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 私は農林大臣としてほんとうに承りたいのは、学識経験者意見を十分承りたいというのが私の率直な気持であります。ただし、生産者側意見代表して組合側代表者にも入ってもらう必要がある。また従来消費者中小商工業者代表者が欠けております。今、しいて申しますれば、消費者米価配給制度等について一番重要な段階にありますので、これらの諸君にも委員としてお加わりいただく必要がある、こう考えて私が申し上げたのであります。
  19. 亀田得治

    亀田得治君 消費者側のほうをふやすということは一つの問題でしょう。必要性があればふやしてもいいと思いますが、しかしそのためには設置法の、たとえば二十五名となっているのを法律を改正して二、三名ふやすとか、そうすればいいのであって、何もそのことを弱い農民のほうの代表を減らすといったような格好でこう持ってくるということは間違いだと思う。どうしてそういうふうな取り扱いはできないんでしょうか。
  20. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 亀田さん御承知のように、たとえば衆参両院から六名の議員さんが出ていらっしゃいます。これらの人はいずれも最も熱心な生産者立場を十分にわれわれにお教えいただく方々であります。委員の内容について考えてみますと、生産者側方面委員は十二分にこれを発表していただくことが多いのでございます。そういう意味から、私は組合のほうに、ダブって委員が出なくてもよろしいという意味から、組合のほうは一人にして、それを商工業者のほうに回したらどうだ、こういうふうにして今度の委員の人選に入ったのであります。決して私は生産者立場を弱めるというような意向は毛頭ございません。
  21. 亀田得治

    亀田得治君 農林大臣、いろいろ説明されましても、結論としては弱めることになるわけです。私はこの点も納得ができませんから、この際やはり再検討してもらうように要請しまして、米審の問題はこの程度にいたしておきます。  そこで、憲法問題に移りますが、調査会長がお急ぎのようでもありますので、高柳会長に先に問題点についてお尋ねをしたいと思います。憲法調査会は、経過から見まして、憲法改正論者方々改憲の準備として設けた。これは私経過的に見て明確だと思うのです。現在でき上った憲法調査会自身は、会長はどういうふうなつもりで運用されておるかしれませんが、結果においては、そういう改憲論者改憲ムードを作る、こういうことのために大いに利用されておる、私たちはこういうふうに見ておるわけですが、会長所信をまず承りたい。
  22. 高柳賢三

    説明員高柳賢三君) 憲法調査会ができます当時は、私は全然知らなかったのでありますが、今おっしゃるように、そういうような動きも一部にあったかとも聞いております。しかし憲法調査会法というものができますると、それを提案した人の主観的意図というものを離れて、国の法律としてわれわれは解釈していかなければならない。したがって、憲法調査会法改憲前提とするなんという問題ではなくて、どこまでも日本国憲法というものに公正な検討を加えて、十分慎重に検討を加えて、そしてそれを内閣及び内閣を通じて国会報告する、これが憲法精神憲法は御承知のように、本質的に超党派的なものでありまして、調査にあたっては全国民の将来のために憲法というものを考えたい、そういうふうなことが憲法調査会によって要請されておるというふうにわれわれは考えまして、法律から委託された仕事を忠実に行なうという意図で従来動いて参ったわけであります。したがって、一部に言われるように、この調査会改憲前提として動いておるのだ、こういう考えは全然誤謬でありまして、改憲が必要なのかどうか、改憲論者改憲の必要を説きましょう、あるいは反対論者はそれに反駁を加え、十分にお互いに論議してみて、そして日本国民のためにどういうふうにしたほうがいいのか、こういうことをやるのが憲法調査会だ、こういうふうに理解して憲法調査会は動いておるわけでございます。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 順々に問題点を整理してお聞きいたしますから、お聞きした部分に限ってひとつ簡潔にお答えを願います。  ただいまの御答弁にもあったわけですが、そういたしますと、この憲法調査会は、成立後の事情は別といたしまして、これができる過程としては、改憲論者改憲促進のために作った、こういう点はお認めになりますね。
  24. 高柳賢三

    説明員高柳賢三君) それは、私として証人に立ってお話しする資格がないと思います、それは私関係が全然ありませんから。私は憲法調査会法ができたあとに委員に任命されたもので、その前の事情——政治的情勢というものについては、新聞で読んでいるぐらいしか知識がないのですから、その点についてはお答えすることは越権だろうと思いますから、差し控えます。
  25. 亀田得治

    亀田得治君 越権でも何でもないのでありまして、あなたのほうは憲法の問題に関していろいろな経過等などの調査もなされておるわけです。こういう年報なども、そのつど出しておられるわけですね。その中にも、一々引用いたしますと時間をとりますから申し上げませんが、皆さん自身がお作りになっている報告書ですから、そんなことは言わなくてもわかっているわけですから……。経過としては、そういう経過でできてきたものだというふうなことは、会長としても認められるんじゃないですか。
  26. 高柳賢三

    説明員高柳賢三君) それは、先ほど申しましたように、法律ができるときに、どういう人がどういうつもりで作ったのか、こういうことにつきましては、いろいろ複雑な事情があるようでありますけれども、そういうととは憲法調査会としては調査いたしておりません。われわれは、憲法調査会法ができた、その法律精神というものは、決して改憲前提としたものじゃないというふうに理解して動いておるわけであります。これは、私よく調査しておりませんけれども、議会でも改憲前提とするものじゃないというふうに提案者も答弁しておると思います。その裏にどういう意図があったのか、こういうことになると、私は何にも言う資格はないように思います。
  27. 亀田得治

    亀田得治君 憲法調査会年報昭和三十五年度第一ページ「憲法調査会設置経緯」、この中に、「改進党においては、昭和二十九年一月二十日第六回大会において、現行憲法の全面的再検討の必要を認めるので、法律をもって憲法改正審議会を設くべきことが決議された。」、それからさらに続いて、自由党につきましても、その経過が書かれまして、さらに昭和三十年十一月十五日の自民党結成大会における同じような趣旨のことも、ここに書かれておるわけです。これは、あなたのほうの書類の中で、経過として書いてあるわけです。こういうことは、一体会長はお認めできないのですか。自分がお出しになって、何もそういうことは調べないんだとおっしゃるけれども、調べて書いているんでしょう、はっきりそういうことはおっしゃって下さい。
  28. 高柳賢三

    説明員高柳賢三君) 党内でどういう動きがあったかというような問題については、私は個人としては十分検討も何もしておりません。それは、なぜそういうことを言うかというと、制定の経過提案者がどういうつもりで提案したか、またそれに賛成した人がどういうつもりで賛成したのか、これは非常に複雑でありまして、これはもういろいろな動機でもって賛成したり反対したりしているので、法を解釈し運用する場合に、一々そういうことをやる必要はないものである。われわれの任務は、憲法調査会というものを全国民のために正しく運用するということが大精神だというふうに理解しまして、それができた経緯、そういうようなことは消えてしまう、そういうつもりで、そういうこまかい——今御指摘になったようなことは事実そうでしょう、しかし、それかといって、そのとおりに憲法調査会法を運用していくべきものだということは考えておらないから、われわれの立場から言えば、その問題は大した問題じゃない、こういうふうに感じております。
  29. 亀田得治

    亀田得治君 そういう経過はそのとおりでしょうと、今お答えの中でおっしゃった。それはしかし、非常に大事なことなんです。法律ができてしまったら、会長はそんなことから離れてやるんだとおっしゃいましても、実際はそうならないわけです。そこに問題が起きているわけです。  そこで、次に問いを進めます。憲法調査会の現在の構成は、御承知のように、圧倒的に改憲論者が多いわけです。国会議員が二十一名でありますが、ほとんど全部が自民党改憲論方々、それから学識経験者が二十名あるわけですが、私どもの立場検討してみますると、改憲反対あるいは比較的中立的な立場で行動しようというふうな立場の人を入れても七名ですね。私は、こういう問題について、あまり数で物を言うのはどうかと思う点もあるわけですが、しかしあまりにもこの構成では片寄り過ぎているわけですね。数が問題ではないというあなたの持論は、私もそれなりにちゃんとこれはわかっております。わかっておりますが、こういう重要な問題について、あまりにも片寄り過ぎた構成になっている。私はこういうことでは正しい意味調査というものはできないのじゃないかというふうに考えるわけですが、会長経験などを通じまして所見を承りたい。
  30. 高柳賢三

    説明員高柳賢三君) 社会党のほうで憲法調査会をボイコットしたために、委員構成が片寄っている。あなたの言う改憲論者というものの数が多過ぎやしないかということは、私もそういうふうに認めます。これはしかし、一番いいのは、社会党方々がボイコットなさらないで、席をあけておるのですから、入ってきていただいて、そしてそこで堂々と所信を述べるということが一番いい方法だと調査会として考え、たびたびそういう趣旨社会党のほうにも申し込んだわけでございます。しかし、遺憾ながら、社会党のほうではやはりこれは拒否されたので、しからば、そういう構成のもとでは憲法調査会はやめてしまうか——そういうわけにはいかないのでありますので、片寄っておりますけれども、それが片寄らないように運用しておるわけで、その一つは、つまり、参考人というものをたくさん呼びまして、この参考人というのは、いわゆる改憲反対論者の学者その他の人を十分に呼びまして、その意見を聴取する。それから、さらに進んで、公聴会も開きまして、そして世間一般の意見を聞く。こういう方法をとっておりまして、委員は御指摘のような点は確かにありますけれども、その与えられたる条件のもとで、国民全体のために憲法の問題を考えると、こういう立場を堅持して運用しておるわけであります。しかしながら、われわれが最も希望するのは、社会党が制定の当時のいきさつなどは水に流して、そして国民のために憲法論議に参加するという、こういう積極的態度をとられる上いうことが、われわれの要望しておるところであります。
  31. 亀田得治

    亀田得治君 社会党が参加できないのは、こういう機関を内閣に設けること自体に、憲法上の疑義を持っておるから、参加しないわけなんです。私がお尋ねした点は、そういういきさつは別といたしまして、でき上がったこの格好というものがはなはだいびつなものだ、こういうことは今お認めになったようだから、そういうつもりでおやりになっておるのなら、一応それで、それなりに、私としてはその点は了承するわけです。その点をお聞きしたわけなんです。社会党のことまで云々と言われるのは、少し言い過ぎる。今、なぜ社会党が参加しないかといったような論議をここで始める必要は、私はないと思うのです。形だけを聞いておるわけなんです。  そこで、そういう構成上の欠陥というものが、今までの憲法制定の経過なり、あるいは憲法施行の実態というものを、今までは主としてお調べになってきたようですが、そういう事実関係調査の中にも現われておるのではないかというふうに考えるわけなんです。会長は、いやそういうことはない、できるだけそれは公正にやっておると言われますけれども、私も、憲法調査会から配付されます文書が非常に多いわけですが、しかしできるだけ目を通すようにしております。しかし、われわれなりに、やはり構成の誤りというものが事実関係調査にもときどき現われておるのではないかというふうな感じというものを非常に持っておる。今一々その部分についての指摘などはいたしません。一々の例をあげろと言えば、もちろんあげられるわけですが、これは大部分の人が改憲論者である。その人たちは、事実関係調査が終わったら、次は改憲論議だと、こういうことを意識しておるわけですね。そういう意識が背後にあって、そうして事実関係調査をやるものですから、そこに飛躍が出てくる。自分の都合のいいように質疑応答などを進める、こういったような個所がところどころにあるわけなんです。そういう個所がないといったようなことは、断言できますか。
  32. 高柳賢三

    説明員高柳賢三君) この制定の経過と、それからさらに運用の実際、これを四年ばかりかかってやったのでごいますが、これはできるだけ公正にやるというので、たとえば、この憲法制定の経過につきまして、いわゆる押しつけ論というようなものがありましたけれども、これは抽象的に押しつけ論というようなものをやっておりました、まあ改憲論一つの論拠として。だから、自主的に憲法を改正しなければならぬ、こういう議論もありましたが、そういう面につきまして、事実を一つ一つ調査して参りまするというと、それほど簡単なものじゃない。英文の憲法を日本に強要したというような考え、こういう意味において押しつけたというような、そんな簡単なものじゃない。もっと複雑しておるということなんです。事実関係を公正に一々検討した結果、明らかになってきておる。そういうような点は、いわゆるそういう改憲論者には、押しつけ論者には、痛い事実がみな出てきたということになりますので、そういうような点は、そういう改憲論改憲反対論者の言うところなどは一つ考えないで、事実を事実として究明していく、それを報告していく。その間にいろいろ意見がありましょう。けれども、大体において私が見たところでは、公正に制定の経過をやったと思います、それからさらに、運用の実際の検討、これも、あらゆる問題について、参考人はいろいろな考えを持っておる人をできるだけ多く呼んで、そうして質問応答をする。そこにいろいろな意見などが出ております。しかし、その意見というのは、実際の運用に照らして、こうしたらいいだろう、ああしたらいいのだろうという意見で、まだ、これをどうするかということは、その報告書ではさまっていない。この問題をどうするという問題は、現在検討しておるわけであります。であるから、あそこに書いてあるのは、委員考えがたくさん出ておるというようなことはありましょうが——おっしゃるとおり。しかし、それはファイナルなものじゃないのであります。これから十分に検討する、ことに、委員だけできめるのじゃなくて、国民とともにきめるという意味で、公聴会を開いてその意見を十分に聴取しておるという実態でございます。
  33. 戸叶武

    戸叶武君 関連。今の答えは、亀田君の質問と的がはずれておるのですよ。これは、亀田君がすると時間をとられるから、その点を指摘する必要があると思うのです。内閣でもって憲法調査会というものを作ったが、それから今日において発展して、それを足場として、今度は内閣自身憲法改正の発案権がありというような断定にまで発展する過程というものは、あとで別な機会にこれは指摘しますけれども、容易ならぬことです。これは、憲法改正という形の言葉に多くの人が目をそらされて、ごまかされておりますが、革命です。日本の今、憲法の基本的な条項に対して切り込んでくる、根本的な改正をやろうというところは、一個の革命行為です。
  34. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 戸叶君に御注意申し上げますが、御意見を述べずに、質疑の点を述べていただきたい。
  35. 戸叶武

    戸叶武君 答えが不十分だ。その過程で、今調査会というものが足がかりでもって、そのときには、絶対に改正するとか改正しないとかいうのでなくて、これをもっぱら調査するのだという形で作り上げて、その上に立って、今度は内閣がそれを足場として、内閣みずからが憲法改正の発案権がある、提案権があるというような出方になったというところに、憲法調査会の持っている政治的出発というものの不明朗な点があるので、そこを亀田さんは聞いているのです。憲法調査会というのは、法律技術屋として憲法を解釈するというのでなくして、憲法を改正せよという意図のもとにおける調査会というものが作られて、その意図によって新しく今度は生まれるという、その点をもう少し十分に説明してもらいたい。
  36. 高柳賢三

    説明員高柳賢三君) 憲法調査会は、御承知のように、調査審議してその結果を報告する、これだけのもので、その審議の結果はどうなるかわからない。そこで、どういう形で報告するかと申しますと、つまり特定のたとえば第九条、これを改正すべしという議論と改正する必要なしという議論が必ず最後まで残るのではないかと思います。そういうような場合には、双方の理由を十分に付して、そしてなぜ改正しなければならないか、なぜ改正する必要がないか、改正に反対するか、それぞれの理由を付して、そしてそのまま報告する。多数決でもって押し切るなんということはしない。これはまあ全会一致でもってそういう方針がきまっておるわけであります。したがって、憲法調査会報告書に基づいてその二つの意見のうちどちらをとるかということは、これは内閣あるいは国会がきめることです。しかし、これは最後には国民がきめる問題なんです。それを考えるときの資料を、われわれはなるべく十分検討した資料を供給するということがわれわれの任務である、こういうふうに考えておるのでありまして、われわれは改憲論の手先だなどとは考えておりません。
  37. 亀田得治

    亀田得治君 高柳さんはまあ非常な学者でありますが、ひとつお聞きしたいのは、憲法関係に関するこの事実関係の認識ですね、これがいろいろこう錯綜しておるわけです。私は、まあ社会党としてはこういう調査会には反対でありますが、ともかく歩き出している以上は、こういう歩き方が正しいじゃないかということを考えている一人なんですが、それは改憲とかあるいは現状維持とか、そういうことじゃなしに、錯綜しておる事実関係の究明、こういうところ最重点を置くべきではないか、ころ考えておるのです。ちょうど労使関係法律に関しまして、過去十数年の経過というものを、労使関係法令調査会ですか、ああいうところでやっております。これは全体から見るならば、経営者、労働者、非常にこの利害の対立する問題です。それだけに、この労使関係の法令調査会では政策問題には原則として触れない、十幾年間の実態を究明しよう、こういう立場でずっとこうやってきておられるようですが、私はそのほうが実態調査としてもやはり権威を持ってくると思うのですが、調査会長のひとつ考えを承りたい。
  38. 高柳賢三

    説明員高柳賢三君) これは憲法調査会法の解釈の問題になるわけでありまして、大体そういう事実だけを調べてそれを報告すれば、それで任務が終わったのか、あるいはさらに進んで、いろいろ改憲論もある、これに対して改憲反対論もある。しかし、それらはまだ十分に考えられておらないでそういう議論をしているんじゃないか。だから、事実調査というものをやって、そういう日本の現実の状態というものに即して特定の条項の改正が必要であるかということを検討していく、これもやはり憲法調査会法がわれわれに求めておるところである、こういうふうに憲法調査会としては解釈いたしております。それでありまするから、ただいま御指摘になったように、労働関係のほうではそういうことがあることも承知しております。しかし、憲法調査会としては、さらに進んでポリシーの問題についても議論が二つに分かれた場合には、どっちに理由があるのか、どっちが将来の日本にとっていいのか、そういうような大きな問題をも合理的に検討する。ムードではなくてですね、ムードでもって憲法論を考えられず、もう少し合理的に一つ一つ事実に即してどうしたらいいのかということを考えなければならない。そういう意味で、やはりポリシーの問題もそういう態度で検討するということになっておるわけでございます。
  39. 亀田得治

    亀田得治君 憲法調査会法は必ずしも会長がおっしゃるようなことにはなっていない。「調査会は、日本国憲法検討を加え、関係諸問題を調査審議し、その結果を……報告する。」こうなっておるわけでして、必ず改憲問題に触れていかなければならぬと、法律上は必然的にこれは出てくる私は解釈じゃないと思うのです。むしろ、こういう重要な問題だから、まず実態を明確にする。それだけでも大きな仕事なんだということが、調査会自体としてそういう判断ができれば、私はそこでとめて決して違法にはならないと思います。これは法律の解釈であるし、その点調査会法の第二条のそれと、それからこの法律の解釈を多少離れて、ほんとうにどちらが正しい態度かということも同時にあなたにお聞きしているわけなんです。
  40. 高柳賢三

    説明員高柳賢三君) 第一の問題につきましては、やはり制定の当時の記録などを調べますと、これに関する諸問題を研究するということになっておりまして、ただ事実調査ということでなく、やはりいろいろ問題点というものがある。御承知のように、これは日本の全体として見ますると、改憲論改憲反対論というようなものがあり、やはり日本国憲法というものは現行法なんですから、これはすべての人が守らなければならない法律秩序の重大な一部になっておる。それに対して、あるここのところだけはちょっと変えてもらいたいという要請も一部にある、いや、それは変える必要はないんだという意見もある。そういうつまり問題を憲法調査会法検討をするというのが相当重大な任務じゃないか。ある人は、それこそが任務であって、憲法制定の経過とか運営の実際などそんなことは必要ないんだと、こう言う人もありますけれども、私らはそう考えないので、運営の実際に即しないでポリシーの問題を研究するということは大間違い。抽象論の対立になって並行線をたどって憲法論争が終わるということは、国のために非常に嘆かわしいことだ。やはり憲法の問題も一つ問題点というものがある、それをどういうふうに合理的に解釈するかということが必要だろうと。これは第一の点については、やはり発案者も大体そういうことをも考慮検討しろという意味だろうというふうに察せられるところがありますが、憲法調査会としては全体としてそういうふうに解釈しておるわけで、あなたのような解釈もあるいは成り立つかもしれません。しかし、憲法調査会としてはやはりその問題をも合理的に検討していくということがわれわれの任務だと、こういうふうに考えております。  それから、これはあとの第二の問題ですが、やはり先ほど申しましたように、いわば日本国憲法というものが改憲論者によって攻撃されている。あるいは検事の立場にある。それに対して弁護士が当然片方にある。そうして議論を戦わせて、それをどちらがいいかを判定するのは国民なんです。一応は国会が発議しましょうけれども、結局は国民が判定する。国民が判断する場合に、ムードでもってきめられては困る。国の将来を左右するような問題がそのときどきのムードでやられるということでは困る。これは慎重の上にも慎重な態度で、対立する意見があれば両方ともよく考えて、どちらの立場がよいのかということを考え検討する、そういう機関として憲法調査会というものは意味があるんじゃないか、そういうことを国民も期待しているんじゃないか、それが憲法調査会法精神に合致するんじゃないか、そういうふうに考えております。  特に、私の考えを御質問になったのですが、私は、今の日本の憲法論議というものがあまりに抽象的で、改憲論者と非改憲論者と全体どこをどういうふうにやろうというのか、非常に不明確なんです。たとえば選挙法について、国会に選挙法を制定させるということは、これはいけない。であるから、憲法上の機関を作って、そうして国会から離れた第三者の立場で選挙法というものは作られていかなくてはならない、こういう議論が憲法調査会内部に出ている。これは改憲論者というのかどうなのかですね、そういう、つまりこれはいわゆる選挙民権のエレクトラル・パワーという問題が憲法学の上で大きな問題になって、十八世紀のモンテスキューの三権分立というのはアウトモーデットで、そういう選挙民権というものが大切である、これが保護されなければならない。これがそういう趣旨憲法の改正を行なうべしというようなときに、改憲論者というものはどういうのかわからない。そういうふうに非常に抽象的じゃわからないので、やはり憲法全体にわたってどの点を改正する必要があるのかないのか、こういうことを検討していかなければならない。そういう意味で、先ほど亀田さんはムードということをおっしゃった。改憲ムードはこれはくせ者だと思う。われわれはムードで動いてはいけない。憲法の問題などムードで動いてはいけない。どこまでも合理的に慎重に考えて、両方の議論を比べてみて、そうして結論を出すという態度でなければならない。これは政党的に考えてもいけないと思うし、憲法の問題というのは、アメリカでも最近の憲法改正のときにフリー・ボードでもってやっている。憲法の問題は、党派に分かているけれども、これは国民の将来の大きな問題である。だから、憲法問題を拘束するということは条理に合致しない。私はこれは正論だろうと思う、憲法の問題について。で、そういうふうに、その問題は別といたしまして、とにかく改正すべきかいなやということは、各条項にわたって、しかも運営の実際に照らして考える、こういうのが着実な行き方だと思いまして、その方針でわれわれの審議を行なっております。先ほど申しましたように、多数決でもって押し切るとかなんとか、そういうようなことは一切しないことになっています。
  41. 亀田得治

    亀田得治君 そういうムードなどではいけないから、事実関係が大事なんだ。したがって、その点に憲法調査会としてはもっとしっかりとした仕事をやるべきじゃないかということを私は申し上げているわけなんです。で、まあ私が抽象的にそういうことを申し上げても、多少こう突っ込みが足らぬような気がしますが、たとえば参考人等をお呼びになっておるのを私全部見ております。大半というものは役人ですね、参考人として出ておるのは。憲法を、上のほうにいて使っておるそういう人たちが、どこが便利だ、どこが悪いとかいいとか、こういう議論が多い。一つ取り上げてみても、それはもう大衆の中には問題にしてもらいたいところがたくさんあるわけなんです。多少はそういうところも出ておりますよ。だから、非常な不均衡である。また、これはゆっくり別な機会にそういう中身に入った議論をしたいと思いますが、ともかくそういうわけでして、この、何といっても構成の欠陥というものが今までの事実調査段階に出ておるわけなんです。だから、一応事実調査を終わったというのであれば、少なくともまあ会長考えでいきますと、事実調査からさらに改憲問題にいくべきだと、こういうお考えのようです。私はそれは反対なんです。反対ですが、しかしそういう会長立場を認めるにしても、一応ここでストップしたらどうか。という理由は、この今まで調査会が作り上げた報告書なり、そういうものを世間にやはり出し——これは出ております。出ておりますが、出して、そうしてゆっくり見てもらう。おそらくあれだけひんぱんに出るわけですから、委員の方でも十分目を通されておる人もあるんじゃないかと私は思う。まあ中立の学者の方は皆さん見ているでしょうが、それをよく見てもらう。それから、国民の批判も受ける。で、こういう点では抜けているじゃないかといったような点が指摘されてきたら、そういう点は補っていく。そういう事実関係に関しての一応の批判と補強を、ほんとうにあなたが公正中立な立場でおやりになるのなら、そういう段階というものは私はあっていいと思うのです。この問題についてはそれはどういうふうにお考えですか。事実調査を終わったら、すぐ改憲だ。第一、事実を基礎にした改憲論議をやるというのであれば、十分それらの資料を読んでおる人にしたって、多少のそこに時間的な余裕がなければだめだ。そうしませんと、事実が無視されて、当初から抱いておる改憲イメージとか、そういうものにすぐ取りつかれてしまうわけなんです。私はそういうものを、事実関係を補強するという意味からも、どういう点から見たって、ここですぐ引き続いて改憲問題に飛んでいく、これははなはだ公正な審議やり方としては間違いだ。どうです。
  42. 高柳賢三

    説明員高柳賢三君) ただいまの御意見でありますが、憲法調査会としては、やはり憲法を改正すべしという、とにかく国民の一部に意見があるのですから、それが正しいのか正しくないのかということをやはり検討しなければならない。これはまあ初めからそういうふうに考えておった。しかし、そういうポリシーの問題を検討するのには、ただ抽象論で法律の条文がどうだとか、そういう抽象論で検討すべき問題ではないのであって、国民のまあ生活全体というものにそれがどういうふうに政治的、経済的、社会的、文化的に動いているのかということを検討するということが、そうして初めてどうするかという問題が合理的にきめられる問題である、こういうふうに考えて、初めからもう最後の段階を、それを予定して、事実調査をやっておる、——事実調査について御批判がありましたけれども、いわゆる支配する側の人の参考人が多くて、支配される人のほうの参考人が少ない、こういう御批判に対してはこういうことを申し上げておきたい。運用の実際については実際、官庁関係、たとえば司法については裁判所、それから法務省、それから弁護士、そういう人たち参考人を呼びまして、それぞれの角度から同じ問題を見る、しかし、そういう人が参考人に多かったのですけれども、これは研究問題の性格上そういうことになっただけでありまして、公聴会においては、今度は逆に憲法の支配を受ける人の立場からものを全部発言されておる。四十五回ほどやりました。そういう国民の声を聞くのは、つまり適用を受ける人たち、あるいは経営あるいは中小企業あるいは労働組合あるいは教育、いろいろな国民各層の意見というものを公述人の口を通してわれわれは聞いておる。それがつまりいわゆる権力を行使する側でないほうの声なんです。その二つを総合して、どうしたらいいかということを考えるということが必要である。あなたの要請されておることは、憲法調査会としては実行しておるのであります。それから先ほど申しましたが、ここでストップして、あとはやらないでもいいじゃないか、しばらく待ったらいいだろうというお考えですけれども、これは先ほど申しましたように、初めからとにかく改正論があるけれども、これが正しいのか、正しくないのかということを検討するのが大きな問題であるというふうに考えておりますので、ここでストップするということは賢明でないというふうに考えております。
  43. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。ちょっと意見にわたりますが、長くはかかりませんから御了承下さい。(「質問、質問」と呼ぶ者あり)質問するけれども、その中に意見も含めて言う。私は憲法が永久、いつの時代においても改正されてはならぬなんということを前提として質問するものではありません。必要に応じてときには改正せんならぬこともあることは当然であります。ただ問題は、今会長が政治的、文化的、社会的等の諸条件をと言われましたが、その中に一つ大きな条件が抜けておると思う。つまり私は、憲法の個々の条項について是か非かということを判断するという場合の一つの背景に、日本の置かれた国際的地位、今の世界的諸条件というものを一つの判定の大きな材料にしなければならぬと思います。つまり世界の情勢が、今完全軍縮が達成されるかどうかは別として、これは時間の非常にかかる問題でありますが、それは別として、軍縮が世界の非常な大きな条件になっておることは事実であります。極東に緊張が存在しておることも事実であります。そういう政治的国際的背景の中では、今の憲法が日本の国民を守る上に役立つかどうかという、そういう背景というものが非常に大きな問題であります。抽象的に憲法の第何条がどうであるとか、こうであるとかという議論は、そういう客観的世界的条件を離れて論議される場合には全く無意味になります。ある時代においては、それは論議として成り立つこともあるでしょうが、今の、私が申し上げた基本的な問題を離れての論議は、私はたいして意味ないと思う。このことを十分頭に置かれて、今後運営される場合には事を進めていただくことが適当であるし、でき得べくんば、今亀田議員の言われたように、これが中止ができるならばそれにこしたことはありませんが、少なくとも先ほど会長の言われた文化的あるいは社会的、経済的等の諸問題のほかに、今申し上げましたような問題があるということを十分御認識なさっておるのかどうか、この点を会長に伺います。
  44. 高柳賢三

    説明員高柳賢三君) 憲法の条項の中でも非常に国際性を持った条項と、それから純国内的と見ていいような問題、いろいろ分かれております。たとえば憲法第九条のごとき問題、これをどう解釈するかというような問題になりますると、これは世界の情勢とかいうものと、現在の世界の構成されておる現状というものとにらみ合わせてこれを解釈しなくちゃならぬ、あるいはこれを改正するというような場合にも世界の情勢とにらみ合わせてやらなきゃならぬ、単に条文の解釈がこう書いてあるからこうだなんという、そんなナイーブな憲法解釈では問題は片づかない、そういうことは十分にわれわれは考えておる。その点では、ただいまの御発言趣旨には賛成いたします。
  45. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 委員長一つ……。高柳先生、私は一昨年当院の内閣委員会に先生参考人としておいでいただいて質疑いたしました矢嶋でございますが、あの当時、私は高柳先生というのは名前を承っておりましたが、ずいぶんりっぱな先生だなという印象を植え付けられた記憶があるのですが、あの当時の先生が公正に運営されておられたことを想起し、その当時、内閣委員会参考人としてお述べになられた経過の運営を見てみますと、最近非常に私は当時の先生の予想、お述べになられたのと違って、スピードが加わってきたと思うのですね。これは何でございますか、先生の御心境の変化に基づくものでございましょうか、それとも一部のある勢力の働きかけ等があって、かように当時の参考人として述べられたのと違って、憲法調査会調査審議がスピードを加えられてこられたのか、それをちょっとお伺いしておきたい。
  46. 高柳賢三

    説明員高柳賢三君) 当時の私の心境と今の心境と少しも変わっておりません。当時私が、たとえば九条に関して発言したところと、ただいま私が申し上げたことは完全に一致しておるのでありまして、心境の変化、あるいは外部からの圧迫というようなものは一切ございません。
  47. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 調査のスピードが、あのときはゆっくり慎重に数カ年を要すると言ったが、最近はスピードが加わっている。
  48. 高柳賢三

    説明員高柳賢三君) 大体、その調査の方法といたしましては、つまり運営の実際なりというものを抜きにしちゃって、初めからやれば非常に早くいくのでしょうけれども、運営の実際が非常に大きな仕事なんですから、これに四年以上かかりまして、そうしてさらにこれからポリシーをやるときにも、やっぱり運営の実際を、最後の段階の問題を検討するについても、その段階においてやはり運営の実際を研究していかなくちゃいけないやつをまとめてずっと最初にやったのです。だから、運営の実際は大体わかったという状態にあるから、割合に早くいくのじゃないかと、まあこういうふうに考えております。
  49. 戸叶武

    戸叶武君 関連質問。先ほどあなたの発言の中に具体的な例ですが、高柳さんの速記とっておりますが、この憲法改正の発案権の問題に対して、一応は国会が発議するであろうが、決定するのは国民である、これは一貫して高柳さんの御意見と思うのでありますし、憲法調査会で三十四年の四月に出し憲法改正に関する資料の論点においても、これが要約されてあります。その中におきまして、憲法改正の発議に関する問題の条項において、第九十六条第一項の憲法改正の発議に関しては、国会の発議権に加えて、これを国民に認めよという意見がある。なお、内閣にも発議権を認めよという意見があるというような報告、事実を事実としての報告でしょうが、という意見があると、第三の微々たる意見が、いつの間にか今度は内閣にもあるというふうに、憲法調査会における論議の微々たる火種を利用して、行政機関が日本の憲法——あなたのこの点の解釈を求めたいんですが、イギリスの憲法がどうのこうのなんて林さんなんか言っているが、そんなものじゃない。日本憲法は日本憲法で解釈しなくちゃならない。日本の憲法において、憲法の九十六条において、第九章において改正ということを明記して、ここでなければ改正ができないような、憲法前文における、あるいはそのあとにおける最高法規で羽がい締めして要約してあるのにもかかわらず、内閣——調査会の論議において三つの意見が分かれている。三つの中において一番微々たる意見を、今度はあたかもそれが学者の定まった意見のような形で、一般の論議を経ないで、しかも、内閣総理大臣憲法解釈において……、(「委員長、注意しなくちゃいかぬじゃないか」と呼ぶ者あり)いや、重大なことなんです。(「関連質問じゃない」と呼ぶ者あり)いや、重要問題です、憲法問題は。国の最高機関として国会がまとまいって……。
  50. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 戸叶君、おやめ下さい。
  51. 戸叶武

    戸叶武君 いや、ちょっと待って下さい。今重大な質問なんです。これは国会内閣との対決だ。国の最高機関としての国会があるのにもかかわらず……、(「ここは予算委員会だ)と呼ぶ者あり)いや、待って下さい。質問をしているんだ。君は学問がないからわからないのだ。学問のある人に聞いている。
  52. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 戸叶君、おやめ下さい。(「学問がないとは何だ」、「論議を中止しなさい」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  53. 戸叶武

    戸叶武君 この問題に関しては、いかに重要であるかということは……。
  54. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 戸叶君、早くお述べ下さい。
  55. 戸叶武

    戸叶武君 国会が守ろうというんだ。国会憲法を守らないで、この重要な問題に関して……、(「学問がないとは何だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  56. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 私語をおやめ下さい。私語をおやめ下さい。
  57. 戸叶武

    戸叶武君 いや、委員長、ヤジを封じて下さい。  憲法において、主権者としての国民の委託を受けているのはこの国会です。国会の中から総理大臣は選んでいるんです。内閣は国の行政機関の最高であって……。
  58. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 戸叶君、議論よりもなるべく早く質問の点をお述べ願います。
  59. 戸叶武

    戸叶武君 これは重大なんです。この問題が政府との対決で一番重要ですから、ちょっと待って下さい。  今高柳さんに聞きたいのは、そういう憲法調査会にわれわれが疑惑を持つのは、憲法調査会で正確なデータを出したといっても、それを足がかりとして、内閣が、憲法改正の発案権、提案権が内閣にある、こういう形で、十分の論議を尽くさないで押し出してくるという危険の中にこの憲法改正のムードが起きている事態に対して、責任を持たなくちゃならないと言うので、あなたのほうの調査会で、並びにあなたはこれに対してどういう御見解を持つか。私は同僚をあれしたことは、それは謝罪します。悪かったら謝罪しますが、この問題に対して純学者的な立場から私は御意見を承りたいと思います。
  60. 高柳賢三

    説明員高柳賢三君) 憲法調査会は、もう憲法解釈の具体的な問題をやる、そういう任務は別にないのですが、しかしながら、たとえば憲法には発議という文字はあります。これは議会でそういうだれか発案をして、問題になって、討議され、十分繰り返されて国会で討議されて、それじゃたとえば改正に踏み切ろうということになって、国民に提案される、こういう形になるのだと思いますが、それをその前に、これがたとえば自民党議員が何名ずつ連合してそういう提案をすると、こういうこともありましょうし、あるいは自民党政府が便宜上それにかわって提案するというようなこともありましょう。だから、発案の問題というのはたいした問題じゃないと思っている。
  61. 戸叶武

    戸叶武君 いや、たいした問題です。
  62. 高柳賢三

    説明員高柳賢三君) 発案でもって国民にすぐいくのじゃないので、発案されて、それが国会で十分に討議されて、その後は国民提出される。それから、先ほど申しましたように、たとえば九条の問題について、あれを改正すべしという議論と、それからする必要なしという議論とは、おそらくなかなかやはりこれは最後まで残るのじゃないかと思いますが、まあそういう場合には、両方の理論を、ちゃんと両方の根拠を明らかにして、そしてどっちがいいかということは国会が判断する、国民が判断する、こういう段階になるだろうと思う。だから、憲法調査会が、きめたことをすぐそれを利用して内閣がどうするというようなことには私はならないのじゃないか、そういうふうに思います。
  63. 亀田得治

    亀田得治君 時間もありませんから、最終的にひとつ確かめたいのですが、この現在の憲法調査会構成が、最初にお認めになったように、非常に片寄っている、これは事実なんです。そして、なるほど調査会長は、改憲の問題について結論を出す場合に、多数決はやらない、おのおのの意見を明確にしていくと、こういうことでありますが、しかし、結局圧倒的に多数の委員の方が、現在の憲法について、ここもいかん、あすこもいかん、こう皆が発言していくわけですね。その結果というものはどうなるかということなんです。それを聞いておる大衆に対しては、やはり何と現在の日本の憲法というものは欠陥が多いものだろう、そういう印象を与えていくことは、これは事実なんです。おのおのの見方が違うでしょう、委員によって。それが一々こうやっていくわけですから、この政治的な、社会的な影響というものを考えないということは、私は筋が通らぬと思う。ムードをおきらいになるのであれば、改憲問題を扱う以上、この点を会長としては真剣にこれは考えてみるべきなんだ。そんな、多数決でやらぬからいいのだ——理屈だけではこの問題は解決しない。  それと、もう一つは、今月から計画されております地方公聴会ですね。改憲問題についての地方公聴会、私はこの実施要領も拝見し、なおこまかい点について事務当局の説明も受けたわけですが、結局はこの地方公聴会の公述人の選び方ということが大切な問題なんです。そういたしますと、この実施要領のやり方、付加説明も聞きましたが、結論として言えることは、この公述人の選定というものは、中央における各種団体の役員の意向できまるわけなんです。私はそういうふうに見ております。憲法調査会としては結局はタッチしない、こういうふうにおっしゃっております。きめるのは中央における、いろいろな業界なり、あるいは各種団体がある。八つか九つほど種類があげてありますが、そういうことになる。そうすると、現在の中央におけるそういう役員の人たち考え方はどうか。非常に社会党に近い進歩的な考えを持った人もあります、中には。しかし、それは少数なんです、現在の段階では。これはもう世間が皆もそう考えております。そういうところから一名ですよ、選んでくるのは。私は数名そういうところで出してくるという選び方であれば、それはその選択の余地がまた調査会として出てくるでしょう。ところが、一名と、こういうわけなんです。そういうやり方で地方公聴会を持たれたって、決して公正な、改憲に対する国民意見は聞かれません、これは。こんなことをやるのなら、いっそのこと、ざっくばらんに公述人を公募すべきです。公募をした中から、あらかじめ意見の要旨を出してもらって、そして公正なやり方で、調査会の目的に沿うように選ばれていく、これでなきゃならないと私は思う。ところが、なぜこういう非常に曲がった実施要領というものができるのか。改憲論者が多いからこういうことになるのですよ。どうですか。私は、たといこういう改憲問題に進むにいたしましても、こういう不公平なことはやってもらっちゃ困る。
  64. 高柳賢三

    説明員高柳賢三君) ただいまの御質問のあとのほうからお答えいたします。つまり公聴会に関して、この公聴会につきましては、国民の各層の団体から選んでいただく。婦人団体とか、あるいは教育界であるとか経済界、いろいろな国民各層から選んでいただいて、大体推薦した人は、たとえば婦人団体なら婦人団体から、この人にいってもらいたいという人が出てくるわけです。それでありますから、一つの団体の中でも、いろいろな考えもありますから、いろいろな考えを全部出せといっても、これは実際上困難である。たとえば婦人団体について、今の憲法は変えちゃいかんという意見が圧倒的、支配的であります。しかし、婦人の中には、今の憲法じゃちょっと困るという意見も出てきております。これはきわめて少数であります。そういうふうに、今の選び方に基づいて出てきた公述人というものは、これは改憲論的なムードの人が多いんだと、こういうふうにお考えになると、これは非常な錯覚でありまして、たとえば、現に東京でやられた第一回のときのあれをごらんになれば、そうじゃないということが非常にはっきりするのじゃないかと思います。これは憲法調査会としては、各種団体に推薦させるので、こっちは何も手は加えない。この前公募ということもやってみました。これは内容は、ただ、公募しますというと、自分の恨みを、いろいろな形でもって憲法の問題にひっかけてやるような人が相当出てきたりなんかします。一般論としては、推薦された人と大体同性格の議論が多い。それから、これを今度やる場合、各都道府県でなく、七つの地区でやる、そういうことにしましたので、技術的に非常に困難になるということもあります。それで推薦された人から聞くと、こういうことにしておるのであります。  それから、大体今のやり方でもって国民の声というものがわかるかという御意見でありますが、これは世論調査じゃないのであって、委員が、十分に国民の声を聞きながらものを考えるというのが目的なんでございますから、その目的からいえば、相当よくいっておると、こういうふうに考えます。  それから第二は、先ほど、そういう改憲ムードみたいなものを起こさせて不都合じゃないかというようなお考え、これは確かに一部にはそういう考え方を持っておる方もあります。しかし、ムードに関しては、三つの意見が私の耳に入っております。一つは、改憲ムードを刺激するという意見。第二は、改憲反対運動を刺激するムードを起こしておる、こういう見解。第三の見解は、憲法調査会は、現行憲法国民教育をやっているのだ、非常にけっこうだ、こういう三つの意見が私の耳に入っております。現行憲法の教育というのはどういうものか。これも憲法を教育するのに、憲法の条文やなんかを解説するアカデミックなやり方もありましょう。しかし、ほんとうに憲法を理解するのには、攻撃されたものに対してどう考えるか、つりまその討論の間に憲法意識というものは育っていく。これは教育の面でもそのとおりなんです。決してお説教をしたような憲法解説なんというのじゃだめなんです。実際政治に役立たない。国民憲法意識というものを高めるのには、この論争の間に高まってくる。自分でどっちがいいか考える。そういう意味で、私は、第三の声というものが憲法の問題を考えるときには一番正しいのじゃないかというふうに考えておりますので、公聴会においていろいろな議論が出てくるのは非常にけっこうなことだ、こういうふうに考えております。
  65. 亀田得治

    亀田得治君 第三の見方が正しいということなら、なぜ公聴会方式をおとりにならぬのです、あらかじめ公募して。いろいろな人が出てくるでしょう。中にはむだだと思われるのもあるでしょう。それは捨てたらいいでしょう。そうしていろいろな意見が出てくるように当然やるべきでしょう。ところが、この実施要領では、近畿なら近畿六県で八名内外というのでしょう。しかも、それを近畿の各種団体に選ばすのじゃなしに、中央における縦割りのその筋の団体の協議会で選ばす。しかも、一つの団体、婦人なら婦人について一名です。その婦人が、私の婦人団体の内部にこういう意見もある、ああいう意見もある、そういうのが出てくることをあなたは御期待にもなるのでしょうが、私はそれは無理だと思う。やはり少なくともそういう推薦制をとるにしたって、二名でなければだめです。そんなことは常識です。そういう点で、ひとつぜひこういう不公正なやり方はとらぬように、この席上をお借りして、会長に要請いたしておきます。あとに、総理にもいろいろお聞きしたいことがありますから、会長に対してはこの程度に一応とどめておきます。  ともかく改憲問題は、あなた自身は公正に公正にと、絶えずこの審議会の議事録等を見ても、そういう跡はうかがわれます、確かに。しかし、元の起こりは、日本の再軍備の促進に関連して、憲法第九条の問題が出て参りまして、それから発展してきたことははっきりしているわけなんです。しかし、それだけじゃいかぬので、あそこにも欠陥がある、ここにも欠陥があるというようなことをいろいろな人が言い出す。しかし、実際は、憲法の解釈なり、いろいろな運営で解決されている問題がほとんどなんです。九条だけ言ったんではちょっと工合が悪い。それでいろいろなことを言う。そうして抱き合わせでムードを作って、最後に落とそう。会長などは善意でおやりになっているかもしれませんが、そういう動きの中のこれは一環なんですから、この点だけはしっかり踏んまえてもらって、ひとつ公正な運営というものを心がけてもらいたいことを、これは重ねて要請しておきます。
  66. 戸叶武

    戸叶武君 関連。高柳さんが帰る前に、総理に対して関連質問。
  67. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 戸叶君、簡単に願います。
  68. 戸叶武

    戸叶武君 高柳さんが学者的な立場から、憲法改正の発案権なり提案権の問題、三つあることを認めておりますが、やはり中心は何といっても国会です。日本憲法においては、これが通説でなければならないのです。しかも、この問題に対して、若干でも、三つの問題があるという学者的な分類によって、その一つを選ぶということを内閣総理大臣がやるときに、少なくとも、国の最高機関、立法府としての——一般法律や予算案と違うのです。この国会の論議を経ずして、国会の了解を得ずして、内閣にもあるのだというような思いつきで、独断的に内閣憲法改正の発案権、提案権があるというようなことは、内閣越権行為です。こういうことを内閣がやられては、国会憲法によって規定せられた……。
  69. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 戸叶君、質疑をして下さい。
  70. 戸叶武

    戸叶武君 その問題に対して内閣総理大臣から答弁を願います。
  71. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、憲法改正の発議は国会並びに内閣にあるという確信を持っております。それは七十二条、九十六条からくる結論であります。
  72. 戸叶武

    戸叶武君 これはまだ調査会においても煮詰まっていないのです。おそらくは調査会においては国会にあることを、第一義的に毛第二義的にも考えなくちゃならないので、そのほかにイギリス憲法やアメリカ憲法を比較すれば、いろいろな国においてはこういう場合もあるというので、三つの分類が出てくるのだが、日本憲法において、日本憲法の解釈は、内閣総理大臣の解釈にあるんじゃないのです。国の最高機関としての国会が責任を持たなくちゃならないのです。国会審議……。
  73. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 戸叶君、同じことを繰り返さずに、質疑をして下さい。
  74. 戸叶武

    戸叶武君 いや、それに対して池田さんは七十二条に横すべりしていますから、ほかのときに論議しますけれども、池田さん、こういう形を——高柳さんにもお聞きしますが、国会を無視して、内閣が独走してそういう態度を決定して日本の憲法というものが守れるでしょうか、どうでしょうか。その点を高柳さんにお聞きします。
  75. 高柳賢三

    説明員高柳賢三君) 御質問の趣旨がよくわからないのですけれども……。
  76. 戸叶武

    戸叶武君 それじゃもう一度言います。これは人民主権の国における解釈で、ドゴール政権の出る前のソルボンヌ大学のルネ・キャプタンの……。
  77. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 日本の憲法について、端的に御質問願います。
  78. 戸叶武

    戸叶武君 いや、学者ですから、学者に対してひとつ……。
  79. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 端的に御質問願います。
  80. 戸叶武

    戸叶武君 委員長越権ですよ。そういう形で国民から国会が委嘱を受けているのです。委託されているのです。主権者は国民です。その国会を素通りして、憲法改正の提案権が内閣にありというような断定を下して、国会審議を経ずして、国会の了解を経ずして独走してよろしいものかどうか。それでは国の憲法が守られないんじゃないかということをお聞きしているのです。
  81. 高柳賢三

    説明員高柳賢三君) そういうことをもし内閣がやればけしからぬ話であって、国会を無視して、直ちに国民にその提案をするという、そんなことはおそらくは池田内閣総理大臣としてもやらないだろう。つまり問題は、発議と発案という二つのことは違うんだから、発議というのは、つまり発議は、今度国民に対してこういう決議を行なう。発案というのは、こういうふうな改正をしうよと思うがどうかねと国会に出すのですね。そうしてそこで、国会でそれはいいとか悪いとかそこできめて、それできまりますというと、いよいよ改正に踏み切るということに国会がした場合には発議になって、そうして国民にいくと、こういうことになるので、もしも池田さんがそういうことはやらないで、直ちに憲法調査会のあれに基づいて、国民に直接に内閣出した、こういうことをやれば、これは非常にけしからぬことであります。
  82. 戸叶武

    戸叶武君 よくわかったということを承認してもらってくれ、池田さんに。
  83. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 高柳先生の発案と発議という御説明、全く同感でございまして、私は、内閣のほうは七十二条の規定によりまして議案を国会提出する、内閣総理大臣内閣代表して議案を国会提出する、発案する、そうして九十六条によって、国会が三分の二以上の賛成を得て国民投票を——国民に発議する、そういう解釈でおるのであります。大体私の考えでは高柳さんと同じようになると思います。
  84. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 亀田君、質問を継続していただきます。
  85. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ、以下、総理大臣に若干お聞きします。なお、関連して外務大臣にも質問します。
  86. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 亀田君、高柳先生はよろしうございますか。
  87. 亀田得治

    亀田得治君 よろしうございます。私が総理にお聞きするのは、こまかいそういう法律問題などはお聞きしません。総理大臣として当然持っておるべき憲法感覚をお聞きするわけですから、法制局長官ちょいちょい出てきますが、きょうはそういうふうに出てこないで、総理みずから率直におえ願いたい。  第一点は、終戦後日本政府の部内で用意されました憲法改正草案である松本案は、一つは、天皇の主権を認める、それから旧態依然として軍隊を認める、それから基本的人権についても、法律の範囲内における保障と、こういう考え方を堅持しておるわけなんです。で、現在の憲法は、明らかにこういう点で松本案とは違うわけでして、民主主義の立場からみて、一体どちらがすぐれたものか、当然これは現憲法のほうがすぐれておると私は確信しておるわけですが、当然なことかもしれませんが、総理の見解を聞いておきたい。
  88. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、寡聞にして松本案を全部読んでおりません。ただ、聞いておりますところでは、旧憲法とよほど似ておる。たとえば天皇が統治権を総攬される、そうして大権事項も認める。しかし、今までの天皇の大権事項は相当数削除して国会に出ておるのであります。あるいは国民の権利義務を尊重する、これはある程度進んでおります。国務大臣は、国務全体について責任を負う。今までの天皇に対する責任じゃなしに、国会に対して責任を負う。まあ前の、旧憲法よりも少しは進んでおりまするが、大体の骨組みは、やはり旧憲法精神に沿っておるということを私は聞いておるのであります。しからば、それについて私は批判は差し控えたいと思いますが……。
  89. 亀田得治

    亀田得治君 いや、今の憲法との比較です。
  90. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今の憲法は、私は、松本案十分でございませんけれども、それだけのことから言えば、今のほうが進んでいると思います。
  91. 亀田得治

    亀田得治君 それから、現在の憲法に対して、押しつけ憲法だ、先ほど高柳さんからもそういう問題が出ておりましたが、これに対して総理はどういう考えを持っておりますか。
  92. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、まだ憲法調査会調査されたその議事録を十分読んでおりません。押しつけ憲法だか、あるいはこちらが発議したかどうか、とにかく今の憲法は、国会の正式の決議によって成立した、こういうことははっきりしております。
  93. 亀田得治

    亀田得治君 いや、総理はまあいろいろなことがあるでしょうが、結局押しつけたというふうな考えは持っておらぬのですか、おるのですか。
  94. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういう世間の言葉に対して、私は、今ここで総理大臣として答弁するだけの資料を持っておりません。ただ、現行憲法は、正式の国会の手続をとりまして、厳然として存在しておるのであります。
  95. 亀田得治

    亀田得治君 まあ押しつけ憲法と同時に、無効論を唱える人が若干あるわけですが、こういうことは総理はどういうふうにお考えですか。
  96. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、今の憲法が無効とは思っておりません。ただ、今申し上げたように、正式に厳然として存在しておるということでも、無効論はとらぬことはおわかりだと思います。
  97. 亀田得治

    亀田得治君 押しつけであるかないかは別にしましょう。新憲法ができたときに、国民大衆は大歓迎をした。この事実は総理大臣はお認めになるか、ならぬか。
  98. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国会で大多数だったと思いますが、これによっても国民が歓迎しておると思います。
  99. 亀田得治

    亀田得治君 そういう感覚で、ひとつ総理は今後憲法問題を扱ってもらいたいわけです。そこで改正問題について基本的なことを若干お聞きするわけですが、個々の点について憲法をどう変えるかということは、自民党としてはもちろんきまっておらぬでしょう。個々の点、一つ一つの条文についてどこをどうするということは、自民党としてきまっていないわけですが、しかし現在の憲法を変えるのだと、この大方針だけは、これは自民党としてきまっておると私たち見ておるわけですが、その点はどうでしょう。
  100. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、そういう決定はまだしていないと思います。
  101. 亀田得治

    亀田得治君 それでは、これはたとえば先ほどもちょっと引用したわけですが、この自民党の三十年十一月の結党大会におきましてもちゃんときまっておるわけですね。改進党、自由党時代にもきまっておる。あなたのほうの結党大会においてもちゃんときまっておるわけです。文書の上に載っておる。たとえば読んでみますと、結党大会のときの「占領下制定さたれ現行憲法国民の自由意思により、国情に即応するよう自主的に改正するため、法律による憲法調査会を設置して改正案を準備する」、変えるという、そのことの方針自体はきまっておるわけじゃないですか。
  102. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 結党大会のときの宣言を十分私記憶しておりませんが、私は今まで国会におきまして、わが国の憲法について検討を加え、関係諸問題を調査研究する、こういうことはわれわれも賛成いたしまして、検討を加えるということで、改正するということは党議としてきめていないと思います。
  103. 亀田得治

    亀田得治君 それはちょっとおかしいですね。私のほうで、あなたのほうの文書のいろんなものを読み出すと時間をとりまして、これはちょっと工合が悪いわけですが、その大方針は、一つ一つの具体的な改正点はそれはきまっていないでしょうが、憲法改正の大方針というものは、これはきまっておるはずですがね。それがきまっておらぬとおっしゃるのですか。今おっしゃったのは、憲法調査会はその方針でしょう、法律によってできた憲法調査会は。自民党の方針は改正はするのだと、この太い柱というものは、これはきまっておると私解釈し、外へ行ってもそういうふうに自民党の紹介をしておるわけですが、それは間違いでしょうか。
  104. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 憲法を改正すると私は決定をしていないと思います。憲法につきまして検討を加え、国民の盛り上がる気持を見まして、そして決定する、こういうことでございます。
  105. 亀田得治

    亀田得治君 これは、自民党の中の改憲促進の方はちょっとそれは納得しませんよ。まあそういう問題であまりごたごたしても時間をとりますが、これはちょっと筋が通らぬですね。私、あなたのほうから出ているいろんなものを見て、あなたのほうの文書でそういうふうに理解しているわけです。しからばそういうふうに理解しましょう、もうきまっていないと言うなら、はっきりおっしゃるなら。それでいいんですか。大蔵大臣、横から何かおっしゃっているが、そうじゃないということを、あなたおっしゃっているのと違いますか。どうなんです。答弁して下さい。何かほんとうにきまってないわけでしょうか。憲法調査会は、これは白紙という立場になっているわけですが、党の方針としては変えるのだと、もう一ぺん大事な点ですから……。
  106. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) たびたび申しておりますように、憲法調査会の結論を待ち、国民の世論を聞いて決定することに党の方針はきまっていると思います。
  107. 亀田得治

    亀田得治君 もう一つ何か読んでみましょうか、自民党のほうの文書を。たとえば昭和三十五年の総選挙のときに自民党から出された文書に「わが党は昭和三十年立党のとき、憲法については平和主義、民主主義及び基本的人権の尊重の原則を堅持しつつ、現行憲法の自主的改正をはかること」と載っているわけです。この態度は終始変わらないところであります。こういう文書がどんどん出ておって、一体その基本的な点までもきまっていないと言うのでは、一松さんなんか、ちょっと私は関連質問が出るかと思うのです。実際これはちょっとおかしいと思いますね。こんなことをいつ書いたのか。
  108. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は自由民主党の総裁として今のようにお答えしておるのであります。
  109. 亀田得治

    亀田得治君 そういうことになりますと、どこをどう変えるといった問題に触れにくくなるわけです。しかし、これは私は納得できませんから、これは一つ別に検討してもらいたいと思います。総括の最終なりで。  そこで、そういうことであれば、個々の問題について触れるのは、あるいは無理かとも思いますが、ただ自民党のいろいろ文書を見ますと、国防の義務と、こういうことをずいぶん取り上げて論議されておるわけです。私、国防の義務とか、国土防衛の義務とかいうものが憲法上出されて参りますと、そこから徴兵の義務と、こういう問題にやはり発展してくるのではないか、こういうふうに理論的に考えるわけなんです。この点は法制局長官、どうですか、あなた何かしゃべりたいような顔をしているが、理論的にそういうことにならないかという点。
  110. 林修三

    政府委員(林修三君) 具体的な問題で、いわゆる国防の義務ということをどう考えるかということによってきまることであります。直ちにそうつながるかどうかは、その具体的問題を見ないと、私も簡単には言えないと思います。
  111. 亀田得治

    亀田得治君 自民党の文書でも国土防衛の義務なり国防の義務ということを書いても、しかし徴兵制はとらないということの説明はついております。ついておりますが、しかしこれは政策の問題。それは理論的には内閣の政策が変わってくれば、徴兵問題に結びつぎ得る。現憲法では結びつかない、絶対に。結びつき得る可能性が理論的に出てくるのではないか、こういう点をお聞きしているわけです。もうちょっと明確に。
  112. 林修三

    政府委員(林修三君) 国防の義務と申しますか、これは国民各自が国土を防衛する建前、あるいは心がまえを規定するということであろうと思います。その具体的方法として、いわゆる国家権力による徴兵制をとるかどうかということが、直ちに結びつくかどうか、これはやはり問題だと思います。
  113. 亀田得治

    亀田得治君 どういうふうに問題になるか。
  114. 林修三

    政府委員(林修三君) それは、具体的な憲法改正の条文を具体的に検討しなければ確定的には申し上げられない。ただ単に抽象的な国防の義務というだけで、すぐ徴兵制に結びつくということは、これは言えないわけであります。
  115. 亀田得治

    亀田得治君 それは理論的にも絶対に結びつかないという意味なのか、政策的な立場なのか、どっちなんですか。私は分けて言っております。
  116. 林修三

    政府委員(林修三君) それは具体的な案で、そういう徴兵制に結びつかないような書き方もできますし、結びつくような書き方も、どっちでもできます。
  117. 亀田得治

    亀田得治君 半分ぐらい結びつくことを認めるわけですな。まあその程度にしておきましょう。  それからもう一つ自民党では、やはり自衛隊の国連軍への参加の道を憲法上開く、この必要性というものを相当やはり問題にされておる。私この点で外務大臣にひとつお聞きしたい。その論拠は、日本が国連に加盟しておるからだ、こういうことが大まかな柱のようです。私も、日本が国連に加盟し、国連に協力していく、これは当然だと思うのです。しかし国連への協力の仕方は、これは何も軍隊の提供だけがその道じゃないと思うのです。幸い国連憲章では、この軍隊の提供については、提供国の同意を得てやる、こういうことになっておるわけでして、ほかにも協力の仕方は幾らでもあると思うのです。何か紛争等が起きた場合、そのあとの建設のために技術者を送るとか、あるいは医者を送るとか、そういうことでも大いにこれは協力できるわけなんです。だから日本のような世界にまれな特殊な憲法を持っている国ですから、この国内事情というものを十分説明すれば、そういう国連に入っておって、国連協力ということがあるから、すく国連軍への参加——こういうことには私はならないと思うんですが、全体の国連の情勢等から見て、外務大臣としては、どういうふうにこの点お考えになりますか。
  118. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 日本が国連に加入しておる。また国連協力を推進しておる。であるから、自衛隊の国連軍への派遣ということは結びつかないとおっしゃる御意見には、私も全くそのように考えております。同感でございます。
  119. 亀田得治

    亀田得治君 最後に、もう一点お聞きしておきますが、この憲法調査会の結論を待って具体的問題に取っ組む、こういうふうに総理はおっしゃるのですが、選挙との関係をお聞きしたい。憲法調査会の結論が出た。それからもう一つは、何かたまたま選挙において三分の二を取った。こういう事態だけでは憲法問題に手をつけないのかどうか。手をつける場合には、憲法調査会の結論も出て、さらにこの憲法問題についてそのことを議題にして選挙をやって、三分の二を取り、初めてそこで手をつける、こういうことになるのですかどうですか。その点。調査会との関係はわかっておりますから。
  120. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 調査会の結論も出ておりません。そうしてこういう問題は、三分の二とったからすぐやるとか、やらぬとかいうことは、自分はいたしたくない。三分の二プラス一になったから憲法改正案を議院なりあるいは内閣から提案するかという問題につきましては、たびたび申し上げまするように、やはり国民の盛り上がる気持等々、いろいろな点を考えてきめるべきものだと、こう言っておるのであります。
  121. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと関連さして下さい。簡単にやります。
  122. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 羽生君。
  123. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうすると、総理に伺いますが、憲法調査会の結論が出た場合でも、直ちに内閣であれ、議会であれ、提案権の所在は別として、それを直ちに提案するとか、国民の意思を問うということなく暫く見送ることもあるわけでありますか。そういうことがあり得ると、今の御答弁では解釈していいと思いますが、いかがですか。
  124. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは当然のことでございましょう。調査会の結論が出まして、そうしてわれわれとしても十分その結論について検討し、そうしてまた国民にも検討してもらうという——そのときに、たとえば両院で三分の二とった、出すか出さぬかというときには、国民のやはり動向というものを考えないと私はいかぬと思います。したがいまして、今私はこういう場合、ああいう場合ではなしに、そのときどきの世論を見てきめるべき問題だと考えております。
  125. 亀田得治

    亀田得治君 昨日ケネディ大統領が記者会見におきまして、数日中に日本政府に対し沖縄問題に関する若干の提案をするつもりである、こういうことが明らかにされましたが、これは非常な重大問題でありますから、外務省でもおそらく諸般の情勢を集めておると思いますが、どのような一体提案というものがなされてくる情勢か。いろいろな資料等によってわかる程度で、外務大臣の御説明をお願いしたい。
  126. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 記者会見の問題は、まず沖縄問題について聞かれたのに対しまして、ロバート・ケネディ法務長官が訪日中に非常に日本国民が大きな関心を持っておる問題だということが言われた。で、非常に権威ある委員会すなわちドクター・ケイセンを委員長とする委員会を沖縄に派遣して、すでに勧告が出ているが、この勧告は統合参謀本部及びその他によって審議された。ここ数日中に本問題に関して日本政府に提案——これはサム・サゼスチョンと言っておりますが、を行なうことになろう。しかし当然のことながら、同地は非常に重要な地であり、アジア諸国に対する安全保障はこの基地で備えられている。それゆえ、われわれとしてはこの防衛上の必要と沖縄住民及び日本人の正当な利益を比較考慮せねばならない。われわれとしてはこの限度内においてもできる限りのことをするつもりであり、間もなく何らかの提案を行なうことになろう、こう言っております。  なお、そのほかにも、ジュネーブ関税交渉妥結に関する見通しであるとか、あるいは軍縮問題や、あるいはまた核実験再開に関する問題であるとか、あるいはソ連は食糧不足に悩んでいるが、ソ連に米国の余剰食糧を売却する、あるいは贈与することを考えているか、南ベトナムの地下戦争及び同地での云々というような話がございますが……。
  127. 亀田得治

    亀田得治君 あとはいいです。
  128. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) で、われわれといたしましては、昨年池田総理大臣とケネディ大統領と会談の際、沖縄施政権の返還を要求するとともに、沖縄同胞の要望、すなわち日本政府といたしまして、現状改善についてとるべきだと考える諸点をあげて、アメリカ側の善処を要望いたしたのであります。そのうち、今日までには国旗掲揚問題、沖縄における教育内容の充実の問題、労働者の地位向上の問題、民生の向上経済発展のため、日本からの援助についてかなりな成果を上げたのでございますが、アメリカ側においてその後においてのわがほうの要望点に対する回答を一貫して促進いたして参りました。今度のケネディ大統領の発言によりまして、ここ数日中にアメリカ側の回答を受け取ることが明らかになりましたが、われわれといたしましては、かつて池田・ケネディ会談の際に言われました生活水準を日本の県なみに引き上げる問題、さらに沖縄同胞において、さらに自治の問題について、従来のアメリカ高等弁務官によってとられていた態度を改善するという問題についての、さらに今後の回答を受けとってみないとわかりませんが、さらにこの点についても努力いたしたい。また施政権の返還についても今後ともあらゆる機会をとらえて話し合いたい、こう思っているわけでございます。まだ回答を受け取っておりませんので、この内容についてはどうもはっきりしたことをこの段階で申し上げられませんことをお許し願いたいと思います。
  129. 亀田得治

    亀田得治君 中身はいずれ明らかになるでしょうが、外務大臣としては、この提案というものは日本政府に提案されて、こちらが意見を述べるという程度のものか、あるいはまたそこで検討して合意に達してからそれを実施していく、そういう性格の提案と見ているのか、どういうふうにそこは考えておりますか。
  130. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は、提案でございまするから、こちらの意見は聞かれるものだと考えておりまして、十分こちらの意見を述べるつもりでございます。しかし、御承知のように、施政権はこれは原則的、法律的に申せば、アメリカにあるのでありますから、こちらの言うことが全部が全部聞き入れられるということにも限りませんし、聞き入れられない場合に、こちらとしての要求し得る限度はおのずからあろうかと思いまするが、私どもといたしましては、従来の方針を堅持いたしまして、極力沖縄の同胞の要望がかなえられていくという方向でこの問題を扱いたいと思います。
  131. 亀田得治

    亀田得治君 これは見通しでありますが、どのような提案があるかわかりませんが、若干新聞等にはいろいろ情報が伝わってきております。あなたのほうにもあると思います。しかし、結局は、この沖縄が米国にとっての極東における最大の軍事基地である、この点の支障になるようなことは絶対向こうは許さない、こういう態度に出るであろうと私たちは予想するのですが、その点はどういうふうに見ておりますか。
  132. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) われわれが施政権の返還を要求いたしまする際にも、先方は、どうしても今日の極東における緊張と脅威が続いている状態においてはこれはできない、こう言っておりまするので、基地としての重要性を失なわしむるような点については、先方はそこまではなかなか考えないのじゃないかと想像いたします。
  133. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますと、沖縄における自治の問題なり、あるいは経済面等における若干のこの改良というものが出て参りましても、一方では、核兵器の基地としての軍事面の作業というものはどんどん強化されていくわけであります、実際は。そっちのほうはもっともっと不利な危険な状態になるわけであります。こっちのほうの他の面が多少よくなっても、こっちではもっともっと大きな生活、生命の不安というものが高まるわけですね。この関係というものを一体どう見るか、評価のしように上ってはちっともこんなことで改善になるわけじゃないわけです。
  134. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この点は私どもも、私どもの立場から極東における東西の緊張緩和ということを望みまして、それぞれの努力をしているわけでございます。根本的にいえば、この極東におけるこうした対立状態の緩和ということが前提になって、今御懸念のような問題がなくなるのではないか。それ以外になくしようがなかなかないのではないか、かように考えている次第でございます。
  135. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますと、このケネディ提案によって、ある形の日米会談というものが持たれるわけでしょうが、その際には、そういう軍事基地に関する問題というものはやむを得ないとして認めていくような態度に外務大臣というものはなるわけでしょうか。
  136. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 今日、われわれが日米安保条約というものを持っておりますのは、やはりわれわれとしまして、日本の安全というものを考えてそれを持つべきである、こう考えておる次第でございます。したがいまして、極東における緊張が現に存在している、その際に日本を守るということから考えますると、やはりわれわれの立場からその状態を判断していかなければならぬ、かように思っております。
  137. 亀田得治

    亀田得治君 まあ、実はですね、ケネディ提案によっていろいろな波紋が起きておりますが、そこが問題なんです。そこが多少よくなることによって、一つのムードができる、しかし実際、先方さんの立場にしてみれば、軍事基地がねらい、その点はそのムードの中でむしろ形は別として強化していく。総理大臣は日本では原子兵器を置かない、こうおっしゃっておる。施政権の返還をわれわれが要求しておるのは、これは日本人と同じ同胞だ、こういう立場からですがね、沖縄の人は、その一番大事な問題についてはもっと危険な状態にさらされるわけです。日米間の外交方針でそれは仕方がないのだと自民党政府はおっしゃるでしょうが、しかし、少しくらいの経済なり行政上の改革に匹敵できない同胞の苦しみというものが、一方ではむしろつのるわけですよ。私はこういう点こそ、このケネディ提案があって、そうして両者の会談、交渉等が持たれるならば、もっと突っ込んで日本の平和憲法立場というものを考え意見を述べ、折衝すべきじゃないかと考えるわけです。非常に複雑な問題ではありますが、そこら辺を、ただ喜んでいるばかりおれる問題ではないわけなんでして、最後にこの点についての総理大臣の大局的な立場に立っての考え方を確めておきたい。
  138. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 亀田君、あなたの持ち時間経過いたしましたから御注意申し上げます。
  139. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 沖縄問題については、いろいろな点から考慮しなければならぬことはあなたの言われるとおりでございます。しかし、何分にも施政権がなくて、そして軍事基地になっておる現状でございます。そして、その際に沖縄の同胞に対して、いろいろな財政的、経済的、あるいはまた政治的な便宜が与えられている、これは私は喜ぶべきことだ。しかし、片一方で軍事基地があれば非常に心配がある、こういうことで、この問題を天びんにかけてどうこういうことは……、少なくとも沖縄の同胞の政治的、経済的に地位が上ることは喜ばなければなりません。しかし軍事基地としての取り扱いについては、われわれの意見は申し上げますけれども、これは施政権は向こうにあるのでありますから、それだけにどういう装備がいけないという問題は、私は日本の置かれている全体の立場から十分問題を処理していきたいと思います。
  140. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) よろしゅうございますか……。亀田君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  141. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) この際、委員の変更につきまして御報告をいたします。本日、近藤鶴代君、塩見俊二君及び成瀬幡治君が辞任せられまして、その補欠として一松定吉君、上林忠次君及び久保等君が選任されました。  衆議院の本会議が二時から開かれまする関係もございまして、三時三十分に再開することといたして休憩をいたします。    午後零時五十八分休憩    ————————    午後四時三十二分開会
  142. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) これより予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。野本品吉君。
  143. 野本品吉

    ○野本品吉君 私は、まず文教関係の事柄につきまして質問いたしたいと思うのでありますが、質問に先立ちまして、先般の今国会の冒頭におきまして、総理が文教に対して示された熱意のほどを、施政方針の演説においてお述べになりました、この施政方針の演説につきまして、私は次のような受け取り方と評価をしておるわけであります。  その一つは、池田内閣がいわゆる経済成長政策、所得倍増ということで国民に臨みましたが、その後国民の一部には、また教育に関心を深く持っておる者、その関係者、これらの間には、池田さんの従来の財政経済に対するすぐれたる手腕等からみまして、政策そのものが財政経済に重きを置いて、それ以前の基本的な問題としての教育あるいは文化の問題について、軽視するのではないかということを、ひそかに心配しておった者が相当多数あるわけであります。この国民の教育に関心を持つ者たちに対しまして、今度の施政方針は非常に共感、共鳴を呼んでおるということをまず考えます。  第二の点は、この施政方針の演説の文教関係の事柄が非常に時を得ておったということであります。それは終戦の直後におきまして、われわれは文字どおり飢餓線上を彷徨いたしておりました、現在はその後の日本の経済繁栄によりまして民生が安定し、発展して参りまして、十分食を得るに何らの不安がありません。着物を着るのにも寒い思いをしておったんですが、今は文字どおり暖衣することができるようになりました。かような情勢から見まして、国民の多くの者、特に青少年が、われいかに生くべきか、まじめに人生の意義を考え、まじめに総理の言われる人間形成の道へ進もうとする気持になっております。このことは、学生の間にも、青年の間にも、労働界にも、教育界にもいろいろな姿、いろいろな形において現われておりますことは御承知のとおりであります。  かような意味におきまして、このときに文教に対しまする理解と熱意を示されたということは、これは非常に今後の文教政策の効果と申しますか、効率を高める意味において非常に意義があったと、かように私は考えます。かような考え方の上に立ちまして、以下若干の点につきまして質問をいたしたいと思うのであります。  第一にお聞きいたしたいと思いますことは、文教予算の前年度対比の問題であります。私は三十三年度から三十七年度までの一般会計総予算額に占める文教関係の予算を見ますと、これは三十三年度が、一般会計が一兆三千百二十一億のときに、文教関係は千五百四十一億、比率において〇・一一七の増を見ておるわけです。三十五年度になりますというと、総予算の一兆五千百九十六億に対しまして千九百四十七億、これは〇・一二四ということになっております。三十六年度におきましては、一兆九千五百二十七億に対しまして二千四百十六億、これは〇・一二三ということになっております。ところが、三十七年度は二兆四千二百六十八億に対しまして、二千八百九十五億、〇・一一九、こういうことになっております。  これを絶対数で見ますというと、前年度に比べまして、三十三年度におきまして、三十二年度に比べて一・〇六七倍、それから一・二四〇倍、三十六年度は一・二九八倍、こういう前年度に対して増加の比率を見ているわけでありますが、ここで教育に深い理解を持ち、また教育に関心を持っている者たちが、一体これはどうしたのだろうという疑いを持つ点が一点あるわけです。  それは比率あるいは増加の額におきまして、前年度に対して三十七年度の予算が低下しているということであります。この点は、教育に関心を持つ者が、さきの総理の演説を聞きまして、一体これはどういうことだろうという不信を抱くことは当然であると思うのであります。この点につきまして、文部大臣の御見解を聞きたい。
  144. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。御指摘のように最近数年、前年度に比べて何がしかの増加を見ていることは仰せのとおりであると思います。三十七年度予算案の対前年度比におきまして、総予算に対する比率は、わずかではございますが、減少いたしております。数字そのものから言いまして、私としましてもむろん遺憾に思いますけれども、いささか弁解じみますが、申し上げて見ますならば、御案内のとおり文教予算の中で七〇%は人件費でございます。三〇%が事業費と申しますか、人件費以外の経費でございまして、三十六年度においては給与改訂が行なわれまして、人件費が相当大幅に増加いたしました。三十七年度予算案におきましては、三十六年度に比べまして、人件費の伸びがきわめてわずかでございます。そういうことからいたしまして、総予算に対する比率は減少していると言えないことはないと思います。  そこでさらにもう一つ弁解させていただきますれば、三十六年度予算の対前年度比におきまして、新規の増加予算額は四百六十八億円、その中で自然増と見られるもの三百五億円を差し引きまして、純粋に仕事の伸びという角度からとらえてみますれば、百六十三億円でございます。同じような考え方で三十七年度予算案の対三十六年度予算に比較しましての増加額は三百八十六億円、当然増と考えられる金額百七十八億円を差し引きますと、純事業費の伸びというべきものは二百八億円、すなわち三十六年度の三十五年度対比関係よりも、絶対額においてはある程度の伸びを示しております。  しかし、数字だけでは、評価できませんので、どれだけ教育目的を達成するに役立つ有効な予算が組まれたかということが問題の焦点だとは思いますけれども、その意味においても、相当考慮をめぐらせた考え方で私としてはおります。しかし、もっと努力すべき山ほどの問題があることは、御案内のとおりでございます。それらは今後の努力にまちたいと思っております。
  145. 野本品吉

    ○野本品吉君 ただいま文部大臣は、文教予算に占める人件費ということに言及されたのでありますが、私もさよう、文部関係の予算を内容的に見ますというと、いろいろな見方があろうと思いますが、ここで私は文教関係の予算を人件費、それからして施設費、補助金その他、こういうふうな大まかな分け方をいたしまして、計算いたしますというと、人件費は三十二年度において千百二十七億、三十四年度において千二百九十九億、三十七年度において千九百八十二億と著しくふえておるわけです。これを、この人件費を施設費、補助費その他の文教施策のために投じられておりますところの諸費用と比較して参りますというと、それらの施設費、補助金の三十二年は六・六倍が人件費であります。三十四年は五・八倍が人件費であります。三十六年は五・一倍、三十七年度の予算は四・一倍とこうなっております。  そこで私がお聞きしたいと思うことでありますけれども、この文教関係の予算の中に占める人件費の大きいことは、その人件費の多いというそのこと自体が、ほんとうの意味における文教施策の推進に圧力がかかってくる、こういうふうに考えられるのでありますが、この点についての御所見は、文部大臣いかがでございますか。
  146. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。数字的に圧力がかかるであろうということは否定できないとは思います。しかし、人件費そのものは、いわば日本の財政上あるいは社会的な考え方から置かれておる現状に照らして、一応合理的な線に沿って人件費が定まるものと推定いたしますれば、人件費が七〇%を占めておりましょうとも、事業費と目さるべきものが実質上必要とする目的を達成するにふさわしいものであらねばならぬ、その要請にはこたえる努力をしなければならぬと思います。
  147. 野本品吉

    ○野本品吉君 私は人件費というものは、これは完全な教育を実施する上において当然必要で、これを圧縮したり押えたりすることのできない性質のものだと思う。そこで、そういう性質を持った人件費が一般の文教施策費というものを圧縮するということにつきましては、これはお互いに十分考えなければいかぬと思う。  そこで施設費、補助金あるいは研究費等を、それを伸ばすことができないということになりますというと、ほんとうの意味の文教の刷新充実はできないと思います。将来予算を編成するにあたりまして、この人件費は、もう当然必要な経費として、その他の諸般の入り用な経費を圧縮する要因にならない、してはいけない、こういう考え方で文教関係の予算というものは考えられないというと、総理のいわゆる文教の充実刷新はできない、こういうふうに思うのですが、これは大蔵大臣いかがですか。
  148. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 人件費が多いために、文教予算の他の部分を圧縮しているということはございません。今度の予算編成におきましても、義務教育費たるこの経費を一応全部除いてみますると、今おっしゃられるように他の項目の予算の伸び方は、昨年に比べて二三%以上という伸び方を示しておりますので、他の一般の施策の前年度に対する伸び率よりも、特に文教予算のほうが一番多い伸び方になってくるというのが実情でございまして、この義務教育費——人件費が大部分である義務教育費国庫負担費のために、ほかを圧縮しているというふうなことにはなっていないと思います。
  149. 野本品吉

    ○野本品吉君 大蔵大臣の御答弁によれば、そういう心配はないと、こうおっしゃるのでありますが、これはやはり、人件費をも含めた絶対の数字というものが非常に多くなって参りますると、自然にそういう結果が起こりやすい、こう思うので、今後の文教関係の予算につきましては、少なくとも重点をもっと強く、一般の文教施策費に向けまして、人件費が文教施策費というものを圧縮するというようなことが絶対にないようにということを、特に私は希望いたしておきます。  次に……。
  150. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ちょっと関連して聞かしていただきたい。野本委員が、与党ながらも文教予算の非常に基幹とすることを突かれた点は、私は敬意を表します。施政演説で施政の大本の次に、文教と科学技術の振興というものを持ってこられたのは画期的で、その点私は野本委員と全く同感です。ただ、私は野本委員とともに追及し、答弁を不十分とする点は、三十六年度、七年度の予算規模が、それぞれ二四・四%、二四・三%と、こう飛躍的に伸びているにかかわらず、この教育予算が伸びていない。しかも人件費は、教員のサラリーは安い、にもかかわらず野本委員が心配しているように、これが圧力になっているんじゃないかと心配される。ベースは低いのに、しかもそれが野本委員が指摘されるように圧力になっているのじゃないだろうかというほど、教育行政の予算というものは貧乏なんですね。だからPTAの負担が禁じられているにかかわらず、約二百四、五十億円もPTAが負担している、こういうことなんですね。だからここで終りますが、予算の規模そのものが、産業基盤整備に重点を置いてあって、社会基盤のほうには少ない。そうして教育のほうにさらに少ないときているから、だから、低所得層が固ると同時に、どんな低所得者層でも、学校に子供をあげていますから、その教育費の負担過重から苦しんでいる。だから、野本委員の言われるように、予算案の中で二四・四%、二四・三%膨張するならば、教育関係の予算もそれと同じ比率で膨張するようにしてもらわなければ、教育の振興にならない。この主張は、私は堂々たる主張だと思うのです。  この点に対する答弁は不十分ですから、あらためてお答えをいただきたいと思います。
  151. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 予算の規模が昨年に比べて二四%となりましても、たとえばこの予算の中には、災害復旧費とか、やむを得ないいろいろな経費が入っておりまして、一般経費とみなされるものの昨年に比べる増加率は、大体一九%前後の予算増ということになっております。そのうちで、今回の予算編成で相当重点的な配慮を加えましたので、中小企業は伸び率から申しましたら一〇〇%、前年の倍というふうに、輸出関係が七割、石炭関係がやはり七〇%というふうに高率に伸びる施策もございますので、全般としての施策の伸び率というものは、十何パーセントになりますか、相当低いところでございます。  したがって、それから比べますと、社会保障費の二〇%以上の伸び率、文教の二三%、こういうものは相当予算の伸び率に比べて比重が大きいということが言えるだろうと思います。
  152. 野本品吉

    ○野本品吉君 そこで、私はその次に、とにもかくにも相当伸びて参っております文教予算が、国費あるいは公費を含めまして考えますときに、学生あるいは青年、それをどういうふうに予算の面で処遇しておるか、これを見たわけであります。これは文部省について調べたのでありますから、この数字は間違いないと思います。私の文部省にお願いして調べたところによりますというと、国費、公費、つまり公費負担といたしまして、学校教育におきましては、一人当たり、年間、幼稚園一万一千七百五円、小学校が一万六千四百二十八円、中学校が二万三千六百八十一円、高等学校が三万二千五百二十七円、定時制の高等学校が二万七千三百六十円、こういうふうになっておるのでありますが、これに比べまして、いわゆる総理の言われた働きつつ学ぶ青年のための定時制の高等学校は二万七千三百六十円であります。さらに青年学級等に収容されております青年のために費やされております費用は、わずかに平均いたしまして七百五十円、こういうことになっておる。それをさらに国立大学の学生一人当たりについて見ますというと、一人当たり二十一万五千、こういうことになっておる。国の費用が国立大学の学生一人当たりに対して二十一万五千円を投じておるに対しまして、あるいは農村で、あるいは工場で働いております青年学級の青年に対しましてはわずかに七百五十円、これが国費、公費において、青年あるいは学生を遇する点において、はたして妥当であり、公平であるであろうかということに私は疑いを持つわけでありますが、この点につきましては、総理は、どのようにお考えになりますか。
  153. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 野本委員の前からのお話をずっと聞いておりまして、まことにごもっともな点があるのでございますが、文教予算に対しましては、今年度におきましては、私はほかの省よりも一番力を入れたつもりでございます。総体の伸びに対してという議論に対しましては、今大蔵大臣が申し上げましたように、大体今年は特殊の経費が昨年、一昨年より多くなっております。それは災害復旧の二百六十億とか、あるいは国債償還につきまして二百八十億ぐらいふえております。予備費も百億から二百億というふうになる。こういうのを差し引きますと、全体は相当落ちるのです。二四%より相当落ちます。これを考えてみますれば、私は、二十三%近い文教予算は、そう少ないのじゃない。それから三十二年ころから、お述べになりました、中学校の急増その他で三十三、四、五、は相当いっております。相当出ております。今回の高等学校のほうは、あまり国費として出ておりません。そういう関係から申しまして、私はことしの文教予算は、研究費、その他につきましては画期的とは申しませんが、例年よりも上になっておると思います。これは余談でございますが、大学の研究費、その他につきましては、東京大学と北海道大学の両総長は、非常によくやってくれましたというおほめを言われたくらいでございまして、私としては、とにかくどの省よりも、いつの年よりもやったつもりでおるのであります。そうして今度、青年学校、その他社会教育の点につきまして、お話のとおりでございます。大学のほうに二十一万使って青年学校、その他社会教育面に七百五十円ということは、これはいかにも御指摘のとおりでございます。今までの教育費の急増に対処いたしまして、国の経済がそこまで伸びなかった。しかし私の想像するごとく、今後日本の経済が伸びますれば、そうして、高等学校のところまで相当生徒がいきますれば、本来、やはり社会教育のほうにもっともっと、通信教育とか青年学校その他に力を入れなければならぬ。これからは、そのつもりでおるのでございます。
  154. 野本品吉

    ○野本品吉君 そこで、繰り返すようでありますが、総理は、働きつつ学ぶ青年に対して、知識と技能を与える点において、最善の考慮を払い努力をするということを施政方針で述べられておるのでありますが、ここで私が特に指摘いたしたいと思いますのは、働くだけで学べない青年がある。学ばない青年がある。  それは中学校を卒業して高等学校へ進学する者、あるいは夜間の定時制高校に進学する者、あるいは通信教育を受ける者、これらのワクの外に、放任されて顧みられない多数の青年がおるということを私どもは見落としてはならぬ。こう思っております。それがどのくらいかと申しますというと、三十二年におきましては、中学卒業生のうち、六十六万八千人おります。三十三年は七十三万おる。三十四年は六十六万八千。それから三十五年は五十八万二千。三十六年は四十一万六千。今これを過去三カ年間だけを積算いたしましても、百六十六万六千という青年がおるわけです。これらの青年は、床屋のでっちになって働き、そば屋の出前をかついで歩いておる諸君。私は日本の教育におきまして、一般の教育が非常に進められておるときに、働くだけで学べない、学ぶ機会に恵まれないこの数十万の青年諸君に目を開かなければいけないということを強く考えておるわけであります。  文部大臣並びに総理大臣の、この点に関する御所見を伺いたい。
  155. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。働きながら学びたい人々に、学ぶ機会を与える努力をせねばならないことはお説のとおり同感でございます。また、それに対しまして、必ずしも、今まで努力が十分でなかったことも反省させられます。  ただ、御案内のように、定時制の高校、あるいは青年学級等に関しましても、先生が兼務しておられるとかいうようなことで、一人当たりの公費のつぎ込み方が少ないというふうに一見見えますが、そういうことも、ある程度はあろうかと思います。しかしそう申しましても、働きながら学ぶ人々に対する国ないしは公共団体としての努力が足りてないことは、私は認めざるを得ないと思います。今後の努力に待つことをお許しいただきたいと思います。過ぐる国会で、職場訓練所等で学びます者等が、高等学校の卒業のいわば資格を得たいと思っても、なかなか得られない、そういう悩みがございましたので、定時制の高校に席を置きながら、この職場訓練所で教わりました教科書の一部を高等学校で学んだものと見なすという制度をお作りいただきましたことも、働く人々にとっては、少なからず便宜であろうかと思うわけであります。さらに、社会教育面でも通信教育がだんだんと充実しつつあります。こういう通信教育の面をさらに充実をする努力を私どもは課せられていると考えているのであります。  いずれにいたしましても、働きながら学ぶ人々に対する措置は、そうでない、まともに学校教育を受ける人々に比べますると、その職場関係等から、ある程度やむを得ない面があるといたしましても、国なり公共団体が、もっともっと力こぶを入れなければならぬことを痛感いたします。今後十分の見通しを立て、年次計画を定めてでも着々と充実することによって、その欠陥を補いたいと思います。
  156. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 文部大臣が答えたとおりでございまして、これから私どもも、うんとこの方面に努力いたしたいと思います。
  157. 野本品吉

    ○野本品吉君 私はここで、特に申し上げておきたいと思いますことは、働きながら学べる青年は、まだ恵まれておるほうだ、働くだけで学ぶ機会というものに恵まれない幾十、幾百万の青年があるというこの事実を見落としてはいけないということ。で、私はここで思いますのは、もしこのままでこれら多数の青年を放任いたしておきますというと、戦前の日本の青年教育水準よりも、はるかにこれらの青年は下に置かれておる。と申しますのは、戦前は、いろいろな批判はありましたけれども、御承知のように小学校を出てから二十才まで青年学校がありまして、これは全部の青年があらゆる職場を通じまして義務的に就学させられる、そこで一般教養、職業科等の教育を受けておった、そこで先ほど来申し述べておりますような、こういう青年を、そのままにおきますというと、これらの青年諸君の学力あるいは教養の水準というものは、はるかに戦前より低くなってしまう、そこに日本の教育の問題があり、私どもの憂いがあるわけでございますが、この点につきまして文部大臣、重ねて御所見を伺いたい。
  158. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。御指摘の点も同感でございます。ただ、同じではございますが、働きながら学ばんと欲して学び得ない人がおる、それも事実でございますが、全体的な傾向といたしましては、大企業においても職場訓練所というものがだんだんと普及し、整備されつつある、中小企業におきましても、そういう傾向がだんだんと出てきていることを承知いたしております。  労働省の所管の範囲におきまして職場訓練所等の措置が講ぜられておるわけでございますが、西ドイツあたりの話をちょっと聞いてみまするというと、働きながら、たとえば日本でいえば、定時制の高校等に通うについて有給で一定日数、一定時間を雇い主は学ぶためにその青少年に対して与えなければならないという建前をとりまして徹底を期しておると聞いております。さようなことも考慮に入れながら、先ほど申しましたような意味において、今後の検討と努力をいたしたいと思います。
  159. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ちょっとさっきのことに関連して。さっき野本さんが予算の比率が下がったと言われました。私も同感に思って関連質問しました。ところが、大蔵大臣並びに総理は、予算規模二四・三%の伸びに対して、文教予算が二一二%ふえているから、決してふえていないことはないと言って、野本委員と、関連質問に立った私を押えたわけですが、私は計算してみますというと、文教予算は前年度より約一五%かふえてない、二三%という数字はどこから出たんですか。だから総理が施政演説の冒頭に文教関係を持ってきたのに対して、予算の性格は変わっていないじゃないかという野本委員の指摘はごもっともと思います。二三%という数字は、どこから出たんですか、お答えいただきます。
  160. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 文教科学予算の中から、さっき申しましたように、比較的固定化している義務教育費国庫負担というものを引いた残りの経費が、二三%伸びているということをさっき申したのであります。
  161. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 野本委員は、文部省関係の予算を言っている。もうやめますけれども、野本委員は文部省の予算を言っているのです。
  162. 野本品吉

    ○野本品吉君 そこで、先ほど来、私がやっております青年諸君をどうするかという問題でありますが、ただいま文部大臣から事業内教育の充実の問題が言われたわけであります。私もその点につきましては、全く同感でありまして、今後各企業内に起こりつつある教育の場を、どのように拡充し、どのように整備していくかということは、これは文部省としても十分考えなければならない問題だろうと思います。  もう一つは、それは大企業に従事する青年諸君でありまして、中小企業その他に従事しております一般青年にまで、その手は伸ばすわけに参りません。そこで各地方におりますこれら働くだけで恵まれない一般青年諸君を、どのようにしてとらえ、どのような制度をもって教育し、どういう内容でこれを教育しなければならぬかということは、これは文部省に課せられた非常に大きな問題であろうと思うのでありますが、したがって、今後この点について十分な検討を遂げて、具体的な成案を持って臨まれるようにしたいと思うのですが、文部大臣はどうお考えですか。
  163. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。ただいまの御指摘の点につきましては、大企業はもちろん、中小企業におきましても、職場訓練所がさらに充実されることを希望するわけでございますが、そのことは、直接文部省の立場からだけは、自信を持っては申し上げかねることでございますが、政府全体としては、そういう方向に持っていくように指導もし、協力もすべきものと思います。  さて、それはそれといたしまして、具体的にどんなふうにしてやっていくかということにつきましては、先ほどお答え申し上げました以外の、もっと具体性のある案は、ただいま申し上げるものは持っておりません、という状態を念頭に置いて検討をし、実施していかねばならない、対処していかねばならないと心得ておる次第であります。
  164. 野本品吉

    ○野本品吉君 まだ具体的な案は持っておらない、今後十分検討するというお答えでございますが、これは、それらの青年の身になりまして、本気になって私は文部省及び政府全体としても、特段の御考慮をわずらわすことを特に希望いたしたいと思います。  その次にお伺いいたしますことは、これまた文教政策に熱意を示しておるということの一つの現われとして、義務教育の教科書の無償の問題が出ております。私は今後、この法案の検討の途上におきまして、こまかい点等につきましてはお伺いいたしたいと思うのでありますが、ただ、ここで一点はっきりしておきたいと思いますことは、この法案に至るまでの過去の経過から見ますというと、昭和二十六年にこの義務教育の無償の理想によってやった場合には、昭和二十六年度に入学する児童に対する教科用図書の給与に関する法律、これには「義務教育の無償の理想のより広範囲な実現への試みとして、」ということが法案の第一条にあるわけです。次いで昭和二十七年の法律第三十二号によりますというと、「この法律は、児童の国民としての自覚を深めることに資する」と、この「国民としての自覚を深めることに資する」ということが主たる目的になっております。次いで三十一年にできました法律によりますというと、新たに入学する児童に対しまして教科用図書の給与をしたわけでありますが、そのうちの考え方は、経済的な理由によって、経済的に貧困な者にやる、こういうことにまあなっております。こういうふうに考えて、今度政府で提案されております義務教育無償の法案を見ますときに、世間ややもすれば義務教育小学校の教科書の無償の問題を経済的な面からのみこれをとらえようとし、考えようとする傾向がないでもないのであります。私は、この種の試みとして最初の法律に書かれております「国民的な自覚を深める」、現在の小学校あるいは中学校の子供にどれだけの国民的な自覚があるか。むろん、がんぜない子供たちでありますから、しさいにこれをとらえることはむずかしいのでありますけれども、もっと強く、日本の子供であるという意識を持たせたいのであります。その日本の子供であるという意識あるいは自覚の上に打ち立てられた教育でなければ、ほんとうの意味の日本の国民教育にはならない。そこで、今度の義務教育の無償の問題にいたしましても、単なる経済的に父兄の負担を軽減するというようなことよりも、むしろ本質的には、国が直接子供に教科書をやるということを通しまして、理屈なしに、厳たる日本の存在が子供の頭に植え付けられる、ここに私は教科書無償の大きな意義を見出したいと思うのでありますが、この点につきまして総理大臣の御所見を伺いたい。
  165. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のとおりでございまして、これを単に経済的に父兄の負担を少なくすると、こういうことでは、この教科書無償の理想というものが、これは何と言いますか、私は泣くと思うのであります。やはり国民——日本を背負うりっぱな国民を養成する気持ということが根本になると私は考えておるのでございます。
  166. 野本品吉

    ○野本品吉君 時間がありませんので急ぎますが、もう一つ文部大臣にお伺いいたしておきたいと思います。それは、昨年の七月の十日に「大学教育の改善について」という中教審からの答申が出されております。その一部分を私は読みますと、「新制大学の制度は、戦後における教育改革の一環として、学術研究、職業教養とともに、市民的教養と人間形成を行なうという理念に基づいて発足した。しかるに、実施後十数年の実績をみると、所期の目的が必ずしもじゅうぶんに達成されていない。そのよってきたる重要な原因一つは、わが国の複雑な社会構造とこれを反映するさまざまな実情にじゅうぶんな考慮を払うことなく、歴史と伝統を持つ各種の高等教育機関を急速かつ一律に、同じ目的・性格を付与された新制大学に切り換えたことのために、多様な高等教育機関の使命と目的に対応しえないという点に求められる。」、これは中教審の答申の大事な点であると思うのであります。私もこの中教審の答申というものは相当置くこれを考え扱っていかなければいけないという個人的な考えを持っておるのでありますが、文部大臣といたしましては、この中教審の中間報告に対して、どのような態度、どのような方針で対処されようとしておりますか、その点をお伺いたします。
  167. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。中教審の中間報告の中で、今読み上げられましたこと、私も野本さんと同じような気持で受け取っております。御案内のごとく、申すまでもないことですけれども、戦後教育制度が改められまして以来今日まで、小中学校、高等学校につきましては、何がしかの手直しが行なわれておりまして、日本の実情に適合するような努力の成果はある程度上がっておると思います。ところが、大学制度につきましては、制度切りかえそのまま、占領中そのままであることも、御案内のごとくでございまして、その点に国民的な一種の不安もございましょうし、十数年を経た今日の経過に顧みて、識者の間にもいろいろと意見があることも、私も伝え聞いております。さようなことを、国民にかわって、二年越しの研究の成果を、昨年の六月に中教審から中間報告をしていただいたものと心得るのであります。しかしながら、今日までも三年越しの検討を続けてもらっておるわけですが、中間報告は、御案内のとおり、大学の目的と性格という見地から検討されました一応の結論が中間的に出されたにとどまるわけでございまして、大学制度全体を今後しからばどういうふうに受け取ってどう改善していくかとなりますれば、今検討されております大学の組織編成ないしは管理運営についての中教審としての客観的な立場からの御意見も拝聴させていただきませんことには、全貌を把握できない。中教審自身も、最終的な結論は、今申し上げたような今後残された課題を検討した上で答申をするというお気持のようでございます。端的に申し上げれば、中教審の答申を待って、しかる上で十分に検討をして、立法措置その他が必要であれば考えるということになろうかと思っております。
  168. 野本品吉

    ○野本品吉君 中教審の答申待ちという御答弁でございますけれども、私は、少なくとも、いつ中教審の全部の答申が出るかわかりませんが、その答申がこの基本的な線に沿っての答申であろうということは、これは予想ができると思います。したがって、そういう予想のもとに、文部省としましては、着々とこれが予備的な研究、準備的な研究を進めるべきであると、かように考えるわけです。時間がありませんので、答弁は求めません。  最後に私はお伺いしたいことがあるのでありますが、それは、三十六年の十月に、人事院月報の第一二八号、これに、昭和三十五年度の懲戒処分の概況——国家公務員の懲戒処分の概況ということが詳細に報告されております。この懲戒処分の総件数というところで、人事院の発表しているところによりますと、三十五年度中に行なった懲戒処分の総件数は一万一千四百七十一件、前年度に比べて七千八百五十件の増加となっております。この七千八百五十件の増加は、違法な職員組合活動を理由とする処分が九千七百九十二件に上り、前年度に比し八千百十六件ふえていることがおもな理由である。私はこの人事院月報を見ましたときに、日本の公務員の問題につきまして深く思いをいたし、憂えざるを得ない気持で今日までおったわけであります。  そこで私はさらに次のごときことも聞きたいと思うのでございます。これらの公務員は、次のような宣誓を任命権者あるいはその任命権者の指名する上司の前で行なっているわけです。  「私は、ここに、主権が国民に存することを認める日本国憲法に服従し、且つ、これを擁護することを固く誓います。  私は、国民全体の奉仕者として、公務を民主的且つ能率的に運営すべき責務を深く自覚し、国民の意思によって制定された法律を尊重し、誠実且つ公正に職務を執行することを固く誓います。」これが公務員として任用されるときの宣誓であります。この厳粛な宣誓に対しまして、署名捺印をしている諸君法律の違反行為が、これだけの件数に及んでいる。実にこれらの方々は、みずからを欺くと同時に、国民の信を裏切っている、かように申し上げても差しつかえないと思います。そこで、どうしてこんなに多くの公務員が違法行為をあえてしているのであろうか。いろいろ探究していけば、数え上ぐべき原因はありましょう。しかし私はここで一点はっきりお伺いいたしたいと思いますことは、世間で言うところによりますというと、公務員の職場に相当多数の共産党員がおる。そうしてこれらの共産党員である公務員が、内外呼応していろいろな動きを示しているということを聞くのであります。私は公安調査庁の長官にお伺いするのですが、一体どのくらい公務員の職場に総数として共産党員がいるか、またその共産党員がどういう職場にどのくらいおるか、概要の御説明をお願いしたいと思います。
  169. 関之

    政府委員(関之君) お答えいたします。お尋ねの国家機関の中には、私どもは大よそ三千前後の共産党員がいるものと見ているわけであります。これは各省庁、裁判所などを含めてのものであります。なおそのほかに、公企体あるいは地方自治団体を含めてみますると、そこに約一万一千前後、総計約一万四千から五千程度の者が現在この方面にいる、こういうふうに判断されるのであります。  なおお尋ねは、さらにそれをこまかく言えというようなお話でございまして、もう少しその内容を申し上げてみたいと思うのであります。さてしからば、どこにどういうふうになっておるかということでありまするが、まず官公庁のほうから大きなのを代表的に申し上げることといたします。全農林省の関係に約五百五十名前後、それから主として国税庁の関係でありまするが、大蔵省全体として約二百、それから裁判所関係が約二百、建設省関係が約二百、それから郵政の関係が千二、三百、こういうところと記憶しているのであります。さらに、公企体とかあるいはその方面を若干申し上げてみますると、何といっても日教組が一番多いのでございまして、これが約四千四百、四千四百くらいの者がそこにいるであろう。それから地方自治体が約二千五、六百、そのほか国鉄などが二千四、五百、全電通が大よそ千二、三百、こういうような数字の者が共産党員で、そこにそういう者がいるというような疑いを持っている次第であります。
  170. 岩間正男

    ○岩間正男君 委員長、関連して。
  171. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 野本君いいですか、関連質問よろしゅうございますか。——野本君。
  172. 野本品吉

    ○野本品吉君 私が今のような質問をいたしておりますのは、あえて憲法が完全に保障しております思想の自由などを押えようとか、これを否認しようとする気持は全然ないのです。私がお伺いしたいのは、善良な公務員が、かような人たちと一緒に仕事をいたすことによって、あえて違法行為をするようなことのないような公務員の職場を作らなければいけない、こういうふうに考えるからでございます。  そこで日本の公務員の職場全体を通じまして、今申しましたような、能率を上げ、あるいは信賞必罰というようなことで、正しくまじめに忠実に働こうとする公務員を守るための、あるいはそれと同時に、非違、違法行為をあえてするようなことのないように親切にこれを守り、これを指導するための人事管理体制と申しますか、これが日本の公務員の職場全体を通じて私は十分でないのじゃないか、かように考えるわけでございます。行政管理庁の長官は、直接このことに当っておるかどうか。当たられておって、いろいろと御感想をお持ちだと思いますので、この点についての御所見を承りたいと思います。  時間が参りましたから、さらに一点だけつけ加えておきます。それは、日本の民間の大きな企業体におきましては、やはり企業の能率を上げるために、企業内の平安を保つために、有能な人物をいわゆる人事管理のための専任の重役といたしております。この考え方は、働く諸君を押えるという意味でなしに、先ほど私が申し上げましたように、まじめに忠実に働く人を親切に守っていく、そういう意味においても相当考えられておるのです。私はさような点につきまして、行政管理庁の長官は日本の行政の円満な運営のために、能率の発揮のために、これらの点につきましてどのようにお考えになっておるかお伺いしたい。
  173. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 野本君、持ち時間が経過いたしました。御注意いたします。(「関連」と呼ぶ者あり)
  174. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 公務員の人事管理は、それぞれの庁がやっているのであります。昨年暮れ、行政管理庁におきまして、人事管理の行政監察をいたしました。その結果を見ますると、各省庁間でまちまちでありまして、非常に成績のいいところと、全く人事管理がなっていないところとあります。給与の点の取り上げ方、また勤務時間、不正不当行為における事後の処置等におきまして、いろいろ私どもは考えなければならぬ点が多いのでありまして、政府全体として人事管理体制をどう作るかということをただいま考究いたしております。
  175. 野本品吉

    ○野本品吉君 最後に一言申し上げておきます。ただいま行政管理庁長官からお話しがございましたが、臨時行政調査会というものを設けていろいろな御検討を将来なされる。しかし、事は昭和三十九年の三月を過ぎなければその答申を受けることができない。そこで私は、昭和三十九年の行政調査会の答申を待つまでの期間といえども、さような点はおろそかに考えられていくべきでない、かように考えております。
  176. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 人事管理の問題は、臨時行政調査会ではありません。政府としてただいま検討いたしているところでございます。したがいまして、臨時行政調査会の答申を待つ前に、なるべくすみやかに体制を整えたい、こう考えております。
  177. 岩間正男

    ○岩間正男君 関連。先ほどの関公安調査庁次長発言に関連して私はお聞きしたいのでありますけれども、各職場における共産党の人数について発表した。公安調査庁は共産党だけを調査しているのではないだろうと思う。ほかに自民党だって調査しているのだろうと思う。あなたのところにその資料があるはずだ。そうでなければ公平を欠く。その数を発表してもらいたい。自民党はどのくらいあるか。
  178. 関之

    政府委員(関之君) お答えいたします。公安調査庁は破防法に基づいて調査を進めているのでありまして、破防法上の容疑があると調査をする、こういうことでありまして、現在のところ左が五つ、右が五つを一応の対象として調べております。左の方は日本共産党、朝鮮総連、その他学生三団体、こういうふうになっております。その他調査の一応要ありとして調べた団体については、責任を持って調査に差しつかえない範囲においてはお答えいたします。その他のことについてはここで申し上げるわけにはいきません。
  179. 岩間正男

    ○岩間正男君 その次に聞きたいのは、あなたはそういうことを言って、対象の問題については、ここでもいろいろ今まで問題になっておることで、それは独断なのだ。そのことについてここで論議することは時間の関係から省いておきますが、大体どのようなやり方調査をしておるのか、調査の手段、方法、これは人権の立場から非常に重大な問題だ。公安調査庁のやり方については非常に衆目の知るところだ。これについて、このやり方は非常に逸脱がありスパイ行為が横行しておることは明白だ。そういうことからこの問題を聞きたいのでありますが、あなたたちはどういうふうにしてこれを調査しているか、その調査の方法、手段、これを明らかにしてもらいたい。
  180. 関之

    政府委員(関之君) お答えいたします。破防法に基づく調査の権限はその第二十七条に規定してあるのでありまして、原則的に強制権はありません。したがって、すべて任意に相手方の承諾のもとにこれを行なうということが原則なのであります。個々の問題につきましては、ここで申し上げることはできません。今お尋ねの人権の問題でありまするが、これは法案成立のときに、私どもがこの国会の御論議を通じて、人権の擁護について最大の注意を払うべしという、決議ではございませんが、各審議を通じての御注意があったわけでございます。その点はけんけん服膺いたしまして、いやしくも人権の侵害のないようにやって参っておる次第であります。
  181. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 野本君の質疑は終了いたしました。   —————————————
  182. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) この際、お諮りをいたします。東隆君から、明日の同君の質疑に日本銀行理事福地豊君の出席を求められました。明日福地日本銀行理事参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  183. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 御異議ないと認めます。  明日は午前十時に開会いたすこととし、本日はこれにて散会いたします。   午後五時三十三分散会