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1962-03-07 第40回国会 参議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月七日(水曜日)    午前十時三十三分開会   ―――――――――――――   委員の異動 本日委員一松定吉君、塩見俊二君、前 田佳都男君及び占部秀男君辞任につ き、その補欠として近藤鶴代君、井川 伊平君、下村定君及び山本伊三郎君を 議長において指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     湯澤三千男君    理事            川上 為治君            鈴木 恭一君            平島 敏夫君            米田 正文君            加瀬  完君            藤田  進君            田畑 金光君            千田  正君            加賀山之雄君    委員            井川 伊平君            植垣弥一郎君            小沢久太郎君            太田 正孝君            大谷 贇雄君            金丸 冨夫君            古池 信三君            近藤 鶴代君            櫻井 志郎君            下村  定君            杉原 荒太君            田中 啓一君            館  哲二君            苫米地英俊君            野本 品吉君            村山 道雄君            山本  杉君            横山 フク君            亀田 得治君            木村禧八郎君            坂本  昭君            高田なほ子君            戸叶  武君            羽生 三七君            矢嶋 三義君            山本伊三郎君            赤松 常子君            東   隆君            市川 房枝君            白木義一郎君            大谷 瑩潤君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 植木庚子郎君    外 務 大 臣 小坂善太郎君    大 蔵 大 臣 水田三喜男君    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君    厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君    農 林 大 臣 河野 一郎君    通商産業大臣  佐藤 榮作君    運 輸 大 臣 斎藤  昇君    郵 政 大 臣 迫水 久常君    労 働 大 臣 福永 健司君    建 設 大 臣 中村 梅吉君    自 治 大 臣 安井  謙君    国 務 大 臣 川島正次郎君    国 務 大 臣 藤枝 泉介君    国 務 大 臣 藤山愛一郎君    国 務 大 臣 三木 武夫君   政府委員    内閣官房長官  大平 正芳君    法制局長官   林  修三君    法制局第一部長 山内 一夫君    総理府総務長官 小平 久雄君    総理府特別地域    連絡局長    大竹 民陟君    防衛庁長官官房    長       加藤 陽三君    経済企画庁総合    開発局長    曾田  忠君    大蔵省主計局長 石野 信一君    大蔵省主計局次    長       谷村  裕君    同       村上孝太郎君    大蔵省理財局長 宮川新一郎君    大蔵省管財局長 山下 武利君    大蔵省銀行局長 大月  高君    文部大臣官房長 宮地  茂君    文部大臣官房会    計課長     安嶋  弥君    文部省初等中等    教育局長    福田  繁君    文部省管理局長 杉江  清君    厚生省環境衛生    局長      五十嵐義明君    農林大臣官房予    算課長     檜垣徳太郎君    食糧庁長官   大沢  融君   事務局側    委員部第一課長 土屋 政三君    常任委員会専門    員       正木 千冬君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和三十七年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十七年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) これより予算委員会を開会いたします。  委員の変更について報告をいたします。  本日、一松定吉君、占部秀男君及び塩見俊二君が辞任せられまして、その補欠として近藤鶴代君、山本伊三郎君及び井川伊平君が選任せられました。   ―――――――――――――
  3. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 昭和三十七年度一般会計予算昭和三十七年度特別会計予算昭和三十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  質疑を行ないます。大谷瑩潤君
  4. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 きょうは早朝から、私質問をさせていただく番に当たりまして、閣僚の各位に特に忌憚のない御意見を承らさしていただく機会を得て心から感謝をいたしております。どうか、私の質問はとかく抽象的な問題が多いために、お答えも自然具体的な問題よりも抽象的に流れやすいことになりはしないかと思います。できまするだけひとつ具体的にお答えを願いたいと思います。  まず最初に、総理国会再開劈頭施政方針演説において、青少年こそは祖国の生命力の聖なる源泉であり、民族の純潔と勇気とを代表するものであって、この次代をになう青少年育成こそが現下最重要課題であると強調されております。そしてこれに続いて、政府地方公共団体その他教育界と協力して、学校教育社会教育を通して教育機会均霑教育内容向上教育施設拡充等に努め、教職員と学生が遺憾なくその本務に邁進できるような環境整備と、働きつつ学ぶ方々に知識と技能を体得される機会提供に一段と努力する所存だと述べられております。これら教育機会均霑教育内容向上教育施設の充実等々は、当面の施策として私はまことにけっこうな措置と存じております。政府の御苦労もなみなみならぬものがあるとお察しをいたしますが、しかしながら、私が考えますに、これら数々の施策は、総理自身もお認めになっておられるごとく、あくまでも環境整備であり、機会提供でございまして、いわば教育の外延にあって、これを支える条件と申さねばなりません。換言すれば教育に至る道程、あるいは教育を得る手段であって、当の目的たる教育理念そのものとは申すことができないものでないかと存じますが、いかがお考えになっておりましょうか。
  5. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 施政演説で申し上げておりますとおり、私は現下重要な問題は、青少年育成であると思います。したがいまして、ああいうふうに述べておるのでございます。教育理念という問題になりますと、これはやっぱり教育内容改善向上ということに相なります。この点につきましても文部当局におきまして一段の工夫努力をするよう要望いたしておるのでございます。
  6. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 ところで、この点がまことに重大であると考えるものでございますが、今日各方面で青少年の問題の危機が叫ばれております。これは要するに、青少年が人生あるいは社会生活における目標を見失い、または青少年としての夢を喪失しているのではないか、こういうことが根本の問題ではあるまいかと思うのでございます。最近における青少年問題をめぐる多くの問題、すなわち動機なき犯罪ローティーンの暴力的あるいは性的犯罪の激増、犯罪集団化的傾向中産階級層家庭子女愚連隊化傾向等は、その起因するところをさかのぼってみますと、みな目標の放棄、夢の喪失、この一点に帰するものではないかと考えられますが、この私の考えに対しましてどう総理はお考えになりますか。
  7. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 全く同感でございます。夢と希望を持つようにすることが、そういういろいろな犯罪をなくする一番の方法だと考えております。
  8. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 ところで、青少年時代の夢とか目標とかいうものは、何より具体性を持つことが特徴でございまして、決して理論的、観念的なものではないのでありまして、必ず具象的なイメージを伴っております。たとえて申しますと、明治時代にありましては、日清日露両戦争の影響でございましょうが、自分乃木大将東郷元帥のような強い軍人になりたいということが青少年の夢であったように思われます。これが大正昭和に至りますと、夏目漱石野口英世博士青少年のあこがれの的となったのではないかと思われます。ところが、今日の社会においては、こういう意味国民的偶像青少年脳裏から全く抹殺されておりまして、子供自分生活目標一つイメージとして脳裏に形成するのは、児童心理学者の研究によると、大体十五、六歳のころと言われておりますが、今日これらの年令の子女に対して「自己の尊敬すべき人物あるいは自己のなりたいと思う人物についてしるせ」というアンケートをとってみますると、「ない」あるいは「わからない」という回答が大多数であります。こういうことでありますために、私はこの点がまことに寒心にたえない重大なところであると思うのでございます。ただ新憲法の建前とか、あるいは戦後の社界風潮といたしまして、政府行政指導で、こういうふうに青少年を導けとか、こういう教育をやれということのできないことは、私もよく存じております。しかしながら、行政最高責任者たる池田総理自身として、自分はこういう青少年育成したい、あるいはまた未来はこういう青年に日本を託したい、こういうようないわば人間形成具体像と申しますか、あるいは人間像といいますか、そういうものをお持ちになっておるに違いないと私は思いますが、そういう具体的な姿をごく素描でけっこうでございまするから、お示しいただければまことにけっこうだと思います。
  9. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) なかなかむずかしい御質問でございますが、私は先ほど申し上げましたように、やはり青少年に夢を持ってもらう、これがぜひ必要であると思います。それはどこから出てくるかと申しますと、やはり私は歴史だと思います。歴史を学ぶこと、これが私は最も必要なことであると思います。そうして歴史を学び、また教育学校だけでは私は十分でない。やはり家庭だと思う。親がそのつもりで子供を導くということが一番必要であると思います。家庭で夢を持たすということは何かと申しますると、やはり先祖のこととか、あるいは先輩の話をするとか、あるいはやはり私は今一番欠けているのは、日本政治における宗教に対する気持が、何といいますか、欠けているんじゃないか。各国に比べて仏教徒が相当多いのでございますけれども、ほんとうに国民キリスト教でも仏教でも敬虔気持になる機会があまりなさすぎるのじゃないか。私は、自分のことを言って恐縮でございますが、やはり神仏というものを信ずると申しますか、たよるという気持がぜひ人間として必要だ。アメリカなんかに行きましても毎週教会に行くということは、政治家実業家にかかわらず、教会に行って反省敬虔の念に打たれるということは、社会人としてぜひ必要である。自分といたしましては毎日やっておる。自分家庭でも家内や子供は毎日仏壇の前にすわる、こういうことがやはり必要だ。それじゃ親鸞上人にたよるかというのじゃない。やはり反省敬虔気持を持つということが必要じゃないかと思います。まあ総じてこの問題は、われわれが今後十分検討し、やっていかなければならぬ問題だと思う。私は学校教育としては、やっぱり歴史を教えるということが一番手っとり早いのじゃないかと思います。
  10. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 総理から具体的ないろいろお話を承って、私非常に力強く感じます。  さて次にお尋ねいたしたいことは、経済成長政策あるいは所得倍増政策の、いわば青少年問題に対するはね返りと申しますか、影響と申しますかの問題でございます。池田内閣経済成長政策の結果、とにかくいろいろな御議論はございましょうとも、一般生活水準が上がり、暮らし向きが相当向上したということは事実でございます。これは何と申しましても、私ども国民としてはけっこうなことだと存じております。しかしながら、こういうプラスがある反面、非常なマイナスの面のあることも見のがしてはならぬことだと思うのでございます。それは何かと申しますと、一般的消費性向の膨張でございます。消費の誇大な扇動でございます。いわく消費は美徳である、あるいはまた消費者こそ主権者であるとか、いわく消費革命、いわくレジャー・ブーム等々、あらゆるキャッチ・フレーズが横行して、ちまたのパチンコ屋はいよいよの盛り、観光の名において非常識に豪華なキャバレーやゴルフ場ばかりが際限もなくでき上がって、いたずらに消費を謳歌して、有閑、驕奢、浪費、享楽をあふる傾向がとうとうとして世をおおうている現状でございます。まことに憂慮すべき事態が軽々に看過されていると申さなければならぬと思います。また同時に、経済成長の波に乗って、こういう消費を対象とする企業なり経営なりが簇生し、またこれが驕奢享楽風潮をいよいよ輪をかけて助長するという悪循環を現出しておるのでございます。そうして、こういう驕奢享楽を追求する消費性向が今日青少年の心をいかに虫ばんでいるか。この点にも目をおおうわけには参らないと思います。池田首相経済成長政策ないしは所得倍増政策、これはまことにけっこうなことでございますが、これに必然的に伴う上述のようなマイナス面についての政府対策がいささか欠くるところなしやを憂うるものでございます。次代をになう青少年に大きな期待を寄せておられる池田首相として、この点に関してどういう御所信をお持ちであるか、これを伺わせていただきます。
  11. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 生活水準の急速な上昇、いわゆる所得の急激な増加によりまして、一時そういう好ましからざる傾向の起こることは、これは歴史の示すところでございます。で、やっぱり為政者といたしましては、そういう点を常に考え、そうして起こることがやむを得なかった場合におきましては、それが早く鎮静するような方法を講じなきゃいかぬと思います。文化生活というものが少しはき違えられ、そして所得増加生活水準が非常に急激に上がった場合に、それを何と申しますか、享楽する施設がないときに、えてして不純なものに走りやすい。だから、やはり所得倍増と申しましても、その間にある程度の何と申しますか、ゆとりと、増加した場合の環境をやはり考えていくということが必要だと思います。今になってこうなったらいかぬじゃないか。これはこれを鎮静さすような方法を講じなきゃいかぬと思います。
  12. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 それに対する具体的な方策に対してのお考えを承ることができなかったのは残念でございますが、時間の都合上次に移らしていただきます。  さて第三に、最近における青少年犯罪傾向の問題でございます。青少年不良化傾向は、これはひとり日本だけにとどまらず、今日、世界各国当面の深刻な問題となっております。十代の取り扱いこそは各国為政者一大関心となりつつあります。かつて社会悪は、すべて資本主義のせいであり、社会主義国家には犯罪はないと豪語していたソ連においてすら、フルシチョフ政府は、ただいま太陽族愚連隊の横行に手をやいておるということでございます。アメリカビート族、フランスの実存主義者日本太陽族、これらは皆同類項であまりす。こうして、このような青少年不良化傾向が次第に低年化していることが問題であると思います。今やローティーン不良化対策が焦眉の急になって参りました。ここに警察庁刑事局少年犯罪者検挙数統計がございますが、これを見ますると、十四才から十六才までをローティーンとし、十六才から十八才までを中間、十八才から二十才までをハイティーンとしておりますが、十四才から十六才まで、すなわちローティーン刑法犯検挙総人数は、昭和三十四年において三万五千八百九十七人、三十五年において三万五千三百七十五名、三十六年が三万九千九百三十二名となっておりまして、漸次増加傾向をたどりつつあります。しかも、これらの低年層犯罪者は、主として生活に困らない中産階級以上の家庭の子弟となっております。この点が私まことにゆゆしい問題ではないかと考えるのでありますが、何ゆえなら、これは貧乏のゆえの金が目的犯罪ではないのでございます。それではその原因は何かと申しますと、この原因を、為政者のみならず、世の親たちは真剣に追及せねばならない事柄ではないかと思います。そうして私はその原因はいろいろございましょうが、その主たるものは次の二つに尽きると思うのでございます。その一つは、家庭におけるしつけが全く失われたことでございまして、先ほど総理のおっしゃったとおりでございます。その二つは、家庭及び学校をも含めて、今日の社会に欠ける宗教心の欠陥であろうと思います。ところで、池田総理は、前の国会におきまして、私の家庭内部宗教情操を導入すべきではないかという質問に対して、同感であるとおっしゃられて、ただいまもその御答弁をなされたのでございますが、それでは、どういう方法家庭内に宗教を導入するかという具体策につきましては、これは言うはやすくして実行はまことにむずかしいのでございます。なぜならば、今日では家庭内部信仰は地を払い、神仏を信じ、道を求める心は全くなくなっていると申してもいいのでございます。明治大正の後は、日本の大多数の家庭は、いわば無宗教、無信仰状態でございます。したがいまして、こういう無宗教、無信心の親たちをして、子供に向かって宗教教育を施せと申しましても、これは不可能なことではないかと思います。それでは義務教育学校ではどうか、これまた御存じのとおり、宗教教育などはとうてい望むべくもない状態でございます。それでは、今後はどうして子供宗教教育を施したらよいか、総理は、私がこの質問の冒頭で引用しましたごとくに、学校教育並びに社会教育を通じて青少年育成するのだと述べられておりますが、私はこの社会教育の場こそ、失なわれたしつけ及び宗教教育を行なう唯一の道であり、そうして、またそれは、家庭内部宗教情操を導入するわずかに残された手段方法ではないかと存ずるのでございます。では、それはいかなる社会教育なりやと申しますと、宗教法人立幼稚園並びに保育園でございます。宗教に接する機縁にはいろいろな道がございますが、おとなの場合は、主として理性に訴えて、説教だとか、経文を媒介としておりますが、子供の場合は主として感性的に、目から耳から皮膚からによって、ごく自然に流れ込んで参ります。信仰の道が開かれるのでございます。ここにこそ子供に対する宗教教育の重大な意味があるのでございますが、宗教法人立幼稚園保育園の特殊な重要性について池田首相のお考えはいかがでございましょうか、承らさしていただければしあわせと存じます。
  13. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話の点は共感するところが多いのでございますが、宗教法人立幼稚園その他につきましては、文部大臣からお答えさせることにいたします。
  14. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 一般包括的なことにつきましては、すでに総理からお答え申し上げたとおりだと存じます。宗教法人幼稚園等経営することが、またはそれを盛んにすることが、子供に対して宗教情操教育を通じての御指摘のような青少年問題を未然に防止する一つのよすがでもあるというお説は私も同感でございます。今の制度におきましても、宗教法人幼稚園経営されるということは、むしろ政府としても好ましいことと考えておる次第でございます。
  15. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 それでは続いて文部大臣にお伺いをいたしたいと存じます。  宗教法人立保育施設設立申請を許可しなかったり、また、宗教法人立保育施設の届出を認めながら、その後に至って行政指導でこれを学校法人社会福祉法人に切りかえるように勧奨している向きがあるという陳情が、私の手元にたくさん参っておりますが、宗教法人立幼稚園に対し、学校教育法百二条で、「当分の間、学校法人によって設置されることを要しない。」と明記している事実に照し、いささかこれは行き過ぎではないかと思われますが、文部大臣お答えはいかがでございましょうか。また、学校教育法百二条にいう「当分の間」ということは、およそどのくらいの期間を考慮されておるのでございましょうか、お示し願えればけっこうでございます。
  16. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。御指摘のとおり、学校教育法百二条で、私立の幼稚園につきましては、「当分の間、学校法人によって設置されることを要しない。」という規定がございます。かつまた、これまたお話のとおり、都道府県の教育委員会を通じまして、個人ないしは宗教法人等経営にかかる幼稚園を、新規のものにつきましては、なるべく学校法人にするようにという指導も、通牒を出していたしておるわけであります。ところで、百二条にいいます「当分の間」がいつまでかというお尋ねでございますが、ちょっとはっきり申しかねますけれども立法趣旨を推察しまするのに、御案内のごとく、幼稚園学校教育法にいうところの学校となっております。小学校以上が義務教育で、幼稚園はそういう制度になっておりませんが、行く行くは幼稚園までも、幼児教育の重要さを考えあわせて義務教育にするという可能性の有無、大体の方向としましては、そういう可能性がだんだんと濃化しつつあるのではないかと推察されるわけでございます。したがって、「当分の間」の期間は明確には申し上げられませんけれども、たとえば幼稚園義務教育にするがごとき制度上の根本的な改正があるとか、あるいは幼稚園にいたしましても、学校教育法にいう学校である以上は、個人ないしは宗教法人等じゃなくて、学校法人経営することが望ましいということだけは言えると思いますので、行政指導でだんだんと新規のものはもちろん、既存のものも学校法人の組織のほうに切りかえを慫慂し続けていって、そして学校法人になってしまったあかつきにおいては、学校法人以外のものは存在しないようにするというふうな構想もあわせ考えられるかと思いますが、その両面の事柄が確立しますころまでは「当分の間」という期間ではなかろうかと思います。これは期間について明記されておりませんので、私の私見に基づく推察も入ってはおりますが、おそらくそういうことであろうと思います。
  17. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 それでは次に厚生大臣にお伺いいたしたいと思いますが、昨冬十一月二十一日、荒木文部大臣池田総理に対しまして、宗教法人保育施設に関する請願に関する意見書を出されております。これを拝見いたしますると、まず第一点として、宗教法人立保育所に対する登録税免除等措置現行法上認められていないから、社会福祉法人立の場合と同様な取り扱いがなされるよう努力したいと申されておりますが、この点はその後いかが相なっておりましょうか、まずこれをお伺いいたします。
  18. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 宗教法人幼稚園とか、あるいは社会福祉関係施設経営する、ことに保育所が多いということ、このことにつきましては、われわれといたしましても非常にけっこうなことだと思っておるわけであります。現に私どものほうで所管いたしております保育所関係仕事にいたしましても、宗教法人にその仕事を委託しておる例も少なくないと存じます。ただ問題は、御承知のように、宗教法人保育所仕事を委託することは可能であり、望ましいことと思うのでございますけれども、その保育所の設備を改善いたしますとか、あるいは建物を増改築いたしますとかというふうな場合の補助の道がないわけであります。これは淵源するところは憲法に発しておるかと思うのでございますが、御承知社会福祉法におきましても、社会福祉法人に対しましては助成の道が講ぜられておるわけでございます。宗教法人にはそれがないのであります。そういう意味合いにおきまして、宗教法人経営しておる社会福祉施設保育所等をさらに発展させる、改善させるためには、宗教法人立と申しますよりも社会福祉法人に切りかえていただいたほうが便利だと、こういうふうな点があるわけでございまして、現行法上さようなことに相なっておりますので、宗教法人そのものに対しまして、設備等についての助成ができませんので、自然さようなことになっておるかと思うのでございます。これはやむを得ない事情からというふうに御了承願いたいと思います。ただ私どもといたしましては、そういった法人が宗教的な情操教育等をそこでやっていただくということにつきましては、非常に望ましいことと考えておるわけでございます。あわせて御了承いただきたいと思います。
  19. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 第二点といたしまして、もう一つ厚生大臣に承りたいのは、宗教法人の役員が、社会福祉法人学校法人の役員を兼ねることができない。この点は宗教法人保育所社会福祉事業との関係、その他宗教法人の特性等、宗教法人の立場も十分考慮して、さらに検討したいと申されておるようでございますが、今後どのような方向で解決をしていただける見通しでございましょうか、お伺いをいたしたいと思います。
  20. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 御承知のように、信教の自由というところから出発いたしておると思うのでございますけれども、公の支配が宗教に及んではならないというようなことになっております関係上、公の支配に属します社会福祉法人、それから宗教法人、その関連はなかなか微妙なところがあろうかと思うのであります。今お話になりました点につきましては、私どもとしてもなお検討させていただきたい問題と考えております。
  21. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 社会福祉法人あるいは学校法人が解散した場合における残余財産を寄付者たる宗教法人に帰属せしめるためには、社会福祉事業法なりあるいは学校教育法の改正を待たなければならないものでございますが、宗教法人の立場を考慮してさらに検討する旨を述べられております。文部大臣が、はたして社会福祉法人並びに学校教育の改正が、両立法の建前からいって可能でありましょうか。また、かりに改正が困難であるとすれば、他に何かこれにかわるべき方法がございますでございましょうか。この問題はわれわれ宗教者にとっては当面の重大問題でございますので、今後の見通しについて、文部大臣にお伺いを申し上げます。
  22. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  御指摘のように、学校法人が解散いたします場合に、宗教法人が主となって経営しておりました学校法人が解散しました場合に、残余財産は、法律の改正がないならば、当然類似の学校法人にその財産権は帰属する、寄付しなければならないという建前でございまして、現行法のもとにおきましては、便宜の措置を講ずる余地はないと存じます。ただ、請願に対してお答え申し上げた趣旨は、実質的には何らかの理由によって解散しました場合のその財産がもとの宗教法人に返らないということの不便さと申しますか、ある程度の不当さがわからないわけではございませんけれども、しかし、それは単に宗教法人だけに限らず、その他の公益法人等信憑すべき目的を持った法人等に帰属させる問題とも関連いたしますので、そういう一連の考慮をいたしまして、法律を改正すべきかいなかということを検討し続けておる状態でございます。なかなか簡単に結論が出ない悩みがございますが、検討をいたしたいと思っております。
  23. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 関連。ただいまの大谷委員の御質問に関連いたしまして、お尋ねをいたします。  先ほど文部大臣は、宗教法人幼稚園なり保育園なりを経営して宗教情操の涵養をはかることはたいへん望ましいのじゃないか、こういう言葉がございました。また、あとで、しかし現在経営しているものを学校法人に変えること、これも望ましい、こういうことなんですが、ちょっとそこのところがはっきりしません。  その点と、それから今、宗教法人宗教情操の陶冶をするために幼児教育をするということは、これは本来の使命として私は非常にけっこうなことだと思うのです。ところが、行政府県の末端では、学校法人にしろとか、社会法人にしろとか、行政指導をやっておられる。そこでそうしなきゃ補助金をやらぬということですけれども、これはちょっと納得がいかぬと思う。なるほど宗教法人自体に補助金が出せないということはわかるけれども宗教法人自体が、宗教法人教育事業をやっている、その教育事業自体に対して補助金が出せぬということは、ちょっとこれは納得がいかぬのでございまして、その点のひとつお答えを願いたい。  さらに、現に府県庁で、宗教法人幼稚園を作っておられる、そうしまするというと、それに屈服して学校法人にする。そうすると、贈与税を取られる。こんなべらぼうな話があるものじゃない。それから、解散した場合には、その財産の帰属というものは、学校法人にしてしまいますというと、それは他の同種の教育事業に寄付してしまうことになり、したがって、宗教法人が持っておる財産が学校法人にしたために取られてしまうということになってしまう。これはそういうことでもって行政の末端において、学校法人にしろ、社会福祉法人にしろというような、人の財産権を侵すようなことの指導をすることは、これははなはだもってのほかだと思うのですが、その点の御見解を、これは大蔵大臣、文部大臣にお伺いしたいと思います。
  24. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  先ほどお答え申し上げたことは、ある程度矛盾をお感じになるであろうと想像しながら申し上げました。(笑声)と申しますのは、幼稚園である限りは学校教育法にいう学校でございます。学校経営は、個人ないしは宗教法人等の民間で私学としてやられることそれ自体は、すでに学校教育法が制定されます以前からございましたから、したがって、それは経過的には認めていくというのが当分の間の趣旨の一つかと思うわけでございます。望ましい姿は、教育プロパーの立場から申し上げれば、形式論から申し上げれば、学校法人であることが望ましい。しかし、単なる個人一つの事業として幼稚園をやられるよりも宗教法人がやっておられるほうが、先ほど来質問応答等がございましたことによって御推察を得て私も申し上げたとおり、いずれかといえば望ましい状態であることには違いない。しかし、それは宗教法人なるがゆえに望ましいというのではなしに、宗教的な情操教育もあわせ考えて趣旨が盛られるであろうから望ましいということでございまして、宗教法人それ自体の経営を慫慂する、奨励するんだという問題とは別問題だと心得ております。ですから、実質的な望ましさと形式的な望ましさが同時に存在しておりますから、そのことを一緒くたに申し上げると、矛盾をお感じになるであろうと御推察申し上げるわけであります。  したがって、御心配のような点は、学校法人になった後に、今の法律でいえば、先ほど御質問がございましたことに対してお答えしたように、万一解散の場合に、宗教法人から寄付をいたしましたその残余財産が、他の学校法人宗教法人とは全然無関係によそにいってしまうから心配だという点でございますが、もしこれがルーズになっておりますれば、とんでもないことになるおそれがあるから、厳密にしてあると思いますが、宗教法人の他の公益法人等目的、性格がはっきりしておって乱用されるおそれがない向きに対しては、もとの寄付者に返し得るという立法措置をして、改正をしてやる余地があるように思うのでございます。その点は検討をいたしたいと申し上げました。  それから、なお、学校法人になって解散してよそへ財産が取られてしまうから困るということを私も聞いておりますが、それは私はその宗教法人の努力が足らぬと思います。宗教法人が主となって設立しました学校法人たる幼稚園がさびれるのは、努力が足らぬせいだから、ミッション・スクールでさびれたということはあまり聞かない。それ以外の、ミッション・スクール以外の、クリスチャン以外の宗教法人が主となってやりました学校法人について、特に最近全国的にそういう心配事が陳情されますゆえんは、私は根本的には、もっと本来の宗教法人的な情熱を込めてやっていただけば商売繁盛するのじゃないかと思っております。
  25. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 贈与税の問題は、宗教法人経営するものが学校法人に移したという場合だけではなくて、もう全部の問題が一律に取り扱われておりますので、特にこれは不公平な取り扱いをしておるわけじゃございません。
  26. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 それでは、質問の題を変えまして、次には領土問題を少し伺いたいと思います。  終戦このかた十七年、平和条約締結以来十一年を経過いたしましたが、わが国の領土問題に関しては、南北ともに未解決でございます。近く衆議院におきまして、南は沖縄、小笠原における施政権の返還、北は南千島たる択捉、国後及び歯舞、色丹の原状復帰に関する要求決議案が上程されるということでございますが、これはまことにけっこうなことと存ずる次第でございます。ただ、私が日ごろ痛感いたしておりますることは、南と北を問わず、わが国領土の返還を要求する前に、ただいま現状のままにおいても、われわれといたしましては、もっともっと打つ手があるのではないかと思うのでございます。現在においてさえ、南は沖縄、小笠原、北は南北千島、さらには南樺太にあったわが同胞諸子に対し果たすべき義務及び責任が残されておりまして、日ごろわれわれはこれを怠っているのではないかと反省しておる次第でございます。  ところで、南北の領土問題と、これを並列的に申しましたが、実はこの二つの領土問題が生起した事情というものは、わが国の悲惨なる敗戦に基づいてこれら二つの領土問題が生じました経過には、全く異なる、全然対照的な事情がそこにあることを、われわれ日本国民は深く深く感銘しなければならないと思うのでございます。今日、政府与党も野党も、ともにこの事情を無視して論議されておるのではないかと思います。  それでは、その事情はどういうことかと申しますと、南の沖縄、小笠原は、わが国がアメリカに宣戦した結果、日本側も、アメリカ側も、ともに莫大な血の犠牲を払って生じた領土問題でございます。苛烈をきわめた沖縄攻防戦においては、日米将兵数十万が互いに三カ月にわたって死闘を続けて、現地住民でさえ死者十六万五千の多きを数えております。しかも、わがほうも沖縄守備隊長以下はことごとく自決し、またアメリカ側もその軍司令官は戦死をいたしております。かくのごとく日米ともに忘るべからざる悲惨、壮絶なる犠牲を払った結果生じた領土問題でございます。しかるに、北のほうのわが国祖父伝来の領土はいかがであろうかと申しますると、終戦前後、わが国とソ連との間には日ソ不可侵同盟条約が厳存していたにもかかわらず、わが戦力がようやく旦夕に迫ると見るや、突然ソ連は不可侵条約を一方的に破棄してわが国に宣戦し、一兵も失うことなくわが北方領土を略取したのでございます。ソ連が千島に進駐して参りましたのは、すでにわが国が無条件降伏をした後十八日目でございます。まずこの点が、われわれ日本人の感情といたしまして、南の場合と北の場合が著しく異なるゆえんでございます。  次に、沖縄、小笠原には現在わが同胞が定住しております。しかも、アメリカは、もとより数々の制約がございまするにせよ、ある程度の自治を許しております。しかるに、ソ連軍の占領下にある北方領土においては、わが同胞はただの一人も居住することが許されず、すべて着のみ着のままで内地に追い返されたのであります。しかのみならず、北方の沿岸漁業はひんぴんとしてソ連側の拿捕するところとなり、現在においては内地漁民までがソ連の圧迫に耐えかねている状態でございます。  私は、わが国領土問題の解決にあたっては、この冷厳なる二つの事実を対照的に、正しくかつ公平に認識することが、何よります問題解決の前提であろうと信ずるものでございますが、これに対する池田総理の御信念をひとつ承りたいと存じます。
  27. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ただいまお話しのとおりでございまして、歴史的の事実、国際法の条約から、両面からいって、あなたの説は正しいと考えます。
  28. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 さて、前に述べました私の所信を前置きといたしまして、まず沖縄、小笠原の施政権返還の見通しでございますが、私、正直に考えまして、東南アジアの緊張状態、あるいはソ連の千島占領と考え合わせますと、これはなかなか困難な問題であろうと思います。それに、何よりこの点が重大なのでございますが、今日の沖縄の経済状態を見ますと、いまだとうてい自立経済は望めないのでございます。先般琉球政府の大田行政主席が来朝されましたときのお話を承っておるのでございますが、これによりますと、沖縄の一九六〇年度における輸出総額三千二百万ドルに対し、輸入総額は一億一千五百万ドルで、極端な輸入超過でございます。しこうして、このような国際収支の赤字は、もっぱら米国駐留軍からの基地収支によってなされておる次第でございます。かかる沖縄経済の現状では、かりにアメリカ軍が撤退し、早急に施政権が返還されまして、困るのはまず沖縄であり、次いで政府ではなかろうかと思うのでございます。もちろん、合衆国に対して施政権返還を要求することは日本国民として当然のことであると考え、双手をあげて賛成をいたしまするものでございますけれども、まずその前に、何よりも沖縄が経済的に自立できるその基礎を作り上げることに協力することが先決問題ではないかと存じます。幸い、アメリカ側も、コンロン報告、次いではスパークマン報告等に基づきまして、米国議会は一昨年七月プライス法を可決し、毎年六百万ドルをこえない額の沖縄援助費を支出する権限を大統領に与えております。アメリカがこのように積極的態度を示しておりますに応じて、政府も沖縄に対する経済援助をさらに充実して、同地域の祖国復帰の日に備えて、同地の経済自立の態勢確立を急ぐことが急務ではないかと考えますのでありまするが、総理の御見解はいかがでございましょうか。
  29. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 沖縄問題に対しましては、お話のとおり、われわれは機会あるごとに施政権の返還を要求し続けておるのでございます。しかし、なかなかアメリカのほうもおいそれと直ちに返しそうにありません。しかし、お話のとおり、今後も熱心に私は施政権返還を要求し続けるつもりでおります。  ただ、その間におきまして、沖縄の住民の方々の状況が今の状態でいいかと申しますと、これはまことにお気の毒なのでございます。私はケネディ大統領との話のときも、日本の内地では相当国が補助している、そうして沖縄においてアメリカの沖縄予算に対する補助は非常に少ないじゃないか。私は、アメリカでやってもらいたい。と同時に、われわれもできるだけの沖縄住民の生活向上、福祉増進のために尽くしたい、こういうので昨年協定を結んで、そしていろいろな方法を講じて、今年は十億をこえる金額を出すことにいたしたのであります。で、沖縄住民の大体の生活水準はただいまのところ、お話のように、基地関係の収入でございますが、生活程度は大体私は鹿児島、宮崎くらいにいっているのではないかと思います。それと大差ない。朝鮮の状態なんかよりはよほど私はいいと思っておりますが、しかし、内地の方々に比べますと、やはりまだ平均して悪いようでございますので、今後も、今申し上げましたような方針のもとに沖縄住民のためにできるだけの福祉向上施設アメリカとともにやっていきたいと考えておる次第でございます。
  30. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 時間がないので、今度は法務大臣にお尋ねいたしたいと思います。現在沖縄、小笠原の戸籍事務は、前者は長崎、後者は東京のそれぞれ法務局で取り扱っておるそうでございますが、北方領土については、平和条約締結直後、その第二条C項によって、わが国は南樺太及び南北千島を放棄されるものと即断した事務当局は、条約が締結される二年前の昭和二十四年七月十八日の民事局通達第一五八三号におきまして、色丹、歯舞、択捉、国後諸島に本籍を有する者は、至急転籍届けをせよ、こういう通達を出しておるのでございますが、これらの地域に居住し、ソ連軍の侵入によって内地に強制送還された者は、内地の戸籍に就籍せよという通達をされたため、もとこれらの地域に居住していた人たちの戸籍に混乱を生じ、現在戸籍のない者、すなわち無籍者が相当数あるということでございます。その後、政府が択捉、国後は歯舞、色丹とともに、わが国固有の領土であり、かつ北千島、南樺太も、わが国が暴力及び強欲によって略取したものではなく、千島、樺太交換条約によって当時の帝政ロシアと正当に交換したものであるから、当然返還要求のできるものである。同時に、またこれら諸地域の権利、権原及び請求権はサンフランシスコ条約を調印した四十五カ国に向かっては放棄しているけれども、これがどの国に帰属するか明らかにはされていない。ましてや、同条約の調印を拒否したソ連に対しては、わが国の権利、権原及び請求権はすべて確保されている。したがって、ソ連がこれを占拠する何らの根拠もないのだという見解をとるようになってからも、法務当局はいまだその態度を改めていないように思われるのでございます。前国会において池田首相及び林法制局長官も、終戦直後のどさくさで、その辺のけじめの明らかでなかったきらいは重々あるが、それは至急改めるつもりであると言明されておる。とにかく戸籍の取り扱いは、将来同地方がわが国に復帰した場合の重大な問題であるからして、南北の両領土に関して同一の取り扱いをするように運んでもらいたいと思うのであります。これがわが国固有領土の祖国復帰の不可決の前提であろうと思います。戸籍法の適用に関し、北方領土引き揚げ同胞に関しても、南方と同様の取り扱いはできないものかどうか。この際、法務大臣の明快なる御答弁を承りたいと思います。
  31. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) お答え申し上げます。  北方領土におきましての、元北方領土に本籍を持っておった者で、今本土に引き揚げておる者についての戸籍事務の問題についての御質問でございますが、大谷委員の先ほど来仰せになりましたとおり、沖縄、小笠原における場合と、北方領土における場合と、いろいろその経過の違うことは御指摘のとおりであります。そうしまして、現状におきましては北方領土、すなわち、ことにわれわれが固有の領土としてあくまでも主張しておりますところの択捉、国後、色丹等につきましては、現在の状態は現地に一人もわが同胞はおらない、全部内地本土に、それぞれ府県市町村に帰ってきております。しかるところ、この戸籍事務についてどうすればいいかという問題につきまして、先ほど通牒をおあげになりましたが、あの通牒は実際上の戸籍事務の取り扱い方を行政指導する上においてどういうようにしたらいいかということを通達したものでございまして、何もこれを強制したものではないということをまず御承知おき願いたいと思うのでございます。戸籍事務につきましては、申すまでもなく、出生、死亡その他の届出、さらには戸籍抄本、戸籍謄本等の交付の問題が常時起こるわけでありますが、こうした問題を処理いたします上におきまして、現地は、ただいまも申しますとおり、従来、以前におきましては登記出張所がありましたけれども、現在はございません。そうしますと、現地住民は全部帰ってきておる、しかも登記所をそこに置くことができないという実情でございます。これは不法の占拠の結果でございますが、そういたしますと、やむを得ませんから、転籍などの方法によって内地に戸籍を移してきた。そうしてそれぞれの実際上の手続をやっておる。そうしますと、住民におきましては、何ら戸籍の仕事の上において不便が起こっておりません。一応それで達しておるのじゃないか、こういうふうに考えられます。また、戸籍事務を取り扱います役所としても、役所側の事務を現地に今開くことができない状態に置かれておるのでありますから、この点は両々相待って、事実上現在のやり方でやむを得ないものと、かように考えておるのであります。  なお、無籍の者があるというようなお話でございましたが、私ども承知しております範囲では、おおむね実際上の必要から内地に本籍を移してきておるという状態承知いたしております。
  32. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 いずれにいたしましても、南北ともに、わが九千万同胞全部に対しまして、為政者としては一視同仁の思いを持って、南に厚く北に薄いというようなことのないように、将来お取り計らいを願いたいと存じます。  次に、農林大臣にちょっとお伺いいたしたいと思います。政府は三十七年度予算に、国民金融公庫から二十億円を限り、旧地主に特別融資をする措置を講じており、自民党の農地問題調査会あたりでは、これは旧地主に対する補償のつなぎ、ないしは前提であるというようにいっておられるよしでございますが、はたしてこの特別融資は農地補償を前提としたものと受け取ってよろしいものかどうか、まずこれを承りたいと存じます。
  33. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたします。  農地補償を前提といたしておりません。
  34. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 次に、農地被買収者問題調査会の答申は六月ごろに出されるということでありますが、答申とこの特別融資の処置との関係はどういう工合になるのでしょうか。
  35. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 御承知のように、答申のほうは、現在旧地主の中で生活に非常に因っておられる人がおりやせぬか、あるいは社会的に非常に困窮しておられる人がおりやせぬか、そういう人がおられるならば、それらの人に何とかしなければならないのではないだろうか、どうだろうかということを調査をして、そして政府に御答申をちょうだいする、こういうことでございます。ところが、今お示しになりました、政府は今回二十億円をもって処置いたしますと考えておりますものは、旧地主の中で何か仕事でもなさろうというのに資金がない、おもな点は資金がない、金を借りたくっても借りられないという人にひとつ資金を融通をして差し上げましょう、こういうことでございます。
  36. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 農地被買収者問題調査会の会長は、審査会長という肩書きを十二、三も持っておいでになる工藤昭四郎さんであると承っておりますが、こういうたくさんの調査会の会長を持っておられるということは、こういう重大な調査会のお役目として専心に、こういうことを研究し、また調査していくということにはあまりに、時間的にも人間の能力には限度があるものでありまして、非常に困難なお仕事ではないかと思うのでありますが、こういうときの人選といたしまして、常に非常にたくさんの審査会長あるいは審査会委員というようなお役目を持っておられる方を選ばれましたそのいきさつを承りたいと存じます。
  37. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 工藤昭四郎君に非常にたくさんの行政機関の調査会、審議会の委員あるいは会長をしておられ、お忙しいのじゃないかというお話でありますが、私は個人的にも知っておりますが、非常にりっぱな公正な方で、そして何と申しますか、学識経験豊かで、世間に対する見方も非常にりっぱな方でございます。能力以上の仕事はあの方ならばおやりになれるだろうというふうに私は考えております。
  38. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 私は工藤会長が悪いというのではないのでありまして、調査会長というようなものを十二も十三も持つということにおいて時間的にも能力的にもその目的を達し得られるような活躍ができるかどうかということに対して、この人選のやり方、いわゆる調査会長というようなもののやり方に対して相当の今後御考慮を願いたい、こういう意味を申し上げたのでございます。時間がいよいよなくなりましたので、もう一つつけ加えさしていただきたいと思います。それは調査会が調査いたしました実情が非常にずさんであったということでございます。私の聞いておりますのでは、学生のアルバイトというようなものを使われまして、そうして調査会のほうで被買収者を調査しました。その調査の時間は一件約五分か六分ぐらいの短い時間で調査をされた。しかも約三百万の旧地主に対して調査された数は千から千五百までの間であるということのデータでもって結論が出てきておるということに対しまして、私は非常にその調査が疎漏ではないかと考えるのでございまして、これから先六月までの間にもっともっと内容調査というものに対する誠意と精密さと、そうして努力とを重ねていただいて、実態をほんとうにつかんでいただいた上でこの問題の解決に当たっていただきたいと思うのでございます。  なお、つけ加えまして申し上げたいことは、この農地解放にあたりまして社寺領、お社であるとか、寺とかいうものの社寺領が一般解放をされたのでございます。ところが、この社寺領につきましては、寺院、あるいは神社の経営主体になり、経済の基礎となっておった大きな地盤、基盤になっておった点があるのでございますが、それが全部一般に解放されてしまったということによりまして、経済的に神社あるいは寺の活動資源というものがほとんど枯渇したというところから、先ほどから総理のいろいろお話を承らさしていただいておる、この教化活動の宗教的な面で非常な欠くるところが出てきておるという次第でございます。どうかその点について農林大臣といたしましては、この社寺領というものの調査につきましての今までの結果をもし御承知であったならば、承らさしていただきたいと思います。その実態を承らさしていただきたいと思います。
  39. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 大谷君、ちょっと申し上げますが、発言中に持ち時間が経過いたしまして、三分経過しましたから、御注意申し上げておきます。
  40. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 神社、仏閣等の所有地が農地解放に該当いたして同様に処置せられた結果についていろいろお尋ねでございますが、私はこれは問題を分けて御考慮いただくのが適当じゃなかろうかと思うのです。今の農地の処置いたしましたものにつきましては、これは農地の問題として考慮する。神社、仏閣を今後どういうふうにして参るかということについては、別の点で考慮して参る。先ほど来お述べになりましたような趣旨に沿いまして、考慮して参る場合があれば考慮して参るということでなかろうかと思うのでございまして、この点につきましては、なお総理にも御相談をいたしまして善処して参りたいと思います。
  41. 大谷瑩潤

    大谷瑩潤君 時間がないようですから、これで切り上げます。
  42. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 大谷君の質疑は、これにて終了いたしました。   ―――――――――――――
  43. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 次に、矢嶋三義君。
  44. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総括質問でありますから、主として総理に御答弁願いますが、総理の答弁を補足して、あるいは単独に大臣に伺う点がございますので、私の要求大臣の確認をしていただきたいと思います。
  45. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 矢嶋君、今催促しておりますから……。
  46. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私のは大臣がそろわないと質問ができません。総括ですから、総理に主として聞いていきますが、個別の大臣に個別の質問するわけじゃないのですから、要求した大臣がおそばにおられないと、あとで御答弁いただくというわけにいきませんので、至急にそろえていただきたい。官房長官来ておりますか。――それでは総理に聞きましょう。  総理にまずお伺いいたします。これから私、予算案を中心に質問をいたしますが、その前に、総理を初め各大臣並びにあなたの部下職員は職場を明るくきれいにして、出退庁の時間を厳守し、知能をふるって誠実に親切に迅速に公僕として事を処理されておられるかどうか、あなたの自信のほどをまず伺います。
  47. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 中にはそういう心がまえでない人もあるかもしれません。全体といたしましては、国民の公僕として誠実に努力しておると考えております。
  48. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 大臣以下国民に信頼をされて国政を遂行していくにあたっては、破邪顕正、謙虚さというものが必要だと思いますが、池田総理の御所見を承ります。
  49. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これはやはり公僕としては誠実で謙虚であらねばならぬと思います。
  50. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理は与党の総裁でもあります。総裁として与党に対する場合、さらに総理として内閣を代表し、国政を進めていくにあたって、破邪顕正の信念を持っておられるかどうか、あらためて伺います。
  51. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 破邪顕正の信念、まことに恐縮でございますが、どういう意味でございましょうか。
  52. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 破邪顕正とは、字引にはこう書いてある。邪道、邪説を説き伏せて、正義を現わし、これを広めることと書いてある。いかがですか。
  53. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういう考えのもとに進んでおります。
  54. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 臨時行政調査会が発足いたしておりますが、現在各種調査会、審議会はどの程度あり、その運用状況をいかに認識されているかということと、臨時行政調査会は、その職務を遂行するにあたって、他の審議会と違って、行政府の運営状況に対して調査権を付与いたしております。この臨時行政調査会の運営にあたって、内閣の各部局はこれに協力をされる。そうしてその結果を尊重される決意があられるかどうか。協力がなかったならば行政調査会の運用はできなくなると思いますので、総理から答弁をいただき、総理の発言に異議がある大臣がございましたならば挙手をして発言を求めていただきたい。
  55. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問の調査会、審議会は二百数十あったと思います。活発に活動しておられるのもありますし、また、あまり開かれないのもありますので、今審議会、調査会全般につきまして、存続すべきものと廃止すべきものと再検討いたしておるのであります。  御質問の第二の臨時行政調査会につきましては、政府といたしましても協力する建前になっており、またその答申につきましては尊重する考えでおります。
  56. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 長官から詳細な答弁を願います。総理府総務長官
  57. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 総務長官は……。
  58. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 官房長官、答弁できませんか。
  59. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 総務長官にかわってお答えいたします。審議会、調査会の問題につきましては、ただいま総理大臣が言われたことに尽きていると思います。
  60. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 数その他の具体的なことを通告してあるのですがね。
  61. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 後刻取り調べを行ないまして御報告申し上げます。
  62. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 委員長、ただいまのは、私の質問が終わるまでに答弁さして下ざい。  総理は、調査会、審議会の答申、意見具申なるものを尊重するということを確認されました。そこで私は、選挙法の改正並びに選挙制度審議会の答申を中心に若干伺いたいと思います。  まず、私は単刀直入に伺いますが、審議会設置法の第三条に根拠を置いたあの答申なるものは、われわれ立法府、国会においても、答申を受けた内閣においても、それを尊重するところの義務があると思いますが、いかがでありますか。
  63. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 尊重すると書いてありますので、私は尊重いたしまして、法案を立案し、国会で審議を願っておるのであります。
  64. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 大臣、そういう形式的な答弁では了承できません。設置法の提案理由には、その尊重の規定をいかように提案理由に書いてあるか、承知しておりますか。
  65. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は文句を全部は覚えておりませんが、ただいま答えたように、答申を尊重して、そうしてできるだけ早く法案を作成し、国会の御審議を願う、こう考えておるのであります。
  66. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 矢嶋君、総務長官来ておりますが、先ほどの質問、お尋ねになりますか。
  67. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 どうぞ。
  68. 小平久雄

    政府委員(小平久雄君) 審議会、調査会の数でございますが、正確な資料はただいま持っておりませんが、私の記憶では二百七十五か、あると思います。
  69. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 いいかげんな返事してはいかぬです、数字が違っていますよ。通告してあるものをもう少し正確に答弁しなければ、いいかげんな答弁ではいけません。数字が違っています。  運用状況をどういうふうに把握しているのですか。お答え願います。
  70. 小平久雄

    政府委員(小平久雄君) 運用状況でございますが、その中には、各省庁に分かれておりまして、各省庁がその事務を扱っております。したがって、その一つ一つの運営状況ということになりますと、ただいま総理大臣おっしゃったように、総理府にありますものにつきましては、それぞれの設置法に従って十分活動しておる。かように考えております。
  71. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 選挙法並びに選挙制度審議会の質問に返りますが、提案理由を述べられた自治大臣、尊重したということでありますが、審議会、調査会の答申を尊重するという点について、この選挙制度審議会の設置法を国会に提案した場合には、特に力こぶを入れておられる。あなたはどういう提案理由を読んだか、ひとつお答えいただきます。
  72. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 選挙制度審議会を設置いたしますに際しましては、従来選挙制度調査会等の答申のいきさつもございますので、特に念入りに学識経験者にお願いをいたしまして、早急に検討すべき事柄、すなわち選挙及び投票の制度、定員のアンバランスの是正、区画の問題、さらに公明選挙、こういったものにつきまして御答申を願い、その結果を政府は尊重して措置をする。こういうことを提案理由に述べておるつもりでございます。
  73. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この設置法案を提案された場合には、党派を越え、国民全体の協力を得て、それから世論もまた強くこれを待望して、「新たに強力にして権威ある選挙制度審議会を設置し、各界各層の学識経験者」、よろしいですか、強力にして権威あると述べている。そして第四のところに、「これを尊重して所要の措置を講ずべきことは当然のことでありまして、」当然のことでありまして、普通の設置法案の場合と違って法案が出てきた経過からいって、非常に力こぶを入れて提案されているわけです。そうして答申案がありました。そして現在法律案は国会に上程されて、総理は尊重したと言われますが、その行政府の処置に対して審議会は、あるいは個別的に長谷部委員が強力な意思表示をされている。このことを総理としてはいかようにお考えになられますか。
  74. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は審議会の答申を得まして、それをよく吟味し、そして立法手続を急いでおったのでございます。内容におきまして、ほとんど大部分は答申どおりでございますが、一、二いわゆる立法技術上その他の点から変えておるのでございます。全体としては尊重して進んでいると考えます。
  75. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 全体としては尊重しているというあなたの言葉が、日本国民の良識、通念に通ずるとお考えになっておられますか。
  76. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 批判は聞いておりますが、私の考えでは、尊重していっておると思っておるのであります。
  77. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は、今まで池田総理という人は、ずいぶん成長して、相当な政治家になったと、ある角度から尊敬していましたが、私は全く裏切られた。日本政治がなかなか前進しない、国民の期待に沿えないというその原因は幾つかあるでしょうが、根本は選挙そのものですよ。選挙法そのものにあるわけですね。かかるがゆえに、こういう異例の審議会ができて答申がなされた。そうして、その一番重要な部分を、数ではだめですよ。幾つかの答申内容のあるその中の主要な部分を骨抜きにして尊重と言えますか。最も重要なウエートのわかった部分を、これをネグレクトしているじゃないですか。それで尊重したと言えますか。これは小学校、中学校の生徒でも、あなたの答弁は了としないですよ。そういうことで、一国の総理国民の先頭に立って国政担当していけるとお考えになっておったならば、とんでもないことだと思うのです、池田さん、私はあらためてお伺いいたします。
  78. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 連座制の問題、高級公務員の問題等につきましては、いろいろ考慮いたしましたが、あの答申案どおりでは、われわれとして行き過ぎと申しますか、言葉が何でございますが、高級公務員の選び方、なかなか困難な点がありますので、とにかく、地位を利用して投票を集める、その行為自体、これは高級であろうと高級でなかろうが、そういうことでなしに、地位を利用することによって投票を集めることを禁止しよう、こういうふうにいたしたわけでございます。  それから連座制の問題につきましても、出納責任者あるいは事務め総括責任者等につきましては、答申どおりでございますが、親族なるがゆえに直ちにこれを現在連座にかけるということは、私はいかがかと考えます。この点につきましては、答申どおりなっていないのであります。その他の連座につきましては、答申どおりでございます。骨抜きと言われますが、これは批判のあれで、私は、従来よりもよほど進んだ立法と考えておるのであります。
  79. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理、この問題は意見の相違とか、批判は自由ですと、そういうことで済まされない問題ですよ。私は、あなたのようなお考え日本の選挙法が改正され、それで選挙を行なわれるにおいては、日本政治はよくならない、国民の期待に大きく私は反すると思うのです。  そこで、私は若干具体的に伺いますが、他の大臣の意見を聞きたいと思うのですが、私の要求大臣がお見えになっておりませんが、ぜひ大臣をそろえていただきたいと思う。皆選挙をやっているのですからね、大臣、伺いますからね。おられない人おるでしょう。外務大臣おられたら、私は外務大臣に聞きたいのですが、外務大臣どうしておられないのですか。中には選挙違反に引っかかった大臣もおられるのですからね。根本ですよ、これは。
  80. 加瀬完

    ○加瀬完君 議事進行。外務大臣を矢嶋君は要求してありますし、委員長にも、与党の理事にも、外務大臣が出てこなければ因るということをわれわれは念を押しておったはずです。ところが、外務大臣はここを抜け出しまして、衆議院の外務委員会を開こうとしまして、外務委員会の部屋におりますよ。こういうことで予算は審議はできません。委員長において、よろしく善処を願います。
  81. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 加瀬君にお話し申し上げますが、今、外務委員会のほうに出ておりまする外務大臣を理事が呼びに行きましたから、すぐ返事があると思いますので、少しお待ち下さい。
  82. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 まず、この連座制の問題ですが、総理、今、選挙がある場合に、一番違反をやっているのは奥さんと兄弟ですよ。外務大臣の奥さんなんか、長野の選挙のときには最も戸別訪問しているという私は資料を持っているのですよ。(「野党はどうなんだ」と呼ぶ者あり)与野党を通じてそうなんだ。だから、ああいう答申が出ているわけなんです。あの候補の奥さんは盛んに家庭訪問をやっているが、あなたの奥さん、あれでは困るでしょうといりて、半病人の奥さんを無理やり支持者が引っぱり出して家庭訪問させる。そうして特定会派によると、カバンを持って奥さんが何するというのは、これはもう社会通念になっているのですよ。これを断ち切らなければならぬというのが審議会の意向ですよ。親族だから云々なんという、そんなことでもって済まされません。社会党はよく理想論を言うといって、あなた方批判されますが、これは日本の選挙の実態から、現実にこれをやらなければ、日本の選挙は明るくならない、政治はよくならない、これは国民の良識です。  それから、答申は出ている。それを二度、三度、四度と勝手に与党の圧力によって、一方的にこの答申案を曲げるということは許すべからざることです。総理、破邪顕正をやっていないじゃないですか。なぜあなたは邪を押えないのですか。そういうことでは、私は日本政治を担当していくことはできないと思うのです。あらためてお伺いします。――外務大臣を至急呼んでいただきたい。
  83. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 奥さんが選挙運動されるということそれ自体が私は悪いのじゃない。違反行為が悪いのでございます。したがいまして、違反行為を取り締まらなければなりません。  しこうして、答申にありましたように、それが親、兄弟、夫婦、妻であれば直ちにというのではなくて、やはりそういう人が違反行為をし、候補者と意思を通じて違反行為をし、しかも、その違反行為が悪性であった場合においてはやろう、こういうふうにいたしているのでございます。私は、それが今の実情から申しまして、その程度で連座規定の拡大でいいのではないか。何もあの案が私はよくないというのではありません。私の信念によっているのであります。
  84. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 総理、私はおとなしい男ですけれども、憤りをもってあなたを見ますよ。同居を要するとか、意思を通ずるとか、しかも、執行猶予になった場合には免れるとか、何事ですか。審議会、国民を愚弄するもきわまれりと言わなければなりませんよ。これで審議会の意見を尊重したといえますか。私は、あれば、うそ発見器にかけてみたいと思う。あなたの良心はそんなものじゃない。破邪顕正の精神を奮起しなさい。いかがですか。
  85. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ただいまお答えしたとおりでございます。
  86. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) ちょっと補足して申し上げますが、矢嶋さんちょっと誤解があるのじゃないかと思うのですが、候補者の身がわりのよ、うな形で、重要な役割をしている者ならば、これは親戚であろうが、肉親であろうが、今の総括主宰者あるいは出納責任者の範囲を今度は拡大いたしまして、その線で連座規定にかかる。これは一般の人と同じ扱いになっているわけでございます。それより相当軽い程度のものを、親戚なるがゆえに特別な扱いをするという点につきましては、これは従来の法律の常識あるいはいろんな点から考えまして、相当万全のしぼりをかける必要があろう、こういう処置をいたしているわけでございます。
  87. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 大臣、つべこべ言ったってだめですよ。常識が許さない。それをやる以外に日本政治をきれいにする方法はないという結論なんだ。これはだれが考えても、あなた方自身やって知っているはずです。あなた方の奥さんで、選挙のときに公職選挙法を守っている奥さんを持っていたら手をあげてごらんなさい。――これは与党だけというものじゃないのです。与野党を通じて、そういう傾向が出ている。  だから、候補者の奥さん、兄弟という者は、むしろ困り果てているのが日本政治家の実情ですよ。これを直すことは、日本政治を明るくし、政治をよくするのに、これ以外にないという、その現実的立場から、審議会はこういう結論を出されたわけですよ。  それでは次に、その資金の問題、これは選挙だけいけなくて、政治資金のほうはよろしいというように曲げたのですよ。これはまことにけしからぬと思うのですが。――ちょっと委員部、この漫画を総理と大蔵大臣、自治大臣に見せて、答弁していただきたい。この政治漫画はどういう意味を調刺しているものか、ごらん願ってお答えいただきたい。
  88. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) どうもあの漫画を見ましても、私はどういう意味か、よくピンときません。
  89. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 時間がかかるといけないから、自治大臣――担当大臣に見せて下さい。その漫画がわからないようでは、選挙法の抜本の改正なんかできませんよ。
  90. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 私も、どうもこの漫画の意味するところはよくわかりません。
  91. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 佐藤通産大臣は頭がいいからわかるでしょう。――法制局長官いかがですか。(笑声)笑いごとじゃないですよ。それは百万言よりもよく言い尽くしている。法制局長官いかがですか。
  92. 林修三

    政府委員(林修三君) 私も、どうもちょっとよくわかりません。
  93. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この漫画はね、日本政府並びに公社、公団等、国民の税金を頂かって事をなさっている、そういう方々と業界との関係を、あるいは減税の場合、あるいは公共料金の引き上げ等の場合を通じて、どういう事柄が起こるかということを示している漫画ですよ。だから、選挙のときであろうが、選挙でないときであろうが、政府並びに公社、公団と関係ある団体が、与党と特定政党に献金をするということを改めなければ、日本政治はよくならないことを示している。ここに自民党という業界代表議員、そばにたくましき女性を描いている。減税と書いた大きな黒いカバンをたくましき女性が奪い合い、そしてそのうしろに政治献金という酒のびんがあって、ここが黒く塗ってある。ここにこの漫画のよさがある。この漫画から見ても、あの政治資金規正法の政治資金の部面を、かように改められたということは、審議会の答申を骨抜きにしたものだと思うのですが、総理いかがですか。
  94. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 政治資金の問題につきましては、私は政党法あるいは政治資金規正法、いろいろ関係するところが多いと思います。この際は、選挙に関してということに改めて、全般の政治資金につきましては、私は今後検討していきたいと考えております。  で、政党活動を強化しようとしていく場合に、政党の活動につきまして、お金のかかることはやむを得ないのは矢嶋委員も御承知のとおりであります。私は今回は選挙に関してのこれを禁止するという建前でいいのではないか、こう考えて法案を提出いたしたのであります。
  95. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 もう一項目取り上げましょう。高級公務員の立候補制限、これは立法考査局で調べてもらったのがここにあります。これは差しつかえがあるから、ここでは読みませんが、この立法考査局で調べていただいた資料を見ますと、やはり審議会の答申なるものは現実に即している、これをやらざるを得ないという結論になったのだと思います。これはわれわれ国民の良識だと思うのですよ。それをかくのごとく全く質の違うものにすりかえられたということは、審議会を冒涜するのも、はなはだしいと思うのですね。大きい声を出さざるを得ないですよ、池田さん。いかがですか、あなた。
  96. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほどお答えしたとおりに、高級公務員なるがゆえにということは、私はいかがかと思う。高級であろうが、そうでなかろうが、その地位を利用して投票を集める、その行為を禁止することが根本問題だと考える次第でございます。高級ということを、審議会のほうによりますれば、法律で定める、こういうふうになっておりますが、法律でいかに定めるか、なかなかやっかいな問題でございます。高級公務員が選挙に出た場合に違反をしているかどうかということにつきましては、これは別個に取り上げていく筋合いのものだと、こう考えておるのであります。
  97. 林修三

    政府委員(林修三君) ただいまの公務員の立候補制限の点につきましては、私どもとしても、純粋に、法律的にいろいろ検討した結果でございまして、その点に私ども非常に責任を持って、それを考えているわけでございます。  で、審議会の答申は、かねて何回かああいう線で出たこともあり、出かかったこともあるのでありますが、要するに立候補制限というのは、やはりいわゆる国民の基本的人権である被選挙権を制限することになる。これはよほどの強い法的な理由がなければ、これはできないのではないか、かように考えるわけであります。審議会の答申も、法律で定める高級公務員、その法律を、いかに規定するかということは、これは非常にむずかしいことで、私どももいろいろ検討いたしましたけれども、つまり立候補自体を制限しなければ、その何と申しますか、法律の目的が達せられないというほどの結びつきを発見することは、なかなかこれはむずかしいのでございます。つまり立候補制限をする理由は、要するにそのいわゆる高級公務員がその職務上の地位を利用し、あるいはかつての部下が、職務上の地位を利用して、選挙の結果をねじ曲げるということ、それを防止しようとするところにあるものだと考えます。  しかして、そういう目的を達する方法としては、まあ一番筋道が通るのは現実にそういう行為をした公務員を失格させることであり、あるいはそういう行動をした公務員を処罰することであります。それを一歩進んで立候補そのものを制限するということは、いわゆるその地位から、当然にその違反行為をするということが予想されない限り、あるいは結びつかない限り、なかなかこれは合法的理論は見出しがたい。  したがいまして、私たちは第一段階としては、今度の法律案に盛ったものが一番筋の通ったものであり、これが答申の意向を生かしたものだ、かように考えております。
  98. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 委員長、この選挙法のところ、結びをするときに、私の要求大臣みんなそろってもらわなければ困る、みんなそろえて下さい。総括質問ですからね。
  99. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 矢嶋君、今また、さらに督促しておりますが、その結果はすぐわかると思いますけれども、その間……。
  100. 藤田進

    ○藤田進君 議事進行について。政府の態度並びに委員長の御所信を伺いたいのでありますが、まず第一に、本委員会が五日に開会される劈頭、出席要求大臣についての亀田発言がございました。委員長は、これに対して同感の意を表せられて進行に入ったわけであります。しかし、従来予算委員会の性格については、多年与党並びに政府が主張せられ、今日いわば慣行化しているものは、両院のハウスにおける会議、いわゆる本会議の会議は、要求大臣等について優先して参る。続いては、予算委員会を優先する態度で、その進行をはかってきたわけであります。  ところで、ただいま事情を聞きますと、これは総理の指示であろうとは思いません。しかし、岸内閣の時代でも問題になったことがあるのであります。政府としては、あるいは与党としては、委員長としては、予算委員会を優先して、他委員会よりも、出席その他協力をするという建前でやってきたわけであります。たまたま外務大臣について、質疑者が熱心な要求をなされているにかかわらず、他院の外務委員会に出て、しかも開会はされていない、あるいは質疑も何もされていないという実情であるようであります。与党理事も再三行かれたことは認めております。わが党理事も参りましたが、依然として、このような実情であります。  これにつきまして、今後の運営もあるようでありますので、内閣とされまして、本会議、予算委員会、他の委員会等についての従来の慣行を踏襲される、すなわち本会議を除く場合は、予算委員会を優先して、政府としても出席等に協力されるという御方針に変りがあるのかないのか、この点が一点であります。  あらためて委員長に対しましては、冒頭五日に、所信を委員長が表明されましたが、その所信について、この現実を、どのように解決されようとするのかお伺いしておきたいと思います。
  101. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) まず、私から藤田君の今の御発言に対してお答えを申し上げたいと思いますが、御趣旨はまことにごもっともでありまして、委員長といたしましても、最善の努力をいたしておりまするところであります。また、今後におきましても、同様の考えを持っておるわけであります。たまたま外務委員会に外務大臣が出席しておりまして、今お話のような状況でございまするが、それに対する外務委員会、また、両党と申しまするか、自民党また社会党等との国対委員会の打ち合わせというようなものがまだはっきりいたしておりません。それがために、また、ただいま督促にやっておるようなわけでありまして、どこまでも、藤田委員の御発言のとおり、予算委員会は最優先して各大臣の出席を求めたいと考えておりますることについては、少しも変わっておりません。最善の努力をするつもりであります。御承知を願います。
  102. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 国会対策上の問題でございまして、政府といたしましては、議院を初めといたしまして、当該委員会の委員長、理事等の御要請に応じまして、審議の円滑をはかるべく、最善の御協力を申し上げて参りましたし、今後もそういう決意で当たるつもりであります。
  103. 藤田進

    ○藤田進君 さきには、岸内閣のときにこういう事態がございまして、岸さんは、明確に、遺憾であるから、今後予算委員会優先の原則で協力していきたいという御答弁があったわけです。けれども、私自身も、そんなにかたくなに、要求しているから質問者がどうあろうともというのじゃなくて、質問者としても、時間の繰り合わせができて、そして今の時間、ある程度どのくらいはよかろうと、いわゆるあとに延ばすとか、先にするとか、そういうことくらいはあっていいと思います。しかし、この場合は、総理、所管大臣に対する質疑と関連をして、特に中の実情も若干指摘されての要求でありますから、そういう場合は、やはり予算委員会優先という建前をとってもらいたいと思うわけでありますが、官房長官の国会対策とかなんとかいうことですが、そういうこともありましょうが、その上に立って、内閣とせられてどういう御方針でおられるのか、あらためて総理のほうからの御答弁を承りたいと思います。
  104. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ただいま委員長からお話されたとおりで、内閣もそれに協力をしていきたいと思います。他の委員会と違いまして、できるだけ各閣僚出ることにいたしております。ただ、予算委員会開会中におきましても、他の委員会の要求があります場合におきましては、今お話のように、質問の順序を変えるとかなんとかして、全般の審議の円滑をはかるようにしていただきたいという考えを持っておりまするが、予算委員会優先の原則は、われわれも十分承知いたしておるのでございます。
  105. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 矢嶋君、そうすると、外務大臣の来るまで……。
  106. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 最後に、大臣の皆さんの決意をお伺いしたいのです。ぜひ、おそろえいただきたいと思います。  各大臣がそろう前に、もう一問いたしますが、総理、私、大きな声を出しましたけれども、私はこの問題は非常に真剣に考えております。今後の日本政治は、この選挙制度審議会の答申をいかように扱うか、この一点に私はかかっておると思う。この扱い方一点で、今後の日本政治というものは様相がきまる。方向づけられる。私は、それだけに非常に重大に考えていますので、少し声が大きくなりましたけれども、私は、第一に、日本の既成政治家が――私を含んで既成政治家が、自分でなくちゃいけないのだ、自分がやらなければ、ほかの人じゃだめなんだ、こう考えておるところに問題があるのじゃないでしょうか。法制局長官がおっしゃるような、条文の字句解釈以前の問題がある。次元が違います。その以前の問題がある。今のような選挙法で、ああいろ選挙の実態ならば、物好きにまかしておけというので、日本の有力なる有識なる人が政界に出てこないで埋もっていますよ。これがおそらく現実です。私はそう思う。だから、自分でなくちゃならぬと既成政治家考えて、審議会の答申というものを曲げて、自分らに都合のよいようにしていくということは、これは、国民に対してもまことに私は許すことのできないことだと思います。あなたのよさは、土性骨がある、野性味のあるところに、私は池田さんの魅力を感じております。(笑声)笑いごとじゃない。なぜあなたは、この重要な問題にあたって、総裁として、総理として、その野性味と土性骨を発揮しないか。あげてあなたの責任きわめて重大だ。あなたの決断一つにかかっておると私は思う。あらためて国民に対してお答えをいただきたい。
  107. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 政治の公明を期するためには、選挙制度並びに国民が選挙に対する関心を、りっぱな関心を強めていくことが必要でございます。選挙法ばかりでは期待できないのでございます。私は、公明選挙のために、選挙法の改正及び国民がほんとうにりっぱな選挙だと身をもって考え、身をもって実行されるように、あらゆる方法を講じておるのであります。選挙法の改正も、この意味でやっておるのでありますが、やはり実態というものは、法的技術、立法上の技術の問題がございますので、私は今、御審議願っておるような案で今度の参議院の選挙をやる、こう考えておるのであります。また、政治資金その他につきましては、先ほどお答えしたとおりで、政党法あるいは政治資金規正法等の関係で今後十分検討していきたいと思います。
  108. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ここで、皆さん大臣にちょっと伺いたいことがあるのですが。
  109. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 矢嶋君、今、外務大臣のほうに、こっちの理事が二人も行っておりますから、すぐ返事があると思います。  速記をやめて。   〔速記中止〕
  110. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 速記を始めて。  皆さんに申し上げます。ただいま矢嶋委員から要求せられております外務大臣の出席の件でございますが、今、外務委員会が開催中で、すでに審議に入っておる由であります。そこで、今直ちにこちらに参るということが外務大臣はできないというような状況であるように考えられます。それで、官房長官にちょっと伺いますが、どのくらいの時間がありましたならば出席できますか。
  111. 加瀬完

    ○加瀬完君 議事進行。先ほど総理は、予算委員会を優先させるというお話があったのですが、優先させるということであれば、このような事態を総理の権限でどう処理をされるのか。始まらなかった外務委員会が、自民党だけで始めている。その間、与党の理事も何回か行って、こちらで予算審議で外務大臣が必要だということは、るる述べておる。これをお認めになるのですか。どう御処置なさいますか。
  112. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 優先の原則は認めますとお答えしております。そうしてその答弁の際にも、やはり他の委員会のございますときには、質問の順序を変えるとか、国会全体としての審議が円滑にいくよう、ひとつお考え願いたい、こう申し上げておったのであります。向こうの都合のつき次第、こちらへ来るように手配をいたしております。
  113. 加瀬完

    ○加瀬完君 話が逆じゃありませんか。予算委員会を優先させると言うならば、こちらの都合で初めから出席しておった外務大臣が、向こうの都合で行ったのです。こちらの都合を優先させて引き戻すのが当然でしょう。向こうの外務委員会が終わったらこちらへよこすというのでは、参議院の予算委員会が優先だという条件も何もないわけです。こういうことでは、衆議院にだけ必要な大臣と取られて、質問したい大臣がいない所でわれわれは予算審議をしなければならない。それでもよろしいというお考えですか。
  114. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申し上げましたごとく、ここにも相当の大臣が来ております。大蔵大臣も、大蔵委員会の要求があるのを断わって、実はこちらへ来ておるのであります。優先の原則は私も認めますが、ただいま申し上げましたように、予算の優先を認めつつも、他の委員会が開かれて、そして他の大臣の要求があるときには、相当にたくさんの大臣も来ておるのですから、質問の順序を変えるとかどうかいたしまして、できるだけ全体の議案の円滑なる進行をはかっていただきたい。つきましては、前からの要求でございますので、できるだけこちらへ早く来るように、向こうのほうに督促をいたしたいと存じます。
  115. 加瀬完

    ○加瀬完君 向こうの外務委員会が開かれておって、要請されて外務大臣は行ったのじゃないのです。外務大臣が行って、与党の委員だけで、それから数刻相談があって、外務委員会を強引に開いている。もちろん、他会派との理事会で相談をして開くという結論が出て外務委員会が開かれているわけではない。おかしいじゃありませんか。
  116. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 各委員会の運営につきましては、とやこう申し上げません。ただ、外務大臣が向こうに行って委員会が開かれているということは、一つの事実なんでございます。したがいまして、そういう事実はなるべく早くやめて、こっちへ来るように要求をいたします。優先の原則、しこうしてまた、国会全体の運行から申しまして、われわれ優先的にこちらに大臣はたくさんきているのであります。だから、質問の順序ぐらいは前後して、全体の議案の審議が円滑にいくようにひとつお願いいたしたい、こう申し上げているのであります。
  117. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 加瀬君、ちょっと申し上げますが、今のことについて加瀬君にちょっと申し上げますが、今、外務委員会で、社会党の委員質問に答えているそうですよ。
  118. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ちょっと伺いますが、だれが向こうで質問しておろうが、私は、国民から負託された審議権のもとに今審議をしている質問当事者ですよ。今お聞きしたような経過を承ると、質疑者である私に対して非礼であるとともに、私の審議権を軽視、無視しているものだと思うのです。そうじゃないでしょうか。総理、これは、だれが何と言おうが、私自身には重大ですよ。総理、何とかして下さい。おかしいですよ。私は、審議権を軽視、無視されているのです。私の了解を得ていかれるなら別ですよ。しかし、当事者に一言もなくて何しているのはおかしいと思うのだな。
  119. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっとお尋ねいたしますが、委員長は、外務大臣の退出に対して許可を与えたのですか。私は、こういうことがあろうかと思いまして、この予算委員会の審議が始まる冒頭において、どうもいろいろな雲行きがおかしいですから、そういうことにならぬように、きちっとしてもらいたい。委員長は、亀田君の発言はごもっともだ、こういうふうにはっきりおっしゃっているのです。そうすれば、せめて退出のときは、委員長の許可ぐらいは私は得ていかなければならないものだと思いますが、退出を認めるわけではありませんよ、ありませんが、一体その手続の点はどうなっているのですか。黙って出たのか、あなたの許可を得られたのですか、どっちですか。
  120. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 亀田君の今の御発言にお答えをいたしますが、外務大臣には初めから出席を要求しておりまして、外務大臣も出るということであって、私は安心をしておったんですが、委員長の許可なしに外務委員会に出たという事実を認めざるを得ないのであります。
  121. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういうことであるならば、矢嶋君が非常に憤慨するのもごもっともだが、あなた自身が一体どうなさるのですか。社会党の人が質問なさっているらしいとか、そんなのんきなことを言わないで、だれが質問しようと、あなた自身の掌握の問題なんです。
  122. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 亀田君の御発言にお答えいたしますが、私が先ほど加瀬君にお話ししたのは、与党の委員だけで外務委員会を開いておるというようなことがありましたから、そのことについて、そういうような状況じゃないということを言っただけで、何も亀田君のお話のようにそれを認めておるわけでも何でもない。それで、私自身も、亀田君と同じように、外務大臣が委員長の許可を得ずに外務委員会に出たということに対しては、はなはだ快からず思っております。
  123. 藤田進

    ○藤田進君 総理にも聞いていただきたいのですが、きょう、たとえば藤山経企庁長官については、エカフェの関係があるので、まあ一時ごろまでという連絡があって、質問者にも了解を得て、できるだけあとに回すようにということをやっております。皇后の誕生日だということで午前中は休みたい――しかし実際には皇后の誕生日だけではなかったように思います。しかし、われわれにはその事情は言わなかったけれども、これも了解した。昨日も総理は、エカフェ関係の方を招待して、五時をあまり過ぎると困るということで、これも協力しているつもりなんであります。本日の場合は、他院の予算委員会、本会議でなくて、いわゆる一般の常任委員会に今のような経過で出ていかれておる。総理とされては、内閣の方針として、予算委員会を優先するという態度の表明があった以上、この上に立っての御処理がしかるべきだと思うのであります。官房長官が行かれたのか行かれないのか知らないけれども、その辺の事情をどういうふうにあなたは把握されて、かつその上でどういうふうに処理されようとしているのか、この際承っておきたい。われわれ予算委員会の理事としては、こういうことでは、何ら了解も何もないままに、与党の理事も憤慨をおそらくされておるでしょう。そういうような事情で、今後こういう事態でだらだらと進むということでは、議事進行の責任が持てない。官房長官はただいま行かれて、どういうふうに総理を補佐する意味においても処置されようとするのか、それを聞いた上でわれわれはどうするかを決意しなければならぬ。
  124. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほどお答えしたことを繰り返すようでございまするが、予算委員会の審議が優先する、この原則は認めます。ただ、私としてお願いいたしたいことは、この原則のもとに、多数の閣僚がここに来て御質問を待っておるわけであります。しかして、国会全体の運営といたしまして、優先は認めるけれども、他の委員会が開かれて、ぜひ担当大臣を要求した場合におきましては、他の閣僚もおるのでございまするから、この際ひとつまげて質問を前後して御審議願えれば、国会全体の議案審議の運営が円滑に進むのじゃないか。何も矢嶋さんの発言をとめるというわけじゃない。国会全体の運営といたしまして、そういうふうにひとつお考えいただけないか、こう申し上げておるのであります。したがいまして、しゃにむにというお話であれば、先ほど来言っておるように、そちらをやめてこちらに来てくれないかということは、ただいま言っておるわけであります。
  125. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 速記をとめて下さい。   〔午後零時五十五分速記中止〕   〔午後一時三十二分速記開始〕
  126. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 速記を始めて。  官房長官、ただいまのなにを釈明願いたいと思います。
  127. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) ただいま、予算委員長並びに予算委員会の理事の皆様方の御要請によりまして、自由民主党側の理事にお供いたしまして外務委員会に出頭いたしました。委員長に、当委員会の注意及び外務大臣出席の要請をお伝えいたしました。委員長の答えは、今質問続行中でございまして、二時半ごろまでには外務大臣にこちらへお出まし願うようにいたしますからと、こういうことでございました。その旨委員長にお伝えいたしたわけであります。
  128. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 委員長より皆さんにひとつ申し上げたいと思いますが、委員長といたしましても、また自民党側の理事としても、最大の努力をいたしまして、皆さんの御要望に応じて、外務大臣の出席を求めるために努めたわけでございます。これはまた、野党の理事の諸君も御了承を願えることと思うのであります。また、野党の理事諸君といたしましては、参議院の権威の上からいたしましても、また、先ほど総理大臣のお話のありますように、この予算委員会の審議につきましては、優先して各大臣の出席をさせるようにしたいと、ただし、全体の運営上やむを得ざる場合には、何とか御協力を願いまして、質問者等のあんばいの点も御配慮願いたい、こういうような御発言が総理大臣からもあったのであります。そこで、この事態を収拾するがために、野党の理事諸君のお考えとしては、とにもかくにもこの際外務大臣の出席を得まして、そうしてそれによって、一応の外務大臣から釈明をして、その後休憩をしてから、再審議をして、あらためて十分に外務大臣の釈明を得たいと、こういうような御発言であり、私どももごもっともにも存じまするが、しかし、今官房長官の釈明のように、即刻の時間においては外務大臣が出席できないという事態でございまして、これは私も、現在の状況としては、皆さんの御希望のように、この席に二、三分でも外務大臣の出席を求めて釈明をするということが、即刻にはできないと思いまするので、私の委員長の権限といたしまして、暫時休憩をいたしまして、そうしてあらためて理事会を開いて御相談をした上に、この事態を収拾いたしたいと思います。  矢嶋君の御発言につきましては、まことにお気の毒でありまして、私は満腔の御同情を申し上げ、また委員長といたしましても、はなはだ力が足らず、矢嶋君の御発言の十分なる遂行のできなかったことに対して、おわびをいたしますが、ともかくこの事態におきましては、休憩をいたすことにいたします。さように御承知を願います。    午後一時三十七分休憩    ――――・――――    午後四時五十一分開会
  129. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) これより予算委員会を再開いたします。外務大臣。
  130. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 午前中の予算委員会におきまして、大谷委員の御発言中、御通告がございましたが、総理大臣が大体御答弁になりまして、外交関係の御質問はもう終わったように存ぜられましたので、一方衆議院の外務委員会におきまして、理事会の御決定によりまして、本日十二時より二時半まで審議が行なわれるということになっておるから、ぜひ十二時までに出席せよという強い御要請が外務委員長からございましたので、私はその間の事情を、もう御質問がなきように判断いたしましたので、十二時少し前にここを退席いたした次第でございます。その結果、非常に本委員会の質疑に支障を生じ、御迷惑をかけたということを、あとになりましてから知った次第でありまして、この点深くおわびをいたします。
  131. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) この際、委員長もちょっと発言をいたしたいと思います。参議院の権威につきましては、議院側と政府側と十分に相協力いたしまして初めてその実の上がることと存ずるのでございますが、予算委員会は各般の問題の集中するところでございまするし、本会議に次いで非常に重要な会議である。したがいまして、その審議に際しましては、両院の各種委員会に優先をいたしまして、政府側におきましても、質疑者の質疑の十分行なわれまするように、各大臣とも御出席になる。すなわち、各委員会に優先する、こういう点につきましては、すでに総理大臣におきましてもお述べになっておったようなところでございまするし、委員長といたしましても、今度の総予算の開会劈頭において、政府側にも要望をしておりましたところでございまするが、本日のごとき事態が生じまして、質疑者の矢嶋君に対し、非常に委員長といたしましても遺憾な点が多かったように存ずるのでございます。したがいまして、今後政府側におきましても、一そう御留意を下さいまして、委員の質疑の円満に行なわれまするように、出席その他について御協力を重ねてお願いを申し上げておきます。
  132. 加瀬完

    ○加瀬完君 委員長
  133. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 加瀬君。
  134. 加瀬完

    ○加瀬完君 ただいまの外務大臣の御発言は、陳謝でありますか。
  135. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) さようでございます。
  136. 加瀬完

    ○加瀬完君 あなたは今、参議院のほうの質問がないと思ったので、衆議院のほうの外務委員長の要請があったのでいらっしゃった、こうお話しになった。しかし、委員部では、あなたが廊下におるときに、質問がありますからお入りいただきたいと要請されたはずです。あなたはすぐ入るとおっしゃった。それから喫茶店のほうに行かれた。お茶を飲んでから入ると言った。それから食事をしてから入ると言った。食事の時間にしては時間がかかり過ぎますから、おかしいと思って、われわれは衆議院の外務委員会をのぞきましたら、あなたが外務委員会に出席されておられた。要請は、はっきりと質問があるから御着席をいただきたいという要請があったはずです。知らないで行ったということにはならない。この点をもっと明確にしていただきたい。
  137. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えを申し上げますが、さような御要請は私存じません次第でございます。私は、本委員会が、十二時になりまして、大谷委員の御質疑で終わるかと――これは私の誤解でございましたのですが、さように判断いたしまして、十二時になりまするときには、正確に出席して御質疑にお答えせねばならぬと考えまして、食事を用意させておきまして、二、三分で食事も三分の一ぐらいちょっとつまんで、それで急遽衆議院の外務委員会へ参りました次第でございます。食堂へ行ったことは事実でございますが、お茶も実は飲まずに、ちょっとはしだけつけて参りました。これが真実でございます。
  138. 加瀬完

    ○加瀬完君 外務大臣がその席からお立ちになったのは、矢嶋委員がここに着席されてからあとです。矢嶋委員は、外務大臣も要請されておられる。それを御存じの上でお立ちになった。これは委員長に伺いますが、委員部ははっきりと、矢嶋委員質問があるから参議院の予算委員会に出席をいただきたいと要請をされたはずでありますが、そういうことは知らぬとおっしゃるのでありますが、はっきりとこれはさしてもらいたい。
  139. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私に関連がございますから、一言釈明させていただきますが、私がここを退席いたしましたのは、大谷委員の御質問中でございました。まだ御質問を続けておる際でございました。(「委員部の答弁」と呼ぶ者あり)
  140. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 委員長から今の加瀬君の御発言に対して申し上げますが、外務大臣に特に今即刻出席するようにという指図は私はいたしておりませんけれども、しかし、質疑の相手方、それはすでに通告をされておることでありまするし、委員部としては適当なる配慮をしたものと思っておりまするが、その点は、外務大臣にどういうようなことを言うたか、それははっきり聞いておりません。委員部課長
  141. 土屋政三

    ○参事(土屋政三君) お答え申し上げます。委員部は、外務省の政府委員室の連絡員に連絡してございます。
  142. 加瀬完

    ○加瀬完君 しかもですね。あなたは、衆議院の外務委員会にお入りになってからも、与党の理事、それから官房長官が、こちらに質問者があるからお帰りいただきたいという御連絡があったはずです。それでも御出席なさらない。これは明らかに、参議院の予算委員会を軽視されている。この点はどうです。
  143. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は外務委員会に出席いたしまして、与野党間の理事でしばらくお話し合いがございましたが、そのうちに質問を始めようということになりまして、社会党の帆足委員から御質問がございましたので、お答えを申し上げておりました。その間に、官房長官もおいでになったようでございますが、私との間には直接何のお話もございません。私は、委員会の御決定によりまして、委員会の進行に協力すべき立場にございまするので、委員長と官房長官の間に何かお話があったようでございますが、あるいは与野党の理事の間にもお話があったようにも席から見ておりましたけれども、私に対して直接のお話がない以上、私から直接にまたそこに立ち入ることは、私の委員会における立場からしてはいかがかと思いまして、私は委員長の御指示に従って質疑応答を続けておった次第でございます。
  144. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 藤田進君。
  145. 藤田進

    ○藤田進君 進行させるために、議事進行の発言をいたしたいと思います。  今委員諸君もお聞きのように、公式に委員部課長は外務大臣の出席を促すべく秘書官に連絡をしたことはここに明言されたわけで、外務大臣はこれを受け取っていない。また、官房長官わざわざお越し願ったわけですが、一向にこれまた連絡がついていない。こういうことでは、今後どういう連絡をしたら、直接、また確実に、敏速に連絡がつぐのかということが、本委員会としては問題であります。私は、小坂外務大臣が単に出席がなかったということだけでなくて、本日は、私ども午後の質疑を継続するということで、総理の出席も期待しておりましたが、総理自身も衆議院の選挙関係の特別委員会に出席になっていたために、理事会を重ねておりましたが、出席が不可能であったわけであります。一連のこのことは、より重大に私ども考えるのは、まだまだ予算審議の当初において、この事態が起きておるという、その根源は何か。私は、今朝新聞によって知り、かつ内的にいろいろ調査いたしました結果、与党とされては、参議院の予算案はもうすでに山を越したものだ、こんなものに力を注ぐよりも、それぞれ、ガリオア、あるいはエロア、あるいはまた選挙法の改正等々について、その主力を注ぐのだ、こういう党としての決定がなされ、これが発表された。その線に沿っての内閣としての協力ということしか見れない。これが今日出てきているところのそれぞれの現象であるとしか思えない。こういうことで、私ども予算委員会の議事進行をあずかる者として、このままで審議を進めていくということは非常に心もとない。ことに、委員長が再三、五日の冒頭の亀田委員委員長に対する要請、これに対する答弁等が全然身が入っていない。単なる口先のことにすぎない。総理も、予算委員会を優先する、できれば繰り合わせて質疑をやってもらいたいという、あわせての要望がございました。しかし、最終的にその話し合いがつかなければ、当然予算委員会の審議を優先されるのが、内閣閣僚の任免権を持っておられる総理大臣として、これを直接補佐せられる官房長官とせられて、わざわざ衆議院に参議院の予算委員会に出席するように促す目的を持って行かれたにかかわらず、これが全然連絡がつかないということは、実際問題として、昨日の与党等の決定――当然これは政府とも連絡があるでありましょう、今の議会制度において。こう考えてくると、今後が実に私どもは思いやられる。もっと明確な、今後内閣全体としての、あるいは与党を含めての、委員長を含めての、はっきりしたものがなければ困る。ことに、理事会等では、四時半から開こうというようなことがまず与党の主張の中心でございました。すでに時間もこういうふうに経過してしまった。これらの点について、もっと明確な道をあけてもらわなければ、質問者としても立てないと言っている。委員長において、しかるべくわれわれの納得する方法なり責任なりを明らかにしてもらいたい。
  146. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 藤田委員の御発言に対して、委員長からお答え申し上げますが、私といたしましては、皆さんの御要望を体して、この参議院の予算委員会の権威のためにも最善の努力を尽したいつもりでありますが、ただいまのお話だと、いかなる方法という具体的な方法ということは、これはつまり努力そのものを傾注する以外に方法はありませんので、政府当局がどういうふうにお考えになっておりまするか、この際総理のお考えを伺っておきたいと思います。総理大臣……、官房長官。
  147. 大平正芳

    政府委員(大平正芳君) 一言私から……。  本委員長からの御要請によりまして、外務委員会に参りました。で、私から直接外務大臣に予算委員会にお出まし願いたいということを申し上げる筋合いでないと私思いまして、外務委員長にその旨を伝えて善処をお願いする、これが国会運営の正しい道であろうと思いまして、政府として、直接外務大臣にこちらにお出まし願うように、そういう差し出がましいことは差し控えるべきであると思いました。
  148. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 総理大臣。
  149. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 午前中から一時過ぎまでの事柄につきましては、ただいま外務大臣がおわびしたとおりでございます。それから、午後の問題につきましては、私は、御承知のとおり、行動は全部国会対策委員等幹部にまかしております。したがいまして、二時から選挙法の改正委員会に出るようにという国会対策委員の御要請がございました。こちらの理事会との了解も済んでいると思っておりましたので、二時五分から参りました。そうして、実は、自民党一時間二十分、社会党一時間二十分、民主社会党二十分、こういうことで進行しておったのであります。自民党の質問が一時間二十分、二時間で、社会党が四時二十分に終わりました。そうして、あと二十分ということでございまするが、国会対策関係の人が、十分にするようにという申し出をしたようであります。しかし、やはり予定どおりに民社党は二十分で、四時四十分までかかりました。そうしてこちらのほうに来たような状況でございます。私は、私から、この委員長あるいは理事のほうに連絡がなしに、国会対策委員のほうでしかるべくやってくれているものと思いまして、指令どおりに衆議院の選挙法改正委員会に行った次第でございます。
  150. 藤田進

    ○藤田進君 官房長官のお答えのとおりを私どもがやった場合でも、これは是認されなければならぬと思う。参議院においては、社会党出身の委員長もいるわけであります。所要の大臣を各委員会で呼んで審議をしているときに、予算委員会に呼んだ場合でも、当該委員長ががえんじなければ、出ることはできない。これはまたやむを得ない、こういうことをあなたは言われることにもなる。そうあっちゃならぬと思うのです。  それから、さらに私、今総理から言われて問題があると思うのは、総理といえども、与党国会対策委員長の指図によって動く。なお、当委員会における与党理事は、今言われたようなことは承知していなかったわけであります。承知していなかった。したがって、そのように国会対策委員長の指図によって動く以外にないということである以上、ここで総理の今後の協力について確答を得たところで、これは意味がございません。これはやはり、国会対策委員長間において、党の問題として、いかように今後の保証なり協力ができるかということがはっきりしなければ、ここでいろいろ問答を重ねてみても、一切これは無意味なように私は思う。したがって、国会対策委員長が、今後においても、昨日与党がきめられた、予算委員会を軽視とは言わないが、これはまあそっとしておいて、他の委員会に主力を注ぐという決定がある以上、おそらく今後も、与党国会対策委員長としては、この線に沿って処理されるでありましょう。総理その他の出席についても、そのようにやりくりをつけられるでありましょう。それであっては、せっかく委員長も、参議院の権威としてまことに遺憾であるし、今後何とかこのようなことのないようにと言われましても、国会対策委員長が言っているのではございませんから、何らの保証にならない。私は、この意味において、国会対策委員長同士の話し合いをまずつけてもらわなければ、今後の出席等についての保証は何らないものと思わざるを得ない。したがって、暫時そういう時間をお与えいただきたい。
  151. 戸叶武

    戸叶武君 委員長、議事進行。
  152. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 戸叶君、あなたのは議事進行ですか。
  153. 戸叶武

    戸叶武君 議事進行。議事を進める上において一番重要なことは、今の藤田君の言われた点と、もう一つは、この委員会の権威は委員長にあるのです。内閣総理大臣や自民党の国会対策委員長の指揮下にあるのじゃないのです。予算委員会委員長に、質疑が継続中において、何らの連絡をしないで、お茶を飲みに行くんだ、飯を食べに行くんだという口実のもとに、他にずらかっていくのでは、先ほど委員長が言われましたところの、この参議院における予算委員会は一切に優先してやるという委員長の声明を与党みずからがないがしろしているんじゃありませんか。委員長みずからの権威を高めるために、行政機関の最高機関にすぎない内閣が、ややもすれば立法府をないがしろにするのですから、きびしくしかりおかなければならないのです。だから、内閣総理大臣池田さんの、先ほどのような、藤田さんが追及するような、自民党の国会対策委員長の指揮命令によって動くというような軽率きわまる、見識のない、そういう一つの発言が出てくるのです。しかも、新聞にも伝えているように、国会運営の上において一番重大な問題は、国会の審議権です。国の最高機関であると同時に、最高の立法府です。その立法府における生命は審議権です。審議権をないがしろにして、すなわち、三日に衆議院で予算が上がったから、参議院は勝手なことをしても自然成立間違いない、ガリオア、エロアの問題、それだけに重点を注いでいこうというような自民党の国会対策の基本対策に従って、内閣総理大臣その他の閣僚が行動するとするならば、明らかに参議院の審議権に対する挑戦である。参議院の権威はなくなる。審議権は剥脱せられて、どこに国会の生命があるか。しかも、その権威を保つべきところの最高の責任者は、この予算委員会においては予算委員長じゃないか。予算委員長を与党みずからが侮べつし、与党の内閣総理大臣を初め閣僚が、自民党の国会対策委員長の指揮命令によって動く、こういう、党が国会をないがしろにし、内閣国会をないがしろにし、予算委員長はあってなきがごとき、でくの坊扱いにするような態度というものは、断じて、われわれ野党といえども、予算委員長の権威を保つために、許すことはまかりならぬ。与党においても当然だと思う。これが、与野党を通じて、国会の審議権というものをいかに尊重しなけりゃならないかということを、目にものを見せて知らせなければ、今後において、こういうかご抜け同様のことが続々として起きる。こういう点において、委員長の責任において、このようなことのないように、一々内閣総理大臣意見を聞く必要はない。委員長の指揮命令に従わなければ適当の処分をするくらいのことを言って、こらしめていかなければ、ほんとうの私は参議院の権威というものは保てないと思う。委員長の口先だけでなく、腹からの所見を伺いたい。
  154. 湯澤三千男

  155. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、誤解があってはいけませんので、申し上げておきたいと思います。午後何時から予算委員会が始まるとは、私は聞いてないので、したがいまして、こちらを一時半ごろ帰りまして、そして二時から片一方のほうで出てくれというので、予算委員会の開会を知りませんでした。私は、国会の審議権尊重の意味から、選挙対策委員会のほうに行ったわけでございます。そしてその後呼び出しも、また、委員長のところにも何も言ってきません。そして四時二十分ころに予算委員会を開くということを聞いたのであります。
  156. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 戸叶君の御発言に対しまして、委員長からお答えをいたします。ただいま戸叶君は、参議院の権威、また予算委員会の権威のために非常に憂えられてお話があったことと思いまして、まことにその点は同感でありますが、しかし、委員長微力にして、総理大臣を懲罰するとか何とかというような権限はございませんが、しかし、あなたと憂いをともにしているのでありますから、十分に政府側に協力を願うように、一そう私は微力ながら今後とも尽くしたいと存じます。誠意のあるところはお認め願いたいと思います。
  157. 千田正

    ○千田正君 議事進行。先ほど理事会できめたのは、四時半から質問を続行するということでありましたが、ただいまの総理大臣の御発言あるいは野党の諸君のいろいろ疑義をただした点において、混迷を続けると思いますので、暫時休憩して、委員長のもとで質問を続行するかしないかということについてお諮りを願いたい。
  158. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) ただいまの千田君の御発言は、私もごもっともに思いますから、暫く休憩をいたします。    午後五時十六分休憩    ――――・――――    午後五時三十六分開会
  159. 湯澤三千男

    委員長湯澤三千男君) 再開をいたします。  明日午前十時に開会いたすこととして、本日はこれにて散会をいたします。    午後五時三十七分散会