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1962-02-16 第40回国会 参議院 本会議 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月十六日(金曜日)    午前十時五十九分開議   —————————————  議事日程 第八号   昭和三十七年二月十六日    午前十時開議  第一 昭和三十六年度一般会計予算   補正(第2号)  第二 昭和三十六年度特別会計予算   補正(特第3号)  第三 炭鉱離職者臨時措置法等の一   部を改正する法律案内閣提   出、衆議院送付)  第四 郵便貯金法の一部を改正する   法律案内閣提出)   ————————————— ○本日の会議に付した案件  一、国会法第三十九条但書規定に   よる議決に関する件(畜産物価格   審議会委員)  一、日程第一 昭和三十六年度一般   会計予算補正(第2号)  一、日程第二 昭和三十六年度特別   会計予算補正(特第3号)  一、所得税法の一部を改正する法律   案、法人税法の一部を改正する法   律案及び地方税法の一部を改正す   る法律案趣旨説明)  一、日程第三 炭鉱離職者臨時措置   法等の一部を改正する法律案  一、日程第四 郵便貯金法の一部を   改正する法律案   —————————————
  2. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。    ————————
  3. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。  この際、日程追加して、  国会法第三十九条但書規定による議決に関する件(畜産物価格審議会委員)を議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  内閣から、衆議院議員芳賀貢君、本名武君、本院議員谷口慶吉君を畜産物価格審議会委員に任命することについて、本院の議決を求めて参りました。  これらの諸君が同委員につくことができると議決することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。    ————————
  6. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第一、昭和三十六年度一般会計予算補正(第2号)、  日程第二、昭和三十六年度特別会計予算補正(特第3号)、  以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。まず、委員長報告を求めます。予算委員長湯澤三千男君。   —————————————   〔湯澤三千男登壇拍手
  8. 湯澤三千男

    湯澤三千男君 ただいま議題となりました昭和三十六年度一般会計予算補正(第2号)及び特別会計予算補正(特第3号)の予算委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、今回提出せられました補正予算の規模でございまするが、一般会計予算補正(第2号)により歳出追加される総額は、五百四十八億九千万円と相なっております。  次に、その歳出内容を申し上げますると、まず、災害復旧費等追加三百億円余、これは、三十六年災追加百六十億円、過年災百三十億円、ほか大阪高潮対策等でございまするが、いずれも、実地調査の結果、事業費が増加いたしましたのと、緊急部分について事業促進をはかろうとする趣旨でございます。また、医療費改定に伴う追加は四十五億円でございまして、これは、当初予算に計上されてありました一〇%と七月改定の一二・六%との差額、すなわち二・六%、並びに十二月実施緊急是正の二・三%引き上げの分を含んでおります。さらに、オリンピック東京大会準備費といたしまして経費八億八千余万円と国庫債務負担行為二十二億余円が計上されております。炭鉱離職者雇用促進についても経費八千二百万円が追加されております。これらのほか、義務教育費失業保険費生活保護費等義務的経費不足補てん並びに三十五年度精算分として合わせて六十五億円、また、地方交付税交付金及び臨時地方特別交付金は、歳入における三税の四百五十億円の増収に伴いまして、その二八・八%に当たる百二十九億円が追加と相なっております。  しこうして、これら歳出に必要な財源につきましては、所得税法人税、酒税、関税物品税自然増収をもってまかなうことと相なっておりまして、本補正予算成立いたしますると、昭和三十六年度一般会計予算総額は、歳入歳出とも二兆一千七十三億八千余万円と相なるわけであります。  特別会計予算補正(特第3号)は、交付税及び譲与税配付金治水道路整備農業共済保険、この四つの特別会計補正でありまして、このうち「農業共済保険」は、共済掛金国庫負担金の繰り入れと、本制度農業災害補償制度に切りかえの時期変更に伴うものでありまして、「道路整備」は、オリンピック道路促進のため三十八億円を国庫債務負担行為として計上するものであります。他の二会計につきましては、一般会計補正内容といたしまして御説明したところに対応するものでございます。  この補正予算案は、一月二十三日に国会へ提出され、二月十二日に衆議院において可決の上、本院へ送付されたものでございまするが、委員会におきましては、一月二十六日に水田大蔵大臣から提案理由説明を聴取し、二月十三日、十四日の両日にわたりまして、池田内閣総理大臣並びに関係大臣に対し質疑を行ないました。  以下、これらの質疑の中の若干の事項につきまして御報告を申し上げます。  まず、「政府が、昨年九月二十六日の閣議で、国際収支改善対策の一環として、公共事業費官庁営繕費及び財政投融資繰り延べ措置をきめたが、これによってどの程度予算繰り延べになったのか。また、この繰り延べ措置は、内容からすれば、景気調整の観点からなされたものであって、明らかに財政法十四条に規定する繰り越し明許費とは別のものと思う。この場合は、財政法二十九条に基づいて国会修正予算を出すべきではなかったか。この点、財政法違反だと思うがどうか。」との質疑がありました。これに対し、水田大蔵大臣林法制局長官並びに池田総理大臣から、「九月二十六日の閣議了解による公共事業費官庁営繕費繰り延べ額は、財政投融資を含めて大体七百億円くらいになると思う。手続としては、予算実行上、景気調整の必要から、繰り越し明許費の中で、閣議了解により繰り延べを認めたものである。予算年度内に配分して使うのは大蔵大臣権限であって、その結果、年度内支出できぬ場合の繰り越し財政法四十三条の三にその規定があり、予算修正をやらなければ財政法違反だというのは当たらない。」旨の答弁がございました。  次に、三十六年の国際収支見通しにつきまして、「三十六年の貿易赤字が九億三千万ドルであって、対米貿易赤字は八億五千万ドルにもなるというのであるが、それでは、国際収支悪化の最大の原因が対米片貿易にあったという事実を政府は認めるかどうか。また、このような事態になったのは、池田首相アメリカドル防衛政策の影響を軽く見た証拠であり、この点、総理責任を感じないか。今後貿易自由化を進める中で、この対米片貿易をどうやって打開していくつもりか。政府見解を聞きたい。」という質疑がございました。これに対し水田大蔵大臣佐藤通商産業大臣並びに池田総理大臣から、「対米貿易が入超になるのは日本経済の宿命であるが、昨年の赤字が大きくなったのは、アメリカの不景気輸出が伸びなかったのと、設備投資予想以上に活発だったため輸入がふえてしまったことによるもので、国内の高度成長が行き過ぎた点にも原因があったと思う。また、ドル防衛協力するのは、自由国家群の一員として当然のことである。明年度貿易については、国内的には景気調整策の浸透につれて機械類輸入の減少が予想される一方、アメリカがEECと関税引き下げを行なえば、最恵国待遇日本も均霑できるであろうし、また、強力な経済外交貿易改善をはかるつもりである。それに、アメリカ景気が回復すれば輸出もふえるわけであって、今後対米貿易の不均衡はやがて改善できると思う。」という答弁がございました。  続いて、日本経済の今後の見通しの問題につきまして、「政府見解によれば、調整過程は本年上期に終わり、下期になれば、国際収支改善されて経済もよくなると楽観しているようであるが、それは全く逆だと思う。三十七年度予算大型予算であるし、それに参議院選挙なども行なわれて、金融引き締めは不可能であろう。上期は不景気にはならず、むしろ下期に入ってその反動がくるのではないか。つまり七月、八月ごろに国際収支が悪化し、金融引き締めが強く要請されることになり、勢いデフレ政策をとらざるを得なくなると思うがどうか。」という質疑がございましたが、これに対しまして池田総理大臣は、「国際収支変動が激しいもので、長い目で見てほしい。私は、下期になれば生産も相当伸びて、経済上昇すると考えている。経済の伸びを五・四%と見ることは、デフレ政策ではない。また、デフレ政策をとる考えも持っておらない。短期間の変動にあまり神経質にならないようにと言いたい。」という答弁がございました。  当面の外交問題として、日韓交渉につき、「両国間の正常な関係を樹立するのには、文民政権成立する時期まで待つべきではないのか。また、その交渉にあたっては、李ライン、対日請求権韓国人法的地位の問題など諸懸案とともに、竹島問題を同時に解決する考えはないか。」という質問がございました。これに対しましては、池田総理大臣及び小坂外務大臣から、「朴政権は、現に民生の安定、汚職の一掃などに努力しており、私の見るところでは、文民政権に移る過渡的政権としてりっぱに役割を果たしていると思う。私は、たとえ暫定政権であっても、合理的な話し合いがつけば、日韓交渉を妥結したいと考えている。交渉にあたっては、懸案事項のすべてを同時に解決する方針で進めるけれども、竹島問題だけは、両国関係が正常化して、友好的な雰囲気が生まれたあとで、国際司法裁判所に提訴して解決をはかることが妥当であると考えている。」旨の答弁がございました。  災害対策につきましては、「治山治水五カ年計画は、三十七年度予算上繰り上げ実施を行なうこととしているが、引き続き三十八、三十九年度も同様の措置をとるか。今回の補正予算による災害復旧事業費追加によって、当年災復旧率が三〇%となるのはけっこうであるけれども、復旧最盛期に当たる来年度予算には三七%程度しか計上されておらず、従来の実績を下回っているのは遺憾であり、三・五・二の比率で三カ年間に復旧を完了すべきである。昨年十一月公布された災害対策基本法においては、激甚災害が発生したときは、別に法律で定めるところにより、応急措置及び災害復旧が迅速かつ適切に行なわれるよう措置する、とあるけれども、従来のように、そのつど特例法を制定するのでは手おくれになるので、恒久的な法律を作る必要があると思うが、この国会に提案する用意があるか。また、災害対策基本法はいつごろ実施する見込みであるか。」などの質疑がありまして、これに対し中村建設大臣及び水田大蔵大臣から、「治山治水計画災害頻発現状にかんがみて、繰り上げてすみやかに実施することが望ましいので、三十八、三十九の両年度についても、できるだけ促進をはかりたい。三十六年度災害が比較的早い時期に発生したので、初年度進捗率を大幅に上げた。復旧の進められるときにできるだけ進めていく方針である。激甚災害については両論あり、そのつど主義ではいけないという説と、また、災害の姿は多種多様であるから、そのつど特例法を制定したほうがよいという説もある。これらの点について目下意見の調整中である。」との答弁があり、また、安井自治大臣から、「災害対策基本法実施時期は六月末を目途としている」旨の答弁がございました。  炭鉱問題につきましては、「政府総合エネルギー対策よりも業種別エネルギー対策を先にする方針をとっているけれども、前国会における両院の決議の趣旨から考えても、これは逆である。エネルギー全体における石炭構成比を外国と比較してみると、西独の七六%に対し日本は三八%で、全く比較にならない。離職者状況を見ても、英国も西独もほとんど全部を他へ吸収している。同じようにエネルギー革命が起こっているのに、日本だけがこのように混乱しているのは、無計画に急激に石油使用量をふやしたためではないか。また、離職者対策もほんとうにやる気であるならば、まず中高年令層官公庁の仕事に雇用すべきである。補正予算に計上された訓練期間中の手当の三百円据え置き、技能習得手当七十円という額も低過ぎると思うがどうか。」というような質疑がございましたが、総理及び関係大臣から、「総合エネルギー対策を軽く見ているわけではないが、まず、その前提となっている石炭石油電力等業種別に取り上げ検討した上、総合エネルギー対策考えたい。西独日本では、資源の賦存状態立地条件雇用状況等すべて違っているので、必ずしも石炭に対する努力が足りないとは言えない。離職者はできる限り官公庁関係にも吸収することはもとよりであるけれども、民間にも協力を願いたい。訓練手当は、失業保険加入者等、他の同種類の者との権衡上三百円にしたのであり、技能習得手当の七十円は、失業保険金をもらっている者が、その上に上乗せてもらうものであるからやむを得ない。」などの答弁がございました。  なお、このほか大きく取り上げられました問題といたしまして交通の問題があり、これは道路整備都市過大化防止自動車交通規制首都交通事業の経営一元化問題など多方面より論ぜられ、海運については、海運助成政府の真剣な決意があるかどうかがただされ、さらに、相次ぐ海外移民失敗に関連し、移住行政の統合についての質疑、農地被買収者特別融資問題等等広範多岐にわたる質疑が行なわれましたが、詳細は会議録によって御承知を願いたいと存じます。  かくいたしまして質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して加瀬委員反対、自由民主党を代表して鈴木委員が賛成、民主社会党を代表して田上委員反対日本共産党を代表して岩間委員反対の旨それぞれ述べられました。討論を終局いたし、採決の結果、予算委員会に付託されました昭和三十六年度予算補正二案は、多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  9. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 両案に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。加瀬完君。   〔加瀬完登壇拍手
  10. 加瀬完

    加瀬完君 私は、日本社会党を代表して、昭和三十六年度予算第二次補正二案に対して、反対討論をいたします。  まず根本の問題として、池田内閣には予算を編成する資格がないという点であります。昨年の今ごろ、三十六年度の当初予算審議の際、わが党は、口をすっぱくして、高度成長政策は行き過ぎる懸念があり、物価国際収支に危険な徴候が見えておりますことを指摘して参りました。しかし池田総理は、経済のことは、わしにまかせろという一点ばりで、今日の事態を招来して参りました。すなわち、当初計画国際収支において一千万ドルの黒字予想は、九億二千万ドルに及ぶ赤字を招来をし、デフレ政策に転換せざるを得なかったのであります。この原因は、過大な設備投資にあることは明らかでありますが、それを促進いたしましたのが池田内閣高度成長政策であり、金利引き下げであったわけであります。また、低金利政策の看板をおろすことをおそれて、日銀に干渉をし、公定歩合引き上げの時期を誤りました責任は、あげて池田総理が負わなければならないのであります。しかるに池田内閣は、みずからの失敗を行き過ぎにすぎないと強弁するのみでなく、その責任民間企業に転嫁しようとしているごときは、許されざるところであります。他方、国際収支赤字内容を検討いたしますと、対米貿易赤字の九割、八億五千万ドルを占めているのであります。これは、池田内閣アメリカドル防衛協力をし、対米追随経済外交を行なった結果でありますことは申すまでもありません。池田内閣は、この打開のために、日米箱根会談鳴りもの入りで喧伝をいたしましたけれども、日米片貿易状態はますます激しさの度を加えるばかりであります。このように、見通しを誤り、責任を回避する政治家に、予算編成の資格ありとは、われわれは信じられないのであります。わが党は、すでに第一次補正予算審議に際し、池田内閣経済政策失敗から国民生活を救うための緊急かつ最低限の予算措置として、生活保護費の大幅引き上げ、失対賃金引き上げ物価対策、さらに災害対策石炭対策医療費国庫負担の適正な措置等を含んだ第二次補正を強く要求してきたのであります。しかるに、政府が今回提出いたしました第二次補正予算、これらには、わが党が主張いたしました国民生活への配慮は全然ないのであります。  私は、以下数点にわたりまして、政府原案の欠陥を明白にして参りたいと存じます。  その第一は、委員長報告にもありましたとおり、景気調整のための予算額の一割繰り越しの問題であります。わが党の木村委員の指摘されたとおり、池田内閣は、経済成長政策のための景気調整措置として、予算額の一割を繰り越し明許費として片づけております。繰り越し明許費は、財政法第十四条でも明らかなごとく、「その性質上又は予算成立後の事由に基き年度内にその支出を終らない見込のあるもの」、このように限定されておるのであります。その性格はあくまでも、「努力しても年度内支出を終わらない見込みの立つもの」でありまして、政府行政上の都合で、国会で決定された予算に、繰り越し繰り延べを自由勝手に選択をさせる権限政府に与えているものではございません。財政法二十九条の二項は、「内閣は、……予算成立後に生じた事由に基いて、既に成立した予算変更を加える必要があるときは、その修正国会に提出することができる。」こう規定しております。明らかに景気調整という政策理由によりまして予算変更を加える必要が生じたわけでありますから、早急に修正補正の案を提出すべきであります。政府はこれを完全に怠って参りました。もしも政府に、勝手な繰り越し繰り延べの自由を許すならば、憲法八十三条の「国の財政を処理する権限は、国会議決に基いて、これを行使しなければならない。」この内容は、全くの空文になるのであります。本補正予算案に、このような憲法違反財政法違反の問題に対して、何ら適切な解決手続がとられておりませんことは、予算案内容以上に許しがたい点であります。(拍手)  その第二は、大蔵大臣説明によりますと、「三十六年度において多額に上ると見込まれる租税の自然増収は、剰余金として後年度に繰り越す、」こう御説明をされておりますが、繰り越す前に、剰余金見込み総額は一体幾らになるのか、本年度補正として使用すべきものがはたしてないのか、こういうことが、もっと国民の前に、国民のために明らかにされなければならないはずであります。  具体的に問題を取り上げます。  一つは、物価の問題であります。池田内閣は、物価問題については卸売物価が中心であると主張されております。しかし、一般国民に直接つながりのありますのは、ネギ一本、大根一本の消費者物価であります。消費者物価は、昨年一年間に八・八%の上昇率を見ました。今や巷の主婦たちは、大根半本、ニンジン半本という買い方をすらしなければならない状態に追い込まれているのであります。しかるに政府は、これら物価対策に対しまして有効な何らの手を打つこともなく、しかのみならず、鉄道運賃郵便料金、こういったようなものを率先して引き上げているのであります。物価抑制という声は国会の開会中だけのことでありまして、国会が閉会となれば、矢つぎばやに政府物価引き上げ原因を作っているのであります。これは許されることではありません。  さらに、生活保護について申し上げますと、保護基準引き上げと称して、前回の補正で五%引き上げ明年度予算で二二%引き上げることをきめております。東京標準五人世帯では月額一万三千四百七十円になると、大いに宣伝をいたしておりますが、これを分析してみますと、一人当たりの生活費は月二千六百九十四円、一カ月を三十日として割ってみますと、一日は八十九円と八十銭であります。生活費総額を締めて一日八十九円八十銭、これで生活保護社会保障、こう鳴りもの入りで宣伝する内容があるでありましょうか。  具体例の二は、これも委員長報告の中にございましたが、義務教育費の問題であります。昭和三十六年度第一次補正における公立文教施設補助費単価引き上げの問題であります。政府は、この前の補正審議のときに、三十五年六月と三十六年八月の、資材費労務費その他の値上がり指数現行単価に乗じて新単価を算出したと説明をいたしました。われわれは、次のように質問をいたしました。それならば、木造校舎における大工左官トビ、石工、こういったようなものの賃金は、昭和三十五年の六月と昭和三十六年の八月で確実に政府のあげているような指数になるのかと、問い詰めて参りますると、労働省統計調査部では、九月を過ぎなければその指数は出ないという御返事でありました。出された指数は、昭和三十五年の九月と昭和三十六年の九月を比べますと、大工は七百六十一円が千百三十四円、トビは七百六十円が千七十三円、左官は七百六十二円が千二百十七円、政府の一一九・五%という数をはるかにこえて、それぞれ一六一%、一四一%、一六〇%と高騰をいたしております。昭和三十六年の労務費は、三十五年と比較いたしますと、一一九・五%ではなくて、少なくも一五〇%以上の上昇を見なければならないはずであります。したがって、このたびの補正には、当然これが加えられなければならない責任があります。しかしながら、本補正には、この再度補正というものは何ら考慮されておりません。  次に、具体例の三といたしまして、このたびの補正内容に、百二十八億円と一億三千五百万円の、地方交付税交付金臨時特別交付金があります。一体この金額は、下から積み上げて計算をしたものでありましょうか。——そうではないのであります。たとえば、問題の高校急増対策にいたしましても、政府現状の認識をまるで欠いております。今現状高等学校経費負担を申し上げます。支出のうち、土地建築費について見ますと、国、府県市町村寄金付、こういう構成別に何%を占めているかということを、土地について見ますと、府県の四六・二%に対して、寄付金は四三・二%であります。市町村負担まで入れますと四六・二%対四九・五%、寄付金のほうがよけいなのであります。建築費についても五五・二対三一・五、二分の一をこえております。国庫補助金寄付金を比べると、昭和三十二年から三十五年までの決算で、総額に対してどういう比率の変化をしたかと申しますと、寄付金は一九・四、二九・八、三〇・〇、三二・〇と、ウナギ登りに上っております。国の補助金は、一一・二、七・六、九・〇、八・九、ジグザグで、やや下がった形になっております。これでは、公立でなくて、PTA立であり、父兄立であります。どうにもなりません。これらの解決措置は、本補正によりまして十二分に解決できるはずであります。これらの解決起債で行なうと説明をするのでありましょうが、今までの起債許可条件に対しまして不適格または要注意は二十二県、実に無条件で起債を借り入れられない府県が五〇%に近いのであります。しかも、道府県収入は、明年度税制改正で減収になる県が多いのであります。ふえるのは府県民税、減るのは事業税入場譲与税遊興飲食税。今、入場譲与税だけ見れば、北海道で十億、鹿児島、熊本、長野で各四億、この穴埋めが何にもできておりません。高等学校急増対策は、どのような形で財源地方は求めるのでありましょう。地方財政に対して、政府は無能力と言うほかはありません。むしろ、余剰財源を見込まれる本年度において、交付税率引き上げまして財政強化がはかられなければならないわけであります。このような計画性または分析性というものに、政府は、はなはだ欠けております。これが反対理由であります。  その第三は、石炭産業の危機とその対策費についてであります。わが党は、数年前から、エネルギーに関する基本政策を樹立しておかないと社会的混乱が生ずることを指摘して参りました。しかし、政府は、真剣にエネルギー総合基本対策というものを立てているとは見られません。そのしわが、炭鉱労働者の首切りとなって現われております、今回の補正予算で宣伝をしております別居手当技能習得手当などの措置についても、全く冷酷そのものであります。技能習得手当一日七十円、二キロ以内の者は四十円、子供の小づかいよりも少ない金額であります。別居手当が三千六百円、これで、家を借りて、十二分に生活をして、しかも物価高の中に新しい生きる技術を覚えられる経費が十二分に含んでおると思われますか。石炭対策などとは全く言われないのであります。具体的に炭鉱都市である大牟田と田川の炭鉱離職者対策財政措置について申し上げて検討してみますと、大牟田の失業対策費は、三十五年の決算総額三億八千万円、このうち地方の持ち出し分が一億八千万円であります。田川の一月支出現況は、現金在高見込みが二千九百三十九万円、支出見込みは、生活保護費千六百万円、緊急失対費八百四十万円、職員給与の繰り延べなどいろいろやりくりをいたしましても、三千四百六万円の支出が要ります。赤字として残りますのは四百六十七万円であります。したがいまして、年度赤字は八千万円をこえるといわれます。これらに対しまして、今度の補正は何にも手が打たれておりません。離職者を一番先に取り上げなければならないのは地方団体であります。しかし、地方団体には財源は与えられておらないのであります。なぜ一体、余剰財源があるなら、余剰財源のうち、交付税交付金などではなくて、別のワクにいたしまして、はっきりと地方財源を与えないのでありましょうか。  その第四は、年度内減税の実施についてであります。少なくも自然増収は、政府計算によりましてもまだ千七百億円をこえると説明されるのであります。
  11. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 加瀬君、時間が参りました。
  12. 加瀬完

    加瀬完君(続) しかし、見積りのいつも少ないのが政府でございますから、二千億をこえるでありましょう。それならば、なぜこれを国民のもとにもう一回減税として返さないのでありますか。  以上四点の理由をあげまして、反対の意思を明らかにいたします。(拍手
  13. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 平島敏夫君。   〔平島敏夫君登壇拍手
  14. 平島敏夫

    ○平島敏夫君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております昭和三十六年度一般会計予算補正第二号並びに同特別会計予算補正特第三号に賛成の意を表明するものであります。  今回の補正は、一般会計におきましては、総額五百四十九億円でありまして、その財源は、所得税法人税、酒税、物品税関税自然増収をもってこれに充てることになっております。  一般会計歳出の面において、その最も大きな項目は災害対策費であります。さきの第一次補正においても災害対策は主要項目となっておりましたが、その予算補正の直前に第二次室戸台風が発生して甚大な被害を生じ、第一次補正においてはその対策の一部が予算化されただけでありまして、その後の調査によって被害額が判明し、予算に不足を生ずるに至りましたので、必要な経費追加し、また過年災復旧についても所要の経費追加して、総額三百億円を要求しておるのであります。次に、生活保護費、児童保護費その他社会保障関係義務的経費の不足を充足するための経費六十五億円、また診療報酬引き上げに伴う医療費関係経費四十五億円、さらにワシントン・ハイツをオリンピック競技場の一部に使用することに決定いたしましたので、その開催期日に間に合わせるために、三十六年度中より一部の工事に着手する必要がありますので、これに伴う経費約九億円、また炭鉱離職者の転職雇用を円滑にする措置を三十七年一月にさかのぼって実施するに必要な経費八千万円余が要求されておりますが、これらはいずれも当然な、あるいは必要な経費と認められるのであります。  なおまた、歳入面におきまして、所得税法人税、酒税の増収が計上されました関係上、増収額の二八・八%に当たる金額を、地方交付税交付金及び臨時特別交付金として地方に交付することにいたしておりますが、これは法律規定に基づく義務的措置であります。  特別会計につきましては、主として一般会計予算補正に関連いたしまして、交付税及び譲与税配付金特別会計ほか三特別会計について所要の補正を行わんとするものであります。  これを要するに、今回の補正は、必要やむを得ざる経費の最小限度を要求しておるのでありまして、適切な措置と申すべきであります。私は、補正案二件に対し賛意を表するものであります。(拍手
  15. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 田上松衞君。   〔田上松衞君登壇拍手
  16. 田上松衞

    ○田上松衞君 政府提出の補正二案の採決を前にしまして、民主社会党を代表して反対理由を明らかにいたします。  政府案の歳出内容は、災害対策費の追加と、生活保護費等の不足額補てんのほか、医療費改訂に伴う経費の増額、農災補償改訂時期のズレに伴う必要経費追加等、いわゆる事務的補正が主体でありまして、新規政策的な歳出補正は、わずかにオリンピック東京大会準備費の約八億九千万円と、炭鉱離職者援護対策費の約八千二百万円の二項目にすぎません。私どもは、このような、ただ単に財政法を機械的形式的に適用することによって事なかれ式の補正措置を行なおうとする政府の態度は、少なくも今日の社会情勢下には許さるべきでないと考えるものであります。  大蔵大臣は一月十九日の財政演説の中で、国際収支の均衡を本年秋に達成するために金融引き締めを続け、この方針のもとに補正予算は極力最小限度にとどめる旨を述べられたのでありましたが、しかし、これをもって政府明年度予算編成に及ぶ健全財政方針の基盤なりと自画自賛されることは、むしろナンセンスと評すべきであると考えるのであります。なぜならば、三十五年度から三十六年度にかけて、政府は所得倍増計画を謳歌して、一般会計予算額で約二四%の増額を行なったのでありましたが、三十六年度から三十七年度にかけて、みずから政策失敗を認めて、金融引き締めを行なうにあたっても、前年度に対する財政規模の膨張を前と同率の二四%としております。しかも、不況に備える強力な政策の備えもなく、ただ党利党略の必要に迫られて総花式に既定経費を軒並みに増額しておるだけではありませんか。編成方針の首尾は一貫せず、多くの矛盾をさらけ出しておりまするが、一体どこに健全財政だと言える根拠があるのでありましょう。  今次補正案の検討にあたって私どもがまず直感したことは、政策の推進という政治の実態と、予算編成の健全化という行政技術の価値評価を、本末転倒されているといううらみでありました。この政府案が提出されている現在は、すでに政府の失政によって景気後退が進行している事実を否定できますまい。今月に入ってからの経済諸指標を見ましても、これまで棒高に伸びてきた小売は、百貨店売り上げを含めまして伸びが鈍くなっておりまするし、民間建設工事は昨年十月から急に減少しております。機械類の受注も、昨年十一月からまる三年ぶりで前年同月の水準を下回っております。景気後退あるいは景気調整など、どんな用語で表現いたしますにせよ、経済縮小状態が進行している事実に相違はございません。一部には、国際収支じりが好転したという向きもありますけれども、現在の輸入は、輸入済みの在庫品の食いつぶしが進んでいるための横ばいの形であり、輸出は、金繰りのための換金輸出のゆえに増加しているのであります。現在の貿易の好転の姿は、決して健全な体質の好転ではないという実態を、冷静かつ厳粛に銘記する必要があるとともに、景気後退の被害は、これからいよいよ国民各階層に深まるであろうことを心せねばならぬと考えるのであります。  もちろん、政府もこれに対応して、明年度予算案では、生活保護基準の引き上げや、中小企業に対する財政投融資の増額等を行なっておるのでありますけれども、このような措置をなぜ本年一月分にさかのぼって施す配慮を欠いたのでありましょうか。試みに、炭鉱離職者援護対策費を引き合いに出してみるならば、予算案の八千二百万円の中身は、新たに雇用奨励金制度と、及び訓練別居手当技能習得手当の二つの支給制度を創設いたしまして、これを本年一月から実施するというのであって、明年度予算案でも、これを受けて、引き続いて実施するよう措置を講じておられるが、この方針そのものは、これこそまさに当を得た施策であると言って差しつかえない。ただし、政府案の予算単価についての同意は別問題といたしまして、この場で私が言いたいことは、このように第二次補正予算を基点として、明年度予算においても新規重要政策を一貫して推進できるような、基礎的、準備的予算編成方針を、今回の補正案全体の中に打ち立てる工夫と努力を怠った点であります。  今回の政府案は、昨年七月一日以来の診療報酬の改定に応じて必要経費を計上しておられるが、この問題の裏には、国民の側の治療費負担が同時に値上げされたという事実を伴っております。政府もこの事実を認めて、明年度予算案では国民健康保険に対する国庫負担率を二〇%から二五%に引き上げておりますが、この程度では国保関係の患者の負担緩和には不十分でありまするから、本年一月一日にさかのぼって、国庫負担率を少なくとも四〇%に引き上げるべきであります。生活保護基準は、明年度予算案では二二%引き上げることになっておりますけれども、これは東京で一人一日当たり十円程度の値上げにすぎません。これでは、政府すら想定されている本年における消費者物価の値上がりには、とうてい追いつけようはずもありませんので、これまた本年一月一日から二五%引き上げる必要があると思います。炭鉱離職者援護対策費については、本年一月から適用対象を三万八千人に改めまして、かつ離職と再就職のための住宅移住資金の支給制度を創設して、これに見合う諸経費二十億円を増額すべきだと信じます。池田総理の再三にわたる公約にもかかわらず、明年度予算にみる石炭対策費は、これからいよいよ深刻化する石炭危機に備える経費としては、あまりにも不十分であるのみならず、このような重大な政策を軽視し過ぎております。この意味で、中小炭鉱近代化資金の貸付金の追加と、並びに産炭地域振興事業団の事業として、新たに火力発電所新設に着手するための準備経費といたしまして二十五億円を補正計上することが、時期的な緊要事であると考えるのであります。さらには、中小企業金融がいよいよ苦しくなっている現状にかんがみまして、商工中金に対して二百億円、中小企業金融公庫に対して百億円、国民金融公庫に対して五十億円の財政資金を追加出資するの補正措置こそ、現在、心ある国民の要望してやまない事柄であります。  以上の建設的な要望事項の合計額四百八十億円を、今次政府案の五百四十九億円に積み重ねて支出するといたしましても、本年度余剰財源はなおかつ二千億円内外という莫大な差引残高となるのでありまして、国家財政の上にはみじんの心配もありようはずはないと信ずるのであります。勤労者の福祉国家建設を理想としている私どもは、以上の見解に立って今回の補正案を検討した結果、私どもの社会観、私どもの理想、私どもの念願とは、あまりにもかけ離れた政府の今次補正案には、遺憾ながら同意できませんので、ここに反対の意思を明白にいたしまして、私の討論を終わります。(拍手
  17. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより採決をいたします。  両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  18. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって両案は可決せられました。    ————————
  19. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) この際、日程追加して、  所得税法の一部を改正する法律案、  法人税法の一部を改正する法律案、  地方税法の一部を改正する法律案、  以上三案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者から順次趣旨説明を求めたいと存じます。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御異議ないと認めます。水田大蔵大臣。   〔国務大臣水田三喜男君登壇拍手
  21. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  御承知のように、政府は、国民の税負担現状に顧みまして、昭和三十六年度の税制改正に引き続く税制の体系整備の一環として、昭和三十七年度において、中小所得者の負担の軽減を主眼とする間接税及び所得税の減税と、国、地方団体を通ずる税源配分の適正化を中心に、国税において平年度千二百億円程度の減税を行なうこととし、関係法律案の提出の準備を進めて参りましたが、通行税法の一部を改正する法律案等に引き続き、ここにこれらの二法律案につきまして御審議を願う運びになったものでございます。  まず、所得税法の一部を改正する法律案の概要について御説明いたします。第一は、中小所得者を中心とする税負担の軽減合理化をはかることとしたことであります。すなわち、基礎控除及び配偶者控除を現在の九万円から十万円に引き上げるとともに、青色申告者の事業専従者について十二万円の控除限度が認められる年令区分を現在の二十五才から二十才に引き下げております。また、税率につきましても課税所得百八十万円以下の階層に適用される税率の緩和をはかるとともに、国と地方団体との間の税源配分の適正化をはかる等の見地から、所得税の収入の一部を道府県民税の収入として委譲いたしました。すなわち、道府県民税の所得割の税率を、課税所得百五十万円以下二%、百五十万円超四%の標準税率に改めることにいたしたのであります。なお、この場合、所得税及び道府県民税を総合した負担が軽減されるように、さきに申し述べました所得税の税率の緩和のほか、所得税の税率において現在課税所得十万円以下の金額について適用される税率は、一〇%を、八%に引き下げる等、所要の調整を行なっております。また、道府県民税においては、昭和三十六年分の所得税昭和三十七年分の個人の道府県民税との間における所得控除等の額の相違分について特別の税額控除を行なう等、必要な調整措置を講ずることといたしたのであります。  以上申し述べました控除及び税率の改正により、夫婦及び子供三人計五人の家族の場合を例にとりますと、所得税を課されない限度は、給与所得者につきましては、現在の約三十九万円から四十一万円に、青色申告者である事業所得者につきましては、現在の約三十七万円が三十九万円に引き上げられることとなるのでありまして、中小所得者の負担は、所得税、道府県民税を通じて相当程度軽減されることになります。  第三に、中小所得者の生活の安定と貯蓄の増強をはかる見地から、生命保険料控除の対象となる生命保険料の限度額を、現在の三万円から五万円に引き上げるほか、退職年金については、法人税法の整備と相待って、所得税においては、企業が従業員のために拠出した掛金に対して直ちには課税を行なわず、年金受給時に給与所得として課税する等所要の調整を行なうことにいたしました。また、最近における生活水準の向上、消費支出金額の増加等を考慮して、寡婦、老年者等に対する税額控除を、現在の五千円から六千円に引き上げることとしております。  さらに、寄付金控除制度を創設し、教育または科学の振興等のための寄付金について一定の金額を税額から控除すること、文化功労者年金を非課税とすること、昭和二十八年一月一日前から引き続き所有していた資産の譲渡所得及び山林所得の計算上控除する取得価額を、原則として同日現在の相続税評価額によるものとしましたこと。資産再評価法による再評価の制度及び再評価税の課税を廃止すること、また、個人間の資産の贈与等の場合で譲渡等に関する明細書等の提出があったときは、その贈与等の際には譲渡所得課税を行なわないこと、事業用の固定資産等について生じた損失は、原則として事業所得等の計算上の必要経費とし、その損失が災害による場合は被災事業用資産の損失として三年間の繰り越し控除を行なうこと、また生活に通常必要でない資産について生じた災害損失は、雑損控除の対象から除外して、災害を受けた年及びその翌年の譲渡所得計算上の損失とすること等、税制の整備合理化をはかることとしております。  第三に、非居住者等の課税につきまして、わが国の締結した租税条約との調整等をはかりつつ、非居住者がわが国で事業を行なう場合における事業所得の課税の要件を明らかにすること、わが国に事業を有しない非居住者の資産の譲渡による所得の課税について、不動産、企業支配的な株式の譲渡その他重要な資産の譲渡について課税するようその対象を列挙する等の措置を講ずる等、所要の規定の整備を行なっております。  次に、法人税法の一部を改正する法律案の概要について御説明いたします。  まず、ただいま御説明の際に申し上げました所得税及び法人税を通ずる退職年金に関する税制整備の一環といたしまして、法人税におきましても、所要の規定の整備を行なうことといたしております。すなわち、企業が、その従業員の退職年金の原資に充てるため一定の要件に該当する退職年金に関する信託または保険の契約に基づいて一定の掛金を拠出したときは、その拠出の際にこれを企業の損金に算入いたしますが、この場合、その従業員に対する所得税の課税が年金を実際に支給されるときまで繰り延べられることは、所得税のところで申し上げたとおりであります。そこで、この繰り延べ措置に関連いたしまして、法人税においては、その課税延期に見合う一種の遅延利息に相当するものとして、この信託または保険の業務を行なう法人に対し、その退職年金積立金について千分の十二の税率による法人税を課税することといたしております。  以上のほか、所得税法における非居住者に対する税制の整備と並行して、外国法人がわが国において事業を行なう場合にその事業所得に対して課税する要件を明確にし、また、わが国に事業を有しない外国法人の重要な資産の譲渡による所得の課税については、所得税法の改正と同様な措置を講ずることといたしております。また、外国で設立した一定の子会社が納付した外国法人税額は、これをその親会社である内国法人が納めたものとみなして、その税額控除を行なうこととする等、所要の規定の整備を行なっております。  以上、これらの二法律案趣旨につきまして御説明を申し上げた次第でございます。(拍手)   —————————————
  22. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 安井自治大臣。   〔国務大臣安井謙君登壇拍手
  23. 安井謙

    ○国務大臣(安井謙君) 地方税法の一部を改正する法律案について、その提案の理由と要旨を御説明申し上げます。  地方税制につきましては、累次にわたる改正により住民の税負担の軽減合理化を行なって参ったのでありますが、最近の経済発展に伴い、国民所得の水準も向上し、地方税においても、自然増収が相当見込まれることになったことにもかんがみ、さらに、その軽減合理化をはかることが適当であると存ずるのであります。  ただ、地方財政は、経済の好況と財政健全化措置と相待って逐次好転して参ってはおりますものの、地方行政水準はなお低く、これをすみやかに引き上げていく必要もまた大きいのであります。したがいまして、地方税制については、このような地方財政の実態を考慮しつつ、住民負担の軽減合理化を実現するとともに、地方財政の自主性と健全性をさらに進めるため、税源配分及び税源帰属の適正化について所要の改正を行なうことといたしたのであります。  これが、この法律案を提案するに至った理由であります。  なお、今回の改正による減税規模は、平年度四百二十二億、初年度二百七十三億でありますが、あわせて、国と地方団体との間に税源配分の適正化措置を講ずることにしたので、地方独立財源が充実し、平年度百五億円、初年度八十二億円の増収となり、差し引き平年度において減収額三百十七億円、初年度において減収額百九十一億円であります。  以下、法律案の概要について御説明いたします。  その第一は、大衆負担、中小企業者の負担の軽減合理化をはかるため、地方税の減税を行なうことであります。すなわち、個人の市町村民税についてその税率の緩和をはかることを初めとして、事業税、料理飲食等消費税、電気ガス税、鉱産税等につき、その税率の引き下げないし負担の軽減をはかることといたしております。  第二は、税源配分及び税源帰属の適正化についてであります。  別途所得税法の改正により、所得税と道府県民税の総合負担を軽減する方向で、所得税の収入の一部を道府県民税の収入として移譲を受け、道府県民税の所得割の税率を改正することといたしております。なお、これと並行して、たばこ消費税の税率を二%引き上げ、その課税標準を合理化するとともに、法人事業税における分割基準を改善し、もって地方団体間の税源帰属の適正化をはかることとし、あわせて入場税の地方譲与の制度を廃止することといたしております。  第三は、税負担の均衡化の推進等、税制の合理化をはかることでありまして、住民税、事業税、不動産所得税、娯楽施設利用税、自動車税、固定資産税、電気ガス税、国民健康保険税等につき、その非課税の範囲、課税標準、税率等の合理化をはかることとしております。  第四は、固定資産評価制度の改正の準備措置を行なうことでありまして、そのために、中央及び道府県に固定資産評価審議会を設置する等、所要の改正を行なうことといたしております。  以上が地方税法の一部を改正する法律案提案理由及び要旨でございます。(拍手
  24. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。荒太正三郎君。   〔荒木正三郎君登壇拍手
  25. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び地方税法の一部を改正する法律案に関し、若干の質疑をいたすものであります。  第一に指摘しなければならない点は、減税の規模が過小であるということであります。政府は、三十七年度において、国税九百八十七億、地方税二百七十三億の減税をしようというのであります。これに対し、税の自然増収は、三十七年度、国税において四千八百億円、地方税において二千億円の巨額に達するのであります。この膨大な自然増収に対し、このたびの減税は、まことにお粗末なものと言わなければなりません。物価騰貴に苦しむ国民にとって、焼け石に水とは、まさにこのことで、二兆四千億という大型予算の犠牲に供されたと言わなければなりません。(拍手昭和三十六年度には七千億円の自然増収が確実だといわれ、三十七年度にはさらに五千億円のこの膨大な自然増収が、結局、租税負担の増加となって、国民の上にかかってくるのであります。自然増収国民に返そうとしないで、取れるだけ取ろう、しぼれるだけしぼろうとする池田内閣の冷たい政治が、如実に表われていると見るべきであります。(拍手池田内閣は、所得倍増、高度成長と、大ぶろしきを広げておりますが、国民の生活は少しも楽にならないのであります。物価の騰貴を押え、重税から国民を解放し、国民生活の安定をはかることこそ、目下の急務であると信ずるのであります。政府の諮問機関である税制調査会の答申を見ても、わが国の秘税負担は、戦前及び諸外国の税負担の割合に比較して、なお相当に重いという結論を得たと報告し、さらに、国民所得に対する税負担の割合を二〇%程度の線で押えることを基本的な目標として、減税政策をとるべきであると述べているのであります。政府は減税を過小に圧縮したため国民所得に対する税負担は二二・三%となり、二〇%ラインを大きくこえているのであります。もしかりに、この答申のごとく、租税負担率を二〇%にとどめるならば、さらに三千億円もの減税が可能となるのであります。政府は、昨年来景気調整策として金融引き締め設備投資の抑制等一連の政策をとってきたが、一部産業界の要求に押されて増加財源の大部分を歳出に振り向け、大型予算を組んだところに、政策上の矛盾が出てきているのであります。これは所得倍増、高度成長政策そのものに無理があるのではないかと思われるので、特に総理大臣見解をお伺いしたいのであります。  第二の問題点は、今回の税制改正にあたって、租税特別措置に手を加えていないことであります。現行の税法には、幾多の不均衡、不公平があることは、国民のあまねく知るところでありますが、その中でも、最も負担の公平を阻害し、しかも大資本本位に設けられた偏向減税、租税特別措置の存続は、池田内閣が独占資本に奉仕する典型的なものであります。これらの特別措置による減税額は、三十六年度予算ベースで一千五百億円以上の巨額に達し、三十七年度はさらにこれを上回ることは必至であります。特別措置は、以前から整理合理化が強く要請されているにもかかわらず、依然としてこれを存置し、国民大衆に対する減税を過小に押えていることは、われわれの絶対に容認することのできないところであります。租税特別措置は、もともと時限立法であり、臨時的なもので、期限が来れば当然廃止さるべきものでありますが、政府も、大企業も、この措置が既得権のように思い込んでいるのであります。租税特別措置を最も広範に利用しているのは、一部の大企業であり、数種の特別措置を合わせて利用しているため、課税所得は総所得の五〇%程度となり、したがって、法人税三八%といっても、実効負担は二〇%にも満たないのであります。特別措置の中で最も課税公平の原則を阻害しているといわれる利子所得に対する特例は、さらに延長されようとしております。額に汗して働く勤労者は、五人家族で非課税限度は四十一万円であるのに対し、配当所得では百三十三万円までが非課税となっているのであります。かくのごとく、今回の税制改正の実態は、依然として、大法人や利子所得、配当所得という不労所得者に対する恩典を温存し、これを不当にまで保護することに貫かれているのであります。この際、租税特別措置を大幅に整理することは、第一に、税制の上で大企業に対して不利な立場にある小企業の競争条件を改善することができる、第二に、減税規模を拡大し、景気過熱化の税制的要件を取り除くことができる。第三に、税負担のアンバランスを是正できる。第四に、収益力のある大企業に対する隠れたる補助金、無利子融通を是正し、国家経費の配分を適正化することができる。あらゆる観点から見て、この際、租税特別措置に根本的なメスを加え、大幅に整理することが緊要であると思うが、大蔵大臣の所信を伺いたいのであります。  第三は、所得税の減税に関し、若干の質問をいたしたいのであります。  政府は、中小所得者の負担の軽減を主眼とする間接税及び所得税の減税をしたといっておりますが、三十七年度における所得税の減税は四百三十八億円にすぎず、一方、地方税において所得税の一部を地方に移譲したため百八十一億円の増税となり、結局差引二百五十七億円の減税にすきないのであります。これを、五人家族、年間所得五十万円の人について見ると、国税において年間三千七十七円の減税となり、地方税では九百九十一円の増税、差引二千八十六円、一カ月当たりわずかに百七十四円の減税にすぎないのであります。同じく年間所得三十万円の独身者について見ると、一カ月当たり百三十円となり、ピース三個の代金にすぎないのであります。今回の所得税の減税がいかに貧弱なものであるか明白であり、大蔵大臣は、大きな顔で所得税の減税など言えた義理ではないと思うのであります。わが日本社会党は、かねてから生計費には課税すべきでないと主張して参りました。これはまた一般勤労大衆の強い要求でもあります。総理府統計の示すところによりますと、昭和三十六年八月において、全都市消費世帯平均支出は、四・五五人で一カ月当たり三万八千七百二十二円、これを五人家族に直すと、月額四万二千五百円になるのであります。この数字は、その後の物価高で若干増加していると思われますが、これが昨年八月における全都市標準世帯の実際の生計費であります。年額にすると約五十一万円に当たります。今回、所得税の改正で、標準世帯において、給与所得者に対しては三十九万円を四十一万円に、事業所得者には三十七万円を三十九万円と、非課税限度を引き上げようとしているのでありますが、わずかに二万円の引き上げでは、物価騰貴に苦しむ国民にとっては救われないのであります。憲法二十五条は国民の最低生活を保障しており、少なくとも生活費に課税しない限度まで免税点を引き上げるべきである。総理見解を特にただしたいのであります。  次に、地方団体の行政水準を高め、地方自治の健全なる発展をはかるためには、行政事務の再配分を前提として、国税、地方税を通ずる税の再配分を検討しなければ、抜本的な解決は困難であると思うのであります。しかるに、今回の地方税の改正は、国税、地方税を通ずる根本的な改革に触れることなく、全く技術的な改正にとどまり、その上、道府県民税の増税、高級料理店に対する税の減免、入場譲与税の廃止等、幾多の問題があります。  第一に、所得税の一部を地方に移譲したことは、地方の自主財源を強化する意味において一歩前進ではありますが、道府県民税を百五十万円以下二%、百五十万円以上四%の二段階の比例税としたため、現行の負担増減率は、給与所得者の場合、独身者十五万円の者は一五〇%増、三十万円では一二四%増、五人家族の場合五十万円では八二%、百万円では三〇・六%、二百万円では五・九%と、累滅方向を示しているのであります。このことは、低所得者に重い税がかかっていることを示すもので、政府の言う中小所得者の負担軽減の趣旨に反していると言うべきであります。第二に、料理飲食税の問題であります。料理飲食税の減税は七十億円に達し、一連の地方税中第一位を占めているのであります。このことはわれわれの理解に苦しむところであります。特に高級料理店に対してかような大幅な減税をいかなる趣旨で行なったのか、自治大臣説明を求めたいのであります。  第三に、所得税の一部を地方に移譲する見返りに入場譲与税を廃止した点であります。地方の自主財源の強化が必要とされている現状において、入場譲与税を廃止する必要はないと考えるのであります。むしろこの際、地方の自主財源を強化するために、交付税率とたばこ消費税を大幅に引き上げるべきであると考えるのでありまするが、自治大臣説明を求めます。  明年度地方財政計画を見ると、大幅な歳入増が見込まれ、その財政規模も、前年度に比し一九・五%の伸びを示す二兆二千八百五十億円に達し、一応財政的に余裕ができたように見えるのでありますが、その内容を検討すると、依然として独立財源に乏しく、地方独自に行なう単独事業は六百億円にすぎないのであります。特に昭和三十七年度予算で最も重大な高校生徒急増対策に、わずかに百三十三億円しか見積もられていない。この程度財源措置では、三年間に百二十万人も増加する高校生徒の受け入れ態勢を整備することは困難と思われるのであります。文部大臣は、一月二十四日の本会議において、高校生徒急増対策について、八十万人は公立学校に、四十三万人は私立学校において収容できるよう年次計画を立て、三十七年度から具体的年次計画地方財政の面に移し、これに対し起債及び交付税を、ひもつきで、きちんと備えることに政府部内の意見がまとまり、父兄に心配をかけないようにしたいと言っておられるのでありまするが、われわれは、文部大臣のこの言明を簡単に信用するわけには参らないのであります。  第一に、私立学校に四十三万人収容するといわれますが、この保証はどこにもないのであります。私学の経営は漸次改善されつつあるとはいうものの、教員給与一つをとって見ても、公立学校との間に相当な開きがあり、今日経営困難を訴えているものが少なくないのであります。この私学の現状において、三年間に四十三万人の収容を期待することは無謀といわなければなりません。文部大臣はいかなる根拠に基づいて四十三万人収容が可能と判断されたのか、その理由を明らかにせられたいのであります。  第二に、地方財政計画に見込まれている百三十三億円については、土地の購入費が含まれていないと聞いているのであります。土地なしで学校が建つはずがないので、これらは市町村あるいは父兄負担でまかなおうとしているのか、との点を明らかにしていただきたいのであります。  第三に、高校生徒急増により、激しい入試競争が起こることは必至であり、その結果、中学浪人は出る、寄付の強制が一段と高まる等、大きな社会問題が起こることが懸念されるのであります。大臣は、これらの問題に関し、どのように対処しようとされるのか、その所信をただしておきたいのであります。  次に、自治大臣にお尋ねいたしますが、  第一に、今日の都道府県財政状態で高校生徒急増対策が完遂できるとお考えになっているのかどうかという点であります。知事会議の決議を見ると、高校生徒急増対策に必要な経費は一千二百億円に達し、向こう三カ年間にこれらに必要な施設を整備することは、都道府県財政の事情ではとうていその負担にたえることは不可能であるといっているのであります。この経費は臨時的な支出であり、経常的な経費追加されるので、地方団体の財政事情を大きく圧迫することは言を待たないところであります。この負担増が将来にわたって地方財政の悪化を招き、地方財政の健全性が大きくそこなわれることを懸念するものであります。地方財政の健全性を維持する立場から見ても、国庫補助の措置を講ずべきであると思うのでありまするが、自治大臣の所見を伺いたいのであります。  第二は、三十七年度地方財政計画に百三十三億円組んでいるが、三カ年の年次計画の上に立って組まれたものであるかどうか、その年次計画内容を明らかにしていただきたいのであります。  最後に、池田総理にお尋ねをいたします。池田総理は施政方針演説において、文教重視の政策国民に約束せられ、国民はその具体的な発展を注目しているのであります。文教の振興は、まず第一に教育財政の確立が基本であると思うのであります。教育財政の確立なくして何の教育振興ぞと言いたいのであります。(拍手)今日、地方団体は教育費の確保のために非常な熱意をもって努力しておるのでありますが、今日の財政事情ではその負担にたえ切れないというのが現状であろうと思われるのであります。自治省が昨年十二月に提出した資料を見ても、税外負担昭和三十五年度において三百五十四億円に達しておるのであります。そのうち七〇%、二百五十億円が教育費であることを見ても、この間の事情を物語っているものと思われます。教育予算の確保の道は、大幅な国庫負担以外に方法がないと考えられるのであります。八割国庫負担、二割地方負担こそ、教育財政確立の道であると思うのでありまするが、総理はこの際、教育財政確立のため根本的な検討を加える意思があるかどうか、その所信をただしまして、私の質問を終わることにいたします。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  26. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私に対する御質問は、第一点が減税の規模と免税点の引き上げでございます。御承知のとおり、われわれは過去十二年間、例外はございまするが、ほとんど毎年減税をいたしまして、中央、地方を通じまして、ここ十二年間に一兆円以上の減税をいたしております。どこの国にもこんな減税をした国はない。私は減税は政治の一つの根本——大きい目標であると考えまして、常に減税を行なっておるのであります。しこうして、今回の減税は小規模だ、あるいは高度成長に無理がある、こうおっしゃいますが、高度成長があったからこそ減税ができるのであります。この点は各国の例をお調べになってもよろしい。私は、減税には力を入れておりまするが、減税ばかりが政治じゃございません。やっぱり社会保障制度の拡充とか、あるいは文教の刷新とか、あるいは災害その他に対しまする国土保全等々、国のやらなければならぬ仕事はあるのであります。したがいまして、減税ばかりというわけにはいきません。社会保障制度の拡充、今お話にもありました文教制度の刷新向上、これが必要でございますので、彼此勘案いたしまして、私は、今年は中央、地方を通じまして千二百億円余りの初年度の減税、平年度の千五百億円で、がまんすべきと考えておるのであります。しかも、この、中央、地方を通じまして千二、三百億円の減税は、過去十年間にほとんど例のないほどの減税でございます。高度成長のたまものと私は考えておるのであります。また、免税点の引き上げにつきましても、今年だけをごらんになっちゃいけません。十年前の免税点は幾らであったか。そして、おととしと今とを比べたらどうか。おととしは三十二万円程度のものだ、今は四十万円、九万円近くここ一年半に上がっておるのであります。これを考えますと、免税点の引き上げも相当行なわれておるということがおわかりいただけると思います。  次に文教政策につきまして、教育財政の確立を主張される。私も教育財政の確立は意を用いているところであります。文教政策は、施政演説で申しましたように、まず、第一に教育内容改善、そうして教育施設、三に教育の機会均等、こういうのでやっているのであります。私は、この教育財政の確立拡充をはかるために、国の財政におきましてはもちろん、最近地方財政も、お話のように、よほどよくなりつつありまするから、国と地方と力を合わせて教育の拡大をはかっていきたいと考えております。(拍手)   〔国務大臣水田三喜男君登壇拍手
  27. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) 租税における特別措置は、これは御承知のように、政策的な必要性とその効果を常に検討して、改廃すべきものだろうと思います。で、三十六年度におきましては、税制調査会にこの問題の全面的な検討を願いまして、昨年、三十六年度において大幅な整理をしたことも御承知と思います。これによりまして、三十一年から今日まで整理した減収額を見ますと、昭和三十七年度予算ベースで換算しますと一千六百億円程度になっており、昭和三十七年度における租税特別措置による減収額は約一千七百億円と見込まれますので、大体半分の整理を終えたことになろうと思います。で、もちろん、今後もこの検討を行なって、新設改廃いたすつもりでございますが、御承知のように、最近は低開発地の開発とか、あるいは新産業都市の建設とか、中小企業の団地造成とか、やはり新規の特別措置を要する事項が非常に多くなっておりまするので、こういう必要なものの新設はやるかわりに、従来の措置において期限のきたものを延長しないというような措置、新規の追加要求というようなものも見合わせるというような措置を、昨年の六月ごろから私どもはとっている状態でございますが、今後も努めてこの問題の改廃については引き続き努力するつもりでございます。  第二の問題で、所得税の減税が今年度非常に少ないということでございましたが、これも御承知のように、政府の行なっている減税政策は、三年間に一応体系的なこの減税を実施したいということから出ているものでございまして、昨年度が直接税中心の減税期でございまして、今年度は間接税を主とした減税をするという日程のもとに今まで検討してきたわけでございます。ですから、昨年度この所得税そのほかの大きい減税をやりました。今年度所得税の一部を地方に移譲するというようなこととの関連で、税負担を重くしないというために、さらに一歩調整的な減税をする必要ができたから行なったわけでございまして、昨年と今年を加えてみますというと、所得税においては千二百億円以上の減税になっておりますので、ことしの少ないというのは、そういう理由で、去年と比べてごらんになったら、先ほど総理がお話になりましたように、課税の最低限から見ましても、二年間で八万円上がっておりますので、こういう点からも相当思い切った減税になっているのじゃないかと考えます。(拍手)   〔国務大臣安井謙君登壇拍手
  28. 安井謙

    ○国務大臣(安井謙君) 地方税の部分についてお答え申し上げますが、大体、国と地方団体との間の財源調査につきましては、長くいろいろとぜひ必要だということが言われておりました。今度の税制改正を機会にそのある程度促進をいたしたわけでございまして、今、県の住民税について比例税率を採用したのは、これは不合理じゃないかという御質問でございますが、この比例税率を採用いたしますことによりまして、地方団体間の貧弱府県の団体には、非常に有利な財源措置に相なっております。しかもそれは、今度の減税は、先ほど御説明になりましたように、所得税との総合減税でございまして、総合的な観点から見ますれば、依然としてこの低所得者に大幅な減税ということになっておることは間違いございません。  なおそれに関連いたしまして、たばこの税率の一部移譲及び事業税の配分基準の変更、こういったような関係によりまして、国と地方だけじゃなくて、地方団体同士の財源調整も相当に今度は進めたつもりでおります。  入場税をなぜやめたか、こういうお話でありますが、御承知のとおり、入場税はもともと、現在は国税でございますが、単に譲与を受けておるという程度の税で、これは地方税源としては非常に強固なものとも言えませんし、だんだん先細りの税であることは間違いないのでございまして、この際、所得税の一部移譲と引きかえにこの譲与の制度をとりやめたわけでございます。  なお飲食税につきましては、御承知のとおり、従来これが場所別、業種別の課税標準をとっておりました。しかし、これは徴税技術の上からも非常に困難であるといったような点から、これは価格制度に直したわけでございます。  高校対策の財政につきまして、今後地方団体がやっていけるかという御質問でございますが、これはなかなか財政としては大事な問題であることはよく承知しております。現在のこの計画総額、施設費五百五十億、このうちの三十七年度の百五十四億分につきましては、本年度については国庫の補助起債及び交付税特別な基準による配分、これによってこの事業遂行はできるものと考えております。土地につきましては別途に、これは起債等の別途処置を考えるつもりでおります。(拍手)   〔国務大臣荒木萬壽夫君登壇拍手
  29. 荒木萬壽夫

    ○国務大臣(荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  第一点は、高校の生徒急増に対して政府考えておる対策は十分でないじゃないか、あるいは知事会議の意向とも食い違いがあるじゃないかという意味で、御心配なようなお尋ねであったと思います。先日も御指摘のように、この議場で申し上げましたとおり、高校生徒の急増百二十三万人と推定をいたしまして、そのうち八十万人を公立高等学校で、残り四十三万人を私立高等学校で収容したい。その事業量は金額で申し上げますると約五百五十億円余りにはなろうかと考えられます。これに対して、知事会議では三倍近い経費が要ると言っているという御指摘でございますが、その点は、たとえば学校を建てます用地につきましても、知事会側では増築分に対しても土地が要るような計算をされておったり、あるいはまた進学率等につきましても幾らか見解の相違がございます。さらに工事の単価土地単価等についても幾らかの相違がございますことが、知事会とわれわれの推計との相違点でございまして、先日来の知事会議でその点は大体了承してもらったような次第でございます。  そこで、それに対しまして、全体計画はそうでございますが、当面、三十七年度としては、これまた先日申し上げましたとおり、また御指摘もございましたとおり、国庫補助金十三億円、これは産業教育振興分、あるいは工業高校に対する普通校舎に対する補助金でございますが、それが十三億円、それに起債特別ワク五十億円、御案内のとおりであります。地方交付税を九十一億円と予定しまして、地方交付税法の改正のもとに、特に高校急増に対してこれが振り向けられるような措置を講じようというわけであります。  ついでながら、用地分の財源措置がないじゃないかという御指摘でございますが、これは特別に、五十億円の起債ワクの中ではございませんけれども、二千数百億円に上る起債ワクの中で、弾力的な運用のもとに、約百八十万坪と想定される用地購入のための財源措置を考慮されておるのであります。その金額は、具体的問題が進行しませんとちょっと推定が困難でございますが、私どもだけの立場で一応推計しましたものは約四十億円でございます。ただし、今も申し上げますとおり、中には国有地が振り向けられ、また公有地がこれに充てられる、あるいは個人でも篤志家があって土地を寄付されることもあり得るわけでございますから、実際金額はもっと下回ろうかとは思います。その意味で自治省との間に具体的金額の協定はございませんけれども、閣議決定でもって坪数だけは百八十万坪を必要とするという閣議決定をしておるわけでございます。そういう措置のもとに、合計いたしますと百五十四億円プラス用地分アルファと相なります。御指摘は百三十三億円ということでございますが、実質地方負担になりまする金額は、御指摘のとおり、そのほかに補助金等を加えますると百五十四億円の事業量で、今までの進学率を十分に維持するだけの高校急増対策はでき得るものと存じておる次第でございます。  次に、私立学校の高校急増対策四十三万人を予定しておるようだが、財源措置等、はたして十分かどうか心配だというお話でございました。結論から申し上げれば、十分とは申しかねる面もございまするけれども、大体において私学でこれだけのものを引き受けてもらえそうに考えておるのであります。それは、収容計画としまして、現在私学が持っております施設の中に収容してもらう員数を十三万人と予定いたしております。校舎の新築増築等によりまして約三十万人を予定いたしております。この経費につきましては、私学振興会からの長期低利貸付、御承知の貸付であります。国庫補助金若干、都道府県の助成及び自己資金でまかなっていきたいと考えておるのでありまして、三十七年度財政措置としましては約四十億円の資金が要ろうかと思いますが、その内訳は、私学振興会からの融資約十六億一円、国庫補助金、産業振興法に基づく分でございますが、国庫補助金約二億七千万円、都道府県からの助成約十億円、そのほか私学の自己資金によって事業量約四十億円をまかなって、とにかく三十七年度に対処すべき措置としては十分であろうかと存じております。  最後のお尋ねは、高校の生徒が急増していくならば、今後いわゆる入学難か試験地獄が起こるのじゃないか、心配だという御指摘でございます。この点につきましては、今まで申し上げたことで御理解いただけようかと思いますが、従来の進学率は維持する建前で、以上申し上げました措置をいたしまする限り、特に入学難あるいは試験地獄などということは起こらないと考えるのであります。現に、今日までの最近の高校の入学状況、入学志願者対人学者の比率を見ますと、九七%入学をいたしております。この程度の入学率は確保できるものと思います。ただ現実に、有名校に志願者が殺到しますために、御指摘のような入学難、試験地獄等の様相を呈しますけれども、これは生徒本人の考え方、あるいは先生方の進学指導、さらには家庭における指導、そういうことと相待ちまして、特別にたいへんな入学難が起こるということは避けたいことでございまするし、また避け得るものと考えておる次第でございます。(拍手
  30. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 永末英一君。   〔永末英一君登壇拍手
  31. 永末英一

    ○永末英一君 私は民主社会党を代表いたしまして、税法改正三案に対して質問を行ないます。  これら三案とも、総理が施政方針にうたわれました減税の実体の一部を示ずものであります。確かに今回の税制改正によりまして、国税は九百八十七億円の減税になりました。ところが、それだけ国の収入は減るかと思えばそうではなくて、逆に三十六年度の当初予算額に対しては三千七百七十二億円の増加となっております。つまり、これだけ国民のふところから税金が、昨年の計画に比較して、よけいに取られるということだけは事実であります。政府が減税というのは、国民にとっては増税である。まことに世にも不思議な物語といわなければならぬと思います。政府は、税法上の減税をいたしたというのでありますけれども、しかしそれは、たとえば給与所得につきましては、三十六年度に比べて賃金水準六・一%の上昇、雇用四%の増加、また個人営業所得九%増加、法人所得四%増加を見込み、さらに消費者物価は総合指数で八%も上昇するであろうとの予想の上に組み立てられた数字であります。国民の側からすれば、税法上の減税というようなものは、経済水準の向上に伴って行なわれるべき調整にすぎないものであって、こんなものに対して減税というような名が与えられないのが当然ではないかと感じられるのです。国民は、日常生活の中で支払わされる税金が自分に与える痛さの度合いで、減税かどうかを判定する、これが庶民の感覚であります。  国民の側に立つとき、私は以下に述べる理由によって、この三案は減税を意味しないと断ぜざるを得ません。  第一は、国税、地方税を合わせた租税負担率が年々大きくなってきているという事実であります。それは、三十四年度一九・八%、三十五年度二一・五%、三十六年度は、当初二〇・七%が結局二二・八%が見込まれる。さらにこの案で示されておりまするように、三十七年度はすでに二二・二%であって、政府の連年の手口から考えますと、おしまいには二三%をこえるであろうという勢いであります。こうした政府のやり方が、毎年、年度末の揚超期に入りますと、ことしもそうでありますが、金詰まりを生じさせ、このために政府は買いオペをやらなくちゃならぬというようなことであります。租税負担率をこのように毎年引き上げながら、これを減税だと一体言い得るかどうか、この理由をひとつ明らかにしていただきたい。  第二は、所得税の課税最低限がきわめて低く、負担が高いという問題であります。政府は、今回の税制改正で、中小所得者の負担を減じたと言うのでありますが、とんでもないことだと思います。政府説明によれば、課税最低限は、夫婦子供三人の標準世帯で、給与所得者は約三十九万円から四十万八千円、専従者のいない事業所得者は約三十万円から三十一万五千円に引き上げられたといいます。しかし、月にいたしまして千三百円から千四百円程度の軽減というものは、これは見込まれる物価の値上がりで消しとんでしまう程度のものであって、これに対して、相当程度軽減されたと言うのでございますから、政府の心臓には毛が生えていると言わざるを得ないと思います。戦前の昭和十年ごろ、同じ標準世帯では、現在の金額に引き直して年収六十六万円まで免税でありました。また、百二十万円まで免税のアメリカや、八十万円まで免税の西ドイツ、七十三万円まで免税のイギリスなどと比較いたしますと、この課税最低限というものは、まだなおきわめて低いと言わざるを得ない。大体シャウプ税制以来、大衆課税によって資本蓄積を強行しているようでは、口で福祉国家なんぞ言いましても、とうていできるものではないのであります。「わかっちゃいるけどやめられない」というのでは、国民は「涙が流れないように」「上を向いて歩こう」、こういう工合な気になるのは当然じゃないですか。いわんや税源配分の適正化ということを名にいたしまして、所得税を払っていない多数の国民にまで府県民税の増税を行なおうとしている。一体、府県民税で今度とられようとする比例税率は、説明はございましたが、上に軽く下に重い負担になっているということは、これは幼稚園の子供でも知っていることであります。一体、こういうことで中小所得者に減税をしたと言えるかどうかということを伺いたい。  第三は、政府自慢の所得倍増計画が、国民に対して増税の押しつけになるという問題であります。所得倍増計画は、大資本に対する設備投資を中心に強行され、この方面における経済成長の大きな伸びのために、国民所得が、全体として、ならして伸びたかのような感を与えます。しかし、一般国民に与えられたものは、財政膨張と金融の偏向による、から景気の風に吹きまくられた生活困窮の欲求不満であります。生産力増加が国民すべてのふところのふくらみになるには時間がかかります。いやまた、日本経済の構造が、所得倍増なんか関係ないわと嘆かせる多数の国民を存在せしめている事実を忘れてはならないのであります。改正税制は、所得倍増計画が生み出すこのような国民生活の格差に一体対応していかれるであろうかどうかを、われわれは疑うものであります。さらに、税制調査会でも検討されましたように、所得が一〇%伸びれば、標準世帯の給与所得者で、所得五十万円の場合、所得税は実に四八・二%増加するというからくりになっているのが、現行税制です。改正案でもこの点は一向是正されておりません。しかも改正案は、事業所得者は来年度九%程度所得が増加するものと見込んで作られているものでありまして、一般事業所得者が、ふえもしない所得を押しつけられて、減税どころか、増税に泣くことがないと政府は保証することができるかどうか。基礎控除のわずかな引き上げだけで問題は解決いたしません。税率の改定ということが私は問題であろうと思いますが、以上三点について総理からお答え願いたい。  もともと税金というのは国家権力による国民からの収奪であります。したがって、何よりもせめて公平の原則だけは豊かに貫いていただきたいと思います。ところが、政府の、税制を武器として資本蓄積をやろうというようなやり方は、そのしわを中小所得者に寄せてきていることは、だれしもが認めるところでありまして、このやり方がまだ是正されていない。国民の目から見れば、政府は税負担の公平の原則を守る熱意がないのではないかと断ぜざるを得ないのであります。以下それを明らかにしていきます。  第一は、資産課税をなぜ考えないかということであります。日本経済は底が浅いと申しましても、近年の成長は目ざましいために、国民の中には、その成長のおかげで、きわめて高額の所得を得るものが生まれて参りました。通常これらの所得には、利子、配当、賃貸料、譲渡益などの資産所得が主要な部分を占めております。課税の公平を期そうというのであるならば、ここに課税しなければならぬというのは、だれでも思いつくところでございますが、この所得課税の補完税として資産課税を考えるべき段階にきておるとわれわれは思うが、一体、政府はどうお考えか。この点について今すぐに手を打たなければならぬのは、土地価格の暴騰に対してであります。土地価格の法外な騰貴が信用の大膨張の原因となり、また国民の社会生活の全般に大きな不安定感を与えていることは、だれしも知っております。日本ほどではない西ドイツですら、この一月から、宅地を買って一年以上住宅を建てない場合には二〇%の税を課するという対策がとられている。政策のこの件に関する対策は今まさに行なわなくてはならぬ喫緊の要務であると、われわれは考える。もちろん、税制だけで土地価格の急騰が押えられるとは、われわれも考えられません。しかし、税制の上でも何も考えていないというのは一体どうしたことか。この点に対する総理大蔵大臣の返答を聞きたい。  第二は、各種所得間の負担のバランスが十分とれていないという問題でございまして、たとえば、利子所得は分離課税などによって保護され、高額になればなるほど他所得に比べてきわめて安くなっている。配当所得も税率が軽減されている。株式譲渡所得の中には非課税のものすらある始末である。租税特別措置なるものを一年延ばしのずるずるべったりにして、これを既得権化しておいて、一般勤労国民に高い税金を納めよ納めよなんて強要することは昔の悪代官のすることだと大蔵大臣はお考えになりませんか。  第三は、個人企業と法人企業とのバランスの問題についてでありまして、個人企業の場合、所得額決定に至るまでの税務取り扱いの実際に実は問題があるのであって、出てきた所得の数字だけで個人と法人間の差はなくなったなどというのは、これはまあいわば手前みそに近いものではないかとわれわれは考えます。たとえば、専従者控除につきましても、専従者に人間らしい生活を保証し得る程度に大幅にこの控除を引き上げる必要があるとわれわれは考える。この点について一言言わなくちゃなりませんのは、中小企業等協同組合法によりまする企業組合の取り扱いについてであります。政府のように、個人でなければ法人、法人でなければ個人という、しゃくし定木のやり方では、企業組合は死んでしまいます。働く事業者と従業員の人的な結合体として企業組合の特殊な地位を税法上認めて、これを取り扱っていくという態度が必要だと思いますが、大蔵大臣はどうお考えですか。  第四は、法人間のバランスの問題です。大体、法人税率を比例税率にしているというのは、大法人保護の本質を露呈したものでありまして、小法人にはわずかな軽減税率を与えて、あめをねぶらし、大法人には租税特別措置で山海の珍味を食べさせるというようなやり方は、どうも賛成いたしかねる。重要外国技術使用料課税の特例、重要物産の免税、異常危険準備金、重要機械類輸入税免税などの産業政策理由にして、大法人に与えているこういう特典を廃止して、これら法人税率に段階を設けるということのお考えについてお伺いいたします。  もともと、地方税法地方団体の財政を安定させるための主軸となるべきものであります。ところが、自民党政府の行なうところ、行政事務は混淆され、地方団体は中央政府の下請と化してしまい、その独立財源は極度に圧縮され、金の鎖で中央統制に地方団体を服従させようとする、こういうやり方は、私は民主化に逆行していると言わざるを得ません。  第一の問題は、税源配分の合理化ということを言って府県民税を増税して、これで地方団体に強力な安定した財源を与えたと言うのでありますが、これは責任転嫁もはなはだしい。中央が税をとり過ぎているから地方財政が貧困である、これが原因です。所得、法人、酒主税を源とする交付税の大幅引き上げ、たばこ消費税の大幅引き上げこそ、地方団体に安定強力なる財源を与えるものであると思いますが、大蔵、自治両相は一体どう考えるか。  第二は事業税。これは事業所得者のみが負担する二重課税であることは明らかであります。今回の改正も、この点を考慮して少し負担率を下げましたが、「五厘負けとけ、気は心」では、国民は満足できません。国民のふところは一つです。事業税については軽減ではなくて撤廃の方向をとっていただきたい。  第三は電気ガス税。これは戦争直後の経済困難なとき、電気やガスを与えているのが恩恵に感ぜられたときに設けられた税金であります。今や全く事態は一変いたしております。これがまた一般国民に対する二重課税で、撤廃すべきであるとわれわれは考えるが、どう考えるか。  第四は、料理飲食等消費税において、外国人利用者に減免の特別措置を今まで講じてきた。大国意識過剰とも見える池田総理を中心とする現政府は、よもや、こんなお追従的なやり方を続けようとはしないと思いますが、こういう種類の税金のある外国では、内外人に区別なく領収しておるのは、外国で金を払った経験のある者ならだれでも知っております。もうやらないと言明していただきたい。  第五で最後ですが、自動車税。交通状況からすれば、段階をつけるなら、ホイールベースなど車の大きさで考えるべきであって、気筒容量で区別すべきものではありません。貿易自由化を控え、国内における自動車産業の前途を考えて、高速道路ができるというときに、この国内産自動車税の減税と気筒容量による区別を撤廃することが必要であると思うが、その意思があるかどうか。これらの点について自治大臣に伺いたい。(拍手)   〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  32. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) お答え申し上げます。  減税と言っても租税の負担率が上がっておるじゃないか、減税にはならぬ、こういうお話でございました。この十年くらい前からよく国会で議論されておりますこの議論は、所得の移動ということを考えまして、三十万円の人が三十万円なら減税になる。三十万円の人が五十万円の所得になれば負担が多くなることは当然であります。この理論はお忘れなく。ビール一本飲めば六十五円の税金、十円下がっても二本飲んだら百十円の税金になることは、当然のことです。この理論を忘れては租税の負担の議論はできない。それから、租税というものは公平であればいい。公平の原則は、かりにとられていいと思いますが、租税というものは公平ばかりではいかぬ。国民経済をどう持っていくかということも租税の大きい原則でございます。基本でございます。そうしてまた、租税というものは国民経済と公平だけでいいか。やはり徴税の原則を考えなければいかぬ。これは、財政学上、租税学上みな言っておるわけです。公平だけで租税の議論はできません。したがって、公平が租税の根本でございますが、公平を保ちながら国の経済の発展と徴税の便宜を考えなければいかぬ。したがって、お話の資産課税、いろいろ私は財産税を立案したこともございます、あるいはいろいろな資産課税を立案したこともあるのでございますが、公平ばかりではいかぬ。完全に公平に徴税できるかという問題が非常にむずかしい問題でございます。したがいまして、今のお話の土地に対しましても、ドイツなどでは、昔、増価税をやっております。われわれもそれを計画したことがございます。あるいは空間税というものがございましょう。あるいは不動産取得税もございましょう。しかし税を課税することによって、かえって土地が値上がりする場合もある。こういう点をよく考えないで、一がいに公平ばかりでは租税行政というものはできません。われわれは、むずかしいからといって、ほっておくのじゃございませんが、いろいろ今考えておるのでございます。その他につきましては関係大臣から申し上げます。(拍手)   〔国務大臣水田三喜男君登壇拍手
  33. 水田三喜男

    ○国務大臣(水田三喜男君) すでに総理からお答えがございましたが、資産所得に対する御質問がございました。で、資産家層に対する課税が甘いというようなことでございましたが、御指摘のような、たとえば配当所得については配当控除制度がございますが、これは法人税との二重課税を排除するという意味の調整措置でございまして、これは特別に資産家所得の優遇措置ではございません。また利子所得にしましても、貯蓄増強の必要から特別措置をとっておるだけでございまして、特にこれは資産家に対する優遇措置ということではございませんし、株式の譲渡所得の非課税も、今お話がありましたように、技術的に非常にむずかしい。したがって、有価証券の取引税というものを設けて、一方非課税にする。で、取引における、譲渡における損失が出た場合も他の所得から控除しないというような措置をとっておりますが、こういうふうに、特にこの資産所得を優遇しておるというごとはございませんが、大体この日本の税法は、御指摘のように高度の累進構造になっておりますので、一般的に資産所得は普通所得のもう上積みであるというふうに見られて、高い税率をかけられておるというのが現状でございますので、特にその上に、特別な資産所得税というようなものをこしらえる必要は私はないのではないかと思っております。  それから、土地の値上がりについての問題ですが、先ほど総理からもお話のとおり、私どももずいぶんこれは研究しました。いろいろ税によって押える方法があるかということを研究しておりますが、問題は宅地の絶対量が不足しているということから来る本質的な問題を持っておりますので、もし、そうだとすれば、土地は今売手市場になっているのが現状でございますから、税をかけたら税は必ず需要者に転嫁されてしまう。上がってしまう場合のほうが多い。そうしますというと、土地の価格を押えるという方策として税制だけを先行させるということは、これは適当ではないと思いますので、結局、地目変換について、今農地を簡単に転用できないとか、いろいろなまだ問題がございますので、そういう総合的な措置の一環として考えるよりほか仕方がないのじゃないかと思っております。  それから企業組合の課税の問題がございましたが、現在は普通法人の軽減税率である三三%の税率を主として適用しておりますが、これは実態的に見て、一般の中小企業である法人と同じでございますので、もし企業組合だけに特別の税制措置をとるということになりますと、一般中小企業である法人との不均衡を生じてきますので、これもなかなかむずかしい問題だろうと思います。  それから大法人と中小法人についての御質問でございましたが、中小法人については三十六年度の税制で、御承知のように、留保所得課税を軽減するとか、中小企業用の設備にかかる耐用年数において、大企業の耐用年数の平均を上回った特別の優遇措置をとっておる。また、中小企業の合理化の機械については、特別償却の期間拡充をやりまして、大企業との区別をつけておる。そういういろいろの税制改正を昨年来やっているところでございまして、明らかに私どもは中小法人のほうが有利になるような税制を考慮しております。  入場税のお話でございましたが、これはもう一向伸びる見込みの少い、伸張性のない、また安定性のない今税金でございますので、これは国が引き取る。そうして、安定性、伸張性のある税金と置きかえるということは、地方財政の健全化のために非常にいいことだろうと考えて、それにあわせて、今度は、たばこ消費税の率の引き上げや、地方交付税引き上げをやるという措置にあわせて、今回の税制改正によって地方財政がマイナスになるという措置には絶対ならないものであるということを御承知願いたいと思います。(拍手)   〔国務大臣安井謙君登壇拍手
  34. 安井謙

    ○国務大臣(安井謙君) 府県民税の標準税率を採用することによって、所得税を払っていない階層に税額負担が増すのじゃないかという御懸念でありますが、これは決してそういうことはいたしません。そういう場合はすべて税額を控除いたしまして、従来より負担になることはないことは、はっきりいたします。また、交付税、たばこの税率についてもっと上げろと、こういうお話でございます。なるほど多々ますます弁ずではございますが、交付税につきましては、御承知のとおり、今回も実質上〇・四%上げまして、しかも、臨時交付税率を普通交付税率へ繰り入れまして、安定したものにいたしております。たばこも今回久しぶりに二%を繰り入れたわけであります。将来伸びる税源でありますし、今回はこの程度が適当なものであろうと心得ております。  事業税は、法人税あるいは所得税とダブるような性格だから、廃止したらどうかというお話でございますが、事業税の性格はちょっと違うと思います。これはやはり事業地方団体との応益関係というものを見て、事業体自体にかけておる税でございます。したがって、その事業税経費の上からは損金に計上するというような措置もとられておるので、むろんやめるつもりはございませんが、だんだんと中小企業の関係事業税率は毎年々々低減をいたしているわけでございます。  自動車税も同様に、大きさあるいは気筒の種類を標準にして、税制の合理化をやったのであります。  電気ガス税をもっと下げろというお話——(「全廃だ」と呼ぶ者あり)これは原則的には賛成でございます。総理も実はそういう御希望を持っておられるわけであります。ただ、地方財政の特に貧弱な市町村——むしろ町村におきまして、これの占める比率が今日は強いものになっているので、これは今全廃ということに参りません。漸減の方針でただいまやっているわけでございます。(拍手
  35. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。    ————————
  36. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第三、炭鉱離職者臨時措置法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長報告を求めます。社会労働委員長高野一夫君。   〔高野一夫君登壇拍手
  37. 高野一夫

    ○高野一夫君 ただいま議題となりました炭鉱離職者臨時措置法等の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審議の経過並びに結果を報告いたします。  炭鉱離職者臨時措置法は、皆様すでに御承知のように、昭和三十四年十二月に制定施行せられたものでありますが、これは、炭鉱離職者のために特別の緊急就労対策事業及び職業訓練を行なうことのほか、炭鉱離職者援護会を設けて、再就職等の援護に当たらしめ、炭鉱離職者の再就職と生活安定を助成しようとしたものであります。  その後、昭和三十六年六月に制定施行せられました雇用促進事業団法によって、炭鉱離職者援護会は雇用促進事業団に統合拡充せられたのでありますが、措置法施行以来、昨年末までに、職業訓練を受講した者は約六千名、広域及び一般の職業紹介による再就職者が約四万四百名、移住資金の支給を受けた者約二万三千名の成績をあげているのであります。しかし、炭鉱離職者の続出と、中高年令者の再就職が困難であるなどのため、産炭地域には今なお多数の失業者が滞留し、また、工業地帯とその他の地域との間には、労働力需給の不均衡が見られますので、本法律案によってさらに対策を強化して、雇用奨励金の支給、移転就職者のための住宅資金の貸付等を行なうことにしたいために、関係法律に必要な改正を加えようとするものであります。  すなわち、本法律案の要旨は、まず第一に、炭鉱離職者臨時措置法を改正して、公共職業安定所の紹介によって炭鉱離職者を雇い入れる事業主に対しては、雇用奨励金を支給することとして、この業務を雇用促進事業団に行なわしめるとともに、同事業団の支給する雇用奨励金及び職業訓練手当が最も効率的となるよう、その支給条件を定めることであり、次に、第二としては、雇用促進事業団法を改正して、移転就職者を雇い入れる事業主などに対し、その雇用労働者のための住宅及び福祉施設の設置または整備に必要な資金を貸し付けることを雇用促進事業団の業務に加えるとともに、事業団は、この貸付業務の資金に充てるため、長期借入金または雇用促進債券の発行を行ない、また、労働大臣の認可を受けて他の金融機関に貸付業務の一部を委託できるようにすることであり、第三には、炭鉱離職者対策に関する規定は、本年一月一日にさかのぼって適用し、労働力流動化のための融資に関する規定は本年四月一日から施行することなどであります。  委員会においては、労働大臣及び政府委員に対して質疑を行ない、たとえば、「石炭鉱業に関する政策は、関係各省がさらに緊密なる連絡のもとに企画確立すべきものであり、合理化等の整理による離職者に対して事後の援護措置を講ずるよりも、職場転換など、あらかじめ離職者を生じないよう十分配慮して、根本対策を確立すべきではないか」という質問、または、「炭鉱離職者を、民間企業ばかりでなく、増員の郵政職員のごとき政府機関にも率先して就職せしめるべきではないか」との質問があって、これに対し、労働大臣から、「石炭対策の確立については、そのような趣旨で従来から主張しているところであり、また、郵政当局にもすでに協力を求めている」との答弁があり、次に、「雇用奨励金の支給期間は一年間にすぎないが、期間経過後に解雇されたり、賃金を切り下げられるおそれはないか」との質問に対しては、「不なれな労務者の雇用を促進するためにこの奨励金を新設したので、一年間も支給すれば、その間に新しい仕事に習熟して、能力相応に昇給するであろうし、従来の実績もこの程度の昇給を見ている。また、当初の職業紹介にあたっても、その職場の給与状況を十分勘案して、懸念されるような弊害が起こらぬよう行政指導に努めたい」との答弁があり、次に、「雇用促進事業団住宅の入居期間の一年以内に公営住宅に転入することができず、また、新しい雇用主が労務者住宅を建設することができないときはどうするか」との質問に対しては、「公営住宅への転入については、建設省と従来緊密な連絡をとっており、万一お尋ねのような場合には、立ちのき要求などはさせない」との答弁があり、また、「中小炭鉱、特に租鉱権による業者に雇用せられる労務者は、劣悪なる労働条件のもとに低賃金で就労しているが、炭鉱労務者の最低賃金制度実施時期はいつごろか」との質問に対しては、労働大臣から、「この問題は最低賃金審議会で審議中であるが、早期に実施してほしいとの要望を適当の方法で伝え、促進をはかりたい」との答弁がありました。  そのほか、住宅資金の雇用主以外への貸付、職業訓練手当の増額、女子離職者の職業訓練等について熱心な問答が行なわれましたが、詳細は会議録によって御承知を願いたいと思います。  質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して阿具根委員から、炭鉱労務者が安んじて勤労に従事し得るような強力な政策の確立を要望し、それまでの措置として本法案に賛成の旨、また、民主社会党を代表して村尾委員から、離職者の再就職に対する政府の一段の努力と諸給与の改善を要望して本法律案に賛成の旨、並びに自由民主党を代表して鹿島委員から、本法律案に賛成の旨の討論がありました。  次いで採決の結果、本法律案は、全会一致をもって衆議院送付案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上報告いたします。(拍手
  38. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  39. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。    ————————
  40. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第四、郵便貯金法の一部を改正する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず、委員長報告を求めます。逓信委員長安部清美君。   —————————————   〔安部清美君登壇拍手
  41. 安部清美

    ○安部清美君 ただいま議題となりました郵便貯金法の一部を改正する法律案につきまして、逓信委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  この法律案は、郵便貯金の貯金総額の制限額を引き上げること等を内容とするものであります。現在、郵便貯金の一の預金者の貯金総額は三十万円でありますが、最近における郵便貯金の利用者の所得及び貯蓄保有額の伸びの状況財政投融資の原資の確保などの面から見まして、低きに過ぎると考えられますので、これを五十万円と引き上げて、預金者の利便と郵便貯金の増強をはかろうとするものであります。また、貯金総額の制限額の引き上げに伴いまして、積立郵便貯金の一回の預け入れ金額につきましては、現行の百円以上一万二千円以下を百円以上二万円以下に改め、定額郵便貯金及び定期郵便貯金の預け入れ金額につきましては、現行の三千円及び三万円を廃止して、新たに十万円を設けようとするものであります。  逓信委員会における質疑のおもなるものを申し上げますと、郵便貯金事業の経営状態、郵便貯金の種類別増減が事業経営に及ぼす影響、郵便貯金利子と銀行預金利子との比較、五十万円の算定の根拠等でありますが、その詳細は、会議録によって御承知願いたいと存じます。  かくて質疑を終わり、討論に入りましたところ、別に発言もなく、直ちに採決の結果、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  右御報告申し上げます。(拍手
  42. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  43. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。  次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十分散会