○永末英一君 私は
民主社会党を代表いたしまして、税法改正三案に対して
質問を行ないます。
これら三案とも、
総理が施政
方針にうたわれました減税の実体の一部を示ずものであります。確かに今回の税制改正によりまして、国税は九百八十七億円の減税になりました。ところが、それだけ国の収入は減るかと思えばそうではなくて、逆に三十六
年度の当初
予算額に対しては三千七百七十二億円の増加となっております。つまり、これだけ
国民のふところから税金が、昨年の
計画に比較して、よけいに取られるということだけは事実であります。
政府が減税というのは、
国民にとっては増税である。まことに世にも不思議な物語といわなければならぬと思います。
政府は、税法上の減税をいたしたというのでありますけれども、しかしそれは、たとえば給与所得につきましては、三十六
年度に比べて
賃金水準六・一%の
上昇、雇用四%の増加、また個人営業所得九%増加、法人所得四%増加を
見込み、さらに
消費者物価は総合
指数で八%も
上昇するであろうとの
予想の上に組み立てられた数字であります。
国民の側からすれば、税法上の減税というようなものは、
経済水準の向上に伴って行なわれるべき
調整にすぎないものであって、こんなものに対して減税というような名が与えられないのが当然ではないかと感じられるのです。
国民は、日常生活の中で支払わされる税金が自分に与える痛さの度合いで、減税かどうかを判定する、これが庶民の感覚であります。
国民の側に立つとき、私は以下に述べる
理由によって、この三案は減税を意味しないと断ぜざるを得ません。
第一は、国税、
地方税を合わせた租税
負担率が年々大きくなってきているという事実であります。それは、三十四
年度一九・八%、三十五
年度二一・五%、三十六
年度は、当初二〇・七%が結局二二・八%が見込まれる。さらにこの案で示されておりまするように、三十七
年度はすでに二二・二%であって、
政府の連年の手口から
考えますと、おしまいには二三%をこえるであろうという勢いであります。こうした
政府のやり方が、毎年、
年度末の揚超期に入りますと、ことしもそうでありますが、金詰まりを生じさせ、このために
政府は買いオペをやらなくちゃならぬというようなことであります。租税
負担率をこのように毎年
引き上げながら、これを減税だと一体言い得るかどうか、この
理由をひとつ明らかにしていただきたい。
第二は、
所得税の課税最低限がきわめて低く、
負担が高いという問題であります。
政府は、今回の税制改正で、中小所得者の
負担を減じたと言うのでありますが、とんでもないことだと思います。
政府の
説明によれば、課税最低限は、夫婦子供三人の標準世帯で、給与所得者は約三十九万円から四十万八千円、専従者のいない
事業所得者は約三十万円から三十一万五千円に
引き上げられたといいます。しかし、月にいたしまして千三百円から千四百円
程度の軽減というものは、これは見込まれる
物価の値上がりで消しとんでしまう
程度のものであって、これに対して、相当
程度軽減されたと言うのでございますから、
政府の心臓には毛が生えていると言わざるを得ないと思います。戦前の
昭和十年ごろ、同じ標準世帯では、現在の金額に引き直して年収六十六万円まで免税でありました。また、百二十万円まで免税の
アメリカや、八十万円まで免税の西ドイツ、七十三万円まで免税のイギリスなどと比較いたしますと、この課税最低限というものは、まだなおきわめて低いと言わざるを得ない。大体シャウプ税制以来、大衆課税によって資本蓄積を強行しているようでは、口で福祉国家なんぞ言いましても、とうていできるものではないのであります。「わかっちゃいるけどやめられない」というのでは、
国民は「涙が流れないように」「上を向いて歩こう」、こういう工合な気になるのは当然じゃないですか。いわんや税源配分の適正化ということを名にいたしまして、
所得税を払っていない多数の
国民にまで
府県民税の増税を行なおうとしている。一体、
府県民税で今度とられようとする比例税率は、
説明はございましたが、上に軽く下に重い
負担になっているということは、これは幼稚園の子供でも知っていることであります。一体、こういうことで中小所得者に減税をしたと言えるかどうかということを伺いたい。
第三は、
政府自慢の所得倍増
計画が、
国民に対して増税の押しつけになるという問題であります。所得倍増
計画は、大資本に対する
設備投資を中心に強行され、この方面における
経済成長の大きな伸びのために、
国民所得が、全体として、ならして伸びたかのような感を与えます。しかし、
一般の
国民に与えられたものは、
財政膨張と
金融の偏向による、から
景気の風に吹きまくられた生活困窮の欲求不満であります。生産力増加が
国民すべてのふところのふくらみになるには時間がかかります。いやまた、
日本経済の構造が、所得倍増なんか
関係ないわと嘆かせる多数の
国民を存在せしめている事実を忘れてはならないのであります。改正税制は、所得倍増
計画が生み出すこのような
国民生活の格差に一体対応していかれるであろうかどうかを、われわれは疑うものであります。さらに、税制調査会でも検討されましたように、所得が一〇%伸びれば、標準世帯の給与所得者で、所得五十万円の場合、
所得税は実に四八・二%増加するというからくりになっているのが、現行税制です。改正案でもこの点は一向是正されておりません。しかも改正案は、
事業所得者は来
年度九%
程度所得が増加するものと見込んで作られているものでありまして、
一般の
事業所得者が、ふえもしない所得を押しつけられて、減税どころか、増税に泣くことがないと
政府は保証することができるかどうか。基礎控除のわずかな
引き上げだけで問題は
解決いたしません。税率の
改定ということが私は問題であろうと思いますが、以上三点について
総理からお答え願いたい。
もともと税金というのは国家権力による
国民からの収奪であります。したがって、何よりもせめて公平の原則だけは豊かに貫いていただきたいと思います。ところが、
政府の、税制を武器として資本蓄積をやろうというようなやり方は、そのしわを中小所得者に寄せてきていることは、だれしもが認めるところでありまして、このやり方がまだ是正されていない。
国民の目から見れば、
政府は税
負担の公平の原則を守る熱意がないのではないかと断ぜざるを得ないのであります。以下それを明らかにしていきます。
第一は、資産課税をなぜ
考えないかということであります。
日本経済は底が浅いと申しましても、近年の成長は目ざましいために、
国民の中には、その成長のおかげで、きわめて高額の所得を得るものが生まれて参りました。通常これらの所得には、利子、配当、賃貸料、譲渡益などの資産所得が主要な部分を占めております。課税の公平を期そうというのであるならば、ここに課税しなければならぬというのは、だれでも思いつくところでございますが、この所得課税の補完税として資産課税を
考えるべき段階にきておるとわれわれは思うが、一体、
政府はどうお
考えか。この点について今すぐに手を打たなければならぬのは、
土地価格の暴騰に対してであります。
土地価格の法外な騰貴が信用の大膨張の
原因となり、また
国民の社会生活の全般に大きな不安定感を与えていることは、だれしも知っております。
日本ほどではない西ドイツですら、この一月から、宅地を買って一年以上住宅を建てない場合には二〇%の税を課するという対策がとられている。
政策のこの件に関する対策は今まさに行なわなくてはならぬ喫緊の要務であると、われわれは
考える。もちろん、税制だけで
土地価格の急騰が押えられるとは、われわれも
考えられません。しかし、税制の上でも何も
考えていないというのは一体どうしたことか。この点に対する
総理、
大蔵大臣の返答を聞きたい。
第二は、各種所得間の
負担のバランスが十分とれていないという問題でございまして、たとえば、利子所得は分離課税などによって保護され、高額になればなるほど他所得に比べてきわめて安くなっている。配当所得も税率が軽減されている。株式譲渡所得の中には非課税のものすらある始末である。租税
特別措置なるものを一年延ばしのずるずるべったりにして、これを既得権化しておいて、
一般勤労
国民に高い税金を納めよ納めよなんて強要することは昔の悪代官のすることだと
大蔵大臣はお
考えになりませんか。
第三は、個人企業と法人企業とのバランスの問題についてでありまして、個人企業の場合、所得額決定に至るまでの税務取り扱いの実際に実は問題があるのであって、出てきた所得の数字だけで個人と法人間の差はなくなったなどというのは、これはまあいわば手前みそに近いものではないかとわれわれは
考えます。たとえば、専従者控除につきましても、専従者に人間らしい生活を保証し得る
程度に大幅にこの控除を
引き上げる必要があるとわれわれは
考える。この点について一言言わなくちゃなりませんのは、中小企業等協同組合法によりまする企業組合の取り扱いについてであります。
政府のように、個人でなければ法人、法人でなければ個人という、しゃくし定木のやり方では、企業組合は死んでしまいます。働く
事業者と従業員の人的な結合体として企業組合の特殊な地位を税法上認めて、これを取り扱っていくという態度が必要だと思いますが、
大蔵大臣はどうお
考えですか。
第四は、法人間のバランスの問題です。大体、
法人税率を比例税率にしているというのは、大法人保護の本質を露呈したものでありまして、小法人にはわずかな軽減税率を与えて、あめをねぶらし、大法人には租税
特別措置で山海の珍味を食べさせるというようなやり方は、どうも賛成いたしかねる。重要外国技術使用料課税の特例、重要物産の免税、異常危険準備金、重要
機械類の
輸入税免税などの産業
政策を
理由にして、大法人に与えているこういう特典を廃止して、これら
法人税率に段階を設けるということのお
考えについてお伺いいたします。
もともと、
地方税法は
地方団体の
財政を安定させるための主軸となるべきものであります。ところが、自民党
政府の行なうところ、
行政事務は混淆され、
地方団体は中央
政府の下請と化してしまい、その独立
財源は極度に圧縮され、金の鎖で中央統制に
地方団体を服従させようとする、こういうやり方は、私は民主化に逆行していると言わざるを得ません。
第一の問題は、税源配分の合理化ということを言って
府県民税を増税して、これで
地方団体に強力な安定した
財源を与えたと言うのでありますが、これは
責任転嫁もはなはだしい。中央が税をとり過ぎているから
地方財政が貧困である、これが
原因です。所得、法人、酒主税を源とする
交付税の大幅
引き上げ、たばこ消費税の大幅
引き上げこそ、
地方団体に安定強力なる
財源を与えるものであると思いますが、大蔵、自治両相は一体どう
考えるか。
第二は
事業税。これは
事業所得者のみが
負担する二重課税であることは明らかであります。今回の改正も、この点を考慮して少し
負担率を下げましたが、「五厘負けとけ、気は心」では、
国民は満足できません。
国民のふところは一つです。
事業税については軽減ではなくて撤廃の方向をとっていただきたい。
第三は電気ガス税。これは戦争直後の
経済困難なとき、電気やガスを与えているのが恩恵に感ぜられたときに設けられた税金であります。今や全く
事態は一変いたしております。これがまた
一般国民に対する二重課税で、撤廃すべきであるとわれわれは
考えるが、どう
考えるか。
第四は、料理飲食等消費税において、外国人利用者に減免の
特別措置を今まで講じてきた。大国意識過剰とも見える
池田総理を中心とする現
政府は、よもや、こんなお追従的なやり方を続けようとはしないと思いますが、こういう種類の税金のある外国では、内外人に区別なく領収しておるのは、外国で金を払った経験のある者ならだれでも知っております。もうやらないと言明していただきたい。
第五で最後ですが、自動車税。
交通状況からすれば、段階をつけるなら、ホイールベースなど車の大きさで
考えるべきであって、気筒容量で区別すべきものではありません。
貿易自由化を控え、国内における自動車産業の前途を
考えて、高速道路ができるというときに、この国内産自動車税の減税と気筒容量による区別を撤廃することが必要であると思うが、その意思があるかどうか。これらの点について自治
大臣に伺いたい。(
拍手)
〔国務
大臣池田勇人君
登壇、
拍手〕