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1962-04-17 第40回国会 参議院 法務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月十七日(火曜日)    午前十一時二十八分開会   —————————————    委員の異動 本日委員林田正治君及び西田隆男君辞 任につき、その補欠として横山フク君 及び佐藤芳男君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     松野 孝一君    理事            井川 伊平君            亀田 得治君    委員            井野 碩哉君            加藤 武徳君            佐藤 芳男君            野上  進君            横山 フク君            高田なほ子君    発  議  者 高田なほ子君   委員以外の議員    発  議  者 千葉  信君   政府委員    内閣官房長官  大平 正芳君    法務大臣官房司    法法制調査部長 津田  実君   最高裁判所長官代理者    最高裁判所事務    総長      下村 三郎君    最高裁判所事務    総局総務局長  桑原 正憲君    最高裁判所事務    総局総務局第一    課長      長井  澄君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   法制局側    第 一 部 長 菊井 三郎君   —————————————   本日の会議に付した案件臨時司法制度調査会設置法案内閣  提出、衆議院送付) ○裁判所職員臨時措置法の一部を改正  する法律案(第三十八回国会千葉信  君外一名発議)(継続案件)   —————————————
  2. 松野孝一

    委員長松野孝一君) ただいまから法務委員会開会いたします。  本日は、まず臨時司法制度調査会設置法案議題といたします。本案は、去る四月十三日衆議院より送付され本審査となっております。本案説明は二月二十七日に聴取しておりますので、本日は質疑に入ります。  ただいま大平内閣官房長官津田法務省司法法制調査部長下村最高裁事務総長桑原最高裁総務局長長井最高裁総務局第一課長が出席しにおられます。質疑のおありの方は、順次御発言下さい。
  3. 井川伊平

    井川伊平君 二点ほどお伺いいたしますから、政府委員のどなたでもお答えを願ってけっこうであります。  第一にお伺いいたしますことは、本法案が予想しておる法曹一元化制度、これの具体的構想をできるだけ詳細に承りたい。
  4. 津田実

    政府委員津田実君) 御承知のとおり法曹一元の制度と申しましても、いろいろ説く人によりましてその内容が異なっておるわけでございます。現在、具体的に現われているものといたしましては、御承知のように、昭和三十二年に発表されました日本弁護士連合会法曹一元要綱、それから昨年の六月に日本法律家協会で発表されました法曹一元を実現する具体的要綱、この二つが具体的に現われているわけであります。ちもろん、御承知のように、アメリカあるいはイギリスにおきましては、その法曹一元を実現しているわけであります。しかし、今回この臨時司法制度調査会において調査審議対象となっておりまするところの法曹一元の制度につきましては、これは、この法律案趣旨といたしましては、この内容を限定しないで、とにかく法曹一元については、裁判官あるいは検察官任用制度密接不可分のものであり、ことに、裁判官任用制度についてはその一つの問題であるので、それは必ず調査審議をしていただくと、こういう趣旨でございます。したがいまして、政府といたしまして、法曹一元というものは、どういうのがいいのであるかというようなことは、必ずしも結論に達していないわけでございますが、先ほど申し上げましたいろいろな法曹一元の考え方につきましては、現在までいろいろ検討いたしておる次第でございます。
  5. 井川伊平

    井川伊平君 この法案のねらいどころも、裁判官になり手が少ない、それを何とかして、法曹一元化の問題で、裁判官に人的な給源を広めていこうと、こういうようなこともねらいになっておるようでございますが、そうした人的給源の大きな問題といたしましては、弁護士から判事になり、あるいは弁護士から判事を採用する、そういう点にも大きなねらいがあるようでありますが、そういうような点から法曹一元の制度の問題を考えるとすれば、判事、検事の待遇の問題等規定するほかに、判事給源となる弁護士の問題にも触れまして、何か考えることが必要ではなかったのかと、こう考えられる次第でありますが、その点、弁護士について触れなかったのはどういうわけか。  なお、弁護士から判事になる者が、また非常に希望が少ない。これは弁護士の数が非常に少ない。言いかえれば、弁護士をしておれば、相当判事になるよりも生活が楽だといったような点が大きな原困になって、弁護士から判事になる者が少ないということではないかと思いますが、弁護士生活の楽なことはたいへんけっこうでありますけれども、もう少し弁護士の数をふやすというようなことも構想のうちに入れてはどうかとも考えますが、それらにつきまして御意見を承りたいと存じます。
  6. 津田実

    政府委員津田実君) この調査会につきましては、その所掌事務に関する第二条の規定にございますように、司法制度の運営の適正を確保するために、緊急に必要な基本的かつ総合的な施策調査審議する、こういうことでありまして、その調査審議対象裁判官及び検察官任用制度及び給与制度、それから法曹一元の制度というふうに限ったわけでございます。それは、要しまするに、当面、訴訟遅延という、政府としては緊急に対策を樹立すべき問題がありますので、その問題に直接緊急する問題は、何と申しましても、裁判官任用制度検察官任用制度及びこれらの給与制度であります。この問題を解決しない限り、現に裁判官及び検察官に存しまするところの欠員補充は著しく困難であるのみならず、欠員補充が困難でありますがゆえに、さらに定員の増加が困難である、こういうことになっておるわけでございます。したがいまして、そういう緊急問題をこの際解決していただくという意味において、この根本問題を総合的立場から調査審議するというのがこの調査会の目的でございます。したがいましてさらに進んで、法曹一元の問題を審議する上においては、これは弁護士制度考えないでは論議できない問題で、いわば法曹一元の問題は、弁護士制度と全く密接な関係がある問題でございます。したがいまして、この裁判官任用制度等を解決する上において必要な法曹一元を考える上において、当然弁護士制度にもその審議は及ぶものであるというふうに考えているわけでございますが、同時に、弁護士となる資格、つまり司法試験制度の問題、さらに進んでは、大学における法学教育問題等にも調査対象は必要な範囲においては当然及び得ることになるというふうに考えている次第であります。
  7. 井川伊平

    井川伊平君 お答えは了承いたしました。  次に、もう一点お伺いいたしますが、この法律は二カ年の時限法でありまして、その企図するところは、右の限られた時間内に、法曹一元の制度裁判官検察官任用及び給与に関する制度等司法制度の根本に触れる問題を基本的かつ総合的に調査審議をするための機関といたしまして、法案の第九条におきまして、臨時司法制度調査会事務局を設置することができることになっている。当然のことでございますが、その事務局のお考えになっておりまする規模は、きわめて貧弱といっては言い過ぎるかもしなませんけれども、その六項によりましても、「事務局長を除くほか、事務局に恒常的に置く必要がある職に充てるべき常勤職員定員は、四人とする。」と、こういうふうなことになっていますが、この広範な取り急いだ調査をするのに、こうしたわずかな職員をもってする事務局をもっては十分でないのではないか、もっとこの点を、ほんとうに希望するような効果をあげようとするならば、事務局を拡充強化する必要があったのではないか、こう思いますが、これで十分だというなら、十分であるということについてのお見通しを承っておきたいと思います。
  8. 津田実

    政府委員津田実君) ただいまのお尋ねでございますが、一応数の上におきましては、事務局長以下五人という常勤職員になっておりますが、このほか、各省庁からの併任の職員もある程度考えております。なお、やはりこの法案の中にございまますように、専門委員を置くことができる制度になっております。そこで問題は、やはりこの調査会所掌事務は、基本的かつ総合的な問題でありまして、一々こまかい法律案を作成するという種類の仕事ではないわけであります。それらの仕事は、大体において法務省に移される結果になるわけです。したがいまして、基本的、根本的な施策を策定いたしますにつきましては、何といいましても委員中心であり、その委員の手足となると申しますか、その幹事、それから専門委員というものが、内容の実体についていろいろと作業をするわけでございます。したがいまして、事務局そのものといたしましては、これらの委員専門員等仕事をしやすいような環境を作り上げるというような仕事になるわけで、したがいまして、この程度の人数によりまして十分まかない得るものというふうに考えております。
  9. 井川伊平

    井川伊平君 私の質問は、以上をもちまして打ち切ります。
  10. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は次回に続行することとして、本日はこの程度にとどめます。  それでは、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時四十分休憩    ————————    午後一時三十八分開会
  11. 松野孝一

    委員長松野孝一君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  裁判所職員臨時措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  前回に引き続き、質疑を続行いたします。  ただいま発議者千葉信君、菊井参議院法制局第一部長安達参議院法制局第一部第三課長影山法務省司法法制調査部参事官下村最高裁事務総長桑原総務局長長井総務局第一課長が出席しておられます。  御質疑のおありの方は、順次御発言下さい。
  12. 菊井三郎

    法制局参事菊井三郎君) 前回裁判所職員臨時措置法において準用しております国家公務員法の八十八条の勤務条件に関する行政措置要求があって、その結果勧告する場合におきまして、その勧告最高裁判所規則制定権を害することがないか、こういう御質問井川委員からございまして、その際に、この勧告規則範囲内である、こういうふうに述べました点につきまして、少しこの際補足させていただきたいと存じます。  八十八条を準用しております裁判所職員臨時措置法によりましてその勧告をいたします際に、その事項下級裁判所の権限に属している事項につきましては、前回申し上げましたように、その規則範囲内であると存じます。しかしながら、その所轄庁最高裁判所であります場合には、規則で定めている事項について勧告する場合が起こると存じます。したがいまして、その結果、規則制定あるいは改廃しなければならない、こういう事態が起こることがあるというように考えられます。しかしながら、この勧告は、あくまでも勧告を受けた機関の自主的な判断を前提としておりますので、最高裁判所が持っておりますところの規則制定権を害するものではないと、このように考えております。
  13. 千葉信

    委員以外の議員千葉信君) 前回委員会井川委員から御質問のありました事項のうち、答弁を保留いたしました訴願前置に関するこの法律案との関係でございますが、衆議院のほうの論議状況等をつぶさに聞きましたところ、もともとこの法律案は、行政処分についての訴えないしはまたその他の裁判所に対する訴願との関係につきましても、いずれの場合でも、この法律案はそれにこだわることなくできるという建前をとっておりますので、衆議院の現在訴願前置の問題に関する論議の結果いかんによってこの法律案が直接の影響を受けることはないという、そういう建前に立っておりますので、これを補足して御答弁申し上げておきます。
  14. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 先日、井川委員から御質問のございました、公平委員会判定規則に違反する、ひいては憲法違反になることがあるのではないかというようなお話が出たように思うのでありますが、規則で定められております事項公平委員会判定が違反するということもあり得ることであります。しかし、ただ違反したからといって、すぐそれが憲法違反になるかどうかということは、事項によって違うのじゃないかと思うのであります。すなわち、ちょっと実際の例を思い出すことは困難でありますが、たとえば、規則が、規定しておりますことが憲法で保障されておりますような事項でありますれば、規則に違反したことがすなわち憲法に違反するということになるだろうと思いますが、しかし、そうでないような事項については、かりに規則に違反いたしましても悪法違反になるということはないと思うのであります。ただ、実際の問題といたしまして、現在まで、そういう公平委員会判定規則に違反するというような実例はないのでございまして、その点は円滑に判定が行なわれているというふうに考えるわけであります。将来もそういう規則違反可能性はあるわけでありますが、現在の制度におきましては、かりにその規則に違反いたしておりましても、その判定は直ちに裁判所を拘束するものでないので、そこに裁判所の自主的な判断が加わるために、その規則違反判定をすぐ実行に移すというようなことはないので、移すことを避けることができるわけであります。ところが、この新しい法案によりますと、公平委員会判定が直ちに裁判所を拘束するというようなことになりますと、そういう規則違反判定裁判所を拘束するというような、たいへん不合理な結果を招来するものと考えるわけであります。  それからもう一点公平委員会判定裁判所の行ないました処分と反対の見解に出たものがあるかどうかというようなお尋ねでございましたので、その点は調査いたしてありますので、長井第一課長からお答えさしていただきたいと思います。実は、この議案の関係人事局長当該事項を担当しておりますが、先日家庭内に不幸がございましたために、本日出席できませんので、総務局担当官でございますが、長井第一課長お答えすることをお許し願いたいと思います。  今、公平委員会判定ということを申し上げましたが、ちょっと言葉が少し強過ぎまして、審理の結果を裁判所に報告するという、そういう趣旨でございますから、そういうふうにお聞き取りを願いたいと思います。
  15. 長井澄

    最高裁判所長官代理者長井澄君) 今、事務総長からお答え申し上げました点でございますが、原処分公平委員会調査審理されました結果変更された事例でございますけれども、一件ございます。で、その調査審理の結果に基づきまして、そのとおりの判定最高裁判所から出されております。
  16. 亀田得治

    亀田得治君 前回井川委員から主として法律的な観点からの御質問が多多あったわけでありますが、私は、主として、法律論憲法論といったような問題よりも、現在の制度関係者が納得いくようなものであるかどうか、実際上。そういう角度からひとつお尋ねを進めていきたいと思います。  おそらく裁判所のほうでも、現在臨時措置法によって国家公務員法規定準用してやっているわけですが、こういう格好は適当なものではない、こういうことだけははっきりお考えになっておるはずなんですが、その辺の基本的な考えをまず確めておきたいと思います。
  17. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 御指摘のように、現在、裁判所職員につきましても、国家公務員法準用しておる形になっておりますが、裁判所職員も、広い意味におきましての公務員の一部でございますから、基本になっております。国家公務員法にある程度準拠して、それに裁判所職員についての特殊の事情を加味したものを作るのは適当と思われるわけでございます。それで、準用の形で相当長い期間今日に至っておりますが、いろいろ経過の詳細については省略いたしますが、国家公務員法自体についても、いろいろ改正、補正をしなければならないような事柄があるように聞いておりますので、裁判所といたしましては、そういうものが整備されました上において、さらに慎重に考えた上に、改正のことを考えたいと思っておるわけでございます。
  18. 亀田得治

    亀田得治君 こういう臨時措置法準用しておるという格好は思わしくない、しかし、国家公務員法のほうでもいろいろ検討がされておるから、それを見てと、こういうふうなお答えのようでありましたが、その辺が少し納得がいかないわけですね。三権分立という立場で、裁判所の機構というものが一般行政庁と違った系列をなしておるわけですから、国家公務員法改正がどうなるかを待つ、これは必ずしも必要でないことだと思うのです。それよりも、いつまでも臨時的な格好法律で処理しておるということのほうがおかしいわけです。裁判所自体としても、戦後相当年数がたっているわけですから、現在の国家公務員法の中でどの点が問題になるのか、そういうことは当然独立研究もなさっておられるはずだし、裁判所自体として考えていっていいはずだと思うのですね。ことに、前の記録を見ましても、昭和三十三年に、私たち、この問題で若干衆参で質問をしたことがあるわけですが、その際に、横田事務総長は、「六年間というのは臨時措置法としては長過ぎますが、もう少し時をかしていただきまして、できるだけよい法律規則を作りたいと考えております。」、こういうふうに臨時措置法の問題について意思表示をしておるわけなんです。で、昭和二十七年から準用ということをやりまして、この答弁がありましたのは、それからちょうど六年目ですね。そのときには、こういう形は少しもう長過ぎる、こうすでにおっしゃっておるわけです。もう少し時間をかしてくれ、六年が長いからもう少しかしてくれというなら、せめて一、二年、こういうふうにこれはだれでもすなおに読めば判断ができるわけです。ところが、一、二年どころじゃないわけでして、もう相当年数がたっておるわけなんです。だから、ともかく人を身分上の処分をして、そうしてその処分が正しいかどうかという判定を求める、そういう制度に関連しているわけですから、やはり裁判所らしい独立制度を早く作る、私はそんなにむずかしいことじゃないと思うのですがね。参議院でも衆議院でも、それから国会図書館でも、そういう独立性を持ったところは、一般国家公務員とは違うということで、おのおの作っておるわけですね。なぜ裁判所がその問題に早く着手して結論を得られないのか。これが不思議でならないわけなのです。私から言えば、この横田事務総長答弁から言いましても、これは怠慢ですわね、実際から言うと。そういうことをいたしておりますから、一方ではやはり要求が出て参りまして、裁判所としての独立ひとつきちんとした判定機関というものを作ってくれ、これは私は当然だと思うのです。それで新事務総長にお聞きするわけですが、あなたも長らく裁判官をおやりになっているわけですが、先ほどの横田事務総長答弁ですね。これは、おそらくあなたもごらんになっておると思うのですがね。それからいきますと、現在なおかつそれができておらないということは、非常に怠慢のそしりを免れないと思うのですが、事務総長はどういうふうにお考えでしょうか。前の横田事務総長のこの言明基礎にして考えてもらうのですよ。私たちは、やはりこの言明を信じて、そのうちできるだろう、こう思っているわけですから、今のあなたの心境とか、そういうことじゃなしに、この言明基礎にして考えて、怠慢のそしりを受けるというのは一体言い過ぎかどうか、お考えを聞きたい。
  19. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) お聞きいたしますと、だいぶ前のことになりますので、それから数年たっておりますから、あるいは怠慢というふうにおしかりを受けておるのも、やむを得ないかとも思われますが、今主として御議論になっております点は、処分に対するいろいろの不服申し立て方法等にどちらかといえば限局しての御議論かと思うのでありますが、臨時措置法公務員全般についての国家公務員法準用しておりますので、もちろんいろいろ考えてはおるわけでありますが、それだけを切り離して新しく法律をこしらえるなり、規則制定するなりということは相当困難に思われますので、今日まで引き続き措置法のままでやっているわけであります。その点、御了承いただきたいと思います。
  20. 亀田得治

    亀田得治君 それは了承できませんよ。そんなものを了承したのでは、前にせっかく横田事務総長がもうしばらく待ってくれというのが取り消しになってしまうわけでして、はなはだこれは、何と言いますか、最高裁としての、一たん事務総長が言うたことを簡単に説明によって曲げる、こういうことは、私は大へんおもしろくないと思うのです。もちろん、臨時措置法は、公平審査の問題だけじゃなしに、いろいろな問題について準用しておるわけですが、しかし、臨時措置法を作るときに、これは臨時のものだ、こういうことで出発しているわけですね。それがもう十年近くになるわけなのです。いまだにその案もできておらない。いわんや、よく問題になる公平審査部分だけを取り出してでも、裁判所らしいものを作るというお考えもないようですね、今のお話ですと。公平審査だけは切り離せない、もう全部一括してだと、いずれにいたしましても、では一括でもいい、一括したものがすぐできるという段階になれば、それはもうしばらく待つということもあり得るでしょうが、そんなものもないわけでしょう、私たちのお聞きするところでは。そういう状態で、切り離しては困るとかというようなことを言っているのは、まるでちとむちゃを言うておるような感じがするのですが、どうでしょう。
  21. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 私の申し上げましたのは、前に横田事務総長が述べられましたことをここで取り消すという意味では決してございませんので、その点、あるいは言葉が足りなかったと思います。なお研究をして、近い将来において何らかの措置をとりたいということは考えておるわけでございます。  それから、今、公平審査の問題だけ切り離して改正することはできないというふうに申し上げたように御解釈になったようでありますが、問題がそこに触れておりましたので、そう申し上げただけでありまして、その点のみならず、もしこの裁判所として特別の法律あるいは規則をこしらえれば、まあ公務員法と同様、全般にわたらなければならないので、非常に困難だということを申し上げたわけであります。これを、公平審査のことだけをここで問題にしておるわけではないのであります。その点、補足をして申し上げておきます。
  22. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますと、最高裁の現在の考えとしては、公平審査も含めて、そうして独立制度を作るんだ、どうもこういうお考えのようですが、それは切り離しては絶対やらない、その点は、はっきりそうもうきめてしまっておるわけでしょうか。現実に要求のあるのは、この公平審査に関する部分について特に要求があるわけですね。それは、絶対切り離してというようなことはもうやらないんだというふうに、はっきりこうきまっておる問題なんですか。どうですか。
  23. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) ただいまのところでは、それを切り離して特別の法律あるいは規則をこしらえるということは考えておりませんです。
  24. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ、全体のものについて、できるだけ早くやるという意味のことをおっしゃったんですが。それはいつごろできるわけでしょう。
  25. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 一番初めに申し上げましたように、公務員制度についていろいろの動きがあるというふうに私ども聞いておりますので、それとの関連において考えなければならないことでございまして、ただいま、いつまでにというふうにおっしゃられても、ちょっと確答申し上げられないわけであります。
  26. 亀田得治

    亀田得治君 そういうことになれば、結局横田事務総長昭和三十三年の言明というものは取り消すことになるじゃないですか。そうならぬですか。
  27. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 先ほど申し上げましたように、別に取り消すつもりはございませんで、ただ、できるだけ早い機会に、しかも、事態がある程度に落ちついたときに考えるというふうにお聞き取りを願いたいと思います。決して、繰り返して申しますが、前の総長言明されたことを取り消す意味ではございませんです。
  28. 亀田得治

    亀田得治君 まあ前の総長がおっしゃったことを取り消す意味ではないと、言葉ではそうおっしゃるわけですが、前の専務総長は、昭和三十三年当時において、すでに六年も経過しておるのは長過ぎると思うと、したがって、もう少し時間をかしていただきまして云々……と、こう言っておるわけです。今あなたのお話からいったって、もう少し時間をかしてといったようなことすらもおっしゃられないわけです。いつになるかわからぬ、こういうお答えでしょう。それは、前の言明を取り消す意味ではないとおっしゃったって、中味は取り消したことになるのじゃないですか。ならぬと思いますか。
  29. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) このいつまでというふうな時期的な確約はできないというふうに申し上げたわけでありまして、ですから、引き続いていろいろ考慮いたしまして、できるだけ早い機会にというふうに申し上げておるわけでございまして、その意味は、結局、もう少し時を与えてもらいたいという前総長答弁と、私としては、同一になると考えておるわけでございます。
  30. 亀田得治

    亀田得治君 もう少し時をかしてくれというのと、できるだけ早くというのとは、一体どっちが短いのですか、普通の常識から言って。
  31. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 私も、いましばらく猶予していただきたいというふうに申し上げたいわけでございますが、冒頭申し上げましたように、三十三年度にそういう説明がなされておるということだもんですから、またそのときから現在までの期間を入れますと、できるだけ早くと申し上げておいたほうが適当ではないか、こういうふうに考えたわけでございます。
  32. 亀田得治

    亀田得治君 ともかくこの横田事務総長言明というものは、これは、最高裁は実行されなかったわけです。そう解釈できるでしょう。この点あなたは、事務総長になると、いやに、政治的な答弁ばかりされるようですけれども、ほんとうに、だれが読んでも、昭和二十七年から六年たったところで質問を受けて、いや、それは六年もほうっておいて、ちょっと臨時措置としては長過ぎた、もう少し時間をかしてくれ、こうおっしゃったわけだから、これはあなた、それから四年たっているわけですから、だから、これはもう、ともかく最高裁としては、その言明に反した、今あなたは、前任者の批判をするようで、はなはだお答えにくいのだと思うのですが、しかしこれは、関係者にしてみれば、非常に重要なことなんです。こういうことが公の席上で言われれば、また、言うたことが一つの大きな意味も持つわけでして、言うた以上は、やっぱりその線で努力もしてもらわなきゃいかぬわけなんです。言うたけれども、どうなるのかわからぬのだということじゃ、これはもう審議なんか意味ないわけですからね。ともかく最高裁としては、その言明どおりにはいかなかったのだという、その事実だけはあなたお認めになりますか。
  33. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 私から申し上げるのもいかがかと思いますが、その後にもいろいろ人事院の機構の問題、権限の問題等につきまして多少の動きがあるというように聞いておりますので、横田事務総長言明されましたことの後に、そういう事情も加わっているというように私たち考えておるわけでございます。ですから、四年の日時というのは、長いということも言えるかもしれませんですが、また、事情の変化ということも加わっておるわけでございまして、一番初めに申し上げましたように、それも一つの理由になっておるわけであります。
  34. 亀田得治

    亀田得治君 そういう国家公務員制度についてのいろいろな変化なり新しい考え方が出てくる、そういうことを一つの事情の変化だなんていうことをおっしゃっていたら、これは、いつまでたっても片づかぬと思うのです。次から次と、いろいろな考えが出てくるわけですから、そういう新しい考え方があって、それがもし認められて、裁判所のほうも、なるほどその点がよろしいというふうにお考えになったら、あなたのほうの独立制度を作っておいて、その制度自身をまた変えていけばいいわけでしょう。だが、あちらのほうで何かいろいろ意見があるようだから、じゃそれが出るまでとは、いつどうなるかわかったものじゃない。だから、そんなものを尺度にして、何か事情の変更がいかにもあったようにおっしゃるのは、ちょっとふに落ちないわけですね。労働組合の皆さんが、やはり私たち地方にいきましても、最高裁判所のこういう言明というものをやはり非常に強くみんなが印象に持っておる。その裁判所独立制度を作る、これは、全司法なり裁判所に働いておる職員の方も望んでおることなんです。裁判所としての一つの特色を生かしたものを作っていく。中身は別ですよ。中身はおそらく、じゃ作るとして、最高裁のお考えになることと、あるいは全司法のお考えになることと、これは私は、相当意見の食い違いもできてくると思うのです。そこはまたお互いに、いい意見はどんどん出し合ったらいいことであって、少なくとも急にはできないから、ちょっと臨時にそちらのほうをお借りしておこうと言っていたものを、いつまでもこうそのままにほうっておいて、そして何か、国家公務員制度について意見が出ているようだから、それが事情変更だから、そのために前の約束が守れなかったのだと、これじゃちょっと筋が通らぬですね。
  35. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 先ほど申し上げましたように、できるだけ早い機会に検討を重ねたいということで、ひとつ御了承をお願いしたいと思います。
  36. 亀田得治

    亀田得治君 前に一度だまされておりますからね。あなたのお答えを非常に私注意して聞くわけなんです。できるだけ早い機会に検討させていただきたいと、検討でしょう、それ。検討では、これは何もならないわけなんです。早くちゃんとした三権分立にふさわしいような機構を作ってくれと、こういうことなんでして、そんな検討でしたら、あしたからでもやらなきゃならぬことでして、そんなものにできるだけ早くなんていう、そこだけに多少力を入れておっしゃったって、中身は検討ですよ。だから、それではやはり信用が失堕しますね、そういうことでは。
  37. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 検討という言葉は、はなはだ適当でなかったかもしれませんですが、従来研究しておりますことにさらに研究を重ねて、もし独立して法律規則制定することが適当であるという結論を得ますれば、それに従ってわれわれとしては行動するという趣旨に御了承願いたいと思います。
  38. 亀田得治

    亀田得治君 あなたのお答えに何回もからむようですけれども、検討して独立した法律規則を作るのは適当であるということになればと、こうおっしゃる。非常に用心深いのですね。横田事務総長はどう言っておりますか。できるだけもう少し時をかしていただきまして、できるだけよい法律規則を作りたいと考えておりますと、きちんとはっきり言っている。法律規則を作ることがいいということになれば作りますというような、そんな言い方じゃないのです。この制度は、やはり、三権分立の立場からいって、一日も早くこれは解消して、独立のちゃんとしたものをやはり設けるべきである、このこと自体は、はっきりこれは認めてかかっている。あなたの今のお答えなんかは、その前提自身を認めていないわけです。たとえ臨時措置法でありましても、これはもう思わしい制度ではないのだから、独立法律規則を作ること自身は、もう最高裁の方針としてはっきりしているのだ、その考えです、前の答弁は。そんな考えがもう後退しているようですね、今のお答えを聞きますと。
  39. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 前の総長言明されましたことにそう違った考えを申し上げているつもりはないのでありますけれども、将来のことでありますので、特に独立してそう大きな法律あるいは規則を作る必要もないということになれば、あるいは現在の状態においてある程度過ごしていくということも、ときによっては考えられるわけでありますので、そういうように申し上げたわけです。ですから、前の総長言明されました趣旨と私は違ったことは申しておらないわけでございます。ですから、公務員制度と非常に違ったものができて、どうしても独立した法律規則規定しなければならないということになりますれば、そのときにそういう法律を作る、こういう考えであります。
  40. 亀田得治

    亀田得治君 今のお答えをじっとお聞きしましても、明らかに考え方がもう変わってきているのです、はっきり言って。臨時措置法制定のときの考え方、それから、中間における横田事務総長言明、横田総長考えは、臨時措置法を作るときの考えと、ずっと一貫しているのです、考え方自身。  ところが、あなたのやつは、場合によっては、もう臨時措置法の形、準用の形だけでもいいのだと、これは、あなたとしては相当考えになり、相談されてきて御答弁になっているんだと思うのですが、一体最高裁でいっそういう方針が変わったのか、明らかにしてほしいと思いますす。
  41. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 今申し上げましたことも、ちょっと十分御理解できなかったかと思いますけれども、たびたび申しますように、前の事務総長言明されました独立法律規則をこしらえるということについては、変更はないわけなんでございます。ただ、まあ内容そのものが、あるいは同じような文句を書くということになれば、準用というような内容になるというものもあるかと、こういうふうなことを申して上げているわけでございます。ですから、独立法律あるいは規則をこしらえるということについては、前の言明を別に変更したわけではございませんです。その点、御了承いただきたいと思います。
  42. 亀田得治

    亀田得治君 そういう意味なら、まだ了とします。とにかく独立法律規則はちゃんと作る、ただ、その条文を書く場合に、準用の条文も中には出てくるかもしれない、そういう軽い程度意味なら一応了承できますが……。  そこで、今度は時期の問題です。またむし返すようですが、一体最高裁では、独立裁判所職員に関する法律を作る準備というものは、現在どこまでできているんです。何か草案でも、あるいは草案の要綱になるようなものでもあるわけでしょうか、現在。端的にお聞きしますが……。
  43. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) いろいろな問題について話はいたしておりますけれども、特に御指摘になりましたような草案というようなものは、現在のところはございません。
  44. 亀田得治

    亀田得治君 その草案要綱というようなものもないんですか。どういう骨組みでやろうというような……。
  45. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) その点も、特にまとまったものは現在ございませんです。
  46. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、いろいろ話をしているというのは、たとえば、裁判官会議の場合に裁判所職員制度についての意見の交換といったようなきちんとした議題になって、そうして意見の交換などがなされておるわけでしょうか。あるいは何かほかの議題に関連して、ときどき話が出る、どちらなんです。
  47. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) おっしゃいました双方でございまして、まあ正式な会議等にときによって出ることもありますし、まあそのおりおりに触れて話をするというようなこともあるわけでございます。
  48. 亀田得治

    亀田得治君 じゃ正式の会議の場合には、この臨時措置法にかわる独立法律等の制定に関する件といったような議題として出ているのですか。そういうことがありましたら、それは何回くらいあったのか。皆さんのほうの誠意をはかる意味で、具体的におっしゃって下さい。
  49. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 議題として、臨時措置法をまあ恒久的な法律にする、そういう議題では別に出ておりませんです。ただ内容についていろいろ議論をするという程度のことでございます。裁判所の内部からいたしますと、そういう法律の形式というよりは、まあ内容に関心を多く持っている事項でありますので、法律をどうするかということは、むしろ最高裁判所だけの問題と言ってもいいかと思うのでありますが、そういうような意味で、会議に、これを独立法律にするかどうかということまでは出しておらないわけでございます。
  50. 亀田得治

    亀田得治君 少し詳しく聞いてみると、何もしていないということですね、どうも。だから、そういう程度では、それは全く私たち心もとないわけでして、このままで行く問題じゃないわけですから、やっぱり最高裁の中にちゃんとした、たとえば人事局長なりがおるわけですし、担当の局長を中心にして、二、三の適任の方が一つの小さな委員会でも正式に、最高裁の会議の名において作って、そうして検討していって、まとまった部分等については、ときどき会議に諮ってみるといったような進み方があるのなら、それはなるほど努力はしているのだ、そういう感じは受けますが、何もないわけですね、さっきの話ですと、結局は。それじゃ、それはもう何ですね。納得できませんな。
  51. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連して。私、資料をもらいたいと思います。臨時措置法が二十七年の一月から施行された。裁判所職員が特別職になった結果、臨時措置法というものが出されたわけですがね、そのときに最高裁は、その臨時措置法の中におけるいろいろの諸手続を制定する方針を明確にされたと、われわれは聞いているわけであります。しかも、この方針を明確にするために、二十七年の多分四月あたりだと思いますが、何か通達の形で、最高裁の方針を明確にされたと聞いているわけです。こういう通達があれば、資料としてひとつ出していただきたい。その当時の何かあるはずですから。皆さん、二十七年以降に現在のお立場におつきになった方々であろうと思いますが、そういったような書類をひとつお調べ下すって、あるかないかもはっきりさして、あれば、そういう内容を盛った資料をちょうだいしたいと思います。いかがですか。
  52. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 裁判所職員に関する臨時措置規則による人事院規則規定準用について、というので、昭和二十七年四月三十日人給A第二十八号、各庁の長あてに事務総長の依命通達が出ております。そのほかにもあるのかもしれませんですが、ちょっと今思い出しませんので、よく調査いたしました上で、御趣旨に沿いたいと思います。
  53. 亀田得治

    亀田得治君 そこでひとつ、この法案で主張している公平委員会ですね。こういうものがぜひ必要なんだという角度から、若干実質的な問題の質問をしたいのです。と言いますのは、先ほどからの最高裁の御答弁を聞いておりましても、いつ結論が出るのか、とてもこれはわかりません。そういう状態では、はなはだ心もとないわけでして、せめていろいろ紛糾があった際における審判、これは公平にやってくれ、その部分だけぐらいは抜き出して早く作ってくれ、これはもう当然の要求だと思うのですね。もうそんなに急ぐな、今年中くらいにはちゃんと最高裁として結論を出すからというような、あるいはそれに近いようなお話でもあれば、これは別なんです。とてもほど遠いわけですね、さっきからの答弁、何回お聞きしても。  そこで、今私が申し上げたような立場からお聞きしたいわけですが、一体裁判所が、たとえば裁判所職員の懲戒免職をするといったような場合、裁判官会議でそのことをきめるわけですね。それに対して、首切られた方から、それはもう少し、誤解もあるし、調査も粗漏だということで審査の請求をする。ところがこれも、その結果設けられる公平委員会というものは、裁判所の手によって設けられるわけです。そして人事院規則の 一三−一の二十項ですか、これなんかが準用されておりまして、結局この裁判官会議の議決というものは相当拘束力を持つという、その面の解釈がどうなるかわかりませんが、一応準用しておるために、そういう印象をやっぱり与えておるわけです。そうしますと、この公平委員会の人の作り方にもよりますが、制度自身としても、何かこう裁判所裁判官会議のワクの中で動いておるような感じを与えるわけですね。公平委員の人の任命をどうするかということはちょっと第二段の問題として、制度そのものとして、したがってそういうところへ持っていっても、なかなかその原処分を訂正するということはならない。先ほど長井課長からお話があったように、たくさんの中で一件だけですね、原処分が多少変わったというのは。そういうことになるわけだ。それで、審査の結果不服だということで、さらに裁判所に持っていくと、また同じ裁判官が今度は出てくるわけですね。たとえば最高裁判所が、昭和二十九年でしたか、大阪の裁判所職員四名を直接処分したことがあります。これに対する審査請求を最高裁判所に出す。そうすると、その審査請求に対する判定には、最高裁判所はいつ幾日なした処分を承認する、こういう判定趣旨になってくるわけですね。いや、それは、その懲戒処分をしたときの裁判所と、この審査を受けて判定を下す最高裁判所意味は違うんだというふうには、それはわれわれももちろん理解はしますよ、制度上の違いというものは。しかし、同じ人がやっているわけですね。制度が違うというだけで、はたしてそれで納得がいくかどうか。同じ人がやる。だから、そういうような不自然な格好が出ているわけでしてね。どうしても何らかのやはり方法で改めなければ、これは納得がいかぬですよ。関係者としては。そこの矛盾は、おそらく裁判所としても感じておられると思いますが、ただまあしかし、いろいろな紛争の最終的な判断というものはやはり裁判所だ、これはまた一つの民主主義の大きな柱ですわね。そういう意味で、そこからはずすわけにもいかないのだというような考えもあるだろうと思いますが、しかし、何らの疑問も感じないでこういうことをおやりになっているのかどうか、ここを一つお聞きしたいわけです。どうです。
  54. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 最高裁判所が、裁判所におきましては一番上級の処分機関になりますので、今おっしゃいましたような、外部的に見ますと、非常に不公平なような感じを持たれるかと思いますですけれども、その点は、いろいろの組織の上からある程度やむを得ないというふうに考えるわけでございまして、もちろん、最高裁判所が再度その処分を承認するという場合には、公平委員会の慎重な審査結果をしんしゃくしているのでありますから、現行のもとにおいてはやむを得ないと思うのでございます。いろいろ裁判についても、たとえば最高裁判所では、判決に対して訂正申し立てというのがございますが、そういうものも、最高裁判所がみずから判定をしておりますし、たとえば、国民審査についてのいろいろな訴訟なども、やはり最高裁判所裁判官自体に関することも、やはり自分で審査をして判決をするというようなことになるわけでありまして、そういう点は、非常に外部的に不公正な感じを与えるといえばえ言るかもしれませんが、内部のものといたしましては、そういうことを十分考慮した上で、慎重な心がまえで処置をしているというふうに私たち考えているわけでございます。
  55. 亀田得治

    亀田得治君 この規則で人事院規則準用しておる結果、人事院規則一三−一の二十項、これをちょっと読んでみますと、「公平委員は、何人からも指示を受けず、良心に従い、且つ、法令、規則、指令及び人事院の議決に基いて審理を行わなければならない。」こういう規定があるわけですね。これから参りますと、結局、この人事院の議決はつまり裁判官会議の議決と、こういうことに読みかえられるわけでしょう。そうすると、公平委員会は、そういうワクから逸脱できないのと違いますか。その点はどうなんです。
  56. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 今御指摘の点は、そのとおりと思いますが、その関係は、人事院の場合においても同様と考えます。ただ、この人事院の議決ということは裁判所の議決というように読みかえられると思いますけれども、それは必ずしも具体的に議決という意味ではないのではないかと思うのでありますが、ちょっとどういう問題を御質問を受けておりますか、その議決の点については、了解いたしかねるのですが……。
  57. 亀田得治

    亀田得治君 たとえば、人事院の場合でありますと、これは前回もちょっと意見が出たわけですが、大部分は、ほかの国家公務員について人事院に持ってくるわけです。で、人事院としては人事官会議を開いて、そしてその基本的な方針などは、人事官会議でやはりやるわけです。その議決です。しかし、それは官庁が違うわけですから、一種の裁判官のような立場に大部分の場合は立っておるわけです、ほかの官庁の事件の持ち込みですから。したがって、人事官会議の決議等が前提になって、そうして公平委員が具体的な事件について処理をしていくということであって、私は決して差しつかえないと思う。ところが、そのことが人事院内の事件であれば、あなたのほうと同じような矛盾に私はぶつかると思うのです。だからそれは、したがって人事院における問題にすべきなんです。ただ、人事院ではあまり問題が起きておらぬものですから、ところが、幸か不幸か、裁判所では相当首切り事件などがあるものですから、それで、具体的にやはり議題になってくるわけですが、これは、はなはだ私はそういう意味で矛盾があると思うのです。だからそんなものを、大きなワクのはまっておるような公平委員を幾ら任命してみたって、これはおかしいです、会議のワクから出られないのですから。これを準用しておる以上は、そうなるでしょう。
  58. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) この二十項の解釈でございますが、今御質問のワクということですが、この人事院の議決、すなわち、これは読みかえて裁判所の議決といたしましても、この事件をどういうふうに処置しなければいけないと、そういうワクをきめるものではないというふうに解しておるわけでございますが、具体的にこの事件をどう処置しなければいけないという、そういうワクというものをはめて、その範囲内で公平委員会審査をさせる、こういうことではないだろうと思うのです。
  59. 亀田得治

    亀田得治君 しかし、処分庁の裁判官会議で、こういう種類の事件についてはかくかくかくかくの方針で臨むべきものだというふうな基本原則をばんと出して、この基本原則の上に立ってこれを処分するのである、そう来た場合には、その具体的な判断のところよりも、むしろその前提になるワクのほうが私は非常に重要だと思うのです。だから、準用というようなことをやっているから、そういうふうなことも不明確のままで、こういう疑問が出てくるわけです、われわれにしてみれば。これは、人事院規則をお作りになった場合は、これは、大部分ほかの通産省なり農林省なり、そこの者が持ってくる。それに対して、一般的な判定の基準とか、考え方の根拠とか、そういうものが不統一になっちやいかぬから、それでやっていこうということなんだと思う、これを作ったのは。法律規則だけじゃいかんだろうということで、こういうものができているのだろうと思うのです。一般的にはそれでいいと思う。しかし、裁判所の場合には、やはり裁判官会議というのが、相当大幅ないろいろなことを扱ってきめる権限は一応持っておりますから、それが一つの判定というものを独立機関として出して、その前提の上で、こういう処分をするのだ、こういうふうなことをやってくる場合には、もう公平委員なんてあったって、まるでこれはたいしたことにならないですよ。条文どおり解釈すればそうなるんですから、しょうがない。
  60. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 公平委員審理について裁判所が議決をしたというようなことも、私記憶しておりませんですが、この規定は、前提に、良心に従いということになっておりますから、公平委員は良心に従ってやられるわけでありまして、かりに裁判所が不当な審理をするような議決をいたしたとしても、もちろんそれに従う必要はないと思います。もともとこの規則は、規則とか指令とか、例があがっておりますように、手続のやり方とか、その進め方とかいうようなことについての方針を授けるというような趣旨でできているものと、私は解釈しているわけでございます。
  61. 亀田得治

    亀田得治君 しかし、裁判官会議の議決権の範囲といったようなことは、これは何らの制限が置かれているわけじゃないでしょう、法律あるいは最高裁規則に反しない以上は。
  62. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 別に範囲については制約のないことは、おっしゃるとおりでございます。
  63. 亀田得治

    亀田得治君 それならば、これを準用している以上は、裁判官会議が、法令、規則範囲内における相当窮屈な議決などをして、その基礎の上に立って懲戒問題等審理していくということができるんじゃないですか。いかんことはないでしょう。
  64. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 今お尋ねのようなことは、十分私了解できないのでございますけれども、裁判所が一つの処分の具体的方針を授けて公平委員会審理要求するというようなことは、先ほど申し上げましたように、公平委員の良心に反することでもありますし、公平委員会そのものの本質にも反するわけで、裁判所がそういうふうな議決をするということは、ちょっと予想できないのでございます。その点で御了承いただきたいと思います。
  65. 亀田得治

    亀田得治君 それは予想できないことはないわけでして、具体的な事件が起きた場合に、その事件に対してどう対処するかという裁判官会議が開かれる。開かれた場合に、具体的な処分の前に、いろいろ基本的な意見の交換というものがあり得るはずです。そういう基本的な考えが集約されて具体的な処分になるわけですから、これは、大阪の事例などを私はできるだけ見ているわけですが、処分としては具体的には一つであっても、やはり一般的な方針と裁判所における勤務のあり方とか、そういうことについての考え方というものはやはり統一しておるわけなんです。だから、この処分を二つにしようと思えばできるのですよ。処分といいますか、裁判官会議の決定を、一般的な考え方としてこれでいこう、そうして、具体的な処分はこうだ、実際はその二つが一緒になって書かれておるのですよ、中身は、だから、公平委員会裁判所が拘束しようと思えば、一般的な議論のところだけは裁判官会議で、これは一つの大阪なら大阪の裁判所における考え方、こうしてばんときめてしまうことはできるわけなんです。それにしていかぬという制約はどこにもないのですよ。そういうことをされた場合には、その一般的な決定については、公平委員はこれに反することはできないのです。これは、準用する以上はそうなりますよ。
  66. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) お尋ねがだいぶちょっとむずかしいので、あるいは十分理解しないでお答えすることになるかもしれませんですけれども、なるほど裁判所として、職員の勤務はこうあるべきだということは、裁判所裁判官会議できめることはできると思うのであります。それで、処分の問題が起こります場合には、そのきめましたことに違反したということが問題になるわけでありまして、今度は、その処分が問題になってから、いや、前の方針は違うのだと、違ったように考えるべきだというようなことは、懲戒処分としても非常に筋の通らないことでありまして、裁判所としては、そういうような方針を後にするということはないと思うのであります。
  67. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連して。今の点について、人事院規則一三−一の第二十項です。「公平委員は、何人からも指示を受けず、良心に従い」、これはいいと思うのです。その下です。「且つ、法令、規則、指令及び人事院の議決に基いて審理を行なわなければならない。」と書いてあるわけです。この解釈は、私から申し上げるまでもなく、公平委員会審査は公平でなければならないということをより具体的に独立した第三者である、独立した人事院の議決というものをここに入れてあるわけですね。ところが、裁判所職員臨時措置法では、これらの法律規定中、人事院とあるのは最高裁判所と、人事院規則とあるのは最高裁判所規則と読みかえるものとすると、こういうふうに臨時措置法の本文には書いてあるわけです。ですから、人事院規則一三−一の第二十項は、「公平委員は、何人からも指示を受けず、良心に従い、且つ、法令、規則、指令及び最高裁判所の議決に基いて審理を行なわなければならない。」こういうふうな法解釈になると思うのです。そういう建前からいってくると、亀田委員が先ほどから質問されているように、最高裁判所の議決というものが公平委員会を拘束することが妥当なのであるという、こういう法解釈は成り立つし、それについてたいへん疑問であるということで、質問が続行していると思うんです。この読みかえのところを正しく解釈していただかないと、亀田委員質問趣旨が徹底されないように思うんですけれどもね。読みかえを、人事院というところを最高裁判所の議決に基づいて審理を行なわなければならないというのは、ずいぶんおかしいと思う。つまり、任命権者の議決に基づいて公平委員会審理を行なわなければならないということになると、公平委員会の機能なんというようなものは、全然これは無視されてくるということになると思う。読みかえてみて下さい。
  68. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 人事院のほうの国家公務員法規定でございますと、人事院の議決を経なければならない事項が十二条の六項以下に並んでおりますので、具体的なことはわかりますが、裁判所のほうは準用されておりますので、公平委員会関係についてどういうことを議決するかということは、裁判所においては必ずしも明らかではないのでございます。ただしかし、たびたびお尋ねのように、この事件をこういうふうに解して、こういうふうに処理すべきだというような議決は、裁判所としてはできないものであろうと、私は考えております。
  69. 高田なほ子

    高田なほ子君 確かにあなたの気持はわかるんです。気持はわかりますけれども、重ねてお伺いしますが、人事院規則一三−一の二十項は、準用規定として裁判所のほうでも使われることになっているわけですか。おるのですか、おらないのですか、この点だけまず聞きます。
  70. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 準用規定でございますから、中には、人事院が議決する範囲が非常に広い場合でも、裁判所が議決する範囲はきわめて狭いということもあり得るわけでありますし、非常に包括的な準用でありますために、抽象的に申しますには、全然準用のない字句もあるかと思うのでございます。そういうことで、先ほどから申しましたようにともかくその議決の中に、公平委員会審査の公平を害するような議決を裁判所がする、そういう議決は、議決の文字の中に入らないことは明らかであろと、私は考えております。
  71. 高田なほ子

    高田なほ子君 お気持はよくわかるんです。私の聞きたいのは、人事院規則一三−一第二十項、これはやはり準用として、裁判所の場合にも準用として法文上は扱われるわけですね。扱われるから、この文中にある「人事院」という名前は、裁判所職員臨時措置法によれば、「人事院」とあるのを「最高裁判所」と読みかえなければならないんですから、この第二十項は、最高裁判所の議決に基づいて審理を行なわなければならない。法律上そうなっているわけです。建前上そうなっているわけです。あなたのお気持はわかるんですけれども、法律はそうなっているんだから、あなたの方針と法律が違うということになれば、これは当然直さなきゃしようがないじゃないかという結論に到達するわけなんです。そうじゃないんですか。
  72. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 私も別に、この法律準用されております国家公務員法の今問題になっております二十項でございますか、これが私の考えと違っているということを申し上げているわけではないのでございまして、ただ、これを読みまして、公平委員会審査の公平に害のあるような議決をする、そういうような議決は、少なくともこの文字からは除かれるのではないか、こういうふうに申し上げておるのでございます。
  73. 高田なほ子

    高田なほ子君 私は、気持はわかるんです。しかし、やっぱりこの法律に基づいて物事を運用するというのが、すべて私は建前だろうと思うので、法律を勝手気ままな解釈をすることは許されないと思う。したがって、人事院規則一三−一の第二十項をあくまで法律のとおりにすなおに読むと、最高裁判所の議決に基づいて審理を行なうのだということで、最南裁判所の議決というのは、最優先的に審理の条件としてここに入っているわけなんです。そうでしょう。これをお読みになってみればわかるでしょう。公平委員会は何をするんだ、それは何人からも指示を受けちゃいけない、良心に従わなければならない。だがしかし、最高裁判所の議決に基づいて審理を行なわなければならないというふうに、最高裁判所の議決が前面にこれは出ているわけです。このことを亀田委員は先ほどから具体的な事例をあげて質問しているわけです。わかるでしょう。
  74. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) わかりました。お尋ねでございますが、この規定は、前段には、指示を受けず、良心に従いということで、非常に独立した、公平な立場でなければならないということをうたったものと思います。後段は、法令、規則、指令及び人事院の議決に基づいて審理を行なわなければならないということで、法令とか規則とか、そういう一般的な準則に基づいて行なわなければならないということであろうかと思います。ですから、ここには、読みかえますと、裁判所の議決ということにはなりますけれども、それが法令あるいは規則、指令というようなものよりもっと重さが重いものであるというふうには私たち考えておらないのであります。
  75. 高田なほ子

    高田なほ子君 あなたは、重く考えてないというあなたの考えだけれども、私どもはしろうとですから、ばか正直に、やはりこの法律法律として順法精神で尊重して読んでいるわけです。あなた一人がお考えにならなくても、法律の解釈がそういかなかったならばやっぱり問題じゃないですか。いいです、これは議論になりますから。どうぞ。
  76. 亀田得治

    亀田得治君 包括的に準用といったような大ざっぱなやり方のやはり疑問点の一つがこういうところにも露呈してくるんだと思います。一般国家公務員の場合には、人事院自体が第三者的な判定機関でありますから、大体こういうことでも、そんなに疑問の起こる場合は私はなかろうと思います。裁判所の場合には、みずから処分をして、そしてみずから公平委員の任命をしてと、こういう立場にあるだけに、矛盾があるように見ればやはり見えるわけなんです。だからこれは、裁判所としてやはりよく検討すべきことだと思うのです。このまま残っていたら、やはり、なあにあんな、公平委員というたって、あのワク内でやっているのだから、あんなものはたいしたことではないのだ、こうなってしまう。運用はそういうことにならぬとおっしゃったって、それはそうはならない。  そこで、現に実際の処分ですね。公平委員会における扱い、先ほど長井課長からのお話ですと一つだけ、ちょっと裁判所の決定を変えてくれた、公平委員会が。まことにやはりこの第二十項の準用に基づいて、裁判所の議決といいますか、そういうものを尊重しておやりになっている。その良心には敬服するわけですが、普通、紛争があれば、処分したものがみな悪いというのじゃないのですが、どうせ人間のやることですから、第三者機関に持っていけば、せめて二割とか三割とか訂正されるとかというものですよ、これは、統計的に見て。まあこんなことは、個個の事件について判断しなければ、その適不適は言えないことかもしれませんが、しかし統計的に見て、そんな程度では、もうだれもそこへ持っていく熱意が出てこぬですね。第三者的な機関であれば、やはりだれでもが、そこへ持っていきたいという感じのものでなければこれはだめです。  そこで、長井課長にちょっとこまかい点をお聞きするわけですが、今まで公平委員会で扱ったのが何件あったのか、その点をまずお聞きします。そして今まで結論を出したものが幾ら、現在進行中のものが幾ら、その中で一件だけ原処分が修正されたというのが、どの程度修正されたのか。そこら辺の実情をまず明らかにしてほしいと思います。
  77. 長井澄

    最高裁判所長官代理者長井澄君) 公平委員会を設置いたしましたのが十五ございます。そういたしまして、そこに係属いたしました事件の総数が三十六件ございます。なお、先ほど申し上げました原処分の修正となりましたのは、原処分減給五カ月が減給三カ月に変更されております。
  78. 亀田得治

    亀田得治君 三十六件のうち、まだ未済のやつがどれくらいあるのですか。この三十六件というのは既済ですか。
  79. 長井澄

    最高裁判所長官代理者長井澄君) 三十六件は、三十七年四月現在の既済が三十六件でございます。
  80. 亀田得治

    亀田得治君 未済はどれどれくらいあるのですか。
  81. 長井澄

    最高裁判所長官代理者長井澄君) 未済は六件でございます。
  82. 亀田得治

    亀田得治君 あるいはあなたのほうに資材がないかもしれませんが、国家公務員の人事院における不利益処分に対する審査の状況ですね。これについて、比較のために、どういう状態になっているか、明らかにしてほしいと思います。
  83. 長井澄

    最高裁判所長官代理者長井澄君) 人事院のほうは、少し資料が古いので恐縮でございますが、昭和三十六年末現在で、九百七件の既済のうち三百件が原処分の修正と申しますか、取り消し、変更を受けております。
  84. 亀田得治

    亀田得治君 三百の残りは、これは原処分の承認ですか。それ以外にも何かあるわけでしょうか。残りを全部処分承認を解してよいわけですか。
  85. 長井澄

    最高裁判所長官代理者長井澄君) 残り六百七件は、原処分が承認されたと理解しております。
  86. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますと、国家公務員の場合は、今、事務総長もお聞きのように、六百七と三百、二対一です。ところが、裁判所の場合には三十五対一ですわ、これは。三十五対一。しかも、その一も、五カ月が三カ月になったという、ちょっと色をつけたという程度のことなんですね。だから、こういう数字を事務総長ごらんになって、何かこう、どういうふうなお感じを持たれますか。これでいいのだというふうな感じをお持ちですか。
  87. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 裁判所内におきます事件、それから人事院関係の事件、一々を具体的に調べてみませんと、はたしてどちらがよろしいかということは軽々に申し上げられないので、裁判所といたしましては、大体原処分の決定自体も、みんな法律家が寄ってやっておりますから、非常に法律的に見て正確にやっているのだろうと思います。また、公平委員の構成そのものについては、亀田委員等からいろいろ御批判もあるようでございますけれども、ともかく内部事情によく通じ、また法律にもよく通じた人によって構成してもらって、したがってまた、その審査の結果も正確であろうと思われるのであります。ですから、私といたしましては、率は非常に少くても、正確にやっているものである、こういうふうに、考えているわけで、それ以上の別に感想はございません。
  88. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連して。三十五対一の比が数でもっていわれたわけですが、減給五カ月を三カ月に変更したというのは、どういう悪いことをしたんですか。
  89. 長井澄

    最高裁判所長官代理者長井澄君) 今、こまかい点、ちょっと記憶がございませんのですが、これは、内容が過激にわたるビラを張った事件のように記憶しております。
  90. 高田なほ子

    高田なほ子君 過激にわたるビラというのは、どういうビラですか。一枚張って五カ月から三カ月の減給、何が過激なんですか。
  91. 長井澄

    最高裁判所長官代理者長井澄君) ちょっと内容がはっきり記憶ございませんので……。ただ、ビラと申しますか、たれ幕といいますか、高い所から下げる、あれを掲げた事件でございます。
  92. 亀田得治

    亀田得治君 まあこの減給五カ月が三カ月になったのが一つあるために、三十六対ゼロにならなくて、多少裁判所の面目は立っておるかもしれませんが、どうも第三者的な機関という感じはちょっと持ってませんね。ところが、裁判所が幾ら公平だと言いましてもね。ああいう処分というものは、これは裁判とは別ですよ。皆さんのほうがやはり使用者的な立場でしょう。普通の裁判であれば、原告と被告、あるいは検察官と被告人、弁護人、こうなるから、裁判所は公平な第三者に立てるのですよ。だけど、何といったって、それは使用者と使われる者という立場に立っている関係なんですよ。それは、そのときの事態によって、多少論理以上に感情が入ったり、それはまた多少あるのが人間らしくていいとも私は思うのですよ。そんなものが全然ないということはあり得ない、実際のこと。だから、そういう問題については、人間同士のやることだから間違わぬようにというので、第三者的な審判制度がやっぱり要るわけですよ。それは何としても、幾ら利口な、りっぱな、外部ではずいぶんりっぱな動きをしている人でも、家へ帰って子供との問題とか、自分の奥さんとの問題になったら、筋の通らぬことを言う人もたくさんある。われわれも多少みずから経験する場合もある、あとから考えて。そういうものなんです。だから、こういう審査制度における得失というものは、ここはやっぱり考えてもらいませんとね。三十五対一というのじゃ、これはもう話にならぬ。それじゃ一般の行政官庁というものは、何だ、むちゃくちゃやっておるのだ、この数字を比較したら。あなたのほうが正しいならそうなる、この数字だけ見ると。だから、そういうわけで、こんなアンバランスが出ていて、これでいいんだというわけには私はいかぬ裁判官のほうは、なるほど法律の解釈なり、そういうものの運用が好きですから、そういう処分の場合でも、おそらく法律の解釈とか、そういうことに重点を置かれるだろうと思うのです、私の想像では。ところが、そういう身分的に上下の関係にあるものが、はたしてそういう処分の場合に、そういう角度だけで結果的に非常に公平かどうか、これは非常に問題がある、この点は。だから、もうこの数字だけで、それは事務総長が、裁判所判断が正しい証拠だなんて、そんな意味のことをさっきもおっしゃっているわけですが、その点は、もう根本的に検討し直してもらわなければいかぬ。どうですか。亀田さんの言うのは、それは間違いだと、私はもうそれはいろんな場合に経験しているわけですが、経験の上に立って申し上げておるわけでして、私の議論が間違いだったら、ひとつぴしっと、理路整然と反駁してもらいたい。
  93. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 私は、非常に率が少ないために、裁判所のやっております処分が公平だ、ほかの一般行政庁処分に比較して公平だと申し上げておるのではないのでございまして、先ほども申し上げましたように、行政庁のほうの処分内容はわかりませんので、その点は一応除外して申し上げておるわけでありまして、裁判所の中の処分が正しいということにつきましては、先ほど申し上げましたように、そういう事件の判定等に非常になれておる者がやっておるし、また、公平委員会も、そういう人を選んで組織してもらっておるというような関係で、そういう結果になったんであろうと、こういうふうに申し上げただけでございまして、裁判所のほうが行政庁に比較してより正しいであろうということまでは申し上げておらないのでございます。しかし、先ほど減給の点だけが一件しかないというふうにおっしゃっておりましたが、あるいはまた、行政庁のほうもそういうのは案外たくさんあるかもしれないのしで、その点は、どうも内容を調べてみませんと全然比較はできない。将来の運用としては、いろいろ公平委員会等問題になっておりまするので、その組織については、十分考慮いたしたいと思います。
  94. 亀田得治

    亀田得治君 そこで、もう一点重要なことは、公平委員会を構成するメンバーの問題ですね。これは、どういうふうにお考えになっておりますか。今までの実績と現在の考え方、多少最近は変化しているように聞いているわけですが、そこら辺の実情について承りたいと思います。
  95. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 組織につきましては、御承知のとおりに、ちゃんと規則で定められておりますので、その範囲で組織してもらっておるわけでありまして、事件によりまして多少構成を異にしております。この前、井川委員から御質問のありましたときも、いろいろ問題になっておったようでございますが、外部の人で構成するということも、非常に長所もございますが、一面においては内部事情に通じないという欠点もございますし、また、あまり内部の者で構成しますと、第三者に不公正な感じを与えるというようなこともあるわけでございます。その点は十分配慮をいたしておるわけでございます。最近は、弁護士の方だけで構成していただいておる公平委員会もございまして、これは、事件の性質からいいまして、まあ裁判官の排斥というようなことが端緒になった事件のために、特にそういう配慮をしたわけでございますが、しかし、これは特殊に事件というふうに考えておりまして、将来弁護士だけで構成していただくということまでは考えておらないわけであります。詳しいことにつきましては、また第一課長からでもお答えしたいと思います。
  96. 亀田得治

    亀田得治君 じゃ補足的にもう少し実情を詳しく……。
  97. 長井澄

    最高裁判所長官代理者長井澄君) それでは、具体的な委員会の構成をおもなるものについて申し上げます。  請求者が佐野加寿男君、この事件につきましては、委員長は家庭局の課長をやっておられた方、また委員には、一人は民事局の岡付の判事補、一人は刑事局の事務官、この三名で構成いたしました。
  98. 亀田得治

    亀田得治君 ちょっとお話中ですが、日付順にずっとやって下さいな。そのほうがずっと変化を理解しやすいですから、できましたらそういうふうに……。
  99. 長井澄

    最高裁判所長官代理者長井澄君) それでは、受理年月日の順に申し上げることにいたします。  昭和二十八年三月四日に受理いたしました佐野君の事件が今申し上げた構成でございます。全部事務総局の職員でございます。次に、昭和二十九年の一月と七月に、これは併合して受理されております大阪の米虫寛君外十一名の事件ですが、これは、委員長は事務総局刑卒局の課長委員には、一人は事務総局総務局課長、もう一人は総務局の事務官、以上の三名で構成いたしました。その次に、昭和二十九年九月に受理いたしました川端延雄君の事件につきましては、委員長は、これは人事局の課長委員には、人事局の局付の判事補と事務官、この三名で構成いたしました。その次に、昭和三十年の五月に受理いたしました佐野加野男君の事件、委員長は事務総局の総務局課長委員は同じく行政局の岡付の判事補及び訟廷部の事務官、以上の三名で構成いたしました。次に、昭和三十二年の十二月に受理いたしました高田貞夫君の事件、委員長には弁護士の石川秀敏氏、それから委員には、書記官研修所の事務局長及び最高裁判所の書記官、以上の三名で構成いたしました。その次に、いわゆる浄書拒否事件、あるいは奉仕労働返上事件と俗称されておりますが、佐藤三郎君外十六名の重件につきましては、委員長弁護士である村田正雄氏、委員には、人事院公平局長、仙台の高等裁判所判事最高裁調査官と東京地裁の書記官、以上の五名で構成いたしております。これは、昭和三十三年の六月に受理しております。次に、昭和三十三年の九月千葉祐二君の事件、これは、委員長弁護士の方がなっております。委員には、最高裁調査官及び司法研究所の事務官、以上三名で構成いたしました。次に、昭和三十四年の三月に受理いたしました田戸君の事件は、委員長弁護士委員には最高裁調査官及び最高裁の書記官、この三名で構成いたしました。次に、三十四年六月に受理いたしました小川昌男君の事件、委員長弁護士委員には最高裁調査官及び書記官、この三名で構成いたしました。三十五年一月に受理いたしました山辺朝雪君、この方の事件は、これは判決が確定いたしまして、委員会の構成に至っておりません。次に、昭和三十五年の一月に受理いたしました横山外雄君外一名の事件につきましては、委員長及び委員三名、いずれも在野の弁護士の方三名をもって構成いたしております。それで、二十九年、この委員会で御審議いただきましてから、委員の人選には御意見を十分に反映できますように、委員の構成に裁判官でない一般の——従前から委員の公選には、裁判官以外の職員の人も加え、なお、人事担当の職員は入れないようにして参りました。一、二の例外はございましたが、二十九回の国会において御指摘いただきましてからは、構成を公平にならしめるように、部外の人を加えていくというような配慮をいたしております。弁護士の中には、かつて裁判所に勤務した裁判官の経歴を有しておられる方もおりますが、この方々も、いずれも裁判官をやめてから十年以上たって在野としての御経験も十分に持たれた方になっていただくよう配慮いたしております。ただ一人、村田正雄氏は、退職後の日がそう長くございませんが、裁判官としての人望ある方で、十分な公平が期待できるという考え方で御審議を願ったわけであります。それから、先ほど申し上げました横山君の事件の委員になられた三人の弁護士さんの構成は、総長からも申し上げましたが、この方は、いずれも在朝の経験を有せられない、全くの在野の経験のみの弁護士さんであります。  以上のとおりでございます。
  100. 亀田得治

    亀田得治君 詳細承りまして、はわかりましたが、この横山事件以外は、委員長弁護士の方を持ってこられた点は、まあはなはだ進歩だと思います。今もお話がありましたが、これまでの方針は多少間違っていたということをみずから認められて、そういうふうに変わったものだと思いまして、その点はまあ了とするわけですが、御説明にもあったわけですが、横山事件以外の方は、現職は弁護士でありますが、ほとんど全部が元裁判官、こういうことのようでありまして、まあ年数が十年以上たっているからということのようでありますが、そろいもそろって、全部元裁判官というふうなことになるのは、やはりざっくばらんに在野法曹からという考えでなしに、元裁判官の在野法曹という名簿の中からこうより出していく、そういうふうにおやりになっているような感じがするわけですが、どうなんでしょう、その点は。
  101. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 御指摘のように、特に前に裁判官をやった弁護士の名簿のうちから選択をするというようなことはございません。弁護士として適当な方で、しかも在官の御経験のない方もたくさんあるわけでございますが、一方には、この弁護士の方は非常に御多忙でございまして、また、御多忙の結果として、なかなか期日に開くことができないということもありますので、そういう点も十分考慮した上で御願いをしておるわけでございます。
  102. 亀田得治

    亀田得治君 まあそろいもそろって、こうびちっと元裁判官という方で弁護士、一人ぐらいはずれるのがあってもよさそうですが、全部そうなっているものですから、やはり在野法曹であるけれども、元裁判官という関係でなければ選ばない、何かそういう内輪の選考方針でもきめて実際はおやりになっているのじゃないか、横山事件は、これは別として。そういう感じがしたからお聞きしたわけですが、そういうことではない、それは偶然の結果だということなら、そういうふうに承っておきまして、そこで、横山事件につきましては、これはそろいもそろって純粁な在野法曹、三名とも。これにつきましては、元裁判官ということじゃいかない、純粋に在野法曹でなければならぬという立場でこれは選考なさったのでしょうか。どうでしょうか。
  103. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 人事局長が出て参りませんで、いことは私は聞いておりませんので、十分なお答えはできないかと思いますが、先ほども申しましたように、裁判官排斥の運動から端を発した事件というふうに聞いておりますので、そういうことから、この際は純粋に在野の弁議士からお願いしたらどうかということできめたというふうに聞いております。  ちょっと申し落としましたので、この点補足させていただきますが、裁判はもちろんでございますが、公平委員会における審査、その結論というようなものを出すのに、いろいろな資料を取り扱われて、また、その最後の結果を出されるについては、なかなか複雑な困難な処理が必要でございまして、そういう点については、従来裁判所におりました経験のある者はなれているというようなこと、こういうようなことも考慮して人選をしているようなことでございます。これは、本筋から申しますと、あるいは便宜的な問題とお考えかもしれませんが、やはりいろいろな資料をよく検討して、それを取りまとめて結論を出すということも相当考えなければならないことだと思っているわけでございます。
  104. 亀田得治

    亀田得治君 今のお答えから判断いたしますと、どうも偶然の結果ではないようでありまして、横山事件の場合には純粋な在野法曹、事件の性質からいってそうしたと、それ以外の場合は、やはり在野法博でありましても、元裁判官、裁判の経験というようなものがあったほうがいいんだというふうな考え方がありまして、そういう結果が反映しているようでありますが、私は、そういう区別は横山事件とほかの事件との間でする必要がないのではないかというふうに感ずるわけなんです。やはりこういう身分上の処分について、行き過ぎなり不当な点がなかったかどうかという判定でありますから、何もそんなにむずかしい、緻密な理論構成とか、そういう問題じゃ私はなかろうと思うんです。いろいろな観点から十分、どう判断するかという問題が多いと思うんですね。全体として見て、どの辺に落ちつくのが公平な、これは何か法律的な判断というよりも、もう少し大きな判断が要るんじゃないかという感じがするわけでして、どうもそこら辺に裁判の経験とか、そういうことにいまだにやはりとらわれている点があるんじゃないか。そうなりますと、どうしても原処分者自身が、法律家がやっているわけですから、それに合わせて思考をこらしていけば、結局は原処分承認ということにやはりどうしてもなるわけなんです。そんなものじゃないと思うんです、これは。上に立つ者と下に立つ者との間の人事関係の紛争というものは、私、先ほど多少例などを引いて申し上げたように、そういうものなんです。これは、皆さんは、裁判官がやっているのだから間違いない。それは、外部から持ってきた事件に対する裁判官として立ち向かう場合には姿勢が違うんですよ、これは明らかに。それは、事件のことについては、ずいぶん冷静に言われる方でも、自分がやった処分についてだと、それはずいぶん赤い顔をしておっしゃる方もおりますよ。だから、そういうわけでして、やはりこの構成の中に、まあ昭和二十九年以後若干の進歩も見られるわけですが、いまだに不十分なところが残っていると私感ずるんです。これは事務総どうお考えになりますかね。
  105. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 先ほど申し上げましたように、最近の事件で在朝の御経験の弁護士さんのみをお願いしたということのいきさつについては、詳しいことはちょっと申し上げかねますけれども、事件の性質から申しまして、そういう構成をお願いしたというふうに聞いておりますし、また、従来国会等でいろいろ御論議になったこともあるいは反映しているのではないかとも私はまあ推測しているわけでございまして、ただ、先ほどは、弁護士さんの時間の関係というようなことで申し上げましたが、実は、なかなかお引き受け下さる方がないので、この点は、ときによりまして、裁判所としては非常に苦慮しているわけなんでございまして、その点も御了承願いたいと思います。
  106. 亀田得治

    亀田得治君 これは、関連してちょっとお聞きしますが、委員に対する手当ですね。これはどの程度のことになっているでしょうか。お引き受けにならぬようなお方もおありになるようだし、そこら辺のこともちょっと。
  107. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 今、手元に資料がございませんので、正確なお答えはすることができませんのですが、きわめて少ない謝金ということであろうと思います。官庁の関係では、御承知のとおりに、証人とか鑑定人あるいはその他の弁護人、そういった方々に対しては、きわめて少額の日当、報酬しか差し上げられないわけでありまして、この公平委員に対する報酬というようなものは、どういうふうになっているか、正確にはお答えできませんけれども、大体そういう程度の不満足のものであるということを御了承いただきたいと思います。
  108. 亀田得治

    亀田得治君 いや、そういうことではちょっと了承はできないわけでしてね。やはり裁判所がおやりになった処分をさらに検討するという機関ですからね。それはもうりっぱな人にやはり扱ってもらわなければならぬと思いますし、それだけに、たとえ多額でなくとも、やはりこの機関を尊重しているのだという感じのすることはやはりしなければならない。もちろん、そんな手当を目当てになされる方はおらぬと思いますが、やはりこの制度を尊重するのであれば、尊重しているだけのやはり格好というものが私はなければならぬと思う。それは、事務総長課長も、どうも今お聞きしたところの印象では、どういうふうに手当なり待遇がされているのか、全然頭のすみっこにもないような印象を受けるわけですが、そういうことでは私はいかぬと思うのですね。わかりましたか、今お調べになっていたようですが。
  109. 長井澄

    最高裁判所長官代理者長井澄君) 実は、昨年度までのものは存じておったのですが、このたび予算単価が上がりまして、その金額がわかりませんので……。昨年度までは、非常勤の職長として、日額二千円を公務員でない方には支払うことになっておりました。
  110. 亀田得治

    亀田得治君 一日出頭して二千円……。
  111. 長井澄

    最高裁判所長官代理者長井澄君) さようでございます。
  112. 亀田得治

    亀田得治君 それは、旅費といいますか、車代なり、そういうものは含まっておるわけですか、その中には。
  113. 長井澄

    最高裁判所長官代理者長井澄君) 通常の勤務状態では、旅費とか車代とかございません。出張して調査審理をするというような場合には、公務員に準じた旅費、日当が支給されます。
  114. 亀田得治

    亀田得治君 それから、弁護士以外のたとえば調査官なり、そういう方がなっている場合には、この手当というものはどうなるのです。これはもう出ないわけですか。
  115. 長井澄

    最高裁判所長官代理者長井澄君) それは、給与に関する法律に従いまして、支給できないことになっております。
  116. 亀田得治

    亀田得治君 結局、そういうところにも問題が多少あるのではないかと思うわけですね。予算措置がない。在野のりっぱな公平な方を任命しようと思っても、予算措置ができておらないとか、その面から制約を受けるわけですね。だから、手当を出さなくてもいい最高裁自身の人を入れて置くとか、そうすれば、予算的にはそれで助かるわけです。だから、幸いやしくも裁判所処分を調べるという非常に重要な任務を持った委員会でありますから、何かこう内部の者で間に合わしておけば、それで事案の審理自体も最高裁のことを考えてくれるだろうということも手伝いまして、結局こういうふうな、大部分裁判所の機構の内部の人、こういうことに結論としては現われておるわけです。したがって、こういうことを、基本的な方針としては相当検討はされておるようですが、もっとよく研究をしてほしいと思います。これは、委員長はみな最近は在野法曹ですが、あとの二人の委員は、これはみな最高裁の機構の中の人です。だから、基本的にまだこの制度自体の仕事にふさわしいようにはなっておらないという感じが私にはするのです。  最後にお聞きしたいのは、法律制度として、この裁判所職員に関する公平委員会をいかに作り上げるかということは、相当問題点があると思うのです。私たちは、一応こういう形のものが、今私たちが提案しておる形のものが少なくとも現状よりは一歩前進するものだと、そういう意味でこれを出しておるわけですが、党の立場から言えば、これをこえて議論するのもどうかと思うのですが、私の気持としては、裁判所職員に関する公平委員会制度というものは、第三者のりっぱな人によって構成して、そこで処分が出る。出た場合には、さらにそれが裁判所に持ち込まれるというようなことにならぬようなものを目標にすべきではないか。だから、そこで処分が出て、それが行政訴訟の対象にもならないという制度を作るかどうか、これは、私はちょっと制度上問題があろうと思うのです。しかし、行政訴訟に持っていけば、それは結局また裁判所へ逆戻りするのですから、法律上行政訴訟を許さないというようなことを書くべきでは私はなかろうと思うんですが、実際上そういう所に持ち込まなくても、ともかく裁判所の問題に関しては、そういう公平委員会で扱ってもらったら、それでもうお互い納得いけるというふうなものを目標にして、普通の人事院なんかにおける公平委員会以上にもっと充実させたものを、内容的にも予算的にも、やはりそういうものを考えておくべきじゃないかというのが私の持論なんです。これは、最初にも申し上げたように、それを制度として書き上げる場合には、現在の三権分立の制度、それとの関連なり、いろいろ問題点があるでしょう。しかし、根本的には、どうもそうしないと気持の上で矛盾が解決しない、そういうふうに考えておるわけですが、事務総長の見解をひとつお聞きしておきたい。これは私、私見として申し上げているわけですが、必ずしも事務総長最高裁を代表してのお答えでなくてもいいわけでして、ざっくばらんに考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  117. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 懲戒その他の内部的な不法不当な行為に対して処分というようなものをいろいろな制度上内部でやっているところが多いので、そういう意味におきましては、国の制度全般的にあるいは検討を要するものがあるんじゃないかと思います。そういう意味では、やはりどうも自分の使っている者を処分するので、どうしても再度審理をし直すといっても、使っている者のほうが有利になるということは考えられるけれども、こういう問題は、また始終第三者の機関にその判定を依頼するということも、いろいろ不合理があるように私どもは思うのでありまして、この御審議になっております法案につきましては、御趣旨は十分しんしゃくいたしまして、これからの裁判所のいろいろの懲戒その他に関する手続の問題で参考にはいたしたいと思いますが、今日直ちに、その第三者的立場の者の判定にまかしたらいいのではないかという御意見には賛成も申し上げかねるわけでございます。
  118. 亀田得治

    亀田得治君 これは、釈迦に説法のようなことにもなりますが、とにかく刑訴にしても民訴にしても、一つの事件について、前の段階で関与した裁判官は、たまたまその後異動があって、もっと上のほうのクラスへ行ってその事件が来ると、当然これはもうその事件からははずされるわけですね。これはあたりまえのことなんです。前は下級判事としてやったんで、今度は上へ上がってきたから、これはまた高い立場で、おれのやったこと自身を上のほうで判断する、そんなことはできるものじゃない。そんなことは当然の原理ですからね。だから、そういう点もひとつ、これは、訴訟法自体がそうなっているわけですから、これは一種の訴訟ですから、処分、審判、さらに訴訟、こういくわけですから、どうしてもそれは矛盾が出てくるのですね、うまくやろうとしても、その結論が。私が申し上げたような、そのかわりそういう第三者にまかすような考えをとるのであれば、それは予算的にも、それから人的にも、これは世間が納得するようなきちんとしたものじゃなければいかぬです、積極的に。そういう点をひとつ、最初のお答えでは、どうもしっかり研究に取り組むという姿勢にもまだなっておらぬようですけれども、これはぜひ取っ組んでもらって、そういう考えもひとつ参考にしてほしいと私は思うのです。  それで、もう一点ですが、従来裁判所では、事前に注意をしてやれば、処分までいかなくても済むのじゃないか、あるいは事後においてもいい、十分厳重な注意をして、そうしてなるべくやはり円満に処理していくと、こういう点で少し欠ける点があったのじゃないかという感じがするわけですが、まあ他の官庁ではずいぶんそれはやっていますよ。それはもう、局長が怒っていても、担当の係長なり課長がまた中へ入るとか、いろいろやっておるのですよ。それは、問題が起きておるといいましても、何も、その問題自身が片づけば、必ずしもそのとき騒いでいるのが人間的に一番悪いとか、公務員として本来不適格とか、必ずしもそういうことは言えないわけでして、だから、そういう点のですね。これはもう、法律上も注意処分というのがあるわけですが、あれも一種の処分なんです。そういう努力が足らなかったのではないかと、例の、一番初めに出ました昭和二十四年の解雇の問題ですね。あれなんかでも、最近行政事件の判決が大阪でありましたが、あの判決も私ずっと拝見しましたが、あの判決の理由の中にも明らかになっているように、昭和二十四年裁判官会議を開いて、乾氏その他を処分するかどうかという場合に、やはりもう一度十分注意をすべきじゃないか、非常に強い意見がやはり出ておる。それで、まあその会議の模様等を判決を通じて見るのですから、これはおそらく大体正確だと見ていいと思うのですが、そういう問題を起こす前の、通常の勤務にあるときの状態につきまして、その詳記官を使っていた裁判官の証言によれば、裁判所に来て比較的年限は短いのだけれども、非常に仕事はよくできたといったようなことも法廷で証言しているわけですね。そういったようなことも関係があるのだろうと思いますが、ともかくもう一度注意をしてからにしたらどうだろうかと、もう一方の意見は、もうあんな者は注意してもだめだ、すぐやってしまえ、こういうふうな両論があったようです。どうもそういう点で、最近はよく注意処分ということをやっているようですが、今までの処分のあり方に多少性急なところがあったのじゃないかというふうな感じを私たちしているわけですが、その点についての従来の状況なり、あるいは最近の方針なり、そういうものについてひとつ承っておきたいと思います。
  119. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 相当長い期間のいろいろな事件の関係でございますので、画一的には申し上げられませんけれども、終戦直後のいろいろ法律制度もまだ十分でないような時代、あるいは社会的な規律というものがあまり十分でなかった時代には、相当処分を受けるほうも過激な行動に出るようなこともあったようですし、また、裁判所の監督の立場にあるものも、まあ新しい事態になれないために、そういうふうに今おっしゃられましたような事前の注意というのが足りないで、あとで処分が問題になるというような事態もあったかと思います。最近では、事件々々によってもちろん違いましょうが、できるだけ処分をされるような行動に出ないように注意を与えておるということは言えると思うのであります。ただ、個々の事件によりましては、大体そういう注意を与えることはもってのほかだというような場合もありますので、すべての場合に注意を与えるようにというふうにもいきかねる点もあるわけでございます。概略ですが、お答えといたします。
  120. 亀田得治

    亀田得治君 この注意処分というのは、最近はどの程度なんでしょうか。
  121. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) これは、申し上げるまでもないかと思いますが、事実上の行為と申しますか、別にそれによって法律的な効果が伴うものではないわけでございます。それで、まあいろいろな段階がありますので、一々注意をしたことについて報告を求めているわけでもないわけでございます。それから、形式にいたしましても、口頭による注意もありましょうし、書面による注意もあると思いますので、どうも全国的にいって、どのくらいこの数があるかということは、ちょっと申し上げかねます。
  122. 亀田得治

    亀田得治君 これは総務局長なり、わかりませんか、もう少し最近の状況。そういうものは、統計などには全然とっておられぬわけですか。
  123. 桑原正憲

    最高裁判所長官代理者桑原正憲君) ただいまの注意という根拠規定は、下級裁判所事務処理規則にあるわけでございます。これは別に、先ほど事務総長からもお答えいたしましたように、法律的な効果を伴わない事実上のものでございます。そして各庁々々の長が注意ということを行なうことになっておりますので、統計的なものも全然とっておりませんので、詳細は不明でございます。
  124. 亀田得治

    亀田得治君 特別なこの事件についての注意処分などはあったでしょう。そういうのは、どういう基準でおやりになっておるのか、お聞きしたいのですが……。
  125. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 御承知のとおりに、裁判官その他裁判所職員については、法律できめられましたいろいろの懲戒の処分があるわけでございますが、それにも達しないという程度のものについて注意処分をしておるわけでございます。注意処分については、いろいろな段階がございまして、すでに御承知のとおりに、飯盛裁判官の発言について最高裁判所が注意を与えるというようなのも、これも注意の一つでございまして、こういうのは、裁判所全体としても非常に重きを置いたものというふうに考えられるわけでございます。  しかし、小さいものとすれば、私たちがよく終戦後話し合ったのですけれども、たとえば、くつが足りないので、廊下をげたで歩いているというのも、やはりこの一つの裁判所の中の広い意味の規律に反するというふうなことで注意する。これも一つのやはり極論すれば注意処分ではなかろうかというふうなことを話し合ったこともあるわけで、そういうふうに、注意の処分ということは、非常に大小ございますけれども、先ほど申し上げましたように、管理そのものは行なわれておりませんし、あるいは、今申し上げましたような例は、突きつめれば、裁判所としてはそういうことになるのかもしれませんが、あるいはそれ以外のものであるのかもしれません。大体御了承お願いしたいと思います。
  126. 亀田得治

    亀田得治君 今お話のありました飯守裁判官に対する注意処分ですね。ああいうのは、ちょっと軽過ぎるという感じを私たち持つのですが、ともかくああいう場所でああいう時期に、ちゃんとあらかじめメモを用意して、そうして発表された。何かこう裁判というものが、一つの自分の主観的な人生観によって相当左右されておるという印象を与えたことは、これは間違っておるわけです。もちろん、それは裁判の本質として、裁判官の抱く人生観が影響しておるのは、これは当然認められておることですが、しかしそれは、もっと問題を掘り下げて、事実をしっかりつかんで、その上で自然に反映してくるべきものであって、ああいう取り調べの段階で、何かメモを用意して一つの考え方を述べる。これは私、職員の方が、くつがないものだから、げたをはいて歩いたとか、そんな問題とは質的に全く違った問題である。さればこそ訴追委員会対象にもなったわけですが、訴追委員会では、多数決で、弾劾裁判にかけることは否決されておるわけですが、しかし、最高裁自体の自主的な処分としても、注意処分という程度では、私は低過ぎるのじやないかということを常々考えていたわけですが、たまたま本件に多少関係がありますので、こういう機会に聞きたいと思ってお聞きしたいわけですが、どうですか。あなたは、そのころはほかの裁判所におられたわけですが、裁判官という立場から見て、これは、最高裁のおやりになった処分について、事務総長として批判はしにくいと思いますが、おそらくあなたなら、ああいう機会にああいうことはおっしゃらないだろうしね。それに対して注意という程度でははなはだ甘い。労働組合などに対しては反対にきつい。こういうふうに、そっちが甘ければ、やはりそういうふうにどうしてもまた反作用として考えられるわけでして、その点、どういうふうに事務総長としてお考えでしょうか。
  127. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) あの注意処分のことにつきましては、国会でもいろいろ御論議のあったように聞いておりますので、重ねて私から申し上げるまでもないのでございますが、あれは、最高裁判所裁判官会議の決議に基づいてなされたもののようでございまして、私としては、もし裁判官であったらばどう考えるかということは、ちょっと仮定的な御質問になるので、お答えいたしかねます。それから、現在においてどうかということでございますが、訴追委員会のほうの処分も、御承知のような処置も決定されております今日におきましては、まあ最高裁判所の注意処分相当であったというふうに考えているわけでございます。
  128. 亀田得治

    亀田得治君 それ以上のことはおそらく言えないのでしょうが、一応これは関連してのことですから、この程度にしておきます。  いろいろ法案について問題があるわけですが、この法案の扱いが前国会から引き続いてかかっておるわけでして、これは、われわれ委員会自体として法案の処理は考えるわけですが、法案の運命いかんにかかわらず、前回並びにきょう論議された諸問題については、十分やはり最高裁としてもっと自主的に積極的に取り組んでいく、きょうの話では、もう何もやっていないという、私はざっくばらんにそういう感じを受けておるわけでして、この点、はなはだ遺憾なわけでして、その点をひとつ要請しておきまして、最高裁に対する本件についての質問は、一応これで終わることにいたします。
  129. 下村三郎

    最高裁判所長官代理者下村三郎君) 今の御発言につきましては、御趣旨を十分考えまして、今後の参考といたしたいと思います。
  130. 松野孝一

    委員長松野孝一君) 他に御発言もなければ、本案については、本日はこの程度にとどめます。  次会は、四月十九日午後一時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時十八分散会    ————————