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1962-04-27 第40回国会 参議院 農林水産委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月二十七日(金曜日)    午前十時三十一分開会     —————————————   委員の異動 本日委員戸叶武君辞任につき、その補 欠として佐多忠隆君を議長において指 名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     梶原 茂嘉君    理事            石谷 憲男君            櫻井 志郎君            安田 敏雄君            森 八三一君    委員            青田源太郎君            植垣弥一郎君            岡村文四郎君            重政 庸徳君            田中 啓一君            谷口 慶吉君            温水 三郎君            藤野 繁雄君           小笠原二三男君            清澤 俊英君            天田 勝正君            千田  正君   政府委員    農林政務次官  中野 文門君    農林省農地局長 庄野五一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    農林省農林経済    局農業協同組合    部長      酒折 武弘君     —————————————   本日の会議に付した案件農地法の一部を改正する法律案(第  三十九回国会内閣提出、衆議院送  付)  (継続案件) ○農業協同組合法の一部を改正する法  律案(第三十九回国会内閣提出、衆  議院送付)(継続案件)     —————————————
  2. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  本日、戸叶武君辞任され、その補欠として佐多忠隆君が選任せられました。     —————————————
  3. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 農地法の一部を改正する法律案(第三十九回国会閣法第六六号)農業協同組合法の一部を改正する法律案(第三十九回国会閣法第六七号)、以上いずれも衆議院送付の二案を一括議題といたします。  両案について御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  4. 森八三一

    ○森八三一君 今議題になっておる二つの法律案のうち、きょうは協同組合法関係につきまして質問をいたした旧いと思います。  きのうも藤野委員から御質問があったと思いますが、今度の改正に関連いたしまして、農事組合を設けるということになったわけでありますが、その農事組合責任と申しますか、制度と申しますか、有限責任の規定をとっておるわけでありますが、農事組合を、この法律が所期するように現実に発展せしめながら、その農事組合事業というものを所期するように伸展せしめて参りまするためには、もちろんその組合を結成いたしまする組合員相互の間における人の和というものが中心でありますることは申すまでもありませんけれども、他の反面は、やはり資金的な確保ということがなされなければ、農事組合仕事を健全に発展せしめていくわけには参りかねると思うのであります。現在、農民の経済的な地位というものは非常に低いのですから、その低い農民がある数まとまったといたしましても、その経済的な力は当然微弱と見なければならぬ。その微弱である経済的な地位というものを補完して参りまするためには、何らかそこに別個の対策が持たれなければならぬと思うのです。にもかかわらず、有限責任組織をとられたということはいかがかと思いますが、きのう藤野委員の御質問にもあったとは思いまするけれども、なぜこうしなければならななったのか、ただ、農事組合を数作ればいいというような形式的なことだけをねらっていらっしゃるのか、ほんとう農事組合というものをしっかり育成していこうと考えていらっしゃるのか、その辺私は非常に疑問を持つのです。数の多くを求めるのではなくて、質のいいものを作っていくということに重点が置かれなければならぬと思うのです。その点が欠けておるように私は見る。そのことについて有限責任というような建前をおとりになった理由について、その構想をひとつお伺いいたします。
  5. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 責任の問題につきましては、おっしゃるようないろいろの考え方があると思います。われわれの考えといたしましては、農民の側から考えてみましても、有限のほうがいいという人もありましようし、あるいは無限のほうがいいという人もあろうかと思います。そこで法律上はまず有限といたしておきまして、原則的には有限といたしておきまして、そうして、どうしてもそれでは法人運営がうまくいかないという人には、補完的に保証責任を持つというようなことをやっていくのが、実情に適したやり方であろうということでこういう制度考えたわけでございます。
  6. 森八三一

    ○森八三一君 もちろん農民の側から見れば、有限のほうが肩が軽いのですから、それを一応希望することの実態があるということを私はわからぬわけではありません。ありませんけれども、ほんとう農事組合事業というものを推進していく堅実に発展せしめていくということを考えまする場合には、非常に経済的な弱者の集まりであるという関係からして、資金を獲得する等の場合に非常な不便を感ずると思いまするし、供給する側にいたしましても、安心して共給するということが非常にむずかしい。もちろん保証制度とかいろいろの制度がないわけではありませんけれども、そういうような制度というものは、おのずから限界のあることでありますると同時に、それにたよらしめるということはこれは考えなきゃならぬことと思うのです。あくまでも自主的にみずからの力によって信用を持つという形にしなければ、この発展はできないと思う。ただ、農民がそういうことを希望しておるからそれでよろしいんだというような安易な考え方では、いたずらに数ができちゃって収拾のつかぬという問題に発展していく危険を感ずるのです。今までこういうような制度法律化されておらぬわけでありますので、ここで論ずるわけにはいきませんけれども、すでにこの種の組合は実際的には存在しておるんです。そういうのにもついて資金供給なり、逆に申しますれば、資金を獲得するについてどういうような状況にあったのか、その辺の調査がございますれば、今までの実態についてお示しをいただきたいと思うのです。農事組合というのはありませんよ。ありませんけれども、これに類するものは現存しているわけなんです。農業法人的なものはあるわけなんですから、そういうものについての資金供給についていかに円滑に行なわれておったのか、あるいは供給を受けた資金が確実に返済されておるというように見てよろしいのか、有限責任の場合に。その実態調査がございますれば、お漏らしをいただきたいと思うのです。
  7. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 現在の段階では、法人による農業経営という例は、ほとんど少数の例外を除いてございません。そういう実例はちょっとお示しするわけにはいかないのであります。
  8. 森八三一

    ○森八三一君 法律的に認めておらぬわけでありまするから、そういう趣旨ではなくて、実態として存在しておるんですから、今お話のように例外的にはあるというのですから、例外的な存在について、私ども聞いておるところでは、構造改善とかあるいは畜産奨励とかいって、そうして自主的には今度奨励しようとする農事組合のようなものができて、それに供給した資金がその返済に困難を来たして、供給した側では非常に難儀をしておるというような事例をちょいちょい耳にするわけであります。そういうようなことは、当然この農事組合というものを認めようとする場合には、実態調査がなければおかしいと思うのです。過去における事例がどうなっているか、そこで初めて有限にするか、保証にするか、無限にするかということの判断がなされなきゃならぬと思う。ただ安易に農民の側から有限責任が、一番軽いのですから、要求もしておるわけですから。そういうものができて、できた結果はどうなるかといえば、これは農業協同組合資金供給を持ち出してくることは間違いないのです。もうその場合に、貸さぬということになれば、役所なり県庁なりが奨励をして作った農事組合が、登記を終わっていよいよ事業をはじめようとして資金の問題について農協に相談を持ちかける、農協ではお前たちのようなそういう微力なものには貸せぬということになると、いたずらに組織人である農民農協との間に資金の問題をめぐって摩擦が起きるのですよ。そんな事例は過去にもたくさんあったと思うのです。そういうことではいけないので、そういう場合にもほんとうにその組合員の計画しておる事業というものが、適正というように認められる場合には、安心して資金供給してやるということにならなきゃならぬはずなんです。それが一体有限責任で確保できますか。そういうことがあればこそ、きのうも藤野委員からお話があったように、産業組合当時に農事実行組合下部機構簡易法人として認めるという経済更生運動の当時に原則として無限をとったわけですね。その意味というものは、今日も私は失われておらぬと思うのです。本気に農事組合を設立せしめて、それで農業構造の改善なり、農家所得の増大をはかるための事業の推進ということをお考えになっておるのか、世間でその点やかましく言うから、格好だけ作ってやればいい。その結果が組合員農協との間に混乱摩擦を起こすという結果を、期待しておるわけではありますまいけれども、そういうようなことになったらどうなるか、おそろしい問題になると思うのです。その辺ほんとうにお考えになっておりますか。ただ安易に考えていらっしゃるような気がするのですが、どうでしょう。
  9. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 従来の例としてあえてあげますならば、これは生産関係ではございませんけれども、一般流通関係等におけるいわゆる専門農協などで信用力がなくて金融面で困っている例はたくさんあると思います。それから農業経営自体をやっているようなケースにつきまして、これはいわゆる任意組合的な形態で事業をやっておりまして、したがいまして責任関係連帯責任保証という無限責任を負った格好でやっておると考えられます。実態はそういうことだと思いますけれども、そこで責任無限にしなければ、金融面から見て育成の成果が上げられないじゃないかという御質問でございますが、われわれといたしましては、法人組織するということは、原則的に考えますと、やはり各組合のいわゆる私生活生産生活を区別して、そして生産面における資産関係を明確にする、そこの責任関係を明確にする。ただ必要に応じて出資の増強というようなことで、その法人財務を堅実にする必要はあると思います。そういう私的な面と法人面との区別を明確にしてやっていくということが、法人一つの大きなねらいであろうと、こう考えております。そういう意味におきまして、原則有限責任といたしまして、先ほども申しましたようにどうしても工合の悪いときには、保証責任という手もあるわけであります。全然個人的な資産のバックがゼロであるということはないと思います。なお一点つけ加えますと、無限責任にいたしますと、法人資産の多寡に差異があります場合には、非常に負担にも不均衡をきたすというような問題もありまして、これらのことが法人組織する場合に非常に障害になるということも、一つのわれわれの考えた要素であります。
  10. 森八三一

    ○森八三一君 無限責任にした場合に、その組織する個々の組合員資産内容差異があるから、そういうものが、組合を結成するために非常な障害になるというお話でありましたけれども、そういうようなことで組合員の和が得られないというような場合には、私はむしろ組合を作らぬほうがいい。そこまでほんとうに素っ裸になって結合していくというような地域なり、そういうような集まりに初めて、この制度を認めるという工合にスタートにおいて堅実に考えなければいかぬのじゃないか。そこで私が心配いたしますとおり、そういうようなことを考えられますから、有限責任をとって、そこで組合が安易にできてしまって、上げも下げもならぬところに追い込まれて、たいへんな問題になる。農事実行組合当時にも、そういう姿はあったのですよ。そういうことを過去の経験に徴して十分お考えになるならば、この際、転換期に際会している農業構造改革をして農業生産を飛躍的に発展せしめていこうということを考えられるならば、ほんとうに堅実なものを作る、数の多きを求めてはいかぬ。その私生活生産の部門と区分するというんですけれども、それはそういう感覚に立って整理することも一つの方法かと思います。思いますけれども私はそういうことよりも、やはりここに新らしく設立される農事組合を通して、その組合員農業生産に関する構造が改善される、それを通して生酢が飛躍的に増進する、結果として所得が増大するという、私は線をねらうべきであろうと思うのです。そのために多少でも必配されるという制度というものはとるべきではない。そう考えて参りますると、有限責任組織原則にすることは間違いだというように私は感じますわけであります。非常にしつっこく聞くんですが、このことが農事組合を今後進めていく場合には非常に基本的な問題になると思うのです。あまり安易にお考えになって数さえ作ればいい、ともすると統計をとって何県では幾つできた、全国では幾つできた、そんなことばかりもてあそんでいてはいかぬ。そういうことに惰する危険がある。その点もう一ぺん御再考願うという余地が十分あろうと思いますが、有限責任組織ほんとうにわれわれが企図するしっかりした農事組合というものを推進していくことが可能とお考えでしょうか。私の申し上げる趣旨をお考えになれば、そうではないという結論が出てくるはずなんですよ。今日の疲弊している零細な農民を集めて出資を求めるといったって、出資か求められるはずはありませんよ。農業協同組合すら今日財務処理基準令に基づく整備ができなくて四苦八苦している。それをますます零細化した、規模を小さくしたものだということになれば、個人の負担する出資は非常に零細だと断言してもはばからぬと思う。そういうような零細な出資を基礎として資金的な信用を獲得することはできません。できないといいながら、その農事組合事業をやるならば資金が要る、手ぶらで仕事はできないんですから、その場合に一体金融機関供給し得るでしょうか。そういうような組合がいろいろ計画したその計画の事業内容というものが適正であれば、政府供給してやるというくらいの制度をお作りになりますか。おそらくこれは農業協同組合がその衝に当たらなければならぬと思うのです。そこで摩擦が起きるのです。摩擦が起きると農事組合農協のけんかが起きて大へんな問題になる、これは今まで私はしばしば経験したことなんです。そういうことをほんとうにお考えになっていましょうか。もし考えておるというなら、農事組合設立後においてはその農事組合の計画する事業が適正である限り、政府のほうで責任をもって、必要な資金をめんどう見てやるというところまで踏み切れるだけの制度を別にお考えになりますか。作ってやったが、それの育成農業協同組合がやれ、これではたまったものではありませんよ。その辺のことをどうお考えでしょうか。
  11. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) この問題につきましては、決していいかげんにこういう結論を出したわけじゃございませんで、過去二年間議論を尽くしたあげくこういうふうになったわけであります。で、戦前の実行組合やり方でございますけれども、これはこの実行組合組合員は、購販売事業あるいは生産事業はもちろんのこと、生活部面もすべての事業につきまして実行組合を通して農業とつながっているというふうな、まあ全生活全財産をぶち込んで実行組合という形で農業とつながっているというのが実情だったと思うわけでございます。したがいまして、その場合にはあるいは無限責任というのも実情に合った考え方ではないかと思うのでありますけれども、われわれの考えております農事組合法人は、御承知のとおり農業生産農業経営というものと一部共同利用させるという事業を認めているわけでありまして、しかも農業経営をやろうとする人たちの現在の傾向を見ますと、みずからの経営全部を打ち込んで共同経営をやりたいというのはむしろ例外的であります。たとえば養豚事業についてひとつ一緒にやろうじゃないかということで経営の一部についての共同化という傾向が非常に強い段階であると思います。そういう実情考えてみます場合に、なおさらわれわれといたしましては、そういう一部の協業経営に対して無限責任要求するということは非常に無理であるというふうな実態的な面から考えまして、こういう結論にしたわけであります。  なお、もちろんこれは農協の、特に金融面におきましては農協の規制を受けなければならないと思います。御承知のとおり、農協はいわゆる指導金融ということを一つのモットーとしております。単に担保があるかないかというふうなことだけじゃなくて、将来の経営改善がうまくいくように、そうして結果として債務が弁済できるようにというふうな指導をやることが、農協の本来の趣旨でございまして、そういう意味から、もちろん農事組合法人自己資本の充実ということは必要でありますけれども、同時にまた農協側でも単にそういう外的な物的条件だけを考えて融資するということではないのでありまして、その辺の調整はお互いの努力によって相当程度円滑にできるべきであろうと考えております。
  12. 森八三一

    ○森八三一君 これ以上は並行線議論になるでしょうけれども、農業協同組合はその下部機構として設けられる農事組合の直接に物的な信用を求めようとするということではないと思うのです。もし直接に物的な力を要求するということでありますれば、これは出資の増加を要求しなければならぬわけでありますが、そういう感覚を持たぬと思います。組合員の一部の人が結合して作られた農事組合である限りにおいては、お話のとおりに指導金融というような感覚に立ってやります。いかにそういう感覚に立ちましたところで、集まっている農協資金というものは、やはり零細な組合員預貯金がその大部分であるわけですね。そういうような大切な預貯金の管理を確実にしていくということを考えます場合には、直接に信用を高める手段というものを要求はいたしませんけれども、間接にそういうことを要求するのはこれは当然だと思うのです。そのくらいの堅実な経営をやらなければ、農業協同組合は再び再建整備のあの出発のときにあと戻りしてしまうということになろうと思うのです。今日まで非常に苦労をして、役所も非常に努力をなすって、やっと農業協同組合整備された、そうしてここでまた今後の飛躍的な発展を期するために、合併条項等一つの根拠としてさらに近代的な農業協同組合に編成がえをしようというときなんですね。このときにその農業協同組合の行なう金融事業がもし組合員から不安の念をもって迎えられたといたしまするならば、これはたいへんな問題になる。といって、でき上がりました農事組合がその生産活動をやって参りますために、何が一番ポイントになるかといえば資金でしょう。僕は資金だと思う。労働力はありますね、もちろんそれは最近の農業生産労働力というものは非常に変還をいたしておりますから、その補完のための機械化という問題は出ましょう。しかし、その機械化という問題は結局つながるところは資金ですね。万事が私はずっと資金に集約せられてくると思うのですよ。その資金供給が円滑に行なわれずして農事組合発展を期するわけにいかぬと思うのです。その農事組合資金を確保するために不十分な組織であるということはこれは仏作って魂が入らぬということになる。今お話のようにここに期待する農事組合というものは酪農なら酪農部分共同経営的な農事組合だとか、あるいは養豚なら養豚部分というふうにお考えになっているようですけれども、それはこれがほんとうにすべり出してくるとそういうものももちろんありましょう。ありましょうけれども、やはり農村の地域性というものを考えたら、地域内における一般普通農業についても、耕種農業についても集団栽培とか、共同化というものが各方面において進んでくると思うのです。そうしなければおかしいと思うのです。その場合に地域性を持ってくると思うのです。その地域性を持ってきた場合に、やはりその地域内における生活の問題もまだ考えておらぬ。これは一応農事組合建前上当然と思いますけれども、組合員相互のやはり相互扶助的な精神に立脚する組合活動というものが出てくると思うのです。その場合に有限責任では、私は非常に事業進展に支障を来たすということを今日から予言してはばからぬぐらいの気持でございます。やってみなければわからぬというならば、それっきりですけれども、しかし過去のわれわれの苦い経験から申しますと、そういうことです。しかも、そういうものと農業協同組合との結びつき資金の問題をめぐって摩擦を起こすことになったら、せっかくの農業基本法ができて、その運営の中核として農業協同組合が全的な責任をもって活動をしなければならないというところにたいへんな問題が起こる。こういうことを起こさないように今日から考えていかなければならない。それには数を大きくしていかなければならない。どこまでも資金供給について安心していける。また組合員無限責任まで発展いたしませんでも、保証責任ということになれば、その結合というのは、私はただ単なる出資額を限度として責任を負うというものよりは、もっと真剣味も加わってくると思うのです。そういうような、精神的な非常に強じんな結合ということが、事業発展をまた助長していくということになってくると思うのです。まあそれならひとつみんなで集まってやりましょう。多頭飼育で三千頭も飼いましょう。それには金がないから、一口ずつ持ってやる。組合はでき上がったが、そこで設備資金なり子豚の購入資金なり、えさ資金というものを全部あげて農協供給を求めたが農協から供給できないということならば、そこで事業は頓挫してしまうことになる。そこで、まあ農協も、育成すべき事業だから資金を出すにも、相当に思い切って供給してやった。やったが、その仕事が、最近の豚肉に例を見るように、まるきり赤字経営だ。われわれは畜産物価格安定法がもう少し親切に農民に対処すべきであるとは思いますけれども、それがわれわれの要求とは非常にほど遠いところで決定されておる。まあ、それで、赤字経営をやっておる。赤字で、養豚農事組合というものはつぶれてしまって、にっちもさっちも動かないというときに、組合員は一口持っている分だけ出して、放り出してしまえばそれでよろしい。その始末は全部農業協同組合がかぶってしまうという、そういう結果になる。現になりつつある事例がないとは言えませんよ。そういう事例はお調べになっておりますか。法人化も待たないで共同してやったという場合に、そういう事例がある。今日はまあ個人保証という建前をとっておりますから、最後の整理はつくと思います。もし個人保証ということなしにやったとすれば、最近における養豚その他の事例は、農協が全部かぶってしまっているという事態が発生しているのです。農協を危殆に瀕せしめるという結果が生まれることは、これはもう明瞭だと思うのです。だから有限責任をやってはいかぬというのではありません。有限責任の場合もあってしかるべきだと思います。思いますが、原則は少なくとも無限責任保証責任において、そして例外として、有限責任を認めると逆にしなければならない。これなくしては、農事組合を作っても、私はほんとうに堅実な農事組合進展というものは期し得ないという感じを持つわけでありますが、実際実態調査をして、資金関係について私の申し上げるような心配はないというふうに断言できますか。おそらく私はできぬと思う。そういうことを考えますと、ここで意見にわたって議論をしてはいけませんけれども、もう少し有限責任原則にしたといういきさつ、経過について、建前論でなしに実態論として、私の申し上げるようなところまで議論されて、それでなおかつ心配はないからこういう制度をとったのだというような説明が承れますれば、私はあるいは納得し得るかと思いますけれども、ここに至ったその経過が二年間議論したというのですから、その二年間議論なさった過程において、今私の申し上げたことは心配はないのだ、むしろこのほうがいいのだという結論に到達したというのなら、そのいきさつをひとつ詳細に御説明いただきたい。
  13. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) あるいは直接のお答えにならないかと思いますけれども、この無限責任にして農事組合法人が金が借りやすくするということに、裏から申しますと農協は相手側が無限責任であるから貸しやすい、安心して貸せるという両々相待って金融が円滑にいくだろうというふうなお説だろうと思います。一体農協が金融する場合に法人を作って、その法人に貸すのだが、その裏に個人組合員無限責任があるからという態度でもって貸付について可否を判定するのがいいのか、それとあくまでもその法人資産内容経営内容だけを着目しまして、そこでもって、もちろん指導面もありますけれども、融資の可否を決定するのがいいかということになると、これはいろいろ意見の分かれるところではないかと思います。で、現実的に有限責任にした場合に、はたして金融がうまくことの責任を持てるかという御質問でございますけれども、これは残念ながらわれわれ責任を持つわけには参らぬと思います。責任を持つわけには参りませんけれど、その法人財務なり経営というものをできるだけ健全であるように指導しまして、その面から実質上金融が円滑にいくようにするという努力はやる考えでおります。
  14. 森八三一

    ○森八三一君 私は、農業協同組合がいわゆる高利貸し根性で貸した金を取り上げるというような感覚に立って金融をするのだ、そういうことを考えるから無限責任要求するのではないか、こんなふうにおっしゃたと思うのですが、私はそんなけちなことを考えているんじゃないのです。どこまでも農業協同組合の金融は、組織する組合に対して親切に指導的に行なわれなければならないと思う。しかしその場合に有限責任の場合と、保証なり無限の場合と、その組織された農事組合組合員間の結束がどうなるかという問題ですよ。有限責任の場合には、その出資を放っちゃえばそれでよしでしょう。形式的には、保証責任無限責任でありますと、それ以上に組合員としては責任を負わされているのですから、その事業そのものについて情熱を燃やしていかなければならないということになるはずですね。そこを期待するのですよ。資金を貸すときには、もちろん事業の計画がずさんなものに貸すわけがありません。いかに指導金融といえども、初めから赤字になる事業資金を貸すばかはありません。一応計画を見て、その仕事が正しいのだという見きわめに立ってやることは間違いない。しかし人間の見きわめてすから、経済上の変転に伴ってどういう不測の事態が発生しないとも限らない。そういう場合に、組合員無限責任の場合と保証責任の場合と有限責任の場合と、どっちが情熱を燃やしてその仕事を継続して挽回をはかっていくということになるかということは明確でしょう。そこなんですよ、問題は。有限責任の場合は放っちゃえば、それであとは知らぬ、こういうことになる。そういうことではいけない。そのことをなぜ考えないかというのですよ。そういうような場合に、農協供給した資金というものについては心配がないというようなうしろだてがありまするならば、これはまた別個の問題なんです。そういうようなうしろだてはありません。絶無とは申しません。それは保証協会とかいろいろな制度がございますから、絶無とは申しませんけれども、きわめてこれは微温的なものです。そんなものをたよっておったら、とんでもないことになります。気休め程度のものです。そういうことを考えますと、本気になって一体農事組合を進めようと考えておるのか。世間もやかましいし、農業生産法人の問題もやかましいし、この辺でこの問題に終止符を打たなければ格好がつかないからやってやれと、そうしてどんどん数さえできれば、なるほどおれたち奨励してよかったというようなことで、形式に走っておるのではないかという気持が出てくるのです。そういうお気持ではないと思うけれども、どうもお話を聞いているとそういうふうになってしまう。原則を変えるべきだと思う。逆にする。有限はいかんというのじゃない、有限もあってもいいんですが、原則保証なり無限なり、無形の信用というものを金融的には与える。そうしてまた、その組合員問の強固な結束というものを考える、初めから保証なり無限程度の出資が集まればいいですが、集まりっこないです。零細なものだから出せっこない。本来ならば、一銭も出さずに農事組合を作って責任を負うことがいい。その場合に、今の無限責任なり、保証責任を、金を出さずに信用力がとれるというような制度考えてやるというのが、今日の実態に即するのじゃないですか。今のお話しの、農業協同組合は高利貸し的なことを考えるから、そういうことを主張するのじゃないかとおっしゃるが、そういうことは私は考えておりません。それはそういう意味じゃなくて、むしろその逆なんです。そういうことを考えると、どうしても私はもう一ぺん再考なさる心要があると思う。原案が出ておるのですから、今これを変えることに同意しろと言ったって、なかなかここで、そうですが、それではひとつ考え直しましょうという答弁はいただけないと思いますけれども、その私の前段質問しました有限責任に、二カ年間議論して落ちついたのだ。そのときに、有限責任で心配ないという見きわめがあって、初めてそうなったはずなんです。そうでしょう、そうでなければおかしいですよ。ずいぶんいろいろなことを議論したと、議論したが二カ年間の議論を通して有限責任がしかるべきであるという結論に達したとこうおっしゃる。そういう結論に到達した問に、今の金融的な問題が、農事組合の一番ポイントになると思うのです。そのことについて御研究になった、その研究の結果心配ないと、こういうことになったはずなんですから、その研究の過程において心配ないということは、どういうことでそういう結論が出たかを御説明いただきますると、私も蒙が開かれて原案に賛成と、こういうふうになるはずなんですから、そこをひとつ詳細に御説明いただきたいのです。
  15. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 議論の過程でいろいろ問題が出たわけでありますけれども、ただおっしゃるように、有限責任で心配があるとかないとかというふうな議論の仕方じゃなく、有限責任格好でやっていけるようにすべきであるという考え方から、この結論に達したわけでございます。で先ほどもおっしゃいましたけれども、無限責任にすれば、もしもその事業に失敗すれば、全財産をほうり出すわけである。したがって、一生懸命になる点においては、有限責任よりも強いじゃないかというお話しでございますが、まさにそのとおりであろうと思います。しかしながら有限責任であるからちゃらんぽらんであるとも必ずしもいえないと思います。たとえば現存する会社というものは、ほとんどすべてがこれ有限責任でありますけれども、決してこれはちゃらんぽらんでやっておるわけじゃありません。やはり有限責任には有限責任としてのいいところもあるわけです。そういう意味においてわれわれが、一つの問題としましては、どちらでもいい、有限でも無限でもいい、それは選ばせる方法はないかということも、実は検討したわけでございます。ただ、これはやや法律技術論になりますけれども、無限責任有限責任では、その法人組織体系を異にしなければならないという問題がございます。そこで同じような組織体のもとに有限無限の両方の責任制を持つということも、非常に法律上の困難がございましたので、そこで法律上は有限として、ただ実際上債務保証格好でその欠点をカバーしていくことを考えていこう、そう思っておるわけです。
  16. 田中啓一

    ○田中啓一君 関連。実は今の御答弁の中に、私が問おうとするところの中核になるような御答弁がございましたので、重複するきらいがないでもございませんが、やはり事態を明らかにする意味で御質問を申し上げるわけです。今度の農地法並びに農協法の改正によりまして、協業ということに関して、協業組織であれ、あるいは協業経営であれ、いろいろな組織が認められるわけでございます。そこで今、農事組合につきまして、無限がいい、有限がいいという議論が行なわれているわけでありますが、その親組合であるべきこれまで大体市町村単位の農業協同組合、これは私は、今のような点から申せば、有限責任のものだというように思いますが、いかがでございますか。
  17. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 有限責任でございます。
  18. 田中啓一

    ○田中啓一君 それからこれは、いわゆる協業組織というものであり、したがって協同組合そのものが協業組織であり、また、農業組合も協業組織を目的としたものもある。同時に、協業経営を目的としておる農事組合もできるでありましょうし、それからそのほかに有限会社でありますとか、合名会社であるとかいうようなものも、今度の制度で認められることになるわけでございますが、それらはやはり無限責任でございますか、有限責任でございますか。どういうことになりましょうか。
  19. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 御質問趣旨をちょっと取り違えたかと思いますけれども、農事組合法人農業経営をやり、あるいは共同事業所の設置をやるという場合の責任は、もちろん有限でございます。そういうことでいいですか。
  20. 田中啓一

    ○田中啓一君 ちょっとまだ不明でありますが、つまり農事組合協業経営をする場合、百姓の全部でもあるいは畜産の一部のものにしても、協業経営をする場合、それも有限なのか、無限なのか。本法の改正によって、こういうものは制度上はどっちになるのだということ。同時に、協同組合法の改正でなくて、商法の規定を持ってきた団体組織というものも、今度の農地法の改正によって認められるわけです。認めたものは、たしか私は有限会社と合名会社でなかったかという気がするのでありますが、それらのものについて、私ちょっと不明確でありますから、何々という組織が認められておるのであって、それはそれぞれについて有限であるか、無限であるか、こういうことをお答え願いたいわけであります。
  21. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 農基法の協業の組織といたしまして、今度農地法上農地の権利取得を認めて参りまする協業経営経営形態は四つございます。今、御質問になっておりまする農協法に基づきまする農事組合法人、これは今農協部長からお答えになっていますように有限でございます。それから商法その他の特別法によりまして、認められる法人、これは会社法人として一括して申し上げますが、有限会社法によりまして設立されまする有限会社、これは責任有限でございます。それから商法によりまする合名会社は責任無限でございます。それから合資会社が認められておりますが、合資会社は有限責任の社員と無限責任の社員と両方で構成されておりますから、無限有限の両方の社員、こういうことに相なると思います。
  22. 森八三一

    ○森八三一君 これはもう農事組合の性格論をいつまでいいましても、果てしはないと思いますが、今協同組合部長の御答弁の中に、他に存在する会社法人等の場合はおおむね有限である、だからここに設けようとする農事組合についても有限というような結論が得られたのだというようなことの趣旨の御説明があったかと思いますが、株式会社を作る場合には、その会社が何の仕事をやるかということで、これはもう株式を募集する際に資金のことを考えながら、それに見合うだけの形式的な信用を持ち得る基礎というものができるはずなんですよ。ところが、今ここで持たれようとしている農事組合というものは、私はそうはならぬと思うのです。そうなるならば非常にありがたいことですけれども、農民の経済的な現況というものは、それを満たすのに十分ではないという実態だ。そういう実態の中にこういう農事組合というものを作ろうとするのですから、全然感覚が私と違うのです。もっと端的に申しますと、ほんとうに経済的には一人前の連中ではない、そういう連中を集めて一つ農事組合を結成せしめる、それに新しい生産の増大をはかる仕事を行なわせるのだ、この行なわせる仕事資金が要り用だ、その資金の確保なくしてはその目的は達成せられない、そういう実態が違うのですよ。違うところを考えていくと、有限原則にしたのはおかしい、こう思うのです。基礎というか、出発が違うのです。そういうことをお考えになりませんか。同一条件のもとにスタートしていくのだという感覚ですか。
  23. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 私が先ほど会社といって申し上げたのは、むしろそういう趣旨よりも、会社が有限であるからといってこれは決してちゃらんぽらんで作ったものではありません、ということにはなりません。もちろん、無限のほうが本人の熱意の点においては大であるということはいえるかもしれませんけれども、有限の場合でも、その人の気持次第でありまして、決してそれがゆえにその経営がいいかげんなものになるということには必ずしもならないのではないかということを実は申し上げたのであります。
  24. 森八三一

    ○森八三一君 それはもちろん一つ仕事を企画してやるのですから、ちゃらんぽらんに初めから創立するということは常識的にはあり得ないと思う。と思いますが、会社を作ります場合に、その仕事を行なうのに必要な信用を確保するための基礎というものを考え出資が構成されていくと思うのです。ですから、有限であっても、その仕事を行なうのには、そんなに大きな支障がないという結論が与えられると思う。ところが、今ここに設立しようとする農事組合は、そういうような形にはなり得ないというのが実態じゃないですか。そうでないという感覚をお持ちになっておるとすれば、これは私と根本が違うのです。会社を設立する場合でも、何を作る場合でも、農事組合を作る場合でも、ちゃらんぽらんに作るとは私は思いません。一つ事業をもくろんで、それを達成するために結成されると思うのです。しかし前者の場合には、それをやるのに必要な資力と申しまするか、形式的な信用と申しますか、そういうものを初めから構想に入れて仕組まれていく。だから、設立された有限の会社というものは、その事業を行なうのに必要な資金の確保もできますし、事業の伸展には支障なく出発ができると思うのです。そうでない株式会社なり、その他の企画はあり得ないと思うのですわ。もしそんなことをやったらちゃらんぽらんなんだ、そんなことはあり得ない。農事組合の場合にはそうはならぬのじゃないか。その農事組合が、三千頭なら三千頭の豚の多頭飼育をやるという場合に、その設備費がどれだけかかる、そうして販売できるまでのえさ代がどれだけかかる、子豚の購入費がどれだけかかる、そのトータルのうちから、自分たち出資によってまかない得るものはどれだけか、差し引いた残りは他給資金でまかないをつけなければならぬと思うのです。その他給資金考えるのに、基礎的な出資ではなかなか形式的な信用というものが十分でないから、資金供給ができなくなってしまう。それを求めようとすれば、金融機関のほうがなかなか貸しにくいということになる。そこで摩擦が起きる。摩擦が起きるということは、組織下部機構である農民農協との問に非常な問題をかもす危険がある。そいつをいいかげんに貸してしまう。いいかげんというと、ちょっと語弊がありますが、もうやかましいから供給した、その供給した仕事がもし不幸にして十分に進まないというときには、投げられてしまうという危険がある。その場合に、そういうふうに投げないという見きわめをしなければならぬのじゃないか、それは有形の信用のほかに、別途の補完作用というものを持つべきである。そうしてやることが農民のためにも親切であって、今ここに企図する農業構造改善を通じて生産の飛躍的増大をはかろうとする趣旨に沿うのじゃないか。沿うのならそういうふうにやったらいいじゃないか、こういう私議論なのです。その辺はおわかりにならぬのがおかしいと思うし、私を部長から見れば、君はわからぬのはおかしい、こういうふうになる。私がわからぬなら、もっとわかるように、二カ年間御苦労の経過を詳細に言ってもらえれば、私も了解することにやぶさかじゃございませんので、その経過、なぜ有限責任に落ちつくか、原則がですよ、有限責任に落ちつくか。私はるる繰り返し申し上げましたが、当然私は論議されたと思う。そういう論議があったにかかわらず、ここに落ちついたその経過を御説明願えますれば、私も了解することにちゅうちょいたしませんので、ただ心配はないと言われるが、このほうがまあ手っ取り早く組合ができるからこのほうがいいんじゃないかというような安易なことじゃ困る。そこなんですよ。
  25. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 過去の議論の経過は、実を申しますと、きょうのこのような議論をずっと繰り返しておったわけでございます。われわれは最初、昨日藤野委員にお答え申し上げましたように、やはりまず組合員にこの法人も作りやすいようにしてやる必要があるのじゃないか、そのためには有限責任ということが一番適当じゃないか、ただ、おっしゃるような問題は確かにありますから、それについては債務保証の判を押してもらおうというような恰好でやっていこうという一つの妥協的な考え方でもっと結論を出したわけでございます。おっしゃる点、私もよくわかるのでありまして、あるいはどちらの格好でもよろしいというふうなことにできたらば、おのずから問題は解消していいのじゃないかとも考えられるわけでありますけれども、その点につきましては、法律技術上の問題もありまして、そうもいかなかったわけでございます。そういうことで、おっしゃる趣旨は、債務保証の判を押すというふうなことで御了承を願いたいと思うのです。
  26. 森八三一

    ○森八三一君 そこで、わかりました。組合を設立するのに比較的たやすくと申しまするか、安易に作らしめたいということを考えた、まさにそうであろうと思うのです。そのことが私は非常に問題を将来に残すということを申し上げておるのです。そこで、そういう姿でできた組合を健全に発展せしめていこう、そうして親組合との間に摩擦も起こらしめないということを補完しようとする手段として、今部長お話しのように、今度は個人保証を全部に求めるということで無限責任になっちまうんですよ。その限りにおいては無限責任になる、個人保証を求めるんですから、そんな組合を安易に作らせることをひとつねらった、そいつがいかんという場合には、別にまた無限責任的な行為がその裏へちゃんとくっついておるんなら、初めから一本の姿でやったらいいじゃないか、どうもそこが農事組合という制度を認めた、ここで初年度に何千組合ができました、第二年度に何千組合できましたという国会報告をするために、農業基本法によっていろいろ情勢を報告しなきゃなりませんから、そのときに各行数がにぎやかになることを求めていらっしゃる、それでは困ってしまうので、ほんとうに堅実なものを数少なくても作っていく、できますればそれは自然に、農民諸君もその事例を見て、堅実なものを次から次へと作っていくんだから、最初のうちは私は農事組合に失敗なからしめるように堅実に奨励すべきだと思うのです。数多きを求めてはいかぬ、堅実なものができればこれはほうっておいても自然に右へならえで、ずっと進んでいきます。もし最初に失敗をいたしますと、これはたいへんなことになる。だからむしろお話しのように、二重の手続をやる煩を省きますためには、有限責任で作ってその組合事業をやるため要り用な資金を獲得するためには、今度は金融機関との間に個人保証という手続をするとか、あるいは個人の持っておる農地その他を担保に供する等の手続をやるとか、そういう繁雑なことを農民諸君にやらしめるということ自体がもう不親切なんですよ。それよりは一番最初に無限責任で作っておきさえすれば、あるいは保証責任で作っておきさえずれば、事後のそういう繁雑な手続というのは、全部行なわなくても済む、同時にその作るときに十分組合員間が討論をし、研究をし、そうしてなおかつ結集されたという組織体になりまするから、その結合というのは非常に強靱なものであるということになるから一挙両得だと思うのです。そのことを考えなさらぬというのは、大体今の御説明でわかりましたのは、なるたけ数を作りたい、生んでしまったものは、これは別にお前たち自分で始末をしろよ、そのときは保証のために個人保証をするのはやむを得ないじゃないか、あるいは担保を提供することも当然である、これでは非常に私は残念だと思います。がしかし、これは繰り返しておりましても、いたずらに時間を取りますので、このことはその程度にしておきたいと思います。  それから第二にお伺いいたしますのは、きょうは農事組合の問題に集中いたしますが、農事組合の行なう事業については、法律に規定がございますが、これをもう少し詳細に実態に当てはめて、こういう仕事まではやらせるんだ、ここからここまではいかんという境い目のところは、ちょっとデリケートだと思うのです。その辺のところをひとつ詳細に御説明いただきたいのですが、なぜこんな質問をしますか申しますと、そのことと農業協同組合との関連が時によって非常な問題を巻き起こす、こう思いますので、農事組合の行なう事業の限界はどこだ、そのすれすれのところが一つあるから、そこを詳細に御説明をいただきたいと思うのです。
  27. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 農事組合法人事業の能力といたしましては、「農業経営(これとあわせ行なう林業の経営を含む)」、それから「農業に係る共同利用施設の設置又は農作業の共同化に関する事業」という二点と、なおこれに付帯する事業ができるということになっております。そこでまず一番問題になりますのは、農業経営ということでありましょうけれども、農業の定義といたしましては、農協法の第三条にありますように、「耕作、養畜又は養蚕の業務」ということになっているわけです。さらにこれを分析して考えますと、たとえば稲の場合、種子まきあるいは田植の作業、個々に分析して、それぞれの作業が場合によっては農業というふうにも定義できるわけでありますけれども、ここに言う農業経営というのは、そういう個々の作業ではなくして、一貫した作業といたしまして、それに対する責任を負うというものを言っているわけであります。ただしかし、その場合に一貫と申しましても、稲を作る場合に、最終的に米を作って売る、これはもちろん一貫作業に入るわけでありますが、たとえば豚の飼育の場合、成豚までしなければ青貝作業にならないのかという問題でございますが、これは必ずしもそうではございません。子豚を生産して、これを販売するということも、一つ農業経営と解されるわけであります。そういう考え方では、農業経営もいろいろケースがございまして、一つ事業について一つの形態しかないということではないわけであります。それからこれに付帯する事業といたしましては、たとえば生産したものの加工ということがあります。それから自分の使っている農機具を農閑期において他に賃貸をするということも付帯事業として理解できると思います。  その次に「共同利用施設の設置又は農作業の兵同化に関する事業」これは従前の農協法にあります共同利用施設の設置というものと、特に違いはないわけであります。ここで議論になりますのは、購販売事業関係だろうと思います。ちょっと言い忘れましたが、農業経営に関連いたしまして、農業経営に必要な資材の供給とか、生産物の販売、これは農業経営自体でございますから、問題はないわけです。個別経営が残っている場合、それについて必要な資材の購入、生産物の販売が、この農事組合法人にできるのかできないのかという問題があるわけであります。これにつきましては、たとえば農事組合法人が必要な肥料を買う場合に、個別経営でも肥料を買う必要がある。そこでこれを一緒に買うというふうなことは、この農事組合法人は可能であろうと、そう理解しております。逆にこの農事組合法人事業と全く無関係購販売事業をやるということは、これは事業能力の規定からしてできないことである、そう解釈しているわけであります。こういう点で、ここには共同利用施設の設置あるいは農業経営の二項目だけ書いてありますが、これに付帯する事業という面におきまして、若干事業範囲は広げて解釈できるということになります。
  28. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますと、農事組合というものと、農業協同組合というものの事業分野が非常に明確さを欠いてくると思う。それから生ずる摩擦というものをまた一つ考えなければならぬ。そこで、それをひとつ明らかにいたしまするために、この農事組合の行なう事業というものが、農事組合組織しておる組合員の行なう農業経営、それに及ぶという範囲もあるのだというようなふうに聞こえる、今の御説明だというと。農事組合は、この方針に書いておりまするように、組合員農業生産についての協業、その協業の部分についての農業経営上に必要な云々と、こうなると、これは一応ははっきりするのですけれども、その組合員農業経営まで発展していくような御説明になりますると混乱が起きてしまうと、こう思うのです。この限界をもう少し明確にしてもらいたいと思うのです。
  29. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 農協との事業の差別と申しますか、関連と申しますか、そういう点の御質問でございまするが、まず農業経営の問題につきましては、これもいろいろ法律解釈上議論はあったわけでありまするが、現在の解釈といたしましては、農業協同組合には農業経営というものは行なえない。それに対して農事組合法人には農業経営は行なえるという解釈でございます。それから農事組合法人には、もう一つ事業といたしまして、共同利用施設の設置、または農作業の共同化に関する事業というのがございまするが、これは組合員の個別経営は残っておる。で、その個別経営生産力の増強といった観点から共同利用施設を設置するということがこの事業になっておる。形式的にはその点におきましては、農業協同組合が共同利用施設の設置ができるということと同じ事業をここではできるということになるわけです。ただ、われわれの考え方といたしましては、農事組合法人というのは、比較的少人数のグループでありまして、しかもこれが行なう事業は、非常に生産に密着した事業である。するわちこの共同利用施設の設置ということにつきましても、協同組合の行なうものは相当多人数の利用に供する、主として流通段階の施設というのが普通である。この農事組合法人の行なうものは、それよりも規模としては小さいが生産面に密着した施設であるというふうに考えておるのであります。ただ法律上の形式としては、そういうふうな差別がないわけであります。それから先ほど申しましたことをさらにもう一度申し上げますと、購販売事業に関しては原則的には農事組合法人はできない。この点は農業協同組合と違います。が、しかし、たとえば農事組合法人が行なう農業経営に必要な資材の購入というものと、あわせて、なお残存している個別経営についての資材の購入も行なうということは、場合によっては付帯事業として読めないことはないということで、そういう意味からは購販売事業はできませんということは工合が悪い。ただ、農事組合法人事業とは全然無関係に、本来の事業とは全然無関係に、独自の購販売事業を行なうことは、これはできませんという点におきましては、一般の農協とは違う。
  30. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 ちょっと関連して。それにつけ加えて、合名会社なり有限会社なり、そういう会社のほうは、会社法人ですからいかなることでも定款できめればできる。それで同じ農業協同組合法で作られている法人は制限される、こう認識していいわけですね。
  31. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 会社法人のほうは、それぞれの母法でございます有限会社については、有限会社法、それから合名会社、合資会社については商法によって規定されておりますが、これを農地法上、農業生産法人として、これに農業経営者として農地法上の権利主体とするかどうかということにつきましては、農地法の二条を改正いたしまして、いわゆる農業生産法人、これには農協法によりまする農事組合法人、それから有限会社法による有限会社、それから商法による合資、合名会社、それらの法人についての業務を制限しております。
  32. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 会社を農地法の、今ここに示された点で、その事業内容を制限しておるし、制限できるというのですか。
  33. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 農地法の第二条の第七項を改正いたしまして、「この法律で「農業生産法人」とは、農事組合法人」云々、で、「左の各号に掲げる要件のすべてをみたしているものをいう。」こういうことになりまして、そしてそれの第一号に農業生産法人事業を掲げておりますが、「その法人事業農業及びこれに付帯する事業に限られること。」こういうことになっております。
  34. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 これに限られていることと条項できめられているその条項の読み方というものは、農協法で示された組合法人には、それは強制できるでしょうが、一たん出発してしまった会社に強制できますか。何も解釈が一義的にきまっていないですからね。その辺はどうですか。
  35. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) こういうふうに、農地法上で限定いたしておりますこういう農業生産法人に限りまして、農地法上の権利主体、あるいは権利の賃借権の主体、こういうことを認める。こういうことにいたしておるわけでございまして、これは許可条件でございますとともに、その後こういう要件を欠くに至りました場合には、農地法上そういうような権利主体になることを認めないということにいたしております。
  36. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 まだ私はその点不安なんですがね、関連ですからあとにします。
  37. 田中啓一

    ○田中啓一君 私も関連して。私は今問題になりました点ですね。農業協同組合法の系統の、いわゆる農事組合でなくて、有限会社、合資会社、合名会社というものが、共同購買事業をやっても、共同販売事業をやっても、それは何ら法律の制限を受けないことになるのじゃなかろうかという御質問がございましたが、私はこういうような感じをちょっと持っておるんでありまして、だからただしておきたいのでありますが、一体農協法に規定している共同購買事業、共同販売事業というものは、明らかに独占禁止法に、農業協同組合法にできるという規定なかりせば、ひっかかる行為だと思います。つまり農産物は農家が申し合わせて、これでなけらねば売らないのだ、この値段でなければ売らないのだという決定をすることになっている。協同組合事業も、同じようにこの値段でなければ買わないのだ、こういう事業になるわけであります。でありますから、一般的に言えばひっかかるが、農協法によってこれはできるのだと、農民というものの立場を考えてできるのだ、こういうことが実は農業協同組合法に書いてあると思うのです。でありますから、農業協同組合系統の適用を受ける法人でなければ、それを組織しておる個々の農家の物資の共同販売、共同購入はできないのだ、独占禁止法に引っかかるだろう、こういうような実は感じがするのです。そこまで言えるかどうかも、相当問題かもしれぬと思うものでありますから、そこらの何か御見解はないものだろうかなというので、お尋ねをするわけであります。
  38. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 会社法人農業生産法人として扱う場合の規定は、先ほども申しましたとおり、それぞれの方法において、それぞれの事業はできるわけでございますが、農地法上の農業生産法人として認める場合は、みずから会社がその事業内容農業とそれに付帯する事業と、こういうふうに制限して参った場合の会社だけに農地法上の経営主体を認める、こういうことに相なるわけであります。これは会社が一つ経営主体になるわけでございます。ですから、その会社の中にそれぞれの経営主体がある、こういうふうに考うべきではないかと考えますので、独占禁止法上の問題は起こらない、こういうふうに考えております。
  39. 田中啓一

    ○田中啓一君 もう一点は、こういうことでございます。一体農地法によって合名会社、合資会社、有限会社というものを認めている点は、そういうものにも農業生産法人として土地を持つ権利を与えます、こういうところに主眼があると思うのです。そこで、これがもし私は、先ほど申したように、共同販売、共同購入という、いわゆる農業協同組合のようなことはできないのだと思うのですが、これはできないわけですね。普通なら、つまり有限会社を作って商売をやることは可能なわけであります。でありますから、農機具の販売業をやろうと、肥料の販売業をやろうと一向差しつかえないわけです。ところがそういう商行為をやるようなことならば土地の所有は認めぬぞと、こういうふうに農地法の改正の趣旨がなっておるのだろうと私は思う。その点はいかがですか。
  40. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 御説のとおりでございます。
  41. 森八三一

    ○森八三一君 私は今農地法の改正に伴う法人化の問題は、これはきょうは触れておらねのです。今ここでは農協法の改正の問題でございますが、そこで今部長から御説明がありましたように、ここに認められる農事組合というものは、付帯事業として、その構成員の農業経営に必要な部分までも関与ができると、こういうことに発展をいたしますると、農業協同組合と実体的にはその部分に関する限りは変わらないものになる。こういうことになると思うのです。それではおかしいではありませんか。小さな農業協同組合を認めるということになる。それでは農業協同組合との間にいろいろな問題を起こすという危険が巻き起こる。それがひいては農村諸般の問題を経済的に取り進めています場合に、かなり摩擦を起こしたり、ひいて、農民に不利を招来するという結果になりかねないというような感じも持つのですが、そこで、私はこの農事組合が行なう事業というものは、その農事組合の設立の目的と申しますか、内容と申しますか、法律では「農業生産についての協業を図る」というのですから、農業生産の協業の部分に関することに局限されるべきであると思うのですが、そうではないのですか。そうでないという御答弁のようですが、そうすると、非常な問題が起こると思うのですが。
  42. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) ここに言う協業と申しますのは、いわゆる協業経営とそれから協業組織と、二つの意味を持っているわけであります。協業経営という部面につきましては、事業農協として農業経営ということをやっていく。それから協業組織育成という観点からは、農業にかかる共同利用施設の設置または農作業の共同事業ということで、本来の事業としてはこの法律の目的に書いてありますように、協業のための法人でございます。ただいわゆる付帯事業の範囲がどこまで及ぶかということについて若干問題があるわけであります。実はこの法律案作成の当初におきまして、一部からこの農事組合法人購販売事業を認めるべきではないかという強い意見があったわけであります。それにつきまして議論の結果、これを認めると農協との間の摩擦を生ずる非常におそれが多いということで、あえてこの事業能力からはずしまして、協業一本にしぼったわけであります。したがいまして、われわれの本来の趣旨といたしましては、この農事組合法人事業というものができるだけ農協事業と重複しないようにということで考えて作ったわけでありますけれども、ただ法律運用上、あるいは実態上の面におきましてこの付帯事業というものの範囲が、若干おっしゃるように農協事業と重なってくる部面もある。しかし、これは非常に局限された範囲でありまして、また一般にいう購販売事業は、農協を通してやってもらいたいという趣旨においては変わりはないわけであります。
  43. 森八三一

    ○森八三一君 通してやってもらいたいという希望をお持ちになっていることはよくわかります。わかりまするけれども、それはあくまでも希望でありまして、そうでないという事態が発生した場合にどうするか。そこで法律解釈としてはここに設置されます農事組合というものは、それは農事組合の本来の事業ということのための部分に局限されるというように明確にしておきませんと、付帯事業と言ってもそれはその目的に直接する付帯事業である。その目的を逸脱する付帯事業というものは存在しないと思う。その付帯事業考えていったら、結局希望するだけである。希望に沿わない行為が起きましても、それを制限するというわけには参りかねると思うのです。その辺をはっきりしておかないと、付帯事業としてあれもこれもやれるということもやむを得ない。しかしそれは希望はしないという程度では、私は非常に不安を感ずるわけであります。だから農地組合はどこまでもその農地組合の目的どおり、協業の部分に関する範囲に局限されるものである。その農地組合を構成しておる組合員個々の農業経営という問題にまでは、この農事組合事業の範囲が及ばないものであるというように整理いたしませんと、付帯事業としてやれるのだとなると、これはどこまでもずーっといってしまって、結果としては農業組同組合と全く同じものになってしまうという危険が起きるのですよ、希望をしていても。そういうことが解釈上行なわれるというのは、それはどこで切るかといっても切りようがない。はっきりどこで切るというわけにはいかぬでしょう。何で切りますか。付帯事業としてこういうことをやれるのだ、こういう解釈をしておいて、どこでその範囲が希望する範囲をこえるのだ。取り締まりをするといっても、取り締まりのしようがないと思うのですね。だからこの出発にあたって、その事業の範囲というものは明確にしておきませんと、混乱、摩擦を生ずると思うのです。明確にしてもらいたい。付帯事業としてこういうところにやれるが、それは希望はしないというようなそんなあいまいなことでは困る。はっきり農事組合事業というものは、その農事組合設立の目的の範囲内に局限されるべきものであるというように明確におっしゃるのか。あるいはそうでない、今お答えのように、付帯事業としてその構成員である組合員農業経営に必要な事業にまで発展し得るものであるというようにおっしゃるのか。これははっきりしてもらいたいのです。
  44. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 私は単に希望的な意味で申し上げたわけでございませんで、法律の規定の本来の事業としては、購販売事業はできませんということは明確に規定されておるわけであります。ただ、あとに残る問題は、法律上の「前二号の事業に付帯する事業」という規定の読み方の問題だと思います。で、われわれが法制局との相談の結果が、先ほど申し上げたような考え方でございますけれども、これは実体上も非常に影響の大きいところでございますが、さらにその辺の考え方は、法制局と打ち合わせいたしまして早急に明確にいたしたいと思います。  ただ、ここでちょっと申し上げておきたいことは、おっしゃるような農協との関係におけるそういう疑問の問題がございますが、他の面から考えますと、せっかくこういうふうにして集まった人たちは残っておる個別経営についての購販売事業を、非常に限定された範囲であるけれども幾らかはやれるということにするほうがいいじゃないかというふうな考え方も、実は別にあるわけでございます。それは実態的にどちらがいいのか、あるいはまた、どういう弊害があるのかという点を検討する要はあろうかと思います。そういうことで御趣旨の点は、実はわれわれもある程度懸念している問題でございまして、早急にひとつその点をさらに検討してかかりたいと思います。
  45. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 関連して。これはとんちんかんな話になるかもしれませんが、全くしろうと論かもしれませんが、農業といったって、昔のような農業なら、自家消費のための農業で、農業とは生産だと、それでいいでしょうが、今日の農業は何のために行なうか。生産して、それを販売して、現金収益を得るために行なうのだ。農業は、今は、農業自身は目的でないのです。この言葉は極端かもしらぬから、適当にしておいてけっこうですが、販売がない農業というものは、逆にいえば考えられない。それが付帯事業だとなって、販売が付帯しないのだ、それは切り離されているのだというのは、自然の姿ではない。これは法律的にどこかやはりゆがんでおると思うのです。すなおでない。ゆがめるなら、農協が一切の資金的なめんどうを見る。したがって、共同集荷なり共販というものは、農協がやれるということがはっきり明示されていないと、これだけでは私は争いになるのではないか。また、実態として、じゃ農協がみんな引き取って販売をやるということが、実行可能であるかどうか。たとえば酪農組合、毎朝毎晩なま乳が出る。それで農協で集荷して、農協が会社に共販しておるところはいいかもしらぬ。農協自身が集荷をしておるところはいいかもしらぬが、そういうことのないところは、何をさしているかというと、ただ契約面だけが農協でやっている。現物だけはここに渡すということなのか、この辺もあいまいです。あるいは林業も含むのだそうですが、林業という経営それ自体は、植林と管理でしょう。しかし、この販売ということはできないのだ。伐採、販売ができないのだ。じゃそれは農協がやるのか。何か私、これは全くしろうと観でわからぬのですよ。私自身は、今日の体制を進めようとするなら、農協が一切の販売はやるべきだ、やらせるべきだという考え方を持っています。そうして緊密な有機的な連関を組合との間に持つべきだと思っています。しかしこれだけの建前でものを言われておるだけでは、どうもその点ははっきりしないと思うのですが、具体的にはどうなんですか。
  46. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) この点は先ほどもちょっと申し上げたわけでありますけれども、農業経営を行なう農事組合法人が、自分の作ったものを売ったり、あるいは自分の農業経営上必要な肥料等の資材を買うことは、これは農業経営の一部をなしておるのであります。したがいまして、この法律にいう農業経営という事業能力の中で当然やれるわけでございます。
  47. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 やれるとなれば、今度は逆な面から聞くのですが、たとえばうちの県等で現に任意組合でリンゴの共同生産、共同防除、共販をやる、しかしその場合に、系統資金農協が引っぱってくるわけですから、したがって販売のほうは、農協を通して販売をするというような体制にして、連絡をとっている。これがみんな個々に生産組合が販売するのだ、農協はくずさないのだというようなことが、あらゆる面でぼつぼつ出てきたら、これは農協というものはどこへ行くかということも考えられますし、それらの調整はどうなっているのですか。
  48. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 農業経営を行なう農事組合法人というのは、これは、個人たる農民農業経営を行なうというのと同じ立場で考えればいいわけであります。個人たる農民農業経営を行ないまして、それからできた農産物を販売する能力は、当然これはあるわけであります。ただこれをできるだけ農協という単位でまとまって販売したほうがいいじゃないかということで、ここで農業協同組合というものを作りましてこれを進めておるわけでございます。同時に、農事組合法人というものは、農業経営を行なう場合には、これは農民と同じでありまして、みずから作るものを売る権利はあるわけです。ただそれを売る場合に、できるだけ農協を通して売ってもらいたいという指導方針は、従前と変わりはないわけであります。ただ、それを法律上、組合員との間のつながりを強制的にするということは、現在の農協法の建前上やっておらないわけであります。
  49. 田中啓一

    ○田中啓一君 改正法の七十二条の八の「前二号の事業に付帯する事業」というのがよくわからぬということで、われわれもたいへんむずかしい御質問でありますから、一生懸命耳を傾けて問答を聞いておるわけなのでありますが、そこで啓蒙的の意味で、しからばその付帯事業というものは、何を、どういうようなことを通常指してこれは書いておるのか。この一号、二号は一応よく内容がわかる。そこで一号、二号をやれば通常出てくるような事例というのは、どういうものがあって、それが三号の付帯事業に当たるのだというようなことを、ひとつ例をあげて御説明を願うと、論をするにもたいへんわかりがいいと思いますので、どうもたいへん初歩的な質問でおそれ入りますけれども、ひとつ例示で御説明を願いたいと思います。
  50. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) この付帯事業の典型的なケースを申し上げますと、農事組合法人が作りました生産物の加工をやるという場合、それから農事組合法人が持っております農機具を、ひまなときに他人に賃貸するというようなケース、それらがあげられると思います。
  51. 田中啓一

    ○田中啓一君 それでまあ二号の共同経営のほうは今御説明でよくわかるのですが、そうして共同経営でできた生産物を売るとか、あるいは共同経営に必要な資材を、たとえば肥料でも何でも買うとかいうようなことは本来の経営に入ることだ、それがあるものを人に貸してやるとか何とかいうことになれば、付帯事業考えるべきだ、よくわかりますが、そのむずかしいのは一の共同利用設備の、あるいは農作業共同のいわゆる共同組織のほうの、このほうの付帯事業というのはどのものがあるのでしょうか。
  52. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) これも同様に農作業の共同化のために農機具を持つ、これがやはり農閑期に遊んでいるときには貸すというようなことが典型的であると思います。
  53. 森八三一

    ○森八三一君 十二時過ぎたのですが、ちょっと三時間や四時間で結論にいきませんが、この辺で一ぺん休憩したらどうですか。
  54. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 午前の質問は、この程度にいたしまして暫時休憩をいたします。    午後零時十一分休憩      —————・—————    午後一時四十二分開会
  55. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 委員会を再開いたします。  午前に引き続き、農地法の一部を改正する法律案農業協同組合法の一部を改正する法律案、両案の質疑を続行いたします。
  56. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 きょうは、私、農協関係についてはいろいろ伝統的なものがあるし、わからない点もあるので教えていただきたいと思って、総括的な質問をしたいのですが、まず両法案を改正して、そしてこの協業化、二つの事業を行なうのですが、その協業化を行なう会社法人なり組合法人なりができるということですが、これがその農業基本法との関係でどういうところまで発展していくことを期待してこういう計画をお考えになり、指導しようとしているのか、お伺いしたい。
  57. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 農業基本法におきましては、御承知のように第一条に「国の農業に関する政策の目標」というのを掲げまして、結局農業生産性の向上と農業生産力の増大、そしてそれを通じまして農業所得の増加拡大をはかっていく、こういうことに始まりまして、そのために農業構造の改善等の措置を講ずる、こういうことに相なるわけでありまして、今回の農業協同組合法の改正並びに農地法の改正におきましては、この農業構造の改善に自立経営育成のために、あるいは協業の助長のため、そういう意味におきます組織と、それからそのために経営規模の拡大等のための農地の流動化、そういったものを両法案を通じて促進するということで、両法案の改正案を提出した次第でございます。
  58. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それだから、まあ将来の展望を私はお聞きしたいというのです。そういう方向で進められて、先般の選挙等で大いに宣伝せられたように二・五ヘクタールの自立農家百万戸を形成する。あとはその他が百五十万で、あとは零細農家が二百五十万なら二百五十万残るという、そういう勘定になる部分がありますが、自立農家がかりに百万戸形成されたにしましても、あとは一人立ちで食べていけないという階層であって、そこから協業化が始まるであろうということも言われておるわけですから、この協業の問題がこういう法人会社等の関係発展していく。またさしていかなければならないものと考えるのですが、そうなった暁、この発展された結果として、私は農業構造の改善というのみならず、日本の農村そのものの構造が変わってくると思う。そういう点からも、どの程度のところまで政府は協業化——こういう組織組織化、こういう法人組織ということを助長し助成していこうとしているのか。また行きついたところはどういう形に農村が変わっていくとお考えになって展望を持っておられるか、そういう点をお伺いしたい。
  59. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 将来の展望でございまして非常にむずかしい問題でございますが、一応所得倍増計画等におきまする自立経営育成の目標といたしましては、府県平均二・五ヘクタールのものを育成していく、こういう展望がひとつなされております。なお、そういう自立経営とあわせて、農業経営の小経営あるいは自立経営にいたすべく努力している経営、そういったところ、または自立経営に達した経営におきましても協業の助長をやらなくちゃならぬ、こういうことに相なるわけでございまして、その目標というものは結局農業所得の増大を通じまして他産業との均衡ある所得の確保をやって農業者の生活の向上に資する、こういうことに相なろうかと存じます。ただいま直ちにこれを数字的にどの程度まで持っていくかということは、協業と今後の農民の自覚と政府指導といったものに非常にかかるわけでございまして、なかなか数字的な目標をお示しするというところまでは参っておりません。
  60. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 その点はそのとおり了解できます。私は数字などを要求するのではありません。ただ階層的には、自立農家そのものが協業するという割合は一般的に少ない。いわゆる自立農家の育成という一本の柱がありますから、したがって、他の階層に対しての協業を進めるという形になるでしょうし、協業のほうは個人経営よりいいんだという前提がない限りはこういう改正は、まあめちゃくちゃな議論でいえば、考えなくてもいい、協業がいいのだという前提があるだろうと思う。いいのだとなれば、いいと思われる方向に成功させるように指導していくだろうと思う。そうすると、それが省令の形になって次々例示されるものの模範を見て、この協業を農村の中で進めていくだろうと思うのです。そうなってきた暁に、なおかつ協業し得ない、また協業するのに資力なり労力なり、あるいは土地なりの問題がもううまくないのだというような向きがあって、はずれるものがはずれていくという想定もあるでしょう。ですから、この協業というものは、どこまで本腰を入れてお進めになろうとしておるのか、どういう階層を主としてねらっておるものか、その辺のところはお示しいただけるのでないかと思うのですがね。
  61. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 御指摘のように、国の経済が高度に発展していく段階におきまして、所得倍増計画においても指摘されているように、農業人口あるいは農業の就業者の労働力の移動というものが必然的に起こって参っております。また、今後も経済成長の段階において、そういう傾向は助長されるだろうと思います。そういうひとつの契機をもってまた農業構造改善の契機としようというのも、本法の一つのねらいだろうと思います。そういう意味におきまして、いわゆる大規模の自立経営というものは、一方においては育成されて参りましょうし、それから御指摘のように、兼業におきましても、第一種兼業、第二種兼業、こういった農業形態がここにあるわけでございますが、そういう面の他産業への移動という面も出てくるだろうと思います。で、他面におきまして、農業の技術の発展あるいは農業機械の高度の発展、あるいは導入といった技術の面の要請も出てくるわけでございまして、そういう面から農業経営の資本を集積して、農業のいわゆる資本装備の高度化をやって経営の合理化、近代化をやるという面が出てくるわけであります。この面は自立経営においても当然でございますが、特に御指摘のように、やはり兼業面、小経営の面において、特に必要になってこようかと思います。そういった農業におきまする資本装備を拡大しまして、新しい農業技術面、効率のいい機械を入れていくという面、片一方において農業労働力が移動する、そういう傾向をもってやはり小経営なり兼業経営において、御指摘のような協業化の方向というものが強く要請される、こういうようにわれわれは考えております。
  62. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そうなることが想定されますと、今、三十七年度から政府が発足させようとしている構造改善事業、それのパイロット地区とか、一般地区とか、そういうものを設定して、相当の金を流し、またその地域自身が借銭をして構造改善事業に取り組むという、その中心になるものは協業化のための土地整備なり何なり、協業の条件を整えていくという方向にあるのですか、そういうこととは全然何ら関係なく、総花的な農業改善事業となるわけですか。
  63. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 構造改善事業として、三十七年度から新しい構想で出発いたしております。御指摘のように九十二のパイロット地区を設定いたしまして、三十七年度においては一般的に二百地区の構造改善事業を推進していく。そうして十年間に全町村、特に都市近郊を除きまして全町村に及ぼす、こういうような構想でございます。これにつきましては農業基本法の目的とするところを達成する、こういうことに相なりまして、やはり事業の対象というものは新しい生産農業、成長農業というものを中心に置いて、そのために自立農業というものの育成並びに今御指摘になるような零細、小経営農業者等につきましては助長されるように、そういった基盤を両方とも並び進めていかなくちゃならぬ、こういうふうに考えております。
  64. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 ですから、大体の方向としては自立経営育成ということと、協業農業ですか、この二つの柱が中心になって、その農村における営農の形態が発展していく、あとまあ兼業農家というのは、それぞれ協業する場合もあれば、他に労賃収入を求める、農家として残る部分があるのだ、農村の姿というものはそういうふうに変わっていくのだ、こう見ていいわけですか。
  65. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) この農業改善事業におきましては、御指摘のように、この計画の実施によって、自立経営育成ということと、協業の助長に資するということに中心が置いてあります。これは農業基本法においてもその二つが柱になっているわけでございます。それに資することに相なろうと思います。ただし、その地区々々のやはり立地条件、あるいは農業条件、あるいは経済条件、あるいはその中におきまする農業経営の状態等によりまして、それがどういうふうになるか、それはその地区の構造改善事業を樹立いたします段階において並び称せられる面もございましょうし、協業の助長については、ウエイトが置かれるような地区もあろうかと存じます。
  66. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それで、今お尋ねしている点を言い直してお尋ねするのですが、結局日本の将来の営農というものは、個人農業で伝統的にきたけれども、今後個人農業としては自立農業、それから個人的なものでない協業による農業というものを進めていくのだ、農政として協業という問題はもういいかげんに奨励するとか何とかというようなことでなくて、日本農業を歩ませていく必然の道筋なんだと、こういう根本理念に基づいておやりになっていくのだということは間違いないわけですね。
  67. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 基本法にもございますように、日本農業の現段階におきまする基本的な経営は、家族農業を中心にいたしているわけでございます。それでその家族農業を自立経営育成していく、こういうことが一つの大きな柱でございます。それとともに、自立経営段階において、いろいろ、早急にこれが自立経営まで持っていくということには、非常にむずかしい問題もあろうかと存ずるわけでございまして、小経営というものがどうしても存立する、あるいは兼業経営というものがあるわけでございまして、そういう面において先ほど申しました資本装備をして新しい近代化をはかる。こういう意味においても、協業にこれを持っていかなければならぬと考えるわけであります。
  68. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 ですから、局長がお考えになっておることを了解するのには、農業基本法に基づく協業の助長ということは、これは重要な今後における農政の課題である、使命である、こういう意味考えていいわけですね。どうも助長などという言葉なので、いいかげんなものでないかという感じを持つし、何かいろいろ議論があったようにも聞いておるので、そういう点を確かめたいからお尋ねするわけです。
  69. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 御指摘のとおりと存じます。
  70. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そこで午前中に森委員からお尋ねのありましたような会社なり組合法人なり幾多の協業の組織ができてくる。そして親組合々々々と午前中も言っておりました農協との関係が、どうなるものかということについて、私どうもはっきりわからぬ。この法人が直接生産したものを販売する、あるいは生産に必要なものを共同購入をやる。こういうような事業が個個の組合で行なわれるという形になると、相当この法人組織発展していった段階には、農協は何を仕事としてやるのかということが、私にはわからないのです。農協というものの使命は、どういうことになるのかということがわからぬのです。その点少し教えていただきたいのです。
  71. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 現在われわれの想定しておりますいわゆる農業経営を営む農業生産法人といいますのは、まあ人数的に申しましても、それほど多人数ではない。たとえば現在の農協の平均の組合員数は、約五百人でございます。で、今直ちに五百人ぐらいの人間が集まってこういう生産法人を作るような事態には、まだ立ち至っておらない、そう考えておるわけであります。したがいまして、それよりはるかに少人数の人間の寄り集まりとしての生産法人を想定しておるわけであります。そこで農協との関係でありますが、そういう生産法人は、農業経営を営むという観点から見ますと、これは一個の経営主体でありまして、個人たる農民とその点においては差異がないわけであります。したがいまして、これらの生産法人は、他の個人たる生産農民と同様に、その生産物の販売につきましては、農協という単位にまとまりましてやっていってもらいたいというのが、われわれの基本的な考え方であります。
  72. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 だから、やっていってもらいたいという願いはよくわかる。よくわかるが、それぞれ一人歩きするわけですから、私の申し上げておるのは、一人歩きしていくそうした組織法人が、自立農家、家族経営農家以外に幾多のものができてくるという形になって、そうしてその団体の、それも個人単位と同様な資格をもって農協に入るのだということになっておっても、農協に利用価値がないということになると、入らないと思うのです。あるいは、自立農業経営をやる組合員と、組織的な法人農業経営をやる同じ農協組合員とは、好むと好まざるとにかかわらずだんだん対立していくのでないかという感じがする。これは私の感じですが、そういうことはあり得ないということですか。
  73. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 先ほど申しましたことは、われわれの単なる希望的観測ではございませんで、最初に申しましたように、現段階においては、そういうふうな大規模な強力な生産法人というものはできないであろうという前提のもとに考えて申し上げたのであります。そうして農業協同組合というのは、御承知のとおり零細な、力の弱い農民というものが集まって、そこで一体となって、力を強くして外へ向かっていこうというのが、本来の趣旨でございます。そういう意味から申しますと、御質問のような非常に強力な生産組合ができ、強力な自立経営ができて、これがあえて協同組合組織によらなくても、単独で購販売事業を市場に向かってやっていくという力のあるようなものができた場合には、あえてこれは理論的には協同組合組織をしいてとらせる必要はない、ただ現実問題としては、そういう力の強い生産者なり生産者の団体というものが、現在もないし、また近い将来にも起こり得ないであろうということは、前提として考えておるわけであります。
  74. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 私はあまり力関係に力点を置いて、想定してものを言うておるのではないのです。多数法人が出るということに力点を置いて判断しておるのです。たとえば主産地形成というものでやっても、農民一つの意識としては、よりいいものをより高く売りたい、これはもう本能的なものです。特産物等においてしかり、それで同じ主産地として、ある条件のものを生産するとしましても、その出荷の時期その他によって販売価格が非常に変わるというような場合には、自分たちの小さな利害だけを念頭に置いて、そうしてこの農協的な組織に団結しないで、小さな組織でそれぞれ相手を求めて販売していこう、あるいは中央の資本につながって販売の経路を求めていこうとか、そういう動きが起こらないか、そういうものが起こるというと、味方陣営の組織間の中で競合が起こってくる。農協などはどこかへやられるという形になって、農協というものは、単に金融機関的なそういう機能しか果たせたないような状況になる場合があるのではないか、こういう考え方なんですが、今のことを言ってるのじゃないです。私はどんどん各農村に、一つの単協の組織下にそうした組合法人が、その経営の問題として、組織等の問題として、いろいろな階層と組んでものが考えられてきた場合に、起こってくるのではないかという感じがするのですが、どうなんですか。
  75. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 現在におきましても、たとえば野菜の出荷につきまして、任意団体であります出荷組合というものを作りまして、これが農協とは別に単独にやる、そういう例があるわけであります。これは農協理念から申しますと、あるいは流通上の理屈から申しますと、そういう小さい固まりでもって出荷することは損である、もっと大きな単位でやるべきである、そのためにはやはり農協を通してやらなければならない、しかも現在の農協でさえも、なおかつ小さくて、もう少し規模を拡大する必要があるであろうということで、われわれ合併も促進しております。そういう意味におきまして、現状におきましてもお説のような問題点があるわけであります。今後農事組合法人のごときものができました場合に、確かにおっしゃるような危険性をはらんでおることは否定できないと思います。ただ、私たち考えておることは今後の農協というものは、そういうふうにだんだん生産者なら生産単位というものが強力になり、大きくなってくる、あるいは専門化してくる、そういう状態を前提にして、そういうふうな生産者をどういうふうにして引っぱっていったらいいかというのを考えるのが今後の農協の大きな課題である一そう思っておるわけであります。そういう農協から離れる危険性があるがゆえに、生産者が大きくなったり、あるいは共同経営を行なうこと等は否定すべきではない、これは促進していく、ただ問題はそれに対応する農協の体制いかんということについて、今後われわれも努力するし、農協自体も研究しなければならないというふうな考えでおるわけであります。
  76. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 よくわかりました。そこで農協というものは私はだんだん購買の面でもくずれてきておるところがあると思うのです。たとえば肥料なら肥料に例をとってみても、農協を通さない問屋筋から別系統で入ってくるというようなのが相当見られる実情だ。なかなか農協としてこれを押し返して一元的に組合員の肥料なら肥料というものを扱おうということは、困難している向きがあるのでないかと思うのですがね。そういうようなのが、先ほど言われるように法人として購買も自由なんだというようなことがあれば、どうも農協というものはどうなっていくのかということが心配なんですね。結局将来は農協というものは、あなたがおっしゃるような指導農協として、あるいは信用の金融、あるいは共済、そういうようなものとしてだけ残るのではないかという感じがするのですがね。私は農協というものの伝統を知らぬのですから、まあこそこそと質問しているわけなんです。農協精神とか農協理念とか、大いに言いますけれども、どこがほんとう農協なんだ。法律にはこう「農業協同組合」とは書いてあるが、農業協同組合であって、そして農民が結集せよと言うておる。しかし、なかなか結集はしていない。農協自身は、何か大きい農協であれば県会議員とかあるいは国会議員とか、そういう人を一連の頂点に置く幹部階層を作って——じゃ、その方は、農家経営はどうしているかというと、まあ単協等でも奥さんか娘かおばあさんがちょこちょこやっているというようなことで、そんなもので飯を食っている人たちではない人たち農協経営のスタッフです。大体われわれの地域を見てもそういうことです。農民農協というものとは何か別もののように外から見てみて見えるし、農民自身がそう見ている向きの中へ入って話し込むと、そういう向きがないこともないのですね。農民農協に対して、意欲的な情熱を傾けて、これをわれわれの一切のとりでだとして守り育てていこうという精神が今日の農村の中で厳として生き、脈々としてそれが伸びようとしているかというと、必ずしもそう言えない実情ではないかと思うのですね。そういう意識的な部面も兼ねて加えるというと、こういうさまざまな組合が出て、それがいいぞということになると、だんだん農協というものがじゃまになるというか、魅力を失うような形にこれは過程的段階であるかどうかわからぬがなるのではないかという感じがするのですが、この点はどうかということをお聞きしたい。  もう一つは、私非常に不思議でならぬのですが、おしかりを受けたら受けたでいいのですが、農業協同組合なんですから、私は本来の精神は農業生産組合でなくちゃ本物でないのではないか、物を売ったとか、買ったとか、利用するとかされるとか、ほんの何かまわりのようなことを主体にしてやっているような農業協同組合というのは、諸外国にそんなものが農民組織としてあるのだろうか、全然私しろうとだからわかりませんが、なぜ農協そのものに生産活動をさせることができないのですか。そしてそのためにこういう法人を他に農協とつながりがあるようなないような形で農業の外に、まわりに作らなければならないのか、この点が私はわからない。この二点。
  77. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) まず前段の問題でございますけれども、確かに現在の農協はすべての農民の力を結集したような形態ではないということはよくわかります。これもわれわれも常々苦心しているところでございますけれども、たとえばこういう問題があるわけであります。農協によって共同購買、共同販売を進めていきます場合に、一体農協によって、そういうことをやったおかげで経済的効果というものがどうであるかということの測定が非常にむずかしいわけでございます。一般の商人あたりが、そういう農協の購販体制をくずすがために特にそういうところに対しては価格の面における競争を一時的にやっていって、そこで打ちくずすというふうな活動もあるわけであります。したがって、そういう場合には特別の価格がそこに形成されるというふうなこともありまして、そうなると、農民の側から見れば非常に目先の問題でありますけれども、農協のほうが安いじゃないか、あるいは買うものは農協のほうが高くしか買えないじゃないかというふうな問題があるのであります。そういう点で、経済的な面で、農協事業の効果といいますか、あるいは恩恵といいますか、そういうものははっきりはかり得ないということがありまして、ここにいろいろと問題が起こってくる。それからもう一つ日本の農協は何といいましても、これは最初の出発点におきまして、ある程度上からの押しつけ的なものであったということは否定できないと思います。そういう面におきまして、諸外国にできております農協と比べますと農民自体の農協運動というものに対する理解、農協というものに対する理解が足らないということはあると思います。なおかつ現在の農協といいますのは、従前のような零細な主として自家消費的生産をやっておるような農民というものを対象として考え農協でございます。今後の青果、畜産のごとき消費生産作物を作る、しかも規模の大きい農家というものを対象としてはあまり考えてなかったという歴史的な事情もありまして、今後の農協のあり方というものは根本的に考え直さなければならない点もあろうと思います。  それから、諸外国の例はどうかという御質問でございましたが、諸外国では私知っておる限りでは流通面——農協の担当しておる部面は流通部門でございますが、生産部門を担当しておる農業協同組合というものはございません。共産圏は別かと思いますが。  それからもう一点、農協生産事業をなぜ行なわせないのかという御質問でございますが、これは法律上あるいは理論上農協生産事業を行なわしてはいけないというまでの考え方ではないのでございますが、現段階においては農協単位に生産事業を行なうということはまだ考える時期ではないんじゃないか。むしろもっと簡易な生産主体であるこういう農事組合法人のごときものを主流的に考えていいのじゃないかという考えのもとに農協には農業経営を認めなかったわけであります。したがいまして、将来の情勢いかんによってはなお検討すべき余地があると思います。  それから、現在かりに農協にそういう生産事業を認めます場合、先ほど申しましたように農協の平均規模は五百人、いわゆる専門農協でも二、三百人でございましょうが、そういうものがほとんど全員参加してそういう農業経営を行なうということはちょっと考えられませんし、といって、一部の者のためにのみ農業経営を行なった場合、それの損益の問題が農協全体の経営に響くというようなこともありまして、現段階では農協に認めないほうがよいのではないかというふうに考えております。
  78. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 これは全く私の個人的な意見で、わが党の考えとはかけ離れて質問しておるわけなのですが、この農協生産活動をやらせない、特殊な組合、養蚕組合とかたばこ耕作組合とか、こういうようなものは生産的なことをやっておるのですね。まあ、それは家族農業としてやっておるので、それは同じだということは、原理的には同じでしょうが、農協の立場と同じでしょうが、何というか、結束というか共同動作といいますか、そういう部面はずっとすぐれておる部面があるわけですわね。経営の中にまで立ち入って、お互いの問で援助し合って仕事をしていっている、そういう仕組みではないわけですね。そこちょっと違う、はだ合いが違うと思うのです。しかし、ああいうようなものがあることを考えますと、五百人なら五百人の単協が全部参加する、共同化のそれはないにしましても、あらゆる部門別に農協内部で組織して、内部のものとして運営していく方法がないのでしょうかということなのです。外部に別人格を持たないで、農協内部のものとして運営していく、そして農協仕事、外から見れば一切が農協仕事、こうなるような方法がないんだろうかということなのです。それでもしもそれが、私しろうとでわかりませんが、ないとするならば少なくともこの農業改善なり何なりというものは農家の所得倍増なり、農家全体の経済水準を上げていこうということなんだから、問題は別な点に発展するのですが、特殊な養蚕だ畜産だ、それ果樹だ何だかだといった場合に、一農家の小笠原なら小笠原がそれぞれ出資をし、資金を分散させるよりは、あくまでもその単協を総合農協として一切のものが農業活動の中でやれるという方法はないだろうか。そこまでいかないなら、たくさんの役員を作っておのおのそっちを向いてやって、本体である農民はみな同じだというような、たとえば今騒がれている農業共済などでも、農民自身は同じで頭の向きが違うのが二つほどあってがしゃがしゃやっておる。まことに私は不思議でならぬのですがね。何で日本の農民が一体になって、そのことが前進であり強力になるのだというなら、今後はずれた組織は持たせない、その中で組織内部の問題として発展させていくという方向が考えられないだろうか。こういう二点、お尋ねしたい。
  79. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) おっしゃる点はまことにごもっともでございまして、実はわれわれもある時期におきましては、農協農業経営をやれるという方向で考えたらどうかということを研究したこともあったわけでございまますが、基本法もできまして、本格的に協業経営というものを促進する立場から考えてあらためて考えてみたわけでありますけれども、その場合に、一つの条件としてその農業経営を営む法人はできるだけ自由な形態で、できるだけ簡易に作るということを考えたわけであります。その点におきまして現在の農協というものは非常に公共的色彩が強く、しかも流通事業を主体として考えておりますゆえに規模も非常に大きいということから、いろいろ行政庁の監督という点からこまごまとしてあるわけで、そういう要請にこたえにくい形態である。それからもう一つは、農協経営は、先ほど申しましたように、行なう場合にそれのいわゆる収支と、それから一方市場を対象とした流通事業に伴う損益というものが混淆することになりますと、そこに一方の側が非常に不利をこうむる、あるいは被害をこうむるということが予想されまして、特にこれは現在のような農協の規模がある程度大きい場合、あるいはまた将来大きくなるだろうとする場合におきまして、また生産する規模としてはそこまでいかないという二つの場合がある。そこで、いろいろ問題がかえって起こるのじゃないかというふうなことを考えまして、この際は農業生産法人というものを単独に作っていきたいということで、この法案を出したわけであります。農協との関係につきましては、おっしゃる点の心配もなきにしもあらずとは考えておりますけれども、あくまでもこれは農民農業経営の合理化をはかっていくという立場から考えていく筋である。農協はそういう農民の意欲、農民傾向というものに対応して、どうしたらいいかということをその次において考えていく筋である。そういうことである程度割り切って、今後は指導なり、あるいは農協努力なりに待ってその問題を円滑に処理していきたい、そう考えております。
  80. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 私にもしっかりしたことはわからぬですが、流通面だけを扱うのが農業協同組合であって、そうして生産にタッチしないという形はどうも私は不本意なところがあるんです。そういうものが、日本の農村の中で農民を守っていく組織として流通面だけ担当するものが一切やる、それでいいんだろうということはどうも私は歯がゆい感じがしてならない。別建で法人を作るとかなんとかいうことで必ずしも、今とやこうこまかいことは言いいませんが、少なくともどっかに農協というものがどうしてもやはり伝統的に農村にあるならば、この農協というものに農民が寄ってくることによって、そうして経済的な条件をよくしていく、それ以外のものにたよったってだめなんだというしっかりしたものを持たせてあげたなら、私はもっともっと農村というものは明るいものになるのじゃないかという感じがする。どうも中途半端だという感じがしてならない。それで、自由主義国家の関係ではそういう組織がないということ、それで共産圏は別だといっておりましたけれども、それは共産圏におけるソ連や中国は全く別で、今の日本でそのまま範とされるということはできない、それはわかる。けれども、東欧諸国あたりの共産圏における農業協同組合というものは、私は大胆なもののいい方ですが、資本主義の中でもやってやれないことがないんじゃないかというふうに思われる部面がある。ユーゴスラビアにおける農業協同組合は、全然社会化された土地に農業労働者が入って経営する組合もあります。これはもう完全な賃金収入でその農業労働者が食っていくという形態のものですから、これは別ですがね。いわゆる一般農業協同組合といわれるユーゴスラビアの組合は、個人の自由の意思によっていかなる形でもその協同組合と共同の契約を結ぶことができるようになっている。たとえば、自分は土地を持って経営するということは困難だという人は、農協にその土地を委託して経営してもらって、自分が労働者としてその農協に雇われる、そうして土地の賃貸料ももらい、労働収入ももらうという契約を結ぶ場合もあるし、ある人は、耕作段階の機械を入れてひとつ耕やす、種まき以前の段階のところだけを農協にやってもらうという契約を結んで、あとは自分が耕作していくという契約の仕方もあるし、あるいはある段階では共同販売の部分だけ契約する、自分の生産した麦なら麦というものを、これをその協同組合で共同販売してもらいたいという契約で自分で直販しない、こういう契約の仕組みもある。それらがいろいろ入りまじって、協同組合は一部的な生産活動もすれば、委託されたものの販売活動もする、その委託されたものの購買活動もやっていく、ある場合には、機械を持っていって一部農作の共同作業もやる、こういう形でやっておる組合の形態のようですね。で、私はこの点を、ただ一週間やそこら行って視察して聞いてきた私の話ですから、十分な点はわからぬのですけれども、あなたのほうでそういう点御検討になっておられる点があるなら、こういう点がうまくないのだとか、ああいう点がうまくいかないのだとか、御批判があったらお聞きしたいと思うのですね。
  81. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 先ほど私、現在の農協が購売事業という流通関係事業が大部分であると申し上げましたけれども、これは現在の実情を申し上げておるわけでありまして、法律上の建前なり、われわれの政策から申しますと、もっと農協生産部面に深く入るべきだという考えを持っておるわけであります。また法律上はそれが可能なことになっております。すなわち、農協は、たとえば共同利用施設の設置というような形態でもって、機械をもって共同農作業をやる、あるいは機械化をやっていく、集団的機械化をやっていく、そういうことは十分可能なわけでありまして、生産面における農協活動の範囲というものはきわめて広いわけであります。ただ、私が農業経営農協が行なえないと申し上げたのは、農協がその農業経営の経済的な責任と危険を負担することが行なえないということを申し上げたわけでありまして、農業生産過程のいろいろな作業につきましては、非常に広い範囲において農協はできるわけであります。その点私、実は東欧の諸国の情勢はよく知らないのでありますけれども、そういったいわゆる農協の共同作業的、あるいは共同利用施設の設置の事業が活発に行なわれているのじゃないかと実は私存じております。
  82. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 関連して質問しますがね。今度の改正案では農業経営を行なわないで、農業にかかわる共同利用施設の設置とか、あるいは農作業の共同化に関する事業のみを行なう団体も農事組合法人として資格を与えているわけですね。そうしますと、ただいまの答弁の中で、農協はまあ法律の定めるところによって農作業の共同化等を実施することができるわけです。現にやっているところがあるわけで、飼育の共同だとか、こういうようないろいろな共同施設を農協自体がやっておるわけですね。そうしますと、今度新しく出た、私が前段申し上げましたものとの調整が出てくるわけでしょう調整の問題が起こるわけですね。これは必ず問題になるわけですよ。こういう農事組合、今度新しくその農業経営なり強化されてきますと問題になってくるわけです。こういう場合の調整はどういうようにお考えになっておりますか。
  83. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 実は前々国会で廃案になりました法案によりますと、農業生産共同組合制度というものを設けまして、これは農業経営だけをやれるという考え方でございました。それを今度は農事組合法人に変えまして、共同利用施設の設置ということもあわせて事業の能力に含めたわけであります。このいきさつは、現在の協業化というもののあり方を考えてみますと、必ずしも一挙に経営を一本化して農業経営を共同でやろうというものもあろうかと思いますけれども、そこまでいかないものも相当あるのじゃないか。いわゆる協業組織というその前段階経営の最後の責任は、個々の組合員に残っておる生産過程が相当高度に共同化されているという形態がむしろ作りやすいし、多いのではないか、そういう意味で、この生産法人というものにも、少なくとも共同利用施設の設置という事業能力を与えるのが実情に合うのじゃないかということで、今度の改正案となったのであります。そこで、実はわれわれはその問題につきまして、当初はおっしゃる点を心配したわけでありまして、農業協同組合にも共同利用施設の設置の能力があり、これにも同じような能力があると重複するじゃないかという点を心配たわけでありますが、これはやはり実態的に考えまして、ここにいう共同利用施設の設置というのは、きわめて生産に密着した事業である。それに対して、現実の協同組合の共同利用施設というのは、数百人の人がたいてい使うことを前提にして、大規模かつ流通面に使う施設である、そういうことで観念的な区別はできるのじゃないかということでございます。おっしゃるような、農協農事組合法人との事業面における重複の結果の紛争というものは、全然これは心配がないことはございません。しかし、全般的に農事組合法人農協というもののあり方の問題として処理されるべきでありまして、これは今までるる申し上げましたように、農協もしっかりしてもらう、われわれも十分指導いたしまして、その点の円滑な運営をはかっていきたい。そう考えております。
  84. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 今まで農業協同組合の中では、この戦後の十数年のいわゆる農政の中で、これは経済的ないろいろの諸関係がありますから考慮されなければなりませんけれども、結果論として農業が非常に立ちおくれて、それから他産業と格差がはなはだしくなっておる。ですから、今度は基本法によって他産業と均衡させるように所得を与え、同時に、生活水準も均衡するように向上させるのだ、こういうことで基本法が定められた。そのうちの農協の助長ということで、結局ここにうたわれておるように、農事組合法人というものを作って、そうしてこれに資格を与えるということになってきた。ところが、その法人は、やはり行政的な政府指導の面からいっても、これは他産業と均衡させるように育成していかなければならぬ義務があるわけですね。そうすると、金融的にも、あるいは生産関係においても、諸施設においても、かなり従前よりも趣を変えた近代的農業にふさわしいものに育てていくところのいわゆる中央地方の行政官庁を通じての指導をしていかなければならない。そういうような指導のもとにおきますというと、必然的に、かりに大きな経済的な変動のない限り、ある程度の力をつけてくるわけですよ。また、そうでなければ他産業と均衡しないわけですよ。そういうように指導していって、事業が完全にいく、資金的にも裕福になってきて、ますます共同利用施設というものは拡充強化されていくのだということになりますと、従来の、いわば末端の農村に行きますというと、活動していないような有名無実の農協というものの影はますます薄れていくというようなことで、そこにいわゆるいろいろの問題が出てくるのじゃないか。二本立のような形が出て、従来の農業協同組合は、単協は要らないのだという声が出てきたときにおける調整段階というものは、これは農協自体のいわば組織の否定という問題にまでも発展しなければならぬというような情勢も考えられるわけですよ。そういうような場合を考慮したときに、どういうようにひとつ対処していくのかお教え願いたいと思うのですがね。
  85. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) これは現在の農協法に農協農協の准組合員たることを得るという規定があるのでございます。これは数年前に改正された規定でございます。このねらうところは、原則的にはいわゆる共同利用施設の設置等は普通のいわゆる農協でやらしたらいいじゃないかという考え方でありまするが、現実的には、たとえば現にありますように、農事組合とか実行組合とか、そういった任意団体的小グループが共同利用施設を設置しておるという現実があるわけです。これらのものを農協所有という形態でやらせようとしましてもなかなか利害関係あるいは利用の関係といったようなことで農協が持つというわけにはいかないということの結果、そういうことが起こっているわけであります。そういうふうな比較的簡単な事業をやるための組織としての農協というものを想定して、そしてそういう農協が、さらに一般に言われる総合農協的な農協、これに加入する道を開いたというのがそのときの改正の趣旨なのでございます。そういう意味におきましては、現在の農協法におきましても、同じ農協という名前でございまますけれども、非常に広い流通事業その他万般の仕事をしている総合農協的形態の農協と、そうではない、比較的小さいグループの、また事業の範囲も比較的狭い農協というものを想定しておるわけでございます。で、法律論から申しますと、これらの二種類の農協が互いに反発し合うというようなことがあっては困るじゃないかというような問題があるわけであります。またそれは、たとえば、専門農協、総合農協というふうな関係でもって現にまた起こっている問題でございます。農事組合法人につきましても、当初のわれわれの考えはそういう共同利用施設は農協でもやらしたらいいじゃないかという考えであったわけでございますけれども、現実に実行組合的なもので持ってやっておる、また持たざるを得ない事情にあるわけであります。これらのものが現在は任意組合でやっている場合が多いので、法人格を持たせることによって事業活動が伸び便利にもなるというケースも考えられるのじゃないかということで、これに対しての道を開かなければならないというのが相当強い団体方面の意見でございまして、そういう意味からこの農事法人に共同利用施設の設置という事業能力を認めたわけでございます。したがいまして毎々申し上げますけれども、おっしゃるような法律上の形態から申しますと、お互いに事業能力上重複する面がありまして、競合するという危険は絶無とは言えないと思います。
  86. 田中啓一

    ○田中啓一君 ちょっと関連して。たいへんきょうは農協というものの本旨につきまして、私もどうも戦後の農協人にしましても役所にしましても、何やら非常にマンネリズムに陥りまして、もっともっと農協というのは本質的に考え発展方向にあるものじゃなかろうかと思っておったのでありますが、そういうような面に対して一条の清風を送り込んでくるような御質問でございままして、非常に私は傾聴いたしておったわけでございますが、そこで私も似たようなことで考えますのが、今出ました、たばこ耕作組合というものが農協法とは別の法律でできている、やっとることは今の流通だの、あるいは生産物資材の共同購買、販売というようなこと主として流通面だということは意味は同じようなわけです。一体そういうたばこを生産をする点に特別のところがあるということであれば、果実農業協同組合と同じようなことだろうと思うのです。あるいはずいぶんあります酪農協組合というようなもの、開拓農業協同組合というようなもの、ほとんど同じものだろうと思う。どこも違わぬのじゃないかと思う。それが一体別の法律でできておって全く農協一般の監督官庁とは離れて、行政の指導監督を受けておるということもおかしいのじゃないか、こういうように思うわけです。それから、今日の問題で、一番みんなが往生している建物共済の問題、さらに私は建物共済の問題が起きたのは、作物共済の問題から起きたわけなんであります。これは純然たる共済事業であります。ただ事の必要上、半ば強制設立、強制加入の点が設立自由加入の農協法とは違っておるということで、別種の法律を立てて、そうしてやってきたものでありますから、もともと農協がよろしく二枚看板をかけてやっておったものが、だんだんわかりかかってしまって、そこへ同じ事業を初めたということで、まことに今困った問題を起こしておるわけです。それからもう一つ考えますのは、農協事業というところに、明らかにその五号に、「農業の目的に供される土地の造成、改良若しくは管理又は農業水利施設の設置若しくは管理」、こういう事業が掲げられておるのであります。これはおそらくもとの産業組合法にはどうもなかったんじゃないかというような私は気がするんですが、とにかく現行法には初めから入っております。実はこういうことになっておるけれども、土地改良をやる場合には別に土地改良区というものを作ってやるのを原則としていっておるわけでございます。他のものをやれぬわけではもちろんないわけでありますが、非常にそれはもう実際は例外的になっている。もっともこれも強制加入という面がありますので、農業協同組合では不適当だと、こういうことであろうと思います。しかし、今後排水あるいは激減のでき上がってしまってからの管理というようなことを考えますると、実は今後は田畑輪換だとか、あるいは輪作だとか言われて、これはもう農作業そのものに、営農そのものに非常に密着をしてくるわけであります。このような団地においては、今年は牧草を作ろう、二年作ったら、今度はすき起こして稲を作ろう、そうすると水が多量に要る。牧草を作るときには水は要らない、こういうようなことでございままして、ほとんどもう営農そのものと非常に密着してくる。それから今度は農業協同組合の中か、厳密にいえば、それは農業協同組合ではないのかわかりませんが、農業協同組合法の中に農事組合というものができまして、農業経営つまり協業経営をやる、こういうのが出てくると、これはどうもそこに水の管理を移してやらぬと、まことにうまくいかぬのではないかというような気もいたしております。しかもそういうような面だけ部落単位の農事組合でやったらどうか、こういうようなことで非常に入り組んでおりまして、密接な連関が出てきているのじゃないかと思う。零細農業から脱して適正規模な多角経営にいく、それを補うのに協業組織をもってする。こういうことは明らかであるわけであります。先ほど安田さんからお話がありましたように、農業基本法の目的に沿って一斉に何もかも立ち上がっていく、こういうようなときになりますと、あっちの団体だ、こっちの団体と言ってはまことにわずらわしい話で、しかも事業をやれば、資金は個々の農家があっちにもこっちも出さなければならぬ。役員もあっちにもこっちにもできる。まことに不思議なもので、団体ができると、団体そのもののために他の団体と一致ができないというようなことも出てくるわけです。でありますから、私は今すぐどうするということは、だれも見解が立つわけではないのでありますから、まさにこれらの農業団体というものの全体について基本法の線に沿って整備を企ててしかるべき段階になっているのではないか。何かちらちら新聞に出たのを見ますと、金融面だけは、何か農協からやや離れるようなことも考える人もあると、そう新聞に出ている。私はこういうときですから、いろいろなことを考えて下さるのは、当然なことで、皆が考えるのはよろしいと思うのでありますが、とにもかくにも何もかも一ぺんこういう団体に関すること、組織に関することを、私はここで根本的に検討して、それぞれ必要な程度においてやっていくというようなことを考えるべき時代じゃなかろうかというように思われますが、これをもう一つ、幸い農地局長などで、やっぱりそういうことについては関係者に違いございまませんから、両方からひとつお答えを願いたいと思うのであります。
  87. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 農業団体の非常に根本に触れまする重要な問題についての御指摘でございます。現在におきます農業協同組合組織につきましては、先ほどから農協部長からお答えがなされておるわけであります。特に現在におきまする農協事業の中に農業の基盤整備等御指摘になりまして、こういう面から現在の農協においても経営のほうに密着していく可能性も今後あるんじゃないか、こういうような御指摘もあったわけであります。御承知のように農業基盤の整備ということは、この農業基本法におきまする構造改善においても一つの大きな基本になる政策でございままして、そういう面を今後構造改善をやっていく血におきまして推進しなければならぬわけでございますが、農協といたしましては、こういう面は従来からの事業として土地改良法上の基盤整備の主体たり得る資格がこの法律で定められておるわけであります。こういう面においてわれわれといたしましても、この新しくできました農事組合法人等にもそういう問題もあろうかと思いますが、農事組合法人等は、御指摘のように農業経営を、従来の農家が資本装備をする、あるいは経営の近代化を進めていく、こういう段階における協業組織あるいは協業経営の形態として考えられてきたわけであります。これがすぐ土地改良の主体になるかどうかということは、なお、今後の発展の方向を見なければならぬと思いますが、今回の法律改正においてはこうした農事組合法人等も土地改良のほうにおきまする土地改良の組合員たり得る、こういうことに相なるだろうと思うし、また正組合員である以上、農協施行の土地改良におきましても、この組合員となって土地改良整備がなされる。その上において新しい農業基盤の上に立って農事組合法人等が経営進展をはかる、こういうことになるかと存じます。いろいろ農業団体の基本的な問題についての御指摘もありましたが、今後の農業発展に即応してそういう点は十分検討、研究しなければならぬ問題であろうかと考えます。
  88. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 実は本日の御質問、これは私たちが法案作成の過程におきまして非常に議論をし、かつ苦しんだ問題をついておられるわけでありまして、しろうとだというお話もありましたが、われわれも全くこの辺は問題としておるところであります。お説は実は正直に申しますと、一々ごもっともな御疑問だと思っております。ただ、われわれは今後のいわゆる協業組織なり協業経営の促進というものを、現在の農村におけるそういう協業化の傾向実態というものを見まして、それに即応してそういう芽ばえを伸ばすために、最も簡便に法人化していく方向として農事組合法人を打ち出したのでありまして、将来の問題につきましてはお説のとおり根本的に検討し直すときに来ていると考えるわけでありまして、その辺御了承の上でわれわれの考え方を御了解願いたいと思います。
  89. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 さっき私の質問に部長が答えて、結局共同利用施設については農協農事組合法人が競合する場合が考えられる。しからば協業した際に問題が出るわけですね。ですけれども、そういうときに行政指導はどういうような理念に基づいてするのか、それとも競合してもやむを得ないんだ、こういう態度であるのか、そのところがお聞きしたいわけです。
  90. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 農協農事組合法人との事業面の競合と申しますと、一号の事業の共同利用施設を設置する事業において主たる問題が起こるだろうと思います。これにつきましてはいわゆる購販売事業と違いまして、競合と申しましてもそこで取引の範囲を取り合うといったようなことが直接起こるという問題でございませんので、ただ、そういう共同利用施設を設置する事業主体が農協であるか、それともその中の一部のためのものであるかという差はございましても、そこに先鋭な対立関係が起こると考えられないのであります。むしろこれは法理論の問題として同じような事業を違う人格でやるのはおかしいじゃないかということはあろうかと思いますが、実態的にはそれほどあつれきは起こらないと思います。
  91. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 だんだんに申し上げようと思っていたことを結論として話されちゃったわけなんであれなんですが、断片的に農協組織性格というものを検討しなくちゃいかぬじゃないかということで、目に触れる二、三の点を申し上げたいと思います。たとえば酪農振興、酪農というのは日本農業の、果樹生産と並んで大きな今後の柱だということになって奨励されてきている。それがきのう大臣の説明にもあったとおり農協関係、経済連なら経済連が一手に集荷販売をする、団体交渉もするという建前をとり、またはそれが酪農振興法なり特定地域指定の精神に合うものとしてやっているのに、伝統的に旧来の会社が指導したかどうか、そういう動機を持つ特殊酪農組合というものが中に介在してそうして共販体制がくずされるという場合がある、こういうことは困ったことだとお考えになりませんか。
  92. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 同感でございます。
  93. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それからタバコ耕作の話が出ましたね。他の農協は一人立ちでは弱いから「生産面、流通面で共同してこれに当たるという態勢にあるのに、たばこ耕作組合はてんでそういうことには無能力にされるような仕組みになっている。そうして農協には法律上も何ら体系的に関連がない、農林省とも関連がない。生産農家は、さまざまな農業経営をやっている中のたった一部分ではあるけれども、現金収入を取得するという場合にはタバコ耕作が非常に大きな問題である。他の問題との輪作の関係からいっても経営上非常に重要視すべき問題だ。それが単に専売公社等との間に監督され、また販売価格も一方的にきめられて売り渡しをする、こういうのはまことにけしからぬと思って、私も岩手県では東磐井郡の東山たばこ耕作組合というものを、断固公社に反対して自主的な耕作組合を作らせて、役職員は単協の役職員をそのまま移行する形にして、一切の購買活動農協が一元化して持つというような形にして、農民のはだ合いにぴったり合うように、このことは成功したわけです。それでもなおかつ販売の面において、あるいは耕作反別等の面において、いろいろいわゆる収納価格や何かの問題でも問題がある。だれも助けてくれる者はいない。こういうのも大きな農協組織の中の一環としてあれば、まだまだいいものになるのではないかと思うが、こういうようなことは、もう農林当局として、断固耕作農民の団結、農協中心、こういうスローガンのもとに将来処理していくということで検討したことがあるのかどうなんですか。
  94. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 農業協同組合法農業を行なう農民の共同点でありまして、そういう意味から申しまして、タバコ耕作も同じく農業であると思います。したがいまして、農協法に基づくタバコの組合を作るということが常織的には最も普通の形態であろうと私も考えるわけであります。ただ問題は専売品であるということ、あるいは歴史的な問題も関係がありまして現在のようなことになっておりまして、しかもこれはいわば政府の大きな方針に基づいてこういうことになっておるのでありまして、過去において、この問題につきまして農林と大蔵当局の間で話し合いがあったということは聞いておりますけれども、現在の段階では特別な動きはございません。
  95. 温水三郎

    ○温水三郎君 関連。今タバコの問題が出ましたが、いろいろないきさつはあるだろうけれども、私は常にタバコというものは農業であるのか、専売公社の下請事業であるのか、この点がわからないのですが、農林省の見解をお尋ねしたい。タバコは農業なりや、それとも農業でないか。
  96. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) タバコを作ることは耕作の業務、こういうふうに考えられるわけでございまして、われわれといたしましてはタバコを栽培いたしますことは農業考えております。
  97. 温水三郎

    ○温水三郎君 こういう事例がある。これは地方選挙にからむ問題なんです。タバコの収納の日に選挙の発表があった。ところが、収納する専売局の吏員が、おれの指導したように君たちは投票するかと思ったら反対に投票した、だから君たちのタバコは二等級下げる、こう言明した。翌日の収納においては非常に等級が悪かった。そこで問題が起こった。これはそのこと自体は別にそれほど取り上げるべき問題じゃないが、その根本の問題は、買う者が値段をきめるというその方式が、これは私は前近代的なあり方じゃないかと思うのです。タバコは専売だから、これを買手と売手との協議によってきめるということはできないとしても、公平なる第三者、すなわち農林省がこの等級をきめるということが私はタバコ耕作が農業であるならば、そうすべきだと思う。そのことを大蔵省と農林省との力関係において、こういう明白な事理が実行されないということは遺憾に思う。農林省としてはかようなタバコが農業であるか、かような点について努力される御意思があるかないか。
  98. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 直接、私所管いたしておりませんが、このタバコの耕作の問題は振興局の所管かと存じます。そういった農民生産いたして、生産物についての販売、交易条件の改善については農林省としても重要な関心がある問題と存ずるわけでございまして、そういう点については、よく意見の点を所管のほうにお伝えして、改善に努めるようにいたしたいと、こういうふうに考えます。
  99. 藤野繁雄

    藤野繁雄君 関連。長崎県の農協大会では、タバコの問題は、作るまでは農林省所管にすべきであると決定して、政府に要望しておるはずであるのであります。また、今後の農業構造の改善には、農地をいかに利用するかということを研究せられなければいけない。その農地をいかに利用するかという場合において、タバコのみは大蔵省の管轄であって、農林省の管轄外に置くということは、将来における農業構造改善、農業基本法制定の本質にもとると思うのでありますが、この点、そういうふうに農業基本法の精神にもとるというお考えがありませんか。
  100. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) タバコの栽培段階におきまして、全然農林省がタッチしていない、こういうような御指摘のようでございますが、この栽培段階におきまする問題といたししまして、大蔵省も非常に新しい技術の導入なり新品種の普及ということに努力いたしておると思いますが、やはり農業経営の一環として、タバコを栽培しておるわけでございまして、タバコについては御承知のように、特に連作をきらう、こういったような問題もございましょうし、また桑とタバコとくっつけて栽培すると養蚕のほうにも影響がある。こういったようないろいろな農業経営、あるいは農村における農業のあり方の中においても非常に問題があるわけでございまして、そういう面において、農林省といたしましては、かねてから耕作農民についての指導をいたしておりましょうし、また今後もそういう面においてタバコ耕作農民の技術の向上なりあるいは経営の向上に努力していきたい。こういうような考えは変わらないと思います。
  101. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 農地局長の御見解、非常にありがたいと思うのです。ありがたいと思うが、ここで口から出まかせなことだけをおっしゃってもらっては困る。このタバコ耕作組合法は、数年前に大蔵委員会の審議にかかって新しい耕作組合を作ったときに、われわれがんばって適正な所得を得せしめる目的をもって価格を決定しなければならないと、法案を修正したにもかかわらず、その後一向この法の趣旨が生かされた収納価格が決定になったことはないのです。まして、今第三者的に云々ということそのとおりだというお話ですが、これはもう専売公社の独占的な立場を堅持して、タバコの鑑別なり標本の決定なり、これは何らタバコ耕作農民の意思を聞かない、反映させないのですよ、一方的なんです。専売当局の主観によってそのつどつど鑑別なり標本がきめられ、そうして等級が決定になる、その際に農林当局であれ、あるいは県の農産課であれ、農協であれ、一切タッチできないのですよ、法律上の建前は。それをあなたが今おっしゃるような御答弁なので、まことにありがたい、ぜひこのことは御言明になったとおり実行されていないなら、大蔵当局、専売公社との間に話し合いを進められて、一段階飛躍していただきたい。これは言明したことを取り消してもらっては困る。
  102. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 所管でございませんので、十分現状を把握しないで申し上げた点もあろうかと存じまするが、農民たる、あるいは農業を所管いたしまする農林省といたしまして、御指摘の点十分心得まして各所管のほうにもよくお伝えしておきたいと、こう思います。
  103. 田中啓一

    ○田中啓一君 関連。タバコにつきまして私はたいへんいい線が出て非常に一進歩だと思いまして喜んでおるものでございますが、実は似たようなものがもう二つございます。それは大蔵省には関連しないで通産省に関連いたしますが、それは綿と羊毛でございます。これはどうも農産物にあらずというような両省の取りきめといいますか、設置法等の所管事項の書き方というか、そういうふうになっておるのじゃないかと思われます。これも所管はおそらく振興局でございましょうから、深く立ち入って申し上げるつもりはございませんが、やはり需要のある農産物を選択的に拡大をしていくと、生産可能であれば、こういうことになるわけでございますから、そして農産物に違いないのですね、これはだれが考えたってそうだと思うのです。おそらくあれは輸出入等に関する点について農林省はもう何らの発言はしないで、通産省にまかせておるという取りきめが事の始まりだと思うのでありますが、それがさらに根本へさかのぼって農産物でない、農林物資でないと、こういう解釈になってしまって、農林省はそんなもののことは、もうたとえできようができまいがかまわぬのだと、こういうふうな気分に今日なってきておるのじゃないかという気がしてならないわけです。私は決して今すぐ大いに生産ができると申し上げるわけではありませんが、やはりそういう点はただしておいて態勢を立てておかないと、私は、いかぬのじゃないかというように思いますので、御注意までに申し上げるので、別段両方とも所管局部長でないですから、お答えは下さってもけっこうですし、なくてもけっこうです。
  104. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それで少し筋道を戻すと、そういう二、三例示した点からいいまして、特殊農協と申しますか、専門農協と申しますか、酪農とか、畜産とか、あるいは果樹、養蚕、まあ農協の範囲には入りませんが、タバコ、こういう既存のそういう組織は、農協からだんだん離れて、独立心を持って距離をおこうおこうとしているという傾向にあることをお認めになりますか。養蚕のほうの組合は、製糸業とか、かなり生糸市場なり、そのほうだけ向いて、そのほうとの関係でだけ指導が加えられていくような面があるようです。酪農組合は、作目お話したような、畜産組合は、旧博労と申しますか、そういうふうな関係の権益を保持するというような向きがあって、農協段階のそれとは別個の歩き方をします。タバコはむろんのこと、タバコ耕作の中央会なんか専売公社のほうだけ向いておる、農民のほうなんかちっとも向かぬ、まして農協なんというものとは別個、別建な考え方を持っておる、一つそういう専門農協というようなものが出てくると、総合農協的なものの指導を受けるものが違ってくるそして農民の一体化ということにはそむく考え方というものがだんだん起こってくる、そういうふうにはお考えになりませんか。自分の利害にだけ直接からんでものを見てくる、そういう傾向が出てくるということをお認めになりませんか。
  105. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 従来のいわゆる専門農協が取り扱う物資が特定しておりまして、しかもまた関係しております加工業者等も払底しておるというような関係で、そういう加工業者と特殊の関係を持つためいわば非農協的な動きもあるという御指摘は、事実そういうことがあると思います。ただそういう情勢が進んでおるのではないかという御意見でございましたけれども、これはむしろ昔の、いわゆる特約組合的な専門農協という形態が現段階ではだんだん是正されてきておるということじゃないかと私は思っております。また、そうでなければいけないと思っております。一面——御質問趣旨よくわからない点あったわけですが、一面その専門農協が総合農協と対立しているということ、これはまた事実でありまして、この面につきましては、確かに最近専門農協と総合農協の間のあつれきと申しますか、そういったことが多くなってきておるという傾向はあると思います。これはいわゆる成長産業である、成長作物である果樹、畜産といったようなものの発展に伴って、従前の総合農協的行き方に不満な人たちが一般に専門農協を作っておるわけです。そこで、単に事業面の争いだけではなくて、感情面の問題もいろいろあるかと思うわけでございます。われわれといたしましては、現状の農協のあり方としまして、従前は何といいましても総合農協が主流的な存在であったことは否定できないと思います。今後はいかにすべきかということにつきましては、画一的な考え方ではなくて、その土地の事情、あるいは生産の状況そういったものも考え合わせまして、実情に即しました形態での農協の発達というものを期待しておるわけであります。一律的に総合農協であるべきとか、あるいは専門農協はいけないとかいうふうな指導をする考えはございません。
  106. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 しかし、第一線にある農協が、現場において個々ばらばらに複数で専門的な農協があって、一個の農家経営者がそれぞれの一切のものに加盟し、これが実費その他負担をしている。そしてそれが総合されなければ自分の農業経営が成り立たないというような形は望ましい形ですか。
  107. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 現在厚田農協組織している人たちの色分けを見ますと、大体農業経営の形態としては非常に専門化した人たちが多いのではないかと思います。おっしゃるような、いろいろなものをあれもこれもと作っておるような従前の経常形態の人の立場から見ますと、おそらくこれは総合農協のような形態がむしろ適当であるということも言えるかと思います。しかし、今後の農業生産の形態というものは相当程度、そういう専門化、専業化という方向に強く進んでいくのではないかと、こう考えられるわけであります。その場合に、はたして今の総合農協がいいのか、専門農協がいいのかということは検討を要する問題であると思います。むしろその地帯の農業経営形態がそういうふうに専門化していきますと、実は具体的には専門農協、総合農協というような議論はなくなるわけであります。その総合農協における主たる事業がたとえば果樹であるということになってしまうとなりますれば、そういう議論はおよそ意味のないことでありまして、そういう形態も考えられるわけでありまして、あまりこれにこだわっての議論はかえって問題を起こす原因ともなろうかと考えているわけであります。
  108. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 私は生産者自体の立場を中心としてものを考えている。それで指導的な役割をになう上層のところは、ある場合は専門農協であってもいいが、下りてくる現場は単一のもので受け取る、こういう考え方はそれなら成り立ちますか。
  109. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 御質問趣旨がちょっとわかりかねるのでありますけれども、単一というのはどういう単位における単一でございますか。
  110. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 単一というのは、一個の農協が、末端農協が、養蚕部門もタバコ部分畜産の部門も一切にない手となる。しかし、その指導的な上層機関は分化されておる、こういうあり方はどうかというものです。
  111. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 農協組織論については、これはまことにたくさんの考え方があるわけでありまして、おっしゃるような考え方もたしかに一つのあり方だと思っております。
  112. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それで、私はそのことを聞こうとして質問しているのではなかったのですが、今度の農事実行組合、会社は別ですが、農協組合法人は、横断的な全国的な任意の組織を持つことができますか。
  113. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 任意の組織でございますからこれは可能でございます。
  114. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 私のこれは空想になるかしらぬのですが、横断的な親組合たる農協とは別個に、全国的な一つ生産命日の系列的全国的な組織を持つ、そして市場出荷等については別建の卸販売の会社を持つ、そういうことで全国的な共販の姿勢をとってくる、農協とは離れてこういうことも許されますか。
  115. 酒折武弘

    ○説明輿(酒折武弘君) 現在の法案から申しますと、任意的な形態でもってそういうことをすることは可能でございます。しかし、それを連合会というふうな法人格を持ったものとしてはでき得ないことになっております。
  116. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 任意の団体であっても持ち得る可能性はお考えになりませんか。そういう連合組織を、全県的なものを持てば全国的なものを持つ、そういう組織化されていくというお考えは全然予想されませんか。
  117. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 理論的にはそういうこともあり得るかと思います。しかし、現実の事態、近い将来においてそういうことが起こるかということになりますと、これは先のことでございまして的確には申し上げられませんけれども、そう近い将来にはそういう事態にはならないと思います。
  118. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それで農協組合員たる農協に対する関心、意識と、有限でも何でもいいようでございますが、身銭を切って、そして責任を分かち合う協業の組織に対する関心と意識とではずいぶん違うと思うのですね。自分の手近かな協業組織が一番大事なものになってくると思うのですね。それで、それがかりに連合組織を持つというような形になってお互いが経営の研究それから発展して共販、こういうような問題なり市況調査その他指導面をどこかに持ってもらうというための一つの横断的な連合組織が出てくるとすれば、農協というものはまた専門農協なりなんなりとの間に感情的なものや利害が一致しない問題が起こる以上にそういうものが起こってくる可能性があるように思う。けれども、その前提としてはそんなことはないというのですから、これ以上申し上げませんが、そういう傾向を、大前提になる部分が肯定されるような状況になってくると起こり得るということもむげにしてはできないと思うのですが、どうでしょう。
  119. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) これは今後の事態の推移にもよるかと思います。と申しますのは、特に農業協同組合というものが、生産農民のそういう動きに対してどう対応するか、対応して十分なサービスができ、生産者の心理をつかみ得るかいなかということが可能なポイントだと思います。だから、この点がどうなるかによって事態は非常に変わるわけでありまして、それともう一つは、農事組合法人のごときものがどの程度できるかということ、この二つの事情がどうなるかによって相当事態が変わるかと思います。
  120. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 私は基本法の建前その他から一番前にお尋ねしたとおり、協業というものが自立農家以外にはほとんど大きなものとして全国的に多数作られていくという方向でものを考えて今質問しておるわけなんであります。  それでもう一つ、まあ私だけで時間をとってはいけませんから、やめろといえばやめますが、もう一つお尋ねしたいことは、午前中、森委員がお尋ねになった金融の問題ですね。これはあれですか、系統の金を引っぱってくるにもせよ何にもせよ、農協自身が——親組合保証するのですか。自分もそれは個人的に債務を負担するというようなこともあるが、農協保証しますか。外からも上からも持ってくる、こういうのですか、中金や何かから持ってくる金について……。
  121. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) たとえば信連から借りた金を生産法人がまた貸しするというような場合ですね、その単協がその債務を保証するという場合はあり得るかと思います。しかし、けさの議論の問題点はその点ではなくして、農事組合法人組合員無限責任を持つかどうかということですね。
  122. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 わかっています。それで、この法人建前としては、市中銀行、個人等横から金を借りて経営することを主体としますか、系統の金を借りて仕事をするということを主体に考えているのですか。
  123. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 法律上はどこから金を借りてはいけないとか、借りるべきであるとかということは規定しておりません。ただ、この農事組合法人には、農協の正組合資格を与えているというふうな点におきまして、政府としては、できるだけつながる農協から、金を借りる場合にはそこから金を借りてもらいたいというつもりでおります。
  124. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そこで私は七、八人が、全財産を投入するような姿勢で法人組織を作ってやるのでない、一部出資運営し、主たるものは借入金で運営をするのだ、こういうような態勢にあるものに、市中銀行その他個人がよう仕事ができるだけの金は出さないと思います。それは任意の共同化されている場合には特にひどかった実例がありますが、いかに形態は法人だというようなことになっても、その出資工合あるいは資産の状況をいろいろ見るでしょうから、十分な手当は市中銀行その他ではしないと思うのですね。結局系統の金を使う、使わせてもらうということがこの組合のうまみのあるところだろうと思うのです、共同者の立場から見れば。ところが、森委員が午前中にお尋ねになったときには、農協は担保があろうがなかろうが、なるべく貸すように、その運営の状況を見て貸すように指導するというような御発言があったようですが、単協自身が自分の内部の預貯金を貸すというような問題は、あるいはその地域内におるお互いの仲間意識であるいは貸す場合があるかもしれない、あるいはがんこで、その危険をおそれて貸さない場合があるかもしれない。そこは一応カッコの中に置いて、信連等の金を持ってきて、さあ貸すということになった場合に、農協責任を持たぬのに、ろくな担保もない、資産もないというところに信連が金を出すかというと、やはりめんどうでないかという感じがしますね。どういう指導をするのか知らぬが、まして単協が保証するのだというようなことになったら、単協役員はその危険負担をおそれて、これはなかなかそういう世話をすることを渋るのでないかと思うのですね、ということは予想されませんか。
  125. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 現在御承知のとおり、農協あるいは信連におきまして、相当資金がダブついているわけであります。それで外部からの批判としまして、農協なり信連はちっとも組合員に対して金を貸すことの努力をしないというのです。運用してもうけることばかり考えるのじゃないかというような御批判も実はあるわけであります。これは正しい御批判であると同時に、他面から申しますと、非常に貸したくてしようがなく、かつその努力農協も、信連もしているわけでありますけれども、貸す相手方に信用がない、あるいはその貸す対象たる事業についての成功の見込みがない、そういうようなことが原因で貸そうにも貸せないというようなケースも多いわけでございます。この問題はまことにむずかしいのでございますけれども、結局一面から農協はいわゆる相互金融とか、あるいは指導金融とかという、農協の理念に徹しまして、表面からの積極的な努力をする、また借りるほうも、ただむやみに農協だから金を貸すというわけにいかないので、それには相当な計画も持たなければならない、将来計画、かつ、できるだけの自己資金を持つということで信用を得なければならない。両々相待ってこの問題を解決しなければならないので、おっしゃるように金融面における問題は非常に多いわけでありますけれども、かといいましてこの問題は当事者のまず努力が大事でありまして、われわれとしてはできるだけのてこ入ればいたしますが、そういう面における関係者の努力が必要なわけでございます。
  126. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 私はその単協が努力するけれども、農林省は指導し、そういうふうになることを期待したいと言っております。私は何か話がさか立ちしているのじゃないかと思うのです。失礼な言い分ですけれども、組織が先か、金が先かということです。私は金の手当は十分してやるんだという態勢の中で組織が広がると思うのです。確かに森委員お話になったとおり、協業についての困難な点は技術の問題や、あるいは郷土意識の問題や、いろいろあるにしても、そういうことに現在問題があるのじゃないのです。金なんです、資金なんです。資金さえ流れてくるということになったら、この組織には必ず飛びつくと思うのです。ところが、組織が先で、組織された場合になるべく金を貸すようにということで、そうして金の貸し借りの問題は、従前のような体系である中では、単協はようそのめんどうを——組織化されたものに万べんなく見ていくというようなことは困難と申しますか、やらぬのではないかと思うのです。それを期待するというようなことでなく、もっと道をつけるという工夫がないものですか。
  127. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) これは御承知の近代化資金によりましての、この近代化資金の融資対象として、もちろん農事組合法人は入っております。しかも融資の限度等におきましては、個人の場合よりも高い額に期待をする、これによりまして、いわゆる純粋な系統資金でまかなえない部分は、この近代化資金によってまかなってもらいたい。そういう考えでございます。
  128. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 では近代化資金なら、割合簡単に貸してくれますか。
  129. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 簡単と申しましても、これは程度問題でございまして、いわゆる制度融資でございまして、利子補給もありますれば、また債務保証協会による債務保証もあるわけであります。したがって、そういった面のいろいろな手続は、これは最小限度はやむを得ないと思います。
  130. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 どうも私は、それは近代化資金のことも、この間御説明が他にあって知っておりますが、なかなか金を出したがらない。あなたもおっしゃったように、信連であれ何であれ、政府関係の窓口機関であれ、市中銀行並みにいろいろやかましい。貸すことについて非常に規制されるという向きがあるようですが、そうたんたんといくのでしょうか。
  131. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 最近の農協なり信連の情勢を見ますと、融資促進という点におきましては、相当意欲を燃やしておるというふうに私理解しております。ただ、お話のようなケースも、実はときどきわれわれの耳にも入るわけでありまして、特に借り手側からなかなか貸してくれないというふうなお話をときどき聞くわけでありますが、これも正直に申しますと、なかなか借り手側にはやはり借り手側としての勝手もあるわけでありまして、一がいに農協というものは金を貸さぬことをもって目的としているというようなことではないわけでございます。しかしながら、農協は一面から申しますと、安全経営ということを非常に重要視しておりまして、その意味から申しますと、自分の預かった金は信連に預けるのが一番いい、一番安全であるというようなことから、安易に流れるという傾向もなきにしもあらずでありまして、この点は十分に是正していきたいと考えております。
  132. 森八三一

    ○森八三一君 関連。今の問題。これはまた午前中の問題の蒸し返しになるのですが、近代化資金は、確かに資金は出るのですよ。農業協同組合も最近においては、相当地方の産業を開発するとか、農業基本法の線に沿って融資等も活発にやっていきたいという意欲に燃えていることはお話のとおりなんですが、いかに意欲に燃えましても、金融という仕事は、今のお話のとおり、安全な見通しがなければ、これはできるものじゃないのです。ところが、近代化資金のほうは、市町村なり県庁なり、そっちのほうで一応きめてくるでしょう、大体のところは。そうすると、奨励する側の人は、何も責任を持ちませんよ。そういう感覚で一応きめたその裏づけとして、保証があるとか利子の補給があるとか、これはそんなものをたよって——利子の補給のほうは別ですけれども、そんな保証をたよって、いいかげんな貸付をするというわけにはいかぬと思うのです。おそらくそんな御指導はなさらぬと思うのです。そうすると、そこで問題が起きるのです。小笠原委員おっしゃるとおり、組織はできた、その組織を動かしていくために、何が肝心かなめの要諦かといえば金だ、その金は、別のほうで、奨励するほうがきめてくるのだ。それを農協に貸せと、こうくると、農協のほうでは、安全経営、堅実な経営という一線がある。そこで実はなかなか貸しにくいという問題が起きるのです。そうすると今度は、指導のほうでは、金利の補給があるのじゃないか、保証があるじゃないか、たいてい農協の連中踏み切らなければいかぬと、これまた圧力がかかってくる。   〔委員長退席、理事櫻井志郎君着   席〕 もちろんその事業は、そんな乱暴な事業じゃありません。県なら県で査定なさるのですから、見通しは絶無とは申しませんけれども、しかし、心配がないわけじゃない。そこで農協と、農協下部機構である農事組合との間に、摩擦が起きてくるという問題が起きるのですよ。そうしてその奨励なさった方は、これは奨励のしっぱなしで、何年かたてば御栄転になってしまうのだから、その資金回収のときになって、どうなろうとこうなろうとちっとも責任はない、やりっぱなしだ、過去にもそういう例はたくさんあるのです。そこで私が言うように、そういう場合に心配のない組織というものを持つべきじゃないですか。そのくらいまでは考えたらいいのじゃないか。それを考えませんというと、個人保証だとか担保だとか、そのときに特別な手続をしなければならない。だから、保証責任程度は、あなたのところは原則的に考えるべきじゃないか。それを考えずに進んでいらっしゃるところに、私は非常に問題が残っておると思うのです。だから、奨励する側が査定するのでしょう。そうして保証をやると、こうおっしゃるが、ほんとう責任をかぶるのは農協なんです。なかなかそれはうまくいかぬと思うのです。それがうまくいくのには、全額県なら県で査定した額を貸した場合には、その全額、もし不幸な場合にはめんどうを見てやる、こういう踏み切った制度があるならば、それはいいです。責任を官庁が持つというならいいが、責任はあくまで農協にくる。指導はするが、指導した人は何年か先にはおらぬ、それが現実です。そんな危険なところへは持っていけぬでしょう。そこをどう解決するかというのが問題だ。その問題については、組織のことについて、現実の形の信用ということでなしに、無形の信用というものも考えたらどうだ、それが現実に即することじゃないか、これが私の主張しておることなんです。これは何べんやってみても同じなんですが、それを考えずに生みっぱなしで、その子供が育とうが育つまいが、その乳を飲ました者が、子供がどうなろうとこうなろうと責任ないというのでは、あまりに無責任だ、こう思うのです。その辺もう一ぺんひとつお願いします。
  133. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) おっしゃるとおり農協系統金融におきましては、無形の信用というものを重視しなければならぬということにつきましては、私も全く同感でございます。そういう意味におきまして、ただ外形的な信用力だけにたよって融資の可否を決定するということじゃなくて、さらに農事組合法人組合員の熱意なり、その経営の計画なり、そういった面も見た上で融資をするということが、これが指導金融の真髄であると思うわけです。その点までは全く私同感でございますけれども、必ずしも、しかるがゆえに無限責任でなければ、その無形の信用は得られないということではないのじゃないか。考え方によっては、有限責任におきまして、一体どの程度その人がその法人に対して熱意を傾けておるかということは、有限責任の形においてつかみ得ないことはないと考えるわけであります。また、無限責任にした場合におきましても、経済的にどの程度の担保力があるかということになると、現在の農家の実情から見ますと、それによっての経済的プラスもさほど期待し得るものはないのじゃないかというふうなことも考えられるわけであります。むしろ将来のこういう法人経営の方向としては、法人形態というものを有限責任のワク内において、できるだけしっかりした方向に持っていくということにしていくべきじゃないか、そういうふうに考えておるのであります。
  134. 森八三一

    ○森八三一君 まあ、あまり蒸し返していけませんが、それはその希望としてはけっこうですよ。けっこうですが、希望と現実とは非常に違っておる。その現実を離れて、ただ理想論だけを追っておってもだめじゃないか、それならば農家は非常に経済的に弱小ですから、無限責任にいたしましても、それが非常な大きな担保力を持つとは思いません。けれども、農家の心理としては、自分の全財産が提供されておるのだということになった場合の熱意というものはこれは違いますよ。それはそんなことは、これは農民心理からいって非常なものなんです。けれども、出資だけやればこれは非常に身軽に感ずるということは当然です。その辺の心理を上手に使っていくというところに、この組織の堅実な発展を期待ができるのじゃないか。こう思うのであって、これはもう何べんやりましても平行線ですからいたしませんが、そういう感覚で御指導なさるというと、私は小笠原委員の御心配になったような、非常に問題が残る。残ったときに一体どうするか、そのときには上げも下げもならぬ状態が起きるということを感ずるのですよ。組織はどんどん作らしていくのでしょう、これはふやさなければならないというのですから、どんどん奨励していく。組織を作ればすぐ金を借りて事業はできるのだ、意欲に燃えますよ。さてやったが金は出てこない、どうする、そうすると、今度は行政的に圧力が加わって貸してやれ、こうなります。当然そういうことになりますよ。組織は作ったが、それは開店休業ほうりっぱなしにはできませんよ。それは作らした指導者の責任上も、その組織が動いていくようにしなければならない、そこに無理がかかってくる、そういう問題で農事組合農協との間に非常な摩擦が起きますよ、これは。今からはっきり申し上げていいと思う。そんな安易なものじゃないと思う。まあ、これ以上申し上げません。
  135. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それで、金融の問題については、まだ議論があるところですけれども、話を変えます。この法人がどんどんできていく、助長される、こういう際に単協の指導の強化の問題です。これは農協指導しなくちゃいかぬと思うのですね。それで技術指導経営指導、このためにスタッフを強化しなくちゃいかぬという問題が起こってくると思う。あるいは上部団体はむろんそういうことになると思う。それでその人材はそれほどたくさんあるのですか。
  136. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 現在の農協におきましてのそういう技術指導員は、総合作業系統で約一万人、それから専門作業系統で約五千人おります。で、はなはだこれは農協の数から考えまして少ないわけでありまして、今後これをどうふやしていくかということが、農協における大きな課題であります。われわれの現在やっております合併ということも、合併によってそういう技術指導員、専門的技術指導員が置けるようになるということも大きな合併促進のねらいでございます。ただ、実はわれわれ非常に問題にしている点は、はたして増員するとしまして、それらの指導員の確保はどうしてやるか、またその資質の向上はどうしてやるかということが非常に問題になってくると思います。この点につきましては、最近も非常に気にかかる問題でございますので、振興局とも連携いたしまして、その点は、技術普及の面は振興局の所管でございますので、振興局にも十分研究してもらいたいということを依頼しております。が、農協独自の事業といたしましても、中央会等の補助金を通しまして、できるだけの経営指導なり、技術指導の人員及び資質の向上についての確保をはかって参りたい。
  137. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 単協はですね、いまだに不振農協といわれ、あるいは地域生産関係によっては全く弱体化しているところもあるわけです。また、いいところもあるわけですから、そこで技術指導員をかかえるということ、この費用の捻出の問題、あなたは先ほど指導農協としてだね、この農協があるし、今後もそうであるという一面をお話になりましたが、この法人地域に、たくさん単協内にできますと、どうしてもこれが技術指導のために単協にスタッフが強化されていなければならぬと思うのです。ところが、現在単協が指導農協としての役割を果たしてているかどうかという問題、それは経費面で非常に困難をしている農協が多いのではないかと思うのです。購買、販売の手数料——われわれ東北の地帯でいえば、米の単作で相当大きな出荷のできるところは、どんどん倉庫を作って倉庫料で食っているというだけで、なかなかいい農協だといわれているのです。それのために統制撤廃反対と農協がいっているものとは思いませんが、その手数料なり倉庫料というものが主たる収入であるという農協が強い農協だといわれている向きがあるのです。それ以外東北でりっぱな経営をしておる農協だといわれるのはちょっとないのではないか、そういう中で法人組合がみずからも売ることができる、農協に委託すればある程度の手数料が取られる、それよりは直接市場へ出すほうがいいというような向きがあったりすれば、その手数料収入なんていうものは大きく期待できない。それで、指導員の確保という問題については、特別に具体的な対策があるのですか。
  138. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 農協指導員についての政府の補助金といったようなものは現在考えておりません。やはりこれは農協の自力でもってやってもらいたい。ただ、そのためには農協の経済的基盤も固めなければならぬ、そういう点から一つ政府として合併の促進もやっているし、また整備特別措置法に基づく農協再建整備もやっている。そういう基盤的な面における助成をはかりながら農協に力をつけまして、農協みずからがそういうものを持ち得られるようにしたい、そう考えており、一面また、振興局のほうの復旧事業といったような面からそれらの農協技術員に対しての技術の向上といったようなことについての促進をはかって参りたい。
  139. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 いろいろ、お聞きするとうまくいくような気がするわけですが、しかし、現実に農協が合併によって総体的な収入がふえるにしても組合員数も一方ふえることですから、あんまりそういうことは当てにならない。農協の収入をふやさなくちゃいかぬ、収益がなくちゃいかぬという問題になると思う。しかし、今日農協収益というものはどうして伸ばされていくのか、そのことでどうして農協を強化していくのか、この点に私は他の畜産物等を生産する地帯のほうを知らぬのですから一般的には言えないのですが、ほんとう農協が収益を上げ、それをフルに活用して指導農協としての責めを果たし得るような、そういうこうやればこうよくなるのだというものがありますか。たとえば販売面で言うても、先ほど言うように、米なら米だけに依存しておる。畑作地ではたいしたものもない。購買の面においては、それは一般商店、問屋筋からいろいろ農村のほうに侵入してくる、農協の購買活動が伸びることも容易でない、また伸ばすにしても、全購連系統の品物を持てば各段階で手数料が取られている。これは私は知らぬのですよ。知らぬのですが、農協関係専門家幹部でさえも一般商品の中間マージン以上に農協関係の系統のマージンのほうが何段階にでも取られる、品物が高過ぎるということを内部で言う人があるので、私は不忠義なことだな、そんなことはあるはずがないのだがと思っておるのですが、そういう状況は事実なようですね。そういう中でどうして農協の収人をはかっていくのかという点で、一般的にあなたのぼうではどんなことをお考えになっているのですか。
  140. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 農協の収入の確保という御質問でございますが、まず単協段階の問題として申し上げますと、当然これは取り扱い量の増大ということによる収入の増大ということが基本的な方向であります。取り扱い量の増大ということはどうしてやれるかということになりますと、これはやはり農協組合員から信頼されるということが第一だろうと思います。たとえば現在われわれが促進しております合併ということの効果の一つといたしまして、貯金とか、あるいは購販売事業の量の増加ということが非常に端的に現われてくるわけです。増加というのは単に三組合が合併したら従前の三つ分の農協の取り扱い量が合計量だというのではなくて、それ以上に伸びておるわけです。それは要するに農協信用ができて、そこで従前たとえば農協に預けなかった、他の市中銀行に預けておった金も、ああいうりっぱな農協になるならば預けましょうということで、よけい預けてくるというようなことがあるはずです。そういうふうに、事業量の増大が行なわれて初めて農協の収入が確保できる。またおっしゃるように、それに基づいて指導助長が強化できるということになる。  それからもう一点、三段階制の結果各段階で手数料を取られて一般の商品よりもよけいな手数料を払わなければならないということも確かにあるわけであります。そこで、実は今の三段階制ではたして合理的なものであるか、必要なものであるかというようなことは当然検討されなければならないことだと思います.ただ申し上げたいことは、かりに現在の三段階制を前提とした場合におきまして、もちろん各段階において取る手数料は必要最小限度でなければならない。なければならないが、その結果として場合によっては商社系統の手数料よりも高いという場合もそれは起こるかもしれない。しかし、これは農協全体として一体この農協活動によってどういうプラスを得るかということのプラス、マイナスは、これははなはだむずかしい問題でありまして、きわめて計算困難な問題でございます。そういう意味におきまして、個別ケースにおいて、たまたまそういうことが起きたからといって、それだけをもって農協活動自体の価値を即断するわけにはいかない。これはもう少し広い立場から考えていかなければいけないということがあろうかと思います。しかしながら、現在の農協が非常に手数料が農民にとって負担であるということは、これは否定のできない事実でありまして、その点の合理化につきましては最善の努力をしなければならないと思います。
  141. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 長々とあっちへ行ったりこっちへ行ったりお話をお伺したわけですが、どうしても農業基本法に基づいて自立農家経営あるいは協業経営、こういう柱を立てて、日本の農業を改造していくという方向で進んでいく限り、この協業が奨励されるのだという前提に立つ限り、私はその親である農協自体を強化していく、あるいは性格をいろいろプラスするものを持たせていくというような点も合わせ考える必要があるのでないか、占領政策で天下りだったとか、過去のいろいろな伝統的なものがあって今日に至ったのだという、これらの農協、これをもっと前向きに検討していって、そして平仄が合うようにし、そしてこの農業改善の主役として農協活動が、運動が行なわれるのです、行なわせるのだ、こういう腰を抱いた考え方を国として持ってもらわなければ、これはなかなか容易でないというふうに考えておる。私はそれが言いたくて、まあ回り回ってきたのですが、何もこういう一部農地を取得させるがためのことこまかい一部改正というふうなことでなくて、農業改善、農業構造改善、このことのために農協はどうあるべきかということを根本的に考えていただきたいというふうに思うのですが、御意見を承りたいと思います。しかも昨日河野大臣は農協信用活動ですか、それも取り上げる、それから中金のほうのものですか知らぬが、合わして農業関係の金融機関を独立させるのだという方向のお話もありましたが、そういうふうに今農協が持っているものを、これでは弱体だから、もっとよくしてやるよくしてやるというので裸にしていくような状況というものはどうも私は納得できない。そして河野さんの大臣になるたびに公団だの公社だの何か農協から手足をもぎ取って、商業的なと申しますか、一般資本主義的な傾向での運営のほうに主要な部分を持っていこうとする。どうも私はこの点は全くしろうとでわからぬのですけれども、おかしなことだ、けしからぬことだなと思っている。かえって農協にさまざまなものを引き寄せてまで強化していく、前向きにこれを押し上げていくということでない。どうも農協はしちめんどうくさいことをいう、米といえば反対だ、何といえばあれだという、こうおっしゃる。米に反対したからといって、何とかという金がすぱっと——何千万円か幾らか岩手県あたりにいく金が吹っとんでしまう、これはもう河野さんのおかげだといって怒っておるのです。そんなことでは、愛情があるらしく見せかけて愛情がない。農民のためにならない。全く資本主義のこういう競争の中へ裸で農民をほうり出すようなものだ。そんなむちゃが一方にあるように思われる。ですから、私は今の農協というもののあり方として、前向きに強化するという方向でやはりあわせ考えていくことにしてやってもらいたいと、思うのですが、これに対する所見を承わりたいし、それから農業協同組合の中から、金融事業ですか、信用事業を取りはずすということについて、ほんとうに協同組合を推進してきたあなたたちはこれに賛同しておるのかどうか、この際承っておきたい。
  142. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 今後ますます農協を強化しなければならないということは私も全く同意見でございます。ただ問題は、ほんとう意味農民のための農協というものはいかにあるべきかということにつきまして、これはいろいろ意見の分かれる面があろうかと思います。われわれといたしましては、事務当局といたしまして、大臣の大所高所的な立場からの大方向に即しまして、できるだけ現状に合った円満な方向での農協の改善強化策をはかっていきたい、こう考えております。
  143. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それで、信用事業を取り上げるということについてはどうお考えになるか。
  144. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) これはまだわれわれといたしましても具体的に検討してみないとわかりません。おそらく今後大臣からいろいろな御下命を受けまして検討しなければならぬことだろうと思いますが、この段階におきましては、特に事務当局にとっては何とも申し上げられない問題かと思います。
  145. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そう聞くと、また私、これは変なことだなと思うのですよ。農協が主体的な役割をになってこの法人生産活動を援助していくということになるわけですが、その援助の中心は金です。金です。そういうものを取りはずすということがおかしいし、農協活動そのものから金融面をとって、それが農協というものはさまざま中身が違うというても、それで一般的に、過去でも、現在でも、将来でも、それがいわゆる農民のための農協なんだ、こういうことがいえるのか。その原則論に立って私はあなたに、あなたは専門家ですからお尋ねするのです。ただ政策的に、あるいは恣意に取ったりくっつけたり、そんなものでなくて、この信用活動農協から取り除いて、さてそれでは農協といえるか、こういう形で私はあなたにお聞きしたのです。
  146. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 信用事業は、特に単協段階におきまして経営の維持のための非常に重要な基盤をなしておるということは事実だと思います。しかしながら、この際問題として考えなければならないことは、系統金融をもっと円滑化して、農民生産所要資金をどういうふうに貸していくか、そのためにはどういう点を改善しなければならないかという観点から物事を考えますと、ここにまたいろいろな考え方があろうかと思います。大臣の考え方にいたしましても、必ずしも具体的なものでは現在の段階でございませんから、はっきりとは申し上げられませんけれども、そういう面について農業金融をもっと円滑化したいとう観点からいろいろ改善案を考えておるわけでありまして、私はそう理解しておるわけでありまして、そういう観点から検討して参りたいと思っておるわけであります。
  147. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 まあ、わかったといっておきましょう。しかし、何かこの問題になると、専門家がもたもたと御答弁になることは不思議でならない。それは農協の外においてはならぬ、円滑なる金融の操作が行なわれるということのために、細い現在のパイプを太くするのを、ある段階のところでよそから注入して太くするならする、あるいはパイプが詰まっているなら、その詰まっているパイプを掃除すると、いろいろあるでしょうが、それは農協内部の組織運営の問題として考えられることであって、だから、これが外へはずされていく、そうしてまたこれ自身も、直接政府そのものにコントロールされるようなことはあってはならない。もしもそういうふうに資金を国家がコントロールしようというなら、われわれ大いに好むところ、一切の資金を国家計画に基づいてコントロールし、調整してもらいたい、そうなるなら農民は助かる。そうでない限り、そういう政府関係の機関だけが農民の金融を上からあずかって押えていくということについては、私はどうも納得できない、この点は。けれども私の言うのは、しろうと論でございますから、あなたとしては聞いても聞かねでも、それはどっちでもよろしい。いずれにせよ、私はこの仕事発展させるためには、どうしてもその農協というものを強化して、そのための抜本的な施策を今後において慎重に御検討を願いたいと思います。  あとは私、農地のほうで、地代と小作料の問題ありますけれども、これはあとで。
  148. 天田勝正

    ○天田勝正君 まあ、農協法の一部改正、先日来各委員から質問されまして、ずっとお伺いしておりながら、どうも私にはわからないことだらけであります。そこで、事務的なことから聞いていきたいと思いますが、まず農協法の今度できます農事組合法人、これが出資農事組合法人と非出資農事組合法人と、こう二通りできる、こういうことであります。そこで農業経営をする農事組合法人出資でなければならない、こういうことになっておれば、自然農業経営をしないものは出資法人でなくてもいい、こうなります。そこで、便宜要綱で私質問しますので、要綱をごらんいただきたいと思いますが、その四十五ページの三項一号、「農業に係る共同利用施設の設置又は農作業の共同化」、これの事業を行なうための組合法人出資組合でなくてもいい、こういうことになると思います。ところが、共同利用施設の設置などをするのに、一体出資しないでそういうものができるかできないか、常識的にはできないと思うのですが、ここにいう規定を置いたのはどういうわけですか。
  149. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 実は、現在の農協法におきましても、出資農協と非出資農協とあるわけであります。大体それと同じような考え方で、農事組合法人出資、非出資制度をとったのでありまして、非出資の場合に、一体どうしてそういう施設をするのかという御質問でございますが、これは組合員に対する賦課金だとかあるいは借入金とか、そういうものによりまして作ることを予定しております。
  150. 天田勝正

    ○天田勝正君 今の農協法でそういう規定があるとかないとかお聞きしているのではありません。今度新しく農事組合法人というものを作って、これは今までの農協法にないものを作るのですから、それを二通りに分けた。ところが、これこれのものは出資法人でなければならない、他のものは出資法人でなくてもよろしい、こうなっておるのでありますから、その出資しなくてもいいほうで、共同利用施設の設置をしたり、農作業の共同化をしたりするほうは金を出さなくてもよろしい、こういうふうになっているけれども、それは実際上できないのじゃないか。今の農協法に書いてあるとかないとかということは別ですよ。むしろ今の農協法のほうならば、別に何も精米所を作らなくっても、その分はのけたってもいいのだし、農業経営それ自体をやっていない。だから、それには出資なくてもいいでしょう。今度、現実に昔の農事実行組合のもっと内容の充実したものを私は想定していると思う。もとの農事実行組合は、それは確かに自力更生で、昔、東北とかあるいは九州とか、そういうところじゃきわめてりっぱにやられておりましたが、たとえば大都市の近郊農村、こんなものは形態がばらばらでありますから、実をいうと、農事実行組合なんというのも、村の集まりの機会、あるいは広場や何かで、協同組合のほうから——その当時は協同組合といいませんけれども、そこから持ってきたものを一緒の場所で分けっこする。さような農事実行組合もあったのです。それは過去のことです。しかし、そんなものでは今度はいかぬ。もっと農業自体に密着し、間接であろうと何であろうと、とにかく農業経営に非常なるプラスになるものを想定していると思う。そうでなければ意味がない。そうだとすれば、そのために共同利用施設を作ったり、農作業の共同化をしたり、これはどっちを想定しても金のかからないわけはない。金のかかることなんだから、それには普通なら出資か、借金をするか、こうなる。ところが、それは出資しなくてもよろしいのだ。とすれば、すてっぺんから金を借りてこなくてはならぬということになると、これは今までも各委員が指摘しましたから、金を借りることがいかに言うべくして実は容易でないということを言われておりますから、その例は引きませんけれども、そうなのだから、なおさら出資しなければならないのじゃないかと私は思うけれども、どうしてそれは出資せずにできるのだろう、こう聞いているので、農協法にあるとかないとかというのじゃないのです。
  151. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) いわゆる共同利用施設の設置という場合におきましても、相当高度なものから比較的簡単なものまでいろいろ種類があると思います。相当高度なものをやろうということになれば、お説のとおりぜひとも出資制にしなければいけないというようなことが考えられますけれども、そこまではいかない比較的簡単なものをやろうとする場合、組合員の賦課金とそれから借入金、そういう形態でもやり得ないことではないと思われますし、またそういう道を開いておくことはむだではなかろうということでこの制度をとったわけであります。
  152. 天田勝正

    ○天田勝正君 それじゃ、出発点から私どもが質問をする、まず頭の中に、質問するには質問するで一つの絵が描かれているのです。その絵というものは何かといえば、農業構造改善とか近代化資金のほうでいえば近代化資金であるとか、掲げることは今までの過去のものでなくて、ずっと高いところを目標にしているものです。ですから、共同利用施設などといっても、過去にあるものよりも、少なくとも今後の農林当局の指導はもっと高いものだ。高いものだとすれば、金も全然かからないようなものでもそれはできるのだということがうなずけなくなるから、その観点で聞いている。あなたのおっしゃるように、それはずっと昔の原始共産制みたいなことだと、資金を出さなくてもやれるのだというように、受け取れる御返事ならばこれは何をか言わんやであります。そうすれば、鬼面人を驚かすようなここに事項を掲げて、そして二番目は「農業経営」、三番目は「前二号の農業に付帯する事業」、こんな一も二も三も掲げることは要らないので、二の「農業経営」、これだけ書いておいて、それで出資組合も非出資組合もできるのだ、これでもいいのじゃないですか、どうなんです。
  153. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 農業経営を営むということが事業内容となりますと、これはやはり出資制というふうなことでもって財政的基盤を確実にしておくものでなければ不安じゃないか。また、これは非常に第三者との取引段階もあるわけであります。そういう意味からもはっきりと出資制をとる必要があるのじゃないかということで、農業経営に関しては出資制を義務としたのでございます。
  154. 天田勝正

    ○天田勝正君 どうもこの法体系なんかばかり考えて、私はこういうこまかい質問をするのも、ことに農林漁業者などにはおよそそういう人方にはわかりやすい法律を作ってもらいたいということなんです。みんなそれが根本にある。第一そんなこと言わなくたって、出資農事組合法人もあれば、非出資農事組合法人もあり、非出資農事組合法人農業経営の場合に出資しなければならぬ、こういうふうに書けばいいのであって、わざわざ何か「農業に係る共同利用施設の設置又は農作業の共同化に関する事業」これを解釈して質問してみれば、たわいない内容なんです。それを鬼面人を驚かすようなことで、何か百姓にはこれは首をひねる、何だろうこの内容は、というようなことで、あんたの趣味はよくない趣味だよ、ほんとうなんです。こんなところから整理してもらう、そういうところでなければ、一体農業者相手の手を引っ張ってやるなんていう親切心は、親切心のような説明をするんだけれども、実はそうでない、こういうことです。まあ書いてあるんだからそれは一応わかった。大したことじゃないということ。  その次は、この「農事組合法人に、役員として理事を置く。」と、こういうふうに一応きめておいて、今度監事のほうは定款で定めて監事を置いて、それも役員である、これはどういうことなんですか。理事はここに大原則をきめ、監事のほうは置いても置かなくてもいいと、こういうわけですか。
  155. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) そうでございます。
  156. 天田勝正

    ○天田勝正君 それはどういう理由ですか。
  157. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 理事のほうは、法人といたしまして、特に有限責任法人といたしましては、一般的にどうしても設置しなきゃならぬ機関だと考えて、これは必ず置く機関としたわけであります。それに対しまして監事のほうは、これはこういう種類の、非常に人的結合の強い団体である場合には、必ずしもこれを置かなければいかんとする必要はないのじゃないかということで、任意の機関としたわけであります。
  158. 天田勝正

    ○天田勝正君 理事のほうは置く必要がある、監事のほうは別に置く必要はないじゃないか、そういう説明は、それは説明にならないのであって、だからそういうふうに片方はどうしても置くとここにきめてかかって、片方は置く必要がないというのは、何か結合のかたい組合であるから、結合がかたくなるか、かたくならないかわからないじゃないですか。どういうことなんです。結合がかたいというのは、どういう条件があるからかたいのですか。
  159. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 農業経営を一緒にやろうというふうな人の集まりでございますから、当然人的な結合の度合いにおきまして非常にかたくなければならない、そう考えたわけでございます。  なお前段の問題でございますが、法律組織の一般的な考え方といたしまして、こういう法人に業務執行のための理事を置くと、こういうことは原則的なものであろう。これに対しまして監事というものは、必ずしも法人の性格によって、必置機関にする場合もありましょうし、また必ずしもそうでない場合もあり得るではないか、そういう理解のもとに、この農事組合法人実態から、監事はどちらでもよろしいということにしたわけであります。
  160. 天田勝正

    ○天田勝正君 まあ議論にわたりますけれども、それは合資会社だって、合名会社だって、同じ事業をやるんだから、精神的に結合しなきやならんのはみんな同断なんです。何も農業をやるだけのことじゃありゃしませんので、そうすればそれを一緒にやるというのは、みんな精神的なつながりがなければ工合が悪いと言うが……。このことを私は長い時間かけて議論するつもりもありませんけれども、監事は置いても置かないでもいいんならば、結局法律というのは必要事項をきめておけばいいんであって、そんなめんどうなことを言わないで、ここに代表者を置かなければならないとか、そういう言葉でもいいんじゃないですか。理事だなんて名前まで、お前の名前はこういう名前だって、押しつけなくても、それぞれの法人によって理事と言おうがあるいは代表者と言おうがいっこう差しつかえないのじゃないですか、どうです。
  161. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 理事と監事はおのずから職務が違いまして、理事は組合を代表する、監事は組合の内部の会計監査する。したがいまして、代表者を置くというだけでありますと、その辺が不明確でございます。それから「置くことができる」という法体系は、合資会社でも合名会社でも同様の規定をおいております。
  162. 天田勝正

    ○天田勝正君 こっちがまるっきり、幾らしろうとだって、ちっとも世の中のことを知らないと思って答弁されては迷惑だ。法律なんというものは、最低限をやればいいのですから、代表者を置くと書いても同じじゃないかということか聞いているのです。理事とか何とかとこっちから、役所側から押しつけて、お前の名称はこうなると言ってやらなくてもいいじゃないか。だから今まではそういうことがあっても、これからの法律はもうちょっと百姓わかりのするように私はしてほしいという前提から、そういうことを申し上げているわけです。別段理事であるから、それはいけないということを言っているのではないが、簡単な届出でできる法人などに事こまかく指図がましいことをせぬでもいいじゃないか、こういうことです。それじゃどうして理事という名前をつけなければいけないのですか。
  163. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 理事という名前は、従来の法律の慣例に基づいてつけたのでありまして、あるいは代表者という名前をつける場合もあろうと思います。またそのほうがわかりやすいという場合もあろうかと思います。ただ、法律規定の内容といたしましては、代表者といたしましょうと、あるいは理事といたしましょうと、それほど変わりはないと思います。
  164. 天田勝正

    ○天田勝正君 次に、四十七ページ「(9)出資農事組合法人の剰余金の配当は、定款で定めるところにより、組合員事業の利用分量の割合若しくは組合員事業に従事した程度に応じ、又は年八分以内において政令で定める割合をこえない範囲内」こう書いてあります。それで別のほうの書類をずっとたどってみますと、年六分ときめるようですが、それはそのとおりですか。
  165. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) そうでございます。
  166. 天田勝正

    ○天田勝正君 そうすると、すでに藤野さん等が質疑されましたが、この出資は何をもって出資とするかということが、自然問題になって参ります。金銭ならば、私はおそらく今六分だったら定期に預けておいたほうがよほど安心だ、こういう心理になると思います。今度現物出資ということになりますと、一体その現物出資したその物件を幾らに評価するか、これが当然問題になって参ります。そうすると、この評価の基準を行政指導によって、あなたのほうから示すのですか示さないのですか。これがまず第一。これは利益配分上都合がいいということから、時価十万円とあるものを、これはこの間、藤野さんは土地で言いましたけれども、土地ばかりとは限りませんが、十万円くらいと思うものを十五万円と評価することもできるわけです。二十万円と評価することもできる。そうすると通常それを使用収益を上げる場合よりも、はるかに有利な配当もできる、配当というか剰余金の分配という言葉にこの際はなりますけれども、そういうことになってそうしてこの出資の評価が割損に評価されたものと割高に評価されたもの、こういう差も出てくるし、その額も全部が一定したものではない。こういうことになった場合に、単に政令で六分なら六分と定めただけで、要するに精神的なつながりがうまくいくと、こういうふうにはわれわれどうも自信が持てない気がいたしますが、この点はどうお考えですか。
  167. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) これは生産法人全般の問題でございますが、農事組合法人に限ってお答えいたしますと、そういう評価の標準というようなものは示さない考えでございます。具体的にどういうふうに評価するかということにつきましては、これは組合員相互間の話合いでもってきめて、実情に合うようにきめてもらえばいいのじゃないかとそう考えております。
  168. 天田勝正

    ○天田勝正君 これは農林省でもすでにお調べ済みのことだと思いますが、このごろの農業の変貌というのは、実に速度が早いのでありまして、私ども、一応、農村問題に首を突っ込んでおるものでも、その速さについて行けないというようなことが多々あります。これは今これから申し上げるのは、全国的な例ではありますけれども、具体的に埼玉のものの例を上げますと、私のところは埼玉県の群馬寄りのきわめて北部でありますけれども、これが中仙道沿いであるということのために、土地価格というものはぐんぐんと上がっております。これに反して東京からの距離はその半分に満たないところでありながら価格が半分に落ちている、こういう事例がある。このことは何も大都市近郊だからということではございませんで、過日高松の在に参りましたけれども、高松市の中心からわずかに自動車で十五分です。その地帯でさえももうえらい勢いで土地価格は下がっておる、こういう一つの現象が起きている。でそう離れない地帯で、工業などがどんどん入ってきそうなところでは、評価するならば農家が資産一億になっちゃっているというようなところもあれば、かって二十万円くらいに上がったところがもう半値に下がっちゃった。こういう工合に同じ町中でも、わずかなところで違いができてくる。こういうようなとき、まあしかるべく評価すれば、お互いにやればいいんじゃないか、こういつも、なかなかこれにむずかしい問題が私はあると思うのですがね。そういうことについておわかりにはなっていると思うけれども、具体的に調査はございますか。たとえば法人指導していく上に必要だと思うので伺っておくんですが。
  169. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 農地価格の問題になってくると思います。御指摘のとおり農地価格の形成におきまして、農業経営をやる農地としての価格というものと、それから今御指摘になりましたように、これが農地以外の宅地化あるいは工場敷地化する場合の期待を持った地価、こういうものを反映して非常に値上がりしている農地価格もあるわけでございます。こういう問題については、われわれ日本不動産研究所等の資料を集めて、地価の傾向というものを研究しております。その点の資料が御要望ならば、この前安田先生からの御希望であったと思いますが、お出しすることにいたしております。なお、その農業生産法人に対しまして、農地を出資した場合の評価の問題、農事組合法人については先ほど農協部長からお答えがあったと思いますが、一般的にこの農地を出資いたしました場合の評価というものについて非常にむずかしい問題がございます。でこの農業生産法人というものは、やはり先ほどから御指摘がありますように農業経営の近代化をやる、そういう意味において協業の助長にこの農事組合法人を使う、あるいは会社法人の形態をとる。こういうことになりまして、あくまで農業経営に重点がかかるわけでございまして、われわれといたしましては、やはりこの農地が農業経営の手段として、いわゆる自作収益価格を中心にして決定されるのが一番いいんじゃないか、こういう考えを持っているわけでございますが、先ほど農協部長からもお答えがありましたように、組合員の中の話合い、そういう収益価格をもとにして適正な価格に評価されると期待し、指導していきたい、こう考えております。
  170. 天田勝正

    ○天田勝正君 私もこの評価の問題につきましては、別段相互の話合いでうまくいかないときめつけて考えているのではないので、しかし指導上からすれば、そうした価格がわずかの距離の中で上がるものと下がるものができるというような変動を承知しておかないと、今後農林当局が生産法人を設立せしめて指導に当たっても、いろいろ支障を来たすと思って聞いているわけなんで、この点は別に反対ではございません。これいただいておりますが何かこれは平均を取っているので、実際この組合指導していく上においては、むしろ近似のところでありながら共同化等が阻害される、そういうデータを、厄介なことだけれど農村全体が厄介なことになっちゃっているのですから、ひとつ手のある限りそういうお調べを願っておかなければならぬと思います。これは申し上げておくだけでよろしい。  で、この農事組合法人を設立する場合、農民五人が発起人になって諸手続をやる、こういうことになっております。この農民の概念ですね、これは農業就業人口を考える場合には、数が上がったり下がったりえらくするわけです。それは一年のうち一日働いても農業就業人口と見る見方もあるし、もう、まさか、二カ月ぐらい働くのでなければ就業人口と見ないという見方もある。一方においては農地法との関連において、三反歩持たなければこれはどうも農民とは考えられない、いろいろなあれがあるのです。今度この新しく設立せられる生産法人の発起人たるべき農民というカテゴリーは、どういう基準を指しているのですか。
  171. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 農民をどの程度に定めるかということにつきましては、定款はゆだねております。もっともその前提といたしましての一般的な農民の定義につきましては、農協法に基づきまして耕種、養蚕、養畜を行なう者、これを農民としておるのであります。
  172. 天田勝正

    ○天田勝正君 そうすると、念押しをするようですが、この農民というカテゴリーは別段農林省に一つの基準を設けたとかあるいは政令で定めるとか、そういうことではなしに定款なんですね。
  173. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) そうでございます。
  174. 天田勝正

    ○天田勝正君 そういたしますと、農政指導上は農地を取得するような場合でも、もともと三反歩ぐらいなければ、それは多少のものを加えても依然として零細農で、それは健全経営が成り立たぬという観点でございましょう。今よりも食糧事情の困難なときでありましょうとも、三反歩を基準にして、それ以下のものは土地を取得する場合に当時の農地委員会、今の農業委員会ですが、そこにおいて許可しない、こういう指導をしてきたわけですが、定款なんだから、今度は一反の者が集まってもよろしい、あるいは一反以下と三町歩の人と一緒に組合員に選んでもよろしいと、こういうことですね。
  175. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 原則的にはそうでございます。  なお御参考のために申し上げておきますと、現在の農協法の模範定款例に基づく指導では、大体一年のうち九十日農業に従事する者、あるいは一反歩以上の土地を耕作する者といったようなことを大体農民の最低限にするという指導をいたしておるわけであります。
  176. 天田勝正

    ○天田勝正君 そういたしますと、やはり指導も、私もそうだと思うのです。一週間くらいしか働かないのを、どうもただ定款にゆだねるということがおかしいので、法律的には定款にゆだねるが、事実上の農林省の指導としては、年間九十日くらい働く者をもって一応農民というカテゴリーで設立から何から、まあ他の条件もありましょう、そういう基準で御指導なさると、こういうように理解してよろしゅうございますね。
  177. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 従前の指導はそうでございまして、今後の問題につきましても、特に支障のない限りそういう方向でいきたいと思っております。
  178. 天田勝正

    ○天田勝正君 そういたしますと、今度は議決権のことをお聞きしますが、農事組合法人がこれこれのことがあったり、また行政庁の解散の命令があって解散するほか、その組合が五人未満になり、そのなった日から六カ月組合員が五人以上にならなかった場合、これは解散する、こういうふうに書かれております。こうだといたしませば、その解散をしたときには、もちろんもとの出資はそのまま今度は分配するということになりましょうが、その分配の場合は、あれですか物で出したら物、金で出したら金とこういう分配の基準でも農林省で示すのですか。
  179. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 解散の場合の残余財産の分配について、これを物でするか金でするかということにつきましては、これもやはり定款にゆだねております。
  180. 天田勝正

    ○天田勝正君 少し離れた質問をしますが、今度これらの法人をそれぞれ農業協同組合の正会員と認めますね。そうすると、私はおそらく現在の農業経営者が現在経営しているものを、すべて出資を全部し尽くして、そして法人を作るということの例のほうが、当初少ないだろう、つまり一部それぞれに二町歩くらい、これは必ずしも反別だけでいっているんじゃないのですけれども、二町歩持っている、しかしそのうちの二反歩なら二反歩を採草地にして、そこで酪農経営をやろう、あるいは一定の地域を定めて集団経営をやろう、それをやる場合に、自分の資産と言わざるまでも、借りているものもありますから、借りている土地もある。その自分が経営している何分の一かを一ぺん出して、まずこの法人を作ろう、こういうことになると思うのです。これは私の想像であります。そういう場合に、農業協同組合組合員としての権利の行使は、個人にも残っておりますね、法人にもありますね。そうすると、権力なんという言葉を用いてはなはだ不穏当だと思いますが、権利の行使については二重権力ということになりますね。そういうことであなれはうなずいているからそうだと思うが、何ら支障がないものですわね、いかがでしょうか。
  181. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) たとえば五人で農事組合法人を作りました場合に、この法律によりますと、各人が一票、それから農事組合法人として一票、合計全体のグループで六票になるわけでございます。そういう意味で、二重と申しましても、二倍という意味ではございませんで、若干ふえるという意味で二重ということでございます。で、これはどうしてかと申しますと、やははり農事組合法人は一個の農業経営主体でございまして、同時にまた、組合員は、自分の個別経営を持っておるという意味におきまして経営の主体であるか、あるいはまた組合事業に従事するという意味において農業従事者であります。現行法におきましても、農協の正組合員農業経営者であるか、農業従事者であるということになっておりまして、そういう意味から、経営主体なり従事者である各人に一票、それから同じく経営主体である農事組合法人に一票を与えるということは、法の建前からいっても適当であろう、また均衡をも乱すものではない、そう考えております。
  182. 天田勝正

    ○天田勝正君 このことは、協同組合内部における権利義務の関係のほかに、農業委員選挙のやはり権利の関係にも自然及ぶと思いますが、その場合いかがでしょう。農業委員の選挙権、片方は個人としての、従前どおりではないけれども、農業協同組合組合員としての権利もまた義務も生じている。片方、法人をその経営の一部によって作る、そうすると、この法人は協同組合の正会員になりますね。その場合における、言葉があまり適当じゃないのだが、二重権利といいますか、どうもこんな小さいところで権利というのを言っていいかどうかわかりませんが、とにかく二重に持てるということになるのだ、権利が。それが一つあるのですけれども、それで今それを伺ったのですが、そのほかに農業委員を選出する選挙権、こういう場合にどうなるか、その際における被選挙権はどういうことになるのか、これを伺いたいというのです。
  183. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 農業委員会の関係におきましては、農事組合法人は独立の一人としては扱われておりません。つまり権限がないわけであります。
  184. 天田勝正

    ○天田勝正君 そういたしますと、一部を供出することによって法人を作った場合には、二部は法人出資なり何なりしていますけれども、他の残ったもので農業委員会選出の権利も、またみずからの被選挙権もあると、こういうことになりますが、全部を出して法人を作ったという場合、そうすると農業委員選出は権利を喪失しますか。
  185. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 恐縮でございますが、この点私の直接の所管でございませんので、確かめた上で御返答したいと思うのでございますけれども、おそらく農業委員会法におきましては、農業者及び農業従事者という規定があるのじゃないかと思います、で全部の経営法人に投入した場合において、これはこの各個人はまさに農業経営者でございませんが、農業従事者であることは間違いないわけでございます。その点で救われるのではないかと思っておりますが、この点なお確かめた上で、後日正確な御回答を申し上げます。
  186. 天田勝正

    ○天田勝正君 この関係はどなたも御承知のとおり、公職選挙法とは別の関係なんです。ですから自治省を呼んでみたってしょうがないの、この関係は農林省のどこの部課が扱っているか知らないけれども、農林省に聞くよりしようがないことになっている、公職選挙法の関係ではございません。そこで、今までのこの関係からしますと、私が一家の世帯主である場合には、その人も選挙権、被選挙権があるとともに、家族従事者もあるんです、農業従事者という格好で。だけれども、それはものはきちっとつめておかなければならぬから、法人になった場合も、農業従事者であるからそのまんま新しい法律になってもいいかどうかということには、即座にこう早合点してしまって、あとでそうじゃなかったということは困るから、そこでお聞きしているわけです。まあこれは後刻でもいいです。その問題は。
  187. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) その面の御答弁を私からさせていただきます。農業生産法人は、農業委員会の選挙権、被選挙権はないことになっております。農業生産法人としての農業委員会の選挙権、被選挙権はございません。ただ、農業生殖法人の構成員が、その法人の耕作の業務に従事する日数、それから個別経営がなおその構成員にあります場合に、その個別経営において農業に従事する日数、それを足しました農業従事日数がおおむね六十日以上でありますれば、農業生産法人の構成員に農業委員会の選挙権、被選挙権を与える、こういうことに省令で改正いたしております。
  188. 天田勝正

    ○天田勝正君 個別経営をしておるからというのではなくて、全部を出資してしまって、各自が、十人なら十人が全部出資してしまった場合に法人ができる。しかし法人が、それ自体は選挙権、被選挙権はともにないでありましょうが、そこに常時働いている者であれば、六十日以上働いておれば選挙権、被選挙権ともにある、こういうことですね、それをひとつ念を押して。  続いて、そうしますと、今度の新たなる生産法人が構成員でなくても五分の一の人だったらば常時使用できますね、今度、そうでしょう、構成員でない者、その人はどうなりますか、これも……。
  189. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 前段の御質問の農地を全部農業生産法人出資するか、あるいは賃貸しするか、あるいは譲渡すると、こういった形でその構成員になれるわけでございますが、農業生産法人の構成員になりましても、その人が農地を提供しただけで、農業生産法人の業務に常時従事しない構成員があるわけでございます。この構成員は、全部出した場合でございますから、個別経営はございませんが、こういう構成員は、従事してない場合は、農業委員会の選挙権、被選挙権はない、こういうふうにいっております。  それから第二段の、農業生産法人に構成員じゃなくて、雇われた農業従事者、これは農業委員会の原則に戻って、農業委員会の選挙権、被選挙権が第八条にございますが、これによってその要件に合えば選挙権、被選挙権がある、こういうことになります。
  190. 天田勝正

    ○天田勝正君 後段の場合は全く、だめ押しのようなことなんですが、今までにすれば自作農が建前ですから、そこで雇い人という形をとっておったけれども、これもあまり家族従事者ということを法の上ではあまり認めたくないという消極的な立場だったのです、今までは。今度は生産法人ができることによって、構成員以外でも常時従事者を置くことができるのです。これは今まで家族の従事者と同じように選挙権、被選挙権がございますか。あるいはその場合における協同組合の役員になっておる者の資格はどうなりますか、私の言っていることおわかりいただけたでしょうか。
  191. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) もう一ぺん。
  192. 天田勝正

    ○天田勝正君 今までは自作農主義で、でありますから、家族従事者によって行なうということが建前になって、その実は経営しているように見えても、多くは人を頼んであまりやるということについては、農地法なんかの関係ですべて消極的なんです。よその者の労働をたよってやるということは消極的なんです。法の建前はずっとそうできているのです。今度は積極的に近代化するため農業生産法人を認めていこうということです。そうすると、今までは雇い人というものはなるべく認めたくない、こういう法の建前であったけれども、今度は積極的に技術者であるとか、あるいは常時従事する者は、構成員でなくても、その構成員でないほうが多いのは今度だって困るけれども、しかし五分の一はいいと書いてある、書いてある以上は、その人が農業委員の選挙権、そして被選挙権になり得るのか、なり得ないのか。同時に、今度は同じように、農業協同組合のこの法人の構成員ではないのですよ、構成員ではないけれども、働いておるがゆえに今度は協同組合の役員にでもなれるのかどうなのかと、こういうことです。
  193. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 農業委員会の点について申し上げます。この農業生産法人に、純粋に構成員ならないで雇われている、こういった農業従事者、これにつきましては、先ほど申し上げましたように農業委員会等に関する法律第八条の一、二という資格がなければ、農業委員会の選挙権、被選挙権はないわけでございます。それで家族世帯員と同一に見たらどうだと、こういうことでございますが、これは農業生産法人でございますので、世帯員というふうには見られない、こういうことを申し上げたわけでございます。見られないわけでございます。
  194. 天田勝正

    ○天田勝正君 今度のこの改正でですね、後段の問題ですが、農業協同組合の理事は、従来と違って農業に従事していない者からも役員を選ぶことができるようになるのでしょう。今どこに書いてあるかというのをちょっと指摘することができないが、書いてあるのだ。それで、そうだとすれば、かりに生産法人のこの構成員にあらざる者であるけれども、常時従事する者でその人が農業協同組合の役員になるということは可能なのじゃないですか。いかがですか。
  195. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 農協法では、従前からいわゆる員外理事の制度が認められております。ただ、今回の改正で従前認められなかった合併の際の員外理事を認めることが改正点となっております。従前の規定から申しますと、理事の中の四分の一は員外、組合員外からでも任命ができるということでございます。
  196. 天田勝正

    ○天田勝正君 だから今度もそうでしょう。だからそれには今の生産法人の構成員にあらざる常時従事者、これがなっても差しつかえないのでしょう。
  197. 酒折武弘

    説明員酒折武弘君) 農協法では、農業に従事する者に農協組合員たる資格を与えております。したがいまして、生産法人の単なる従業員も農協組合員たる資格を持ち得るわけでありますから、それが組合員となり、理事となる場合には員内理事ということでなり得るわけであります。
  198. 天田勝正

    ○天田勝正君 だんだんわかって参りましたが、そうすると、その前段の農業委員の場合は家族従事者とは認めないのだと、こういうお答えがあったけれども、そのアンバランスはどうしてできるでしょうか。今までであれば、端的に聞きますが、私なら私が世帯主である。その場合にもちろんせがれも家族従事者、そしてそのせがれが農協組合長になっても何ら差しつかえない、こうなっておる。農業従事者だから……。一面、そのせがれは、今度は当然家族従事者として農業委員の選挙権がある。これとまあ私は法人になって、そこに構成員として入っていようと、従事者として入っていようと同じ関係ではなかろうか。それは片方だけの権利がむしろ失われるという形になるだろうと思うのです。これは全体としては大した影響はないというけれども、法の建前からすればおかしいのであって、なぜ法人になったがゆえにその常時従事者というものは従来どおりに扱われずして権利を失うのですか、なんか理由があるはずです。いかがですか。
  199. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 農業生産法人に雇用される雇用契約にあるものは構成員じゃないわけでございまして、今度の法律改正においては、雇われること自体をもって農業委員会の構成員は選挙権、被選挙権は与えられておりません。農業委員会のほうは経営主体ということを着目いたしておるわけでございまして、第八条の第一号に「都府県にあっては一反歩、北海道にあっては三反歩以上の農地につき耕作の業務を営む者」、二号に「前号の者の同居の親族又はその配偶者」、こういうふうになっておるわけでありまして、明確に家族経営を中心に置いて記載されております。それで農業生産法人の雇用者が一、二の一の資格があれば当然なるわけでございますが、単に農業生産法人に雇用されているだけをもっては、農業委員会の選挙権、被選挙権は与えられない、こういうことになっております。
  200. 天田勝正

    ○天田勝正君 これから先は議論になるようなことになりますから、なるべく控えたいと思うのですが、今度の両法の改正を見ると、剰余金の配分なんかの場合条文を書いておりますが、それも今の世相を反映してか、金銭による、出資金による配分というほうは三つ書いてある一番どん尻にいっているのですよ。これは私は世相を反映したと思う、そこに失礼な言い分だけれども労働の尊重、こういう思想が出てきた。出てきたというよりは、そういうことを認めざるを得なくなってきた。これが一つの世相だと思う。でありますから、今局長のお答えは、あなたの答えの範囲内ではそのとおり私もうなずくのですよ。だけれども、あれはすべて自作農主義に立っているのだから、今度はその自作農主義もその原則は変えないけれどと言いつつ、中身を変えようというのだ、実際は中身を変えようというのだ。その変えるのに、この思想的にどういうのがいいのかと言えば、やはり労働の尊重ということは一つのいいところの部面なんです。そうだとすれば、今までにないけれども、今度そういう生産法人ができるというところから考えて、その労働に常時従事する者も新しく権利を与えるべきだという思想が私は出てくると思う。そうでなければおかしいというのが私の考え方です。だからこれが改正されない前のとおりだったらお答えのとおりでよろしいが、この際ではどうも労働尊重、しかもこの法文を見るというと、こういうことも書いてある。技術指導者、技術指導者を生産法人の役員にも入れられるのじゃないですか。何かそれに近いようなことをどこか条文で見たけれども、何ページというのを忘れましたけれども、技術指導者、こういう者を尊重するということになれば、必ずしも昔どおりの、百姓の雇い人といえば右も左もわからなかったというような者じゃない。やはり近代化するには、技術の尊重というものを非常に重く遇いていかなければならない。そういう人は個々の人としても十分組合の役員にはなれる資格もあるし、農業委員になっても、またその選挙権を行使しても一向差しつかえない人ということになる。単純労務だけでない人、そういう場合に今度の法改正の趣旨よりすると、どうもそういう労働並びに技術の尊重というものが足らぬと、こういうことになると思うのですが、いかがですかね。
  201. 庄野五一郎

    政府委員(庄野五一郎君) 農業生産法人の要件といたしまして、構成員になる資格といたしまして、農地につきましての所有権、使用収益権、こういったものを法人に提供する個人かまたはその農業生産法人事業に常時従事する者、こういう者が構成員になるわけであります。で、構成員になりますれば、先ほど申しましたような農業委員会等の委員には出れるわけでございますが、ただ雇われているという、労務を提供しておるという構成員にならない者は、先ほどお答え申したような次第であります。
  202. 天田勝正

    ○天田勝正君 まあこれをいつまでもやっていると議論になるし、先へ進みましようか。
  203. 櫻井志郎

    ○理事(櫻井志郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  204. 櫻井志郎

    ○理事(櫻井志郎君) 速記をつけて。  両案につきましては、本日はこの程度にいたします。
  205. 藤野繁雄

    藤野繁雄君 資料要求します。  それはたばこ耕作組合の役員の過去数年間における調査をしてもらいたいと思っているが、これは最近農協関係の者は、全部役員からはずすという方針でやられておりますから。  それから特約栽培をやっておる種類と、そうしてその特約栽培を農協がどういうふうに利用しているか、農協と特約栽培との関係をお願いしたいと思うのであります。  また、農協が加工をやっているものの状況、販売状況、それだけどうぞお願いします。
  206. 櫻井志郎

    ○理事(櫻井志郎君) 本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十三分散会