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1962-03-27 第40回国会 参議院 農林水産委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月二十七日(火曜日)    午前十時五十六分開会     —————————————   委員異動 本日委員片岡文重辞任につき、その 補欠として東隆君を議長において指名 した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     梶原 茂嘉君    理事            石谷 憲男君            櫻井 志郎君            安田 敏雄君            東   隆君            森 八三一君    委員            青田源太郎君            植垣弥一郎君            岡村文四郎君            温水 三郎君            藤野 繁雄君           小笠原二三男君            北村  暢君            清澤 俊英君            天田 勝正君            千田  正君   政府委員    調達庁次長   真子 伝次君    農林政務次官  中野 文門君    水産庁長官   伊東 正義君    水産庁次長   村田 豊三君    工業技術院長  藤崎 辰夫君    運輸省海運局長 辻  章男君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    外務省国際連合    局経済社会課長 山中 駿一君    海上保安庁警備    救難監     松野 清秀君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選の件 ○農林水産政策に関する調査  (燃油によるノリ漁業被害に関する  件)  (北洋漁業に関する件) ○漁業法の一部を改正する法律案(内  閣提出) ○水産業協同組合法の一部を改正する  法律案内閣提出)     —————————————
  2. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  本日片岡文重君が辞任、その補欠として東隆君が選任されました。     —————————————
  3. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 委員異動に伴い欠員となりました理事補欠互選を、この際行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 御異議ないと認めます。  それでは互選は、成規の手続を省略して便宜その指名委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 御異議ないと認めます。  よって委員長理事東隆君を指名いたします。     —————————————
  6. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) この際、農林水産政策に関する調査のうち、燃油によるノリ漁業被害に関する件を議題といたします。  本件につきましては、去る十六日有志委員により行なわれました現地視察について、藤野委員から発言を求められております。これを許します。藤野君。
  7. 藤野繁雄

    藤野繁雄君 私はただいま議題となりました燃油によるのり被害の件に関しまして、三月十六日本委員会有志委員とともに千葉下木更津富津大貫沿岸地域における被害状況について現地視察をして参りましたので、その概要を御報告いたしたいと思います。  視察に参りました各位は、木島委員清沢委員東委員天田委員森委員並びに現地で参加されました野上(元)議員片岡議員と私の八名であります。本件は本委員会におきまして、すでに三月二日及び同月十二日の二回審議を行なっておりますので、その際の質疑応答にありました事柄については、省略して御報告いたしたいと思います。  当日は富津役場に参り、直ちに船にて被害現場視察する予定でございましたが、西方の強風が浜の表砂を吹き飛ばすほどでありましたので、船による視察を取りやめ、役場において、県並びに地元関係者から実情を聞いた後に、近くの大堀漁港周辺における被害現場視察いたしました。漁港に流れ込む水路に残っておる黒い油性物質漁港岩壁の黒々とした油性物質の付着並びに二、三百メートル沖のノリさくの竹の水面より上が七、八十センチも黒く光って並んでいる状況等は、お手元に回覧しております被害状況写真をごらん下さればよくわかると思いますが、いかに被害が甚大であったかを想起させるに十分なものがあると存ずるのであります。  富津役場における懇談で明らかにはなりました事件発生当時の状況は、二月十五日、たまたま第三海堡方面へ出漁した貝捲船が、油の漂流を発見、大急ぎ帰港、午後一時三十分ごろ横浜海上保安部第三課に連絡、この旨を報告している。午後三時ごろ木更津漁協に、横浜海上保安部より、座碓油送船の油が海上に流出漂流しているから警戒をしてくれ、また関係漁協連絡を頼むとの連絡があった。同日は小潮のため、一般漁民ノリ採取に出漁しておらなかった。また、同日は西南西強風であったが、夜半に至り北風に変わっている。このため富津青堀大貫沿岸沖合に漂流していた油が沿岸に流れ込んだものと思われ、二月十六日にノリさくへ付着しているのを、出漁した漁業者が発見した。またユナイテッド・マリタイム・コーポーレシヨンの代理店である飯野海運が、燃油中和沈降剤をドラム一カン散布、同時に、ヘリコプターにより状況視察、かつ燃料による被害が、これ以上拡大しないよう、各漁協協力依頼している。さらに、二月十九日には、富津沿岸に漂着している油が、西南強風のため、木更津沿岸に流れ込み、ノリ漁業等被害を与えた。  この木更津富津地区は、昭和三十年一月三十一日にも、重油による被害を受けている。その被害状況は、今回と同様で、当時、海況等調査しており、今回この被害の件も、この海況等調査気象状況等より、十二分に、イーグル・コーリヤ号の流出せる燃油によるものと推定されると、地元漁業者等から言われております。  被害地元では、県を初め、関係市町村関係諸団体の協力のもとに、弁護士依頼し、証拠保全等措置をとるとともに、関係方面に働きかけているのであります。  そのおもな事柄を日を追ってみますと、二月十九日、調達庁総務部補償課外務省アメリカ局安全保障課飯野海運本社、同横浜支店横浜海上保安部陳情、同二十日、富津町に対策委員会を設置、同二十一日、水産庁飯野海運本社マッカイバー・カーフマン山本法律事務所調達庁横浜海上保安部村田法律事務所陳情、同二十六日、水産庁横浜海上保安部飯野海運実情を訴え、また同日、飯野海運マッカイバー・カーフマン山本法律事務所富津地区現地調査をし、県は、通産省工業技術院資源技術試験所へ油の分析依頼、三月三日、水産庁より、県に対策を出すよう要望、同五日、衆参両院国会議員並びに水産庁陳情、また県では、横浜地方裁判所川崎支所に、イーグル・コーリヤ号に関する証拠保全措置を申請しております。県は、六日より十日まで再調査をし、十二日に被害の詳細並びに対策水産庁説明をしているのであります。  帰路、千葉県庁における知事との懇談で、県としては、被害者側が、被害を与えたのは、イーグル・コーリヤ号の流した燃油であると飯野海運でも認めているということは、過去のこの種事件経験から、最終段階であいまいとなる。常識的には、イーグル・コーリヤ号燃油であると、当地、他に油を流した船もなく、気象海況等状況から立証できる等のことから、話し合いによる円満な解決を望ましいが、他面、民事訴訟になることも考え、証拠等も整えることに最善の努力をいたしている。  また当面の対策として、第一に、被害漁民への立ち上がり復旧資金と、来漁期の資材購入資金のあっせん、でき得れば、長期低利でこれが利子補給措置がとられるよう努力する。  第二に、漁場清掃復旧をすみやかに実施する。このため、国の補助を願いたい。  第三に、アサリ、ハマグリ等ふたあけを早めるので、これが稚貝の手当をしなければならない。  第四に、油等被害の今後の防止措置について、県も研究努力するが、国としても十分な対策が望ましい等を考えており、今後、関東方面の御協力を得たいとのことでありました。  以上であります。
  8. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 本件につきまして、御質疑等おありの方は、御発言願います。
  9. 清澤俊英

    清澤俊英君 まずその後、この問題について、いろいろ折衝したり調査しておられるだろうと思います。水産庁も、あるいは海上保安庁としましてもやっておられると思うのですが、その後の推移をお聞かせ願いたいということと、先般最終段階審議の際に大森創造君が要求しました資料ができておりましたら、それをちようだいしたいと思います。
  10. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) お答えします。先生方の今現地視察の御報告を伺ったのでございますが、その後私ども県といろいろ相談をいたしております。実は県から、国でこういうような補助金なり何かを出してもらえぬかというようなことで、たとえば資材購入費でございますとか、漁場清掃費でございますとかいうようなものにつきまして、国としてめんどうをみてもらえぬかというような案を持って実は来られまして、私のほうとしまして、どういう形でこれを財政当局に持ち出したらいいかということを、実は今内局で検討いたしております。検討いたしておりますのは、実は加害者本件の場合は、われわれとしましては、先方でも大体自分らのほうの原因でこういう被害が起きたんだという前提話し合いに今入っているわけでございます。でありますので、加害者がはっきりした場合に、一体、国としてどういうことができるかということが実はいろいろ問題がございます。先般、大蔵大臣予算委員会で、その点いろいろ問題があるという意味のことをお答えになっておりましたが、われわれとしましても、どういうふうにやったが一番いいか、被害者めんどうが見れるかということにつきまして、方法金額等にりきまして実は今検討いたしております。それから現地でございますが、現地では加害者被害者側代表弁護士の方々が話し合いをいたしまして、被害鑑定といいますかに、実は二人の人の名前をあげまして依頼をしようじゃないかと両方で合意をしまして、実は依頼をしたのでございますが、一人の人ははっきりと、自分はそういうところに入るのは適当じゃないという意味で、一人の人は断わっておられるそうでございます。もう一人の人は、まあ完全といってもなんでございますが、今の時点に立ってなかなか被害算定というものがむずかしい問題があるので、県がやりました被害報告というものをいろいろ検討して、おかしいところは直すとか、そういうやり方でやれるかどうかというような意味のことで、今、両方代表者に話しておられるというふうにわれわれは承知いたしております。でありますので、両方代表者がこういう人に被害鑑定を頼んだらいいというような話し合いをして頼んだのでございますが、頼まれた人がまだ完全な引き受けはいたしておらぬというような状態でございますが、これにつきましては、われわれも県のほうに話しまして、何とか鑑定を引き受けてもらって、すみやかに被害額算定をしてもらうというようなことにやりたいというふうに思っております。
  11. 松野清秀

    説明員松野清秀君) 海上保安庁におきましては、事件が発生いたしましてから、直ちに取り調べ調査をいたして参ってきたのでございますが、本件に関しましては、油が出ましたのは、故意でないことがはっきりいたしましたので、港則法違反あるいは水産資源保護法違反としては取り上げることができませんでしたが、海難事故そのものにつきましては、業務上過失船舶破壊罪容疑が濃厚になりましたので、去る十九日にその容疑で送検いたしております。  なお今回のイーグル号から出た油とノリ被害の油との因果関係につきましては、この前の委員会でも申しましたように、また先般の予算委員会運輸大臣も申しておりますように、やはりそういういわば容疑が濃厚であるというように思量いたしております。  なおこの前の当委員会におきまして、どうして神奈川県の工業試験所依頼したかとか、あるいはどういう方が鑑定に当たられたとかというような点について御質問がございましたので、その点について現地に確かめて参ったのでございまするが、神奈川工業試験所依頼いたしましたのは、その試験所はこれは汚水及び油の分析専門にやっておられるところでございまして、非常にまあ経験もおありになるということと、この事件を担当いたしております横浜保安部地元機関でもあり、かつ県立でもありまして信頼もおけるということで一神奈川工業試験所依頼した次第でございます。また、分析に当たられた方は その工業試験所古屋弘という方と藤井芳男という方の二人でございますが、古屋さんのほうは同試験所十二年の経歴を持っておられます。また一方の藤井さんもその工業試験所で八年の経歴を持っておられる方でございます。  なお、こういうような油の鑑定ができるものかどうかというような点についても、御質問があったと思いますが、その点につきましては、通産省付属機関であります資源技術試験所一並びに科学警察研究所担当官に御意見を伺ったのでございますが、それによりますと、非常にそういう鑑定はむずかしいということ、特にそれが同一であるというような断定を下すことは、とうていできるものではないという意味の御意見でございました。大体そういうような推移でございます。
  12. 清澤俊英

    清澤俊英君 この間、大森君がこういう調査をしてくれと言ったことの主要点はですね、あなた方の調査神奈川県の調査機関というか、その場所は忘れましたが、そこへ依頼して、油を調査をしてもらった。その際に向こうのほうからは、水がたくさんで油の検査ができない、こういう返答があった。大体は油に水があってその検査ができない、こう言ったので、それじゃひとつだれがそういうことをやったんだ、どういうわけでできないと言うのか、それを明確にして資料で出してもらいたい、こういう要求であったと思うんです。今のお話を聞くと、科学警察研究所であるとか、いま一つ通産省のそういう試験所からは、出されたこの油とイーグルコリア号の二百トンの流出油同一であるということなどはそれは証明できない。これは私はおそらくは、だからこの間も言うのです、結果としてはそういうものが出ないだろう、こういう前提であなたにいろいろ食ってかかったのです。われわれの問題にしているところは、そういう科学技術のところが提出したる資料に対して、その油の同一であるかないかはこれは別としまして、結論としてこうこうこういう状態であるからこれだとは言い切れませんというなら話はわかっている。どうしてできないのだ、結論が。これをあなたにお願いしたんだと思うんです。全く別なことを報告しておられる。
  13. 松野清秀

    説明員松野清秀君) 御質問の点につきましては、工業試験所にいろいろお尋ねしております。それによりますと、青堀海岸採取いたしました油は非常に水分が多くて、それを油を分離して分析することができない状態にあった、これがために鑑定できなかった、こういうことを申されているのでございます。なお、今回提出いたしました資料は五つございますが、そのうちで、イーグル号船内から取りました油とそれからイーグル号舷側で取りました油は、これは大体類似のものである、こういう鑑定をされております。これは相当油の濃度が高かったのでまあ分析もできた、こういうことであります。なお、鑑定にあたりましては、やはり油を分析いたしまして、その含んでおる元素とその分量、これを比べて鑑定をするのだと、こういうことでございます。
  14. 清澤俊英

    清澤俊英君 今のお話の中で、イーグル号のその側近で取った油と、それから千葉海岸のどこかで漂流したのか、あるいは付着しておったのかを調査した結果は、これは大体同一なものだという試験結果が千葉県の試験所では出たと、こうおっしゃるのですか。
  15. 松野清秀

    説明員松野清秀君) いえ、私どもから神奈川県の工業試験所鑑定依頼に出しました資料は五点あるわけでございます。そのうちには、青堀海岸で取りましたのが二つ、一つはあの海岸一つ竹竿であろうと思います。ノリのついた竹竿。それから他の三つは、一つイーグル号船内から、もう一つイーグル号舷側ごく近いところ、もう一つは、第二海堡北側に浮流いたしておった油と、合わせて五つでございますが、そのうちでイーグル号船内で取った油と、それからイーグル号のすぐ近くの舷側で取りました油は、比較的濃度が高かったので、これらについては類似のものであるというふうに鑑定されておるわけでございますが、その他の、つまり青堀海岸で取りました二点と、それから第二海堡北側の海面で取りましたもの一点、合わせてその三点につきましては、水分が多量であって、それを分離して分析することが困難な状態にあった、そのために鑑定ができなかったと、こういうことを申されております。
  16. 清澤俊英

    清澤俊英君 どうも私らはそういうことにしろうとですが、全然科学知識ばないんです。ないんだけれども、昔から水と油は一緒にならぬといっている。どうも技術者がそういうことを言うのは、私らは常識としておかしいと思うんです。その油がどうあろうと、ある時間置いてかきまわしておきましたら、水と油は必ず分かれるんです。私は新潟県のそういう油地帯で生まれておるんです。子供から知っておるんです。井戸から掘り上げた場合は、水が七割あるいは九割で、油というのはごくわずかなんです。それをたるの中へ入れて、数日置きますと、水は下へ油は上へ浮くんです。それを栓を抜いて、水を捨てて、油をとるんです。油と水はすぐ分かれるんです。今日のこの進歩しておる科学時代において、油と水を分離することができないなんということは、私どもとしてはどうしても納得できない。だから大森君が、だれがやってそういうことを言うたんだか、この古屋さんと藤井さんはそういうことをはっきり言うているんですか。何か書類で出ているのでありますか。
  17. 松野清秀

    説明員松野清秀君) それはそういうことを書面でいただいております。
  18. 清澤俊英

    清澤俊英君 その書類を写していただきたい。これは、委員長、要求していただきたい。
  19. 安田敏雄

    安田敏雄君 清澤さんに関連して。今の水と油の問題ですけれども水分が多くて油の濃度が少ないということが誤解を招いているわけなんです。そこのところかwら取った水か海水の中に、濃度の問題でなくて、全然油が含まれておらなかったということなら、これはわかるわけなんですよ。ところがその水と油の関係で、濃度の問題で、水分が非常に多いということになるから、清澤さんがそういう質問をするのじゃないかと思うわけなんです。たまたま取ったのに、油が全然取れなかったということなら、これは分離することができないからよくわかるわけなんですよ。いわば少量過ぎてわからないということ、それならわかるわけなんですね。その点はどうなっているのですか。
  20. 天田勝正

    天田勝正君 私らが聞いてみてもおよそ不思議なのは、一体その報告定性分析ですか、定量分析ですか、それを藤井何がしという人ははっきりしてきましたか。というのは、清澤さんもさっきから指摘されておりますけれども、これはその第二海堡どうのこうのといいましたが、私ども視察した際に全部の方がちゃんと見ておるのですが、あの突堤にくっついた油などというのは、急になくなるようなものじゃないのです。私ども報告を聞いた際に地元県会議員でありましたか、さっそくにその干がたになったところへ油に染まった砂を一定の場所へ埋めて、だからそれを掘り出せばちゃんとそれまで証拠が明らかでありますと、こういうことを言われている。ところがその役場説明を聞いた際、油だからどっかへ行っちまうのじゃないかというふうに私どもは実はその説明を不思議に思いながら聞いていた。ところが、突提まで行ってみたところが、なるほどなんで、とても普通でいえばコールタールのごときものが今だって落ちっこない。あの突堤にぴったりくっついてとても離れるものではありません。さらにどこの漁港でも入江のごときものがありますけれども、その入江にはものすごい濃度で、われわれの目で見れば水面には全部油がすき間なく漂っているのです。ですからそういうところを取れば、どうも油の分が少な過ぎてわからないという状態じゃない。行ってみないからそういうことをおっしゃる。一カ月以上もたった入江でもぴったり油が一ぱいで、今言ったように突堤には油が全部付着して、その油たるや普通われわれが想像するような油じゃなくて、コールタールごとき、今だっておそらく落ちているはずはない。そういうものを取れば痕跡認めがたしなんていうことになるはずはないのであって、何かわざわざ痕跡のないところへ行って取ったというふうにしか現地を見た者では感じられない。でありますから、かりにわれわれはどうも今の科学技術からすれば不思議だというのは、たとえば犯罪者が毒物をびんへ入れた。そいつをすっかり洗ってやっても、なおかつ痕跡があってちゃんと検出することができるというのが、例は違いますけれども犯罪捜査の場合の例だと思う。そういうのから見れば、現に油のあるところから取れば、どんな材料であろうとも、それは性質というものはわからなければなりません。これをですからあなたが取っておる報告というのは、一体わざわざそういう油のないところを取ったのか、取らないのか、その青堀地区で取ったのなら、私の行ったとき、青堀で見たのですから現実に突堤に張りついている。そんなおかしい報告はないので、わざわざ油のないところを取り上げたとしか思えないけれども、その点はどうなんです、同時に今言った定性分析なのか、定量分析なのか、両方やったのか、それがわからないとするならば、日本科学技術はおよそ信用ができない、こういうことになるわけですがどうですか。
  21. 松野清秀

    説明員松野清秀君) 先ほど私が油の濃度というようなことを申しましたが、それは油の量が少なかった、これは青堀海岸におきましては浮流する水面から取ってきたものと、一つ竹竿を持ってきておるのですが、その水面から取ったのですが、油の量が非常に少なかったということでございます。もちろん、そういうわざわざ少ないところを取ってくるというわけでございませんが、確かにそういう点において不十分な、配慮が足りなかったということもあると存じておりますが、そういう点につきましては、これは捜査技術のレベルが低いということでもあると思いますので、そういう点につきましては十分私どもも指導して参ろうとしておるわけで、かように存じておる次第であります。
  22. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 まだ質問答弁が残っているようですがあわせ答弁してもらいたいのですが、あなたの今おっしゃっているのには、採取方法においても不十分な点があったようである、今後においてよく指導したいというような意味の御答弁でしたが、それは今後指導してはっきりしたものが出せるまでの捜査はやり得るというのですか。もう今回はだめだ、今後何か起こったときは、今度はしっかりやるということなんですか。もう少しはっきりして下さい。
  23. 松野清秀

    説明員松野清秀君) 今回採取しました油につきまして、そういうような工業試験所の御意見がありますし、ですから今後取る場合にはやはり相当量、たくさん取ってくる必要もある、こういうふうに考える次第でございます。
  24. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 何言っているのだ。油の量が少ないから鑑定が十分にできなかった、わからない、多分そういうことなんでしょう。それで今後しっかりやるように指導する。いつ鑑定の結果が出たのです。鑑定の結果が出て国会でこうしてわれわれに答弁を求められて、さて今後また取ってきて調べてみます、そんなことなんですか。では二回目取ってきてやっているのですか。
  25. 松野清秀

    説明員松野清秀君) 鑑定についての回答をいただきましたのは十二日であったと思います。その後は取って参っておりません。ただ、今申し上げましたのは、そういうような事情から今後取る場合には、そういうふうにやろうという配慮が必要であるというふうに思っております。
  26. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 だからそれで十分だとして十二日の鑑定報告を受けて、十分だとして、もう手をつけておらなかった。それでこの国会で今質疑があって、それでは今後取ってきてもう一ぺんやってみよう、そういうことなんですか。もうその鑑定で十分だからこの問題はけりをつけるのだ、鑑定上原因がつきとめられない、したがって、これはもうやむを得ない事件である、こういうことなのか、ちっともその積極性がない。あなたたちの任務として何をどうしようとしているのか、ちっともわからない。もうこの事件の究明をやめるというのですか。
  27. 清澤俊英

    清澤俊英君 とれだけの被害が出た犯人をつかまえる意思があるのかないのか。問題は、犯人を追及する意思がないのじゃないか。そんなことではだめですよ。
  28. 松野清秀

    説明員松野清秀君) 今回の油が流れ出ましたのは、故意でないということがはっきりして参りました。犯罪捜査の面におきましては、なるほど同一性ということは出て参りませんでしたけれども捜査上この程度でいい、つまり、故意犯ではないというような観点から、捜査上は重ねて特にまた取ってきてやる必要がないというふうに考えておったわけでございます。
  29. 天田勝正

    天田勝正君 僕の質問答弁していない。私もう一回言い直します。定量分析定性分析かと言ったのは、そのことは言うまでもないのだ。中学へ行った人はみな知っているはずだが、たとえば鉱石の金分なら金分、これは一万分の幾つとかそういう量をはかって成り立つとかということは、定量分析でいくのです。そのときは、実に微量であってこれは問題になりません、こういう答えが出てくる。ところが、この際は定性分析でなければならぬ。性質の同じものだから、その船の油であるという認定ができる。その量の多寡じゃない、水がよけいあるとかないとか、そんな問題じゃない。その性質が同質かどうかという、ここが問題なんです。それには今の技術をもってすればできる。言うまでもなく五十年前の技術をもってしても、ビンの中に耳かきの百分の一くらいの微量が入っていても、それは分析できる。そうして同質のものかどうかはっきりするのです。だから定量分析したのですか、定性分析をしたのですか。定性分析をしたならば、それは必ずわかるはずです。わからないというのは、わからなくしているということにしかならない。この点はどうなんですか、それを聞いている。質問に答えないで、先に進められてはとてもだめですよ。今から取っても間に合うのですよ。学のない私でさえ知っているのですから。これは報告にあるはずですよ。
  30. 松野清秀

    説明員松野清秀君) 神奈川工業試験所のは定量分析でございますが、なお、この点につきましては、専門のほうの方が来ておられますので、工業技術院の方でございますが、お尋ねいただきたいと思います。
  31. 藤崎辰夫

    政府委員(藤崎辰夫君) この成績表を見ますと、定量分析になっております。この水分が例のサンプルが〇・〇五、それから残留炭素五・八九%、字がよくわかりませんけれども、石油に関しましては定性というようなことでございませんで、こういう型で大体やっております。ただこれで見ますと、油であるとか何とかいう数字はあまりはっきり出ておりませんです。私はこれに関係ありませんけれども、この説明だけ……。
  32. 天田勝正

    天田勝正君 それには出てなくても、あなたは技術者でしょうから、多くは油のごときもの、金分のごときもの、これは採算上の問題があるから何%入っているか入ってないかということが、普通の場合のきめ手ですよね、この採算上やあるいは工業化する場合の。だから多くは定量分析でやるのだ、しかし、同質のものか異質のものか、イーグル号のものか他の船のものがあるいはそれが燃料用のものか、その他の油であるか、機械油であるか、そういうどこへ使う、どういう用途のどういう性質のものだという区別をするには、普通の場合はこうだと言っても、これは犯罪上のことなんですから、定性分析でなければならぬでしょう。常識でしょう。どうなりますか。
  33. 藤崎辰夫

    政府委員(藤崎辰夫君) 今の分ではわかりませんけれども、一般論で申しますと、今のお話しのように、たとえば非常に微量の青酸とか何とかいうものあるいは無機物でございますとか、ああいうものは非常にこまかいところまで測定可能でございます。ところが、今の石油系のそういう重油の質になって参りますと、一般には定性分析というものは、なかなか困難でございまして、これは別な行き方でいかなきゃいけませんです。できないことはないと思います。別な行き方に……。
  34. 安田敏雄

    安田敏雄君 ちょっと関連して。先ほど海上保安庁答弁では加害者として濃厚であると、したがって書類を作って送検した、こういうわけですね。そういう報告していますね。そうでしょう。
  35. 松野清秀

    説明員松野清秀君) 送検いたしましたのは、この海難事故につきまして刑法の業務上過失船舶破壊の容疑が濃厚であるということで、その容疑で送検したと、こういうことだったと思います。
  36. 清澤俊英

    清澤俊英君 どういうふうにして犯罪捜査をせられるか知りませんけれども、とにかくわしらが新聞などで見ておりますと、新聞などでいろいろの犯罪が出ますと、これは陸の場合ですよ、警察がいろいろのことをやりますが、全然手のつけようのない問題を取り上げるときには、聞き込みというようなことをやるですね。聞き込んで、いろいろそこでデマが飛んだり想像したいろいろな話があるやつを聞き込んで、それからだんだん探り当てて犯罪者をしぼっていく、網をしぼるとかいうことをしているわけです。そういうことがある。ところが、水産庁長官からのお話あるいは松野さんの報告にありますとおり、飯野海運自分らがやった、その被害を認めているとこういうのです。そうして話し合いに入っている、こういうふうに言っているのです。してみましたならば、犯罪捜査飯野海運と、どこをお前たちが認めるのかということをお話になったことがあるのですか。そうすればまた捜査の道が開けてきて、きょうの国会においてその後の経過という中にそれが出てこなければならぬ。飯野海運は何か聞きますところによりますと、その油を調べるためにヘリコプターを飛ばして見て歩いた。その結果自分らとしては、そこにある程度の被害を与えたことを認めている。だからわれわれとしましてもその場所においてはなるべく訴訟などをやめて話し合いでいきなさいと、こういう話をしてきておるくらいでおります。どうしてあなたのほうではそれがはっきりしないのですか。そういう重大なものは聞き込みとしていってみたらどうですか。おやりになったんですか。
  37. 松野清秀

    説明員松野清秀君) 犯罪関係から申しますと、かりにノリ被害イーグル号から出た油としましても、これは犯罪にはなりません。今の水産資源保護法にしましても、これは故意犯だけを罰するわけですから、犯罪にはならぬわけでございます。なお、その因果関係につきまして、ただ捜査過程においていろいろ調査いたしておりますので、私ども調査いたして参ったわけでございますが、私どもも船舶側の関係者からも、いろいろ事情は聞いております。それからその他時期的な関係とか、その他に流したものがあるかどうかというような点も調査して参っておりまして、そういうような四囲の状況から、先ほど申し上げましたように、そういうに濃厚である因果関係においては、やはりそういうふうに推測されるというふうに思料しておるということを申し上げたのでありまして、飯野海運とそういう問題について話したことはございません。
  38. 清澤俊英

    清澤俊英君 それは犯罪ということはちょっと言い過ぎかもしれませんが、海難にあって出したんですから、故意にやったわけではないわけです。それは犯罪とは考えられないでしょうけれども、捨てるべからざる所に廃棄した油が流れてきたものとはちょっと性格が違うと思います。思いますがこればやはりひとつのこれだけの大きな被害を与えますならば、今までもたくさん例があるのです。したがって、もっと深刻に何者が被害を与えたのかというくらいのことは、犯罪になろうとなるまいと、あなたのほうで調べるくらいのことはこれはあたりまえじゃないかと思いますが、結局犯罪でないからこれをおっぽり投げた、こういうお答えになるのですか。その点はっきりして下さい。
  39. 松野清秀

    説明員松野清秀君) 海水汚濁のような場合におきましては、それが犯罪に関係のあるというような場合におきましては、当然これは因果関係を究明する義務があると存じておりますがそういう犯罪に関係のない場合もそういう義務があるかどうかという点については、これは問題があると存じておりますが、先ほども先生も申されますように、いろいろそういう問題が起こっておりますので、私もやはりそういうような場合でもできるだけやはり捜査をするという含みでやって参っておるような次第でございまして、犯罪に全く関係がなければ放任するというような態度ではいないということは申し上げていいと思います。
  40. 清澤俊英

    清澤俊英君 私らが、あれは何日でしたか視察に行った翌日、情報を聞きますと、おそらく海上に滞留した油が船橋海岸を襲って船橋海岸で約五千万円くらいの被害を与えておる。これもいろいろな点を総合すると、この油が数日間海中に漂っておって、それがいりたんじゃないかと土地ではこう言っておる。こういうことについて水産庁報告を受けておりますか、同時にそういう問題が起きたということについて、今までの保安庁からの考え方としては、海上にそういうものが数日間まだ漂っておったというようなことはお認めになっているのですか。もう二十六日かに行方不明になったまま、もうそのままどこにどうなったかわからぬ、こういう考え方でおられるのですか。
  41. 村田豊三

    政府委員村田豊三君) 御指摘の点でございますが、ここの地区におきますここの油の浮遊状態がどうであったという詳細な報告は受けておりませんけれども、先般も申し上げましたように、十四日に遭難事故が発生いたしまして、十六日に地元の漁民がノリの採集に行って被害を発見したそのときに、もちろん付近に油が相当浮遊しておる。またその後に県の担当官現地調査に参っておりまするし、それらの人々の報告によりますれば、事件のありましたあとしばらくは、その周辺の海上には相当その油とおぼしきものが漂っておったことは事実のようでございます。またそれを、そんなものは跡形もないというふうに否定する報告は私どもは何ら受け取っておりません。  なお、先ほども水産庁長官からも申しましたように、これにつきましては、船舶側の飯野海運のほうでは、ある程度自分のほうのこれば責任であろうということから、もちろん科学的な分析はともあれとしまして、すでに両方の、漁民側の代表弁護士と、イーグルコリア号の側の弁護士との間で具体的な話が着々進んでおるところを見ましても、責任の所在がどこにあるかということは、おのずから常識的にはもうわかっておることじゃないかというふうに私どもは考えておるのであります。
  42. 東隆

    東隆君 私は先ほどからのお話を伺っておりまして、海上保安庁のほうのお考え方は、だれも故意でもって油を流したわけじゃないので、船を座礁さしてまで流すわけはないのですから、だから故意にやったことでないということはわかりますけれども、しかしこの問題は、ノリ被害を受けたほうが問題なんであって、これの原因をはっきりさせることが、これが必要だと思います。で、私は無過失損害賠償も当然成立をする筋合いのものだと思う。その場合に、今までのお話しでありますと、できるだけ責任をのがれるような、そういうような表現のされ方をされている。そこで、被害者に対して賠償をする場合に、何でも行政協定その他から言いますと、ノリのような被害については国が賠償をしなければならぬように規定をされておる、行政協定かなんかの中にそういうような規定があるように聞いておりますが、その点はどういうふうになっていますか。
  43. 松野清秀

    説明員松野清秀君) この行政協定の問題は、まあ私どもからちょっとお答えする問題じゃないと思いますが、間違っても困りますので、やはり調達庁に御質問願いたいと思います。私どもはただ行政協定にいう、該当するようなことにはなっていない、今のイーグル号でございますが、というふうに聞いております。
  44. 東隆

    東隆君 今の私の質問に対する答えにひとつもなっておらないので、逃げたわけですが、調達庁のほうからひとつ御答弁を願います。
  45. 天田勝正

    天田勝正君 議事進行。あのね、調達庁呼ばなかったそうだけれども、私はこれは当然出る質問が予想されるので、だから行政委員であれば別段他の人でも差しつかえないのです。だけれども、それは答えられないというのですからやむを得ない。あらためて呼んでいただくほかない。そういう手続きをして下さい。  それから立ったついでだから私も一つ伺いますが、ほんとうは水産庁質問するのですが、せっかく工業技術院から来ているのですからお聞きしておきたいのですが、この油が流れたのは、多分飯野海運のチャーターの船だろうということから、さっそく中和剤をまいたというのだな。現地でもそれは認めているし、この間の当委員会においてもそういうようなことが言われている。ところが、さっきの質問にも関連するのですが、定性分析でこの油とはこういう性質のものだということが明らかにならないので、その性質に適合した中和剤でなければならぬはずなんです。そうでなければ中和剤にならぬ。そうでしょう。もしその性質が、少なくとも飯野海運ではわかっておったればこそ、中和剤をまいたに違いないと私は思う。そうでなければ中和剤にならぬ。もし当てはまらない中和剤という場合になれば、あらためて海水汚濁をその中和剤投棄によって行なうということになってしまう。こういうことになると思いますが、そうではございませんか。そうでありますか。工業技術院の方と、それから次の水産に関係しますから、水産庁からも同じことについてお答え願いたい。そうでなければおかしい。
  46. 藤崎辰夫

    政府委員(藤崎辰夫君) 今の問題。私的確に知りませんですが、多分中和剤と申しますのは、重油を乳化する乳化剤じゃございませんでしょうか。
  47. 天田勝正

    天田勝正君 ございませんでしょうかとおれに聞いたって困る。
  48. 藤崎辰夫

    政府委員(藤崎辰夫君) 私も中和剤と言われてもわかりませんです。
  49. 天田勝正

    天田勝正君 だから、その油の性質がわかっているから……。
  50. 藤崎辰夫

    政府委員(藤崎辰夫君) だから重油みたいなものを、そういうものを乳化する。そして解溶性にしまして、水の中に、海水の中に溶けてしまう。
  51. 天田勝正

    天田勝正君 だからそれが油がないとすると、それ自体が汚濁になりませんか、海水の。
  52. 藤崎辰夫

    政府委員(藤崎辰夫君) そうは考えられませんのです。そんなにたくさん使いませんでしょうから。私も今のものをはっきり見ませんからわかりませんけれども、多分乳化剤じゃなかろうかという気がいたします。
  53. 村田豊三

    ○政舟委員村田豊三君) 中和剤の投棄の問題でございますが、中和剤が養殖されておりますノリにどのような作用を及ぼすものでありますか、中和剤の化学的な性質にもより、またノリに対する影響力等にもよることでございまして、にわかに断定はいたしがたい問題ではないかと存じます。
  54. 櫻井志郎

    ○櫻井志郎君 私は、各委員からいろいろ御質問が出ましたので、重複を避けて簡単にお尋ねをいたします。  この問題を当委員会で取り上げてからの審議の過程においての政府側の答弁、特に海上保安庁答弁は、失礼な言い分だけれども、私どもは十分納得しかねる。私は、この前お尋ねしたのでありますけれども採取した油が、分折したけれども同じものであるかどうかという判定に困ったのか、分析できなかったのかという話を聞いたところが、分析できなかった、こういうお答えであったのです。私は、分析できなかったということは、今の科学技術からしてあり得ないと、そう思います。分析してみたけれども同一のものであるということを実証するには十分でなかったということは言える。しかし、分析は不可能だということは、私はあり得ないと思う。この点は、過去を追及する意味ではありませんが、そういう事態がいつもくり返されて、こういう問題が起こるたんびに、この次からはこの次からはと、こういう答弁で政府側が終始をしておられる。そうして、この次からというその新しい事態が起こったときには、やはり同じような行き方で何となしにぼやけてしまう。今後私はこういうことが、ほんとうに今後あっちゃいけない。  もう一つは、これはこの前も申し上げたことでもありますけれども、いわばこういう犯罪、犯罪というたとえ言葉はよくないかと思いますが、犯罪というたとえ言葉を使うと、犯罪科学からいって、何も油が同一のものであったかどうかという点だけで問題を解決しようとするところに誤りもある。ある犯罪が起こった。ある犯罪が起こったら、その犯罪を起こした要因はどういうことであったのかということを突き詰めていって、この要因以外にはそういう犯罪を起こしたことがあり得ないという実証ができたならば、推定される要因はこれははっきりその犯罪の要因であった、こういう分析の仕方もあると思う。油の分析という問題だけじゃなしにそのほかの要因から分析じていってもこの問題をきめつけることはできる。私ばそういう見解をとる。  そこで、私は、過去の問題は各委員からの御質問で、御答弁は十分ではなかったのですが、前向きの形でお尋ねしたい。といいますのは、今後こういう問題は起こらないように善処をいたしますと必ず政府側はおっしゃいますけれども、起こらないように善処する具体的の方法いかん、私はこの点をはっきりしておきたい。そのためには今後こういう問題が起こることに備えて、少なくとも関係省間においてどういう方法によって問題を究明し、要因を追及するか。どの省がどういう責任でどうやっていくかということぐらいは、関係政府機関の間ではっきり協定を結んでほしい。まずこの点についていかがでしょう。関係省からお答えをいただきたい。
  55. 村田豊三

    政府委員村田豊三君) この問題につきまして、被害者の立場に立たされます水産関係代表いたしまして、水産庁の立場を卒直に申し述べますと、先般も当委員会でいろいろおしかりをいただきましたように、油によりまする水産物の被害というものは、年々非常に発生件数が多いのであります。しかも、その発生いたしました原因等につきまして、いろいろな角度からの究明が行なわれましても、なかなかそれに時間がかかり、あるいはうやむやのうちに終わるという事例も多いのでございまして、こうした事件が今後発生いたさないように事前の措置を、これにはいろいろあると思います。行政面からもございましょうし、あるいは国際条約の面からもございます。そういった面につきまして、やはり私どもとしましては事前の防止策は何と申しましても外側から、そういう影響が外部から加わってくる問題でございますので、そういう外部から加わる影響を極力防止する措置関係各省にお願いする必要があると存じまして、先般来申し上げておりますように、油による海水汚濁の防止に関しましては、国際条約にかけて日本も調印をいたしておりますが、まだ批准にも至っていないような状況でございますので、これらにつきましても、絶えず外務省等を通じまして関係各省に協力を呼びかけておるような次第でございまして、今回のこうした事件を契機にさらに、そういった未然に防止策が促進されますことを念願しておる次第であります。
  56. 櫻井志郎

    ○櫻井志郎君 村田次長の答弁は、予防対策についての考えを述べられて、事件が起こってからどうするかという私の質問に対してはお答えになっていない。
  57. 村田豊三

    政府委員村田豊三君) 事件が発生いたしました場合には、やはりこれは当然その発生いたしました事件の原因の究明ということがまず第一に迅速にとられて参らなければならないと存じます。その原因の究明につきましては、その発生しました事件の種類によりまして、これまたいろいろ関係各省間の立場もございまして、これにつきまして当然関係各省の御協力を願わなければならないと思います。もちろん水産庁といたしましても、水産庁の立場でできまする原因の究明ということは、これも当然にいたすべきことでもありまするし、また出先にそれぞれ関係府県庁もあることでありますので、そういう形では水産庁それ自身としても迅速な措置が必要だと考えております。
  58. 辻章男

    政府委員(辻章男君) 海運局といたしましては、今の御質問にぴったりいたさないかとも存じますが、海水汚濁の問題がだんだんとやかましくなって参りまして、実はこれにつきましては、先年ロンドンにおいて各国集まりまして、油によりまする海水汚濁防止の会議がございました。まだ日本ば批准していないのございますが、最近の情勢にかんがみまして、実は現在ロンドンでまたその会議があるのでございます。私のほうからも代表が行っておりまして、その改正案の内容を検討いたしまして、できるだけすみやかに批准して施行したい、かように考えておる次第でございます。
  59. 東隆

    東隆君 今の御答弁というか、お話から考えまして、一九五四年の油の云々ですから条約は。それがなぜ日本で批准をされなかったのか、その理由をひとつ明らかにして下さい。
  60. 辻章男

    政府委員(辻章男君) この海水汚濁の条約の基本となっております点は、ある一定の水域に油を遺棄しないということが重点でございまして、そのために船舶に対しまして油水分離機のような施設を備えさせるということ、でございますから船といたしましては、油水分離機で油と水を分離いたしまして、油分を航行中船に積んでおきます。それで港に入りました際に、一定の施設を持ちましたところでこれを処理する。したがいまして、港におきましてそういう廃油の処理の施設が必要なんでございますが、船に施設をつけますことは、特に今小さな船につきましては、非常な負担になるという点と、それから港湾にそういう施設をするという点につきまして種々の困難がございまして、そのために今まで批准をいたさなかったというおもな理由でございます。
  61. 櫻井志郎

    ○櫻井志郎君 どうもあまり満足な御答弁がいただけないのでありますけれども海上保安庁神奈川県の工業試験所に頼んでおる。それから千葉県側がどこでしたか、どこか別のところに頼んでおる、こういうあり方ではなしに、私は問題の究明を積極的に解明するという政府側に熱意を常に持ち、そういう事態が起こったらば、急速な原因解明の方法をとる準備態勢というものを常にとっておく、何も人をそろえておきなさいということを言っておるのじゃないのですよ。たとえば神奈川県の工業試験所に頼んだ、そしてこの委員会で何度も何度も催促して、その結果二十何日間かの時間をつぶして、そのあとで分析不能でございました、こういう回答が出てきたのでは、だれしもが納得されない。おそらくだれも納得できないと思う。私与党でありますから、あまり政府にきびしいことを申し上げるのはいささか差しひかえなきゃならぬかとも思うけれども、(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)いや、個人的には思うのだけれども、どうもだれしもそういう点では納得されない。であればこそ、前向きの姿勢で今度こういう問題が起こった場合に相変わらず今度のような結果からいけば、時間を浪費したような形で終わるということはこれはもう耐えられぬ。ですから、今度こういう事態が起こった場合には、どういう方法をとるのだという基本的な方針くらいは、少なくとも水産庁海上保安庁で協議を作っておかれる、このくらいのことは当然じゃないかということですが、いかがでしょうか。もう一度その点について御答弁をお願いいたします。
  62. 村田豊三

    政府委員村田豊三君) ただいま櫻井先生の御指摘の点、まことにごもっともだと存じます。実はこの問題が発生いたしましてからも、私ども再三海上保安庁とも連絡もとって参ってきておるのでございますが、御指摘のようにこういう問題が今後発生しないとは保障できない問題でございます。これにつきましてただいまの御指摘の御意見さらに尊重をいたしまして、さっそくにまた海上保安庁等とももしこれについて具体的にたとえば何かこういうボタンか何か一つ押しますと、直ちに出動態勢がとれるとか、そういう性質のものであるかどうか、多少問題もあろうかと思いますが、そういった具体的な点は、関係各省ともよく具体的に検討をいたしまして、態勢といたしましては、ただいま御指摘のような前向きの態勢で迅速なる臨機応変の措置がとれたのじゃないか。これはもちろん、そうすみやかにといいましても、おさまる問題ではございませんのですけれども、もちろん水産庁はそういった関係の各省にそういう積極的な御協力を願います立場にもございますので、十分関係の各省にお願いをしまして、そういう態勢をとれるような方法を検討させていただきたいと思います。
  63. 松野清秀

    説明員松野清秀君) 今後水産庁とも十分協議をして、遺漏のないようにいたしたいと思っております。
  64. 櫻井志郎

    ○櫻井志郎君 もう一点だけ、先ほどちょっと御触れになりましたが、一九五四年の条約ですね。この批准を急がれる意思があるかどうか、外務省からお答え願います。
  65. 山中駿一

    説明員(山中駿一君) 一九五四年条約は、どちらかと申しますとヨーロッパ方面の国の沿岸の汚濁防止の目的で規定ができておりまして、日本のようなぽつんとほかの国から離れた国に必ずしも適用しないような条文がございまして、今まで批准しておらないわけであります。しかしながら、日本は主要海運国でございますし、国際協定、国際協力の立場から、できるだけすみやかに条約を批准したいと考えております。で、五四年条約はその後各国から修正意見が出ておりまして、この三月の二十六日からロンドンで改正するための国際会議が行なわれております。四月十二日まで行なわれます。それにおきます日本代表団に対しましてできるだけ日本が早期加入できるような規定に改めるように訓令いたしております。各国の修正意見日本が加入しやすいような方向に向かいますならば、これはあるいは早期加入が実現するのじゃないかと考えております。
  66. 天田勝正

    天田勝正君 あなたがそういうことを今、答弁されて、どういう立場の人かわからぬが、そういう答弁をしていいのですか。おかしいですよ、それは、北欧の国々には適用される条約で、日本のように飛び離れているところは、あまり関係ないと言ったけれども、そんなことを言ってよろしいのですか。おかしいよ。だってここには三十二カ国が署名しておりますよ。  日本はもちろんそのとき署名している。署名したというのは、賛成したから署名したのです。この条文をずっと私見ましたけれども、あなたのおっしゃるように北欧諸国なりヨーロッパ諸国なんというけれども、どこにも書いてない。どこの国にでも適用するように書いてある。この条文が手元にある。私は全部これを読んでみた。ですから日本政府としては、とにかく賛成したのですよ。賛成したから調印してきたのです。調印してきた以上は、直ちに国会に批准手続をとるべきなんです。そうして今ごろになって、各国ともこれには改正案がございます、なんと言ったって、これは締結してから八年もたったから、いろんな情勢が変わってきたから、前のも確かにけっこうであるけれども、それにさらに付加したりなんかしたほうがいいというので、改正意見が出ているはずなんです。何か今までのはあまり日本関係ないから、国会に批准手続をとらないようなことをおっしゃるけれども、それはあなた内閣の方針として承ってよろしいのですか。それだったら、ほかの委員会、あるいは予算委員会等で必ず問題になりますよ。日本政府はけっこうだとして賛成しているのです。賛成しているものを、国内法整備の関係から、あるいはそれは私は上手な言葉で言ったけれども、ほんとういえば船会社が反対したから、費用をかけるのをどうも工合が悪いというので出さずにおいたのですよ、事実はどうなんです、これは。
  67. 山中駿一

    説明員(山中駿一君) 先ほどの私の答弁がもしそのような印象を与えておりましたならば、申しわけないと思います。ただいまおっしゃいましたようなことでございます。要するに国内法の整備が、あるいはその国内的な措置がいろいろ問題がありまして、ただいままで批准しておらない状況であります。
  68. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 ごたごたとこの前から質問しているのですが、簡単にこの事件ですね、この事件についてはっきり伺いたいのです。国民の立場からこの事件についてのいろいろな扱いについて、国のどこが責任を持つのか、こう聞いた場合にはそれはどこですか。このノリ被害が起こる、その原因は油である、この種の事件を扱う、国の援助を受けて加害者側との民事的な損害賠償なら賠償を請求する、それらに対して国の援助を受けたい、そういうときの国としての責任者は窓口はどこなんですか。
  69. 村田豊三

    政府委員村田豊三君) 被害を受けます者が漁民でございますので、その漁民の救済措置を講ずるという立場からば、水産庁が当然窓口になると解します。
  70. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 では水産庁は救済の面だけ、じゃその原因究明の部分は客観的に自発的に自動的に海上保安庁なのであって、水産庁としてはその部分までは責任がない、こう言うのですか。
  71. 村田豊三

    政府委員村田豊三君) 水産庁被害を受けました漁民に対する応急の措置なり、あるいは恒久的な措置を講じます場合に、いろんなこれは原因によりまして措置の態様も変わってきております。たとえば天災の場合でございますれば……。
  72. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 いやいいんですこの問題だけで。
  73. 村田豊三

    政府委員村田豊三君) この問題でございますれば、やはり普通の天災などとは原因が違いまして、まず、その原因の究明ということが当然必要になってくるかと思います。この原因の究明につきましては、たまたま今回のこの事件は、外国の船が座礁しまして、その油が出たと思われるということから、海上保安庁なりその他の立場からのその原因の究明をお願いしておる筋でございます。
  74. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 だから海上保安庁が自発的に自動的に任務、責任としてノリ被害関係まで調査をする、そういうものであって、水産庁はあずかり知らないのです。水産庁は原因を究明してもらうということで、他の関係機関水産庁の責任で要請してその究明に当たっているのですか、その点ははっきりしていただきたい。  海上保安庁は、どういう職分によってノリ被害の油と、このイーグル号の油と同質であるかどうかということをわれわれに追及されていると思っておるのですか。迷惑だと思っておるのじゃないですか、本分ではないと思っておるのですか。
  75. 松野清秀

    説明員松野清秀君) 犯罪捜査の面から、海上保安庁はそういうやはり原因を追及する責任があると感じております。
  76. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 じゃあ水産庁
  77. 村田豊三

    政府委員村田豊三君) ただいま海上保安庁から御答弁のあったとおりだと存じます。
  78. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そうすると、水産庁としてはぜひこういう点を、原因を究明してもらいたい、自分では究明する手段を持っておらないから、海上保安庁に、あなたの職分なんだからしっかりやってもらいたい、こういう要請をし、そうしてただ海上保安庁がやった報告を受けて、さようでございますか、ではこうでございますと、それを代弁するだけなんですか。責任の主体を持っておる政府機関はどこなんです、この事件について。水産庁海上保安庁との共同責任だと、こういうのですか。
  79. 村田豊三

    政府委員村田豊三君) 原因の究明の問題は、これは今後の損害賠償その他の問題と関連する問題でございますが、一たん発生しました損害につきまして、損害賠償の問題を離れましても、いろいろ漁民の今後の救済措置というものは、当然これは沿岸漁民の救済に関する問題でございますので、そういう面からの対策は、水産庁が県当局と十分連絡をとりながらやっていかなきやならぬと考えております。
  80. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 私はそういうことを聞いておるのじゃないのですよ。最終的にどこまでもこの事件を究明し、事態を明らかにして損害賠償なら損害賠償の問題で漁民が不利益を見ないように、あるいはその他、国がこの被害を受けた地域について援助の手を伸べるなら援助の手を伸べるということ、それをやる官庁はどこなんですか。責任を持つところはどこなんですか。私たちは海上保安庁にだけこうして、お前たちは何でそんなしっかりした調査をしないのかなどと追及しておって、それをただ水産庁では、それはそちらのほうだというので聞いておると、どうもこの態度がおかしい。じゃあ、海上保安庁から水産庁としては一切の報告を受けておって、それだけが資料である。こういうことですか。飯野海運と業者とがとやこうしておるなんということは、それはよそ見の話なんです。そうでなくて、この問題は、これこれこれこれであるから、飯野海運においてこれが損害を賠償せられるように関係業者団体等を援助してその始末をしてやるのだ、こういうような態度が水産庁に出るとすれば、その原因となるものについて客観的な資料がなくちゃならぬでしょう。さっきから油の質がどうとかこうとかいっているのは、物的証拠なんですけれども、櫻井委員がいうように、物的証拠がなくても、状況証拠によって先ほど海上保安庁のほうから話しされたように、これ以外にここにくる油は他にないのである。そう推定され、その推定滞留面積はどれどれ、どれぐらいの海域であってこういうこうである、かりに民事訴訟が国際的に起こって、そうして争いになっても、この状況証拠を持って関係団体から必ず出させることができる、そういうような資料水産庁持っておるのですか、そういうことを聞いているのです。あとでわけがわからなくなってしまって、泣き寝入りをさせられることをおそれるから、われわれは調査をしてもらいたいと思っておるのです。損害賠償の問題を国みずからなり県なり、それぞれ直接間接この救済なり対策を講じなければいかぬ問題でしょう。その責任はどこにあるのかということを聞いているのです。かりに事件になって、法廷でさあ証拠を出せとなった場合には、これは海上保安庁まかせで水産庁は知らぬというのですか。はっきりしたものを持っておるのですか。
  81. 村田豊三

    政府委員村田豊三君) 確かに御指摘のように、この事件の原因のきめ手になりまするそういう科学的、技術的な分析の結果がはっきりいたさないことは、まだ今日に至ってもはっきりいたさなかったことは、非常に残念だと思いますけれども、ただ先ほど来、いろいろ諸先生から御意見も出ましたように、これはそういう油の分析の結果がどうこうということだけで、それをただいたずらに手をこまねいておるわけじゃ参らぬと私ども考えております。また、私ども本件加害者とおぼしき、推定されます船舶がアメリカの関係の会社でもございますので、大使館にも何回もこの問題の善後処置の促進につきまして、水産庁から担当官が出向きまして協力を要請したりしているような次第であります。また、私どもも、すでにそのような意味で、外国のほうの会社側もこの問題については、そういう示談的な解決といいますか、善後解決におきまして、すでに相談に応ずる態勢に入って今日まで参っております。ただ御指摘のように、その際にも、もし一たんその話が不調に終わるようなことでもございますれば、ただいま申しました油の分析などということは、やはり重要な問題にもなるわけでございます。その点十分確実な分析ができ得なかったことは、返す返すも残念でございますけれども、そのためにこの事件がうやむやに終わるということであっては相ならぬと思いまして、そのつもりで今後対処して参りたいと、かように考えております。
  82. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 どうも私聞いていることは、そういうような問題を聞いているのじゃない。そういう、あなたが言うように、大使館に話をして協力を求め、飯野海運との間に話し合いを進めるとしても、物的証拠が見つからなかったらやむを得ない、認めましょう。それはしかしながら、推定される、のがれがたい状況証拠というものは、はっきりと持っておられるのかということを聞いているのです。それがなかったら、示談といいましても、非常に幅のある問題になって、不調に終わるか成立するかわからぬのです。これこれのものは、確かにあなたのほうは、これは油の、責任上起こってきたものであるという、そういう状況証拠というものばあるのですかと聞いているのです。またそういうことについて、唯一の証拠を出せるところは水産庁なんですか、海上保安庁なんですかというのです。
  83. 村田豊三

    政府委員村田豊三君) 水産庁といたしましては、直接この被害の原因の究明は担当いたしておりませんので、原因究明という立場からの証拠というものは持ち合わせていないのであります。
  84. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それなら、ただ客観的には、いかなる油であるかはわからないが、油によるノリ被害、この範囲だけしかあなたのほうにはわかっていないというのですか、それなら、飯野海運との間に何で話を進めるのですか、飯野海運であるか、どこの会社であるかわからないのじゃないですか、私の言うのは、イーグル号の油によってこれこれの被害が起こったのだ、それは油の質については鑑定できなかったけれども、空中写真なり、あるいは現地におけるノリ被害状況等から見て、これこれなんだという状況証拠があるのかと聞いているのです。
  85. 村田豊三

    政府委員村田豊三君) 前回の当委員会でも私お答えをいたしたのでございますが、油の分析という見地からの確実な証拠のございませんことは御承知のとおりでございますが、ただ、先般も櫻井先生からも御指摘がございましたように、あれだけの集中的な被害があの事実、集中的に発生しているというこの客観的な事実、またその当時あの周辺に物好きに大量の油を流したという人もない、たまたまイーグルコリア号がそこに座礁した、座礁して油が流出したという事実以外にないという、そういうむしろ客観的と申しますか、常識的な判断に基づけば、当然これが原因ではなかろうかという立場で、私どもも善後処置を講じていいのではなかろうか、またそれを裏づけますように、イーグルコリア号日本側の代理店におきましても、すでに事件の善後措置についての話し合いにも乗っておりまするし、また、私どもが県庁の担当官から連絡を受けましたところでは、その会社はどうも自分のところのようでございますということも暗々裏に認めているというふうに聞いておりまするので、そういう立場から善後策を至急に講ずる必要があると判断しているのであります。
  86. 安田敏雄

    安田敏雄君 議事進行。あのね、小笠原委員の聞いているのは、原因の究明も被害対策も合わせて水産庁が持つのか持たないのかということなんです。水産庁の責任でこれはやるのか、そういうことを聞いているのですよ。これはどうですか。
  87. 村田豊三

    政府委員村田豊三君) 水産庁自身といたしましては、原因を究明する場合に、たとえば両当事者が正式にその意見を表明しますれば、これは簡単なことで済むのでありますが、今回の事件のように、また従来もしばしばあるのでございまするが、海上に浮流する油によってノリ被害を受ける、その原因の究明は一体どこがやるのかと申しますと、水産庁それ自身はそういう原因を究明する機関は直接持ち合わせておらないのでございます。したがいまして、当面その被害の発生しました関係県庁なりその他が、被害を受けました漁民と相談をしながら、適当な機関に、もしそれを分析する必要があれば分析もいたしましょうし、話し合いをする必要があれば話し合いをするというようなやり方で措置をして参っております。
  88. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 あのね、どこかの県が必要があれば原因を調べるのだとか、いろいろのことをあなたはおっしゃっているがね、水産庁調査をする機関を持ち合わせない、よろしいそれは。しかし水産庁自分の責任で原因を究明すべく、ある場合には海上保安庁、ある場合には県、ある場合にはどこというふうに、水産庁自身が主体的に原因を追及しまうと、こういうことをやるのかやらぬのかということなんです。その必要は私のほうはないのでございます、それは県なり何かがおやりになったらいいでしょう、こういうことなのかというのだ。何かあなたのほうは、今回の事件については、その部分だけは第三者的な立場で、はたに立って見ているような格好なんです。
  89. 村田豊三

    政府委員村田豊三君) 御指摘の点でございますけれども、役所の機構と申しますか、権限と申しますか、その面から申し上げますと、第一義的には、被害が発生いたしますると、役所の立場でこの問題を処理するということになりましたときには、今までは県庁がこれをまず処理の責任の第一線に立ってやっておるのでございます。そのまた事柄の性質によりまして、県から報告を受けたりいたしますと、またそのために必要な応援なり援助ということは水産庁もいたしております。もちろん、水産庁がして悪いということではございませんけれども、行政組織の建前上は、第一義的には県庁がまずこういう事件の処理に当たっておるのが通例でございます。
  90. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 行政組織的にはなんて、何をあなたおっしゃるのですか。それはそれでいいでしょう。それはそれでいいでしょうが、あなたのほうは報告を受けたところこうだ、そうして何かの場合に、将来それは事実にたがったというときには、それは調べた県が悪かったんだ、私はあずかり知らぬ、こういうことになるのですよ。そんなばかなことはないじゃないですか。ましてこれは国際的に事件となれば争いになる問題なんだ、それを県限りで調査する、それでもういいのだ。そうでなくて、水産庁自身がノリ被害対策をやろうが、救援措置を講じようが、もろもろの措置を講じようとするとき、自分みずからもさまざまな方面においてこれが原因を究明し、客観的な事実に基づいて幾多の施策をとらなくちゃならぬでしはう。県から出てきたものをうのみにしてやるなんということは、行政組織法上も、自然災害か何かの査定なんという場合にそんなことをやりますか。査定官なり何なり派遣して、現地に当たってみて、そうして報告書と照らして、そうして水産庁なり農林省自身の責任で査定し、災害額を決定するのじゃないのですか。またその際には、原因だって究明されて、いろいろな措置が公共事業なら公共事業として行なわれるのじゃないですか。何にせよ、水産庁機関を持っていなくても、もう水産庁自身が最高の、最終の責任を持つ。一切のものはそこに行りたらもう人知を尽くして調査し得た資料というものはあるのだ、そういうような形になっていなかったら、それば漁民としても不安心でしょう。あるいは県にまかせておるなら、県の報告を取ったら、その報告が吟味されてこれが妥当であろうというような措置をとったらとったで、そういうものを確固動かない一つ資料証拠として水産庁はお持ちになっておられなくちゃいかぬでしょう。それが個々ばらばらにいろいろな証人や証言が出てくるということだったらどうなりますか。あるいはがんばって逃げを打たれたらどうなります。私はだから最初から聞いているように、櫻井さんの御質問もありましたから、こういうものはどこが最終的に責任を負うのだ、どこに行って聞いたら事態の真相というものが明らかになるのだ、こういうことを聞いている。それを行政組織法上その方面千葉県でございます、私のほうは対策でございます、そんなことを言っておられますか。政務次官、これでいいんですか。
  91. 中野文門

    政府委員(中野文門君) ただいまの、船が故意でなしに座礁によって事故を起こして、客観的情勢から判断をした場合に、その船から流した油でノリ被害が起きたということ、そのことにつきましての最終的と申しますか、取り扱いの責任官庁はどこであるか。責任はどこで持つべきか、最初から最終までの積極的な取り扱いの立場の政府機構がどこであるかということにつきましては、非常にこれは当然の御質問でございまして、明快にその事柄についてこの席で右左の御答弁を申し上ぐればよいのでございますが、直ちにこの席で私申し上げるわけに参りませんので、至急に十分にひとつ検討と申しますか、その間の事柄を明らかにいたしまして、すみやかな機会に御答弁さしてもらいたいと思います。と申しますのは、私自身農林省の内部におって政務次官を拝命しておって、何もかも知らなくちゃならぬわけですが、そういうわけにも参りませんし、特にこれがまあ常識的な私の考えかも存じませんが、船が座礁して油が流れて、沿岸の漁民が、沿岸ノリが大きな被害を受けた。それだけのことを見まする場合に、これが故意でないという限りにおいては犯罪ではないでございましょう。しかし、事実は船の油によってノリ被害を受けた。農林省の立場から、かりに私自身の判断で考えてみました場合に、先ほども水産庁の次長が申しましたように、直接この沿岸漁民の救援と申しますか、援護措置につきましては、これは水産庁の積極的な働きが当然の義務として私はあろうと思いますが、ただその場合に、たとえば訴訟する場合に、それがその事件に対しまして訴訟を起こすような場合には、一体訴訟者が国であるか、その被害を受けたその漁民であるかというようなところからも、その権利の主体と申しますか、事件の進捗、事件を推進する主体が国であるか府県であるか、被害者の漁民自体がまず第一義的なこの関係者であるかというような点が吟味されなくてはならぬと思いますが、本件に関しましては、これは従来たびたび事例もある、油による魚介あるいはノリ等の被害の例がたびたびありますので、その事柄について将来もこれは必ずあるでございましょうが、そういう場合に国の機関がどのような形で、おのおのの分野、どこが責任を持って直ちに事件を究明し解決をすべきであるかというようなことが、どうも私今皆様方のお話を聞いておりまして、みずからまだ判断に苦しむ点がございますので、これはそういうことであってはならんと思いますが、十分に今どこに責任があるか、水産庁は一体積極的にこの事件をどこまで処理すべきか。義務と申しますか権利と申しますか、農林省水産庁の立場というものがどこで線が分かれておるかということにつきましては、一口にここでお答えをする私自信がございませんので、すみやかな機会に御答弁をさせてもらいたい。かように思います。
  92. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 援護なり事後の対策をとるためにも必要ですし、のみならず事外国船舶との関係で、示談であろうが争いであろうが問題を処理しなければならん。その当事者が争いの問題でも示談の問題でも話し合いを進めるという場合一つ例にとってみても、あるいは援護の対策をとるにしても、どうしてこういうものがどの範囲に被害を受け、その被害ばどの程度のものであるという客観的な事実というものは、これは県のきめ方、国のきめ方、当該被害者のきめ方によって違うんですよ。同じわれわれがもらっておる請願なり陳情書を見ても、ある地域々々によってはその被害総額の決定の基準等、みな違う。そして総額的なものも違う。それらが千葉県なら千葉県でとりまとめられて国にくる。国はどの程度のものが客観的にそれは被害があるのか、最終的な決定をしておけば、それは動きがたいものとして相手方との間にそれが根拠になって主張できるという問題もありましょうし、あるいは外交的に大使館の協力を得るにしましても、客観的なそういう事実関係というものが国の責任において明確にしておかなければ、ただばく然と協力をお願いしますでもいかんでしょう。被害総額というものをはっきり打ち出さなければ対策もとれないでしょう。それらを調査の結果とりきめするのは、私は水産庁だと思っておる。千葉県の水産課なら水産課が調査してあがってくるというのは、これは千葉県の水産課の千葉県行政が持っておる固有の事務ですか、それは。そういうことは国として機関委任している事務ですか。それやこれや考えれば、あなたたちは出先出先と先ほどから言っておりますが、結局そういうものを集計して最終的にきめるものは、国の仕事だと私は思っておるんです、災害の関係は。そういう客観的な事実、資料関係状況証拠というものがなければ、あらゆる場合に問題になるだろう。したがって、それらをはっきりさせておいて最終的な責任をとるところは、水産庁なら水産庁でということを明確にしておいて、その上に立って他の関係機関協力を受けて、関係ある漁民に多くの損害を与えないような取り組みを水産庁としてすべきではないか。こういう趣旨から私は重ね重ね質問しておるんです。
  93. 村田豊三

    政府委員村田豊三君) この種の被害が発生いたしました場合に、それに対しまする救済措置、あるいは善後措置を講じまする行政面からの第一次的な官庁は、県当局だと私は解釈しておるんでございますが、本件のように非常に問題が範囲が広範で、関係各省にも連絡のありまするような問題は、やはりどうしても水産庁が県だけにまかせきれないで、県ともちろん十二分な連絡はとりまするけれども、中央における取りまとめ役的な立場には立ちまして、積極的にこの事件の解決をはかるような措置を講じて参るべきだと考えます。
  94. 天田勝正

    天田勝正君 どうも今の小笠原委員との質疑のやりとりですがね、あくまでも第一次的には地方庁だ地方庁だと言い張るんですがね。たとえば加害者のない農業災害のごときもの、雨が降った、風が吹いた、こういうようなものはどこにも加害者はいないんですよ。天然自然のものなんですよ。だけれどもそれだって第一次的には市町村、県なんですよ。だけれども結局国会でこれが議論される場合は、取りまとめた責任者は農林省でしょう。われわれは一々県知事を呼び出したり、県の食糧事務所長などを呼ぶわけにはいかない。そういう取りまとめの責任の官庁というものがなければ、今後当委員会において国政を審議する上においてまことに差しつかえる。第一義的にはほとんどのものがこれは末端の地方自治体に違いない。そこのところをはっきりしてもらいたい。  もう一つ、これは議事に私も協力する約束をしましたから、早く実は済ましたいと思っておる。で、これは委員長にもお聞き取りおき願い、かつ水産庁あるいは政務次官なんかでけっこうですが、お答え願いたいことは、過日の委員会において私はこの提出されましたこの資料について質疑をいたしたんです。これは三十九か例示がされておるんです。この今回と同様な被害が三十九、それを見て何分の一でもスズメの涙ほどの補償をされたというのは、二つか三つしかないのです、これには。二つか三つしがなくて、はなはだしいのになると、原因がとうとうわからなかったというような対策なんです。あるいは自然にしけがきて、そしてつい油なんというものは行方不明になってしまったというのが対策なんです。これは対策じゃない。もっとはなはだしくなると、対策の欄が白紙でちっとも書いてない。何も書いてない対策というものはないはずじゃないですか。こうやったんだ。そうしたところが、そのときの答弁は、これはさっきからの答弁と同じように、それは県からあがってきたものでございます。私どものほうのあずかり知らざるところでございます、こういう答弁だ。それではそういう資料を要求するときに、事水産に関する限り、委員長、私どもはどこに資料要求するんです。一々地方庁へ行って、水産課というのか何というのかそこに行って、資料要求しますか。国会法には資料の要求ができると書いてある。できるというのは、法律解釈上出さなければならないと解釈すべきだというのが統一見解だ。いいですか。そういう場合にこれは委員長がこの委員会を主宰をなさるについても今後問題だと思う。この資料は一体われわれはどこへ要求できるか。できるということは、出さなければならないという解釈だという。この点どうです。  それから同時に、水産庁のほうにおいてはそれでは私どもの責任においてちゃんと調べて、そうして資料を提出いたしますと、こう申されでおったんだけれども、それはどうなっておる。この点を伺います。
  95. 村田豊三

    政府委員村田豊三君) 先般天田先生から御指摘のございましたその資料の中に、対策等についてブランクのところがあったというおしかりをこうむったのでありますが、あの資料は、当委員会からの要求がございまして各県に照会をいたしまして、その照会のままを印刷に付した次第でありまして、御指摘のように対策がそのままブランクになっておる、はなはだこの点は申しわけないと思っております。先般も申しましたように、これらにつきましては、水産庁といたしましても、対策の不明なもの、あるいは報告の内容の不明なもの等につきまして、ただいまあらためて県庁に再調査をいたしておりますので、できるだけ早い機会にこれらの点を明確にいたしたいと存じております。なお、今後こういう問題につきまして、十分水産庁といたしましても、県のそういう被害についでの報告等につきましても、積極的にそれらの措置が講ぜられまするような配慮を加えつつ、県庁の指導に当たりたいと存じております。
  96. 天田勝正

    天田勝正君 それで、もうやめますがね。とても果てがない。要するに、農業災害なんかの場合に、それはそれぞれ農林省の農地局なり振興局なり、いろいろな局がありますけれども、そのそれぞれの局においては、県庁からも報告を求めたり資料も取りますよ。取るけれども、それは自分たちの行政処理上便利だから取るんであって、国会に対しては、農林省のそれらの各部局が責任を持って出してくるというのがこれは普通でしょう、委員長。それを内部の説明をされて、千葉県なら千葉県、神奈川県なら神奈川県のほうに責任があるんだというような言い分をするもんだから、皆さんがわからなくなるんだし、私もわからなくなる。そういうのでなく、それは内部的には行政運営上の便宜として、地元の漁業協同組合からも聞くこともあろうし、県庁からも聞くこともあるだろう。しかし、少なくとも国会、当委員会においては、水産庁が取りまとめて、その答弁なり資料提出なり、あるいは対策なりについては当たるというのでなければ、今後水産問題のこの運営を委員長どうされる。そうして、私ども資料の提出については、あくまでも水産庁に求めるんだ、こういうことでよろしゅうございますか。もし委員長が即座に御答弁が無理だとすれば、速記をとめてこの点協議して、きちっときめておかないと将来困るですよ。
  97. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  98. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 速記を起こして下さい。
  99. 清澤俊英

    清澤俊英君 さっきからいろいろ質問しておりますが、どうもやっていることには、本腰のところが見えないんだ。見えませんでしょう。だから、飯野海運との話し合いが、飯野海運である程度まで被害をこうむったんじゃないかというように言うておる。これはそれも非常にあいまいな話なんだが、飯野海運とどんな話し合いをしたんだ、いろいろ話し合いもしてみました、こういう答えがあるけれども天田君の質問に対して、何とか中和剤の問題、そういうものは何にも知らない。私は、少なくとも飯野が、そういうことを自分のほうで、県庁や漁民の話から見れば、大体認めておる、こういうことがありましたならば、どういうところをどういうふうに認めておるんだかぐらいのことは、ちゃんと聞き出して、当人も、飯野も言うておるから、われわれとしても、結論として大きな疑いを持っている、海難によって流されて出た油で災害をこうむらせたのじゃないかと、こう考えておる、これぐらいのものはつけてもらいたいんだ。そういうものに対して何らないんだ。こまかいことはやっておらないというんだね。これが一点です。だから、これをどうしろとか、いいとか悪いとかいう御返事は要りませんよ。  第二点としては、今の問題で、どこに責任があるかという問題で、その油の性質というものを探し出す場合、過去の例からいっても、なかなか海面に浮かんだ油とか、あるいは数日を経た油とか、護岸についた油とか、網についた油とかいうようなものが、今までの経験からいくと、大体被害を加えるのであろうと思われる船の油とは性質の違ったものができてくる。それはあるいは水の関係や、天気の関係や、温度や、いろいろ私は科学は知りません。知りませんが、そういうことによって変質をするのではないかという疑惑があるから、したがって、そういうものをあらかじめこういう油をどこで流した場合、何日間海上を漂流しておって、どういうところへこの油が着いた、そうした場合にその結果はこういうむのが出たというくらいのことを常に試験しておったらいいじゃないか、こういうのです。それは大体だれがどう考えてやるのか。きょうは私はそれをお聞きしょうと思った。  それから第三点としましては、先ほども言われておるこの事件後、油が海上を漂流したことは認める、こういうのであります。その油はそのまま放置しておいて、十数日を経て、現に船橋の漁場を荒らしておる、こういうものに対しては、一体どう処置しようとしておられるか。結論からいきますならば、これだけの被害を与えておる重大問題が、もっと真剣に被害を与えないようにするための海水汚毒というのですかの問題等を、法律をもって規定して、相当の経費をかけて常に調べておく必要があるのじゃないかと思う。そうじゃなかったら、いつまでたっても、こんなものは片づきやしない。今出されておる被害の件数、その内容等の調査、あれに漏れたものが幾つあるのだかわからない。私らが聞いているだけでもまだたいへんある。そういうものはみな伏せてある。これだけじゃないのです。それを沿振法における沿岸振興としては、養殖にこれから大いに力を入れるのだ、こう言うておられる水産庁等が、このままこれを放棄しておいて、何が沿岸漁業の振興になるのか、もっと本気でやってもらいたい、こういうことを私は言いたいのです。農林次官どうです。今までの経路で話し合うだけでなく、私のいう沿岸漁業の振興、これからのあり方について、こんなものが発生したら片っ端からだめになるでしょう。そういうことについて根本的に何か考えるのか考えないのか。これが一つ。  その次には、先ほど伊東さんの説明によりますと、今いろいろ関係当事者によって弁護士等を相手にして飯野海運と損害賠償等の話もしているのだから、それらがきまるまでこの問題を農林省がとる、水産庁がとるいろいろの施策を勘案して考えている。非常に急を要するものであるから、これとは別に、先日この問題が出たとき、森君が三点についてお伺いしてあります。その際には、この問題と別にそのことは考えます、こういう御返答だった。いろいろ被害によって生ずるこれからの問題について、その点は水産庁としても考えて、損害賠償とは別にやっているのだ、こういうお話だった。そうすると、きょうの水産庁長官お話とは全く違ったものが出てくる。私は村田さんにお伺いするが、水産庁としては疑わしい、大体これでないかということはわかるのだから話し合いで、水産庁が復旧をするものの中に相当額を取れるとお考えになっているのかどうか。おそらくは、それは私は問題であろうと思いますから、いつになったら、そういうことを大体あなた方のほうで研究して、法律的のことをもっと詳しく研究して、言いたいことはありますが、こういう場合には私は言わないだけだが、研究して、一日も早く現に起きつつあるノリ漁場の災害復旧に対して、これは私は災害だと思う、復旧に対して水産庁はどう手を打たれるつもりか。じんぜん日をむなしうして、飯野海運と業者の間の弁護士が話しているのを待って、もう損害が全部過ぎてしまったあとで何とか考えよう、こういう御趣旨なのか。これは重大な問題です、漁民にとっては。この損害賠償はなかなかむずかしいと思う。私はしろうとですが、今までの例からいくとむずかしいと思う。だからこういうことを言うのは、いいふんぎりをつけて大体の結論を出して、とるべき措置を、損害賠償と離していつごろまでにとられるのか、その見通しをはっきりしていただきたい。
  100. 村田豊三

    政府委員村田豊三君) 御指摘の点まことにごもっともでざいます。先ほど水産庁長官からお答えいたしましたように、両当事者間でこの問題についての善後措置話し合いをいたしておりますが、これは損害賠償の問題でございますから、それはそれとして、当面の対策といたしましては、あの漁場の今後の対策、処理をどうして参るかという問題が考えられるわけでございます。普通でございますならば、ノリの仕込みの時期はまだ相当猶予期間があると思うのでございますが、先般もお答えしましたように、あの地域はほかのノリ地帯とやや趣を異にいたしておりまして、漁家みずから網を手作りする、それには今からすでにこの準備に入るわけであります。これにつきましては現に漁家自身が資材の手当をしており、これにまた一定の融資の措置を県がとりまして、利子補給措置をとって、この漁場の復興対策といいますか、次に来たるべき生産対策に着手しているわけであります。またそういう問題につきまして今後やるべきことはたくさんあります。たとえばもうすでに使いものにならない資材について撤去する、あるいは漁場の水底に沈澱いたしました油分をこれを除去し、漁場を清掃していくといういろいろな対策がございます。これにつきましては、さしあたりは融資の措置でごいざますとか、あるいはそれに対する県の利子補給というものが考えられるようでございますが、これは県庁等とも相談を私どもいたしておりまして、国といたしましては、たとえば融資のあっせんでありますとか、あるいはどうしても国のある程度の助成措置が必要だといたしまするならば、これば予算関係省との折衝でずいぶん骨の折れる問.題でございますが、これらについても県庁とよく連絡をとりまして、できるだけの努力はしてみたい、かように考えてただいま県庁とも具体的な折衝を進めておるような次第でございます。
  101. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  102. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 速記を起こして下さい。東君。
  103. 東隆

    東隆君 はなはだおそくなって相済みませんけれどもイーグルコリア号の持ってきた重油は、これは当然軍に関係をしたものであって、したがってそれの関連は調達庁と非常に関係があると思うのです。ところが、おそらく行政協定関係の中には、何度もノリ被害のようなあまり大きな関係のないようなものについては、国がそれの補償をする、こういうような条項があるやに聞いております。したがって、そういうような点がかりにあるといたしますと、当然この問題に対するところの賠償をする、補償をする、そういう場合には当然調達庁関係になるんじゃないか、こういうように考えますので、その点を明らかにしておきたいと思うのであります。
  104. 真子伝次

    政府委員(真子伝次君) お答えを申し上げます。ここで問題になっておりまするイーグルコリア号が流した油がノリに付着して、それがノリの災害を起こしたということについての因果関係について一応ここで問題になっておるわけでございますが、かりにイーグル号の油というものがノリ被害を与えたといたしましても、イーグル号と米軍との関係の根本を申し上げますと、実はこうでございます。イーグルコリア号ば米軍が油を積んで横須賀港へ持ってくるまでのことは、航海傭船と申します契約形態で運んできますので、油を積んで持ってきて、陸揚げするまでは米軍とこの船舶とは被用者、使用者の関係に立つのでございますが、陸上げ後におきましては、米軍と船とは被用者、使用者の関係に立たない。したがいまして、米軍との関係は多々あるわけでございます。もしこれが油を積んで陸上げするまでに事故を起こしたというような場合におきましては、御承知のように地位協定第十八条によりまして取り扱うことになるのでございまして、結局そういう場合は米軍の被傭船でございますから、雇われておる船でございます。使用者、被用者の関係に立ちますので、地位協定によりまして、日本政府が二五%、米政府が七五%、こういった割合でその損害を弁償する、こういうことに相なるものでございます。  なお、これは今、先生がちょつと触れておられましたように、地位協定の十八条の取り扱いについて、条文そのものを読みますると、海上におけるこういった事故をどう処理するかということについて、日米間にいろいろ話し合いがありまして、結局、沿岸の生鮮魚介類あるいはノリ等の被害については、これが地位協定十八条を正面から適用するという両国間の話し合いになっておりますので、イーグルコリア号が、今申しましたように米軍の被傭船であった状態において被害を与えたものなら、そういったことになりますけれども、今申しますように本件の場合におきましては、すでに荷おろしたあとで、施設区域の外に出て事故を起こしたという関係になりますので、私どもが担当しておりまする調達庁の介入の余地がない、こういう現状でございます。そのことはこれまでに申し上げたかと思いますが、繰り返して一応失礼でございまするけれども詳しく申し上げた次第でございます。
  105. 東隆

    東隆君 その件に関連をして、何か、女の弁護士が船長を尋問して、そうして答弁をとった中身があるように聞いておりますが、その件は御承知ですか。
  106. 真子伝次

    政府委員(真子伝次君) お答えを申し上げます。ただいま御質疑の点につきまして、私どものほうは存じておりませんのでございます。
  107. 東隆

    東隆君 それは契約上における問題で、必ずしも切れておる、そういうような段階でなくて、続いておるという答弁をいたしておるのです。そういう中身を船長が弁護士質問に対して答えておる、こういう中身を私どもは聞かされておるのでありますが、これは今非常に問題になるところでありますけれども、そういう件がありますから、その点は御承知おきを願いたいと思うのです。
  108. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 本件は、この程度にいたします。  暫時休憩をいたしまして、二時より再開することとし、北洋漁業の問題を御検討願います。続いて漁業法二案に入ります。  それでは休憩いたします。    午後一時三十分休憩      —————・————— 午後二時二十六分開会
  109. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 委員会を再開いたします。  この際、農林水産政策に関する調査のうち、北洋漁業に関する件を議題といたします。北洋漁業につきましては、目下モスコーにおきまして日ソ間の交渉が行なわれておりますが、まず現在までの交渉経過につきまして説明を聞くことにいたします。
  110. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) ことしの、三十七年度の日ソ交渉の問題でございますが、御承知のように、昨年ミコヤン副首相が参ったおりでございますが、農林大臣に会われましてお話になりました要点二つわれわれは聞いております。一つは、規制区域の問題、これは先生方御承知のように、北緯四十五度以北が条約上の規制区域ということになっておりますが、これらの拡大がいつも問題になります、日ソ交渉の過程におきまして。それで、日本としては規制区域の拡大ということはどうしてものめないので、しかし、規制区域以外のところでは何もしないというのじゃなくて、これは自主規制といいものは、どういう方法かは別にして、自主規制をやっていくというお話をされましたことと、もう一つはいつも日ソ交渉というものは非常に長くなるというようなことで、その前にひとつ資源の問題については両方の科学者の間でよく討議をしておいて、交渉はそう長くならぬで、効率的といいますか、能率的といいますか、そういう交渉にしようじゃないかというような話をされたということを、会見後われわれ承ったわけでございます。それで、昨年の十一月から十二月一ぱいにかけまして日ソの間で、いわゆる科学者同士の資源につきましての話し合いがございました。両方の科学者の間で三十七年度の資源についての見通しにつきまして、大体了解点に達したものがございます。ただ了解点に達したといいましても、原因等につきましては両方でまだ見解が一致しておらぬという問題がございます。昨年は紅ザケでございますとか、あるいは白ザケ、マスというように魚種別につきましておのおの資源がどうだろうということをお互いが意見の交換をし合ったわけでございます。その中で特に昨年マスにつきまして非常に議論になりまして、といいますのは紅、白につきましては、これはソ連側でもそう再生産機構が破壌されるというようなことにはなっておらぬ。これにつきましてはそうたいした資源的に今のところは、そう心配はない、再生産が縮小再生産になっていくというようなことはない、ということを認め合ったのでございますが、マスにつきましては、これは非常に悪いのじゃないか。特に来年度のマスにつきましては例年の、これば偶数年が大体不漁年でございますが、それを下回るというような悪い資源の状態じゃないかということにつきましては意見の一致を見たわけでございます。ただ、これは原因につきましては、ソ連側はこれば一切日本の沖取りが、これが原因だということを主張しておるわけでございますが、日本側の主張としましては、それは沖取りということもこれは多少影響があるということは認めるが、そのほかに自然環境要因等が非常に水産資源については影響するのじゃないかということで、この原因につきましては両方合意に達してはおりませんが、資源が悪いということにつきましては、実はマスにつきましては両方が認めたわけでございます。そういうようなことで十二月一ぱいかかりまして資源の状態につきまして両方が合意に達して、一応専門会議は一ぺんも過去においてやったことがございませんが、ことしはやったわけでございます。その後二月二十六日から本会議が始まっております。その前の予定では二月上旬から科学小委員会を開催するということになっていたのでございますが、それを省きまして二月二十六日から交渉に入っております。その前に議題等につきましていろいろやりとりをしたのでございますが、特にソ連側としましては、今年度の議題の中にいろいろな問題の追加の要求がございました。その中で話し合いのついたもの、つかぬものがございますが、議題として追加されました点が四点ございまして、一点は、規制区域内の漁獲その他の管理手続、これはどういうふうにとって、とったものをどういうふうに通報するという点、これは非常に事務的な問題でたいした問題ではございません。そのほかに、マス資源につきまして、マス資源の回復についてということがこれに加えましで、新しく一つ入っております。それから規制区域内の紅ザケについてということで議題一つ入っております。それからもう一つは、日本の陸上基地を根拠とします船、これは特に以南の流し網を考えておるのでございますが、これの規制区域の規制措置についてということで、これは規制区域内の規制でございますので、当然のようでございますが、これにつきましては従来のように、必ず規制区域をどうするかということが問題になってくるだろうと思いますが、そういう議題が追加されております。こちらで向こうの要望がありまして、断わりました議題の中には、一つは規制区域を拡大するという意味議題が、それと読める議題があったのでございますがこれは議題からは落としております。ただ議題から落としましても交渉の過程においては当然議論になるだろうと思っておりますが、その議題を落としましたことと、現在の条約で対象になっております魚は鮭鱒、カニ、ニシンでございますが、そのほかの漁業資源についても話し合おうじゃないかというような議題の要請がありましたが、これは実は断わっております。そういうような議題で二十六日から実は会議に入りまして、現在までの進行状況は、大体科学小委員会でやりました資源の見方につきましてやはりまた蒸し返しましていろいろ議論がございまして、向こうは特にマスの資源につきまして非常に悪い、従来、専門会議でやった以上に悪いのじゃないかということを強く主張いたしましたけれども、またほかの紅、白につきましてもよくないのだという主張があったのでございますが、結論的にマスは非常に悪いということを認めまして、最近の偶数年よりもことしは下回るのじゃないか、これは紅、白、マス全部入れて考えて、資源的にはマスが非常に悪いということでございますので、向こうでそういう合意ができたのは資源的に見ればやむを得ないのじゃないかというふうに実ば思っております。マスにつきましては、それは日本の漁獲と向こう沿岸漁獲と足してみますと、やはり奇数年は奇数年で、偶数年は偶数年でかなり漁獲高は減少している。向こうの河川の遡上量につきましては、これははっきりした数字はございませんが、向こうが飛行機でとったいろいろな資料でございますとかなんかを資料にいたしております遡上量も少ないということで、沖合いの漁獲、沿岸の漁獲、遡上量合わせてみたものが非常に少ないというふうな判断をいたしておるわけでございます。資源についてはそういうような判断をいたしておりまして、現在向こうでは、これから網目の問題でございますとか、そういうような技術的な問題が議論されるだろう。その後に、ちょうど明日から政府代表としまして高碕代表が参られますので、行かれますと、これは規制区域の拡大の問題をまた持ち出しましょうし、あるいは規制区域内の禁止区域の問題、あるいは規制区域内の数量の問題というような、四月に入りますれば本題になってくるだろうというふうに考えるわけでございます。  経過はそのようでございますが、そのほかに実は私のほうといいますか、水産庁で業界に対しまして自主規制案というものを出しております。これは先ほどから申し上げましたような資源の問題、もう一つは規制区域拡大というものを防止する、規制区域以外のところでは、日本側が自主的に規制をしてある程度資源と見合った漁獲をやっていくのだという、二つの面から自主規制案を実は出したわけでございます。現在までは母船は十二母船ございますが、母船を一船団減らすという申し出がきております。そのほか日鮭連といいますのは独航船でございますが、四百十隻ございます。これに対して一割ということを言っているのでございますが、まだ最終的なオーケーという返事はもらっておりません。それから、以南業者と言いますのは、四十八度以南の流し網で、陸上基地を根拠とするものでございますが、これが大体四百十四隻ございます。これは従来減船というようなことは言っていないのでございますが、これにつきまして二割の休漁——独航船は一割の休漁、以南は二割の休漁ということを話しましたが、これもまだ実は了解は得ていないような状況でございます。関係は母船会社、独航船の日鮭連、以南の流し網の全鮭連でございますが、いろいろ賛成されたところもあり、反対と言われるところもございますが、いろいろニュアンスは実は違っているような状態でございます。  大体、以上が経過でございますが、ただ三十六年度のことでございますが、三十六年度で日本側がこれは規制区域内は六万五千トンという、条約できまっております。区域外を大体七万トンにしょうというようなことを向こう側と話し合いといいますか、ある程度約束したというような事実がございます。これに対しまして三十六年の七月末の統計でございますが、これで約八万トンとっております。十二月の統計が出ておりませんので、まだ十二月はわかりませんが、七月末で八万トンとったというような数字に実はなっております。この七万トンという約束でございますが、これの対象になりますのは以南の流し網関係、それからはえなわ、これは岩手県、青森県——岩手県が圧倒的に多いのでございますが、このはえなわがことしは一万三千ぐらいとっております。それから、日本海の流し網というのがございます。これは約九千ぐらいとっております、というようなことで、そのほかに北海道の七トン未満の船でございますとか、定置でございますとかいうようなものが一万トン以上とったというような状態でございまして、そのほか残ったものが以南がとっているというような状態でございます、これにつきましては、ソ連側は七万トンという約束をしておきながら非常に約束違反じゃないかというような、日本に対する不信感は常に述べております。それで先ほど申し上げましたように資源、それから規制区域拡大には絶対に反対するというような趣旨からひとつ日本側としては自主規制案を示しまして、来年の数量規制区域拡大防止という交渉に臨もうというのが実はわれわれの態度でございます。簡単でございますが、今までの経緯を述べました。
  111. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 本件に関しまして御質疑がございましたら、順次発言を願いたいと思います。
  112. 千田正

    ○千田正君 ただいま長官から今までの経過をお伺いしたのでありますが、実を言うと、ほんとうは、河野農林大臣でもいらしておられれば私は河野さんにお伺いしたいのですが、母船の数をふやしたのは、たしかこの前河野農林大臣が農林大臣に就任した際に、北洋漁業の問題に対しては、ある程度拡張して母船の数をふやした。ほんとうから言うと、いうとその際、日ソ漁業間の条約の変異によっては減船せざるを得ないことがあるだろうということを、業者との間に十分な了解を取りつけてのあの際の増船であったかどうか、この点はどういうことだったのですか。
  113. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 当時の事情、あるいは私はっきり知りませんので、もう一回調査いたしましてはっきりお答えしてもよろしゅうございますが、北洋につきましては、実は許可は一年々々出しております。と申し上げますのは、これは区域内の数量等につきましては、お互いが科学的な調査に基づいて妥当な数字でやるというような態度でおりますので、これは資源によりましてふえたり減ったりということがあり得るはずだということで、私のほうも毎年々々一年ずつの許可を実はいたしているような次第でございます。ことし業界に示しましたのも減船と言わず、来年はマスが奇数年でよくなるということであれば、またふやすということが考えられるのじゃないかということで、一年休むという、休漁制をとったらどうかというようなことを言ったわけでありますので、大臣御就任当時ふやされたとすれば、それはしかし、また将来は資源によっては当然ふやしたり減らしたりということがあり得るというのが私は前提だろうと思っております。
  114. 千田正

    ○千田正君 私はそういう簡単なことにとっていないのです。あのときのあれは、北洋という問題は、単に漁業という問題じゃないんじゃないか。公海における自由操業ということと、日本の権益を、このまま縮小したりしちゃいけない、むしろこの際拡大生産をし、拡大することによって日本の北方における権益を広げる、こういうのがおそらく河野さんの構想じゃなかったかと思うのであります。たまたまその対象として北洋漁業というものを考えたのであって、いずれは日ソ漁業というものが話し合いがついた場合は、ある程度規制されるのはこれは当然出てくる、その際規制の限界をどの程度にとどめようか、今のうちに一応日本の実績を作っておこうじゃないかというのがおそらく当時の河野さんの構想のうちにあって、そうしてソ連に乗り込んだはずだと私はその当時の事情から推察するのであります。そこで今度のようなことになってきますというと、漁民はそれを十分納得すればいいのですけれども、なかなか納得しない。毎年とって漁業高を上げておって生活水準も上げようという考えから言えば、なかなか減らそうといっても減らされない。今度の場合、今のお話の中にあったように、ことしは不漁年だから一応漁船の許可数を話し合いによって減らして、そうして対処しようというお考えのようでありますが、そんならばそれなりにもう少し早く仕込みや何かしないうちに、アイデアがあったならば、話してもらえればそうあわてないで済むんじやないかというようなことを業者の連中は言う。それば是か非かば別です。  それからもう一つの問題は、どうも従来の考えから言うというと、減船されることによってのマイナスというものは、残つて操業し得る人たちが幾らか出し合ってマイナスの面を生かせるような方向に指導されておるようでありますが、さなきだに最近の情勢が悪いのにとってきて、さらに減らされた分まで残った人たちがそれをカバーしていく、これはなかなか容易じゃないのじゃないか。その辺において十分に一体水産庁としては金融の処置なりあるいは何らかの方法を考えてそういう指導をされておるのかどうか、その辺をお伺いしたい。
  115. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 今の休漁いたします場合に、どういう措置をとるかということでございますが、これは実は過去独航船につきましては、いわゆる減船、休漁をやりましたのが一度、それからそのあと二度減船をやっております。この場合も先生おっしやいますように、実は国からたとえば補償金を出すとかいうような措置はとってておりません。これは法律論になりますけれども、許可期間が切れたあとの問題は、これは漁業法の建前からも補償はしないという態度をとっておりますので、そのときも国からは実は補償はいたしませんで、残った人がお互いが見舞金を出すというような形でやりました。そのほかに水産庁としまして希望者にはカツオ、マグロの兼業許可を出しましょう。四カ月はこれは新規許可として出しますが、あとの五カ月分につきましては権利を買ってきて下さいというようなことを実は三十五年にはやったわけでございます。今度はその点はやはり補償という問題になりますと、これは国が補償いたすということはやっておりません。もしもお互いに見舞金を出すということであれば、ひとつ金融のお世話はいたしましょうというようなことで、実は中金に内々われわれのほうからもこういう場合にはひとつ融資を頼むというような工合に中金に頼んでございます。そのほかに過去におきましては、やめるという人には、一部は買ってきて下さい、一部は中金で出しましょうというようなことを申してきたのですが、今度はもしやめられるという人については、船につきましては百トン未満の今のカツオ、マグロの新規の許可を出します。買ってきて下さいというようなことは言いませんということを申しておりますが、ことし休漁して来年また鮭鱒をやられるという人につきましては、兼業の許可をひとつ新規に出しましょうというような措置を実はしておるわけでございます。
  116. 千田正

    ○千田正君 まず一つの問題としまして三十五年のようにことしもできるかという問題。それは三十五年のときは、残って授業した諸君から金を出し合って休んだ人たちにそれをカバーしてやろうという話し合いであった。そのときはそれで納得してやったのですが、今度の場合ば、実際今の経済状況はそういうような工合にうまくいくかどうか。まず第一に、休漁した、休船した、それならばやめるというのに対して、カツオ、マグロの魚種変換に対して許可をするということになれば、現在のカツオ、マグロでも必ずしも十分な成果を上げていないのに、さらに整理されるところの北洋の諸君がそれに参加されるということになると、なかなかカツオ、マグロのほうとしても双手をあげて賛成なんというところまでいかないのじゃないか。その点がまず第一点。  もう一つ全然やめるのだからという場合においては、これはやはり日本の政治力が足りないという点もあるし、外交折衝の面においても日本の政治、外交というものははなはだ十分じゃないという点から言えば、国内の産業という面に対して、ある程度考えてやらなければならない。そういうことを、補償と言わなくても、それに見合うような方策を講じてやらないというと、これなんか相当問題があとに残るのではないか。まず第一に、カツオ、マグロのほうはそれでよろしいと承知したかどうか。それから、それならば、政府のほうで中金その他に話し合いをして、そうして低利の資金を貸してやるから、ほかに転業しろ、こういうことにおいても、それは利率の点においていろいろあるし、そういうことに賛成したかということ。それから、仕込みをしておって、すでにやめなくてはならないというような減船の対象になった場合に、仕込みした者に対するとこるの補償というような問題に対してはどういうふうに考えられておるか。まず、この三点についてお伺いいたしたいと思います。
  117. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 第一のカツオ、マグロが賛成しておるかどうかという問題でございますが、賛成だからぜひ入ってもらってけっこうだということはまだ言われておりませんりただ私ば、カツオ、マグロの理事会にも行きまして、実は話してきたのでございますが、私は現在のカツオ、マグロ漁業につきましては、これはまだ水産庁としてはキハダについて若干わからないことがございますが、そのほかの資源につきましては、まだ資源的に新規許可を出していってやってもいいのではないかという考え方を実は水産庁は持っております。それで、その場合どのぐらいやるかという問題でございますが、そういう資源の問題ともう一つは、内需、外需を含めて、カツオ、マグロにつきましては、需要はまだ伸びるだろう、対米関係等も着尺輸出は伸びておりますが、需要の面、資源の面から、自分らとしてはまだ伸びる余地があると考えて、その場合にどういうものをやるかということにつきましては、実は今後御審議願う漁業法に考え方を出しておるのでございますが、従来のように、単にくじ引きでやるとかというような無政策的なことでなくて、ひとつ沿岸の構造改善に役立つような人には考えたらいいのではないか、あるいは資源の関係その他で、どうしても転換しなければならぬという人、あるいはその漁業の経営の中で、たとえば先生おっしゃいましたのもその意味かとも思いますが、ある程度小さい人が大きくなっていくというような場合に新規の許可をやったらどうか、その数量等は、自分たちは約二年間に船で二万トンぐらいのものは、新規許可として考えていいのではないかというような意味のことを、私は実は理事会に行きまして説明してきたわけでございます。最終的に、今度の転換の問題は、それはけっこうだとまではまだ返事を聞いておりませんが、私どもの考え方としては、そういう新規の許可を出してもいい漁業だというふうに実はこの点は考えているわけでございます。  それから、経済事情が違うので、三十五年度と違うので、お互いが補償し合うというようなことはなかなかむずかしいのではないかというお話がございましたが、実は日本の漁業の中で見てきまして、北洋の鮭鱒、これは独航船、流し網ともにでございますが、私は特に流し網と言いたいのでございますが、ほかの漁業から比較しますと、非常に収益はいい漁業ではないかというふうに実は思っております。ただ、収益がいいということはたいへんけっこうでございまして、それが悪いということを言っているわけではございません。たとえばトン当たりの権利金ということをよく言われますが、以南がトン当たり百万、独航船であれば三十万とか、三十五万ということをよく言われますが、日本の漁業の中でも割合収益のいい漁業でございます。残った人も、ある程度私は、単年度でなくても、考えればある程度の見舞金を出せるということも、私ば可能ではなかろうかと実は思っております。ただ、しかし、これは休漁とか減船という仕事は非常にむずかしい仕事だということは私どもわかっております。中金に対しましては、いろいろ共補償とか見舞金をお互いに出し合うという場合には、この中金からひとつ系統資金としていろいろめんどうを見てほしいということは頼んでおりますが、今先生おっしゃいました金利を下げるというところまでは実はまだ私ども話をしておりません。あるいはまた公庫資金の中でそういうめんどうが見れれば、私は公庫の中でもこの資金をある程度リザーブして転換する人にお世話をしたらどうかというふうに実は考えております。  それから仕込みの済んだ人という問題でございますが、これは共補償といいますか、見舞金で幾ら出すという金額の問題と、これは当然からんでくるのではなかろうかというふうに思っております。
  118. 千田正

    ○千田正君 その今の三点については、大体努力されている御意向はよくわかるのですけれども、そのうちでたとえば漁船を一隻に対して何十万という金を払って借りて出漁している人がいる。これは従来非常に問題になっておる。貸したほうは一漁期何十万という金を取って漁業には従事していない。実際の漁業に従事している者は、たとえば三陸の沿岸、かりにいわばわれわれの県の漁師の人たちは相当の金を払ってその船を借りてそして漁業をやっておる。そういう者は、今度かりに整理の対象になるような場合、あるいは休まなければならないという場合は、そういう金を払ったほかに、今度は残った船という理由のもとに金を借りて、そうして休んだ組に対して金を回してやらなければならない。そうすると、二重のよけいな金がかかる、かりにそういうことがあればですよ。ただし、こういうことは確かですね、実際の漁業をやる人に水産庁は出しておりますか、許可を全部。私は非常に疑問だと思う。あるいは石川県に行く、富山県に行く、方々の県に行って、船の許可権を持っているところから実際に働く漁師の方は金を出して借りてきてそうしてやって、ようやく漁獲を上げているというのが実情ではないでしょうか。そういうのは今後どんなふうに考えているか。
  119. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 今御質問の点は、おそらく法律的にいいますと違反漁業ではないかというふうに実は思います。まあ、名義貸しといいますか、許可だけ持っておって漁業を休んで、それを貸して実際に経営をやっていないということになりますと、私はその許可自身が、許可をもらっている人は自分は漁業をやらぬ、許可をもらわぬ人が漁業をやっているということは違反漁業なんであります。実は今度やってみまして先生のおっしゃるようなのが実は陳情として出てきまして、私もそういう実例があることを知っております。でありますので、これは水産庁は全部漁業をやっている人に許可を出しているのかという御質問になりますと、中には違反漁業者があって、現実はそうでないものがあるということを言わざるを得ないだろうと思います。これに対しましては、私どもとしては、今度の漁業法等でもそうでございますが、許可を受けた人は、許可についてはこれはその受けた人が漁業をやっているのだということで、非常に厳重に、その許可を人に貸すとか、あるいはほかに売るとかということは縛っていこうというふうな実は漁業法の考え方も貫いているわけでございますが、現在の法律の中では往々にしてそういうことがあるということは認めざるを得ない。ただ、これを今度の場合にどういうふうにやっていくのだ、許可名義を持たぬ人がたとえば休むということにあたった場合には、それはどっちの、許可名義人がその共補償をもらうのか、実際やっている人がもらうのかということは、経済問題として出てくる問題であろうと思います。そこまで私タッチしまして、どっちの人がもらうのだということまで私申しませんが、実例としては先生おっしゃるように、違反漁業があるということはどうも認めざるを得ないと思いまして、今後は特に私どもやかましく取り締まって参る、実際に漁業をやる人に許可を与えていくというやり方をとっていきたいと思います。
  120. 千田正

    ○千田正君 実際漁業をやる人に対してもやられたらどうですか。また、違反だといえば違反といえるけれども、実際船の数はきめられているのですから、実際自分たちやりたくてもやれないから仕方がないから持っている人から借りてもやらなければならないというのが現実だと思う。だから、かりにやめさせるという場合には、実際やっている人がやめなければならない場合になったときに、名義人でなく、現実にやっている人に対してこれは補償なり金融なり、そういうことを考えてやるのが水産庁としての親心じゃないかと私は思うのです。それはそれとして、では国際——時間をだいぶ私ばかりとって失礼になりますから、もう一点伺うのですが、どうもいつも日ソ漁業ということになると、こっち側ばかりしょっちゅう押しつけられて、日本だけがいつでも規制をされます。公海自由の原則から言えば、何も世界の七つの大洋の中をどこを歩いて、どこをやってもいいということは国際法からきめて、かかったら問題にならないでしょう。それを日本だけがいつでもソ連から押しつけられて、やれ規制だ、規制外の方でとっちゃいけないという、自粛だということを言われるのですが、公海の自由の原則があれば堂々とやってかまわない。それも資源の不足になる一つの理由として、必ずしも日本の漁夫がとるだけが問題じゃないのであって、たとえばラッコ、オットセイのような害獣もある、稚魚を食うやつもある。それがちっとも規制していないじゃないですか。たとえば日本側が七万トンに下げると、今度はマスの資源が足りないのだからこれだけやるというときには、ソ連も十分に下げなければならない。それに対して強い主張をどうもやっていないようなんですね。もう少し強く私は日本の権利確保のためには堂々としてやるべきじゃないか。ソ連側の線は相変わらずであって、こっち側だけがけしからぬと、いかにも海賊みたいなことをやっておるような言い方をされたんじゃ、はなはだわれわれは遺憾だと思うのであって、向こうも漁獲量をどっと下げろと、そのかわりわれわれも自主規制をしようじゃないかという、そういう話し合いならいいけれども、こっちだけ自主規制をやれだとか、あるいは禁止区域を拡大しろというようなことばかり主張されて、こっちは泣き寝入りになる手はないじゃないですか。その点に対しては、どういうふうにお考えになっておりますか。
  121. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 今の御質問の点でございますが、数字で申し上げますと、ソ連側も偶数年と奇数年はやはり計画を変えております。たとえば一九六一年は豊漁年でございまして八万トンということで、実績七万九千トンぐらいになっております。ところが、一九六〇年は不漁年だということで——昨年は八万トン、おととしは七万トンというふうに、やはり数字が下がっております。その前は豊漁年ということで、また九万五千トンにするということで、ソ連の数字も、数字を疑えば別でございますが、ソ連の数字も奇数年、偶数年、豊漁年、不漁年ではやはり数字を高低はいたしております。先生おっしゃいますように、こればそうは申しましても、日本側としてあまり強い主張をしないじゃないかというお話でございますが、これは過去には私は交渉にあたりませんでしたが、今年は日本側としてもすべきことはする、そのかわり、大臣もよく言っておられますが、ソ連の沿岸の漁業についても、日本でもある程度数量を減らすというようなことであれば、それはソ連に対してもお前のほうも資源の状態からして減らすべきだということを強く主張するということを実はきようも高碕さんと話しておったんですが、そういうことも話の中に実は出ておるわけでございまして、私どもとしては、主張すべきことは言う。しかし、やるべきことはやるが、主張すべきことは主張する。  もう一つは、公海自由の問題でございますが、先生も御承知のとおり、最近の海洋法等におきまして、沿岸航行の問題とか、実績主義とかいろいろな考え方が出ておりまして、日米加条約がまさに一つの公海自由というものを別な理念でやっておりますが、百七十五度の線を引きましたり、あるいは自発的抑制という原則をとりましたり、ああいう条約ができておるのでございますが、この点もわれわれといたしましては、資源の保存ということについては、日本として極力——私は過去においてあまり努力が足りなかったんじゃないかという気がしますが、それはやることにしまして、先生のおっしゃいましたように、しかし、なるべく制限というものはお互いが少なくしてやっていくというやり方で漁業をやっていきたいというふうに思いまして、国際漁業条約等につきましては、そういう態度でひとつ臨みたいと思っております。
  122. 千田正

    ○千田正君 そこで、日本からもソ連の沿岸視察であるとか、あるいは操業状態のときの状況視察するというようなことで、日本側も参加して、漁期においては、日本水産庁の船なり何なりが行って、ソ連の漁業の操業の状態等を十分に見る必要があるんじゃないか。国と国との問題でありますから、お互いの国を尊重して、その国の発表する数字に対しては全面的に信頼を置きますけれども、どうも従来は、これは長年かかってわれわれは、たとえばカムチャッカ周辺をわれわれに調査にやらしてくれるなり、あるいはサケの遡河状態をあれしてくれないかというようなことを当初言ったんだけれども、なかなかそれはソ連が承知しなかった。最近になってようやく水産庁のどなたかが招待されて行っている程度でありまして、場合によっては参議院、あるいは衆議院の水産委員の諸君の二、三人くらいは代表になって、向こうの資源の調査視察に行くくらいのことを考えて差しつかえないと思う。どうも向こうからばかりいつでも日本の出したデータははなはだ信頼が薄い、そうじゃないんじゃないか。あるいは地方の新聞紙などに載ったのを一つの論議の対象にして取り上げて、こういうことをやっているから日本人はうそ言っているんじゃないか、そんなことを議題にされたのではかなわないのであって、やはりそういうことであれば、われわれのほうからも操業状態を十分に視察さしてもらうようなチャンスをつかまえて、あるいは遡河状況であるとか、あるいはマスの資源の培養の状況とかという、そういうものを、お互いに国際交流の立場から行って見てくる必要があるんじゃないか。そういうこともどしどしやるべきじゃないか。そういう点については、長官どういうふうにお考えになりますか。
  123. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 今のいろいろな調査の問題でございますが、共同調査につきましてはわれわれも主張しておりますが、まだ十分でない点は先生御指摘のとおりでございます。ただ、カムチャッカ等につきましては、実はもう西カムのほうへは行って見ております。ただ遺憾ながら、まだソ連が東カムについては理由は言わぬのでございますが、まだ見せておりません。多数の移学者をお互いに出しまして 母船にも向こうの人を乗せますし、向こうの陸上にも行き、向こうの人が日本の陸上も調査するということになっているのでございますが、遺憾ながら東カムだけは、まだ向こうは立ち入って調査をさせないということがございますので、今年度は特にこの共同調査の問題は強く言いまして、お互いが見せてくれというところを見せてもらうということを、こちらから強く主張しようという態度を実はとっております。特にオホック等も、あすこは日本の船が入って漁獲はしないということにしていますが、いろいろ資源の問題等から言いますと、あすこでも相の調査をする必要があると思いまして今年度は調査船も三隻入れまして、一反当たりどのくらい魚がかかるかという密度調査なんかやらしてくれということを強く主張しようと思っております。先生のおっしゃいますとおり、お互いが相互にこれは見せ合ってやっていくということは、若干そういうところに進んでおりますが、まだ不十分な点はありますので、今後強く主張したいと思っております。
  124. 櫻井志郎

    ○櫻井志郎君 私伺いたいと思っておったことの過半は、千田委員からすでに御質問があり、あるいは外交交渉でもありますので、交渉に抵触するような質問は一切避けまして、ごく簡単に一、二点伺います。  一つは、規制区域と自主規制の区域の問題でありますが、北緯四十五度を境にして北は規制、しかし、いわゆる自主規制と、こう言っておるところ自体が、三十六年度に七万トンという約束をして、事実は八万トン前後とった、こう言ってソ連側から責められておる事態も承知しているんですが、今度日外側からこの自主規制区域を、もっと減船等の方法によって規制を強化していく、そういう段階が次第に進むと、規制区域と自主規制区域との実質中身にどういう顕著な違いが出てくるのか、その点をひとつ伺いたい。
  125. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 自主規制、規制区域外、規制区域内との違いはどういう違いかというお尋ねでございますが、端的に申し上げますと、規制区域内になりますと、そこに出漁いたします場合には、これは条約でお互いが毎年漁獲量を交渉するということになっておりまして、その数がきまりまして、それを一船一船ノルマとして割り当てまして、それができない限りは出漁できないということになります。それから出漁しましても、監視はこれは日本側だけでなく、ソ連の監視船からも監視されるということになりますので、ノルマをもらわなければ出ていけないということ、いわゆる数量がきまらなければ出ていけないということと、出ていっても監視は日本だけでなく、ソ連の監視も受けるということになるわけでございまして、規制区域外でありますれば.これは漁獲量がきまらなくても条約上は出漁はできますし、またソ連がそこまで入ってきて監視するということはないわけでございます。
  126. 櫻井志郎

    ○櫻井志郎君 大体の形式的な区別はわかりましたが、しかし、自主規制区域で七万トンとりましょう。実質八万トン前後とった。七万トンとりましょうと言ったからには、各船別にある程度の割り当て——ノルマとでもいいましょうか、そういうものがきまらないで、七万トンの漁獲というものをどういうふうにきめるのか、割当しないでですね。やはり割当をして、そして、その総計が七万トンになるように出したんじゃないですか。
  127. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 七万トンの出し方でございますが、これは、たとえば日本海の流しに幾ら、あるいは沿岸の定置とか、釣とか、はえなわに幾ら、太平洋のはえなわに幾ら、以南のはえなわに幾らというものを積み上げまして、そして七万トンということに積み上げたということよりも、それよりも実は過去の漁獲統計——豊漁年、不漁年の漁獲統計をとって、昨年は豊漁年であるというので、どのくらいということで出したのが実情だと私は思っております。それで先生のおっしゃる、規制区域外に実は割当をしますということは、これは非常に沿岸の定置とか、釣、はえなわまでの漁獲量でございますので、事実上困難でございます。それで私どもが、これは今年の交渉でございますので、どういうことになりますかまだわかりませんが、その辺のところはいろいろなアローアンスをもってものを考えないと非常にむずかしいのではないかと思っております。
  128. 櫻井志郎

    ○櫻井志郎君 今の点は大体わかりました。私は、先ほど千田委員から御質問があり、お答えがあった相互監視の問題があるのです。この問題は、やはり千田委員の御主張どおり、あくまで対等の形を確保していく。堅持じゃなしに——現在は堅持していないのだから、対等の形を確保していくということも、今度の交渉の中にぜひ織り込んでもらいたい。  それからもう一つは、マス資源は、奇数年、偶数年で減ったりふえたりする。これは私は全然知らないからお尋ねするのですが、マス資源の人工養殖という問題、つまり資源保存というよりは資源拡大ということができないのか。現在どの程度おやりになっておるのか、その点お答えを願いたい。
  129. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 資源保存の問題でございますが、現在両国でやっておりますのは大体四億粒足らずでございますが、のものを、これは日本では白ザケでございますが北海道でやり、向こうは樺太、千島で放流を鮭鱒ばやっております。
  130. 櫻井志郎

    ○櫻井志郎君 マスですよ。
  131. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) マスにつきましては、日本でまだ北海道等でこれを孵化放流するということはほとんどやっておりませんで、ほとんど資源的に比重の高いサケについて実はやっておりますので事実上困難でございます。北海道でやっております。マスは、これはほとんどまた問題にならぬ程度のものを県で陸封性のマスをやるというくらいで、海洋性のマスについては、まだこれを孵化放流するという事業はたいしてやっておりませんで、資源的に高いサケだけを実はやっておるようなのが実情でございます。
  132. 櫻井志郎

    ○櫻井志郎君 サケのことは私は大体承知しておるからお尋ねしなかったのです。マスについてお尋ねしたのですが、資源的に高いサケにだけ現在は限定しておるということ自体に私は疑問を持っておるのです。マスというものは資源的に低いのだという見解に立つことが、今後の漁業を推進していく立場からいって、正しいいき方なのか、そうでないのか。資源的に低いという見方をとるなら、なぜマスの問題についてもそうやかましく言わなければならぬか。資源的に低いという見方じゃなしに、資源的にやはり相当価値のあるもの、また価値を高めていかなければならないという見解に立つからこそ規制問題が出てくるはずです。そうだとすれば、なぜもっと資源保存ということじゃなしに積極的に資源拡大の方法をとらないのか、そういうことをお伺いしております。
  133. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 答弁がどうもまずかったのでございますが、現在やっておりまするのは、ほとんどサケが大部分で、マスはごく少量ということを申し上げましたが、資源保存の問題は、これは私はマスだけじゃなくしてサケの問題についてももっとやる必要があるのじゃないか。その中の一環としまして、マスもふやしていくといざいません。ただ、マスとかサケの資源保存といいましても、この回帰率の問題からいいまして、今十数万トンとか二十万トンとかやっておりますが、一体孵化放流で、そのかわりにどのくらい回帰してくるのかとなってきますと、いろいろ実は問題がございます。私どももやはり四億粒北海道でやっているわけでございますが、これを拡大することには、私はもちろんサケ、マスとも異論ございません。ただそれは、それをしたから洋上のたとえば今問題になっております。マス資源等の沖取りに相当これが大きな貢献をするということになるには、もう少しよほどこれは調査してみませんと、なかなかむずかしい問題はあるのだろうというふうに思っておりますが、北海道の孵化放流事業をもっと拡大する、その中にマスも入れていくということについては、私も異論ございません。
  134. 櫻井志郎

    ○櫻井志郎君 マスも同じように河川に遡上して産卵するのではないのですか。だとすれば、沖のマス資源というものもやはり河川で繁殖して沖でとれる。沿岸でもそうだ、河川内でもそうだ。そういう点からいえば、やはり日ソ交渉というものは次第に科学的になって、科学技術何というのですか、分科会と言っているのですか、そういう基本的な問題から協議を始めておられる。始めておられる中で、日本のあるところの川でどれだけマスを孵化したら自分のところへ幾ら帰ってくるのだという小さな見方じゃなしに、国際的にマス資源の増殖という問題も日ソ交渉の中に取り上げて、日ソ両国がこの問題について前向きで拡大していくという方向をとることが、やはりこれは日ソ交渉の一つの焦点ではなかろうかという感じからお伺いしたのです。お答えいただきます。
  135. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) お説のとおりでございまして、特に高碕代表等は日ソ両方でもっとこの孵化放流事業を大規模にやるようにと提案しておられることはお言葉のとおりであります。ただ、今問題になっております。マス資源は、これは西カムなりオホーツク海へ行くマスでございますので、おもにこれは日本側、先生おっしゃいますように、日本側だけがやってもだめでございまして、これはソ連が相当大々的にやりませんと、日本がそれを沖でとるということになりませんので、これは日本側だけでもだめで、ソ連で相当大規模にやってもらい、それがふえれば日本がそれを沖でとるという格好になるわけでございます。その配分論の問題になって参りますと、日ソ間でいろいろ問題はあると思いますが、両方で鰐化放流事業を拡大しようということは、今度の交渉の中にも実は入れております。
  136. 櫻井志郎

    ○櫻井志郎君 最後ですが、長官の先ほどの御答弁から伺うと、サケの問題についてはこれは相当進歩的でもありますし、相当具体化されておる。マスの問題については、どうもその点が非常に低調ではないかという感じがするのです。今お答えになったような方向を基調として今後の日ソ交渉にあたえられたい。私は日本の狭い地域の中でどうこうということを言っておるのでもなし、日本だけのことを言っているのでもない。外交問題として、国際問題として日ソ共同でマス資源、サケ資源を拡大していくという方向で進められることを希望いたします。お答え要りません。
  137. 森八三一

    ○森八三一君 一点だけお伺いいたします。と申し上げますのは、もちろん乱獲を避けながら資源を保存をしていくということにつきましては、これはちっとも異論のないことで十分やっていかなければならぬと思っています。が、しかし、そういう感覚に立って毎年日本側の見解に基づく漁獲量というものを示しておるのですね。これは間違いのない、確信のある数字を提示されておると思うのです。が、しかし、交渉の結果はその確信のあるものがいつもゆがめられれ後退しておる。もちろんお話がありましたように、きぜんたる態度で臨むという点につきましてはおやりをいただけるとは思いますけれども、結果的には、今までもそういう方針で臨まれておったとは思いまするが、非常に遺憾の結果が生まれておる。これではとうてい日本の漁民諸君を守っていくというわけには参りかねると思います。そこで私は、福田さんが農林大臣の当時、予算委員会で、そういうことをいつまで繰り返しておってもなかなか解決は困難だ、力があるのとないのですから、これはいかにやっておりましても理想の状態というものは作り得ないであろう。とすれば、鮭鱒類の習性というものを考えながら、魚族と音響という問題についてもう一歩踏み込んだ研究をすべきじゃないかということを提案をしたことがあります。と申し上げまするのは、北上してくる鮭鱒類に対して集魚灯のような、一つの感覚ですけれども、音響を与えることによって日本沿岸にそれを誘致してしまう。そうして乱獲をしない程度において日本の領海内で漁獲をするという方策を考えるべきではないか。結論としては魚族と音響の研究調査、そういうことをもっと深刻に徹底してやるべきだということを提案をいたしまして、大臣もそれはひとつ考えてみようじゃないかというようなお答えがあった。昨年の九月の六日の毎日新聞の夕刊には、他の国ではそういう研究が相当強く進められておるという記事がはからずも出ておったのであります。そこで、お伺いいたしたいことは、水産庁として、そういうような問題にどの程度予算をつけて具体的におやりになっておるかどうかという問題なんです。
  138. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 今御質問の点でございますが、音響につきまして私そのものずばりの研究をやっておりますかどうか、どうも少し勉強が足りませんので今お答えいたしかねます。たとえばどういう網を使ったらどのくらい比較しましてとれるか、たとえば透明網を使ったらどのくらいとれるとか、あるいはどういう網であればかかったものがどのくらい落ちるのだとかいうような調査はいたしておりますが、これは応用研究費等をもらいまして実はやっております。しかし、まだ金額的にはそう大きな金にはなっておりません。音響につきましては、実は現在私知りませんので、これは後刻調査の上でお答えいたしたいと思いますが、先生おっしゃいましたように、魚を音でも光でも何でもいいと思うのでございますが、どこか領海内に集めて、ある程度とるというやり方、これはまああるいは一番経済的に見ていいのかもしれませんが、そういう、そのあとさらにまたこれが元の川に戻っていくのか、その辺のことになりますと、私はいろいろまた日本の川でそういうものが全部まかない切れるようになるのか、残ったものが。いろいろその点私は問題があるだろうと思います。しかし、私現在音響の調査というものを知りませんので申し上げかねますから、後刻調べましてお答えいたします。
  139. 森八三一

    ○森八三一君 まあ、調査をして御回答を願うことはけっこうですが、もちろん私も魚族を全滅さしてしまうような乱獲をやろうとは思っておりません。いろいろな科学的な調査に基づく確信のある漁獲量というものを示して交渉をしておる。その交渉がいつも希望どおりに達しない。いかに誠意を尽くしてやりましても、ゆがめられている。ということは、結局力関係でこれはやむを得ないということを私は思うのです。今後も誠意を尽くしてやりましても、なかなかこの問題は私は解決点に到達することはむずかしいのじゃないか。といたしますれば、鮭鱒類の習性として生まれた川に帰ってくるということがはっきり確認されておるとすれば、いずれ日本海なり太平洋沿岸を通ってそれぞれの地点に遡上をしていくということになるはずですから、その地点に好む音響を放流することによって魚族を誘致してくる、そして必要数だけをとる、乱獲はしないという措置をとることが——日ソ漁業交渉などやめてもいいのじゃないか、そうすれば。というところまで考えていって私はいいのじゃないかというような、夢のようなことを考えまして、そういうような研究をすべきであるということを提案をしたわけであります。ところが、すでに、今忘れましたが、ノルウェーかどっか外国では、非常に魚族と音響という研究が進められているということが新聞に出ておりましたので、ただ研究してみようという当座の御答弁だけでは困るので、ほんとうにひとつやっていただきたいということを希望しておるのですが、まあ、長官の記憶に残っておらぬ、調べるという程度でございますので、まあ、やっておらぬという程度だと思うのです。それじゃ困るのですね。もう少しそういう点について科学的な研究を進めて、われわれが確信を持って主張し得る数字というものは、外交交渉で解決つかなければわれわれの科学的な力で解決するという手段に訴えるべきであるというふうに思いますので、そういう研究に一歩を進めていただきたいという希望を申し上げます。
  140. 東隆

    東隆君 母船式のほうで一割程度で四十一隻、それから四十八度以南で二割で、これが八十一隻程度ですか、この程度の休漁、それに対してカツオ、マグロは裏作をさせる。そういうようなお話でありますが、これの大よその休漁をさせる目安ですね。どういう点でそういうような数字をお作りになったのか。それから四十八度以南のほうになりますると、船が小さいのですから、おそらくマグロのほうなんかには向かないだろうと思いますし、いろいろの問題があろうと思うのです。どういうような目安でそれをおきめになったのか。それをひとつお聞きいたします。
  141. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 今の御質問でございますが、実は休漁という隻数を示しただけで、これは数量は申しませんでした。それから、私どもは内部的にはこの休漁ということだけで終わるかどうか、あるいは操業期間をどうするかということがまだ問題があるのじゃなかろうかということを実は検討しております。その検討の根本になるのは、実は数量を想定しまして、これをやったらどのくらい減るだろう、あるいはそのほかこの措置をとったらどのくらい減るだろうかということを資源の面から想定してやったことは確かでございますが、実はこの数字はまだいろいろ差しさわりがありますので外に申し上げておりませんので、もう少しその数字を申し上げるには時期をかしていただきたいと思います。私どもはこの休漁だけで済むのかどうか、そのほかに操業期間等も問題があるかどうかということも、実は中で検討いたしております。  それから、カツオ、マグロの問題でございますが、私どもも、二十トン、三十トンというものは、これはカツオ、マグロは自由漁業であります。四十トン以上が許可漁業でありますので、小さい人がカツオ、マグロ漁業をやるというような場合には数人組んで船を借りてやるとか、だれかカツオ、マグロの経験者とやるとか、いろいろやり方はあろうと思いますが、小さい船がカツオ、マグロに転換するということではなくて、船なんか大きい人は別でございますが、小さい人になりますと、別の手段をとってやる。やる場合には、そうなるだろうというふうに考えております。
  142. 東隆

    東隆君 どうも四十八度以南のほうは、七万トンを八万トンとったというふなの内容でもって、自主規制の方面で、少しよけいとり過ぎたから罰でもって今度減らすのだ、こんなふうにも見えるような節もありますし、それから全体からながめて、おそらく総体の数量をやはり四十八度以南、外に分ける問題もございましょう。いろいろの問題がからんでくる。そこで、非常にむずかしい問題とは思いますけれども、ある程度の比率を考えられておるのじゃないかと思うのです。そうでないと、こういう問題が出てこないと思うのですが、これはたいへんあとあとの交渉に響いてくる問題かもしれません。しかし、自主規制だの、そういうような問題を持ち出されている以上、これは向こうのほうにどっか重点置いたのですし、そんなような意味でもう少しはっきりしたところがわからないと、業者のほうだってなかなか不安ですし、それから用意もしなきゃならぬ。そういうような問題みんなからんでくると思うのですが、これはいかようにでもまた動く可能性があるのですか。決然とした態度なんですか。その辺のところをもう少しはっきりお答えを願いたい。
  143. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 一割、二割出しますときには、もちろん数字を想定いたしましてやっております。先生おっしゃいましたように、七万トンといったのを八万トンとったから罰をやったのだということは、私どもは全然これはそういうふうには考えておりません。独航船につきましては過去において二回減船をやっております。それで以南のほうはまだそういうことはやっておりません。それから一番問題になるのはマス資源でありまして、これは今独航船では約五千トン、独航船の漁獲高がことし大体五万五千くらいでございますが、そのうち五千トンがマスで、あとは白なり、紅でございます。ところが、以南のほうは六万五千くらいとっておりますが、そのうちの五万トンくらいはマスでございます。大部分とっておりますのは以南でございますので、マス資源が特に悪いということを頭に置きまして実は出したわけでございます。先生おっしゃいますように、数量につきましては実はいろいろな想定をしておるのでございますがこの数量は、私ども数字を言いますのはもう少し先にさしていただきたいと思います。自主規制の案をどうするかということでございますが、実は先ほど申しましたように日鮭連、全鮭連ではニュアンスは違いますが、まだ話のきまらぬままに実はおそらく全鮭連の会長、日鮭連の会長も近日中に立たれるのではないかと考えておりますが、向こうでの交渉の様子も見られて、団体としては最終判断をされるのじゃないかというふうに私は思っておりますけれども、われわれの事務的な考えとしましては、なかなか資源問題、その他からいって、交渉という問題は相当きびしいものじゃないかと思います。でありますので、あの自主規制案というものは、私どもとしましては、こういう自主規制をやったのだからそういうことは困る、あるいはソ連側もこうすべきだということを強く主張しようと思っておりますので、この点は強い態度で自主規制もやって参りたい、このように考えております。
  144. 東隆

    東隆君 これは母船式のほうがソ連の漁獲その他に非常に影響すると思うのです。それで、マス資源の問題を非常に大きく持ってきて、そうして交渉の中に持ってきた理由は、これはどういうことになるかといえば、四十八度以南のほうがマスがたくさんとれるのです。しかも四十八度以南のほうはソ連の漁獲の方面には影響のないものじゃないか、それはかえって母船式のほうがソ連に影響するのであって、そうするとソ連の漁獲のほうに影響のないマス資源を先方が非常に強く主張して、そうして総体の漁獲量を減らすとか、あるいは規制区域の拡大をやるとか、ということの問題の材料に使っているように見えるし、その点がどうも解せないのですが、問題はソ連のほうの沿岸で漁獲する量がコンスタントにふえていって、そうして日本関係のものが減っていく、そうしてその中に持ってくる材料は、何を持ってくるかというとマス資源の減退だ、マス資源は実のところをいうと、母船式ではなくて四十八度以南のほうで減っている、それは日本がたくさんとったからだ、こういうことになろうかと思います、今のお話からいくと。そういたしますと、北洋漁業における漁獲量、その他の問題で交渉をするときに、向こうのほうでは実は無理な条件を持ち出してきてそうしてやっている、こういうように考えられるわけです。初めのほうですと、どういうふうになっているかというと、必ず漁獲量とそれから規制区域の拡大、この二つをもって向こうのほうは攻めてきた。なおまた今年もこいつをやろうとされるでしょうし、その形でもってすでにやってきている、そのときにどうも母船式のほうがソ連のほうに一番影響するので、そちらのほうから考えるべきであって、四十八度以南のマス資源でもってかれこれ言われて、そちらのほうを非常に減らすという問題、それから休漁の問題なんでありますが、そういうことをやるというと、これはどういうことになるかというと、一番影響するのは沿岸から沖合いに出て行った中小の漁民です。これらに一番影響を及ぼしてくる独航船そのものももちろん中小企業なんですが、しかし、母船に従ってやっておりますし、これは企業的なものの中における一つの形態として一応考えてみなければならないのですが、四十八度以南のほうになってくると性格は完全に中小企業になってくる、しかもこれが沿岸漁業のやはり中心的なものになってくる、そう考えてくると、沿岸漁業の振興の方面から考えても相当に考えなければならない。こう思いますが、どうも向こうのほうでは材料に使っているのが、マス資源の減少ということで押してくるのでありますから、これについての反論なども十分用意していかなければならないと思いますが、そういう点何かないのでしょうか。
  145. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 今先生おっしゃいましたソ連の漁獲に一番影響するのは母船の関係、独航船を含めまして、しゃないかという御質問でありますが、ソ連がとっておりますのはおもに白マスでございます。紅につきましては、ほとんど問題にならぬくらいの数字でございまして、これは圧倒的に日本がよけいとる。たとえば一九六一年でございますが、日本側が三万七千トンくらい紅をとっておりますが、向こうは七千トンくらいでございますので、紅につきましては、ほとんど日本側がとっているからソ連が減っているのだという意味のものではないのじゃないかと思います。問題はマスと白でございます、ソ連の漁獲は。それでソ連は三、四年前は実は十万トンくらいマスをとっておりますが、これが非常に減ってきまして、ことしは三万、去年は二万、おととしは約五万というようにマスの漁獲は非常にソ連は減っております。それで、日本側は大体昨年、ことしあたりは六万、七万五千というように向こうの三倍あるいは二倍くらいのマスをとっているわけでございまして、ソ連側に非常に影響があるということを考えますのは、特にマスの問題でございまして、紅等につきましてはあまりそういう母船と向こうの関係は非常に少ない。白は大体向こうとこっちが、向こうがことしあたりは若干多いのですが、大体同じくらいずつとっておりますというような形でございまして、今度白をとるのはどこだといいますと、これはやはり以南と母船とが同じくらいにとっているという形になりまして、以南がとっております白マスというのが非常にやはり向こうの漁獲に関係があるとすれば、沖取りがそのままだというソ連の主張でいきますと、これが非常に関係ある。ただ日本側としてはそのほかに、沖合いの漁獲のほうに自然環境要因というものが非常にあるのじゃないか。減った原因については、原因は別でございますが、魚種だけ見ますと、以南でとっておりますものが、向こうの沿岸でとっておりますものと大体魚種については同じだということが言えるわけでございます。  それから、先生のおっしゃいました沿岸の問題でございますが、確かにこの船につきましては小さい。たとえば十トン未満も許可になっておりますので、こういうものは私は沿岸という範疇でいいかと思いますが、数十トンのもので二、三カ月で数千万円の水揚げをしているというような漁業はこれはまあ従来のいわゆる沿岸漁業というものとは若干違うのじゃなかろうか、もう少し上だろうというように実は私は考えております。ただ、独航船は大体八十五トンになっておりますが、平均して四十トンくらいでございますので、船自身は小さい。ただし、漁獲量等はこちらのほうが一隻当たりは非常に多くなっております、以南のほうが。ただ、それをもってすぐに収益計算がそのとおりだとは申し上げませんけれども、いわゆる沿岸漁業というものよりかなり高い収益を、かなりといいますか非常に質的に従来の沿岸漁業よりは違うのじゃないかというふうに考えておる次第でございます。
  146. 北村暢

    ○北村暢君 以南の流し網の二割を休漁するということは、あす高碕代表が出発するようですが、最終的にきまりましたか。
  147. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) まだ最終的にはきまっておりません。
  148. 北村暢

    ○北村暢君 きまらないままに高碕代表が出発するのですか。
  149. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) あしたの時点では完全に私はそこまで話し合いがつかぬのじゃなかろうか。ただ一つ、先ほど申し上げましたように、日鮭連と全鮭連ではニュアンスが違うということを申し上げたのでございます。それはここではまだはっきりお答えいたしかねますが、私どもとしましては、二つの団体があるのでございますが、どちらか一つでもまとまれば、まとまったものを持っていってもらうのが一番いいのでございますけれども、立たれるまで団体との交渉は続けて参りたいというふうに思っておりますが、最悪の場合に、両団体と完全な話し合いがつかないでも高碕代表には立っていただくというふうに考えております。
  150. 北村暢

    ○北村暢君 大体そうすると、漁業交渉をやっている間において、交渉最終までにはこの全鮭連と日鮭連との二割休漁という問題は解決する見通しがあるのかどうか、また解決しないということになると、この漁業交渉に一体どういう影響があるのか。また、どうしても交渉期間中にこの二割休漁というものを結論を出させる、そういうつもりでおられるのか、ここら辺のところをひとつ御説明いただきたいと思います。
  151. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 一割、二割でございますが、漁期を申しますと、いわゆる独航船のほうが出漁いたしましたのは、昨年五月二十日ごろでございます。時期はおくれております。それから、いわゆる二割といいました以南は、昨年は四月十九日にたしか出漁いたしております。漁期が一カ月くらい違っております。それで規制区域外、いわゆる以南でございますが、これは昨年は以南の問題等十分話し合いのつかぬうちにいわゆる実質漁というか、大臣許可、知事許可を出しまして出漁したわけでございます。今年度もこの問題どうするかの問題がございますが、昨年は四月十九日でございましたが、漁期からいえば、なるべく以南のほうももっと早く出て操業するということが望ましいとは思うのでございますが、私どもはこれから二十日以上ございますので、そういう間にこの問題につきましては全鮭連の会長も向こうに行く、それにソ連の空気も身をもって体得されるわけでございますが、その辺とこちらと呼吸を合わせまして私は何とかこの問題は出漁までには解決いたしたいというふうに思っているわけでございます。
  152. 北村暢

    ○北村暢君 この二割休漁の問題については、長官は沿岸漁業よりはもっと経済力もあるし、二割ぐらい削減、休漁してもいいのだ、こういうような判断をしているようですが、実際問題として母船式の規制区域内における操業というものは、おっしゃるとおり紅が主体で白が少ない、サケ、マスも少ない、こういう状態にある。したがって、母船式の場合はこれで相当なやはり採算というか何というか、そういう点からいえば、優秀なものをとっているに相違ない。ところが、以南はマスが主体だ、マスとサケにおいて大体価格の点からいっても何からいっても、マスのほうが不採算だということはだれが考えてもわかるはずです。そういうマスを主体とするしかも母船式から見ればはるかに零細なものが紅をとろうといっても、とれないようなところで操業しているものを二割削減をして、規制区域内の母船の漁獲量を確保しよう、そのために犠牲にならなければならないということは、私はやはり相当漁業問題としては考えなければならない問題でないか、こういうふうに思うのです。そうしてこのソ連の漁獲が白とマスが主体であり、そうしてマスが年々減っている、こういうことのようでございますけれども、資源的にいって、一体この以南の漁獲というものがソ連の漁獲のマスとどういう因果関係があるかというようなことについても、私はどうも割り切れないような感じがいたします。さらに、区域内においては、母船式はわざわざかかった白のサケであるとか何とかというものは、これをとらないで逃がしてやる、こういうようなことすら実はやっておるわけですね。紅を主体にとっておる。でありますから、したがってソ連のほうは、白ザケよりもマスのほうを珍重するというような意味でマスというものに執着しておるのかどうなのか。この規制区域内における白ザケというものについては、母船式は今言ったような形でわざわざ逃がしているというような状況で必ず紅を主体にとる。採算の点からいって紅をとったほうがいい。こういうことでやっておるんだと思うんですね。そういうような点からいくというと、資源論だけでは何か割り切れないものが出てくるのではないかというふうに思うんです。そういうような点からいって、一体そういう点についてはどのように考えられるのか。あらかじめこの以南の二割休漁ということをおみやげにしていって、そして向こうで交渉の中で有利にしたいというんだけれども、そういうことが、千田委員も触れているように、毎年々々一歩ずつ後退をしていくというような形で、あらかじめそういうようなことでいくというようなことについては、これはそういうような態度をとるべきでない、こういうようなことで、明らかに資源論からいくべきだと、こういうような形でありますが、どうしてもマスについては資源的にどんどん減っていっているのかどうなのか。科学的にそれほど自信がないものなのかどうなのか。これらの点について、もう少しわかるように説明をして下さい。
  153. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 先ほど、規制区域内の関係の犠牲で以南を減らしているんじゃないかというお話でございましたが、これは実はそういうことではございません。両方とも、規制区域につきましても一割ということをいっておりますし、これはあくまで資源という問題と、それから四十五度以南ということから、これは四十五度以南に規制区域を拡大することを拒むという両方の目的から実はやったわけでございます。資源は、先生が減っていないのじゃないかという意味のことをおっしゃったのでございますが、実はマスにつきましては、これは豊漁年、不漁年と、両方ございますが、これを比較してみますと、日本と、それからソ連の沖取りというものを比較してみますと、これはやはり減ってきております。両方を足したものが減ってきておりまして、この原因は別でございますが、減っているのだということにつきましては、これは日ソの両方の科学者が実は合意しているようなわけでございます。たとえば、これは昨年は豊漁年でございましたが、その二年前と昨年を比較しますと、約五万トンは、両方の漁獲で減っております。それから、その前のいわゆる不漁年、一九六〇年が不漁年でございますが、それと、その前の偶数年、一九五八年を比較してみますと、これもちょうど五万トン減っております。豊漁年は豊漁年で約五万トン、不漁年は不漁年で約五万トンというふうに減ってきておりますので、この事実は両方の科学者も実は認めているわけでございます。原因については、先ほどから申し上げますように、まだ両方とも意見は一致していないということでございます。で、マスの資源が一体日本でとっているマスの資源が、ソ連のマスの資源とどうだというような問題でございますが、これはいろいろマスの系統はございますが、日本でとっておりますマスについては、これはたとえば日本海のものも、これはソ連のほうへ、樺太なり、オホーツクのほうへ上がっていくマスの資源と同じでございますし、それから、四十五度以南でとっておりますマスは、やはりこれもオホーツク、カムチャッカの方面にいきますマスと大体同じだということは、両方の科学者も認めていることでございまして、大体同一資源であるが、四十五度で線を引いているのだということでございます。私ども四十五度の問題に非常にとらわれますのは、四十五度、これをもしも拡大する、そして規制区域を南まで下げるというようなことになりますというと、これは北海道——まあ場合によりましては北海道、東北の北のほうの沿岸漁業者がサケ、マスをとることについて、これは一々規制区域の中の数量がきまって、それを一船当たり何ぼという割当をもらってでないととれなくなってしまう。それから、そういうところまでもソ連の監視船に監視されるというようなことでは、ほんとうに軒先までもこれは監視される。それから軒先に出ていくのにも、一々割当をもらわなきゃいかぬというようなことになりますので、四十五度の規制区域をさらに拡大するということにつきましては、過去五回の委員会でも、これは強硬に日本は突っぱったところでございまして、これは私どもは、これもことしの交渉では、ぜひこれは堅持する。しかし、そのためには、こちらでも自主規制ということをある程度強化するという態度をとっているわけでございます。  それから、収益の点でございますが、これは平均でものを考えておりますが、私どもの考えでは、収益は独航船よりも以南のほうがこれは私は相当いいのじゃないかという——平均の数字でございますが、そういうようなことを実は試算もしておりまして、以南の——必ずしもそれがまあそのまま現われておるかどうか知りませんが、トン当たりの権利金が百万だ、あるいは百二十万だと言われ、独航船は三十万だ、三十五万だということを言われておりますが、収益も私はやはり以南のほうが高いのじゃないかというふうに考えております。それから、規制区域内では、いろいろ白とか、マスとかいうものを捨てているのじゃないかというお話ございました。私はそういうふうに言われるのを——過去においてそういうことを言われたということを聞いたことはございますが、まだ現状においては、非常に数字も少なくなってきております現状においては、そういうことはないだろうというふうに——絶対ないとは申し上げかねますけれども、そういう傾向はもうなくなっているのだろうというふうに考えているわけでございます。
  154. 北村暢

    ○北村暢君 そうすると、政府の方針として二割休漁させるということをきめたのはいつですか。
  155. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 外へ申しましたのは三月七日の日だったと覚えております。
  156. 北村暢

    ○北村暢君 資源的からいけば、規制区域がだんだん拡大をしていく、そういうようなことで、規制区域外の漁業しか認められない。こういう流し網業者が、規制区域をだんだん拡大されていけば、規制区域外が狭められることはもう間違いない。そういうことで、狭められてきている。こういうことで、もうこれ以上四十五度以南にまで持ってくるということは絶対にいけない。四十八度でとめよう、こういうことのようですけれども、それは確かにそのとおりで、その線は貫いていただきたいと思いますけれども、あの資源的な調査をずっとやってきたという形からいけば、大臣なり、都道府県の知事なりの許可でもって漁業をやって、そして沿岸から沖合いへと、こう指導してきて、多大の犠牲を払ってやはり融資も受け、非常に楽にこういうふうに拡大していったのではないはずなんですね。そういうような形で、ようやっとあの区域外の流し網という形で育ってきたものが、もう四月早々出漁しなければならないという矢先の三月七日に、二割削減——出漁の準備も何も完了しておる、そういうような時期に、この二割休漁という方針を決定して、漁業交渉に有利に持っていこう、これでは比較的零細な流し網業者が怒るのは、これはあたりまえだと思うのです。こういう資源問題について、昨年からそれじゃわからなかったか。年々歳々それじゃ農林省はどういう指導をしてきたか。そういう資源の見通しについて、サケでも何でも、年々減ってきていることはもう事実わかっている。にもかかわらず、許可漁業としてやってきている。業者が勝手ほうだいにやっているわけじゃない。都道府県なり農林大臣なりの許可を得て許可漁業をしてやっているじゃないですか。そういうものをどんどん振興するような意味でやってきて、そして出漁まぎわの一カ月か半月前に、これを二割減らせと、こういうようなことは行政の措置としては私は非常にまずいやり方じゃないかと思うのですね。一体そういうことについて農林省はどういうふうに考えているか。資源の問題については日ソの共同調査その他もやっているのでしょうけれども、三月七日の当時まで、その減らなければならないなんということはわからなかったのですか。これは三月七日の現在においてはもうすでに出漁準備というものをやっている。もう四月早々に出ていこうという準備をやっているという段階に、この二割を減らせということは、まことにまずい方法じゃないか。前年度あたりからどういうふうに指導されてきているのか。こういう点についてひとつ納得のいくように説明してもらいたい。
  157. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) お答えいたします。先ほど先生の御質問の中に、以南の人は規制区域内には入らないで、規制区域外だということをおっしゃいましたが、これは実は規制区域内でも操業いたしております。いたしておりますが、これは二割くらいの配分で実はやっております。  それからもう一つの点でございますが、この休漁なり減船ということが非常にむずかしい問題だということは私どもも知っております。資源の問題につきましてはいろいろ中で議論をいたしておりまして、日ソ両方話し合いまして、合意いたしましたのは十二月末でございますか、それからわれわれのほうでいろいろ、どういう時期にどういうことをやったらいいかということを実は検討したことは事実でございますが、交渉その他のことを考えましてわれわれはああいう時期に実は休漁ということを発表したのでございますが、時期としましていつがいいかということにつきましては、これはいろいろ議論がございます。専門会議の前がいいのか、あとがいいのか、いろいろ議論もございますが、われわれとしましては、交渉が始まりました段階で、交渉をうまく進めていくということの考え方から、あの時期を選んで出したわけでございます。
  158. 北村暢

    ○北村暢君 三月七日にこの二割休漁の問題を出すのはどうか、適当かどうかという前に、今までずっと日ソ漁業交渉をやってきて、ずっと減ってきているわけですね。減ってきている中で、この流し網というものの面については許可漁業としてやってきているのです、昨年、一昨年から。方向としてはやはり急に二割削減というような形で出るのではなくて、資源的な見通しだの何だのというものがあれば、もっと計画的に許可漁業というものの行政措置というものがスムーズにできるのじゃないかというふうに私は思うのですよ。そういうようなことで、せっかく振興してきたものをこうやって規制をして削減をしていかなければならない。二割で、休漁というのですが、休むだけか、永久にこれはやめていくのか、こういうような問題もあわせて考えなければならない、こういうようなことのようですから、先ほどの説明によるというと、漁獲の期間等についても考えなければならない。とういうようなことを言っておるようですけれども、そういうような方向にいかなければならないものであるとするならば、もう少し計画的にできないものか。伸ばすだけ伸ばしておいて、そして——勝手に伸びたわけではない、許可制をとってやっているものなのです、そういうようなものを二割も一挙に削減をしなければならないというようなこと自体が方針としては無計画であったのじゃないかということを私は言っているわけなんですよ。それは、それまでわからなかったことなのですか、どうなのですか。
  159. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 資源につきまして、特にマスについて同意ができましたのは昨年末でございます。その後どういう方法で資源の回復をばかったらいいか、あるいはこれは資源だけでなく、実は先ほどから申し上げますように、ことしは向こうから言わせれば、日本側はとり過ぎだ、約束違反だということを言っておりますので、四十五度の問題、これを守っていくにはどういう方法が一番いいかということを実は検討したことは事実でございますが、しかし、これは、たとえば昨年の漁期以後すぐやったらいいじゃないかというような、いろいろこれは御議論があるかと思いますが、私どもとしましては関係者の資源論の合意ができましたあとにどうやったらいいかということを実ば検討したわけでございます。
  160. 安田敏雄

    安田敏雄君 関連してお尋ねしますが、その二割制限しなければならないということは、向こうから昨年とり過ぎたからということで強要とまでいかなくても、何かそういうような要請は実際の問題としてあったわけなのですか。
  161. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 先ほどから申し上げますように、この二割という問題は、漁獲の約束をしたのを日本が守らなかったからだということの結果ではございません。そうでありますれば、独航船の区域で一割減らしているということもつじつまが合わぬわけでございます。これはそういうことではなくて、資源の面と、もう一つは四十五度の線は日本としてはどうしても守るのだ、それにはどうしたら一番守りいいのだろうか、当然ことしも——昨年、一昨年と規制区域外の数量を実は向こうと話し合いをしておりますので、今年度も当然そういうことが問題になってくるだろう、そういう場合にどういうふうにやったらその規制区域外の数量を守っていけるかという方法論が一つと、それからもう一つは、マス資源が非常に減っているという、両面からこれを考えましたので、ソ連側から強要されてやったとか、あるいはソ連側と話し合いの上でこういう数字にしたというわけではございません。
  162. 安田敏雄

    安田敏雄君 よけいにとったということは去年だけではないようでございますし、そこで、去年と同じ船団だけくる、すなわち二割減らさないということならば、またことしよけいにとり過ぎるというようなおそれがあるから、だからその二割減らしていけば、二割捕獲してもよけいにならない、こういう勘定が出てくるわけなのですよ。そういうような心配も配慮されたわけなのですか。
  163. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 先ほどから申し上げますように、これはよけいとったから、その罰といっては語弊がありますが、そういう意味で減らすとか、よくそれに結びつけて言われるのでございますが、私どもはそういうことじゃなくて、一つは、資源の面から、マス資源というものを回復するのにはやはり漁獲高というものを相当減らさなければいかぬじゃないかということを考えましたことと、ソ連との交渉では四十五度をもっと南に広げて、そして沿岸の漁業をもう全部、ノルマをやってもらったらどうか、やるべきだ、同じ資源であるからやるべきだということを強く主張されるのでございますが、これに対しては、日本側で、私どもは自主的に規制していく問題だ、規制区域外はそれを確保していくには、そういう、たとえば一つの休漁ということをとったのでございますが、これが一つの確実なやり方ではないか、その上に数量におきましては、操業期間の問題等も出てくるというふうに考えております。日本側が自主的に規制区域外で数量を言いましたのは、実は一昨年からでございます。一昨年も七万といいまして、七万三千トンくらいとりましたことは事実でございます。昨年も七万といって七月末に八万になり、十二月末の統計出ておりませんが、十二月中の統計が出ればこれがまたふえるということになろうかと思います。
  164. 安田敏雄

    安田敏雄君 私はこの問題全然わからんわけですが、先月の新聞を見ますというと、業者ですか、のほうは船団を二割減らさないで休業したほうがいい、こういうことで主張している。ところが、水産庁のほうばそうでなくて、既定方針どおり二割減らしていくという方針を堅持している。こういうようなお話でしたが、その間の調整は全部お済みになったわけですか。
  165. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 御質問の点でございますが、まだ調整済んでおりません。  もう一つ申し上げたいのでございますが、実は団体二つございまして、日鮭連という独航船のほうと、それから全鮭連といって、以南の流し網がございます。両者それぞれ話しておりますが、いろいろニュアンスは実は違っております。違っておりますが、全鮭連のほうにつきましては、まだその点が調整つかんままに、高碕代表は明日立ち、全鮭連の会長があるいは一緒に行きますか、数日おくれていきますか、まだ国内的には話し合いがつかんままに代表が立たれるというのが現状だろうと思います。
  166. 北村暢

    ○北村暢君 私はまだちょっとふに落ちないのが、区域内の母船式も一割減らすということで、区域外のほうは二割減らす、こういうのですけれども、大体母船式のほうばまあ一九五二年当時約三隻であったものが、一九五九年で十六隻になって、それを十二隻に今日減らしている。大体、これが十二隻で九万六千トンくらいのようです。ところが、以南の流し網は、非常に零細なトン数、平均で四十トンくらいだろうということのようですが、それが一九五五年が千二百四十二隻、その前の一九五三年は約千九百三十二隻、約二千隻であったものが、今日では四百十四隻に減らされている。こういうことで、年々歳々べらぼうなものが減らされているのです。しかも、一九五五年の千二百四十二隻から、その翌年は五百十隻に減らされているのですね。それで半分以下に減らされてしまっている、それがなおかつ、ずっと減ってきているのです。とこるが、母船式のほうは、一九五九年まではふえてきているんですよ。そういうことで、母船式の犠牲に流し網がなってきているということは、私ははっきり言えるのじゃないか。しかも、四百十四隻でもって一万六千トン何がしです。こちらは十二隻で九万六千トン何がし、てんで違うわけですね。もちろん独航船もそれに付属してついているわけでございますけれども、そのようにして、母船式の漁業というものは相当やはり伸びてきておったわけです。そういうことのために、流し網が規制区域外が狭められるし、そういうようなことで、相当減ってきているわけです。したがって、区域内で一割減らないでも——一割減らすんだが、区域外のほうで二割減らすのは妥当なんだというけれども、これは配分の国内問題として、私は国内の問題である。配分の問題である。したがって、これは私は、納得のいかない、全鮭連ですかというのも、相当の理由があるというふうに私は感ずるのです。したがって、そういうようなことからいくというと、どうしても今度の規制というものは、比較的零細なものを犠牲にして母船式を確保する、これ以外にないのじゃないか、そういうような点からいえば、もう少しやはりあたたかい行政のあり方があっていいんじゃないかというふうに思うのです。母船式のほうはどちらかといえば、資本漁業でありますから、北洋漁業がうまくなければ、陸へ上がって畜産もやる、何もやるという、大資本なら何でもできる、何の転換でもできる。ところが先ほど来、東委員質問しているように、鮭鱒を、マスを直ちにそれじゃマグロなりカツオなりに切りかえられるか、なかなか切りかえられないという実態です。そういう中で二割を減らすということについてはやはり問題があるのじゃないか、こういうふうに思うのです。したがって、これはやはり国内問題なんでありますから、どうも聞くところによると、水産庁は非常に強権的にお前たちの漁業というものは一年一々許可漁業だ、言うことを聞かなければ許可しないぞ、こういうようなことでおどかしているということも聞いている。それでは私は行政のあり方として非常に間違いじゃないか、こういうふうに思うんです。そういうふうな点からいって、どうも国内配分の問題について、私どもは割り切れないものを感じますし、また日ソ漁業の交渉にあたっても、この問題解決しないままでいって、一体どのような交渉の経過になるのか。全鮭連の会長も行くから、そのうちに交渉の中で難航するというと、ひとりでに折れてしまうだろうというような予測のもとに、決定しないで出ていくというのは、何かこれは多数で押し切ってしまうような感じがする。もっと、やはり流し網漁業というようなものの性格というものを、しっかり、国内の調整の問題としては考える必要があるのじゃないか、このように思うのです。そういうふうな点からいっても、国内規制の問題が二割がどうしても正しいと考えられるかどうなのか、この点を一つ説明願いたい。二割の問題はマスの資源ということに特に関係があって、そういうところにきているようでございますけれども、国内の調整の問題としては、どうも私は割り切れないものを感じますので、どうしても動かないものなのか、また、これがそれほど合理性のあるものなのか、この点をもう一度お答え願いたい。
  167. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 先ほど先生、母船式のために以南を減らすというか犠牲にしているのじゃないかというお話でございますが、実は私どもは全然そういうことを考えておりません。実は母船式といいましても、これは母船会社と独航船で団体交渉しまして、一匹幾らという値段をきめて、団体交渉で売っているということでございまして、母船式の中にも独航船が四百十隻、ちょうど以南の四百十四隻と匹敵する独航船があるわけでございます、漁獲高は実は一隻当たりにしますと六一年、昨年でございますが、以南のほうは一隻当たり百六十五トンぐらい取っております。、独航船のほうは百三十トンぐらいでございます。数量からいきましても、小さい船で一隻当たりにはたくさんの魚を取っております。収益で見ましても、われわれの収益計算では、以南のほうが独航船よりもかなりいいんじゃないかというようなことを実は考えておるわけでございます。それから先ほど以南を非常に減らしたということを先生おっしゃいましたが、これは以南の中で船をつぶして大きくなってくるということが一つあるわけでございます。ですから、五百十ばいと現在四百十四隻でございますが、約百隻違いましても、トン数は同じでございます。一つは、一隻当たりの船が大きくなったということと、一つは以南の船を独航船のほうで買ったということがございまして、以南にっきまして、私どもたとえば今度は源泉といいますか、給料といいますか、こういうことじゃなくて、実績的に船をつぶして大きくなってくるということがだいぶ行なわれたわけでございます。  それから今のお話しで、二割というものが話がつかぬうちに行くかということでございますが、私どもとしましては、あしたの時点まででは遺憾ながら話はつかぬのでございますが、私ども今年の漁業交渉、資源の問題、今まで出ていることから考えますれば、私はこういう方針は堅持したいというふうに考えております。
  168. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 他に御発言がございませんければ、本件につきましては、この程度にいたします。     —————————————
  169. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 漁業法の一部を改正する法律案(閣法第一三二号)、水産業協同組合法の一部を改正する法律案(閣法第一三三号)以上参議院先議の二案を議題といたします。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  170. 森八三一

    ○森八三一君 ただいま議題になった二つの法律案の提案理由の説明なりあるいはその補足説明の中に、日本の漁業は漁獲高では世界有数の地位を占めておるが、しかしその中を見ると、沿岸漁業は一部を除く全体として非常に低い生産性にとどまっておる。さらに国際的な制約の強化等によって、沖合い遠洋漁業も非常に不安定な状態にあるということが述べられております。まさに実態はそうであろうと思います。そこで、今後の水産日本としての成果を高揚して参りまするためには、諸般の情勢から考えまして、沿岸における漁業、特に養殖というような面にかなりの努力を払っていかなけりゃならぬと思うのです。そういうことに関連いたしまして、前国会におきましても、その前の国会におきましても、いわば農業基本法に匹敵するような沿岸漁業の振興に関する国策と申しまするか、国の基本的な態度というものをきめて、相当高度の保護、助長政策をとるべきであるということが、おそらく同僚諸君全部からの主張であったと思うんです。それに関連いたしまして、政府当局といたしましては、すみやかにそういうふうな措置をとりたいというような御答弁があったように記憶いたしております。その後承りますると、この国会中にもそういうような措置をとられるやにも伺ってはおりまするが、いまだ具体的に現われておりません。そこで、そういうような処置がとられるといたしますると、そういう処置に関する立法と、ここに今審議を託されております二つの法律とり関連がどうなるかという問題が一つあるというように思われるんです。そういう関係はどうなりまするか、その辺を最初にお伺いしたい。
  171. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 今御質問のありました、特に沿岸漁業につきまして何か立法措置という問題でございますが、私どもも農林漁業基本問題調査会の答申をもらいまして、実はいろいろ検討したのでございますが、大体成案を得まして、本日の閣議で国会に提案するということを実は決定いたしたわけでございます。すでに漁業法、水協法を提案いたしておりますが、この問題の取り扱いにつきましては、委員長ともよく私ども御相談いたしまして、なるべく早く国会のほうに提案して御審議をいただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  172. 森八三一

    ○森八三一君 私のお伺いいたしましたのは、そういうような手続が講ぜられるといたしますると、あとできてくる沿岸漁業の振興に関する法律と、ごの漁業法の改正なり、協同組合法の改正なんというものの関連があるのじゃないかという感じを持つのですがね。そういうことはなしに、この二つの法律は本院の先議ですから、これはこのままとして、これはずばり見て審査をしていってよろしいかどうかという問題にも、一つ割り切れぬものが残るように思うのですが、その辺はどうでしょうか。
  173. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 漁業法につきましては、これは沿岸漁業だけでございません。漁業制度全般に国際漁業まで含めて規定しておる法律でございます。水協法になってきますと、若干性質が違います。それから、今もう一つ考えております沿岸漁業等振興法は、おもに沿岸漁業、それかな若干足を出しまして、沖合いといいますか、中小漁業まで頭に含めた法律というふうに考えておりますので、漁業法等とは若干範囲がまた違うかもしれませんが、一部につきましては、当然これば関連を持った法律だというふうに考えております。
  174. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますと、その法律が出てきたのを見てでないと十分な質疑はならぬと思いますが。しかし、きょうの時点ではそうは参りませんので、出ておる法律だけに関連して一、二お尋ねをいたしたいと思います。  漁業法の改正の中に、漁業権行使の制限という問題が出ております。これは事務的なことではありまするが、総会の開催前に書面で同意の手続をとるということがありますが、三分の二以上の同意が出てしまえば、総会の議決ということはただ形式上やるというようなことになるような気もしますが、こういうような手続をなぜやらなければならぬのかという問題が一つ
  175. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 今の点は、従来は各自行使権という規定を置いておったわけでございますが、各自行使権でございますと、どうしても組合員全部にこれを行使させなければいかんということで、非常に零細化するという問題もございますので、実は今度の法律は、漁業権行使規則あるいは入漁権行使規則という規則を作りましてやろう。ですから一部の人は、その規則によりましては漁業権を使えぬということも出てくるようなことになるわけでございます。それで、あらかじめその関係のものの三分の二の同意をとるということに、書面で同意をとって意思を確認しておくということにしたのでございますが、その人と今度は組合の議決権を持った人とが、若干食い違いが出てくることがございます。三分の二の同意のほうには准組合も入ってくるということも考えられるわけでございまして、総会の決議になりますと、議決権がないということにもなりますので、これは一回関係者の二分の二以上の同意と、同時にこれは組合として行使規則を作りますので、組合の決議と両方に実はかけたような次第でございます。
  176. 森八三一

    ○森八三一君 その次にお伺いいたしたいのは、漁業法の改正の中で、漁業権の行使の制度を廃止するということが述べられておりますが、特に区画漁業につきましては、今の沿岸漁業の振興に関する法律が出て参りまするその場合に、論議があろうと思いますが、養殖関係の問題につきましては、相当多額の資金、施設というものを投入をすることになると思います。という関係から、過去におきましてもそういうことが考慮せられた結果として、特別な場合を除きまして更新の制度が認められておるというように私は理解しておるし、当然そうなければならぬと思うのです。ところが説明書には、相互的利用を目的とする云々ということのために、この更新制的を廃止するということが述べられております。総合的利用ということと、養殖等を中心とする区画漁業の問題とをどういうふうに理解してよろしいのか。むしろ、私は今までの規定のとおりに、特別な場合は更新を認めないということはあり得ると思いますが、原則的にはやはり安心して沿岸の漁業、養殖方面に精励のできる建前というものを作っておいてやるということが、親切な形ではなかろうかと思いまするが、その点はどうなるか。
  177. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 更新の規定を落としましたのは、現在の法律では、更新の規定は区画漁業につきましてありまして、附則でこれを停止いたしております、現在の法律では。これを今度の法律では更新制度をやめまして、特に区画漁業の中では先生のおっしゃいました相当資本を使うというようなもの、たとえば真珠、漁類養殖業というものにつきましては、そのかわり実は許可期間を十年としたわけでございます。これにつきましては、十年間といえば、相当の期間でございますので、ひとつ十年にする。そのほかの区画漁業につきましては、たとえばノリでございますとか、あるいはカキというようなものにつきましては、これはほとんどが団体管理の漁業権でございます。でございますので、実は組合以外の人は、ほとんどそういう権利はもらえない、優先的に組合がその区画漁業権を、特定区画漁業権といっておりますが、もらって、組合に行使させるということになっておりますので、組合以外にはその漁業権は行かぬという前提がございますので、これは更新の規定を取りましても、ほとんどまた組合ということは、これは実は法律の建前ではほとんど明らかでございます。それでやはり一つは、十年ということにいたし、一つは団体管理漁業権ということがありますので、漁業権を更新いたします際には、必ず前の人がもらうのだというふうに全部をしてしまうということじゃなくて、団体管理漁業権は、大体そういうことになりますが、やはりその時点に立ってその漁場をどういうふうに総合的に利用したらいいかということは、五年間なり十年間たったら、やはり考えてみるということが私は必要ではなかろうかということで、更新の規定を取ったわけでござい.ます。
  178. 森八三一

    ○森八三一君 期間は、十年ということで、確かに五年は延長になったことはわかります。わかりますが、漁業協同組合に対する更新が、十年たてば原則としては認められないということになるわけですね、結論的には。今までの付則で制限をしておったということは、これは別の理由で制限があったように私は承知しておるのです。原則的には更新をするということであったが、他の理由によって、制限といいまするか、適用しないというような附則がつけ加えてあったのであります。違うと思うのです。十年に延長いたしましても、協同組合に対する権利というものは更新していくという建前を存続をしておかなければ、この種の漁業としては、非常に不安定じゃないかというふうに思いますが、その点はどうですか。
  179. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) お答えいたしますが、組合の団体管理漁業権でございますと、ほとんどこれは五年たてばまたその漁業協同組合、もう五年たてばまた漁業協同組合というように十年たてば更新できるという意味じゃなくて、カキとかノリとか、そういう団体管理漁業権はその時点その時点に立ってでございますが、ほとんどほかの人はもらえない、団体に優先的にいくとしいうようなことになっておりますので、組合がその時点で切られるということは、私はほとんど考えられぬのじゃないか、団体管理漁業権についてはというふうに考えております。ただ、真珠とそれから大規模な漁類養殖については、これは十年たった場合に、もう一回再検討して見るということになると思いますが、団体管理漁業権については、私は先生のおっしゃるようなことには現実の問題としてはおそらくならぬで、団体管理漁業権として続いていくだろうというふうに思います。
  180. 森八三一

    ○森八三一君 今の長官のお話し、具体的には続いていくものであるとすれば、むしろ法律規定といたしましては、その実体を明示しておくことが、関係の漁業協同組合なりそれに加入をしておる組合員が、ほんとうに安心をしてやっていけるということになると思うのです。これは多少邪推かもしれませんが、十年たてば、一応形式的に打ち切るというように改めまする結果として、今の臨海工業なんかの問題の補償問題ということの関連が、どうも頭に浮かんでくるのですね。そういうことじゃ問題にならぬ。だから実体的には、管理漁業の協同組合に対する漁業権については、貝類だとかあるいはノリ、あるいはカキというような養殖的なものについては、当然これは存続していくことが原則だということになれば、その原則をむしろ明らかにしておくということが、私は親切な措置である、こう思いますが、いかがでありますか。
  181. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 今申し上げましたように、これは私のほうは、漁業権につきましては、共同漁業権の場合はこれはほとんど組合でございますので、そういうことを書きませんが、従来からありました区画漁業権につきましてこの規定を取りましたのは、たとえば組合の者だけはこれは必ず更新する、組合以外の者は更新しないということは、私は法の建前上これはなかなかむずかしいのじゃないかということが考えられます。それで区画漁業権の中には、当然組合員以外の者もあるわけでございますので、組合だけは必ず更新する、個人は更新しないということも法の建前上いかがかと思われますので、これは片っ方の資本投下の大きいものとかいうものについては十年ということにいたしましたが、一応区画漁業権全部につきまして、個人の場合には必ずその人に免許するという規定は落としたのでございますが、その根拠になりますのは、先生のおっしゃいましたように、何か補償とか、そういうような場合にこういうことでやりやすくするのだとか、そういうようなことは全然考えておりません。
  182. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますると、ここで明確にしておきたいと思いますが、協同組合等に対する漁業権につきましては、養殖等の多額の資本を要し、計画的に長期にわたるというものについては、実体的には十年後において特別の理由のないという場合には更新をする、現在の規定と同じ精神においてこれが運営されるのだ、こう了解してよろしゅうございますか。
  183. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 十年先ということじゃなくて、実は先ほど申しました区画漁業権の中で十年になりましたのは、真珠とそれから大規模の魚類養殖でございます。そのほかは実は五年でございます。五年丸々で切っていくわけでございますが、先ほどから先生のおっしゃいますように、ノリとかカキ養殖というものは、これは団体管理漁業権でほとんど組合にいくということになっております。現実の姿はおそらくそういうことになってくるだろうというふうに私は思います。
  184. 森八三一

    ○森八三一君 なっていくであろうというところに、ちょっと問題があるのですね。そうなるのだというように実体的には御説明があったように思うのですが、そこがあるということになりまするというと、これは問題が起きるのですから実体的にはそうなるのだということが明確に御説明いただけますれば、一応私個人としては了解できまするけれども、この種の養殖漁業について五年ごとに再審査をして可否を決するということが建前だということになりまするというと、これは非常に重大な問題が伏在してくるというように思うのです。
  185. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 今の問題でございますが、これは十四条で免許の適格性ということをいっておるわけでございます。この中で二項で特定区画漁業権、先ほどのノリとかカキとかでございますが、これは適格性がありますれば、こういう人に優先的にいくわけでございます。たとえばその組合員のうちで地元地区内に住所を有し当該漁業を営む者の属する世帯の総数が、地元地区内に住所を有し当該漁業を営む者の属する世帯の数の三分の二以上であるものとかいうような条件はもちろんついております。こういう適格条件があれば、ノリとかカキについては組合に優先権があるのでございますから、こういう条件さえあれば、これは当然その組合以外にはいかないということになろうかと思います。
  186. 東隆

    東隆君 関連。  これは今の問題は、私は一番関係するのは、先ほど森委員が言ったように、東京湾その他におけるノリ業者に一番関係が多いと思う。ノリ関係というのは埋め立てその他の問題が当然起きて参ります。したがって、私はこの漁業権の免許の更新関係、その他についての規定を歴史的に見ますと、古い時分の明治時代に出たのには、前項の期間は漁業権者の申請によりこれを更新することを得と、こういうふうに書いて、届出をすると、もうすぐそのまま継続をする、こういうようなおおらかな形でもって行なわれておった。それが現行法では、第二十一条の規定で一応おおらかな気分を示しておるのですけれども、ところが附則でもってそれを限定をしております。それは「第二十一条第二項から第四項までの規定は、当分の間は適用しない。」そういう附則をつけています。そして現行では、おおらかな規定を実は廃止をしておる。こういうのが現状ではないかと思う。それでこのこと自体でも、もうすでに不安を来たしておると思う。今度は明らかにこの明文を除いてしまって、そして農林大臣及び都道府県知事に大きな権限を付与する、こういうことになるわけであります。そこで、これは非常に関係のないものと、それから関係のあるものとせつ然と分かれる問題なんであります。別にこういう規定を原則にしておいても、漁業法の中には、明らかに農林大臣も都道府県知事も免許その他を取り消す権利を保有しておるはずで、それに適格な条件がない場合に、それを続けていく必要がないのでありまして、そういうような権限があるはずでありますから、別にこういうような規定を必要としないのじゃないか、こう考えるわけですが、この点はどういうふうにお考えですか。
  187. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 今の御質問でございますが、今の規定で更新を置いておりますのは区画漁業でございまして、それの附則で適用を停止したということは、事実でございます。それで今度の考えでございますが、これはやはりある期間がきたら、その地先の漁場につきましては、どういう計画を作っていくのかということをみな検討しようじゃないか、総合的に一番いい方法でやろうじゃないかということを実は前提にいたしまして、いわゆる継続免許とかいうことをやめたわけでございます。ただし、その中でも、先ほどから申し上げますように、生産期間の非常に長いもの、あるいは相当な投資が要るもの、あるいは漁業調整上そう差しつかえないというものについては十年というふうに、従来よりも長い免許の期間を実はやりましたが、そのほかは五年にしている。ただし、その場合に一部の人だけに継続免許をするということもできませんので、これはそのたびごとにだれにやったらいいかということを考える、ただし先ほどから申し上げます特定区画漁業権につきましては、こは先ほどの一定の要件がございますれば、当然優先的に組合にいくというような形になってきますので、私はその条件がある限りは、これは当然五年たてば、また組合ということになるというふうに、現実はそういう姿になってくるだろうというふうに考えるわけでございます。
  188. 清澤俊英

    清澤俊英君 関連して、ただ一点だけ少しきょうは早く打ち切ってもらうことにしまして続けてやることになるだろうと思いますが、二十六年かの改正のときに知事の取り消し権がついたんですね、あれは二十二年ですか二十四年ですか、その審議の過程において、おそらく知事の取り消しの要件というものが質問になっていると思うのだ。どういう場合に知事ばこれは取り消されるのだ、ただどれもこれもなしに勝手に取り消されぬじゃないという必ず審議は行なわれておると思う。その点はどうなっていますか。こういうことと、われわれが今までの経験から見ますと、港湾法の適用や、知事の取り消し要項や、そういうもので非常に脅威を感じて、今森さんが言われたとおり、そういう場合には専決的に処分することができるんですよ。だから明確にそういう継続権限があることを明記してもらわなかったら大問題ですよ。これは農地法の二十条の解釈のようなものがちゃんとついていなかったら、これは大問題になると思うんですよ。二十条のあすこの結局は無条件に取り上げられないというあれをとってしまったというなら、これは農地局はひっくりかえっちゃうだろうと思う。それと同じようなものを今出そうとしているんですよ。しかも、いろいろの公益性を持った場合には港湾法でもってやる、現に横浜のときは出たんですよ。そういうものとの食い合わせはどうなんです、この法律でいったら。それだけお聞きしておけばいいんです、あとはまたその次にやります。
  189. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 今の取り消しの問題でございますが、この法律は漁業法の三十九条にございますが、私どもはこの規定はいじっておりません。三十九条はもとのままにいたしております。それで現在は区画漁業権につきまして、一応規定があって附則で停止するということでありますが、たとえば定置の自営などもこれは経験者優先でございますが、組合の自営というものは相当多いわけでございますから、これにつきましても、実は継続して免許するというようなことは現在いたしておりませんが、区画漁業権につきましても、その点は今度は一緒にしまして、ただしある程度の条件があれば、これは優先的にその組合員にいくというふうに、停止の場合のときと同じふうな取り扱いをしたわけでございます。
  190. 千田正

    ○千田正君 さっき森委員の御質問に対して長官からは、これはたとえば埋立その他によって漁業権を失うような問題が起きてくる、そういうようなことを考えてはおらないんだ、そういうことを心配してあれしたのじゃないということなんですが、現実においては、たとえば東京湾のノリの問題、あるいはその他の都市に近いノリ漁業や何かが、どんどん近代産業発達につれて土地造成をされていく、埋め立てられていく。それで五年の漁業権と十年の漁業権との場合の賠償の場合は額が違うと思いませんか、どうです。私は今までいろいろな問題をここへ持ってこられたうちで、一番難問題は、たとえば漁業が埋立によって、市なり県なりが中へ入るんだけれども、なかなか漁民は承知しない。一方にはどうしてもそれをやらなくちゃならないというような場合に、非常な問題が起きてくるそれは漁民を納得させない間は、納得させるには十分な根拠がなければならぬし、そういうような場合非常に困る。そういうようなことも勘案しながら、こういう法律を作ったんじゃないと、私はそういうことを歪曲して考えれば、人を悪く考えれば、あるいは賠償する場合でも五年にしておけば、五年の場合の賠償額と十年の場合の賠償額とは額にしてもだいぶ違うんだから、私は非常に漁民のために考えた場合はこれはどうかと思う。どうかと思うようにわれわれは考えられる。漁業の埋立や何かに対して、水産庁は今まで真剣になって中へ入って解決に当たったことないでしょう、実際において。たとえば横浜の埋立に対してもわれわれは何回となく、こういう問題に対して折衝したけれども水産庁は十分なる指導あるいはあっせん、協力というようなことをやらなかった、そういうような問題が幾多も残っておる。だから、その問題を解決するに際しましても、五年ということにきめてというようなことになるというと、あなたは純理論的におっしゃるけれども、実際そういう環境におかれた漁民は、なかなか納得しないわけですね。これをどういうふうに納得するように解釈されるか、もう一度ひとつお答えいただきたい。
  191. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 今の点でございますが、われわれ、区画漁業権について全部更新制というものをやめた理由でございますが、これはやはり、ある年限がきたら、その漁場についてはもう一回みんなどうやって使ったら一番いいかということを見直そうじゃないかということで、更新制というものをやめたわけでございます。先生のおっしゃいますように、長い免許期間があればあるほどいいじゃないか、まあこれはひとつのたとえでございますが、そうおっしゃることも、確かに補償とか何かになりますれば、二十年なり三十年なりという長いものがあるのと、五年というのとでは、いろいろな問題で違ってくるだろうということはわかります。現在の補償等では、しかし自由漁業、免許や何か、許可がなくても、自由漁業についてもやはり十年ぐらいの補償はしているというのが現状でございますが、私どもは、補償ということだけから考えたのではなくて、これは漁場の総合的な利用をやっていくんだということからは、何年かきたら、もう一回再検討していくということの前提をとったような次第でございます。
  192. 森八三一

    ○森八三一君 同じことを繰り返して聞くようですが、ただいまの策弁だと、一定の年限が到達をして、そこで漁場の総合的利用だとかいろいろなことを勘案した結果、その漁業権というものを取り消しする事由が明確であった場合だけに取り消しする、そうでない場合は更新をしてやるんだということが、特定の区画漁業については行なわれるであろうと、こうおっしゃっておるんですね。だとすれば、現行法におきましても、そういうような期間延長の免許の取り消しをする事由がある場合を除いては、継続していいんだと、こういう規定があるんですね。ですから、そういう規定をお作りになったらどうですか。全部やめてしまう、もう機械的に、そのときにはいやおうなしに漁業権は一方的に与えないということが行なわれるんですね、あなたの法律的な考えでは。その事由をきわめましても、この事由についてはいろいろな意見があると思うんです。その意見が調整できませんうちに、これは一方的に更新を認めないという措置をなし得るんです、こういうふうに書いてしまえば。ただ、そうはならぬだろうと言っておりましたが、それはただ水産庁長官としての考え方であって、これを取り扱いますのは地方庁その他が扱うんですから、そういう場合には、他の事由によって一方的に期間の更新をも認めないという措置が行なわれてしまえば、それきりなんですね。こういうようなカキだとか、ノリというようなものを養殖することになりますると、もう五年たてば免許が与えられないかわからぬからといって、仕事をやめておるわけにいかぬわけですね。次から、次へ継続して資本を投下し、施設をしなきゃならぬ。当然これは免許していただけるものだと、継続されるものだという認識のもとに資本を投下し、施設をしておるのに、一方的な事由によってぴしゃっとやられてしまうというようなことが起き得ると思うんです。そういうことであってはならぬので、そこで、取り消しをしなきゃならぬ正当な事由のある場合を除いては、当然更新さるべきであるということを言っておる。現行法と同じなんです。そういうことが親切な措置じゃないんでしょうか。今の御説明でございますると、実体的にはそうなるんだと、こう私は受け取っておるんです。実体的にはそうなる、実体的にそうなるというなら、法律はだれにもわかりやすいように書いておくことが親切なんです。実体を説明したらよいと、こ、う思うですが、そうは思いませんか。
  193. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 先ほど申し上げましたように、区画漁業権の中には、先生御承知のように、個人のものもあり、組合のものもあるということでございます。それで、その個人の中に、特に先ほど申しましたように、十年という非常に長い期間漁場を使うというようなものもあるわけでございます。それが十年先になって、また、はたして個人がいいのか、組合がいいのかというような問題も、これはまた当然、たとえば、真珠につきまして今度の法律でいろいろ議論がございましたが、これは十年先になった場合には、個人にやるがいいか、あるいは組合にやるがいいかというような問題も、当然私は出てくるのだろうと思います。その場合に、一律にはやはりこれはその人に当然やらにゃいかんということになりますと、やはりその地先の漁場計画をやります場合に、これは私は問題だというふうに思います。そしてまた、組合だけに更新して、個人には更新しないというのも、これはおかしなことになるのじゃないかというふうに思いまして、漁場の計画につきましては、やはり何年かたったならば、もう一回再検討する。ただし、団体管理漁業権については、これはある資格があれば、当然その人以外にはいかんのでありますから、当然その人に免許がいくだろうということが当然考えられる、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  194. 森八三一

    ○森八三一君 長官の説明はわかりましたが、その説明の趣旨どうりにここへ文句をかいたらどうかということなんです。と申し上げますことは、そういうような一々の事例をあげて法律規定をすることは、確かに煩にたえませんから、そこで更新をする事由のないという場合ですね、その場合を除いて、当然更新されるのだという規定を置いたらどうです。お話しのように、個人の漁業権がある、それは総合的利用ということを考えて、もし更新をしなくてもよろしいという事由があるのですね、そういう場合、事由があって取り消しを要する場合は別でございますから、そういうような事由のない場合には当然継続されるのだという、現行法の規定と同じような規定を存続されることがむしろ好ましいし、御説明の趣旨を法律に表わすことなんです。何もこだわる必要はないと思うのですが、御説明どおり書いたらどうか、こういうことなんです。
  195. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 今申し上げましたように、私ども前提は、ある時期がきたら、そればその漁場については何をやったらいいのだということを、当然私は再検討すべきじゃないか。それは、その漁場は定置がいいのか、区画がいいのか、またいろいろ問題はあるだろうと思います。それは何年間かたった場合には、それは新しく検討してやる、こういうことでいいのじゃなかろうかということで、漁場についてあまり固定的にものを考えないということにしたわけでございます。
  196. 清澤俊英

    清澤俊英君 さっき私が言いましたね、現行法の知事の認可の取り消しは、どういう場合に取り消せるのか、これが問題になったと思うのです。こういう場合に知事は取り消せるのだ、こういう場合にはそうむちゃなことはやれないのだ、これは何かそれに説明があると思うのです。それを聞きたいというのだ。現行法の、この知事の取り消しという条項がついているでしょう。その知事の取り消しに対しては、どういう場合に取り消されるのだ。何もかにも知事が考えて、これはひとつ取り消してしまえで何でもできるのか。何かそこに私は残っていると思うのですよ、説明が。元来ならそこに、知事の取り消す場合にはこうこう、こういう場合には取り消すことができると書かれるのがほんとうだろうと思うのだが、そうなっていないのだ。そこで問題があるから、それをお聞きしたいということと、今個人が云々と、こう言われるけれども、終戦後の漁業法を作るときは、漁場の民主化が中心だったのでしょう。そこへ個人というものが入るのは、これはどうも法則から見れば間違いなんだ。だから、それに対してある制約を加えて、もっと民主化したものにしようという考え方は、これは一応の考え方だと、こう思われる。ところが、これはひとつの団体としてずっとやってきたものの漁業、ノリだとか、あるいはアサリの養殖だとか、個人ではこれはできないですよ、やたらにね。あまりできないです。そういうものを団体でやってきたものを、これはすぐこの条文からいけば、五年間で打ち切りになってしまう。ところが、あなたのおっしゃるのは、ただし三分の二以上の、その土地においてその業に従事する者がいれば、三十二条ですかによってそれはあるのだ、こういうことを言われているが、あるならあるではっきりさせたらいいじゃないか。これは森さんの言うことなんだが、私らもやはりそう思う。逆に今森さんはそれを言うていられるのだ。これこれの場合は継続することはできないが、これこれの場合には継続することができるとはっきり書いたらいいじゃないか、ない場合でも。これは民法上問題になると思うのです。私は農地法の二十条とちょうど似ているところがあるから、そう簡単に人の権利をそんな簡単に取り上げられるものじゃないです。生活権に影響するものは、社会の福祉に、いや個人の生活に対してこんなもの幾ら法律が通ったって、民法のほうからいったらだめなんじゃないか、二十条の解釈については、それはこうなっておりますけれども、どうしても、継続して土地を耕すというものについては取り上げることはできないと、はっきり農林省答えているんだ。そういうあやしいものを出してきたって、われわればはいはいといってあとへ下がれるものじゃないんです。
  197. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 御説明いたします。漁業権の取り消しはどういうことになっているかというお話しでございますが、現行法の三十七条から実は四十条までございます。三十七条では、休んでいるという場合ではいろいろな条件がございますが、取り消す、あるいは三十八条でございますといろいろな漁業の免許に優先順位をつけて適格性を置いております。そういうものがなくなった場合は取り消しできる、あるいは公益上の必要でございますが、漁業調整、船舶の航行、停泊、係留、水底電線の敷設その他公益上必要があると認めるときは、取り消しなり停止ができる、あるいは免許の錯誤があった場合にはこれは取り消すという規定が実はございまして、これはこのままいじっておりません。
  198. 森八三一

    ○森八三一君 ただいまの質問、三十七条から四十条までに取り消しの規定がある、そのほかに今度は提案理由の補足説明漁場の総合的利用というのが新しく入ってきたわけです。ですから総合的利用ということについては、調整委員会なんかの意見を聞いておやりになると思う。ただ役所が一方的に総合的利用ということの判断をされないと思います。そういうような民主的な公の機関がそういうことを決定いたしまして、現行法の三十七条から四十条の中にお読みになったその理由、そのほかに民主的な判断に基づいて漁業権の更新を非とするというような場合をここに書いて、その他の場合には当然更新されるのだという規定を入れる、これは御説明のとおりなんです。御説明のとおりにここに明示いたしまして、そうして漁民が安心して資本をおろし、施設をさして今後伸していかなければなら、日本水産のほんとうに中軸になる沿岸における漁業というものを振興していくという態度を私はとるべきだと思うのです。それば別に曲がったことをいっているんじゃなく、御説明のとおりを書いたらどうかそういうことを言っているんで、それがいかぬというのは、どうしても私わからない。御説明と違うことを要求するなら議論がありますが、御説明のとおりのことを文書に表わしてみたらどうか、これだけの相談です。それがいかぬとなるとその説明は真相を説明していないということにおそらくなってくる。説明のとおり書いたらどうか、こういうことです。
  199. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 今のお話しでございますが、私先ほどから申し上げますように、五年なりあるいは真珠でありますと十年ばかりたちました場合、この漁場をだれが使うかということを再検討するということです。これは漁場の総合利用といいますか、そういうことをすべきだ、そうしてその上に立って新しくだれに免許をするかということを考えるべきだ。その場合の免許につきましては、優先順位がはっきり書いてありまして、そうして団体管理漁業権につきましては、一定の条件があれば、これは組合に行くようになるということを申し上げたのでございます。その場合に、法律でこれは継続して免許するのだというふうにまでは、私はそこは法律的にはむずかしい問題があるのじゃないか。その場合は新しい立場に立って、だれにやるかということをこれは検討してやるべきだ。ただし、団体管理漁業権については、当然そういうものに行く可能性は非常に高いということを申し上げたわけでございます。
  200. 天田勝正

    天田勝正君 ちょっと関連。じゃ聞きますが、私は質疑応答を聞いていると、いつまでもまた昼前と同じで時間だけ食っているような気がしてしようがない。森さんの言うとおり書いてどこに差しつかえが起きますか。私どもが聞いていますと、起きないというふうにしか聞けないのです。何も森さんが言うとおりに書いたからとて、五年たって新しい観点に立って検討できないというはずはないわけなんです。その一つ方法は、現行法にだってですね、清澤さんなんかも指摘していたけれどもある。それを今度の法律改正に、さっきから森さんが指摘したように書き直してみたところで、それじゃそれば五年たったときに検討できないかといえばできると、こういうことなんです。それがどうも今あなたのおっしゃるように固執するということになると、どうもその際に自然に共同管理の漁業権だっても必ず行くとは限らない。行けるということだけであって行くとは限らない。正当なる事由がなくても取り消すこともあり得るということになっちゃうと思うのですが、どうなんですか。私はもうここで人が質問しているから、あまり言いたくないのだけれども、どうも時間取りになるから申し上げているのです。
  201. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 先ほどから申し上げているとおり、その場合に、先生、正当な事由があれば取り消せる、免許しないという意味のことをおっしゃったのでございますが、これは私のほうの今の法律の出し方からいきますと、その場合の正当というものの問題でございますが、その時点に立って判断する、これはどういう漁業権を免許したらいいかということが再検討されるのだという時期がある。今でございますと、たとえば三十七条から四十条でしたか引きまして、その場合に該当しない場合には免許しなければならぬとしてそれは規定で切っているのでございますが、私のほうの考え方としましては、そのほかに漁場の総合的利用とかいうことを実は新しく加えて考えて、その場合にだれにやったら一番いいかということをもう一回再検討したらどうかという建前をとっているわけでございます。
  202. 森八三一

    ○森八三一君 今の長官のお話しでもうはっきりしたわけです。だから現行法の第三十七条、第三十八条、第三十九条第一項もしくは第二項または第四十条の規定による漁業免許の取り消し事由がある場合、並びに漁場の総合的利用の観点から更新を適当としない場合を除いて期間延長の免許をしなければならぬ、こう書いたらそれでお話しのとおりになるのですね。そういう規定がなぜいかぬかということなんです。その規定がいかぬとおっしゃると、それは事由のいかんを問わず一方的にもう更新はしなくても法律としては違法ではないということになる。そのことは漁民から見れば非常に不安定なものになる。その不安定をここにやるということはおかしいということなんです。だから現行法の四十条の規定による漁業権免許の取り消し事由がある場合並びに云々と、こうあなたのおっしゃるとおりに入れて、その場合を除いては更新をしなければならぬ、こう書きさえずればそれでいいんじゃないですか。お話しのとおりになるのですよ。そのことに何か支障がございましょうか。
  203. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 先生のお話しでいきますと、これはおそらく漁業権を与えている人につきましては、理論的にいきますと全部そういうことにしなければおかしいということに私はなるんじゃないかと思います。これは定置漁業権持っている人であっても何であっても、これはみな更新せにゃならぬということに私はなるんじゃなかろうかと思います。で区画漁業権だけについてこれが書いてありまして、附則でこれを切っていた、なぜ切っていたかということが私はこれば問題だろうと思うのでございますが、やはりこれは漁場につきましては、もっとその年度が来ましたら、もう一回見直していくのだという建前をとりませんと、漁場の総合利用という面から私は工合が悪いんじゃなかろうかということで、更新の規定は適用しないということだというふうに考えておりますので、今度の法律では、それは附則の精神からして、これを切ったような次第でございます。
  204. 千田正

    ○千田正君 今の問題は、もう一回研究してお互いにこれば議論しなければならぬ問題です。私は同僚議員にも御了解を得たいのですが、この三日間で重大な問題がどうなるかという問題があるのです。  それで水産庁長官質問したいのは、この問題とは違います。一件だけ時間がありませんからお尋ねいたしますが、これは昨年、漁業生産調整組合法並びに魚価安定基金法によって、三陸沿岸のサンマの魚価安定の行政指導をやって、そうして青森、宮城、岩手、この三県に水産庁の行政指導のもとに冷凍させたものが、大体水揚高の五八%、岩手は七二%冷凍処置して、極力基礎価格の維持に努力したわけであります、水産庁の指導によって。ところが漁期の後半に至っては、こういう情勢から、もう漁業生産の調整がさんざんに乱れてしまって野放しになってしまった。その結果、今は三陸沿岸の三県においては、冷凍しておる数量は六万トン、ほとんどこれは売り物にならない。そうして冷凍資金の借り入れの残高は約二十三億円、償還期限は四月一日から始まります。そういうような状況において非常に困っておる。これは水産庁としては、行政指導して、魚価安定政策だといって、三陸の漁民や、あるいは業者に冷凍させておいて、そして今になってこの六万トンというものはもう持ち腐れという状況です。これをどういうふうに解決するか。償還期限の延長であるとか、あるいは何か方法を講じなければ、来年度からは水産庁の指導なんていうことを聞くわけにいかなくなってしまう。これに対して長官はどういうふうにお考えになるか。あと三日しかありません。
  205. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 今先生の御指摘のような、ことしサンマの調整をやりましたが、あれが結果的になかなかうまくいかなかったということは、そのとおりでございます。今の問題は、実は私のほうも調査を出しまして、いろいろ滞貨の状態や何かを調べておりますが、私どもとしては、いろいろ現地の御意見があって、たとえばどの銀行にどういうふうに償還延期してくれとか、次の借りかえしてくれという話があれば、私どもあっせんの労はとろうと思っております。
  206. 千田正

    ○千田正君 これはむしろ水産庁の行政指導がまずかったということじゃないですか。三陸沿岸だけにはそういう行政指導をやって極力冷凍させておいて、それはいいですよ、思想的においては魚価安定ということなんだからけっこうなんだが、漁期半ばにおいて、茨城以東へ入ってきたときはもうそれは野放しなんです。だから正直者はばかを見たというのが三陸の三県の業者並びに漁民でありますよ。こういうことの指導をやられたのでは、魚価安定政策なんていうことは名前だけであって、苦しいのはその正直者の漁民だけですよ。あるいは業者だけですよ。これの解決方法をこの際打ち出してもらわぬというと、たとえば償還期限はもうきておる。これに対して延長の政策をとるとか、あるいはフィッシュ・ミールなんかにかえさせるように政府が買い上げてそういう方法をとるとか、そういうことを現実にやらないというと、来年度からは水産庁で幾ら太鼓をたたいて、こうやれといって指導したって、だれが言うことをきくか。そういう現実が起きておる。これは長官としては初耳じゃないと思います。あるいはもし初耳だとすれば、下僚の諸君とよく相談して早く善処しないというと、水産行政が、実は根本からくずれていく、魚価安定政策など、幾ら政令で出そうが法律で出そうが、こういう指導をやられたのでは、たまったものではありません。しかも零細沿岸漁民に対象としたサンマの漁業だけに、特にこの問題を真剣に考えていただきたい。
  207. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 先生おっしゃいますように、今の生産調整組合なり、あるいは基金で、一体魚価安定ができるかどうかという問題は、私はもう一歩踏み込んで検討しなければなかなかむずかしいのじゃないか、過去一年の経験でございますが、あの基金でそこまでなかなかむずかしいのじゃないかということを実ば非常に考えております。それで水産庁等の内部としましては、この問題については、三十七年度はそれに及びませんでしたが、三十八年度以降については、もっと抜本的な価格調整というものを考える必要があるのじゃないか。いるいろ機構の問題等についてということで実は検討いたしております。今の問題は、私ば初耳ではございません。この問題は私どものほうからも現地に人を出していくというようなことも、実はいたしたわけでございますが、先生のおっしゃいますように、いろいろ補助金を出してもらえぬかとか、いろいろの話のあることも実は私聞いております。ただ、ああいう制度のもとで、そこまでは私はなかなか困難じゃないか。ただ金融問題等で借りかえ等の問題につきまして、具体的にどの銀行にどういうように役所も話してくれということがありますれば、私も水産庁として、そのことのあっせんの労はとりたいというふうに考えております。
  208. 千田正

    ○千田正君 今申し上げたとおり、六万トンも冷蔵庫にかかえておいて、これはこのままかかえ込んで先行き売れるという予定がついているならば、今のお話しのように、これが魚価安定政策でかかえさせられて持ったまま売れない、片一方は野放しに漁業をやらせたから、こっちはどんどん売れちゃった。正直にかかえておったほうが冷蔵庫にそのまましまい込まされておるわけなんです。それで政府のほうとしては、金融措置を講ずるとか、あるいは今在庫しているものを政府機関が指導してフィッシュ・ミールにするか、何かの買い上げをやらせるとか、そういうことをやらんというと、次の漁期はどんどんやってきますよ。その間冷蔵庫にかかえ込んで、ぼんやりして金利のかかることをやっておられたのじゃどうにもならない。何とか応急処置を一講じなければならないじゃないですか、少しどうも今の長官のお話しだと、調査しましょうというのんきなことのようですが、そんなことじゃあならないですよ。
  209. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 本件につきましては、魚価安定の対象としましては、十一円を下げる場合に、これを、発動しようという問題があったのでございます。三陸につきまして、全部それはあの買い入れ価格で持ちなさいと言ったわけじゃございません。ございませんが、しかしやった人は、これはなるべく魚価安定ということを頭に置いて、なるべく安い価格にならぬようにということでやられたであろうということは、これは確かだろうと思います。そして私どもとしましては、その問題は、現地にも調査員を派遣しまして、一体どのくらい滞貨になっているんだということを調べたのでございます。今先生のおっしゃいます借りかえの期限が来ておるという問題でございますが、これは具体的にどの銀行でどうということがありますれば、私どもとしては、それはあっせんの労は十分とりたいというつもりは持っております。ただこれが先生のおっしゃいますように、将来、持って一体売れるのかどうか、あるいは損しても、フィッシュ・ミールにして補助金を出してくれという話は、実は内々でしていることも私は知っておりますが、これを財政的にそういうことをしますことは、私はなかなか困難な問題が、本問題についてはあるのじゃないかということを申し上げたのでございます。金融その他につきましては、できればできるだけのあっせんはいたしたいと思っております。
  210. 千田正

    ○千田正君 私は今後もこういう問題は起きてくると思いますよ、いろいろな問題が。それで魚価安定政策を少なくとも水産庁が立てるとするならば、応急処置と恒久対策と、こう二つに分けて考える必要があるのじゃないか。とりあえずというなようなことで、そこで漁民のほうでは、水産庁協力して、自分らも相当の値段を確保したいからそうやったのであるが、結論としては、こういう問題が起きてくる。ですから、こういう魚価安定政策というものを立てるならば、やはり応急処置と、それからこういうふうな状況になった場合には、恒久政策としてはこういうことをやるのだというような、そういう親心をもって今後やらなければ、これはもうあなた方の指導面というのは、途中からがたがたとくずれてしまう。それでなくてさえも、漁業なんというのは農業と違ってほんとうに低い立場でやっていることでありますから、せっかくやったことが途中でつぶれるようなことではどうにもならない。だからこれは大いに考えて、少しも早く、一日も早く処置をとられることを要望いたします。
  211. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 他に御発言がございませんければ、両案につきましては、本日はこの程度にいたします。  これをもって散会いたします。    午後五時二十一分散会      —————・—————