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1962-02-16 第40回国会 参議院 農林水産委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月十六日(金曜日)    午後三時二十九分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     梶原 茂嘉君    理事            石谷 憲男君            櫻井 志郎君            安田 敏雄君            森 八三一君    委員            青田源太郎君            植垣弥一郎君            岡村文四郎君            古池 信三君            温水 三郎君           小笠原二三男君            大森 創造君            木下 友敬君            清澤 俊英君            天田 勝正君   国務大臣    農 林 大 臣 河野 一郎君   政府委員    農林政務次官  中野 文門君    農林大臣官房長 昌谷  孝君    農林大臣官房予    算課長     桧垣徳太郎君    農林省農林経済    局長      坂村 吉正君    農林省振興局長 斎藤  誠君    農林省畜産局長 森  茂雄君    農林省蚕糸局長 立川 宗保君    食糧庁長官   大沢  融君    林野庁長官   吉村 清英君    水産庁次長   村田 豊三君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    農林省農地局参    事官      富谷 彰介君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査  (農林水産基本施策に関する件)     —————————————
  2. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  この際、農林水産基本施策に関する件を議題とし、前回に続きまして農林大臣に対する質疑を行ないます。御質疑の方の発言は、委員長におきまして御指名申し上げます。なお、質疑の時間は、大臣の答弁も含みまして、一人三十分以内にお願いいたします。小笠原君。
  3. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 質問に入る前に委員長にお願いですが、三十分と限定されては、この膨大な報告書質疑はおよそ不可能なんで、機会を見て順次やっていただけるという意味でこの際は三十分と、こういうふうに了承しますが、そのとおりでございますか。
  4. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) お答えを申し上げます。先般の委員長理事の打ち合わせで、大臣に対する御質問は往復三十分以内にしょうということに話し合いをいたしたわけでございます。すでに数人の方々の御質問があったのでありますけれども、やはりその申し合わせの線でお願いしたわけでございます。したがって本日もその例にひとつお願いしたいと思います。なお今後いろいろ大臣に対する御質問を願う機会もあろうかと思います。そういう際にっきましては、また御相談申し上げまして善処することにしたいと思います。
  5. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 唐突な質問ですが、農業動向に関する年次報告を読んでみまして、まだ本格的に実施に、移されておらない農業基本法それ自身について検討を要するというような、そういう検討の仕方は農林当局ではやっておらないのでございますか。
  6. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 御承知のように、農業基本法制定になりましてから、たとえて申しますと、近時とみに起こって参りましたEECの自由国家群貿易の上に及ぼして参りました影響、これが今アメリカと欧州との間にいろいろ協議が行なわれておるようでございますが、それがさらに日本カナダ等についても同じような問題が起こってくる可能性があるわけでございます。さらにまた、これと相関連するがごとくに、東南アジアと日本との間に同じような経済圏と申しますか、というような話もぼちぼち起こりかけておるわけでございます。こういう世界の動きを見てみますると、これまで想像しなかった、たとえばこれまでわれわれが想像しておりましたものは、いわゆる貿易自由化というようなことでございましたので、貿易自由化というような場合には、たびたび申し上げましたとおりに、われわれは、農業各国における特殊性というものから、各国でも、それぞれの農業をそれぞれの国において保護するというようなことは肯定されておったのでございますけれども、それが今回、今申し上げましたような広い角度において貿易をどうするか。たとえば欧州共同体の中における農業問題が取り扱われました角度等を見ますと、こういう従来の線をこえてやっておるようでございます。そういうことが世界傾向として、その中に日本が一体入るようになるかならぬかというような場合等も想定して、われわれは準備はしておかなければならぬのじゃなかろうかということも実は考えたわけでございます。そういうような新しい動向が出て参りますれば、それに対処する必然的な日本農業に対して、われわれも基本的な考え方検討というものは当然いたさなければならないと思うのであります。そういうことになりますと、農業基本法そのものについて決して改定するとか、基本法そのものがどうこうというのじゃなしに、それとは別に別途また基本的に考えなければならぬ問題がありはせんかということも、想像すればできるわけでございまして、実は私としてはそういう機会に処するために基本的な研究をいたさなければならぬのじゃなかろうかということを考えておりますので、この私のお答えが御満足がいくかどうかわかりませんが、基本法そのものについて検討するということよりも、日本農業とこれら世界農業との間の関連性、それに対する基本的な考え方というものについて考えなければならぬのじゃなかろうかということは考えておるわけであります。
  7. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 あと機会がある際にこまかく御質問しなければいかぬので、本日は乱暴粗雑な質問になると思うのですが、三十六年度の報告で見ても、農業生産なりあるいは農家収入なりがふえたというても、しかし、他産業との開差はますます開く一方なんですね。農業基本法目標とするところは、家族経営であって適正な家族構成のもとで家族農業従事者が正常な能率で働いて、ほぼ完全に就業する程度規模で他の産業に従事する者の生活水準に釣り合う生活をなし得るものと、こういうことで自立農家を百万戸十年間に形成しようというのが根幹になってできているのが、農業基本法なんでございます。ところが一方、こういうふうに開差は拡大する、しかも五年ぐらい前までは一町五反ぐらいで自立農家としてやりていけたというのが、現在以降においてば、二町五反ぐらいを目標にして百万戸を作っていかなければならないということです。この報告で見ると、二町五反程度のところが専業農家としてその家計費水準というものが七二から九五%、他の都市勤労者家計費に比べてその程度にしかなっておらない。それが全農家戸数の微々たるものである一町から二町あたりのところが一番停滞している農家の形態だということが報告されている。五反以下の兼業農家農業外収入のあるところが家計費が伸びている、こういう報告なんですね。そうしますと二町五反で百万戸の農家形成して自立農家を作っていくとしましても、結局それは農家戸数全体の五分の一程度のものがこの十年間に生きれるだけで、あと中間層農家というものは、農地を取得して専業農家として、自立農家として上に上がっていくか、そうでなければ、転落農家として、兼業農家として農業外収入というものに大部分収益を得ようとする農家になる、五分の四はそれになる。こういう状態で日本農業というものがあるいは農家というものが他産業と均衡のとれた生活水準所得水準に達するか、もう明らかに、この報告で見ても、それには達することができないのじゃないか、こういう感じを私は持っているのです。ですから、この点は今後どうされるのかということをお聞きするとともに、もっと突っ込んで言えば、この自立農家というのは、農地法の改革で今日までやってきた点、あるいは農政そのものが全部そこに集中してやってきた点で、それは農家生活水準は上がったし、あるいは日本農業生産も上がったし、経済も高まったという歴史的なそういういい部分は正当に評価しなければならぬが、自立農家それ自身を推進してきたとしうことが今後の農業経済の発展のためには、逆な意味で阻害となっておる。もう停滞しておるんです。矛盾が内包されておるんだということにもなっているんじゃないかと思うんですね。そういう点を考えると、この自立農家形成するということ、だけで日本農業が生きていけるものかどうかということを、端的にまあ二点としてお尋ねしたいんです。大臣のような有力な方がおられて恒久的な施策ができるのであって、単にいいかげんな大臣が出たからといったって、それは農家のためにはならぬ。期待が大きいので、私はこの点を基本的な問題としてお尋ねする。その百万戸の形成そのものがでてきていくのか、まずやるというなら。それで農家それ自身は階層分化します。しますけれども、百万戸ばかりでもいいから、それは確かに自立農家として十年間の間にやっていける、こういうお見通しで施策を今後おやりになろうとするのか。もう一つは、そういうことをしたからといったって、この自立農家の育成ということだけでは、日本農業というものは、もう内部矛盾のために、伸びないのじゃないか。農業従事者はみんな自立農家ということにはなり得ないのですから、少なくとも五分の四というものはなり得ないのですから、それらはどうされるのか、この点をお伺いします。
  8. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 少しお答えが適切にいきかねるかもしれませんが、第一は、これまで日本農業が持っておった弱い面、その弱い面は一応政府保護政策でこれをカバーしておった。であるから自立でなくて常に保護が必ずつきまとって、そこに一応の安定を考えてきた。したがって狭い耕地でありますから、その耕地適正規模農家というような意味合いで一町そにそこ、もしくは一町五反というもので、一応みんな多数の者がおやりなさい、足りない者は助けます、米が安ければ何とかしますどいうようなことで長年の間やって参りました。その惰性、その現実、そこに、こういう時代に入って参りまして、これじゃあもういかぬ、そこに自立農家考えなければいかぬ。自立さすためには、少なくとも今まで考えておったような一町五反前後のものでは計算が立たないと、そこで一応二町五反程度のものを考えなければ、施策をしても、自立計算が立っていかないということから、一応二町五反前後のものを持ちまして、そこにどういう経営をしていったならば、それで自立した農家ができるかということを一応考えておるわけでございます。そこで、百万戸と申しますけれども、これはなるべく多いことを期待いたしますが、御承知のとおり、非常な一般農家諸君土地に対する執着がございますから、にわかにこちらのほうはやめて、それをこっちへ合わせて二町五反、これもこうして二町五反という工合にいきにくい。したがって、なるべくそうあってほしいという希望を持ちつつ、そういうものを想像して、奨励してやって参るということに基本考えを置いております。これは基本考えでございます。それが一応農業基本法考えるところの自立農家。ところが、それじゃそうならぬものはどうするのだということになります。そこで、私はこの現実に処して、一体そういうふうにならなければどうするのだ、ならぬものはどうするのだ。何といっても新たに土地造成すると申します、全力をあげて土地を作るつもりでおりますものも、なかなか急にそれが、この狭いところで、大ぜいの方々に二町五反といったところで、そういうふうにいけるものでないので、努力をいたして、なるべくそれも今申しますように百万戸の自立農家を作るというような行き方と同じような意味において、土地造成には努力いたしますが、それもなかなかいきかねるだろう。  そこで、次の話に入りますが、成長農業というものをわれわれは想像いたしますが、たとえて申しますれば、くだものにいたしましても、今までくだもの奨励をあまりやっていなかった。これも非常に高級な食生活の、高級な支出のうちに計算されておったものをそうでないふうに、大いにこれを家計の中に日常取り入れるようにして、そうしてこれを農家所得の中に入れていく。畜産の製品についても同様であるというような意味合いから、従来農家収入に、経営主体となり、また、もしくは収入に入っていなかったこれらの新しい農業を取り入れて、そうして今申し上げました土地の中で、これを計算の中におきつつ収入を増していくことによって、一部はいくのじゃないか。これにもちろんいきかねるものがある。その場合に私はたとえて申しますれば、畜産主体にしてやります場合には、どうしても相当の広い面積を要求いたします。ところが、これを温室栽培に切りかえた場合にはどうなるか。狭い面積に金をかけて、今日全国各地に見受けられますような温室栽培経営の中に取り入れて奨励することになりますれば、その資本が加わることによって面積が狭くても収入はふえていくことができるだろう。そうしてそこに新しい自立したものができるようになっていくだろう。くだもの畠を作る場合にどうなるか、くだもの種類によっては面積と比例するということなしに、面積の広さとむしろ関係なしに高級なくだものを作る場合には、そこに一つのものが得られるだろう。たとえば石垣イチゴのようなものについても、そういうことがいえると思うのであります。こういつたようにいろいろな農業種類、もしくは技術の進歩というようなものを取り入れて、そうして農業高度化をはかることによりまして、経営面積とは別途資本を加えるごとによって労力収入に変わってくることができるのじゃなかろうかというようなことを考えつつ、日本全体にわたって地域的に適正な農業経営計算いたしまして、そうして全体にわたって構造改善をやりていこうということを一応の目標といたしているのでございまして、したがいまして二町五反歩百万戸というものだけがねらいじゃない。二町五反歩経営規模を拡大したものもむろんけっこうでございまして、第一にはそれを考えます。しかし、そうならない狭いところにも施設をいろいろいたすことによって、狭いところにも自立した農家ができぬことはなかろうじゃないかということも考えて、資本を加えることによってそこに土地資本というものによって、労力相当高く運営できることが考えられる。  第三番目には、そうは申しながらも、一家の家族のうちで工場の分散、地方誘致等によりまして、農家労力の一部が工場労力に変わって参る。残存の者ば、その残余の土地経営するということによって、面積が狭いながらに、収入もそれだけで立つことはできませんけれども、兼業農家というものは、そこに従来よりも明かるく安定した兼業農家というものも形成できるのじゃないか。その点については、特に今後ひとつ研究をして、どういうふうに兼業農家安定化固定化をはかっていくことが適切であるかということについては、特に検討を加えてみたいと考えておる次第でございます。
  9. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 今のお答えですが、前半と後半のお答えは違うと思うんですね。温室栽培をやるとか、資本投下して云々するとか、そういうのは日本農業において一般的な問題として、今農業基本法の問題を消化していくにあたりて考えられることではないと思う。それはしかし、農業構造改善事業とはいっても、農業基本法でいわれる改善政策ではないと思う。あくまでも農業基本法の要求するところは、農地移動、それによる適正農家自立農家形成という点にあると思うんです。構造改善事業というのは、従来のような零細な補助金等をパラパラまくということでなくて、総合的に集約的にその金を町村に出して改善事業を行なわせる。それはそれなりに意味があると思う。否定はいたしません。それはしかし、この基本法でいわれる選択拡大というものに類するものでしょう。主産地形成というても、基本はそこにあると思うんです。しかし、それをやるにしても、農業基盤を整備されるということ、これが第一だと思う。諸外国のそれと匹敵し競争するにしましても、どこでも小農的な経営から脱却する道というものは基本的に考えられると思うんです、考えられていると思うんですね。  私は、その政善事業というものは、一応あとでお尋ねしますから、これは取り除いて、オーソドックスに、この百万戸を作るなら作るとしまして、そのことができるのかできないのかということをこの報告で見ますと、あるいは本年の施策というもので見ますと、何が出ているかといえば、自作農創設資金の拡充というのが出ている。そうして、これは、転落農家を防止するという資金手当土地の取得という創設資金という方向に変わってきておる。これも一つ方向でしすう。あるいは農地法改正によって、相続とかあるいは農地移動とかいろいろ考えられる。ここなんです。こういうことをやることによって、十年間に百万戸の自立農家ができるのかできないのかということがやっぱり検討されていいのでないか。このことをお尋ねするのです。このことに、ほんとうにできるということで農林当局は取り組んでおるのかどうか。ここに出てきておるもの、あるいは予算、こういうものを見ただけでは、われわれは必ずしもそういうところに口では言うておっても、そういうところに力点が置かれてないというふうに考えられる。そして何か、構造改善事業というものにすりかえられてきておるんじゃないかと、端的にそういう感じを持つ。たとえば農地が、今農地移動というものはなかなか困難だと大臣がおっしゃりたし、この報告でもあります。それは農業入口は、若い者は都市にどんどん出ている。けれども農家戸数は減らない。土地を握って離さないということになる。だから移動は困難でしょう。困難なものをどういうふうにして移動させていくか。開拓といいましても、ここにも開拓と出ていますが、つぶれ地と比較してみたら、新規の開拓というものは微々たるものです、総体的にいって農地造成というようなことは、工業用地その他からいえば、それは現状においては考えられないことなんです。そこで農地移動ということになるが、反当ですね、二十万なら二十万を要す。そうしてかりに買うとして、取得できるとして金を借りる。そうして反当二万近い利子を払う。反当収益が米四石なら四石というもので考えてみても、四万四、五千円のもので二万近い利払いをしている、二十年近いものをですね。それ自身困難があるのじゃないか。またその資金手当といいましても、十年間の移動でそういうものを形成しようというのには三兆円ぐらいかかるのではないかと、私たちのほうでは言うておる。しかし、それだけの年度的手当があるのか、ない。また一方、土地というものは値段があって値段がないものなんです。自立的資本と言われておるように、こういうものがどんどん高くて、二十万円ずつの資金全国に散布したら、これをどういうふうに吸収するか。吸収しなかったらこれはインフレです。それやこれやを考えて、大臣としてはこの百万戸の農家というものを具体的に逐年どういうふうにして形成していこうとしておられるのか、その施策をお伺いしたい。この報告施策という中には、強力にこれが出ていない。ちっとも出ていないと言ってもいいんです、これは、どこを読んでも具体的に、初年一年度にはこう、二年度にはこう、三年度はこの程度、そういう青写真も何もない。そこで私疑問があるから先ほどからお尋ねしているり構造改善事業とは切り離してこの問題はお答え願いたい。この改善事業を私は否定するんじゃないんです。改善事業そのものは過去の怠けておった部分をどうしてもやらざるを得なくなった。たとえば果樹のようなものがそうです。畜産というようなものも当然やり得べきものが停滞、もたもたしておったのが、ようやく大臣になって踏み切りがついてきた、道が開けてきた、歓迎すべきことでしょう、それ自体は。しかし、大臣がおっしゃったとおり、温室でどうするとか、資本を集約的に投下して、そうして零細な土地面積の中から高収益を得ていく、こういうようなことは一般的な議論としては日本だけが特殊な事情で、それは対外的にもそれに太刀打ちできるような姿勢になるんだと言われないと思うんです。やっぱり適正な耕地面積を持つ、そのことが農業基盤の整備だと思う。で五分の四はどうなるか、あとでお尋ねいたしますが、五分の一の農家だけでもほんとうにこの十年間で生きていけるかどうか、こういうことをお尋ねしておる。
  10. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) ただいまお答え申し上げましたとおり、基盤となるべき耕地面積は、今までのでは狭い、これを拡大しなければいかぬ、これば基本的なことでございます。つまり、従来適正規模と申した一町数反歩のものでは狭い、これを二町、二町五反に広げていくべきものだ、がしかし、私考えますのに、世界各国どこを見ても、まずこれはたとえば二町歩だが三町歩になったところで、世界の例を見れば農業経営としては決して広い面積じゃない。よほどそこは集約的なものを考えなきゃいかぬ。ところが、広い面積を利用しておるものが非常に農家としてうまくいっておるかといえば、必ずしも私はそうではないと思うのでありまして、問題は常識的にある程度のものは必要でございますけれども一問題はこの土地をいかに利用するかということによってきまるのだと私は思うのでございます。だから、農業基本法の際にわが党で申しましたとおりに、基盤を拡充して、そしてある相当面積を持って、そこに自立農家形成するという一つの方針、方向というものは間違いない、そのとおりだと私は思う、それでいくべきもんだと。しかし、それだけが絶対のものじゃない。これをいかに運用するか、経営していくかというところに主題はあるものと私は思うのでございます。だから話がごちゃごちゃしたようで、決してごまかそうという量見じゃございませんが、これをどういうふうに経営していくかということを相兼ねていくべきものという意味で申し上げておるのでございまして、同時に御承知のとおり、非常に設備投資が過熱いたしまして、そうして全国各地工場敷地というようなことが出まして、その地方土地をいたずらに値を高めております。これが必ずしも適正な値段とも私は考えません。したがって、むしろ安定の中に順次そういう傾向方向を持っていく。もしくは、一部の方が、都市に労働しておられる人も、今はその土地に非常に愛情を持っておられる人も、その自分の職業について、都市職業について安定し、固定して参れば、その土地移動するというようなことも起こってくるというようなことで、農業のことでございますから、いろんな面が総合的にある年月のうちに改革されていく、こうあるべきもんじゃなかろうかと思っておるのでございます。
  11. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 大綱としてはそういう方向も言えると思うんです。けれども、意欲的に農政のあり方として、そうして適正な農地移動させて、そして百万戸の農家形成する。これは自民党の皆さんの大きな旗じるしだったのです。それを具体的にどうして百万戸農家というものを形成していくか、この点をお尋ねしておる。
  12. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 前国会以来経続審議になっておりまする関係法の成立を待ちまして、一般農民諸君にもこの法律の運用に御理解、御協力を願いまして、まず基本的にはそこから出発していかなければならないと思います。そういうことが順次できて参りまして、そこにわれわれとしても奨励方法考えてやって参りたいと思っておるのでございます。
  13. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 私もそういうことではないかと思うのです。農基法というものが動き出すというのは、農地法なり農協法なりの改正がなければ、本格的に動いたとは言えないと思うのです。それで、農地法改正されるとしまして、最も基本的な問題として取り上げられるのは相続の問題です。それで、相続の問題で他の家族の取り分を動産で年賦なり何なりで支払うという形で土地の分散は避けるというような場合に、地代というものはどういうふうに考えられることを予定しておるのですか。大臣が今もおっしゃいましたが、非常に地価が高い、地代が高い。だれが跡取りになって農業経営をやるにしても、この負担というものは自立農家形成ということをいよいよ困難ならしめると思う。それで地代というものはどういうふうに今後考えようとしておるのですか。
  14. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) その点、勉強しておりませんから、事務当局からひとつかわって答えさせます。
  15. 富谷彰介

    説明員(富谷彰介君) 先ほど以来、御指摘のございます農地の取引価格が非常に高い問題でございますが、これは要するに、現在一町歩経営しておる人が、さらに一反歩追加購入するといったような限界価格、つまり、本来、新しく十万円なり二十万円なり出して一町歩、二町歩経営をすれば当然引き合わない価格でございましょうけれども、すでに一町から二町を経営していて、それにプラス二十万円出しても、それなら引き合うという価格で形成されております。したがいまして、私どもとしまして適正な経営に耐え得る額というのは、現在農林省がやっております干拓地の売払価格反当八万五千円でございますが、まあその辺が採算の限界であろうかと、かように考えております。
  16. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 小笠原君、ちょっと申し上げます。予定の時間が超過しつつありますから、お含みおきの上で簡単に願います。
  17. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 今、入口まで行ったところですが。(笑声)それじゃ、もうやめます。この次、またやらせていただきますが、その八万五千円というのは、これは具体的な取引価格としてでなく、相続の場合も、土地換算の基準が八方五千、こういうことですか。
  18. 富谷彰介

    説明員(富谷彰介君) いいえ。農林省が、干拓地を売り払います場合に、採算に耐える限度としまして政策的に考えております最高が八万五千円、こういうことでございます。
  19. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それじゃ八万五千円が動かぬのでしょう、実態としては実際上、将来。八万五千円で取引をされたり、相続の場合に、はあそれでけっこうです、私ば次男ですから八万五千円の三反歩と、二十何万何がし、それで私はもうけっこうです、この家を去ります、こうなればいいのですが、ならぬのですがね。なると思いますか。そこをどうするのかですね、私の聞くのは。
  20. 富谷彰介

    説明員(富谷彰介君) 相続の場合の次男、三男以下が相続放棄しました場合の実際の取引価格でございますが、私のほうでは扱っておりませんのでございますが、先ほど申し上げました八万五千円の干拓地の売払価格の場合には、これはすでに着工しました干拓地の場合には、これが最高限であるということで国が売り払います額でございますから、これで実際行なっておるわけでございます。
  21. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 何かそこを一生懸命言うところを見ると、八万五千円で全国農地の取引を規制していくようにも聞こえるのですがね。それならそれでもけっこうですが、そういう伏線でもあるのですか。八万五千円というようなものが現実的に将来、相場として動くような、そういう何か行政措置なり立法措置を考えられるということですか、この農地の取得のために。
  22. 富谷彰介

    説明員(富谷彰介君) 私の申し上げましたのは、干拓地を売り払います場合の実態だけを申し上げたのでございます。
  23. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 ですから、大臣かわって答弁させましたが、性根を据えて、ほんとう農地移動があるものとして取得でき得るような、ほんとうにおれは自立農家になりたい、土地もほしい、こういうようなものは具体的には二十万円では不可能なんですから、この道が切り開かれなければこの施策というものが実現できないのではないかということを私まあお尋ねをしているのですが、どうなんですか。
  24. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 実は私は昨年就任いたしましてから、農地法が施行されて十数年、しかも、日本農業について基本的に考えを変えていかなければならなくなったこの段階において、一体農地に対する考え方ばどういうふうにしていくべきか、これでいいか悪いか。その他農地に関する基本的な調査をする段階が来ておるのじゃなかろうかと思うが、農地局において基本的に調査をするようにということを実は命令いたしました。これはあまり外部に出ますと、またいろいろ誤解、刺激が起こってはいけませんと考えまして、ごく部内で検討するようにということの命令をいたしておったのであります。しかし、今御指摘のような点について指摘して私は命令したわけじゃございませんが、全般にわたって再検討するようにということはいたして今日に至って、先ほど申し上げたようなまだ勉強はいたしておりませんとお答えをいたしたのでございますが、御指摘のように、いろいろの問題が私は起こってくると思います。今相続の場合を御指摘でございますが、相続の場合ももちろんのこと、いろんな面において基本に関する問題でございますから、ひとつ性根を入れてさっそく勉強いたしまして、何らかの方向を打ち出すように鋭意努力するということで、ひとつこの機会は御了承いただきたいと思うのです。
  25. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 私自身の体験でも、私のうちでも農家土地を持っておりますが、だれも農業をやる者がない、いないけれども土地は離しません。私の弟を婿にやったところも農家ですが、これもサラリーマンで、うちにはおばあさん一人だけいますが、農業経営に従事はできないが、相当数の反別は離しておりません。われわれの近隣では離さない。よそへ働き手が出ていっても、老齢化したじいさん、ばあさんがうちにおるだけでも離さない。万一の場合ということでその土地を離さない。このことはこの報告にもあります。農業人口は減っても農家戸数は減らない、土地移動が活発に行なわれない、はっきりしておる。この農村の実態。もう一つは、今まで自立農家ということで盛んにやってきても、家族経営という中で、ああいう封建的とはいいませんけれども、ああいう農村の共同体的な中で若い連中としてはもう息がつけない、つまらぬということで都市にどんどん出るわけですが、そういうような環境も地ならししなければ近代的に、民主的に直さなければ、農地移動ということもこれは困難であろう。またこういう価格の点からいうても非常にめんどうな点があるだろうと思うのですが、いずれにしましても、この基本法が第一眼目にしたことが初めからできそうもないというような状態にあることはもう間違いないですね。ですから構造改善事業なんというものが出てきたんだと申し上げると、大臣があるいは不愉快になられると思うので、そうは申し上げません。しかし、この構造改善事業をいかほど進めても、二町五反の農家というものは百万戸できていかない。問題は別です。しかも、二町五反の農家が出てもそれはちっとも利潤というものは計算に入っていない。都市勤労者との生活が大体均衡がとれることを目標にしておる。それでおって企業経営ということを期待するということは私は無理だと思う。  で、もう一つお尋ねしたいことは、そういう意味で十年後にでき上がった二町五反農家といえども、それは企業経営をやり得る農家ではない、目標は。利潤が出ないのだから、ただたしか毎年々々働いて、粗収入百万なら百万を得るというだけのことで、他の企業のように利潤がいかほどということははじける余裕がない計算なんですから、この二町五反農家というのは。そうしたら大臣がおっしゃる企業経営と申しますか、資本を投下して集約的な農業を行なうとかいうようなことそれ自身も、構造改善事業だけでは私は実現しない。そういう点で次の機会にもう一度私はお尋ねしたいのですが、百万戸農家形成のための具体的な農地移動、取得、これに関してのお考えというものを、農業基本法のときあれだけ農民に訴えたことなんですから,その具体的な施策というものをお示し願いたいと思うのです。また逆な意味で言うと、それで百万戸はかりにできたとしても、あとの五分の四である四百五十万なら四百五十万という農家兼業農家、そして大臣いみじくもおっしゃったように、農外収入を得る働き手は、工場分散なら工場分散による労働者としての労賃の取得、そして留守家族が零細農地を持った農業経営を集約的にやるという、とういう形になることが期待されると思う。そうすれば、この報告にもあるとおり、果樹でも畜産でもそうですが、機械の設備の過剰投資ということがいわれておりますが、個々の経営でそういうことをやらせることはこれは不可能だと思います。その他いろいろな理由からいって、われわれのほうでいう共同化、農林当局なり自民党のいう協業化、これが促進されなければ私はやっていけないというふうに考えるのですね。ところが、この協業化の促進といいますか助長と申しますか、ここに書かれておるものを見ても、あるいは基本法当時の説明を見ても非常に消極的なんですね。何か協業なんてわざわざ言葉まで業をあわせるというような言葉を使ったのですが、イデオロギー前の問題として、日本の零細兼業農家はそうでなくてもそうですが、大規模ならば大規模なほどいいわけですが、農業の共同化ということで、日本農業が進んでいくべきだというふうなことを基本路線に据えるということがなぜできないのか。この際お尋ねしたいのです。
  26. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 私は経営の共同化は悪いという考えは持っておりません。それは人情、風俗、北から南に非常に違っておりますから、一つのものでこれをこうあるべきだといってきめることは無理じゃないか。その地方々々によって一番皆さんに好まれる方法、しかし原則は共同の精神、共同の作業というようなことが基本になって、そして零細なものがなるべくその規模を大きくしていくことが原則なんでありますから、その際に、共同作業でなければいかぬとか、何でなければいかぬとか、協業でなければいかぬとかいうふうに規定することは、少し行き過ぎでございまして、地方のそれぞれの意欲によって、そしてなるべく仕事のしやすい、そして合理化できる行き方であるべきだ。ただし、販売、購買等については、なるべく共同でいくことがいいにきまっておりますから、そこらのところに構造改善のねらいといたしておりますものも、主産地を形成して、そしてそこに共同でやる場合もございましょうし、いわゆる協業でやる場合もございましょうし、個人でやる場合もございましょう。それはそれぞれによってやるということでいくべきではなかろうか、こう考えておるのでございまして、家族主義が今まで非常に強うございますから、一軒の中で一軒の中でということをやっておりますけれども、これをだんだんに経済の運営、農村におけるこれらの観念がだんだん浸透することによりまして、どれが一番有利であるか、どれが一番合理化されておるかということによっていくべきものだと、こう考えております。
  27. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 小笠原君、時間です。だいぶ時間が超過いたしましたので。
  28. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 もう終わります。今、大臣がおっしゃったことだけでもけっこうですが、そういう指導を農林当局が積極的におやりになっていますか、今後おやりになりますか。農協を通してでもよし、各都道府県市町村を通してでもよし、あるいは普及員を通してでもよし、経営の問題として、各種各様の地域々々による組み合わせなり、いろいろ小規模、大規模いろいろなケースを研究せられて、主産地形成なら主産地形成それ一つの中での共同化、協業化でもいいが、具体的な取りきめについて、一つのものを持って農林当局が指導せられるという姿勢がありますか。今日までないのですね、それは。
  29. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 農協法改正案を実は御審議願っておるのでございますが、この目標とするところのものは、農事組合の法人化を意図しまして、そして今御指摘になりましたような方向経営を持っていくことに資するためにやっておるのでございまして、われわれとしても積極的に御指摘のようなことを考えてやるつもりでございます。
  30. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 終わりますけれども、私はもう一度きめこまかく、大臣がおらぬでも、局長の方にでもお尋ねしたいと思います。きょうはこれで終わります。
  31. 梶原茂嘉

    委員長梶原茂嘉君) 本件につきましては、この程度にいたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後四時二十五分散会      —————・—————