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1962-04-17 第40回国会 参議院 逓信委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月十七日(火曜日)    午前十時三十五分開会   —————————————   委員の異動 四月十三日委員奥むめお辞任につ き、その補欠として加藤正人君を議長 において指名した。 本日委員森中守義君、山田節男君及び 加藤正人辞任につき、その補欠とし て永岡光治君、村尾重雄君及び奥むめ お君を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     安部 清美君    理事            寺尾  豊君            新谷寅三郎君            松平 勇雄君            野上  元君    委員            植竹 春彦君            谷村 貞治君            久保  等君            永岡 光治君            村尾 重雄君   国務大臣    郵 政 大 臣 迫水 久常君   政府委員    郵政大臣官房長 金澤 平藏君    郵政省電波監理    局長      西崎 太郎君   事務局側    常任委員会専門    員       倉沢 岩雄君   説明員    日本電信電話公    社運用局長   山下  武君   参考人    日本船主協会理    事長      米田富士雄君    船舶通信士協会    常任委員長   大内 義夫君    海事検定協会理    事       三田 一也君    全日本海員組合    教育部長    村上 行示君   —————————————   本日の会議に付した案件理事辞任及び補欠互選の件 ○電波法の一部を改正する法律案(第  三十九回国会内閣提出)(継続案件)   —————————————
  2. 安部清美

    委員長安部清美君) ただいまより開会いたします。  委員の変更についてお知らせいたします。  四月十七日、森中守義君が委員辞任せられまして、その補欠永岡光治君が選任せられました。   —————————————
  3. 安部清美

    委員長安部清美君) 手島栄君から、都合により理事辞任したい旨の申し出でがございましたが、これを許可することに御異議がございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 安部清美

    委員長安部清美君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  つきましては、直ちにその補欠互選を行ないたいと存じます。  互選方法は、成規の手続を省略して、便宜その指名委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 安部清美

    委員長安部清美君) 御異議ないと認めます。  それでは、私より理事新谷寅三郎君を指名いたします。   —————————————
  6. 安部清美

    委員長安部清美君) これから電波法の一部を改正する法律案について、参考人方々から御意見を承ることとなっておりますが、委員会を代表いたしまして、参考人の各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、本委員会のために、御多忙中にもかかわりませず遠路わざわざ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。  本法律案につきましては、どうか御忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じますが、審議の都合上、参考人方々の御発言の時間をおのおの十五分程度でお願いいたしまして、全部の参考人方々の御発言が終わりましてから、委員側よりの御質疑をお願いすることといたします。  それでは、これから順次御意見の御開陳をお願いいたします。日本船主協会理事長米田富士雄君。
  7. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 私、ただいま委員長から御指名がありました米田でございます。電波法改正につきまして、私が持っております見解を申し上げたいと存じます。  まあ今日に至りますまでに、当委員会におきまして、委員諸先生と政府の御当局の方々との間に大へん広範にわたりまして慎重な質疑応答がございましたように速記録で拝見いたしておりますので、まあ私といたしましては、そういう点をひとつ省略さしていただきまして、なぜ私どもがこういう改正案をお願いするかということについて申し上げたいと思います。  最初に、今回のこの電波法改正ということは、私たちのほうから見ますと、いわゆる法規の要請というのは、船舶航行の安全上最小限度のものを要請するのでありまして、それ以上に、たとえば、業務通信とかあるいは一般用通信のために必要の量がございます。それをも含めての要請ということは、また別途考えるものがあるのではないだろうかというふうに考えます。  それから第二に、二十四時間の聴守あるいはオート・アラームを備えつけた場合には八時間の聴守というようなことでお願いしておりますのは、これは自船の遭難救助するためでなくて、他船の遭難救助のためでございます。この意味においては、海洋を航行している世界の全船舶相互保険かあるいは相互扶助ともいうべきものでありまして、したがいまして、日本船だけが外国船以上にその保険料とでも申しますか、そういうものをより多く負担する必要はないというふうに私は考えるのであります。こういう意味で申しますと、外国船が大体一人でやっておりますそれと同じ負担をいたせばよいのでありますが、本改正案におきましては、附則において大体二人が乗ることになっておるようでございますが、これは理論的からいうとまあ徹底を欠いておるというふうに考えますが、しかし、長い間三人だけでやっておりましたので、そういう経験から一挙にして一人になるというところに多少無理もあるかというふうな経験的な意味からこれを二人にされるという暫定措置も、あるいはやむを得ないのかというふうに考えるのであります。そこで、舶主協会初め海運業界におきまして、なぜこれをひとつお願いいたしておるのかということ、特にこのお願いは、昭和二十五年以来何回となく繰り返してお願い申しておったのでありますが、今回特にその実現を要望いたしたいということの理由は、まず第一にオート・アラーム信頼性が出てきたということでございます。これについてはあえて詳しく申し上げる必要もないのでありますが、郵政省から、すでに日本の製品に対しての型式承認も、何回かの試験の結果与えておられるようであります。大体機能世界的な水準に達して参っておるようでありまして、その証左といたしまして、日本で作られる、いわゆる外国に輸出する輸出船に、この日本製オート・アラームを付けているものがすでに百四十台近くに達しておりまして、これに対しても何らクレームを聞いておらないのが実情でありますので、もうこの辺でこのオート・アラームに対しての信頼は十分ではないかということでございます。  それから他の一つは、すでに御承知のように海運企業が非常な窮境に陥っております。ここでまあ徹底的な合理化をはからなければならない。その合理化の一翼といたしまして、いわゆる船員生産性向上ということが強く浮かび上がるわけでありまして、特に昨年船員の賃金をベースアップいたしまして、これは昨年のあのムードからいたしましてやむを得ない事情であったかと思いますが、そのベースアップの総金額が、大体内航船外航船を合わせまして、四十四億ぐらいになっております。この四十四億余のまあ支出増を、今度船員生産性向上によってできるだけカバーしていきたい。このことは海員組合のほうも十分認めておりまして、このベースアップと同時に、乗組定員の基準というふうなものが、団体協約できまっておりましたが、それを廃止いたしまして、船長の判断によりまして乗組定員を減らすことに同意したのであります。したがって、今のところこの四十四億の支出増をカバーするために乗組員合理化をはかっていて、かなりの成績が甲板部機関部のほうには出ております。しかしながら、なかなかこれをカバーするまでには至っておりません。ただ無線通信士に対しましては、電波法船舶職員法関係がございますので、この点が全然厚い壁にぶつかったような形になっております。そこで、何とかこの方面についても合理化をしていただきたいということが切実な問題になってきたわけでございます。  それからもう一つ、かりに現在やるといたしましても、無線通信士に対する失業のおそれというものが、今においてはほとんど考えないでいいのではないだろうか、むしろわれわれは非常な供給難に陥っておるというふうなことで、供給難といいますか、無線通信士の乗り組みがときに困難なために、船の資格を落としてまで動かさなくてはならないというふうなこともだいぶ出ております。こういうふうなことに打ち勝って、船をして十分にその機能を発揮させるためには、やはりここで通信士の数に対してこれを減らしていただかなくてはならないというふうに考えておるのであります。もとより、この船員の需給問題というのは、一つの現象でありまして、私たちから考えております海運国際競争力というふうな面からして、やはり一人でなければ外国船と太刀打ちすることが非常に困難であるというふうな事情にありますのですが、たまたま今の時期がそういうふうなことを実現していただくのに一番いい時期だというふうに判断いたしておるのであります。そこで、今度はこの無線通信士改正によりまして一人にいたし、あるいは暫定的に二人にいたした場合、そういう場合にいかなる障害が起こるであろうかということにつきましても、もちろん私どもは十分考えたのであります。まあその例として、海難の関係はどうなるであろうとか、あるいは気象業務との関係はどうなるであろうとか、あるいは通信疎通が混乱するようなことはないであろうかというふうなこと等につきましても、いろいろ検討してみたのでありまして、これらにつきましては、それぞれ海上保安庁とか、あるいは郵政省電電公社、あるいは気象庁等の御意見も承って、まあこれでやっていけるであろうというふうなところへ落ちついたので、この点も一応解決したということでお願いするのに差しつかえないというふうに考えたわけであります。この点につきましては、当委員会におきます速記録を拝見しますと、非常に詳細に質疑が行なわれておられるようでございますので、あえてそれを繰り返して申し上げることはいかがかと存じますので、省略さしていただきます。  大体そういうふうなことで、われわれが多年念願いたしておりましたことを、最近置かれておる日本海運企業状態からして、さらにここで国際競争力を増強するために、ぜひこの機会にやっていただきたい。そのやっていただくのには今が非常にいい時期である。それは通信機機能の問題としても、あるいは需給の関係にいたしましても、あるいはわれわれが追い詰められておる企業力の弱化をここで盛り返すということの助けになるためにというふうなことで、ぜひこの機会にお願いいたしたいというふうに考えるのであります。  翻りまして、蛇足でございますが、世界海運界は今非常に熾烈な競争をやっておりますが、その競争一つの手段として、各国とも乗組員減少、いわゆる機械化による乗組員減少ということに非常な努力が払われております。アメリカにおきましては、現在四十五人から五十五人乗っておるマリーナー・タイプの船、これを十名程度に減らせられないだろうかということでやっております。またイギリスも、機関部自動化というふうなことに対して非常な研究が続けられております。ノルウエーも大型タンカー機関部について、やはり六名から九名の間ぐらいでできないだろうかというふうなことで、非常な検討が加えられておりまして、日本がこの競争の外にあるということは絶対に許されません。日本におきましても、いろいろこの努力が続けられておったのですが、先ほど申し上げましたベースアップに伴ういわゆる乗組員定員合理化の話が海員組合とできましてから、従来たとえばニューヨーク航路を見ますと、五十名以上乗っておりましたのが四十五名になっておりまして、もっと減らしたのでは四十三名ぐらいになりまして、これは外国船が四十六名ぐらい乗っておるのをさらに追い越して参っておるような状態でございます。このときにひとり無線通信士だけが、ほかの国が一人でやっておるのに三人を乗せていかなければならないという形が今の形でございます。この船員を減らすということは、非常に忙しい甲板部機関部船員にがまんしてもらって、その生産力を上げることをやっていただいておるのに、そのかたわらに無線通信士があって依然として三人でなければならないということになりますと、船内融和の面からしても、はたしてどうであろうかというふうなことについて、われわれは非常に危惧を感ずるのでありまして、一船にとりまして各パートパートが同じような歩調でひとつ合理化に向かってもらうということが絶対に必要なことではないかというふうに考えております。われわれは合理化のことにつきまして、海運にいろいろの助成策政府にお願いするときにも、政府とか、あるいはその他の方面から、国民の税金を使うようなことを考える前に、まずお前のほうでやれるだけのことはやってみろというふうなことをいつも言われるのでありまして、私たちはもっともだというふうに考え、それに向かって今邁進しておるのでありまして、そのときの壁がこれでありまして、ぜひひとつこれを解決していただいて、そうしてこの合理化というものを船内の全般に歩調を合わしてやっていただきたい。やることによって、何らそこに支障が起こるということは考えられなくなってきたというのが現状であるというふうに考えておりますので、ぜひひとつお願いいたしたいのであります。  私たち無線通信士を決して軽視しておるのではありません。船の中における無線通信士仕事重要性というものについては、十分な認識を持っております。また、今後のことを考えますと、いわゆる無線通信というものがいよいよ重要性を増していくというふうにも考えております。したがって、無線に関する技術者重要性については、非常に認識をしておりますので、決して軽視した結果ではなくて、そういう方々がそれぞれのポストにおいて最もそれぞれのポストにふさわしい仕事の量で、そしてほかのパート歩調を合わして船の運航に当たっていただくということをお願いしておるのであります。  この法律案改正ということはその趣旨からであります。今後また、これがかりに一人になりました場合、あるいは業務用通信その他でいろいろの安全上の通信以上の業務もいろいろ考えられるかもしれません。私たちの統計ではあまり多いようではございませんけれども、かりにそういうものが出て参りました場合の乗組員の員数というふうなことについては、これは法律要請を離れ、かつ船会社必要限度というものを考え合わせて、海員組合等々と十分話し合って、円満な一つの解決をしていきたいというふうに考えておるわけであります。  ごくあらましでございますが、そろそろ時間になりましたので、いずれまたいろいろ御質問いただきましたなら、それについてお答え申し上げたいと思います。  ありがとうございました。
  8. 安部清美

    委員長安部清美君) ありがとうございました。  次は、船舶通信士協会常任委員長大内義夫君。
  9. 大内義夫

    参考人大内義夫君) 私は船舶通信士協会大内でございます。  ただいまの電波法改正案に対しまして、私ども意見を述べさしてもらいまして、なるべく現状における実例をあげまして改正案に対する反対点を、また問題点となるような点を申し上げたいと思います。  電波法改正案内容をなすものは、現行の第五十条の規定でございまして、その五十条は、通信長の配置をきめる、そういう条項でございますが、内容におきまして船舶局局種別を変更することによって執務時間あるいは聴守時間の削減をはかり、そうして通信定員削減することにあるわけでございますが、第一番に、現行状態の中で船舶局執務時間が減ることによって起こる大きな支障は、現状から見ますというと、直ちに公衆通信疎通が甚大な障害を受ける、こういう点を私どもは日常の中で強く見ておりますので、非常に不安にたえない。実情を申し上げますと、現在内航——日本近海を走っておる船、これの特に中波通信——中波周波数通信を行なうのでございますが、これがほとんど太平洋沿岸海岸局軒並みに、順序通信と申しまして、海岸局に対する航行中の船舶から電波がくる、呼び出しが多数ありますために、それぞれ順番をきめて並ばせる、こういうふうな通信システムが行なわれておる。これはつい一年前までは想像もできなかったような範囲まで及んでおる。電電公社は、かつて数年前に、大分にございます大分海岸局を廃止しようという案があった。その局においてすら、現在においては多数の船舶局通信に応ずるために順序通信を行なう、こういうふうな状態でございます。それから特に最近九州から東京芝浦方面にくるほとんど定期的に航海しておる船が、ずっと海岸局呼び出し電報を打とうと思っても、なかなか相手にしてくれない。それがために、中波周波数通信ができませんので、短波周波数を用いて、日本の沿海を走っていながら、遠距離から通信するために使用する短波周波数でもって辛うじて通信しておる、これが現状でございます。さらに外航船舶の場合は、さらに大きな混信状態がございまして、当委員会においても検討されたと思いますけれども、なるほど現在日本船舶が一日に扱う公衆通信通数というものは、わずかに四通とか五通ないしは六通程度でございますけれども、これを疎通するためには非常に大きな障害がある。たとえば一通の電報疎通するためには、海岸局をとっつかまえて送り込ませるには、わずか三分または五分以内で送ることができる。したがいまして、一日わずか五通か六通の電報はわずかに二十分か三十分の時間で疎通できる。これは表面上の計算であって、遠くからあるいは近くから海岸局を呼んで手持ちの電報を送ったり受けたりする、そうするための連絡設定をはかるための時間が、現在のような混信状態では相当の時間がかかる。私どもが取りあえず各船からの報告によりまして調査いたしましたところ、ほとんど短波通信による疎通の状況は、その半分以上は一通の電報疎通するために一時間以上かかっている、一時間ないし三時間、これが一番多いわけです。それから一時間以内に疎通できるのも、これも二分の一以下がこれは実情です。はなはだしいのは五時間、六時間とかかる、こういう状態が最近ますますひどくなってきておる。これによる通信秩序の混乱というものも一部に見られまして、たとえばわれわれにとって非常に不名誉なことではございますけれども日本船呼び出し過度という点が問題になりまして、アメリカあたりから違反通信の通告が日本にくる、こういう実例がたびたび今でもあるわけでございます。こういうような公衆通信疎通におきましても、現状を見て参った場合、これが電波法改正によって限定執務時間になる。一日八時間でよろしいということになった場合、相当大きな問題が出てくるのではないかという点を私どもは深く心配しているわけでございます。たとえば電報を送る場合には四通、五通で済むといいますけれども、いつ、どういうところから自分船あてに重要な電報がくるかわからない。そうするために、たとえ一日一通もないときであっても、船舶通信士聴守を続けなければならない。これが二時間に一ぺん各海岸局から船あて電報がある場合には、その船を一括して呼び出すわけでございますが、二時間に一ぺんに、呼び出し時間が一ぺんに二十分ないし三十分以上かかる。この時間はどうしても聞かなければいかぬ。長崎電報があるかもしれないと思って、二時間置きに長崎のあれを聞く。あわせて銚子も聞かなければならぬ。それで外国に行く場合に、行き先地外国海岸局あて呼び出し時間も聞かなければいかぬ。そうしますと一時間ごと、結局毎時間ずっと聞いて、電報がおくれないように、自分航行支障を来たさないように、そういう態勢でもって執務していませんと、日本無線通信というものはうまくいかない。そういう実情でもってわれわれは仕事をしているわけでございます。これを一日八時間の限定執務になった場合には、そういう完全な通信はできない。特定の通信時間に集中いたしますために、この混信がますます増大いたします。これをどうやって防ぐかという点について、改正案内容におきましては、一日八時間の執務時間の時間割を集中させないように、もう一つの裏時間というものを用いて平均するような方法を考えるということを言われております。しかし、いずれにいたしましても、八時間の時間の振り当てを変えるだけでもって、結局は昼間を中心といたします時間に全部が集中するわけでございます。ほとんど夜間、未明にかけての時間というものは無線通信疎通をはかるためには利用できない、こういう結果を来たしている。そういうような案であっては、当然いかなる措置を講じても公衆通信疎通はうまくいかない。したがって、何らかの方法によって公衆通信抑制をはかる。これは強制力をもって抑制をはかることはできませんでしょうけれども、重要な電報は言うまでもなく、現在においては遠く離れて働いている乗組員私信——家族との通信、こういうものが非常に通数が多い。ほとんど公衆通信の半分に達している。そういう家族通信というものをここで完全に絶たれてしまう。そういうような乗組員全体に対する士気に影響を及ぼすような弊害が直ちに現われてくる、こういうような点も、私どもだけではなくて、乗組員全体の関心の的になっている、こういう現状でございます。  次に、聴守時間の削減でございまするが、現在においては、いわゆる義務船舶局と申しまして、近海航路以上の、千六百トン以上の船は全部無休聴守を行なっている。この場合、この改正案によりますというと、今後航行無休聴守しなければならない船は、国際航海に従事する船舶限定されます。この場合、国際航路に従事しない日本近海を走っている船は、全部一日八時間の執務時間の中で聴守を続けるだけでよろしい。そういうことになります。そういたしますと、日本内地周辺を走っている船は、ほとんど夜間においては聴守する必要がない。そういう現状が出てくるわけでございます。こういたしますと、日本近海は非常に気象の変化が激しく、また海岸の入り組みも非常に多い。船舶が一たん危急の際、危険な目にあいまして他船の救助を求めるような場合は、やはり夜間にかけて多いわけであります。そうした一番重要な時間に船の耳が奪われるということが直ちに現われるわけでございます。この場合、よる夜中船舶遭難しましてSOSを発信する。こうした場合、だれも聞いてくれない。助ける船もこの場合助けないというような事例が起きてくるわけでございます。したがってそうした場合に、二十四時間の聴守義務を持っている国際航海に従事する日本船舶と、それからたまたま日本にやってくる外国船とによってそういうブランクの時間が守られるというようなことになる。しかもそれが人間の耳によらずしてオート・アラームというような機械によって聴守される。こういうような重大な、まことに決定的な変革がこの電波法改正によって行なわれる。こういうことは、ひとり通信士ばかりではなくて、今、現行法改正されるという話は、単に私ども無線通信士だけではなく、船長以下乗組員全員を含めてその内容がだんだんわかって参りまして、一体電波法改正というものは三人の通信士を一人に減らすというだけに理解されておったものが、その内容がわかるに従って、これは非常に不安であるという点が最近でも私ども強く言われまして、よる夜中これじゃ安心して走っておられない。こういう不安がやっぱり出てきている。これはまことに私どもは重大なことだと思っておるのでございます。こういう点は、なるほど国際水準並みにする、海上人命安全条約に規定している線まで下げて、いわゆる国際水準並みにするという方針のもとに、条約においては可能であります。しかし、はたしてこういうような改正によって来たされる状態国際水準並みかどうかは非常に疑問である。たとえば海上人命安全条約において国際航海に従事する船に無線電信の聴守義務というものをきめている。それだけで十分な場合がある。たとえば欧州各国においては、国と国とは隣接しておりますから、沿海を走っておっても国際航海になる。そういう点で、条約並みであってもあるいは安全が守れるかもしれない。ところがアメリカのように非常に海岸線が長い国、そういう国は国内だけを走っている場合は無線電信を強制されませんというと、非常に大きなブランクが出てくる。したがって、アメリカはすでに三十年前から条約の規定を上回って国内だけに航行する船についても千六百トン総トン以上の船には無線電信を強制している。日本の場合においては地理的な環境が相当異りますので、国際航海に従事するものは相当遠距離の、いわゆる国外のことを想定するわけです。その場合に、条約においては国際航海に従事する船に限って無休聴守の義務を課しておりますけれども日本の場合はその条約の規定どおりによりますと相当大きな不安が生じてくる。これが第一番目の電波法改正に対する私たちが一番不安に思っている点でございます。  また、無休聴守を人間にかわって補うためにオート・アラームの採用、これがまたきわめて重要なことでございまして、たびたび当委員会においてもオート・アラーム信頼性あるいは性能について御検討があったというように承っておりますけれども、私どもオート・アラームの性能が外国製品と比べて日本は劣っている。こういう点について反対しているのではございません。あるいは外国船並み、同様である。場合によっては外国船よりか優秀である。たとえそういうことであった場合でも、実際の場合にはオート・アラームというこの制度が、はたして有効なものであるかどうかという点について大きな不安を持っているわけでございます。昨年以来いわゆる合理主義に従いまして電波法改正される、これを前提にいたしまして、わずか一年か半年の間に日本船におきましても非常にたくさんのオート・アラーム日本船に今付けられております。実際におきましては電波法改正後でありませんと全面的な使用、あるいは価値を発揮いたしませんけれども、それでもなお現在五十何隻という船が一名減員されまして、その時間をオート・アラームの使用にまかしておる。そうした実際に使用している船の報告によりますというと、わずか半年しか使用経験がございませんので、はっきりした決定的なことは言えませんけれども、そうした短い期間においても五十数隻の船の報告によりますと、約半数に近い二十一隻がこのオート・アラームが直ちに故障があった、故障の種類、内容、条件、そうしたことが私どもの報告に寄せられておる。停泊中機能テストをしようと思ってテスト・ボタンを押しても鳴らないというようなこと、室内の温度が三十五度以上になればもう機械が働かないというようなこと、たとえば誤作動におきましても、日本近海でも特殊の事例がございます。空電五百KCが常時行なわれ、それがためにオート・アラーム混信の妨害を受け、誤作動を生ずる、たとえば、こまかいことを申し上げて恐縮でございますけれども日本海岸局のコール・サインというものは全部Jという符号がついております。JOS、JSM、この符号を連続して航行している船がたたきますというと、これがいわゆる警急信号に似たようなものになりまして、オート・アラームを作動させる、これが空電、混信と重なりまして、外国船から従来私どもたびたび聞いておる。南シナ海を走っておって、日本船が、よくコール・サインによって警急信号がおのずから形成されて鳴った、そういう話を聞いておったのでございますけれども、最近日本船の使用実例を見ますと、潮岬の沖を船が走っておった、その呼び出しによって他船のオート・アラームが鳴った、こういうような実例日本近海、特に五百KCによる非常に大きいものでございますから、そういう事例がたびたび起こる。したがってオート・アラームの現在の技術水準からいって外国製と比べて遜色はないといわれても、実際に使用した場合にはそういうような特殊的な環境によって誤作動が起きるという例は、これはどうしても防ぎようはないわけであります。電波法の規定におきましては、通信中はオート・アラームを付けた以上は作動しておかなくてはならない、この規定を忠実に守って他の周波数通信を行なっている場合は、五百KCの通信がおろそかになりますから、その間は作動させておきます。そういたしますというと、日本船の使用する電力は外国船と比べて非常に大きい、五百ワット、一キロというような大きな電力を使う、これは日本船としてどうしても必要な電力でございますので、そういう大きな電力を使って発信いたしますと、作動中のオート・アラームのコイルに誘導いたしまして燃えてしまう、こういうようなケースがある。外国船にはそういうようなことはあまり聞きませんけれども、そういう事例も最近聞くわけでございます。そういうような機械的な設備の不十分さ、オート・アラームという機械そのものの性能はどうであろうか、設備条件というものがそういう点非常に不完全である、そういうために生ずるいろいろなこまかい点の障害というものはたくさんあるわけであります。そういうものはわずか半年かそこらあたりの使用経験しかないのにかかわらず、たくさんの問題がわれわれの仲間の中で話に出ているというのが、これが現状でございます。それからもう一つども無線通信でございますので、この電波法改正になった場合、どういうふうにわれわれの立場が変わっていくかという点がまた強い関心の的になっているわけでございます。特に五十条は、先ほど申し上げたとおり、通信長の配置条件をきめる条項でございます。これが局種別の変更によりまして相当大きな変革を来たす、たとえば現行におきましては、第一種局の船、五千五百トン以上の貨物船はこれに該当いたしますけれども、この船がもう六百隻近くある、この船の通信長になるためには、現行電波法においては、一級通信士として四年以上の業務経歴がないと従事できない。法規は四年の業務経歴を要求しているわけでございますから、実際においては十年、二十年、三十年というような長い経験を打つベテランの熟練した通信士が実際に専任されている。さらに五千五百トン未満の第二種局乙の局種別においては一級通信士として二年以上の業務経歴がないと認めない。したがって、これについても相当のベテランの通信士が乗っている。これも今度全部三年後には、いわゆる最低の第二種局乙というような局種別になります。そういたしますというと、第二種局乙の一日八時間でよろしいという局種別になりますと、通信長の条件は全然業務経歴を要求しておらない。学校を出まして、一級通信士の資格を取れば、そのままでも一万トンの船であろうと、何万トンの船であろうと、どこへ行こうと、通信長になれるというような、そういうふうな改正内容でございます。したがいまして、これによって生ずるいろいろな問題がたくさん出て参りまして、これがまた職場がなくなるという問題が出てくる。現在人を減らして、失業の状態は生じないというような点、一般的な数字の上から見て、需給が逼迫しているために、新造船によって就職することができるということを一般的にいわれているわけでございますけれども、今過剰となる通信士の二級の資格を持った者を新造船に充てるといってもできない。そういうようなものは資格の上からアンバランスがございまして、足りない部分を補うという点においては不十分である、そういうことから考えまして、船舶通信士として一級の免状を持っておっても、二級の免状を持っておっても、いろいろな形で不安が生じている、これが現状でございます。  時間がないので、あと簡単に申し上げますけれども、私どもはいろいろなところで説明いたしますけれども、私どもの話を聞いても、現実に外国船が一名でやっているのに、なぜ日本は三人でなければやれないのかということを言われるわけでございます。それはよくわかっているのでございますが、これを聞かれる人に納得できるような説明をしても、なかなかわかってくれない、そういう点がございます。その場合に、なぜわが国は電波法という法律をお作りになって、そうして無休聴守無休執務が必要であると、それが日本海運あるいは公共的な航行の安全からいっても必要であるとおきめになったその動機自体が、無言で証明していると思う。これは理屈にわたりますけれども、私ども承知している範囲におきましては、外国船では一名でもできるという条件があるわけです。それは日本と向こうと通信体制が相当違う。卑近な例で言えば、われわれはモールス信号をかたかなとアルファベットと両方覚えなければならぬ。かたかなのモールス信号を用いますと、外国船と自由に通信はできない。そういう実際的の障害航行安全におきましてもだいぶ日本外国では事情が違う。そういう点、こまかく言えば限りがございませんけれども、そういう相違がたくさんございます。それから決定的に違うのは、船舶における無線通信士仕事内容が全然違うのでございます。なぜかと申しますと、向こうでは、いわゆるマルコーニ・システムとわれわれ呼んでいるのでございますが、船会社が、無線通信士に限って、直接雇うのじゃなくして、無線会社から派遣されてくる、無線通信機械をつけて持ってくる。したがって、船の無線通信機械の保守、その修理を含めまして、無線会社が責任を負う、そういう格好になります。世界の主要海運国であるイギリスのような国では、そういう雇用形態にあるのがちょうど半分ずつ、船会社船員でないんです。これは全部船会社船員じゃない。つまり無線会社からやってくる。オランダの場合、全部そうです。そういう影響がありまして、アメリカにおきましても仕事内容は機器の補修とか、いろいろな電報料の計算であるとか、無線通信士でやる、無線の最低限度の修理であるとか操作運用をはかるだけが向こうの仕事であります。  それからもう一つは、ここでも問題になったと思いますけれども世界中の船舶局の局名録を調べた場合に、八時間という執務時間を持っておる国は非常に少なくて、不定の局を持っておる国が非常に多いわけです。なぜかと申しますと、その理由の一端は、たとえばアメリカのごときそうですけれども、一日八時間の執務時間だから一人でできるじゃないか、ところが八時間の内容は二時間ずつ区切って四回にわたってやるという、こういう時間割です。これが国際上きまっておる。こういうふうに一日四回に分けて、合計すれば八時間である。これは向こうは八時間労働として認めておらない。向こうは一日八時間の労働時間を三回以上に分割してはいけないと、そういうのは八時間労働として認められない、こういう規定があるために、条約上の規定のために、八時間というものはどうしても行なわれない。不定の局にいたしまして連続した時間による二回あるいは三回の当直によって八時間の労働の中に入れる。こういうような労働条件といいますか、仕事内容について根本的に違うわけでございます。したがって、そういう点を考えますと、あるいは一人でも可能であるということが言えましても、日本の場合は不可能です。そういうような相違点がございますので、どうしても外国船と比較いたしまして数の上だけの比較においてやられることは心外に思っておるわけでございます。  時間がないので、たくさん申し上げたいことがございますけれども、以下略しますけれども、さらに最後に申し上げたいことは、この改正法案中に、暫定期間経過措置というのがございまして、新造船は当初から一名という規定がございますけれども、こういう点は私どもは理解しがたいものを持っている。片方のほうにおいて、当分の間、暫定的に二人でよろしい、しかし、新造船は一名である。御提案の説明を読みますと、三年間の暫定期間中に、いろいろな通信機械の整備であるとかそういうことをはかって支障ないようにする。その期間がまだ終わらないうちに新造船は一名である。その新造船の一名はどうやって仕事をしていくか、そういうような問題が、すぐわれわれ実務上からきた経験の中で、非常に奇怪な、不合理な制度として私どもは感ずるのです。  それからもう一つは、電報が多いとかなんとかいうことは、法規は最低でいいのだから、もしそういう必要があれば、事業上たくさん人を乗せてもいいのじゃないか、こういう議論がある、これもまことに表面的にはごもっともな点でございますけれども、一体これは商船の場合の無線通信というものは、漁業の場合と違いまして、いわゆる専用通信、事業通信によって行なうのじゃなく、やはり公共性を持った公共通信というものが中心になっておる。しかも公共通信というものは、外国と違いまして独占事業になっておる。その中に割り込んでやるということは、国全体の制度の中で自由に円滑に疎通できる条件があって初めてそういうことが言えるのでございますけれども、そういう条件がない。ある特定の船だけは、おれのところは電報が多いのだから三人乗せるといっても、それはおかしい。こういう点からいっても、国の制度といたしまして、やはり公共性を持った公共通信疎通であるとか、あるいは航行安全上の外国と違った地域、環境、そういう条件を勘案されまして、最低の要員を確保することがやはり公共性からいっても必要じゃないか。そういう点からいいましても、現行の規定が一番最低であり、かつ望ましい制度と私どもは感ずるわけでございます。  以上でございます。   —————————————
  10. 安部清美

    委員長安部清美君) この際、委員の変更についてお知らせいたします。  本日は、山田節男君が委員辞任せられまして、その補欠村尾重雄君が選任せられました。   —————————————
  11. 安部清美

    委員長安部清美君) 次に、日本海事検定協会理事三田一也君。
  12. 三田一也

    参考人(三田一也君) 私は、ただいま御紹介にあずかりました三田一也です。私のやっております仕事は、海上安全のためにいろいろな団体、たとえば日本海難防止協会とか、あるいは航行安全審議会とか、そういうところの委員をやっております。私は甲種船長の資格を持っておりまして、多年海上で航海し、または船長として職務をとってきたものであります。  電波法の一部を改正する法律案の趣旨に沿いまして、船舶に乗り組む通信の要員が減ぜられた場合に、海上の安全にどういう影響があるのであろうかと、こういう点について私は意見を申し上げたいと思うのであります。  船舶通信の使命は、私どもの考え方から申しますというと、広い意味における船舶の経済的な運航と、それから海上における人命の安全すなわち海上保安の目的、この二つに分けることができると思うのであります。この二つは、どちらがより重要であるかと、いわゆるそのプライオリティというものを決定するということは非常にむずかしいことであると思うのでありますが、私どものように海上の安全ということばかりに関係しておる者にとりましては、もう海上安全が第一である。ほかの問題は第二義的だというふうな考えをとらざるを得ないのであります。この法律改正の結果を、私どもは簡単に考えますというと、通信士定員が一名となりまして、聴守時間が、われわれは当直時間と申しますが、それが一日八時間、そうして生ずるところのその間隙をオート・アラームを使用して埋めまして、少なくとも遭難信号に関する限りは二十四時間当直の実効果を上げようとするものである。そういうふうに解釈されるのであります。そこで、私は船舶の安全に関する事項のみについて私の意見を申し上げるのでありますが、私の考えを申し上げる前に、御参考までに申し述べたいと思いますことは、海上における人命の安全のための国際会議、大へん長い名前でありますが、略称私どもはこれを国際安全会議と称しております。御高承のごとく一九一二年四月の十四日に、当時イギリスが造船、造機あらゆる科学的な技術の粋を集めまして、いわゆる不沈船と豪語したタイタニック号が、その処女航海において北大西洋で氷山と衝突して沈没いたしまして、千五百十七名の人命が失われたのであります。この事件を契機といたしまして、一九一四年から第一回のいわゆるロンドン国際安全会議が開かれ、最近は第四回が一九六〇年にロンドンで開かれたのであります。日本からも二十六名の多数のそれぞれの専門家が出席いたしております。この国際会議の決定事項は、いろいろな所要の手続を経まして、海上における人命の安全のための国際条約となって、事実上世界海運国はこの条約に拘束されまして、それぞれの国内法規を制定いたしまして、海上の安全を確保しておるのであります。この条約の内容におきまして、船舶通信に関しては特に第四章を設けて、非常に詳細に規定しております。これはいかにその海上航行の安全に通信が重要であるかということを示す証左であろうと思うのであります。  そこで、私はこの問題に戻りまして、一番大事と思われまするところのオート・アラームについて申し上げたいと思います。この装置は、一九二九年、今から約三十三年前ごろと思いますが、外国では実際に使用され始めまして、日本でも遠洋航路の船に備えつけて、その性能試験をしたことがございます。実は、私が一等航海士として乗っておりました船にそれをつけて試験をした記憶がございます。一九四八年のロンドンの国際安全会議におきまして、このときはわが国が占領下でありましたので、代表者が出席しておりません。そこで、米国の代表の報告書を見ますと、現在それは一九四八年のことでありますが装備しているオート・アラームは、今回の、一九四八年の条約によるというと、技術的に格段の改善をしたものが要求され、米国の標準以上のものとなった、そのために、新式のオート・アラームを装備するまでは猶予期間が与えられていることである、そういう報告が出されております。すなわち、最初から使った経験によって一九四八年には大きな改善がなされたことを示しているものと思われます。その次の一九六〇年の国際安全会議におきましては、そのときの条文を見ますというと、過去三十年の長期間にわたって世界各国の船舶が実際に使用した経験にかんがみ、多少の規定の改正はありましたけれどもオート・アラームの役割がますます重視されていることは明らかになっておるようであります。  さて私は、その次に、日本近海の海難救助を担当しております海上保安庁の遭難通信に対する受け入れ態勢と申しますが、受信態勢について、簡単に申し上げようと思います。  海上保安庁の発表によりますというと、通信所は全体として陸上に六十七局、所属の巡視艇に二百七局ほどあるようであります。このうち遭難通信、いわゆるSOS五百KCを二十四時間聴守しております局は三十四局ございます。それからこれはおもに小型船で使用されます二一八二KCに対して聴守している局が七十七局ほどございます。ここで私は特に申し上げたいと思いますことは、これらの通信所並びに巡視艇は、過去長年の統計によりまして、海難の発生しやすい海域を十分カバーされるように配置されているということであります。これを実績によって見ますというと、昨年七月発表されました海上保安白書によりますというと、全遭難通信並びに緊急通信の約九〇%、すなわち大事な通信はほとんど全部海上保安庁の通信が最初に受信をいたしまして、応答をしている、こういう好成績を示しているのであります。このほか、御高承のように電電公社直営の海岸局が十二ほど、魚業無線局は四百にも及んで、わが国沿岸の重要な場所にありまして、それぞれ海難の通信に協力している現状であります。また世界各国とも、国際会議の勧告に従いまして、海上保安のため、海岸局の整備活用に協力しているというのが実情でございます。  以上、私はこの二つの問題に対しまして実情を申し上げたのであります。これからこの問題に対する私の意見を申し上げたいと思います。  まず、オート・アラームにつきましては、わが国では最近五十数隻とかあるいは七十隻と私は承っておりますが、日本の船に付けたようでございますが、実際にいわゆる遠洋航路に使った実績はないと思うのであります。したがいまして、これは信頼ができるものであるとか、そういうふうに考えられる方と、まだ不安があるという意見等に分かれるということは、これはやむを得ないことだろうと思うのであります。私は私なりにオート・アラーム信頼性に対する考えを持っているのでありますが、その根拠は、次の四つの理由によるものであります。  第一は、先ほど申し上げましたとおり、海上安全に関する限り、憲法ともいって差しつかえないと思いますように大切な国際条約において、特にオート・アラームの使用が詳しく規定されているということでございます。これによって、いやしくも海事関係仕事をしている者は、オート・アラーム信頼性について何ら不安がないと判断することであろうと思うのであります。  第二には、三十年以上の長期間にわたって外国船舶で実用に供されているということであります。  第三には、わが国の電子工学は、決して世界水準に劣っておりません。国産オート・アラームも実用に供され、あるいは先ほどのお話にもありましたように、輸出されておりますし、郵政当局の試験の結果も好成績であったと発表されているように思っております。  第四に、一九五五年六月ポルトガルで開かれました第七回の国際救命艇会議、これは実際に海上で遭難した船を救助する技術を、各国の担当者が、ほんとうの技術者が集まって、お互いに知識経験を交換し合う会議でありますが、その会議へ私は出席いたしまして、遭難通信中に他の重要な通信用として、五一二KCを規定してもらうように日本といたしまして提案をいたしました。そういう関係上、オート・アラームについても、各国の代表者と話し合ったのでございますが、この人たち意見は、何も問題はない、今ごろ日本のような国で使っていないのは一体どういうことなのか、そういう意味意見でありました。すなわち何ら不安となるような資料は得られなかったのでありました。したがいまして、私は安全条約に従ってオート・アラームを使うようにしますれば、何ら差しつかえはないと思うのであります。  次に、この問題に関連いたしまして重要なことは、わが国の通信士特に大型船の通信士諸君は、非常に長い伝統と施設の完備した教育機関で教育され、厳格な国家試験の合格者であります。ことに日本人の性格は通信のようなデリケートな頭脳作業に適しておりますので、外国通信士よりははるかに優秀であります。私は、仕事関係上、多数の外国の海軍あるいは海事関係技術者仕事のことで交際をしております。その結果、日本通信士が優秀だということを確信をもって申し上げられると思うのであります。かるがゆえに、私は先ほどの船主協会の米田理事長の御発言を伺っておりましたが、日本船舶の所有者を初めとして船舶乗組員の一同が仲間です。乗組員の皆さんが、それからさらに一般海事関係者が、船舶通信重要性について認識を改めまして、通信士諸君が自発的にこの問題に協力をされるような方策を講ずるならば、この改正案のごとく実施されることに何ら不安を抱くものはございません。私の述べましたことは、私の専門である海上保安の見地から、私としては最も重要であるとは存じますけれども、ごく一部分を述べたのみであることを御了承願いたいと思います。  私が今まで申し上げましたことがこの重要な法律案の御審議に、いささかなりとも御参考になれば望外のしあわせと存ずる者であります。終わり。
  13. 安部清美

    委員長安部清美君) ありがとうございました。  次は、全日本海員組合教育部長村上行示君
  14. 村上行示

    参考人(村上行示君) 私は海上で働いておる船員の立場から、この電波法の一部を改正する法律案に対する意見を申し上げます。  まず、この改正法律案は、船員意見というものを全く無視して、民主的な審議会等の手続をとらないで、いきなり郵政大臣から国会に提案されておるという点について御留意願いたいと思います。この改正法律案によりますと、法定乗組員数の減少という、船員にとりましてはまことに重大な結果が招来するわけでございますが、このような重大な問題を、船員意見を全く無視して国会に上程されるというようなことでは、かりに国会で多数決で決定されるとしましても、決して円滑な実施は望み得ないのではないかと思います。郵政大臣は聞くところによりますと、放送法等の改正にあたっては、審議会というようなものを作って民主的に審議されると伺っておりますが、電波法改正にあたっては、このような配慮が何らなされていないということはまことに奇怪であると存じます。もちろん通信士定員を直接きめております船舶職員法改正にあたりましては、海上航行安全審議会におきまして、関係者を集めて審議をしておりますが、この場合も、船舶職員法改正電波法改正に応じて行なうものであるというふうに政府から説明されておりまして、電波法改正に伴う技術的な問題の審議は何らなされていないというのが実情でございました。したがって、今日まで一体何のために電波法改正が必要なのかという点につきまして、現場の船員は全くつんぼさじきに置かれてきたのでございます。そこで、電波法改正の必要性の問題でありますが、法律改正の理由の一つとして、無線機器の性能の向上ということがあげられております。しかし、これは法改正の理由としては、一般の誤解を招くようなこじつけ理由のように思われます。現在、産業界全般にわたって技術的革新が急速に進められ、これに伴い就労体制の変化が起こっておりますが、船舶の場合は技術革新の導入が割合におくれております。無線通信体制などにつきましても、何らの変化は生じていないのでございます。いや、むしろ無線通信体制の強化が要請されておるというような現状でありまして、機器の性能が向上したから運用義務時間や聴守義務時間を短縮する必要があるというようなことは、全く事実に反するのであります。オート・アラームというものにつきましては、先ほどからいろいろ御意見がありますし、また、この委員会でもいろいろ審議されておるようでございますけれども、これは御承知のように誤作動の多い目覚まし時計のようなものでありまして、このようなものを目して機器が向上したということは言えないのではないか、こういうふうに考えます。航洋船における無線無休執務体制というものは二十年近くも実施されてきておりまして、今日これを改めねばならない理由は全く見当たらないと思います。また、改正理由としては、海運企業の改善をはかり、国際競争力を強加する方策の一環としてということがいわれておりますが、法律によって実情を無視した減員をはかるなどということは、海運合理化対策とは言えないと思います。人間を減員しさえすれば国際競争力が強化されるというような考え方は、全く幼稚な考え方であると思います。もちろん船舶の場合も技術革新の進展に応じて合理的に定員を定めていくという努力を怠ってはならないのでありまして、このような努力につきましては、むしろ現在組合のほうから船主に提案をしまして、着々と実施をしてきております。これにあたって最も重要なことは、労使の事前協議あるいは労使の協力態勢ということであろうかと思います。ところが、現在の船主にはこのような長期的な見通しに立った海運政策や船員政策というものが一つもないように見受けられます。船主は通信士定員外国船並みにできなければ海運の助成がしてもらえないかのような錯覚に陥り、海員組合との協議や協調態勢というものを放擲いたしまして、いちずに法律改正によって通信士の減員をはかろうとしております。このような船主の陳情をもとにして電波法改正理由とすることは、電波法制定の本旨をはなはだしくゆがめるものであると思います。法律改正を審議するにあたりまして最も肝要なことは、法律本来の目的を十分把握することであろうかと思います。この法律の目的につきましては、私がここであらためて申し上げるまでもないと思いますが、私は特にこの機会に、現在の船員が国の海運政策についてどのように考えているかということについて申し述べたいと思います。  一言にして言えば、船員ははなはだしく不平と不満の念を持っております。よく外国船並みというふうなことがいわれておりますが、一体、日本船員の待遇は外国船並みになっておるかどうか。たとえば労働時間一つとってみましても、あるいは船員設備というような問題にしても、賃金にしても、はなはだしく劣悪でございます。海難防止体制というような問題についても、非常におくれておる。そういう状態を放置しておいて、通信士定員だけを取り上げて外国船並みというふうな議論は、これは私どもはまともな議論とは受け取れないと思います。このような状態でありますから、船員志望者が毎年減少していく、あるいは既成の船員が陸上に転職していくというふうな事態が起こっているのであります。それを、需給が逼迫を告げているから定員削減をはかるなどというのは、全く本末転倒の議論であります。根本の海運政策の実施を捨てておいて、需給逼迫を理由として定員削減をはかろうとするのは、これは海運産業発展の方向と逆行する政策であると思います。船員は困難な苦しい客観情勢をよく認識し、苦しみに耐えて、海運産業の発展にできるだけの協力をしようと考えています。そして、世界的に見ましても、日本船員は高い技術水準と高いモラルを持っています。労働組合の組織としましても、産業別の単一組織という外国並みのすぐれた組織を持っております。このような船員から、協力態勢が得られないような事態が起こって、どうして日本海運に将来性があるでしょう。この点をよくお考えになる必要があると思います。船員は、通信士が一人になれば私用電報がほとんど打てなくなり、家庭との交信が不可能になるというふうな点を心配しています。また、無線ニュースもとれなくなり、新聞ニュースもとれなくなり、船内の文化生活が破壊されるということを心配しております。さらにまた、外国海運と比べて日本海運はあまりよいところはないけれども無線の三直制だけは誇るに足るものであるとして、世界の海員団体の国際組織である国際運輸労連の会議におきましても、日本船員は、日本の船に見ならえというふうに主張してきております。このような船員の気持を無視して、現在の通信体制を改悪することは、国の海運政策に対する船員の不信の念を一そう深める以外の何ものでもないと思います。四面海に囲まれたわが国の経済的発展のためには、海運の必要性は無視できないし、優秀な船員の養成と確保の努力を常に怠ってはならないと思います。ところが、今、日本海運は、多年にわたる海運政策の貧困と船主の無責任、無能力の結果、船員努力にもかかわらず、重大な岐路に立っておると思います。法律問題等につきましても特に慎重に取り扱わねばならない時期であると思います。このようなときにあたって、法律は最低をきめるものであるから、それ以上は労使で勝手に相談しなさいというような考え方で法律改正問題を取り扱うような態度がもしありとすれば、それはきわめて危険であるということを申し添えておきたいと思います。船員自身は、現在の線が最低であると主張しているということをよく考慮していただきたいと思います。海上人命安全条約による聴守義務というものを最も真剣に正しく把握しているのは日本船員であり、それゆえに日本船員は、現在の定員を最低の線として守ることを誓い、また外国船員に対しても、このことを日本海運の誇りにしてきたのであります。  以上申し上げましたことを要約いたしますと、第一に、この改正案船員意見を全く無視して出されている。第二に、改正の必要性や理由があまり見当たらない。理由としてあげられているものも、詳細に検討してみると、矛盾に満ちている。第三に、このような改正案の実施は、混乱を起こすだけで、よい結果が何一つ見出せないということであります。  現場で働いている者の意見を無視して、理由もなく法律改正を行ない、その結果がよくならないことが目に見えているというのであれば、これに賛成するわけには参らないと思います。したがって私は、結論として、この改正案には反対であるということを申し上げたいと思います。  なお海員組合は、船主や政府に対して、次のような警告書を出しております。このことも、御参考までに御承知おき願いたいと思います。     警告書   運輸当局はさきに電波法の改定をまたず、而も海上における船舶、人命の安全を低下せしめぬという理由と方策もないままに、突如として海上航行安全審議会に対し、船舶職員法通信士定員並びに資格を改悪、削減する旨の諮問を発し、運輸官僚の傀儡と化した委員を利用し、審議会本来の使命を故意にぼかし、専ら政策的な見地から強引に答申を行わせようとした。   このため、審議会本来の審議を主張する本組合を代表する委員は、その責任を感じ、かつて例のない委員総辞退の挙にでたが、何等反省の色もなく、組合側委員欠席のまま、遂に運輸大臣の意図する諮問案をうのみにする答申を行い、この答申をたてに今臨時国会に於て電波法並びに船舶職員法の改悪を強行せんとしている。   電波法が海上安全のための聴守義務と公衆サービスのための公衆無線局としての運用義務時間を規定し亦、船舶職員法が海上航行安全の見地から、その必要員数と資格を規定していることは改めて述べる迄もないが、今回の改悪がいづれも、法制定の本来の主旨を逸脱し、そのすべてを海運合理化に結びつけた政治的、経済的目的におかれている事実は本組合の断じて容認できぬ所である。   政府並びに船主が、若し法律さえ改定すれば定員削減が行えるなどと考えているとすればそれは大きな誤りである。   本組合は海上の安全と船員船内生活擁護の見地から機会ある毎に政府並びに船主に対し、この誤りを指摘してきたが、この警告を無視して法改悪を強行せんとする今回の暴挙に対し、本組合第二十回定期全国大会は改めて、従来の決議を再確認すると共に航洋船における無線無休執務体制を法改定の有無に拘らず、断固実力を以て守る方針を明らかにした。海上における無用の混乱を惹起せんか、その責任はあげて政府並びに船主にあることを警告する。  これは、さきの臨時国会開催前に出した警告書でございますけれども、この海員組合の大会決議というものは、現在まで変わっておりませんし、航洋船における無線無休執務体制を守るという決意を持っておりますので、現在審議されておりますような法改悪がかりに行なわれましても、これは実効のないものであるというふうに思われますので、そういう点もあわせてよく御検討願いたいと思います。  以上で私の意見を終わります。
  15. 安部清美

    委員長安部清美君) ありがとうございました。  それではこれより参考人方々に対する質疑を行ないます。御質疑のある方はどうぞ順次御発言を願います。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  16. 安部清美

    委員長安部清美君) 速記を起こして。
  17. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 二、三ただいま供述されましたことについてお尋ねしたいと思いますが、米田参考人に伺いたいのは、従来、船主協会と海員組合の間には、船舶乗組員の定数について団体協約があったように記憶するのです。さっきお述べになったところを聞いておると、乗組定員の問題について、従来行なわれておった団体協約というものが変わっている、現在はですね。これはなんですか、やはり両団体で、全船主、全海員の間で、両団体の間で何かやはり協定のようなものがあるのか、あるいは関係の船主単位に協定をしておられるのか。先ほど、海員組合生産性向上に対して趣旨は了承されて、そして乗組定員を各部にわたって合理化することに対して、基本的に同意見だということを言っておられるということをあなたはお述べになったが、それと団体協約との関係はどういうふうになっておるのか、その点が一点。  それからもう一つは、船員船内における事務の処理の仕方ですね、これは船によっても違うでしょうが、一般的にいって、甲板部機関部、事務部、無線部というふうにあると思いますけれども、問題になっておる無線通信士の職務ですが、国際条約から見ますと、大体各船になぜ無線通信士を乗せるかというようなことが、条約からこれは明瞭に出てくる部分があるわけです。海上の安全をはかるため、それから通信関係の法令からいきますと、公衆通信を円満に疎通させるためというような点から、無線通信士はそういった職務をやらなければならぬ、そのために無線通信士を乗り組ましておるんだということになるのですが、船によっては、先ほど来他の参考人の方からもお述べになりましたが、いろんな仕事無線通信士にやらせておる船もあるようですね。これは、私どももこの委員会でいろいろ政府委員との間で検討したんですが、たとえばラジオのニュースを聞くとか、あるいは海外放送を聞くとか、それに基づいて、いわゆる船内新聞を発行するとかというようないろんな仕事を、無線通信士仕事としてやらしておるような船もあるのじゃないかと思われるのです。しかし、これはどうも本来の無線通信士仕事ではないように思うのです。そのために、たとえば船内新聞を発行するために無線通信士を法定職員として強制的に乗らせるのだということになると、およそ船舶は海外放送を聞かなければならぬ、ラジオ放送を聞いていなければならぬ、船内新聞を発行させなければならないという、船舶職員の職務というものと関連をして、何らかの法定した職務を考えなければならないと思うのですよ。そういったことは、私は不適当だと思うのですが、そこで問題は、そういうふうな各船員の職務をきめるのは一体だれがどこできめているのか、これはもう便宜船長にまかしてあるのか、あるいは団体相互間でそういったものはきめさしておるのか、あるいは各船会社が所属の船員との間で何らかの申し合せをしてきめているのか、それと今の法定せられた船舶職員の定員というものとどういうふうに関連をして考えるべきか、こういう点について、もう一ぺん恐縮ですが、あなたの御意見を伺いたいと思うのです。
  18. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 第一の、乗組定員をどういうふうにきめるかということは、今御指摘のように、従来団体協約が船主団体と海員組合との間にできておりまして、それできまっておったわけです。ところが、先ほども申し上げましたように、三十六年のベースアップのときからこれを廃止したわけであります。したがって、あとは、乗組員数をどうきめるかということは、船主の意欲と、それから船長がそれを適当であるというふうなことかどうか、船長意見によってきめるということになりまして、会社が定員を決定または変更しようとする場合には、あらかじめ船長が同意した書類を出してくれ、それによってきめる、そういうふうになっております。従来の団体協約は、ここでなくなったのであります。したがいまして、これによりまして、現在船主は片っ方で機械化をはかり、あるいは仕事合理化をやりまして、船員をどんどんおろして、まあできるだけ少ない船員でやっていこうというふうな形に今大体なっております。甲板部機関部、これは私の目から見ますと、無線よりもはるかに多くの仕事量を従来から持っておったと思うのでありますが、この部門が主としてまあ今合理化の対象になっております。先ほど申しました数のように減って参っております。ところが無線は、元来いえば、これの方針に従っていくべきでありますのに、電波法、職員法の関係からして、それができないのだというのが現在の状態でございます。したがいまして、一日も早くこの法律改正をしていただきまして、ほかの甲板部機関部あるいは事務部と同じようにやっていただきたい、こういうのがお願いでございます。  それから第二の、船内における各船員の分担と申しますか、これは大体甲板部機関部、事務部というのは、一応八時間労働というものを原則にいたしまして、おのずからきまったものがございます。それによってやっております。大体これはただいま申し上げましたようなことから、会社のほうの執務規程、それから船長がそれをどう見るかということできまって参るわけであります。ただ、無線につきましては、今御指摘のような非常に混乱した形が出ております。それは現在三人乗っておりますために、三人の執務無線だけでは余るのじゃないか、そこで、今御指摘のような船内新聞をいろいろ出すとか、あるいはその他のいろいろの事務部のほうでやる仕事とか、あるいは甲板部でやる仕事とか、そういうようなものをある程度分けてそれをやっておるというふうな形が見えておるようでありまして、私が一番最後に申しましたように、私たち無線通信士というものは軽視しているのじゃないのだというようなことを申しましたのは、今船内でこういう三人の配乗からいたしまして、非常に不安定な仕事のような形になっておりますのを、安定した形に直して、そして甲板部機関部、事務部、無線部というものが、それぞれのプロパーの仕事を持ってひとつやっていただくという形こそ望ましいというふうなことで申し上げたわけでありまして、御指摘のようにいろいろニュースもやっております、あるいはレーダーの修繕なんかをやっておるところもあるかもしれません。そういうふうなものも、元来からいえば、ほかのパートでやるべきことを、今のような配乗から、そういうものに合併しておるというようなことでございまして、これをやはりきめておるのは、会社が大体その作業内容をきめておりますが、それは三人という前提の上にきめられておるので、仕事の性質そのものからいえば、かなり混乱したような形になっておる、こういうように考えております。
  19. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 米田参考人に重ねてお伺いしますが、あとのほうの問題なんですね。これは結局。こういうふうに理解していいのですか。各船別に大体船長意見を聞いて、各船会社が所属の、ある特定の船のその船員の人たちと相談して職務の内容というものをきめているということなんですか。それとも、会社の執務規程とかなんとかというものによって大体会社のほうできめてしまって、どこの部では何をやれということをきめたものを船長のほうに強制しておるという格好になっているのですか。それによっていろいろ考え方も違ってくると思うのですけれども
  20. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) お答え申し上げます。  基本的には、団体協約がなくなりましてからは、船長自分の船の状態を見まして、そしてこういう配乗をやるべきであるという意見で、それに従って会社もやるというのが基本的な線のようでありますが、現在はそこへ行くまでの間と申しますか、従来のしきたりもございますし、あるいは各船型によって大体同じような執務形態になりますので、会社が一応のまあ体系を作りまして、そしてそれを各船でやっているという形になっておるように聞いております。
  21. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 その問題について米田参考人にもう一つ意見を伺いたいのですが、まあ大体そういう今お述べになったようなことは、常識的には私もそうだったろうと思うのですが、ここで今回の法律案によりまして、かりにこれが両院を通過して法律になった場合には、つまり本来の船舶通信士仕事と見るべきでない仕事無線部のほうでされていることになりますから、今までの形ではいけない。それは各社の執務規程とかいうふうなものの改正の問題も起こって参りましょうし、それから本来の仕事以外に仕事を受け持たせるというならば、それに対するいろいろ処遇上の問題も考えていかなければならない。そういったことについては、船主協会としてはどういうふうな対策を持ち、どんな見解でおられるのですか、もし伺えれば伺いたいと思います。
  22. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 船主協会は、今のところ、各社に一律にこういうふうなやり方をしてくれというふうなことは申しておりません。各社がその持っている船の性能、それから就航する方面その他によりまして、それぞれそれを考えていくということにいたしております。また、おそらく各社は各船について一律のものを出さない。各船についてのものをそれぞれ船長意見によってまあきめられていくというふうに存ぜられます。その一つの例を申しますと、最近海運のほうに非常に技術革新が入って参りまして、最近三井の金華山丸等を見ますと、現在われわれが想像できなかったような、非常に少ない数で船を動かしております。その動かし方については、いわゆるリモート・コントロールというものを現在の段階で入れられるだけひとつ入れて、そしてやっていくというふうなこと、それから執務内容を、いわゆるパブリック・ルームを使って、そこで集中的に解決をしていくというふうなこと、いろいろ考えられておりますので、だんだん今までの船とは違った執務のやり方をいわばやらざるを得ない。これでこそ私は日本海運の進歩というものが生まれるのではないかというふうに考えられます。ただそのときにも、金華山丸のような、アメリカで非常なセンセーションを起こしたというのは、これだけの少ない乗組員でやるということは、アメリカでもなかったわけでありまして、かなり大きなセンセーションを起こしておったのでありますが、その船でも通信士は三人でもってやっているという形であります。
  23. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 次に大内参考人にちょっとお伺いしたい。  大内さんのお述べになったことを要約しますと、今度の改正法律案に、もしそれによるとすれば、まず現在でも非常に公衆通信がよく疎通していない、あなたの言葉を借りると非常な混乱状態だというその問題と、もう一つオート・アラームの問題、それの二つの意見。窮極はここにくると思うのですが、公衆通信の問題ですが、私もだいぶ調べて見ましたし、電電公社やら郵政省からいろいろな資料を取り寄せて見ているのですけれどもね、特殊の例外の場合は別といたしまして、日常の海上通信というものは、日常現在の船の通信量、それから現在の海岸局周波数、座席の数、そういったものによって円滑に疎通されておる結論が出ているのです。これはいろいろな時期をとって見ましてもそうです。ところが、あなたのおっしゃるところによると、短波中波とも非常な混乱状態で、長い間待たないと疎通ができない、海岸局との間に。そういうことを盛んにお述べになっておるわけですが、どうもその事実がわれわれのほうの調べからは出てこない。で、まああなたのほうが専門家ですから、具体的に私はお聞きしたいと思うのですが、この一通疎通するのに——非常の場合は別でございますが、日常一通疎通するのに一時間も二時間もかかる。場合によっては五時間も六時間もかかったことがあるとおっしゃるのですが、そういう事実が現在でも至るところにあるのか、もしそういった事実があれば、これはどこかの船からでもけっこうですが、何か資料をお持ちになっておれば、どういう場合にどこでそんなことが起こっているのか、それをもう少し具体的にお聞かせをいただきたいと思うのです。それが一つです。  それからもう一つオート・アラームの問題については、あなたは外国オート・アラームよりも現在においては日本オート・アラーム信頼性があるということも認めていい。しかし、あなたがおっしゃったのには、このオート・アラームというものは本来いろいろの欠陥がある、温度によってもどうとか、あるいはいろいろその呼び出し符号のいかんによって誤作動を起こすとか、そういったような欠陥があるということをおっしゃっているのですが、もう一歩掘り下げて基本的にお考えを伺いたいのは、かりにオート・アラーム信頼性をゆだねるにしても、あなたの御意見は、結局無線の——これは村上さんもそうおっしゃったと思います——無線の三直制はどうしてもこれは守っていかなければならないのだということをおっしゃっているのかどうかということです。オート・アラーム信頼性があろうがなかろうが、これはその船舶無線執務体制というものは八時間三直制というものをどこまでも守っていかなければならないのだ、こういうふうな前提に立ってお話になっているのかどうか、あるいはオート・アラーム信頼性があり、その誤作動があるということは、これは程度問題だと私は思いますが、それについて、もしあなたが欠陥があると言われたようなところは、ある程度是正されていった場合には、三直制というものを変えていってもいいんだというような前提でお話しになっているのかどうかということです。それからなおそれに加えまして、さっきお話の中で私にわからなかったことがあるのですが、それはまあ日本近海の海上の特殊な環境によって非常に誤作動が起こる場合がある、オート・アラームに。これは数が少ないからそうその全体の船についてどうこうというわけにいかないでしょうが、もうすでに今日そういうことが起こっておるという報告を受けているというお話ですけれども、まあ日本船からのそういう報告を受けられたか知れませんが、こういったことをお聞きになりませんか、同じような条件で、日本近海の海域に非常にたくさんの外国船がいるわけですね、日本船よりも多いだろうと思います。そういうその近海外国船につきましても、同じような条件のもとにおいては同じような誤作動を起こしているかどうか。そういったことについて何かお調べになったり、あるいはお聞きになったことがございますか。その点あわせて参考に聞かしていただければけっこうです。
  24. 大内義夫

    参考人大内義夫君) お答えいたします。第一の公衆通信疎通の点でございますけれども、これは電波法の問題が出ましてから、これはわれわれの手によって、われわれ側の立場がよくわかるような、また実情がわかるような資料をお互いに出し合おうじゃないかということでもって、各船からいろいろな航路別あるいは会社別に通信士の有志の方からいろいろな資料を出していただきました。その結果を集計いたしましたところが、電報一本の所要時間が相当ある。たとえば先ほど申したとおり短波通信の場合には、公社の規則によると一時間以上おくれる場合には、局内心得をつけて、おくれた理由を受信人に知らせるという制度がございまして、その時間を一時間というふうにきめてあります。したがって一時間を基準とした場合に、一時間以上にあれがかかった場合にはそういうことになるので、その基準といたしますと、短波通信で使用されました公衆通信の場合には、一時間以内で千九百通の電報のうち約八百通くらいが一時間以内で疎通しておりますけれども、残余の一千百通ぐらいは一時間以上三時間あるいは五時間、六時間。七時間という例もありますけれども、これは特殊な場合と思います。そういうふうに実際上かかっておる。これは公社側からとった場合とわれわれとは多少違いまして、公社側で調べる場合には、電報の受付時間、それから海岸局の受けた時間、これしか判断しようがない。私どもの受付時間は、船長が私ども電報を持って参りますと、それは午後一時であっても、ちょうど気象を受けておったという点があって、一時十分に受けた格好になりまして、その時間を入れますと、公社の責任に関係ない部分がある。それ以外に、非常に混信があってどうしても相手が出てこない、そういうケースに限定しまして調べた数字がそういうことです。  それからもう一つは、これはぜひ御理解をお願いしたいと思いますけれども日本船の数百隻が世界海域に就航しておりますけれども、各海域によってどうしても日本国内と通信ができない海域があります。たとえば欧州航路の定期船の場合ですと、これが航海日数は約九十八日かかる。ところがどうしても日本海岸局と直接通信ができない日数が五十三日ある。中近東航路の場合には、航海日数が九十二日のうち実に五十四日という日にちが直通連絡できない。それからニューヨーク航路の場合は、航海日数が七十日でございますが、そのうちの三十八日間が直接通信ができない——できないというのは、徹底的にできないというようなことでなくて、できる場合もあるでしょうけれども、非常に困難である、呼び出しを長い時間やって他に迷惑を与える。五時間、六時間かかる、そういうことでは円滑な疎通ができませんので、現在では社船相互によって連絡時間を設定して、こういう海域に入った船が中継いたしまして、これをまとめて送る、そういう疎通をやっております。私どもがQSPと言っていることをやっておりますが、いわゆる無料中継、そういうことで辛うじて、そういうふうにしておくれている電報は、やはり最初の船から打った電報が中継船を通って日本海岸局へくるというので、経過時間が長くかかる、こういうような事情が現実にある。そういう点がなかなか理解が困難と思いますけれども、公社その他統計資料においては、全部が平均化された数字で出てきます。ですから、公社の海岸局が十何局ありましても、裏日本が非常に閑散である。そういうものをまとめた場合には、もっと余裕があるのじゃないか。そういう銚子、長崎の場合でも、短波周波数がいろいろあると思いますけれども、利用できる周波数と利用できない周波数と、時間によって、場所によって違うわけです。それを、たとえば波が遊んでおるとしても、その遊んでおる波が利用できない場合がある。それを全部ひっくるめて、運用時間が何時間とか、統計的に見れば、なるほどまだ余裕があるのじゃないかというふうなことを言われる。そういうので、どうしても統計的の上から見た場合、そういう点の食い違いがあって、実際の話とだいぶ違うのじゃないかというような、御指摘のとおりのズレが出てくるのではないか。私どもはそういうふうに考えているわけでございます。  それから、近海航路混信の状況でございますけれども、これは、やはり特定の地域に船が密集いたしまして、どうしても通信が殺到するということがございますので、中波の場合におきましても、東京湾周辺、たとえば銚子の局であるとか、横浜の局であるとか、そういうところにたくさんの船が集中いたしまして、お互いに混信状態を現出するということで、何時間かかっても、とうとう、芝浦に入るのに、電報を受けることができず、送ることもできないというようなことが、たまにあるわけでございます。たとえば、川崎に入る予定で北海道から来たところが、東京湾の入口に入って、銚子と横浜と、どうしてもすき間がなくて通信できない。やむを得ず川崎に入ったところが、電報があった。それが入港寸前に、千葉へ行けという電報だった。そういうことが受信できない。この場合、責任はだれが負うかといえば、乗っている船舶通信士が会社から文句を言われる。そういう状態で、話してもわからないわけですね。そういう例がたくさんあるので、私どもは公社側にいろいろ要望を出しまして、こういう状態で、電波法改正と関連なく現実に処理していかなければならぬのだから、お互いに、いろいろな知恵を出し合って円滑に措置をやっていただきたいということを、具体的意見を付して電電公社のほうに今、私ども要望しておるわけでございます。これは、この電波法改正の話と直接関係ないのでございますが、そういうような実情もあるわけでございます。  それから、第二のオート・アラームのお話でございますけれども、これはオート・アラームは、外国製品と比べて日本の製品が優秀である、私は、そういうふうに実際に見て比較して言ったわけではないわけですけれども自分の理解しておる範囲では、想像もまぜて言った場合には、日本オート・アラーム外国のに比べると劣るということは断言できないのではないかと思うのです。というのは、外国オート・アラームは、一九四八年以前に作ったような古いオート・アラームを使っているものもあるわけでございます、条約の規定によって。今度、条約が発効しますと、四八年の条約で規定した基準に達しないものは認めないということになって、そうなりますと、日本は最近作ったために、最近の条約の基準に合わせて一応作ったことになっているために、むしろ悪い機械よりも日本のほうがいいのじゃないかというだけの話であって、絶対的に日本が優秀であるというふうなことを確認したものでもなければ、そういう知識も私どもは持っておりません。ですから、したがってオート・アラームが、たとえ優秀であっても、これは利用価値がないということを私ども申しておるわけじゃないのです。ただ、私どもは、オート・アラームというものを頭から否定して、そういうものは役に立たないのだというふうに、頭から否定しているわけではない。  ただ、オート・アラームを用いて人のかわりにするというような使い方、そういう制度に対して反対しておる。それをどういうふうに使うかといえば、これは現行電波法オート・アラームの採用をはっきり認めております。昭和二十八年以来、電波法の中で、はっきりと日本オート・アラームを使ってよろしいということを現在でも認めております。私どもの立場から言わせれば、最近、非常に通信が混雑いたしまして、違った周波数通信しておる時間が非常に多い。そういたしますと、安全のために聴守しなければならない周波数である五百KCを聞く場合に、そっちに取られてしまう。これじゃ、そういう場合に、SOS、警急信号を打つという場合に受けることができないから、そういう場合には、オート・アラームを作動しておきまして、そして、ほかの仕事をする、あるいは気象を受ける、そういうようなことをするために、補助的にオート・アラームを使うのは、これは価値があるのじゃないか。そういう意味において、性能を高める点において、私どもは希望もあります。したがって、もっと優秀なものができることを望んでおるわけです。  ただ、私ども今、反対しておるのは、オート・アラームをつけて人をおろしてしまう、人のかわりにするという点において、私どもは反対するわけですが、何が何でも三人乗っていなければならぬということを言うのかというお話でございますけれども、これは、私ども、そういうかわり得る条件がそこに整備されまして、陸上施設であるとか、救難設備であるとかいうものが担当整備されてくる暁には、その条件に応じて航行の安全が確保されれば、そういう条件のもとで、やはり法律改正の話が出るのもやむを得ないじゃないか。ところが、現在において、そういう保証とか条件が全くないものと私どもは思っておる。  さらに外国船の問題でございますが、これは、そういうような実例があった、そういう意見があったということでもって、資料として出すほどの確実な日時まで含めた資料はございませんけれども、われわれは船舶通信士でございますから、外国へ行って外国船通信士と話してみたり、そういうものと訪問し合って、相互に交換した知識の中で得た情報といたしまして、日本近海に来た場合、そういうような長崎へ行く船、JOSというような呼び出しを、日本自分のほうで狂わすものだから、それが警急通報を作動してしまった、そういう話を聞いておるわけです。ところが、そういうことは自分の経験で、ございませんから、そういう話として記憶しておった。ところが、最近、日本船オート・アラームをつけましたところが、最近、同じような状態でJSMというような呼び出しを出したところが、呼んだ船が近くにおったために、その連続が自分オート・アラームに作動して鳴ったというようなことと関連して思い出して申し上げたわけです。そういう点において、外国においても、同様ではないかというように私どもは見ておるわけであります。
  25. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 大内さん、もう一つ、今のお答えがありましたので重ねて伺いたいのですが、船舶無線通信士の協会の方々からもいろいろ陳情やら、あるいは御意見が書面で出てきておるのですけれども、それで、いろいろ御意見がありますが、最後にお触れになったようなことが書いてある書面がある。船舶のいろいろの施設あるいは海岸局の施設なんかが、もっともっと充実され改善されたならば、あえて三直制を主張しないのだというお話がありましたが、その言っておられる意味はどういうことなんでしょうか。船舶航行安全に関するいろいろな施設といいますと、無線機そのもの、それから、このごろの船でございますとレーダー、それから今のオート・アラームも問題になりましょう、そういった問題以外に、船舶の施設として何があるでしょうか。どういうことを言っておられるのか。たとえば、今お話になったようなオート・アラームというものが、一体、国際水準並み、あるいは電波監理局の話によると、国際水準をこえておるだろう。私も常識的には、日本の電子工学が非常に最近著しい進歩をしておるのです。船関係のものだけおくれておるとは思えない。あらゆる無線機器が非常に進んで、どんどん輸出されておる、低開発国に輸出されておるところを見ると、やはり五百KCを受けるというオート・アラームも、割合いに無線機器としては単純なものだと思いますから、それが国際水準以下であるとは考えられない。これは、意見一つ申し上げて恐縮ですが、そういう状況だとすれば、オート・アラームの問題は、これは国際水準をこえているだろう、それから無線機器の問題、これも同様だと思います。おそらく古い船も新しい船もありましょうから、いろいろな無線機器を積んでいるものもありましょうけれども、少なくとも性能からいうと、ほかの国は三百ワットとか五百ワットぐらいのものですけれども日本の船は一キロワットを積んでいるのが多いのでしょうね。ですから、到達距離や何かからいいましても、これは、はるかに外国の船よりも、日本の船のほうが整っておるということがいえるのじゃなかろうかと思うのです。それに対する保守の手数が違うのだということも、これは幾分ありましょう。しかし性能そのものはいいと、もっと施設が改善されたらばとおっしゃるのですが、船舶に積んでおる無線機器、レーダー、それからオート・アラーム、いずれを見ましても、私は、これは国際的にひけをとっておらないと思っておるのですが、一体、何を考えておられるのかということが一つ。  それから海岸局の問題でございますが、いろいろお話を伺って、重複したことはやめますけれども日本海岸局の能力は、相当大きいのですね。今もお話にございましたが、これは電電公社のやり方が悪いのか、あるいは船側が悪いのか、よくわかりませんが、しかしある波は非常に利用されるのですね。ことに短波においてはそうでしょうね。非常に、ある波は聞きやすいと見えて利用される。しかしたいてい一つの波でいけない場合は、他の波を用意して、それで通信しているでしょう、海岸局は。他の、もう一つのほうの波を利用しようとしないのですね。そういう点は、確かに、どっちかに、私はまだ連絡上欠けるところがあると思うのですけれども、しかし海岸局の設備そのものは、従業員の座席の数からいいましても、船舶の数に応じ、通信量に応じて、割り当てられた周波数にしても、私は、ほかの国よりも、ずっとたくさんのものを割り当てていると思うのです。御承知かもしれませんが、つまりいろいろ新しい波を実験し、研究して、登録をして、まあ、二十四時間使えなくても、八時間使えるとか、あるいは十二時間使えるとかいうような波を、だいぶ新しく開発して、それを電電公社のほうに割り当てているわけです、郵政省は。そういう点からいきまして、私の知っている範囲では、この海岸局の設備、それからそれに使っておる周波数、したがって、従業員の座席の数にもなりますが、能力が非常に劣っておるということは考えられないのですよ。今おっしゃった中で、船舶の設備なり、あるいは海岸局その他の設備というふうにおっしゃったが、一体、具体的にお考えになっておる点は、どんなことか、その点を少し具体的にお述べ願いたいと思います。
  26. 大内義夫

    参考人大内義夫君) 何といいますか、船内の設備として、どういうふうな要求があるかということでございますけれども、一般的にいいまして、私ども主張したいことは、主として陸上設備のほうの改善が相当まだあるのじゃないかというふうに思っております。  たとえば、海岸局の設備ということが出ましたけれども、なるほど、確かに最近、新しい波も増設されまして、相当利用されておるわけです。その点、確かに通信が楽になったという点はあるわけなんです。だけれども、やはり船舶の増加に応じて、その間にまた、だんだん繁忙度を増してきたことは、これは私ども事実だと思います。ただし外国と比べて、日本の開発した波もあるし、設備も悪くないということを言われましたけれども、銚子、長崎短波周波数でもって、一番最高の電力がたしか十五キロワットというものなんです。ところが外国ではもう二十キロワット、四十キロワット、そういう大電力の集中的な制度を作って、それで多数の船舶を相手にやっている。それで電力の点からいっても、全然違うのですね。しかも十五キロワットという電力は、全部の周波数じゃないのです。やはり十キロワットというようなものが中心を占めている。世界に散らばっている日本の船を相手にしてやる、こういう制度は世界中どこにもないのです。そういう地球の裏側まで回って、日本の局と直接通信をやるということは、外国には全然ない。外国は、それを必要としない。そういう点が外国船との食い違いの決定的な点だと思うのです。  それから船の設備に要求はないと申し上げましたけれども、やはりこれは全般的にいって、そういうことは言えるのですけれども、なお通信を困難ならしめているのは、船主側の非常な無理解な点もあると思うのです。たとえばアフリカへ行くのに、やはり短波の波を全部持ってない船がある。たとえば二十二メガという波が非常に遠距離の場合有効な波である。そういう周波数を持っていない古い船が、南アフリカのほうへ行って非常に苦労している。全く困っている。それから受信機にしましても、こういう激しい通信の状況ですから、きわめてやはり優秀な受信機を必要とするのですけれども、なかなか受信機を買ってくれない。これは受信機のいい悪いでもって、通信士仕事の難易というものは、格段の相違がある。そういう混雑した通信でありますのに、古い受信機を使っているような船がたくさんあって、なかなか要求しても買ってくれない。それから機械を改造してくれないのです。最近の話ですけれども、現在二百五十ワットの電力でもって、アメリカへ行っている船があるのですけれども、どうしても通信ができない。四時間連続して呼んだけれども出ない。これはどうしても五百ワット以上の電力を回してくれないと困るというようなことでもって、それは認めるとか認めないということでもって、通信士が非常に困っている。そういう実情でございますけれども外国船と比べまして、決定的に条件が違うという点はあるので、そういうものが改善されたら、そのとき初めて法規の改正の話も出てくるのじゃないかというふうに、私どもは思うわけです。
  27. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 大内さんの御意見は、そのまま伺っておきますが、海岸局のパワーの問題は、国際条約にも関係があることですから、日本だけが勝手にできないという部分もあるのですけれども、今、最後におっしゃったような点は、これは十分船舶会社のほうで考慮すれば、それは打開できる問題が大部分だと思うのです。  最後に、村上さん、一点だけお伺いしたいのですが、いろいろ伺った中で、あなたのおっしゃったのは、海員組合員としては、やはり現在の海上無線通信の態勢、というものを、どこまでも維持していくのだという御議論が中心だったと思いますけれども、私はずいぶん古い話で、今はもう、こういうことはどうなっているかわからないのですけれども、知っている限りでは、毎年海上の国際労働会議がございますね。毎年じゃないかもしれませんが、あるたびに船主の代表も労働者の代表も、国際会議に参加しておられますね。おそらく海員組合からも、どなたかが労働代表になって出ておられると思いますけれども船舶乗組定員の問題について、これは第二次大戦前にも国際条約案がありまして、それを日本で批准するとかしないとかいうことを議論したことがある。その場合にも、それからそれ以後、最近になりますまで、それ以後の問題でも、今おっしゃったような船舶乗組の通信士は、やはり各国とも海上の安全を守るためには、八時間労働、三直制ということを日本側から主張されたことは私は聞かないのですけれども、そういった主張を国際会議でなすったことがございますか。またそういったことを、船舶無線通信士について、国際会議で主張したような国が外国にございますか、その点、あなたご存じであればお聞かせ願いたいと思います。
  28. 村上行示

    参考人(村上行示君) これは現在、世界の海員の労働組合の国際組織でありますところの国際運輸労連という組織がございます。その国際運輸労連で国際船員憲章というものを作っておりまして、これが世界中の船員のひとつの努力目標であり、これが運動の方針であるということで作られておるわけでございますけれども、その国際船員憲章を、わが国の海員組合の代表が憲章の改正を提案いたしまして、その憲章の中に無線通信士の三直制ということを、従来なかったのを入れさしたというような経緯がありまして、現在では国際運輸労連のひとつの努力目標が無線通信士の三直制ということになっております。  なお、ついでにちょっと申し上げたいと思いますけれども、先ほど米田参考人から話がありました労働協約の件につきましてですが、米田さんの御意見は非常に実際と違っておりまして、現在の労働協約では、海員組合と船主団体との間に、厳然と定員に関する基準というものがございます。ただ基準の仕方を変えたというだけでありまして、基準なしに一方的に船主にまかしておる、あるいは船長が勝手にやれるというふうな態勢にはなっておりませんで、昔は各船の定員につきましては、トン数別あるいは馬力別に数をきめておったわけでありますけれども、そういうきめ方は現状にマッチしないということから、組合のほうから提案をいたしまして、定員を決定する際の基準というものをきめたわけであります。  そのきめ方はどういうことになっておるかと申しますと、まず第一に、海上の人命安全を守るということが第一原則。それから次に、労働時間の仕事量を適正にして恒常的な時間外労働をなくする、そういう観点に立って基準をきめておるわけでありまして、この基準に従って船主が具体的な人数を決定する。通信士につきましては、海上人命の安全を守るという見地から、航洋船につきましては三名乗せるというきめ方を組合では出しておりますけれども、船主はそこまで明確に理解はしていないけれども、この問題については労使間では、何らの事前協議が行なわれていない、そうして船主のほうから一方的に法律改悪の陳情を国会に出しまして、そうして今回の改悪案となって現われてきている、こういう経緯でありまして、現在の労働協約では基準なしというふうな状態ではありませんから、この点申し上げておきたいと思います。
  29. 新谷寅三郎

    新谷寅三郎君 村上さん、もう一つ、今のお答えがございましたが、国際運輸労連のほうの状況はわかりましたから、国際労働会議のほう——船員の海上の国際労働会議のほう、このほうへは日本側から、いまだかつてそういうことを提案したことがないように思うのですが、どうですかということと、それから他の海運国のやはりおそらく、出すならば労働代表だと思いますけれども、各海運国からこの無線技術者の問題について、三直制にすべしというような提案をして、それが議題になったことがございますか。何か御記憶がなければないでけっこうなんでけれども、私はどうもそういった記憶がないものですからお尋ねするのですが、簡単に一言でけっこうですから、お答え願いたいと思います。
  30. 村上行示

    参考人(村上行示君) 国際会議では、現存定員に関する国際的な基準を設けようということが論議されておりますけれども、まだ結論に達していないというような状況でございます。  なお、国際運輸労連では、そういう国際会議に対して指導的な、労働者の代表的意見を出しておりますけれども、特に通信士定員問題に関して、これが国際会議の議題になったということは、最近においてはないと思います。
  31. 安部清美

    委員長安部清美君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  32. 安部清美

    委員長安部清美君) じゃ速記を起こして。
  33. 野上元

    ○野上元君 まず米田さんにお伺いしたいと思いますが、先ほど米田さんのお話によりますと、甲板部機関部等については相当の人員の削減ができた、それについては海員組合とおそらく話し合いがつかれた上で、円満にそういう措置がとられたと思うのですが、どうして通信士だけ円満に解決できないのか、それは電波法というものがあるからなのか、あるいはまた通信士の勤務の実態から見て、話し合いがつかないのか、それはどちらなんでしょう。
  34. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 先ほども申し上げましたように、この合理化をしておるのは、各船について海員組合と話し合いをしているわけじゃないのですね。一つの基準線を設けまして、そこであとは船長意見によって、こう減らしているわけでございます。それに対しては海員組合は何も異議はない、そういう方針、基本線が出ているわけなんです。そこで今度は無線の問題につきましても、もし電波法が一人ということになっておって、そして何らかの必要で三人乗っけているというようなことがもしありとすれば、やはりそこで、これをまあ今のほかのほうとの関係も考えながら減らしていくということは、これは当然起こることなんです。しかしながらその電波法が現在三人ということになっているために、どうしても、そこでとまらざるを得ないということなんです。で、私はやはり減らさないのは電波法関係である。ベースアップ無線通信士も全部同じようにやっておる。ですからやはり生産性を求めるとすれば、甲板部機関部方々にお願いするように、無線通信士方々にもお願いしたいというのが、まあわれわれのほうの考えであります。
  35. 野上元

    ○野上元君 今のお話を聞いておりましても、必ずしも電波法がガンになっておるのではなくて、電波法改正するための海員組合との話し合いがつかないということは、やはりその内容である無線通信士の勤務状態によるのではないかというふうに考えるのですが、その点はどうでしょうか。
  36. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) すでにここで、ずっとお聞き及びで御了解いただいておると思うのですが、オート・アラームに関する信頼性がこんなに違ってしまったら、それはどうにもならないですね。だからオート・アラームに関する信頼性意見が一致すれば、そこから必ず解決する道が出ると思うのです。ですから、むしろ先生方に御判断いただきたいのは、今のオート・アラームに対する信頼性をどうお考えになるかということではないかというふうに、私はまあ、これが基本問題だろうと思います。
  37. 野上元

    ○野上元君 村上さんに同じことを質問したいのですがね。海員組合としては、どういうふうにお考えになっているでしょうか、今の私の質問に対して。
  38. 村上行示

    参考人(村上行示君) ちょっと聞き漏らしましたのでもう一度。
  39. 野上元

    ○野上元君 先ほど来、定員の問題については船主側と海員組合との間において、おおむねの基準をきめる。その基準に従って各船主が定員をきめていく。そのことについては海員組合は同意をされておる。したがって機関部甲板部定員削減については、今日そう大きな問題がなくて、比較的円満に解決されておるにもかかわらず、無線通信士の場合に大きな問題になっておる理由は、電波法というものがあるからなのか、あるいは電波法があろうがなかろうが、今日の三直制を改定することについては、いわゆる船員側としては、どういうふうにお考えになっておるのか、こういう質問なんですがね。
  40. 村上行示

    参考人(村上行示君) われわれとしては労働協約においては、先ほども申しましたが、通信士定員につきましては労働時間と仕事量だけでは律しきれない面があるということから、ことに海上の人命安全という点を基準の中に盛り込みまして、その見地から通信士定員は考えていきたいというふうに考えておるわけでございます。したがって現在でも通信士定員は、電波法並びに船舶職員法に定めております線よりも、若干の船舶については上回っておるという、そういう定員が現実に実施されておるわけでございます。  しかし、これらの点につきましても、海上の人命安全という点について重大な支障がなければ、もちろんできる範囲で、甲、機等との見合い等も考えまして、合理化できる点は合理化していく努力において反対しているわけではないわけであります。
  41. 野上元

    ○野上元君 今米田さんからお答えいただいたのですが、結局は最終的にはAAの問題になる。この機能に対する信頼度のいかんによる、こういうことが言われておるわけです。私たちもこの法案を審議する過程において特に私はその点をやかましく当局に質問しているわけなんです。先ほど三田さんからも、AAに対する実験の度合いが少ないために、この性能について信頼する、しないという両論に分かれるのは当然である、しかし私自身は多年の経験によって信頼するに足る、こういう発言をされたわけですね、そこでこれが非常にむつかしいわけなんです。私は郵政当局に対しましても二十八年から二十九年の初めにかけて海上において三方面にわたって実施の検査が行なわれた、その報告書も私は持っておるわけなんですが、その報告書によりますと、機器の数も少ないし、海域もある限定したところのみ調査をしたんであって、回数も少ないので、なおかつ数度にわたって、この問題は実施検査を行なって確信を得るのでなければ、今直ちに結論を出すのは時期尚早であるという報告書を読んでおるわけなんです。  それで、私も非常にそれが引っかかっておるわけなんです。二十八年から今日までというと、およそ十年たっておるわけです。なぜその間に、実施検査が何回も行なわれなかったのか、そうして三田さんの言われる両論があるのは当然だということではなくして、完全に皆さんが同じ意見に一致できるというふうなことをやられなかったのかということを非常に私は疑問に思っているわけなんです。その点について船主協会側としては、特に何か試験をされたことがあるかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。
  42. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 船主協会といたしまして独立に試験をしたことはございません。今御指摘のように三回にわたって、各地で試験が行なわれた、その際にわれわれのほうの者も参加さしていただいて、そうして、それに実際立ち会ったというふうに記憶いたしております。その後オート・アラームについて、われわれはだんだん進歩してくるものというふうに考えて、一応郵政省で形式的には出されておりましたが、これで大体規格としてはいいんじゃないか。それから輸出船があの時分にはなかったんですが、最近輸出船にどんどんつけていっている、それに対してあまり——あまりじゃなく、ほとんど私はクレームを聞かないというこのデータの上に立って、まあ世界的にそれでいいんじゃないかというふうなことの確信を持ったわけです。  それから先生、はなはだ私の私見で恐縮なんですが、もし言い過ぎたら、ごかんべんをいただきたいんですが、なぜ今まで進歩しなかったか、こういう問題が残ったかということなんですね、これは正直に申しまして、私のほうでもオート・アラームをよくして、そうしてこれをつけようという意欲があまり出なかった、ということは、三人が二人に減るとか何かであれば、これはそろばんの上からでも、またいろいろ考えることもあったかもしれませんが、もういかにいいものにしても、やはりそれだけ強制されるということであれば、やはり与えられたところへゆく。そうしますと、今度はメーカーのほうも買手のほうが、そういう意欲がないとすれば、ほかの電気通信機のように活発な技術進歩というものが、どうしてもそこから生まれる努力が少なかったというふうに私は考える。そこでしかもそれでありながらなおここまで参ったわけなんですね、世界的に見て。それならここで思い切ってはずしてみたら、私は日本の電気通信というものは、先ほど皆さん御指摘のように、決して劣っておるものではなくて、もっと製作意欲を強くしてゆくと、もっとりっぱなものを割に短時間にできるんじゃないかというふうに考えて、あまりにわれわれと違った立場にある方が現状を尊重し過ぎるんじゃないかというふうなことなんです。  それから信頼性の問題は、これは立場をどこにおくかで信頼があるとか、信頼がないとかいうことが出てくるわけなんでありまして、機械のことですから、絶対にこれでいいというふうなものじゃないと思います。しかしそれは、ここで妥協しようという、いわゆる世界が妥協しているところで、それをわれわれが妥協点にとるということはいけないのであろうかしら、どうなんだろうかというふうに、私は考えるのです。  そうしますと、世界的にあれでいいのだというところなら、——これは自分の船ならたいへんですが、ある程度、まあ世界があれで、ひとつ相互扶助をやっているというなら、その水準相互扶助もやる、そこまできた、こういうふうに考えたんです。これは私の私見が入っておって、はなはだ言い過ぎかもしれませんが、そこはごかんべん願いたいと思います。
  43. 野上元

    ○野上元君 私も必ずしも、あなた方のおっしゃることが理解できないことではないんです。問題は、その電波法の提案の理由の説明にありますように、最近著しく無線機器の発達があった、これが第一の理由なんです。第二の理由は、海運界の現況にかんがみ、こういうことになっているわけです。第三点は、聴守義務を軽減するんだと、この三つが大体の提案の理由の骨子になっているわけですね。  で、第一の機器の発達の問題で、逓信委員会としては非常に論戦がたたかわされておるわけです。それで、郵政大臣に聞きますと、ちょうどあなたと同じような答弁をするわけです。おそらくあなたが教えられたからかもしれませんが……。それで、今日、外国船には相当日本で作られた機器が——AAが装置されておる、にもかかわらずコンプレーンもなければクレームもないというから、私としてはもう今日信頼するに足るものと考えたと、こういうわけなんです。ところが、その外国船からのクレームはないんだが、日本船にも現実につけておるわけですね。そのほうからのクレームが、私のほうに盛んに入ってくる。これで私も実は困っておるわけなんです。じゃどちらを一体信頼すればいいかということです。外国船の、外国人を信頼したほうがいいのか、あるいは日本人を信頼したほうがいいのかということになると、私としては日本船員信頼すべきであると、こう考えるわけです。ところが日本のほうからは、日本船員の諸君からは盛んに、この電波法改正によってAAが通信士に取ってかわるということはあり得ないと、そういうことをやられては困るという、非常に大きな要請がありますし、AAについての具体的なクレームが相当たくさん来ておるわけです。まあ、その判断が非常にむずかしいわけなんです。  で、私は大内さんにその点を伺ってみたいと思うんですが、現実にどういう故障があり、どういう不動作あるいは誤動作の妨害があるか、その実情を簡単にひとつ御説明いただければけっこうだと思うんですが。
  44. 大内義夫

    参考人大内義夫君) オート・アラームにつきましては、先ほども申し上げましたとおり、最近日本船では、多数の船がすでにつけておりますけれども、それもこの一年とか半年以内につけたため、まだ完全に使用実例としてたくさんの例は出ておりませんけれども、その少数の中においても非常に大きな通信士としてクレームが出ているわけでございます。特に故障が多いということ、それからその故障の種類でございますけれども、テストしても鳴らないというような、そういうような極端な事例もある。それからまた、故障の頻度が非常に多いと、そういう点がございまして、また、誤作動の実例も相当ございます。  ところが、じゃあ有効な動作をした例があるかという点につきましては、これも最近の実例では、遭難船が警急信号をたたくという例がきわめて少ない。従来のあれに従いまして、人間の耳で聞いておることを承知しておりますから、いきなりSOSをたたく、こういう状態でございますので、規則に従ってまず警急信号をたたいてから、それによってオート・アラームを鳴らして、起きてきた通信士に向かってSOSをすぐ聞かせると、こういう順序を踏まずに、いきなりSOSをたたくという状態が続いておりますから、実際に鳴るべくして、鳴ったという例はきわめて少ない。ただ、ないかといえば、私の聞いた範囲では、昨年において例があった。この実例は、片っ方は日本船遭難しまして——昨年の例でございますけれども、この船は警急信号をたたいた、それを聴守しておった日本船が、オート・アラームと普通の受信機を両方合わせて聞いておりましたところが、普通の受機信には入るけれどもオート・アラームには入らない、こういう例があった。ところが偶然にといいますか、その日のまた夜になりまして、外国船遭難して、これはやはり最初SOSをたたいたのです。直ちに両方の機械を、つまりオート・アラームと受信機の両方をウォッチいたしましたところが、警急信号がなかなか入らない、発信してもオート・アラームが作動しない、ところがSOSを打って、それがだんだん各船の人にわかってきまして、五百KCの発信をやめてしまった、五百KCの交信がなくなった、非常に空間が静かになったときに警急信号を発信したものがオート・アラームに作動した、オート・アラームを調整しながら待っていたところが、とうとう引っかかって鳴った、こういう実例がたった一件あったわけなんです。それは、人間がそばにおって、鳴るか、鳴るかといって機械を調整しておるから、そういう最良の状態の中で初めて鳴ったという実例が昨年ありました。この場合、通信士がやはり自分の部屋に帰っておった場合には、とうとう鳴らなかったというふうに十分想像されます。ですから手でもって、手動調整しながら最良の状態に感度を合わせれば、鳴る場合がある、それでは、オート・アラームの役にならないわけですね、人間がいなくて鳴らなかったら役に立たない、ところが人間がそばにいながら調整して初めて鳴る、これじゃ実際の役に立たない、こういうふうに私どもは感じるわけであります。
  45. 野上元

    ○野上元君 このAAについてのことですが、最近改良された点は、特にAGCといいますか、自動利得調整装置ができたので、きわめて信頼の度が高くなった、こういうことが言われておるのですが、今日、日本船舶で装置しておるAAには、全部AGCがついておるのですか、またそのAGCの働き工合について、実際の模様を大内さん御存じですか。
  46. 大内義夫

    参考人大内義夫君) 自動調整のことでございますけれども、これは海上人命安全条約の規定によりまして、オート・アラームは手動調整によらずして、なるべく自動的に調整されなければならないという規定があって、その規定に基づいてオート・アラームを製作しないと、各国とも型式検定の試験に合格しないことになっております。ただし、なるべくという言葉があるのですけれども、一応AGCの、そういう設備をつけまして、人間の手によって調整しなくても自動的に機械を調整して合わせるという装備があるわけなんです。ところが、実際におきましては、それで完全無欠ということはどうしてもいえないわけであります。しかも条約の基準からいって、なるべくという言葉がついているから、人間の手によっても——完全に自動でなければならないという規定ではない、なるべく人間の手によらなくても、自動的に調整されなければならないと規定されたために、AGCの作用が不完全であっても、これは型式検定からいっても認める、これは国際水準並みである、こういうふうに当局は言っておるのじゃないかと思います。決してこれは完全なものではないと思います。
  47. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) われわれのほうの調べでみますと、今先生の御指摘のように、全部そのとおりにしております、つけております。
  48. 野上元

    ○野上元君 このAGCの機能というのは、いわゆる動作基点を自動的に調節するということでしょう、その動作基点を自動的に調節する必要があるというのは、気候だとか気象だとか、あるいは空電の状況だとか、混信状態だとか、そういうものを考慮しながら、機械が自動的に動作基点を調節していく、したがって人間がこのAAを調整することはもはや必要ない、自然に動作するようになっておるんだ、こういうことをいわれておるのですが、それは実際に使ってみて、ほんとうにそうなっておりますか。
  49. 大内義夫

    参考人大内義夫君) たびたび申し上げておるとおり、日本船の場合には非常に使用時数が少ないので、断定的には申し上げられませんけれども、われわれの聞いている範囲内においては、日本のみならず外国においても、なかなか完全に人間の手をわずらわさなくてもできるということにはなっていないんじゃないか。特に日本の場合においては、やはりいろいろな気象条件によりまして、日本近海の場合には非常に不安定な状態に置かれているわけです。オート・アラームの完全な作動ということは期待できないんじゃないか。まあこれはよけいなことを申し上げるようでございますけれども、この安全条約の規定は一九六〇年において改正を見ましたが、オート・アラームの整備の規定については従来と同様でございますけれども、さらにこれを厳格にいたしまして、性能基準に達しないものはお互いに認めないようにしようじゃないかということで、今後できる新しい機械については条約の規準どおりの性能を持たないものは認めないということになっております。そういう改正会議のときに、大体オート・アラームを作った提唱国であるイギリスの提案は、こういう提案をしているわけです。無線通信士が当直に入る前、また当直を終わったあと、そのつど、必ず手動調整をしてオート・アラームの調整を完全なものにしておかなければならない、こういう規定をつけ加えようとした。つまりそのことは、今の条約の規定から申し上げますと、一日二時間ずつ四回のわけですから、当直に入る前と終わったあとと、合計しますと一日に八回調節しておかなければいけない、こういう規定を入れようと提案をしている。一日八回も人間の手で調整しなければ役に立たないような機械を、みずから提案者であるイギリスが提案した。そういう状態です。もし、かりに当直を終わって、たとえば夜の十一時に当直を終わりまして、無線通信士が部屋に帰って寝る。あくる朝九時が第一回の当直ですが、その間十時間というものは、全然人間というものはいないわけですが、そういうふうな貴重な夜の時間は手でさわることはできない、オート・アラームに全部まかせる、そうなりますと、自動調整によって完全になされなければならないけれども、今言ったように、自動調整の機能はきわめて不完全である、こういう状態でございますから、おそらくは各国でも完全にいわゆる人間にかわるものとしての信頼性というものは持っていないのじゃないか。ただ、こういう制度をやめたら、どうしてもこれの調整の必要からいって、人間をふやさなければならなくなるので、国際的に妥協してこういう制度を置くことを認めようというのが実際のあれじゃないかということを私どもは想像しているわけでございます。
  50. 野上元

    ○野上元君 三田さんにちょっとお尋ねしたいのですが、三田さんは二十八年から九年にかけて郵政省がキャッチ試験をやられましたね。そのときにあなたは通信局長としてその船に乗っておられたのですか。
  51. 三田一也

    参考人(三田一也君) 私は全然、通信関係じゃございませんので乗っておりません。
  52. 野上元

    ○野上元君 そうですか。問題のポイントがどうしてもそこにいくのですが、オート・アラーム通信士にかわり得るものかどうか、それが百パーセントかわり得るものでないということは、これはもうだれでも認めておるわけです。ただ、その程度の問題なんですが、その程度の問題で私もなかなか判断がつかないわけです。それで今日、日本で実際つけられておるオート・アラームの型式の種別の数と、その性能について、米田さん御存じならば教えていただきたいのです。
  53. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) これは、私実は先生に私の意見として申し上げるのは恐縮なんですが、私は正直に言って知りません。見ておりません。しかし、私のほうで調べましたものはございます。オート・アラームが承認されている番号とか型、それが東芝とか、日本無線、協立電波、安立とかいうところで作られている。こういうものが何年に承認されて何年に作られたかデータがございます。しかし、それ自身の性能を私は調べたことはございません。
  54. 野上元

    ○野上元君 ちょっと別の観点から……。これも米田さんに対する御質問になると思いますが、海運界の現況ということになっておりますので、どうしてもそちらのほうに質問がいくと思うのですが、今日船舶に乗っている無線通信士が行なっている業務内容は、まず第一に公衆通信、それから海難救助通信、いわゆる海上保安の通信、三つ目が気象観測の通信、大体この三つに分かれておるようですね。その他日誌をつけるとか、いろいろのことをやっておるようですが、今申しました通信の三つの種類は、この電波法改正することによって、いずれもサービスが低下するということだけはいなめない事実だと思いますが、船主協会側としてはどういうようにお考えになっておりますか。
  55. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 私もこれで今よりもずっとよくなると考えておりません。しかし、サービスが低下するという考え方については、私のほうはこれに合うように内容を改めていくべきだというふうに考えております。たとえば、先ほどからいろいろ近海方面通信量がこうであるとかいうようなことがだいぶ出て、混信があるというようなことも出ております。私は現状のままでそれを一人にした場合にどうなるかというふうなことは、あるいはそれに近いものがあるかもしれません。しかし、私どものほうで、一人にするということであれば、一人になれるようなひとつの通信量を考えなければならない。これがやはり企業としての一つ合理化であり、前進であるというふうに考えております。たとえば、今までばらばらに通信しておったものを一括して、一緒にまとめる、あるいは今までばらばらに受けておったのを遠慮してくれとかなんとかということにしましてやったら、できるのではないか。気象のほうも、ここでいろいろ御審議をいただいておったようですから、私はその点についてここで触れるのは御遠慮申し上げたいのですが、しかし、船舶からの気象の取り方を、今のようなただ出すものは一つ出してこい、こういうふうな形を、ある程度個々の各船についての計画性を与えてみる。たとえば日本船については私のほうの海運会で配船は全部わかっております。今どこの地点のどこにいるか、それの予定もわかっております。その中からどういうふうにピックアップしたら有効なものが取れるかということは研究に値するものでないかというふうに思っております。そこで、あまり現状は動かさないとして、さてこれじゃ困るということは、私はあまり考えない。むしろこれに合うように私ども努力をしていかなくちゃならないというように考えております。はなだはだ抽象的で申しわけありませんが……。
  56. 野上元

    ○野上元君 そのために三年という経過措置を設けられておると思うのです。思うのですが、その三年間にそれでは何を一体整備するのかという点について、いろいろと質問をしてみたのですが、特に公衆通信にしても聴守義務時間、運用義務時間ですか、船舶通信局の運用が減れば公衆通信疎通が鈍るということは当然だと思うのです。したがって、政府当局としては、公衆通信抑制しよう、こういう考え方のようですが、そうして今度の改正に合わしていこう、こういうことですから、現実には公衆通信の数が減っていくとか、あるいはその他船員が何カ月も長い旅行した場合に、家族との通信をやるというような、そういうものも抑制してしまうというような、いろいろな措置を講じて、この電波法改正に見合う通信量というものをきめていこうと、こういうことを考えておるようです。したがって、現状よりは著しくサービスが低下するということは、これは当然私は明らかだと思うのですね。   〔委員長退席、理事松平勇雄君着   席〕  さらにまた、海上の保安の問題についても、三直制で常時聴守しておるほうがAAにかわるよりも安全度が高いということも、これまた当然だと思うのです。これは幾らAAを改良しても、私は無線通信士が常時聴守しておるほうが安全だと思う。三つ目の気象の問題についても同様なんです。深夜においてはほとんど通信が行なわれないということになるわけです。それで、気象庁長官を呼びまして、いろいろ質問申し上げたんですが、気象庁長官も技術的な立場から見て、あるいはまた気象庁の長官として考えた場合に、この電波法改正は好ましくないという答弁をされたわけであります。ということになりますと、いずれもサービスの低下ということになるわけなんで、それでは三年間の間に気象の今日の状態を確保するような何らかの措置を考えておられるかというと、それは三年間じゃとても請け負えない、こういう答弁もあるわけなんです。こういうことになって参りますと、この改正は非常に支障が起きるんじゃないか、こう考えるわけです。これは私は決して船主を責めるわけじゃない。通信内容を見てもほとんど国家がやらなければならない問題だ、それをたまたま今日船主の方々が自発的におやりになっておられる、こういう形になっておるわけでして、公衆通信の問題にしても、海上保安の問題にしても、気象観測の通信にしても、商船がこれをやるべきものじゃなくして、国家に財源の余裕があれば、当然これは国家が常時この広い海に国の船を浮べていろいろな観測をやられることが最も好ましい状況である。しかし、それは今日の日本の財政の中からできないから、あなた方にお願いをしておるんだ、こういうことになっておるわけなんです。したがって、あなたのほうがこれをおやめになるということになると、あるいは回数を減らされるということになると、気象観測については重大な影響を与えるということだけは、もう明らかなんですね。そういう点について、あなたのほうから国家に対して何か要望はないですか。
  57. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 私はこの気象関係については、先生と全く同感でありまして、われわれの犠牲において気象業務が取れるというようなことは、今の段階じゃおかしいと思います。前の時代は、とにかく気象の恩恵を一番受けるのは船である。したがって船から出してその反射的な利益を得るということはあったのですが、最近はそこに集中されるということはない。したがって、定点観測船とか、あるいはいろいろなことを考えていただきたいというふうにお願いしておるわけですが、しかし、それがそう簡単にできないだろうということと、かりにそれが実現まで待つということであれば、なかなかいつのことかわからぬ。それならばその経過的な措置として、まあ先ほど申し上げたような一つの情報の取り方に計画性を与えてみるということをもっと具体的に検討しようじゃないか、ある程度検討に入ったのです。大体こちらの委員会では気象庁長官何とおっしゃったか知りませんが、まあこの程度なら何とかやっていける、決して先生のおっしゃる点に満足するという程度ではないでしょうが、まあ国民に御迷惑をかけないでいける程度のものは何とかなるだろうというところの見通しはついた。   〔理事松平勇雄君退席、委員長着   席〕  そこで、私も安心して国会方面にお願いするということになったのです。それから片一方の一般業務のほうの、いわゆる公衆通信、これも今のような形で無制限にやっていくのとまた違ってくると思います。しかし、片一方この海運は非常に今合理化をやらなくちゃならない時期であって、こういうことがなくても、外からの圧力がなくても、やはり自分通信量を減らしていくとかなんとかいうことをどうしてもやらなくちゃならない今時期なんです。その減らし方につきまして、最も効果的な工夫はないかというようなことは、これは考えていくべきだと思います。絶対に必要なものを、これを一人にするから減らせと、こういうことではなくて、われわれとしてもやらなくちゃならないものをひとつやって、それが一人の場合とぶつかるようになったときにはどうであるかということを考える。それのしかも暫定期間として、今先生のおっしゃったとおり、ある期間、三年間ですか、二人なら二人でやってみようということであれば、これは非常に理論的には通らぬと思うのですが、形式的にはそういうものも必要かなということで、経過規定にも私は賛成したわけなんですけれども、そういう点で、まあ何といいますか、一人になったために非常に不自然な抑制というものがある、あるいは非常に不便になるというふうなことは、私のほうでは考えておらない。もちろん野放図のものにしてはやはりいかぬので、そこに努力が要ると思います。そんなつもりでやっています。
  58. 野上元

    ○野上元君 何といいますか、三年間の暫定措置のうちでどういうことをやられるかということは、きわめて重要なことなんですが、そのことによって私たちの気持もだいぶ考え方が変わると思うのですが、そういうことを言いながらも、新しい船についてはもう改正されたとおりにやろうと、こういうのですね。そういうところに非常に矛盾があるのですね。三年の暫定期間を設けて、その間に整備をするものは整備をして、そしてこの法律を実施しても何ら支障のない状態にしたいのだ、こう言いながら、それは現在現存する船舶についてのみそういうのであって、新しくできる船はどんどん改正された法律の条件に従ってやっていくのだということになると、どうもその辺は、何といいますか、三年間の暫定期間は言いのがれのような気もするのですね。そういう点は、船主としてどういうふうなお考えですか。
  59. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 全部ぶちまけてお話しますけれども、新しい船では一人に合うような施設ができるわけです。ですから一人でやれるような形がとれるわけです。しかしながら、在来船は大体三人乗って、私たちから見ると必要以上の大きな施設を持っているわけです。これを今すぐ取りかえてみるということは、それは言えることは言えるのですが、しかし、なかなかそれをやったからといって、すぐに効果が現われるような大変化というものを今船のほうに持っていくということは、ああいう船の構造上困難である。それで、仕方がないからやれるものからやろう。それで毎年一体三年間にどのくらいの新造船がある、在来船はどのくらいであるというふうなことは、私ちょっと資料を持ってきておりませんが、ある程度のそれは数字的に検討をしておるわけなんです。まあ私たちの気持からいいますと、できるだけ早くこういう何といいますか、技術革新というようなことではないにしても、技術的な進歩というものは取り入れていきたい、こういう意欲からああいう形でわれわれのほうもお願いしていることなんです。
  60. 野上元

    ○野上元君 今、米田さん非常に貴重な御意見を発表されたわけなんですが、在来船と新造船の無線設備といいますか、それはもう根本的に違うものになるのですか。
  61. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 私は内容的な技術的なものはよく存じませんが、新造船はうんとコンパクトなものにしていく、もっと簡素なものにしていくということに、みんなそういう意欲でやっております。またそれに耐えられる技術があるというふうにも聞いております。ですからそういう形になっていく、こういうふうに考えます。
  62. 野上元

    ○野上元君 大内さんはそういう実情を御存じですか。また、新しい船の無線通信局というものをごらんになったことがあるかどうか、その点お聞きしたい。
  63. 大内義夫

    参考人大内義夫君) 私どもその点非常に心配をしておるわけでございまして、三年間の暫定期間の間は現存船に限っては二人である、新造船は一名である、そういうことになりますと、新造船の数はどのくらいふえるかわかりませんけれども、おそらく外航船舶の三分の一以上はその三年間に変わっていく。そういたしました場合、この新造船の一名の船はどういうことになるか。機械的設備を合理化するといたしましても、私どもの想像できるのは、大体ファクシミリ——気象を受けるのに、天気図を受けるのに人間の手をわずらわさなくてもそのまま出てくる、こういう装置ははなはだ便利でございますけれども、そういうこと以外に、人手を省くような機械的な設備というものは、ちょっと考えられない。ところが肝心のファクシミリというものは、自動的に天気図が出てくるわけですけれども、これは通信士がいなくてもできるわけじゃないのです。やっぱり通信士がそばに付ききって、まず周波数を受信して絶えず調整しながらやるわけですから、人手は全然省かれない。ただその時間に人間の手によって天気図を書かないで済むというだけであって、時間にかかりきりでやる。だから人がいなくても受信できるものではない。こういう点は非常に誤解が生じておると思うのです。それから、ついでですけれども、このレーダーというのは、元来通信士が所管するものではなくて、甲板部その他の人が扱うべきものである、そういう御意見でありますけれども現状におきましては、レーダーというのはやはり無線局の無線設備の一環になっておりまして、やはり通信士が機器の保守については責任がある、これを扱うといことになる。ひまがあるからやるということじゃない。これはそういう知識、能力があるという点を含めてわれわれ国家試験においてそういう知識、能力を試験されて、レーダーの保守、修理、取り扱いを含めてそういう技能を授けられておる。決してこれはひまだから、余力があるからやるというものではないわけです。そういう意味におきまして、最新式の船はやはりレーダーが一台どころではなくて二台もつけるところがだんだんふえてきます。そういった場合に、通信士の手数が省かれてほかの所管に移すということになれば、規則その他においても全面的に変えなければならぬ。そういう意味で一人でもってとても——最新式の船が自動化され、また電気設備が完備されれば、とても一人や二人やではできないのじゃないかと、逆に私どもは想像しておるわけであります。
  64. 野上元

    ○野上元君 どうも意見がなかなか合わないのですがね。それでもう一つお聞きしたいのですが、海運界の立て直しということが非常に大きな要望であるということは、これは船主側も組合側もおそらくその点に関しては、私は意見が一致されると思うのです。ただそのやり方が問題だと思うのですよ。先ほど村上さんのほうからも船主協会側の無為無策をだいぶ痛烈についておられたようですが、今私が申し上げましたように、この無線通信士通信内容というものは非常に公共性を持っております。したがって、何回も言うようですが、これは国家がやってもいいような仕事です。これを今日船主がやられておる。ところが一方、海運界の立て直しということは、とりもなおさず海運界の基盤の立て直しのことだと思いますから、どうしてもむだを省く場合には、こういうところに向いてくるということは当然考えられるのです。しかし通信の性格から見て、船主協会としてはそこに手をつけないで別のほうへ向けられて、このほうは国家に対していわゆる補助なりあるいはその他の手を講じて、この公共性のあるものをますます高めていくというくらいのことをやってもいいのじゃないかというような実は気がするわけなんですね。その他の点について合理化なり、あるいは鉄鋼価格を特に安くしてもらうとか、その他いろいろな方法があると思うのですが、そういう手を打たれたほうがいいような気がするのです。その点はどういうふうにお考えなんですか。
  65. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) これは速記に残ると非常に恥ずかしいことなんですが、われわれのほうは今合理化を、利子補給とかいろいろな形から大蔵省とか運輸省とかその他の方面から、いろいろ要請されておるのです。その中には、たとえば何といいますか、広告費が多い、あるいは役員の数が多過ぎるとか、何とかかんとかいって、おそらく自由経済における独立企業としての存在を無視されておるようなふうなことまでわれわれは言われておるのです。場合によりますと、たとえば年末の暦とか、あんなものまでやめろというようなことを一時言われたことがあります。それほどいろいろな角度から経費を節約させられることになったのです。また、それを言われなくても、われわれのほうでやらなければならない。そのときに一番目につくのは、乗組員数が多いということなんです。たとえばアメリカの船、外国の船と日本の船で一万トンのクラスのものを比較しますと、向こうで五十人でやっておるのにこちらは五十五人乗っけておるというふうなことがあった。そこで、この点は絶えず各方面からそれを指摘されたわけです。何とかこれをやれないのか、日本船はやれませんと言ったら、いや戦前はやっていたじゃないかというふうなことを言われたわけです。それがようやく最近になってこういう形に出てきたわけなんです。私は少しすてばち的なことを考えたときには、もしそういうことを政府が言われるならば、政府無線通信士にしても一名という法律にして、あとこれをお前のほうと組合とでもってやってみろ、組合は反対するだろう、それでもいいからやってみろ、お前のほうの努力がどこまであるかそれを見ようというふうなことまで言われるのが当然かもしれないと考えておるわけです。それを私たちのほうからこうやってお願いして歩くというふうなことは、一体いかがなものであろうかというふうに考えたときもあるのです。しかし現実は、それは抜きにいたしまして、今一番問題になっておるのは、やはり乗組員数をどうするかということで船の経費が動く。経費の節約面ということは船舶のコスト面、これが大きな問題となります。それ以外には、油にしてもそれ以外のものにしても、ほとんど世界的に共通なんです。油はどこの船でも同じように買うのでありますから。それから港の費用も同じです。勝負をするときにものをいうのはやはり船員の数なんです。これが多いか少ないかということは、ただ賃金の合計だけではなくて、それを設備する一つの船の部屋割りの使い方によってもかなり違ってくるわけです。ですから、各国ともこれを減らすことにいっておるわけです。それで、この問題ももう世界の大体水準までいったんだから、一応世界でわれわれは競争できるような形にひとつしていただきたいということ、そうするのが、また国としてもやれと言われるのが、私はあたりまえじゃないかという感じがした。そんな状態なので、この機会に先生に不平をぶちまけたような格好になって申しわけありませんけれども、まあそういう状態でありますから、ひとつ御了承を願いたいと思います。
  66. 野上元

    ○野上元君 今、一万トンの船はどれくらいの乗組員が乗っておりますか。
  67. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) ここにニューヨーク航路の船の統計を私ちょうど手元に持っておりますが、大体これが日本の代表的な航路であって、また代表的な優秀船が配属されているところであります。そこの状態を見ますと、昭和二十四年から三十六年くらいまでの間は、日本船は士官、いわゆるオフィサーと、それから属員と言っていますが一般の船員といいますかクルーの方、それ全部合わせまして五十一、二名くらいである。それに対して最近非常にわれわれのほうで努力いたしまして、そしてこぎつけたのか、先ほど申し上げるような三十七年には四十五名になっておる。外国船を見ますとこれが四十六名から七名というところであります。この中で、中をいろいろ内輪に割ってみますと、士官の場合ですと甲板部でわれわれのほうが現在四人に対して外国船は四・五くらい。それから機関部のほうは現在五人に対して外国船は七人、それから無線がわれわれのほうが三人に対して外国船は一人であります。それから事務部がわれわれのほうが一人に対して外国船は〇・三三、約半人分、これは合計で割りましたからこんな数になります。それから医者のほうが、われわれのほうが一人に対して外国船はゼロ、こういうふうな形であります。あと属員は別として……。したがって、ここで一番目立つのはやはり船員、ほかのほうはとにかくここまで何とか船員のほうも協力していただいたのですが……。というのが今の形であります。
  68. 野上元

    ○野上元君 あなたのほうは、とにかく国際競争場裏であくまでも商業ベースを守っていかなければならぬという立場に今日あるわけです。あなた方の気持がわからぬことはないのです。ただ問題は、今日、船を作るのに大体トン当たり十二、三万円ですね。そうすると一万トンの船を作ると十二億円ですか、十二億円かかるわけです。そうするとそれに払う利子ですね、自己資金があなたのはうはないそうですから、ほとんどそれを借金で作らなければならぬということになると、年七分とすれば八千四百万円の利子を払わなければならぬということですね。片一方四十六名ないし四十五名の乗組員が乗っておるということになれば、その平均月四万円なら四万円の給料を払って、一年計算してみると大体二千百万から二百万、あるいは三百万、二千三百万円程度ということになるわけですね。そうすると、経営上から見て一つの船を作って払う賃金なんというのは、もう借金の利子に比べるとはるかに低いものであるというのが今日の海運界の実態じゃないかと思うのです。そこに大きな問題があるのじゃないでしょうか。それを根本的な対策を立てずに、さっきあなたが言われたように、まず税金でまかなってもらうことを考える前に、みずから合理化をしたらどうだ、こういうことを盛んに言われるそうですが、合理化もけっこうですが、先ほども申し上げましたように、通信というものの公共性から見て、そこに最後に集中的にきたわけなんですが、そこのところを何とか別の方法で切り抜ける手はないのかというような、われわれとしては感じがするわけなんです。その辺をうまく切り抜けることができれば、こんなに大きなトラブルを起こしてまでやらなくて済むのじゃないかというような気がするのですが、その点はどういうように船主協会としてお考えですか。
  69. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 実は先生に御理解いただきたいので、私も全部いい悪いという判断は抜きにしてそのまま申し上げます。  今船価の問題について、金利が先生の御指摘どおりに非常に高い。そこで開銀の金利を五分にして、一分五厘補助してもらってそれから市中銀行のほうは元来八分か九分になりました。それをさらに七分五厘にしてもらっているわけです。これでもなお外国船に比べると高いというようなことなんです。そこで、外国船並みのところに持っていっていただきたいということと、それからもう一つ、今国会で特にお願いいたしておりますのは、今のような海運界の不況が毎年々々の積み重ねでここへきてしまっているという形なんです。そこで、これを一挙に片づけていただく方法を考えて、あとは自分の力でやっていきます、こういうことを申し上げている。私たちは決して外国船会社競争して負けてはおりません。負けないだけの力、自信はあります。ただ、先生のおっしゃるような利子の負担や何かのためにこういう窮状にあえいでいる。その例は、イギリスの海運会社と日本海運会社の収益、水揚げだけを見ますと、日本のほうがもうけておる。あと取られるところがみなほかへ取られているということのためにどうもうまくいかない。そこでこれを根本的に解決していただきたい。そのときにおいて、今までわれわれはいつも言われておりましたことは、やはりそういう体制になるためには海運企業の中も国際競争力に耐えられるような内容になってもらいたい、そうでなければ、どぶに金を捨てるようなものではないか、こういうような御批判があるわけです。そこで私たちは、これだけのことをやっていただくために、まず、われわれがやれるものは何であるかということを考えましたのでここへ来たのでありますが、この無線の三人がいるのは、たいした問題じゃないとおっしゃれば、それは利子の問題からいえば、たいした問題じゃない。しかし、これは私の見通しでありまして、船内関係を見ましても、甲板部機関部が非常に減ってきているわけであります。無線のほうはそうじゃない。やはり船は一体となった融和が必要であるわけであります。その融和がどこまでとれるであろうかというような限界点を考えなければいけない問題もあると思います。今度の場合は、何もこれだけ先にやれ、ぜひお願いしたいという——われわれのほうでまず受け入れ態勢を作りたいというつもりでお願いしておったのでありますが、片方ではまたそういう根本的なこともこの国会にお願いしております。それとこれとが同時でなくてはならないということは、一番望ましい形なんですが、しかし、そうでない場合がかりにできても、何とかこの問題だけでも片づけたい。それから片方のいわゆる基本、抜本策というか、金利をある程度モラトリアムして融資してもらいたいということにつきましても、それを検討する整備審議会に関する運輸省設置法の改正は成立したように承っております。そうしますと、この秋ごろからやはり各企業についてこの合理化内容、それから将来立ち直る見通し等も逐次検討いたしまして、そうしてその見通しのついたものに限って何とか措置をするということになると思います。そのときにこの問題も当然起こってくる問題だと私は思っております。そんなことで、たいしたことじゃないじゃないかということについては、私から見れば、たいした問題であるかもしれませんが、これは数字の問題を離れまして、そういう形にあるということ、これはぜひ御理解いただきたい点なんです。
  70. 野上元

    ○野上元君 私もこの問題が起きてからいろいろと海運界の問題については、できるだけ関心を持って見ておるわけなんですが、今、米田さんが言われたように、水揚げ率においては世界でももう一、二を争う、しかし、実際の収益が少ないということは、結局積取率の問題ですね、今日その積取率を改善する方策があるかどうか、たとえばアメリカがとっているようなバイ・アメリカン主義、ああいうものをやめてもらわない限り、日本の積取率が急速に向上するということは考えられないわけですね。特に対米貿易が最も大きい日本においては、このアメリカのとっている政策を変えてもらわなければならない、こういうことは、はたして可能なのかどうか。最近また問題になっております運賃同盟を破る盟外船が盛んに日本にやってくる。そうして思い切った運賃のダンピングをやって、どんどん日本の品物を運んでしまうというようなことが、最近非常にやかましくいわれておるわけですが、そういうものに対する対策というようなものも、あまり政府がやっておらないんじゃないか、これはあなたのほうでも関心を持っておられるでしょうが、どういう対策を立てておられるのか。こういうような大きな穴がふさがらないで、小さな穴だけを突っついておるような気がするのですが、その辺はどうなんですか。
  71. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) この積取比率の問題は、最近の日本の産業の勃興のカーブが非常に顕著であるがために、非常にぐっと減っております。せっかく五〇%以上になっておったものが、輸入のほうは四〇%台に下がっておるというようなことも出ております。これは結局、船を増すテンポと、それから日本の産業の上昇していくテンポと、これが合わないところからまずきておる、こういうふうに考えております。したがって、シップ・アメリカン問題とか、あるいはバイ・アメリカンというような、いろいろなことは制約にはなりますけれども、しかし、それだけが宿命的なものだとは思いません、ほかの国でも同じようなことがありますから。それから片方の盟外船の問題、これは非常に弱った問題ですが、一体盟外船に対しては、やはり業者自身が戦うというのが、一つの常識です。業者の中で戦っていく、たとえばイギリスの場合なんか見ましてもイギリスの海運が結束して、少し損してもたたいてしまうというようなやり方をやって、その損失は、ある程度自分で見ていくという形がいつもとられるわけです。これが運賃同盟を維持していく一つのきめ手になる。ところが日本の場合は、そういうことをやる力を現在の日本海運業者が持っていないということ、それだけの一時犠牲を払ってやっていくというその力を持っていない、あまりに疲弊している、こういう形が起こってきている状態です。そこで、今のところ、ああいう問題に政府が介入してもらうことは非常に困る、必ず外国から報復手段がくるきっかけになりますから困ります。やむを得ず政府のほうで何かいい手はないかということを言っておるのですが、しかし、業界は業界として今までのような過当競争はやめて、一本でやっていくということです。  もう一つ、これは世界の傾向で、海運の運賃がどうしても下がる傾向にあります。今までのように上がる傾向はもうあまり期待できない。そうすると、その下がる傾向の中で生きていくということになれば、どうしてもここでもうできるだけの経費の切り詰めをやっていかなくちゃならない、これが宿命的なことになる。それで、無線の一名や三名、たいした問題じゃないじゃないかというようなことでありますけれども、やはりそういうことを考えますと、われわれとして非常に真剣な問題なんです。そこら辺のところを、ひとつ御了承を願いたいと思います。
  72. 野上元

    ○野上元君 時間があまりありませんので、聞きたいことはたくさんあるのですけれども、あまり長くお聞きするのもどうかと思いますが、最後に一つお聞きしておきたいと思いますのは、海運界が国際競争場裏にあって十分やっていけるという態勢を作るためには、いろいろな方策が必要だと思います。特に、あなたのほうでやらなければならぬ点は、たとえば海運界の整理統合というようなものをこれからやらなければならぬのじゃないかというような気がするのです。私も米田さん以下たくさんの人に実は陳情を受けているわけですが、船会社が非常に多いのですね。単なるオーナーであるとか、オペレーションも一緒にやっているところもあるでしょうけれども、そういうふうに、船会社というものは非常に多い。これを整理統合するというような方策はお持ちでないのですか。
  73. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) これは私たちも半分よそから見ての立場なんですけれども、見ておりますと、当然なんです。やはり過当競争を防いで、そうして大企業となって一本になって当たっていく、これは当然なんです。ところが各社の企業になりますと、そこまで踏み切るためには、やはり踏み切るだけのメリットといいますか、そういうものがどうしても必要になってくる。ただ、理論的なことだけではいけないということで、したがって、そのメリットは何であるかということが問題になるわけです。今海運業者は、やはりこのままの姿ではいけないということについては自覚しております。そこで、先ほど申し上げましたような整備審議会とか何かができまして、たとえば五年の間に再建される見通しはどうであるかということになった場合に、そのときに初めて今おっしゃるような線がはっきり出てくると思います。それをいやがっているということではございません。それほど詰まって参りました。
  74. 野上元

    ○野上元君 先ほど村上さんが参考人として陳述された中で、最も大きな点は、今回の電波法改正、すなわち、無線通信士定員削減について、船員側に何らの相談がなくて、突如として国会に出されたということは非常に不満であるということを言われたわけなんですが、私ども客観的に見ておりまして、海員組合と船主協会側とは常に密接な関係を持ちながら円満な交渉の中ですべてを解決していくという従来からの方針を対外的に誇示されておったにもかかわらず、今回あなたのほうが、無線通信士の問題に関してのみ、なぜ海員組合とよく話し合いをされなかったのかという点について、お聞きしておきたいと思います。
  75. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 私は、これから話し合いたいと思っております。きまりましたら。ということは、冒頭に申し上げましたとおり、オート・アラームに対する認識があれほど違ってしまったら、話し合いはやってみてもできません。それからもう一つ、かりにここで話し合いをするとしても、人を減らす問題であります。人を減らすことに何かの代償なしに勇敢に踏み切れる労働組合というものは、私はほとんどないのじゃないかと思います。やはりここで一つの基準を政府に出していただいたら、その基準の上に立って十分話し合いを持ちたいと思います。それは私はそのときにはできると思っております。今組合のいろいろ出している声明なんかも、私は拾い読みいたしましたが、反対であると、それははっきり言っておられます。しかしながら、これは法律の成否にかかわらずわれわれは三人を維持するという言葉を使って言っております。そこは、法律法律である、三人は三人であるというこの考え方、私はそのときになれば、この三人という一方的なそういう考え方に対して、十分に話し合う余地があるだろうと思っております。ですから、私はこれからできるというふうに考えております。
  76. 野上元

    ○野上元君 反対側の村上さんにお聞きしたいのですが、私どもも外部から見ておって、こういう法案を出される場合に、両者の間で意見の統一がされて、お互いに了解し合って出されることが最も好ましいと思うのですが、今、米田さんは、この法案が通っても海員組合の皆さん方とは十分話し合いができると、こういうふうに言われておりますが、海員組合としてはどういうお考えを持っておられますか。
  77. 村上行示

    参考人(村上行示君) われわれのほうでは大会で一応方針をきめておりますから、その方針の線に従って活動を進めていきたいというふうに考えておりまして、これは現在労使関係というものは必ずしも外部で見ておられるような円満な形では物事が進んでいないのでございます。これはまあ貧すれば鈍するということで船主のほうでもいろいろ苦しいところから、何でもかんでもいやだいやだと言っているということもあると思いますけれども、しかしながら、私どもが非常に不満な点は、この電波法の問題に限らず、たとえば船員法の改正の問題、あるいは船員設備の問題、あるいは船内の安全衛生の問題、これらのいろいろな問題については、すでに公益委員等も交えて円満に意見が一致した問題もあるわけです。たとえば船員設備の問題なんかはそうです。四年も五年も前にすでに一応の結論が出ている。しかしこういう問題についても、これは運輸省がやろうとしないわけですけれども、こういう問題を審議する過程において、常に船主は現状をより改善する方向に対して反対し続けてきた。現在海事関係のいろいろな労働関係法律は、陸上に比べて非常におくれている面がございます。従来から特殊扱いというような形で労働関係の問題も運輸省でやっておりましたのでありますが、この場合、割合に実情がよくわかっていいという面もかつてはあったわけですけれども、現在では非常に陸上に比べておくれている面が顕著になってきている。こういう場合に、やはり船主としても世間一般並みのことはするという態度がぜひ必要であると私どもは考えておりますけれども、そういう点についても船主が非常に前時代的な考え方をしている。そこで、そういうやはり考え方を改めなければ、なかなか労使関係というものは、幾ら一方が合理的な考え方で物事を前進的に考えていこうとしても、そういう前進的な方向が生まれてこない。このオート・アラームの問題は、われわれとしては技術革新的な問題ではないと思いますけれども、とにかく一般に技術革新の問題が非常に論議されている。海上においてもやはりこれをとり入れていくべきだ。すでにわれわれとしてはもう帆船時代に逆戻りできない以上は、やはり人類の進歩の方向に従ってこの技術革新の方向と積極的に取り組んで参りたい。同時に、そういうときに問題になるのは、就労体制の変化の問題、あるいは配置転換の問題、あるいは教育の青写真を示す再教育の問題、そういういろいろな問題がありますけれども、そういう問題について、何ら船主のほうでは努力しようとしていない。そういう状態であっては、今後、将来ともなかなか労使関係のいろいろな問題が円満にいくとは考えられません。
  78. 野上元

    ○野上元君 最後に大内さんに一つだけお聞きしておきたいのですが、この電波法を提案した理由の中の一つの大きな理由として、最近無線通信士の需給状態というのが問題にされているわけです。せっかく無線通信士の学校を出ても、海上に好んで就職される人が非常に少なくなった。したがって船が動かないというのが一つのこの電波法改正の原因になっているわけですが、なぜ無線通信士の諸君が海上に来ないのかという点について、あなたの御意見を承っておきたいと思います。
  79. 大内義夫

    参考人大内義夫君) 確かに現在船舶通信士は、需給関係が非常に逼迫しておる、そういうことで私どもは非常に困る場合があるわけです。これはいろいろ原因がありましょうけれども、私どもが一番心配しておるのは、昨年以来電波法、職員法を改正して定員を減らす、そういうことで、どうもこの船の職場というものは将来性がないのじゃないか、それから最近の陸上関係の場合の就職の条件と比較して、海上はよくない、そういう点で、せっかくそういう学校に入っても、なかなか船のほうに進出してこない。しかも、将来性を考えて、この際、今のうちに転向しておかないと、将来とんでもないことになる、こういうような気分が相当びまんして、非常に動揺しておる。それで、必要以上にあせりまして、船をやめてしまう、あるいはもっと少しでも有利なところへ行きたいというので移動する。これは全く意味のない移動でございますけれども、そういう不安の状況で、何とかしてこれはそういうことのないように、もっと安定した職場にしたいというのが私どもの終始変わらない念願でございますけれども、どうも最近の情勢は少しもよくない。定員削減されて、そのかわりに月給でもどのくらい上がるか、そういう裏付も全然ない、将来の見通しに対してもきわめて悪い。これは単に船舶通信士だけではございませんけれども、非常に船の待遇がよくない。こういう中で通信士が不安におびえておる。これが、まあ人が足りないことに対して拍車をかけておるような状態になっておる。それからもう一つは、通信士の職場というものは、最近では陸上関係におきまして、いろいろなエレクトロニクスというような点から、陸上産業においても需要がある。非常にむずかしい国家試験を苦しんで受けてそういう免許を取る前に、ほかにも行ける、こういう点がございまして陸上へ行く。あわせて日本の場合には教育機関といいますか、どうもそれが中心がはっきりしない。電波法によりまして将来二級通信士という職場が非常に少なくなっていく。小型船は電話に切りかえる、大型船は人を減らす、こういうことでは、二級通信士の職場はなくなってしまう。ところが今の場合、船に進出してくる養成機関は、文部省にある電波高等学校——全国に三つございますけれども、これは主として二級通信士を養成する学校です。非常に現在は不足しておる状態でありますけれども、これは法律改正になりますと職場がなくなる。しかも必要としない二級だけを養成する、こういう制度が非常に矛盾しいおると思うわけでございます。それからせっかくそういう学校に入っても、無線通信士という資格を取るために養成しておる学校でありながら、毎年国家試験を受ける者が少なくなる、こういう点も現状に比して非常に矛盾を来たしておる。しかも、足りない場合に需給調節をやるというような国の制度としての機関が、所在がはっきりしない。船員一般の需給関係は運輸省でやっておりますけれども、そのもとになる無線通信士になる資格は郵政省でやっておる、郵政省の免状をもらってから、またもう一度運輸省の国家試験を受けて、また海技免状というものをも取らなければいかぬ、二枚の免状が要る、こういうのはここの通信士だけでございます。取ったはいいけれども、どこへ行って就職していいかということがわからない。こういう状態で非常に困っておるわけでございます。その点、将来においてはよほど国として船の通信士の教育なり需給問題なりあるいは就職の安定というようなものをどうしても考えていただかなければ、これは将来たとえば法律で減らしましても、減らした定員も充足できないような状態にくるのではないか。それからもう一つは、世界的にそうでございますけれども電波科学が非常に進歩しておるにかかわらず、海上の無線通信の技術というものは、やはり昔からモールス信号で手送り通信をやっておる。非常に形の上では旧式な状態を十年続けておる。この制度は形の上では非常に旧式でございますけれども、現在の海上の無線通信においては一番経済的な、しかも電波の共有性からいって能率的な電波の使い方をするために、こういうような電波通信を行なっていた。ところがこの電波通信内容というものは、陸上に最近では全然応用がきかないきわめて特殊な技術でございます。それを国の機関において養成しておきながら、ほかに使いものにならぬような技術を学校で教えながら、必要とする船の職場に来ない、こういうことは非常におかしいと思います。しかもこれは貴重な技術になっております。貴重な技術を養成し、貴重な技術を身につけた者を、一番必要とする職場に役に立たせるということができない状態は、これはやはり国として考えていただかないと、私ども全く困ってしまう。そういう点から申しましても、将来に対する見通しとか何かについては全然何もない、そういう状態がわかってきますと、船に乗りたがらない、学校に入ってもむだだと、こういう状態になってくるんじゃないかということを私ども痛感しておるわけです。
  80. 安部清美

    委員長安部清美君) どうもありがとうございました。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  81. 安部清美

    委員長安部清美君) 速記を起こして。
  82. 村尾重雄

    村尾重雄君 私は米田さんに一つお尋ねしたいのですが、事前協議ということですね、電波法なり船舶法ですか、これらの改正が成立した後に、通信員ですか、無線通信員の定員削減については、相手方である海員組合との間に十分に話し合いをする、こういうお話がありましたが、参考人の方のお話をずっと伺っておりまして、無線通信員が、この法の結果、削減ということは、法が通る、通らないは抜きにして、私は同一のものだと思うのです。そこで、事前協議というのは、御承知のように最近オートメ化といいますか、技術革新の進行とともに、これは非常にまあ近代的な労使関係では重要視されているところである。特に船主側と海員組合との労使間に、いかにトラブルがあろうと、その事前協議といいますか、団交といいますか、非常にこれは今日まで尊重されてきたことだと思いますが、そこで非常に重要なことなんですから、この法律の通る通らない、成立する成立しないということを抜きにして、これは十分やはり事前協議ということを尊重されて、話を進めていかれることが最も好ましい関係ではないかと、こう参考人の御意見を伺っていて感ずる、と申しますのは、これだけではなくて、今あなたの御意見を伺っていると、まだまだこれからこうした問題がどうも起こりそうな感じがいたしますので、どうでしょう、当初からの事前協議で了解を得るための努力を払うべきだということを感ずるのですが、そういう点で、どうお考えになりますか、お考えの一端を伺いたいと思います。
  83. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) お説はごもっともだろうと思います。一体、電波法はさておいて、船舶職員法でも船員法でも、法律は一応最低限度をきめているのです。最低限度をきめまして、それから先どれくらいが実際にふえる船の業務量であろうかということをお互いに話し合ってきめるわけなんです。場合によっては、船舶職員法なんか見ますと、職員法できめている以上の者を乗せる船があるわけです。そこで、この問題も最低限といいますか、一応法律が強制するものの限界を出していただいて、あとは話し合いでいく、これがわれわれのほうの今までのやり方である。ですから、これは今までのやり方をそのまま踏襲していっていけるのじゃないか、しかも、今度の場合はオート・アラームに対する認識が、先ほど申し上げたように非常に違っております。なかなかそうはいかないというふうに考えておりますけれども、まあこれできまれば、あとはひとつ話し合いで十分できる、大体そういうようなことであるわけです。
  84. 安部清美

    委員長安部清美君) これにて参考人方々に対する質疑は終了いたします。  参考人方々におかれましては、御多用中のところ、長時間にわたりまして、それぞれ有益な御意見の御発表をいただきまして、まことにありがとうございました。席上はなはだ失礼ながら一言お礼を申し上げます。  暫時休憩いたします。    午後二時二十五分休憩    ————・————    午後三時五十八分開会
  85. 安部清美

    委員長安部清美君) ただいまより再開いたします。  電波法の一部を改正する法律案について、前回に引き続いて、質疑を続行いたします。
  86. 永岡光治

    永岡光治君 今朝来、当委員会は四名の参考人出席を求めまして、ただいま議題となっております電波法の一部改正について、意見を聴取したわけでありますが、当委員会でこの法案が審議された内容と、あまり実は目新しい意見も出てこなかったわけでありますが、要するに、船主協会のほうの代表は、海難対策あるいは気象通信それから一般の公衆通信と、この三つを問題として、この通信職員の数がどうあるべきかということに集中されたわけであります。オート・アラームを使うよりは、十分な人員を配置して万全を期するということが、今申し上げました三つの目的を達成するにはそれに越したことはないというのは、だれもそう隔だった感じは持っていないのでありますが、船主協会側としては、要するに今日の海運の国際的な競争場裏から考えると、少しでも節約をしていきたい、そういう意味でこの際減らしたい、それにかわるものをオート・アラームというものに変えていきたいということでありまして、船員側のほうは、この三つの目的にウエートを非常に大きく置いているわけであります。もとよりこの職員側におきましても、合理化そのものに観念的に反対しているわけではないのでありますが、これに重点を置く。ところが船主協会のほうは、その目的は達しつつも、しかしまあまあ程度で許されるならば、むしろ経常と申しますか経理と申しますか、そっちのほうに重点を置いていきたいという、こういうまあ大きな二つの分かれた見方があると思うのですね。  そこで、これは大臣にお尋ねするわけでありますが、船主協会の代表の方にも今朝来の質問で聞いてみたわけでありますけれども、この日本海運界が国際競争場裏で対抗していくという、こういう大きな立場から考えると、単に無線通信員を一名減らすとか二名減らすとかということだけでは、これは問題にならぬのではないか。もっとも根本的なそういう意味での対策があるはずだ、たとえば政府の助成金の問題にしても、利子補給の問題にしましても、いろいろあると思うのですが、あるいは経営そのものにも私はあると思うのですね。また今朝来のお話にもありましたけれども、あまりにも多くの海運業者が、乱立という言葉は当たっているかどうか知りませんが、多過ぎるのではないか、統合整備ということが必要じゃないか。管理者陣営について、したがって、それは縮小される方向に進むのも一つ方法でありましょうし、とにかくその根本的な問題をこの際考える時期に来ているのではないかというような話もして、聞いてみたわけですが、確かにそのことは認めつつも、しかるがゆえに細部の問題といえどもできるだけこの競争に太刀打ちをするためには、些少の問題といえどもやはり合理化するものは合理化していきたい。その現われがこの通信員の削減だと、こういう趣旨の説明でありました。そこで大臣にお尋ねするわけでありますが、一体郵政当局は、直接海運行政にはもちろんタッチはしていないのでありますが、かつて経済企画庁の長官もやっておいでになった大臣でありますから、こういうささい——ささいと言うては恐縮でありますが、こういう問題に手をつける前に、本質的な根本的な解決策というものをなぜ考えないのだろうか、こういうことになるわけですが、その点については郵政大臣としてはどのように考えておいでになりますか。
  87. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) かつて経済企画庁長官でおりましたときに、私はこういうことを言ったことがあります。大体日本の経済というのは、一応舗装した道路の上を走って行く自動車のような状態であるけれども、やはりところどころ舗装がこわれてがたんがたんといって不愉快な状態のところもあるが、それは日本の経済では海運界と石炭の問題だ。したがって、海運の問題と石炭の問題が整備されてきたら、ほんとうに日本の経済というものは舗装した道路を自動車で走るようなふうに快適に行くのじゃないかと。そういうようなことを考えまして、この石炭の問題と造船、海運の問題の合理化、経営の刷新ということについて非常に尽力をいたしましていろいろな案も考えました。それが現在逐次実行されつつあると思います。したがいまして、そのときに考えたことは、海運界合理化をはかるということには、いいことならどんな小さいことでも一つやるし、悪いことはどんな小さいことでもやめていく、こういう考え方でなければ、一つのことだけで全部カバーするというようなことはとうていでき得ない。小さいいいことから積み重ね、小さい悪いことを除去することを積み重ねていって初めてできるんだという考え方を持ちました。いろいろなことがいろいろな立場でもって、なかなかやはり障害が多くてそう一ぺんには行っておらぬようでありますが、とにかくその方向で現在でも運輸省と経済企画庁は協力してやっておるように私は理解をいたしております。その関係で、この電波方の問題も小さいことであるかもしれませんけれども、いいことはどんな小さいことでもやる、障害になっておることはどんな小さいことでもなるべくその障害を除去していくという、日本海運界のための考え方からいうと、やはりぜひこの際やるべきことじゃないか、こういうふうに思うわけです。
  88. 永岡光治

    永岡光治君 職員側の主張しておる大きな点は、やはり海難対策、気象通信の確保、公衆通信疎通、こういう点から考えて、三交代であるべきだ、したがって、通信員は減らすべきじゃないという結論になるわけですが、この海難対策、気象通信の確保、公衆通信疎通という三つの問題を考えますと、確かにこれは公共性の非常に強い問題だと私は思うんですね。そうなりますと、私は船主協会の方にちょっと聞きたかったんでありますが、その点漏らしましたけれども、要するに、経営の合理化という点で経費の節約を行なっていきたいというわけですから、逆に、必要な分だけ余分に政府のほうから補助してくれるならば差しつかえないという、裏を返せばそういうことにもなるのじゃないかと私は思うのですが、確かに三人配置しておりますと、途中での多少の手すき時間はあろうかと思うのですが、公共施設なるがゆえに郵政大臣の所管しております郵便局、特に特定郵便局の場合でも、ずいぶん手すきの時間はありますけれども、やはり配置して置かなければならない使命はあるわけでありますが、その面で、船主協会が主張しておるところの、経費がかさむというのであれば、これはひとつ政府としてその分だけ補助する、こういう方向に進められる考えがあるのかどうなのか、むしろ電波関係を所掌しております郵政大臣としては、この三つの非常に大きな使命を達成するためには、そこまでいってもいいのではないかという見方も私はあると思うのですが、そういう考え方については、郵政大臣はどのようにお考えでありますか。
  89. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) 私が運輸省当局等より説明を受けまして、私が理解しましたところは、この問題はお金の問題というよりも、むしろ非常に人そのものが得られにくくなっておる。もちろん非常に高い給料でも出せばまた別でしょうけれども、それはおのずから他の種の船員とのバランスの問題もあり、他の一般職種とのバランスの問題もあって、そうめちゃくちゃに高い給料を出せるわけでもないと思うので、そうなってきますというと、この問題は、金を補助したから三人乗せられる、補助しないから三人乗せられないという問題でなしに、実際問題として船をおりる人も多いし、供給が非常に少なくて、人間そのものが得られない状態になりつつあるというふうに私は理解をいたしております。
  90. 永岡光治

    永岡光治君 そういたしますと、言葉じりをつかまえて質問するわけじゃありませんが、船員の確保さえ十分であるならば、私の今申し上げたような措置を講じてもよろしいということになるわけですか。
  91. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) そういう通信士の供給があり余っておりました場合には、そうして特別にそのために非常に高い給料でも払うということでなく、通常の給料状態において人があり余っておるという場合には、三人乗っけてもちっとも人手には困らない、こういうような状態であったとすれば、私はこの際電波法改正することに踏み切ったかどうかということはちょっと……。そういう前提でなくて、人が足りないという前提で踏み切ってきたわけですから、そういう人が十分あるという場合は、ちょっと考えられないのですけれども、かりにそういう場合を想定すれば、これは今までどうりだっていいと思うのです。
  92. 永岡光治

    永岡光治君 大体考えはわかりました。そうなりますと、今度は通信士の養成が過剰になった場合には、また問題が起こるということにも逆に言えばなりかねないのでありますけれども、今朝来の船主協会の代表の方の意見を聞いておりますと、仮定の問題でありますが、この法案がかりに国会を通過したと、その際には何名以上といううたい方をしておるわけですから、法案では。したがって、これは二人でいいとか、三人でいいとかということについては、船員組合のほうと相談をして話し合いをして数をきめたいと、こういう話でありました。もしそれがスムーズにその話し合いが進むと、これもまた仮定するわけでありますが、そう船員が減員されては困るということに私はなろうかと思うのです。そうなってくると、新しいオート・アラームの設備に相当な金額をかけたと、減員もそう思ったほどできないということになると、一体船主協会側が考えておる経費の面での節約という面ですね、そう期待したほどのものは出てこないのではないか、むしろ逆にトラブルが多くなって、その面での支障のほうが大きいのではないだろうかという気がするわけでありますが、これは郵政当局は船主協会のきょうのお話をお聞きになっておると思うのです、政府委員の諸君は。そこで、数について話し合ってきめるということをどのように指導しようとしておるのか、これを私は聞いてみたいと思うのです。
  93. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) 具体的に三人乗っけて、二十四時間の聴守義務時間をきめているということは、通信士の供給の限界上、そういうことを固執しておれば、船が動かなくなる可能性がある、人手が足りなくて船が動かなくなる可能性があるというところから、世界的な水準にまでひとつ返そうとこういうことです。そういうような場合、法律改正するためにはやり方が私は二つあると思うのです。大体具体的にどのくらいの人手が得られるであろうかということを想定しまして、それに合うようなふうに二十四時間の聴守義務を十八時間にしてみたり、また二十四時間の聴守義務を持つ船の数を減らしてみたりする方法ももちろんありますけれども、そういうようなことはしないで、電波法関係においては世界的な水準にひとつ法律を合わしておいたほうが将来のためにこれは合理的である。中間的なものを作るのは、全く人間の供給の分量等をはじく一つの過程の上に成り立つわけでありますから、そうでなしに、世界的な標準というものがちゃんとある、その線まで日本もしわ寄せをしておくということのほうが正しいと思って、実はこういう改正案にしたわけでありますが、したがって、これを具体的に運用する場合には、これは船舶職員法のほうの問題であって、どういうふうに指導するかということは、向こうの運輸省がやることで、私のほうでは関与いたすべき問題でないと思います。
  94. 永岡光治

    永岡光治君 それでは気象通信なり公衆通信疎通なり確保の問題についての郵政当局の指導方針ですが、それはどのように対処するわけですか。
  95. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) 公衆通信疎通をするということは、私のほうのやはり責任ですから、電電公社の設備をよくするということと、それからこの前言いましたむずかしい言葉でありますが、裏時間を使うとか、あるいは何といいますか、なるべく節約をするというようなこと、そういうようなことでもって指導していきたいと思います。  それから気象通信の問題というのは、私はこれはもう少し政府自身がほんとうにこの問題については金を出してやるべき性質のものではないかと思うのです。したがって、気象通信を船にさせるために、そのために人手をよけいに船に、乗っけておかなければならないというのは、これは全く逆な話で、たまたま乗っておるから、それを利用させていただいている、甘えているというのが、現状だと思います。気象通信については、ほんとうに気象通信の確立という面から、当然運輸省で別途に処理してもらうべき筋合いだと思います。
  96. 永岡光治

    永岡光治君 私もあまり詳しくありませんから、あるいは私の考えが間違っているかもしれませんけれども気象通信といえどもやはり通信線等を通して気象庁に入るべきものだと私は考えておりますので、その意味での通信施設の整備という問題があろうと思います。そこで、今、大臣の言われました気象の問題でありますが、政府は、気象観測のためにわざわざ一ぱい船を作ったり、あるいは一ぱいではとても足りないので、何十ぱいも作らなければならないと思うが、そういう余分な、余分なといいますか、経費の割に効果の薄い——同じ経費を使うとすれば、むしろ全船舶に依頼したほうがより的確な、より広い範囲のものが得られることは常識的にわかるわけでありますが、そういう意味から考えて、やはりむしろ私は最初申し上げましたそういうものを含めての政府の助成金といいましょうか、補助金といいますか、そういうものを出すべきが正しいんじゃないかということを、言ったわけでございますが、そういう問題について、三十七年度予算において何か考えているのかどうか、それが一つ。少なくとも公衆通信疎通について、どの程度の予算を確保しているのか、このために。
  97. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 先ほど大臣が言われましたように、通信疎通の面では三カ年間に電電公社の設備を拡充してもらう、あるいはまたその間に裏時間という制度を具体的なものにしよう、あるいはまた通信料の抑制といいますか、そういったこともひとつできるだけやってもらう、そういったことを考えているわけですが、そのうちで公社はどの程度の具体的に三十七年度計画を持っているかということは、今、ちょっとここに資料がございませんので、もしお許しを得られれば、資料で提供させていただきたいと思います。
  98. 永岡光治

    永岡光治君 今持ち合わせがなければあとでもけっこうですけれども、そういう指導のもとに公社のほうには連絡をし、そのための特別な予算のワクを取っていると言明できるわけですか。
  99. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 実は三カ年の経過期間の間に——三年後には疎通が困難になってくるという事態が起こってくるわけなんで、それに対処するために、三カ年にその対策を講ずる、すなわち海岸局の設備の増強をしよう、こういうことになっておりますので、三十七年だけでその態勢を作るという意味ではございません。  なお、ちょっと補足させていただきますと、公社の資料によりますれば、三カ年間は、現在の設備で、これは増強しないでも対処できると、こういうふうに言っておるわけであります。
  100. 永岡光治

    永岡光治君 どうも今の答弁ですと、私は三年後に整備を完成するというのであれば、金額は別といたしましても、その三年計画の中の初年度の分として当然予算が計上されてしかるべきだと、こう理解するのですが、ところが、それもないようです。あなたは資料を出すとおっしゃったけれども、私が要求しても資料は出てこないはずです、そういうことになると。特に今の説明では、三年後までは現状維持だと、こういう説明。なおさら僕は資料が出てこないと思うんです。そうすると、現状でいけるということは、現在がそう困難を来たしていないと、こういうことになろうかと思うんですが、どうも午前中の質疑応答の中では、相当の混乱があると、こういうように私たち受け取ったわけですが、これは電波監理局長も同席をしてお聞きになっていると思うんですけれども、それでは全然どうも話が違うように思うんですがね。どうも政府の熱意というのはあまりないように私は思うんですね。どうでしょうね。
  101. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 確かに午前中はそういう参考人の御意見がありました。ただ、私どもとしましては、公社のほうとも十分連絡をとりまして、その結果三カ年間は現有設備でもって疎通できると、こういう回答を得ておるので、それを基礎として考えておるわけでございます。
  102. 永岡光治

    永岡光治君 どうも現状のままでいけるということになれば、三年後そうするとあなたのほうで整備するというのは、どういう考え、三年後から計画を始めるわけですか。
  103. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 要するに、御承知のように経過措置によりますと、現在三人乗せている船は二人にする、それから二人乗せている船は一人にする。しかし、これが三年後になりますと、旅客船を除きましては、三人が一人になる。したがって、そこで相当の通信の集中、特定の時間帯への集中という現象が起こってきます。したがいまして、経過期間中は公社の設備でも何とかこれは疎通できる。しかし、三年後の事態、そういった、極端に言いますると、今まで二十四時間に分布していた通信量が八時間に集中するということになりますと、そこに相当のオーバー・フローが起こって参りますので、その事態に対処するのには三カ年間にこれに対処できる設備の増強が要る、こういう意味でございます。
  104. 永岡光治

    永岡光治君 そうすると、こういうように理解していいわけですか。三十七年度も予算が計上されるし、三十八年度も計上されるし、三十九年度も計上されて、そうして完成が三十九年度の終わりになると、まあ常識的に言うとですね、そう予算は組んであると、こうおっしゃるわけですか。
  105. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 実は、その点、各年度の計画がどういうふうになっているかということは承知いたしておりません。ただ三カ年後にはそういう事態に対処できる設備を作り上げると、こういうふうに聞いております。
  106. 永岡光治

    永岡光治君 どうもそれがこれだけの重要な論議されている問題についての責任ある郵政当局の指導方針としては、私は誠意がないと思うのですね、そういうことでは。まだ聞いていない。三年後には完成するとは聞いているけれども、これの計画も聞いていない。だけれども、あなた先ほど資料を出すとかおっしゃっているわけですが、そういういいかげんな答弁ですと、資料はないのじゃないでしょうか。電電公社は三十七年度でこういう施設をするという計画を持っているんでしょうか、このための。
  107. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 先ほどちょっと間違えた御答弁を申し上げたかもしれませんが、三十七年度で具体的にどういう年次計画を持っているかという点は、われわれのほうとしては十分聞いておりません。ただ、先ほど申し上げましたように、三カ年かかって設備を完成する、こういうふうに聞いておるわけでございます。
  108. 野上元

    ○野上元君 ちょっと関連。今の問題に関連しての質問ですが、電波監理局長にちょっとお聞きしますが、先ほど来、永岡委員が質問しておるような状態に対処するために、三年後に設備ができ上がるというお話なんですがね。その点、はっきりしてもらいたいのだが、三年後にはそういう設備ができておるのか、それとも三年後初めてそういう設備を開始するのか、どちらですか。
  109. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 三年後に完成ということでございます。
  110. 野上元

    ○野上元君 私はここに電電公社の三十七年度予算を持っておるんです。それには全然そういう計画はありません。さらに第三次五カ年計画案も持っております。その中にもありません。これはどういうわけですか。どうしてこういうものが全然載っていないのか。そうすれば、あなたの言われるように三年後にどうやって設備ができるのか。
  111. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 実は電電公社の、お手元に配付されておる資料の内容は、私よく存じませんけれども、公社の責任のある筋から、三カ年後には今申し上げたようにそういう事態に対処する設備を完成する、こういう話を聞いております。
  112. 野上元

    ○野上元君 私は、現実に三十七年度の予算を持っております。第三次五カ年計画の構想というものも持っておりますが、どこにも何にもそんなこと書いてないんですね。少なくともこれだけ大きな問題になって、あなたのほうが電電公社に諮問されて、こういう状態にしてもらわなければ困るということをおそらく言われたと思うのです。それに対して何ら答えてない、電電公社は。この間の答弁を聞いておりましても、電電公社は、そういう必要はありません、今日十分にその余力がありますと、こう答弁しておりましたよ。したがって、あなたの認識電電公社認識とは著しく違うのじゃないですか。
  113. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) おそらくその公社の答弁というのは、三カ年間の経過期間中は何とかやっていけるということを言ったのだろうと思います。
  114. 野上元

    ○野上元君 だから、あなたの答弁と電電公社の言っておることとは食い違うというんですよ。電電公社は、三年間いわゆる暫定期間の間にそういう設備の拡充だとか改善をする必要がないと、こう言っておる。あなたの先ほどの答弁では、三年後には通信疎通できるような設備が拡充されておるという状態になっておる、こう答弁されておるわけです。したがって、郵政当局の考え方と電電公社の考え方は食い違っておるのじゃないか。認識に大きな相違があるのじゃないか。
  115. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 私はそういう食い違いはないと思います。海岸局の増強工事というものがすぐできるものであれば別ですけれども、やはりこの程度の規模のものになりますと、短期間でできるという性質のものじゃないので、やはりその暫定期間かかりまして準備をする必要がある、こういうふうに考えております。
  116. 野上元

    ○野上元君 よく聞いて下さいよ。私、関連質問だから、あまり長くやると迷惑しますからね。あなたのほうがそのとき出された改正案の中には、暫定期間が三年間設けてあるわけです。あなたのほうはその三年間に通信疎通ができるように設備をしてもらいたいという要望をしておるわけですね。そうして今私たちの質問に対して、三年後にはそういう設備が拡充されておる状態になっておるでしょうと、こういうわけです。電電公社はその三年間何ら設備の増強は必要ないと、そういう答弁なんです。電電公社としては、そういう設備の拡充は必要ありません、今日相当の余力を持っております、今後三年間ぐらいは何もしなくてもよろしいと、こう言っておる。だから、現実の姿は、あなたが考えておるような姿にならぬということですよ、三年後は。そこに大きな認識の相違があるのじゃないかと、こういうのです。その点はどうしてもう少しはっきりと詰めて、正確な話し合いが行なわれなかったのが、その点をひとつ明らかにしてもらいたい。
  117. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 先ほど申し上げましたように、公社の現有の設備で三年間のトラフィックというものは何とか疎通できると、現有設備のままで。しかし、四年後になりますと、いわゆる本則が適用されるようになります。そうしますと、現有設備ではそのときにおける通信量を疎通することが困難になる。したがって、それまでにそれに対処できる設備の増強を完成しておく必要がある、こういうふうにわれわれは理解しておるわけでございます。
  118. 野上元

    ○野上元君 だから、あなたの言うことはわかるんだけど、電電公社は四年目から設備の増強を開始しようと、こう言うんです。でなかったら、この予算の中にも入っていなきゃならぬはずだけど、そういうことは全然うたってない。
  119. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 私たちとしましては、先ほど申し上げたように理解しておるわけであります。なお、その点はさらに公社に確認をいたしたいと思います。
  120. 野上元

    ○野上元君 あなたはこの前、電電公社が答弁したとき、おられなかったですか。
  121. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) おりましたはずです。
  122. 野上元

    ○野上元君 そうすれば、その当時電電公社が答弁した内容は明らかだと思うんですがね。こういう食い違いがあって、電波法を通してしまってから話し合いをしてみましょうでは、これは問題がおかしい、逆転しているんじゃないかね。
  123. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) なお、あとで議事録を調べさしていただきますが、私の聞いた、また理解したところは、先ほど申し上げたように三年間の疎通には現有設備で事を欠かないと、そういうことでありまして、その工事云々の問題は、実は聞き漏らしておるわけでございます。
  124. 野上元

    ○野上元君 それでは大臣に聞きますが、そういうことで、もしも電電公社としては三年間に何らの計画がないということになったら、この電波法との関係はどういうふうになるんですか。撤回しますか、電波法を。
  125. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) まさか電電公社も、こちらのほうの法案が通って、経過期間がどんどん経過していくのに、それに合うようなことをほったらかしておくようなことはないと思います。したがいまして、今お手元に書いてないからといって、計画が全然ないことはないと私は思っておりますので、ぜひひとつこれにテンポを合わせるように設備をするように、よく頼もうと思います。
  126. 野上元

    ○野上元君 その点はもう水掛論ですから、すぐ山下運用局長ですか、あれを呼んで明らかにして下さい。そうしないと、この問題がはっきりしないと、進めても非常に進めにくいと思いますので、ほかの問題にひとつ移ってもらって、私の質問はこれで打ち切ります。
  127. 久保等

    ○久保等君 ちょっと今の問題に関連して。郵政当局としては、先ほど来の御答弁を伺っておると、してもらうとか、計画はあるはずだとかいう御答弁なんだけれども電波行政を担当する立場からは、私は、計画があるはずだとかなんだとかという人ごとじゃなくて、郵政当局そのものが、電波法改正に伴って公衆通信疎通をはかるためには、電電公社当局としてはこういった措置、こういった対策を考えなきゃならぬのだ、したがってこういった対策を立てろと言う立場にあると思うんですよ。したがって、電波法改正がどうなされるかは、これは全く電電公社のあずかり知らないところなんだけれども、その改正に伴って起こる事態に対する具体的な措置というものは、これは郵政当局が指示をすべき私は問題じゃないかと思うんです。したがって、三年間に立てるのだという先ほど来の御答弁なんだけれども、それならば三年間に平均して、一体その施設なり要員対策なりをやるのか、あるいは二年でやるのか、あるいは一年でやるのか、あるいは一年も要らぬけれども、半年ぐらいあれば間に合うというふうに判断をしておられるのか、そこらを一体郵政当局としてはどうお考えになるのですか。これは電波監理局長の御答弁でもけっこうですけれども
  128. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 今、先生からお話のように、当然こういった問題を考えるときには、これの対策というものの裏づけがなければならないわけでございまして、対策ということで、要するにこういう制度に移行することによって、はけ切れない通信量をどうやって消化するかということを考えなければならないのでありまして、そのために三つの方法を考えております。一つは公社の設備を増強していく。一つは裏時間制度を使いまして、できるだけそのトラフィックの平均化をはかる。それからそれによってもはけ切れないものは、できるだけ社用電報抑制をはかっていく、こういう三つの方法を考えているわけでありまして、当然この問題を考えますときには、これは省内部の問題で恐縮ですが、監理官室であるとかあるいは電電公社、こういうところとも十分相談はしておるわけであります。したがいまして、われわれのほうとしては、もしこの法案が通りますれば、そういう対策を講じてもらえるということを期待しておるわけでありますし、また要望いたしておるわけであります。
  129. 久保等

    ○久保等君 それでは、やっぱり私は非常に怠慢というそしりを免れないのじゃないかと思うのですがね、法律案が通ったら、法改正がなされたら、それからいろいろ相談をして、具体的な対策を立てるのだということでは、法案の提出をせられた立場からいけば、私は非常に無責任だと思います。先ほど来郵政大臣は、気象業務の問題については、現在の船舶にやらせていること自体が実はおかしいのだ、これは政府みずからがやるべきことなので、したがってその点については当然政府そのものが従来と違った意味で力を入れて、気象観測、気象通報の問題については、他の面で当然政府が対策を立ててやるのだというお話があったのだが、これは運輸当局の私は当然責任の範疇の問題だと思うのです。まあそれは別問題として、ここでは特に郵政大臣の立場で直接考えなければならぬ問題は、いわゆる電電公社にやらせる施設なりあるいは要員なり、これに対する対策の問題だと思うのです。ところが、その対策については、ざっくばらんに言えば、今のところ何ら具体的に対策はお持ちになっていないという御答弁にしかならぬと思うのですが、そう理解してよろしいですか、郵政大臣。
  130. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) 久保さんなり野上さんのおっしゃることはきわめてごもっともでして、私はこの問題についてはちゃんと電電公社との話し合いがついて、電電公社との話し合いをつけるときの窓口は、うちのほうでは電気通信監理官が窓口ですが、そうしてちゃんと計画はできているものと考えていまして、具体的にそれが第一年度にはどうなっているか、第二年度にはどうなっているかということは、私は実はそこまでは突き詰めておりませんけれども、事務的には突き詰めてあるものと信じております。ただ、野上さんはさっきそんなものは自分のもらった紙にはないと言われるのですから、私はびっくりして。あれ、と思ったのです。ところが、ここにおる者は電波監理局の当局だけで、私どものほうが手勢がはなはだ少なくて、先生方の御質問に対して明確な答弁ができないのはまことに遺憾でありますから、今援軍を増強いたしまして御答弁をしたいと思います。
  131. 久保等

    ○久保等君 それでは、私も関連質問ですからやめますが、その点は、いずれ電電公社が来て、その答弁をお伺いすればおのずから明らかになってくると思うから、ここでこれ以上その問題について触れてお尋ねはいたしませんけれども、先ほど来の電波監理局長のお話を承っておる限りでは、どうも具体的な対策というものが立てられておるようには承知できないのですが、郵政大臣はおそらくそういう答弁をせられることは常識的にいって当然なんですが、ただ答弁では、先ほど来そういう具体策をお持ちでない。しかも具体策は、先ほども申し上げたように、電電公社にお願いをするとか、要請をするとかいう言葉の表現は別としても、これはあるいは電波監理局長だけがやるべき問題じゃないかもしれない、電通監理官もおられることですから。しかしいずれにしても、郵政省として一つのやっぱり明確な対策をお持ちになって、初めて私はこの法案に対する答弁ができるのであるし、またこの法案を提出する一応の態勢ができたということになると思います。ところが、それは電電公社で考えることですということは、少なくともこの委員会において答弁せられる答弁としては、私は適当でないというように考えますが、いずれその点はもう少し事態を電電公社のほうから説明を伺ってから、またお尋ねしたいと思います。
  132. 永岡光治

    永岡光治君 私の質問は、それでは電電公社出席があってからさらに掘り下げて質問することにして、一応ここでは私は他の委員に譲りたいと思います。
  133. 野上元

    ○野上元君 それでは電電公社の方が見えるまで、私が他の問題について御質問申し上げますが、電電公社との関係も私は必ずしもうまくいっていないと思うのです。私はここに現実に電信電話公社拡充第三次五カ年計画の構想というものを持っておりますが、これは説明を受けた、逓信部会としても。そのときにやはり全然その話はなかった。三十七年度の予算というものはちゃんとできておりますが、これにも載っていないということになれば、電電公社としてはやらない気らしい、こういうことなんです。  もう一つ気象の問題なんですが、これも郵政大臣はちょうどあのときは途中で中座されたと思うのですが、気象庁長官に私が質問しました。それも気象業務整備五カ年計画に基づいて質問したのです。これは気象庁が発行しておるものなんです。まず第一にこの五カ年計画というものは、電波法改正することを予想して作ったのか、こういう質問をしたところが、そのとおりである、こういうわけです。それでは内容について質問してみるが、まず第一に気象観測に関する通信現状においてもなおかつ不十分である、こういうふうにこれには書かれておる。電波法改正されると気象観測通信は激減するおそれがある、こういうことが書かれておる。それに対する気象庁長官の措置はどうだ、こう言ったところが、三年間ではとてもじゃないが、それを実現することは不可能です、こういう答弁をされておるわけです。それで気象庁長官としては、あるいはまた純然たる技術者としての立場から見て、電波法改正は好ましいかと質問したところが、好ましくないと、こういう答弁をされた。そういうことになると、あなたのほうが運輸当局に対して電波法改正した場合にはかくかくしかじかの支障が出るが、それに対して運輸当局は責任を持つか、こういう質問を出しています。それに対して運輸当局は私のほうで一切の責任を持ちます、その心配のないようにいたします、こういう回答書が文書をもってなされておるわけなんです。それは全くうそなんです。気象の面を見てもはっきりそれがわかる。和達気象庁長官は、三年間ではとてもそういうことはお受け合いできないと言っている。その点について郵政大臣はどういうようにお考えになりますか。
  134. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) 気象庁のほうでは、私のほうで電波法を今度改正を提案しなかったら、電波法がこういうことになっているじゃないかということをたてにとって、気象のほうの通信を有利に展開、資料を得るのに有利にするために大いに材料に使っただろと思うのです。しかし私のほうとしては、電波法の建前から申しますというと、運用義務時間あるいは聴守義務時間をきめるのが電波法の建前でありまして、それは従来は非常に手厚くやっておった。それは日本経済全体の置かれておる立場から、そういう手厚いことをしておったと思うのですが、それは今日の経済情勢に照らして手厚くすることが不可能になってきたから、国際水準並みに直そうということなんでありまして、私のほうで八時間の運用義務時間をきめたときに、十六時間にしようとちっともかまわないわけでありまして、運輸省内部で気象庁長官がんばって、船員をそれだけよけい乗っけるように運輸省内部で調整してくれればいいと思う。だから私のほうもなるべく直さないようにしてくれ、私のほうに援軍を頼みにこなくてもいいと、実は私そう言っちゃ悪いけれども、露骨に言ってそういうような感じです。もう少しうまい言葉があるかもしれませんが、率直に言ってそういうような感じです。したがって、電波法改正は好ましくないという——気象庁長官が好ましいとか好ましくないと言う筋合いじゃなくて、電波法改正しなかったら自分のほうは助かるなという、そういう意味だと私は理解をして聞いておりました。
  135. 野上元

    ○野上元君 それは郵政大臣むちゃくちゃな答弁だよ。これは重大な問題だと思うのです。それはなぜかといえば、この問題が起きたのは昭和二十五年以来なんですよ。そうして電波法改正してもらいたいという声は非常に強かった。しかし今日まで郵政当局は純粋なる電波技術、電波行政の立場から見て、時期尚早である、もし電波法改正したならば、こういう点がまだ満足に穴を埋められないだろうというような考え方があったからこそ、郵政当局でむしろ電波法改正に踏み切らなかったという理由だろうと思う。ところが今回踏み切ったことについては、あなたのほうとしては同じ心配があった。それについて運輸当局に対してこういう心配があるがどうかという質問をあなたのほうはしておる。まず第一は公衆通信疎通状態はどうなるか。海上安全の問題はこういう弱点が出る。第三番目には気象観測の通信のほうはこういうふうになるのだ。こういうことに対して運輸当局は大丈夫だと言ったからこそ、あなたのほうは踏み切ったのに、今になってそういうものの言い方をすることはおかしいと思う。運輸当局としては、そのときはっきりと、それは実際私のほうは責任を持って引き受ける……。ところが気象庁——これは運輸省の一機関です。これが責任を持てないと言っておるのです。あなたは一体どう考えるのですか。これは振り出しに戻るべきじゃないか。
  136. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) 電波法改正してこういうふうに聴守時間、義務時間を短縮することについては、私のほうの所管で始末をつけなければならぬ問題であります。それが要するに通信疎通の問題。したがって通信疎通問題については今まで電電公社が難色を示しており、またそれによってわれわれのほうもなかなか疎通はしにくいであろうという考え方から、電波法改正に遅疑しておったことは、これは私のほうの役所の責任であります。しかし、率直にこの前もちょっと言って諸先生からちょっとしかられたようなきみだったのですけれども郵政省が運輸省に対して気象のほうは大丈夫かというようなことを聞くことは、率直に言って聞かなくてもいいことを聞いたなと私も実は思いました。私も郵政大臣だったらそういう照会文はおかしいぞと言うところだったのですが、私がたしかくる前に出ておった文書だと思います。気象のほうはどうだということを運輸省に聞くことは、聞かなくてもいいことを聞いておるな……。私がその文書を見たときに、なるべくうちではこういうものはやりたくない、ことに諸先生にいろいろむずかしい問題を聞かれて困るから、なるべくこういうむずかしいものは出したくない、こういう気持が事務当局に充実しておるときにこういうことを言うたのじゃないかと考えるくらいで、そこで、どこまでも郵政省としては公衆通信疎通という点に重点を置いて、この問題を検討すべきだ、それについては、確信を得たから今回提案をした、気象とか、あるいは海難とかいう問題は、それぞれ所管省の運輸省が責任を負うべき問題である、こう思っております。
  137. 野上元

    ○野上元君 私は公衆通信疎通だけが重大問題だとは思わぬのですがね。しかし、百歩譲って、公衆通信疎通があなたのほうの担当であるというならば、それについても、はっきりした確証がなかったのです。電電公社を呼ばなくちゃわからない、これは重大なやっぱり私はミスだと思うのですね。もしも運用局長が来て、そういう計画はありませんと答弁したときには、あなたのほうは法案を提出した何はないですね、理由はなくなるわけです。しかも、気象のほうは関係ないと言われるのですが、少なくとも船舶無線局の運用義務時間、これを短縮し、聴守義務時間を短縮するんですから、当然気象の問題にも触れてくるし、海難救助の問題にも触れてくるはずなんです。それをそんなことはおれのほうの知ったこっちゃない、そんなものは運輸省でやればいいのだというような言い方は、私はおかしいと思うのですよ。  そういう言い方は、それは、同じことをさっき参考人が言いましたがね、船主協会側の参考人は、今ごろ私たちが船主協会側として、こんなことを先生方にお願いして歩くのはおかしいのだ、海運界実情政府が把握するなら、当然みずから進んで電波法改正すべきだ、それをやらないから、われわれがこうして頼んで歩かなければならない。政府はまことに怠慢過ぎる、こういう私に対する答弁をしておりましたが、それに対して郵政大臣はどう考えますか、あなたは怠慢だというのですよ。
  138. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) 慣性の原理によりまして、静止したるものは永久に静止、動くものは永久に動くというのが慣性の原理ですから、一つ法律を直すということはなかなか容易でないと思うのです。できるだけその法律は直さないで済ませれば済ましたほうがいいと私ども思います。したがって、どうしても必要が迫ってきた、こういう段階にきて、われわれのほうは改正を提案した、こういう立場だと思います。
  139. 永岡光治

    永岡光治君 関連。今、野上委員の質問に関連するわけですが、海難、気象の問題は所管外だから、郵政大臣としては通信疎通ということで一名必要だという判断を下したと、そうすると、この三名、二名という最初きめたときの通信疎通状況と、今日の通信疎通状況と比較して非常に改善されたと、疎通状況は。だから、これは一名にし、二名にすると、こう理解してよろしいわけですか。
  140. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) 先ほどから申し上げておりますように、人が十分得られれば三人のほうがよりよいことは当然です。二十四時間聴守させていて、二十四時間に分布しておいたほうがいいことは必然だと思います。現実にその問題ができなくなるという状態が起こってきたときに、どうすればいいかという次の次善の策を研究するのは当然なんですが、その場合に通信疎通がどうしてもうまくいかないということになれば、またもとに振り返ってきて、どうしたって、そういうことなら、もう無理やりにでもして、どうしても三人の人を乗っけておかなければならないということに返ってくると思うのです。三人乗っけておくことが非常に経済上の問題として困難になってきた、それじゃ三人乗っけずに済ませる方法はないか、その場合に通信疎通はどうかというと、三人乗っけた場合より若干悪いけれども、とにかくまあどうにかいけるだろうという結論が出てきたので、そこでこの提案をした、したがって改善したかという質問に対しては……。
  141. 永岡光治

    永岡光治君 改悪になるでしょう。
  142. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) まあ改悪といって、前に百点だったから、九十八点とか七点とか、少しは減るだろうと思いますが、落第ではないと思います。
  143. 永岡光治

    永岡光治君 意地悪い質問のように受け取られるが、そうではなくして、やはりこれは本質を掘り下げて質問しなければいけないのですが、三人でもきょうの質問を聞きますと、千九百通ばかりの通信があって、そのうちの大半の、千百通というものは非常な疎通を阻害して思うようにいかぬのだと、こういう説明がきょうの参考人意見として述べられていたわけですよ。  そうしてくると、大臣は、一名に減らすというのは、これは通信士が不足しているからやむなくそうせざるを得ないと、こういうような言い方をしておられますが、逆に私はそうではなくて、その三名で、なおかついけないのであれば、四名にするとか、五名にするとかいうことは、これはいかないにしても、むしろ通信士をどうしたら確保できるかという方向に努力するのが郵政大臣としての、経済問題は別にして、抜きにして考えるならば、そういかなくちゃならぬだろうと私は思うのですが、逆にいえば、人がないから破れかぶれだ、知ったことじゃない。あとは便法でその場を糊塗しようじゃないかというように、端的に表現すれば、そのように受け取れるわけですね。だから、九十八点どころじゃない。三人で百点ですから、その三分の一になれば三十三点ですか、そのくらいしか僕はならないと思う。通信の確保という観点からするならば、もっともっと大臣は積極的にやるべきだと思うのですがね。ますます納得できない。やがて電電公社に聞いてみたいと思いますけれども、設備もやっていないというわけですね。三年後にやるそうだ、こういうことでやったら、一体その間どうするのだということになるのですね。完備してから、それで対策を考えるというのは、これは一つの筋ですけれども、対策は今言ったとおり不明確のまま、ただ通信疎通はなかなか解消しない、人を得られなければしようがないのだ、こういう言い方では責任ある大臣として、もうちょっと通信士の確保に向かって努力することのほうが、私はよっぽど通信の確保という点からするならば、それが筋じゃないかと思うのですけれどもね。
  144. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) 私の本体であります郵便のほうでも、なかなか人が実は得られませんので、いわゆる機械化というものを考えております。機械化ということは、人手でやるよりも、当然これは若干の不行き届きな点は出てくると思うのですけれども、それでも機械化をしていかなければならぬというので機械をいろいろ扱っておりますが、したがって今度の電波法の   〔委員長退席、理事新谷寅三郎君着席〕 改正で、そういうことで通信士の増強というか、できれば、私はそれはそれでいいと思いますけれども日本全体の雇用の状態、もっと大きなことをいえば日本の人口からいって、とってもそういうことができないという結論が出ていると私は理解をしているわけです。それから今、設備も何もないところで、いきなりやぶから棒にやるやつがあるかと、全く先ほどからの私のほうの答弁では、明確な答弁ができないものですから、そういう格好になっておりますので、今電電公社がやって参りますから、おそらく明確なる答弁をやってくれるものと私は期待しております。
  145. 野上元

    ○野上元君 郵政大臣としては、いつも需給関係さえよければ何も改正する必要はないと、こう言っておられるのですが、運輸大臣から郵政大臣に出した文章によりますと、これは昭和三十六年五月十七日ですがね、それを読んでみますと、三名は現状からみて不必要である、こう書いてあるのですよ。あなたは郵政大臣としては、需給関係さえよければ三名必要である、こう認定されておる。運輸大臣は不必要であると、三人は。だから一名に減らすのだと、こういうふうにあなたに文書を出しておりますが、この点の意見の一致もないわけですか。
  146. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) それはたしか木暮運輸大臣から小金郵政大臣にあてた文書だと思うのでして、それは私の大臣になりましてから、私はその当時経済企画庁長官でありましたが、木暮運輸大臣が私に説明したときには、いかにも不必要であるがごとき印象を実は受けました。それで改正したほうがいいのじゃないかというふうに、当時の小金郵政大臣に言ったのですけれども、いよいよ私が自分が郵政大臣になってみて実情をよく聞いてみると、なかなかそんな簡単なことではない。通信疎通の問題からいっても、簡単にこれは不必要とか何とかいうことはいえないのだということはわかりましたので、   〔理事新谷寅三郎君退席、委員長着席〕 そこで一ぺんちゅうちょして十分検討いたしたのでありますが、今度はだんだん、だんだん話を聞いてみますと、通信士の需給状態の問題が非常に逼迫しておるといって事態が明らかになりまして、その点について、いろいろ研究しました結果、現実に船をどんどんおりてしまわれる方が多い。こういう状態では、あるいは船が動かなくなる状態が起こるかもしれない、こういう話も出てきて、その点で、いろいろ研究をしました結果、将来に備えて、そういうことを十分危険性があるように私も判断をしましたので、今度の改正案を提出することに踏み切ったわけです。
  147. 野上元

    ○野上元君 そうしますと、郵政大臣としては、あくまでも無線通信士が良好な状態で求人することができるならば、何も改正しなくてもよいという気持があるということだけははっきりわかったのですが、それならば、郵政大臣としては無線通信士のいわゆる試験ですか、というようなものは、あなたのほうの管轄になっておるわけでしょう。なぜ無線通信士がこういうふうに求人難に陥ったのかという点について、あなたのほうで出されておる「電波時報」というのがありますが、これは一九六二年の一月号の八十七ページに書いてあるのですが、書いた人は電波教育連盟事務局長で、東海高等通信工学校の教授の人ですが、この人が書いておるのを読んでみましても、あまりにも試験がむずかしすぎる、こう書いてあるのです。これだけのむずかしい試験を受けて、さらにまた国家試験を受けて、そして船に乗ってみたら、待遇はあまりよくない。これでは当然ということが書いてある、船の無線通信士が来ないのは。それは簡単な試験で給料のいい陸上に上がってしまうのはあたりまえだ、こう書いてある。これはあなたのほうの「電波時報」に載っておるのです。それはそういう手を打てばいいじゃないですか、まず最初に。  どうして、その手を打たないで、ただ、無線通信士がいなくなったから電波法改正するのだというふうなさか立ち的な議論をするのですか。
  148. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 無線通信士の国家試験のレベルの問題だと思いますけれども、御承知のように、現在通信士の制度としましては一級、二級、三級、そのほかに電話級とか、いろいろありますが、商船の関係ということになりますと、一級と二級ということになるわけであります。この一級、二級というのは、船に乗る通信士だけを考えておるのじゃなくして、先ほどお話の海岸局であるとか、そのほか陸上の無線局は働く人も対象にしておるわけであります。無線の技術というものの進歩発達ということは非常に著しいわけでありますので、勢いわれわれのほうは、最低限の資格を要求はしておるわけですが、どうしても試験のレベルというものが高くなりやすいわけでありまして、しかもその点は、条約におきましてきまっているわけなんであります。それぞれの国で勝手にきわめるわけにもいきかねるので、そういう関係で現在のような試験内容になっているわけでありまして、われわれのほうといたしましては需給難の解決策といたしましては、できるだけ試験の回数をふやし、従来定期的に一級、二級というのは年に二回でありますが、途中臨時試験というものもやりまして、できるだけ需給難の解決に、間接的でありますが、資しているわけであります。
  149. 野上元

    ○野上元君 私はこの際、あなたにお聞きしたいと思いますが、郵政大臣、あなたも、国際並みにしたいのだということを盛んに言われているのですが、この需給状況の資料を見てみますと、こういうふうに書いてあるのです。「国際規則には何の改正も加えられなかったのに、国内では無線科学の進歩に籍口して、試験科目をふやし、試験範囲を広め、試験程度は漸次高められた。このため国家試験合格者数は著減するに至った」となっているのであります。国際規則には何の改正もないのに、だんだん試験をむずかしくしていったために、合格者が少なくなってきた。これは国際並みにやればいいと思う。あなたのほうでは、国際並み国際並みと言われているのだが、試験のほうは国際並み以上に、うんとレベルを高くしてやっておられて、そうして通信士が足りない足りないと言っておられるのだが、そういうところで、どんどん手を打っていかれれば、そうあなた方が心配しなくてもいいようになってくるのじゃないか、ほとんど手を打っていないのじゃないかと思うがどうですか。
  150. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 国際的に、どういう試験をやれという項目がございまして、そのうちで、たとえば通信速度であるとか、そういった問題につきましては、これは国際規則で定量的にきまっているわけであります。一級は何語であるとか二級は何語であるとかというふうにきまっているわけでございます。しかしそのほかの基礎的な知識であるとか、あるいは実験関係につきましては、これは別に国際規則で具体的な内容がきまっているわけじゃございませんので、この点につきましては、先ほど申し上げましたように、船におきましても、いろいろ新しい機器も取り入れられておりますし、そういうものを十分扱いこなせるということも、これまた必要なんで、そういう点につきましては、そのときの技術水準というものも勘案いたしまして、多少のそういう水準を上げるということも起こってこざるを得ないのじゃないか、こういうふうに考えております。
  151. 野上元

    ○野上元君 若干の水準を上げるということが必要であるかどうかは私もよくわかりませんが、少なくとも一定の資格を持っていればいいということでしょう。いたずらに試験をむずかしくしなくてもいいのでしょう。この点をあなたのほうでは、だんだん試験科目をふやしてむずかしくしている。したがって国家試験の合格者が著減したと言っている。だから、その点打つ手があるのじゃないかという気がいたします。  さらに無線通信士の不足の外的原因といたしましては、船舶無線通信士の初任給が、陸上のそれに比較してはなはだ劣悪であるからである。これはさきの全国電波教育会議で、各出席者が異口同音に述べたところである、こういうふうに言っているのです。試験はむずかしい、初任給は陸上と比べて著しく悪い。これは水が近い所へ流れるのと同じように、ものが高いところへ流れるのと同じように、これは当然、船舶無線通信士に来る人はいなくなるのじゃないか、そういう手を打ってから無線通信士が足りないのだということを言われるならばわかるのですが、そういう手を全然打っておらないで、ただ無線通信士船舶に来ないというような言い分で、この電波法改正されるのは、さか立ちの議論じゃないかと言うのです、私は。郵政大臣、どうお考えになりますか。
  152. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 無線通信士の合格者数が年々著減しておるということでございますが、われわれのほうの資料によりますと、そう著減しておるというふうな数字は出ておらないわけであります。  ただ、ここで一つ問題になるのは、実はこの国家試験に合格しなくても働ける職場というものがだんだんふえておりますんで、そういう意味で受験者というものがむしろ減る傾向にあるという点から、結果的に多少合格者が減ってくるというような現象も起こってきておるわけでありますが、この点につきましては、われわれのほうとしましては、先ほど申し上げましたように、定期試験のほかに臨時試験というものも予算の許す限りやっておりますんで、そういう手段によりまして、できるだけ求人難の解決に資したい、こういうふうに考えております。
  153. 野上元

    ○野上元君 初任給が低いという現実は御存じですか。陸上に比べて著しく低いという現実は御承知ですか。
  154. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 陸上と申しましても、いろいろの職場があるわけでございまして、船に比べまして高いところもあれば低いところもあると思います。しかしそのほかやはり生活環境その他からいって、陸上のほうへ流れるという傾向はわれわれのほうでもいなめない事実じゃないか、こういうふうに思います。
  155. 野上元

    ○野上元君 そうしますと、郵政当局は船舶無線通信士の求人難の原因は、まず第一に試験が非常にむずかしいということと、それからその試験のむずかしい割合に初任給が低い、待遇が悪いということは認めますか。
  156. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) 試験が非常にむずかし過ぎるというか、あるいはその程度の試験をしなければ船舶無線通信士としての資格がないのか、そこんところ私は技術的なことでよくわかりませんが、必要以上の——もし当然このくらいの程度の資格を持っていれば、技術を持っていればいいもの以上の技術を要求するような試験をしているとすれば、その試験は、私も直したほうがいいと思います。しかしあとの給料の問題は、そこに書いてあることは、劣悪であるといいますけれども、逆にいえば、もっと割のいい職業が、職場が陸上にどんどんできてきたもんだから、どんどん船をおりてしまうという意味じゃないかと私は思うのです。したがってその連中を船にとめておくためには、うんと高い給料を出さなければ船にとまっていない状態である、そういう状態なんだ。日本の雇用全体のバランスがそういう状態になってきて、その連中を船の中へとめておくためには、うんと高い給料を出さなければとまらない状況になっています、こういうことじゃないかと思います。  そうなってくるというと、はたして高い給料を出していけるのかいけないのか。そこで、今度は三人どうしても乗っけておかなければいけないものなのか。それを一人で、外国並みで一人で済ましていけないのかという問題が出てくるんじゃないかと思うんです。したがって私は、日本全体の雇用状態が、昔の均衡状態を保っておって、そうしているならともかく、新しい雇用の状態が起こってきた場合に、特に著しく高く給料を払っておかなければ、船の中に通信士の人がとまっていてくれない、そういうふうな状態になったときにおいて、なおかつ三人という手厚い処置をしておくことが、はたして国際競争場裏にある船舶業というものについて、そういう義務を課することがいいのか悪いのか、この問題になってくると、こう考えております。
  157. 野上元

    ○野上元君 そうしますと、一人にしたらいい給料が出せるという理屈になるわけですが、そういうことを船主協会は考えておるのですか。あなたのほうで保証できるのですか。
  158. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) 私は多分そうだと思いますけれども、それは運輸省のほうで指導することでして、私どもわかりませんけれども、事の当然として、一人になれば給料を少し——今まで三人分払ってたのが一人になれば、ちっとは高くしたって割が合うと思いますけれども、おそらくそうなるのじゃないでしょうか。私はそれはよく知りません。
  159. 野上元

    ○野上元君 問題は、知らないのじゃ困るのだ、あなたは。もしも一人にしても現在の給料のままにしておけば、最後の一人までも陸上にもぎ取られてしまう可能性が出てくるのです。そうなった場合に、それこそ日本船舶は全部動かなくなってくる。だから、その一人を確保するためには、どれだけの給料を払うとか、そういうことを全然話も聞いておらないということでは、これはもう話にも何もならぬので、これはもちろん郵政大臣が雇い主じゃないですから、あなたの権限外のことですけれども、しかし少なくともそのくらいの情勢を握ってやっていかなければ、改善策にもならぬでしょう。
  160. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) 今度は船主としては、最小限どうしても一人なら一人というものは確保しなければならぬわけです。それもおりてしまうような状態になったら船が動かなくなるのは当然ですから、船を動かすためには、どうしても確保するでしょう。確保するとすれば給料は当然高くしなければ乗っていてくれなければ、これは当然出すだろうと思うのでして、それは私が、どう考えて出すかということを、ここで突き詰めなくても、必要の最小限度の給料をどうしたって出さなければ、とどまっていなければ、それっきりだと思いますから、これは心配ないと思います。
  161. 野上元

    ○野上元君 今回の電波法改正一つの理由は、あなたに言わせれば無線通信士の求人難だというのですね。だからそれに合わして電波法改正したいというのです。いよいよどうにもならぬということになると、またもう一ぺん電波法改正して、もう〇・五でいいというようなふうに電波法をあなたは改正しなければならぬように落ち込んでいくのじゃないですか。
  162. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) 私は世界的に〇・五という数字が出てきた場合には、これまた別ですけれども世界の諸国がみんな一人乗せておるときに、日本だけ〇・五でいいということは私は少なくとも踏み切れません。やっと世界並みにするところまで踏み切ってきたわけでして、またさらに一段先に進んだところを世界に先がけてやろうとは決して思いませんから……。もう、せんだってから話が出ているように、三人になったのは、戦争中の必要の状態から起こった一つの結果なんですから、今は戦後ではない状態からいって、戦前に戻るということでもあるのですから、そこまで……。将来〇・五にするということは、これは全然別個な問題ですから、それはもう全然現在の段階においては考えられない。
  163. 野上元

    ○野上元君 いずれにしても私は電波法改正することは本末転倒だと考えておるのです。郵政大臣は気象観測の問題については、これはもう運輸省が考えればいいので、あるいはまた海上救難の問題についても、それは運輸省の仕事なんで、何かそんなことまで運輸省に問い合わせるのがおかしいと思っておると、こう言っておるわけですが、西崎電波監理局長電波行政の考え方から見て、やっぱり郵政大臣の考え方を支持されますか。
  164. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 大臣の言われるとおりであります。
  165. 野上元

    ○野上元君 そうなると、もう電波行政なんていうのはなくてもいいようなものだ、それは全くむちゃくちゃですよ。あなたのほうで義務時間を変えておいて、気象状況を何とかしなくちゃいけない、海上救難のこともしなくちゃいけない、おれのほうは海上通信公衆通信疎通できればいい、その公衆通信電電公社にきてもらわなければできない。それで、電波法改正するというのはおかしいですよ。私は、そういう考え方がどうしても理解できない。それでも郵政大臣の言うとおりですか。あなた技術者として良心を言わにゃあ困るんです、和達長官みたいにね。
  166. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 先ほど大臣が言われましたように、気象とかあるいは安全面、これは運輸省所管でございますので、運輸省のほうで差しつかえないといわれれば、われわれのほうで、それでも支障があるという筋のものじゃないのじゃないか、そういう意味において申し上げたわけです。
  167. 野上元

    ○野上元君 それで、運輸省のほうでは支障がない、こういう文書がきたので、あなたのほうでは踏み切ったと、こういっておるわけでしょう。  しかし、この委員会であなたも聞いておられたように、和達長官は支障があると言っている、困ると言っている。これは気象庁長官は運輸省だ。それで公開の席上でしかも権威ある逓信委員会の席上で、こう述べられた。それをどう考えられますか、あなたは。
  168. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 当然その点は、運輸省において責任ある処置をされるものと、こういうふうに期待しておるわけであります。
  169. 野上元

    ○野上元君 その気象庁長官が、責任者が三年間ではそれはできません、私は請け負えませんと、こう言う、その場合にどうなんですか。
  170. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) やっぱり運輸大臣と気象庁長官との意見が分かれた場合には、運輸大臣の意見を尊重すべきだと思って、運輸大臣が責任を持たれれば、それでいいと思うのです。
  171. 野上元

    ○野上元君 それは形式的にはそうですよ。形式的にはそうです。しかし大臣というのは、日本では御承知のように性能の悪い飛行機に乗っているようなもので、いつ落ちるかわからぬものでしょう、大臣というのは。しかし気象庁長官というのは、比較的長くやられるわけです。しかも責任を持った純然たる技術者がやっておられる。その技術者が見て困ると言っているのを、これを政治家がそれは引き受けたというのでは、一般の国民がとった場合に、どっちを重くとるかといえば、気象庁長官の言葉を重要にとりますよ。われわれだってそう思う、やっぱり。専門的にこの物事を考えれば、気象庁長官が困るといっておるのを、あなたのほうがいい、いいというのはおかしいと思うのです。
  172. 永岡光治

    永岡光治君 関連ですが。そうすると、この改正案は運輸本位だ、運輸省でよいといえば、私のほうでやるのだ、こういうことですから、運輸委員会でこの法案が通らなければ、先議の必要はない、そういうことにもなるわけですね。
  173. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) それはそうではないので、私のほうは建前として運用義務時間、それから聴守義務時間を国際水準に戻す、同時に戦前の形に戻したい、この機会において戻しておこう、こういうことであって、それは運輸省が、この基準に基づいてこの義務時間以上にお使いになる、職員をお乗せなさることは一向差しつかえないことなんですけれども、私のほうが、どうしても三人乗っけておかなければいけないという、これは戦争中の一つの変態的な状況が変わった今日において、それをどこまでも置いておくことはいけないことじゃないかと思いますから、その障害を除去して、ちゃんとした正しい格好にしておくことが必要なんですから、向こうが通らなくても、こちらの法律はどうぞ御審議をお願いいたします。
  174. 永岡光治

    永岡光治君 それじゃ、電電公社の運用局長が見えておりますから、私の前の質問に返りますが、この質問の経過を申し上げますと、現状においても通信疎通は、なかなか公衆通信疎通は、気象上の通信もその中に入るかもしれませんが、今朝来の参考人意見を聴取いたしましたところ、過半数のものが、大半のものが疎通を欠いておると、こういう話であったわけです。そこで、この法律は実施されて三年間の猶予期間があるのだけれども、その三年間の間に、この疎通の解消、つまり通信員を減らすわけですから、より一そう疎通するように海岸局その他の整備をしなければならぬわけですが、電波局長の話ですと、私の理解の仕方がまずかったならば、それは補足答弁をしてもらいたいと思うのでございますが、どうも三年間の間に整備をするような意向のようにも受け取れるし、そうでなくて、三年間済んだ後において整備するようにも受け取れるし、三年間の間に整備をするとなるならば、電電公社の予算の中に、この整備の予算が組まるべき筋のものであると理解をするわけですね。それで、電電公社のほうはどのように予算を組んでおるのかと、こういう質問をしたわけですが、あとで資料を調べると、こういうことでありましたけれども、引き続いて関連質問で、野上委員の質問によりますと、電電公社は三年間現状維持でいくのだ、よろしいと、こういう答弁を、この前電電公社当局から答弁を聞いておる、こういうお話でありますが、電電公社としては、この対策について、どのように具体的に措置をしておるのか、それをひとつ御答弁いただきたいと思います。
  175. 山下武

    説明員(山下武君) お答えします。電電公社といたしましては、この法案が通りましたならば、これに対応した施設計画その他の準備をいたす予定にしております。ただ、まだこの法案が通過しておりませんので、三十七年度の予算あるいは第三次の五カ年計画には計上しておりませんけれども、法案が通りましたならば、この法案の趣旨に沿って逐次施設整備をやるという予定になっております。  そして、ただいま御指摘の三年間の経過期間中に何もやらないのかという問題につきましては、法案が通過いたしましたならば、これは郵政省のほうから新しい周波数の割当を受けなければなりませんが、その周波数の割当を受けまして、それに伴ういろんな技術的な試験や設備を逐次やりまして、三年の経過期間が過ぎまして本実施になるころまでには、公社としてやるべきことはやる。ただその場合に、公社だけで今回の運用時間の短縮に伴う疎通対策の全部をやるというのでなくて、船主協会といいますか、船の所有者のほうからも、自主規制あるいは外国電報の利用等によって、日本海岸局を経由する通数の節減については十分協力するというお話でもございまするし、また電報の運用時間といいますか、今回改正の第三種局甲という新しい運用時間の制度も設けられますので、三年後これが本実施されますときには、この船会社における自主的ないろいろな措置並びに郵政省における電波法改正に伴う裏時間の利用、それと相待ちまして、電電公社における施設の増加をいたしまして円滑な疎通をはかりたいと、そういう予定になっております。
  176. 永岡光治

    永岡光治君 そういたしますと、いろいろこの時点においては、これだけの重要な法案で、国会の審議をされており、この法案が前国会において問題になった法案で、引き続いて本国会にも継続審議の形で今論議されておる重要な問題で、しかも長い法案の経過があるわけですね。この時点ではまだ具体案は持っておらぬと、こういうふうに理解してよろしいわけですか。
  177. 山下武

    説明員(山下武君) この法案の問題は数年前から、いろいろ問題になりまして、私どもといたしましてはいろいろと研究に研究を重ねて参っておりまして、これに伴う運用上あるいは施設上の問題につきましては、内部としては、十分に検討をして参っております。
  178. 永岡光治

    永岡光治君 そういたしますと、仮定の問題でありますが、この法案が通過したというときには、当然すぐ着手できる具体計画を持っておいでになるわけですか。
  179. 山下武

    説明員(山下武君) その具体的な計画についてはいろいろ検討いたしておりまして、今後は法案の通った以後における利用の状況その他を見て、それに応じた方法を十分にやっていくということでございまして、現在どういうふうにするということを、ここではっきり申しかねますけれども、私どものほうの今までの調査によりますると、大体二年間ぐらいありますれば、電波のいろんな試験から設備の完成、運用までこぎつけられると思っておりますので、この三年間の猶予期間中にはやれるものと思っております。
  180. 永岡光治

    永岡光治君 そういたしますと、郵政当局のほうから、この問題についてすでに事前に相談があって、その検討は進めておるわけですか。
  181. 山下武

    説明員(山下武君) さようでございます。
  182. 永岡光治

    永岡光治君 そこで二年間あれば、十分疎通の整備ができると、こうおっしゃるわけでありますが、その三年の間には、現在相当、通信疎通を阻害しておるという実情を私たち承っておるわけでありますが、その対策は何も考えていないわけですか。
  183. 山下武

    説明員(山下武君) 私出席しました前回のこの委員会でも、そういう質問がございまして、現在の海岸局の運用では、船のほうから見て非常に困る点があるのだというような御指摘もございましたが、その際、私は御回答申し上げておいたのですが、私のほうの海岸局の状況——船から打ってくる電報の受付時分と海岸局で受信する時間並びに国内の各電報局から船打ちの電報海岸局に参りまして、海岸局から船を呼び出して送るわけですが、その海岸局における船あての送信並びに受信の所要時分を見ておりますると、まあ、ある時間帯において多少起こることはあるかもしれませんけれども、私どものとらえ聞く全体の状況、疎通余力等から見ますると、現在、一般的にそれほどお困りではないのではないだろうかというふうに考えておりまして、またこの新しい法律改正を行なわれましても、それに即応した運用の方法を考えておりますので、疎通上、それほど大きな困難にはならないであろうというふうに考えております。
  184. 永岡光治

    永岡光治君 ただいまの御答弁と、今朝来、私たち承りました参考人意見とは、かなり食い違うわけですが、そうすると電電公社のほうでは、その資料をお持ちでございますか。
  185. 山下武

    説明員(山下武君) 持っております。
  186. 永岡光治

    永岡光治君 ここで説明できるものを承りますが、さらにそれは資料として御提出をいただきたいと思いますが。
  187. 山下武

    説明員(山下武君) 別途提出することにいたしますが、これは前回も申し上げたことでございますが、私のほうから船に送る電報につきましては、実態が正しく把握できるわけです。国内の各電報局から海岸局に到着いたしまして、海岸局は船のほうを呼び出しまして、その船の応答を待って、こちらから送りますので、船と海岸局との間の関係はわかりますが、船側からこちらを呼ばれる場合におきまして、日本海岸局はなかなか出ないじゃないか、非常に呼んでおるけれども出なくて困るんだというお話は聞いておるわけでございますが、船の中におけるいろいろな実情というものは、私どもにわからないのでございまして、私どもは船の中で受け付けた電報の受付時分と、海岸局のほうに到着いたしました、海岸局で受信した時分と、その受付と受信の時分とを対比いたしますると、それほどおくれておるようなものは、まあ中にはあるように思いますけれども、全般的には、それほど大きな遅延は生じていないと思いますので、今のような判断をしているわけでございます。
  188. 永岡光治

    永岡光治君 今朝来のお話を聞きますと、船の中でのコール・サインの時間が、かなり長いように聞いておるわけですが、そういう実情電電公社としては調べたことはありますか。
  189. 山下武

    説明員(山下武君) ただいま申しましたように、船の中の状況は、どうも私のほうの直接関係でないものですから、海岸局側から見たものだけになっております。
  190. 永岡光治

    永岡光治君 当然これはコール・サインを送って出るまでが長い時間ですから、なぜ出ないかというところに、また、その疎通の阻害しているところもあろうかと思うので、これはやはり当然、その疎通を解消するという場合には、すぐ応答できるような整備もしなきゃならぬと私は思うので、そういう実態について、当然私は調査さるべきものと思いますが、その点について電電公社はどうお考えですか。
  191. 山下武

    説明員(山下武君) 先生の御指摘の点もごもっともだと存じますが、私のほうの海岸局における設備の状況、それと与えられておる周波数とを対比いたしまして、ある時間帯における疎通能力がわかるわけでございますが、現在のところ、各時間帯を見ますると、その疎通能力いっぱいに運用しておる時間はほとんどないのでございまして、通数と今の周波数設備を伴う周波数の運用能力から見ましてオーバーはしていないのだというふうに理解しておりますので、先ほどから申し上げておりますように、現在の海岸局の能力そのものが欠けるのではなくて、ある時間帯において多少起こることはあるかもしれませんが。そのような理解でございます。
  192. 永岡光治

    永岡光治君 これは十分ひとつ、船側のほうの状況も調査していただいて、その誤まりなきを期してもらいたいということが一つと、それからもう一つは、二年間で大体完備できるという見通しをお持ちになっているようでありますが、予算はおよそどの程度必要といたしますか。
  193. 山下武

    説明員(山下武君) 先ほども申しましたように、いろいろと公社としては検討いたしておりますが、これは本案が実施されまして以後における実情、実際の電報というものが、どのように変化するかということを見た上で、私のほうの所要の設備数を考えていく予定になっておりまして、それと合わせて、裏時間の利用による効率的利用の余地がどの程度あるのか、そういうふうなのを見た上できめることになっておりますので、今のところ、はっきりとここでどの程度の予算だというふうに申し上げることになっておりませんが、公社といたしましては、これに即応した施設の増強をいたす、そういうふうに方針をきめたいと思います。
  194. 野上元

    ○野上元君 一つだけ聞いておきます。  この電波法改正には、三年間の暫定期間が設けられておりますね。その間何をやるんですか。
  195. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 先ほど来お話がありました公社としましては、海岸局の設備増の準備、それから、先ほどこれもお話がありました裏時間制、これを一体、どの範囲に適用したらいいかということを検討したい。それからおそらく気象台のほうとしましては、先般来お話がありましたように、気象観測業務というものを維持するための準備、こういったことが行なわれるわけであります。
  196. 野上元

    ○野上元君 この問題は、あなたのほうが電波法改正するのですから、改正された暁において、いろいろの障害が当然起こるはずですから、その問題について、あなたのほうから、運輸省なら運輸省に対して、これとこれとこれを手を打ってもらいたい、電電公社には、これとこれとこれを手を打ってもらいたい、気象庁には、こういうふうにやってもらいたいと、こういうふうにやらなければならぬはずですが、そういうことをやっておりますか。やっておったら、ひとつ文書を見せてもらいたい。
  197. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 運輸省の所管の分につきましては、当然この法案が成立しますれば、運輸省として所管のものについては自主的に措置すると思いますけれども、われわれのほうとしても、念のためにこの法案が成立しましたらば、いろいろアドバイスすることはしたいと思います。それから電電公社は、先ほど運用局長から話がありましたように、一応、もうすでにそういう内部的な体制になっておるようでありますので、この法案の実施に支障のないような措置を当然されると思います。
  198. 野上元

    ○野上元君 私が聞きたいのは、過去においてもこの電波法改正は問題になっておるわけですよ。そのたびに、郵政当局としては時期尚早というので踏み切らなかったわけですね。だから、それの理由があるでしょう。踏み切らなかった理由が、今回は踏み切ったら踏み切っただけの理由があるはずですね。その理由を確実にしてもらえばいいわけです。こういうものが整備されればよろしい、三年間に。したがって、あなたのほうとしては、運輸当局に対して当然要求されなければならぬはずなんだ。こういう事象が起きるから、この点については大丈夫ですか、それは大丈夫です、電電公社に対しては、公衆通信疎通上あなたのほうが監督官庁なんだから、こういう設備を設けなさい、こう言って、あなたのほうが指令しなければならぬはずなんだ。  そういうことをおやりになっていますか。具体的にあげて下さい。どういうことをやるのか。あなたのほうが指示されたことについて。
  199. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) 野上さんの仰せは、気象については、かく処置すべし、海岸については、かく処置すべしということを運輸省のほうに、すべしということじゃなくして、したらどうかとか、してくれたら、私のほうは電波法改正してもいいから、改正するについては、こういうことをしてほしいということを要望すべきだとおっしゃるのですか。私はそれは必要ないと思って、先ほどからそれを答弁しているのですけれども気象の問題は、運輸省のほうが当然、どういう支障が起こってくるかということがわかっておるのでして、所管事項ですから、その穴埋めをするのは当然だと思います。海岸の問題、またしかり。電電公社に対して、通信疎通上大きな支障のないようにすることを指示いたしまして、電電公社がそれを引き受けております以上、それで気象の問題について、こちらが言う必要は毛頭ないように私は考えております。したがって、この際気象の問題について、どういうふうな処置をしてほしいということを要望する意思はございません。
  200. 野上元

    ○野上元君 あなたの言うことを聞いておると、裏返していえば、電波法改正は、運輸省の要望に沿ってやったのだから、当然運輸省としてはしかるべき措置が講ぜられておるはずだ、したがって郵政当局は、とやかく言うことはないじゃないか、こういう意味ですか。
  201. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) これが私のほうで積極的に電波法改正をする。向こうのほうとしては、気象通報上非常に困るからやめてくれというようなことがあった場合には、それでも私のほうで、どうしてもこれを改正する必要があると認めた場合は別でございますけれども、運輸省のほうも非常にこれを切望しておるという段階において、運輸省所管の問題で、もし穴のあくようなことがあったら、運輸省が当然処置すべきことであって、これは私のほうからとやかく、こういうふうにしたらよかろうということを言う必要がないと思います。
  202. 野上元

    ○野上元君 あなた、形式論を言われているのですが、かりに電波法改正して、運輸省が三年間なら三年間に、そういう措置ができないという場合には、電波法改正というのは実際に爼上に上らないわけでしょう。
  203. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) 御質問は、気象上非常に困るからということを言ってきた場合に、われわれのほうは爼上に上らないかという問題ですが、それはそのときの状態だと思います。この改正の動機というのが、雇用の状態から出発いたしておりますことは、先ほどから申し上げているとおりでございますので、それをカバーする他の方策がありますれば別でございますが、それをカバーする方策が他にないとするならば、この改正案はどうしてもやらなければならないものだと私は思います。その場合に気象にどうしても支障があるというならば、運輸省はそれはその面で、気象をどう穴を埋めていくかについて別途措置すべきではないか、この電波法を使って気象の問題の穴埋めをしていく考え方というものは、私はどうしても筋でないように思います。
  204. 野上元

    ○野上元君 私が先ほど質問をいたしましたように、この電波法改正は、何回も問題になっているのだが、郵政当局に踏み切らなかった理由があるわけです。それはまだ時期尚早だということであります、おそらく。いろいろな問題があったと思う。これは昭和二十五年ごろから問題になっていることでありますから、今回踏み切ったには何かの理由があったのじゃないか、前に踏み切らなかった理由があるはずだ。その前に踏み切らなかった理由が、今回は全部解消したのか、あるいは満足したのかということがやはり問題だと思うのであります。その点が、どうも明らかでないのです。
  205. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) 従前踏み切らなかった理由は、先ほども申しましたように通信疎通という郵政省の責任を果たす上において、二十四時間なら二十四時間に分布してくれたほうが便利であるから、それでその点から言って踏み切らなかったわけです。  しかし、現実の問題として、しかもその当時においては、雇用の状態というものはそう逼迫をしないで、三人乗せておいても、日本の経済の全体の運営には支障のない状態であるから、そういう立場をとっておったわけですけれども、現実の問題として雇用の状態が逼迫した今日においては、どうしてもその面からの一つ要請が出てきた。そこで、通信疎通の問題について研究したところが、従来どおり——全く従来どおりとはいかないけれども、大きな支障なく済ませるように電電公社も施設を拡充するし、そういう措置がとれるということになりましたので、ここに踏み切ったのでありまして、気象関係がどうのとか、海難の関係がどうのとかいうことが電波法改正することにちゅうちょせしめたということは、私は郵政省の立場としてはないと思っております。
  206. 野上元

    ○野上元君 そのところは言い方がどうも釈然としないんですが、あなたのほうは運輸大臣に対して、これをあなたのほうの言うとおりに改正した場合には、こういうふうなことになります、それでもあなたのほうはお困りになりませんか、大丈夫ですかと念を押されておるわけですから、だから、あなたのほうは、気象とか海難のほうは関係なしにこれをおやりになったというふうには、どうしても考えられない。その点の条件が満足したから、今回踏み切ったんじゃないか。こうわれわれとしては解釈せざるを得ないんだけれどもね。
  207. 迫水久常

    ○国務大臣(迫水久常君) たびたび答弁申し上げておりまするように、そういうことを照会いたしましたのは、まことに老婆心のしからしむるところでありまして、本来言わなくてもいいことを言ってるじゃないかと私は思っております。したがって、私がかりに郵政大臣の責任者でありまして、そういう文書が回ってきたときには、これは、君こういうことを郵政省として言う必要があるか、それは運輸省の話じゃないかと言って、おそらく赤棒を引いただろうと私は思うんですけれども、遺憾ながらその文書は前に出ておるものですから、それをたてにとられて御質問を受けますというと、そういう御質問も成り立たないわけでもないと思いますけれども、現在私が責任を持っての改正案を提案いたしました立場におきましては、これは全く言う必要のなかったことと、こう思うわけです。
  208. 野上元

    ○野上元君 まだその点がどうも釈然としないが、山下さん、ちょっと伺いたいんですが、三年間の間にあなたのほうでやれることですね、準備されること、それは何々ですか、具体的にあげて下さい。
  209. 山下武

    説明員(山下武君) あまりこまかいスケジュールまで今全部作っておるわけじゃありませんが、本案実施後は、いわゆる経過期間中となりまして、三人配置が二人配置になるところが非常に多うございますので、それに対応した運用上の要員の配置、必要があれば訓練をしたり、増員したりする必要があると思いますが、そういう運用上の措置を講ずる必要があると思います。  それから郵政省にお願いいたしまして、新しい周波数を割り当てていただきまして、その周波数の何といいますか、試験といいますか、それが実際上どういう性能のものであり、今後の電波疎通上に、どのような働きをしてくるかということをよく実験する必要があると存じますが、それらと並行いたしまして、海岸局における、その周波数の増波に伴います設備の増加を計画して、施設整備をしていかなければならぬ。したがって、またそれに応じた保守要員等の充実もしなければならぬかと思いますが、大体の筋といたしましては、そういうようなところが公社としてやっていくことだと思っております。
  210. 野上元

    ○野上元君 周波数の割当について、電波監理局長のほうではきめておられますか、どういう波を割り当てるのか。
  211. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 幾つかの波を用意しております。ただその中には、実際に試験電波を出してみないと、はたして外国混信なしに使えるかどうかという点に疑問のものもあるわけであります。そういう点も試験をしたい、こういうわけであります。
  212. 野上元

    ○野上元君 それでは、まだきまってはいないわけですね。
  213. 西崎太郎

    政府委員(西崎太郎君) 大体、もう具体的な波がきまっておるわけであります。ただその中に、実際に通信してみて使える波と使えない波が出てくるのじゃないかというわけであります。
  214. 野上元

    ○野上元君 戻って、山下さんにお伺いしますが、今あなたがおっしゃった程度の設備で十分に海岸局としてはやっていける、こういうふうにお考えですかあるいは三年たった後は、さらにまた別のことを考えておられますか。
  215. 山下武

    説明員(山下武君) ただいま申しました趣旨によりまして経過期間中並びに本実施以後におきましてもやっていけるという見通しでございます。
  216. 野上元

    ○野上元君 そうしますと、別に新たに海岸局を増設するというようなことは、全然考えておられないですか。
  217. 山下武

    説明員(山下武君) 局といたしましては、今の長崎と銚子の二局でけっこうでございまして、周波数をふやしさえすればよろしいと思っております。
  218. 野上元

    ○野上元君 そうしますと、その予算というものは、総額から見ても大した額ではないということですね。
  219. 山下武

    説明員(山下武君) 電電公社の建設予算のワクから見れば、さほど問題となるほどの金額とは思っておりません。
  220. 野上元

    ○野上元君 さらに提案理由の説明の中に、海運界の現況にかんがみというような問題もありますし、それから聴守義務時間の軽減ということがうたわれておるわけですが、それらの問題についても詳細に、実は海運界の状況等についても質問したいのですが、きょうはもう時間が過ぎておりますから、この次に回わします。
  221. 安部清美

    委員長安部清美君) 他に御発言もなければ、本日のところ、本案に対する質疑はこの程度にとどめておきます。  これにて散会いたします。    午後五時五十七分散会    ————・————