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1962-05-02 第40回国会 参議院 地方行政委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年五月二日(水曜日)    午前十時十七分開会   —————————————   委員異動 五月一日委員米田正文君及び村上春藏 君辞任につき、その補欠として郡祐一 君及び小柳牧衞君を議長において指名 した。 本日委員小柳牧衞君、郡祐一君、館哲 二君及び鍋島直紹君辞任につき、そ の補欠として北畠教真君、井川伊平 君、村上春藏君及び米田正文君を議長 において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 武治君    理事            野上  進君            増原 恵吉君            秋山 長造君            基  政七君    委員            井川 伊平君            北畠 教真君            西郷吉之助君            津島 壽一君            野本 品吉君            村上 春藏君            湯澤三千男君            米田 正文君            加瀬  完君            松澤 兼人君            矢嶋 三義君            中尾 辰義君            杉山 昌作君   国務大臣    通商産業大臣  佐藤 榮作君    労 働 大 国 福永 健司君    自 治 大 臣 安井  謙君    国 務 大 臣 藤山愛一郎君   政府委員    経済企画政務次    官       菅  太郎君    経済企画庁総合    開発局長    曾田  忠君    文部大臣官房長 宮地  茂君    労働政務次官  加藤 武徳君    労働省職業安定    局長      三治 重信君    建設政務次官  木村 守江君    建設省計画局長 関盛 吉雄君    自治政務次官  大上  司君    自治大臣官房長 柴田  護君    自治省行政局長 佐久間 彊君    自治省選挙局長 松村 清之君    自治省財政局長 奥野 誠亮君   事務局側    常任委員会専門    員       福永与一郎君   説明員    大蔵省主計局調    査課長     鹿野 義夫君    自給省行政局振    興課長     山本  明君   参考人    日本放送協会会    長       阿部真之助君   立教大学助教授 久保田きぬ子君    読売新聞論説委    員       宮崎 吉政君    一橋大学教授  田上 穰治君    千葉大学助教授 杣  正夫君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○公職選挙法等の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○新産業都市建設促進法案内閣提  出、衆議院送付)   —————————————
  2. 小林武治

    委員長小林武治君) ただいまから委員会を開会いたします。  初めに、委員異動について御報告いたします。  五月一日付をもって委員米田正文君、村上春藏君が辞任され、補欠として郡祐一君、小柳牧衞君が委員に選任され、さらに五月二日付をもって委員小柳牧衞君、郡祐一君が辞任され、補欠として北畠教真君、井川伊平君が委員に選任されました。   —————————————
  3. 小林武治

    委員長小林武治君) 本日は、公職選挙法等の一部を改正する法律案について、参考人意見を聴取することになっております。参考人の氏名はお手元に差し上げてございますとおり、午前中に三人、午後二人の方にお願いいたしております。  参考人の方々に一言あいさつ申し上げます。  本日は、非常に御多用中のところを当委員会のためおいでいただき、まことにありがとうございます。参考人皆様にはそれぞれの立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと存じます。  議事の順序といたしまして、まず、お一人約二十分程度の御意見をお述べを願い、後刻委員の質問にお答え願うことにいたして進めて参りたいと存じます。よろしく御協力のほどをお願いいたします。  それでは、まず、阿部参考人からお願いいたします。(拍手
  4. 阿部真之助

    参考人阿部真之助君) 私はどうも法律の問題には頭が弱いほうなんで、こまかいことについては申し上げることができないので、はなはだ大ざっぱな、選挙法改正に対する私の考え方を申し上げて、もし多少なりとも御参考になればしあわせと思います。かように思っている次第であります。  私は、そういうこまかいことには今のところたいした興味を持たぬということは、大体今度出された答申案というものが暫定的なものであるという性格であることからも来ていることなんです。ちょうど私もこの審議会一員として、改正調査会には出席しておったのでありまするが、当時一番最初に問題になったことは、大体この基本的の問題というものは、区制の問題がきまらないというと、罰則とか選挙運動というような、こまかいことを規定しても役に立たなくなるのじゃないか。だから、まず区制について審議をして、それがきまった後において、選挙運動とか、あるいは罰則というようなことをきめるべきじゃないかというような議論が出たのでありますが、とりあえず、参議院選挙も行なわれることでもあるし、この区制の問題を扱うことになると、なかなか基本的の問題で手間もかかるし、あるいは間に合わないかもしれない。だから暫定的に、ひとつ現行法基礎にしてそれらの問題を審議する、これと並行して基本的の区制の問題を審議していくということにしたらどうか。要するに、区制の問題がきまったら、ここに出された結論というものは再審議する、再検討する、そういうことでなければならぬというふうな話し合いで、区制の問題と罰則の問題、その他選挙運動に関するそういう問題が並行的に審議されてきたのでありますが、区制に対する問題はまだ結論が出ていないのであります。今度出された答申案というものは、あくまで一時的、暫定的、もっと極端な表現をすれば、今度行なわれる参議院選挙が済んだならば、新しく結論が出た区制によって審議をし直すということになる性格を持つ答申案なのであります。だから多少恒久的な立法措置とは性格を異にしているということを考えなければならぬことだろうと思うのであります。  今、世間で問題になっていることは、調査会で出された答申案が、途中において政府及び政党、そういう方面において修正されている、それははなはだ不都合である、そういう議論新聞その他に散見しておりまするが、この点についても考えてみる必要があるだろう。一体この調査会で出された答申案というものが、どの程度尊重されなければならないかという問題なのであります。私は調査会一員として、調査会が出したその答申案というものは、できるだけ完全に尊重されることを望むということは、これはもう他の委員諸君と少しも変わりはないのでありまするが、しかし、一般論として申し上げると、調査会で出されたものを一厘一毛も掛値なく、そのまま行なわなければならぬものであるかどうかというものでもなさそうに思います。多少幅があった考え方を持つべきであろうと思います。実際政治においてはそういうものだろうと思います。調査会諸君といえども神様じゃないのですから、その答申というものは、完全無欠であるということはあり得ないことなんで、そういう不完全なものに対して、もっとよりよき完全なものに修正を加えるということは、これは当然であろうと思います。  それから調査会答申というものは、法律的に、立法的なそういう形において答申がなされたわけじゃないのでありまするからして、立法の際においては、憲法の問題その他他の法律の問題との関係において答申案そのままに行なうことはできないという場合がある。多少修正を要するということもあり得るのじゃないか。それからいま一つは、より完全のために、よりよくするために修正を必要とする場合もあり得る。第三の場合は、政府もしくは国会もしくは政党、そういうふうな立場から、自分たちの主張を曲げてまでも調査会答申に従わなければならぬというものでもないだろう。そういう場合においては、政府もしくは政党責任において、多少の修正をやられるということは、これは当然なことであろう。この場合に拭いて、いろいろの問題が起こってくる、いろいろの批評が起こってくることはもちろんで、そのよしあしというものは、これは世論によってきめられることなので、一切修正相ならぬ、調査会結論どおりに行なわなければならぬというほどのものではないと思う。ただし、一般調査会とは選挙法の場合は多少性格が違うところがある。これは議員皆様の直接利害が関係していることなので、この修正にあたってはとかく世間疑惑を招くおそれがあるので、修正に対しては特に慎重を要するということなのであります。たとえて申しますと、今度の修正された条項一つに、事前運動でも、演説会に関する事前運動というものは認められてもいいのじゃないかということで、たしか百回程度演説会は認められるというような答申案が出されたものと記憶していますが、この条項が削除されているのであります。これはどういうふうな意味でこの条項が削除されたか私は知りませんが、まあ邪推してみれば、現議員がこういう条項があると不利益である、百回も事前運動を新しく出る人にやられている、現議員国会へ出ていろいろ仕事をしている、この場合に、百回も自分選挙区でもって演説会をやられちゃこれはたまらぬというふうな自分たちの利益のために、この事前運動演説会条項を削除した、こういうふうに邪推されるのであります。これは相当理由があることだろうと思う。私はまだ拝聴いたしておりませんが、とにかくそういうふうな邪推をされるおそれが多分にある。だから、この修正をするにあたっては、一般の人にそういうふうな疑惑を持たせない十分な慎重な考慮を必要とするということは、これは当然のことだろうと思うのであります。それだけの準備がなされたかどうかということは、これはひとつ世論に聞いてもらうよりほか仕方がないのですが、とにかく選挙法の場合においては、できるだけ調査会意見が尊重されるということは、きわめて重大なことだろうと思うのであります。  現在一番問題になっている要点というものは、多分この連座制規定に関する条項であろうと思う。これが修正によって骨抜きにされた、こういうふうな世間疑惑もしくは非難だろうと思うのでありまするが、私自身考えてみても、この点については、どうしてこういうふうな修正がなされたかわからないですが、大体連座制というものができてきた由来を考えてみると、連座制そのものは実に古くさい立法だろうと思うんです。今どき罪九族に及ぶというようなそういう法律日本の国に現在においてあるということは、好ましい状態ではなかった。現在でも私はないと思うんです。しかし、こういうものが出てきた理由考えてみると、どうも選挙法があってもそれが行なわれてない。それで、たとえば買収、供応というような行為があっても、責任選挙運動者に課せられて候補者には及ばない。候補者は逃げてしまう。これをつかまえるにはどうしても運動者の罪をやっぱり候補者連座させんきゃならぬという社会一般要求から連座制というこういう古くさい立法ができてきたものだろうと思う。ところが、この連座制というものの法律ができてみても、抜け穴がどこにあるか知らぬが、実際はこれを適用されたという例はほとんどない。あるいは一、二あるか知らないが、私は寡聞にしてこの連座制という規定が行なわれたということを聞いたことがない。そこで世論は、これはどうも抜け穴だらけだからもっときびしくしなければならぬという、そういうムードが今度の答申案に現われて、この連座は親族、妻子何とかというような罪全く九族に及ぶというようなずいぶんきびしいそういうふうな答申にまでなってきたんだろうと思うんです。だから、いわれ考えてみればいわれのないことじゃないんですが、しかしながら、こういう立法の存在というものが好ましいか好ましくないかということは、これは実際上の必要がこうさせたことなんで、どうもいかんとも仕方のないことだろうと思うんですが、同時にまた、連座制規定については裁判がどうも長過ぎる。一ぺん三年、五年かかって裁判がきまったあとでまた無効訴訟によって裁判のし直しをしなければ連座規定が実行されない。こういうことでは困るから、裁判を何とか短縮しなければならぬ。ところが、なかなか裁判を短くするということは、手がないから、今度の答申案では、裁判の確定と同時に連座規定が適用されて当選が無効になるというような答申案がなされたと思う。こういう点についても私は多少の疑問はあると思うが、実際の世間ムードというものは、そうでもしなければ連座法をこしらえても何にも役に立たぬということから起こってきたことだろうと思う。今度の修正なんか見ますというと、何か三分の一以上の主宰者の犯罪の場合には連座規定がある。ところが、こんなことはすぐ抜け道ができる。みんな四分の一ずつ総括主宰させれば、四分の一だからこれは連座しないというようなことになって、世論がこれに失望したということはこれは当然のことだろうと思う。そういう点については、この修正に対しては私ははなはだ遺憾の意を表せざるを得ないわけです。しかしながら、全体を通して今度の提案を見ますというと、相当広い部分において調査会答申というものは取り上げられていて、現行法と比較してみるならば相当進歩しているということは認めざるを得ないわけなんです。だから、私自身考えとすれば、修正に対して多少不合理だと思われたら、再修正してそうしてもっとすっきりした姿にしていただければ申し分はないと思うんですが、実際政治あり方、現状においては、もう会期が切迫した今日においてまた修正を再修正してすっきりした姿にまで持っていくということは、相当困難の事情があるだろうと思う。こういう事情のもとにいつまでも論争を重ねて、何ほどか進歩を遂げた、進展をしたこの提案というものを成立できないような状態に置くことは、これは何としても私は適当じゃないと思う。  大体、国会政治あり方というものは、すべて物事を相談づくで、多数の意見を話し合って相談づくできめるということなんですから、どうしてもある点においては、完全な一貫性というものは用いることはきわめて困難で、だから、オール・オア・ナッシング、一かそうでなけりゃなくなっちまうという、そういうふうな考え方というものは、国会政治においてはとるべきものじゃないのだろうと思う。一つに気にいらないからあとは全部反対する、こういうのは、ある意味においては革命思想に通ずる考え方だろうと思う。ことに今申し上げた連座規定が何ほどか緩和したといえば緩和だろう。われわれの立場から言えば、何かぼかされた、こういうことははなはだ遺憾ではあるが、他にはなはだ時期に適した改革も行なわれているので、その点においてこの法案というものはできるならば改正すべき点は再修正すべきものだろうと思うんですが、しかし、前に申しました各種の情勢からそれが短時日の間に困難であるとすれば、そういう点は眼をつぶして、そうしてこの法案は一応通して、次の参議院選挙に適応したほうが私は適当だろうと思う。やがて調査会区制について審議をして結論を出すべきものだろう。今調査会区制に対する審議をストップしたということは非常に私は残念なんです。大体現行法でも選挙はやれないことじゃない。現行法が行なわれるまでには、もう過去何十年の経験を積み重ねて現行法ができてきたんですから、現行法だけでも私はやっていけないことはないとは思うんですが、しかしながら、この改正案というものは現行法に何ほどかの進展を示したということの意味でこの原案というものはやっぱり通して、少なくとも次の参議院選挙には適応するようにしたほうが、何ほどか選挙をよくするほどには役立つのじゃないかと思う。そういう意味で私は今度の政府によって修正されたその部分が不適当であるならば、この参議院において審議されて再修正されるということは望まれることでありまするが、くどいようですが、これは事実上に非常困難だという事情があるならば、政府原案によって一応それをもとにして次の選挙は行なったらよくはないか。  大体、私は今度の選挙法調査会ができたわけはどこにあるか、これは政府でないからわかりませんが、多分人口選挙区とのアンバランスということが、主たる、痛切な要求だったろうと思う。ところが、この点に対して、調査会はまだ結論を出されていない。  いま一つは、この選挙制——選挙区制に対する再検討。まあ私自身の私見を言うならば、どうしても選挙は小選挙区制でなければならぬものだろう。今あるような中選挙区制だと、どうしてもこれは政党の内部に非常に派閥というようなものが起こってくる、選挙の結果も誤りであるというようなことで、まあいろいろの意味で私は小選挙区制でなくちゃならぬ。そこからこの選挙運動の問題、選挙罰則の問題、その他をいま一ぺん審議し直すということが適当だろうと思うのでありますが、この調査会というものはもう六月で実は任期が切れるんで、それから先の、政府はどういうお考えを持っているか知らないが、私は、政府に対して望ましいことは、この選挙区制、ことにこれに付随して人口とのアンバランスという問題を解決するために、さらにこの調査会を継続するなり、新しい調査会を発足させるなりして、この問題を解決することがきわめて私は必要だろうと思う。それと同時に、今度の政府修正案に不備の点があったら、その際において、再検討することが最も現実的な、適切なやり方じゃないか。それまではしばらく政府のこの原案を認めて、そうして次の選挙に臨まれるということが最も実際的な行き方じゃないか。いたずらに、何か原則論をお互いにやり合って、時日を空費するということは、この際、私は現実的な、国会主義的な行き方じゃないじゃないかと、まあかように存じている次第であります。  まあ私の考え方は、大体こんなところでございます。(拍手
  5. 小林武治

    委員長小林武治君) ありがとうございました。   —————————————
  6. 小林武治

    委員長小林武治君) 委員異動がありましたので、御報告いたします。  本日付で委員館哲二君が辞任され、その補欠として村上春藏君が委員に選任されました。   —————————————
  7. 小林武治

    委員長小林武治君) 次に、久保田参考人にお願いいたします。(拍手
  8. 久保田きぬ子

    参考人久保田きぬ子君) 久保田でございます。  公職選挙法等改正法律案に関しましては、約二カ月近い間の衆議院の御審議の過程で問題点大かたが論じ尽くされてしまっておるように私には思われまして、今さら、賛否いずれにいたしましても、何も指摘することがないような気がしております。したがって、きょうお呼び出しにあずかりまして、これから私がお話し申し上げようとすることも、その大部分がこれまで多くの方によって表明されておりました意見の繰り返しになるんじゃないかと思いまして、その点たいへん恐縮で、お許しを願いたいと思います。  で、私が第一番に申し上げたいと思いますことは、今回の改正法律案基礎になっておると言われておりまする昨年十二月二十六日に提出されました選挙制度改正に関する選挙制度審議会答申についてでございます。この答申の内容は、細部の点につきましては、いろいろな異論もございますと思いまするけれども、全体として見ましたときに、明るい、自由な、公正な選挙という国民の要請を私は相当程度に満たしているものだと思います。で、とりわけ、長年の間、一部から要求されておりました連座制を強化、徹底いたしました点、あるいは立候補予定者の公示前における個人演説会をお認めになったこと、あるいは政治資金につきまして、国と財政的に関係のある団体が寄付をする場合に、選挙に関してはもとより、政治活動一般に関しても、いけないと言って禁止いたしました点などは、選挙言論を中心にした正常なものにしようという意味からはきわめて重要な点でございまして、この答申に基づく今回の改正に大きな期待を寄せましたのは、私だけではなかったと思うのでございます。  ところが、ただいま本院において御審議になっておりまする改正案原案を拝見さしていただきますと、私が今申し上げました一番重要だと考えました答申の諸点が、全くと言ってもいいくらい取り入れられていないのではないかと思うのでございます。で、申し上げるまでもなく、この選挙制度審議会設置法で、答申の尊重を規定しておりますことをも考え合わせますときに、この点私は非常に遺憾でございまして、この点をまず第一番に申し上げさしていただきたいわけでございます。  次に、改正法案原案の一、二の点について、私の考えを申し上げさしていただきます。  その第一は、事前個人演説会を、特例としてある程度認める規定を削除した点でございます。選挙におきましては、それが個人本位選挙であっても、あるいは政党本位選挙でございましても、何よりも重要なことは、申すまでもなく、選挙の争点に関する候補者並びにその御所属になっておられる政党見解を、選挙民の間に十分徹底させることだと思います。で、投票に際しましての判断の材料をできるだけ提供することは、候補者並びに政党の私は責務であろうかと考えております。そのためには、原則といたしまして、言論による選挙運動は、でき得る限り自由として、制限必要最小限度にとどめるべきではなかろうかと思います。この意味におきまして、事前個人演説会をある程度認めることは、私は妥当なことだと考えます。この規定を削除いたしました修正提案理由によりますと、事前個人演説会を認めると、選挙運動が常時行なわれることになって、結局多額の経費を必要とする。すなわち、金のかからない選挙が実現できないからだというふうに私は拝見いたしましたが、個人演説会が純然たる演説会である限りにおいて、そうしてまた、回数等にたとえば審議会答申によりますれば、百回以内というような制限がございますようでございますが、そういうふうに回数等においての制限を設けたならば、私は、それほどおそれるほど多額費用を要するものではないのではないかと思います。かりに相当費用が必要でございますといたしましても、第一に、それは、私は何よりも選挙民に対する政治教育になるのではないかと思います。時々の政治問題に対する見解、批判というものを選挙民の前に提示して参りますることは、選挙民政治意識と申しましょうか、そういうものの向上に少なからぬ貢献をすると思います。そうして国民政治的な判断力というものが、次第に高まってくるのではないかと思います。それから第二に、この措置は、先ほども出ましたように、私は有能な新人登場を容易にする道を開くことになると思います。選挙現実を拝見さしていただいておりますると、次第に新人登場が困難になってきておりますることを考えますときに、有能な人を国会に送るためにも、私はこの制度は、ある程度認めるほうが妥当ではないかと思います。そのほか、この措置には、弊害の面よりも私はむしろプラスになる面のほうがずっと多くあるような気がいたしますし、また一昨年の総選挙のときには、いわゆる百日選挙というような言葉が新聞紙上にもちらついておりましたし、また今年のこれから行われようといたしております参議院選挙につきましても、新聞等は、すでに目に余る事前運動が行なわれていると伝えられております。現実がそうであるといたしまするならば、言論による事前運動だけでも認めることのほうが、私は実態に即したやり方ではないかと思います。法律違反というものをできるだけ少なくさせるとともに、悪質な事前運動よりも、選挙本来のあるべき姿でございます言論によって争っていくというその行き方選挙をもっていくという意味からも、私は個人の事前運動を、原則によるものだけは認めるほうがいいのではないかと思います。そういう意味で、修正されました個人演説会を認める規定の削除には、反対するものでございます。  第二は、連座制について申し上げたいと思います。今回の改正法律案におきましては、いろいろの点で、たとえばポスターを破棄したものは、選挙の自由を妨害する罪だとか、あるいは短期時効の廃止等々、罰則を強化いたしておりまして、その意味におきまして、現行法よりは一段の改正がなされていると私も思います。しかし、厳正な選挙という観点から一番大きな意義を持つものは、私は、連座制の強化徹底ではないかと考えるわけでございます。先ほども、個人主義社会におきまして連座制というのはきわめて前近代的だという御批判もございました。私も全くそういう考えでございまするけれども、選挙の実態を長年ながめさせていただいておりますと、日本の実情からいたしまして、まさに連座制が、特殊日本的な風土の中にこそ連座制というものが必要である。このような制度がなくなるときが望ましいことではございまするけれども、実態に即しましたときに、連座制を強化徹底させることよりほかには、何か選挙の粛正をはかる有効な措置かないような——ほかにもございましょうけれども、最も有効な措置一つであるような私は気がいたします。それゆえにこそ、答申に、連座制に関しましてあのようなきびしいものになさったのだと私は思います。それを原案では、連座制の対象からいわゆる親族条項をはずしておられまするし、さらに修正におきましては、法の明確性という見地から、地域主宰者に関する規定を、その「選挙区の三分の一以上」云々というふうにお書きになっていらっしゃいますけれども、はたしてそれが厳格に守られるものか。これはまさに連座制というものを空文化する、有名無実なものにする規定ではないかというふうに、私には思われるのでございます。その意味におきまして、この連座制に関しましては、私は、答申案に基づいて忠実にこれを法文化していただくことを主張したいものでございます。  第三に、政治資金に関する規制についてでございます。選挙の腐敗堕落の根源が、政治と経済の結びつきにございますことは、今さら私が申し上げるまでもございませんで、わが国だけでもなく、諸外国の例にならいましても明白なところでございます。これを断ち切らなくては選挙粛正というものは、私は望めないものだと思います。原案におきまして、選挙に関しての献金はこれを禁止しておりますが、選挙に関しての献金と政治活動に対する献金というものは、観念的には区別できると思います。しかし、現実にはたして峻別できるものでございましょうか。私はこういう意味から、とかくの疑惑を持たれる団体からの献金は一切禁止して、その政治資金というものは個人一本にすべきものではないかという気がいたします。この点につきましても、その選挙制度審議会答申を、私は、尊重するのが妥当ではないかと思うのでございます。  以上の三点につきまして、簡単に私の気持を申し上げさせていただきましたが、最後に一言つけ加えさせていただきたいことがございます。  私のようなものが申し上げるまでもございません、選挙制度というものは代議制度の根幹でございます。選挙民の意思ができるだけ正確に反映される選挙が行なわれない限り、私は、代議制は健全な機能を営み得ないと思います。日本における議会制が健全に機能し、発展していくために、選挙制度を御決定になります国会が、目前の直接的な利害関係をお離れになって、大局的な見地から、あえて現職にいらっしゃる方々の不利益をもお忍びになりまして、よりよき選挙制度を御決定下さるように、そのためには、中立的な第三者的な立場にあるもの、たとえば選挙制度審議会の今回の答申のようなものの内容を、先ほどもございましたように、全部をそのまま文字どおりと、私は、もちろん申し上げるわけではございませんけれども、そういう三者的なものから出されました内容を実質的に御尊重するという慣行をお作り上げになっていただくことを心より切望いたします。  それに関連いたしまして、先ほども、審議会の最も重点は区制の問題にあるということを伺いましたし、そのように私も了解いたしております。この点に関しまして、すでに御承知の方もいらっしゃると思いますが、三月の二十六日に、アメリカの最高裁判所におきまして注目すべき判決が出されておりますので、御参考までにそれを御紹介申し上げさせていただきたいと思います。これは、いわゆるベーカー対カーの事件といわれるものでございますが、アメリカにおきましても、日本におきますと同じように、選挙区制議員の定数が近年著しく不均衡になって参っております。この不均衡を是正するために、かなりしばしば、そして長年にわたりまして、いろいろの議論が行なわれて参っておりまするけれども、やはり立法議員の現職にいらっしゃる方の直接の利害に関係いたしますものだけに、どうしても実現できないでおりました。その結果、ついに——これは各地に起こっている問題でございますが、その一つでありますが、テネシー州議会の定員是正の問題が今回裁判上の争訟の問題となりまして、最高裁判所において争われたわけでございます。最高裁判所は、この事件に対しまして、従来この棟の問題に関しましては、政治問題という理論によりまして判決を下すことを回避いたして参ったのであります。しかし、ベーカー事件におきまして、この立場を捨てまして、アメリカの憲法の保障する平等条項に違反するといたしまして、州立法部の議員の定数の不均衡の是正を判決によって命じたのでございます。この事件は、州立法部の定数是正の問題でございまして、コングレス、連邦議会のそれではございませんが、この判決の意図するところは、いわば第三者である裁判所が、アメリカの民主政治を維持擁護するために、あえて定数の問題に介入してきたことだと思います。その意味において、歴史的判決だと言われ、今後にいろいろな問題がございましょうとも、非常に大きな意義を持つ判決だと言われておるのだと思います。この判決の下されましたことをきまして、私は、選挙制度に関する聞決定は、国会の御任務ではございますが、あまりにも直接的な利害関係のあることでございますので、どうしてもお互いに人間である以上、これはどうしても第三者的なものに、日本でございましたら審議会答申というようなものを尊重せられることが必要であるということを痛感いたしましたので、よけいなことでございますけれども、付言させていただきました。  以上でございます。
  9. 小林武治

    委員長小林武治君) ありがとうございました。  次に、宮崎参考人にお願いいたします。
  10. 宮崎吉政

    参考人(宮崎吉政君) 私は、まずこの法案を批判するにあたりまして、基本的な考え方を先に申し上げます。  それは、第一番目には、選挙とは、政治におきまするところの、そのほかのいろいろな国民作用の諸方式、たとえば請願デモ、交渉、圧力団体の働きかけといったようなものに比べまして、選挙はその中心である、いわば唯一の表通りの行事でありますが、すべての国民が漏れなく、公平に、かつ、明朗に参加することが大事だというふうに考えております。にもかかわらず、最近選挙が決してこうした理想どおりに行なわれないことから今日のように選挙法改正が取り上げられたのだ、これをまず第一に考えるのであります。  第二番目には、選挙法改正というものは、これは場合によっては政治制度をも変革するところの直接の契機となり得るものであります。ルネ・キャピタン教授あるいは宮沢俊義教授が言っておりますが、一種の革命さえ引き起こしかねないのが選挙制度改正であります。同時に、選挙法は、政治家にとりましては、場合によって、それこそその死命を制するような事柄をも含んでおるのであります。したがって、私たちは、単に選挙制度改正するといたしましても、こうした点を十分に考えてから慎重に取り上げることが必要だ、これが第二番目に考える点であります。  第三番目には、しかしながら、同時に、選挙というものは民主政治の根幹であることは言うまでもありませんし、政治家同様にわれわれ国民にとりましても、選挙民にとりましても重大な問題であります。したがって、選挙法あるいはそのほか立法権に属する問題は第四権——立法、司法、行政のほかに第四権的なものを置いて、こういうものを認めるべきだという意見があるくらいでありまして、ただいま久保田さんの言われました第三者的な機関というのも、その意味かと思いますが、そうした意味合いで国民も十分にこの選挙制度改正選挙法改正に参加しかつ参加するところの権限と義務とがあるんじゃないかというふうに考えます。したがいまして、私たちは、選挙制度が民主政治の土台であるという限りにおきましては、まず第一に、基本的な人権としての政治的な自由を侵害してはならないという点と、もう一つ、抜け道を探すような現在の選挙あり方選挙法の脱法行為というものは厳重に規制すべきだ、つまり選挙の自由と、それから罰則を強化するという二律背反の上でこの問題を考えねばならぬというふうに考えます。これが私の今度の法案選挙法改正に関しまするところの基本的な考え方であります。  ところで、提案された選挙改正案でありますが、これを見ますと、表面は、これは選挙制度審議会答申から政府案ができ上がりまして、自由民主党の修正、そうして民社党と自由民主党との共同附帯決議をつけているということで、衆議院を通過したものでありますが、内容におきましては、答申案からまず政府案になる段階、しかも、その政府案になる段階におきましては、自治省案がいろいろな党内修正によって政府案に固まるまでの段階、さらに衆議院におきましては、自由民主党による修正という各過程を通じまして修正されておりますが、何といっても一口に申しますと、この修正は改悪と称して過言でないというふうに考えます。もちろん、私たちはこの答申の完全実施を今直ちにやれという強論を吐こうとは思いませんけれども、しかし、今申し上げたような意味で、やはり社会党もしくは民社党の主張されておる点に重点を置きまして改正されることが望ましいと、今日の段階におきましても考えております。すでに社会党は、今度否決はされましたが、修正案衆議院に出しております。民社党は今度は提案はいたしませんけれども、一昨年民社党が発表いたしました選挙法改正案要綱につきましては、ほぼ社会党と同様の主張をいたしておりますが、私どもは、こうした方向に従って本案をできれば修正していただきたい、こういうふうに考えております。  それでまず内容につきましては、時間がありませんから、簡単に触れることにいたしますが、まず、何といっても、本案の内容について問題にされておりますことは、現在の国会とそれから国民との間にギャップが多過ぎるのではないかという点であります。その一つが、先ほどから阿部さん、久保田さんによって主張された選挙制度審議会答申無視という格好に現われているのでありますけれども、その第一番の点は、やはり言うまでもなく連座制強化の問題であります。この内容も、時間がありませんから、ここでは触れませんが、これにつきまして、政府あるいは党の御説明を聞きますと、たとえば連座制におきますところの当然失格の条項については、憲法違反ではないけれども、本人を裁判に関与させないということは憲法違反の疑いがあるというふうなことを言っております。あるいはまた、実際上これは危険が多いのだ、兄弟姉妹は他人と同様である、現実において、自由民主党と社会党とに兄弟が分かれて選挙をやっている例があるではないかということを言っております。私もこれの例を知っておりますが、そうした実例をそのほかに知っております。しかしながら、この辺で考えなければなりませんのは、やはり私は連座制そのものは今日の段階において簡単に罪九族に及ぶ、そういう思想が古いと言ってきめつけるべきものじゃないというふうに考えております。やはりこれは今日の現実考えますと、連座制というものは、今日の選挙でどうしても必要なんじゃないかという気がいたします。今日の選挙というものは、しばしば、選挙候補者一人でなくして、多くの人々と共同作業によって行なわれているという事実であります。したがいまして、私どもは、しばしば候補者以外になお実力を持った側近者がいるというようなことを考えますと、この連座制の存在というものはなお必要じゃないか。さらにまた、法律思想の点から考えましても、他人の罪によって当然責任を食わなければならぬということでありますが、これは今日の候補者が運動員に対する管理もしくは監督、指導といったものの責任意味合いからも、この考え方は取り上げられてしかるべきではないかというふうに思うのであります。イギリスにおきましては、一切の選挙が、この選挙資金を扱うエージェントというものがおりますけれども、その制度のことにつきましては、普通選挙区の責任者などが当たっております。そうしてこれは候補者選挙違反は連鎖反応としてその地域のエージェントに及ぶということになっておりますが、こういうこともこの際一緒に考えるべきじゃないかというふうな気がいたします。  それから第二番目には、同級公務員の立候補制限であります。これは御承知のとおり、内容はすっかり変わったのでありますが、私どもは、これにつきましても非常なる不満を感ずるのであります。高級公務員の立候補制限につきましては、理論的にもそうでありますけれども、実際問題として非常に多いのじゃないかという気がするのであります。皆さん御存じのとおり、昭和三十四年に選挙制度調査会答申をいたしました際、各新聞の社説は一様にこの問題を取り上げております。また幾多の事例が新聞紙上に公開されております。当時の言葉といたしまして、高級官僚が政界に進出をねらう最短コースは、参議院の全国区だというふうなことを言われておったのでありますが、過去四回の参議院の全国区の当選者のうち、高級公務員出身といわれる方々は、昭和二十二年四月選挙では十五人、二十五年六月選挙では十人、二十八年四月選挙では十四人、三十一年七月選挙では九人、三十四年選挙では十人ということになっております。その内訳はいろいろありますが、これは省略いたしますけれども、いずれも現業官庁の元次官とか局長といったような人々が多いのでありまして、この人々の最短コースとして選ばれたということについては、何がしかここで考えなければならぬのじゃないかという気がするのであります。そのほか、これにつきまして自治省や自由民主党内においては、しきりに法律論を展開しております。あるいは法の下の平等の問題とか、職業選択の自由とかいったようなことをいわれておりますけれども、これは私ども十九世紀的な権利義務の概念ではないかという気がするのであります。二十世紀の権利義務の概念といたしましては、国家のため、あるいは民主政治を守るためには何らかの制約、制限というものを甘受しなければならぬというのが、私は二十世紀の権利義務の概念だと思うのでありまして、そういう意味合いにおきまして、高級公務員の立候補を制限するということは、必ずしも憲法違反だとか、基本的人権を侵害するというふうなことには相ならぬというふうな気がしております。そのほか、これにつきましては、なお、この高級公務員の立候補制限が形を変えまして、一切の公務員あるいは政府機関職員、地方公共団体職員というふうに今度の対象が変えられました。これも私はずいぶん、まあ悪く言えば党利党略、それからよく言っても、物事のけじめを誤った考え方というふうに断ぜざるを得ないのであります。つまり高級公務員とただいま申し上げました一般行政職員とは、おのずから別な範疇に入るのじゃなかろうかという気がいたします。これは単に高級官僚が高文をとっていわゆる高級官僚となる者と、それからそうじゃないところの者というふうな分け方よりも、現実に高級公務員といわれる人と地方の一般行政職員との間には、行政に対する責任におのずから違いがあろうじゃないかという気がするのであります。のみならず、現実の問題として高級公務員といわれる人々が、これはひとり参議院のみではありませんが、非常なる勢いをもって選挙に出てきておることは、私どもも現実に見ております。その人々は、ある人々は役所の看板を利用するでありましょうし、あるいは役所の機構、スタッフというものを十分に活用しておるのであります。そうした人々と、単にあるいは職員組合あるいは日教組の役員ということで出ておるのとでは、おのずから私は軽重の差があるのじゃないかという気がするのであります。のみならず、この高級公務員に対する考え方といたしましては、単に日本のみではないのでありまして、外国におきましても、ハロルド・ラスキ教授なども、いやしくも責任ある行政に携わった者は政治に出てはいけないということをはっきりと言っております。これはひとり日本のみではないのでありまして、私は、この考え方はなお今後も生かしていかなければならぬ。したがって、この考え方が否定されたことは非常に残念であるという気がいたします。  さらに第三番目には、政治資金の規正の問題であります。これにつきましては、先ほどいろいろな方から御意見がありましたから、私はここで詳しくは述べませんが、要するに、選挙に金がかかる、したがって、政治に金がかかり過ぎるというふうな実態を是正するには、やはり現在アメリカやイギリスか採用し——完全に採用しているとは申しませんけれども、採用する方向にありますところの個人献金ということに方向を向けるべきではないかという気がいたします。もちろん一朝一夕でできないといたしましても、これは段階的に取り上ぐべき問題であります。しかも、本改正案のイニシアチブを終始とりましたところの自由民主党におきましては、いわゆる少額大量という意味合いで国民協会を結成しているのでありますから、今度の選挙法改正にいたしましても、この点について、もっと抜本的な考え方が必要だというような気がするのであります。これはすでに、単に選挙だけではありませんで、政党の資金源の構成の問題としても取り上げなければならぬと思いますが、この辺は、私は、やはりもう少し突き進んで思い切った措置をとってほしかったということをまず申し上げておきます。  なお、衆議院の最終段階で修正されました自由民主党の修正、これは全くまあむき出しの現議員のエゴイズムと申しますか、個人本位と申しますか、そうしたことが多かったような気がいたしまして残念であります。内容については詳しくは申し上げませんけれども、私どもは、たとえば事前運動の削除でありますが、本来選挙というものは、先ほど申したとおり、自由なるべき点。言論文書に関する活動は自由に、できればもう無制限に自由を許すべきだというふうに考えます。わが国の選挙の取り締まりというものは、これは明治二十二年、さらに二十三年ごろからのものがそのまま残っておるのであります。しかも、大正年間におきまして、普通選挙が採用されましたときに、時の政府がこの普通選挙が、あまりにも燎原の火のごとく国民の間に民主主義的な風潮を起こすだろうということを心配いたしまして、むしろこれを抑える意味合いで、普選と引きかえに取り締まり法規ができたというのが、今日の選挙言論の取り締まりの沿革であります。したがいまして、これはできるならば、こうしたものは徹底的に制限を緩和するという方向に向けるべきであったというふうに私ども考えるのでありますが、それがこのような、単に現議員国会に縛りつけられている間に、新人やあるいは元議員などが出ていって、事前運動をやるから困るというような小乗的な気持でこのような修正をされたことは、はなはだ残念だという気がいたします。  それから例の労務報酬の問題でありますが、これは私どもは、私ども自身選挙現実に見ておりまして、決して実際の選挙運動というものは手弁当でやらなければならぬということは、必ずしもとるべきではないというふうには考えております。そう簡単な原則論ばかりは言っておられないと思います。したがいまして、むしろ私はこの問題は末梢的な問題とさえ感ずるのでありますが、ただ問題になりますのは、運動員の報酬という名目で、一体どの辺からあるいは買収が行なわれるか。つまり量が質を規定するといいますとおりに、あまりにもこういったことが多くなって参りますと、どこかで本質的な買収、供応ということに転化するのではないかというふうな点が心配されるのであります。さらに後援団体の寄付の問題でありますが、これも後援団体の寄付を一定期間内だけとするという考え方でありますが、これはちょうどこの選挙資金と政治資金とを分けまして、選挙資金はいかぬが、というふうな言い方と同じだろうと思います。つまり抜け道をどこか設けて、それをだんだんこじりあけて大きくしていくという危険がこの法律修正する場合の底流にあったのではないか。例外を認めるということが、例外がだんだん拡大して、その全部になってしまうというふうな危険を考えますと、こうした一定期間だけとして制限をつけたということは、はなはだ危険なことになるのじゃないかという気がいたします。  そのほかいろいろな点もありますけれども、私どもといたしましては、もちろんこの法案の中に、今日よりも前進した点は多く認めます。たとえばポスターや演説会、ビラなどに触れた点、政党本位に進めようとした点、公営を拡大しようとした点、法定選挙費用を合理化した点、そのほか罰則の面などにおきまして、選挙秩序維持のために、重複立候補や郵便立候補を禁止した点は、私はやはりかなりの成果を上げると思います。しかしながら、そうは申しましてもなお、この点にも、政府がそう申しました中にも、非常なる不満な点もあるのであります。政党本位選挙といいましても、現在の中選挙区のもとでもって、一体同士打ちが避けられるかどうか。そうしますというと、結局やはり政党本位選挙ということはどうも望まれないのではないかという気もいたします。公営の拡大といたしましても、もっと思い切って、たとえば立会演説会一本にしぼるとか、選挙事務所を一個所に集中するといったふうな点にならなければ公営の拡大ということもおのずから限度があるのではないかというふうな気がいたします。  私は結論的に申し上げますと、本案は、決してせぬよりましな程度改正とういふうには思いません。しかしながら、といって、審議会の成立の過程あるいは政府の公約、池田総理大臣のしばしばの約束、国民世論といった観点から考えますと、決してこのままで法案が通るということには満足できないのであります。今度の参議院選挙は、もちろんこの改正案でやってもらいたいと思いますけれども、なお、このような不満があるのですから、時間はもちろん迫っておりますけれども、やはり三党の間で十分な話し合いをやって、できれば社会党、民社党の主張しているところに近づけていただきたいと思っておるのであります。  ただ私は、この際もう一つ申し上げたいのは、幾ら制度や法規というものを改正いたしましても、これが守られなければ意味がないのであります。私の友人の杣正夫君などは、その「選挙」という書物の中に、選挙法は、現在わが国におきましては、独禁法、食管法、売春法と並んで、四大ざる法というあだ名が進呈されておるというようなことを言っております。このように抜け道ばかり探されて、これが実施されないならば、いかにりっぱな改正が行なわれましてもそれは意味がないのであります。  さらにもう一つ、私は、この選挙法改正があまりにも今日のような政党の運動の面だけに集中されましたために、根本的な問題において幾らか注意がそらされたというふうには感じております。先ほど阿部さんが冒頭に申されましたとおり、選挙制度審議会自身が今日その答申をちゅうちょしておりますのは、人口アンバランスの是正の問題と、選挙区制の点であります。私は選挙法改正というような問題は、区制改正を含むような抜本的なこの制度改正ということを契機として、初めて実施されるのではないかという気がいたします。つまり選挙制度の中心的な二の改革を行なうことによって、一切の部面に改革を与える、そうして候補者はもちろんのこと、国民も一緒になって新しい気持でこの選挙に臨むということによって、初めて今日われわれが期待しております公明なる選挙、粛正選挙ということが期待されるのではないかという気がいたします。また、区制につきましては、小選挙区制もあります。比例代表制の主張もあります。あるいはまた、両者の混合方式ということも言われておりますけれども、私どもは、そのいずれでもいいんでありますけれども、ともかく、今後は区制改正の問題に取り組んでいただきたいということを感ずるのであります。  最後に一言申し上げますが、私たちの世代というものは政党政治の時代に成長いたしましたので、政党政治以外によりよき政治運用の方式はないという信念に一貫していたのであります。しかるにもかかわらず、中途にして、私どもが戦争におりました間に、政党政治というものが日本において崩壊する時期を迎えたのであります。しかし、私どもは今日政党政治以外によりよき政治の運用方式はないと思います。それがまた今日腐敗選挙によってゆがめられたり、あるいはそのために左右の暴力を招くということになりましたならば、これはまさに私たちは再び千年の悔いを残すことになるのであります。したがって、私たちは、この際、三党いろいろの立場もありますし、いろいろの主張もありましょうが、選挙制度改正なんという問題は、何もその主義主張とか、あるいはその立党の精神とかに関する問題ではなくして、もっと国民と密着した意味合いで取り上げれば、おのずから妥結点、妥協点も出てくると思います。その意味で、日にちは少ないですけれども、やはりもっとわれわれの世論の一番最大集約的表現であった選挙制度審議会答申、これに近づけるように、ひとつ三党で修正に努力していただきたい。もし時間がないといたしましても、そうした例はすでに皆さんも御存じのはずであります。たしか芦田内閣のときでしたか、一日で予算ができたということもあります。そういうふうにやろうと思えばできないことはないのでありますから、日にちがないというようなことを言わないで、ひとつ三党間でなおも再修正の話し合いをしていただきたい、こういうことを要望いたしまして私の公述にかえます。(拍手
  11. 小林武治

    委員長小林武治君) ありがとうございました。  ただいまでお述べいただきました御意見に対し、御質疑を願うわけでありまするが、阿部参考人には、所用のために中途退席されますので、そのお含みで願いたいと存じます。御質疑の方御発言願います。
  12. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ただいま、このわが国の議会制民主主義の根底に関する件についてわれわれは審議、調査しているわけでありまして、先刻来わが国の最高水準の方々から、きわめて公正にして熱心な、高邁なる御意見を拝聴いたしまして、個人としても非常にありがたく思っております。で、若干質疑さしていただきますが、その前に私は委員長に一、二点、念のために伺わせていただきたいと思います。そのことは、参考人の方々がここに御多忙の中に御出席いただいて公述をしていただき、さらに私たちの質問にもお答えいただくわけでありますが、それだけにあえてお伺いするわけです。委員長としては、ただ形式的にこういう会を開いて参考人の御公述をお願いし、それを聴取するということでなくて、参考人の方々のりっぱな御意見は、われわれが審議の対象になった法律案審議過程において、本委員会においても十分尊重し、これに対処するという基本的なお考え方で本委員会を現在司会され、将来においても司会されるものと、私はそんたくいたしておるわけでありますが、念のために承っておきたいと思います。
  13. 小林武治

    委員長小林武治君) 矢嶋委員のお話のような心がまえで対処いたしたいと思います。
  14. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 もう一つだけ伺わさしていただきます。それは、たとえば何人かの参考人の方々から御意見を拝聴するわけですが、そういう参考人の方方の御意見が偶然にも皆さん一致されたような御意見というものは、特に本委員会としては、法律案審議にあたっては尊重し、これを採択する程度のウエートをもってこの尊重ということをお考えになっておられるものと確信をいたしますが、その点、念のためにお伺いいたしておきたいと思います。なぜかと申しますと、でないと、御多忙のところおいでいただき、公述していただき、さらにお忙しい中に、われわれはこれから若干質疑さしていただきまするので、参考人に対する儀礼上からも、われわれ立法府としては、そういう点、一応確認しておくのが適当だと考え、あえて委員長の御所見を承らしていただいた次第であります。
  15. 小林武治

    委員長小林武治君) 御意見のとおり心得ております。
  16. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それでは、阿部先生に二、三伺わさしていただきます。私は、阿部先生がNHKの会長になる以前から、日本政治に対し、あるいは政党政治家に対して適切にして自由奔放なる所論を展開されているのをずっと見たりあるいは聞いて参りました。また読んでも参りました。で、きょうお伺いするにあたって、私はお願いをも含めて参考人の御意見を承りたいわけですが、先生は選挙制度審議会委員でもあられると同時に、NHKの会長さんでもあられます。私は、NHKは公共放送であり、その及ぼすところはきわめて重大なる無私な立場にあるとは思いますが、しかし、善意に満ちたものであり、公正なる意見は、ときの政治権力者に対しようと、政治に対しようと、私は堂々と述べて、NHKの公共放送の本質にはいささかも矛盾をいたさない、こういう私は見解を持っております。たいへん失礼でありますけれども、最近の阿部先生はかなり御遠慮なさって公述され、あるいは御批判されているのではないかと拝察する向きもありますので、それらの点について、私の意見をお聞きいただくとともに、そういう角度でお答えいただけばありがたいと思うわけですが、第一点としてお伺いしたい点は、先ほども宮崎参考人から述べられておりましたが、選挙制度審議会答申、それを受けて自治省の事務当局で検討した段階、それから政府案確定の段階、さらに法律案国会に提出されて、衆議院において修正された段階等を通じて、私は、やや失礼になる言葉かもしれませんが、醜態のきわみだと、こういう見方をしている。選挙制度審議会の発足の経緯と、これに対する国民の期待とを考えるときに、現代のわが国の政権担当者である池田内閣総理大臣は、もう少しよりよき対処の仕方があってしかるべきではないか、そういう意味で私は醜態だと、こういう見方をしているんですが、率直に阿部先生は、この選挙法の一連の取り扱いについて、池田内閣並びに特に池田総理ですれ、この人の対処の仕方というものをいかようにごらんになられ、何点ぐらいおつけになられているか、私は承りたいと思います。
  17. 小林武治

    委員長小林武治君) 阿部参考人に申し上げますが、そのままで御発言願います。
  18. 阿部真之助

    参考人阿部真之助君) この点については、私はきょうは選挙法に対する私の私見を述べに伺ったまででありまして、池田総理大臣に対する評価ということになりますれば……
  19. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 選挙法の取り扱いについての評価ですね。
  20. 阿部真之助

    参考人阿部真之助君) ちょっと何点というようなことは申し上げられません。
  21. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それではあまり追及してお伺いしませんがね。私は、NHKさんがあらゆる放送、ラジオ、テレビの放送を通じて政治的啓蒙をはかり、国民政治教育を広い意味において果たしている点というものは、非常に高く評価してしかるべきだと思うのです。それで、今度のような選挙法の取り扱いについてもですね、私は、NHKとしては、こういう意見もあるという程度の評論でなくて、NHKとして、あるいは会長さんとしても、これに取り組む内閣の態度なり、あるいはその最高責任者である池田総理の態度について、自分はこう思うと、断ずべき点は断固として断ずることが、私は決して公共放送の本質に触れるものでなくて、日本政治の向上に多く貢献するものだと確信しているがゆえに、この選挙法のこの過程における一連の取り扱い方、これに対するときの政権担当者、最高責任者としての池田さんをどういうふうに見ておられるかというのを承ったわけです。私は池田総理についても、もちろんりっぱな敬服する点もありますけれども、今度の選挙法の取り扱い方については、国民の期待とあわせ考えるときに、一国の最高責任者の総理としては、非常に優柔不断であり、醜態を露呈したのではないかという、かような見方をしているのでございますが、激励する意味において、阿部先生はどういう見方をされているかということを一言お伺いしたいと思うのです。
  22. 阿部真之助

    参考人阿部真之助君) ただいま私が申し上げたことでたいてい御了解いくことだろうと思うので、端的にどうも、池田総理論はここでしばらく遠慮さしていただきたいと思います。
  23. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 けっこうです。もう二点ほどひとつ伺わせていただきます。  第二点としては、先生が先ほど、ともかくも区制を論じ、この方向づけをしてからでなければ、他の事柄はきまらないので、暫定的なものだと、かように述べていただきました。そしてあわせて先生は、自分は小選挙区制の方向をとるべきものだと思うという御意見を拝聴いたしたわけでありますが、先生のお考えになっていらっしゃるのは、比例代表制を含む小選挙区制というお考えでございましょうか。それともほかのお考えでございましょうか。その点を承るとともに、先生が一員でいらっしゃる選挙制度審議会は、現在伝え聞くところによりますと、政府答申案に対する態度に若干の不満があり、審議をストップしているというふうに承っているわけでありますが、いつごろ審議会審議を再開する雰囲気なのでございましょうか。また、それが再開された場合に、そういう人口議員数のアンバランス是正とか、根幹に触れる選挙区制等の検討のめどの立つのはいつごろでございましょうか。かりに、先ほど申し述べられましたように、六月に切れる、それまでに間に合わないとなれば、行政府はみずから進んでその継続を考慮することが当然でありますが、審議会としても、こういう重要な人口議員数のアンバランスの是正も未了である、根幹である選挙区制についても検討できていないとならば、審議会それ自体においても、付託された審議、調査が完了していないので、この審議会の継続をはかるべきだというような、審議会みずからの意思表示が私はあってしかるべきではないかと思うんですが、これらの点についての阿部先生の御所見を聞かしていただきたい。
  24. 阿部真之助

    参考人阿部真之助君) 第一の区制の問題でございますが、私は、あの調査会の席でも小選挙区制に比例代表制を加味した、そういう方式をとるべきだという論もかなり有力に唱えられたことも承知しております。中には、もう大選挙区の比例代表制が一番いいんだというような意見を述べられた方もあったように記憶しておりますが、私はむしろそういう比例代表制を取り入れずに、端的に小選挙区一本やりで——これは私個人の考えでございますが、一本やりでいくべきものだ、これは昔から考えておるのでありまして、今でもその見解は変わっておりません。  第二点の調査会審議をストップしているということは事実なんで、私所用があって、そのストップしたときその会議に出席しませんで、事情をよく存じませんので、ストップしたことは非常に私は残念に思っているのです。なぜかならば、調査会は、これは政府が任命されたものでありますから、そういう意味では政府調査会との関係でありまするが、同時に、調査会結論、その他審議に対しては、国民一般大衆も大きな関心と期待を持っているので、政府調査会との関係のみにおいて審議をストップしたということは、国民の期待に必ずしも私は沿うものじゃないだろうと思う。だから、もし私かあの席に——今になってこういうことを言うのは非常に卑怯なんですが、欠席していながら。出席していたならば、これはストップすべきものじゃないということを主張しただろうと思うのでございますが、遺憾ながら審議がストップされちまった。だけれども、このままで任期が終わるということは、必ずしも私は調査会責任を完全に果たしたものとは考えておりません。だから、できるならば、私とすれば、できるだけ早く審議を再開して、区制の問題の審議に入るべきものだと思いますが、何しろこの問題に取り組んで、もう六月一ぱいの任期でございますから、おそらく時間的に結論を得ることは非常に困難であろうと思う。だから、できるならば政府がこの審議会を継続するなり、もしくは新たな委員を任命して再発足するなり、それはどういう方式があるか、いろいろあるだろうと思いますが、このままもう終わってしまうということは、はなはだ私は区制の、ことに焦眉の急を叫ばれておるアンバランスの問題が置きざりにされた、そのままで済むということは、これははなはだ遺憾千万なことなので、何らかの機会において、この問題を審議されるということは適当であろう、私はかように考えております。
  25. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 もう一回だけ伺わしていただきます。それは、先生は審議会一員でありますから伺うのでありますが、中央調査社で、選挙制度審議会答申を知っておるかどうかという角度から、一月に政府で調査社に委託して世論調査をしたところが、審議会答申を知らないという人が七八・二%あったということですが、この点については、まあきょうは先生は審議会の代表者でおいでになっておられるわけじゃございませんけれども、政府におかれても、また審議会におかれても、さらに一段と工夫、努力されるべきではないかと、かように思うのですが、この点と、それからもう一つは、国さらに地方公共団体と財政的につながりがある会社、法人の寄付は、全面的に、私は蛮勇を断固としてふるって即時禁止すべきが最も適切ではないかと、こう思うのですが、それが答申を受けた後に、ごらんのとおり法律案において非常に変わって参りました。これは三参考人の公述の中でも触れた問題でありますが、この基本的な点について、阿部先生はどの程度の重要度をもってお考えになっておられるか、それだけ承って私の質問を終わりたいと思います。
  26. 阿部真之助

    参考人阿部真之助君) 政治資金の問題でございますが、これは間接には選挙の問題とつながりがある問題ですが、これを規制するということは、別に政党法とかほかの法律でもって規制されるべきであって、今ここで選挙法を論ずる場合に、この問題について論ずることは、必ずしも私は適切じゃないと思います。しかしながら、日本政党政治の発達の歴史を見ますというと、もしも政党活動の資金源というものを今すぐ水の手をとめてしまうということは、まかり間違うと角をためて牛を殺すといいますか、政党を殺してしまうようなおそれもあるだろう。だから、私は政党に金を払うことはあたりまえだと思うのですが、ただ、入り方の問題だろうと思う。非常にガラス張りにはっきりした、そういう政治的に悪い因縁がつかぬような形、そういう形で何らかの方式で金を払うならば、政党は金がなければ活動はできないのですから、いかなる政党もどこかから金が入ってくるのです。だから金の規制の方式について、十分これは考えなければならぬ問題であると思う。それは、日本の現状において、一体どういう方式をとるがいいかどうかという問題はなかなかむずかしい問題なんで、水の手をとめてしまえば、それですぐ政界は浄化できると、そう簡単に考えることはむずかしい。むしろそういう法律をこしらえても、政党の活動がある限りにおいては、その活動資金が必要なんだから、かえって暗いわけのわからない金が入ってくるので、できるだけガラス張りのようなそういう形で資金が入ってくる、しかも、その金は政治に悪い因縁がつかぬような金、そういう方式をわれわれは積極的に考えなければならぬのだ、かように考えております。
  27. 秋山長造

    ○秋山長造君 三人の参考人の方に端的に御意見をお伺いしたいのですが、まず第一に、阿部さんにお尋ねしたいのですけれども、先ほどの御公述で政府原案は十分ではないけれども、とにもかくにも一歩か半歩か前進だからというお話のように承ったわけですが、その政府原案はともかくとして、衆議院で最終段階に四点にわたって悪評さくさくたる修正がなされたわけですが、あの衆議院修正に対する忌憚のない御意見をお伺いしたいと思います。
  28. 阿部真之助

    参考人阿部真之助君) その点については、私は前に陳述したつもりでございますがね。
  29. 秋山長造

    ○秋山長造君 私はちょっとおくれてきたものですから、もう一度……。
  30. 阿部真之助

    参考人阿部真之助君) どうも、私自身とすれば、はなはだ遺憾の点が多いように思うのですがね。しかしながら、この修正によって現行法と比べてみて悪くなったということはないですね。現行法より悪くなったということは。もとになったというだけの話で。それならば、幾らかいい点があるのだから、国家政治というのは私は漸進主義だろうと思うのです。だから、すべて漸進的に少しでもよくなるのならば、この法案は通すべきものだろうと、かように考えておるわけなんです。
  31. 秋山長造

    ○秋山長造君 現行法より悪くなってないとおっしゃるのですが、たとえば選挙運動員に対する報酬ですね、こういう点はどうですか。今までの選挙法考え方なりあるいは判例その他を一貫して流れておる思想は、選挙運動というものは本来無報酬でやるべきだと、ただ労務者あるいは労務者的な者に対しては、それ相当の日当を払うことはまあやむを得ない、こういうことできちっと一貫してきているわけですね。それを今度は非常に乱す形になりますがね。これはもう、何と説明をしたところで、この一角から買収を公然と認めていくということに結果的にはならざるを得ぬことば、多年選挙の実態等よく御存じの阿部先生、これは十分御承知だと思うのですがね。それでも現行法よりは悪くはならないというように言い切れるものでしょうかね。
  32. 阿部真之助

    参考人阿部真之助君) どうも私は、この問題についてはあまり、ほんとうを言うと、関心を持っていなかったのですがね。しかしながら、現状を見ると、事実私はそういうふうな人たちに内緒に陰で何らかの報酬は与えられているのじゃないか。そのくらいならば、やみ取引をするくらいならば、もっと表面に出して、そうしてはっきり何円なら何円あげるという制限を設けたほうが、もっと一つの進歩であるとも言い得るわけなんで、これはよくなる点もあるので、今御質問のような趣旨で、それが公然たる買収になると、そういうふうな考えもあるなら、これは差し引いてみれば、いいか悪いか、私はこの点についてはあまりはっきりした見解を持っていませんがね。この点は、悪くなるというように、一方的にばかり私は断定できないだろうと思います。せいぜいのところが、もとっこのところくらいじゃないですか、まあかように考えております。
  33. 秋山長造

    ○秋山長造君 いや、私は阿部先生にいつものもっと歯切れのいい毒舌を承れると楽しみにして来たわけですけれども、NHKの会長におさまられてから、そういう選挙の実態というものに少しうとくなっておられるように、私は失礼ですけれども思うのですけれども、この点は今先生のおっしゃるような簡単なことで済まぬと、われわれ選挙の実態からして思うのですがね。
  34. 阿部真之助

    参考人阿部真之助君) 重ねて申し上げますが、選挙の実態を考えてみて、実態的には、そういう人たちに何らかの報酬が、時間がたってか、その前か何か知らぬが、与えられておると思うのです。ただ奉公ということは、当節私は考えられないことだと思う、現代においては。ただ、言葉はきれいなんですよ、奉仕なんという言葉で、しかしながら、当節の人たちがただで一体それほど熱心に奉仕するということは、まれにはあるかもしれませんけれども、多くの場合、選挙の実態をきわめてみれば、私はそんなものじゃないと思う。きれいごとを言っておるだけの話なんです。そのきれいごとを、表面に出してきて、そんなやみではなしに、はっきりした公定価格をここに持ってくるということは、必ずしも悪い結果ばかりじゃないと思う。この点については。
  35. 秋山長造

    ○秋山長造君 それは阿部先生、お言葉をお返しするようで失礼ですが、認識不足もはなはだしいです。たとえば、社会党あたりの選挙というものは、それはもう大体腰弁です。それはまれな例だとおっしゃるけれども、そんなことはない。これはまれじゃないです。それでなかったら、選挙というものはやれぬですよ。だから、そういう点もひとつ十分認識をしていただかぬと困ると思うのですがね。まあしかし、それは議論になりますから、これ以上は申し上げませんが、今の点について久保田参考人はどういうふうにお考えになりますか、衆議院修正について。
  36. 久保田きぬ子

    参考人久保田きぬ子君) 選挙運動員に対する報酬の問題でございましょうか。私も、過去の判例におきましては、一貫いたしましていわゆる機械的に労務者に限っておりますことも、承知いたしておりますし、それから先ほど阿部先生のおっしゃいましたことも現実でございますし、今秋山議員がおっしゃったことも事実だろうと思うのでございますけれども、そういう選挙の実態というものを自分で直接に知らない私でございますから、伺うだけのことでございますけれども、当今からいたのまして、私も、これは厳密な意味で、ある程度の報酬というものを表向きに認めたほうが明るいのじゃないか。非常に清い選挙、まことにそれが望ましいわけでございますから。と同時に、買収につながる面であるということも、まさに御指摘のとおりで、私も思わないわけではないのでございますけれども、これはむしろ、私自身考えますところでは、このたびの選挙法改正の大きな争点として取り上げるべきものでもないような気がいたしまして、一言に申し上げますれば、どっちでもいいと言ったら申しわけないのでございますけれども、まあ望ましいわけではございますけれども、現実にこんな物価高になっておりますときに、あるいは心持という形でお礼をすることがあるのじゃないか。それだったら、きちっとある一定の人数に限りましては、ある程度のことをするということは、むしろ現実に合っておるのじゃないかというような気がいたします。何か取りとめのない、要領を得ませんことでございますけれども。
  37. 秋山長造

    ○秋山長造君 この点は、ちょっと私質問が、非常に選挙の実態にお触れになっていないお立場の方々ですから、御無理な質問じゃないかと思う。今の選挙法は、選挙運動員に対しても実費弁償ということは認めておるわけです。だから、足代なり弁当代、あるいは宿泊等の実費弁償というものは認めておる。今問題になっておるのは、それとは別に報酬を払うかどうかということが問題になっておるのですけれども、まあその点よくそこらの点は御理解になっていないようなので、あるいはあまり突き詰めてお尋ねすることは御無理かと思いますが、お気持はよくわかりましたから……。  宮崎さんにお尋ねしますが、先ほど宮崎さんの衆議院修正についての御意見をちょっと承りはしたわけですけれども、重ねて衆議院修正の四点についての忌憚のない御意見を端的にお伺いしたいと思います。
  38. 宮崎吉政

    参考人(宮崎吉政君) 第一の事前運動削除の件は、これはせっかくここで、不自由な選挙を自由な選挙に持っていく。しかもこれは、明治以来の悪弊である選挙というものに対して何とか制限を加えようという古い考え方に対して、新しくこうした制限を緩和していこうという企てを削除したということは、非常に残念で、反対であります。  それから第二番目に、今問題になっておりました労務報酬の問題は、これは私は末梢問題だとさっき申し上げたとおりでありますが、やはり私自身選挙の実態というものはよく存じております。そうして考えております上で、法定選挙費用の不合理な点、あるいは実際に今日の選挙というものは、単なる運動員だけで行なわれているのではなく、労務報酬者だけでなくて、しばしばいろいろな協力によって行なわれている。マンモス選挙という言葉はオーバーですが、非常に広範囲な人によって行なわれている。しかも理想論として、手持ち、手弁当ということが言われておりますけれども、私はこの点はある程度の幅を認めていい。ただ、先ほどちょっと申しましたとおりに、運動員の報酬という名目が買収に転化するということはきわめて心配であるけれども——ということをつけ加えておきましたが、そういう点さえ考えていただくならば、これはたいした問題ではないと思います。  それから、後援団体の寄付禁止に関して一定期限をつけたこと、これは私も反対であります。一極のこれは抜け穴を見つけることでありますから、だんだんとこれが拡大して弊害を起こしてくるということで、反対であります。  それからもう一つの、地域主宰者連座の対象となる場合についての その制限でありますが、これも当然、こんなような制限をつけていけば、この規定はまさに骨抜きになってくるという意味で、反対であります。
  39. 加瀬完

    ○加瀬完君 阿部先生に伺いますが、先生の先ほどのお話によりますと、審議会の設置目的が、人員数と人口アンバランス、すなわち区制を改めなければならないのに、この区制を改めないで、いろいろなことをおやりになった。ですから、したがって、これは暫定的なものだ、こういう御説明がございましたが、審議会設置法からすれば、それも含まれてはおりますけれども、第一の目的は、腐敗選挙の粛正、あるいは公明選挙の推進ということではないのでございましょうか。
  40. 阿部真之助

    参考人阿部真之助君) うたい文句は、まさにそのとおりである。うたい文句では。だが、急速に結論を出していただきたいという政府の要請はどこにあったかというと、とりあえずこの人口アンバランスの問題、これだろうと思う。それ以外に、急速に結論を、区制の問題なんかほっておいて、そうして急速に結論を出してもらいたいということは、私は意味がないことであります。ところが、このアンバランスの問題に取っ組むことなしに、ことに区制の問題に取っ組むこと——その結論が出ない以前にこういう答申案が出されたということは、これは私個人の考えじゃないのです、当時委員会においても、この区制の問題がきまらぬ前に選挙運動とかあるいは罰則の問題を審議しても意味をなさないのではないかという議論が行なわれたのです。だがまあ急ぐから、ひとつ並行してやっていこうじゃないか。だから、もしも早いものとおそいものとあって、非常にちぐはぐな事態が起こった場合には、あらためて区制結論が出たときもう一ぺん考え直そうじゃないか、こういうようなことで並行して審議が行なわれてきた。これは私の個人の考え方じゃないのであります。   —————————————
  41. 小林武治

    委員長小林武治君) 委員異動を御報告申し上げます。本日付けをもって鍋島直紹君が辞任され、その補欠として米田正文君が選任されました。   —————————————
  42. 加瀬完

    ○加瀬完君 私ども結論的に言えば、今区制というものを確立しないと、そこでいろいろ処罰法規をきめたところで、それは全くナンセンスだという考えに変わりありません。しかし、審議会答申そのものが、審議会の設置法でうたっているように、やはり公明選挙の推進といいますか、現在の腐敗選挙を何とかしてなくそうというところにこの中心が置かれて答申が出されたと了解してこれはよろしいのでしょうね。
  43. 阿部真之助

    参考人阿部真之助君) まさにそのとおりであります。
  44. 加瀬完

    ○加瀬完君 そういたしますと、その先生のお話の中に、たとえば政府とか政党等の主張というものも、当然答申されたものの修正の大きな働きかけとしてあり得るのだ、したがって、これは答申そのものが原案になるということではなく、若干の修正というものはこれは考えられてもいい、こういうお話がございましたけれども、これはあくまでもその修正は、公明選挙といいますか、こういう目的をより進めるような方向に修正が行なわれるということだけが認められる、先生のお立場としてもお認めになるのは、公明選挙への推進という意味がよりプラスになるという点で修正が認められる、そういうように了解してよろしゅうございますか。
  45. 阿部真之助

    参考人阿部真之助君) 審議委員とすれば、まさにそのとおりでございます。しかしながら、公明選挙を進める手段、方法というものについては、いろいろな考え方があると思うのです。それと、審議会考え方政府当局の考え方がずれている場合があり得ることである。その点の調整は、これは一つの問題なんですが、だから、何でも審議会見解どおり、それを一点一画も間違いなしに政府はやらなければならぬというふうには考えられない。政府政府責任において、自分見解は議案として提出し得ることだろうと思うのですね。
  46. 加瀬完

    ○加瀬完君 しかし、この審議会設置法を審議するときに、第三条は、御存じのように、答申を尊重するというものを新しく特に入れてある。その点総理も強調されまして、われわれが今までのように、通例、調査会等から、あるいは審議会等から答申がされても、それをいろいろ政府修正なり与党修正なりということをはなはだしくして、何ら答申そのものに保証を与えなかった、言葉は違うが、意味は。しかし、今度第三条で答申を尊するということを入れたのは、あくまでも答申というものを尊重するのだ、こういうふうに述べられておるわけです。したがいまして、答申そのものの、たとえば、先生御指摘のように、若干字句の修正とか、立法技術上の問題点というものを政府が手直しをして出されるのはよろしいとは思いますが、あのように持って回って、答申そのものが損なわれるような傾向を生ませたといいますか、答申案をある程度修正してもよろしいのだという風潮を生むような原因を政府みずからが作るようなやり方というものは、私ははなはだ設置法からいってけしからぬと思うのですが、先生御見解いかがでございますか。
  47. 阿部真之助

    参考人阿部真之助君) まさにそのとおりで、審議会の私は一員として遺憾であるということは、先ほど申し上げたとおりなんで、それは……。
  48. 加瀬完

    ○加瀬完君 もう一つで済みますが、参議院選挙もあるので暫定案としておやりになったということであれば、高級公務員の立候補制限等はどうしてもここで答申案のとおり強調さるべきものだと思いますが、先生の御意見はいかがですか。
  49. 阿部真之助

    参考人阿部真之助君) もしできるならば、そうありたいと思いますが、しかしながら、実際政治というものはなかなか私はそういうふうに動かぬだろうと思うのです。それで、そういう場合に、それがないからもうこの案は葬ってしまえということは、どうかと思うのです。——ということを申し上げておるので、やはり何ほどか前進があるのだから、この案をむしろ進めて、暫定的なものであろうと、一回だけでもこれでやっていく、それで将来は区制を論議する場合においていま一ぺん考え直したほうがよくはないか、こういうふうに現実に私はものを考えております。
  50. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 久保田さんにちょっとお伺いいたします。  今加瀬君からお話がありました高級公務員の立候補の制限答申の中では「離職後最初に行なわれる参議院全国選出議員」と、こういうふうに書いてある。この程度の条件がついていれば、必ずしも私憲法違反というような問題が起こらないのじゃないかと思いますが、御専門の立場から外国の事例などひとつお聞かせ願いたい。
  51. 久保田きぬ子

    参考人久保田きぬ子君) 私、高級公務員の制限は、必ずしも被選挙権の制限に直ちにつながるというものではないと思うのでございます、立候補制限が。一般行政職員と申しましょうか、一般公務員にまで広く及ぼしましたときには、これはいたずらに被選挙権の制限になるということが考えられると思いますけれども、ごく特定の高級公務員、しかも特定の条件のもとでその立候補を制限するということは、いわゆる公平の原則というような点から考えまして、必ずしも被選挙権の制限になる、したがって憲法違反になるということは言えないのじゃないかと、憲法の研究者といたしましては考えております。
  52. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 日本でもそうですけれども、外国などでも、特定の行政官になる場合には特定の営業はやめなければいかぬとか、財産の処分をしなければならぬとかいうような、いろいろの制限がついておる事例がございますね。そういう問題は、憲法違反の問題とは関係のない問題として考えられているのじゃないですか、普通外国などにおきましては。
  53. 久保田きぬ子

    参考人久保田きぬ子君) まさに憲法上の問題とまではいかないと思うのでございまして、ある程度の、いわば政治良識とでも申しましょうか、たとえば一番いい例が、アイゼンハワーのときの、あのチャールズ・ウィルソンGEの社長の就任でございますが、一切のそういう関係のものを国防省の長官に御就任のときにやめましたし、株の処分もなさいました。これはいわば政治をきれいにする意味での、私は当然その職におつきになります方のなすべき一つの倫理的な自発的なものであって、制限イコール被選挙権の制限とかあるいは公職につくことの制限というふうなものに私自身考えていないのでございまして、まさにおっしゃるとおりでございます。
  54. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 今の点に関連するのですが、一回だけ久保田先生並びに宮崎先生にお聞かせいただきたいのでございますが、それは今度の答申の中のやはり一つの大きな柱として国民の関心を集めた高級公務員の立候補制限、これはあわせて下級公務員まで言及していただいてもいいんですが、久保田先生、さっきの第一回の公述のときには、高級公務員の制限に関しては一切ここでお触れになりませんでした。今御所見の一端がわかったのですが、この点について、宮崎参考人のほうでは、相当峻烈に答申案を採択しなかったということを批判されておりました。問題は、私は現実だと思うのです。こういう声があり、日本の政界に若干の反省の色が、きざしが見えるようになれば、それなりに僕は見方があると思うのですよ。ところが、選挙制度審議会であれだけの答申が出て、世論を沸かしているさなかに、ある程度申し上げないとわからぬでしょうが、日本の政界の実力者とうたわれている人、ある政治家にごく近い筋の高級公務員の方が立候補するために退職されましたですがね。そうして、やはりその官庁の組織をフルに使って猛烈なる事前運動をやられているんですがね。これがやっぱり実態ですからね。こういう点からは、衆議院参考人の公述速記録を読みますと、あるいは長谷部さん、あるいは御手洗さん等は、ともかく日本選挙の実態からいってある程度の副作用を起こすもやむを得ない、荒療治もやむを得ない、そういう必要性があるというような筋から公述されておりますが、そういう実態が一部にあるということを計算に入れた上で、久保田参考人はなおかつかような御見解を持たれるかということを承るとともに、幸いにして宮崎先生は自由なる新聞社の論説委員をされているわけですが、こういう点について私はもう少し新聞の使命を積極的に紙面を通じて果たしていただけないものかという感じと、それから先ほど阿部先生にお伺いしたことに関連するんですが、公共放送としてのNHKの会長としての阿部先生の御意見を私はサウンドしてみたわけですが、おたくの新聞の論説もまあたいがい拝見さしていただいておりますが、一般国民に与える影響性、指導性の深く広く大きいという点から、こういう議会制民主政治の根幹に触れると、日本の政界に一大転機をもたらすであろうこういう重要法律案国会において審議されている段階においては、私は、新聞社としても、本日参考人として宮崎先生がその信念に基づいて堂々と論ぜられたその程度の論陣を新聞報道界は張ってしかるべきじゃないか、そういう僕は見解を持っていますので、これは念願も含めて、幸いに先生が大新聞社の論説委員であられますので、あえて御所見を承っておきたいと思います。
  55. 宮崎吉政

    参考人(宮崎吉政君) 今の高級公務員立候補制限に関する主張は、今日に始まったことではないのでありまして、前回昭和三十四年の選挙のときも取り上げられまして、そのときにはたしか、私の知っておる限り、東京のほとんどの新聞参議院選挙についての批判の中に必ずこの項目を入れておったと言って過言でないというふうに了承しております。のみならず、今度のこの案か出ましてから、各新聞——私どもはもちろんでありますが、各新聞いずれも改正案のこの項目について賛成しておりましたはずであります。やっぱり私は、矢嶋議員のおっしゃるとおりに、実態からいきますと、この高級公務員が今日選単に堂々と出てきて、しかも楽に当選しているという現状は、やはりこれは選挙の不公明の実情だろうと思う。それから、理論的に申し上げましても、これを憲法違反だとか基本的人権云々と言われるのは、これはやはり十九世紀的な権利義務概念だと言って差しつかえないと思います。
  56. 久保田きぬ子

    参考人久保田きぬ子君) 先ほどの矢嶋議員の質問でございますけれども、私前提といたしまして、答申を尊重しなければならないという前提に立っております。その意味におきまして、高級公務員の立候補制限も、当然その中に含まれる——答申の中にはございますけれども、含まれなければならないと思っているんでございますけれども、二十分と承っておりましたものでございますから、私が原理的に考えます三点に関しまして申し上げさせていただいたわけで、私はもちろん、実態の面から考えまして、今宮崎参考人がおっしゃられましたと同じように、高級公務員の制限というものはある程度妥当で、先ほど申し上げましたように、私はそれは憲法問題とかいうような問題ではなく、いわば一つの良識としてそれだけの節度が立候補なさいます方自体にあってしかるべきものと存じて、それを制限することは一向さしっかえないという立場でございます。
  57. 加瀬完

    ○加瀬完君 宮崎さんにお伺いいたしますが、お話の中に、国会国民のギャップがある、こういうお話がございました。まさにそのとおりでございまして、せんだって衆議院修正案を御説明なさる衆議院の方が参られまして、私どもいろいろ質問をしたわけでございますが、その方は、たとえば新聞あるいは報道といったようなものも事実をよく認識しておらない、あるいはそういった新聞を通しての世論というものは間違っておる、こういうようなお話がありました。あるいはまた、私ども新聞などで見ておりましても、ある政党の大幹部は、しろうとに選挙のことはわからない、このようにまあ答申案などに対しては批判をいたしております。こういう一連の動きというものが続いている限りは、どういう審議会が優秀な案を出し、あるいは第三者が選挙の粛正あるいは公明選挙のためにいろいろの参考意見を述べても、これは法律としては実を結んで参らないと思う。こういう点に対して、あるときは、各大新聞が筆をそろえまして、いろいろな世論の方向づけといいますか、指灘をなさったような事案もございますが、今度のような選挙法改正などにつきまして、もう少し、そういった似て非なる自信といいますか、先生のお言葉で申し上げるならば議員のエゴイズムというものを報道陣がこぞってたたく、あるいはまっすぐ世論の方向に議員を向けさせる、こういう活動がもう少しあってしかるべきだと思うのですが、この点の所見を承りたい。
  58. 宮崎吉政

    参考人(宮崎吉政君) やはりこのことは、議員の各位の中に、あるいは政党の中に、非常に大きな誤解があると思うのです。つまり、選挙というものは政党人あるいは政党だけのものだ、政治家だけのものだというふうな認識があるのではなかろうかと思うのです。やはりこれは選挙民というものを含めて初めて選挙というものは成立するのですから、堂々という言葉が当たるか当たらないか知りませんが、かかる意味合いにおいて、選挙民も十分に選挙法改正などといった問題には参加する権利もあれば義務もあるというふうに考えております。ですから、しろうとに何がわかるかといったような議論は、これはもうはなはだおかしい議論だというふうに私ども考えております。今度の答申案から今度の提案に至るまでの過程で、一番われわれが非難されましたのは、お前ら選挙を知らないだろうという言葉でありました。これは、そんなことを言えた義理ではないのでありまして、私自身が投票しながら、かつまた応援もしながら知っているわけであります。また、その次に言われた言葉は、机上の空論という言葉でありまして、これも、今言ったような意味で、はなはだ問題にならない言葉だと思います。それから、さらにはなはだしきは、くやしかったら選挙に出てこいという言葉でありました。そうすれば、選挙を批判する者はすべて代議士もしくは参議院議員でなければならぬということになる、こんな暴論もないと思う。こういうところに、私どもはやはり、こういうことを言った人々、言った政党人というものの基本的な考え方というものがまだ不足だ、これは大いに今後とも訂正していただきたい、こう思っております。
  59. 加瀬完

    ○加瀬完君 これは久保田先生、宮崎先生両先生に伺いたいのでありますが、先ほど秋山委員の御指摘になりました、運動員に報酬を与える件ですね、これとあわせまして、それらも含めまして、選挙費用の単価というものを上げたわけであります。確かに今の法定選挙費用というものは現実に合っておりませんけれども、その法定選挙費用の中で選挙を済まされている方もいる。その法定選挙費用というものを上げる、あるいは運動員に対する報酬というものを新しく設けるということになりますと、ますます選挙費用がかさみまして、結局金権選挙というものがさらに幅を広げるのじゃないか、こういう懸念を私どもは持つわけでございますが、この点御所見はいかがでございますか。
  60. 久保田きぬ子

    参考人久保田きぬ子君) 法定選挙費用の引き上げでございますが、今の引き上げないままの中で、あるいはそれ以内、内輪でりっぱに選挙をなすって当選なすっていらっしゃる方を、私大先輩でも存じておりますわけでございまして、私は、選挙というものは金がかかるというこの事態が、そもそも選挙というものの本質をわきまえないのじゃないかという気がいたしますのでございます。そういう意味で、法定選挙費用の引き上げということに対しましては消極的な見方をいたしておりますのですけれども、ここ数年来のこの物価の高騰を考えて参りますときに、よろずのものの物価が上がってくるであろう。いくら法定費用をあるところで単価をきめておきましても、守られない。そこで、くずれていくなら、ある程度現実に即して引き上げていくのもやむを得ないだろうというくらいの、そういう意味の消極的なものでございまして、選挙法原則から参りますれば、私は現行の法定選挙費内でできないはずはないと思うのでございまして、それをしなければならないということは、いわば正しい言論による、意見による、思想による選挙というものが行なわれていない証拠だという気がいたしますのでございます。
  61. 宮崎吉政

    参考人(宮崎吉政君) 先ほど申しましたことで、私はこれは末梢問題だと実は思っておったんですが、と申しますのは、現実の問題として、とても現在の法定費だけではやっていけない。これは私ども、選挙を友人も先輩もたくさんやっておりまして、聞いております。実情からいって、聞いております。これはただ、繰り返して申しますが、運動員の報酬という名目で買収に転嫁するということさえ警戒していただけば、一日七百円、そうして三十人以内というならば、これは私はそう目に角立ててやる必要はないと思っております。
  62. 基政七

    ○基政七君 宮崎さんにちょっとお伺いいたしたいのですが、私は、選挙制度というか、こういう法律を作る際の基本的な考え方として、やはり選挙する側の立場に立って考えるのが公正な選挙法を生み出す根本だと、こう考えておるわけですが、その意味でいきますと、国会審議権との関係で最終的な問題が出てくるわけですけれども、この選挙を、たびたびこういう法律改正しましても、国民のほんとうに期待するような立法ができない。その点はやはり、国会の立ち入り方が根本に私は問題があるんじゃないかと、個人的にこう考えております。ですから、今度の選挙制度審議会立法の際にも、特に尊重するという、今までにない異例のいい法律ができたわけですけれども、そういう意味から言いましても、第三者にいられる、いわゆる審議会のような場合は、むしろ口移し的でいいのじゃないか、国会というものは手続を形式にとるということが、そこまで根本的に考え方を変えれば、選挙法自身はおそらく国民の期待に沿うようなものができるんじゃないか、こう私は考えるわけです。もちろん、この点は、選挙される側の立場も全然無視するわけにいきませんけれども、そこに非常に問題があるわけでございましょうけれども、つまり議会制度をほんとうに守る、それから選挙をする選挙民の側の人が十分納得する法律考えることが根本になる、そうすれば審議会答申をそのまま口移し的に扱っていくというくらいにまで思い切っていかなければほんとうの改正にならないんじゃないかと思いますが、この点についていかがお考えですか、お伺いしたいと思います。
  63. 宮崎吉政

    参考人(宮崎吉政君) 私冒頭に申し上げましたとおりに、現在選挙法とかあるいは国会議員あり方国会議員のいろいろな事柄について、いわば第四権を設けてはどうかというふうな意見があるというふうなことを申し上げましたが、それほどでなくても、少なくともああいった過程を経て、非常な権威を持って、総理大臣のしばしばの約束によってでき上がった審議会答申でありますから、これは百パーセント法定化してしかるべきだという気がいたします。ただ、もちろん、そう申しましても、おそらく審議会委員に選ばれた方々は、学識豊かな方々であり、経験だってかなりある方だと思いますから、決して、この選挙法というものが、政治家にとって死命を制する問題であり、かつまた場合によっては政治制度を変革するかもしれないというような重大なものを含んでおるのだということについては、おそらく十分お考えの上でやっていただけるだろうと考えますから、そのような意味で、原則的にはおっしゃるとおりであります。
  64. 小林武治

    委員長小林武治君) 以上をもちまして、午前に予定いたしましたお三名の方の意見聴取を終わりますが、参考人各位には、御多用のところを、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、また委員の率直な質問にお答えいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  午前はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十分休憩    ————・————    午後一時三十五分開会
  65. 小林武治

    委員長小林武治君) 休憩前に引き続き委員会を再開いたします。  議事に入ります前に、参考人皆様に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず、当委員会のため御出席いただきまして、まことにありがとうございました。皆さんには、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。なお、議事の順序としまして、まずお一人様二十分程度意見をお述べ願いまして、後刻委員からの質疑にお答えいただくことに進めたいと存じますので、御協力をお願いいたします。  それでは、まず田上参考人からお願いいたします。(拍手
  66. 田上穰治

    参考人(田上穰治君) 今回の法案につきまして、まず第一に、私選挙制度審議会関係しておりましたので、この審議会答申法案とがかなり違っているのではないかという声が、審議会の中でも、また世間でも、しばしば申されるのであります。その点から簡単に申し上げたいと思いますが、私は結論的には審議会答申に賛成しているものでありまして、その点で、法案がかなり手直しというか、ことにまた衆議院におきましても修正を加えられておりまするので、必ずしも現在の法案に全面的に賛成という——賛成でないというのはちょっと言い過ぎでございますが、まあかりに学生の答案に私どもが採点をするといたしますと、むろん満点というか——を差し上げるわけにはいかないと思うのでございます。しかしながら、また反対に、答申に絶対に政府は拘束されるかと申しますると、これは内閣が国会に対して連帯責任を負う。審議会のほうは、むろんそういった関係はございません。また、国民から直接選ばれているわけでもないので、いわば民主政治の土俵の上に乗るというのは、これは審議会ではなくて、政府国会であります。したがって、審議会答申に対して政府が無条件、無批判的に従ったということになりますと、これは憲法の責任政治の原理から申しましておかしいのであります。賛成できないのでございます。政府自分責任において法案を出すべきであり、したがって、審議会結論にどうしても従えないのというのであれば、その理由を明らかにして、自分立場法案を出し、その点で国民なり国会の批判を受けるべきものと考えるのでございます。したがいまして、内容が審議会答申と一致しない点があるからというだけで、私は直ちにこの法案を非難するという考えはないのであります。  内容的に見て、はたして政府の直しましたところが適当であるかどうか、これを簡単に申し上げたいと思います。主として問題は、連座制規定と、それから公務員、特に高級公務員の立候補の制限、この点も変わりましたし、もう一つ大きな眼目は、政治資金の規正という点で、審議会答申法案とが違っているところでございます。もうすでにいろいろな方が指摘されておりまするし、当議院におきましても十二分に御研究と思いまするから、簡単に意見を申し上げますると、第一に連座制につきましては、一つは当然連座制によって当選無効訴訟を待たず失格するというのが答申でございましたが、法案のほうでは、検察官が当選無効訴訟を提起しなければならないということになっているのでございます。実はこの点は、審議会の内部でも意見が分かれまして、昨年十二月の総会で答申をいたしましたが、その直前、われわれの属しておりました第二委員会のほうでは、むしろ政府案に近いものでございまして、当然失格ということはかなり内部に異論がございました。私自身は、当初から、当選無効訴訟は必要であるというふうに考えていたのでございます。これは、買収犯などに関する刑事の有罪の判決が確定いたしましても、その判決の理由の中で、地区責任者であるかどうか、あるというふうなことが一応認定されるのでございますが、この裁判所の判断は、訴訟に関与しなかった当選者には当然には拘束力を持たないということでございまして、これは既判力の主観的範囲——既判力かどの範囲の人に及ぶかという問題だと思いまするが、一応刑の過重の理由に地区責任者とかその他がなっておりまするから、その程度において刑事の判決の理由においても一応認定があるわけでございますが、しかしその裁判所の判断は刑事訴訟に関与しなかった当選者には必ずしも効力が及ばない、むしろ当選人はその刑事の判決の理由において裁判所が下しておりまする認定を争う余地がなければならない、かように考えるものでございます。その意味で、簡単でありまするが、検察官があらためて当選無効訴訟を提起するということにつきまして、私は賛成でございます。これは、審議会の内部においても、前からその点を私は主張しておりました。  それから、なお、こういうふうな点は、総会においては少数意見でございますが、したがって、総会の答申に私は正面から反対するものではございませんけれども、個人的な意見としては少数意見でございますから、この際私はこの法案に賛成であることを申し上げておきます。  なお、連座制については、その他連座制が適用される範囲につきましていろいろ問題がございます。特に、父母、配偶者、子、兄弟姉妹、この点につきまして、三点において御承知のようにしぼりがかかっております。しかし、これは私は、連座制をどの程度に広げるかということは、選挙の粛正という大きな立場から見ると、むしろ広げたほうがよろしいと思いますが、また、これによって失格する当選人というか、候補者立場あるいは候補者の権利、参政権という立場から考えますると、むやみに広げることについては法理上ちゅうちょするものでございます。しかし、結論的に申しまして、この父母、配偶者などにつきましては、一応候補者との結びつきというか、候補者がこれに対して注意を怠ったという——監督というか、そういう注意を怠ったことが事実であるならば当然でございますが、そういう点で、法案候補者と意思を通じというような要件が、実際は立証困難であるために、連座制が無意味になる、実効を上げることが困難なおそれがあることは、私も承知しております。そういう意味におきまして、立法の技術の上では多少考慮の余地があると思いますが、また反面に、全く候補者関係なく、ただ実際に父母である、あるいは配偶者であるというだけで、それが買収犯などに問われたときに当然失格するという、当選の効力を失なわしめるということは、疑問があるのでございまして、一応この点は、この法案に対して賛成でございます。  それから、公務員の問題につきましては、実は前の選挙制度調査会の時代から議論がございまして、考え方としては、私も、高級公務員の立候補制限一つの目のつけどころは、選挙の粛正の上に必ずしも判断を誤っていないと考えている者でございますが、ただ立法の技術の上で、第一に、高級というのはどの程度の、どの範囲のものをさすのか非常にむずかしいのでございまして、憲法四十四条あるいは十四条などにございます平等の原則、また特に議員となる資格につきましての平等の原則考えますると、合理的な差別でなければ憲法違反のおそれがあるわけでございます。この点で、審議会のほうでもかなり慎重に検討いたしまして、あるいは過去の実績によって、比較的全国選出議員のような場合に当選しやすいポストはどういうものか一応調べたのでございます。しかし、どうもこれだけではちょっときめ手にならない。また、実際に、そういう調査によりますると、各省庁によりましてかなり範囲が違って参りまして、ある省では地方の出先の機関の責任者まで入れたほうがよいようにも思われる。しかしまた、ある省では、外局におきましてはほとんどそういう選挙には影響しない、有利でないというポストもございます。だから、どうもどの程度に——どこで線を引くかということがきわめて困難でございまして、そこで審議会答申においても、具体案は示すことができなかった。法律によってこれをきめてもらうというだけでございまして、その点、われわれは法律学者として、正確な答えを出すことがまだできないのでございます。  そういう問題と、それからもう一つは、高級公務員とございますが、これは突き詰めて言えば、公務員法の問題というふうに考えられるのでありまして、つまり行政の腐敗を防止するということであって、公選法の上の問題かどうか、そういう点も大いに疑問があったのでございます。  結論的には、でありまするから、当初政府から出されました法律案、今日もそうでございますが、公務員一般について、選挙運動あるいは選挙運動に類似だとみなされるもの、これを規制し、さらにまた特別の連座制のようなものを入れたということで、よろしかろうと考えております。  第三の政治資金の規正でございますが、これは正直に申しまして、法案に私は若干不満を持っております。と申しまするのは、当初答申のほうでは一般政治資金の規正でございましたのが、法案になりまして、選挙資金というものの規正にしぼられたのでございます。しかし、常識的に見ると、どの寄付が選挙資金であるのかあるいはそうではないその他の政治資金かという区別は、きわめてあいまいでございまして、実際は、会社なり団体から政党が寄付を受けるときに、特にこれは選挙のためではないというふうに話し合いがつけば、法律の規制を免がれるように感ぜられるのでございます。そういう意味において、それがこの法案のような形でありますると、ほとんど改正することが実効性を持たないのではないかというふうにおそれるものでございます。実は私どもは、選挙制度審議会の第二の委員会のほうといたしまして、特に資金の規正については非常な熱意を持っていたのでございまして、一方では、御承知のように、答申は、一般の会社、労働組合その他の団体が選挙または政治活動に関して寄付をするという場合を規制する。これはすぐではありませんが、そういう計画というか、考えを持っているのでございます。その角度から見ますると、どうも法案はかなり弱くなっているということは率直に言えると思うのでございます。ただしかし、この点でも、この間ドイツのケルンの大学の教授がこちらに参りまして、西ドイツで政党法案が今日なお立法化されていない。なぜこれが法律にならないかという疑問を持っておったのでございますが、西ドイツにおきましても、政党の資金を公開するということは、まず現在では実行不可能である。選挙運動の規制はほとんど加えないで、しかも理想的に選挙が行なわれているような、自覚を持った国民というか、ある意味でわれわれの模範とする国民でありますが、そういう西ドイツにおいてすら、政党の資金を公開し、そしてこれについて、つまりこれを法律で規制するということは、まず不可能に近いという感想でございます。これは、わが国の政党につきましても、私は実情を存じませんが、非常にむずかしいものであって、理想は一歩々々実現すべきだと思いまするが、今回この点で、幾分というか、どうも非常に手ぬるくなっておりまするが、幾分はそういうやむを得ない事情も私考えられると思うのでございます。ただ、政党の資金をあまりにきびしく制限いたしますることは、憲法二十一条の結社の自由との関係において、若干の疑問を持つものでありまして、私は、審議会においては、この点で政党の公的な、公の性格を明確にしなければならないのではないか、そのためには政党法を考える必要があるということを申したのでございますが、本格的な政治資金の規正になりますると、公選法の改正あるいは今回の程度の手直しでは、もともと不十分であって、もっと抜本的な工夫を考える必要があると思うものでございます。  その他、時間がございませんが、以上が選挙制度審議会答申との大きな違いでございまして、大体私はその第三点のところに不満を持っておりますが、初めの二点は法案について賛成でございます。  それから、その他のところでは、たとえば選挙運動のために使用される事務員の報酬、これは衆議院修正で問題になりましたが、この点は、実費弁償のほかに報酬を考えることは、審議会におきましても議論になっておりまして、十二月の総会に持ち込むまでの第一委員会の案では、この点、報酬を考えるべきではないかという意見相当でございました。ただ、それが総会において否決されたのでございます。私といたしましては、この点も大体総会の結論に賛成でございまするから、衆議院修正に対してはむしろ消極的な考えでございますが、しかしまた一がいにそれが当然間違っていると簡単には割り切れない。言いかえますると、買収と給与、報酬との区別がかなり不明確であり、費用がかさむというようなことが反対の理由でございますけれども、しかし他方で、連座制からこれをはずしてやる——審議会でも途中ではずしたのでございますが、そういう点から考えましても、この事務員というのは、一般の有給の選挙運動員というものを正面から認めるというよりは、やはり労務者に近い機械的な労務、そしてそれと関連する選挙運動のための一般的な事務というふうな範囲で考えられまするから、その意味においては、私は絶対にこういうものを入れてはいけないという強い反対ではないのでございます。  それからもう一点、衆議院修正が加えられました選挙期日告示前の演説会、それから選挙運動期間中の個人演説会の回数の制限を撤廃するという点が、すべて現行法どおりにもどったのでございますが、あとのほうの点は、これは実際に選挙運動期間中制限回数まで演説会をやる候補者は比較的少ないように聞いておりまするし、また特定の候補者が場合によって会場を借り占めてしまうというふうなおそれもないわけではございません。私は、その意味においては、回数を現状どおりに制限を残すということが、必ずしも反対ではないのであります。ただしかし、事前演説会、期日告示前の演説会につきましては、どちらかといえば原案に賛成でございます。現在の現職の議員の方は比較的に選挙において有利でありまして、ことに政党本位ということをもし考えまするならば、それほどやかましく事前運動を規制する必要はあるまい、ことに文書ではなくて、言論による事前運動相当大幅に認めることが必要ではないかと考えております。こういう点でも、でありまするから、衆議院修正に全面的に賛成というのではなくて、相当ちゅうちょするところがございます。  それから、その他は、時間もございませんから、端折りまして、そこで結論を申し上げますると、法案につきましては、必ずしも全面的に賛成ではございません。しかしながら、それならば、答申がいろいろ修正を加えられましたけれども、それは現行法と比べて改悪であるのか、逆の方向に、つまりマイナスの形で改悪であるのかと申しますると、私はそうは思わないのであります。ただ、あまり現行法と比べて、特に政治資金の規正などにつきましては、変りばえがしないという意味において、不満はございます。しかし、今日は、御承知のように、会期もわずかでありまして、現在の段階で修正を加えて一そうこの法案をよくするということは、実際に時間的に不可能ではないか、もしそういう意味で時間がないといたしますると、修正を加えることは、もう否決というか、審議未了に終わるおそれがある、しろうとでございますがそのように考えます。そういたしますると、多少の不満はありまするけれども、現行法をかりにたとえば五十点といたしますと、百点ではないが、法案は七十点あるいは八十点くらいに、相当必要な重要な改正も加わっておりまするから考えられるのでありまして、そうなると、現状維持よりは、この法案を通していただきたいということ、審議会に関与いたしました一人として、そういう希望を持っております。  簡単でございますが、以上をもって一応私の話を終わる次第であります。(拍手
  67. 小林武治

    委員長小林武治君) ありがとうございました。  次に、杣参考人にお願いいたします。
  68. 杣正夫

    参考人(杣正夫君) 杣でございます。(拍手)  公職選挙法を中心といたしまして、これに関連しました法規、さらにこれら法令の外側に、政治道徳運動としての公明選挙運動の態勢がありまして、これをひっくるめて広く選挙制度と呼ぶことができるわけですが、この選挙制度は基本的な点で大きな問題を持っているのであります。それは、この選挙制度は、大正十四年のいわゆる普通選挙法を中心とした選挙制度を原形にいたしまして、それをもとにして改正を加えて戦後の現在に至ったものであるというところにあるのであります。詳しく申しますと、憲法は戦後になって国民主権への大きな改革を遂げたにもかかわらず、憲法付属法典である選挙法はその基本的な形態で旧態をとどめているのであります。そのため、わが現行選挙制度は、他の自由民主諸国家に類例を見ないほどに、民主政治の実態に即さず、極端な言い方をすれば、時代錯誤と思われるような部分を重要な点で持っているのであります。国民主権は議会主義のもとでは具体的に最もよく選挙の際の選挙民の行動に表われねばならないということ、議会主義は言論による討議を主要な手段にするということ、さらにそうした原則の上に行なわれる政治政党政治であることを考慮に入れながら、今回の改正法案を検討してみたいと思います。  まず第一に、現行の選挙運動の法規制は、あまりに繁雑で、制限的であるので、これを改めなければなりません。このことは、過去の調査会審議会でも主張されてきたところであります。中でも言論、文書活動の制限がきびしいのは特に問題であります。言論、文書活動の自由化につきまして、審議会答申政府案は、一歩を進めているようでありますが、事前運動制限付で認め、期間中の個人演説会の回数制限を撤廃する、会場での宣伝ビラの配付を認める。ポスター、葉書の枚数の増加など、また選挙中確認団体である政党団体に言論による選挙活動を認めるなどの改善を行ないました。これら改正案は、言論活動の自由化という選挙運動の法規制の質的な改革にはなお及ばないと思うのですが、量的には改善されたわけであります。こうした量的な改善を積み重ねていって、質的な自由化の徹底にまで及ぶのは、現状としてやむを得ないところではないかと思います。ところが、衆議院修正で、個人演説会制限緩和に関する部分が、現行のものに逆戻りいたしました。この修正案などは、選挙における言論活動の意義を理解しないものと言わなければなりません。池田内閣は、その成立以来、議会主義の尊重を基本方針としております。議会主義とは、言うまでもなく、選挙の場から始まって、議会の場、法律実行の場で終わるもので、そこには言論による討議が最大限に重視されるのであります。  そこで、特に選挙は、主権者国民と、その代表者たるべき候補者政党とが、今までの政治あり方を批判、検討し、今後の政策について注文し、理解し合う機会であります。国民の基本的人権の一つである参政権が最も具体的に表わされる機会が選挙であります。その意味から、選挙における議会主義、すなわち言論による討議を自由ならしめることは、国民主権の議会民主制のもとでは、幾何学の公理のように重んじられねばなりません。にもかかわらず、言論活動の自由化の量的拡大をはかった原案を、そのおもな点で修正をつけ、逆戻りさせるのには、反対であります。  さて、政府案自体も、言論規制の点で問題を持っております。その一つは、選挙中に言論、文書活動のできる確認団体を一つにしぼった点であります。そもそも、政党を含めて、政治団体の言論、文書活動を、選挙の際にこのように制限するなどは、議会主義の、政党政治の首を絞めるようなものであります。政党は、社会に足を置いて、政府の機会で活動をいたします。つまり、政党は広い意味での政府と社会の政治への意思を疎通させる橋であります。そして、もちろん、選挙の際、これら政治団体のうち活動する意向を持っているものには、十分活動をさせなければなりません。これを制限しようとするのは、西欧流の政党政治の常識に反しているのであります。  その二は、政党政治団体の言論活動がこのように制限された上で、それ以外の第三者である選挙民選挙運動のためにする演説会が一切禁止されている規定がそのままに置かれていることであります。選挙民の自発的な選挙活動を言論でも文書でも禁止しているのは、早急に改める必要があります。ルソーはイギリスの民主主義をからかって、イギリス人は選挙のときは主権者であるが、選挙が済めば奴隷になると申しましたが、日本はどうでありましょうか。日本では、選挙のときでも、選挙民はただ黙ってポスターや公報を読み演説会を聞きして投票することを求められているのであります。せめて選挙のときだけは、国民は主権者らしく、政治について大いに知り、自分たちの希望をまとめ、よい指導者を選ぶための言論活動を積極的に許してもらいたいものであります。  本改正案は、選挙の公明化をはかったとされております。私は非常に希望したように、言論活動が国民にも政党にも自由に堂々と展開される態勢こそ選挙の公明化のロイヤル・ロードであると思います。これによって国民選挙の中に自発的に入って参ります。政治自分のものと思います。政党も、候補者も、金で投票をつかもうとする者は自然軽べつされる風潮ができるでありましょう。審議会委員やその他の方々が、西独やイギリスなどの選挙事情を視察されて、そこには公明選挙運動もなく、選挙取り締まりもほとんど見られなかったことの報告をしておられますが、それはこの政治言論の自由と大いに関係があるのであります。  第二に、この改正案について、衆議院選挙区別議員定数是正が含まれなかったことを残念に思います。御承知のように、審議会を設置する際に、衆議院は附帯決議をつけまして、選挙区制は慎重に扱うこと、定数是正は早急に行なうことを希望したのであります。ところで、審議会審議経過でこの附帯決議がいかに尊重されたかが、大いに問題にされねばなりません。この附帯決議は、審議会という中立的、第三者的機関の活動に与えられた政治的なワクであるのであります。ともあれ、十二月二十六日の答申には、定数是正案が入りませんでした。前回の岸内閣の調査会では、これを入れた一本の答申が出ております。昭和三十四年の岸内閣のときより選挙区別議員定数と人口との不均衡は拡大し、それを責める世論も大きくなっております。都道府県門で人口状態に合わして異動させねばならない定数は、四十九人の多数に上ってしまったのであります。こうした状態にあり、かつ附帯決議があったのにもかかわらず、その答申がありませんでした。明けて二月中に答申があるとされていたところが、政府のほうでその答申を待ってもらうよう押えたかに聞いております。そうして、ついに今国会で日の目を見なかったのであります。定数是正は、参政権の実質的な平等をはかるために、つまり公選法第一条にいう選挙の公正のために必要であることは、言うまでもありません。さらに、本改正案が大義名分とする選挙の公明化のためには、さきの言論活動の自由化と、この定数是正は、きわめて大きな効果を上げると考えられます。  選挙の悪質違反は、農村地区に多いのであります。そのおもな理由は、農村選挙区では票を多く取らなくても当選できるからであります。たとえば、四万票を取れば当選できるといたしまして、固定票のほか、足りない部分——五千票なり三千票なりを違反手段で求めるわけであります。六万票も七万票も取っても落選するような大都市選挙区では、とてもこれはできないのであります。それゆえ、都市、農村とも、ほぼ人口、すなわち、有権者に比例した議員定数の配分があるときは、農村選挙区における定数一人当たりの有権者がふえ、このような実弾作戦はできなくなるのであります。  さらに、本改正案は、ポスターやはがきの枚数の増加をはかりました。それは一応よいといたしまして、現行のアンバランスのままでは、都市選挙区と農村選挙区できわめて不公平ができるのであります。たとえば、三万三千票で当選できる区では、二万五千枚の選挙用はがきがその票数の約七割五分あるのに反しまして、七万票も取らねば当選できない区では、はがきはその票数の約三割五分にすぎないのであります。有権者の多い選挙区では、候補者選挙民も非常に不公平な公営の措置を受けるわけであります。ポスターにしても、このことは言えます。この例にとどまらず、選挙区画と議員定数は、候補者選挙地盤を定め、したがって選挙運動の形を決定いたします。それゆえ、選挙区画と定数を動かさなければならない緊急の平信があるとき、それをしないで、運動の規制のほうのみを動かすことは、あまり合理的ではないのであります。  さて、第三に、公務員に対する特別の選挙活動規制が新たに作られました。審議会答申の高級公務員の立候補制限は、賛成できないのであります。それは、国会は国政の最終の、かつ最高の舞台であります。ここには、いかなる職業階層も、選挙の試練を経て登場する権利を平等に認められねばなりません。これは憲法の規定するところであります。より実際的に考えますと、公務員、特に高級公務員は、わが国の才能ある人材の一部に属します。このような才能を国会から制限するようなのは、国民の損失であるばかりか、逆に、国会から締め出されたこれらの階層が、旧来の官僚政治のとりでに立てこもるおそれもまたあるのであります。それゆえ、政党政治の発展の将来を考えるとき、高級公務員に政党人たるの道を開いておくということは、現実的に必要であるのであります。明治憲法下における貴族院の勅選議員のことを考えれば、高級公務員が民主的な試練を経て国会登場するのは、決して非難すべきではありません。しかしながら、政府の当初案は、高級公務員の立候補制限をやめて、選挙活動をきびしく規制する態度をとりました。しかし、このような特別の制限は、公務遂行上の常識と公務員の執務義務の点から措置されるべきで、あえて法規制の必要はありません。選挙運動規制の違反は、公務員たると一般であると区別されることなく同様に律せられるべきであります。しかも、最終の政府案は、この特別制限を高級公務員から全公務員に広げましたから、ますます問題が重要なものとなりました。去年五月の自治省の数字によりますと、地方公務員は百七十万四千人であります。国家公務員は、三十五年度の予算定員で、一般職、公社、現業その他を含めて百七十九万二千三百八人であります。合計約三百五十三万人余がその制限措置の対象になるわけでありますが、一体これだけ多数の有権者を、公務員であるがゆえに特別の選挙活動規制を行なうことは、不当な差別であると言わなければなりません。公務員は、すでに政治活動の点で一般的に規制を受けております。それだけで十分であります。  次に、連座制についての改正案でありますが、これは現行法のおとりになる免責規定を取り去り、検察官の訴追を義務化することで十分で、これを厳重に実行すればよいのであります。政府案は、連座の対象を、選挙区の一定範囲を主宰した者や、同居あるいは候補者と意思を通じた親族にまで広げましたが、その必要はありません。これを衆議院修正案が範囲を三分の一以上といたしましたが、これも無意味であります。選挙運動主宰者の悪質違反は、地理的範囲によらないのであります。当選に足りない若干票に実弾作戦が一般になされることは、すでに申しましたが、この不足票は選挙区の三分の一にもならないでありましょう。親族が悪質違反に問われること自体が、候補者に重大な打撃であります。その親族が総括主宰者か実質的な出納責任者と判定されたときのみ連座制を適用すれば十分であります。  立候補供託金の全面的引き上げ、町村長選挙においてこれを新設したのは、全く反対であります。供託金制度は、泡沫候補の防止にある程度役立ちますが、それよりも、被選挙権が金によって制限される形をとり、ひいては選挙民の選ぶ範囲が金によって制限される傾向を生み、普通選挙制の本質的な理念を署する点で、廃止に向かわなければなりません。泡沫候補の抑制には、もっと別の措置があるのであります。政党の統制の尊重であるとか、有権者の推薦制であるとか、その区の選挙権者であること等を考えればよいのであります。  選挙管理委員会の強化は、結果として賛成でありますが、その理由の点で問題であります。選挙管理委員会は、公明選挙運動といった社会教育活動の責任主体の意味で強化されるのではなく、選挙の管理事務の厳正な権威ある執行それ自体のために、予算の上で、職員の上で、数段の強化がはかられねばなりません。各地の多くの市で、専任の選管担当者がなく、庶務係長などと兼務している例がありますが、これでは選管の権威は保たれないのであります。選挙管理は、その事務の量でもって価値をはかるべき種類の仕事ではないのであります。選管職員に若干予算による特別の手当を確保して、管理能力の向上をはかってほしいと思います。  選挙管理委員についての改正案は、賛成であります。できれば、公正な管理執行のため、管理委員の選任には、国会の事務総長におけるような、各会派の一致あるいはそれに近い形の多数決制をとったほうがよいのではないかと思います。  衆議院修正案で設けられました選挙運動従事者に対する報酬規定は、やめたほうがよいと思います。選挙選挙民政党との自治的な活動によって行ないたいというのがその根本理由でありますが、一たんこのような報酬規定が設けられますと、選挙活動に金が日当、報酬として合法的にものを言うようになり、選挙を金で汚す傾向を増大させるでありましょう。  最後に、政治資金の寄付に関してであります。答申の、国または公共企業体と特別の経済的関係にある会社等の当事者は、政治資金選挙資金の寄付を禁止しようとする、あれは自治省案で生かされておりましたが、政府案では選挙に関する寄付のみとなりました。これではざる法になってしまいます。答申の線に戻すべきであります。  以上で、言い足りないところがあるのでありますが、本改正案は、最初答申として出てきたときには、差引改善部分が多いものとして支持できたのでありますが、政府案になり、修正案となって、以上のような賛成できない部分が多くなり、しかも衆議院の要望であった定数是正が含まれていないので、全体として、私はこれに賛成することができないのであります。(拍手
  69. 小林武治

    委員長小林武治君) ありがとうございました。  ただいまのお二方の御意見に対しまして、御質疑のある方は御発言願います。
  70. 加瀬完

    ○加瀬完君 両先生に伺いたいのでありますが、特に田上先生ですが、政府審議会答申に無条件に従う必要はない、こういう御前提でお話が進められたわけでございますが、しかし、今度の審議会設置法によれば、第三条に答申を尊重するということがあるわけですから、これは審議会答申を尊重するという建前で進められなければならない一つの義務づけがあると思いますが、この点いかがでしょう。
  71. 田上穰治

    参考人(田上穰治君) まことにそのとおりでございまして、審議会の設置法の第三条に、尊重せよということがございます。したがって、この答申とあまり違った法案でありますと、政府は、その点を国会、間接には国民に対して釈明をし、またそれについてのいろいろな疑義に対しては、なお十分責任を負わなければならないと思うのでございます。しかしながら、反対に、政府がとうてい賛成できない部分につきまして、かりにすべて審議会答申をしたからそれに従うと、それがこの法律上の義務であるということでもって、政府みずからの責任を回避することになりますと、これは憲法の精神に反する、審議会国会に対する責任を負わせることはできないのでございまして、法案の内容については、一切の責任提案者として政府が負わなければならないということでございますから、審議会答申理由政府責任を免れることはできない、これを申し上げたのでございます。言いかえれば、審議会の設置法第三条の規定は、これがあるからといって、政府は自己の責任を免れることはできない。そうなりますと、その責任上、従うことができない場合も起こってくるのであって、絶対に答申に拘束されるという解釈は、設置法の規定からは出てこないということを申し上げたのでございます。できるだけ尊重しなければならないという含みはむろんございますし、政治的に、従わない場合は十分釈明する義務はあると思いまするけれども、しかし政府に対して法的な拘束力は答申は持たないということを申し上げたのでございます。
  72. 加瀬完

    ○加瀬完君 それから、これは両先生にお答えをいただきたいのでありますが、問題の高級公務員の立候補の制限の問題でありますが、両先生とも、公務員法のワクの中で処置できるのじゃないかと、こういう御見解のように承りましたが、立候補するには退職して立候補するわけですね。したがいまして、事犯が起こりまして、公務員法を適用しようとするときには、すでに現職にはおらないという現象も出てくるわけですね。それから、これは、服務規律の問題というよりは、地位を利用して選挙運動をするという問題のほうが私は強いと思う。したがいまして、公務員法で処置をする問題ではなくて、やはり選挙法で処置をする問題ではないかと思いますが、この点はいかがでしょう。
  73. 田上穰治

    参考人(田上穰治君) 先ほど簡単に申し上げましたが、公務員法の中で規定せよということを申し上げたことはないのでありまして、ただ、考え方としては、公務員が同級であるか、あるいはもっと中堅というか、若手であるかということは、程度の差はございましょうけれども、とにかく、公務員が地位を利用して、いろいろ、本来の目的、本来の使命と反するような政治をやってはいけない。それを選挙に結びつけて、選挙の目的のために、本来の公務、全体の奉仕者としての立場をはずれるようなことがあってはいけないという意味で、先ほど申し上げたのでございます。そうして、申し上げたのをもう一度繰り返しますると、高級ということの範囲がつかみにくい、そうして一方では、今申し上げたように、公務員全体に同じ共通な問題がございまして、たとえば、具体的にはちょっと申し上げられませんが、農林省とか建設省とかいったような方面でありますと、しばしば地方の出先機関の責任者などについても、選挙に出やすい事情があるようでございます。ところが、これまた、省なり庁によりましては、むしろ中央の責任者でありましても、必ずしも選挙に有利でない。一々は申し上げませんけれども、そういう事情がございます。そこで、高級という範囲をはっきりきめる。たとえば各省の本省の局長、次官というふうに、一律にきめることが困難と私は判断しております。そうだといたしますると、どうもそこで線を引いても、それが合理的な差別であるという説明がかなり困難でございまして、もちろんこれはさらに検討を要する。将来また合理的な差別ができるかと思いますけれども、現在の私どもの考えでは、ちょっと合理的な差別が困難である、それは先ほどの憲法十四条とか四十四条の精神からみて。そうなりますると、立法化することが困難だということでございます。御質問に対するお答えと少しはずれたかと思いまするが、その意味におきまして、現在の法案は、大体公務員一般につきまして、むしろ公務というか、行政の腐敗を防止するということがかなり強い理由になっているように私は思うのでございます。
  74. 杣正夫

    参考人(杣正夫君) 大体、一般的に申しまして、人は職業によって社会的な地位を持っているのであります。ですから、公務員が退職して選挙に出る場合に、その過去における地位に伴った長年の社会関係を利用するということは、常識的に言って当然であります。しかしながら、その常識的なワクを非常にこえた場合には、これはもちろん制限がなされねばなりませんが、そういう部分制限については、その公務員が現職にいるときでは、場合によっては公務員法に触れますでしょうし、それからひどく程度をこえるという場合には、その政治的な反対派の批判、一般世論の批判が起こって、それを抑制することが期待されるわけです。場合によって、そういうような一般世論だとか、その反対派の批判というものが徹底しない場合もありますけれども、選挙というものは、その国家の政府の活動だけで考えてはいけないので、その社会活動、社会の面に根をおろしたものでありますから、その両方につながっているものでありますから、そういう社会的な人間関係が入ってきて、しかもそれが程度をこえる場合には、法的な場でではなく、社会的な場でそれを抑制するような事態に持っていくというのが、選挙の規制としてはふさわしいのではないか、こう思うのです。実例を申し上げますと、三十五年の群馬県の知事選挙の場合でしたが、副知事が選挙に出ることを目ざして、余分に各地の視察をやっていたというようなことを反対党から言われて攻撃されたことがありますが、その場合も、副知事はそういう批判を甘受して、みずからその職を早く去ったというような事例もありますから、反対党がしっかりしていて、そうして世論の批判がそういう点で徹底して参りますと、そういう地位を利用した選挙活動といったようなものが極端なものになった場合には、必ず抑制されるようになってくるであろうと思います。さらにまた、選挙は、何といっても選挙という一つのふるいがかかるのであります。そのふるいをかけて、選挙民の能力というものを十分やっぱり育てなければならないし、また現在ある能力を信頼したいと思うのです。
  75. 田上穰治

    参考人(田上穰治君) 先ほどのお答えがちょっと不十分でございましたので、補足いたしますが、高級公務員についてなぜ立候補の制限をしなければならないか、これは選挙制度審議会の中でもしばしば問題になりましたけれども、これはただ選挙に出やすい、ことに全国選出議員として当選しやすいから、そう簡単に出てはいけないということでありますると、私はそう思わないのでありますけれども、そうだとすると、労働組合にいたしましても、あるいは宗教団体——全国的に非常な勢力を持っておる宗教団体がございますが、そういうふうな方面からも、そのことについで同じことが蓄えるのではないかと思うのであります。しかし、当選しやすい人が選挙に出ていけないということだけでありますと、はなはだおかしいのでありまして、むしろある意味においては多数の国民が支持しておるのだから、そういう人はむしろ進んで出ていただきたいというふうにも思うわけでございます。なぜ高級公務員の場合に特にそれが問題になるかと申しますると、それは公務員というものが全体の奉仕者としての立場であり、その公務を選挙の目的のためにまげて執行するということになると、これは事重大である。その意味でありますると、これは高級であろうとなかろうと、とにかく公務員のやはり規律の問題には結びつくと思うのでございます。高級というのは特に公務員の中でも出やすいものだから、そこでそういった汚職というか、職権を乱用するというおそれが大きいということで、ことにこれは政治評論家のような立場からいたしますと、直観的にここをひとつ取り締まるというか、押えなければならないという意見が出たのでありまして、私もそういう目のつけどころは非常にけっこうだと思うのでございますが、分析いたしますると、どうも高級というのはただ出やすいという意味でございまして、 いけないのは、公務員がそういう政治あるいは選挙の目的のために本来の職務をまげて執行する、職権を乱用する、行政が腐敗化するということにあろうと思います。そういたしますると、今回の法案のように、高級ということは一応はずしたのでございますが、むしろ広く公務員についての規律、ことに一応政治活動は現在の人事院規則なりあるいは地方公務員法で制限されておりますが、しかし罰則においては、特に地方公務員法の場合においては、この規定が乏しい、またこの政治活動、事前運動につきましても特に厳重にこれを規律する必要があるというふうな点で、ある意味で綱紀の粛正、そういう意味におきましてこの法案ができたと思うのでございます。その意味において、先ほど申し上げましたが、私は一応賛成でございます。
  76. 加瀬完

    ○加瀬完君 この出やすいから反対するということではなくて、高級公務員の地位を利用してたくさん出ておることも事実であります。しかも、その出る出方については、国家権力を利用して事前運動を激しくやったという幾多の例もあります。したがって、杣先生御指摘のように、われわれ野党として指摘もするし、あるいは世論もきびしくこれに対しては批判を加えておったわけであります。したがいまして、高級公務員といって、おしなべて高級公務員を十ぱ一からげにするわけにはいきませんが、今までの現実的な経験と、それからいろいろの合理的な判別をすれば、国家権力という地位を利用して事前運動を激しくやりそうな高級公務員の地位というものは判別できるわけです。そういう者に立候補制限をすることが、これは一つの社会的要求でもあろうと思う。国家公務員とか地方公務員とかいう一般公務員と、特に下級の公務員と高級公務員では、その責任も違うと思う、権力の動かし方も違うと思う。力関係、したがって条件も、やはり特殊な高級公務員については立候補をある一定期間制限すべきだ、こういうことになったのではないかと思うのですが、私は審議会意見もこういう点においては合理性もあると思うのですが、両先生はやはり御反対でございますか。
  77. 杣正夫

    参考人(杣正夫君) 私先ほど申しましたように、やはり国会の舞台、あるいは地方の議会でもそうですが、その議会の舞台というものは、もうすべての職業階層に開放したいと思うのです。そうして、選挙に対する各政党の活動、それからまた選挙民のそれに応ずる自発的な対応活動というものによって、そういう高級公務員の違法な、常識をこえた悪質な手前運動のようなものは抑制し、そういうことをする者は押えるというような、そういう方向に持っていくほうがよいと考えるわけで、今おっしゃるように、そのような悪質な例があるいはあるかと思うのですが、これは、これを今直ちに法的にどうこうというようなことをして、それでなくても選挙に対する法的規制が繁雑で、しかもきびしいというような、自由民主主義の国としては異例な選挙制度であるのに、一そうこういうところで公務員に対してそういうような制限を特に加重するということは、やはり選挙制度の将来の方向として思わしくないのであって、国民の——公務員を含めて、そうして政党も含めて、政治に対するレベルの向上ということによってこのことを処置していきたい、こういうふうに思っております。
  78. 加瀬完

    ○加瀬完君 時間がありませんから、次の質問に移りますが、田上先生、参議院では審議期間もあと幾らもないので、修正作業ということにはなかなか時間的にむずかしいだろうと、しかし現行法よりはいいのだからこれを通したほうがいいと、まあ言葉に絹着せず申し上げれば、そのようなお話と私は了解したのでございますが、しかし、時間がないから、現行法よりいいのだから通せということでは、二院の存在価値というのははなはだあやふやなものになるように私どもは感ずるのです。十二分に審議の時間がなければ、審議の時間を設けるべきである。非常に不備がある先生方御指摘の問題を、時間がないからといって、限られた期間に、一週間ぐらいの間に、参議院だけ、あまり審議せんでもいいから、現行法よりはいいのだから通せということでは、ちょっと私ども承知しにくいのでございますが、この点もう一回御所見を承りたいと思います。
  79. 田上穰治

    参考人(田上穰治君) まあ、そんなことを申し上げなくても、よくおわかりと思いますが、今度の通常国会は、御承知の参議院選挙で、特殊事情にあって、非常に会期というか、審議の期間が短くなっていることを伺っております。で、修正いたしますと、むろんこれは衆議院に戻さなければならないし、非常に成立は困難——ほとんど不可能に近いと考えております。  二院制度は、確かに御指摘のとおりでございますが、これは参議院先議の場合でありますると、衆議院において同様な問題が起きるわけでございまして、常に参議院にしわ寄せになるというわけではないと存じます。  そして、結局、この法案の総括的な批評というか、評価でございますが、先ほど時間の関係で申し上げませんでしたけれども、まあ私としては、たとえば郵便による立候補、あるいは重複立候補の禁止とか、その他いろいろな点におきまして、あるいは選挙公営の拡充ということを考えましても、あるいは先ほどの政治確認団体、あるいはそのほかに推薦団体につきましての政治活動、選挙運動をある程度認めるというふうな点も、非常な進歩であると考えております。ただ、これは杣参考人も言われましたけれども、今回の改正法案は、公職選挙法改正を必ずしも要する重大な点を網羅しているわけではないのでございまして、実は、選挙制度審議会のほうでは、さらに第二次の答申考えていたのでございます。あるいは区制の問題とか、あるいは政治資金のもっと大幅な規正についても、議論がございましたし、さらにアンバランスの是正についても十分検討をして答申をする、このほうは実は審議会において、時間切れというか——のような感じでございまして、はなはだ申しわけないのでございますが、そういう意味においては、この法案が必ずしも抜本的というか、非常な理想的なものとはとうてい言えない。ですけれども、もしこれが審議未了になりまして、現行法のままで当分行くということであると、実は正直に申しまして、昨年来約一年間、相当私ども勉強し、また実際に、答申の結果は十分御批判いただきたいと思いまするが、かなり大きな改革を考え、またこの法案がこれを含んでいる。私どもの答申のとおりではございませんけれども、しかし相当部分においてこれを取り入れて、そして現行法に比べれば非常な進歩——もし修正の時間的に余裕がございますならば、それは部分的になお直していただきたいと思うところがございます。しかし、それは致命的な重大なきずとは私思わないのでありまして、むしろそれを補って余りあるというか、それよりかはるかに現行法に比べて多くの進歩を示しているわけでございますから、全体として考えますると、この法案を通していただきたい。そして部分的に、なお欲を言えば、修正意見もございますが、そのために全体が審議未了になるのは、私は非常に遺憾だと考えております。それだけのことでございまして、深い意味はございません。
  80. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 お二人の先生に若干伺わしていただきます。  皆さん方の意見を承る機会でありますが、ちょっと意見を申し上げないと、あなた方の真意がつかめませんので、若干意見を加えて、数点にわたって承りたいと思います。  第一点は、加瀬委員からお伺いいたしました公務員関係の問題でございますが、杣先生のほうから、公務員なるがゆえに特別の規制をすべきでないという意味の御発言、それから、公務員は優秀な人がいるのだから、そういう人々に民主的な試練を与えて政界に登場願うことは好ましいことだ、こういう意味の御発言があられたのですが、そのこととこのことは私は違うのじゃないかと思うのですね。こういう種類の立法というものは、その国に、その時代にいかような者が必要かという、その認識が根底にあって考えられるべきで、その国の事情が時間的経過によって変われば、またそのときに次善、三善へと検討されていくべき問題でないかと思うのですね。私は、現在のわが国の公務員諸君が、高級であろうと、中級、下級であろうと、お互いに日本民族の中で、知能指数の比較的いい層で占められていることを、私は認めます。そうだと思うのです。しかし、だからといって、その政界に乗り出して行く乗り出し方は、現状のままでいいということにはならないのじゃないかと思うのですね。問題は現状認識にあると思うのです。私は、高級、下級にかかわらず、一般論として申しますが、特に高級の場合強いのですが、わが国は何と言ったって官僚支配というものは強いのです、政党政治というものは。わが国の政党政治というものは、官僚支配のほうがより強いですよ、実態が。補助金行政というものが非常に行なわれているわけです。ことに、出張の機会が多いのは、高級公務員ですよ。だから、現にその人が優秀かどうかということは別なんです。政治家に適するか適さないかということは別ですよ。国民のサーバントとして、全体の奉仕者ですね。その人は、国家権力を背景に、国民の税金で出張するわけですよ、実態は。そうして事前運動をやるわけです。そうして補助金行政をやっているから、だから売り方と買い方の関係で、組織を通じて、計画的に綿密に票の規制がされるわけですね。そうなると、される側は、選挙の自由意思表示というものは全くなくなるわけですよ。国家権力と行政運用の面から制約されるわけですね。そういうのは特例じゃなくて、それのほうが一般なんですね、今わが国の実態は。高級公務員の中でも、りっぱな選挙をして出てくる人はあるのです。しかし、それは希有なんです、一般論としては。そういう行政機構と、国家権力と、それから国の予算、こういうものを背景に、そうして規制される側の選挙への自由な意思表示というものが制約された形で選挙が行なわれているということは、そのほうが一般であるということは、何人も否定できないと思う。かかるがゆえに、高級公務員あるいは下級公務員の問題が起こってきているわけで、この実態から、いかにこれに対処するかという場合に、公務員が優秀だからとか、あるいは公務員なるがゆえに制約されることは云々という所論は、私は当てはまらないのじゃないか。学者としてはそれでいいかしれませんが、われわれが政治の場で法律考え、実態に即していく場合には、それでは足りないのじゃないかと、私は政界の末席を汚す一人として、その感が強いわけです。それが、皆様方が象牙の塔の角度から、われわれ政界、政界人に対して、そういう角度から、どういう御発言をされるか、私はさっきの御公述を承って、若干お言葉の中に納得しかねる点がありますので、若干実態、私の認識、これを申し述べて、さらに御所見を承りたい。
  81. 小林武治

    委員長小林武治君) これは、質問者も、お答えになる方も、性質上、討論にわたらないようにお願いいたします。
  82. 杣正夫

    参考人(杣正夫君) これはすでに申しましたことの域を出ないのでありますが、公務員だけが優秀であるというわけではないのですが、ほかにも優秀な人が、ほかの職業階層にもいるわけですけれども、しかし、そのような優秀な人が、この国政の最終の、しかもまた最高の舞台である、そこへ登場してもらうということは、この国家の重大な統治ということのためにはぜひとも必要であるというように思うのです。  それからそういう高級公務員を国会に入れることによって、政党政治の発展が阻害されて、官僚政治の性質を濃くするということでありますが、これもやっぱり考え方でございまして、まあそういう御指摘のような事実があったことは、確かに事情があるということは、私も認めるものですが、しかし、この高級公務員をシャット・アウトする、締め出すことによって、官僚機構を通ずる官僚政治の実質が残るよりも、そのような人たちを国会に入れることによって、選挙とそれから政党の活動のワクの中に入れる、そして次第に政党がこの選挙民と政策的に今以上に結びついて参りますと、高級公務員出身者であっても政党人とならざるを得ない。私は多くの高級公務員出身者の中でりっぱな政党人になっている人を知っておりますが、これは自民党にも社会党にもおられるわけですが、そういうふうに、政党政治の発展と対応して、かりに国家機関の中から国会に入った人も、次第に選挙とそれから政党政治の活動の中で政党人に陶冶されていく、そういう方向を長期的には目ざすべきである、こういうような考えなんです。
  83. 田上穰治

    参考人(田上穰治君) 矢嶋委員にちょっとお答えしたいのでありますが、私は必ずしもこの公務員の立候補を制限してはいけないということを申し上げたわけではございません。
  84. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そのことはよくわかっています。  杣先生にもう一回伺いますがね。私は午前中も参考に伺ったわけですが、あなたと私の討論でないから深入りしませんが、あるべき基本的考え方については同じだということは、私よくわかっているのですよ。ただ、現状認識に相違のあるところから、方法論としての大きな食い違いがきているというところが、さっきの僕の発言と先生の公述との相違点になっているかと思います。で、たとえば、午前中もちょっと触れたのですが、こういう国民世論が出てきますと、まあ過去は過去として、あるべきよりよき姿に持っていくために、当事者並びに周囲の人々の反省、改善の方向づけがされれば、私はそれでけっこうで、こういう国際的にはあまり誇れぬような法律は、条章は、作るべきでないという考え方ですよ。ところが、昨年十二月選挙制度審議会から答申があり、国論の沸いているさなかに、実際問題として、一つ例をあげますと、わが国の政界の非常な有力者と自他ともに許されている人ときわめて近い関係にある、ある有力高級公務員がおやめになられて、そして今次七月に予定される選挙に立候補を声明され、組織を通じて現在活発なる事前運動をしています。私も、もう四回その選挙運動に関する封書の手紙が私にも参りましたよ。だから、全国的には膨大なものがばらまかれていると思うのですよね。だから、見ていてごらんなさい、相当多数の票をとって当選なさいますよ。これが実態なんですから。これほどの状況下で、先生の学究的な意見のみでわれわれ政治家は対処していいんだろうかという僕は疑点を持ったから伺ったわけですが、これ以上なにしますと討論になりますから、これはよして、次に伺いたいと思います。私のお伺いした真意はおわかりいただけたと思います。  田上先生にお伺いいたしますが、田上先生は選挙制度審議会の構成メンバーでもありますが、お伺いいたしますがね、任期は一年となっておって、刻々任期が迫っておられるわけですが、あの審議会に対する国民の期待というものは大きいし、その設置された経過は万々御承知のとおりですね。で、第一次答申がなされた後に、答申を受けた政府部内で若干問題が起こり、所管の安井自治大臣から若干野村会長さんに御意見なり御要望をなされたように承っているわけなんです。それらとは別に、私は、審議会としては、当初期されたところの人口議員定数のアンバランス等の検討を最終的まで審議会答申という責務を、私は休息することなく完遂すべきではなかろうか。また、よく言われるところの選挙区制についても、皆さん委員の方々はみんなお忙しい方々でありますけれども、任期中に最大限の努力を独自の立場でなさるべきではなかろうか。それを、若干答申案を受けた政府の態度が好ましくないとか、あるいは政府側から若干の要望があったから、政界をあまり刺激しても好ましくないからというような点で、審議を休息されるということは、私は問題があるのではないか、国民に対してですね。これは願望を含めて、御意見を承っているわけですが、これに対する御所見なり、今後——先ほど人口議員定数の問題とか選挙区制に対する先生の御所見の一端を御公述いただいたわけですが、審議会のメンバーの一人でもありますから、先生の御所見と、今後の審議会の方向というものはどういう方向に行くべきものであろうかという、先年個人の角度から、窓からごらんになったところを、参考にお聞かせいただきたいと思います。
  85. 田上穰治

    参考人(田上穰治君) たいへん恐縮でございますが、第二次答申が今日までなされないということは、御指摘のとおり、私どもも非常に責任を感じております。正直なところ、アンバランスの是正は第四の委員会のほうで担当しておりまして、それの現在——というか、二月でございますが、小委員会のほうで幾つかの案が出ており、それは一応中間報告のようなことで、私どもも聞いておりますけれども、私自身は、小委員会ではなくて、第四委員会のほうに直接属しておりますので、小委員会のほうから委員長を通して第四委員会のほうに案を報告があれば、当然それに対して意見を言う筋合いでございますが、現在のところまだその手続がとれていないのでありまして、もちろんこれも、私どもも大いに督促をすべきであると思いますので、この御質問に対しては、全く恐縮しておるのでございます。  簡単に意見を申し上げますると、アンバランスの是正では、大体私どもの観測では、もう答えは簡単に出せるように思うのでございます。しかし一方で、見方によると非常にむずかしい。それは、要するに、数学的にみまして人口のふえているところは議員定数をふやす、そうしてまた、それに比例して、一方の少なくなっているところは定数を減らすということならば、もちろんこれは簡単な算術的な計算で出ることと思うのでございますが、実際は減らすほうが容易でない。三人出せるところが二人になる、四人のところが三人しか議員が当選できないということになりますと、これは重大問題でございまして、大体おわかりのように、この国会——これは特別委員のほうでもいろいろ審議会意見がございましたが、私どもの想像でもきわめて困難、そこで結局まあ、小委員会のほうで何を考えているか私も存じませんが、おそらくはそう数学的に正確な答えではなくて、幾分これを曲げて、そうして定数の減るところをできるだけ少なくする、そういう努力なり構想だと思うのでございます。これもしかし、そんなにむずかしい計算ではないと思いますが、その点でまた幾つかの案が出てくる、あるいは一番簡単なことは、減らさないで、ふやすことだけ考えるという見方でございます。これは一つ意見になりますけれども、ただふやすということでありますと、アンバランスの是正になるかどうか、いわゆるアンバランス是正は、公職選挙法の別表の第一でございますか、あれの議員定数を変えることでございますが、総ワクは公職選挙法の四条か五条あたりに別に出ておるのでございまして、その問題とはちょっと違う。総定数は動かさないで、そのワクの中で別表の各選挙区に対する配当の数を動かすというふうに私どもは理解しているのでございます。その点でちょっと食い違いがあり、だから、単にアンバランスの是正という名目だけではなくて、さらに人口もふえているのであるから、議員定数を全体としてふやすということになってくると、まただいぶ議論が変わってくるわけでございまして、現在のところは、総定数をふやさないで、ただ各選挙区に対する割当の配当数を変えようという方針できておるのでございます。そうなると、非常にむずかしいことが出てくるので、これはあとは大体よく御存じと思いますから、その程度にひとつとどめておきます。
  86. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 あと二回質問さしていただきます。  その一つは、先ほど先生は率直に、修正議決をされて本院に送られている原案は現行選挙法を五〇とするならば七〇か八〇ぐらいだという相関関係で評価されたわけです。そこでお伺いしたい点は、答申を受けて政府から政府原案衆議院に提出されたわけですが、その政府提出案は、先生のお言葉を借りれば、満点ではないとさっきお述べになられたわけですがね。審議会答申を一〇〇とすれば、衆議院に提出された政府案というものは一〇〇に対して幾らぐらいと評価なさっておられましょうか、お伺いいたします。
  87. 田上穰治

    参考人(田上穰治君) 非常にむずかしい御質問でございまして、ちょっと私も……。
  88. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 参考に量りたい。
  89. 田上穰治

    参考人(田上穰治君) 正確に申し上げられませんが、私自身は、先ほどお話ししましたように、たとえば連座制にいたしましても……。
  90. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 結果だけでけっこうです。
  91. 田上穰治

    参考人(田上穰治君) 少数意見でございますから、私自身の評価ということになると、必ずしも政府のほうの案が劣っておる——まあ一方の答申か百点というのはちょっとおこがましいわけでございますが、それと比べて特に見劣りがするとは思わないのでございます。ただ、しかし、正直に申しますると、政治資金の規正、この政治資金であったのが選挙資金の規正に変わっておるという点は、何としても不満でございます。でありまするから、もしこれがもう少し早い時期でございますと、なおこういう点で御考慮をいただきたいという気持はあるのでございます。選挙資金になると、先ほど杣参考人も言われましたように、ほとんどこの点では骨抜きになってしまう。つまり、現行法から見て前進しないということでございますから、これは答申のほうがだいぶ優秀な点がつくわけでございますが、連座制なり、それから今の高級公務員の立候補の制限のほうになりますと、必ずしも政府案が特に選挙制度審議会答申に比べまして悪い点がつくとは考えておりません。
  92. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 最後にもう一回伺いたいと思うんですが、それは、連座制の問題と、それから高級公務員チェックの場合に、検察官が公訴を提起するということが要件になっているわけですね。この点審議会答申と大いに違っているわけです。それは審議会の中で議論があったと承ったわけですが、次の点はお二方どういう見解を持っておられるかという点を承りたい。それは、高級公務員の当選された人に対するチェックする場合の検事公訴の提起、それから連座制を適用する、発効する場合の検事公訴提起——御承知のように、わが国の現状にピントを合わせてお考えいただきたいと思うのですが、検察庁が行政府の一部門になっている。そうして政党内閣で、その所管大臣はその政党内閣の政党所属の党人だ、そうして指揮権を法律上持っている。その政党人である所管大臣、法務大臣の指揮権の発動の現状、それからわが国の検察行政の実態、こういう点をあわせ考える場合に、私はこの運用というものは、連座制の効果を発動するために時期が早くなるとかおそくなるとかいう考えのみならず、相当私は大きな問題を運用上内包しているのではないかと思うのですが、こういう実態については、どういう認識を持たれ、これの相当効果が上がり、公正を期し得る——期さなければなりますまいが、期し得る、効果が上がり得るというふうにお考えになっておられますか、その点を伺いたいと思います。  なぜ私がそういうことを伺うかと申しますと、私は審議会答申など非常に百パーセントりっぱなものだとは思いません。国際的視野から見れば、ある面はお互いの政治的教養の低さ、民主政治の認識なりあるいはその訓練の足らなさという点からこういう立法が論じられるのかと思って、国民の一人として若干面はゆい感じのする面もありますが、しかし、私は、ほんとうに効果あらしめるためには、当面対症療法としての成果を上げるためには、政府原案なりあるいは衆議院修正されたものよりは、選挙制度審議会答申がよりよい、ベターだ、二者択一、三者択一ということになった場合には、政党政治家は審議会答申をピック・アップすべきでないかという私は認識、判断を持っておりますので、一応両先生はどういう根拠、どういう御見解を持っておられるのか承って質問を終わります。
  93. 杣正夫

    参考人(杣正夫君) 矢嶋議員の御懸念の点はわかるのですが、しかし、連座制の場合には、検察官による訴追が怠られるというような心配は、もしこれが法制化され、できますと、これはあり得ないだろうと思います。というのは、客観的に、連座の対象になる人が刑の判決を受けたという客観的事実があるわけですから、その事実はもう隠すことのできない事実ですから、この事実に基づいて検察官が訴追するという訴追義務が法に規定されるわけですから、この点それが怠られるという心配はないであろうと思います。  それから、公務員に対する連座制の特例でありますが、これは私の先ほどの高級公務員ないし公務員に対する選挙運動規制の特別の規定は不必要だと言った点からも、当然特別に公務員に連座制の特例を設けるということは必要ないと思います。
  94. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 田上先生、御答弁いただく前に、連座制で失効した場合ですね、答申では直ちに失格になるわけですね。ところが、法律案でいきますというと、そこに検事の云々が出てくるわけですね。そこのところを私は伺っているわけですから、念のために申し上げておきます。
  95. 田上穰治

    参考人(田上穰治君) 大体は御承知のことと思いますが、私などが前から検察官によって当選無効訴訟を提起する制度を主張しておりましたのは、御承知のように、一方で確かに疑問はございます。答申のように、何らそういう特別な訴訟なく、刑事の判決で当然当選人の無効が確定する、失格するということになれば、きわめて簡単であり、連座制は強いものになるわけでございます。現在の法案でありますと、とにかく判決確定までは相当時間を要するわけでございますから、刑事の判決がすでに確定するまでに相当時間がかかる。そこへもってきて、また当選無効の一棟の行政訴訟的なものが提起されますと、それもまた判決に何年かかるということになりますと、衆議院であれば、その前に解散になってしまうとか、あるいはそうでありませんでも、任期満了で、結局訴訟の、何というか、目的が失なわれてしまうということになって、連座制がほとんど無意味になるおそれがないとは言えない。この点は、私どももっと簡単に処理できないかということは考えておりまして、その意味では、確かに、御指摘のように、答申のほうが長所を持っていると思うのでございます。しかし、御懸念になっておりまする、当選無効訴訟を提起するについて、検察官があるいはちゅうちょする、特に法務大臣の指揮権の発動によって訴えを提起することが困難になるおそれはないかということでございますが、私はこの点は、ほとんどその心配はなかろう、ただいま杣参考人も言われましたように、同様に考えております。普通の刑事の訴追というか、公訴提起の場合と違って、すでに有罪の判決が確定しているのでございますから、これはもう、何というか、見のがすわけにはいかない。むしろ現行法と違うのは、検察官が当選無効訴訟を提起するということは、すみやかに当選無効の訴訟に入って、そして連座制の効果を発揮するというところをねらっているわけでございます。そして、指揮権の発動ということになると、これは検察庁法のまた別の一般的な問題でございますから、むろんこれは別に研究を要すると思いますが、さしあたっての連座制で、このような当選無効訴訟法案の上で復活されたということは、私はむしろ、当選人の権利、当選人が、たとえば連座制の適用を受けようとしておるが、その有罪の判決を受けた者は必ずしも自分のほうの地区責任者ではない——刑事の裁判においては、地区責任者というか、三個以内の分けられた区域を担当する者だ、主宰者だというふうに認められたけれども、実はそうでないのだということを主張する機会を与えなければならないのじゃないか。その機会を与えないで当選を失わしめるということは、これは刑罰ではありませんけれども、おそらく候補者にとりましては、当選を失うということは、そう言うと何でありますが、金銭罰などに比べればはるかに苦痛ではないかというふうに思います。重大なこれは権利の侵害でございますから、正当な理由ならば、むろん失格することやむを得ないのでありますけれども、はたしてそういう法の規定に照らして当選を失うべきものかどうか、その点で本人の弁明を許す必要がある。もしそれを許さないで、当選人の口出しを許さないで、刑事訴訟の判決だけで自動的に失格ということになりますと、たとえば憲法のほうで、裁判所の裁判を受ける権利、あるいは正当な手続によらないで自由を奪われる、あるいは権利を奪われるという意味合いにおきまして、三十一条とか、三十二条とか、そういうふうな規定に照らしまして疑問がある。しかし、これもむろん、疑問があるというのでございまして、なお、何といいますか、当選無効の訴訟をはずしてもよろしいという意見審議会にございますし、でありまするから、われわれもなお研究したいと存じておりますが、現在のところでは、だから明らかに憲法違反と言い切るわけでございませんが、かなり憲法上は疑義がある。そういう意味におきまして、私自身は当選無効訴訟を残したい、残すことが必要だと考えております。ただ、そのためにあまりに結論がおそくなっては困りますので、現在の制度法律よりは、むしろ検察官が訴えを提起するといったほうが幾分早くなるのではないか。しかし、それでもなお失格の時期が非常におくれるものでありますから、その点は確かに私も十分とは思っておりません。現状では、そういうわけで、しかしながら一応この法案に賛成でございます。
  96. 小林武治

    委員長小林武治君) 以上で参考人意見聴取を終わりました。  お二人の方には、長時間にわたり当委員会の審査に御協力下さいまして、まことにありがとうございました。委員会を代表しまして厚くお礼を申し上げます。(拍子)   —————————————
  97. 小林武治

    委員長小林武治君) 引き続き、新産業都市建設促進法案を議題とし、質疑を行ないます。  なお、御参考のために申し上げますが、本日は藤山長官、安井自治大臣、佐藤通産大臣、福永労働大臣、木村建設政務次官、大蔵省の村上主計局次長、鹿野主計官、文部省官地官房長が出席の予定でございます。  なお、佐藤通産大臣、福永労働大臣は、所用のため、四時から退席したいとのことでありますので、お含みおき願います。  約十分このまま休憩いたします。    午後三時十七分休憩    ————・————    午後三時二十六分開会
  98. 小林武治

    委員長小林武治君) 委員会を再開いたします。
  99. 加瀬完

    ○加瀬完君 経済成長を維持するために必要だ、こういう提案理由の説明がありますけれども、現在の経済成長計画を正しいと是認されて、新産業都市建設というものをその上に乗っけていく、こういうお考えですか。
  100. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 経済成長が望ましいことは、これは申すまでもないのでして、経済が伸張しなければならぬのでありますから、経済成長を基本的な問題としてその計画がその基礎の上に乗っていくということは、これは申すまでもございません。ただ経済成長の過程におきましていろいろな行き過ぎがあったり、ゆがみが出たり、ひずみが出たりするという状態がたびたび起こらないように経済を調整して参らなければならぬので、その意味からいって安定的な成長を期していくということが望ましいわけであります。その安定的な成長を期しながら、こういう開発計画を並行してやっていきますことが完璧を期するゆえんじゃないか、こう思っております。
  101. 加瀬完

    ○加瀬完君 それは当然です。経済成長は安定的に維持されなければなりませんけれども、それをどうこう言うのじゃない。今の池田内閣の経済成長政策が安定性があるか、こういう問題です。
  102. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 私どもは、今回の貿易アンバランスが出たり、あるいは物価高になりましたり、経済の成長の過程においてゆがみとかひずみが出てきたわけです。これが十分な検討を加えまして、そういうことの原因を除去して、そうしてそういうひずみやゆがみが再び起こらないように、また現在の過程でそれの改善すべきことについては、できるだけ反省をしながら改善をしていくべきではないか、こういうふうに存じております。
  103. 加瀬完

    ○加瀬完君 提案理由の中でも御指摘をされておりますように、地域格差というのがどうして生じたか、あるいは不均衡というものがどうして生じたか。特に産業の不均衡、経済の不均衡というものの原因が、集中傾向が非常に過度になってきた、こういう点を御指摘されておるわけですけれども、これは裏を返せば、池田内閣の長期成長計画というものが集中傾向を助長し、地域格差を生じているということにはなりませんか。
  104. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 長期な経済計画、つまり十年の経済成長計画というものをある程度立てていきますことは、これは私は必要だと思っています。ただ、その間にありまして、やはり民間経済の伸び方等について、時々その事態の情勢に即応して政府考えて参らなければいけないので、自由主義経済の中における政府の経済指導の役割というものは、景気が非常に沈滞する場合にはこれを刺激し、また景気が過度に過熱してくる場合には、これをある程度押えるというような面についての指導と施策とを行なっていかなければならぬのでありまして、そういう意味において長期の計画そのものが間違っていたというよりも、長期の計画を進めて参ります上において、そういう面についての観察が十分でなかったかどうかという点については、われわれとして十分反省をしながら、そういう点について、過度に刺激された点がありますれば、それを是正していかなければなりません。そういうふうに考えております。
  105. 加瀬完

    ○加瀬完君 この高度成長経済政策のプランというものを見ますと、これは自母堂構想ですから、一応政府の構想と同じだと見てもよろしいと思いますが、公共投資計画などは、ほとんどが特定の地域に抑えられておりますね。たとえば新産業都市というものをこれからやろうとしても、あるいはまた低開発地域の開発をやろうとしても、そちらのほうに公共投資なり、あるいは一般の財政的な投融資なりというものを振り向けようといっても、そういう計画自体というのは非常に薄いでしょう、そういう方面に振り向ける対象というものは、そうであるならば、これから手直しをしようとしても、今までの、もしも集中傾向が出たり、経済の不均衡が生じたりするということであれば、そういった一方的なあるいは一地方、一区域とか、あるいは特殊の産業とか、こういったようなものに対する政府の財政計画というものにも若干考え方を変えなければならない問題というのはあるのじゃございませんか。
  106. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 今まで、いわゆる国土の総合開発というものに対する考え方が、実はあまり具体的にきまっておらなかったところにいろいろな問題があったと思います。同時に、非常に景気が過熱してきた結果として、大都市にそういう仕事が集中するということで、大都市の機能が麻痺しかけてきたという状態に現在立ち至っているわけです。したがって、少なくも現状は大都市のそういうような諸般の機能の麻挿しているものを改善していくということに力を注いでいかなければなりませんので、ある意味においてはやや重点が集中したと、都会に置かれ過ぎているとも見られますけれども、このことそのものはやはり喫緊のことでありますから、相当力を入れてやっていかなければなりませんが、他面、やはり新産業都市というようなものを作りまして、そうして今後過度にそういう都市に工業が集中するということをできるだけ避けていくような方策として、こういうものを並行して進めて参らなければ、大都市におきます過度の集中というものは、大都市自体の改善だけでははかり得ないと思うのでありまして、そういう面において、今後の財政運用等についても考えて参らなければならぬことはむろんでございます。ただ当面大都会における交通事故、道路の計画、あるいはそういう種類の諸般の計画というものがもはや行き詰まって機能も麻痺しておりますから、喫緊にそれらのものを考えて改善していかなければなならぬという状況にありますので、財政面から見るとあるいはウエートが少しかかり過ぎているということは言えないことはございません。
  107. 加瀬完

    ○加瀬完君 公共投資で、建設省関係を見ると、四大工業地域に三五%でしょう、政府の計画は。それから太平洋ベルト地帯を含めた六五%。新道路計画でも、四大工業地域というものに六五%かけておる、建設省の計画ですね。こういう計画を手直ししない限り、新産業都市というものを作ったって、そこに財政投資をする政府の手持ちというものは、非常に限られてくるのじゃありませんか。ですから、私が先ほどから申しておりますように、現在の経済高度成長計画ですか、これは一応手直ししなければならぬのだという前提に立たなければ、新産業都市に対する財源というものは出てこないのじゃないかと思うのです。ですから、これは新産業都市という新しい構想に手直しが行なわれるのだと考えてよろしいのでございますか。
  108. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) つまり、今の喫緊の事態を改善するということには、ある程度力を財政的にも投じなければなりませんけれども、今後の問題としては、これ以上に過度の集中が大都市に起こらないように、そのためには、新産業都市を作って、そうして道路建設計画、その他も新産業都市を中核として、その地方の経済圏の中の道路部門及び他の経済圏と、その新産業都市という中心、何と申しますか、拠点を連絡する道路等については、相当な整備をはかっていくように財政投融資あるいは建設省の計画等も、それに合わしていくようにして参らなければいけないと思います。たとえば中央道を作る場合、あるいはそういうような場合に、新産業都市と中央道との連絡というようなことは新しい問題として、これは当然起こってくる問題だと思います。ですから、そういう問題に力を入れませんければ、新産業都市というものが十分育っていかないということにもなろうと思います。
  109. 小林武治

    委員長小林武治君) ちょっと加瀬さん、質問の途中ですが、通産大臣がやむを得ない用事があるそうですから、矢嶋さんの質問を先にさしていただきたいと思います。
  110. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 通産大臣の出席時間の関係上、委員長のお許しをいただいたので、加瀬委員の質疑展開中でありますが、通産大臣に限って二、三点お伺いいたしたいと思います。  この法律案は、御承知のごとく、経済企画庁、自治省、さらに建設省にそれぞれ試案の試案があり、政府部内で紆余曲折、調整された結果、経済企画庁が所管庁として提案されて参った経過があるわけでありますが、実際にこれを運用することになりますと、この法案のねらっておる角度から、実体上通産省の発言権を持つウエートというものは非常に大きくなると思うのです。経済企画庁は行政組織上に規定されておるとおりに、企画官庁であり、僕は内容的、実体的には通産省、通産大臣の発言権と関与の度合いというものは最もウエートがかかるのじゃないかと思うのですが、それに対する通産大臣の認識と、閣内においていかようにこれを調整され、船頭多くして山に登らないように、この法を公布施行された後にうまく執行するためには、いかなる心がけで対処すべきだとお考えになっておられるか、そういう点、ちょっと伺いたと思います。
  111. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) ただいまお尋ねございましたが、いわゆる産業の面として産業の立場からの主張は、通産省はもちろんいたします。しかし、産業だというのが、生産だけの部門では実はないわけです、御承知のとおり。ことに立地条件は非常に強い主張があるでしょう。それから見ると、あるいは道路、港湾あるいは工業用水の確保であるとか、あるいは労務の問題とか、さらにまた教育施設の整備とか、いわゆる近代産業都市を作るためのいろいろの条件がある。やはりそういう意味から申しますると、どうしても総合的な官庁で取りまとめることが必要だ、かように実は思うわけです。で、通産省の考え方も、ただいま申し上げるような、広域にわたっての行政の調整を必要とする、また各省の協力を得なければ産業の振興もできない。こういう立場にございますので、もちろん主務官庁としての産業政策その他は強く推進はいたしますが、協力を得るような形において進めていかないと実効が上がらない、かように実は思っております。
  112. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私があえて通産大臣の御出席をいただいてただしているわけは、この第三条に「協議により、」「総理大臣に要請するものとする。」と、こうなっておるわけですね。政府原案では、関係大臣が六大臣になっているわけですよ。これにさらに衆議院修正によって労働大臣が加わるわけですが、しかし、実際に運用することになりますと、所管の経済企画庁長官と通産大臣が最もウエートを持つようになるのではないか、自然とね。そうなりますと、通産大臣の所見というものが、この法律施行の段階に非常に大きな影響力を持つという意味で御出席を願ったわけでありますが、その点に対する認識は矢嶋と同様だと思うのですが、いかがでございますか。
  113. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 大体同じように思います。ただ、この法律案ができます前に、一つの構想として、新産業都市の構想を一つ考える、土地あるいは道路網を整備していく、そして工場を持ってくる、こういう考え方もあるわけですけれども、もう一つは、大きな一つの製鉄所ができる、そういう産業が起こる、その産業を中心にして、人口はどのくらいの包容力になる、関連産業はどのくらいできる、そして新しい都市の規模ができる、こういうような主張と二通りのものがあると思うのです。その間をやはり十分調整をとらないと、今までのように、工場は来た、下水の施設は一つもない、工業用水の施設も不十分だ、あとからやるのじゃ困るのですね。また先に土地ばかり作りましても、その後工場来いと言っても、なかなかその土地に適当な工場が来ないということも困るのですから、やはりプランニングの最初から関係省で十分相談することが必要だ、かように実は思うわけです。だから、そういう意味で、矢嶋さんのお話も、多分同様なお気持でのお話じゃないかと、かように私は考えるのです。
  114. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 引き続いて、昭和三十七年一月十六日付で、地方制度調査会会長の前田多門さん、行政部会長の高田元三郎さんの名前で、内閣総理大臣池田さんに対して「地方開発都市の建設に関する意見について」という意見具申がなされておるわけです。これは新産業都市建設促進法案国会に提出されそうだという段階において調査会並びに部会の意見をまとめたものですね。その中に、あくまでも住民の意思がよりよく反映されるようにして、上から命じてやるのでなくて、都道府県知事がイニシアチブをとって推進される形態をとるべきだという基本的な方針を意見として具申していますね。これに対する通産大臣の意見を承っておきたい。
  115. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 大体この答申を尊重して参りますし、ことに、ただいまの民主政治のもとにおいては、望ましい形ではないか、かように思います。
  116. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 引き続いて、次の点については、所管の経済企画庁長官と通産大臣と両者にこの順序でお答えいただきたいと思うのですが、第四条に、申請がない場合においても指定ができるようになっているわけですね。私は、この指定が、申請がない場合においても規定できるというのは、第三条の都道府県知事から申請があったのを、検討して指定するのが本体で、従的な取り扱いがなさるべきものだと基本的に考えるのですが、この条章を読んでも、立案者としてはそういう気持だろうと推察をするわけですが、なぜこれを伺うかと申しますと、これは、藤山大臣にしても佐藤大臣にしても実力者ですから、いつか佐藤大臣は新潟へ行って演説をぶたれたそうですが、ここを指定するということで、第四条でできるからというような実力を発揮されては困るので、私は良識を信じて、そういうことは万々あり得ない、第三条の形態が主体であって、第四条というのは従の従で異例的な場合だ、そういうつもりでこの条章はうたわれているものだと推察するのですが、この点について、藤山、佐藤両大臣の順序で簡単にお答えをいただきたいと思うのです。
  117. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) ただいまの御質問どおり、地方行政の長官からの申請を主体にして検討いたしたいと思っております。ただ、地方行政庁が、いろいろな関係でもって非常に区域内の問題としてまとまらぬ場合もあるように思います。したがって、ある場合には、政府自体が指定するということも考えられますが、しかし、その指定する場合にも、さらに都道府県の長官の同意を得、また、長官が市町村長に協議をしなければならぬことになっておりますので、順序は逆になっておりますけれども、やり方においては、大体違わないやり方になっておる、こう思います。
  118. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま企画庁長官がお答えしたとおりでございます。あなたの御指揮のとおりだと思います。
  119. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 通産大臣にあと二回伺わせていただきます。  最近のわが国の経済状況、特にこの民間設備投資等の問題について、いろいろ論じられているわけです。この法律案を第一院で審議する場合についても、指定方針のあるべき姿という角度から質疑応答、あるいは附帯決議等が熱心になされているわけですが、通産大臣の所見をこの際承っておきたいと思うのですが、その前に、私の私見を三十秒程度申し上げますが、みだりに、語弊があるかもしれませんが、無計画に、準備態勢も整っていないところを次々に指定していく、場合によれば政治的に指定していくということでは、細分化されて所期の目的を達成し得ない。やはり限られたワク内でやるとなれば、準備の整ったところに計画的に順次に指定し、その地域の発展をはかるとともに、あわせて全国的に調整のとれた全国土の開発、進展という方向で対処されるべきものだと、私はそう考えているわけですが、この法案に非常に実態的に関与度の高い通産大臣の所見を参考に聞かしていただきたいと思います。
  120. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま御指摘のように、もともと自治体の、あるいは地方住民の意向を尊重して、また、本来私どもは、自由経済の建前でやっておりますから、いわゆる官庁が関与するということは、これはもう第二次的でしかるべきだと思います。最近は誘導行政という言葉がはやっておりまして、相当流行しておりますが、いわばそういう立場において行政指導する、行政誘導していく、これが私どもの本来の姿でございます。だから、ただいま矢嶋さんが御指摘になったと同じようなことになるのじゃないか、かように思います。ただ申し上げたいのは、なかなか、この新産業都市建設ということについては、地方で非常な強い意欲を持っております。われ勝ちと申しますか、おくれをとらないという意味でいろいろ進んで参ってきますね。そういう場合に、地方の実情等をよくお話をしたり、産業の実態などをよくお話をして協力を求めることが非常に必要じゃないか、かように思います。
  121. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 最後にもう一回お伺いをさしていただきたいのですが、それはこの法律が公布施行されるようになって参りますというと、民間設備投資の問題が起こってくるし、それとの関連なくしては考えられないと思うのですね。当今、民間設備投資を抑制せねばならないという点については、藤山大臣も佐藤大臣も意見は完全に一致していると思うのです。その方策としていかなる道を選ぶべきかという点について、若干の食い違いがあるやに私は判断をし、仄聞をしているわけですが、それはさておき、民間の設備投資というものを私は機械的に、言葉は失礼かもしれませんが、むやみやたらにただ抑制だけということでもないと思うのですよ。相当僕は、藤山大胆にしても佐藤大臣にしても、ことにその方面に国政上非常に関与度の高い両大臣においては、やはり現実に即したかなり幅のある態度でおられるものだと思う。そこで私は、若干具体的になって恐縮なんですけれども、やはり一つの例をあげて大まかな御意向を承ったほうが明快になるかと思って伺いますけれども、たとえば大分に九州石油の製油工場云々という、これは数年前から計画があり、すでに県側と土地の売買契約も了し、そしてその契約では、契約して一年以内には工事を始めるという取りかわしまでしてもうレールに乗っているわけですね。かつては国費を投じ、助成をして臨海工場地を造成した宮崎県の細島みたいなところは、何十万坪という土地が何年間も利用されず放置されているという遺憾な事態が起こったわけです。国並びに地方団体が計画的に投資して、そういう態勢が整い、そういうレールに乗っているところは、日本の石油精製業に対して臨む基本的態度はともかくとして、その実態というものは十分考慮の中に入れられて基本方針を堅持しながら運用に対処されて参るものだと私は推察いたしておるのでありますが、ただいまの可能な範囲内において、大臣のお気持をお聞かせいただいて、私の佐藤大臣に対する質疑を終わりたいと思います。
  122. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 矢嶋さん、たいへん具体的な問題について、回りくどいお尋ねがございましたが、同時に、答弁を具体的に要求しておられることと思いますので、具体的な問題について、私はこういう責任のある場所でお答えするということは、現状においてはなかなか困難でございます。ただ、そういう具体的な問題と申しますよりも、原則的な考え方をひとつ御披露してみたいと思います。  御承知のように、ただいままでは民間が自由に諸計画を進めて参りました。また地方の自治体等も産業誘致という意味でどんどん計画を進めて参りました。ことに今の九州石油の場合だと、九州石油それ本体の事業体がどういう態度をとるかということ、これは必ず出るものだと、かように予想して関連部門はもうすでに進出しておる、こういう状態でございます。でありますから、本来ならばそういうものは成り行きにまかすというか、その進行工合にまかして、行き過ぎがあればこれを押えるということが行政の本来の姿だと思います。ただ当面しておるこの経済の調整段階というのは、いわば、これは平常の姿ではございません。したがいまして、今回とっておる設備抑制の措置というものは、通常の考え方から見ると非常な行き過ぎだ、あるいは非常にきつい、こういう批判があるようです。過去の計画に対して非常な支障を来たす、こういうような御意見がかなり出てくるだろう、かように思いますが、これは異例な扱いだ、かようにお考え願って、時期的にただ足踏みするという程度のものだろうと思います。総体の計画自身は総体の力というものから判断して、しかる上で相談をするわけでして、今までのところで製油施設あるいはコンビナートの設備整備というようなことは、わが国としてはまだまだ余地のある問題でございますから、通常の状態においては特にこれに拘束を加える、こういうものでないことは、これは根本的に御了承あって、また御了解いただいていいことでございます。ただ今日やっております調整というのが、非常にとは申しませんが、通常の状態に行なわれていないのでございます。それで一つの異例な扱い方をしておる。しかし、そういう状態は長く続くことはない、かようにお考え願うといいだろうと思います。ことに御指摘になりましたように、過去の計画、しかも、関連するものが非常に膨大だということを考えて参りますと、この扱い方は慎重の上にも慎重にしなければならぬ、そういう異例の、時期等においても十分考慮すべきものは考慮しなければならない、かように私ども考えまして、担当官庁にも慎重な扱い方をさしておるというのがただいまの現状でございます。  これは原則的な考え方を具体的なものにまず適用してのお答えでございますので、今の九州大分の問題をどうこうするということをただいま申し上げたわけではございませんので、その点誤解のないように願いたいと思います。
  123. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 一応私の質問を終わります。
  124. 小林武治

    委員長小林武治君) なお、申し上げますが、福永大臣も急いでおられるようですから、もしありましたら……。
  125. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 しかし、加瀬先生の了解を得ないと困りますから……。
  126. 加瀬完

    ○加瀬完君 どうぞ。
  127. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 では、労働大臣、二、三点伺いたいと思うのですが、今度衆議院修正で、あなたがここにクローズアップしてきたんですが、労働大臣として、この法案をどういう角度からごらんになり、今後いかように対処されていこうかという新たな抱負を持たれたか、その点承りたいと思う。
  128. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) 実は政府がこの案を提出されるまでに、いろいろ閣内での意見調整がありましたときにも、数点の、今御指摘のあった衆議院段階での修正がありましたが、たとえば郵政大臣に労働大臣を加えるのが至当であるというような主張は、実は私としても相当声を大きくして主張はいたしましたが、しかし、閣内全体の調整の結果、ついに、原案にそれが入るに至らなかったのでありましたので、そういう点、残念に思っておりましたのでございますが、衆議院修正になったというようなことで、私どもも非常に、労働省としては喜んでおる次第でございます。まあ、務働情勢全体をながめて、いろいろ問題がございますが、労働力の需給等に、場所によっては相当アンバランス等もあるようなことから考えまして、今度の法案が成立いたしまするならば、これを通じても、ぜひ、今申し上げましたようなことについて、労働省の政策を織り込んでいきたいと、こういう希望を持っておるわけでございます。したがって、今度のような修正措置を講じていただいたということについては、非常に私どもとしては幸いでございました。従来から講じておりまする幾つかの施策にさらに加えまして、この法案の趣旨とするところのものについても、ぜひ労働省の考え方を推進して参りたい、そういう所存でございます。
  129. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 「目的」のところに、「雇用の安定」等加わった点は、ある意味においては画期的だと思うのですよ、この法案を内容的に見た場合に。ともかく、現在並びに将来の企業は、労務管理が成功するかどうかというところが、一つの大きな私はキー・ポイントになると思うのですね。そういう意味で、労働省の関与部面も、重かつ大だと、私はさように判断いたしております。  そこで、もう一つ労働大臣に伺いたい点は、労働需給は、地域的に非常にアンバランスになっておると、これはデータもちゃんと出ているわけで、この法律案提案理由にも書いてあるわけですが、この是正については、いかような方策が最善であり、あるいは拙速でも、こういうほうが適切だというような具体的な構想なり案件を、労働省としては、いかように持っておられるのか、この機会に承っておきたいと思います。
  130. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) ただいま御指摘のような点につきましては、従来とも広域職業紹介、転職訓練、雇用促進事業団による移転資金の貸付あるいは住宅の建設、貸与その他、こういうような労働力の地域間流動対策を推進して参ったのでありますが、ことしは、この広域職業紹介の拡充強化につきましては、予算的にもかなりの措置もいたしましたし、それから職業紹介体制機能の刷新につきましても、たとえば北九州には、職業安定事務所を新設するというようなこと、その他いろいろ能率を上げるための幾つかの措置等も講じたのでございます。あるいはまた雇用促進票業団の労働者移動助成業務の拡充強化のために、一般労働者用の住宅をさらに一そう増すとか、炭鉱離職者用の住宅の大幅な増加を期すとか、雇用奨励金制度を新設いたしますとか、いろいろな地域町流動対策を、ここで画期的に強力に推進したいというようなことで、予算にも、十分とは申せませんが、ある程度盛り込んだ次第でございます。そういうようなことを考えれば考えるほど、今度の新産業都市を作る法律案については、こういう考え方と、この新しい法律案との間の調整ということについては、強い関心を持っておりましたわけでございます。ことに矢嶋さん十分御承知のとおり、たとえばイギリス等の例に見ますと、ロンドン周辺のニュータウン等につきましても、イギリスの場合では、先ほどの矢嶋さんの御表現——経済企画庁、通産省が主としてとおっしゃいましたが、イギリスは労働省が主になって、ニュータウンを作っている。これは国によっていろいろ事情は違いましょうが、そういう現実を私も自分で見て来ておりまするものの一人といたしまして、こういうようなことについて、ぜひ政府としては、先ほどもお話がありましたように、画期的な考え方をもって、労働省が対処していかなければならない、こういうように私は重々考えております。
  131. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 労働大臣にもう一つ伺います。  さすがに国際的水準の政治家をもって、自他ともに任じている労働大臣らしく、非常に傾聴に値する御答弁をしていただいて、ありがとうございました。それで、もう一つ伺いたいというのは、さっきベット・タウンの問題が出ましたが、労働力の確保、管理という角度からも、その労働力を提供する源泉となる教育機関ですね、これは、できるだけその指定都市の中に、あるいは近くにあるほどよろしいし、原則としてそうあるべきではないか。衆議院修正においても、なすべき施設の整備の中に、教育施設の整備というものを追加しているわけですがね。たとえばこれは百万都市と言っておりますが、必ず百万でなくても、大きな拠点開発の中心都市を形成して参ろうというわけですからね。具体的な、たとえば日本に非常に不足している中級あるいは高級の技術者の供給等は、その労働力の提供という点から、最も緊急を要する件だと思うのですがね。そういうことを考える場合に、そういう技術者なり労働力を提供する、それを養成すべき国家的な教育機関というものは、こういう基幹都市と指定された地域に整備する、そういう方向で国政というものは進めるべきだ、方向づけられるべきだと思うのですが、労働大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  132. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) お説の点につきましては、従来もよく似た問題が起こりまして、現に失業者のある地域で訓練だけ行なっておりますると、新しく就職させるということと関連して、需要地とのつながりにおいて、必ずしも完璧でない場合が起こりまして、せっかく訓練したのにというような事情も従来ともあったわけでございます。したがって、現実に労働者、特に技能労働者については、そういうことがより一そう言えると思いますが、その需要地の中で、ないしは今お話がありましたように、それに近接したところで、訓練等を行なう必要があるわけでございます。しかし、これにつきましては、中高年令層等については、住宅の問題その他いろいろございますので、こういうことも一緒に考えなければなりませんけれども、いずれにしても、お説のとおりであると、こう思うわけでございます。したがって、そういう観点からの「職業訓練施設」という文字が整備すべきものの中に加えられておりますることにつきましては、私ども非常に適切なことであり、したがって、労働省がこのことについて、今御説のとおりのようなことについて、特段のこれから力こぶを入れて参らなければならぬと、そういうふうに考えております。
  133. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 藤山大臣に、労働大臣がおられるときに一問だけして、労働大臣に対する質疑を終わりたいと思います。  それは、この法案作成過程においても、総理大臣に要請する大臣をいかようにするかというので、てんやわんやの動き、経過があったわけです。この原案によっても、第三条によって六大臣になっているわけですね。それで所管の経済企画庁長官としては、うるさいことだというような感じをあるいは持たれているのではないかと——ここで労働大臣は、修正されて労働省で大喜びだと言われるけれども、厄介者がまた入ってきたというような気持はまさか持たれることなく、労働大臣と同じように、藤山大臣も喜んでおられることと拝察するわけですが、その確認と、この第三条に「協議により、」ということがありますが、この協議する場合に、こういう七人の大臣が協議するような会には、別に名前もつけないのか。それから、おそらく私は全会一致制、皆さんが了解づくでやるという形態をとるものだと思うのですが、その点はいかようにお考えになっているのか、労働大臣のおられるところで承っておきたいと思います。
  134. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 新産業都市を作ります場合に、特に産業を誘致して参ることですから、それに伴う労働力の関係が非常に重要であることは申すまでもないのでありまして、したがって、今回の衆議院修正されたことにつきましては、われわれ非常に心強く感じておるわけであります。労働大臣のこれからのそういう行政面に対する十分な施策を、われわれとしても入れて参らなければ、この計画は基本的には進んでいかないのじゃないかと、こう思っておるわけであります。むろんこの過程におきまして、実は各省に関係する問題でございまして、厚生大臣でありますとか、上下水道の問題、あるいはただいまのお話のございましたような高等の技術を要する工業専門学校であるとか、種々な教育施設、また、そういうような産業に伴います教育施設ばかりでなく、人口が三十万もふえて参りますと、小中学校から高等学校までの施設というのは、文部行政の面にも非常に大きなあれがありますので、実は多ければ多いほど、ある意味からいえばいいと思うのでございますが、この過程からいいまして、ある程度しぼったような関係にもなります。したがって、これらの要請大臣のみならず、関係各省の大臣の御意見は十分われわれは伺いまして、そしてそれを取り入れて、要請大臣であるといなとにかかわらず、この基本計画作成に対しては御意見をいただいて、そしてまた協力していただくことが絶対に必要だと考えておるのであります。  これだけの大臣がそろって何か会議等の形態をとるのに、会の名前もつけないのかということでございますが、しかし、これらの点については、各省大臣共通に話し合いをすることによって、特別の会議等を催さなくてもよろしいかと思いますが、非公式な何と申しますか、経済関係閣僚懇談会とか、あるいは交通関係閣僚懇談会とかいうような種類の非公式な会合もございますので、要請大臣等あるいは今の関係大臣等がそういうような意味での非公式な閣僚懇談会というものを開いていきますことが、実際の運営からいえば適当じゃないか、こう考えております。
  135. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 わかりました。
  136. 加瀬完

    ○加瀬完君 質問を前に戻しまして、自治省でも経済企画庁でもけっこうですが、現在の府県別の地域格差というものをどう認識しておられるか。特に自治省には、法人事業税、法人住民税等の偏在、これをどう押えておられるか、まず御説明を承ります。
  137. 安井謙

    ○国務大臣(安井謙君) 現実において、地域的に見て格差が相当あることは事実でございますから、そこで、御承知のように、地方税改正の際にも、この住民税の徴収率というものを変えることによって相当バランスさせるという点を今度は留意したわけでございます。その他の方法についても、今後地方税の改正の際には、例のたばこの配分にしましても、それぞれ相当今度は財源配分については留意をしたわけでございます。しかし、これはいわば消極的な方面なんであります。これだけで決して地域格差がなくなるとは思えない。したがって、今のようなこういった法案あるいは低開発地域の工業開発といったようなものをにらみ合わせまして、さらに積極的に格差の是正をはかっていきたいと思っているわけでございます。
  138. 加瀬完

    ○加瀬完君 もっと数字的に需要額に対する税収入の割合を、法人事業税、法人住民税について、不交付団体ABCDのグループ別にお示し下さいませんか。
  139. 安井謙

    ○国務大臣(安井謙君) 事務当局から……。
  140. 山本明

    説明員(山本明君) 財政力指数を中心にいたしましてABCDEと五つ分けますと、先生のおっしゃいましたようなこまかい数字はちょっと持っておりませんが、府県税を中心に申し上げますと、人口一人当たりの税額におきまして、Aグループが五千七百六十四円になっております。それからBグループが二千六百五十八円、Cグループが二千三百五十七円、それからDグループが一千七百九十三円、Eグループが一千四百九十五円でございます。Aグループの中でも、東京都を除きまして、大阪、神奈川、愛知、静岡、兵庫、福岡、京都、広島、山口、埼玉という県につきましてだけ計算をいたしますと、四千四百十二円と、こういう格好になっております。
  141. 加瀬完

    ○加瀬完君 今この法人住民税で見た自治省の調べによりますと、需要額に対する税収入の割合は、五五・三、あなたのおっしゃるAグループ不交付団体。それがあなたのおっしゃるEグループ、やはり一番貧弱な団体になりますと、三・五という数字になりますね。五五・三と三・五、これを法人専業税でやりますと、もっと差は開きます。五三・九に三・三と、これが昭和三十三年、三十四年を比べますと、不交付団体が四六・七であったものが、昭和三十四年には五三・九に伸びております。法人事業税だけ調べると、それが一番最下位のグループは四・六が三・三と減っておる。結局、地域格差はたんだん——だんだんといっても、ここ三、四年の間には開いてきている。今もっとこの傾向は激しいと思う。今度の新産業都市計画は、地域格差を是正するというのが一つのねらいだと言うけれども、こういう問題は解決されるのかどうか、これは大臣に伺います。
  142. 安井謙

    ○国務大臣(安井謙君) 一ぺんにこれを解決しろと言っても無理だと思いますが、解決の方向に向かって、相当寄与できると思っております。
  143. 加瀬完

    ○加瀬完君 どういう理由で解決の方向に向かえると御判定なさるのですか。新産業都市のどういう点が今大臣おっしゃるような内容に当たりますか。
  144. 安井謙

    ○国務大臣(安井謙君) まあ今の、先ほどあげられましたABCDEグループにしても、これはやはり工業、産業の非常に発展しておる地域というものがAグループに入る。したがいまして、今後地方のそういったものをより意欲的に、積極的に興していくということによって、それは漸次そういうレベルに高まっていくし、また過度集中をやっております主要地の工業というようなものは、できるだけこれは押えて、セーブして、それ以上のものにしていかないという方向をとっていくわけであります。
  145. 加瀬完

    ○加瀬完君 これは企画庁に伺いますがね、具体的に言うならばDグループ、Eグループというのは、鳥取県とか島根県、こういうところですね、こういうところが新産業都市の対象地域として考えられておりますか。
  146. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 地域格差が著しく起きることは御指摘のとおりでございます。ただ、今のようなこの鳥取県とか島根県とかいうものの格差が相当大きいと申して、これを是正するのに、はたして新産業都市としての条件を備えたところがあるかどうか、もしそういう条件がないといたしましても、いわゆる低開発地域の工業開発促進ということによってこれを是正していくことでありまして、両方が並行して参らないと、これは地域格差の是正はできない、こう思います。
  147. 加瀬完

    ○加瀬完君 私の今の質問はですね、いわゆる非常な後進県と見られる、今大臣の御言葉を引用すれば、低開発地域だといわれるような県がすぐさま新産業都市の対象地になり得るかどうか、その限界点だけをお答えいただければよろしいのです。
  148. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 低開発地の工業開発促進法によっては、お手元に差し出しましたとおり、相当各地方におきまして数多くやって参りますけれども、新産業都市の対象としては、今回の法律にございますような条件をかなり具備した場所ということになりますので、低開発地のところに必ず置くというよりも、低開発地域自身に影響のあるような経済圏を中心に置くというようなことになろうかと思います。
  149. 加瀬完

    ○加瀬完君 ですから府県財政、府県経済というものを押えていけば、新産業都市計画というものは、必ずしも地域格差というものをねらって低開発地域に優先的に置かれるものであるということにはならないと了解していいですね。
  150. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 低開発地だから置かないということでなくして、低開発地でも条件が備わっているところであれば置きますし、そうでない、高開発地域でも条件が整わなければ置かないということなのでありまして、その点にそうこだわっておるわけではない。
  151. 加瀬完

    ○加瀬完君 質問が前後するわけですが、先に飛ばして申し上げますれば、一応新産業都市というものは、人口、経済の形態で、あるモデルがあるわけですね。それに該当するようなものはD県グループ、E県グループという一番低開発地方にはないわけでしょう。そうでしょう。ですから特殊な、政治的配慮で置こうとするのは別として、原則的には、新産業都市の第一対象にはそういうところはならない、御説明のように、そういうところは低開発地域開発計画の中に入れていくのだ、こう判断してよろしいですか。
  152. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 大体そう判断していただいてけっこうです。
  153. 加瀬完

    ○加瀬完君 自治大臣、今の点どうですか。
  154. 安井謙

    ○国務大臣(安井謙君) 私は、この問題は結局程度の問題ととり方だと思います。今度の修正条項の中の一つにも、「大規模な産業都市」というものを「相当規模の産業都市」、こう直されているわけです。ですから、これにはもともと低開発といいますか、地方開発というものは、たての両面のようなものだと思います。地方自体が相当意欲的なものを持ち出して、そうして積極政策を打ち出してきて、これを国に申請をする、国はこれをまた産業立地の観点から、いろいろ検討して、でき縛る限り適当な方法でやるが、それには単に自然条件なり、今までの経緯にとらわれないで、相当意欲的に積極的な補助もやる、こういうような形でいくのでありますから、むろん今の日本の経済の進行状態、あるいはそういう判断から最初は数カ所というふうに限定されるということもあるでありましょう。しかし私は、将来これは相当こういった条件の幅を広げて考えていくならば、相当広範囲に広がっていくべきである、しかし、それにしても、発地域で非常に条件のないものを無理にやるといってもこれはできないことなんで、それは、地方の行政水準の維持というものは別途の方法で考えなければならないが、できるだけ広く、効果的にこれは考えてみようというふうに考えております。
  155. 加瀬完

    ○加瀬完君 はっきりおっしゃっていただきたいのですがね。Eグループの、法人税三・三%地域などというところの解消には、新産業都市はすぐには役立たない、それは低開発地域の開発という計画の中に入るということは別ですよ、新産業都市計画というもので低開発地方の県がすぐさま新産業都市と結びついて、地域格差がなくなるとか、あるいは経済発展が異常な進歩を遂げる、そういうことでは、この計画はないのだ、こういうことでしょう。
  156. 安井謙

    ○国務大臣(安井謙君) これはあまり、ちょっと藤山長官もお答えになったように、低開発地域全体としては、低開発地域であっても、そこに一つの特殊な産業を起こし得るという要件なしとはいえない、そういうところを中心にすれば、またこれは起こる可能性も非常にあろうと思いますが、一般的にいって、それは低い地域というものは、自然条件にも恵まれないから、優先的にそういうものを適用されていくのには、どうしてもおくれがちになる。これは一般論として私は言えると思います。ないとは断定できない。
  157. 加瀬完

    ○加瀬完君 ないですよ。あり得るはずはないですよ。そういう条件がないでしょう。そこに天然資源がどんなに眠っておっても、三十万加えて大体人口百万程度という社会条件はないでしょう。社会条件がなければ、新産業都市計画というものの第一次選考の候補地にはなれない。
  158. 安井謙

    ○国務大臣(安井謙君) これは百万なんぞというものをどうしても常に考えているということじゃないと思う。百万というものは一つの標準として、理想形態としてはあり得るのだが、何も百万程度を標準にしなければ、都市というものはあり得ないとは私は考えておりませんし、それから、たとえば島根県とかにしても、あそこの松江とかなんとかという港にしても、相当島根県自体が意欲を燃やしております。私はむろん政府が十分検討してみて、はたして合うかどうかということは、検討を要することは事実であります。低開発地域だからこれは可能性なしと断定することは、はなはだ早計だと思います。
  159. 加瀬完

    ○加瀬完君 じゃ、企画庁長官に伺いますが、長期成長計画というものを御変更になったのですか。大幅に根本から変更しようという政府の御態度になったのですか。
  160. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 長期経済計画というものを大幅に変更いたしたわけではございません。お手元にも差し出してありますように、東京、神奈川、愛知、大阪、兵庫というふうに、いわゆる太平洋ベルト地帯といいますか、非常に大きな、人口も増加をいたしておりますし、それから収入にいたしましても、非常なそれらの他の地域と格差がございます。したがって、これを是正していくということは、これは日本の国土総合開発のほうからいいましても、社会生活のほうからいきましても、ぜひとも必要だ。そこで、ごく低開発地域につきましては、低開発の工業促進法によりましてこれらの地方において工業を植え付けていくことをまずやって参らなければならぬと思います。そこで、第一次的にはある程度要件を備えて、先ほど百万とおっしゃいましたが、これは既存人口プラス三十万ということで、十万の都市があれば一応四十万ぐらい、あるいは三十万の都市があれば一応六十万ぐらいには、新産業都市になればなるだろうということで、必ずしも百万ということを最初から想定しているわけではございません。したがって、そういう面から見て進めて参るわけでありますが、それでは、きのうも申し上げましたとおり、いわゆる低開発地の工業開発が今日までできなかったという理由がいろいろございますけれども、しかし、それを将来科学知識その他でもって克服し縛る条件も備えてくれば、たとえば低開発地の工業促進法によってその地方が盛んになってくる、したがって、その地方を将来拠点として新産業都市にまとめ得るというようなことも起こって参りましょうし、また経済圏の考え方からいきましても、必ずしも行政区域を限っての経済圏ということは考えませんから、あるいは中国におきましても、たとえば瀬戸内海と今の鳥取、島根のほうと横断道路というようなものができて参りますと、立地条件からいいまして、一つの経済圏的形を構成することが私は可能ではないか、必ずしも行政的な考え方でなしにですね。そういうような意味において、第一次的にはお話のような低開発地域にすくに——原野とは申しませんけれども、あまり準備のないところにすぐにこれを指定するというところまではまだ考えていない。
  161. 加瀬完

    ○加瀬完君 それはお話はそのとおりだろうと思う。昨年自民党は高度成長政策に手直しをいたしまして、北海道、裏日本の工業化というものはむしろ倍増計画をおくらせるものだから、これはしばらく控えると、こういう御決定をなさったと伝え聞いておる。そうでなくても、大体公共投資は表日本が中心です。ですから、われわれ地方行政の立場から言えば、新産業都市計画というものをどのように進めても、それがすぐ後進地域の地域格差をなくすとか、あいは所得格差をなくすということにはつながらない。つながってこない。もう一つの低開発地域の開発計画というものをはっきりと打ち出してもらわなければ、新産業都市計画は、それなりに理由がありますし、効果がありましょうけれども、地方開発という点から言えば、あるいは財政的に貧弱な府県という立場から言えば、長い間自主財源の拡張ということを願っておっても、それらの目的がすぐ達せられるということにならない、こう思いまして、地域格差の問題を出した。質問を進めますがね、一応表日本に限らず裏日本であっても、新産業都市的要件があれば新産業都市としての指定をするということに仮定をいたしますね。しかし、そういう場合、今の自民党の長期計画の、公共投資を押えている、公共投資の財政計画というものは、そちらのほうまで振り向けるだけの財源というものは、今までの場合は考えられておらなかった。これは建設省に伺いますが、新しく新産業都市ができた場合は、当然公共投資が必要になる、それならばその公共投資の財源というものは、今までの公共投資のワクを変更するのか、それとも新財源を地方に与えるのか、この点はどうですか。
  162. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 新産業都市ができますと、港湾にしましても、あるいは道路にしても、新産業都市を育成するような方向に向かって考慮されて参るのでありまして、いわゆる新産業都市ができたけれども、何か公共投資というものは、太平洋ベルト地帯あるいは東京、大阪を中心にした地帯以外には振り向けないのだということはないわけでありまして、そういう決定も、自民党で実は私はしたとは考えておらぬのであります。ただ現状非常に東京が過大都市になっておる、あるいは大阪が過大都市になっておる、したがって、急速にこれを解決するためには、その方面に若干力を注がなければならぬという点はございましょうけれども、新産業都市ができない前でもそうだと思いますが、できた後にはなおさらやはり新産業都市育成のために、道路にいたしましても、あるいは港湾の整備にいたしましても、輸送関係の整備にしても、そういうところに相当の力を注いで参りませんければ、新産業都市というものの育成はできないわけでありまして、そういうふうにできるだけ育成をしていくように力を注いでいく、こういうことになると思います。
  163. 加瀬完

    ○加瀬完君 大臣、そんなことをおっしゃるなら、ひとつ局長でもどなたでもいい、答えていただきたい。公共投資の計画が十年間に十六兆で、このうち農林が一兆、民生安定が二兆二千億、国土保全一兆六千億、このほかはすべて高度成長政策の投資ということに一応計画をお作りになったでしょう。で、残った高度成長政策の投資のうちには、新産業都市という構想はまだなかったわけです。だから新産業都市というのが新しく構想として生まれたからには、今までの高度成長政策の財源というものをそっちに振り向けるのか、それとも新規財源を作るのか、当然こういう疑問はできるわけです。事務の方でけっこうですから、答えて下さい。
  164. 曾田忠

    政府委員(曾田忠君) 先ほど大臣がお答えいたしましたように、新産業都市の指定がありますと、重点的に公共投資を行なわなければならぬということはもちろんだと考えております。その財源といたしまして、もちろん所得倍増計画にもございます公共投資のワクからも相当削除があると思いますが、なお所得倍増計画の行政投資のワクといたしまして、産業立地のための調整費といいますものが五千億円計上されております。これは今後の産業立地の振興に伴いまして必要な調整を行なうための保留ワクでございますが、その中に特に新たに北海道あるいは東北、裏日本等の後進地域におきまする大規模工業地帯の育成のための必要な調整費ということもその内容にうたわれてあるわけでございまして、すでに道路あるいは港湾等のワク内からも当然支出されるわけでございますが、なお、必要のあります場合におきましては、この調整費を使って促進をはかっていきたいというふうに考えております。
  165. 加瀬完

    ○加瀬完君 五千億というのは、十年間に五千億なのか、一年間に五千億なのか、十年間でしょう。
  166. 曾田忠

    政府委員(曾田忠君) 十年間でございます。
  167. 加瀬完

    ○加瀬完君 十年間に五千億で北海道、裏日本の低開発地域の工業開発や、あるいは公共投資にまでそれを使うということにして、しかも、同じ五千億を新産業都市の建設に使うということになったら、一つの産業都市にどれだけの投資ができることになりますか。あなたは今港湾関係その他の一般の財源というものを振り向けられるということをおっしゃったけれども、そういう点に振り向けていくなら、今度は新産業都市でないところの港湾はどうなりますか。新産業都市でないところの道路計画は、公共事業はどうなりますか。結局競合するんじゃありませんか。そうすれば、低開発地域はますます低開発地域に、開発地域はますます開発地域に、地域格差がますますつくじゃありませんか。だから、新産業都市計画などというのをお進めするならば、なぜもっとはっきりとした財源を打ち出さないかという私は疑問を持ちましたから、伺っているわけです。  そこで、質問を返しまして、木村さん、建設省では今の計画にどういうように予算を適合させるのですか。
  168. 木村守江

    政府委員(木村守江君) この法律国会を通過いたしましたあとには、公共投資を増大して参らなければならないことは今さら申し上げる必要はないと思いますが、そういう点から、一体この法律に即応いたしまして、新産業都市建設の指定を受けた場所に対して、公共投資をどういうふうに増大していくかというような御質問でございまするが、御承知のように、建設省におきましては、あるいは道路五ケ年計画におきましても、また治水五カ年計画におきましても、これは道路におきましては一級国道は五カ年間——昭和四十年までに九八%ないし九九%の整備並びに舗装を完了することになっております。二級国道におきましては大体五〇%の改修を完了いたしまして、大体三〇%内外の鋪装を完了することに相なっております。その他主要地方道、県道等におきまして、それぞれの計画にのっとってこれを施行することに相なっております。河川におきましても、一個々々の河川につきまして、その積み重ねて作り上げましたのがいわゆる治山治水五カ年計画であります。そういう点から考えますると、この法律ができましたからといって、一級国道を五カ年間に完了しないで、その金を新産業都市に振り向けていくというようなことはでき得ないわけであります。そういうことはすべきでないと思います。しかしながら、御承知のように、主要地方道並びに県道等におきましては、大体五カ年に二二、三%でありまするが、その全国の二二%のうちを重点的にその新産業都市のほうに振り向けていける方法もあるかとは考えておりまするが、そういうことになりますと、先ほど申されましたように、まあ低開発地域はいつまでたってもあと回しになるというような状態になりまして、好ましい状態ではないと考えます。そういう点から考えまして、この法律ができまして、いわゆる公共投資を増大して参りますためには、どうしてもこれは明年度あたりに道路の整備計画というものを改定いたしまして、また治山治水の整備計画というものをこれは改定いたしまして、その中に、この新産業都市に振り向けられるような予算を計上して参らなければ、この法律で要望するような仕事ができないと私どもは考えておる次第であります。
  169. 加瀬完

    ○加瀬完君 私もそのとおりなんです。すでにきまっておる計画を変更して新産業都市計画に振り向けるということは、大体一年計画で終わるものじゃなくて、もう続いて工事というのが進行している状態に特に建設省関係はあるのですから、これはできがたいということは、しろうとでも想像できます。そうすると、一体その財源というものはどこから出てくるか、新産業都市の建設の財源というものはどこから出てくるか。非常にまた経済成長が激しくなって、税収入がふえると、そのふえた部分を振り向けるということは考えられるけれども、そういうことを今日の時点で予想することはできない。これは結局地方でまかなわなければならないということになるのですよ、大部分は。自治省はこのような点でどう御検討なさったか、また今のような問題をどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  170. 安井謙

    ○国務大臣(安井謙君) 私は、今のような既定計画で進んでいくべきものであろうと思いますけれども、たとえば十年計画とか五カ年計画というものが非常に固定した、動きのつかない計画では私はなかろう、道路計画にしましても、一年か二年やって、すぐそれが非常な変更にあって改められて、新しい五カ年計画ができ上ったといったような、自由主義経済のもとで総合的な計画は立てますけれども、そのときの状況によっては相当な、私は財源の変化や配分の変化も当然起きてくるものだ、目標は、これをやるためにできるだけ効果的にそれを動かしていくということであろうと思いますし、また自治省の面でいうならば、今の地方税のほうの軽減であるとか、あるいは起債の面でのでき得る限りの措置をやっていく、また交付税の方面からも、これは十分いろいろと考えていくということになろうかと思います。
  171. 加瀬完

    ○加瀬完君 あらためて伺いますが、低開発地域の工業開発と、適正産業の配置構想のもとに新産業都市を作るということは、目的は一つでありませんね。自治大臣に伺いますが、いいですか。低開発地域の産業開発、あるいは工業開発をしていくということと、適正産業の配置構想というものから新産業都市を作るということは、これは当面の目的は一つでありませんね。長い目で見れば合うところがあるかもしれませんが、第一目的とするところは違っておりますね。それで、新産業都市の建設だけに自治省が中心を置くと、低開発地域の工業開発というものは新産業都市の陰に隠れて、影が薄くなりますね。こういう傾向が出るおそれがあるとはお認めになりませんか。
  172. 安井謙

    ○国務大臣(安井謙君) 私は必ずしもそう思わないのです。それは今加瀬さんの言われるように、立地条件の非常に悪い地域、このものがこういう計画に従ってどんどん無理なようなことでもやって、非常なテンポで伸びるというようなことは、これは期待しにくいことは事実なんでありますが、しかし、地域開発というものと新産業都市の開発というものが全然うらはらになるものであるというふうには考えないので、やはりこれは両方の面から見ながら、そのこと自体がまた低開発地域の改善にも非常になっていくのだ、これは私はなかなか予測できないし、やってみなければわからない。たとえば岡山の水鳥地域というようなもの、四、五年前にあそこがあんな工業地域になることはだれも考えなかった。レベルからいえば、日本でいえば水準よりやや低いくらいの低開発地域であったわけです。しかし、それが今日では、日本の有数の開発地域にもなってきているというようなことから、一がいに低開発地域にならない。ただ一方だけを、言われるように低開発をどんどん開発していくだけの目的にすべてが使われるというふうには、これは御指摘のように、ならないと思いますけれども、総体的には非常に有効だと思っております。
  173. 加瀬完

    ○加瀬完君 今岡山の水鳥ですか、その地域は自然発生的にそういう発展を遂げたのですね。今度新産業都市として建設するものは、政治的にも財政的にも、政府や地方団体の努力によって新産業都市というものをここに作るわけです。だから、たとえば地方財政計画でいうならば、地方財政計画の一応の財源というものを新産業都市に振り向けようとするならば、大臣の御指摘になった交付税でもいい、交付税の割合を新産業都市の建設というほうによけい流そうとすれば、これは低開発地域の工業開発というほうに流すというほうをセーブしなければならぬでしょう。競合してくるでしょう、どうしたって。交付税の総額というものが非常にふえる場合は別だが、現状で押えて、産業都市というものに重点を置いていけば、工業開発は押えられる、工業開発に重点を置いていけば、産業都市は自前でやらなければならない、こういう形になるんじゃないか。自治省として今やらなければならないことは、新産業都市の建設ということよりは、どうにもやりくりの財政的につかない低開発地域を開発するということのほうが政策的には先でなければならぬと思うし、今までもそういう主張が続けられてきた。しかし、新産業都市というものがクローズ・アップされれば、政治的にも経済的にも力が強いのですから、その地域にどうしてもウェートがかかる。それじゃ残されたほうの開発はどうするのだ。交付税とか起債とかというワクでは、これはどうしたって競合して強いほうに弱いほうが頂ける、こういうことになるわけですけれども、これを一体このままに見過ごしておってよろしいのかどうか。
  174. 安井謙

    ○国務大臣(安井謙君) いろいろ御心配をいただいておる点は、私どもも非常に傾聴して考えなければならぬと思っておるのでありますが、この名前が新産業都市という形で法案ができたからといいまして、国がいわゆる産業を一方的に植え付けるという法律案じゃこれはない。さっき御質問があって、通産大臣あるいは藤山長官もお答えになったように、地方開発の意欲を燃え立たして、それと立地条件をかみ合わせて国も大いに応援してやらせていこうというのがこの法律案でありますので、私はそれは確かに非常に条件の悪いところで、あるいはこれだけによってすべての地域格差をなくするとかなんとかというふうに期待をすることは、これは無理でありますが、同時に、地域格差の解消に非常な役に立ってくるということは、もう言えると思うのでありまして、今の全部の総ワクが、たとえば財源の総額が一定だから、やはり一方をやれば一方がなくなるんじゃないかということになってくると、これは国の予算だってそうです、総額というものがきまって、それをどういうふうに配分して、どういうふうに効率的に使っていくかということを国がきめていくわけでありますから。私はそれは配分をやれば、必ず一方は犠牲になるのだから、これが意味がないというふうには言えない、こう思うのです。
  175. 加瀬完

    ○加瀬完君 その目的が違います。この法律の目的も地域格差を是正するというのでしょう。地域の不均衡を是正するというのですよ。地域格差を是正するというなら、一番低いところをまず是正にかからなければならぬでしょう。ところが、今度の場合は、一番低いところにかけるべき財政的な財源というものを、そうではない、一応の政治的な形態をしているから、将来の経済的な発展が予約されるだけの素地がある、そういう低開発地域よりはるかに高い新産業都市に財政的な財源が振り向けられるということになれば、これはますます格差が生ずる、地域格差の是正という目的とははなはだはずれる、これは当然そうなります。  質問を私はさらに進めたいと思いますが、これは財政の問題ですから企画庁に伺いますが、この間の御説明の中に、私の聞き間違いであればおわびをいたしますが、新産業都市は、これは財政的に国が相当援助をする、しかし、低開発地域の工業開発のほうは、どちらかというと、起債程度のことで地方自治体独自で進めてもらいたいというようなふうに聞き取れたのですけれども、傾向としてはそうですか。
  176. 曾田忠

    政府委員(曾田忠君) お答えいたします。低開発地域の工業開発促進法にもございますように、低開発地域の工業の開発を促進するために必要な工業用地あるいは道路、港湾施設等の施設の整備につきましても、国及び地方公共団体はその促進に努めなければいけないという規定もございまして、この趣旨は、新産業都市建設促進法に盛られております趣旨と同様とわれわれは考えております。
  177. 加瀬完

    ○加瀬完君 それじゃ、さっきの五千億の内訳を言ってもらいましょう。低開発地域工業開発に見合う財源は幾らで、新産業都市の建設に見合う財源は幾らですか。
  178. 曾田忠

    政府委員(曾田忠君) 新産業都市の規定の問題あるいは低開発地域の関係の開発地区の規定の問題、これはいずれもまだ具体的にどの程度の地区を規定するということもきまっておりません関係上、まことに申しわけありませんが、五千億の内訳ということはただいままだ検討が終わっていない次第であります。
  179. 加瀬完

    ○加瀬完君 そんなでたらめなことでは、地方は新産業都市なんか申請できませんよ。新産業都市として一体どれだけの土地というものを想定しておるのか、あるいは低開発地域の工業開発には一カ所どのくらいの国の援助があるのか、そういう計算をしなければ、そうでなくても貧弱団体である低開発地域の団体がどうして計画を乗り切れるですか。一応こういう法案を出すには、そういう財政的な措置なり、配分なりというものの想定くらいはできておらなければどうにもならぬですよ。  自治大臣に伺いますが、そんな全然財政的な考え方のかまえのないものを自治省は無条件でありがとうございますといって引き受けられるのですか、どうですか。
  180. 安井謙

    ○国務大臣(安井謙君) 私は、この法案は決して企画庁や通産省がお作りになったものを自治省、お前つき合えというふうに言われていただいておるとは一向考えておらぬのでありまして、これはわれわれのほうで考えております地方の開発ということにつきましても、できるだけの要件も盛り込み、できるだけの主張もして、一方、それだけじゃできませんので、全体の国の計画なり産業開発の基本計画なりもできるだけ合わせていこうというものでありますので、今具体的に何カ所、どこへどういう財政的措置をしていくかと言われましても、これはこの法案にありますように、まず地方と国の具体的な問題についての負担区分を分けて、そうして地方についてはまた起債でやるなり、あるいは交付税でやるなり、また都合によっては、特別交付税でやるべき面もできるかもしれません、そういうものは個々のケースについて考えていくのでなければ、今ちょっとここで財源はどこへどれくらいと言われても無理じゃないかと思います。
  181. 加瀬完

    ○加瀬完君 どこの土地に幾ら財源を与えるかということではないので、大ワク、一体国が援助する財源としてはどれくらいか、これは所得倍増計画のときには十六兆というものを立てた、今度の新産業都市だって幾らというものを立てなければうそです。あなたは何でも起債だ、交付税だと言われますが、これは一方がふえれば一方は少なくなるのですよ。全体がふえれば、当然期待権——この間の共済組合ではないが、ふえれば、各団体はふえた分はふえた割合にもらえる期待権というものがある。それを一方的にやればそれは交付税制定の趣旨から言えばはずれるわけです。交付税でまかなえるか、起債でまかなえるかという場合じゃないと思う。じゃ、具体的に伺いますが、府県知事が新産業都市を設定した場合は、財政責任はどの範囲ですか。
  182. 安井謙

    ○国務大臣(安井謙君) これは今の計画によりまして、国が、その地域にもよるでしょう、たとえば同じ公共事業にしても、補助率はみな違って、三十六年度で補助率の格上げもやっておるわけですから、その地方によっては補助の額も違う、そうするとその地方での負担し得る額を配分すべきもので、それはやはり具体的なものをつかまえてでなければ、今ちょっとここでは総括的には返事のしようがなかろうと思います。
  183. 加瀬完

    ○加瀬完君 それじゃこんなものは何にもなりませんよ。地方の負担はこれだけ、府県の負担はこれだけ、国の責任はこれだけというものがなくて、新産業都市というようなりっぱなものが進みますか。そこで府県でも市町村でも、現在の行政規模というものをかかえておる、それに対するところの財源というものは必要なんだ。新産業都市というのは、新しくどれだけの一体計画が加わるのか、その計画によって、どれだけの財源が要るのか、この負担割合はどうなるのか、こういうものまで検討されなければ私は問題にならないと思う。自治省は無責任ですよ。なぜならば、町村合併というものをやって、行政的には合併をやったけれども、財政的にはその裏づけがなくて、市町村合併の目的は半ば失われている幾つかの団体があったことは、あなた方自身も御反省のはずなんです。だから今度新産業都市なり低開発地域の工業開発なりをやるというならば、事務配分、財源配分というものをきちんと立てなければそれはうまくいきませんよ。時間があまりないそうですから……。
  184. 安井謙

    ○国務大臣(安井謙君) むろん立てるのですよ。これから立てていこうというのですから、基準はみなあるわけですからね。
  185. 加瀬完

    ○加瀬完君 これから立てていこうといったって、国の一体補助財源がどのくらい、それもまだワクがないでしょう。府県の一体事務はどういうことを受け持つかといったって、それもはっきりしてないでしょう。これから立てていくというのではなくて、そういうことははっきり計画されてアウト・ラインだけでも説明されなければ、私はおかしいと思う。交付税で優遇するとかいろいろ言うけれども、交付税で優遇するということをすれば、優遇されない団体もできる。そういう点を十分御検討いただきますことを希望して質問を終わります。やっておったってしようがない。
  186. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 続いて若干私から伺わしていただきます。経済企画庁、それから自治省、これは最も関係深い省庁ですから、大臣並びに政府委員の質問をあとにして、他の大臣並びに政府委員で比較的お客様的立場にある人から先に質問いたします。  その前に資料についてちょっとお伺いいたしますが、経済企画庁の官房長に伺いたいのですが、あなたのところの「新産業都市建設促進法案参照条文」等の資料を見ますと、たとえば「総合開発局の事務」として「第九条、総合開発局においては、左の事務をつかさどる。左の事務略」、こういう形式のところが非常に多いんですね。これは紙面を節約する意味ですか。それとも何かあなた方の提出の方針があるのですか。私は長いこと国会審議に携わっておるが、こういう名前だけ掲げて、あと略という一番大事なところがみな略にしておるのですが、これは六法全書を見ろということで、こういう資料の作り力をするのですか。新しい形式なものですから、官房長からちょっと方針を聞いておきたい。官房長おらなければ、どなたでも承知している政府委員でけっこうです。盛んにこういう形式を使ってあるですね。
  187. 曾田忠

    政府委員(曾田忠君) まことに資料の不備で申しわけない次第でございますが、われわれといたしましては、直接に法律改正等に関係のあります条文だけを今まで参考資料として提出しておった次第でございまして、御指摘のような問題がございまして、まことに申しわけないと思っております。
  188. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 申しわけないとそう断わらぬでもいいですよ。今後資料を出すときに、ある程度親切に書くなら書く、そうでない場合は書かないということですね。われわれは六法でも繰りますよ。これは中途半端な資料の作り方ですね。これは自治省の作っている資料に比べると、質的に格段の差があります。私の批判を申し述べて参考に供しておきます。  それから資料についてもう一点ですが、これは自治大臣にお願いしたいと思うのですが、「低開発地域工業開発地区指定申請一覧表」、総合開発局名でここに出ておりますが、あなたのところの省は、この地方団体の最もお手配をされる中央官庁ですから、参考にこの申請のあってない都府県に対して、こういう資料を立法府に出したと、念のため、ということで参考に当該都府県の議長と知事に送付されることを私は希望いたします。特に徳島県あたりには参考に送っておいていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  189. 安井謙

    ○国務大臣(安井謙君) これは、もう非常にいい企画だと思っておりますし、できるだけこの線に沿って自治省は各地方団体にも指導もしていくし、便宜を与えていきたいと思っておりますので、これはよく拝見しまして、各地方団体とも十分な打ち合わせをやっていきたいと思っております。ただ、このとおりにいくかどうか、これはまたその事情によって多少は違うでしょう。
  190. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私の質問しておる点がよくおわかりにならないので、あなたの答弁をそれなりに私はけっこうで了承します。ただ、私のあなたにお願いしておる一番大事なことは、こういう資料を立法府の要請で立法府に出しましたと、念のためにということで、申請を出していない都府県に参考に知事と議長に送ってほしいと、こういうことです。やっていただけますか。
  191. 安井謙

    ○国務大臣(安井謙君) できるだけそういう御趣旨の措置をとりたいと思います。
  192. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 けっこうです。  建設政務次官、お待たせいたしました。あなたにとっくり伺いますが、先ほど加瀬委員がお伺いをした内容で、私御出席を願った大半は尽くされておるんですが、あらためて簡単にお伺いいたしますから、簡単にお答えいただきたいと思うのです。  人口の過度集中を排除するという施政の方向づけが出ておるわけですがね。建設省としては、新都市作りとか、あるいは東京の首都圏云々ということを研究され、よく論じられてこられておるわけですが、人口過度集中を排除して新しい都市作りをするという点については、確たる方針が立っておられるのかどうか。また構想はどうなのか。さらに、若干説明しまするならば、川島さんのところでは、官庁を地方に分散するというような構想のもとに計画も一応立てられ、各省庁内の意見調整をやっておるやに了承しておるわけですが、それらも含めて簡潔に御答弁いただきたいと思います。
  193. 木村守江

    政府委員(木村守江君) 人口の大都市過度集中の防止の問題につきましては、これは建設省だけではなく、閣内におきましても大きな問題の一つとして取り上げておられることは御承知のとおりであります。建設省におきましても、さきに広域都市建設計画を作りまして、この大きなねらいは、大都市の過大化を防止することが第一の目的でありまして、この線に沿いまして一昨年から調査を始めまして、御承知のように、全国数十カ所にわたってこの調査をいたしております。  また東京都につきましては、御承知のように、首都圏整備委員会が基本方針を立てまして、現在の都市市街地内の問題、あるいは周辺地区の問題、あるいは衛星都市の建設の問題、こういうような計画を作りまして、この計画に従いまして建設省では、あるいは道路の整備とか、住宅の問題または首都圏の市街地内における工業立地の規制に関する法律等に伴いまして、都市内の過度の人口集中を排除するような方策をとっております。しかしながら、なかなかむずかしい問題でありまして、その所期の目的を達成しないような状態にありますことは、まことに遺憾な状態でありまするが、今後ともこの首都圏の問題につきましては、首都圏の整備委員会の作りました基本計画に従いまして、建設省は事業を施行して参りまして、過度の人口の集中を排除して参りたいというような考えを持っております。
  194. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 一応お考えはわかりました。次に伺いたい点は、新産業都市にしろ、あるいは低開発工業地帯にしろ、指定されたところはいいが、指定されないところは、平ったい言葉で言えば、うっちゃられる、軽視されるというような行政はあるべからざることだと思うのです。それぞれの立場において、いずれもバランスのとれた開発が行なえるように施政はされなければならぬと思うのですが、そういうことを前提にしながらも、公共投資というものは総花的になることはあくまでも反省されて、やはりある程度重点的にされることが、所期の目的を達成される一つの手段として必要ではないか、重要な要素じゃないかと思います。そこで、あなたのところは道路あるいは治水関係を所管され、港湾は運輸省になるわけですけれども、こういう面においても、新産業都市として指定された地域については、それなりに若干の焦点を合わして配慮がなさるべきものだと思うのです。それを行なう場合に、先ほどお話がありましたように、新道路五カ年計画等のワクが不十分な場合には、また閣内において検討され、それらを町検討されるという前提はありますけれども、あくまでも、そういう都市が指定され、その目的を遂行するためには、若干そういうところに焦点を合わした先行投資というものがなされなければ、私は所期の目的を達せられない、意味がないと思うのです。このことと、それから先般道路審議会に諮問され、新たな国道の昇格あるいは国道への指定等をなされ、道路の整備計画を発表されましたがね。このことは新産業都市あるいは低開発地域工業開発促進法も考慮に入れながら、ああいう新たな道路網というものをお考えになられ、それを推進する必要があり、また、それをやるという建設省としてはお考えだと了承するのですが、推察するのですが、念のため承っておきたいと思います。
  195. 木村守江

    政府委員(木村守江君) ただいまの御質問でありまするが、建設省においては、道路並びに治水問題が五カ年計画を立てられております。しかし、五カ年計画を立てたその大きな原因の一つは、総花的に五カ年計画を施行するというようなことではなく、一つの道路、一つの河川につきまして、その経済効果というものを相当ウエートをもって考えておるのでありまして、そういう点から決して総花的にやるのではなく、実際問題として効果的な、社会的に及ぼす影響の大きな点を重点的に考えておるのであります。そういう点から考えて、今度の新産業都市というものができましたならば、どうしてもそこには重点を置かなければいけないだろうというお話でありますが、これはごもっともであります。ごもっともでありまするが、その道路等につきましては、一級国道ですね、今までありました四十三の一級国道、これは五カ年間に九八%以上の改修をして、舗装を完了するというようなことになっておりますので、この金はどうすることもできない状態になっております。しかし、二級国道は大体五カ年間に五〇%の改修を終わりまして、二五%程度の舗装ということになっておりますから、その五〇%の改修あるいは二五%の舗装というようなものは、いずこに重点を置いて先にやるかというような問題になって参ると思います。そうしますと、どうしてもやはり新産業都市というようなところに重点が置かれまして、それを先にやるというようなことに相なるのではないか、それから主要県道あるいは一般県道等におきましても、そういうような実際の施工事実が現われて参るというように考えております。しかし、実際問題として、それによっていわゆる低開発地域をいつまでもうっちゃるような状態になりましては、まことに遺憾でありますので、新産業都市のために大きな犠牲をこうむるという状態になりますので、なるべくこの法律ができました際には、そこに取り残された道路の整備を促進するためには、新道路計画というものをあらためて作るべきではないかというような考え方をもっております。それから今度新たに一級国道並びに二級国道が道路審議会を通過いたしまして、政府にその答申案が提出されまして、これが決定するようになりますが、そうしますと、この決定については、新産業都市のことを考えたのかという考え方もありまするが、この道路の格上げの問題につきましては、御承知のように、その道路沿線の人口並びに工業の状態、それから経済の状態、多方面から勘案いたしましてこれを検討いたしましたので、そういう点から考えますと、新産業都市というようなものも勘案してこれを決定したのだと申し上げても差しつかえないのじゃないかと思います。
  196. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 承っておりますと、政務次官の答弁はだんだんと大臣の答弁らしくなって慶賀の至りです。建設省の私の質問は終わります。  次に、大蔵大臣のかわりに政府委員がお見えになっているようですから、一問だけ質問いたします。——おられますか、主計局次長が見えておられたようですが……。
  197. 小林武治

    委員長小林武治君) 出かけられました。主計局調査課長です。
  198. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 念のため伺いますが、大臣にかわって御答弁なさって下さるわけでしょうね。
  199. 鹿野義夫

    説明員(鹿野義夫君) 説明員でございますから、その点ちょっと問題かと思います。
  200. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 大臣は御要件があるというので了承したのですが、政務次官も差しつかえがあるというので了承したんですが、御注意申し上げますが、最小限政府委員は出席すべきですよ、幾ら大蔵省でも。この点は委員部のミスですよ。それを説明員で代行させるというのは失礼ですよ、立法府に対して。最小限政府委員は出席すべきです。しかし、あなたは実力があるから認めて、質問に入ります。  御承知のごとく、新産業都市建設促進法並びに低開発地域工業開発促進法を修正いたしました。その非常に重要な部分は、財政上の措置に対して、努力義務を課した点が大きな修正になっているわけですがね。この修正に対して、大蔵省側としては敬意を表しているのかどうか。それから今のところ、どういうことが予想されると判断されておられるか、それだけを伺っておきます。
  201. 鹿野義夫

    説明員(鹿野義夫君) どういうことが予想されるという……
  202. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その前に、敬意を表しているか表していないか。
  203. 鹿野義夫

    説明員(鹿野義夫君) 修正案には十分敬意を表しております。  新産業都市の建設につきましては、先ほど来御議論がありましたように、道路とか港湾とかあるいは工業用水といったような公共施設に関する投資が、相当の先行投資が投ぜられるということが重要な問題になるかと思います。その投資の実際は、財政的な措置といたしましては、公共事業を中心にして行なわれることになろうかと思います。公共事業はこの数年来相当増額しつつありますけれども、現在の公共事業の対象としましては、先ほど来御議論がありましたように、相当部分がやはり隘路打開の面にさかれているかと思います。そのゆえに先行投資的な意味での公共投資というものは若干制約を受けざるを得ないというふうには思いますが、今後国民経済がだんだん大きくなるにつれまして、財政の規模も長期的に見れば増大していくことになると思います。同時に、公共投資も財政の中でさらに重要なウエートを持っていくかと思います。そういう公共投資の全体のワクが大きくなるにつれまして、そこに先行投資をやっていく余裕が生じていくだろうと思います。今後先行投資をやっていく場合に、この新産業都市建設促進法に基づきまして総合的な計画ができるということ、それによりまして投資が計画的に効率的に重点的に行なわれていくということは非常にけっこうじゃないかというふうに思っております。今後の予算的な措置におきましても、この促進法の趣旨を十分くんでやっていきたいというふうにわれわれは考えます。
  204. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 大蔵省の見解よくわかりました。大蔵省の質問は終わります。  次に、文部省に一、二問いたします。文部大臣差しつかえあっておいでになっておりませんが、あなたは官房長ですから政府委員です、堂々たる。文部大臣にかわって御答弁いただけるものと思いますが、念のために承っておきます。
  205. 宮地茂

    政府委員(宮地茂君) 大田が所要のため出席できませんで申しわけございません。できる限りの御答弁をいたしたいと思います。
  206. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 文部省は日本の、特に国立の教育機関の設置場所並びにその教育機関の規模の決定についての責任官庁です。で、これから新産業都市がどの程度どういうところに指定されるかということは、私どもには一切わかりません。行政府においてはそれぞれの所管庁で詳細に計画的に調査、研究をされていることと思います。それにわれわれは一切おまかせをいたします。ただ伺いたいことは、新産業都市が指定され、その都市作りが始まる、それが開発拠点となって参る、そこに計画される企業というものもその計画の中にきまってくると思うのです。そうすると必然的に労働力の確保、あるいは中級、高級技術者の需要供給関係からの提供、確保ということが必然的に問題になってくると思います。これは交通にも関係して参ります。住宅問題にも関連して参ります。こういうことを前提に考えた場合に、国の教育機関を新設あるいは既設の機関の中にそれぞれ適当なる学部あるいは学科を増設するという場合に、その新たに指定され、これから都市作りをされて参るいわゆる新産業都市指定地域、そこに建設される産業部門、それは国の恒久的な教育機関を増設あるいは新設する場合の重要なる要素となると思うのです。このことが衆議院修正における教育施設の整備という大部を占めておると、かように認識いたしておりますが、文部省側の見解を承っておきたい。
  207. 宮地茂

    政府委員(宮地茂君) 文部省におきまして国立学校、特に義務教育の小中学校は、これは人口に応じてできるわけですが、同等学校以上、特に高専とか大学とか、こういったものは義務教育学校と違いまして、設置する場合に、やっぱり一定の要件を考えまして適切なところに設置するという方針で臨むのが当然でございます。また、そのように臨んでおります。ただ、四年制大学のようなものを今後新設していくか、あるいは学部、学科を増設していくか、そういったような場合でございますが、学科増となりますと、大体現在のところ、既存の学部の中に学科を作っていくのが建前でございます。ただ、新しい学部を作る、そういったような場合、一方におきまして、今、矢嶋先生のお話のような点も十分考慮すべきことはもちろんでございますが、しかしながら、特に総合大学等となりますと、やはりその学部があちこちに散らばっているよりは一カ所に学園として、総合大学としての機能が果たせるようにといったような観点で作られる場合もございます。もちろん大学を作ります場合、文部省だけの、役人だけの考えというわけじゃございませんで、設置審議会等の意向も十分承ります。したがいまして、今、矢嶋先生のおっしゃいます新産業都市が大学を作ります場合、特に四年制大学等に……、総合大学をおきましては直接新産業都市なるがゆえに云々という問題は比較的、もちろん考慮すべきでしょうが、比較的関連は薄いのではなかろうか。ただ、工業高等専門学校を今年度から作ることにいたしました。十二校を設置いたしました。そういった場合に、文部省としましては、高専を設置する場合の設置要件、この場合立地条件とかあるいは教員の確保がどうであるのかといったようないろんな要素を勘案して決定いたしましたが、そういったような場合には、新産業都市の産業構造なり、特に工業都市といったようなことであれば、高専を設置する場合の一つの有力な要件として検討すべき問題であろうと、このように考えております。
  208. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 もう一回質問いたします。なぜこういうことを私は伺うかと申しますと、従来においても、国立の教育機関の全国的分布状況が日本の産業企業のそれと必ずしも私はマッチしていないと思うのですよ。たとえば大学の農学部というのがある地域に密集しておって、しかも、それが貧弱な農学部が幾つかあるというような状態があります。従来でもそうだ。ところが最近、技術革新の目ざましいものがあるし、産業構造だって非常な大きい変化を来たしているわけですね。そういう状況下においては、日本の企業、産業の日本全国における分布実態と、それから国の人材養成の教育機関とはできるだけマッチするように配慮することは、私は中央官庁としての文部省の権限であるとともに責任だ、こういう立場から伺ったわけで、御所見のほどを承って、文部省に対する質問を終わります。
  209. 宮地茂

    政府委員(宮地茂君) 矢嶋先生のおっしゃいますように、産業分布に即応をして学校が配置さるべきである、たとえば工業地帯は工業大学、農業地帯は農業大学といったようなお気持であろうかと思いますが、ただ学校といたしましては、御指摘のようにそのとおりに必ずしもなっていないのも実情でございますが、今、矢嶋先生のおっしゃいます点は考慮すべき問題と思いますが、必ずしも絶対に、その産業分布と大学の特にその学部の内容とが完全に一致するということはなかなかむずかしい面があると思います。それは学校を作ります場合に、一つ考え方として、いわゆる学園都市、学校というものは都会にあるのではなくて郊外の静かな、教育環境のいい場所で学問をすべきだといったような考え方もございます。また地力の大学はその地方と密接な関連を持ち、特に地方産業と密接な関係を持って地方産業の進展に役立つようにといったような社会的な要請もございます。そういったようなことを彼此勘案いたしまして、適当な場所に選定するというのが学校を選定する場合の基本的な考えであろうと思います。矢嶋先生のおっしゃるお気持は、今後学校、学部を作ります場合、十分尊重さしていただきたいとは思いますが、必ずしもそのとおりにするかどうかは、将来その際に、具体的な問題のときに検討さしていただきたいと思います。
  210. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私の表現が少し不十分な点がありましたが、あなたの答弁を承って、あなたの意見と私の意見は一致しております。したがって、ほかの委員の方が質疑がなければ文部省はこれでけっこうです。  次に、自治大臣に若干承ります。  この法案の第二十三条ですね、これ、町村合併は適正規模に合併することは望ましい、しかし、強制的になってはいけない、そういうことを、すなわち、やや強制的になってまでも合併をすることを期待しておるのではないというのが、藤山長官の前委員会における答弁でありました。自治大臣としてもそういう見解であることだと思いますが、念のためにお伺いします。
  211. 安井謙

    ○国務大臣(安井謙君) お話のとおりでございます。
  212. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 続いてですが、都市合併に関する法案を先般本委員会審議議了いたしました。そのときに議論になったことですが、新しい自治体を合併によって新設した場合には、できるだけ早い機会に市長はもちろんのこと、議会も新しい構成をすることがフレッシュな気分に包まれた新地方団体を作るのに適当だという原則は、この前認められたわけですわね。その立場から考えますと、この二十三条で、合併市町村の議員は二カ年間継続して議員となるようになっていますね。これは市の合併に関する法律案が二年でありました。これは衆参で非常に論議の対象となり、御承知のごとく修正をしたわけですね。どちらも内閣提出法律案だから、二年で歩調を合わしているのだと思いますが、私見を申し述べることを許されるならば、私は、この二年というのは長過ぎる、やはり町村合併促進法のそれに準じて一年と修正さるべきものだという見解を私は持っております。このことは衆参を通じて市の合併に関する法律案審議する場合に論じ尽くされ、修正可決された経過から見てもそれが適当だと思うのですが、自治大臣の御見解参考に承ります。
  213. 安井謙

    ○国務大臣(安井謙君) この点は矢嶋委員のおっしゃるとおりだと思います。でき得る限り、合併が行なわれました場合には、新しい機構によって進んでいくことが好ましいと思いますが、いろんな従来の事情や何かがあって、急速にでき得ない場合も想定しまして二年以内ということですが、指導としては、今の御説のように、できるだけ、早くやっていくように指導していきたいと思っております。
  214. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その意見は大臣としての意見として承っておきます。あと一、二点伺いますが、法律案の十九条並びに附則四条で財政上の措置に関する点が修正されましたね。これを地方団体のお世話をなさっている中央官庁のあなたのところではいかように受け取っておられ、今後どういう心がけで閣内で対処されて参るつもりか、お答えいただきたいと思います。
  215. 安井謙

    ○国務大臣(安井謙君) これは必要な財政上の措置をとれということと、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、特別の配慮をしろ、こういうお話でございまして、私どもこの線に沿って、極力御趣旨に沿って善処していきたいと思っております。
  216. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 企画庁長官に伺いますが、あなたの御答弁では、現在の地方団体に最小限三十万の人口をプラスした程度のものを考えておって、必ずしも百万という、百という絶対数にとらわれるのではないという行政規模に関する見解を承ったわけですがね。指定をいつされるかわかりませんが、指定される地域によって、いろいろ態様は現われると思うのですが、まあ標準的と申しますか、大まかに考えて、その指定された新産業都市の事業に要する総予算ですね、規模というものは何億程度——何億というと私は必ずしも一けたというわけではないのですよ、二けた、三けた、四けたがあろうが、どの程度のものになるであろうと予測されておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  217. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 大小いろいろ違うと思いますが、大体約一千億というようなことでございます。
  218. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私もミニマム一千億程度になるだろうと思うのですね。そうなると、自治大臣に伺いますが、この一千億程度の規模による財政負担というものは、消化というものは、容易ならぬものだと思うのですね。比較的に財政規模寺中以下の水準にある地域を合併していくのでしょうから、そうなりますと、政府においても、特に自治省、自治大臣においても、よほど配慮し努力されなければならぬ面が非常に大きいと思うのです。これを果たし得なかったら絵にかいたもちになる可能性が非常にこれは大きいと思うのですがね。この点についての大臣の所見なり決意を承っておきたいと思います。
  219. 安井謙

    ○国務大臣(安井謙君) おっしゃるとおりだろうと思います。裏づけになる財政措置を自治体にでき得る限りやっていくのでなければ効果は非常に減殺されると思いますので、今の一千億円と申しましても、おそらくこれは何カ年かの計画になるでありましょうし、また企業体自体が用地を購入するといったようなことに振りかえられる金額も出て参りましょうし、その一千億円が一つの地域にすぐ要る金だというふうにも必ずしも私ども考えられませんが、今のようにでき得る限り起債の面なり、その他の面で善処していきたいと思っております。
  220. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 金額の絶対額だけでなくて、これを何年間でやるかということも非常に影響の大きい事柄だと思うのですね。そこで、経済企画庁長官に伺いますが、この新産業都市の建設というのは、今池田内閣でやっておられる所得倍増十カ年計画、昭和四十五年ですね、大体。これとの関連づけはいかように考えておられるのか、承っておきたいと思います。
  221. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 工場が誘致され、三十万の人口増になるというのは、指事してから大体十カ年くらいな期間を想定いたしておりますので、その間に整備をしていく、こういうことになろうかと思います。
  222. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その点わかりました。で、自治大臣に伺いますが、この法律によりますと、どの開発でもそうですが、企業に対しては地方団体は税の減免を考慮しますがね、それは中央官庁としては、基準財政需要額、地方交付税交付金で考慮するということが考えられておるわけですがね、しかし、大きな企業が参り、行政水準を維持向上させるために相当の支出を地方団体はするということになると思いますね。で、若干の交付税交付金等において配慮がなされても、それだけでは不十分で、結果論としては、企業を招致したその代償として企業へ相当額の税の減免をやるという結果が、住民にある程度のしわ寄せがされて、そうして住民の負担が大きくなるおそれがある。しかし、そうなっても道路がよくなったからいいじゃないか、上下水道が整備されるからよろしいじゃないか、こういう答えでは済まされない。また逆に、そういう道路がよりよくならない、上下水道等、そういう生活環況は、税金の負担が大きくならないかわりに、そういう生活環況水準が上がらないという場合かどっちかに私はなる可能性がかなり多いと思う、よほど配慮しなければ。これらに対して、自治庁当局としてはいささかの懸念がないのかどうか。そういう事態を招来しないように、十分自治省自体善処し、あるいは地方団体を指導し得る見通しと自信があるのかどうか、これは行政局長にお答えおき願いたいと思います。
  223. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) ただいま御指摘のございましたように、この法案におきましても、地方税の均一課税につきましては、地方交付税の算定上、配慮をいたすことにいたしております。しかし、それだけではなお不十分ではないか、住民の日常生活に直接関連するサービスのほうにしわ寄せになっては困るという御指摘でございますが、それらの点につきましては、自治省におきまして、財政当局におきましても、行政当局の私どもといたしましても、十分これは頭に置いておりますので、今後そのようなことが起こりませんように、地方団体に対しまして指導もいたしますし、部内でも相談をして処置を講じて参りたいと考えております。
  224. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 藤山企画庁長官に伺っておきますが、あなたの角度からお答えいただきたいのです。内閣提出法律案で、都市の合併に関する法律案が提出され、本委員会でも議了したわけですが、あの法律は公布施行されても、新産業都市建設促進法によって指定され、合併した地方団体には適用しないということが条章にうたわれているわけですね。この法律案の所管省であり、主務大臣である藤山企画庁長官としては、そのことをいかように考えておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  225. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) この新産業都市を作ります場合の、町村の合併その他については、大体新産業都市の形態に応じた方式として、ここに今度載せておりますので、私どもはこれで十分である、こう考えております。
  226. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 十分であると考えるので、適用しないということですね。僕はやり方次第だと思う。この点は、そういう見解でそういう取り扱いをされているというならば、私は皆さんの発言を信用いたします。だから、先刻行政局長が御答弁なられた点、今、藤山長官が御答弁になられた事項については、この法律が成立、施行された暁においては、責任をもって処置されることを強く要請いたしておきます。  それからもう一、二点、この法律の第六条第三項、六ページの最後の行です。「これを関係都道府県知事に指示するものとする。」とあります。もちろん「新産業都市建設審議会の議を経て、」とはなっておりますが、これは行政当局はよほど心しないと天下り的なものになるおそれがあろうと思うのです。少なくとも藤山さんが企画庁長官をされ、総理大臣を牽制されている間は、僕は心配は要らないと思うのですが、総理大臣並びに企画庁長官のお考えなり、人柄によっては、これは運用上、警戒を要する事態が起こると思うのです。このことは、先ほど申し上げました昭和三十一年一月十六日の地方制度調査会の前田会長なり、高田行政部会長から、池田内閣総理大臣への意見の具申として出ているわけですが、御見解を承っておきます。
  227. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 指定して参ります場合に、むろん地方からの申請による場合が多いと思いますが、同時に、中央でも指定を受けることになりますので、その点は指定をいたしましても、先ほど申し上げましたように、関係都道府県知事との話し合いをいたすわけであります。したがって、建設基本計画そのものを決定いたして参ります場合に、すでに地方との十分な協議をいたすことになっておりますので、天下り的な指示というような弊には陥らないということに考えております。
  228. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 答弁を了承します。  次に、八ページの第九条ですが、基礎調査の項で、「必要な基礎調査を行なわなければならない。」と義務規定をしております。これは最も重要なことだと思うのですが、企画庁の政府委員に伺っておきますけれども、現在基礎調査というものはどの程度進んでいるのか、どの程度の地域の基礎調査がまとまっておるのか、その進捗状況を伺っておきます。
  229. 曾田忠

    政府委員(曾田忠君) お話のように、この新産業都市の指定等のためには相当な調査が要るわけでございまして、それぞれ各省におきましても、所要の予算を計上いたしまして調査を行なっておるわけでございます。企画庁といたしましては、必ずしも新産業都市関係のみの調査のための費用ではございませんけれども、三十六年度に初めて地域経済計画調査調整費という予算が計上されておりまして、約五千万円計上されております。三十七年度も大体五千万円程度の金が計上されておりますが、企画庁といたしましては、特に必要な立地条件の調査、たとえば地盤調査とか地形の構造調査、あるいは河川港湾等の調査、それから道路交通の流量の調査、それからいろいろな資料を作りますために必要な図面の作成というようなものを、ごく特定な地域でございますけれども、三十六年度に各省に移しかえいたしまして調査をお願いしているわけでございます。三十七年度も同じような目的で調査を続行いたしたいというふうに考えております。
  230. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ひとつ具体的な例として伺いますが、ことしの二月に、通商産業省企業局で、わが国工業立地の現状という、この調査をされたのを刊行されておりますね。これは相当僕は綿密で優秀なものであるとしろうとながら考えるのですが、こういうものは相当重く参考にし、また企画庁としての基礎調査の面に参考とするのみならず、採択される方針で進まれていると思うのですが、いかがですか。
  231. 曾田忠

    政府委員(曾田忠君) お答えいたします。企画庁といたしましては、たとえば全国の総合開発計画を、今最終的に案を練っているわけでございますが、その場合におきまして、いろいろ工業開発の発展の方向といいますものをうたっているわけでございます。こういう問題につきましては、特に通産省と十分連絡をとりまして、できるだけ後進地域のほうにも工業の開発を促進するというような考えで進んでおりまして、十分通産街とは連絡を密にいたしておる次第でございます。
  232. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その答弁了承しました。  次に、藤山企画庁長官に伺いますが、十二ページの第十二条ですが、この総理府に付属機関として新産業都市建設審議会を設けるとあるのですが、この庶務は経済企画庁、お宅でとられるということが閣内で了承されておるのかどうか、その点お答えをいただきたい。
  233. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) そのとおりでございます。
  234. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 きょうは都合があって衆議院修正提案者が御出席になっていないから、その真意を承ることができないのですが、この審議会名を「地方産業開発審議会」と改めておりますね。これは衆議院で社会党も賛成したもので、私は社会党の議員として意見を言うことは差し控えなければならないと思うのですが、しかし、まあ国会はお互いに討論する場だから私見として申し述べていろいろなことを言うのを許されていいと思うのですが、私は「新産業都市建設審議会」という名前のほうがよかったのではないか。あえて「地方」という字を使うとかえっておかしかったのではないかという、単に矢嶋個人の私見を持っているのですが、修正段階で企画庁としては、原案はそう作ったが、まあそのほうがよかろうということで同意を表したのか。その経緯なり見解なり、参考のために聞いておきたい。
  235. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 御承知のとおり、低開発地域工業開発促進法によります権限をも処理することになっております。そういう意味から言いますと、新産業都市というのでは必ずしも適当ではないのではないか。地方産業開発審議会のほうが適当ではないかというような御意見であったように存じております。したがって、そういうふうに修正されることになったわけでありまして、その点から見まして、名前の問題は、修正必ずしも悪くはないのではないか、こういうふうに存じております。
  236. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そういう見解も確かに成り立つと思うのです。しかし、私はすぐ「地方」でなくなるというような感じがしましてね。少しそちらのほうにあまりウエートを置き過ぎたという感じがしたから承ったわけです。しかし、そういう見解もありますから、それでけっこうです。  ところで、この十三条の審議会委員十五人ですね。これは低開発工業地帯に関する審議会と統合するわけですから、人選が改められるのだろうと判断するのですがね。現在低開発に関する審議会の十五人が任命されております。今度はそれを吸収して新たに地方産業開発審議会でやはり十五人で構成するわけですが、十五は同じですが、その人的構成については、個別的にはきまっていないでしょうし、また承りませんが、方針としてはどういうことをお考えになっておられるのか、承っておきたいと思います。
  237. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 各方面の有力な方を網羅して、あらかじめ新産業都市ができた場合に、その審議に当たり得る方をという意味でわれわれ考えて今日まできているわけでございます。そして特定な低開発地域に関するような場合には、特別委員を置くというようなふうにして、そして相補足して参りたいと、こういうふうに考えております。
  238. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ちょっと明確にわからなかったのですが、具体的に構成する人は変わりますね。全部変わるということはないでしょうが、相当部分変わるという結果が起こるのではないかと思うのですが、大臣のお考えはどういうことなんでございましょうか。
  239. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) この法律を出します場合に、すでにこういう規定を入れておりますので、それを考えに入れまして人選をいたしたわけであります。特に今後変わるということには考えておりません。
  240. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私はその委員の名前を知らぬから、抽象的にそういう質問が出たわけですが、あなたがそういう考慮ならば、もう構成メンバーが変わらないでいいような適当な人で構成されているのでしょうから、その点大臣の答弁で私は了承しておきます。  二十三条ですが、これは自治大臣に伺いたいと思うのですが、二十三条、十九ページの最終の行、「第二十条の二中「十箇年」とあるのは「五箇年」とする。」これは災害に関する項のところですが、どういうわけなんですか、十カ年とあるのを五カ年にしたのは。新産業都市は相当めんどうを見てあげているから五カ年程度でよろしいと、こういう見解なのでしょうか。私は、合併に伴う災害等の不利益になった場合の取り扱いなんですから、どういう合併が行なわれるかわかりませんけれども、この法律の内容からいって、相当僕は大きな合併が、ところによれば実際問題として起こってくるのじゃないか。そしてその中には、僻地とはいえませんけれども、相当、平たく言えばいなかといいますか、行政水準が低いといいますか、財政力の乏しい村も合併されるケースは、必ず私は起こると思うのです。そうなればこの「「十箇年」とあるのは「五箇年」とする。」とわざわざこうしたというのは、どうも僕は理解しがたいのですが、自治省当局の見解と、それから所管の藤山大臣の見解を、その順序で承りたいと思うのです。
  241. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) この点につきましては、町村合併促進法、あるいは新市町村建設の場合におきましては、合併市町村が財政力の弱小なものが多うございますので、十カ年間特例を認めることにいたしておったわけでございますが、新産業都市の場合には、それらの市町村から比べますと、相当財政力もあるものと一般的に考えられますので、十カ年を五カ年に縮小いたしましても、そう支障はなかろう、こういう配慮からいたしたわけでございます。
  242. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 自治省のお考えのようにわれわれも考えております。
  243. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この点私は了承できません。その意見に賛意を表するわけにいかないのです。必ず出てきますよ。貧弱な村で合併するケースは出てきます。これはあり得ると思うのです。そうでないと、ここに大きな拠点開発の都市ができて、その周辺に貧弱な村があったら、これはやっていけないですよ。そういう形が現実にできたら、やはりこれと行政的に、政治的に、経済的に、文化的にうまく結合しなければ、そんな強力なでかいもののそばで、弱小な村というものは立っていけませんよ。だから、そのよしあしは別として、現実問題として、そういうものは合併するという事態が起こる可能性のほうが、僕は強いと思うのです。だから、こういう災害等についての不利なる点をカバーしていこうという場合に、町村合併の場合は、弱体な自治体があるだろうから十年にしたが、新産業都市の場合はそうないだろうから、これは十年を五年にしようというのは、僕はあまり合理性と科学的な根拠はないと思うのですが、その点と、先ほど触れた議員の任期を二年間延ばすという点は、私はどうも賛成いたしかねますね。一体市町村会合併しておそらく三百人ぐらいな会議体ができるのじゃないですか。それは会議をする場所もないだろうし、失礼ながら、ときどき集まって、しょうちゅうを飲んで帰るということになると思う。そういうケースも起こると思う。かつて町村合併の前にはそういうことがよくあったのですからね。だから、これは最小限にして私は一年程度でよろしいのじゃないか。市の合併のそういう批判があって修正したわけだから。それとのつり合いからいっても、立法府はこれは修正すべきだという私は見解を持っておるわけです。これに対する見解を行政府に聞くのはやぼですから、あえてこれは答弁を求めません。  恐縮ですが、あと二、三分。先般ちょっと質問にも出たわけですがね、藤山企画庁長官に伺いますが、この法律が施行された暁において、開発公社、公団というものはどういうことが予想されるのでしょうかね。最近都道府県に開発に関係する公社、公団がやや乱立の気配がある。これについて自治省としては、断定的な見解は下しておりませんけれども、その指導については十分研究し対処せねばならぬ大きな研究課題だということを表明されておられるわけですが、経済企画庁長官としては、どういうことを予想しており、指導するとするならばどういう方向に指導して参ろうとお考えになっておられるのか、承っておきたいと思います。
  244. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 開発公社等の関係ですでに既存のものが若干あるわけでございまして、まあ、根本的に言えば、そういう問題についての非常な検討を将来の問題として要すると思いますけれども、十分これを現状においては活用することが必要だろう、こう考えております。
  245. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 今あるものを現状において活用することは必要だろうということは私はそのとおりだと思います。現状においてないものがあり、また、これを拡大する方向と縮小する方向とあり得る場合がいろいろあるわけですね、予想されるわけです。それで方向づけとして、経済企画庁長官はどういうお考えを持っておられるのか。また自治大臣はどういうふうにお考えになっておられるか。また予想されておられるのか。両大臣からその点にピントを合わしてお答えいただきたい。
  246. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 省の事情においても違うかと思いますが、主体は市町村と申しますか、地方自治体が中心になってこれらの仕事をやっていきますことが現実には必要だと思います。ただ、それが地方の自治体のいろいろな条件によってそういうものが出ておりますところについては、それを十分活用していきたい、こういうつもりでおります。
  247. 安井謙

    ○国務大臣(安井謙君) 企画庁長官と同じようなことでありまして、できるだけ既存のものを利用するということですが、まあ都市の造成その他で万やむを得ない場合には、みだりに行き過ぎになったり、乱立しないように自治体をよく指導しながら最小限度のものにとどめていきたいと思います。
  248. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この法案関係省庁が非常に多く、実施された場合を予想すると、非常にいろいろな場合が予想されるわけですね。したがって、運用のいかんによって玉ともなれば石ともなる素質を持っておる法律案だと思います。それだけにいろいろ多方面にわたって承りたいと思うのですが、委員長はたいへん急いでいられるようですし、ほかの方も質問があるでしょうから、私の質問は一応ここでとどめておきたいと思います。
  249. 小林武治

    委員長小林武治君) これにて質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  250. 小林武治

    委員長小林武治君) 御異議ないと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  251. 増原恵吉

    ○増原恵吉君 私は、自由民主党を代表いたしまして、本法案に賛成をいたします。  本法案第一条に示しますところの目的は、当面まことに喫緊のものでもあり、妥当なものでもあると考えるのであります。ただ本委員会における審議の経過を通して考えましても、本法案実施にあたりまして、さらに検討をすべきもの、配慮すべきもの、留意すべきもの等いろいろあると考えられますので、私は、各派共同提案にかかわる附帯決議を提案をいたしたいと存じます。決議案を朗読いたします。    新産業都市建設促進法案に対する附帯決議(案)   新産業都市の建設は、わが国将来の産業経済構造と地方自治制度に直接重大な関係があるから、本法の実施に当り、政府は左の諸点を検討し、所期の目的の完遂に遺憾なきよう措置すべきである。  一、新産業都市建設の成否は公共事業の先行投資の適否が決定的要素をなすものであるから、これについては予算その他の財政措置について特別の配慮をすること。  一、建設基本計画の実施については、必要事業を強力かつ一体的に遂行し得るよう中央、地方の組織の整備について検討すること。  一、国土総合開発その他地方開発関係法律は、この際、統合あるいは整備を検討し、人口の過度集中の排除と地域的格差の是正に遺憾なきを期すること。  一、建設基本計画の実施に要する事業費は充分に確保し、特に地方団体の必要財源については国において事業の目的に適合する措置を講ずること。  一、新産業都市建設については、行政事務の共同処理等、広域行政の諸方式を充分に活用し、関係市町村の合併は事業の実施に必要な範囲に限り、いやしくも作為強制に亘ることのないよう厳に留意すること。  一、新産業都市の建設に伴う社会経済事情の変動により地域住民の福祉が害われることのないよう特に行政指導に努めること。   右決議する。  以上でございます。  皆さんの御賛成を願います。
  252. 秋山長造

    ○秋山長造君 私は、日本社会党を代表いたしまして、本法律案並びにただいま増原君御提案の附帯決議案に賛成するものであります。  昭和二十五年に国土総合開発法が制定されまして以来、地方開発関係の諸法令はすでに十数件に上っているのでありますが、なかんずく今回の新産業都市建設促進法案は、わが国今後の産業経済構造と地方自治体のあり方に直接かつ具体的な市大影響を及ぼす点において、まさに画期的な立法であり、それだけに究明すべき問題点はまことに多いのであります。しかし、すでに会期も迫り、また、衆議院において与野党で共同修正の上、本院に送付されてきた経緯もありますし、さらにまた、関係地方団体の要望も非常に強い実情にかんがみまして、政府において、本法律案の第一条に掲げられた目的に沿い、関係地方団体とも緊密な連絡をとりつつ、慎垂かつ意欲的に本法律案の実施に当たられるよう強く要望いたしまして、本法律案に賛成の意を表するものであります。  なお、増原君御提出の附帯決議案は、本委員会の総意の結晶でもありますので、政府において特に留意、尊重されるよう強い要望を付して、これまた賛成をするわけであります。
  253. 小林武治

    委員長小林武治君) これにて討論は終局したものと認めて御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  254. 小林武治

    委員長小林武治君) 御異議ないものと認めます。  これより採決に入ります。  新産業都市建設促進法案を問題に供します。本案を衆議院送付案どおり可決することに賛成の力の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  255. 小林武治

    委員長小林武治君) 全会一致でございます。よって本案は全会一致をもって衆議院送付案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続等につきましては、先例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  256. 小林武治

    委員長小林武治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  ただいま増原君の討論中に述べられました各派共同提出にかかる附帯決議案を議題といたします。  本附帯決議案を当委員会の決議とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  257. 小林武治

    委員長小林武治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  ただいま決定いたしました決議に対し、関係大臣の発言を許します。藤山経済企画庁長官。
  258. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) ただいま御可決になりました新産業都市建設促進法案に対する附帯決議につきましては、できる限り御決議の趣旨を尊重いたしまして、本法案の運用に努力して参りたいと存じております。
  259. 小林武治

    委員長小林武治君) 安井自治大臣。
  260. 安井謙

    ○国務大臣(安井謙君) 附帯決議案は、御趣旨非常にごもっともな点が多いと存じますので、御趣旨を尊重して措置したいと思います。
  261. 小林武治

    委員長小林武治君) 次回は五月四日午前十時開会とし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時十七分散会