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政府委員(大上司君) ただいま議題となりました、
地方交付税法の一部を
改正する等の
法律案の提案理由とその要旨を御説明申し
上げます。
明年度は、地方公務員の退職年金制度の創設を初めとして、
地方団体の
財政需要が増高いたしますので、地方交付税の率を引
上げる必要があります。また、このことと関連いたしまして、
昭和三十五年度以降住民税の減税に伴う
地方財政の状況にかんがみ、当分の間の
措置として交付されて参りました臨時地方特別交付金を廃止することが適当であると
考えられるのであります。
次に、明年度は、
道路整備五カ年
計画に基づく
道路整備事業を初めとする各種
公共事業や、社会保障制度の拡充に伴う
地方団体の所要経費をまかなうための財源及び昨年十月から実施されました地方公務員の給与改定の平年度化等により増加する給与費に対応する財源を、
関係地方団体に付与する必要があります。
また、明年度は、国税三税の増加や本年度からの百億円の繰り越しによって地方交付税の総額も相当増加いたしますので、この際
関係基準
財政需要額を増額して、さらに地方行政水準の
向上を企図することが適当であると
考えられます。
このほか、
昭和三十八年度から
昭和四十年度までの間における高等学校生徒の急増に対処するための
特例として、基準
財政需要額の加算の
措置を講ずる必要があります。
以上が、この
法律案を提出する理由であります。
次に、この
法律案の内容の要旨につきまして御説明申し
上げます。
第一は、
地方交付税法の
改正に関する事項であります。
その一は、地方交付税の率を引き
上げることであります。国税三税に対する地方交付税の率は、
昭和三十四年度以降百分の二十八・五とされておりますが、地方公務員の退職年金制度の創設その他明年度の
地方財政の状況全般を勘案いたしまして、
昭和三十七年度からこれを百分の二十八・九と、〇・四%引き
上げることといたしたのであります。
その二は、単位費用を引き
上げて基準
財政需要額を増額することであります。道府県分につきましては、(イ)
道路整備五カ年
計画に基づく
道路整備事業の実施その他公共投資の充実に必要な財源を付与するため、
道路費、農業行政費及び林好行政費の単位費用を引き
上げ、(ロ)さらに、投資的経費を包括的に算入するため、その他の諸費の人口及び面積を測定単位とするものにかかる単位費用を引き
上げることとしたのであります。市町村分につきましては、
道路及び街路、公園、公共下水道、屎尿処理施設等都市における施設の
整備に要する経費及び農山漁村における投資的経費の拡充をはかるため、
道路費、都市
計画費、
衛生費、農業行政費及びその他の産業経済費の単位費用を引き
上げることといたしております。さらに、道府県分、市町村分を通じて、(イ)
生活保護基準の引き
上げ、結核予防行政の充実、失業対策
事業にかかる労力費引き
上げ等により増加する社会保障
関係経費の財源を付与するため、
生活保護費、社会福祉費、
衛生費及び労働費にかかる単位費用を引き
上げ、(ロ)税外負担の解消をさらに促進するため、道府県分、市町村分を通じ高等学校費にかかる単位費用を、市町村分についてはさらに小学校費、中学校費等の単位
費用等を、それぞれ引き
上げることとし、そのほか、(ハ)地方公務員の退職年金制度の創設、給与改定の平年度化、昇給等に要する経費の財源を基準
財政需要額に算入するため、
関係行政項目の単位費用を引き
上げることとしたのであります。
その三は、補正方法の
改正に関する事項であります。道府県分につきましては、(イ)河川費、
港湾費及びその他の土木費のうち、海岸保全施設の延長を測定単位とするものにつき、これらの測定単位により算定される投資的経費を、より各道府県の
財政需要の実態に適合させるため、新たに当該道府県の人口または
事業費と当該測定単位の数値との割合を基礎とした密度補正を行なうこととし、(ロ)高等学校費について、測定単位として新たに教職員数を設けたため、これについて種別補正その他の補正を行なうことといたしました。市町村分におきましては、府県分と同様、
港湾費に
事業費を基礎として密度補正を適用するほか、高等学校費について測定単位の新設に伴い所要の補正を行なうことといたしております。
なお、今後補正係数を定めるにあたりましては、弱小の市町村に対する財源の傾斜的充実をはかるため、都市的形態の度合いに応じて定めている態容補正係数を
改正し、その
格差を縮小することとするほか、
財政力に比し公債費負担の大きい市町村の公債費負担の軽減をはかるため、市町村が国庫の負担金を受けないで施行した災害復旧
事業の財源に充てるため起こした
地方債の元利償還金を基準
財政需要額に算入するにあたり、
財政力補正を適用することといたしたいと
考えております。
その四は、測定単位の
改正に関する事項であります。昨年の国会におきまして、公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する
法律が成立いたしましたので、高等学校に要する経費のうち、教職員の給与費につきましては、教職員数を測定単位として算定することといたしました。
その五は、高等学校生徒の急増対策に関する事項であります。御承知のとおり、
昭和三十八年度から
昭和四十年度までの間におきまして、中学校を卒業する生徒が急増いたしますので、
地方団体といたしましては、これに対処するため、高等学校の新増設等、この
整備を
計画的に進めていく必要があるのであります。そこで
政府は、明年度における
整備事業費を総額百五十四億円と見積り、これについて所要の財源
措置を講ずることといたしたのであります。すなわち、この百五十四億円のうち、十三億円を国庫支出金で、五十億円を
地方債で
措置することとし、残額の九十一億円は、これを基準
財政需要額に算入することといたしたのであります。すなわち、本
法律案の附則におきまして、
昭和三十七年度の
特例措置として高等学校生徒急増対策費を設けることとし、
昭和三十八年度から
昭和四十年度までの間に増加すると見られる高等学校生徒数を測定単位として所要の経費を算定し、これを基準
財政需要額に加算することとしたのであります。なお、高等学校生徒急増対策費は、原則として道府県について算定するものとし、例外として、五大都市につきましては、その生徒数を基礎として所要の経費を算定することといたしております。また、私立学校に対しましても、この期間中に急増する生徒の一部の収容を期待しておりますので、私立の高等学校の増加生徒数を測定単位として、私立高校援助のための都道府県の所要経費を算定することといたしました。
その六は、基準
財政収入額の算定方法の
改正に関する事項であります。すなわち、別に御
審議いただいております地方税制度の
改正によりまして、住民税、たばこ消費税の課税方法が改められますので、基準
財政収入額の算定方法も、これに応じてその一部を改めることといたした次第であります。
第二は、臨時地方特別交付金に関する
法律の廃止に関する事項であります。今回、明年度の
地方財政の状況全般を考慮して、地方交付税率の引き
上げを行なうことといたし、これに伴い、臨時地方特別交付金を廃止することとしたのであります。
なお、以上の
改正に関連いたしまして、
関係法律の規定の一部を
改正することといたしております。
以上が
地方交付税法の一部を
改正する等の
法律案の提案理由及びその要旨であります。何とぞ、慎重
審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し
上げます。
次いで、ただいま議題となりました
地方税法の一部を
改正する
法律案について、その提案理由と要旨を御説明申し
上げます。
地方税制につきましては、戦後累次にわたる
改正により住民の税負担の軽減合理化を行なって参ったのでありますが、最近の経済発展に伴い、国民
所得の水準も
向上し、地方税においても自然増収が相当見込まれることとなったことにもかんがみ、さらにその軽減合理化をはかることが適当であると存んずるのであります。
ただ、
地方財政は、経済の好況と
財政健全化
措置と相待って逐次
好転して参ってはおりますものの、地方の行政水準はなお低く、すみやかにこれを引き
上げていく必要も大きいのであります。したがいまして、地方税制については、このような
地方財政の実態を考慮しながら、次に述べるような方針に基づいて、住民負担の軽減合理化を実現するとともに、
地方財政の自主性、健全性をさらに進めるために、国、
地方団体間の税源配分の適正化をはかり、地方独立財源の充実をはかるために、所要の
改正を行なうこととしたのであります。
今回の
改正による減税規模は、平年度四百二十二億円、初年度二百七十三億円でありますが、あわせて国と
地方団体との間に税源配分の適正化
措置を講じることとしたので、地方独立財源が充実し、平年度百五億円、初年度八十二億円の増収となり、差引平年度において減収額三百十七億円、初年度において減収額百九十一億円であります。
改正方針の第一は、大衆負担、中小企業者の負担の軽減合理化のため地方税の減税を行なうことであります。そのために、個人の市町村民税の
所得割について低額所御者に対する税率の緩和、中小企業者に対する
事業税の税率の引き下げ、料理飲食等消費税の負担の軽減、
電気ガス税の税率の引き下げ等、所要の
改正を行なうことといたしております。
方針の第二は、税源配分及び税源帰属の適正化をはかることでありまして、
所得税との総合負担を軽減する方向で、別途
所得税の一部を都道府県に移譲し道府県民税の
所得割の税率を
改正することと相待って、たばこ消費税の税率の引き
上げ及びその課税標準の合理化等をはかるとともに、入場税の地方譲与の制度を廃止することといたしております。
方針の第三は、税負担の均衡化の推進等税制の合理化をはかることでありまして、住民税、不動産取得税、娯楽施設利用税、自動車税、固定資産税、
電気ガス税、国民健康保険税等の税率の引き下げ、非課税の
範囲及び課税標準の
特例の合理化等を行なうことといたしております。
方針の第四は、固定資産の評価制度の
改正の実施に伴う準備
措置を行なうことでありまして、そのために、中央及び地方に固定資産評価
審議会を設置する等、所要の
改正を行なうことといたしております。
以下その内容の概略を御説明申し
上げます。
第一は、住民税に関する事項であります。
その一は、市町村民税
所得割についてであります。低額
所得者に適用される市町村民税
所得割の税率の緩和をはかるため、準拠税率における課税
所得七十万円以下の
段階区分の
改正を行なうとともに、本文方式採用市町村とただし書方式採用市町村との間における市町村民税負担の不均衡をできる限り是正するため、ただし書方式採用市町村における扶養親族の数に応ずる税額控除について、六百円の標準額を法定することといたしております。なお、税率の緩和の
改正については、
昭和三十八年度分の個人の市町村民税から適用することとしております。
その二は、個人の住民税についてであります。現在、障害者、未成年者、老年者及び寡婦については、前年中の
所得が十五万円以下である場合に限り非課税としておりますのを、十八万円に引き
上げるとともに、障害者、老年者、寡婦及び勤労学生に対する道府県民税の税額控除の額を現行四百円から千円に引き
上げ、その負担の軽減をはかることにしております。なお、個人の住民税における配当控除の制度につきましては、国税における配当課税の取り扱いについての根本的検討の結論が出されるまでの間、さしあたり国税における配当控除の率に対応して配当控除を行なうこととしたのであります。
第二は、
事業税に関する事項であります。
その一は、個人
事業税についてであります。個人
事業税の税率につきまして、第一種
事業にあっては五パーセントに、第二種
事業にあっては四パーセントに、第三種
事業にあっては五パーセントまたは三パーセントに、それぞれ引き下げて負担の軽減をはかることといたしております。なお、新たに
事業用資産の譲渡による損失についての控除の制度を設け、
所得の計算の合理化をはかることとしております。
その二は、法人
事業税についてであります。法人
事業税の税率につきましては、普通法人の
所得のうち、年百万円以下の金額について六%に、百万円超二百万円以下の金額について九%に、それぞれ引き下げて、中小法人の税負担の軽減をはかるとともに、
段階税率の整理簡素化を行なうことといたしております。特別法人につきましても、その税率を、
所得のうち、年百万円以下の金額について六%、百万円をこえる金額について八%に引き下げることにいたしました。なお、現在三以上の都道府県に事務所または
事業所を有する法人で資本または出資の金頭が五百万円以上のものに対しては、軽減税率を適用しないこととしておりますが、その資本または出資の金額による区分を千万円以上に改め、千万円未満の中小法人に対しても軽減税率を適用することとし、負担の均衡化をはかっております。また、税源帰属の適正化をはかる
措置の一環として、製造業を行なう分割法人で資本または出資の金額が一億円以上であるものの分割基準である従業者の数につき、その本社の従業者の数を二分の一として算定するように改めております。
第三は、不動産取得税についてであります。税負担の均衡化を推進する等のために、非課税の
範囲、課税標準の
特例について合理化をはかったのでありまして、学校法人が設置する寄宿舎並びに民法法人、宗教法人及び社会福祉法人が設置する幼稚園の用に供する不動産の取得、中小企業工場集団化のための
事業協同組合等による不動産の取得等に対しては不動産取得税を課さないこととするとともに、農林漁業及び中小企業経営の
近代化または合理化のための農林漁業協同組合及び中小企業協同組合の特定の共同施設で国の助成にかかるものの取得については課税標準の
特例により負担の軽減を行なうこととしております。
第四は、娯楽施設利用税についてであります。娯楽施設利用税につきましては、入場税の税率との均衡上、舞踏場等で利用料金を課税標準とするものの標準税率を百分の十五から百分の十に引き下げることといたしております。
第五は、たばこ消費税についてであります。国と
地方団体及び
地方団体相互の圏における税源配分の適正化をはかる
措置を一環として、地方の独立財源の充実をはかるため、道府県たばこ消費税及び市町村たばこ消費税の税率をそれぞれ一%引き
上げるとともに、その課税標準を公社が小売人に対して売り渡した製造たばこの数量に全国平均小売価格を乗じた額に改め、その合理化を行なっております。
第六は、料理飲食等消費税についてであります。料理飲食等消費税の負担の軽減と課税の合理化を行なうことを目途として、その税率につき、現行の場所による税率適用区分を廃止し、一人一回の消費金額が三千円をこえる場合には一五%、それ以下の場合には一〇%とするとともに、旅館における課税標準の
特例の額を現行五百円から八百円に引き
上げることといたしております。なお、旅館における宿泊の料金の税率については、消費金額による区分を行なうことなく、一律一〇%といたしております。
第七は、自動車税についてであります。小型自動車の税率について、総排気量により三つに区分し、総排気量の少ないものについて負担の軽減合理化を行なうことといたしております。
第八は、同定資産税についてであります。地方鉄道または軌道の都心乗り入れのためのトンネル、公共危害の防止のために設置する火薬類取締法による土堤、防爆壁等及び地方鉄道または軌道の踏切保安施設等、学校法人が設置する寄宿舎並びに民法法人、宗教法人または社会福祉法人が設置する幼稚園の用に供する固定資産については固定資産税を課さないものとするとともに、鉱工業技術研究組合の試験研究用の機械装置、国内路線を運航する航空機、立体交差化施設並びに農林漁業及び中小企業の
近代化または合理化のため共同利用の用に供する機械設備等について課税標準の
特例を設け、負担の軽減合理化を行なうことといたしております。また、新設大規模償却資産に対して課する固定資産税の課税限度額の増額
措置につきまして、その適用年度を一年度延長することといたしております。
次に、固定資産税の課税の基礎となる固定資産の評価の適正均衡化をはかるため、さきに行なわれた固定資産評価制度
調査会の答申の
趣旨にのっとり固定資産の評価制度
改正の実施態勢を整えるため、道府県知事または市町村長は自治
大臣が定めた固定資産評価基準によって画定資産の価格を決定しなければならないものとし、また、
自治省に中央固定資産評価
審議会を、各道府県に道府県固定資産評価
審議会を置くことといたしております。
固定資産評価制度の
改正は、各資産間及び市町村間における評価の不均衡を改善是正するために行なおうとするものでありまして、もとよりこれによって増税をはかろうとするものではありません。したがって、
改正評価制度の実施に伴い、税率の引き下げ、課税標準の
特例等の
措置を講じ、税負担の変動の調整を行なうべきものと
考えておりますが、その具体的な方法は、
改正評価制度による実際評価額の変動状況等を勘案する必要があり、その実施前適当な機会に国会の御
審議を願う所存であります。
第九は、
電気ガス税についてであります。まず、大衆負担の軽減をはかるため、
電気ガス税の税率を一割引き下げて百分の九としたのであります。なお、非課税の
範囲の整理合理化を行なうこととし、非課税品目として新たにパルプ等十六品目を追加し、塩化ビニリデン系繊維等二品目を削除し、新規重要産業にかかるプロピレンオキサイド等十品目について三年間の期限を付することとするとともに、
電気供給規程における料金割引の適用を受ける公衆街路灯に使用する
電気及び農山漁村
電気導入促進法による農林漁業
団体が供結する
電気に対しては
電気ガス税を課さないものといたしております。
第十は、鉱産税についてであります。中小鉱業者の負担軽減をはかるため、鉱産税に軽減税率として百分の〇・七の率を設け、一定の金額以下のものについて適用することといたしております。
第十一は、国民健康保険税についてであります。国民健康保険
事業に対する
国庫負担金の負担割合が引き
上げられたことに伴い、国民健康保険税の標準課税総額を療養の給付及び療養費の総額から一部負担金の額を控除した額の百分の八十に引き下げることといたしております。
以下申し
上げました諸事項のほか、税制の合理化その他規定の
整備を行なうことといたしております。
以上が、
地方税法の一部を
改正する
法律案の提案理由及びその要旨であります。何とぞ、慎重御
審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し
上げます。