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1962-04-02 第40回国会 参議院 大蔵委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月二日(月曜日)    午前十時四十二分開会     —————————————    委員の異動 本日委員田中茂穂君、林屋亀次郎君及 び山本米治君辞任につき、その補欠と して谷口慶吉君、鳥畠徳次郎君及び平 島敏夫君を議長において指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     棚橋 小虎君    理事            上林 忠次君            佐野  廣君            荒木正三郎君            永末 英一君            市川 房枝君    委員            青木 一男君            大谷 贇雄君            岡崎 真一君            木暮武太夫君            高橋  衛君            谷口 慶吉君            鳥畠徳次郎君            平島 敏夫君            堀  末治君            前田 久吉君            木村禧八郎君            成瀬 幡治君            平林  剛君            杉山 昌作君            須藤 五郎君   国務大臣    大 蔵 大 臣 水田三喜男君   政府委員    法制局次長   高辻 正巳君    大蔵政務次官  堀本 宜実君    大蔵大臣官房    財務調査官   松井 直行君    大蔵省主税局長 村山 達雄君    国税庁長官   原  純夫君   事務局側    常任委員会専門    員       坂入長太郎君   法制局側     法制局長   斎藤 朔郎君     —————————————   本日の会議に付した案件国税通則法案内閣提出衆議院送  付) ○国税通則法施行等に伴う関係法令  の整備等に関する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ただいまから委員会を開きます。  国税通則法案外一件を議題とし、その質疑を続行いたします。
  3. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 問題が二つあるのですが、きのうの委員長報告ですね、これには私のほうに非常に大きな異論があるのです。これは大蔵委員だけじゃなく、社会党として異論がある。それは、委員長報告内容についてはおまかせしているわけなんですが、通常の場合、法案の審議の重要な質疑については委員長報告の中にあるのが当然なんです。特にきのうの場合、税法関係重要法案については、社会党出席をしていないので、討論等も参加していないわけなんです。あれを聞くと、ほとんど審議されていない、何が審議されているのかわからない、こういう状態であり、私らも反対討論をしようと考えていたのですが、時間の関係もあって自発的に遠慮したわけです。そういう関係があったので、委員長報告がやはりあまり簡単で、これは委員長を私は特に責めるという考えじゃないですよ。委員長も時間の関係を考慮してできるだけ短くしたい、きのうの場合。そうお考えになってのことだと思うのですが、やはりこの点は、そういうときでもやはり重要な質疑だけは簡単に触れてもらいたい。これは委員長に要望しておきます。  次に、第二点の問題ですが、これは委員長所見をまず伺いたい。国会法第五十一条ですね、「総予算及び重要な歳入法案については」という言葉がある。五十一条に「総予算及び重要な歳入法案」、これは歳入法、案というのは税法関係法案以外にはほとんど考えられないですね。歳入法案ですから、所得税とかあるいはその他の税法関係法案、こういうふうに思うのですが、委員長見解を伺いたい。
  4. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 初めの、非常に報告が簡単であったということにつきましては、これは時間の制限——予算委員会報告もあり、そのあと予算案が上程される、なお大蔵委員会もまたそのあとによって続行されるというようなことで、非常に時間が少なかったものですから、できるだけ簡単にして要領だけを報告するということにいたしました。この点、御了承いただきたいと思います。  それから、あとのことでございますか……。
  5. 永末英一

    永末英一君 議事進行。ただいま荒木さんから、国会法五十一条について委員長所見をただしたいと、こういう意向が出て、委員長がそれに答えられかけておりますが、一体、大蔵委員長大蔵委員会委員長個人見解を申し述べるということは適当かどうか。私どもは、この国会法の五十一条第二項については、われわれ独自の見解を持っている。たまたま委員長はわが党の所属の方でございまして、大蔵委員長大蔵委員会が一致した意見を言われるなら別でございますけれども個人見解をただされるということなら、そのことに対し私どもとしてはお答えになる必要はないと思います。
  6. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはおかしいですね。何も、会派に属しておりますけれども委員長となったらこの委員会委員長ですね。それで、議事進行する場合に、今の五十一条の問題は、これから荒木委員質問すると思うのですが、今後の議事進行に重大な関係があるわけですね。公聴会の問題です。委員長はこれに対して一応の見解を持たないで、どうして議事進行できますか。これは会派を代表しているというのでなく、この委員会委員長なんですから、委員長はそれについて十分、専門員もおるのですし、そういう意見を徴して、そうしてこの解釈の仕方というのがあるのですから、国会法五十一条が制定されたときのちゃんと立法の趣旨があるわけですから、それに従って御答弁すればいいのであって、答弁する必要がないというのは、私は——それはお気持はわかります。わかりますけれども答弁する必要ないというのは少し行き過ぎじゃないですか。何かもう少し相談されて答弁されるとかなんとかすればいいのですけれども答弁されないというのは少しおかしいように思うのですけれどもね。
  7. 青木一男

    青木一男君 議事進行について。私も永末委員と同じ疑問を持ちます。委員長というものは、委員長の資格において発言する場合は、個人意見を言ってはいけないのです。そういう質問をするのは妥当じゃないのです。委員長というものは、委員会なり理事会の全体の意見をもとにして行動すべきであって、いろいろの解釈その他について委員長としての、私はそういう予断を、先に解釈を下すということは、妥当でないと私は思います。
  8. 平林剛

    平林剛君 この件に関しては、私が昨日委員長に要望いたしました。すなわち、国税通則法は、政府自体として、国民に一般的に関心を持たれる法案として、重要な法案であると考えるかどうかという私の質問に対し、政務次官から、これは国民一般的関心を持たれるという意味では重要な法案であるという答えがあったわけです。いわゆるこれは重要法案である、そうお答えがあったので、国会法五十一条の例を私は引用して委員長にその処置をお願いしたわけであります。国会法第五十一条には、「総予算及び重要な歳入法案については……公聴会を開かなければならない。」、つまり「委員会は、一般的関心及び目的を有する重要な案件について、公聴会を開き、真に利害関係を有する者又は学識経験者等から意見を聴くことができる。」と書いてありますが、特に「重要な歳入法案については、前項の公聴会を開かなければならない。」と規定をしてあるから、委員長としてはどういうふうに取り扱うかというお尋ねをしたわけであります。しかし、委員長自体では委員会運営全般に当たるのは当然であるけれども、しかし、私はそれに敷衍して与党、野党理事とよく相談して善処してもらいたいということを言ってあるわけです。  そこで、私は委員長にお尋ねいたします。昨日理事会を開かれたことと思います。その間、その理事会において私のこの意見に対し御相談があったものと思うのであります。その結論はどうなっているか、そしてその結論に基づいてどう運営をなさろうと考えておられるか、こういう角度で私はお尋ねいたします。委員長個人意見を求めているのじゃありません。
  9. 永末英一

    永末英一君 今、平林さんが言われたように、一昨日の委員会では平林さんの委員長に対する、今後の会議運営上委員長意向をただした件は、特に五十一条の一項に関する件で御意向がただされた。そうして、それについては理事会が持たれたということは私も承知をいたしております。ただいまの荒木さんの質問は、五十一条の二項の「歳入法案」という文字に、この国税通則法歳入法案であるかどうかということの法解釈委員長に聞いたわけであって、そういうものについて委員長お答えになるということであるならば、その前に、一体そのことについての各委員意見を徴し、委員会の最終的な見解がきまらなければ、委員長としては——私の会派に属しているという意味じゃございません。委員長として勝手な解釈委員会としては言ってもらうわけには参らぬ、こう申し上げておるわけであります。しかし、平林さんのおっしゃったことと荒木さんの御質問とは違うと思うのですが、荒木さんのほうが、委員会の全体の意思で、委員長が別段そういうことに対して解釈を今の機会に言わないでいいということであれば、平林さんの言われたことについては、委員長はそれぞれ会議主催者としての今までの手続は、これは御報告になることは必要だと思います。
  10. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは、委員委員長質問する権限が私はあると思うのです。内容が、私の質問内容について答えることができないということであれば、答えることができないとおっしゃっていただければいいと思うのです。私は何も内容について言っているのじゃないのです、私の聞いたのは。そういうわけですから、これはこういう字句の解釈については委員長個人的解釈はできないからとおっしゃっていただけばいい。私が質問したらいかぬという規定はないと思う。  やはり委員長について質問をする。私も委員長個人的解釈を求めているのじゃないのです。もう少し質問をして、この問題は委員会においてもう少し論議をしたいと考えているだけのことで、それは求めているのじゃないのですが、委員長として取り計らいを依頼したいために、言葉足らずでしたが、そういう質問をしているわけです。だから、委員長個人的見解を述べるのは差し控えたいとおっしゃれば、それは私としても文句を言う気持はないわけですが。
  11. 永末英一

    永末英一君 今、荒木さんの言葉、私は荒木さんに質問しちゃいかぬということを言っているんじゃないのです。委員長がその点についてお答えかけられたので、議事進行上、本委員会理事として委員長答弁する姿勢というものはこうではないかと意見を述べたわけです。あなたが委員会委員長について質問をされるのは自由だと思います。
  12. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 荒木君の御質問通則法に今すぐ触れているのではないのですよ。実際問題として、所得税法案その他の重要法案について、公聴会を開かないで、われわれが欠席しているときに通しちゃっているのですよね。五十一条の二項によれば、これは公聴会を開かなければならぬわけですよ。「開くことができる」じゃないです。公聴会を開かないでどんどん通しちゃって、それでよろしいのか。そういう処理をやってきたのです。通則法の問題はまたあとから出てきますけれども、「公聴会を開かなければならない」と規定されているのに、重要な歳入法案について公聴会を開かないで通しちゃっていいのかどうか。  それから、もう一つは、重要な歳入法案予算案と同じに扱われていますよ。ですから、委員長報告においても、予算案と同じように重要な問題点については、これは一応報告するのが当然だと思います。これについては委員長からさきに御答弁がございましたから、これ以上どうこうは申しませんが、今後は私はやはり予算案と同じウエートをやはり置いて報告すべきじゃないかと思います。これはもう、一応荒木委員も要望され、委員長もお言葉がありましたから、これは一応強く今後のこととして要望して、第二の公聴会を開かないで重要な歳入法案を通したということは、これは国会法五十一条二項の規定に違反するのですよ。そういうことを今後やっていいのですか。このことを私はまず答弁を求めているのですよ、議事進行上ですね。
  13. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) この件につきましては、一昨日理事会を開きましたけれども理事会意見が一致いたしませんので、委員長といたしましては、ただいまのところ、いずれとも決定しておりません。
  14. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 委員長、そうじゃないのですよ。国税通則法について言っているのではないのですよ、今は。国税通則法も問題になりますけれども所得税法案、すでに通った法案についてなぜ公聴会を開かなかったのですか。
  15. 青木一男

    青木一男君 それは委員会の仕事だ……。
  16. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 だから、われわれがいないときに、公聴会も開かないで通しちゃったということは問題じゃありませんか。こういうことでいいのですか。
  17. 青木一男

    青木一男君 重要法案として公聴会を開くか、その他議事運営については委員会がきめることであって、委員長独自の見解なり裁量によってきめるものでないから、その点を委員長質問されることは委員会運営上適当でないと私は考える。
  18. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはおかしい。それは第一項についてはそうです。開くことができることになっているのです。第二項は、開かなければならないのです。理事会で開くか開かないかという問題じゃありませんよ。予算案と同じですよ。予算の場合はちゃんと開かなければならない。ただ、その日取りをどういうふうにきめるか、あるいはだれを公述人にするかということについては、理事会でこれは御相談すべきです。しかし、ちゃんと国会法五十一条二項で「開かなければならない」となっているのを、理事会で開くか開かないかをきめる、そんなことではないわけです。第一項はそれでいいですよ、第一項のほうは……。
  19. 須藤五郎

    須藤五郎君 私も、この法案は重要な法案であり、法案が提出されるまでにも何回も内容変更を来たしているような重要な法案だと思うので、それから国民がこういう法案について大きな反対をやっている。こういう場合に、一回の公聴会も開かずに、これを通過させるということは、とてもできないと思うのですよ。国会法の第五十一条にもそういう規定があり、私は今参議院規則の六十一条に基づいて文書をもって公聴会開催委員長の手元まで要求した。これは六十一条に従ってやっていることです。ぜひとも公聴会を一ぺん開かれるように委員長において取り計らっていただきたいと思うのです。
  20. 永末英一

    永末英一君 公聴会の問題は二つ、国会法五十一条によればあると思うのです。第一の点については、委員会意思がまとまるならば、これは公聴会を開くということになると思います。第二項について、今木村委員からお話がございましたが、私は短い期間でございましたが大蔵委員として参加をいたしました経験からいたしましても、所得税法あるいはまた法人税法といういわゆる歳入関係のある法案大蔵委員会にかかったときにも、その五十一条二項をそのまま適用して公聴会を開いたことはなかったように記憶いたしております。それはなぜかというならば、そういう歳入関係のある租税法案であっても、予算委員会等公聴会を開いておる。つまり、ただし書きの言葉に引っかかって、「すでに公聴会を開いた案件と同一の内容のものについては、この限りでない。」ということで、暗黙に委員会で了承されて、いわゆる租税法案そのものについて絶えず大蔵委員会公聴会を開くということをしなかったのではないかと思うのです。したがって、通則法の問題については、第一項と第二項とに分けて、第一項の公聴会を開けという御要求は、平林さんからもあったし、今伺いますと、須藤委員からもあっておるようでございますが、第二項について委員会がもう当然義務づけられておるかどうかということについては、私はいささか疑義があると思います。
  21. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは重要ですから、明らかにしておきたいと思うのです。それは、衆議院ではどう処理したかというと、税制調査会の会長の中山伊知郎氏を呼んで意見を聞いております。それで十分かどうかは知りませんが、一応中山氏はこの税制改正について答申されましたから、いろいろな意見を総合的によく承知をしておられる中山さんを参考人として意見を聴取するということによって、公聴会にかえたという。一応筋は通っている。手続はそれで完備していると思うのです。  それから、予算委員会においてそういう重要な歳入法案について公述があれば、それはダブってやる必要はないと思うのですが、これは今度に限っては、予算委員会では歳入について、税法についての公述がないのですよ、税法については。ですから、予算委員がみずから五十一条の二項を今後活用しないような発言をすることは不見識だと思うのですよ。むしろ積極的に、このままでかりに開かなかったならば、それは誤りですよ。私は、この点は今後はっきりさしてもらいませんと……。折り目を正しくしなければいけないと思うのです。
  22. 永末英一

    永末英一君 ただいま私の見解について、見識足らずというような評価をされたようでございますが、私の考えでは、本委員会といたしましても、数回参考人を呼んで、税法に関していろいろ意見も聞いております。ただし、所得税法そのものについてやったかどうかについては、今会期においては私はしかと了承しておりませんけれども所得税法そのものについては一般的な歳入の問題として予算委員会であったので、特にこの委員会の議として所得税改正法案について参考人を呼べという意見がなかったのではないかという工合に私は了承しておるのです。しかし、その他の法案——物品税法入場税法等々については、本委員会公聴を開いてぴしゃっとやったという工合に私は記憶いたしておりますので、どうも不見識なんと言われますと、だれの話かわかりませんが、私としては了承いたしかねるわけです。
  23. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 参考人を呼んで聞くということは、公聴会と違うのですよ。明らかに公聴会と違いますから。それで、せっかく国会法国会の権威を高めるために、国民権利義務に関する重要な法案については、特に税法などそうです、特に公聴会を開かなければならないとせっかく規定しているのですよ。それを何ですか、みずから自分たち権限を制限的に解釈するという仕方は、これは私はいかがかと思うのですよ。(「これから気をつけましょうよ」と呼ぶ者あり)これは、ここでは積極的にやはり解釈を明らかにしておく必要があると思うのです、この機会にですね。
  24. 青木一男

    青木一男君 木村委員の御意見ですが、重要であるかどうか、公聴会を開く必要があるかどうかということは、かかって委員会の私は決定に属すると思うのです。この委員会がきめるべきで、ほかの人は、委員長といえどもだれもきめることはできない。委員会のみが決定すべき機関である。したがって、それを決定されることは自由ですから、適当な手段をとられればいいと私は思います。
  25. 佐野廣

    佐野廣君 今後気をつけましょう。ほんとうに了承します。
  26. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この問題、いろいろ意見があるようですから、昼の休憩時間中に理事会を開いて、理事会で若干相談するということにしたらどうですか。
  27. 佐野廣

    佐野廣君 今後の問題はね、今後の問題として、確かに私は木村先生言われたことがいいと思います。
  28. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それは諮ってもらってきめましょう。
  29. 佐野廣

    佐野廣君 それは、木村さん、今度の問題じゃない、一般論ですね。
  30. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 委員長、ちょっとそれを諮って下さい。この問題はあと委員会で取り扱う……。
  31. 佐野廣

    佐野廣君 理事会でやればいいじゃないか。
  32. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 昼の休憩時間中理事会を開いて、そこで協議するということに……。それよりしようがないと思う。
  33. 佐野廣

    佐野廣君 将来の問題として、ひとつ研究しましょう。
  34. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) それでは、その問題については休憩のときに理事会を開いて協議することにいたします。
  35. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは通則法も含めてですね。
  36. 佐野廣

    佐野廣君 含めてというよりは、一般的にこの問題でしょう。
  37. 上林忠次

    上林忠次君 将来の問題として十分協議すると……。
  38. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 大蔵大臣出席されましたから、質疑のある方は、順次、御質疑を願います。
  39. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 じゃ、大蔵大臣に御質問いたします。  これまで、通則法制定経過等につきまして、事務当局あるいは政務次官に御質問して参りましたのですが、大蔵大臣からやはり責任のある御答弁を伺う必要があるというので、きょう大蔵大臣質問することになったのですが、御承知のように、この通則法国民権利義務に関する税法のうちでも特に非常に重要な、初めての画期的な私は法律だと思うのです。そこで、税制調査会から答申が行なわれ、それから大蔵省がこの原案を作成する過程において、各方面でこれについてはいろんな議論が行なわれ、批判もあり、それから反対もあるわけです。で、税法学会や、あるいはまた労働組合中小企業団体、そういう方面から反対意見も表明されてきておるわけです。そうして、これが一たび国会に上程されますと、われわれのところには、電報やらはがきやら、いろんな方面から反対の陳情がたくさん来ているわけですね。  そこで、大蔵大臣にお伺いしたいのは、今の時点において通則法を制定され、そしてこれを実施しようとしておりますが、そのほんとうのねらい、目的は一体どこにあるのですか。まず、この点、お伺いしておきます。
  40. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ほんとうのねらいは、御承知のように、今税制が非常に複雑になって、なかなかわかりにくいことになっておりますので、これを簡潔にしてわかりやすくするために、各税法の中から共通的な事項は抜き出して、そうしてもっぱら手続問題を中心通則法整備をするということになりますと、今後、税制改正のときでも、税制の本法がそれぞれ直る程度であって、今の複雑さからはこれは非常に解放されますので、そのほうが納税者にとっても非常にわかりやすくて便宜であるということ、そのほか諸加算税の問題、こういうような問題もあわせてここでこれを改善するなら、納税者権利利益の擁護になるということでございまして、これによって徴税の強化をしようとかどうこうというような問題は一切ございません。  ただ、この通則法を当初の考えではもう少し基本法的なものにしたいという考えも持っておりましたし、税制調査会でも、そういうような意味でいろいろ税の理論に触れた、根本理論にも触れたようないろいろな問題が出て参りましたが、そのことはやはり相当真剣な論議をしなければならぬ問題でございますので、最初のそういう案が各団体に伝わっていろいろな反対が出てきたことは事実でございますし、また野党皆さま方も相当各方面にこれは反対だ、こういう問題はまだまだもっと慎重に討議さるべき問題であって、未熟のままで通則法に盛られることは反対だ、というようなことを非常にもう世間に宣伝もされておりましたので、今度のこの通則法がどういうものになったかというのを知らないで末端で反対しておる人が多いというのは事実でございます。しかし、御承知のように、そういう問題は全部避ける、今後の検討にまかしていいんで、とりあえず納税者利益に着目した部分だけの変更をやるということにしてございますので、だんだんにこのことはいろいろな当初反対した団体の方にも今わかっていただいておる過程だと思いますが、そういうことで、税制調査会答申そのままを、そういう角度から尊重すべきでございますが、そのとおりにやらないで、問題のある点だけは全部今度は省いて、そうして各税法から共通的な問題を抜き出した、もっぱら手続中心にした通則法になっているということでございますから、それがまあいきさつでございますので、最初税制調査会の案とはもう変わってしまっているということだけ御了承願いたいと思います。
  41. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいま大蔵大臣の御説明によりますと、これは反対している人は、この法案制定のほんとう意味を知らないで反対していると、こういうお話がありましたが、われわれ反対しているんですが、われわれはほんとう意味をわれわれとしては知っているつもりなんですけれども、わかればわかるほど反対しなければならぬと思うのですね。で、反対していて、まあ納得したという方は、まだほんとう通則法制定のねらいですね、精神、そういうものは知らないから納得していると思うのです。  で、私はここでやはり事態を明らかにしておかなければならぬと思うのですが、大蔵大臣は、これは税制調査会答申をもとにして、その趣旨は尊重して作った。しかし、第一次原案にはその答申に近いものを盛り込んだけれども、その後、いろいろな反対があったので、いわゆる五項目というのですかね、あれを削ったと。削ったから、そこでそういう問題になる点は削ったから心配がないのである、徴税強化をねらいとした法律ではないのだと、こういう御説明をされましたが、経過はそのとおりなんでございますか。
  42. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 答申案が出ましたので、おそらく政府の原案というものはその線に沿ったものであろうというような予測から、いろいろな反対が起こりましたが、政府には第一原案というものは実際にはございませんで、この答申案を慎重に私どもが検討しました結果、今度御審議を願うことになった案が私どもの第一原案でございまして、その前にもう一つの原案というものを私ども最初から作っておりませんでした。ただ、答申案が出されましたので、その線に沿って政府がやるだろうということを想像して、先ばしった反対が起こったことは事実でございます。
  43. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私の承知しているところでは、その第一次原案というものは、それはなかったでしょう。しかし、第一次試案、第二次試案、第三次試案、そういうものは各方面にちゃんと知らされておるんですよ。そこで、非常な反対運動が起こって、最終案ではいわゆる五項目というものを削るということになったのが、私は実際の経過だと思うのです。
  44. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) それは全くの誤解でございまして、そうじゃございません。政府は最初から一次案、二次案、三次案というようなものを作ったことはございません。     —————————————
  45. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 委員の異動について御報告いたします。  本日付をもって委員林屋君、山本君、田中君が辞任され、その補欠として鳥畠君、平島君、谷口君が委員に選任されました。     —————————————
  46. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、当事者である大蔵大臣がそう言われるのですから、それはわれわれとしても——われわれ当事者じゃありませんから、それでもそうじゃないというのは、これは無理かと思いますから、一応その点は、じゃ了承いたします。  その次に伺いたいのは、この答申案の趣旨、精神は尊重してこれは制定されたわけでございましょう。その点について……。その問題になる点は、いろいろまあ削除されたといいますが、答申案の基本的な精神です、この立法の精神、立場、そういうものを尊重されて立案されたものと思われますが、その点いかがでしょう。
  47. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そのとおりでございます。
  48. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこで問題になりますのは、それじゃ答申案の根本の精神はどこにあるとお考えですか。
  49. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 答申案の精神は、やはりさっき申しましたように、税制を繁雑にしない、国民にわかりやすくするということと、国民利益になるように、通則的な事項を、もっぱら手続規定中心として構成された通則法を作るべしというのが答申案の精神だと思います。
  50. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私の理解しているところでは、そんな簡単なものではないように理解しているのでございます。それは日本税法学会におきまして「国税通則法制定に関する意見書」というものを出しております。この意見書によりますと、「国税通則法を緊急に制定する必要はない。学説、判例の発展を待ち、機熟してから、むしろ租税基本法を制定すべきである。」、こういう意見を述べて、その理由としまして、この国税通則法税制調査会答申に基づいて立案された、しかし税制調査会答申はドイツ法の条文を参考にして答申が作成された、ということになっていますね。いわゆるナチスの租税適用法です。このナチスの租税適用法は一九三四年に制定されている。御承知のように、ナチスのファッショ体制に税制を適用させる、そういう法律なんです。非常にファッショ的な法律であると思うのです。そういうわざわざナチスの租税適用法を参照して、それに基づいて制定されたというわけですね。そうすると、その精神がどこにあるかということは、こういう点からもわかってくると思うのです。ナチスの租税適用法は、憲法に規定された法規を軽視して、税法が憲法に規定された規定よりも優先する、こういう精神になるのです。それがたとえば訴願前置主義を残しておくという点なんかも、やはりそういうふうに理解されるのでありますが、この税法学会で言っているように、「スイス連邦では、一九四七年六月二十三日連邦税基本法ブルーメンシュタイン草案が作成され、十四年経た今日に至るも未だ審議中で立法化されていない。」、こういうふうに述べているわけです。なぜ、ドイツ法の条文を参考にして答申されたこういう答申案の精神を尊重して、そして作られた国税通則法が、単なる手続規定した法律ではなくて、そこに徴税強化の精神を盛ったところの法律ではないと言えましょうか。根本はやはりその精神は徴税強化にあると思うのです。その証拠には政府は五項目を削りましたね。あの五項目は削りましたけれども、あの精神は五項目に表われているんですよ。あれは象徴的なものなんです。かりに五項目を削っても、根本の徴税強化の精神というものは、これは私は決してなくなっていないと思うのです。それは具体的に検討していけば、そうなります。現在すでに通達行政を通じて非常に徴税は強化されているわけです。ですから、私は、大蔵大臣は徴税強化を目的とした法案ではない、こう言いますが、これは税金を取る権力者の立場に立って規定された法律でありまして、納税者を保護するという立場に立って制定された法律じゃありません。あくまでも、いかにして税金を取りやすくするかという立場から制定されているのです。そういう意味では、徴税強化と言えるのであります。そういう意味の徴税強化の根本の精神から制定された法律であると思うのですが、この点は大蔵大臣はどうお考えになっているのですか。
  51. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 税制調査会答申の中にどういうねらいがあるかというようなことの御批判がありましょうとも、私どもとしましては、あの中のああいうものを全部取ってしまって、今回はそれには触れない。そして調査会の精神である、やはりさっき申しましたような納税者利益というものに着目した一連の今度のような改正案というものは、別に徴税強化を目的としたというふうな個所もございませんし、衆議院においても、これは逐条審議でいろいろ論議していただいたのですが、結論としては、いろいろのことがあろうとも、この程度の通則法においてはそう大きい問題はないというところまで御審議を願っているものでございまして、実際は、この法案の中にどういう部分がそういうことになっているかというのが問題だと思います。私ども最初から、徴税を強化する、こういうようなことは一切目的として作ったものでないことだけは、これは明瞭でございます。
  52. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃ、あとで母体的に各条文について、徴税強化を目的とした法律であるかないか、具体的に質問して参りますが、その前に、総合的な質問がございますから、その点について御質問します。大蔵大臣は、この法律案が租税法定主義の精神に反しているとお考えになりませんでしたか。
  53. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 別に反しているところはないと思います。
  54. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 租税法定主義というものはどういうものであるか、大蔵大臣の御見解を伺いたい。
  55. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) よく刑法で罪刑法定主義が犯人のマグナカルタだと言われております。それを同じことで、税法というものは、納税者にとってのマグナカルタでございまして、かってに国がいろいろ徴税を強化をしたりなんかしないというために、この税法ができているので、この部分はこうする、この部分はこうするということが、納税者に対する国の権力の限度をはっきりと明示しておるということでござまいすので、そういう意味において納税者にとっては税法というものは非常に大切である、この範囲内において国の権限もきめられるということだろうと思います。
  56. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣の御答弁のとおりだと思うのです。憲法では三十条及び八十四条でこの租税法律主義を、あるいは法定主義といいますか、規定しています。「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」と三十条で規定しています。八十四条では「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」、これは法律さえ定めればどんな税金を取ってもいいということではなく、大蔵大臣が今言われましたように、これは租税は徴収する側の法律であると同時に、徴税者のほうの徴税の限界というものをそこで定めて、そうして納税者を保護するという規定だと思うわけです。それは大蔵大臣が言われたとおりだと思う。フランス革命の人権宣言にありますように、代表なくして課税なしというあの精神だと思うのですね。ですから、表面から見ると、法律さえ作ればどんな税金でも取っていいように思われますけれども、しかし、こういう租税法定主義が出てきた歴史的経過を見ますと、今大蔵大臣が御答弁なさったように、やはり納税者の保護ということが——これは納税者側から非常に強い要求が起こって、こういう租税法定主義というものが出てきたと、こう思うのです。  それならば、国税通則法の第一条で目的をうたっておりますが、そこで納税者の保護を規定したような条項が一つも見当たらない。これは、これまでの通達行政というものを、非常に税法よりこわいと言われて、民間では非常におそれられている通達ですね、この通達というものを考えますと、通達行政を合理化するような規定のようにわれわれとしては解釈できるのです、今の通達行政の実態から見ますると。そうして今の通達行政、税法以上に権威があるといわれている、それを何か合理化するような規定のように思われるのです。今の通達行政から納税者を保護するというような規定は、この第一条からは少しも見られないんでありますが、その点はどうお考えですか。逐条的な審議はあとでわが党の他の委員からお願いしますが、これは、この法律は徴税強化を根本のねらいとしているのではないか、そういう点に関連してお伺いしておるわけです。
  57. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) この法律は、現行の通達とは何の関係もない法律でございます。通達に触れるところは何もございません。法律面で納税者手続上の権利義務を明らかにすると同時に、納税者利益をもろもろの点ではかっております点につきましては、きのうお話し申し上げたとおりでございます。通達につきましては、これは御案内のように、法律は相当詳細には書いてございますが、いろいろな疑義がございますので、行政を担当するところで、行政庁としてはその解釈はこう考えておるというこまかい問題について見解を統一いたしまして、同時に、納税者にそれぞれの解釈規定をすべて発表しているわけであります。したがいまして、通達も、よく考えてみますと、法律あるいは政令等で、なおいろいろな原価計算の問題その他でこまかい問題がどうしても残るわけでございます。それらについての法の趣旨を行政府における解釈として統一的に定め、これを同時に納税者にすべて公表している、こういう性質のものでございます。したがいまして、この通則法と通達で定めるということは何の関係もないことでございます。
  58. 平林剛

    平林剛君 ちょっと私関連をしてお尋ねしますが、先ほど大臣は、国税通則法を作った目的につきまして、木村委員質問に答えて、この法律は複雑難解な現行の租税体系を納税者に理解しやすいようにしたということと、また、各税法を通ずる基本的法律関係を明らかにしながらこれを簡素化した、そうして納税者の利便をはかる立場から改善合理化したというお答えがあったのでありますが、私は逆にお尋ねします。それならば、この国税通則法の中には、あるいは従来税法の中においても、法律国民のためのものでなくて政府のためであるというような個所がないかどうか。あるいはかえって非民主的あるいは権力主義的な考え方、税務行政の独裁化を法的に承認しあるいはこれを保障するような個所はなくなっていると判断をなされているかどうか。これを私、逆から大蔵大臣に解明をお願いいたしたいと思う。いかがでしょう。
  59. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私は、国税通則法によって納税者側に不利ないろいろのものが新たに加わったというふうには、全然考えておりません。
  60. 平林剛

    平林剛君 たとえばですね。国税通則法の第十一条には相続人に対する書類の送達の特例が掲げられております。これによりますと「相続があった場合において、相続人が二人以上あるときは、これらの相続人は、国税に関する法律規定に基づいて税務署長又は税関長が発する書類……で被相続人の国税に関するものを受領する代表者をその相続人のうちから指定することができる。」と書かれているのであります。私は、この規定はきわめて税務署が権力主義的に、相続人に関するいろいろな関係法があるにもかかわらず、税務署長が何人かある相続人の中でお前は相続人だというような指定をする権限を与えているように思うのであります。まことに税務署長の権限が強くなってしまって、相続人さえも勝手にお前が相続人だときめることができるようになっている。その第十一条四項にはこれらの「法律に基づく処分で書類の送達を要するものは、その相続人の一人にその書類が送達された場合には、当該国税につきすべての相続人に対してされたものとみなす。」、こういうふうにきわめて独善的に書いてあるのですね。こういうような例は、あなたは私の指摘に対してそういうことはないと言われますが、具体的な例として第十一条を私はあげることができると思います。これに対する御見解はいかがですか。
  61. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 十一条の今の問題については、主税局長から御説明いたします。
  62. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) すでに御説明しましたように、国税通則法は各税に共通な規定をここに取りまとめまして、その際各事項ごとに検討いたしまして、この際結論の出たもので改善する必要のあるものについては改善しているわけでございます。しかも、その改善の方向は主として、納税者利益を擁護するために遺憾の点はないかと、こういう点で考えているわけでございます。で、ただいまおあげになりました十一条でございますが、これは現行の国税徴収法の二十八条をそのまま持ってきておるわけでございまして、これについていろいろな角度の御批判はあると思います。われわれはこれは相互の利益のために設けられたと考えておるわけでございますが、現行法のまま、これは通則的なものとして移行しておるわけでございますので、徴税強化という点は当たらないと思います。
  63. 平林剛

    平林剛君 私は、権力行政的なものがこの国税通則法に含まれていないかどうかという形でお尋ねしたのです。あなたはそれを徴税強化かどうかにすりかえたけれども、私は、先ほど指摘しましたように、税法というものが国民のためのものであってもらいたい、それが政府のためのものであっては困る、そういうものが入っていないというお話があったので、具体的に指摘をしたわけであります。従来の税法がそのまま引き込まれたといたしましても、やはりこの際は、こういう問題について通則法をきめたわけですから、明らかにするというならば、自慢をして、この法律は決してそういうものでないということが言えましょうが、こういう例がもう一つ、通則法の第七十六条の第二項に、「国税庁、国税局、税務署又は税関の職員がした処分は、それぞれその処分をした職員の所属する国税庁、国税局、税務署又は税関の長がした処分とみなして、前項の規定を適用する。」、これは異議申し立てに対する規定の中でありますが、考え方としては、おれの命令は天皇の命令であるという昔の軍隊と同じように、国税庁の職員がした処分もそれぞれの長がした処分とみなすという一つの通則的な原則をこの規定の中に織り込んであるわけであります。私は、現在の国税庁の行政を見ておりますと、かなりいろいろな方面において不満があり、またそのやりについて官僚的だという批判もあり、その徴税の仕方におきましても、大きな意味で国税の課税の公平その他がそこなわれておるという具体的な指摘を聞くわけであります。ところが、今回の通則法の中にはこのような基本的な考え方が織り込まれておる。  私は、もしそうだとするならば、少なくとも現在の税務行政を行なう権利というものがあり、権力乱用であってはならぬから、乱用を防止するための規定を、通則法とするならば、入れるべきでないかと思うのでありますが、今度の国税通則法にはそういう基本的な考え方は盛り込まれておらない。これはやはり政府が提案した国税通則法の中には、お上の都合のいいようなやり方を中心に盛られておると判断をしなければならぬまた一つの例示だと思うのであります。なぜ税務行政権の乱用防止について何らかの措置をこの中に入れようと考えられなかったか。その点はいかがですか。
  64. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 非常に法律技術的なことにも関連いたしますので、私からお答え申し上げます。  さっきの相続人の問題、これは実体の問題でございますが、実際問題といたしまして、これは相続権のある者はすべて、現在その家にいる者だけではございません、すべての子供について相続権があるのですから、嫁に行った娘さん、それらにもすべてあるわけでございます。そういうことでございますので、相続税の問題につきましては、大勢の者が納税義務者になる場合が非常に多いわけでございます。したがいまして、通常はまだ日本では長男が家におりまして全部取り仕切っておる。これを一々やられて、嫁に行った先に娘さんまで納税で悩まされるということはたいへんであろうということでございます。そこで、向こうのほうで代表者を定めることもできるし、また税務署長のほうで代表者を定めることができると、こう書いてあるのであります。必ず一人に指定するとは書いておるわけではありません。それぞれの適当の場合に応じてその規定を適用して参るのであります。  それから、先ほど申されました第七十六条第二項は、これは逆でございまして、今度はいわゆる不服審査の対象に事実行為が入っております。従来でございますと、賦課徴収に関する法律処分がその不服の対象になっているわけでございます。今度は、その点は納税者利益ということを考えまして、法律行為のみならず、事実行為も全部その問題にし得ることにしたわけでございます。その場合に、事実行為でございますので、税務職員のなした行為、これもまた問題になるわけでございます。それを一々これは税務署長の責任においてやっているわけでございます。その指揮命令下においてなしているわけでございますので、もしそれがいかぬということであれば、これは税務署長の責任として争うべき問題であるということでございまして、決してこれが税務職員のしたものは署長のやったものと思えというような思い上がったものではございませんので、不服の対象を拾い出しまして、その関係から出て参っておるわけでございます。権利の乱用につきましては、乱用してはいかぬことは当然でございます。あえて規定を書くまでもないことでございます。
  65. 平林剛

    平林剛君 あえて法律的措置をするまでもないと言われるけれども、やはりそれを今度の通則法の中に明確にすべきでなかったかということなんです。あなたはそういう考えでおっても、実際の税務行政の中において、しばしば指摘をされるような事件に遭遇をしている多数国民がいるわけです。私はその現状から見て、こういう通則法を、もし国民のためと、こう言われるならば、それを立法的措置を講ずべでなかったかということです。だから、必ずしもこの税法は、国民の利便のためのものだけではないのじゃないか。  特に今第十一条についてお答えがありましたけれども、民法の八十七条、そのほか戸籍法やその他いろいろ調べてみたんでございまするけれども、だれを相続人にするかについては、その法律によってやればいいので、それを税務署長が指定することができるというような書き方になっている。もしこれを補おうとすれば、税務署長がそれぞれの法律に基づいてやるということであるならばこれは話は別ですが、そういうことも書いてないで、いきなりこれが出てくる。こういうところに、政府、税務署中心的な考え方があるのでないか。同時に、また第二十三条の更正の請求の点についても、その点が表われてきておる。国民が納税の申告をし、その税額がきまっていくときに、更正の請求を行なう、そのときの規定が第二十三条の第二項において掲げられております。第二項には、「前項の規定による更正の請求……をしようとする者は、同項の申告に係る課税標準等又は税額等、更正後の課税標準等又は税額等、その更正の請求をする理由、当該請求をするに至った事情の詳細その他参考となるべき事項を記載した更正請求書を税務署長に提出しなければならない。」と掲げられておるわけであります。私はこれは一見あたりまえのように考えられると思うのであります。しかし、納税者である国民に対しては、きわめて、理由、事情、その他参考になるべき事項を記載した更正請求書を出さなければならないと規定している反面、第二十八条にはどう書いてあるか。第二十八条の「更正又は決定の手続」の中には、税務署のほうは、この更正通知書を送達するときには、ただその更正前の課税標準等及び税額等、あるいは金額、それだけをやればいいというように書いてありまして、国民のほうは、理由や事情やこまかい書類を出さなければいけないものを、税務署がやるときには、ただ税額等、あるいは金額を通知すればいいんだ。まあどうしてそういうふうになったかという挙証責任といいますか、証拠をあげるという、そういうことが何ら感じていないような法律案になっておる。これも税務署の言うことは間違いないのだ、お前らわからないから、事情や理由やその他のものを持ってこなければならぬ、こういうふうに、非常に官僚独善的な書き方になっておる。これはどういうことです。
  66. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 最初権利乱用の問題でございますが、税法は一々その規定におきまして、どういう場合にどうするという要件をすべて書いてございます。たとえば、納税義務に関する問題はもちろんでございますけれども、その他質問検査権につきましても、必要があるときはというふうに限定しております。必要がなければもちろんできないわけでございます。そういうふうにすべて要件を限定しておりますので、あえて権利乱用の規定を設けるまでもない、当然のことでございますので書いてないということでございまして、これは従来から同様でございます。  先ほど相続人の話がございました。何人が相続人であるということは、もちろん実体法できまるわけでございます。その場合の手続関係だけを書いてあるわけでございます。手続関係も、双方の便宜を考えまして、先ほど言ったような理由から設けられているところでございます。  なお、更正の請求の書き方と決定の書き方についてどうかというお話でございますが、更正の請求は、御案内のように、当初本人が申告されるものを直すということでございます。本来、この更正の請求と申しますのは、これは申告納税が軌道に乗りますればおそらく要らない規定だと思います。その申告期限をきめておりますから、そのときまでに正しい申告をしてもらえばいいということでございましょう。ただ、日本の場合は、まだ申告納税制度が完全に軌道に乗っていない、過渡期だと、こう考えまして、一ぺん申告したものを自発的に自分の申告は間違っているのだといって直す道を開いたと思うのであります。したがいまして、本人が申告したものをどこが間違っているかということがわかることは、政府が調査するまでの間はもっぱら納税者にしかわからないわけでございます。その場合、更正の請求をしたときに、さらにその更正の請求にかかる内容が争いになって、調査を要するとかということになりますと、お互いに非常に不便なわけでございます。本人が本来の申告と、収入が幾らで、何が幾ら、経費は幾らということはわかっておるわけであります。それで間違ったということでございますから、それならばどこが違ったのですか、収入ですか、支出ですか、収入の違った点ならそれはどの部分でございますかということを聞いておく必要がある。ここはていねいにやったほうがあとがうまくいくわけでございます。そのために書面上で話がつくものを、わざわざ現場に臨んで帳簿を引っくり返したりなんかする必要はないということでございます。一方、更正決定の場合の理由につきましては、青色につきましては、これは帳簿がございます。したがいまして、その帳簿に基づいて所得計算が間違っているということでございますから、したがって理由を書くわけでございますが、白色につきましては、必ずしも帳簿はないわけでございます。のみならず、あっても非常に不備で、青色申告ができない程度の記帳でございます。したがいまして、その帳簿に照らし合わせて、どこがどう間違っているかということを、一般的には言えない場合が多いわけでございます。そういう意味で、特にどこが間違っているかということを法制上強制しなかった、こういう事情でございます。
  67. 平林剛

    平林剛君 もう一つ、私はあなたの答えについて、一つ一つ議論があるけれども、大綱的にこの税法は決して国民のためばかりではないということを指摘しておるわけです。またあとで……。関連質問ですから、私は大綱的なことだけを指摘しておいて、あとで議論をしていきたいと考えております。   八十八条を見てごらんなさい。八十八条は、訴訟に関する規定の中で証拠申し出の順序が掲げられております。この八十八条によりますと、こう書いてある。「国税に関する法律に基づく処分に係る行政事件訴訟法第三条第一項(抗告訴訟)に規定する抗告訴訟においては、裁判所が相手方当事者となった国税庁長官、国税局長、税務署長、税関長その他の行政機関の長の主張を合理的と認めたときは、その訴えを提起した者がまず証拠の申出をし、その後に相手方当事者が証拠の申出をするものとする。」、私は、税法の中に訴訟手続規定が必要であるからとして政府は提案をしたのでありましょうけれども、本来裁判長の権限に属すべきことを国税通則法の中にきめるということは、越権だと思うのですよ。これがやはり国民のためのあれでなくて、税務署がいろいろな行政をやるのに都合のいいような考え方で立法化されておるという一つの例だと思うのであります。だれが、いろいろな訴訟があったときに、その訴えを提起した者がまず証拠の申し出をしろということは、裁判長が決すべきことなんですよ。裁判長が決定すべきことだと私は思います。それをこの国税通則法によっては、与党議員全般も、これを認めさしてしまって、そうして行政がやりいいような形の法律案に法的に認めさせようとする考え方が含まれておるものではないか。私は、八十八条も、先ほど指摘したように、税務署の権力的な行政を強化するための措置として、そういう性格が含まれておるものとみなさざるを得ないのですけれども、これについて大蔵大臣、御見解いかがですか。
  68. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 今お読みになったところをよく見ますと、「裁判所が……行政機関の長の主張を合理的と認めたときは、その訴えを提起した者がまず証拠の申出をし、その後に相手方当事者が証拠の申出をするものとする。」ということでございまして、この八十八条の問題はもちろん裁判所の判断にかかる問題でございます。したがいまして、これは別に羈束しているわけでもなんでもございません。これは現行所得税法五十二条、法人税法三十八条、相続税法四十八条、国税徴収法百七十条にいずれも同様の条文があるのでございます。これは当初シャウプ税制のときに、シャウプの主張は、およそ行政処分は一般的に有効であり適法と推定されるのだから、のみならず国税の納税者を相手にしてその財布の中に幾らあるかというような書類のものを一々できないのだから、まず挙証責任を納税者に持たせるのが筋である、こういう話で、その種の改正をすべきであるということでございまして、しかし、その問題は日本の訴訟の現実の問題に照らして考えてみますと、挙証責任の配分の問題でございます。これはなかなかそういかない事情がございます。現在でも、挙証責任はどうあるべきかという問題はいろいろ論議されるところでございます。したがいまして、挙証責任の問題としては、これは規定ができないということになります。証拠申し出の順序、しかもそれを裁判所の判断にかかる。もちろん、裁判所の問題であるというふうに裁判所が定めるときには、証拠申し出についてここに書いてあるような順序にすることはできるという規定にいたしたわけでございます。
  69. 平林剛

    平林剛君 何もそんなことを国税通則法の中に盛り込む必要はないのじゃないですか。それは裁判所の判断によるべきものですよ。そういうような法律が、私は今関連質問として幾つか指摘したにすぎませんけれども大蔵大臣、どうですか、あなたは、この国税通則法は複雑難解な現行の租税法体系を納税者が理解しやすいように各税法を通ずる基本的法律関係を明らかにしながらこれを簡素化し、納税者の利便をはかる立場から改善合理化した、こうお話しになりましたけれども、ただいま指摘をした各条項の例を見るように、必ずしもそうじゃないのですが、かえって先ほど私が指摘をいたしましたように、これは非民主的とまで言えるかどうかわかりませんけれども、少なくとも権力主義に立脚しようとする考え方が含まれているし、税務行政の独裁化というか税務署がやりやすいように、あるときは裁判所の権限を侵し、あるときは民法や相続税法規定しているその問題を横取りし、そしてそれを法律化してこの権力的なものをやりやすいようにさせようとする法律がこれではないだろうか。そうして一方においては、租税行政の乱用あるいは行き過ぎ、そういう現在の国民の相当多数が抱いておる危惧、心配、そういうものに対しては何ら保障を与えない。税務行政権の乱用防止についてはどうするという基本的なものをこの法律にまず掲げられるなら真の国民のための法律、こういうことが言えるかもしれませんけれども、それについては何ら触れていない。こういうことであれば、先ほど木村委員お答えになったような考え方と少し違いやしませんか。もう少しあなた、ひとつこの法律の趣旨というものを検討し直す必要がありゃしませんか。これは大蔵大臣、答えて下さい。
  70. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 各税法の中に重複規定されているもの、共通しておるものを抜き出して、通則法にあげたということで、これによって真に納税者の不利益になるような問題が提起されているという問題ではございませんので、今後税法をどう変えるかということが問題でございましても、通則法を作ることによって徴税がかなり強化される方向にいくとか、権力的にさらに強化されたのだというような問題は、今回の場合にはもう一切ないと私は思います。   〔委員長退席、理事上林忠次君着  席〕
  71. 須藤五郎

    須藤五郎君 今、権力の問題がちょっと出ていますが、私その点について質問したいのですが、僕は国税通則法に大きな権力的なにおいがぷんぷんとしていると思うのです。最も権力的な問題は第十六条にはっきり現われておると思う。そこで、「国税についての納付すべき税額の確定の方式」について少し質問したいと思うのです。  第十六条の規定による第一項第一号では、「申告納税方式」については、「納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則とし、その申告がない場合又はその申告に係る税額の計算が国税に関する法律規定に従っていなかった場合その他当該税額が税務署の調査したところと異なる場合に限り、税務署長の処分によって確定する方式をいう。」と、こういうように規定しておるわけです。ここに大きな私は権力的なにおいがすると思うのです。この申告納税方式の規定は、前段では「納税者のする申告により確定することを原則とし」と言いながら、後段で「税務署長の調査したところと異なる場合に限り、税務署長の処分により確定する」と、こう言っておるわけです。これは要するに、納税者の申告だけでは税額はきまらない、つまり納税者の申告と税務署長の調査が異なるときは、税務署長の調査したところによって税額が確定するということであります。したがって、納税者の申告はお上が最終的に税額を確定するための調査資料にすぎないことになる。このような課税方式を賦課課税方式というわけです。したがって、第十六条の第一項第一号の「申告納税方式」の内容は、賦課課税方式のことを述べておると私は思うのです。第十六条には、本来民主的納税制度であるべき申告納税方式の規定はないことになっております。また、同条同項同号は、「その申告に係る税額の計算が国税に関する法律規定に従っていなかった場合……税務署長の処分により確定する」とあるが、このようなことは税務署長の計算が常に正しいという前提があって初めて言えることだと思います。こんなことは絶対にあり得ないことだと考えるわけです。このように主権者たる納税者が多大の手間をかけて申告した課税標準並びに税額が、税務署の一方的な処分で自由に変更できるということは、封建時代における悪代官が民百姓の年貢米をきめたやり方と全く同じだと私は考えます。この規定の中に主権在民の現行憲法の精神に基づく租税法律主義という民主主義が一かけらでもあるかどうか。第十六条第一項第一号の規定について明確な答弁をまず求めたいと思います。
  72. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) この税額の確定、従来は、この税額は、納税義務が成立して、それからある確定がありまして、確定した税金について初めて納付の問題が起きるということが、これは解釈上はそう考えられておったわけでございますが、これを法律上明らかにしたわけでございます。それで、つまり確定の前には納付の問題は起きませんということを単に書いてあるわけでございます。それと同時に、具体的に確定するのはどういう手続によって、どの部分の税額が確定するのかということでございます。その税額が最終的に正しいかどうかという問題は全然別途の問題でございます。  そうであるといたしますと、申告納税方式と申しますのは、まず本人が申告して、その申告したものについては、申告にかかる税額については、その申告によって確定する。   〔理事上林忠治君退席、委員長着   席〕  それは期限内申告についてもそうであるし、期限後申告についてもそうであるし、あるいはそれを修正した場合の修正申告についてもそうである。それはすべて本人のところでいきます。ただ、もとより、その本人の申告した税額がそのままうのみにされない場合もございます。これが計算間違いがあれば、それを直す必要がございます。それから調査したところの所得並びに税額と違っておれば、これはあとで訂正する必要があるわけでございます。訂正すれば、その訂正した限度においてその具体的な納税義務が変わってきますということをうたっているにすぎないわけでございます。それで、変われば変わったところで今後の納付の問題が生ずるのだということでございます。  この章を見ますと、「納税義務の確定」と書いてございまして、ここは一般に申告納税方式と賦課課税方式の定義が書いてあるわけでございまして、各税法で本人が税額を申告すべきものという定めがありましたら、それは申告納税方式ということでございます。申告納税方式の確定は、さきに申しましたように、ここに書いてありますように、本人の申告した限りにおいては、その限度においては申告によって確定いたします。自後のものは、それは税務署の処分によってその部分について確定いたします。こう書いてありまして、その具体的な手続は申告に関しては十七条、十八条、十九条で書いてございます。それぞれ「期限内申告」、「期限後申告」、「修正申告」と、こう出ておりまして、それらの効力が二十条に出ているわけでございます。それは申告した限度において確定いたします。  それから、この十六条の税額が間違っている場合、処分によって確定するものにつきましては、その次から書いてありまして、第二款の「更正の請求」以下のところから始まるわけでございます。一ぺん申告しておっても更正の請求はできます。更正請求を受けて、その次が第三款で更正いたします。減額いたしますれば、その限度において減ります。逆に、政府が調べてどうも税務署への申告が間違っておると見れば、それは増額決定いたしますということが、以下ずっと書いてあるわけでございます。それで、最後に再更正もできますと書いて、最後に二十九条に更正効果が書いてありまして、更正いたしますと、その増額した部分だけが更正によって具体的な納税義務となります、こう言っているわけでございます。それで、それぞれ確定いたしてから初めて納付をして下さいと。納付の時期は、納付はいつから納付義務が生ずるかというところには必ず確定がなければならぬと、こうここで、その間を単に明確にしているにすぎぬわけでございます。  もとより、この税額が何できまるのだと、抽象的にですよ、正しい税金は何できまるのだといえば、法律の定むるところでございまして、税額を算出するまでの課税要件、それによってきまるわけでございます。その法律で定められた課税要件を、それぞれが、本人、納税者がそれを読んで申告される。税務署はどうもその課税要件と違っている、申告したところと違うということになりますと、あるいは減額しあるいは増額するわけです。減額も増額も両方あり得るわけでございます。しかし、その納付という問題に関する限り、これは具体的にきまらにゃいけませんから、それが間違っているとか間違っていないとかという問題じゃなくて、まず、きまったものについて納める義務がございます。もし間違っているというなら、その救済手続は別個に定めているということでございまして、これは別に、これによって納税者権利がどうされるとかこうされるという話ではございません。納付の前段階として税額が確定する必要がある。で、どの部分が確定するかということを書いているわけでございます。
  73. 須藤五郎

    須藤五郎君 全く詭弁にすぎないと思うのですよ。それじゃ、そういう精神なら、この後段ただし書きのあとは、僕は削除すべきだと思うのです。申告して——申告はとにかく、受け取ることは受け取るけれども、申告の内容は信用しないんだ、最後の決定は税務署長の判断においてやるんだということじゃ、申告というものの意味がなくなるじゃありませんか。いろいろの理屈をつけて詭弁を弄しても、ここが僕は今度のこの国税通則法の一番大きな問題だと思っているのです。いわゆるヒットラーが戦争準備資金をかせぐために、いやおうなしにドイツ国民から税金を取り立てたのと同じように、こういうことは僕は非常に非民主的だと思うのです。もし、あなたがそういうふうな精神なら、民主的な精神を持っておるなら、この条項は削除すべきだと私は思うのです。  次に、以上私が述べたように、第十六条第一項第一号における申告納税方式の規定が、戦後、民主化と称して膨大な納税者を能率的に捕捉するための賦課課税方式たる実態は、現行税務行政の実態及び以下述べる一連の手続規定を見れば、明らかになると思うのです。  まず、十九条の「修正申告」の規定と第二十三条の「更正の請求」に関する規定とに関連して申しますならば、要件事実を誤って当初の申告がなされた場合において、増額する場合には、修正申告で期限に制限なくいつでも受け付けて、この修正申告により税額が確定します。一方、当初申告が誤ってなされたことがわかり、これを減額したいときには、期限は一カ月以内にせねばならず、詳細にその事情と資料を添付しなければならない、こういうことになっています。しかも、これはあくまで申請であって、税務署長の調査の結果を待たなければ確定しないのであります。この第十九条「修正申告」及び第二十三条「更正の請求」を見れば、要するに、同じ間違いでも税金をふやすほうは無制限であり、減らすほうは徹底的に制限しておるわけです。このことは第二十四条から第二十七条に至る一連の更正決定の規定と、第七十六条の「異議申立て」規定との関連についても同じことが言えると思います。税務署長が更正決定をするのは、除斥期間内はいつでも何回でもできるんです。異議申し立てば一カ月以内ということになっているのです。これら一連の規定は、ただ少しでも税金がふえればよいという考え方から来ていると私は思います。申告内容変更ということは、更正処分もそのうちに含まれるが、納税者と税務官庁との関係は、民主主義のあり方からすれば上下関係ではなく、少なくとも対等関係でなければならぬと思うのです。大臣、よく聞いておいて下さい。——この立場に立つと、増額する場合は修正申告すればよいが、要件事実を誤って申告したことにより減額する場合には政府の許可が要るのだということはおかしいと思います。また、この立場に立てば、更正請求の期間はあまりにも短過ぎる。増額する場合は五年、減額の場合は一カ月では、権力的色彩があまりにも強過ぎると私は考えるのです。民主主義の常識からいって、あまりにも片手落ちだと思いますが、これに対する政府の答弁を求めます。大臣から答弁して下さい、政治的な答弁ですから。
  74. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 主税局長から……。
  75. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これは、本来からいいますと、申告納税はその期限が定めてございますので、そこで切ればいいわけです。で、二つのことを設けておりますのは、元来、納税者利益考えておるのでありまして、「更正の請求」、これはいつまでも期限が確定しないと工合が悪いですから、一カ月ということで、これは経過的な問題でございます。他方、修正申告のほうを期限を設けなかったということは、もっぱら納税者利益のためでございまして、あとのほうを見ますとおわかりになりますように、加算税については過少申告加算税は、五%あとで増額するとかかるわけです。ほうっておきますと、それは更正決定になるわけでございまして、そうしますと不足税額について五%かかるわけです。ただ、修正申告をなさる場合には、初めから善意で、おれは間違っておったと、こうされた場合には、それは今の加算税の免除の規定を設けております。したがって、これは長ければ長いほど納税者利益だ、こういうことを言っております。
  76. 須藤五郎

    須藤五郎君 全くごまかしですよ、それは。ほんとうに人民の利益を守るという立場に立つならば、もっと別な考え方がなくちゃならぬと思うのです。あなたたちの考え方は、国民のふところから金を取ることだけしか考えていないのです。だから、自分たちの都合のいい非民主的なことしか考えていない。それが今度の税法にはっきりと現われてきている。  そこで、次にもう一点質問しますが、第二十八条「更生又は決定の手続」、第八十四条異議申し立てと更生決定の効力、第八十七条訴願前置主義の規定の関連について質問したいと思うのです。第二十八条においては、更生決定をするに理由付記の強制規定があります。また第八十四条では、異議申し立てしても、更正決定による税額については何ら効力を及ぼさず、滞納処分差しつかえなしとしているのです。このような一連の規定で保障されているからこそ、せっかく手間をかけた納税者の申告を無視して、税務署がほしいままに更生決定を大量に行なうのであります。また、要件事実についても、納税者と税務署の見解の差異について、税務署の一方的な見解によって不当なる更生決定がどしどしと行なわれているのであります。これら規定こそが、国税庁、長官の解釈にすぎない通達による一方的、恣意的税務行政が思うがままに行なわれている原因であり、また第八十七条において、税務関係だけが行政不服審査法の制定にもかかわらず訴願前極主義をとらざるを得ない根本原因となっているのであります。以上のごとく憲法の精神に合わせて納税者の申告が尊重されるとすれば、第十六条第一項第一号は納税者の申告により税額が確定することを原則とする、だからこそ税務署長の一方的な処分のみでは税額がきまらないとすべきであると考えます。税務署の申告を変更するには納税者の合意が必要であることが、申告納税制度の本来の姿であります。政府は常々民主主義云々を口にしているが、そうならば、せめてアメリカで行なわれている申告納税制度のやり方ぐらいはまねていいのではないかと私は考えるのです。  「国税通則法の制定に関する答申及びその説明」三十一ページには次のように書かれているのです。私は参考までに簡単に読んでみたいと思うのです。これはアメリカの申告制度です。「1 租税の賦課は、原則として、申告書提出期限又は申告書が提出された時後三年以内にしなければならない。」、「ここにいう賦課とは、税額を賦課台帳に登載することを意味し、原則として、これなくしては徴収を行なうことができない。納税者の申告が適正であれば、その税額が直ちに賦課台帳に登載されるが、申告税額が納税者の真実の所得を反映していないと認められたときは、その不足額について通知が行なわれ、この通知に係る税額について納税者が合意を与え、権利放棄書に署名したときに、はじめてその税額が賦課台帳に登載される。納税者が上記の通知に係る税額に不服を唱えたときは、納付不足額告知書が納税者あてに発付される。この書面の発付後納税者が争訟を提起しないで九十日が経過するか、又は争訟の提起があってその判決により税額が最終的に確定するまでは、同じく賦課台帳への登載が行なわれない仕組みである」、こういうふうになっております。また、四十六ページにはこうなっているのです。「これらの連邦税については、課税標準及び税額の申告がされ、その申告により納税義務が確定する。ただし、正当な申告が期限内にされない場合の処理は、次のようである。(イ) 所定の申告書を提出しないが申告書作成に必要な一切の資料を開示することに同意した者については、税務官庁において申告書を作成し、それに本人の署名を求めて正規の申告書として受理することができる。」もう一点、「(ロ) 申告書に記載された税額が課されるべき税額に不足すると認められるときにおいて、納税者との間に和解が成立しないときは、最終的に不足額通知書が納税者に送付される。この不足税額通知書は、九十日レターとも呼ばれ、税額に不足があること、その不足税額を納税者が支払うべきこと及び更正の理由が附記される。」、こういうふうになっております。これと比べると、今度の国税通則法というものがいかに非民主的であるか、アメリカの民主主義にさえも及ばない、こういうことになると思いますが、見解を大臣からはっきりと伺いたいと思います。
  77. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 理由の付記につきましては……。
  78. 須藤五郎

    須藤五郎君 大臣は黙っているのですか。
  79. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 現行の青色申告制度についてはすべて理由を付記することになっております。ただこれは通則でございますので、通則には入れなかったというだけでございます。  異議申し立てと執行との関係、これは原則的には執行に影響を及ぼさないということは、行政不服審査法でも書いてあるとおりでございます。ただ、この税務に関しましては特例を置きまして、この間差し押えまでは行けるけれども公売処分はできないということに、今度全部を通じていたしまして、納税者権利擁護に努めたのでございます。のみならず、差し押えそのものも担保の提供があればすることができない、これも新しい規定でございます。  それから、先ほどの訴願前置主義は税務だけだとおっしゃいましたが、そうではございません。非常に大量的、反復的に処分の行なわれます四十何法というものは、すべて訴願前置主義を置いてございます。もちろん、裁判と訴願との関係につきましては、それぞれ裁判上の利益が失われることがないように、また非常に決定がおくれた場合には本人がどんどん行けるようになっております。再調査の請求をしても六カ月まごまごしておれば、本人が行こうと思えばいつでも訴訟に行ける。審査請求段階で三カ月ほうっておけば、本人の提起によりまして訴訟に行ける、こういう道が開いてございます。それから、緊急の場合でどうしても直ちに裁判を求めなければならぬという場合には、もちろんその道が開かれておるのでございまして、訴願前置主義というのは納税者と政府の相互の手続上の便宜をはかっているということは、それからもおわかりになると思います。  それから、今の争いのある場合の解決の仕方について、アメリカと日本の違う点は、きのう高橋委員からの御指摘がございまして私から説明申し上げたとおりでございます。これは本質的には少しも変わっておりません。もとより、政府が調査して申告が間違っておると見れば、それを是正するわけでございます。ただ、是正するまでの間、日本の場合でございますと、一々更正処分という形でいきますが、その前に十分両者からの話を聞きまして、ほんとうに訴訟に行く、争いに持っていくというときに、今の不足額を通知していくというやり方でございます。で、アメリカの場合は、きのうも申し上げましたように、あるいはタックス・コートにも行ける、あるいは民事裁判所にも行ける。タックス・コートの場合はやはり執行停止になります。民事裁判所に行くときは、税金を一応納めて、不当利得の返還請求、こういう形の訴訟が行なわれる。しかし、その内容におきましては、政府の調査と違った場合には政府が決定するという、この方針にはちっとも変わりございませんです。
  80. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これまで私の質問から関連して、母体的にこの国税通則法が徴税権を強化する、いわゆる権力的規定を強化する、あるいはまた徴税強化の精神から出ているんではないかということを、具体的に各条文についていろいろ質問してきたわけなんです。それで、先ほど主税局長が権力の乱用は当然慎しまなければならぬということを言われたんですね。ここのところが非常に問題なわけですね。当然懐しまなければならないと簡単に言われていますが、現状はこれは乱用されておるんですよ。いわゆる通達行政を通じて末端の税務職員によって非常な苛酷の徴税が行なわれておるんです。そういうことが今度の通則法によって合理化され、さらにそういうものが何というんですか、法的にその基礎づけを持つに至るんではないかということが、中小業者とかその他一般の反対する一つの有力な理由なんですよ。  で、具体的例として、これはたくさん例があるんですけれども、昨年の十一月千葉県の商店街で、税務職員が納税者のがまぐちまであけて見たという例があるといわれております。あるいは中野税務署、世田谷税務署で白色申告者に記帳を強制したという例もある。こういう例は枚挙にいとまがありません。それは中小業者に聞いていただけばですね。ですから、非常に乱用されておるんですね。そこで、どうせ税法というのは権力規定なんですから、政府が権力に基づいて税金を取る規定なんですから権力規定ですが、しかし、租税法律主義というのは、それが乱用され行き過ぎて、納税者が憲法で保障されておるような権利を侵すことはならないということが租税法律主義ですね。ですから、取るほうの側の規定であると同時に、それは限界があるんであって、納税者を保護するという立場がこれになければならぬはずなんです。  そこで、この第一条で、そういう納税者の保護という規定がなされていない。これは読みようによれば、今の行き過ぎを、権力乱用を合理化するように読めるんです。これはたとえば「税務行政の公正な運営を図り、もって国民の納税義務の適正かつ円滑な履行に資することを目的とする。」といいますが、何が公正であるか、公正の名によってがまぐちまであける、こういうあれもあり得るんですよ。今の通達行政をもとにしてやっている税務行政ではあるんです。「納税義務の適正かつ円滑」、何が適正で円滑か。今の通達行政の実態は、その適正の基準が納税者権利を侵すような形において行なわれておるのが実態ですよ。ですから、この第一条に、租税法律主義を貫けば、ここに何らか国民権利を保障する規定がなければならない、それがないんですよ。ですから、これは徴税者の立場に立って、いかにして税金を何とかかんとかいって取りやすいようにしようかという規定なんです。根本の精神がそうなんです。徴税の行き過ぎから納税者を保護しようという規定がどこにもないんです。今まで救済規定がいろいろあると言いましたけれども、根本の精神が問題だと思うんです。  で、もともと税金が高いからこういうことになるのであって、税金がうんと安ければ、極端にいえば税金取らなければ、こんな法律は要らないわけですし、それから税金が楽なら、そんなに徴税強化しなくてもいいと思うのですね、楽ならば。そもそも税金が重いところに問題があるのですよね。だから、私は、本末転倒している。まず、こういう法律を作るよりも、もっと税金を、この前にもっと税金を安くすべきだと思う。そうすればね、納税者は、節税だ、あるいはいろいろなこの法を考えて税金をのがれようとしなくても済むと思うのですね。税金が高いから、節税だ、その他いろいろ合法的に脱税——それを今度はつかまえよう、何とかしてつかまえよう。それで「公正な運営」あるいは「納税義務の適正かつ円滑な履行」という形においてつかまえようと、こういうことから来ていると思うのです。だから、私は考えると、本末転倒している。まず、税制調査会答申した前に、大蔵大臣に論争しましたがね、大体二〇%ぐらいにさしあたりすることが、税負担率を。これが急務である。こんなものは緊急じゃありませんよ、ちっとも緊急じゃないのですよね。その点、いかがですか、大蔵大臣
  81. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 税を安くしようとするなら、各税制の本法でできることになっておりまして、毎年これはやっておることでございますので、通則法とその問題とは直接結びついている問題じゃないと思います。
  82. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはおかしいですね。もっと大蔵大臣は、大臣ですからね、もう総合的に高い視野に立ってやっぱり判断すると。そんな事務官僚的なね、御答弁じゃ、私は満足できないのですね。  それはね、重要ないろいろなこういう税法は、たとえば、そうじゃないとおっしゃっていますけれども、たとえばナチスの法律を適用したといえば、そこにですよ、政治との関係がやっぱり関連があるのですよ。今、日本はそうであるかどうか知りません。今後しかしね、そういうほかの、憲法で保障された権利に対して税法が優先しようとしている精神があるのですよ。どうしてもこれはあるのですよ。先ほどの具体的な質問から通じてわかるわけですね。税法絶対主義、こういう精神がここにあるのですよ。これはもう否定することはできないのですよ。これは権力的な規定であり、徴税強化の規定であると、こういう判断なんですよ。ですから、これは、今の日本の政治、外交、経済、いろいろな諸般の情勢と無関係では決してないですよ。ですから、私は大蔵大臣に、やはり具体的には税金が絶対的に重いのだと、だから徴税を適正にし、そして取りよいようにしなければならぬという努力が、それが国税通則法という形で出てきていることの前にね、もっと税金を徹底的に安くしろ。これと無関係じゃございませんよ。そういう点で私は伺っているのですよ。事務当局的な御答弁ではなく、大臣としての御答弁を求めているわけなんです。
  83. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ですから、所得税を安くしようというなら、所得税法の改正によってこれはやればよろしいのですが、いずれにしましても、徴税の適正化と申しますか、納税者利益になるような徴税の手続規定、争いが起こった場合にはどうするかというようなそういうものを中心として構成されているのがこの通則法でございますので、今税金を安くすべきというようなものとは私は直接関係がないのだと、そういうものは各税法の本法においての改正によってやられることでございますので、この通則法とは直接その問題は私は関係ないと申したわけでございますが、それはそうだと思います。
  84. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 遺憾ながら、大蔵大臣はたいへん見解を異にするのですがね。大蔵大臣はそういう御認識なんですかね。だって、実際問題として考えた場合ね、納税者は、それは税負担が重いから、いろいろな許される範囲において税金が軽くなることに努力する。これは皆さんも、官民党の方だってみんな共通だと思うのですよ。それが節税という形とか、それから——節税とか、いや節税までも、判断によってそれは範囲を逸脱しているという認定の問題になってくるわけですね、そういうことはね。ですからね、そういうふうでだんだん税金取れなくなって困ると。国民権利意識とかそれから税制に関する知識もだんだん向上してきておりますよね。そういうことからだんだん税法を活用して、そうして政府には、税制に対しあるいは税務行政に対して非常な批判なり反対が大きくなってきているわけですよ。そういうものに、そういう事態に対処して、何とか税金を取りよいようにしたいというねらいがこの根本の精神だと思うのですよ。ですから、そのもとは税金が重いというところから来ているのですよ。根本はね。ですから、無関係じゃないと思う。もちろん、手続規定所得税法なりあるいは各税法の改正によって行なうのですけれども、これは関係ないとは思わない。これは大蔵大臣は直接は関係ないと言われていますが、それは言葉のあやですが、それはまあしかし間接であっても重大な関係があると私は思うのです。——(「静かにしてもらいたい」と呼ぶ者あり)御異論があったら質問してやっていただきたいですね。  その点、大蔵大臣ね、やはり間接ではあっても重大な関係あるのじゃないですか。ですから、私の言いたいことは、減税をもっと積極的にやるべきだ。税金はとにかく重過ぎるのですよ。だから、これを思い切って低くすれば、今のように納税人員が減った減ったと言いますが、千二百万人ぐらいでしょう。そうすれば、税務官吏だって非常な労働強化ですしね。もっと思い切って減税すれば、仕事もぐっと楽になるですよ。そういう点からまた非常な、第一線の税務官吏と納税者との間にいろいろなフリクションが出てくるのですね。そこで、税金を何とかのがれようというのを、何とか、国税通則法を作って何とかしよう、こういう形になってくるのが実態ではないかと思うのです。だから、今後もやっぱり思い切って減税することが税務官僚の権利の乱用とかなんとかを防ぐ根本の対策ではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  85. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 減税は必要であると思います。したがって、減税をする場合には、税法の改正によって減税ができる。ただ、この通則法との関連におきましては、もし徴税が不適正であったために、不適正であるということでしたら、それによって取られなくても済む税金が取られるという問題は起こると思います。したがって、その意味におきまして、それを適正にするための共通的な手続というものをこの通則法できめるということでございまして、これはできるだけ適正に徴税が行なわれるようにやるべきでございますが、そういう意味においては、これは間接にこの通則法と税負担の問題は結びついておりますが、そうでなくて、木村さんのおっしゃられるように、根本的に今の税が高いのだ、これをもっと減税すべきだということでしたら、この通則法の問題じゃなくて、各税法の問題だろうと、こう言っているわけでございます。
  86. 永末英一

    永末英一君 私はこの機会に二点だけ、ひとつ大臣がおられる機会に聞いておきたいと思います。一点は、今問題になっているところでございますが、通則法の基本的性格について大蔵大臣がどう認識しておられるかという点です。内容を申し上げますと、第一条で、この法律は国税についての基本的な事項が書いてある、こういうお話ですが、ところが、この通則法を通読いたしますと、われわれが考える基本的な事項ではない。むしろ、そのあとに書いてある、従来までの各税法の共通的な事項とか、あるいはまたそれに重点を置いた各税法の共通的な部面を抽出をして、体系的に並べてみたというようなことが書いてありますけれども国民の側に立って、納税者の側に立って基本的な事項といえば、憲法の三十条には「納税の義務を負ふ。」ということが書いてある。昔なら、一体、税金なりあるいはその他の公租を取られるほうが、何に使うかわからないで、のがれるということだけを昔の時代は考えておったのが、納税者なり一般の人民の立場であったと思うのです。このごろでは、とにもかくにも民主主義国家になったというので、国民はみな、税金は払うべきものは払おうと思っておる。しかしながら、憲法で「納税の義務」とは書いてあるけれども、この義務を遂行する上において、一体われわれが財産を持ち、そうしてその財産に国家権力で手を差し延べて、その財産から一部をひったくろうと国家がする限りにおいては、どうやってわれわれの正当な勤労の成果であるところの所得を守っていくか、これは国民の共通の関心事です。したがって、国税通則法という名前で法律ができる場合には、この納税の義務の内容についてやはりはっきりさせてもらわなければならぬ。国民ひとしくそう思っておると思います。ところが、この国税通則法は、先ほどから問題になっておるとおり、国民の財産権に対する保障であるとか、あるいはまた国税の徴収手続の上において現われてくるいろいろな形式の問題や、こういうような問題について、国民利益をどのように国家としてはやはり担保する非常に十分な配慮をするか、こういうことは一つもうたわれておらぬ。そうなりますと、一体この国税通則法の一番最初に書いてある「国税についての基本的な事項」というものについてどういうことを一体この法案はうたおうとしておるかということについて、国民としてははなはだ納得できない感覚を持っているのです。まずその点について、大蔵大臣に伺いたい。
  87. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 基本的な問題はたくさんございますが、さっき申しましたように、基本的問題で今回通則法に入っていない問題もたくさんございますが、この法案の中におきましては、今おっしゃられたような意味の基本的問題と申しますと、特に租税備権の成立確定に関する事項、これをはっきりさせたこと、賦課徴収に関する期間制限として除斥期間とか時効の制度を明らかにするということ、修正申告、それから更正決定の相互間の法律関係を明確にするというようなこともこの中でやっておりますので、基本的事項というものはたくさんございますが、今言ったようなものも基本的事項の一つでございまして、それは今回の法案の中ではっきりさせておるということでございます。
  88. 永末英一

    永末英一君 私が申し上げたいのは、国税についての基本的事項というのは、国家が国民から税を徴収するにあたってどのように国民利益を担保する姿勢を持っておるかということを書きあげるのなら、これはその国税についての基本的事項がこの法律に掲げてあるとわれわれは思う。ところが、それは一つもない。今大臣が言われましたのを言葉をかえていえば、国税を徴収する手続についての基本的事項だと思うのです。それであるならば、この法律は具体的にいえば国税徴収手続通則法みたいなものであって、国税通則法なんという名前を冠するのははなはだ不適当だと私どもは思うわけです。それにもかかわらず、大臣のほうはそういうものをはずしておいて、われわれが言うているような規定をはずしておいて、国税通則法というようなことでこれが十分だとお考えになるかどうか、もう一度伺っておきます。
  89. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 理想的な基本法というようなものはなかなか簡単に作れるものじゃございませんので、むずかしいために、私は今度のような、さっき話しましたような方針の通則法を作ったわけでございますが、これは各税法の中にある共通的ないろいろの部分を抜き出して、それを中心に構成されているというところから見ますというと、ちょうど名前が、通則法という名前に今度はぴったりする程度の法案じゃないかと思っておりますので、今この内容通則法という名前をつけるのにちょうど値するような法案になっておるのでございまして、ほんとうなら、もう少し理想的な、基本的なものにしたいという考えを持っておりますが、そこまで行きませんので、この通則法的なものにしたということでございます。
  90. 永末英一

    永末英一君 国民利益を保障するために、もしこの通則法に盛るべきことがあるとすれば、たとえばたくさんございますが、税務当局が行なう質問や検査というようなものについて、もし末端でそれぞれの行き過ぎがある場合に、国民としてはその行き過ぎを法律に照らしてやはり是正を求めなくちゃならない。ところが、この一番重要な税務行政の日常起こる問題は、通則法は触れずに全部各税法にまかしてある、こういうことなんです。これはもっとあとで詳しく尋ねます。  そういうような国民利益をどうやって守るかということがこの税法に一番欠けている大きな点だとわれわれ思うのでありますが、あとでまた大蔵大臣出席されるでありましょうから、詳しくひとつ、項目々々にわたって質問することとして、法制局次長にひとつお伺いしたいのでありますが、この法律は「四月一日から施行する」、こういうことになっている。きょうは四月二日でございます。そこで、本日以後この法律がもし成立をいたしましたときに、「四月一日から施行する」と書いてあるこの法律のその成立の日までの間における有効性については、どうお考えになるか。
  91. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げます。お尋ねの問題は、法理の問題としては確かにごもっともな御質問だと思います。しかし、私ども実は、ただいま御指摘のような例の場合といたしまして、何回かそういう場面に当面をいたしております。まあ結局、そういう場合の解釈は一体いかになるかということを御説明申し上げればいいかと存じます。  今までの例でございましても、きょうは四月二日でございますが、公布の前、七日前、あるいは十日前、あるいはそれ以上のような期日に施行期日が定められておったような例もございますが、そういう場合には私ども一応それは公布の日から施行し、その一定の期日から適用するというふうに、やっぱり法律解釈としてはそうだろう。ただし、御承知のとおりに、憲法等によりますと、三十九条でございましたか、遡及処罰の禁止というような規定もございますので、そういうような観点から見まして、まあ罰則の遡及なんというものはむろん考えられない。しかしながら、今度の通則法等が大体において国民——ただいまいろいろ議論がございましたが、手続上の問題としてはいろいろ利益になる面もございますし、そういう面に関しましては、もちろん問題なしに四月一日から適用するということが言えると思います。今までの一応の解釈もそういう解釈でやってきております。したがって、もう一ぺんかいつまんで申しますれば、罰則の遡及とかそういうような問題はむろんできませんけれども、そうでない部分におきましては、それを適用してやるというふうに措置をいたし、またそういうふうな考えであります。
  92. 永末英一

    永末英一君 これが公布される日と、それから四月一日との間に、今までの政府当局の御説明によると、これは手続法規である。したがってこの法規以外の手続でその期間においては手続がされておるわけですね。その手続は、法制局の観点から見た場合に、無効と思われますか、どうですか。
  93. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 何といいますか、原則論といたしまして、この法律が適用される前における従前の法律による手続というものは、むろんそれはそのとおりでございまして、その問題につきまして本法律上どういう取り扱いになりますかというと、この通則法案の附則の第二条に規定がございまして、それは、「この法律の相当の規定によってした相当の処分又は手続とみなす。」というような配慮が加えてございますから、それに乗っかって参ることになります。
  94. 永末英一

    永末英一君 これの附則の第二条によって、公布前に通則法にかかわらないほかの租税法規でなされた手続があっても、それは無効ではなくて、これにひっかかって有効であると、このような法制局としては御見解をお持ちであると解釈してよろしいか。
  95. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) これは第二条に書いてあるとおりでございますが、この法律の施行前に、ここに書いてありますような法律またはこれに基づいてなされるような命令の規定によってした手続でこの法律に相当規定があるものは、別に定めがあれば別でございますが、この法律規定によってした処分等とみなすことに相なるわけでございます。乗っかって参らなければ、何といいますか、相当規定がないものについては、二条では言っておりません。相当規定があるものにつきましては、ただいま申し上げたようなことに相なるわけでございます。
  96. 永末英一

    永末英一君 それでは、相当規定のないものについて、もしその当該期間内に手続が行なわれたということになれば、これは根拠法規がないわけでありますから、その行政行為というものは無効ですか。
  97. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お尋ねの中にありますところの、相当規定がないものにつきましては、二条はこの文言からいきまして働かないわけでございます。しかし、このほかにこの附則の規定にはいろいろな経過措置が書いてございますから、私、一々つぶさに検討したわけではありませんけれども、ただいまお尋ねがありましたその点の具体的な中身をただいま直ちにずっと全部出てくるわけではございませんけれども、相当規定ということで乗っかってくるのが本則的なものであり、その他のものについてはそれぞれの附則の規定におけるそれぞれの経過措置によって始末されるということに相なると思います。
  98. 永末英一

    永末英一君 もう一度、相当規定がない場合、この法律が施行された日に、この法律としては「四月一日から施行する」、こう書いてありますから、さかのぼって相当規定のない事項について法律行為をやるということによってそれは合法性を取得いたしますか。
  99. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ただいま申し上げましたように、この法律が公布の前の一定の期日を施行期日といたしておりますが、その施行期日につきましては、先ほども触れましたが、公布の日から施行し、それでいえば四月一日から適用するということに相なると思います。そこで、そういうさかのぼって適用する関係でございますから、もうむやみやたらに何でもよろしいといとわけにはむろんならぬと思います。たとえば、極端な場合でございますが、罰則の規定なんというものは、これはさかのぼって適用させることは憲法上の問題にも相なりますし、それはまあまずだめである。しかし、そうでないもの、まあ極端なことをいえば国民利益になるようなもの、そういうようなものについてはむろん問題がございません。それに、今の原則は必ずしも、刑罰については憲法上の規定がございますが、たとえば民法、まあ私、ただいますぐ出てくる例といたしましては、新民法と旧民法の関係では、新民法は、その法律の施行前にした一定の事実についても適用があるということが法律に書いてある例もございます。まあ、本法につきましては特にそういうことは断わってございませんが、一般の原則に従いまして、遡及できないもの、たとえば憲法の規定に照らして問題になるもの、これは罰則でございますが、そういうものでないものは四月一日から適用することも別に憲法上どうという問題は免じない。まあ「四月一日から施行する」という本法が、この案のとおりに成立いたしました場合には、やはりそのような解釈というものはできるであろう、こう考えております。
  100. 永末英一

    永末英一君 もう二点ひとつ伺いますから。そうしますと、国民に不利益を及ぼすようなことが、さかのぼって効力を持たせるために起こるということであれば、憲法上の問題を生ずるおそれがある。だといたしますと、この法律が将来、四月二日以後ですね、いよいよここで成立をし、それから公布されるという場合に、この法律には何らそのことについてうたわないでよろしいかどうか、これが一点。もう一つは、今の期間において国民が行為をしない。不行為です。これは手続法規ですからね、行為をしないから、ほかの法律に照らして罰則をつけ加えて、罰則ではなくて、何やかや言うてくるということがあるわけです。そのことについては国民は責任がないということがはっきり言えますか。この二点について、ひとつ。
  101. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) まず最初の問題でございますが、私は罰則の点について、憲法第三十九条の刑罰の不遡及の問題について先ほど申し上げたわけで、およそ不利益なものというものにつきましては、これは立法政策上の問題になる部面が多分にあると思います。したがって、この法律のどの規定がどうというようなことについては、ここで具体的に申し上げることもないと思いますが、一般論といたしまして、国民に著しく不利益になるというような問題がもしありとすれば、それは一応問題になると思います。そういうものにつきましては、この法律上の中身というものは、それにたとえば罰則の、遡及を禁止するようなものに該当するものが私は必ずしもあるとは思いませんけれども、そういう一般論が一般的には言えると思います。  第二の問題といたしまして、この法律の施行前に不行為であったもの、それは一体どうなるかということになれば、もしその不行為が、何かこれも典型的な場合としましては、刑罰なんかがもしありますとすれば、それが不行為に対して反社会性があるというわけで処罰をするというようなことが考えられるかという問題になりますが、それは、まさに憲法が否定しているところでございまして、そういうことによってもし罰則がかかるというような、この法律はそこまでいっていないと思いますが、そういうことがありますれば、その不行為が法律的評価として本人の不利に帰するというようなことはあり得ないことだと考えております。
  102. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 ちょっと、簡単明瞭に答えてもらいたいと思う。私は結論だけでいいと思う。時間をとりたくない。この法律は四月一日施行です。かりにきょう通る、あるいはあしたになるかもしれない。その場合に、四月一日の施行期日を修正しなくてもいいのかどうかという問題なんですよ。修正しなくてもいいか、あるいは修正する必要があるのか、それをはっきり言ってもらいたい。
  103. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ただいま申し上げましたことでおわかりいただけたと思うのでございますけれども、要するに、この法律規定が、法律案として出ておりますこの表現が、かりに国会で成立をしました場合には、やはり先ほど申し上げたような解釈というものがそこにりっぱに成り立って、解釈として一定の筋道を立ててこれを適用していくという余地があるということを申し上げたわけでございます。
  104. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 あいまいな言葉を使わないで、きょう、あるいは三日——明日ですね、この法律を可決しても、施行日四月一日は修正しなくてもよろしいということになりますか。それはわれわれの見解と非常に違うのです。違うところは追及しませんが、法制局の見解では、たとえば二日に参議院で可決成立する、あるいは三日に可決成立しても、修正しなくてもよろしいかどうか、その点だけ。
  105. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) その点は、ただいま私が申し上げたような解釈、それが是認できるということでもしありますれば、つまり今申し上げることが極端にどうこうということであれば話は別でございますが、そういう解釈のもとに律することができる、たとえば国民に対する刑罰法規なんかの例において見られるような、遡及しない、そういうものは遡及できないというようなことで益しつかえないということでありまするなら、実はこのとおりの案が御決定になってもしかるべきじゃないかと、私見としては申し上げられると思います。
  106. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この問題は、政党政派の政策の問題じゃないのです。不体裁にならないように修正する必要があるなら、修正します。しかし、必要がなければ修正しないで済みます。しかし、私の聞いている大蔵省見解とあなたと非常に違います。だから、迷うわけですよ。だから、この後休憩しますから、これは言いのがれとかそういうのじゃなしに、参議院が誤って事を決するということは、これは与野党にかかわらず問題ですからね。よく研究して、一時間でも二時間でもいいです、研究して、大蔵省とも打ち合わして、ぴしゃっとした見解を出して下さい。そうしなければ、あなたの言ってることと私の見解とだいぶ違うんです。疑念を残しちゃいけないという意味質問しているんですから。
  107. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ただいま仰せになります点は私にもよくわかります。したがって、最初に申し上げたとおり、この問題は法理の問題としては一つの問題であると思います。思いますが、最初に例を引き出しましたように、私、少なくも三つの例を存じております。まだほかにもあると思いますが、今すぐ出てくる例としては、第五回国会の貿易特別会計法とか、あるいは二十八年でございましたか、戦傷病者戦没者等遺族援護法、それからまた三十年ごろでございましたが、これは厚生省設置法の一部改正、そういうようなものはいずれも公布前の日が施行期日になっておった例でございます。そのような場合につきまして、むろん法律は中身は違いますからこれと一様には申せないかもしれませんが、それらの例につきましては、やはり今申し上げたような解釈で事が運び、またりっぱに法律として成立し、法律として適用されております。そういう観点から、問題ではあるけれども、確かに一つの解釈のもとにそれはいけるのであるということをまあ申し上げたいと思っております。
  108. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今あげられた例とこれとは中身が違うのですよ。だから、その前例が前例とならない点を私どもは心配しているわけです。この通則法は日々に起こってくる、きょうも起こっている問題を処理しなければならぬ問題があるわけです。日々起こっている問題を、そのどれによって処理するか。きょう通ればあるいは処理し得る、あした通れば処理し得ない、そういう微妙な内容を私は持っていると思います。ですから、もう少し研究して下さい。
  109. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 一時四十分まで休憩いたします。    午後一時三分休憩      —————・—————    午後二時十三分開会
  110. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ただいまから委員会を再開いたします。  委員会休憩中に理事会を開きまして、木村委員より国会法第五十一条第二項に基づいて公聴会を開催すべきであるという要求、及び須藤委員よりただいま議題となっておる法案重要法案であるから公聴会を開かれたいとの要望について協議いたしました。理事会では協議がまとまりませんでした。  右、御報告いたします。     —————————————
  111. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 休憩前に引き続き、法案質疑を続行いたします。
  112. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 初めに、午前中に問題になっておりました附則第一条「この法律は、昭和三十七年四月一日から施行する。ただし、第八章……の規定は、昭和三十七年十月一日から施行する。」、この前段のほうの「昭和三十七年四月一日から施行する。」となっておりますが、四月一日はすでに昨日経過したわけです。本日は四月二日になっておるわけですから、かりに本日この法案が参議院で議決されると考える場合に、この附則第一条を無修正のまま議決しても差しつかえないものかどうか。言いかえれば、無修正で議決しても四月一日に遡及して効力を生ずるものかどうか、この点について法律見解をただしておきたいと思うんです。それで、午前中もお尋ねをいたしましたが、念のために参議院法制局の見解をこの際明確にしてもらいたいと思います。
  113. 斎藤朔郎

    法制局長(斎藤朔郎君) ただいまの御質問お答えを申し上げます。この問題は二つあるかと思いますが、一つは、この法案を無修正で上げていいかどうかということ、それから、それを上げた場合に法律の適用問題がどうなるかということ、この二点にあろうと思います。  まず、第一点についての法制局としての立場から考えました考え方を申し上げますと、国税通則法と各個別の税法との関係は、これはいわば同時に存在すべき関係、同時存在または並列しておるべき関係にあると思うのでございます。それが何らかの理由によって同時存在ができずに、前後の関係ができて参りました場合においては、法制的に考えますれば、本来同時に存在すべきものが何らかの理由で前後になった場合においては、その間隙をできるだけ狭めるということが法制的には私は望ましいと考えるのでございます。しからば、この際この附則の「四月一日から施行する」という条文に修正を加えて他院に回付するか、あるいは修正を加えずに本院で議決をして、そのまま法律として成立するか、どちらが通則法と個別法とのギャップが狭まるかという観点に立って考えますれば、私の事務的な判断といたしましては、修正を加えずにこのまま議決するのが法制的には望ましいし、差しつかえのないことではないかというように考える次第でございます。
  114. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 わかりました。ただいまの法制局長答弁は私は疑義があります。疑義がありますけれども、これは後に譲りたいと考えます。  それで、午前中の質疑に続いて私は若干の質問を政府にしておきたいと思います。その問題は、きのう、衆議院で修正議決された人格なき社団の問題については、修正者である衆議院側から来てもらって、質問をして、修正の内容については私も大体了解しました。しかし、それでは問題がその答弁だけで解決したかというと、決して解決していないと思います。現に、この人格なき社団をめぐって法廷で争われておる問題があるわけなんですね。未解決に残られている問題がある。きのうの答弁では、十三条を修正することによって原状に復帰した、こういう御説明でございました。その点は理解するわけです。しかし、原状に復帰してもなお問題が残っておるというので、きょうこの点で質問をしたいと思います。  それはどういうことかというと、人格なき社団の代表者または管理人は納税義務があるのかないのかという問題ですね、この問題についてお尋ねをしたいと思うのです。日本がとっている租税の原則は、租税法律主義をとっておるわけです。したがって、どういうものが納税者であるかということは法律規定しているわけなんですね。たとえば法律の施行をせられる施行地に居住している法人あるいは個人、これは私が言わなくても明らかなことです。しかし、これらはあるいは出入国管理令によって登記され一年以上日本に滞在している外国人、まあいろいろ納税者というものは法律によって明記されているわけですね。これが日本のとっている建前なんです。ところが、人格なき社団においては、これは全然登記されていないわけです。少なくとも納税者は、日本人である場合は戸籍法に登記されている、外国人であれば出入国管理令によって登記されている、明記されているわけです。ところが、人格なき社団については全然登記権が与えられていない。そういう代表者または管理人に納税の義務が生ずるかどうか。納税の義務が生じない、こういう解釈が強く行なわれているわけです。この点を解明してもらいたいと思います。
  115. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 今度の衆議院の修正によりまして、人格なき社団に関する納税義務については現行法と同じ状態になりましたということを申し上げたわけです。そこで、この人格なき社団に関する納税義務の現行法上の問題が一つでございます。今、荒木委員のおっしゃったのは、管理人あるいは代表者の納税の義務がどうかという点を、さらにその点に加えて質問されたものと理解するわけでございます。
  116. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 後段のほうはもう少しあとで詳しく質問します。
  117. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 人格なき社団の納税義務を法人とみなしてはっきりと規定しておりますのは、所得税法法人税法、それから国税徴収法の規定がそれぞれあるわけでございまして、それぞれ明確になっているところでございます。その他の間接税につきましては、法人たると個人たるとを問わず、その納税義務がありという規定の仕方をしてございます。たとえて申しますと、酒税法でございますと、納税義務者というところの条は第六条に規定してございまして、「酒類の製造者は、その製造場から移出した酒類の数量に応じ、酒税を納める義務がある。」、こう規定されているわけでございます。酒類の製造者はこううたっているわけでございます。それが法人たると個人たるとを、あるいは人格があるとないとを問わずというふうにわれわれは理解しております。要するに現行法は、その他の税についてはこういう書き方をしているわけでございます。そこで、今度の修正では、これと同じように、原案においては、国税に関する法律規定の適用については人格なき社団で代表者あるいは管理人の定めのあるものは法人とみなすと、こう言っておりましたのを、全部現行法に改めたわけでございますので、この点に関しては、規定の形は現行法と同じようになるわけでございます。われわれは、当然人格なき社団についてもこういう規定の仕方をしておれば納税義務があると、かように解釈しております。
  118. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは、人格なき社団の代表的な団体というものはどういうものがありますか。
  119. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これは代表者は単に代表者でございまして、人格なき社団、酒類製造業を人格なき社団が営なんでおれば、それに関する納税義務についてはこれは人格なき社団が負うべきものであって、代表者とは直接関係はない、こういうことになります。
  120. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私の質問しているのは、人格なき社団の代表的なものにはどういうものがあるか、こういうことです。
  121. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 一番典型的なものは、財団法人あるいは社団法人、民法三十四条の公益法人、これの許可申請中のものでまだ法人格の許可を受けないもの、これが一番代表的であろうと思います。そのほか、各種の学校の後援会のようなものがございます。それから、PTAもそうじゃないかと思います。代表的なものはそういうふうにあります。
  122. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 このわれわれの結成している政党ですね。自由民主党とか日本社会党、民主社会党とか日本共産党、こういう政党は人格なき社団の代表的なものだと私聞いておるんですがね、そうですか。
  123. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 今おっしゃったので気がつきましたが、政党も人格なき社団でございます。
  124. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると、政党の場合に例をとって考えた場合にですよ、これが納税義務者であるという判定ですね、今までに下されたことがありますか。実際問題として、実例としてそういう例がありますか。
  125. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 特にその判断をしなければならない場合は私は記憶しておりません。法人税でございますと、収益事業を営んでおりますと、収益事業から生ずる所得に限り法人とみなされるわけでございまして、政党は収益事業をやっておりませんので、実際問題は起こらない。所得税でございますと、私は政党の財産関係は知りませんが、また政党がその名において預金をしあるいは株を持っておるということになれば、当然所得税は、所得税に関する限りこれは法人とみなされることにはなるわけでございます。
  126. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そこの関係ですね、明らかにしてもらいたいと思います。どの政党でも、預金はしておりますよ。財産を持っておる。これらに対してですね、適正な課税がなされているかどうかですね。
  127. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 今の一番代表的なものは、政党関係でお使いになっておる従業員がございます。これは源泉徴収義務があるかないかという問題によってきまるわけでございますが、これは人格なき社団は、所得税の納税義務の範囲では、源泉徴収の規定に関しては、これは人格なき社団は一般的に法人とみなしておりますので、政党といえどもその使っている人たちの給与については源泉徴収義務があるわけでございます。今ちょっと思い出しましたので。
  128. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私がさっき質問しているのは、所得に対して課税されているかどうか、政党に対してですね。そういう問題を質問しているわけです。
  129. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 当然課税になっているわけでございます。
  130. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは、政党が催しもの等をする、そういう場合についても税を徴収しているかどうか。
  131. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これは入場税に該当する主催の事実があれば、当然課税になります。
  132. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そういう実例は今まであったかどうかですね。全然ないのか。
  133. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) そういう実例があったかどうかということは、寡聞にして聞いておりません。多分われわれの耳に入っていませんから、そういうことはないんだろうと思います。
  134. 須藤五郎

    須藤五郎君 関連して。この前の委員会で、間接税については両罰規定から人格なき社団等は削除されているが、国税通則法の第一条と第三条が仲立ちとなって、国税反則取締法が生きてきて、人格なき社団等に刑罰のかかることはないかということについて、参議院の法制局の出席を求めてその見解を求めることになっておりましたので、この際、御出席があるようですから、伺っておきたいと思います。
  135. 斎藤朔郎

    法制局長(斎藤朔郎君) ただいまの御質問は、国税通則法の原案の十三条が削除されまして新三条の形になった現在においても、このままで法律が成立すれば、その国税通則法規定と国税犯則者処分法の規定とが一体になって、やっぱり人格なき社団に刑罰を課せられることがあるんじゃないかと、こういう御質問のように伺いましたが、いろいろ私のほうでも研究はいたしましたが、どう考えましても、さような解釈になり得る余地はないと私は考えます。国税犯則取締法と申しますのは、これは一つの徴税に関する強制手続規定でございますので、入場税法の二十八条の規定が、数回前の当委員会において御説明申し上げましたように、二十八条の刑罰法令たる実体法の規定が働かない以上、手続法が働くということはあり得ないのでありますから、さような御心配はないように私は考えております。
  136. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 僕の問題とちょっとはずれているから、あとにして下さい。  政党の問題ですね、これは人格なき社団の一例として私は質問しているんですよ。それでは、所得に対して申告しているかどうか、政党は。
  137. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 先ほども申しましたように、人格なき社団の所得税法上の納税義務の範囲は、源泉徴収にかかる分だけでございます。したがって、申告はないわけでございます。それから、法人税法は収益事業から生じた所得について法人とみなすと、こういうことでありまして、政党は収益事業をやってございません。したがって、申告もないわけでございます。
  138. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 では、政党が預金しておる預金に対しては分離課税がかかりましたね。それは全然ないというわけではないでしょう。
  139. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 先ほども申し上げましたように、源泉徴収は働いております、こう言っているわけです。したがって、預金があれば全部課税しているはずでございます。
  140. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは、人格なき社団という認定はだれがするんですか。人格なき社団を法人とみなすといって税を取っておりますが、その人格なき社団という認定はだれがするんですか。
  141. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) それはそれぞれの当事者がやっているだろうと思います。最終的には、人格なき社団かどうであるかというのは、もし争いになれば裁判所できまる問題でありましょう。税務署は税務署で、これは人格なき社団だと、こう考えるでしょうし、その立場において考えるでしょうし、納税者納税者、人格なき社団は人格なき社団でお考えになると思います。源泉徴収義務者は源泉徴収義務者の段階で、その人格なき社団に該当するかどうかということを判断せざるを得なくなると思うわけです。争いになれば、それぞれ所定の手続をとってその争いが解決される、こういうことになるわけであります。
  142. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 人格なき社団であるかどうかという問題ですね、これが結局今お話しのように、裁判によって確定する問題だと思うのです。裁判によらなければ最終的に確定できない。それは認めていいでしょう、主税局長。
  143. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 争いになればそれ以外にないでしょう、こう申し上げておるわけです。
  144. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それは争いが起こらない場合はいいですよ。しかし、私は人格なき社団であるかどうかという認定は、税務署限りでして、それで屈服している団体はいいですよ。それを了承しない団体は、やっぱりこれは裁判にかけると、こういうことになるわけですね。いわゆる裁判にかけなければ最終的に決定しないそういう社団に対して、納税義務者として税を徴収するということに疑義があるんじゃないか、こう言っているのですよ。
  145. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) まあ人格なき社団というものが何であるかということにつきましては、通常まず社会通念として、あるいは法律常識として、おのずからそこに共通的な考えがあると思います。それらのものに基づいてやっているわけでございます。たとえば納税の義務につきましても、規定を見ますと、微に入り細にうがって書いております。したがって、その見解が違うという場合があり得ると思うのでございます。ただ、実際問題は、それぞれ税務署は税務署の立場で、法規はこういうふうにして解釈しておりますというところで実は執行を進めて参っておるわけでございます。したがいまして、争いの起きる場合というものは、まあ通常われわれそういう問題に関しては少ないものと思いますが、争いがあれば、それは最終的には裁判所で判断していただく以外には手がない、こう申し上げているわけです。
  146. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は、別に専門的なこの問題について知識があるわけではありませんから、十分な質問はできないかもしれないのですがね。少なくとも納税義務者というのは明確になっていると思うのですよ。少なくとも、個人であれ法人であれ、個人であれば戸籍簿に登記されている、あるいは法人であっても登記されている。登記されて確認されているわけですね。外国人の際でも、やはり納税義務者というのは登記されているわけですね。はっきりしているわけです。ところが、人格なき社団というのは登記されていないのですよ。これが納税義務者であるという判定は、これは何を根拠によっててやるか。私はどうしても疑問が残っているように思うのですがね。もう少し説明して下さい。
  147. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) まあその実態から考えてみますと、法人が何かある業務をやっております。興行場でもけっこうですし、それから酒類の製造でもけっこうでございます。だれかがやっておるから製造場があるわけであります。だれかがやっているからその興行場があるわけであります。法人がやっているか、個人がやっているか、人格なき社団または財団がやっているかということだろうと思うのでございます。したがいまして、その人格なき社団に該当するかどうかという問題、もちろん問題になりましょうけれども、本来経営主体があるわけでございますから、法人でもない、個人でもないということになりますれば、おのずからそこに人格なき社団または財団が普通やっている場合が通常だと思います。その場合に法律は、ただ管理人の定めがあるとかなんとかということはございますが、人格なき経営の実体があるわけでありますから、だれが経営者であるかと、これを見ればいいんだろうと思います。
  148. 須藤五郎

    須藤五郎君 関連して。今、村山主税局長の答弁では、人格なき社団を認定するのは税務署だと、こういう返事だったと思うのですが、それ自体が憲法違反ということになるのではないかと思うのです。第一線に働いている人たちの中にはひどい人もたまにはあるわけですが、その人たちに判断権を与えてしまうということは、これはたいへんなことになるのではないかと思うのです。正しく国民権利を守る憲法に従い、筋を通して課税しなければならないと思うのです。だから、憲法八十四条を正確に理解することがまず第一の急務だと思うのですが、憲法八十四条の「法律の定める条件」という、この「法律の定める条件」というのは一体何なんですか。「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」と書いてありますが、「法律の定める条件」とは何ですか。
  149. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) ここで書かれておりますのは、課税の要件を書いておるものとわれわれは理解しております。
  150. 須藤五郎

    須藤五郎君 この「法律の定める条件」というのは、私は属地主義だと思いますが、どうですか。
  151. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 別に、属地主義……。どういう意味でお使いになったか知りませんが、施行範囲、これももちろん一つの問題でございましょう。それ以外に納税義務者はどういうもので、それから課税標準はどういうもので、それから税率はどういうふうにして算出するか。要するに、法律を見ますれば、だれがどういう金額を基準にして、どういう税金を納めるのかということを明らかにすることのために必要なすべての要件、こういうふうに考えております。
  152. 須藤五郎

    須藤五郎君 だから、まず第一に、課税する場合はその人のとにかく住んでいる所、そういうものをはっきり認識することがまず必要なんでしょう。だから、僕はまず属地主義によって課税というものが起こってくると理解するのですが、どうですか。
  153. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これは最近は、最高裁の判決の理由の中でそのことに触れております。本年の二月二十八日でございまして、その中では最高裁はこううたっております。「同八十四条は」、というのは今の規定でございます。「「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」と定めている。これらの規定は、担税者の範囲、担税の対象、担税率等を定めるにつき法律によることを必要としただけでなく、税徴収の方法をも法律によることを要するものとした趣旨と解すべきである。」こううたっております。
  154. 須藤五郎

    須藤五郎君 だから、私はこう思うんですよ。属地主義に基づいて初めて、個人も、法人も、外国人も、外国法人も、戸籍法、法人登記規則、出入国管理令に従って法律的にこれを捕捉できるんだと、こう思うんですが、どうですか。
  155. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) まあ最高裁の判例以上に、われわれがいろんな憶測を加えるのは何でございますが、もちろん、その法律々々については、その施行地域はそれぞれの法律ごとにきまっているわけでございます。その範囲で、納税義務の発生もおのずからその範囲で起きてくるということは当然のことでございます。
  156. 須藤五郎

    須藤五郎君 私の質問にもっと率直に答えないといけないと思うんでんよ、はぐらかすような答弁はしないで。所も何もわからぬ者に税をかけることはできないんでしょう。そうでしょう。だから、属地主義の規定を書いておる。人格なき社団等は、幾ら法人とみなしても、法人登記能力がないんだから、法律的に捕捉できないはずなんです。どうして捕捉するんですか。何によって捕捉するというんですか。
  157. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 今、属地主義の意味が、そういうことだということが初めてわかりましたが、登記の問題とは関係ございません。
  158. 須藤五郎

    須藤五郎君 それじゃ、何によって捕捉するのですか。
  159. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 各税法の定めるところでございますので、各税法をごらんになるとおわかりになるように、登記をだれの名義にしているかということは、納税義務とは関係ございません。
  160. 須藤五郎

    須藤五郎君 じゃ、僕の質問と違いますよ。人格なき社団を何によって捕捉するのですか。
  161. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 人格なき社団を何によって捕捉するかと申しましても、人格なき社団はその実体があるわけでございます。それが各税法の納税義務を負うに足る要件を備えるに至れば、おのずから納税義務は発するわけでございます。どういう場合に納税義務を負うかということは、各税法で具体的に書いてあると、こう申し上げておるわけであります。
  162. 須藤五郎

    須藤五郎君 さっき荒木君の質問に対しましても、最後は裁判官の判定に待つより仕方ないと、こう言っているわけでしょう。ところが、その前の答えでは、人格なき社団はやはり税務署員の認定にまかしているんだ、こういう答弁があった。この答弁は矛盾しやしませんか。
  163. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 争いがあって最終的に解決するのは、それは今の機構で、国の制度組織といたしまして、裁判所の決定でやっていただく以外にはないであろう、こう申し上げておるので、それぞれ税務執行を担当する側は、その法規の解釈をしているわけでございます。それから、納税者はおそらく納税者でもって理解されているだろうと思うわけでございます。その場合に見解が違っても、なお話がつけば、その限りにおいて問題はないわけでございまして、争いがある場合には最終的には裁判所に行きます。もとより、その間の手続はそれぞれ当事者がみずから理解しているところによって進めていく以外にはほかに方法がないと、こう申し上げておるわけでありまして、たとえば申告納税を見ましても、申告する人がその税法をどう理解するかによって、申告の性格もきまってくるわけでございます。それがその税法解釈を間違っておると思えば、税務署のほうはそれとは違う税務署の意思によって別に処分を起こしていくであろう。それで納得がいけば、それでおさまるわけであります。納得がいかなければ、不服審査の申し立て以下救済手続に移るわけでございます。最終的には、最後に賦課権の行使期限が来てしまって絶対的に課税権が行なわれないようになるか、あるいは裁判所でその確定判決が出てしまうかというところで争いは落ちつくわけでございます。
  164. 須藤五郎

    須藤五郎君 裁判官のみが判定を下し得るような、そういう重要な問題を一税務署員に与えていくということは、私は問題があると思うんですよ。それから、先ほども荒木さんおっしゃったんですが、裁判に訴えるということを知らない人たちは、税務署の一方的なこういうことのために、大ぜいの者が泣き寝入りしているというのが出てくるのだと思う。だから、私はこういうことは明らかにしていく必要がある、このようなうやむやな状態の中で事を運んではいけない、こういう見解を持っているわけです。関連質問ですから、この程度にしておきます。
  165. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この納税義務者の問題について次にお尋ねしたいのは、第二条の第五号ですね、この規定があるのは、これで納税義務があるとされている者の中に「源泉徴収等による国税を徴収して国に納付しなければならない者」、これは端的にいったら法人の代表者、もっと端的にいったら会社の社長、さっきお話があった政党でいえば、それは幹事長か給裁になるか知りませんが、こういう人たちがどうして納税義務があるのかという問題ですね。この人たちは面接所得がないわけです。しかし、政党でいえば、多くの事務職員を雇っている。それに給料を出しておる。給料をもらっている者は確かに所得があるんですから、これは所得税がかかる。これは納税義務者ですね。これは私は間違いないだろうと思う。しかし、それらを雇っている代表者に、なぜその納税義務を負わさなければならぬかという点を、わかりやすく説明してもらいたい。
  166. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) ここで使っておりますのは、各税法でいう納税義務者を言っておるわけではございません。あとで出て参りますように、たとえていいますと、給与所得につきましては、給与所得だけしかない者を見ますと、所得税法上の納税義務者は、それは給与の受給者になるのでございます。しかし、徴収する者はこれは会社だということになってございます。ここの通則法で問題にしたいのは、その租税債権の発生、消滅を問題にしたいわけでございます。ですから、国の側からいいますと、だれが納めるのか、こういいますと、なるほど所得税法上では納税者は各個人でございますが、国の側があなたは徴収すべきもの、納めるものを納めていないではないかというような催促その他の手続は、全部この徴収義務者に向かっていくわけでございます。それで、国税通則法は、そういう意味の租税債権の発生、消滅を論じておるわけでございます。したがいまして、ここではこの用語の定義の問題でございますが、納税義務者というのは、平たい言葉で、各税法でその税金を国に納付する義務がある者、それが本来の納税義務者であろうがあるいは他人の納税義務に基づいて徴収して納める者であろうが、それはすべて国税通則法では国に納付する義務がある者という意味で、納税者という簡単な用語で出しておいたほうがあとがわかりやすいということでございます。これは各税法の納税義務とは直接関係はない問題でございまして、国に納める義務のある者のその義務はいつ発生し、それからいつどういう手続によって納めるのだ、納めない場合には国はどんな手続に従ってそれを決定し、あるいは納付を催促するのか、こういう手続が書いてあるわけでございます。
  167. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それで、そういう徴収する義務者ですね、それを今度は納税義務者としているのでしょう。違いますか。私の質問の趣意は、直接所得がある君はこれは所得税でもなんでも義務者ですよ。そうじゃない。それを徴収して納める者を義務者として拘束を受ける根拠というものはどこにあるのかと、こういうことです。
  168. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 具体例で申し上げますと、たとえば給与所得者、われわれもそうでございますが、われわれは所得税法上の納税義務者なんです。しかしながら、われわれが税金を納める手続は、所得税法規定によりまして、みずからこれは申告するわけではございません。役所なり会社なりが源泉徴収票で毎月取っていけばいいわけです。年末調整で調整してしまえば、それで納税義務は完結するわけです。それで、国との間の税金を納める過程というものは、その徴収義務者たる会社なりあるいは役所なりが直接国に税金を徴収して納付するという義務を負うわけです。国税通則法で問題にしておりますのはその部面なんです。徴収して納付すべき者を納付しなかったときにどうして催促するか、こういう問題でございます。したがって、われわれ月給取りには関係のない問題でございまして、各税法で納める義務のある者、これが納めないときにどういう手続をとっていくかということをきめているのがこの手続法なんでございます。したがいまして、通則法では各税法の納税義務者を全部ここで出す必要はないわけでございまして、国に具体的に納付する義務のある者だけをとらえて、それがどういう過程で納まっているかということだけを問題にすれば足りるわけでございます。したがって、これは別の言葉でいいますと、これで新たに納税義務を課したわけでもなんでもございません。現行の各税法のうち徴収義務者として規定されている者が結局徴収して納付するわけですから、その納付というところだけをとらえてこれから規定していこうというわけでございます。それを一々長たらしく引きまして、各税法の定める納税義務者のうち、自分でみずから納める義務があると規定されている者、そのほかに徴収義務者のうちその徴収して国に納める義務があるとされている者、これらについてはこれこれこれこれと一々言うのはたいへんですから、ここで簡潔に、以下納税者というのはそういう意味で国と徴収面で直接関係のある人だけでございます、こういうことを申し上げようとしているわけでございます。
  169. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 質問を簡単にしますがね、所得税なら所得税の場合、所得のある者が直接納めないで、会社なり役所なり、徴収者が集めてきて、そうして一括して納める、こういうやり方をしているわけですね、これはしかし、元来は国が徴税すべき性質のものじゃないですか、個々から。それでは繁雑だから、集めてきてやっている、こういうことになれば、国の事務を委託してやっているという解釈が成り立ちませんか。成り立てば、そこに費用弁償が起こってくるという問題はないか、この点を質問します。
  170. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) この点に関しても争いがございまして、これも先ほど引用いたしました本年の二月二十八日の最高裁の判決の理由の中に述べられております。これをちょっと読み上げてみますと「されば源泉徴収制度は、給与所得者に対する所得税の徴収方法として能率的であり、合理的であって、公共の福祉の要請にこたえるものといわなければならない。これすなわち諸国においてこの制度が採用されているゆえんである。かように源泉徴収義務者の徴税義務は憲法の条項に由来し、公共の福祉によって要請されるものであるから、この制度は所論のように憲法二九条一項に反するものではなく、また、この制度のために、徴税義務者において、所論のような負担を負うものであるとしても、右負担は同条三項にいう公共のために、私有財産を用いる場合には該当せず、同条項の補償を要するものでもない。」、こういうことがうたわれているわけでございます。
  171. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 さっきの人格なき社団の場合ですね。両罰規定は免かれましたが、刑上の罰は科せられないとしても、今度は税金を納めないような場合の差し押えとか、そういうようなあれは、税務執行上のそういう措置はできるわけですか。
  172. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) それは現行法でできます。その点は何ら改正は加えてございません。
  173. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今度人格なき社団の場合ですね、両罰規定を除きましたけれども、実際にはどうなんですか。たとえば労音あたりで問題になっておりますけれども、やはり税金を納めなかったら差し押えとかなんとかどんどんやっているわけですか。
  174. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 当然それは滞納処分に関する現行の国税徴収法の規定の適用がございますから、そういうふうになれば、差し押えも公売処分もやり得るわけでございます。
  175. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうなりますればと言いますけれども、現行でできることになっているんですね。そうなると、実際に今係争中ですね。そういう場合どんどんやっているんですか。
  176. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 全部はわかりませんが、中には差し押えているものもあると聞いております。
  177. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう少し明らかに……。全部じゃないけれども、まだやらぬのもあるんですね。
  178. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 中には、私の聞いた範囲では、税金はとりあえず納めておられて、人格なき社団で、別に訴訟を起こしているというのもあるそうでございます。こういうケースについては、すでに納まっておりますので、差し押えの問題は当然ないわけでございます。
  179. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その訴訟の一番焦点はどういうところにあるんですか。
  180. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 今おっしゃったのは労音の、私たち人格なき社団と一般に申し上げているんですが、労音については差し押えているということはないと聞いております。人格なき社団一般については、これは別に差し押えているものもございますということでございます。
  181. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは滞納とかあるいは税金を納めないという事例が労音についてはないということなんですね。ちゃんと納めているということなんですか。
  182. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) ですから、税金は税金で納められている。しかし、納税義務について根本的に疑いがあるからという理由で別に訴訟が提起されているというふうに聞いております。
  183. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、それは非常に重要な問題ですね。納税義務があるかないかで争われているのですね。その点は、今度の人格なき社団の規定は全然関係ないのですか。影響ありませんか。
  184. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 関係ございません。今度の改正で関係があるとすれば、今の争っている間でございますと、従来は公売まで行ったわけでございます。今度は争っている限りは差し押えだけになります。ということは、今の不服の申し立てに関するところの納税者に有利にはかった点の一つに、一昨日お話し申し上げましたが、差し押えまでしかいけないということになります。これは人格なき社団であろうが、あるいはそうでなかろうが、すべてについてそういうことになるわけでございます。
  185. 平林剛

    平林剛君 通則法の八十三条についてちょっとお尋ねしておきたいと思います。八十三条は、協議団による審理を定めた規定でありますけれども、「協議団の運営に関し必要な事項は、政令で定める。」と第二項に掲げられております。今後政令で定めるときどういう考えを持っておられるか、この際基本的な考えを明らかにしておいてもらいたい。
  186. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これは現行法でも同様でございますが、政令面で特に改正する点はそれほど多くないだろうと思っております。この問題は実際問題が相当ございますので、われわれの考えといたしましては、今後の運用の実態、その運用の中から出ましたものを、今後結論が出ましたら、それを漸次政令化していきたい、かように考えておりますので、現行法についてはそれほど大きな改正を加えなくても済むのじゃなかろうか、こう考えておるわけであります。
  187. 平林剛

    平林剛君 たとえば協議団の構成員の過半数を非常勤の民間学識経験者をもって、そういう人を委嘱する、あるいはそういう意見について国税庁の長官や国税局長の指示を受けないようなことにする。いろいろ協議団の運営について、従来の運営に関し意見がある問題については、政令を定める際にこれを受け入れていくお考えがありますか。
  188. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 今おっしゃった第三者たるものを入れるかどうかという点につきましては、これは調査会でも詳細に検討いたしましたが、現段階ではそのような改正をしないほうが適当である、こういう結論でございますので、その点について改正を加える意図は持っておりません。
  189. 平林剛

    平林剛君 なぜ改正をしないほうが適当であると考えられますか。その理由はどこにありますか。
  190. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 論議せられました中心は、税に関する事案と申しますのは非常に専門的である。事実を正確につかみ、それと法律解釈適用の問題、第三者を入れるということになりますと、これはかつて戦前は同じようなことがあったようでございますが、公選による所得調査員、この制度の運用をはかったわけであります。シャウプ税制のときにそのことが問題になりまして、プラスかマイナスかという判断が非常な論議を呼んだわけでございますが、事務の性質から申しまして、やはり専門家のほうがよろしい、能率的であるということ、それから第三者を入れますとともすると思わしくない夾雑物が事柄の性質上入ることが多い、こういう意味でシャウプ税制のときにもこれは否定的な解決になっておるわけでございます。それで、税制調査会においても論議したわけでございますが、現状においてもやはり、専門家からなる練達堪能な人を当てればそのほうがよりスムーズにいくであろう、こういう結論でございます。
  191. 平林剛

    平林剛君 その問題については私は議論がありますけれども、もう一つこの法律案を読んでいてどうもわからない。実際上の問題にあたってたいへん困るだろうと思いまして、その解釈を明らかにしておく必要を感じますからお尋ねしますが、第十条の五項について、これは書類の送達について規定した条項でございますが、その五項に「次の各号の一に掲げる場合には、交付送達は、前項の規定による交付に代え、当該各号に掲げる行為により行なうことができる。」と書いてありまして、その第一の「送達すべき場所において書類の送達を受けるべき者に出会わない場合、その使用人その他の従業者又は同居の者で書類の受領について相当のわきまえのあるものに書類を交付すること。」この「相当のわきまえのあるもの」というのはどういう人をいうのですか。
  192. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これは民訴百七十一条でも同じことが書いてあるわけであります。われわれがこれを文章で読みますと、書類の受領について相当のわきまえがあるというふうに書いてございます。したがって、これはいなかった場合にはこの人に渡せるという条文ですね、それで有効の送達になるのだということがわかる程度の人であればいいのだろうと思います。受領についてわきまえがある人であればいいのだ、こう思います。
  193. 平林剛

    平林剛君 これは「受領について相当のわきまえのあるもの」というのは、どういうことですか。
  194. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) ですから、これはわれわれが解釈しておりますのは、そういうことであろうと思うのであります。たとえば、これが申告書の送付とか、あるいは中身は更正決定の通知書とかいろいろございましょうが、その中身についてのわきまえは必要ないので、ここは御主人がいないから、だからあなたに渡すのだ。渡すについては、あなたに渡していけば本人に渡したと同じ効果になるのだから、間違いなくお渡し下さいと言ったら、ああわかりましたといって、その事柄がわかればいいのだろうと私は思います。
  195. 平林剛

    平林剛君 ちっとも法律的な解明になっていないじゃないですか。これは私はまことに実際の実務に当たる者は困惑すると思います。また、その間に争いが起こるだろうと思います。もう少し法律的に筋道を立てて、ああそうですかと言ったからそれで渡したというような無責任なことでなくて、もっと解明しておく必要があるのじゃないのですか。今ので実際の実務に支障ありませんか。いろいろな問題が起きたときにどうしますか。
  196. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これはひとり通則法、税務だけではありませんで、民訴の場合におきましても、あるいは会社更正法等におきましても、同じような条文があるわけでございまして、かなり詳しく書いてあるということであります。ここでこの「わきまえのある」というのは、われわれがこれを読んでみますと、「書類の受領について相当のわきまえのあるもの」と書いてあるので、私はこういったものだろうと、こう思うわけであります。
  197. 平林剛

    平林剛君 ちっともわからない。第二号についてもやはり同様なことがありまして、この際解明しておく必要があると思います。「書類の送達を受けるべき者その他前号に規定する者が送達すべき場所にいない場合又はこれらの者が正当な理由がなく書類の受領を拒んだ場合、送達すべき場所に書類を差し置くこと。」、この「送達すべき場所」とはどこですか。
  198. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) その送達の場所は十条に書いてございます。「国税に関する法律規定に基づいて税務署長その他の行政機関の長又はその職員が発する書類は、郵便による送達又は交付送達により、その送達を受けるべき者の住所又は居所(事務所及び事業所を含む。以下同じ)に送達する。」と、こう書いてございます。この場所でございます。
  199. 平林剛

    平林剛君 それは一応法律的に解明されましたから、わかりました。しかし、第一号のところはもう少し理論的に解明しておかないと、実務のときに困るんじゃないか。二号もやはり少し問題があるね。置いとけばいいという書き方ですね、これは。受領をこばんだときは、置いとけばいいと。なくなったときはどうするの。風が吹いて飛んじまったらどうするの。こういうことになると、これも非常に実際の問題としては困るんじゃないかと思うんだが、どうですか。
  200. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) それはさらに政令でその事跡をはっきりさせなくちゃいかぬというようなことが書いてございます。現在の国税徴収法施行規則第二条「税務署所属の職員は、……の規定により交付送達を行った場合には、その交付を受けた者に対し、その旨を記載した書面に署名捺印をしなければならない。この場合において、その者が署名捺印をしないときは、その理由を附記しなければならない。」、「税務署所属の職員は、法第五条第三項第二号の交付送達を行った場合には、前項の書面にその旨を記載しなければならない。」、差し置いたときには事跡を明らかにしなさいということをすべて要求しているわけでございます。
  201. 平林剛

    平林剛君 まあ実際の税務行政に当たった場合には、われわれがここで議論する以上、あるいは想像する以上に、幾多の問題にぶつかると思うのでありますけれども、どうもこの法律は、ただいま質問をいたしましたように、きわめて御都合のいいような字句が書かれてめりまして、そういう意味ではやはり税法として、私が先ほど指摘をいたしましたように、税務署のあるいはちょっと独善的なことがここにも現われておるということを指摘をしておきたいと思うのであります。  第十六条について私はもう一度見解を承りたいと思うのでありますが、これもどう考えてもおかしいと思うのであります。それは第十六条の一項一号に申告納税方式の規定が書いてありますが、申告納税方式というものは何ぞや。ここに書いてある四行は、私はその内容から読みますと、掲げた申告納税方式の印象あるいは概念、これを根本的にひっくり返してしまうようなことが掲げられておるのでありまして、そういう意味では適切な表現ではないのでないか。だから、やはりこれは「申告納税方式」と書く以上は、納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則とする、これだけでいいんじゃないかと思うんですよ。その次に書いてあるような、「その申告がない場合又はその申告に係る税額の計算が国税に関する法律規定に従っていなかった場合その他当該税額が税務署長の調査したところと異なる場合に限り、税務署長の処分により確定する方式」が申告納税方式だというのは、どうも拡大解釈であり、申告納税方式というのがこれでございますというには、ふさわしくない表現になっているのではないか。実際の青色申告とか白色申告という現在の税制の現状から考えますと、実際のことは私よく承知しています。承知はしておるけれども、少なくとも国税通則法という通則的なものを掲げ規定をする法律案の表現としては適当でない。実際はこうなんですよということはよくわかるけれども、通則的な規定としてこれは適当でないと思うのですが、いかがでしょう。
  202. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 問題は、申告納税方式というところになくて、通則法できめていきたいのは、申告納税方式による国税がどういうふうにして義務が確定するかという問題でございます。それで具体的に——抽象論をやっているわけじゃございません。具体的に納税義務が発生すれば発生したものについて納付書で納めていただきます、こういうことでございます。したがいまして、あくまでも具体的な問題でございます。申告納税方式にかかる税、それからそうでない税というのは、税一本でもってきまっているわけです。この立て方は、申告納税、所得税というのは、申告納税方式にかかる税金でございますと、こういったものの立て方をしているわけなんです。しかし、その中で確定という問題になりますれば、そのうち申告納税にかかる分については申告で確定いたします。しかし、間違っておって税務署が増額するあるいは減額する部分については、その処分によって確定するといわざるを得ないわけでございまして、これは現行法でもそのとおりでございます。とらえる角度が、各税がどういうふうにしてきまるかということを、その手続と、要件と、それでどんな書類を出すとか、きまったものはいつから、その納期はいつで、どういう納付書なりあるいは納税書を添えて納めるのか、こういう具体的な手続上の問題でございます。したがいまして、そのいわゆる申告納税方式にかかる税につきましても、申告によって確定する税については規定する必要があると同時に、申告以外の処分によって具体化する税についても明確にしなければ、国税通則法の今の徴収とか納付とかいう問題を具体的に取り上げているのですから、だから、それをきめようということですから、ここはやはり申告納税方式によるものでありましても、その税務署長の処分によって確定する分についてもこれは規定する必要があるわけでございまして、ここは柱書きでございまして、これはこういうものでございます。具体的にはどうなるのだということは、先ほど申しましたように更正の請求、それから更正決定のところにそれが出てくるわけでございます。申告と申しましても、これは柱書きでございまして、あとを見ていただくとわかりますように、期限内申告にかかる分については、その期限内申告で確定するし、期限後申告でおくれたことがいいとか悪いとかいうのは別です。ただ、本質は期限後申告した税額によってきまります。それが正しいとかなんとかと言っているわけじゃございません。そこで初めて納付の義務が起こるのだと言っているわけでございます。あとで間違いました、修正申告いたしますといえば、その修正申告が正しいとかどうか言っているのじゃございません。ここで言っているのは、ふやしたならばふやした限度において後納付の問題が生じますということをうたっているにすぎないわけでございます。正しく書こうとすれば、まさしくこれを抜かしてはいかぬわけでございます。
  203. 平林剛

    平林剛君 私は、税制やその他の関係の条項について触れているわけじゃない。申告納税方式と書いてある以上は、納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則とする、とだけで足りるのではないか。この申告納税方式と掲げた場合に、申告がない場合はどうするということを書いてありますけれども、あるいはその税額が税務署長の調査したところと異なる場合のことが書いてございますけれども、それは申告納税方式という掲げた中で書く性質のものと異質のものでないか、こういうことを言っているわけです。だから、「申告納税方式とは、納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則とする。」、これで足りる。もしそれ以外の方法がなければ、国税についての納付すべき税額の確定する方式がなければ、別の項をあらためて書けばいいんじゃないか、こういうことを言っているわけです。いかがですか。
  204. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) このほうが正確であり疑問の余地はないと思います。また、こう書かないといたずらに疑問が起きるということでございます。その前のところをちょっと見ていただきますと、こういうことを言っているわけです。十五条三項のところで「納税義務の成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定する国税は、次に掲げる国税とする。」問題はその税目ごとに話をしているわけでございます。こういう国税は要りませんと、こう言っているのです。問題にしているのは、国税の税目を問題にしておるわけです。第十六条で「国税についての納付すべき税額の確定の手続については、次の各号に掲げるいずれかの方式によるものとし、これらの方式の内容は、当該各号に掲げるところによる。」、そこで、「申告納税方式」としまして、「納付すべき税額が納税者のする申告により確定すること」、これは定義でございます。定義でございまして、その次に書いてありますように、二項で、「国税……についての納付すべき税額の確定が前項各号に掲げる方式のうちいずれの方式によりされるかは、次に定めるところによる。」と、こう書いてありまして、一号に「納税義務が成立した場合において、納税者が、国税に関する法律規定により、納付すべき税額を申告すべきものとされている国税」、これを申告納税方式と呼んでいるわけでございます。したがいまして、ここでわかりますように、どの税が申告納税方式であるかということは、この条文ではきまりませんで、各税法を見て下さい。そのときの約束は、ここに書いてありますように、納付すべき税額を申告すべきものとされておれば、それがいわゆる申告納税方式でございます。それらの各部分部分の税額は、これは通則法でございますから、具体的の償権を問題にせざるを得ぬわけです。それぞれの具体的の債権はいかにして確定するか、こう申しますと、申告納税にかかる分については申告納税、調査によって決定をした分はその部分、こういうふうにならざるを得ないわけでございます。そのことがあとで敷衍して書いてあるということでございます。
  205. 平林剛

    平林剛君 私は、やっぱり政府の基本的な考え方が第十六条の第一項に現われてきておると思うのです。政府としては、やはり税額の確定の方式は、喜んで税金を納める人は今の政治じゃないでしょうけれども、ある程度それを法律に書いてあるように、義務として喜んで納められるという体系に持っていく必要があるし、同時にまた、そのときは納付すべき税額が納税者のする申告によって確定する方向に政府自体が、あるいは税務署自体が指導していくということが必要なんです。それを便宜このほうがはっきりしているなんと言って、実際にはそれが主として行なわれているわけでありますが、税務署長の調査したところとは違うから、幾ら申告があっても税務署長の処分によって確定をする、これが申告納税方式だと押しつけられたのでは、国民は一体これからの税の納め方、あるいは税に対する考え方というものに対して、重大な錯誤を抱くのではないか。私はむしろ、納付すべき税額が納税者の申告により確定するということを原則とし、このための指導、PR、そして善政を施す、こういう建前にいかなくちゃいかぬのではないだろうか、こう思うのですよ。あなたの言い方は、このほうがはっきりしていると、こう言うけれども、これはお役所としてはっきりしているのであって、国民のほうはちっともはっきりしていない、こういうことになるのです。  ことに「当該税額が税務署長の調査したところと異なる場合に限り」と言うけれども、税務署の調査したもの、それから納付すべき納税者が申告したもの、その違いというものはどこで見るかといえば、実際の税務署においては課税標準率表とか効率表とかいうものを使ってそれを押しつけているのですよ。ここに書いてある、「税務署長の調査したところと異なる場合に限り」とありますが、「税務署長の調査したところ」とは何を基準にして調査をされ、そしてまたこういう判断を下す場合のものさしは何によってなさるつもりか。
  206. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) もう一度お答えしますと、ここで申告納税が軌道に乗って、更正決定等がないほうが一般的に望ましいとかどうとかいう問題、あるいは本人の申告された税額が正しいとか正しくないとかいう問題、あるいは税務署長の調査では増額、減額したその税額が正しいとか正しくないとかいう問題、これはここでいう通則事項ではございませんということを申し上げておるわけです。通則法はそういうことを規定しようとしておるわけじゃございません。ただはっきりした、具体的に債権として確定し、それから徴収の問題の起きるものはどの部分がどういうことになりますかということを書いてあるわけでございます。そういうことは、これは今言ったように、現在盛ろうとする通則法の範囲外の問題でございます。
  207. 平林剛

    平林剛君 どうもわからぬ。あなたは私の言った趣旨もわからぬのでしょう、多分。
  208. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと質問しますけれども、第一条の「基本的な事項」、これはやはり申告方式なんというのは基本的事項、重要な事項になるのじゃないですか。その一つになるのじゃないですか。それについて、今平林委員が……。申告納税方式といったって、それをこの法文自体、一項がみずから否定しておるように思うのですがね。申告納税制度というものと申告納税方式というものと、どういうふうに違うのですか。
  209. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) ここで言っておりますのは、先ほど来言いますように、申告納税方式の税金でもいろいろのきまり方をするわけでございます。そこで、どういう手続でどの部分が確定するかということを言っておるわけでございます。申告納税方式が望ましいとかいう話は、これは別の問題でございます。そして、どの税について申告納税方式をとるかどうかという問題、これもまた各税法がきめておる問題でございます。ここで言っておりますのは、税額確定についてはっきりする必要がありますので、その限度において規定しておるわけでございまして、申告納税方式にかかる税金というものは、各税で、こういう税額を申告するというものがそれでございまして、それについては申告した部分は申告によってきまります。そうでない部分はその他の処分によってきまります。ここまでをうたっておるわけでございます。  ですから、基本的事項として、今の納税方式が何がいいかというようなこと、それはもちろんございましょうが、これはそれぞれの各税の性質によってきまるわけでございます。したがいまして、各税法にまかされておる。ただ、今度の、通則法ではございませんが、各税法の改正後における申告納税方式と賦課課税方式を申しますと、間接税も原則として全部ほとんど、いわゆるここでいう申告納税方式に移行した残りのものは、税関から引き取る場合の内国消費税をかける場合でございますが、これは申告納税に乗らない制度でございますので、賦課課税として残っておる。あるいは場内消費をした場合、これは普通の製造者がやるわけじゃございません。そういうものについては、直ちに税金を徴収する必要があります。申告は期待できないわけでありますので、これは賦課課税方式によります。それから、同じく、本税は申告納税方式をとっておりましても、あなたの申告は過少であるから加算税をかけます、かけざるを得ません。この加算税をかけるのもこれは本人の申告を期待するわけには参りません。そういう意味で賦課課税になって残っておるということでございまして、しかし、これらはいずれもその税の性質から見て申告を期待しがたいもの、こういうものを賦課課税として残しておるわけでございます。どの税を申告に持っていき、どの税を賦課課税に持っていくかということは、各税法の問題でございますが、中身から申しますと、大部分が申告納税方式になりました、こういうことでございます。ただ、いわゆる申告納税方式についても、その部分々々の税の確定の点につきましては、それぞれの手続を経てきまることになりますということを、納付との関係においてここで明らかにしておる、こういうことでございます。
  210. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その説明は一応わかるのですけれどもね、この十六条の一項を普通に読みますと、実際問題としてですよ、どうも申告納税方式ということはわかるのですけれども、実際問題としてどうも、この賦課課税ということになっちゃって申告ということは一つの参考みたいになるのじゃないか、実際問題としてですね。そういう気がするわけです。そこのところです。実際にはこの原則以下があるために、どうも実際これはみずから申告納税方式を否定するような規定のようにわれわれしろうとにはどうしても解釈されるのですがね。これはあとがないといいんですがね。そうすると非常にすっきりわかるのですよ。それで、たとえば建前は申告納税方式になっておるけれども、実際は最後は税務署長がきめるということになれば、これは実際問題としては賦課課税になるのであって、どうもみずから申告納税方式を否定しているように解釈されるのですがね。その点は、われわれまだこういうしろうとでわからないかもしれませんが、もう少しそこのところわかるように説明してもらいたいのですがね。
  211. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) どういう角度から言ったらおわかりいただけるかと思うのでございますが、あと手続を見ますと、申告されたらその税額は、申告期限はきまっております。そこで確定しますから、納付の問題が起きます。申告納税方式でございますと、自分で申告したものはそのときに期限内申告の分については、法期限内にそこで確定したことになりますから、納めて下さい、こういうことになるわけです。それから、修正申告でございますと、そのときにあなたの申告に基づいて確定したのですから、その部分は申告と同時に納めて下さい。これは納期の関係。それで、それ以後でなければ納期の問題は起きないのでございます。もちろん更正決定ということはございますが、更正決定によって増差額が出ますと、その決定通知書の納期限を指定することになっております。更正決定通知書を発送する日の翌日から起算して一カ月を納期限にして納めて下さい。こういうわけで税額そのものの決定は、もちろん更正決定通知書によってきまるわけですが、納期は指定納期限一カ月後に納めていただきます。こういうことになるわけです。そこで納まらなければ督促状以下の問題が発生するわけです。  賦課課税でございますと、本人が申告されるのは一つの参考としてちょうだいしておるわけです。ですから、これでは税額は確定いたしません。先ほど申しましたように、税関から出てこられる場合に、申告されましょう。しかし、その業者ではございませんからわからぬわけですが、携帯品について申告したといって税額がきまるという制度はとれないわけでございます。もしその価格が間違っておれば、税関で査定価格でもって決定するわけでございます。その決定に基づいて初めて納税義務がある。そこで、それぞれ所定の納付をして下さいということになるわけでございます。その納期限がまたどうなるかということは、また次の問題でございます。申告では税額は確定いたしませんということでございます。だから、納付の義務も当然には出てこない、決定を受けてから納付の義務が生ずるんだ、こういうことでございます。
  212. 高橋衛

    ○高橋衛君 この際、すべての質疑を打ち切り、直ちに討論、採決に入ることの動議を提出いたします。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  213. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ただいまの動議に賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  214. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 多数と認めます。よって、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。(「ちょっと独断過ぎるな」「公聴会はどうしたんだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  215. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 速記をつけて。  暫時休憩いたします。    午後三時四十一分休憩      —————・—————    午後四時八分開会
  216. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ただいまから委員会を再開いたします。  御意見のある方は、賛否を明らかにとてお述べを願います。
  217. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、国税通則法案について反対をいたします。  反対の理由を述べるに先だちまして、まだこの法案が十分に審議されない段階において、自民党側から強硬に質疑打ち切り動議が出されまして、非常に不明朗なまま討論採決に持ち込まれたわけですが、衆議院においても十分審議されず、参議院においても十分審議されず、またあとでも触れたいと思いますが、本来ならば国会法五十一条二項に基づいて公聴会を開かなければならないことになっているのに、公聴会も開かない。これでは国民に対して、国民権利義務に非常に重要な関係のある重要法案について審議を尽くしたとは言えないと思うのです。国民に対して相済まぬと思う。その責任は全部自民党の諸君に私はあると思います。非常にきわめて遺憾であったということを申し上げなければなりません。  反対理由の第一は、この新しい法案を制定いたします真のねらい、また本法案の根本精神に対して、納税者の立場から見まして絶対に容認することができないという点にあるわけです。すなわち、本法案は税金を徴収する権力者としての立場から、いかに税金を取りやすくするかという基本的な精神に基づいて制定されているのでありまして、納税者を保護するという精神から制定されたものではありません。政府は、本法案の提案説明において、あたかも納税者利益になる法案であるように述べております。たとえば、第一に、現在日本には税金の種類が非常に多い。それぞれの税金がそれぞれの税法として規定されて、それらを通ずる共通の問題も個々の税法の中に規定されている。たとえば、申告とか、あるいは更正決定、あるいは再調査、審査の請求とか、税務職員の質問検査権とか、加算税とか、利子税とか、罰則、そういうような各税法に共通な問題が各税法ともそれぞれ書かれている。そこで、こういう共通的な規定を一つにまとめたのである。それから、第二には、現在の税法が非常に難解であるから、これをわかりやすくしたのである。しかし、わかりやすくするといっても、依然としてまだ難解でございますが、政府はそういう理由によって、その理由が本法制定の趣旨の一つであると言っております。あるいは、第三に、納税者の救済規定を拡大している。あるいは、第四に、税制調査会に諮問して学識経験者の意見を十分聞いたんであると、こういうふうに本案の制定の理由をあげております。しかし、これは表面的な理由であって、その限りにおいてはけっこうであり、反対すべきものはないと思います。しかし、こうした提案理由だけを聞かされておると、この法律は何でもない法律である、税法をわかりやすくし、そうして各税法の共通部分を統一したにすぎないのだと、こういう政府側の宣伝に国民はごまかされてしまう危険があると思うのです。しかし、この法律の制定のほんとうのねらいは、このような表面的な名目的な理由にあるのでは絶対ありません。この法律制定の基本的精神は、一言で評すれば徴税強化にある、また徴税権力を強化する点にある。いかにして税金を取りやすくするようにするかという点にあるのでありまして、納税者を救済し保護することにあるのではないと私は思います。  その証拠には、本法の目的規定した第一条は、これまでの審議で明らかになりましたように、納税者の立場を十分に保護するという規定がないのであります。この第一条は、あくまでも税金を取る側の権力者側の規定にすぎない。税金そのものが日本の今の現状では非常に重いために、納税者はいろいろ苦心しまして、税金の負担からのがれようと苦慮しているわけであります。そこで、政府は、通則法第一条に規定されているように、「税務行政の公正な運営を図り、」とか、あるいは「国民の納税義務の適正かつ円滑な履行に資する」、こういう名目で、結局は徴税強化をはかろうとしていると思うのです。そうして中小企業者の非常に猛烈な反対がありましたので、税制調査会答申の中にいわゆる五項目というものがあげられましたが、それは一応削除せざるを得なかったわけでありますが、大蔵大臣に対する質問によって明らかになりましたが、この法案税制調査会答申の精神に基づいて作られたのだ、その精神を尊重してと言われましたが、税制調査会の根本の精神は五項目にあるわけです。一番の中身は、この五項目はあくまでも徴税の権限を強化するということが五項目の骨子であります。答申全体を流れる精神は徴税強化にあるわけでして、それでこの答申はドイツのナチの租税適用法を参考として作られたというわけで、そういう徴税強化を根本の精神とする税制調査会答申に対してこれが作られているのでありますから、たとえ五項目を削っても、その本質というものは私は変わらぬと思うのです。やはり権力者側において徴税を強化するという性格というものは、決して変わらないと思うのです。これがこの法案反対する第一の理由であります。  それから、第二の理由は、この法案は本末を転倒している点であります。徴税を強化しなければならないのは税負担が重いからでありまして、税制調査会答申にも明らかなように、日本の現状としては、諸外国に比べても、戦前に比べても、税負担がきわめて重いわけです。ですから、税制調査会は当分の間、大体国民所得の二〇%程度の税負担にすべきであるという答申が行なわれているわけです。その税制調査会答申に沿って思い切ってここで減税すれば、徴税をそんなに強化し厳格にしなくても、私は徴税というものは円滑にいくと思うのですが、ですから、まずこういう国税通則法のような徴税強化を根本の精神とするこういう法律案を、急遽ここで制定する前に、税負担を軽減するということと、それから税負担を公平化させるということが先決問題だと思うのです。今の徴税の現状は、税負担が重いばかりでなく、もう著しく不公平です。予算審議の過程で明らかになりましたが、たくさんの資産所得が課税されないで放任されているのですね。各種の譲渡所得とか、あるいは土地の譲渡所得、あるいはまた国民貯蓄組合法を悪用して、そうしてたくさんの資産所得、不労所得が、働かないで得られる所得が課税外の対象に置かれているのです。そういう点から見ると、実に不公平な税制になっていると思うのです。そういうことを改めるのが第一の問題であって、何もここで通則法を急速制定する必要はないと思うのです。  それから、第三の理由は、百歩譲って、制定の理由があるとしても、制定の時期はこれは尚早であると思います。これは税法学会意見もあります。その他各方面から非常な反対があるのでありまして、したがって、十分に学識経験者あるいは利害関係者の意見を徴して、そうして慎重にこれは制定すべきであったと思うのです。税法学会意見書にもそういう点が述べられておりまして、一年や半年の間にこのような国民権利義務に重大な影響を及ぼす法案を軽々に作って実施に移すべきではないと思う。時期尚早である。なぜそんなに急いでこれを実施しなければならないか、その理解に苦しむわけであります。  それから、その次は第四の反対理由でありますが、この法案の審議がきわめて不十分であるということです。これは先ほど冒頭に述べましたから、簡単に申し上げますが、衆議院段階でも十分審議されておりません。参議院の段階でも審議は不十分。ことに、途中で自民党が審議を打ち切ってしまった。これは国民が非常に不満に思うと思います。われわれはいたずらに審議を延ばしているわけじゃありません。審議して、重複質問がたくさん出てきて、そして明らかに引き延ばし作戦をやっていると見られる場合には、これはいたし方がないかもしれません。しかし、疑義を明らかにするために一生懸命にやって、まだまだ逐条的に検討すれば疑義を明らかにしなければならない点はたくさんあるのでありますが、それを明らかにさせないで審議を打ち切ってしまった。それから、国会法第五十一条二項に違反して公聴会を開かなかった。これは非常に遺憾な点であると思います。  それから、最後の反対理由でありますが、それは施行期日についてでございます。この法案は四月一日が施行期日になっております。わが党としましては、本日はもう四月二日なんでありますから、施行期日は修正をいたしまして、「四月一日」実施になっているのを「交布の日」というふうに改めるべきだと思います。この点につきましては、参議院の法制局等の意見を徴しましたが、実施上差しつかえないと、こういう御意見でございましたが、日本社会党としてはこの意見に承服することはできません。これは修正をしないと法律に空白の期間ができるのでありまして、これは違法の性質を持つと、こう考えているわけです。だから、当然「交布の日」と改めるべきである、こういうふうに考えております。  以上五点にわたりまして反対の理由を開陳したわけでありますが、以上のような理由によりまして、日本社会党はこの国税通則法に絶対反対する次第でございます。
  218. 永末英一

    永末英一君 私は、民主社会党を代表いたしまして、ただいま上程されております二つの法案について反対意見を述べます。  第一は、本委員会委員長が非常に公平に審議を進めているその最中、しかも十分審議が尽くされていない段階で、自民党の側から審議打ち切りの動議が出て、審議が十分されていないままでこの法案審議の終結を見つつあるという事態を、非常に遺憾に存じます。なぜかならば、これはそれぞれの各政党の問題ではなくて、納税者である国民が、自分の財産等について国家権力によって制限をされてくる、その態様について非常に重大な関係を持っている法案を審議する場合には、審議だけは十分に尽くさねばならぬと考えるからであります。たとえば、本国税通則法が、その基本的な性格といたしております点がその第一条に盛られておるということでございますけれども、その中には、この法律には国税についての基本的な事項が盛ってあると、こういうのです。しかし、私ども考えるところによれば、国民は憲法によって納税の義務を与えられておりますが、その納税の義務の果たしようについては、今まではそれぞれのたくさんの税法上の扱いが規定されただけであって、その義務を遂行する場合に、一体国民利益というものはどのように国が守らねばならぬかということを規定した法律はございません。しかし、問題は、昔のように、国と国民とが上下関係に立つのではなく、いやしくも財産に関する、あるいはまた経済的財に関する問題については、国と国民とは同等の立場において行なわれるべく、取り扱われるべきだとわれわれは考えるからである。すなわち、言葉をかえていえば、昔の権力主義的な一つの租税徴収体系というものについて、国民はこれを強く是正を望んでおったと思うのです。もしもこの国税通則法がそういう点について新しく今まで雑多であったいろいろな法律をまとめて、一つの基本的な通則を作ろうというのであれば、この点こそは見のがしてはならぬ最も重大な点であったと思うのです。ところが、残念ながらこの点が貫かれていない。たとえば、国民が、各税の決定があった場合、それが不服と考えた場合にいろいろな審査要求をしたりしようというようなことが、この法律では他法の成立を待つがためにその施行期日が十月一日まで延ばされている。私どもは、その不服審査等の件について十分にこれで国民権利が担保されていると思いませんけれども、今まで政府当局が説明したところでは、従来よりはいささか国民利益が担保されているとするならば、他法の成立を待たずして、もっと早くからこの法律案の中に施行期日をきめるべきが至当であったと思います。すなわち、これを半年も延ばしておるという一つの身がまえの中に、この国税通則法自体が国民利益についてはなはだ考えるところが少ないということを暴露しておるものであると考えざるを得ないわけであります。したがって、こういうものについて国税通則法という名前を冠するのは、はなはだどうも羊頭を掲げて狗肉を売るものではないか、むしろ徴収手続法、その程度のものであって、もしもこれをもって、国民が国税に対するいろいろな考え方に、一応これで終局的な筋道が立った、こういうように考えるならば、とんでもないことだと思います。そういう観点から、この国税通則法という名前、しかも目的にあげられたことが満足せられていないという点に、私どもはこの法案に対して賛成できないという基本的な考え方を持ちます。  以下、国民利益がどのように担保されていないかということを、事例をあげながらわれわれの反対意見を開陳したいと思います。  第一は、最初この草案が出ましたときにいろいろな意見が出ました。最終的には、実質課税の原則等五項目にわたって今回は規定をしなかったということでございます。規定をしなかったのが、一体今の観点からすればどうなっておるかと申し上げますと、これをもし何らか抽象的な規定を設ける、あるいはまた何らかの規定をもってこれを執行していくということになりますと、国民が、この法文に盛られた文章だけでは推測、予知でき得ないような事態において、税務行政機関の判断によって措置せられる、こういうことが非常に国民に不利益になるのではないか、こういう判断が政府当局にもあったがために、これを今回盛らなかったのであろうと思う。しかも、将来の見通しにつきましては、この点について、ある部分については、相当長い間の成熟を待たなければできないという考えもございまするが、ある部分については、何らかの契機があればこれを盛ろうというような感覚が政府当局にある。こういう点についても、国民はひとしく非常に不安の念を持ってこれを見ておると私ども考える。との政府の考え方についても賛成をいたすわけには参りません。  第三の問題は、納税の態様を申告課税と付加課税と二つの方式に分けました。しかし、申告納税制度が昭和二十五年以来、シャウプ勧告に基づいて設けられましたけれども、その当時には片や申告納税制度を設けながら、片や所得税、法人税等におきましても、推計課税が白昼大手を振って堂々と行なわれてきておる。つまり、国民には一応申告はさせるけれども、政府のほうの見込みによって、行政機関の見込みによって推計をやってよろしい、こういうことが行なわれておる。もし租税通則法が一応申告納税方式をとるいろいろな税目をきめまするならば、これを主軸にして物事の手続をきめるべきであって、推計課税方式の残滓を残して、これを運用すべきでないとわれわれは考えます。これが本委員会におきましても、規定には十六条等においてなおその遺物を残しておるがために、いろいろな疑義が出たと私ども思うのであります。私どもは、税務官庁が、たとえば政府が所得倍増計画によってかくかくしかじかの職業種には大体これくらいの所得の伸びがあるだろうというような、間接的な一般的な経済の成長発展の速度を片や考えてやるが、そうしてこの世帯には大体このくらいの収入があるのではないかというような見込みを片や持って、もし一方的な判断を持って、調査をしたと称して申告納税の結果に対して違った結論を出してくるとするならば、ゆゆしき重大事であると思います。しかも、そのゆゆしき重大事である見込みは、通則法においては決してぬい去られておりません。私どもは、この申告納税制度が民主的な納税制度として主軸として運用していくべきものであるというのならば、政府はこれまで行なってきた推計課税の方式を改めて、もしわれわれ主権者である国民が申し立てておられる課税の態様についてはそれに即して、あるいはまた国民が作り上げる租税関係法律に即して、これを政府側が一々これに対して反駁すべき点があれば反駁をすべきである。それと無関係な一般的な条件を理由にして、国民の所得を勝手に推計してもらうのは、はなはだ迷惑千万であると私ども考えまして、こういう点はもっと強く政府当局の考え方をただしたかったのでございますが、先ほど申し上げましたとおりの事情によって、本委員会で十分に尽くされておりませんことをはなはだ遺憾に存じます。したがって、またその点の不分明な点を残したままでございますから、こういうようなやり方については、われわれとしては反対をせざるを得ないと申し上げざるを得ないのであります。  第四点は、新たに納税者の概念が作られました。これは従来の納税義務者、あるいはさらにまた源泉徴収義務者であるとか、特別徴収義務者であるとかいうものを一緒にしました新たな概念でございます。憲法に認められている納税の義務、これを果たすべく直接国庫に自分の所得から支払わるべき納税義務者と、それから手続上政府が何らそれに対して反対給付を行なわないで単に税務行政の便益のためにいろいろな今まで納税をさせるものを作りました、こういうものを同じ概念に取り扱われて、そうしてこの通則法によってはそれらがいろいろな税務行政上のルートに乗りました場合に、いろいろな問題を起こした場合に、一列平等にこれが取り扱われるということには、私は概念上も非常な不当な拡大であって、そうして実質的にはこれら納税義務者以外に新たに納税者の概念に包摂されてくるところの人々に対して、非常な不便を与え、不利益を与えるもとになっておると思います。この点につきましても、政府の見解を十分に実態に即してただしたかったのでございますが、残念ながら時間がございません。こういう点についてはわれわれははなはだ遺憾である。これらの概念を、どうしてこれを作る必要があるかということについて考えます場合に、私どもは本国税通則法のような姿でこれが出されてくることには反対をいたします。  第五点は、質問検査権に関する規定を、本国税通則法はいろいろな論議の末書き上げるに至っておりません。しかし、各税法にはこれが書き上げられておる。この点でございまして、国民利益を守るというのならば、せめて、一番税制の末端において日常国民が突き当たる問題はこの問題でございますから、これについては特にやはり法案の中に規定すべきが至当であったと私は思います。他の税法それぞれを検討いたしますと、その質問の態様あるいは検査の態様、それにつけ加わる罰則の態様は種々まちまちでありまして、こういう点について国民利益を担保するならば、その国民利益を担保するという点において、やはり一般的な規定をこの通則法に盛るべきが筋道であったのではなかったかと思います。しかも、この点につきましては、当委員会におきまして、たとえば物品税法あるいは酒税法等の点において取り扱いが一致していない、こういう点について私は質問を試みましたけれども、戦前の国税犯則取締法におきましても、規則を犯す者についてこれをやる、こういう考えである。いわゆる刑訴法におけるような犯罪の観念は使っていないように私は受け取っております。したがって、その規則を犯した者については犯則嫌疑者という名前が使ってありますけれども、それを犯人であるとか、犯罪を犯した者というような一方的なきめ方をとっていないとわれわれは了承いたしております。ところが、このごろは行政罰と司法罰と二つある。どちらも加罰の対象になる。その対象になる一つの事案というものは、これは犯罪と呼んでもいいのだというような非常に法律用語上の混乱が整理されずにまだ残っているのではないか。こういうことを考えました場合に、たとえばよりうらはらを考えますと、その具体的な事案に突き当たった場合、納税者がこれに対してどの程度対応しなければならないか。刑事事件につきましても、国民は黙秘権が憲法で認められている。ところが、行政事件についてはその黙秘権があるのやらないのやら、行政上の都合からいえば、ないといったほうが都合がいいかもしれませんが、その相手方になる国民のほうからいえば、一体どの程度協力をしておればいいのか、どの程度からは協力でないとみなされるのかというようなことがはっきりいたさぬのに、加罰されてはたまったものではない。こういう点についての取り扱いの原則というものがはなはだ不分明でございます。したがって、私どもはそういう片手落ちなこの法案に対しては賛成をいたすわけには参りません。  第六には、延滞税の新しい制度ができました。この延滞税が今までの利子税、加算税と合体して作られました新しいものではございますけれども、たとえば法人の損金不算入という制度が、個人の損金に算入しないのであるから法人も算入しないというような一部分かえられた面がある。こういうかえる面についての考え方は、私どもは、もし片一方損金算入をして納税者利益を保つというのなら、平等に法人にもそれを均霑すべきであって、納税者の不利益のほうにしわ寄せをするというような考え方がわれわれには納得できません。さらにまた、納税の督促をやって十日過ぎれば納める金は二倍になります。二銭が四銭になる。ところが、一方国民が納税をいたしました場合に、余ってくる還付金を出さなければならないというような加算金は、国民が要求いたしまして何日たっても二銭であって、ちっとも上がらない。これまたはなはだ片手落ちではないか。国と個人とは経済的な関係においては平等であるという法則を租税法規でも貫くべきであって、断じて国のほうが主であって、国民利益というものはちっとも——利益でもかまわないのだ、こういうことにならぬと思います。こういう点に対する考慮が今回の通則法では払われていないということをはなはだ遺憾に考える。この点についても賛成するわけには参らぬというのがわれわれの考え方でございます。  最後に、不服審査の点でございますが、この点、先ほど申し上げましたとおりに、一応この法案に書きながら、これをもし国民利益を保つためにこれがぜひとも必要だというなら、早い機会にこれを実施すべきである。半年もおくらせてぼやっと待っているという態度には、私ども承服できません。しかも、協議団の内容、さらにまた行政訴訟を起こしました場合は挙証の責任の所在がどちらにあるかということについては、法文に照らしてみました場合にその解釈が、政府当局からの答弁がございましたけれども、はなはだ不十分ではないか。訴訟を起こすのは国民です。しかし、その処分をしたのは行政機関であって、その行政機関がなぜその処分をしたということを証拠をあげてまず裁判所に言うのが至当であって、それが処分をやったという行政手続の合理性だけを申し述べれば、すぐに挙証責任が納税者側にあるというような事項をこの通則法で設けてございますが、こんなものが一体納税者利益を保つゆえんになるかどうか。こういうことを考えました場合に、私どもはこういう考え方に対して反対をせざるを得ないと考えるのでございます。  その他、法文に盛られましたいろいろな点について私ども反対の点もあるのでございますが、以上申し述べました重要な諸点についてなお整理することなく、疑点を解明することなく、これを議了しようというのが現段階でございまして、民主社会党はこれらの諸点を勘案し、反対意向を申し上げる次第でございます。
  219. 須藤五郎

    須藤五郎君 私は、日本共産党を代表しまして、ただいま上程されました国税通則法案及び国税通則法施行等に伴う関係法令整備等に関する法案に対しまして反対をするものであります。  政府は、納税者利益に着目しつつ理解を容易にするためにこの法案を提出したと言っておりますが、これはまっかなうそいつわりであります。ほんとう納税者利益考えての法案ならば、質疑打ち切りなどせずに、十分に時間をかけて審議すべきものであります。人民の利益を侵す法案なればこそ、その審議をおそれ、打ち切りをやったのではないかと思うのであります。これは断じて許すことのできない行為だと思います。  第一に、この法案にいう申告納税制度は全くのえせ民主主義納税制度であります。なぜなら、申告手続だけはアメリカの申告納税制度の形式のみを模倣窃用し、内容に至ってはナチス・ドイツの租税調整法における賦課課税制度をそのまま盛り込んだものだからであります。そもそも、申告納税制度とは、他の資本主義諸国の法制においても見られるように、納付すべき税額を納税者がみずから計算して申告納付し、それによって納税義務が完結する制度をいうのであります。これに対して税務官庁がこれを変更しようとするには、明白な証拠と納税者の合意を得た適正な手続を必要とする方式であります。もし両者間に合意が成立しない場合には、不一致の税額はあくまで未定であって、最終的には司法裁判所の判定によって初めて税額が確定する制度であります。このことは内閣総理大臣の諮問機関である税制調査会国税通則法に関する第二次答申説明資料、第三十一ページ及び四十六ページにおいて、アメリカにおける申告納税制度の説明として明確に記述されておるところであります。しかるに、本法案第十六条第一項第一号の申告納税方式に関する規定は、申告納税方式という巧妙な表現に名をかりて賦課課税方式そのものを伸しつけ、申告納税制度を根本から破壊しようとするものであります。  第二に、本法案第三条の「人格なき社団等」に関する規定に至っては、法人でもなく個人でもなく、したがって法律上納税義務者としての適格性を全く持たず、かつ納税義務者として捕捉できないところの社団または財団を法人とみなし、いわば法律社会における幽霊を税務官庁の一方的判断によって納税義務者にデッチ上げ、しかも所有権能力のないものから税金をもぎ取ろうとするものであります。このことと憲法第二十一条に保障されておる人格なき社団等が無数に存在するという現状とを対比して考えるならば、結局政府にとって好ましからざる特定の民主団体のみを対象とすることになり、租税公平の原則が根本的にくずされるばかりでなく、税務調査に名をかりて特定の民主団体の組織を破壊せんとする不逞な意図があると断ぜざるを得ないのであります。  第三に、本法案第二条第五号においては、憲法第三十条に規定する納税義務者以外に納税者というカッコつき納税義務者を新らたにでっち上げたのであります。そして千二百万人余に及ぶ労働者階級が本来申告納税によって納付すべき勤労所得税を、納税者という給料支払い者から一方的に賦課徴収することによって、一つには苛酷な税収奪に対する労働者階級の民主的抵抗権を奪い去り、二つには給料支払い者に対しては刑罰規定で威嚇しながら、ぬれ手にアワの税収確保を合法化せんとするものであります。政府自民党がこのような国税通則法を恥知らずな手段をもって強行せんとするのは、第一に、政府が現行税法に違反し不当な税収奪を行なっていることに対して国民各階層からの反対闘争が日ましに強まり、特に総評の源泉徴収違憲の闘争、勤労者音楽協議会の人格なき社団等に対する不当課税違憲の戦い等を先頭に、税制民主化の正当なる主張が政府の一番痛いところを鋭く突き、政府の詭弁を許さないところにまで追い詰めたからであります。そこで、政府はこの誤れる税収奪を改めるのではなくて、逆に税法体系を反動的に再編成し、その反動的政策をあくまで貫こうとしているのであります。これが第一の理由であります。  第二に、政府はこの国税通則法を使って今日矛盾が激化しつつある高度成長、所得倍増政策をなお強行し、安保条約の実行、軍国主義の強化のための財源を確保するために税収奪を今より一そう強化しようとしているのであります。ナチス・ドイツが戦時中に使用したドイツ租税調整法に見習ってこの法案を作った政府の意図はまさにこれであります。これが第二の理由であります。  全国の労働者、中小企業者が直ちに反対意思を表明し、この撤回を政府に要求したのは当然であります。政府自民党はこの国民反対の前に、また国民の反撃の前に、きたならしい詐術を弄し、あくまでもこの法案の成立を策してきたのであります。まず、政府は、当初案から最も露骨な反動的五項目を引っ込め、さらに間接税における人格なき社団等を修正削除し、あたかも譲歩したかのごとく見せかけて、その実この法案の反動的、反人民的性格は基本的に何ら変えていないのであります。それは全く国民の反撃をはぐらかし、ごまかす手段にすぎないのであります。しかも、政府自民党はこのような重要法案衆議院野党質問一日、参議院大蔵委員会ではわずか二日間、しかも審議を打ち切るというようなやり方でこれを強行し、強硬に通そうとしているのであります。これはこの法案の真の性格が明らかになることをおそれた政府自民党の卑劣な態度で、全く言語道断と言わなければなりません。  以上、本案は憲法の基本的な精神、特に憲法第三十条、第八十四条の租税法定主義、第三十一条の罪刑法定主義を真向から否定し、民主的申告納税制度を根本的に破壊するものであります。この政府の政策は税収奪のための人民弾圧であるばかりでなく、政防法、ILO八十七号条約批准に伴う国内労働法の改悪等とともに、全般的な反動政策、軍国主義強化の政策の一環であることは明らかであります。  わが党は以上の見地からこの国税通則法反対するとともに、この法案反対して戦ってきた労働者階級、中小商工業者等とともに、この法案を粉砕するまで徹底的に戦うことを明らかにするものであります。
  220. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ほかに御意見もなければ、これにて討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  221. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 御異議ないものと認めます。  これより採決に入ります。国税通則法案国税通則法施行等に伴う関係法令整備等に関する法律案を問題に供します。両案を衆議院送付案どおり可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  222. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 多数でございます。よって、両案は多数をもって衆議院送付案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、諸般の手続等については、先例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  223. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたしました。  これにて散会いたします。    午後四時五十分散会