運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1962-03-29 第40回国会 参議院 大蔵委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月二十九日(木曜日)    午前十時五十四分開会     —————————————    委員の異動 本日委員藤田進君辞任につき、その補 欠として野溝勝君を議長において指名 した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     棚橋 小虎君    理事            上林 忠次君            佐野  廣君            荒木正三郎君            永末 英一君            市川 房枝君    委員            青木 一男君            大谷 贇雄君            岡崎 真一君            高橋  衛君            田中 茂穂君            林屋亀次郎君            堀  末治君            前田 久吉君            山本 米治君            木村禧八郎君            成瀬 幡治君            野溝  勝君            平林  剛君            原島 宏治君            大竹平八郎君            須藤 五郎君   衆議院議員    修正案提出者  毛利 松平君   政府委員    大蔵政務次官  堀本 宜実君    大蔵省主税局長 村山 達雄君   事務局側    常任委員会専門    員       坂入長太郎君   説明員    国税庁間税部長 上田 克郎君    日本専売公社総    裁       阪田 泰二君    日本専売公社販    売部長     狩谷 亨一君    日本専売公社塩    脳部長     高橋 時男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○物品税法案内閣提出、衆議院送  付) ○国税通則法案内閣提出、衆議院送  付) ○国税通則法施行等に伴う関係法令  の整備等に関する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○租税特別措置法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○酒税法等の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ただいまから委員会を開きます。  まず、物品税法案を議題といたします。  質疑のある方は御発言を願います。
  3. 平林剛

    平林剛君 昨日、私は大蔵大臣に対して、税法関係から、今度の減税はたばこに及ばなかったという問題を取り上げまして、今後の善処方を要求をいたしておいたのでありますけれども、そのたばこに関連をいたしまして、若干質疑をお許しをいただきたいと思うのであります。  きょう専売公社総裁においでをいただきましたのは、実はたばこ販売に関する問題についてであります。私の承知しているところによりますというと、昭和三十七年度からたばこ販売小売手数料変更するというお話を聞いているのでありますけれども、まだ確定したものとは考えませんけれども公社として一体どういうお考えでその販売小売手数料変更考えるようになられたのか、このことについてまずお尋ねをいたしたいと思うのであります。
  4. 阪田泰二

    説明員阪田泰二君) お尋ねのございましたたばこ小売手数料歩率の問題でございますが、これにつきましては、御承知のように、従来は原則として売上高の八%というところでございますが、月十二万といいますか、年に百四十四万以下の売り上げ部分につきましては八・五%、こういうことになっておるわけでございます。これにつきまして、いろいろ小売店経営実情収支状況等も勘案いたしまして、明年度からは月十二万円以下の部分につきましては九%、それ以上の、それをこえる部分につきましては従来どおり八%でありますが、さらに、非常に売り上げの大きい部分、月百万円をこえる部分につきましては六%、こういったように直したいということで、準備を進めておるところでございます。  そういうふうに改訂いたしました趣旨は、結局、先ほど申し上げましたように、小売店経営実態を見てみますると、非常に売り上げの小さいところでは、なかなか現在の手数料では、売り上げの絶対額が少ないのでありまして収入の絶対額も少ない。したがいまして、かなり経営の苦しい面がございます。そういう面について見ますとともに、非常に売り上げの大きい面につきましては、ままここに、売り上げの少ないところよりも採算がいい、こういうことが、いろいろ全国実態調査公社でやっておりますが、そういう面からはっきりいたしておりますので、そういう面につきましては従来よりも率を多少下げる、こういったようなことで方針をきめました次第でございます。
  5. 平林剛

    平林剛君 ただいまのお話を承りまして、販売小売手数料変更について公社考えておることについてはほぼわかりました。しかし、ただいまのお答えの中には、そういうふうに直したいと思って準備を進めているというお言葉がございました。まだ確定をしていないということに承知をいたします。そこで、専売公社が、かりに、そういうふうに直したいと思って準備を進めておられましても、ただいま承った理由について、私がこれから指摘をすることで総裁としても十分考えなければならぬということがございましたならば、また全般的情勢から再検討することがあり得る、こう考えてよろしいでしょうか。
  6. 阪田泰二

    説明員阪田泰二君) ただいまのところは、先ほど申し上げましたような方針で進むつもりでおるわけであります。
  7. 平林剛

    平林剛君 ただいまのところそういう方針でいくということは、次の段階によって、場合によっては、検討した結果、若干是正したほうがよろしいということになるかもしれないという意味が入ったものと、私は好意的に理解をいたします。  そこで、ただいま公社が今後準備を進めておるという中において、私ふに落ちない問題がある。月の売り上げ十二万、年間百四十四万円以下の売り上げに対して、これを八分五厘から九分に持っていくということは、手数料引き上げでありますから、なかなかけっこうなことだと思うのです。私はむしろこの際一割程度引き上げることが妥当だと思っておりますけれども引き上げの場合には、ないよりあったほうがましだという議論もありまして、そう問題にはならないかと思うのであります。しかし、百万円をこえるものについては、現行八分を六分に引き下げていくというやり方は少し苛酷であって、筋が通らないのではないだろうかと思うのであります。その理由は、だれでも今日の生活よりあしたの生活の向上を望むのは共通の感情であります。だから、たばこ小売屋さんといえども、かりにそれが月に百万円以上の販売成績を上げておったものだといたしましても、なおさらに売り上げを増進するという意欲に燃えて生活を改善をしていきたいというのは、これは今日池田内閣自由主義経済における当然の思想ではないか。いわんや、池田内閣所得倍増政策ということを掲げまして、各国民の所得をふやしていくのだという建前からいきますというと、いかにたばこ屋さんであって、それが百万円以上こえるうちだからといいましても、いきなり現行八分から六分に引き下げるというやり方は当を得ていないのではないだろうか。また同時に、たばこ屋さんにとってみますと、やはり既得権という考え方はあると思うのであります。今までピースを売るごとに、あるいは新生、バットを売るごとに、八分の歩合があった。それが昭和三十七年度からいきなり、公社準備を進めておられる構想に基づいて六分に下げられるということになると、既得権侵害ということになるわけです。これを一方的に実施をするということは、私はいかに専売公社が権力を持っておってそれをやるのはおれの自由だということになっておりましょうとも、やはり権力的な実施という批判を免れないだろうと思うのであります。同時に、かりに、百万円をこえている、たくさんの販売成績を上げているところは、月の売り上げが少ないものと比べたら利潤があるのだということであると仮定いたしましても、お前の小売店売り上げがたくさんあって、利潤がたくさんあるのだから、八分から六分に下げるというやり方は、どうも筋が通らない。たくさんの売り上げがあって、それだけ利潤は少し上のほうが制度が変わる、こうがあれば、税務署はその所得に対して税金をかけるわけでありますから、そこで調整をしていけばいい問題ではないでしょうか。私は、今日、人件費やあるいは諸般の事情から、物価の上昇の機運の中におきまして、たとえ小売屋さんがもうかっておると仮定いたしましても、それをいきなり八分から六分に下げるというのは理屈に合わないんじゃないかというふうに考えるのであります。私のこの見解に対しまして、なお八分から六分に下げなければならぬ理由というのはどこにあるのでございましょうか。
  8. 阪田泰二

    説明員阪田泰二君) 手数料のきめ方につきましては、上げるほうはけっこうだけれども、下げるほうは既得権侵害ではないかと、こういった御趣旨質問ですが、やはり手数料というものは、その実態に応じて適正な手数料の率をきめる、こういうことが基本的な考え方であるべきだろうと私は考えておるわけであります。今回も十分に小売店実情を、これは全国で多数のサンプルを抽出して調査いたしました結果でありますが、そういったものをいろいろ参考にいたしまして、それぞれの売り上げの階層に応ずる利潤状況等を十分勘案いたしまして、こういう歩合が適当であるということできめましたわけであります。売り上げがふえれば率が減るということはおかしいじゃないかといったような御趣旨お尋ねもございましたが、現状におきましても、十二万円までは八分五厘でございますが、十二万円以上に売り上げがふえますと八分に下げる、こういった制度にすでになっておる。今回いうことをやったわけでありますが、従来からやっておることを拡張して一そう実情に適するように直した、こういうことに御了解願いたいと思うのでございます。  もうかるならば税金調整すればいいじゃないかという御趣旨の御質問もございましたが、これは今主税局長がおられますが、税金というものは、まず利潤なり所得がありまして、その所得に対してかかるわけでありまして、よけいもうかるものを税金調整するといってようなことは不可能じゃないかと私ども考えておるわけでありますし、あくまで手数料そのものを適正にやっていくということが本筋であろう、こういうように考えておるわけであります。
  9. 平林剛

    平林剛君 総裁お答えとしては、まことに適切でない引例がございました。現在でもたばこは、十二万円以下のものは八分五厘であって、それ以上のものは八分で、下げておるのだと言われました。これは高いものを下に下げたのじゃないのです。私がこんなことを説明するのはおかしいのですけれども、従来たばこ販売手数料は八分であったものを、下の分を八分五厘に上げただけでありまして、下げたという例は今度初めてなんです。総裁のただいまのお答えによりますと、あたかもそれを下げたかのごとき印象を含めたお答えがございましたけれども、それは誤りであります。むしろ、今日の経済情勢全般を考慮して、八分から八分五厘に上げたのでありまして、ただいまの御説明は私に対する答えとしてはどうも理解ができません。これは私が申し上げたほうがほんとうでありまして、総裁がこれは下げたのだというような言い方をされたことはむしろ誤りでございますから、同僚議員もそのつもりでお聞き取り願いたい。  そこで、私は、小売店経営規模によりまして、割合と売れないようなところは経費がかかる、たくさん売れるところと比べると経費がかかる、だからこれを九分引き上げるのだという理屈はわかりまます。また、それだけに限らず、月に三万円程度しか売れない小売屋さんのごときは、マージンが二千四百円くらいしかないのでありますから、かりに十万円売れたとしてもマージンは八千円でありますか、あるいは八千五百円ということになるわけでありますから、そういう意味では、現在の状況のもとにおいても八分五厘にし、九分にし、あるいは一割に持っていくことが当然の前進だと思うのであります。割合と高く販売できる小売屋さんはそれほど経費がかからない、こういうふうにおっしゃる。だから、その手数料はその実態に応じて下げるというのがあなたの御説明であります。  しかし、しからばたばこ小売屋さんの経営実態について経費がどういうふうになっておるかということは、私は議論があると思う。総裁はそれを全国的に実態調査されたと言いますが、一体何軒、どういう規模でおやりになったでしょうか。その経営実態調査した実際につきまして御説明をいただければ、私ども納得できない。また、これは調査の仕方によってずいぶん違いますし、私も一つサンプル調査は持っております。専売公社はどういう規模によって、何軒、いつ、どういうふうに調査をされたか、これをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  10. 阪田泰二

    説明員阪田泰二君) 最初に、私が何か、十二万円以上の売り上げのものは料率を下げたのだといったような御説明を申し上げたようなこともございましたが、さような趣旨で申し上げたのは、手数料体系と申しますか、手数料がどういう形になっておる、十二万円までは八分五厘、これをこえれば八分、さらに将来の問題としては、百万円をこえる部分はまた率が下がると、こういった点が手数料体系になっている、十二万をこえれば料率が下がるのだ、こういう御説明を申し上げたつもりでございます。全体が八分五厘であったものを、十二万以上は八分に下げたのだといったような御説明は申し上げておりませんので、御了承を願いたいと思います。  なお、料率を下げるということは、これは平林委員も御承知のように、戦前におきましても手数料率が一割というような時代もございましたわけでありまして、手数料率を過去に下げたことは絶対ない、あるいは手数料を下げることは既得権の剥奪であってそれはできないことであるといったふうには私ども考えていないわけでございます。その点は御了承願いたいと思います。  それから、ただいまの小売業者経営実態調査の問題でありますが、これは即売公社で毎年全国的に標本を抽出いたしまして、記帳させ、収支調査をいたさせております。件数は、大体昨年千二百軒くらいだろうと思いますが、調査の詳細の内容につきましては、たいへん膨大なものでありますが、もし御必要がございますれば、資料を取り寄せて、それぞれ係から詳細に御説明申し上げてもよろしゅうございます。
  11. 平林剛

    平林剛君 まあ先ほどの私の抗議に対してはあらためて御回答がありましたから、了承しますが、もし体系を少しずつ変えるというのなら、下のほうは一割にして、その次は九分にして、八分にして、こういうこともあるわけですね。それをいきなり九分から六分にもっていくことは、これは穏やかでないのではないかということを私は申し上げておるわけなんであります。  そこで、今全国調査千二百軒くらいで行なったという総裁お話がございましたから、一応それは実態を見なくても御信用申し上げて、了承いたしましょう。しかし、千二百軒の小売屋さんの実態調査に基づいて、それでは大体公社調査によりますというと、売上高や、あるいは利益経費、いろいろなものを考えまして、経費がかからないということが先ほど上げ下げする理由になっておるようでございますから、その調査結果によりますというと、平均経費というものはどのくらいに売り上げに対してなっておりますか。まあそれがわかりますというと、専売公社経費がかからないのだから八分を六分に下げたのだ、こういう理屈もあるいは納得できるかもしれませんけれども、その千二百軒を総合的に調査した結果、平均経費は幾らと見込まれたので、だから八分から六分に下げたとおっしゃるのですか。
  12. 狩谷亨一

    説明員狩谷亨一君) ただいまの御質問に対してお答えいたします。千二百軒の小売店調査をいたしました結果、大小に格差がございまして、売り上げに対しまして、従来からの実績で申しますと、大体二%程度経費になっております。これを最近の調査に基づきますと——これは二%と申しましたのは、おおむね従来何年かにわたってその程度数字が出ておりますが、さらに最近の数字を見てみますと、若干上がって参りまして、低額の小売店について申しますと三%強、高額の小売店について見ますと二・五%程度経費率になっている次第でございます。ただ、これは経費率の問題でございまして、経費率のほかに、小売店実態を見ますためには、商品回転率がどうなっているか、あるいは資本回転率がどうであるか、また経営資本純利益の率はどうなっておるか、そういうような角度もあわせて検討いたさなければならないと思いますが、商品回転率で申しますと、高額の小売店のほうが五割方高い率を示しております。また、資本回転率で申しますと、約倍程度比率を示しております。経営資本対純利益率で申しますというと、これまた約倍程度比率を示している、こういう、実情でありまして、高額の小売店のほうがさような経営資本から照らしてみまして経営が安定している、収益の額も多いと、こういうことが言えると考えております。
  13. 平林剛

    平林剛君 私は、ただいまの千二百軒のサンプル調査をやった事実は認めますけれども、しかしその平均経費の見方、またその取り方、こういうものについてはたいへん疑問がある。これは全国たばこ販売協同組合においても、同じように東京や大阪、名古屋の標準のたばこ店調査いたしました結果によれば、対売り上げに対して五・四%は平均経費がかかるという調査結果になっているのであります。問題は、これは取り方によってどう見るかということでかなり違っているわけであります。私は、こういう千二百軒にしろ何軒にせよ、取り方によって違ってくる。そのことだけを取り上げて、八分から六分に下げるというようなことは適当でないのではないか。あまりにもダウンが激し過ぎるのではないか。むしろこの際は現状維持をさせて、そして下の分を上げる程度のことでとどまるというならまだしも、八分から六分に下げていくということ自体が問題は大き過ぎると思うのです。何かほかにも理由があるのではないのですか。  たばこ販売協同組合の幹部の人たちにお会いしましたときも、こんな話をしておりました。これは与党にも関係があるのです。政府、自由民主党が最初財政部会で、パチンコ業者に対する大口割引販売がどうもある、これは適当でない、そういうことをきらうあまり、この歩率調整が必要であるというような議論が出て、専売公社はそういう議論を得たりかしこしというわけでこの改正に乗り出したのだという説明をしてくれた人があります。しかし、これは政府与党全般意見でないと思う。自民党もその後、これは全般意見ではないと訂正をされておるわけでありますが、今日この段階においては結果だけが残ってしまった格好になるわけであります。もう一度お尋ねしますが、議論の多い、経費は何かということだけを中心にして今回八分を六分に下げた、こういうことになるのでしょうか、ほかにも他の理由があるのでしょうか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  14. 狩谷亨一

    説明員狩谷亨一君) ただいま小売人経費調査の結果につきまして申し上げましたことにつきまして、いろいろ御意見ございましたのですが、まあ私どもといたしましては、この小売人調査、二百軒の調査、これは小売人自体に記帳させますし、組合協力も得てやっておるのでありまして、現状におきましては最も信頼のできる確実な調査であるという考えでおります。  それで、こういうものを参考にいたしまして今回のようなやり方考えたわけでありまして、まあ先ほど御説明申しましたように、実態におきましては、手数料率で差をつけた以上の差があるわけであります。しかし、実態はもちろん個々の業者によりましていろいろ差もあることでありますから、調査に現われたところ、その率をそのまま適用しますと、たいへんな手数料になるわけでありますが、そこまでは考えていないわけでありまして、まあある程度実態に近づくように調整をしようと、こういう趣旨になっておるわけであります。今回改正いたしましようとする趣旨も、もっぱらそういう関係でございまして、お話、御質問のございますような何かほかの動きがあるのではないかということにつきましては、別段そういう動きはないのだということをお答え申し上げておきます。  なお、ほかのいろいろ貴重な御意見等につきましては、いろいろお話ございましたが、この問題につきましては、私からお答えする限りではないと思いますが、ただ、パチンコ云々というお話がちょっとございましたので申し上げておきますが、まあパチンコ業者小売店から非常に大量のたばこを一口でまとめて売り渡すと、こういう場合に、手数料の戻しが行なわれておると、こういう問題は、私どもはもちろん聞いているわけでございます。今回の手数料改訂にあたりましては、戻しがあるから手数料を下げるんだ、こういうふうな理由で下げておるのではございません。ただ、経営収支状況が、そういう大口売り上げにつきましては非常に採算がいいわけであります。その結果、採算がいいために戻しをするといったような余地もできてくるのじゃないか。そういうことは確かに考えなければならないことであろうと思います。今度手数料を下げますれば、まあ多少そういうふうな点におきまして、戻しがしにくくなるといったような問題は自然出てくると思いますが、根本的な考え方といたしましては、私どもは、やはり経営実態に応じて手数料をきめるべきである、こういうことから出発しておるわけであります。
  15. 平林剛

    平林剛君 それなら、参考のためにお伺いしますけれども、千二百軒のサンプル調査、しかも販売協同組合小売店協力を得てでき上がった調査結果、それの経費が何%くらいだったら、八分を六分に下げなかったのですか。それを聞きたいのです。いろいろ利益率だとか、経費だとかございますけれども、どの程度であったならば、こんなふうに考えなかったというふうにおっしゃるのか。私はその点を参考のために聞いておきたい。今の、調査結果によってこうなったから、八分から六分に下げた。それをきわめて合理的に御説明なさろうとするなら、このくらいだったら下げなくてもよかったということも言えるでしょう。私はそれを参考のためにお伺いしておきたい。それが一つ。  それから、もう一つは、たばこ小売屋さんがパチンコ業者に対して大口に卸をしておる。最近のパチンコのはやり方から見て、その景品がほとんどたばこである現状から推測して、あり得ることだと思います。しかし、しからば、総裁もただそれを聞いているというだけでありまして、実態はつかんでおらぬようであります。もしそういうことが日常茶飯事としたならば、今日までの間に、なぜ適切な指導をなさらなかったかということも、逆にいえば言えるわけであります。聞いているだけではだめです。そういう指導をなさって、そして後に、どうしてもだめだから、直接の目的ではないけれども、間接的に効果があるからというので下げるというなら話はわかります。しかし、全国の十六万の小売店のすべてが専売法に反するような行為をやっているとは考えられない。専売法に触れるような行為をやっている人を専売法に基づいて罰するなら、これは別です。十六万の小売店全部がそれをやっているわけじゃありません。また、百万以上販売する小売店がすべてそれをやっているということも当を得ていないでしょう。総裁といえども、いや、それはやっているのだ、こう言えるかといいますと、おそらく言えない。聞いています程度だと私は思います。そうすれば、これもまた理由が成り立たないのではないでしょうか。前段の問題は、私きわめて関心を持っておりますので、参考のためにお聞かせいただきたいと思います。
  16. 阪田泰二

    説明員阪田泰二君) 最初お尋ねございました、どのくらいの経費率なら、それじゃ八%を六%に下げないでもよかったかという、こういう御質問でございますが、これはたいへんむずかしい御質問でございまして先ほど申し上げましたように、たばこ小売人経費率というものは三%、せいぜい高率なもので、これは売り上げの小さいものでありますが、それで三%ということでございます。したがいまして、手数料の八%あるいは八・五%、これに比べれば経費率は二%でありますから、要するに手数料収入の半分以上、これが大部分利益になるわけであります。そういったような関係になっておるわけでありますから、それがどれくらいになったら下げなければならぬかというようなことにつきましては、これはやはり経費率ということばかりでなくて、経営全体の、先ほどいろいろ回転率とか総収入が、全体の占める収益が、総額がどうなるかといったような観点も非常に大事でありますから、いろいろそういった見地を総合的に考えましてやるほかないのでありまして、ただ、率が何%ならどうか、こういうふうに簡単に結論は出ない問題じゃなかろうかというふうに考えておるわけでございます。先ほど申し上げましたように、そういったような状況から申し上げますと、率の調整の仕方、調べました実態に比べましては、かなり内輪な調整の仕方をしておる、こういうつもりでおるわけでございます。  それから、パチンコ屋その他に対する手数料の戻しの問題でありますが、これはもちろん専売法違反になれば取り締まらなければならないわけでございまして、事実、専売で監視をやっておりますが、監視関係で摘発しました事件もございます。ただ、実態は、これが相対取引で、現金処理でやられるものでありますから、なかなか処分するに必要な証拠をつかむことがむずかしい、こういった事実がありまして、なかなか話には、うわさには聞いておりましても、処分できるような実態をつかむということは非常にむずかしい、こういったことが実情でございます。  それから、百万以上の売り上げがある業者全部専売法違反をやっておるのかといったようなお尋ねでございまが、もちろん、私どもはさようなことは考えておりません。専売法違反をやっておるから率を下げるというような考えは全然もっていないのであります。専売法違反は専売法違反で取り締まらなければならないと思いまするし、手数料手数料で適正な手数料をきめる、こういった考えで両者進んでいきたいというのが、私ども考えでございます。
  17. 平林剛

    平林剛君 どうも私は、その総裁の御説明にかかわらず、突然変異のごとく、経費がそんなにかかっていないし、利益率が高いから、たばこ小売屋さんだけを下げるということは、ふに落ちないのですよ。これは日本の産業の中にいろいろな産業がありましょう。また、商売によっては種々雑多あり、その中には相当の利益をあげておるものもございましょう。そういうものに対しては何ら手を打たないで、なぜ、そのすべての産業の中からたばこ小売屋さんの、しかも月百万以上ということだけが条件で、そうしてその経費についてもいろいろ論争がありながら、八分から六分に下げなければならぬという理由がなぜ生まれてくるのでしょう。なぜそれだけを犠牲者のごとく選び出したか。専売公社総裁は、これからもたばこ小売屋さんの協力を得て大いに販売成績を上げてもらわなければならぬという立場にあるのじゃないですか。それをあなたが好んでそれだけを選んで、他の産業にはそんなことはありませんよ。みな所得倍増、所得倍増でもってやっておる。相当利益率を上げておるところだって、政府は決してそんなところに手をかけておりませんよ。なぜたばこ小売屋さんだけ選んで、私は苛酷といってもいいけれども、犠牲者にして、お前のところは利益率が上がるから、八分から六分だ、こういう一方的なことをやるということになるのですか。私はそれにはもっとも深い理由があるのじゃないか、こう思うんですが、どうも経費だけでは納得できない。政府与党もおそらく承知できないと思うのですが、政府与党のほうでも何か暗黙の了承をしているのですか、いかがですか。
  18. 阪田泰二

    説明員阪田泰二君) 先ほど来たびたびお答え申し上げましたように、公社といたしましては、公社が行ないましたいろいろの小売人経営実態調査その他、要するにそういう小売人経営収支実情を十分調査いたしました上で、今回のような手数料率のきめ方をすることが適正であるという結論を出しまして、そういうことで実施したいと考えておるわけでありまして、なぜ小売人手数料だけを選んだのか、小売人だけを苛酷な手数料でいじめるのかというお話ですが、これは当然のことでございますが、公社といたしましては、ほかの産業の手数料収益はどうするということはできないわけでありまして、公社関係ある取引先、これについて公社のできる範囲のことをする以外にはございません。この点は御了承願いたいと思います。  また、自民党の了承を得てとかいうお話でございますが、この点については別段お答え申し上げる必要はないと思います。
  19. 平林剛

    平林剛君 あなたにほかの産業の利益率まで下げてくれとは言いませんよ。ほかは何にもやっていないのに、あなただけなぜするのかということを言っているのです。衆議院の大蔵委員会でこの問題を質問されたときに、もう一つ理由として、総裁は、一般公共料金の例を取り上げまして、たとえば郵便切手や収入印紙は、これは手数料も、同じ政府関係事業で低いのだ。だから、今度これを下げるのは当然だ——当然とは言わないが、そういうこともあるのだということを言われましたが、そういう理由ですか。
  20. 阪田泰二

    説明員阪田泰二君) 他の公共事業等におけるいろいろな場合における手数料率のきめ方等につきましては、もちろんいろいろ実情調査いたしてみました。高額のもの、大口のものにつきまして利益率を下げておるといったものも、御承知のようにございます。ただ、しかし、そのために専売の小売人手数料につきましてそのまねをしてやった、こういうことではございません。あくまで小売人実態に基づいてやったということでございますから、御了承願いたいと思います。
  21. 平林剛

    平林剛君 それで私も少し納得しました。衆議院の大蔵委員会では、同僚議員質問答えて、それも理由一つにあげておったので、まことに総裁にしてはおかしなことを言うな、こういうことを感じたのであります。なるほど、収入印紙の場合、あるいは郵便切手の場合、たばこ小売手数料ほどのマージンは出していません。しかし、私は、もし総裁がきょうもこれを理由にするようであれば、こう申し上げようと思った。たばこは税は含んでおるけれども商品である、郵便切手や収入印紙は、これは有価証券に類するものであって、商品とは違う、これを申し上げようと思ったのであります。同時に、収入印紙は最高は二万円というのがありますが、たばこには二万円なんていうのはありません。一万円のたばこ売り上げをするには、ピースなら一個々々積み重ねていかなければなりませんが、それをマージンが多いからたばこを下げるという理屈は成り立たないんじゃないですか。そしてまた、郵便切手は、たしか税についても特別な扱いがされておるわけであります。だから、衆議院の大蔵委員会総裁が例にあげられました、一般の公共料金が低いのだからたばこの六分というのも不当ではないということは成り立たないのだ。きょうはそれを指摘しようと思いましたが、総裁はそれを例にあげられなかったので、了承いたします。  たとえば電電公社がやっている赤電話、皆さん、あなたもめったにお使いにならぬかもしれませんけれども、町にあるあの赤電話、十円ずつ入れて一通話——何通話でもできますけれども、あのマージンは三割であるわけですね。あれはたばこ小売店におけるたばこ娘も要らなければマッチのサービスも要らないし、ありがとうございましたというごあいさつもなくても、三割くれているわけですね。それをたばこのほうは八分から六分に下げる、こういうことは、私は公共料金の中においても、そういう歩合率を出しているところもあるじゃないかということを申し上げようと思いましたが、総裁はきょうは賢明にもそのことを理由にあげなかったから、私はこれ以上申し上げませんけれども、そうすると、理由はただ一つ経営実態だということだけでありますが、さてその経営実態というものは、あなたが考え経営実態というものと、また小売屋さんが考え経営実態というものが必ずしもひとしいということはありません。第三者である私どもがこれを考えるときも、必ずしも総裁の言われる経営実態を、なるほどわかりましたと胸を打つわけにはいかないわけであります。そういうもので八分から六分に下げるということは、私はやはり当を得ていないのじゃないかと、そう思いまして、総裁に再考をお願いいたしたいのであります。いかがでしょう。
  22. 阪田泰二

    説明員阪田泰二君) 先ほど来、衆議院の大蔵委員会ですか、何か印紙税その他の手数料率を、引き下げの今回の法律改正の理由にしたといったようなことを私から申し上げたようなお話がございましたが、私ちょっと記憶がございませんので、おそらくこれは何か他の者から御発言申し上げたことじゃなかろうかと思います。私としては先ほど申し上げたような趣旨考えておるわけであります。  それで、最後のお尋ねでありますが、どうも同じお答えを繰り返すようになりまして恐縮でございますが、やはり私といたしましては、先ほど来繰り返し申し上げておりまする、公社調査いたしました小売人経営収支その他の実情を勘案いたしまして、手数料率の改正ははかって参りたい、かような考えでございます。
  23. 平林剛

    平林剛君 衆議院大蔵委員会の回答は総裁でなかったかもしれないが、しかし、おそらく総裁の命を受けてその代理として出席をされておるのだと思うのでありますから、そういう意味で指摘をしておいたわけであります。幸い総裁の意思でないということがわかりましたから、この問題はようございます。  しかし、最終的に私がお尋ねしましたように、再考してもらいたいという件については、相変わらず最初お答えと同じようであります。しかし、一説によりますと、また公社の部内におきましても、予算が通過したあとで考えようじゃないかというような議論をし、それを期待している人があると思うのであります。もし、しかりとすれば、まことに奇怪千万なことでありまして、予算が成立してしまったあとにおいて直しようがないはずであります。予算がきまったあとで、何らかの働きかけがあってそれが修正されるということは、議会を侮辱するものだと思うのです。ですから、もしこれを修正をし、ある程度直さなければならぬと考えるならば、やはり少なくとも予算の成立前が最もよろしい。あとではいけないというわけじゃありませんけれども、やはり議会軽視ということのそしりを免れるためには、すみやかにその判断をすべきだと思いますけれども、巷間伝えられているというか、その関係者が淡い期待を持っておりますけれども、それも持ってはいかぬ、おれはもう断固として、平林委員からは理由がないとこう言われたけれどもやるのだ、こういうお考えでしょうか。
  24. 阪田泰二

    説明員阪田泰二君) 予算が通過したあとでどうというようなお話でありますが、そういうようなことは考えておらないのであります。予算との関係から申しますと、もちろん、この手数料をどうきめるか、これは歳入予算見積もりということと関連する問題でありまして、歳入につきましては、これはいろいろと実際の予算を実施しました実態によりまして、収入がふえることもあれば減ることもあるわけでありまして、予算で法律的に拘束されるという問題ではないように思います。しかし、現在といたしまして予算が済んだあとでやるのだ、国会を軽視して、何か予算が通ったあとやる、そういったようなことはおそらく考えている者はいないと思います。
  25. 平林剛

    平林剛君 公社部内に考えている者がかりにいないといたしましても、そういう期待を持っている関係者がいるわけです。たとえば、たばこ販売協同組合の幹部の人たちもそういう考えを持っている。ですから、私はもしこれを直すとするならば、年度内におやりなさいということを申し上げているのであります。その点、いかがですか。
  26. 阪田泰二

    説明員阪田泰二君) 年度内ということでございますが、これは一応来年度からというふうに予定されているわけであります。ただ、いろいろ、これはなかなか手続、手数、それから公社でこういう仕事をとかく出先でやるわけでありますが、関係者につきましてなおいろいろと検討の余地がありますので、実施の時期につきましては、年度初め直ちにということには参らないかもしれません。しかし、来年度からやるという基本方針は変えないつもりでございます。
  27. 平林剛

    平林剛君 その言葉を聞きましたので、私は少し納得するのであります。検討の余地があるとおっしゃったことは、まことに賢明なる総裁の判断としていいことだと思う。やはり自分でおやりになろうと思いましても、これは部合が悪いなということは、あとであるわけでありますから、各方面の意見も十分聞いて、そしてこれを検討するという態度が望ましい。私は、総裁が検討の余地もあるのでという言葉を言われたことは、まことにけっこうだと思います。  それから、告示も、これは専売公社が法律に縛られてやる性質のものでなくて、総裁ができるわけであります。告示の時期につきまして十分考えるということは、とりあえずの段階としてはいいことだと思うのであります。その告示の時期というものは、今の総裁お話であるというと、五月でやるのか、六月でやるのか、七月でやるのか、あまり変なにおいのするやり方はやってもらいたくないですね、総裁。あまり、根本的に直すならともかくとして、告示の時期を七月一日にするなんていうやり方はおやめになったほうがよろしい。今総裁お答えになりました、かりに諸般の事情から検討の余地があるから告示の時期は延ばすというならば、どのくらいのお考えを持っておられますか、どういうお考えを持っておられますか、それをひとつこの際明らかにしておいてもらいたい。
  28. 阪田泰二

    説明員阪田泰二君) この手数料の改訂の問題につきましては、いろいろ手続その他の問題がありまして、年度当初、四月一日からすぐには実施の運びにはいかないのじゃないかということを先ほど申し上げたわけでありますが、しかし、やはり先ほど来いろいろ申し上げましたように、やることが適当だと考えまして、やる方針をきめたわけでございますから、できるだけ早い機会にやりたいと考えているわけでございます。
  29. 平林剛

    平林剛君 できるだけ早くやりなさいということを私は言っているんじゃないのですよ。もう半永久的に延ばしたらどうですかということをお勧めしている。これは私は、現状からいって、今回公社がお考えになったことは適当でないですよ。私は公社に対しては比較的好意的な理解者のつもりでいます。だけれども、これはいかに小売屋さんが百万以上あるにしても適当でない、こう思いますので、告示は半永久的に延ばされることが適当である。もし総裁が今後検討の余地があると言明されたような理由をしさいに検討したら、そういう措置も含めてお願いをしたい。  私どもは社会党として、ふだんこの問題について見解を述べておりました。われわれは今度のように、かりに一割、九分、八分という段階説であっても反対です。やはり九分なら九分、一割なら一割、マージンは一律できめていくべきだ。先ほども申し上げましたような理由も含めてであります。そして、そうしなければ専売公社の職員自体もなかなか繁雑でたいへんです。これは総裁が一番よく御存じだと思う。こんな回りくどいやり方をとらないで、かりに一割の店、一割、九分という二段階の店がありましても、その売上高に応じて、この小売居は一割の歩合をもらえる指定店であるというふうにし、そのまますっきり一割にする。売り上げ経営実態に応じて、この店は九分であるということに考えたならば、それを九分の指定店にする。こうすれば、今、専売公社の職員自体も、十二万までは九分だ、それ以上は八分だ、もっと売れれば今度は六分になってしまうというやり方でありますと、定員をふやさない限り繁雑でとてもやりきれない、こういう声も総裁自身が十分御承知だと思うのでありますが、そういう意味で、私は全般を一割に引き上げるということを強く要望しておきたい。その立場から、今度の小売手数料の価格、その歩率調整についても反対なんであります。ぜひひとつ、準備を進あている段階におきまして、再検討の余地のある段階におきまして、総裁が今までの考えを修正せられることを強く希望いたしまして、この問題に関する質問は終わりまして、もう一つ別な問題に移ります。  次にお尋ねしたいことは、専売公社の合理化計画と、たばこの価格引き下げについてであります。専売公社は最近長期計画というものをお立てになりまして、特に事態の進展に応じた合理化を進めるという意味で、五カ年計画を立てたという話を聞いているのでありますけれども、その計画の大要につきまして、簡単に御説明をいただけませんか。
  30. 阪田泰二

    説明員阪田泰二君) たばこ事業の五カ年計画につきましては、公社といたしましては、これはちょうど今年度といいますか、三十六年度を含む五カ年計画になっておりまして、最近の基本的な情勢から申しますと、製造たばこの売れ行き状況、これは非常にいいわけでありまして、数量におきましても、毎年七%、八%増加を示しているわけでありますが、これからの日本の経済の伸び方、国民の所得水準の向上の見通し、あるいは喫煙人口の増加といったようなことも考えられますが、いろいろそういったような見込みを立ててみますと、こういった式の製造たばこの売れ行きの増加、たばこの消費の増加という趨勢は多分続くと考えられるわけでありますが、そういう趨勢を、いろいろと国民所得の全体の増加の数字その他の要素等を勘案いたしまして、結局それに対応いたしまするために、公社といたしましては、たばこが売れるからたばこをふやすのだといいましても、これは簡単にいかない問題でありまして、葉たばこの生産といったような面、あるいはたばこの製造の設備といったような面、それぞれ計画的に手を打って、そういう情勢に対応する面も考えていかなければならない。これは量的な面だけ申し上げたわけでありますが、国民の生活水準が上がって参りますれば、たばこに対する趣味、嗜好と申しますか専売公社に対する御要望、こういうものもだんだん高度になってくることが考えられますから、たばこの品質、銘柄、そういった面につきましてもだんだんと改良をはかっていかなければならぬ。  そういった面を総合的に勘案いたしまして五カ年計画というものを立てまして、第一年度終わるところでありますが、大体第一年度で、来年度のたとえば葉たばこの増産の見通しその他大体立ったところでありますが、製造設備関係におきましては、初年度に着手すべき工場の設備の拡張、改造、これは御承知のように五カ年計画でプレッシャーという新しい設備を工場に入れて、これからプレッシャーとしては五カ年もう少しかかりますが、新しい機械に全部入れかえていく、こういう構想で入っているわけであります。そういった工場の三十七年度から着手するこういう体制が、大体整ったという現状になっております。
  31. 平林剛

    平林剛君 その専売公社の五カ年計画というものは、公社部内の計画なんでございましょうか、それとも大蔵省との間に十分連絡調整をした結果でき上がった計画として受け取っていいのでしょうか。すなわち、これは即売公社の五カ年計画であるととに、政府自体の計画でもある、こういう理解をしてよろしゅうございましょうか。専売公社自体がそれを希望して、今後大蔵省や政府に折衝しなければならないという考えに基づく程度のものであるかどうか。その問題につきまして御説明をいただきたいと思います。
  32. 阪田泰二

    説明員阪田泰二君) たばこ事業の長期計画につきましては、これはあくまで公社といたしまして、たばこ事業の現状、将来の見通しから、こういう計画を立てて絶対にやっていかなければならないといったような考えで始めましたものであります。計画のでき始めから、そういう公社の自発的な考えで計画を立てまして、公社におきまして終始検討した結果でき上がりましたもので、でき上がりました計画につきましては、これは大蔵省にももちろん御連絡してあります。御連絡してありますが、これはこの全体の計画につきまして大蔵省でこれを認めた、これをそのとおりやっていくための予算的措置その他はすべて五カ年間にわたって了承されておる、こういったような性質のものではございません。ただ、具体的な問題といたしまして、三十七年度——明年度の予算でありますが、これにおきましては五カ年計画の二年目が出て参るわけでありますが、大体公社が意図いたしました五カ年計画の第二年目をまかなうに足りるだけのものは、予算におきましても認められておるわけであります。
  33. 平林剛

    平林剛君 専売公社がお進めになっておる五カ年計画、それが私は単なる徴税機能といいますか、専売公社事業として持っておられる一面の性格だけを追求するものではなくて、半面一般の国民消費者に対するサービス、そういうものも含まれておると理解をいたします。そうだとすれば、もし総裁も同じ考えで進められておるというのであれば、必要な大蔵省のただ連絡だけでなくて、国民大衆の利益に通ずるものであるとするならば、われわれも微力でありますが十分に御協力申し上げるつもりでおります。しかし、ただ徴税のためのものに重点が置かれ、かつこの合理化計画が対労使の間における労働条何の変更——小売屋さんに対しても八分を六分に下げることをやる公社ですから、そういう点では、もしもさようなことをやる場合においては大いなる反発が出てくるわけでありまして、そういう点はどうかひとつ公社においても十分勘案をしてやってもらいたいと思っておるわけであります。  そこで、この合理化計画の全般につきまして、私もそれがはたして国民消費者にサービスが行き渡るようなものにかなりウエートをさかれてやられておるものであるかどうかということを確かめるために、大蔵委員会に資料の御提出をいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  34. 阪田泰二

    説明員阪田泰二君) ただいま尋ねがありました御趣旨のとおり私ども考えておるわけでありまして、専売事業には、徴税機能といいますか、財政収入をあげるという面と消費者にサービスするという面がございますが、最初に御説明申し上げましたように、あくまで今回の計画は、公社として、公社がこういったような将来の経済情勢の見通しのもとに、国民に手落ちなく消費者にサービスしていくためにはどうしていかなければならないか、こういうことが基本となってできた計画でございます。その点は十分御了承願いたいと考えるわけでございます。  資料の点につきましては、御要求のありましたものは提出いたします。
  35. 平林剛

    平林剛君 協力する面もあり、また私ども要望しなければならぬ点もあるかと思いますので、資料の提出を要求いたします。委員長を通じて提出をいただきたいと思います。  そこで、私は、総裁お話のように消費者大衆に対するサービスもこの計画の中に含まれておるということであれば、まことにけっこうなんですけれども、最近の専売公社やり方を見ておりますというと、その積極的意欲がうかがえない。たとえば、昨日大蔵大臣とこの点論争したのでありますけれども、なぜたばこの価格を下げるようなことをせなかったか、これから五カ年にわたって公社は設備について、あるいは材料の確保について、工場の建設について、いろいろな抱負を持ち計画を持たれ、そうしてそのために大蔵省もぜひ国民の消費者によいものであればそれに財源的裏づけの協力をしてもらいたいと思うのでありますけれども、それだけの経費をかけて、なおかつ国民のほうのサービスには一向来ないということになると、また私は考えを改める。大蔵大臣は、今度の酒税法や、あるいは物品税法や、いろいろな間接税の軽減の際に、私の質疑答えて言いました。大蔵大臣としてはたばこの価格を実は引き下げたかった、当初はそう考えておりました。これは正直だとそのとおり受け取ったのですけれども大蔵大臣としてはそういうお考えを持っておられた。ところが、その問題を税制調査会でいろいろ議論もいたしまして、なるほどもっともだというような議論になったとき、反対をしたのは専売公社だ。私はそれを漏れ聞いておるのであります。まことに総裁の先ほどのお言葉とも見えない反対的現象が現われたわけでありますけれども総裁はなぜたばこの価格引き下げについて、せっかく大蔵大臣もそういう考えを持っておられるときに、国民の消費者に対するサービスという面を半分くらい考えて、価格の引き下げということを実現化されなかったのでしょうか。
  36. 阪田泰二

    説明員阪田泰二君) たばこの価格の問題につきましては、御承知のように、今回の税制改正案、こういうものを御検討をされます機会に、税制調査会その他で話題に上りましたわけでございます。たばこ事業には消費者に対するサービスの面と財政収入をあげる面、両面ございまして、財政収入をあげるという面では他の税と同じように検討の対象になるということは、これは当然のことであろうと思います。税制調査会の検討の結果どういうものを——負担の状況なりいろいろの状況、あるいは財政収入の観点から、どういうものをどういうふうに減税していくべきか、こういうものは全体の方針をおきめになりまして、今回の税制改正案が出ておるのであろうと思うのであります。私どもの立場といたしましては、現在のたばこの定価が高いか安いか、高過ぎるのじゃないか、下げる必要があるのじゃないか、こういった問題から検討していくものであろうと思います。  そういう面からの検討からいたしますると、現在のたばこの定価、これは御承知のように昭和二十五年度か、六年度ですか、改訂いたしまして、すぐ一度ピースを値上げいたしまして、また下げたことがございます。それを除きますと、それ以来据え置かれておるわけであります。諸物価の値上がり、ことに消費者物価の値上がりの状況等からいたしますと、たばこはその間において全く値上げをいたしておりませんので、今のたばこの定価が高過ぎるのじゃないかといったような点につきましては、必ずしも私どもはそういうふうに考えていないわけです。それで、いろいろ諸外国のたばこの価格、あるいはそれぞれの外国の国民所得、あるいは各人の所得状況に対するたばこの価格の状況、あるいはたばこの絶対的価格そのものの比較、いろいろの点から考えてみましても、日本のたばこは御承知のように決して高いとは言えないわけであります。また、いろいろと戦前と、他の物価とを比較しましての上がり方、あるいはいろいろございますが、たとえば酒類との比較、いろいろそういった面から各般の検討もそういう機会に私どもといたしましてもやってみたわけでありますが、現状におきましてたばこは必ずしも高くないという結論が出ましたので、現状におきまして積極的にたばこの定価を下げなけならないという理由はないように私どもとしては考えておるわけであります。  ただ、お話のように、確かに専売事業には画面がありまして、消費者に対するサービスという面がございます。その面から考えますと、消費者に品質のいいたばこを豊富に十分に供給するということとともに、価格が安ければなおよいわけでありますが、この点につきましては、先ほど申しましたように、財政収入とのかね合いの問題、財政当局のお考え方、こういったようなものが、何といいますか、重点になるわけでありまして、そういう意味におきまして、今回の税制改正に伴います政府の財政収入全体を検討いたしました結果、たばこについては値下げをしない、こういう結論が全体として出ておるわけだと思います。私どももその結論に従ってやはりいるわけであります。
  37. 平林剛

    平林剛君 たばこが高いか安いかという議論の立て方は、それぞれ議論の立て方によって変わってくると思います。今、総裁は外国の状況を例に一つあげられました。しかし、外国の中にもその税率——私ども高いか安いかというのは税率の面から比較検討するわけであります。それから、税率の面からいきますというと、日本より高い税率のところもありますけれども、安いところもあるわけです。しからば、国民経済の中におけるたばこの価格という面からいきますというと、アメリカの国民経済と日本の経済状態と比較していきますというと、日本のほうが高いのじゃないか、安いのじゃないかという議論も出てくるわけであります。外国のことだけが私は最大の理由でないと思いますけれども議論の立て方によって変わってくるのでないかと思います。私は、たばこが高いか安いかという議論をする場合には、やはり一面専売事業でありますから、税というものを中心にして考えていくべきだ。生産費、そうして販売価格、これの工合を見ながら価格を調整していくんじゃないか、こう思うのであります。  そういう意味からいきますと、現在のたばこの税率は、ピースの場合は六六・四%という高率であります。ハイライトが六六・五%になっている。富士も六四・三%、しかしてその半面、新生は六五・三%、「いこい」は六二・一五%という工合に、比較的低所得層が吸うだろう——趣味、多少の好ききらいがありますから、社長さんでも新生を吸っている人もあるでしょうけれども、傾向的に見ますと、新生や「いこい」というものがいわゆる大衆たばこであるという、まあ常識的に判断をいたしますと、ピース、ハイライトに比べまして、「いこい」や新生が大体において同率であるということは、百万円の月給取りにも二万円の月給取りにも所得税を同じに課すると同じような工合で、たばこの場合にはどうもそういう点は矛盾があるのではないだろうか、こう思うのであります。だから、そのゆえに、新生や「いこい」のようなたばこの価格は税率が高過ぎるのだから値段を下げたらどうだろうか、こう思うのであります。特に総裁は酒の例を言われましたけれども、酒の場合には、特級が税率五六・七%であるのに対し、一級は四六・四%、二級は三五・一%という工合に、大衆酒に近くなるに従って税率は下がっているのであります。私は、もし酒との比較をされる場合ならば、この税率の点も一つ検訂しなければならぬのではないか、こう思います。専売公社の場合は逆にパンドールとかグロリアの税率が低い。パンドールとかグロリアなんというのは、昔総理大臣をやっていた吉田さんがたいへんお好きな葉巻たばこですが、葉巻たばこを吸われる人は今社会的に見ますというと比校内高額所得者に多いのでありますが、それに対する税率は五〇%台ではありませんか。新生、バットに六〇数%もかける。あなたが、専売公社というのは半分徴税機構の役割も果たさねばならぬとするならば、この徴税の税率はきわめて矛盾に満ちたものとお考えになりませんか。こういう点もひとつ取り上げて検討なさっていただきたいと思うのですけれども、いかがです。
  38. 阪田泰二

    説明員阪田泰二君) 御質問のように、たばこが商いか安いかといったような議論につきましては、考え方、観点によっていろいろの立場があり得ると思います。先ほど申しましたのは、いろいろと例をあげまして、こういうような趣旨から、いろいろな観点から一応現在のたばこの価格は高くないのじゃないかといったような趣旨を申し上げたわけでありまして、いろいろな見方があるということにつきましては、私どもも否定はいたしません。  それで、ただいま全体のたばこの価格の水準という問題を離れまして、たばこの銘柄でその税負担割合、こういったような点の御指摘があったわけですが、これにつきましては、いろいろこれも見方といいますか、問題がございまして、そもそも公社一社ですべての銘柄のたばこを製造しているわけでありますすから、銘柄別の原価、したがいまして、原価との差額が財政収入の部分になるわけですが、銘柄別にそれをどういうふうに計算したらいいか、どういう計算が適切なのか、こういうこと自体にまず問題があるのじゃないかというふうに基本的には考えております。ただいま御指摘にありましたようなこういう原価の計策、これは公社が一応やっている計算でありまして、こういう見方もありますし、いろいろな考え方があるのじゃないかと思うわけであります。そこで、現在のたばこの価格、これはたばこも要するに趣味、嗜好品でありますが、とにかく商品でありますから、その内容において購買者が買う、消費者が買う価格をつけなければならないわけです。これにはこれだけの税を込めなければ売らないといいましても、消費者が買わなければその税収入は実現されないわけでありますから、そういったような問題がありますから、その商品の性質といいますか、内容に応じた価格格差をつけて売らなければならない、こういう問題が問題になるわけです。しかも、たばこの価格につきましては、御承知のように、あまりこまかい端数の単位は工合が悪いということで、少なくとも五円単位、それ以下のこまかい単位は差をつけていないわけです。そういったような意味から、こういうふうに公社で一応やっておりますような方法で原価計算をして見ますると、こういった多少矛盾といいますか、安いたばこのほうが税収入が多いといったような結果が出て参りますので、この点はやはり十分に研究していかなければならないとは思いますが、これもまあ一応のそういう結果が出ておるということでありまして、これに基きまして直ちにこの税率といいますか、収入部分を直すように定価の引き下げといいますか、直したらいいかどうか、すぐには結論は出て参らないと考えるわけです。しかし、まあお説のような点は私どももいろいろと検討といいますか、考えてはおりますが、この原価率が違うと安いもののほうが率が高いと、わずかでありますが、違うわけでありますが、この程度の差別、この程度の原価計算のやり方ですぐにどうという結論を出すべきものではなかろうというふうに現状としては考えておる次第でございます。
  39. 平林剛

    平林剛君 まあ全般的に総合いたしましても、たばこはやはり税率六六・七%ぐらいになりますから、確かに高過ぎるのではないかと思うのであります。だから、私どもの社会党としては、せめて五〇%程度まで下げるような努力をしたらどうだろうか。一ぺんにそこまでいかなくても、漸次その方向に向かって努力をすべきだ。なぜかといえば、きょうも議題になっております物品税法を見ましても、たばこがさように高い税率にかかわらず、テレビのごときは二〇%でいくわけですね。これは特殊なカラーテレビのようなものになりますというと、一〇%ぐらいになっておるわけです。カメラでさえも二〇%です。ゴルフ道具でさえも四〇%ですね。それで、真珠の指輪、あるいはピアノ、電気冷蔵庫、みんな一〇%台ですよ。そしてたばこだけが六六・七%というのは、やはり専売公社が半面徴税という役割を果たしている以上は、税の面からの検討ということも必要じゃないのだろうかと思いまして、ぜひたばこの価格については検討をすべきと思うのであります。  今、総裁は、端数が出ちゃ工合が悪いとか言われますけれども、それは公社のほうの側の言い分でありまして、消費者はそうは言わないですよ。消費者は五円でも安いほうがいいのですよ。たとえば新生を買う人が、三十五円だったら、五円で工合悪いなんて言いません。二つ買って七十円という計算もあるわけで、端数で都合が悪いというのは公社の言い分であって、私は国民大衆というものは、こういう物価がどんどん上がっているときに、専売公社が新生やバットや「いこい」をもし下げてくれたら、専売公社とはなかなかよくやるわいということで、一番評判のいい官庁になると、公社機構になると思うのであります。それをおやりにならなかったことは、阪田総裁のような英才を迎えた公社としてはまことに私は残念なことだと思いまして、来年はぜひそういう方向で進んでもらいたいと思っておるわけでありまして、幸い大蔵大臣も、来年度はこれはひとつ検討しましょうと言われておるのでありますから、今度はひとつ税制調査会におきましても、理屈の立て方は幾通りもあるわけでありますから、私の申し上げた点もこれは少しは引用されて価格引き下げの御努力を願いたいと、こう思うのであります。  総裁に一度聞きたい聞きたいと思っておったのですけれども総裁はかつて大阪において、まあ税金を下げることも一つの消費者に対するサービスだけれども、品質をよくしたり、あるいはまた十本詰めのたばこを十二本詰めにするということにして、二本おまけがつくのであるから、同じ価格であれば三本だけよけいつける、これも消費者に対するサービスになるのじゃないかということを御発言なさった記事を私読んだのであります。総裁としては、新しい製品十三本詰めたばこというようなことまで御計画になっているのでしょうか。私もいささか関係があるのに、寡聞にしてそういうことを知らない。総裁談話でそういうことが大大的に報ぜられておりましたので、この際に、そういうサービスの仕方もほんとうにお考えになっているのでしょうかということを、まあ聞いいてみたいと思ったのです。いかがでしょうか。
  40. 阪田泰二

    説明員阪田泰二君) たばこの価格の問題、あるいはたばこによりましてどれだけの財政収入をあげているか、こういう問題、これはまあ財政全体の問題でありまして、私どものほうからだけ御意見を申し上げるべき筋のものじゃないと思います。しかし、私どもといたしましても、大蔵省その他関係当局と十分に連絡をとりまして、この問題は研究を続けて参りたいと考えておりますので、御了承願いたいと思います。  それから、たばこの価格の端数の問題につきまして御指摘がありまして、仰せのとおりでありまして、私は現状の価格がまあいろいろ便宜と考えて、少なくとも五円単位刻みになっておるということを申し上げたわけですが、私個人といたしましても端数があってはいけないということは考えておりません。やり方によってはそういうことも十分に考えられるという意見でございますので、その点もお含みおきを願いたいと思います。  それから、大阪で私が何か申し上げたというようなお話でありますが、これは多少新聞記事等にも十分でない点があったように私思いますが、大阪に参りましたときに、たばこの価格引き下げの話がありましたので、その場合に、こういうことをやるという趣旨じゃなくて、いろいなやり方があり得るのだと、こういう話を申し上げたわけです。価格を引き下げなくても本数をふやせば実質的には価格は下がったことになる、こういったようなやり方もあるのだという説明をしたのが、何かそういうことをやるのだというふうに受け取られたのではないかと思います。現状におきましては、十二本入りのたばこ、そういったようなものを作るという具体的な計画は別段ございません。しかし、それも一つの方法として十分研究していっていいものではないかと私たちは考えておる次第でございます。
  41. 平林剛

    平林剛君 いや、それでよくわかりましたが、何か急にたばこの価格を引き下げたらどうかという議論が盛んなときに、総裁が十二本詰めのたばこなんというお話をされたので、一体それにかわるべき対抗策としてほんとうに考えておられるのかどうかということを、実は不思議に思ったのです。十二本詰めたばこを、かなり価格を引き下げてもらいたいと要望している大衆に普及するには、何年もかかる……。十年たって所得を二倍にするという計画と同じように、何年かたたないという、たばこ価格引き下げにかわる十二本詰めたばこというのは実現しないわけでありますから、そういう点では時間のズレがずいぶんあるのじゃないか。そうして大衆が今希望し、われわれが主張しているのは、当面こういう物価高の中において一服の清涼剤のごとく、たばこが下げられたらたいへんいい影響を与えるのじゃないかということで、また実際にはたばこのぜに、たばこ賃というものは、なかなか庶民一般大衆の生活ではばかにできない価格になっておりますので、そういうことを物品税や酒税を下げるこの機会にやったらどうか、それを強く要望しておったのでありますから、どうも疑問に思ったのでありますが、ただいまのお話でよくわかりました。とにかく、私は、今総裁の最終的にお答えになりましたように、政府与党においても、大蔵大臣もそういうお考えを持っておる時期に、ひとつたばこの価格についても十分お考えをいただきたいということを最後に要望いたしまして、第三の塩の問題についてちょっとお尋ねしておきます。  専売公社は、きのうか、おととい、塩業審議会か、あるいは塩の収納価格審議会かなにか開催になったというお話を聞きましたが、そこで議論されたことはどういうことでしょうか。まず、参考のためにお聞かせをいただきたいと思う。
  42. 阪田泰二

    説明員阪田泰二君) 一昨日及び前日に開きましたのは塩の収納価格の審議会ありまして、公社は塩業者から塩を収納といいますか、買います価格をきめる前には、その審議会に諮問することといたしておるわけです。先日の収納審議会に諮問いたしましたのは、昭和三十七年の四月一日、来年度初めから適用する収納価格につきましての諮問案をその審議会に提出いたしましたわけであります。審議の内容につきましては、実はまだ、審議会は一応終えましたが、まだ最終的な結論が出ない状況でありますので、ちょっとただいまお答え申し上げかねる状況でございます。
  43. 平林剛

    平林剛君 まあ塩の価格につきましては、一応審議会におまかせしておるわけでありますから、結論が出ていないとすれば、これ以上私のほうからお答えをいただこうとは思いません。ただ、私は日本の塩業全般考えた場合、これからも塩の分野においてはいろいろ問題が起きてくるのではないかということを実は憂慮しておるわけです。今日でこそ塩はだぶついて参りましたから、あまり国民は重大な関心を寄せない向きもありますけれども、しかし、国民経済における塩の役割というものは、これはなかなかたいへんなもので、戦時中のごときはそのためにかなりいろいろな政府としての施策も行なわれて参ったものでありまして、どうもこのごろは専売公社にまかせ切りでありまして、そうしてただ議会で塩の事業を整備するなんというときだけ、なるほどそうかという程度になりまして、ふだん関心が薄らいでおることは、私まことに当を得ていないのじゃないかと思う。そこで、きょうは、これらの塩業の問題について、若干総裁の御意見をお聞きしておきたいと思う。  公社として、今塩の生産、収納の指導、実務に当たっておられますけれども、塩が余り過ぎて、前に塩業整備法案というものが法律では成立をしましたが、しかし、それでもなお依然として需要と供給とのバランスがとれない。その結果、公社も手持ち在庫が相当あるようになったと聞いておるのであります。現在、国内塩と輸入塩と分けまして、大体ストックの状況はどうなっておるでしょう。
  44. 高橋時男

    説明員高橋時男君) この年度末で大体総体で六十万トンで、外塩が十万トンくらいであったと思いますが、あとでこまかい数字を申し上げますけれども、概数はそういうところでございます。
  45. 平林剛

    平林剛君 国内塩が五十万トンとしますというと、大体需要の四カ月分くらいに相当しますか。
  46. 高橋時男

    説明員高橋時男君) 大体年間、国内の食料用塩と、若干小さい工業用塩も含めてでありますが、百万トンないし百五万トンくらいが必要であるというふうに考えておるのでありますが、そのうち国内の生産者の作ります内地塩と称するものが大体八十万トン前後——季節によって若干上下がありますが、八十万トンから八十五万トンくらい、あとの二十万トン前後は外塩ということに考えております。  今まで比較的だぶついておったということでありますが、本年度末から来年度の過程において、在庫塩としてひどく余っておるというようには考えておりません。
  47. 平林剛

    平林剛君 この在庫の塩は倉庫に入れてあるものと野積みになっているものとがあると承知しておるわけですけれども、私は特に野積みの塩においては早急に整理しなければいかぬのじゃないかと思っているのですが、どれくらい野積みのストックがございますか。
  48. 高橋時男

    説明員高橋時男君) 野積みの塩は三万トンをちょっと欠けるくらいでございますが、これは順次他の用途に使って参りますので、そう長く処分に手間がかかるというふうには考えておりません。
  49. 平林剛

    平林剛君 この処理は具体的にどうしますか。
  50. 高橋時男

    説明員高橋時男君) ソーダ工業用塩に売っていくつもりでございます。
  51. 平林剛

    平林剛君 野積みになっている三万トンの塩は、専売公社が収納するときは一万二千円ぐらいの金額であったと思うのでありますが、ソーダ工業に払い下げるときは幾らで払い下げますか。
  52. 高橋時男

    説明員高橋時男君) 収納価格は、当時の収納で、ある期間にわたってやっておりますので、平均単価は幾らになるか、帳簿を調べないとわかりませんが、大体平林委員の御指摘になった数字の前後であろうかと思っております。ソーダ工業に売り渡すときには、その当時における輸入外塩の価格と比準をした価格をとりますので、ときによって若干の上下をいたしますが、大体四千円見当でございます。
  53. 平林剛

    平林剛君 そうすると、専売公社としては平均収納価格と、今回ソーダ工業塩として払い下げる平均価格との差は、およそ八千円ぐらいあるわけですね。その分は結局どういうことにするつもりですね。
  54. 高橋時男

    説明員高橋時男君) 塩会計の赤字要因ということになります。
  55. 平林剛

    平林剛君 三万トンを全部これに処理するといたしますと、どれくらいの赤字の累積になりますか。
  56. 高橋時男

    説明員高橋時男君) さっき三万トンと申し上げましたが、失礼いたしました、二万トンぐらいでございましたが、今だんだん減らしてきておりまして、坂出にございますのが一万五千トン、それから竹原にありますのが四百トンで、一万五千四百トンぐらいでございます。一万トンぐらいほど数字を間違えておりました。  かりに一万五千トンとしますと、平均八千円程度の損でございますから、一億二千万円ぐらいの損になると思います。
  57. 平林剛

    平林剛君 現在の塩事業会計の赤字は、昭和三十六年度どれくらいになりましたか。
  58. 高橋時男

    説明員高橋時男君) 若干数字の、今後の見通し等もございますけれども、ほんの少しでございますが、黒字の決算をするのではないかというふうに予想しております。
  59. 平林剛

    平林剛君 今のようなことをしても、なお黒字になる工合にまで今日の状態は達していると、こう言われるわけです。
  60. 高橋時男

    説明員高橋時男君) マイナスの要因もございますけれども、たとえば輸入塩を入れて食料塩に売れば黒も出ますので、マイナスの要因が予算編成当時に比して少なくなり、また黒字の要因が予算編成当時に比して多くなるというような彼此の差し繰りによりまして、若干の、ほんの少しでありますが、黒字になるということであります。
  61. 平林剛

    平林剛君 この前に承知をしたときには、塩事業会計の赤字が、昭和三十三年度まで二十六億円ぐらいまであって、なかなか公社として四苦八苦しておった時代がありましたが、その後の運営によりまして、ただいまのようなことになったとすれば、まことにけっこうなことだと思います。しかし、この間塩会計の赤字、あるいは今度もまた、せっかく商いお金で収納したやつを、これを安く払い下げなければならぬという、まことに国民に対して申しわけないようなやり方をとらざるを得なくなったということは、現在までの公社としての塩業政策そのものに大きな失敗があったのではないだろうかということを感ずるのでありまして、これは、三年ほど前にも十分指摘をしておきました。また、塩業整備法が通過する際におきましても、今後の善処方を求めておいたわけでありますけれども、それにもかかわらず、最近またイオン交換樹脂膜という新しい製塩方法の発達によりまして、こういう事業が最近になって操業を開始し始めた状況にあるようであります。私は、これはきわめて矛盾をしているのではないだろうか。時代の進歩とともに合理化が要請されることは当然であるかもしれませんけれども、塩が余り過ぎるという段階において、ここいらの辺を何とか調整して参りませんというと、また第三次の塩業整備というような事態に発展としていくおそれはないかということを感ずるのであります。総裁としては、今後なお塩の将来のことを考えるならば、第三次の塩業整備をしなければならないと考えられるか、あるいは現在までのいろいろな措置によって、ここしばらくはそういう心配はなくやっていけるものと判断をされているか、その点の御見解を承りたいと思うのであります。
  62. 阪田泰二

    説明員阪田泰二君) 現在の塩の内地塩の状況ですが、これは御承知のように、塩業整備後におきましては、各生産者ごとの生産ワクといいますか、製造量を割り当てたような格好になっておりまして、その範囲内で生産をやっておるわけでありまして、現状におきまして需給バランスを失するほど塩が余りつつある、過剰に生産されておるという事態は、まずないというふうに考えておるわけであります。ただいま、まあイオン交換樹脂膜による製造が始まったのはどうかといったようなお話もございましたが、これも、そういったワクの範囲内でイオン交換樹脂膜による製造をやっておるわけでございます。それによりまして増産されるというわけではございません。これは先刻御承知のことですが、日本の内地塩は、製造能力としては現在十分ありまして、また製造能力が余り過ぎたために整理をしたと、こういう事態になったわけであります。ただ、その製造されるもののコストが高いというのが難点でありますから、そのコストを下げるということに努力しなければならない。そのためには、新しい技術も、いいものは取り入れて、塩業のそういう再編成といいますか、合理化といいますか、そういうことをやっていかなければならないわけで、増産といったような意味ではなくて、内容をよくしていく、コストを下げていく、そういったような意味の合理化、再編成が今後必要になってくるということでございまして、御心配のようなことはないというふうに私どもとしては考えております。
  63. 平林剛

    平林剛君 昔のことになりますけれども、私は、イオン交換樹脂膜を使った新しい製塩方法の企業化に新日本化学というのが乗り出したという記事をここに持っているわけです。最近、この三月ですか、そこが操業が開始をされたということを聞いておるわけです。現在イオン交換樹脂膜を使って製塩をするのはここだけで、ほかにはないと判断してよろしいでしょうか。
  64. 阪田泰二

    説明員阪田泰二君) ただいまのお話は、おそらく新日本化学の小名浜でやっている話であろうと思います。ごく最近全体的に操業を開始いたしましたわけでありますが、その以前から、ほかに坂出、あるいは九州の福岡の付近ですか、二カ所で従来からやっております。現在やっているの建二カ所という状況でございます。
  65. 平林剛

    平林剛君 新日本化学の場合には、ワクが五万トンと聞いておりますけれども、その坂出と福岡、それぞれどのくらいのワクでもって許可をしておりますか。
  66. 阪田泰二

    説明員阪田泰二君) 具体的な数字はちょっとただいま記憶いたしておりませんが、大体一万トン程度のごく少ない数量で、ごく試験的にやっているといったような、そういう形であります。
  67. 平林剛

    平林剛君 このイオン交換樹脂膜によって製塩する企業におきましては、当然コストが安くできるのだから、もう少し私のほうにその製塩の許可を与えてもらいたいという要望が当然出てくるのではないだろうかと思うのでありますが、そういうときはどうなさいますか。
  68. 阪田泰二

    説明員阪田泰二君) ただいまの問題につきましては、全体のワクをきめ、これをまた各業者ごとに配分しておる、こういう実情でありますので、採算のとれる方法でできるから、そのもののワクをプラスして、総体のワクがふえる、こういったような方向に参りますことは、先ほど御指摘のような問題がありますので、総体のワクをふやすことは考えておりません。ただ、このワクにつきましては、塩業組合中央会から流れておりまして、業者間で融通するといったようなこともやっているようでありますので、そういう意味からして、ほかのワクをもらって増産するということは考え方としては可能性があると思いますが、総体のワクをふやしてそういうものに対する製造の増加を認めるというようなことは、全く私どもとしては考えておらないわけであります。
  69. 平林剛

    平林剛君 この新日本化学がある福島県小名浜に、専売公社の製塩試験場がございます。これを今後何かしなければいかぬ、企業を転換しなければならぬとか、作業の内容を変えるとか、あるいはその他の動きがあるとかいうようなことは、現在起こっているのでしょうか。
  70. 高橋時男

    説明員高橋時男君) 専売公社の小名浜工場は、年間約一万二千トンの塩を海水直煮の電気加圧という方法で作っているのでありますが、この方法は、この工場は約十年前に完成、操業を始めたものでありますが、当時におきましては、海水から電気のエネルギーを使って塩を直接にとるという新しい画期的な製塩方法ということで、公社としてはこれをひとつパイロット・プラントということで始めたのでございます。その後これにならって民間の同様な製塩方式を採用した工場が数カ所できたのでありますが、現在といたしましては、イオン交換樹脂膜製塩法のほうが、技術的にコストの安い塩ができるというような態勢になりまして、従来の電気製塩法というものは、方式としてはすでに、発足した当時のような輝かしい方式であるとは申せないような状態になっておるのであります。で、私どもの小名浜の工場も、創立後十年経過しておりますし、パイロット・プラントとしての使命も一応達成されておるというふうに考えておるのでありますが、そのほかに新しい商品の企画とか、あるいは構想とか、そういうものについても、併設的に、並行的に、試験と申しますか、実験と申しますか、そういうことのやはり使命も負わせておるのでありますが、主たる目的の電気製塩工場としての当初の使命はほぼ完了したように考えておりますので、なるべく早い機会にこれをどう今後運営するかということについて根本的に検討したいというふうに考えておる次第であります。
  71. 平林剛

    平林剛君 私は、塩業全般を見た場合に、このイオン交換樹脂膜による製塩方式がもし本格的に企業化されたときは、瀬戸内海沿岸の塩田というものはほとんどつぶれてしまうんじゃないか、極端なことをいえばそういう感じを持っておるわけであります。したがいまして、その際新しい社会問題が起きてくる。また補償の問題も起きるということになりましては、今日まで瀬戸内海沿岸に塩業を育てるために政府自体としても相当の経費を投じてやってきておるわけでありまして、またここで先回のような補償問題が起きるということになれば、二重の負担をするということになりまして、ゆゆしき問題であると思います。そこで専売公社は、今塩の事業を一部の自己輸入制度を除いては一手に引き受けてやっておるわけでありますから、これらの問題についてもよくコントロールしてもらいたい。やたら、三十一年当時ありましたように、錦海湾の塩田を許可するとか、北海道の三井塩業を許可するとか、井華塩業を許すとかということにして、そうして認めたやさきに今度は整理をして金を出してやるというようなへたなことはやらないでもらいたい。そのためには、イオン交換樹脂膜の企業化につきまして、専売公社が十分慎重な態度をもって臨んでもらいたい。これは塩業に携わっておる多くの関係者の共通の願いでもあります。そういうことをひとつ公社に要望いたしたいと思うのであります。  同時に、そういう意味で、日本の塩業は重大な転換期に立っておるといえると思うのであります。その際、専売公社の研究工場として残されておった小名浜は、そういうときこそ有効に活用してもらいたいということを思うのであります。これはひとつ総裁も十分御検討いただきまして、善処をわずらわしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  72. 阪田泰二

    説明員阪田泰二君) イオン交換樹脂膜を採用いたしまして、塩田がつぶれてしまうんじゃないかと、まあいろいろ社会問題等も起こるんじゃないかといったような御心配でございますが、公社といたしましては、いろいろこれから塩の関係は新しい技術が出てくると思います。まあイオン交換樹脂膜が一番有力なものでありますが、そういったものを採用しまして塩田がつぶれるというようなことでありますが、まあつぶれるという表現は私は当たらないと思うのでありまして、塩田にかわるより有利な方法が発見されれば、それに移る、こういう形で私は塩田からイオン交換樹脂膜なり何なり新技術の採用に移っていくんじゃないかと思うんです。塩田を離れた製塩というものに移っていくんじゃないかと、こういったような考えを持っておるのであります。したがって、塩田自体も、これはまあつぶれるということでなしに、まあより有効に活用されると、こういう形にいくことが一番望ましいんじゃないかと思っております。  御承知のように、昨年の五月に塩業審議会から、今後の塩業の方針、見通し等につきましていろいろと御意見が出ておりまして、まあその答申におきましても、大体そういったような方向で物事が考えられておるわけであります。これは今後の具体的の経済情勢の発展、あるいは新技術の進歩の状況その他によりまして、いろいろ具体的には塩業審議会の言っておられるとおりには進まないかもしれませんが、方向としてはそのような方向で進めていくのだ。もちろん、お話ありましたようないろいろな問題を起こさないように、ひとつ公社といたしましては慎重にやって参りたいと考えております。そういったような意味におきまして、公社自体としてもいろいろと研究、実験していく必要があること、これももちろんであります。  ただ、小名浜工場の問題につきましては、先ほど来由しましたように、小名浜工場、現在ありますこうした、ことにああいったような形体でできております工場をどういう方法で活用するか、また活用する道があるならばそれが適当であるかどうか問題でありますので、研究自体はもちろんやるのでございますが、具体的に小名浜工場をどういうふうにすべきかということにつきましては、先ほど塩脳部長からお答え申し上げましたようなことでありまして、十分にこれから検討して参りたいと考えておるわけであります。
  73. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  74. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 速記つけて。
  75. 平林剛

    平林剛君 私は、総裁が今お答えになりましたように、どうか一つ、日本の塩業につきましてはいろいろな問題があります。私きょうは触れなかった輸入塩も自己輸入制度の問題も、少し議論をいたしたい点があるのであります。けれども、非常に重要な段階に入っておりますので、専売公社は全知能をあげて、前者の轍を踏まないような覚悟をもちまして事に当たってもらいたい。ことに小名浜の試験場の問題につきましても、どうか活用するという方向で善処をしてもらいたい。これは私の要望であります。その要望を申し上げまして、たいへん時間も長くなりまして恐縮でありますから、この辺で私の質問を打ち切りたいと思います。総裁質疑応答とするのは今回初めてでありますが、まことに真摯に私の質疑答えてくれましたことを深くお礼を申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  76. 永末英一

    ○永末英一君 物品税法について二、三点質問をいたします。一つは、昨年度から物品税が安くなるということが言われておったのですが、元来物品税というものは戦費調達ということを目的として作られた。したがって、物品税法が改訂されるということについては、少なくとも大衆課税に類すると思われるような品目は全部はずれるだろうという予測をわれわれはしておったわけですけれども、残念ながら、少しばかりの品目は確かに課税対象からはずされた。ところが、まだ残っているものがある。残っているとすると、一体何のために物品税法を残しているかということを疑いたくなるわけであって、したがって、第一点としまして、なぜまだこの物品税法を作って課税をしようとしているかという大蔵省の見込みをひとつお聞かせ願いたい。
  77. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) お話のように、物品税は、これは沿革としましては、昭和十二年に発足しまして、その後今日まで続いているものでございます。今度相当整理いたしまして、現行法では、七十物品でございますが、このうち十六物品を非課税にいたしたわけでございます。この物品税体系は、われわれは結論といたしましては、今日の間接税の中では、私の個人的な感じをいいますと、最も担税力に相応した税である、かように考えておりまして、今後これにみがきをかけていくということはございましても、廃止すべき筋合いのものではなかろうと思っているわけであります。諸外国におきます体系を見ましても、その形はいろいろ違いますが、英国における仕入れ税、あるいはアメリカにおける製造業者消費税、あるいは小売消費税、それから西欧、欧州大陸のほうは売上税、付加価値税、こういう形でおりますが、要するに各国とも間接税体系の中で中心的な存在でございます。そういった意味からいきまして、今日われわれはこれを絶えずそのときどきの実情に合わせながらみがき上げていくということはありましても、体系として廃止すべきものではないと、かように考えております。
  78. 永末英一

    ○永末英一君 新しい物品税法では最もその国民の担税能力に照応しておるという自画自賛めいた御説明がございましたが、マッチなんというふうなものは、これはマッチがなくちゃ火がつかないのですね。それでもそういうものを残して、やはり税金を取ろうというのは、一体どういうことですか。その担税力との関係説明をして下さい。
  79. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) おっしゃるように、残りました物品のうちマッチ等につきましては、今後さらに検討を続ける必要のあるものもありますが、今日これも論議の対象になりましたが、このマッチは千本一円でございまして、大体従価になりますと五%くらい、最低税率でございます。マッチは家庭でも使いますが、広告用マッチが大体五割以上占めている、こういう実情にもございます。外国は、不思議なことに、マッチは各国とも課税しているような実情もございます。まあ、外国でもあるから残したというわけじゃございませんが、そういった消費の実情もあります。それから、税率も最も安い税率でありますので、今回はこれを存置した、かようないきさつでございます。
  80. 永末英一

    ○永末英一君 清涼飲料、嗜好飲料というような名前で残っておりますが、酒は酒で別途くくっておる。ところが、子供が飲んでおる、特に駄菓子屋等で子供が暑いときに、あるいはまた遊び盛りの子供ですからのどがかわく、そういうものにはやはり税金がかかっているわけであって、そういうものがある。担税能力に関係があるのではなくて、やはり大衆課税でやっている、こういう工合に思われるのですが、御見解はいかがですか。
  81. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 間接税全体が大衆が購入するものにもある程度かかるということは、あるいはやむを得ないかと思います。具体的に今の清涼飲料の話が出ましたので、申し上げますと、ラムネについては先般やめました。今度は残りましたのはサイダー等が残りました。御案内のように、これは一キロリットル現在一万一千円というのを、思い切って五千円に下げたわけでございます。その他の嗜好飲料につきましても、それぞれ消費の態様から見て、廃止すべきものは廃止しましたが、代表的なサイダーについては六割程度減税して残すというような形で、今日のところはそれくらいでとどまったということでございます。
  82. 永末英一

    ○永末英一君 物品税は、もしこれが残っていくとすると、やはり担税力ということだけに問題があるのじゃなくて、やはりその中において、いわば大衆生活の標準以上のものが購入されておる、そういうものに対して担税力が認められるということであれば奢侈的な物品ということが主眼になる。それをはずして、それももちろん含まれておりますが、そういうところが重点になってくれば、われわれも物品税を残しておいていいと思う。ところが、現在なお明らかに大衆課税とみなされるようなものを残しておるということについては、いささか承服しかねるわけですが、どういうことをやっても大衆課税になる面はやむを得ないとお考えになるのか。それとも、物品税になるものは、私どもが申しているように、そういう方向に整理をいたしていくべきものと考えておられるか、その点をひとつお尋ねいたします。
  83. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これは税率を見ていただくとおわかりになりますように、段階税率でございます。従来は、二種でございますと三%から五〇%までの八段階税率ですが、今回は整理いたしまして中心を二〇に置いて、上に三〇、四〇、下に一〇と、五本の税率に整理いたしたわけでございます。もちろん、いわゆる奢侈品といわれるようなもの、ぜいたく品といわれるようなものにつきましては高率の税率によっております。低い税率のものになりますと、その辺の限界は、そのときどきの消費の状況に応じまして、残すか残さないかという限界線は順次低いものから出て参ると思うのでございます。ただ、今日残しましたものにつきましては、なお今日の段階では嗜好品といわれる性質のものでございます。嗜好品でも大衆が消費するということはもちろんあると思います。全般の方向といたしましては、そのときそのときの消費の状況とにらみ合わせてはいきますけれども、できるだけそういう大衆の消費のようなものについては課税をはずす時期が来れば、そこれにしたことはないということは、全く永末委員のおっしゃることと私は同感でございます。
  84. 永末英一

    ○永末英一君 物品税の性格としましては、初めは戦費調達、それから戦後の経済の混乱期にはいささか——いささかではなくて、非常にやはり不急不要品に対して重課をするということが、当時国民生活のバランスをとる上に必要だったということがあったわけです。ようやく文章の体裁もこのごろの時代に合わしたようなことになったときにこの改正案が出たのですが、したがって、この物品税法は今までの歴史と離れて、新しく政府が物品税に対する態度を明らかにしたとわれわれは考えておる。その考え方の中には、現在の財政需要上はやはり物品税というものは残していくべきものだ、こういう意図がうかがわれるのですが、そう解釈してよろしいですか。
  85. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) さようでございます。最近、この五年間ぐらいの平均の伸び率を見ておりますと、物品税が最も伸びがいい税金でございます。同時に、間接税のうちで所得との比例関係をとってみますと、ほかの間接税はどうしてもその所得との関係が逆進的になりますが、この物品税はほぼ比例的でございます。そういった意味からいきましても、課税物品の選択は現行法でも比例的になっております。これを相当整理いたしますと、この形はもっと税体系としては好ましいのではないか、かように考えておるわけでございます。その伸長性からいいましても、その担税力との照応関係からいいましても、現行の間接税体系の性質としては最も好ましいものである、かように考えております。
  86. 永末英一

    ○永末英一君 物品税の性格については今御説明がございましたが、私どもその御説明を承服するわけではございません。ただ、これが続いていくということになりますと、この中のたとえば四十一条に質問権、検査権の規定があり、それを受けて四十六条に罰則規定がある。ところで、あなたのほうの説明では、申告納税制度をとったのだから、いかにもどうも物品税を納める側にとってやわらかい感じを持たしたような風格を与えておるわけです。ところが、申告納税にしたのだと言いながら、なおかつ検査権、質問権というものは残り、しかもそれに対する罰則はきちっと加えられておる。その検査権、質問権の内容を見ますと、物品を輸送中でもやはりやれるというような、したがって、それが犯罪になると困るというので、犯罪を何かやっておるというふうに解してはならぬという訓辞規定までわざわざおかなくちゃならぬということになりますと、一体申告納税ということを言っておきながら、やはり重点はそういうような何か、これは物品税というものは形式的な一つの法規ですから、それに引っかけてそれだけの強い質問権を認め、さらに罰則をもってこれを担保するというようなことも考えられるけれども、われわれとしてはそこに重点を置いて考えると、どうも申告納税なんというようなものはてんぷらみたいなものじゃないかと思いますが、どうですか。
  87. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 申告納税は、これは今度ほとんど全部の税が申告納税になることを予定してございます。賦課課税として残りますものはごく一部のものでございまして、税関から引き取る場合の国内消費税であるとか、あるいは国内の製造場でもってそれを消費したとかいうような場合、あるいはどろぼうが蔵から盗んだというようなときに、どろぼうを納税者にする場合、あるいは申告納税の場合、過小申告をした場合に加算税をかける。この加算税につきましては賦課決定せざるを得ない、本人が申告できませんから。こういう例外的のものを除きましては、ほとんど全部が申告納税に切りかわるわけであります。申告納税というものは、まず納税者が自分で税法をよく理解していただいて、自分が課税標準を計算し、税法の定めるところによって税額をはじき出して申告する。とりあえずはその本人の申告で税額がきまります。政府はただ、本人が申告したところの課税標準なり税額が間違っておると調査によって認めれば、その後、間違いを直します。ふやす場合もありましょうし、減らす場合もありましゃう。ふやした場合にはそれだけ増額いたします。税額が増額になります。減らした場合にはそれだけ減額になる、こういう制度でございます。したがいまして、政府が間違っているか正しいかということについての調査の権限は当然要るわけでございます。  物品税法の中に、運搬中のものに対して御案内のように質問検査権がございます。これはすべて物税でございますので、それぞれが課税物品として動いているわけでございます。納税義務は原則として製造場から移出したものに働くわけでございます。したがって、それが課税物品であるかどうかということは、ものに即して調査をされなければならぬわけでございます。そういう物税の性質上、運搬中のものについても質問検査権があるわけでございます。これは酒についてもまた同様のことでございます。今、質問検査権のありますところには、それは質問検査権は、当然違反があれば、罰則義務でございますので、それに対して違反があれば罰則の規定が法制としては設けられるのがあたりまえだろうと思うわけでございます。これがまた、その罰則を伴っているだけに、通常の刑事事件の捜査のためにされる権限ではないということを特に断わっているにすぎないわけでございます。
  88. 永末英一

    ○永末英一君 国税通則法では、そういうどの法律についても検査権、質問権を規定し、それに対して罰則をつけているというものを、通則の形で持ったらどうだという意見も税制調査会ではあったけれども、なかなか問題があるので、今回提案されている通則ではそれが書いてない。書いてないけれども、物品税法なら物品税法にそれが書かれ、事実これを読みますと、答弁しない、つまり黙否権を行使している者に対してすら罰則を強行するということになると、一体、刑事訴訟法、あるいはそれの大もとである憲法でも認められているこういうものでも、財産の移動に関係のあるようなそれに関する一つ税法でそこまでぴしゃっと規定しているというのは、われわれにとってはどうも、日本の全部の法体系という関係から見て行き過ぎではないかという感じがするのですが、あなたの御見解はいかがですか。
  89. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 先ほどの点を一つ訂正しておきます。運搬中の物品に関する質問につきましては、特に罰則からはずしてあるそうでございます。そのことだけ訂正申し上げておきます。  一般に憲法で、何人も自分の不利になる事柄については自白を強要されないということは、これは慣例、学説の通説も、これは刑事事件に関することであるということでございまして、戦争以前における刑事訴訟の実態から、この規定が設けられたと聞いているわけでございます。ところで、物品税は一般に別に憲法で定められました納税義務が円滑に遂行されるための規定でございまして、刑事とは何の関係はございません。そういう意味で、それの適正な納税義務の実現のために必要な調査権限で設けられており、当然その反対といたしまして、違反があれば罰則が適用になるということでございまして、これは刑事事件とは全く違います。
  90. 永末英一

    ○永末英一君 その物品税法には、まぎらわしいような言葉はないように思うのです。ところが、酒税法には質問検査権に関係しているその相手方を、犯人という名前を使っていますね。したがって、それはまた酒税法は酒税法のところで質問いたしますけれども、そういう感覚が背後にあって、大蔵省側が、並びに政府が、税金に関して行なう質問権、検査権というものを考えているといたしますと、やはり問題じゃないかと思うのです。どういう工合にお考えになりますか。
  91. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 今、犯人という言葉を使っているかどうかはあとで見てみますが、租税犯には、いわゆる脱税犯、逋脱犯と、それから秩序犯がございます。そこで、今の質問検査権に対する違反、義務違反ということは、いわゆる秩序犯になるわけでございます。逋脱犯が、いわゆるこれが何といいます、純粋の刑事事件になる筋合いのものでございます。犯人という言葉を使っているかどうかは知りませんが、もし使ってあるとすれば、逋脱犯に関連して使ってあるのではなかろうか、かように思います。今条文をひとつ見てみます。——今これを見てみますと、今度の新しい五十六条第三項のところでございます。これは密造酒の所持人が、密造犯、それから所持犯、こういうものでございます。これはいずれも今の系統から申しますと秩序犯ではない、こういうことで考えられているようでございます。
  92. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 暫時休憩いたします。    午後一時六分休憩      —————・—————    午後二時十九分開会
  93. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ただいまから委員会を再開いたします。  国税通則法案国税通則法施行等に伴う関係法令整備等に関する法律案を議題といたします。  まず、両案に対する衆議院の修正点について毛利衆議院議員から説明を聴取することにいたします。毛利衆議院
  94. 毛利松平

    衆議院議員(毛利松平君) 国税通則法案及び国税通則法施行等に伴う関係法令整備等に関する法律案の両案に対する衆議院における修正について、その趣旨を御説明いたします。  御承知のように、国税通則法政府原案は、同法の制定に関する税制調査会の答申に基づいて提案されたものであります。答申事項のうち、実質課税の原則に関する規定等若干の項目につきましては、なお将来の慎重な検討にゆだねることとして、その制度化がはかられていないのであります。これは国税通則法制定の趣旨についての誤解を解く意味においても、妥当な処置であると考えるのでありますが、同様な観点から見ました場合には、いわゆる人格のない社団等に関する規定についても、現行の課税関係変更を加えるがごとき規定の仕方は、これを避けることをするのが適当であると考えます。したがいまして、政府原案のうち、この部分につきましては、国税通則法では、現行の各税法の規定のうち共通の事項が国税通則法に移されることに伴う規定の整備にとどめるとともに、各税法における当該規定も現行どおりとするように修正しようとするものであります。  その修正のおもな内容は次の二点であります。  まず第一は、国税通則法案についての修正であります。すなわち、政府原案においては、人格のない社団等は国税に関する法律の規定の適用については法人とみなしておりますが、これを国税通則法の規定の適用については法人とみなすと改めようとするものであります。  次の第二は、国税通則法施行等に伴う関係法令整備等に関する法律案についての修正であります。すなわち、現在国会において審議中の酒税法改正案等の間接税法改正案並びにすでに国会を通過した通行税法改正法及び印紙税法改正法の規定の中から、人格のない社団等についての両罰規定を削除しようとするものであります。  以上が同案に対する衆議院における修正の趣旨及び内容の概要であります。
  95. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 本案についての質疑は後日に譲ります。     —————————————
  96. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 次に、酒税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑のある方は御発言願います。
  97. 野溝勝

    野溝勝君 大蔵省からどなたか来ておりますか。
  98. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 堀本宜実政務次官、村山主税局長、志場税制第二課長、上田間税部長。
  99. 野溝勝

    野溝勝君 私、しろうとでございますから簡単にお伺いをいたしますので、ひとつわかりますくお話しを願いたいと思います。  第一は、この酒税法の一部改正の法律案を見たのですが、酒類が九種類から十種類になっています。どうもこの名前は私どもにはよくわからぬし、さらに法律案を見ると、ウイスキーにいたしましても、あるいはスピリッツとかいう種類にいたしましても、この内容を見るとどうも専門家でなければよくわからぬのですがね。もっとしろうとでわかりやすくできないもでのすかなあ。
  100. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 従来はこの酒類、これにつきましては、おっしゃるように九種数でございました。今度ただその中には白酒とか濁酒、今日ではほとんど石数のないものまで含まれておるわけでございます。そうかと思いますと、片方におきましては雑酒という項目が九番目にあがっております。この中にはウイスキー、ブランデー、ラムもウォッカも、それからいわゆるリキュール類も、すべてこの中に突っ込んであるわけでございます。この現在の分類は、昭和十五年のときの分数でございまして、当時としてはそれなりの意味はあるいはあったのかと存ぜられるのでありますが、最近におきます酒の消費の動向からいいまして、全くそのウエートが違ってきておるわけでございます。だいぶ嗜好も変わりますし、それに伴いまして製造の状況も変わって参っております。したがいまして、最近におきます酒類の消費の動向に合わせましてここに新しい分類をしたわけでございます。  それで、おもなる違いを申し上げますと、清酒、合成清酒、しょうちゅう、とここまでは同じでございます。みりん、いわばこれが昔からの在米酒でございます。その次のビール、これも同じでございます。それから、その次、果実酒類というのが六番目にございますが、この果実酒類、これは従来は山梨県で造っておりますようないわば生ブドウから造っておるもの、こういうものだけを果実酒数といっておったわけでございます。それから、ほしブドウから造ったもの、あるいは濃縮した果汁で造ったもの、これはフランスあたりで造っているのはこれでございます。みんな外国はこれでございます。実はこれは甘味果実酒類といっておりましたもので、雑酒の中に入っております。それから、果実酒をもとにいたしまして、若干甘味を加えたもの、これも甘味果実酒類として雑酒で規定しているわけです。税率が全く違っているわけであります。今回はこの従来の雑酒の中にありました両種の甘味果実酒を、やはり果実酒類の中に入れたわけであります。ただ、その中の二つを分けまして、果実酒と甘味果実酒と、この二つにいたしました。こういうふうにいたしまして、これをより実際の性質を表わすものに統合したわけでございます。それから、今度新たにウイスキー類というものを設けまして、この中にはウイスキーとブランデーを入れたわけであります。これはいわば従来の雑酒の洋酒系統のものの代表選手でございます。これが非常に伸びてきておりまして、今後いろいろ洋酒もこの方面に相当の伸展が期待されるわけであります。これを従来の雑酒の中に混然と置くことはいかがかと思いまして、これを一つの種類に昇格いたしました。それから、新たに従来の雑酒のうちからスピリッツ類、これがウォッカ、ラム、ジンのようなものでございます。かなりアルコール度の強いものでございますが、ウイスキーとは違いまして、発芽した麦芽を使わないというところが特色でございます。こういうものも将来相当伸びて参るであろう、こういうふうに考えているわけであります。なお、このスピリッツ類を新たに設けますとともに、従来のしょうちゅうと今度の新しいスピリッツ類、この限界がはっきりしておりませんでした。これを今度新たにその限界をはっきりさせることにしたわけでございます。しょうちゅうにつきましては、これが在来酒であるということから、従来からスピリッツ類に対しましては比較的安い税率でありました。それだけに、このスピリッツ類としょうちゅうの限界につきましては明確にする必要があるということで、その点を明らかにしたのであります。あとのリキュール類でございますが、これは俗に申しますと混和酒の部類でございます。ペパーミント、そういう種類のものでございます。何でも二種類以上のものをまぜればすべてリキュールに通常入るわけであります。それから、あと残りましたものを雑酒といたしまして、その中に現在の——現在でも雑酒の中でこれをここに分けまして、発泡酒とその他の雑酒に分けたのであります。発泡酒はすでに現在出ておりますラビー、こういう種類のものでございます。若干麦芽を使っておるけれども、そのほかにイモとか、そういったものを原料にして発泡性のものにして、いわばビール類似のものでございます。それから、その他の雑酒、このその他の雑酒の中に濁酒その他が入っているわけであります。従来の白酒、これは新しい分数ではリキュール類の中に入っておるわけであります。  こういうふうにいたしまして、酒類を、現行の九つを、最近の消費の動向に合わせてそれぞれ限界をはっきりいたしまして、十種類にいたしました。  それから、従来類別というものがあったわけでございますが、これはすべて今回は廃止いたしました。類別といいますと、みりん類の、本みりん、本直しというのが従来類別でございます。しょうちゅうの中類、乙類、これがやはり類別になっておったわけでございますが、これは全部品目の区分に改めました。従来は種類と、それから類別と品目別と、それから級別とあったわけでございますが、そのうち類別という観念を廃止いたしまして、今度は種類と品目と、その種類の中の品目と、それから級別を設けるものについては級別を設けるということになったわけでございます。大体以上のとおりでございます。  それから、なお、もう一つ申し上げておきますが、この全体を通じまして各酒類の一度当たりの度数は、従来はある程度アルコール度数の高いものにつきましては加算税率を盛っておったわけでございますが、今回は原則としてこれを全部廃止いたしました。将来の酒がどういう酒が好まれるかということは今度の問題でございます。そういう意味で、税法のほうから、制度のほうから加算税率を設けて将来の発展を阻害するようなおそれのある制度でございますので、これは廃止いたしました。ただ、あまりにも低い度数の酒でございますと、これはその酒の種数によりましては腐敗のおそれがございます。そういう意味で、最低税率は度数において設けてあることは従来どおりでございますが、それ以上のものにつきましては、原則として当該酒類についての一度当たりの度数は比例的に今度は盛られているわけでございます。  そのほかに、今度は原則としてあらゆる酒類についてガス入り、ガスを入れて造るということをこの制度上認めることにしたわけでございます。で、現在はガス入りでございますと、実際出ておりますのはシャパンのたぐいとか、あるいはウイスキーの中に入れたものでございますが、だんだんこれから清涼飲料的なものが好まれるようにおえられますので、今度の酒類税法の改正では、将来品質の向上、嗜好の変化に即応できるように、原則としてすべての酒類にガス入りを認める、こういう制度にいたしたわけでございます。
  101. 野溝勝

    野溝勝君 村山局長さんから専門的な話もありましたが、ここに出ておる改正法律案の内容を見ると、実際はあなた方にもよくわからぬのではないかと思うんだね。今、いろいろな御説明がありましたが、私どもはしろうとでしてよくわからぬのですが、こういう複雑な内容に改めていくと、いわゆるインチキ雑酒とは極端には言わないけれども、いろいろまぎらわしいものがますます出てくると思うのでございます。こういう点、一つも心配ございませんかね。
  102. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) インチキのものが出るという心配はないと思うのでございます。われわれも定義を作っていきまして、これは何しろ財政物資でございますので、その限界は取り締まりの関係もありますので明らかにしなくてはなりません。そういう意味で、ある酒類々々の限界線は、これはどうしても制度上引かざるを後ないと思うのでございますが、しかし実際その酒の種類を見ますと、そう心配は要らないんじゃないかというふうに考えます。ただ、先ほど申しましたように、たとえば今清酒の問題でございますと、清酒をいかにして伸ばすかという問題が一つ問題としては考えられます。それから、その場合に、低アルコールのほうがいいんじゃないか、それからガス入りの問題、将来輸出がきくんじゃないかという、こういうところは業界としても非常に研究しているところでございます。こういう研究あるいはそういうものを試験的に造ってやるという道を開いてやることは必要であろうということでございます。もとより、これは酒税を納めるものですから、十分の研究を積まないで試験的にやるとうことは、非常に危険な仕事でございます。そういう意味で、業界で新しい品種を出す場合には、それぞれ十分な検討をした上で出すであろうと、こういうふうに考えますので、今度の税法の改正によっていかがわしい酒がたくさん出るというふうには考えておりません。
  103. 野溝勝

    野溝勝君 この酒税法の中にありますように、酒類の定義というものが出ておるわけですね。私どもはしろうとですから、酒税法でいう酒類の定義を根拠にしておるんですが、酒類の定義の第二条には、「この法律において「酒類」とは、アルコール分一度以上の飲料(うすめて飲料とすることができるものを含み、アルコール分が九十度以上のアルコールのうち、第七条第一項の規定による酒類の製造免許を受けた者が酒類の原料としてその免許を受けた製造場において製造するもの以外のものを除く。)」と、こういうようになっております。それで、酒類とは、「清酒、合成清酒、しょうちゅう、みりん、ビール、果実酒類、ウイスキー」まではわかるんですがね、そのあと今お話しになりました「スピリッツ類、リキュール類及び雑酒」というんですが、今のスピリッツにしてもリキュールにしても、今までは雑酒の取り扱いを受けておったと思うのです。それが、今度はこのほかにまた雑酒というんですから、この雑酒のまた内容たるや、私どもといたしましては実に不明確なんでありすして、こういう点について私が今お伺しいたんです。ですから、酒類の定義から見ると、あまり定義の内容を含むようにも見受けられない点もあるんでございます。こういう点については、私はいろいろの擬装的なものができやせぬかということをさっき聞いたわけです。
  104. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 従来は雑酒というのが、昭和十五年当時設けられましたときには、大体在来酒を中心に考えまして、残ったやつはすべて雑酒だ、こういったわけでございます。ところが、雑酒がどんどん発達しまして、これが現在では十三品目になっておるわけでございます。しかも、その間、その酒類とか雑酒の品目間で非常に疑義がある、こういう状態でございます。しかも、この雑酒が非常に伸びて参っておりますので、これを法律の面で一人前に取り扱ったほうがものごとがはっきりするわけでございます。この雑酒の幅を広げれば広げるほど、実際は行政上困るわけでございます。その意味で、この雑酒のうち今日は一人前に成長したもの、それから今後成長株と認められるもの、これらをすべて一つの種類にあげてきて、同時に、先ほど申しましたような果実酒のように、従来雑酒の中に一部あり、それから果実酒の中に一部あるものは、果実酒類として統合いたしたというようなことでございます。それから、スピリッツ類につきましても、今ウォッカ、ラム、ジンのたぐいでございますが、これもその他の酒類としておくよりも、はっきり区分いたしまして、税率もそれぞれそれに適当な税率を盛るとともに、しょうちゅうとの限界いかんという問題、これがすべてその限界については取り扱い上の問題にまかされておったわけですが、今度は法律上はっきりさして参る、こういうふうにいたしたわけでございます。
  105. 野溝勝

    野溝勝君 今までに酒のうちで一番もうけたのは雑酒なんです。それで、この前の主税局長原君のときに、この雑酒はあまりに目が届かいという点で非常に利潤を得ておる、ほかの酒類とは違う、だからこれに対する酒米の配給などについても、あるいにその他の税率などについても考える必要がありゃせぬか、こういう質問をしたんです。ところが、原君いわく、非常に大衆の受けがよくて、非常な好みになっておる酒類でございまして、これに対しましてはむしろわれわれとしてはまあ大いに奨励までもしたい気持である、こういうような意見でございました。ところが、今、村山局長が言われるように、実際においてこの浩類のうちでもうけておるのは雑酒業者だ。それからもうけたから、壽屋などは今ビールにまで進出しようとしています。これは一つの例ですが、その他の雑酒を見てごらんなさい。大体目が届かぬから、こういうものといっては失礼でございますが、こういう一つの業種が非常にもうけておるわけです。私はきょう、ここに数字を持っておりますが、それをここではしません。このことについては、あなた方が一番よくわかっているはずです。また、こんなものを作るというと、こんなものは「浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きない」で、ますますもってわけのわからぬようになってしまう。この点で私さっきから言うのですが、そう目が届きますか。
  106. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) もちろん、これは酒税法は各間接税法のうち最も厳重な規制に服している税金でございます。したがいまして、税法上の取り扱いにおいては目が届かぬということはございませんです。最も厳重であるわけでございます。  ただいま利益がどうなるかという問題でございまいますが、これは税法のほうではそれぞれその酒類の性質に応じまして税率を幾るかという問題、それから基準販売価格——これは公定価格からはずしまして、今度は基準販売価格になったわけでございまいます。基準販売価格をどうするかというような問題が中心でございまして税の本筋といたしましては、何と申しましても、その税率をどうするかという問題でございます。今度はおおむね税率で平均二割程度小売価格で一割程度引き下げることを目途に減税をしようとするものでございますが、その際、減税率は下級酒に厚く、それからいわゆる高級酒といわれるものには相当薄くなっているわけでございます。お話のような点について申し上げますと、たとえば合成清酒であるとか、あるいはしょうちゅうのようなものでございますと、減税率が合成清酒が二八・六、それからしょうちゅう甲類が三二・〇、それから清酒二級が二四・五と、こうありますが、今の雑酒、今度ウイスキーになりますと、特級が七・六%、それから一級が九・六、二級が二三・九、という工合に、それぞれその性質に応じまして減税率では調整してあるわけでございます。  それから、今の利益率関係でございますが、これは売り上げ利益率で見ますと、そうたいした違いはないようでございます。たとえば清酒、これは平均でございますが、法人、個人いろいろございます。メーカーによりまして、値段が同じでありましても品種が違いますので、それぞれ違いますが、平均して清酒は三・八%、合成酒は三・五%、しょうちゅう甲類が四・九%、みりんが四・三%、果実酒類が四%、ウイスキーも売り上げ利益率は四%程度というようなことになってございます。その他の雑酒、これは現行でございますが、その他の雑酒も四・三%程度、売上利益率はさほど変わっていないようでございます。
  107. 野溝勝

    野溝勝君 この改正法律案は引き下げの法律案でございますから、私どもはもちろん賛成はいたします。今私が申しました点、減税率の点について、特に雑酒に対して、他の一般酒よりも留意しておるという点はよくわかります。  しかし、売上率におきましてはあるいは今とあまり大差はないかもしれませんが、今少しく検討する余地がありやせぬかと思いますので、ひとつこの点を当局にも再検討を希望しておきます。  次に私が聞きたいことは、私の親戚に酒の小売屋が非常に多いのですが、また醸造家もありますが、今度の改正案では非常に減税してあるので、小売価格もおおむね一割程度引き下げるというのです。しかし、この点について法案では明記されておらぬと思うのですが、小売価格と卸価格、メーカーとの関係などはどういうふうに配慮されているのですか。これは酒にかかわらず一般酒類……。
  108. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 現在の酒税は、蔵出しの際課税することになっております。これを下げるわけでございまして、それで一升当たりで五十円とか四十円とか下げます。ですから、末端価格をもらう四月一日からすべて四十円下げたものは四十円下げます。それから、五十円下げたものは五十円下げるということにしまして、新旧の価格をそれぞれ小売店舗に掲示させることにしております。業界も、今度の減税が末端価格に直接そのまま響くということを大衆に、消費者にはっきりさせるように、今のような掲示をさせることにして、全面的な協力を約束しておるようなわけであります。
  109. 野溝勝

    野溝勝君 まことに引き下げはけっこうでございますが、そこで考えなければならないのは、たとえばそういうことを理由にいたしまして、特に原料は、酒にしてもあるいはビールにしても、ホップであろうと米であろうと、農村でできる原料であることには間違いないと思うのです。あるいは合成酒などもカンショということになっております。そうすると、百姓の作った原料に対しても、酒が下がったからお前たちの買い上げもひとつ協定値というものを作って押えていくとそういうような傾向もまた見られると思います。米についてはもちろんきまっているのでございますが、その他のものについてはどういうふうに考えられているのですか。百姓の原料をこれがために安く買いたたくということがあれば、それは問題だと思います。そういうような点はどういうふうに考えておりますか。
  110. 上田克郎

    説明員(上田克郎君) 私が直接担当いたしておりますので、間税部長から答えさせていただきます。  酒の原料は、むしろ最近は原料のほうが上がる傾向にございまして、原料が下がるから製品も下げるというような傾向がございませんで、むしろ原料が上がったので製品を上げたいというのを、なるべく製品を上げないでほしいというような格好でいっております。で、製品が下がるから原料も下げるという方向は今のところございません。
  111. 野溝勝

    野溝勝君 一応事務当局としてはそういうものであるが、なかなか政治的にはいろいろと伸びていくものなのです。その場合には、あなた方としては私からそういう意見があったということを頭に置いて、政策的にも十分なる留意をされていく必要があると思うのです。この点は強く当局に申し述べておきます。で、この点に対して村山局長の答弁をひとつお願いいたします。
  112. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これは主としてその実施面に当たっております国税庁が指導しているわけでございますが、米でいきますと、それぞれ買い上げ価格がきまっております。毎年の清酒なら清酒に使う米を幾らにするか、これは食管会計から払い下げを受けるわけでございまして、毎年その価格を農林省、主計局、それから国税庁というところが入りまして、各界の要望を入れてきめて参るということになっておるわけでございます。その他の食管会計以外のものにつきましては、これはそのときの相場で取引が行なわれるわけでございますが、これは不当に買いたたく、あるいはまた不当に売り惜しみされて値段が上がるというようなことは、これは酒税にも響く問題でございます。そういう意味では、その指導に当たっている国税庁としては絶えずその間の取引が円滑にいくように指導をして参っておる状況でございまして、今後といえども、そういう事態が発生いたしますれば、それぞれ適切な方法によりましてその間の調節をつけて参るわけでございます。
  113. 野溝勝

    野溝勝君 私の言う点は、そういうことでなくて、たとえばこの酒の値が下がるということはけっこうなことです。しかしまた、下げれば、その業者はそれだけ、やはりそこで一つの生産費といいますか、いろいろ原価計算をいたしますよ。その場合、原料である農産物に対して、酒が下がったから原料を高く買うわけにはいかぬというような理由づけにもなるわけなんですよ。そういうような場合については、私はむしろ酒を安くすることのために、あるいはビールその他の合成酒を安くするために、そういうところへしわ寄せが来てはかなわぬから、そういう点についてはひとつ十分なる配慮をしてもらいたいと思うのです。
  114. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) わかりました。もちろん、これは酒の税金を、税率を下げるから値段が下がるわけでございますので、直接それ以外の、その原価要素の価格とは無関係のことは、先生の御指摘のとおりでございます。したがいまして、そういうことを理由に原料を買いたたくとかいうことは、筋の通らぬ問題だろうと思います。
  115. 野溝勝

    野溝勝君 最後にひとつお伺いしておきたいことは、この酒と合成酒とどういうところが違うのですか、私はわからぬけれども。一体、米を使ってみな造っておって、どんな醸造方法をするか知らぬけれどもね、そんなまるで封建時代に言うようなことを言ってもおかしいと思うのだよ。そういうことについていつも疑問を持つのです。こんなものは一緒に酒にして、それじゃ合成酒を安くしたらいいじゃないですか。それはアルコール分が少ないとか、米の使い方が少ないとか、どうですかこれは。
  116. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 現行ではっきり違っておりますのは、酒のほうは原料中米を五〇%以上使わなければならないと、こういうことでございます。それから、合成清酒のほうは、酒には似てはおりますけれども、製品中米の使用量が五%以下でなければならない、以上使ってはいけませんと、こういう限定があるわけでございます。その他若干補助材料等について差はございますが、その根本的な点は、米を主たる原料にするかしないかというところで切られているわけでございます。  それで、この合成清酒が新しい種類として酒税法上、法律上現われてきましたのは、従来の酒造法にかえまして、酒類税法というものが昭和十五年にできたときに初めてこの合成清酒というものが一つの種類に取り上げられたわけでございます。このときに、新しい酒類として、米を使わないで日本酒と同じようなものを伸ばしていく方向が望ましいということで、これが設けられたわけでございます。その後いろいろ変遷がございましたが、昭和二十八年に、現在の酒税法になり、そういう発足の過程から、経緯からいたしまして、合成清酒については製品中米を使える分量は五%以下である、こういうところで押えまして、酒類業界との間のいろいろな問題を一応そこで断ち切ったわけでございます。で、もちろん米を使っておりませんので、それからまた日本人の従来の嗜好もあって、清酒のほうが最近では年々の伸びが高いというようなこともございます。したがって、税率等につきましても清酒のほうが若干高い税率が盛られておると、こういうことでございます。両業界、いろいろございます。その利害の一致する点も、それから相反する問題もございますので、現行ではそういう区分をしたので一応、何と申しますか、両業界の競合が避けられておるというのが現状でございます。
  117. 野溝勝

    野溝勝君 まあ大衆酒というのは大体二級酒以下の清酒と合成酒とビールだと思っているのです。その他の、まあわけのわからぬリキュールとかスピリッツとか、雑酒というようなものについては、今度の改正案では特に税率について少しく考えられているようでございますが、私申したようなはっきりわかっておる大衆酒に対しては、ぐっと値下げをする。あいまいなわけのわからぬようなものは、大衆にも迷惑をかけるし、また税の収入においてもちょいと手が届かぬ点もあると思うのです。これらの点について当局が十分配慮されんことを希望しまして、簡単でございますがこの程度質問を打ち切りいいと思います。
  118. 平林剛

    平林剛君 ビールの減税について一つだけお尋ねしておきたいと思います。今度ビールの減税が行なわれることになりますと、今まで私どもが酒屋さんから買ったりするときには一本百二十五円であったのが、ビン込みで百十五円になるというふうに理解してよろしいでしょうか。
  119. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) さようでございます。
  120. 平林剛

    平林剛君 よく家庭では、ビン込みで百二十五円で買って参りまして、夕方でも一ぱいぎゅっとこうやりますね。そうすると、そのあきビンができるわけです。あきビンを酒屋さんに持っていきますと、一本で十二円とか十円とかというので引き取ってくれるわけです。まあくず屋さんに払い下げる人もありますけれども。取引先によりましては、そうしてあきビンを引き取ってくれますから、かりに今まで百二十五円でありますというと、そのビンの引き取り代を計算しますと百十三円になるわけですね。一本がね。今度はどうなるのですか。たとえば家庭の主婦が、何本かたまったから、それを酒屋さんに持っていくということになりますと、同じように、百十五円になるとすれば、その十二円が引き取られて、今までの計算でいきますというと、百三円になる。つまり、十円のビールの減税があったんだから、実際家庭の主婦としても、自分のふところ工合としては百三円で済むというように理解してよろしいですか。
  121. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これは直接まあ減税の問題とは関係ないわけでございまして、いわば十円減税になるというのだから、今度はビンづきのやつは百二十五円、これを百十五円にするところまでが、これが税の問題でございます。それで、今のビンの従来引き取り値を、これは基準販売価格のところで引きかえた場合には幾らにするか、こういうことが書いてあるわけであります。これは基準価格上の問題でございます。びん引きかえという制度は、実はビールにしかなかったわけでございまして、酒にも、雑酒にもないわけでございます。ところが、くず屋に売りますと三円とか一円とかというような差がございます。最近調べたのは、サントリーの七百四十CCですかのびん代がくず屋へ売って一円くらいにしかなっていないという実情がございます。ビールびんの引き取り、びんの引き取り値をビールだけにすることは、公定基準価格をきめる意味でどんなものであろうか。これはやかましい議論になっておるのであります。かたがた、今言ったような実際のくず屋の払い下げ相場等もございます。  そこへもってきて、最近出て参りましたのは、ビール会社は今四社ございますが、これはそれぞれ自分たちのびんを型を作っているわけでございます。この回収をするときには、たとえばアサヒ・ビールとか、キリン・ビールとか、ニッポン・ビールが出てくる。冷蔵庫に入れておくと、いつのまにか、レッテルがはげて、料理屋に入るときにはどこのビールかさっぱりわからぬということで、品質競争をする上に非常に問題があるということで、自社びんだけが買えるようにする制度にすることは、この際どんなものであろうか。そういたしますと、びんを回収するときには一種の選別を必要とするわけでございます。その選別費を考えていきますと、相当経費はかさむのでございますが、そういう点も、この際将来の、ビールの合理化のために、この減税の際にそういうことをあわせ考えるべきじゃないか。そういたしますと、将来びん詰め作業なりあるいは箱詰め作業なんというものが非常に能率的になり、やがては原価を落とす要素になって参るわけです。ひいては、それは生産性の向上につながる問題あるいはその一部は理論としては消費者に還元さるべき性質の問題であります。これは好もしいことと私は考えております。そういう際でございますので、この際としては、今度はビールのびんの引き取り値というものを基準価格からはずそうと考えておるわけでございます。ただ、その際、いきなり一円とかなんとかということになりますと、これはまた結果におきまして家庭に対する影響が大きゅうございますから、業界にその間によく自粛するようにということを国税庁方面で指導しておりまして、少なくとも最低値くらいは指導上引き下げて参る方向で今考えておるわけでございます。
  122. 平林剛

    平林剛君 ビールのびんは確かにその製造会社によって少しずつ型が違っておりまして、私もよく承知しておるのですけれどもお話のように、レッテルがはげてしまうというと、キリンビールを飲みたいと思ったときにほかのビールが来たりということがありまして、レッテルに誤りありというようなことがときどき見られるので困る。こういうことを酒を飲む人や、ビールを飲む人がよく苦情として上げまして、それはビール会社の信用の問題になります。今のお話のようなこともあって、やはりこれはしっかりと自分の社の商品の責任を持つというやり方が私は望ましいと思いますから、そういう意味では、この選びんということはきわめて大事なことじゃないだろうかと思うのであります。しかし、そうだからといって、家庭の主婦にとっては、ビールの税金が今度十円下がるのだ、一本について。ところが、実際の日常やっておる感じからいきますというと、びん代の引き取り代が十二円のやつが今度は八円になった、七円になったということになりますというと、何だ、これはやはり感じとしては、十円下がったんじゃないんじゃないか、五円しか下がっていないんやないかという感じになりまして、これまた税法上の信用問題になります。一般の国民はビールが十円下がるのだとやはり思っているやつが、実際の生活において酒屋のやりとりにおいて五円にしかならなかった。お上の言うことはどうもおかしいということになって、これはビール会社の信用どころじゃない、税法上の信用問題になってくると思うのでありまして、私は少し問題が残っていくのじゃないかと思うのであります。私の言ったような感じに結局主婦がなると思うのですが、あなた、どうでしょうか。
  123. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) もし黙ってそうやりますと、家庭では何か看板に偽りあり、こう思われる方もあると思います。したがいまして、その間はっきりさせる必要があると思うわけであります。今でも十二円と言っておりますが、大体現在小売の引き取っておる値段は九円、十円というところらしいです。今度はその選別の問題もございます。その辺のことを考えまして、今後国税庁が業界の動向を見ながら指導していくわけであります。最低七円以上で引き取る。目下はそこを最低線に指導して参るわけであります。そうしますと、今の選びんに関しましても、これは家庭にも御理解いただけるのじゃないかというふうに考えまして、いずれにいたしましても、その点をはっきりさせていって、今度の減税と、それから実際の家庭がびんを交換した場合の負担がなぜそういうことになるか、それが納得できるような形ではっきりさせることがぜひとも必要である、こう考えるわけであります。
  124. 平林剛

    平林剛君 びん込みで百二十五円が百十五円になるのだから、その意味では十円の減税ということになるわけだが、実際の生活上主婦の受け取る感じはそういうことにならないので、私はそういう断の不満というか批判というものが当然起きてくるだろうと思うのであります。それと同時に、かりに政府指導するびんの引き取り——告示をやめて引き取りにするというのは、大体どのくらいに指導しようと考えておられるのですか。
  125. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 先ほど申しましたが、現在基準価格上十二円ということになっておりますが、実際の取引は九円か十円らしいです。今度はそこに選びん費がかかりますので、二円程度を見て、最低七円以上で引き取るようにということで、それは八円になりますか九円になりますか、何か知りませんが、最低七円という線で指導して参るというような方針で目下おるわけであります。
  126. 平林剛

    平林剛君 聞くところによりますと、その今のびんの告示をやめて、十二円の引き取りが幾らになるか、七円にするか、八円にするか、九円にするか、こうなって選びんを酒屋さんが自分でやるようになってしまうのじゃないかということを聞くのでありますけれども、実際上そんなふうになるのか、酒屋さんが選びんをやってしまうというようなことになるのですか。
  127. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これはだれにやらせるかということは、だれの負担においてやるかという問題と、だれが実際選びんをやるかという問題とは違う問題じゃないかと思います。いずれにいたしましても、負担は製造業者のほうに行くわけであります。かたがた、だれに扱わせるか、それは小売屋にやらせる場合もありましょうし、いわゆる選びん屋にやらせる場合もありましょう、そのときには、自社びんだけ戻ってくるわけですから、メーカーがそれだけ払ってしかるべきだと思うのであります。
  128. 平林剛

    平林剛君 その指導をうまくやらないと、今まで選びんの仕事に携わっていた、これはまあかなりの数の人たちがおられるだろうと思うのですが、あういう人たちの領域がなくなってしまうのじゃないか。私はビール会社と、こういう酒数を卸したり小売をする者と、また選びんに携わっておる人たちを比べますというと、大きい、中くらい、小さいという形に想定してよいと思うのです。この場合に、びんの引き取りの告示をやめたということ、それが先ほどお話があったように、レッテルが違ってしまうというようなことを避けるために、それを維持しようとすれば、その段階において従来やっておった選びん屋さんの仕事がなくなってしまう、それが大きく奪われてしまうということになると、新しい社会問題になりかねない、こう思いますので、こういう点の指導はどういうふうにおやりになるつもりでおられますか。
  129. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) まあ一がいにはなかなか、これは業界取引の問題なのでございますので、一がいには申し上げられませんが、一方においてそういう選びん屋の立場も考えにやならぬと思います。まあそうかといって、自社びんにするからといって、選びん屋がつけ込んで非常に高い選びん費を要求することになりますと、めぐりめぐって消費者の負担がそれだけ大きくなるということになりますので、その間適当なところで調節をつけていかざるを得ないものと思っております。業界ももとよりそのつもりで参っておりますし、また国税庁も基本的にはそのかまえで今後の指導に当たるものと、かように考えておるのでございます。
  130. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今度の酒類の減税でどの程度減税になったのか、値段では出ているわけですね。特級酒については三十五円減税したとここに出ているわけです。一級酒については六十円の減税。これを率にすると幾ら減税してあるわけですか。
  131. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 新しい特級でございますが、率で七・二%、清酒でございます。
  132. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 いや、ちょっと途中ですが、それは今度の減税率ですね。そこで私がお尋ねしているのは、特級酒で八百三十五円でしょう、今まで。
  133. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 小売でございますか。税額でございますか。
  134. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 税を含めてですね。特級酒の値段は八百三十五円であったでしょう。その八百三十五円のうち、現行税率は四百八十八円ですね。それを改正案では四百五十三円にしたわけですね。減税額は三十五円、減税率は七・二%、こうなるんですが、私のお尋ねしているのはそうじゃなくて、その小売値段に対する今度の減税で何%の酒税がかかっておるのかということを知りたいわけです。
  135. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 小売値段の中に占める税金割合の推移はどうなるかと、そういうことでございますね。
  136. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうです。
  137. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 申し上げます。特級から申し上げますけれども現行五八・六%が五七・七、それから一級が五一・四が四六・四、それから二級が四一・七が三五・一、それから合成清酒が四二・〇が三四・一、しょうちゅう、二十五度で申し上げます。現行が三七・五が二九・二、しょうちゅう乙類、同じく二十五度で申し上げますと、現行三二・八が二二・四、みりん、本みりん現行四〇・〇が二四・四、それから本直し現行三六・六が二八・四、ビール現行五六・一が五二・三、果実酒現行一六・二が一四・九。
  138. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 一応それでけっこうです。私のお尋ねしたいのは、この程度の減税で妥当であるかどうかという問題なんです。今お聞きすると、特級酒で五八・六%が五六・七%、わずか二%の減税ですね。それから一級酒についても五一・四が四六・六、大体これ五%減税ですね。それで、この程度の減税が妥当であるというふうに考えられた根拠ですね、諸外国とも比較し、あるいはまた戦前との税率等をも勘案して考えたときに、この減税程度では私十分でないような感じがするのですがね。この程度ならば妥当であると考えられた根拠ですね、これを明らかにしてもらいたい。
  139. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 今先生は小売価格の中に占める比率が幾らから幾らになったと、それを減税率とおっしゃっておりますが、減税率といいますと、現在の絶対税額ですね、単位当たり、それ対、本改正後の税額というのが、減税率とすればそれが正しいのだろうと思います。
  140. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私の質問が悪かったのですが、とにかく特級酒一升ですか、飲めば、その中に税金として払われる金は幾らになるのか、その率は幾らかと、そういうことをお尋ねしておったのですがね。そうしないとわからぬですからね。
  141. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) その意味では、今の先生のおっしゃるとおりでございます。
  142. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それが幾らになっているか。
  143. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) それが読み上げた数字でございます。飲んだときに税金を幾ら飲んだか、何割そのうちに含まっているか、今度は何割含まれておるかと、その点ではおっしゃるとおりでございます。
  144. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 だから、特級酒八百三十五円の酒を一升飲めば、そのうち従来は五八・六%、半分以上税金を飲んでおったわけですな。今度もやっぱりそれはあまり変わっていないということでしょう。ところが、戦前、特に昭和九年から十一年度における税率が出ているわけなんですがね。それを見ますと、二九・六三になっているわけですね。これ間違いないでしょうか。
  145. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 間違いございません。二九・六三、九−十一の平均でございます。
  146. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これはおそらく酒類の平均かなにか、何で出したのか私よく知りませんが、そういうことになっている。それに比較すると、大体二倍ぐらいになっていますね。非常に私高いように思うのですがね。
  147. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) おっしゃるように、九−十一年のこれは加重平均で出しまして、小売価格の中に占める酒税額の比率は二九・六三%、その後ずっと上って参りまして、一番高いところをとってみますと、二十五年の六一・二七%というのがございます。それからだんだん下がって参りまして、三十六年度予算では四六・八〇、これが今度の改正によりまして加重平均四一・三七というところに来るわけでございます。  まあどの程度がめどかというのは考え方がございます。一つのめどは戦前、今の酒の税金を含めた小売価格、これが現行では四百十三倍くらいでございます。諸物価指数が三百五十倍といわれております。それで、今度の減税後の小売価格はおおよそ三百七十倍程度になる見込みでございます。ねらいといたしましては、小売価格を大体一割くらい平均的に引き下げることと、それから料率でおよそ二割くらい引き下げることと、これは絶対額対絶対額でこれくらいをねらいまして、それで今の酒類の種類によりましてその間ウエートをつけた、傾斜をつけた。少ないものはごくわずか七%くらい、大きいものは四〇%以上というように傾斜をつけて参ったのであります。  これにつきまして外国の制度、これも一応全部参考にいたしましてただ、この酒類の税率というのは非常に沿革的なものでございまして、どこの国の税率を見ましてもそれぞれ違っているわけでございます。客観的に言えますことは、どこの国も従来からあったものは割と安い。それから、新しく最近になって伸びてきたものはどうも重いようでございます。日本と違いますのは、アルコールの度数によりまして、アルコール度数の強いものはやはり高い課税にしておる。これは何といっても酒類というのはアルコールのものでござますので、その度数による課税が相当強く出ておるということでございます。日本の場合は、今までもいろいろ沿革がございます。そういうことがございますので、ある基準で、度数基準だけでいくというわけにも参りません。それももちろんある程度考えたわけでございますが、それからその商品の伸びがどうであるか、こういうことを考えねばならぬと思うわけでございます。それから、その酒類が比較的どういう場所で今飲まれておるかという問題もございます。家庭で使われておるか、高級料理屋で使われておるか、その割合はどうかという点もございましてそういうものを総合勘案いたしまして、単位当たりさっき言ったような基準から、清酒ならたとえば三十五円とか、あるいは二級であれば五十円、これくらい下げるのが適当だというふうに割り振ってだんだん考えて参ったのであります。
  148. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そういうふうにだんだん考えられた結果この程度の減税が妥当である、こういうわけですね。たとえば、聞いておっても……。しかし、酒について一級酒が五八%、それから二級酒で三五%ですね。二級酒といえば大衆の酒ですね。これはほかのものに比べて高いのじゃないかと思うのですが、酒に対しては格別な頭が、やはり国庫収入の観点から考えていいのじゃないかと思うのです。どうですか、それは。ほかのものと比べて非常に高いじゃないですか、これは。
  149. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 酒はどうしても、やはりどの国でも財政物資と考えているわけでございまして、今回、今日の間接税体系も決して物品税と同一のレベルでは考えておりません。やはり酒のほうが高くていいのだという考え方の基礎の上に立って考えているわけでございます。したがいまして、あまりにも重いものですから、平年度三百七十億円、初年度三百九億円と、従来にない大幅な減税ではございますけれども、まあ相当おかしな点はやったつもりでございますが、基本的な考え方として物品税とバランスをとってやるというふうには考えておりません。なお、やはりこういうものはある程度重くていいのだ。酒、たばこというのはどうもやはり財政物資として考えられておるということでございまして、これはどこの国もそのようでございます。
  150. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私、その考えはだいぶ古いのじゃないかと思うのですがね。それは酒飲んで半分税金だというようなことはそれがあたりまえだというようなことは古いですよ。やっぱり、ほかの物品税と直接比較することは、それはできないかもしれませんよ。しかし、してもいいじゃないですか。酒だけ格別な考えを持つという考え方は、これは是正していったほうがいいんじゃないのですが。そんなにこういう酒類は奢侈でもなければ——料理屋で一ぱい飲む酒はちょっと取ってもいいと思うのですが、普通飲む酒にこんな高い税金をかけておくということは、やっぱり改めていただきたいと思うのですがね。そこで賛成なら訂正するくらいの……。与党の諸君も高いと言っているくらいだから高いですよ。  それから、密造酒のことについてちょっと聞いておきたいのですが、どのくらい推定がありますか。
  151. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 密造酒は、三十五年度、これは推計でございますが、十六万七千キロ・リッターでございます。それで見ますと、一番のピークが二十五年でございまして、六十万七千キロ・リッターでございますから、約四分の一程度くらいになった。しかし、なお十六万七千キロ・リッターですから、石にしまして八十八万石くらいあるという推計でございます。
  152. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 こういうのはどうして把握するのですかね、推定は。推計でしょうが。
  153. 上田克郎

    説明員(上田克郎君) 密造でございますが、推定はなかなかむずかしいといえばむずかしいわけでございますが、まあ、ちょっと公式的に申しますと、それぞれのサンプルの地域を選びまして、そうしてそこに正常のルートで入った酒と、それからそこにおられます成年男女の人数で、大体その地域では平均どれほどくらいその成年男女がお飲みになるという数字を、これを前提といたしましてかけ合わせてみて、正常な酒が入っているのがそれに足りない場合は、その残りの部分は密造であろうというような、きわめてラフといえばラフな計算方法でございますけれども、そういったあれで推計をいたしておる次第でございます。
  154. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この密造が相当あるということはこの数字でわかるのです。この数字もしかしそう根拠のある数字とは思っておりませんが、密造酒の問題はどう考えるかということですね。これは私は、一面同情的な見方が必要だと思う。それは、米を作って、お百娃きんがその米を原料にして、どぶろくか何か知りませんが、酒を造り、そうして自分の家で飲むくらい造るというのは、人情として自然の考え方ではないかと思うのです、一方からいえば。一方からいえば、そういう密造はけしからぬ、こういう筋もあるわけですが、そういうのを何か調整して考える必要があるのじゃないかと思うのですがね。何か政府のほうでいい考えは持っておりませんか。
  155. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) この点につきましては、従来から大体しょうちゅうのたぐいが非常に密造と振りかわり得るという考えで、しょうちゅう、それで密造酒は大体二十度くらいのものでございます。そこで、しょうちゅうの二十度あたりのところは特に安くしておるということで、酒税法の上ではその点は考慮してございます。今度もその二十度のものにつきましては、従来と同じように、格段の税率の引き下げを行ないまして、それで密造対策にも資するように考えているわけでございます。  一方、密造酒のほうの行政的な取り締まりにおきましては、これは執行面におきまして、検察庁あるいは県の指導方面と密接な関係をとりまして、地域々々に適切な措置を講じておるわけでございます。密造酒の形といたしましては、農村密造もありますが、販売を目的とする、密造もあるわけであります。販売を目的とするような密造酒に対しましては、反復繰り返し取り締まりをやっておるということでございます。それから、農村密造におきましては、これは子供のときからだんだんこういうことがいかぬのだという考えを植えつけていくということで、もちろん密造の場合には取り締まりますが、一方におきまして、そういう気持をその地方の子供さんのときから植えつけていくという方向に向かっており、実際の対策面と両々相待って手を打っているわけでございます。昭和二十六年ごろは先ほどの六十万キロリッターが、今日、推定ではございますが四分の一になったということは、もちろん購買力の上昇にも関係がありましょうが、一つは反復取り締まりをやっていって、だんだんこういうことはいかぬのだというようなこと、こういったことが順次効を奏しつつあるのではないか、こう思っているわけでございます。
  156. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 密造酒の問題はいろいろむずかしい事情もあるから、あまり私は質問しませんけれども、それは農家で、自分の家で飲むくらいのどぶろくというのですか、ああいう酒を造ったのを犯罪視するというような考え方をしているのですか。そういう考え方は、私は若干疑問があると思う。それは酒屋さんのほうはできるだけ取り締まってやってもらいたいということになるけれども、自分の家で米作って、自分の家でちょっとした酒を造って飲むというくらいのこと、これは犯罪者扱いのできるような範疇に入りますか。これはどうですか。
  157. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これはやはり、これが非常に大事な財政物資として現行税法下にあるわけでございますので、たとえ自家用に供するものといっても、酒をほんとうに造って無税で飲むということは困るということでございます。
  158. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この問題はこのぐらいにしますが、次に、最近べらぼうに高い酒が出ているようですね。一升一万円とか二万円とかいうのは、どういう酒があるのですか。
  159. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 最近日本酒でもだいぶデラックスものが出ております。例をあげますと、高いものでは、ここにありますのは、たとえば極上特選菊正宗、小売価格千五百円、ヤング酔心千六百二十円、ゴールド賀茂鶴二千円、それからデラックス大関二千五十七円、エクセレント白鶴二千百二十五円、このほかに何か豪華賀茂鶴とかいうのが三万五千円かで出ているそうであります。ただし、これは容器が一品作品を使っておりまして、ほとんど容器代だということだそうでございます。
  160. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そこで、そういうものの税の取り立てというものはどういう工合にやるのですか。かりに三万五千円として、容器代が三万三千円になるのか、酒は二千円、その二千円に税金がかかるのか、どういう税のかけ方をしておりますか。
  161. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) それは現在は酒税は容器にはかからない。酒の中身について従量税でかかっておりますので、そのうちの中身部分のものは課税している。別にその容器が物品税の課税物品に該当するようでございます。そういう意味で物品税をちょうだいしている。両方でやっているわけであります。今度の改正は、その点がだんだんデラックスものが出ております。酒は、取り締まりの見地から従量税にしておりますけれども、従量税でございますと、同じ特級といっても、非常に幅があるわけでございます。先ほども申しましたように、現在千七十五円でございまけれども、それから三万円ぐらいまであるわけでございます。同じ従量税ですと、小売従価に対しては御指摘のように非常に率が違うわけでございます。そこであまりにも違うものについては、従量税をやめまして、特に高いものについては従価税一本でいく、こういうことを同時にこの法案で提案しているわけでございまして、ある一定のメーカーの段階で、移出価格が一定額以上のものにつきまして、これは従価税率でいきますということを言っているわけであります。この法案の中にもその税率は書いてあるわけであります。清酒、ウイスキー等につきましては、従価一五〇%の税率で参りますということ、それから今のスピリッツ類につきましては一〇〇%でいきます、こういうようなことを書いている。その間を従量税でほうっておきますと、負担のバランスを失します点を補おうとしているということでございます。
  162. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 高価なものというのは、どれ以上のものをいうのですか。
  163. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これは政令で非課税最高限度をこえるものということで、政令段階で明らかにするつもりでございますが、今考えておりますのは、大体、ものによって違いますけれども、平均して通常もの、一級なら一級、特級なら特級の通常のメーカー価格に対して五割以上高いというようなものあたりからねらっていきたい。いろいろな銘柄が出ておりますので、大よそこの辺をめどにおきまして、目下検討しているということでございます。
  164. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 さっきの三万五千円の酒、実際は酒の中身は千五百円だ、あるいは千円だということにして、それに税金がかかる、器のほうはどういう税がかかるか知りませんが、合法的な脱税の方法は幾らでもその問題については考えられるのじゃないですか。
  165. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 今度は、現行でもそうですが、酒税法はなかなかうまくできておりまして、脱税は絶対にできないようにできております、今度のやり方も、そこは容器をつけて、容器込めでもって移出するわけでございます。そういうわけでございますので、そのときには容器代は非常に高いわけですけれども、そのうち従価税のものは、容器込めの価格に対して従価税を取っているわけでございます。そのときに、ただ三万円もする容器をそのまま取るわけに参りませんので、そこはある酒というものに対する容器としての、今の骨董とかそういう一品作品としての値段ではなくて、容器としての最高値段を査定いたします。それで中身価格に加えて、それを従価税の対象にします。実際の容器の価格からそれを引いたもの、それは物品税でちょうだいしますということになります。もしどこかで詰めかえる、製造場以外で詰めかえるということになりますと、これはみなし製造の規定が働きまして、そこでまた同じ課税関係を起こすわけであります。酒の移動につきましては、すべてこれはあとで全部トレースするということになっておりますので、そういったことで脱税が行なわれるということはわれわは、心配しておりません。
  166. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 もう一つお尋ねをこの機会にしておきたいのは、昨年来合成清酒ですか、合成清酒のあれは五%米が入っているでしょう。それを米を入れる分母をふやしてもらいたい、こういう非常な運動がありましたね。これに対していわゆる日本酒を造っている人は、それはまかりならぬということでいろいろあったですね。あの問題に対する大蔵省の考え方を聞いておきたいと思いますがね。
  167. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これは合成清酒協会から、最近における合清酒の売れ行きが停滞しているのは、一つには名称が、合成清酒という名前がいかにも工合が悪いのだ。たとえば新清酒とか、何かもうちょっといい名前を税法上もつけてもらいたいということを、一つ言っております。それからもう一つは、米の使用割合をせめて一〇%くらいまで上げてほしい、こうしたらうまくいくのではないかというようなことを言っております。清酒協会では非常な反対をしているわけであります。この問題はそれぞれ両業界の関係もございます。それから従来のいきさつもあり、それから現状における問題もございます。それから、なぜこういう問題が起きたかという原因につきましても十分に吟味する必要がございます。そういう意味で大蔵省としては、この問題を今すぐどちらかという判断をする段階にはないということで、慎重に検討中でございます。まあいずれにしましても、今度の減税案が済まないと、この減税案と一緒に扱っておったのではとてもたまらないから、この減税案が済みましてから、これらの問題を根本的に検討して妥当な措置をとりたい、こういうふうに考えているわけであります。
  168. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  169. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 速記をつけて。     —————————————
  170. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 次に、物品税法案を議題といたします。  御質疑のある方は御発言を願います。
  171. 平林剛

    平林剛君 村山さんにお尋ねいたしますけれども、今度の物品税法案の提案の理由や御説明はお聞きいたしましたけれども、問題は、物品税法の改正によって税率、税額を下げることによって、消費君にそれだけ恩典がいくということに最大のねらいがあると思うのでありますけれども、それ以外に何か考えるところはございますか。
  172. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) さようでございます。第一は、現在の物品税の負担が、ものによりまして非常に重過ぎると税体系の上で考えられるものがございますので、その点の負担を是正する、そのことを確実に小売価格のほうに反映して参るということが一つでございます。それから、もう一つは、この機会に、同時に、負担の軽減を通じつつ、物品税の体系を近代的なものにする。そのやり方としましては、すでに、課税を廃止すべきものは思い切って廃止してしまう、それから税率構造を根本的に改める、免税点も相当思い切って引き上げるということ、それから新しい物品についても、バランス上入れるものについてはこれを入れる。それから現在日本産業で相当弱いものがございます。そういうものについては暫定的にある軽減税率を適用して参る、こういうような制度の改正も考えております。それから第三点は、物品税につきまして、これは非常に古い法律でございますので、今度全部ひらがなで全文改正いたしました。同庁に、その機会に、物品税につきましても申告納税制度を全部導入いたしまして、今までの未納税移出であるとか、あるいは未納税引き取り、これを全部申告に変えて、一々承認を要しないということにいたしたわけでございます。
  173. 平林剛

    平林剛君 ただいまの御趣旨は提案理由や補足説明などで十分お聞きしたとおりを確認したわけでありますけれども、御説明以外に、たとえばこういう考え方が入っているかどうかという点であります。たとえば、その物品によりましては、将来あるいは現在、輸出の競争力、そういうものに耐えない、何らかの形でもってその関係業を擁護しなければならぬというようなねらいが、この物品税法の改正の中に含まれておるかどうかということであります。御説明にはその点がありませんでしたけれども、結果としてそういうことになりはしないかという心配もありますので、総括的に、まずそういうねらいも入っておるものなのかどうかということを確めておきたいと思うのですが、いかがですか。
  174. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 全部の物品についてそれを一々考えておるわけではございません。ただ、こういう点は考慮しております。たとえばテレビでございますが、これは大型三割、小型二割となっております。それで従来は十四インチ以下が小型になっております。今度はこの両方については税率は変えてございません。しかし、今度大型、小型の区分を二十インチにしております。この点は、十四インチでは輸出の対象にならない、十七インチでないととてもいかぬ、こういうわけでございます。最近の消費動向を考えてみまして、その辺は今度は二十インチ以下にして、十七インチのものは二〇に下げたというあたりにそういう配慮が払われております。  それから、逆に輸入の点を考えておるわけでございますが、カラー・テレビ、カラー・フィルム、これは非常に競争力の弱い商品でございます。ひとしく業界も認めておるところでございまして、こういうものは、基本税率はその商品の性質から見て二〇%だと考えるわけでございますが、この三年間に限って一〇%にしてございます。  それから、自動車でございますが、千九百CC以下の小型自動車、これは基本税率二〇%でございます。ただし、この問題も相当弱い点がございますので、三年間に限り一五%にしておる、こういうような点、そういったところに若干の配意をしておる点がございます。
  175. 平林剛

    平林剛君 まあ物品税の対象になる商品の中で、いろいろ消費税、大衆消費税といいますか、そういうものを考えたり、あるいは税の税収の中心になっているものを考えたりいたしますというと、まあ浮かび上がってくる品物が幾つもございますが、その中において、私が今お尋ねいたしましたように、いわゆる消費者に対してその価格を引き下げるという目的以外の要素、すなわち外国との輸出の競争力に勝つとか、あるいは輸入に対抗するために援助策をとるとかいう問題の例は、ただいま御説明になりましたテレビ、自動車、それ以外にまだ何かありますか、大体こんなところに尽きると、こう考えてよろしうございますか。
  176. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 今おもな例示を申し上げましたが、もう一つ私の記憶に残っておりますのは、十七センチ以下のレコードにつきましては、これまた三年間の暫定税率として二〇を一〇に下げてございます。これもやはりアメリカ方面から非常にこの方面に安く入って参る、どうしても、今のジャズの関係だそうでございますが、向こうではやったものがこちらに、何月かおくれて入る。そのころは向こうは大量生産でございます。もう要らなくなったものが、どんどん安いのが入って参るということでございまして、二〇%ではとてもこちらでは対抗できぬということもございます。そういった点のこまかい配慮は加えてございます。
  177. 平林剛

    平林剛君 大体わかりましたが、しかし、自動車でもテレビでも、レコードの十七センチ以下のものであろうと、暫定税率がきめられる。他の物品税は、今日まで御説明があったように、それぞれ免税になったり税率の低下をされるということでありますけれども、問題は暫定税率であろうと何であろうと、今度軽減になるというものは、商品として町に出たときに、逆にいえば消費者がこれを購入するときに、その分だけは的確に消費者に対して恩典がある、こういうように理解をしてよろしゅうございますか。
  178. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) さようでございます。昨日通産省から、この物品税の施行に伴ってどれだけどういうものがどういうようにいつから下がるかということを新聞発表してございます。いずれ国税庁もさらに詳細なものを、あるいはその会社名をあげて発表する計画もあるやに聞いておるわけでございまして、業界は全面的に賛成しておるわけでございまして、きのうの通産省の発表分を見ますと、ほとんど全部のものは四月一日から減税額通り正しく還元するということを約束しております。ただ、ものによりまして、とりあえずは九〇%、それから一定時期が、ちゃんと九月とか十月とか明示してございますが、さらにそのとき一〇%下げると、こう約束しておるものも間々ございます。いずれもきのうの発表で明らかになったと思うわけでございます。
  179. 平林剛

    平林剛君 私、まだその通産省が発表した各品目ごとの具体的な例を見ておりませんので、またあらためてそれをよく熟読いたしまして、お尋ねをする点が出てくるかもしれませんが、とりあえずこういうことを聞いておきたいと思います。政府は、今度の物品税法に限らず、酒税法や入場税法のときに、業界と話をして、その業界の協力がある、あるいは全面的に政府考えに賛成をしているというお話がしばしばございまして、私もそれを信頼をいたしたいと思うのでありますけれども、業界との間の取りきめということは、一体どれだけ拘束力があるのか。また、政府としてもこの取りきめを全面的に信頼しているといいましても、もしそれに反したようなことがあったときに一体どうなるかということが、やはり若干私の頭に引っかかるわけであります。これにつきまして、政府当局としてはどの程度の心がまえを持っておられますか、またどれだけ確信を持っておられますか。
  180. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 現在ほとんど引き下げの対象になるものが公定価格制度ではございません。したがいまして、法律的な拘束力はないわけでございます。ないからこそ、政府のほうでは指導に今まで三カ月余りかかって、そこまで持ってきたわけでございまして、幸い業界におきましても全面的な協力を約束しておるわけでございますので、われわれはそのとおり行なわれるものと確信しておりますし、従来の経緯から申しましても、この違反というようなことはないであろうと、かように考えているわけでございます。
  181. 平林剛

    平林剛君 私は、法律的に拘束力がないだけに心配なんです。もしも政府が今私に説明をしているようなとおりのことならなかったり、あるいはそれがいろいろ理由をつけて、実際に考えていたようにならなかったりした場合には、何だ、あの物品税法の改正や税法の改正は結局業者を助けるためのものではないか、国民大衆、消費者に対して税を軽減したと言って、しなかったじゃないか、また政府はうそをついているというようなことになりまして、政治に対する信頼というものもそこからそこなわれてくると思うのであります。私は法律的な拘束力がないだけに、その点はどういう約束をされ、どういう場所でどういうふうにやったか、これは一々たいへんなことでありますけれども、どうも気にかかるのであります。たとえば入場税法議論のときそうでありますしたけれども、同僚の議員が大蔵大臣質問をしている。そうして今私が疑問としたと同じことをただしたのに対し、大蔵大臣はこう答えている。業界は全面的に物価を上げないという政府の政策に協力して、この問題は政府の言うとおりに約束するという回答が業界からありましたから、御心配はありません、こう言っている。なるほどそうですかといえばすなおなのでありますけれども、しかし全面的に物価を上げないという政府の政策に協力してという言葉は、逆にいえば、物価が少しでも上がれば御協力できません、あるいは物価が上がったときには、一カ月か二カ月がまんしますけれども、また値上げしますということに通じゃしないか、こういうことになりまして、もしそうだとすれば、今後の物価の上昇を理由にして、結局一時は値下げをしたけれども、また上げちまったというから念仏が含まれていないかどうか、その点はいかがですか。
  182. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 確かにこれは法的拘束力がありません。要するに、税金も原価要素の一部にほかなりません、その原価要素が下げる。政府は減税という形で下げているわけでございます。原価要素が下がりますので、それだけは下げるべき筋合いであり、また下げることが可能だというところで、行政指導をしているわけでございます。  で、いろいろ御心配のようでございますが、これは実は三十四年の例があるのでございます。三十四年の物品税、これは約三十億ばかり減税いたしたのでございますが、この際は特に行政指導をいたしませんでしたが、そのときの実績を見てみますと、大部分の品物はやはり物品税で下げただけ下がっておる、あるいは同等以上下がっております。中には五割とか、そういったものも間々ございます。そういう例がございますので、今度政府がこれだけ念を押して一々業界から確約をとって、そうして政府が発表までしているわけでございます。この前よりははるかに協力度のいいものとわれわれは期待しているわけでございます。  もとより、これは拘束力がありませんので、将来の問題について、他の原価要素が上がったときにどうなるかという問題まで、これは今答えるわけには参らぬと思うわけでございますが、少なくとも今のような経済組織のもとでは、非常に競争の激しい物品でございます。物品税の課税対象になっておるものは耐久消費財が中心でございます。どちらかといえば、われわれが今度の税収見積もりをはじく場合には、どうも、単価という点では去年よりは低く見ざるを得ない、これくらい競争の激しいものでございます。それは一つ業者が単純に消費者をごまかすというような観念で上げられるものではないと思うのでございます。そういう客観情勢にもありますので、今はっきり協力もしておりますし、そういったことから、われわれは今度の減税はまさに消費末端までの価格の引き下げとなって、そのとおり消費者の利益となるものと、こういうふうに確信しているわけでございます。   〔委員長退席、理事上林忠二落着席〕
  183. 平林剛

    平林剛君 一般の消費者というものは、一々こまかく、この品物が前に幾らであって、今度物品税が改正になってこうなったということを、調べているわけではないと思うのであります。しかし、感じとして、ときどき思い出したように、ああこれはちっとも下がっていないじゃないかというようなことにぶつかることもあると思うのですね。私は、今回政府がいろいろな税を軽減しなければならぬという、特に物品税についてはかなり大幅な減税を行なったわけでありますが、それが末端に至るまで正面に、こういうよいことがあったぞよと、なるほど、国民もそういうものかとわかるようなところまでの行政指導をおやりになるつもりですか。たとえば、従来は一万円であった品物が、今度の物品税軽減によって九千円になりましたというような例示をあげて、その法律が文字どおり徹底をされたという証拠といいますか、実例を示すようなところまで気を配られたお約束が業界との間にあったかどうか。
  184. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これは、その点は、きのう通産省の発表がありましたが、さらに国税庁のほうでは、どこどこの会社の製品の何という品物は、今まで税率は幾らで、税額は幾らであったが、今度は改正によって幾らになり、幾ら下がるはずだということをすべて表示して参るということにいたしまして、その間のさらに徹底をはかりたいというところで、目下計画を進めているわけでございます。   〔理事上林忠二君退席、委員長着   席〕
  185. 平林剛

    平林剛君 取り越し苦労かもしれませんけれども、たとえば楽器のようなものですね、これはことしの一月からすでに値下げになっているようなものもあるわけですね。こういうものはどうなのですか。一月に下げたのだから、今回は物品税の法律が通っても下げなくてもよろしいというようなことになっているのですか。私、国税庁のあれも、通産省のも見ておりませんで、こういう質問をしなければならぬわけでありますけれども、それはどういうふうになっておるのですか。
  186. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これは、実は監督官庁である通産省が個別に全部当たって、それで下げろ、下げられないならその理由、という中に、楽器はこういう事情があるそうでございます。もう今度は税率が下がるということがきまりまして、全部消費者のほうが買い控えてしまった。そこで、二月にすでに減税分だけを下げざるを得なかった。四月から下げるどころでなくて、二月にちょうど減税額だけ下げないと売れなくなってしまった。それで、やむなく業界はずっとそのときから値下げをした。そのことを通産省が確認をされて、まあお前は損をした口だからあらためて下げる必要なし、そういう点で、それは全部発表文に出ているそうであります。
  187. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ちょっと関連して。楽器の税について、特にピアノの税についてちょっと質問しますが、僕はピアノなんかに対する——物品税自体、僕は間接税全部反対な立場なんだけれども、特に楽器なんかに税をかけるのは僕はどうかと思うのですよ。今税を免除する規定もあって、音楽専門家には税を免除して、台数を限って、年限を限って売るというような、そういうことがやられていると思うのですよ。ところが、あの中にいろいろ僕は不合理な面があると思うのですよ。今やられているのはどういう人たちだけに限って免税になっているのです、ピアノ、オルガンなどは。
  188. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これは特殊用途免税になっています。学校がその音楽のために、音楽の教育のために使うものとか、あるいは音楽の先生のようなもの、そういう職業人でございます。これは業務用にかける趣旨ではございません、この物品税の基本的な考え方は……。そういうために、そういうのは特に非課税にしております。それは特殊用途免税といたしまして、今度の法案によりますと一々申請書を出すわけでごいざます。それに基づきまして確認の上非課税にするという措置がとられております。
  189. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 その楽器は一台しか買えないのですか、どうなんですか。
  190. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) それは、法律の面では特に台数を制限しておりませんが、もとよりそれに使うものについて免税するわけでございます。おのずから事実上台数には制限があろうかと思います。
  191. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、主税局長、まあ学校なんかだったら、大体講堂に置いたり音楽教室に置いたり、大体見当がつくけれども、学校が買う場合、教室がたくさんあって、たくさんの教室に各一台ずつピアノを置くという場合には、それはすべてが免税になるわけですね。
  192. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 法律上別に制限はございません。したがいまして、事実ほんとうにそれにお使になるのでしたら、台数が多いとか少ないとかいうことを課税のほうから言う理由はないと思います、事実使うのでございましたら。
  193. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それじゃ、音楽の先生はどうですか。制限ないのですか、あるのですか。
  194. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これも同じことでございます。別に法律上は台数の制限を特に設けてございません。しかし、その人の使うものとして免税するわけでございますから、事実上おのずからその限度はあるとは思います。
  195. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、音楽の先生が方々にけいこ場を持っておる。そのけいこ場でとにかくピアノ一台ずつ置きたいという場合には、そのけいこ場に応じてピアノは免税で買えるわけなんですか、どうなんですか。
  196. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 事実問題でございまして、事実その必要があるということで使用するものであれば、別に制限する必要はない。
  197. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 僕はある音楽家からこういう訴えを受けたのですが、自分が自宅でピアノを一台置いている、自分の研究用に。それから、けいこ場へピアノを置いている。そうすると、自宅へけいこに来る生徒が使うことを、これは先生の研究用に買ったピアノだから生徒にひかしてはならぬといって、地方の税務署からやかましく監督に来るということを聞いて、先生たちびくびくものです。おそれておるという事実。それを僕はことしの正月に友人のところに遊びに行って訴えを受けたのですが、どうですか、そういうことがあり得るのですか。税務署はそういうふうに理解しているらしい。先生用というのは、先生だけしかひいちゃいかぬ、弟子もひいちゃいかぬ、そういう解釈で、課税するといっておどかしに来たといって、みんな音楽の先生びくびくしている。どうですか。
  198. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) それは非課税にするほうの理由は、先生の練習用に使うということで非課税にしておるわけでございます。しかし、生徒がひくこともございましょうし、別にそれだからだれも手をふれちゃならぬという問題ではないでしょうから、これは実際問題だと思います。運用の面では、その辺は常識的に運用をされるべきものと思います。
  199. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 実際にそういうことがあります。これは西宮です。宝塚に住んでいる人の音楽家、僕の友人です。そこで驚かされて、びっくりしているような状態がある。そういうことは方々にあるらしい。だから、そういうことがないようにしてもらいたい。  それから、あれは何年たつと売ることができるわけですか。
  200. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これは法制上は二年という制限があるわけでございます。
  201. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると免税で買ったピアノを三年たったら自由に売買できるということになるわけですね。
  202. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) さようでございます。その前でも売買はできますが、追徴いたします。もし二年以内にやりますと、曲に免税しておった税金をちょうだいに上がります。こういうわけでございます。
  203. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ここでもう一つ問題は、音楽の先生はピアノを買うことができるが、音楽の学生です。これが免税でピアノを買うことができないという不合理がある。私はこれはおかしいと思う。音楽の学生はどうしてもピアノがなければ勉強できない。ところが、音楽の学生は免税でピアノが買えないという状態があったのですが、どうですか。
  204. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これは今音楽を専門にしておる大学の学生あるいは音楽の教員を養成する学校、そこでの生徒さんなら、これはやはり専門家と考えられますので、その人たちの使うものについては同様に免税措置は講じられております。
  205. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、音楽の学生であるという証明書かなんか持っていったら、免税で買えるわけですか。
  206. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) さようでございます。
  207. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうしてそれも二年たてば売れるわけですね。それじゃ、この間——僕は音楽家なんですよ。僕がピアノを買おうと思ったら、免税で売れないというのですよ。これはどういうことですか。(「政治家だから」と呼ぶ者あり)職業は音楽だよ。音楽家の政治家なんだ。主税局長、僕は音楽家だといって免税の証明書を出すか。
  208. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これは現にやはり音楽の先生としてやっておる、先生としての仕事に従事しておる、あるいは現に音楽学校の生徒である、あるいは教員養成所の生徒である、これに課税するということは物品税の本来の趣旨ではない、こういう意味で免税にしておったわけでございます。したがいまして、それに該当いたしませんと残念ながら……。
  209. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 僕は該当するわけなんだ。僕は自宅で生徒に教えるわけだ。自宅でも生徒に教えれば、音楽の教師なんだ。だから、僕には売らぬということにならぬと思うが、どうかね。
  210. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これは見解の問題でございますが、これは教育用としておるわけでございます。したがって、学校というところで線を引いておるというわけでございます。
  211. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 それはおかしい、その解釈は。学校じゃない、自宅で生徒をとっておる先生が音楽の先生として無税で買っておるのですよ、今あなたの答えたとおり。ところが、僕も同じように家庭で音楽を教えるのだから、片方で政治家、参議院議員だというので売らぬというのです。これはおかしいと思う。僕は音楽家であると同時に先生であり、同時に参議院議員なんだ。(「どちらが本職かわからぬよ」と呼ぶ者あり)僕は世間には音楽家須藤五郎で通しておるのだ。所得は今ゼロだ。(「それじゃだめだ」と呼ぶ者あり)ただで教えておるのだ。(「進行々々」「趣味の先生はだめだよ」と呼ぶ者あり)
  212. 平林剛

    平林剛君 それじゃ、他に御質問があるようでありますから、私はあと一つ二つにとどめたいと思うのでありますが、先ほど申し上げたように、物品税法の改正が単に業者を潤すものであってはならぬという趣旨から、私は商品ごとについてお尋ねをしておるわけであります。特に現在の国民の生活現状を見ますと、ことしの夏あたり扇風機がほしい、それから電気洗たく機を買いたいというのは、今日の一般家庭における共通の感情であろうと思うのであります。その場合に、今度物品税法によって、たとえば扇風機は三〇%から二〇%に税率が下がりますね。また、電気洗たく機は四〇%から三〇%に税率が下がるわけです。そうすれば、これが額面どおりに値段が下がる。たとえば一万三千円の扇風機があったとすれば、これは一万二千円になる、それから電気洗たく機が二万四千円であったとすれば、これは二万三千円になる、こういうふうに理解してよろしいのですか。
  213. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) さようでございます。
  214. 平林剛

    平林剛君 その場合に、四月一日からこの法律が施行されますと、今私にお答えになったとおりの価格に下げられると仮定をいたします。多分それはそのとおりになるでしょう。しかし、夏までの間には、関係業者はいろいろの創意工夫をいたしまして、今までの扇風機と違う特殊性が今度の新製品にはあるのです、だから一万三千円だったものが四月一日から一万二千円になったけれども、夏発売するところの新型の扇風機は一万三千円あるいは一万四千円ですということになるおそれはありませんか。つまり、新型であるとか、あるいは今までにない部品が一つついていますとか、それを理由にして結果的には値段が下がらないということにならないか。電気洗たく機でも同じであります。右回りとか左回りとか、いろいろラジオで宣伝しておりますね。これがかりに二万四千円が二万三千円に四月一日から掲示をされたとしましても、五、六月ごろに発売された新製品は、今度は、寝ていてもスイッチがとまる、なんということはないにしても、新しい考案がしてあります、だから二万四千円ですというようなことで、それを理由にして、結局はもとのもくあみになるというようなことになりませんか。
  215. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 減税額を消費者に還元しないで、業者が何らかの名目をつけて、実際は減税分の一部を自分のほうのふところに納めるというようなことは、先ほど申し上げたような意味で非常に少ないだろう、ほとんどないだろう、これだけ制約しているんですから。しかも、競争は非常に激しゅうございます。ことに扇風機のようなものでございますと、おそらくことしの型はもうすでに生産済みだろうと思うんです。これからやるったって、もう間に合わないだろうと思います。ですから、そういうことはないだろうと思います。  将来四月一日の値段がそのまま維持されるかどうかということになりますと、それはそうでなくて、やはり新しいものが出ていけば、それにはそれに見合った税抜きの原価というものはあるでしょう。マージンを加えて、それで今度の新しい物品税の税率ではじいたもの、これが売り値になりますから、もともと新規製品の原価は違うわけであります。だから、違うことはあり得ると思いますが、おっしゃるような心配はないだろう、こう考えておるわけでございます。
  216. 平林剛

    平林剛君 私は、そういうことも少し問題があると思うんですよ。たとえば扇風機にしても、電気洗たく機にしても、ある程度独占価格になっていますね。それは数社あるいはそれ以上の競争になっておったといたしましても、製造業者は限られてくるわけです。そのときに今お話しのようなことを理由にしてまた価格が上がるということになれば、大きな目で見れば、物品税法業者の役に立っただけで消費者にはあまり役に立たなかった——今日の競争時代においては、もしかりに物品税の軽減がなくても、いろいろ新しい技巧をこらした新製品を発売して競争しているんですよ。だから、かりに物品税の税法の改正によって軽減がなくても、おそらく同じ価格で新しいアイデアを盛り込んだ新製品を発売するだろうと、私は傾向から見てそういうふうに理解をするわけです。しかし、これを悪用しようとする者があれば、新しいアイデアが出たんだからこれは違うのです、というやり方で、実際上値下げ分は業者のふところに入るという仕組みになる。これは道徳上の問題であると思いますけれども、あると思うんです。そういうことはどうやって制限できるか。
  217. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 先ほど申しましたように、法律上それも拘束力のない問題でございます。ただ、御心配のような点がないというのは、一つは、業界がこれだけ誓約しているということ、それから何らの誓約のない三十四年当時の実績から見た場合、その当時と現在の業界では、やはり今は買い手市場なんだということでございます。全般的に耐久消費財は今買い手市場でございます。扇風機にいたしましても、横ばいないし下がり気味の状況でございます。そういう非常な発展するところの業界におきましては、どうしても競争が非常に激しいのでございます。そういった意味で、その客観情勢を考えても、そういう御心配は要らないじゃないか。かりにそんなことを、かりに一時とんでもない者がおりまして、目先の欲にかられてみても、やがては失敗するにきまっている。それは経済の冷徹なる原則が貫くだろう、こう考えておりますので、その点は御心配は要らないじゃないか、こういうふうに考えます。
  218. 平林剛

    平林剛君 私は、これが私だけの心配に終わることを期待しています。ただ、入場税法議論を会議録によって通読いたしますと、村山さんの答弁にもどうもそういう傾向を示唆するような言葉がございましてね、気にかかったわけですよ。たとえば入場税のときなどにおきまして、入場税を軽減すれば、それが観客料金として下がるかどうかというようなきめのこまかい質問に対して、あなたが、いや映画の出しものによっては違うでしょうとか、ロードショーのようなものでも一本々々値段が違うわけでありますからとか、あるいは出しものによっては毎月料金を変えていくというような考え方もありますなどといって、何かすっきりしないものがあるんですよ。何か理由を作っておいて、映画の観客料金が下がらないときの伏線が、張ってあるような気がしたものですから、きょうはしつこいようでしたけれども、物品税法については特に世評で行なわれているように、これは業者のふところをもうけさせるようなものだということにならないために、私は念を押してお尋ねしたのであります。私だけの心配になることをもとより期待をしておりますけれども政府もやっぱり道義的にそういう問題についてはこれからも絶えず監視をしていくという態度をとってもらいたいと思うのです。これは要望いたしておきます。  他に御質問があるようですから、一応物品税法に関する質問はこの辺で、あとは保留をいたしておきたいと思います。     —————————————
  219. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案を議題にいたします。  質疑のある方は御発言願います。
  220. 高橋衛

    高橋衛君 租税特別措置法について政府当局に一、二お尋ねをいたしたいと思います。  まず第一に、租税特別措置法というのは、われわれの見解によれば、一つの政策目的に従って多くは二元的に特別の措置をとるという建前に相なっておると思うのでありますが、過去において数次、経済情勢その他の事情の変化によって改正が行なわれて参ったのでございますが、今回もずいぶんこまかい点について改正が行なわれておりますが、今回の改正の主眼が、やはり今日の日本経済におけるところの一番むずかしい問題であると同時に、たとえば中小企業対策または輸出振興、そういうような方面にある程度重点が指向されておるのじゃないかと思うのでありますが、まず第一に、その二つの点について、条文を読めばよくわかるかもしれませんが、非常に税法はむずかしいから、その二つの点についてどういう施策がこの税法の中に盛り込まれているかという点を、まず最初にお伺いいたしたいと思います。
  221. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 中小企業関係でございますが、これは企業だけではございませんが、中小所得者の減税に中心を置いております。そういう意味で、昨年相当手を打ったわけでございますが、ことしも引き続きやりまして、昨年は、今の法人につきましては留保所得課税の軽減措置、耐用年数の平均二割短縮、ことに中小企業については平均三割になっております。それから特別償却の町は、三年五割増しという制度を原則として初年度三分の一というふうに、中小企業方面については持って参りました。ここまでは昨年の改正でございます。ことしはそれに引き続きまして、基礎控訴の引き上げ、それから税率の百八十万以下の軽減というようなこと、それから専従控除の年令の引き上げ、この辺がございます。それから……。
  222. 高橋衛

    高橋衛君 租税特別措置法におけるところの施策をお伺いしている。
  223. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 租税特別措置法でございますと、特にうたっておりますのは、農林中央金庫の債券、それから商工債券、これの発行に対する登録税これを軽減してございます。現在の千分の三を、それぞれ、これが中小企業に向けられる金融だということを考えまして、千分の一・五に下げております。そのほかのところでは、外航船舶もございますが、これは、ただ従来はトン数の制限がありましたが、今度はトン数の制限をしないというところが中小企業方面にも恩典になるかもしれぬというところでございます。特別措置で特に中小企業をねらったというのはその二点ぐらいであろうと思いますが、ほかの税では、印紙税の取引金額の零細なるものについて五万円非課税にしました。それから、十万円までの税率を引き下げた、こういうあたり。それから、物品税につきまして、零細企業と思われるものの課税方式を小売のほうに移す。あるいは零細企業が製造しているものにつきまして、原則として物品税をはずしてしまった、こういうような点が随所に現われておるわけでございます。  それから、輸出振興でございます。輸出振興の問題は、実は昨年の臨時国会で例の所得基準一本にしたということ、それから割増し償却の制度を設けましたこと等、昨年の臨時国会で手を打ちました。今年度のところはそうたくさんございませんが、間接税、特に物品税の中にそれが盛られておるわけでございまして、先ほどもちょっとお答えいたしましたように、特に輸出物品について小型自動車について暫定軽減税率を設ける。それから、これはこまかい問題でございますが、豆電球というのがありますが、これは主として輸出用に向けられておるというような点、こういったようなことで今度は課税から全部はずしております。それから、手続上の問題でございますが、申告納税制度にいたしました。したがいまして、輸出免税は従来一々承認にかかっておったわけでございますが、今度全部申告だけでよろしゅうございます。それから、初め国内消費の目的で向けて、あとで用途変更で輸出になったという場合、従来の物品税法でございますと、これは戻税の道がなかったわけでございます。今度新たに戻税の道を設けることにいたしました。おもな点は、そんなところでございます。
  224. 高橋衛

    高橋衛君 国際収支の改善の見地から、先ほどもちょっとお触れになりましたけれども、海運関係の問題として登録税の軽減が今回行なわれておるのでございますが、この登録税については、保存登記と移転の場合と双方、やはり地上の物件と比較しては、これは商法の関係があるのでありましょうが、非常に重課されておるような登録税法の建前に相なっておるように思うんであります。これは税法の建前——建前というよりも、商法その他の法律構成の関係からそうなっているとは思うんでありますが、それにしても、そういう場合においては、むしろそういうふうな法律構成を前提として地上物件と同じような程度に優遇することが妥当じゃないかと、かように私ども考える。そこで、そういうふうな見地から申しまして、登録税の大幅な特別措置による軽減をされておることは妥当であると思うんですが、思い切ってこれを全廃するということが常識的に考えてもむしろあるべき姿じゃないか。どうも海運関係でもって、利子補給その他でもってある程度の助成はされておるのでございますが、一方において登録税を相当多額に納めさせておるということは、何かそこらに、その間に海運に対する政策が矛盾しているような感じがするのでございますが、その点、ひとつ政府の見解を御説明願いたい。
  225. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) おっしゃるとおり、この登録税は非常に古い法律でございまして、各法律を基礎にしてでき上がっているものでございます。いわば法の上の法のような形になってございます。かなり形式的に機械的に税率がまたきまっておるという次第でございます。で、この登録税につきましても、いずれの機会にかこれは抜本的に考えざるを得ないと思いますが、何分にも基礎法がそれぞれたくさんございますので、このほうから全部洗っていかなければならぬという問題がございまして、今日まで整理がおくれているわけでございます。  おっしゃるような点について、あるいはそういう考えもあるかと思いますが、現在最もまけておりますのは、というか軽減しておりますのが、収用の場合等で、四分の一程度軽減するというのが実はもう最低のところでございます。したがいまして、今の外航船舶の保存登記あるいは抵当権取得登記、これは従来は二分の一になっておったわけでございますので、ほかとのバランスから見まして最大限もし減税をすればどの程度いくかということを一つのめどにいたしまして、現行の軽減税率をさらに半分にする。基本税率に対しては四分の一になるというところまでやったわけでございますが、おっしゃるような点については、さらに根本的な問題があろうかと思いますが、これは登録税法全般の検討の際までもう少し時間をかしていただきたい、かように思っております。
  226. 高橋衛

    高橋衛君 なお、船舶の登録税の軽減につきましては、内航船にも相当関係があるわけでございます。今回は外航船ということで一応の区切りをされたようでございますが、たとえば五百トン未満の鋼船で内航に従事しているというようなものと、それがたまたま外航船であるというものとの間に、やはり残念ながらどこかに線を引かなければならぬというその苦心はわかりますけれども、やはりその間に何か割り切れぬ不公平な感じが残るような感じがするのでございます。その辺は政府としてはどういうふうに感じておられますか。
  227. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 先ほども申しましたような意味におきまして、今度の軽減をしたわけでありますが、しかし、その立場はあくまでも政策的見地に立ってそこまで踏み切ったわけでございます。外航船につきましては、いろいろ国際収支の改善がやかましい際、しかし外航船舶については利子補給も行なわれておる現状でございます。こういう政策方向も同時に考えまして、この措置をきめたわけでございます。そういう意味合いでございますので、特に登録税法の中で改正しないで租税特別措置法の中で軽減しているわけでございます。したがいまして、今回は外航船舶というところで線を引かざるを得なかったという次第でございます。
  228. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今度の措置で利子所得、この特別措置を一年間延長するというんですね。大蔵省は前々から、三十六年度限りでやめたい、こういう話がしばしばあったわけですね。ところが、また一年延長する。もう恒久立法のような感じがするんですがね。これまた何で一年延長するんですか。
  229. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 利子に対する現在の分離一〇%課税、これは基本法では総合の建前になっておりまして、租税特別措置法で分離一〇%ということが特定的に設けられまして、昨年は今年の三月まで延長しますということ、これをまた一年間延長いたします、こういう提案をいたしておるわけでございます。この利子に対する課税の問題につきましては、一方配当に対する課税、これとのバランスが最もやかましい問題でございます。その負担、それから税引き利回りはどうなるかという問題がございます。ところで、その配当に対する課税につきましては、法人、個人の二重課税の問題がございまして、去年措置を講じましたが、これは断定的な措置だということになってございます。このほうの法人の配当の支払い分について法人税の税率の軽減をしてございますが、これも当分の間ということになっておりまして、それで実は税制調査会が検討したわけでございますが、結論が出ませんでした。なお、引き続き検討するということになっておるわけでございます。したがいまして、配当課税に対する、取り扱いについても、なお最終的にきまっていない、こういう段階でございます。そういう意味合いでございまして、もう一年やはりこれも引き続き両方あわせて検討いたしたい、かような意味で延長を提案したわけでございます。
  230. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私がお尋ねしておるのは、さらに延長する理由ですね、もうちょっと明確に言うてもらわぬと何か今聞いていると、配当課税との見合いで延長するのだと。今、配当課税も期限立法だから、一緒にやられたらどうですか。同じ質問ですよ。
  231. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 御案内のように、この配当に対して法人税を課税し、それからそのまま受け取り人にも課税することは二重課税であるということが、国際的に非常にやかましい論議になっております。日本におきましても同じような考え方をとりまして、二重課税の調整の方法を講じております。ただ、その調整の方法を昨年いろいろ検討いたしましたが、二年間にわたって実は討論したわけでございます。しかし、最終的の答えが出ないで、最後の答えとして暫定的にいたしましたのが、支払う配当側で法人の税率に三八とあるのを二八にする、そのかわりに受け取る側につきまして税額控除なり、あるいは配当益金不算入制度を同時に四分の一圧縮すると、こういう暫定措置をとりまして、そうしてその後の実施の模様を見てさらに根本的に検討を続けるということになったわけでございます。ところが、その実施が、法人税の税率引き下げにつきましては去年の四月一日以降開始する事業年度から適用したわけでございます。したがって、適用になりましたものは九月末の決算期からでございます。それから、配当控除の圧縮の分は、個人は三十七年分の所得税から適用になるわけでございまして、これはまだ適用になっておりません。来年の三月十五日になるわけでございます。  今度はこの問題をどうしたらいいかということで、実は各金融機関、それから産業界、それから経済研究機関、これらにすべてアンケートを発したわけでございます。で、これをさらに拡大すべきか縮小すべきか、あるいは配当損金算入に踏み切るべきかどうであるかということを、すべてアンケートを発したわけでございますが、この回答が、まだ実施して間もない状況であって、その影響は測定できぬと、しばらく現行制度はそのまま存続すべきである、その影響をよく見てその上で考えろと、こういう答申が——答申と申しますか、アンケートの回答があるわけでございます。今度の税制調査会では、このアンケートの回答ではこういう回答が出ておるが、どうしたものだろうかということを、各界の人が集まっておりますので、相談いたしますと、やはりこのアンケートにあるのと同じように、この点はさらに慎重に検討すべきものである。だから、今の配当に対しては去年改正したものを直ちにまた改正するということは見合わすべきである、慎重に検討すべきである、こういう結論になっておるわけでございます。  それとの関係がございますので、利子につきましても分離一〇%をもう少し延ばさしてほしい、こう申し上げたわけであります。
  232. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 今の説明でありますと、配当課税の問題が片づかない限りこれを置いておくということになるわけですね。税制調査会の答申といいますか、あれを見ると、今の経済事情から考えて、貯蓄の奨励というふうな実情から、この問題を打ち切ることについて若干議論がある、こういうふうな言い方をしていますが、だいぶ違いますね、主税局長と。
  233. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) もちろん、今、荒木委員の仰せられたその事情ですね、経済情勢が非常に微妙だ、これもございます。ございますが、税制上の問題としては、先ほど私が申し上げましたような点が一つ大きくからまっておる、こういうことでございます。
  234. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは悪い言葉ですけれども、私、怠慢ということになるのじゃないかと思うのです。これは税の公平な負担という原則からいえば、これは早急にやはりきまりをつけるべき性質のものだと思うのですね。それを配当課税のほうがうまくいかぬので結論が出ないでずるずる延ばすということは、ちょっと悪い言葉でいえば怠慢だといいたいのですがね。配当課税がきまらなければこれはきまらぬと言い切る性質のものですか。
  235. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) これは利子と配当の問題というものは非常にやかましい問題でございまして、ですから、できるだけ同時に解決が望ましいということが言えると思います。ただ、同時に言えますことは、今の分離課税ということは決して好ましくない、これはもうはっきりしておると思います。原則的な方向としては、総合課税をした場合の負担をねらいつつ改正の方途を見出だすべきであと、こういう点についてほとんど異論がないわけだと思います。ただ、最終的の問題について、負担を実際どうするか、これは投資利回りの相互の関係がございまます。そういった関係で配当課税と同時的に解決するほうが望ましいという問題と、それからもう一つは、単に総合課税と申しましても、この利子課税の歴史が表わしておりますように、いろいろな変遷を経ております。総合課税は今まで日本では一回一年間だけございますが、これがうまくいきませんで源泉、直ちに選択に復活しておる実例がございます。ですから、実行の上でも正直者がばかを見ないという保証のあるようなやり方によることでないと、再び失敗を繰り返すのじゃないかと考えます。方法としてはまさに、おっしゃるように、負担は総合した場合の負担をねらいつつ、その技術的な問題は今言ったような、正直者がばかを見ないような方法で解決したい、こう考えております。
  236. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それから、配当所得に対する源泉徴収ですね、一〇%の特例にしておりますね。これは今いろいろ説明があったのですが、しかし、いずれにしても、配当所得生活しておる人はどれぐらいまで税金かからないのですか。
  237. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 夫婦及び子三人で、三十七年度が初年度でございますが、百四十八万九千円ということになっております。  それから、先ほどの、配当に対する源泉徴収税率一〇%、これも一年延ばしましたが、これはさきの話とは違いまして、配当は現在総合することになっておりますが、源泉で幾らあらかじめ取っておきますかということでございます。これは先に二〇%取っておけば、あとで二〇%返します。先に一〇%取っておけば、あとで一〇%返す。要するに源泉段階での利回りを考えまして、利子のほうが一〇%になっておるから先取りする分も一〇%にとどめておく、これだけの話でございます。
  238. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 だから、こういうのは確かに不合理だと思うのですね。百四十万円からの収入に対して税金がかからない。一方、勤労所得に対しては十四万円からかかるということですね。非常な不合理ですからね。これの調整、これがだんだん延びるということは、私はこれはおかしいと思うのですがね。
  239. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) その点は、配当に対して個人、法人に対する課税を二重課税と観念するかどうかの問題でございまいます。これは法人に対する実は税引き分で配当はもらっているわけでございます。法人税がかかった残り。法人税はまず五〇%納めているわけでございます。地方税を入れまして。株主が負担したものかどうかということと考えるか考えないかの違いでございます。各国いろいろの税制がございまして、その場合にやはり最近の考え方は、これを無条件で両方課税することはいかにもひどい、それは二重課税だ。単純に考えてみましても、一方で益金処分で出るわけでございます。また、こちらも所得で課税するわけです。通常のものでございますと、一方が損で出ますと、片方が、益になる。一方でかかるということはわかりますけれども、両方課税するということは、同じ源が一つじゃないか、それは二重課税でないかという論議でございます。そういう意味で、徹底しておりますイギリスなんかは、法人に対する税金は全部個人が、株主が納めたものとして、あとでグロスアップして返えしているわけでございます。各国いろいろの調整方法がございます。日本は、先ほど申したように、今の軽減税率という形である程度調整をとっているわけでございます。ですから、この辺、この百四十万円までかからないことは不公平であると考えるか考えないか、その今の二重課税と考えるかどうか、法人税を株主の負担と考えるかどうか、そこにかかる問題でございます。
  240. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 法人税をかけておっても、実際に配当が百四十万円あるのですからね、実際のふところに入るのですよ。それに税金がかからぬということは、何を二重課税とかなんとかそういうことを振りかざしても、実際にふところに入る金に税金かからないというのは、ごく常識的に考えて、——私はむずかしい理屈わからぬですよ。けれども、不合理だということは言い得ると思うのですよ。それを二重課税の問題があるから不合理でないような説明をされると、引き下がるわけにいかぬ。
  241. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 関連して。たとえば実際個人経営でもって法人経営のものが幾らでもあるわけですね。そこで、資本金たとえば百万だとか百五十万というような場合が多いわけです。そうして十割配当をやるというので、実は百万とか百五十万の経営者が配当をもらうわけです。完全な所得になっている、事業所得ではなくて。そういうものに対するものが、今言っているように、何か二重課税になるのだから、うんと安くせなければならぬというようなことになってくると、どうもやっぱりそういうところの個人経営、これは例が悪いですけれども、大株主もあるわけですけれども、何かやりくりさんだんというのですか、どうも納得がしにくいわけなんですよ。あなたがおっしゃるように、二重じゃないか、こうおっしゃるなら、たとえば組合費で集めた組合の金をもらっても、またそれがちゃんと所得にかかってくるというような問題で、一度議論したことがあるわけですけれども、専従者に対する労働組合組合費に対しても。またやはり税をくくったものがたくさんあると思うのですよ、実際。何かこう不労所得と言っちゃ非常に悪いかもしれないけれども、まあ不労所得に類するもの、それに対して税を軽減していくのだということは、これがためにほかに何か有益のことがあるというなら、それは私は別だと思うのですが、何かバランスがとれておるから、それで筋が通っているというような言い方は、ちょっと納得しがたいのですがね。
  242. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 非常にむずかしい問題でございます。別に配当を安くしたいとかなんとかいうこととは何の関係のない問題でございまして、配当の二重課税の問題というのは、同族法人ではなくて——これはまた同族法人は同族法人として別の問題がございます。一般の非同族会社の株主がもらう配当をそのまま課税してもいいかどうかという問題でございます。実はこの配当に対する二重課税調整の問題を論議する際に、一年間にわたりまして、これを二重課税と観念すべきかどうか、そもそも二重課税ということを考えてもいいんじゃないか。これは日本の税法でも戦前はそういう考えもございまして、そういう考えで施行しておった時代があったわけでございます。しかし、その後各国ともだんだん二重課税の調整のほうに向かっているわけでございます、税制が。そこで、その問題もこの前提としてずいん論議したわけでございますが、税制調査会のほうでは何らかの調整を必要とする、こういう結論でございまして、ただ、その調整の方法として、現在のような現行の日本の税制でございますと、受け取る株主側で調整しているわけでございます。したがいまして、支払い法人の側では、実際のことをいいますと、借入金でございますと、八分で借りるわでけございますね。八分でもって借りた、これは八分のコストでございます。それを受け取ったほうは八分の所得ですが、五〇%の課税になり、四%の手取りとなるわけです。ところが、今度は配当でございますと、平均一割三分でございます。受け取ったほうは実は配当益金不算入制度が働いておりますので、それは課税にならぬわけですから、手取りは、一二%そのままとなるわけです。ですから、もし支払い法人が受取り株主の利回りを税引きであらかじて考えるならば、六分でいいはずなんですね。それで、配当と利子のバランスはとれている、こういうわけでございます。しかし、実際の企業はそのことを意識しない。そこに問題があるのです。それであれば、自己資本にかかる配当質担が高くなって、借入金にどうしてもたよりがちだ。そこは六分で経済的にいいはずのものを一割二分払うじゃないか。それは税制が同じ二重課税の調整をするときに、受け取り法人側に着目してやっているからそういうことになるのだ。支払い法人側に徹底してやれば、それは損金でやればいいじゃないか。そうすれば自動的にそうなるであろう、こういうことになったのでありますが、そういたしますと、今度は投資者の側、投資をしているほうの側の負担が非常に変わってくるわけでございます。そこらは非常な論議の対象になりまして、そこで損金算人ではなくて、軽減税率でいったわけでございます。しかし、この問題は非常にむずかしい問題だ。自己資本の構成の問題、あるいは資金調達、資金コストの問題にからむ問題、こういうことでこれで一応実験してみようということで、昨年実験してみたわけでございます。  その結果は先ほど申しましたように、ことしの九月決算から初めて出ているわけでございます。それから、今の税額控除のほうは三十七年度分から初めて働くわけでございます。財界がそのために一体どれだけの自己資本の構成に役立ったか、そうして配当率がどういう変化をしたか、こういう問題はなお時間をかけて分析しなければならぬ、こういうことで、各界の意見ももうちょっとこの制度について最終的の結論は待て、こういうことが言われているわけでございます。まあそういういった観点がございますので、この点は、この配当の二重課税の調整の問題というものは、もうしばらく研究さしてほしい、こういうことを言っているわけでございます。答申でも今後すぐ結論を出すべきではない、こういうことになっております。     —————————————
  243. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) 次に、酒税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑のある方は御発言を願います。
  244. 永末英一

    ○永末英一君 先ほど、物品税法に関して検査権、質問権等を行使する場合に、相手方を一体、政府はどう見ているのかということと関連して、酒税法の改正案中に犯罪という言葉が書いてある、あるいはそれにかかる者を犯人と呼んでおるということについて質問いたしたのでありますが、今度の酒税法改正、特に第五十四条関係で、旧法がすべて密造にかかるものを犯罪と呼んでおって、改正案では、その犯罪という文字を残しておる項と、そうして「犯罪」を「行為」と変えておる項とが混在しておるわけであります。その辺の思想統一は一体政府でどうなっておるのかを、ひとつお伺いしておきたい。
  245. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 五十四条の第三項というのは、「前二項の犯罪に係る」ということでございまして、その第一項、第二項を見てみますと、これは改正ございません。「第七条第一項又は第八条の規定による免許を受けないで、酒類、酒母又はもろみを製造した者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」、二項に持っていきまして、「前項の犯罪に着手してこれを遂げない者についても、前項と同様とする。」、それを受けまして、第三項のところで、「前二項の犯罪に係る酒類、酒母又はもろみに対する酒税相当額」、今度の改正ではカッコしまして、「(酒母又はもろみについては、その他の雑酒とみなして計算した金額)」、まあこうあるわけであります。それで、従来から、この今の無免許犯——まあ密造もそうでございますが、それといわゆる逋脱犯、これがいわば広義の意味における逋脱犯で、そういう刑事上の犯罪であるということでございます。それ以外のものは通常、秩序罰と呼ばれております。これは手続犯でございます。実体犯のものにつきましては、犯罪、罪というような言葉を使っておりますし、それから手続犯については、何々に違反したものと、こういう使い方をしておるわけでございます。  まあ罰則につきましては、これは実は法務省のほうが大体統一的に見ております。それで、その罰則規定の何といいますか、統一という見地から、法務省刑事局のほうで全部目を通しておるわけであります。
  246. 永末英一

    ○永末英一君 私の伺っておるのは、五十四条の第一項で、密造する者のことが書いてある。第二項では、それは犯罪だと書いてある。それから三項以降に、三項は犯罪という言葉を残し、五項、それから六項では「犯罪」という旧法の言葉を「行為」と書きかえておる。一体、それは違うかどうか。全部それぞれ第一項、第二項に該当する件、しかも、それを改正案では犯罪という文字を残したものと、そうしてそれをわざわざ「行為」と書きかえたものとが混在をしておる。その間の消息を伺いたい。
  247. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 三項のほうは罰則を書いておるわけでございます。ですから、その罰則的見地からは、それは罪でなければ罰則はかからぬわけでございますから、犯罪という言葉、罪という言葉を使っておるわけでございます。一方は税金を徴収するという話でございます。ですから犯罪であろうが犯罪に該当しなかろうが、それには関係ないわけでございます。取るべき税金を取りますということでございますから、何も犯罪を問題にする必要もない。だから、行為をした者から直ちに税金を徴収する、こう書いてあるわけであります。
  248. 永末英一

    ○永末英一君 旧法では犯罪という言葉が使ってあったわけですね。それで、今のようにあなたのほうで変えられたということになると、第五十六条の三項に、四十五条と関連して、犯人という言葉が書いてある。しかも、それは罰則そのものはなくて、いわゆる経済的な話ですね。酒税徴収。そうすると、今のあなたの御説明を貫くとしても、ちょっと矛盾しておるように感ずるのですが、いかがですか。
  249. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) だから、むしろ、新法のほうが概念が厳密になったのだろうと思うのでございます。旧法のような書き方ですと、罰金をかけた場合でないと、税金のほうは取れないのか、意地悪く読みますと。おそらく、そうは読まいで済むでしょうが、犯罪を犯したる者は罰金に処すとありますから、罰金をかけなければ税金のほうは取れぬのか、こういう心配もありましょう。そういう意味で今度の文理のほうがわかりやすくなっていると思います。
  250. 永末英一

    ○永末英一君 五十四条関係で、罰則を課する場合と課さない場合と分けて、課する場合には犯罪という言葉を使った、こうしますと、四十五条の行為をする者、それを五十六条の三項で受けて——第一番に五十六条の第一項六号で受けております。それを三項が受けておる。それは、三項そのものは罰則とは関係ないのだから。しかるに、犯人という言葉を使えば、犯人というのは犯罪を犯した者だと思うのですが、犯罪という感覚が残っておるのじゃないか。それはおかしいと思います。
  251. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 書いてございます。これは今度変わってない。これは、ここへ書いてありますのは、五十六条第三項、ここのところは、「第一項第四号の場合において、酒類、酒母又はもろみの製造者が判明しないときは、酒類については、犯人から、直ちにその酒税を徴収し、酒母又はもろみについては、当該酒母又はもろみを濁酒とみなして、犯人から直ちにその酒税を徴収する。」、これは本来ならば、密造犯を犯した者から取るべきである。しかし、その者はわからないという場合には、物税はすべてそうでありますが、初めから密造酒であるという認識をもって所持しておる者、これもやはり犯人だ、犯罪だ、こういっておるわけであります。これは関税法でもみな同じですが違反物件を持っておりますと、その認識があって持っておる者は、所持犯として禁止しておるわけです。いずれも脱税犯の系統に属するものであります。その場合には、所持犯を犯しておる者からこれを取りますぞ、ということを書いておるわけでございます。だれから取るか、所持犯を犯した者。それは所持しておる者だけではいかぬのでございましょう。やはりそれは所持犯にならなくちゃ工合が悪い。何らかの認識がなくして持っておる者は、(「今はそれは犯人だ」と呼ぶ者あり)それは認識がなくちゃいかぬだろうと思います。
  252. 永末英一

    ○永末英一君 私の伺っておるのは、五十四条関係で、なぜ、全部各項ともに「犯罪」と書いてあったものを、一部「行為」に直したかという質問に対して、あなたの答えは罰則がつけてあるものは犯罪という言葉を残したが、そうでないものについては行為にいたしましたという御答弁だ。だといたしますと、五十六条関係の三項のところは、罰則が書いてないでしょう。それを、それにもかかわらず、なお犯人という概念を使っておるということについて、あなたの答弁と食い違っておるから、伺っておるわけです。
  253. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) ちょっとわかりませんが、犯罪というのは、今の犯罪という言葉を使っておるのは、脱税犯系統は全部使っております。だから、無免許製造の場合、それから逋脱犯、それから無免許製造にかかる密造酒をそれと知りながら持っている、これはすべて今の逋脱犯の系統で、これは犯罪だと、こう呼んでいるわけでございます。そこで、今度は犯罪を犯したときに罰金をかけるとか、刑罰は刑罰でみんな規定してあります。税金の話が飛び出してくるわけでございますね。その場合に、通常の場合でございますと、その行為をなした者から直ちに取りますと、これでいいわけでございます。ここに書いてございますのは、その本来の脱税者がわからないと、こういうわけでございます。その場合に、だれから取るかというときに、ただ所持している者から取るという意味ではございません。所持犯に該当する者から取ります、こううたっているわけでございます。したがって、そこはどうしても犯人——犯人という言葉が適当であるかどうかは別にしまして、法律的には、所持犯に該当する人間からその場合は取りますぞと、こう書いてあるわけでございます。そこまで書かないと意味がはっきりしないということでございます。
  254. 永末英一

    ○永末英一君 私どもが心配しておりますのは、物品税というような問題について、物品税の中に書き上げられておるいろいろな条項に対して、国民が違反をしたとか、あるいはまた、それの条項に対してそのとおりに事が運ばないというものについて、質問権、調査権をこの法律によってあなた方が持つと、こう書いてある。しかし、それは犯罪捜査のためとは違うんだ、こういうことをわざわざあなたは書いている。ところが、同じような対象になっておる酒税については、明らかに密造する者、あるいはまたそれを所持する者について犯罪だという感覚を持っておいでになる。しかも、犯罪だという感覚を持っておるから、政府全般的にこういう間接税関係質問なり、あるいはまた検査をする場合には、やはり建前としてはそういう感覚が出てきはしないかということを心配するのが一点と、酒税法だけについていっても、罰則があるから犯罪という言葉を残し、罰則のない条項については犯罪という言葉を「行為」に直したと、こう言いますけれども考え方の根本には、やはりこれは全部犯罪だと、こういう感覚で臨んでおるとわれわれには受け取れるんです。その二点を、私が解釈しているように解釈していいかどうか、承りたい。
  255. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 前段の問題は全然別でございましてへ先ほども申し上げましたように憲法でいうところの、いわゆる何人も自己の不利益な自白を強要されることはないとかといういわゆる自己救済に関する規定、これは刑事事件に限られるということでございます。ですから、今の質問検査権について罰則を設けることは、それとは何らの関係のないことだということでございます。もちろん、質問検査権は、これは強制はできない、実力行使はできないわけでございます。そのかわり、その裏づけとして、質問検査権に加罰規定がございます。しかし、その加罰規定は、今の犯罪捜査のためとは全然別で、通常の調査のために設けられているんだということでございます。ですから、何といいますか、のあの条項は、逆にいえば適用がないんだ、それとは関係なく設けられておる質問検査権に対する加罰規定である、こういうふうにはっきり断わっているわけでございます。  で、ただいま申しましたのは、その犯罪かどうかというときに、いろんな税法がございますが、脱税犯というものと手続犯というものとは区分して書いてあるわけでございます。それで、同じく普通の脱税犯でございますと、間接税ずっと通じまして、三年以下の懲役または五十万円以下の罰金、ただし逋脱額の十倍に相当する金額が五十万円以上のときには、その十倍に相当する金額とする。それが多額になるわけです、罰金額が。その下に以下というのが働きますから、それ以下で働く。こうなっておるのがすべて逋脱犯の傾向でございます。酒税につきましては、製造が免許でございます。物品税につきましては何にも免許という関係はないわけでございます。その関係で、今の、免許を受けて逋脱をはかった者と、初めから免許制度を前提にしているんですから、初めから知りながら免許を受けないで造った者は、これは実質的に逋脱犯である、こう法律構成はできているわけでございます。それをまた事情を知りながらその密造酒を持った者についても、同じようにこれは逋脱犯の系統である、こういうふうに、一つの約束と申しますか、こういうような税の刑罰体系における一つの約束というふうになっておる。それを受けてあとの用語がずっと出ておるというわけでございます。  ただ、罰金のところでは、罰を犯した者についてはやりますと書いてある。ところが税金を徴収することになると、それは処罰しようがしまいが、税金徴収は別な問題でございますから、ですから、行為をなした者から徴収するといったほうが正確だろうと思います。
  256. 永末英一

    ○永末英一君 私どもが心配をするのは犯罪という言葉が刑法上の犯罪ではなくて、あなたが今おっしゃったような意味合いでのものであると言っても、字は同じ字を書いてあるわけですね。そうすると、それを受け取る国民の側からいえば、やはり刑法にかかわる犯罪人と同じような立場で、警察官でない、あるいはまた検察庁でない、政府の大蔵省関係のお役人がやってくる。そういう一種の雰囲気というものを税金関係で絶えず持って、暗い影がつきまとうということで一体いいのかどうかということを、われわれとしては問題としておるわけであって、そういう観点から見ますと、酒税法で犯罪という文字を特に使わなくちゃならぬかどうか。「犯罪」という言葉を「行為」に全部書きかえたら、全然意味がわからないで、酒税法が働かなくなるというようなことがあるのかどうか。「犯人」というものを、「行為をする者」と、「者」ということにしたら、全然ここの条文は読めなくなる、こういうような感覚をお持ちかどうか、その点をちょっと伺っておきます。
  257. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 同じようなことでございますが、実は強制調査という問題は、これは全然別でございます。ある同じ犯則事件について強制調査をやるかどうかは、国犯法、国税犯則取締法でいきますと、その場合、任意調査もありますし、強制調査もあります。もちろん検査の章は全部違うわけでございます。普通の収税官吏が持っていきます質問検査権に基づく検査と、それから国犯法に基づく検査というものは、おのずから違うわけでございます。その場合に、強制調査をやろうと思えば、裁判所の令状が要るわけでございます。この点につきましては、今の憲法の問題が働く。初めから、これは何といいますか、脱税した税金を取る目的ではなくて、犯罪を、刑事犯を打とうとしていっているわけでございますから、結果としてそれは脱税額がわかりますが、これは普通の税務署長を通じて通告したりなんかして税金はちょうだいいたします。これは初めから犯罪捜査でございます。主体が犯罪捜査でいきますから、これにつては憲法上のあの条項が働く。こちらのほうは犯罪捜査でなくて、税金の問題でございます、こう書いてあります。ただ、その税金のときに、加罰規定、罰則は各税法ごとに設けられていなくちゃいかぬわけでございます。そうでないとわかりせんから、それでこう書いてあるわけでございます。その中に、逋脱犯に相当するものと、手続犯に相当するものがございます。それはかなり観念的には違います。そこで、その逋脱犯についてと手続犯については、刑の量刑も違います。それから観念も違います。こういうことでございます。そこで用語としての逋脱犯のほうについては、その罪を犯した者と、こういうことを言っているわけでございまして、手続犯のほうは、何々に違反した者、こういう用語になっておるということでございます。
  258. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 犯人の文字が適当かどうか、あるいは犯罪という言葉が適当かどうかということで議論をしておって、中身がどうかというわけじゃないのです。そこで、税法の五十六条の三項のところに——まあ例ですよ。三項を例にとりますと、「第一項第六号の場合において、酒類、酒母又はもろみの製造者が判明しないときは、酒類については、犯人から、直ちにその酒税を徴収し、」、以下ずっとこう書いておる。その「犯人」——この次にも出ておりますが、「犯人」という言葉が、これは密造酒である、密造のものであるということを認識をしておらなければやらない、認識をしておらない者は犯人じゃないのだ、認識しておるから犯人というような言葉を使ったのだ、こういう解釈をしていいですか。あなた先ほどそういう言葉を使いましたが……。
  259. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 当然そうだろうと思うわけでございます。
  260. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 だろうと思うというのでなくて、そこを明確にしておいて下さい。
  261. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 罪を犯す意なき行為はこれを罪せずという刑法総則があるわけでございます。ですから、犯意がなければ犯罪は成立しないということは、これは税についても当然のことだろうと思います。
  262. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 だから、ここで犯人からという言葉を使ったということは、もう完全に意識しているんだということを前提にして犯人という字を使ったわけですか。
  263. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) さようでございます。
  264. 棚橋小虎

    委員長棚橋小虎君) それでは、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十一分散会