運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1962-02-15 第40回国会 参議院 大蔵委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月十五日(木曜日)    午前十時三十一分開会   ——————————  出席者は左の通り。    理 事            上林 忠次君            佐野  廣君            永末 英一君            市川 房枝君    委 員            大谷 贇雄君            木暮武太夫君            高橋  衛君            西川甚五郎君            林屋亀次郎君            堀  末治君            前田 久吉君            木村禧八郎君            原島 宏治君            須藤 五郎君   政府委員    大蔵政務次官  堀本 宜実君    大蔵省銀行局長 大月  高君   事務局側    常任委員会専門    員       坂入長太郎君   参考人    東京銀行頭取  堀江 薫雄君    三井物産株式会    社取締役社長  水上 達三君    全国銀行協会連    合会会長    柳 満珠雄君   ——————————   本日の会議に付した案件 ○外国為替銀行法の一部を改正する法  律案内閣提出)   ——————————  〔理事上林忠次委員長席に着く〕
  2. 上林忠次

    理事上林忠次君) ただいまから委員会を開きます。  本日は、棚橋委員長が都合により欠席いたしますので、私が委員長の職務を行なうことにいたします。  まず、委員会を代表して、私から参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  これより、外国為替銀行法の一部を改正する法律案を議題とし、同法律案について、順次、参考人方々から御意見をお述べいただくわけでございますが、時間の関係上、一人二十分程度で御意見をまとめていただきまして、それが済みましてから、委員の質疑がございますから、それにお答えしていただきたいと存じます。  柳参考人は後刻御出席になる予定でございますので、さっそく水上参考人から始めていただくことにいたします。どうぞよろしくお願いします。水上参考人
  3. 水上達三

    参考人水上達三君) 私、水上達三でございます。私は、貿易を担当しておりますので、日本貿易を今後推進していくために必要だというそういう見地から、外国為替銀行法の一部を改正する法律案につきまして、若干の意見を申し上げたいと思います。  戦後の日本銀行制度は、総司令部の指導で、戦前日本特有特殊銀行制度を全廃いたしまして、普通銀行一本にしてしまったわけでありますが、その後、わが国経済必要性に即しまして、ある程度特殊銀行の復活を見たわけでございます。たとえば日本開発銀行日本輸出入銀行長期信用銀行法日本長期信用銀行日本興業銀行、それから本日ここに関係のある外国為替銀行法がまあ昭和二十九年四月に制定されたわけであります。  二十九年ごろの日本貿易の中で、輸出だけ考えてみますというと、まあ十数億ドルくらいの輸出しかなかった。現在それが、ことしはまあ四十七億ドルできるかできないかという議論をしている段階でございます。いずれにしましても、非常に貿易の量はふえてきておる。したがって、その金額が非常にふえてきた。そういうふうなことになっておりますが、私ども貿易業界使命は、言うまでもなく貿易振興であるわけでありますが、それは貿易商社だけの力でできるものではなく、ほかの船会社とか保険会社とか、そういう関連企業との協力ということはもちろんでありますけれども、最も重要なのは、やはり貿易決済を担当する為替銀行が強力であるということが一番必要なわけであります。それが、単に銀行のほうから見まして、一東京銀行ということだけではなく、わが国為替取り扱い銀行強化ということが一番私どもとしては望まれるわけであります。その専門銀行としての東京銀行強化ということが、その中でもしかし最も先決であり、かつ、焦眉の急であるということを、ことに最近の輸出促進を叫ばれる現状からいたして、特に痛感するわけであります。為替銀行強化というのは、まあ組織の拡充とか、店舗増強とか、いろいろあるわけですが、一番必要なのは、やはり資金充実資金充実していただくということになるわけであります。  この間、実は為替国際金融のオーソリティといわれておりますトリフィン教授日本に来たとき、私もその会合で教授に指摘したのでありますが、戦後世界的に貿易長期化してきた。戦前貿易決済というのは非常に短期でありました。ところが、最近は、御承知のように、長いのになりますと十数年になるものがあるわけであります。これは特例といたしましても、だんだん特例でなくなりつつある傾向にありますけれども、そういうふうな傾向でございますので、この長期化に対する為替方面の対策というものが非常に必要になってきているわけでありますが、なかなかそれを今調達する方法がないわけであります。そこで、そういう長いものを一挙にどうということもなかなかむずかしいのでありますが、銀行資金も、自然取引長期化ということに対処することが非常に必要ではないかということを痛感しているわけであります。現在輸出振興が私どもに課せられた大きな任務であるわけでありますが、現在のわが国輸出金融制度では、この期待に必ずしも沿っていないという感じを強くするわけであります。  輸出金融制度輸入金融制度というふうなものがいろいろありますが、これはまあここでは長くなりますから省略いたしますけれども、その中で為替専門銀行としての東京銀行貿易金融として円を必要とする取引というものにどんなものがあるかということだけちょっと拾ってみますというと、まず担保適格輸出貿易八五%の残り一五%分、それから輸出入銀行との共同融資、これは輸銀が現在では八割、市中銀行が二割ということになっております。それから、たとえばカン詰金融のように、いずれは輸出金融になるのですけれども、まあ生産仕込み資金といいますか、生産資金として出す、そういったもの。それから、貿易金融には原則として輸出円金融輸入外貨金融であるべきですが、輸入金融においては最近特に著しいいのですが、外貨金融を過ぎた金融、いわゆる「はね返り」といわれております円金融になる、そういったようなものが円を必要とする取引のおもなものではないかと思うのであります。  現在の為替専門銀行法制定当時、私はそれに関連しまして三点主張したことがあるのですが、約十年近く前になるのでありますが、外貨の厳格な国有制度、今そうでありますが、そういう国有制度を緩和して、これをできるだけ早く民有に切りかえる。第二は、貿易金融分野の確立、すなわち貿易面における商社金融メーカー金融を分ける。現在では商社負担の分が相当長過ぎる。ですから、商社が非常な金融機関仕事をやらざるを得ないというふうなことになっております。第三点は、外貨金融円金融の分離、ということは、為替専門銀行外貨金融機能強化ということになるわけでございます。そういうことを主張したことがあるのですが、これらはその後何がしか政府の施策によりましてそういう方向に進んできてはおります。きてはおりますけれども、まだまだの感が深い。  そこで、私は、今度東京銀行所要資金を安定的に、金融債発行しまして、それによって資金調達の道を開くということは、およそ貿易をやっておるものとしましては、私個人としてはもちろんのこと、貿易業界といたしましても全部賛意を表しておるところであります。まあ資金調達方法とかなんかにつきましては、これはすでに金融制度調査会等で十分検討されておることでございますので、私はまた専門外でもございますので、この点には特に触れませんが、とにかく中期的な資金の確保ができて、それがまた十分になるということであるならば、先ほど申し上げました世界貿易のすう勢にも伴っていくということにもなりますし、日本輸出が非常に必要である現段階において、特にこれが実現するということは非常に有意義ではないか、こういうふうに考える次第でありまして、この法案には全面的に賛成するわけであります。  輸出目標というようなものにつきまして、一体それじゃ日本は幾らぐらい輸出をこれからしていけばいいのか。際限のない希望を持ってもこれは仕方がないし、そうかといってあまり小さいことを望んでおりますというと、国民生活程度は上がらないということになるわけでありますが、私は大体、現在は、今年度の予算規模その他いろんな点から考えまして、三十七年度の日本輸出は、今のところで予想する限りでは、大体いわゆるGNPの一〇%から一〇・五%ぐらいじゃないかと思います。西独とかあるいはイギリスというところは、同じような計算をいたしますというと、大体一八%ぐらいの輸出をしております。フランスあたりで一四%ぐらいになっておるかと思いますが、それで御承知の、今よく問題になっておりますEEC諸国、あの六カ国などの生活程度から見ますというと、なおかなりの開きがある。日本が一八%ぐらいの輸出をしたらば、それならどのくらいの輸出額になるだろうかという推算をしてみますというと、おおよそ九十億ドルちょっとこえる程度ではないかと思います。現状では四十七億ドルの輸出をするかしないか、できるかできないかというようなことがまあ論議されているという状態でありますが、約倍余りのものが、一挙に一八%ぐらいできればそういう計算になるということでございますが、私は、日本のこの国民生活水準を上げて、なお国際的に日本立場において協力するという使命を果たすためには、やはり西独イギリスぐらいの、一八%ぐらいの輸出をしていくというぐらいの目標を立てていくのがいいのじゃないか。  そのためには、現在の為替専門銀行である東京銀行資金状態は、ここに頭取がおられますが、はなはだ貧弱な資金を持ってやっておられる。たとえば預金の三倍ぐらいの金融をしておられるのではないかと思いますが、非常に貧弱なわけであります。日本の全体の五十億ドル余り輸出をしていくにしましても、まあ非常に貧弱。これは東京銀行だけの問題じゃもちろんありませんが、いやしくも為替専門銀行という線を打ち出した以上は、それに対しましてその所期の目的に沿うようなことを何がしかやっていかなければならない。で、今回これをこういうふうな輸出が非常に大事だということが国民の世論にもなっているというような際に、こういうふうにお取り上げになったということは、たいへんけっこうなことだと思います。  簡単でありますが、私の考えの一端を申し上げまして、御参考に供したいと思います。
  4. 上林忠次

    理事上林忠次君) それでは、堀江さんに一応やってもらいまして、またまとめて質問したいと思いますが…。それでは堀江さん、どうぞ。
  5. 堀江薫雄

    参考人堀江薫雄君) 堀江薫雄でございます。外国為替銀行法一部改正法案の御審議あたりまして、参考人として御説明申し上げる機会を賜わりましたことを厚くお礼を申し上げます。本改正法案趣旨につきましては、すでに政府当局から御説明があったことと存じまするので、若干重なる点もあるかと思いますが、補足する意味で、為替専門銀行としての東京銀行実情及びその考え方につきまして、概略御報告申し上げたいと思うのであります。御審議の御参考に供していただけたら幸いと存じます。  戦後、特に近年におけるわが国経済成長は目ざましいものがありまして、その土台となる貿易伸張もまた著しいわけであります。たとえば、ただいま水上さんからお話もありましたが、昭和二十九年、それは為替専門銀行が発足した年でありますが、二十九年の日本貿易量は、輸出が十五億ドル、輸入が二十億ドル、計三十五億ドルであったのでありますが、それが昨年三十六年におきましては、輸出が四十億ドル、輸入が五十億ドル、計九十億ドルで、つまりこの八カ年間に二倍以上の伸張を見せているのであります。二倍と申しましても、金額的に見ますと五十五億ドル、これを円に引き直しますと二兆円という大きな伸び方であります。そういたしまして、この傾向は今後とも継続しそうであります。御承知のとおり、機械、原材料、その他いずれの面を見ましても、わが国経済体質強化していく、また雇用と生活水準を引き上げていく、つまり経済繁栄のための高度成長を続けていく上から、輸入増大傾向は避けられないのであります。さらに、自由化の措置がこれとともに進行するわけであります。この自由化の過程で、わが国貿易構造産業構造の改革とか、あるいは企業近代化を進める必要があり、この面からも輸入増大して参ります。ただ、この間にも重要度に応じて輸入に選別の観念がないと、国際収支の悪化を招くという多少矛盾した問題を含んでおり、これを調整しましたり、あるいは輸入交通整理をしましたりしなければならないと思うのであります。現在の日本経済はちょうどそういった実情にあると私は思っております。ともかくこうして輸入増大が避けられないといたしますと、国際収支の破綻を防ぐためには、どうしても輸出を大きく伸ばしていかざるを得ない。今水上さんのお話しのとおりです。その結果として、わが国貿易量は、今後とも相当のテンポで拡大していく、また拡大させていかなければならぬ、こういった実情だろうと思います。  こういう貿易伸張を、金融面、また為替技術面、こういったほうから積極的に支援していくことがわが国為替銀行一般仕事でありまするが、なかんずく為替専門銀行はこれを専業とする銀行であり、ちょうど八年前に御制定いただきました外国為替銀行法に準拠して誕生をみたものであります。現在、為替専門銀行として、東京銀行わが国輸出入為替全体のほぼ二五%、つまり四分の一を取り扱い、その金融に当っております。年間百億ドルの貿易量といたしますと、ほぼ二十五億ドルという巨額の金融になるわけであります。このほかに、たとえば西ドイツ東南アジア諸国、あるいは西ドイツと南米といった間の貿易というように、いわゆる第三国間の貿易為替海外支店相互間で取り扱っておりまするし、またわが国海外に進出しておる企業に対する現地での短期、中期の金融もその仕事一つとなっておるわけであります。もちろん、貿易量と同額の金融が常に必要というわけではありませんが、ともかく年々増大して参りまする貿易及び為替外貨と円貨の双方で金融して参らねばならない。もし調達資金量不足ということでこういった金融が円滑を欠くということになりますると、わが国貿易の健全な発展に支障を来たしまするし、またせっかくの外国為替専門銀行としての公的機能も全般的に低下せざるを得ないわけであります。  ところで、この重要な業務つまり為替資金運用量がどういうふうに伸びて参ったかといったことを申し上げたいと思いますが、まず第一に、外貨資金であります。専門銀行移行当初の昭和二十九年には、東京銀行運用外貨資金は一億ドル見当にすぎませんでした。これが現在では十億ドル余りつまり十倍に伸びております。また、専門銀行設立効果、効能といたしましては、設立後わずか一年以内に、御存じの方もおありかと思いますが、例のL・U・A制度という日本銀行対外為替取引政府保証をしていた、その保証をはずすことができましたわけであります。また、日本銀行発行信用状にそれまで要求されておりました外銀保証担保金の差し入れも不要になり、また外銀からの借り入れ条件も緩和されるといったように、日本側銀行全般立場が著しく改善されるに至ったのであります。これも、それまでもっぱら外国銀行にのみ預託されておりました日本外貨の一部が漸次専門銀行に預けかえられ、実力がつきました結果、これを端緒として外銀側が譲歩を余儀なくせられたためであると思うのであります。この政府外貨預託ということは、為替専門銀行法成立の際の国会附帯決議の中でも、低利円資金供給等と並んで御要請されている点でありまするが、この預託外貨のおかげで国際為替金融市場での為替専門銀行信用力外貨調達力といったものも非常に高まって参りました次第であります。昭和三十四年の秋のことでございまするが、米国連邦準備銀行から、以降東京銀行引き受け手形連銀の再割適格手形として取り扱うという通知を受けました。連銀からこの取り扱いを認められておるのは、米国銀行でも一流銀行のみで、在米外銀ではきわめてその数が少ないのであります。このことは、東銀国際為替金融市場でファースト・クラスの銀行として認められたことを意味するだけでなくて、海外市場での日本銀行外貨調達力、ひいては国の外貨準備にも大きなプラスをもたらすことになったわけだと思うのであります。  それで、外貨調達現状について申しますると、日本政府からの預託を除きまして、第一に、英米等外銀からの貿易資金借り入れワクは、ただいま私どもとしまして四億五千万ドルに達しておりまして、現在実際に使用、借り入れておる額がこのうち三億二千万ドルであります。第二に、海外金融市場での預金並びコール資金等が、私ども現在一億二千万ドル持っております。第三に、御承知のユーロ・ダラー、自由円預金等国際短資一億五千万ドル。合計六億数千万ドル現在調達し、なお外貨借り入れワクを多少余しておるといった現状であります。これらはそのままわが国貿易拡大資金として、あるいは海外進出企業運転資金として活用され、あわせてわが国外貨準備の補強にも役立っておると思うのであります。  外貨資金面は、以上で御理解いただけるように、国際信用力強化に伴い、ほぼ順調に推移いたして参っております。  次に円資金でございまするが、これは今、水上さんからもお話のありましたように、東京銀行といたしましては、専門銀行移行以来一貫してその不足に悩まされてきたというのがいつわらざる実情でございます。  そもそも、為替銀行法制定趣旨は、その当時の公式説明にもありますとおり、国際金融市場外国銀行と比肩し得る能力と信用を持ち、国内的には他の為替銀行協調補完関係を保ちながら為替取引及び貿易金融に専念するということにあったわけであり、為替専門銀行を中核として日本為替銀行界秩序を維持していき、一体となって日本貿易発展に寄与することにあるのであります。こういった機能と申しまするか、責務と申しまするか、それを全うしていくためには、これにふさわしい人的要素とか、あるいは海外支店網とか、それに資金、この三つの充実を必要といたすと考えます。このうち円資金を除きましては、この八年間に大体充実を来たしておりまして、このうち外貨資金状況はただいま申し上げたとおりであります。  次に、海外店舗網国内店舗網につきまして申し上げますと、国内店舗のほうは、為専に転換のときに比べ、ほぼ半減の二十五カ店となっておりますが、海外支店海外駐在員事務所は、専門銀行生命線でもありますので、その充実に努めました結果、現在海外支店が二十カ店、海外駐在員事務所が二十カ所、それから海外の子銀行は、カリフォルニアの東銀、ニューヨークの東銀信託、テヘランの日本イラン国際銀行の三行、七店舗を数えるに至っております。なお、海外布陣につきましては、わが国海外貿易上必要であり、その拡大伸張に役立つと判断される地域には、必ずしも採算に拘泥せず店を出すといった方針をとって参りましたので、現在では、辺境の後進国をも含め、ほぼ世界主要地域大半を網羅いたしております。  次に、スタッフの人員のほうでありますが、現在私ども四千五百人の行員がおりますが、このうち一千百人は海外支店海外駐在員事務所の要員として世界地域で活躍しており、国内店にもこれら海外勤務経験者が多数配置せられ、為替専門銀行にふさわしい陣容を整えております。このように十分専門化された多数の行員が、内外ネットワークの中で密接な連係を保ちながら、為替取引貿易金融及び国際間取引につき多岐多様の業務に従事しております。たとえば、お聞き及びと存じまするが、最近まとまりましたスイス三大銀行からの機械輸入代金クレジット三千万スイスフランや、また大阪府と大阪市のドイツマルク債一億マルクの発行など、外資外債関係仕事どもその一例であります。  話が若干それまして恐縮でありますが、こういったことで、円資金面を別にいたしますると、発足以来この八年間に他の基本的部面はほぼ満足すべき充実を見せて参っております。問題は、ただ一つ円資金面であります。為専発足時の円資金運用量は八百億円見当でありましたが、現在では二千億円になっております。外貨資金量伸びが十倍だったのに比べて、円資金童伸びは二倍半にとどまっております。それはともかくとして、円資金は非常に窮屈な状態で推移して参りました。絶対量が不足であっただけでなくて、調達源に不安定さがあり、コストも高いといった事情がこれに加わってきているわけであります。  何ゆえそういうことになっておるかという事情につきましては、政府当局よりの改正法案趣旨説明にもあったことと存じまするが、そのおもな原因は、円資金安定調達源たるべき円の預金が、専門銀行という性格のために伸びがたいためであります。つまり、第一に、国内支店が制限されておる上に、その配置も預金店本位ではなくて貿易為替店本位の形になっておる。第二に、預金増強効果の大きい純国内貸付を制限されておる。第三に、貿易商社が私ども取引先大半を占めておりまするが、この貿易業という業種は、預金歩どまり率がはなはだよくないのであります。  こういった事情によって円資金ははなはだ能率が上がらない、また苦労しておるということであります。そして、二千億円の運用量のうちで国内円預金の占める割合は八百億円、四〇%であります。したがって、あとは日本銀行借り入れ市場コール資金取り入れに依存せざるを得ない。日本銀行からは、並手形取り入れとか、あるいは高率適用免除等の配慮をいただいておりまするが、これにも限度があり、市場資金はその不安定性と高いコストのゆえに、大きく依存することは健全経営の建前からできません。昨今は、御承知のとおり、海外からの自由円預金相当伸びを示し、円資金繰りに寄与しておりまするが、それにしましても、年々増大する貿易量円資金調達額の差は拡大一途方向にあり、ここにどうしても安定的な円資金調達のパイプを引く必要が生じてきたわけであります。  政府当局とされましても、その必要性をお認めになり、昨年金融制度調査会を招集、前後四回にわたって審議の上提出された答申の線に沿って、今般改正法案国会へ上程される運びとなりました事情は、すでに御高承のとおりであります。金融制度調査会での審議及び答申の内容につきましては、委員の一人として市中銀行を代表されて参加されておりました、ここにおられます柳さんから御説明があることと存じます。  本改正法案が成立し、金融債発行が可能となりますると、当行現在の資本金及び準備金は約二百三十億円でございまするので、その五倍として約一千百五十億円の限度まで発行が可能となるわけであります。加えて、今後毎期積立金が累積して参ることも勘案いたしますると、発行消化が円滑に参りまする限り、当行円資金問題は相当改善の方向に向こうものと考えます。  なお、当行一般為替銀行との協調関係を確立し、業界に公正な競争が行なわれ得る秩序を作っていくことが、為替専門銀行設立にあたっての御要請であったわけであります。私どもといたしましては、専門銀行設立当初から、この点につきましても大いに努力を傾けてきたところでございます。幸いに一昨年あたりから各銀行との協調、話し合いも急速に進みまして、その結果、現在では、第一に、すべての為替銀行東京銀行との間にコルレス契約が締結されました。第二に、このコルレス契約を通ずる為替取引も年間五億六千万ドルに及んでおります。第三に、また大部分の銀行東京銀行外貨勘定を持つに至りました。第四に、当行はこれら為替銀行に対し、合計一億二千万ドルの外貨資金を供与しております。第五に、このような業務の提携交流の強化とともに、すべての甲種為替銀行東京銀行株式の相当数を保有して資本参加をするに至りました。それから第六に、また当行としてもその経営をオープンにいたしまして、金融界代表として元全国銀行協会会長の小笠原光雄さんを当行取締役にお迎えし、同時に、貿易界代表として日本貿易会会長の稲垣平太郎さんも取締役として経営に御参加いただいておる次第であります。このような協調関係をもとに、さしあたり金融債の主要消化先としましては、甲種及び乙種為替銀行、すなわち市中銀行と地方銀行をめどにさせていただいておる次第であります。  私どもといたしましては、今後とも一そう日本貿易発展にお役に立ち得るよう、同時にまた、わが国為替金融界全般のお役にも立ち得るよう、当行の内容や機能をさらに充実させて参りたい、かように考えておりまするので、皆様方御審議あたりましても、格別の御理解を賜わりますとともに、今後とも御支援、御指導のほどお願い申し上げます。貴重なお時間を御清聴賜わりまして、まことにありがとうございました。
  6. 上林忠次

    理事上林忠次君) ありがとうございました。  柳さんお見えになりましたが、柳さん、本日は御多用のところ、どうもありがとうございました。外国為替銀行法の一部を改正する法律案につきまして、御意見を先ほどから聞いておりますが、柳さんの御意見、なるべく二十分間くらいにおまとめいただきまして、これが済んでから、御三方一緒に皆さんからの御質問を受けていただきたいと思います。  それでは、柳さん、お願いいたします。
  7. 柳満珠雄

    参考人(柳満珠雄君) ちょっと、私、自分の銀行の都合でおくれまして、たいへん失礼いたしました。ただいまからお話を申し上げたいと思います。  まず、劈頭に申し上げたいと思いますのは、この法案に対する私の意見は賛成でございます。  私は、為替専門銀行資金調達の方式について諮問のありました昨年の金融制度調査会におきまして、為替銀行を代表いたしまして、委員として審議に当たりました。この際、本件に関する一般為替銀行の基本的な考え方について申し述べたいと存じます。  まず、昭和二十九年の為替専門銀行発足から今日に至るまでの為替銀行界の状況を、ここでちょっと振り返って見ますと、為替銀行法が提案されました当時におきましては、すでに外国為替業務に従事しておりました一般の為替銀行は、大体においてこれに反対意見であったといういきさつがございました。つまり、すでに活躍中でありました一般為替銀行の実資力の強化や国際信用の獲得があれば、特に専門銀行という制度を作る必要はないということであったのでございます。また、当時の賛成意見にありましても、専門銀行と一般銀行は、その能力において十分競争と補完の関係に立つように慎重な配慮を加えるべきであって、また各界、特に金融界の積極的な協力が行なわれるべきであり、その意向の反映されるような運営が望ましいとする見解がつけられていたものと記憶するのでございます。  しかし、かようにして専門銀行が発足しましてからの実情は、東京銀行においても、海外支店網充実を初めとしまして、業容の拡大があり、また一般為替銀行におきましても、貿易為替金融に力を注いでおります。また、国際的信用を獲得することによりまして、業務発展に務めました。もちろん、これは国際経済における日本の地位の向上や、あるいは国力の伸張というものを土台にしておったのではございますが、いずれにしましても、業務発展に努めまして、それぞれその力を伸ばして参ったわけでございます。その間の両者の関係は、競争という点ではそれぞれ業容の拡大に貢献するところがあり、外国銀行に対しましても十分太刀打ちできるように育ちました。しかし、他面、協調、補完という点では、私の口から申すのははなはだ遺憾でございますが、顧みまして、まだ十分なものではなかったものと言い得ると思うのであります。  しかし、われわれ業界の問題といたしまして、公正な競争はもちろんけっこうなことで推進さるべきものであると思います。その結果が、ひいてはわが国貿易の伸展にもいささかでもお役に立つ面があるかと存ずるのでございますが、それがいたずらに行き過ぎとなりまして、他を押しのけることになっては、貿易為替業務に従事する銀行の公共的使命にかんがみましても好ましくないし、また国際的信用にもかかわるという面もございます。そこで、ここ一両年にわたりまして、過去の反省もありまして、業界の問題として為替銀行間の協調態勢確立の必要というものが論ぜられるようになりまして、金融界全体として、内に力を争うより、外にそれを結集すべきであるという機運が醸成されてきたのでございます。  しかし、協調と申しましても、御承知のとおり、こういう問題は今日明日直ちに実行できるというわけではなく、なかなかむずかしい問題でございまして、特にこれという方針や方策が打ち出されていたわけではありませんが、個々のケースとしましては、貿易金融協調融資の取り扱い、特に商社海外活動に伴うものであるとか、東京銀行海外支店とのコルレス契約の締結であるとか、特殊貿易取引には東京銀行の人員能力にお願いして為替銀行全体の窓口になっていただくとか、あるいは昨年のアメリカの輸出入銀行の綿花借款の取り扱いについて、従来日本銀行がやっておりましたのにかわりまして、東京銀行を借款受け入れ機関にお願いしたとか、そういうような例は多々ございます。要するに、協力して為替金融界全体の運営をスムーズにいたしたいという方向を進めつつあったのでございます。特に一昨年から、これは先ほども掘江さんからお話しがありましたとおり、一昨年から昨年の東京銀行の増資にかけまして、ほとんどの為替銀行が話し合いの上、東京銀行の株式を保有するという話を進めまして参りました。これはそういう協調機運の明確化してきたものと申すことができると思います。  ところで、昨年来の金融逼迫の実情につきましては、今さらここで申し上げることもないところでありますが、それがまず金融機関の金詰まりから始まりますことも、これも御承知のとおりと存じます。かような際に、専門銀行である東京銀行においては、特にその預金吸収網が少ないのと、業務の特殊性のために、その資金繰りの窮屈は十分察せられるところでありまして、かつ、当初予想しましたコール資金への依存もなかなか困難の多い実情にありました。かような情勢におきまして、昨年六月、大蔵大臣から、金融制度調査会に対しまして本問題の諮問があったわけでありますが、為替銀行の代表としまして委員を勤めておりました私の第一に考えましたことは、前申しましたような協調機運の中にありまして、これはまず業界内の問題として対処する方法はないかということであります。もう一歩具体的に申しますと、根本的な全体の金融制度金融機構の問題として考えるべきことはもちろんといたしましても、まず何よりも当然のことではありますけれども、われわれ業界の問題として解決したいということでございました。  かようにしまして、調査会における審議の結果は御承知のとおりと存じますので、詳しくは触れませんが、まず東京銀行実情につきましては、何らかの安定的資金の導入が必要であり、東京銀行の支援のためには金融界に醸成されてきた協調機運という、これを助成する基盤があるということが私たちの議論の出発点でございました。  そこで、具体的に問題となることは、第一に、まず安定資金調達方法でございますが、これは為替専門銀行発足当時からの問題の一つでありまして、行政当局、日本銀行東京銀行、それぞれにおきまして、特に円資金の調達には御苦心のあったところと思いますが、やはり当初予想されましたようなコール市場の安定とか、金融環境の整備という点においては、いまだ不十分なものがありました。現状においては、協調機運を基盤として、同業者預金とか、金融機関の借入金とか、他の手段もいろいろ考えたところでございますが、やはり協調といってもギブ・アンド・テークの、双方により納得してつき合えるものが必要である。結局、債券の発行によることが現状ではやむを得ない方法であるという結論に達したものであります。  それから、第二に、債券の発行によるとはいえ、本来、為替専門銀行業務は、預金とこれを補完する借り入れとを資金調達の基盤として運営さるべきものでありまして、業界内でもかれこれ意見があったのでございますが、結局これは当分の間の暫定的、過渡的なやむを得ざる資金調達補完の手段として、かつ、先ほど申しました業界協調基盤の確立に役立つものとして認めよう、こういうことになったのでございます。  次いで、債券の発行は、以上のような資金のおもなる調達源を補完するものであり、かつ、いわば現在の正常ならざる金融環境において、過渡的な手段であるということ、さらに既存債券発行銀行の営業との兼ね合いや、為替専門銀行の性格から、債券の発行限度は自己資本の五倍に設定することが、これらの趣旨を盛り込んで、かつ、専門銀行の運営にも支障はない線であろうと、こういうふうに考えられたわけでございます。  さらに第四に、具体的な発行条件、消化方法につきましても、発行には、為替専門銀行の性格上、比較的短期のものが望ましい、既存金融債その他起債市場の状況を勘案します必要がある、それから発行者、消化先の採算をよく考える必要がある、こういう点に留意する必要がある。それから、消化の方法については、業界協調の精神に出ずるということから出発しておるのでございますから、金融機関の消化を原則とすべきであると、こういうふうに考えるのでございます。そういう考え方を実現するためには、関係者からなる協議会を設けまして、まず何よりも業界の問題として対処する方法をとりたいと考えているのであります。  以上、為替銀行を代表いたしまして、東京銀行の債券発行の問題について私の考え方を申し述べましたが、要するに、本法案の成立によりまして、東京銀行の債券発行方法が、為替銀行協調関係を助成する具体的な場を形成しまして、今後の業界の努力と協調によりましてわが国貿易為替金融の円滑化、ひいては貿易振興に役立つことになれば、幸いと存ずるのであります。たいへん貴重な時間をいただいて、ありがとうございました。
  8. 上林忠次

    理事上林忠次君) それでは、参考人方々に御質疑のある方は、順次、御発言をお願いします。
  9. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 水上さんにお伺いしたいのですが、先ほど、貿易為替金融につきまして、前から三つの点についていろいろな御意見を持っておられるわけです。一つ外貨の固有制を民有制に改める、もう一つ貿易金融の分野を明確化すること、第三は外貨金融円金融との分離、こういう点について御意見承ったのでありますが、第一の外貨国有制から民有制への切りかえの問題でございますが、この点については私も前からいろいろ疑問を持っておったのでありますが、政府は、外貨が非常に一時たまりまして、最近減ったようですが、金保有は非常に少ない。アメリカの銀行とかアメリカの証券に運用しているのですが、非常に低利なんですね。三分程度ですね。大体預金なんか三分程度だと思います。そうして大蔵省の外為会計では日銀から六分くらいで借りている。そうして外貨を買って、それでそれを外銀預託したり、証券を買って三分程度の運用をしている。金利の点について、外為会計は非常に損な運用をしていると思うのですね。私はそういう点から見まして、なぜアメリカの銀行にたくさん預託したり、それから証券の運用をしているのか、疑問に思っておったのですが、これはやはりもっと金を買って日銀にこれを保有させるとか、あるいは大蔵大臣勘定に移して、それをもっと民間の銀行に運用させる、そういうことが必要であると思ったのです。多少そういう方向に移ってはいるようでございますが、現状について水上さんはどの程度にお考えですか。まだ現状程度でよろしいとお考えですか、もっと進んであるいはもっと抜本的な対策を講ずべきであるか、その点についての御意見を伺いたいのですが。
  10. 水上達三

    参考人水上達三君) 私の申し上げたのは、一つの当時の理想を申し上げたわけでございますけれども、その中で若干は漸次その方向に向かっているということは言えると思います。今御質問の第一に、私の申し上げました外貨を民有にすべきであるという問題ですが、これはおっしゃるような抜本的なことをやるという段階ではもちろんないと思います。しかし、貿易振興し、それからそのために、また貿易のための外貨資金なりあるいは円資金なりを円滑に調達していくという建前からいきますと、なおさらに前進していくべきではあると思うのですが、現状では、たとえば貿易会社に対しまして一部売り渡してある外貨があるわけです。しかし、これはきわめて少額なもので、要するに、私ども立場貿易を円滑に進めていく立場からいきますというと、資金の必要なときに直ちに必要な資金が得られるということが最大の条件、もちろんコストは安いほどけっこうなんですけれども、それが目的ですから、そのいろいろなやり方ですね、たとえば国の中の外貨に対するいろいろな制限、そういうものは今の目的に沿う限りにおいては、極端にいえばどうでもいいということでもよいと思いますが……。
  11. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 従来は貿易管理をしておりましたから、その関係政府相当外貨を持っておらなければならなかったのでしょうが、しかし今後はSAAをやめてAA制に移っていく、そういうことになれば、そんなに政府外貨を持っていなくてもいいということになるのですが、どうも私は政府外貨の運用について非常に問題があるのじゃないか。今自由化にどんどんなっていくのに、そう政府が持っている必要はないのじゃないかと思うのですがね。
  12. 水上達三

    参考人水上達三君) その点、二つ問題があると思うのですがね。たとえば今の外為のやり方ですね。それから輸出が非常に減ってくるというと、まあ輸出が昨年のように減ると、国内の金融がそれだけ締まってくるという今のあり方ですね、これはまず第一に考えなければならぬ問題である。これもすぐどうというわけにはなかなかいかない問題だと思いますが、しかし前向きに考えていかなければならぬ。それから、もう一つは、自由化によってやはり当座の金が要るというふうな形になってくるわけですね。それですから、先刻も申し上げたように、必要なときに直ちに必要な資金が合理的な金利で得られるということが必要になってくるのです。ですから、どうしてもわれわれの保有の外貨というものはもっと多くなっていかなければならない。これは確かにそういう傾向だと思います。
  13. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 堀江さんに一つ伺いたいのですが、これは非常にしろうと的な質問なんですが、政府が今度アメリカの市中銀行から約二億ドル借り入れを受ける。さらに輸出入銀行保証で一億二千万ドル借りる。ところで、政府外貨保有を見ますると、一応これは見通しでありますが、三十六年度の会計年度ですが、本年の三月末で十二億五千六百万ドルに外貨保有がなる。ところで、しろうとの考えですと、十二億五千六百万ドルまだ外貨があるのですね。外貨があるのに、どうして外銀から二億ドル借りたりーーいや、三億二千五百万ドルですね、合計ーーそういう必要があるのか。まだそんなに外貨があるじゃないか。十二億幾らもあるのに、どうしてそんなに外銀から借りなければならないのか。その金繰りの点ですが、その点ちょっとお伺いしたいのですがね。
  14. 堀江薫雄

    参考人堀江薫雄君) お答え申し上げます。ただいまの御質問、日本の保有外貨が十二億、一月末ですと十二億一千万というような御発表でございます。それがあるのに、なぜ金を借りるのかというお話ですが、この問題にはやはり政府御自身がお答えになる建前だろうと思いますが、大蔵委員会のことですから、私からあえて申し上げたいと思います。まあ、考えよう次第でございますけれども、国の外貨保有も、またわれわれ銀行、会社のバランス・シートも同じでございまして、銀行の場合も資本勘定があり、相当余裕が、準備がありましても、しかし、やはり国でいえば、国の貿易運転資金国際収支運転資金として資本金外貨保有がありながら、債務を持ち、債券を持つということは当然なんで、たとえば銀行の場合でも、資本金が三百万あっても、別に予金を受け入れ、あるいは借り入れをし、また同時に長期、短期の貸付をしたり、予託もするといったようなことがあるわけでございまして、ある時点で清算してしまうという場合なら、木村さんおっしゃるように、十五億もあったら何も二億も三億も借りなくてもいいんじゃないかという建前になるけれども、その十五億もいろいろな意味で多少は運転、運用をされておりますし、またそれがありましても、ちょうど銀行が莫大なリザーブを持ちながら、同時に貸付もし、借り入れもするという建前と同じだろうと思います。御指摘のように、在日アメリカの銀行から二億ドル、それからほかのアメリカの銀行から輸銀保証でさらに一億二千万ということにつきましても、私はいろんな意味で運転資金的な調達法、また将来に備えての用意のための調達法ということなら賛成できるのではないか、そんなふうに思います。しいて申しますなら、市中銀行から借りるのなら、何も政府が借りなくても、為替銀行が借りる建前であった。その際に、政府なり当局がサイドからあっせんをするとか、あるいは特に口をきくということから、この方法が出たのだ。ただ、輸出入銀行とか世界銀行から借りるということになれば、もちろん当局側がお借りになるのが当然であろう。御質問のことについては、そういうことは実際上外資なり為替取引上あり得ることであって、資本金準備金を持っておっても、貸したり借りたりするのはむしろいいのではないかと私は思います。
  15. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほどの堀江さんのお話ですと、東銀外貨勘定でもまだ多少余裕が、外銀から借りる限度があるというお話だったですね。ですから、それでは東銀が借りてもいいのですがね。ところが、もう一つは、今の政府の公表される外貨が十二億ドルぐらいになっておるときに、外銀から借金しなければならないということになりますと、大体この外貨保有としては十五億ドルぐらい持っていなければ、一応危機ラインとかいろいろいわれますが、それは絶対的なことではないと思いますけれども、一応十五億ドルぐらいは大体キープしていなければならないものだと思いますが、どうもそれを割ると、政府は借金をしますから、そこで大体十五億ドルぐらいに押えたらいいものか、その二つの点を伺いたいのです。
  16. 堀江薫雄

    参考人堀江薫雄君) お答え申し上げます。御質問の件は、よく日本でも、あるいはIMFあたりでも問題になりまする、一国の適正外貨の保有量はどの程度かという問題と了解いたします。これはIMFの場合でも、それから日本でも一時だいぶ論議いたしたのでありますが、木村さんのおっしゃったように、数字的にどのくらいが適当だ、あるいは何分の一が適当だといったことは、一応の目安としてはいえますけれども、全体としてきめ手はないように思います。で、よくIMF当局が、各国の為替管理を撤廃することを勧告する、いわゆる規定十四条国から規定八条国に移行することを勧告するような場合の一つの目安としてIMFが考えておりますのは、その国の年間輸入量の四分の一とか三分の一くらいあればいい。そのくらいを目安にして、ただしその国の国際収支の安定とかあるいは不時の需要に備えて多少その上に手配量を押さえる、あるいはその国の経済成長度、そういうことまで考えるということでございます。そのためには、大体五十億くらいの年間輸入としますと、まあ四分の一といたしますと結局十二億五千万、そういうふうなところが何となしの常識的な目安じゃなかろうか、そういうふうに私は考えておる。きめ手、あるいは絶対的なものではないんじゃないかと思います。
  17. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 柳さんにお伺いしたいのですが、この東銀の債券発行ですね、これを資本金五倍ですかに債券発行を許すということになると、さつきのお話では大体九百億くらいですね。千二百億になるでしょう。その消化の問題ですがね、これを市中で消化するという場合ですね、これは一般の産業金融のほうとの競合の問題が起こらないか、ほかのほうとですね。これはこれまで設備投資の貸付を行なってきたわけですが、そうしてその反動として金融引き締めをやっているわけですが、東銀でそういう債券を発行した場合、これは市中で消化する場合ですね、ほかのほうへの金融の影響ですね、これはどういうふうにお考えでしょう。その結果、他の方面で金融が圧迫される、特に中小企業あたり資本が要るということになると、これは問題だと思います。その点はどういうふうにお考えになりますか。
  18. 柳満珠雄

    参考人(柳満珠雄君) ただいまの東銀発行による市中金融一般に対する影響、こういうことですね、これに対してお答え申し上げます。御承知のとおり、今日の起債市場というのは、これは金融逼迫のために非常に困難な状態にある。したがって、東銀債を一般起債市場で発行するということが影響がないとは言えません。確かにございます。しかし、これは当初から私も申し上げましたように、われわれの考え方としましては、これは東銀との協調という建前を基盤として出発した問題でございます。これを一般起債市場にかけて、そうして確保するということでなしに、われわれのいう銀行間で、為替銀行間でこれをまず消化するという建前ということなんです。為替銀行というのは、甲種、乙種ございますが、これはみんな主体に全部入るということになると思うのです。同時に、これは、金融債は、ただ東銀債だけでございませんで、御承知のとおり、興長銀債もある。それからまた不動産銀行債がある。そういうものがございますから、そういうふうな既存の金融債発行銀行との関係も考慮してやらなければならないという問題でございまして、今ここで直ちに、今日の状態をもってすれば非常にむずかしい、しかし、今ここで今後の起債市場、一般金融情勢というものを予想することもできませんけれども、しかし、そのときどきの金融情勢、起債市場の情勢に応じまして、これをやっていく必要がある。そのために協議会を設けて、そうしてその協議会には日本銀行、それから東京銀行、それから一般の引き受けに関係あるものがこれに入りまして、そうしてその情勢を勘案してどの程度にしていくかということをきめていく、こういう考え方なんです。
  19. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは貿易金融、産業金融全体をあわせてやはり考えなければならぬ問題だと思うのですがね。一方では設備投資のために行き過ぎがある、それで貿易が赤字になったということもあるのですがね。そういう面と、設備投資のほうの面と貿易金融というものと、やはり調整をしていかなければならぬと思うのですがね。それを調整しないで、東銀が債券を発行する。そうすると、それを市中銀行で消化するとしても、この市中銀行の貸し出しのほうにやはり影響があるわけですね。他の方面に対する貸し出しに影響があるわけですね。ですから、全体的な調整を考えませんと、やはりどこかがしわ寄せを受けるということになるのでじゃないかと思うのですが、そういう点はいかがですか。
  20. 柳満珠雄

    参考人(柳満珠雄君) お答え申し上げます。それは木村先生のおっしゃるとおりなんです。確かに金融全般に影響があることは確かでございますが、しかし、そのために協議会を設けまして、そうしてその協議会において全体を勘案してやっていくと、こういうことでございます。
  21. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 けっこうでございます。
  22. 永末英一

    ○永末英一君 先ほど柳さんの御説明で、今回の措置は過渡的であり暫定的であると、こういう御説明がありました。そこで、今度の東銀債の発行で予定せられている限度額というのは、現在の貿易量を一応見込んで勘案されていると思うのです。ところで、現在の貿易量は、所得倍増計画でもどんどん伸びていくわけですから、どれくらいの貿易量がこれでカバーできるとお考えか。さらにまた、それを突破していく場合には、またこの債券の発行額の限度を上げたり、あるいはまた債券だけでまかなおうとするのか、ほかに処置はないのか。つまり今回の処置では、東銀円資金の調達面においては質的な変化を加えることなく、債券発行でこれをやろうと、これだけの提案だと思うのです。その二点について柳さんと堀江さんのお考えを伺いたい。
  23. 柳満珠雄

    参考人(柳満珠雄君) 他の処置の問題につきましては、これは先ほどもちょっと申し上げましたように、いろいろ考えたのです。金融機関の借入金とか考えたのですけれども、結局この問題は、東京銀行資金調達にとって不利——不利といっては何ですが、貿易金融というのは金利が安くなくてはならない。これは堀江さんがお答えになると思いますが、高いものであっては、東京銀行としては私はやり切れないと思う。それから、不安定であっては困る。それから同時に、為替銀行、これがたとえば同業者預金東京銀行に預ける、そうして東京銀行がそれを使う。それから東京銀行がわれわれの為替銀行から金を借りてお使いになるというようなことであっては、これは不安定なんです。比較的、まあこれは御承知のように、貿易金融は短いものであるといっても、御承知のとおり、このごろ延べ払いのものができてきたし、比較的長いものもできておるというような状態でございますから、不安定なものであっては困る。それから、高いものであっても困る。もし同業者預金としてわれわれのほうから出す、あるいは借入金として出すとかいうようなことになると、今日の金融情勢ではコールのような高い金利のものに引きずられてしまう、こういうことでは東京銀行にとっては不利である、それから不安定である。したがって、これは今の債券発行というようなことでいくほうが安定的であり、有利である、こういうふうに考える。  それから、貿易量の問題で、今のお話貿易量についてどう考えるか、そうして将来貿易量に関連して東京銀行がどの程度資金を必要とするかということにつきましては、私どものほうといたしましては、先ほど堀江さんからもお話があったのですが、ただいまのところ、東京銀行の自己資本が約二百三十六億程度でしたかね、増資を別にして毎年自己資本の増加は約二十億ということであれば、年にまあ百億ずつのワクがふえていくと、こういうことになると思う。現在の段階で約千百億から千二百億ぐらいの限度である。そこへ毎年百億ずつのワクがふえていく。これをかりに毎年五十億の債券を発行していきますと、それだけ残高がふえていくとして計算すれば、これは約二十四年ぐらいは出していけると、こういうような勘定になる。もし二百億の計算でやれば、これは十二年というようなことで相当余裕があるものであるというふうな考え方で、大体五倍くらいが適当ではないかということにきめたわけでございます。その大きな日本貿易量がどうだこうだということで言ったというわけではございません。
  24. 堀江薫雄

    参考人堀江薫雄君) お答え申し上げます。今の柳さんのお答えで大部分尽きておると思うのであります。私ども当事者の心がまえとしましては、やはり一方で日本金融市場が正常化することを期待いたしておるわけであります。御承知のとおり、私ども銀行の前身である横浜正金銀行円資金調達は、日本銀行からの市中借り入れ金のほかに、主としてはコール市場からコールを取ってやっておったわけであります。戦前の東京金融市場、大阪金融市場というものはかなり大きなものでありまして、したがいまして、一般の銀行も、それから正金も、この市場をを通じて余裕資金あるいは不足資金を調達しておる。したがって、日本銀行もいわゆるマーケット・オペレーションあるいは金利操作の効果があったわけであります。ところが、戦後の市場が、こういうほんとうの正常な金融の市場が回復しておりませんものですから、すべては中央銀行に直結するというような形に相なっておるわけであります。現在金融制度調査会におかれましても、金融の正常化といった題目とみんな取り組んでおられますので、いつの日かやはり金融市場は正常化されなければならない。そのことを期待しながら私ども考えておるわけでありまして、円資金の調達としましては、預金そのものにさらに努力を加える。また市場が回復するにしたがって、コールも、コールの金利も正常化しますれば、このほうも極力使っていく。それの補いに今度の債券による安定資金を期待しておるということでございまして、まあ理想的とか完璧とは申せませんし、同時に、長い将来の先のことまでも考えられませんけれども、さしあたりはこれでやっていけると考えておるのでございます。お答えになりますかどうか……。
  25. 柳満珠雄

    参考人(柳満珠雄君) ちょっと補足させていただきますが、今堀江さんのおっしゃったとおりなんでございますが、なお東銀所要資金量を、先ほど申し上げましたように、貸し出しと同時に東京銀行預金量というものがどれくらいである、それをやはり一つ目安にして五倍だとちょうどいいのじゃないかというふうに、大体その辺がいいのじゃないかというふうに考えております。先ほど東銀預金量というものを、現在の預金量を、今後預金がふえるというようなことを考えに入れまして、まず五倍の程度がいいのじゃないか、こういうように考えたので、補足させていただきます。
  26. 永末英一

    ○永末英一君 そうしますと、近い将来この種の問題が起こるということは、今のところはございませんね。
  27. 柳満珠雄

    参考人(柳満珠雄君) これは日本経済発展輸出貿易がどうなるかということなんですが、これはいろいろ考えられるのです。率直に申しますと、為替専門銀行為替銀行のシェアの問題であるとか、いろいろございます。現在為替専門銀行としての東銀貿易金融において占めるシェアの問題というものと、ほかの銀行のシェアというものが現在のままであれば、今の程度で私はいいのじゃないか、こういうふうに考えます。
  28. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 債券利回わりはどのくらいなんですか。やはりコストを安くしなければならぬというお話がありましたが。
  29. 堀江薫雄

    参考人堀江薫雄君) 債券発行のこまかい実際の問題につきましては、いずれ国会改正法案が通過してから具体化いたしまするし、その際に大蔵省、日本銀行といった当局に、金融界あるいは証券界、そちらとも御相談し、またすでに発行しておりまする既存の債券発行銀行、ここらとの均衡も考えまして慎重に考えたいと思いますが、まあ既存の金融債五年ものが大体七・三%見当でございますので、私どもの場合二、三年ものの発行を考えておりますので、もちろんそれより安い金利になるものと思います。いずれ国会でこれを可決していただいて後に、具体的にそれぞれ相談して善処したいと考えます。
  30. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 貿易金融ですから、そんなに高い金を使うわけにいかないでしょうが、そうすると、その消化は非常に困難で、結局は銀行が引き受けるということになるかもしれないと思うんですね。そうすると、今後ずっと一般に消化されるということは困難ではないかと思うんですが、その点はどうなんでしょうかね。
  31. 堀江薫雄

    参考人堀江薫雄君) お答え申し上げます。貿易金融と申しましても、ごく短期の外為替資金とか、あるいは六十日といったような短期為替前貸し資金ですと、御承知のように、現在日本銀行の適格手形再割制度というものがありまして、かなり低いところでやられております。私ども安定資金としてこれに期待しておりますのは、むしろ国内でも多少長期化とするもの、また海外でも輸銀その他の窓口を通じて出ております現地の運営資金で足りない不足資金とか、あるいは多少中期の輸出金融とか、円貨、外貨両方考えますが、そういったものでございます。その際に、全体のからみから申しますと、私ども、先ほど申しましたように、外貨資金もかなり豊富に持っております。これは金利がかなり低いものであります。それから円貨資金につきましても八百億の預金コストはかなり低いものであります。そういったものを平均いたしまして運用を考えるわけでありますから、そうしてできるだけ中期のものに運用するということなら、採算も合うわけでありまして、六分ないし七分でも採算がとれるわけであります。そういった点を主として考えておるのであります。
  32. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうすると、全体をひっくるめてコストを考えるとなると、政府の保有外貨の運用ということ、これもやはり問題になるんじゃないですか。もう少し、政府外銀にばかり預託していないで、日本為替銀行にも運用させるということも考えるべきじゃないかと思うんですがね。
  33. 堀江薫雄

    参考人堀江薫雄君) その点はお話のとおりでございますが、政府といたされましても、ニューヨークならニューヨーク、ロンドンならロンドンでのいわば市場金利というものがありますから、それを基準にして、かつ、安全確実にという建前で運用しておられるわけです。一応のその土地の客観的な金利水準があるわけです。それでまた、事実上為替金利としては引き合うことになっております。先ほど申しました、私どもの調達外貨につきましてもそういったことで運用いたしておりまして、これは決して赤字になっておりませんから、ただいま申しましたことで運用できると思います。
  34. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 しろうとくさい質問なんですが、今東銀は国内に二十五カ所支店を持っているといいますが、将来これをふやしていくという計画はないのですか。
  35. 堀江薫雄

    参考人堀江薫雄君) 支店の増設につきましては、国内でも海外でも、これは大蔵省の銀行行政になっておりまして、私どもの一方的意向でもいけませんですが、私ども専門銀行の発足の建前から申しますと、原則として貿易為替金融のために支店を持つという建前になっております。たとえば、どこかの土地で非常に輸入が盛んになって為替が大いに必要になってくるということなら、もちろん増設を考え、当局に申請して、許可を得た上で開くということになるかと思うのですが、現在はそういう建前で二十五店あるだけでございます。
  36. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 地方に支店を非常にたくさんふやして、円資金を作っていくというやり方と、今とられようとしておるところの債券発行という形と、どちらが利害があるのですか。
  37. 堀江薫雄

    参考人堀江薫雄君) お答え申します。これはどちらのほうにも有利な点と不利な点とがあるようでございます。コストだけから申しますと、おそらくは全国的な支店網をこさえて、コストの安い一般預金、特に当座その他を集めることがいいかと思いますが、そのためには人員がたくさん要ります。また、支店の開設費用も要ります。私ども銀行では、国内はできるだけ内地の金融界と協調しながら補完的な立場で活動し、できるだけ海外各地、外貨のほうから日本の産業、貿易のために、あるいは同業のために尽くしたいというのが私どものおもな方針でございますので、重点はどうしても外地または海外に置かれるということになり、国内では支店を開くことは一つの考えでございまするが、人員の点、それから今申しましたような海外に重点を置いておる点から、おのずから制約ができておって、有利と申しましても、必ずしもそれができないというのが実情でございます。
  38. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 そうすると、国内に支店をたくさん作って預金を集めるということは、いろいろな点で不利益な点があるから、そういう面はほかの銀行の人にやってもらって、そうして今度債券を発行する場合はその銀行に負担をしてもらう、一般にはその債券は募らない、こういうことで他の銀行との間に話し合いがついているということなんですか。
  39. 堀江薫雄

    参考人堀江薫雄君) お答え申します。大体おっしゃったとおりの考えで今まで来ておるわけであります。また、今後もできるだけそういったことでいくだろうと思います。
  40. 上林忠次

    理事上林忠次君) それでは、参考人方々に申し上げます。本日は御多忙中にもかかわりませず御出席いただきまして、本法律案の審査に際し貴重な御意見を拝聴することができましたことを、厚く御礼申し上げます。どうもありがとうございました。  速記をとめて。    〔速記中止〕
  41. 上林忠次

    理事上林忠次君) 速記をつけて。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十九分散会