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1962-04-12 第40回国会 参議院 商工委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月十二日(木曜日)    午前十時五十五分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     武藤 常介君    理事            赤間 文三君            剱木 亨弘君            中田 吉雄君    委員            上原 正吉君            大泉 寛三君            川上 為治君            小林 英三君            高橋進太郎君            吉武 恵市君            阿部 竹松君            近藤 信一君            吉田 法晴君            田畑 金光君   国務大臣    通商産業大臣  佐藤 榮作君    国 務 大 臣 藤山愛一郎君   政府委員    経済企画政務次    官       菅  太郎君    経済企画庁調整    局長      中野 正一君    通商産業大臣官    房長      塚本 敏夫君    通商産業省石炭    局長      今井  博君    通商産業省鉱山    保安局長    八谷 芳裕君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を  改正する法律案内閣提出衆議院  送付) ○鉱山保安法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○産炭地域振興事業団法案内閣提  出、衆議院送付) ○海外経済協力基金法の一部を改正す  る法律案内閣提出)     —————————————
  2. 武藤常介

    委員長武藤常介君) これより商工委員会を開会いたします。  本日は、石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案産炭地域振興事業団法案鉱山保安法の一部を改正する法律案海外経済協力基金法の一部を改正する法律案、以上四案の審査を行ないます。     —————————————
  3. 武藤常介

    委員長武藤常介君) それでは、まず、石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案議題とし、政府委員より内容説明を聴取いたします。今井石炭局長
  4. 今井博

    政府委員今井博君) 法律案要綱につきまして簡単に補足説明をさしていただきます。  第一は、石炭鉱業合理化事業団業務に、次に掲げる業務を加えるとなっておるのでございます。  第一は、このたび石炭鉱山整理促進交付金という制度を設けまして、従来の買収にかえまして、山を、鉱業権を抹消してそれの整理を促進する交付金という制度を設けまして、そういう業務を一つつけ加えたわけであります。  それから第二は、石炭鉱業整備に必要な資金貸付、これは石炭鉱業整備にあたりまして、退職金が非常にたくさん要る。それから鉱害関係資金が要る。この二点につきまして必要な資金を直接合理化事業団から貸し付けよう、これが第二の点であります。  それから第三は、国鉄運賃延納制度ができまして、それに対する合理化事業団債務保証を行なわせたいという点でありまして、この三つの業務をつけ加えたという点が第一の改正点であります。  それから第二の区分経理の問題は、これは従来の、いろいろな業務をたくさんやっておりますが、それぞれ区分経理をいたしておりますので、先ほどの業務につきまして、これを区分経理をいたすという規定を掲げたわけでありまして、これは従来の区分経理と変わった点はございません。  それから第三は、運賃保証業務に関する保証基金の問題でございます。これは先ほどの運賃延納に関しまして、合理化事業団債務保証を行ないますので、その保証を行ないまする基金を、別個に保証基金というものを設ける。これは従来保証基金と申しますのは、石炭鉱業整備保証基金制度というものがございましたが、運賃延納保証はまた別の制度でございますので別個に保証基金を設けました。  それから第四は、先ほどの石炭鉱山整理促進交付金交付につきまして、次のような制度を設けまして交付金交付を行ないたいというわけであります。このたびは、従来はまあ買収、山を買い上げるという制度でございました。この制度はもちろん三十七年度も続くわけでございますが、それと並行いたしまして、このたび採掘権者のみならず、租鉱権者も対象といたしまして、その事業を廃止してきた場合には交付金交付しよう、こういう考え方でございまして、第一は前の買い上げのときと同じ考え方でございまして、六カ月引き続き事業をやっておったというものに限っております。  それから第二は、やはりこれも前の買い上げと同じ考え方でございまして、一定の品位及び生産能率を持っておる山でないといかぬ。こういうこれは生産能率等につきましては、まあ従来の買収のときよりは、買収は現在十八・二トンという能率でございますが、今回はやはり若干これを引き上げなきゃいかぬだろう、こういうふうに考えております。  それから第三に、租鉱権整理する場合には採掘権者同意が必要である。これはこのたび租鉱権を放棄しました場合には、あと租鉱権の設定を禁止する制度になっておりますので、採掘権者同意をとってほしい、こういうことでございます。  それから第四に、鉱量の問題であるとか、その他細部にわたりまして必要な基準を考えたいという、これはまあ細部の問題であります。  それからその次の2といたしまして、事業団は、一定交付金、これはトン当たり千百円の交付金交付するという算定でございますが、その交付金交付いたします場合には、政令でもって一定割合をきめまして、その割合金額につきましては、事業団が留保いたしまして、賃金債務、この賃金の中には退職金も含んでおりますが、賃金債務及び鉱害賠償債務を優先して事業団が直接払おう、こういうことでございます。これは事業団といたしましては、やはり賃金債務を一番優先いたしまして、賃金債務につきましては、これをまず優先する。しかし、それについても頭打ち制度をこしらえまして、それで賃金の未払いを確保し、それから残りにつきましては賃金鉱害債務を按分比例いたしまして、この弁済確保していく、こういう考え方でございます。  それからその次の3は、その事業団が留保いたしまする金額につきましては、譲り渡し、あるいは担保に供し、または差し押えることができない。いろんな差し押え等につきましては、この留保金はそういうものに優先するということであります。  それから4は、そういうふうにいたしまして、整理いたしました鉱区または租鉱権につきましては、今後はそういうものを設定することができないという禁止規定を設けましたわけでございます。  それからその次は、離職金の支給でございまして、平均賃金の三十日分の離職金を支払うという、以上のような制度をこしらえまして山の整理を促進いたします。  それからその次に、大きな五といたしまして、近代化資金貸付の相平方に特定船舶整備公団をつけ加えました。それは、このたび専用船建造を促進しようという目的で、三十七年度は三隻を予定いたしておりますが、これを石炭合理化事業団から特定船舶整備公団をスルーして相手方に貸し付けよう、こういう考え方でございます。この点は、現在特定船舶整備公団がやはり船舶スクラップ・アンド・ビルドという関係で、本来自分のほうも預金部から金を借りて参りまして資金貸付をやっておるわけでございますが、本来の整備公団資金合理化事業団から参ります近代化資金とあわせまして、専用船建造を行なわせよう、こういう制度を今度考えたわけであります。そのために相手方整備公団をつけ加えたわけであります。  それからその次の第六は、債務保証弁済は、これは従来から石炭鉱業整備のために保証基金制度というものがございまして、これは、これに対しましては弁済額に対して五〇%の保証をすると、こういう制度になっておりましたのを、今回八〇%まで引き上げるという点であります。  それから第七の、整備資金貸付は、先ほどちょっと御説明いたしましたように、退職金金融、それから鉱害に関する資金金融、こういうものに直接事業団から貸付制度を開く。これは三十七年度は現在は十五億という資金ワクになっております。  それからその次の第八は、運賃延納に係る債務保証でございまして、国鉄に対しまして、大手業者は支払い全体が連帯保証でもって国鉄に対しましては延納措置を講じておりますが、大手以外の中小炭鉱にありましては、いろいろ運賃延納につきましては合理化事業団がこれを保証いたそうと、こういうわけでございます。  それからその次の2の点は、この法律が通りまするまでの間、もう運賃延納につきましては一月一日からすでに実行に移っておりますので、それまでの間に山がつぶれたりいたしまして、国鉄損害を受けたという場合には、事業団がその損害を負担しよう、こういう規定でございます。  それから最後には、有効期間の問題でございまして、法律有効期間は、現在は昭和四十三年の三月三十一日ということに現在の規定はなっておりますが、これを三年間延長いたしたいというのが第一でございます。これはこのたび六百二十万トンの新しい整備方式を考えておりまして、これに対しましては国庫の補助が一割、それからあとの二割は業界の納付金でもって充当いたしたい、こういう考え方でございまして、その納付金の期限をさらに三年間延長するというために、四十六年三月三十一日まで延長する、こういうことになっております。しかしながら、あとのほうに一、二、三とございますが、これはそれぞれいろんな業務を行ないますが、それぞれの業務に応じまして、運賃延納保証関係は三十九年三月三十一日までということにいたしたい。これは債務保証をする行為有効期間でございまして、三十九年三月三十一日以降これは保証を新たにやらないという考え方でございます。  それからその次の第二は、このたびの新しい整理促進交付金その他整備資金問題等昭和四十年三月三十一日までにいたしたい。これはこのたびの新しいニュー・スクラップ方式は、三十七年、三十八年、三十九年と三カ年の計画でございまして、一応この三十九年度で終了いたしまする計画になってございますが、一応昭和四十年三月三十一日、こういうふうにいたした次第でございます。  それから最後近代化資金並びに交付金、この雇用促進事業団に対する交付金交付、これは従来どおり昭和四十三年三月三十一日ということが、現行どおりにするというわけでありまして、これは必要があればさらに延長することになるかと思います。一応こういう特定業務につきましては、それぞれの有効期間を別個に定めまして、全体としましては三年延長と、こういう制度有効期間を延長いたそう、こういうわけでございます。  非常に簡単でございますが、御説明を終わらしていただきます。     —————————————
  5. 武藤常介

    委員長武藤常介君) 次に、鉱山保安法の一部を改正する法律案議題とし、政府委員より内容説明を聴取いたします。八谷鉱山保安局長
  6. 八谷芳裕

    政府委員八谷芳裕君) 要綱に基づきまして御説明申し上げますが、この鉱山保安法の一部改正に至りました手だてにつきましてちょっと先に触れたいと思いますが、昨年の三月末に国会におきまして、鉱山保安法鉱業法抜本的改正ということが決議されまして、これに基づきまして、その後省令改正等もやって参ったわけでございますが、鉱山保安法改正につきましては、十二月から保安法に基づきまして設置されております中央鉱山保安協議会、この中央鉱山保安協議会諮問をいたしまして、この中央鉱山保安協議会内に保安法改正委員会を設置いたしたわけでございますが、その保安法改正委員会で、労使それぞれ三名、並びに中立委員合わせまして九名の委員の方々に御参集をお願いいたしまして、関係経営者団体または労働組合から、七つの団体から改正意見が出てきておりまして、その意見に基づきまして、十二月、一月、二月、三カ月にわたりまして前後八回審議を重ねて参りまして、二月の二十日に中央保安協議会といたしまして、第一次の保安法改正につきましての中間答申が出て参りました。この中間答申に基づきまして、ただいまより御説明申し上げます六項目にわたりまして一部の改正を行なうことにいたしたわけでございます。  第一番目でございますが、要綱に基づきまして御説明申し上げますが、第一点といたしましては、保安委員会に対しまして、保安に関する通産大臣あるいは鉱山保安監督局長または監督部長等がとりました処分内容を通知する、こういう規定でございます。これは、保安委員会と申しますのは、各山元に設置されております労使双方からなります保安管理者諮問機関でございますが、従来ややもするとこの保安委員会活動が非常に消極的というようなうらみもあったわけでございます。こういう点も、大いに自主監督の面から、こういう労使双方から構成いたしております保安委員会活動を促す必要がある、こういう面に立脚いたしまして、この保安委員会活動を促す一端といたしまして、鉱山保安法あるいは省令規定によりましてやりました処分は直ちにこの保安委員会鉱業権者から通知を行なわせまして、そうしてこの保安委員会で慎重に審議をして、積極的な保安改善の策を講ずる、こういうことにいたしたわけでございます。それが第一点でございます。  それから第二点は、いわゆる請負の問題でございまして、要綱といたしましては「鉱業権者の使用人以外の者」、こういう規定をここではいたしておりますが、いわゆる請負のことでございます。従来、請負組夫によります災害は、いろいろ調査を重ねて参りましたが、種々問題点が多い、こういうことで明確に請負を使用した作業場につきまして届出を行なわせたいと思っております。届出は、この請負組夫を使用されることによりまして起こります保安のための措置、これを監督局長または監督部長に届けさせることにしたわけでございます。との届出を行なわせまして、現場の実態を把握し、また監督強化に資する、それが一点でございます。  それから次に、その届出があった場合におきまして、特に保安教育の問題、あるいは保安管理の問題、保安管理の問題は人的な管理と、それから物的な、たとえば保守機器等管理等に分かれると思いますが、こういう教育の問題、保安管理問題等につきまして、届けられた事項では、保安確保が困難である、こういうことを考えられた場合には、監督部長はその変更を命ずることができる、こういうふうにいたしまして、請負組夫の使用によります災害をなくしていく、こういう方向に踏み切っていったわけでございます。これが第二番目の問題でございます。  それから第三点は、法規違反行為に対する事業停止命令でございます。現在鉱山保安法の中の事業停止命令というのは、法の二十四条にございますが、今度新しくこれは挿入いたしましたこの事業停止命令は、いわゆる制裁規定でございまして、鉱山保安法、またはこれに基づきます省令違反した場合におきましては、特にその態様が悪質なもの、あるいは反復いたしまして違反をいたしておると、こういうものにつきましては、一年以内の期間を定めまして鉱業停止を命ずることができると、こういうふうにいたしまして、単に改善命令等だけでなく、さらに一歩進めまして、改善命令にも従わない、こういう場合には鉱業停止を命じていく、こういう形をとったわけでございます。  次に、第四番でございますが、これは鉱山保安協議会、ただいま当初説明しましたときにも出て参りましたこの鉱山保安協議会でございますが、これは中央地方にございます。中央のほうは通産大臣諮問機関になっております。地方のほうは監督局長または監督部長諮問機関になっておりますが、この鉱山保安協議会運営は民主的にし、かつ円滑な運営をしよう、こういうことから、ただいま、たとえば中央で申しますと、会長通産大臣になっておりますけれども、これを改めまして、協議会の中の学識経験者のうちから委員を選任して会長にするということが第一点でございます。  それから第二点といたしましては、この協議会内に石炭部会、あるいは鉱山部会等部会を分けておきまして、円滑な運営をはかっていこう、こういうことでございます。  それから次は第五番目といたしまして、罰則強化でございます。現在の罰則強化をさらに二倍ないし三倍程度に高めていく。これは現在ございます火薬類取締法、あるいは職員衛生法、この並みに罰則強化いたしまして、法の厳格な順守を促そう、こういう考えでございます。  最後の六番目でございますが、鉱業法による鉱業権取り消し、これは先ほど第三番目といたしまして申し上げました鉱山保安法法規違反行為に対する事業停止命令関連するものでございますが、停止命令をいたしましても、さらに聞かないということがございますれば、鉱業法を今度改正いたしまして、この保安法の規制として鉱業法改正いたしまして、通産局長はこの命令に従わない場合には鉱業権、あるいは租鉱権取り消しができる、こういうふうにしたことでございます。  当初申しましたように、中央鉱山保安協議会中間答申に基づきまして、さしあたりこの六つの点を改正いたしましたわけでございますが、さらにこの保安法改正委員会は継続いたしておりまして、さらに所要必要改正につきまして今後も検討を続けていきまして、結論が出たごとに所要改正を加えていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。  簡単でございますが御説明を終わります。     —————————————
  7. 武藤常介

    委員長武藤常介君) それでは、ただいま内容説明聴取いたしました二法案及び去る五日の委員会において内容説明の聴取をいたしました産炭地域振興事業団法案、以上三案を一括して質疑を行ないます。  質疑のおありになる方は順次御発言を願います。
  8. 吉田法晴

    吉田法晴君 三法に関連をしてお尋ねをするのですけれども、この間、石炭政策問題について閣議決定がございました。これは、まあ受け取り方によっていろいろあるだろうと思いますけれども、少なくとも雇用の面からいえば、石炭政策について大きな転換がなされたと考えなければならぬかと思うのですが、若干、従来の石炭政策と、それからこの間、閣議決定をみました石炭政策との関連というのですか、それから合理化法に出ております合理化計画というものとの関連を伺って参りたいと思いますが、四月六日の閣議決定された石炭政策は私ども承知をいたしているわけでありますが、この四月六日の閣議決定をみました石炭政策によって、今までの石炭政策の重要な部分について若干の修正が加えられたのではないか、あるいは従来の政策と、今後とられようとする石炭政策との相違、あるいは変更の点があるならば明らかにせられたいと思います。
  9. 今井博

    政府委員今井博君) 四月六日の閣議決定によりまして、今後の石炭対策という問題につきまして、いろいろな事項決定されたのでございます。従来の石炭政策基本線といいますか、基本路線として五千五百万トン、千二百円引き下げの問題につきましては、これは従来の方針を堅持するという建前をとっておりまして、その基本線については、あくまでもこれを守っていこうという考え方でございます。  たとえば五千五百万トンにつきましては、三十七年、三十八年というものは五千五百万トンの合理化基本計画ということになっておりまして、出炭規模としてはこの五千五百万トンはやはりこの期間はこれを維持していくという考え方でございます。ただし、三十九年以降につきましては、まだ合理化計画というものはきまっておりません。一応今後の見通しというふうな態度で、従来政府考え方はございましたけれども、この点につきましては、総合エネルギー対策の一環としてこの五千五百万トンをそのまま維持していこうということはよくひとつ検討しよう、こういうことでございます。ただその場合に、原料炭の問題につきましては、国際収支の問題もございます。たとえば原料炭につきましては、現在一千万トン程度の輸入を行なっておりまして、このうちには弱粘結の部分相当量ございますので、日本における原料炭の合理的な開発計画が立つなれば、やはり国際収支観点からこういう問題をもっと積極的に取り上ぐべきじゃないか、こういう考え方を出しております。しかし、これは五千五百万トンというものが、必ずしもそのままそれがプラスになるというわけのものではございません。やはりそういう形の総合エネルギー対策の一還として、この出炭規模の問題は今後検討さるべき問題だと考えております。  それから炭価の千二百円引き下げにつきましては、従来のこの方針はこれを堅持いたしまして、従来の方針によるものといたしておりますけれども、三十七年度、三十八年度の値下げの計画につきましては、これは前々から石炭鉱業審議会に諮っておりますので、これはその答申を待って実施したいという点、これも従来の方針とは変わりはございません。ただ通産省の中に、総合エネルギー対策に関する強力な審議機構を設けまして、この観点から、総合エネルギー対策観点から、石炭対策というものをひとつさらに掘り下げて検討しようという点は、従来とは急速に前進した問題だと思います。  それから雇用の問題につきましては、第二会社の問題、これは従来とそう方針が変わったわけではございませんが、第二会社につきましては、従来はこれは原則として好ましくない。しかし、ケース・バイ・ケースによって、やむを得ない場合にはこれを認めていかざるを得ないのではないか、こういう方針でございましたので、この点をもっとはっきりさせる意味におきまして、労使協議の上、双方雇用対策上必要と認める場合に限定する。労務対策として、そこの従業員が、第二会社にして、そこで働きたいというふうな場合に、これを認めていこうという点をはっきりさせていくという点が一つございます。  それからいま一つ問題になっておりました組夫臨時夫の問題につきましては、現在職安法でもって、これは単純な労務提供事業というものは禁止されているわけでございますが、これの基準を、やはりこの際明確にいたしまして、組夫臨時夫という者を、無制限にこれをどこまでも使用するというふうな傾向に対しては、やはりこれに対しては取り締まりを強化する必要があろうということで、その基準をひとつはっきりさしていこう、これは労働省の問題でございますが、この点もひとつ態度をはっきりさせるつもりでございます。  それから産炭振興事業団融資機能を今後大いに活用して、安定職場確保に努める。この点は、これからの問題でございますが、従来こういう離職者の吸収という問題が、振興事業団融資をやる場合には、当然考えておったのでございますが、もっとこれを計画的に、安定職場確保という点に、さらに機能を強めたいという点を取り上げております。  その他につきましては、従来の政策というものを特に大きく変更したとかいう問題はそうございませんが、さらに石炭鉱業資金の問題、これは従来からも非常に強く要望されておりましたが、この石炭鉱業資金対策としては格段の金融措置を講じたいということで、これは従来の金融措置をひとつ大いに前進させたいということで、具体的にはどういうことをやるかということは、まだきまっておりませんが、これはもうすでに事務的にも、いろいろと話を進めておりまして、さらに調査団のいろんな結論が出ますれば、さらにいろんな金融措置を前進させたい、こう考えているわけでございます。  最低賃金につきましては、専門部会を設置したいということでございます。  以上、概略の説明をいたしましたが、以上が今後の石炭対策というものについての主要な点でございますが、当面の措置といたしましては、この際権威ある調査団を派遣したい。この調査団答申につきましては、政府としてもこれを尊重して、ひとつ石炭の雇用問題のみならず、合理化、近代化、やはり石炭の全体についての答申もお願いいたしまして、これをやはり軸といたしまして今後の石炭対策を強く進めていく、こういう考え方でおるわけでございます。
  10. 吉田法晴

    吉田法晴君 閣議決定を中心にして御説明をいただきましたが、私は、雇用問題を中心にして石炭政策というものについて政府が責任を持つようになりたという点に、石炭政策として大きな変化があると思うんですが、こまかい点はあとで逐次伺います。その前に、実はこの政府に対します石炭対策確立の要望、これは昨年の十月の国会で決議をされました。総合エネルギー対策の樹立、その中における石炭産業の安定的な地位の確保、それから生活と雇用に万全を期し、生活の安定と、転換職場のない合理化は行なわしめないように強力に指導をする。最低賃金制度の確立のためには努力をするという点を中心にして、昨年の国会決議を与野党一致してきめました。あの決議を実行をしてもらいたいと、こういうことで要望をしてきて参ったところでありますが、それについて、不十分ではあっても、一応閣議決定を見て、この政策転換要求については、動員なり、あるいはそれを解除した。ところが、その後、同時に解決を要望されておりました賃金問題については、中労委のあっせん案にかかわらず——あっせん案が出ましたけれども、なかなかの状態。で、けさの新聞を見ますと、炭労は受諾の意思を表明をした。しかし、経営者は、一応拒否の態度をきめたが、政府とよく相談をし協力を得て云々と、こういう中労委会長の発言もあって、のんでおるようであります。石炭問題について、あるいは石炭政策について、雇用を中心にして責任を持つという態度になられた政府として、この事態に対しても、これは御感想なり、あるいは方針があるべきだと思うのであります。中労委会長の発言の内容にも関連をして、通産大臣としてすみやかに解決のために努力をせらるべきだと思うんですが、通産大臣の御所見を承りたい。
  11. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 通産大臣がその点について意見を述べるということが適当かどうか、私にもちょっとわかりかねますが、しかしたって通産大臣の所見を述べろと言われますので、申し上げてみたいと思います。  この石炭産業につきましては、ただいま、雇用の面について閣議決定は非常な前進だということを言われております。私は、今回の閣議決定をいたしました点で、特にものの考え方で、やや重点が在来の政策ではぼけていたというような感じが実はしていたのであります。私は皆様方の御質問にお答えして、石炭産業は基礎産業であり、安定産業であるということを、またそういうようにすることが私の責務だということをしばしば実は申し上げたのでございますが、当面する合理化に直面いたしますと、できてきた、発生する事象に対しての感覚が非常に強く浮きぼりにされまして、いわゆる離職者対策に狂奔しておる、あるいは合理化の形から見まして、石炭の産業を圧縮するかの印象を非常に強く与えている。この点は受ける感じでございますので、本来の趣旨がどこにあろうとも、そういう印象を与えていたことはまことに不本意だと言わなきゃならない。今回はそういう点について、安定産業たらしめる、こういう点を明確にひとつすることが必要だろう、まあこういう考え方から、石炭に対する対策というものを閣議決定をいたしたそのポイントがひとつそこにあったと思います。  したがいまして、閣議決定は、すでに御承知のように、当面の施策というものは出ておりますが、これは当面、の事象に対する施策でございまして、基本的にはやはり五千五百万トン、千二百円下げという基本線、これは短期の間に実現する、そうして次の飛躍に備える。飛躍の方向が示されてない、拡大の方向が示されてない、このエネルギーの総合的利用という点についてなお不安だ、こういう感じがどうしても拭うことができなかったと思いますが、そこで、総合審議会を、エネルギー対策の総合的な審議結論を出すような制度をひとつ設けたい、これが積極の面でございます。同時に、この五千五百万トンは、合理的、経済的な数字であるならば、五千五百万トンにとらわれません、こだわりませんと、こういうことを実はしばしば申し上げてきたのでございますが、いかにも五千五百万トンで全部を締め上げておるかのような印象が強かったと思います。そこで、五千五百万トンにつきましても、将来の新鉱開発、こういう意味においてのその片りんを出すことが必要だろうというので、原料炭の開発について積極的な意図を実は示したつもりでございます。まあかような方向で協力をお願いし、どこまでもその観点は石炭の合理的、経済性を持つこと、そこに実は重点が置かれておるのでございまして、そういう意味の閣議決定をし、その考え方労使双方の方に十分理解をしていただきたい、これが基本的な趣旨でございます。  この基本的趣旨に立ちまして、当面する合理化計画なぞも協力を得るということが前提になると、当面しておる争議形態は一日も早く解消さるべきだ、そして労使双方が納得する線が必要だ、そのためには中立公正な調査団を派遣し、その答申を待って、そして政府がさらに具体的な政策決定をする、それまでは労使双方一応休戦しよう、こういうのがその骨子でございます。で、その観点に立っての種々の肉づけが行なわれておるのでございます。で、しばしば交渉を持ちました際も、今回の闘争はどこまでも雇用の問題だ、雇用の問題であるがゆえに、同時に賃金問題等についても労使、交渉を持ってはおるが、こういう点は雇用が第一だから、賃金の問題は、雇用の問題についての、一時でない、将来に対する見通しが立てられれば、その点は比較的解決が容易だ、こういうようなお話を関係の人たちからも実は伺ったのでございます。したがいまして、この当面の対策としての労使双方の休戦状態は、理論的に申しますならば、雇用の問題ではあるが、同時にこの石炭産業を安定産業たらしめる、そのためにも合理的な経済性を持たす、それについて双方協力するというその立場に立つならば、なるほど閣議決定にはふれておらないが、賃金問題なども十分話し合いで結論を得てはしい、こういうことを実は申したものでございます。しかし、不幸にしてこれがストライキに展開し、そしてそのあっせん案が提示され、そうして組合側はこれを了承し、経営者側は非常な難色を示しておる、こういう実は事態になっておると思います。経過は、また今回の閣議決定をいたしましたまでの情勢の分析は、それぞれの立場によりましてあるいは表現の相違はあろうかと思いますが、大体同じようなことだろうと思います。  ところで、在来の石炭の合理化計画、これもやはり賃上げの率を一応予定しておることは御承知のとおりであります。合理化計画を進めていく場合におきまして、三・八%というものが毎年予定されていたと思います。したがって、三・八%の範囲内であれば、合理化計画基本線から申して、一時的な足踏みがあるにしろ、おそらく経営者側としてもこれはもう了承せざるを得ない状況だろうと思います。しかし、昨年以来、昨年の賃上げの率、また今回の一月にさかのぼって支給される賃金の率、これはいずれも大幅に合理化計画で予定した三・八%を上回っております。そういうことを考えますると、経営者側が難色を示しておることは私はある程度わからないではない感がいたすのでございます。もちろん、今日あっせんの労をとられ、そしてその具体案が提示されておる際でございますから、それについて諾否を私などがとやかく申す筋ではございませんが、今日新聞に出ていて、経営者側が難色を示しておるその経緯は、ただいまのように考えて参るとこれがわからないでもないという感が実はいたしておるのでございます。しかし、いずれにいたしましても、これは労使双方で話をつけることだろうと思いますので、その結果を待って私どもはそれに対する対策などを講ずる、これがまあ行政官庁のあり方ではないか、かように考えております。
  12. 吉田法晴

    吉田法晴君 閣議決定の精神について、私は通産大臣としての御答弁あるいは解釈があるかと思ったら、どうも少し閣議決定説明とは違うような御答弁があって、大へん残念であります。この五千五百万トン千二百円下げ云々の点は、先ほど石炭局長も答弁されましたが、そういう言葉が閣議決定の中にももちろんございます。ございますから、それを全面的に私ども否定するわけではございません。しかし、この閣議決定を貫いておるものについては、これは経営者もこれより以上の人員整理というものはなかなか容易でない、こういう事態になっており、それを基礎にして政府雇用問題については責任を持つのだ。それから炭鉱労働者の雇用と生活の安定のために石炭政策についても審議会あるいは強力な委員会等を通じて最善の努力をするのだ。あるいは総合エネルギー対策を設けて、その中で石炭産業の安定的な地位を確保する。こういうのが私は閣議決定の中心的な精神だと思うんです。  それから紛争は行なわない云々という点について、直接的には雇用の問題であるけれども、経済性を確保するために全体についての休戦を希望するというお話ですけれども、その点は、全体について云々という点は、閣議決定なりあるいは補足説明の中にはなかったところです。私はここで強調するまでもございませんが、あとで質問に答えて、労働者側は紛争行為を行なわないという文句が、その対象関係はどうかという質問に答えて、ここでいう紛争行為は人員整理関連するものに限定をされるとはっきり答えておる。したがって、それより以上のことは、これは大臣として言い過ぎだと思う。少なくとも閣議決定説明としては。  それから、もう一つ私がお尋ねをしておったのは、賃金の問題は労使の問題だと、こう言われますが、中労委のあっせん案の提示に伴って、口頭で労使に藤林会長が述べられた中に、閣議決定を引用をして、「政府で石炭安定化対策が決定されている現状では、そのにない手となるべき炭鉱労働者の生活条件の維持向上も緊急時なので、関係当局の支援を得ながらあっせん案を受諾することを強く期待する。」、こういう言葉がございます。そうすると、通産大臣よりも私は中労委会長は正しく理解をされておると思いますけれども、石炭安定化対策を実行する上においては、そのにない手となるべき炭鉱労働者の生活条件の維持向上も緊急だ、こういう理解があり、そうしてその上に立ってあっせん案が提示される。そのあっせん案の実施についても関係当局の支援が必要だろうからということで、これはいわばそのあっせん案あるいは中労委のあれからいたしますと、直接的ではないかもしれませんけれども、現実的に安定化対策を決定をされ、そのにない手となるべき炭鉱労務者の生活条件の維持向上のためには、この程度のことはしなければならぬじゃないか、こういう意味で提案をされておるのでありますから、通産大臣がいわば資本家的なといいますか、三・八%を予定されておるからそれを上回るのはどうかと誓われたり、それから資本家が難色を示しておるのはわかると、こういう話はこれはむしろ逆だと思う。中労委会長のような答弁をされるのが通産大臣の責任であり、それをいわば反駁するような議論がなされるのははなはだ心外でもあるし、私は、政府を代表した通産大臣——これはほかに大臣が出ておられませんから、通産大臣を相手にする以外にないのですから、通産大臣に物を申すわけですが、安定化方策を推進をするときには、にない手となるべき炭鉱労働者の生活条件の維持向上にこの程度賃金値上げはやむを得ないのじゃないか、こういう判断で出された案、それに対して「関係当局」というのですから、おそらくこれは政府が大部分でしょう。「関係当局の支援を得ながらあっせん案を受諾することを強く期待する。」という中労委の態度に対して、政府としてはどういう工合に考えるか。まさかノーとは言われまい。先ほどの答弁を繰り返えされるとは思いませんが、前の答弁を訂正をして、政府の当然のひとつ答弁を願いたい。
  13. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) これは今、吉田さんから重ねてお尋ねでございますが、私は吉田さんともしばしば交渉を持ちましたが、この閣議決定の中で、雇用について政府が責任を持つ、こういう話がお話の際にもございました。私は、政府が責任を持つというそういう表現は当たりませんとしばしば申し上げた次第でございます。だから、少なくとも政府雇用について全責任を負うのだ、この建前で御主張になりますと、閣議決定の読み方がすっかり変わってきます。この閣議決定の第四にはそういう書き方はいたしてございません。雇用の安定をはかるため新たにこれこれをいたしまして、雇用の安定を一そう強化するため次の措置を講ずる、こういうことでございます。いわゆるしばしば誤解を受けることでございますが、組合の方々に対してその言葉を云々するわけじゃありませんが、この点は趣旨を明確にしておかないと誤解を受ける、かように思いますので、これはひとつ御了承をいただいて、この閣議決定そのままひとつお読みいただきたいと思います。  それからまた第一の、当面の措置につきまして、これは御指摘のとおり、またそれから後にも確認されておりますとおり、また先ほど私が発言いたしましたとおり、この趣旨は、ここに書いてありますものは、雇用に関する労働者側と経営者側とが休戦するという考え方でございます。それはもう何度も確認して差しつかえございません。ただこの条項が入るその状況のもとというか、経過のもとにおきましては、どこまでも組合側も話し合いによって話を片づけていく、こういうことであって、それは基本線として石炭政策合理化計画はこれはやむを得ない、しかしながら今までのように非常な強い、また急速な処置で進められることは困るということで、とにかく今炭鉱事業が置かれている状態については十分の理解を持たれておる、また私どももまた経営者側もとにかく組合の方々に対する離職等の処置について、それは気の毒だ、またそういう点で工夫の余地があるかどうか、また一般の納得がいくようなことになるかどうか、いわゆる経営者側あるいは政府側だけが合理化の方針を遂行するという強い態度では必ずしも納得がいかないだろう、こういう意味からこの調査会が設置されておる、こういう状況でございます。  私は中労委のあっせん案そのものについて、これは是非を私は申し上げる筋ではないということを先ほど申したのでありますが、ただ吉田さんの言われるように、労使双方考え方、また中労委が、政府側その他もぜひともこれを進めてくれろ、こう言われることは、私は中労委としてどうかと思う。中労委は自分の権限、自分の信ずるところを裁定されるのがしかるべきだろうと、私はさように思います。これがあっせん案のしかるべきゆえんであって、それが特別な考慮のもとに払われるということはどうも私はこれはやや納得がいきかねる、だから先ほど大へん私とすれば遠慮した表現をしたわけです。中労委が在来の合理化計画で示しておる三・八%をあっせんの原案としてお話なさるなら、これは非常に話はよくわかりますけれども、昨年も非常に高いところであり、ことしもまたそれを上回っている、こうなりますと、経営者側にいろいろの御議論があるのはこれはわからないわけじゃない、こういうことを実は申し上げておるのでございます。問題は大へん労使双方関係であれだけ激化した問題でございます。したがいましてそれぞれの説明の仕方があろうかと思います。だからそれぞれの立場において、やや表現の仕方の相違はございましても、趣旨は私の申しているところと別に変わりはない、かように私は思うのであります。先ほどの答弁を重ねて申し上げるのも、さような意味合いでございます。
  14. 吉田法晴

    吉田法晴君 石炭対策についての閣議決定によって政府雇用について責任を持つようになったかどうか、この点はあとで質問をいたしますし、論議をいたしますから、あとに譲りますが、きのう来のあっせんの問題について政府の石炭安定化対策が決定をされ、そのにない手となるべき炭鉱労働者の生活条件の維持、向上を緊急に解決しなければならない、そういう意味で賃金問題を扱われ、そしてその実施のために関係当局の支援を得て、おそらく協議をなされるでしょうが、協議をし、支援を得て、あっせん案の受諾をされることを望むと、こういう表現に対して、政府としてはどういう態度をおとりになるかということをお尋ねしたのですが、いわば従来の合理化計画の中での三・八%云々の説明は要らぬです。説明じゃなくて、政府態度をお尋ねしているのです。そしてそれについて中労委の判断が妥当であるかどうかといったような判断を非常に内輪にしておられるようですが、それは私は逆じゃないかと思う。石炭政策あるいは中労委の言うところによると安定化対策を決定をした。それを実施していく上からいえば、これをどうするか、労働者の生活安定もはからなければならない、あるいは生活条件の向上もはからなければならない。それについて結論が出た。あなたは全然中労委の結論について責任がないかのように言われますけれども、中労委は、これは労働省ですが、政府委員を委嘱している。その政府委員を委嘱いたしました中労委がその立場において問題を考え、あるいは双方の事情を聞き、それから石炭の実態も考え、あるいは安定化方策と申しますか、石炭対策についての閣議決定も十分腹に入れながら、こういう解決方法以外にはなかろうということで出された案でございます。それについてとかくの批判をすることよりも、問題を解決するためにどうしなければならないか、あるいは表明された当局の支援云々についてどうされる、これはこれからの問題だろうが、同時解決すべきであったという希望は、私どもも持っている、持っておりましたけれども、解決しなかった。そこでいろいろな方法等が言われている。それは時間はズレましたけれども、中労委あっせんということになった。そうすると、中労委のあっせんによってすみやかに解決すべきだというのが、通産大臣としても当然の私は立場でなければならないと思う。いかがでしょうか。
  15. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) もちろん事業として労使双方で話し合いがつき、中労委あっせんでもどういう形でもけっこうですが、話し合いがまとまる。これは大へん私ども望むところでございます。しかし今新聞にそういうふうに出ているという話でございますが、まだ正式に通産省自身としては、そういう意味の話も実は受けておりません。それを実は申し上げているわけです。ただいままでのところ、もちろん経営者の連中は、私のところに尋ねて参りまして、いろいろ意見も申して参っております、おりますが、今言えることは、ただいま申し上げたように、一日も早く紛争をやめることだし、そして平常に復して、そしてそれぞれの職場において働いていただくこと、それを行政官庁としては望むという以外にはございません。その具体的な条件、その他はどういうことかといえば、これはもう労使双方で話し合いをされるだろう、かように期待をしているということを、先ほど来申し上げ、なるべく具体的な紛争の実態に通産省としては関与する筋のものではないだろう、こういうふうに実は私は思っている次第であります。
  16. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の答弁は大体まともでありましたが、前に要らぬことを言うから……。石炭政策決定をするときにも、実は賃金の問題について片づけたかった、それが紛争になることを望まなかったという点は、これはわかる。しかし当時において同時解決を望むという気持があったなら片づくにしても、そのとき労使の間ですぐ片づくとは思われないから、中労委のあっせんで云々という点もやはり考えられて、政府としても考えられた。中労委のあっせんが出たら、すみやかに中労委のあっせんで解決するように望むと、こういう今の答弁が、それは最初からあれば問題はなかったわけです。まあ途中で要らぬことを言われましたが……。  それでは、中労委のあっせんですみやかに炭鉱の賃金問題も片づくことを期待すると、こういうことでよろしゅうございますか。
  17. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 問題でございません。
  18. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは答弁の中にございました、閣議決定によって石炭対策を通じて雇用に責任を持つようになったわけではないと、こういうお話です。なるほど直接的な責任は、これは政府雇用じゃないのですから、そういう形での責任を持ったとは私も言っているわけではございませんが、閣議決定の中に、通産大臣も、それから石炭局長も認められたように、「権威ある調査団を編成し、これに対して石炭鉱業の近代化、合理化および雇用の実状調査を要請し」、まあこれは委嘱することだと思うのですが、「要請し、今後の政策について答申を求め、これを尊重する。」、これを閣議決定としてきめる。こういうことです。そうすると、雇用に関して——雇用だけではございませんが、雇用を中心にし、それから近代化、合理化、雇用の実態等について答申を早急に求めて、その答申に基づく措置につき政府決定があるまでは、経営者側は、新規の人員整理を行なわず、労働者側は、首切りがないから、人員整理に関する紛争行為は行なわないとございますが、これは当然のことだと理解するのであります。四月五日以降権威ある調査団答申と、その答申に基づく措置についての政府閣議決定があるまでは、これは法的の措置、予算措置を含むと思いますが、閣議決定があるまでは新規の人員整理は労働者の承諾なしには一方的には行なわない。期間が一応限ってありますが、従来のような合理化を名目にして一方的な解雇が行なわれない、こういうように閣議決定で制限をされておる。そうすると、政府の責任において一方的な解雇は行なわしめないと、これは解すべきであろうと思うのですが、どうですか。閣議決定、そしてその調査あるいは調査に基づく政府決定が行なわれるまでは解雇は行なわれない。ということは、政府からいえば、行なわしめないということ、閣議決定によって一方的な解雇は制限をされたと、こう解するのは当然だと思うのです。
  19. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) これは御承知のように、経営者側は新規の人員整理を行なわず、労働者側は紛争行為を行なわないよう期待するものとする。これは期待するのは双方へ実はかかるわけでございます。これはただいま申し上げますように、非常に苦心の作なんです、期待するものとするということは。ことに紛争行為というようなことになりますと、政府はそういう事柄を、本来の問題を制限するわけに参りません。また雇用関係におきましても、経営者側に対して行政的指導は可能にしても、それを行なわさないと、そういう確約のできるものではございません。これは当時関係された方々もすべて御了承のことでございますが、同時にこの方針閣議決定をする、労使双方はこれによって協約をするだろう、そういうことを実は期待しておるものでございまして、協約の内容によって、ただいま吉田さんが御指摘の点が明確になる。政府が協約ができればそれを確認するということは当然でございます。そういうものでございます。これはもう在来から行政官庁として関与し得ることと、関与し得ないこととがあるものでございますから、そういう意味で苦心した書き方をしたつもりでおります。
  20. 吉田法晴

    吉田法晴君 権威ある調査団答申と、答申に基づく措置について政府決定があるまで、一方的な人員整理、新たな人員整理が行なわれないように、政府が責任を持って、答申に基づく措置について閣議決定をし、その後の「石炭鉱業の合理化に伴う整備計画(人員整理及び閉山計画)」とありますが、その整備計画についても、これを「地域別、炭田別に、毎年石炭鉱業審議会において審議検討する。」とあります。石炭鉱業の第二会社化、租鉱権の設定、請負等についても政府監督強化する。それから炭鉱労働者の安定職場への転換雇用について、従来以上政府が直接かあるいは間接か責任を持つのであります。従来の合理化は、炭鉱経営者の責任においてやってきた、あるいはおやりなさいということだった。政府はその資金、あるいはその他の援助をして、出てきた失業者について、経営者と労働者の自由意思に基づいて就職するようにあっせん援助をするという原則から、あるいは建前から、炭鉱労働者の炭鉱における雇用について、及びその雇用を裏づける総合エネルギー対策の確立について、なおやむを得ず出てくる閉山とともに、これに伴う人員整理計画及びこれによる被整理人員の雇用、再就職についても、政府が直接であるか間接であるかはとにかくとして、責任を持つということになると解すべきでないかと思うのですが、その辺はどうですか。
  21. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 責任という言葉をどういうようにお使いになるかは御自由でございますが、この点は先ほど申し上げたとおり、政府が全責任を持っておる、こういうものではございません。
  22. 吉田法晴

    吉田法晴君 全責任を持っているということではないが、炭鉱労働者の生活と雇用の安定について最善の努力をし、生活安定と、転換職場のない合理化とならないよう強力に指導をするという決定に基づいて、そして調査政府が任命された強力な権威ある調査団を組織し、その結果、政府閣議決定をする。それからその中で出てくる整理の人員については、系列会社等について就職をさせるように特段の勧奨をするし、それから再雇用のためには、政府関係機関やら、あるいは特定の成長産業に協力を要請する云々ということだが、これは閣議決定ですよ。系列会社に就職させるように勧奨するのも、あるいは政府関係機関や特定な成長産業に協力を要請するというのも、これも閣議決定政府が勧奨をするというならば、雇用の問題について強力なる機関なり、あるいは年ごとに決定される鉱業審議会の答申の実施について、それからあとの再雇用その他についても政府が責任を持つということにこれはなるじゃないか、全責任を持つという点、直接的な責任だと解釈されるならばどうか知らないけれども、よってくるところは生活の安定と雇用の安定について最善の努力を払い、生活安定と転換職場のない合理化にならないように強力に指導する。その強力な指導の仕方を閣議決定でやる。あるいは間接も約束されたが、その点も勧奨等を通じて政府で責任を持つ。言いかえれば間接、直接を問わず、仕事場のない、行き先きのない首切りは行なわないと、こういう点について政府が責任を負われているわけです。直接、間接の方法もありますけれども、どうですか、それは。
  23. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) どうも吉田さんのお話、ちょっと私にはわかりかねますが、政府の持ちます責任が行政の範囲であることは間違いないと思います。これだけは御了承おき願いたいと思います。行政の範囲において行政上の責任は持ちます。しかし行政上の責任を越して以上の雇用についての責任というものはないということを、ひとつ御了承いただきたいと思います。
  24. 吉田法晴

    吉田法晴君 その行政の範囲内というのは行政指導の範囲内というのですか。しかし、たとえば計画についても責任を負われるでしょう。閣議決定をするというのだから。それから年々の年次計画についても石炭鉱業審議会答申を待ってと、これも政府で作られる機関。いわば雇用の問題について、それから生産計画の問題について、近代化、合理化計画について、しかもそれをとにかく政府で実行していくというのだから、その答申されるものについて全責任を負われることは間違いない。行政の責任であるか、政治の責任であるかは別問題として、ただ、その行政の責任だと言って、一番薄いところだけをあなたは言われるからあれですけれども、石炭対策について政府が責任を負ったというのが閣議決定ではないですか。そうして雇用の問題についても、やって出てくるものについても具体的な方法が書いてある。その勧奨をする、あるいは要請をするというところが、行政的な責任である云々という点かもしれませんけれども、それはまあ間接的な責任あるいは行政の責任かもしれません。しかし全体を通じてこの国会の決議から、いわば石炭対策全般について異例とも言うべき閣議決定をやられたのは、雇用問題を中心とする石炭政策について政府が政治的な責任を負いたい、負うということにきまったことには間違いないじゃないですか。それを逃げられるのですか。
  25. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 政府が行政上あるいは政治上の責任、これは逃げはいたしません。しかし雇用についての全責任を持つ、と言えば、雇用関係政府との間にあるかのような印象を与える、そういう意味の点の誤解がないように、だから責任を持つというのは当然のことだと言われては困るということを先ほど来申し上げているのです。それは政治上の責任、行政上の責任というのは本来当然政府にそれはあります。そういう意味なら全面的に私も賛成です。しかし、それは雇用について全責任を持つという表現とはおよそ違う事柄ですから、それは一緒になさらないように願いたい。
  26. 武藤常介

    委員長武藤常介君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  27. 武藤常介

    委員長武藤常介君) 速記を始めて。
  28. 吉田法晴

    吉田法晴君 通産大臣じゃなくて、あるいは局長や次官なら、それでもいいかもしれない。責任を持っているかと言われると、いや行政的な指導の責任しか持ちません。閣議決定説明を求めているときに、しかも有力通産大臣……(「総裁」と呼ぶ者あり)その総裁問題は、これは将来の問題でしょうけれども、少なくともほかの大臣も出られないで、あなたが出て、しかも石炭対策について、これは労働大臣あるいは官房長官その他もおられたかもしれませんけれども、決定をされて、そして政府を代表して答弁をされるときに、一番遠いところを責任を持ちたくない云々ということで、末端の間接責任のところを取り上げて行政的な責任を持つかもしれませんけれどもと、そういう答弁はなさるものじゃない。私も、そんなことを言って直接雇用じゃないのだから、これは駐留軍の労務者とかあるいは政府の職員のような質問をしているわけではないのですから、閣議決定について政治責任を持ち、あるいは今後の計画について責任を持たれますか。あるいはやって出たものについては、これは直接間接の方法はとにかくとして、責任を持つというのが、この閣議決定の精神ではありませんかと申し上げている。それはそのとおりですと言われるのが私は当然だろうと思うのです。
  29. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 最初からそう聞いてくれれば、そう申し上げております。
  30. 吉田法晴

    吉田法晴君 最初からそう聞いているじゃないですか。直接間接の方法を通じてではあるけれども、政府が責任を持つようになったのが、この対策の中心的な精神ではありませんかと、こういうことをお尋ねした。ですから、これはこまかいあれになりますけれども、石炭局長でもいいですが、あるいは労働省が出ておれば労政局長になるかもしれませんが、解雇、人員整理は労働者の自己の意思と都合による退職、それから労災等によって労働能力を喪失をして法によって補償を得て退職する者、それから病気によって治療したが、健康を回復せずに労働能力の回復の見込みがないので退職する者、それから就業規則によって当該炭鉱の労働者全体の利益のために解雇される者、それからこれは組夫なりあるいは第二会社の問題に入ることですけれども、基準をこれは明らかにして云々ということですけれども、強化をしてという、私はこれは実質上の強化をして云々だろうと思うのですけれども、しかしその背後にありますものは労働者なり労働組合の了承を得て解雇する、こういうことだろうと思うのでありますが、そういうものを除いてはこの答申閣議決定をするまであるいはその後においても答申を実施する、あるいは鉱業審議会の答申を待って実施する点についても、労働者なり労働組合の承認なしには一方的には行なわれないと解してよかろうかと思うのですがいかがでしょう。
  31. 今井博

    政府委員今井博君) ここは、そういうこまかく御指摘になりましたけれども、ここに閣議決定にございまする「人員整理を行なわず」というところにカッコして一応例外事項を書いてございますが、これはこういうふうに書いてあるこの文句のままでございまして、今御指摘になりましたように非常にこまかく具体的にそこまで論議してきめたものではございません。
  32. 吉田法晴

    吉田法晴君 大臣も忙がしいようですから、それでは大臣に答弁を願うべきところのものを一応お尋ねをして大臣についての質問を終わりたいと思います。総合エネルギー対策の樹立と、その中において石炭産業の安定的な地位を確保したい、こういう閣議決定なり、閣議決定の精神の説明がございました。それをどう具体化していこうとされるか。権威ある調査団云々という点もありますけれども、通産大臣としての御方針を承っておきたいと思います。  それからコストの切り下げを可能な場合の五千五百万トンの  まあ五千五百万トンという点は変わらないのだとこう言われるけれども、原料炭を主にして未開発炭田の開発を行なっていくということですから、原料炭を中心とする未開発炭田の開発によって、五千五百万トンの出炭規模の拡大がなされる。こういう点はこれに含まれているのではないかと思われるのですが、このコスト切り下げの可能な場合の五千五百万トンの出炭規模の拡大の方向、それからこのコストの切り下げを可能にする場合云々とありますが、過去においてこの切り下げ合理化をやってきたが、これを妨げる要件、過去においては、国鉄運賃等については運賃の値上げの分のたな上げ云々の措置が講ぜられて参ったわけでありますが、今後こういう政府の施策によってコストが上がるような傾向が出て参りました場合、その要素について同様の対策をとられるのか、おそらくそういうものも含むだろうと思うのでありますが、こういうコスト切り下げの努力を防げる要因について、これは一切行なわないということなんですか。それとも起こってきた場合に、どういう対処の仕方をされるかという点をお尋ねをしておきたいと思うのであります。あとは石炭局長なり何なりでいいと思います。
  33. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 御承知のように、ただいま通産省に産業構造調査会というものがございますが、その中にエネルギー部会というものがございます。このエネルギー部会をひとつ強力なものに改組する、こういう考え方でございます。で、それは直ちに立法措置を必要とするというところまで踏み切っておるわけではございません。将来の問題といたしまして、さらに立法措置を必要とする、こういう結論を得ればもちろん立法措置をすることをいなむという考えはございません。さしあたって産業構造調査会のエネルギー部会、そこで総合エネルギー対策審議する機構を強化する。こういう考え方でございます。これはいろいろ議論がございまして、私自身も、総合エネルギー対策から見れば、内閣において総理大臣が直接任命する、そういう形が望ましくはないかと実は考えたのでございます。ところがエネルギー部門は全部通産省所管、原子力はなるほど通産省所管ではございませんけれども、原子力発電となりますと、これは通産省所管でございます。そういうことを考えますと、通産省に関係するものばかりのように考えられますので、産業構造調査会、それの中で総合エネルギー対策をする部会強化する、これで十分まかなえるのじゃないか、かように実は考えておる次第でございます。  第二の点、千二百円下げの実施をはばむような事態が起きたらどうするか。運賃しかりということを言っておられますが、これはいろいろ実情等をよく考えて対策を考究しないと、今予定したものから変わったから、直ちにこの千二百円下げを再検討するということでは、やや事態に合わないのじゃないかと思います。たとえば昨年の賃金引き上げについても、これは予定したより以上のもの、今回もまた予定したより以上のもので、これは直ちに千二百円下げに影響があることは当然でございますが、これを他のほうで吸収が可能かどうか。そういうところに研究の余地があるわけでございまして、賃金が上がったから直ちに千二百円下げは変更だと、こういうわけには実はいかない。また鉄道運賃にいたしましても、ただいま延納措置をとっておりまするが、それも引き上げ分全額ではないと思います。あれはたしか、二分の一だと思います。ですからあるいは坑木代が上がったとか、電気料金が上がったとか、それを一つ一つ取り上げてどうこうすることは、いわゆる合理的経済性を持たすという観点に立ちますと、万全の方法ではないと思います。しかし非常に事情が変わってきたときに、それを全部否認して、そうして何でもかでも千二百円下げにする〜いう、そういう極端なことも、これは事態には合わないだろう、かように思いますので、そういう意味で十分情勢を認識して、しかる上で対策を立てる。今回もすでに三十七年に入っておりますから、いわゆる千二百円下げの三十七年度計画あるいは三十八年度計画、こういうものはまだ具体化いたしておりませんが、近くこれなどは、石炭鉱業審議会結論を得て、しかる上で答申を得た上で政府態度をきめる、こういう考え方でございます。政府の一存で独断できめるということでなしに、情勢判断に誤りのないようにする、こういう考え方であります。また、原料炭開発計画、これが五千五百万トンの中にあるとか外にあるとか、いろんなこまかな議論がございますが、大まかに申しまして、だんだんこういう必要な原料炭、ことに外国の輸入炭にかえ得る国内の原料炭ということを考えますると、これはできるだけ、一千万トン以上も外国から入っておる原料炭に国内炭をもって置きかえるという、これはまあ積極的な政策で、そこに意義があると思いますので、特に開発計画として上せたわけでございます。しかしこれは、吉田さんのほうが専門だから、御承知のとおりに一般燃料炭等につきましては、政府がいろいろ施策をいたしましても、なかなかこれは伸びないでありましょうし、むしろ減少の危険すらある、かように思います。そういたしますと、原料炭はふえたが、片方で燃料炭等で後退いたしますと、なかなか五千五百万トンの目標を確保することも非常に困難だ、こういうことも一部心配されるのでございますが、問題はこの数壁にとらわれることなく、需給の関係が円滑に推移する、そのためには石炭が合理的経済性のある炭になること、こういうように実は考えまして、原料炭は外貨の支払い等の関係もございますから、そういう意味ではやや一般炭とは趣を異にする、こういう意味で積極的に開発計画を持ったのだ、かように御了承をいただきたいと存ずる次第でございます。
  34. 吉田法晴

    吉田法晴君 五千五百万トンのワクに必ずしも拘泥するわけではない、五千五百万トンはこすように、需要の確保等に努力をして安定産業たらしめたいという過去の答弁と、今の答弁は、少しニュアンスが違うようです。まあしかし、これらの問題については、別の機会にいたしましょう。じゃ、その辺の、あるいは重油との関係については、あとの機会にいたしますが、もう一点だけお尋ねをしておきますが、今後石炭対策閣議決定に従って調査を委嘱され、それから早急にその結論を待って閣議決定をする云々、それから、年次計画については、石炭鉱業審議会答申を待って実施する、こういうことになりますと、その間に雇用問題、あるいは人員の問題等が出て参りましょう。その結論が出てさらに争うということでなしに、私どもの考えた炭鉱労働者の雇用安定に関する法律のように、その中にもございますが、労働者の代表を委員会の中に入れて、とにかくそれが出てきたあとで争いをやるということでないように、構想をする必要があるのではないかと、こういうふうに考えますが、それらの点についてはどういう工合に考えておりますか。
  35. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 五千五百万トンについての説明が在来とニュアンスが違う、そのとおりやや変えております。これはどういうわけで変えたかと申しますと、五千五百万トンという数字を唯一最高のものにしてただいままで説明して参りましたが、これは数字そのものにこだわる筋じゃなくて、石炭の合理的経済性ということが主体なんだ、だから、その合理的経済性があれば五千五百万トンにこだわることはないんだ、こういうふうに、在来の説明とやや重点といいますか、五千五百万トンにとらわれているのはここなんだということをつけ加えたつもりであります。したがいまして、ただいまの、石炭の情勢、趨勢等から見まして、私は五千五百万トンという数字を合理的経済性があるもの、かように漠然と考えると、それはなかなか困難な目標じゃないか、かように一つは思っておるわけでございます。  それから第二の問題、御承知のように当面の措置として作ります調査団、これは中立的なものがよろしい、こういうことで、これには労使双方入っておらない。これは通産、大蔵、労働の三者の関係官並びに中立委員をもってエネルギー懇談会等の方に委嘱をしてこれを出すわけであります。しかし、後の、今お話しになります四の一ですか、石炭鉱業審議会ですね、このほうには今いわれるように組合の方も入っておられると、かように私は理解しております。御了承願いたいと思います。
  36. 吉田法晴

    吉田法晴君 またの機会にいたしましょう。
  37. 武藤常介

    委員長武藤常介君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  38. 武藤常介

    委員長武藤常介君) 速記起こして。  他に御質疑はありませんか。他に御発言がなければ三案の質疑はきょうはこの程度にとどめます。  午前の審議はこの程度にとどめ、午後一時半まで休憩いたします。    午後零時三十四分休憩      —————・—————    午後一時四十九分開会
  39. 武藤常介

    委員長武藤常介君) これより商工委員会を再開いたします。  まず、海外経済協力残金法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  40. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私はただいま議題になりました海外経済協力基金法改正案に入ります前に、少し総括的なことを若干お尋ねしたいと思う次第であります。  まず第一に、国際経済の、あるいは世界経済の構造変化ということからもう一ぺん基金法というものを本格的な検討をして、そのはっきりした位置づけをやって出発すべきじゃないか、今回出ていますような二つの点の改正についても私たちも賛成するのですが、もっと本格的な世界経済の構造変化、こういう問題において本法がどういう位置づけをさるべきかという点を検討すべきじゃないか。と言いますのは、一九五八年のローマ条約から発足しましたEEC、その後アジア、極東地域あるいは中南米地域、南アフリカ共同市場あるいは東欧地域のコメコンあるいは共産圏というような共同市場化といいますか、そういう大きな世界経済の構造変化の中で、一体わが国はどうすべきか、その中で海外経済協力基金法はどう位置づけすべきか、どうあるべきか、特にこの法律ができましたのは昭和三十五年で、そのときにはまだヨーロッパ共同市場というものが今日ほど注目すべきものでなかったということが大前提として重要じゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  41. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) お話のように、世界の経済が大きな角度でもって変わりつつあるということは、中田委員の御指摘のとおりでございますし、特にEECは本年から第二段階に入りまして、農業関係の調整に入ったというようなことで、EECの持っております基礎というものが固まりつつあるというような状態でございますし、その他南米におきましてもひとつの地域経済の協力というようなことが行なわれる、あるいはおそらく将来アフリカにおいても同じような関係が出てくると思うのでありまして、そういうものを考えて、これからの国際経済に臨んでいかなければならないことはむろんだと思います。が、同時に反面、低開発国とそれから先進国との間の経済関係の問題がございまして、これはガット等におきましても、明らかにいわゆる低開発国の数がふえて、独立をしてきたものでありますから、数がふえてきておる。それらの経済を確立して参ります上においても、先進国と低開発国との間に関税の関係の問題というようなのが、昨年暮れにガットに行きましたときにも新たな問題として提起されておるところでございまして、ある意味からいうと、ガットの曲がり角に来たと事務総長なども、私の出ましたある宴会の席上で言っておったわけであります。そういうふうに一つの大きな世界経済が新しい転機に立っておるということは、われわれ当然考えて参らなければなりませんし、日本の経済もその中にどういう位置づけをし、またどういう今後方針をもって進むかというようなことも十分考えて参らなければならぬと思います。がしかし、そういう大きな問題を考えて参りますけれども、しかしその過渡的と申してはあれでありますけれども、現在の少なくとも実情から見まして、日本が東南アジアを初め低開発国と協力して参ります態勢を、一日もゆるがせにして参るわけに参りませんし、世界の状況から見ましても、御承知のとおりOECDの中にDACという委員会ができまして、低開発国に対する開発援助をやろう、こういうことが一つの方針になっております。したがってそういう見地から考えてみまして、現在あります海外経済協力基金そのものを現実においてはできるだけ有効に活用しながら、そうした大きな問題を将来考えていくことが必要でございますので、この経済協力基金というものをこの時期においてはやはり一応実情に即するように運営をし、能率を上げ、効果を上げるようにしていくことが必要だと、こう思いまして今回の基金法の一部を改正する法律案を提案したわけでございます。
  42. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 ただいま藤山大臣の御答弁よくわかりますが、これは新聞で伝え聞くところによると、OAECの共同宣言が閣議にかかった際に、一体こういう世界経済の大きな構造変化の潮流の中で、わが国がどうあるべきか、何をなすべきかということが、やはり問題になったやに新聞紙上で伝え聞いておるのですが、やはり企画庁とされては、そういう分析をやっていただく、していただくことが、特に、これはまだはっきりと、さだかでない点もありますから、まあ差し迫まった問題から解決していくということも大切でしょうが、そういう点を私は早急に……。ですからたくさんこういうことに関して新聞に出ている記事を散見しても、さまよえる羊のごとく、EECの巨人的な何におそれをなして、孤立感にかられてなすところを知らぬということでは、これは困ると思うわけで、私はほんとうならやはり海外経済協力基金法というものは、日本が世界経済の動きつつある中で何をなし、この基金法にどういう役割りを負わせるか、それが一つと、そうしてEECとは全然もう比重が違ってきているということを検討していただきたかったのですが、そういうことの希望を申し上げて、そこで私今回の、主として東南アジア地域を対象にします本法適用地域におきまして、いろいろ調べて見まして、予想外に日本の投資と言いますか、そういうものが少ないということを……。たとえばインド、パキスタンに対する円借款の一億……六一年の両国に対する債権国会議の工業化計画資金として一億ドルですか、そうして今回いただきました資料で十五億円ですかというようなことで、あとは主として、賠償というもの、賠償か、ある意味では形の変わった、間接的ではありますが、そういう経済協力になって、それ以外ではないという点で、私はそういう点は、このことから何を日本が学ぶべきか、中国市場にかわるものとしてずいぶん東南アジア市場が言われながら、たったこの程度のクレジットなり投資で、非常にわずかなんです。ところがこれをアメリカ等を見ますると、一九六一年の対外経済援助四十六億八千万ドルに対してアジア地域に対して十六億七千万ドル、西独のごときもインドに対してすでに三億六千四百万ドル、パキスタンに対して一億一千七百万ドルというふうな、日本なんかよりかもけたはずれた規模の、そういう経済協力をやっているわけです。そこで私が特に申し上げたい点は、わが党も本法案には賛成ですが、これはもっとふやすべきですが、国内の投資その他を考えて見ても、なかなか海外に出すべき蓄積の元木がそうない。私はそういう際に、やはり必要なことは、一番重要なことは、日本は今日なお資本蓄積が少ないから、そういう少ない資本蓄積の日本でもやれるという東西貿易というものを、もっと高い比重において、それがまた資本蓄積を進める非常に重要なものだと思うのですが、その点はいかがでしょう。私はとうていヨーロッパ共同市場あるいは巨大な米国等で協力をしながらといっても、とうていこの対外経済協力の援助競争になかなか勝てぬ、そういう際にはやはり必要なことは普通のベースによる——思想や考えは違っても、そういうことで経済の交流の範囲を拡大する。あれほどいろいろ池田さんも二回も東南アジアにも行かれ、やってきたことは、タイの特別円の九十六億ぐらいで、たいしたことは実際できていないという点を見ても、これは結局日本の海外の経済援助をすべき資本の蓄積の元本が少ない。こういう中で何がやり得るかということは、私ははっきり見きわめておくことが必要じゃないか。それには近隣にあります共産圏との経済交流というものが高い比重を占めていくということを、まずはっきりすることが必要じゃないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  43. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) お話のように日本が対外経済協力をやります上において、資本蓄積が十分でなければできないことは当然であります。したがって国内的にも私は資本蓄積ということが相当にこの場合、必要なことであろうと考えておりますが、同時に国際的な貿易関係によって日本の経済を拡大し、それによって今お話のような、日本の経済力を増し、それがおのずから蓄積となり、あるいは海外への再投資となるという方向に持っていかなければ日本としては拡大して参れませんし、また海外経済協力も進んでいかないわけであります。したがって東西貿易についても政府としても決してこれをないがしろにするわけではないわけでありまして、まあ数年前にソ連との通商協定を作りましたときは私自身、初めて作ったわけであります。あの当時予想しておりましたよりも、その後さらに私の時代に三年の長期契約をやって改定しましたときには非常に伸びております。最近の状況から見れば、非常に伸びております。したがって政府としてもソ連との貿易関係について、あるいは東欧諸国との貿易関係について、それぞれ通商関係を設定もして参りましたし、決してそれをないがしろにしておるわけではございません。ただ問題は中共との関係になりますが、これも経済問題としては当然私どもは前向きの姿勢をもって貿易を拡大していくという道が開かれることを望んでおるわけでありまして、そういう点については、やはり両国が経済面において十分な理解を持って、政治的な基盤は違いましても、経済関係を十分過渡的にも確立していくということは望ましいことで、そういう方向に進めて参らなければならぬと、こういうふうに考えております。
  44. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 くどいようですが、さっき申し上げましたように、インド、パキスタンに対して円借款の債権国会議で一億ドルという程度で、あとは賠償の一千万円くらいになっておるというのが実際上の……今回これが十五億円が基金であります。実際、東南アジア、東南アジアといっても、具体的にはこれは日本の資本蓄積の浅さからきている欠陥だと思うのですが、そういう点で私はどうしても七億近い中国、一億のソ連、八百万の北鮮、モンゴールの一千と北ベトナムの千五百万、この近接した地域の普通のベースによる貿易というものは、あとでもちょっと触れたいと思うのですが、アジアの経済統合をやる際の最大の障害である経済の発展段階の相違、相互の補完性のないというようなのを補ない、日本の資本蓄積の少なさからくる障害を克服しながら、世界的な潮流である共同市場化の傾向に対応するには、やはりそれが私は非常に重要な点ではないか、その点を、それは藤山大臣も御答弁になりましたが、ところがそれは別として、経済の補完性は非常に少ないといいながら、この間のエカフェの会議で日本ははなはだどうも、前向きの足踏みだとか、前を向いているが、足踏みをしているとか、EECのほうばかり見て、はなはだ地域の共同化に対して冷淡なような記事をたくさん散見しておったのです。藤山大臣は議長として出られたのですが、いかがですか。
  45. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) このエカフェ地域内における経済協力の関係でございますけれども、今お話のように、発展段階が違いますし、補完関係が違って必ずしも一致しておりません。したがってそういう地域におきます経済協力というものがすぐに、たとえばEECのごとく、あるいは南米におきますごとく行なわれるということは、これは考えられないと思います。がしかし、それではそういう経済協力が全然できないかといえば、御承知のとおり三人委員会の報告にも、事務総長に出しました報告にもございますように、ある程度地域内の基礎的なつまり交通でありますとか、通信でありますとか、そういうもの、商業あるいは工業、経済の基礎的な整備というものに対する協力態勢そのものができないわけではございません。またできることが必要だと思いますが、過去におきます東南アジア地域、いわゆるエカフェ地域のつまり通信でありますとか、交通でありますとかいうものは、植民地本国につながるような交通である、あるいは通信、電信、電話にしても、通信連絡の系統——域内を一つに便利な、域内の共通に十分活用できるような実は態勢になっておらぬのでございます。そういう面からの協力をまず始めていくというようなことは、私は非常に重要なことだと思うのでございます。またエカフェの会議等に出ましても、そういう協力態勢を作ります場合に、日本を抜きにしてはなかなかそういう協力態勢はできにくいのだということが、それぞれの国の代表の私的な会談においても言われておるわけでございまして、そういう意味において日本がこれに前向きの態度でもって接触しながら、そういう期待を実現していくことは必要だと思うのであります。ただ御承知のように、若干日本にも、戦後十六年たちましたけれども、何か日本があまりに東南アジア地域の問題について積極的な発言をすれば、あるいは大東亜共栄圏の再建というような感じを、それぞれの地域の方々が、もうなくなっていると思いますけれども、かりに受ければ若干そういう面において支障を来たすかもしれない。むしろ盛り上がってきた態勢に日本が協力しながら進んでいくというような考え方のほうが適当なんじゃないかというような、若干の意識もございますので、そういう面から、外から見られますと、幾らか消極的な面が現われるのじゃないかと思いますけれども、私としてはできるだけ積極的にやって参りたいと、こう思っております。
  46. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そういう戦前のイメージやその他はいいですが、どうもEECの脅威的な発展に、アメリカもEECはアメリカに対する挑戦だというようなこともあったりして、その驥尾に付して日本もEECにばかり秋波を送っているといいますか、私はそういう日本の置かれた状況をEECとの接近で打開するということは、そう期待するような結果は出てこない。特になるほど排他性はないといいますけれども、私はやはり東南アジアを見ても、アメリカとEEC諸国、中国等からはさみ撃ちをくっているということが、なかなか排他的な競争力を持っておる。そうEECとの接近で、日本の置かれた現状が打開できるものではないのじゃないか、それはともかくとして、そういうふうに考えるのですが、その点についてはいかがでしょうか。
  47. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 私はEECの問題について、二つの観点からこれを見ておるわけでありまして、日本の対EEC諸国との貿易を拡大するという意味において、EECが非常な強力な一つの経済形態をとりながら、合理的に域内経済を統合しあるいは整理して、力を持って参りますことは、EECと日本との貿易関係においてはそんなに悪影響だけがあるものではなくて、むしろ日本の自由化に伴いまして、EECとの間の貿易関係というものは拡大していくのではないか、したがって、その間においてEECと十分に経済協力を持つことは私は必要だと思います。ただ問題は、今御指摘になりましたとおり、EEC自身でなくて、EECの域外と申しますか、東南アジアとかアフリカとか南米とかというところにおける日本とEECとの競争力、これが一つ問題になるわけでありまして、したがって、それではEECと接近することによって、その地域における競争力が何か調整できるかというと、必ずしもそれは調整できるものだとも思いませんし、また、調整して両方の関係がそれらの地域で伸びるというようなことになりますためには、もう少し日本の国内経済力というものを強めていかなければ、まだその段階になかなかいかぬ。したがって、EECとの接近ということは、対EECと日本との協力をいかに円滑にするかということの意味において接近が考えられるわけであります。域外においては、やはりEECの勢力が強まって参りますから、したがって、日本との競争も相当盛んになる。そこでこれにどう対処していくかということを日本としても考えなければならぬ点であります。その場合に、EECと接近しながら、ある程度調整をとっていくということも必要でありますけれども、なかなかそういうわけにはいかぬ場合が多いと思うので、それらの点については、日本の国内経済政策の態勢を固めて、そうしてEECとの競争力を深めていくというところに持っていかなければならぬと、こういうふうに考えております。
  48. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 その点が混同されて、EECと接近さえすれば問題解決への道が開かれる EECのように、加盟六カ国は単一の市場になって、それに伴い企業規模が拡大化して、合理化して、国際競争力が強まっているのですから、私は今日本が一般にEECと接近すれば、この問題が解決するという——日本自体がそういう国際競争力を高めていく、自分の持つ経済の矛盾を克服せぬとなかなかこれはできないので、そこらの混同があると思うのですが、最近よく財界等で、日本、アメリカ、カナダあるいはオーストラリア、ニュージーランドを入れた太平洋共同地域、太平洋地域の経済統合ということが言われますが、こういうことはいかがですか。
  49. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 日本側の現状から申しまして、貿易関係についてカナダ、アメリカ、豪州、ニュージーランドを加えまして、太平洋地域の先進国と申しますか、あるいは日本と同じ程度の開発国との関係ですが、主としてこれらの関係というものは、日本の輸入超過の関係にどちらかといえばなりがちであります。日本が相当に羊毛を買い、あるいは小麦を買い、綿花を買いというような原料品を相当買うという、木材を買うというようないろいろな面から見まして、日本の貿易をもう少しその方面に伸ばして参りますことは、これは日本の貿易のバランスを改善し、しかもこれらの国はある程度経済的に先進国としての立場を持っておりますし、また豪州は昨年は若干財政危機がございましたけれども、しかし、貿易関係における支払い等の困難な国だと予想するわけには参りませんししますから、そういう意味におきまして、これらの諸国とある程度の緊急関係を持って、日本の輸出貿易を伸ばし、そして輸入超過を防遏していくということは、これは必要なことであって、その限りにおいて、特に豪州でありますとか、カナダでありますとかが、かりに英本国がEECに入るというような状態となりますれば、なお、さらにそれに反対しておりますようなカナダとか豪州とかというものの経済関係が相当大きく方向転換をしていかなければならぬわけでありまして、そういう意味からいうと、これらの諸国と緊密な連絡をとっていきますことが必要不可欠のことだと考えております。ただそれを、何か太平洋貿易協定とかあるいは太平洋同盟とか、経済同盟とかというような形にすぐまとめるかどうかということになりますと、いろいろな問題もございましょうが、しかし、そういう、それらの国との緊密な連絡を持っていきますということは、地理的に考えましても必要でございますし、そういうことを含めていきたい、そういうふうに考えております。
  50. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 きょうは基金法の改正についてお尋ねするのが本筋ですから、もうやめたいと思いますが、私はやはりEECを中心とする最近の国際経済の動きにからんで、早急にやはりわが国がどう対処すべきか、何をなすべきかということを、やっぱり企画官庁とされて、めんどうな作業でしょうがやっていただきたいということを特に希望を申し上げて、そして態勢は違っても、すぐ隣りの七億近い中国、二億のソビエトというものとの結びつきなしには、大量生産からくる国際競争力を作るという面からいって、私はめんどうじゃないかと思うので、早急にやはり日本の基本的態度を検討していただきたいということを御希望を申し上げて前段を終わります。  その次に基金法に移りたいと思うのですが、この海外経済協力基金法改正は、ごく簡単な、第一に、理事の定数を二名ふやす、第二番目に、貸付または出資の際の要件をゆるめる、こういう二点でありまして、ごく簡単なことで、最初の理事の増員ということは、基金の資本金が設立当初に比べまして現在三倍にもなっているんですから、これは事情やむを得ないと思う次第であります。ただ第二の貸出実施要件の緩和には若干問題があるんじゃないかと思うのです。といいますのは御承知のように、去る三十七国会におきまして、基金法を当委員会が決議いたしました際に、基金が投融資の選定を誤らず、いやしくも放漫な経営に流れることのないように指導すべきであるという趣旨の附帯決議がなされている次第であります。もちろん今日まで政府はこの趣旨に沿って、基金の運用を指導されたことと思いますが、現在出されています「達成が確実である」というのを「達成の見込みがある」というように改められます改正案は、当委員会の決議と真正面から対立するというふうには少し言いすぎかもしれませんが、相当の対立といいますか、あるいはズレといいますか、そういうことがあるんじゃないかと思うのですが、本改正案の立案にあたって政府は当委員会の決議を十分考慮されましたかという点と、もちろん考慮されたと思うわけですが、あえてこういう改正をされなくてはならなかった理由は一体どこにあるか。そういう点について一般的なお話を承りたい。
  51. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 本案を提出する際にあたりまして、参議院の附帯決議の御趣旨は十分われわれ了承しておりますし、またその趣旨が当然なことでありまして、あらゆる場合に守っていかなければならぬ根本原則だと思います。ただ基金を運用いたします場合に「その達成が確実である」という言葉自身は、非常に厳格でございまして、それ自身が、東南アジアあるいは南米等の国々において仕事をいたしております現状から申しますと、十分将来見込みがあるけれども、しかし今すぐに確実であるというような条件ということになると、相当運用上も何と申しますか、憶病になると申しますか、注意は十分いたしますものの、あまりにも厳格ではないかと思うのでございまして、海外経済協力という立場からいいますと、十分達成の見込みがあるということを基準にして、いやしくも資金が放漫に流れないように検討していくということが実際運用面において必要だと思うのでございまして、御趣旨の点は十分基金の当局者にも申して、われわれも御趣旨のとおり国費を使うことでありますから監督をいたして参らなければなりません。今お話のような積極的にある程度こういう基金を活用する場合には、この程度改正は必要じゃないかと、こういうふうに考えます。
  52. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 貸出要件を厳格にしますと、基金業務の範囲が非常に狭くなってしまうというようなことでありますが、この基金業務の独自性といいますか、基金と輸銀との分業関係については、基金法を審議いたしました際にも、非常に問題になった点であります。その際に政府は輸銀でできないところを基金がやるので、基金の独自性はここにあるんだ、こういう答弁をされているように思うんですが、実際に基金を通用した結果を見ますると、輸銀は非常に広範な権限を持っていまして、輸銀でできないものは基金でもできない、その結果が貸出要件をゆるめるという改正案の提出になったと思うのですが、そこで政府にお尋ねしたいと思うのは、政府は貸出要件をゆるめるという方向で基金業務範囲を拡張しよう、広げようとしていると思うのですが、逆に現在輸銀が持っている仕事の一部を基金業務範囲に繰り入れるという方向で基金の存在というものを確立し、あるいは業務範囲を拡大するというように考えることはできないか。たとえば現在輸銀は海外投資金融までやれるのですが、これこそ基金業務範囲に移しちゃうというような点はいかがですか。
  53. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 全体として今度の改正の趣旨は、かりに理事二人を四人にいたすということも、業務範囲の拡大ということもございますが、しかし協力基金自体の業務の達成のためにもある程度協力基金自体の専門的な理事がいることが必要だ、輸銀と兼ねた理事がおるわけでございますから、簡素化の意味では前のほうがよかったわけでございますけれども、そういう面から見ると、海外経済協力基金の独自性をある程度現わして仕事をして行きますためには、こういう改正をいたさなければならぬと思うわけであります。したがいまして、今お話のように業務関係におきましても、輸銀と十分に連絡協調を保ちませんければなりませんけれども、ある程度海外経済協力基金自体が独自の検討等をいたして参らなければ、お話のようにできるものは輸銀でやってしまって、そうしてその他のものだけが来る、それを検討してみると、なかなか達成確実というような線ではむずかしいというものもございます。むしろそれですから、経済協力基金自体の立場からして、輸銀のほうの領分に食い入るとまでは申しませんけれども、業務活動の範囲を円滑にして、そうして独自の立場でやれるように仕事を進めて行く必要があるんじゃないかというのがねらいの一つでございます。
  54. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 このいただきました「海外経済協力基金業務概況」の「最近における内談状況」、こういうようなのを拝見いたしましても、貸出の要件をゆるめれば、基金に対して借り入れの申し込みがふえて、基金業務量も拡大するということはあるでしょうが、しかし単に形の上で基金の仕事がふえましても、それが必ずしも経済協力の実をあげることにはならぬ場合もありましょうし、友好関係を促進することにならぬ場合もあると思うわけであります。たとえば基金を海外の不健全な開発事業に投資して不成功になりましたり、あるいは利権屋の乗ずるところになったりいたしますれば、かえってわが国と開発諸国との親善関係を害するようなことにならぬとも限りません。ですからこの解説書を見ましても、その運用方針は「開発事業が適切な計画により確実に達成されることは、基金の債権保全のために必要であるばかりでなく、失敗により相手国の不信を招くような逆効果に終わらせないためにも特に必要である。」と述べているわけでありまして、当然だと思うのですが、対外関係では、ですから「達成が確実」という規定は絶対必要じゃないかと思うのですが、この点がやはり経済協力を大いに促進するということと、達成の確実ということが必要でないということとは通じないと思うのですが、これはどうなんですか。
  55. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) お話しのように、つまり利権的な人の介在によってこの経済協力基金の貸し付けがゆがめられるというようなことがあったり、あるいはこの業務によりまして相手国の感情と申しますか、あるいは政府方針に違っておるようなことをいたすというようなことは、これは当然日本の海外経済協力基金そのものの基本的な問題でございまして、いかなる意味においても、そういうことは考えられない、運営の中では考えてはならぬことだと、こう考えております。ただそういうことを、基本的な問題は別にいたしまして、業務運営をいたしております場合に、達成の見込みがあるという状況でありましても、それが確実であるというような、非常な厳格な形のもので制約されますと、先ほど来申し上げたような意味において、基金自体の活動が何か非常な制約を受けるような感じも運営の上において持ちますと、かなり海外経済協力基金として相当十分な活動をいたしていかなければならぬ場合に、実績を上げ得ないのではないかと思うのでありまして、むろん国費を使って、そうしてこれを貸し付けをいたしていくことでありますから、十分な達成の見込みがあって、そうしてそれが確実に償還されてこなければならぬことは申すまでもないことであります。その点については、われわれとしても厳重にひとつ監督もいたしますし、基金自体もその点について十分な配慮をして、運営の万遺憾なきを期していきたい、こういうつもりで今回の案を出したわけでございます。
  56. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 基金法には、貸し出しの要件につきましては規定がありますが、償還の方法、担保についての規定がないようであります。もちろん貸出要件と償還条件は密接に関連していると思うのでありますが、この改正によって貸出要件をゆるめる場合には、償還条件にも何らかの変更があるのか、償還につきましては、現在の基金運用方針の中で、原則として償還期限は二十年以内にするとか、現地通貨によるとか、現地通貨による返済は認めないとか、原則として物的担保を徴求するとかいうように幾つかの項目を定めておりますが、今回貸出要件を緩和するに伴って償還条件はこれはどうしますか。そのほうはそのままですか、この点についてお答えいただきたい。
  57. 中野正一

    政府委員(中野正一君) 私からお答えいたしますが、償還条件につきましては、法律には特別に書いてございませんが、先ほども御指摘のありましたように、業務方法書で償還期限、それから据え置きの期間、あるいは担保の問題を書いてございます。この点につきましては、今度貸し出しの条件を緩和するわけでございます。償還条件については従来どおりの方針基金としてやらせるつもりであります。
  58. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 昨年来わが国は非常にきびしい金融引き締め政策がとられて、中小企業は特別そのしわが寄って苦しんでおると思うのですが、こういう際に、国内にまだ十分でないのに、外国に経済協力が必要だとはいいながら、貸し出し条件を緩和していくということは、やはり国民感情としては問題だと思うのです。これはさっきも言おうと思ったのですが、一体資本蓄積の中でどの程度を海外協力に向ける、経済協力に向けるかという基本原則も必要だと思うのですが、それは別にしまして、政府としては貸し出し要件を緩和しても、償還返済のほうは確実だということを国民にやはり十分理解させぬと、運用のいかんによっては、国民感情に微妙な不満や疑惑を抱かせることがあるかと思うわけであります。たとえば、アメリカでは開発借款基金は、MSA法に基づきましてかなりルーズな条件で、ある意味では政治的なとも言えるような貸し出しを行なっておりますが、しかしその返還につきましては、借手が償還を確約し、かつ償還について合理的見通しがあるということがはっきりした規定を法の上に設けて、そういうふうな、やはりかなり国民の税金をどう使っていくかということについても、割合やかましくアメリカの議会でも言われているのです。したがって、わが国の協力基金法においても、償還についてやはり明確な規定を設ける必要があると思うのですが、先にも調整局長は、償還については方法書に譲っているということでしたが、この点はいかがですか、もっと明確に償還についてもしておくことが、この基金のファンドをもっとふやしたりして、経済協力を大いに促進するためには必要じゃないかと思うのですが、その点いかがですか。
  59. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) もちろんこれは税金を使って、そして海外経済協力をやることですからして、貸し付けにあたって慎重であって、そして達成の見通しがあるものでなければ貸さない、そういう見込みがなければ貸さないのが当然ですが、かりに、達成の見込みがあっても、その返還方法等について厳重な規定が必要であることはむろんでございますけれども、しかし今のような業務方法書自体にそれを譲りまして、そうして参っても、監督を厳重にして参りますれば、そう混乱を起こすこともございませんし、誤った運用をすることもないと思いますので、この点については、必ずしも業務方法書に書いてありますようなこと自体を、すぐ改正法の中に取り入れて書く必要は現在のところまだないのではないかというふうに感じております。
  60. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 これはまあ三十六年からですが、だからこれが確実に返還されるかどうかということは将来のことですが、これは順調に進んでいるのですか、調整局長いかがですか。
  61. 中野正一

    政府委員(中野正一君) お手元に「海外経済協力基金業務概要」が配付してあると思いますが、今まで基金として融資なり出資をいたしましたものは三件でございまして、合計十五億になっておりますが、この件につきましては、たとえばあがっております北スマトラ石油開発協力会社に対する出資、これは現在のところ大体われわれ考えております線で油で返還することになっております。北スマトラに対する融資につきましては、これは大体順調に参っておるように見ております。そのほかの二件につきましても、現在のところの見通しでは、大体順調に返還のほうもいくものというふうに考えております。
  62. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 この基金法の第二十一条の要件ですが、それによりますと、融資と出資について区別を設けてないわけであります。しかし貸し出しまたは出資——融資と出資について区別がないようでありますのですが、貸し出しまたは出資の際の要件をゆるめて、達成確実を達成見込みがあればいいというふうに改めますと、融資と出資について何らかの区別をする必要があるのじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。と言いますのは、融資の場合は運用方針にもありますように、担保、保証人、外国政府または銀行の支払い保証等のように、たとえその開発事業が達成されなかったとしても、ある程度されなかったとしても、ある程度まで債権の保全が可能であります。出資の場合には全然そういうことがないし、ありません。もちろん出資した会社の資産の一部を持ち分として手に入れるというようなこともあるでしょうが、その会社事業が失敗した場合は、それはほとんど意味がなくなってくると思うのです。したがって、金を出す場合に、出資のときのほうがより慎重でなくちゃならぬじゃないか、債権保全のためにもそういうふうに考えるわけですが、この改正案のように、金を出す際の要件を緩和すれば、ますますそういうことの必要が、融資と出資とではあるのじゃないかと思うのですが、その点いかがでしょうか。
  63. 中野正一

    政府委員(中野正一君) 出資と融資の点でございますが、これは二十条に書いてございますように、この基金はやはり融資ということがやはり原則で一、二書いてあるわけです。第二号に、開発事業のために特に必要な場合には「前号の規定による資金貸付けに代えて出資をする」ということでございますから、当然これは運用面につきましては、出資の場合は非常に慎重に基金としては現在までやっております。また今後もその方針でございまして、ただ全般的に今度は要件が少しゆるんだ感じになっておるわけでございますが、資金の供給形態が融資と出資では違うわけでございますから、特にその場合に条件をはっきり区別するという必要はないのじゃないか、この法律に書いてある程度のことで、あと基金の運用面で十分に慎重にやっていただければ事足りるのじゃないかというふうに考えております。
  64. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 じゃ運用の際には原則として融資が中心だから、十分配慮しているからいいと、こういうわけですか。
  65. 中野正一

    政府委員(中野正一君) そのとおりでございます。
  66. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 「達成が確実である」というのは……「達成の見込みがある」という判断は、考えようによっては運用の問題で、何にも確実な客観的な基準はございませんから、結局は運用するものの主観的な判断によることになってしまうと思うのです。したがってこの程度改正は、実際は運用方針変更によって内容的には十分達成されるのじゃないか、しかるに今回事新たに法律改正されたことになりますと、かえって拡張解釈の幅が非常に広げられて、弊害のほうが多くなるのじゃないか、この程度改正内容は、私は運用で処理できたのじゃないかと思うのですが、やはりなぜこういうふうにしなくちゃならなかったか、具体的な例をあげて、中野局長でけっこうですから、具体的な例をあげて、そうしてまたこういう改正をすれば、たとえばただいま申し上げました「海外経済協力基金業務概況」の最後のページの「最近における内談状況」というようなので、こういう改正をすれば、一体どの程度ペースに乗ってさらに経済協力が促進できるかというような、具体的な例をあげてひとつ御説明いただきたい。
  67. 中野正一

    政府委員(中野正一君) 今度の条件の緩和のあれは法律を直しまして、われわれの考えでは、要するに基金の自主的な判断の幅を広げたほうがいいんじゃないか。だから先生御指摘のように、運用で、あるいは企画庁長官の通達なり何なりくらいでいいんじゃないかというようなことも考えましたが、やはり法律で明確にして、そうして基金の自主的な判断の幅を広げて、実際には慎重に相当やっております。したがって、その点は十分監督でやっていったほうがいいんじゃないか、それから過去においての例はどうだという御質問でございますが、たとえば北スマトラ石油開発会社に出資をいたしましたが、このときも、だいぶ基金のほうでいろいろ慎重に考えられまして、なかなか決定をしなかったわけですが、それで最後閣議了解をとりまして、要するに政府金融機関でこれに応援すべきであるというふうなような意味合いの経済協力という点、あるいは必要な資源を日本に確保するというふうなような、両方の意味合いからやったらいいんじゃないかというような意味合いの閣議了解をとった例がございます。それから、「基金業務概況」のところに書いてございますうちで、たとえば農林水産関係、今、現在十六件の中で、五件のうち四件ほど漁業進出でございますね、これが例があがっておりまして、いろいろやっておりますが、これなんかも事業の達成が確実だということにあんまり固執すると、なかなか金が貸しにくいというふうなような例じゃないかと考えております。というのは、やはり漁業者でございまして、中小企業者が主体になっているわけでございますね、そういうふうな関係で、なかなか——それから向こうの現地のいろいろな運用の関係等、非常に不確定な要素が多いわけでございまして、そういう点である程度貸し出せるような態勢に基金自身を持っていっておかないと、なかなか業者のほうで、せっかく漁業進出なんかで中小企業者が組合なんか作って進出しようというような場合の妨げになるのじゃないか、これあたりは今度の改正でだいぶ進んでくるのじゃないかというふうに考えております。
  68. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 基金が昨年三月に発足しまして、三十六年度に投融資の承諾が行なわれましたのは、ただいま御説明がありました北スマトラ石油を初め、たった三件ですか、そうして金額にしても十五億に過ぎないのであります。もちろんこの種の問題は話がまとまりますまでに、かなりの時間を要することですし、発足してから一年くらいのうちに、そう多くを期待することは困難だと思いますが、そういう点を考慮しましても、あまりにも少ないのじゃないかと思うのですが、これは一体石橋をたたいても渡らぬということなんですか、一体これはどういうことですか、あまりにも少ないのじゃないかというふうに思うのですが。
  69. 中野正一

    政府委員(中野正一君) 今、先生から御指摘のありましたとおりでございまして、基金で扱う案件は経済協力事業でございますので、輸銀その他の一般の金融機関の金融通念をこえた高い判断と言いますか、そういうものが必要でございますし、また金融技術的に見ましても、むずかしい案件が多い、しかも相手国政府なり相手との交渉に、相当これは時間がかかる問題でございます。したがいまして、基金の窓口に相談に参りましてから、融資の対象として決定するにふさわしい程度にまで、この案件が何といいますか整うというか、成熟するといいますか、それには相当長期にわたりまして、基金としても懇切な指導、めんどうをみるというようなことが必要でございます。したがって大体今までの案件を見ましても、案件が成立するまでには、半年ないし一年くらいの期間を要するものが多いのでございまして、昨年の三月に基金はできたのでありますが、実は半年程度やはり創設の準備等に相当かかりまして、昨年度の下半期ぐらいからようやく活発な活動ができるようにもなったわけであります。結局そういう点からいいますというと、三十六年度中にいろいろ相談を受け、指導もしておるような案件が大部分三十七年度で融資の承諾になるというふうなことになっていくわけであります。そういう関係で、それとやはり相当慎重に、先ほど御指摘がありましたような、参議院で決議がついておりますし、われわれとしてもその決議の趣旨に沿って、そうして慎重にやるように指示をしておりましたので、そういう関係でスタート早々というようなこともありますが、それから案件自身の性質からいって、今まで十五億程度しかない、数字だけみますると、相当少ないようでございますが、しかし内談中のものは別に資料をお配りしてございますように、十六件二百億円以上の期待額になっておりますから、今後は相当進んでいくのじゃないかというふうに考えております。
  70. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 そこで業務をふやすために、貸出しまたは出資の要件をゆるめるという改正なんですが、そのほかにもう一つ、中小企業の海外進出に対して、重点的に金を出して業務を拡大するということはできぬものでしょうか、大企業の場合には自分の力でも十分やれるのじゃないか、このいただきましたボリビアの銅鉱山の探鉱なんかは三菱さんで——日本の財閥をもって誇る三菱さんですから、むしろそういうふうにやっていただくべきじゃないか、私は日本の輸出と輸入の貿易のにない手は、一体大商社か中小企業の商社かという調査をしていただきましたところが、輸入については大商社です。輸出については非常に中小企業の輸出業者が熱心であり、大きな部分を占めておる。もう設備拡張をやり、投資需要があって、とにかく一番もうかるほうは大商社がやって、輸出のほうを圧倒的大部分を中小企業の貿易業者がやっているという、そういう具体的な政府の貿易通商白書の中から見ても、はっきり出るのですが、そういう点で私は企業の健全性等もあるでしょうが、そういう点をひとつ十分考えていただきたいと思うのですがいかがでしょうか。
  71. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 低開発国に対する日本の経済協力というものは、お話のように私はやはり日本の持っております技術と経験とを少ない資金でもって生かしていくということになりますと、やはり中小企業の進出ということに相当力を入れていきますことが、現実の経済開発に協力していくゆえんだと思う。原則として、たとえばヨーロッパの先進国でありますとか、あるいはアメリカのやっておりますのを見ておりますと、何でも大きな工業を売りつければいい、長期にクレジットして売りつければいい、そうして非常な最新式の工場ができたけれども、それを動かすだけの能力が十分ないし経験もない、したがってせっかく何千万ドルというような金をかけてりっぱな工場を、モダンなりっぱな工場を作ってみても、それが完全に動いていない、そこに働く労働者の数も少ないというよりも、日本がやはり持っております中小企業の技術をもって、日常生活必需品を現地で作っていく、そうしてそこで働く人の数も多いというようなことのほうが私は日本の経済協力らしい経済協力の形だと、これは全く中田委員と同じような考えを持っております。  したがって、先ほど漁業関係も話に出ておりますけれども、今後東南アジア方面、特に東南アジア方面だと思いますが、そういう方面に日本の経済協力を推進する場合に、資金的なバックをしていくということが必要でありまして、そういう点については、われわれも同感でありますので、資金運営にあたっては十分そういう方面に力を入れるように監督もして参りたいと思うし、また基金当局も、そういう考え方で現在も考えていると思います。そういう意味から申しまして、先ほど調整局長から申し上げましたように、達成が確実となるというと、大会社その他のようなものが条件に合致しているというふうに判断されることになりますので、ある程度は、そういう意味において勘案していくことも必要だろう、こう考えるのであります。
  72. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 ちょっとさっきのほうに戻るのですが、この基金法の第一条は何といっても東南アジア等が一番の中心なんですが、このただいま三十六年度に内諾を与えられた、承諾を与えられたのが三件で、東南アジアがたった一つしかないのですが、これは一体、今年度はふえるものなんですか、どうなんでしょう。
  73. 中野正一

    政府委員(中野正一君) 御指摘のとおりでございますが、今内諾のありますものは、これは資料にお配りしてありますが、十六件の中で東南アジア一件でございます。したがって金額的に見ましても相当東南アジアのウェートは高いということで、今後は東南アジアで、相当これは融資なり、案件が進んでいくのじゃないかというふうに期待はいたしております。
  74. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 最後に理事の増員なんですが、基金法ができます際に、たしか二名の理事では少な過ぎるじゃないか、こういう質問が委員会でされて、それに対して当時藤山長官ではなくて、迫水長官が、ここ当分は極力機構を簡素化して、少数精鋭でやっていくのだ、人数の足らぬところは質で補っていくのだ、こういう答弁をされておるのですが、それが一年にもならぬうちに変えられるというのは奇異な感がするのですが、これはそういう理事が少なかったから調査機能が十分でなくて、審査機能が十分でなくてだめだったのか、そういうことでなしに、発足して半年ぐらいだから、こういうことなんですか、その点はいかがですか。
  75. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 今まで御指摘のような点については最初出発するときには、この種の基金でございますから、できるだけ簡素な組織をもって経費をかけないで出発したい、そうしてまた輸銀との関連においては、輸銀を活用していくというような立場で、できるだけ簡素なる組織でいこうじゃないかということで出発点はあったと思います。しかし実際に運営してみますと、やはり相当なこれは海外協力基金としての検討を加えて参らなければならないし、ことに先ほど調整局長が申しましたように、国外に対する、仕事に対する援助をいたすことでありますから、海外の事情等も十分了承して参らなければならぬと同時に、内地におきますそれぞれの関係等についても、やはり責任を持った理事が責任を持ちまして、そしてその運営をはかって参らなければならぬのであります。現状から申しますと、理事二人ということでは、あまりにも少数すぎて、その運営に十分に力を入れにくいところでございます。また将来は、やはりこの種の基礎的調査は、出発点のときにある程度輸銀に委託しようという考えもございましたけれども、やはり基金自体がある程度スタッフを持って、そうしてやっていくということが、簡素化は必要でございますけれども、ある程度の基礎的充実はやはりしておかなければならぬというふうに考えますので、今回の改正をいたしたわけでございます。
  76. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 中野局長からでいいのですが、四人にふえた理事はどういう分担でやられ、また、この種の機構に人材が十分集め得るかどうか。それから、現在の職員、一体何人くらいでやっておられるか。説明書はありましたが、その点について。
  77. 中野正一

    政府委員(中野正一君) 今度理事四人になりました場合の分担でございますが、総務担当、それから営業担当、それから渉外及び調査担当、これが三人で専任の理事が、今言った総務と営業、それから調査及び渉外ということになると思います。それから一人は、輸銀の理事が見えておるわけであります。これは輸銀から月給も全部出ておる、これは輸銀との連絡調整ということになると思います。  それから職員は、現在四十七名おりまして、これは日銀、それから関係の官庁方面、そのほか為替銀行等から相当優秀なスタッフが集まっておるというふうに聞いております。で、今後、この理事の増員と、それから基金が今度御承知のように六十五億に資本金がふえますので、事業量が多くなりますから、本年度は職員もふやしたいと思いまして、今検討中でございます。
  78. 武藤常介

    委員長武藤常介君) 他に御質疑はありませんか。
  79. 吉田法晴

    吉田法晴君 本法はすでにできて、法律案改正ですけれども、海外経済協力、それから実質は経済協力であるけれども、経済協力という名前で、あるいは基金から出てないものもたくさんありましょう。それで、いろいろあるのですが、実は最近の池田・ケネディ会談から、アメリカのドル防衛、そして軍事援助とか経済援助も、日本を初め、何といいますか、協力的な部面に協力を求め、あるいは肩がわりを希望する、こういう態勢があって、これとこの関係は、どうなるかという疑問を持つのです。どうですか。
  80. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) アメリカのドル防衛と、この基金活動とが直接につながっていることは、それは全然ございません。アメリカのドル防衛というものに対して、日本がある程度日本自身を防衛していきますと同時に、また、アメリカのドル自身の価値が混乱いたしますと……、及びアメリカ経済の混乱そのこと自体、日本経済に影響いたしますから、その意味において、ドル防衛に協力いたして参りますことは当然であります。しかし、この基金活動とドル防衛とは直接の関係はございません。
  81. 吉田法晴

    吉田法晴君 まあ直接の関係はないかもしれぬけれども、経済協力をアメリカの肩がわり、できるだけはやってもらいたい云々という話と、それから、皆さんはまあ否定されるかもしれませんけれども、ガリオア、エロアにしても、あるいはタイ特別円にしても、それが賠償ということであろうが、あるいは経済援助ということであろうが、私は客観的にはつながりがあるような気がしておるわけです。  ですから、そういう点から伺いたいのですが、それともう一つは、これは経済援助というが、資本も投下する、あるいは何といいますか、資本輸出の面もあるわけです。そうしますと、これはインドネシアの石油もありますが、これはたしか高崎さんがおいでになったと思うのですけれども、バンドン会議の際には、新しい形の植民地主義というのが非常に言われた。独立をしたアジア、アフリカの国々で残っている古い型の植民地主義、たとえばゴアの問題のごときは、そのときに問題になっておる、あるいは西イリアンも問題になっておる。日本からも沖繩の話等もしたわけであります。占い形の残っておる植民地もなくさなければならぬが、経済協力その他の形でアメリカから、アメリカという名前があがった部分もありますが、あがってなかったところもあります、新しい型の植民地主義は、これは防がなければならぬ、その進出は防がなければならぬ、こういう話があって、そしてバンドン十原則というものが確立されたのですが、これは平和五原則よりも、多少相互協力だとかありますが、違った要素がございましたけれども、しかしアジア、アフリカの地域から新しい植民地主義を放逐しなければならぬ、そうして、アジア、アフリカの相互の協力によって、それぞれの国の発展をはからなければならぬ、相互協力をしていかなければならぬという強い空気があったことは、これはたしかあのとき代表で、何というのですか、主席代表ではないがおいでになったはずですね。だから御存じだと思うのですが、そういう問題が、これはアジア、アフリカがこれから経済協力をしようというとき、相当強いことも御承知のとおりであります。したがって、平和五原則と申しますか、あるいは相互主権の尊重といいますか、これはこういう問題のときに強く言っておかなければならぬ問題、これ自体はとにかくですが、これを取り巻いておるいろいろな形の経済協力、まあ賠償を含めて、あとから具体的に問題にしますけれども、それとの関連において、これだけではないわけです、日本からアジアの新しい国々、あるいは中近東、アフリカを含めて経済協力をしていく場合に大事な問題だと思うのですが、これについては、どういう工合にお考えですか。
  82. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) この低開発国の開発を援助するということは、これは今日の非常に大きな世界の題目になっておりますことは御承知のとおりでありまして、したがってDAC等の委員会ができまして、日本もそのメンバーとして、低開発国の開発援助に協力するという一つの線が打ち立てられておるわけです。それは必ずしもアメリカのドル防衛と、また直接関係あろうとは私は考えておりませんが、そこでバンドン会議のときのお話でございますが、私も当時商工会議所の会頭をしておりまして、民間の一人として社会党の佐多さん曾祢さんと同行して一緒にホテルに泊って、あの場面は承知しております。新しい帝国主義的な問題が起こりつつあるのだというあのときの論争は、セイロンのコテラワラ首相と周恩来氏との間で相当——新しい形の帝国主義が単にアメリカとか自由主義陣営じゃなくて、ソ連の資本進出も同じような形なんだということのコテラワラ氏の主張があって周恩来氏と相当激論のあったことも私承知いたしておったのでございます。海外経済協力ということ自体、私は新しいいわゆる何と申しますか、植民地支配にかわるべき何らかのひもつき条件であっては、これは相ならぬと思います。  したがって、いずれの国がいずれの場合においても、そういう傾向を持ったものでなしに、ほんとうに、新興独立国の経済を発展させて、そうしてその国のために、ほんとうに民生のためになるんだ、そのこと自体が、その国自体の発展が、ほんとうの世界経済にも、また世界の平和にも貢献するんだ、あまりにも格差の多い国が共存していること自体が平和に非常に支障になる、そういう立場から経済協力の問題を、いずれの国としても私は考えていくのが本筋であって、何か特殊の政策を持っておるもののために、政治的に海外開発、経済協力ということをもてあそんだりあるいはそれを利用しては相ならぬと思います。そういう純粋な立場に立って、日本としても今後経済協力をやって参らなければならぬことは、これは申すまでもないことでありまして、そういう点についてわれわれ経済協力をやって参ります場合に、十分な注意をして参らなければならぬと、そう思っております。
  83. 吉田法晴

    吉田法晴君 これは国際舞台でも、国の外交方針として対米協力という点が打ち出され、それから国連総会における活動その他も、たとえば中共の国連議席問題と関連して重要事項方式に積極的に参加されるというようなこともあって、国際的には日本というのはアメリカの協力国であって、いわば外交方針についてはアメリカの、言葉は悪いが追随者というか与国みたいに考えられて、少なくともアジア、アフリカの国々についても、そういう印象があるでしょう。それだけに経済協力する形にしても、やっぱり問題があると思うのですが、国と国との関係について互恵平等あるいは相互不干渉、主権尊重等ももちろん必要ですが、形も何といいますか、提案理由の中にもございますけれども、OECDの中でDAGの一員として協力をすると、こういう形も多少問題になるんじゃないか。あるいはたとえば最近経済圏の問題として出ておりますが、願わくば、たとえば東南アジアなら東南アジアについての東南アジアの経済協力機構があって、その中で行なわれる、こういうことになれば、そういう誤解というものも消滅するのではなかろうかという感じがいたします。これは外交方針にも関連をいたしますが、しかし形はこの経済協力基金法に関連をするものですかち、バンドン会議に出席をされ、フィリピンあるいはタイの主張もありましたけれども、ソ連の態度も同じじゃないかと、こういう話はバンドン会議の結論には入らなかったのですね、議論はあったにしても、最後の決議といいますか、十原則の中には入らなかったのですから、それはその当時の藤山個人、藤山さんの御心境と、大臣になられてからの御心境に変化があったと私は思うのですが、重要閣僚しかも総裁公選も辞せぬというような御心境にある藤山さんですから、もう少し大きな議論を願いたいと思うのですが、アジアなり後進国の協力の形としては、やっぱり今の形は問題じゃないかという点はお考えになっているだろうと思うのですが、どうでしょう。
  84. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) DAGの問題は、これはEECその他各国が入っておりますし、必ずしもDAGの低開発国援助計画が、アメリカだけの考え方あるいは力で動かされているとも考えられないと思います。こういう問題については非常な友好親善関係にありましても、イギリス、アメリカおのおの違った考え方もございますし、そういう意味からいえば、EEC諸国とアメリカとの間の関連において考えてみましても、必ずしもアメリカだけの考え方でこれが動かされると思えません。そういう点については、われわれもDAGの一員として一的な協力と申しますか、これは低開発国が一日もすみやかに開発されることを日本としても望む立場におりますので、まあ当然だと思います。お話のように日本がアジアの経済力をして参ります場合に、やはり何か新しい形態における植民地支配のような形を考えることは、これは当然考えるべきではないのでございまして、過去におきまするあの苦い経験から申しましても、日本がそういう立場にありますれば、アジアの一員としてのほんとうの力と、アジア友好国との関係を調整して参るわけには参らぬのでございますから、断じてそういう立場をとって参ることは日本のために望ましいことだとは思いません。  そこでEECその他地域経済協力体制ができて参りますので、日本としてもアジアの先般の、少なくともエカフェ区域なり、こういうようなものの協力関係というようなものをある程度打ち出して参りますことも日本としては望ましいことだと思っております。ただ御承知のとおり発展段階がいろいろ違っておりますし、あるいはその間での貿易関係におきましても、必ずしも相互補完の関係にない場合がございます。したがって、そういうものをいきなり無理にEECのような形に持って行こうといったとて、これは発展段階の違う現状においては、むずかしいわけです。したがって協力の方法としては、やはり地域内の経済で共通した問題について協力をして行くのでありますから、先ほども中田委員にも申し上げましたように、かりにああいうものが出発して参りますと、あの素案の中にもありますが、従来すべての通信あるいは運輸の機構というものが、植民地と本国との関係、たとえば船の航路なども、みなそういう関係になっている。アジア地域をつなぐような関係の航路でなくて、ヨーロッパとアジア、あるいはヨーロッパとアメリカとの航路、あるいは通信関係を見ましても、無電の関係、あるいは海底電線の関係等を見ても、ヨーロッパと従来の植民地をつなぐような関係であります。アジアの中をつなぐには非常な不便な、たとえばセイロンからインドネシアに電報を打つ場合に、一ぺんどっか遠くのほうにまでいかなければ、できないというような関係、そういうようなものを調整しながら基盤を作っていくということが必要になってくるのじゃないか。いきなり完全といいましても、なかなか、日本とそこらの国との間の農業関係もございますし、また同時にタイとビルマの関係、米の問題や何かあれして、すぐに補完作用ができない。そういうような経済協力の関係からいって、今言ったように、共同の基盤をアジアの中で作るというようなことで進んでいきますれば、摩擦もなしに協力体制ができていく。先般のエカフェの会議におきましても、たとえばアジアを結ぶいわゆる縦貫道路と申しますか、まあ途中にむろん海がありますから、それを連絡する船の関係もございますけれども、イランからずっとタイまでひとつ、自動車道路を作ろう、これに協力をしようというような関係もございました。あるいはメコン川の開発というようなことは、あのメコン川のまわりにありますラオス、カンボジア、ヴェトナム、タイというものは、必ずしも政治的には一致いたしておりません。メコン川の開発ということだけには国連の方針に従って協力し、他の問題としては、政治的には必ずしも協力するわけにいかない、その問題について協力していく。そういう点をやはり日本としても、頭に置きながら進めていくことが必要ではないか。私ども日本が東南アジアの経済協力をやりますのには、やはりそういう点を考えながら、そういう面から前向きの姿勢で進んでいくことが必要だと、こう考えております。
  85. 吉田法晴

    吉田法晴君 後半に述べられたところは、先ほど私が質問いたしました趣旨に沿っているといいますか、期待といいますか、しかしそれはやはりエカフェの場で討議をされている問題。ですからアメリカとの関係もなければ、それからイギリスあるいはヨーロッパから始まったOECDの後進国開発の線ではない。それとは関係がない。それで、それはOECDがアメリカの後進国開発をしたものであり、その中で協力することがアメリカの経済援助の肩がわりになる、こういうことを申し上げておるわけではない。しかし一応まあ通信や航路の話をされましたけれども、ヨーロッパの従来の植民地主義国と、それから植民地であった新しい国との間を結ぶ航路なり、あるいは通信網としてあった、それを切りかえようというのが今の空気ですから、そこで後進国開発援助の形も、アメリカや古い植民地主義の国々からする後進国開発計画の中に、日本が入るということはどうであろう、したがって形を変えることに後半で言われたことですけれども、そこに主眼を置くべきでなかろうか。それは問題を具体的に提起する場合に、必ず出てくる問題でもありましょうし、それから個々の経済協力について、その国と日本との間に、新しい植民地主義的な意図もない、こう言われても、全体から見ると、そういう危険性がある。あるいは日本の対米協力もありましょうが、再軍備なり、あるいは軍国主義復活云々という批評もあるくらいに、そういう逆コースのやはり面があるのですから、日本全体の逆コースヘの方向と、それからそういう後進国援助という構想が、いわばアメリカ的、あるいは従来の植民地主義の国を中心とした援助の線に沿うならば、やはり一般的に問題にもなるし、あるいは問題になる要素が起こるのではなかろうか、こういう危険を感じますがね。その援助の形を変えるべきじゃないか、OECDなり、あるいはアメリカのまあ何といいますか、示唆に基づいて対外援助をするということはやめるべきじゃなかろうか、その辺に自主性と、それから相互尊重の原則をはっきり打ち立てた上で、日本と新しい国々との間に協定を結ぶほうがいいんじゃないか、こういうことを申し上げているわけであります。
  86. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) むろん経済協力をいたします場合に、特に東南アジアに経済協力をする場合に、日本の自主性というものを貫いていきますことは、これは当然なことであります。アメリカと協力をして参ります場合にも、決して卑屈にアメリカの言いなりほうだいになっていくということでは、日本の自主性がないわけでありまして、そういう意味から言えば、協力はしながらも、自主性は十分保っていく、またその力を逆に日本が活用するということ自体は、日本の自主性を傷つけるわけでもございませんし、そういう意味においては、日本が逆コースを歩いているかどうかということについては、若干意見が違うと思いますが、まあ現状におきまして、東南アジアの、いろいろな大東亜共栄圏的誤解というものは次第に解消しつつあるというふうに見て差しつかえないと思いますが、しかし、そういう印象を与えることは好ましいことでございませんから、先ほども申したように、アジアの協力体制を作るというには、日本があまりに先ばしってしまいますと、何かそういう印象を植えつける点もあるので、どうも日本の東南アジアに対する態度というのは、少しちゅうちょ気味じゃないかという御批判もたまにはございます。ございますけれども、あまりにこうこうしろということになると、また大東亜共栄圏的な現地の方々の感じも起こってもいけませんから、そこらの動向等見ながら、協力しながら誤解のないように進めていくことが必要だと、こう考えております。
  87. 吉田法晴

    吉田法晴君 根本論は少し違うという話ですが、大いに違うのですし、それから、たとえばあとで伺いますけれども、日韓経済協力なんというものは、これはどういう形になるかわかりませんが、政府関係あると言っていいかどうかわかりませんけれども、沢田大使が大使になった歓送会の席上で、われわれは鴨緑江までもう一ぺん帰るのだ、こういう発言をされたりしたことが、大きくやはりこれは問題になった。そしてクーデターでできた軍事政権であるのに、これに大いに経済協力をしよう、それからその背後には、日韓の調整をアメリカがやったという点もあって、これのごときは、まさに新しい植民地主義的なやり方として、アメリカの示唆なりあっせんによってやろうというものだという理解も、やはりほうぼうにあるわけです。その辺は国際世論の認識がだいぶ違うけれども、それはあまり論議をしてもしょうがないですが、経済協力の中で、この基金法はどこをやるんだ、こういう点を承りたいと思うのですが、というのは、インドネシアヘの賠償あるいはタイ、ビルマヘの賠償も、やはりある種の経済協力、この賠償にくっついている協力協定、これも経済協力に間違いない。それから、ここで、今まで決定をしましたボリビアの銅鉱山の探鉱がありますが、これはあとで外務大臣のときに多少関係がありますので……。パラグァイとの移民協定、これは日本から船を作ってやる、そして向こう側は移民を受け入れる、いわばその移民と経済援助とが交換になっているといいますか、そういう形での経済協力もあります。それから片方のほうでは、この基金を要しないで輸銀の融資でやっている、こういうものもありますが、その経済協力としてどこに主眼があるのか、ただその形が賠償だとか、あるいはこれに伴う経済協力だとかいうものもあり、それから移民に関連をしているものもある、あるいはブラジルのミナス発電所のあれもある、いろいろありますが、それぞれあげながら、その中で——この経済協力は基金の使用方法じゃないですよ、経済協力なら経済協力としては、そう本質的には違いはないと思うのですが、ここで言われている経済協力というのは、いろいろある経済協力の中で、どういう点に主眼を置いておられるのか、それを承りたいと思います。
  88. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 御承知のとおり、賠償協定に伴っております経済協力といいますのは、まあ経済協力でございますけれども、賠償の一連の関係においてやはり考えられていくものだと思います。また、先ほど御指摘のようなパラグァイの移民の問題と関連して船を作るということも、これは相互の利益のために別個の考え方から出ている問題で、結果は経済協力になっておりますけれども、考え方から申せば、必ずしもここに言われております経済協力と完全に一致したようなものではないわけです。ここに言われている経済協力というのは、現地におきます開発の必要、それに伴います日本の技術的な、あるいは資金的な援助、経済経験を生かし得るような仕事、そうして、それは必ずしも直接、たとえば輸銀等で貿易資金としてめんどうを見られる場合もありますけれども、必ずしも貿易資金として見られない長期のもの、そういう関係において経済協力を達成していきたいという立場に立っておりますので、それぞれの分野において大きな目で見ますれば、経済協力とすべてを包含して言えると思いますけれども、機能におきましては若干ずつの相違がございます。そしてそれが相互補完的に運営されていくことによりまして、一つの大きな道が開けていくことと、こういうふうに考えております。
  89. 吉田法晴

    吉田法晴君 タイの特別円のときには、これは別に今質問しなくても、これはまあ、どういうふうに……。別に機会があると思いますけれども、総理や外務大臣、皆さん……。千名も日本人がおる、それから貿易についても、向こうから言って輸出超過、珍しく輸出超過で云々という話で、いわば貿易あるいは輸出入の関係として、いいお得意さんだからと、こういう説明がありましたが、そうすると、この経済協力、その基金を出す出さぬはとにかくとして、経済協力とあまり違わぬ、貿易資金でめんどうが見れない、あるいは長期のもの、技術なり資金なり日本の経験をそこで生かし得るもの云々と、こういう点になると、タイの特別円によってい少なくとも政府の言っているところと、われわれの言っているところは、この経済協力とあまり違いはない。  それから、たとえばブラジルの製鉄なら製鉄事業への協力、こういうものを見ると、これもまあ若干の移民という点もあるかもしれぬ、人間の点からいうと、タイにつきましてとは、比べものにならないほどたくさん日本人が行っている、二世、三世の日本人がおる、こういう実態です、事情は、タイ以上。ところがこれは基金からいってないで、輸銀ですか、何なりの融資関係で片づける、そうすると、ほかの形でいっているものと、これとの、とにかく経済協力なら経済協力という点からいうと、本質的には違いはないような気がするのですけれども、それだけに私は賠償、それから賠償に伴う経済援助、それとこれとの間に本質的な違いがなくて、日本の外交方針関連をして、やはり誤解が生ずるあれが、この経済協力についてあるのではないか、こういう疑問を持つわけです。いかがですか。
  90. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 賠償に伴います経済協力は、本質的には日本が戦争中に迷惑をかけた国に対して、それを賠償する、しかも直接の賠償金額ばかりではなく、経済協力を推進することによって、戦争中迷惑をかけた事態の償いをするというのが、賠償及び賠償に伴います経済協力の本質的な問題でございます。  したがって、海外経済協力基金がやります問題とは、本質的にそういう意味では違っておるのでございまして、この経済協力基金は、相手国と、戦争中迷惑をかけたとか、かけないとか、そういう問題とは全然関連をしないで運営をいたして参ります。また同時に、むろん外貨の事情から、返済能力ということを考える点はございますけれども、しかし日本の輸出貿易と、あるいは輸入とのアンバランスを非常に是正するために、こういろ経済協力基金を使うんだという、そういう趣旨とも違っておって、先ほども申し上げましたように、完全に現地の経済を開発する、しかも、それが日本の資本と技術と経験を生かして、そして現地の人たちの希望に応ずるような経済協力をしていくということが、この基金法によります経済協力の本質でございまして、その点は違っておると思います。  御例示のミナスの問題については、この法律ができます前に、すでにミナスとの間の仕事、話し合いはずっとついておりまして、これは輸銀のいわゆる延べ払い方式、あるいはその他によりまして、ある程度純粋の貿易という以外に、経済協力の面が非常に多いのでございまして、その意味では、海外経済協力基金法ができておりましたならば、ミナスの問題は、あるいはこういう基金法の範囲内に入れて同じような関係にあったかと思いますが、当時、そういうものがございませんし、したがって、海外経済協力基金のワク外で現在それが輸銀のワクでもって行なわれておるのでございまして、そういうふうに私どもは解釈をいたしております。
  91. 吉田法晴

    吉田法晴君 賠償に伴う経済協力は、戦争中の迷惑を賠償とともに償うのだ、こういうお話です。それは賠償についてはそうでしょう。しかし、経済協力という点は、迷惑を償うというあれがないから、そこで賠償とせずに経済協力としておるということですが、その迷惑を償う云々という点は、経済協力の意味では少なくともなかろうと思うのです。  しかし関連をしたということでしょうが、理屈のつかぬところを、結局経済協力ということで出しておられる、その経済協力という理屈の限りにおいては、この経済協力と私はそう違いはないと思う。何と言いますか、インドネシアに行かれたかどうか私は知りませんけれども、賠償金以外に経済協力をしておられるところも、おそらくそうだと思うのです。それからタイの場合も債権の提供、向こうから言えば債務ときめたものを無償で供与をする、こういうことになったのは、戦争中のこともあり、あるいは輸出入云々ということもありますから、これもやっぱり償いではなくても理由はあるけれども、理屈は、日本の言うようにそれは貸与だから返済をすべきものだけれども、それを出す、その理屈には、千人の人間と、それから貿易の点が言われたのですけれども、おそらくしかる限りにおいては、説明の限りにおいては、私はこの経済協力とあまり違いがないと思うのですが、その辺は賠償と賠償に伴うあれと、お話のように戦争中の迷惑の償いということではなかろうかと思うのですが、ただ、そのあとのミナスの場合には、こういう法律ができておったらば適用したかもしれぬと言われたが、それなら了解をするのですが、今説明の中にあります輸出入のアンバランスを、バランスのとれないものだけにやるわけではない、こういうお話ですが、それは今度の法改正も、そこのととろが一番実質的には大事なところだろうと思うのですが、その不確定要素に左右される面が大きいと、こう説明しておる。その不確定云々というのは、結局返済なりあるいは貿易面で、その決済ができるかできないか、それについて不確定な要素があるから、そこで輸銀の融資でなしに、基金で貸すと、こういうことになっておるのだろう。そうすると、不確定要素といいますか、若干の危険というものはある。そこにこの基金を貸す。こういうことであるならば、これは輸出入のアンバランスが理由ではないと言われるけれども、やっぱり実質的にはあるのじゃないですか。あるし、そうしてその経済ベースだけでいけないものに協力をするというところに、冒頭申し上げたやはりひもの大きさは、何といいますか、背ほどではないというのでしょうが、相互主権の尊重というか、あるいは互恵平等というのが傷つけられる要素が出てくるのではないか、こういうのが心配する要素です。その辺をもう少し明確にしていただきたい。
  92. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) つまり私の申し上げたのは、むろん海外経済協力をある国といたします場合に、その国の個々の盛り立てたい産業を助成していくということが、これは第一の要件でありまして、当該国に、こういう産業を興したいということが、当該国の政府はもちろん、民間においてもそういう意欲があり、日本とも協力をしていきたいという立場に立つことはむろんでございまして、そういう点をまず考えなくちゃならぬことは、これは当然のことでございます。同時に、その事業ができるだけ達成の見込みのあるものであって、達成の見込みのないものであっては困る。しかし同時に、それはいろいろな条件を考えて見ますと、やはりその国の経済状態というものが、そういう見込みを立て得るかどうかということも、これは一応の考慮をいたさなければなりません。ただその際に、たとえばその国と日本との貿易関係が、ただ日本が輸出超過だということだけで必ずしも決済が不可能だというわけのものでもないし、その国の日本以外の国との経済関係もございますし、その国自身の経済の発展段階を考えて見れば、十年、二十年の将来にわたっては、返済能力は、十分に経済発展の段階で、あるということもむろん考えられるわけでございまして、そういう点もむろんある程度勘案して参ることは、それは当然必要であると思います。  でありますから、そういう意味から言えば、達成の見込みが将来あるのだ、その国の経済もよくなっていくのだということであれば、やはり直接日本との関係の、輸出入の貿易額だけでその国の経済援助をするとか、しないとかということをきめるわけではないということを申し上げているわけです。
  93. 吉田法晴

    吉田法晴君 インドネシアのスマトラの開発協力の話は、賠償、それから経済協力に引き続いて話があったのですが、あれとは全然関係なしに……。スカルノ氏が言ったりいたしましたけれども、関係はあるのですか、ないのですか。
  94. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 直接の関係はございません。
  95. 吉田法晴

    吉田法晴君 ない。——これは純然たる民間段階での話からきた、こういうわけですか。
  96. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) さようでございます。
  97. 吉田法晴

    吉田法晴君 それから、幾つかある経済協力の中で、賠償だとか、賠償に伴う経済協力とかいう政治的な、国と国との話し合いでなされる経済協力以外に、インドの製鉄なり、鉄鉱の開発だとか、それからブラジルの問題もありますが、たくさんある話の中から、いわば選択をする基準と言いますか、こういうものははっきりせぬ、そうして、どうもその経済協力基金を借りられるかどうか、引っ張り出されるかどうかという点が多分に、これは前の内閣時代だと思いますが、これはまあ利権化ではありませんが、偶然性があるような気がするのですが、その点はいかがでしょうか。
  98. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 一応のむろん基金としての基準と申しますか、考え方、それはもっておって運営はいたしております。それでお話のように、何か偶然、利権的にというようなことが起こってはならぬし、また起こっておることはないかという御質問だと思いますが、私ども現状からいえば、そういう点はないと申し上げて差しつかえないと思います。また今後も、そういうことがあっては相ならぬのではないかと思います。
  99. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると、その一つ一つについて、どういうところから話があったのかという経過を聞くということになるのですが、一々聞いてる時間がありませんからあれですが、藤山さんはりっぱな人だと思います。だけれども、あなたの外務大臣時代に、これはパラグァイといいますか、移住振興会社関連をして聞いたことがございますが、あれは藤山さんも個人としても御関係があったようですが、パラグァイの問題であります。あれはアラビア漁業というのですか、アラビア海に魚を取りにいく船に乗ってアラビア海に行くのを移民に関係がありとして、その倒れかかったボロ会社融資をされた。これは委員会で問題にした。当時の総裁というのですか、するとかなんとか……。あの話には、はっきりした根拠があったのか。それは常識的に考えてみても、アラビアに移民をするというなら別ですが、アラビア海に魚を取りにいくのが移民に関係がありとして、つぶれかかっている漁業会社に移住振興会社から金を貸してやる。これは明らかに利権ですよ。その当時、名前を並べておられたが、実質は、御存じなかったと思いますけれども、それを岸総理、藤山外務大臣のときには、やはり弁護されて、そういうことはございませんというような話がありました。  あのたくさんある経済協力の中で、基準と、それからそれを防止をすべきあれがないと、これは藤山さんが——個人藤山さんが関係しておられる会社だから——事業だから貸す、これはアラビア石油について、岸さんとの関係をいうわけではありませんけれども、これは公の仕事、政府の金——経済協力基金というのですから、それを貸す、あるいは資本投下に使う。こういう場合に、そういう危険性は、これはみじんもあってはならぬと思う。私には選別されるその標準といいますか、基準がはっきりしないだけに、偶然ということを申し上げるわけなんですが、そこに基準といいますか、厳重なあれがないと、内輪話かもしれませんけれども、海外移住振興会社から、アラビア漁業と申しましたか、そういうボロ会社に移住振興資金を貸してやるようなことが起こらないとは、これはなかなか断言しにくいのじゃないか。そういうことにならぬようにいたしますという、あなたの善意は信ずるけれども、制度として、これは私は、まあ過去のことになりますけれども、岸内閣のときには、そういうことが多々ございました。それは世論の批判を受けた。その後選挙して、批判を受けたのだと思いますけれども、そういうことが一つならず、あっちにもこっちにもあるということは、おそらくあなたはその当時、閣僚の一人として、好ましくないと思われたでしょう。おそらくそういうことは繰り返してはならぬと思われたと思いますが、海外経済協力基金法説明に来られた藤山大臣としても、過去の責任は薄いかもしれませんけれども、外務大臣としては関係があった。それからあるいは個人としてもあった  並び大臣かもしれませんけれども、あった。これはあなたは、今ここでそういうことを言われることはおきらいだと思うのですけれども、あえて申し上げなければならぬと思うのです。その保証をどうしてなされるのか、なさったのか、この点をひとつ。
  100. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) お話のような点は、海外移住振興会社にあったわけでございまして、当時の事情から申しますと、海外移住振興会社の新しい移住地が、必ずしも南米でなくても、東南アジアなりあるいは中近東方面、特にあの当時は、イランからカスピ海の沿岸に日本の米作農業移民をするというような話もあったので、当時の大志摩社長が、東南アジアからあの辺を回られまして、そうしてその可能性を検討されておったわけです。たまたまそういうときに問題が起こったわけでございます。  私どもといたしましても、当時外務大臣として、移住会社監督の立場にあります者としては、実は遺憾にたえなかったと思います。その後、やはり実際の問題として、移住会社で東南アジア方面に移民を送るということは、実質的には、ある意味からいえば、生活程度の高い国から低開発国に行こうというのでございますから、実は非常に困難なことであって、技術移民というものなら、ある程度はできまするけれども、普通の農業移民というものは、もう送り得るような状況にはないと思います。したがいまして移住会社の移民にあたりましては、私も在職中、その点については、厳重な注意をして運営をしてきたと思っておりますけれども、そういう点は十分な反省をして参らなければなりませんし、今後これらの基金運営等につきましても、これまた十分、お話のような点について、企画庁として監督をして参らなければならぬと思います。  話は違いますけれども、企画庁としても、監督行政をやっておりますところに、あまり適当でないいろんな状況が起こっておるのが、現に問題になっていることもございますし、そういう点もあわせ考えてみますと、監督行政というものは相当厳正にやりませんければ、ルーズにいたしたのではいけないと思いますので、そういう点は基金業務達成についても、むろん業務方法書に書かれておりますようなことを十分厳格に守りながら——しかし条件等は業務方法書にそろっておりましても、何かそのこと自体に適当でないような裏の問題があっちゃいけませんから、そういう点は監督行政の上で非常にむずかしい点でございますけれども、しかしやはり責任をもって監督しております立場からすれば、むずかしいからできないのだと言って、あとで頭を下げるのは非常にいけないことだと思うので、できるだけ事前から注意して参る必要があろうと思うので、そういう点については、今後とも十分、われわれとしても協力基金運営にあたりまして注意をして参りたいと思いますし、また部内も督励していくつもりでおります。
  101. 吉田法晴

    吉田法晴君 それは督励したり、そういうことのないようにというような精神的なことでは、これは困難です。で、大志摩さんですか、移住振興会社の社長、なくなられましたが、死屍にむちうつようなことはしたくないと思うのですけれども、あとで気がつかれたようにやはりルーズなといいますか、あるいはどうかと思われることがあったら、やはりそれは責任者はかえるだけのあれが、あなたの在任中でもあっておれば、そういうことを言いませんが、それからそのことが、あの移住会社の問題だけでなく、そのあともあった。これはいろいろ雑誌その他に出ましたが、パラグァイの移住協定に至りますまでにも、やはりいろいろ言われることがあった、それが必ずしも事実無根ではなかった。ところがその任期中は、岸さんのところへ弁明に行かれたというふうに新聞に出ておりましたが、もみ消すのでなくて責任をとる、あるいは責任をとらせる、こういうことになれば、そういうことは一罰百戒で、なくなるだろう、こういうことが言えますけれども、これは生存中には法律その他がなかったから、やはりあの会社にはそういう空気が私は残っておると承知しておる、空気が。そういう何といいますか、不正といいますかあるいは不当支出といいますか、そういうものが現在続いておるとまで思いません、思いませんけれども、あの会社の空気の中には、やはり問題点が残っておると承知しております。そのことは問題になったことは、やはり責任をとらせるならば、あるいは何らかの形で処罰の方法がとられ、責任を追及する方法がとられぬものだから、私はそう言うのです。そうしてそのとき感じましたことは、要するに問題は海外のことだから、海外でどういうことをやられておるか、これは大使館なり、あるいは総領事館かもしれませんけれども、大使館なり総領事館のほうのひざ元で行なわれていることなら、そうでもないかもしれませんが、たとえば工場を建設するとかいうようなことになりますと、やはり首府のあるところではない、あるいは総領事館のあるところでないから、どういうことが行なわれておるかが、実際にどう行なわれておるかということが、今度の問題についていえば、調整局長なら調整局長のところでは、大臣のところでは逐一監督できない、国内の場合には、現地を会計検査院が見ることができるのだから、こまかいものを指摘することができるが、海外で行なわれることは、監督機関なり会計検査院が出張してあれするわけでもないし、国会議員が国政調査として出ることもできないので、そこで私は見逃がされるという、そのときに感じを持ちました。  経済協力基金から出されるものについて、そういうものがあるということを申し上げておるわけじゃない、申し上げておるわけじゃないが、選択について基準なり、あるいはそれを選別をするこれは委員会があるかもしれませんけれども、厳重にとにかくあれができる、普通の予算のように、たとえば予算を要求する際の基礎の事実について、どれだけ被害があったのか、どれだけの控除をしなければならぬのか、これは通産省も見るが建設省も見る、あるいは予算になる場合には大蔵省も見る、それからあと支出がどれだけあるかどうか、工事がどうかということで、行政管理庁も見るが会計検査院も見る、こういう二重三重のあれがあるということになれば、これは防ぐことができましょう。それから海外の問題で、海外で建設する工場であり、あるいは使われる金であるかもしれないけれども、それについては、海外にまで巡回をしてではないけれども、結局見る機会等もなければ、やはり移住振興会社に行なわれたような不正といいますか、あるいは疑点というものが出てくる心配は全くなくなるわけではない、大臣の答弁だけを信頼するわけにはいけませんから、そこで政府として、こういうふうにして事件になることは防ぎたい、基準の問題なりあるいは機構の問題なり、そういう点をお尋ねをしたわけですが、局長から補足説明をしていただければ……。
  102. 中野正一

    政府委員(中野正一君) 今御指摘になりました点につきましては、業務方法書で相当詳細に規定をしておりまして、この業務方法書に従いましてやらせる。それから法律にありますように、収支の状況なり、資金の状況、あるいは計画等につきましては、一々企画庁に承認なり認可というようなことで、相当厳重なる監督規定がございますので、そういう点を通じて十分監督したい。ただ仕事は実際には海外で行なわれるわけでありますので、その点につきましては、たしか衆議院のほうだったと思いますけれども、附帯決議がついておりまして、在外公館等とも連絡をとって、そこらを十分監督するように、それからわれわれのほうでも、海外への出張旅費をある程度認めてもらっております。そういう点から、そういう旅費等を使って、今言った巡回をするというようなこともやりたいと思います。それから基金自身が貸付をするなり、出資をするわけでありますので、そのあと監督といいますか、監理——貸した金の監理でございますね、この点は、基金自身が先般北スマトラにも、石油の現場にも、実は基金のほうから理事と担当されておった人を差し出しまして、相当調べさせております。そういうふうに基金自身が、まず十分その点を気をつけるということにさせております。それから、もちろん会計検査院が別途に、これは会計検査を行なうことになっております。そういうような点で十分気をつけて、今御指摘のようなおかしいことが行なわれないように、十分われわれとしては注意していくつもりであります。
  103. 吉田法晴

    吉田法晴君 どういうようなものについて貸し出すかという選定なり、それからあれについては、企画庁だけでなくて、委員会等が設けられているのですか。
  104. 中野正一

    政府委員(中野正一君) これは運営協議会というのが関係省の次官——事務次官でございますが、作ってございまして、これは月に一ぺん必ず会合しまして、そうして基金からいろいろ業務状況等の説明を聞き、そういう意味で関係省も関係のあるところの次官が、この点について十分タッチしていくような仕組みになっております。
  105. 吉田法晴

    吉田法晴君 関係機関の次官とか、あるいは自主的に役所だけでなくて、もう少しその点も行政委員会とまでは言いませんから、民間のあれも入れて、選別なりあるいはその後の機構について責任を持つ委員会等もお作りになるべきではないかと思います。その点は監査の点もありますから、考慮せらるべきではなかろうか。これは今までの海外移住振興会社は極端な例でしょう、極端な例でしょうけれども、海外関係については、やっぱしいろいろ問題がそれぞれありまして、それだけに一件についても億の金のことでありますから、そういう他にありますような例がないためには、万全の機構というものがやはり作られなければならない。これは私の意見として申し上げます。  それから一つ、経済協力なり、あるいは資本の輸出等の形も事実上とるわけですが、資本の過剰な国が行なうならとにかくですが、日本の現状で、資本——国内での資金も足りないで、中小企業等は金融引き締めの政策にあえいだり、あるいは黒字倒産でも見かねまじき情勢もあるのですが、それに資本輸出を含めて経済協力をするという点については、どういうようにお考えになっているか、その点は、国内との問題もありますので伺っておきたい、
  106. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 国内の中小企業の保護、またその金融という問題は、これは重要な国内問題として、われわれも経済発展の段階において、特に中小企業の発達ということを考えて参らなければなりませんし、また今日のようなある程度景気抑制の段階においては、そのしわが中小企業に寄っては相ならぬ、資金的な面における十分な援護措置というものを考えていかなければならぬと思います。ただ、それを考えて一方で十分にやって参りますけれども、しかし若干の捻出されました資金によりまして海外の、特に東南アジア方面を中心にした経済協力をやって参りますことは、将来の日本の中小企業の新しい分野の開拓にもなり、また新しい輸出貿易のお得意先ともなるわけでありまして、そういう点は、やはり中小企業そのもののために、そういう政策をある程度並行して参りますことは必要なことだと思います。  したがって、むろん国内に事欠いてしまって、そうして国内はどうでもいいのだ、海外の経済協力だけやればいいのだという考え方は持っておりませんけれども、国内に事足りる状況であれば、若干余ったと申しますか、資金というものは、当然海外経済協力にも使って参ることが、これは当然必要なことだと思うのでありまして、その範囲内において、われわれも考えておりますので、本年あたりも外貨事情さえよければ、私どもとしては、もう少しよけいな金額をこの基金に入れて、この基金活動を、もう少し旺盛にいたしたいと考えておりましたけれども、国内金融関係もございますし、外貨事情等もございますから、必ずしも普通に考えておりますよりも出資が多かったというわけではございません。六十五億というあたりにとめた次第でございます。
  107. 吉田法晴

    吉田法晴君 これは直接関係があるのかないのかわかりませんけれども、日韓経済協力という問題について、ちょっとお尋ねをしたいと思います。クーデターでできた軍事政権に日本が相手をするかどうかということは外交上の問題になるかもしれませんが、ところが国交回復前についても、民間段階での経済協力はこれはけっこうじゃないか、こういうことで、日本のほうからも、本人は池田総理の親書を持って行ったと称しておりますが、実際には池田総理の手紙じゃなくて石井さんの手紙のようですが、しかし、政府の総理かだれかにお会いになったことは間違いない。それから向こうも個人的な関係になるかもしれませんが、士官学校の先輩後輩という関係もあったかしれませんが、朴議長に会っていられる。そして保税加工方式というものを考えた。そしたら同行をされたたくさんの会社があったようですけれども、あそこもここも、それは物が売れればどこでもいいじゃないか、こういう商魂のたくましさにもよるのでしょうけれども、だいぶついて行かれた。そして釜山やなんかの水道を回り、五台山の開発計画があるのかどうかわかりませんけれども、五台山よりも蔚山等というお話のようですけれども、開発の話があった。ただ、行った人の談話として、政情が不安で朴政権がいつまで続くかは、これはなかなかの問題だ、あるいは疑問がある。そこで政府が何らかの延べ払いの保証というか、あるいは経済協力になるか、しなければ、してくれなければという、こういう希望を述べている。  そこで、今までのあれから言うと、インドネシアのときの賠償交渉あるいは韓国の賠償交渉じゃないが請求権の問題が、あるいはタイの特別円ではないが、請求権としては、法的な根拠によると、これだけに限定されていなければならないと言われるけれども、そのほかに経済協力というものが相当多数出てくるのではなかろうか、これは日韓交渉の結果ですよ。あるいは別な形の経済協力というものが出てくる。少なくとも経済協力なら経済協力の形で、政府あとで引き受けてくれることが望ましいという意見を述べられていることは事実です。保税加工方式という、韓国の中に、政府の及ばない治外法権的な工場ができる、あるいは関税がかからないで入ってくる、それからそのまま出てくる。こういういわば経済の中での一部分だけれども、治外法権的なものができるのは、これは困るという意見も民間にはあるようです。民間にもあるようですが、日本から行った経済人の中には、どういう形にしろ経済協力という形で、あとを見てくれることが必要だと、こういう意見等もありますから、全く私は関係がないわけではない。話の内容、それからあとの形にしても関係がないことはなかろうと思いますが、あとで、それは経済協力基金から出されるかどうか、そこまではきておりませんからあれですが、こういう事態について、どういう工合にお考えになるか。
  108. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 個人の方が韓国に行かれまして、いろいろ経済上の問題を話されることは、これをとめるわけには参らないわけでございます。また向こう側の意向も、それをかりに歓迎するとすれば、入国等も割合に楽ではないかと思います。しかしそれで今すぐ政府が、そういう人たちを日韓交渉のさなかでバックするとか、あるいはそういう人の意思を将来何らかの形で生かすとかいうようなことを今全然考えておるわけではございませんし、したがって、そういう点について政府として何らの意思表示もむろんいたしておりませんし、また意思表示をいたすべきものだともわれわれ考えておりません。  そういうことでございますから、政府としては、日韓会談そのものが妥結することに力を注いでおるわけでありまして、それを除いて、何か経済協力を推進していくという意見は、政府に関する限りはございません。
  109. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 ちょっと関連して。今吉田委員が質問されたのですが、この改正そのものは、参議院議員選挙ですか——日韓会談をやって交渉を妥結して、主としてそこを対象にしたのと違うのですか。そういう、うがった観測をしている人もあるようですが、その点はどうですか。
  110. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 全然、そういうことを考えておらぬことをはっきり申し上げます。
  111. 吉田法晴

    吉田法晴君 全然考えておりませんと、しかし請求権問題に関連をして、請求権については、法的な根拠のあるものだけを支払う。しかし、経済協力の形で、要求の全額であるかどうか知らぬけれども、何といいますか、考えよう、こういうことは少なくも新聞には出ていますね。新聞には伝わっている。これは外務大臣ではないのだから、あれかもしれませんけれども、そういう新聞記事があるものだから、われわれも日韓会談に伴って経済協力という問題が起こってくるのではないかと思っている。少なくとも起こってくる危険性がある。インドネシアのときにしてもタイのときにしても、どこでもあることですが、最近は経済協力ということで、理由のつかぬ金を出そう、こういう動きが過去においてあった。日韓の場合にも、あるのじゃなかろうか。  それからもう一つ、まあこれからの「内談状況」というものが出ておりますが、この中には全然含まれておらぬのですか。それともあるいは将来にわたっても経済協力で、その説明のつかない説明のつかないというのは、請求権の問題に関しては説明がつかないが、しかし経済協力云々という点は全くない、したがって、この経済協力基金の中から韓国関係について支出することは全くない、——こういうことですか。
  112. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 今、私が全然ないと申し上げたのは、基金法を改正する意図の中に、何か日韓経済協力あるいは参議院議員選挙を目的として、そういう意図は含まれておらないのかということでありますから、この基金法の改正には、そういうことを全然考えてやったわけではございませんということを申し上げたわけであります。  日韓交渉につきましては、外務大臣が責任をもってやっておられまして、請求権以外に、やはり経済協力が成立するのか、しないのか、その辺については、今後の交渉の経過によってきまっていくことだろうと思うのでありまして、その点を全然ないと申し上げたわけではないのでありまして、全然ないと中田委員に対して申し上げたのは、この基金改正に、そういう参議院議員選挙とか、日韓交渉とかということを考えて改正をしたのではないということを申し上げたのでございます。
  113. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは、まあ外務大臣でないから責任ある答弁はできないけれども、やはり日韓会談に関連して経済援助という問題の可能性が全くここで否定されるというわけには参らないだろうということで、これは私も、これからの話ですから、その危険を指摘しているわけですけれども、もしそういうことがあるということになりますと、経済人で行かれた人のいうように、やはり危険がある、その政情についての、それから返済云々についての危険がある。したがってそれを押して経済協力をやろう、あるいはもしその話の中から基金からも出そう云々ということになると、その危険をあえてこえて、あるいは軍事政権云々の点もあるけれども、なお政情不安に対しての経済協力の手を差しのべなければならぬということになると、軍事政権のてこ入れ——これはアメリカからする朴政権へのてこ入れの一種の槓杆になるというのですが、あるいはかわりになるということで、政治的にも問題になると思う。会談の内容はとにかく、その点は、将来についての可能性について、もしただいま否定をするわけではないというならば、私は、そういう経済協力なり、あるいは経済協力基金の中から出されるということになると、大へん問題だということを指摘しておかざるを得ないのです。
  114. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 日韓会談の進行をする場合に、請求権と経済協力が並行して行なわれるか行なわれないかということは、今後の交渉いかんであろうと思うのでありまして、外務大臣が、これに当たっておられますので、私から、どういう形でそれが最終的解決をみるということを申し上げることは、ここでは差し控えるべきだと思います。日韓の間の国交が正常化して参りますれば、この基金の対象地域になりますことは、これは当然なことだと思います。が、しかし、それではいまの達成確実だとか、あるいは達成の見込みがあるというような状況を、その場合に、どういうふうに判断するかということは、そのときの状況によって判断すべきでありまして、また事業内容にもよりましょうし、したがって今からそれを可能だとも申し上げかねるのでございますし、また、不可能だと申し上げることもできないと思います。
  115. 吉田法晴

    吉田法晴君 あの「最近における内談状況」というのを、これは時間もございませんから、あとで資料でいただきたいのですが、今のお話のように、これは将来のことだけれども、日韓会談によって国交が正常化されたら韓国も経済協力の対象になり得る。具体的な話によるけれども、あるいは返済能力といいますか、そういう点も、合意という点も考えなければならぬけれども、ものによっては、あるいはこの基金からも出る、こういう答弁をされると、最初から申し上げたように、アジアの各国の中で、特にタイだとか、あるいは南ヴェトナムだとか、あるいはパキスタンとか、SEATO加盟国、あるいはアメリカあるいは自由主義陣営といわれる諸国に重点をおいて外交もなされ、あるいは賠償や、賠償に伴う経済協力もなされておるが、それとの関連において、この協力基金が使われるのではないか、あるいは貿易の云々というものに使われるのじゃないか、そうなれば、この法案に反対せなければなりません。その点はっきりして下さい。
  116. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) むろん海外経済協力基金でございますから、国交が正常化した後におきましては、韓国も入ることは、これは当然でございます。ただ、基金運営自体が、吉田委員の言われますように、偏見をもって運営されておるとは私は思っておりませんし、立場が少々違いますので、あるいはあれかもしれませんが、本日までできております三件についても、インドネシアのスマトラの開発は、これはある意味からいいまして、この過程におきまして、オランダから、相当鉱業権の問題でインドネシアに抗議が来た、日本にも抗議が来たのでございます。インドネシア自体は、中立政策の国でもございます。同時にまた、スエズ運河の協力の関係においても、中立国の関係でございまして、そういう偏見をもって運営しておるのではなくて、業務の確実なところならば、そういう政治状況のいかんにかかわらず出していくというのが実績でございますから、吉田委員の言われるほど御心配にならなくとも差しつかえないのじゃないかと思っております。
  117. 吉田法晴

    吉田法晴君 御心配にならなくともいいように明快に答弁をして下さい、こういっているわけです。そのOECDの中では、とにかく協力という形もあまり好ましくないじゃないか、別に考えられたらどうです、こういうことを申し上げて、これは、まあその情勢にもよるけれども、エカフェの話も、アジアにおけるその経済協力の点についても考えたいというお話であったのだから、日韓会談について、日韓会談そのものについて反対もあっておる、あるいは軍事政権を相手にして云々という点もあってのことだから、将来の点は、話の内容はわからぬ、日韓会談というのは何年かかるかわからぬけれども、しかし、いわれるような意図をもっての、あるいは植民地主義的の危険を伴う協力の仕方はいたしませんと、あるいは韓国についても、現在は話がございませんし、そういう心配されるような協力の仕方はいたしませんと、こういう答弁がなければならぬ。それから、先ほど申し上げたように、これが利権化したり、あるいは汚職を伴うような危険は全然あらしめぬように万全を期したい、こういうような答弁があれば、われわれも納得する、その答弁の仕方。
  118. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) ただいまの答弁で実はおわかりいただいておりますように、これは純粋に政治的な意図を持ちませんで、経済協力の範囲でやっておりますので、ただいま申し上げたように、中立国であるインドネシアの石油開発、これに対しては鉱業権の問題でオランダから日本にもインドネシア自身にも、いろいろ問題を出してきた、それにもかかわらず協力いたしておるわけであります。スエズ運河の問題しかりでありまして、そういう偏見なしに実際の範囲の経済協力の立場で、これは運営いたしておる。ただ、海外経済協力という立場からいいまして、韓国と正常化した場合に、この基金の区域に入らないということは、これは申し上げかねるのでございます。これは当然入ります。しかし、それが援助するかしないかという問題は、その事業の達成いかんということが標準で判断せられるのでありまして、何か非常なアメリカの手先になって、韓国だけに金を貸すというような偏見を持って私どもは運営をいたさないつもりでございます。
  119. 吉田法晴

    吉田法晴君 そんなら日韓の問題は、外務委員会もありますし、あれいたしますが、日韓問題自身がペンディングの段階です。そこで、との会談中のものについては含まれてもおらぬが、日韓国交回復後は当然のことのように承りますが、この経済協力基金から出して云々のときには、あらためて論議をする、こういうことならば了承いたしますけれども、今の段階では、日韓会談それ自身にも反対しておる私どもとしては、この相手国が、韓国が経済協力の対象にもなるという前提に立っての御議論については、私ども承知するわけにいかぬ。その点は取り消しを願って別な機会に譲る、こういうことにしていただけば、他の点は了承いたします。その点は了承できません。
  120. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) ただいま申し込みを受けておる中に、韓国に関するものはないことはお手元に出したとおりでございまして、おそらくそう急にそういうものが出てくるとは思いません。ただ、日韓間が正常になったらば、この地域がこの基金貸付範囲の内であるということを取り消せというもしお話でございますと、これはなかなか取り消せないことになると思います。
  121. 吉田法晴

    吉田法晴君 まだ会談それ自身も、請求権その他の問題をめぐって話が片づいていない。国交回復していない。ですから、国交回復を前提にしてお話をされるということは、外務大臣じゃなくても、経済企画庁長官としても不謹慎だ。それはそれで、国会にかかることですから。今の段階では、国交回復してない国が経済協力の対象になるだろうという前提だけはお取り消しになっていいのじゃないですか。
  122. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 国交回復していない国を対象にするということを申し上げているのではない。日韓会談がかりに成立して、そして国交回復した後にということで、国交回復しない前に、この区域に入るということを今申し上げているわけではありません。
  123. 吉田法晴

    吉田法晴君 だから、国交回復していないのだし、話がまとまっているわけでない。だから、今のところは会談にも入っていないし、経済協力の対象には現在のところ考えておりませんというのがあなたの答弁でなければならぬ。
  124. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 少なくもこの経済協力基金における対象地域は、先ほど申し上げたように、日韓会談が終わって正常化すれば、そういう地域に入るけれども、そうでない。入るということは、その前には入らぬということを申し上げておるわけなんであります。
  125. 武藤常介

    委員長武藤常介君) 他に御質疑はありませんか。
  126. 田畑金光

    ○田畑金光君 ちょっと一つだけ。
  127. 武藤常介

    委員長武藤常介君) 簡単に願います。
  128. 田畑金光

    ○田畑金光君 この法案については、もう質疑がたいへん長くなったのでやめますけれども、直接の問題はないが、間接的な問題で一言だけ、ひとつ藤山長官にお尋ねしておきたいのですが、この間の八日ですか、池田総理が京都の知事選挙に応援に行かれて、福知山で新聞記者といろいろな問題について話をなされておるわけです。  その中で特に多くの新聞が社説にまで取り上げていろいろ批判を加えておりますので、しかもどの新聞を見ても、池田総理の話をなされたことと、また経済に対する見方とか、見通しとか、そういうことと、経済閣僚である佐藤通産相や藤山長官との考え方には、相当の開きがある。どちらかというと、やはり佐藤通産相や藤山長官の考え方、特にその中でも、藤山長官としては、やはり今の経済の動きに対しては相当警戒して見なければならない。一般的に世論もまあそういう見方をし、その意味においてなら藤山長官の見方に共鳴しているのじゃないかと、こう思うのですが、そういう角度から、私は特にこの際、藤山長官にお尋ねしておきたいのは、たとえば、消費者物価の動きや国際収支の動き等について、いろいろ新聞記者から尋ねられたわけですが、その中で総理はこういうことを述べておるわけです。「外貨はいま十六億ドルもある。国際収支も本年三月には均衡したし、欧米への輸出も相当に伸びている。国際収支回復への心配はいらない。いまのままの施策を推し進めていけばよい。ただ調子にのってどんどん生産を伸ばして行くことは少しく自重してもらいたい。」この中で、たとえば三月の輸出入信用状がいくらかよくなってきた。このことが直ちに、これから三十七年度の上半期を通じても安定してよくなるような、そういう見方に立って、非常に楽観的な構想というものが出ているわけですね。もう国際収支の心配はいらぬ、そうなってきますと、一体政府が当初見通したように、この秋ごろには国際収支の均衡というものが確実に見通しが立つのかどうか、こういう疑問もあるわけです。ことに昨年の十一月からことしの六月までは、生産は下降する。そのあとは上昇する。こういう政府は見通しに立って、その前提が満たされるならば、私は総理のような発言も正しかろうと、こう思うのです。  ところがことしの一月に、すでに三・八%の生産上昇で、これがいろいろまた経済指標の動きとして、今の経済の動きは、これは注意しなくちゃならぬ、こういうことになるだろうと思うのです。さらに物価の問題等については特にそうですが、総理の言葉を引用しますと、「物価が上がることよりも、むしろ賃金が上がり過ぎてコストインフレになることがよくない。一方では生産過剰で卸売物価はむしろ下がる。日本経済は世界の歴史にない成長を遂げているが、これは日本人の勤勉のたまものである。物価の上昇は国民全体が責任を負うべきものである。政府の施策は、これがあまりにも退えい的で積極政策をやらなさ過ぎたと思っている。」全くわれわれの見方というものと、あるいは国民の不安、一般の経済を心配しておる識者の人々の見方と違っておるわけですが、こういう見方に対して、率直に藤山長官は賛成なのか、あるいは藤山長官は一般の、先ほど申し上げたように、新聞等においては総理の考え方とは相当違っておると、こういうわけで、私は率直にひとつ長官の見解を承っておきたい、こう考えておるわけです。
  129. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 総理の福知山の談話というものが、どの程度に、あるいはどの環境で、正確に言われたかということについては、私もその席におりませんし、判断に苦しむわけでございますが、経済の見方につきまして、私と総理と必ずしも全部一致だとは考えておりません。むろん自由民主党は民主主義政党ですからして、各人がみんないろいろの考え方を持っており、内閣では強きあり、弱きあり、いろいろ考え方を持って、それをお互いに討議しながら、そして一つの線にまとめていくところに一つの進歩があると思うのでございまして、必ずしもそれと私とは一致してないということ自体が悪いというわけではないと思っております。
  130. 田畑金光

    ○田畑金光君 いや、私も今の答弁の限りにおいては、そうだと思うし、総理がこういう考え方だから、大蔵大臣も経済閣僚も、そういう考え方じゃなくちゃならぬ、これは間違っておると思うのです。むしろそういう点から言うなら、大蔵大臣はどっちかというと、総理の見解に同調の率が多いように見受けますけれども、やはりこれは藤山長官としては長官の見方に立って、あるいは佐藤通産相は佐藤通産相の立場で、たとえば先月の三十日に、佐藤通産大臣は、設備の規制については、あくまでもこれを強く進めていく、必要に応じては生産の調整も考えなくちゃならぬ、電力に対する設備投資を除いては、その他については十分規制していく、こういうようなことを言われておるわけです、こういうことはやはり今の景気調整の中だるみというようなことがよく言われておりまするが、そういう動きから見るならば、このような発言というのは当然のことだと思うのですね。  ことに私は先ほど申し上げたように、総理が今までの政府のやった政策というものは、あまりにも退嬰的だと言われているが、政府の、ことに池田総理のふろしきを広げ過ぎたこの積極的な経済政策というものが、結局設備過剰投資、あるいは今日はどうも生産がふえて、在庫商品がふえていく、こういうような一つの危険な様相も出ておるわけです。こういう点から見ますならば、総理のいき方が経済政策があまりにも行き過ぎたんじゃなかろうか、それがいろんな面に今日破綻を来たしておる、そういうことを見たときに、私はあまりにも退嬰的であったんじゃなくて、あまりにも拡大主義の上に立っていた、こういう見方をしておるわけです。さらにまた物価の問題等についても、これはわれわれといたしましても、経済成長の過程において、ある程度第三次産業部門における物価の値上がりというものは、これはやむを得ない面もあると思いますけれども、しかし政府の経済政策、物価政策に便乗する値上げ等もこれは無視できない、こういうことを考えたとき、私は率直に長官は、この見方に賛成なのか反対なのか、これを正直に、ひとつ承っておきたいと、こう思うのです。
  131. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 今申し上げましたように、すべての問題について総理と私とが必ず同意見だということではないことは、これはむろんでございまして、それが内閣運営の重要な方法だと思うので、同じような考え方の人ばかりが集まっておりましたら、内閣というものは一つの方向だけに行ってしまうと思います。したがって総理の考えておられる考え方、必ずしも全部そのとおりだとは思いませんし、現状の分析についても、必ずしもそう私は楽観をいたしておるわけではございません。ただ過去の例から見ましても、昨年企画庁長官に就任いたしましたときに、私は公定歩合の引き上げを必要とするということを申した、必ずしも総理の考え方はそうでなかったろうと思いますけれども、その後二回にわたって引き上げもやり、また私の言ったとおりに同調してこられておりますし、物価問題についても、総合対策を立てるというようなことで、政府がこれに対して責任を持って対処していかなきゃいかぬということで、総理も同意見となって、三月末に総合対策を作ったというようなことにもなっております。  したがって、全部が全部同意見であるということは申しませんし、今の見方につきましても、必ずしも全部総理と同じではないし、むしろ私は若干悲観的な見方をいたしておりますけれども、しかしそれらの点については、総理にも十分私なりに意見は申して、そして今後の施策が万全を期するようにして参りたい、こう思っております。
  132. 田畑金光

    ○田畑金光君 藤山長官の御答弁は、私は了といたします。そういう気持でひとつ御努力願い、来たるべき総裁選挙においても勝利をおさめることを切にお祈りいたしまして、私はこの問題は、これでとどめておきます。  経済協力基金法については、私は先ほど申し上げたように、もうお二人が詳細にわたって質問されましたので、別段これ以上質問しようとは思っておりませんが、ただ一つだけお尋ねしておきたいと思います。  それは私はあらかじめ希望として申し上げておきたいのは、こういうたとえば業務解説とか業務方法書等の資料を、当委員会に出て初めていただいたわけで、私たちも実は初めてこの資料を読んでいる始末で、この委員会の席上読んで理解するのも、これは事実上困難である。だからもっと親切に、これは事務当局の人方ですが、こういう法律案審議にあたっては、このような資料をあらかじめわれわれのほうに配付されるという親切心が必要です。ことにこの法律案は、きょう一日、午後から半日だけ審議をして、会派の申し合わせで本日中に上げるということになっておりますので、われわれはこの約束に基づいて協力いたしておりますのですから、事務当局としては、こういう資料については、あらかじめ提供するくらいの親切心が必要だ。  そういうことで、ただ一つだけ私はお尋ね申し上げます。ごく簡単です。この二つの改正の中で、第二の点、従来「その達成が確実であると認められる場合」融資するということになっておりましたが、「その達成の見込みがあると認められる場合」と、非常に緩和されているわけですね。そうしますと、輸出入銀行というものと、この経済協力基金というものの融資の区別、違いを読んでみますと、要するに輸出入銀行や市中銀行の金融ベースに乗りがたいものを、これをこの経済協力基金で取り扱うということになっている。今度はその裏づけとして、さらに「達成の見込みがある」というようなことで、条件を緩和することになります。そうしますと、相当これは危険性というものが予想されると思うのです。この一年間に三つの貸し出し件数で十億の貸し出ししかありませんけれども、今後だんだん貸し出しが増大するならば、相当の危険というものが予測されるのだか、そういう危険負担というものについては、どのような措置を考えておられるのか、それをひとつ伺っておきたいと思うわけです。
  133. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) ただいまお話ございました資料等が整備しなかったことは、まことに申し訳ない次第でございまして、この程度の資料は御要求のあった点、法案が提出されましたときに、一括して差し上げておるべきだと思います。今後その点については、十分に注意をいたして、事務当局から、そういうように手配をいたすようにいたさせます。  今回の法案をこういうふうに改正してやっていくと、だんだん債権回収の困難なものが出てくるのではないだろうか、そのためには、何らかの処置が必要じゃないかという御質問のようでございますが、これをある程度弱めたということの感じも起こって参りますけれども、しかし「達成の見込みがある」ものということは、必ずしも非常にルーズな貸付をするという意味ではないのでございまして、いわゆる外国関係の投資をいたすことでございますから、日本の国内の投資をいたしますように非常な確実な、すべての担保を取るとか、すべての処置をする、あるいはその政情等の見通し等につきましても、若干の見解の違いも出てくるわけでありまして、そういうことで非常な、その国の経済情勢とか、あるいは政治的な情勢とかいうようなものの判断も確実だという範囲までですと、相当困難なところもあると思います。しかし事業自体として、やはり確実に収益を上げて、その国の経済開発の速度によっては若干の遅速はありましても、確実に見込みある仕事として達成されて、必ず資金の回収ができるということを原則にいたしておりますので、今のところ回収不能になりはしないかというようなものに対しては、そう貸し出しを拡げて貸していくというような気持で、この字句の改正をいたしておるわけではないのでございまして、そういう意味に御了承いただきたいと、こう思うわけであります。
  134. 田畑金光

    ○田畑金光君 もう一点だけ、それに関連して私は指摘しておきたいと思うのですが、きょう配付されました「業務解説」の資料ですね、これの七ページをみますと、こういうことが書いてあるわけです。この基金の対象になる内容といたしまして、一つは「低開発地域における開発事業のうち、相手国の政情等による不安定要素が多く輸銀の金融ベースに乗り難いものであっても、経済協力上緊要と認められる案件」こうなって参りますと、相手国の政情不安定がかりにあったとしても、それがその国の経済開発、国民生活水準のためにプラスになるならば、輸銀としては、とても対象に困難ではあるが、この基金は貸し出す場合があるわけですね。ことに東南アジアの国々の今日の政治上の姿を見た場合、しかもまたこの基金を最も必要とする国々を見ますと、政情不安いろいろ不安定要素があるわけですね。かりにこのような国々に融資をしてみますと、私は融資が悪いというのではありませんが、私は相当やはり危険負担というものが予測されるわけで、そうなって参りますと償還の問題等についても、そういう政治的な考慮のもとに経済協力を進めていくならば、償還等についても、危険負担の問題等についても、当然特別な考慮があってしかるべき内容じゃないかと思うので、私はそういうような点等については、率直にそういうような考え方がないのかあるのか、あるとすれば、どういう考慮を政府としては考えておるのか。これは一例です。その次を見ましても、同様なことが言えるわけです。幾多の問題がこの中にあるわけですね、そういう根本的な問題等については、ただここで、融資する場合に検討し慎重に査定の結果貸すから、そんなことはあり得ないだろうというようなお茶をにごしたようなことじゃなくして、私はあり得ると思うのです、これは当然。  だから、そういうことについて政府としては、どのような考えを持っておられるのか、これを承っておきたいと思います。
  135. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) お話のように、若干海外投資でございますから、国内金融をやりますと同じような非常な確実性のない場合があるわけで、しかしその中で、十分な選択をしてやって参るつもりでございまして、今お話のように、それだけではやはり危険があるから何か、たとえば損失補償とか何かそういうような問題を、この際考慮していないのかというような御質問かと思いますが、現状においては、できるだけそういう面のないようにして行きたいという考え方でやっておりまして、若干の企業を生かして、それを回収して行くというような方法等によって、政府が今直ちにこの危険に対する損失補償をするとかいうようなこと自体、まあ政府資金でございますから、補償といっても妙なものでございますけれども、そういうような何か特殊のことを今考えるということは、現在の段階では考えておりません。
  136. 田畑金光

    ○田畑金光君 それは現在の段階においては考えていないだろうが、しかしいずれ私は考えなくちゃならぬ問題だと思うし、しかもまたそれなくしては、輸銀と一般市中銀行の金融ベースに乗らぬものをこの基金が取り上げるということですから、それだけこの基金融資対象というものが国策的には大事なことであっても、同時にいろいろな危険の伴ってくることは必至であろうと思うので、その点について、何か調整局長お考えがあるなら、この際承っておきたいと思いますが、そういうようなことを考えておくべきじゃなかろうかと、こう思うのですが。
  137. 藤山愛一郎

    ○国務大臣(藤山愛一郎君) 運営して参ります上において、やはり将来のそういうようなことがございますれば、基金を正常に運営して行けば、ある程度の利益が出てくるわけでして、そういうような利益の中から、そういうような将来起こり得る損失を補償する、基金自体が補償するような積立金を置くというような問題は十分考慮する余地もあると考えます。それらの問題については、必ずしも発足早々でございます現在の段階で、どういうふうに、たとえばまだ利益金もあるわけでもございませんし、そういうものの処置そのものというような問題等については、今後十分検討いたしまして、これ以上国家に損失を、かりにそういうことが起こりましても、与えないように運営して行かなければならぬと思いますので、御質問の点は、十分われわれ今後考えながら注意して参ります。
  138. 武藤常介

    委員長武藤常介君) 他に御発言がなければ、本案の質疑は終局したものと認め、これより討論に入ります。  御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  139. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私は日本社会党を代表しまして、ただいま議題となっています改正法案に対して賛成をするものであります。  本法律が公布されましたのは、昭和三十五年十二月二十七日ですが、その当時はまだ、異様な発展をし、世界の注目を集めておりますEECの全貌が必ずしもはっきりいたしておりませんでした。しかし今や、米ソに次ぐ大きな経済圏として無視できず、それらの関連から各地域で経済統合の大きな潮流があるわけであります。そういう際に、日本といたしましてはどうあるべきか、何をなすべきかという、やっぱりはっきりした世界の経済構造の変化に対処する基本方針が確立され、そういう中で、やっぱりこの経済協力基金法がどうあるべきかという位置づけをすることが必要ではないかと思いますので、その点を希望申し上げておきます。  さらに、吉田委員が強く主張いたしましたように、この基金の運用が従来はありませんでしたが、反共国に限定されるというようなことのないように、ひとつ希望申し上げたいと思うわけであります。  さらに最後に、この第三十七回国会の三十五年十二月二十二日に、当参議院におきまして、「債権の保全に遺憾なきを期し、」云々という決議がありますが、今回の緩和規定が拡大解釈されて、そしてかえって、当事者間の親善を害するというようなことのないように強く希望を申し上げまして、本改正法案に賛成をいたすものであります。
  140. 武藤常介

    委員長武藤常介君) 他に御発言がなければ、討論は終局したものと認め、これより採決に入ります。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  141. 武藤常介

    委員長武藤常介君) 総員挙手と認めます。よって本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により、議長に提出すべき報告書の作成等につきましては、慣例により委員長に御一任を願います。  別に御発言がなければ、本日は、これにて散会いたします。    午後五時三分散会      —————・—————