○国務大臣(佐藤榮作君)
通産大臣がその点について
意見を述べるということが適当かどうか、私にもちょっとわかりかねますが、しかしたって
通産大臣の所見を述べろと言われますので、申し上げてみたいと思います。
この石炭産業につきましては、ただいま、
雇用の面について
閣議決定は非常な前進だということを言われております。私は、今回の
閣議決定をいたしました点で、特にものの
考え方で、やや重点が在来の
政策ではぼけていたというような感じが実はしていたのであります。私は皆様方の御質問にお答えして、石炭産業は基礎産業であり、安定産業であるということを、またそういうようにすることが私の責務だということをしばしば実は申し上げたのでございますが、当面する合理化に直面いたしますと、できてきた、発生する事象に対しての感覚が非常に強く浮きぼりにされまして、いわゆる
離職者対策に狂奔しておる、あるいは合理化の形から見まして、石炭の産業を圧縮するかの印象を非常に強く与えている。この点は受ける感じでございますので、本来の趣旨がどこにあろうとも、そういう印象を与えていたことはまことに不本意だと言わなきゃならない。今回はそういう点について、安定産業たらしめる、こういう点を明確にひとつすることが必要だろう、まあこういう
考え方から、石炭に対する対策というものを
閣議決定をいたしたそのポイントがひとつそこにあったと思います。
したがいまして、
閣議決定は、すでに御承知のように、当面の施策というものは出ておりますが、これは当面、の事象に対する施策でございまして、基本的にはやはり五千五百万トン、千二百円下げという
基本線、これは短期の間に実現する、そうして次の飛躍に備える。飛躍の方向が示されてない、拡大の方向が示されてない、このエネルギーの総合的利用という点についてなお不安だ、こういう感じがどうしても拭うことができなかったと思いますが、そこで、総合
審議会を、エネルギー対策の総合的な
審議、
結論を出すような
制度をひとつ設けたい、これが積極の面でございます。同時に、この五千五百万トンは、合理的、経済的な数字であるならば、五千五百万トンにとらわれません、こだわりませんと、こういうことを実はしばしば申し上げてきたのでございますが、いかにも五千五百万トンで全部を締め上げておるかのような印象が強かったと思います。そこで、五千五百万トンにつきましても、将来の新鉱開発、こういう意味においてのその片りんを出すことが必要だろうというので、
原料炭の開発について積極的な意図を実は示したつもりでございます。まあかような方向で協力をお願いし、どこまでもその
観点は石炭の合理的、経済性を持つこと、そこに実は重点が置かれておるのでございまして、そういう意味の
閣議決定をし、その
考え方を
労使双方の方に十分理解をしていただきたい、これが基本的な趣旨でございます。
この基本的趣旨に立ちまして、当面する
合理化計画なぞも協力を得るということが前提になると、当面しておる争議形態は一日も早く解消さるべきだ、そして
労使双方が納得する線が必要だ、そのためには中立公正な
調査団を派遣し、その
答申を待って、そして
政府がさらに具体的な
政策決定をする、それまでは
労使双方一応休戦しよう、こういうのがその骨子でございます。で、その
観点に立っての種々の肉づけが行なわれておるのでございます。で、しばしば交渉を持ちました際も、今回の闘争はどこまでも
雇用の問題だ、
雇用の問題であるがゆえに、同時に
賃金の
問題等についても
労使、交渉を持ってはおるが、こういう点は
雇用が第一だから、
賃金の問題は、
雇用の問題についての、一時でない、将来に対する見通しが立てられれば、その点は比較的解決が容易だ、こういうようなお話を
関係の人たちからも実は伺ったのでございます。したがいまして、この当面の対策としての
労使双方の休戦状態は、理論的に申しますならば、
雇用の問題ではあるが、同時にこの石炭産業を安定産業たらしめる、そのためにも合理的な経済性を持たす、それについて
双方協力するというその立場に立つならば、なるほど
閣議決定にはふれておらないが、
賃金問題なども十分話し合いで
結論を得てはしい、こういうことを実は申したものでございます。しかし、不幸にしてこれがストライキに展開し、そしてそのあっせん案が提示され、そうして組合側はこれを了承し、経営者側は非常な難色を示しておる、こういう実は事態になっておると思います。経過は、また今回の
閣議決定をいたしましたまでの情勢の分析は、それぞれの立場によりましてあるいは表現の相違はあろうかと思いますが、大体同じようなことだろうと思います。
ところで、在来の石炭の
合理化計画、これもやはり賃上げの率を一応予定しておることは御承知のとおりであります。
合理化計画を進めていく場合におきまして、三・八%というものが毎年予定されていたと思います。したがって、三・八%の範囲内であれば、
合理化計画の
基本線から申して、一時的な足踏みがあるにしろ、おそらく経営者側としてもこれはもう了承せざるを得ない状況だろうと思います。しかし、昨年以来、昨年の賃上げの率、また今回の一月にさかのぼって支給される
賃金の率、これはいずれも大幅に
合理化計画で予定した三・八%を上回っております。そういうことを考えますると、経営者側が難色を示しておることは私はある
程度わからないではない感がいたすのでございます。もちろん、今日あっせんの労をとられ、そしてその具体案が提示されておる際でございますから、それについて諾否を私などがとやかく申す筋ではございませんが、今日新聞に出ていて、経営者側が難色を示しておるその経緯は、ただいまのように考えて参るとこれがわからないでもないという感が実はいたしておるのでございます。しかし、いずれにいたしましても、これは
労使双方で話をつけることだろうと思いますので、その結果を待って私どもはそれに対する対策などを講ずる、これがまあ行政官庁のあり方ではないか、かように考えております。