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1962-03-22 第40回国会 参議院 商工委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月二十二日(木曜日)    午前十時三十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     武藤 常介君    理事            赤間 文三君            剱木 亨弘君            中田 吉雄君            牛田  寛君    委員            上原 正吉君            大泉 寛三君            川上 為治君            阿部 竹松君            近藤 信一君            吉田 法晴君            加藤 正人君   国務大臣    通商産業大臣  佐藤 榮作君   政府委員    公正取引委員会    委員長     佐藤  基君    通商産業省通商    局長      今井 善衛君    中小企業庁長官 大堀  弘君   事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○中小企業団体組織に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出) ○輸出保険法の一部を改正する法律  案(内閣提出)   —————————————
  2. 武藤常介

    委員長武藤常介君) これより商工委員会を開会いたします。  本日は中小企業団体組織に関する法律の一部を改正する法律案輸出保険法の一部を改正する法律案及び家庭用品品質表示法案の審査を行ないます。   —————————————
  3. 武藤常介

    委員長武藤常介君) まず、中小企業団体組織に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 近藤信一

    近藤信一君 今回の法改正によって、これまで不況の場合にしか認められなかった商工組合不況の場合でなくても設立できるようになるので、協同組合商工組合制度の上で重複する面が出てくるのではないかと思うのであります。そこで協同組合商工組合性格相違点をどこに求めているのか、この点からまずお尋ねします。
  5. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) この商工組合協同組合との性格上の差でございますが、私ども協同組合組合のメンバーになっている業者協同企業体といいますか、一つの私経済的な目的を達成しようということがねらいになっております。商工組合のほうは、広く業界の、同業界の中の共同目的を達するためでありますが、非営利的な性格を持った団体、こういう性格でございまして、したがいまして、協同組合の場合は、原則としましては、やはり組合員たる中小企業の人々に奉仕をするということが考え方原則になっておりますから、法律の上でも相互扶助原則、あるいは組合員に対する直接奉仕ということが組合目的にはっきり入っているわけでございますが、商工組合の場合は当該業種に関する中小企業者すべてのものの運営の合理化なり安定をはかるということが目的になっておるわけでございます。その点において、できるだけ多数の同業者が入って業界全体のためという目的になっております。その点が基本的に目的及び性格の差になっていると思います。したがいまして、事業の面での差になりますと、協同組合のほうは共同施設ということが中心仕事になっておるわけでありますが、商業組合のほうは従来は経営の安定ということで不況カルテルをやることが主体になっていたわけですが、同時にあわせて協同組合と同じような共同施設もできる、付随的にこの制度を認めておりましたが、今度の改正案によりまして不況カルテルのほかに合理化カルテルもできる。あるいは調査教育活動、こういうこともできるというふうにいたしておりますが、協同組合がやっております共同施設についても従来と同様に付随的にやはりそういった仕事もできますと、こういうことになっているわけでございます。この点が協同組合商工組合の差違かと思います。
  6. 近藤信一

    近藤信一君 この改正案によれば、商工組合を単なる不況対策としての組織でなく、経常合理化事業もできるようになる、積極的活動する商工組合にするようになるわけでございますが、従来は、中小企業組織化していくための重点的な方策として協同組合を作るよう指導してこられたと思います。今後は組織化対策として、商工組合重点主義に移っていくのであるかどうかという点と、その方針についてお伺いいたします。
  7. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 私どもは、重点という多少語弊があろうかと思いますが、従来は商工組合が、御承知のとおり不況要件前提になって、設立の場合も不況要件前提になっておりましたので、非常に設立に困難を感じるということで、協同組合制度は、さっき申し上げましたように、やはり共同施設ということが中心の、経済事業中心組合でありましたのですが、商工組合設立が非常に困難なために、割合に協同組合を利用して何とかやろうという形で、過去の経緯としましては参っておると考えられます。今後、商工組合同業組合的活動で、非常に設立の面においても不況要件をはずし、しかも活動の幅も広がって参りますと、今後相当広い範囲業界共同行為をし、あるいは組織化しようとします場合には、商工組合を利用するほうが非常に便利であるということで商工組合を利用するケースがふえてくると、かように私どもは考えておりますが、協同組合性格から見て、協同組合本来の協同組合事業ということが考えられるわけでありますから、こういうものも、今後もちろん結成されると思いますが、同業組合的な活動をし各般の事業をやるという場合には、商工組合を利用することが都合がいいということで、商工組合結成が今後相当ふえてくると、かように考えております。
  8. 近藤信一

    近藤信一君 不況要件が伴わなければ、これまでは商工組合設立したくてもなかなか設立ができなかった業界がたくさんあるわけです。また同じ理由で、商工組合に移行しようとしても移行できなかった協同組合が多かったと思います。それが今回不況要件が削除されるために、設立が容易になってくるわけです。このために組合設立組織変更が多くなると思うのでございますが、したがって、現在六百八十にすぎない商工組合の数も、これは急速にふえてくることが予想されるわけです。さしあたり幾つぐらいの業界商工組合を新しく結成しようとしておるのであるのか。また二万くらいある事業協同組合のうち、幾つぐらいの組合商工組合に移行しようとするものと、あなたのほうで推定されておるのか。この点はどうですか。
  9. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 数学的には非常に予想することは困難でございますけれども、私ども見当で申しますと、商工組合設立するという見込みのある業種が、大体当面百業種くらい想定されるわけでございます。大体、機械関係雑貨関係その他でございますが、見当をつけてみますと、百業種くらいありそうだと思います。組合の数はなかなか困難でございますが、商業関係でおおむね二千くらい考えられるのじゃないか、まあ協同組合から組織変更するものが三千くらいあるのじゃないかと、これはごくわれわれの目見当でございまして、組合の、協同組合を変えたいと思っても、いろいろ財産関係から急に変えることが話がつかないというケースが予想されますので、無理なこともできないわけでございます。まあ、性格から見て、こういうふうに移り変わりそうだと思われるものが、見当としてこのくらい予想されておりますが、その数字はあくまで見当でございまして、なかなか数字を申し上げることは適当ではないかと思います。
  10. 近藤信一

    近藤信一君 今長官の御説明によると、見込みは百業種くらいだと、こういうことですが、一体この百業種のおもなる業種別といいますか、そういうのは主としてどんなような業種があるか、この点いかがですか。
  11. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 非常にたくさんになりますのでございまするけれども、例示的に申し上げますと、機械関係等におきまして二十七、八あると思いますが、鋳物関係、ダイキャスト、粉末冶金製品あるいはボルト、ナット、とめネジといったような種類のもの、歯車あるいは金型とか、各種の試験機、自動車の部品でございますとか、農業機械器具精密機械器具部品等あるいは自転車用部品その他でございますが、あと雑貨関係で申しますと、木製の家具とか建具、漆器の製造業、あるいは玩具関係貝ボタンとかアルミ機物、シャープ・ペンシル、あるいはセルロイド製品あるいは紙製品、そういったようなもの、それから繊維関係にも、やはり紙関係手すき障子紙手すき奉書紙とか、製本関係、あるいは手加工繊維関係仕事日用品、日用の紙製品、こういったようなものが考えられるわけでございます。なお、鉱山関係にも多少亜炭とか、石こうの関係等も考えられますが、そのほか通産省以外の農林省関係におきましても、食料品関係相当たくさんのものがございます。これはやはり相当商工組合結成する可能性があると考えられます。
  12. 近藤信一

    近藤信一君 そのうち輸出関係はどれくらいございますか。
  13. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) ちょっと内訳として輸出がどのくらいかということは申しかねますけれども繊維関係のは相当部分輸出関係しております。雑貨あたりも、玩具その他相野雑貨関係輸出が多いのでございますから、いずれも相当輸出関係が多いと思います。
  14. 近藤信一

    近藤信一君 商工組合現行法では「一定地域において」と規定していますが、その範囲は、過度の競争が行なわれておれば、全国であろうと、また一都道府県であろうと、その広い、狭いは問わない形になっております。今度の改正案では「一又は二以上の都道府県の、区域地区とする場合に限り、設立することができる。」、こういうことになるわけですが、都道府県単位とすることを規定しているのでございますが、なぜ商工組合設立区域都道府県に限定されたのか、その点お伺いしたいのです。
  15. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 今回の改正案のねらいでございます商工組合同業組合的な性格を帯びるという意味から言いまして、できるだけ業界の人が多数入っていただくということに考えておりますので、通常、特殊な地方特産品でございますとか、あるいは業種によって非常に一つ府県の中にたくさん集まっておりまして、一県だけでは非常に無理があるというような場合は例外を認めておりますけれども通常の場合は、やはり一県あるいは州県以上、二県単位組織をして、広くその業界の方に入っていただいて、また教育指導事業その他のいろいろ行政官庁との連絡につきましても、また将来カルテル行為をやります場合におきましての予想をいたしましても、やはり行政区画としての都道府県単位で作っていただくことが、便宜でよろしいのじゃないかという考え方で、そういう原則をとっているわけでございます。
  16. 近藤信一

    近藤信一君 中小企業組織化を推進するには、商工組合中心とするということであれば、業者が容易に設立できるものでなければならないが、たとえば東京や、大阪や、名古屋などの大都市では、中小企業業種も非常に多い。また中小企業者の数も多いのです。そのようなところでは、同業者の全体の過半数をまとめるということはなかなか容易なことではないのじゃないかと思うのです。どのようにして一都道府県単位商工組合設立を促進していくものであるかどうか、その具体的な方法をお示し願いたい。また同業組合協同組合単位組合としてその連合会商工組合になれるのであれば、比較的容易だが、そういうことが許されるのかどうか、この点も合わせてお答え願います。
  17. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) ただいま御指摘のように、大都市等におきましては、非常に業者の数が多くありますために、県単位組織するということが非常に困難な場合が現にあると考えられます。したがいまして、私どもはこの組織化についての一般的な方向としては、現在ございます中小企業団体中央会、あるいはまた地方府県単位にあります中央会、これらが組織化についての指導をいたしておりますし、またわれわれとしても、通産局あるいは府県を使って組織化指導に当たっておるわけでございますが、制度といたしましても、ただいまのようなケースを予想いたしまして、特例的に、そういった場合は県単位でなく結成できるという例外を認めることにいたしておりまして、これによって設立について遺憾なきを期していけると考えておる次第であります。  後段の御質問の点でございますが、現在ございます協同組合が、商工組合連合会に直結するというふうな形は、法の体系としては認めておりませんので、そういう形は法律上とれないことになると思います。あるいはその必要がございます場合は、商工組合に移行されて、そして新しく商工組合連合会結成されるということが適当かと思いますが、事情がございますれば、あるいは現在のままやっていただくということになるかと思いますが、法律上はできないことになっております。
  18. 近藤信一

    近藤信一君 従来は、先ほど申しましたように、いわゆる一定地域ということであったやつが、県単位または三府県にまたがってということになると、非常にこれは困難を生ずる。大体これは中小企業組織化ということに目標があると思うのですが、それがこの目標と反するような困難な方法に陥るのじゃないかというふうにも一つの懸念される点があるのですが、この点私どうも矛盾するのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  19. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 現在設立されております商工組合の場合は、ほとんど大部分県単位にすでにできておるわけでございますが、この協同組合制度は、もちろん二十人、三十人の方が同志的に寄って事業活動をされるということができる建前になっておりますけれども商工組合を作り同業界全体としての発展をはかっていこうという趣旨においての組織をされます場合は、やはり私どもとしては、少なくとも府県単位原則であってしかるべきではないか、かように考えておりまして、従来ございますものについては、今度の経過措置においても、特別の事情があってそういうことになっておるものもあるわけでございましょうから、そういうものについては特例的に経過措置で従来どおりにやってよろしいということにいたしておりますが、今後結成いたします場合は、一応この原則によってやっていただく。ただし先ほど申し上げましたように、地方特産品でございますとか、あるいは県によっては、非常に県単位結成が困難な場合には、特例的にそういった地域府県以下の単位においても認めるということにいたしておりまして、これによって組織化をすることができるように私どもは考えておる次第でございます。
  20. 近藤信一

    近藤信一君 現在商工組合都道府県未満地区のものが、先般委員会でいただきました資料の「商工組合の現況」というのによりますると、九十ございます。これはどんな業種組合であるのか、この改正案の附則の経過措置で、現在設立されている商工組合はそのまま認められることになっているが、原則として地区都道府県単位としたのでございまするから、将来はなるべく都道府県未満地区のものを都道府県単位のものに組織がえさせる方針であなたのほうは臨んでおられるのか。それともその業界特殊事情を考慮されて、これは現状のままでいいと考えておられるのかどうか。この点はいかがですか。
  21. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 私どもとしましては、組合に特別の事情がございます場合は、これは別でございますけれども、できるだけやはり府県単位に持っていくように指導をいたしたいと考えております。ただしこれは、従来できておりますものは、特に過去のいろいろないきさつもございますし、あるいは財産関係その他の問題もございますので、これは無理をしてやるわけには参らぬと考えております。その点は十分事情調査勘案して適切な方法をとりたいと思っておりますが、方面といたしましては、できるだけ府県単位に持っていくようにいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  22. 近藤信一

    近藤信一君 で、九十ございますその組合業種別はどんなのですか。これは、一枚資料をいただきました、これに都道府県未満地区のもの九十とありますが、その点について。
  23. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 資料は、こまかくなりますのでお配りいたしてございませんが、八十九のうち工業組合製造工業関係が七十五でございます。商業関係が十四でございます。工業関係で大きなものは繊維関係でございまして、この関係が六十九でございまして、あと残りの六つは、窯業関係でございます。陶磁器といいますか、瀬戸物の関係、これが窯業関係でございます。商業組合内訳は、繊維の織物の取り扱いが十二で、その他小売商関係が二でございます。
  24. 近藤信一

    近藤信一君 小売商関係というと、どんなところですか。
  25. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) ちょっとただいま内容はわかりかねますが、現在ございますのにも、佐賀県に一つと三重県に一つございます。佐賀県のものは、唐津の化粧品関係小売商でございます。それからもう一つは、うどん屋さんの組合のようでございます。
  26. 近藤信一

    近藤信一君 今お答えになりました地区では、たとえば商店街組合というふうなものはないのか。ないからこういうふうな商工組合を作っているのか。それとも商工組合商店街と重複した点があるかどうか、この点いかがですか。
  27. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 現在の商工組合は、設立町の不況要件が非常にございますので、実際上商店街組合等についてはなかなか結成する条件がそろわないということで利用できない格好になっております。協同組合を作っておられるのは、商店街協同組合の形で作っておられるのは相当ございます。それから私どもの聞いております範囲では、任意団体として、法律に基づかない任意団体として相当結成されておるものが多いようでございまして、商工組合としては商店街組合は事実上現在のところは結成されたものはないといってよろしいのではないかと思います。
  28. 近藤信一

    近藤信一君 商工組合設立区域都道府県に限定しておりながら、その地域特例を設けている。特例を認める場合の政令で定める基準として、どんなものをあなたのほうでは考えておられるのか、この点を、おわかりであれば、お答え願います。
  29. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 先ほど申し上げましたように、特例といたしましては、一つ地方特産物——ある町にほとんど全国の大部分産業が集まっておるというようなケースもございますが、特産的な地方特産物についての組合、これは特例を認めます。それから一つは、大阪とか、東京あるいは名古屋あたりに多いのでございますが、さっき申しました繊維関係等で非常に業界の数が多くて、府県単位では大き過ぎるので、結成が非常に困難である場合には、それ以下の単位結成してもよろしいという例外措置を認めております。かりに団体法を使って商店街組合を作られる場合がございますれば、これももちろん特例として扱っていけると思っております。  大体まあ考えられる点は以上のような点でございますが、これはその他もし必要がありますれば検討してつけ加えたいと思います。
  30. 近藤信一

    近藤信一君 特産物ということになると、なかなか範囲も僕は広くなってくるのじゃないか、こういうふうに思うのですが、その点特に特産物として限定されるのかどうか。というのは、まあ日本は狭いという関係もあって、特産物は、たとえばあっちこっちに同じようなものが特産物としてあるわけなんですね、そういう点はどうですか。
  31. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 普通できておりますのは繊維関係、あるいは機械にいたしましても、自転車にしましても、大部分特産とはいいかねるものでございますが、通常の場合は原則によるわけでございますけれども、たとえていいますと、適当かどうかわかりませんが、刃物なら刃物の特殊な集まり、あるいは洋食器の特殊な集まり、こういった工芸品等地方の特殊なものがあるということですが、そういったものは特産品として考えてよろしいのじゃないか、やはり数からいいますと、特産品といいましても数の上では非常に多いものではないであろうと思っております。
  32. 近藤信一

    近藤信一君 商店街組合は今まで集団的な不況要件が存在しなかったために、法律では設立できるようになっていたにもかかわらず、現実にはなかなか不況要件がそろわないので設立ができなかった。今度の改正案によって設立されやすくなると思いますが、商店街組合は各地に設立されると、ところによって商工会組織とぶつかり合う面が出てくるわけなんです。そこで両者の間に摩擦を生ずるようなこともこれは予想されるわけですが、この調整についてあなたのほうではどのように考えておられるのかお伺いします。
  33. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 団体法によりまして商店街のための商工組合といいますか、これを結成することももちろんできるわけであります。この場合に、やはりこれは目的が多少違ってはおりますけれども地方によっては、商工会の——現在結成されたばかりの商工会が、商店街組合結成されることによって、まあ成長を妨害されるといいますか、まとまりが、秩序が乱れてくるという場合も予想されますので、私どもとしましては、この商店街商工組合結成します地域政令で定めるということにいたしてございまして、この場合、主として六大都市ないしそれに準ずるような大都会で商店街組合結成の必要もまた多いかと思いますので、まあそういった面を配慮して政令で定めるところによって地域を定めて、その範囲でやっていただくという考え方をいたしておるわけでございます。
  34. 近藤信一

    近藤信一君 今局長が言われましたように、大都市では商店街相当発展しているのですね。むしろ私は、商工組合よりも商店街組合のほうが勢力を持っているのじゃないか、こういうふうに思うわけなんです。そこで、どうしても同じような組織で競争するということになってくるわけなんですが、そういう点が非常に心配になってくるわけなんです。そこで将来その両者の間に摩擦ができないように、あなたのほうでは十分に思慮することが必要じゃないかと、かように私は思うのですが、いかがですか。
  35. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 御指摘のように私どもも、まあ商工会の場合もそうでございますし、地方商工会議所の場合についても類似のケースがあろうかと思いますので、そういったものについては商店街組合結成については十分私どもとしても配慮を払って指導して参りたい、かように考えておる次第でございます。
  36. 近藤信一

    近藤信一君 それから今度の改正によりまして、商工組合不況対策としてだけでなく、経営合理化事業を行なえるようにしております。したがって、商工組合事業内容も拡充して、不況カルテルのほかに、業界に対する指導教育事業、さらには経常合理化をはかるために合理化カルテルもできることになっております。また、従来からの協同組合事業とほとんど同じこともできることになっているわけなんです。このように商工組合はきわめて広範な事業を行なえることになるが、このうち、どの事業商工組合事業として最も望ましいものであると考えておられるのか、またどの事業重点的にあなたのほうでは進めようと指導されておられるのか、この点お尋ねします。
  37. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 私どもとしては、この調査指導教育専業、こういった事業と、合理化カルテル結成するいわゆる合理化事業不況の場合の調整事業、これらはいずれも、いずれに重点をおくとかいうことではございませんで、すべての事業活動について積極的に考えていきたいと思っておりますが、常時は、平時はやはり組合活動調査活動、あるいは情報活動、これが平時仕事としては中心になろうかと思いますが、さらに不況事態ではないけれども業界の全体の経常合理化をはかる、あるいはコストの引き下げ、技術の向上とか、そういった面の業界全体の合理化をはかるために合理化カルテルを作るということがかなり広く行なわれるのじゃないか、また不況時になれば、業界全体としての不況カルテルという問題になろうと思います。いずれに重点を置くかということでなく、これらの事業を並行して、その組合の実情に応じて考えていきたいと考えておるわけであります。協同組合と違いますので、共同施設につきましては、これはやはり付随的な仕事というので、共同施設なり共同事業そのものを中心にいたします場合は、やはり協同組合でいくのがよろしいのじゃないかと考えておりますが、そういうことも考えております。
  38. 近藤信一

    近藤信一君 公取のほうでは、不況カルテルについてどういうふうに考えておられますか。
  39. 佐藤基

    政府委員佐藤基君) 商工組合不況カルテルにつきましては、従来も商工組合結成要件であると同時に、そのカルテルについての制限がありますが、それらの点においては今度の法律は、結成要件がどうかという点は違いますけれども不況カルテル自身については変わりはないものと考えております。
  40. 近藤信一

    近藤信一君 業界に対する指導、教育事業商工組合の重要な仕事でございます。一体どのような方法組合指導に出たるのであるか、各商工組合業界指導するに足りる人材を常置して、そしてあなたのほうでは指導に当たるというふうなことを考えておるのかどうか、この点いかがですか。
  41. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 組合指導事業といいますか、これにつきましては私どもも従来中小企業団体中央会が、各組合のそういった仕事中心になって動くという制度にいたしまして、これに力を入れ、政府も補助金を出して、全国及び府県中央会が具体的な指導に当たっておるわけでございますが、私どももやはり組合指導員の、まあ何といいますか資質の向上ということが非常に大事なことでございますので、そういった指導者の教育という面についても相当中小企業庁といたしましてもやっておりますし、中火会においてもやっております。また中小企業の今後はセンター等もできるわけでございますが、こういった各面を通じてやはり組合指導に当たっていきたいと考えておるわけでございます。商工会におきまする経営改善普及員のような制度組合に置くかどうかという点につきましては、組合性格から見まして、これはやはり業界が自主的に指導態勢を作っていただくということでいくのが制度上よろしいのではないかと考えておりまして、現在のところは商工会と同じような制度は目下のところは考えておりません。
  42. 近藤信一

    近藤信一君 そこで商工会には、国の補助で経営改善普及員というものを配置しているわけなんです。中小企業者のめんどうなんかも、その経営改善普及員というものがいろいろと関係しているわけなんです。商工組合についてもこれに似た制度を何か考えなければならぬじゃないかと私は思うのです。ただ中央会にまかしていくというのじゃなくして、やはり商工会と同じような組織でもございますし、また何らかの形で商工組合の行なう指導事業について国が助成措置をとるというふうなことも考える必要があるんじゃないかと私は思うのですが、長官の御答弁ではそうでなくして、中央会ですか、中央会のほうでいろいろとやっていくと、こういう御答弁ですが、私はほんとうに中小企業組織しようということになれば、もう一歩積極的に事業指導というものをやらなければならんじゃないか、かように私は思いますが、この点いかがですか。
  43. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 御指摘のように、やはり商工組合結成し、これを強化していきますためには、指導事業についてわれわれとしても、政府としてもできるだけ助力もし、援助もするということが必要だと考えております。当面、経営改善普及員制度については、経済行為を行ない得る態勢になっております組合に対して助成ということになりますれば、多少これは問題があろうと思いますが、何らかの方法において、できるだけ商工組合指導事業を助成していくという意味についての方法については、私ども検討をして参りたいと考えております。
  44. 近藤信一

    近藤信一君 この点はかって私ども商工会組織のときにも、これを強く要望したわけです。それというのは、農業改善普及員ですか、あれには相当国は力を入れてやっているわけです。わずかの予算で商工会経営改善普及員というものが配置されている。実際、日本の農業と中小企業を比較すると、それは数的には農業のほうがずっとはるかに多いのですが、今日本の中小企業の苦況という立場からいけば、私は農民と同じような苦況の立場に立たされている。こういう点を考えて、やはりもう少し政府としても積極性を持って、そして国の助成措置というものを考える必要がある。そうでなければ、私どもはいつも毎年同じような法案を審議するわけですが、一向に中小企業は目に見えるような振興ということが、少しも起こってこない。ここに私は一つの欠陥があると思うのですが、この点いかがですか。
  45. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 中小企業の対策としましては、商工会に対する制度というものは二年前にできましたわけで、来年、三十七年度は国の助成金は十億をこえるということになりましたのですが、全般としましては、やはり中小企業対策としても、われわれもまだ十分でないと考えておりまして、御指摘のように、ことに組織化を進める上におきまして、商工組合活動を活発にする意味においての政府の助成措置につきましては、いろいろ方法が考えられると思います。なお、私のほうとしても今後努力して、御趣旨に沿って参りたいと考えております。
  46. 近藤信一

    近藤信一君 内容に移っていきまして、第十七条第一項第四号、ハに「役務に係る資材の購買の方法に関する制限、役務の提供価格の制限又は役務に係る資材の購買価格に関する制限」というのは、具体的にどのような内容の制限であるのか、説明していただきたいと同時に、なぜ今回これらの制限も追加したのか、その理由を明らかにしてもらいたいのであります。
  47. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) この事例といたしましては、電気工事に使用する資材等の購入代金支払いとか、購入資材の受け渡し時期、場所の協定、資材の共同購入、こういったことで、役務を提供する事業——一般生産事業はかなり広く初めから規定されておりますが、役務に係る資材の購買方法に関する制限、役務に係る資材の提供価格に関する制限、こういったものは従来入らなかったのでございますが、仕事内容から見ますると、生産事業も役務提供事業も同じ仕事をやっているわけでございますから、こういった資材の購買についても協定ができるようにしたいと、これは御要望もございましたし、われわれとしてもその必要があると思いまして改正したわけでございます。これはたとえば床屋さんがポマードを買う場合に協定するということも可能なわけでございますが、そういった意味で役務提供事業について、生産事業者と同じように資材の購買について協定ができると、こういうことで認めようという趣旨でございます。
  48. 近藤信一

    近藤信一君 第十七条第一項第四号のイからハまで、不況カルテルとして各種の制限を列挙しているにもかかわらず、これだけの制限があるとこのほかにどんな制限が必要か考えられないが、さらにニとして、「イからハまで掲げる制限のほか政令で定める制限」と規定しております。この政令で定める制限としてどのようなものが考えられるのか、この点もあわせてお尋ねいたします。
  49. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 私どももこのイからハまででほぼ必要なことはできると考えておるわけでございますが、ニにおいて政令で定める場合としまして考えられます場合は、たとえば統一原価計算カルテルを作る、あるいは原材料の種類に関する制限というようなことがあり得るんじゃないか。販売業者の販売設備に関する制限ということもあるいは出てくるかもしれぬと考えておりますが、予想されますことはそんなことでございます。しかし大部分はこのイからハでカバーできると考えておる次第でございます。
  50. 近藤信一

    近藤信一君 公取委員長にこの点お尋ねしますが、この不況カルテルとして、こうしたいろいろな制限が加えられるわけでございますが、この点について、あなたのほうは、これが妥当であるというふうにお考えになっておるのかどうか、この点お願いいたします。
  51. 佐藤基

    政府委員佐藤基君) 不況カルテルにつきましては、条件がちゃんと備わっております。一方商工組合の現実の必要性とあわせて考えまして適当であると思います。
  52. 近藤信一

    近藤信一君 この改正案に、第十七条の商工組合事業範囲を拡充し、特にいわゆる合理化事業を進めるために、第一項第五号として「技術の向上、品質の改善、原価の引下げ、能率の増進その他経営合理化を遂行するため特に必要がある場合における」制限として、イ、ロ、ハと、こう分けて制限内容を列挙しております。合理化カルテルを実施をする場合に、見方によっては三つの相反する面があると思うのであります。すなわち一部大企業も参加する商工組合で、経営合理化という名のもとに、不況でもないのに製品の種類や種類別の生産数量を制限することになれば、一般消費者や関連事業者にとっては、場合によっては相当な不利益をもたらすおそれもございます。しかし第十七条第一項の第五号にはただし書きがあって、数量や価格などに不当に影響を与えるものを除くと規定しております。さらに第十八条の調整規程の認可の規定や第十九条の規定の中でもそれぞれ認可の要件をしぼっているのでございます。こうなりますと、商工組合合理化事業というものは、容易に実施できにくいことになっているようでもあるのです。そこで一体この改正案の趣旨からして、商工組合合理化事業をどういう方式で具体的に進めていこうとされているのか、業界の安定と消費や関連事業への影響とのかね合いをどうやってとっていかれるのか、この点お尋ねいたします。
  53. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 私どもは、やはりこの中小企業組織化が必要だという基本的な考え方としては、やはりまあ近代化の上において大企業におくれておる、要するに、経営合理化が全般としておくれておると考えられるわけございますから、この面について、合理化目的のためでございますれば、できるだけ、やはり同業界が協調して、そして合理化目標に向かって進むという体制を積極的に進める必要がある、かように考えておるわけでございます。ただこれが合理化範囲を逸脱して、関連事業者、あるいは消費者に不当な影響を与えるような協定になりますと、これはわれわれとしては認めるわけに参りませんので、この点は、われわれの認可にかかっておりますし、同時に公正取引委員会に同意を求めなければならぬ建前になっておりますから、われわれとしても監督の面で十分逸脱のないようにして参りたいと考えておる次第でございます。
  54. 近藤信一

    近藤信一君 合理化事業を進めていきますと、やはり落ちつくところは消費者との今度は面で、相反するような面が出てくると私は思うのです。そういう点の調整はどういうふうにされるお考えですか。
  55. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 私どもは、合理化ということになりますれば、やはり技術を向上するとか、あるいは合理化によって原価を引き下げていくというのがねらいでございますから、結果においては、これはむしろ消費者の利益になるのが合理化ではないか、これは経営者の利益にもなりますけれども、消費者のためにもなるのが合理化カルテルではないか。ただ数量協定、あるいは価格協定ということになりますと、特に消費者に影響を与えるということになっておりますから、いわゆる不況カルテルにおいてやっておりますような、数量協定、価格協定は、合理化カルテルとしては認めないということに建前上なっておるのでございまして、その点は今後運営についても十分注意して参りたいと考えております。
  56. 近藤信一

    近藤信一君 合理化事業によって、コストを引き下げるのが目的で、消費者にも利益になる、こういうふうに長官も御答弁されましたが、私は往々にして他の面から見ますると、たとえば今度入場料の引き下げということが国会で問題になりましたが、もう業者は入場料が引き下げになる前に入場料を引き上げまして、そして用意してやっておるというふうなこともあるわけなんです。で、原価が安くなる、コストが下がるからといって、業者は、じゃあこれだけ今までもうけておったから、今度はこれだけセーブしてというふうなことには、なかなかこれはなりにくいと思う。特に日本の従来のいろいろな面から見ますると、そこでやはり目的はそこにございまするけれども、実際上は、なかなか今長官が言われましたようなところまでくるかどうか、こういうことが非常に私心配になると思うのですが、この点はどうですか。
  57. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) まあ先生御指摘のように、そういった事例もまま私どももあろうかと思っておりますが、私どもとしましては、法の建前としては、合理化カルテルはあくまで合理化目的でございますから、この運用において合理化目的ということが、ひとつ監督を十分注意をして参りたいと思っております。ことに価格協定——ただいま問題になりますケースは、価格の協定の場合に多いかと思うのでございますが、価格協定は不況カルテルとしてしか認められないことになっております。そういった乱用のないように、私どもとしては認可その他の監督の面で厳重な注意をして参りたいと思っております。
  58. 近藤信一

    近藤信一君 そこで私はこの商工組合ができて、そしてそのねらいというのは、今長官も御答弁の中にございましたように、まあ合理化事業によってコストを下げていく、ここでは、私も大いにそのことには賛成だと思うのです。しかし過日の委員会でも、私からも吉田さんからも御質問があったように、組合ができると逆な面が出てくる場合があるのです。たとえば商工組合で価格協定をやる。安いほうへ協定するならいいけれども、これは今はとかく小売物価がどんどんと上昇しておる。特にこんなときに値上げしなければチャンスがないのだと、こういうことも私はよく聞くのです。そういうときに、値上げの申請協定なんかがなされたときには、公取のほうではどういうふうに考えておられますか。
  59. 佐藤基

    政府委員佐藤基君) 価格協定につきましては、ことに最近のような物価——消費者物価が上がっておるとき、私のほうとしても非常な関心を持っておりまして、それが、たとえば不況カルテルの場合においては要件を十分備えておるかどうか、ことに関連事業者、一般消費者との関係を重視して認可するものはする、こういう立場でございます。
  60. 近藤信一

    近藤信一君 長官は、今の点はどういうふうに考えておられますか。
  61. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 実は前回も申し上げましたかと思いますが、商工組合によります価格協定は、不況要件その他の条件が厳格でございますが、認可にかかっておりますので、この価格の点についてはわれわれのほうも公取委員会等とも十分協議を尽くして認可をしていくという建前になっておりますが、問題はむしろ協同組合が——前回も協同組合が価格協定をやっているという点について非常に御質問があったように覚えておるわけでございますが、この点について、従来どちらかというと、商工組合制度が利用できないで、まあ協同組合でこの価格協定をやるという形で参っておったかと思うのでございますけれども、私どもとしては今後全体の取引分野に影響するような協定でございますれば、やはり商工組合でやるというのが本筋ではないかと思います。今後はそういう面に向かってやって参りたいと思います。確かに現在の、今日まで協同組合のほうの扱いとして認められております価格協定につきましても、監督面で十分厳重に監督をして参りたいということで、先般も届出ということを組合に通達してございますが、これを実施前二十日前に届出をするということと同時に、この内容についても所管官庁をして、あるいは通産局が、問題があると考えます場合は十分その事情を聴取して、そうして不適当なものがあれば是正するように勧告するという指導方針を立てまして通達をしてございますので、ただいま公取委員長の御方針と同じように、私どもとしても消費者の立場を十分考えて、価格協定には対処して参りたい、かように考えております。
  62. 近藤信一

    近藤信一君 合理化カルテル目的の中に品質の改善をうたっているならば、品質を改善するに最もよい方法は製品検査をやることでないかと私は思うのです。したがって、協定事業の中に製品検査を入れたらどうかというふうにも思われるわけですが、それが今回の法改正には入っていない、いわゆる入れなかったという理由というものは那辺にあるか、この点をお伺いいたします。
  63. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 私どもとしましては、「組合員が生産をする資格事業に係る物の生産の技術に関する制限、その物の種数に関する制限」、これは法律でございますから、非常に制限、制限とネガティブに計いてございますが、実質的には、検査を受けた物しか売らないことにしようというような積極的な検査の事業というものが、これによって協定できると私どもは考えておるわけであります。
  64. 近藤信一

    近藤信一君 品質の検査で合格しても、品質がいいからといって必ずしもその製品がいいというふうには私は判断できないと思うのです。品質の改善までいくということになれば、これは製品検査をするということが当然じゃないかというふうにも一方において考えられるわけなんです。それを今度はその点に触れていないということは、私は何らかこの点が納得いかない点があるわけなんです。この点はどうですか。
  65. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) いろいろまあ合理化の態様としては多数ございますので、法律の書き方としては非常に抽象的にしぼって書いてございますが、私どもは、まあ検査は当然これはやってよろしいと考えておるわけでございまして、特に規格については員外者規制命令まで認めることにいたしておりますが、これは特に品質の面についての同業者の協定というものについては、これは消費者のためにもいいことになりますという考え方で、そういった線を出しておるわけでございまして、私のほうは検査は当然やっていただいて差しつかえないと、かように考えております。
  66. 近藤信一

    近藤信一君 このことは、私がなぜそういうことを主張するかというと、特に輸出品なんかにおいてはこの点非常にやかましいのですね。輸出検査なんかをしても、いろいろと問題が起こってくるというわけなんで、そういう点を考えて、やはり製品の検査ということが厳重になされなければ、いろいろな問題がのちに起こってくるということが懸念されるわけです。この点どうですか。
  67. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 私ども全く同様に考えまして、ことに輸出の場合は品質の問題が最も肝要でございますし、検査の問題も非常に重要なことでございますから、これは国の検査制度もございますけれども、同業者で検査設備を整備して品質の向上をはかることが最も大事なことと考えております。
  68. 近藤信一

    近藤信一君 検査協会もあって、いろいろと検査協会で検査されているが、昨年でしたか、ことしでしたか、検査協会の不正事件があって、厳重に検査をしたと思うけれども、それがああいうふうなことが出てくるわけなんです。そうすると、やはり粗製品が輸出されるということも起こってきて、これはただその産業の製品だけでなくして、日本の産業全体の面に悪影響を及ぼすと、私はこういうふうに思うわけなんで、こういう点も十分指導されるほうで考えなければならぬ、かように思うのですが、どうですか。
  69. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 御趣旨のとおりだと思いまして、今後十分そういう面を考えてやって参りたいと思っております。
  70. 近藤信一

    近藤信一君 今度追加された合理化カルテルのうち、第十七条の第一項第五号の生産物の規格に関する制限だけを第五十六条の二で事業活動規制命令の対象とした理由はどこにあるのか。合理化カルテルはおおよそその事業を営んででいる者は、だれでも賛成してやれるような合理化をすることだと思うのであります。品質の改善でも、技術の向上でも、これを希望しない企業はないはずであると思うのです。そういうことをやらない業者には、規制命令を出して無理やりにも合理化させるようにしてもよいのではなかろうかとも考えるわけなんです。ところがその規制命令を、今申したように、規格に関する制限だけに認めて、その他の制限には認めなかったということは、どういうことですか。
  71. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 合理化カルテルの場合は、やはり経営の改善向上といいますか、業界をベターに、よりよくしようというのが合理化カルテルだと思いますが、不況カルテルの場合は、これはこのままいけば業界全体がどうなるかという浮沈に関する場合になるわけでございます。不況カルテルの場合ですと、員外者規制命令——多少、わずかの方が、員外で値段を崩すとかいろんな問題のために、全体の業界の浮沈に関するということでございますから、これは員外者規制命令は、全体のためにやってよろしいのではないか。合理化カルテルの場合は、業界をよりよくしようということだけのために、員外者まで規制命令を出すのは行き過ぎじゃないかという一般的な御意見が一方にあるわけです。他方に、もう少し合理化カルテルについても、アウトサイダー規制命令を認めるべきじゃないかという御意見もございます。私どももいろいろ検討いたしましたのですが、合理化カルテルについて、あまり員外者規制命令を強く認めるということは、この制度の趣旨からいいましても行き過ぎじゃないか。したがって規格に関しては、規格統一ということは、むしろ消費者の面から見ましても、結局いいことになるわけでございますから、規格に関してはアウトサイダー規制命令を設置してもよろしいのではないか。こういう趣旨で、規格だけに特に員外者規制命令を認める。こういうのが原案の趣旨でございます。
  72. 近藤信一

    近藤信一君 合理化カルテルは、業界の面をよくしようということがねらいなんで、規格に関する制限だけにした。ところが今私が申しましたように、品質の改善や、それから技術の向上ということでございますれば、私はあらゆる業界が、これに反対する者は一人もないと思うのです。そういう点でこのアウトサイダー規制を全部せずにおくということは、ちょっと不親切なようにも考えられるわけなんです。やはりその業界が発展するということであれば、少々無理があっても、これをやるというところに、いわゆる指導性というものがなければならぬと思う。それをほうっておいて、ただ規格の面だけを規制命令で押していこう。こういうことでは私はどうも納得いかぬように思うのですが、この点再度お尋ねいたします。
  73. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 私どもも先生の御指摘の趣旨は了解がつくのでございまして、ごもっともだと考えるのでございまするけれども、問題は、結局、合理化々達成するということからいうと、できるだけ広く、員外者もそのいい制度に従っていくのが、全体のためになると考えられまするが、同時に合理化のために員外者まで強い規制命令を出すということは、法の、今日の制度から見て行き過ぎじゃないかという反省と両面ございまして、私どもも当面、規格についてだけ員外者規制命令を実施させていただいて、今度合理化カルテルを初めて導入したわけでございますので、今後この運用状況を具体的に検討しました上で、さらに改善する方法があるかどうかということを検討するようにいたしたいと思っておるわけでございます。
  74. 近藤信一

    近藤信一君 従来は、事業活動の規制命令の違反者に対しては、罰金を課すだけであったのですが、今回、一年以内の期間を定めて事業停止の措置を加えているが、なぜ罰金刑だけでは不十分であって、今度のように業務停止命令を加えたのか、この点。この法律を施行してから、何か支障を生じたとでもいうふうなことがあって、あなたのほうは、罰金を今度は事業停止ということにされたのかどうか、この点お答えを願いたい。
  75. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) この点につきましては、罰則でございますので、私どもも慎重に扱わなければならぬと考えておるわけでございますが、従来の罰金だけでございますと、規制命令がせっかく出ましても、実は取り締まりの面で十分の効果が上がらないという事実がございますので、この点にかんがみて、今回実質的に、悪質な者に対して、「事業の全部又は一部の停止を命ずることができる。」という点をあわせて措置することができるように改正させていただいて、員外者規制命令を出して、業界全体の浮沈に関する際に、全体の秩序が保てるように、実効を上げていきたいという趣旨にほかならないのでございます。
  76. 近藤信一

    近藤信一君 今の御答弁によりまして、私もわからないことはないけれども、やはり今までは、規制命令の違反者が罰金で済んだのが、今度は新しく業務停止までいくということは、私は若干酷のようにも考えるわけなんです。罰金なら払えばいいわいというようなことも、今までいろいろ聞いたこともあるわけなんです。罰金に対しては、罰金を払って済むことならやっちまえというような事業家もあるわけなんで、あなたのほうが、それを今度事業停止措置をされるということは、これは当然かもしれませんけれども、従来にあまり支障がなかったということであるならば、僕は従来どおりでいいのじゃないかと思うのですが、今まで罰金だけでいいわいということで、だいぶんその規制命令に従わなかった者が現実にあったかどうか。もしあったとすれば、一体どれほどの数字に上るか。この点おわかりであればお答え願いたいと思いますが、この点いかがですか。
  77. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) ただいまちょっと数字を持ち合わせておりませんが、具体的ケースとしてはいろいろございますが、やはり、たとえば数量割当をしておる、そのときに超過して売ってしまう。そうすると、そのためにほかの方が迷惑をした、まあ次回に割当を減らすということもございますけれども、非常にもうかるときにうんと売って、不況になってくれば、少なくてもたいしたことはないというふうなことで、結局は何といいますか、正直者がばかを見るような結果になるということで、非常に声が大きいものでございますから、やはり制度として、非常に悪意、悪質な者に対しては、そういった場合にはっきり割当をとめるなりなんなりということができるという制裁が必要じゃないか、かように考えましてこの規定を入れたのであります。私ども運用としましては、十分、制裁でございますから、運用の面から十分慎重に考えなければならないと思いますけれども、やはり勧告をしても一度、二度やるというような場合にはやるというようなことでございます。やはりこういう制度がないと規制効果が保てないということが現実のようでございます。ぜひこういう改正をすることについてお認めいただきたいと思います。
  78. 近藤信一

    近藤信一君 このことは私は現実にぶつかったこともあるわけなので、いわゆる繊維機械の制限があるのに、現実はむしろじゃんじゃんやっておる機屋がたくさんあるわけなので、この前もこんなことじゃわれわれは生きていけぬから、何とか制限を解いてもらうようにという陳情があったから、ばかなことを言っておると僕は追い帰したことがあるのですが、そういうことで、今長官が御心配されておられるような面は私はあると思うのです。特にこれは繊維関係で多いのじゃないかと私は思うのですが、一部にそういうものがあるからといって、全般的にこういう業務停止を普及するということは、僕はちょっと考えなければならぬのじゃないかとも思うのですが、この点はいかがですか。
  79. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 私どももできるだけこういう制度の発動がないことを念願しておるわけでございまして、やはりこういう制度がございますれば、業界がお互いに自粛をして、そして規制を円滑にやっていただくということができるのじゃないか。できるだけ伝家の宝刀ということにしていきたいと思うのでございますけれども、運用の面では十分注意をして参りたいと思いますが、やはりこういう制度がございませんと、どうも今日の状態ではせっかくの規制が効果を発揮しないということが現実にございますので、これをひとつ御了解いただきたいと思います。
  80. 近藤信一

    近藤信一君 もしここで今度業務停止命令まで出すということになると、相当の効果をあげるというふうに長官はお考えになっておられますか。
  81. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 私はこういう制度があるということによって業界の秩序がよりに保ちやすくなるのじゃないか、かように考えておるわけでござます。
  82. 近藤信一

    近藤信一君 それから強制加入命令が現在までにただの二度も発動されたことがないとすると、今後発動する可能性があると考えているのか、また発動しなければならないと予想しているのであるか、この点はどうですか。
  83. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 強制加入の命令につきましては、御指摘のように今日まで一件もございませんが、これは組合からの申請も出てないわけでございます。これについてはかなり厳格な要件がつけてあるわけでございまして、私どもも、やはりこの身分こと組合に入れる制度でございますから、強制するということはよほどの場合でないといけない。通常の場合はできるだけ業界の話し合いなり行政面の指導あっせんによって任意的にひとつ組合に入っていただくというのがわれわれの組織化の行政指導の基本方針だと考えておるわけでございまして、この強制加入の規定は、私どもとしましては今後もきわめて慎重な運用になろうかと思います。まあほんとうに特定の一、二の方のために全体の業界が非常な混乱をするという場合で、話し合いでどうしてもいかぬというようなケースの場合に、これが適用される場合もあろうかと思いますけれども、私どもとしてはできるだけこれは発動しないで、むしろ自主的に行政指導あるいは話し合いをつけてやる方向にいきたい、かように考えておるわけでございます。
  84. 近藤信一

    近藤信一君 員外者の規則は、何も強権的な強制加入命令を発動して員外者を無理に組合の内部に入れなくても、アウトサイダー規制命令だけで十分ではないかと思うのです。現にアウトサイダー規制命令だけで十分効果を上げているのではないか、今回中小企業組織としての商工組合性格を制定した当時とまるで違う。性格に大転換をしようとする改正案を作成する際に、なぜ問題のあった第五十五条の強制加入命令の条項をあえて削除しなかったか。その真意は一体那辺にあるのか、その点お尋ねいたします。
  85. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) この点につきましては先ほど申し上げましたような趣旨でわれわれとしても員外者規制命令によってできるだけ経営の安定をはかるための方法を取ってもらいたい、かように考えておるわけでございますが、この点につきましては、やはり先ほど申し上げたようにこの方法によることが最も適当であり、また、これ以外に方法がないという場合も予想されないわけでもございませんので、現在ある規定でございますので、そのまま存置してわれわれとしては運用の面でできるだけ強制加入命令は発動しないで行政指導なり自主的な話し合いによって加入を促進していくというふうに運用したいと考えてるわけでございます。
  86. 近藤信一

    近藤信一君 この強制加入命令の問題については、この団体組織法が成立する前に、この委員会でも審議して非常にこの点に問題があった。われわれは強制加入ということは憲法に違反するのじゃないかというふうな主張までして、この問題に対しては議論をしたわけなんです。それにもかかわらず、これが制定当時のときにはそのまま通りまして今日に至っているわけですが、今までに強制加入命令を申し出た数、何といいますか業界、こういうようなのはどれくらいあったのか、それとも全然なかったか、この点はいかがですか。
  87. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) 現在まで発動した事例はございません。これは結局、今日まで申請は一件もなかったわけでございます。申請があって条件がそろっておって発動ということになるわけですが、今日までそういうことで発動いたしておりません。
  88. 近藤信一

    近藤信一君 現在まで発動した事例がないとするならば、私はあえて今度の改正案にこれをそのまま強制加入命令の条項を置いていくということは不必要じゃないかというふうにも考えられるのですが、この点はいかがですか。
  89. 大堀弘

    政府委員大堀弘君) まあ、私たちとしては、この必要な場合は絶対ないということも予想できませんので、やはりこの方法によることが全体のために一番いいという場合も予想されますことが一つと、やはり組織化の面からいうと、もう少しそういう面を強化しろという御要望もなかなか強い面も一方にございますものですから、これは団体の中にもそういう御要望を強く出しているところもあるわけでございます。しかし、私どもは現状において、現状の制度のままでは、しかも私どもとしては制度の趣旨から見ても、運用の面できわめて慎重な態度を取っていかなければならぬと考えておるわけでございますが、特にこれを削除しないでこのままひとつ存置をさして伝家の宝刀といいますか、最後の場合に必要な場合も予想されますので、そのままの規定にしておいておきたいというのが提案の趣旨でございます。
  90. 近藤信一

    近藤信一君 ちょうど私の質問が終わりごろに、通産大臣がお見えになったので、大臣に一点だけお尋ねしておきたいと思いますが、先ほど長官への質問の中で、私が商工組合が容易にできるようになった。しかし、政府が何回かわっても、また通産大臣が何回かわっても、中小企業の振興ということは、なかなか口では簡単でございまするけれども、実際には困難な面がたくさんあって、一向に振興され得るようにも向いていかない。そこで、せっかく商工会には改善普及員というものが配置されて、そして、それがまがりなりにも指導普及というものをやっておるが、商工組合にはそういうものがない。そこで、先ほど長官は、来年度のときには何とか一つよく考えたいという御答弁があったのですが、実力者である佐藤通産大臣のことだから、もう抜け目はないと思うのですけれども、来年になれば通産大臣をやっておられずに総理大臣になられるかもしれませんが、商工組合組織して、そして、将来中小企業発展のために寄与するということであるならば、やはりそういう面も十分考えていかなければならぬと私は思うのですが、この点について、ひとつ大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  91. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま近藤さん御指摘のように、中小企業の重要性を考え、また同時に、その弱点などを考えると、よほど行政の面で指導し、また強化していかなければならないものが非常に多いように思います。もともと弱い業者、しかも、お互いに非常に激烈な競争をしている、こういう場合におきまして、やはり独自性は尊重して参りたいと思いますが、ときに団体の力で強いものに拮抗していくということも必要じゃないか、こういうように考えますので、どちらかと申しますと、私は組合組織というほうを指導したい気持は多分に実はあるのでございます。過去におきましても、あるいは商工組合あるいはその他の同業組合あるいは地区的な商工会それぞれの団体がございますけれども、なかなか行政指導の万全を期して参りましても、業界というものがそういう点についての理解を十分持たないと、思うように組合結成も進むものではございません。もともといわゆる国の権力によってどうこうするということは避けたいと思いますけれども業界の自主的な組合結成、これには力をかしたい、こういうように実は考えておるわけでございます。そういうことを考えておるものから見ますると、政府があるいは国が関与いたしますにいたしましても、その自主性、独自性は尊重していきたい。しかしながら、なかなか工夫あるいは研究等につきましても、思うようにいかないのが現状だと思います。そういう意味から見ると、商工会指導員などはある程度役立っているのじゃないかと思います。これは今日までの商工会指導員の人選、あるいは働き等も予算的措置等から見まして、これは十分でありません。これはなお私ども商工会そのものともよく連係をいたしまして、十分その機能を発揮するように予算的措置も講じたいと思います。同時にまた、今御指摘になりますようなこの商工会自身の制度と同様のものを商工組合等につきましても、その必要のあることも考えられますので、これらの具体化についてはもう少し検討させていただきたいと思います。ただいまちょうど私おくれて参りましたが、きょうは中小企業関係の現場をひとつ見てくれということで、ただいまお話をして参ったのです。主たる問題はやはり過当競争をいかにして防ぐか。しかもその独自性をいかにして生かすか、その競争と協力、この二つの面で調和をとっていかなければならぬ。しかも日進月歩といいますか、どんどん進んでいく企業の内容もおくれをとらないように、そういう意味では適切な協力機関が必要だ、かように考えますので、よく検討してみたいと思います。
  92. 近藤信一

    近藤信一君 最後にもう一点大臣に要望しておくのですが、何としても、日本の産業構造から言って、日本の中小企業はなかなか軽視できないと思うのです。ところがその中小企業は、金融の引き締めがあればすぐそのしわ寄せがくる。それから好景気のときには、大企業の系列にいていろいろな面で恵まれることもあるが、まあおおむねどちらかというと、日の当たらない産業としていつの場合でもまっ先にその被害をこうむるのが中小企業なんです。で、いろいろ法が制定され、法の改正も毎年々々やるわけですが、一向に浮かばれてこない、依然として中小企業中小企業として下積みであえいでいなければならぬ。そこで私が考えるには、いくらいい法律ができても、なかなか中小企業の発展などということは考えられない。そこで問題は、税制面で、これは大きな一つ改革というものをやらなければ、現在の日本の中小企業としては生きていくのに非常に私は困難だと、こう思うのです。そこでやはりそういう税制面で何とか救ってやるような大きな手を打たなければ、今のうちに中小企業の生きていく方途というものを考えなければ、あの大企業で特に斜陽族といわれた炭鉱自体が、今日石油に押されて、だんだんと大きな山もつぶれていってしまう。ああいうところまで行き詰まってしまってから対策を立てるのでは、私はおそいと思うので、やはりこういう法の改正も大切でございまするが、何といっても、僕たちがいろいろと聞くには、税の問題が一番中小企業ではこたえているわけなので、こういう面についてひとつ政府としても十分考えて、そうして税制面で中小企業の諸君を救済し、生きていけるようなひとつ方法を政府としては考えていただきたい、かように私は思いまして、私の意見もまじえて大臣に要望しておきます。
  93. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 中小企業に対する政府、まあ国の考うべき点はいろいろあると思います。その中でかねてから資金、税制というようなことが言われておりましたが、最近は特に労務関係も強く、対策を緊急に立てなければならない問題になっております。で、中小企業と一口に申しますが、大企業と関連のあるもの、あるいは中小企業だけで独自なもの、しかもまたその中小企業自身が下請にずいぶん出しておるのです。きょう午前中見ましたのが玩具、おもちゃを作っている工場でございますが、この工場なども小さな工場でありますが、しかしそれでもなおかつ下請に相当部分を出しておるということでございます。そういうことを考えますと、経済の活動というものはちょっと想像以上に複雑でございます。そういうものを対象にして行政を行なっていくのでありますから、ただいま言われましたものが一つの基本線であることはもちろんであります。これはよく考ていかなければならぬ。金融は三公庫等、国の特別資金のものがございます。これらの運用等にあたりましても、あるいは輸出産業であるというような点について特にめんどうを見て参りまして、一般金融引き締めの際でございますから、今近藤さんが御指摘のように大企業につながるものとすれば、本来なら安定的な経営ができるはずのものが、最近のような金融逼迫から見ますと、系列下にあるものも非常に苦しい立場に置かれているようであります。比較的独立した中小企業のほうがやりいいんじゃないか、これは私どもが資金の面でいろいろ見ましても、そういうような数字が出ておるようでございます。ところが税制の問題になりますと、それぞれの産業の特殊性がございますが、全般としての公平の理論といいますか、そういう立場でいろいろ負担をきめて参るものですから、その意味で中小企業なるがゆえに特に引き出すことはなかなか困難でございます。しかし経営体なりを指導することによりまして、また税制に関する法律がなかなか複雑でございますので、申告その他の手続等におきましても、よほど指導を十分いたしませんと、なるほどそういうことがあったのかというようなものもあるわけでございます。私なども今ちょうど申告時期に参りましたけれども、自分自身の所得を申告するということが、非常に単簡な、月給をとっておるものでも、思うようにいわゆる税制自身で期待しておるようなものになかなかできません。大蔵省にいた関係で、その専門のものに特に委嘱してやらせてありますが、ことに業界中小企業の方々からお考えになりますと、税務署の役人は税金をとるほうばかり考えている。まける工夫などしてくれないというので、法規なども自分の不十分ながら持っている知識だけで片づける、あるいは税務署が示してきてくれる形だけでその申告をなさる、こういうところにもいろいろ実情に合えばもう少し負担が軽くなるというようなものも見逃がされておる面もあると思います。だから商工会指導員なども、税については、もう少し税法に明るいものが、ほんとうに業界の方に、会員に手をとって教えるような気持があると、税そのものもそうむずかしいものではないと思うのです。しかし、なかなか経営の実態に触れるというので、言ったほうがいいのか言わないほうがいいのか迷っている、それが後に問題が起きたりしますから、そういう点がもう少し指導の面でうまくできないものか、こういうことが実際の面で考えられる。で、ただいまお示しになりましたように最近は法人化が非常に多いのであります。個人経営の場合などでも、経費として落とす。それなどはいろいろ議論があるようでございます。これはどうも制度そのものとすれば、各産業間の均衡、負担の均衡といいますか、その原則に立っている、かように考えなければならぬ。しかもその負担の原則に立ってみて、非常に不都合なものがある。最近は特に中小企業と農民との負担をよく比較されます。そういう意味で、私どももちろん研究の余地はあるだろうと思いますが、ただいままでのところは、そういう原則から見て、一応の均衡はとれておる、かようにみておりますが、なお、実際の面の指導が特に必要だと思います。ただいま近藤さん御指摘になりました幾つかのもののうち、特に中小企業の方が弱いと考えられる税について、ひとつ考えろと御指摘になりましたことは、至極ごもっともなお話だと思います。私ども制度そのものについても考えて参りますし、また実際の運用等についても十分徹底するように指導したいものだと思います。今回の物品税などの軽減は、そういう意味では中小企業の方に役立ち、同時にまた税のあり方等についても、庫出しの時期なりあるいは販売の時期なり、いろいろ問題になっておりますし、ことに小売り値を上げないということを行政指導として申し上げ御協力を願っておりますその立場からは、やや税のあり方の実際についての御検討も、いただけたのじゃないかと思います。これは非常に大事なことでありますから、一そう注意することにいたします。
  94. 武藤常介

    委員長武藤常介君) 他に御質疑はありませんか。——他に御発言もなければ、本案の質疑は本日はこの程度にとどめます。速記をとめて。   〔速記中止〕
  95. 武藤常介

    委員長武藤常介君) 速記を起こして。   —————————————
  96. 武藤常介

    委員長武藤常介君) 次に、輸出保険法の一部を改正する法律案を議題とし質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  97. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 輸出保険法の一部を改正する法律案についてお尋ねする前に、ひとつ、ただいま近藤委員のほうから中小企業の振興の問題がありましたが、私非常に重要ではないかと思うことを感づいていますので、申し上げて御所見をお伺いしたいと思うのですが、実は私は暮れから正月にかけまして、東京のある宗教法人が、オリンピック道路に接収されるものですから数億円の用地買収の金が入って来る。それは非常に資産内容がいいので差し迫ってその金を必要としないから、どこか安全な確実なところに預託するということになって、私実は大蔵省と通産省の中中小企業庁に参りまして、私少し知っている人であるし、その宗教法人の責任者が、安全確実なところにひとつ預託して何年でも置いていい……。それで大蔵省に行き通産省に行ったのですが、大蔵省は、名前は言いませんが、銀行局は、はなはだ私の受けた印象では、信託銀行に気がねして積極的に商工中金等に預託するようにという運動をなかなかつべこべ言ってやらないのです。ところが幸い、中小企業庁に行って、金融説長、大堀長官等に話しましたら、さっそくそれでは話してみましょうということで、北野理事長等も行き、なるほど商工中金は預託金利も安い、しかし安全な投資ではあるということで、まあ東京都のオリンピック道路の用地の価格がきまれば、若干は何年でも預託するわけなんです。そのときにとった大蔵省の態度というものは、結局いろいろ粉飾をしていますが、それはもう信託銀行の心配から気がねして、積極的にその金融難に悩む中小企業のほうにそれを預託してもらうようにそう積極的なことを言わない。結局それはいろいろつべこべ弁解はしていますけれども、それはもう信託銀行なんです。すでに年末に七億出て、そのとき私知らなんだのですが、それは有力な信託銀行がその預託の争奪戦をやっているのです。そういう点に、そういう信託銀行を心配して商工中金等に対する熱意のなかったところが私は非常に問題で、これは一体どういうことであろうと、まあ大蔵省を定年になってやめたときには大きな信託銀行にでも行かなけばならぬ、平素大切にせねばならぬだろうというようなことをいろいろと考えたのですが、私はこの態度は——はっきり言いまして、明治神宮なんですよ、明治神宮は、まあ金利は少し安い、しかし安全な国の何だから預託してもいと、こう言っているのに、大蔵省がそれに対して信託銀行を心配している、こういう態度こそ、その態度の中に私はやはり非常に中小企業問題に対して根本的な財政金融的な裏づけのある対策ができぬ一つではないかと思うのですが、幸い中小企業庁——まあ佐藤大臣をわずらわすこともないと思って、中小企業庁に行きましたら、秋本課長その他理事長も行かれたりして、遂に若干な預託しよう、こういうところまでいって、値段がきまりさえすれば若干預託するわけですが、そういう態度が私は非常に問題になると思う。いろいろ言っているけれども、何も理屈はない、もう信託銀行を気がねしていることは明らかなんです。私はこういう態度を改めぬと、やはりなかなかこれは問題じゃないかと思うのですが、その点いかがでしょうか。
  98. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 中田さん、それはたいへんありがとうございました。お礼を申し上げますが、中小企業のほうは必要な資金でございますから、できるだけ勉強してと言いたいけれども、これはさまっていることですから、金利は思わしくないと思いますけれども、御利用願う、特にそういう処置をとられたことはまことにしあわせでございます。私からもお礼を申し上げます。大体この金融のお話、まあ中田さんがそれだけ打ちわったお話をなさると、相手の人もそのお気持について別に誤解はないだろうと思いますが、誤解がもしあればいろんなことが出てくるだろうが、たいへんきれいなお気持でお話になっていらっしゃる、それにやはり応じた御返事を申し上げるのが筋だろうと思います。ただ、いろいろ競争している銀行あるいは相互銀行等があります場合に、役所がこれだということを具体的に申しますと、いろいろ批判を受けるというようなことだろうと思います。通産省関係は御承知のように政府関係の機関が非常にはっきりしておりますので、これはもう窓口も一つならば、出ていくところも一つだということで、選択の余地がない、これは非常に話がつきいい、ただ、大蔵省の場合は、私関係したことがございますが、甲だとか乙だとかいうことは非常に困難な立場にある、そういうことじゃないかと思います。だからこれは別に誤解があったわけではないだろうと思いますから、いわゆるやめてどうこうということでなしに、たいへん競争しておる間柄であれば、なおさらそういうことを役人とすれば積極的に関与することを差し控えるというのが普通の考え方のようでございます。そういう際に、あるいはもっと上のほうの人が責任をもってそれじゃ甲だ、乙だ、こう言って指示すれば、ただいまのような問題は起こらないのじゃないか、かように実は思います。しかしたいへん御親切にそういうような資金の運用までお考えをいただいて、そういう御相談を持ちかけられましたことをありがたく重ねてお礼を申し上げます。また、私ども事前に耳に入れば、そういう点別にこだわりなく指示ができるのではないか、かように思います。とにかく、せっかく金があるものを遊ばしておく手はないと思います。そういう意味でもっと具体的に効果が上がるように御相談に応ずるのが筋であったろう、かように私は思います。
  99. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 この法案と直接関係ないですから申しませんが、民間のほかの銀行に持っていってくれというなら問題でしょうが、何とか金融難を大蔵省銀行局は緩和しようと言っているときですから、私は、まあそう言っても、日銀でもいろいろ手当しているのですから、問題はないと思うのですが、まあひとつ気をつけていただきたいと思います。  次に、本法案についてですが、通商局の三十七年三月に出ています「輸出振興対策について」という資料がございますが、この本法案の改正は、実際輸出振興についこの政府の五つばかりの柱の一つに、輸出保険制度の充実というのがあるようであります。来年度四十七億ドルの輸出をし、四十八億ドルの輸入といの政府の計画をいろいろ実施するための対策を発表しておられますが、具体的にはこの五つに集約されて、中長期輸出金融の拡充、改善、短期金融の拡充、改善。輸出振興税制の拡充。4として輸出保険制度の充実。5として輸出表彰制度の創設。6、輸出振興国民運動というような五つ、六つの中の、具体的にはこういうことに、いろいろ精神的なあるいは運動はありますが、具体的にやられようとすることは、こういうことですが、内外の大きな経済情勢の特徴ある変動の中で、この程度で、具体的に、実際です、政府の計画は遂行できるものでしょうか、実際できるものでしょうか。保険法の改正法案について具体的に入る前に、四十七億ドル、四十八億ドルのこの計画というものが、具体的には六つばかりですが、これででき得るものでしょうか、その点。
  100. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) いわゆる基本的なもの、たとえば経済外交の推進であるとか、あるいは本来の自由化の遂行であるとか、こういうようなものが基本的なものとして実はあるわけでございますし、そして、それから後の問題になって参りますと、いろいろガットの制限があったり、あるいは相手国との間にいろんな問題が起きたりいたしますので、なかなか私どもあちらこちらで制約を受けるわけでございます。制約を受けて参りますが、大なかに見まして、内容について申し上げているわけではございませんが、ただいま五つあるいは六つばかり項目として掲げております。そういうものが、まず基本的なものを推進する、その上に立つ実は柱じゃないか、このように実は考えているわけでございます。この中身等につきましては、非常に材料は看板ほどにないじゃないかという御把判もあろうかと思いますが、少なくともただいま申し上げましたような点が基本になるのではないか、柱になるのではないか、かように実は考えておるのでございます。そういう意味で御要望の資料に沿っているかどうかと思いますが、基本的な基盤をなすものは別でございます。かように御了承いただきたいと思います。
  101. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 この中に東西貿易というようなものは具体的には入らぬものでしょうか、その点について。
  102. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) これは別に、私どもかねてから申し上げておりますように、政治的な関係とは別で、経済はどこまでも別途でいくということでございますから、いわゆる共産圏陣営との貿易も、この基本線で進めていくということでございます。ただ最後に政治的な制約を受けるということがございまして、このまま、もう必ずしも全部が全部この適用ができないというようなこともございますけれども、いわゆる共産圏陣営だから別にする、こういうようなことはしないつもりでございますが、特にその点を列記いたさなかったのでございます。
  103. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私はこういう具体的な、実際、場の積んだ一つ一つの柱になる政策を積み上げることも重要ですが、私はヨーロッパ共同市場の状態にかがみて、なかなかアジアの置かれた情勢から言いまして、わが国を中心とした共同市場というものは困難であることば、今開かれておるエカフェの会議を見てもはっきりしておると思う。そういう点で、これはもうどうしても私はやはり日本を取り巻く中ソの、八億もある人口を対象にした貿易をやらねばいけない、こういう考えでおるので、実はそういう問題を実証するために、ヨーロッパ共同市場の特質その他について佐藤大臣といろいろ御論議をして、どっちが正しいかということをやるがいいと思うのですが、時間がないので、そこで具体的に入る前に、実は私一九五八年——このヨーロッパ共同市場のもとであるローマ条約ができたのは五七年ですから、その翌年、議員団としてヨーロッパに派遣さしていただいて、実は私かねがね文献で共同市場の重要性について若干教わっていましたので、通産省から大公使館に出ておられる財務官というのですか、通商関係の人に聞いても、ヨーロッパ共同市場の説明のできる人が全然なかった。そうして最後にイギリスに行って大野大使に何とか共同市場のレクチャーをしてくれぬかと言ったから、じゃ準備をしておから、最後の日にしてあげようと言うのです。これは私は共同市場が一九五七年にローマ条約で発足して、その翌年に行っても、どの人も——大使館の一般の外交官の人も、通産省からもたくさん行っておられると思うのですが、ほとんどなくて、やっと数日予告をして宅に来てそれだけ熱心ならひとつヒアリングで文献を集めてやろうと……。私は今日本で大きくEECが問題になっていますが、そういう先の見通しのないところに、私はこれからでもおそくないと思うのですが、今は一体そういうことについては、やはり日本の貿易をどう立てていくか、日本の経済をどう立てるかということについては、やはり共同市場というものは見のがすことのできぬ大きな国際経済の動きですが、それに対して通産省はどういう手をお打ちなんでしょうか。
  104. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 最近私自身、商工本議所あるいは国策研究会その他、討論に引っ張り出されて、EECの講演をしばしば頼まれておるのであります。EECの、一九五七年あるいは五八年、その時分に、日本国内におきましてもEECの将来というものに非常な一部で疑念を持っておられた、一体あれは成功するだろうかどうだろうかと。最近になりましてEECが関税同盟からスタートしたものが経済共同体となり、さらに大目的は政治統合にまであるのだ、こういうことがはっきりし、そういう意味の努力がいろいろ払われた。またイギリスがこれに参加すると、いわゆるこのEEC外の欧州諸国も英国が入れば全部入るようになると思います。そういたしますと、今まで一億七千万と言われたものが、一躍二億七千万にもなるだろう、そういう経済状態ができる。最近英国の加入ということを契機にして非常に強く出てきたと思います。ところでこのEECが強化されると、いわゆる域内だけで需給経済でもやるんじゃないかという心配を一部でしておられる。日本はアウトサイダーだ、非常にこれは域内だけでやればひどい目にあうのじゃないか、ちょうど戦前の、前のブロック化経済、そういう形が出てくるのじゃないか、こういう非常に心配をしておられます。しかし今日までのところ、EECは経済共同の態勢が整うにしたがい、しかもEECとの間の貿易は非常に意対の伸展を示して、非常な拡大でございます。これはEECの域内間の貿易の拡大というものが、これはもう目ざましいに違いないと思います。日本の場合を見ましても、一年にEEC関係では約六割以上に伸びている。アメリカやイギリスなども非常な伸び率を示しておりますが、これは四割程度であります。日本だけがただいま申すように六割ちょっとこした伸び率を示している。こういうことを考えますと、いわゆるアウトサイダーとしての差別扱いを受けるということじゃなしに、やはりEECが経済活動を活発にすれば、域外の協力も得なければ十分目的を達しない、こういうものが現実に実は出てきていると思います。もちろんまだEECの中におきまして、日本に対して差別待遇をしているものもございますから、こういう意味では日本商品に対する差別待遇を除去するなり、あるいは関税等の問題にいたしましても、アメリカに対しては非常に安くすると言いながらも、日本との間には、場合によっては混合関税まで考えられている、こういうようなことでは困りますから、こういう点が経済外交を推進していく基本にならざるを得ない。そういうことを考えて参りますと、これはEECが活発な経済活動をしていけば、日本と競争の立場にも立つ、あるいは東南アジア諸地域において、EECの力が日本とぶつかる場合もございますけれども、EECそのものの経済活動が活発な場合における日本の協力と言いますか、貿易拡大、これは可能だとかように実は思いますので、むしろ懸念よりも見込みのある方向に向かって日本が積極的に進むべきじゃないかと思います。財界等も、一流の財界人がEECへの視察団を作るとか、あるいはそういうのが作られまして、その実情を調査する等、いろいろの計画等がございますが、さようなことは実は望ましいのじゃないか、また政府自身も経済外交を推進する、かように申しておりますので、EECへの特派大使というようなことも考えられてしかるべきじゃないか、こういうふうに実は思い、いわゆる接近方策をとるという態度を示しているわけでございます。根本的な問題として考えました場合に、EEC諸国は、もうすでに関税を低下するというか、引き下げるという方向へ進んでおります。このことは申すまでもなくEECの内部においても自由化が非常に進んだという事柄でございます。ところが日本の場合は、今ようやく自由化をしようという、したがって他の委員会で御審議をいただいておりますように、関税の改定等においても、安くするというよりも、場合によっては高くせざるを得ない、国内産業保護の立場において、そういうことをやる。いかにもEECのやり方と日本のやり方が食い違っているじゃないか、これは明らかに食い違っておりますのは、そのもつ経済力の相違、いわゆる国際競争力があるもの、ないもの、言いかえますならば、自由化の進んでいる国とおくれている国、こういう差のあることはやむを得ないと思います。だからこのEECへ接近し、EECと協力して貿易の拡大をはかり、また東南アジア諸地域等において競争に負けない、そのためにも国内の自由化態勢を整備する、産業自身が国際競争力に勝つように十分育成していくということが必要のように思います。一部言われておるように非常な心配の面もございますけれども、私はむしろ過去の実績等からみると、EECというものに期待をかける方向で、またこれと協力し得るような日本産業態勢を作るべきじゃないか、かように基本的な問題としては考えております。
  105. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私、長期的にみれば佐藤大臣の言われるようなことになるかもしれませんが、短期的にはなかなか必ずしもそうでないと思うのです。私ここで特に申し上げたいのは、輸出保険法の一部を改正することも非常に大事ですが、私たちがヨーロッパ共同市場から学びとらねばならぬことは、それに対して接近方策を精力的に加盟各国にとるということも大事ですが、一番重要な点は、とにかく六カ国が経済統合をやって、大臣の言われたように一億七千になった、アメリカの一億八千に匹敵した、そしてそれがこの技術革新を支えるだけの大量生産をする一つの大きな経済単位になった、オートメーション、電子計算機、その他の新しく進んだ二十世紀の技術革新をやるためには大量生産せにゃいかぬ、そのためには一定の人口が必要だというようなことで、六カ国が一本になって、関税を毎年一〇%ずつ下げて、終局的には一つの経済単位にして無税にする、こういうふうにしてとにかく技術革新を支えるためには、そういうことを可能にするには大規模な生産が必要である、それには経済のある程度のユニットが必要である、そういうことをやって、ヨーロッパのルネサンスといいますか、やって——ですから一番特徴的な点は、もう統合をやって、資本提携と企業の強大化です。非常に企業単位が大きくなっていく、そして今アメリカが幾らでしょう、輸出が二百億ならヨーロッパ共同市場はもう三百億でしょう、一九六一年は。そういうふうになって、しかも最も重要な点は、私ここで中ソ貿易の重要性を申し上げたいのは、六カ国が一本になって接続しておって、原材料の運賃コストが最低であるというのです。これは非常に重要な点で、私はそういう点でやはり個々のいろいろな政策は積み上げますが、共産主義国とは社会党がやかましく言うから、また業界にもそんなものがあるから、細々と口封じ程度にやるというような程度では私は、とにかくアメリカが二百億ドルの輸出ならこの共同市場だけで三百億で、人口は一千万しか違わないのに、輸出はもう倍、二百億ドルも多いというようなことになっているのは、やはり技術革新をやる、それを支える強大な生産態勢ができる、しかも六カ国が接続しているから、原材料の運搬料等の運賃コストが最低であって、そしてそれぞれの六カ国の特徴を最高度に生かして補完的に各国がやる。私がここで言いたいのは、とにかく運賃コストが最低である、そういう点ではこれは態勢は違っても、何といっても先ほども石油業法を調べて、日本が七億数千万ドルの油を買うのに、二億ドルも船賃を払うというようなことは、なかなかこれはもう軽視できぬわけで、そういう点で、とにかくヨーロッパ共同市場を中心とするアメリカその他世界の共同市場化といいますか、そういうことをやる際にひとつ念頭において、日本の置かれた、日本を取り巻く状況の中で、なかなかエカフェの会議を見ましてもめんどうですが、しかし運賃コストを最低にして、国際競争力にたえるというような点では、ぜひ特に佐藤大臣におかれても、幸いまあソ連との貿易はかなりの進展をみていますが、もっとそういう共同市場ができないことを日本がどう補うべきかという見地において、私はやっていただきたい。そうしてこの特徴は、そういう点と同時に、もう加盟六カ国はほとんど輸出入が完全に関税を一〇%ずつ下げてもバランスがとれておるということなんです。完全にドイツが域内に自分の国から出すやっと、域内から入れるのと、あるいはフランスが域内に出すやっと入れるのと、それからその六カ国の外に出すやっと完全に貿易のバランスがとれたというようなことも特徴ですが、私はぜひともこういう具体的な、佐藤大臣のところが責任の主管省として輸出を振興されることにおいては、私はやはり運賃コストを最低にするという点は、ヨーロッパ共同市場の一つの大きな美点ではないか、そういう点できょうは時間がありませんので、くどくは申し上げませんが、そういう点をぜひとも態勢は違っても最も運賃コストを節約する、節約し得る一つの態勢を日本はどうするかという点で、私は共産圏貿易というものは別な角度もありましょうが、そういう意味でも、経済の合理性を貫くという点からも、ひとつぜひ考えていただきたい。この点いかがです。
  106. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 先ほどEECについて関税同盟から発展し、貿易の自由化に実は触れました。これは今中田さんが御指摘になっているように、強固な共同市場ということが、同時に私どもが見のがしてはならないのは、共同市場が持つ経済の生産性でございます。だから経済の生産性に日本がやはり負けないようにという、そのことを先ほど国際競争力という意味で表現したつもりでございますが、それをただいま大きく取り上げて御意見が述べられましたが、そのとおりでございます。だからこのEEC問題をみます場合に、ただ関税というような形でなしに、経済共同体が持つ経済の生産性というか、生産力というものを十分念頭に置かなければならない。ただいまお話のとおり、域内においての会社の企業の合同、あるいは国は別でございますが、その間においての企業の共同化、こういうものがよほど進んでいる、そこに大きな、強力な経済性が出てきておる、生産性を発揮してる、これを見のがしてはならない、こういうように思うわけでございます。  ところでこの辺で、今共産主義国との貿易について、これは現状の姿でありますが、これを少し分析して申し上げて御理解をいただきたい。今のあるままの姿がいいというわけではございません。大体分けてみまして三通りに実はなるようでございます。その第一に、非常に進んだと申しますか——のものは、日ソ間の通商取りきめでごらんになるように、これは明らかに政府間での話し合いで進めていっているのであります。これは東欧の共産圏、いわゆる衛星国との間にもそういう問題がございまして、これはいわゆる比較的その軌道に乗った貿易形態でございます。ただ一般の貿易と違う点を指摘しろと言われれば、できるだけ二国間の貿易のバランスをとるという立場に立っております。大体日ソの通商取りきめをいたしましたのも、ことし三十七年は、大体片道一億ドルということでございますが、なかなか共産国、商売が上手でございまして、出超というか、日本から見ると大体入超になりがちであります。そこで過去の入超分を三十七年、あるいは引き続いて解消するという意味で、ことしは日本からの品物をよけい買おう、ソ連から入るものは一億、こちらから売るのが一億二千五百万ドルというように過去の輸入超過分を少しとりかえそう、こういうことですが、根本になりますものは、二国間の貿易のバランスをとる、こういう考え方であります。その他の自由主義諸国の間においては、グローバルの意味において、全体的に見て収支バランスがとれるようにということを考えておりますが、この共産圏においてはそういう措置をとっておる。これがまだ不十分、もう少し改善の余地がありはせぬかということですが、日本の国際収支の状況等から見まして、これがこわれますと、ただいまのところ原材料を売るソ連、また製品を買うソ連というその立場から見ますと、日本からの輸出は伸び悩みになるという危険がございますので、できるだけ均衡をとるようにということで通商取りきめをきめたわけでございます。これは比較的形の整った貿易形態とお考えを願いたい。  第二のものは中国大陸との貿易でございます。これは御承知のように、政府自身を承認はしておりませんから、政府間の通商取りきめということまで踏み切っておりません。しかしながら、その関係者の往復なども比較的楽にできております。また商品見本市も作るようにもなっておりますし、これはその政治の問題に突入しない限り、貿易の拡大は可能でございます。かつてはバーターでございましたが、最近はバーターでなくて現金決済にまで両方の間で進んでおりますから、民間貿易もそういう意味では形は進んでおるわけでございます。中国の北京政府自身がやっておることは——御承知のように、中国の北京政府を承認しておらない。カナダからも小麦をうんと買っておる。しかも小麦を買うに際しては、カナダ自身は延べ払いでこれを売っておる、こういうような姿さえ出ておりますから、日本の場合におきましても、ただいまは申し上げるまでもなく、政府間取りきめというところまではいっておりませんけれども、その他の方法ならば、商品見本市を開くことも、また向こうの政府の要人が日本にくることも、これはあまり制限を加えておらないのです。また今回の、今御審議をいただいております保険等につきましても、在来から見ますと、保険をかける範囲を拡大しておる。こういう意味では比較的順調にいっておる。だから、積み重ね方式をとっていただくならば、また池田内閣自身が申しておりますように、政治とは別だ、経済はどこまでも拡大しよう、こういう当方は前向きでございますから、双方が前向きにならないとうまくいかない。これは北京政府を前向きになって下されば、双方前向きになるならば、民間貿易はさらに拡大できる、かように思います。ただいまのところは、双方合計いたしましても一億ドルに達していない。これはいかにも残念なことでございます。だから、これはもう少し双方で前向きになれば、日中間の貿易はもう少し拡大される、かように思います。しかしこれも過去の実績等を見ますると、いずれも日本の場合が入超でございまして、中国側が日本によけい売っておる、こういうことでありますので、これはやはり中国が日本商品をもう少し買っていただく、その意味ではもう少し前向きになっていただくことが望ましいのでありまして、そういう意味のことでは、日ソ間に次ぐ共産国としての待遇が与えられておる、かように思います。  第三のものは、北鮮、ベトナム——北越でございますが、ここになりますと非常にこれは窮屈であります。だからせっかく商談ができても、関係者の日本への入国にいろいろ制限をつけたりしておる、こういうことで、これはなかなか窮屈におかれておる。だから、同じようにいわゆる共産圏貿易と、かように一口には言われますが、態様を分けてみると三通りになるのじゃないか、私は実はさように考えております。  しかし、できるだけソ連並みの、日ソ間の貿易のような状態にするのが本筋でありますから、そのためには、中国大陸の場合は、何としても国連においての中国の加盟問題というものが片づくこと、これはもう世界的視野に立っての解決がぜひとも必要でございます。北鮮、北越の問題になりますと、これはただいま日韓交渉等でこれが非常に議論になっておるというさなかでございますし、北越も、御承知のようなベトナムは状況でございます。したがいまして、ここのところもなかなか急速には片づかないと思いますが、先ほど申し上げたような三段階に三分離されておる共産国との貿易でございますから、順次その地位を高めていくように相互で工夫すべきじゃないか、かように思います。  それからもう一つ、その基本的な問題で、中国大陸の七億の人口、これは今日私どもが見のがすことのできないいい貿易の相手国であること、これはもう間違いございません。間違いございませんが、先ほど欧州のお話でありましたように、やはりその国の購買力というか、その国の経済状態、あるいは生活状態、こういうものが貿易の場合においては見のがすことができないのであります。日本もかつては非常な低廉な粗悪品を送り出しておりましたが、最近は輸出品が漸次いわゆる高級品化しております。それはもう相当高度のもの、程度の高いもの、これを送り出す。まあ繊維にいたしましても、安い繊維はそれは香港やインド等が作るが、やはり高級なものを日本が出していくようになった。そういうようなことを考えますと、頭数だけじゃないのですね。やはりその購買力というもの、その経済力というものは相対の力でございますから、そういうことも見のがしてはならないと思います。今まで日本の貿易が、たとえばアメリカを中心に考え、あるいはEEC——欧州を中心に考えるとか、こういうことをしばしば指摘される、そういうことをこわしてできるだけどこにでも持っていったらどうだという、どこにでも持っていくということが貿易を拡大する本来の筋でございますから、やはり作っておる製品の向き口は実はあるわけでございますから、そういうことはやはり念頭において、そうして貿易拡大の実際に当たっていかなければならない、こういうことが基本にある、これはひとつ御了承いただきたいと思います。  それからただいま運賃コストのお話が出ておりましたが、これはもの御指摘のとおりであります。だから、最近いわれておりまするのは、タンカーにいたしましても、鉄の鉱石輸送船にしても、あるいは石炭の輸送船にしても、もう将来は十万トンになるべきじゃないかということがいわれております。十万トンの船を作る、その十万トンの船が岸壁に横づけになるような港を作る、これはもう大事なことでございますし、またそういうものが着いた後に、その付近においてそれが消費されることが必要だ、そういうことが運賃低減の基本的方向になるわけであります。ところが、十万トンの船を作ることは容易でも、その十万トンの船が着く港を作ることは、そうたくさんあるわけじゃありません。ことに最近コンビナート方式が盛んにいわれておるのですが、そのあり方を見ますと、運賃コストの低減ということが一口にいわれますが、現実の問題としては困難だ、しかしそういう方向に向けなければ日本の産業としての強化、育成は、それは不可能だということで、業界もただいま御指摘になりましたようなほうにいろいろ工夫しておるのが実情でございます。  たいへん中田さんのお考えとあるいはややぶつかるような意見であったかとも思いますが、実は私がいろいろ取り取んでおりますその基本的な考え方は、ただいま御説明したような気持で行政の衝に当たっておるというのが実情でございます。
  107. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私はぜひ通産当局にお願いしたいのは、日本はアジアの中にあって、日本は別なんですが、しかしヨーロッパ共同市場が驚異的に発展をし、やがてイギリス、そして最近は北欧の諸国も準加盟を申し出ているというような点で、非常に注目せねばならぬのですが、これをひとつぜひ通商局で、一体ヨーロッパ共同市場の経済合理性といいますか、どういう点が、これは結局いい品物が安くできるから他の国は負ける、こういうことだと思うのですが、そういう経済合理性の見地から、徹底的にあそこから学び取るものは何だということを、企業の規模が拡大したということを、世界経済の動向等でも出しておられますが、結局佐藤通産大臣に、そういうヨーロッパ共同市場の経済合理性はどういうふうなからみ合いで貫かれていっているかという点を、ひとつぜひやっていただきたい点と、それから私はやはり日本があやまちのない通商政策をやるためには、実際通産省の人が世界各地に出て、ほんとうに現地で勉強してもらわにゃいかんと思うのですが、あれはどういうふうにそういうことはなっているんですか。そういう点を一つ
  108. 今井善衛

    政府委員(今井善衛君) 御承知のように通産省からも、在外公館に一名ないし二名ずつ派遣されているわけでございます。欧州共同市場の六カ国にもそれぞれ派遣されておりますが、今までEECを専門にするように派遣された者はございません。三十七年度からブラッセルにEECを専門にいろいろ研究し折衝する意味で適任者を派遣したい、かように考えております。
  109. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 今井通商局長にお尋ねしますが、EECというものを現地であらゆる角度から検討されて、その特徴的なことをまとめあげたものはあるのですか、それはいかがですか。
  110. 今井善衛

    政府委員(今井善衛君) EECの中のいろいろ貿易の交流問題あるいはEECの中のその産業に及ぼす影響等をいろいろ検討しております。部分的にはまとまったものもございますけれども、それを集大成したものはまだございません。
  111. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 それをぜひやっていただきたいのです。さきにも申し上げましたように、私は五八年にヨーロッパの大ていの国を回ったのですが、五八年には、まだ共同市場について通産省からおいでの人も説明ができなかった。その理由は言いませんが、それは勉強が足りなかったからで、そのことが今になってできるようになったのではないかと思います。ぜひこの点はもっと充実していただきたいと思うわけでございます。
  112. 武藤常介

    委員長武藤常介君) 他に御質疑ありませんか。——他に御発言もなければ、本件の質疑は本日はこの程度にとどめます。  なお、議事の都合により本日はこれにて散会いたします。    午後一時五分散会