○剱木
亨弘君
九州班について申し上げます。
九州班は、吉田
委員、田畑
委員と私の三名で、期間は二月十一日から十六日までの六日間でした。
今回の派遣は、
産炭地振興事業団法案や
石炭合理化法の一部
改正案を
中心とする
産炭地振興方策と、それに関連して、先般、当
委員会で行ないました
石炭危機突破
対策を
内容とする附帯決議の施行
状況について、
現地の
実情と
要望を見聞することでありまして、そのため、まず、福岡において、
通産局及び
石炭合理化、
鉱害復旧、雇用促進の三
事業団より、それぞれの
立場からの事情の
説明を聴取後、
経営者、労組、県市町村の代表の方々と懇談いたしました。
以後、唐津、粕屋、筑豊の各炭田を順次回り、佐賀県庁初め、それらの地区の市町村
関係者とか、
炭鉱関係者等から
要望を聴取したのであります。
さらに、唐津港、若松港の
石炭関係施設、三菱古賀山、明治佐賀、日炭高松の各
炭鉱と、電発若松、
九州電力苅田、西日本共同火力新苅田の各発電所または建設現場を視察して参りました。なお、今回、爆発事故のあった新大谷
炭鉱へ参り、遺族へ弔意を表して参りました。
現地で見聞しました点は、きわめて
多岐にわたります
関係上、
産炭地、
石炭関係二
法案の審査や、エネルギー問題の
調査過程において、詳細かつ具体的に申し上げることとし、ただいまはごく概括的に
報告させていただきます。
第一点は、
石炭経営の安定化の問題であります。
まず、
総合エネルギー対策を確立し、
石炭の地位を明確にすべきで、
九州地区は千二百円の値下げ、五千五百万トンの出炭規模の維持には協力的であるが、
政府の一そうの援助を望んでおりました。
援助の
内容といたしましては、第一に、スクラップに要する
政策的なてこ入れより、むしろビルトのための
措置を強力に行なうべきで、そのための財政的裏づけはもちろん、最近特に著しい坑木等の資材
関係の値上がりを防止することのほか、
運賃、電力料金を軽減するための
措置を講じてもらいたいということがありました。
第二に、資金の問題については、たとえば開銀融資の返済条件の緩和とか、
中小炭鉱の近代化、
合理化資金の融資条件、基準が
大手に比べてきびしいため、不利であるから、その点を是正されたい。また、
中小企業信用補完
制度を
炭鉱に対して、もっと拡充強化してもらいたい旨の
要望がありました。
第二点は、
産炭地振興事業団の
事業計画とその財政的
措置の問題であります。
産炭地区の県市町村のいわゆる自治体
関係者が最も関心を寄せているのはこの問題であります。
炭鉱の不況と相次ぐ閉山で疲弊した自治体にとって、工場の誘致と雇用の増大は、最も期待しているところであります。しかし、このためには、産業基盤というか、社会資本の充実というか、要するに工場を誘致するための環境
整備の強化が必要であります。私どもの参りました自治体
関係者が異口同音に水資源の確保、産業道路の
開設拡張、工業用、住宅用の土地の造成、交通通信網の拡充という先行投資を行なうべきだとしておりました。特に水資源の確保については農業用水、工業用水、飲料水の確保のためダムの建設を力説しておりました。しかし、現在
提案中の
事業団法案による
事業団の
事業計画には、工業用地並びにその関連
施設の
整備促進に七億円、
企業への資金
貸付分二億円、その他一億円、計十億円が予定されているので
現地ではその増額を強く
要望されました。この点は
法案審査のときでもあらためて論議したいと存じております。
なお、
工場誘致については単に
中小企業のみならず大
企業の進出も歓迎しており、融資その他の優遇
措置を、進出しようとしている
企業に配慮すべきであるとの意向がありました。
第三点は
産炭地発電と流通機構の
整備の問題であります。
九州地区の
産炭地発電はエネルギー
懇談会の中間
報告にあるような大きな構想ではありません。しかし、私どもが視察しました若松火力では、おもに日炭から三千カロリーベースの低品位炭の供給を受けるほか、ボタや遠賀川の汚水から微粉炭を回収する方法を実験または
計画中でありました。また新苅田火力は、出資や開銀資金以外の
一般融資による資金調達が難航しているで、開銀融資ワクの増加を望んでいる状態でした。この二つの発電所は低品位炭発電に
九州地区において先鞭をつけるものでありますが、地元の
九州電力も
石炭専焼発電に力を入れております。たまたま私どもが視察中に
九州電力が唐津港に
石炭専焼火力を建設することを大体決定しまして、佐賀県及び地元市町村や
炭鉱関係者が期待していました。ただし、今後
産炭地発電は低品位炭を
中心にすべきか、高カロリー炭を
中心にすべきかは、出炭規模や
中小炭鉱の問題未利用炭の処理等の観点から
問題点として残りましょう。これら
産炭地の発電
計画の進行とともに内陸線の増強が焦眉の急となっております。特に唐津線の増強、油須春線の早期完成がそれであります。油須春線は、苅田地区の火力発電所の強化と若松港とともに、
石炭積出港としての苅田港の
整備計画の進捗と相待って、最も疲弊している筑豊地区にとっては死活の問題と思われるのでありますが、地元から熱心な
要望がされていました。
その他、篠栗線の延長とか、あるいは
石炭荷役設備の共同化や荷役料金の問題についても地元から
要望もあり、今後流通機構の
合理化の一助として
研究されねばならないと思いました。
第四点は雇用の問題であります。この点については労組の一部から閉山は認めない、させないという原則を立てるべきで、そのためには
中小炭鉱等へ特別の融資やその他の特別
措置を講ずべきであり、また鉱区
調整の緊急性をしばしば訴えられたのであります。その具体例としまして志免あるいは山口鉱山小城
炭鉱から
要望がございました。特に小城
炭鉱は鉱区
調整ができない限り、閉山、離職という深刻な事態に直面するという事実を視察途上の路傍で承ったのであります。
離職者対策については、買い上げ
炭鉱の離職金の増額、生産、立ち上がり資金や住宅、移住資金の確保等、さきの当
商工委員会の附帯決議と同様な点を
要望されましたが、中でも中高年齢層の再就職が困難をきわめているとのことでした。
その他買い上げ
炭鉱の炭住や浴場、飲料水
施設等の処理について
離職者に不安のないよう
措置されたいとか、職業紹介の広域化、さらには職業安定所の強化拡充などを
要望されました。また
炭鉱付属産業、おもにサービス業が閉廃山に伴って生活が成り立たなくなるものが多いので、これらの人々に対しても生産資金の融通を行なわれたいとの希望がございました。
なお、県市町村のほとんどから
離職者緊急
対策事業費や
失業対策事業費、生活保護費の算定基準が
実情と隔たること遠いものがあり、ただでさえ財政逼迫にあえいでいる自治体財政を一そう苦しめている
現状にあるので、全額国庫負担なり高率な国家補助の適用が必要で、この点、
地方交付税の基準財政
需要額算定について特別の配慮を行ない、特別交付税の増額等の
措置を講ぜられたいという強い意見がありました。
以上のほかボタ山の処理、たとえば伊万里地区におけるボタの海中投入と港湾
整備計画との
関係、あるいは
産炭地における
中小企業対策、特に金融問題と団地化等についてもきわめて参考になる意見が開陳されました。その詳細は省略いたしますが、ただ直方市に見られるように事業費なり融資なりが円滑に行なわれれば、いつでもすばらしい工場団地化が実現するという所もございました。
なお、
鉱害問題につきまして、融資機能の強化、家屋等の移築復旧、ポンプ
施設による農地復旧方式の併用、ポンプ維持管理費の国庫負担等について、復旧
事業団より
要望を受け、筑豊地区市町村より
工場誘致なり、工業開発のための
鉱害復旧への国の補助を全面的に行なうよう
要望されました。
最後に現在争議中の大正
鉱業問題について若干触れたいと存じます。この問題についてはまた日をあらためて検討したいと存じますが、結局は福岡銀行及び新しい
経営者田中直正氏と労組とが、再建方針についての意見の食い違いに基づくもののようであります。私どもが中間市において市及び
経営者、労組の代表よりそれぞれの意見を聴取したところによりますと、労組側では田中社長が誠意を示してくれればいつでも話し合いに応じ、再建に乗り出す用意があるとの見解が示されたのであります。この問題は労使双方のみならず、中間市民の生死にも
関係し、大正
鉱業の関連産業にも重大な影響を及ぼすものと憂慮されておりますので、円満な解決の一日も早からんことを祈る次第であります。
以上、はなはだ概括的でありますが、今回の派遣により、深刻な
石炭鉱業及び
産炭地の
実情と
問題点について
調査し、予期以上の
成果を得ましたことは
関係者各位の絶大な御協力のたまものでありまして、ここに衷心よりの感謝の意を表し
報告を終わります。