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1962-03-15 第40回国会 参議院 社会労働委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月十五日(木曜日)    午前十時四十七分開会   —————————————    委員異動 三月十三日委員坂本昭辞任につき、 その補欠として小酒井義男君を議長に おいて指名した。 本日委員小酒井義男君、光村甚助君及 び山本杉君辞任につき、その補欠とし て坂本昭君、永岡光治君及び堀本宜実 君を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     高野 一夫君    理事            鹿島 俊雄君            村山 道雄君            阿具根 登君    委員            勝俣  稔君            紅露 みつ君            佐藤 芳男君            谷口弥三郎君            山本  杉君            永岡 光治君            藤原 道子君            村尾 重雄君            石田 次男君   政府委員    労働政務次官  加藤 武徳君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   —————————————   本日の会議に付した案件労働情勢に関する調査  (ILO第八十七号条約批准問題  に関する件)   —————————————
  2. 高野一夫

    委員長高野一夫君) ただいまから本日の社会労働委員会開会いたします。  この際、委員異動について報告いたします。  三月十三日付をもって坂本昭君が辞任され、小酒井義男君が選任されました。  また、本日付をもって小酒井義男君、光村甚助君が辞任され、坂本昭君、永岡光治君が選任されました。   —————————————
  3. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 労働情勢に関する調査の一環として、ILO第八十七号条約批准問題に関する件を議題といたします。  先般、加藤労働政務次官ジュネーヴに行かれまして、本条約批准の件について日本側事情説明等のために御出張になりました。つい最近お帰りになりましたので、諸般の事情についての経過報告お願いして質疑に移りたいと思います。
  4. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) 御承知のように、去る二月の二十二日からジュネーヴにおきまして、ILO結社自由委員会が開かれ、引き続き、三月の六日から理事会が開催される、かような予定であったのでございます。日本政府といたしましては、いまだILO八十七号条約並びにこれと関連をいたします国内法改正案国会上程されておらない、このことについてジュネーヴにおいて十分な理解がいただけておらない節があるかもしれないので、私は労働省公務員である、職員である、かような立場で、急遽ジュネーヴに参りましたのでございます。そこで、政府といたしましては、二十日に直ちにジュネーヴに向かえ、かような決定をなされ、私は急遽二十一日に出発する、かようなあわただしい予定でございましたので、当委員会の皆さまにも十分にごあいさつ等をいたしまする機会のないままに立ちましたことを恐縮に存じます。と同時に、おわびをいたす次第でございます。  結社自由委員会は、御承知のように、三者で構成されておるのでございまして、政府側代表三名、労働者側代表三名、使用者側代表三名、この九名で構成されておるのでございます。私は、結社自由委員会の正式の委員方々や、なお、副委員組織がございまして、おのおの三名、三名、三名で、これまた九名のデピュティがおられるのでありますが、かような方々のうち、何人かにはお目にかかりまして、日本実情お話をいたし、了解を得る努力をいたしたのでございます。また、三月の六日からは理事会が開かれたのでございますが、理事会は、これまた御承知のように、政府側代表が、常任理事国十カ国、非常任理事国十カ国、この二十カ国が理事でございますし、労働者側代表十名、使用者側代表十名、この四十名が理事であるのでありますが、結社自由委員会の場合と同様に、政府労働者使用者、この三者おのおの副理事が十名ずつで、三十名のデピュティ組織であるのであります。この理事会理事方々にも何人かにお目にかかりまして、日本実情を話をいたしました。また、ILO事務局モース事務総長や次長のゼンクス氏、部長のパルティコス氏にも会いまして、同様にわが国実情を話をいたしまして、理解を願うべく努力をして参ったのでございますが、結社自由委員会におきましては、主として二十二日、二十三日にわが国関連をいたしまする問題を論議いたしたのでございますが、最終的には、二十八日の夜開かれました結社自由委員会で、理事会報告すべき案文の採択をいたしておるのであります。この文章がそのまま理事会報告をなされ、原案のとおり三月の八日に理事会採択をされた次第でございます。この結社自由委員会採択をし、理事会報告をされました文書内容は、大体二点に尽きると、かように思うのでございまして、その一点は、日本自治労ILOに提訴をなすっておられるのでございますが、これはILO提出をいたしました文書等が相当膨大なものであり、時間的に十分審議をいたす余裕もない。これは政府側から出しました文書もだいぶおそく到達いたしたのでございますし、自治労から追加情報として提出をされましたものが委員会開会の直前に到達をした、かようなこともございまして、時間的な余裕もなく、次回に回す、これが一つ結論なのでございます。  もう一つ結論は、私が参りました主たる任務の八十七号条約批准に関する件でございます。御承知の八十七号条約につきましては、日本政府は、すでに昭和三十四年の二月に閣議決定をいたし、国内法改正を行なってこの条約批准をいたすのだ、かような方針を明確にいたしておる次第でございますし、昭和三十五年の四月には国会上程をされまして、審議未了に終わっておるのでございます。また、第二回目を昨年の春、通常国会上程いたし、これまた内容審議に入らないままに、未了に相なっておるのでございまして、かように、何回か政府国会上程をいたし、また、政府文書等によりまして、ILOに、早い機会批准をしたい、かような意思表示をしておりながら、まだそのことが実現できておらないということにつきまして、ILOではずいぶん論議がなされており、昨年の秋の第五十八次結社自由委員会報告におきましては、かような姿に対する失望の意を表明いたしておるのでございまして、今回の結社自由委員会理事会報告は、いわゆる第六十次報告、かように言われておるのでありますが、第六十次報告におきまして、昨年秋の五十八次報告を思い起こして、そして再確認をするのだ、かような表現が使われており、原文によりますと、リコーリング・エンド・リ・アファーミングと、かような表現になっておるのでございまして、この表現に続きまして、日本政府が八十七号条約国会上程し、承認を求めようとしている努力がついに成功することを希望する、かような言葉で結ばれておるのでございます。したがって、政府が早い機会国会上程をし、国会承認を求めようと努めておるということは、ILOにおきましても十分認めてくれた、かように私は理解をいたしておる次第でございます。さようなことで、結社自由委員会並びに理事会に顔を出しまして帰って参った次第でございまして、最初にお断わりいたしましたように、全く時間的余裕等がないままに、十分な御了解をいただかないままに旅行に出ましたことをお許しをいただきたい。まずかいつまんで出席をいたしました経緯や、結社自由委員会におきまする結論等を簡単にかいつまんで報告をいたしました。
  5. 高野一夫

    委員長高野一夫君) どなたか御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  6. 永岡光治

    永岡光治君 冒頭に、政府当局お願いいたしますが、向こうからの結社自由委員会及び理事会等におけるそれぞれの審議経過及び結論、こういうものについて当然報告もきておるし、それから報告がきていない分で、そちらの政府当局のほうで報告しなければならぬ事項、こういうものを一括して当委員会提出を求めたいと思いますが、大体いつごろ提出が可能でありますか、それのお願いと、その時期を聞きたいと思います。
  7. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) 永岡委員承知のように、結社自由委員会は、先ほど私も報告いたしましたように、九名の正委員からなっておるのでございまして、遺憾ながら、わが国政府並びに労働者使用者側は正委員にはなっておらないのでございます。ただ、使用者側の副委員としては、日本三城晃雄氏がなっておるのでございますが、結社自由委員会秘密会議でございますので、ここでいかような議論がなされたかは、わずかに情報としてキャッチをする程度以上には出ないのでありまして、結社自由委員会理事会報告をいたしまする採択文書は入手をいたしておりますが、審議経過なり内容につきましては、つまびらかでないことを御了承をちょうだいしたい、かように思うわけでございます。  それから、先ほど申し上げましたように、結社自由委員会結論理事会報告されたのでございまして、わが国政府は、理事会におきましては十名の常任理事国の一人に加わっておるのでございます。私は理事会には出席いたしましたが、正式の政府代表は、すでに現地の青木公使決定いたしておりましたので、私は正式の理事としての出席ではなかったのでございます。ただし、理事会におきましては、モロッコ外務大臣と私が席を同じゅうしている、かような報告理事会にされた次第でございます。  それから、理事会におきまする日本使用者側理事に加わっておるのでございます。労働者側代表につきましては、遺憾ながら、一昨年までは原口君が副理事でおられたのでございますが、ただいまは理事にも副理事にもわが国は入っておらない、かような状況でございます。そこで、理事会におきまして採択をされましたいわゆる六十次報告なるものは、おそらくもう正式のものが届いておると思いますので、できるだけ早い機会資料として提出をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  8. 永岡光治

    永岡光治君 概略今のような報告に従った資料でけっこうですが、ただ正確を期するために、おそらく労働省当局には、ILO協会向こうのほうの関係の人も集まることも承知だろうと思うのですが、理事会出席された日本青木公使、あるいは使用者側代表等があるだろうと思うのですが、それぞれの方々報告をとっていただいて、それでこちらに提出お願いしたい。  それから、それがお願いでありますが、まず質問をそこでしたいわけですが、旬々の間に出発されたわけでありまして、出発なさるにあたりましては、おそらく事前にわかっておれば、当委員会において、いろいろ国会立場から政府に要望したいこともあったのでございますが、それができませんでした。今その過去をとやかく言うのではありません。まず基本にお尋ねしたい第一点は、どういう目的で、具体的にどういう内容のことを向こうに説得に行ったのか、その内容をひとつ明確にしていただきたい。
  9. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) 先ほど報告をいたしましたし、また十分御承知の、政府におきましては、三年前にすでに閣議決定をいたしまして、明確な方針を打ち出しておるわけでございまして、この方針に基づいて、過去二回国会法律改正案件とともに、八十七号条約承認を求める案件上程いたしたのでございますが、遺憾ながら、二回とも審議に入らないままに流れてしまったのでございます。すでに本国会が召集されまして相当の日時を経過しておるにかかわらず、いまだ国会上程されておらない、このことにつきまして、はたしてジュネーヴにおきまして十分な国内事情をキャッチし得ておられるかどうか、この点での危惧がございましたので、主としてこのことについて関係者方々理解お願いをしたい、かような趣旨と目的で出発をいたした次第でございます。
  10. 永岡光治

    永岡光治君 具体的にどういう説明をされたかということを私はお聞きしたいのでありまして、たとえばそれでは私から具体的に聞きますが、国内事情批准できない理由、及び、まだ提出のおくれているという理由をおそらくあなた説明されたと思うのです。その事情はどういう事情で提案されないということを説明されたか、具体的にお聞きしたい。
  11. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) 私は関係者方々にかような表現をいたしたのでございます。日本では三度目の正直という言葉がある。おそらくあなたの国でも同様なことわざがあるであろうと思う。そこで、日本政府は、過去二回国会上程して、これも中身審議に入らないままに流れてしまっている。かりに今国会政府が早々に上程をしても、中身審議に入らないままに流れてしまう、かような事態が起きると仮定をすれば、おそらくILO関係各国だけではなく、世界の各国は、はたして日本政府は八十七号条約について誠意を持っているのかどうか、かようなことを疑われる、この危惧政府内部には非常に強いのだ、そこで、三度目である今回は非常に慎重を期しておるわけであって、それは三度目の上程をしたら、必ず批准承認を得たい、かような強い願望のもとに、非常に慎重を期しておる。したがって、きわめて誠意ある一個の現われだ、このことがおくれておる理由なんだ、これをぜひ理解してほしい。このことを中心に私は関係者の各方々に訴えたわけでございます。
  12. 永岡光治

    永岡光治君 今のお話によると、三度目の正直で、今度出してだめになると、さらに一そう不信を買うから慎重を期しているのだ、それで出せないのだと、こういうのですが、その失敗に終わるかもしれないから慎重を期すというのだが、どういうことで失敗するかもしれないという、こういう具体的な内容説明はなかったわけですか。
  13. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) 相手によりまして若干の説明内容なり方法は異なったのでございますが、今、永岡委員が御指摘のような点につきましても私は説明をいたしたのでございます。ある国の代表者のごときは、どうも理解ができぬ、それは日本政府国会において絶対多数を占めている、かように理解をするのだが、絶対多数を占めているのなら、当然国会上程し、そうして当然承認が得られる、かようなことであるのは間違いないと思うのだが、どういうわけなんだ、かような質問もあったのでございます。かような質問に対しましては、私はかつて日米安全保障条約承認案件等国内におきまする状況なぞも説明をいたしまして、ただいまの池田内閣岸内閣のあとを引き継いだ内閣であり、いわゆる多数決の原理を直ちに国会で発動して、数による結論をぴしゃっと出す、かような基本方針を実は取っておらないのだ、かようなことも実はるる説明をいたしたのでございます。国内でいわゆる低姿勢という表現を使われておりますが、その言葉のいい悪いを別にいたしまして、要するに、数にものを言わしてぴしりぴしりと直ちに結論を出す、こういうやり方をただいまの内閣はしておらぬ、このことを私は詳細に説明をいたしたわけでございます。  それから御承知の、去年の春の国会におきまして、五十数日間審議方法について与党野党との間の意見が分かれて論議をされたままに流れてしまったのでございまして、与党側におきましては、条約並びに五つ法律改正案、この六件を特別委員会を設けて、特別委員会一括付託をしたい、かような考えであられたのでございますが、ところが、野党第一党の社会党におかれては、いわゆる三原則なるものをはっきりさせられまして、その一つに、特別委員会には反対だ、かような一原則があると理解をいたしているのでございまして、かような与党野党第一党との間に、審議方法についての具体的な話し合いが全くできておらぬ、かような姿のままで上程をいたしましても、過去二回の場合と同じような運命に逢着する危険がある。さような結果になっては、さっき申しましたように、国際的にかえって信用を失墜するおそれがある、こういう立場から慎重を期しておる、かようなことを私は説明いたした次第でございます。
  14. 永岡光治

    永岡光治君 今の特別委員会の一本、あるいはそれぞれの関係委員会にかけろという論争のままこれは流れた、その根本は何か、すなわち、与党特別委員会一本で強力に主張してお  る目的、そういうものを説明され、野党関係常任委員会へ分離しなければならぬと主張しておるその論拠、どういう意味でそういうことを言っておるか、もう少し具体的にいえば、野党主張しておるILO八十七号条約批准そのものと、たとえば鉄道営業法改正案人事院機構改正案等々のごときは直接関係ない、したがって、特別委員会にかける必要なしというような、もっと深く突き詰めていえば、それらは別の問題であって、ILO八十七号条約をまず批准をして、御承知のとおり、これは一年後の法律改正でけっこうであるのでありますから、批准をして、その後にもし必要と思うならば関係法規改正してもいいのではないか、今国際信義をこの機会に取り返す意味では、文句なしにILO八十七号条約批准すべし、こういう社会党主張は、あわせてそれと関連をして、今申し上げましたような鉄道営業法改正案だとか、人事院機構改正案、直接関係のない法律案を、しかも日本の労働行政なり、あるいは人事行政等から見て、与野党意見の分かれるところではありましょうけれども、野党としては好ましくないという見地で、これはおのずから別個の問題として取り扱うべし、こういう主張のもとに、特別委員会であってはいけないのだと、ところが、与党のほうはそうでなくて、これを一本にして、同時成立でなければならないと主張するがために特別委員会主張している、こういう分かれておるところを具体的に説明したのかどうか、説明しなければしないでけっこうですが、そういう深く掘り下げた説明をされて理解を求めてきたのかどうか、この点を私はお尋ねいたしたいと思います。
  15. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) 私は政府立場で参りましたので、与党内部事情、あるいは社会党内部事情等には、できるだけ触れるべきではないという基本態度で臨んだわけでございます。しかし、若干質問の出ました方に対しましては、私の知り得ておりますことを、今申し上げました、あまり深入って報告すべきではないという建前に立ちながら、若干は報告をいたして参りました。これは質問のあった際にのみ話をしたように記憶をいたしておるのでありまして、その際の私の説明は、与党である自由民主党においては、八十七号条約は非常に重要な案件であり、したがって、重要な案件審議いたす従来の慣例に従って特別委員会を設けるのだ、かような考え特別委員会という主張のようであるし、それから条約並びに五つ法案をばらばらに付託をすると、五つ常任委員会付託されざるを得ない、これは条約はおそらく外務委員会公労法並びに地公労法改正社会労働委員会国家公務員法改正内閣委員会地方公務員法改正地方行政委員会国鉄営業法改正運輸委員会、かように五つ委員会付託をせざるを得ない。そこで、かようなことでは審議の進捗にも憂うるところがある、かような考えを自民党は持っておると理解をいたしておりましたので、そういう考えを私は説明をいたしたのでございます。なお、野党第一党の社会党が三原則を掲げられて、一つ特別委員会ではなしに、常任委員会分離付託をすべしという御意見につきましても、私は若干皆さん方の御意見を承って理解をいたしておりまするので、その範囲におきましては、必要に応じ説明をいたして参ったわけでございます。
  16. 永岡光治

    永岡光治君 今の政務次官の答弁の中に、従来こういう案件安保条約の前例もあり、低姿勢でいくという方針であるからして強行しないのだ、こういう一貫した方針を持っておるという御説明がありましたが、それは条約案件については皆そうですか。
  17. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) それは内閣の抽象的な、一般的な方針といたしまして、非常な無理は避けると、かような方針でありますことは御理解願えておると思うのでございます。ただ、いかなる案件についても、必ず一般的な、抽象的な方針そのままが当てはまる、かような説明は私はいたしたのではないのでありまして、政府基本的な態度なり、基本的なものの考え方なり、あるいは基本的な国会に臨む態度としての姿を私は報告をいたした次第でございまして、個々の具体的な場合にいかようなる処置がとられるかは、これは全く私の関知しないこととして、一般的な政府考え方を述べて参った次第でございます。
  18. 永岡光治

    永岡光治君 実は、これは労働大臣あるいは池田総理等に聞くのが私は筋かと思う問題であるのでありますけれども、せっかくこの機会でありますから、私は向こうに使いをされました加藤政務次官出席されておりますから、ただしておきたいのでありますが、条約に軽重があるのですか。たとえばガリオアエロアは二国間の関係条約でありますが、ILO条約は、御承知のとおり、国際条約です。二国間ではございません。しかも、これまた深くここで論議しようと思っておりませんけれども、そもそもILO憲章の八十七号条約というのは本質的な問題であったわけでありますけれども、たまたま九十八号条約、八十七号条約憲法事項であったのを、もう一つさらに丁寧にするために特に抜き出しておるのでありますから、このILO加盟決定したその瞬間において、この精神は完全に実施されていなければならぬ性質のものでありますが、そういう内容であるし、同時に、数十カ国のものが入っているのでありますが、ガリオアエロア条約とこの八十七号条約と軽重ありと考えておるのですか、どうなんですか。
  19. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) 形式的な議論といたしましては、条約にいたしましても、あるいは国内法にいたしましても、どの法律が重い、どの法律が軽いというような議論は軽々にはできないと思うのでございますが、永岡委員がただいま御指摘のとおり、八十七号条約ILO精神のいわば中心になるものでありまして、ILO憲章真髄であるとも言い得るわけでございます。したがって、実質的な見方からいたしますれば、もちろん非常に重要な条約である、かように私は理解をいたしておるわけでございまして、形式的な見方と、実質的な見方では表現は違いはいたしまするものの、与党考え方が、重要な案件である、かような考えになっておる。それはただいま申しまするILO精神真髄表現する条約であるということ、さらにこれと関連をいたしまして、五つもの法律改正をするのだ、かように案件といたしましても数の上でもだいぶん多いのだと、かようなことを総合いたしましての特別委員会の設置の主張である、こう理解をいたしておりまして、そのことを説明をいたしたわけでございます。
  20. 永岡光治

    永岡光治君 労働大臣のほうに質問したほうがいいかしれませんが、引き続いてお尋ねいたしますが、鉄道営業法等改正ILO八十七号条約とはどういう関係があるのですか。なぜこれが必要になるのですか、八十七号条約批准に。
  21. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) 御承知のように、また、先ほど来御報告をしておりまするように、条約五つ関連法案は、すでに一昨年も上程され、また、昨年も上程されたのでございまして、いわば今の政府は、昨年上程されましたそのままの改正案件を踏襲いたしまして、八十七号条約承認とともに国内法改正をいたしたい、かようなことで参っておるのでありまして、すでに政府といたしましては、関連ありとして決定をいたし、今日に至っておるのでございまして、その事のよしあしについては、もちろん議論のあるところでございましょうが、ただいまの内閣は去年のそのままのものを踏襲して参っておる、このことを御了解願いたい、こう思うわけであります。
  22. 永岡光治

    永岡光治君 そうすると、関連というのは、一度かつての国会政府関連法案として出したから、今後その法案は永久に関連がありとして変えない、こういう御説明のように聞きますが、そう理解してよろしゅうございますか。
  23. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) さように内閣はすでに決定をいたしておるのでございまして、この決定は今日も変更されておらないのでございます。
  24. 永岡光治

    永岡光治君 その意味での関連ということはわかりましたが、ILO八十七号条約と、鉄道営業法改正によって刑罰を強化するということとどういう関連があるのですかということを私は聞いておる。
  25. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) 御承知のように、労働省として直接責任を持ちまする法案は、公労法並びに地公労法なのでございます。国家公務員法地方公務員法並びに国鉄営業法も、もちろん関連がないのではないのでございますが、私は、ただいまここで国鉄営業法改正ILO条約関連がありということを説明いたしまする資料を持ち合わしておらないのを残念に思います。
  26. 永岡光治

    永岡光治君 どうもこれ以上追及しても、なかなか答弁苦しいところだと思うのでありますが、結社の自由のための条約と、刑罰を強化する鉄道営業法との関連がどういう関連があるのかということを私は聞きたいのだけれども、他日にこれは譲ります。  それでは、ただいま御答弁の中にありました国家公務員法地方公務員法については、関連を一応持っておりますか。それなら御答弁できますか。これも関連ありませんか。
  27. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) 労働関係全般につきましては、もちろん労働省の所管でございますし、八十七号条約精神を敷衍していきまするための国内法改正をいたしまする処置につきましても、労働省が責任を負うべき筋であると思うのでございます。ただ、私が今申し上げましたのは、一般的な、抽象的な表現説明はできますが、具体的に政府が準備をしておりまする法案内容の、この点がこうであるという説明についての資料がただいま手元にございませんと、かように申し上げましたので、御了解をいただきたい、こう思います。
  28. 永岡光治

    永岡光治君 観念的に、大体概念的な説明ができるということであれば、結社の自由に関する条約の問題と、今後といいますか、従来のを今方針を変えるというのですから、そこで私は聞きたいのでありますが、人事院から人事局を内閣に新しくそれをはずして持ってくるということとどういう関係がありますか。必然的にどういう関連があるのですか。それをしなければ条約はなぜ批准できないのですか。そのことを私はお尋ねしたい。
  29. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) 五つ法律改正案内容は、御承知のように、多岐にわたっておるのでありまして、その一つに、ただいま御指摘の、内閣公務員の問題を所管する専任の国務大臣を置こう、その下に人事局を設置する、かような考え方が織り込まれているのでありますが、これは一口に、その必要はこうなんだというような説明を申し上げる資料がないということをただいま申し上げたのでございますが、これは私は、八十七号条約批准関連をして、その必要ありという立場に立ってさような改正内容が織り込まれているのだ、そのような程度の理解以上には出ておらないし、ただいま、また予定されている法案内容を具体的に説明いたしまする資料を持ち合わせておらないわけであります。
  30. 永岡光治

    永岡光治君 ですから、まあこれ以上私は追及しても、答弁の明確な理解を得ることができないので、機会を改めて労働大臣なり、あるいは池田総理なり、そういう方の出席を求めて質問をいたしたいと思っております。
  31. 阿具根登

    ○阿具根登君 私も、内容的には触れないように質問を一、二点申し上げたいと思っているのですが、次官がおいでになった理由は、ILO八十七号条約批准がおくれている理由説明に行かれただけですか、どうですか。
  32. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) ただいまの阿具根委員の御質問の、批准がおくれている理由というよりも、もうちょっと私の説明の範囲は狭うございまして、今国会にいまだ政府上程しておらない理由、これを中心説明をいたしたのであります。というのは、こういう議論がずいぶん強いわけであります。アメリカあたりの議会と政府との関係を頭に描いて、政府は何しているんだ、ぱっと国会に出せばいいではないかと、かような議論が相当強いのであります。米国等におきましては、御承知のように、政府の閣僚は国会では議席を持っておらない。政府国会との関係ははっきりと分離いたしているのでありまして、さようなことを頭に置いての議論は、実は日本としては困る議論なのでありまして、政府与党が一体でありまする今のような国会との関連説明をせざるを得なかったのでありまして、ただいまの御質問の、いまだ批准をしておらないということよりも、その前の段階の、いまだ上程に至っておらないことに関する説明を重点にいたして参ったのであります。
  33. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうしますと、次官がおいでになったときと、内閣態度があるいは変わったかもしれないが、予算委員会では、総理大臣初め労働大臣は、今国会批准をしてもらうように、極力早い期間に提案いたします、こういうことを言っているわけですね。それは御承知でお行きになりましたか、それとも、今国会ではあるいは上程できないかもしれないという空気の中でおいでになりましたか。
  34. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) 国内事情は、私の勉強いたしました範囲内におきましては承知をいたしておりますので、その限りのことは説明もいたしましたし、また、私も、若干は国内のことを承知をしておると自負をいたしておりまして、ただいまの御質問の点でございますが、雑な言い方をいたしますと、それはして参りましたと、かように言っていいのではないかと思うのであります。
  35. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうしますと、非常に重要な問題になってくると思うのです。先ほどから御説明になっておりますように、アメリカ等では、自国内国会状況を連想して、日本与党が多数を持っておるから、出せば批准は簡単にできるではないか、極端にいえばこういう御質問があった場合に、政務次官は、まあ池田内閣の政策として、多数を頼って強行する腹はないのだ、いわゆる低姿勢だ、だからなるべくそういうことはしたくないのだ、こういうことを向こうでおっしゃった。そうしますと、裏返していけば、多数で強行はしないということは、社会党が折れない限りはこれは批准できません、国会に出せません、こういうことになるわけですよ。もう一つ突き進んでいけば、野党が反対をしておるから批准ができないのです、政府批准をしたいのだけれども、国内法案について野党の諸君が反対をするから強行したくないということは、野党が完全に折れざる限りは批准はできませぬぞ、それを認めてもらいたい、こういうことになりはしませんか。
  36. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) さようにはならないと考えるわけでございますし、野党、ことに第一党の社会党が三原則なるものを掲げておられ、その中には国内法改悪反対という表現を使っておられると理解をいたしておるのでありますが、改悪であるか改善であるかは別個の議論といたしまして、私はジュネーヴでの説明は、社会党がすべての国内法改正案内容に反対なすっておられるとは考えないという前提でものを言って参ったのでございます。五つ改正法律案のうち、賛成願えておるものもございましょうし、そうでないものもあるのだ、こう私は理解をいたしておるのでございます。そこで、今国会上程がおくれてはおりますが、しかし、与党野党意見が完全に一致しなければ上程をしないというものの言い方も私はしておらないのでありまして、できるだけ歩み寄る努力をしておる最中だ、したがって、そのめどを見定めて政府上程をするのだと、かように説明をいたしておるわけでございまして、軽々に上程することによって前二回の轍を踏みたくない、これを基本説明をして参った次第でございます。
  37. 阿具根登

    ○阿具根登君 私はまた聞きでございますけれども、総評の岩井君が、政務次官と時を同じくして向こうへおいでになって、そうして同じILOの機関で、違った立場から国内状況報告された、そうして向こうの返答を持って来られたことを私は聞いている。でき得ればきょうは双方の方をと思ったのですけれども、次官も忙しいようですし、まあ二人の方を並べて法案審議する前にここでやるということはどうかと思いましたので、後日に岩井君に来てもらいたいと私は思っておりますが、次官がここで報告された言葉とずいぶんニュアンスが違うのですね。私らが今度総評の立場から行かれた方の話を聞いてみますと、たとえば次官が言われたのを今度はそのままとるとしても、多数を持っているから国会に早く出せばいいではないかという問題の裏には、国際問題としての八十七号の条約批准については、与野党完全に一致しているのだから、これは早く出して、そのあとのものは政府として別個の形で出してもいいのではないか、こういうふうに諸外国の人は考えておられるかと、こういうふうに私はとったわけなんです。いい悪いは別として、また、諸外国から見るならば、これだけ問題になったこのILO八十七号条約批准が、なぜ国内法と分離できないのか、この問題を持っていっても、他国の代表の方々は他国の国内問題について介入することは一切避けるはずです。国際会議はそういうところだと思うのです。そうすると、その国内問題は国内で片づけて、国際的な問題を早く批准してくれということを、失望をしたという表現でさらにこれを確認した。そうして今後の日本の行き方を見守っていると、これは言葉にしては強いようには表現されておらないけれども、内蔵しておるものは、非常な大きな日本に対する不信を表明しておると私は思うわけなんです。さうしますと、たとえば政務次官の話を聞いておれば、あとの五法案の問題については歩み寄りを話し合っているのだ、こういうことにとれるのだけれども、どこでそういう話し合いをされておるのか、どこまで政府は譲って社会党あるいはその他の党と話をされようとしておるのか、さっぱり私らは知らない。本問題の責任者の一人と思っているのだけれども、何も私はそういうことを聞いていない。そうしてただ前二回の轍を踏みたくない踏みたくないと言っておられる。あるいはもう一つ逆に言えば、社会党が何か折れて、このくらいまでどうだという線を持ってくるのを待っておられるのか、それとも、自分のほうでどのくらいまで折れて、間隔の差をなるべく縮めて国会審議上程されようとされておるのか、どういう腹があるのか、お答えできなかったならば、これも永岡君の話ではないけれども、大臣、総理の前で御質問したいと思いますが、お考えがありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  38. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) 総評の事務局長の岩井君もジュネーヴにお見えになりまして、数日間滞在なすっておられたようでございます。私はこの間、何回か岩井君に会いまして、ざっくばらんな意見の交換も実はいたしたのでございますが、これは公に申し上げるべきことではないと存じておるのでございます。そこで、私は政府立場で参っておったのでございますし、したがって、主として政府立場中心にものを言い、また、考え方を述べる、これが当然なのでございますし、岩井君はおそらく労働者側、かような立場でものを言われたと思うのでありまして、その間にいろいろ正式に記録に残るような会い方や言い方ではなくて、個々に会いまして意見の交換をし、考え方を述べたのでありまして、その表現なりニュアンスに関しましては、相当の開きがありますことも、御指摘のように、事実であろうと思うのでございますが、ILOが三者で構成されており、私は政府立場でものを言ったと、かようなことで、その違いのございますことは御理解いただけると、かように思うのでございます。そこで、ただいま阿具根委員が御発言になりました中で、与党野党でお互いに努力をしておるという点につきまして、私は、少なくとも国会におきます審議方法などにつきましては、非公式に何回か話し合いがなされておることを承知をいたしておりますが、ただいまちょっとお触れになりました法案内容についてまでの話し合いはなされておるということを私は聞いておらないのでありまして、少なくも、審議方法についての話し合いが、与党野党若干私的になされておる、かように私は理解をいたしておるのでありまして、ただいまの御発言と私の理解とは若干距離がございますので、このことを申し上げておきたいと、こう思います。
  39. 阿具根登

    ○阿具根登君 政府立場から、次官は、与野党の私的な話し合いがどこかでなされておるというお話でございますが、私ども国会対策の面をあずかり、社労の審議をあずかっておる者として、そういう話を聞いておらない。そうなりますと、そういうことが一つの言いわけになって、あと半分近くになった国会に、ついに提案されないということになりはせぬかという懸念が私にはあるわけです。そうして外国まで飛んで行って、何とか提案をしたいのだというようなことですりかえて、内実は提案もできなかった、提案はしたけれども、審議する期間もなかった、こういうことで、その責めはあげて野党にあるんだというような印象をつけるために外国に行かれたのじゃないか、使いされたのじゃないか、こういうふうに非常に受け取れるわけなんです。そうじゃなくて、積極的に今国会には成立させますという、積極的な気持で外国に使いされたならば、こういう考えがありますということがあるはずです。ところが、自分のほうには腹案は何もなくて、前二回の轍を踏みたくないのだ、今日まで提案がおくれておる理由は、野党諸君が賛成してくれないからだ、これでは、もしも提案されなかったならば、あるいは提案されても、審議を完全に行なう時間がなかったというようになれば、三回の審議未了というのは、これはあげて野党にあるのだろうということを裏づけに行かれたような印象を受ける。これならば大へんだ、こう思うのですが、そういうように結果はなりはしませんか。
  40. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) 政府方針といたしましては、今国会に早期に上程して御承認を願う、この方針には変わりはないのであります。ただ、今日の段階になりますと、はたして早期といい得るかどうかの議論はございますが、とにかく早く出して承認を願いたい、この願望には終始変わりがないのでありまして、ただいま阿具根委員の御指摘のようなことは、私はみじんも考えておりませず、また、さような片りんをさえジュネーヴでは示して参ってはおらぬ、このことをひとつ御理解を願いたい、かように思うのであります。
  41. 永岡光治

    永岡光治君 今、阿具根委員も触れられておりましたが、私は、そういう表現を使ったかどうかは別としても、やはり従来、この前衆議院の予算委員会で問題になっておりますように、社会党が反対をなさったからつぶれた、批准ができないのだというふうにとれる報告書を出したことがだいぶ問題になったのでありますが、六月には総会があることだから、そういうことも想定しつつ——まあやがてあなたをお使いされたことも総会のときに問題になると思うのですが、そこでお尋ねいたしますが、社会党野党第一党の立場の責任でこれは延びているのではないか、こういう説明をして来たわけですね。
  42. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) 与党である自民党と、野党第一党の社会党さんとの間の考え方の開き、主として審議方法等についての考え方の開きは具体的に説明をいたしましたが、責任の所在が野党にある、あるいは与党にある、かようなことを政府としては口にいたす立場にはないのでありまして、さような点につきましては、一切私は触れずに帰って参ったのであります。
  43. 永岡光治

    永岡光治君 八十七号条約そのものに関する限り、与野党満場一致で、一日もすみやかに、提案されたその日でも私ども成立さしたいという気持はあるのですが、そのことは向こう説明されて来ましたか。
  44. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) 社会党のいわゆる三原則の中には、八十七号条約批准承認、このことが第一にはっきりうたわれておりますることは、ジュネーヴで私は口にいたして参りました。
  45. 永岡光治

    永岡光治君 せっかくお使いして帰ったわけでありますが、私は、その後いろいろと新聞の記事で、向こうILO理事会、あるいは結社自由委員会報告によるところによれば、とにかく早くやってくれ、熱望しておるという空気があるようであります。それから、万一この国会で再びこれが承認されないという事態に到達いたしますならば、重大なる決意をILO本部は持っておる、その具体的な現われとしては、調査団をも日本に派遣するということをもどうも含めているやに承っておりますが、そういう空気は察知して来られたかどうか、それが第二点。  それから、もし万一この国会に不幸にして提案ができずに、あるいはまたこれが批准されなかった結果として、そういう調査団が派遣された事態においては、当然これはその調査団を受け入れるべきである。申し入れがあった際に、それを拒否するかしないか、この三つについてお尋ねいたします。
  46. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) ILOにおきましては、政府側といわず、労働者側、使用者側といわず、自由主義国家の代表の方々に一致した気持が、八十七号条約を早く批准したほうがいい、かようなことでありますることは、ただいま永岡委員指摘のとおりでありまして、私は国内におりましたときよりも、より一そう痛切にそのことを感じ取って帰って参った次第であります。  それから第二点の、この国会承認を経なかった場合に、五月二十八日から開かれる結社自由委員会、あるいは六月一日からの理事会並びに六月六日からの総会等におきまして、いかような様相が現われるかにつきましては、今から予断の限りではないのでありまして、政府といたしましては今国会上程をいたし、批准承認を求めたいという願望でただいま一ぱいなのでありますが、ただ、三月八日の理事会におきまして、日本のこの案件上程をされました際に、ベルギーのドボックという方が発言をいたしておられるのであります。この方は労働者側代表で、十名の正式の理事ではございませんが、副理事になっておられる方であると私は理解をいたしておるのでありまして、この方が発言をされましたその中に、ただいま御指摘のことと若干似通った言葉が使われておるのでありまして、それは別の効果ある提案をせねばならないような事態も考えられると、かような表現が実はあるのでありますが、別の効果ある提案なるものがいかなる提案であるかにつきましては、全くわれわれとしては予知し得ない問題なのであります。  そこで、第三番目に御質問のございました調査委員会等に付託をされる、そのような場合に日本が拒否をするかどうか、このことにつきましては、まあ政府内部でいまだ何ら論議をされておらない問題でございまして、私個人といたしましても、いまだ全く考えておらないことでございまして、お答えできないのが残念でございます。
  47. 永岡光治

    永岡光治君 最後の一つですが、社会党も、条約だけならばいつでも、提案されたその日でも承認したいという気持はあるのですが、政府はそれはいやですか、イエスですかノーですか。それだけ聞いておけばよろしゅうございます。
  48. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) 政府といたしましては、国内法改正いたし、条約批准する、この方針には変わりがないわけでありまして、今八十七号条約だけを提案する、かような考えは毛頭ございません。
  49. 永岡光治

    永岡光治君 いろいろな法律が提案されたにしても、条約だけは十一回も文句を言われているわけですから、国際信義を取り返す意味でも、直ちにこれを承認したい、あとは多少延びたにしても、とにかくまずこれをやりたいという気持は一ぱいなんですが、それはいやだ、とにかくほかのものと一緒でなければ絶対にこれは承認しないという政府の気持なのかどうか、政府の答弁を聞きたい。
  50. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) 今申し上げましたように、政府の一貫した方針は、国内法改正して条約批准をする、かようなことでございまして、国内法改正条約批准がいかように相前後するかは、国会の議決の模様によるわけでありまして、政府といたしましては、決定をいたしておりまするとおりにお運び願うことを強く望んでおる次第でございます。
  51. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 加藤政務次官に、率直にひとつお答え願いたい、こう思うのですが、それは阿具根委員永岡委員との質疑の間でいろいろとお話があったように、あなたと、また他の方々がこのたびのジュネーヴ理事会なり結社自由委員会に出られ、また、それを見てこられた方々報告のニュアンスがかなり違うわけなんであります。そこで、あなたに率直に、今度のあなたが行かれた目的というものは、十分に理解を得て帰られたかどうかということを伺いたいと思います。
  52. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) 三月の八日に理事会報告をされまして、原案どおり承認を得られましたいわゆる結社自由委員会報告なるものでありますが、報告内容につきまして、先ほど御報告をいたしましたように、昨年十一月の五十八次報告を思い起こして再確認し、それに引き続いた表現といたしまして、先ほど申しましたように、政府が今国会上程し、承認を求めようとしておる努力がついに成功することを希望する、かような表現になっておるのでありまして、この表現からくみ取れますることは、政府は早期に国会承認を求めたい、この希望を強く持っておるのであります。そのことが早う実現するようにこのことを表現してくれておる、こう理解をいたしておるのであります。したがって、私は政府立場ジュネーヴに参ったのでありまして、政府が早期に国会承認お願いしたい、この強い願望を持っておりますることをILOでは十分理解をしてくれまして、その上でのかような表現になっておる、こう私は信じておるわけであります。
  53. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 私は、八日の理事会におきまして、二日、三日の結社自由委員会の大体決定を受けてこれが採択され、しかも、この国会において提出、これが批准されることを望むという決定、並びにその前提となっておる今までの日本政府国会に対して、批准されないことに対する失望の再確認というような表現を見たということは、あなたがいささか十分自分の使いしたことの政府考えている考え方政府のとっている態度について、理解を十分得たということとは相当反していると、こうわれわれは見ているわけなんです。そこで、私の伺いたいことは、再度この国会提出を望むという考え方が表明されたその中に、国内法改正という言葉は、あなたはそれぞれ関係者了解を得たかのような表現なんですが、その国内法改正のうちに、ただ八十七号批准に伴うそれに抵触する部分の国内法改正ということが私は理解の程度だと思うのであって、政府考えているような——われわれが言う改正を行なわなくてもいい、かえって批准に妨害になるような個所の理解を、十分に私は関係者理解を求めていないのだと思うのです。それに触れていないのだ、こう解するのですが、その点十分八十七号条約批准に伴って、単に抵触する部分の改正ということを、国内法改正ということで表現されて理解を得られておられると、こうわれわれは思うのですが、非常に障害になっている個所の理解まで十分得られたと、こう解しておられるのかどうか、それを伺いたい。
  54. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) 理事会採択をいたしました文書は、先ほど来申しておりますように、昨年の十一月の五十八次報告をここでもう一ぺん思い出して、そうだったということであり、そしてその後に、今申し上げました政府努力していることを実現するように希望するのだ、かような表現でありまして、この文書は二つに切られたものでないのでありまして、したがって、前段は、昨年秋の五十八次報告をいわば経過として説明をし、そしてそのあとで政府の希望が達成されるように望むのだ、かような表現なのでありまして、したがって、ことさらに去年の十一月の五十八次報告よりも今回がきつい表現になっているとも思わず、むしろ政府努力を大いに認めているという点、この点が中心での報告書である、かように私は理解をいたしているわけでございます。  それから第二点の、改正法案内容についてでございますが、ILO事務局のゼンクスという次長が結社自由委員会を担当いたしているのでございまして、この方は英国の国籍を持っている方でございますが、日本事情を想像以上に非常によく知っておりました。また、日本政府改正したいということで、かつて上程した法律案内容につきましても、驚くべき詳細な知識を持っておりましたのに実は驚いたのでございまして、法案内容につきましても、若干の意見の交換をいたしましたが、私の受けました感じは、むしろ法律改正が必要なりという立場に立っている、かように理解をいたしたのでありまして、いわゆる便乗改正なんというような空気はみじんもなかったのであります。また、政府といたしましても、従来の方針を進めていく、かようなことでございまして、決していわゆる便乗改正であるとか改悪である、かようには政府はみじんも考えておらない次第でございまして、この点ぜひひとつ御理解を賜わりたいと、かように思うわけです。
  55. 村尾重雄

    ○村尾重雄君 最後に、永岡君から触れましたドボックですか、ベルギーの労働代表から、八日の理事会だったと思いますが、もしこのたび日本国会でこれが提出され、批准が得られないような場合においては、重大な考慮を払うという意思表示があったということです。これはわれわれの聞いているところでは、ジュネーヴにおける労働代表多数の人の意見のように伺っているのです。もしこのことがわが国の労働事情といいますか、八十七号批准に伴う実際の姿を見きわめるために調査団の派遣というような事態、すでにこういうことも云々されているところを見れば、火の気のないところ煙立たずということのように、もし批准されないというこのままの事態が継続される場合においては、調査団派遣ということも考えられるのです。このことは、単にわれわれ日本の労働関係関係する者だけの心配だけでなく、日本の今日の国際的な地位の関係からいっても、非常に重大なことになるのだと、こう思うのですが、そういう点で、これが単にドボックといいますか、ベルギー労働代表一個の個人の意見としてなされたものか、われわれ聞くところにおいては、労働代表多数の意見だと、こう聞いているのですが、あなたがこのたび出るに至りまして、どうおとりになったか、その見解を承って御質問を終わりたいと思います。
  56. 加藤武徳

    政府委員加藤武徳君) ただいま村尾委員指摘のように、ベルギーの方であるドボック氏が八日の理事会で発言をいたしているのでありまして、ここで私の表現で間違っている点が若干あったかと思うのでありますが、これは理事会理事なりあるいは副理事と申しますのは、政府の場合はその国という表現なのであります。ところが、使用者労働者側は、これはその国ということではなくて、むしろその個人ということが中心のように私は理解をいたしておるのでありまして、たとえば理事会開会されましたときに点呼をしたのでありますが、その点呼の際、これは政府代表の場合は国の名前を言い、出席した代表者の名前を言うのでありますけれども、使用者側並びに労働者側の場合は、これは国の名前は言わないのであります。日本の場合、政府側日本国の青木公使が代表であったのでございますけれども、ところが、日経連から使用者代表として理事に入っていらっしゃる三城晃雄さんにつきましては、これは三城晃雄ということであって、日本国ということは頭につかないのであります。したがって、ベルギーの国籍を持つドボック氏につきましても、ベルギーのドボックというのが正しいか、あるいは単に労働者側の副理事であるドボックというのが正しいのか、その点は、私は表現で今まで間違った点が若干あったと思うのでございまして、そういう点がございましたら御了承いただきたい、こう思うのでありますが、いずれにいたしましても、ドボック氏が発言をいたしまして、今申しましたような、十名の労働者側の理事ではなく、ドボック氏は副理事になっておるのであります。したがって、委員会等で発言はできますが、表決等の場合は権利はないのでありますが、この人が発言をいたしました。冒頭に、おれは労働者側から頼まれてしゃべるのだがと、前置きしまして言っておるのであります。もちろん労働者側の副理事でもあるのでありまして、その中で先ほど私が申しましたような、次の機会には別の効果ある提案をしなくちゃならぬようなことになるかもしれぬというような言い方を最後にしておるのでありまして、ところが、この発言の前段を見ますと、むしろ日本政府を鞭撻したと思われるような点があるわけです。それは、日本政府国会で絶対多数を持っているのに何たることだ、絶対多数を持っているならさっさっとやったらいいじゃないか、どうしてやれないのだ、そういう発言も前段にあるのですが、その前段の点は別にいたしまして、最後に述べました効果ある提案ということにつきましては、いろいろ労働者側のほうとしては考えていらっしゃることがあるのかもしれませんが、少なくも、公の席で具体的には何もそれ以上は言われなかったのでありまして、はたして調査団云々というととろまでの気持を持っていらっしゃるのかそうではないのかもわからず、むしろ前段の政府を鞭撻されるようなことに重点を置いての発言であったのかもしれません。いまだ内容、真意につきましては、つまびらかではないのでありまして、その点をひとつぜひそういう工合に御理解をいただきたい。したがって、この発言に対して、日本政府の受け取り方は、まだそれをなるほどこうだったのだというようなことにコンクリートにはなっておらないわけでございまして、これもあわせてひとつぜひ御理解をちょうだいいたしたい、かように思うわけであります。
  57. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 本件に関する本日の質疑はこの程度で終了したいと思います。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  59. 高野一夫

    委員長高野一夫君) この際、委員異動について御報告いたしておきます。本日付をもって山本杉君が辞任され、堀本宜実君が選任されました。  以上をもって本日の審議は終了いたしました。次回は来週火曜日、三月二十日午前十時から開会いたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後零時六分散会