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1962-03-08 第40回国会 参議院 社会労働委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月八日(木曜日)    午前十時二分開会   —————————————   委員の異動 本日委員竹中恒夫君、山本杉君、光村 甚助君及び小柳勇君辞任につき、その 補欠として吉武恵市君、泉山三六君、 永岡光治君及び吉田法晴君を議長にお いて指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     高野 一夫君    理事            鹿島 俊雄君            村山 道雄君            阿具根 登君            藤田藤太郎君    委員            勝俣  稔君            紅露 みつ君            佐藤 芳男君            谷口弥三郎君            山本  杉君            横山 フク君            吉武 恵市君            永岡 光治君            吉田 法晴君            村尾 重雄君    発  議  者 村尾 重雄君   政府委員    労働省職業安定    局長      三治 重信君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   参考人    日本石炭協会会    長       萩原吉太郎君    日本炭鉱労働組    合中央執行委員    長       原   茂君    日本石炭鉱業連    合会会長   舟橋  要君    全国石炭鉱業労    働組合書記長  菊地  勇君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働情勢に関する調査  (石炭鉱業合理化に伴ふ離職者対策  に関する件) ○労働組合法の一部を改正する法律案  (村尾重雄君外二名発議) ○労働基準法の一部を改正する法律案  (村尾重雄君外二名発議)   —————————————
  2. 高野一夫

    委員長高野一夫君) それでは、これから本日の社会労働委員会を開会いたします。  労働情勢に関する調査の一環として、石炭鉱業合理化に伴う離職者対策に関する件を議題といたします。  本日は、本件に関しまして、調査上の参考に資するため、参考人方々の御出席をお願いしております。この際、当委員会を代表いたしまして、一言参考人方々にごあいさつを申し上げたいと思います。  まことに御繁忙のところ、曲げて当委員会に御出席いただきまして、まことに恐縮に存じております。石炭産業合理化が漸次進められるにつきまして、諸般のいろいろな問題が伏在して参るのでございまして、当社会労働委員公ににおきましては、これらの点について非常に重大な関心を持ってる次第でございます。それで、当委員会の審議の参考にいたすために皆様においでを願いまして、合理化の実情、対策、あるいは離職者発生状況、今後の見通し対策等につきまして御意見をお願いいたしたいわけでございます。まことに申しわけないのでございますが、時間があまりございませんので、最初に十五分程度御意見をお聞かせを願いまして、それからあと委員から質疑がございますれば、委員質疑をお受けを願いたい、こういうふうにいたしたいと思います。  なお、委員諸君、それから参考人方々に御了解を願いたいことは、参考人萩原さんが非常に御都合が悪くてお急ぎになりますので、最初萩原さんに御意見を述べていただいて、そして直ちに萩原さんに対する質疑に移りまして、お帰りを願ったあと、ほかの方々の御意見発表に移っていく、そして御三人の方々の御意見発表が済みましてから質疑に移る、こういうふうにいたしたいと思いますので、皆さんの御了承をお願いいたしたいと思います。  それでは最初に、日本石炭協会会長萩原吉太郎さんにお願いいたします。
  3. 萩原吉太郎

    参考人萩原吉太郎君) ただいま御紹介にあずかりました萩原でございます。  石炭協会といたしましても、この数年来やかましくなって参りました石炭問題について、最大の関心事は、多くの人を首切らなくちゃならぬという問題であります。現に三十四年三月末に比べまして、大手、中小を加えますと、実に八万人近く、七万九千人からの人員を整理いたしております。さらに今後においても、これは観測でまちまちでありますけれども、今日見て予想されているところでは、七、八万の人員整理がここ三年間の間には行なわれるのじゃないかという見通しがあるわけでございます。こうした大量の人員整理ということは、いまだかつてわが国においてもない事実でありまして、これは暗に経済問題、大きな社会問題なのでございます。そこで、われわれといたしましては、この問題について、首を切らないで石炭鉱業が立ち直れるか、これが最初の問題であろうと思うのでございます。遺憾ながら、この石炭鉱業における人員整理ということは、全く必然的という運命に置かれております。さらに、また、これが今日の政策のもとにおいては、どこでこれが収拾をし、目途が立つか、これが全く不安定、ここに深刻な問題がひそんでいると思うのでございます。なぜ必然的と言えるか、これは経営者経営手腕の不足によるもの、あるいは一時の不況によるものなれば、われわれとしても、経営者の努力によってこれは乗り切らなくちゃならぬ問題である、こう思うのでございますが、御承知のとおり、これは消費構造変化によるものでありますので、そうしたもので、いわば燃料革命の第一歩として起こっているところにすでに悲劇がひそんでいるのでございます。われわれは石炭鉱業再建のために、どうしても能率を向上し、原価を引き下げて重油と対抗しなければならぬ、こういうことであります。したがいまして、能率の向上ということに努めております。現に昭和三十三年の十四トンが、三十六年二十一トン九分で、こういうものになっているのでございます。しかし、消費構造変化によりまして、需要というものは、これは大きく期待することはできない、横ばいとまず見るのが最も穏やかなところであろうというのが、わが国ばかりではなく、各国でいわれているところでございます。してみますと、需要が限られて、能率は上がっていく、その結果として人が余ってくる、こういう結果になってくのでございます。それから、また、再建に努めまするために、非能率の山をしめて集中生産に向かおう、これは年来唱えておったところでございますが、このスクラップ・アンド・ビルドの結果として、多くの炭鉱が閉山され、その結果として、またここに離職者を出さざるを得ない運命にある。今日までにおきましても、この閉山によって生じた失業者というものは、約三万をこえているわけでございます。こうした情勢であって、遺憾なことでありますが、必然的というような運命に置かれておるというところに問題の深刻さがあるのでございます。しかし、ここで考えなくちゃならないことは、必然的であるからといって、それでは企業の存立を確保するために、急激な人員整理をやっていいかどうかということは、これは別個の問題であります。終局において必然的なものであるということは認めるといたしましても、われわれとしては、この人員整理で大きな社会問題を起こさないように、そうしてここに働く人たちをでき得る限り不幸に陥れないようにしながらこれを切り抜けていくところに問題点があると思うのでございます。それはどういうことかと申しますと、これは必ずしも私は、それでは各炭鉱過去二年間において、そうした徐々とした政策をとっておったかというと、そうは申し上げません。しかし、理論として、私の考え方としては、このテンポはゆるやかに持っていかなくちゃならない、こう思うのでございます。急激に一年間に三万近くの人、今後行なわれる二万数千人の人を、企業が存立するためにやむを得ないのだ、理論としてはわかるとしても、それはわれわれとして最も考えなくちゃならない点だと考えておるのでございます。そこで、ただいま言ったような事情で、再建のためには必然的にそういうところに追い込まれてこられる。そこで、国に要請いたしておりますとおりに、この多くの雇用者を擁しておった石炭鉱業が、そうした状態に急激に追い込まれないような政策をとってもらいたいということは、私は年来これは政府に要請し、主張しておったところでございます。一企業の限界をこえておるのでございます。そうしますと、政府がこれを大きな社会問題としてみて、石炭鉱業もしくは私企業のような救済というよりは、そうした観点から見て、政府がここに一つの急激な首切りの行なわれないような手段をとってもらいたい、こう要請しておるのでございます。これはもし政府が昨年言明いたしましたとおりに、一つの抜本的な長期安定政策というものを生み出してもらいますれば、その線によってわれわれはそうした行き方をとりたい、こう思っております。さらに、また、そうした政策をとることによって、大よそこの辺にいけば、もう人員整理をしなくても立っていけるわけだというめどのついた政策を生み出してもらいたい、こう思っておるのでございます。これはもし働く者の立場から申しますれば、急激に首切られ、そうしてどこへ行ったらこれがとまるのか、これは何人も断言し得ないような、そういう面の政策がゼロといっていいような状態に放置されているという点に、労務者としてもたえられないものがあると思うのでございます。ここに炭労委員長の原君がおられますが、私は推測いたしますのに、原君としても、最近の言動を見ますと、必ずしも頭から人員整理絶対反対を唱えているのじゃない、こういうことを言っておられますが、その裏には、切っていいんだということではないので、これはやむを得ないとしても、不幸に陥れないような手段を講じ、急激にせず、そうして最後めどをつけてもらいたいということが必ずやその裏に考えておられることと経営者としても推察いたしておるのでございます。したがいまして、今日は労働委員会でございますけれども、帰着するところは政府がいかなる政策を今後樹立するか、長期政策として安定政策をどう打ち出すかというところに問題は帰着してくると思うのでございます。私は、問題がややそれて参るようではございますが、炭労が今月末でもってストライキに入って大動員を行なうという計画を知りました。私は、われわれの言っていることは、決してこれは闘争ではないのだ、政府一つの策を立てるようにという要請をしておるのでございますから、私としては、そうした長期ストライキに入り、労使ともに不幸になり、しかも、あるいは将来を脅かされるというような結果に立ち至るかもしれないということに対しては、ぜひ今後こうした事態の起こらないことを心から熱願しておるのでございます。しかしながら、そうした状態に追い込まないように、政府においても一つ長期安定政策というものを樹立していただきたいと思うのでございます。私は、原君を前に置いて恐縮でごいざますが、あの無期限、そうして十万入の動員ということは、経営者としてはたえがたいところであります。しかし、その一歩手前に、私はそうした事態に追い込んでいいのか、これが政治であろうと思うのでございます。なぜその前に、そうしたところへ追い込んでもなお放置しておくか、なぜ至急に一つ安定策を出さないか、昨年これは政府においても、この通常国会において、私たちも感じたことは、予算において可及なる措置はとるけれども、この議会において一つ安定政策というものを出すということを言明されておるのでございまして、私は、政府においても、むろん通産省で御用意になっておると思いますが、そうした案を首を長くして待っている状態でございます。しかも、炭労においてこういうふうな事態であるとすれば、経営者としてもたえがたいところであります。全く破滅に瀕している。ぜひそれが一日も早く政府においてそうしたやむにやまれず追い込むというようなことのないように御配慮願いたいと思っておるのでございます。  翻って、約八万人になんなんとするような人員整理をしましたが、この離職した人の姿がどうなっているかと申しますと、数字相当のよい数字が発表されておるのでございます。これはただ私は、ここに一つの問題があろうと思うのでございます。飯を食わなければならないので、何かの職にありついているでしょう、しかし、その職場が安定したものであるか、私は、離職者対策としては、ただきょうの米、あすの米を食えればいいという状態が、これで職を得たから離職者対策はなったと見てはならないと思うのであります。私たちは、長年会社のために働いた人たち、涙をのんで切ったその人たちが、はたして安定した職を得ているかどうか、この安定しているかどうかということに大きな問題があると思うわけでありまして、広域の職業紹介によって一万四千人、自県内の職業紹介によって三万四千人、その他合計六万近くの人が職についた、こう言っておりますが、決してこれは安定した職場についているのじゃなくて、その裏に、炭鉱夫としての失業は免れた、しかし、さらにその先からの失業者というものの卵になっていると見られる点が多いのじゃないかと思いますので、この離職者対策については、さらにその中について御検討願って、そうした見せかけの数字でなく、安定した職場の与えられることに、首切った側から私は切に望んでおるのでございます。今後さらに七、八万の人を切る、われわれ会社の縁故をたどっていろいろ入れたという人も、数字の上では、大手各社であっても二万二千人と言っております。こういうような統計が出ておりますが、今後こうしたことができるかどうか、他産業受け入れ力にも限度があります。そうしますと、今後切る人というものの職というものは非常に不安定である。なかなかその職を見出すのに困難であろうと思うのでございます。私は、この炭鉱離職者対策について考えるのでございますが、政府は、この自後の失業者を救済するという意味で職を与えているということでよいのかどうかということに私は大きな疑問を持っておるのでございます。事は、革命によって起こっておる失業でございます。これは大きな立場から見るなれば、炭鉱で働く労働力国家のために有効に使用するには、どこに持っていったらいいかという点を労働省としては考えているかどうか、首切った者を世話するのだということでいいかどうか。これは国家経済の上からも考えなくちゃならぬと思うのでございます。いわば言葉をかえていいますれば、炭鉱離職対策というものは労働力の再編成であると見ていいと思うのであります。してみれば、大きな目からこの炭鉱離職者をどこに収容するか、職業あっせんというものは、どこに収容するかということに一歩踏み込んでいただきたいと思うのであります。うしろ向きでなく、前向きに一歩前進して離職者対策を見ていく、離職者対策というより、労働力の再編成の問題としてこれを取り上げていただきたいと思っておるのでございます。これは私は、昭和三十四年に、政府に対する意見書において、一つのこの点から見て意見書岸内閣のとき提出いたして見ました。自民党政調会においても御審議願ったのであります。また、社会党は当時一本でありましたが、鈴本茂三郎氏のあっせんで、ちょうど勝俣氏が座長席についておりましたが、これらの点について意見を述べたのであります。当時社会党としては、勝俣氏の言を借りれば、自分考えと全く同じである。全幅的に、この案を見たときに、社会党はあげてこれを支持するということを言明している。自民党におきましても、これを見ていて、党六役会議までこれを認めてきましたが、最後においてこれが挫折したのであります。なぜか、この点について私は一言述べたいと思うのでございますが、世間一般に、炭労の原君を前に置いて何ですが、戦後の炭労の動きというものは、他の組合から見て、きわめて過激なものもありました。ストライキもひんぱんでありました。しかし、その上に、ここに働く者全部を、いかにも危険であるがごとき目をもって見たというところに最大の間違いがあると思うのであります。そして、そういう目で見ては政治はできない。それなればそれとしても一そうではないのでありますが、百歩譲ってそうとしても、それに対する対策としてでも打ち出していかなくちゃならぬと、こう思ったのでございますが、それは当時私は、一つの例としてあげておるのでございますが、公共事業などで全国で流れて出る人間はどのくらいあるか、厚生省の調べによると百万人に達しております。それならば、この労務公団を組織して、その一割の十万でもここに収容し得ないかという点を問題として提起したのであります。私は、単にやめた人をどこかに世話するというようなこと以上に、ここからやめなくちゃならない産業運命から見て、そうなっていかれた人たちをどこに収容するかということに対して、離職対策というよりは、労働力の再編成という観点から、政府がもっと大きく高い角度からこの問題を解決していただきたい、こう願っておる次第でございます。  以上をもって終わります。
  4. 高野一夫

    委員長高野一夫君) どうもありがとうございました。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  5. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 速記を始めて。  それでは、ただいま萩原さんから御意見を聞かしていただいたわけでありまするが、委員側から、萩原さんに質問なさりたい方がありますれば御発言願います。
  6. 阿具根登

    ○阿具根登君 ただいま萩原さんから、非常に適当な御意見を拝聴いたしまして、私ども非常に同感とするところが多いのでございますが、時間がないようでございますので、三点ばかり御質問申し上げたいと思うのです。  ただいま言われましたように、名目的にはたくさんの人が就職しておる。しかし、実際問題として非常に生活に苦労しているし、その後の失業についても何も手を打っておらない、もう少し実のある、実際の生活が安定してできる職場、安定したものを世話することである、全くそのとおりだと思います。しかし、そういたします反面、政府並びに国民の税金等でこれを考える場合に、ただこれには相当制約がなければいけぬと私は思う。そうした場合に、受け入れ側は一切そういうものは廃止される、極端に言えば、少しでも社会党がものを言う、あるいは社会主義的なものを言えば、一切そういうものはお断わりだ、もう一つ極端に言えば、金は政府が出しなさい、しかし、企業には一切口を入れるな、こういうことが今日まで続いてきていると思う。そうすると、いつまで経っても浮かばれない、その点はどういうふうにお考えになっておるか。  それから、最近の新聞等にも出ておりましたが、これはひとつお伺いしておきたいと思いますのは、総合エネルギー対策というものを業界でもお考えになって、近々発表されるということでございますので、その構想なりをお聞かせいただければ幸いだと思います。  それからもう一つきょうの新聞に出ておりましたが、まあエネルギー革命というような言葉で申されましたが、確かに油のような、非常に大きな輸入によって、これは国会でもいつも論争になっておりますが、日本ほど極端に利益に食いつく業者というものは私はないと思う。油だってそのとおり。石炭なんかどうであろうとかまわない、自分がもうかりさえすればいいということで、日本国内産業等は無視して、世界各国で見られないような油の大量輸入をやって今日の問題を起こしているところなんですね。ところが、きょうの新聞等を見てみますと、その石炭業者自身が全部油と提携している。その石炭を守って下さるだろうと思っている石炭業者が、全部外国の資本と提携して油を入れて、それを精製するほうに転向されておる。これは逆じゃなかろうか。それは企業としては考え方はそれはわかります。しかし、こういう何とかして石炭を守っていかなければならない、ただ価格面のみで太刀打ちして、日本の長い経済考える場合に、あるいはエネルギー考える場合に、日本の国で唯一の資源である石炭が、価格で太刀打ちできないならば、国で守るべきであるということが、これが労使双方で言われておる言葉だ。ところが、それが自分企業を守るためか、あるいは利潤追求のためか、あるいはバスに乗りおくれないためか、それはわかりませんが、石炭業者自体が油と提携をして、油のほうに転向されておるということは、これは私は少し逆じゃなかろうか。この問題に限って、企業面でなくて、労働政策の面について、あるいは国内資源という問題について、たとえば萩原さんも言われましたように、そんなに急激に首を切ってはたまらぬ、だからゆるやかにしてくれ、おそらく炭労委員長もそういう気持だろうとおっしゃったのですが、それと逆に、かえって首を切るような姿になっていくのではなかろうか、こういうふうに思います。  それからもう一点は、確かにおっしゃいますように、今日まで八万人からの人が首を切られておる。さらに七万人以上の人が首を切られようとして社会問題化した。これが十万人に増員ということになれば、大へんな問題が起こってくると思うのです。ところが、その首を切られた中で、政府名目だけでも世話しております。しかし、その首を切られたうちの相当の人が炭鉱にまた採用されておるという現実なんです。数字的に見ますと、首切られた人のうちの約七割ぐらいは炭鉱がまた採用している。炭鉱が首を切って、そうしてその七割ぐらいは採用をまた別個からしている。その七割のうちの八割近いものは、また炭鉱夫を雇っておる、こういうことなんです。そうすると、高い賃金で今日まで長い間働いていた人にやめてもらって、首を切っておいて、そうして今度安い賃金でまた石炭を掘らしておる。それが七割ということなんです。これがどうも私たちとしては考えられない。第一には首を切る、そうして労働者賃金を下げて、また炭鉱が雇うという、こういうような姿が繰り返されておる。そうして、そのあとの残った大体年間二万五千人くらいが、政府やその他の民間の力であっちこっちに世話をしてもらっておるが、その結果が、おっしゃったように、完全に仕事になっておらない、こういう弊害が起こっておるのではなかろうか、こういうふうに思うわけなんです。  以上、四点ほど御質問を申し上げましたが、この点につきましてひとつお聞かせ願いたいと思います。
  7. 萩原吉太郎

    参考人萩原吉太郎君) どうもこういう質問に対しては、落とすといけませんから、もう一度問題点のテーマだけをおっしゃっていただきたい。この前のときにもこの委員会に来て、よくあるのですが、四つくらい出されて、二つくらいで、あと忘れて答弁しないので、言いにくいのだろうということで済まされて、だまっていたことがありますので、もう一度問題点だけをおっしゃっていただきたいと思います。
  8. 阿具根登

    ○阿具根登君 要点だけ申し上げますと、たとえば首を切らないような政策を立てろ、首を切ってから政府名目だけの世話をすることでなくして、もっと抜本的な考え方を示せ、こういう御意見でございましたから、これを裏返して聞けば、たとえば油と価格において太刀打ちすることができない。しかも、首を切ることは社会問題にもなるのでできないというならば、何がしか国がそれに対する対策を立てろ、援助をしろ、もう少し極端にいえば、補助金を出せとか、そういう問題がつき詰まってくるとするならば、そういう場合は、やはり国がそれだけの施策をやれば、業者に対してもそれだけの何がありますよ。
  9. 萩原吉太郎

    参考人萩原吉太郎君) それはいいのですが、御質問の第一問は何ですか。
  10. 阿具根登

    ○阿具根登君 それから第二番目は、総合エネルギー対策はあるか。業者は出すと言われているが、私ども今研究しておりますから、どういうお考えであるか、それをお聞かせ願いたい。
  11. 萩原吉太郎

    参考人萩原吉太郎君) それから続いて石油業者提携と、それから最初は……。
  12. 阿具根登

    ○阿具根登君 首を切って、またそれを安い賃金で雇っておられるじゃありませんか。この四点ですね。
  13. 萩原吉太郎

    参考人萩原吉太郎君) あとでまた不足していましたら御質問願います。  最初にただいまお話がありました総合エネルギー政策ということであります。業界といたしましては、十四日に評議員会を開いて決定して、これを各方面の批判を仰ぎ、世論に訴えるつもりで作業中でございます。問題点というのは、今急に作るのでなくて、過去一年の間にいるいろ言って参りましたが、これを絞って、何がきめ手であるかということのものに限っていこうということで作業中でございまして、実は秘密にする必要はちっともないのでございます。ないのでございますが、実は協会だけの事務当局で、私自身で案を立案中でございまして、十四日に評議員会を開いてこれをかける、おそらく十七社いろいろの意見もあろうかと思います。その意見も調整しないうちに先に言うということは、協会内部の統制上、非常に困りますので、これでいきますよということは私は申し上げられませんが、それではまるで逃げたようになりますので、もし私個人の考えとすれば、問題の究極点は、いろいろなことを言うが、価格問題に帰着する、こう考えておるのでございます。まあどうきまるか知りませんが、そういう点が骨になって一つ長期政策というものが編み出されてくると考えるのであります。  それから第二に、私は、これだけの数を切って、そのうち七割なり幾らがさらに炭鉱に雇われているじゃないか、その数だけが雇われているじゃないかということは、不用意ではございますが、私はそういうふうに行っているということを耳にいたしておりません。これは協会に帰ってから調べてみます。ただ、問題があるとすれば、これはどうしても欠くべからざるような業者がしておるということから起こるかもしれませんが、今日の炭鉱状態においてそういうことが実行されつつあるということは、私としてもそれだけの数が行っているということは非常に意外とするところでありますが、これは阿具根委員に、私として耳にしないというよりも、不用意でありましたが、考えておらなかった問題をつかれておりますので、数字を取り調べまして、後日書面をもってお答えいたします。  それから第三に、石炭各社が石油と提携しているじゃないか。これは何のことはない、石油のほうの肩持ちをして自分の首を締めるのじゃないか、これは非常におかしいという御質問でございました。本日の朝、私の会社で日石との提携ということがうたわれて出ておりました。各社がいち早く数年前からこの手に出ておりましたが、同じような考えから、私はこれを踏み切らなかった。各社の三井、三菱、住友その他が打つ手は、われわれとしてもすぐ気がつく。はたしてそういうふうな点も私は考えまして、これを踏み切らなかったのでございますが、これは石炭としては既存の販売網を持っている。それが石炭業者以外のものから売り込まれている。われわれはそうした業者に向かって、石炭を売らないで、石油をよけい売り込むように努力するというのではなくして、少なくとも、従来エネルギーを扱ってきた部門である、そうしたなれば、どうしても現実の問題として、重油にかわってきている面がある。また、今後の石炭需要が五千万トンとかりにいわれておる、こうしたものでそれ以上に増大をしていくものがある、その分野をエネルギーを扱ったものにおいてこれを扱っていいんじゃないか、これは一つの確かにそれによって利益は生まれてきます。しかし、石炭鉱業を追い込むというものではなくして、あくまでかわる、もしくはかわらざるを得ないものにおいてならば、他のものが扱わずして、それによって会社の基礎を強くしていくという方策に出てもよかろうということで、最近に至って私は踏み切ったわけでありまして、あえて石油の販路の拡大に奔走するという意味は毛頭ないのでございます。これは非常にその点についてはこういうふうにとられますので、私が数年間踏み切らなかった問題点であります。決して石炭をやめて石油にいくというようなことではありませんので、この点はひとつ御了解を願いたいと思います。  それからもう一点ございましたね、何か。
  14. 阿具根登

    ○阿具根登君 たとえば、今のままではどうしても首を切らなきゃならぬところができてくる。それを首を切らないためには、ある一定期間政府補助金なり補給金なりを出してでも守れというようなことになれば、それに対してやはり政府としては、業者に対して何かの規制がありますよ。そうする場合、一切規制はいやだ、金はくれと言われるのが今までの業者考え方であるが、その点はどうですか。
  15. 萩原吉太郎

    参考人萩原吉太郎君) これは私は、経営者の頭というか、一国の経済の運行について大きな変革を世界的に来たしつつあると私は思います。一面において自由化といわれておりますが、いまだ、しかし今日ほど各国が計画経済といいますか、計画的に進めている時代はないと思います。そうも見られる。そうしますれば、よく自由々々といっておりますが、一国、ことにわが国のような基盤の弱い国におきましては国が統制して、いたずらにこまかいところへ、会社の内部に介入してあれこれ言うのではないけれども、一つの計画を国が持つべきだ、そして、その計画の線によってこれを指導していくということを各国はとっております。わが国においては、むしろこの点において欠けていると思います。そうして石炭鉱業の、ただいまの御質問のように、援助もするけれども、いろいろな規制や何かも起こりますよと言われますが、私はそれでいいと思います。それでなぜ国の一つの大きな見通しの計画を立てて、そのワクで行動することがいかんのだ、いたずらに名前だけで、経済は自由経済がいいんだというような昔の思想そのままのものは今日許されない、こう考えておるわけであります。そうして、今思い出したので、御質問の中で、各産業でとらないじゃないかという御質問がありましたが、私も全く同感でありまして、大よそ自分産業さえもうかればいいんだ、会社さえもうかればいいんだという思想が、すでに私は明治時代の考え方じゃないかと思います。そうした考えよりも、関連産業を助けて、そして計画された中で、そして他産業との関連において安定した線を見出すという、そのワク内において利益をあげるのがいいじゃないか、利益一方に走るということは、今日というよりも、今後の経済において、そういうものはかえって滅びるに違いないと私は考えておりまして、そういう意味からいって、他の産業界も、石炭鉱業の置かれた現状をよく認識していただきたい、こう思っているわけであります。ちょうど私が西独に参りましたときに、石炭問題を大きく解決した一つは、これは言葉は非常に違いますが、「友情の経済」ということを非常にフランクフルター・アルゲマイネが言い出して、西独一般を風靡した。それによって大きく石炭が救われた。向こうで聞きますと、政府政策もさることながら、この空気というものが石炭鉱業を助けているのだということを聞きましたが、失業者の問題ばかりでなく、もとよりそれは一番大きな問題ですが、そうした点についても、他の産業もこれに協力していただきたいと思っております。
  16. 高野一夫

    委員長高野一夫君) どうもありがとうございました。あなたお時間の都合があるようですから、お帰りになってけっこうです。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  17. 高野一夫

  18. 高野一夫

    委員長高野一夫君) この際、委員の異動について報告いたします。本日付をもって、光村甚助君、小柳勇君、竹中恒夫君が辞任されまして、永岡光治君、吉田法晴君、吉武恵市君が選任されました。   —————————————
  19. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 先ほど御了解願いましたとおりに、これからお三人の参考人方々に順次御意見の発表を願いまして、それが済みましてから、あと質疑に移りたいと思います。  次に、日本炭鉱労働組合中央執行委員長の原茂さんにお願いいたします。
  20. 原茂

    参考人(原茂君) 炭労の原です。一番先に離職者の数と、それから生活がどうなっているかということにつきまして、先ほど萩原さんから、大体約八万人整理された。これは八万人整理されたうちで、一回炭鉱をやめて、また炭鉱に復職している者がございます。それは二万円もらっていた者が、一万五千円から一万円の労働条件で同じ炭鉱に雇われている。こういうような形で逆にまた復職している者がいるわけです。実際には六万人が実質の失業者ということになります。また、約二万人というものは、先ほど阿具根さんがお話になりましたように、むしろ一度首を切られた人間が、また別の炭鉱に雇われて、その条件は三分の二とか半分くらいの賃金で雇われている、こういう事情にある。大体六万人の労働者のうち、約一割が、ある程度安定した職場に就職している。それからあとの九割というのは、ほとんどこれは失業状態で、生活保護法の適用を受けるか、あるいはニコヨンになるか、こんな格好で、ほとんど炭鉱の周辺に舞い戻っているというのが実際です。そういうふうに整理をされたが、しかも、その残っている炭鉱労働者はどういうことになっているか。一慶約八万人も首を切られて、そんなひどいことをやられたわけですから、普通で言うならば、残った労働者は人並みの生活をしているのが常識だ。ところが、残った労働者が中小大手を問わず、現在の賃金の確保ができないということで、五千円ないしは一万円、こういう賃下げがこの二年の間にずっと各社提案されておる。したがって、二年前の生活状態考えますというと、約半分の収入で生活をしているといってもいいんじゃないかと思うのです。物価がどんどん上がっていく、他の労働者は多かれ少なかれベース・アップされる、そのことは別に国家公務員も同じことだと思う。ところが、炭鉱労働者は二年の間に五千円——一万円の賃下げをされている。生活の実際の実態は、二年前から見たら半分の収入で生活をする、こういうことと何ら変わらない状態に実際は置かれている。もう一つは、職場が安定しているのかといいますというと、いつ首切りの通知がくるかわからないという不安を抱いている。もう一つは、今国会でも昨日問題になりましたが、大正鉱業は二千人の労働者をかかえて、働こうと思っても、坑内には、保安設備が完備しなくて、命がけで働かなければならないというので、働きに行くこともできない。働いても賃金を払うかどうかもわからない。アルバイトしようと思ったら仕事がない、生活保護法を受けようと思ったら地方自治体に金がない、失業保険にかかろうと思えば首切りを認めたことになる。こういうことが次から次へと九州中心に行なわれておるわけですから、残っている労働者も、まさに地獄の生活だ、こういう事情に置かれていることが、非常に社会問題になっている大きな理由であるし、これを政治の場の問題にしていただけないのが不思議である、この際抜本的に真剣に取り上げて、政治の場で解決することが一番近道ではないか、あるいはそれをしない限り、ほとんど道はないというような事情に実は置かれている。  そこで、次に、各国炭鉱労働者というのは、それではどういうことになっているのか、政府も三年前に、石炭合理化計画を、世界的なエネルギー革命の一環として押し寄せた日本産業革命である、こういう規定の上に「斜陽」という名前をつけて、十一万人の首切りはあたりまえだといった。ところが、世界的なエネルギー革命だといわれながら、各国ではどういうことが行なわれているか、もはや私企業で成り立たないというのが常識ではないか。社会主義国ではなくて、たとえばイギリスは国有国営である、フランスも国有国営でやっている、たとえば国営でない西ドイツは、事実上国が経営の実体と実権と指導をしている。それの単なる下請的な仕事が西ドイツの石炭経営者の仕事だ、言うなら三等重役の仕事をしておるだけだ。西ドイツの炭鉱の社長は政府であります。こういうふうに、もはや企業形態そのものにメスを入れて、政府が主人公になって、形が国有であるかないかは別にして、ここに石炭政策を確立しない限り、絶対に解決の道はない。たとえば最近西ドイツでは三割五分の関税という期限が切れて、新しく石炭政策を打ち出そうとしている。その場合には二つの道が提案をされるという話を聞きました。一つは、消費者、需要家に使用命令を出すという法律を作る。したがって、電力会社石炭をこれだけ使わなければならないという使用命令を出す。鉄道はこれだけ石炭を使えという使用命令を出して、法律的に規制をして石炭産業を守る。これは関税にかわるべき一つの措置であるといわれている。  もう一つは、補給金という問題が問題になっております。その補給金は、石炭業者に補給するのか、石炭を使う側に補給をするのか、この問題は別ですけれども、いずれにしてもそういう措置を講じて石炭政策を立てるということをいわれています。イギリスでは石炭の値段を上げて石炭の赤字解消をする、しかも、需要を確保しなければならない、こういうふうにいわれております。いずれにしても、損するかもうかるか、そういう経済的なものはともかくとして、いずれにしても、もうどこの国でも、国が石炭政策を責任を持って解決していく、こういうことが各国の常識になっております。このことは、日本の場合は労使の問題に、力関係で解決してみろというわけですから、ここで非常に殺人的な大量人員整理失業のまま行なわれていくという実情にあることが非常に問題ではないか。炭労としてこういう事情をほうって置くならば、これは石炭労働者として、実際に働いておるという気持になるだろうか。仕事の見つからないものはしがみついて、生きるためにということになるでしょう。しかし、若い者は石炭産業にいるよりは、安定した産業に行きたい、こういうことになっております。こういうことは日本だけではないんです。ヨーロッパ各国はそういう危機を一度通っているわけです。したがって、その解決策についてはどうなっておるか。やはり炭鉱に働く者が安心をして働くことが必要である。あるいは低い条件であるから、その労働条件に見合う賃金を支払わなければならない。したがって、ヨーロッパにおいては、どこの国においても、炭鉱労働者はいかなる産業よりも最高の賃金である、労働時間は一番短い、これが常識になっている。日本の場合は、労働時間は八時間という基準はあるけれども、九時間十時間という労働は平気でされている。むしろ中小においては十二時間労働もされている。基準法違反をしなければ成り立たないという状態にある。あるいは経営ではなくて、生業みたいのに、とにかく働くという意思のある者は百円でも五十円でもいいから賃金をもらいたい、そういう労働者を集めて五十人、三十人の炭鉱を経営している中小炭鉱がある。これはまさに企業とは称せられなくて、生業である。こういうひどいやり方が問題ではないか。しかも、最近は一番ひどいのは、首を切るということと同時に、実はコスト引き下げのために賃金を下げる手段として、第二会社に切りかえる、会社の看板を変えたとたんに、一万円ぐらいの賃下げになる。もう一つは、直接自分がやらないで、租鉱炭鉱というものを設定をする。これは結果において安い賃金で働く労働者を使用する手段として行なわれている。もう一つは、人員を整理したあとで何をするかというと、組夫、臨時夫を雇い入れる。三池で千二百名の指名解雇をされましたけれども、現在は入間が足りなくて困っている。そのためには、直接雇うと人並みの金を払わなければならない、そこで組夫、臨時夫を採用していこうとしている。これも結局は賃下げのためにそういう手段をとっているのですから、非常に問題ではないか。  第一点の解決の方法としてどうしてもお願いしたいのは、石炭産業の地位をこの際明らかにしていただきたい。五千五百万トンというのを政府は一応方針としております。千二百円のコストを引き下げるために人員整理十一万人、能率を二六・二トンという三十八年までの計画をまた上げまして、二八トンにいたしました。したがって十一万人ではなくて、むしろ十二万六千人の首を切らなければならない。こういうふうに首切りの数がふえていっている。なぜか。コストを引き下げるために労働者が一生懸命に働いて能率を上げる。すると、五千五百万トンという天井がありますから、能率を上げれば自動的に仲間の首を切るということになっていきます。コストを引き下げるために一生懸命働いて能率を上げると自分の首を切ってしまう、こういう事情に置かれている。これはまことに地獄責めのやり方ではないだろうかと思います。したがって、五千五百万トンという数字にこだわらずに、生産態勢の変革を行なって、近代経営形態に変えていくことを通じて、能率を上げてコストを下げる。結果的に五千五百万トンのワクを取り払って、安い石炭が全体として確保されて、労働者は喜んで協力ができる、こういう事情にひとつどうしてもしてもらいたいものです。日本の場合は、非常にアメリカのやり方をそのまままねをしていると思うのですけれども、アメリカでは、現在石炭の地位は三四%であり、日本の場合は三二%です。しかし、アメリカの場合は、石油も石炭国内資源です。イギリスはどうかというと、八五%が石炭です。イギリスは石油資本ですけれども、自分の国に石油を持っているのではなくて、むしろ植民地から石油を掘って外国に売買している、こういう形をとっています。高い国内炭を、炭価を値上げしても使う、油は外国に売るという仕組みになっている。これは国内資源を守っていくというやり方ですから、イギリスとアメリカと事情が違うのはあたりまえだと思います。西ドイツは七五%が石炭の地位です。これも日本と同じように、油は輸入ですから、国内資源である石炭をまず第一にしていく、こういう方針をとっていっている。この点が非常に基本的に問題のあるところではないだろうかと思うわけです。そういう意味で、石炭政策についての基本的なことが合理化の柱に間違いを起こしているのではないだろうか。この点が解決をしない限り、離職者対策とか、あるいは就職あっせんとかなどで解決することはない。労働者の首を切るということはできても、石炭産業は安定をしないという地獄の道に通じているのではない、だろうか。  次に、そういう石炭の地位を確保していく事情の上に、現在は経営を近代化して能率を上げ、そしてコストを引き下げる、こういうやり方ではないのです。中小には銀行は金を貸さないから、掘った石炭の日銭で賃金を払い、資材を買うというやり方をしている。そこには設備資金もなければ合理化資金もない、こういう事情ですから、ここに石炭産業が近代化する理由は全くないわけです。結局、結果的には労働者の働く時間を長くして能率を上げ、賃金を下げるというのが近代化への解決になっている。大手はどうかというと、大手の場合も、むしろ自分がやらないで、第二会社という小規模のものにして、そこで設備資金や合理化資金が確保されて近代化されることはないのです。したがって、私が今言いました中小企業のやり方を同じことを第二会社に共通してやらせるわけです。これはまさに近代化ではない。したがって、政府は、ここで石炭経営者はもうけが少ないという理由で、すべての銀行が合理化資金や設備資金をシャットアウトしているわけですから、こういう問題についての解決の道を通じて合理化、近代化をひとつ抜本的に行なうべきではないか。そのガンになっているのは、経営者一つのエゴで鉱区を独占しているために、大炭鉱という、理想的な炭鉱を作ることを妨害しているわけだから、そういうものの排除をすることが近代的な一つの原則になるわけです。  もう一つは、産炭地の問題でありますけれども、五百四十万人の国民が、炭鉱とともに運命一つにしているわけです。今日のように、炭鉱労働者が首を切られ、あるいは賃金が下げられ、あるいは閉山をしていくという形は、炭鉱周辺にいる五百四十万の国民の生活を直ちにたいへんなどん底に陥れていく、こういう事情が一つあると思うのです。だから、これは単に炭鉱に働いている労働者や、あるいは炭鉱産業というものを越えて、国民的な問題としてこれは処理をする重大な要素を持っていると思います。  もう一つは、流通機構の問題があります。現在鉄道、電力あるいはガス、セメント、鉄鋼などという大口消費者には、千二百円コスト引き下げという方式で、半期ごとに値段の引き下げの交渉が、石炭業者とさしで話をされています。十一万人の首切りの犠牲は、こういう大口消費者には確かにサービスはされている。しかし、一面、たとえば東京で、一トン五千円の石炭が、一万円から一万二千円で国民に配給されている。九州で四千円の山元炭価でできる石炭が、大阪までくると一万円になっている。これは大口ではないのです。中小企業とか一般国民に配給される石炭は、こういうむちゃなことがされています。したがって、ここに石炭経営者のやり方の問題点と、これを監督する政府合理化方針というものの関係をこの際明確にする必要があるのではないかと思います。  次に、やはり何と言っても、われわれは労働組合であり、労働者ですから、安心して働けるまず職場を作ってもらう、これがもちろん原則であります。しかし、たとえば保安の危険性から、保安確保ができないという事情で閉山しなければならない山がある。あるいは石炭は掘ればなくなりますから、その終掘の山では閉山ということが起こります。今までならば、その炭鉱労働者は、他の炭鉱に全部雇用しろという要求でありましたけれども、今日の段階ではそのことを主張することについて妥協しなければなりません。それは、石炭以外の産業に転換することを炭労は認めています。ところが、実際には転換先もない、あるいはもし数の少ない労働者が行き先があったとしても、それは一万円とか、あるいは家族持ちで一万五千円とか二万円とか、しかも別居生活である、住宅がない、こういうことで、どうしてもその生活のかてにならない、こういう不幸な事情が起きておるにもかかわらず、それに対する対策がないまま閉山をし、あるいは首を切られていく、あるいは失業してしまう。大手は、若干の就職の手段というのを、一つの系列会社の協力を得てやっているようでありますけれども、中小炭鉱においては、これは独立企業ですから、まさにそういう関係でないから、そこで首を切られた労働者は全く行き先がない、こういう事情の中に実はほうり出されている。したがって、この際、炭労としては、就職の保証と生活の保障がない人員整理というものを認めないという方針を政府はこの際確立すべきである、これは石炭経営者政府の責任において解決すべき問題だ、これは雇用の問題として明らかにしておきます。  もう一つは、現在はニコヨンを基準にして中小は賃下げをする、生活保護を基準にして賃下げをする、そのために第二会社にする、租鉱炭鉱にする、こういう形をとって賃下げを盛んにしているわけです。したがって、物価はどんどん上がるという方向とは逆に、炭鉱労働者は賃下げ競争の中で泳いでいるわけですから、この際、一番危険で一番ひどい労働をしている炭鉱労働者が、せめて賃下げはしないという最低の賃金を制度としてひとつ確立をしていただきたい、これがわれわれの解決の条件とする考え方であります。  概略述べましたけれども、以上をもちまして、考えている所見を述べて終わりたいと思います。
  21. 高野一夫

    委員長高野一夫君) どうもありがとうございました。まあ非常に時間をかけて御意見を伺いますと非常に参考になるのでありますが、委員会の都合もございますので、できるだけ十五分程度、延びましても二十分以内くらいにお願いをいたしたいと思います。  次に、日本石炭鉱業連合会会長の舟橋要さんにお願いいたします。
  22. 舟橋要

    参考人(舟橋要君) 舟橋であります。私は、北海道の中小炭鉱会長をしておりまして、全国の連合会の副会長をしております。これから申し上げることがそれらと非常に深い関連を持つので、あらかじめ自分紹介するのでありますが、その前に、委員長さんにぜひお伺いしたいことがあるのですが、お答えを願えれば幸いと思うのですが、この委員会の構成は、一体何人ぐらいになっておるのでありましょうか、お知らせ願えませんですか。
  23. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 委員の数は二十名でございます。
  24. 舟橋要

    参考人(舟橋要君) 私は、炭鉱という問題、石炭という問題及び労働問題というものは、非常な今日重要な要素を含んできておる、したがって、少なくも国政に参与しておる方が、委員会を通じて、すべてが国の施策に持ち込むのでありますから、私は全員の出席を願えるものだ、また、そこで私は話ができるものと思いましてお伺いしたのでありますが、非常に残念に思います。このことを申し上げておきます。  先ほどから萩原さん及び炭労委員長さんから、いろいろ参考意見を伺っておりますが、私は、事、今日に至ったら、単に労働問題とか、あるいは炭鉱の問題とかということをばく然と話すことは枝葉末節の問題であろうと思うのです。問題は、少なくも世界の経済の動き及び日本固有の経済のあり方から見て、石炭の問題はもっと抜本的の対策をとらない限りはいけないということが、もはや九千万国民のひとしく憂うるところであると思うし、感じておるところであると思います。御承知のごとく、昭和四十二年までの安本の青本計画を見ますと、石炭に換算いたしまして、総エネルギーの数が二億四千万トンから二億七千万トンまでを見込んでおる。その中にあって、石炭を一体五千五百万トンに押えておるとか六千万トンが正しいとかいうことは、非常にこっけいなんです。少なくも、労働問題の解決も、あるいは石炭の問題の解決も、一切あげて私はここにかかっておると思うのであります。私どもも昭和三十三年から三十四年の合理化臨時措置法ができたとき、委員の一人として、今日まだ合理化委員をしておるのでありまするが、そのとき作りました国の情勢と世界の情勢、いわゆるエネルギー革命といわれる言葉から逆算しましても、大きく様相が変わっておるのです。ここで少なくも急速に日本は立て直しをしなければならぬという段階にきておることは、これは諸先生方の頭にひとしく入っているし、また、政府も知っておるのです。いたずらにお役人というものは、自分の立てた案というものを非常に守りたがって、そうして自分のかいた幽霊にびっくりして腰を抜かす、抜かしたときにはおそい、もうここでひとつはっきりした抜本対策を立てなければいかぬ。いわゆる炭労のいう政策転換という言葉が正しいのか、私どもの常に申し上げておる政策の変更ということが正しいのか、これらの問題は言葉の字句の問題である。いずれにいたしましても、国として私はこれを立てていただきたい。少なくも、石炭を五千五百万トンという字句にこだわるならば、五千五百万トンは最低の線であるのだ、あとは少なくも日本の唯一無二の、ただ一つしかないエネルギー源の石炭を、六千万トンであろうが、七千万トンであろうが八千万トンであろうが、八千万トン掘りましても、少なくも二百五十年——三百年は掘り得るし、あり得る。国家百年の大計という計画を立てるということが、言葉には常に大政治家にうたわれておるのでありまするが、それらを考えますときに、なぜダンピングで押し込んできている油に依存しているのか、このことを私は常に申し上げておるのでありますが、なかなかそこに踏み切っていただけない。労働問題で弥縫策をとって、これにも金を使い、失業救済資金として失業の金を各地方にも渡し、また、これで相当の金を使っている。そんな金を使うのがあるならば、石炭の保護政策といわないまでも、石炭の抜本政策がとらるべきはずであります。そこで私は、労働問題の問題に対しまして、労働の専門家の委員長なり、それらの方が申し上げるのですが、労働問題を解決するために、どうしてもこのことだけはお話を申し上げたいと思いまして、昨夜このことを聞きまして——参考人を聞きまして、労働問題のこまかい数字にわたっては、その内容を持っておりません。ただし、労働問題の抜本解決にはこれしかないという一つの信念と観念を持って諸先生方に聞いていただきたいと思って、けさ実はお伺いしたのですが、いかにして今の労働者を首切らずに済むか、これでもってできるのです。石炭は六千万トンでも七千万トンでも、できるだけひとつ有意義にあまり高くない価格で掘るのだ、増産することによって、先ほど炭労委員長は首切りにつながるのだ、これは五千五百万トンの線で押えるからつながるのだ、これを押えなければつながらない、現在の人間でも足らない、北海道においては、つまり中小炭鉱においては労働者が足らない、わずかにいる労働者を得るために道内でもって間に合いませんから、われわれは山形、秋田まで人間の募集に来ている実情です。北海道において一万二千人ほどの首切りがありましたのを、六千人ほど中小炭鉱においてほとんどとっておる、そのほか一、二千人は、先ほど申し上げたように、第二会社とか小会社に収容されている。その他、若い連中はほとんど他に就職している、ほとんど労働者が足りない。これは石炭だけではありませんで、あらゆる産業の面で北海道は労働者が足らない実情であります。そこで、こういう実情から見ましても、日本石炭は約二百億トンと称しております。六千万トンを掘っても、三百何十年、七千万トン掘っても三百年掘れるのですから、この際、国際収支の赤字の一部の補てんともなり、さらに国の政策の抜本解決ともなり、総合エネルギーの抜本対策にもなるのですから、どうしても今までの合理化のほうできめましたあのワクをはずしていただいて、急速にこの国会で何とか抜本対策をとるということにひとつ踏み切っていただきたい。  そこで、こまかいことに入りますが、時間的制約を受けておりますので、飛び飛びになっておそれ入りますが、しからば、今のままで政府にどういうことをするがいいかと申し上げますと、今ここで価格差補給金をくれ、あるいは政府石炭に対する保護政策をとれとかいいましても、そこまでいくことにはなかなか無理であります。きわめて簡単に解決つくことは、ここ二年間、昭和三十七年と八年の二ヵ年間、現在の三十六年の価格の横すべりでいくのだ、そうしてこの二年間に、思い切って現在の八十億ぐらいの投融資を三百億ぐらいの財政投融資にしていただいて、二年間で思い切って石炭の増産計画を立てていただきたい。立ててみて、どうしても下がらなければ、初めてそこで補給金を出すなり、あるいは補助金を出すなり、あるいは流通機構のほうに助成するなりして解決をしていただきたい。それには政府がどういう手をとられるか、これはむずかしくないのであります。電力、鉄鋼、あるいはガスとかセメントとか、大企業の人と政府がひざをつき合わせて懇談をして、政府石炭の抜本対策をとるのだから、それまでの間がまんしてくれということがいい得るし、また、私ども最近この大企業の五社の経理内容を一通り調べますと、電力は三十六年度の石炭価格で、すでに五ヵ年計画でそれぞれ一割二分の配当ができる経営企画を立てております。セメントもしかり、電気もしかり、鉄鋼もしかり、ガスもしかり。したがいまして、三十六年度の価格の横すべりで二ヵ年間石炭を育成してみる。そうして五千五百トンの線をはずすのだ、六千万トン、七千万トン掘れるだけ掘るのだ。そこでどうしても掘り得ない老巧に達した山、保安の面から見て危険であり、さらにまた、どうしてもコストの下がらないような山は、これは国が買い上げて整理する。これらの人口は多いものではない。多くても一万人か一万五千人、これらのものは増産するところの新しいほうに転換していくのだ。御承知のように、炭鉱労働者は、三十歳以下でありますればどの仕事に転換しても間に合う。四十歳過ぎになると——十五歳から炭鉱に入って、二十年、三十年穴の中に入って、モグラのように日の当たらぬ作業に従事していて、それを出したところで間に合わない。間に合わないからなかなか離職者対策の手が打てない。これはやはり本人も望んでおる。また、一つの特殊技術者なんです。これらに仕事を与えてやることが非常に大事じゃなかろうか。私ども終戦後、国破れて山河が残って、石炭の傾斜生産に協力した。今日これだけの経済力がついたのも、私ども一つの功労者です。これらのものが、先ほど炭労の原委員長のいわれるごとく、行き場がない、食うのに困るというこれらの者をこのまま置いていいのだろうか。この問題を一つ精神的にも肉体的にもひとつ検討していただきたい。ただ、国民の目に映っておる炭労というものは、非常に大きな疑惑と憎しみがかかっております。何かというとストライキ至上主義、いわゆる闘争至上主義、自分職場から離れて、よそのけんかのお手伝い、あるいは安保闘争とか何とか、わけのわからない、自分たち職場以外の闘争に明け暮れしてきた。それらの歴史を通じて、炭鉱労務者というものは、もう名前を聞いただけでふるえ上がる、こういうことです。しかし、つい最近炭労のとりました。北海道から、九州からやって参りましたところの炭労ストライキ行進、行進ストライキと申しますか、あの行動は、非常に厳粛なものであってりっぱなものである、炭労も十六年もの間にりっぱなものになったという印象を国民にアッピールし、国民全体も知っていただいた。私どもは、この際、政党政派を超越し、労使の関係も一切超越して、石炭という問題は、ただ単に一つ石炭とか、企業であるとか、産業であるということを離れまして、この二ヵ年の間に、お互いがひとつ一切をたな上げして、協力し合ってやっていただきたい。一人も首を切らない場が作れるはずだ。また、国の収支のバランス面にもお役に立てるのだ、そうして日本に唯一無二、たった一つしかないエネルギー源の確保ができるのだ。これがどうしてやれないのか。先ほど阿具根委員からの話がありましたが、社会党から何か出すと、すぐ経営者が反対する。私は社会党でも、自民党でも、民社党でもありません。善良なる国民の一人として、正しい観点に立って、政府も与党も野党の方の動きも、常によく見ております。どうかひとつ、いかに社会党の言うことでも、いいことは、日本の国にふさわしい最も大事なこと、緊急になすべきことは取り入れていただきたい。社会党さんも、何んでも、かんでも反対するということがないようにしていただきたい。同時に、また、労働者諸君も、やっていけないことは必ずやつちやいけない。最近の炭労に対する批判は非常によくなって、好転しておるのです。せめてこれを守っていただきたい。これを私は望む。お互いに九千万国民が、同じできるならば、平等とまでいかなくても、幅のあまりない生活水準に持っていきたい、これが私は国民全部のひとしく望むところじゃないかと思う。また、政府も望んでおるし、この委員会においても望んでおると思うのです。今までの感情も一切捨てて、私は、石炭に関する限りは、この機会に国民全体が立ち上がって抜本対策を立てていくことが、わが国の非常な大きな特典になるし、有利になると思う。最近における西ドイツのあり方のごときは、西ドイツだけをまねして申し上げるのじゃありませんが、私どもの労働問題、石炭問題は、西ドイツとかフランスとかイタリアとかイギリスとかのあり方を見ておりますが、国有国管がはたしていいか。日本のような狭い国——まあイギリスから見ますと狭いとは申されませんでしょうが、はたして国管というものがいいかどうかということは、過去の歴史から見まして、これはなかなかむずかしい。そこで、この三十七年、八年度の二ヵ年間、現在の価格の横すべりで、余裕がありますれば炭鉱は改善をする、さらに政府も財政投融資を思い切ってかける、そうしてやってみて、どうしてもいけなければ、そのときに初めて価格差の補給をするなり、あるいは国営にするなり、あるいは国有にするなり考えてもいいのじゃないか、これが私の申し上げること。それをやりますれば、おのずから労働問題の抜本対策がとれるはずです。労働問題だけ単に論じましても、いつまでたってもこれは水かけ論であって、末節の問題だから、抜本対策を立てない限りは前進の道はないと私は感じておるものであります。  そこで、なぜか私どもにはわかりませんが、先生方にはおわかりであろうと思いますが、合理化臨時措置法というものができた限りは、五ヵ年間やらなければどうなるか。どうしてもあれをやらなければならぬということに日本の国の法律がきまっておるのかどうか。あの中でも、やってみていけないものはおやめになることができるのかどうか。おやめになることができるならば、直ちにこれはあの中の字句の一部修正でできるはずですから、やっていただきたい。  はなはだ簡単でありまするが、これをもって私の公述を終わりたいと思います。
  25. 高野一夫

    委員長高野一夫君) どうもありがとうございました。  次に、全国石炭鉱業労働組合書記長の菊地勇さんにお願いいたします。
  26. 菊地勇

    参考人(菊地勇君) 全炭鉱の菊地であります。きょうは私のほうの委員長の重枝が来てお話しする予定だったようでありますが、所用のため出席できませんので、私かわって組織を代表して御意見を申し上げたいと思います。  いろいろお三人の方から申されましたので、同じようなことを申し上げることを避けて、もう一回石炭産業の今日までの、状態を振り返ってひとつ考えてみたいと思うのですが、いろいろ今言われておりますけれども、炭鉱労働者は七万人とかいうふうな首切りがあったといわれておりますが、実際にはそれよりも上回っておるわけです。これは労働省の職安の調査によりましても、現在まで、三十三年度以降は二百三十数炭鉱がなくなって、約八万人の人が職を失っておりますが、そのほかに、大手炭鉱の中でも、職を失っておる者が非常に多いわけでございまして、三十三年度から年度別を追ってみますと、三十三年は三万八千人、三十四年は四万二千人、三十五年は三万七千人、三十六年の推計は三万五千人であろう、ことしは計画によると、三万五千人程度の離職者が出ると、こういうことになっておりまして、三十数万人おりました炭鉱労働者は、三十七年の末、あるいは三十八年の初めには十四、五万に減少するというような、とてつもない問題になっておるわけでありまして、だから労働問題と石炭政策というのは不可分の関係にあるということがいわれておると思うのでありますが、これを石炭政策の関係から見まするならば、私どもとしては、石炭の問題は、日本エネルギー消費構造の変革というものから逃がれ去ることはできないんだ、だから、その中では総合対策というものを樹立して、石油、電力、石炭という三つのエネルギーの総体的政策を確立するようにということは、十数年来主張してきておるわけです。ところが、それが実際に問題になりましたのは、石炭合理化審議会ができまして、そこで三十八年度まで五千五百万トン、千二百円の炭価引き下げということが問題になったわけでありますが、このときは政府もあるいは業者も労働組合も一致して、そうしなければ日本石炭産業というものの成り行きは、全体的な経済成長に合わせて、問題が起きるんじゃないかということになっておったと思うのです。そのときには、そういうような石炭合理化の基本的な方針を定めるばかりでなくて、それに付帯する一切の社会的問題というものをどういうように解決するかということが内容としてきめられておったわけなんです。今日そのきめられたものに対して、実際の推移を見ますると、どうも労働政策につきましては、一方的な弾圧とか何かばかりが加わっておる、あるいは物価政策の面につきましては、一番産業の原料である石炭のほうにばかりしわ寄せがくるというような形の、いわゆる跛行的現象ばかりができて今日のような重大な石炭政策に関する転機が生まれたんじゃないかということが言えるんじゃないかと思うのです。それをもう少し詳しくいえば、たとえばスクラップ・アンド・ビルドだということで、能率の悪い炭鉱、保安の設備の悪い炭鉱を買い上げるということで、石炭鉱業合理化事業団というものに政府がある程度の金を出し、業者も金を出して、これを買い上げる仕事をしておるわけでありますが、それもなかなか計画どおりにはいかない、あるいはそれから出てくる失業者の取り扱いについて、前には炭鉱離職者援護会というものがあって、そこで取り扱いをしておったわけでありますが、それも実際には炭鉱労働者の実態をあまりにも知らなさ過ぎるために、手の届くような救済方法が講じられなかった。これが今度雇用促進事業団というふうにかわりまして、そこで安定所の窓口を通じた援護業務を行なっておりますが、これもまだ炭鉱労働者の実態を知らない援護業務であるために、全然救済は氷山の一角に過ぎないような状態であるということが加わってきておるわけでありまして、今日いろいろと五千五百万トンはだめだ、千二百円もだめだというようなことを言われ始めておりますが、しかし、これは国の産業政策として、一たん学識経験者も含めた全関係者が集まってきめた方針を、いろいろな跛行的現象のために修正をするということがもし許されるとすれば、これは自民党内閣であろうと、社会党内閣であろうと、あるいは民社党内閣であろうと、これは国の政治の取り扱いについて、非常に大きな社会的問題として歴史の中に残りはしないかということを、実は私どもとしては危惧をしておるわけであります。だから、石炭の問題を考えるという場合には、石炭だけがよければいいんだという考え方に立つことなく、日本経済の全体的な繁栄の中で、国民全般がより幸福になるような姿の中で石炭政策というものを立案し、残るものに好条件を与え、去り行くものにも好条件を与えるということの、両々相待った政策をぜひとも実現してもらいたいということを実は主張したいと思うのでありますが、私どもとしては、今までそういうような立場にあるわけですから、いろいろと毀誉褒貶はありましても、この総合エネルギー政策の中で、とにかく新しい石炭業の安定のために、忍ぶべきものは最低限のひとつ忍ぶ態度を持してこようということで、炭鉱労働組合の中には、炭労と全炭鉱と二つありますが、私どものほうとしては、がまんのできる範囲は努めてがまんをして、今日まで全体の日本経済の将来の展望に立って協力をする。協力するところについては、最大限の協力をしてきたと思うわけでありますが、協力をしたわれわれの仲間が去った現実は、実際にはちっとも救われていないわけなんです。たとえば実際の失業者状態を見ますと、私どもは数百万の金をかけて、自分たちの去った仲間のいろいろと就職あっせん等をやってきましたが、これも実際には微々たるものでありまして、限られた金でやるわけですから、できないわけですが、産炭地域の中で、福岡県のような場合、福岡の筑豊炭田の田川、飯塚、直方というところは、ほとんど炭鉱生活している町でありますが、そこの生活保護を受けている者を全国平均で比較して見ますと、全国平均の千世帯当たりの生活保護を受けている者の比率は一・五%というような数字が出ているのに対して、筑豊炭田の三都市では七・五%と、約七倍の比率で生活保護を受けているというような実態もあるわけです。福島の常磐とか九州の長崎とかでは、炭鉱離職者のうち、生活保護を受けている者は、恒久的の性格を帯びているものとして、二〇%から二五%程度の生活保護を受けている者がいるわけです。こういうような姿を見、あるいはその年令構成を見ますると、四十歳以上の者がおおむね離職者の半数以上になって、それらの中からいろいろ地域的の社会問題が出るようになっているわけでありますが、反面、こういうように実際に産業政策に協力をして職を離れた者が、失業保険も切れて、なかなか新たな職場も見つからないで、結局社会の落後者として滞留して生活保護を受けざるを得ないという状態に立ち至っている。こういうことを野放しにして産業政策を論ずるということは、これは許されざる現象であると考えないわけにはいかないと思うわけです。ところで、そういうものをいろいろと解決するためには、私どもとして、今まで炭労とも、全体の産業政策について、石炭産業の安定のためには、協力できるところは努めて協力して政府にお願いして参ったわけでありますが、今までできたところを見ますと、名前だけは総花的に全部政策の中に、あるいは政府施策の中に盛り込まれているようでありますが、その内容は、われわれの考えているものとは、相当かけ離れた状態で行なわれてきているわけでありますから、このまま推移していけば、いずれにしましても、社会問題化することは免れないと思うわけです。今、根本的な石炭政策の問題については、いろいろと政府の中でも論ぜられているようでありますが、特にその中で石油業法との問題があります。私どもは、石油業法を政府があれほど真剣に取り上げようとするならば、それよりももっと大きなウエートを持った総合エネルギー対策を、どういうふうに石油業法とかね合わせてやるかということを、はっきりとひとつ政府の責任で示してもらいたいと思うわけです。業界の力の強いところのほうを政府はこれを取り上げ、あるいは圧力の強いほうを取り上げるというような瞬間的政策ばかり行なっておれば、だれが政権を担当しても、日本国民のためになる政治の遂行というものはできないじゃないか、騒ぎが起ころうと起こるまいと、長期的の経済政策見通しの上に立って、どういうふうにしていけば各種の産業の存立というものが長期的安定を保てるかということについて、明確なるひとつ今日の為政者の見解を近日中に出していただきたいということを、私どもは声を大きくして、過去の実績に照らして、言うことができるのではないかと、こう思うのであります。  その次に、それができましたときに、一体石炭産業は、従来の経過の上に立って、はたして近代化されるかどうかという問題については、これは私は先ほど萩原さんの意見を聞きまして、まことに憤激を感じたわけでありますが、今日までの石炭経営者は、とにかく、まま自分企業だけがうまくいけばよろしいというような考えが非常に強かったわけですが、過去の歴史を見ましても、戦争のときはいろいろとすごい労務弾圧を行なってかり立てるとかあるいは兵役を免除して労務者をくぎづけにしておくとかいういような、いろいろなあらゆる努力を講じ、終戦後は、石炭産業再建なくしては日本産業再建はないというような、常に今までは日の当たるこの大義名分の上にいろいろ労務対策も行なわれてきたわけでありますが、それが一たびなくなれば、自分企業に対する責任があたかもとれない、また、とれないからどうしてくれというような発言があったということは、今や石炭産業のほんとうの意味の長期安定のためには、現在の私企業状態では、ほんとうの意味の経済の所得倍増に対応する石炭産業の安定というものはできないということを私どもとしては考えないわけにいかないと思うわけです。だからといって、今すぐに国営にしろということになりましても、国だって、現在のような無定見な状態の中で歴史的修正をされてきた石炭企業について、国営にすぐ引き取れぬということが問題である思いますが、そうならば、国は強権をもって現在の私企業を修正させるために、炭田別の総合開発を、これは炭田別に地区を新しく設定して、その中でほんとうのひとつ石炭産業の近代的企業形態というものを作るための努力を行なうべきじゃないか。そのことが結局は千二百円の引き下げが可能かどうか、五千五百万トンの出炭ベースが一体どういうふうになってくるか、雇用状態がどういうふうになってくるかというようなものが総体的に考えられて初めて日本石炭産業総合エネルギーの中でしっかりした骨格を持つことができるのじゃないか。そういう努力なくして、部分的問題だけを取り上げて今ここで一時的な救済をしましても、これは結局一年なり二年なり先にいって、根本的な手術をしなければならないというような状態を見ることは明らかであると思うわけであります。そういうような方向を開拓するために、国会といわず政府当局といわず、全知全能をしぼってひとつ対処していただきたいことを申し上げたいと思うのでありますが、その間にも、先ほど来申し上げましたように、特に本日の社会労働委員会としてぜひ取り扱っていただきたいのは、そうやっておりますさなかにおきましても、石炭の過去の労働者であった者が社会の落後者として滞留しておるような状態が非常に多いわけでありますので、それにつきましては、現在ありますが、雇用促進業事団に、炭鉱労働者として社会的に滞留しておる者は、全部これは政府の責任で登録をして、ひとつ生活を保障するような考え方を、実際的なものを持っていただきたいと思うわけです。なお、現在職業訓練を受けている者とか将来受ける者とか、いろいろとそういう者について具体的な問題で問題があるわけでありますが、時間も長くなっては申しわけないと思いますので、あとで書面をもってひとつお願いをすることにいたしたいと思うわけであります。  最後に、個人々々の問題として申し上げておきたいのは、この中でも、炭鉱の事情をよく知って、いる方が多いと思うわけでありますが、炭鉱は、御承知のように、ほかの企業とは、労働者に対する世話活動のしきたりが違うわけなのです。一つ炭鉱に手人という労働者がいれば、これは全部会社の住宅に居住をして集団生活をしているわけです。その集団生活を分解して、三百八単位くらいに会社の労務係という世話活動をする事務所があるわけです。出産届けしても、あるいは税金の青色申告にしても、一切がっさい、夫婦げんかに至るまで、これが世話活動するような、そういう長い、百年以上にわたる、言うなれば、そういう封建的な社会機構の中にならされてきているわけです。これが親子二代、三代にわたってならされてきているわけでありますから、ほかの工場労働者のように、自分の家を持って、自分で社会的なおつき合いをするということとは、ちょっと形が違っておるわけです。だから、一ぺんにこういうことで国家政策で保障がなくなって野放しにされた場合には、これは自分で開拓するという方法を残念ながら知りません。したがって、ほんとうに個々の人を救済しようとするならば、自分たちの仲間の中から代表を選んで、そして新しい就職に対する転機をどうやって求めていくかというような状態にならざるを得ないわけなんです。私どもは、前から、もし買い上げが行なわれたり、集化的な就職が行なわれた場合には、その中から代表を選んで、その代表が個々の人にかわって、あるいは職業安定所とか、あるいは新しい就職する職場とかいうものと密接不可分の関係になってお世話活動のできるような態勢をこしらえろ、こういっておったにかかわりなく、今度の最終的な政府の案によれば、そういうものは何一つできていないわけです。で、私は先だって雇用促進事業団に聞きましたら、従来までの生活保護を受けている者が、先ほど言いましたように、多いわけでありますから、どうしても厚生省関係の民生委員の手をわずらわさなければならない。だから民生委員にそういう世話活動をさせるようにお願いしたのだというようなことを言っておりますが、民生委員はそのことが仕事ではないわけで、ほかに仕事をしているわけですから、せいぜいお世話でも、一ヵ月に一人か二人というような程度になるわけです。それで十分だという考え政府の事務当局者、あるいは偉い人は思っていたようなわけでありますが、そういうようなことが、まあ個々の問題として枚挙にいとまがないから、したがって、いつとはなしに社会不安として爆発して、いろいろな行動をとらさるを得ないような形に——これはだれもしむけておるわけではなくて、社会自体、政治自体がしむけているのではないか、私どもといたしましては、今日ほど日本政治の貧困があるということは、かつての歴史上にないくらいに、問題として指摘しないわけにはいかないと思うわけでございまして、たまたま今まではいろいろとお骨折りを願いましたが、今までのような部分的、瞬間的なお世話活動ではなくて、この機会に抜本的に一つ石炭産業企業形態、あるいは産業政策における立案を、どっちみち先にいってやらざるを得ないのですから、この機会にぜひとも作り上げていただきたいことを心からお願い申し上げますと同時に、それに至るまでの、今滞留しております炭鉱失業者の中で、特に落後している者に対して、なお積極的な一つ御配慮を切にお願い申し上げまして、はなはだ雑駁でありましたが、意見にかえたいと思います。
  27. 高野一夫

    委員長高野一夫君) どうもありがとうございました。  これから質疑を行ないます。なお、政府側から岩尾主計官、久良知通産省審議官、江上企業局参事官、三治職業安定局長が出席されております。しかし、参考人方々のお時間の都合もありましょうから、もっぱら参考人方々に対する質疑をお願いしたいと思います。  御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  28. 阿具根登

    ○阿具根登君 船橋さんに御質問申し上げますが、先ほど拡大生産のことで御意見がございましたが、私ども全く賛成なんです。五千五百万トンにこれをしぼっおるそのものについても、私どもは最初から反対しておるわけなんです。そして、現在の出炭状況を見てみますと、六千万トンは軽く出る態勢になっておる。そして、六千万トン以上石炭を使ってくれということを叫んでおるやさきに、船橋さんの意見とは全く反対な意見業者から出てくるわけなんです。それはなぜかというと、六千万トンもあったら大へんだから、生産制限をしなければならない、こういうことが業者から言われるわけなんです。そうすると、個人能率は二六・二トンから二十八トンに上げなければできぬと言ってきておる。ところが、それがもっと上回って個人能率は上がってきておる。六千万トンにも及ぶようになってくれば、今度は業者自体が、これを六千万トンでは多過ぎるから、しぼらなければならない。そうなってくると、優秀な幾つかの炭鉱が残るだけであって、中小炭鉱はほとんどつぶれてしまう。そういう業者意見が、私どもが仕事をしようと思っていれば、そのやさきに逆な意見が出てくるわけです。それに対して中小関係の業者方々は非常に御苦心になっておると思っておりますけれども、一つも反論がない。ここでお聞きして、私は非常に意を強くしたわけです。ところが、実際はあれだけ新聞でこの問題が騒がれておって、業者意見が出てきた場合に、それは業者全部の意見ではないぞ、六千万トン以上使えというような意見も出なければならないと思うのです、舟橋さんの今の考え方では。それが一向出てこない。その点ひとつどういうふうに——もう大手企業業者の皆さんと中小企業の皆さんとのお話し合いとか、あるいは対策等も、石炭問題については話し合っておられると思うのですが、どういうことになっておりますか、お聞かせ願いたいと思います。
  29. 舟橋要

    参考人(舟橋要君) 私どもも、この問題で苦心しておるわけなんですが、五千五百万トンという線で強く押えられて、行政指導を受けておるからああいったことが出ると思うのです。先ほど私が申し上げましたように、総合エネルギー対策の面から見て、三分の一ぐらいは国内産業によらなければいかんということは、これは石炭業者という立場から論ずると手前みそになりますから、私どもは石炭業者という立場から離れて、善良なる国民としてこれを言っているわけです。現在の油は九四%は輸入です。しかも、それがほとんど外国資本です。それで、油の価格は現在六千五百円、七千円が高いから六千五百円にしろとかいう交渉が行なわれておるが、それが油の価格で、これも世界市場から見ますと、日本だけが一番安い、ダンピング市場である。ダンピング市場として日本経済界に送り込んでこられる。ところが、目先だけを考え日本人の一つの悪いくせが出ている。安いものを使って安いものを輸出するのだ。ところが、国内の資源がつぶれて、国内に経済の破綻が起きてから、一部の事業が輸出したからといって、それが国の生産としてりっぱであるかどうかということは、これは考えるに至っていないわけです。そこで、少なくともダンピングはなぜかというとこれは日本経済を麻痺させる一つの策略です。今でこそダンピングをしておりますけれども、いよいよ石炭企業がつぶれてしまって、三千万トンとなり二千万トンとなり、それで間に合うという企業だけが残ったら、それからは石油の価格を倍にしようと三倍にしようと向こうの自由です。その場になってあわてても、もうだめです。御承知のごとく、昭和二十年の終戦直後は月産五百五十万トン、年間六千万トン近い石炭が掘れておったのが、終戦と同時に、わずか月産四十五万トンにまで落ちてしまった。それから今日の月産五百万トンになるまでの間には十六年の歳月を要しておる。そして二兆からの金が注ぎ込まれており、かつ、相当の歳月がかかっている。そういう場合に、ここでもし、いざ二年後か三年後に重油が上がった、石油が上がった、現在世界のどこの情勢を見ましても、われわれはもとより平和を欲するし、戦争はあっては困りますけれども、今後もし戦争が起こった場合どうなるかといえば、今後一番先にやられるのはいわゆる石油資源、いわゆる原動力を破壊するでしょう。その場合、石油が入らなくなった場合に、日本は一体何によってエネルギーを得るのか。これを考ええますと、私どもは、やはり石炭が大切だ、国が経済の中で多少やりくりをしてでも、国の持っている資源の確保だけはしておいてもらいたい。しからば、それによって国が損になるかといえば、一向損はしない。ドルには一つも影響しないのです。一月には八千万ドル、二月には七千万ドル、三月もまた相当の赤字が持たれておる。このままの形でいったら、日本経済はこれでいいのか。石炭に対して、単に三百億や二百億の助成費を、あるいは助成という言葉がいけなければ、いろいろの方法をとられても、これは国内の資源で、国内に流れてきますので、何もドルには影響しない。したがって、私どもは、御承知のごとく、昨年の十月の六日に危機突破大会を開きまして、五千五百万トンの線をはずして、また、六千万トンとか七千万トンとか、そういう数字にこだわらずに、掘れるだけ掘る、そして一人の失業者も出さないようにということを政府に要求して、政府も、石炭は基幹産業とする。ただし、五千五百万トンの線はせっかく作ったのだから、いましばらく情勢を見たいということだった。そこで、私どもは、その後基幹産業とし、基本産業とするならば、安定産業にしてもらわなければいけない。安定産業という字句にはなっていないから、三十七年度においては抜本対策をとって、ぜひ安定産業に持っていってもらいたいということを言っておりますが十三日からこれに引き続き大会を開きまして、大手にも呼びかけまして、五千五百万トンの線にこだわらずに、六千万トン、七千万トンと、少なくとも二億七千万トンの三分の一、約八千万トンから九千万トン出なければいけない、そこまではいける。このままで努力すれば、私どもは労使協調して、政府の施策よろしきを得れば、七千万トンぐらいの石炭は掘れるのではないか。七千万トン掘っても三百年間掘れる。石油資源は百五十年か二百年で、石炭より百年間ぐらい少ないだろう。百五十年か二百年でなくなるだろう。しかも、これは平常の場合で、一たん何か事があった場合には一ぺんになくなる。石炭は土の中で爆破されませんが、石油は、サハラ砂漠の二万バーレルの井戸一つたたけば、日本に入っている石油は全部入らなくなる。こういうような非常な危険要素をはらんだ経済の中におってはいけない。これが私どもの強くお願いをしているところですし、また、これから要求いたしていきたいと思いますから、どうか一つ御協力を願いたいと思います。
  30. 阿具根登

    ○阿具根登君 参考人の時間がないようですし、また、他の委員の方の質問もあると思いますから、私簡単にお三方にそれぞれ一つお答えを願いたいと思うのです。  先ほど原さんの御意見の中にもありましたが、私たち石炭問題を審議しておりまして一番わからない問題は、たとえば三井なら三井、北炭なら北炭と、こういう優秀な技術を持っており、そして資本金が非常に大きいところでやっていけないようになった炭鉱が、第二会社になり、あるいは租鉱権になり、あるいは組夫等になってそこの会社でやっていける、あるいは大きな会社で、炭層も厚い、技術部も非常にいい、保安状況も非常にいい、運搬機械も非常に完備している、そういうところでやっていけないようになった炭鉱が、今度は中小炭鉱に落せばやっていける、これは一体どういうことだろうか。中小炭鉱でやっていけないのを大炭鉱が引き受けて、そして多額の金をかけて技術陣を動員してやったらできるのだというのならわかるけれども、大炭鉱でやったのがやれなくなって租鉱権に落とし、第二会社にする、そうすれば石炭が出るというのは、私はどうしてもこれはわからないのですが、お三方それぞれ御意見があると思いますので、お聞かせいただきたいと思います。
  31. 原茂

    参考人(原茂君) これは簡単な理由なんですけれども、企業を近代化したり経営を健全化するという意味でなくて、労働賃金を引き下げる理由で第二会社にするわけです。ただ、炭労が関係している三井なら三井の会社でいうと、企業はたくさんあっても、一応賃金が二万円なら二万円できまっている。三井の労働者炭労組合員だから二万円払わなければならない。ところが、「三井」という看板をはずしまして、別な第二会社にしてしまうと、別な会社になったから規模が小さくなって、人間も減らして、しかも、能率もものすごく上げなければならない。そのためには設備に金がかかる、独立採算ですからというわけで、一万円に賃下げしたところもある。だから、第二会社にするということは、一万円とか一万五千円に労働者賃金を引き下げるためにやる。あるいは労働時間をむちゃくちゃに延長してもやっていける。非常に簡単です。しかも、その中で組夫、臨時夫を自由自在に労働組合を無視して勝手に入れることができる、そういう手段のために使われているわけです。
  32. 舟橋要

    参考人(舟橋要君) 多少、原君と意見を異にするのですが、私は中小炭鉱を全部で四つやっております。年産六十万トンほど出しております。大手との賃金格差、これを克明に私は持っているのですが、三井、三菱、大手十八社もそれぞれ格差があります。一律じゃありません。年末手当、期末手当は一律でありますが、その日その日の労働の収入というものは、それぞれ全部異なっております。その中で、大手の十八社のうち、私どもの持っておる炭鉱なんかは、大手のうちの十二社ぐらいのところに入る賃金を払っております。しからば、なぜこの中小炭鉱に下げてやれるのかといいますと、これははなはだ、大手の方もおられると思うのですが、たとえば三井で一つのものをまとめるのに、六十五くらいの判が要る、私どもでありますれば即決で、社長で、よし、三分間でまとまるものが、一週間ぐらいかかる、それくらい非常に経炭者といいますか、経営者といいますかの層が非常に厚いわけなんです。私はいつも大手に向かって言うのだが、あなた方、労働者を百人首切るのを、経炭者五入か六人整理すれば済むのじゃないか、これを常に言っておるわけです。これが、私は非常に大きな負担がかかっておると思います。この問題を解決せずに、末端の解決ばかりしたのでは、私はほんとうの大手といえども経営の合理化はできない。そこで、ようやく最近大手さんにも別会社を作って、それぞれ参事とかあるいは部長とかいうような人をたくさん——最近北炭では、いわゆる職制のない重役は非常勤とする、非常勤は給料が半分だ、こういうことで、したがって職制をつけなければならぬために、一つ会社に七部も八部もあってお役所と同じです。これは現在の日本の役所では、人は今の三分の一もあれば間に合う、それをやたらにやかましいことをいって、縛って、どうにも動きがとれぬようになっている。私どもから見ると不可思議でしょうがない。しかし、失業者をあまりたくさん出したくないから、われわれ一生懸命働いて、りっぱな国作りをするために税金を払っておる。それでもどうにかこうにかやっておるのですが、これにまた輪がかかっておるといっても差しつかえない。長い間にマンネリズムになった機構というものが、なかなか一朝にしてやめられない。それを動かそうとすると社長は首になる。大会社の組織、いわゆる炭鉱は特にそうでありますが、社長は、常に部長クラスあたりで今度はだれを社長にするのだ、今度やめてもらおう、株式会社でないから株主によって左右されていない。部長クラスは、課長クラスの会があってあの部長はけしからぬからやめてもらう。部長は課長クラスにおいて、課長は係長クラスの職員がやる。職員の首は、これは労働組合委員長がやる、ここに原さんもおられるけれども。これは、あんな労働課長いてもらっちゃ困るからやめてもらう。労働組合委員長は、また下の穴を掘っておるところの坑夫がやる、ちょうどピラミットをさかさにしたようなもので、下ほど炭鉱は偉くなっておる。そこに非常にむずかしさがある。そういうことが私は改革をされぬ限りは、今のような問題が出てくると思う。そこで多少原さんの言うのと違うというのは、そこです。私どものほうを見ますと、社長以下直接執務者です。そうして労働者との間の間隔が非常に短いですから、ものは身近に感じております。私どもは自分労働者の子供の名付けまでやる、一切のお世話をする、相談も受ける、そういうようにして——同じ炭労の傘下です。私ども北海道の中小炭鉱はほとんど炭労に入っておりますが、現地では非常に、北海道炭労の——道炭労というのがあります。道炭労も話し合いで、炭鉱のそれぞれの企業の中で、この炭鉱はこれから以上いくと無理だ、しかし、さりとてわれわれは炭鉱労務者の汗と油の犠牲をしいることはいけない、だから君たちの持っている知恵を貸してくれ、どうだろう、この山がよくなるのはどうしたらいいか知恵を貸してくれ、知恵は生きておるときに使わないと、死んだら使えなくなる、生きておるうちに知恵をしぼり合って、一番楽な方法で——ひとつも働かないで、すわっておって、これで炭が出ればいいがそうはいかない。楽な方をやろうじゃないか、それでその山々に応じた機械化、それは大手のように大きな機械を入れて、がっと掘ればいいかしれぬが、耳の穴をほじるのにおたまじゃくしじゃ掘れない、したがって小さいところには小さいものを当てはめて企業合理化を進めて今日やっておる、したがって中小炭鉱になるといい山が、大手で掘るとだめだ。それで最近、私は自分の山の鉱区を売りましたが、今から八年前に今の三舟鉱業を始めたときは、これは三井がどうしてもそろばんに合わぬからと投げたときに、四千八百円かかったのが、今日原価で二千二百円くらいで出して間に合っておるわけです。これはずいぶん苦しいときもありましたが、一日も待たさずに、自分たちの家屋敷を抵当に入れてでも借金して労務者に金を払った。自分たちは借金して首が回らなくても、労務者は生活費ですから、その生活費をつめることはせず今日まできておる。北海道では幸い道炭労と中小炭鉱は話し合いが非常によくいっておる、ところが中央に出てくると、中央のほうの執行委員が集まってくると非常に強くなって話し合いがむずかしくなる。この点は私は道炭労のあり方も——炭労といいますか、原さんのほうのあり方ももう少し掘り下げて、現地に即した指導をこの機会に原さんにもお願いしたい、こういうことです。どうぞよろしくお願いいたします。参考人(菊地勇君) 大体今言われたのでいいと思うのですが、やっぱり炭鉱という企業の独自性を考えないで問題を理解しようということは間違いになると思うのです。第二会社に行くという——私どものほうでも多少第二会社に行きますが、それは何といっても原さんがおっしゃったように、第二会社に行くのだ。今、舟橋さんがお話しになったように、最初から小会社で、小さなこういう会社でやったのとやっぱり違うわけです。第二会社へ行く場合には、大企業自分の鉱区の中に多少取り残したところを第二会社にする点がやっぱり多いと思うのです。その場合では賃金は五〇%から多いところで七〇%ということを、これはどうしてかと言えば、やっぱり石炭産業という企業が戦争中、戦後をかけて相当長い間に人海作戦を行なったというところに根本的原因があるのです。だから、石炭企業とほかの企業を比べると一生産費当たりの人件費というのは炭鉱のほうがなかなか多いわけです。ここに経営者のやっぱり甘さもあるし、国の力の足りなかった点もあると思うのです。そういうものを解決しないで、それを目隠しして問題を論ずるということはやっぱり解決にならぬと思うので、人間の賃金を下げるというのと、もう一つは大会社——親会社のほうが減価償却し終わった生産諸設備、こういうものを活用するところに第二会社のうまさというものが、ある期間はあるわけです。だから、これだって最終的に何年も過ぎれば、第二会社だってやっぱり行き詰まるわけです。そういう行き詰まることをわかっておりながら、やむなく瞬間的な現象としてやるということが繰り返されているわけですが、だから、私はこの機会にお願いをしたいのは、中小といわず大会社といわず、やっぱり限られた鉱区の中で生きていこうとするところにやはり問題があるわけです。だから、まず労働条件は全国一本に大会社といわず、中小炭鉱といわず、とにかく最低ベースを保障する、それに満たないようなところは法で買い上げることに決定したわけだから、賃金も採炭夫で三万円以下のようなところは経営を行なわせない。経営を行なわせないということになれば、必然的に何らかの近代的な企業形態に脱皮しなければならないわけだから、そうすれば、個々の採炭機械で労働条件が著しく向上するだろうし、今、舟橋さんがおっしゃったように、三井、三菱という大会社が官庁と同じような判こが必要だということもなくなるわけです。だから、そういうふうなことにでもしていかなければ、第二会社の解決にもならないし、実際問題としてほんとうの意味の第二会社を論ずることは、炭鉱の近代化を想定して、それにつながった施策を講じなければ、根本的な解決にならないということを申し上げておきます。
  33. 舟橋要

    参考人(舟橋要君) ちょっと追加させてもらいたいのですが、特にこの機会に先ほど原さんからも出ておったのですが、鉱区の調整といいますか、整理統合、これは私は大事なことだと思うことは、大手関係にも下を掘っているもの、中間を掘っているもの、上を掘っているもの、これらが一本にまとまれば四百円も五百円もコストが下がるというところが北海道に四炭鉱経営しており、赤平とか、赤間とか茂尻あたり、三年や五年——五年後においてどういうことが起こるかということは私どもは人のことながら危惧しているわけです。したがいまして、中小炭鉱のごときは自分の限られたワクのすぐ外側に、これは外見でうらやむほどりっぱな鉱区がある。しからば、それを大手が掘るかというと、これは計画にも何にも入っていない。売るとなったら、現金で何億も要るから中小は買えない。しかも御承知のとおり、沼とか、川とか、海とか、石炭とかというものは国家のもので、採掘権だけを与えておる。そうしてここを採掘しますからといって許可を受けた。許可を受けても五十年も七十年も採掘もしなければ、調査もしない。そういうことがあっていいかということです。これは自由経済主義ですから、私、人の財産に手をつけようとは、無条件に解放せよという強引なことを考えてはおりません。ある程度公定価格がきまっておるのです。あの公定の買い上げ価格の範囲で、ある程度財政とにらみ合わせて、二年でも、三年でも年賦で分けていただきたい。私はこのことを各大手にお願いしておる。私のお願いしてきたところは、大体十のものは五つ六つまで、これは食い下がったら離しやしません、大手の重役会議でお願いして進めておるわけです。これは法律でしなくても、せめて行政措置でもいいからしでいただきたい。たとえば、鉱区の問題なんかにしても、通産局長が権限を持っておりますが、局長はなかなかやらない。そういうようなことで、この点も、一つの法の盲点といいますか、あるいは国の行政の盲点といいますか、これらを急速になくしてもらいたい、こういうことも一つつけ加えてお願いしておきたいと思います。
  34. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 次の質疑に入ります。藤田委員
  35. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は舟橋さんに一つお尋ねをしたいのですが、まあ私の理解が間違っておれば御指摘をいただきたいと思うのです。  今、舟橋さんは、日本エネルギー資源開発、将来のエネルギー対策として五千五百万トンというワクをはずして、そうして今の鉱区の問題もありますけれども、これも含めて、首切りを食いとめると同時に、日本産業発展の中のエネルギーの役割を果たすべきだという御意見がありました。私もそういう考え方を持っておるものでありますが、ただ歴史を振り返ってみて、もう少しその歴史的なものを明らかにしていただきたいと私は思う。それはなぜかというと、ちょうど日本が機械化に入って参りましたのは二十七、八年ごろからであたっと思います、産業の機械化は。そのときに、その新しい産業を興こすエネルギーを石油に求めるか、石炭に求めるか大議論が二、三年続いたと私は思っている。そのときに、私は何といっても大企業を中心とした——石炭協会萩原さんがちょうどいらっしゃるといいんですが、もうけたらよいという格好で、利益さえ上げたらよいという格好の態度を堅持され、これが新しい産業エネルギーを石油に転化していった。最近はダンピングによってそれに拍車をかけているということで、単に大手の大企業だけ、大手だけ守られている。そうして五千五百万トンという生産のワクをはめている。大手のほうはこれに賛成である。そういう格好で、合理化の中で首を切られる。首だけは切って、その犠牲は全部労働者に追い込んでいく。こういうやり方は理解ができない。だから、そういう歴史的なものを業者自身が反省すべき段階にきている。ただ、政府が抜本的な政策を立てろということを萩原さんはしきりに主張された。しかし、阿具根委員質問によると、業者自身は内容を一切外に見せないで、政府対策を立てろということを主張されている。しかし、そういう歴史的なものを見れば、私は業者自身が第一に根本的に反省をする段階じゃないか、こういう工合に思うのです。舟橋さんの御意見はだいぶ違うようでございますから、今までの経過からいうと、私の考えているのと同じような御意見もありましたから、この問題についてどういうふうにお考えになっているかお聞きしたい。
  36. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 質疑の点にだけ限って御答弁を願います。
  37. 舟橋要

    参考人(舟橋要君) はい。そのとおりと思います。まことにそれ以上のことはないのでありますが、しかしながら、ただむずかしいことがあるということを一つ考え願いたいことは、政府の立てた案、それをほとんどうのみにしているのですね。うのみにしなければならぬ事態にあるということなんです。ということは、その年の財政投融資の予算をつけてもらわなければならない、さらに銀行から金融を受けなければならぬ。とにかく銀行金融といいますか、財政投融資が足らぬものですから、市中銀行の金融というものに非常に大きく依存しておる。これが、今日日本の国の経済の実態をよく静かに考えてみたら、これはもう銀行によって事業が左右されておると私申して過言じゃないと思います。それらの意見を十分に取り入れ、それらのきげんをとらなければ事業が成り立っていかない。そこにこれは問題があるのじゃないか。そうすると、政府が立てた案で、少なくも要る金の三分の一、四分の一を財政投融資に仰がなければならない。財政投融資を仰ぐために政府の案に逆らったのじゃできない。そこで私は大手の中でも非常に新しい感覚を持った萩原さんでも悩んでおると思う。それで、どうしてもいけなければ一切大手が国に返上しようじゃないか、国にお返ししようじゃないか、それまで議論したことがあるのです。したがいまして、今の議論は、あくまでも自由企業という利潤追求自分の利益を固執するということじゃないけれども、過去の因縁からなかなか脱皮し切れないということであろうと存じます。以上です。
  38. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 まあ、それに関連してでありますけれども、さっき原さんの発言の中に千二百円、この計画の中に千二百円コストを下げるという片方で話し合いが大需要者との間に進められておるけれども、現実の問題としては石炭の生産コストは下がっておるけれども、中小企業以下の企業または個々の小需要者に対しては一万円からの値段でこの石炭が売られているということをおっしゃいました。そういうことが実際あるとすれば、非常に私は問題だと思うのですが、その点は舟橋さんどうお考えになっておりますか。
  39. 舟橋要

    参考人(舟橋要君) 御承知でもありましょうが、石炭は実はもう千二百円以上下がっておるのです。それの分析をいたしますると、私どもが昭和三十三年から東京電力に納めた石炭は九百五十円下がっております。それに昭和三十四年、五年、六年までの諸物価のはね上がり、いわゆる火薬、坑木、電力料、鉄道運賃、そういうもののはね上がりを、私ども昭和三十四年審議会できめました労働賃金のはね上がりは三・八倍しか見ていない。これが今日八・六倍、そういうところから見て、それらを全部総合しますと、トン当たり五百四十一円諸物価のはね上がりがきておる。これはいわゆる所得倍増政策の私は結果であるのか、あるいは世界経済の動きであるのかは私ども経済通でありませんからわかりませんが、そこで私どもは昨年の十月に大蔵省に向かって——これはちょうどすでにもう千四百九十円下がっておるわけです。それを入れますると、したがいまして、ここでまたさらに二百五十円下がるということは、とても不可能だ。そうすると、つぶれていってしまって、失業者ができ、山がつぶれる。銀行も迷惑される、市町村も迷惑されるのだから、この辺で横すべりせいということを先ほど申し上げたのはそこなんです。二ヵ年間だけの延期をしてくれ。それらを考えますと結局は私どもは災害者なんです。私ども伊勢湾台風の災害者と何も変わらぬから、災害補償金をくれということを強く要望しております。今日も要求をしております。それは災害補給金と見ることが妥当であるか、価格差補給金とすることが妥当であるかどうか知りませんが、そういう問題がありますけれども、そういうことがあるので、もうすでに下がって、これから以上下がらぬという段階に来ておるのです。そこでひとつ二ヵ年間だけはひとつ停戦期間、労使協調し、政府も、あるいは与党も野党も一切石炭の問題に対しては白紙に返って、ひとつ研究をしていただきたいということをお願いしたわけであります。以上であります。
  40. 高野一夫

    委員長高野一夫君) ほかからの質疑の申し出がありますから……。
  41. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私のお尋ねしたのは、コストを下げろと言っているのじゃないので、今の現状においても大都市においては一万円以上の石炭を売って、石炭業者が非常に利益を上げている。片一方ではそういう工合に利益を上げておって、だんだんと反射的に市場を狭めている、狭めているという作用を起こしている、そうしていって、片一方ではコストを下げろ、コストを下げろという格好で、とにかくその場その場で利益の上がるところには、他とのバランスを考えずに、利益だけをとっているという方式をとっているのではないかと思いますから、片一方では政府に抜本的な対策を講ぜよ、財政投融資やその他によって石炭業界が立っていくようにしてくれ、こう言っておられるけれども、一般国民に対してはとれるところならどんな無理をしてでも利益をとるという考え方が片一方で動いているということについて、そういうやり方はどうですかというお聞きをしたのですよ。
  42. 舟橋要

    参考人(舟橋要君) 誤解があると思うのですが、今日の石炭の販売機構といいますか、これが非常な複雑怪奇なんです。それで私は一月の三十日に北海道初めて暖房用炭——五万道民のたく石炭が二百四十万、これが山元では四千五百円ぐらいで売った石炭が、たく人には八千円ぐらいにはなっております。これを今分析をしている最中でありまするが、この流通機構の改革を抜本的に行なわない限りは、石炭というものはだんだんプロパンに食われ、油に食われていく可能性があるわけです。これを急いでやらなければ、これは大手も中小も一丸となってやらなければいけない時期が来ておるんでありますが、東京へ持ってきて船賃をかけて、一切見てみましても、東京で一万円以上に売られておる石炭は、六千五百円、高くて七千円ぐらいのものを持ってきておるはずなんです。山元は五千円以上のものはほとんどないのです。そこに流通機構の改革をしない限りはいけない。今日の事態になりますると、われわれは石炭を販売するなんかという考えはやめて、石炭をいかに上手に一銭でも安く、諸がかりを下げて、たくところまで送り届けるか、ここまで私は掘り下げてお互いが研究しなければ、ますます石炭はきらわれるものになっていくのじゃないか。したがって今の問題は、販売機構の非常な複雑なことが原因している、こう申し上げていいと思うのです。これは私のほうで分析をしている内容も相当ありますが、そうういことを御承知おきを願いたいと思います。
  43. 吉武恵市

    吉武恵市君 それではちょっと、社会党委員の方からもまだ質疑があるようでございますので、私あえて御質問を申し上げることもないと思いますが、社会党の方だけの御意見だとほかの委員の方及び政府におきましても社会党の御意見かというふうにお聞きになりましてもいかがかと思いますので、私ども大体お聞きしておりまするのに同じ気持でおりますので、私あえて御質問なり、また自分意見を申し上げてみたいと思います。  先ほど来、三人の参考人の方の御発言を聞いておりまして、私どもいずれもごもっともである、そうだろうという感じがいたします。公述の内容はそれぞれ多少の違った観点はお持ちになっておりましたけれども、私多少石炭に触れておりまする者からお聞きしておりまするというと、ごもっともだと思っております。そこで三人の御発言にもありましたように、私今回提出されておりまする石炭離職者対策の処置は、それ自体私必要でもあるし、けっこうだと思うのでありますが、ただ先ほどから原さんからも御指摘になりましたように、どうも離職者をどうするかという問題だけに、石炭対策というものが集中されているような感じがするんであります。で、やはりもとを何とか解決をするということでないというと、ただ出てきた離職者をほうってはおけませんから、今回のように政府もわれわれもあげて当面の処置をやろうとするのでありますけれども、しかし、それではいつまでたっても同じことを苦労するわけでありまして、根本の問題を解決しなければならない、こう思うのでありますが、そこで、先ほど来御意見も出ておったように、政府は五千五百万トンを目標として維持したいということをいい、それに対して社会党委員からも、また原さんからもっと増産をしてひとつ大いに地位を確保すべきであろうというお話でありますが、私も希望としては、そう思います。またそれが不可能ではないと思うのであります。ところが当面の問題として、昨年はいろいろの問題がございましたが、昨年は非常に石炭の危機といわれ、確かに危機でした。なぜ危機かという点は、時間がございませんからあまり触れられませんけれども、確かに危機でしたから、労使ともあれだけのお骨折りをされたのですが、しかし、石炭は貯炭がだんだん減って、今申されたように市中では相当の値段で売られている、こういうわけでありますけれども、私はもうすぐ今の問題としてことしどうなるだろうかというと、私は相当の貯炭が出ると思う。去年は好況によりまして石炭が売れた、それからまた一般の暖房用としても相当出たから、これは吸収されたのでありますけれども、六千万トンになりますと、あるいはまた貯炭が始まるのではないか、一般の経済界も御承知のように設備投資の行き過ぎだというので、金融引き締め、その他産業生産の引き締めをやっておりますから、その影響も私は出てくると思うのです。そこで希望としては、六千万トンを七千万トンにもしたいけれども、しかし、現実掘るだけ掘って、そしてそれが貯炭になるのでは、どうにもならない。それじゃそれを国民が買ったらいいじゃないか、こういっても、一般の国民は、それを油と比較して、暖房だけをとって見ましても、石油のほうが安いから石炭のストーブをやめて、油のほうを使う、こういうことになるわけです。そこで、私はどうしたらいいかという問題についてお三人の御意見を聞きたいのですけれども、私はその方法としては、石炭の大きい需要者であるところの電力というものに対して、日本石炭の増産をするものを、これに結びつける以外に、私は方法がないじゃないかという気がするのです。ただ掘れ掘れで政府はけしからぬ。もっと目標を高くやったらどうかと、こういわれても、掘ったものが貯炭になったのでは、一昨年のように石炭危機はたいへんなことになります。舟橋さんがおいでになりますが、大手でも中小のほうでも、貯炭が多過ぎてお互いにどうしようか自粛しようというので、自粛された時代もあったわけでありまうすから、必ずそいう問題が私は出てくると思う。三人の御意見も同じですし、社会党の御意見も同じですが、日本石炭産業というものは、私はどうしても維持発展をさせたい。それをもう私があなた方に申し上げるまでもなく、セキュリティという問題から、日本の地下資源の開発というものを存続しなければいけない、また労働問題からいっても、三十万の労働者、またそれにつながるところの家族を入れれば、とにかく相当多くの人の生活問題ですから、これはほうっておくわけにはいかない。ですから、それじゃ国内の総合エネルギーというものは、そうよけい要らぬかというと、そうじゃなくて、先ほど萩原さんもお触れになりましたが、総合エネルギーはどんどん要るわけですから、電力だってどんどんふやしているわけです。ですから、それに石炭を結びつけなければなりませんが、ただ買ってくれ、買わぬのはけしからぬ、それから政府は何をしている、こういっただけでは、私はこれはなかなか経済というものは、統制経済をやれば別ですけれども、自由経済の建前でありまする限りにおいては、私は困難と思う。それでありますから、千二百円コスト・ダウンというものは、私はある程度——ある程度じゃない、やはりコスト・ダウンはお互いに労使ともの骨折りでしていただかなければなりませんが、しかし、限界がある。先ほどお触れになりましたが、私は石油の問題も、この問題に取っ組んで、最近少し頭を究っ込んで研究しておりますが、もっと安くなります。石炭はもっと安くなる。これはもう世界的に資源というものがどんどん開発されている。ソ連なんかは、もっともまだ埋蔵量からいうと、ソ連系のほうがむしろ多いくらいですから、もっと私は安く入ってくると思うのです。ですから、それじゃ、それを制限をして輸入させなければいいじゃないかということも、これはなかなか石炭だけから見ればけっこうであろうと思うけれども、私はこれはできない相談だ。やはり安い石油が入るのは入って、産業というものの全体は考慮すべきだと思う。しかし、入りっぱなしでいいかというわけにいかぬので、私も、先ほどお触れになりましたように、ある程度の関税を加えて、そうして西ドイツがやっているように関税をして、そしてある程度の調整をして、そしてその関税の収益でもって石炭保護政策というものへ回していくという方法が一番——これは私から申し上げぬでも、お三人もすでにおそらく研究になっている、お考えになっている。また、われわれ政府部内でも話しておるわけです。そこで、それでは石炭業者にそれだけの補給金や金を出したらいいかといっても、これは私なかなか言うべくしてできぬのじゃないかと思うのです。ですから、日本石炭の大半というものは電力に使う以外にありません。もう民間の瞬房用に使えといったって、今は石油ストーブがどんどん入ってきている。プロパンも入ってきておるという状態ですから、なかなかむずかしい。ただ、電力の発電所ではほうっておけば油を使います。それは安くなる。ですからほうっておけば……。それじゃ、政府が法律なり命令でもって高い石炭を、ただ使え使えといったって、これはやはり会社ですから、そう命令だからといって、はいというわけにはいかぬと思うのです。ある程度は業者間の——萩原さんがおいでになれば、その点をお尋ねしてみようと思うのですが、私はある程度財界の話し合いでこの問題というものは解決がまだできる余地もあるのじゃないかと思ったのですが、萩原さんお帰りになりましたけれども、話し合いだけでは私はむずかしい。ですから、近代化させてコストは下げてはいただきたいけれども、限界がある。先ほど舟橋さんがお触れになりましたように、千二百円コスト・ダウンはやっているけれども、逆にそのときから比べてもう五百円あるいは六百円というコストが上がっている。現に電力料も上がった。運賃も上がっておる。坑木も——坑木だけじゃありませんけれども、木材として非常に値上がりをしているのですが、これは防ぎようがないのですが、ですから限界があるので、その限界をカバーする方法としては、私はある程度政府というものが、今言った油の輸入にも関税をかけて、その関税財源、一般でもいいのですが、しかし、一般の人に負担をかけるということはなかなかむずかしいことですから、その財源をもって、そして電力会社にカバーをして、そしてまあ自由にすれば、油のほうがいいかもしれませんけれども、石炭だけというわけにいきません。そうさせるよりもうほかに方法がないんじゃないか。ただ石炭は掘るだけ掘ったらいいじゃないかとか、それから舟橋さんは価格を横すべりで、こういうことは結論だけをおっしゃったのですけれども、結論は、私はそれで当座はやむを得ぬと思いますけれども、油はまだまだ下がってきますから、なかなかそれだけでは解決がつかぬ、そういうふうに私は思うわけです。そこで私はどなたかに——一人々々質問するわけじゃございませんけれども、お話を承り、かつ私の感じておりまする点を申し上げまして、そしてお三人の方の御意見を私は聞かせていただきたいと思います。私は批判なんかをしようという気持はございません。あなた方と同じに、日本石炭を何とかして維持して、そして現在働かせておるところの炭鉱労務者の方が安心して働いていく道を見出して、実際炭鉱離職者といって、そして離職者が出れば、それは今度のように相当手厚い方法で救済をされておりますけれども、炭鉱に働いている人の気持というのは私も若干触れておりますが、よそへ行くのはいやがるのです。炭鉱の中は危険であってきたない仕事でありますけれども、なれた仕事にやはり落ちついておりたいのです。それからまた現在働いている中小炭鉱にしましても、人は要るのです、大手でも。ですから、離職者が出る一方には人が要る。先ほど原さんからの数字で、八万人も整理したけれども、二万人が帰って来ている。そういう状態は私は起こり得ると思う。特に昨年なんかは私はあると思うのですから、それでどこでもいいということでなしに、やはりできるならば炭鉱に落ちついて、それは年とれば働けないから新陳代謝はやむを得ないと思いますけれども、させたいと思うのですが、その方法として、私はどうしても今言ったように、大口の中の大口、つまり電力に国策として、そして皆さん方労使双方のお力添えによって引き取らす。引き取るには、ただ引き取らねばけしからぬぞという行き方では、これは無理です。引き取りやすい方法を講じて、そして引き取らしていただく。それには私ども部内におきましてもいろいろ意見を述べておりますけれども、率直に言って、石炭に対しては一般の第三者の関心が薄いですよ。いろいろ話してみまするけれども、それは君そう言ったって、石炭の高いの使えと言っても無理だという言葉がすぐ出ますけれども、そして石炭業者といっても、相当昔はもうけたじゃないか、労働者にしてもああしょっちゅう争議をやられちゃ困るよというふうな、第三者はそういう目で見ておる。  そこで、先ほど舟橋さんが触れられましたが、私の感じましたことは、昨年炭労のやられましたあの厳粛な陳情というものを私は見まして、非常に感じ深く受けました。これは世間に非常にショックを与えました。これは石炭業というものが追い詰められた結果、ああいうふうになった点もあろうと思いますが、世間ではあれはアベック闘争、炭鉱業者炭労と一緒になってやった——私はそんなことはないと思います。私も多少関係しておりますが、そんなことがあろうはずはない。それは業者も追い詰められて、どうにかせなければやっていけない、政府のほうも何とかしなければならぬというその必死の気持が私はあそこに現われた。それが一般の世論に訴えて、あれは非常に私は政府にもその他にも影響したと思うのです。それで私は、ここに二人組合の方がいらっしゃるのですが、私は過去をどうこう言うわけではございませんけれども、ほうっとけば世界の油の生産というものがどんどんふえる一方である。もう日本をダンピングの市場としてやってくるといっておりますけれども、これは日本ばかりじゃない。どこへでも出ておりますから、この国内資源としての石炭を守るためには、労使がもっと私はざっくばらんになって話し合っていかなければならぬ。この六千万トンの炭を維持することは、これは私はそうむずかしくないと思うのですから、もうちょっと話し合って、どうしてこれを切り抜けていくか、その気持で世間に訴えられれば、政府ももちろんこれは動かすことができるだろうし、一般世論も動かすことができるのじゃなかろうか。かように思いまして、少し時間が長くなりましたけれども、率直に意見を申し上げて皆さん方のお三人のお気持をお聞かせいただきたい。こう思います。
  44. 原茂

    参考人(原茂君) 安い油より石炭を使え使えと掘りっぱなしで貯炭ができる状態になる。こういう不安があるのではないか。もちろんそれがなければ何も僕ら要求しないのですね。掘って売れなくなると、あと石炭労使の犠牲で何とかしろ、こういう政治では困るというので要求しておるわけなんですね。問題点は、私はむずかしいことではない。ほんとうに政治の場でない限り、石炭産業は生きれないというのは世界の事情である。労使で話をして、あるいは使う側と売る側と話をする、石炭産業は何とかなるのだという事情に世界的にないのだここがどうも私は政府自民党の皆さんがちょっと考え間違いをしているんじゃないか。普通のその辺の商品やテレビやラジオの安いやつを買うのと違うと思う。問題は、したがって、資本主義国であって統制経済でないにもかかわらず、イギリスなりフランスではなぜ国営にしているのかと、こう言えば、石炭産業が労使なりあるいは私企業なり、あるいは自由経済という原則では、その現実に対して処置することができないというところに政治が表面に出てくる。その政治の場で石炭産業の安定の道を考える。こういうふうな経路になっているわけですから、そこのところが実はそうでない。むしろ炭鉱労働者が陳情に来たというのを、何か交付金の陳情に来たと同じように考えているのではないか。そういうものではなくて、本来は政治の場で、政治が責任を持って、政治家が行なうべき、その産業の方向を考えなければならないものを、実は労使の犠牲においてやられてきた。ここのところに僕らは問題があると思う。しかも、この三年間に泣き寝入りしたということになります。その間に少くなとも八万人の人間が首を切られて、まだ五万人切るか十万人切るかわからないという状態はそのままに、ただ安いからいいとか、高いからどうだということだけで、そんなところに重点が置かれているような気がするのです。そこのところが一番問題です。  もう一つの問題は、私は国内資源という問題についてあまり——日本人というのは舶来主義なのかどうか知りませんけれども、これをあまり政治の問題にしていないのではないか。安いものなら何でも使うというなら、それならソ連からでも中共からでも安い炭が入ってくるのに、それはやらずにおいて、しかもほかのほうから油をどんどん入れている。そして日本石炭産業はつぶれていく。労働者失業してしまう。しかもそれが治安問題になる。治安問題か社会問題にならなければ、政治の場で問題にしてくれないというのでは、あまりにも情けないことではないか。ですから私は石炭は普通の産業とは違うと思う。国鉄あるいは電気産業、あるいは郵政のような、言うなれば公益事業と、石炭産業というものの立場というものは私はあまり違っていないと思うのです。たまたま私企業だったという歴史がありますから、これはそっちのほうにまかしておいても何とかやるだろうということでやっていたのかもしれませんが、私思いますのに、労働者はいつも不幸だったけれども、石炭会社というものは昔はたいへんもうけた。中小炭鉱でも炭鉱主が何人も長者番付に並んでいたこともある。そうした過去の経営のやり方というものに問題がある。むちゃくちゃだったと思いますが、しかし、今さら死んだ子の年を数えたからといって、石炭産業が安定するわけでもなければ、労働者失業の道が消えるわけでもない。私は今日、この時点においては、問題は政治の場で確立する。単に労使の問題としてではなしに、政治の場で確立することが、日本だけの事情でなしに、世界的なエネルギー政策の事情なんだということを、ひとつどうしても御理解を願いたいわけです。  それから、やはり何といっても電力が大口消費者だということは間違いないと思うのです。これからもますますそうだと思うのです。十年計画でいくと今までの三倍になるわけですから、一番電力の消費が多いということになる。そこで問題になるのは、油あるいは石炭を使うことによって、電力そのものではなくて、それから出発して製造業等、日本経済に対する影響がどのくらいあるか。私は重大な影響があるというならば問題だと思うのです。ところが、実際にはせいぜい三%ぐらいです。製造業に与える影響は三%ぐらい。そこで問題は、どの点でしぼるかというと、電力会社企業内容、コストというものと石炭産業の安定とがどう関係するかということが一番ネックになっているのではないかと、こういうふうに思います。そうすると、実際にはどうかというとイギリスでもそうですし、あるいはイタリアでもそうですし、あるいはフランスでもそうだが、ほとんど電力会社というものを国営にしてしまっている。そして政府石炭をどの程度使えということをきちんとやる。結局、政治の場で解決している。掘るほうも使うほうも政治の場で解決するという手段をとっている。ところが日本の場合は、貧乏な国でありながらアメリカをまねて、何でもいいから自由経済でやらしておけばいい、自由にやらしておけば日本産業は成長していくのだというふうに見ているが、これは誤りではないか。その点を展望していただければ、ある程度問題解決の方向が出るのではないか。  それから、油が安くなり、電気のコストが高くなる、こういう問題は、私は一時的にはそういうことがどうしても起きると思うのです。だから労使で話し合えばとかなんとかという性質の問題ではないのです。私は日本経営者は信用していません。もうけることにガリガリ亡者のようなものです。もし、一銭でも安ければ国が倒れてもいい、企業がもうかればいいという考え方が強い。石炭の中でも、三井がつぶれても三菱が助かればいい。三井、三菱がつぶれてもわが社だけは残るという考え方がある。そういうけしからぬ考え方経済全体を麻痺させたり、少しも政治の問題に反映しないという理由である。それでこの際ここのところで、私は経営者というような考え方を整理していただいたほうがいいのではないか。そうすると、電力というものは完全なる民間企業なのか。法律的に言うと公営企業ということになっている。そうすると、これはどちらの問題を取り上げても、政治の問題として解決しても別にむずかしいことでもなければ、それが官僚統制ということにはならないのではなかろうか。そこのところをこの際はっきりしてもらいたい。それから先ほど舟橋さんが触れておりましたが、私も同じ見解ですが、現在の石油市場を獲得する手段としてダンピングしているということは間違いないと思う。ヨーロッパでも、どこの国でも石炭より油の安い国は一国もない。イギリスだって、西ドイツだって、フランスだって、イタリアだって、どこの国でも石炭と石油の値段が同じだったり、石油の値段が石炭より安かったりする国は一国もない。そこで、そういうむちゃなダンピングをしていると、それを直ちに安いものを使うということで西ドイツがやるならば、西ドイツの炭鉱は全部つぶれてしまっている。ところが絶対につぶれていないというのは何かというと、これは政治がそれを解決している。何も業者間で完全に問題が解決するわけではない。政治の問題です。先ほど申しましたように、電力は幾ら使えという使用命令を出す、法律を準備する、関税のかわりにですね、そういう形で、結論は労使——使う側、掘る側でなくて、政治の問題として解決しない限り、石炭産業エネルギー全体がどうにもならない状態に来ているのではなかろうか、こういうふうに私は考えるわけです。だから、アメリカのほうはソ連と同じで、それぞれ国内に石油資源を持っている。こういう国では石炭も石油も自分資源だから、安いほうを有効に使うというのがあたりまえだと思います。ところが、ヨーロッパや日本は全部自国に油はない。全部外国資源であるということになれば、ここでどちらを優先的に保護するかということは、せめて私は同じ資本主義国であるヨーロッパ並みの石炭政策日本が確立したならば、何もこういうひどい、みじめな合理化を行なわなくても、近代的な生産向上による低炭価というものが確立される、こういう意味で考えているわけです。だから、私は現在の炭価がいいと思っておりません。労使が努力すれば安くできる。ただそのやり方で、人をぶった切る、三年間に十万人切ってやるというやり方が納得できない。ここのところに問題点がある。そういう意味で一つ御了承願いたいと思います。
  45. 高野一夫

    委員長高野一夫君) それでは、だいぶ時間も切迫いたしましたし、参考人の方も御予定があると思いますので、質問も答弁も簡潔にお願いしたいと思います。
  46. 吉田法晴

    吉田法晴君 おそくなってたいへん恐縮ですが、実は前臨時国会で、衆議院では石炭危機突破に関する決議という本会議決議がございます。参議院のほうは石炭四法案に対する附帯決議という形でいたしましたけれども、精神と内容はほとんど同じようなものであります。特に参議院の決議は詳細にわたっておったという点が、衆議院の本会議決議と違っておったところだと思いますし、それからそのとき御三人とも御存じだと思いますけれども、公述をしていただきました内容はほとんどそれらに関連をいたします。ただ公述をしていただきました部分で大事な点だけを明らかにしておきたいと考えますので、おそくなりましたけれども、一点ずつお尋ねをしていきたいと思います。  決議は、総合エネルギー対策の樹立、今の石炭総合エネルギーの中での位置等も含んで決議をやったわけでありますが、その中で原さんにお尋ねをいたしたい点は、決議の中にあります、生活と雇用の安定に努力をし、転換職場生活の安定のない合理化はこれを行なわないよう強力に指導する、こういう文句がございました。御陳述をいただきました内容は、重点はそれらに関連をいたしておると思いますので、先ほど安定職場炭鉱において確保すること、あるいは最低賃金の問題、生活の安定する職場紹介しろ、あるいは保障しろ、あるいは炭鉱での安定職場を確保する意味で第二会社、あるいは租鉱等の話もございましたが、これは決議の精神に基づいて政府も立案をすべきである。大臣は決議の精神に従って決議の趣旨を生かすように努力をしたいと言われたのですから、政府においても雇用と生活の安定のために努力をするかと思うのですが、その後具体策が新年度予算案に不十分に出ている程度、したがって政策転換を唱えられ、現在も続けられておるようですけれども、この生活の安定と雇用の安定について、ぜひともこの程度はしてもらわなければならぬという点について、もう少し、これは石炭全般についてのただいまお尋ねございましたし、焦点をしぼって御答弁を原さんにいただきたいと思います。
  47. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 原さん、簡潔にお願いいたしたいと思います。
  48. 原茂

    参考人(原茂君) われわれの要求は、この前の臨時国会で決議されました決議を実行してもらいたい、こういうのが現在の要求です。もちろんその一点は、石炭産業の地位と、こういう意味で五千五百万トンのワクの拡大をしろという拡大生産のことをいっております。もう一つは、何といっても職場の安定と保障がないのに首切りがどんどんされるというやり方、これは困ります。これも決議にちゃんとなっているわけですから、この決議を実行する具体的な措置をはっきりこの国会で明らかにしてもらいたい、こういうことの二つです。もう一つは、同じく決議の中にある炭鉱労働者には最低賃金が必要である、こういう決議をしておるわけですから、この最低賃金の確立を早期に促進をするという動きを政府あるいは国会全体としてやっていただきたい、要点はこの三つでございます。
  49. 吉田法晴

    吉田法晴君 舟橋さんの述べられました点、具体的に関連をしてもう少し伺いたいのですが、価格の横すべり、三百億の財政投融資、二割増産計画というお話がございましたが、五千五百万トンのワクをはずせというのは共通の要求ですし、われわれも考えておりますが、そうしますと、先ほどのそれじゃ増産をしたものをどこに使うかという点もございますし、三百億の財政投融資の何と申しますか、向け先、先ほど近代化、合理化のための資金に制約がある、そのワクを突破してもらいたいというのがちょっとございましたが、それから増産計画をする、もし五千五百万トンを突破して、六千万トンあるいは六千万トン以上になって参ります場合には、今論議がございましたけれども、電力について使用を政府で保障する等の策がなければなるまいと思いますが、お話のございました価格の横すべり、あるいは三百億の財政投融資あるいは増産の可能な能勢云々というのですが、その具体的な方策について御意見があれば、補足をお願いをいたしたいと思います。
  50. 舟橋要

    参考人(舟橋要君) 三百億ということは、実は三十七年度の計画のうちで、一千億近代化設備の予算を組んでおるわけであります。そのうち、自己資金で三分の一、市中銀行で三分の一、政府で三分の一、それが今年の予算を見ますると百億か八十億くらい、それじゃ予定どおり近代化ができない、したがって少なくも三百億以上のものにせよ、こういうことでございます。  それから、あとはどういうことですか。
  51. 吉田法晴

    吉田法晴君 ワクを破った場合の……。
  52. 舟橋要

    参考人(舟橋要君) これはワクを破るということよりか、これは抜本対策になるわけです。これが石炭全体の解決のかぎであろうと思うのです。これは五千五百万トンに押えるから失業者も出る、無理が出る、総合エネルギーの面から見て、石炭を三分の一使うとすれば、七千万トンないし八千万トン使い得るのだから、少なくも総合エネルギーの総量のうちの三分の一を石炭にする、これが国策できまりますれば、電力へ向けることが妥当なのか、あるいはその他に向けることが妥当なのか、おのずからきまってくる問題です。先ほどから電力問題に向けろということを吉武委員さんのほうからのお話、同感ですが、これは私どもだけで努力したのでは、今や努力にも限界が尽きてしまっている、圧力に屈せざるを得ません。そういう日本状態です。そういうようなことであるから、これはどうしても政治の場で解決していただきたい。それから電力のごときもこのままでいっていいかということは、国民の声として電力の再編成相当大きな声で叫ばれているわけです。そういうことから考えまして、少なくとも電力を再編成をしてでも国の政策を織り込まれた石炭の使い方をしていただきたい。したがいまして、五千五百万トンというものがまだあるならば、そこにこだわらずに、これを破っていけるのかどうか、これは議員さんでなければわからないが、私は修正することが可能であると考えておりますが、すみやかに修正をしていただきたい、こういうことをお願いいたします。
  53. 吉田法晴

    吉田法晴君 菊地さんに最後にお尋ねいたしたいのですが、石油業法との関連において総合エネルギー対策をきめてもらいたい、あるいはその具体的な方法として関連の総合開発計画を作ってもらいたい、こういうお話がありましたが、石油業法との関連というのはどういう御趣旨ですか。その点と、雇用促進公団で生活を保障してもらいたいというのは、国か雇用促進公団で全部血清の問題を引き受けて、具体的な生活保障あるいは仕事を保障するか、あるいは生活の転換をはかるにしてもその転換のあれを、責任を持ってもらいたい、こういう意味だったのか。その辺の、雇用促進公団で生活保障をしろという具体的な内容。もう一つ最後に言われました、ことに労働者世話活動を責任を持ってやるというのは、雇用促進公団あるいは政府の機関で、そういう機関をこしらえて世話をせよというのか。ちょっとはっきりいたしませんでしたが、その辺も具体的に構想、要望がありましたら承りたい。
  54. 菊地勇

    参考人(菊地勇君) 最初の問題ですが、この石油と電力を含む、石炭ももちろん入りますが、三者の総合エネルギー対策というのは今のところばらばらになっているわけですね。石炭のほうは今、舟橋さんからも言われたように、六千万トンをこえてもそれを国家で保障しろ、こういうふうな現実に追い込まれているわけですが、そうなるとまた先ほど吉武先生からお話があったように、油が安くなれば、経済原則でだれも安いほうを買うだろう。結局、それは問題になってくるのだろうかということが出ているわけですね。だから、石油の問題は、安い石油が大量に入ってくることについて、業界がそれをどういうふうに国内で消化するかということが中心になって、石油業法というものの業界の一貫した態勢整備を今急がれているのですけれども、それがただ急がれてくるということになれば、石炭との競争というものが必然的に倍加されてくる傾向があるわけです。だから、片やそういうふうな石油業法の主体性を確立する、石油業界のほうの態勢を整備するということがより強まってくるとすれば、引き取る側の電力と供給側の石炭という立場も加えた中で一緒にこの総合政策というものをこの機会に作ってもらわなければ産業政策としてばらばらの政策の立案になるのじゃないか。これを、どうせここまできたならば、一緒にして全体的なエネルギー政策というものを、できますればエネルギー総合省かなんか作ってもらって、この三つは完全に国家意思でひとつ運営していただくような、そういう方法を講じてもらいたい、こう思うわけです。  それから炭田別というのは、これは石炭は掘ればなくなるわけでありまして、今は深部に移行しておるわけです。だから小山とか、あるいは弱小資本の投入だけでは、いろいろな生産設備を要求される現在の要求に合うのには、なかなかむずかしい問題があるわけです。特に鉱区という問題がありますから、そこで筑豊なら筑豊を幾つかに区切る。北海道の炭田ならばそれを最も自然条件に合ったように幾つかに区切る。常磐地方ならばこれは一つぐらいでいいわけですが、そういうふうに炭田別に最も近代的な企業形態にできるようなシステムで衣がえをするようにしなければ、時代の要求に合っていかなくなるのじゃないか。そういうことを考究してもらいたい。それは石炭国家管理になるか、あるいは公社的な立場になるかということは、いろいろと本質的に問題があろうと思いますが、そういう抜本的な企業形態の変革と自然条件に対応する企業の近代化というものを進めるようにしなければ、根本的な解決にはならないのじゃないか、こういうことを申し上げたわけです。  それから三番目の、実際にいろいろな施策が講ぜられましても、現に数万に上る人が社会の落後者的な立場に追い込まれておるわけですから、それを救済するのには、新しくやろうとしても問題がありますから、たまたま炭鉱離職者援護会から雇用促進事業団に引き継がれておるわけでありまして、この雇用促進事業団を通じてこれらの救済をしていただくようにしたい、根本的には。これは雇用促進事業団というのが新しくできましたが、失業の問題は労働省職業安定所の窓口を通じなければ問題の解決にならなくなっておるわけです。ですから、ここでは窓口は一つのようでありますが、実際には救済の方法としては分裂しておるわけです。これをひとつ大綱的には一つにしていただくほかはない。だから、窓口は通さなくても雇用促進事業団に全部登録をしてもらって、その中で職業訓練の方法もやることになっておるわけですが、再就職する者と再就職しない者と区別していただいて、少なくとも再就職のできないような人については、雇用促進事業団が責任を持って一切のお世話活動できるように、現状の雇用促進事業団を直すようにしてもらわなければならないのじゃないか。実は私のほうとしては、失対事業との関係がありまして、今失対事業のほうは一般対策と緊急就労対策というものを区別して、労働条件に差があるわけです。だから、こういう差のあるものは一本に、平等に直してもらいたいという現地からの要求もあるわけです。私どものほうとしては、炭鉱からやめた離職者だけを、それぞれ親睦会的な組織を作りまして、つながりをもってお世話しているわけでありますが、そういうのが幾つかあるわけですが、それから再就職しましても、特にこれは筑豊炭田でありますが、筑豊から福岡に通うという方が非常に多いわけです。そういう方は交通費の保障がないわけです。だから、新しく厚生施設に対する融資を政府で決定していただいたわけですが、この新規の事業に就職する場合には、ある程度の通勤距離というものは、国の財政投融資によって何らかの保障をしてもらって、通勤の便をはかっていただきたいという声が筑豊地区から相当に強いわけでありまして、それと同じ理由はほかの産炭地にもあるわけです。だから、できますならば交通費の問題についても、ひとつあらためて新しい問題でありますが、政府として考慮をしてもらいたい。  それから先ほど申し上げましたように、実際に炭住に残っている人は、なかなか問題があるわけでありまして、だからその中で専任者をぜひとも作っていただいて、お世話活動の中心にしてもらう。それは即雇用促進事業団とつながっていくような形態にしていただきたいということを申し上げたわけでありまして、それができますならば、他面、総合政策石炭産業の近代化へのいろいろな配慮をしていただくと同時に、現在滞留しております人々の救済についてもそういう考慮をぜひともはらっていただきたい、両々相待ってやっていただきたいことをお願いしたわけです。
  55. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 速記をとめて。   〔速記中止
  56. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 速記をつけて。  参考人に対する質疑は、この程度で終わりたいと思います。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 御異議ないと認めます。  参考人の皆さんには、長時間この席においで願いまして、さぞかし御迷惑であったろうと存じます。しかしながら、それぞれ非常に貴重な御意見を伺うことができまして、当委員会の今後の本問題に対する審査に非常に役立っことと存じます、委員会を代表しまして、心から厚くお礼を申し上げます。   —————————————
  58. 高野一夫

    委員長高野一夫君) この際、委員の異動について報告いたします。  本日付をもって山本杉君が辞任され、泉山三六君が選任されました。   —————————————
  59. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 労働組合法の一部を改正する法律案及び労働基準法の一部を改正する法律案を議題といたします。  両案について、提案理由の説明を願います。村尾重雄君。
  60. 村尾重雄

    村尾重雄君 ただいま議題となりました労働組合法の一部を改正する法律案の提案理由を時間の関係上、ごく簡潔に説明いたしたいと存じます。  労働組合法において規定される労働委員会の制度は、中央労働委員会と地方労働委員会とに分かれておりますが、いずれも労使間の紛議の調整並びに不当労働行為の救済をつかさどる行政機関として、労働組合または労働者の利害に重大な影響を持つ制度であります。それがため労働委員会を構成する委員の選出については、労使委員については、それぞれその関係団体よりの推薦により、公益委員については、学識経験者中より労使委員の同意を経て、労働大臣または都道府県知事が任命することになっております。  現行労組法においては、労働組合労働者委員を推薦するためには労組法第二条並びに第五条第二項の規定に適合する旨の労働委員会の決定がなければならないことになっており、また、同法施行令によつて、これが推薦手続について二以上の都道府県にわたって組織を有する労働組合は、中央労働委員の、一つの都道府県の区域内のみに組織を有する労働組合の場合は地方労働委員の推薦手続に参与できることになっているのであります。したがって、現行法並びに同施行令によりますれば二つ以上の都道府県にわたって組織を有する労働組合が労働委員の推薦手続に参与できるのは、中央労働委員についてのみであって、都道府県に所在する当該単位組合の支部、分会等の組織は、当該都道府県の地方労働委員の推薦手続に参与できないことになっているのであります。ところが、現実には二以上の都道府県にわたる組織を有する単位労働組合の支部、分会等は、当該都道府県の労働運動に大きな影響力を備えており、当該都道府県の労使紛争の調整機能の上に及ぼす影響をも決して見のがすことはできないのであります。のみならず、不当労働行為の救済については、労組法第七条第一号の組合員個人の救済の場合、これら単位労働組合の支部、分会等が、事実上単位労働組合にかわって当該組合員の利益のための主張をする地位を有しているのであります。しかるに現行法によれば、これら単位組合の支部、分会等にあっては、その組織がいかほど大きくても、独立した労働組合でないとして、当該都道府県の地方労働委員の推薦手続に参与できないことになり、労働委員会制度の本質からいっても、また現実の労働行政の実施上からいっても、現実に即しない制度であるというべきであります。しかも、この現実に遊離した現行法のもとにおいては、すでに労働行政の実施に事実上障害を与え、同一の単位労働組合の規約でありながら、都道府県を異にすることによって労働委員会がその解釈を異にし、単位労働組合のいわゆる支部、分会等に対して資格あるものと認定するものあり、またこれに反する解釈をするものがあって法の運用に混乱を生じ、また労働組合は、この混乱を避けるため心ならずも二都道府県にわたる組織を有する労働組合は、形式上連合団体たる労働組合になす等の無理を来たしているのが現状であります。かくては、労働行政の正常な運営に障害を与え、また、本来労働組合が任意にその組織形態を選ぶべきに対して、地方労働委員の推薦手続に参与したいがため、あえて連合団体の形式を選ばなければならないということは、労組法の趣旨である自主的組織擁護の指導理念にも反するものといわなければなりません。ここに労組法の一部を改正してこれらの障害を排除し、もって労働行政の円滑な運用と、労組法の本来の趣旨である労働組合の自主的組織擁護の機運を育成しようとするものであります。  以上がこの法律案の提案理由及び大要であります。何とぞ、慎重審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。   —————————————  続きまして、ただいま議題となりました労働基準法の一部を改正する法律案について、その提案理由をごく簡潔に申し上げたいと思います。  労働基準法第六十二条第三項は深夜業禁止の例外規定として、交代制による女子の深夜労働について別段の規定を設けております。すなわち、交代制労働の場合において行政官庁の許可があれば労基法第六十二条第一項の規定にかかわらず午後十時三十分まで労働させ、または午後五時三十分から労働させることができるというのがそれであります。  この規定は、現行の八時間労働制のもとで労働者、この場合女子労働者を二交代制で労働させようとする場合に、労働基準法第三十四条によって労働時間の途中において、一交代ごとに四十五分の休憩を与えなければならない関係から、午後五時に始業した場合にその終業時間は午後十時三十分になり、したがって深夜業を禁止している労働基準法第六十二条第一項に違反する結果になるわけであります。すなわち、二交代制で八時間労働を行なわせようとすれば、どうしても午後十時以後午後十時三十分までの三十分間が必然的に深夜業にまたがるので、これについて例外措置を認めようというのが、同規定の趣旨であります。しかしこの点については、かりに深夜業を全般的に禁止するとすれば、労働時間の八時間制をくずすことになり、八時間制を固守すれば、深夜業にまたがるということで、そのいずれをとるかについて、立法当時から相当議論のあった点であります。結局、資本家、特に、二交代制によって、労働者を労働させている紡績資本家の圧力によって、この労基法第六十二条第三項が創設され女子労働者の深夜作業に対する例外を認める結果になったというのが過去の経緯であります。女子労働者について、深夜作業が弊害のあることは、すでに、世界の世論であり、一九一九年及び一九三四年のILO総会においてもこれが禁止のための条約案が採択され、前者については一九二一年六月十三日、後者については一九三六年十一月二十二日にそれぞれ発効し、今日においては、前者についでは五十二ヵ国、後者については三十六ヵ国が批准している現状であります。しかるに日本においては、いまだこれが両条約とも批准するに至っておりません。しかも、批准の障害をなしている最大原因は、この労基法第六十二条第三項の規定というべきであります。  また最近におけるわが国労働情勢を見た場合、労働者の労働条件は年ごとに改善が行なわれ、この女子の深夜労働の排除についても、その大部分が労使の間で解決を見ているところがあります。深夜労働の排除がこのような労使の自主的な話し合いによってその解決を見つつあることはきわめて喜ばしいことではありますが、この種の自主解決は、組織力のきわめて強いところにおいて初めて可能であり、これを全使用者に及ぼそうとすれば、現行法のような例外措置をこの際認めないこととする法改正がどうしても必要なのであります。深夜業の禁止は、今日すべての近代国家において採用されているところであり、わが国としても、これが実施に厳正を期すべきであると考えるものであります。  われわれは以上の趣旨に基づきこの際、労働基準法を改正して深夜業禁止の例外措置を排除し、もって女子労働の保護と国際的労働条件への接近をはかるべきであると考えるものであります。  以上がこの改正案を提出する理由であります。何とぞ、慎重審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  61. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 両案に対する質疑は、次回以後に譲りたいと思います。御異議ございますか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 高野一夫

    委員長高野一夫君) 御異議ないと認めます。  本日の審査はこれをもって終了いたしました。次回は来週火曜日午前十時から開会いたします。なお散会後、委員長理事打合会において、来週火曜日の委員会の件をきめまして、後刻連絡をいたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後一時十六分散会