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1962-04-12 第40回国会 参議院 外務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月十二日(木曜日)   午前十時四十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     井上 清一君    理事            青柳 秀夫君            鹿島守之助君            木内 四郎君            大和 与一君    委員            杉原 荒太君            永野  護君            堀木 鎌三君            加藤シヅエ君            佐多 忠隆君            羽生 三七君            森 元治郎君            佐藤 尚武君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    外 務 大 臣 小坂善太郎君    大 蔵 大 臣 水田三喜男君    国 務 大 臣 藤枝 泉介君   政府委員    法制局長官   林  修三君    総理府総務長官 小平 久雄君    総理府特別地域    連絡局長    大竹 民陟君    防衛政務次官  笹本 一雄君    防衛庁参事官  麻生  茂君    防衛庁防衛局長 海原  治君    外務政務次官  川村善八郎君    外務省アジア局    長       伊関佑二郎君    外務省アジア局    賠償部長    小田部謙一君    外務省アメリカ    局長      安藤 吉光君    外務省条約局長 中川  融君    大蔵省主計局次    長       谷村  裕君    運輸省船舶局長 藤野  淳君   事務局側    庶 務 部 長 小沢 俊郎君    常任委員会専門    員       結城司郎次君   説明員    外務省審議官  宇山  厚君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○日本国に対する戦後の経済援助の処  理に関する日本国アメリカ合衆国  との間の協定締結について承認を  求めるの件(内閣提出衆議院送  付) ○特別円問題の解決に関する日本国と  タイとの間の協定のある規定に代わ  る協定締結について承認を求める  の件(内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 井上清一

    委員長井上清一君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  日本国に対する戦後の経済援助処理に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、特別円問題の解決に関する日本国タイとの間の協定のある規定に代わる協定締結について承認を求めるの件、以上衆議院送付の両件を便宜一括議題にいたしたいと存じます。  両件につきましては、前回において小坂外務大臣から補足説明を承っておりますので、これより質疑に入りたいと存じます。  ただいま議題にいたしました両件につきまして、ガリオア・エロア返済協定につきましては来たる二十日、タイ特別円協定につきましては二十一日の両日にわたり、それぞれ参考人から意見を聴取することとし、その人数、人選等につきましては、これを委員長及び理事に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 井上清一

    委員長井上清一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  御質疑のおありの方は、順次御発言をお願いいたします。
  4. 大和与一

    大和与一君 今からガリ・タイの大事な問題審議に入るのですが、初めに委員長要望というか、しておきたいのは、参議院では、いわゆる参議院の良識というか、あらゆる問題について深く掘り下げて解明をしていきたいと思うのです。たとえば平和条約討議のときには、衆議院では委員会を九回やった。参議院では二十一回やっております。そういう前例もありますから、変なところで打ち切るとか、それから十分審議を尽くさないのに早目にやめるとか、そういうことのないように、十分ひとつ徹底的に審議をして国民に対して解明をする、こういう基本的な態度をお認めをいただきながら委員会運営を上手にやっていただきたい、こういうふうに思いますので、一応委員長の所見を承りたいと思います。
  5. 井上清一

    委員長井上清一君) 委員長からお答えを申し上げます。  御趣旨の点は十分拝承をいたしまして、今後十分留意いたしまして委員会運営をいたして参りたい、かように考えます。
  6. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ガリオア・エロア処理の問題あるいはタイ特別円処理の問題についての論議に入るわけでありますが、これらの問題は、たとえば将来返済されるであろう金額について、それを後進国開発援助のために向けたいというような意向があります。あるいはまた、特にタイに対して特別な政治的な配慮をもってこの処理をやられるというようなことを言っております。これらの問題から考えますと、東南アジアにおける政治的な状況、特によく言われておりますところの東南アジアにおける脅威緊張の問題、そういう問題が背景になってこれらの処理の問題が考えられておると思いますので、あわせて、本日の議題には国際情勢について論じるということになっておることにもかんがみまして、まずそれらの背景について質問を始めたいと思うのであります。  そこでまず第一にお伺いをしたい点は、極東における脅威とか緊張とかというような問題の内容でありますが、その内容を明瞭に説明をしていただきたい。そのために特に極東における東西両陣営兵力配備状況がどうなっておるかという問題をあわせて詳しく御説明を願いたいと思います。これは、したがってまず総理大臣に御説明を願って、さらに防衛庁長官に御説明を願いたいと思います。
  7. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 東南サジアにおきまする脅威緊張ということについての御質問でございまするが、まあ今問題になっているのはベトナムラオスの点とそれから西イリアン問題、またゴア、そうしてこれは緊張脅威まではいっておりませんが、インドパキスタン関係くらいのものと思います。最も注意を要しまする点は西イリアンの問題とベトナムラオス関係だと思います。この点につきましては、外務大臣より詳しく御説明することにいたします。
  8. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まずラオスの問題は、これは御承知のように、三殿下の間に会議が持たれております。大体中立系プーマ殿下中心内閣考えようということになっておりまするが、ブンウム殿下派ノサバン将軍をどう扱うかということでなかなか話がつきません。ジュネーヴにおきまして大体その大綱についての方向はきまっておりますので、小康を得ているということかと思います。  それからベトナムの問題でございますが、これはベトコンの侵略というものが非常に南ベトナム政府脅威になっておるということで、これの討伐ということを考えている。その要請によりまして、トンプソン・イギリス司令官がマライにおける共産側の追い出し、締め出しに成功したということで、この人が行ってそれをやっておるわけでありますが、アメリカテーラー大将も行っております。かなりこの南越の政府自身そのベトコン脅威に対して立ち向かう姿勢を強く示しておる。しかし一方において、そうした討伐の問題と並行して、農民に対してもっと収入をふやさせるような政策をとらねばならぬということで、いろいろな手だてが行なわれておるようでございます。一方、しかしこのゴ・ジンジエム政権に対する不信といいますか、そういうものも若干あるようであります。しかし先般行なわれました爆撃そのものは、これは個人的な一つの衝動的な爆発にすぎなかったというふうに見られておりまして、現在この点は平静になっております。  さらに西イリアンの問題でございますけれども、西イリアンの問題というのは国連で何回も議せられて、もう数年間議題になっておるわけでございますが、これは現在国連事務総長代理ウ・タント氏が中心になりまして、この問題について調停あっせんの労をとろうということになっております。しかしながら、一方ウ・タント以外の某方面においてこの調整をするということで、現在ワシントンの郊外におきまして話し合いが行なわれておる。しかし、この話し合い内容等については、これは一切極秘にされておるのでありますが、非常にそれがうまくいっているという説と、いやそうではない、非常に不安であるという説とございます。インドネシア側においてもこの正規軍を出すとかいうような問題もあるわけでございます。しかし、われわれあくまでこの問題は平和的な話し合いによる解決ということを考えておりまして、その点で双方——インドネシア側に対してもオランダ側に対してもその話をいたして、双方ともそれは非常にけっこうなことだ、どうしても話し合い解決しなければならぬということは言っておるのでありまするが、なかなかその話し合いが進まない、こういう状況でございます。
  9. 笹本一雄

    政府委員笹本一雄君) 日本周辺における各国の兵力状況等につきましては、資料によって差し上げましょうか、それとも、今防衛局長が来ておりますから、ここで説明させましょうか、どちらに……。
  10. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 一応説明して下さい。
  11. 海原治

    政府委員海原治君) ただいまお尋ねございました、わが国周辺の国々の現在の兵力保有状況を一応数字的に申し上げます。  まず極東米軍でございますが、これはハワイにおります部隊を除きまして約二個師団、五万二千人、海軍の第七艦隊百二十五隻、約五十万トン、海兵隊が一個師団、約二万四千人、空軍が、太平洋空軍といたしまして約千八百の勢力でございます。  それから中国——国府でございますが、これが陸軍が二十三個師団、約四十万、海軍が二百隻、十五万トン近いものであります。海兵隊が一個師と一個族団空軍が五百機。  さらにまた韓国が、陸軍が二十八個師団で約五十四万人、海軍が約七十隻で約五万トンの勢力でございます。さらに海兵隊が一個師ございます。空軍といたしましては三百機を持っております。  極東ソ軍兵力は、陸軍が約三十個師団、四十万人、海軍が約七百隻で約五十万トン、そのうち潜水艦が約百二十隻、空軍は約三千二百機。  中共でございますが、これは陸軍が約百十個師団、約二百五十万人、海軍が七百六十隻、十七万トン、空軍が約三千機。  北鮮は、陸軍が十八個師団、五個旅団、約四十五万五千人、海軍は百隻で一万七千トン、空軍が約九百九十機。  以上の勢力でございます。
  12. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の両陣営兵力配備状況でございますが、今後それがどういうふうに展開をするとお考えになるか、その点もお尋ねをしたいですが、特に、さらにアメリカは一体今の兵力配備前提にして極東戦略をどういうふうに考えているのか、したがって、その極東戦略に基づいて配備をどういうふうにやっているのか、特に沖繩中心にする配備状況をどうやっているのか、それらについて御説明願いたい。
  13. 笹本一雄

    政府委員笹本一雄君) 沖繩極東におけるところの平和維持のための拠点として米軍はこれを重視しまして、有力な兵力を保有するとともに、紛争発生の際は直ちに出動、紛争拡大を阻止すべく常に速戦の態勢をとりつつあるのでありまして、わがほうで知る範囲におけるところの配置その他につきましては、防衛局長からひとつ御説明いたします。
  14. 海原治

    政府委員海原治君) まずただいまお尋ねのございました現在の配備状況、将来の見通しというようなことでございますが、これは私どもがここ数年間に観察しておりますところでは、先ほど申し上げました両陣営兵力、その数につきましては、たいした変化はないように思います。今後はそれぞれの持っております装備というものが逐次近代的なものに改善されていくということではないかと推察いたします。一例を申し上げますと、先ほど申し上げましたそれぞれの陣営の航空機の数は変わりませんけれども、その持っております戦闘機であるとか、あるいは爆撃機というものが、それぞれ新しいものに置きかわっていくということでございまして、したがいまして、これを簡単に総括いたしますというと、兵力数といたしましてはたいした変化はない、場合によっては、むしろこれは減っていく傾向にあるかもしれない、しかし、その持っております装備というものは最も近代的なものに置きかわって参りますので、戦力的ないろいろ判断をいたしますというと、むしろ量より質ということで、双方の力が増強されていくんじゃないかという観察が実はございます。  沖繩の問題でございますが、これは現在陸軍関係部隊といたしましては、第二空挺戦闘団を主体といたします部隊がおりまして、そのほかにナイキ、ホーク等いわゆるミサイル部隊が駐屯いたしております。  海軍関係部隊といたしましては、第七艦隊指揮下にございます第三海兵師団が駐屯いたしております。  空軍関係部隊といたしましては、第五空軍指揮下にございますもので第三百十三師団という師団が一つございます。  これらの部隊中心となりまして——そのそれぞれの部隊を支援いたします関係部隊も駐屯いたしております。  その総兵力につきましては、これは公表されておりません。しかし新聞、雑誌等の推察するところによりますと、約四万ないし五万程度のものではないかということが報道されておりますが、これはあくまで推定のものでありまして、公表の数字はございません。
  15. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今のような極東における戦略配備あるいは戦力配備、あるいは特に沖繩における兵力配備、そういう問題を前提にしてそういう現実の問題の状況考えるときに、一体沖繩戦略的意義、価値、そういうものを総理はどういうふうに見ておられるか、その点を御説明願いたい。
  16. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 軍事専門家でございませんので、お気に入るような答弁はできないかもしれませんが、少なくとも東南アジアの平和の確保のために、私は米軍にとりまして重要な拠点であると考えているのであります。もちろん第七艦隊は、フィリピンその他に本拠を置いていろいろやっておりますが、沖繩の地位は、極東における平和維持のための最も重要な地点であると、アメリカ考えてやっているようであります。
  17. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今その沖繩における兵力配備の問題、あるいはさらに戦略的な意義いかんというような問題は、先ほどお話しのあった国際緊張の問題、特にベトナムのいろいろな動乱の問題との関連、それからこれは国際緊張の問題として御説明はなかったのですが、やはりあなた方があげておられる問題としては南北朝鮮の問題があるだろうと思いますが、それらに関連をして沖繩戦略的意義という問題が論ぜられてくるし、したがって、そういうことに即して兵力配備の問題をもう少し検討しなければならないと思いますが、これは防衛庁長官が見えましてから、もう少し詳しくいろいろ論議をしてみたいと思っておりますが、長官こっちへ見えますか。
  18. 笹本一雄

    政府委員笹本一雄君) 長官衆議院決算委員会のほうに行っておりますので、後刻こちらに来ることになっております。
  19. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それでは、それの問題はなお長官が見えましてから、後刻さらに詳しくいろいろお尋ねをすることにしまして、次には総理にお伺いをしたいのですが、沖繩の問題であります。  沖繩の問題について、まずお尋ねをしたいのは、沖繩施政権返還の問題でありますが、これは申し上げるまでもなく、沖繩住民が非常に熾烈な願いとして要求をし続けてきている、また日本国民もこれを要望をしている、そうして国会においてしばしばその決議をいたしております。特に本国会においても決議をしている。それに対して池田首相も、その期待に沿うように善処するということを言っておられますけれども、これまでの行動その他から見ると、ほとんどその努力を具体的にしておられないとしかわれわれには思えないのであります。この点について池田総理はどうお考えになっておるか。これまでそれをどういうふうに主張してこられたか。特にアメリカとの関係においてどういう要求、主張をされ、どういう返事をとっておられるのか、それらの点を詳しく御説明を願いたい。
  20. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国民沖繩施政権返還要望しており、われわれは熱望いたしておるのでございます。で、私が内閣を組織いたします以前からも、歴代の総理大臣あるいは外務大臣は強く機会あるごとにこれを要求いたしております。私といたしましても、昨年来ケネディとの会見を主といたしまして、施政権返還要求は強くやっておるのでございます。しかし、何分にもアメリカといたしましては、先ほど申し上げましたごとく、極東平和維持のため軍事基地がぜひ必要であるという考え方が強いようでございます。私といたしましては返還要求すると同時に、それまでにおきましても、沖繩島民の気持と、そうしていわゆる自治権拡大、福祉の安定向上のために努むべき筋合いでございますので、片一方では強く要求すると同時に、こういう民生安定、自治拡大措置をとるよう、これまた強く要望し、先般ケネディ声明によりまして、私はある程度われわれの要望が実現したと考えております。  なお返還につきましての今までのことについては、外務大臣よりお答えいたします。
  21. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この返還問題につきましては、岸総理が、アイゼンハワー大統領との共同声明に出ておりまするように、あのとき以来特に強くこの問題を取り上げまして、その後藤山前外相、また私も参りましたときにハーター前長官との間に、今度総理が昨年行かれましてケネディ大統領との間にこの話をされ、私もラスク長官との間に話をしたというような工合で、いろいろ交渉いたしております。ただいま総理が言われましたように、この平和条約には第三条におきまして、この沖繩国連信託統治にするということになっておるわけでございます。しかしそれに至らざる問はこの三権をアメリカ施政のもとにおくということになっておるのでございまするけれども、今度の大統領声明におきましては、はっきりと沖繩日本の領土であるのだということを確認して、日本施政のもとに至るまでの間、またその施政に至る時期を非常に円滑にいたしまするために特にこれこれの措置をとりたいということを声明いたしておるのでありまして、この点はお言葉でございましたけれども、池田総理努力が非常に大きくこの問題を前進さしたということになると思うのであります。やはり、こうした問題は一挙にはいかぬ問題でございまして、非常にわれわれ精力的にそれに近づくべく今後も努力を続けたいと考えておりますが、従来までのところ、池田総理努力は相当な効果を奏している、かように考えていただいてけっこうだと思うのであります。
  22. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 池田総理努力が相当に実りつつあるというお話でありますが、私たちの見るところによると、どうも池田総理なりさらに日本政府は、この問題について真剣に積極的な要求をしておられるとは思えないのであります。  もう少しそれじゃ聞きますが、小刻みに聞いて参りますが、今もお話がありましたが、三十二年になりますか、岸それからアイゼンハワー大統領岸総理アイゼンハワー大統領との会談のときにはこの問題はどういうふうにやりとりがなされたのか。どの程度その点についての話し合いがなされたのか。その点を御説明願いたいと思います。
  23. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 岸総理はこの沖繩小笠原に対する施政権返還要求をされた。しかし、先方はこれに応じられないということが共同声明趣旨であったと思います。しかし、日本の立場というものについては十分了承するというようなお話があったようにわれわれ承知をいたしておるのであります。このたびの池田総理の際には、その潜在主権を持つ日本施政権を持つアメリカという言葉がはっきりうたわれておるのでありまして、この点共同声明の際にも一歩進んだのでありますが、今般これがさらに、先ほど申し上げましたように、前進して、平和条約第三条の規定にかかわらず、はっきりとアメリカは、沖繩日本国土の一部であるということを認めて参った。かような経緯であります。
  24. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 岸・アイク会談のときには、岸総理施政権日本への返還について日本国民の強い希望を強調をしておる。これは会談論議に、討議に上せられるに至らないで、ただ日本国民の強い希望を表明したにとどまっているというふうな状況であったのじゃないかと思うのです。これに対してアイゼンハワー大統領は、日本潜在主権を再確認をする、これは再確認をするけれども、極東における脅威緊張の状態が存在する以上は、アメリカ沖繩現状を維持する以外にないのだと言って、返還の問題は軽く拒否をしている。これがその当時の実情であったと思うのです。ところが、そういう状況であったのに、次の昨年ですか、昨年の池田総理ケネディ大統領との会談においては、この問題がむしろほとんど落とされている。施政権返還の問題としては何ら論議がなされていない。これはもう全然背後にひそんでしまって、先ほど言われた経済協力その他の問題だけが論ぜられている。こういうふうにしか思えないのですが、その点は池田総理どういうふうにお考えになるか。
  25. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 表に施政権返還がはっきり現われたのは、もちろん以前にもわれわれ要求しておりましたが、岸・アイゼンハワー会談からでございます。で、その後機会あるごとに私は言っておるのであります。もちろんケネディ大統領との会談におきましても、沖繩施政権返還の問題は重要な問題で、それを前提といたしまして、いろいろ論議をしたのであります。私はあの声明のとき、沖繩施政権返還問題を議論したということはもう通り過ぎておると思います。これはもう声明前の問題だ、絶対に譲れない問題だということで、そうして返還までの問題を論議してその結果を共同声明に出したのであります。沖繩返還があの共同声明に出ていないから、それを折れというようなことは絶対にございません。また今回のケネディ声明を見ましても、将来返すということを前提として措置しておることは、昨年六月の二人間の話の私は結果を考えておるのであります。
  26. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうも前提の問題として問題を考えておると言いながら、問題はたな上げされてしまって何ら触れられていないというのが実情としか思えないのですが、この問題についてはなお後ほど、今度のケネディ沖繩に対する新声明関連してさらにお尋ねをしたいと思いますが、その前に、返還要求はたびたびしたと言われておりますが、同時に、アメリカ側からはそのたびごとにいつも拒否をされ続けておるというのが現状じゃないかと思いますが、その点について過去から現在に至るまで、アメリカがどういう態度をとっておるかということをもう少し詳しく順序を追って御説明願いたいと思います。特に私がまず第一に聞きたいのは、奄美大島返還協定をやりましたときに、この交渉の際にもこの問題が出たと思うのですが、このときには、この返還の問題をどういうふうに扱われたか、どういう結果になったか、その点をまず御説明願いたい。
  27. 中川融

    政府委員中川融君) まず第一と申しますか、奄美大島返還の際の交渉経緯を御説明申し上げますが、そのときはもちろん、その当時——講和条約のときから沖繩全島を一日も早く日本の完全な施政権のもとに返してもらいたいということを要求していたのでありますが、その当時アメリカ政府は、日本側要望は了とするけれども、やはり国際緊張の継続する間は沖繩全島返還は困難であるということを言っていたのでありますが、奄美大島につきましては、特に日本要望にこたえる意味でこれを返還しようということになりまして、奄美につきましては御承知のような協定ができたのであります。それ以外の部分については、極東国際緊張が継続する間はやはり返せないのだということをやはり言っておったのがそのときの経緯でございます。
  28. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 沖繩小笠原施政権返還に対してアメリカとの交渉経緯ということについて少し申し上げますが、昭和二十七年以後、たびたびこれに対して交渉を行なっておるのであります。昭和二十八年八月新木駐米大使がダレス国務長官と会見しました際に返還要求いたしております。それから昭和二十九年二月岡崎外務大臣がアリソン・アメリカ大使と会談の際、沖繩小笠原返還に対する国会決議並びに現地住民の要望に言及いたしまして、アメリカ政府の配慮を要望しております。昭和二十九年十一月ワシントン訪問した吉田総理大臣一行とアメリカ側との会談によりまして、この問題について要望いたしております。それから昭和三十二年六月岸総理大臣が訪米の際、アイゼンハワー米大統領との会談におきましてこの問題を要望いたしております。さらにダレス国務長官との間にやはり同様のことを岸総理大臣要望いたしております。昭和三十二年九月藤山当時の外務大臣がダレス国務長官との会談において同様の要望をいたしております。昭和三十五年九月私が訪米の際に、ハーター国務長官に同様に要望いたしております。昭和三十六年六月池田総理大臣訪米の際、ケネディ大統領との会談においてこの問題を強く要望いたしているのであります。またその後に、私もラスク国務長官との間に同じように強く要望いたしているというような経緯であります。
  29. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今お話しのとおりに一応しばしば要求しておられるように思いますが、その要求に対してアメリカ側はどういう態度をとってきたのか、特にこの返還要求に対してどういう態度を変えてきているのか、そうでなくて、ほとんど変えないで終始一貫して要求拒否し続けてきているのか、その辺はどういうふうにお考えになるのです。
  30. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 結論的には変わりないのでありますが、この過程におきまして、だんだん日本側要望というものに対して非常に深く配慮をするようになっているというのが実情だと思います。しかしながら、やはり極東における脅威緊張の続く現状においては沖繩施政権日本に返すということは困難であるという結論は一つでございますが、その間におきまして、わがほうの要望に対する先方の理解の仕方が著しく進められてきている、これは言うまでもないことだと思いますが、私どもさように感じております。
  31. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 アメリカ側は、この日本返還要求についてはいつも拒否し続けている、そうしてその態度は今度の新政策においてもほとんど変わっていないのじゃないかというふうに思いますが、たとえば、まずダレスが言っているのは、共産主義の侵略の脅威から自由諸国の自由と安全を保障するためには沖繩軍事基地が絶対に必要だし、そういう点から沖繩施政権は持ち続けるのだということを明瞭に言っていると思う。それからまたアイゼンハワー大統領沖繩の基地は無期限に保持するのだということをはっきり予算教書あるいは一般教書でしばしば繰り返し述べているのです。そういうふうに半永久的に沖繩施政権は返せないのだというのがアメリカ考え方であり、この考え方は今度の新政策においても少しも変わっていないのじゃないかと私たちは見ているのですが、その点は政府のほうでは、総理はどういうように見ておられますか。
  32. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 半永久的にという言葉の問題でございますが、私は今までの沖繩に対するアメリカ態度はある程度変わってきた、今回のケネディ大統領声明にもありますごとく、今までは返せないということだけだったが、今度は将来返す場合のことも考えるということは、私は非常な前進だと考えておるのであります。ただ極東の情勢いかんによってそれがきまるのだと、返すということを前提にして声明が行なわれたということは、非常な私は前進だと考えておるのであります。
  33. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 新政策が非常な前進であるというふうに判断をしておられるのですが、この点はなおさらにいろいろお尋ねをした上で、どうもそうでないのじゃないかというふうに考えられますので、その点はあとで論議をいたしますが、現在の状態として、少なくとも緊張脅威がある限りは、沖繩軍事基地を保持し、したがって施政権を持ち続けることは絶対に必要なんだということを繰り返しアメリカが主張していることは、これは政府も否定はされないだろうと思う。そこで、そういう向こうの主張を前提にして、向こう側の解釈によると、池田ケネディ会談を通じて、池田首相沖繩施政権極東緊張緩和が実現するまでアメリカの手に置くことに同意している、こういうことをキャラウエー高等弁務官は二月二十八日の新聞記者会見で言っておるようでありますが、このように池田総理考えておられるのかどうか、その点をお尋ねしたいと思います。
  34. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) キャラウエー高等弁務官の声明は、私は読んでおりません。しこうしてケネディ大統領に、沖繩における施政権アメリカが持つことに同意する、こういうことはもうきまっていることなんでございます。平和条約第三条から申しますると、国連信託統治になるので、アメリカ施政権を持つということはわれわれは承知している、承諾しておるのです、条約的にいえば。しかし、日本施政権があることも、当時米英の全権がこれを認めております、潜在主権があるということを認めておる。われわれはこれをたてにとりまして、早く返してくれと、こう言っておるのであります。返してくれということは、アメリカ平和条約によって施政権を施行しているこの事実を認めておる。認めないとは言えない。その事実は認めますが、われわれは日本国民の悲願としてこれを早く返してくれということを常に言っておるのであります。だから、向こうは同意した。私はこの問題で、持つことに同意しますとは言っておりません。ただ、平和条約の事実からいって、そうして今の現状からいって、私は早く返してくれということと、そうして今返せなければ、沖繩同胞のためできるだけの措置をとるべきじゃないかということを言っておるのでございます。同意したという言葉は使っておりません。私は平和条約第三条からいって、アメリカ施政権を持つということを認めておる。これはもうすでに日本としては同意しておる。しかし、それを変えようとして努力しておるのであります。だから、私が同意したという事実はございません。ただ、前提平和条約第三条から来ておるのであります。
  35. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ただいまのキャラウェー発言というものは、声明ではなくて、これは記者団の人員に変動があったので、新しい人の便宜のためにブリーフィングをしたということでありまして、ただいま佐多委員のおっしゃったようなことは、その中で言っておりません。ここで言っておりますのは、岸総理とアイゼンハワー前大統領との共同声明中、大統領の発言として述べられた、その文言を引いたということでございます。全文は予算委員会でも佐多委員のお手元に配付いたしてあると思いますので、その点はひとつそういう誤解のないようにしていただきたいと思います。
  36. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 総理の言われる、現実の現状として施政権アメリカにあるということは、これは現実の状態としての認識からも、あるいは平和条約を受諾した以上、それを容認をしておるということは総理のおっしゃるとおりに当然でしょう。しかし問題は、現実の事実としてそれを認識をし、あるいは容認をするという問題でなくて、将来の状態としてもそれを容認をしておるということが問題です。で、外務大臣は、そういうことはキャラウエー自身も言っておらないとおっしゃいましたけれども、あなたがわれわれに下さったこの新聞記者会見の発言を見ると、明らかにこういうことを言っておる。「琉球に対するアメリカの政策は多年にわたって一貫しております。アイゼンハワー大統領が行なったアメリカは琉球列島における日本の潜在的な利益を認めつつも、極東において脅威緊張の状態が続く限り現在の地位を保持し続けるであろう」との声明をしております。この政策は一九六一年六月の池田ケネディ会談の際再び主張されて、それを総理も了承をされた……それは了承しておらないのですか、それじゃ総理は。
  37. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは先ほどの総理のお答えで十分だと思いますけれども、キャラウェー発言を引いての発言ですから、その部分に関してお答えいたしますが、この前段にお述べになりましたのは、そのとおりでございます。そこで、ジス・ポリシーですね、この政策は、ウオズ・リアファームド・イン・ザ・イケダ=ケネディ・トークス・イン・ジューン・一九六一、このリアファームドということはコンファームということではないか、確認されたということではないかということで、先般も予算委員会でその話がございました。私はコンファームということとリアファームということと違うのだということを申し上げた。これは英語の解釈上当然そういうことだと思います。それはリアファーム、再び主張されたということであります。これをケネディが主張した、こういうふうに読むのが当然であろうと思います。あとの池田総理の承諾した云々ということは、ここに書いてございません。
  38. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、池田総理お尋ねをしますが、そのようにケネディがさらに再強調をした場合に、池田総理はそれに対してどういう見解を述べ、どういう主張をされたか伺いたい。
  39. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど申し上げたとおりでございます。われわれとしてはあくまで施政権返還要求し続けます。
  40. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 この、あくまで要求し続けるという希望を強力に主張をされたにかかわらず、それが共同声明に出ていない。前の共同声明のときにはそれがちゃんと記録されておるのに、今度の共同声明のときにはそれが記録されていないで、共同声明からはそれが消えてしまっておる。そうしてそのかわりに、ただ、沖繩住民の福祉増進が強調された、こういうふうになっておると思うのですが、それの共同声明から考えると、どうも伝えられるように、そうして当時新聞でいろいろ書かれましたように、もはや施政権返還の問題は何ら主張もしないし、強調もしなかったのだ、そうして、むしろ沖繩施政権を、極東緊張緩和が実現するまでは、アメリカの手に置くことを承認したのだ、同意したのだというふうに解釈されておる、その解釈が正しいとしかわれわれには思えないのですが、その点はどうなんですか。
  41. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど来お答えしたとおりでございます。私は、平和条約の点、そうして向こうが返さないというとき、こちらはあくまでこれを主張した、こういうことは、もう特に取り上げるまでのことでない。それを池田が主張しなかったとか、確認したとか言うことは、私は日本のためにならぬと考えます。私ははっきり事実を言っておるのでございます。それを日本人が、日本人のある者が、池田はこれを認めたんだとか、受諾したんだとか言うことは、私は、将来の沖繩問題に役に立たない、害になるということをはっきり申し上げておきます。
  42. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうも主張されたということが、さらに、記録されることが、害になるかどうか。私はむしろその反対で、もしほんとうに主張し続けられるならば、それが共同声明にも二度でも繰り返されて記録をされることが将来への希望を残すことになると思うのですが、この点は意見の相違になりましょうから、これ以上申し上げませんが、それならば、今度の新たに提示されたアメリカ沖繩新政策、これは今の施政権の問題をどういうふうに考えているとお考えになっておるか。沖繩日本本土の一部であるというふうな文句がまずうたわれておりますが、この点からすると、沖繩における領土主権は、これまでは、むしろある意味においては未確定状態であった、それが今度の声明によって、はっきり沖繩の主権は日本にあるんだということが明瞭にされた、確認をされたというふうに考えていいかどうか、これが第一点。  それからこれに関連をして、そういうふうにアメリカか、沖繩日本本土の一部であると確認をする以上、次のことが明瞭になったと考えていいかどうか。アメリカは、沖繩アメリカの領土として編入する考えは毛頭持っていない。それから、アメリカが今、現に持っておるところの施政権日本以外のどこの国へも移譲するという考えはない。  それから第三には、アメリカ沖繩国連信託統治に置く考えはないということを、今度の新声明で明瞭に言ったというふうに解釈をしていいかどうか。この点はこれまでいろいろ疑問に思われており、いろいろと論議をされた点であると思いますが、この点をはっきり、信託統治にはしないんだということをあの声明は言ったものとわれわれは考えておいていいかどうか。これらの点についてどうお考えになるか。総理並びに外務大臣の御答弁を願います。
  43. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 佐多さんは、私がケネディ大統領との会見のとき、施政権返還を言わなかったんだろうと、こういうふうなことを想像されるが、先ほど答えたとおり、そういうことを言っているからこそ、その後において沖繩実情を調査して、そうして琉球が日本の本土の一部であることを認めると、これは画期的なことではございますまいか。今までこういうことを言っておりません。琉球は日本の本土の一部であるということを言っておる。これは私の言うことを聞いてくれたからこういうことになったと思うのであります。そうしてまた、琉球諸島が日本施政下に復帰することになる場合の混乱を除去するため、琉球諸島が日本施政下に復帰することになる場合の混乱を最も少なくするため幾つかの措置をとる、こう言っておる。今までこういうことはなかった。だから私は、あまりに邪推をせずに、アメリカ日本の言うことをよく聞いてそして日本の本土の一部であることを確認をし、そうして沖繩日本施政下に帰ることを前提にしておることは、私が昨年強く主張したことの答えであると私はとるべぎだと思います。これははっきり私は申し上げておきます。そうして、このことからいって、米国が琉球を自分で——いつまでも永久に持とう、自分の国にしようという気持がないことは、この声明ではっきりしておるじゃございませんか。  第二に、第三国に譲る。何の根拠があってできるのですか。そんなことは、想像することだにおかしな問題だと思います。  だから、第一の点と第二の点は、絶対にそういうことはあり得ないことです。この声明でわかります。平和条約でわかります。  第三の、信託統治を続けるかという問題、これは平和条約第三条にあります。しかし、三条にありますが、これは先ほど話題になりました奄美大島信託統治——一応平和条約になかったのを、アメリカが独自の考えで返してくれた。そうして平和条約調印国もこれに、この措置について何ら異議を言っていない。こういうことは、私は、将来われわれとしてはっきりしておかなければならない。そこで、私が今総理大臣として、平和条約第三条はだめになるのだということは言えません。言えませんが、奄美大局の例から考えても、私は、アメリカ信託統治にせずに、平和条約第三条の奄美大島日本に無条件で譲ってくれた、この事実を頭に置くべきだと思います。しかも、今申し上げました今回のケネディ声明考えますと、私は個人的考えとして、アメリカ信託統治にするという気持はないものと想像いたしております。そう考えておるのであります。
  44. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 アメリカ沖繩信託統治にする考えはないことを、日本本土の一部であるということを確認をしたことを通じて、これは裏からそう言っておるのだというふうに解釈することは間違いでない、それから総理自身も、個人的な意見としてそういうふうに考える、こういうふうにおっしゃるのであるならば、アメリカ側は、国連信託統治にしない以上は、その前提がなくなった以上は、施政権返還は当然に行なわれなければならない、こういうふうにそこから結論をしなければならない、こういうふうに思うのです。そうでなくて、信託統治にすることをすでに放棄することを裏から声明をしておりながら、なおかつ、施政権を返さないということになれば、これこそ、今度こそ、国連憲章違反になるというふうに思いますが、この点は、総理外務大臣、どういうふうに考えられますか。
  45. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) このケネディ声明は、今まで講和条約の際に言われました潜在主権、これはダレス全権ヤンガー全権によって言われた言葉でありますが、これを単に抽象的な、あるいは理念的なものとして扱うのでなくて、具体的に、また積極的に日本国との関連において扱っていく、こういうことを示したものであると思うのであります。したがいまして、この声明関係から、それでは直ちに日本に復帰させなければ、日本施政権を返さなければ、国連憲章違反になるというようなことは出てこないと言わざるを得ないのであります。
  46. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 時期的に直ちに返す云々という問題にひっかかるわけですが、かりに直ちに返さないにしても、施政権返還をするのだ、それで、いつ返還をし、返還に対してはどういうスケジュールで、どういう施策を整えながらやらなければならないのだということを、それならば、ここで協議をし明瞭にすべきが当然であると思うのですが、今度の新政策にはそういうことは何らうたわれていないで、依然として、施政権は半永久的に保持するのだ、施政権の問題については何ら意向を表明をしていないとしか思えないのですが、したがって、そういう意味においては、池田総理、しばしば自分の意見をいれられたと言われるけれども、経済協力その他の問題についてはなるほど若干いれられているかもしれないが——その問題はあとでさらに論議したいと思いますが、それらは若干いれられておるかもしれませんが、しかし、施政権返還に関する限りは、完全にたな上げをされているとしか思えないんですが、その点は総理なり外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  47. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 総理もお答えになりましたように、この沖繩日本施政下に復帰する日に備えて、その復帰を円滑ならしむるためにこれこれの措置をとるということでございますから、これが一番実質的には大きな問題だと思うのであります。で、どういうスケジュールでと言われまするけれども、これは極東脅威あるいは緊張というものが緩和されるときに返すというのでございますから、そのときに備えましてわがほうの協力を十分歓迎して、日米相協議しつつこの沖繩におけるわが同胞の状態をよくしていこう、こういうことでございますから、これはわれわれとしても今までと比べて非常な躍進であって、大いに歓迎すべきアメリカ側態度である、それに大いに協力し、話し合っていくという考えでおりますわけです。
  48. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうも非常に寛容と忍耐の態度で接しておられるようだが、それだけにどうもたな上げしちゃって、その問題には本格的に触れておらないという感じしかしないんです。たとえば、それじゃもう一ぺん聞きますが、この池田ケネディ会談において沖繩問題については八項目を掲げて論議をされたんだ、それ以上の何ものでもなかったと言われておるんですが、そのときに論議された八項目はどういう内容のものだったんですか。
  49. 小坂善太郎

  50. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 共同声明内容でなくて、共同声明が出される前に論議をされたときに……。
  51. 中川融

    政府委員中川融君) 総理アメリカに行かれました際、沖繩問題について七項目でありましたか、あるいはもっと多い項目でありましたか、数は忘れましたが、沖繩についてあらゆる現下の問題につきまして詳細な準備をいたしまして、それで先方との総理交渉されるにあたりましてのいろいろな準備をいたしました。現実に総理が行かれました際にも、大体それに基づいて話し合いがされたのであります。これは今の施政権返還という根本問題から、日本側の一部行政権と申しますか、従来から言われておりましたような沖繩住民の福祉の問題、あるいはそれ以外の法的ないろいろ地位の問題、こういう問題につきまして、できるだけ日本政府の意向を聞き、もしできれば、さらに日本の行政権が現地に一部でも及ぶように、こういう趣旨から、従来からずっとアメリカとの間に交渉されておりましたような項目について準備いたし、またそれについて総理から大局的なお話があったわけでございます。別に従来と変わりました新しい項目を特に取り上げたということではございません。
  52. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その項目を、もっと具体的に明瞭にしてほしいと思います。
  53. 宇山厚

    説明員(宇山厚君) その項目は、先ほど来御答弁がありましたような原則に沿いまして、それを大前提といたしまして、事務的に項目に分けて申し上げますと、自治権拡大、それから国旗の掲揚、経済開発、それから民生福祉の水準の向上、それから教育内容の充実、労働者の地位の向上、それから裁判権の問題、日本旅券の現地発給、そういうふうに大体まとめることができるかと思いますが、それぞれの問題につきまして、またいろいろこまかく述べられたわけでございます。
  54. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうも施政権返還の問題等は、大前提として七項目について論議をされたと、こういうことになっているのです。今お話を聞いて大体わかりますように、伝えられているところのその討議内容は、琉球の祝祭日に日章旗を掲げること、それから日本の教育指導主事の琉球派遣と、琉球の教育指導主事に相当する者の来日講習、それから布告改正による労働組合役員の審査権の緩和、それから琉球住民の民生福祉増進のための日本援助の増大、それから裁判権の問題、旅券の問題等々と伝えられるのですが、事務当局に御質問をする場合には、そういう点をもっと具体的に明瞭に御説明を願いたいと思いますが、それらの問題を通じて見ると、自治権拡大の問題、特に施政権返還の問題というような問題には何ら触れないで、これはただ大前提の問題として、総理が述べられたのは今あげたような具体的な問題そういう問題にすぎなかったというふうに言われている。これらの問題はむしろ総理が出さるべき問題ではなくて、外務大臣なり、あるいは外務大臣自身ですら出されるには恥ずかしいくらいの問題だと思う。もっと大所高所からの会談論議がなされてしかるべきだと思うのですが、どうもこれらを通じて考えると、そういうことが何ら論議をされてないというふうに思えるのですが、それらの点はどうだったのですか、池田総理なり外務大臣に御答弁を願います。
  55. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 施政権返還要求ということは、これはもう強く言うわけです、また言っておるわけです。これは、それだけやってきて、あと何にもしないということでは、かえって沖繩同胞のために不利になりましょう。向こうは返せないと言ってそれでおしまいで、これだけ言ってきたのだというのじゃ、これは沖繩同胞のために真に交渉したということにならぬので、むしろ向こうは現状においては返せないということであるならば、返せと言ってもぎ取るわけにもいかず、われわれ条約でこのことを承認しておるわけでありますから……。しからば、この段階において返すという日の一日も早いことを望むという前提のもとにおいて、しからば現段階において、それじゃこういう点、こういう点を改善してもらいたい、こういうことを言うことは、これはもう当然のことでございまして、それをやらなければ、かえって職務渋滞になる、私はさように思うのであります。どうかひとつ佐多さんも、立場の違うことは私もよくわかっておりますけれども、われわれの立場で考えてごらん下さいまして、この点についてはそれだけのことを言ってきておればこれは完璧である、こう思うのでありますが、いかがでございましょうか。それでむしろこれが今回実りまして、これから日米間の交渉が持たれるわけなんでございますが、そういう点についてさらにわれわれは深く強くこの問題の解決にあずかっていきたい、かように思っておるわけであります。
  56. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 現段階の問題を具体的に論議をするということは、調子の低い、手続的な問題を出して、それで話をしてくればいいという問題ではないのであります。今あなた方が言われておる八項目というようなものを、非常に調子の低い、手続的な措置の問題にすぎない問題を現段階に限って具体的に論議をするということは、格調の高いことを非常に希望しておらるる池田総理であるならば、施政権返還の問題は、緊張の緩和なり脅威をどうするかという問題に関連しての議論で、現在の段階においてこういう緊張がある、こういう脅威がある、これを除くにはどうするか、それを具体的に論議をする、これが問題の具体的な論議の仕方であり、そしてまた総理と大統領との会談にふさわしい具体的な問題の処理の仕方なんだ。格調の高いことを非常に強調し、希望をされる総理としては、そういう態度施政権返還の問題を論議されてしかるべきだったと思うし、今後もそういう態度でさるべきだと思うのですが、その点を総理なり外務大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。
  57. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 格調の高い論議も必要でございましょう。しかし、格調の高い論議だけをして帰ってくる、そうしてこれが日本のため、沖繩同胞のためになるかどうかということもお考え願いたいと思います。外務大臣の言うとおりであります。たとえば、国旗の問題にいたしましても、われわれは数年間国旗の掲揚を要求してきたわけでございます。要求してきたわけでございます。なかなか聞きません。しかも、今度外務大臣と私参りまして、国旗の問題をまた出しました。これは非常にささいなことで、お笑いになるかもわかりませんが、沖繩同胞として見れば、祝祭日に官庁、学校等に国旗を掲揚するということは、非常に熱望しておるのでございます。しかもこの国旗の掲揚も、外務大臣とラスクの間では、正月の三日間だけの掲揚を許されたのであります。で、私はその後、前日にそういう話になったということを聞きまして、ヨットの上でケネディに、何を言うのだ、ほかの祝祭日にもあげさすのが当然じゃないか、こう言ってケネディ要求したのでございます。さすがにケネディは、わかった、キャラウエーがこれきめることだが、一応それじゃ至急に沖繩に連絡して弁務官の意見を聞こうというので、発表はその返事が来るまで待ってくれということでヨット会談をした。あなた方はささいな問題だとお考えになるかもわかりませんが、私は、前日ラスク・外務大臣との間で、正月三日間だけ、これを私は、そういうことじゃいかぬというので、ケネディのそういう措置に相なったのでございます。しかも、一般の内地と同様にあげ得ると同時に、沖繩だけの祝祭日にもあげることを認めようというところまでしてくれたのでございます。あなた方は、教育の問題とか、あるいは沖繩の民生安定、生活向上の問題等々をないがしろにされて、ただ国際、極東の情勢を議論している、そうしてけんか別れでも、議論したことでそれでいいじゃないかと言うことは、私は外交じゃないと思う。やっぱり施政権返還につきましての議論は当然でございますが、それをしながら、だんだんそれに向かっていくための沖繩同胞の要望を事こまかにやっぱり解決していくことが私は外交である、こう考えておるのでございます。
  58. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 私は、今の国旗を掲げる問題、あるいは旅券の問題等々について論議をするなとは申しません。これらの問題が、なるほど総理の言われるように、施政権返還の問題に連なる問題だし、さらには沖繩における住民の基本的な人権に関連をする問題であるから、そういう立場、そういう方向において問題が論議をされなければならない。にもかかわらず、そうでなくて、そういう基本的な問題はたな上げしておいて、ただ手続的な問題として論議をされているところに問題があるという論議の仕方について意見を述べているのですが、その問題は意見の相違になりましょうから、もっと問題を次の問題に移しますが、それならば、ことし二月でしたか、沖繩で、沖繩の植民地解放宣言を引用をしながら、沖繩施政権返還、解放という問題を沖繩の立法院が決議をしたと思うのですが、これについて政府はどういうふうにお考えになるか。これを促進をし、推進をする、それに努力をしてやる、協力をしてやるという立場をとるべきであると思うのですが、その点はどういうふうにお考えになるか。
  59. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 沖繩が植民地であるかどうかという問題でございまするが、植民地というのはまあ非常に学問的な定義はむずかしいことかもしれませんけれども、一般に、国連において植民地解放宣言がなされましたときに使われている字句、いわゆる一民族が他民族を搾取し征服し支配するということであるならば、少なくともアメリカ沖繩を搾取していない。沖繩に対して、一般的な経済的な観念で言う非常に安いものを作らして、それを、作らしたものを非常に安く買いたたいたり、高いものを無理やりに買わしたり、そういうようなことはしていない。したがって、沖繩は植民地であるという前提施政権返還と言うことは、私どもはこれは考えが違っておるのではないか、かように思っておるのでございます。私ども政府の方針等も累次申し上げておるので繰り返すまでもありませんけれども、この極東緊張脅威というものを少なくしつつ沖繩の帰る日をできるだけ早くする。しかもその帰る日に備えて沖繩同胞の生活を向上するという、これがわれわれのとるべきことだと、かように思っております。
  60. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 沖繩が植民地でないということで、あの植民地解放宣言に該当するものでないということをしきりと言われるのですが、その植民地でないという考え方が非常におかしいのじゃないか。で、一体政府は植民地というのをどういうふうにお考えになっているのか、それからが問題だと思うのですが、搾取があるとかないとか言われたが、搾取云々の前に、植民地というのは、よく言われておりますように、政治的な従属関係があるかどうかという問題、一民族が他民族を支配しているかどうかという問題、これが第一前提だ。そうして、その前提に立って、さらに経済的あるいは政治的な支配に加えて経済的な搾取があるかどうかという問題で、植民地がもっと広義に解釈されるようになる。広義に解釈された植民地の場合には、かりに政治的な支配はなくても、単に経済的な支配、搾取の関係だけが事実関係としてあるにかかわらず、これが植民地として植民政策の対象になるのだという問題として広義解釈をする場合に、その搾取の問題が出てくるということは、これはもう植民政策の「いろは」だと思うのです。それなのに、その厳然たる、一民族による他民族の支配が厳然としてなされている。そうしてその支配から解放をされることが今沖繩の重要な問題になっているときに、問題をそらして、そこには搾取がないから植民地ではないのだというようなことで、あの意見は間違っているのだという態度は非常におかしいのじゃないか、それをどういうふうにお考えになりますか。
  61. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 実は国連で植民地解放宣言がなされまする場合に、この沖繩のような状態はどうかということで、これは植民地でないということがはっきりいたしておるのであります。で、それ以上私どもは言う必要はないと思いまするが、まあ佐多さんの御説のような見解は、国連の場においてはさような見解はとられていない。私どももその植民地でないという見解をとっておるわけであります。
  62. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならば、その国連での話し合い沖繩は植民地でないというふうに話し合いされたことが間違いなんです。あの解放宣言自体をごらんになれば、今言ったような、一民族による他民族の支配が行なわれている限り、それは植民地だし、そういう状態を早く解消をしなければならないというのがあの植民地解放宣言じゃないですか。それは、あの解放宣言を見れば非常に明瞭だと思う。しかも、沖繩が植民地であるということは、もうこれは国際的な常識になっているじゃないですか。  たとえばロンドン・タイムズでも、アメリカ沖繩で植民地行政をやっているということをしばしばはっきり明言をいたしております。あるいはまたフランスの新聞記者もちゃんとそういうふうに言っている。植民地主義という文字は、アメリカ人が、そして同じようにソ連人も非常に好まない文句である。しかし沖繩アメリカ人たちは、彼らがそこにいるということのために、植民地国家が支配下の民族に対して持つ多くの問題に当面をしておる。アメリカ人は沖繩において植民地主義なしでは彼らの存在そのものも考えられない。こういうふうに言って、フランス人でも、これがアメリカの植民地であるということは非常に明瞭に言っております。さらにアメリカの国際人権連盟の議長のボールドウィンも、そう沖繩の現地で言っておる。植民地と言われるのがいやだって。しかし、ここは事実植民地ではないかということを、ボールドウィンははっきり言っておる。このように沖繩が植民地であるということは、もうこれは国際的な常識になっております。  それで、植民政策の大家であった矢内原忠雄先生もはっきり言っておる。マルタ、ジブラルタルと同じように、沖繩は軍事的植民地であるということを言っておる。  あなた方はよく、経済的な搾取がないから植民地でないと言われるが、これは政治的な支配関係が明瞭であることを否定するものではないのみならず、ただ単に軍事的な意味においてあそこを占拠しておるという事実は、最近における帝国主義時代の露骨な軍事的な支配の植民地である。そういう意味において軍事的な植民地であるということを表白しておる以外の何ものでもないと思うのです。その点をあなた方はどういうふうに考えておられるのか、その点をお尋ねしたいと思います。
  63. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) いろいろフランス人の言った話などもおあげになりましたけれども、言論の自由の国ではいろいろな意見があるでありましょうから、一人が言ったから、これは全部その国はそう思っているということでないことは、もう言うまでもないことだと思います。第十五回の国連総会におきましては、ソ連も含めて、沖繩は植民地であるということを言っている国は一つもないのであります。で、ことにはっきりとその際に、提案者であるインドネシアの代表が、沖繩というようなものはこれに該当しないと言った上で植民地解放宣言を採択しておるのであります。私は佐多さんの御意見は、どうもこれに同調するわけには参りません。  それから、ボールドウィンという人が、沖繩は植民地であるということを言ったという話でありますが、それは私どもは寡聞にして存じません。これも言論の自由の国でございますから、いろんな意見もありましょうけれども、公式にそのボールドウィンという人の権威においてそういうことを言ったということは聞いておりません。
  64. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうも国際的な常識を否定してしまって、沖繩が植民地でないというようなことをあくまで強弁をしているように思われますが、あるアメリカの高名な人は、こういうことを言っている。われわれは沖繩にある軍事基地を維持するため、植民地支配を行なっている——植民地支配を行なっていると言うんですよ。が、他方においては、これと同じ重要性を持つ日本での基地は、条約による日米間の合意だけで維持している。だから、沖繩の場合、なるほど言いのがれはできない。沖繩の置かれている十九世紀的地位は、二十世紀の世界では全然通用しないことが間もなくわかるであろう。日米関係沖繩問題で困った状態にならない前に、米国がこの問題に取り組むようにすべきだ。これは申し上げるまでもなく、施政権返還をしなければならない、むしろ日本内地におけるように、条約によってあの問題をきめなければならないということを主張した主張だと思いますが、これは先ほど言いましたように、植民地支配を行なっているということを明瞭に言っているものです。ある高名な人がそう言っておりますが、これはだれだとお考えになりますか。(笑声)
  65. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) そのなぞなぞは私わかりませんけれども、少なくとも私は、国連においてこういう決定がなされているのだということを申し上げたことは、国際的な常識がさようであるということを言っているつもりで申し上げているわけであります。
  66. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 これは非常に皮肉なことですが、ライシャワーの言です。もっともライシャワーがハーバード大学の教授として言った文句でありますけれども、あるいは最近は責任ある地位についたので、意見を変えたというのかもしれませんが、少なくとも良識が曇らされていなければそういうふうに考えなければならないし、現実の状態もまさにそのような状態であると言わざるを得ないと思うのです。それを、ただ何か政治的なかけ引きか何かで、あそこは植民地から除くのだというような取りつけをしたから、それでいいのだといって安心して、あれを植民地としてあの悲惨な状態を解放してやるという主張と要求をされないところに、むしろ現在の悲劇があるのじゃないか。政府は、むしろあの植民地解放宣言を文字どおりにとり、しかも現在におけるアメリカのあの植民地状態をつぶさに冷静に検討をし、分析をし、その冷静な事実判断の上において植民地解放の熱烈な要求をされる。そういう態度をとるときに、初めてあなた方が施政権返還の問題を真剣に主張をしておられる、取り組んでおられるということが言えるのだと思うのですが、そういう態度をとらないで、ただ搾取がないから、経済的な搾取がないからあそこは植民地じゃないのだ。あるいは国連において、政治的なかけ引きで、二、三の人がそういうことを言ったから植民地じゃないので、あそこは植民地と考える必要はないのだとか、そういう解放を主張する必要はないのだとかいうことで安堵しておられる態度がそもそも問題だと私たちは思うのですが、その点、外務大臣総理大臣はどうお考えですか。
  67. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は、繰り返すようですが、国連においてのそういう決定というものは、これすなおに見るのが国際間の常識であると思うのです。しかし沖繩現状において、これがいいとはわれわれ思っておらないので、とにかく施政権返還要求するし、それからその実現に至らざる間は、われわれの協力によって、われわれとしてもできる限りの努力をして、沖繩同胞の経済的な、あるいは生活、社会環境というものをよくしようということで努力しているわけでございます。  にもかかわらず、現在の施政権者であるアメリカを、非常にあなただけの独断によってきめつけて、あなたのお考えによってきめつけて、そうして私どもにもそれに同調しろ、こう言われて、かりにわれわれが同調したら、どういうことになりますか。これは施政権返還というものは遠のくということになると私は思うのです。やはり相互の信頼と理解というものがあって初めて施政権というものは帰ってくるのです。私はそういう態度をとるほうが現実的である、これが私の信念でございます。
  68. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうじゃなくて、たとえば、この間のアメリカの対沖繩新政策等々を考えると、これは失礼ですが、そうなる。あるいはあなた方が一生懸命折衝されたその成果というよりも、沖繩の現地における住民がほんとうに血を流しながら沖繩施政権返還の問題なり、祖国復帰の問題なり、民政を守る問題なりに対して非常に強い要求をぶちつけている。それがアメリカをして余儀なくあそこまで後退をさせ、譲歩をさせているというふうに私たちは思うのです。むしろそういうふうな主張があの成果をかち得たんであって、その点はあなた方としても十分に評価をしなければならないんじゃないか。それを背景にしてアメリカと折衝をし、交渉をすることによって初めて効果的な成果が得られるんであって、その点は十分にひとつ考えていただきたいと思う。  で、あなた方は、植民地でない、植民地状態にないと言われるけれども、そしてまた経済的な搾取がないと言われるけれども、経済的な搾取さえないとは言えない。それはあなたの言われるように、いわゆる植民地作物を作らせてそれを非常に安く買い上げて云々ということはしないかもしれませんが、沖繩の琉球銀行その他を考えれば、過半数をアメリカがこれを持っていて、そしてこれを経済的には支配しておる。しかし、高い利益の配当をやっている。あるいは電力にしても、ガスにしても、それらの基幹産業は全部アメリカがこれを握っている。しかも、アメリカ資本に特殊な便益を与えて高額な配当をさせている。こういうところにも明瞭に経済的な搾取があるすです。経済的な搾取がないとは絶対に言わさないと思うんです。しかも、いかにみじめな植民地的な支配が行なわれているかということは、あの沖繩の住民の血の出るような叫びによって、あなた方も十分に御存じのはずです。たとえば、基地伊江島の農民は次のように訴えています。武力によって家屋が焼き払われ、補償のない強制立ちのきが行なわれ、軍用犬によって不法逮捕が行なわれている。あるいは手錠、暴行、罰金、投獄、爆死、射殺、最近では電灯やラジオの撤去まですら強制的に行なわれている。こういう実情沖繩実情なんですよ。これをもってしても、あなた方は、現実の事実として沖繩が植民地でない、植民地状態に置かれていないというふうにお考えになっているのかどうか。これらの実情をどういうふうに認識しておられるのですか。
  69. 大竹民陟

    政府委員(大竹民陟君) ただいまお話しの中にございました琉球銀行、それから水道公社あるいは電力公社、こういう方面につきましては、アメリカが金を出しまして沖繩で事業をいたしております。これは事実でございます。非常に高い利子で搾取をして高い配当を行なっているというふうなお話がございましたが、これはアメリカの個人が行なっておる事業ではないわけでございまして、アメリカ政府で、こういう事業を現地の政府でやっておるわけでございます。それから上がります収益はすべて沖繩住民の利益のために還元するというやり方をやっておるのでございます。その関係から、沖繩が非常に搾取を受けておるということは、私ども事実問題としてないというふうに考えております。  それから伊江島におきまして、立ちのき問題をめぐりまして、非常に暴力行為と申しますか、ひどい措置が行なわれたというふうなお話がございました。私ども聞いておりますところでは、伊江島の軍用地の中にあります民家の立ちのき問題、これが最近ありましたけれども、地元側でも十分了解をいたしまして、相当な補償を出しましてこの問題は円満に解決をしておるというふうに承知いたしております。
  70. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうも沖繩の植民地支配の現実に対する認識が非常に足りないように思う。それらの問題は、さらに調査団を出して調査をされるということになっておりますので、その際に十分ひとつ調査をしていただきたい。  それから、この点は特にお願いをしておきたいのですが、その調査が単に役人諸君の行政技術的な、状況あるいは施策の調査に終わっていて、もっと基本的な人権の問題、あるいは政治経済的な社会的な構造がどういうふうになっているか、どういうひずみを受けているか、それをどう直したらいいか、どういう施策を起こしたらいいかというような問題について、基本的な調査がむしろこの際なされなければならないと思いますから、これらの点については、単に役人諸君を調査にお出しになるだけでなく、民間にも非常にいい調査機関があるのでありますから、それらのものに命じて、あるいは委託をして、そういう社会経済的な掘り下げた調査その他をやっていただいて、それを基礎にさらに今のような施策の問題についての論議をいたしたいと思いますので、これらは希望として申し上げておきたいと思いますが、総理大臣どうですか。
  71. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) われわれといたしましても、この上とも沖繩の事情を十分調査いたしまして、適当な措置をとりたいと思います。
  72. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。今の調査の場合、一応今度のケネディ声明に基づく新しい沖繩の調査団の派遣ということが日程に上がっているわけですが、その構成メンバーは大よそ政府としては一応の案を持っておるのじゃないんですか。ありましたら、この機会にどういう構成で調査団を派遣されるのか、お示しいただきたい。
  73. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これは各省にわたる問題でございますので、各行政機関からそれぞれの適当な人を選びたいと思っております。しかし、それも一回だけでなくて、いろいろな部門からその必要に応じて行ってもらうということが適当ではないかというふうに考えて、目下考慮しております。
  74. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 先ほど政府委員お話しによりますと、何ら搾取は行なわれておらないし、かりに高利潤を吸い上げてもそれは国民に還元をされているので、何ら植民地的な支配が行なわれているわけじゃないというような御意見がありましたが、これについては、それじゃさらに財政規模その他の問題についてどういう措置が行なわれるか、数字的にどういう事情であるかという問題を詳しくお尋ねをしたいと思いますので、そのときに譲りますが、その前に、総理ケネディとの会談の結果今度の新声明が行なわれるに至って、新声明には非常な進歩が行なわれているというふうなことを言われました。しかし、一体新声明でわれわれが重要に考えなければならないのは、施政権返還の問題がどうなるかという問題自治権拡大がどうなるかという問題であったと思うんですが、施政権返還の問題については、先ほど申しましたように、何ら触れられておらない。これはたな上げされて、そうしてむしろ施政権は半永久的に保持するのだということが宣言をされたにすぎないという実情にある。特に問題になりますのは、自治権拡大の問題であると思いますが、この自治権拡大の問題が考慮されているとお考えになっているのかどうか、これについて非常な進歩があったと判断をされているのかどうか、その点について総理なり外務大臣の御所見を伺いたい。
  75. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 沖繩施政権返還は半永久的にだめになったという前提に立ってお考えになっているようでございますが、われわれそのようなことは考えておりません。これはしばしばお答えしているとおりであります。さらに自治権拡大に対するかねての住民の要望、この問題は、主席の公選あるいは高等弁務官の拒否権の行使の限定、あるいは立法院議員の任期、選挙区の改訂、琉球裁判所の管轄権の拡大というような問題については、この実現方に従来から努力して参りましたが、昨年六月の池田ケネディ会談においてこの点について具体的な意見を交換したということは、先ほど申し上げたとおりであります。三月二十日に発表されましたケネディ米大統領の声明によれば、現行大統領行政命令第一万七百十三号が次に述べますような点で改正を見たわけでございます。  一、立法院が琉球政府の行政主席を指名できること。  二、高等弁務官の拒否権行使の場合の順守条件の強化。  三、立法院議員の任期を二年から三年に延長し、かつ立法院自身が選挙区の数及び区域を改正し得るという点について改正が行なわれておるのであります。  さらにアメリカが、今後行政機能の琉球政府への移譲、住民の個人的自由の制限を伴う諸統制の撤廃については継続的に検討を行なう旨を明らかにいたしております。したがいまして、政府としては今後沖繩における自治権がさらに拡大していくことを期待して、近く行なわれます日米間の協議に際してこの問題について意見の交換を十分やってみたいと考えている次第でございます。
  76. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 二、三述べられて、非常に改善が行なわれたように考えておられるようでありますが、このケネディ大統領の行政命令をあらためて読み直してみれば、高等弁務官についても、民政官についても、ほとんど従来と何ら変わっていないと言わざるを得ないのではないか。たとえば、一番大事な問題は、施政権返還をされることを前提にしてその準備がなされているというのであるならば、まず第一に軍政が民政に切りかわられなければならないと思うのですが、それは片りんだに認められておらない。そして高等弁務官は従来どおりに軍人であるのみならず、あらゆる権能を持っていて、あらゆる問題について拒否権を従来どおりに持っておる。これは何ら本質的な変化は行なわれておらないとしか言えないのじゃないか。あるいは民政官が今度新しく新設されたことになっておるけれども、この民政官についても、これは従来慣行で行なわれていたことが明文化され、成文化されたにすぎないのであって、何ら本質的な違いは行なわれておらない、改善はなされていない。そして完全に高等弁務官に従依するものとして国防長官その他の指揮下にあって、国務省なり何なりの威令は直接には行なわれないということになっておるにすぎない。この点から見ても何ら改善は行なわれておらない。それから琉球の政府主席についても同じようなことが言えると思います。これも依然として任命制が行なわれて、そして選挙制に変えられるべき筋の、少なくとも自治権拡大をするというのであるならば、選挙に、しかも直接選挙によってこれが選出さるべきであるにかかわらず、そういうことが何ら考慮されないで、依然として高等弁務官の任命ということが続けられておる。これらの点を考えると、自治権拡大ということは何ら考慮されていないとしか思えないのですが、これでもあなた方は非常な改善が行なわれたというふうにお考えになり、しかも、これまであなた方が非常な主張をしてきた結果こういうものがかちとられたと自負されるのかどうか。あなた方がいかに努力しておられないかということがこれに明瞭に示されたにすぎないと考えるのですが、この点をどういうふうにお考えになりますか。
  77. 宇山厚

    説明員(宇山厚君) ただいまの御質問で、たとえば、行政主席が立法院によって指名されるということでも、高等弁務官がいる間はだめではないかという点につきましては、今度の改正では、はっきり琉球立法院で行政主席を選挙をして指名することになるわけであります。したがいまして、その選挙された人が行政主席になるかならないか、それをアメリカ側の高等弁務官のほうで拒否権を行使いたしましてその任命を妨げるということになりますと、はっきりとその拒否権を行使する理由が示されなくてはなりませんし、今度のケネディ大統領の指令によりまして、拒否権行使につきましても制限が強化されておりますので、これは立法院の自治の体制、立法院の権威が大いに拡大されたと、こう考えていいものと思うのでございます。拒否権の行使につきまする制限につきましては、従来でも、大統領命令にございますような、琉球において責任のある民主的な政治が確立されること、それから経済開発、民生の向上という高等弁務官が受けておりまする責任に沿うてすることを念頭に置いて拒否権が行使されなければならないということになっておりましたけれども、今度はそれをさらにはっきりいたしまして、単にそれだけでなく、沖繩の人々の権利に十分な考慮を加えなければならないということも加わりました。それからまた、拒否権を行使いたしましたときには、高等弁務官は国防長官に報告することになっておるのでありますが、その際もどういう理由で拒否権を行使したかという理由を明示して報告することになっております。したがいまして、拒否権の行使はいわばガラス張りの中でみんなから納得されるような理由を十分に明らかにした上でされなければならないということになりましたので、よほど拒否権は行使しにくくなったと存じます。それからまた、従来の例を申しましても、たとえば拒否権の行使は琉球政府の職員の任命についてもできるということになっておりますが、これはいまだかつて拒否権行使された事実はないわけでございまして、従来とも米側では拒否権の行使は慎重にやる、最も慎重に行なうということを言っておりますが、今後のケネディ大統領の発表した政策によりまして、その点がもっと強化されたということが言えると思うのです。
  78. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いろいろ御説明はありましたが、ケネディ大統領の行政命令を見ると、高等弁務官の地位権能、あるいは民政官あるいは琉球政府主席の権能等があげてありますが、それをいろいろお話しになったようですが、一つ一つについてもっとこまかに論議をして参りますと、いかに制約されていて本質的な改善が行なわれていないかということ、従来のままにすぎないかということが明瞭になると思いますが、この論議はきょうさらに午後にでも回しまして、総理が非常にお急ぎのようですから、問題を総理へのお尋ねに移しますが、総理はしばしば県並みの扱いに今後はしていくのだというふうに言っておられますが、県並みの扱いというのはどういうことを意味しておられるのか。そして今後どういうことを主張していこうとしておられるのか。まず県並みの扱い方ということに対する総理のお考えをお聞きしたいと思います。
  79. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 沖繩の一人当りの所得は、大体内地の一人当たりの所得の七割前後と心得ております。それから沖繩の財政につきましては、私はケネディ大統領に直接言ったのですが、アメリカ沖繩援助資金は六百万ドル、沖繩の財政は百億ちょっとこえておる。百十億程度。百十億の財政収支のときに六百万ドル、すなわち二十億円程度はいかにも少ないじゃないか。私は日本の鳥取県あるいは山梨県の例を出しまして、地方交付税がこういうふうな状態になっている。もちろん鳥取県、山梨県からも国税を取ります。しかし、それに比べていかにも少ないじゃないか、われわれは昨年度四億ほどいろいろなことで援助いたしました、本年度は十億ほどになる、こういう点をアメリカはよほど考えるべきじゃないか、そうして税制等は違うけれども、六百万ドル程度沖繩の民生安定の援助費というのはいかにも少な過ぎる、日本も出すから、アメリカも今までの数倍をひとつやってもらいたいという話をいたしました。こちらの県並み、こちらの宮崎、鹿児島くらいと見ております。これは戦前はそこまで行っておりません。沖繩のほうが低かった。今宮崎、鹿児島程度になっておりますまいか、一人当りの所得が。しかしいずれにいたしましても、それはいわゆる基地関係の所得で、第一次産業、第二次産業というものにはむろん見るべきものがございません。したがいまして、われわれは産業を興すと同時に、社会福祉、社会保障関係につきましても、まだ内地ほど行っておりませんから、そういう点におきまして十分力を入れていく、これを強く話しました。したがいまして、今回もありますように、六百万ドルが千二百万ドルの援助になったようでございます。これは将来はもっとふえることと思われます。われわれといたしましてもこれに呼応いたしまして、これはまあ沖繩から税金を取っておりませんから、鳥取県や山梨県と同様にはもちろん行きませんけれども、民生の安定と向上と産業の復興をアメリカと相談しながらやっていこうと、これが私とケネディとの話でございます。今度千二百万ドルになった。倍額になったと思いますが、これでもまだ十分ではございませんので、今度日米の合議の上でこれを進めていき、少なくとも内地平均ぐらいの所得に持っていきたいという考えでおるのであります。
  80. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その問題についてはなお大蔵大臣にもう少し具体的にこまかにお尋ねをしたいと思っておりますが、ただ、総理に聞いておきたいのですが、施政権返還の問題が非常に重要な問題でありますが、さしあたり現実においてはアメリカ沖繩を支配しておるというその現実を前提にして、応急の措置として、ます第一に沖繩の住民の自治権に非常な制限が加えられている事実にかんがみて、少なくとも行政主席の任命制を廃歩して公選制を実現をするということが必要だし、住民はそれを非常に要望しておるし、アメリカの国際人権連盟の議長のボールドウインその他も基本的な人権の立場からそれを主張すべきだということをボールドウインなんかも言っておりますが、総理はこの点をどういうふうにお考えになりますか。
  81. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今ちょっと聞きのがしたのですが……。
  82. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 任命制を公選制にする、行政主席の……。
  83. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は今総理としまして、せっかくケネディ大統領がこれまでの措置をしたのに、またこれでどうしろああしろと言うのは差し控えたいと思います。できるだけ自治権拡大をしてもらいたいという気持だけで、主席のことは、今まで任命だったのを立法院で選挙する、こういうところまで来ておるのでございます。大体この程度でしばらく情勢を見たいと思います。いろいろ御議論ございましたが、私は公私ともに沖繩島民全体の気持は喜んでおられると聞いておるのであります。それは十分ではございますまい。十分でないことはわかりますが、今の状態としては私は自分もよかったと思いますが、沖繩同胞も私は喜んでおると考えております。
  84. 井上清一

    委員長井上清一君) 総理、時間でございますので、総理に御退席願います。
  85. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 時間ですから、まだいろいろ総理にお聞きしたいのですが、これで打ち切りますが、総理は先ほどからしばしば、非常に自分たちの意見が入れられて、しかも現地の人たちも満足していると、こういうふうに言われますけれども……。総理は。
  86. 井上清一

    委員長井上清一君) 外務大臣にかわってひとつ答弁していただきますから……。
  87. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 最後に総理希望を申し述べたいと思っていたのですが、それでは僕はもうこれで打ち切ります。
  88. 井上清一

    委員長井上清一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  89. 井上清一

    委員長井上清一君) 速記をつけて。  これにて暫時休憩し、午後一時半から再開をいたします。    午後零時三十九分休憩    ————————    午後一時五十五分開会
  90. 井上清一

    委員長井上清一君) 休憩前に引き続き、委員会を再開いたします。  ガリオア・エロア返済協定タイ特別円協定、両件についての質疑を続行いたします。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  91. 大和与一

    大和与一君 それに関連して、本日は、仲間の議員である辻政信議員がだいぶ長い間行方不明なんですが、国内の場合は、これはまあ場合によっては本人のほとんど責任ということになるけれども、国外でいまだにその消息すらわからない、こういうことについて、一体政府はいつまでほうっておくのか、責任はだれなのか、それじゃ一体どうしようというのか、これについてまずお尋ねいたします。
  92. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 辻議員の消息につきましては、本委員会においてもいろいろ申し上げておりますことでございますが、要するに、最終的にはこういうことになっておるわけでございます。  昨年の十月十日御報告したことでございますけれども、シェンクーアンにございます最高権威筋は、辻議員と直接会見した事実はないけれども、その権威筋が出した情報によりますれば、辻議員は六月ヴァンヴィェンにおった。しかしその後のことはわからない。しかし情報によれば、辻議員はシェンクーアンに来た後ハノイを経て中共へ向かったらしい、こういうことでございました。そこで昨年十二月二日付書簡をもって日本赤十字から中国紅十字会あてに、同議員が中共地区に入ったかいなか、また同議員の安否の状況等について照会をしたわけであります。これに対して中国紅十字会から十二月二十五日付書簡をもって、辻議員は中国に入国した可能性があるとの日本側の消息は全く根拠がなく、したがって、同議員の行方調査に協力する方法がない、こういう回答をしてきたわけでございます。そこで、遺憾なことでございますが、現在まで辻議員の正確な消息は依然不明のままでございますが、外務省としてはもちろんほうってあるわけではございませんで、従来ともいろいろ努力しましたが、今後とも外務省の出先機関はもちろん、その他の調査ルートによる調査を一そう強化いたしまして、この方面における辻議員の消息の確認に全力をあげている次第でございます。  それからなお本年の一月五日に香港時報——これは国民政府系の新聞でございますが、これが辻議員の消息に関して昨年十二月上旬、上海から香港に逃亡してきた−中国人が伝えたところとしまして、辻議員は東北の琿春——吉林省の琿春——でございますね。そこにおきまして日韓青年のゲリラ訓練の指導をしている。これも少しどうも言葉もおかしいのでございますが、そういう旨の報道を行なっておりますが、もとより真偽不明の一情報にすぎませんし、香港にございまする総領事館をしまして最近再度この記事の執筆者についてその後の模様を照会せしめたのでありますが、やはりその執筆者はその後何ら新しい情報を入手していない、こういう旨を報告してきておりますので、依然不明と言うしかないわけであります。
  93. 大和与一

    大和与一君 それはラオスが現在なお混乱状態にあるから、それでその入ったときですね、大使館なりの手の届かないところは一体どこから始まっているのか。ラオスのヴイエンチァンですか、そこまで行ったのは間違いないでしょうから、そこら辺の現地の日本側の情報というものがもっと正確にわかっていないのですか。
  94. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) ヴィエンチァンに入られましたのははっきりわかっております。あすこで四月の十日過ぎでありますが、別府大使がお会いしております、当時の。そしてヴィエンチァンからヴイエンチァンのやや北東になりまするシェンクーアン地区、ここにプーマ政権のいわゆる所在地がございます。そこに入りたいということをおっしゃっておられたわけであります。それに対しまして別府大使は、非常にあぶないからということでおとめしたわけであります。しかしついにお入りになったらしいというところまでははっきりしているわけであります。そしてあすこで——シェンクーアンでもって中立政権の首脳者と会いたいということを言っておられたので、そこでいろいろな筋を通じましてその中立政権の首脳部のほうに連絡をいたした、そしたら入られた、しかし自分は会っていない、その後ハノイを経て中共のほうに行かれたという情報を得ておる、というところまでしかわかっておらぬわけであります。
  95. 大和与一

    大和与一君 この中国、北ベトナムと、いろいろあると存じますが、中国におるという可能性ですね、そういうことでこの赤十字が問い合わせたことになりますが、そうすると、中国に入ったらしいというのはやや確実な根拠があって、そういう手をお打ちになったのか、その辺どうですか。
  96. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 大体辻議員は、ラオス地区に入られまして、そして現在の政府軍地区から今のパテト・ラオス地区においでになった。それからハノイのほうへ出ていくということをお話しになっておったようなんです。そこでまあ今のラオスの中立政権の最高首脳者に照会をいたしましたところ、そのほうから、自分は会っていないが、確かな情報によれば、ハノイを経て中共に入られたと自分のほうは思っている。これをたよりに中共にお入りになったんじゃないかというふうな判断をしたわけであります。それから北越につきましてもいろんなルートで調べましたが、どうも北ベトナムにはおられないということを、これは北ベトナムのほうで言っておられるわけであります。そうしますと、やはり中共ではないかという状況判断をしておるわけであります。
  97. 大和与一

    大和与一君 事務局でわかっていますかね、社会党の千葉会長が向こうに行かれて謝南光かと会ったという話。それはちょっとどうですか。
  98. 小沢俊郎

    ○参事(小沢俊郎君) 御承知のように、本年当初に社会党の方々が中共へ行かれまして、その中のお一人の本院議員の千葉さんが、辻さんのことに対して何か聞いてこられたという話を伺いまして、千葉さんにお伺いしたわけであります。千葉さんのお話は、こういうことでございました。本年の一月一日に中共へ参りまして、ちょうど五日の日に人民外交学会で日本議員団と中共側との会談があり、そこで謝南光という方に会われましたので、その謝南光氏に辻さんのことをお伺いしたそうでございます。謝南光氏は、しばらく時日をかしてくれ、責任あるお答えをいたしましょうということを申されまして、一月の十二日の日に謝南光氏から千葉さんのほうへ御返事があった。その御返事によりますと、中共の調査機関を動員して調べた結果、まあ遺憾ながら紅十字が回答したと同様なお答えしかできない、ただし辻議員が日本国を離れた後に中国に来られまして十日前後滞在したことは事実だ、しかし中国の辻さんに対する態度が冷たかったので、辻さんはさびしい気持で中国を去られたことと思う、それから推して、再び中国に入ってきたということは考えられない、そういう話があったそうです。なお、これは責任は持てないけれども、北京に流布されている風説としては、今度は東南アジアのほうの共産軍側に入ろうとして、その背後から米軍に射殺されたと、こういう風説もある、しかしこれは責任は持てない、こういう話があったということを千葉さんからお伺いしております。
  99. 大和与一

    大和与一君 外務大臣お尋ねしますが、それで政府が、外務大臣だけの担当でないかもしれないけれども、このままどうにもならぬということですかね。あるいは捜索隊なんていうと大げさだけれども、もう少し積極的に調べるつもりはないでしょうか。
  100. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあ私どものほうとすると、ラオスから入られたのでございますけれども、こちらの機関を動員して北越側とできるだけ接触して、そうして、これを調べるという方法にいたしたわけでございます。中共側では、紅十字会はこれを否定しておられるものでございますから、どうも今といたしましては、格別こうしたらいいという名案はちょっとないのでございます。
  101. 大和与一

    大和与一君 もうラオスなんかは、大使館に話して、さらに行ってみてもまず新しい事実なんかはとてもつかめそうもない。逆に向こうのほうから、何かあれば連絡があるのだろうから、それを待っていると、こんな程度しかないということですね。
  102. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まあ今後もできるだけ努力いたしますけれども、今のところどうも積極的にこれといった名案もないので困っておるということでございます。
  103. 大和与一

    大和与一君 これはやっぱり前例もないことだし、政府としては、しかし、そうかといっていつまでもほうっておくわけにいかぬと思うのです。やっぱり生きているならばちゃんと出てもらわなければだめだ。そういう点は一体いつまで、ほうっておくという言葉はおかしいけれども、努力はされておるのですから、それはわかりますが、じんぜんとして日をむなしゅうする、そういうことになっちゃいかぬと思うのですが、その辺は政府としてというか、外務大臣としてはさらにどういう手があるのか。
  104. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ほうといていいかどうかという問題は、国会なり政府全体なりがいろいろ考えることでございましょうが、私の立場からは、できるだけ出先を督励いたしまして今後も消息確認に努めると、これ以外にないわけでございまして、そういう点は今後もできるだけ続けたいというふうに思っております。
  105. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の千葉君が中国側で聞いてきたという話、非常に重大なあれだと思うのですが、一ぺん入ったことは事実ですね。それから二度目のほうはわからないと言う。しかし今、謝南光が、流説ではあるし、したがって確かではない、よくわからぬがと前置きしてはおりますが、パテト・ラオのほうに入ろうとしてアメリカ軍に射殺されたといううわさがあるということを言っておりますね。もしそうだとすると、非常にこれは重大問題だと思うのですが、したがって、何か出先を督励してそういう実情をさらに調べると同時に、アメリカ側に対して、こういう流説があるのだが、その辺の事実はどうかということをアメリカ側に直接にただし、調べるということはおやりになっているのかどうか。それから僕は、流説にしろそういう流説があるのだがということで、少しアメリカ側とも話し合いをしてみる必要があると思うのですが、それらの点について大臣お考えになりますか。
  106. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) これがあくまで流説である限りにおいては、しっかりした話し合いもできないわけでございますけれども、ただいま国会論議になりまして、こういう御議論が国会であったわけでございますから、これを根拠にいたしまして私話してみたいと思っております。
  107. 大和与一

    大和与一君 事務局に聞きますが、家族に対する連絡はどういうふうになっていますか。それからまた新しい何か向こうの意見といいますか、あるいは消息を家族から聞いたことはないか。
  108. 小沢俊郎

    ○参事(小沢俊郎君) 家族の方には絶えず私どもも御連絡いたしまして、私のほうへ何か情報が入ればお知らせする、御家族のほうからも入ったら知らしてもらいたい、こういう接触はいたしておりますけれども、まだ新しい情報というものはただいまのところございません。
  109. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) それからなおもう少し聞かしていただければたいへんありがたいのですが、中共にはアメリカ軍はいないわけでございますね。中共に入った人が中共を出ようとしてアメリカ軍に射殺されたと、こういう背景はどういうことなんですか。
  110. 大和与一

    大和与一君 そうじゃなくて、その流説というのは、辻さんが東南アジアの共産圏に入ろうとしたので、アメリカに射たれた、ラオスで。こういうことですね。
  111. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 一度中共に入って、それからラオスに帰って、ラオスでという……。
  112. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 パテト・ラオのほうに向かおうとしたらそのとき……。
  113. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 中共からパテト・ラオを通らなければ帰れぬわけですね。それでパテト・ラオを通ってプノンペンですか、そういう地区に入って、そしてまた入ろうとして、そこでやられたと、こういうことですか。
  114. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうじゃなくて……。
  115. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) その辺は不明なわけですね。わかりました。
  116. 小沢俊郎

    ○参事(小沢俊郎君) 私、千葉さんからお伺いしているのは、東南アジアの共産地区側に入ろうとして、そしてそこで射殺された、こういうことだけしか伺っておりません。
  117. 大和与一

    大和与一君 今のじゃなくて、家族のことは……。
  118. 小沢俊郎

    ○参事(小沢俊郎君) 家族のことは、今お答えいたしました。
  119. 大和与一

    大和与一君 それじゃ、辻問題はそれで終わりです。
  120. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 ちょっと済みませんが、大和委員の御質問に対する事務局側の答弁を私十分聞き取れなかったところがあるのですが、その謝南光があとで答えたことの中で、十日ほど中共におったということは、それも流説として、うわさとしてという前置きがあるのですか。
  121. 小沢俊郎

    ○参事(小沢俊郎君) 十日前後おったことは事実である、こういうことでございます。
  122. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 その点私も実は初めて聞くので、非常に重要なことだと聞いておるのですが、外務省でも、そういう情報を今まで聞いておられますか。それから、それをもとにしてさらに赤十字から紅十字に連絡するとか、そういうふうなことはまだやっておられないわけですか。
  123. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 中国紅十字のほうの回答は、これは昨年の回答でございますが、辻議員が中共に入国した可能性があるとの日本側の消息は全く根拠がないと、こう言って、そういうことを全然否定しているわけです。今の十日ほど中共におられたというのは全く私ども初耳でございます。
  124. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それから、これはしかし非常に重要な私は情報だと思うのです。当然これは外務省のほうでも、それに基づいての措置考えられたいと思うのです。
  125. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 もう一ぺん確認しておきたいのですが、紅十字会の一応の正式の回答は、向こうに行った形跡はないと、こういう返事をしたわけですね。しかるに謝南光によると、そうじゃなくて、十日くらいいたことは確実である、こういうふうな話になっておる。そうすると、非常に事実なり、あれも違います。だから、そこいらはあらためて紅十字会なり何なりにさらにはっきりさせるなり何なりというような点もひとつ手配をして処置をしていただきたいと思います。
  126. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 事柄のいきさつからして当然のことだと思います。私どもの入手している情報は、正式に紅十字会から、中共に辻さんが入ったということは全く根拠はないということを言っているわけです。それで今度新たに十日ほど中共におった、そういうことでございますから、その点はやはり紅十字に確かめてみるということは、まずやるべきことだと思います。
  127. 木内四郎

    ○木内四郎君 今のに関連してお伺いいたしますが、小沢さん、それは辻さんが初め日本を出た当初、中国に入って、そこであまり厚遇をされなかった事実があるから、あとで再び入ってくるというようなことはなかったろうと、こういうことでしょう。それはいつごろ北京に行ったのか。さっきのあなたの話ははっきり聞こえなかったので、日本を出て東南アジアに行く前に中共に行ってそこで冷遇された、だから向こうを出て、方々回ってあとでまた中共に入るということはちょっと考えられないということが今の説明じゃないかと思うのですが、そうすると外務大臣のほうでおっしゃったのは、ラオスのほうから中共に入った事実はあるかどうかということを聞いておられた。それに対して紅十字はそういう事実はないと言われたので、私は、もし入られたのなら矛盾はないと思いますが、その点はどうですか。
  128. 小沢俊郎

    ○参事(小沢俊郎君) 私も大体木内さんのおっしゃるようなふうに考えております。
  129. 木内四郎

    ○木内四郎君 いま一度、たいへん失礼だけれども、初めのほうで言われたことを繰り返して言って下さい、何月ごろということを。
  130. 小沢俊郎

    ○参事(小沢俊郎君) これは社会党の議員団がお立ちになったのは、たしか十二月三十日だったと思います。それから一月一日に北京に入っておられます。それで謝南光に千葉さんがお会いになったのは一月五日の日にお会いになっておると、こう伺っております。そこで謝南光にお願いした。それで一月十二日の日に謝南光が返事をした。その返事の内容は、北京の調査機関を動員して調べた結果、遺憾ながら紅十字が回答したと同様なお答えしかできない。ただし、辻議員が日本を離れた後に中国に入って十日前後滞在した事実はある、こういうふうに聞いております。
  131. 木内四郎

    ○木内四郎君 日本を離れた後ということは、いつごろということは言われないが、前後のあれから見ると、日本から離れてよそに行く前に、初めのころに入ったということであれば、紅十字の報告と少しも矛盾がないと思いますがね。
  132. 大和与一

    大和与一君 中身は、流説として言われておりますが、その言ったことは、社会党の使節団の人に正式に話はきちんとあったのですから、その意味ではきちんとした話ですから、それをよく含んで外務省で考えていただきたいと思うのです。
  133. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私考え違いをしておりましたけれども、そうですと、ちょっと辻議員がこっちを出られた日と、わがほうの大使館の別府大使、あるいはベトナムの久保田大使と会われた日付とちょっと合わぬところがあるようですね。航空機で四月四日に東京を出られて、そうして当日サイゴンに到着した。その間、北京に寄ったということは考えられないのです。ですから、どうも私はそういう頭があるものですから、先ほどのように理解せざるを得ないのですけれども、もしお願いできれば、千葉さんが十日ぐらいと聞かれたのは、何月に十日間ぐらいおられたか、そこをもう少しはっきりさしていただければいいのですが。私のほうは、四月四日に東京を出発して、当日サイゴンに到着しておる。ですから、この間に北京に寄ることはとても考えられない。足取りは、ともかく四月九日ごろプノンペンに行かれて、四月十一日までプノンペンに滞在しておった。さらにバンコックに行っておられる。ですから、十四日にバンコックから在タイ大使館伊藤防衛駐在官とラオスに行かれた。ですから、その間には全然ほかに行かれるあれはないわけですね。
  134. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 だから、そこら辺は非常に話がわからなくなっておりますから、ひとつ外務省としても、あるいは参議院の事務局としても、千葉君にさらにそれをはっきりしてもらうと同時に、紅十字会その他にもはっきりしてもらわなければならない。それぞれいろいろな措置を十分にして、さらにこの問題を取り上げていろいろ対策を講じていただきたいと希望しておきます。
  135. 大和与一

    大和与一君 それでは次に沖繩の船で第一球陽丸といいますか、これがインドネシアの軍隊ですか、これに銃撃されて沈没をして死亡者も出ましたが、これに対する概要をちょっと聞かしてもらいたい。
  136. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 事件発生の状況につきまして、在京のアメリカ大使館、それからインドネシアにございまするわが国の大使館、それらからの情報、報告をとってみましたところによりますと、次のとおりでございます。  四月三日夜、時間はわかりませんですが、インドネシア水域におきまして出漁中の沖繩マグロ漁船第一球陽丸百四十七トンは、モロタイ島付近におきまして、インドネシア空軍戦闘機一機より銃撃を受けたわけでございます。  銃撃の理由は、インドネシア当局の説明によりますと、哨戒中の戦闘機が国籍不明の漁船に対しまして停船を命じ、モロタイ島南部の港に入港を要求したのに対し、同漁船がこれに従わず逃亡せんとしたので銃撃を加えたもので、同漁船が白旗を掲げた後は攻撃を停止したと言っております。  銃撃の結果、同漁船乗組員中一名が死亡し、三名が負傷いたしました。同漁船は負傷者の手当のためインドネシア空軍機の護衛を受けてメナドに入港しました。負傷者は直ちに同地の病院に入院いたしました。  負傷者のうち二名は病院で手当を受けた後帰船いたしましたが、他の一名はなお入院中で、退院までに約二週間を要する見込みでございます。これは十日現在でございます。なお死亡者はメナドにおいて火葬に付されたということでございます。  第一球陽丸のこうむった損傷は軽微の模様で、目下メナドに入港中であるが、いつでも出航し得る状態であるということでございます。
  137. 大和与一

    大和与一君 こういう例が台湾近海でも一、二あったように聞いておりますが、その事実はございますか。
  138. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 私ども聞いておりませんですが。
  139. 大和与一

    大和与一君 この原因は正当な国籍表示をしていなかったから、こういうふうに言いますが、なぜ日本の旗が立てられないのか、その点お答え願えますか。
  140. 藤野淳

    政府委員(藤野淳君) 船舶法第二条によりまして、日本船舶でなければ日本の国旗を掲げてはいけないという条文がございますが、沖繩琉球列島地域並びにその住民に対しましては、現在日本国の主権の行使が禁じられております関係上、船舶法その他一連の海事法規の適用ももちろんできない状態にあるわけでございます。したがいまして、沖繩地域船が日本の国旗を掲げますことは好ましくないことである、かように考えております。
  141. 大和与一

    大和与一君 そうなると、その船舶の運用については沖繩に法律がある、こうなると思いますが、国旗を立てないで、便法といいますか、そういう旗を立てておればいずれ間違いが起こるかもしれぬ、あまりはっきりしないから。こういうことはもう自明の理なんだけれども、そういう点はアメリカ側というか、日本政府としては全然予測はできなかったのか。当然できなければなりませんが、政府としてはどのようにお考えになっておるか。
  142. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) この船は琉球籍になっておりまして、特別の琉球籍の旗を立てて走っておるわけでありまして、アメリカ側にもすぐ照会いたしましたが、その旗は周知さしてあるということでごいざましたが、何か非常に見にくいというふうな、見分けがつきにくいというふうなことが事実問題としてあるんじゃないか。特別の、あまり数も多くない、だれも知らないような旗ということであるんじゃないかと思いますが、今後この問題につきましてはよく相談いたしまして、どういう方法がいいか今度アメリカ側と十分この点について将来どうするかという問題、いろいろこれはむずかしい法律問題もあると思いますが、相談したいと思っております。
  143. 大和与一

    大和与一君 それはアメリカ側にそれじゃ一体どういうふうに言うのか。日本の旗を立てるのがわれわれから見れば第一条件なんですが、特に現地ではこれはたいへんな騒ぎで、近く立法院の人も来るし、議員も来るようですが、どういう腹がまえでアメリカとこの問題を解決しようと提案をするのか、それを聞かしてもらいたい。
  144. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 今までそういうケースがございませんでした。今度初めてこういうケースが起こりまりましたので、今外務省内部局とそれから運輸省、所管庁の間で十分打ち合わせをいたしまして、どういう方法がいいか、実際問題といたしましては日の丸を立てておれば非常に安全であるわけでありますが、それが法律上可能かというふうな問題もございますので、十分検討いたしまして、アメリカ側と相談しよう。しかし、アメリカ側には、近くこの問題を取り上げるということだけはすでに朝海大使を通じて申し込んでございます。
  145. 大和与一

    大和与一君 それでは、これからはそういうふうな提案をするんだけれども、今までそれじゃ国際信号旗、D旗といいますか、そういうものを使うということは、日本政府として同意をしているんですか、アメリカ側に。
  146. 宇山厚

    説明員(宇山厚君) 同意をいたしておりません。事実問題としてそういうふうになってきたわけでございます。
  147. 大和与一

    大和与一君 それでは、外務省関係だけでなくて、日本政府として、そのはっきりした国旗を立てないで国際信号D旗、一体こんなことが今までもほかの国でそういう例がたくさんあるのか、おそらくないと思うんです。そういうことをすれば、当然これは万一の場合には間違いが起こるかもしれない。あるいは鮮明でないとか、あるいは周知せられているとこっちは言っても、向こうでこういう事実が起こったのだから、実際には周知徹底されていないということになるわけです。ですから、そういう点は、国際信号のD旗を使うということは日本政府は全然関知しないことで、これは勝手にやったんだ、これでいいんですか。
  148. 宇山厚

    説明員(宇山厚君) 先ほど船舶局長からのお話がございましたように、船に掲げます旗は船籍のある国の旗というのが国際慣例になっておりますし、また日本の法律の建前でもあるわけでございます。それでこの問題は実は二ヵ月前にも取り上げて、アメリカ側のほうでも検討しているはずであります。それで今まで聞いておりますところでは、実はアメリカ側のほうでもいろいろ検討しました結果、琉球に船籍があるということであると、向こう側の旗を立てなくてはならない。ところが、琉球の国旗というものはないわけでございますから、そこでアメリカの旗を立てるということも一つの解決方法かもしれませんが、これはどうも適当でない。そうかといって、日本の旗を立てるということも、先ほど申し上げましたような、通常の法律の建前から言うと適当でないというので、国際信号旗のD旗——端のほうを三角形に切ったような旗にしておる。そうして長い間問題が起こってこなかったので、大体、これで各国にも周知徹底してきたので、これでいいと思ったのだと、こういう説明でございます。先ほどアジア局長からもお答え申し上げましたように、こういった問題が起こりました以上、今後同じような問題が起こらないためにも、何らかの措置をすることが適当ではないかと、こう考えておりますが、いろいろ問題がございますので、ただいま検討中でございます。したがいまして、アメリカとどういうふうな気持で交渉するのだという御質問でごいますが、それにつきましても、何とかして同様な事故の発生を防止したいという気持はございますけれども、まだ提案の具体策というものは結論に達しておりません。
  149. 大和与一

    大和与一君 ところが、その船の籍はちゃんと日本にあるのでしょう。ただ旗を立てる形というものは、日本でいえば国内法があって立てられぬというけれども、船籍は日本にあるのですよ。だから、私の言うのは、それが一部分潜在主権があって、形は変になっておるのだけれども、こういう話が前にあったときに、そのときに、日本は同意をしたかというのです。こういうことでしょうがない、いいと、こういうことでおっしゃったかと言っておるのです。そのときに問題があったら、はっきり日本の旗を立てるか立てぬか、こういう議論がなされていなければならない。これは不鮮明だと非常に危険を伴う問題ですから、そういうことは当然わからなければならないので、そういうときにどういうふうに日本政府としてはアメリカ側と話したかと、こういうふうに聞いているのです。
  150. 宇山厚

    説明員(宇山厚君) ただいまのお話の中に、この船の籍は日本にあるとおっしゃいましたのでございますが、これは沖繩にあるわけでございます。したがいまして、アメリカが統治を行なっておる。条約上、立法、司法、行政の権限全部をアメリカが行なっている。そういう特殊な地域に船籍があるわけでございまして、日本の旗を立てるということが直ちに適当であるかどうか、この点にも法律上の問題がございますので検討しておると、こういうふうに申し上げた次第でございます。
  151. 大和与一

    大和与一君 沖繩にあっても、潜在主権は認めておるわけですね。そうすると、話の移しかえがどこかにあるわけです。そのときにこの問題が当然取り上げられて、具体的に話し合いがされていなくちゃならぬ。そのときに、一体あなた方はこの旗を立てることに同意をはっきりとしたのかどうかと、こう聞いているわけです。
  152. 宇山厚

    説明員(宇山厚君) 先ほど申し上げましたように、この問題についての話し合いは、政府部内ではっきりした結論を得てからしたいと、こう考えております。アメリカ側には、この問題は取り上げるぞ、アメリカ側でも検討しておいてくれと、こういう予告はしてございますけれども、まだ話し合いは始めておりません。それから先ほど船舶局長が申されましたように、日本の船舶法は、現在、沖繩には適用になっておらない。施行されておらないわけでございますから、そういう点も勘案いたしまして、検討中なのでございます。
  153. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の船舶局長お話で、船籍が日本にないので日本の国旗を掲げてもらうのは困るというような口ぶりだったが、どうも沖繩の人に対して非常につれない、非常に沖繩住民に対する愛情のない答弁としか思えない。で、大体、もっと明瞭にしてもらいたいことは、船籍が日本にあるのだということも言われておりますが、船籍は日本には全然ないんだ、絶対にないんだ、ただ沖繩にあるんだということは事実かどうかという点が一点。  それから、かりに日本に船籍がなくて沖繩にあるとしても、沖繩に船籍があるとすれば、これは国籍は依然として日本だということにならないかどうか。かつて、琉球人は国籍からいってどこなんだということを、いろいろわれわれが論議したときに、その結論は、潜在主権がこちらにあるのだから、国籍は日本なんだということがそのときの結論であり、したがって、日本人なんだということだったと思うのです。この点もアメリカ側が了承しているかどうかは私は知りませんが、これもはっきりしてもらいたいが、少なくとも日本側の主張としては、政府自身が、日本人であります。したがって国籍は日本にありますということを言っておられたと思う。そうであるとすれば、やはり琉球に船籍があるということは、日本に船籍があるということと実質的には同じことになるので、そういうものとして扱わなければならないのじゃないか。したがって、そういう点からいって、船舶法が今沖繩には適用されないということは、国籍の問題等から考えると、船舶法は当然沖繩にも適用されるものだというふうに考えて、そう主張してむしろ向こうと折衡することが必要なので、そういうところから施政権返還の問題というものが解きほぐされてくる一つのことでもあると、そういう気持なりそういう態度で問題を取り上げ折衝することが、日本人としての、日本の役人としての態度でなければならないと思うのに、先ほどの船舶局長態度たるや、まことにわれわれには了解に苦しむものがある。  それからもう一つ、かりにそれじゃ、船籍は日本にないのだ、そうして施政権アメリカにあるから、アメリカのほうなんだとおっしゃるのなら、ほんとうに沖繩の人の人権を保護してやり、あるいはそれらの生命財産を保障してやるという熱意があるのならば、そうして施政権アメリカにあることをそんなに強く考えるのならば、施政権アメリカにあるのだから、その限りにおいては、生命なり財産を保障するためには、施政権を持っているところのアメリカが万全の貴任を負わなければならないし、したがって、アメリカが、その限りにおいては、アメリカの国旗を掲げることを許すということでなければならないのじゃないか。アメリカ側施政権をがんばるのならば、あくまでも責任を持たす意味において、そういうことを強く主張して、船なり船の乗組員の生命を保障してやるという努力をすべきだし、そういう気持なり考え方でアメリカと折衡してしかるべきじゃないか。そういうことすら考えられないで冷然としておられる態度は、われわれはまことに解せないし、けしからぬと思う。それらの点をあなた方はどういうふうにお考えになりますか。
  154. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) あとの法律上の問題については、政府委員からいろいろ言うようにさせますけれども、ただ、今回の問題は、旗がいいかげんだったためにこうなったので、インドネシアのほうは免責されるのだということではもちろんないわけですね。この旗について理解を十分持っていなかったインドネシアについては、これはインドネシア側が十分責任を認めているわけです。それで負傷者の手当についてあらゆる便宜を供与するとともに、負傷者の沖繩への送還について、要すれば飛行機を提供すべきこと、それから漁船及び乗組員に対する損害補償を行なうことを米側に申し入れたということでありますし、米側は、補償は医療費及び輸送費をも含むとの了解のもとにこれを受諾して、金額については米側から算定の上提示するということになっているそうです。すなわち、その旗が周知されていなかったためにこういう事件が起きたのではなくて、インドネシア側がこれを誤認したといいますか、誤って銃撃を加えたということになっていることは、前提として申し上げておきます。
  155. 藤野淳

    政府委員(藤野淳君) ただいま、私の先ほどの答弁が非常に冷酷であるというおしかりをこうむりましたが、船舶の国籍を処理する法律は、御承知のとおり船舶法でございまして、沖繩置籍船に対しましては、戦後に沖繩で取得され、あるいは新造をされましたものにつきましては、琉球船舶規則という規則で処理されておりますし、戦前に日本に船籍のありました沖繩置籍船は、その後日本の船舶登録原簿を閉鎖いたしておりまして、法律上は、形式的には日本には船の国籍は残ってないという形になっておるわけであります。私ども、沖繩の船舶行政の問題につきましては、外交問題は別といたしまして、実質的の面では、沖繩政府の職員が沖繩の法規の整備その他につきまして毎年私どものほうに参りまして、一般のわれわれ政府職員と全く同じ立場でいろいろ研修に参加してもらって非常に私どもはあたたかい気持で処理しているというふうに考えておるのでございまして、私の先ほどの申し上げ方が非常に冷酷なふうに響きましたのはまことに申しわけない次第でございまして、お許しいただきたいと思います。
  156. 大和与一

    大和与一君 外務大臣が言われた、旗が鮮明でなかった。そのことでなくて、そういう旗を一体、じゃなぜアメリカアメリカの旗を立てさせないのか。それはやっぱりアメリカ日本との関係で、潜在主権があるから、いろいろなややこしいことがあるからそういうふうになっているのじゃないかと、逆に言えば言えると思うのです。そうすると起こってしまってからアメリカと話をするというのじゃなくて、すべてのことについてそういうやっぱり移り変わりというか、あるいは引き継ぎというか、何かあったわけですから、そういうときに、ほかの問題についても、いろいろとアメリカ話し合いを諸般の情勢について全部各関係の役所がしていなくちゃならない。それを何もしないで、もうこれは向こうが勝手にやるのだから、向こうは力を持っているからまかせっきりであって、あとは何か起ったら、こっちは力も足りぬけれども、ちょっと言ってみるとこういう程度のことになるのですか。
  157. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 実は、その点申しわけないのですが、今度の事件が起きましたもんですから、従来も言っておるのですけれども、どうも確たる返事がないままに過ぎておるわけですが、今度はひとつ改善方を正式に四月六日に申し入れておるわけであります。そこで沖繩問題についての協議が近く始まるわけでございまするし、この際にひとつこの問題も改善をしようとこういう気持でおるわけであります。ただ、どういうふうに改善したらいいかという点につきまして、外務省としましては、まだ関係各省の間に意見の一致がないものですから、こうしますということをちょっと今の段階で申し上げられない、こういう状態でございます。
  158. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 午前に総理大臣が、沖繩の現地において日章旗を掲げることを了承さした、これは非常に大きなことなんだと言われたんですが、そこでちょっと私聞きたいのは、沖繩の祝祭日に日章旗を掲げるんですが、これは官公署なり何なりが祝祭日に限って掲げるということになるのか、そうでなくて、官公署、それから一般の民家も希望によっていつでも日章旗を掲げることができるのかどうか、その辺はどうなっているんですか。
  159. 宇山厚

    説明員(宇山厚君) 民家におきまして日章旗を掲げることは、全然制限がございません。いつでもよろしいことになっております。それで、問題になりましたのは公共の建物、官庁とかそれから学校とか、そういうところに掲げます際に、一々事前の許可が必要であったわけでございます。その点を昨年制度を改めまして、沖繩の祝祭日、それから正月の三ヵ日は許可なしに掲げてよろしい、こういうことになっておるわけであります。しかし、これにつきましても、先ほど申し上げましたように、公共の建物についてでございまして、民家に立てることは依然として初めから制限がございません。
  160. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 民家が国旗を掲げることが制限がないのならば、船舶も民家と同じような意味において国旗を掲げるということは差しつかえないし、船舶法その他の関係でいろいろ問題はありましょうけれども、先ほど言ったように、ほんとうに愛情を持っているのなら、船舶法その他が向こうに適用されるような主張もし、したがって、船が日章旗を掲げることは何ら差しつかえないというふうにむしろ主張をなすべきじゃないかと思うんですが、これは船舶には船舶法を適用しないから、したがって船は日章旗を掲げてはならないということは、アメリカ側がやかましく言うんですか、どうなんですか。その点は日本自身が遠慮してやらないのか。そこらはどういう事実の関係になっているか。  それからもう一つ、さっきも聞いた、国籍は日本だということになって、琉球人の国籍は日本だ、したがって日本人だということになっている。それとの関連からいえば、船が日章旗を掲げてもいいんじゃないかと思うのだが、それを何も拒む理由はアメリカ側にないと思うのでありますが、それを掲げないのはアメリカ側の主張によるのか、日本が遠慮しているのか、その辺はどういう事情になっておりますか。
  161. 藤野淳

    政府委員(藤野淳君) 国際法上の解釈問題は、外務省の方がまた答弁されると思います。船舶がその所属国の国旗を掲げておりますことは、前提としまして船舶関係の法定書類を備えておるということを前提とするというふうに私どもは考えておりまして、沖繩置籍船は船舶法の船舶国籍証書あるいは船員手帳あるいは船舶検査証書を受有し、その他もちろんその根拠となる法規の適用を受けておることを意味すると解しております。したがいまして、日本の国旗を沖繩置籍船が掲げるということになりますと、それは法律的に日本の国籍を有しているという意味に推定をされますために、私どもはこれは好ましくないとかように考える次第でございます。あるいは外務省のほうから正しい御説明があるかと思いをす。
  162. 中川融

    政府委員中川融君) 今御質問のありました、人間につきまして、沖繩の人が日本の国籍を持っていることこれはもう日本のみならず、アメリカも完全にそういう了解をしておるのでございまして、その点について疑いは一つもないわけでございます。したがいまして、沖繩の人が外地——第三国に行っておりまして何か問題が起きた際に、日本の大使館なり領事館なりが外交保護権を行使するということはこれは当然できることでございまます。しかしながら、船舶につきましては必ずしも個人の場合と同じように簡単にはいかない面があることは船舶局長の申しましたとおりでございまして、いやしくも日本の国旗を掲げた船舶であれば、その船舶についての全責任を結局日本政府が外国において負わなければいかぬわけであります。たとえば、船舶がほんとうに安全な船であるかどうかというようなことについては、船舶検査ということを定期的にしなければいけない。それから船舶の中で、もし犯罪等が行なわれるならば、これは日本が責任を持って裁判権を行使しなければいけない。要するにその国——その国旗を掲げておる政府がいわば全責任を外国に対して負うわけでございますから、そちらのほうの船舶行政がみんなアメリカにありながら、その国旗だけを日本のを掲げるということになってきますと、その間なかなか困難な問題が出てくるわけでありまして、日本の国旗を掲げます際には、やはり船舶行政についても全責任をとる、やはりその態勢が整わなければいけないであろうと思うわけでございます。しかしながら、現実の問題といたしまして、沖繩籍の船舶に対してどういう旗を掲げさせるかという問題、これは非常にむずかしくなるわけでございますが、これとよく似た例といたしましては、占領中の日本が、やはり国際標識の、これはD旗でございましたか、それを掲げていたのでありまして、ちょうど同じように三角形に切った旗を掲げていたことがあるのでございます。アメリカ側考えとしては、自分のこの行政権のもとにある地域の船である。したがって自分が全責任を負う船ではあるけれども、アメリカの領域でないところであるから、アメリカの国旗を掲げさせるのはやはり適当でない、こういう考えから、この国際標識D旗というものを掲げさしておると考えられるのでございます。必ずしもこれが、今のような事態が起きますと適当とは言えないわけでございまして、やはりこれは何らかアメリカと話して調整すべき必要があるであろうと思いますが、国旗を掲げる場合には、必ずしも個人の場合のように簡単には言い切れない面があるということを御承知願いたいと思います。
  163. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 しかし、人間に対して国籍が日本国籍であるならば、やはり船の籍も日本に国籍はあるのだというふうに考えるのが妥当なんじゃないか。先ほど、琉球に籍はあるのだと言われるけれども、琉球国なるものはないのだから国籍はないと、無国籍だとして、沖繩にあるということは無国籍船として顧みないのだということにしかならないのだと思います。そこが、私さっき言っているように、非常に冷酷な扱いをしててん然としておられるのがまことにわれわれのふに落ちないと言うゆえんだ。そこで今条約局長の言われるように、しかし施政権なり行政権はアメリカ側にあるので、われわれは何ともいたし方がないとおっしゃる。それならば、行政権、施政権のあるところがその基本的な人権、生命、財産を安全にするという意味において、アメリカの旗を掲げさせればいいので、それだけの責任をとってもらうことがむしろ必要なんじゃないか、そういうふうに考えますが、それらの点についてはどういうふうにお考えですか。
  164. 中川融

    政府委員中川融君) ただいま御指摘のように、行政上の権限は全面的にアメリカにあるわけでありますから、アメリカの国旗を掲げさせるということ、これ確かに一つの解決方法でございます。それと同時に、むしろ船舶行政をもできるだけ日本に移譲してもらって、日本の国旗を掲げさせるという、これも一つの解決方法といいますか、われわれにとって一番好ましい解決方法であるわけであります。何かそういうふうな形にして、今の国際標識D旗というような、一般になかなかわかりにくいものを掲げて遠いところまで行くということは、どうも適当でないと思われますので、これらの点につきましては、先ほど政府委員から御答弁申しましたように、最もよい解決方法を考えまして、アメリカと鋭意折衝をしたいというのが、ただいまの考え方であります。
  165. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 沖繩の人たちの生命財産を守ってやる。それからさらには施政権返還を積極的に具体的に非常な熱意を持って交渉するのだと言われるのならば、今条約局長の言われたような考え方、特に船舶行政に関する限りは完全に日本が掌握するのだ、掌握してしかるべきだということを大前提にして、第一の前提にして交渉をすることが必要だろうし、もしアメリカ側がそれをがえんじないのならば、アメリカ側に全責任を持たすという意味においてアメリカの国旗を掲げさすということを承諾させるか、そういういろいろな態度なり順序があると思うのですが、いずれにしても生命、財産を守ってやる、それから施政権返還を、手のつけられるところから少しでも奪還をするという態度が望ましいと思いますが、大臣、これらについてどういうふうにお考えになりますか。
  166. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先ほどからるるお答えしておりますように、この問題についてはアメリカ側といろいろ交渉してみたいということで考えております。しかしながら、どういう形にするのが現在のこの船舶法その他から見て最も妥当であるかということについて、さらに国内——わがほうの所管庁間で打ち合せをいたしまして、最も妥当なるところをもって交渉したい。
  167. 大和与一

    大和与一君 そのアメリカと近く会談を持つことになっているそうですが、それはけさほど来言われている施政権を、一ぺんに全部でなくても、一部でもやっぱり返してもらう。たとえば奄美大島の問題があるわけですが、そういう考え方で解決をしながらあわせてやっていくのだ、こういうふうに考えてよろしいのですか。
  168. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) そうではございませんで、施政権の問題については、先方、アメリカ側の言っている言い分があるわけであります。しかしそれに至らざる間の措置として、今回の新しいケネディ大統領考え方というものが発表されまして、行政命令が出たわけであります。それを最もわがほうの考え方に沿う解決をするにはどうしたらいいかという範囲で交渉するということであります。
  169. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、今のお話だと施政権の問題、施政権返還の問題は、今後の交渉その他のときも触れないのだということなんですか。
  170. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) そういう問題に触れる時期には触れますけれども、今回の交渉は、この大統領の声明並びに行政命令に基づく話し合いでございますから、そこでまた全部ひっくり返すような話をしたのでは話ができない。こういうことだと思います。施政権返還の問題については常時交渉いたします。ただし、この機会はその現状をどうするかという具体的な話し合いの機会でございますから、この機会にまたそれを新規まき直しに出るということは、私は妥当でないと思います。
  171. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それはおかしいと思うのですが、その問題は次のときにやります。
  172. 大和与一

    大和与一君 それからその沖繩での国旗の問題ですが、民間は自由だ。今度話がまとまったのは官公署でしたね。そういう役所。そうするとそれ以外には船舶法に基づく船だけですか。あと全然例外がありませんか。正確に言って下さい、ほかにまだ幾らもあるのに、いいかげんなことを言っては困るので。それだけだったら、あとは自由だということになるわけですからね。
  173. 中川融

    政府委員中川融君) 飛行機があれば飛行機が問題になるわけですが、今沖繩には飛行機の会社もございませんし、飛行機飛んでおりませんから、この民家、あるいは官公署、船舶の国旗問題、それ以外には国旗の問題はないと承知しております。
  174. 大和与一

    大和与一君 そうすると、日本の船舶法を変えれば、沖繩の船も日の丸を掲げていいのですね。
  175. 中川融

    政府委員中川融君) 日本の船舶法によりますと、ただいま船舶局長の申しましたとおり、船舶国籍証書の発給を受けなければ日本船舶とはみなされないわけでございますから、この条項を変えまして、沖繩については例外として日本の船籍港で船舶国籍証書の発給を受けなくても日本の国旗を掲げることができるというような例外規定を設ければ、これは沖繩の船に日本の国旗を掲げることは技術的にはできると考えております。
  176. 大和与一

    大和与一君 それをアメリカと相談しなければできませんか。
  177. 中川融

    政府委員中川融君) これは平和条約三条で施政権の全部がアメリカにございますので、そのアメリカ施政権関連する事柄については、すべて協議しなければできないわけでございますから、したがって、この問題もアメリカと協議、アメリカが同意しなければできないわけであります。
  178. 大和与一

    大和与一君 前例として占領中にこの旗を掲げたというのですが、そのときに、日本政府側でアメリカ話し合いをした場合に、日本の国旗をなぜ立てられぬかという、そういう問題がずいぶん起こったのです。そのときに出たから、それが前例になっていると思うのですけれども、そのときの理論はどういう内容ですか。
  179. 中川融

    政府委員中川融君) もちろん、これは占領直後に先方から指令が参りまして、日本の船舶はすべてアメリカの管理下において運航されるということになったわけでございまして、そのときから今のスキャジャップ旗が用いられたわけでございます。したがって、そのもとは指令でございます。連合国司令部の命令でなったわけでございます。その後にどういう交渉がありましたか、私は実は詳しいこと存じませんが、占領中は結局この制度が続いていたわけでございます。
  180. 大和与一

    大和与一君 沖繩の立法院から、国会図書館を通じて運輸省にこの問題について問い合わせが来ていますが、いつですか、どういう内容ですか。
  181. 藤野淳

    政府委員(藤野淳君) 問い合わせがありましたこと、私承知いたしておりません。
  182. 大和与一

    大和与一君 それは困りますね、そんなこと知らぬじゃ。正確に言いますと、昭和三十六年の十二月二十一日、立法資料調査依頼として国会図書館に来ております。そうして三十七年の一月十三日、国会図書館から運輸省へこの内容は行っております。その内容が三つほどあるのですがね。(「運輸省、怠慢だぞ」と呼ぶ者あり)全然知らぬですか。(「だから冷たいと言うのだよ」と呼ぶ者あり)お答えがなければもうちょっと言いますがね。一つは、日本に船籍港を——船の籍ですね——定めるとどういうことになるか、船舶法四条との関係。二つには、外国に船籍港を設ける場合の実態について。これはちょっとよくわからぬものだから、先方に照会中だと思うのです。三つには、海上運送法で貨物運賃を届出制にしている理由と、旅客のほうは許可でしたかね、そういう内容が来ているはずなんですよ。ですから、やはりそういうことも向こうでは相当前の話なんだから、今起こっているのじゃないのだから、それについて、もし来ておれば、当然外務省とも話し合いをしたり打ち合わせをしておかなくちゃいかぬ。今そんなのんきな顔をしているけれども、沖繩から押し寄せて来ます。それじゃたいへんだ、いいかげんなことでは。
  183. 藤野淳

    政府委員(藤野淳君) ただいま非常に広範な問題につきまして照合があったようでございますが、これはおそらく運輸省の官房においてまだ処理中だと推定されます。
  184. 大和与一

    大和与一君 早急にその経過を調べて、そうして外務省のほうに連絡をして、日米話し合いの参考にされるように要望しておきます。
  185. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ただ要望だけでなく、そういう調査依頼が来ているのだから、ひとつ運輸省のほうで責任を持ってその返事を至急に出してもらいたい。同時に、この委員にもそれを出してもらいたい。
  186. 大和与一

    大和与一君 外務大臣に、この補償の問題ですね、これはアメリカがインドネシアに要求するらしいが、日本政府としても、非常に残念なことだけれども、こういう不幸な結果が生まれたのだから、しかも死亡者も出てきているのだから、日本政府としても、この犠牲に対して正当な補償が出るように協力すべきだと思うが、具体的な内容を含めた御見解を承りたいと思うんです。
  187. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) わがほうのインドネシア大使館に対しましては、黄田大使、またはスラバヤにございます領事館の石出領事、この両名に対しまして、この調査方の訓電を発しまして、さらに被害者の保護について万全の措置をするように訓令をいたしました。その結果、これは施政権者はアメリカでございますから、アメリカの大使が交渉したわけでございますが、わがほうも側面的にこの交渉の促進に助力いたしまして、その結果について、先ほどもお答えしたような、インドネシア側も非常に遺憾の意を表しまして、損害賠償について万全の措置をとるという約束をしたわけでございます。
  188. 大和与一

    大和与一君 それは、私たちの言っているのは、アメリカの旗を立ててくれというのでなくて、日本の旗が立てられぬか、それがやはり強い沖繩の人たちのほんとうの気持だと思うんです。それを代表してお尋ねしているわけでありますから、しかも、近く行なわれる日米会談でおそらくこの問題は何らかの解決を見ると私は期待したいんです。そうなると、再び起こらないことなんだから、とにかく当面私ども死亡者を含めたこの大きな犠牲に対しては、ぜひひとつ積極的に日本側も協力し、なるべく十分な補償をしてもらうように、こういうことをひとつ私は外務大臣に特にお願いしておきたいと思うんです。  それから、大体これで私の質問を終わるんですが、去年六月の池田ケネディ会談において共同声明が出ている。これはずいぶんりっぱなことが書いてあるんですが、これは今の船の問題だけじゃないですけれども、十分日本政府も協力するというか、そんなようなことが書いてありましたね。ですから、この問題は必ず最近行なわれる日米会談で取り上げて解決をする、こういうふうにひとつ了承してよろしゅうございますか。
  189. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ただいまだんだんの御質問趣旨については、われわれもできるだけの努力をして、何とか成果をおさめたいと、こう考えている次第でございます。
  190. 大和与一

    大和与一君 私の質問はこれで終わります。
  191. 井上清一

    委員長井上清一君) それでは、本日はこれにて散会いたします。    午後三時七分散会