○
説明員(
柴原孝太郎君) 災害対策につきましては、基本的には恒久的な部分と、応急的な対策と二つあるわけでございます。恒久的な治水事業の対策につきましては、すでに明治の初期から行なわれておるわけでございますが、当時明治初期におきましては、主として河川につきましては、舟航灌漑の便をはかるという点に重点を置きましたが、明治二十八年以来大災害が起こりまして、明治二十九年河川法の制定、それから三十年に砂防法の制定を見るに至りまして、続いて明治四十三年の大災害を通じまして、非常に各河川におきまして長期的な洪水対策事業がなされてきたわけであります。これがおおむね明治の末期から大正、昭和にかけて順調に行なわれてきたのでありますが、戦時中に一時工事が途絶いたしまして、戦後気象
状況の悪化に相ついで大災害が起こってきたということであります。で、実はそれに伴いまして、昭和十二年ごろから全国的に河水
統制の調査を行ないまして、これは堤防だけでなくて、水源地にダムを設けたり、そしてこれを洪水の害を防ぐためにそこに一時水を貯溜し、その貯溜した水を利用しまして、水道用水とか発電とかというように多
目的に利用しようという機運が非常に起こりまして、昭和十二年からずっと全国的に建設省で河水
統制という調査が実際にできたのであります。たまたま戦後相ついで大災害が起こりまして、二十二年のキャサリーン台風によりまして利根川がはんらんし、二十三年、二十四年、二十五年と相ついで大きな災害が起こってきたわけでありまして、こういう災害を契機といたしまして、従来の堤防とともに多
目的ダムをあわせて
考える。それで水源は治山と
協力して砂防ダムを作り、土砂の疎通を可能な許容の限界にとどめようというようなことでありまして、種々各重要河川について検討が加えられてきたわけであります。そうしまして、すでに二十八年に西
日本の大災害を契機といたしまして、建設省といたしましては、治山は農林省でございますが、治山治水基本
計画というものが制定をみるに至りまして、これは立法化はされませんでしたが、その
計画を
基礎といたしまして、昭和三十五年
法律第二十一号の治山治水緊急措置法が制定されることによりまして、同年十二月二十七日、治水事業十カ年
計画というものが閣議
決定を見ております。現在われわれ治水事業は、この治水事業十カ年
計画によりまして、三十五年以降四十四年までの十カ年間の事業として、目下三十五年、三十六年と実施して参ったわけでありまして、これによりまして、特に重要な百河川につきましてはおおむね三十五年度以降十五カ年間で完成することを目途として、国が直轄で施行するものとしまして、その他の河川改修につきましては、都道府県知事がその規模におきまして中小河川改修並びに小規模河川改修事業、それから局部改良事業としまして、事業効果の大きなものから実施するということになっておりまして、また高潮対策事業並びに汚濁対策事業につきましても、東京、大阪等の地区について重点的に実施することになっております。また砂防につきましては、特に荒廃の著しい渓流及び土砂害の危険が予知される点につきましては、特にその規模及び効果から見て重要な約三十水系、六十河川の砂防につきまして、三十五年以降十五カ年間で国が直轄完了をすることを目途としておりまして、その他の河川の砂防事業については都道府県知事が事業効果の大なるものから重点的に実施する、こういうことになっておりまして、それから多
目的ダムにつきましては、最近の国民経済の発展によりまして、特に水資源の強化をはかる必要がありますものですから、その水の供給源としてのダム並びに洪水対策としての
目的をもちまして、多
目的ダムをできるだけ
推進する、こういうような状態で前期、後期合わせておおむね八千五百億円の事業量によりまして実施しよう、こういう
状況であります。
以上、大体治水事業の基本的な長期的な対策でございますが、次に、これとあわせまして、科学的に雨が水源でどのくらい降ったらどのくらい下流に水が出てくるか。つまりどのぐらい流量となってくるかということは、これは一番河川
計画上重要な問題でありますので、これはかねてから全国的に水利調査を実施しております。水利調査は行政部費で恒久的に行ないますものと、それから公共事業費によりまして、各河川事業の中におきまして、工事上必要なために設けられるものと大別して二種あるわけでございますが、現在、来年三十七年度におきましては、行政部費では雨量観測所は三百五十三カ所、水位観測所三百四十五カ所において観測を実施する。これにつきましては毎年この資料をまとめまして、雨量年表並びに水位年表及び流量年表として建設省で発刊しております。
次に、そういうような調査を土台にいたしまして、一方技術的な、つまり先ほど言いました雨が降ってどのくらいの流量になるかということが防災上非常に重要な技術的問題でありますので、これにつきましては、各河川の事業所におきまして、また建設省の土木
研究所におきまして
研究しておりまして、種々成果が出ているわけでありまして、こういうような一方においては計算方法の確立、
理論の確立、それに対する応用等によりまして逐次予報にこれを生かしていくというふうな結果になっております。特に多
目的ダムにおきましては、水源におきまして予報の迅速を、雨及び水位その他流量を迅速に知らなければなりませんものですから、主として無線ロボット雨量計もしくは無線ロボット水位計等の設置をなしておりまして、これによりまして事務所におきましては、ボタンを押すだけで直ちに所要の時期に所要の量を知ることができまして、これによってダムの円滑な操作を行なおうとしておる次第であります
以上、大体現況と応急対策を申し上げました。