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1962-03-15 第40回国会 参議院 運輸委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月十五日(木曜日)    午前十時四十二分開会     —————————————   委員の異動 三月十四日委員松浦清一君及び中村正 雄君辞任につき、その補欠として赤松 常子君及び基政七君を議長において指 名した。 本日委員基政七君及び坂本昭辞任に つき、その補欠として中村正雄君及び 小酒井義男君を議長において指名し た。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     村松 久義君    理 事            天埜 良吉君            金丸 冨夫君            谷口 慶吉君            大倉 精一君    委 員            重宗 雄三君            鳥畠徳次郎君            平島 敏夫君            重盛 壽治君            小酒井義男君            中村 正雄君            赤松 常子君   政府委員     運輸省海運局     長      辻  章男君     運輸省船員局     長      若狭 得治君   事務局側      常任委員会      専 門 員 古谷 善亮君   参考人     日本船主協会     理事長    米田富士雄君     全日本海員組     合副組合長  南波佐間豊君     東京商船大学     学長     浅井 栄資君     船舶通信士協     会常任委員長 大内 義夫君     —————————————   本日の会議に付した案件船舶職員法の一部を改正する法律案  (第三十九回国会内閣提出) (継続  案件)     —————————————
  2. 村松久義

    委員長村松久義君) ただいまより委員会を開会いたします。  船舶職員法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は四人の方々を参考人として御出席を願い、それぞれの立場から本案に対する御意見を伺いたいと存じます。  参考人の方に申し上げます。本日はお忙しいところをわざわざ本委員会のために御出席下さいましてありがとうございます。御発言は特に時間の制限はいたしませんが、おおむね十五分程度とお心得を願いまして御発言を願います。終わりまして、委員の方の質疑があれば御答弁を願いたいと思います。  それではこれより順次御発言を願います。
  3. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 日本船主協会理事長米田でありますが、今日こういう機会を与えられたことは、まことに感謝にたえないところであります。厚くお礼を申し上げます。非常に簡単に私どもの考えているところを申し上げまして、そしてあと、今委員長の仰せのように、御質疑がございましたらば、それに答えさせていただきたいというふうに存じております。  今回の船舶職員法改正につきまして、私どもが考えておりますまず最初前提は、職員法で要請する乗組員数というふうなものは、船舶航行の安全上の最小限度を要請しておるということだろうと思います。したがいまして、船舶職員法改正が、業務用通信とか、あるいは一般公衆用通信の量をも考えた改正ではないというようなふうに心得ておるのであります。  その次に、今回問題になっております二十四時間の聴守で、オート・アラームを備えつけた場合には八時間に御改正願いたい。またその案のようでございますが、それにつきましては、これは海洋航行中の世界船舶が、相互に安全に航海するということでございまして、結局自分の船の海難救助というのではなくして、むしろ他船の遭難救助というためにこの規定が設けられてあるという精神だと思います。で、この意味では海洋航行中の世界船舶が、いわば相互扶助あるいは相互保険のような関係にあるというように考えられますので、したがって日本船外国船以上に負担を多くしなくてはならないということはないかと思います。ことに海運企業は御承知のように世界的に非常に自由な競争をやらされておりまして、したがいまして、その前提である企業ベースは、世界的に水準が大体同じであるというベースの上に立って競争が行なわれておるのでございます。その上に、日本海運を抽出して言いますと、日本海運は御承知のように戦後の回復が非常におくれておりまして、また企業力が非常に脆弱でございます。そのようなことからして、特に外国海運よりもよけいに負担をしなくてはならないということはない。また、でき得れば、外国海運よりも少なくていける方法があれば、そのほうがまだ今の日本海運の実力からいえば、合っておるのではないかというふうに考えられますが、しかし、これは世界的にきめられましたいわゆる相互扶助精神によりまして、世界並み負担はになわさしていただきたいというようなふうに考えております。したがいまして、今回の改正案のように、現存船について施行後三年間二人というふうなことは、世界のあらゆる船舶オート・アラームを備えつけることを条件として一人であるということに対しまして、むしろ矛盾がございます。私どもは、徹底的に最初からオート・アラームをつけた場合には、一人で行っていただきたいというふうに考えるのであります。何分とも長い間三人でやって参りました一つの経験的なものもございますので、これを一挙に変えるということもどうかというふうなことからしてこの御配慮から、経過措置として現存船については二人というふうにおきめになりましたことも、これはやむを得ない。その経験によって一人に三年後には当然になるものというふうに私は考えております。  そこで、こういう前提に立ちまして今回の改正案についていろいろ考えてみたのですけれども、すでに御承知のとおり海洋におきますところの船舶無線電信局の執務時間あるいは聴守時間あるいはそれに要する乗組員の人数というふうなものは、国際電気通信条約あるいは海上における人命の安全のための国際条約、いわゆる安全条約あるいは電波法、それから職員法安全法というふうなものできめられておりまして、これらにつきましては、すでに十分御検討いただいたことと存じますので、私はあえてそれを詳しく申し上げて時間をいただくことは避けたいというふうに存じております。ただ、国際通信条約におきましても、第一種局は無休、第二種局は十六時間、それから第三種局はそれよりも少ない聴守時間というふうなことになっております。そのことを、電波法国内法として施行するために、第一種局の常時の聴守執務時間のものにつきまして、旅客船については三千トン以上、それから貨物船につきましては五千五百トンをこえるものというふうなことになっておりまして、また、第二種局甲の十六時間勤務につきまして、やはり総トン数三千トン未満から五百トン以上の旅客船、それから五千五百トン未満から一千六百トン以上の貨物船というものについて十六時間というふうな規定をしております。第二種局乙の八時間につきましては、それよりもっと小さい船について規定をしておるわけであります。こういうふうに条約電波法でくだいて国内的に施行しておるのでありますが、これがすでに御承知のように安全条約からいたしますれば、国際的に、オート・アラームをつけた場合には、一人でいいということ——総トン数千六百トン以上の場合においては一人でいいという規定がございまして、職員法のほうはこれに対しまして、まあ電波法がかなり上回った規定になっておりますので、それに合わせるように職員法でもやはり平水または沿海を航行する貨物船については、比較的程度の低い乙種の通信長一人、それから近海または遠洋区域航行する貨物船について千六百トン未満については通信長一人、これは甲種。それから千六百トン以上五千五百トン未満については通信長甲種と、それから二等通信士。それから五千五百トン以上のものにつきましては通信長甲種一人、二等通信士一人、三等通信士一人、合計三人というふうなことになっておりますのを、今度の御改正の方向でこれは全部一人にしまして、そうして経過的に五千五百トン以上のものにつきまして、現在船について三年間、通信長と二等通信士、二人というふうなことになっているわけであります。  そこでいろいろオート・アラームの性能その他についての御検討が重ねられているようでありますが、現在千六百トン以上の船につきましては大体常時聴守のようであります。そこで二十四時間の聴守ということになりまして現在二人でやっておる千六百トン以上の船につきましても、これは八時間、八時間を人、あと八時間をオート・アラームでやって二十四時間ということになっているのでありまして、現在すでにオート・アラームを使うことを前提としたものが船舶職員法にきめてあるのであります。また、それが安全法電波法関係においてもそうなっているのであります。そこで、すでにこの点につきましてはある程度政府もそれから実際面のほうにつきましても、オート・アラームというものに対する信頼が八時間は出ている。八時間を十六時間にすることがどうしてできないかということが一つの問題に残るわけであります。まあそこら辺のところが現行の規定でございます。  さて、こういうふうな状態になっておりますのに、船主協会は先ほどから申し上げましたように、いわゆる国際水準の、外国と同じような相互扶助の制度にしていただきたい。そこで、それを一人にしていただきたい。オート・アラームと一人ということにしていただきたいということを二十五年以来何回となく繰り返してお願いして参っているのであります。今回特にそれを強くお願いして、ぜひひとつ実現をしていただきたいということを申し上げます理由に大体三つ、四つございます。  その一つは、いわゆる日本製オート・アラーム信頼性が二十五年くらいから言っておりますときよりは、はるかに増強してきているということであります。郵政省がすでに御承知のように世界海洋、ペルシャ湾とか、インドネシア航路ニューヨーク航路においてかなり緻密な検査をした結果、これに対して型式承認を与えていられるわけでありまして、いわゆる日本製としてこれでいいというふうなことができているわけであります。その後もだんだん技術的な進歩が加えられているようでありまして、現在、日本で御承知のように輸出船外国船をどんどん作って、そうして外へ出しておりますが、その輸出船日本製オート・アラームをつけている数が二十三年から三十六年まで百三十八台、約百四十台のものが外国船につけられておる。これはオート・アラーム通信士一人ということで動いておるわけでありまして、これに対して、私はまだ何らのクレームを聞かないのでございます。大体これで、オート・アラームの機能で満足しておるのではないかということが想像できるのであります。それから日本船につきましてもすでにもう六十台以上がつけられております。このつけられたものにつきましては、船舶職員を二人ということでやっておるわけでございまして、これは実は海員組合との関係で、昨年かなり幅の広いベースアップがございました。その幅の広いベースアップの裏返しに船員生産性向上というふうなことに対して船主努力する、組合も協力するというふうなことから、従来は千六百トン以上でも三人の無線通信士を乗り組ましておりましたのが、近海の一区と二区というふうなところのものにつきましては、千六百トン以上五千五百トン未満貨物船についてオート・アラームを備えつけることを条件として、二人というふうなことも可能であるということになったために、そのほうの努力船主がいろいろやりまして、その結果こういうふうな国内船にまで大体つけた。それに対してのクレームと申しますか、そういうものもあまり私どもは聞いておらないのでございます。ですから、ある意味ではオート・アラームはすでに実験を経ておるというふうな形がございます。これが、今回ぜひひとつ実現していただきたいと申し上げる一つ理由であります。  第二の理由は、いわゆる海運企業合理化というふうなものが今われわれにひしひしと迫られております。御承知のように海運企業は戦後ほとんど配当ができないような形にありましたものを何とかして一人前の企業にひとつしよう、そのためには市中の金利あるいは開銀の金利も五年間現在のものの二分の一程度をたな上げして、そうして再建計画を立ててみて、その再建計画に合格したものにはそれを実施していこうじゃないかということでございます。再建計画目標は、大体借入金の延滞をほとんどなくしてしまうとか、未償却をなくしてしまうとかいうふうなところで大体うすうすながら配当体制に入れるというところに目標を置いておりまして、これで企業が一人前になるというようなことで、その合理化を非常にわれわれのほうは一生懸命になってやっておる。たまたまそれに船員ベースアップが昨年の一月に大体できまして、それから以後、その金額は、まあ外航方面と合わせまして約四十四億八千万円、約四十五億に達するベースアップ金額を、それをわれわれはただ見ておるわけにはいかない、これを何とかして切りくずしていくというためには、できるだけ船員生産性向上をやって、乗組員定員合理化をやるということによってこれを克服していくということでございます。で、その結果、大体昨年の七月からこの一月までに行なわれたのが外航について約八億五千万円、それから内航について六千万円、大体九億くらいの金に相当するものが合理化によってまあ生まれてきたわけでございます。で、これをなお今後も続けていかなくてはいけないということになるわけでございます。もちろん、こういう場合のこの定員を減らすということについては、船の安全性を阻害しない、労働強化にならないというふうなことは十分考えなくてはならない。また、海員組合もそういう条件の上に立ってこれに協力していくという形になっておるわけでありまして、この意味では、私は、少しまあオーバーな言い方かもしれませんが、日本海運再建とそれから船員の給与の上昇と、この二つの、ある意味においては矛盾するものを調和させるために、船主労働組合とが一緒になって真剣な努力が払われているというのが今の状態ではないかというふうに思っております。したがいまして、今後もこれはどんどん続けられて参るのでありますが、そのときどうしても厚い壁になるのは電波法でございまして、電波法関係からして三人という壁はどうしても破れないのでございます。  そこで、このわれわれが今原因とした中の内訳を見ますと、ほかの方面、たとえば甲板部とか機関部とか事務部とかいうような方面ではかなり出て参っておりますけれども無線関係ではほとんどその成果が現われてこないという、まあ現われても非常に少ないまだ段階にあるということでありまして、これを何とかしなくてはならないということが一つと、それからもう一つは、今度は無線通信士の側からいたしまして、非常に現在需給が逼迫しておりまして、供給難の形であります。たとえばこの三十六年度あたり職業安定所数字等を見ましても、まあほとんど求人申し込みが求職の申し込みの倍以上になっておりまして、なかなかその求人を満たす、申し込みを満たすというわけにいかない。それから、新しい一つ供給源としての大学卒業生というようなもの、あるいは高校卒業生、こういうものの無線関係を見ましても、やはりまあ大学卒業生の、無線関係で三十五年には四十七人ぐらいの者をわれわれは必要としておったのに、わずかに四人きりいないというふうなことでありました。で、三十六年になります、ともうゼロになりまして、短大の者が一人ある。それから高校卒業の者につきましても、三十五年度では三百十一人のわれわれの要請に対して、入ってこられたのが六十六人、三十六年度は百六十七人に対して六十人というふうに、非常に少ない数で埋め合わせをしておるというような状態であります。それにもう一つ、もしこういうふうに三人を一人に減らすということによって失業者が出るということになれば、これはたいへんなことである。またその時期ではない。われわれが二十五年以来いろいろお願いして、絶えずそこに頭を向けなければならない問題でしたが、今回は失業者というものは絶対に考えられぬ。さらに今後の船の増強というふうなものを見ますと、今の三人が一人になったその二人分についても、何とか自分のところにかかえておいて、そうして新しく入る人とともに新しい船に向けていきたいというふうなことでございまして、失業者のことは全然考えられないことであります。もちろん私たちは、この需給関係の一時的なことからこういうことをお願いしておるのではないのでありますが、まあ時期といたしましては今が一番いい時期であり、また将来も失業者が出るという見通しは立たないような状態が今日の状態かと存じますので、ぜひお願いを……。
  4. 村松久義

    委員長村松久義君) 米田参考人に申し上げますが、簡潔にひとつ願います。
  5. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) で、あと今度は法律改正の影響をいろいろ言われる方がございますが、日本近海が非常に海難が多いということでございますけれども日本近海海難が多いのは、大体海上保安庁の整備によりまして、それをほとんどカバーできるような形になっておりますので、あえてこの日本海運の、近海のことでこういうものを必要とするということはないというふうな判断の上に立っております。  それから気象業務につきましても、まあいろいろございますけれども気象業務の取り方をもう少し具体的に検討いたしますと、必ずしもこれを減らしたために起こるという数字的なものだけでは片づかない。むしろ、それを減らしても大丈夫目的を達するというふうな気持でございます。  それから、一人になったために通信が混乱するのではないかというふうなことでございますが、大体現在の船の一日あたり通信が平均二・四通から四・七通くらい。その所要時間が三分から五分ぐらいのように平均しますとなりますので、この分量を、一時に殺到するからといって、通信が混乱するというふうなことも考えられない。また、そういう場合においては外国電信局を使えば十分にそれをカバーすることができるというふうなことが考えられます。これらは、われわれだけで考えたのではないのでありまして、あるいは保安庁あるいは電電公社あるいは気象庁とも十分打ち合わせをいたしまして、まあこれを考えた、こういうふうな結論に達したのでありまして、その面でも別段心配はないという結論を持っております。  それから労働過重にならないかということは、先ほどのようにオート・アラームとの関係、われわれのほうの通信の量の合理化等によりまして、あるいは気象業務の取り方等の調整等によりまして、労働過重にならないで済むようなことになるというふうに存じております。  そこで、最後に少し時間をいただきまして結論だけをひとつ急いで申し上げたいのでございますが、今の世界海運は非常な熾烈な国際競争をやっております。その国際競争のやり方は、ほかの産業が技術革新を入れてコストダウンをどんどんやっておりますから、それに合うように、輸送費コストダウンというふうなことで競争しておるわけでありまして、そのコストダウン一つ建造費を下げるということと、もう一つ運航費を下げるということの二つになるわけであります。その運航費を下げるということを各国の例で見ますと、たとえばアメリカではマリナー・タイプの船は現在四十五人から五十五人ぐらいでやっておるものを十名くらいにならないかというふうなことでやっております。それからノルウェーあたりも、現在大型のタンカーを作りまして、その機関部が十五名から十八名くらいでやっておったものを六名から九名くらいでやれないかというふうなことで検討が進められております。それからドイツにおいてもやはり同じようなことで、非常にやっております。こういうふうな関係で、今度は日本の例を見ますと、日本もやはりこの中でコストダウンをやるというふうなことからして、先ほどのベースアップの刺激もございましてどんどん数を減らしております。その結果、前は日本乗組員数は非常に多いといわれておったのでありますが、たとえばニューヨーク航路を見ますと、三十六年までは五十一名ぐらいだったのが、これが外国船が約四十七名くらいであります。それを三十七年には四十五名くらいのところまで下げて参りました。で、そういう形でやっておりまして、ことに最近できました船は四十三名というふうなことで、アメリカでも驚異的な目をもって見るほどに下げておる。こういうふうなことによっての競争力をつけておるわけであります。で、今度は政府のほうもこれに合わした予算を取りまして、大体二十名前後でできないだろうかというふうなことでやっております。そういたしますと、無線通信士のほうが三名で、非常に忙しいと思われるような甲板部機関部のほうがいろいろ減らされていくということで、船内の配置が非常なアンバランスになる、そこで船内融和というふうなものが非常にむずかしいようなことが人事管理上出てくるという面もありまして、何とかひとつこの際にこれを直していただきたいというのが一つの切実なわれわれのお願いでございます。で、船員生産性向上ということにつきましては、やはり海員組合との関係も非常にうまくいっておりまして、何とかひとつ労働過重にならないような方法で減らしていくということが、先ほどのような結果になったのでございますが、私はそれを同じように無線通信士のほうにも向けていただきたい、無線通信士を私は軽視しているのでは絶対にないのでありまして、これから先、やはり船舶航行について電波通信必要性というものはまことに加重されて参るわけでありまして、そこで、それを扱ういわゆる無線技術者というものに対するわれわれの期待も非常に大きいのであります。したがいまして、今申し上げましたような傾向を十分に無線通信士その他の方面でもよく御理解して下さいまして、一緒になって、そうしてこの日本海運再建に資していただきたい。われわれは無線技術士に対して非常に大きな期待を技術的にも経営的にも持っておるということでございます。  それから最後に申し上げますが……
  6. 村松久義

    委員長村松久義君) 米田さん、なるべく簡潔にひとつ願います。時間がだいぶ超過しております。
  7. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 冒頭に、船舶職員法は安全のためにと申し上げましたが、業務用のこともあるいは問題になるかと存じます。したがいまして、この法律ができましたあとには、、やはりこの業務用通信も考慮に入れまして、海員組合とも十分に協議をいたしまして、そうしてこの改正された法律の円満な実施をはかっていきたいというふうに考えております。  大へんどうも長い時間いただきまして恐縮でございましたが、そういうことでございますので、あと御質問で申し上げたいと思います。
  8. 村松久義

    委員長村松久義君) 次に、全日本海員組合組合長南波佐間豊君に願います。
  9. 南波佐間豊

    参考人南波佐間豊君) 私は海員組合を代表しまして、船員立場から、この法律改正といいますか、われわれは改悪と理解しておるわけですけれども、反対の理由を述べたと思います。  まず、第一番に今度の法律改正というものは、われわれから見ますると技術的な検討もなく、あるいは理由合理性もなく、単に海運行政の面から、運輸省がいうところの海運機構合理化だということから乗組定員を減らすという立場に立って推進しておるということでございます。後ほど申し上げますけれども船舶職員法改正につきましては、電波法改正をされるから変えるのだと、こういうことに尽きるのであります。電波法につきましては、過去において、第二十六国会以来議員立法として国会審議をされたわけでありますけれども、二十六国会では継続審議になり、さらに二十七国会におきましても継続審議、二十八国会においては審議未了ということになったわけであります。それを今度、今申し上げましたような理由から、われわれの理解するところにおきましては、運輸省が推進力となって、閣議了解ということを理由にいたしまして、昨年の三月十六日ですか、電波法の一部改正についてという閣議了解をもとにして、電波法なり船舶職員法というものの改正というものが今度の国会に出てきた、こういうことであります。御承知のように運輸省設置法によりまして、付属機関として航行安全審議会というものがございます。これは運輸大臣の諮問に応じまして船舶職員法改正あるいは航行安全の重要事項について調査審議をするということになっております。そこで運輸大臣は、この法律改正につきまして、航行安全審議会に諮問をいたしております。そのときも問題になったのでございますけれども、要するに、電波法が変わるからそれに合わして船舶職員法改正をするのだ、こういうことであります。もちろん電波法船舶職員法は違った法律でありますけれども電波法によりまして聴守義務時間、運用義務時間というものが規定されております。それによって、この関連において船舶職員法によって通信士乗組定員がきまっている。そこで、私も航行安全審議会の委員の一人でございますけれども、一体、電波法改正をされるから船舶職員法改正するというならば、まず電波法が先ではないか。ところが、われわれの理解し、知った範囲におきましては、電波行政をあずかる郵政省は、郵政大臣にもお目にかかりましたけれども、われわれのほうは電波法改正する意思はないのだ、しからばおかしいではないか、政府部内においても行政担当の面において意見が統一されていない。したがって、そういうことならばこの航行安全審議会で、一体電波法がいかなる理由で、いかなる根拠をもって改正するのか、それを承りたいということを、委員として私は主張をしたわけでございます。ところが、それは閣議了解である。したがって、われわれはその線に沿って法律改正しようとするのであるということだけであって、一体電波法がいかなる理由で変わるのか、あるいは変わることによってどういう事態が起きるかというようなことも検討されたことがあるかというと、必ずしもそうではない。閣議了解におきましても、われわれは文章によって承知する範囲におきましては、機器の進歩、海運機構合理化ということをあげております。しからば、その機器が進歩したかどうかということは、これは郵政当局が御承知のはずだと思うわけであります。そういうことで、しかも、この法律案の中にもございますけれども、三年間の経過期間を置く、これはいかなる理由か、われわれの質問に対して、運輸当局の答えは、これは労務対策の問題ではないのだ、技術上の問題であるということは、三年間そういう措置を置くことは、法律改正によって一名になれば、一般通信も公衆通信というものも阻害を来たす、あるいは今日行なっておりますところの気象業務法によるところの気象通信の問題においても問題が起こる。したがって、それに対応する対策というものを三年間にやるのだ、こういう説明であったわけであります。しからば、そのことは一体具体的に考えているのか、対策はあるのかということになりますと、私の知っている範囲においては、現時点においてそういう対策というものはない。しからば、理由はないではないかということで、実際航行安全審議会におきましては、審議が軌道に乗らない。たまたまそのうちに、運輸省当局は、船舶職員法の一部改正法案というものを、この前の臨時国会で配付しております。したがって、われわれは、一方において諮問を求め、答申を求めておりながら、すでにそういう全く自分の独善的なあるいは運輸行政の観点からのみ立った考え方でそういうことを進めることは、委員会を無視するもので、納得できない行き方だ。しかし、日程がきまっておって、早くその答申を求めようとしており、さらにわれわれから言いますれば、委員会委員長の運営議事の進め方も、とにかくきめられた時点において答申を出すということで、具体的な内容の審議もほとんどやられないままで採決をしようとしたわけであります。そこで、船員を代表する委員が五名その委員会出席しておりましたけれども、われわれはそういうような議事の進め方なり一方的なやり方では審議に責任を負えないということで、われわれは運輸大臣に辞表を出して、政府の、あるいは委員会の反省を求めたわけでありまするけれども、それに対して何の考慮もなさず、そのあとで採決をいたして答申をしておるわけです。で、その答申にはほとんど運輸省提案のとおりの内容をそのまま認めておるわけですけれども、附帯条件として「本件実施に関しては通信の円滑なる疎通を行ない得るよう措置を講ずること。」と、もう一つは、「なお本審議会が右の結論を得る過程において」−結論−というのは通信士定員を減らす問題でありますけれども、「結論一」「については極めて強力な少数の反対意見があったことを附記する。」、こういうことになっております。そこで、一体そういう専門的な立場に立った航行安全審議会が十分審議すれば、私は、あるいは今国会に出されている法案も変わったものができたか、あるいはまたその過程において電波法に対する郵政当局の考えがどうであったかということも明らかになったと思うわけであります。私の承知する範囲においては、今日に至っても運輸省と郵政省の見解には、かなりの違いがある。問題の主体は電波法であるにかかわらず、電波法を所管する郵政省というほうが通信行政なりそういう面から積極的に法律改正する準備ができ、あるいは正当な理由があるならば、まずその点をひとつ先に審議をするのが当然ではないか。ところが、御承知のように国会におきましても運輸委員会審議のほうがだいぶ進んでおるようにわれわれ理解をしておるのですけれども、その点についても、われわれは事の性質上疑問を持っておるわけであります。しからば、次に案のごとく法律改正されたとするならばどういうことが起こるか。いろいろこうすればいいんだ、あるいはこういうことをすればこれはこうなるといわれますけれども、それは仮定の論議でありまして、現時点において、もし現在三名乗っておるものを一名とするならば、少なくとも現在の二十年来やってきた船舶通信体制というものは根本からくつがえされることになることは明らかであります。ひとりその通信士の問題だけでなくて、現在、先ほども申しましたように、気象業務法における気象通信というものも今までと非常に違って低下をする、こういう点につきましては、おそらく気象庁長官もこの点は危惧されていると思います。さらに、公衆通信というものは一定の時間に殺到しますから、現在の海岸局の通信能力からいっても、先ほど申しました経過規定にあるごとく、海岸局を整備するとか、そういうことがなければ支障を来たすことは、これは明らかな事実であるはずであります。さらに、船舶相互間の救援体制というものも、はなはだしく低下をする。あるいはまた、御承知のようにわれわれ船員は船で労働し、船で生活をしているわけであります。社会から孤立した状態において船員というものは洋上におる。したがって、現在われわれは船内生活の面からいいましても、いわゆる船内文化と申しますか、現在におきましては共同通信とか、そういうようなものを利用いたしまして、一般日本の中で起こった新聞ニュースというようなものを、船内で紹介をしておるわけでありますが、こういうことはできなくなります。あるいは留守宅との通信におきましても海岸局を使えばいいじゃないかといいますけれども、もしそういうことになるならば、通信費用の船員負担は、現在と比較すれば十倍程度になります。私たちはそういうようなことをあえてやるならば、正当な合理的な理由がなければおかしいじゃないか合理化定員を減らさなければならぬのだ、あるいは国際水準がどうだといわれますけれども、それぞれの国にはやはり一つの伝統がございます。あるいはまた通信業務の仕方、そういうものは外国日本の場合は全く違っておるということをひとつ御記憶願いたいと存ずるわけであります。  さらに私は、そういうことをして法律をあえて改正した場合に、一体実効があるのかどうかという点について申し述べたいと思います。  御承知のように現在の法案の中には、経過措置はございますけれども経過措置を置く理由は、先ほど申しましたような海岸局の整備とか、あるいは気象観測に対する措置をするというようなことが理由でありますけれども、少なくとも現存船に対して向こう三カ年間電波法によって運用義務時間を十六時間とすることは、国際条約による運用義務時間の時間割がございます。その時間割によれば通信士は夜中に連続六時間の当直をしなければならないということが必要的に起こるわけであります。そういうことは、われわれは労働関係から見て、とうてい容認するわけにはいかない。したがって現存船においては三名乗るということは必至になるわけであります。しからば同じ船、同じ大きさの船で同じ航路についておる船が、片っ方は三名で従来どおりの体制がとられ、片っ方は一名だと、そういうようなことがはたして可能かどうかということをひとつお考え願いたいと思うわけであります。さらに、最近いろいろな理由あとからつけておりますけれども、人が足らないのだ。これは諸先生方は御承知かと思いますけれども、ひとり通信士の問題ではなくて、船員は一般に、特に若い船員諸君は、陸上に転職する傾向が年々増大をしております。新しく養成機関を出た諸君が、船に乗ることを避けて陸上に就職するばかりでなく、現在船に乗っておる若い諸君が、陸上に転職をしております。これはどういう理由かといいますと、根本的には日本海運の実態というものが、日本船員が満足する条件を与えられない。特に年々陸上に雇用が増大して参りますと、船員にそういう傾向がますます増大をする。それに対しては、われわれは根本的な手を打たなければならないと考えますけれども通信士に関する限りは、先ほど申しましたように、過去三年以上にわたりまして通信士を減らすのだというような動きが終始一貫あるために、通信士の将来に不安を感ずる、そういうことが通信士が陸上に転職する一つの大きな理由となっておることは見のがしてはならない事実だろうと考えるわけであります。  また、特に運輸省あたりは、強制法規として一名というものにすることは当然である。外国国際条約から見ても、国際水準から見ても当然だと、そこで実際の定員というものは労使間の問題であるから、法律はそういう意味において改正するんだ、こういうような論も出ておるように伺っておるわけですけれども、もともと通信士を減らすのが目的で法律改正しようとしていながら、そういう一つ理由あとでつけておる。もし、われわれが減らさなくて、減らすことができない、法律の有無にかかわらず減らすことができない。その場合に、もともと海運業の合理化だという理由を表面に打ち出して、郵政省よりも運輸省がこの大きな推進力となってやってきた関係からいうならば、私は法を改正することは乗組員を減らすのだ。もしそれが減らないという場合にどういうことになるかといいますと、一体日本海運企業というものはだらしがないではないか、国際的に多い人間を乗せて、それで困るから海運助成だ、まずその前にこういうものを減らせ、こう言っておったはずなんです。それに対して海運経営者は、そんなことを言ったって法律があるじゃないか、先ほど米田さんも言っておられましたけれども、法しがあるのだ。だから法律を変えなければできないじゃないか。そこで、法律にそういう責任といいますか、それを転嫁する。政府法律改正することによってこれをやったんだ、それでも減らさないのかということで、逆に、さらに船会社というものがそういう点から追及される結果になるし、あるいは運輸省自体も行政指導をして減らすとか言っているそうですけれども、はたしてそういう自信があるのか、私はないと考えています。したがって、そういう面からいいましても、私はこの法律改正しても実効はない。  さらに、最後に申し上げたいことは、私たちはもちろん正当な理由があり、正当な準備があり、そうしてむだな仕事をやめて人間を減らすということに、あえて反対する者ではありません。いうところの、われわれの今後の日本海運というものをわれわれの立場から守るというならば、やはり船員というものを確保しなければならない。今日御承知のように、国が必要だ、年八十万トン作るのだ、九十万トン作るといっておりますけれども、一体、船員のことをどう考えておられるか。おそらく船ができても、こういう問題に対してただ人間を減らせばいいのだというような安易な考え方を持つならば、船員の面から日本海運というものは行き詰まるのではないかというふうにさえわれわれは考えている。したがって、われわれはそういう観点に立ちまして、われわれは国会審議労働組合として力をもって圧力を加えるというようなことはいたしません、労働組合主義の上に立って、そういうような国会の問題に対して実力をもって、これに圧力を加えるというようなことはいたしませんけれども、労使の段階において、先ほど来申し上げました理由によりまして、われわれは航洋船の無線三直制というものをあくまで堅持をするという方針を明確に打ち出しております。したがいまして、われわれの考え方は間違っておるかどうか御批判は御自由でございますけれども、われわれはそういう意味におきまして、ひとつこの国会がより高い見地から、公正にして合理的な審議を進めることを特に期待を申し上げたいと存ずる次第であります。われわれは、国会の先生方がそういう点に十分御留意の上、御審議を進めておると信じますけれども、私たちは今申し上げましたように、この法律がどう変わろうといたしましても、海員組合といたしましては、航洋船の無線三直制というものを堅持をいたす。したがって、そういうことを最後に申し上げまして、慎重な御審議お願いいたしたいと存ずるわけであります。
  10. 村松久義

    委員長村松久義君) ありがとうございました。  次は、東京商船大学学長浅井栄資君にお願いをいたします。
  11. 浅井栄資

    参考人(浅井栄資君) 東京商船大学の浅井でございます。  私は、将来船舶職員となる者の教育に当たっております関係上、船舶職員の数の減るようなことを喜ぶわけには参りません。しかし、技術革新の波はあらゆる産業部門において、極度に少ない人数で極度に高い生産を上げようという方向に向かっておることに目をふさぐわけには参りません。したがいまして、多くの陸上産業等におきましては、いち早く遠隔操作、自動制御等の技術が取り入れられまして、また取り入れられつつあることも周知の事実でございます。船舶もその例外ではございませんが、その点においては著しくおくれておると申さざるを得ません。しかし、ぼつぼつではございますが、船内にもそれが取り入れられつつありまして、従来人間の働きに依存しておりました諸作業が、順次機械の働きに置きかえられつつある。したがって、人間も少なくなりつつあるということは、これは世界海運界の趨勢ではないかと存じます。したがって、将来船内の機械化が進むにつれ、航海、機関、通信、事務の各部門におきまして、相当数の職員または部員の数が減って行くであろうことは、これは避け得られない勢いのように存じます。しかし、それはあくまで生産性を高め、船内の労務を軽減し、かつ能率化すると同時に、船員の待遇や勤労環境の改善などと並行して行なわれるべきものであると信じます。  ところで、ただいま御審議中の、船舶職員法の一部を改正する法律案のことでございますが、私は前に述べましたような線に沿った改正であるならば、あとで述べますように、いろいろの問題点はございますが、ある程度仕方のないことであると思っております。  そこで、このたびの改正案の第一点として、船舶通信士定員改正については、次のように考えます。  その一は、元来船舶職員法に定める航海士、機関士、通信士などの定員は、国が公益上の見地から安全運航上欠くことのできない最低の員数を定めるというのが各国の例でありますので、実行上の問題は別といたしましても、わが国としてもその例によるのが妥当ではないかと存じます。そうして、世界各国の船は、現にほぼ改正案のとおりに実施しておりますのみならず、わが国でも戦前はほぼ改正案定員でやっていたのであります。それに日本通信士の技量と通信機器の進歩の現状から見ましても、同じ仕事の量と内容であるなら、諸外国の船でやっていることが日本の船でもできないわけはないと思います。まして、現行の日本船舶通信士定員は、いろいろの事情で戦時中の体制がそのまま今日まで置かれたということも聞いておりますので、まあそれならば、平常の状態に戻すことはやむを得ないことであろうと思う者であります。  その二としまして、海運が常時きびしい国際競争の場にさらされております以上、海上と陸上とを問わず、各海運会社が経営や人員の合理化に立ちおくれてならないことは申すまでもございません。そのためか、すでにずっと以前から、各海運会社は船内の航海機関、事務などの各部門で、部員や職員の数を諸外国並みに減らすことに努力しておることを承知いたしておりますが、通信部門においては現行の法定定員そのものが諸外国よりも多いというので、このような改正案が提出されたのではないかと推察いたします。その三は、船舶通信士求人難に対応するためにも、このたびの措置が必要であるといわれておりますが、私は求人難ということが法律改正の第一義的な理由であってはならぬと存じます。しかし、現実の問題としてはこれが最も深刻な問題であると存じます。と申すのは、電気通信大学、同短期大学、電波高等学校の卒業生全部を通じて、最近は卒業生総数の約一割くらいしか海上に就職せず、したがって、海上の求人数の二割ないし三割くらいしか人が得られない現状で、しかも逐年膨脹しつつある日本船舶の通信士定員を、現行のまま将来も維持するということは、これはとうてい不可能なことだろうと思います。したがって、このままの情勢で参りますと、早晩通信士の法定定員が満たされないために、船舶の運航がとまるという事態すら予想されるのであります。それも諸外国並みの定員であれば問題はありませんが、法定定員そのものが先ほど申し上げるようなことでありますので、これは大いに考うべきことではないかと思います。  次に、改正の第二点といたしまして、乙種並びに丙種船舶通信士の免許年令を当分の間現行の満二十歳から満十八歳に引き下げようとする改正案でありますが、これも現状においてはやむを得ない措置であると思います。と申すのは現在では教育の程度も進み、機器の性能も進歩しておりますので、年令を引き下げたからといって実務の上ではそれほど支障は起こらないと思うからであります。むしろ通信業務の性質上、年令が若いほど上達が早いとも聞いておりますし、電波高等学校などを卒業した後、船舶通信士の免許を受けるまでの一、二年間の空白期間を除くことによって、通信士求人難を緩和する一助ともなりますならば、この改正に反対する理由はございません。  以上、私は、このたびの改正案に対しおおむね肯定的な意見を述べて参りましたが、何もかも少しも懸念がないというわけではありません。それは、次のような諸点についてであります。  その一は、改正法案の経過措置などの適切な運用によりまして、現在海上にある船舶通信士が失職するようなことは絶対にあってはならない、またないことと信じますが、監督官庁も船主団体も、よほど慎重に考慮して、かつ具体的にこれを明示いたしませんと、このたびの改正船舶通信士求人難に拍車をかける結果を招きはせぬかと憂うるものであります。と申すことは、電子工学関係の陸上産業のいんしんとも関連しまして、定員を減らされるような業種には、ますます希望者が減ることを憂えるからであります。  その二は、現実に定員が減るならば、その前にほんとうに信頼できるオート・アラーム、ファクシミリ等々の機器を必ず装備することが前提と存じますが、これらの機器は、従来需要が少なかったなどの理由によって、日本での開発はややおくれていたのではないかと懸念いたします。しかし、需要さえ多くなれば、外国にまさるとも劣らないものができることと存じますが、それには若干の時日が必要であるように思います。  その三は、現在日本船には比較的多くの通信士が乗り組んでおりますので、気象、海象情報の発受信などの、航行安全の上にも、社用、私用通信の円滑の上にも、また乗組員の文化生活の上にも、その他いろいろな面で多大な利便を得ておりますことは事実であります。したがって、もし通信士が少なくなった場合、その少ない人数に現在どおりのサービスを期待することによって通信士に過重な労働を課するようなことがあってはならないと存じます。それと同時に、乗組員の社会性と文化性が今よりも低下しないように、具体的な配慮と船内設備の充実が必要であると思います。  その四は、通信士が減りますと、勤務時間などの関係上、海岸局に一時に多くの船からの通信が輻輳しまして、通信の不円滑を来たしはしないかという懸念がございます。したがって、海岸局などの整備充実もあわせ考えられなければならないと存じます。それについても若干の時日が必要であると思います。  その五は、乙種並びに丙種船舶通信士の免許年令を満十八才に引き下げることによって、そのこと自体には異論がございませんが、それらの年少通信士が直ちに小型船舶などの通信長としてただ一人で配乗せられるようなことは、若干の懸念がないではありません。したがって、新人通信士の配乗については相当の工夫が必要であると思います。  以上、私は、このたびの改正案に対して、前段ではおおむね背定的な意見を申し上げ、後段ではいろいろ懸念せられる問題点を指摘して参りました。そこで、結論としては、船舶職員法定員世界各国の例にならって必要の最低員数を規定しておいて、それより以上乗り込むことは少しも差しつかえないことでありますから、その後のことは法の適正な運用にゆだねて、監督官庁の指導、船主団体の自主的規制及び労働団体との労働協約などによって、日本の現状に即して、段階的に配乗の適正化を進めることが最も妥当な行き方であると存じます。  なお、最後に申し述べたいことは、海上要員の節減だけが海運の基盤強化のすべてではないということであります。船舶の要員数が諸外国と対比せられますと同様に、各海運会社の陸上管理部門その他の人員や経費などについてもきびしい検討と節減が伴わなければならないと存じます。このようにして各海運会社の自主的合理化の促進と国家の強力な施策と相待ちまして日本海運が一日も早く立ち直りますことを切望してやみません。そうでありませんと、海運界には海陸ともに人材が集まらずに、この先、船はどれほどできても、要員不足のために運航に支障を来たすことがないとは限らないと思います。現に、航海機関の職員または部員を教育しております商船大学、商船高等学校、海員学校などの入学志願者の数は年々低下しておりますのみならず、卒業して職に就かんとする者あるいはすでに海上の職に就いた者までが、通信士の場合と同様に、相当多く陸上産業に吸引せられつつあるのが現状でございます。そうしてそのもとはと申せば、先行きの海運産業に魅力が乏しく、海上の激務と心労と不自由さの割には陸上に比べて待遇はよくないなどの点にあるように察せられます。しかし、待遇を改善するにしても、企業基盤そのものが確立されなければならぬと存じますので、その一助ともなるならばという意味において、このたびの改正はやむを得ないことと存じます。
  12. 村松久義

    委員長村松久義君) ありがとうございました。  次は、船舶通信士協会常任委員長の大内義夫君にお願いたします。
  13. 大内義夫

    参考人(大内義夫君) 私、船舶通信士協会の大内でございます。私は船舶職員法改正案に対して反対する立場から、特に改正の動機となりましたあるいはその理由となっておりまする船舶通信士需給関係を中心としまして、少し申し述べたいと思います。  最近一般の船員不足と同様に、船舶通信士需給関係が非常に逼迫しておるということが強くいわれまして、私どももこれは事実において確かに人が不足である、また人が窮屈であるという点は毎日見ているわけではございますが、なぜそういうふうになったか、また、その不足の状態がどういうものであるかということについては、多分に誇大に、または事実をゆがめて一般に誤り伝えられている点があるんじゃないかという点を非常に気にしておるわけでございます。一つの影響といたしまして、船舶職員法改正案が出まして、この影響が現在現われておる。ただいままでの国会その他において、政府その他関係者の御説明によりますと、今度の職員法改正になりますと、法律的に定員が減りまして、大体九百名であるとか何名であるとかというふうに法律的に削減されるようになっております。たとえまた九百名の定員が削減になっても、新規需要やあるいは自然消耗に充足していくために現実に失業不安はないという説明をされておる。ところが、われわれの立場から見ました場合、船舶職員法改正によって定員が削減されるということは、船舶職員法の資格においては甲種船舶通信士、乙種船舶通信士というふうな資格別が厳然としてある。こういうところにおきましては、一級通信士、二級通信士という資格上の区別がある。このたびの改正によって法律的に削減されるのは、大体大型船、外航船の二等船舶通信士あるいは三等船舶通信士、この大半は二級通信士の資格を持っている。そこで、この人たちが——職員法でいえば乙種船舶通信士——法律的に過剰になる。ところが余った者を足りないところへ持っていけばいいと言われましても、残った者は第一級の免状を持つ通信士甲種船舶通信士の資格でなければならぬのです。そういう余ったものをどこかに持っていくにもそういう資格上のアンバランスがある。もう一つは、肝心の供給源であるところの無線通信士の養成機関——文部省でやっておられます二級の電波高校、仙台、託間、熊本、こういうところが現在の日部の無線通信士の教育機関でありますけれども、これは文部省令によりまして二級無線通信士の養成を目的とする学校でございます。他に電気通信大学がございまして、これは一級無線通信士の養成をあわせて行なっておりますけれども、先ほども御説明いたしましたように、ほとんど出てこない。主流は依然として国立電波高校の三つの学校から出る。二級無線通信士供給源が、これから要らなくなる二級無線通信士を養成しておきながら余った者をどういう方法で補わなければならないか。私はこういう事実を見て参りますと、たとえ今後一名でよろしいというふうに法律がなりましても、一名の無線通信士が得られなくなるという状態さえ予想される。これは現実の問題でございます。  それからもう一つは、二級通信士の職場というものは、現在においても内航船、小型船、これが主たる職場でございますけれども、すでに政府で計画されております内航船、小型船の場合は、今後、無線電信を無線電話に切りかえる、こういう方針のもとに千六百トン未満の小型船におきましては、将来無線電話になる、こういう話が一般に伝えられている。この職場は大体二級通信士の職場でございますが、御承知のとおり電話になってしまえばこの職場を失う。上と下の両方から責め立てられて二級通信士の職場というものがだんだんなくなっていく。こういう事実を法律改正、これは国会でどういうふうになるかわかりませんけれども、まだきまってもいないのに、これは非常にたいへんである。こういう不安が出てきたために、必要以上に船の通信士の移動が多い。こういう際に、将来職場の将来性がないということでもって陸上に転職する者が非常に多い。私どもが知った範囲では、半年、一年の間に百二十名という通信士が船を離れまして陸上に転職しております。この百二十名という数字は外航船で大体四十ぱいの船に相当する数字でございます。こういう大量の通信士が、ほとんど若い年令層の人でありますけれども、船からやめていっておる。残った人は相当年配になりますと陸上の転職もきかない。こういう状態に追い詰められてきて、転職の自由もない将来どうなるだろうという不安があって、この際少しでも待遇条件のいいところへ、また、電波法であるとか、職員法であるとか、こういう定員の問題で悩まされない水産会社、そういうところに移動しようということで、非常に移動が頻繁になった。一人やめて一人会社に入るという事実がございますと、それは非常に強く、また大げさに宣伝をされて、日本中に船舶通信士が現在一人もいないといううわさまで飛び出す。こういうふうな状態になっておる。自分の生活問題を考えたときに、これじゃ不安でならないというような事実が、今日現在現われておるわけであります。  それからもう一つ電波法職員法の話になると、よくオート・アラームの問題があるわけです。このオート・アラームというのは、二十四時間の無休聴守をしなければならぬ、そのかわり人にかわってそういう機械をつけるということでありますけれども、今度三人の人を一人にして二人分を埋め合わせるためにオート・アラームをつけるということになっておりますけれども、これは事実に反する。今度の改正案によりますというと、オート・アラームを必要としない、すなわち一日一人八時間船に乗って仕事をすればいいというふうな船は、これは内航船全部でありまして、オート・アラームをつけなければならないような船は国際航路に従事する船舶に限って二十四時間やらなければならない、そのかわりオート・アラームをつけなさい、こういうことでありますから、これが通った場合、どういうことになるかと申しますと、日本近海を走る船はオート・アラームをつけなくてもよろしい。日中八時間やればよろしい。日本近海は全部ブランクになってしまう。小型船が遭難してSOSを打つ。夜、夜中どういう時間においても現在の状態においては船舶が遭難してをS ○S打つと、立ちどころに五はい、十ぱいという付近を航海しておる船が応答してくれます。ところがこの法律改正になると、だれも来てくれない。来るのはだれかといいますと、国際航路に往事する日本船舶が日本の周辺に近づいたその範囲内と、日本に参ります外国船によって日本近海周辺を航行する内航船の安全が守られる、こういう状態になるわけです。一つは、閣議決定とかいろいろの話の中で、日本船舶の設備というものが国際水準並みということをよく言われておる。これははたして国際水準並みであるかどうかということは、私どもは断言できないと思う。日本法律改正をなさろうという案は、海上人命安全条約という国際条約の一番最低線に乗っかって、そうして国際航路に従事しない船は二十四時間の無休聴守は必要としない、こういうことは確かに国際条約並みでありますけれども、これは国際水準並みであるかどうかわからない。たとえば日本の現在の法律を見ると、何万トンの船であっても何千人という乗客を積んでも、沿海区域を走っておる船は無線電信設備は必要でないということになると——これは日本国内法ではそうなっておるのです、国際条約並みであります。たとえば青函連絡線があれだけの船客を積んで毎日々々航行しておりますけれども、これは法律的に無線電信をつけなくてもいいということになって、合理化が進めば無線電話に切りかえられて、通信士は下船させられるという不安が起きてきます。それから瀬戸内海を走る別府航路の船は一切無線電信を廃止してしまう。何千人お客を積んでも沿岸区域を走っておる以上は無線電信をつける必要はない、こういう状態になっておる。これ国際条約並みでありましても、国際水準並みであるかどうかということは断言できないと思うのです。こういう不安な状態の中でもって職員法改正して国際水準並みにすると、こういう不安がすでに現在船舶通信土の需給関係の中に現われているわけであります。  もう一つは、オート・アラームの問題でございますけれども、この点も実は先ほど他の参考人からも御説明がありましたれけども日本においては大体今度はいよいよ大詰めがきて、電波法がある、職員法改正案が出るという昨年の三月、四月、五月ごろから、またこの半年にかけまして、私どもの知った範囲においては、日本船舶で百三十雙近い船が、すでにオート・アラームを設置し、あるいは設置しようとしている。これはオート・アラームオート・アラームと申しまして、盛んにわれわれ抗議しておりますけれども、実は日本無線通信土でオート・アラームを現実に見た、扱った者はきわめて少ない。戦争前にオート・アラームという例も現われましたが、これはあまりにひどくて役に立たない機械でありましたので、とうとうやめになってしまった。昭和十一年から昭和十四、五年にかけて、日本においても製作されたが役位たぬ、機械が悪くてどうにもならない、実用にならないので、とりやめになってしまった。戦後はさしつかえないということで復活いたしました。ところが現実においては——当時においてもオート・アラームを製作しましたけれども、部分的に二十ぱいの船であるとか三十ぱい程度の船はずっとつけておった。しかし実際においては常時三人の通信士でやっているものですから、現実には使用していません。その範囲内において見たり、聞いたりで、扱った者はきわめて少ない。ところがこの一年以内、半年以内に実に百三十雙近い船がつけておる、あるいはつけようとしている。この実績の中で初めて現実に扱った。ところが、これは全然同じだ、わずか半年や一年の使用経験だけでは、決定的なことはとても言えませんけれども、このわずかの期間の中においても、私の知った範囲においては、故障の率であるとか、あるいは誤作動の率であるとか——警急信号を打たれて、正規に作動したかどうかという問題、これこそ国際水準並みであって全然役に立たないということが立証されたと、通信士の実感の上においては知っておるわけでございます。そういう点におきまして、私ども日本オート・アラーム外国の機械に比べて特別に劣っているという証拠はない、あるいは部分的にには古い外国の船のオート・アラームよりか新しい日本オート・アラームの機械のほうが、むしろ性能がいいんではないかというように私は思うわけでございます。性能のいい悪いは、これは全く問題ないのです。オート・アラームの持っている機械の宿命的な性格——その特定の信号が五〇OKCというのが常時日本近海においてはずっと続いておる。こういう状態がある場合においては、どんな優秀な機械があっても誤作動があったり空電があれば鳴ってしまう、これはどんな優秀な機械であっても避けがたい、外国でも同じことでございます。外国ではどうしているか。役に立たないことをお互いに知っていながら、お互いに使うことによって国際的な妥協の産物として現われたオート・アラームでございますから、外国においても同じでございまして、実際においては、率直に申し上げましてほとんど航行では使っていない、こういうふうな実例が多いわけでございます。これでもって、たとえばどういうふうなことをやっておるか。たとえばオート・アラームという機械は——一日八時間の時間が過ぎますと、あと通信士が休むわけです。自分の部屋に帰って休んでいる間に空電あるいは誤作動でもってベルが鳴る。このベルの音というのはすさまじい音であって、やさしい音じゃない、どんな寝ぼ助でも飛び上がるほどの大きな音です。船長の部屋と船橋にあります、それから通信士の部屋にある、この三つが一斎に鳴るわけです。行ってみるというと、これは誤作動であった、空電であったということで、何だということで帰る。これは多分うそであろうということでも行かないわけにいかない、実際に鳴るんですから。ところが、空電とか誤作動であればまだいいんですが、これは規則でもってきまっておりまして、もしオート・アラームの機械に故障が生じた場合にも自動的にベルがなるようになっている。たとえばちょっと電圧が下がった、ジーと鳴る。それから真空管の球が切れた、。ジーと鳴る。そういうことでは、たまったものではない。こういう点で、誤作動やそういうような状態通信士が起こされて無線室に行った回数が合計にして六回になったならば、これは一時間分の時間外手当を支給する、こういう労働協約を結んでいる。アメリカはそうですけれども、そういうことに実は私どものほうはばかげた制度だと思う。労使双方ともこれは実際お体裁なものであるということは、実は一応認めているんです。しかも空電、混信があれば誤作動は避けがたいものであるということは、お互いに認めているんです。遭難の通信だということで、鳴れば、まさかと思っても行ってみる、行ってみれば、やはり違う。そういうわけでもって、それを補償するためにそういうような時間外手当を支給してやっておる。そういうふうな状態でございますので、これは三十年前から国際条約できまっておりますけれども、国際会議で盛んに問題になりまして、そういう信頼のできない、信頼の薄い機械では困るんじゃないか。そのいろいろの論議の中で、そんなに信頼できない機械であるのなら、航行中一日一回この機械をテストした結果、いいか悪いか、どういう状態であるかということを、一日一回船長または当直中の士官に報告しなければいかぬ、そういうことを義務づけて今やっているのがこの状態です。そういうばかげた機械を使った上で、われわれ通信士が今言ったように職場から締め出されて、われわれとしてはまことに情けない話であります。しかも、航行安全にはほとんど役に立たない。日本の場合においても、実は先ほど申し上げましたように、使用経験が非常に少ないのじゃないかということもありますけれども、遇難した場合に警急信号を発射いたしまして、それによってベルが鳴って遇難が救助された例は日本においては一回もございません。ただ、じゃ全然鳴ったことはないかというと、たまにはある。船が遇難しますと、実際においては船の通信士というのは——外国でも日本でも警急信号は実際には役に立たない、とりあえずSOSを打って、付近にいる船に知ってもらうSOSをたたく。それを聞いた近くの海岸局がかわって海岸局のほうで警急信号を打つわけです。そうするも、海岸局が打った警急信号を聞いたオート・アラームをつけておる船の場合は、たとえば信号の距離二十マイルあるいは大体十マイル、非常に短距離で鳴った場合の例は一回か二回かあるわけですが、有効に作用したことはないというのが実際の状況でございます。したがって、今申しましたとおり、内航の場合には、今後日本近海で鳴った場合は、夜、夜中はだれも聞いてくれない。そういう中で今まで夜、夜中、どんな危険な航海をやっていても、必ず近くにたくさん船がいますから、安心して夜寝ておられたけれども、今後は、こういう電波法改正職員法改正になれば、だれも聞いていないということになる。これではあぶなくて乗っていられない。これは通信士だけの実感でございます。こういう状態では将来性がないので、今足を洗ってよそに行くとか、よその会社に入るかというような、現在こういう意味の影響が出ております。なるほど日本近海の安全というものは、海上保安庁が二十一ヵ所にわたる通信所で聞いておる。常時五〇〇kcを聞いておる。漁船の場合は電話の波二メが帯で常時聞いておる。ただし、聞いてくれますけれども、海上保安庁の救難態勢といいますか……
  14. 村松久義

    委員長村松久義君) ちょっと待って下さい。速記をとめて、   〔速記中止〕
  15. 村松久義

    委員長村松久義君) 速記を始めて下さい。
  16. 大内義夫

    参考人(大内義夫君) そういうようなわけでございまして、通信士としましては、日本の海上保安庁の救難設備あるいは救難の実情というものはよくわかっている。やはり航行中の付近を走っている船において救助されるという率が多いし、そういう点でもってだれも聞いてくれないという状態の現出することはきわめて不安だ、こういう点で私ども職員法改正電波法改正については大きな不安をすでに——現在きまっていないのにもかかわらず、しかもその影響が現われているということが、当面の需給問題の本質ではないか。  それからもう一つは、私どもは何せ急場の問題に対して、あるいは事実起こり得る問題、こういうものに対して、船舶通信士の養成をどうやったらいいのかという場合に、学校教育は文部省、無線通信士資格は郵政省、船舶職員法でいう海技従事者の免許を取るためには運輸省、こういう三つの役所でやっておって、どこに中心があり、どういう連絡があって、統一的に需給対策であるとか需給調整をやる役所がどこにあるのかということが今日わからない。そういうことでもって、一般私立無線学校を出まして資格を取っても、どういう手づるをもって船に乗ったらいいかというようなものは全然ないのです。ほかの商船教員の場合は一貫しておりますから、はっきりしておりますけれども、陸にも海にも行けるという中途半端な養成をやっているために、そういう資格を取っても、すうっと船に乗れるようなルートが今までにない。したがって、今まで郵政省の発表なんかの数字は、一級通信士の免許を出した者が六千八百名、二級は六千六百名。現在、商船では一級通信士が二千三百名、二級が一千七百名程度である。大体三倍以上の免許が発行されているにかかわらず、有効なところに流れていっておらない、役に立っておらない。  それからもう一つは、現在世の中が変わりまして、無線通信士というものは非常に特殊な技能を必要とする。これは全く最近では陸上で応用がきかない特殊な技術なんです、世界的に。日本でもそういうわけで、船に乗っている以外は、通信の技能というものは半分は役に立たない。そういう特殊な仕事。われわれから言わせれば、そういう貴重な技能を学校で養成しても役に立たない、陸に行くということは国としてむだである、こういうふうに考える。したがって、海に行っても将来性がないということになると、何を好んでそういう学校に入るかということにもなるわけです。これは、やはりどうしても国として一元的に、統一的にお考えなさいまして、どうしてもこういう場合の対策に役に立つようなまず政策をお示しになって、いろいろな他の条件も考えまして、すべて国際水準並みにレベル・アップするような点もたくさんございますのでそういうものとあわせて総合対策を考えて、こういう条件をそろえたから職員法改正してもさしつかえないんではないか、こういう条件の整備をやって初めて御審議なさったらどうか。あるいは政府みずから提案される前に、そういう準備をもって臨まれるのが正当ではないかというふうに私どもは思っているわけでございます。
  17. 村松久義

    委員長村松久義君) ありがとうございました。  これで参考人の御発言は一応終了いたしましたが、委員諸君から質疑の通告がございますので、これを許します。
  18. 大倉精一

    ○大倉精一君 大へん貴重な御意見あるいは御事情をお聞かせいただきましてありがとうございます。私はこの問題全然しろうとでございますので、今後の審議の参考にしたいと思いますので、二、三お伺いしたいと思いますけれども、まあ質問がしろうと質問で、何かピントをはずれるかもしれませんが、その点は御了承願いたいと思います。  皆さん方のお述べになったところを聞いておりますというと、まず第一番には、この法案というものは人間を減らすためだ、そうして減らすことが必要だ、こういう御意見、あるいは非常に危険である、こういう御意見、いろいろありました。私は、日本海運の将来を心配することは人後に落ちないと思うのですが、その基盤強化のために通信士を減らすということは、先ほど浅井先生もおっしゃいましたように、逆効果になるんじゃないかという点を非常におそれております。というのは、通信士が不足するという原因は、ほかに大きな原因があるのではないか。その原因を探求し、対処しない限りにおいては、船舶通信士の不足を解消することはできない。法律でもって通信士を減らしてみても、それをもって日本海運の将来というものの安泰を期するわけにはいかないと思います。逆に言って、これによって非常に不安が増大する、こうなった場合に、先ほど皆さんがおっしゃっておりましたように、船舶通信士は志願者が少なくなる。学校を卒業しても船に乗るのはいやだ、そういう傾向になってきた。そのうちには船舶通信士は一名もいなくなってしまうのではないかというような懸念を持つわけで、米田さんにお伺いしたいのですけれども、そういう懸念はないというお話もありましたし、あるいはまた浅井先生、大内さん、あるいは南波佐間さんあたりからの御意見でありますと、労働強化という面も相当心配される、こういうようなお話でありましたが、私は船主協会のほうで、船舶通信士の不足をしている原因というものを、もっと大きくつかむ必要があるのではないか。それに対処するということが先決ではないかというふうに考えるのですけれども、御意見をひとつ伺っておきたい。
  19. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 今、他の参考人からいろいろ不足の原因が言われておったわけですが、これはどちらが原因になって、どちらが結果になるのかわからないような実情であると思います。まず第一に、広く世界海運全体を見まして、船員になり手がだんだんなくなっていくという傾向は、これは避けられない。これは労働のああいう条件からくる一つの問題です。その中でどうやって船員を調達していこうかということが、これが海運界の一つの大きな努力であり、悩みになっている。そこで、その中で通信士の問題について、われわれが要らないから減らすのだ、その不安があるからだ、こういうふうなことが言われておりましたけれども、実は私はそうは考えていない。船内で三人の無線通信士があって、しかもそれが先ほど大内参考人の言われたように、教育の過程が全然違っております。そこで、そういう人が船に入って、三人でやっている、その仕事が、非常に他の部門と比べて見ますと、アンバランスなような不安感があるわけであります。それが一つの私は原因ではないか。したがって、ここでは無線通信士船内における地位を確固とひとつしてしまえば、この不安は私はなくなると思います。ですから、私は、それを端的に申しますと、船に無線通信士は絶対に必要なのである。それを一人ということでやっていく。しかもそれを非常に大事にするということであれば、こういう不安定な状態というものはなくなっていく。それを片方のほうでそう言われるのですが、ちょっとこれは表面的なものに対して、ことさらにこじつけてくるというか、あるいは他の電気の産業が非常に盛んであって、そちらへ逃げていくというふうな——逃げるのじゃなくて、当然選択権は無線通信士にあるのでありますから、そこで、そちらのほうに向いていくということ、それからきている。われわれはむしろそちらのほうへ行ってもらっちゃ困るのです。だからここで船内における地位を確固として、はっきりさしてもらう。そのためには一日も早くこの職員法をひとつ通していただいて、そうして無線通信士の地位をしかっりしていただきたいというつもりでおります。
  20. 大倉精一

    ○大倉精一君 なおその点については、いろいろ私のほうでも検討しなければなりませんが、先ほど皆さん方のおっしゃっていることは、そういう不安が、今度の改正によって、かえって増大をするという、特に船舶勤務というものは、海上の航行安全ということで、審議会なんかあるように、人命に関することである。しかもその航海中におけるところの不安というものが増大をする。そこで船舶通信士というものの不安というものが増加されるのではないかという意見がありました。私はそれもそうだと思っております。  そこで、淺井先生にお伺いしたいのですけれども、そういうような不安の増大について、私は先生の、必要のないということを具体的に示されなければ、やはりこの人員不足に拍車をかけるのではないかという御意見もあり、はたまた、やはりこの航行の安全ということについても非常に大きな問題があるというお話でありましたが、その点をひとつ具体的に、われわれしろうとにわかるようにお話し願ったらいかがかと思います。
  21. 浅井栄資

    参考人(浅井栄資君) ただいまの御質問は、航行安全に対する影響はどうかということと、海上人命の安全に対してはどうかという御質問だと存じますが、航行安全上の影響といたしましては、確かに気象情報なり、あるいは海象情報なり、また水路通報といったようなものを受信してもらうことによって、非常に参考になる。けれども、この無線通信そのものが、直接に船舶の安危、今すぐどうこうというようなことに関係するのではなくして、それに対する資料を提供せられる立場でありますので、それは、また、多いほどよろしいのでございますけれども、少なくなったならば少なくなった設備をして、そしてそれに対応する処置があると思います。たとえば気象ども、非常に長文の気象電報をとって、しかもそれを天気図に書いてまで提供してもらっておる。非常に今行き届いたサービスをしてもらっておりますが、そういう点、少なくなった人数に要求するわけにはいかない。それらは航海士その他がやらなければならない。ただし、気象無線が取れなかったらば、やはりラジオによるものも得られますし、それからファクシミリと申しまして、天気図そのものをずっと送って、これはほぼ実用化されておりますが、そういうものもございますので、方法はあるということでございます。確かに、それは人がやるに越したことはないのでございますけれども、しかし、人がいなくなったらばいなくなったで、対応する処置があるというのが、第一に対するお答えでございます。  第二の、人命安全に関する問題につきましては、大内参考人からもオート・アラーム信頼度その他のお話がございました。これは、日本においては開発が進んでおらない。つまり需要がないということで開発がおくれておるという事実はあると存じます。しかし、日本の電子工学の現状から見まして、要求があり、そして、することによって、それに対応するようなものが順次出てくるということは、これは専門家も確信を持って言っておることでございます。それから人命安全と申しますと、非常の場合はどうかということになると思うのです。自分の船の非常の場合はどうかということになりますが、それは、そういう、いわゆるエマージェンシーのときは、船内全部が休んではおれないことでありますので、勤務時間外といえども活動してもらわなければならないかと存じます。それで、それらのことによりまして、行く道はある。あるが、段階的に時間をかけてやっていくのが妥当な行き方じゃないだろうかというのが私の考えでございます。
  22. 大倉精一

    ○大倉精一君 次に、米田さんのほうからも、浅井さんのほうからも、気象関係通信には支障がないだろう、あるいはこういう制度になれば、それに対応する対策を立てればいいだろうというお話がありましたが、この問題は、いずれ委員会において気象庁のほうからも聞きたいと思いますが、この際、ひとつ通信の専門家にお伺いしておきたいと思います。というのは、気象関係の通報に関して聞いておりますところによりますというと、大体百六十度以東においては、三時、九時、十五時、二十一時と、こういう四回の通信をやっておられるようですけれども、今度の改正によって、三時の通信はこれは全然できないことになる。十五時はどうかといえば、これはちょうど交代時間切れの時間になって、これは、今までも外国船からも、十五時の通信というものが非常に少ない。というのは、甲板において気象観測をやっておっても、通信士は時間切れになって通信ができない、あるいはしないという、そういう勤務時間の関係も出てくるということも聞きました。そうなって参りますというと、やはり気象関係通信というものは、大体観測をして三十分以内にそのデータをもらわないというと、いわゆる気象通報に差しつかえがあるというふうに聞いております。でありまするから、大体外国船からのものは、一名の場合におきましては、三時のものが九時でなければ打ってこないというような結果になることも聞いております。そうなってくるというと、ラジオというお話でありましたが、漁業気象につきましては、一日三回、六時、八時、十二時ということがありますけれども、この十二時というものは、この九時のデータが取れないから、十二時のラジオの漁業気象通報ができないという結果も起きるようであります。そうなって参りますというと、通信時間というものは、これは日本だけで変えるものではなくて、国際何とかいうものがあるのですね。それによって国際的に時間がきめられているので、こういうことになったら、発信時間を変えたらいいじゃないかということは通用しないと思うのですが、そういう点は大内さんひとつ専門家はどういうふうにお考えになりますか。
  23. 大内義夫

    参考人(大内義夫君) 気象業務法による規定された時間も、大体グリニッチ・ミンタイムでやっていると思うので、その点は時差の関係がありましても、国際的に統一されておりますので、時間の関係においては、観測時間というものについてはズレはないと思うのですけれども、それを無線通信で送った場合に、相当問題があるわけです。一人になった場合には、やはり世界の海域を五つに分けまして、それぞれのブロックによって、時間が同じ八時間でも、時間の振り割りが皆違う。そういう時間になりました場合は、日本の場合を例にしますと、日本近海の地帯はCブロックといいまして、日本の時間でいえば、午前の九時から十一時、それから十三時から十五時、十七時から十九時、二十一時から二十三時、こういう四回になっている。したがって、十五時から十六時の間は、義務運用時間じゃないのです。ところが、現在においては、銚子無線電報局、長崎電報局なんかを見ますというと、船舶の義務運用時間でない、たとえば十五時から十六時の間に、一番電報が集中するのです。ですから電波法改正によりまして、表時間、裏時間というもので、矛盾のないようなことにいたしますということを、郵政省はお答えになっておりますけれども、きょう現在においても、そういう時間にはびっちりになっているのです。したがって十五時なら打てる、十五時だったら打てないと申しましても、観測することはできますけれども、その時間に通信は今後ますます集中いたしますから、せっかく甲板部で観測したものを、無線通信士が送ることができないということになりまして、事実上通信士が上がってきているからいいという時間でも送れない。その時間に皆一斉にやるのですから、きょう現在においても、その気象通信する時間になりますと、その時間が他の公衆電報に取られてしまって、ほかの電報が打てない。そういうふうな時間がずっと続いている。それが二十四時間の当直じゃなくて、一日わずか八時間になりますと、どうしても通信が集中しますから、気象電報というのは、ほんとうは公衆電報の一種でありまして、送信しなければなりませんけれども、何といってもこれは会社の電報であるとか、ほかの電報が優先になりますから、送れないものはそのままやめてしまう。三十分、一時間たったら、役に立たないからやめてしまうということでもって、夜中の三時だけじゃなくて、昼間の時間の観測報も、現行よりも半分、三分の一あるいはもっとそれ以下に落ちることだけは、全く間違いないことだと、こういうふうに思います。
  24. 大倉精一

    ○大倉精一君 その点につきましては、委員会のほうでいろいろやりたいと思っておりますけれども、こういう点につきましても、やはり海上気象の通報というものが、航行安全には非常に大きな影響があると思うのですね。ですから、この面につきましても、たとえば漁業気象が、ラジオでもって一回ブランクになれば、漁船は非常に不安を感じます。あるいはまた船舶自身も、四回打つ、あるいは百六十度以西におきましては、八回打つことになっていると思いますが、打つことによって船舶航行位置が、そのときの位置がわかるということであって、船員自身も非常に安全感があるのだが、これはもうできないということならば、非常に不安感がある。さらに、今おっしゃるように、私の聞いておるところによってというと、その通信が殺到して、いわゆる船舶の出入りの通信が優先になるから、気象通信というものは、あと回しになってしまうということを聞いております。できないから、今おっしゃったように、めんどうくさいからやめてしまえということになる。そうなってくると、非常に大きな問題があるのじゃないかというように考えられるわけです。  次に、お伺いしたいことは、先ほど海員組合の副組合長のほうから、非常に重大な事実を聞きましたけれども航行安全審議会の審議経過というものは、これは非常に私は重大だと思う。これはあらためて、必要な人に来てもらって、その事実を確かめたいと思いますが、ほとんど審議らしい審議、あるいは検討らしい検討はしていない。これは、あらためて調べてみたいと思いますけれども、この審議会において、さらに検討を加えられ、あるいは論議を進められておったならば、今日の事態とは非常に変わったものになってきておるだろう、こういうお話でありました。  しかも、附帯決議の中に非常に強い反対意見があったということもあり、かたがたこういう通信の円滑については、いわゆるその準備態勢といいますか、それに付随する万般の態勢を整えるということもあると聞いておりますが、その当時の模様について、南波佐間さんから、具体的に聞けたらけっこうだと思います。
  25. 南波佐間豊

    参考人南波佐間豊君) お答えいたします。この船舶職員法の一部改正に対する諮問が航行安全審議会にあったのは、三十六年の七月三十一日なんです。答申をしましたのは、三十六年の九月の二十五日であります。この期間を見ますると、約二ヵ月あったわけです。ところが先ほども申しましたように、船舶職員法改正する理由というのは、電波法改正が行なわれるので、船舶無線電信局の運用義務時間が国際水準に改められるのに対応して変えるのだ。そこで、それではわれわれは、何も電波法改正されない限りどうにもならないのだから、審議の提案の理由がわからないじゃないか。そこで電波法は、どのように変わるのだ、これは、いわば国会の問題である。しかも電波行政をやっている郵政大臣が、われわれにその時点においてはしばしば言明したごとく、いやわれわれのほうは別に改正するつもりはないのだ、私たちは、郵政省に対しましては、当時電波法改正するための調査会というものが検討されておる、準備されておるのだ、しからばそのときに、あわせてやったらどうだろうかということに対して、いや郵政省は、今それをやる気はないのだから、それをやるときには、そこに関係者を入れて十分審議するつもりはあるのだけれども、今は改正をする意思はないんだと政府部内において、一方においては電波法改正されるんだと、片一方のほうは、いやそういう意思はないんだということではおかしいではないか、その間の事情を明らかにしてもらわなければ、内容の審議に入る前に、そういう重大なことは納得できないということのやりとりで、もうすでにこの二カ月間のほとんど大半というものは費された。たまたまそのころに運輸省のほうは、昨年の臨時国会にこの法案を提出するという方針のもとにきまっておった、したがって、早く答申をしてもらなわければ困るという要請があったと思うんです。そこで、早く採決をしようということになりますと、とにかく委員長は採決をあせっておった、したがってその内容の審議というものは、ほとんど行なわれていない。もちろんあの中には水中翼船のように、あまり問題にならぬものがございますが、この中心的な通信士定員を減らすということについては、いろいろな角度から、たとえば先ほど申しましたように、経過措置にこういうことが書いてあるけれども、これは一体どうなんだと、将来やるんだというならば、そのときでもいいではないかと、しかも郵政省はそれに対してどれくらいの具体的な考えを持っているのか、それを聞かなければ論議にならない。  そういう状態で、とにかく運輸省は非常に一方的な態度といいますか、そういう態度で審議も十分行なわれないのに採決をしようとしたから、われわれは、それでは審議の責任を持てないということでやめたわけなんです。したがって、そのことが非常に反対の意見があったと言いますけれども、少数意見ですけれども、もちろんこれは航行安全審議会の船舶職員部会で集まったこの委員は三十名——正確には覚えておりませんが、三十名程度なんです、どういう構成かと申しますと、これは船員を代表するものとしてわれわれ海員組合から私、ほかに四名、計五名、それに船舶通信士協会の、ここにおる大内参考人委員の一人であった。そこでわれわれが実際そういう質問をすることに対して的確な、理解できる答弁がない。一方その中の船主のほうの委員は、これはもちろん早く結論を出せということで、ところがほかの委員は、これは保安庁とかあるいは海難審判庁とか、そういったような官庁の委員が多いわけなんです。こういう委員の各位は、これは運輸省が閣議了解なんだ、こう言われれば、実際積極的な発言はしないわけなんです。したがって、終始意見は出さない。最後の段階になりまして、日本船長協会というのがありますが、船長協会の会長をしておる高田さんという人ですが、この人が、それはやはり問題があるだろう、せめて三名を二名ぐらいにしなければ、二名でなくては、どうにもならぬということを自分自分の海域の多くの船長から聞いておる、こういう意見が出されました。さらに郵政省から来ておる委員は、これは積極的な反対はできないわけですけれども、とにかくわれわれの郵政省の立場としては、閣議了解ということもありますから、積極的な反対はしないけれども、非常に消極的である。一方その他の委員の中には、やはりこれは海員組合が、それほど言うておるのに、もっと慎重に審議すべきではないかという意見もあった。  しかしその段階におきまして、委員長は一人々々名ざしをして、賛成か反対かということで採決をされようとしたので、そういうことでは、われわれは少なくともこの答申の審議に責任が持てない、われわれは単に反対するために反対しているんではないんだ、もう少し審議を尽くすべきではないかということで、審議に対する責任が持てないということで、もし強行されるならば、われわれは審議ができないということで辞表を出した、そのことによって、多少でも委員会の運営なり、あるいはそういう諮問をしておる側の運輸省の態度に、多少でも反省をしてもらうところがあるかと思ったところが、そのあとで直ちに採決をして、先ほど言いましたような答申をした。  そこで、われわれは、先ほども申しましたけれども、この問題は、きわめて単純なんだ、要するに海運企業合理化定員減だと、この一点に尽きるわけなんです。そのことをいわゆる器材発達とかいうことを、一つひっつけた、電波法のほうには。しかし、職員法のほうには、何べんも申し上げますけれども電波法が変わるであろう、それに、おれは合わしていくのだというだけだ。ですから、われわれとしては、もともと話にならぬ。むしろわれわれは電波法改正のたびに、もしそれがあるならば、郵政大臣にもお願いをして、関係者をその委員の中に入れて、慎重に検討してほしい、一方において、そういうことをやっておったのですけれども、とにかく強行に時間切れということで採決をされた。われわれの参加なしに採決された。  したがって、私はそういうような、意味合いからいえば、少なくとも現在の運輸省というものは、御承知のように海運行政船員行政をやっております。それがあたかも海運行政に単に追従するというような形の中で、こういうことが考えられ、しかもそれに航行安全審議会が自主的な検討もせずに追従をしていった、そういうことでは、われわれとしては今後協力もできないし、われわれは辞表を出して、自来航行安全審議会は、そのために開催をせられずにおるわけです。
  26. 金丸冨夫

    ○金丸冨夫君 関連。今の問題につきまして、ちょっとこの審議会の答申のいきさつにつきましてお話があったようですが、私もこの点は、その経過を承知をいたしておりませんですが、初めに海員組合の方のお話では、郵政省が改正をする意思がないのだ、というようなことで、審議会に入って、結局この審議会自体というものでは内容の審議をしなかった。少なくとも組合辞任されたというようなことを言っておりますが、この時期との関連において、皆さん方は、ただ郵政省が改正しないと言っているのに、この審議会でもって、そういうことをやるようでは、われわれは、組合代表としての五人は審議には応じかねるということで辞任してしまって、その結果、やむを得ず審議会が答申を残余の方でやったのか、あるいは皆様方が、組合の方が最後までやはり入っての結果の答申であるか。その点ひとつ、はっきり言っていただきたいと思うのですが。
  27. 南波佐間豊

    参考人南波佐間豊君) お答えいたします。先ほども申しましたように、諮問があったのは三十五年の七月二十一日、答申をしたのは三十六年の九月二十五、二十五日まで、われわれは審議に参加しておりました、最後はですね、今もありましたけれども電波法が変わるからと、こう言っているのに、電波行政をやっている所管の郵政省が、その意思がないというのに、どうなんだということに終始したということなんです。  その問題が明らかにならぬので、最後に、この法案の内容に賛成ですか反対ですかというような議事の進め方をされたから、それでは、われわれは審議の責任は持てない、こういう採決をするなら審議の責任は持てないということで、われわれが辞表を出して退場して、その直後に答申が出た。こういうことでございます。
  28. 金丸冨夫

    ○金丸冨夫君 その場合、皆様方辞任せられる前に、郵政省といわず運輸省といわず、この航行安全審議会というようなものは、やはり政府の機関だからということであるならば、郵政省は、こういうことをわれわれに確認しているではないかというようなことをチェックすれば、それに対する回答が審議会において得られたと思うのですが、あるいはまた、そういう意味についての説明が聞かれたと思うのですが、それはお聞きになっておりますか、おりませんか。
  29. 南波佐間豊

    参考人南波佐間豊君) 聞いておりません。しかしですね、われわれは、こういうところと違いまして、じゃひとつ郵政大臣に来てもらって、その説明を聞こうじゃないか、あるいは運輸大臣に来てもらって聞こうと思っても、これは委員長が、そういうことをやってくれて、そして、そういうところに出てくれば聞けますけれども、そういう主張をしても、それを取り上げなければ、われわれとしては直接郵政大臣にお目にかかって聞く以外にないわけです。  さらに、先ほど申し上げましたように、たとえばすでに審議の過程において、改正案なるものが国会の諸先生方に配られている。そういうことはおかしいじゃないかと言っても、それは委員長は知りません、しかし、じゃ委員長、それを委員長の責任において調査していただきたいと言うても、そういうものはしないということになれば、われわれとしては、手の打ちようがないわけなんです。
  30. 金丸冨夫

    ○金丸冨夫君 そこの問題です。つまりあなた方が郵政省、郵政大臣に会われたかどうか、そのことによって、電波法改正しないのだ、意思なしということをお聞きになったことを、その審議会の方々に確認をする意味において御要求になったかならないか、委員長に。お聞きになるのが当然でしよう。それでもって退場するかどうかということまでも、皆さんお考えになったというならば。
  31. 南波佐間豊

    参考人南波佐間豊君) それは、何べんも申し上げておるのです。それは私が、こういうことを申し上げれば、委員長自身も確認する責任があるのじゃないか。もしわれわれの言うことに自信がなければ、委員長ひとつ確認してほしい。さもなければ直接郵政省の責任者に聞いて、はっきりしてもらえばいいのだ。そういうことに対して運輸省側は、おれは閣議了解しているのだという一点張りで、そういうことの確認のしようがなかった。しようともしなかったということなんです。
  32. 大倉精一

    ○大倉精一君 どうも、この審議会の内容というものは不可解だと思うのです。ちょっと大内さんも関連してあると思うのですが、今調べてみますと、三十六年九月二十五日に答申があって、委員会に付託されたのが二十八日ですね。国会に提出されたのは、少くともこの答申と同時くらいじゃないかと私は思うのですね。それでしかも、今のお話のように電波法改正を受けて、この職員法改正をするのだ。しかも電波法改正する意思はないという、政府部内の不統一ですよ。それを何で委員長が、かりにどういう理由で退場されたか、それはわかりませんけれども委員長としては、やはりもっと会議の運営を説得し努力すべきだと思うのですよ。しかも一ヵ月、二十五日間しかないのですね。こういうことで出てきた法案ということでありますから、私は非常に問題が多いと思う。  なおこれは調査してみたいと思うのですけれども、何かつけ加えることがあれば、どなたからでもけっこうですから。
  33. 大内義夫

    参考人(大内義夫君) 最後の答申案が作られた九月二十五日の状況でございますが、私は当日出席しておりまして、記憶しておるのでございますが、当日の安全審議会では、当然出席を予定されておりました船員局長がお見えになっておらない。どこへ行かれたかと言ったら、本日国会へ行った、船舶職員法改正案を持って国会に行かれましたと、そういうことから、当日は最初から紛糾いたしまして、きょう現在、われわれは運輸大臣から諮問を受けているにかかわらず、諮問案のできないうちに、すでに運輸省は案を作って国会へ持っていくというのは審議会無視ではないかということを組合側の委員が強く追及しまして、それはおかしいというような話もありましたが、手続上、そういうこともあるんじゃないかというような他の出席委員が擁護されまして、その後議事が進みまして、審議会の委員長が、ではこれから、各委員の最終的な意見を聞いて、本日は最終的にきめたいと、こういうあれを出したわけです。とたんに組合側の列席した委員五名が、そういうような強行審議はきわめて不当である、そういうことであっては、委員の席にとどまることはできない、本日、きょう現在をもって委員辞任する、こういうことを申し入れまして、用意されておりました辞表を委員長に出して退席されました。私はそのとき、そのままおったわけですけれども、各委員の意見を聞きまして、私は反対意見を述べまして、結局大多数の多数決をもって、答申案が別室で作られた。その間に、私も退席いたしました、というのが、当日の模様でございました。
  34. 米田富士雄

  35. 村松久義

    委員長村松久義君) 米田参考人の御発言は、この審議に関する問題ですか。
  36. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) はあ。
  37. 村松久義

    委員長村松久義君) 関連として、ひとつお話を願います。
  38. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) どうも、今承っていると、経過の報告が、重点が違ったところへ置かれているような感じがするのです。私は出ておりませんでしたけれども、私は議事録を見、それと、私のほうから出ている委員から聞いたので、大体知っております。  一体、この航行安全審議会というのは、航行安全のための技術についてのことをやる審議会で、決して労使がここでもって衝突するというふうな、あるいは労働問題の調整をやるような所ではないのでありまして、そこで、電波法のほうが閣議で了解されて、こういうやり方をやる、——それは、今ここで法律案として、改正案として出ていると同じ内容であります。それを出して、これは政府で、こういうふうにきまったんだから、これについて電波法は、こういう形で改正するんだが、職員法について、これに合うような方法はどうかという諮問だったのです。  ところが、その問題について、内容にほとんど入れないというふうなことが審議の経過でありました。この委員会には、商船学校の教授とか、あるいはその他第三者の人々も相当いられて、技術的な意見を持ち、あるいはそれを断片的に発言しておったのでありますが、そうじゃなくて、今南波佐間氏が言われたようなことで終始してしまった。だから審議が、決して本筋に乗っからないような審議のやり方をさせられたということなんです。  そこで、最後になって、それでは退席するというようなことになったようでありますが、こうなりますと、審議がすっかり軌道に乗ったわけです。ということは、前からほかの方々は、そういう気持を持っておられた。そこでそういう方々が、それではまあとにかく、こういう答申でいこうじゃないかということであった。その別室でもってやったというのは、私は議事録で見たのでありますが、起草委員をきめて、その起草委員が、それを練るために行ったわけなんです。  こういうふうないきさつがございますので、運輸省として、何とかしてこれを技術的に乗っけたい、しかも電波法が出る、その出るところで職員法も出さなければ、片手落ちになる。電波法だけが先行するわけにはいかない。だから、職員法も、これに合わせようということでやっておったのが、とうとう軌道に乗らないような審議方法最後まで行ってしまったというのは、私としては非常に残念に思っておるのであります。それからあと詳しいことは、ここで南波佐間氏なり大内氏なりとやってもしようがないのでありますから、議事録を御検討いただきましたならば、その点はおわかりだろうと思います。どうも今まで承っておりますと、ちょっと重点の置き方が違っているような感じがいたしましたので。
  39. 村松久義

    委員長村松久義君) どうか参考人の方は、御意見だけを御発表願って、討論にわたらないように、ひとつ議事を進行したいと思います。
  40. 赤松常子

    赤松常子君 関連で。私も単なるしろうとでございますから、教えていただきたいと思っております。  今の南波佐間参考人米田参考人のその審議会に対する御発言のところに何か食い違いがあるように思うのでございますが、米田さんにお尋ねいたします。政府の意見として委員長が御発表なすったのですか。私がちょっと皆様のお話を伺っていますと、郵政省と運輸省と、全然意見が統一されていないまま、その審議会に御出席なすったように受け取れるのです。にもかかわらず、委員長が、政府の意見として発表されたというところに、私ども了解に苦しむ点がございますのです。
  41. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 簡単にお答えします。その前に、南波佐間参考人から言われているように、閣議の了解ができております。したがいまして、運輸大臣は、その了解に従いまして、船舶職員法改正に対して、この委員会に諮問しておるわけです。その諮問に今こたえようとしておるわけなんでありまして、それでいっておるので、委員長が、独自に自分でやったとか何とかじゃない、運輸大臣の諮問にこたえる委員会の進め方をしておるわけです。
  42. 赤松常子

    赤松常子君 そうですが。運輸省の諮問が中心で出されたのですね。
  43. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) そうです。
  44. 赤松常子

    赤松常子君 それじゃ今度南波佐間参考人に伺いますが、郵政省が、どういう態度でいたのでしょうか。また郵政省の意見というものは、この答申案に盛られているかどうかということを、組合側の方は、どういうふうにお受け取りであったのでしょうか。
  45. 南波佐間豊

    参考人南波佐間豊君) 先ほども、しばしば申し上げましたけれども電波法改正されるというから、電波法を所管しておる郵政省に、われわれは確かめたわけです。ところが、郵政大臣は迫水大臣ですか、大臣は、そういう考えは持っていない、そこで、政府部内でおかしいではないかという質問をわれわれがしたわけなんです。それに対しての運輸省の答弁は、閣議の了解だと、こういう答弁だったわけです。
  46. 赤松常子

    赤松常子君 了解しました。そのあと、皆様方が退席なすったあとの起草委員にどういう方々、どういう立場の方がおるようでございましたでしょうか。組合側の意見を代表する方がお入りでございましたでしょうか。
  47. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 組合の人は入っておりません。ということは、前に退席しましたから。ですから、四人か五人と思いましたが、大体中立の方々が主になっております。  それから、先ほど南波佐間さんから郵政大臣がどうこうと言われましたけれども、これは閣議の了解がすでにできております。郵政大臣が、かりにそういうことを南波佐間氏に言ったとすれば、それは私語でありまして、それを取り上げる必要はどこにもないということが、われわれのほうの考えであります。
  48. 赤松常子

    赤松常子君 いずれそういうことは、この委員会で明らかにされると思っておりますが、反対意見を持っておる方は、この起草委員にはいらっしゃいませんでしたでしょうか。
  49. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 反対意見も、最終的なところに行くまでには、いろいろ議論を出された人もあります。あるいは郵政省の事務当局の人も、閣議の決定は多少疑を持った発言もあったように聞いております。しかし、最終段階におきましては、全部一致しております。全部一致しております。
  50. 大倉精一

    ○大倉精一君 今の審議会のことをお尋ねしますけれども、あなたは、今郵政大臣の言ったことは私語だというお話がありましたが、組合の人あるいは民間の人は、閣議決定なんて、やっぱり知らぬのですから、郵政大臣という人に聞いたんですから——そのときにはだれですか、迫水さんですか、迫水さんに聞いたんじゃないのですか。郵政大臣に聞いたのですから。郵政大臣が言ったことは、やる意思がないということは、これは言われたとおりである。——それはそれとしまして、この運営については、九月二十五日に、この答申案を出すということは議事運営上前もってきめたのですか、南波佐間さん、どうですか。
  51. 南波佐間豊

    参考人南波佐間豊君) きめておりません。
  52. 大倉精一

    ○大倉精一君 私は、もう少し具体的に調査してみたいと思っておりますけれども、非常に不可解に思うのですが、二十五日に答申案を出さなければならぬという理由が、一体どこにあったのですか。しかもその日は、船員局長はすでに案を持って国会に出てきて、その結論を出す日には委員会に出ていないということです。しかも二十八日に委員会に付託になっておるのです。どういうわけで、たった一カ月、二十五日ばかりの短期間に、結論をあわてて出さなければならなかったか。  私は、むしろ海員組合の方あるいは船舶通信士協会の方々、現実にやっておいでになる方々、こういう方々の意見というものは相当尊重されなければならぬと思うのですね。その人々がどういう事情があったか知りませんけれども審議結論を出すのに参加されなかったということは、重大なことだと思うのですよ。むしろ私は、その他の方々は、現地調査をおやりになったほうがよかったと思うのです。これを審議される場合に、ただ机の上だけで、ただ閣議の上で、航行安全というような重要な問題を審議することは非常に危険だと思うのです。むしろ現地に向かって、実際として調査をし、あるいはそれだけの資料も集めて、真に航行安全に対する大臣の諮問に答える、そういう審議会でなければならぬと私は思うのですけれども、何か形式的に審議会という名のものを開いて、そして大臣に答申する、これが民主的だという、往々にそういうことがあるのですけれども、何か聞いておると、政府の御用機関のように思われる。運輸省のほうに二十五日……。どこからどういうふうになったか私は知りませんけれども、そういう、審議会の運営の仕方に私の疑問を持つわけなんです。私の疑問が当たっておらなければ幸いなんですけれども、もう一つ調査していきたいと思いますが……。
  53. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 一つ大倉委員に、あえて議論をふっかけるわけでも何でもないのです。はなはだ失礼なことを申し上げて恐縮なんですけれども、私は、今おっしゃったとおりなんで、この問題について最初から実質的な討議に入ってもらいたかったのです。今のおっしゃったようなことで。こういう点はどうだ、こういう点はどうだということで、それに入ることを、ほかのほうの委員の方はちょいちょいと言われておる。ところが、とうとうそれに入れないで、最後まで行ってしまったということが一つと、それからもう一つ、一体この問題の基本法は電波法なんで、電波法で大丈夫だという一つ結論が出れば、それに職員法をあわしていく上において、どういうふうな支障があるかということを検討することなんです。われわれは大体この問題に対して、ほとんど疑いを持たなかった、技術的に、われわれの態度は。  ですから、こういう問題については、これは、もちろん委員会にかけて、検討してもらわなければならないけれども、しかし、当然結論というものは、われわれとしては、ここへいくということは一応期待しておった。そういうような二つのことからして、どうも、はなはだお言葉を返して申しわけないのですが……。
  54. 村松久義

    委員長村松久義君) 大倉委員、この問題は、この程度でいかがですか。
  55. 鳥畠徳次郎

    鳥畠徳次郎君 議事進行……。
  56. 村松久義

    委員長村松久義君) 議事進行を許します。
  57. 鳥畠徳次郎

    鳥畠徳次郎君 先刻来、審議会の運営その他について、いろいろ核心に触れての応答があるようでありますが、本日の参考人の御出席を願ったのは、われわれとしては、少なくとも審議会の運営の問題は関連はいたしておりますけれども、ほんとうの主題でない、かように考えますので、私は審議会の運営問題についてはお尋ねはいたしません。また委員各位も、この問題に関連するものに対しては、一応打ち切るほうがいいと私は考えます。
  58. 村松久義

    委員長村松久義君) 大倉委員も打ち切りに同意せられておりますので、この問題は、この程度にいたしたいと存じます。  次の問題に、ひとつ移ることにいたします。次の問題、発言ありますか。
  59. 鳥畠徳次郎

    鳥畠徳次郎君 参考人に聞きたいのですが……。
  60. 大倉精一

    ○大倉精一君 もう二、三点でやめますから、審議会の問題は、今いろいろお話のとおり、議論をしても仕方がありませんが、私は私なりの疑問を持っておるので、これは私個人として、大いに調査をしてやりたいと思っておりますが、ただ審議会を呼んだのは、この目的ではないということについて若干触れて、終わりたいと思いますけれども、この法案というものは、根本は審議会なんです。それがために運輸大臣というものは審議会に答申を求めたのですから、この答申によって、この法案の審議にかかっておりますから、その母体になる審議会の運営については、われわれは大いに関心を持つ必要があると思います。それはさらにまた後日調査をしてみたいと思っておりますが、委員長において、ひとつ、あとでその速記録を要求いたします。  次に、二、三点についてお伺いしたいと思うのですけれども、その一つは、たとえば免許の年令を引き下げるということについて、これも当然やむを得ないというお話がありましたが、一方浅井先生のほうからは、こういう年少者を一人でもって通信士にして操作される不安もお述べになりました。私も同様の不安を持っております。陸上においては、交通事故をなくすために免許年令を引き上げようという際ですよ。海上においては、単に人員不足という原因だけで、免許年令を引き下げるということについては不安があると思いますけれども、それに対して、実際に現地に働いておられる技術者から、実感をひとつお聞かせを願いたいと思います。
  61. 大内義夫

    参考人(大内義夫君) ただいま職員法の中で、当分の間乙種船舶通信士、丙種船舶通信士は年令十八才に下げるというのが法律案の中でございますが、これは私どもは、当初から反対しております。これは、なるほど日本通信士の教育は、電波高等学校でやっております。卒業年令が十八才、そのときに国家試験を受ける、そうしますと海技免状をとるために二年間のブランクが生ずるので、その間むだになるので、年令を引き下げて免許を与える、いかにもそれだけを申しますと理屈に合った、実情に合ったように聞こえますけれども、実際におきましては、電波高校を卒業して、卒業と同時に国家試験を受けて、二級通信士の免状をとる人はきわめて少数。実際におきましては、国立電波高校の中では、本科三カ年の教育を受けまして、さらに一年の専攻科に入って、そうして国家試験を受けて通るというのが大部分でございます。中には稀に非常な秀才がおりまして、卒業と同時に国家試験を通るという人も稀にはございますけれども、毎年々々合格率が低下しまして、また国家試験を受けない人がふえまして、実際におきましては、年令を下げても需給関係に大きく影響を及ぼすだけの人は出てこないと私は見ておるわけです。  もう一つは、やはり責任ある船舶職員として船舶に勤務する限りは、単に無線通信士という技能だけの知識でなく、やはり社会的な経験、知能というものをあわせて持つことが必要じゃないか。そういう点において、現行法においては満二十才ということになっておるので、これにあわせてやる必要があるんじゃないかと私どもは思っております。ましてや現在におきましては、二級通信士の知識内容というものは、電波高等学校の三カ年の教育で十分かどうかという点も、はなはだ疑問である。それが証拠には、毎年国家試験を通る率が少なくなっている。もう一つは、先ほど申し上げましたように、二級通信士が出ないような現在の教育制度に根本的な欠陥がある。そういう点から考えまして船舶職員法法律改正して、年令を十八才に下げることは実効がない。やっても非常に無理が生ずる。十八才の人がたった一人乗って、いざという場合に、総合判断を下だして適切な重要通信を行なう能力があるとは私どもは思えないわけです。  そういう点でこの点は、きわめて重大な改正だと思いますので、私どもは反対したいと思います。
  62. 大倉精一

    ○大倉精一君 委員長、もう二点だけ。  次に、浅井先生に最後にお伺いするのですけれども、この法改正によって、この法の規定最小限度規定であるから、だから、あと人員等の点については、労使関係の間の交渉なりあるいは行政指導なりでもって別にやる必要がある、こういう御発言がありましたが、これはいうならば、やはり最小限度であって、一名では少ないという御意図が中にひそんでおるものだと私は信じておるのです。しかしそれが、私が心配することは、法律最小限度をきめれば、これはもう、そうなってしまうということですね。先ほどから米田さんの御発言やら、あるいはその他の政府当局の提案理由の説明によりましても、人員不足に対処するためにこれをやるんだと、こういう——これが一番大きな理由だと思うのですけれども、そうなれば私は最小限度をきめるということは、この法律を上回ったものは、これはなかなか実現ができない、現実の問題として。理屈としては、労使交渉をやればいい、あるいは行政指導をやればいい、そういう理屈は成り立つと思うのですけれども、現実の問題として、法の目的からいって、これが最小限度のものとして実現するのではないか、こう考えるのですけれども、その点はいかがですか。
  63. 浅井栄資

    参考人(浅井栄資君) お答えいたします。確かに、そういう面はございますが、現在、今まで従来、航海士、機関士でも、法定定員より以上に乗せておったことは事実でございます。それからやはり船主等にいたしましても、あれだけ巨大の財産を預けておるのに、一人では不安だと思うものに一人きりというようなことはしないと思います。それからまた、確かに今大倉先生からおっしゃいましたように、まあ一人だから一人でいい、あとは二人だ、こう言う人がないとは限りません、商行為をいたします商船のことでございますから。それはしかし、役所の行政指導やそれから労働協約などによって強く規制して、そうして段階的にやっていくというのが妥当なところではないかと思われます。法律の建前としましては、やはり世界各国の例にならっておく、そのほうが穏当ではないかというのが私の意見でございます。
  64. 大倉精一

    ○大倉精一君 まあそれは、この程度として、私はそう考えない面があるのですけれども、これは米田さんにお伺いしても、この場合ではしょうがないと思うから言いませんけれども、まあそういう危険があるというものを、私は、こういう法律最小限度をきめるんだ、その最小限度のきめ方に問題があると思う。これは航行安全と人命に関連した、あるいは相互扶助ですか、の精神からいって、非常に危険であるということを私は考えるわけです。  特に日本海運の現状からいって危険だと考えるわけですけれども、これは後ほどの論議としまして、次にお伺いしておきたいことは、オート・アラームという機械についてですけれども、これは私は、この委員会では専門家じゃないから、電波法の逓信委員会のほうで十分やっておってくれるから、そちらのほうの結論を待ちたいと思っておりますけれども、私の非常に心配をしておりますことは、オート・アラームというものは、いかに優秀であっても、これはオート・アラームという機械を買うだけじゃないわけですから、問題はオート・アラームというものに一名つけて、そして航海した場合に、どういう現象が起こるかということを把握しなければならぬ。ですから、オート・アラームの機械が非常に優秀だ、優秀だ、であるから一名でいいと、こういうことにはならぬとしろうと考えに私は思うのです。外国船日本船とは違う。さらにまた日本近海の状況と外国沿岸の状況とは違う。また、日本海運会社と諸外国との慣例というものも違う。言葉も違う。あるいは気象関係においても違う。あらゆるものが違う。ですから、私はこのオート・アラームという機械に一人をつけた場合に、どうなるかということを心配しておるのですけれども、この前の委員会で、オート・アラームに一人くっつけて実験したかと言ったら、ないとおっしゃる。そこで、そうだろう、だろうの論議になる。でありますから、私はそこに非常に不安を感ずるのですけれども、まあこれは、この場でオート・アラームの性能についてはお尋ねしません。そういう心配を持っているということだけ、ひとつ申し上げておきたいと思います。
  65. 鳥畠徳次郎

  66. 村松久義

    委員長村松久義君) 関連ですか。鳥畠委員に申し上げますが、しばしば発言を求められておるのは、委員長よく承知しておりますが、通告がございますので、通告順に従って発言を許可いたします。中村正雄君。
  67. 中村正雄

    中村正雄君 四人の参考意見を聞いたわけですが、それぞれ時間の関係もあって、具体的な面についてのお話のなかった点を補充する意味において二、三点事実だけをお尋ねしたいと思うのです。  最初船主協会米田君にお聞きしたいと思うのですが、これは政府の提案理由を見て参りましても、国際競争力を強化するため、合理化の一環として諸外国並みに改める必要があると、こういうのですし、米田君の意見も、そういう意見だと思うのです。そこで諸外国並みということなんですが、海運全体について、たとえば船舶建造費の問題、利子の問題、また運営の面におきまする人の数の問題、また船員の給与の問題、こういうものが、日本船舶外国船舶とどうなっておるか、要点だけでけっこうですから、簡単に御答弁願いたいと思います。
  68. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 今の問題でありますが、これは何も、無線通信士だけを国際水準に合わせろというのではないのです。たとえば船舶の建造につきましては、やはり金利国際水準の五分にしてもらわないと困る、そういうことでなければ、とても競争できないということで、それをお願いいたしております。そこで大体、まあ今のところ、開銀のほうで五分ぐらいに金利を落としてくれているようなんです。これでも、まだ多少足らないようです。輸出入銀行は四分ですから。そういう点では、まだもう少し下げてもらわないと国際水準にいかない。そのときにいつも問題になるのは、自分のところだけじゃなくて、もう少しお前のほうで努力できることをやったらどうだ、こういうことなんですが、それが今、先生の言われた銀行経費の問題とか、あるいはいろいろな問題にお金がかかる。それから乗り組みの問題もあるのです。乗り組みの問題も先ほど申しましたように、大体、向こうが五十人足らずでやっているときに五十五人ぐらい乗っけておったのです。それはおかしいじゃないかといって、いつも責められていたのです。それで先ほど申し上げましたように、今のところ外国より少ない数にまで努力してきております。ですから、これはひとつ、ある程度解決するのじゃないかというふうに考えております。しかし、まだもっと少なくしていかなければならない。それから経営の面につきましては、陸員の問題、先ほど浅井先生も、いろいろお話がありましたが、もしわれわれが金利とか、そういうふうなものを抜きにして、ほんとうの償却の前の形でほかの海運、たとえばイギリスならイギリスと日本海運とが、どういう利益を上げているだろうという、やはり水楊げの利益を比べてみますと、日本海運のほうがよけい水揚げをやっております。むしろ日本海運のほうが商売はある程度活発にやっているというふうなことが大体最近の傾向として出て参ります。これはもう定員を減らしたりなんかして、ずいぶん努力した結果がそういう形になってきております。  それから最後に、船員費の問題であります。これは外国の生活程度日本の生活程度とがやはり違うものですから、だいぶまだ差があると思います。しかし、だんだん今のところベースアップベースアップでもって近づいて参っております。これは私は、海上にある程度船員というか、人をとめるためには、やはりそういうことをある程度考えなくちゃいかぬ。考える以上は、今度はその人の生産性を上げなくちゃいけないということでやっております。ですから、まあ大体、先生のおっしゃられることに向かっての努力はいっておりまして、今、国際的にならないのはこの無線通信士関係と、それからもう一つドクターの問題、船医ですね。これがやはり外国で乗っけておらないのに、日本だけが乗っけている、こういうことでございます。  この無線通信士にしましても、三人を一人に減らしたから、二人分の経費の節約というだけではないのであります。実は、ああいう船みたいな一つの限られたスペースを、どうやって有効に使うかということなんであります。そうしますと、そのあけられたスペースは、他の穴に、利益を上げるほうにそちらに持っていくということにして努力をしておるわけでありまして、ただ費用、人件費だけでどうこうという問題ではないというふうに考えます。
  69. 中村正雄

    中村正雄君 私のお聞きしているのは、そうしますと、人員の面なんかは、大体外国並みになってきた、建造の面の利子の問題も利子補給その他で大体近づいてきた、ところが生活様式が違うといっても、日本船舶で運ぶ貨物運賃も、イギリスの船舶で運ぶ貨物運賃も、これは一緒ですね、どこの船で運ぼうと。そうしますと、私のお聞きしているのは、日本船舶船員の給与と外国船舶船員の給与も、大体近づいてきたという、こういうおっしゃり方なんですが、現在具体的に言って、大体イギリスやノルウェーの船員の給与と、日本船員の給与と、大体どの程度近づいてきているのか、現状をお聞きしたいのですが。
  70. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) それでは申し上げます。個々の船員の月給がどうだということより、やはり船舶経費で見ますと、まず、全体の船の中で、全体の船員費が幾ら占めるかというふうなところからいかないといけないと思います。  そうしますと、たとえばノルウェーのタンカーを見ますと、日本のタンカーより安いです。あちらのほうが安いです。それは乗り組みを減らしている。それからタンカーが大型になってきまして、大型になるということは、同じ二十人でやっても、その半分になる。たとえば五万トンが十万トンになれば半分ということでございまして、そういう面では、われわれは追いつかれたというふうなことでございまして、今われわれが悩んでおるのは金利の問題、これが一番悩んでおる問題でございます。それと、こういうふうなこと、ということになるわけでございます。
  71. 中村正雄

    中村正雄君 南波佐間君にお聞きしたいのですが、この法律が成立すると、船員の生活の海上文化の面において支障がある、こういうお話なんですが、具体的にどういう点に支障がありますか。
  72. 南波佐間豊

    参考人南波佐間豊君) 今、通信士が三人乗っておりますけれども、これは遊んでいる人は一人もいない。それぞれ八時間労働で仕事をしているわけです。一人になれば、その仕事ができないことは明らかなんです、労働強化をしいなければですよ。そこで、具体的にどういうことができなくなるかといえば、先ほど言った海上の安全に非常な関係のある気象通信もできなくなる、あるいは受信もできなくなる。できなくなるというよりも、なくなるわけじゃないけれども、非常に下がってくる。それから、いわゆる公衆通信も、従来と同じようにやろうとすれば、海岸局を経由しなければならぬ。そうなれば、経費というものは今の十倍くらいになる。それから船内文化の面では、ますます海上に孤立した状態で、つんぼさじきに置かれる。今われわれは、労働協約の面で共同通信の放送料を船舶が払って、これを受信して船内で新聞を出しているわけですが、こういうものができなくなる。そういう面で、船員全体の問題として、いろいろな不便が出てくるということなんです。
  73. 中村正雄

    中村正雄君 米田君にお聞きしたいのですが、今南波佐間君の意見によりますと、海上文化の面においては支障が相当出てくる、また気象通信その他についても支障が起きる、こういう具体的な話があったわけなんですがね。その面について、支障を来たさないという御意見のわけなんですが、具体的にこういう点については、こういうふうに考えておるという点をひとつ御答弁を願いたいと思うことが一つと、それからもう一つ、先ほど大内君から話がありました、この法律が成立しますと、内航船については、これは通信士の減少だけであって、機械の設備をする必要もないわけですね、法律的には。そすると、航行安全性というものは、内航船については保障されないという陳述があったわけですが、それに対して米田君は、どういうふうにお考えになりますか。
  74. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) まず気象の面でありますが、これは実は三人を一人に減らすのに、現状のままの行き方にして、一人に減らして大丈夫だということは私は考えていない。一人に減らすためには一人に減らすような体制をやはりとらなくちゃいけないということです。  そこで、たとえば、さっき言った通信の混乱なんかも、海運全社は、いわゆるむだな通信ではきるだけやめるとかなんとかして、そういうものは防いでいくということでございます。それから気象の問題でも、結局このやり方といたしましては、今気象庁に入っている電報の相当の部分がむだな電報になっております。これはデータとしては要らない電報が相当あります。これは気象庁でお聞きいただいたらわかります。それからまた、ああいう気象業務法がありますけれども、それは一つのただ、ああいう法律があるだけで、全部がそれを実施しているわけではない。各船から出ているその気象の通報というものは、オール船舶が全部出しているというものでありません。そこで、今度はこれに具体的な計画性を持たしてやったらどうかということで、私は気象庁と話してもおります。ということは、われわれのほうから日本船の全部の配船図を出しています。その中で、さっき言った四回の気象通報のところは、どことどこはだれに担当してもらうということをやれば、この気象通信というものは最も有効に使われて、そうして、今まで穴があくと言われていたところが、穴があかないで済むということになると思います。これは気象庁のほうでも、大体そんな考えで、今具体案を練っております。大体そんなことでやっております。  それから内航の面は、なるほど八時間だけで穴があくということは、これはあるかもしれません。しかし現在内航のほうは、中短波の無線局を今作ろうとしております。これは遭難を中心にいたします。中短波の無線局は、結局、基地をみんな設けまして、海上保安庁にすぐ通ずるようになっております。それによって、そのブランクを全部埋めようとしております。ですから、私はこの設備は、今一局だけできると、大体日本沿岸の全部について、その連絡がつくということのようになっております。ですから、これをひとつ進めるのと、海上保安庁の警備体制を、これに合うように充実してもらうということで、この問題は片づくと思います。  それから、文化方面のことでありますが、それはなるほど、今までたくさん出ておったのが、きてないというふうなことのようでありますが、一体これには、どのくらいのもので満足するのかという、一つ程度の問題があると思います。それから現在NHKやその他のほうで、相当ひんぱんに教養放送をやっております。それである程度満足のできるものもあります。それからまた、一人になりましても、先ほど申し上げましたように、大体一日の取り扱いが三通から五通、一通話が平均五分、ですから多く見て二十五分です。あとのものについては、またそのウオッチの中で考えられる面も出てくると思います。こういう面で、やはり私は何とか、これもいけるのではないか、特に船員の、そういう文化生活が急に落ちてしまうというふうに考えるのは、それは、また、少し思い過ごしの点があるのではないか、こう思います。  それからもう一つ、先ほどの業務用のことや何かで、浅井先生からも、あるいは業務用のことで三人が二人になるのではないかというふうなことでありますが、安全上必要とした一人というのと、安全上必要とする三人というのとでは、船舶の運航にたいへんな違いが出てきます。ということは、かりにある港を出るときに、その船が、一人が欠員になったらば船が運航ができません、今の法規では……。しかし、それがもし、そういう教養とか、かりに、そういうことは私はないと思いますけれども業務用通信等で、もう一人ふやすということで、二人でやった場合に、一人が減っても、次の港で補充する間は、船は動けるのであります。そこで、運航するには差しつかえがないということが出てくるのでありまして、法律の強制と、それからわれわれがその船を動かすために実際に使用する人数というものに多少開きがあっても、またその開きに対して価値がある、こういうふうに私は考えております。
  75. 中村正雄

    中村正雄君 浅井君にお聞きしたいのですが、海上勤務者が、だんだん希望者が減ってきておる、こういう事情なんで、これは現在の海運業界その他陸上の企業の問題等の見通し等もあると思うのですけれども、海上勤務者と陸士勤務者との待遇の問題について、陸上のほうが待遇がいいから、そっちに流れる、こういう傾向はないですか、どうですか。
  76. 浅井栄資

    参考人(浅井栄資君) お答えいたします。陸上のほうが特にいいということではございませんが、海上の労務が激甚であって、そしてまた、家庭から離れて不自由な状態であるというような割にはよろしくないのでありまして、しかしまた、陸上でいわゆるいんしん産業というようなところでは、同じ商船大学なら商船大学を出ました者に対しても、むしろ本給は高いのであります。そうして、時間外手当その他というようなものやら、あるいは厚生施設の面、それからボーナスというような面を通算いたしますというと、陸上のほうが、たまに高いことがございます。また高いほうが、いわゆる一流会社は多いようであります。そういう現状でございます。
  77. 中村正雄

    中村正雄君 同じ質問なんですが、南波佐間君にお尋ねしますが、今まで私たちの聞いたり、見たりしているところでは、海上勤務者のほうが、相当待遇がいいということで、今までは、相当海上勤務者の希望者が多かったわけですが、今現在においては、相当希望者が少なくなっておるということの原因は、どこにあるとあなたはお考えになりますか。
  78. 南波佐間豊

    参考人南波佐間豊君) これは船員の収入の絶対額というものは、一般的にいえば陸上より高いかもしれません。しかし、船員の労働の実態とか、海上労働の特殊性というものが、何らかの形でカバーされなければ、単に金が少し高いだけでは、だれも船員になる者はいない。  そこで、最近非常に希望者が、あるいは若い青年の船員層が陸上に転職をするという原因は、何かといえば、やはり船員労働にふさわしい労働条件というものが与えられておらぬ。その根本は何かといえば、やはり日本海運産業というものは、現在どういうことに置かれているのかというところに尽きると思うのです。それで、先ほどいろいろなお話がありましたけれども、私はここで論争するつもりはございませんから、質問だけにお答えしますけれども、一体、今船員の総額というものと、海運企業負担しておる借入金の利子というものは、大体同額なんです。そういう中で、苦しいから人間を減らすとか、いろいろな無理をする、非常に稼働率を上げていく。そうすると船員は、これほど働いて、もうかっているはずだ。しかるに、われわれはどうなんだと。ことに最近は、やはり家庭生活というものが非常に問題になっている。ですから、船員の奥さんから、特に新家庭の若い奥さんから、私はしばしば投書をいただくのですが、自分の夫は帰ってこない、あるいは子供が学校にいって遠足をする、あるいは今日レジャーブームの中で、いろいろなやはり苦しさがあるわけです。  そういうようなことから、やはり家庭生活というものを犠牲にしているということが一番大きな問題ではないか。しかし、それを犠牲にしても、それに報いられるだけの条件が与えられているかどうか、それが与えられなければ、今日御承知のように、陸上のいんしん産業といいますか、どんどん雇用があるわけです。そうしますと、陸上に行くのは当然なんじゃないか、これは世界的な趨勢なんです。御承知のように、船員というのは、五年、十年の船員生活をした人は、なかなか陸上に行けないのです。したがって、古い船員というものは、不幸を持ちながら、やむを得ずやっている、しかし、若いところは、どんどん離職をしているというのが現状です。
  79. 村松久義

    委員長村松久義君) ほかにございませんか。
  80. 金丸冨夫

    ○金丸冨夫君 ちょっと簡単に二点だけお伺いしたいのですが、浅井参考人にお尋ねいたしますが、通信士組合の方々の言によりますと、養成機関は二級通信士であって、仙台、託間ですか、そこでやられているということで、三年間やって出る、こういうものだけでは、今後船舶をふやす、あるいは今不足しているものに持っていっても実際不可能だというようなことをお聞きしたのですが、この二級通信士から一級通信士になる試験というような、あれは国家試験は、やはりいつも時期をきめてやっておられるのでしょうか、その点は、いわゆる需給関係において、また、二級通信士の栄進の意欲の問題と関連して、そういう機会が与えられているかどうか、その一点をお伺いしたい。
  81. 浅井栄資

    参考人(浅井栄資君) この問題は、大内参考人がより詳しいと思いますので、大内参考人に答えてもらったらどうかと思いますが、いかがでございましょうか。
  82. 金丸冨夫

    ○金丸冨夫君 よろしゅうございます。
  83. 大内義夫

    参考人(大内義夫君) 先ほど申しましたとおり、商船に乗り込む通信士供給源は、ほとんど二級通信士が九〇%を占めております。ところが、二級通信士の資格では、将来大型船、外航船の通信長になれません。一人前の通信士になれませんので、どうしても三年、四年と働いて、経歴を重ねまして、それから一級の国家試験を受けるために、また学校へ入るわけです。  甲板部機関部の職員には、そういうことはないのですけれども通信士は、どうしてもそういう教育をやりませんと一人前にならない。供給源が二級しか出ませんので、どうしてもそのあと一級を取るために業務経歴三年間乗りまして、それからもう一ぺん学校へ入って、それで一級の国家試験を取る。日本無線通信士の国家試験は、現在年に二回あるわけです。半年ごとに、二回あるわけです。その機会を逃がしては受験できないわけです。ところが、最近はなかなか一回の国家試験で一ぺんに通らないというようなために、せっかく学校を出て二級の免状もらって船に乗れたはいいが、一級の資格を取るためにお金をためて、学校へ行くという目標をもって三年間乗って、初めて学校へ行って国家試験を取るのですけれども、一ぺんになかなか取れない、こういう状態でいるために、こういう生活では不安だということでもって、上級資格を取る意欲を失うような傾向が最近見えまして、このままやめてしまうという状態になっているわけです。
  84. 金丸冨夫

    ○金丸冨夫君 時間がございませんので、簡単に、もう一点だけ米田参考人にお伺いいたしますが、この組合の南波佐間参考人最後のお言葉にも、海運合理化海運向上というようなことには努力するのはやぶさかではないというような意見でございましたし、また、力をもって実力行使などはしないというような、われわれが労働組合の方々に対して考えた場合には、実に理解ある言葉のようであります。  こういう組合でありますので、なるほど現在の海運自体については、基盤強化という問題については、いろいろ問題がありましょうが、浅井参考人もお話しになりましたように、減員だけが決して基盤強化に通ずる問題ではないということもいわれておりました。にもかかわらず、非常に実際問題として陸上に上がる、そうして海上生活に見切りをつけるという方がふえているやに聞いておりますし、また、今後の無線通信無線電話に切りかえるとかいうようなことの問題も、非常に船員、特に通信士に対しては不安なように思っておりますが、あなたのお言葉で、これに対しては通信士の地位を確保する方策を考えなければならぬということを、ちょっと私お聞きしたのですが、それに対して、具体的にどういうことがあるのか、これはあたたかい気持で経営者側も、そういうことを進んでやっていく、もちろん待遇改善その他について一つもやらずに、採算だけをとろうなんというけちな考えはお持ちになっておりますまいけれども、さらに進んで、こういう特殊の技術者である以上は、その将来の地位というものを確保して、具体的方策というようなものが、どういうことであるのか、ちょっと簡単でよろしゅうございますからお聞きしたいと思います。
  85. 米田富士雄

    参考人米田富士雄君) 実は私、一番その点を心配し、一番そのように努力したいと思っております。海員組合が、ほかの組合と違いまして、片一方ではベースアップの要求は出しますけれども、しかし海運企業のこれからの将来を考えて、なるべくそこに船員生産性向上さして、何か企業を建て直そうということの気持があると、それは私は、ほかの組合にはない一つの気持だ。  それが具体的に表われましたのが、ベースアップをしながら片一方で昨年の七月一日から、ある条件のものについては、船員を減らすということについて協力しております。その協力の結果が、先ほど申し上げましたように、日本乗組員がやはり世界的な水準へいくのに、大いに役立っているというふうなことになっております。その場合に、今度無線通信士のことでございますが、これはまあ、技術的な関係からいたしましたらば、ひとつ電話にして通信士が要らないというふうなことも考えられるのかもしれませんが、今世界各国、どこを見ても無線通信士一人ということを動かす国はどこにもございません。ということは、とにかくこの通信士一人は、どうしても乗せておかなくてはならないという考えでやっております。だから、われわれのほうも、やはり世界と同じような形で、今後もひとつ無線通信士に働いていただきたい。  ただ、その場合に、私は船内においてほかの、たとえば甲板部機関部の人と無線の人とがぴったり融和した形でひとついってもらいたいという気持がございます。これはなかなかむずかしいのです。先ほどのように学校のおい立ちが違います。片一方は商船学校、片一方は、どこの分野にでもいけるような通信学校でありますから、おい立ちも違いますけれども、そうじゃなくて、船の中では同じようにひとつ融和していって、そのためには、みんながやはり同じように労働力を持っている、仕事をしているという、この形が私はほしいのであります。三人乗っておって、そうしてその通信量からいったら、ほとんどないというようなことで、その人が、どういうことをやっておるかというようなこと、それを甲板部機関部方面からそれを見た場合に、彼らは自分の方の人間が、今どんどん減らされております。その減らされておるそのほうから無線を見た場合に、どういうふうに考えるかということも考えなくちゃなりません。  私はやはり、かりにこれが一人ということになれば、そこで無線通信士の地位はしっかりいたします。そうなれば、船内の融和というものはしっかりとれます。そこで船の能率もよくなり、われわれ海運経営も非常によくなる、私はその無線通信士に、全部逃げてもらいたいとか、ほかに置きかえたいとかというようなことは毛頭われわれ考えておりません。何とかして、ひとつわれわれと一緒になって働いてもらいたい、働いてもらうためには、その働けるような一つのポスト、仕事というものを船内で考えたいという気持でおります。これは待遇の問題は、また別に考えなくちゃならないかもしれませんけれども、待遇の問題じゃないのでありまして、待遇のことにつきましては、ほかの船員と同じように海員組合で全部を平等に扱っております。特にこれを避けたりなんかしておりません。ですから、それは平等に扱っておる、私はこの点を今、金丸先生がおっしゃったその点を一番心配し、またその点については、ぜひひとつやっていただきたい、やっていきたいというふうな気持でおります。お答えになったかどうかわかりませんが……。
  86. 大倉精一

    ○大倉精一君 いろいろお話を伺いましたが、残念ながら、私はこの法律案の目的とするところの第一条の目的、いわゆる「船舶航行の安全を図ることを目的とする。」というこの法律が、今度の改正によりまして、いわゆる国際競争力の増加と、それから海運企業合理化にすりかえられたと、いわゆるそれがために、航行の安全というこの法律の目的が犠牲になったのじゃないかという疑いを持っておったのですけれども、どうも本日のお話から、その疑いをまだ一掃することができません。  私は、まだたくさん聞きたいことがあります。たとえばあなた方が、人件費の節約とおっしゃっておりますけれども、たとえば外国の海岸局を経由して電報を打つ場合には、日本文を外国の文章に直している、そうすれば二十倍、三十倍というようなお金がかかることも聞いております。あるいはまた、家族との通信連絡も制限をされ、さらにまた、たくさんの費用もかかるということも聞いておりますが、まあそういうことは、これから逐次われわれのほうとしても調査をしようと思っておりますけれども、私はこの法律案というものは、政府海運助成政策が、さらに合理的に強化されておったならば、こういう問題は起こってこなかったと思います。私は。これが政府の政策の欠陥から、いわゆる海運合理化という名のもとに船舶通信士を減らそう、船舶航行の安全を犠牲にしてまでもというところにきているのじゃないかと思うのです。きょう皆さんの御発言を聞いておりますというと、私はこれで安全だという確信を持った御発言はないと思う。まあ、だろうということは、いわれております。でありまするから、私はこの法律案につきましては、さらに検討を加えまして、しろうとでありますから、皆さんに教えてもらいながらやって参りたいと思います。どうかひとつ、皆さんのほうでも、特に反対側の意見のほうの方も、具体的にひとつわれわれに教えてもらうように、さらに他の皆さんからも教えてもらうようにお願い申し上げます。どうもありがとうございました。
  87. 村松久義

    委員長村松久義君) 参考人の御発言及び質疑は、これをもって終了いたします。
  88. 南波佐間豊

    参考人南波佐間豊君) ちょっと一言……。
  89. 村松久義

    委員長村松久義君) 質疑に対する御発言でしたら許しますが、これで終了をいたしますから、どうか、さように御承知を願います。
  90. 南波佐間豊

    参考人南波佐間豊君) 今ちょっと、金丸先生の質問に対するお答えに誤解があるといけませんから、私はちょっと補足したいと思うのです。
  91. 村松久義

    委員長村松久義君) そういう意味なら、ひとつ簡単にどうぞ願います。
  92. 南波佐間豊

    参考人南波佐間豊君) 今米田参考人の金丸先生の質問に対するお答えの中に、何かほかのほうの航海士なり、あるいは機関部のほうが減ったと、減らされたと、それに対して何か通信士のほうが減らさにゃいかぬのだ、何か通信士が遊んでいるようなことをいわれますけれども、われわれ海員組合立場といたしまして、われわれがむだな人間をおく必要はない、あるいはまた仕事の仕方を合理的にやっていくとか、あるいは機械化をして、要らないような措置をとることによって人間を減らすことについては、反対をしていないわけです。またわれわれは、そのことによって、われわれの船員の労働条件というものを改善する、私たちは労働条件の改善については、別に船主さんにどうこうというよりも、われわれはわれわれの組織の力をもって、それだけの自信は持っております。  そこで、何か通信士が遊んでいるようなことをいわれますけれども、船というものは御承知のとおり、当直制度をもって一日八時間、三直をもってやっているわけです。ただ、御承知のように航海士、機関士というのは、従来碇泊をいたしますと、機械の整備、あるいは荷役に非常に追い回されておると、その場合に、無線局というのは碇泊すると閉鎖をされますということから、そういうような誤解をされるような発言があったと思うのですけれども、そういう仕事の仕方を変えるということは、これはさしつかえないことでありますけれども、何かほかのほうが減らされたといいますけれども、われわれは、そういう理解をしていない。そういう対策をとって、減らす条件を作って減らすことはいいのですけれども、だから、何か通信士が減らなければ格好がつかないのだというようなことは、非常に誤解を招くと思いますので、その点、特に発言を求めて申し上げておきます。
  93. 村松久義

    委員長村松久義君) 金丸委員が誤解をしておるかどうかということは、委員長としては判断はつけかねますが、ただいまの御発言は御意見の補充として拝承をいたしておきます。  参考人の方、長いこと、しかも昼食を廃止してまで、有益なる御意見を聞かしていただきまして、本委員会として厚く御礼を申し上げます。まことにありがとうございました。  では、ここに委員会は暫時休憩をいたしまして、なお、午後の運営について、理事会を開催いたします。   暫時、休憩いたします。   午後一時五十三分休憩  〔休憩後開会に至らなかった〕