○国務大臣(斎藤昇君) 昭和三十七年度
運輸省関係の予算について御説明申し上げます。
初めに、予算の規模について申し上げます。
まず、一般会計について申し上げますと、
歳入予算総額は十二億六千八十三万二千円、
歳出予算総額は六百九十五億六千四百五十一万六千円であります。今、昭和三十七年度
歳出予算総額を前年度予算額と対比いたしますと百三十三億七千八百七十三万五千円の増額であり、約二四%の増加率を示しております。
この増加額の内訳を見ますと、
行政部費系統におきまして三十九億三千四百八十万八千円の増額であり、
公共事業費系統におきまして九十四億四千三百九十二万七千円の増額となっております。このうちには両系統を通じ定員二百三十一人の純増が含まれています。なお、ただいま申し上げました
歳出予算総額のうちには
北海道港湾事業費等の他省所管分六十五億四千百五十万六千円が含まれています。
次に、特別会計について申し上げます。
まず、木船再
保険特別会計の
歳入歳出予定額は、前年度より若干減少し二億九千四百六十四万九千円となり、
自動車損害賠償責任再
保険特別会計の
歳入歳出予定額は、附保自動車の車両数の増加に対応し、前年度より約十億円増額され六十三億一千三百七十三万円となっております。また前年度から新たに設置されました
港湾整備特別会計におきましては、その
歳入歳出予定総額は、最近における船込み等に対処するため前年度より約五十一億円増額され三百五十五億二千四百三十一万六千円となっております。
なお、このほか、昭和三十七年度
財政投融資計画中には、当省関係分として約千七百五十億円が予定されております。
政府といたしましては、昭和三十六年度以降約十年間に国民総生産を倍増することを目標として
国民所得倍増計画を策定し、
わが国経済の健全な発展をはかろうとしております。当省におきましてもこの趣旨にのっとり、海陸空にわたる
運輸交通部門全般について効率的な諸策の遂行に努力いたしておるのであります。しかしながら、昨年来経済発展のテンポは予想を大きく上回り、内需の旺盛と輸出の停滞により国際収支の悪化を招くに至り、これが改善をはかるため強力な対策が要請されている実情でございます。また、急速に発展する第二次産業部門の輸送需要の伸びは、
運輸交通部門の供給力を大きく上回りまして、これが経済成長に対する阻害要因となりかねない危険性が顕著に現われてきているのであります。さらには、
わが国経済の国際的環境は、貿易為替の自由化の促進が強く要請されておるなど、一そうそのきびしさを加えているのであります。
これらの諸点を考慮いたしまして、
国民所得倍増計画の第二年度目にあたる昭和三十七年度の予算におきましては、同計画の基本線を維持しつつ、最近における経済事象の変化に即応して、まず国際収支の改善をはかるための
貿易外収支の改善と輸出の振興、経済発展に即応する輸送力の増強さらには防災体制の強化、交通安全及び海上治安の確保、
運輸関係科学技術の振興等の諸施策に重点を置き、これらを積極的に推進することといたしております。
以下、部門別に重点施策の要旨を御説明申し上げたいと存じます。
まず海運関係について申し上げますが、おもな事項といたしましては、
第一に、海運企業の
基盤強化対策に必要な経費といたしまして六十二万六千円を計上しております。経済の発展に即応し、国際収支の改善をはかり、
工業用原材料の安定的輸送を確保するためには、大量の船腹保有を必要とするのでありますが、企業基盤がきわめて脆弱な
わが国海運企業が大量の船腹建造を遂行し得るようにするためには、その企業基盤を充実強化する必要があるのであります。このため新たに
海運企業整備計画審議会を設けまして、個々の企業の整備計画を慎重に審議し、審議会の答申を得まして財政上の措置をしようとするものであります。
第二に、
外航船舶建造融資利子補給に必要な経費として七億九千三百十五万六千円を計上しております。本制度は、
外航船舶建造資金を融通する
市中金融機関に対する利子補給を行なうことによりまして、海運企業の合理化に対する自主的努力と相待って海運企業の金利負担を軽減し、海運企業の基盤を強化しますとともに、これに
国際競争力を賦与しようとするものであります。
第三に、
外航船舶建造にかかる
日本開発銀行に対する利子補給に必要な経費として一億五千六百九十二万二千円を計上しております。これは
市中金融機関に対する利子補給と同じ趣旨により
日本開発銀行に対してその融通いたします
外航船舶建造資金につき、利子補給を行なおうとするものであります。なお、これら利子補給にかかる新たな契約限度額として
市中金融機関に対する分として十八億五千六百十三万九千円、
日本開発銀行に対する分として十六億七千五百四万五千円を計上しております。
第四に、外航船舶の建造に必要な資金として
日本開発銀行からの融資二百億円を予定しております。これによりまして、昭和三十七年度においてわが国の貿易規模に即応した外航船腹の整備をはかるため約五十万総トンの建造を行なう予定であります。
第五に、三
国間輸送助成に必要な経費として四億六千万円を計上しております。これにより前年度に引き続き、三国間輸送を促進して
わが国海運の発展と外貨の獲得をはかりたいと存じます。
第六に、移住船の
運航費補助に必要な経費として一億二千七百八十一万六千円を計上しております。これによりましてわが国の移住計画に基づく
移住者輸送の円滑な遂行をはかることといたしております。
第七に、
戦時標準船処理対策に必要な資金として財政融資二十八億円を予定しております。これは、前年度に引き続き、航行に耐えられない状況に立ち至っている
戦時標準船の代替建造を行なうために必要な資金でありまして、
特定船舶整備公団分として十六億円、
日本開発銀行の融資十二億円を予定しております。
第八に、
特定船舶整備公団の
国内旅客船の建改造に必要な資金として七億円を予定しております。これにより昭和三十七年度におきましては、同公団は約四十隻四千五百総トン程度の
国内旅客船の建改造を実施する予定でありますが、最近における管理費の増加にかんがみ、そのうち一億円は出資をもって充てることとし、残余は
資金運用部資金からの融資を予定しております。
第九に、
太平洋客船建造研究に必要な経費として千五百万円を計上しておりまして、これにより太平洋客船の建造についての諸問題の研究を行ないたいと存じます。
次に船舶関係について申し上げます。
第一に、船舶の
経済性向上対策に必要な経費として千四百五十五万円を計上しております。これによりまして最近における船舶の自動化、構造の合理化等の趨勢に対応し、
わが国海運の
国際競争力の強化に資するため、船舶の経済性の飛躍的向上を目途としてこれが試設計を行ないたいと存じます。
第二に、
造船関連工業振興に必要な経費として九十五万六千円を計上しておりますが、貿易及び為替の自由化に対処して、
国際競争力の弱い
造船関連工業の合理化等を促進する所存であります。
第三に、中
小型鋼船造船業及び木船造船業の合理化に必要な経費として五百八十一万五千円を計上しております。これにより、引き続きこれら造船業の技術の向上、経営の合理化をはかりたいと存じます。
次に船員関係としましては、第一に、海上要員の確保に必要な経費として二千六百六十二万四千円を計上しております。これは最近深刻化しつつある
海上労働力の不足を打開するために、船員供給源の開拓に必要な経費百六十二万四千円と、船員の福祉厚生を増進するため、国内における
船員厚生施設を整備する公益法人に対してその整備費の一部を補助するために必要な経費二千五百万円とであります。
第二に、船員教育の充実に必要な経費として一億二千六百九十九万三千円を計上しております。これは、船腹の増大に対処するとともに、
船舶運航技術の近代化に即応して、館山に海員学校を新設するほか、教育施設の充実、教育課程の新設などを行なうために必要な経費であります。
次に、港湾関係について申し上げますと、第一に、港湾整備五カ年計画に基づく
港湾整備事業の促進に必要な経費として二百二十五億七百四十二万八千円を計上しております。このうちには一般会計から特別会計への繰入金二百十六億六千三百七十五万円が含まれております。
国民所得倍増計画に基づき貿易量の伸長、工業生産の拡大及び国土開発の進展に対応して緊急かつ計画的に港湾の整備をはかる必要がありますので、昭和三十六年度を初年度として港湾整備五カ年計画の実施に努めておりますが、最近の主要港湾における著しい船込みの状況にかんがみ、昭和三十七年度においては、その早急な解消をはかるべく、六大港の整備に重点を置いて
港湾整備事業の早期実施を行なう所存であります。
これら
港湾整備事業は、前年度において設置されました
港湾整備特別会計によって実施されているのでありますが、同会計の
歳入歳出予定額は三百五十五億二千四百三十一万六千円と、前年度に比べて約一七%の増加率を示しております。
また、これを勘定別に見ますと、
港湾整備勘定においては、その
歳入歳出予定額二百八十六億八千三百八十四万四千円の規模をもちまして
港湾改修事業として、横浜港外約三百港の整備を行なう予定であり、
特定港湾施設整備勘定においては、その
歳入歳出予定額六十八億四千四十七万二千円の規模をもちまして、輸出港湾として大阪港外一港、石油港湾として千葉港外四港、鉄鋼港湾として千葉港外七港及び石炭港湾として苫小牧港外七港につきまして港湾施設の整備を行なう予定であります。
第二に、港湾及び
海岸防災事業の推進に必要な経費として百二十六億二千七十二万八千円を一般会計に計上しております。これによりまして
特別高潮対策事業、
チリ地震津波対策事業、
伊勢湾高潮対策事業等、
海岸防災施設の整備と港湾及び海岸災害の復旧を促進する所存であります。
以上申し上げましたとおり、昭和三十七年度における
港湾関係予算は、一般会計及び特別会計を通じて前年度に比し八十四億一千六百十三万二千円の国費の純増を予定しております。
また、財政融資五億円により、
港湾運送事業者の事業の用に供するはしけ、引き船等の整備拡充を
特定船舶整備公団に行なわせ、
船込み解消に資することとしております。
次に鉄道関係としましては、第一に、国鉄五カ年計画の推進に必要な財政資金として八百億円を予定しておりますとともに、
日本国有鉄道新線建設費補助に必要な経費として四億二千四百七十九万五千円を計上しております。このうち前者は、東海道新幹線の建設を初めとする
国鉄輸送力の増強をはかるための
所要財政資金であり、後者は、昭和三十五年度及び昭和三十六年度における新
線建設費相当額の一部を
日本国有鉄道に対して補助するための経費であります。
第二に、
地下高速鉄道建設促進に必要な資金として
帝都高速度交通営団に百億円を、東京都、大阪市、名古屋市及び神戸市については総額百七十億円の財政資金の融資が予定されております。
第三に、
地下高速鉄道建設費補助に必要な経費として一億八千百七十八万円が計上されております。都市交通の円滑化をはかるためには、
地下高速鉄道網の早急な整備を行なう必要があるのでありますが、その建設費は巨額に及び、これが経営の重圧となっている現状にかんがみ、東京都、大阪市、名古屋市及び
帝都高速度交通営団に対し、建設費の一部を補助しようとするものであります。
第四に、
踏切道改良費補助に必要な経費として二千二百一万三千円を計上しております。これによりまして、さきに成立をみました
踏切道改良促進法に基づき踏切道の改良の促進をはかるため、保安設備の整備を行なう経営の苦しい地方鉄道、
軌道事業者に対してその費用の一部を補助する予定であります。
次に
自動車関係につきまして申し上げますと、
第一に、
自動車行政の基本体制の充実強化に必要な経費として三億一千七百二十二万八千円を計上し、また要員も六十九人の増員を行なっております。これによりまして激増する
自動車車両数に対応し、京都外六カ所の車両検査場の整備を行ない、もって
検査登録機能の強化をはかるとともに、
自動車輸送統計機構及び
タクシー免許業務体制の整備等を行なう予定であります。
第二に、
自動車事故防止対策の強化と
自動車輸送秩序の確立に必要な経費として六百四十七万六千円を計上しておりますが、これによりまして
運転者実態調査、
分解整備事業者及び
自動車運送事業者の監査、白タク、無
免許トラック等の取り締まりなどを強力に実施する予定であります。
次に航空関係のおもな事項といたしましては、
第一に、
日本航空株式会社に対する出資として
産業投資特別会計中に三億円を計上しております。同社の
国際競争力を強化するため前年
同様政府出資を行なうものであり、なお、これとともに、同社の発行する社債について二十二億円、借入金について八億六千八百八十万円を限度として債務保証を行なうことにしております。
第二に、国際空港の整備に必要な経費として二十七億七千万円を計上しております。このうち
東京国際空港につきましては二十三億三千六百八十万円を計上しておりまして、これにより滑走路の新設、
ターミナル周辺の整備、
ターミナルビル増築分の買収等を実施する予定であります。また、大阪国際空港につきましては四億三千三百二十万円と、ほかに
国庫債務負担行為二十億八百万円を計上しておりまして、現在施設の改修のほか、滑走路の新設のための用地買収を実施する予定であります。
第三に、国内空港の整備に必要な経費として九億四千九百万円を計上しております。これによりまして既定空港として
名古屋空港外十二空港の整備を続行しますとともに、新規空港として青森外七空港の整備に着手し、また鹿児島外三空港の
追加改良整備を行なう予定であります。
第四に、
航空機乗員養成費補助に必要な経費として二千万円を計上しております。
航空機乗員の払底に対処してその緊急な養成を促進するため、民間における養成に対してその経費の一部を補助しようとするものであります。なお、このほかに防衛庁に対しても
航空機乗員の委託養成を予定しております。
第五に、航空の安全の強化に必要な経費として一億九千六百四十三万七千円を計上しております。これによりまして
航空路監視レーダーの新設、
航空保安施設の整備及び
管制用国際無線電話の設置等を実施する予定でありますが、このレーダーの新設に必要な経費としましては、ほかに
国庫債務負担行為二億九千百六十一万八千円が計上されております。
次に観光関係について申し上げますと、
第一に、
日本観光協会に対する出資といたしまして一億円を計上しております。これは
外人観光客の増加に対処して同協会の設置する
総合観光案内所の設備資金として政府出資を行なうものであります。
第二に、同協会に対する補助に必要な経費として四億二千四百七十三万九千円を計上しております。これによりまして
日本観光協会の
海外観光宣伝活動の整備充実をはかり、昭和三十七年度にはダラス及びフランクフルトに海外事務所を新設いたしますとともに、
総合観光案内所の運営費及び
一般管理費についても新たにその一部を補助することといたしまして、
海外観光客の積極的な誘致を推進する所存であります。
第三に、
ユースホステルの整備に必要な経費として、
国立ユースホステルセンターの増設備費五千百五十万七千円、
地方公共団体の
ユースホステル整備費補助金四千七百五十万円を計上しております。これによりまして
国立ユースホステル・センターの完成をはかるとともに、
公営ユースホステル約九カ所の整備を行なう予定であります。
次に、
海上保安関係についてそのおもなものを申し上げますと、
第一に、
海難救助体制と
海上治安体制の強化に必要な経費として十億五千九百四十八万三千円を計上しております。これによりまして
老朽巡視船艇を三隻代替建造し、八隻主機換装いたしますとともに、
塩釜航空基地の新設、航空機の増強、第十
管区海上保安本部の充実を初めとする
海上保安組織の強化、通信施設の整備、
海上警備力の強化等を行なう予定であります。なお、巡視船の代替建造に必要な経費として
国庫債務負担行為一億六千九百四十四万円を別途計上いたしております。
第二に、船舶航行の安全確保に関する体制の整備に必要な経費として
航路標識整備費十億五千万円、水路業務の整備拡充に必要な経費一億八千八百四十四万四千円を計上しております。これによりまして港湾整備に即応する港湾標識、
電波標識等の整備を行ない、集約管理の一環として
灯台見回り船を建造するとともに、瀬戸内海における航路の精測を行ない、測量船の建造を実施する予定であります。
気象関係といたしましては、第一に
防災気象業務の整備強化に必要な経費として七億二千二百十六万九千円を計上しております。これによりまして札幌、仙台に
気象用レーダーの新設、伊勢湾地域に
自動応答式無線ロボット装置の新設、地震津波及び
火山観測施設の整備等を実施して、
台風豪雨雪対策及び
地震津波火山対策の強化充実をはかりますとともに、防災要員二十二人増員、
農業気象業務及び
航空気象業務の拡充強化を実施する予定であります。
第二に、
基礎的気象業務の整備強化に必要な経費として三億九千七百二十八万三千円を計上しております。これによりまして観測船一隻の代替建造、
大船渡測候所の新設を行なうほか、
無線模写放送の整備、
気象官署間通信施設の整備を実施するとともに、気象に関する研究の強化等を行なう予定であります。
次に
科学技術関係について申し上げます。
第一に、
科学技術試験研究補助金として五千九百五十八万二千円を計上しております。これによりまして次に申し上げます
運輸技術研究所における試験研究と相待って、民間が分担する試験研究を促進し、運輸に関する技術の発達改善をはかる所存であります。なおおもなテーマといたしましては、超
高速優秀商船の建造に関する研究、航空機の
航行安全確保のための管制施設の近代化に関する研究、新
型式輸送機関の開発に関する研究等を予定しております。
第二に、
運輸技術研究所の研究施設の拡充強化と、研究促進に必要な経費として一億六千四百五万五千円を計上しております。これによりまして引き続き原子力船の開発研究を促進いたしますとともに、
電子航法評価試験体制の整備を行ない。また輸送機関の
経済性向上、近代化等に関する研究等を実施し、
各種輸送機関と施設の合理化、近代化に資する所存であります。
第三に、
港湾技術調査研究機構に必要な経費として八千六百七十三万七千円を計上しております。港湾工事に関する研究部門と、
調査設計部門とは、これまで分離独立しておりましたが、港湾技術の強力な発展をはかるためこれらを統合して
港湾技術研究所を設置いたす予定であります。
最後に、
航海訓練関係でありますが、
練習船進徳丸の代船建造に必要な経費として五億二千万円を計上しております。これによりまして前年度に引き続き、老朽化しております
練習船進徳丸の代船の建造を実施する予定であります。
以上をもちまして昭和三十七年度の
運輸省関係の予算についての御説明を終わりますが、何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成あらんことを御願い申し上げます。
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次に、昭和三十七年度
日本国有鉄道予算の概要につきまして御説明申し上げます。
昭和三十七年度の予算の編成にあたりまして、三十七年度は日本経済の著しい成長のあとを受けて、経済の発展は幾分控え目にならざるを得ないと考えて
収入支出予算を組みましたが、一方また、
国鉄輸送力の増強及び近代化のための国鉄新五カ年計画実施の第二年度として、この計画実現に支障を来たさないよう十分の配慮をいたした次第であります。
以下、
収入支出予算につきまして、損益、資本及び工事の各勘定別に御説明申し上げます。
まず、損益勘定について申し上げます。収入におきましては、
鉄道旅客輸送人員は五十四億九千万人、
輸送人キロは対前年度七・三%増の一千三百六十九億人キロとして旅客収入二千九百四十六億円を見込み、また、
鉄道貨物輸送トン数は二億一千百万トン、
輸送トンキロは対前年度五・九%増の五百八十億トンキロとして貨物収入二千百二億円を見込んでおります。以上の旅客、貨物収入のほか、雑収入等を含めまして収入合計は五千二百四十六億円となっております。
次に、経営費についてみますと、人件費につきましては三十七年度の昇給と期末、
奨励手当合計三・二五カ月分を見込みまして、給与の総額は一千七百八十一億円といたしております。また、物件費につきましては、節約に特段の努力を払うことにいたしておりますが、おもなものといたしましては、動力費四百八億円、修繕費六百五十九億円を見込んでおります。これらを合わせまして、経営費の総額は三千六百二十億円となっております。
以上の経営費のほかに、受託工事費四十億円、利子及び債務取り扱い諸費二百六十二億円、減価償却費五百七十一億円、資本勘定へ繰り入れ六百八十八億円、予備費六十五億円を合わせまして、損益勘定の支出合計は五千二百四十六億円となっております。
次に、資本勘定について申し上げます。収入といたしましては、先ほど申し上げました減価償却引当金五百七十一億円、損益勘定から受け入れます六百八十八億円のほか、資産充当七十五億円、鉄道債券六百十五億円、資金運用部等からの借入金四百七億円、合計二千三百五十六億円を計上いたしております。
他方、支出といたしましては、このうち二千三十五億円を工事勘定に繰り入れるほか、借入金等の償還三百十四億円、
帝都高速度交通営団等への出資七億円を予定いたしております。
最後に、工事勘定について申し上げます。三十七年度は輸送力の増強及び近代化に重点を置き、東海道幹線増設工事を推進するとともに、主要幹線の複線化、電化、電化されない区間のディーゼル化、さらには通勤輸送の混雑緩和、車両の増備をはかるため、三十六年度に比して百十億円増の二千三十五億円を計上いたしました。
以下、工事勘定の内容について御説明申し上げます。
まず、新線建設につきましては前年度と同額の七十五億円を計上いたしております。次に、東海道幹線増設につきましては、昭和三十四年度に着工してから四年目を迎え、工事も最盛期に入りますので、前年度より百七十二億円を増額いたしまして六百十億円を計上し、幹線増設工事の促進をはかり、東海道線の輸送の行き詰まりを早期に解消いたしたい考えであります。
次に、通勤輸送対策といたしましては、前年度より十四億円増額し、東京付近六十五億円、大阪付近十七億円、電車増備二百三十両、四十五億円、計百二十七億円を計上いたし、輸送需要の増大に対応するとともに、混雑緩和をはかることにいたしました。
次に、幹線輸送力増強のために前年度より二十一億円増額いたしまして四百九十億円を計上し、その能力の限界近くまで利用されており、輸送需要の増大に応じ切れなくなっている東北本線、北陸本線、上信越線、中央本線、鹿児島本線等の輸送力を増強し、これら線区における輸送隘路をできるだけすみやかに解消することにいたしました。
次に、電化及び電車化につきましては、前年度より二十四億円増額し、二百四十八億円を計上いたしまして、現在工事中の東北本線、常磐線、信越本線、北陸本線及び山陽本線の電化を促進するとともに、既電化区間の電車化を積極的に行ないまして列車回数を増加し、サービスの改善と経営合理化をはかることにいたしました。
以上のほか、ディーゼル化、諸施設の取りかえ及び改良、総係費等を含めまして、支出合計は二千三十五億円となっております。これらに要します財源といたしましては、資本勘定から受け入れます二千三十五億円を充てることにいたしております。
以上御説明申し上げました
日本国有鉄道の予算は、これに予定されました収入をあげ、予定の工事計画を完遂するためには格段の努力が必要であろうと考えられますので、公共企業体としていま一そうの経営合理化をはかり、もって
わが国経済の発展に資するように指導監督して参りたい考えであります。
以上、昭和三十七年度
日本国有鉄道の予算につきまして御説明申し上げましたが、何とぞ御審議の上、御賛成下さるようにお願いいたしたいと存じます。
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