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1962-02-27 第40回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十七日(火曜日)     午前十時十八分開議  出席分科員    主査 中村 幸八君       相川 勝六君    臼井 莊一君       田中伊三次君    床次 徳二君       松野 頼三君    田口 誠治君       滝井 義高君    辻原 弘市君       野原  覺君    長谷川 保君       山花 秀雄君    玉置 一徳君  出席国務大臣         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君  出席政府委員         文部事務官         (大臣官房長) 宮地  茂君         文部事務官         (大臣官房会計         課長)     安嶋  彌君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         文部事務官         (社会教育局         長)      齋藤  正君         文部事務官         (体育局長)  前田 充明君         文部事務官         (調査局長)  天城  勲君         文部事務官         (管理局長)  杉江  清君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局長) 清水 康平君         厚生事務官         (社会局長)  大山  正君  分科員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   谷川 寛三君         文部事務官         (体育局学校給         食課長)    臼井 亨一君     ————————————— 二月二十七日  分科員辻原弘市君及び井堀繁男委員辞任につ  き、その補欠として滝井義高君及び玉置一徳君  が委員長指名分科員選任された。 同日  分科員滝井義高委員辞任につき、その補欠と  して田口誠治君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員田口誠治委員辞任につき、その補欠と  して辻原弘市君が委員長指名分科員選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十七年度一般会計予算中外務省、文部省  、厚生省及び労働省所管昭和三十七年度特別会  計予算厚生省及び労働省所管      ————◇—————
  2. 中村幸八

    中村主査 これより会議を開きます。  昭和三十七年度一般会計予算中、文部省所得を議題といたします。  質疑を続行いたします。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井分科員 私はきょうは給食の問題とそれから教育扶助の問題について尋ねたいと思います。沖縄の問題はありますが、これは昨年第一分科会でやりまして、文教行政までいきませんでしたけれども、これはきょうは時間の関係がありますから別の機会に譲らしていただきまして、その二点を質問したいと思います。  その前に、多分昨日であったか、湯山議員から、私立学校入学金授業料の問題の御質問があったのです。実は私の質問の予定にもそれがあったのですが、新聞湯山さんの質問の要旨を読ましていただいたのですが、私が問おうとする焦点とは幾分焦点が違ったような感じがいたしますので、初めにこの問題を湯山さんとの関連でお聞かせ願いたいと思います。   それは二つ学校受験をした場合に起こる問題です。最近各種の新聞の声の欄その他投書欄にひんぴんとして現われているのですが、たとえばAという学校とBという学校とCという学校三つ受験生受験をするとします。すると最近の傾向を見ますと、私立学校官立学校より先に試験があるわけです。私立学校受験して合格をします、たとえば大学で申しますと、三月の六日に発表がありますと、三月の十三日には入学の手続をしなければならぬことになっております。その場合一体どういうものを納めるかと申しますと、学校の名前を言うと工合が悪いですから言いませんが、入学金が一万五千円、授業料が四一万円、それから設備資金が三万五千円、約九万の金を、三月の六日から三月の十二日までの約一週間ぐらいの間に納めてしまうことになるわけです。授業料だけは四万なら四万を二回に分けてよろしい、従って実質的には七万円を納めてしまうことになるわけです。そうしまして、今度は次の学校受験して、そこに合格をする。たまたまそれが公立であったということになると、親としては、その公立の方が授業料も安いし、いろいろ経済的に有利だからそこに行くことになる。前の七万円は放棄することになるわけです。これは七万円の例ですが、多いのになりますと二十万くらいを納めるのがあるわけです。これは大学です。それから今度は高等学校を見ますと、大体三万から八万の限度で納めることになるわけです。私は最近出た新聞投書をずうっと集めてみましたら、大体そういうことは困るという意見が相当に父兄の中から出ております。一方、私学経営の実態を見ると、文部省から私学振興会等へわずかな金が出ておりますが、実質的にはそういう入学金授業料学校経営が行なわれているわけです。私学側言い分がやはり新聞に出ているのですが、それを見ますと、私学というのは私企業だ、官庁に私学指導する権限はない、少なくとも入学契約を結んで、一方的にそれを破棄するのだから、その契約金を返せというのは筋が通らぬという意味の回答が出ているわけです。これはここ一週間くらいの新聞にもちゃんと出ておる。私学連合会か何かの事務局長さんか何かが回答しているのです。これはなるほど契約の形からいけば私は当然のことだという感じがしますが、一方父兄の身にになってみると、入学金だけならいいのだけれども、授業料設備資金までということは問題がある、常識的にいってそういうことになるのじゃないかと思うのです。そこで一体こういう入学期にあたって世論がわいてきておるときに、私学というのは私企業だから、文部省がいろいろ監督するのは筋違いだといってそのまま放置しておいていいかどうかという問題になってくると思うのです。こういう世論が声として各紙に出ておる実情にかんがみ、文部省としては何かここに一つの筋を通したものを、私学に勧告と申しますか、指示と申しますか、まあ一つこういう方向でやってみたらどうかというくらいのことはいっていい時期がきているのではないかという感じがするのですが、これについて大臣はどうお考えになりますか。
  4. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 どうもむずかしい問題でございまして、そのものずばりでお尋ねに答えることを今念頭に持ち合わせませんけれども、理屈からいえば、今滝井さん御自身も新聞記事を引用して言わましたように、大学側言い分そのものにはかれこれ言う余地はないと思います。ただ教育政策的に、度が過ぎれば、一種の指導、助言的なことを文部省としてもすべきじゃないか、する時期がきているのじゃないかという仰せも、感じの上では、私も同感の気持がございます。さりとて、しからば具体的にどんなふうに私学側に働きかけるかということにつきましては、もうちょっと実際の把握と根本的な問題も考え合わせましてから、他の機会お答えすることをお許しをいただきたいと思います。  ただ、昨日も申し上げましたことは、私学経営上の立場から、非常に金がかかって苦しい立場にある、そういうことがひいては今御指摘のような事柄となって現われておるとも考え得るわけでありますから、今、直ちに直接効果の上がる方法が何だという意味において、策がないといえばないことは恐縮ですけれども、これこそ長い目で見まして、私学経営上さして困らないような対策は何だ、政府側としてなすべき対策は何だという意味で、昨日、一、二の方にお答えを申し上げたと記憶いたしますが、それは結局私学経営財政的基本は民間の浄財に依存するということが本則だ、国家財政資金を注入することはむしろ例外的に受け取ることが本筋じゃなかろうか、こういう建前に立ちまして、浄財の集まりやすい方法、たとえば個人なり法人なりの教育面に対する寄付、生前であれ遺贈でありましょうとも、できるだけの措置を講ずるということでもって大筋は対処するのが本筋じゃなかろうかということを昨日申し上げたわけであります。  なお、具体的には政府委員からでも何か申し上げることがあれば補足させていただきます。
  5. 福田繁

    福田(繁)政府委員 ただいま仰せのような点につきましては、決して好ましい傾向だとは考えておりません。しかしながら、私立学校に対しまする監督と申しますか、そういう点については、文部省としては法律的な権限はございませんので、それは事実問題として非常にむずかしい問題だと考えます。しかしながら、常識的に考えまして、今おっしゃいますような点は、やはり世論なりあるいは一般考え方として、是正していかなければならぬというような考えもございますので、従来から私立学校団体等に対しまして、文部省は再々そういう点は注意を喚起して参ったわけでございます。しかし、これを法的に規制する措置はありませんので、いわば自粛的な形でこれを拘束する以外にはございません。たとえば、中学高等学校関係団体におきましてはできるだけそういう問題を今後自粛していきたいというような団体意向もある程度表明しておりますけれども、いよいよ実施になりますと、やはり個々の学校に対する拘束力が弱いというようなうらみもございまして、なかなか今日まで実際上そういう措置がとられてきてないのは非常に遺憾なところでございますが、先ほど大臣がおっしゃいましたように、やはり私立学校経営自体としては、一般寄付金なりその他の資金が集まるような措置を講じまして、たとえば税法上の措置考えるのもそういう一つの趣旨でございます。それによって、一般受験生あるいは父兄から多くのものをとらなくても経営ができるような、いわゆるもとをつちかっていくような方法を講ずるよりほか方法はなかろうというような考え方であります。しかしおっしゃるような点は今後も文部省としてはやはりある程度指導もいたしまして、できる限りそういうことが行なわれないような方向に持っていきたいと考えております。
  6. 滝井義高

    滝井分科員 これはやはり私学立場を全然無視するわけには参らぬし、といって、同時に二人、三人の子供高等学校なり大学にやろうとする父兄にとっても、優秀な子供ならとにかくとして、普通の子供ならやはり二つくらいは受けるわけですし、そうしますとやはり親心で、一方入学した方に入学金を納めてそれを確保したいというのもまた人情だと思う。といって私学の側にも経営の困窮さがある。こういうことですから、入学金はやはり納めるのが筋だ。しかし授業料設備資金というものは、これを分けて二段階式にして、一週間か十日以内には一応入学金は納める。それから他の官立学校が終わってから、その段階でもう一回今度は授業料その他を納める期日を作る、こういうようにしてもらうと非常に便利がいいわけです。各学校が全部一斉に試験をやるということになると、これもまた一つ方法だと思うのです。というのは、今有名校に集中するのですから、これが全国一斉になりますと、一回しか受験機会がないのですから、分散してそれぞれの能力に応じて分かれていくという方法もあると思う。しかしそれもなかなか人情として一回限りでは気の毒だということもあって、ああいう官立校だって一期校、二期校としてやっているのだと思うのです。そういう点がありますから、これはやはり受験生並びに父兄の側と学校側との間をとったようなことになるけれども、何か暫定的にでもそういう方法で、ことしは無理としても、来年ごろからやっていただく必要があるのではないかと思うのです。今大臣は、これは非常に重要な問題だからなお検討して別の機会に、こうおっしゃいますが、この機会が一番いい機会ではないかと思うのです。そういう方向である程度、割り切れないかもしれないけれども、これは割り切らなければならぬ問題ではないかと思うのです。このまま放置しておけば、文部省に対してだんだん非難が集中することになるのではないかと思う。最近、大臣もごらんになってみますと、ほとんど毎日投書欄に出ています。けさも多分毎日新聞か何かに出ていました。ほとんど出ているのですね。朝日は夕刊によく出ています。読売も一つの囲いの記事として取り上げています。各紙に出ています。大臣、何かぜひやってもらいたいと思うが、再度御答弁を願いたいと思う。
  7. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 さっき申し上げたことで尽きるわけですけれども、今最後におっしゃったことも、どうも私学側意向を無視して一方的にせりふだけを言ってみましても実現するものでもございませず、かりにそういう応急措置といいますか、折衷的なことを考えるといたしましても、私学側意向もくみ、実情考えあわせてとくと相談した結論でないと意味をなさないと思いますので、即席のことは申し上げない方がかえって適切だろう、こう思ってさっきの通りお答えをしたのでございまして、仰せのようなことをこの場限りで来年もまた同じことが繰り返されるというふうにはしたくない、もっと十分考えあわせ、御相談の上にしたい、こう思っております。
  8. 滝井義高

    滝井分科員 私学自主性もありますから、ぜひ一つ十分私学と御相談になって、今年のような惰性が来年にないように、大臣の方針もございますから、していただきたいと思います。  次に移りますが、給食の問題です。荒木さんの文教行政でことし非常に大きく問題になったのは、高校生の急増対策とそれから教科書の無償配付の問題と学校給食の問題だったと思います、その中で非常にはなばなしく打ち出しておった学校給食の問題は、いつの間にかしり切れトンボになったような感じが非常に濃厚なんです。本会議における私の質問で、荒木文部大臣は率直に、ことしの予算要求というものは自分は負けたのだとおっしゃったわけです。負けたのだ、こうおっしゃったので言葉としてはそれでいいかと思いますが、やはり日本教育の前進という点から、考えると、負けただけでは済まぬ面があると思うのです。  そこで、現在の日本学校給食の現状というものは、小学校中学校でいいと思いますが、できれば盲ろうあ学校その他特殊学校のもお教えいただきたいのですが、一体これの実施はどういう状態になっているのか。特にその実施の状況を完全給食ミルクだけの給食と分けて、一番新しい統計を御説明願いたいと思います。
  9. 前田充明

    前田(充)政府委員 一番新しい統計を申し上げるには全般的にやっておりませんので、全般的な点からいうと、三十六年の五月現在というものがございますが、これで申し上げたいと思います。  小学校につきましては、完全給食をしております学校は一万一千九百四十七校でございまして、児童数にいたしますと七百八十六万六千三百四十一人ということになっております。それから補食給食でございますが、三千二百七十校、七十二万三千百三十八人、合計いたしまして一万四千三百十七校、八百五十七万八千四百七十九人ということになりまして、これをパーセンテージでとりますと、完全給食の方が六四・二%——全国総数に対するパーセンテージでございます。それから補食給食の方が五・八%、全体を合計いたしまして全国総数の七〇%、そういうことになっております。  それから中学校につきましては、中学校完全給食は一千五百七十九校で、六十四万四千八百五十九人、補食給食の方が六百七十二校で二十六万四千三百六十八人、合計いたしまして三千三百五十一校、九十万九千二百二十七人。パーセンテージにいたしますと完全給食が九%、補食給食が三・七%、合計いたしまして一二・六%、そういうことになっております。
  10. 滝井義高

    滝井分科員 これを地域的な分布で見るとどういうことになりますか。
  11. 前田充明

    前田(充)政府委員 地方的で最も多い県は九八・九%という例がございます。それから最も少ないところでは一〇・六%でございます。そういたしまして、都市といなかというと語弊があるかもしれませんが、都市部郡部とそういう普及率から考えますと、三十四年九月現在のものでございますが、都市部の方が七八%、郡部の力の普及率が四四%ということになっておりまして、市部の方が割合多く普及されておるということでございます。
  12. 滝井義高

    滝井分科員 さいぜんのあの学校統計では七〇%になっておりますが、これは児童数でいって七〇%ですね。
  13. 前田充明

    前田(充)政府委員 さようでございます。
  14. 滝井義高

    滝井分科員 そうすると学校数でいくと、完全給食学校パーセンテージ中学校完全給食パーセンテージとそれからミルクだけの、補食パーセンテージはどのくらいですか。
  15. 前田充明

    前田(充)政府委員 学校の方で申しますと、先ほど小学校につきまして一万一千九百四十七校と申しました完全給食でございますが、それは四四・三%でございます。それから補食給食の方は二千二百七十校と申しまして八・四%でございます。それから中学校の方につきまして千五百七十九校は一二・一%、六百七十二校は五・一%。合計の方でございますが、小学校が五三・八%、中学校が一七・三%であります。
  16. 滝井義高

    滝井分科員 質問に入る前にもうちょっと統計を聞きたいのですが、現在の給食経費は、いろいろ学校によって違うと思うのですが、文部省小学校中学校について一体一食幾らに見積もり、月に幾らと計算されておりますか。
  17. 前田充明

    前田(充)政府委員 一日の経費でございますが、これはおっしゃる通り学校によって非常に相違がございます。従って、ここで全般的に一般論として申し上げさせていただきますのは、準要保護児童の生徒の補助金を出しておりますので、その金額で見まして、三十七年度から給食内容の改善をいたしたいと考えておりますので、それによってお答えを申し上げたいと思います。小学校の分につきましてはパンが六円三十三銭、ミルクが一円六十二銭、おかずが十一円八十一銭、合計十九円七十六銭、中学校につきましてはパンが八円五十四銭、ミルクが二円十八銭、おかずが十四円六十二銭、合計二十五円三十四銭、そういうことに一応なっております。
  18. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、準要保護児童の一カ月の経費幾らですか。これは三十五日と見るのかどうかでいろいろ違ってくると思うのですが、一カ月、一年はどのくらい……。
  19. 前田充明

    前田(充)政府委員 実は土曜日抜きにいたしますので、一カ月ということではなく、一年を一応二百十五日で計算しておるのでございます。そういたしますと、一年で小学校が、十九円七十六銭に二百十五をかけまして、それに実質ということで考えまして、九割、〇・九をかけまして、三千八百二十円、中学校は四千九百円でございます。
  20. 滝井義高

    滝井分科員 三千四百三十円と言ったのですが、ちょっともう一回。
  21. 前田充明

    前田(充)政府委員 三千八百三十円でございます。
  22. 滝井義高

    滝井分科員 中学校でしょう。
  23. 前田充明

    前田(充)政府委員 小学校でございます。十九円七十六銭に二百十五をかけまして、それに九割をかける。かけまして三千八百三十円。それから二十五円三十四銭かける二百十五、かける九割、四千九百円、こういうことになります。
  24. 滝井義高

    滝井分科員 準要保護児童補助金基準にすると、一年間に小学校給食費は三千八百二十円、中学校が四千九百円、こうなるわけですね。そうしますと、今度給食のために、文部省予算としては、小学校子供に一年に三千八百二十円負担をすることになるのですが、これに対して文部省補助はどういう形で、幾らになるのですか。
  25. 前田充明

    前田(充)政府委員 小学校につきましては、給食員数が三十七万一千六百三十九人でございまして、これは七百四十三万三千七百七十一人の五%でございます。それから中学校につきましては三万五千四百九十九人、七十万九千九百八十五人の五%。それを基準にいたしまして、小学校につきましては、準要保護全体といたしまして七億九千七百五十二万一千円でございます。
  26. 滝井義高

    滝井分科員 いや、ちょっと私がお聞きしていることと違ったことをお答えになったのですが、今の準要保護児童給食費小学校三千八百二十円、中学校四千九百円というのは、当然これは一般児童基準になるわけです。ですから、こういうものを今度一般児童に持ってきたときに、一体文部省一般児童に対してどのくらい負担しておりますかという質問です。たとえば文部省ミルクを半額負担するといっためですが、それがだめになったのですね。それから。パンは一食について百グラム一円だったのが、今度は八十五銭かになったでしょう。だから、そういう形のものを具体的にこの三千八百二十円、四千九百円、一般児童とした場合には、一体今の国の補助がその中に入りますか、こういう質問です。
  27. 前田充明

    前田(充)政府委員 一般児童に対します補助金といたしましては、従来パン一食一円と申しましたが、小学校につきまして八十五グラムですので八十五銭、そういうことになるわけでございます。これは食管特別会計への繰り入れでございまして、十七億一千二百万円でございます。
  28. 滝井義高

    滝井分科員 それは予算書を見たらすぐわかることなんです。食管特別会計繰り入れば十四億二千五百万円になっておるんですね。今の数字とちょっと違いますけれども。その十四億二千五百万円が一人々々の子供にいったときには、一体どういう形で、小学校三千八百二十円、中学四千九百円の中に国の経費が入りますか、こういうことなんです。これが一番大事なところなんです。
  29. 前田充明

    前田(充)政府委員 申しわけございません、十七億一千二百万円と申しましたのは、十四億二千五百万円でございます。一食八十五銭でございますので、これに二百十五をかけるという勘定になるのでございますが、かけ算をしてございませんでしたので、説明員かけ算をさしてから……。
  30. 滝井義高

    滝井分科員 それはあとで、質問の過程でもう一ぺん尋ねます。  これで給食の全貌が大よそわかったわけです。やっている学校の一応の経費と、その中で国が幾ら出しているか、これはまだわかりませんが、あとでやってもらうことにして、そうしますとこれからいよいよ本論に入るわけですが、今のような御説明給食の中から、一体どういう問題点が出てくるかということなんです。実は私は、勤労者職員消費パターン労働者消費パターン、それから都市における消費パターン農村における消費パターン、これをいろいろ過去の調査を調べてみた。どういうことになるかというと、これは非常におもしろい結果が出てくるんです。同じ三万円なら三万円を取っている職員労働者消費の型を調べてみますと、特に給食ですから食いもの中心に言いますと、同じ三万円を取っておっても、職員の方は非常に蛋白質よけいとっておる。労働者の側は蛋白質とり方が非常に少ない。含水炭素よけいにとっておる。それから都市農村との食の形態を見ても、農村専業農家といえども実に蛋白質とり方が少ない。特に現金で食いものを買うということについては、もう文部省も指摘しているようにきわめて消極的です。このことは一体何を意味するかというと、結局農村における含水炭素中心とする食形態というものが、農村出身に多い労働者の家庭にそのまま引き継がれてくるわけです。それから職員は、その形態が、職員という仕事の関係その他で、あるいは環境で、幾分変わってくるわけです。それからもう一つは、その配偶者奥さんの役割です。職員の方は労働者奥さんに比べて平均的に幾分教養が高い。そうすると育児とか栄養というものについての注意を払ってくるという関係もあります。ところがこのことが今度は子供に非常に大きな影響を及ぼすのです。われわれが祖先伝来農村に育って持ってきた食いもの形態というものが、今度はそのまま労働者なり農民の形で持ち込まれて、それが次にやはり子供に持ち込まれていくわけです。そうしますと、これは非常に医学的になりますけれども、蛋白質よけいにとるものと、含水炭素、粗食をするものとの大脳の作用は非常に違ってくるんです。このことは同時に昨年九月行なわれた学力テストに現われてきておるわけです。私、具体的なあれで全部調査していますから、今から具体的に指摘しますが、今体育局長さんの御説明になりましたように、小学校では五二・八%の学校、約半分しか給食をやっていないんですね。その五割分の学校一体どの地区が給食よけいにやっているかと地域的に調べると、都市よけいにやっております。農村はやっていない。そうすると今度、学力調査の結果を先日中間報告をやりました。これを見ると、学較差、地域差が出ているけれども、都市学校農村学校よりはるかにいいです。ずっと毎年のか見ると、大体十点ぐらいの開きがある。はなはだしいのは三十点の開きがある。都市がよくて、農村が悪い。都市の中でも山の手がよく、いわゆる下町、工業地帯、商業地帯は悪い。この給食形態というものが学力調査にも現われておる。そのことが給食によっても裏づけされておるのです。教科書なんというものは一年に一回買うものです。給食というものは毎日一回食うものです。従って、私たちが人間改造をやろうとすれば、新しい人間形成をやろうとすれば、やはり教科書より先に食いものの改造をやらなければならぬ。ところが現在の日本の家庭生活の中では、食いものの改造というものは、祖先伝来の食習慣のためにできないのです。これを一体どこでやるのかということになると、学校給食以外にないというのが、私のいろいろ分析して到達した結論である。従って、私は文部行政の中でこれを相当積極的にやらなければならぬと思うのです。文部大臣は今教科書に非常に政治生命をかけておるかどうか知らぬが、相当自民党の中でやっておるが、最近自民党の中では給食論について片鱗だに見ることができない。むしろ、教科書は一年に一回買ったらいい、こんなものは義務教育無償だが私は給食よりあとでいいと思う。極端に言えばむしろ給食を先にやる。給食を全部の学校にやるとしたら一年に幾ら経費がかかりますか。今の小学校三千八百二十円、中学校四千九百円ということで、全国千八百万の小学校の生徒に全部国持ちでやったら一体幾らかかりますか。
  31. 臼井亨一

    臼井説明員 大体の推計でございますけれども、本年度でありますと、給食費全体では父兄が支出しております金額は約三百二、三十億と考えております。そうして新年度栄養基準を改訂いたしまして単価が上がりますから、来年度におきましてはトータルが約四百億円でございます。食給費全体で大体そういうふうに推計しております。
  32. 滝井義高

    滝井分科員 それは小学校中学校の五二・八%と一七・二%実施しておるものの総額ですね。そうすると、これを千八百万の全部に及ぼすと一体幾らになるのか、こういうことです。
  33. 臼井亨一

    臼井説明員 小、中学校は現在全体で一応二千四百万の児童生徒がございます。ところが私の方で一応小学校は五年計画、中学校は十年計画で完成するというような計算をいたしました十年後の児童生徒数は、二千四百万もございません、おそらく千八百万か二千万だろうと思います。その児童生徒に対しまして、昭和三十七年度の給食費基準にして推計いたしますと、約八百億と推計いたします。
  34. 滝井義高

    滝井分科員 八百億、安いものです。租税特別措置だって二千億ですから。これを今大きな会社に負けておるわけですよ。だから私は八百億を文部省が取り鳴るかどうかということが日本教育における非常に大きな問題だと思うのです。私はこれはあとでもやりますが、私の地域を具体的に調べてみたのです。そうしましたところが、町の中心部や大きな炭鉱のあるところは全部完全給食をやっております。ところが農村部と中小炭鉱のある周辺部というのは完全給食をやっていない、ミルクだけです。その結果は、おそらく学力調査の結果も、その給食をやっているところがよくて、やっていないところが悪いでしょう。私がPTAの会長時代に調べたときもそうだったのですから、今でも変わっていないと思う。ところが、これは大へんな結果を体位に及ぼしてくる。どうしてかというと、皆さん御存じの通り、今は小学校のあるところの校区の中学校に行くわけです。そうしますと、町部の者はすでに小学校から中学校まで一貫して完全給食を受けてくるわけです。ところが周辺地帯と中小炭鉱のある地帯は、小学校中学校完全給食を受けないのです。この青年前期における六年と三年の九カ年の状態は、異常な変化を体位に与えるのです。そしてその体力に与えた異常な状態は、大脳の作用に重大な影響を与えてくるのです。いかにこれに優秀な教師を配置しようと、人間の肉体は——昔から真理は単純で、健全な肉体に健全な精神が宿るといってくれているわけでありますが、この状態がそのまま放置されている。その肉体が非常に劣った状態の中で、今度は文部省の、体力をそのまま放置した、知育の、しかも重要な科目の読み、書き、そろばんだけのテストが行なわれてくる。これはもうやらなくてもわかり切っているわけです。やらなくても結果は悪い。だから、どのくらいの開きがあるかと見るためにやるようなものなんです。やらなくてもわかり切っている。あなた方は五年と十カ年の計画をお出しになったことはいいことなんだけれども、ほんとうにやる気があるかどうかということなんです。このように重大な影響を及ぼすこの給食の問題をやる気があるのか、ないのか。それは今言ったように八百、億です。しかしこれは八百億だけれども、完全な給食体制で全国二千四百万の子供にやるということになれば、このうちからおそらく二百億くらいは、大量に物を一元的に買って、一元的に配給する形を作れば、こんなものはもっと安くて済むと思うのです。この点に対する文部大臣の見解は一体どういう見解か、どういう情熱をお持ちになっているか、明らかにしていただきたい。
  35. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 滝井さんと同じ気持を持っております。完全給食まで持っていくべきだ。ただ、負けた、勝ったの表現は適切でないと思いますけれども、要するに私の努力不足のゆえに、五年計画ないし十年計画の第一年に取っつき得なかった点を非常に遺憾に思っております。捲土重来を期したいと思っておるところであります。
  36. 滝井義高

    滝井分科員 すでに奄美大島で、大臣御存じの通り、アメリカがやってきましてから完全給食をやったわけです。ところが本土の方の鹿児島はしばらくおくれた。その五年間の奄美大島の給食をやったところと、それから本土の給食をやらなかったところと比べると、奄美大鳥が多分男は三倍で、女が二倍、そのくらいの差ができた。奄美大島の方がよくなってきたのです。  このことは、おそらく給食をやった地帯の知能も、私はテストをやってみたらぐっと伸びてきたと思うんです。こういう実態をすでに文部省は明らかにしておる。それから生活白書の状態を見ても、消費の水準がずっと進んだところ、たとえば東京とか、大阪とか、神奈川とか、愛知とかいうようなところは、学力テストの成績もいい。給食も普及をしている。ところが一方、消費水準の伸びないところ、岩手、宮城、福島、栃木、群馬、鳥取、徳島、香川というようなところは給食も少ない。東北地方は給食は少ないです。その少ない地帯は一割そこそこだと言ったのは、主として東北地方だと思う。東北地方、それから南海地帯、高知とか、鹿児島とか、宮崎とかいうようなところの農村部というのは給食が少ない。だから、こういう教育の革新をおやりになろうとすれば、何といってもやはり人間革新が最大のものです。人間革新というものは、毎日食う食いものによってある程度革新をされる。そしてその上に新しい知育というものが植え付けられていくという、こういうものが両々相待たなければならぬと私は思うのです。  もう一つ給食の役割としては、今言ったような家庭における食生活の構造を変えるという面、すなわち子供学校給食を受けて帰る。そうすると今までのうちの食いもの学校食いものとが全く違うので、だんだん子供が母親なり父親に向かって、うちの食いもの学校食いものと違うということを啓蒙宣伝することによって、家庭の内部の食いものの構造が変わることになるわけです。これは日本全体の食構造を改善する一つの原動力にもなるということは、すでに多くの人によって指摘されている。  そのほかにもう一つ、今のような所得倍増の多い中で、給食が貧富の格差を縮めることになるのです。教科書は年に一回きりですが、給食は今言ったように年にしたら三千八百円から四千九百円になるわけですから、これをすべての子供にやることによって、お金持ちの子供も三千八百二十円の支給を受けるし、貧乏人の子供も三千八百二十円の支給を受けることになれば、家計から見れば貧乏人の方がよけいにプラスになるわけです。それだけ所得の格差が縮まる。なぜならば、おやじの持って帰る収入というのは、片方は十万持って帰るけれども、片方は二万しか持って帰らぬというと、これは八万の格差がある。ところがむすこが学校でもらう給食というのは、十万も持って帰るおやじの子供も、二万しか持って帰らぬおやじの子供も三千八百二十円持って帰ることになるわけですから、これはそれだけ縮まることになるわけです。その証拠には、収入階層別に見た父兄負担の学校教育費と、家庭の収入に対する比率ですが、収入階層別に、一体どの程度教育費をその収入の中から支出をしておるかということを、これは文部省もお調べになったことがあると思うのですが、ずっと前のものはあるのですけれども、最近、去年ぐらいにお調べになったものがありますか。各収入階層別に教育費というものが一体どの程度の割合を占めているかという最近のものがあれば、御説明願いたいと思うのです。
  37. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 ちょっとそのお尋ねに応ずるための準備をいたしていないようでございますから、きょうは一つかんべんして下さいませんか。
  38. 滝井義高

    滝井分科員 けっこうです。実は前の統計では、収入が少なければ少ないほど教育費の比率が多くなっているのです。たとえば、これはちょっと古くて、三十三年ぐらいのものじゃないかと思いますが、最近のを探してもちょっと見つからないのです。当然これは文部省はおやりになっておると思うのですが、三十三年ごろでも、所得六万から十一万程度の小学校父兄負担が六千百五十六円、中学校が七千八円です。そうすると父兄の収入に対する教育費の負担は小学校が六・八四%、中学は七・七九%です。ところが、これを五十四万から五十九万ぐらいの所得のところで見ますと、小学校に行く子供教育費、これは間接、直接の教育費を含んでおるわけですが、九千三百九十五円となっておる。中学校は一万一千六百四十六円となっておる。そしてその教育費の占める比率は小学校が一・六五%、中学は二〇・四%です。それから今の所得税で税金を免除される程度の人、三十六万から四十一万程度、こういうところを見ると大体小学校二・〇三%、中学校二・四四%、こうなっておる。所得が低いと、その家計に占める——ちょうどエンゲル系数みたいなもので、教育費というのは非常に大きくなってきておる。それは義務的な経費なんですから多いわけです。こういう形で家計に教育費が非常に大きな比重を占める。この中で給食費というのは今言ったように四千円も占めるのですから、それを国が持ってくれるということになると非常にこれは家計が楽になる。貧富の格差が縮まることになる。この論は私だけが主張している論かと思ったら、私は自民党の中によき友を発見した。加賀興宣先生がこれをやはり主張していることを私は発見したのです。やはり私はこういう点をやらなければならぬと思う。そこで私はこのごろ党内でも、今酒やビールの税金をまけようとする動きがあるけれども、こんなものはまける必要がない、おやじが晩酌を飲むときにはむすこが学校で、ミルクを飲んでおるのだという気持になれば、酒やビールの税金をひもつきで給食にお回しなさい、百円、ヒールを作る前にまず政府は完全給食をせよ、こういう主張を私はしているわけです。このくらいの主張は文部大臣やる必要があると思うのです。そうしてこの給食を速急に実現をすることによって——これは日本における白米偏重の食生活による弊害、たとえば胃腸疾患が多い、早くお年寄りになる、それから短命である、また白米の多いところにはガンが多いというような問題が今あるわけです。こういう日本の成人病の問題にまでこれは発展をし、解決の一つの基礎を与えることになるわけです。それから日本で結核が非常に減ってきたというのは、学校給食がBCGなりツベルクリン反応とともに大きな力があったはずです。これはアメリカが来ていいことをしてくれた一つの例にわれわれはいつも出しているのです。  それからもう一つはさいぜん申しましたように、国民生活自体の中に大きな改革というものを与えて、民族の若返りができるといういろいろいい面があると私は思うのです。これは文部省も、学力テストその他を一生懸命におやりになっておるけれども、その大前提である人間改造の根本のところをぜひ一つ検討を加えていただきたい、こういうことを要望しておきます。
  39. 福田繁

    福田(繁)政府委員 先ほど御質問のございました家計調査に現われた教育費でございますが、これは総理府の統計局の家計調査報告及び家計調査年報というのがございますが、それによった資料でございます。三十四年と三十五年にまたがっての調査で、これは一年間総平均でございます。教育費が大体が一万八百六十二円、文房具費が千四百八十六円、教養娯楽費が二万三千八十三円、こういうようになっておりますので、大体教育費、文房具費等を合わせますとおっしゃるような意味のものが出て参ると思います。
  40. 滝井義高

    滝井分科員 階層別にはまだ出ておらぬわけですね。
  41. 福田繁

    福田(繁)政府委員 階層別の資料を持ち合わしておりませんので……。
  42. 滝井義高

    滝井分科員 問題は階層別のが大事なところだと思うのです。  それからさいぜんの三千八百二十円ないし四千九百円の中に占める国の負担分というのは幾らになりますか。
  43. 福田繁

    福田(繁)政府委員 その資料がございませんので、また後ほど申し上げたいと思います。
  44. 滝井義高

    滝井分科員 これも一番大事なところですよ。どうも文部省は三カ年とか十カ年とかいう計画をお立てになっているけれども、給食費の中に一体国の持ち分がどのくらいあるかということぐらいはきちんとやっておいていただかぬと、ますます給食に対する熱意が疑われますよ。  では時間がきたから最後の問題に移ります。文部省は今の教育扶助の費用で十分に教育が行なわれるという確信を持っておるのかどうか。今の教育扶助費で他の子供と均衡のとれた、他の子供教育の遂行に支障を来たさないだけの十分なものであるか、まあ十分という必要はないのですが、大丈夫なものであるという認識を持っておるのかどうかということです。
  45. 福田繁

    福田(繁)政府委員 ただいま教育扶助経費の問題でございますが、この点につきましては、いろいろ積算の基礎は小学校あるいは中学校それぞれまた学年別によって違っておりますので一がいには言えないと思いますけれども、これは最低と申しますか、一応実績を見た上の計算になっておりまして、その負担も御指摘のように実績負担の建前をとっておりますので、必ずしもこれで非常に少ないということは考えてないわけでございます。
  46. 滝井義高

    滝井分科員 全国的な平均で見て、学校の先生が子供にお金を持っていらっしゃいという額は、小学校一年生で大体どの程度になりますか。
  47. 福田繁

    福田(繁)政府委員 ちょっと統計が古いようでございますが、学校の徴収金として表われておりますのは、生徒一人当たり小学校におきまして千八百円ないし三千百円くらいでございます。
  48. 滝井義高

    滝井分科員 それは給食費は入らずに、文房具費その他どういうものが入っていますか。いわゆる学用品費だけでしょうか。
  49. 福田繁

    福田(繁)政府委員 これは学校給食をやっているところにおきましては入っているわけでございます。
  50. 滝井義高

    滝井分科員 それは入っておらぬですよ、一年間に給食費が三千八百二十円から四千九百円ですから。文部省は数字に弱いな。
  51. 福田繁

    福田(繁)政府委員 これは平均でございますので、やってないところとやっているところを平均した数字でございます。
  52. 滝井義高

    滝井分科員 そうすると、社会局にお尋ねします。平均して一体どの程度のお金を教育扶助でお出しになっていますか。
  53. 大山正

    ○大山(正)政府委員 教育扶助として見ておりますのは、学用品費と実験実習見学費と通学用品費、それから教科書、給食費、こうなっておりますが、小学校三年の例で申し上げますと、来年度予算といたしまして学用品費で年額千五百六十円、それから実験実習見学費といたしまして年額で二百四十円、通学別品費としまして年額で七百八十円、合計年額で二千五百八十円ということになります。それから教科書代と給食費につきましては実費を支給する、こういうことに相なっております。
  54. 滝井義高

    滝井分科員 これはだいぶ違ってきたわけですね。教育扶助が二千五百八十円、文部省統計では一人千八百円から二千百円、これではちょっとつじつまが合わぬですよ。三千五百八十円では金が余り過ぎることになる。教育扶助は余るから削らなければならぬということになる。大蔵省はこうなったら削るといいますよ。何か文部省の方が間違いか、厚生省の方が間違いか。しかし厚生省の方は今学用品、実験用、それから通学用品費、こう分類をして三千五百八十円と出してくれたのですから、福田さんの方が間違いではないですか。
  55. 福田繁

    福田(繁)政府委員 数字をよく調査いたしますが、私の申し上げましたのは三十三年度の数字でございます。
  56. 大山正

    ○大山(正)政府委員 私が先ほど申し上げました二千五百八十円は一級地の小学校三年の例でございますので、あるいは全国平均の数字とは若干そこに開きがあるというようにも考えられるのであります。
  57. 滝井義高

    滝井分科員 少し具体的に……。私、全部調べましたから……。  実は御存じの通り筑豊炭田というのは生活保護者が人口一千人について百人おるわけです。一割は生活保護者です。従って学校にも生活保護者の子弟がわんさおります。それからボーダー・ライン層、いわゆる低所得階層、生活保護にならない、すれすれの者もたくさんおるわけです。これは筑豊地帯だけでなくてやはり失業多発地帯には一時的にそういう現象が起こってくるわけです。従って学校の先生がお金を持っていらっしゃいという額を持ってこれない子供が相当出てくるわけです。その場合に基準になるのは生活扶助というものをやはりわれわれは一番問題にしてくるわけです。文部省調査でも多分給食費を納め得ない子供が相当おるはずです。十九万人くらいおるといっておる。そのほかに、さいぜんの御説明のように、五%そこそこくらいしか低所得階層には準要保護児童として見てないわけですから、あとのさらに大きな人たちは給食費その他を持ってこれない人が相当おるわけで、す。そこで、これはどういう効果を及ぼすかと思って私が中学校八校と小学校十校について一年から六年まで全部調べてもらった。一年間に一体幾らの、学校から持ってこいという金があるのかというのをずっと調べてもらってみました。今生活保護で教科書その他副本代というものは全部くれます。給食もやってくれる。ところがそのほかに学用品費というのがあるわけです。これはもういろいろたくさんある。調べてみますと、これは学校によっていろいろ違いはありますが、結論的に言うとどういうことになるかというと、下学年で、大体月でしたら三十円から三十五円不足です。先生が持っていらっしゃいという金を持ってこれないのです。それから上学年、五、六年くらいになりますと、どうかしたら五十円不足するのです。生活扶助で五十円も不足するのです。これは全部調べてもらった。これでは教育ができません、こういうわけです。そうすると一体教師はどういうことになるかというと、一人か二人の間は教師が立てかえるという場合もあります。筑豊炭田のように低所得なり生活保護者が多くなってくると、もう立てかえるわけにはいかぬ。従って教育の調子というものが、普通の子供に合わせるわけにはいかぬわけです。やはり低所得なり化活扶助のところに教育を合わせなければならぬことになる。それはもう持っていらっしゃいといっても金を持ってこない、手工のこれこれの道具を持っていらっしゃいといっても、持ってこれなくてはそれまでだ、授業が遂行できないという事態が起こりつつあるわけです。こういうことは、文部省もただ厚生省だけに生活扶助というものの教育費はこれだけだということでおまかせにならずに、やはり教育の現場を文部省教育委員会その他を通じてきちっとお調べになって、そうして厚生省文部省からこれだけのものは最低必要なものだという要求を示唆する必要があると思うのです。それをおやりになったことがありますか。
  58. 福田繁

    福田(繁)政府委員 文部省といたしましては、要保護児童のみでなく、準要保護児童教育対策の問題もございますので、従来から厚生省とは連絡をとってやっておるわけございます。
  59. 滝井義高

    滝井分科員 そうしますと、これはあるいは私の手に入れたのは古いものかどうか、変わっておればまたお示しを願いたいと思うのですが、「教育扶助(学用品費)の内容」というのが文部省告示で多分出ておる。「小学校学習指導要領及び同中学校学習指導要領に基づき義務教育に伴って必要な教科書を除く学用品費のほとんどすべてをその算出基礎の内容としている。その内容は次の通り文部省告示の内容です。ずっと学習用紙、木琴、ハーモニカ等の楽器、縫い針、へら、小ばさみ等の裁縫用具、はち巻、帽子、水着、トレーニング・パンツ等の体育衣類まであるのです。ところがズックというのですか、ズックを持ってこい、こうなるわけですね。私の子供のころは雨が降ったらはだしで行っていました。私の近所の炭鉱の子供も、長ぐつなんかはいて行ってなくなったりしたらいかぬといってはだしで行くのもいます。はだしもいいです。いいけれども、運動会があるのに、はち巻、帽子やトレーニング・パンツまでくれるが、ズックがない。これは一体どうしたものだろうかといっても学用品にない。  それからこれは文部省に直接関係ないけれども、教育関係あるのですが、洋服の学童服です。これは一体生活保護子供幾らやると文部省は思っていますか。六年の間に何者くらいと思っていますか。
  60. 福田繁

    福田(繁)政府委員 厚生省の方からお答えした方がいいと思いますが、何着といいますか、その必要のときに応じてやるという建前になっておるわけでございます。
  61. 滝井義高

    滝井分科員 これは一年から六年までに二着くれるのです 一着の代金が千二百円です。そうしますと、一年のときに着た洋服というのは、六年になったら着れないのです。子供が大きくなって、洋服は小さくならぬけれどもそのままですから。そこでどういう工合に福祉事務所がするかというと、一着千二百円、三着では三千四百円ですが、その千二百円を六百円ずつにして中古を買う。中古をやるわけです。こういう形です。こういう状態が行なわれている、しかもこの文部省の学用品費として告示をされておるものは、学年別に分類されていないのです。従って福祉事務所では、一体学年別にどれをどういう工合にやっていいか、教育のしろうとですからさっぱりわからぬのです。先生は、あれを持っていらっしゃい、これを持っていらっしゃいと言うけれども、福祉事務所は一体そういうのは何年に要るのかわからぬから、お金の準備もないし、ものの準備もない。洋服は今言ったような状態、ズックはない、こういう状態で非常に混乱が起こっているのです。だから私は、この学用品費をお示しになるならば、少なくとも日本教育には、一年生にはこれとこれとこれが要ります、二年生にはこれとこれが要ります、そうして大体金額は昭和三十七年の価格はこの程度でございますというくらいの親切な示し方を、教育的な立場から文部省厚生省にする必要がある。厚生省教育のしろうとですから、大蔵省からしぼられるのでなるべく金は出さぬ方がいい。洋服は君のところは六年のにいちゃんが持っておるはずだ、にいちゃんが卒業したのだから、今度は弟はにいちゃんのものを譲り受けろ。一年から六年までたった二着くれて、しかももらい手が多い。中古を六百円で買うてきて一着分を二着にして渡す、こういう実態です。これでは教育が行なわれない。こういう点は、荒木文部大臣速急に改善をしてもらう必要がある。やはり少なくとも、あなた方の要望を厚生省に出す、厚生省文部省の要望に基づいて大蔵省と事務折衝をする、こういうそれぞれの所管の省が有機的な連係をとって子供教育を推進する形を作らなければ、とてもこれはだめです。文部大臣、この点は、どうでしょう。
  62. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 ずいぶん精細な御調査に基づいての御質問で、私もそれほどまでの具体的認識はないので恐縮ですが、ただ一応考えられますことは、むろん御指摘のようなことをきちんとやるという努力をしなければならないのです。その努力が足りていない部分につきましては、事務当局を督励して努力をさせます。ただ、それぞれ気候風土が違う全国的な学校の学童を対象にものを考える場ですから、おそらく今お示しの告示の内容も、一般的なことを示しまして、各地域ごとの、都道府県なり市町村ごとの教育委員会において、十分実情に合うようにその中からピック・アップして、学年ごとの必要品目を福祉事務所等とも連絡をしたらよかろうという建前から、大ざっぱになっておろうかとも想像いたしますが、これは私の想像でございまして、末端における実情を千分把握したわけではございませんから、当たらなければごかんべんをいただきますが、いずれにしろ、お話のようなこまかい思いやり、考慮があってしかるべきことでございますから、もし十分の措置ができていない部分があれば、それを完全にする努力をさせたいと思います。
  63. 中村幸八

    中村主査 滝井君に申し上げます。せっかくの御質疑中ですが、あとにまだ質問者がたくさん残っておりますから、至急まとめていただきます。
  64. 滝井義高

    滝井分科員 私は、もちろん日本列島は北から南に長い列島でございますから、鹿児島で桜の花が咲くときには北の北海道ではなお寒き雪に包まれているということも知っております。しかしそれにしても、やはり一年生で教える科目に何が必要かという一応の文部省基準というものは必要だと思う。これを文部省が、教育については所管でない、しろうとと言っては語弊があるが、まあしろうとにひとしい厚生省にお示しになることが必要だ。そうしないと、こういう形でさっと列記をするだけでは私はやはり問題があると思う。これは義務教育ですから、ぜひかゆいところに手の届く程度のことをしていただきたいと思う。  それから、この教科書その他はいただける。学用品は今のような状態でやってもらう。給食の金もいただけるが、そのほかに小学校で見ると全然金のこないものがある。視聴覚費というのがある。視聴覚の図書費、映画代です。この実態調査を全部やって書かせてみましたが、大体一年生から六年生までに一年について百二十円ぐらいの視聴覚の図書が要るのであります。映画が八十円くらいずつ一年に要るのでありますが、こういうものを出すところがない。それから実験、実習、見学費というのがあります。これは修学旅行でございますから、修学旅行は一応準要保護児童までは幾らか見るけれども、五年、六年になりますと七百五十円ずつ要ります。それから社会科見学というのがある。これは低学年はございませんけれども、三年、四年ぐらいになりますと三百円から三百円くらいです。それから家庭科材料というのがあります。これが四、五年で百五十円、六年ぐらいになると三百円になります。それから理科材料費というのが二十円ずつくらい要るわけです。負担金、つまりPTAですが、これが私の調査したところでは六百円ずつ要る。それから学校安全会費というのが十円ずつ要ります。学校保健費というのが各学年全部二円ずっとっております。こうなってみるとこれらの出すところがない。そこでこれを一体どうして出しているだろうか。結局これは出さずじまいかPTAの会費から肩がわりするかです。日本における税外負担の総額は三十五年で三百五十四億円です。三百五十四億円もあるというので、学校の校舎の維持修繕費とか人件費は税外負担をしてはいかぬという法律をお作りになった。ところがこの法律ができたけれども大した影響がない。税外負担の七割は実に教育関係費です。従ってその七割に当たる二百四、正十億のものが、こういうものにもその一部としていっていることは事実だろうと思うのです。しかしこの視聴覚の経費やら実験、実習の見学に行く負担金というものをボーダー・ライン層や生活保護を受けている子供が持ってこないということは、そのクラスの教師にとっては教育上非常に重大な支障を来たすことなんです。こういうものを文部省学校教育上どう一体処置をするつもりなのか。
  65. 福田繁

    福田(繁)政府委員 ただいまいろいろの費目をお述べになったのでございますが、たとえば視聴覚教材等につきましては、文部省としては、教材費の増額をはかりまして、できるだけ学校の設備を充実していきたいという考え方でいっているわけでありますけれども、お述べになりましたような、個々の生徒が映画を見にいくとかそういう経費までは、現在のところ手が及ばない状態でございます。しかし一般的に準要保護児童の援護範囲を拡大しまして、三十七年度におきましては、大体引き上げまして五%というような範囲を予算考えているわけでございます。それから従来からいろいろ出しております教科書、学用品、通学費といったようなものにつきましてもそれぞれ単価を引き上げるというような措置を講じますと同時に、ごく一部分でありますけれども、先ほどお述べになりました学校安全会の掛金等も、これはやはりいろいろな、その掛金すら困るというようなこともございますので、そういう準要保護児童あるいは要保護児童に対する掛金の一部を国が負担してやるというような措置を三十七年度では講じておるわけでございます。そういう工合に内容充実と同時に、就学奨励関係の費目の範囲を漸次拡大するというような方向考えますことが一つの点でございますが、そのほかには先ほどお述べになりました中にございましたように、税外負担の解消ということについては従来ともに文部省としてはいろいろ努力をして参ったわけでございますが、やはりPTAの負担等が相当現在も多額に上っていることは、これは御指摘の通りでございます。従って昭和三十七年度におきましては地方財政計画の中に約百億円の税外負担の解消というものを織り込んでいるわけでございます。それによって今申されましたようなPTAその他の負担をできるだけ軽減していくという方向をとっているわけでございます。
  66. 滝井義高

    滝井分科員 大臣、今私が述べたのは小学校です。中学校になるとさらに多くなるのです。これらはもう学校安全会費も二円が十円になりますし、体育連盟とか今度は生徒会の費用なんか要ってくるのです。生徒会の費用でも百八円要るのです。そのほかに学級費というのがあるのです。中学校というのはだんだん自治会のようなものを持ちますから非常に多くなってくる。小学校よりはずっと経費がふえてきます。こういう点は生活扶助では見ないわけなんです。だからこういう点も、今あなたが安全会費その他、だんだん努力をしていただくし、それから税外負担百億軽減の措置をとると、いろいろありますが、なお相当の負担がある。これらのものについては大臣にもお願いをしますが、ぜひ一つ厚生大臣教育上の問題については十分協議をされて、そしてその実態を把握してやっていただきたいと思うのです。これは私は教育委員会に調査をしてもらったのです。ところが教育委員会から福祉事務所に言ったって、末端はこんなものを受け付ける情勢にないのです。もう一定の金しかこないのですから、末端で解決する問題ではない。だから私はきょうここまで持ってこざるを得ないというわけでやっておるわけですが、私、わざわざお願いをして調査をしてもらったのです。従ってこういう問題についてぜひ一つ両省の間にもう少し討議をされて、きちっとした体系にして教育の遺憾なきを期していただきたい、こう思うわけです。最後に荒木文部大臣の所見をお聞きして私の質問を終わります。
  67. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お示しのようなことにつきましも末端まで透徹いたしまするように努力いたします。
  68. 中村幸八

    中村主査 次は田口誠治君。
  69. 田口誠治

    田口(誠)分科員 私がきょう御資問申し上げたいと準備をしておりましたのは、高校住の急増対策についてでありましたけれども、けさほど委員部の方にきのう一日の先生方の質問の内容をお聞きしましたら、こういう点については辻原先生が具体的に時間をかけておやりになったようでありますので、そういう点につきましては私は省略をしていきたいと思います。なお、私の質問は、滝井先年のように具体的ではございませんので、抽象的でありまするから、数字を御請求申し上げたときは、一つしっかり出していただきたいと思います。  それで、私は先生の定員の問題についてお伺いをしたいと思います。そこで、その前に、一つ大綱的な面で文部大臣にお聞きをしておきたいと思いますることは、今度の予算を見ましても、工業高校の国庫補助については、これは相当力を入れていただいてあるわけですが、その他の高校については力を入れてもらっておらないというのが実態であるわけなのです。こうなりますると、生徒はだんだんふえていきまするし、工業高校だけ補助をして校舎を建ててみましても、女子の場合には非常に困るわけなのです。従って、こういうやり方を何年も続けていく場合には、教育機会均等であるところの女子の取り扱いが、これは冷や飯扱いをさせるということに相なるわけですが、こういう点についてはどういうように今後の処置をお考えになりまか、まずもってお伺いをしておきたいと思います。
  70. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 高校生急増につきまして国の予算に全額として載っけておりますのは、産業教育振興法の関係の十三億円にとどまりますが、三十八年から始まります三年間ないし四年を見越しまして急増する生徒数が百二十三万人と推定される。その年次計画を自治省とも十分連絡をとりまして、その年次計画内の三十七年度分としましては、国の経費でなしに交付税と起債で見る。必要な学校施設、建物の建設の費用が一番かさみますので、それに対応するものとしましては三十七年度に三十八度を迎えるために前向きに措置すべき事業量は百五十四億円見当と推定されますので、それから国庫補助金を除きました残りを起債の、五十億及び交付税の九十一億、さらに新設します学校の用地費が要りますから、これは金額的には確定はいたしませんけれども、推定四十億円見当、それを一般起債財源でもって措置する。坪数にして百八十万坪くらいと推定をされますが、そういうことを都道府県が実施しますための財源的措置は一応いたしておるわけであります。形が国の予算、国庫支出金という形で出ておりませんだけあって、裏づけは一応できるものと考えておるのであります。  そこで御質問の女子の高校進学者をどうするんだというお話でございますが、女子は男子に比べて工業高等学校等に行く人がほとんどなかろうと考えられます。従って商業高校、あるいは数は少なうございましょうが、農業高校等に行くであろうという考え方のもとに措置しておるのでございまして、特別に女子が御指摘のように進学にはなはだしく困るということは、数字の上では一応出てこないであろう。もとより具体的な場合には特別な措置をしなければならぬことも出てくるとは思いますけれども、一般的に申し上げますとそういう考え方で対処しておるわけでございます。
  71. 田口誠治

    田口(誠)分科員 端的に申し上げまして、工業高校の場合に予算的な措置として力をお入れになった場合には、工業高校の場合は次から次へと校舎が建っていくわけです。ところがその他の普通高校の場合は新しく高校が増築されるということが割合に少ないということになりますると、やはりこれは中学の生徒数からいきましても女子の数が男子に劣るということじゃございませんので、進学を希望しておる人たちが高校へ進学する場合の門というものはやはり非常に狭くなるということなんです。これは端的にいってそういうことになるわけなんですが、そうなりまするとやはり教育機会均等という面が失われるということになりまするので、こういう点をどうお考えになるか。そして三十七年度の予算措置といたしましては文部省としては今の予算書にありますような実態でありまするけれども、将来の問題といたしましてやはりこの面をどういうようにお考えになるかということをお聞きしておきたいと思います。
  72. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 工業高校は校舎が建つのだが、一般高校の方は校舎が建たないであろうという御懸命のようでありますけれども、それは先刻も申し上げましたように高校の生徒急増というのが三十八年から始まるわけでございます。現在中学校の二年に在学しておる者が三十八年になりまして高等学校に入っていくということになるわけで、八年、九年、四十年、四十一年まである程度続きますが、その三十八年度に入学するであろう生徒急増に対応しまして、三十六年度と三十七年度と合わせて三十八年の四月早々にはその態勢々を整えようという姿勢で対処をいたしております。そのことについてさっき申し上げましたように三十八年度に急増します生徒数に対する措置として、金額で申し上げれば百五十四億円の措置をするならば、普通高校はもちろんのこと、産業教育振興法に基づく工業高校を初めとする施設もできるんだという基礎に立って措置いたしておりますから、生徒急増に対応する校舎が、工業高校だけ建って、普通一般高校は建たないのだということにはならないと考えております。将来ともおっしゃいますが、繰り返し申し上げますれば、高校の生徒急増は三十八年から始まって三十九年、四十年、四十一年にある程度残る、そういう姿になりますので、それに対応します措置を前向きに、今申し上げるように当面は三十八年に対処しますが、三十九年度分に対しましてはまた三十八年度の予算について前向き姿勢で同じような計画のもとに措置していく、こういうことにいたしておりまして、原則として父兄の御心配は要らないであろう、そういう見込みのもとに措置をいたしております。
  73. 田口誠治

    田口(誠)分科員 これは極端に工業高校は今後急増されるけれども普通高校はふえないということではなくして、新しく校舎のできる率として工業高校の方へは現在のところでは力が入れてあるのだから、これは確実に工業高校の方はふえていきますね。ところが普通高校の場合はその率の進み方で学校はふえていかない。そうなりますと、結局三十八年から四十一年にかけて生徒数がふえていった場合に、女子の両校進学の円が非常に狭められていくということになるわけでございますから、こういう点を大綱的に考えてお伺いをしているわけなんです。そういうことになりませんか。
  74. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 そういうことには当然にはならないと考えております。ただ御質問の点はあるいはこういうことにあるかと思います。工業高校に対しては、実験実習の建物及びその中身の設備、これはずいぶん金がかかるわけであります、普通高校に比べれば。それに対して法律に基づいて補助金を出している。さらに技術者養成という今の世論的な要望にこたえる意味で、三十六年度から工業高校の普通校舎に対しても三分の一の補助金を出すことになって、それに対応するものが三十七年度予算にも計上されている。これは実験実習設備とともに計上されている。だから国の補助金の裏打ちがあるから順調に建てられていくであろう。一方普通高校に対しては、国の補助金というものは建物に対してはないわけだから建たないであろうということを前提にして御心配になっているようでございますが、その点は先ほど来申し上げましたように、なるほど補助金という裏打ちはございませんけれども、元来高等学校の施設義務者は都道府県が原則になっておりますから、都道府県の義務を果たすに必要な財政的な裏打ちがあるならば建たないというはずはない。その裏打ち方法としまして百五十四億円を三十七年度に手配をするならば、建つはずである、そういうことでやっておりますから、それがまじめに実施されます限りにおいては、御心配のようなことは総括的に申し上げるとなかろう、部分的に一般論では処置できないことがありせば、それはそれぞれの都道府県で善処してもらえば御懸念は解消するのではないか、こう考えますのでお答えしているわけであります。
  75. 田口誠治

    田口(誠)分科員 各県でそういう点について考慮すれば解消すると言われますが、それはそういうことになるでしょう。なるでしょうが、実際問題として技術革新という面から、一つの法律もできておりますし、そういう面にのっとって教育の面もやはり広げていかなければならないわけなんですが、今大臣から説明された内容からいきますと、普通高校の場合でも何ら冷飯扱いにしているわけではないし、ただ金の出し方において相違があるのだというような答弁なんですが、実際問題として、各都道府県が新しく三十七年度に学校を建てようとするのを見ますと、工業高校の場合がほとんどなんです。こういうことからただいま申し上げましたような懸念がいたしましたので、質問を申し上げたのです。将来ともやはり予算措置その他についても、工業高校と同様に一般高校の場合もやはり文部省としては力を入れていただくのだということになりますれば、私は何も文句はありませんし、これ以上質問申し上げることもないわけであります。そういう点でただいままで追及をいたしているわけであります。答弁はあえて要求いたしません。  それから次には先生の定員の関係ですが、これはどこの県へ行ってみましても、先生は不足しているわけなんです。特に私はこの高校生の急増対策についていろいろ調査をいたしました関係上、高校の面だけを数字的にもいろいろ拾ってみましたわけですが、先生は非常に足りないわけなんです。これは御承知の通り現在先生の数をきめる場合には、高等学校設置基準に基づいて一クラス四十名の割合で先生の数をきめるようになっております。これが甲号基準でございまするが、この甲号基準までに一挙に達しないものにつきましては、これは一クラス五十名の割で先生の数を割り出すということになって、これを乙号基準と言っておりまするが、現在のところでは乙号基準に達しておらない学校がほとんどであるということなんです。こういうことからお伺いをいたしたいことは、現在全国的にいってどういう数字が出ておるかということ、この点につきまして伺いたい。
  76. 福田繁

    福田(繁)政府委員 高等学校の教員の定数でございますが、これは三十六年五月一日現在でございますが、現員は十二万一千五十五人、これは事務職員を含めております。
  77. 田口誠治

    田口(誠)分科員 それでこの乙以下のものが何%あって、それから乙の基準に達しておるものが何%、甲号基準に達しておるものは何%、こういう点を伺いたいと思うのです。
  78. 福田繁

    福田(繁)政府委員 ただいま御質問の点でございますが、従来乙号基準による学校がたくさんあったわけでございますが、しかしこの前の国会で成立いたしました公立高等学校の教職員の標準定数法、これに基づいて今後高等学校の教員の定数を算定いたすわけでございます。従ってただいま申し上げました昭和三十六年五月一日現在の現員でございますけれども、これが今申しました定数法に基づいて今後充実されていくということに建前上なるわけであります。従って甲号、乙号という問題は今後の問題としては起きてこないわけでございます。今の三十六年五月一日現在の現員に比較しまして、少なくともこの法案の成立によりまして三十七年度末にはそれが十三万程度に充実されなければならない、こういうことになっておるわけでございます。
  79. 田口誠治

    田口(誠)分科員 三十六年度までの、その数字というのはわかりませんですか。先ほど質問申し上げました甲基準に達しておるところ、それから乙基準に達しておるところ、乙基準にも達しておらないところ、これは大体数字を取り扱っておられれば、きちんとした数字はわからなくとも、およそのパーセンテージが頭の中におありだろうと思うのですが……。
  80. 福田繁

    福田(繁)政府委員 大体ただいま申し上げました現員でございますが、これは各学校の状況もいろいろ違うと思いますけれども、大体九五%程度が乙号基準のものかと考えております。
  81. 田口誠治

    田口(誠)分科員 それは私の調査からいきますと大へん実態と違っておるわけなんです。私は特に岐阜県の場合なんかを調査しておりますが、もう乙号に達しておるというのはほとんどないのですね。だから岐阜県はどうかといえば黒字財政をとっておりますので、こういう黒字財政の県がこのように先生の定員が足りないということになりますと、全国的には相当不足をしておるのだ、いわゆる乙号基準以下のところが九五%くらいあるのだというように把握をするのですが、今の九五%は、乙号基準に達しておるというのとおらないというのと違っておりませんか。
  82. 福田繁

    福田(繁)政府委員 ちょっと言葉が足りませんでしたが、以下のものを含めてでございます。
  83. 田口誠治

    田口(誠)分科員 以下のものを含めてだと数字的に出ませんので、これ以上の数字を要求してもむずかしいと思いますから要求いたしませんが、これは乙以下も含めて九五%ということでございますから、結局甲という基準に達しておるというのは五%ということです。そうなりますと、この九五%というものはほとんど乙号基準以下のものというように文部省の方でも把握をしていただいて、そうしてこの定員増の問題については一つ何かと心を使っていただきたいと思うわけです。  そこでこの定数法ができまして、これに基づいて今度教員の定員も配分されることになりますが、今乙号以下のところ、これは定数法を適用いたしましてもやはり一万人ほどふやさなくてはならないわけなんですが、そういうような点についての準備、予算化、こういうような面は地方の実態等もいろいろ調査をされたものがあると思いますが、可能であるかどうかということを伺っておきたいと思うのです。
  84. 福田繁

    福田(繁)政府委員 ただいま御質問のございました定数法に基づいて現在の教職員をどの程度に維持するかという問題でございますが、教職員につきましては大体七千六百人程度だと考えております。そのほかに約二千人くらいの事務職員を含めまして約九千六百人程度だと思っておりますが、来年度の地方財政計画におきまして、今申しました七千六百人程度の教員が年度末までに充実できるというような財政計画上の目算を立てまして増員をはかっておるわけでございます。
  85. 田口誠治

    田口(誠)分科員 それで文部省まで上がってきておるかきておらぬか、その点はわかりませんが、今の実態というものは一人の先生が三科目、四科目を持たされておるところが相当あるわけなんです。これは岐阜県にあります。そういうことになりますと、高校の場合にはやはり先生もある程度の専門的な基礎勉強を行なって、そうして児童を教えなければならないというので、先生一人の勤務時間というようなものは家庭に帰ってからやる分も含めまして非常な数字に上っておるわけなんです。八時間労働といいますけれども、これの倍くらいはやはり先生の職務として、それを完全に遂行するために先生方が費やさなくてはならないというような実態であるわけです。従って、定数法が通ったのだから、定数法に基づいてやるのだということでございますが、この点につきましても非常に現在の不足しておる実態を、定数法に基づいておやりになっても、これは相当まだまだ不足の面が出てくると思うのですが、こういうような場合に、大体文部省指導方針といたしまして、先生は一人何科目までぐらいが妥当であり、何科目以上は無理だという一つ指導方針があろうと思いますが、この点についてはどうなんですか。
  86. 福田繁

    福田(繁)政府委員 ただいまの御質問でございますが、大体定数法の算定の場合に考えておりますのは、一人一週十八時間というのを基準考えておるわけでございます。その範囲内で先生の担任その他をきめていくという考え方でございます。十八時間を考えてやっているというのが、実情でございます。
  87. 田口誠治

    田口(誠)分科員 それから次に事務職員、これは助手も含めてでございまするが、工業高校にしても農業にしても理科系にいたしましても、助手とか事務職員という者が非常に必要であるわけです。ところが現在のところでは一校に対して、岐阜県なんかの場合を例にとってみますと二名ぐらい、こういう数字になっております。これではとても行なおうとする実験ができないというのが事実であるわけです。それでせっかく校舎も建て、ワクも広めて子供教育に完璧を期するためにいろいろ努力していただいておるけれども、今の実習助手なり事務職員なりが現在のような定員ではとても十分ではないと思うのです。この点につきましても、岐阜県の場合は、県の予算が黒字になっても、こういう方面への力の入れ方が不足をしておるのかもわかりませんので、全国的な平均がわかりますれば、助手の場合、事務員の場合をお聞かせ願いたいと思います。
  88. 福田繁

    福田(繁)政府委員 大体平均いたしまして二人ないし二人半という模様でございますが、明年度におきまして事務職員二千人、助手二千五百人程度を増員する計画をいたしております。
  89. 田口誠治

    田口(誠)分科員 二千五百人ふやしてもらうということになると、パーセントではどの程度上がりますか、概略でよろしいです。
  90. 福田繁

    福田(繁)政府委員 大体三割ちょっと上回るようでございます。
  91. 田口誠治

    田口(誠)分科員 この助手なり事務員の必要度合いというのは、文部省でも把握されておられると思いますが、大体理想的な員数というのは文部省としてはどの程度を押えておられるのですか。
  92. 福田繁

    福田(繁)政府委員 これはいろいろ考え方がございましょうと思いますが、定数法の基準によって計算するのが一番妥当だと考えております。従って私どもとしては、事務職員等につきましては現在約七千人の事務職員がおりますが、あと二千人ぐらいで大体適当ではないか、こう考えております。
  93. 田口誠治

    田口(誠)分科員 なおお聞きしたいけれども時間がありませんので、次に移りますが、いずれにいたしましても不足です。それで文部省としてはおそらく実態把握をされておられるだろうと思いますけれども、御回答の言葉からしみ出る一つの思想をくみ取りますると、どうも現場の実態というもの、現場の苦しみというものがそのまま把握されておらないように受け取れますので、こういう点については十分に現場の実態を把握していただいて処置をしていただきたいと思います。それから次にお伺いをいたしたいことは、養護教員の関係ですが、これは現在全国に何名おられて、何校に対して何名おられるということはわかりますんですか。
  94. 福田繁

    福田(繁)政府委員 御承知のように養護教員の置き方でございますが、これは小学校の児童千五百人につき一人、中学校の場合は二千人につき一人というようなやり方をいたしております。現状は小中学校三万三千九百校くらいございますが、その中で現在置いておりますところは約九千六十でございます。
  95. 田口誠治

    田口(誠)分科員 今お答えになった数字からいきましても、割算をしてみますればわかりますように非常に足りないわけですね。これも岐阜県の実態なんかからいきますと、生徒の員数からいきますと一人で千六百五十人というのが算術で出た数字なんです。こういうような実態でございまするから、私はなおこの点についてこまかくお聞きいたしたいし、また要望もいたしたいのですが、時間がありませんので次に移りますが、このような実態ではあってもなきものと同じようなもので、効果を得ることはできないということなんです。教育の問題につきましては現場の実態をよく調べてみますと、目的の達成できない、目的に相反するようなものがずいぶんたくさんあるわけなんです。それでこれも私は文部省としてはほんとうに、机の上でただ今年は数字がこうなった、だから今年はこれだけふやして三割増しだという、こういう消極的な手を打っていかれては、とても満足のいく教育はできないので、やはり現場の実態調査というものを完全に行なっていただいて、そういう数字の上に立って抜本的な手を打っていただかなくてはいけないと思いますので、この点強く要望申し上げておきます。  私に与えられた時間が来ましたので、最後に端的に伺いますが、岐阜の医科大学の国立移管の問題です。この問題につきましては、ここ三、四年前から非常に運動もされておりまするし、その当時は国立に移管するだけのいろいろな基準に達しておらないというので、文部省の方からいろいろ話のありましたその基準は、大きな予算をかけて大体整ったわけなんです。従ってこの結果はおそらく調査に行っていただいておると思いまするが、どういうようになっておりますか。
  96. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 今、公立大学の国立移管の先頭を切っておりますものとして、岐阜の医科大学があり、あるいは山口県、兵庫県等にもあるようであります。ところでおそらくその問題が出始めましてから数年、少なくと六三、四年経過しておろうかと思いますが、いまだに結論が出てないことは御承知の通りであります。それはことさらに一寸延ばしにしておるわけではございませんで、御案内と思いますが、さきおととしになりますか、大学の制度のあり方、その他もろもろの、大学に関する基本的な問題を中央教育審議会に諮問いたしております。中教審では今日まで引き続いて熱心な討議をしていただいておりますが、おそらくことしは方針を出していただけるのではないかと期待いたしております。その中教審の大学のあり方についての答申待ちという状態で、今日まで延びておるわけでございます。それは、答申の内容等をむろん今推測できませんけれども、総合大学というものはどんなものを考えているのか、あるいは短大その他もありますが、どんなふうな方向づけが適切なりやということにも関して参ります。従って公立で現に存在しておる大学を国立にただ単純に移管するという形をとってそれで済むものではなかろうと思います。将来を見通して、安定した姿に持っていくという考慮なしには、にわかに決定できない。そういうことから、わずかではありますが調査費をつけながら、今申し上げた三つの大学については調査を続行しつつ、答申待ちの状態であるということでございます。岐阜大学の医学部の整備状況を私もせんだって拝見させていただきまして、しろうと目にもなかなか充実の努力をしていただいていることがわかるような気持がいたしまして、そういう点についてかれこれ申し上げているわけじゃなしに、今申したような意味から中教審の答申待ちで待機しておるというような姿でございます。のみならず、公立は、この三つでなくて、まだ十数校同じような要望が出ております。もともと都道府県みずからが医科大学その他を持つ方が適当なりとしてスタートしたものを、今まで比較的熱心に主張された三つの大学だけでケリになるものじゃなしに、残る十数校も、総合的に、今申した中教審のものの考え方に即してどう措置するかということを見きわめませんと、単純な国立移管という作業だけでは済まない、かように思っておることも申し添えさせていただきたい。
  97. 田口誠治

    田口(誠)分科員 答申待ちということでございますが、実態を申し上げますと、とにかく二、三年前から、岐阜大学の場合は基準に達しておらないから、これこれこういうような基準に達する予算措置をとって教室もふやし、病室もふやし、いろいろな設備を行なえばいいというように、そういうような受け取り方をしておりましたので、それができたのだから、もう自動的に、いやおうなしに、そんなに文句なしに移管してもらえるものだというように、いなかの県だけに、それを率直に、純真な気持で受け取っておったわけです。ところがまだどうもいろいろな面で工合が悪いというようなことで、非常にその当時事に当たられた人たちが困っておられるわけです。それで、答申待ちもございましょうけれども、十分に内容を調べていただきまして、今年度はむずかしいとすれば、来年度に、やはり一部移管をしていただくようにお願いしたいと思います。岐阜県の場合は、一気に全部ということにはなっておりませんので、そう無理な要求ではないと思いますから、その点よろしくお願いしたいと思います。  それに関連して、岐阜大学の農学部、工学部が、岐阜基地那加の飛行場の付近にあるので、この学校に防音装置をしてもらうということ、これもまた三年がかりくらいで、いろいろ予算要求の提出は事務局の方から文部省へ出ておると思います。それで、昭和三十七年度あたりは真剣にこれと取り組んで実現さしてもらえるものだというように、やはり事務局の方でも大きな期待を持っておるわけですけれども、しかしこれが大蔵省の予算要求にもなっておらないのでしょう。それはどういうことなのか、ちょっと承りたいと思います。
  98. 杉江清

    ○杉江政府委員 文部省といたしましては、各務ケ原基地の防音丁寧も、岐阜大学、東海地方病院その他義務教育学校数校についてその必要を認めて、これを年次を追って整備するという考え方を持っておるわけでございますが、岐阜大学について、先ほど本年度予算におきましてはこれを計上することが必要だと私ども一応考えたのでございますが、防衛庁とも相談いたしましたところ、まず何といっても義務教育学校の整理をする必要がある、義務教育学校で、より緊急度大なるものがまだほかにあるから、その方を先にやりたい、こういう基本的な考え方で、一つこの際は次年度に回してもらいたいという御意見で、その旨を受けまして私ども次印度以降に回すということを了承するほかはなかったのであります。
  99. 田口誠治

    田口(誠)分科員 その経過はわかりましたが、小中学校の場合は、防衛庁が予算をとって直接防衛庁の方から防音装置を行なってくれるわけですが、国立大学の場合は防衛庁が予算をとってくるということはできないでしょう。やはり文部省でこういう方面の予算を独立に組まれて防音装置をなされるのだというように私は把握しているのですが、やはり作業にかかる場合は、防衛庁の方からもどれだけを出させる、それから文部省もその残りの分を予算化をして防音装置を行なうということになるのか、その点どうなんですか。
  100. 杉江清

    ○杉江政府委員 防音装置の工事については、いわゆる原因者負担の原則によりまして、その原因を作っておるところがその経費を計上して工事をする、こういう原則がとられておる一わけであります。従って国立大学につきましても、これは防衛庁予算に計上さるべき性格のものでございます。
  101. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そうしますと、私の方ではどんどん文部省にそういうような陳情をし、お願いをすれば仕事は進んでいくものだというように考えておったのですが、そうじゃないのですね。やはり防衛庁の方に行かなければいけないのですか。国立の場合だけは違いませんか。
  102. 杉江清

    ○杉江政府委員 これは予算的には防衛庁及び調達庁ですね。この両方の責任でございます。もちろん私どももこの点については重大な関心を持っておるわけでございまして、この工事のすみやかなる実施を希望し、そういう要望をいたしておるわけでございますが、最終的な官庁としての責任は防衛庁及び調達庁にあるわけでございます。
  103. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そこで、私今までこの問題を取り扱っておりまして把握しておる範囲では、防衛庁は騒音の激しいところは徐々に防音装置をやっていくのだけれども、国立の建物の場合はそこの担当の省がやはり主になってやっていただくのだということでございましたが、ただいまのお答えは、防衛庁の方ともそういうような話し合いをなされたのか、それは実際どうなんだということを教えておいていただきたい。これからの進め方がございますから……。
  104. 杉江清

    ○杉江政府委員 ただいまの点は了解済みでございます。
  105. 田口誠治

    田口(誠)分科員 これで終わります。
  106. 中村幸八

    中村主査 次は玉置一徳君。
  107. 玉置一徳

    玉置分科員 私は義務教育施設の整備充実につきまして、文部大臣並びに大蔵省の方に質問をいたしたいと思います。  そこで順序といたしまして、まず義務教育関係の教科書無償配布の問題でございますが、これが今年度の予算審議にあたりまして、政府並びに自民党の間において文教関係予算として一番問題とされまして、異常な熱意を持って大臣予算の復活に向かって努力をされたのでありますが、これはいわゆる教科書無償配布というのは、義務教育はほとんど国の責任においてやるのだという見解を持ってこれだけの努力をされたのだ、こう思うのですが、いかがでございますか。
  108. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 もちろん御指摘のような考え方に立って推進をいたしました。
  109. 玉置一徳

    玉置分科員 そこで次に義務教育の施設の整備充実でありますが、この問題もまた同じように義務教育の施設の充実は国の責任においてめんどうを見ていくことが建前であると、こういうように御解釈をいただけるかどうか、まことに恐縮でありますが……。
  110. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 仰せ通りに心得ております。
  111. 玉置一徳

    玉置分科員 それでもし地方公共団体に過重な負担を負わしめるようなことがありますと、その施設も引き続きまして父兄の負担になるというようなことになりまして、公共団体の財政力により左右されまして、地域によって非常な教育施設のへんぱができる。ましていわんやこのごろ問題になっております僻地の教育の尊重と振興ということが叫ばれておりますが、こういうところは非常に苦しいことになると思いますが、地域差の解消とか、僻地教育の振興とかいうようなことが一番重要であるにかかわらず、ますますその差が開いてくる。先ほど滝井先生のお話にもありましたように、学力にまでそれが影響してくるというようなことになると思うのであります。  そこで文部大臣にお伺いをいたしたいのでありますが、いよいよこれから本論に入るわけでありますが、学校施設の建築の補助というものにつきまして、その基準坪数の引き上げと補助率並びに補助単価の引き上げについてこれからお尋ねをいたしたい、かように思います。そこで御承知の通り現在文部省学校統合を含めまして、不正常のあれには二分の一、老朽校舎には三分の一補助をしておいでになります。残りは施設者の負担として、これに対しましてはおおむね八〇%前後の起債を認めておいでになるのでありますが、基準坪数並びに補助単価等の関係で、実際は実はきわめて低い補助率となっておるのであります。御承知の通り学校建築基準坪数は、小学校におきまして児童一人当たり〇・九坪、中学校は一・〇八坪でございますが、これがいずれも廊下、給食室あるいは便所等も含まれておりまして、非常に窮屈なのが、実態でございます。これができましたのが実に昭和二十八年の、十年近く前でございました。当時は戦時中並びに戦後の荒廃のままで捨て置かれました学校の施設を、一斉に新築、改築をする、この急需に応ずるためにやむを得ず普通教室を大体整備するということを建前として、こういう窮屈な基準をお設けになったと思うのでありますが、その後、大体におきまして普通教室は整備されたやに思えますし、またその後経済界の異常な成長に伴いまして、産業教育の振興とか、従って特別教室の充実というような時代の要請が熾烈なものがあると思うのです。こういうものに対処いたしまして、ただいま申しましたように基準坪数というものを、約十年前の当時の坪数を改定せなければ、実際の需要に応じ得られない。従って地方公共団体は乏しい財政をさきまして、まるまる地元負担をもって、これが改築、新築に当たらねばならないというような事態が起こっておるわけであります。こういう意味におきまして、文部省ではこの基準坪数を時代に即応するごとく改定をされるお考えがあるかどうか、文部大臣にお伺いを申し上げたい、かように思います。
  112. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お示しのような考え方がございます。ただ実際の効果は御期待ほどにいってないことも、また遺憾ながら認めざるを得ませんが、今後に向って今お話しのような点を初めとして、あらゆる努力をしなけばならぬ、かように思っております。
  113. 玉置一徳

    玉置分科員 そこで特に僻村の問題でありますが、今の坪数に対しまして学級数の少ないところは、それぞれ補正係数をもって調整をしていただいておるのでありますけれども、この補正が決して満足なものではない。従って児童数の非常に少ない、学級数の少ない僻村の学校におきましては、大部分が地元負担、設置者負担の形でやらなければならないようなのが現状ではないかと思います。その上、ここらの地域の地方自治体は、御承知の通りいずれも地方財政の非常に弱い地域に当たっております。先ほども申し上げました通り、僻地の教育の振興、いわゆる教育機会均等を叫ばれております今日でありますので、先ほど大臣の御答弁がございましたが、特に僻地の問題につきまして御考慮をいただきたいと思うのでありますが、これにつきまして一つ御所見をいただきたいと思います。
  114. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 僻地の施設を初めとする教育充実、あるいは特殊教育の充実等につきましては、私個人としましても非常な関心は持っておりますが、これとてもなかなか御期待に沿い得ないことを同じように恐縮に思っております。実は僻地の実態も、文部大臣という立場にある私自身も、この目で見なければ実感がわかないと思いまして、機会あるごとにその企てをいたしますが、なかなかほんとうの本格的な僻地というようなものも妙な言い方ですが、ほんとうの山間僻地あるいは離れ小島の施設を見ますのには、少なくとも五日間なり一週間なりを要するところがあるようでございまして、そういう気持がありながら実態を私自身この目で認識いたしておりませんが、しかし半日くらいで行ける程度は二、三カ所見せてもらいましたし、実感をもってある程度は理解しておるつもりでございます。私一個の問題でなしに、文部省全体として、僻地教育振興のために年々努力はしておりますものの、成果が上がらないことを遺憾に思うことは今申し上げた通りでありまして、今後さらに急速度に僻地学校の整備のために、文部省として努力し続けねばならない、かように思っております。
  115. 玉置一徳

    玉置分科員 この点につきましては事務当局の方でも、十分補正係数の改定等に御配慮をいただきたいと思います。  次に、同じくこれに関連いたしまして、災害復旧並びに老朽校舎の基準坪数にございますが、同じように基準坪数が非常に低うございます。窮屈でございますので、幸い老朽校舎と御認定をいただいたり、あるいは災害復旧の対象にお認めをいただきましても、それは基準坪数だけにとどまりまして、実際問題としていずれも地方公共団体におきましては、既存のものが認められた分だけはやむを得ずやらざるを得ないのが現状でございます。というようなわけで、地方財政窮迫のおりから、なお災害等をこうおりまして、窮乏のどん底におきまして、こういうものがまるまる設置者の負担でもって復旧をやらざるを得ないというのが現状でございます。従って、いずれも先ほど申しました基準坪数の引き上げ改定につきましては根本的な問題でございますので、大臣仰せ通り御協力をいただきますことにいたしまして、この災害復旧と老朽校舎の対象になっている分だけは、せめて基準坪数の拡張解釈をして、既存の分までは補助の対象にする、あるいはもう最低譲りまして、せめて起債の対象にだけなりと、既存の分のはずれた分だけは認めてあげるというような措置を、自治省とも御相談をいただきまして、そういう方に踏み切るように御努力をいただきたいと思うのですが、文部省のお考え一つお聞かせいただきたいと思います。
  116. 杉江清

    ○杉江政府委員 災害、老朽等につきまして、現行法認められている各種の特認その他の措置等によりまして、できるだけ実情に沿うように努力しているつもりでございますが、根本は今基準坪数等の制約があって、なかなか思う通りに、十分な御満足がいただけるほどの措置が困難な場合もあるわけでございます。ただいま御要望のあった点、今後十分努力いたしたいと考えております。
  117. 玉置一徳

    玉置分科員 なおこれに関連いたしまして、小学校並びに中学校の用地費及び小学校の屋体につきましての国庫補助一つやっていただきたい、こう思うのです。と申しますのは、小学校におきましても昨今体育の向上というような見地から、屋体の必要は痛感されておるところでありますし、なお用地の問題でありますが、土地代が昨今非常に上がって参りましたので、建築全体に占める用地費の割合が、従来と違って非常な部分を占めて参ります。これに財政措置をせない以上、上に建ちます学校施設の補助をいたしましても、実際問題として非常に補助率の低いものになってしまうわけであります。こういうものにつきましても一つ十分な御配慮をいただきたいと思いますが、これにつきまして文部省の御所見をいただきたい。
  118. 杉江清

    ○杉江政府委員 小学校の屋内運動場につきましては、御承知の通り現在戦災復…分についてのみ認められてあるわけでございまして、本年度予算には九千三百万円が計上されております。私どももちろんこのような事態に放置しておくわけにはいかない。これを全体の整備計画を立てて、今後その充実に努力する必要があると考えております。今後十分努力いたしたいと考えます。
  119. 玉置一徳

    玉置分科員 ぜひともよろしくお願いを申し上げたいと思います。  次に基準単価の引き上げでありますが、これはあらゆる機会にしばしば言われておるところでありまして、さきに若干の引き上げをいただきまして、ずいぶんと助かってはおるのでありますけれども、なお現在コンクリートで六万三千円の坪基準単価のものが、実際は七万円以上要るのではないか。こういうような意味で、先ほど来申しました基準坪数と同じような意味で、せっかくいただいております補助の対象が、あるいは補助率が、これでもって実際問題としては薄められる結果になって、その差額は全部設置者の負担になっておるような現状でございます。全国市町村長からも文部省当局に対して非常な要望のある問題でございますので、なるべく近い機会を見出されまして、実際単価に見合うような基準単価を御設定いただくようにお願いを申し上げたいと思うのですが、文部省当局の御所見をいただきたいと思います。
  120. 杉江清

    ○杉江政府委員 単価の問題につきましても、年々文部省といたしまして努力はして参っており、またある程度の引き上げが実現されておるわけでございますが、なお不十分の状態だと考えます。今後十分努力いたしたいと思います。
  121. 玉置一徳

    玉置分科員 そこでただいままで申し上げました、またお答えをいただきました問題を一応まとめまして、これはいずれも義務教育学校施設の国庫負担法と、先ほど申しました通り十年前の昭和二十八年に制定されたものであります。当時はそういう要望がございましたけれども、それにおこたえいただいたわけでありますが、その後経済界の成長に伴います時代の要請とか、いろいろな面で実際に即応せない部面が多うございまして、地方公共団体の財政に大きな負担をかけ、あるいはPTAに御迷惑をおかけしておるような現状でございますので、この際先ほど申しました教科書の無償配付と同様な意味におきまして、義務教育施設は国でめんどうを見るのが建前であるという精神に基づきまして、この国庫負担法を現状に即して再検討されまして、これを近い将来に改定される御意思があるかどうか、そうして先ほどの精神に合うようなものにお直しをいただくようなお考えがあるかどうか、一つ大臣のお考えをいただきたい。
  122. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 仰せのような考え、ございます。ただ実際問題としては容易ならざることだとは考えます。それにしましても努力すべき対象であることは当然のことでございますから、懸命の努力をいたします。ことに中学の生徒急増が三十六年度で終わりまして、今度はそれが今後三年間は高等学校に移っていきますので、そのための対策等もありましたために、三十七年度には実績を顕著には残し得ておりませんけれども、義務教育という立場から見ますると、ある程度の気持の上でのゆとりが大蔵当局としても出てきておる時期でもございますから、まさに仰せのようなことを考える時期が一応到来しているとも言えないことはございませんので、努力いたしたいと思います。
  123. 玉置一徳

    玉置分科員 全国の府県知事会並びに町村長会の切なるこれは要望でございますので、ちょうどチャンス到来というような感じも私もいたしますので、ぜひとも今から一つ御検討いただきまして、来年度あたりから実施ができるような運びにやっていただきたいと思います。  そこで次は小中分校義務教育施設の永久構造の比率でございますが、昨年の災害対策委員会におきましても、小中学校等の義務教育施設並びに病院等の施設はぜひとも、一朝有事の場合の緊急避難の場所として、永久構造物にせなければならぬというのが、すべての委員諸君のお考えであり、関係大臣その他責任者からもそういうようにぜひともしたいと思いますという御答弁をいただいておったのであります。ことしはともかく永久構造物並びに木造の建物が、六割・四割に進歩したことは事実でございまして、これもまた喜ばしいことでございますけれども、ぜひとも希望の向きは全部永久構造物にしてあげるということにせなければ、実際問題としては木造の割当をいただきながら、隣近所の町村がもう学校は全部コンクリートになって参りますので、自分のところだけがコンクリートにせないというわけに町村長の立場ではできません。従って、それはみな持ち出しでもってコンクリートをやっておるというのが、ほぼ実態に近いのではないか、かように思いますので、ことしはことしといたしましても、運営の面で何らかの措置がとられたらやっていただきたいと思いますし、ぜひとも来年からは大蔵省を口説かれまして、ここで踏み切っていただきたいと思いますが、大臣の御所見を一つ承りたいと思います。
  124. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 実は三十七年度予算案から、少なくとも新設の学校あるいは老朽校舎の改築等にあたりましては、全部鉄筋鉄骨百パーセントを目ざしてスタートしましたが、経過は一割比率向上にとどまりました。しかしながら大体大蔵省のものの考え方も、これこそ長い目で見て永久構造物にした方がより合理的であり、財政面から見ましても合理的であり、国の財政からいって節約ができるという考えも成り立つ、そういう気持がだいぶ出てきたように観測いたします。三十八年度の予算を目ざして、今申し上げました範囲においては少なくとも百パーセントに持っていきたい、かように文部省として考えておるのであります。もっとも六割・四割という比率になりますと、ほとんど大半は永久構造物に実施できょうかと思います。今一息のところでございますから、努力を重ねたいと思います。
  125. 玉置一徳

    玉置分科員 せっかくの御努力をお願い申し上げたいと思います。  次に少し変わりまして産業教育振興法によります特別教室の設備充実でございますが、政府は時代の要請にこたえられまして、中学校の産業教育を、木工一を主にしました従来のものから、電気あるいは金属加工と申しますか、に重点を移行されましたのは、昭和三十三年からだと思います。経過措置としてだんだん充実されて参りまして、昭和三十七年度をもって大体これを完了する。このたび、その予算として五億八千六百五万円の予算措置をしておいでになりました。まことにけっこうなことだと思うのでありますが、実はこの内容を見ますと、国庫補助一校当たり十五万円、事業費にしまして金額三十万円でございまして、私は先般町村長会に参りましてある町長と話をしておったのですが、実はそういうように教科内容が変わると、実際は何もできていない。百万ないし二百万要るそうで、弱っておりますということをおっしゃっておりましたが、今日の予算は一応これで本年度で終わるそうでありますので、それはそれといたしまして、実際に要ると思われる百万、あるいは校長会が申しておいでになります二百万、これをことしを一応終了された後、実態調査をやっていただきまして、向こう三カ年間ほどでもって実際に間に合うような設備に充実するのにはどれほどの設備が要るか、それについてはどれだけの予算措置をせなければならないかというような一つ再検討していただきまして、さらに産業教育振興のために御努力をお願いをいたしたいと思うのでございますが、これにつきまして文部当局のお考え一つお述べいただきたいと思います。
  126. 福田繁

    福田(繁)政府委員 お述べになりましたように、中学校の技術家庭科は新しく発足したわけでございまして、施設面につきましても従来は施設の補助ができなかったような事情でございます。従いましてとりあえず技術家庭科の教育ができます最小限度と申しますか、そういう趣旨で一校当たり事業費として三十万程度を各学校に全部補助する、こういうような考え方でもって三カ年計画で参ったわけでございます。従いましてこの技術家庭科の教育が十分できますには、それは考え方によりますと非常に金がかかる場合もあると思いますが、より効率的にこれをどういう工合に設備を充実していったらいいかというような問題も確かにございます。それから個々の学校についての設備の充実状況というのは、的確に文部省としてはまだ把握できてない状況でございます。一応最低限度の設備補助によりましてそれを充実した暁に、三十八年度以降の問題につきましてはおっしゃるように実態調査を十分やりまして、そうして今後の技術家庭科等の設備について、どの程度やれば完全な教育が行なわれるかということを基礎にいたしまして、今後の措置をきめたい、かように考えておるわけであります。
  127. 玉置一徳

    玉置分科員 次に、通学費の補助についてでございます。学校教育の充実と申しますか、振興と申しますか、それと地方公共団体の財政を健全ならしめよう、こういう二つの目的で文部省におかれましても自治省におかれましても、学校の統廃合を奨励されておったのでありますが、だんだんと統合の実が上がりつつありますのはまことに御同慶にたえないところでございます。それに伴いまして、地方自治体の通学費に対する補助が非常にふえてきておるのであります。御承知の通り統廃合をやりますときには、必ずつぶす方の地区の方には通学費を半分補助するとか、何らかの交換条件がないと実際は行なえません。私も京都府の町村合併の委員長を長くやって参りましたが、なかなか実際問題としてむずかしい問題であります。文部省におかれましては、昭和三十六年からスクール・バスというものを二分の一補助、二百万円限度というものでお始めいただきまして、喜んでおるのでありますが、ただ問題はそれの運営費と申しますか、油代と申しますか、非常に少ない。これをもう少し、二分の一くらいになるように一つ増額を将来していただきたい、かように思いますのと、もう一つ私が申し上げようと思いますのは、実は中学校が帯のようにまっすぐに一本の谷間におるような学校ですと、片方から順番に拾っていくという運行は可能でありますけれども、通常は中央に位して中学校を統合するようなのがほとんどでありまして、従って既設の鉄道、電車、バス等を利用して通っておいでになります。それに対して、町村が半額定期の補助をするというような実態が非常に多いのであります。私の方の京都府の船井郡の日吉町でこの額が——きのうも電話で地方課に尋ねたのであります。私は二百万だと思っておりましたが、三百万だと申しております。それから同じく地方課で聞きましたが、北桑田郡の私の方の美山町というのと京北町がいずれも三百万、船井郡の同じく八木町、それから園部町がその次に位するというような、多額の地方負担をいたしておりますにつきましては、現在文部省のスクール・バス制度並びに自治省にも何ら補助措置はないのでございます。こういう問題は、今後とも統廃合を行ないます上につきましての非常なガンと申しますか、壁と申しますか、障害になると思いますので、これにつきましても実態を御調査をいただきまして、一つ十分な配慮をいただきたい。これは文部省だけにお願い申し上げるのはどうかと思うので、自治省にも同様お願いを申し上げたいと思うのですが、よろしくお願いを申し上げます。文部省が、四月二十五日到着の予定で回答をお求めいただいておるようにお伺いいたしますが、それもスクール・バスと委託経営会社運行のバスでありまして、私が今言っておりますような非常に実態の多いものにつきましては、調査の対象に載っておりません。どうぞそういうことも御勘案の上、十分な御配慮をいただきたいと思いますが、文部省当局の御見解を一つお聞かせいただきたいと思います。
  128. 福田繁

    福田(繁)政府委員 ただいまの学校統合の問題でありますが、小中学校学校統合の場合に、私ども適正な距離と申しますのは、小学校の場合は大体四キロ、中学校の場合は六キロ以上というのが、適正なものとして指導しているわけでございます。現実の場合は、小中学校の統合が、いろいろの事情でそれ以上の特別長い通学距離というものが、往々にしてあるのでございます。従ってそういった場合、通学費の問題が付随して起こって参るわけでございます。私どもが指導しております統合の通学基準によります以内であれば問題はございませんが、そうでない場合に起こって参ります通学費の問題としては、貧困家庭の児童、生徒に対しましては、御承知のように二分の一の通学費の補助をいたしております。それから今おっしゃいましたように、市町村がバス、あるいはその他のボートもございますが、バス、ボート等で児童、生徒を通学させるという場合につきましては、その財源措置としては、補助ではございませんが、交付税でこれを措置するという方法以外にはなかろうかと思います。従って、自治省と相談をいたしまして、そういう運営費、あるいは年間バスを借り上げてやるというような場合につきましては、特別交付税でこれを措置するような話し合いをいたしておりますので、そういうようになるのではないかと考えております。来年度の問題についても、町村が困らないように十分措置をいたしたいと思います。
  129. 玉置一徳

    玉置分科員 自治省にも、該当の府県の町村長と一緒に、これには熱を入れたいと思いますので、ぜひとも御協力をいただきたい、かように思います。  次に、定時制教育の振興でございますが、働きながら学ぶ方々の教育の振興には、格別の御配慮をいただいておるのでありますが、ことに夜間定時制に通学する諸君につきましては、昼間一人前の勤労をしてから、疲れたからだで教場に向かうわけであります。これの小夜食につきまして、昨年はミルク、ことしはそれにパンをつけていただきまして、われわれ関係者として非常に喜んでおるのでありますけれども、二食を持って職場へ通うということはできません。従って、夕食なしでかけつける場合が多いのじゃないか、かように思いますので、これをさらに将来一つ発展させていただきまして、小夜食が夕食の実を備えるように、ぜひとも御努力をいただきたいと思うのであります。  なお、照明設備のさらに一そうの充実とか、あるいは長く叫ばれておりました定時制教育に専任の校長がなくて、全日制の校長さんでもってついでに管理しろということでは、これの教育のほんとうの実が上がらぬのじゃないか。こういう校長さん並びに教職員の方々の専任制ということにつきましても、さらに一段の御努力をお願い申し上げたいのですが、先ほどの小夜食を給食まで拡充するという問題と、専任校長、専任教職員の問題につきまして、文部省当局の御所見をいただきたい、かように思います。
  130. 前田充明

    前田(充)政府委員 小夜食の件でございますが、ことしより来年は相当増額されまして、来年度につきましては、一人当たりパンが六十五グラム、ミルクが三十三グラム、添加物が八グラムということで、補助をいたすわけでございますが、さらにこの食事内容を一食と同じようにということでございますが、実情に応じて量をふやすように、だんだん努力いたしたいと思っております。
  131. 福田繁

    福田(繁)政府委員 ただいま御質問のありました、たとえば夜間定時制の照明設備の問題、こういう点につきましても、教育の十分な効果を上げるためには非常に必要なことでございますので、文部省としては照明設備の整備、あるいはおっしゃいましたような校長の問題は、これは将来の研究問題でもございますが、一つ十分配慮して研究して参りたいと存じます。
  132. 玉置一徳

    玉置分科員 学校給食の問題でございますが、先ほど滝井先生から詳しく御質問がございましたので、私は簡単に三点についてお答えいただきたいと思います。  児童生徒の体位の向上、体質の改善、ひいては国民の体質改善のために非常に役立っている、なお教育上も非常な効果が上がっているというので、実施後日なお浅いにもかかわらず、先ほどのお答えのように、小学校は六二%、中学校は九%あるいは一三%ともいわれますが、これからこれを全国的に伸ばしていくためには、きょうの午前中のお答えにもございました通り、地方公共団体の財政の非常に弱い僻村の地で、こういう必要がなおさら感ぜられるところが多いと思うのであります。こういう僻村の、いまだ普及されておらない残りの小学校三〇%、それから中学校の大部分について普及するためは、設備の補助率をさらに考慮する必要があるのではないかというように思いますが、これについてお答え願いたいと思います。  それから栄養士の問題でありますが、ちょっと滝井先生からもお話がありましたが、この設備が、多数が共同してやる食事でありますので、一つ間違えば大問題を招来いたします。栄養士が必ずついているのが実態でございますが、全部設置者負担もしくは父兄負担でやっておりますが、これも先ほど申しました農山僻地では、その自治体が財政上非常に弱いのでございまして、こういう点につきまして、七回大蔵省に言うたけれどもだめだったという話でありますが、これだけ実績を認められた問題でございますので、一つ来年こそ大蔵省に負けぬという意気込みでおやりいただきたいと思います。  最後に第三点といたしまして、内容の充実でありますが、小麦粉の問題は皆さんの御努力によりまして、そのまま引き続いて一円の補助をいただくことができて非常に富んでおるのでありますが、従来放出物資をおやめになったり、あるいは牛乳が農村行政上余ってきたりというようなことで、そのつどいろいろ内容の変化があったわけであります。ここまで大きな組織として、あるいは施設として完備して参りました日本の学童給食という問題は、いよいよ内容を充実し、それが時のいろいろな農村行政その他によって変えられないような、安定したものにすべき段階にきたのじゃないか。これにつきまして何らかの非常に強い法的措置、それに伴って予算がいつも計上できるというようなところまで持っていかねばならない時期だと思います。前の二項につきましては文部省当局、最後の問題につきましては大臣の御所見を伺いたいと思います。
  133. 前田充明

    前田(充)政府委員 最初の施設の件でございますが、現在ことに小学校において残っている場所はだんだん郡部の方面に移って、特に僻地等の場所が多いわけでありますが、そういうところの施設の補助率を上げるということでございます。これは従来二分の一ということでやって参りました。現在もそれでやっております。来年度千百一校分を考えておるわけでございますが、急に補助率を変えるということになりますと、従来との関係もございまして、相当検討を要するのではないかと思うのでございます。ただ単価の問題、なお小規模学校において、現在四坪当たりでやっておるわけでございますが、一体この辺が適当であるかというような問題等について、実質的な面においてだんだん考慮いたしたいというふうに考えるのでございます。  次に栄養士の設置の問題でございますが、これはおっしゃる通り、従来から文部省といたしまして計画をしながら考えておるわけでございます。御説の通り給食管理者があるとないとでは、全体の栄養の問題はもちろんのことでございますが、経済的にも安く買える、同じ値段で栄養がよく、おいしくできるということになるわけでございますので、今後ぜひ努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  134. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 御案内の通り学校給食始まって十年だと思いますが、十年間の体験に顧みまして、かつまた給食の持つ教育的な、あるいは社会的な価値もおのずから高く評価されておる現実に立ちまして、制度的にももっとしっかりしたものに改善したらどうだという御意向であったと思いますが、私も同感でございます。一円給食を維持することが精一ぱいだということでなしに、一円給食補助そのものもやり方として検討を要すると思って、実は給食関係の委員会を設置いたしまして検討願ったのでございますが、安上がりで手っ取り早く、とにかく十年の経験に基づいて効果のある他の方法というのがなかなか急に見つかりませんで、一円給食はそのままの姿でいるということになったのは、今後にわたってもっと検討を要するとも思います。同時に、ミルクを給することによって栄養的な補強をしたいという構想でございましたが、不幸にしてこれは成立いたしませんので、遺憾に思っております。そういうことを含めて、給食の内容、制度等をもっと前向き姿勢で検討を加えまして、これは農林省の農業政策面との関連もあろうかと思いますが、そういうことにつきましてももっと突っ込んだ、安定した相談をいたしながら、何とかお説のような方向づけをする必要ありと私も思います。努力したいと思います。
  135. 玉置一徳

    玉置分科員 最後にお願いしたいのですが、プールの設備補助でございます。国民の体位の向上という見地から、生徒を夏季の水の危険から守るために、学校にプールを作ってくれというのがPTAの切なる願いでございます。これにつきまして、去年は四十三カ所、今年は八十五カ所のプール設備の補助予算措置をされたのでありますが、全国の中等学校の数から勘定しましてその七割か八割がまだだとすれば、これは百年かかる大事業だと思います。これにつきましてお伺いしたいのですが、国民健康保険もしくは国民年金の還付金で一部やっている町村もございますが、今後これとの調整をどういうようにおやりになるか。それからどのくらいの速度でやっていくか。私は、補助を少なくして、今申しましたような金もしくは起債でもって、五年ないし十年くらいで償還するという考え方の方が、設置者としてかえってありがたいのではないかと思う。と申しますのは、隣にできますものですから、府県に割り当てがちょびっとしか来なくてもやらざるを得ないというところに追い込まれまして、事実は父兄もしくは地元負担でもって、全部まかなわざるを得ないところに追いやられつつあるのではないか、こういうようにも考えるのですが、これにつきましての御所見をお伺いしたい。  それからもう一つ、社会教育関係であります。私もこのPTA会長を長くやらしていただきまして、社会教育ということにつきましても若干経験をしているわけでありますが、これは補助金だけの補助ではなくて、それの指導者の定員をおとりいただくことが大事である。これはどこの府県知事に申しましてもなかなかむずかしいのでございます。文部省のことですから万々お間違いはないと思いますけれども、一つ十分御考慮をいただきたい。  最後にもう一つ高等学校急増対策につきましては、皆さんからいろいろ御質問があったと思いますので省略いたしますが、用地費の問題がまたばかにならないではないか。一万坪で二千万円、三千万円というような金が要ります。公募債を認めるような認めぬような話がもやもやあるような感じがするのですが、自治省との関係はどういうことになっておりますか、もしもわかっておればお話しをいただきたい。右いずれも文部省御当局から御答弁いただければ幸いであります。
  136. 前田充明

    前田(充)政府委員 プールの件を最初に申し上げます。昨年度五千万円、今年度一億二十万円、前年度は四十三カ所でございまして、本年度は大体八十五カ所程度できる見込みでございます。今お話の通り全国から申しますと微々たる数でございますので、この予算については今後とももちろん努力をいたさなければならないのでございます。なおお話のプールに対する起債のことでございますが、厚生年金の還元融資が本年から特別地方債として取り扱われるようになりまして、従来厚生福祉施設のみでございましたものが、プールにも入るようになりまして、本年は四十八億のうち体育施設十六億ということになっておりまして、そのうちプール二十五カ所ということになっておるのでございますが、関係当局とも十分連絡いたしまして、全体の計画にうまく合うようにやっていくことに努力いたしたいと思っております。
  137. 福田繁

    福田(繁)政府委員 ただいまの社会教育の問題でございますが、これもおっしゃるように、指導者の養成ということは非常に大事な点でございます。従いまして、文部省としては、社会教育主事を市町村まで設置するというような建前にしまして、計画的にやっておるわけでございますが、来年度の交付税におきましても、人口一万から一万五千の町村につきまして、八百十四名の社会教育主事を設置するような財政計画を立てているわけでございます。そういう年次計画に基づいて今後指導者を充実していきたい、こういうように考えております。
  138. 杉江清

    ○杉江政府委員 用地費につきましては、昨日も自治省の答弁があったのでありますが、公募債を認めるということになりました。
  139. 中村幸八

    中村主査 次は長谷川保君。
  140. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 昨日受田委員から質問があったようでありますが、今回の高専の入試問題のミスの問題であります。このミスの問題を、文部省は新しくまた視学官など専門家を加えて検討するように、そういう御指示をしたというので、私は一応了としたいと思ったのでありますけれども、今朝の新聞を見まして、少しく憤慨をせざるを得ないのであります。それでこの問題に少しく触れて、文部当局の御意見を伺い、また同時に御反省を促したいと思うのであります。御承知のように入学試験、ことに大学入学試験というようなものは、青年諸君にとりましては生涯の方向を、それによってどうなるか決するというような、非常に重大な機会であります。従いまして、子供を持っております父兄は、どちらでも御承知のことでありますけれども、これは大臣御自身も御承知のことと思いますけれども、そのときの青年諸君、学生諸君の態度というものは、真剣そのものであります。多くの場合、親たちも相当真剣になるのでありますけれども、こういうような真剣そのものであり、しかもそれによっては彼らの生涯の方向を変えるというようなチャンスでございますから、従って試験場内の空気というものは、もうお互いそういう立場に立った者としましてよくわかりますことは、緊張そのものである。そういうようなときに、この入試問題のミスがあるというようなことは、この受験生諸君にとりましては心外の限りだと思うんです。−つまり試験をいたします側、今回の場合では文部省、その代表であります試験官、文部省側の態度が慎重を欠くということになれば、受験生諸君にすればいわばいかにも侮辱されたというような感じを持つだろうと思うのであります。今回の高専の試験の問題は、新聞の報道するところによると、きわめて驚くべきミスをいたしておる。これをミスプリントだから問題は簡単だというようなことを申すことは、ふまじめきわまると思うのであります。この新聞の報道が真実であるかどうか存じませんけれども、今朝の新聞に出ておりました文部省側の態度、「二十六日文部省は採点の仕方をどうするかの検討を進めたが結論が出ず、二十七日再び専門家をまじえて検討することになった。」ということでありますが、「二十六日は初等中等教育局と大学学術局の関係者が集まり、誤りの多くは単純なミスプリントなので解答には「大した影響はない」」こういうように見ていると、これは朝日新聞でありますけれども、報道をいたしております。これがもしこの通り考え方だとすれば、私は慎重を欠くものはなはだしいと思うのであります。一体今回の試験問題は、まず第一に一つの間違いでありまするグラフの問題、これは新聞も指摘しておりますけれども、鉱業の「鉱」という字を使っております。その内容は、綿布の生産高、自動車の生産高、商船の進水高がその中に入っている。大よそ試験問題を出しますのに、この一事を見ただけでもいかに軽率なことをしておるかということがわかると思うのであります。また第二の問題でありますところのものを見ましても、実に軽率そのものだと思う。こういう一つの問題で幾つかの間違いが出てきている。今のグラフの問題でも、線を引くべきところを引いてない、こういう非常に軽率な間違いをしておる。このことが真剣そのもの受験生諸君にどんな心理的影響を与えるか。試験場の中の空気を一つ想像いたしましても、ひょっとこの問題を見た、何だか変だなというので頭が混乱をする。この問題は、単にミスプリントだから大した影響はないなんという問題ではなくて、その彼らに与えた心理的な混乱、困惑というものから参ります、受験生諸君の能力に対するマイナスの面は決して小さくないと思うのであります。どうしてこんな軽率な試験問題を出したのであるか、まずこのことを承りたい。どういう事情でこんな軽率なことができたのか、昨日あるいは受田君が聞いておるかもしれませんけれども、次の質問への順序として、その事情を承りたい。
  141. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 昨日もお答え申し上げました通り、まずもって、長谷川さんも御指摘のごとく、数万人に及ぶ全国の高等専門学校受験生のその真剣な純情の前に申しわけなく思います。ほんとうに肝に銘じて、昨日の御質問ときょうの長谷川さんの御質問を通じて、しかられておるような気持がいたします。もう取り返しのつかない今日の段階ではそのこと自身はどうしようもございませんから、かんべんしていただきたいと思っております。その事情は、高専の予算の政府としての案がきまりました後に問題に着手しなければ申しわけないだろうという事務当局の配慮から、問題についてスタートしましたのがそういう時期でございまして、慎重を期すれば期するほど特別に高等専門学校用の試験問題を作成するのに時間的に余裕がないということからいたしまして、電波学校と商船学校の問題につきまして時間をかけて検討しました一つの案がございましたので、それはひとしく、程度からいえば中学卒業程度でございますし、技術系統の学校入学試験用でございますから、それを高等専門学校にもいわば流用する形で試験問題として取り上げたということでございますので、これは毎年やっておりましたやり方で、慎重を期して準備をいたしたことも間違いございませんが、不幸にして、印刷されたものを校正します場合に、校正に粗漏がありましたために、問題そのものには欠陥がございませんでしたが、御指摘のようなところがミスプリントになった。経過はそういうことでございますけれども、ミスプリントだから軽い、大した影響なしと断定することは間違いであることは御指摘の通りだと思います。あくまでも試験場における純真な、目の色まで変わっておるかもしれないところの受験生数万を前にして、軽々にもそんなことをもし言ったとすれば、これまた申しわけないことで、そういうことであるべからざるものと私は考えます。そういう気持において事務当局も同じように恐縮千万に存じておりますが、新聞記事にそういうことが書かれましたことは、そうと受け取れるだれかの発言があったかとも推察されますので、うそにもそんなことを言わないように、また心の中でもそんなことを思ってはいけないくらいの厳粛な問題と私は考えます。今後に対しまして、事態を最も納得のいく——きずものであることはいたし方ありませんけれども、それはかんべんしていただいて、その前提に立って最も合理的な解決の仕方を発見することこそが、今私どもがなすべきことだ、こう考えまして、昨日もお答え申し上げましたように事務当局に指示をいたしたような次第でございます。
  142. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 数年前からすでに大学の入試の問題、いろいろな問題が起こりました。御承知の通りであります。ことに今年の高専のでは、試験問題が佐世保かどこかで一部なくなってしまったというようなこともあり、これは実にきわめて遺憾なことであります。昨年も九州大学等で問題の漏洩のようなことがあり、文部省当局でも厳重な注意をせられたようでありましたけれども、こういうようなときに、ことに文部省自身が責任を持ってなさいますところの、こういう高専の試験にこういうようなことができたということは非常に遺憾しごくだと思うのでありますけれども、大臣も非常に責任を感じておられるようでありますから、一応私も大臣の気持は了といたしますが、しかし今朝の新聞を見ますと、東京教育大学の小林教授談として「いくら責任を自覚しても、人間だから間違いはある。」これもおそらく、小林教授がこういう言葉をほんとうに吐いたとすれば、これはやめてもらわなければならぬ。このような者については文部省の直轄の学校の教授なんてやってもらう筋のものではない。こういう乱暴きわまる、幾ら責任を自覚しても人間だから入学試験問題に間違いがあるだろう、こういうことは言うべきでない。こういう気持というものは不届きだということを、この言葉を見て私は非常に憤慨をした。  またさらに同じく新聞が書いておるところによりますと、出題者である各大学側言い分という中に「問題作成から採点まで、多くの時間をそれに注ぎ、苦労をいくら積んでも、国立大学の場合わずか二千円ほどの手当が支払われるだけだ。」こういう言葉があるのであります。これも新聞記者にそういうことを、だれが直接そういうことをおっしゃったのかどうか、それを記事としたのかどうかは存じませんけれども、しかし、もしそういうようなことであるとすれば、これまた確かに不届ききわまることだと思う。こういうような態度でやられたのではたまったものではないと思う。道徳教育もくそもあったものではないと思います。聞くところによりますと、先ほど青山学院の試験問題を作ることについて、よそで聞いたのでありますけれども、試験を終わりますと一年間、すぐに来年の問題はどういう問題を出すかということを非常に慎重に、試験を担当いたします人々が研究をするということであります。私はそれぐらいの態度があってしかるべきものだ、学生諸君のこの真剣さと、また彼らの人生に対します影響の重大さということを考えますと、それくらいの慎重さはあってしかるべきだと思うのであります。  まず私が伺いたいのは、今まで申し上げました第二の問題であります。国立大学の場合に幾ら一生懸命に苦労して試験問題を作っても、二千円しか手当が出ないんだから、こういう言い分、これは一体事実そういうことなんでしょうか。この試験問題を作りますにはどういうような経過をとって作り、そしてどういうような、今言ったような経理の状態になっているのか、二千円しか出さぬ、幾ら苦労して一年かかってやっても二千円しか出さぬというようなことなのかどうか。入学試験につきましての会計の問題は一体どういうようになっているのか。
  143. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 入学試験の採点に関する問題でございますが、国立大学におきましては、これは大学の教官が採点に当たるわけでございますから、これは超過勤務という形でそれに対する対価を支払っておるわけでございます。今回の高専の場合でございますが、これは同等専門学校自身がいま設置されていないというような関係がございまして、従いまして高等専門学校の本来の職員がいない。そこでそれ以外から採点者を求めなければならないわけでございます。その者に対しましては採点謝金ということで、流用等で約六十四万円を計上いたしております。金額でございますが、これは謝金の通常の単価といたしまして一人一日千五百円を計上いたしております。
  144. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 文部省でやっていらっしゃいます大学受験料というのは年間幾ら入るのか。受験料、授業料収入二十二億円というのが予算書にございますけれども、そのうち文部省関係受験料収入は全部で年間幾らあるのか。どこへ載っているのかよくわからない。この中に載っておるのだろうね。明細がわからぬ。
  145. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 それは予算書のもちろん歳入の事項に上がっておるわけでございますが、明細を申し上げますと、歳入のうちの諸収入の中に授業料及び入学検定料という事項がございまして、その額は三十七年度におきましては約二十二億円でございます。そのうち入学料及び検定料でございますが、これは約三億六千万円余になっております。
  146. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 それは入試のものですか。
  147. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 そうでございます。これは入学試験料と同時に入学料も含めた額でございます。
  148. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 試験料は幾らですか。
  149. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 三十七年度の数字がちょっと見当たらないのでございますが、三十六年度の数字を申し上げますと、約二億六千五百万円でございます。三十七年度の数字も大体この数字に近いかと思います。
  150. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 そして今の試験問題を作ったりあるいは試験官、採点者等に払います費用等と、入学試験そのものに必要といたしまする支出は幾らでございますか。それが私これをめくってみたけれども、そういうことが書いてないので、どこかに入っておると思いますが、どこに入っていますか、そしてそれは幾らと見積もってありますか。
  151. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 実は予算書の整理ということになりますと、これは費目別の整理が行なわれるわけでございますが、国立学校の方の、たとえば超過勤務手当の項に若干、それから入学試験のための……
  152. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 それは幾らあるか、分科会だからほんとうはそういう積算の基礎を全部やらなければいかぬと思うのだ。そうしないと、何のために金を出しているかわからぬということになる。
  153. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 費目別の金額は調べてお答えをしたいと思います。
  154. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 全部大ざっぱでいいですから……。
  155. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 内容的には入学試験経費といたしまして一億四千七百万円を予定いたしております。その中の費目の分類でございますが、これは超過勤務手当、職員旅費、それから答案等の印刷費の工費、そういう類別になっております。それぞれの金額は調査してお答えします。
  156. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 あとでけっこうです。大臣ちょっとお留守だったからお聞きにならなかったかもしれませんが、昭和三十七年度はわからぬ。三十六年度の入学試験料というものが二億六千五百万円、それから試験費用が一億四千七百万円だそうです。そうしますと、このことに関する限り非常にたくさんの、約一億二千万円の収入超過があるわけです。でございますから、これは本来は、国と学校でやるべきものは、試験に必要なだけの実費をとるというのが当然だと思うのです。それで金もうけをしようなどというけちなことを考える必要はない、私はそういうふうに思います。こういう収入超過があるとすれば、先ほどお話しのような、幾らやっても二千円しかもらえぬの、だというような、こういうことはほんとうかうそか知りませんけれども、こういうような幾ら苦労して試験問題を作ったとしても二千円しかもらえないのだというような言葉というものは、どこの大学教授から出たか知りませんけれども、こういうような言葉というものは出てきてはならないし、出させる必要はない、出させてはならない。もっと真剣そのものにこの問題と取り組んであげる。およそこのような中学校の生徒でもわかるようなミスを、文部省で出します試験問題に印刷してって、幾ら校正しなかったにいたしましても、したかしないか知りませんけれども、全然しないわけではありますまい。それにしてもこのようなばからしいミスというものが出てきて、そして受験生諸君を困惑させるというようなことをしてはならぬと思うのです。だから、これだけの収入があるとすれば、当然これで金もうけするというようなけちなことを考えるのではなしに、もっと、ほかの考えでおやりになったか知りませんけれども、当然出すべきものは出すべきではないか。当然出すべきものは出して、もっと慎重な、そしてまことに真剣そのものの青年学生諸君のその態度に対して、これからの人生をきめていくというような重大な機会でありますから、そういうような重大な機会に対するだけの態度というものが文部省になければならないじゃないか。こういう態度が見えないというところに、何だか私どもは悪い意味での官僚臭というものをここに感ずるような気がするのであります。この問題についてどういうように今後変えていかれるのか。すでに御指示をなさったということにつきましては、これがきょうの問題ではなくて、数年間入学試験の問題はいろいろ国会でも論議され、問題となってきたのでありますから、すでに文部当局、大臣におかれましても、どういうように変えるかというお気持があると思いますが、どういうように今後なさろうとするか、お答えがありますれば承りたい。
  157. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 ただいま長谷川分科員から歳入超過というお話があったわけでありますが、受験料の収入と、私どもが歳出に入学試験経費として計上いたしております部分だけを比較いたしますと、歳入超過といったような形になるわけでございますが、大学におきまして問題の出題、監督、採点に当たります者は、これは大学の本来の職員でございまして、それに対する給与は本来の給与として支払われておるわけであります。また、入学試験に伴いましては、単に答案の印刷費だけではなくて、会場の設備費その他整理の諸経費が要るわけでありますから、そういうものは国立学校の本来の経費として別途積算されておるわけであります。従いまして、そういうものを全体として勘案いたしました場合に、歳入超過にはたしてなるかどうか、その辺は私どもとしても歳入超過にならないと申し上げる材料は今持ち合わせておりませんけれども、先ほどの数字だけからそういう結論を出すことは、必ずしも適当でないのじゃないかという意見を持っております。  それからもう一つ、千五百円ないし二千円というお話でございますが、これは私先ほど採点の謝金の単価を申し上げたわけでございまして、出題につきましては、ただいま問題になっております高等専門学校の問題の作成は文部省で行なったわけでありますから、採点謝金の単価とはかかわりがないということを補足して申し上げておきます。
  158. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 わかりました。今の会計課長のお話はわかりますけれども、しかしそれにしても、この歳入と歳出を見ますと、しいて今のような会場を提供することについて、あるいはこの大学の教授と職員とは別の金で出ている、別の項目で出ているというようなことをおっしゃいますが、先ほど来お話しのように、超過勤務料としてこれは特別出すのだというようなお話もあり、採点料その他について、どうもこの二億六千五百万円と一億四千七百万円と比べますと、これは何と言ったって歳入超過にきまっておりますよ。常識から見ればそんなことはきまっております。だからこういう問題は、時間もありませんし、もう予鈴も鳴りましたから、あまりこれ以上追及しませんけれども、これはやはり文部省として歳入超過にきまっておりますよ。常識から見てきまっておる。だからこういう問題について今回のようなそういう新聞が報じますような、幾ら苦労して試験問題を考えたって二千円しかくれないのだからというと、どこでだれがどう言ったか知りませんけれども、とにかくこういうことを大学側言い分として朝日新聞が伝えておるということにつきましては、やはりここらはもっと根本的に変えて、今回のまことに相済まぬ事件に対する謝罪の実をあぐべきです。そうでなければ学生諸君に相済まぬですよ。それでこの問題について十分今後お考えをいただいて、学生諸君に対する謝罪をしていただきたいと思いますが、謝罪だけで済まないものがある。採点方法をどうするかという問題です。採点方法をどうなさるのか。具体的にこれは高専を受けて、そしてこのミスの問題で困惑をして、心理的な影響を受けてきた諸君にしますれば、この採点方法をどうするかという具体的の問題というものが今さしあたっての問題になってくると思う。どうしてくれるのだ、おれはあのために非常にどぎまぎしてしまってほかの問題に手がつかなかった、こういう諸君もおられると思うのです。だから採点方法をどうなさるのだ。きのうきょういろいろ御相談なさるようでありますが、すでにその方法は何らかの方向が出たのかどうか承りたいし、またどういうようになさるつもりであるか、まだ方向が出ないなら出ないで、どういうふうに相談をしてこれらの学生諸君に対して謝罪の実をあげるかということを、ここで発言してもらいたいと思う。それは全国の高専を受けた学生諸君が聞かんとし、その親たちが心配をして首を長くし、耳をそばだてております。どういう方法をとりますか。
  159. 宮地茂

    ○宮地政府委員 採点の方法につきましては、実は昨日から夜を徹して本日にかけて、専門家等で今検討中でございます。できる限りきょうじゅうぐらいに公正な採点方法考えまして、すみやかに関係者に通知したいと思っております。
  160. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 どうかこれらの点につきましては、先ほど大臣が非常に遺憾の意を表しておられますのでこれ以上追及いたしませんけれども、二度とかかる不祥な事件が起こらないように十分な御注意をいただきたいと思います。  問題がここでほかの文化財等の問題に移りますので、一応切っておいて、本会議散会後に一つ続けさせていただきます。
  161. 中村幸八

    中村主査 本会議散会後再開することとし暫時休憩いたします。    午後一時五十五分休憩      ————◇—————    午後二時三十六分開議
  162. 臼井莊一

    臼井主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  文部省所管に対する質疑を続行いたします。長谷川保君。
  163. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 世界の各国を回りまして、大体その国の文化水準がどこにあるかということを見ますのに、文化財の保護、博物館、美術館等を見れば大体私はその水準がわかると思うのであります。それで世界の国を旅するごとに、私は何よりもまず喜んで美術館や博物館等を拝見をしておるのでありますけれども、わが国の文化財の保護、博物館、美術館等の施設を見ますと、いかにも恥ずかしいという感じがするのであります。おそらくこれだけの力を持っております国でこんな低い水準のところは世界じゅうないと思うのであります。こういうことに対する予算を見ましても、いかにも貧弱だと思うのでありますが、第一に大尉は、こういうような文化財の保護の問題あるいはまた芸術の振興あるいはまた博物館等の政策について、どういうような考えをお持ちになっているか、承りたいのであります。   〔臼井主査代理退席、主査着席〕
  164. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 私も大英博物館を、日本の博物館等との比較を念頭に置きながら見せてもらったのですが、あれだけのものを維持管理、運営していくということは大へんなことだろうと、しろうと目にも考えた一人でございます。ところで日本の持っております文化のレベルまた文化財の内容等、これまた専門的な評価はできっこありませんけれども、抽象的に言いまして、世界各国に比べてもそう劣らないものを相当持っておることは事実だろうと思います。それにもかかわらず、お説のようにはたして諸外国に比べて十分な措置をしておるかどうかとなりますと、いささか心細いような気持がするわけであります。しかしながら率直なところ、私は文化財なり美術工芸その他に特別の趣味も持たない男でございますから、文部省に入りますまではあまり関心もないと同時に、博物館等の運営等の立場からは考えたこともなかったわけでありますけれども、ともかく議員立法でもって文化財保護法を作っていただいて以来、文部省の努力は細々とではありますけれども、着々積み重ねられながらどうやら一応の措置はしておるとは思います。また具体的には三十七年度の予算を取り上げてみましても、ある程度の増加はいたしているわけでありますが、むろん十分でないことは私も感じるのでございまして、これまた今後の努力によって諸外国にも負けないようなところを目ざしていかなければならぬと考えておるところであります。
  165. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 大臣はどういう問題につきましても、重要なことにつきましては努力をして、せいぜい百%まで持っていくのだという御答弁でございまして、そのお志のあるところは私も了といたしますけれども、しかし現実あまりにもそういう重要な問題に対する予算措置あるいは行政がおくれているのじゃないか、あまりにも理想からかけ離れて、天と地というような感じがするのではないかということを非常に遺憾に思うので、以下この文化財関係あるいは芸術関係のことで少しくお伺いしたいと思うのであります。  まず第一に伺いたいことは、数年前のことでありますが、文教委員会で問題となりまして、都下の保谷にあります民俗博物館を拝見に行ったことがあります。そしてこの民俗博物館に集めてあります資料が、民俗の資料といたしまして非常に重要なものでございまして、私も世界各地でこの種のものを見ますけれども、どこの国の民俗資料的な博物館と比べましても決して劣らない。かつて私は中共に参りましたときにも、中共の誇りとしております民俗資料の博物館を拝見したのでありますけれども、それと比べて決して劣らない、世界の一級の資料を集めておられる。もちろんそこに集めてありますエスキモーの何とかいうようなものは私は大したことは考えておりません。けれどもわれわれ日本民族が古くから生活して参りましたその生活のいろいろな資料、こういうものでは非常にすぐれたものを集めておられる。そこで何とかしてこれを生かしたい、生かそうじゃないかということをわれわれ同僚の仲間でいろいろ話し、委員会の問題として当時の文部省の当局にもこの点を申し上げたことがあるのであります。大臣、御承知かどうか、ごらんになったことがあるかどうか、まず伺いたいのであります。
  166. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 実はございません。
  167. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 これはぜひごらんになっていただきたい。驚くべきことでありますけれども、その重要な資料が収容してありますところは、いわば大工工事場の、工事現場というようなたぐいのものであります。でありますから、一たび台風がくればこれは全部ひっくり返ってしまうだろうというような心配があります。またそういうところでありますから、ほこりだらけ。おそらくはこりだらけであるばかりでなしに、ああいう状態でありますから虫もつき腐食もしということで、非常な危険にさらされているのであります。当時も私はそのことを当局に申し上げまして、これに対する処置をするように、できればこういうものはたとえば九段の旧遊就館、ああいうところに陳列するのにふさわしいものではないか、そうすれば全国の、たとえば靖国神社に来られまする方々、そういう方々のためにも、自分の地方の先祖はこういうものを使っておったんだ、こういう生活をしておったんだというようなこと、そういうことが一々考え合わせられて、心あたたまるものがあるだろうと思うのであります。また国に対しまする、大臣がいう愛国的な精神もここで呼び起こされるのでありましょう。また郷土に対する深い愛情というものも呼び起こされるでありましょう。これがまことにひどいことになっております。これらに対して何らの手が今日まで打たれておらないのであるか、私どもが当局に注意いたしましてから後に、何らかの手が打たれたのであるか伺いたいと思います。
  168. 清水康平

    ○清水政府委員 ただいま保谷の民族博物館のお話があったわけでありますが、これは御承知のごとく学術民間団体でありまする財団法人日本民俗学協会の付属機関でございます。三十二年だったと思いますが、衆議院の長谷川文教委員長外数名の文教委員が現地に御視察なされまして、あそこに収容されておりまする民俗資料が、私どもの先祖のいわゆる文化的遺産であるということ、そうして日本の歴史を理解する上にもまた現代の生活を見直す上にも貴重な資料である、これの保全について強い御要望があったのでございます。その後ただいまお話がございましたような、たとえばもとの遊就館の跡に収容してはどうだろうかというお話もございました。また文部省といたしましても、あるいは赤坂のもとの東宮御所の建物が、法務省が使っておりまするが、あの跡へ入れたらどうであろうか、あるいはその他いろいろなところの検討をいたして参ったのでございますが、あの建物が御承知のごとく非常に腐朽しておる。また整備も必ずしも整っておらない、何とかこれを収容しなければならぬということで、これはまた民俗資料であると同時に学術資料でもありますので、文部省といたしましては、その後鋭意検討の結果、毎年予算を要求したのでございますが、今年すなわち三十六年度予算におきまして、大体坪数が三百三十坪くらいでございますか、二千一百万円の予算を計上いたしまして、現在戸越にありまする文部省史料館の敷地内にその建物を建設中でございます。従いまして保谷の民俗博物館に収容されておりまする三万一千点というのはそこに収容されるのではないか、かように思っている次第であります。
  169. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 おそまきながらともかくも手がつけられたということでありますが、どうかこういうものをもっと大事にするという考え方文部省一つ持ってもらいたい。これはもしほんとうにりっぱなところに陳列をいたしますならば、おそらく私は今度オリンピックに外国から来るお客さんにいたしましても、あるいはまたこの方面のわかりまする外国のお客さん、学者諸君が見ますれば激賞するだろうと思います。ぜひこういうことに金を惜しむことをしないで、これは貴重な民族の歴史を諾っておるものでありますし、また民族の知恵を現わしているものでありますが、二千百万円というような金ではどの程度のものができますか。非常に心細いのであります。私も何だかこの問題について予算がついたようにもちょっと記憶しておりましたけれども、さっぱりその後音さたがないので、きょうこの質問をしたわけでありますけれども、日本のこの方面の学者の中にも、この史料を非常に惜しんでいる有力な学者もあるのであります。私ども全くしろうとではございますけれども、拝見いたしまして貴重なものだと思います。ぜひ大臣もおりを作って、ごらん下さいまして、そしてこの扱いについて万遺憾ないように御努力願いたい。必ずや世界各国から来るお客さんはおそらくどこへ連れて行くのより、そこへ連れていくのが一番喜ぶだろうと私は思うのです。ぜひそういう御努力をいただきたいと思うのであります。  博物館に対する予算の問題でありますが、今度京都の博物館を大きくなさるので八千九百万ほどついておるようでありますけれども、これは各種の博物館を見ましても、これまた非常に外国と比べて貧弱です。いいものがないわけではありません。これはございます。たとえば代表的に考えられまする奈良に参りましても、奈良の博物館はいいものがございます。けれどもきわめて点数が少ない。また建物がきわめて小さいというように考えられる。これは外国のそれらと比べてまことに貧弱のように思います。  それからおよそ新しい美術品等、古美術等を買います予算というものが、これがきわめてまた少ない。ほとんど見るべきものがないと言っていい。こういう点、私は文部省も腰を入れなければならないし、大蔵省もこれは考えてもらわなければならない。従来こういう問題に対して、やはり大蔵省自体が御理解がないのだと私は思うのです。そういう感じがするのです。こういう博物館、ことに古美術等を買い入れます予算というのは、ことし一体どれくらいあるのか、あるいは文化財保護委員会の方の予算、そういうものはどのくらいあるか、これを見ていきましても、ほとんど見当たらない。そういうものはあまり見当たらない。文化財保護委員会の方には八億円という予算がありますけれども、その大部分はどうも京都の博物館等々の問題、あるいは国立劇場等の問題でありますが、どうもあまり古美術等の買い入れをするというような予算がきわめて少ないのではないかということを非常に心配するのでありますけれども、これは幾らくらいついておりますか。
  170. 清水康平

    ○清水政府委員 観光、特に国際観光の場合は、日本の文化観光が主じゃないかと思います。その中心は御指摘の通り文化財ではないかと思うのです。そうなると、これはというものを、国でもって買上げなければならぬ国宝または重要文化財にどのくらいの予算がついておるかというお話でございますが、実は昨年までは明らさまに申し上げますと、国宝その他買い入れ経費は千四百四十万円だったと思いますが、三十六年度、すなわち本年度はそれが五千万円に増額いたし、三十七年度におきましては三千万円増の八千万円ということに相なっておるわけでございます。これとても私どもは十分とは思っておりません。今後とも増額を努力いたしまして、りっぱなものを買って参りたいと思っておる次第でございます。
  171. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 大臣お聞きの通り、増額されたといいながら、わずかに八千万円ばかり、それで一体何が買えるか、古美術など何が一体買えるかということであります。これではどうにもならぬと思うのであります。  かつて京都、奈良等のこの方面を視察して歩きましたとき、奈良の博物館、京都も同様だと思いましたけれども、寺社の持っているものを、つまり寺の持っているものを借りてきておる。ところが寺の収入がない。寺の維持管理に事欠きますために、博物館に預けてありますものを持ってきて寺に置いて、そうして観光料、展覧料と申しますか、それをとって寺の維持費に充てたい、こういうことで、奈良の博物館にありましたものでございましたが、それは持って帰りたい、京都でも同様の話があるというように当時伺ったのであります。こういうことで、そういう寺の維持管理ということにつきましても、ある程度憲法との関係もありますけれども、考え直さなければならぬ点が多分にあると思います。重要文化財という形におきまして、それを国が大きな責任を持って守っていくということで、そういうことについての予算を何らかの形で作って寺がやっていくような道を考えていかなければならぬと思いますけれども、ことに私心配しましたのは、寺に持って帰ってはたして火災のようなときにこれを十分に守れるか、われわれの祖先の偉大な財産、遺産を守れるかということを非常に心配せざるを得ないという感じがしたのであります。何しろ五千万や八千万の金で博物館に収蔵いたしますようなりっぱな美術品だとか、古美術品だとか、そういうものを買う、一体何点買えるかということを考えざるを得ない。こういう点なども、いかにも予算を見て、こういう方面に対する理解がないなと、悪く言えば日本人の文化水準というものが残念だなという感じがするのであります。  それからことにこれと同じように考えられますものに美術館があるわけでありますが、近代美術館、これは直接文部省関係のものでありますが、これの予算を見て、七千三百二十三万円、四千万円前年度よりも減っておるのであります。これは建築等の関係があってこうなったんだろうと思いますけれども、いずれにしても近代美術館の運営をして参りまする費用が七千三百万円しか一年間にない。おそらく外国と美術品の展覧の交換もずいぶんなさるのでありましょう。向こうからもしばしば来ておるようでございますし、こちらからもパリその他に行っておるようでございます。そういうような日本の国際的な文化の交流ということに役立たせることも多々あるであろうと思われますのに、わずか七千三百二十三万円という予算、四千万円が前年よりも減っておる。この内容を伺いたいし、またこればかりの予算をつけたという理由を伺いたいのであります。  ついででありますから同様に西洋美術館の問題も承りたい。これが予算を見ますと、三千六百八十万円、これは前年度よりも約一千四百万円ふえておる。一千四百万円ふえて西洋美術館が三千六百八十万円だから、いかにこういう予算がでたらめというくらい少ないかということが想像されるのであります。一体こればかりの予算をおつけになった理由はどこにあるか承りたい。
  172. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 近代美術館の予算につきましては、御指摘の通り建築費、増築費が前年度限りでございますので、形式的には減になっておりますが、増加のおもなものは、先ほどお話のありました京都に分館を作る計画、それから国際交流でことし懸案になっておりますロ仏映画交換の経費が増加になっております。西洋美術館につきましては、今年度初めて資料購入の一千万を新たに加えまして、その他地方巡回展をいたします経費を加えております。以上が内容でございます。
  173. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 まことに慨嘆にたえないと思います。資料購入一千万なんていうのは慨嘆にたえない。やはり当局の諸君は外国へ行って見てくる必要がある。大蔵省の関係の方々にも、これはぜひ一つ見てきてもらいたい。それでないと恥ずかしいです。日本人として、文化国家として恥ずかしいです。ぜひ大臣、それくらいのことは来年度の予算で組んで、こういう方面専門に、十分外国の文化国家といわれるところを御視察になる、そういうことをしないといけないと思う。こういう問題は、ぜひとも考えていただきたい。かつて文化財保護委員会で河井弥八先生が委員長をしていらっしゃいましたときに、私と同郷でありますから、しばしばおいでになって、りっぱなものがあっても、何とも買うことができないと嘆いておられました。私は全く同感でありまして、先生、一つ応援しますからおやりなさいと言って励ましたことがあるのでありますけれども、あのりっぱな年寄りがほんとうに嘆いておられました。今日の状態を見ましても、ほとんど改善されておらないということであります。  同様に、今度は新しいものといたしまして科学博物館の問題でありますが、これは、ことしの予算幾らでございますか。
  174. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 三十七年度の予算が一億三千三百六十二万六千円で、前年度に比して五千四百万円ふえております。
  175. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 科学博物館も、今日、ことに学生、生徒、児童などの教育のために、やはり目で見てすぐわかるという行き方をしなければいけないと思う。アメリカなどは、金があるといえば金があるのでありますけれども、アメリカあたりの各地の博物館を見まして、その整備されているのに驚くのであります。一見してもう何もかもわかるというような感じがするのです。しかもけちなことを言わない。たとえば汽車の模型がそのまま置いてある。子供たちが入っていって、自由にその機械を直接動かすことまでできる。汽車が走るわけではありませんけれども、汽車の中のいろいろな機械の部分を自由に動かすことができるというふうにもなっておりますし、大きな炭鉱の機械が、石炭を掘っているところから全部の機械がそのまますわっておりまして、どういうようにして機械が石炭を掘っているのかということが一見してわかる。だから、何も学校子供にやかましいことを教える必要はない。そこへ行って見せれば、そのままわかるというような状態にさえなっている。テレビでも、すぐ目の前で、カラーテレビがどういう形であの色が出ているのか実験されている。自分がそこへ写って、そのままカラーテレビに出てくるその経過というものが、理論的にずっと配置されておって、実物が置いてあってすぐわかるようになっている。あらゆるものがそうなっておるのであります。それが、古いものから、新しいものから、全部そうなっておるのであります。  一例を申し上げたのでありますけれども、やはり今日の教育では、そういうような教育の仕方をすることが非常に大半だと私は思う。ところが日本ではほとんどできておらない。一体日本に科学博物館なるものが幾つあるのか伺いたい。
  176. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 科学博物館は、現在六十二ございます。これは登録された博物館、それから相当施設として、たとえば明石にあります天文台というようなものを含みまして六十二で、ございます。
  177. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 まず上野にありますもののほかは、私もときどき地方に行って見ますけれども、ほとんど規模の小さいこと、問題にならぬと言って差しつかえないのであります。こういう問題も、教育を重んじられますならば大臣はもう十分に、どんなに少なくとも、最低今の予算のまず五十倍ぐらいは考えてもらう、どんなにしたって最低限度十倍の予算はとってもらわなければどうにもならぬと思います。こういう問題は国の予算、だけではやれなければ、こういうものに寄付するものにつきましては無税というような形に持っていくというような——アメリカの方に行ってみましても、遺産をそのままそれに寄付するというような行き方をしておるのでありますが、そういうような方策をどんどん進められれば、やはり相当の寄付も進むんじゃないかと思う。国の予算はもちろんどんどん出してやることが大事でありますけれども、同時に今のような方策も立てればよほど進むのではないか。ことに外国の科学博物館など見まして考えさせられますのは、それぞれのメーカーに、自動車なら自動車をそのまま持ってこさす。自動声のたとえばエンジン等を真二つに割りまして、それが、こう押せばどう動くかということがみなわかるようになっておる。だから収容します建物を国で作りさえすれば、あとはそれぞれの機械のメーカー、自動車のメーカーあるいは飛行機のメーカーというようなものからそれを寄付させるという手もあるのであります。そういう方策を立てて、必要な展示すべきものを集める工夫さえできれば、それに対する寄付の税金関係等が解決しますれば、私はそういうことはできると思う。そういうような機械その他のものを収容します建物を政府で用意をすれば、できないことはないと思う。それぞれのメーカーが皆喜んで寄付をすると思うのです。そういう工夫をなされば道が開くのではないかというように思われます。こういう科学博物館のことも非常におくれておる。こういう点は、単に机の上で教えるということでなしに、実物で教えるという方策を当然とるべきです。そういう点がほとんどなされていないということを、いかにも残念に思うのであります。  それからついででありますから伺いますが、国立劇場の問題はその後どうなっておるのか。これは予算書を見ますと三千二百万ほどついておりますけれども、さっぱりこれも進まぬじゃないか。国立劇場の問題が、敷地の問題が議せられましてからずいぶんになるが、これがいまだにさっぱり進まぬように思うが、現状はどうなっておるか承りたい。
  178. 清水康平

    ○清水政府委員 三十二年だったと思いますが、衆議院文教委員会におきまして、国立劇場建設促進に関する決議が取り上げられたことを記憶しております。当時はまだ敷地がきまっておりませんでした。その後敷地は、いろいろな方面にきまりかけたり、それがだめになったりしまして、最後に、御承知のごとく半蔵門の前の、いわゆるパレス・ハイツというところに敷地がきまったのでございます。ところが、その敷地は全部で一万三百七十七坪でございまして、敷地がきまる前はあそこに古典芸能——大体六つか七つございますが、古典芸能を中心とした大劇場一つと、バレー、オペラというような現代芸能を中心とした大劇場を一つと、もう一つ小さな劇場を作るということになっておったのでございますけれども、御承知のごとく、あそこのところは高速道路が地下二つの線に分かれて入っております。それから住宅地との関係があり、建築基準法との関係もございますし、それからもう一つは国立劇場のバレー、オペラのような大劇場と古典芸能を中心とした大劇場、その二つをあの一万三百七十七坪のところに作るということは、駐車場等の関係がありまして非常に技術的にも困難だという結論に達したのでございます。その後国立劇場設立準備協議会とも協議の上、あそこに作るとなればどうしても大劇場中心、大劇場一つを作って、そこに国立劇場としての資料収集、展示、公開、養成というようなものをくっつけた中心的な国立劇場を作る、それなら何を作るかということになりましたならば、やはり日本の古典芸能を中心とした大劇場を作ることにきまったのでございます。そのために、毎年延び延びになったのでございますが、一般公募として予算がとれたのでございます。そういう意味合いで延びたのでありますけれども、ただいま大蔵省と建設省との間の緊密な連絡のもとに、三十七年度におきましては古典を中心とした国立劇場につきまして設計公募を立てる計画で、今すでに事務的に折衝いたしておるような次第ございます。
  179. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 そうすると、これはいつでき上がるという予定でしょうか。
  180. 清水康平

    ○清水政府委員 事務的に今公募の手続、それから予算的にこまかいことを大蔵省と固めつつありますが、それで本年中に公募をし、そうして大筋をきめまして、三十七年度は懸賞募集、三十八年度は基本、実施設計に入りまして、三十九年度、四十年度にかかって実際の国立劇場が設計完備と申しますか、実際の建築にかかる予定でございますから、ただいまのところでは昭和四十一年の三月までにはできる見通しでおります。
  181. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 こういう問題も、諸外国と比べますと非常におくれておりますからこれまた恥ずかしいものでございまして、ぜひとも大蔵省の方も十分配慮をして、日本民族として恥ずかしくないように御尽力をいただきたいと思います。これらのことについての御配慮を今後とも特に大臣にお願いをいたします。  次の問題は、最近よく火災が起こる。本分科会におきましても、昨日でありましたか、ちょっと取り上げられたように記憶するのでありますが、信州大学がまた焼けた。すでに三回目ですか四回目ですか、焼けた。毎年大学が焼ける。ことに最近は小学校中学校が実によく焼ける。ほとんど毎日の新聞をにぎわしている。容易ならぬことだと思うのでありますが、一体最近一年間にどれくらいの火災の件数があり、どれくらいのものが焼け、損害額といたしましてどれくらいのものがあるか承りたいと思います。
  182. 杉江清

    ○杉江政府委員 最近の火災の発生状況を申し上げますと、三十六年の五月から現在に至るまで国立学校の校数は、昨晩の信州大学を入れまして六校でございます。坪数は、昨晩のを除きまして二千五百五十三坪。公立学校につきましては、数で七十校で、坪数は一万四千四百八坪でございます。金額は計算が非常にむずかしいのでありますけれども、ラフに考えまして国立学校で一億、公立学校で四億というようなことがおおむね言えるかと思います。
  183. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 こうひんぴんと起こります原因は、一体どういうことでありますか。
  184. 杉江清

    ○杉江政府委員 発生原因につきましては、いろいろ調査いたしておりますが、今までの調査結果をやや詳細に申し上げますと、一番多いものは放火及び弄火でございます。次に多いのはたばこの扱い。次が煙突によるものであります。その他ストーブ、かまど等の原因が多数を占めておりますが、もちろん原因不明のものもかなり多くを占めております。なお、発生個所による区別でございますが、一般注意が足りなかったということはやはりどうしても言わざるを得ないのではないかと思います。なお、何といいましても木造建築が多いというようなことが客観的な原因としては考えられると思います。
  185. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 これは単に一億とか四億とかいうことだけでなしに、教育にすぐ差しつかえることでございますし、また、こういうような火災がたびたび起こるということにつきましては、何らか十分な対策を立てるべきだ。昨日もお話がありましたような、ただ単に宿直の先化にまかせるというようなことであってはならないし、また、そういうことは先生たちにとっては迷惑しごくなことであります。文部省としてもこういう火災を防止いたします対策を、毎年のことでもありますし、ことに最近のようにひんぴんとして起こってくるということになりますならば、何らかの対策をお立てになっていることと思います。結局平均しますと五日に一ぺんくらい焼けるということになるわけでありますから、何らかの対策を立てていらっしゃると思いますが、そういう対策についてどういうようにお考えになっておるのか承りたいのであります。
  186. 杉江清

    ○杉江政府委員 火災の発生につきましては、文部省といたしましてそのつど厳重な注意を喚起しておるのであります。そのほかに文部省としてやっておりますことといたしましては、学校防火講習会を随時開催しております。詳細な予防についての注意を喚起しておるわけでございますが、そのほか根本的には学校建物の不燃化という施策を進める必要があると考えまして、その努力をしておるわけでございます。
  187. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 先ほどもちょっと申し上げ、昨日もちょっとお話し申し上げたのですが、私の知っている学校でも、小学校でありましたが、焼けた。校長には本来何らの責任もないのである。ところが校長はついにやめざるを得なくなった、非常にりっぱな校長でありましたが、ついにやめざるを得なくなったという気の毒な事例があったのであります。こういうときに、もちろん教育委員会の仕事ではありますけれども、本来教師の日直宿直というようなこと、これは教育に直接関係があることでありますれば、教師もやらなければならぬということもございましょうけれども、こういう火災についての責任を負うというようなことは不当であると私どもは考えざるを得ないのであります。もちろん、お互い公共のものでありますから、教師といわず、だれといわず、そういうことについての、火災を起こさないということの努力をするのは当然でございますけれども、さればといって、わずかの宿直料を与えられて、重い責任を負わされて、そうして火災が不幸にして起こったら、校長もやめなければならぬというようなことになりますれば、これは実に不当なことだと思うのでありますが、文部省一体そういうようなことが起こった場合に、どういうような責任を教師に対してとらされますか、またとるのが妥当だと思われますか。全国的に、こうひんぴんと火災が起こりましたなら、教師は宿直の目は夜もろくに眠れないだろうと思いますが、こういう点、文部省教育委員会に対していろいろ指示等をなさっておられますか、どういうようなものを考えておられるのか。全国の教職員諸君が今晩も非常に心配をして宿直をしておられると思いますので、この点を承りたいのであります。
  188. 杉江清

    ○杉江政府委員 教員も今日宿直を職務として命ぜられております以上は、その職務を行なっております際に火災が発生した場合、その状況によりましては、やはり責任を分担することは当然かと考えます。ただ、もちろんそれはその状況にもよりますけれども、全く本人の不注意というような場合には大部分が本人に帰せられると思いますが、一般的に言いまして、施設の不十分その他、本人にのみ帰せられない責任があると思います。また当然校長の管理責任も問われることもありましょうし、また、もっと施設設備の整備について不備な点がありとすれば、その施設の整備の責任を負っておる者の責任も問われることになろうと思いますが、一がいにその責任がどこにあるかということは断定できないと思います。ただ日宿直をしておる教員の責任も問われる場合は当然考えられると思います。
  189. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 数年前にもこういう問題がずいぶん文教委員会等で問題になったのでありますが、一体教師の責任であるかどうか、教師の職務であるかどうかということはずいぶん問題になっておる。昨日の同僚議員の質問の中では、当然警備員にやらせるべきではないかというような御発言もあったように記憶するのですけれども、やはり教師にそんな責任を持たせるのは無理だと思うのです。ことに、こういう五日に一ぺんくらいの割合で日本じゅうのどこかで学校が燃えているというようなこと、こういうときに教師に責任を持たせられたのではたまったものではない、こんなことは当然教師以外のところに責任を持たすべきであって、昼間、一日じゅう一生懸命に教師が教えて、夜くたびれて寝ておるのに、たばこの火の不始末をしたとかあるいはストーブの不始末をしたというならば別でありますけれども、直接自分の責任でないものの責任を問われるということではたまったものじゃない。先ほど申しました、ある小学校の校長がその学校を焼きました責任をとってやめたという場合にも、その校長はもちろん宿直でございませんで、二里ばかり離れた自宅におった。ところがそれにもかかわらずこの校長は責任をとってやめざるを得ないということになって、ついにやめたのでありますけれども、そういうような責任を校長なりあるいは宿直の職員なりに負わせるというようなことは、今日のようなこういうひんぴんたる火災の発生しますとき、たまったものじゃないと思うのです。われわれはこれは教職員の職務ではないと思いますが、文部省は教職員の職務の一つ、だとお考えのようであります。これは直接教職員の職務でない、生徒、児童を教えるということ以外のこと、ただその学校という教育環境をいわば保存するというか、そういう意味の仕事です。少なくとも学校の火災に関する限りはそうだ。もちろん生徒児童が何か教育の問題でわからない点があったから学校に行って聞かなければならぬとか、たとえばあした運動会があるので天気のことをいろいろ聞くとかありましょう。そういうようなことはともかくとして、学校という教育環境にすぎない、そういうものを保存する、確保するということにまで教師の責任を問うということは、もうすでに行き過ぎだと思うのです。文部省は、こういうようにひんぴんたる火災の発生するときでありますから、警備員というようなものを置けという方針をおとりになれば、全国教育委員会は当然そういう方針をおとりになる。大蔵省あるいは自治省の方としてはそういう措置をもちろん地方にしてやらなければなりませんけれども、そういう方針を文部省がおとりになればそういうことになるに違いないと思う。だからここは文部省の腹の据えどころです。今まで通り職員にさんざんの荷を負わして、そのあげくにこういう教育環境である学校校舎の保存の責任まで負わせるということが妥当であるかどうか、私どもはまことに行き過ぎだと思いますけれども、文部大臣この点どうお考えになりますか。
  190. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 学校の校舎ないしは備品等の管理のすべてを日直、宿直の教師に、あるいは学校長に負わせるということは行き過ぎの部分がありはしないかという意味において、私はあるいはそういう疑いを持ちます。会社、工場、官庁等におきましても、警備員というのは別に置くということが、このころ常識化しつつありますが、そういう意味では一つ検討をさしていただきたいと思います。ただ現実問題としまして、今日までの実態は、そういうことまで考える政府上のゆとりもない、あるいはそういう常識すらもが確立されない、普遍的でなかったとかいろいろなことがございましょう。そういうことで、いわば行きがかり上そうなっておることも反省されねばならぬ点はあろうかとも思います。けれども、それを長谷川さんのお説のように一挙にやれるものでもございませんから、十分その辺も考えあわせまして、何とか年次計画でも想定しまして、そういうやり方で考えてみるという懸案事項として検討さしていただきたい。
  191. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 全国学校で今不燃質にするというお話がございますが、不燃質のものとそうでない木造のものと、現在ありまする学校の校舎等々、学校の建物、これはどのくらいの割合なんですか。
  192. 杉江清

    ○杉江政府委員 木造は、八二・六%が木造になっております、それは総体、国立、公立私立を通じて木造が八二・六%、公立につきましては八六・五%になっております。
  193. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 時間もないそうでございますから簡単にお伺いいたしますけれども、こういうような状態で、先ほどの玉置委員の質問にもございましたが、今新たに予算をとって建てて参りまする学校の不燃質と木造との比率等々から見ましても、公立で八五%もの木造の家屋に対してこれほどにひんぴんたる火災のありますときに、この問題を火災を防止する対策として不燃質のものにしていくことによって根本的な解決をはかろうなんていうことは、先ほどの不燃質の学校と木造の学校との比率から見ましても、百年河清を待つがごとし、文字通りそういうことになる。その間この責任を今お話しのように現実問題としては教職員が負うということではたまったものではない。これはすみやかに文部としましてはまず火災の発生をなくするという万全の策をとるべきであり、ことに今すぐできるものでもないという文部大臣のお話でございますが、すぐできぬことはない。今すぐできぬことはないのでありまして、ことに毎年古い建物であっても四億、五億というものを焼いておる。その中にありまする器材、設備をみな焼いてしまうということ、教育がはなはだしく阻害されるというようなことを考えますならば、こういうような警備員をちゃんと置いておくということだって経済的には決してそう高いものではないのでありまして、先生たちの迷惑、熱心に教育をしてくれます教職員の迷惑を考えましても、あるいは実際に防火対策という点から申しましても、これはすみやかに対策を立てるべきである。本予算にそういう対策が何らとられてないということは非常に残念に思います。ある意味では文部省の怠慢であり、自治省の怠慢でありあるいは大蔵省の怠慢であると思うのであります。どうか主計官もよくこの点をお聞き下さって、すみやかに対策を立てられるように何らかの措置をとられることを強く要望するものであります。  時間がないそうでありますから、最後にもう一点だけ伺いたい。南極探検の問題でございますが、南極探検という言葉が変でありますが、南極探検の学術調査の仕事をおやめになるというので、全国的に国民が非常にこれを惜しみ、また、ただにわれらの国のみならず、外国からもこれを惜しみ、ことに米国側では、これの継続のために協力をしてもよいという申し出があるやにうかがうのであります。その後東京都内におきましても、これを継続しろという大会等が持たれたようでありますが、文部省は今日これについてどういうようにお考えになっておるか。われわれもまたこういうような点において世界的な貢献ができるということでありますならば、これを当然継続すべきであると思う。予算におきましてはもはや継続する意思がないと拝見するのでありますけれども、この点は文部省はどういうようにお考えになっておるか。おそらくこの問題は、時がたつにつれて全国民的な要望となると思うのでありますが、大臣はこれについてどうお考えになるか、最後に伺いたいのであります。
  194. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 御指摘のように、予算上も今年現地に越冬隊を置いておりますのを引き揚げるための予算、及び三十六年度にその予算措置いたしまして、三十七年度としましては、今までの調査結果の整理さらに調査資料の検討、今後南極観測調査を再開するための準備的な仕事、そういうことをさせるための予算を計上しておるわけであります。これは将来絶対にやらないんだということでございませんで、一応中止をいたして、再開の準備をその間やって、万全の措置を講じて再開したいという含みでございます。やめました理由は、まず第一に輸送機関が不備でございます。もともと第一次の宇宙観測年にあたります昭和三十一年でございますかに始めました一わけでありますが、それがきっかけでございますけれども、開始することそのことが諸準備が応急的なものであった。いわば恒久的な調査をするような態勢整わざるままにある程度危険を冒して出かけていったという点に無理が、ございまして、一手に輸送に携わっておりました「宗谷」も、もう大体老齢でございまして、危険性を感じられる。だからすべからくその輸送船そのものにつきましても、しかるべき砕氷能力、南極のもろもろの危険に対処し得るような能力のある船を新造してしかるべきだ。またヘリコプター等の航空機も当然必要なようで、ございますが、これとても自衛隊の使用中のものを一時拝借に及んで出かけるというがごときことも、あまりにも当面の応急的なことばかりでございますから、そういうものを、輸送機関を中心に整備いたしまして再開いたしたい、こういう考え方であります。
  195. 長谷川保

    ○長谷川(保)分科員 今文部大臣から再開せられる御意思であるというように伺いまして、非常に欣快に思うのであります。確かに私も「宗谷」を見まして、また「宗谷」の能力を、文教委員をしておりました当時いろいろ伺いまして、いかにも心細い。特に人命に関する問題でありますし、少なくともソ連のオビ号くらいのものはお作りになって、そうして万全を期してやはり世界の学術進歩に貢献するという意味においてこれを再開せられることを強く要望いたしまして、すでに時間もだいぶ超過したそうでありますので、これで終わります。
  196. 中村幸八

    中村主査 次は野原覺君。
  197. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 きょうの分科会の質疑は私が最後のようであります。従って前の委員の質問等と重複する点もたくさんあろうかと思うのでありますけれども、これは一つ御容赦を願いたいのであります。できるだけ簡潔に行ないたいと思います。  まず第一点、お尋ねいたしたいことは、教科書の問題です。教科書の一四%値上げ、これは決定したようでございますが、大臣御承知のように、教科用図書審議会から答申がなされたのが十二月十一日であります。教科用図書審議会には文部大臣がこの教科書の値上げについて諮問をされた。諮問をされたその認可権者が、答申もないのに二割の値上げやむなし、こういう談話を出したり、放送をしたりすることは、私はいかがなものかと思うのです。この点について大臣はどうお考えになりますか。
  198. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 特にそういう声明を出すというようなことをやった記憶はございませんが、記者会見等におきまして、質問が出たときに座談的に話した記憶はございます。もともと教科書会社方面から、教科書協会の方からの昨年来の陳情は、二割五分くらいの値上げはどうしてもやってもらわなければ、第一に工賃の値上がりあるいは製本代の値上がり等、紙代の値上がりももちろんでございますけれども、こんなふうな陳情がしきりでございました。そういうことに関連して記者会見等においてはしょっちゅう話題になっておりまして、教科書会社の方からそういう話があるのだけれども、二割五分上げるということは大へんだということで、二割なんという話が出たことはあろうかと思います。しかし少なくともそういう話が出ました意図は、正式に文部省の見解を表明するということでなくて、今申し上げたようないきさつから新聞等にも出たことがあろうかと記憶しております。
  199. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 いや、あろうかではないのです。私も何回となく新聞で読んだ。それから単なる記者会見だけでもないのです。教科書会社から二五%くらい値上げをしてもらわなければ採算が合わないのだ、やっていけないのだ、こういう要請があったものですから文部大臣は諮問した。いやしくも認可権者であるあなたが諮問しておって、そのものを値上げするかどうかということは、今日政治上の大問題になってきておる。私は藤山経済企画庁長官をきょうはこの問題でお呼び願いたいと思ったのですが、時間の関係でやめたのです。いやしくも諮問をして答申も得ないのに、たとい記者会見で何と言われようとも、このことは今諮問をしておる。何のために教科用図書審議会は審議をするのです。認可権者がそんな放送をやったら、ばかをみるのは教科用図書審議会だ。ばかばかしくてできやしない。何だ、文部大臣はそういう腹なのかということなんです。従ってこれは何とあなたが御答弁になりましょうとも、このようなことは慎しむべきことじゃないかと私は思う。もう諮問をしたその自体が、二割の値上げを承認してかかっておる。こういうようなことでは諮問の意味からいっても答申の意味からいっても、教科用図書審議会が審議するそういう性格から考えても、問題があろうかと思うのであります。あなたはこれは軽い気持で言ったとおっしゃるかもしれませんけれども、私はいかがなものかと思うのです。これはやはり軽率のそしりは免れぬのではないかと思うのでございます。  そこで次にお尋ねいたしたいことは、この一四%の値上げですが、この値上げというものは全くおかしいと思うのです。大臣はよく御承知だろうと思いますが、この教科書の展示会というのがあって、教科書を学校では採択決定する。ところが昭和三十六年度は展示会が七月一日から七月十日までであったのです。七月一日から七月十日までの間に、学校の教職員諸君が展示会に行って本を見る。中身を見るのですね。なるほどその見本には定価は書いていない。書いていないけれども、物価を押えるのが政府の方針だ。この中身だ。定価は、去年の定価はこれだなということで本を採択したのです。ところが本を採択してみたところが、突如年の暮れになってからその値上げをやるというようなことは、私はこれは契約違反じゃないかと思うのです。いわゆる採択したということは、予約したということなんです。予約者の了解もなしに、政府が勝手に定価を上げるということは、これは民法上の契約違反です。だましている、こういうやり方は。だから幾ら教科書会社に理由がありましょうとも、もう展示会をして、採択が済んでいるのであるから、この値上げというものは翌年度からやるべきだ、こういう方針でこれは臨まなければならぬ。採択したものは前の定価と思って採択した。いいですか、この点について大臣はどうお考えになりますか。
  200. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 法律的な解釈論でございまして、的確に申し上げられないかもしれませんが、私の常識を申し上げれば、展示会をしましたときには、いわば見本を見て教育委員会が検討をする、そして教科書会社と教育委員会との間に大体了解がついて、そしてそれぞれの具体的な、教科書会社が自分のところではどこそこに締めてどれだけのものを引き受けるという、いわば予約ができたということになりまして、そしてあらためてその教科書の会社の信用状態、資力の状態、教科書を翌年度初頭までに的確に送達し得るかいなかの誠意のほども見きわめて、そしてその上で指定をいたしまして、その上で初めていわば今申し上げたようなことを文部省立場で教科書会社に指示する、そのことを条件として契約が最終的に成立する一種の停止条件付の予約みたいなものであり、しかも一方教科書の値段というものは、そのつど毎年文部大臣が認可をする建前になっている。そういうことでございますから、定価の欄が空欄でございましょうとも、やがて指示された直後に教科書定価の認可があった値段になるであろうことは、採択する側にも当然念頭にあって採択されるわけでございますから、あえて法律的に契約違反というおしかりを受けることは私はなかろうと思っております。
  201. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 いや、これはやはりちょっとおかしいですよ。予約をしたということは、内容と定価について契約をしたのです。何ら特段のこれは表示がなければ、前の定価で判断するというのが常識です、ものを見る者は。中身については若干変わっているかもしれぬというので、あちらこちらの会社の本を、検定本でございますから検討する。ですから内容と定価について予約したのです。だから予約者はこれは百円の本だと思っている。ところが一四%突如あとで上げる、こういうようなやり方は、これはどうかと思うのです。あなたは、文部大臣がその定価の認可権があるのだから、その点については文部大臣がどのような定価をつけようとも、それはそういう予約をした者が勝手に定価を判断したことが間違いである、こういう見解のようでありますけれども、しかしそれは常識が許さない。なるほど法上はそうなっているかもしれません。しかし物の値段は上げない政府の方針だ。だからして、百五十円と百八十円の社会科の本があって、内容がそう変わらないから、表紙は百八十円の方が少しよいけれども、たとい三十円でも安いからというので、百五十円の本を採択した教師もあったかもわからない。私はこういう点は特段に深い議論をしようとは思いませんけれども、十分配慮をしてもらいたいですれ。これは十分気をつけてやりてもらわなければならぬ。だから、たとえば諮問をして答申が出た、その答申々見ても一四%の値上げをしよう——上げねばならぬ事情があったかなかったかは、私はこまかに検討はしておりません。しかし上げねばならぬ事情があると判断するならば、少なくとも来年度の本に関しては差額を政府が持つべきです。物価値上げをしないと約束した政府が一四%上げた。展示会に出したときには前の定価だということを暗に示しておきながら、政府が年の暮れになって勝手に上げたのですから、差額は政府が持つべきです。それなら文句はない。ところが子供に持たせる。親に持たせる。そうすると、それを推薦した教師はどうなる。話が違うじゃないかということになりますね、こういう点については、もう過ぎたことでありますから私はとやかくは言いませんが、これは十分一つ配慮をしていただきたいと思うのであります。  そこで、第三点の教科書の問題でございますが、義務教育学校の教科用図書の無償に関する法律案、これはやがて文教委員会で十分審議されようと思うのであります。私も国会に出てかなりになりますが、このくらいおかしな法律案を手にしたことは初めてです。これは一体何という法律案なのか。私はこれを手にしてあけてみたときに、実は驚いたのです。実にけったいな法律案になっておる。このことは文部省はよく御承知だと思う。木に竹を継いだような法律案になっておる。その一つ一つを私が申し上げますと、とても時間がかかるのでございますが、まずお尋ねをしておきたいと思う。この法案は重要な法案でございますから、社会党から出されました法律案と対照して、やがて文教委員会で徹底的に私どもは論議を重ねて参りたいし、それから教科書の無償という画期的な法律案を審議するにあたっては、国民に対して、これは全国的に、中央でも地方でも公聴会を開いて、十分国民の世論を聞くということも、私どもは後刻また主張して参りたいと思うのであります。しかしそのことはさておいて、ここで私がお尋ねしておきたいことは、第一条についてです。「(趣旨)」普通は目的と書くのですが、これは「(趣旨)」としてある。この法案の考え方ということでしょう。その第一条は「義務教育学校の教科用図書は、無償とする。」こう書いてある。義務教育学校の教科用図書は、無償とする目的ならば、それでは無償になるのかというと、ずっと読んでみても無償にはなりませんと書いてあるのです。そのことは別に法律で定めます。調査会で審議します。こんなおかしな法律がありますか。第一条に考え方、目的ともいうべきものをうたっておきながら、どこにもその目的を実現すべき条文がこの法律にはないのです。こういう人をだました、国民を愚弄した法律がどこにありますか。私はこれからたくさん指摘しますよ。「義務教育学校の教科用図書は、無償とする。」というならば、この法律には無償にするだけの条文がなければならぬ。無償にするということがなければならぬ。目的も無償法案だ。ところが、簡単な短い法案でございますけれども、第二条からも附則からもどこにも無償にするという保障の条文は見当たらないじゃありませんか。文部大臣はこれをどうお考えになりますか。
  202. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 大体のことは本会議で御説明申し上げたと思っております。繰り返しになることがあろうかと思いますが、お許しをいただきます。  第一条は、憲法二十六条が義務教育は無償とする理想を揚げておりますことに対しまして、その憲法のいう義務教育の無償の中の教科書を無償とする方針で今後いくのだということを宣言した趣旨でございます。しからば、御指摘のようにいつからどうしてやるのだということは、別に政令でなしに、法律で定めるということを第二項でうたっているわけでありまして、さらに御指摘の通りその「別に法律で定める。」については、以下出てきますところの調査会の審議を待って立法措置を講じ、むろん国会の御審議を経て定まるわけでありますが、そういう丁重な取り扱いで慎重にやりたい。ただしその調査会は、のんべんだらりといつまでも結論を出さないというのではなく、おそくも今年の十一月末日までには必ず答申を出していただいて、早ければ早いに応じて政府側もその答申を基礎に、具体的な段取りを定める予定でおります。その段取りの内容——すべてではございますまいが、立法措置を必要とする事項につきましては、立法措置を講じた上で実施いたします。その実施します第一着手の対象は、三十八年度四月一日に入学する小学校の第一学年の生徒に対するものを、まずもって無償といたします。その予算は三十八年度の予算をもってしては間に合わない面もございますから、今御審議中の予算に七億円見当を計上しております。そういう相互関係に立って、一年でも早く具体的に着手するということとあわせて、第一条をお読みいただきたい、こう考えているわけであります。
  203. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 今大臣が御答弁になったこと自体にも、聞いておりまして、実はたくさんの問題がある。まず第一点の問題は、「別に法律で定める。」となるほどうたってある。「前項に規定する措置に関し必要な事項は、別に法律で定める。」法律がなければできぬということです。「義務教育学校の教科用図書は、無償とする。」この方針は立てるけれども、別に法律を作らなければ無償にはしない、そういう法律は問題があるでしょう。無償法といって国民に宣伝しておきながら、別に法律を作らないと無償にならぬ。同時にあなたはその法律でやるのだといっておきながら、附則の「2 第一条第一項に規定する措置昭和三十七年度の予算の執行に係るものを実施するため必要な事項については、同条第二項の規定にかかわらず、政令の定めるところによることができる。」これはいずれこれが上程になれば、私は掘り下げて審議をしたいと思いますが、別に法律で定めるといっておきながら、政令でもできるというのです。こういうことはやがてこれが審議されるときにいたしましょう。  そこで一番基本的な問題をお聞きしますが、従来の文部省は憲法二十六条の義務教育無償については、授業料を取らないことだという見解であったのです。これは大臣は御承知だろうと思います。ところが今度は授業料を取らないことだけではない。義務教育学校経費一切が無償だということが、憲法二十六条の精神だという御認識に修正された。そういう修正された認識の上に立って教科用図書の無償の方針を出されたのかどうか、これは大事な点です。従来の方針をお変えになられるのかどうか。私、速記録を調べたら、文部省はこれは何回となく言ってきております。内藤初中局長大臣を横に据えて言ってきたのです。大臣はそれに何ら訂正の御発言をしていない。憲法二十六条の無償は授業料免除だけです、そう言ってきた。今度はいやそうじゃないのだ、授業料だけじゃないのだ、教科書もだ、給食もだ、そういう考えを憲法二十六条はさしておるのだ、こういうお考えに立たれてこの第一条ができたのかどうか、承っておきたいのであります。
  204. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 憲法二十六条は、義務教育は無償とするということを無条件に定めております。憲法の規定だけで実施はできないわけでございますから、法律をもって現実的な解釈と実施の範囲を定めるというやり方で、今度第一条を定めようとしておるわけでございまして、今までも、憲法二十六条の趣旨は授業料を取らないことだ、それ以外の意味はないのだと申しげたことはございません。憲法の規定だけでは、理想はそのままでは現実のものとならない。そうするについては、具体的な立法措置をして、その限度内において、憲法の理想が一歩を踏み出す、第二歩目とでも申し上げるべきものである、そういうことでございまして、今まで申し上げていることとの矛盾なり変更はございません。
  205. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 申し上げたことがないというようなら、いずれ後日に速記録をごらんに入れます。きょうは持ってきませんでしたから、速記録をごらんに入れます。憲法二十六条は授業料の免除だけをさします、こう言って答弁をしておりますから、そのときに文部大臣は困らないようにして下さい。今あなたの言ったことと食い違うじゃないかということで私は問題にいたします。  そこで大事なことは、第一条の無償というのは、憲法二十六条に基づくということであるならば、義務教育は無償だというこの考え方で、学校給食に対しても、父兄の負担に対しても対処していかなければならぬと思いますが、その点はそのように理解してよろしゅうございますね。そういう方針で政府はいくのだ、よろしゅうございますか。
  206. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 それはあくまでも、さっきも申し上げますように、国会を通じてその限度をきめていただく、無償の範囲を具体的にきめていただくというやり方以外にはやり得ないことでありまして、憲法二十六条との矛盾はないと私は思っております。
  207. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 この法案は、私が先ほど申し上げましたように問題点がたくさんあります。従って、これは後日に譲りたいと思うのであります。ただ譲ることのできない点が一点だけございますので、お尋ねしておきます。それは第二条の四項です。これは現実に昭和三十七年の十一月三十日になりますと、それを期限として文部大臣に答申が出るわけでございますから、お尋ねをいたします。これは予算関係のあることでありますから、お尋ねをしておきたいと思うのであります。四項にはこう書いてある。「調査会は、第二項の規定により文部大臣から諮問のあった事項のうち昭和三十七年度の予算の執行」、これは明許繰越費として計上しておる七億円をさすのだろうと思うのです。「及び昭和三十八年度の予算の作成に関係のある部分については、」つまりそれについては、昭和三十八年度も七億円でいくのか、あるいは十四億円でいくのかということをさすのだろうと思うのです。その調査、審議した結果を十一月三十日までに文部大臣に答申しなければならぬ。十一月三十日までに答申をして、この答申に基づいて文部大臣は大蔵省との折衝を始める、内閣に要求をする。昭和三十八年度の予算についてはこういうことになろうかと思うのです。そうすると、十一月三十日までには文部省昭和三十八年度の予算要求はしないのだ——これは大事な教科書無償のことです。今度の文部行政としては大事な点です。十一月三十日まではしないのだ、教科書のこの要求についてはそういうお考えに私はとれる。そうとって参りますと、いささか心配があるのです。どうもこれは首をかしげなければならぬ点があるのですが、いかがですか。
  208. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 その点は御心配は要らないかと思います。おそくも十一月三十日でございます。一番おそいときが十一月三十日ですが、三十八年度の政府としての国会に対すろ予算案の提出は、今年の例から申しましても、とにかく通常国会が十二月上旬に召集されませんければ、提案する時期が来たりませんから、そうしてまた政府案の最終決定は、今年の例からいえば、十二月末ぎりぎりでようやく政府案がきまる。これは例年事実問題としてそういうことでございますから、形式論としては少なくとも十一月三十日に答申をしていただきまして、実際問題は答申という印刷物ができる以前から、内容的には知らしていただけましょうから、準備をいたしまして大蔵省に概算要求し、折衝し、政府案がきまりますまでには大蔵省との話をまとめる。政府側としましてはそういう決意も含めておる。大蔵省とも、むろんおそくも十一月三十日までにという点については、十分打ち合わせをした法案でもございますから、政府部内としては考え方の統一は一応できておりますので、要求しないのでない、要求するにつきまして、調査会の慎重御審議のアドバイスを待って遺憾なきを期したい、そういうことの条文に現われました表現でありますことを御理解いただきたいと思います。
  209. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 どうもおかしいですね。大臣、あなたの今おっしゃったことをお気づきになりませんか。概算要求は八月三十一日ごろやっておる。これは慣例です。その場合は、大蔵省の方は文部省要求予算総額というものをまず検討する。教科書だけ十一月三十日まで待ちはしませんよ。そこで大臣も御答弁をしながら困ったとみえられまして、答申がおそい場合には答申を待たぬで概算要求でやるのだと言われる。こういう法案々作って本会議にまで提案して、国民に大きくアピールしておる調査会、この法律は調査会法と言ってもよいです。第一条に趣旨を書いただけで、あとはみんな調査会です。その調査会の答申を待たないで、大蔵省に文部省は概算要求をするということになれば、何のための調査会かということになりますよ。あなたは今そう言われた。また事実上文部大臣としてはそうせざるを得ないでしょう。十一月三十日が期限の終期だ、だから実は九月か十月かに出してもらいたいと言っても、こんなものをうたっておる限り、そう簡単に出てこないかもわからない。もとよりこの調査会のメンバーが、あなたの支配下にある関係行政機関の職員であれば別です。これはこの三項にも問題がありますけれども、「委員二十人以内で組織し、委員は、学識経験のある者及び関係行政機関の職員のうちから、」と、こうある。文部省職員調査会、私はこれはおかしいことをするものだなと思うのですよ。義務教育教科書を無償にするかどうかということをやるのに、文部省職員、文部大臣の監督下にある職員がやる。それから、まあ関係機関だから大蔵省あるいは自治省が入るのかどうか知りませんが、これはお尋ねすれば長くなるからやめますが、そういうものならば、意思を疎通して、おい、どうなんだ、じゃあ、もし君のところは出なくても、おれはもう八月三十一日に第一次要求を出さねばならぬから、七億円また出しておくぞ。こうなれば、何のための調査会か、これは全くおかしいですよ。ここのところはどうなっているのですか。法律に書いた以上は、十一月三十日とした理由があると思う。
  210. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 先ほどお答えしましたことは、おそくも十一月三十日までとございますから、最悪の場合をいいますか、最もおくれた場合を想定して一応申し上げました。四月一日から施行されますから、予定でございますから、順序通り調査会ができますれば、八月末日までに概算要求を出すというのが従来の慣例であることは、今御指摘の通りでございます。それに間に合うように答申を出していただけるかもしれない。その場合は従来通りにやれる。もし最もおくれて十一月三十日であった場合はどうするか、それも国会に予算案を提案しますまでは一カ月近い余裕がございますから、その間に十分に大蔵省の査定もできましょうし、盛り込むことができる。最悪の場合でもそうでございますということをさっき申し上げました。
  211. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 これは時間をとりますから、もう私は反駁いたしません。ただ昭和三十八年三月三十一日限りでこの調査会はもうなくなる。これはどういうわけですか。こういう調査会というものは少なくとも私の知る限りでは二年くらい以上あったのです。昭和三十八年三月三十一日までに結論を出させるのだ、これはなくなると、こうしている。これがなくなって、なるほど第一条の趣旨の精神を生かす結論を出してくれてなくなったらいいけれども、ついにこれを具体化することができないでなくなってしまった。幸いなるかな参議院選挙は済んだ、まあええわいということで、早くこんなものはなくしてしまえ。いいですか、これはひがみじゃないですよ。そうとれる法律になっているのです、文部大臣。これは一体どういうわけなんです。どんな調査会だって二年以上ですよ。憲法の二十六条に基づいた義務教育の無償、それについて審議する、来年の三月三十一日でこれはもうなくするのだ。どうもこれはおかしいと思いませんかね。このわけを一つ聞かせて下さい。
  212. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 第一条で教科書を無償とする方針は確立させてもらうわけであります。第二項でもってその具体的なやり方を法律で定めるということだけが残されておる。その第二項の法律案を作るについては、文部省だけで考えるよりも、調査会を作りまして、衆知を集めてその基礎をアドバイスしていただく方が適切であるというためのものが調査会でございます。従って実施する方針が定まり、具体的方法を検討するとならば、この調査会は一年間あれば十分であろう、それが一年限りで調査会というものがなくなるという規定ができたゆえんでございまして、方針そのものは義務教育学校の教科書を無償とすることに、日本国民である限りだれ一人異存はない課題でございますから、実行方法だけについて現在も、野原さん御承知のように教科書の臨時措置法がございますが、あれを基礎に、あれでやれぬことはございません。けれども全面的な無償方針を立てるとならば、教科書会社も今のままの通りであっていいかどうか、配給機構も今のままと寸分たがわないものであってよろしいかどうかというふうなことも、当然検討を加うべき一つの課題であろうと推察するわけですが、そういうことも含め、三十八年度以降の年次計画等についても、私どもの立場からいけば一年でも早く完成することを望みますけれども、国の財政規模等を考え、あるいは現実のこの実施にあたってのいろいろな角度からの検討があり得るでございましょうから、ともかくその年次計画につきましても調査会で検討していただく、そのことを、立法事項に相当するものは第三項に基づきまして立法措置を講じて、次の国会で御審議願って、その上で初めて確定するという建前の方が正しいであろう、そういう構想が盛られておるわけであります。
  213. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 それではお尋ねいたします。これはやめておこうと思いましたが、お聞きしなくちゃならなくなった。調査会というのを置いたのは、衆知を集めるためだという御答弁がございましたから、これは大事な点ですからお聞きいたしますが、この委員は二十人、学識経験者とそれから関係行政機関の職員と、こうある。これで構成する。この比率はどうなるのですか。それから学識経験者とはどういう人をさすのですか、大臣
  214. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 その比率までもこうだと申し上げる構想は具体化しておりませんが、関係行政機関といえばもうそれだけでおのずから範囲はきまったようなものでございます。さっきも野原さんおっしゃったように、大蔵省なり自治省なりというのが直ちに浮かぶ連想でございまして……
  215. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 文部省もある。
  216. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 文部省もむろんその主人役でございますが、そのほかにはちょっと今即答いたしかねるくらいの限られた範囲であるわけであります。そのほかの学識経験者は、学界ないしは言論界その他の学識経験者と目される人、それをもって構成するという建前であります。
  217. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 比率がきまっていないとすれば、これはお尋ねしても御答弁ができないだろうと思う。私が心配するのは、大事なこの調査会、これが官僚だけででき上がる。あなたが指揮監督権を持っておる文部省の役人と大蔵省の役人と、そういう者が行って政府の役人だけでこんな調査会ができて、何で衆知を集めることになるかということ、広く衆知を集めるというならば、衆知々集めるような調査会にしなければならぬ。しなければならぬのに実はそうならない心配がある。だからお聞きしたのです。いずれにしてもこの問題は私どもは非常に問題がある。  そこでこれは大臣質問ではなしに、この教科書法について要望いたしておきますが、公聴会なり、それから全国的な地方公聴会を開いて、国民が最も大きな関心を持っておる問題ですから、これは広く国民の意見を聞く、それが何よりの衆知だ。この方途を今から一つおとりになるように、これは要望いたしておきます。もちろんそのときには社会党の教科書法案についても国民の審判を受けることは、私どもはいささかもあとに引くものではないのでございまして、これは十分一つの国民の審判を受けて、衆知を集めて、あなたの御答弁のようなことで対処しなければならぬということを、要望いたしておきたいと思うのであります。  大きく第二項目ですが、高等学校急増対策、これもこの分科会で相当質問が出たということを私も承ったのです。承りましたが、大事な個所二、三についてお聞きしておきたいのであります。  昭和三十八年から四十年にかけて高等学校の生徒はどれだけふえるのだ、いろいろ調べて文部省の計画等もあさってみますと、百二十三万人ふえる。この百二十三万人というのは、定時制の高等学校生も入っておるのかどうか、このことについてお聞きしておきたいと思うのであります。
  218. 杉江清

    ○杉江政府委員 入っておる数字でございます。
  219. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 そうなりますとこの大事な点は、百二十三万人ふえると読んだこの根拠ですね。百二十三万人ふえるということを土台に計画を立て、起債五十億、交付税九十一億、予算には十三億、こう組まれて、これで昭和三十七年度を迎えるのだ、三十八年四月一日に間に合わせるのだ、こういう方針ですから、私はこの百二十三万人という数字を一体どういう基礎においてお読みになられたのかということが、これは大事な問題点だろうと思うのです。御説明願いたいと思う。
  220. 福田繁

    福田(繁)政府委員 お答え申し上げます。三十八年以降の高校急増期におきます生徒数の推定の問題でございますが、これは私どもといたしましては大体三十五年の入学率を基礎にいたしまして——三十五年と申しますのは、大体入学者が非常に多いときでございます。それを基礎にいたしまして、その入学率を三十八年、三十九年、四十年、その三カ年間は少なくともそれ以上の入学率で、最低その程度は保証するというような考え方に立ちまして、百二十万の増加生徒数を推定したわけでございます。
  221. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 百二十万人ですか、百二十三万人ではなしに……。
  222. 福田繁

    福田(繁)政府委員 百二十三万人でございます。
  223. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 そうなりますと中学校の卒業生徒に対しての入学の比率を、どのようにお考えになられたかということをお聞きします。
  224. 福田繁

    福田(繁)政府委員 三十五年は中学校の卒業者が百七十八万一千人でございます。従いまして入学率五九・九%になっておりますが、高校入学者数は百六万七千人、こういうふうに三十五年の数はなっております。
  225. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 そうじゃないのです。各年度別に昭和三十八年度の進学率はどれだけか、それを聞いておる、三十九、四十年。
  226. 福田繁

    福田(繁)政府委員 大体三十八年は中学卒業者を二百五十万と見込みまして入学率六〇%、高校入学者は従って百五十万三千ぐらいになります。それから三十九年度は中学卒業者が二百四十三万九千、進学率は六一・五%で高校入学者は百五十万、四十年は中学卒業者が二百三十六万九千、入学率は六三%といたしまして高校入学者は百四十九万二千でございます。
  227. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 それを合計すると四百六十六万四千人になり、昭和三十五年度が三百三十二万六千人だから差引百二十三万八千人ふえる、こういう勘定ですね。あなたが十分な答弁をしないから、私が答弁しなくちゃならなくなる。これは気をつけてもらいたい。  そこでもう一ぺん初中局長にお聞きしますが、昨年の四月に入った者、昭和三十六年度の入学率は何%になっておりますか。定時制を含めて……。
  228. 福田繁

    福田(繁)政府委員 これは三十五年に比しまして入学率は高くなっております。中学卒業者が百四十一万でございます。高校入学者数が九十三万五千、入学率といたしましては六六・三%、ただこの三十六年は卒業者の数が非常に少ない年でございますので、入学率としては前年に比べて非常に高い率になっております。
  229. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 これは文部大臣、お聞きの通りです。昭和三十六年には六六・三%入学をしておるにかかわらず、三十八年、三十九年、四十年は六〇%、六一・五%、六三%と押えているのです。時代逆行の計画をあなたは立てようとしておる。これは私はいろいろ調査をしてみましたが、こんなおかしなことはないと思うのです。昭和十六年でございましたか、当時は中学校、高等女学校と呼んでおった。今の高等学校にあたるものですね。それに実業学校、師範学校を含めたパーセンテージを見ましたら、入学率は一五%です。それが二十年間で今日六〇%台にきておる。この比率をずっと統計で調べてみますと、毎年二%から三%ずつ上がってきておるのです。昭和三十六年に六六・三%であるのを、これを三十八年は六〇%に下げる。今度の文部省の計画は六%の者はどこにもいないようにしてしまうのです。学校に入りたくても入れないのです。計画にないのですから収容ができない。私はこんな時代逆行の計画はないと思うのです。この点についてどういうわけで入学率を低く押えたのか、文部大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  230. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 三十五年の実績が大体六〇%見当かと記憶しますが、三十六年は先ほど政府委員も御説明申し上げましたように、生徒数が急激に少なくなった年であります。従って三十六年の高校入学については、各都道府県ではところによっては、頼むようにして入学してもらうくらいなところもあったと聞いております。そういうことでございますから、急激対策についての入学率の基準をとるにいたしましても、またさらに学校の校舎を中心考えます場合、三十五年の終戦以来卒業者、入学者が一番多いときを押えて、そしてピークに備える基礎にしていくことが当然の処置だと考えます。なるほど進学率と申しますか、入学率と申しますか、三十六年度は急に上がってはおりますが、それは絶対数からいうと非常に少ない。それに対して六六%ということでございまして、もっとたくさんの生徒数が入学してくる、また在校生徒数がそれよりもっと多くなる状態に対処します場合は、三十六年度という在学生徒数の少ないときを基準考えたのでは、かえって計画としてはおかしくはないか。基礎にとるならば、三十五年の一番多かったときを基礎に考え、それよりさらに多くなるときになおかつ六〇%、六一・五%、六三%というパーセンテージを予想しますことは、三十六年に比べれば絶対数からいきますればうんとたくさん進学するという措置を講ずるゆえんでもございます。従ってわざと三十六年をとらないで、三十五年を基礎に考えているわけでございます。
  231. 福田繁

    福田(繁)政府委員 ただいまの大臣お答えになりました通りでございますが、私の説明で足りなかったところを補足さしていただきますと、もちろん進学率は長い目で見ますとだんだん上がっておりますけれども、必ずしも本年高いから翌年それ以上になるということではございません。過去の実績を見ましても、高い年に続きましてそれ以下に下がるという年もかなりあるようでございます。従って高校の進学率が大勢として上がって参りますのは、やはり国民生活の水準の向上とか、あるいは経済の成長発展に伴うもの、こういうような考え方に立つわけでございます。従って三十五年の約六〇%を基礎にいたしておりますのは、最も近い時期における進学率がいいということと、三十六年は今申しましたようにちょっと異例の年でございますので、これを除いて、少なくとも三十八年ないし四十年の急増期におきましても、三十五年の進学率程度を保証できる措置を講じたいということであります。それ以後におきましては、昭和四十五年にかけましてだんだんに進学率は高まる。私どもの計画としては四十五年には七二%程度までいける。いくべきである、こういう考え方で進んでおるわけであります。ちょっと補足さしていただきます。
  232. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 ただいまの御答弁は私は了解できないのです。それではお聞きいたしますが、昭和三十四年の入学率は何%になっておりますか。
  233. 福田繁

    福田(繁)政府委員 五六・三%でございます。
  234. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 昭和三十四年が五六・三%、昭和三十五年が六〇%、その差は三・七%の上昇です。それから昭和三十六年は六六・三%、まあこれは異例の事態であったとあなた方は申されますけれども、これだって異例の方法をとらなくたって四%から五%上昇しておるのです。池田内閣は経済成長を建前にしておるのです。経済が成長して国民の生活が豊かになれば、局長が今御答弁されたように、高等学校への進学率は高まる。私は経済企画庁で調査したところの統計を持って参りましたが、中学校だけでよいというものは二%です。九八%は高等学校以上を卒業させたい、六〇何%が大学、三〇何%は、自分の生活の都合からせめて高等学校だけでもということになっている。これが今日の実態です。今日は高等学校を出なければ大企業は雇ってくれない。中学校卒業では、ほんとうに小使と申しますか、全く将来性のない雑役しかないのです。そういうことを親もよく知っておりますし、子供も知っておりますから、進学率はどんどん高まってきている。三十四年が五六・三、三十五年が六〇、三十六年は六六・三、この進学率のカーブから参りまして、今度の文部省の計画した百二十三万の算定基礎、これを六〇%に依然として——三十五年から二年たっておるのに、三十五年と同じ進学率に押えるということになれば、池田内閣のもと、高度経済成長をやっているのに依然としてそれに押えられたら、それではあとの七%か八%のものはどこに行ったらいいのですか。これは入学したいのです。現実には今日までこの三十五年の六〇%の事態であって、三十六年の六六・三%は無理やりに入れたのだと言われますけれども、必ずしもそうとは言えない。無理やりにひったくって来い来いと言って、ひもをつけて入れたって、親がやらなければ、また子供に入る力がなければ、やはり入れなかった。こういう点から見て、この百二十三万人の進学率というものを低く見ている。低く見た上に計画を進められておるという、このこと自体が、どだい、これは国民の願いにかなった計画でない。根本からなっていない。これは現在の趨勢を何ら見ていない。だから、その計画の一番土台になる生徒数の算定そのものがこういう状態では、私はこれは実に大へんなことになろうかと思うのであります。先ほども申し上げましたが、昭和十六年は一五%、三十六年の今日は六六%、そうして文部省の計画によりましても、昭和四十五年に池田内閣の経済十カ年計画が完成するときには七二%、こう見ておるのです。そういう世の進運にこたえるような進学率の計算をすべきではないか。それがそうなっていない。このことを私はきわめて不満に思うのです。もうこれはあえて文部大臣の見解は求めません。きわめて不満です。  そこで、その次にお尋ねをいたしたいことは、百二十三万人を収容するとして、その経費を総額幾らと見ておられるのか。これは公立私立を含めて、公立は八十万人、私立は四十三万人でやっておられますが、その財政措置としての経費の総額は、高校生急増の施設と設備だけでけっこうですから、どれだけと見ておられるか、承りたい。
  235. 杉江清

    ○杉江政府委員 公立につきましては先般閣議了解がなされまして、事業総量に必要な経費は五百五十億、私立につきましては百八十億、合計七百三十億でございます。
  236. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 この経済企画庁の出した高校の急増対策の資料を見てみますと、約九百億円なければならぬという方針を出している。これは経済審議会の教育訓練小委員会が政府に答申をしたもので、それによれば九百億円だと見ておるのです。それを七百三十億だと押えておりますが、この差はあまりにもひどいじゃないですか。これは経済企画庁の方針から見て非常に少な過ぎると私は思うのですが、御所見を承りたい。
  237. 杉江清

    ○杉江政府委員 この所、要経費の積算におきましては、各都道府県の実際の具体的な計画を基礎にいたしまして、その所要坪数を計算し、それに本年度の予算単価をかけて、この数字を出しておるわけでございます。従いましてこの単価の問題または構造比率等の問題につきましては、実情にかんがみて必ずしも十分だとは思いませんけれども、ただいまのところ、積算といたしましてはほぼ妥当な数字が出ておると考えております。なお、ただいま御指摘の数字については、おそらく経常費とか人件費等が入っておるのではないかと推察いたしております。
  238. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 いや、そうじゃないのです。経済審議会編の「国民所得倍増計画」という本の百三十八ページをあけて読んでごらんなさい。施設、設備だけと書いておる。これは専門家がしさいに検討した結果、最低約九百億円要るというのです。それに比してこれはあまりにも少ないと思う。これではたして学校が建つのか、収容できるのかということです。文部大臣の確信の度合いを承りたい。三十八年四月はあと一年ですぐくるわけですね。だから、三十八年四月に四十何万人ふえるのだが、これはほんとうに収容できますか。私立学校の方に四十三万人あなたの方では割り当てられて、私立学校の方の受け入れ体制はどうなのか、私立学校の方はほんとうに四十三万よろしゅうございますと文部大臣に確答したのか。ここら辺をよくお聞きしておきたいと思います。
  239. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 私立学校の四十三万は、これは私立学校の特色と申しますか、文部省が一々具体的な学校に手を染めまして確認したものの集計の上に立っておるわけではございません。もっとよけい私学の方に期待してよろしい、ぜひそうしろという私学方面の要望もございましたが、今御指摘のような点もあわせ考えられますので、御要望よりも少なくして、それを公立の方に振り向けるという割り振りが、八十万と四十三万になっておるわけでありまして、私は私学ではこの四十三万の消化をしていただけるものと信じております。
  240. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 それはあなたが勝手に信じておる。これを受け入れなかったらどうしますか。あなたは、終戦処理費としてでもこれは政府の責任としてやらなくちゃならぬ、また都道府県云々という局長の御答弁もありましたけれども、一体都道府県だって、ほんとうに八十万を消化できる準備体制を整えておるのかどうか、怪しいものです。私は一県々々については一々ここで申し上げませんが、それでは東京の情勢はどうだ。北海道の情勢はどうだ。青森はどうだ。一体文部省の計画では、学校を建てるのに公立幾ら私立幾らという綿密な計画は立てておる。立てなくてもよいすし詰めまで立てておられる。これは一学級五人ふえるというようなばかなことはないのですが、五十五人の学級の高等学校ができる。こういうように紙の上でプランだけ立てておられますけれども、今文部大臣が御答弁になったように、四十三万人と信じているだけでは保証はないのでしょう。私立学校が四十三万人消化できなかったら、子供たちはどうなるのですか。これは文部大臣、市民の中におりいって下さい。今中学校の二年生、今度三年に上がる家庭では、これが一番問題になっておる。私はこの冬の休暇に、ある中学校の三年のPTAの総会に来てくれというので行きました。もうこれだけで頭に一ぱいきてしまっておるのです。どこの学校に行っても、親たちはどうなるのですかと言う。これに対して文部大臣は、四十三万人は受け入れてくれるでしょう。それから八十万については何とかなるでしょう。もうあと一年しかないのに、何とかなるでしょうといって、小屋にほうり込むわけにもいかぬ。土地を買って、校舎を建てて、勉強ができるような施設設備をして、来年の四月一日には、このベビー・ブームの子供たちを収容してやらなければならぬ。それはだれがやるのか。あなたがやるのですよ。そのやるあなたが、信じておるというような程度では了解できませんね。  大臣、よく御承知のように、あなたが文部大臣になられて数年たつわけですが、私どもは口をすっぱくして言ってきたではありませんか。今日の政府に対して、間に合いませんよ、間に合いませんよと言ってきたではありませんか。来年になってやったって一年しかありませんよ。今から長期の計画を立てて、土地の買収なりその他、教育委員会左指導してやらなければならぬ。私立学校にも一々話をつけていかなければならぬ。各府県には私立学校の協会ができておるのですから、そこを通じて、そこの予算措置はどうやるのだということを、綿密に立てなければなりませんぞということを警告しておるにもかかわらず、それをやってきていない。やってきていないから間に合わない。私はこういう点はきわめて残念に思うのであります。この問題は、実は申し上げたいことは山ほどあるのです。経常的経費にしても、臨時的経費にしても、あるいは工業高等学校との関連においても、山ほどございますけれども、私は主査に協力をして、この急増対策についてはこの辺でやめておきたいと思います。しかし、私は今から申し上げておきます。今のような文部省の体たらくでは、高等学校の急増問題は大へんな社会問題になるということです。百二十三万人自体がおかしいのです。中学浪人ができて、親も子も学校に行きたいと言うけれども、入る学校がない。それが何十万だということになりますよ。そして現実に百二十三万人と計画した子供自体を、まともに学修させるところの施設、設備を提供できなかった政府の責任は重大ですよ。こういう点、私どもは非常に残念に思うのです。  そこですし詰めに関連してお尋ねをいたしますが、今度の予算では、小学校の一学級の定員は五十六名を五十四名にした。中学校は五十四名を五十二名にした。これはしないよりもましでありますが、欧米の一流先進国家では、今日では四十名以下です。ところが日本では、残念ながらまだ五十六名が五十四名、五十四名が五十二名の線をさまよっておるわけであります。ところが定数法の本則を見てみますと、一学級五十人でなければならぬのに、いまだに五十四人と五十二人です。私はこの問題は、昨年でございましたか、文教委員会で質問いたしましたら、今の次官の内藤さん、当時の初中局長が、昭和三十八年度には必ず本則の五十人を実現いたしますと、大みえを切られておるのであります。私はこのことについては内藤さんに敬意を表して、必ずそうやってもらいたいということを言いましたが、ほんとうに昭和三十八年度には小学校の五十四名も、中学校の五十二名も、五十名になりますかどうか、今から文部大臣の御決意を承っておきたいのであります。
  241. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 なさねばなりませんし、なせると思っております。
  242. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 ぜひ一つやってもらいたい。  そこで、公立高等学校の定数法が第三十九国会で通りまして、そのとき実は附帯決議を付したのであります。その附帯決議は昨年の十月二十日でございましたが、「本法が施行されるにあたっては、現在各学校の課程別、職種別の教職員の実績を尊重し、その現状を下廻ることのないように配慮すること。」。こういう附帯決議であります。特にこの附帯決議については、時の内藤初等中等教育局長は、これは必ず配慮するということを言って、そして文教委員会は、私ども不満でございましたけれども、この法案にこの附帯決議を条件に賛成をしたのでありますが、どのような配慮をしてきたのか。附帯決議というようなものは、これは法律じゃないのだからというのでほうってきておりませんか。ほんとうにこの附帯決議を指導しておりますか。都道府県の教育委員会、五大市の公立高等学校の所管の教育委員会等にどういう指導をして、どういう配慮をしてきているか、承りたいのです。
  243. 福田繁

    福田(繁)政府委員 定数法に関する附帯決議の問題でございますが、お読みになりましたように、「実績を尊重し、その現状を下廻ることのないように配慮すること。」こういうような御趣旨でございますが、文部省としては、当時の内藤初中局長は、当然この附帯決議の精神を体しまして、関係の都道府県等に対して指導したものと考えております。来年度におきましては、私どもは定数法に基づいて、約七千六百人程度の増員をいたしたいと考えております。従って、各都道府県あるいは五大市等の虚数というものがきまって参りますと、そのワク内で各学校の配置というものが、今申しましたように、今の上回っている実績を下回らないように措置をして参りたい、こういうような趣旨で、私も教育委員会等に対して、会議のたびに、あるいはおりに触れてそういう助言をいたしております。
  244. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 局長、今大阪市で問題が起こっているのです。高等学校の設置基準四号という有力な定数を獲得した大阪市の工業高等学校で問題になっている。この法案が出た当時、その工業高等学校の諸君は国会に来たのであります。大阪市の場合には、これは下回りますということであった。私は委員会でも、なお心配でしたから、個人的にも内藤局長に尋ねた。そうしたら、いかなることがあっても下回らさせない、責任を持ちますと言われた。私は最後まで、実はこの法案は危険だ、これはあぶないじゃないか、せっかく甲号という有力な定数を獲得しているところが、この法律ができたために下回らされるということになったら、これは学校当局に対して申しわけないじゃないか、こう言いましたら、いや、そういうことは絶対にないと言ったにもかかわらず、今日大阪市の工業筒等学校は困っておるのです。この法律によって市の教育委員会は突き出してきておる。これは一つ指導して下さい。文部省は責任を負うと言っておったのですから、責任を負って下さい。法律を通すときにだけ頭を下げて、責任を持ちます、こう言って通しておきながら、あと通って、私どもも文部省を信頼して、いや、文部省は大丈夫だ、心配するなというので帰したのです。定数の低いところがよくなるのだから君らは下がることはないのだから、というので説得して帰したところが、実はそうではない事態が今日大阪市において起こっておりますから、すみやかに調査をして、責任ある処置をとってもらわなければ困る。このことを申し上げておきたいと思うのであります。  その次には、給食の問題でお尋ねいたします。今日給食の普及上昇率は何%になっておりますか、お聞きします。
  245. 前田充明

    前田(充)政府委員 給食普及率でございますが、これは三十六年の五月の調査でございます。小学校が人数にいたしまして六四・二%、これは完全給食でございます。それから補食給食が五・八%、合わせて七〇%でございます。それから中学校の方が、完全給食が九%、補食給食が三・七%、合わせて一二・六%でございます。
  246. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 学校数一つ御発表願いたいのです。
  247. 前田充明

    前田(充)政府委員 学校数で申しますと、小学校の方が、完全給食が四四・三%、補食給食が八・四%、合わせて五二・八%でございます。中学校の方が、完全給食が一二・一%、補食給食が五・一%、合わせて一七・二%でございます。
  248. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 そういたしますと、生徒の数で小学校は七〇%で、中学校は一二・六%、学校では五二・八%が小学校、一七・二%が中学校、こういうことだそうであります。文部省の体育局から出た五年計画、十年計画の学校給食の計画書を私も拝見をしたのであります。これだけの%で普及上昇率はわずかに三%内外だろうと思うのでございますが、はたして五年計画で一〇〇%に達成できるのかどうか、十年計画で達成できるのかどうか。これはあなたの方の計算しておる普及率からいいましても、私どもは今の文部省のやり方からいったならば、五年が十年になり、中学校の十年が二十年になる、それでもできない。残念ながらそう思わざるを得ないのでございますが、いや、野原の言うことは間違いだ、五年計画で給食を完全に達成することは可能だ、中学は十年で可能だという確信があるならば、その確信の度合いをお示し願いたいと思います。
  249. 前田充明

    前田(充)政府委員 小学校の方は七〇%でございますので、残りの三〇%ということでございます。従いましてこれを五年で割れば六%ということになります。そういたしますと、従来の伸びから申しますと、相当苦しいとは思います。中学校については、なおもちろん同じことが言えると思うのであります。ただ私考えますのに、学校給食の必要性ないしは効果という点につきましては、もう御承知の通りでございます。しかしながら現実問題としてのみ今うまくいかない現出は、地方の小さい学校に支障があるのではないか。ことに小学校についてはそういうことが言えるのではないか。そういたしますと、施設の点と、もう一つにはPTAの方々が金を出すことに非常につらい、そういうことに原因があるように思うのでございます。従いましてこの給食興を、できるだけ安くて効果のあるような方法でだんだんやっていかなければならない。そういたしますと、まず第一に私ども考えますのは、ミルクが現在非常に安く飲めているのでございます。小学校においては一円六十二銭、中学校におきましては二円十八銭ということでございますので、その辺ののことを考えまして、ミルクからまずやっていくことによって、やはりそれでは少々つらい給食費でも、出して、何とかやろうではないかという気持に皆さんになっていただいて、そうしてやっていくということを考えるのでございます。従いまして非常につらいけれども、そういうわれわれ文部省の意識と申しますか、意欲と申しますか、そういう点を十分持たなくちゃならない。そういう点も幾分織り込まれているかもしれませんが、ともかくそういう意欲を持っておるのを御了解いただきたいと思います。
  250. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 今度の四月一日から副食物がちょっと変わりますね。カロリーの計算で父兄の負担はどれだけ増額になるのか。
  251. 前田充明

    前田(充)政府委員 父兄負担の増額でございますが、小学校につきましては、これは全体の平均で申し上げるわけでございますが、従って要保護児童生徒の補助金から申し上げますが、従来十七円七十四銭のものが十九円七十六銭になるわけでございます。従って二円二銭上がるわけでございます。それから中学校につきましては、二十二円六十六銭が二十五円三十四銭になります。従いまして、二円六十八銭上がるわけでございます。
  252. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 そういたしますと、小学校が大体五十円、中学校は大体七十円近いものが月に上がる。これは教科書でお尋ねしますが、一四%値上げになりますと、小学校でその単価は幾らですか。
  253. 福田繁

    福田(繁)政府委員 単価でございますが、小学校が六百八十円でございます。それから中学校が千五十五円。
  254. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 そういうことは、私がその次に何を聞くかわかると思うのです。父兄の負担が大きくなっておるじゃないか、荒木文政は父母負担を増大する政策をとっておるじゃないか、こういうことになるのです。これは荒木さんの本意でないと私は思う。物価が上がるということが今日大問題になってきたのですけれども、税外負担と申しますか、税金以外の負担が教育費の面においても、小学校が毎月五十円、中学校は七十円近い。これは何でもない家庭もあるかもしれませんが、何でもある家庭の方が多いのです。特に私の選挙区である大阪市のごときは大へんなんです。みんな給食代が払えないと困っている。準要保護の指定もしてもらえない、また上がるのだ、こういうことでは給食はどんどん辞退いたします。どんなに文部省局長がカロリーを計算して、それから。パンフレットを出して、五年計画、十年計画でやってみるのだ、こう力んでみても、こういうようなほんとうにこまかなところに手の届くような点に配慮のない施策というものは、何にもならぬと私は思うのです。子供の負担、親の負担を多くする政策を、荒木さん、あなたの本意ではないかもしれませんが、遺憾ながらとられてきつつあるじゃありませんか。経済が成長して、みんな賃金が上がったのだからいいだろうとお考えになっては大へんですよ。経済が成長したかどうか知りませんが、実はそうでないところの階級が片一方ではどんどんふえていっておる。こういう事情も考えて配慮してもらいたいと思うのであります。時間がありませんから、給食問題はこの程度で終わっておきたいと思います。  その次は、昨日でございましたか、同価議員の村山君が消防法の一部改正に伴ってお尋ねをしたようでございますが、文部大臣の御答弁も私はじかには聞いておりませんけれども、村山君から承りまして若干不満でございますので、重複するようでございますが、重ねてお尋ねをいたしたいと思うのであります。この消防法の一部改正と施行規則の改正に伴って、本年の四月一日から各学校ごとに防火管理者を置かねばならなくなった。そこでこの防火管理者の資格の問題です。教員でなければならぬという規定は私はないと思う。教員でなければならぬという考えを文部大臣が持っておるかどうかということです。持っておるとすれば、それはいかなる理由によるのかということです。消防庁との間に文部省は長い間折衝されたはずです。私は消防庁に聞きましたら、文部省の意見を十分尊重したのです、こう言っておる。きょうはここに消防庁を呼ぶことができませんでしたが、学校の防火管理者は教員でなければいけないのか、この点、文部大臣にお尋ねをいたします。
  255. 福田繁

    福田(繁)政府委員 御承知のように学校の管理は、もともと教育委員会の権限でございます。防火等につきましてその管理者を定める場合には、学校の教職員の中から管理者を出すのが一番適当ではないか。従来防火等につきまして、学校自体でもいろいろそういう仕事をやって参っておりますので、一番適当と考えております。
  256. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 そういたしますと、教員の本務は子供に教えることです。この法律によって、防火管理者にだれがなるか知りませんが、余分のことをその人は持たねばならぬ。防火管理者の権限というものを私はずっと調べてみて驚いたのです。校長がなるのか、教頭がなるのか、教務主任がなるのか、だれがなるのかわからぬが、あなたの方針でいくと、各学校に防火管理者というものが置かれたら、その人は子供を教える以上の勤務に服さねばならなくなります。それは学級教育法の二十八条との関連でどう考えるか、その点はいかがですか。
  257. 福田繁

    福田(繁)政府委員 もちろん学校教育法の二十八条では、「児童の教育を掌る」というように書いてございまして、教育の任に当たることは当然でございますが、そのほかに教員としては校務を分掌するという責任があると思うのです。従って、そういう直接子供教育に当たるということと、学校職員として校務を分掌するという建前から申しますと、今のような仕事も当然に分掌すべきものと考えます。
  258. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 これは単なる校務の分掌じゃないでしょう。消防法の一部改正で、消防法に基づいて、しかも施行規則で規定される。単なる校務じゃないのですよ。それは学校にはいろいろな任務分担がある。生徒の自治指導係とか、あるいは清掃係とか、いろいろありますけれども、この防火管理者というのは、私は単なる校務じゃないと思う。実は法律に基づいて特別の責任を与えられておりますから、こういうことになりますと、学校教育法の二十八条の本務——校務の分掌ということはなるほどうたっておりますけれども、分掌する校務は本務じゃない。教員にとっては大事なことは本務です。本務であるところの職務を全うできるかどうかということが、大事な問題でなければならぬ。そう考えて参りますと、防火管理者にされた教員は、ほんとうに子供に教えるという職務を全うすることができるであろうか、何かそこに支障を来たさないかどうかということを憂えるのです。大丈夫できるのだ、こういう安易な考え文部省はやられているかと思いますけれども、こういう考え方であなた方が消防庁と話し合いをしたとすれば、これは大問題ですよ。だから、学校の教員が望ましいのだということで消防庁と話し合いをしてきたのかどうか、これは一つあらためて承っておきましょう。いかがですか。
  259. 福田繁

    福田(繁)政府委員 防火管理者の仕事が将来どう変わっていくかということも予想される場合におきましては、これは将来の問題として研究しなければならない点でございますけれども、現在の消防法の関係におきましては、その学校の消防計画を作るとか、あるいは児童生徒の避難訓練の実施をやるとか、あるいは消防施設、設備の点検をするとか、そういったことが主たる任務になっているわけでございます。従って学校の運営として、児童生徒を扱っている限りにおきましては、火災等の場合に備えまして、平素からそういう準備をいたし、いろいろな避難訓練等のことを実際に従来もやってきているわけであります。従ってそういう現在の消防法の規定からいたしまして、学校として行なわなければならないような仕事としては、これはやはり現在の教職員の中でこれを担当してもらうのが適当であろう、こういう考え方に立ったわけでございまして、将来これが非常に変わってくれば、これはまた別の問題として研究の余地はあろうかと考えます。
  260. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 あなたは、従来学校でやった防火、消火の避難訓練と、今度の防火管理者とを同一に扱っては困りますよ。従来なるほどどこの学校でもやってきておる。そういうようなものの担当じゃないのですよ。今度は法律による担当責任者です。この法律を読んだことがありますか。防火管理者は、実は大きな権限が与えられておると同時に、火事でも起こると大へんなことになるんじゃありませんか。この法律及び施行規則では、防火管理者というのがやはり責任を問われることになっておるじゃありませんか。校長は学校の管理者だ。同時に防火管理者も責任を問われるのだということになれば、防火管理者はうちに帰ったって何だかおもしろくない。しょっちゅう緊張しておらなければならぬ。学校全体の防火の管理を教員に与えて、しかも校長がやるのじゃない。群馬県のごときは教頭が押しつけられておる。第八条でございますか、市町村教育委員会はどうしてもこの法律に基づいて設置しなければならぬものですから、設置しなかったら処罰されますから、そこで校長に、学校管理規則によって学校の管理は一任しておく、校長に言いつける。校長は教頭を推薦する。教頭は校長の言うことを聞かなければならぬ、校長にしてもらえませんから。あるいは教育委員会の達しならば聞かなければならぬというので、いやいやながらやっておる。これが今日の現実なんです。これは実は大問題になってきておる。こういうことで、ほんとうに文部省が、教職員子供に教える授業というものをどう考えておるのか。自分が防火責任者にならないものだから涼しい顔をしておりますけれども、子供を受け持たされて、そして防火管理者だと、こう法律で押しつけられたその人の身分になって少しは考えてやりなさい。これは長谷川委員が先ほども申しておりましたように、こういうものは教員にやらせることは酷です。学校の防火の責任者というものは、ちゃんとこれは、警備員というか何というか、そういうものを置くべきなんです。そのことを予想して消防法には、教員でなければならぬとは書いていないのに、文部省が、子供の授業を一生懸命やれと指導しなければならぬ文部省が、いや教員でなければならぬのだと言う。教員の気持も知らないで、一体現場で今日の新教育がどんなに大へんな事態であるかということも知らないで、教員でなければならぬのだといって消防庁に話したのでしょう。消防庁は言っておりますよ。消防庁は、教員でなければならぬということは私どもは主張はしていない、この法律はどこにも教員が防火の管理者でなければならぬということは書いておりません、こう言っております。これはよそが言って、そのときに文部省は、いや生徒の授業に困る、教員は子供の授業に専念してもらわなければならぬのだという指導をすべきであるにかかわらず、その指導をしないで、逆の立場をあなたはとろうとしておりますね。これはいかがなものでしょう。初中局長としてそういう心がまえというものは、私はいかがなものかと思います。もう一ぺんお考えを承っておきます。
  261. 福田繁

    福田(繁)政府委員 私どもは、現在の学校の運営からいたしまして、ほかから人を連れてきてそういうものに当たらせるというよりも、学校の教職員がそういう仕事に当たるというのが一番適切である、こういうように考えておるわけでございます。
  262. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 この問題は、私どもまた文教委員会であらためて問題にしたいと思うのであります。  文部大臣にお尋ねします。あなたは失礼でございますけれども、ときどき失言をなさる。私は最近あなたの失言についてやはり聞いたことがあるのです。それは日教組のことです。あなたの一番きらいな日教組です。この日教組は、あなたに言わせると道徳教育に反対しておるそうです。日教組が道徳教育に反対しておるということをあなたがおっしゃったものですから、私は日教組の執行部に問い合わせたら、とんでもないことだ、日教組は道徳教育に反対した覚えはありません、こう言うのです。どういう根拠があって道徳教育に反対しておるという、そのことをおっしゃるのか、承っておきたいと思う。
  263. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 昭和三十一年でございましたか、義務教育の課程に道徳教育の時間を特設するという制度が戦後加えられたことがあったと思いますが、そのとき以来今日まで、新しい教育課程そのものに反対、道徳教育反対という、少なくとも文部省が主唱するところのものには反対という態度は、終始一貫きわめて明確に主張し続けているのが日教組だと思います。また全国大会の決定、中央執行委員会の決定の線に沿って、組合員を指導しておる姿が適当でない、けしからぬと私は言うのです。
  264. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 日教組は道徳教育には反対をしない。日教組は、子供の全生活の中で子供の道徳的指導をしなければならぬ、こう言っておる。道徳教育は重要だと言っている。人間の形成に役立つ人格の陶冶、もとよりこれを否定したら教育は成り立たぬです。これは教育の非常に大きなウエートを占めることは、もうここで申し上げる必要もない。日教組は道徳教育には反対していないですよ。文部省が権力をもって、倫理科というのか、修身科というのか、道徳科というのか知りませんけれども、そういう教科を特設する、あるいは時間を特設する。そうして特設した時間、特設した教科を通じてお説教をやっていくようなことでは、ほんとうの人間形成はできるものじゃない。そういうことになると、その時間にたよって戦争前の修身の二の舞を演ずることになるといって反対をしておる。これは道徳教育に反対じゃないのです。いかがでございますか。
  265. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 今おっしゃるようなことが、道徳教育に反対しておる現実の姿だと思います。小中学校における教育課程の基本は、文部大臣が責任を持って定めねばならないことに法律上、制度上義務づけられております。そのことに対して、建設的な批判ならば、これはあり得ましょう。批判するだけならば別ですけれども、組合の意思を決定して、五十万と称せられる組合員に指令を発して、具体的に乱暴、ろうぜきを働くところまで発展する姿での、文部省の責任においてやろうとするところの道徳教育に反対することが、道徳教育に反対していることだと思います。本来職員組合は、教育の実体そのものについて、具体的に影響をもたらすようなことはやるべき立場ではない。それを逸脱して、しかも法律に基づいて権限を与えられ、責任を持たされておる立場において、全国民に責任を持つ立場でやろうとすること、そのことに具体的に反対をする。日教組自体の教育課程が、文部省教育課程指導要領を骨抜きにする目的をもって研修をやる、そういうふうに指導するやり方で、しかもさっき申し上げましたように、あるときは暴力ざたに訴えてでも反対をするということが、けしからぬと言うのであります。
  266. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 あなたは大へんなことを申されますね。戦後の教育というものは、命令服従の考え方であってはいけないというところから出発してきたのです。権力が命令し、服従を強制するという、そういう行き方というものを今日の教育は否定しているのですよ。あなたは依然として命令服従の教育なんですか。文部省が決定したものは、これは絶対順守しろというのですか。そういう文部大臣教育基本法違反ですよ。文部省が定めたものは、いかなることがあっても聞けと教員に言うのですか。どんなことがあってもついてこいと言うのですか。右向け右と、みな国民を戦争に連れていったと同じようなそのやり方は、憲法違反ですよ。あなたのやり方は憲法違反ですよ。憲法違反で、教育基本法違反ですよ。権力というものは、そういうものを強制するものじゃないですよ。今日の教育はそうなっているじゃありませんか。文部省が教科課程を定めたことについて、反対を言って何が悪いのですか。教員が集まって一人や二人が号命をしてやるのじゃない。全教員がこういう修身科というものには苦い思いをしている。戦前の教師は特に苦い思いをしている。忠義、孝行を押しつけて、そうして戦争に勝て、天皇陛下のために死ねといって押しつけてきた。私は戦前の教育の一番の弊害は修身科であったと思う。これが日本を誤らしたのだ。だから、そういう苦い経験があるから、修身科を特設する、あるいはお説教の時間を持つということになると、またそのあやまちを繰り返すのではなかろうか、人間を形成し、人格を陶冶するというのが教育の目的だから、それならば一切の子供の全生活の中から指導していくべきじゃなかろうかと言って、何がいかぬのですか。そういうことを言う者は、不逞のやからですか。何がいけませんか。そういうことを教員諸君が言ったから、これはよろしくない、これは赤だ、これは不逞のやからだ、車夫馬丁だというような、そういう考え方、書き方自体が、私どもは納得できないのです。戦前の道徳教育というものはどういうことであったかは、荒木さんはよく御承知だ。あなたは今日文部大臣として、戦前の道徳教育を賛美する立場にはないのです。皇国臣民の練成、天皇のためには喜んで死ぬという忠義、君臣の義、そういった道徳の核心が戦前はそこにあった。それをあなたが賛美したら、あなたは直ちに文部大臣ではなくなるのです。だから、あなたはそうではなかろうと思う。しかしそういう方向に、今日の政治の動きを見ておるというと行くかもわからない。持っていかれるかもわからない。文部省の官僚が作った教育課程を、教育勅語を押しつけられたごとく、これをけんけん服膺せよと押しつけられたら、現場の教師はたまったものではありません。だからそういうことには反対です。何も悪いとは思いませんよ。憲法はそんなものは禁止していないのです。私どもは憲法と教育基本法で行動しなければならぬのです。日本教育基本法は、日本の文部大臣がそう言ったから、それに従わなければならぬということにはなっていないのです。間違ってはいかぬと思うのであります。  それで主査注意されていますからやめたいと思いますが、最後に私は入学試験のミス問題は、この分科会でも取り上げられました。またあしたの朝刊にも載るかもわかりません。昨年荒木文部大臣は、九州大学試験のミス事件が起こったときに、衆議院の文教委員会でも、参議院の文教委員会でも、私どもが文部大臣にその所見をただしたら、文部大臣はほんとうに謹厳な態度で、何と申されました。御記憶だろうと思うのです。このようなことがないように私は監督を厳重にして、もうこういうことがないようにいたしますと誓ったのであります。文教委員会を通じて国民に誓ったのであります。その誓った文部大臣が監督される国立大学がやったミスではない。監督しなければならない文部省がそのミスをやったのです。私はけさの新聞を見て驚いたことには、一つじゃない。二つじゃないでしょう。三つじゃないでしょう。一体どれだけミスをやったのか。何という文部省なのかと私は情けない。私ども文教に関係しておる者として、臼井さんもそうですが、ほんとうに情けないのです。一つじゃない。三つじゃない。三つじゃない。こんな文部省がかつて日本の歴史にございましたか。文部省の出題する試験に毎日毎日ミスが出てくる。商船学校に出た、電波の学校に出た、高等専門学校、それは佐世保だけではないでしょう。函館もある。こういうようになって参りますと、私は一体、文部大臣は恐縮千万に思います、これだけでは済まぬと思うのです。これはそれだけでは済みませんよ。一ペンのそれだけで国民が納得すると思いますか。この問題を通じて、国民は一体文部行政というものは何だと言っていますよ。一体どれだけのミスが出たのか、どうしてそんなに幾つものミスが出たのか。文部省には賢い人もおるだろうと私は思うのだが、一体入学試験問題を何と考えておるのか、どうしてそんなことになったのか。私は追い打ちをかけるつもりはありません。追い打ちをかけるつもりはありませんけれども、これは私は徹底的に究明しなければならぬと思うのです。私どもがその責任を国民から持たされておるのです。どうして出たのか、幾つ出たのか、まずその点について大臣から、最高責任者はあなたですから、あなたから一つ十分御説明願いたいと思う。どうして出たのか。そうしてミスは新聞で一いろいろな新聞を取り寄せて私集めておりますけれども、私が集めただけでも三つや四つでないように思うのだが、幾つミスがあるのか、どうして出たのか、これを一つあなたから御説明願いたいと思う。
  267. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 きょう午前中も、昨日もおしかりをこうむりまして、衷心申しわけないことに存じております。ことに長谷川さんのお言葉にもございましたように、純真な児童生徒が、数万人真剣な面持で試験場の場におる姿を念頭に置きながら、ミスがありましたことをほんとうに恐縮に思います。お許しをいただくよりほかにないわけでありますが、ただそれだけで済もうとはむろん思いません。今なすべきことは、最小限度、ミスのあったその答案と取っ組んで、試験問題と取っ組んで、答案を出しました数万人の受験生が、一応納得してくれるような採点を合理的にいたしまして、今回の問題を処理する。それが何だということを検討し、実施することが急務であろうと思いまして、一昨日来、その検討を専門家も交えてするように指示をいたしておるわけでございます。新聞でミスのあったことを承知いたすことが初っぱなでございますが、大体ミスプリントが三カ所ばかりあるようであります。ミスプリントだから間違いそのものが、そうでないよりも軽微だとはむろん思いませんし、考えるべきではむろんありません。そういうことになりましたのは、実は工業高等専門学校の法律を過ぐる国会で通していただいて、準備をいたしておりましたわけですが、試験問題を作成するのには、専門の人に頼んで相当の時間をさいて、慎重に検討してもらったものでなければなりません。それを着手するにつきましては、政府内部の問題でございますけれども、明年度の十二校の予算内容が、政府案として一応きまるということがスタート・ラインでなければなるまいと、こう考えて準備に着手したわけでございますが、暮れ押し詰まって、この線が確定し、あけてから着手せざるを得なかった。そうしますと、試験の期日まで余日幾ばくもございませんので、やむを得ない措置として、同じ中学から入学いたします国立の電波学校、商船学校、ひとしく技術系統の学校でございますから、むろん高等専門学校と趣旨は違うにいたしましても、中学の卒業程度の学力を中心入学試験をいたすとしますれば、さじよりその準備された問題に依存せざるを得ないということに結論がなりまして、その試験問題の中に、ミスプリントができたわけですが、これは商船学校と電波学校とが、いわば回り持ちで印刷その他の準備の担当をすることになっておりまして、今年は広島の商船学校が担当いたしまして、試験問題の印刷、現実にはあそこの刑務所で秘密を保つ必要から印刷をした由でございますが、そのゲラ刷りの校正にあたりまして手抜かりがあった。最終的な校正が厳密でなかったと目されるわけでございます。それに気づかないままに試験問題としてそれぞれの学校に配付し、試験当日を迎えるようになったということが、ミスプリントのままで御指摘のようなことが新聞にも出、おしかりを受ける原因にもなったわけでございまして、そういう取り扱い方そのものにも慎重さを欠いた。さらには印刷の校正にあたりましても、責任のある者がはたして当たったかどうかということも調査しなければわからないにいたしましても、そういう面にも慎重な考慮が必要であろう。試験問題そのものにつきましては、むろん今後にわたりましては、高等専門学校十二校もさしよりあるわけでございます。これに対する問題の作成にあたっても、従来の例によらないで、もっと慎重に二段がまえ、三段がまえのやり方で、万遺漏なきを期するという措置がなければなるまいと、今一応考えるわけであります。そのこともあわせまして、専門家を交えて今検討をさしております。当面の処置としましては、なるべく早く、できるだけ合理的な納得のいく一応の線を出しまして、それぞれの学校、準備を担当しておりますところに通知いたしまして、予定の成績発表期日までに間に合わせるような努力をすることが当面なすべきことと、かように考えておるような次第でございます。重々申しわけないことができたと思って遺憾千万に存じております。
  268. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 そういたしますと、答案につきましては、文部省のどのように処理するかという方針がきまるまでは、今現実には採点をストップしておる、このように受け取ってよろしゅうございますか。
  269. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 その通りでございます。問題は社会科に出たようでございますから、その他関係のない科目につきましてはむろん採点を進めておりますけれども、問題のありますものについてはストップしておると御承知いただいてよいと思います。
  270. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 大臣の御答弁を聞いて、大体その真相が一部わかったわけでありますが、大臣の御答弁によりますと、問題の作成は電波と商船、この学校がやった、こういうことですか。
  271. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 問題の印刷、校正等を広島の商船学校が担当いたしました。問題そのもの文部省本省の責任において、視学官その他の手によって作られておると承知いたしております。
  272. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 文部大臣は責任者として御調査をされたと思うのでございますが、これは国民に文部行政についての疑惑を解くために、明らかにしなければならぬから私はお尋ねするのですが、文部省が作成した問題自体には間違いはございませんでしたか。これはどうなっておりますか。
  273. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 作成しました問題それ自体の誤りと目せられることは、社会科の問題の中で、伊蔵博文が旧帝国憲法の制定にあたって準備をいたします場合、各国を回ってそれぞれの国の憲法の調査に出かけた。それが明治十五年、一八八五年、すなわち明治十五年と注釈されておる。それが、実は一八八二年であったということの誤りがございます。そうしてフランス、ドイツ、イギリスその他の国々が列記されておって、その中の主としてどの国の憲法が旧帝国憲法ではお手本になったかという式の解答を求められておる部分がございます。それとあわせて読みまして一八八五年が実は一八八二年だったという点は、実質的な関連を一応持つと考えざるを得ない。もっとも明治十五年を主として考えれば、それが間違いないですから、間違いないと半分は言えぬことはございませんけれども、西暦と併記してあるということについて、受験する生徒の思考の混乱を来たしはしなかったかということも、おそれねばならない点ではないか。私も試験問題についてはしろうとでございますけれども、そのことを聞きまして私としては一応そう思っておりますが、いずれ専門家たちが昨日以来徹宵、対策について相談もいたしておりますから、合理的な、一応納得のいく線が出てくるのではないかと期待しております。
  274. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 そうすると、問題作成については文部省自体の誤りは一カ所、その他については広島商船学校が担当しておる。ゲラの校正刷りの間違いだ、このように受け取ってよろしゅうございますか。
  275. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 ただいまのところ、私連絡を受けて承知いたしましたところは以上の通りであります。
  276. 野原覺

    ○野原(覺)分科員 この問題は小さいようで、影響するところが大きい問題ですね。従って文部大臣はやはり確信のある調査をされる必要があると思います。聞きっぱなしではなしに、多分そうではなかろうかというあなたの御推測ではなしに、どこに間違いがあったのか、どこがどうなって機構がどうなっておるのか、私はこれはゲラの校正刷りにしても、全国の国立学校の高専あるいは電波、商船学校を含めての入学試験問題でございますから、文部省の係官が出張して行って、そうしてはっきり目を通すということぐらいはすべきではないか。国立の学校ですから主体は文部省なんです。それをしていないのじゃないか。この点もいかがなものかと思う。まかせっぱなしじゃないのか。やっぱりこれは文部省の責任だ。監督を十分にしていない。広島商船学校のゲラの校正刷りの誤りだといって言いのがれには決してならない。従って文部大臣から御決意の表明がございましたように、文部大臣の御決意を生かす意味にも、どうか一つこの問題は徹底的に、その原因がどこにあったのか、どういう点がうまくないからこういう事態になるのか、こういうことを一つ十分調査をされまして、しかるべき機会に文教委員会に文部省があらためて、今後の決意をも含めてその御発表をしていただきたい。私はこのことをお願いをして質問を終わりたいと思います。
  277. 中村幸八

    中村主査 これにて昭和三十七年度一般会計予算中、文部省所管についての質疑は終了いたしました。  以上をもちまして昭和三十七年度一般会計予算中、外務省、文部省厚生省及び労働省所管並びに昭和三十七年度特別会予算中、厚生省及び労働省所管についての質疑は、全部終了いたしました。     —————————————
  278. 中村幸八

    中村主査 この際お諮りいたします。  本分科会所管の予算二案に対する討論、採決は、先例によりまして予算委員会に譲ることといたしたいと思いますが、これに御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  279. 中村幸八

    中村主査 御異議なしと認めます。よってそのように決しました。  以上をもちまして、本分科会の議事はすべて終了いたしました。  分科員各位の御協力を感謝いたします。  これをもちまして第二分科会を散会いたします。    午後五時三十八分散会