運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1962-02-21 第40回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十一日(水曜日)     午前十時十五分開議  出席分科員    主査 中村 幸八君       相川 勝六君    臼井 莊一君       床次 徳二君    岡本 隆一君       角屋堅次郎君    小林  進君       田口 誠治君    辻原 弘市君       中村 重光君    野原  覺君       長谷川 保君    山花 秀雄君       井堀 繁男君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         厚生政務次官  森田重次郎君         厚生事務官         (大臣官房長) 山本 正淑君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     今村  讓君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      尾村 偉久君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      五十嵐義明君         厚 生 技 官         (医務局長)  川上 六馬君         厚生事務官         (薬務局長)  牛丸 義留君         厚生事務官         (社会局長)  大山  正君         厚生事務官         (児童局長)  黒木 利克君         厚生事務官         (年金局長)  小山進次郎君         厚生事務官         (援護局長)  山本淺太郎君         農林事務官         (水産庁次長) 村田 豐三君  分科員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   岩尾  一君         厚生事務官         (保険局次長) 熊崎 正夫君     ————————————— 二月二十一日  分科員辻原弘市君及び門司亮辞任につき、そ  の補欠として小林進君及び井堀繁男君が委員長  の指名分科員選任された。 同日  分科員小林進辞任につき、その補欠として岡  本隆一君が委員長指名分科員選任された。 同日  分科員岡本隆一辞任につき、その補欠として  中村重光君が委員長指名分科員選任され  た。 同日  分科員中村重光辞任につき、その補欠として  角屋堅次郎君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員角屋堅次郎辞任につき、その補欠とし  て田口誠治君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員田口誠治辞任につき、その補欠として  辻原弘市君が委員長指名分科員選任され  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十七年度一般会計予算厚生省所管  昭和三十七年度特別会計予算厚生省所管     ────◇─────
  2. 中村幸八

    中村主査 これより会議を開きます。  昭和三十七年度一般会計予算及び昭和三十七年度特別会計予算厚生省所管を議題といたします。  厚生省所管に対する質疑は、本日及び明二十二日の二日間とすることになっておりますが、質疑者がきわめて多数でありますので、この際質疑は大体一人三十分以内とし、重複を避け、簡潔に行なわれますよう、質疑者各位の特段の御協力をお願いいたします。  これより質疑に入ります。床次徳二君。
  3. 床次徳二

    床次分科員 私は、国民健康保険の、いわゆる保険税あるいは保険料負担の問題についてお尋ねいたしたいと思うのであります。第一に、国民保険趣旨において国民健康保険が実施せられましたが、各地方の状況によりまして、被保険者内容がかなり違うために、組合によりましては、負担額について著しい軽重があるのではないかと思うのです。特に保険料最高というものが頭打ちしております関係上、下に負担が重くなっておると思うのでありますが、その組合によるところの被保険者相互における負担の問題はいかようになっておりますか、御説明いただきたいと思います。
  4. 熊崎正夫

    熊崎説明員 御趣旨のように、国民健康保険保険料負担及び給付中身につきましては、各保険者間で内容に差があることは事実でございます。例を申し上げますと、たとえば療養費につきましては一人当たりの領にいたしますと、大体一人当たりの額で年間一番大きいといいますか、中間で二千円から三千円くらいのところが六〇%くらいを占めておりまして、最低は五百円程度から最高三千円以上のところまで、相当分かれておるのでございます。それからまた一部負担割合につきましても、先生承知のように、おおむね五割、これは被保険者、家族含めましておおむね五割のところが九〇%程度でございますけれども、その上と下とに相当差がございまして、多いところでは七割ないし十割近くまでやっているところもあるわけでございますが、これにつきましても非常に差があることは事実でございます。結局こういうふうに差がございますのは、大体医療機関の分布というものが必ずしも保険者にとりまして同一ではない。それから各被保険者受診率等相当の差がございますので、現在の法制のもとではある程度やむを得ないというふうに私ども考えざるを得ないと思うのでございますけれども、将来はこのような不均衡は逐次是正していくように慎重に検討して参りたいと思っております。
  5. 床次徳二

    床次分科員 あとでまた参考資料がありましたらいただきたいと思うのでありまするが、なおただいまお話しになりましたように、非常に負担がまちまちでありまして、せっかく国民保険といいながらも、その間の不均衡という点はかなりこれは将来の問題として残されておるのだと思うのであります。  なおこの際明らかにいたしたいのは、この国民健康保険のいわゆる平均割合健康保険とを比べました場合におきましては、やはり本人、被保険者負担というものについて、さらに著しい負担の差が出ているのではないか、かように考えられますので、この点どれくらいの数字になっておりまするか、御説明いただきたいと思います。
  6. 熊崎正夫

    熊崎説明員 国民健康保険保険料と、それから健康保険保険料との比較はどうであるかという御質問でございますが、これは国民健康保険健康保険につきましては、給付内容から制度全般にわたりまして相当な差がございまして、必ずしもこれを厳密に比較することは私は困難じゃないか、こういうふうに考えておりますが、一例をとって比較をいたしてみますると、昭和三十四年度——少し資料が古いものでございますが、三十四年度において、国民健康保険標準課税方式により、全国の平均保険税、これは三千五百六十七円程度を課しております。市町村の四十の例をとって試算いたしましたその平均保険税三千五百六十七円程度を課しております。市町村世帯、これは平均五人世帯になりますが、世帯当たり所得を推計してみますると大体十六万九千八百円程度になるのでございます。これに比べまして、健康保険で十六万九千八百円程度収入を得ております被保険者保険料といいますものは、これは期末、勤勉手当等を差し引いて計算しますると、大体四千二百八十円ということになりますので、この四千二百八十円と今申しました三千五百六十七円を比べてみますると、保険料自体としては健康保険保険料の方が高い、こういうことになるわけでございますが、しかし健康保険の方では国民健康保険の方で行なわれておりません傷病手当金を支給いたしております。それからまた被保険者本人につきましては、国民健康保険と違いまして、十割給付でございます。そういう点いろいろ給付内容につきまして差がございまして、この保険料だけを比べてみまして健保の方が高いというふうに断定することは困難であるというふうに考えざるを得ないのでございます。それからまた国民健康保険におきましては、先生承知のように、各保険者によって保険料に差があることは当然でございまして、単に平均だけでもって高いかどうかということを断定すること必ずしも適当でないのでございますが、一応数字的に試算をいたしてみますると、ただいま申し上げましたような数字の結果に相なろうかと思います。
  7. 床次徳二

    床次分科員 ただいまの問題は、将来の皆保険の実施上について私は十分検討すべき問題だと思うわけです。お話のごとく、平均額におきましては国保の方が下回っておりまするが、実際の療養内容あるいはいわゆる受診率等あるいは負担関係というものを総合的に見ますと、実際はこれはむしろ国保の方が負担が倍加しているんじゃないかというふうな一般的な見解が多いのでありまして、この点をやはりでき得る限り是正する方角に持っていくことが必要なのではないかということを私も考えておる。なお実は過般国民のいわゆる税負担の点を調べてみたのでありまするが、特に国保におきましては税の負担割合が上よりも下に重くなってきている。これは五万円という頭打の問題もありますし、あるいは所得あるいは資産割という問題がありますので、そういう形になると思うのでありまするが、かような意味の負担均衡ということは今後私は非常に重要な問題だ、ぜひ一つ詳細なる保険料負担割合と申しますか、これを比較検討をして将来の参考としてお願いいたしたいと思うのであります。  なおこの機会にお尋ねいたしたいのでありますが、今回国庫負担金がふえましたことは非常にけっこうなんでありますが、実際におきましては、今度の国庫負担の増額というものが、保険料の減税には充てにくい実情でありまして、昨年の医療内容向上に対する負担の増加というものを埋め合わせてとんとんじゃないかというような目安があるのでありまするが、こういう問題について将来考えなければならぬ。本日は時間がないので触れませんけれどもあとで伺いたいのは、その国保調整金の問題でありますが、現在各地方組合に対して調整金を配付しておられますが、これはいかようなる基準でもって配付しておられまするか、御説明いただきたい。
  8. 熊崎正夫

    熊崎説明員 先生のおっしゃるように、国保税につきましてはいろいろ内容が多岐にわたっておりまして、私どもとしましても、今後十分慎重に検討していかなければならぬと思いますが、来年度、三十七年度におきましては、国保負担能力実態調査を行なうということで、些少でございますけれども予算もとれておりますので、そういう実態調査によりまして、被保険者負担能力を十分調査した上で、おっしゃるように国保中身につきましてのこれまでの足らない点を十分再検討して参りたいと思っております。  それから調整交付金配分の仕方につきましての御質問でございますが、現在調整交付金は、御承知のように普通調整交付金特別調整交付金と、この二種類からなっておりまして、普通調整交付金につきましては、被保険者所得考慮しまして算定する収入額療養給付費額考慮して算定する需要額に満たない場合、つまり所得考慮して算定する収入額療養給付費考慮して算定する需要領とを比べてみまして、これに足らない場合に交付しますし、また特別調整交付金は、災害があったとかあるいは結核、精神病等特殊指定が多いとかいうような特別の事情によって支出増があった場合に、それぞれ交付する方式をとっております。従って被保険者所得につきましては、現在も調整交付金の算定にあたって考慮しておる形になっておるのでございますが、この点、調整交付金交付方法につきましては、従来のやり方自体にも種々検討すべき点もあることは私ども十分認めておるのでございまして、これは来年度におきまして、財政当局とも十分相談をしまして、調整交付金交付方法につきまして再検討したいということで考慮して参りたいと思います。
  9. 床次徳二

    床次分科員 本年におきまして被保険者負担能力等調査をなさることは、まことに私は適切だと思うのでありますが、とかぐ国民健康保険の場合におきましては、組合経営をいかにしてうまくやっていくかということに重点がありがちでありまして、管理者立場としてはやむを得ないと思うのでありますが、個々の被保険者能力に応じて適切なる保険料を実施するという考え方が欠けておるのではないかということを実際において私は残念に思うのでありまして、やはり個人々々の負担というものを十分に検討いたしまして、そうして医療の完全を期するということが国民保険趣旨ではないかと思うのであります。この点は管理者たる人たち十分反省と申しますか、注意を一つ喚起しながら今後のこの調査をやっていただきたいと思うのであります。  それからなお調整交付金の問題でありますが、現実におきましては、国保負担の重いというところは、とかく被保険者所得の少ないところに片寄りつつある。地方的に非常に偏在するのがありまして、言いかえまするならば、これがいわゆる財政貧弱地方というものにもやはり偏倚しやすいのではないかという点が一点考えられます。  それからもう一つ問題点は、組合によりましては町村団体から相当繰入金をいたしておるのであります。これは町村が貧乏であるか、あるいは富裕であるかということを問わず、やはり国保重要性にかんがみまして、ずいぶん無理をしながら繰入金を実際上においてやっているという問題がありまするが、こういうものに対して考慮する必要があるかないかという点なのであります。また言いかえますならば、被保険者能力に対して、現在はある程度まで考慮が加味されておるかのように思うのでありますが、やはり被保険者負担の重いところ、所得の非常に少ないところに対しましては、よけい調整交付金を出すということを、もう少し強くこれが加味されていいのではないか。現在のやり方でもって十分かどうかという点につきましても、私疑問に思うのでありますが、詳細な数字的な根拠を持ちませんので、ばく然とお伺いするわけでありますが、ただ、いまのいわゆる調整交付金配分に対して、なお今後御考慮になるべき点について、当局としてはいかように考えておられるのか、承りたい。
  10. 熊崎正夫

    熊崎説明員 調整交付金交付方法につきましては、私どもも前々からあらゆる機会に現在のやり方自体必ずしも適当じゃないのじゃないかという御批判もいただいておりまして、今度の国庫負担率の五分引き上げに伴いまして、国保財政にとりましては従来に増して相当改善されたというふうに考えておりますので、調整交付金中身をいろいろこれまで指摘されました点を考慮しまして、改正するちょうどいいチャンスでございますので、ぜひとも今先生おっしゃるような趣旨を含めまして、三十七年度においては大々的な改正をやって参りたい、こういうふうに考えております。  それから市町村一般会計からの繰入金につきましては、現在大体三、四十億程度一般会計から入れておるわけでございますけれども国保財政の本来的な立場からいいますと、やはり特別会計を堅持するのが建前でございまして、一般会計繰り入れをもって直ちに収入として取り扱うというふうなことにつきましては、種々問題もございますので、やはり厚生省としましては、国保特別会計独立会計として堅持していきたいという建前でもって、今後とも考慮して参りたいというふうに考えております。
  11. 森田重次郎

    森田政府委員 ただいまの床次委員の御発言に対して、私の方からも簡単にお答え申し上げておきたいと思います。  実は、厚生省へ参りまして、いろいろの問題、特に問題になりそうなものを検討いたしたものの一つに、ただいま問題にされた財政調整交付金のことが取り上げられました。どう考えても、この財政調整交付金という本来の目的に、今やっている財政調整交付金の支払いが一致しないという点に、私も非常な疑問を抱いて、これの調整方がどういう点に原因があるのかということ等につきましても、特に研究さしていただいているわけでありまして、まだその結論を得ておりませんけれども、これはぜひ大きい問題として取り上げて、御期待に沿うような方向へ持っていきたいと目下検討中でございます。
  12. 床次徳二

    床次分科員 ただいま政務次官からお話がございましたごとく、調整交付金と言う以上は、やはり財政、それから本人所得額負担均衡という立場から見まして、これが交付せられるのが適切であろうと思います。ぜひ一つ、現在の状態というものを十分御検討の上、この交付金の配付のあり方につきましては基本的な改善をお願いするものであります。なおこれに関連して、われわれ国保の将来について考えます場合に、今年の国庫負担金の五分の増というものは、一つの大きな進歩でありますが、今後におきましてはやはり健保負担均衡化するというところに目的があるのではないかと思う。とかく今日所管が別々になっておりますし、関係者も別になっておりますために、その両者の比較というものがやや国民保険という一言のうちに埋もれてしまっておって、検討が欠けておるのではないかと思われますので、やはり方針といたしましては、健保の被保険者負担というものを標準にいたしまして、でき得る限りこれに統一すると申しますか、これと均衡を得た国保負担というものを考慮すべきではないかと思うのであります。この点に対する厚生省の御所見を伺いたい。
  13. 熊崎正夫

    熊崎説明員 まことにお説ごもっともだと存じますが、不均衡を是正することについては、私どももすみやかにその検討を始めて、成案を得たいと考えておるのでございますが、この点につきましては、社会保険制度全般にわたりまして、現在社会保障制度審議会総合調整の案を検討中でございまして、その案が近く出ることになっておりますので、そういう点も考慮いたしまして、御趣旨に沿うように今後とも努力して参りたいと思います。
  14. 床次徳二

    床次分科員 将来の社会保険調整について検討しておられるそうでありますが、これはできるだけすみやかに一つ実現を期していただきたいと思うのであります。特に最近は医療問題等におきましても、医療関係者側からいろいろ要望がありますが、事務的見地から見ましても、各種社会保険が一元化される、あるいは同じベースに乗るということによりまして、医療関係者事務だけ見ましても非常に簡素になるのであります。いわんや国民医療に対する負担均衡、公平という立場から見ますと、これは絶対に必要なものでありまして、今後社会保険改善の際におきましては、まず一番最低にありますところの国民健康保険というものの地上げをしながら、他の社会保険に追いつくことのできるようにする。何も他の保険を足踏みさせる必要はないのでありますが、少なくとも、もっとスピードアップを必要とするものは、国民健康保険であるということをわれわれ考えておるのでありますが、これに対して大臣来られましたので、大臣の御意見を伺いたいと思います。
  15. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 医療保険が各種ございますが、その中でも国民保険内容的に見まして劣っておりますことは御指摘の通りであります。これにつきましては、内容改善をはかりますと同時に、またお尋ねの中にもありました負担均衡等の問題についても、十分検討しなければならぬ問題と考えておる次第であります。まず財政基盤を整えつつ、内容改善、充実に向かって鋭意努力してみたいと存じております。
  16. 床次徳二

    床次分科員 次に医療関係者待遇向上の問題として、たとえば看護婦保健婦あるいは助産婦等待遇の問題について要望いたしたいと思うのであります。  さきの予算委員会一般質問等におきましても、医療関係者の不足というもの、同時にこれが医療内容の低下ということになるのではないかという御意見があったのでありますが、現状を見て参りますと、看護婦その他のものが非常に減っているということを感ずるのであります。特におそるべきことは、今後の若い人がこれに志望していないというところであります。このままいったならば、補給が続かなくなるのではないかということで案じられておるのでありますが、この点に対して私端的に感じますことは、待遇が悪いというところだと思う。地方によりましては、一般事務職員となりますものの方が結果においては将来の待遇がよろしい。また俸給の号表適用も、何と申しますか、将来の伸びのない、いわゆる技術職員関係号表を使っている。なるほど技術職員には違いありませんが、将来に伸びがないということは、一そう普通の教育を受けた後、特殊教育を受けて、こういう技術職員になるというものの希望者を減らす原因になるのだと思う。この点におきまして、中央、地方を通じまして、これらの職員待遇に対して積極的に改善する必要があるのではないかと思うのでありますが、この点に対する御所見を伺いたいと思います。
  17. 川上六馬

    川上政府委員 ただいまお話のございましたように、確かに最近は看護婦などに対する魅力がなくなってきたと申しますか、学校や養成所に入る志願者がだいぶ減ってきております。この点は私といたしましても、将来の看護婦需給の面から非常に心配をいたしておるところでございますが、これは何といいましても、お説の通りやはり処遇の問題に大きくかかっておると思います。御承知のように、最近はいろいろ産業部門に女子の職員を優遇して採っております。それに比べますと、看護婦職業というものは相当心身を労する仕事でもございますし、また夜間勤務どもございまして、かなり骨の折れる職業でありますが、それに比較して必ずしもよくないというように私どもも見ておるのであります。この点に問題が一つある。それから看護婦待遇処遇を見て参りますと、現在のところはやはり大体国立比較的よく、民間に比べますとおよそ二割程度はやはり国立はよいというように見ておるのであります。そういうことで、民間看護婦処遇、それは単に給与という面のほかに、勤務時間などの関係労働条件、そういうものを含めまして、特にそういうところの処遇をよくしていくということが必要だというふうに考えておるのであります。われわれといたしましても、指導課などを作っておりますので、そういう面で、そうした待遇処遇改善ということに努力して参りたいと存じております。
  18. 床次徳二

    床次分科員 国立病院等における給与適用について、号俸はよく知りませんが、一般行政職に比べて不利な号俸を使っておることはありませんか。特に地方におきましては基準がないそうでありまして、この点はどっちかというと、非常に不利な方の基準によるものが少なくないといううわさも聞いておるのでありますが、この点はいかように指導されておるか、お伺いいたします。
  19. 川上六馬

    川上政府委員 国立の場合におきましては医療職を用いておりまして、一般行政職と違った号俸をとっております。これは決して不利なことはありません。むしろ同じ学歴の事務職員に比べますと有利になっておると私は考えておるのであります。それから地方公務員は大体国家公務員給与基準に準ずることになっておりますので、そういう面で、国家公務員が上がっていけば地方公務員も上がっていく、あるいは民間も上がっていくという順序で、だんだんよくなっていっておると思っております。
  20. 床次徳二

    床次分科員 私よく知りませんが、医療職の二表じゃないかと思いますが、一般医療職よりもかなり将来において不利な状態になるのじゃないかということも言われておるようであります。この点はさらに御検討いただきたいと思いますが、なお、常識的に言われておりますことは、終戦後のいわゆるアメリカ式の新制度におきましては、これらの医療職員というものの地位は非常に高く評価されておったように見ておるのでありますが、最近になりますと、それがまた低下してしまって、医療職員の単なる助手、補佐というのか、雇い人というような形にまた低下しつつあるのではないか、特にはなはだしきは、これが一般の私立の病院あるいは個人のお医者さんのところにおります者の待遇は、一時かなり改善されたようなものが、再びそういういわゆる雇い人式のものに低下しておるじゃないか。この点は一般医師会等におきましても相当反省と申しますか、改善を要すると思うのでありますが、かかる取り扱い、これは官公立の医療関係者にあっても私は同様だと思うのでありますが、もう少し考える余地があるのではないかと思う。  なお、この点に対して常に聞くのでありますが、要するに、厚生省における看護課の独立という問題が多年要望されておるのでありますが、さようなことに対する御配慮はいかようになされておりますか、伺いたいと思います。
  21. 川上六馬

    川上政府委員 看護職の看護婦、准看護婦医療職三でございます。これは少し伸びが悪い。ことに婦長などの伸びが悪いというように、看護婦伸びが悪いという点がよく問題になっております。こういう点はやはり今後改善をしなければならぬと思っております。それから病院ストなどもございまして、だいぶ民間看護婦待遇改善されてきておる。この点はまだ不十分でございますけれども、今後ともそういう点の改善については極力努力をいたすつもりでございます。  看護課の独立は前から問題になって、医務局といたしましては看護課を独立さしたいという考えを元来持っておるわけでありますけれども、御承知のように、医療機構の拡充ということはなかなかむずかしい面がございまして、まだその実現を見ないわけでありますが、今後努力をいたしたいと思います。
  22. 床次徳二

    床次分科員 医師の問題につきましては、社会的に相当これはわかりやすい問題でありますので、注目を引いておるわけでありますが、医師のいわゆる補助者として国民保健に重大な関係のありますこれらの者の待遇改善、また相当の定員を確保するということは将来非常に重大なことでありまして、今にしてその準備をいたしておきませんと、数年後におきましてこれは非常な憂うべき状態になるということを考えますので、特に厚生省におきましても配意されんことをこの際要望するものであります。  なお、この機会にお尋ねいたしたいのは、わが国の医療技術の海外協力、海外進出の問題であるのであります。東南アジアその他におきまして一部実施されておりまするが、地元におきましては相当好評である。わが国の技術協力というのは小規模でありまして、他国のような大規模のものはありませんけれども、その技術、また人柄から申しまするならば、決して他国に劣るものではないと思うのでありまして、十分な効果を上げ得るものと思うのでありまするが、しかし、実際におきましてはきわめて今日小規模であるという点につきまして残念に思うのであります。単なる経済的な進出にとどまらず、むしろ医療技術という立場に立って、わが国が進出と申しますか、東南アジア等後進地方に寄与するということはこの際重大な事柄であると思うのでありまするが、これに関する大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。ことしも若干の調査費はあるようでありまするが、きわめてこの点は少なかったような感じがするのでありますが、いろいろ将来に対する政府の御所見を伺いたいと思うのであります。  なお、この問題に関連して申しまするが、医療技術が進出するということは、同時にこれに付随いたしまして、医薬あるいは医療機械というようなものもあわせて将来の発展の道ができるわけでありまして、わが国にとりましては、これはすこぶる重視すべき事柄だと思っておるのでありまして、一般からもかなり好評でありまするので、ぜひ一つ将来におきましては積極的な計画をお願いいたしたいと思うのでありますが、大臣の御所見をお伺いいたしたい。
  23. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お尋ねの御趣旨につきましては、私も全く同感でございます。東南アジア諸国との関係にかんがみまして、わが国といたしましては、この地方に発展もしなければなりませんし、また同時にこの地方に対しましてできるだけの協力もして参らなければならぬと思うのであります。さような観点からいたしまして、医療関係の技術的な援助というようなものも、すこぶる有意義なものと存じます。従来、床次委員も御承知のように、医療技術者を派遣いたしますとか、あるいは医薬品その他のものを贈与いたしますとか、さようなことをやっておりますが、きわめて小範囲、小規模であることは明らかな事実であります。われわれといたしましては、もっと積極的にお役に立ちたいと思っておるような次第でございます。海外技術協力事業団も発足するという段階になっております。さような関係におきまして一そう連絡を密にいたしまして、できるだけ御趣旨に沿うようにやって参りたいと存じます。
  24. 床次徳二

    床次分科員 大臣の御所見を伺いましたが、医療関係の仕事は、やる以上は、ある程度までまとまったもの、しかも多少時間的に長い施設をする必要があるのであります。巡回車とかあるいは一時的な診療、巡回診療班も悪くはございませんが、結果において後援続かず、範囲が狭すぎるので、かえってかの地方からも遺憾の意を表せられることも少なくないかと思う。多少経費はかかりますけれども、やはり腰を落ちつけてやることが必要なんじゃないか。この点についても、将来十分調査をして一つやっていただきたいと思います。  それからなお、医学の進出する場合におきまして、それぞれの国によりまして、日本におけるところの医学の技術者の免状と申しまするか、資格というものが、直ちにその国において適用し得る国と、なかなか受け入れてもらえない国と、いろいろの国があるわけであります。こういう点につきましては、少し専門的に御調査をいただきまして、ほんとうにわが国が進出し得るところの国に対しましては、少し規模の大きな根本的な計画を立てて、技術協力をされるという配意が必要ではないかと思うのであります。同時に、この点は、今日海外から日本に医学関係の留学生もずいぶん来るわけでありまするが、この留学生がほんとうに役に立つ、帰国いたしまして働けるというところまで配意をせらるべきだと思うのであります。単に技術を修得いたしましても、実はいろいろの国内法との関係から、これが通用しないということも考えられるのであります。なお、将来のわが国との結びつきというものも、そのために、かえって不十分だというところもあるわけでありまして、この点は、厚生省といたしまして、東南アジア各地方の状況をもう少し徹底的に調査をいたしまして、そうして今後積極的な進出ができまするように配意せられたいと思うのでありまするが、この点に対する御意見も伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  25. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 御趣旨につきましては、私もさように考えるわけであります。できるだけ日本の医学、日本の医術というものが海外にその声価を高め、同時にまた、それに対して一そう緊密な関係が打ち立てられていく、あるいは親善の関係も結ばれていく、こういうことはまことに望ましいことと考える次第であります。従来からもさような話がときどきあるわけでありますが、なかなか実を結ばなかったように私も思うのでございます。お話にもございましたように、厚生省といたしましても、今後一そう積極的にそういう面について関心を払って御趣旨に沿いたいと思います。
  26. 中村幸八

    中村主査 次は小林進君。
  27. 小林進

    小林(進)分科員 時間がきめられているようでございますから、きわめて事務的に御質問を申し上げたいと思うのであります。  第一番目には、これは生活保護基準の問題であります。これはおそらくここでは結論は出ないと思うのでありまするが、本会議場やらあるいは予算委員会等で、総理大臣や大蔵大臣の御答弁を聞いておりますると、総理大臣は保護基準の引き上げはことしも一三%やって、毎年々々基準を上げているので、低所得者の水準は非常に上がっておりますよ、生活はよくなっておりますよ、こういう答弁をせられて、暗々裏に、どうも日本にはだんだん生活保護の必要がなくなっているような感じを受ける答弁をしておられるし、大蔵大臣は、基準年次から比較をいたしまして、もう四〇%も保護基準を引き上げているんだ、最終の四十五年度あたりにいけば、三倍ぐらいに引き上げる見通しもついたというようなことを言われて、これも低所得階層に対して非常に善政をしいているようなことを言われているのでありまするが、私をして言わしむれば、全く逆でございまして、池田内閣というのは貧乏製造内閣である。池田内閣になると、だんだん貧乏人がふえているじゃないかという、私は私なりの一つの考えを持っているわけでございますが、一体、厚生大臣は、この池田発言、大蔵大臣の発言を、厚生大臣立場でどうおとりになっているか、御所見一つ承りたいと思うのであります。
  28. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 池田発言あるいは大蔵大臣の答弁と、私別に変わった考え方はいたしておりません。小林委員は、池田内閣は貧乏製造内閣だ、こういう仰せでございます。私どもは貧乏をなくしようと思って一生懸命努力いたしておるわけでございます。貧乏製造内閣というお言葉は一つお返し申し上げたいような気持がいたすのでございます。ただこの生活保護と申します制度につきまして、私どもは、これは国民のいわゆる最低生活を保障するものということになっておりますが、その最低生活というものは、何も固定したものではないと思います。われわれの念願といたしますところは、いわゆる最低生活というものをだんだん引き上げて参りたい、そうしてより豊かな、より安定した生活に持って参りたいという念願のもとに各種の施策を進めて参りたいと思っておる次第でございます。池田総理も言われましたように、また水田大蔵大臣も言われましたように、さような心持をもちまして、生活保護の基準の引き上げをやっておるわけでございます。しかし、これでもって十分なんだというふうには私は申し上げたくないのであります。もっと上げたいという気持をもって努力を続けたいと思っておる次第でございます。何にいたしましても一挙にどこまでいかなくちゃならぬというわけのものでもないと思います。従って大蔵大臣も申しましたように、昨年から本年、来年にかけまして、保護の基準からいえば約四割くらいは上がっておる、そのほかの教育扶助でありますとか、住宅扶助でありますとかいうふうなものを加えますと、もっと上がることにもなろうかと思いますけれども、ともかく生活保護の内容が昨年以来幾らかずつでも改善をせられてきつつあるということは申し上げられるのではないかと私は思うのでございます。ただ、こちらがそうやっておりましても、また物価が進んでくるということになりますれば、せっかく上げましても、それだけの改善ができないということもございますけれども、若干ずつでも改善せられてきておるように私は思うのでございますが、行く行くはさらにこれを引き上げまして、国民の生活の底を上げていくという方向で努力をいたしたいと思いますので、今後ともにこの努力は継続して参りたいと思います。
  29. 小林進

    小林(進)分科員 きわめて限られた時間でございますから、事務的に要点だけ一つお答えいただきたいと思うのでありまするが、生活保護基準、生活水準の特に基準をおきめになるときに、昨年度からマーケット・バスケット方式をおやめになって、今度はエンゲル係数方式の算定方式でおやりになったということを厚生省はお言いになっておりまするが、その基準のきめ方を、いわゆるエンゲル係数方式でおやりになったその理由を一つ簡単にお聞かせ願いたい。あわせて、この方式が今日の時代に適合して、生活保護者の最低基準というものを明確に出し得る方式であるかどうか、自信のあるところをお聞かせ願いたいと思います。
  30. 大山正

    ○大山(正)政府委員 ただいま御指摘がありましたように、本年度からいわゆるエンゲル係数方式に基づいた算定方式をとったわけでございます。従来はあらゆる面におきまして、物量々積み上げて計算をするやり方をとっておったわけでございますが、必ずしもこれは実情に合うものではない、と申しますのは、個々の家庭におきまして、それぞれ必要なものが違うのでございますし、それらを平均して物量を積み上げるということは必ずしも適当でない、かように考えまして、むしろエンゲル方式によって算定することが適当であろう、かように考えたわけでございます。エンゲル係数方式をとりました場合に、どういうやり方をやるかと申しますと、東京都の家計調査に基づきまして、大体生活保護を受けている家庭程度の消費支出の世帯を例にとりまして、それらが一体どの程度のエンゲル係数であるかということを見まして、それによって算定をするわけでございます。それに基づきました結果、昭和三十五年度におきましては、生活保護世帯のエンゲル係数は六四ほどであったわけでございますが、本年度これを一八%、さらにまた補正で五%引き上げました結果、エンゲル係数は五七・九、こういうことになっておるわけでございますが、来年度さらに二三%引き上げることによりまして五六・二というエンゲル係数、かような状況に相なっております。
  31. 小林進

    小林(進)分科員 私は、このエンゲル係数は、正しく今日における国民の中の憲法でいわれる健康にして文化的なる生活を保障するに足る係数が出るか出ないかは、これはまたあとでお伺いすることにいたしまして、あなた方がおやりになりましたエンゲル方式に基づくといたしましても、そのエンゲルはあなたも御承知のように三〇%までがややゆとりのある生活だ、四〇%以内にとどまる場合にはわずかに慰安の持てる生活だ、人間生活としては満足じゃないけれども、ようやくこれは人間らしいと言われる程度の生活だ、こうエンゲルは説明をいたしております。食費が五五%を占めるものはこれは限界以下の生活だ、人間の限界を越えた動物的生活である、こうエンゲルはみずから称しておる。あなた方はエンゲルという係数の仕方が正しいといって、エンゲル係数で最低生活をおとりになるならば、一体なぜ五五%以下にするというエンゲルの至上の限界線を守らないのですか。今あなたの御説明では去年までは六四%まで食費が占めている。五五%をこえること九%、動物でも下等動物の生活じゃありませんか。しかし今御説明で今日ようやく二二%引き上げて、なおかつ五六・二%ということは、エンゲルの説をもってすれば人間の生活じゃないです。人間の生活に及ばざること、なお一・二%だ。なぜそういうエンゲルという係数の説をとりながら、その基準まで至らないのですか。これは間違いじゃありませんか。あなたの計算の間違いか、どこかの間違いでなければならないと思う。エンゲルの説が間違っておるのか、あるいはあなたの五六・二%と言われる係数が間違っていなければ、この厚生行政は、国民の納得するような生活の最低線をおきめになったことにはなりませんよ。そうじゃありませんか。大山さん、一つお聞かせを願いたい。
  32. 大山正

    ○大山(正)政府委員 エンゲル係数によって幾つまでがどういう生活であるというようなことを理論的に言うことができますれば、御説のように五五をとるべきだということが出てくるかと存ずるのでありますが、このエンゲル係数につきましては、一体幾つがどういうものだということについては、若干の学者の説はあるのでございますが、一定した説はないように承知しておるわけでございまして、遺憾ながら理論的な係数をとるわけにはいかないのでございます。私どもといたしましては実態をとりまして、先ほども東京都の家計調査をもとにしてやっておるということをお話し申し上げたわけでございますが、二万五千円程度までの世帯の実際のエンゲル係数をとりまして、それの実態に合わせたエンゲル係数を採用するというような形でやっておるわけでございます。今後私どもは、生活扶助基準の引き上げに伴いまして、エンゲル係数も漸次軽減していく、降下していくというふうに考えておる次第でございまして、現在は一般世帯が三十五年の平均では三七・二、三十六年の十月は三六・六という係数が出ておるようでありますが、私どもはできるだけエンゲル係数自体も下がっていくように努力したい、かように考えております。
  33. 小林進

    小林(進)分科員 今あなたのお話を聞いておりますと、最初はエンゲル係数でやられたが、これもやはり理論的に切り詰めていくと、そう理論的生計を生み出す方式ではない、そういうお話に至るわけです。これはいいですよ。大山さんのところだけじゃないのであって、僕も聞きますと、確かにエンゲル係数に基づこうと、あるいはマーケット・バスケット方式でいこうとも、それは最低生活を編み出すということは、非常に困難だ。困難だということは私が言わないで、これは世の学者が言っておる。ここであなたも御承知の、社会的貧乏線論というものが叫ばれておるのでございまして、あなたの方で発行せられておる「生活保護法百問百答」という本がございますね。これは毎年お作りになるのですか、毎月おやりになるのですか、そういう書類はやはりくまなくわれわれの方へ回していただきたいと思うのです。私は変なところでこれを拝見した。個人でおやりになっておるならけっこうです。厚生省の大山さんなりあるいは小山さんなりが個人でおやりになるならいいけれども厚生省でお出しになるならば、そういう資料はわれわれの方へ回していただきたいと思うのであります。その厚生省で御発行になっておる本ですがその百問百答の第九集に、結論としては、マーケット・バスケット方式によろうと、今あなたのおっしゃるエンゲル方式によろうと、せんじ詰めるところは、先にきまったワクを理論的に説明するごまかしの方式である。ただ生活基準の総ワクというものは、先にきまっておるのだ。それをきめるのは、すなわち社会的貧乏線である。その時代、その社会の生活様式、社会環境、経済状況、そういったものでもうきまっておるのだ。それをもっともらしく説明するためにいろいろの方式を用いている。こういうような意味の説明がある。これはどうでございますか。これはそういう説もあるという主張であって、厚生省がその意見に立脚しておるというのではないのでありますけれども、こういう主張に対して一体どうお考えになりますか。
  34. 大山正

    ○大山(正)政府委員 百問百答は、厚生省におきましていろいろ担当の事務人たち事務の便宜に資するために編さんいたしまして出すわけでございますが、発行しておりますのは全国社会福祉協議会から出しておるという形になっております。ただいま第九集についての、一部をあげてのお話でございますが、私その部分を十分記憶しておりませんので、はっきりしたことを申し上げかねるのでございますが、要するに国民生活がだんだんよくなって参りますのにつれて、やはり最低生活と申しますか、生活保護の基準も引き上げていくべきだというような考え方に基づいておるのでございまして、絶対的に、たとえば、生物学的に、あるいは医学的にこういうものが最低生活だというような線は出てこないのではないかというような考え方をとっておるわけでございます。そういうような観点からいたしまして、国民生活の一般伸び、あるいは消費物価あるいはその他のことを総合的に勘案いたしまして、大体この程度が本年度の、あるいは来年度の生活保護基準として適当であろうという点できめてやるというような形に相なるわけでございまして、その場合に、飲食物費その他の経費というようなことにつきましては、エンゲル方式を用いて計算するというやり方をとっておるわけでございます。
  35. 小林進

    小林(進)分科員 結局私の言いたいことは、生活保護法というもの、生活保護基準というもののよって来たるところは、憲法の第二十五条です。憲法の第二十五条に、すべて国民は、健康にして文化的な生活を国家によって保障せられるといっている。その憲法でいう、健康にして文化的な生活というのは、どうして一体これを編み出すかということを私はお聞きしてきたわけです。それをあなた方は、エンゲル係数であるとかマーケット・バスケット方式だとか、いろいろなことをおっしゃるが、結局きまってしまっていることは、まず最初に予算の線か何かできめてしまって、一つかみにつかみ取りできめてしまって、そうしてきめたものをこれが最低生活だ、これでりっぱなんだというような、国民をごまかすような、そういうやり方をやっている形が現われている。その点はもう時間がありませんから追及しません。私は予算委員会一般質問のときにでも、いま少しきめのこまかい質問をしたいと思いますが、そういうごまかしはお互いにやめて、一体憲法でいう、あるいは生活保護法の第三条あるいは第八条でいう、その文化的で健康な最低生活というものは一体何なのだということを考えてみた場合に、それはやはりいわゆる今日の時代に適合した、憲法第二十五条でいうその生活とは、人間らしい生活を言っているのだ。めんどうなことを言わなくても、人間らしい生活、人並みの生活、せんじ詰めれば、回りの人に比べてあまり見劣りしない生活、人間として体面や体裁をある程度保っていける生活、これを私は健康にして文化的な生活と憲法できめていると判断するほかにない。私はそう考えておる。そういう考え方でこの保護基準をきめてもらわなければ、池田さんや大蔵大臣の言うように、去年よりよくなったではないか、おととしより上がったじゃないかと言われたのでは、五千年前の裸のときから見れば百倍も二百倍も上がっている。そういう比べ方はいわゆる憲法の精神に反している。いわゆる国民を愚弄したものの言い方だから、その点は一つ御注意いただきたい。同時に厚生大臣は、その意味において憲法の精神を正しく保護基準に反映するように努めていただかなければならない。それならば、一体人間らしい生活、人と人並みの生活、その最低生活というなら、一般消費水準との比較対照しかないじゃありませんか。それならば一体、一般の国是の生活水準を一〇〇とした場合に、今日行なわれておる生活扶助の基準はどこにいっておりますか。エンゲル係数でも、あなたがおっしゃるように四〇%もいっていないでしょう。一般の人の半分の生活です。一般の消費水準の半分もいっていない。だんだん低下をしてきているじゃありませんか。低下をしているということ、すなわち人とともに営む人並みの生活からだんだん比率が離れてきているということは、これ私が申し上げておる池田内閣は貧乏製造内閣であるというこの立論は成り立つと思う。大臣、いかがでございましょう。私の立論が誤っていたら、お教え願いたい。
  36. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 憲法の、健康にして文化的な生活というのは、これは、われわれ国民に課せられた非常に大きな理想であり、またこれに到達すべく国をあげて努力しなければならぬはずのものと思うのであります。その意味におきまして、生活保護基準を考えます場合においても、始終このことを頭に置いてお互いに努力していかなければならない問題と思います。この点はもう小林さんのお説と変わるところはないと思います。ただ、具体的に現実に生活保護基準をどこに求めるかということになりますと、その時代、その社会によりましていろいろ考え合わせてみなければならぬ点も多々あると思います。そういうことを頭に置きつつ、私どもは国力のつくにつれまして、国民生活の向上につれまして、生活保護を受けるような世帯の生活内容向上させて参りたい、よそが倍になれば、こちらは三倍にも四倍にもしたい、こういうような心持でやっているわけでございます。今お話にありました一般消費生活との比較の問題でございますけれども、確かに過去の実績を見ておりますと、数字に現われたところでは、昭和二十六年ごろの数字比較いたしますと、だんだん格差が増してきたということが現われております。ただ私どもの調べでは、昨年以来多少大幅に引き上げも行ないましたので、その格差を、急速にとは申しませんけれども、幾らか縮めて参っているということは言えるのじゃないか。漸次この格差を縮めて参りたいというつもりで、今後もこの努力を続けて参りたいと思います。
  37. 小林進

    小林(進)分科員 これだけをやっておりますと、あと質問が済みませんから、保護基準の問題はやめます。やめますが、ただ、重大な法律の問題として私は大臣に申し上げておきたいのでありまするけれども、今も申し上げました生活保護基準というものは、だれがきめるかという問題です。生活保護法の第八条の第一項ですか、生活保護基準は厚生大臣がこれをきめることになっている。これはわが党の八木さんも言ったが、われわれも反対です。こういう最低生活、人間の生存権に関する重大な問題を、厚生大臣一人が独断的にきめるなどということは非常に封建的であると考えるが、その法律論争は別にいたしまして、厚生大臣がきめるとある法律に基づき、実際にあなたはおきめになっておりますか。あなたはおきめになっておりませんね。おきめになっておらぬというその証拠は、三十六年度において、あなたがこの法律に基づいて基準をおきめになった。そうしたら閣議で大蔵大臣はどうしましたか。去年は二六%お出しになったけれども、それを大蔵省が一八%に修正をしたではありませんか。今年度あなたは一八%引き上げの保護基準をおきめになった。そうしたら大蔵省は、これを二三%に切ってしまった。大蔵大臣がそれを修正したということは、大蔵大臣が保護基準をきめたということになりませんか、どうですか、これは言葉の問題ではなくて、厚生大臣が原案をお作りになったか知らぬけれども、しかし最終的に保護基準を決定いたしたのは大蔵大臣だという結論になりませんか。大臣、いかがでございましょう。
  38. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 なかなかむずかしい御質問だと思いますが、厚生大臣が保護基準をきめるということは、これは法制上与えられておる一権限でございます。従って、この生活保護基準の適否というようなことにつきましては、これは厚生大臣が責任を負うべきものであります。ただ、厚生大臣が生活保護基準をきめるにいたしましても、手ぶらではきめられないわけであります。やはり裏づけがなければならぬ。裏づけの問題となりますというと、相談するところがたくさんあるわけでございます。そういうことでありますので、財政面を無視して厚生大臣が勝手にきめて、そしてやっていくというふうには、なかなか実際問題としてはならないと思うのでございます。今度の生活保護基準についてでありますが、大蔵大臣が査定したとおっしゃるのでございますけれども、私は、実はこの問題で大蔵大臣と私との間で取引をしたとかきめたとかいうふうには考えておらないのであります。私の方は御承知のような数字をもちまして大蔵省に予算の要求をいたしました。大蔵省は大蔵省の考えを示しましたが、これは話が合わなかった。合わなかったままに、結局最後に閣議できめましたようなことでございまして、いわば政府全体として、まずことしはこの辺でいこうということにきまりましたようなわけでございます。査定したとか修正したとかいうふうにはおっしゃらないように一つお願いしたいと思います。
  39. 小林進

    小林(進)分科員 厚生大臣、生活保護法には予算的、財政的な考えで保護基準というものは閣議できめていいとか修正していいとか——そういう問題についてはほかにもいろいろ法律はありますよ。仲裁裁定の問題なんかも、勧告しても財政的、予算的になければ、内閣は断わってもよろしい、そういうような法律がいろいろあるが、この保護基準の決定に対してはそういう救済規定がないのです。これは厚生大臣がこれをきめるときちっときめてある。ということは、この生活の保護基準というものはほかの予算問題と違いまして、人間が生きる最低基準をきめるのですから、予算があるとかないとかという問題で、これは修正、付加、増減できるものじゃないという、そういう本質的な意味において、これは厚生大臣だけにきちっときめてある。内閣においても修正権がない。大蔵大臣ばかりじゃありません。内閣も総理大臣も厚生大臣のその決定はこれをちゃんと実施する義務がある。法律全般からは内閣も総理大臣も厚生大臣の決定を行なうべく義務づけられているというのが立法の精神です。もう私時間がありませんからこれでやめますが、大臣も少しお勉強をしていただきたい。これは厚生大臣が持つ唯一絶対の権限ですから、これを大蔵大臣にこね回されたり内閣にこね回されたりして、ふらふらしているというのでは、最低級で生きている国民はとてもたまったものじゃありません。きょうは時間がありませんから、論争は後日に回すことにいたしますが、これは私は了承できません。大臣一つしっかりこの結論を出していただきたいと私は思うのであります。  次に私は、看護婦の行政事務的な問題を、もう時間もありませんからぽつぽつとやっていきたいと思うのであります。これは先ほど床次さんも質問されておりましたようですから、私は重複することを避けていきたいと思うのですが、今度、看護婦あるいは保健婦、助産婦が少ないということで今年度から初めて貸費制度というものを設けられて、二分の一の補助を与える、こういうことで一千八百万円ばかりの予算を細まれて、養成する人員一千三百三十人を予定せられておるようですが、これを含めて、一体看護婦の不足分を充足することができるのか。この数字は、看護婦の不足分を何年で充足するとか、何か一つの計画があってこの数字をお出しになったと思うのでありますが、その点を一つお聞かせを願いたいことが一つ。  それから、現在週四十四時間制をおしきになっている。看護婦の欠員をしている、定員不足の中に四十四時間制をおしきになったその関係上、各病院でみんなトラブルが起きている。呼んでも看護婦さんは来てくれない、あるいは深夜に人が死んだ。いろいろの問題が、患者の側からも、また看護婦さんの側からも方々に故障ができておりまするが、そういう問題の救済のためにどういう処置をお考えになっておりますか、川上さんに一つお尋ねをいたしたいと思うのであります。
  40. 川上六馬

    川上政府委員 最初の貸費制の問題でございますが、今お話しの通り、府県で貸費制度をとってもらいまして、それに対していろいろ助成をしていくということにしております。これはお話しの通り千三百三十人の貸費制を設けようということでございますが、これで看護婦の不足が解消するかという御質問でございます。看護婦の不足はなかなかそういうことでは現在は解消できないと思います。病院医療法に基づいて必要な看護婦を置こうといたしますと、一万四千名ばかり要るということでございます。こういう計算をいたしております。
  41. 小林進

    小林(進)分科員 それは国立だけですか。
  42. 川上六馬

    川上政府委員 全国です。しかしそれは全体的なプラス・マイナスでございまして、そのほかに地域的なアンバランスもだいぶあるわけでございます。たとえば都市の方にだんだん看護婦が流れていく、あるいは施設のよい方に看護婦さんがだんだん移っていくというようなことがございますので、そういう地域ごとあるいは施設間ごとにアンバランスが相当あるわけでございます。従ってそういうような貸費制だけではとうていその不足を充足することはむずかしいわけでございまして、これとは別にやはり看護婦の需給対策というものをもう少し積極的に講じていかなければならぬというように考えているわけでございます。  それからその次の、四十四時間制にしたために国立療養施設などで相当看護婦の不足があって、いろいろそのための支障が起きておるというお話でございますが、確かに四十四時間制にいたしましたために、現在のところは多少そういう点が出ておるわけでありますが、しかしこれに対しましては、御承知のように三百名余りの看護婦を増員いたしましたり、あるいは看護の機械器具というものを整備いたしましたり、あるいは超過勤務などで手当をいたしましたりなどいたしまして、現在やり繰りをやっておるわけであります。特に地域的にあるいは施設的に不足のところがあるというのは、全体としては国立療養所、病院とも一応基準看護の定数を確保しているわけでございますけれども、実は欠員がございましたり、特に立地条件の悪いようなところにはなかなか看護婦が行ってくれないということで、欠員の補充がなかなかむずかしかったり、それから何分患者の移動がございまして、非常にふえるところがございますし、また減っていくところがございまして、その間の定員の調整をいたしておるわけでございますけれども、それがまだ思うようにできないというような現実の問題がございまして、地域的あるいは施設的にお話のような不足の状態を来たしておるところもあるかと思います。しかし非常に極端な話をときどき聞くわけでございますけれども、そのつどいろいろ調査をいたしてみますと、必ずしもそれが実際には事実でありませんで、組合などの好意的な看護婦の編成に対する協力があれば解決する面が非常に多いわけでございます。そういうことで、今のところ御心配のような点もございますけれども、だんだんこれを是正して参っております。御承知のように相当患者が多かった時代に比べますと、現在患者が相当減っておりますにもかかわりませず、看護婦さんは別に減らしておりませんので、そういう点では、民間看護婦の確保状態に比べますと、国立の方はそれよりも全体としてはさらによいように私は考えておるわけであります。
  43. 中村幸八

    中村主査 政府側に申し上げますが、時間が大へん限られておりますので、答弁は要領よく簡潔にお願いいたします。
  44. 小林進

    小林(進)分科員 私のいただいた一時間という時間は、私の質問だけに限られた一時間で、答弁の方はこれは含まれないものと一つ御了解をいただきまして……。
  45. 中村幸八

    中村主査 主査においてはさように解釈しておりませんから……。
  46. 小林進

    小林(進)分科員 三十五年度の末ですか、看護婦の総数が十八万五千五百九十二名、これは最近若干ふえていますけれども、この数字は別といたしまして、この中には昭和二十二年の政令第百二十四号によって廃止された旧の規定、看護婦規則、保健婦規則、助産婦規則、こういう規則によって——これを廃止されて、新しく現行法でいわゆる免許をとったのですが、そういう旧の規定に基づく看護婦がどの程度含まれておるか、一つ数字をお聞かせ願いたいと思います。
  47. 川上六馬

    川上政府委員 全体の数字は今ちょっとまとまっておらないのでございますが、看護婦協会でやってくれました全国の百床以上の病院二千十四の施設の中の十分の一を抽出いたしまして、これは無作為抽出でございますが、二百一について看護婦総数九千二百六十一名につきましての調査の結果が出ておりますが、その中で看護婦さんが五千四百七十三名、准看護婦さんが三千七百八十八名。パーセンテージで申しますと、看護婦さんが五五%、准看護婦さんが四五%でございます。その看護婦さんの五千四百七十三名のうち、旧制養成所の卒というのが三七・五%、国家試験の合格、これが三〇・九%、検定その他が一三%ということになっておりまして、新しい制度に基づきましての看護婦さんというのは約三割でございます。あとは旧制度看護婦さんになっておるというのが大体の状況になっております。
  48. 小林進

    小林(進)分科員 現行法と旧制では同じ看護婦という名前を与えても、内容は違いますね。看護業務の内容は違っておりますね。
  49. 川上六馬

    川上政府委員 看護婦さんの場合は同じでございます。准看護婦もほぼ同じでありますが、准看護婦看護婦さんの指示に従わなければならぬということになっておるわけでございます。
  50. 小林進

    小林(進)分科員 旧規則によって登録をした看護婦と、現行法による看護婦との資格は同じであるかいなか。たとえば都道府県に登録をして、第五十三条第二項により、業務は准看護婦に関する規定を準用するというように規定がなっている。一般の看護業務は第五条でできるけれども、それ以外のものは看護婦と同じ業務はできないと規定されていると私は承知しているのですが、この点いかがでございますか。
  51. 川上六馬

    川上政府委員 看護婦ということになりますと、旧制の人も新制の人も看護業務においては別に差異はございません。同じような看護業務ができるわけでございます。
  52. 小林進

    小林(進)分科員 その範囲外のことは准看護婦と同じ扱いにするということは何を意味するのですか。
  53. 川上六馬

    川上政府委員 どういう根拠でそういう御質問をされますのかよくわかりませんけれども、先ほど申しました通り看護婦という名称の看護婦は、旧制であろうが新制であろうが業務内容には変わりございません。準看の方は看護婦の指導を受けるということになっておるわけでございます。業務の内容は先ほど申しましたように変わりませんけれども、登録が準看護婦は府県でやるというだけでございます。業務の内容は変わりございません。
  54. 小林進

    小林(進)分科員 実はこういう質問を申し上げますのは、旧規則を現行法にかえるときに、一つ一定の期間を設けて府県に看護婦の籍ですか、それを登録して、新しく免許の書きかえをするようにということを、厚生省の医務局で二十六年のころ通達をお出しになった。その後一体その通達が正しく行なわれて登録ができているかどうか。旧看護婦の免許で一切何もその登録がえもしないで、看護婦業務に従事している者がいるかいないかということです。それに基づいて実際の弊害ができているかいないかということです。私はそれに基づく書きかえをあなた方の通達通りやっていないもろもろの例を知っております。またそのために一つの弊害もできておることも私は了承しておる。知っている。あなたは知らないとおっしゃるならば、これは時間がないから私はやめますけれども、非常に大きな弊害が起きております。しかし旧法と現法と書きかえて、そのためにちゃんと看護婦の籍というものを設けて、そこに登録せよという通達をお出しになったならば、新しいそのための免許証をやるのですから、そのためには少なくともこの規定に基づいて三年間継続して看護業務をやらなければ資格を失格するでしょう、そういう規定がありますね、そのことからその人たちが旧法に基づいて継続して看護婦をやっていたかどうか再調査して、その人物、識見みなやって、再整理して新しい免許証を下付する、そういうことがあなたたちの通達通り看護婦行政というものが円満にいっていない。あるいは五年も六年も休んでいて、新しい今の看護法なんか知らないで、昔の規則通りやっていたり、そういう免許証を持って看護業務に従事する者があるかもしれない、あるかもしれないじゃない、現実にあった。そのためにやはり被害が生じている。その被害が生じているという例は、ちゃんと厚生省のあなたの部下のところへもある実害に基づく報告がいっている。局長のあなたがお知りにならないならば、あなたは部下からその障害の実情をお聞きになっていないからわからないのだ。あなたの部下の掌握の仕方が悪いからだ。それはあるのですから、そういうことが実際に行なわれているかどうかということをお聞きいたします。
  55. 川上六馬

    川上政府委員 御承知のように、もとは府県の登録であったのでありますが、新制度に切りかえて、旧制度看護婦さんも国家の登録をするようにということを申しているわけであります。それで今のお話の中に、三カ年たつと免許が無効になるということですが……。
  56. 小林進

    小林(進)分科員 免許が無効ということじゃない、看護婦さんの資格を与えるわけにいかなくなる……。
  57. 川上六馬

    川上政府委員 現在はそういうふうに考えていないのでありまして、今お話のございましたように、特に弊害があるということにつきましては、私も実情を知りませんので、よく調査をいたしまして、そしてなるべく国家登録に切りかえるように、これを促進するように一つ努力をいたします。
  58. 小林進

    小林(進)分科員 旧免許について継続して三年以上看護業を休んでいる者には資格を与えられないということになっております。これはあなた勉強して下さい。あなたの勉強が足りないのですよ。それはそうなっておりますから。同時に、実害ができていることも、あなたの部下の課長さんが詳しく知っておりますから、帰ったらよく聞いて、私の言うことが間違っているかどうか、あらためて一つ社会労働委員会でお目にかかることにいたします。  時間がありませんから急ぎますが、これも昨年の社会労働委員会でも私は言った。その後の経過処置はどうしていたか。それは国立の大学付属病院における研究生の取り扱いの問題です。これを一体どう処置していただいているか。大学の付属病院においては研究生というものがいる、これは大学の定員でもなければ、国家公務員でもない。しかしこういう人たちが一体何百人いるか何千人いるか。俸給ももらわなければ、その他の給料ももらわない。そして研究生と称して入っておる。大臣も御承知でございましょう、たくさんいるのです。これは無籍者です。籍がない。しかし、この人たちが何々主任教授というものの下にいて、主治医と称したり、あるいは患者をとんとんやっているわけなんですが、そういう研究生自身も定員外でしょう。何年たっても労災保険をもらえるわけではないし、健康保険組合に入れるわけではないし、一切のそういう国家の恩典から締め出されているし、給料だってもらうわけではない。また患者の方からいわせれば、大学なら大学の付属病院に行けば、その大学の定員になっているりっぱな教授、助教授、あるいはその大学が任命している国家公務員たる職員というか、お医者さんによって診療されるものと信じて意識的、潜在的に行くわけです。そうすると、大学の職員でもなければ国家公務員でもない、わけのわからぬもうろうたる者が、主治医と称してとんとんとやる。その中には誤診というものがあるかもしれないし、あるいは誤った治療というものが出てくる。そのときの責任は一体どうなるか。最近は人権問題等が多く、誤診あるいは誤った治療に基づく死亡あるいは争いが非常に激しくなって参りました。大学の病院に特に多いのです。それを追及していくとみんなこれなんです。これでは患者も困るし、研究生も困る、大学当局もその信用を失墜する結果になると思いますが、こういうことに対して私は、重大問題だから早急に処置をしなさいということを昨年度から声を大にして御忠告申し上げておるのです。これは文部省の関係でもあり、厚生省関係でもありますが、大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  59. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 実情をよく取り調べまして十分検討いたします。
  60. 小林進

    小林(進)分科員 これは実に重大問題でございまして、大学の主任教授や助教授の名誉に関する問題でもございますから、私どもはこれを公表することを控えたいと思っておるのでありますが、それに基づく弊害というものは実に多いのであります。そのために相当死んでおります。そういう籍のない研究生が主治医と称して見ております。みんなそういう研究生に診療してもらって、相当死んでいるのです。それは誤診でないかもしれない、誤った治療でないかもしれないけれども、そのためにかわいい妻を殺されたり夫を殺されたりしている。(「大学だけではない。国立病院もある、」と呼ぶ者あり)これは国家公務員だから、国立病院を含めての話でございます。大学だけではございません。これは重大な問題で、実に被害が跡を断たないのであります。国立病院なり大学病院——片方は人が小なくて定員に満たないにもかかわらず、片方はそういう籍のない者がまるで余っているという矛盾ですね。だから国立病院でも大学病院でも、きめるものはきちっときめて、これは文部省の関係ですから、厚生大臣から文部大臣にもよくお話しいただいて、そういうあいまいなことのないように、きちっと始末をするようにしてやっていただきたい。来年また同じような答弁を繰り返すことのないように一つ善処をお願いしたいと思います。  それから結核対策についてでありますが、これもあと質問が出ると思いますから、重複することはやめて、私は結論だけをお尋ねしたいと思います。あなたたちがお出しになった資料に基づいても、結核予防法による届出の結核患者だけでも四十八万九千七百十五名おる。要医療患者だけでも大体九十六万人、人口十万に対して千人からいる。こういうような統計をお出しになっている。それに対して、現在入院しておる結核患者は二十三万名くらいで、在宅の患者、いわゆる感染濃度の強い患者にして、まだ入院しないで在宅で治療しておる者があなた方の統計だけでも十一万からいらっしゃるということでございますから、こういうことから見れば、結核対策は非常に成功をいたしておりますけれども、まだ完全とはいかない。今この機会に、いま一歩ぐっと締めていただかないと、せっかくここまできたものがくずれるのではないか。これを非常に心配するのです。先ほどから医務局長が言われておるように、どうも国立結核療養所の入院患者が減った、あるいは空床ができてきたから、国立病院、結核療養所、診療所を縮小する、こういう政策を去年あたりからおとりになっておる。実に私は気に入らなくて気に入らなくて仕方がない。あなたたちの統計だけでも、結核に費す費用が年間七百億ですか、八百億くらいの推定の数字でありますが、それをだんだん締めてきて、ようやく仕上げの段階にきたときに、それを手放されるようなことは非常に危険だと思います。その意味において私はお伺いするのでありますが、第一に、結核対策といたしましては、何といっても健康診断でございましょう。国民全部を健康診断してみれば、結核患者、保菌者はすぐわかる。それをあなた方はおやりにならない。今年度の国家予算においても、一体健康診断の予定人員は幾らかというと、全国民の四〇・六%ですか、健康診断費として、この予算書の中には、三千百七十一万六千人しか予定せられてない。九千四百万国民の中で、定期的な診断をこれくらいしかおやりにならない。あとなぜやらないのですか。こういうところに結核対策の大きな抜け穴がある。一般の住民に至っては結核のための健康診断はわずかに二六・三%しかない。だからあなた方のおっしゃる保菌者が幾らあるとか、要保護者が幾らあるとか、感染濃度の強い患者が幾らおるとかということはみな推定の数字であって、的確なものをまだつかんでおいでにならない。どうしてこの健康診断をわずか四〇%にとどめておかれるのか、その理由をお聞かせ願いたいと思います。
  61. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 健康診断、これは政策としてこのくらいしかやらぬということではもちろんないのでございます。それは法律に明示してある通り、ぜひ全国民が受けてもらえれば全部やりたい、こういうことになっておるわけでございます。ただいろいろな隘路がありまして、たとえば実施機関におきまして、村々町々の末梢まで、この年に一度の健康診断をなかなか受けてもらえないというようなことがございまして、これに対しましてはレントゲン自動車を逐次整備いたしまして、これは年々増加しておりますが、これによって現地に出向いてやるというような、実施上の隘路を解消する。さらに、事業体におきましても、いいところはもちろん九〇%以上やっておりますが、そこまでいかないところもございます。これは事業体の費用でやることになっておりまして、これがなかなか思うようにいかぬところもございますが、これも指導監督し、法律に基づいてさらに強い勧告をいたす、こういう形で上げていく。一番困りますのが、今おっしゃいますように一般住民ことに家庭の主婦あるいは家庭の中におる小さい子供、老人というようなものは、実施の、チャンスはありましても、なかなか出にくいということでございますので、これを一そう増加させていく、そういうことでございまして、これを三千余万人にいたしましたのは、従来よりもさらに若干ずつ増加する数を組んでおりまして、かってはいつでも四割から、五割前年度に比しまして多い数を組んでおいたのでございますけれども、いかに努力しても年間の伸びが何%とかあるいは一〇%程度という実績が続いておりまして、この実績にかんがみまして努力は十分にして、大体来年はこの程度しかうけてもらえない、こういう計数でございますので、もちろんそういうような施策によりまして健康診断を受ける者の数がふえれば、当然それに応じて組む。年年結核の健康診断につきましても、足らないときは他の費目の余ったものを流用するとか、あるいは一方が足らなくなってほかがどうしても余らぬということが決定した場合には、移用の願い出をするという形で操作いたして参っております。さようなことでございますので、決してこれしかやらないというつもりでこの数字をあげたわけではないのでございますので、御了承願いたい。
  62. 小林進

    小林(進)分科員 大臣、今もお聞きの通り、法律に基づいても全国民がみな結核のための健康診断を受けることになる。そういう法律の規定の中にも、実数は三千なんぼしか受けていない。その中には今も申し上げますようにむしろ経済的の関係で、結核を発見されて入院でもされると妻子眷族が困るというので、隠れて治療をしている者がまだたくさんいるのです。現在非常に濃厚度の患者でありましても、先ほど私から申し上げましたように入院をしない。在宅で治療をしている。なぜ在宅で治療しているかというと、まだ農村なんかへ行きますと世間体が悪い、肺病だからといっておつき合いしてくれない、そういうような事情があります。第一には経済関係です。入院してしまうと経済が保っていけない、生活ができないということで、無理してやってしまう。こういう点もお考え下されば、単に病院に入院患者がいないからということで病院を縮小するというような政策は木末転倒、非常に間違っておることなんです。それをあなたの部下の川上さんがおやりになろうとするから、私はそれは間違っておりますよということを申し上げるのですが、いま少し健康診断をやれば、在宅で苦しんでいる者なんかの生活も厚生行政の面でみな見ていって、保健所なんかも手がないのですが、保健所をもっと活用していきますと、まだまだ結核保菌者の発見もできる。保健所もまだその機構が弱いから、こういうことをいま少し活用していただいて、年間金額にいたしましても七百億から八百億も浪費をしているのですから、そういう金を今ここで二百億か三百億ぐっとお詰めになれば、その元手によって八百億円の経費が浮かぶのですから、経済的にもその点が有利でございましょうから、いま一歩強力な措置を進めていただきたい。  次に母子福祉対策についてお尋ねいたしたいのですが、これは非常に事務的な問題でございますけれども、児童局の母子課の勘定でいきますと、全国の母子家庭が大体百二万なんぼになっておる。また厚生省のこれはどこですかでおやりになった数字では四十二万四千世帯ということになっておるのですが、これはおそらく満十八才以下と満二十才以下という子供の年令のとり方によって違ったのではないかと思いますが、この母子家庭の数字というものは一体どういうふうにおとりになるのですか、これを私はお聞きをしたい。百二万と四十二万との開きがあるわけですが……。
  63. 黒木利克

    ○黒木政府委員 御案内のように昭和三十一年の八月に全国母子世帯実態調査というものをやりまして、そのときの数字が推定百十五万世帯であります。五年ごとにこの実態調査を繰り返したいというので、実は昨年の八月に実態調査をやりまして、現在資料がまとまっておりますが、それによりますと、全国母子世帯の推定数は百二万八千世帯でございます。
  64. 小林進

    小林(進)分科員 その百二万八千世帯というのは、満二十才までの子供ですか、満十八才までの子供を持っている家庭ですか。
  65. 黒木利克

    ○黒木政府委員 二十才までの子供を持っている母子家庭であります。
  66. 小林進

    小林(進)分科員 そうしますと、今の母子福祉法による母子家庭、いろいろの援助を求めているのは、満十八才までの子供でございましょう。
  67. 黒木利克

    ○黒木政府委員 二十才まででございます。
  68. 小林進

    小林(進)分科員 間違いございませんね。  そこで、いろいろ母子福祉資金の貸付等でごめんどうを見ていただいている中で、これを調べてみますと、事業の開始資金、支度資金、技能習得資金、生活資金、事業継続資金、住宅補修資金、修学資金と修業資金、この八種類についてそれぞれ貸付制度を設けていただいておるわけでありますが、その内容を見ますと、修学資金の貸付がもう圧倒的に多い。ほかの一番多い事業開始資金で、五千九百八十六件くらいしかない。技能御符資金に至っては、申し込みのありますのがわずかに六十八件です。それに対して修学資金の方は二万七百五十六件、圧倒的に多いわけです。だから母子家庭で一番熱望しているものはやはり修学資金の貸付金とまず見てよろしいわけです。この中に高等学校と大学があるわけです。その中の高等学校と大学に一体幾らずつお金をお貸しになっているか、一つ限度をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  69. 黒木利克

    ○黒木政府委員 昭和二十八年から始めておりますが、昭和二十八年から三十五年度までの実績を申し上げますと、貸付の総額が約八十六億であります。そのうち生業資金が三十億、それから修学資金が二十九億でございますが、うち、高等学校の方が二十一億、大学の方が八億三千万円程度でございます。
  70. 小林進

    小林(進)分科員 今もおっしゃるように大学の方は少ない、高等学校の方は非常に多いわけです。だからいかに低所得の母子家庭が、子供の高等学校の教育に全能力を傾けているかということがこれでわかるわけです。その一人に対する貸付金額は幾らですか。
  71. 黒木利克

    ○黒木政府委員 千円でございます。
  72. 小林進

    小林(進)分科員 その千円に対して、母子家庭は少なくとも千五百円にしてもらいたいという切実な要望が全国的な声になって届いているはずだ。その要望にこたえてあなた方は、三十七年度から千五百円ずつ貸し付けますということを確約したはずだ。これはあなたのときでなくて大山さんのときだと思うのですが、大山さん、お約束されたはずです。一つ御答弁を願いたい。
  73. 大山正

    ○大山(正)政府委員 私、児童局長時代に千五百円という要望がありまして、予算要求したこともございますが、確約したということはございません。
  74. 小林進

    小林(進)分科員 実にこれは重大なことになる。全国の未亡人は大山さんが今度は、三十七年度から一千五百円に必ず上げてあげますと替われたということで、喜び勇んでみんなその準備をしていた。にもかかわらず、ふたを開けてみたら依然として千円だということで——そのときは政務次官もおいでになって、その切実な声は聞かれたはずであります。そういうようなことをされちゃ——どういうことで一体、千五百円を約束しておきながら、ならなかったのか、その経緯を一つ承っておいて、同時に御答弁を願いたいと思うわけであります。
  75. 黒木利克

    ○黒木政府委員 前局長の方針を踏襲いたしまして、明年度予算要求にも千円を千五百円にする、従って必要な金は二億円でございますが、従来の実績三億にプラス一億で四億円の要求をしたのでございますが、残念ながら三億円の増額にとどまった次第でございます。
  76. 小林進

    小林(進)分科員 その理由は……。
  77. 黒木利克

    ○黒木政府委員 理由は二つあるのでございますが、一つは、新規の高等学校の生徒がだんだん多くなりまして、従いまして母子家庭で新規申し込みの件数が急速に増加したということでございます。三十四年度の新規申し込み件数から申しますと、一万三千五百四件であったのでありますが、三十五年度は一万六千二百三十五件、約二〇%ふえております。三十六年度もさらに増加しておるものと推定されるのでありますが、一般の高校生につきましても、三十六年度の新入生が九十三万人から、三十七年度には百二十万と三〇%ふえておる。従いましてこの新規申し込みにこたえるということが急務ではないか。額の引き上げよりも新規申し込みを満たしたい。現在までのところ、高校修学資金の方は九二%、申し込みに対して決定しておりますが、こういう高率を維持したいというために、現在の限られた予算では、むしろ申し込みの方の数の要求にこたえたいということであります。  それともう一つは、直接の関係はないにいたしましても、文部省の方で育英資金の制度がございますが、ここと従来同じ歩調をとっているのでございます。いろいろ考え方はございますが、ただ私の方の修学資金をもらいますと、文部省の奨学資金はもらえないというようなことになっておりますから、大体金額についても同じような態度をとっているのですが、これは文部省と共同作戦で、要求したのでありますが、文部省の方も同じような理由で、まず数をふやすべきではないかということで、単価の引き上げがだめであったというような事情でございます。
  78. 小林進

    小林(進)分科員 これは大臣にお願いしたいのでございますけれども、一番目の、人員の増加に基づいて、新規のものの要求を重点的にいれるために千五百円にしなかったとおっしゃることは、これはもっぱら予算的な問題でございます。これは大蔵省と厚生省との力の関係でございますから、どうか一つ——生別、死別同じでありますけれども、女の細腕で、男の子供をかかえて人生の荒波と戦っているのです。私は人数の問題でもお聞きしたいのですが、こういう人たちは、新しい夫を見つければ母子家庭でなくなるのでしょう。それが恋愛関係であろうが、籍を入れないでも、とにかく事実関係が生すれば母子家庭でなくなる。だからここでいわゆる母子家庭というのは、名実ともに男にはたよらないで、女の細腕で子供をかかえて、教育をしながら人生の荒波と戦っている未亡人であるということは間違いはないわけです。そうでしょう。そういうような人たち教育の問題なんです。精神的、肉体的、経済的な苦労に耐えながら、何で一体生き長らえているかといえば、子供が唯一の頼みなんです。だからこうやって申し込みも、修学資金が一番数が多くなっていくということは、にじむような未亡人の切実な気持が出ておるのですよ。だから、こういう金ですから、新規はもちろんでありますけれども、千円を千五百円にできないような、一体国家の財政ですか。日本はそんな貧乏な国じゃない。これは私は理由にならないと思う。これはやはり厚生省の皆様方が、大蔵省に対する力が足りないと私は見ている。ほんとうにこういう人たちの生活を守るという熱意が足らないと私は考えている。ですから大臣一つ来年は大いに金を取って下さい。  それからいま一つは文部省との関係、この考え方も私は賛成できません。文部省の奨学資金は、これは秀才教育なんだ。秀才で、頭のいいやつで、生活がそれほど豊かではない。その中にはどっちかというと、生活の程度よりは学校の成績が主体になります。文部省の奨学資金というのは、えてして秀才にその金が流れていく。厚生省の方は、今申し上げたように秀才、不秀才の問題じゃない。この人生にほんとうに生き長らえていくいたいけな母親の最後の願いがこめられております。だから、文部省の方が千五百円ならこちらは二千円、向こうが二千円出したら二千五百円、三千円出して、こういう人たちを、厚生行政のあたたかいところでめんどうを見ていくという気持を、私はこの修学資金の中に見せてもらわなくちゃならぬ。特に私は大臣にお願いいたしたいと思います。  まだこのほかに、小児麻痺や麻薬や、いろいろ問題がございますが、時間がございません。あまり同僚諸君の時間をとることはいかぬと思いますから、私の質問は、この点に関してはこれで終わります。
  79. 中村幸八

  80. 井堀繁男

    井堀分科員 この三十七年度の予算編成の基本的な方針は、池田総理並びに大蔵大臣の施政方針の演説の中で、かなり厚生省関係予算に言及され、強調されておりますので、一、二重要と思われる点をお尋ねいたしてみたいと思うわけであります。  池田総理の本会議における施政方針の演説の中で、低所得者階層に関する対策にかなり強い発言をいたしておるのであります。また福祉国家建設を目ざすかのごとき多くの言葉を使っておるのでありますが、この点は、わが党としては非常に強い関心を持っておることであります。もし忠実に池田内閣が、福祉国家建設のために予算の編成に実を上げますならば、国会正常化の一番重要な与野党の共同の、政策上の問題を中心にする討議の場所を得られることにもなると思うのでありまして、そういう点で強い関心を持っておるわけであります。しかし残念ながら、予算説明の内容を拝見いたしますと、どうもそういう主張とははなはだ縁の遠い内容のように理解されますが、しかしそれも、将来芽を出してくるようなものでありますならば、われわれは大いにこれに協力する必要を痛感するのでありますので、こういう意味で二、三お尋ねをしてみたいと思うのであります。  そこで低所得者階層のために、特別何か新しい予算でもお組みになっておるかと思いまして、いろいろ検討をいたしましたが、私どもの今までの検討の結果では、そういう点が見当たらないのでありますが、しかし引き出し方によってはと思われる点が一つあると思います。それは第一、今は低所得者の問題は、疾病や癈疾などによります場合の保護はもちろんでありますけれども、その以前の問題——健康で、しかもりっぱな職を得て、しし営々と、国の経済を開拓し推進するために日夜労働に従事しております人の生活が、はなはだしく脅威を受けておるということは、私は非常に重大なことだと思うのであります。こういう問題について、できるだけ私どもは小さな予算でありましても伸ばしていくようにすべきではないかという意味で、この点をお願いするのでありますが、私が今一番痛感いたしておりますのは、低所得、すなわち低賃金や所得が低いために生活の維持ができないということは、もちろん厚生行政の中だけで問題を処理することができないということはよく理解できるのでありますが、しかしちょっと手を貸してあげる、一押し押してあげれば、その勤労者は勇気を鼓舞して、またある場合にはちょっと手を引いてあげることによって、落ちようとする危険な段階から救うことができるという場合が非常に多いと思う。そういうものを私はここに具体的な事例をあげて一つお尋ねしてみようと思うのでありますが、厚生予算の中で、そういう生活金融——言葉は適当でないかもしれませんが、生活金融というものがそういう点に大きな役割をすると思うのであります。ところが今日の金融制度の中では、生活金融と思われるようなものは、公然としてあるものは労働金庫でありますとか、あるいは公益質庫あるいは民間の質庫などがありますが、しかしこれとて問題がたくさんあると思うのであります。ことに高利貸しなどによって危機を切り抜けようとすることが、結果において深みに陥るという例がたくさんある。そういう点で私は公益質庫について一つの希望を持っておるのであります。  そこでお尋ねをいたしますが、一体この予算の中を見ましたけれども、公益質庫に対する予算上の措置は、設備資金のわずかをほんの申しわけに見ている。法律の本来の目的にようやく間に合わせるといったような予算の組み方ではないかと思うのであります。これは一体どういう考えで、厚生省はこういう予算の組み方をなさっておるのか、どうも理解ができないのであります。すなわち低所得者階層のために手を差し伸べる一番初歩の段階としては、ボーダー・ラインに落ちてしまっては意味をなさぬのであります。そのすれすれのところを救っていくということは、防貧などという言葉では適当でないと思いますが、ここら辺に問題があると思うのであります。なぜこんなにかぼそい予算しか組めなかったのであるか、あるいはまた他に適当な方法をお考えになっておるか、そのことをまず伺いたい。
  81. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 低所得階層に対する金融の問題は、なかなかそれぞれの家庭にとりましては切実な問題もあろうかと思います。同時にまた金融のことでありますから、全然いわゆる信用貸しというふうな状態でやっていくわけにも参らぬ点もあろうかと思うのであります。いずれにいたしましても、公益質屋を厚生省所管をいたしておりますが、私も最近の状態をあまりつまびらかにしておらないのでありますけれども、どうも少しこの方面の行政活動が不活発ではないかという感じがいたしております。一体なぜこれが不活発なのかというような点にも検討を要する面があろうかと思いますが、この公益質庫がはたして社会的に見まして、庶民大衆の諸君の要望に沿わないものがあるのか、あるいはまたこれを必ずしも必要としないというふうな事情にあるのか、そこらがどうも私まだよくつかめないのでございますけれども、いかにも行政としましては——実は私、昔の初期時代の公益質屋の問題に携わったことがあるので、さようなことを感ずるわけでございますが、どうも不活発なのではないか、そういう感じがいたすのでありますが、これにつきましては実情をよく調べまして、ほんとうにお役に立つものならば、もっともっと広げていかなければならない、かように考えております。低所得者階層に対する対策の一つとして、お役に立ち得るようなものがあるのではなかろうか、かように私は思っておるのであります。もし実情をまたお聞かせいただければ、それらにつきましてもよく調べまして、十分検討いたしたいと思います。
  82. 井堀繁男

    井堀分科員 私はこれが最善のものとは考えませんが、しかし実情を見ますと、たとえば、民間の質庫の実情のデータが手に入らぬものですから、質庫協同組合の御協力によって得た資料で、しかもかなり前のものでありますが、それによりますと全国質庫の数が二万一千二百二十軒、そうしてその貸付金額が七百八十九億を突破しておる。しかも驚くことには、その支払われておる利息の金額が二百五億に上っておる。もちろん八分ないし九分の高利のものでありますけれども、そういう高利のものが今日依然として市民生活の中に大きな役割をしておるということは、この数字でよく理解ができると思うのであります。もちろん質ぐさを持っていくことでありましょうが、いろいろここには悲劇が描写されている一つの社会世相だと思うのであります。私は質庫金融というものが望ましいかどうかという問題はもちろんあると思いますが、そういうことではなしに、今私がこれを取り上げるのは、こういうことによって市民が危機を切り抜けておる生活金融の実情だということは、間違いないと思うのであります。これを多少でもカバーしようというのが、私は公益質庫の誕生であったと思うのであります。ただいま大臣も御指摘になられたように、それがほんとうに時代の要求であったならば、民間質庫にかわって公益質庫になったかもしれません。またそうすることがいいか悪いかという別の問題も出てくるだろうと思いますが、しかし口数だけを見ましても六千八百四万口というのでありますから、国民生活の中で大きな役割をしておる。それと低所得者というものをどういうふうにつかむかということは問題があるようでありますが、厚生省調査によりまするボーダー・ラインと俗に言っておりますが、昭和三十五年四月を見ましても八百三十三万人に及ぶ、今度保護基準をお引き上げになりましたから、たとえば一級地の五人世帯の金額が一万三千四百七十円というものが出るようでありますが、このデータを基準にいたしまして、労働力調査の上に現われている所得階層を拾いあげてみますと、それ以下になるものが一千五百五十八万人にも及ぶというのでありますから、これは自営業者でありましたり、りっぱな雇用関係の中に就職しておる労働者であります。でありますから今日の低所得階層というものをつかむ場合には、この数字は私は最低のものではないかと思うのであります。そうしますと、こういう人々がおおむね生活の危機を切り抜けるための金融ということになれば、高利貸しかもしくは質庫、公益質庫はあなたの方の報告書を見てもわかりますように、貸付額はわずかに三十三億ですから問題になりません。それから貸付の制限がありますし、利息は三分以下でありますから、九分、八分の貸付の金利に比べて非常に安いのでありますが、私はこういう実情をそのまま放置するということでは、これは低所得者対策というものの一番序の口の問題に一向に手が届いていないのではないか。もちろん私は公益質庫を拡大せよというのではありません。しかし何か当面の措置というものが、今の池田内閣の性格からするなら、ここら辺に手が打たれなければ——、自由主義経済、資本主義経済の中における社会政策というものは、こういうところから始められるべきではないか。こういうところにも手が出ないようなことであっては、福祉国家にはとても手が届かぬ、そういう意味で私はこういう点を一つ具体的に例を申し上げたのであります。予算委員会でも大蔵大臣にお伺いする予定でありましたが、時間がありませんでできませんでしたので、よい機会であると思いまするが、公益質庫を拡大するというよりは、むしろこういう低所得者のために年々二百億からの高利が払われておるのでありまするから、その高利の一部を補給してあげるというようなことは、そんなに至難なことではないのではないか。しかもそれはすぐ肉になり血になって、経済の拡大をはかろうという場合における勤労者の意欲というものを引き上げていく一番手近な、だから再生産に回ってくる金だと思うのです。もっとも生活保護その他も重要でありますが、こういうようなものにどうして、手を出さないのだ、こういう点に対する——まあことしの予算には間に合わないのでありますけれども、多少操作などの上で工夫をこらすとすれば、ここいら辺にあるのじゃないかと思います。この点に対する御所見一つ伺いたいと思います。
  83. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お話の御趣旨は低所得階層といいますか、生活上から申しましても必ずしも楽でない世帯を中心にしてのお話だと思います。こういうふうな世帯になりますと、いわゆる一般国民金融公庫であるとか、そういったふうな通常の金融機関ではなかなか間に合わない。どっちかというと生活資金的なものが多いのではないかと思います。それだけに金融という形において処理していくということには、なかなか事務的に困難な面があろうかと思うのであります。厚生省といたしましては、今のまことに不活発だということは私自身が申し上げましたが、公益質屋という制度は残って、これがほんとうにお役に立つものならば、もっともっと需要があってよろしいかと思うのですけれども、あまり需要も出てこないということでございますので、この点はよく具体的に調べてみたいと思います。それから御承知のように昔はなかった制度でありますけれども世帯更生資金でありますとか、あるいは先ほどお話が出ておりました母子福祉資金とかというふうな資金というものを用意しておりまして、これによって多少のお役には立っているだろうと思うのです。どういう形においてどういうふうにやっていくかということについては、よほど研究を要する面があるのではないかと思います。お金を貸すとか借りるとかいう問題でありますだけに、そこにまたむずかしい面もあろうかと思います。これはまた識見を仰ぎ、また一つ検討さしていただきたいと思います。
  84. 井堀繁男

    井堀分科員 あなたの方の所管には、いろいろと生活保護のために国費をそれぞれの形で国民に還元しておるわけでありますが、しかし資本主義の政府の中ではそういう還元よりは一段と楽なケースじゃないか。貸し付けるのですから、くれるわけではない。しかも高利を低利に置きかえてあげるということですから、御存じのようにあなたの方の政府では、国策では大胆におやりになっておる、赤字補給金を出すこともありましたし、あるいは低利を財政投融資の形でどんどんと大義名分をさえ立てれば、大金を要するに貸しつけておるわけです。もちろん金融政策の基礎は、貸し付けたものが元利確実に償還されるということが前提になるでありましょうが、信用社会における問題としては問題があると思う。そこで厚生省に私はお尋ねしたのでありまして、でなければ、これをまあ通産行政あるいは金融行政の中で問題が処理できるものでございまして、生活金融というのは意味ありませんよ。でありますから、私はこういう問題はいろいろ工夫を要すべきだといえばそうでありますけれども、ケースからいうと、一番楽なルートではないか、くれるよりは貸し付けるのですから。現実にさっきあなたが例を引かれましたけれども、今度低所得者対策としてここに六億ばかりの予算を組んでおります。これは貸し付けより、末端にいけば問題を起こして、とても要求にこたえられる数字でも何でもありはしません。ほんの気休めになってしまう。それはさっきの質屋の数字でわかる。だから町屋に通っておる人は、これに飛びつく人だと見ていいわけです。数字的にも非常な差があるわけでありますから、幸いにして民間が貸し付けをしておるのでありますから、九分なり八分なりという高利を公益質屋が三分に持っていったところに意義があると思う。けれども今日の質屋経営を抑えてしまうというやり方は、私どもは賛成できません。でありますから、質屋経営を維持できながら、しかも庶民の生活に潤うということになれば、要するに三分と九分ないし八分の差を埋めて上げるということは、一番やさしい政策ではないか。どこにそういう障害が起こってくるか。ただそういう点にお気づきにならなかったのではないかというように私は理解してお尋ねをいたしておるわけで。もしこれが行なわれるようになりますと、庶民生活にはかなり広い範囲に新しい光明を与えるのではないか。むしろ池田内閣が一番先に考えなければならぬ政策ではなかったかと思ったので、実は具体的な数字をあげて一言お尋ねしておるわけです。これはぜひ一つ前進していただいたらいかがかと思います。なおもう一度念のために御意見を伺っておきます。
  85. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 十分一つ検討さしていただきます。
  86. 井堀繁男

    井堀分科員 次に低所得者の問題ともちろん関係がありまする事項で、一、二お尋ねしたいと思います。時間の都合もありますから、今の問題を一つ拡大して各般の政策についてお考えをいただければ、私は存外手近なところに低所得者対策というものが生きて生まれてくるのではないかと思う。厚生行政の中の一つの新味ではないかと私は思うわけです。  そこでもう一つ具体的なものをあげてお尋ねをいたしたいと思いまするのは、厚生行政の中で一番大きく欠けておると思うのは、いろいろと御苦心の跡はよく理解できるのでありますが、多くの予算をつぎ込んでやらなければならない政策もたくさんあります。しかしあまり金をかけないで効果の上がるものが、今池田内閣としては一番手を出したいところじゃないか。そういう意味で実は申し上げますが、それは各国の例を引くまでもありませんが、社会保障制度を推進する上に、一番大切なのは人だと思う。すなわち社会福祉関係に従事する専門家を早急に育成すべきではないか。それには二つの方法があると私は思うのであります。一つは、その資格を修得させるために、今もわずかではありまするが、短大や大学を設けたり、あるいは専門学校を作られるということはその一つだと思うのであります。しかしこれはあまりに今政府が掲げておる、呼びかけておりまする社会保障制度を推進するためには、規模が小さ過ぎる。だからこういう点で養成とか、あるいはそういう社会保障事業に従事する人々の摘出と中丸催すか、そういう点に対する政策が知でおるのではないか。いま一つの問題は、やはり自由競争の中でございまするから、有利な条件のところにいい者が流れていくということ、これは必然だと思うのであります。わずかに殉教者的な宗教関係者だとか、あるいは特殊の思想に夢を抱いておりまする人が飛び込んでくれば例外で、一般に——福祉関係の人の労働条件を私は調べてみておるのですが、要するに他の同じレベルの仕事と比較してみますと、すなわち同質労働といいますか、非常に待遇が悪いのであります。でありますから、一つにはそういう人材を計画的に養成をする。他方には自然にそういうところに人が集まってくるように待遇改善していく。物質的な面だけではないと思う。社会的地位などについても考えてあげる必要があるのではないか。いつまでも下積みにしておく、殉教者的な存在に置いておくということは、社会保障制度を推進する今日の歩調とはなかなか合わないのではないか。この歩調を合わせるだけでも、社会福祉関係に従事しておりまする人々の地位を引き上げる必要があるのじゃないか。これに対する予算措置が何ら行なわれていないようでありますが、一体どういうわけでありますか、この点を一つ伺いたい。
  87. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 御指摘の通りにそれについての特別の予算というものはできておりません。御注意によりましてまたわれわれも十分検討さしていただきますが、ことしの予算では、社会福祉施設なり児童福祉施設等に従事しております職員処遇について、いささかなりとも改善したいということで、若干の予算を計上いたしております。これによりまして少なくとも民間の社会福祉施設、児童福祉施設等に従事しておられる職員処遇というものは、かなり改善せられるものと私考えておる次第であります。これはことしだけの問題ではなく、なお引き続いてこの努力を継続いたしまして、せめて民間社会福祉施設の職員公務員並みのところまでは急速に持って参りたい、こういうつもりで考えておる次第でありますが、ただ御質問の要旨はそういうところだけでなくて、もっと根本的な問題ではないかと思います。社会福祉関係の仕事に従事する職員につきましては、お話の中にもございましたが、だんだんとそれを専門とする人を養成する教育施設も進んで参りましたけれども、決してこれが現在なお十分であるとは申し上げかねるわけであります。同時にまた社会福祉に従事する職員の地位といいますか、身分というものが、まだお話のように確立しているとも申し上げかねる状態であろうと思うのであります。これが一つの尊敬すべき専門的な仕事として社会的に認められ、またその人たちもそれによって誇りを感じ、自信を持って仕事が進められる、こういうふうに持って参るのが適当であろうと私も考えておる次第でございます。今回の予算にさような措置はもちろん講じておるわけではございませんけれども、これらは今後の社会福祉施設あるいは社会保障を進めて参ります上において、人の問題として十分に関心を払って研究をすべき重要な項目の一つと、御指摘によって私もしみじみ思うわけでございますから、一つ検討をさせていただきたいと思うのでございます。
  88. 井堀繁男

    井堀分科員 私どもは実際今の法律あるいは制度だけでも、もっと完全にその回転をしてもらいたいと思う。能力がないではないと思うのです。ちょっとしたところに工夫が欠けているのじゃないか。これは社会保障に対する国民の理解もいろいろ足りないかもしれぬ。しかしそういうものを推進していく必要があると思う。たとえば地方にありましてこういう制度を見ていましても、私どもでさえよくのみ込めない。現行法だけ見ましても、福祉事務所、あるいは今度あなたの方で力を入れております心配ごと相談所、なかなかいい名前だと思う。しかしどうも思いつきだけで、実際どれだけ活用できるか。あるいは保健所の活用などについても、どうも保健所というものが庶民の生活にぴったり結びついていない。法律や制度が要求しているものとはどうもしっくりしないのじゃないか。逆に許可認可の権力が背景になるような部分は伸びていくが、ほんとうに庶民の生活に結びつくような公衆衛生の中における指導的役割、相談の役割というものが、ほとんど機能を失っておる。俗にいう官僚的だ、お役所仕事だという非難は、そういうところにあると思う。これは私は行政指導の面でも直るのではないかと思う。たとえば児童相談所や婦人相談所あるいは身体障害者の問題などを取り上げてみましても、あるいは精薄児の場合などについても、何人かのすぐれた指導者に会いまして、多くの経験や知識、あるいはその人柄には私は敬意を表するものがあります。しかしそういう人たちが、この制度の上からいったら、各方面にもっと活発な活動を行なわれているべきではないか。ことに身体陣雲者や精薄児の家族などというものは精神的に痛めつけられておるわけでありますから、そういうものをキャッチできるような人でなければならぬ。何か権利義務の関係の中だけで、お役人が自分の責任さえ全うすれば、手落ちさえなければといったような仕事とは違うと思うのです。こういうところで働く人は、そういう意味で国家公務員地方公務員より一段と高い使命が背負わされている人だと私は思うのであります。私は相談所あるいは保健所、福祉事務所などを訪問して、こういうことを感ずるのであります。こういう点は、厚生行政の中で、何も莫大な金をつぎ込むということだけではなしに、そういうことが行なわれてくれば、私は予算も自然に増加してくるのではないかと思う。そういう問題に対する具体性が、池田内閣の施政方針の中でから回りをしておる。ということは、大上段に振りかぶったスローガンが、全く実際とは結びついていないという典型的な姿だと思うのです。特に厚生省の外局や末端、そういうものは末端とか外局というものではなくて、それが厚生省の主流ではないか。そういうものが積み上げられてきて、中央厚生行政のあり方が輝きを持つと思う。こう言ってははなはだ失礼な言い方ですけれども、率直な私の感じを言いますと、厚生省の局長以下の役人はどことなく国民に親しまれない。なるほど相談に乗れるというような雰囲気が自然に生まれてくるべきではないか。私が諸外国のお役所を訪問した場合、何も聞かなくても雰囲気でわかりますよ。そういう雰囲気がございません。厚生省の役人も大蔵省の役人も、あるいは裁判所や検察庁の役人も——国民からいって福祉国家を振興する場合には、厚生省がそういう指導をやって、末端のそういう雰囲気を盛り上げていくべきではないか。今厚生省は一番大きな曲がりかどに来ているところではないか。地方の庁に参りましても人事の交流で、きのうまで徴税官をやっていた人が、翌日福祉事務所の大将になっているというような例がたくさんある。器用に立ち回ればできぬこともないといえばそれまでですが、そういう人事行政の中にも大きな方針というものが出てこなければならぬのではないか。灘尾厚生大臣は長い間の厚生行政の経験者であります。そういうところに一つ新しい道行き、息吹を与えるべきではないかと考えます。予算などを見ましても、そういうものがにじみ出てきますと、金額などについても同じ一億の金でも、あるいは十億、二十億の大きな働きをなし得るものである。投資のための金ではありませんから……。そういうところに厚生行政の予算はもっと特殊の傾向が出てくるべきではないか、そういう意味で実は幾つかのことをお尋ねしたかったのですが、持ち時間がありませんので、二つの事柄だけをここに引き出しましてお尋ねをしたのであります。賢明な厚生省の皆さんであります。そういう点を十分一つお考えいただいて、福祉国家の、特に池田内閣にとって厚生行政が新しい機軸を出していくかどうかということに国民が注視をしておりますので、お尋ねすることはたった一、二のことでありましたけれども、そういうものが全体に応用できるのではないかと思いまして、実はお尋ねしたわけであります。これに対する所見を伺っておきます。
  89. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ただいまお尋ねになりましたお心持につきまして、私は全く同感であります。厚生行政は単なる行政であってはならぬというふうに私始終考えるのであります。ことにいわばふしあわせな人たちに接することが多いのであります。それに対するサービス機関がなければならぬはずのものだと思うのであります。サービスはやはり気持が通じなければその効果がないので、第一線の者はもとより、厚生省があげてそういうような心持で行政の運用に当たらなければならぬ、これは私常に考えるところであります。昔から実はそういう気持を持っておったわけでございます。その意味におきまして、現在の厚生省職員あるいは地方の第一線の職員に欠くるところがあれば、これはすみやかに是正をすべき問題である。なかなか簡単な問題だとは思いませんけれども、しかし私は単なる生活保護をやるとか、あるいは生活扶助を出すとか、そういうものはお金を出して事足れりというものではない。それにプラス何かがなければ、ほんとうの厚生行政にならないというような心持でもって考えてほしいということを、部下の諸君にも始終申し上げているところでありまして、お気持につきましては全く同感でございますので、そういう一つの厚生行政の何かの気持がにじみ出るような行政にいたすべく、御協力を得まして努力いたしたいと思っております。
  90. 井堀繁男

    井堀分科員 一点だけ、これはどうも厚生行政の中で私はしっくりいたさないのでありますが、環境衛生という関係の中で、特に最近大きな都市の周辺に新しい住宅地がどんどんできておりますが、下水の問題、それから屎尿処理の問題、それから俗にいう環境衛生、公衆衛生というようなもの、あの辺の関係とこれは建設省などの仕事との関係において、どうもこれは一般厚生行政としっくりせぬような感じがいたします。特にどんどん間に合わせに住宅を建てるものですから、土地の関係その他の事情があるでありましょうけれども、下水はありませんし、それからごみは積み上げておりますし、それで文化住宅を建ててみても、掃きだめにツルがおりたような姿なんです。ああいう問題については建設省と厚生省関係というのは有機的にどんな働きをしているだろうか。しろうと考えかもしれません。現象だけを見て申し上げるのでありますが、しかしこれは環境というわけでございますが、形に出たままそのままではないかと思うのであります。こういうものに対する何か改善の道でもお考えになっておるかどうか。
  91. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 御指摘になりました面は、厚生省としましても実はやきもきしている問題の一つでございます。だんだん人口の都市集中とかいうようなことで、新しい都市が形成せられますし、また東京のような過大な都市もできて参ります。そういうような場合に、いわゆる環境衛生施設がそれに伴って一緒にいくというところになかなかいかない。あとからあとから追っかけてやっているというのが今の状況でございます。現実の事態はかなり困った問題になっておる。あるいは社会問題にもなっておると申し上げてもよろしいような事態もあるわけであります。できるだけ早くそういうふうなものの整備をはかって参りたいというので、三十六年度から十カ年計画というようなものを想定いたしまして、それに基づいて実現を期しておるようなわけであります。ことに東京あたりのことを申しますと、オリンピックも近づいておる、このざまではしょうがないではないかというような声も商いわけであります。極力急いでやって参りたいというふうに存じておりますが、なかなか私どもの思うにまかせない点もございますが、ことしも若干の経費の増額をはかりまして推進することはしておりますが、引き続いてさらにこの点はもっともっと強力に環境衛生関係の整備について努力していかなければならない、そういう心持で今後努力を続けて参りたいと存じております。
  92. 井堀繁男

    井堀分科員 これで終わりますが、最後にぜひ一つ、住宅の問題をどっちにしたらいいかということで私は迷っておるわけでありますが、しかし私は、考え方によりましては衣食住、特に住宅、人間は環境に一番なじみやすい弱さを持っているわけでありますから、住宅の問題は、まあそういう方面からとれば、あなたの方の行政としては、むしろ建設省をリードするような強さが出てこなければならぬのではないか。どっちにしたらいいかということは、私自身もまだはっきりふん切っておりませんけれども、そういう中途半端な状態に置かれていることだけは事実だと思うのです。これは早く政府としては方針を決定すべき事柄の一つではないか。厚生省と建設省はどうも似ても似つかないような役所の性格だし、姿だけれども、大切なことはわれわれの生活の中で一番急がれていかなければなりません。特に低所得者の住宅の問題は私は基本的なものだと思います。でありますから、低所得者のための、あるいは勤労者のための住宅政策ということになりますれば、むしろこの際建設省から切り離して、厚生行政の中で一つの機軸をもって、そういうものがやはり一つ大きな政策として成長していくべきではないか。むしろそう私は考えておったものでありますから、お尋ねをしたわけでありますが、これは内閣としてはこういうようなものは無計画で、まあ人口がふえてくる、どんどんうちができますから仕方がないといったような、あとを追っかけるようなものであってはならぬのではないか。厚生行政の中でもし住宅問題を考えるならば、今の低所得者の思想的な混乱というものは私は住宅だと思っております。成年に達した者が一つの部屋に寝起きするというようなところから、いい思想が生まれてくるはずはないと思います。こういうものは私は動物的な姿だ、まことに遺憾だと思うのであります。そういう点から厚生行政をもし考えるならば、私は低所得者のための住宅というものは、建設省と異なった意味でもっと自主性を持たすべきではないか、そういう意味では環境衛生や公衆衛生などの問題が優先されて、そして住宅政策が生まれてくるべきではないか、こう実は思って大臣にお尋ねしようと思ったのでありますが、きょうはそういう予定の時間を持っておりませんので、ただ問題だけを提起して私の質問を終わります。
  93. 中村幸八

    中村主査 午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時四十六分休憩      ————◇—————    午後一時三十六分開議
  94. 中村幸八

    中村主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生省所管に対する質疑を続行いたします。岡本隆一君。
  95. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 最初に社会保険の問題でお伺いしたいと思います。  国民健康保険医療費の国庫負担が五%ふえたということは、これは一歩前進ですから、非常にけっこうだと思います。しかしながらなお医療保険の中には、残された多くの問題があると思うのでございますが、何よりも一番大切なことは、各種医療保険の間にあるところの格差の是正をやるということが、非常に大きな問題で、またもうそろそろ取り組んでいただかなければならない段階にきているのではないか。とにもかくにも国民保険、現在までは、国民の中には医療保険の中から取り残されておった人たちがおったわけであります。今度はそれがなくなった。そこで、この各種保険の中に非常に大きな格差のあることは、御承知であると思うのです。たとえば健康保険の被保険者は、ほとんど費用を要しないで医療給付が受けられる。ところが国民健康保険の被保険者は、半額負担をしなければならない。しかも同時に、療養しておる期間の生活保障は全然ないということになっておりますが、そういう非常な格差というものをどうやって是正していくのか。何かすでに厚生省としても、どういう時期からその格差の是正を始めて、どういうふうな段階を経て、この格差をなくしようという考えをお持ちになっておるのか、そういうプログラムがございましたら、お示し願いたいと思います。
  96. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現在の医療保険は一応皆保険の形はできたわけでございますが、その間にいろいろな相違があるということは御指摘の通りでございます。この問題については前々から御質問もあり、またお答えもいたしておるわけでございますが、もちろん将来の問題といたしましては、国民ひとしく同じような医療を受けられるというところまで持っていきたい、私どもはかような考え方を持っておるわけでございます。従ってまた一朝一夕にできる問題とも考えないわけでございますけれども、その方向に向かって努力していかなくちゃならぬ、そういうつもりでおるわけでございます。この問題につきましては、もちろん厚生省の内部におきましても、いろいろ検討もいたしておるわけでございます。ことに社会保障制度審議会にも社会保険総合調整というようなことについての諮問もいたしておりまして、そちらの方でもいろいろ御検討願っております。権威のあるそういうふうな方々の答申が得られますならば、これを中心にいたしまして、今後の具体的な方策を考えていかなければならぬ、こう思っておるようなわけであります。究極のところからいえば、何もかもみな一つになったらいいではないかという考え方もあろうかと思うのでありますが、それよりも前に各種保険間の総合調整をはからざるを得ない、こういうことでありますが、その総合調整をいたすにつきましても、現在の各保険間の相違というものがかなり大きいわけであります。ある程度地ならしをやりませんと、なかなか総合することも困難だということもございまして、結局は一歩一歩進んでいく以外にはない、かように考えておる次第でございます。その中でも特に国民保険のごときは、給付内容から申しましても一番劣っておると申しますか、そういう状態にあろうかと思います。雇用者と被雇用者との違いということもありましょうけれども、とにかく給付内容が劣っているという点もございますので、この国民健康保険内容改善をまずもってはかるべきではなかろうか、かようにも考える次第でございますけれども、御承知のように国民健康保険もできたばかりでございます。財政的にも決して強固な基盤の上に立っておるわけでもございません。まず財政基盤を整えつつ、内容改善の方向に向かって進むのが順序ではなかろうか、こういうような考え方のもとに、来年度はただいまお話もございましたが、国庫負担率を引き上げるということをいたしました。ついでにといってはなんですけれども内容改善もやりたいと思っておりましたが、そこまでは手が及ばなかった。まず基盤の強化から進んで漸次内容改善に進んでいこう、こういう考え方をしておるわけでございます。まだプログラムというところまで至っておりませんけれども、われわれも勉強しなければなりませんし、同時に今申し上げましたように、権威のある諮問機関の答申をなるべく早く得たいというので、その方もお願いしておるわけでございます。
  97. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 なるほど社会保障制度審議会の答申を待たれるということもいいと思うのでございますが、やはり日本の厚生行政を動かしていく主軸になるものは厚生省だと思うのです。だから厚生省である考え方を持って、こういう方向に進みたいと思うが、社会保障制度審議会はどう思われるかというような形で、むしろ社会保障制度審議会厚生省がある程度回転させる一つの意欲を持たなければならぬ。その中にはいろいろの考え方を持っている人がいるわけです。だからそういう点は厚生省が主軸になっていただきたい、制度を進めるための推進力になっていただきたい、私はこういうふうに思うわけでございます。現在のところさしあたり各種保険の中のそれぞれの部門を、ぼつぼつ統一していくというふうな方向へ出発していただくべきじゃないか。たとえていえば国民健康保険市町村ごとに組合が作られております。そうなりますと、その市町村組合ごとに非常にまた納付内容に開きがあります。しかしそれは大きな格差ではございません。大きな格差ではございませんが、ことしの厚生白書を見ましても、全然制限のないものが市町村の中で二千三百八十一、そうして制限のあるものが千百十八あるわけです。そこでその制限のある内容を見ていきますと、往診を制限しておるもの、寝具を制限しておるもの、あるいは歯科補綴を制限しておるもの、またそれぞれの組み合わせにおいて制限しているというふうに、制限の仕方というものがきわめて複雑であるわけです。一つにはこれは事務の簡素化とも私は関係があると思うのです。この各組合においてそれぞれの形でみずからの財政状態に応じてさまざまな制限が行なわれると、担当するところの医療機関においては、そんなものまで窓口において一々わからないのです。どこがどういうものを制限して、どこがどういうものを制限してということがわからない。従ってつい一律に給付内容を大体制限ないものとして取り扱ってしまう。あとでもってこれは制限があるということになって参りまして、これはもう担当しているところの医療機関事務の簡素化というものと非常に大きな関係がございますから、こういうものについてはまず第一に制限をなくすようにしてもらわなければならぬ。そのためには各市町村によって、これは保険経済にもいろいろなにがございましょうから、まず市町村単位の組合というものは、これは当然府県単位の国保というものに切りかえていかなければいけないのではないか、当然そこへ進むべきではないか、こういうふうに思うのでございますが、大臣の御所見を承りたいと思います。
  98. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現在国民健康保険の中でいろいろ給付の制限をしているところもございます。これはお話通りにまずもってこの辺から片づけなければならぬという問題であろうと思うのでありまして、詳細は政府委員から申し上げますが、厚生省としましては、さような制限を撤廃する方向に向かって指導をいたしている、かように御承知を願いたいと思うのであります。  それから国民保険保険者としての単位を市町村にするか府県にするか、これはいろいろ御議論のあるところと承っているのであります。利害得失、それぞれあることだと存じますので、私どもとしましては、今別にこれをどうしようという結論は持っておりませんけれども、御議論のあるところでありますので、なお一つ検討をさせていただきたいと思う次第でございます。  なおその他の分につきましては政府委員からお答えいたさせます。
  99. 熊崎正夫

    熊崎説明員 岡木先生から給付制限の撤廃のことにつきまして御質問がございましたが、御承知のように給付制限をいたしておりますのは、全体の三千六百五十一の保険者のうち若干でございます。その後給付制限につきましては逐次撤廃するように指導して参りまして、今回の療養給付国庫負担率の引き上げ等の財政措置もとりましたので、さらに強力に給付制限の撤廃につきましては指導して参りたい、こういうふうに考えております。従来は財政調整交付金あたりでもその辺は考慮して指導してきたのでありますが、近く、ここ一、二年の間にはほとんど給付制限はなくなる、こういうふうに考えている次第であります。
  100. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 これは事務の簡素化と非常に密接な関係があり、同時にまたこの組合が幾つにも分かれていることは、請求書を作る場合に一々その組合ごとに集計をとらなければなりませんので、そういう事務的な量というものは非常なものでありますから、できるだけ早く府県別に統合されることを特に私は要望しておきたい。  その次には今度は組合管掌の保険でございますけれども、この組合管掌の保険につきましても付加給付があり、それがまたいろいろな区分になっている関係上、統合が非常に困難である模様でございます。しかしながら私は社会保険という観点から考えて、これは相互補助的な制度として医療保障をやっているという観点にある限りにおいては、これは各組合ごとにいろいろな格差があるということは本来間違っているし、また政府管掌も含めたところの一体の被用者保険というところまで、早く統合していかなければならぬと思うのでございますけれども、しかしながらそこまで行くのにはまだ段階があろうと思いますから、これはもう組合保険というものも早急に統合するように指導していかなければならない。これについては健保連合会あたりで相当強い反対があるやに聞いているのでございます。その辺の事情なり、また厚生省としてどう取り組んでいくのか、たとえば何年間ぐらいの間でそういう目的を達成したいという希望を持っておられるか。これはできるというなにでなしに——というところまではあなたにもおっしゃれまいと思う。しかし大臣としては、どのくらいの期間の間に組合管掌を統一するというくらいのことはやらなければならないと思うというくらいのことは、この際ぽんと一本ここで大きく方針を打ち出していただくことも私は肝要かと思いますが、大臣のお考えを承りたい。
  101. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 多くの保険者の間にバランスがとれていないということは御指摘の通りであります。ことに組合管掌の方にはかなり財政的に豊かなところもございます。そこらのところではできるだけ充実した給付をやっていくということで、内容的にも相当進んだ施設を講じている面もあるかと思うのであります。この辺が実は非常にむずかしい、それは御指摘の通りでございまして、いろいろそれぞれの組合の実情もございましょうが、何か統合でもしょうとか調整でもしようというときには、一番の問題は一つはその辺にあるのではなかろうかと私も思うのでございます。このことは一般の政府管掌の保険にいたしましても、その他の保険にいたしましても、おくれておるという点に大きな一つの問題があるわけであります。これを引き上げていくために努力を怠ってはならないと私は思いますけれども、一面から申しますと、それぞれの企業体の力関係といいますか、実力の関係で、経済力のあるところは自然財政もいい、こういうふうなことにもなりますし、これを低い方と一緒にしようというふうなことになりますと、何か損をするような気になりまして、その辺に実際問題としてむずかしい支障があるのではなかろうかと思います。年金制度なんかにつきましても、今後そういった問題があるいは起こってくるのではないか、かように考えておる次第でございます。これはまあ私の考えでございますけれども、せめて医療保険だけでもひとしくみんな同じような医療が受けられるというふうな状態に持って参りたい。二十年も三十年もということでなく、せめて医療保険だけでもなるべく早く統合ができたらしあわせだ、こういうふうに考えるわけでございますけれども、今申しましたようにいろいろ沿革その他の事情もありましょうから、その間に支障はありましょうけれども、大局的にそういう面においてぜひとも協力していただきたい、こういう考えを持っておるわけでございます。何年先にどうするかということまで的確に申し上げるだけの決心もございませんし、用意もございませんが、私は少なくとも医療保険ぐらいは一つにしたいものだという気持で、検討を進めてもらっているわけでございます。
  102. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 気持を持っていただく範囲においては、これは動かないと思うのです。やはり意欲を持って、そういう方針を打ち出していただかなければならないと思う。仰せの通り付加給付の問題は、元来からいえばその企業が自分の従業員に対するととろの福祉対策であると思うのです。だから、福祉対策と福祉施設が社会保険の中に取り入れられてしまって、その中で一緒にまかなわれていくというふうなことの中に混乱が出てきているわけなんです。だから医療保障と企業の福祉対策というものとは切り離していかなければならない。現存するところの大企業の非常に豊かな保障を受けている人たちには、これはやはり企業の中において福祉対策としてやっていけばいいのであって、それらの既得権利を別に少しも剥奪する必要はないと思う。しかしながら弱小のなにがある、その中で一部の者だけが——それは多きは幾らでもまさることはその通りでありましょう。それをへずれという意味ではございません、しかしながら片一方において弱体なものがあり、政府管掌のなにがある。格差が非常に大きくなっていく。しかもこの格差はこれから後ますます大きくなる傾向があると思うのです。現に社会保障年鑑を見ましても、年々付加給付の金高はふえていっております。パーセンテージもふえていきます。そういう状況の中で、福祉対策と医療保障というものとは二つに分けて、その中ではっきりと医療保障はすべての者にひとしい医療保障を与えるという形に切りかえていくべきではないか。そのことがまた医療担当者の中からしばしば出ている事務の簡素化に非常に役に立つ。これは少し多く扱う医療機関でありますと、二百から三百くらいに分類して、その分類された組合ごとに一つ一つ集計表を請求帯につけて出さなければならない。そのためには二人ぐらいの人で一日ではできないのです。二日ぐらいかかってしまう。それほど大きな保険業務の負担をになっている事務上の問題もありますから、これは合わせて一石二鳥というふうな形になりますから、そういう方向をすみやかに打ち出していただくことを要望しておきたいと思います。  その次は、今非常に大きな政治問題になっているところの臨時医療報酬調査会の問題でございます。これに対しては、私は政府の方にもある程度この問題についての無理解さがあるのではないか。医療報酬というものは、医療担当者と支払い側との間の話し合いによってきまるべきだ。しかしそれがきまらない場合には、中立的な機関において裁定をやらなければ話は片づかないと思う。ところが臨時医療報酬調査会にいたしましても従来の調査会にいたしましても、各立場々々の人を集めてきて、それらの人でもって、中立的な人をも加えて話し合う、調査をする、議論する、こういうふうな場でございます。だからこれは使命が違うだけであって、似たような性格のものが重複して置かれることになり、ここにそういうものは不必要だという説も出てくれば、ぜひ置いてもらわなければならぬという説も出てくると思う。しかしながら違った性格のものであれば、両方ともあった方がいいという考え方も出てくると思うのでございますが、厚生大臣はあくまでも既定の方針で進まれるのか、あるいはもっと中立的な裁定機関——これは早くから言われておりますし、私も昭和三十二年ごろでございましたか、国保の大幅改正がございましたときに、岸さんが総理大臣をされている時分でございましたが、中立的な裁定機関を設けなければ診療報酬の問題はいつまでも泥沼が続く、だからそういう裁定機関を設けるべきであると思うが、どう考えるかということを本会議で岸さんにお尋ねしましたら、そのときに、なるほどその通りだと思う、だからそういうふうな制度を作るために、早く実現させるように努力したい、こういうふうなお答えがございました。そういう考え方はすでにもう早くから各方面から出ているのです。いつまでもそういう機関が設けられないで、従来の同じようなしきたりの中でごたごた繰り返しているというふうなことは、日本の医療制度の前進のために非常なマイナスであると思うのでございますが、厚生大臣のお考えを承りたいと思います。
  103. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 臨時医療報酬調査会法案を近く国会で御審議願うような運びになろうかと思うのでございますが、この法案をめぐっていろいろな意見があるわけでございます。賛成あり、反対ありということでございますが、これは岡本さんよく御承知だと思うのでございますけれども、従来社会保険等の診療報酬を決定するのは、大体において厚生大臣がきめるということになっておるわけでございます。その厚生大臣が診療報酬をきめますのにつきまして、御承知のように中央に中央医療協議会というものがある。これが支払い者側あるいは医療担当者側あるいは公益側というようなもので構成せられておるわけでございます。ところがこの中央医療協議会の従来からの状態が、御承知のように常に混乱をいたすのであります。診療報酬の問題をめぐりますというと、利害が違うと申しますか、常に混乱をいたしておりまして、正常な運営がなかなかできにくい。そこで前の臨時国会におきまして改組法案を御審議をお願いし、これは通していただいたわけでございますけれども、なおかつ従来からのいろいろな行きがかりと申しますか、しこりと申しますかというようなものがありまして、この再出発につきましても非常に苦慮しておるというのが、現在までの状況でございます。つまり診療報酬の決定をめぐりまして、支払い者側あるいは療養担当者側ないしは政府、この三者の間が非常にこんがらかったような格好になっておりまして、思うように参らないというので、昨年の早々であったと思いますが、厚生大臣の方から社会保障制度審議会に、適正な診療報酬を決定するのにいい方法はないかということを御諮問申し上げたのであります。  その答申として、医療報酬を算定するのに算定の基準となるべきものを調査する、ルールと申しておりますが、そういったふうなルール的なものを一つ調査する調査会を作る。その調査会で得た結論というものを参考にして、具体的にいつどういうふうにやるかという問題については従来の医療協議会へ厚生大臣が諮問をして、そうして決定をしていく。そういうことをすれば、ただぶつかり合うというのでなくて、何かそこに一つの考えの基準になるものがあって、そうしてお互いが話し合いをすれば比較的スムーズにいくのではないか、こういうようなお考えのもとでの答申をいただいたわけであります。  それを昨年の通常国会のときに、当時古井厚生大臣のときでございますが、御承知のように二つの法案を国会に提出いたしまして、どちらもとうとう流れたのでございます。前の臨時国会にも私としましても、二つの法案を同時に提出するのが筋であるというふうには考えましたけれども、会期も短いことでありますし、しかもこの問題につきましては議論の多いことでもございますし、どちらかといえば、現実問題として考えればあるいは社会保障制度審議会の考え方とあべこべだったと思うのでございますが、現実問題を考えたときにはやはり医療協議会の再出発の方が先ではなかろうか、こう存じまして医療協議会法案の方を御審議を願いまして、臨時医療報酬調査会の方はあと回しにいたしましたようなわけでございます。  そこで今度の通常国会には懸案となっております問題でございますから、審議会の答申の趣旨を尊重いたしまして、この法案を再度おかけいたしまして、皆さん方に御審議を願ってぜひ成立させていただきたい、こういうことでございます。医療協議会の方は、具体的にそのときそのとき引き上げる必要があれば引き上げなければなりません。そのときそのときの診断報酬を具体的にきめていくための諮問機関である。臨時医療報酬調査会の方は、厚生大臣がそういうことをやります場合の一つ参考になるものをいただく、こういうことになりましょう。従ってこれはただいまのところは永久的な機関とするつもりもないわけであります。二年ぐらいな期限の間に、何かルールになるものができたら一つ作っていただく、こういうふうなつもりで調査会を開設していただくということでございますので、従って医療協議会とこの調査会との間には、よく屋上屋を架するとかなんとかいう御議論もありまするけれども、ただいまの建前で進みます限りにおいては、私はそういうことにはならぬのじゃないか、こういうふうに考えております。  それから岡本さんのお話の中にございましたが、昔は御承知のように保険者と診療者側との間に契約が結ばれておったわけであります。そういうふうな形でございましたが、今は厚生大臣がきめることになっておりますので、支払い者側と受取側とがお互いに団体交渉でもしてきめていく、そうしてその話がうまくいかぬ場合には、何か仲裁裁定というような機関でも設けていくということになりますと、少なくとも現在のものの立て方とは、基本的にも違っておる格好になってくるのであります。これも簡単に支払い側と受取側とが交渉してきめれば、それでいいではないかというふうにも結論づけられない点もあるかと思うのであります。一つ国民医療に至大な関係を持つ問題でございますし、同時にまた国その他もこれに対しては相当な関与もいたしておるわけでもございます。ただ払う側と受け取る側の団体交渉というふうに片づけられぬ面もあろうかと思うのであります。一つのお考えとしてはそういう考えもあろうかと思います。私どもとしましては現在の建前の上に立ちまして、そうして診療報酬をできるだけ適正なものを求めていく。しかも世の中は始終変わるのでありますから、それに応じましてそのときそのときに適正な医療を求めるということが必要だと思います。いつまでも固定化するべきではない。そういう意味におきまして中央医療協議会が必要でありますし、また中央医療協議会にそういうふうな案をもっていろいろ御相談をする場合の、何か片寄らないところできめていただいたルールというふうなものがあれば、これが非常に参考にもなるしまた助けにもなる、こういうふうにも私は考えますので、社会保障制度審議会の答申の趣旨を全面的に取り上げましてぜひ御審議をいただきたいもの、かように考えておるわけであります。
  104. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 二年ほどの臨時的な機関としておく、こういうふうなお言葉でございますけれども、少なくも今は池田内閣が所得倍増計画を立て、十年間の長期経済政策を立てておる。従ってその間には国民所得というものはぐんぐん上がっていく。そうすると医療報酬というものは、やはり他産業の給与と見合ってきめられていかなければならない。そういたしますと、診療報酬というものは、十年間の間に他産業の給与がある程度のカーブで上がっていけば、やはりそれとともに動いていかなければ、医療担当者というものは満足しないと思います。しかも大学を出て数年修業しなければ一人前の医者になれないというふうな段階においては、他産業の、自分の中学の同窓、高等学校の同窓がどんどん給与が上がっているのに、自分はいつまでも激しい医療というものに——これは心身ともに普通の仕事以上に疲れる仕事なんですね。だからそういうものに従事しながらうんと給与が低いというようなことでは、これは満足しません。だから紛争が絶えないのもこれは当然だと思うのです。だからこういうふうな経済がどんどん急角度に上昇していくというふうなときにおいては、それに伴うところの体制というもの、診療報酬をスライドさせていくという体制というものを作っておかなければならない。ところが二年間でルールをきめるのだ、こういいましても、ルールそのもの、尺度そのものが、やはり時勢とともに考え方が変わっていくのですね。従ってこれは建前として一つの独自の調査機関を持ち、医療報酬というものはいかにあるべきかということを絶えず考えいくてような、人事院に相当するような機関というものがなくてはいけない。しかも今日国民医療費というものは、これは何千億という金になっておるわけであります。だからその何千億というお金の支払いの方式をどうきめるかということのために、そしてまたそれが円滑に摩擦なしに回転していくためには、そのために一定の規模の機関というものがあり、それに相当な経費がかかったとしても、それはまた当然でなくてはならない。またその経費を惜しむために、要らざるところに摩擦が起こって、たとえば日赤ストというふうなあんな大きな事態が起こりますと、そのために起こるところの損失というものの方が、私は国民医療にとってはるかに大きなマイナスであると思うのです。だから、そういう意味においては、恒久的なというと語弊があるかもしれませんが、半恒久的な機関として、医療担当者と支払い側との間の意見調整を公平な立場においてやっていく機関、裁定機関を設けなければならないと思います。  そしてまた今大臣は、現在は厚生大臣がきめるのだ、だから現在の考え方とはそれは違っておるというふうなお言葉でございますけれども、それは現在厚生大臣がおきめになります。しかしながら一応まず諮問機関にお諮りになる。そこで支払い側と医療担当者との間に十分話し合いをさせた上で、そのきまったものについて厚生大臣が告示される、こういうふうな順序になっておるのであって、実質的には現在の中央医療協議会が診療報酬というものを両方が話し合う話し合いの場になっておる、そういうふうに理解しなければならないと思うのです。そういう現実的な動かし方の理解の上に立てば、それを越えて、そこでもって話がどうしてもきまらないというふうな場合には、これは裁定機関に持ち込む。その裁定機関でどんぴしゃりときめて、それについては両方とも一応はそれで納得してもらう、そしてそれから後また新たな機会において話し合いをしていくというふうな形の機関を設けなければ、これは現在臨時医療報酬調査会を設けていただきましても、やがてまたそういう問題が幾らも起こってきて、これは弔う医療機関の間に、医療制度の間に、いつも診療報酬でもってするところの混乱というものは絶えないと思うので、私は特にこの点も厚生大臣として御再考をお願いしたいと思うのでございますが、お答えがいただければお答え願いたいと思います。
  105. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほど申しましたような趣旨で、臨時医療報酬調査会を作るわけでございます。どちらにも片寄らないと申しますか、権威のある学者の方少数が中心になって専門家を動かして、また関係団体の意見も十分聞いて、何がしかのルールができれば将来非常に助かる、こういう趣旨のもとに作るわけでございます。ただ実はなるべく早く結論をいただきたい、こういうような趣旨で一応二年と限ったわけでございまして、この問題は二年たった場合にさてどうするかということは、そのときにまた考えてよろしい問題だと実は思うのでございますが、一応そういうふうな形になって、なるべく早くルールらしいものを出していただければ、厚生省も政府も大助かりということになるし、諮問機関等における議論もよほどスムーズになってくるのではなかろうか。現実はお話しの通り医療協議会の中におきましても、支払い者側あるいは療養担当者側でそれぞれ意見を戦わしてやっていく。そこにまた公益側を代表する人もあって、その間いろいろ調整を進めていくというふうな仕組みになっておりますが、現実は皆さん御承知通りで、なかなかこれが動かないというふうな歴史を相当期間持ったわけであります。何とかそういうふうな状態をなくしたいということから出発した一つの努力であり、試みである、私はこのように思います。今までのような例をいつまでも繰り返しておりますと、世の中はどんどん変わっていく。今お話にもございましたが、経済、社会は変わっていくにもかかわらず、医療報酬は据え置きのまま、結果としてそういうふうになってしまったということも、ここ数年来の問題でございます。ああいうことのないようにいたしたいと思います。  ルールというものがどんなものができますか、これは私どもがかれこれ申すことでもないと思いますが、たとえば一般の経済、社会がこうなっている、賃金がこうなっている、あるいは物価がこうなっているというような場合に、この程度まで物事が変わってきたときには、やはりある程度医療報酬も再検討しようではないかというようなことも、一つの考え方だと私は思います。それから従来ややもしますと、共通の資料を持って議論をしていないうらみがあるのであります。厚生省が出した資料は信用ができないとか、あるいはまた医師会さんが出された資料に対しては、それは医師会さんが調べたものだからということで、共通の資料すら持たないで論議しているという状態が続いたわけであります。従って今後どういうような調査をすべきであるか、あるいはまたどういう資料によって医療報酬の問題は算定すべきであるかというようなことでもきめていただければよほど助かる、こういうことにもなろうかと思います。これは私はやはり一度はやってみなければならぬ努力ではなかろうか、かように考えておる次第であります。
  106. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 今の問題、まだ私もなにを残しておるのですが、時間がございませんから、また法律の審査のときにいろいろ御意見を承りたいと思います。  次に、今度の予算を見ますと、環境衛生費でございますけれども、環境衛生対策費の中で下水道の終末処理の施設、さらにまた屎尿処理設備費というものがそれぞれ九億九千万あるいは八億ですかというふうについておりますが、今これだけ一千万都市というものができ、都会への人口集中というものがどんどん進められておるという段階で、しかもだんだん各都市が屎尿処理に因ってきておるときに、このような程度の施設の増をもってしては、百年河清を待つというふうなものではないかというふうに私は思うのです。厚生省としては、現在国全体において屎尿の処理というものがどういう形で行なわれておるのか、さらにまたそれを何年くらいの計画でもって完全に処理する程度のところまで持っていこうという意欲を持っておられるのか、そのためにどういう努力をしておられるのか、こういう点についてわれわれにわかりやすく御説明をお願いしたいと思います。
  107. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題はわれわれといたしましても頭を痛めておる問題でございます。従来とりました措置ないし今後の考え方等につきまして、政府委員から一応お答え申し上げます。
  108. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 ただいまお尋ねの屎尿処理問題でありますが、私どもこの問題の解決にあたりましては、三十六年度を初年度とする十年計画を立てております。究極の目的としましては、昭和四十五年度までに清掃法でいいます特別清掃地区、これが四十五年度の終わりには大体七千三百六十万人の人口を持つというような推定ができるわけでございますが、その人口が排出する屎尿並びにごみのすべての量をいわゆる衛生的な処理で始末をしたい、こういう目標を持ちまして年々その予算化、施設の整備に努力をいたしておる現状でございます。現在の段階でごく大づかみに申し上げますと、三十五年度の屎尿処理関係では、この種の特別清掃地区の人口が約五千五百万人と推定いたしておりますが、その人口の排出する屎尿の大体三〇%をいわゆる衛生的な処理、たとえば下水道の終末処理でありますとか、あるいは屎尿消化槽でありますとか、そういうもので処理しておる実績になっておるわけであります。ところがこれを昭和四十五年度末まで見通して参りますと、分母になります総人口が、五千五百万人から七千三百六十万人にふえるわけでございます。従いましてその率は二〇%程度に落ちるわけでございます。その残りの分を十年間に処理して参りたい、こういう考え方でこれを予算化して、年々整備して参っておるというような実情でございます。
  109. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 そうすると残りの七千七百六十万人になりますと、二〇%まで現状の質だと落ちる、そうすると八〇%残ってくるが、それを一〇〇%まで十年間に持ち込むものだ、こういうふうなお説のようですが、そうしますと、それに伴う予算というものは、一体総額事業費と国の負担分はどれくらいになりますか。
  110. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 一応私どもが推定いたしております総額は、屎尿消化槽施設で三百五十億、それから下水道終末処理施設で七百二十億というような総事業費の推定をしております。
  111. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 そうしますと一千億かかるわけでございますね。そうすると今の九億、八億両方合わせて二十億に満たないというふうなことしの予算のつけ方で、一千億までいこうと思いますと、五十年かかるという計算になってくるので、これは急速にそんなに伸ばし得る自信がおありなんですか。
  112. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 この総事業費は、御承知通り国庫補助額のほかに起債の額をも含んでおるわけでございます。従いまして先生がおあげになりました数字は、国庫補助額でございますので、補助率に応じましてその三倍あるいは四倍という額になるわけでございます。これを年度ごとの事業費といたしまして、年々かなりの率で増加をいたして参っております。来年度の予算につきましては、いろいろ御意見もあろうと存じますが、その増加の傾向をさらに強化して参りまして、十年計画の完全な具体化に邁進したい、こういうような考え方でございます。
  113. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 ことしはフィリピンでパラコレラがはやっておるということでございますが、これが入って参ると、これはもう非常な問題になってくると思います。結局ワクチンの問題で、今のポリオのときのようなワクチン騒ぎをまた始めなければならない。ワクチンを作ることばかり大騒ぎになる前に、そういうふうなワクチンなんかにたよらなくてもいいような、ことに消化器系伝染病については、ワクチンよりも下水です。だからそういう点、下水道設備の重要性というものは、十分厚生省でもお考えであろうと思うのでありますが、やはりこれはそういう点をよく強調していただきまして、もっと下水道の完備、また終末処理というものに努力していただくようにお願いをいたしておきたいと思うのです。  その次にもう一つ、それと同じような関連した問題に公害の問題があると思うのです。このごろ東海道線に乗りますと、静岡の近辺に参りますと、非常な悪臭が列車の中へ入ってくるのは、大臣も御経験であろうと思います。あれは私たちが汽車で通るだけで、あれだけ不愉快な思いをしなければならないのに、ああいう空気の中で生きていかなければならない、日々暮らしていかなければならない人のことを思ったら、これはどれだけ毎日あの悪臭に悩まされているか、風の向きの変わるごとにあの悪臭がただよってきて、これは非常に不愉快なことであろうと思います。あれは亜硫酸ガスだと思いますが、長くああいう空気を吸い続けることによりまして、ある程度呼吸器にも影響を受けると思うのです。ああいう公害というものは許さるべきでない。それをいつまでも放置されておるというふうなことは、政府の方にそれを取り締まる、あるいはそれを指導するということに怠慢があるのではないか、こういうふうに思うのでございますが、製紙会社に、あの悪臭を放っておる会社に対して、厚生省としてはどういう措置を講じておられるか、一つお伺いしたいと思います。
  114. 五十嵐義明

    ○五十嵐政府委員 公害の問題が社会的にいろいろ大きく取り上げられまして、一般の市民に少なからぬ影響を与えておるということは御指摘の通りでございます。私どもも、水の関係、あるいは大気汚染の関係、さらに振動、騒音、御指摘になりました悪臭という問題につきまして、いろいろその被害、あるいは防止対策、あるいは法律上の規制というようなことについて従来とも検討し、研究し、勉強して参ったわけでございます。ただいま私どものところでは、一応経済企画庁が中心になりまして、水質汚濁の問題については法律で取り上げていただいたわけでございますが、次に大気汚染の問題につきまして、これを何らかの形で防止、予防、あるいはあとの処理というようなことを規制して参ることができないかということで、関係の省、あるいは現にこの問題に当面いたしております大工場地区を控えた都市あるいは県との間でいろいろと検討して、研究を続けておるわけでございます。その中で、ただいま亜硫酸ガスというようなお話もございましたが、煤煙とか粉塵とかいうものは比較的つかまえやすいものでございますが、特に悪臭の関係は、先生承知のように非常にむずかしい問題のようでございまして、たとえばこれを空気中から捕捉して、定量的に分析するということが非常にむずかしい。諸外国でも、人間の主観をたよりにして、インスペクターというと多少語弊がありますが、鼻さきを使って、それにかがせて、グレードを置いて、数字でこれを表わすというようなことから、悪臭の問題に対処していっておるというふうなことでございまして、主観をたよりにしてこの問題を処理していかなければ、科学的につかまえにくいというような現在の段階から、悪臭の問題については、法律で規制することも技術上非常にむずかしい問題があることでございます。しかしこれも決して対策がないわけではございません。たとえば工場を作る当初から立地的に問題を検討する、あるいは空気の中にできるだけ拡散をいたしますとか、あるいはこれを吸着するとか燃焼するとか、あるいは最近屎尿関係でそういった技術が取り入れられておりますが、他のにおいをまぜる。たとえばオゾンでもってその悪臭を消すとか、こういったようなことが逐次研究的にきわめられてきておりますので、こういった問題をさらに具体的に進めまして、この問題の処理に当たりたい、かような考え方でせっかく勉強いたしておる次第でございます。
  115. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 時間がなくなりますので、これ以上議論いたしませんが、私は先年北海道の王子製紙を見に行きました。王子製紙は、工場の中ではにおうていますが、外まで出しておらない。だから王子製紙でできることをほかの工場でできないことはない。それはやはり工場にそれだけの意欲がないのだと思う。意欲のない工場が横着をきめ込んでおるのを見のがしておられるということは、監督者としての責任の問題があると私は思います。だから早急に、あの王子製紙ではどうやっておるのか、それから静岡方面の製紙工場ではどうやっておるのかということをよく御検討になって、王子製紙でやっておるような同じ設備を私は要求さるべきだと思う。またあの製紙業というものは、ある一定の工程のときにだけ出すのですから、その工程の部分だけコンテイナーをつけたらいい。コンテイナーをつけて、そこに悪臭が出れば、それをパイプで吸着させるような装置を作って、送って吸着させて放流すれば、そんなものは当然防げるはずでありまして、こういうものを放置しておられるということは、これは怠慢のそしりを受けてもやむを得ないと思いますので、特にそういう点の御留意をお願いいたしたいと思います。  それから、きょうは私、昨年暮れに出ました医療制度調査会の答申についてお伺いしようと思っておったのでございますが、時間がございませんから、それは次の何かの機会に移しまして、遺族援護の問題についてお尋ねしておきたいと思います。  今度恩給、年金等がベース・アップされて相当増額されることになったことは、これはけっこうであると思うのでございますけれども、その中で準軍属に対する処遇はどうなるのか。公務扶助料、それから遺族年金がベース・アップされますが、遺族年金が従来先順位者については五万一千円にプラス一人について資格者があれば五千円ずつということになっておるそうでございますが、それがどの程度増額されるのか、まずお伺いしたいと思います。
  116. 山本淺太郎

    山本(淺)政府委員 ただいまお話しの準軍属につきましては、軍人、軍属の場合に支給されます遺族年金の半額を五カ年に限って支給するという遺族給与金が出ておるわけでございます。従いまして今回恩給のベース・アップに対応いたしまして、根っこの遺族年金がそれに見合って増額されますから、遺族年金の半額ということでございますので、その半額の分につきましても当然それに見合った額が機械的に上がる、こういう関係になります。
  117. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 そうしますと、遺族年金は五万一千円から幾らに上がりますか。
  118. 山本淺太郎

    山本(淺)政府委員 七万一千円でございます。
  119. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 プラス五千円の分はどうなりますか。
  120. 山本淺太郎

    山本(淺)政府委員 これは従前通りでございます。
  121. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 そこでもう一つお尋ねしたいのは、遺族給与金の問題でございますが、この給与金については、昨年の予算が十一億一千七百万円、それから一昨年は八億三千四百万円というふうになっておるようでございますが、ことしはその金額が四億二百六十万円というふうになっておるのでございます。これはどういうことでこんなに急減しておるのでしょうか。
  122. 山本淺太郎

    山本(淺)政府委員 遺族給与金につきましては、来年度の予算額は四億二百五十九万九千円でございますが、この遺族給与金の対象は、御案内のように徴用工であるとか、あるいは戦闘参加者でありますとか、非常に特殊な対象でございますので、その死亡理由が遺族援護法に該当するものであるかどうかということが、普通の恩給の公務扶助料なり、あるいは遺族年金の対象と比べます場合に、把握が非常に困難なのでございます。御承知のように恩給の公務扶助料等につきましては、もとの部隊にそれぞれその原簿というようなものがございまして、把握が非常にかっちりいくのでございますけれども、遺族給与金の対象は、たとえば当時徴用工でございましたような場合につきましては、本人の申し立てによりまして、その者がどういう軍需会社に勤めておったといったようなことの申し立てを基礎にいたしまして、今日それが大部分ございませんので、それを継承すると思われる会社につきましてそういう事実を当たるというようなことで、対象件数及び認定関係におきまして、ただいま申しましたような予算額の基礎件数を見たという次第でございます。
  123. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 これは昭和三十五年から給付が開始されて三十八年まで五年間給付されるものですね。そういたしますと、三十五年に八億三千四百万で始まったものが、翌年十一億にふくらんだということは、これは給付対象が少しふえたのじゃないか、これはわかります。それが今度は四億と減る。分割払いに五年間払うと一たんきまったものが、四億にこんなにぽんとひどく落ちる、こんなに激減する理由が私にわからないのでお尋ねしておるのであります。
  124. 山本淺太郎

    山本(淺)政府委員 ただいま申し上げましたように、この遺族給与金の潜在的対象と申しますか、それはまだ相当多く残っておると思われるのでございます。それから特に大きい問題は、先ほど申し落としましたが、戦闘参加者につきましては沖縄関係相当含まれておるわけでございます。沖縄関係は戸籍等の整備が十分できませんために非常におくれております。そういういろいろな要素がこういう数字になっておる、こういうふうに御了承いただきたいと思います。
  125. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 そうしますと、こういうふうに理解したらいいのですか。おそらくこれくらいの人数はあるだろうと思って予算をつけた、そして三十五年と三十六年については八億、十一億と相当数の給付の対象者があると思って予算をつけたが、事実はそんなになかった。だから四億でいいのだ、こういうことになった、こういうふうに理解していいのですか。
  126. 山本淺太郎

    山本(淺)政府委員 明年度の現実予想される裁定の件数は、今先生の御指摘のような額に該当するものであると思われますが、ただそれで全部が片づくわけではございませんで、私どもも、せっかくこういう制度ができた次第でございますので、将来なるべく早く裁定の申請をしていただきたいということをいろいろ指導しておるのでございますけれども、遺憾ながら現実の問題としてはおくれておる。従いまして、将来ともこれですぼんだままに非常に少なくなっていく、こういうものではなく、明後年以降におきまして裁定の申請が出るというようなことは十分予見されるわけでございます。またもう一つ、こういう遺族給与金は、先ほど申しました軍人、軍属の場合のように、このくらい出るであろうという、原簿からかちっと推定できますような対象件数の把握がもともと困難なものでございますので、もし遺族給与金の対象件数が明年度予定しておりまする件数よりも多いというようなことになりますれば、遺族援護法全体としては援用等もできますので、申請がございました場合に、また裁定いたしました場合に、それで予算が足らないというような事態は絶対に起こさない、こういうふうに考えております。
  127. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 もう一つわからないのですが、それでは遺族給与金というものは、予算をつける場合には五年分一括して初度年に予算がついておるのですか。それをただ払うときだけ分割払いにするのであって、予算化されるときには五年分として、たとえば約二万五千円でございますね、今まで五万円であったとすれば、年額二万五千円でございますね。そうすると五年分として十二万五千円ですね。対象一名について十二万五千円ぽんと予算をつけておられるのか、あるいは年々お払いになる一人について二万五千円ずつ予算に盛り込んでおられるのか、どちらですか。
  128. 山本淺太郎

    山本(淺)政府委員 仰せのように当該年度、しかもこれは年に二回でございますので、当該年度に現実に支給を要する額を計上いたしておるわけでございます。
  129. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 そうしますと、昭和三十五年度に支給を開始されたときは、対象は一体何名でしたですか。
  130. 山本淺太郎

    山本(淺)政府委員 三十四年度の基礎件数は九千百八十五件でございます。
  131. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 そうすると九千百——約一万について八億三千四百万要ったわけですね。その一万の人については五年間続くわけでございますから、ことしもそれ以下に下るということはあり得ないように思えるのに、それが四億に減っているのは、私には理由がわからない、これを先ほどからお尋ねしておるのですが、それがわかるように一つ説明して下さい。
  132. 山本淺太郎

    山本(淺)政府委員 先ほど申し上げましたように、予算は、年二回に分けてお払い申し上げます額を計上しておるわけでございます。従いまして前年度におきまして裁定は相当進んだ。しかしながら現実の支払いが年二回でございますので、その時期によりましては、前年度に裁定いたしましたものを、新年度におきまして現実の金紙を計上する、こういう操作が現実に必要になってくるわけでございますが、そういうことが来年度につきましてはないということで、つまり今まで計上してありました過年度分を計上されてないというようなことが一つ原因。それからもう一つは、先生の先ほど御指摘のように、当初見込みました人員が多少減ってきておる、こういう申請がおくれたことによって少なくなった、こういう二つの原因というふうに御了承いただきたいと思います。
  133. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 まだそれでは、これだけ半分以下に減るということが御説明では十分でないと思いますが、いずれこれは法律案が審査されますから、そのときにまたお伺いすることにいたしたいと思います。  基本的なことについて大胆にお伺いしておきたいと思うのです。それは、とにかく戦闘参加者であって、たとえばいろいろな例がございますが、徴用に行った人も召集も変わらない。工場で爆弾でやられれば、それも戦死と同じじゃないか、こういう考え方もあるでしょう。それからまた船に乗って、軍用船で働いておった厨夫であるとか、その他いろいろな形でもって働いておった。それがばんとやられれば、これは一切の将兵とともに海のもくずに消えた。だから、これは当然戦死と同じような考え方で取り扱わるべきじゃないか、こういうような声が出まして、そこで、それでは何にもないから気の毒だから、一応戦死と似た取り扱いにしよう。だから五年間一時給与金として、遺族年金のせめて半額でも出しましょう、こういうふうなことで、この援護法の改正が行なわれたと思うのです。しかしながら根本的な考え方からいきますと、身分が軍人であり、軍属であり、あるいは軍属でもなかったというだけでもって、同じ戦闘に参加して死にながら、しかもこれだけ大きな区別をつけられるということについては、遺家族としてはどうも納得がいかない。またその遺家族の中にも、いろいろ立場によって、非常に生活に困窮している人もある、そういう人にしますと、隣近所の遺家族は相当公務扶助料をもらっているのに、自分の夫だけは、同じ戦闘参加者でありながら、国の援護が薄いじゃないかというふうな点に、一そう大きな不満と悲しみを持つということも、これは無理からぬと思うのですが、大臣はそういう点、やはり身分が違うのだからやむを得ない、身分差による違いというものは、これは当然仕方がないのだ、こういうふうにお考えになりますか。同じ戦闘参加者なら、できるだけひとしい国の援護を与えてやりたいというふうなお気持をお持ちになりますか、その辺をお伺いしたいと思います。
  134. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現在の制度がどういう経過でできたかということは、今お話しの通りだと思います。また政府としましては、臨時恩給等調査会の諮問を経て、こういうふうなことを始めたということでございます。その当時の考え方としましては、いわゆる軍人軍属の方と若干身分関係その他においても違っているから、同じようなことをやるのはいかがであろうかというふうな趣旨で、ものがきまったように私ども伺っておるのであります。ただ政府の方針として確定してないものをかれこれ申し上げることもいかがかと存じますけれども、これは私の考えとしてお聞きを願いたいと思いますが、私自身といたしましては、今お話しの通りでございます。現在準軍属ということで、若干違った扱いを受けておりますけれども、私はこれは一つ軍属並みにはやってほしいという心持を現に持ち、また将来も持とうと思っておるわけでございます。それから今の法制が、御承知のように時限立法になっておりますが、これももちろん延ばすべきだ、延ばすというか、終身的なものにするというか、そういう方向に進むべきであるという考え方を前から持ち、現に持ち、将来も持っていこう、こういう心持でおるわけでございます。従って実はこの国会において、少なくとも年限の問題くらいは片づけておきたい、こういうふうな気持もございましたが、政府部内でそこまでものがきまらなかったわけでございますけれども、次の通常国会には、私としましてはぜひそういう問題を解決すべく最大の努力を払いたい、かように考えております。
  135. 岡本隆一

    岡本(隆)分科員 御承知のように、昭和三十八年をもって五年間の期間がなくなりますので、来年までは給与金をそれらの人はもらえることになっております。従ってそれから後のことをそれらの人は不安に思っておりますので、今の大臣のお言葉は、それらの人も非常に喜ぶであろう、ぜひその大臣のお考えが実現するように、一つ御努力をお願いいたしたいと思います。  時間がなくなりましたから、これで質問を終わります。
  136. 中村幸八

  137. 中村重光

    中村(重)分科員 被爆者の問題、さらには学徒あるいは女子挺身隊の援護、それらに関連いたしまして、時間の制約もございますので要点だけ、できるだけ意見を省いて御質問いたしたいと思います。  全被爆者から特別の制限をはずし、すべての被爆者に無料で医療適用されるようにということが長い間の念願であったわけでありますが、今度、従来の二キロの制限を三キロに拡大をする。これに対して大臣が格段の努力をされたことに対しましては敬意を表する次第であります。この三キロに拡大ということをどういう方法をもってすべての被爆者に周知徹底させるかということに対して伺ってみたいと思います。ということは、私は被爆地である長崎県の出身でございます。そういうことで、県下をよく回って歩くわけですが、肝臓が悪いとかいろいろなことで寝起きをして仕事ができないでいる。聞いてみると、やはりどうも放射能による影響があるのじゃなかろうかということを、しろうとなりに感ずることがあるわけでございます。ところが長崎市に居住し、被爆者の会等に入っている人はわかるけれども、県下に散在している人はなかなかそういう法の適用あるいは法の改正ということを知らないで、せっかくそうしたあたたかい手が差し伸べられるのに、効果を現わさないという点があろうかと思うのであります。従いまして、これに対しては、当然この法の恩典をそうした気の毒な被爆者全体に及ぼすように格段の努力がなされるべきではなかろうかと思います。それらのことと、さらには今度の三キロの拡大によって、対象人員がどの程度ふえ、また予算的にはどれほど必要になっておるか、増額分とあわせて全体の費用を伺ってみたいと思います。
  138. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 ただいまの原爆医療法の恩典があるにかかわらず、知らずしてみすみす過ぎておるというような例が多うございまして、まことに遺憾なことでございます。従来も長崎市とか広島市につきましては、ほかの都道府県と違いまして、広島県、長崎県と同等に直接いろいろなことが徹底するような扱いに法律的にもなっております。その他では市等も全部都道府県一本でこれを扱っておりましたが、かような形にいたしておりますので、ほぼ八割が居住しております広島、長崎については、他よりも一段とよく徹底し、また保護も行なわれておるというふうに信じておるのでございますが、今の長崎自体の御事情も御存じのようでございますので、これにつきましては一そう市部の住民については市、県下の住民については県、具体的にいいますと、市町村、福祉事務所ないしは保健所というようなものが今度の法律の届け出あるいは手帳交付その他のポイントになっておりますので、これらの周知方がまだ不十分といたしますれば、これは一そう督励いたしまして、漏れる者のないようにいたしたいと思います。  それから今回二キロの特別被爆者の制限を三キロにまず第一点として拡大いたしました。このために現在までの対象者はほぼ八万七千名でございますが、これが今回の拡大によりまして十二万四千名になるということで、四万人足らずが対象になってくるわけでございます。予算的に申しますと、今回の拡大によりまして、特別被爆者に対する一般疾病医療費の方は、昭和三十六年度の予備費による追加も入れまして三億八千万円でありましたものが五億四千万になりまして、ほぼ一億六千万円の増加になるわけでございます。もちろんこの原爆医療費全体には、このほかに実は元来の原爆症医療費が一億二千五百万円ございますので、合わせて六億七千万円弱という予算になるわけでございます。さようなわけでございますので、今回の三キロへの拡大、並びに三キロ以上のものにつきましても、従来のむずかしい制限を若干緩和いたしまして、すなわち、広島市、長崎市に在住しておりまして、一定の期間内に、一定の中心地域に入所する、この諸条件が備わっておる者が、ある程度の症状を起こしますと、二キロ以上でもこの対象になるとされておりましたのを、被爆地におった、すなわち、ほぼ四キロでございますが、四キロのところにおったということだけの条件ないしは一定の期日内に一定の地域内に入ったという別々の条件で、七つの放射能に関係のある症状を現わした者は対象にする、こういう拡大改正も今度行なわれましたので、三キロまでの自然的なすべての拡大とともに、三キロ以上のものについても、従来と比べますと、人数的にも、ほぼ従来の三倍を予定しておりますが、拡大が行なわれたわけでございます。
  139. 中村重光

    中村(重)分科員 そこで今度は四億円近く予算的には増大したわけであります。ところが、国民健康保険という関係によって、市町村の地元負担金というものが当然ふえてくるわけです。このことは、財政的に非常に行き詰まっておる市町村財政を圧迫してくることになる。これに対しては特別の措置というものが考えられなければならないと思うのです。そうしなければ、市町村の窓口で、そういう面からの取り扱いというものが非常にきびしくなり、せっかくの法が悪く活用されてくるということもなきにしもあらずと思います。しかしそういうことのために私は申し上げるのではなくて、当然そうした特別の援護というものが、やはり地方自治体に対しても特別の措置が当然考えられなければならぬと思うのでありますが、それらの点に対しては、どのようにお考えになっておりますか。
  140. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 この特別被爆者の医療費につきましては、この法律では、対象となる疾病の医療費は、まず国保負担すべきものは負担するということで、自己負担にかかわる、ほぼ半額が通例でありますが、この部分をこれでカバーすることになっておりますので、この点は、表面的には、従来と国保負担が突如として変わるわけではなくて、むしろ従来の自己負担の部分が、本人からこの法律の国費に負担がえされるということで、理屈上はあるわけでございます。ただこの国保も皆保険でございますから、必要な医療を受ける軒が、一般的にいって制限されておったとは言えないわけでございますけれども、これは本人がいろいろな事情で、自己負担があればそれがつらいので、よくよくのことでなければ医者にかからないという事情は、やはりある程度推測されるわけでございますので、自己負担が今度国でまるまる肩がわりしてもらえるということになると、確かに受診率がふえることは間違いないと思うわけであります。そうなると、結果において、理想的な医療が、国保とこの法律によって行なわれるように近づいていくことになるので、一般的にはけっこうなことであります。ただこういう法律を拡大したゆえんであります疾病の発生率が多い、それからまた治癒口数も、からだが障害を受けているために長いという形でございますので、半額負担する国保への圧迫、負担がふえる、こういうことになるわけでございます。ただ理論的に言いますと、今のような形で、理想的な形でございまして、ちょうど健康保険の被保険者本人が全額保険負担という形に近い形になるわけでございます。事実結果におきまして一件当たり医療費は、ほぼ健康保険の被保険者と同等ないしは若干少ない程度でございまして、それ以上にむやみにふえるということは疾病の限度から言いまして考えられないことであります。そこでこの法律によって今の国保の部分をどうにかするということはちょっと不可能でございますので、これは保険の方へも、たとえば調整交付金のような形、これらが財政困難な団体にいくということでございますので、こういうような原因によっても収支が合えば極力その運営の中で考えていただくということをわれわれの方で要請しておるわけでございます。それ以外には、今のところこの法律の建前では、特別な措置を国保組合そのものにこの原爆の医療に関して算定いたしまして注入するということは、筋から言いましても不可能ではないか、かように存じておるわけであります。
  141. 中村重光

    中村(重)分科員 私が申し上げたのは、特別手帳が交付されている被爆者その他すべての被爆者というものとの関係で申し上げたのであります。いろいろ理論的な御意見もありましたが、私も特別被爆者でありますし、被爆者の概念に入っておる。そこで現実にはいろいろな問題が障害になって町村負担というものがあって、御答弁がありましたような形で増大されてくるということは当然でございます。従いまして御答弁の中にありました、当面はそうした調整金等で十分医療法の精神を生かしていくということに御留意を願いたい、こう思うのであります。  さらに厚生大臣にお尋ねをいたします。今までは制限キロの範囲に、二週間のうちに入っておるというようなことで放射能の影響によっての原子病という形に認定をされる、こういう場合は特別被爆者としての手帳の交付、いわゆる認定が行なわれておりました。ところがこれがなかなかむずかしい。二回目の検診もやる。さらには精密検査もやる。時間的に順調にいって一カ月以上を要しておる。しかもそうした認定を受けようとする人は年寄りの方が多いわけです。みずから手続をするというのにも非常に困難がある。さらに年寄りの人特有の持病というものが出て参ります。従いまして放射能の影響による病の発生であるのかあるいは持病であるか、このことは専門のお医者さんですから問題は簡単だ、こうも考えられましょうけれども、現実にはなかなかむずかしい。そういうことで非常に困っておるというような現象が多いわけなんです。そうした点から考えてみて、ここで三キロ拡大さらにはいろいろな対象の拡大をやったわけですが、百尺竿頭一歩を進めて、ここですべての被爆者に対してはこの特別の被爆者という今の取り扱い、医療法を抜本的に改正をして、無料で医療をやる、ここまでおやりになることが適当ではなかろうか、こう私は思うのでありますが、その点に対してはどうお考えになりますか。
  142. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私も被爆者と縁の深い方の人間でございます。従って被爆者のことにつきましては及ばずながら関心を払い、またお世話をいたしたい、かように考えておる一人でございますが、今お話しのように、被爆者なるがゆえに何もかも、医療の問題なら医療の問題について特別な扱いをするということには相当難点があるのじゃなかろうかと思っております。やはり従来からだんだん実情にかんがみまして拡大をしまた制限を緩和するということをいたして参りましたが、被爆者だからすべてと申しますと、考えにくい面も若干あるように思いますから、この辺は一つお互いにまたよく研究さしていただきたいと思います。
  143. 中村重光

    中村(重)分科員 被爆者であるがゆえに無料で医療をするということは問題がある、こうおっしゃる。ところが特別被爆者というものに対しては、その病気のいかんにかかわらず、もちろん半額の自己負担というものがついて参るけれども、特異な犠牲者であるという形においてそういう制度がとられておる、こう私は思うのであります。その法の精神をあくまで生かしていくというならば、ただいま大臣が答弁されたように、被爆者であるからこの医療を無料にするとかあるいは特別被爆者という形で拡大をしていくというのはどうだろうかというようなことは、私はこの法の精神からいって了解できないのです。私はもっと大臣は、いわゆる原爆の犠牲者である、この考え方の上に立って被爆者の十七年間ほんとうに叫び続けたその要求をここで満たしてやることが当然ではないか、こう思うのでありますが、どうですか。
  144. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 もともと原爆被爆者の医療法につきましては、放射能を受けたという特別な原因から出発いたしまして、それに対する医療の問題が考えられたわけでございます。ただ厳密に放射能によるものであるかどうかということになりますと、先ほど来お話もございましたが、なかなかその原因を確定することは困難な点もございます。また時日がたって参りますと、それをトレースすることもむずかしいということもございましょうが、最初に法律を設けました趣旨を生かしますために、前に二キロの範囲というものを考え、今度また三キロの範囲というものを考えまして、当初法律を制定しました趣旨が十分達成されるようにというところがこの法律が動かされておるわけでございます。原爆と全く関係のない姿において病気にかかられた方に対しまして、これは被爆者であるから医療を与えるというようなことにはまだ至っておらぬわけであります。またその考え方をすることについては、よほど検討を要する点もあろうかと私は思うわけであります。
  145. 中村重光

    中村(重)分科員 それならば私は今の特別被爆者の取り扱いをすべての被爆者に適用していく。現在は特別被爆者であっても半額は自己負担です。原爆手帳を出しましても、地域的な健康保険に入っていなければ、当然半分は金を出さなければなりません。ですから原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の一部を改正する法律案の説明の中にも、大臣が今答弁されたようなことを述べておる。原子病に完全にかかってしまうというおそれもあるのだ、早く病気の治療をやらなければ、早期にこれを発見し、その他の病気であってもこれを治療する、こういうことをやらなければならないのだということが書いてある。自分が病気にかかって、これは早く医者にかからなければならぬと思っても、なかなか生活が苦しければ働きもしなければならぬし、思うように参りません。ですからそういった特別措置が行なわれておるならば、この説明の中に述べられたように、完全な原子病にかかるのを未然に防止することも可能ではなかろうか、こう私は思うのであります。大臣はいろいろ配慮もありましょうが、やはりここではもっと積極的な態度をもって対処されるのが適当ではないかと思うのでありますが、いかがですか。
  146. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 ただいまの点につきまして少し補足をさしていただきたいと思います。ただいま保険に入っておらなければ半額は自己負担ということがございましたが、そういうことはないことになっております。といいますのは、国保に入っておれば当然半額は国保、それから一般社会保険の被扶養者でございますと同様半額自己負担で半額が保険、こういうふうになっておりますが、この半額は全部これで持つ。ただし除外しております重大な自己の過失あるいは故意というような場合にはこれは見ないということになっておる。これは過失なり、あるいは故意に犯したという特別な除外例でございますが、その他につきましては保険に入っておらないとすれば、生活保護の適用者または適用すべき者かと思われますが、これは特別被爆者の場合にはこの法律で全類見るということになっておりますので、これは原則としてあり得ないという形で、もしありとすれば申請手続と今の疾病の起こった間の若干のずれという期間の問題かと思います。しかしこれもいろいろな事務手続上これが補足されるような形になっておりますので、この特別被爆者については少なくとも本人の自己負担はあり得ないという建前になっております。その点若干御説明いたしておきます。  なお先ほどからの御質問にありましたように、あくまでこれはあのときの放射能等の関連で、はっきりとそれ自体を起因とした原爆症、白血病等でございますが、これと、これに関連して身体がある程度弱っておるために、一般国民も年に平均二回医療にかかっておるわけでございますが、この二回というのは、この場合受けても受けなくても平均的にはかかっておる。それがさらに上回って二回が三回、あるいは二回かかっても平均二十二日である国民医療日数が、三十日になるというふうに、からだをある程度障害されたためにその部分が非常に不利になるという建前で、こういうふうに保険等と併用いたしましてカバーするという形になっておりますので、もちろん手厚くいたしました。三キロへの拡大もある程度資料に基づきまして、従来の二キロ以内の者と三キロ以内の者と白血病その他の認定疾病の発生率がかなり近い。ところが三キロ以上になりますと、とたんに四分の一ないし五分の一になりまして、これは白血病の発生率等が被爆しない者あるいは他の地域の者とあまり差がないような発生率になっている。すなわち科学的に見まして他の一般国民の発生率とはっきりした区別がつかないという現実の問題が三キロ以上にありまして、ありとすれば非常に発生率の少ないもので関係のありそうな七症状を起こしてくる。これはある程度二キロまでの発生頻度の確立論を大体三キロまでに拡大するのが、ちょうどその線を引く適当なところになる。こういう形で拡大されたわけでございますので、従って現実の問題としては、三キロ以上の問題は現在までのところ従来の考え方による拡大の根拠はつかまりませんし、ないという形でこういうふうになっておるわけでございます。
  147. 中村重光

    中村(重)分科員 ただいまの答弁につきましては反論がございますが、時間もありませんのであまり多くを申しませんが、今の、半額は自己負担と申し上げたのは、もちろん地域保険あるいは職域保険に入っておる場合は御答弁の通りであります。政府管掌組合保険というものは自動的にその適用をされます。しかし国民健康保険、いわゆる地域保険というものは申請をしなければいけません。そういうことで申請をしていない者もある。またその間の、申請をする場合に時間がかかる、あるいは保険金を納付する等、いろいろな問題があるわけであります。理論的には今あなたが御答弁になったようなことになっているのだということでありますが、現実には私はいろいろ複雑な問題があるというのです。私は、現実の立場に立ってこれに対しては特別の措置を講ぜられる必要があるのではないかという意味で実は申し上げておるのであります。ですからいろいろと、こうなればこうなるのだ、だからこれに入りなさい、負担も何も考えないで、そういう制度があるのだからこの制度適用を受けるようになさい、こうするのがあたりまえだ、こういう考え方の上に立つならば、それは今あなたのおっしゃった通りだと私は思う。ところが現実にはなかなか複雑な、実に気の毒な問題があるということです。そういう点を考えてもらわなければならぬという意味で申し上げておるわけであります。ただいまの点は、きょうは大臣もこれ以上答弁できないでしょうから、強くもっと積極的な態度で取り組んでいただきたいということで——まあ広島が郷里の大臣であります。広島の原爆地でそういう者がないはずはもちろんございません。そういった実情を知っておれば、なおさらだれよりも権威者であり、だれよりも発言権というものが強いのだという自負心と責任を持っていただきたいということを大臣に強く要望しておきたいと思います。  なお被爆者の人たちも、前からこれまた叫び続けて参った問題ですが、障害年金であるとか、あるいは原爆によって死没した人たちに対して弔慰金を支給して参りたいということ等の願いがあるわけであります。これに対してはまだ実現されておりません。しかしこれは何とかしなければならないのじゃないかと思いますが、これの点についてはどうお考えになりますか。
  148. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 原爆の被爆者の皆さんがいろいろ苦しい中を、また悩みを持ちながら今日生活をしていらっしゃるわけです。その間、いろいろな御要望があることは私も中村さんと同様に知っておるつもりであります。ただ被爆者の処遇の問題につきまして、今お述べになりましたような弔慰金でありますとか年金でありますとかいうふうなものを出すか出さぬか、この問題はよほど慎重な検討を必要とすると私は思うのであります。まだ積極的な結論が出ておらないことを遺憾とするのでありますけれども、しかし私も心配は御同様いたしておるわけでございます。十分一つこの問題については検討さしていただきたいと思います。
  149. 中村重光

    中村(重)分科員 戦争に行って戦没された軍人に対しましては、弔慰金さらにそれぞれの恩給あるいは援護法というものがあるわけであります。これは先ほど御質問がありましたように、また大臣から御答弁がありましたような、階級差というような形においての支給というものが適当でないということは私も同じような考え方でございます。しかしいずれにいたしましても、苦しい中にも軍人の遺家族に対してはそれぞれの支給がある。ところが原爆の犠牲者、原爆によってなくなった人たちには、軍人と同じような、あるいはそれに近いような形の援護の道が開かれていない。まあそういうことからやはりくるものだとも私は思いますが、墓地に行ってみますと、軍人の墓には石塔が建っている。ところが原爆でなくなった方のお墓には、いまだに石塔が建ってないのが多いのであります。おそらく大臣もそうお思われになったと思う。私も原爆で十二名家族をなくしておりますだけに、いつもその地域を回ります。私がただいま申し上げましたように、十七年後の今日に至るまで石塔すら建っていないじゃないか、そういうものが非常に多いじゃないか。それらのことを考えてみますとき、もう少しこの点に対しては何とか石塔でも一つ建つように、そこまでは適当な措置を講ぜられるべきではないかと思うのですが、どうですか。
  150. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 あまりかたい御返事は実はしたくないのでありますが、ただ原爆被爆者について格別な措置を講ずるということは、政府といたしましてはよほど慎重な検討を必要とすると思いますので、今の御質問の御趣旨から申しますと、消極的なことを申し上げてまことに遺憾に存じますけれども、そういたしましょう、こういたしましょうというような積極的なお答えがいたしにくいということを申し上げざるを得ないのであります。これらの問題につきましては、私どもといたしましてもなお十分に考慮はいたしますけれども、戦争の被害者であるということから考えましたときに、特に原爆の被爆者に格別な扱いをするというようなことにつきましては、よほど慎重な検討を必要とすると存じますので、本日のところはこの辺のところで一つ御了承いただきたいと思うのでございます。
  151. 中村重光

    中村(重)分科員 すべての戦争犠牲者というか被害に対する援護の措置が行なわれていないということは、それはその通りであります。私が引用するのはまことに何かいやなことでありますけれども、農地改革によって適当な価格をもって買い上げられた農地が、非常に当時では安かった、こういうことから、これに対しては今日さらに何とか補償の道を講じなくちゃならぬということで、自由民主党の中にもあるいは政府の閣僚の中にも公然と主張され、あるいは法的な準備まで行なわれておる。これらの人たちは、占領政策によって農地改革というものが行なわれてきた広い意味においての戦争犠牲といったような考え方もあるいはあるのかもしれません。そういうような正当な価格をもって買い上げられた農地においてすら、今日旧地主の補償をしなければならぬということが公然と考えられ、そういう準備が進められておるそういう中において、どうして原爆犠牲者のようなこうした大きな犠牲をこうむった人に対して特別な措置が講じられないという理由があるのだろうか、私も納得いきません。答弁しておられる大臣も、これではいけないのだという気持があるのではなかろうか。ましてやすべての被爆者は、ただいまの大臣の答弁では私は納得しないと思う。厚生大臣として積極的に、今のようなことではなしに、もっと前向きで前進して、これらのことに対して何とかしなければならぬという気持はお持ちではないのでございますか、いかがですか。
  152. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 原爆の犠牲者となられた方々に対する理解と同情ということにつきましては、私も人後に落ちないつもりであるわけでございます。ただ国の制度として何かのことをするということになりますと、それのみでは片づけられないものもあろうかと存じます。その意味において、私は慎重に検討をする必要があるということを申し上げておるわけでございます。私としましては自分の個人のことを申し上げますれば非常にお答えしにくい問題でございますけれども、戦争の被害を受けられた方はいろいろあるわけでございます。そういうふうな方たちとのいろいろな関係もございましょうし、政府としまして今直ちに原爆被爆者に対して——今日まで医療の問題は医療の問題として行なっておりますけれども、それ以外に何か特殊のものとして特別な措置を講ずるというところまでは至っておらない。このことを率直に申し上げておるわけでございます。今後ともに十分私自身としましては検討をいたしたいと存じます。
  153. 中村重光

    中村(重)分科員 次に原爆によってなくなられ、あるいは傷つかれた動員学徒、女子挺身隊、これらの人たちに対しては援護の措置が講じられておるわけでありますが、なかなか審査がきびしいわけですね。これを何とかして緩和してもらいたいという声が非常に高いと思うのでありますが、この点に対しては何か特に法律を改正して、実情に沿うようにやろうというお気持を持ってはありませんか。
  154. 山本淺太郎

    山本(淺)政府委員 御案内のように、援護法によりまする先ほどもお話が出ました準軍人につきましては、一般の軍人軍属の場合と異なりまして、業務上かつ戦時災害によるというふうな条件がついておるわけでございますが、少なくとも今先生おっしゃいましたような原爆でやられたという場合は、戦時災害という条件は十分満たしておるわけでございます。従いまして現在法的な特別の措置をあえて講ずる必要は当該案件の処理についてないではないかと存ずるわけでございますが、先ほど申し述べましたように、軍人軍属の場合におきましては、その原簿となるものがちゃんと現在政府に持たれておるわけでございますが、そういう準軍人につきましては原簿がございませんので、あくまで本人の申し立てを中心といたしまして、工場でありますればそれがどういう軍需工場であったか、それが現在どういう会社に引き継がれておるかといったようなことを拾うのに非常に手間取っておるということでございますが、ただいま仰せのようにこうした方々の御遺族の心情を考えまして、なるべく早く処理するという基本的な態度を大臣からもお示しいただきまして、現在そういうことでやっておる次第でございます。  なお一言釈明のようになりますが、一般の軍人軍属の場合にもそういうケースは多いのでございますが、この準軍属の場合におきましては、そうした本人の申し立てを容易につかみ得ないケースが多い。ところでそういうものは非常に事務的に考えますと、本人の申し立ての事実はないといって却下しがちでございますけれども、私どもといたしましては、何とかして調査調査を重ねて、御本人の申し立ての事実があるのではないかといったようなことで、第一次的なもとへ当たって調査をする。さらにそこで十分でない場合は、第二次、第三次の調査対象に向かって調査を進め、何とかして御遺族の申し立てが通るような、そういう親心でやっているということで、最終的な裁定がおくれている、こういう案件は相当あるような現状でございます。
  155. 中村重光

    中村(重)分科員 この援護法は三十八年度までの時限立法ということになっておりますね、これはどうなさいますか。
  156. 山本淺太郎

    山本(淺)政府委員 先ほど岡本先生から同様のお尋ねがございまして、大臣が率直なお気持をお述べになったのでございますが、十分前向きの姿で真剣に取り組んでいきたいというただいまの大臣のお答えがございましたので、それで御了承願いたいと思います。
  157. 中村重光

    中村(重)分科員 それではこの援護法を当然延長する、でき得べくんば恒久立法までやらなければならぬというお考え方であるというように確認してよろしゅうございますか。
  158. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほど岡本分科員のお尋ねにつきまして政府として公式に態度がきまっておるわけではございませんから、私の気持ということを実は申し上げたわけでございますが、私は立法は恒久にすべきものと考えて、次の通常国会にはぜひともその趣旨の法案について御審議をわずらわしますように運びたい、こういう考え方をしております。そういう趣旨で御了解いただきたいと思います。
  159. 中村重光

    中村(重)分科員 そのことに対しては大臣の答弁を信頼して、これ以上質疑をいたしません。  そこで、私は先ほど申し上げましたように、この障害年金の方ですが、これは局長さんに御答弁願えればいいのですが、非常なケロイドにかかっているとかあるいは内部疾患というようなことで、わかっておるけれども非常にそれが怪いんだというので申請をしても却下される、こういうような例が多いのでありますが、これが先ほど私が申し上げたように、非常にきびし過ぎるという非難が強いのであります。これに対しては何とかもっと緩和していくというようにお考えになってはおられないかどうか。それからこれは第何項症まで支給しておられるのか、あわせて御答弁いただきたい。
  160. 山本淺太郎

    山本(淺)政府委員 二人の先生の御指摘のような点が十分問題になっておりまして、おそらく現地でお聞きいただければ大体の傾向がおわかりと存じまするが、そういう御要望にかんがみまして可及的に拾うというようなことで、現在実際の運用はやっておるはずでございます。六項症以上までやっております。
  161. 中村重光

    中村(重)分科員 これを対象をより多くする。それからまた第三くらいになるのが第五、第六と落とされておる。こういう例が非常に多いのであります。先日長崎の辻原光雄という人が申請をいたしました。この人は手足や胸その他にやけどをしておる。ところがこれは却下された。先日原爆世界大会に出席をしまして、そこで被爆者代表としてあいさつをした。そのあと厚生省に行って、こういう傷を受けた人がある。こういうやけどをした人がなぜ対象からはずされたか、これでいいのかと厚生省に言った。ところが厚生省はその外傷を見てびっくりした。これじゃいかぬということを個人としてはおっしゃったという例があるのであります。何かあなたはそういう事実を知っていらっしゃいますか、それらに対して何か……。
  162. 山本淺太郎

    山本(淺)政府委員 はなはだ残念でございますが、ただいまの辻原さんのケースは私存じませんが、十分法の運用の誤りなきを期し、運用の面におきましても十分考えていきたい。なおさらに救済の幅を広げるというようなことで、立法措置が要るかどうかというような点につきましても、十分誠意を持って検討いたしたいと存じます。
  163. 中村重光

    中村(重)分科員 まだいろいろお尋ねしたいのでございますけれども、時間の制約がありますから、またいずれ適当な機会にきめこまかく質問したいと思うのであります。蛇足のようでありますが、ただいまいろいろと私が問題を指摘したりあるいは質問いたしましたような点を十分一つ大臣もお考えになって、そうしたすべての被爆者あるいは動員学徒、徴用、こういう気の毒な人たちの希望を十分満たしていく、こういうことに格段の御配慮と取り組みをお願いしたいと思います。  一、二お尋ねしたいことが別にあるのでありますが、環境衛生一に関係して、先日環境衛生法の一部改正がございました。これは議員立法でありますけれども、もちろん実施は政府の方でおやりになるわけであります。ところが、この改正によって、いろいろありますけれども時間がございませんからただ問題の点一点だけにしぼってお尋ねするのでありますが、今度過当競争という状態の中に、これを今までは中央の公取の同意を得てこれを勧告するということになっておりましたのが、勧告の程度は、地方の審議会の同意を得て勧告をするということに法改正が行なわれました。これらによって環境衛生関係の業者の人たちというものは非常な期得を持っておるわけであります。ところが現実の運営がどう行なわれるかということで、環境衛生法というのはざる法だといわれておるが、今度の改正によってはざる法といわれておった法律が何とか保護立法的な形になるんじゃないかという期待と希望を持っております。ところがこの法改正がうまく運用されなければこのざる法は改まってこない、こう私は思うのでありますが、これは大臣の御答弁でなくても担当の方の御答弁でけっこうでありますが、どういう運営をしようとお考えですか。
  164. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 環境衛生法は議員立法で御改正をいただいたのでありますが、われわれといたしましては、その御趣旨に沿ってこれが運用をはかっていくことは当然の責務だと思っております。まだ実施早々のことでございますので、実情がどういうふうになっておりますか、私どもよく承知いたしておりませんが、いずれにいたしましても、法改正の趣旨を没却されることがあってはいけませんので、御趣旨に沿って法の運用をはかって参りたいと考えております。
  165. 中村重光

    中村(重)分科員 具体的なことでもう少し突っ込んでお尋ねしたいのでありますが、環境衛生関係の業務は非常に多いわけでありまして、その中で一つ美容の例をとって申し上げますと、都市の方はそう厚生施設の影響はない、というよりは比較的薄いと思います。しかし農村、漁村に行ってみますと、農協あるいは漁協が厚生施設をやる。従って料金も半額程度でやる、こういうことになっております。そうするともうお客はほとんどおりません。そうすると税金を納めて正規の営業をやっておる人は立ちいかない、こういう現象が現われてくる。そういうことが今度の環境衛生法の一部改正という形になって現われて参ったと思います。厚生施設は当然憲法に基づいて、あるいはそれによる美容師法という法律によって資格のある者はだれでも経営をすることができるわけです。そういう影響があろうとも、漁協がやり農協がやる、これは当然のこと。労働組合がやるのもあたりまえ。組合員の福利を考えていく場合におきましてはやらなければなりませんし、やる権利がある。ところが一方においては、地域によりましては非常な困難な問題にぶっつかってくるわけであります。なお、当然そういった地域は勧告の対象になるだろう、それこそ過当競争ということになろうということは常識的に想像できます。ところが勧告ということには非常な手続を要する。時間的にも相当長くかかるというようなことが起こって参ります。これらのことは、おそらく今度政令をお出しになる場合にも十分検討しておられるだろうと思うのでありますが、そういうことはどのように検討をしておられるのか、どういうような運用をしてそういう実情に備えるというようにお考えになっておるか、まずそれらの点を伺ってみたいと思います。
  166. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 実務をやっております事務当局がちょうど外へ出ておりますので、あとでお答えいたさせます。
  167. 中村幸八

    中村主査 御要求がなかったので担当の局長は帰りました。
  168. 中村重光

    中村(重)分科員 それじゃもう一つ申し上げます。これは大臣が答弁できると思います。過当競争が保健衛生に関係をしてくるというので最低料金というものが適正料金としてきめられる。この適正料金をきめる際に、公取地方審議会があらゆる角度から検討して、そして最低を幾らときめる。決定をしますと、知事に答申をする前に公取に事前協議をしなければならない。事前協議がまとまれば、正式に答申をし、知事がそれを申請をする、こういう形が手続として行なわれるわけです。ところが一回、二回、三回、こういう事前協議をやりましても、公取はなかなかかぶりを縦に振らない。これは私は、公取は公取として当然物価抑制という立場から、あるいは独占禁止法というものを守っていかなければならない、そういう役割からおやりになるのですから、それはそれでいいと思う。ところが最高料金というようなものではない。最低料金である。しかもその最低料金は、過当競争をやると、これは保健衛生上重大な支障が起こってくるというのが今度のこの環境衛生法の精神の一つになっている。そうなってくると、この公取というものが最低料金をきめるというので、いわゆる物価抑制という形からは直接的な関係ということには私はならないと思うのでありますけれども、関連はありますけれども最低ですからねらいが違う。ところが一回、二回、三回と事前協議をしても公取がうんと言わない。わずか一円かそこらのものです。そうすると生殺与奪の権、許可権というものは公取そのものが持っているという形になる。こうなると、地方の審議会というものは、労働者代表がある、消費者代表がある、業者代表がある、学識経験者がある、この環境衛生法によってそういう権威のある地方審議会という制度が設けられているのが、ただ形式的なものになる。それならば地方審議会というものは必要がなくなる、中央審議会一本にまとまればいいじゃないか、こういう議論が出て参ります。これは非常に問題点であると思うのでありますが、これらの点について、私はいろいろ厚生省に苦情が出ておると思うのでありますが、この点についてはどうお考えになっていらっしゃるか、これもおわかりならば……。
  169. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私も実情をあまりつまびらかにいたしておりません。ただ環境衛生の関係は今お話通り最低の方が大事だということ、しかもそれ、が保健衛生とつながり合っての料金ということになっておりますので、料金問題についていろいろな問題があるということは伺っておるわけであります。お話のあったような点につきましては、私も一つよく実情を調べまして、検討さしていただきたいと思います。
  170. 中村重光

    中村(重)分科員 今の点は、私は公取の態度が物価抑制という立場からやるということに対しては、それは肯定をするのでありますけれども、ねらいがはずれていくということになって参りますと、法を非常に曲げて解釈するということになって、ゆがめられてくるということになっては、これは適当なことではない。一つこういう点は十分実情を調査されて、議員立法であるこの環境衛生法の一部改正、これらの点に重大な関係を持つのでありますので、大臣一つこういう点については十分調査をして、公取等とも打ち合わせをされる、そしてそういう地力審議会、中央審議会というもののそれぞれの権利、分野というものは尊重していくという態度をおとりになるように強く要望しておきたいと思います。きょうはこれで質問を打ち切ります。
  171. 中村幸八

    中村主査 次は角屋堅次郎君。
  172. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 私は、本日は私の地元の関係で、昨年全国紙等にも報道されまして、非常に国民の関心を集めました第五拓新丸の乗組員であります久保隆さんの問題について、厚生省関係の今後の取り扱いの方針等についてお伺いをしたいと思うわけであります。連日大臣以下大へん御苦労さんでありますが、厚生関係の各般の問題についてもいろいろお尋ねしたい点もあるわけでありますが、特に焦点をこの一点にしぼって、なるべく簡潔にお尋ねをいたしたいと思います。  先ほど中村君の方から、広島、長崎の原爆の被害者等に対する問題が出ておりまして、別に事前に打ち合わせをしたわけではないのですが、たまたま同種類のような関係の問題を取り扱う経緯になりました。実は私自身も終戦の直前に長崎の原爆の被害を受けまして、幸い健康上支障は起こっておりませんけれども、原爆の惨状というものは目のあたり体験をいたしましたし、同時にそういう関係者のその後の問題等についても、そういう関係から非常な関心と、これが善後処置についての熱望を強く持っておる一人であります。  今回取り上げます久保隆さんの問題については、すでに大臣関係当局等から十分話を承っておられると思うのでありますが、久保隆さんは私の方の地元の関係の、三重県の度会郡南勢町宿浦というところの出身でありまして、たまたま非常に健康状態が悪化をいたしましてから、三重の県立医大の付属病院に入院をさせるときに、ちょうど私が小学校当時に教わりました恩師がその入院のお世話をしたという関係等もありまして——その事情は、たまたま南勢町の方に自分の娘が小学校の先生で行っておりまして、そこに下宿をしておる、そういう関係で、ことに病状が悪化をしておるから地元の病院でなくて、一流の病院で看護を受けて、一日も早く治った方がいいだろうということでお世話した経緯がありまして、本人は昨年の九月二十七日に県立医大の方の付属病院に入院をいたしまして、御承知通り約三カ月間療養いたしましたが、昨年の十二月十一日に死亡をいたしておるのであります。病名は急性骨髄性白血症ということに相なっておりまして、いろいろ従来の経緯を見て参りますと、御承知通り本人はまだ非常に若いのでありまして、昭和九年五月六日生まれというのですから、昭和二十九年、ビキニの実験当時、被爆の影響を受けたと思われる時期には大体二十代の若い青年であった。なくなったのが大体二十七才のときでありますから、非常に健康な好青年でございました。第五拓新丸はビキニのアメリカの実験以降約一カ月くらい経過をしてから、実験の区域の千海里程度離れたところを航海をして帰っておる。航海日誌その他の関係から、こういう経緯になっているわけです。本人はそういう若い青年でありまして、乗り組み中はきわめて健康でありましたが、清水港に帰って健康診断を受けた当時は、必ずしも特に異常状態というわけでなかったわけですが、その後四カ月くらいしたころから、からだの状態が非常に悪くなりまして、同じく私の地元であります山田の日赤病院等にもかかるようになった。そして療養に親しむ身となりまして、昨年九月に病状が非常に悪化して参りましたので、先ほどの経緯のようなことで県立三重医大の付属病院に入院をして、遂になくなったわけであります。こういう経緯になっておるわけであります。しかも大臣承知通り、ビキニの原爆実験の当時国際的にも国内的にも非常な関心を呼びまして、本国会におきましても、三月十七日以降十数回にわたって、関係委員会で、あるいは患者の治療に関する問題あるいはまた漁業補償に関する対アメリカの関係の問題、各般の問題が御承知のように論議されました。そしてこの乗組員でありました第五拓新丸の関係についても、当時私の調べた数字では九十六万四千九百円というものが現実に支払われておるというふうに承っております。従ってこの船がビキニの実験後関係区域を航海をし、そしてやはりその影響下のところを通っておるということは明らかであり、また関係の船舶であることもこういう御報告その他の経緯から見て明らかであると思うわけであります。いろいろ秋田さんなりあるいは本人の遺族の関係等から承って参りますると、御承知の久保山さん当時は非常な国民的な注目の関係もありまして、対アメリカの関係においても相当な金額が支払われたわけでありますけれども、当時健康状態を悪くし、最近なくなられた久保隆さんの場合にはいろいろの理由をたてにいたしまして、現実には何ら遺族に対するあたたかい配慮も今日までとられていない、こういう問題についてはやはり私どもも政治的にも十分判断をして配慮すべき問題ではないのかということを考えるわけであります。そういうふうな従来の経緯等もあるわけでありますが、この際大臣に承りたいのは、第五拓新丸の久保隆さんの問題について、厚生省として従来どういうふうに措置され、今後この問題についてはどういうお考えで対処せられようとしておるのか、まず承りたいと思います。
  173. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 久保隆さん御本人につきましては、私どもも大へんお気の毒なことだと存じております。その当時新聞等を拝見いたしましても、すぐに関係当局にも事実をよく調べるようにということで調査もいたさせましたので、その辺の経過は政府委員から説明させます。
  174. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 第五拓新丸の久保隆さんにつきましては、もしビキニの放射能実験が第五福竜丸と同様に関連があるといたしますならば、まことお気の毒でございますので、それに基づいて措置を考えるということは当局といたしましても考慮いたしまして、さっそく当時の記録をよく調査いたしました。幸い私もちょうど二十九年の福竜丸事件のときには安藤国務相を本部長といたします対策委員会の医療部門の幹事をやっておりましたので、記憶的にもよく存じておりました。記録も自分並びに医療部会で作成いたしましたものが保存してありますので、これに基づいて調査いたしました。その結果今角屋先生が御指摘になりました通り、二十九年の二月十一日、三月一日がビキニの爆発の日でございます。その前に清水港から出港いたしまして全然地域とは関係のないコーラル海で漁獲をいたしまして、爆発の日から三十五日を経ました四月の五日、六日に危険地域——これは指定がしてありまして、あらかじめこの時期でございますと、無電で南方船舶にみんな通達してあるわけでございます。従いましてあらかじめ迂回をされまして地域を約千海里西方を通過して四月十三日に清水港に入港した。しかしながらこれは無電の連絡がございまして、大体これと同様にあらかじめ迂回の連絡を受けまして、迂回して帰った南方帰りの船舶はおそらく二百隻くらいだったと記憶しております。全部帰航いたしました場所で船体とそれから漁獲物と乗組員、これの健康診断、これを全部いたすことに、あの後半年間はいたしてございましたので、その記録がございます。これによりますと、当該第五拓新丸はこういうふうに三十五日を経て、さらに放射能残存地域から千マイル離れておりましたので、想像できるわけでございますが、船体からも漁獲物からも一切放射能検出なし、それから乗組員全員健康、こういう記録になっておりまして、これは事実であると思うのであります。従いましてこれは直接の被害関係はなし、すなわち第五福竜丸でございますと、ちょうど危険水域におりまして、三月二日以降灰を直接浴びたという形で船体も漁獲物もよごれたわけでございます。これに若干もう少し距離の離れたものが、数隻帰ってきたものは、やはり船体あるいは漁獲物から調べまして、これらは適切なる処分をされ、また健康管理も受けた者が大体記録上約四十名程度残っておりますが、これは医療費を補償いたしました。しからば、こういうふうに直接関係のないのになぜ第五拓新丸に九十六万四千九百円が支給されたか、この関係費用としてされたかということを調べましたところ、これは明白になっておりまして、一つは当然直航で帰ってくるものがあらかじめ無電連絡によって危険区域を迂回するようにという指示に基づいて迂回したための燃料の増加分と、当然乗組員の日当等も入っておると思いますが、その迂回をいたしました経費、それからもう一つは、漁獲物は全然無傷でございましたので販売されましたが、これは南方から来ますマグロその他の南方水域の漁獲物が著しく当時値下がりをいたしまして、これを平年と同じ時期に、値下がり部分を間接の経済損害といたしまして補償いたしましたが、その両者の原因によりましてこの両項目の補償が合わせて九十六万四千九百円あった。こういうことがはっきり記録に残っておりまして、これに類似のケースは多数ございます。何もかも合わせて、当時福竜丸の一切の補償を含めまして七億円が総額として補償されたと思いますが、その中の一環としての項目ということがはっきりいたしました。従いまして、この調査結果によりますと、これは非常にお気の毒な、急性骨髄性白血症という重病を起こされましたけれども、これは放射能の直接被害によるものではない。年間日本人が全国で約二千名起こっておりますが、ほとんど大部分が原因不明で、しかも発病いたしましたほぼ大部分が死の転帰をとるという白血病の一ケースとして偶然に起こったものと解する以外に、これはちょっと結びつけようがないという形でございますので、福竜丸と同様なビキニの放射能の関連発生の患者ということの認定ができないということになりましたが、しかし、これは費用的にもお困りであるようでありますので、こういうような方に適用されております生活保護による医療扶助を適用するということで、現地で確かにその資格もありましたようで医療扶助で処理された。結果においてはお気の毒にも死亡されたということになっております。さような過程でございますので、基本的に今のビキニにおける第五福竜丸のごとき放射能爆発との直接の関連が何としても考えられませんので、今後もその面からの特別な措置ということは不可能ではないかということで、経済的に余裕のなかった方が重病にかかって、結局は死亡された、これに対する一般的ないろいろな保護ということがありますれば、それによって一般的に処理する、こういう形に現在なっておるわけであります。
  175. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 ただいまの厚生省関係部局のお話を聞きまするときわめて事務的であります。私ども現地におりましていろいろ関係者お話を聞く場合にも、県の衛生部の関係では、当時やはり現実にビキニの実験以降、海区の距離の問題は今もお話のように大体千海里前後だと思いますが、とにかくそういう影響のある地域を航海しておったわけでありますし、しかも非常に健康体であった久保さんが、わずか四カ月くらい経過したときから実際に健康状態が悪化して、病床に親しむようになり、ついに昨年重症状態になってなくなるという経過から見て、はこういう言葉を使っておるのであります。本人が死亡した問題について、ビキニ核実験との濃密な関係は諸般の情勢から結びつけ得ないというふうなお話をしておられるわけですけれども、私はやはりアメリカのビキニの実験と無関係でないということだけは事実だと思います。本来、広島、長崎のような場合でも、現実には当時投下されて以降相当年数がたってから——これは健康の状態にもよりましょうけれども、先ほど中村君の話の中にも出ましたが、いわゆる原子病の症状を呈してきて、その症状のために苦悩するという姿があるわけでございます。私どもの地元の県の関係でも、広島、長崎でやられて、数年間は健康で何もなかったけれども、その後健康状態がやはり相当に悪くなって、時期的に原子病的な症状を呈する。今は変わりましたけれども、山田の日赤病院長をやっておった服部さんなんかもそうでありました。そういうことで、放射能の影響の関係というのは、最近の問題でありますから、医学的にもまだ確立されておらぬと思うのでありますけれども、広島、長崎の被爆の経緯からいっても、あるいは第五拓新丸のような場合においても、ただ単に距離的な関係の問題、あるいは清水港に入港したときの健康診断、あるいはまたガイガーの検出ということだけでもって、事務的にビキニの実験による影響とは関係が薄い、あるいは関係がないのだという判断そのものが、私は非常に問題ではないかというふうに思うわけです。しかも本人は、小学校以来の健康状態あるいは家族的ないわゆる親族の健康関係とか、いろいろな問題から見ても、ビキニの実験ということがなければ、そういう若い世代の状態の中で、あの航海が終わってから数カ月後にそういうものに悩み、ついに死亡するということにはなり符ない。やはりそれが根本原因になってなくなったのだというふうに考えているわけです。ただ単に航海の日誌の関係とかあるいは清水港におけるところの健康診断その他の状況だけから直ちに断定をして、そういう方向での措置はできないのだというのは、あまりにも事務的であり、実際問題として実情にそぐわないじゃないかという感じが率直にいっていたすわけであります。この点一つ大臣からこの問題に対する今後の取り扱いの問題について——ただいま事務当局からはそういう話が出ておるわけであります。しかもこの点については、県の衛生部としても、当時の状況等から見て、直ちにその問題と濃密な関係というわけにいかぬかもしれぬけれども、その後の経緯からすればやはり無関係ではないという点から、何とかしたいという気持が相当に強かったわけでありますけれども、普通われわれの使います言葉で、厚生省の圧力というか、見解によって、そういうふうなところまで前進し得なかったというふうに判断をいたしておるわけですが、私はそういうことだけで断定をして事終われりというふうな問題では済まされないのじゃないか、さらにこの問題について今後の検討の問題として十分精査をいたしまして、もちろん第五拓新丸の乗組員の関係あるいは船主の関係というようなところでも、当時の状況等について、記録だけではなしに、十分お聞きを願いまして、適切な措置に前進をする方向で誠意を持って努力してもらうべき筋合いの問題ではないか、こういうふうに思うわけですが、いかがでございましょうか。
  176. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 実は最初に私知りましたのが新聞で承知したわけであります。新聞で読みましたときには、やはりお気の毒だという感じがすぐにしたのであります。いわんや、御家族の方々とか、お近い方々が、この問題についていろいろな思いをお持ちになっておるということは想像にかたくないところであります。従って、やはりビキニというものがあります以上、あのまわりを通って帰られたわけでありますから、今回の病気についてこれと結びつけてお考えになるということも無理からぬことだと思います。ただあまりに事務的だという御批評でございますが、何も厚生省がこういう問題について逃げる必要も、回避する必要もあるわけではありません。できるだけのお世話をしていくのが厚生省の役割であります。そういう気持は少なくとも私にはございませんし、事務当局といえども、さような気持はさらさらないことだと思います。いれずにいたしましても、これが一体ビキニの関係のものであるかどうなのかということについては、これはやはり事務的といいますか、技術的に考えていく以外にはないと思うのであります。今日まで取り調べました結果は、先ほど局長の申し上げました通りであります。ビキニの実験とは直接関係はないというふうな判定をいたしておるわけでありますが、ただ角屋さんは、実際郷土を同じくされまして、現地の事情もよく御承知のことと思います。なお私どもといたしましても、当時の状況等につきましてさらに取り調べもいたしまして、何かお世話をやくことができるなら、お世話をやいてちっとも差しつかえないことであります。さればといって、理由のないことをやるわけにはいきません。その点は誠意を持ってさらに精査いたしまして、その上で判断をいたしたいと思います。
  177. 角屋堅次郎

    ○角屋分科員 先ほど申しました、お世話をした秋田さんの方では、厚生省関係あるいはそれを受けて立った県衛生部の関係等の措置について、何とか遺族のためにもしたいという気持から、地元の行政監察局の方に、公平な立場で十分実情を調査してもらいたいということをお願いをいたしまして、行政監察局の方で調査をすることに相なった。過般、私、地元に帰りました際に、直接お目にかかる時間的な余裕がなくて、監察局長に電話でいろいろお話をしたわけでありますが、この行政監察局長のお話では、ビキニの実験との関係という問題については、それは関連はあるだろうけれども、何しろ白血病という病気は、原水爆の実験のみによって起こされる病気ではなくて——医学的なことは、私、専門ではありませんけれども、その他の理由によっても、やはりこういう問題が起こってくる、従って、ビキニの実験の一カ月近くたってから、関係の地域、距離的な問題は別にいたしまして、そこを航海をして帰って参りましてから数カ月後に病床に親しむ身になったという点から無関係だということは言えないにしても、それがきめ手の原因であるかどうかという、そういう断定がなかなかむずかしい、従って、この問題については、行政監察局としては、いろいろ誠意を持って調べているんだけれども、なかなかきめ手がなくて、遺家族の御要望に沿うような方向にいけないという現段階ですということを、電話でるるお話がございました。三重大学の付属病院の方でも、やはり久保さんのビキニの実験の問題につながるかどうかという問題もありまするけれども、学問的な立場から、さらに死体解剖その他各般の問題についていろいろ研究をしておられるようです。しかしこの問題も、先ほど申しますようなことで、きめ手というところにいくのには医学的な立場からいえばなかなかむずかしいんじゃないか。やはりこういう問題についてはこの問題の時日の経過の判断の中で、単なる事務的な問題ばかりでなくて、いわゆる政治をあずかる政府の立場から政治的な御判断等もやって、そして適切な方途を見出すということが非常に望ましいんじゃないかという感じが率直に言ってするわけであります。いろいろ私も関係の方方にもお話を承ったわけですが、本人の学生当時からの健康状態であるとか、あるいは親族の方の健康の関係であるとか、あるいは帰って参りましてからの病状の悪化した経緯であるとか、そういういろいろな問題についてはお話がございましたし、しかも本人がまだ非常に若い時代の人でありまして、必ずしも中年以降という状態ではございません。従って遺族の立場とすれば、やはりそれが原因でなくなったというふうに思っておりますし、それはやはり厚生省が今航海日誌その他の当時の状況から見て、無関係だという判断というものは、遺族を了解せしめるような筋道にならないんじゃないかと思います。本人はやはり、遺家族の話等によりますと、あるいはそれはまたおそらく関係者意見も聞かれてだと思いますが、非常に暑い地域での航海でありますから、これは本人に限らずほかの船賃なんかもそうでありましょうけれども、海水でからだを洗うとか、あるいはやはり航海中はとった魚も食べなければならぬとか、いろいろな問題等もからんで参ります。そういう問題についてもここで詳細にお話を聞いた点を申し上げようとは思いませんけれども、やはりそういう海域を通っておる船員のそういう海域におけるところの生活の状態、あるいは食物の状態、こういうふうなものもやはり相互関連して病状の原因になるという判断も私はやはり十分実情に従ってすべきものだというふうに思います。従って清水港に入った時点における健康の調査であるとか、あるいはガイガーの検出であるとかいうことだけで直ちに判定を下すことが適切であるかどうかというふうな問題については、十分やはり温情を持って考えるべき問題であろうというふうに思うわけであります。  再度厚生大臣にお願いをいたすわけでありますけれども、私どもは久保隆さんの問題については、今事務当局からお答えになったような形でこの問題はそれで終わりでございますといって済ますわけに、諸般の情勢を聞いて参りますといかない気持がするわけでありまして、大臣が先ほどもお答えになりましたように、この問題については十分、第五拓新丸の乗組員の関係もありましょうし、また本人の入院をいたしました病院における病状の問題もありましょうし、あるいはそれ以前の問題もありましょうし、県の衛生部その他各般の関係等十分調査を誠意をもってやられまして、できる限りやはり遺家族が了解をし、納得し、そして十分今後の生計その他の問題についても適切な措置によって、今後の明るい希望が持てるような方向にいくように、ぜひ一つ善処を願いたいというふうに思うわけですが、いかがでございますか。
  178. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほどのお話の中に行政監察局の話でございますかありましたが、要するになかなかきめ手がつかめないという気持は私も同様な気持がするのでございます。何かはっきりしたものがなければ、少なくともどっかと話でもしようかというふうな場合には実は困ることになるわけで、きめ手さえあれば問題はないと思いますけれども、あいまいな話で話をするわけにも参らぬかと思うのでありますが、いずれにいたしましても厚生省としましては、先ほど局長が申しましたように、従来調査しました範囲ではどうも関係がない、こういうふうな判定を下さざるを得ないということでありますが、逆に言えば、また関係があるという証明もできないというふうなことになっておりますから、せっかくのお話でございます、また遺族の方のお気持をお察しすれば、なかなか簡単に済ませる問題ではないだろう、従いましてさらにもう一度厚生省としまして調べるものは調べてみまして、その上で一つ判断をしてみたいと思います。
  179. 中村幸八

    中村主査 次は田口誠治君。
  180. 田口誠治

    田口(誠)分科員 私は時間の関係でどこまで質問ができますかわかりませんが、保育所の予算関係と厚生年金の関係について質問をいたしたいと思う次第でございます。  最初に、これは予算とは直接にあまり関係はございませんけれども、昨年のこの厚生省の分科会におきましても強くその実態を披瀝をし、厚生省としても十分に考慮をして改正をするような方向の作業を進めたいという気持の御答弁をいただいたわけでございますが、厚生年金につきましては今年は何ら改正の作業が進められておらないようでございますので、なお引き続きこの点について御質問を申し上げ、要求をいたしたいと思う次第でございます。  御承知通り厚生年金につきましては昭和十六年に法的な措置が講ぜられまして、十七年から発足をいたしておるのでございまするが、その後今日まで十数回の改正はなされておりまするけれども、そのおもな大きな改正といたしましては昭和二十九年の改正と昭和三十五年の改正であるわけでございます。そこで昭和二十九年の改正のときを振り返ってみますると、給付するところの給付率の引き上げということが主として改正がなされたわけでございますが、しかし三十五年度の場合を見ますと、今度は法の改悪に相なっておるわけでございます。そこでちょうど昭和十七年から三十七年でございますので、二十年間たちましたので、本格的に老齢年金の給付をされる時期に相なりましたので、この問題については真剣に早急に取り組んでいかなければならないと思うわけでございます。昭和三十五年の五月から実施されたところの改正内容を見ますと、従来の掛金の率が引き上げられた。それからなお標準報酬等級が一級から十二級までのが、これが二十級までになりまして、一万八千円でとまりになっておりましたのが三万六千円までワクが広まったわけでございます。これがために掛金の増徴収というものは非常に増加いたしておることは、私が説明申し上げるまでもないことでございますが、念のためにここでお伺いいたしたいと思いますことは、この等級のワクを広めたことと掛金の率を上げたことによって、昭和二十九年の改正の当時よりどのぐらい一年間に増徴収になっておるか、この数字をまずもってお伺いしたい。
  181. 熊崎正夫

    熊崎説明員 二十九年と三十五年の改正によりまして増徴収はどのぐらいかという御質問でございますが、きょうちょっと資料を持っておりませんので、はなはだ恐縮でございますが、ただいま調べておりまするので、保留さしていただきたいと思います。
  182. 田口誠治

    田口(誠)分科員 時間がありませんので、答弁のできないところはできないままで進みます。  これは大体七、八百億ぐらいに相なると思いますが、現在のところ五千百億円という積立金に相なっておるようでございます。そういたしますと、今年度から本格的に老齢年金の給付が開始されるということに相なるわけでございますが、三十五年の改正からいきますと、ただいま申しましたように相当多くの増徴収に相なるにもかかわらず、給付の方の改正は現在の計算でいきますとわずか一年に二千円程度給付率に相なるわけです。それと申しますのは、大体今日までその給付に該当される方の数字は四万円程度だそうでございます。そうしますと、それを逆算してみますとやはり二千円ぐらいの増給付ということに相なるわけであります。掛金の方では千分の三十が三十五になり、三十五が四十二になり、そうして一万八千円までの者はどれだけ給料をとっておっても一万八千円までのワクでこの標準報酬の掛金がきまったわけでございますが、それが二十級まで広められて三万六千円までになったので、非常に大きな増徴収になるわけでございます。従ってこの増徴収の面から、私どもしろうとが計算をいたしましても、現在の基本金額の二万四千円というものを三倍ぐらいにしても、会計面の上においては支障を来たさないという判断をするわけなんですが、そういう点についてどのように把握されておられるか、おわかりになったら御発表を願いたいと思います。
  183. 熊崎正夫

    熊崎説明員 厚生年金の給付内容は、御指摘のように現在非常に悪いことは私どもも十分認めておるところでございます。これを逐次改善していくことにつきましてただいますでに検討に着手いたしておるのでございます。前回の改正のときに標準報酬なりあるいは料率を上げましたことにつきましては、これは料率の目標を千分の四十四まで上げるということにしまして、それで財源計算をいたしました。その最初の分として千分の五だけ上げたということになっておりまして、給付改善と直接関係はないということで当時は改正をいたしたということに相なっておるわけでございます。しかし御指摘のように現在大体平均額四万一千円程度になってございますが、これが非常に低いことはすみやかに改善する必要を認めておるのでございまして、私どもの考え方としましては、大体三十八年四月までを目標にしまして給付内容改善をはかるべく、すでに社会保険審議会の厚生年金部会におきましてもその検討に着手をして、また保険局内におきましても定員の増員等を考慮しまして、すでにその検討に着手いたしておるような状況でございます。
  184. 田口誠治

    田口(誠)分科員 今までこまかい改正は十何回かいたしております。また大きな改正というのは、やはり社会保障制度審議会意見も聞いたり、十分厚生省の方でも研究をされてなされておるのですが、この改正が大体四年目四年目になっておるのですね。ところが私が昨年から申し上げておりますることは、とにかく昭和三十七年からは二十年になって老齢年金の給付を受ける該当者が出てくる年であるから、それでこれは四年を待たずして、やはり昭和三十七年度の五月一日あたりから改正をするようにということで、昨年御要望を申し上げておいたわけなんです。それで厚生年金と船員保険との関係、それから国家公務員の共済年金、公共企業の団体共済、それから私学共済、農林漁業の共済、いろいろ年金制度はございまするけれども、厚生年金と船員保険は掛金の割に給付は非常に少ないのですね。たとえば国家公務員の場合を申しますと、船員保険あたりよりは掛金が年に二千円ばかり少なくて、そして給付の方は二万五千円ほど多いわけなんです。これは公共企業体の共済組合の年金の場合もそうでございますが、こういうような国家公務員やら公労関係の団体の年金と比較しますると、非常に給付は安いということです。しかも安いけれども給付する金がないかといえば、現在のところ三十六年十二月で積立金が五千一百億という金額になっておるのですから、私どもが計算をいたしますると、現在の基本金額の月二千円、年二万四千円というものを約三倍くらいにしてもどうにかこうにかやっていけるのじゃないか、こういうそろばんが立つわけなんでございますが、こういう点についてはこれから厚生省の方で十分検討をいただいて改正の準備をしていただきたいと思うわけでございます。  そこでこれは四年目々々々に改正をするということを待っておることは、ときによってはよろしいけれども、生活保護法にいうところの生活保護費なんかも毎年少しずつ上がっていっておりまするし、それから昭和二十九年から三十六年までには公務員の賃金なんかでもちょうど一万円ベース・アップになっております。その通り物価が上昇いたしております。金の値打もなくなってきておる。こういうような中で二十九年の改正がそのまま今まで置き去りになっておるということは、これは厚生年金と船員保険関係は非常に冷や飯扱いをされておるような感がするわけです。それでこういう点から特にこの改正の内容については基本金額を三倍というように要望を申し上げておきたいと思うのです。  それから三十五年の改正のときに、とにかく増徴収という改正を主に行なって給付の方へ手をつけなんだということは、何かその当時理由があったのですか。
  185. 熊崎正夫

    熊崎説明員 当時の担当者が来ておりませんので、私ども詳細を伺っておりませんけれども、私が承っておりますところでは、当時の改正をやりましたときには、財源計算上料率を上げるということで検討いたしまして、給付内容改善まで持っていくということにつきましては、当時はそのまま取り上げるということにはならなかったように記憶いたしております。ただ一つだけ言い落としましたが、比例分だけを、千分の五を千分の一上げまして千分の六にいたしましたのが内容改善になっております。その他につきましては、これは手をつけておらない、こういうことになっております。  それから先ほど先生の御説明では四年ごとということをおっしゃられましたが、これは厚生年金の方では大体五年ごとに改定をすることになっておりまして、先ほど私が申し上げました昭和三十八年四月を目途にするということは、実は本来的には五年ごとということになれば昭和三十九年からということになるわけでございますけれども、御指摘のように現在の給付内容はきわめて低く抑えられておりますので、その辺を考慮いたしまして、これを一年早めて三十八年からということで作業を繰り上げてやろうという準備をただいまいたしておるような次第であります。
  186. 田口誠治

    田口(誠)分科員 三十五年の改正が、財政面を考えて掛金の率も上げられ、また標準報酬のワクを広げられたというようにお聞きしておりますが、これはこまかい計算を伺ってもちょっと御回答にならないと思いますので、私は伺いませんが、これは実際面からいきましてそのような心配はなかったわけなんです。それで結局今日のところでは質疑応答というよりも、私の方からの意見ということになろうと思いますけれども、ただいま御回答のありましたように千分の五を千分の六に上げたことは、これで年四万円という目標において計算をしますと、二千円近いものが上がるだけなんです。大体二千円くらいのもの、その程度給付増ということになっておるのであって、徴収の面は非常に上がっておるのでございますけれども、今申しましたように給付の面は非常に貧弱な上げ方になっておりますので、この厚生年金の改正は今年は間に合わぬといたしましても、明年は必ず間に合わせるという考え方の上に立って根本的に検討を願いたいと思うのです。  今御質問申し上げましても、おえらいさんの方ですからわからないらしいのですが、そのくらいこの厚生年金なり船員保険は冷や飯扱いをされておるわけです。というのは、あまり労働組合の方からもやかましく言っておらないということなんですね。どうかといえば、昭和十六年にこの法律案を作ったときには、社会保障というような考え方ではなくて、戦争目的のために貯蓄を奨励しても金が集まらなんだ、だから、その当時は厚生年金とはいっておりませんけれども、この制度を作りまして、労働者から、強制的に加入をさせて、強制的に掛金を集約して、これを戦争に使ったという、こういう経過がありまして、そこで戦後になって初めて社会保障がやかましくいわれるようになって、名前も厚生年金といういい名前がつかりまして、今日にあるわけなんです。そういうことから、今日までの労働者は、給料から引かれておるけれども、さていつになったらどれだけもらえるかということに非常に無関心であったわけなんです。二十年たって、最近いよいよ給付を受ける時期になって、初めてやかましく騒ぎ立てたのであって、それだけにやはり厚生省当局の方へも圧力がいかなかった面もありますが、厚生省としてもこの問題に無関心であるということもいなめない事実であろうと思うので、どうかそういうような汚点を払拭していただいて、五年目ごとであろうとも、来年は一つ改正に踏み切ってもらうようにお願いいたしたいと思うのです。何かこれについて最後の御回答を願いたいと思います。
  187. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ただいまのお尋ねには私からお答え申し上げます。  厚生年金の給付があまりにも貧弱であるという御批判はどなたからも受ける問題でございます。われわれもこの程度ではいけない、もっと改善しなければならぬという考え方をいたしておりますので、今までも別に厚生省は遊んでおったとは存じませんけれども、何さまかような問題は複雑な保険数理ということもございまして、結論が出にくかったと思うのであります。政府といたしましてはただいま保険局次長からお答え申し上げましたように、そろそろ給付をする時期がきました。そういうことでもありますので、なるべく早く改善の案を立てまして国会の御審議をわずらわそう、そういうつもりで現に作業を開始いたしておるようなわけでございまして、相願わくは三十八年度からその改正法が実施せられるようにいたしたい、かようなつもりで作業をいたしておるわけでございます。御了承をお願いいたします。
  188. 田口誠治

    田口(誠)分科員 大臣の方からきわめて誠意ある御回答をいただきましたので、私は今まで去年あれだけお願いしてもあまり作業も進んでおらず、今年の質問に対しての質疑応答が十分できない程度のことであるので、こういう点は非常に残念に思いますが、ただいまの大臣の誠意ある答弁に私も信頼をしまして、お願いをいたしておきたいと思います。よろしくお願いいたします。  それから次には保育所の関係でございますが、予算書からいきますと、保母さんの給与が二二%引き上げられるということになっておるのですが、私どもが把握しております範囲内においては、保母さんの平均賃金というのは九千二百円というように把握しておるのです。厚生省の方ではどの程度……。
  189. 今村讓

    ○今村政府委員 児童局長がまだ見えておりませんので、便宜私から申し上げます。  厚生省で今把握しておりますのは、三十五年の四月に社会事業施設の全数の全般の実態調査というものをやっておりますが、その当時の資料から推算したものでありますけれども、保育所の保母さん以下全体の平均が一万四百八十九円、これは理論的な推算であります。これは三十五年の四月の実態調査時における現員、現給に、三十五年十月に一一・九%の予算単価の引き上げを行なっております。それから三十六年四月に、社会事業職員給与が低いというので、七・五%の引き上げをやっております。それから去年の十月一日現在、公務員と合わせまして七・六四%の引き上げをやっておる。この三つを合わせまして、三十五年四月の現給にこれの三回分をかけていきますと、理論的には、平均しまして一万四百八十九円、こういう数字になりますけれども、ただ公立と私立がやはり格差がありまして、公立の方のその方式による推算をしますと、一万一千三百九十五円、それから私立の方につきましては、三十五年の四月が七千三百六十二円、それに三十五年十月の一一・九%、それから三十六年四月の七・五%の特別アップ、それから三十六年の十月の公務員に合わした七・六四%のアップ、それがその通りに実施されておりますならば、私立の保母さんでは九千五百三十三円という数字になるんではないか、こういう推算をいたしております。
  190. 田口誠治

    田口(誠)分科員 これは今年二二%の引き上げということを予算化されたのですが、予算要求としてはどんなものでございましたか。やはり二二%要求して二二%通ったということなんですか。
  191. 今村讓

    ○今村政府委員 要求といたしましては、現在の予算単価を一五%上げてくれという要求をいたしました。ただいろいろなバランスがありまして、結局において保母、それから児童指導員、いわゆる子供やなんかと起居をともにする職員は一三%、それから事務員とか小使さんとかの普通の事務職員は七・五%というふうに、個々の職種別単価を是正する、こういう結果になっわけであります。
  192. 田口誠治

    田口(誠)分科員 省の方でははっきりしておると思いますが、全国からいろいろ陳情が来ておると思いますが、やはり陳情の実体からいっても、ただいま発表なさったのは正しいのですか。僕らが陳情を受けておるのは非常に安いですね。だからとても保母さんを雇うことができないというようなことで、強い増額の陳情を受けているのです。私の把握しておるのと今発表いただいたのとは、だいぶ開きがございますけれども、やはりこの保育所の必要性というのは、いろいろな日本の産業の方式が変わっていくにつれて必要度も加わってきますし、こういう内容の充実をはかるということも、必然的に国民から要望されることでございますから——私はちょうと五十分から向こうの委員会に出なくちゃなりませんので、これも半ばで残念でございますけれども、各県からいろいろと陳情されておる各項目の問題については、時間があれば一々お尋ねするつもりでございましたけれども、できませんので、一つそういう点を十分に取り上げていただいて、予算の面に移していただくことをお願いを申し上げて、私の質問を終わります。
  193. 中村幸八

    中村主査 次会は明二十二日午前十時より開会し、厚生省所管に関する質疑を続行することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十六分散会