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1962-02-26 第40回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十六日(月曜日)     午前十時二十四分開議  出席分科員    主査 赤澤 正道君       井出一太郎君    仮谷 忠男君       倉成  正君    三浦 一雄君       足鹿  覺君    淡谷 悠蔵君       加藤 清二君    川俣 清音君       小林  進君    中嶋 英夫君       武藤 山治君    兼務 楯 兼次郎君 兼務 田中織之進君    兼務 本島百合子君  出席国務大臣         国 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         経済企画政務次         官       菅  太郎君         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房会計課         長)      川村 鈴次君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    中野 正一君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長事務         代理)     向坂 正男君         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  曾田  忠君         大蔵事務官         (主計局次長) 村上孝太郎君         食糧庁長官   大沢  融君         通商産業事務官         (軽工業局長) 倉八  正君  分科員外出席者         総理府事務官         (経済企画庁調         整局参事官)  羽柴 忠雄君         検     事         (刑事局刑事課         長)      羽山 忠弘君         大蔵事務官         (主計官)   相澤 英之君         大蔵事務官         (理財局資金課         長)      鈴木 喜治君         農林事務官         (食糧庁業務第         二部長)    中西 一郎君     ————————————— 二月二十六日  分科員高田富之委員辞任につき、その補欠と  して足鹿覺君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員足鹿覺委員辞任につき、その補欠とし  て武藤山治君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員武藤山治委員辞任につき、その補欠と  して中嶋英夫君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員中嶋英夫委員辞任につき、その補欠と  して小林進君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員小林進委員辞任につき、その補欠とし  て高田富之君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  第一分科員楯次郎君、第二分科員田中織之進  君及び第四分科員本島百合子君が本分科兼務と  なった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十七年度一般会計予算経済企画庁所管     ────◇─────
  2. 赤澤正道

    赤澤主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  本日は昭和三十七年度一般会計予算経済企画庁所管を議題といたします。  質疑を行ないます。田中織之進君。
  3. 田中織之進

    田中(織)分科員 経済企画庁長官がお見えでございまするので、特に長官に、今全国的に進められております地方開発、さらに昨年度に法案成立をいたしました後進地域開発、また今国会に提案せられました新産業都市建設促進法案、こういうものとの関連において若干お伺いをいたしたいと思うのであります。  経済企画庁といたしましては、ことに池田内閣になって、いわゆる所得倍増計画という観点から、国全体を総合的に見た立場において開発計画というものを策定せられておることと思うのでありますが、この所得倍増計画に先だちまして、北海道東北——これは歴史的には戦前からの東北開発という問題がございまして、戦後北海道開発重点を置くという形で地方的な開発促進計画を立て、そのために予算的、資金的な裏づけをするという方策がとられております。そういうような経過から、引き続いて九州開発四国和歌山開発計画、引き続いて中国開発北陸関係、こういうような形で各地域ごと開発促進法成立をいたしまして、現在それぞれの施策が進められておるのでありますが、昨年に、先ほど申し上げましたような後進地域開発のための基本法が制定せられ、また今国会産業都市建設のための基本法とも申すものが別途提案されておるわけでございます。そういう点から見ますると、たとえば房総関係であるとか、あるいは中部地区の問題であるとかいうような地域的な開発方針を立てろという要求もございまするけれども、この段階に立ちまするならば、ここらでやはりそういう各地域を限っての開発計画というものと、国全体の開発計画あるいはそれを通ずる後進地域開発計画というようなものとの間に、再検討と申しますか調整をすべき段階ではないか、このように考えるのでありますが、まずこの点についての企画庁長官としての御所信を承りたいと思います。
  4. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 お話のように、所得倍増計画がありませんでも、日本の国力を総合的に増進する上におきましては、地方開発あるいは低開発地域開発と申しますか、そういうことが必要であることは申すまでもないのでありまして、従って、今日までそれに伴いますところの諸般の法律あるいは制度等が次第にできてきておる、これもまた当然のことだと思います。ただお話のように、国土総合開発ができまして、ただいま最終的成案の発表を見る段階に至って各方面の御意見を伺っております。これができ、また低開発地域法案もできましたし、今度は総合開発における拠点開発意味をもちまして、新産業都市法律もできるわけでございます。そうしますと、これらのものを再検討をして総合的に進めて参る必要があるかとも思います。  そこで、法律そのものを全部再検討するということではないにしましても、少なくも地域開発に伴います各種の審議会等がございますが、それらのものは国土総合開発計画というような大きな計画の中の部会的な存在として、あるいはその中で総合的に、かつ地方的な問題として話し合いをするということも適当ではないかと思うのでありまして、そういう点についていろいろただいま検討をいたしておるところでございます。
  5. 田中織之進

    田中(織)分科員 そういたしますと、北海道東北にいたしましても、九州開発にいたしましても、四国開発にいたしましても、あるいは北陸開発にいたしましても、それぞれ審議会があるわけです。審議会のできました日時に相当のズレがございまするから、各審議会結論を同時に出させるということも不可能だろうと思うのでありますが、現在各審議会でそれぞれの地域開発についての方針は大体どの辺まで審議が進んでおるのか、企画庁所管国土総合開発審議会との関係現実にはどういうように調整されようとしておるのか、この点についてお伺いいたします。
  6. 曾田忠

    ○曾田政府委員 先ほど大臣がお述べになりましたように、現在私どもとして重点を置いております作業は、まず全国的な視野から総合開発計画を早急に作る必要があるといいますることと、現在各地域につきまして特殊立法ができておりまして、その内容におきましても、各地域それぞれの特殊性に応じました地域促進計画を作るということが、特に両者を総合いたしました計画を作るということが当面の緊急課題でございます。  現在までの経過を申し上げますと、北海道あるいは東北九州四国といいますものは、すでに一応の計画立案されております。また新しくできました中国あるいは北陸につきましても、現在計画の案を策定中でございますが、北海道にいたしましても、あるいは東北九州にいたしましても、若干時期的に、たとえば初年度が三十三年度とか、そういうふうに計画期間が古いといいますことと、所得倍増計画期間というものとの関連におきまして、あらためて計画立案をし直すということもございます。いずれにいたしましても、私どもといたしましては、全国総合開発計画といいますものと、各地域促進計画といいますものを総合的な関連から調整して、早急に作るべきだというような態度でございまして、法律的に申し上げますと、全国総合開発計画は、御承知のように国土総合開発法というものに基づいて策定されたものであります。各地域促進計画はそれぞれ各地域促進計画に基づいて作っておりますが、法律の建前上は、それぞれ別々の審議会におきまして調整審議されるということでございます。最終的にもし全国総合開発計画とそれぞれの地域促進計画との間に調整の問題が起こるという場合においては、内閣総理大臣がそれぞれの審議会意見を聞いて調整するという段取りになっております。いずれにいたしましても、現在、昨年の七月に作りました全国総合開発計画草案というものにつきまして、それぞれの各地域皆様方の御意見を承っておりますし、それとの関連におきまして、各地域促進計画の案を私の方で策定しておる段階でございます。
  7. 田中織之進

    田中(織)分科員 そういたしますと、昨年全国的な開発計画草案が発表されたので、それと地域ごとにできている審議会審議中の地方開発計画との間の調整段階だ、こういうふうに受け取れるのでございますけれども北海道の場合には北海道開発庁という国の機関がございます。それから東北地方につきましては、後ほど決算委員会で問題になっておる問題との関連において伺いたいと思うのですけれども東北開発という総合的な、いわゆる国策会社としての会社がございます。ところが九州四国中国というような関係におきましては、もちろんそれぞれの審議会地域全体の総合的な観点計画というものが今立案中だと思うのでございますが、その地域におきましては、各府県それぞれ、もちろん審議会とどういう関係にあるかはつまびらかにいたしませんけれども、それぞれ計画を立て、当初のときにはそういう開発地域九州なら九州開発公社のようなものを作るかどうかという問題、あるいはそれに必要な資金を供給するための金融機関も作る、そういう二本建の形で九州開発を進めていかれるというような構想で進んで参ったと思うのです。現在は、審議会におけるその地域の総合的な開発計画が本ぎまりにならない関係から、各府県思い思いと言えばあるいは語弊があるかもしれませんけれども、それぞれ計画を立てて開銀地方開発ワクと言いますか、地方貸付ワクによって具体的な開発計画を進めておるというのが現状だろうと思うのであります。それでその関係からくる各府県ばらばら計画というものが進められてきておるし、その点から見ますると、同時に、特におくれた地域でありまするから、工場誘致という関係でお互いに競合するという問題も出てくるかと思うのであります。それと、後ほど大蔵省関係の方にお見えいただいて伺いたいと思うのでありますけれども、たとえば開銀地方ワク貸し出しの問題につきましても、必ずしも地方の問題ではなくて、中央あるいは市中銀行、その他開銀のいわゆる本店のワク内で処理されるべきものも地方ワクの中に食い込んでおるという実情もあろうかと思うのであります。そういうような現実についての調整経済企画庁としてお考えになったことがあるかどうか、この際承りたいと思います。
  8. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 企画庁がそれぞれ開発計画を立てまして、それを実行します上におきまして、お話しのような資金的な裏づけその他も必要であろうというような問題から、北海道という特殊の場合におきましては、北海道について戦後急速な開発計画を進めなければ、日本の引揚者の場合その他を考えてみても、あるいは日本の狭くなった国土を最大限に利用する意味においても、おくれております北海道開発が必要であるということで、特殊の立法がなされてきましたことは御承知の通りでございます。ただ、私どもいろいろ今この問題を考えておりまして、たとえば九州でありますとか、四国でありますとか、あるいは中国でありますとかいうような部分的なそういう開発会社、もしくは金融的な措置をする仕事を行ないますものができますことが適当であるかどうかということについては、むしろ若干の疑問を持っておりまして、そういう意味においては現在の開銀地方ワクを拡大するか、あるいは開銀自身というものが主として工業的な日本産業の育成ということを主題とした仕事でございますから、個々にそういうものを作るよりも——もし個々に作るようなことであるならば、全国的な何かそういうものを別個に考えた方が適当ではないかと思います。ただしかし、これらの問題につきましては、地方的に御意見もいろいろございます、また中央における財政金融関係もございますので、十分慎重に考慮して参らなければならぬと思っております。軽々に今結論を出すわけには参りませんけども、そういう点について、おそらくこの段階になりますれば、企画庁自身もそういう感じを持っておりまするし、またそれぞれ各地の開発計画を御立案になりました衆議院の各方面方々もそれぞれお考えになっており、いろいろ御検討になっておると思うのでありまして、そういう点について今後十分な検討をしていって、そして国土総合開発計画とあわせて、力強い地方開発計画が促進されるように考えていく時期が、法律の制定が順次整備して参りますにつれて必要ではないかというふうに私は考えておるのでございます。ただしかし、これはまだ検討するという段階でございます。
  9. 田中織之進

    田中(織)分科員 地方開発の問題につきましては、今長官からお述べになりましたように、北海道東北というようなものに例をとった形の、その地域の一本の開発公社というか、そういうようなものを主体として開発計画を進めるかという問題が一つ。それの裏づけになる資金面を担当する金融機関を、従来はそれと二本立で各地区ごとに作るような考え方が、地域開発促進法基本的な考え方であったと思うのです。現実には、審議会で総合的な開発計画案がまだきまらないという関係がありますから、現状において各府県ばらばら——ばらばらと言ったら大へん語弊があるかもしれませんけれども関連は持っておるのでありましょうけれども、各府県がそれぞれ計画を立てて進める。従って、その地域全体としての開発という問題にまで発展をしないから、金融機関関係は、便宜的に開銀地方ワクという形で進んでおる実情はわかるのであります。基本的な考え方として、今度東北開発一つの事例があるわけなんですけれども、そういう九州なら九州四国なら四国——これは和歌山県も含みますけれども、あるいは中国とか北陸とかいうような形で開発機関を、特殊法人のものを設立するというような考え方と、それからもう一つ、それを裏づけ金融機関地域ごとにこしらえるという考え方、これでは国全体の計画との観点で、私は非常にその調整に困難な問題を起こしてくると思うのです。その点から見ても考えなければならぬ、こう思うのであります。その意味で分けて伺いますけれども東北開発会社のようなその地域全体を通ずる開発会社というものを、九州なりあるいは四国なり中国なり、北陸なり、その他の地域に作られるという方針はもう踏襲されない——これはもちろん全体の計画が出なければ結論が出せないと、あるいはお答えになるかもしれませんけれども、やはり各府県で今進めている仕事進行度合いにも関連を持ってくるので、その点をまず伺います。
  10. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 これは全く企画庁確定的意見でもございませんし、むろん政府意見でもございませんが、私個人考え方からいたしますれば、東北開発のような開発会社がはたして地域開発のために適当であるかどうかということについては、私は若干の疑問を持っております。ああいう会社個々事業を経営するということが適当であるのかどうか。むしろ地方実情から見ますと、地方実業家と申しますか、あるいは産業人は、非常な産業を興す意欲を持っております。ただ問題は、そういう地方において意欲を持ち、あるいは技術、経験を持っておりましても、資金が足りないというところに一番の難点があるのじゃないか。でありますから、ああいう会社自分仕事をしてみますと、やはり十分な実業家的経験もなくて、仕事内容自分としてはうまくいかぬ。むしろ地方方々会社を、たとえばセメント会社を作る、しかしどうも資本金が足りない、そういうようなものに対するある程度育成するまでの資本を出して、そうして援助していくというようなことがむしろ必要なのであって、はたしてああいう機関自分自身で、近代産業みたいなような仕事をやるのが適当であるかどうかということについては、私、これは個人意見でありますけれども、若干の疑問を持っております。従って、今後地方開発を促進する上において、地方産業人がこういう仕事を興したい、またある程度の経験も持っておる、これを拡大していけばりっぱなものになるんだが、しかしその土地々々では必ずしも資本は十分得られないし、個々では中央民間資金というものを吸収できないというようなものに対して資金を供給して、あるいは場合によれば、ある期間株を持ってあげて、そうしてそれが育成されれば、その株をその地方民間の方に払い下げていくと申しますか、売って、そうして完全な民間のものにしていくというような、何かそういう種類のものが必要ではないか。でありますから、今のような形のものがはたして必要であるかどうかということについては、私個人としては、私の過去の体験から見て、若干の疑問を持っておるのでございます。しかし、これらの点につきましては、すでにできております東北開発会社の問題もございますので、今後地方開発に対してそれだけでいいのか、やはりああいう種類のものが何か一つ仕事を興さなければならぬのか、そういう点については、十分各方面の御意見も伺ってみないと、私個人意見だけでこれは何とも申すわけにはいきませんし、またこれは企画庁意見でもございません、政府意見でもございませんが、私はそんなように思っておるのでございます。
  11. 田中織之進

    田中(織)分科員 藤山長官実業人としての過去の経験から、ごもっともなお考えだと思います。またその点につきましては、今九州関係等のことについては詳しくは存じませんけれども四国和歌山総合開発で、私の郷里の和歌山等で、県が計画しておる事業というようなものにつきましても、工場誘致するための土地の造成の仕事であるとか、そういうような基礎的な、基盤的な面をやられるというようなことの範囲を越さないようにということを、私ども意見を述べておるのでございますけれども、一歩進んで出て参りますと、現在司直の手に裁かれておるような東北開発と同じような事態が出てくるのではないか、そういう点も、後ほど東北開発のことについては伺いますけれども、すでにそういう前者の轍があるわけでありますから、今後それぞれの地方開発計画が本ぎまりになってくると同時に、その開発主体をどこに置くかという問題が当然出てくると思うのであります。最初われわれ議員提案法案を出すときには、そういうようなものを、東北開発等の例にならって、地域全体を通ずる主体を打ち立てる、またそのうらはらな、これからの質問になるわけでありますけれども資金面を担当するものとして特殊な金融機関を、やはり九州なり四国なり開発金融公庫というようなものを作るというような考え方が、われわれ議員提案をするときの前提になっておるわけなんですけれども、実際には、それは先にできました北海道東北開発公庫のほかは、地域的な金融公庫というものは設立されないで、開銀関係で進んできているわけなんです。そういたしますと、今後の問題としては、金融関係については、開銀が、従来は電力であるとか、あるいは海運であるとか、鉄鋼であるとかいうような、日本工業力発展をさせるための特殊金融機関としてできたと思うのでありますが、そういうことで開発銀行の役割というものが産業投資特別会計とのうらはら関係で理解できると思うのです。それを現在は地方開発ワクとして、来年度においては二百億でありますか、たしか本年、三十六年度より三十億であったと思うのですが、増加した形で地方開発ワクというものが設定せられるわけです。この開銀を通じて地方開発のための資金を流していくという考え方は、政府としてはこれからも一貫してとっていかれようとするのか、この点についてのお考えはいかがですか。
  12. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 少なくとも現状におきましては、地方開発資金を流すルートとしては開銀地方ワクということが政府方針であって、これを拡大していくということになろうかと思います。ただ、先ほど来お話もございましたように、地方的にいろいろ金融機関を作ったらどうだという御意見もあることはむろんでございまして、地域的な実情に即した活動をしやすいということのためにそういう御意見も出てくると思うのであります。四国なら四国九州なら九州を対象にしまして一つのそういう金融機関を作る、ただ、そういう個々のものを作りまして資金量を分散いたしますことがはたして適当であるかどうかということは問題があろうかと思います。でありますから、少なくも現在は開銀地方ワクを充実して、それによってやっていく。しかし、開銀は今のように基幹産業を主として成立させるというような形で出発いたしておるのでありまして、地方開発の必要ということが叫ばれてから地方ワクというものができたのだと思います。従って、国土総合開発計画をやって地方の格差を是正し、地方産業発展させますためには、あるいは将来開銀地方ワクというものが非常に大きくなってくれば、それ自体を運営する別個の全国的なものが考えられてもしかるべきではないか。そしてその会社が、先ほど申しましたように地方でもって仕事をしたいが、ある程度の資金は集まるけれども、それ以上はなかなか集まらぬ。また、地方的な発起人の方々やなんかの数あるいは持ち株からいって、必ずしも中央の大きな実業家がそれを持つわけにも参らぬし、また持つことによって地方的な利益が中央に吸収される。御承知のように、過去において一番最初東北興業が出発いたしましたときに、東北地方だけで株を持とうというような動きもあったわけでございますが、そのこと自体が必ずしも東北振興を十分にしたわけではございません。そういう点から見まして、中央資金が要ることはむろんでございますが、それを個々資本家資金から出すよりも、今のような国家的な地方ワクを持った金融機関ができて、そういうものがやることも必要だ。今後そういう点につきましては、開銀ワクが大きくなっていくということとにらみ合わせながら、地方開発に対する個々金融機関が必要だろうという御議論その他からあわせて、将来はそういう問題を検討すべき時期もあるし、また検討する必要もあるんじゃないかということを私個人としては考えておるのでございますけれども政府としては、今の段階におきまして、開銀地方ワクをできるだけふやして、そして各地方の便宜に供していく、こういうことに方針はきまっておるわけでございます。
  13. 田中織之進

    田中(織)分科員 この点については、それぞれの地方開発法案議員提案で出しました私どもといたしましても、たとえば私ども社会党にいたしましても、党全体として意見をまとめたわけではございませんので、その点については、今長官お答えになった考え方基本にして、いずれ将来のことについては研究をしたいと思うわけであります。それにいたしましても、現在そういう意味地方のそれぞれの開発計画が最終的にきまらないと、過渡的段階として開銀を通じての貸し出しということになります。来年度の予算にあります開銀地方開発ワクの二百億、これは地域別に大体どの程度予定されているかということも、これは大蔵省関係だろうと思うのですが、伺ってみたいと思うのです。そういう点から見て、地方開発計画がどんどん進んで参りますと、長官もお認めになられると思うのでありますけれども、これだけの資金ワクではとうていその需要に応じられないではないかと考えるわけです。その意味で、開銀の設立された当初の使命と、新しくそういう地方開発計画資金をも供給するという面を兼ね備えていくことになれば、設立当初の趣旨から見れば多少目的外になるので、付随的な事業では地方開発計画で必要とする資金を十分まかなってもらうわけには参らないと思う。別個に地域的にこま切れ的なものを作るということには必ずしも賛成いたしませんけれども考えていただかなければならぬと思うのでありますが、そのように理解してよろしいですか。
  14. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん地方開発を促進するために、今の開銀の機能というものが、設立本来の趣旨からいって、地方開発を予定いたしておりますよりも、基幹産業を急速に建て直して、そうして日本産業開発一つの基礎を作ろうというのがおもなねらいであったと考えております。従って、今後地方開発という問題が出て参りますと、開銀自体がそういう方向に、ある程度基幹産業が確立したから大きく転換するということも一つの方法かと思います。がしかし、同時に、開銀自身がなお今後まだ日本基幹産業を充実させなければならぬ時期にあると思いますから、別個にそういう二百億が五百億になり、あるいはそれが千億になるというような大きな資金を動かすことになってくれば、絶えずそういう地方実情に即したような検討、研究をしているようなところ、しかもそういう機能というのは単に融資だけではだめなので、ある程度やはり事業育成のためには、最初資本参加というような形をとらなければならぬという感じもいたすのでありまして、私としては、これは私見でございますから、今政府がそういう方向にいくとは申し上げかねますけれども、そういうような感じで今後もこの問題は私自身考えていってみたい。なお、そういう点につきましては、現実にそういうことを扱っておられる大蔵省考えもございますから、十分それは検討しなければならぬ点ではございますけれども、そういうことが必要ではないかというふうに個人的には考えております。
  15. 田中織之進

    田中(織)分科員 その点は、地方開発法案議員提案で出しました私どもとしても、地域一本の開発主体を打ち立てる、それから金融機関地域ごとに設ける、そういう二本立でいくという考え方が基調になっていたことは事実でありますけれども現実の進行過程から見て検討すでき段階にきているのではないかと思うのであります。私どもとしても、やはり考えなければならぬ立場の問題でありますけれども、これから伺います東北開発等との関係で、この点についても一つ考えをいただきたいということをお願い申し上げまして、次の質問に移ることにいたします。  それでは、大蔵省の理財局の資金課長がお見えになったようでございますので、今経企長官に御質問を申し上げましたのでありますが開発銀行の三十七年度の資金計画で、地方開発関係として二百億でありますか、三十六年度より三十億増額された形になるわけであります。これは地方開発の三百億のワクが、さらに地域的に、たとえば九州関係四国関係中国北陸関係というような形で、一応予算を立てられるときに地域別一つの目標がきめられたのではないかと思うのでありますが、その点はいかがでしょうか。
  16. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 ただいま御質問の点は、二百億のワクが、積算の基礎があって、それぞれ地域別に金額が明らかじゃないかという御質問と思いますが、これは昨年もそうでございますが、事務的にわれわれが一応の事務当局案を作ります際には、多少のそういう地域別の面積なり、あるいは産業の状況なりを参考にしておりますが、全体のワクを作ります際、あるいは運営にあたりましては、地域別ワクはございません。
  17. 田中織之進

    田中(織)分科員 そういたしますと、先ほどからも経済企画庁の方へ御質問を申し上げたのでありますが、各地方からの資金需要というものは、とうてい二百億のワク内で処理し切れないくらいのものになるのではないかということが予想されるわけであります。そういう地方的に出て参りまするものの調整ですね、それは一体どこがやられるのですか。それは開銀におまかせになるのでありますか。それとも、大蔵省経済企画庁との間で各地域との関係考え調整をせられるのか。現実にはその点はどうなっていますか。
  18. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 これは開銀全体についてそうでございますが、経済企画庁が中心になりまして、われわれの方も御相談を受けまして、毎年度開発銀行の運営方針を作ります。これは閣議にかけるわけでございますが、その際には、地域別ではございませんでして、地域開発としてはどういう運営の仕方をするかということが一項目として入って参ります。それの、現実にどこへ幾らつけるかというのは、もっぱらこれは自主的な金融機関でございます開発銀行の審査によってやるわけでございます。
  19. 田中織之進

    田中(織)分科員 それは了解できます。そこで、最近特に四国開発等の関係から参りますと、現実にこの地方ワク貸し出しについて、本来なら開銀の本店関係と申しますか、本店ワクと申しますか、それぞれの産業関係でとれるものが地方開発ワクへ食い込んでくるというような実情がある。その点から見て、たとえば開銀地方開発貸し出しについて、たとえば資本金の額でいえば、最低一千万円以上の額でなければならぬ、あるいは五千万円ということも言われております。あるいは従業員は三百人以上だ、これはたとえば中小企業金融公庫との関係で、中小企業のカテゴリーとの関係で出て参るということも理解できないことはないのでありますが、そういう関係から見て、ほんとうはこの地方開発資金開発を進めたいというような小規模の計画ですね、比較的小規模の計画、そういうようなものがこの地方開発資金の恩典にあずかることができないというような貸し出しの実態になっているというように聞くのでありますが、その点は大蔵省の方としてはどのように見ておられるのですか。たとえば地方開発に、大企業等の関係で、本店なりあるいは市中銀行なり、あるいは興銀なり、そういうような関係でまかない得るものまで食い込まないというようなことについては、何らかの配慮をせらるべきだと思うのでありますが、その点はいかがでしょう。
  20. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 御指摘の通り、開銀地域開発として出ております資金の中に、地場のものでないもの、資本形態から言いまして中央資本であるもの、あるいは規模から言いまして相当大企業であるもの、こういうものが現実に相当な額入っているのは事実でございます。この点は、開銀にしても、ほかの公庫にしても、いろいろ問題はあると思いますが、なるべく地場の小さなもので、これから成長させる必要のあるものについて融資していくことが必要だと思いますが、現実には、いろいろな審査を通じまして、金融機関でございますので、金融ベースに乗らないものに貸すわけにも参りませんし、そういう点で、ある程度大きなものが入ってくる、あるいはある程度中央等の資本のものが入ってくる。こういう現実になっておりますが、われわれとしても、地域開発の本来の使命にかんがみまして、そういう地域の振興に役立つものにできるだけ重点が置かれるように今後も考えていきたいということでございます。
  21. 田中織之進

    田中(織)分科員 そういたしますと、私が今申し上げました貸し出しを受ける対象の資本金額というような関係で、たとえば中小企業金融公庫に行けばいいというような関係の一定の基準というもの、限度というもの、これは理解できますけれどもその点から見たら、たとえば資本金五千万円以上でなければならないというような貸出基準というものの設定はないと了解していいのですか、いかがですか。
  22. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 今開銀で貸しておりますのは、むしろ中小公庫となるべくぶつからないように、中小公庫の方は資本金一千万円以下、それから従業員三百人以下でございますが、それ以上のやつは開銀全体の対象にしております。従いまして、五千万とかなんとかという限度ではございませんで、一千万円以上でありまして、中小公庫等の対象にならないものは開銀の対象になり得るということでございます。
  23. 田中織之進

    田中(織)分科員 なお、北海道東北開発公庫との関係で伺いたい点があるのでありますが、その前に経企庁長官に伺いたい点があるので、開銀関係の点はその程度にとどめます。  次に、長官に伺いたいのでありますが、東北開発の主管が一応経済企画庁ということになっておるわけでありますが、現在衆議院の決算委員会において、過去の東北開発の経営あるいは経理の問題について問題になっておることは長官御存じだろうと思います。承るところによりますと、経済企画庁からも、開発会社に対しまして、これは昨年会計検査院から特に三十五年度の決算についての摘発を受けてからのように伺うのでありますが、幾つかの質問条項が発せられておるということでありますが、それに対して会社側から回答があったものかどうか、この問題について長官として、目下事件が進中行の問題でありますけれども、どのようにお考えになっておるか、伺いたいと思います。
  24. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知の通り、東北開発株式会社の三十五年度の決算というものは、必ずしも適当であるとわれわれは考えておりません。従いまして、これを適当に直して参りますことはこの際必要なことだと思うのでございまして、決算委員長の方からも経企庁にお話がございましたので、そういうことについて十分会社側に対して回答するように申しつけたわけでございますが、すでに回答済みでございます。
  25. 田中織之進

    田中(織)分科員 そういたしますと、特に決算委員長が本年の二月の五日でございますか、決算委員会において、委員長としてはこれは異例の報告だと私は思うのでありますが、報告しております。それに対しまして会計検査院が、若干の問題を除いたほか、委員長の報告は会計検査院も同一見解だ、こういうことが表明された。今決算委員会審議中でありますから、その内容の問題についてはあまり立ち至って私伺う考えはないのでありますけれども、特に三十五年度の決算において、硬化セメントの損失を計上いたしまするならば三億数千万円の赤字になることが明らかに看取せられるにもかかわらず、セメントのから売り、あるいは秋田木材への土地の売却を、決算じりに合わせるために、実際には五月十日であったものが三月三十一日にさかのぼって契約ができたような契約書を取りかわした。こういうような事実に基づいて、売却利益というものを仮装なものを計上したことで、この決算が虚偽である、不適当であるとかいうことがいろいろ言われておるのでありますが、この問題については、長官としてはどのようにお考えになっておるのですか。
  26. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ちょうど昨年七月の末でございますが、私が前経企庁長官から事務の引き継ぎを受けまして、その際、今日問題にされているような内容があるという事実は必ずしも正確に引き継ぎを受けておりませんけれども、ただ前企画庁長官にいたしましても、東北開発会社の運営その他について非常に心配をされておりまして、そうしてこの際むしろ民間会社運営の実力ある人を中心にして、会社全体の経営を刷新することが必要であるということを自分は思うから、そういう方針を立ててきているのだという引き継ぎを受けたわけでございます。八月一日に差し迫っておる問題でございますので、私といたしましては前企画庁長官のその方針を踏襲いたしまして、この種の会社がどういう状態にあるかということを詳しい内容までそのとき調べ上げるわけに参りませんでしたけれども、幸いにして新総裁に有力な財界の経験を持った、しかも剛直な方を得たわけでございますから、その方の会社に対する調査あるいは長期的な問題の御意見を待ったわけでございます。私は当時、もし何らかの経理上いろいろ問題があるとすれば、この際新総裁が更送されたことでもあるし、信頼さるべき新総裁でありますから、会社内容その他について適正な手段をとられることが一番適当であるということを申し上げて、新総裁もむろんそういう方針でなければ自分はやれないということで就任をいただいたわけでございます。従って、その後新総裁としては、そういう方針のもとに経理全体あるはい会社の運営、組織等について改革を加えられておるのでございまして、私どもは新総裁を信頼して、その率直な仕事ぶりというものに信頼をかけてただいまおるわけでございます。
  27. 田中織之進

    田中(織)分科員 その点具体的に伺いたいと思うのですが、私も、持ち時間の関係もありますので、できるだけ簡略に伺いますが、決算委員会開発会社の山中副総裁を参考人として呼ばれたのを速記録等で拝見をいたしますと、たとえば三十五年度の決算で一番問題になりました秋田木材への会社が造成した土地の売却の問題でありますけれども、三月三十一日現在、口頭で契約は進んでおった、それは実際には五月十日ということだけれども、話が進んでおったので、それだけの売却益が出るものだとして決算に計上したのだ。しかし、それは期間計算が誤っていたという点があるので、三十六年度の決算でそれが解約になった。裏契約があって解約になったということなんですけれども、解約になったのだから三十六年度の決算で訂正すればいいのだ、こういうような考え方の上に立っておられると思うのですが、もしそういうような考え方であるとするならば、決算委員会の速記録によって承知したところによると、三十六年度の赤字は、繰り越しを入れますと十二、三億になるというような膨大なものが予想されるときに、そういう不確定要素というか、そういうものが決算の中に出てくるというようなことになれば、ちょうど国会でも問題になった、検察庁の手も入っている、そういう機会だから、それだけ多額の赤字を計上しておいたらいいのだ、こういう安易な形で——伊藤新総裁は、私も経歴もよく知っておりますし、この間からの国会に出られた態度等も伺っておりますので、この際、過去のうみはできるだけ徹底的に出して、その意味で再建のために積極的にやりなさいという激励を受けている立場ですけれども、それにしても私は問題があると思うのです。ことに、調べてみますと、これは決算委員長の指摘にもあるのでありますけれども、現在の副総裁の山中さんが当時監事であった。長官は、今、伊藤さん以下役員が更迭されたと言うけれども、監事として中村さんが残っておるし、山中さんが副総裁として、今度は理事者の側で来ているのですね。ところが、三十五年度の決算でやった秋木への土地のから売りというのですか、裏契約を含んだ手付金をもらうだけの契約と同じようなことが、三十四年度の決算においても、日本ゼオンという会社に対してやられている。これが年度を越えるとまた解約になった。それが三十四年、三十五年と二年も続いておるというところに、私は、どうも速記録を見て、当時の監事であった現山中副総裁の国会における答弁もまだ釈然としないものがあるわけなんです。しかも、決算委員長の報告にも出ておるのでありますけれども、毎期の決算に、多いときには五億以上もいわゆる受け取り手形の関係が出てくる。とにかく、そういう決算面における手形勘定が、受け取り、支払いともに逐年相当巨額に上っておる。しかも、三十四年度の決算のごときは、そういう意味日本ゼオンから手付金として受け取った六千万円の手形を直ちに利益だとして計上しておる。こういうようなことが、三十五年度にたまたま出てきたということではなくて、三十四年、三十五年と二年間にわたって出てきたということになると、尋常一様の手段ではこの東北開発の経理の刷新なり立て直しができないように考えられる。ことに、三十六年度は、副総裁も言われておるように、十億からの赤字が予想せられる。そういう経理の段階でこの予算の中には産投特別会計から五億の出資をされる。昨年は一億でしたが、ことしは五億になったように数字を拝見したのでありますが、そういう点から見ると、国民は、少なくとも予算審議の間に政府としてもこれは徹底的に明確にするのだという方針を示さない限りは、こういう十数億からの赤字を持っておる会社にさらに血税の中から五億という出資をやることを承認しないのではないか。そういう観点から見て、この決算のやり方については直接的にやはり監督官庁としてもっと手を打たなければならぬ段階ではないかと思うのでありますが、この点に対する長官のお考えを伺いたい。
  28. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 企画庁としまして、東北開発に対する監督をいたしておる立場から言いまして、こういう事態が起こって参りますと、必ずしも過去の監督が十分であったということを申し上げかねるのはまことに遺憾でございます。しかし、今回こういうふうな新総裁も得て、会社全体に対して新たな刷新を加えていくということになりまして、経理も適正にこれを運用していくという建前をとって参ります以上は、過去の赤字をやはり将来は消して参らなければならぬのは当然でございます。また、新たに東北会社が持っております使命を十分遂行させて参らなければ、赤字をかかえたままで東北会社の使命を遂行するわけにも参りません。また、赤字を埋めるにしましても、新資金を補給いたしまして、活発な事業を適正に行ない、その赤字を解消して参りますことが、国民の税金から出資されたものを将来安全にいたして参るゆえんでもあり、また、東北会社の将来の開発目的を達するゆえんでもあろうと思いまして、私どもといたしましては大蔵省にも特に出資をお願いしたようなわけなのでございます。  むろん、今回の人事の場合に、山中副総裁が過去監事であったからという点がいろいろ問題になっておるのでございますが、山中副総裁としても監事の時代に十分な御審議があったと思うのでありまして、副総裁自身が全力を尽くされたと思っております。また、同時に、過去の経緯等につきまして、新総裁としては、十分過去のいきさつも知る必要もあり、また、過去の社内の事情の大勢等から見ても、だれが自分を補佐するに適当な人であるかを考えられたのでございまして、これもまた必ずしも不適当であったとは思いません。ただ、しかし、こういうような事態が起こって参りますと、何かその点について若干の遺憾の点はございますが、御承知の通り、取締役会から出ますこういう問題につきまして、監事が普通の場合においてなかなか十分な監査をしにくい場合があるわけでございまして、そういう点は、副総裁が怠慢であったということだけではないように私ども考えるのでございます。そういう意味からして、副総裁としては、今後の会社刷新に対して、過去のいきさつから見ても、総裁を助けて十分な努力をされると思いますので、それに期待をすることが適当であろうか、こういうふうに考えておるのでございます。
  29. 田中織之進

    田中(織)分科員 私の持ち時間がだんだんなくなって、はなはだ済まないのでありますが、あと二、三点重要な点を伺っておきたいのであります。  三十六年度の決算予想では、大体十億の赤字が予想せられるということでございます。しかも、その内訳といたしまして、決算委員会で述べられた点から見ますると、不良セメントの処分損、これが一億二千万円、それから、先ほどから申し上げておる秋木への土地売却の関係の差し戻しという関係から来る損失二億七千万円、合計四億程度のものは内容を述べられておるのでありますが、あと六億くいのものがどの部分から出てくるものかということが明確でありませんので、この点は事務当局からでもけっこうですから、お示しをいただきたい。
  30. 曾田忠

    ○曾田政府委員 十億一二千九百万円の赤字を三十六年度見込まれておるわけでありますが、その内訳といたしまして、秋田木材の契約解除によります損失が二億七千七百万円、硬化セメントが一億二千二百万円、それ以外に、セメントの販売によりまする損が四億五千二百万円、それから、ハード・ボード工場が一億一千万円、その他七千五百万円であります。  セメント工場につきましては、三十五年度末から相当市況が軟化いたしまして、引き続き三十六年度に入りましても軟化を続けてきまして、相当大幅な、四億五千二百万円という赤字になったわけであります。それ以外に、もう一つセメントの問題といたしましては、実はこの販売先が、関東と東北の大体の比率を申し上げますと、現状は、関東が大体六くらいで、東北が四くらいな割合になっておりまして、運賃その他の関係で、非常に関東方面の比率が多いために、そういう運賃方面の赤字が出てきたということでありまして、この点は、われわれといたしましても、今後できるだけ東北地方の方に重点を置いて販売を進めていきたいと考えております。  なお、ハード・ボード工場につきましては、実は三十六年度から新規操業をいたしたのでありますが、これも、実は工場の適正規模等の問題もございますし、あるいは端尺等の関係で、新設早々の工場でもあるために、こういう一億一千万円という赤字を生じたのであります。  今後とも十分注意をして参りたいと存じます。
  31. 田中織之進

    田中(織)分科員 今十億の内容を概略説明になられたわけでありますけれども、セメント関係の問題については決算委員会でも非常に詳細に追及されておるように、これはやはり、先ほど藤山長官も述べられたように、このセメント工場に手を出すというときには、既存のセメント業界からは猛烈な反対があって、しかし、それにも、品質のいいものを安いコストで出せるということだったけれども、現在ほかの既存のセメント会社のコストに比べればはるかにコスト高になっているというような点にも、こういうものへ手をつけたというところに根本的な問題があろうかと思うのですけれども、いずれにしても、こういうような内容のところへ、先ほどおっしゃったように、その赤字について、つぶれたならつぶれたままにほうっておくわけにもいかないので、大蔵省にも頼んで五億またことしも出してもらうことになったのだ、わかりやすく言えば長官はそういう御答弁なんですけれども、これは、どうしても、この赤字の責任についてもっとやはり行政官庁として責任をとらせない限りは、あるいはまたその意味において監督官庁としても責任を明らかにしなければ、国民が納得しないと私は思うのです。  それから、伺いますが、三十二年には二億八百万円、それから三十四年には九億円、三十五年度二億円と予算の繰り越しがございますが、この点はどういう関係からこういう事態が出ておるのでしょうか。もちろん、事業計画というものが主務官庁に申請をしてなかなか許可がおりない、その意味において、たとえば工場建設をするというような場合に土地の買収というようなものが予定通りいかないので、勢い予算が年度内に消化できないということから出てきた繰り越しの問題だと思うのでありますが、そういう点から見れば、たとえば土地造成の関係で三十六年度の予算においても七億ですか、あるいは砂鉄の関係では十七億というような膨大な資金許可が一応企画庁からおりているのですね。それが現在どのように進行しているかということとも関連して、これはそれぞれ黒字を出した年というわけにもいかないと思うのですけれども予算の繰り越しが三十二年度二億八百万円、三十四年度九億円、三十五年度三億円というような形で出てきておるのでありますが、この点は企画庁としてはどういうように見られておるのでありますか。
  32. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 こまかい点は事務当局から御説明申し上げますけれども、総括的に申し上げますれば、この種の事業会社が年度内に一定の資金を消化するということは、事業会社自体の運営の上からいきますと相当困難ではないか。政府が公共事業その他をやりますのと若干違った立場がある。従って、必ずしもその年度内にそれが十分消化されないこと自体が悪いというわけではないと思いますが、しかしながら、せっかく計画を立てましたことでございますから、その計画が十分年度内に遂行されていくように諸般の準備を事前にいたしまして、そうして、たとえば機械の発注である、敷地の選定である、あるいは販売の計画であるとかというものが十分慎重に検討されて、そして、それらの資金が年度内に必要であるから計上したのですから、それが使われていくということが事業がすみやかに進行するゆえんだと思うのでありまして、若干そういう点について政府の公共事業の実施と同じようには言えませんので、そういう点を考えてあげなければなりませんが、しかし、そうした計画が若干どうもずさんであったと申しますか、あるいは運用面において正確を欠いたというような点は過去においてもあったように存じております。
  33. 田中織之進

    田中(織)分科員 その点に関連してもう一点伺いますが、そういたしますと、三十六年度の会社計画の中にありまする砂鉄事業関係の十七億、土地造成の関係の七億というような予算は、もう年度末も近づいてきておるのですけれども、現在までのこの予算の消化状況はどういう段階へ進んでおるのですか。本年は赤字はございましょうけれども、先ほど計画局長から聞いたのでありますけれども、砂鉄等については、たとえば製錬所の建設だとかいうようなものが現実に進行しておるのかどうか。十七億という膨大な予算を持ったわけでありますけれども、これはやはり当然来年度への繰り越しが予想せられるのですが、その点はいかがですか。どの程度繰り越しが予想せられるのか。
  34. 曾田忠

    ○曾田政府委員 お答えいたします。三十六年度の事業といたしまして、一番大きな事業項目に上がっておりますのは、砂鉄の十七億円と、それから土地の造成の七億円というのが非常な大きな事業になっております。砂鉄につきましては、数年前から鉱区の買収ということに重点を置いて参りまして、三十六年度におきましては一部工場の建設あるいは機械の発注ということで予算を計上していただいたわけでござますけれども、将来の東北会社事業といたしましては非常に大きな事業でございまして、たとえば鉱区の問題にいたしましても、あるいは大体予定といたしましては青森県のむつ市を考えたわけでございますが、そういうところの土地の問題、あるいはまた、特に新しく動力線を引くわけでございますが、それの費用がどの程度かかるかというような、非常な根本問題を慎重に検討しなければ企業の許可はわれわれといたしましてもできかねる状況でございまして、会社の方に鋭意そういう基本的な問題につきまして具体策の提出を求めておるわけでございますが、なかなかわれわれといたしましても、なお慎重な検討を要しまする問題が残っておりますので、現在のところ事業計画の認可もいたしておりませず、おおむねほとんどのものが繰り越しになるのではないかというふうに考えております。今後の会社の経営に非常に重大な問題を及ぼす事業でございますので、われわれといたしましても十分慎重な態度で実は臨んでおるわけであります。  それから、土地の造成事業の七億円といいますものは、これは宮城県の土地の造成の問題でございますが、これも、実は、いわゆる石油基地といたしまして非常に適当な地域でございまして、当時ある企業がその方面に進出するという予定のもとにこういう大きな造成費を計上したわけでございまが、その後、資金等のいろいろな問題がございまして、残念ながらその企業の進出が当分の間見込めないというような関係がわかりましたので、一応事業を中止するというような関係で、この七億円もほとんど使わずにおるというような状況になっておりまして、まことに申しわけないと思っております。
  35. 田中織之進

    田中(織)分科員 御答弁を伺いておりますと、砂鉄関係の十七億にいたしましても、土地造成の関係の七億にいたしましても、相当部分がやはり繰り越しをせざるを得ないだろうという、こういうことのようでありますが、特に、青森地方にある砂鉄の製錬によって地方開発が推進されるということから、今の日本の鉄鋼生産の現状から見て、東北開発が砂鉄事業とどこまで積極的に取り組まなければならぬかという点についても、これは経済企画庁の立場においても私は考えなければならぬ問題ではないかと思う。幸いにというか、不幸にというか、予算を十七億も計上したものが大部分を繰り越しをしなければならぬというような時期にこそ、そういう点から考えるべき問題ではないか。これは防衛庁の関係もそうでありますけれども、そういう繰り越しだとかいうような形で、昔の臨軍費のような形で、長い目で見れば一種のどんぶり勘定みたいな形の予算の立て方、使い方をやること自体が、私は、やはりむだが出てくる、問題が起こる原因ではないか、このように考えるのです。この点は一つ充分お考えをいただきたい。  最後に、長官は、この東北開発促進のために、開発会社金融公庫、それに東北六県の県当局、こういうものが一体になって開発促進協議会とかいうものを作られておることを御存じかどうか。われわれの聞くところによると、この開発促進協議会というものが、今は政党内閣でありますから当然のことだろうと思いますが、与党の東北開発特別委員会と緊密な連絡をとって、ある人は、与党の東北開発特別委員会の事務同等におる職員等はこの推進協議会からの金でまかなっていると言う。自民党ともあろう大政党が、そんなことではなくして、党の政調の中にある特別委員会でありますから、党費でまかなっておられることだと私は信じますけれども、事実はそういうことが言われる。与党の中の特別委員会で、いろいろの開発計画というようなものが会社に参考的な意見として出されることも、私は現在の政党政治の建前からしてある程度は当然のことだろうと思うのですけれども、まるきりそういう形で出てくるところに——今度の伊藤総裁以下のなにについては、まだそれが自民党の中のどういう派閥につながっているというようなことは言われませんけれども長官もお聞きの通り、前の渡邊総裁はたとえば岸系であるとか、前の副総裁の加藤さんは何々系だとかいうような形で、そういうところに今度東北開発で汚職事件というか、不明朗な問題が出てくると、これは当然そういうものとのつながりで世間は見ると思うのです。その点から見て、これは与党の自民党の名誉のためにも私は明確にされなければならない問題だと思う。その意味から見て、私は、与党から出ている決算委員長が異常な決意で、異例の委員長報告の形で会社の問題を国会の問題にしたという英断に敬意を表するものでありますけれども、私が最後に伺いたいのは、東北開発促進協議会というものに会社は相当の金を出しているということも伺っているのでありますが、その点はいかがかということであります。
  36. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 東北開発会社会社運営と地方開発のことをやるわけですから、おそらく各省庁等と密接な連絡をとりながら協議をいたして、運営につき意見を聞くことは当然のことだと思います。ただ、それが必要以上な経費を使って暗い面があるというようなことは許さるべきことではないのでありまして、われわれといたしましても、伊藤総裁に十分そのことを、もしそういうことがあれば改善していただくように申し上げますし、また、伊藤総裁も、その総裁就任の御決意から見れば、そういうことはないと私は信じております。
  37. 赤澤正道

  38. 足鹿覺

    足鹿分科員 最初に経企庁長官に二、三伺いたいのでありますが、私は主として総合開発関係地域開発との関連についていろいろと伺いたいのであります。  最近厚生省の発表しました生活調査によりますと、地域ブロック別の支出格差がだんだん拡大しつつある事実を発表いたしておりますが、南関東の場合は一戸当たりの月間の支出が三万九十七円、これに対するに南九州の場合は一万六千百三十円、山陰の場合はこれに次いで一万六千七百四十円というふうに、大きく開きが拡大していることを示しているのであります。産業間の格差あるいは階層間の格差等、ずいぶん論じられ、その格差の解消のためにいろいろな施策がそれぞれの立場から講ぜられているのでありますが、事実は支出格差の面にまでもこういう大きな開きとなって現われているということは、従来の総合開発計画あるいは地域開発計画というものが、資料によりますとある程度進捗率を示しているわけでありますが、実効としては目に見えたものが見えないということをこの数字は物語っているのではないかと思うのであります。その点について具体的に申し上げますと、経企庁のお調べによります特定地域総合開発事業の進捗状況、それを見ますと、いずれの地域も相当程度進んでいるようで、たとえば大山・出雲の地区の場合を見ましても、進捗度は九七・五ということになっております。これは行政経費の積み重ねたものでこういう数字が出ていることは御存じの通り。概して、二十五の特定地域総合開発事業というものは、数字の上では進んでおりますが、具体的にはあまり成果があがっておらない。いわゆる予算の特別ワクがないということに基因していると思うのであります。また、最近、ただいまも田中分科員から触れられました地域総合開発法が次々と成立をしている。これによってある程度の成果が期待され、地方住民もその立法制定にあたっては非常な期待を持っておるにもかかわらず、三十七年度の予算にもその特別の施策の裏づけとなる予算が計上されておらぬということは、まことに遺憾にたえないところであります。いずれ、限られた予算でありますから、すべてに直ちに効果が現われるとは私ども考えません。しかしながら、少なくとも池田内閣の大きな施策といわれておる公共事業、特に道路整備五カ年計画等の点から考えてみましても、それらの面にはいま一段の、低開発地域については実効があがるような対策が重点的にとられなければならぬのではないかと思う。  今建設省の道路統計年報の一九六一年のを見ますと、一級国道の場合、全国平均が五七・六%に対しまして、鳥取県の場合は三六・二%という程度で、二級国道につきましては、大体全国平均が一ただいま述べておりますのは改良済みあるいは延長の問題ですが、三六・一に対して三三・六。地方重要道あるいは市町村道に至りますとぐっと率が落ちまして、市町村道においては全国平均が七・二に対して四%舗装の面に見ますと、もう全く問題にならない低率のものであります。こういう一つの事例を見ましても、要するに、今の経済企画庁の性格が総合調整機構にすぎないのであって、各省の予算を寄せ集めるというだけのことにとどまっておることが、こういう総合的な効果をあげ得ない一つの原因にも考えられるわけであります。  特に、特定地域の問題にしましても、閣議決定によってきめられた事業費というものは数年前のものであります。その後物価が上がったり労賃が上がったりという事情を考えてみますと、それ自体に実はもう手直しの必要が生じておるにもかかわらず、それは全然手直しもされておらぬ。いわんや、今私が指摘したような一般行政費の積み重ねでもって進捗率を示すというようなことでは、これは全く絵に書いたもちに終わりはしないか。次々とまた産業都市圏の計画立法化されあるいは低開発地域の工業化促進の立法が進められる。全く入り乱れて、総合調整どころか、ますます乱調子になり、しかも、その結果は、最もおくれておる地帯には手が伸びないで、だんだんそれらが阻害されていくような事実上の結果を生んでおるということは捨て置きがたい重要な問題だと思う。  この点について、三十七年度において、基本的なこれらの問題をいかに調整し、重点的に低開発地域を中心にし、そして特定地域あるいは総合地域開発、それと全国総合開発との関係をいかに調整をし、重点的に進められようとしておりますか。この矛盾は長官もお気づきだろうと思う。私は先年来この点をしばしば歴代の長官に申し上げ、また、その決意も伺っておりますけれども、一向是正されない。これは一体どこに理由があるのか。このような事態は放任できない重大な問題だと思う。その点について御所見を承りたい。
  39. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 地方開発の問題は、私の承知しておる範囲内では、少なくもここ数年来非常に大きくクローズ・アップされ、また、クローズ・アップされるだけの理由があったからそういうふうになってきたと思います。また、所得倍増計画等を実行して参りますのに、あるいは総合国力を発揮する上におきましても地方開発が重要だということで、それぞれ各地域におきます開発計画立法等も国会でも御審議になり、成立いたしておるようなわけで、次第にそれが力をつけてくるということになったと思います。  そこで、今回も、御承知のように、低開発地域におきます開発促進の法律もできましたし、また、新産業都市の問題も今後御審議を願うことになるわけでございますが、たとえば低開発地域開発を促進すると称しましても、それだけで部分的には必ずしも促進されるわけではない。やはり、国土総合開発計画の中において一つの力をつけてもらわなければならぬ。また、低開発地域開発するということのためには、その拠点になるような産業都市というものがある程度できて参りませんと、飛び離れて低開発地域だけをとりましても、必ずしもそこに産業が移動する、あるいはその地方の経済状況が改善するというわけにもいかぬわけでありまして、これらの法律がそろって、そうして調整をとりながら運営されていくところにほんとうの力が発揮されてくるということに相なろうと思うのでございます。むろん、経済企画庁としては企画自身を立てましても、実施面においてはそれぞれ各実施官庁にそれを推進していただくことにしておりますので、その間について十分な調整もはかり、また、十分な推進をして参らねばならぬのでありますから、そういう面についてわれわれも今後努力をして参ろうと思います。そういうことによって地方開発全体を進めて参るのが必要であろうと思う。  そこで、低開発地域の方に対して、あるいは地方開発に対して若干国費の配分その他が十分でないじゃないかという御意見もあるわけでありますし、また、事実必ずしもそうでない場合もあるわけであります。今日のような経済が急激に膨張いたして参りますときには、既開発地域においてすでに相当な改善をしなければならぬ状態が急速に差し迫っておる場合もあるわけでありまして、それらのものを放置しておくわけにも参りませんので、おのずから、予算その他の上におきましても、それぞれにらみ合わせて総合的に考えて参らなければならぬので、決して低開発地域あるいは地方開発に対してないがしろにいたしておるわけではございませんが、そういう事情から、若干力の入れ方が足りないような、あるいは既開発地域に対する力が入れ過ぎるという当面もあろうかと思いますが、それらの面が漸次訂正されて参りますれば、おのずから地方開発の方に重点が移っていくということになろうかと存じております。
  40. 足鹿覺

    足鹿分科員 全国総合開発検討されておるやに聞いておりますが、いつそれは完成をし、御発表になりますか。また、先ほど私が指摘いたしました特定地域の問題にしましても、前の閣議決定は、賃金、物価の点等で現在にはとうていそのまま適用できない、もしそのまま継続するとするならば、それだけ事業効果が減殺され、事業分量が従って減る、こういうことにならざるを得ないと思うのですが、これを経企庁長官が中心となって是正をされる御用意がありますか。また、全国総合開発計画は、どのような構想で現在進められておるか。その決定の時期、構想の大要という点がありましたらお話しを願いたい。
  41. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 大体国土開発総合計画草案が昨年七月できまして、そして、大きな問題でございますから、ただいま世論の御意見を聞いておるわけでございます。三月末までにそれを聞きまして、四月早々にそれらの意見を取り入れて最終的な案を決定することにいたしておるわけでございまして、それに伴いまして、今後計画案全体を閣議において再検討するということになろうと思います。
  42. 曾田忠

    ○會田政府委員 お答えいたします。  特定地域の問題でございますが、これは、先生も御承知のように、国土総合開発法に基づきまして策定されまして、古いのは二十八年度からの継続になっております。従いまして、必ずしも進捗率だけで事業の効果があがったかどうかということは言えないと思っております。私ども、今後この特定地域計画につきましてどういう取り扱いをすべきであるかということを実は検討しておるわけであります。と申しますのは、特定地域は、要するに、終戦直後のいわゆる食糧難とか電力事情あるいは国土保全、そういう問題が重点になりまして、その内容にはそういう事業計画が多いと思っておりますが、その後の経済の発展の状況等から考えますと、特定地域計画も今までのような内容でいいかどうかということが、まず第一に検討すべき問題だと考えているわけでございます。また、もう一つは、国土総合開発法ができまして以来、御承知のように、各地域にそれぞれ特別な開発促進法が制定されまして、それに基づきます促進計画が策定されるという段階になっておりますことを考えますと、この特定地域と各地方促進計画との関係もどう考えたらいいかという問題がございまして、実は、そういう問題を考えまして、今後の特定地域のあり方というものにつきまして慎重に検討して参りたいということでございます。あるいは、一応特定地域開発計画の大部分の目標を達したというようなものにつきましては、ある特定の時期にやめたらどうかという議論も出ておりますけれども、これは各特定地域のそれぞれの特殊事情がございますので、今後十分検討を続けて参りたいと考えている次第でございます。
  43. 足鹿覺

    足鹿分科員 長官も今お聞きのような御方針を総合計画局長が示されましたが、近く公表される全国総合開発計画というものと特定地域との関係、あるいは一昨年来次々と成立しました東北九州四国和歌山中国北陸、こういった一連の地域開発法、これらとの関係というものが少なくとも明確になり、既存のものとの調整がもっと効率的に、そして重点的に全国総合開発との関係において解決をされ、新しい段階に備えての具体的な施策の裏づけがなされない限り、計画計画として終わってしまうのではないか、かように思っております。  一つの事例を申し上げますと、先般成立いたしました中国地方開発促進法に基づく促進計画企画庁の第一次計画を見て、私どもびっくりしたわけであります。いろいろな計画がありますが、開発の目標としまして、昭和四十五年度に中国地方の一人当たり所得を平均四十六万円に置いておる。ところが、裏日本、つまり、日本海沿岸の工業化のおくれた、また将来もなかなか困難な地域においては、第一次産業が大部分を占めておりますが、この第一次産業の一人当たりの所得はわずか二十万円を見ておるにすぎない。このようなことで、所得の均衡、その内容としての階層問の格差の是正やあるいは産業間の格差の是正、地域間格差の是正、先ほど冒頭に申し上げました支出格差の是正などは、およそ及びもつかぬではありませんか。これは、おそらく、鳥取県の議会あたりも、超党派でもって、このようなもので地域開発裏づけをするようなことではもってのほかだ、いわゆる地方住民を欺くと言うと語弊がありますが、看板だけで愚弄するのじゃないかというので、非常な憤りをもって政府にその改定、修正を要望した事実も私聞いておるのであります。  このようなことが、幾たび指摘をしても一つも是正をされない。そして、ここの論議は論議としてそのまま通り過ぎて、何らの具体的な施策の転換も計画の改定も行なわれない。こういうことでは、国政の停滞の面から言いましても、国会審議というものに対する政府の態度としましても、われわれまことに遺憾にたえない。のみならず、この法そのものの効果を疑わしめ、法に対する信頼、つまり、国に対する、政治に対する信頼感が薄くなることがあっても、高まることはないのじゃないかと私は思うのです。今度の発表されんとしておりますこの総合開発計画と、地域開発、特別地域との関係、そういったものをまだ伺う段階ではありませんが、基本的には、これらの現に進めつつある地域開発等の誤まった計画をどう是正していかれようとしておるのか、長官としてのはっきりとした御所信をこの際委員会を通じて明らかにしてもらいたいと思います。
  44. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 地域開発の問題を取り上げます場合に、それぞれの地域発展段階が非常に違っておるわけでございます。また、違っておるからこそ、地域開発というものが非常に大きく叫ばれるのであります。従って、現状の基礎の上からいろいろ数字を持って参りますと、急速に非常に大きな数字を目標にすることは無理な場合があるわけでありまして、ある程度はそういう見地から若干やむを得ない点があろうかと思います。ただ、地域開発法の問題を全国開発計画と合わせながら、そして、単にその地域開発をやるというばかりでなく、その地域と他地域との関連において十分な考慮が払われませんと、その地域内の発展も必ずしも期し得られないという点も多分にあるわけでありまして、そういう意味から申しますと、私どもとしては、地域開発のそれぞれの審議会等がございますけれども、これらの地域審議会方々に集まっていただいて、そうして、お話し合いをして調整していただく、また、意見も統一していただくというようなことが必要な場合があるのではないかと思うのでございます。  ただいま鳥取、島根等のお話が出ましたが、先般も、四国に岡山から陸路、橋と申しますか、そういうようなことで連絡するということについて、そのことは、単に表の中国四国との問題じゃなくて、鳥取、島根の方にもそれが非常な好影響を与えるということで、鳥取、島根の方が大挙して私のところへおいでになりまして、裏日本においてもそういうことを促進してもらいたい、それが裏日本開発の非常に重要な一つのあれになるというお話も承ったわけであります。そういうことを考えて参りますと、やはり、四国開発と裏日本開発とがおのずから一体になり得る場面もあるわけでございまして、そういうような点も考慮して参らなければならぬとしますと、地域開発のそれぞれの審議会がそれぞれの意見を出しますよりも、ある場合には、御一緒になりまして、そうしていろいろな面について御協議にもなって、そうして総合開発の中にそういうものが打ち出されていくことも必要じゃないか、こう思うのでありまして、その点心ついては今後とも十分総合開発の場合にわれわれとしては留意もいたして参りますし、また、そういうような総合開発計画委員会等におきましても、地域的な部会と申しますか、そういうものが総合されて意見が出て参りますようにすることも何か考えていくことが必要ではないか、こういうふうに存じております。
  45. 足鹿覺

    足鹿分科員 この問題であまり時間をとりますと、ほかにまだ私申し上げたいことがありますので、もう一点だけ経企庁に伺いまして、次へ移ります。  先ほども申し上げましたように、また、今長官の御答弁にもありましたように、やはり地域を結ぶ動脈的な道路ということに帰するように思うのですが、もちろんけっこうであります。しかし、この産業基盤として道路が重要であるということ、また、後進地域と先進経済圏とを結ぶ、あるいは、私ども地方で言えば山陽と山陰を結ぶ、さらに四国を結ぶ、四国をさらに九州へ結ぶといったことは、私どもはその意義を認めることに決してやぶさかのものではございませんが、大体、道路に対する考え方が、道路は受益者負担でやるものだ、こういった考え方がいまだに残っておる。従って、負担能力のない地域というものは、いかに必要度が高くてもだんだん取り残される、こういう結果になっておると思うのです。やはり、道路は大きな公共施設でもあり、言いかえるならば大きな社会資本一つとも言える。そういう面から、一般財源をもっと大幅に投入していく、こういう考え方に切りかえていかない限り、地方住民なりその自治体というものは、受益者負担の問題が伴う限り、なかなかこの問題を処理することは困難だと思うわけであります。  先ほど私は一つの事例を申し上げましたが、念のために長官に申し上げておきますことは、一級国道の場合でも、改良率が、全国平均五四・九%に対して、島根の場合は九・九なんです。舗装率について見ますと、四〇・二が全国平均に対して、二一・四。二級国道になりますと、改良率が三三・九に対して一六・四です。舗装率が一六に対して六・六。それが、国の重要道、重要地方道、都道府県道あるいは市町村道になりますと、たとえば市町村道の例をとりますと、改良率が、全国平均の六・八一に対して、島根の場合は二・一なんです。舗装率に至りますと、全国平均が一・二に対して、〇・三なんですね。こういう全国平均の何分の一にも足りないというような大きな開きというものをごらんになれば、これは、先ほど述べたようないわゆる社会資本をもっと充実していく、一部受益者負担の考え方を是正していくという一つ考え方に変えていかない限り、いつまでたっても、この開きというものは、一方において進むが、一方においてはこれが伴わない限りますます拡大していくのではないか。そのことは、低開発地域がいつまでも低開発地域として取り残される結果になりはしないか。これは機会を得て建設大臣にも十分申し上げたいと思いますが、特にそういう点を一つ十分お考えにならなければならぬと思うのであります。これは建設省所管で、具体的にこの点についてどうこうと御答弁を承る必要もないように思いますが、そういった点から、いわゆる低開発地域と目されるところについては、やはり、第一次産業というものに対して、いかに食糧が国際的に飽和状態に達した、また政府が選択的拡大政策を持ったというものの、いわゆる一次産業によらざれば他に依存することのできない地域に対して、もっと認識を新たにした一つ考え方なり施策声打ち出さない限り、問題は解決しないのではないか。いたずらに新しきを追って、いわゆる工業化さえ進めばそれで万事所得格差も解消する、地域格差も是正されるというような、一つのムード的な、ムードに酔うたような宣伝が行なわれ、考え方が横行することは、大いに反省を要する点ではないか、そうして、第一次産業を軽視するということは、非常に重大な誤りを犯しつつあるのではないかということを一指摘して、この点について特に長官の御所見があれば承りたい。  なお、先ほど、述べました中国地方開発促進法に基づく計画第一次案を経企庁がお立てになったその責任者として、総合開発局長はいかように是正されようとしておりますか。全く驚き入った案を示されて、一次案だからこれからやるのだとはいうものの、相当の日子をかけてあなた方も検討されたであろうが、中国地方の四十五年度における総平均が一人当たりの所得を四十六万円と定めておきながら、第一次産業の一人当たりの所得を二十万円と見るようなことでは、これは全く地域開発の名に値しない中身ではありませんか。すでに目標においてあやまちを犯しておる。そういう認識と対策では、地域開発法などというようなものは全く絵にかいたもちに終わり、何らの地方住民に希望と期待を与えないのみならず、むしろその期待を裏切るような事実ではないか。  この二点を長官なり開発局長から伺っておきたい。
  46. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 第一点のお答えを申し上げます。  国土総合開発を行なって経済力を発揮していく、ただいま工業化のムードがあると言われましたが、これは私もそうではないかと思います。必ずしも工業立地に適しないところが無理に工業立地を考えてやりましても、なかなか産業というものはそこに移動して参りません。むろん、地域開発でございますから、道路が整備し、あるいは交通が整備されて、そうして、その地の基礎的な電力でありますとか、今後の近代化に必要な水でありますとか、そういうものがあります地方、そういう条件を備えておるところには、整備されて移動し得る関係がございますけれども、必ずしも低開発地どこにもそういう状況がりっぱにあるとまではいきません。とすれば、地方開発の重要問題は農業問題であることは、申すまでもないのでありまして、農業基本法ができまして、農業の構造的な変化を行ない、そうして選択的拡大を行なう、そうして第一次産品を中心にして、それによる工業化と言いますか、工業製品化というものも十分に織り込んで参らなければならぬのでございまして、そういう点については、総合的な開発計画の上で、農業の改善問題、構造改革、選択的拡大と申しますか、そういうものが非常に重要な問題であろうと考えております。
  47. 曾田忠

    ○曾田政府委員 お答えいたします。  まず率直に申し上げますと、昨年の七月に全国総合の計画草案を私ども作業して作ったわけでございますが、東北あるいは九州中国、それぞれの後進地域につきましては、第二次産業も相当以上の伸びを実は考えたわけでございます。しかしながら、結果的には、各後進地域とも所得の格差がそう大幅に縮小しなかったというようなことに相なっておるわけでございます。その原因は、先生のお話のように、そういう地方におきましては、農業が相当部分を占めておりまして、農業所得が相当なウエートを占めておるというようなことが、実は大きな原爆であるわけでございます。  しからば、就業者一人当たりの農業所得をどういうように見たらいいかという問題でございますが、先生の御指摘のように、今の中国地方促進計画の第一次におきましては、第一次産業は大体二・一倍二次産業は二・二倍ということになっておりまして、大体一人当たり就業者の所得の伸び率はそう大した相違はないわけでございます。これは実は所得倍増計画にもありますように、第一次産業につきましては、全体の生産の伸びが二・八%、就業者の所得の伸びが二・八%、合わして大体五・六%の伸びになるということで、二次産業の就業者一人当たりの所得も大体同じような数字になっておるものと思っております。  こういうように、農業の今後十年間の所得の伸びといいますものは、所得倍増計画におきまして相当な農業の近代化をはかりましても、十年間ではこの程度の伸びにしかならないというような現状のもとに、私どもといたしましては、全国計画草案あるいは中国促進計画の第一次案に、先生のお話のような、一次産業の就業者の所得の数字を出したわけでございます。まあ、これにつきましては、今後農業基本法に基づきます構造の改善あるいは近代化の努力がどの程度まで進んで参りますか、今現在農林省の方におきまして作業中と聞いておりますが、その結果によりまして、ある程度の修正が必要でありますれば修正いたしたい、そういうふうに考えておるわけでございまして、いわゆる基礎になりますものは、所得倍増計画におきます農業生産の伸び、そういうものを全体の頭に置いてその作業を進めておる次第でございます。
  48. 足鹿覺

    足鹿分科員 いかように御説明になろうとも、第一次計画案では、私が指摘したようなものを御発表になった。ですから、もう計画の目標そのものからして、あなた方は、階層間や地域間の格差はこれを是正すると言いながら、そういう倍と半分の開きを頭で立てるということではお話になりません。これは時間がありませんので、少なくとも別な機会においてまたさらに申し上げもし、御所信も承ることにしまして、経企庁関係はこれで終わります。  きょうは通産大臣がお見えになっておらぬようでありますので、基本問題は別としまして、肥料政策について、一、二伺っておきたい。  去る二月九日の本会議におきまして、私、農業年次報告について、特に農業対策としての肥料政策についてのあり方について伺いました。佐藤通産大臣は、問題は、肥料が数量的にも、また価格の面におきましても、需要者である農民に、円滑に、しかも不便を与えないように、不都合を来たさないようにすることが、肥料政策に対する考え方だ。そういう考え方に基づいて、昭和三十八年度までは有効である臨時肥料需給安定法、硫安輸出会社法の二法をやめて、新しく新法の構想が練られつつあるということを聞いておるのであります。伝え聞くところによりますと、新法の構想は、その目的において、肥料工業の合理化を促進し、及び肥料の輸出を振興することによって、肥料工業の振興をはかるとともに、肥料の取引の適正化をはかり、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とするという趣旨のものだそうでありまして、臨時肥料需給安定法に比べますと、よほど性格が変わってきておるようでございます。しかも、肥料二法のうち、輸出会社そのものは残していく。そうして合理化投資は今までも十分に受け、そして今後も思うままに、全体の資金ワクの四〇%は開銀の六分五厘の低利融資を受ける。農業の場合などは、六分五厘の金利などということはとても容易に実現しない現状にもかかわらず、先年よりすでに、六分五厘の低利融資が肥料合理化のために行なわれている。しかも、大量のものが行なわれている。こういう肥料二法のうちで、肥料企業家に必要であり、有効な面だけは新法へ残して、そうして、農民に少なくとも安く肥料を使わせる、こういう考え方の点については、全く骨を抜いてしまっておる。一体、まだ有効期間が二カ年もある肥料二法について、なぜこのような構想が具体化するのであるか、われわれは疑わざるを得ない。現在の肥料二法において、硫安企業の合理化は大きく進められておる。また、その結果、合理化されたメリットは、ちゃんと農村に肥料価格の引き下げという形で農村を潤しておる。こういう法の成果も上がりつつあるときに、その対農業政策としての面をほとんど骨抜きにし、いわゆる合理化中心、いわゆる輸出産業と称して、これを中心に、企業家にとっていいところだけを骨子としたものを作らねばならないのか、おそらくこれは肥料政策の一大転換だと思うのです。いわゆる農業政策としての肥料の価値、肥料の占める位置、これに対する施策というものは、これを完全に切ってしまう、そして、輸出産業オンリーの考え方に切りかえられる、そういう思想的なものが基幹となって現われておると私は判断せざるを得ない。この点について、通産大臣はおいでになりませんけれども、経企庁長官は肥料審議会の主管者でもありますし、いかようにお考えにおりますか。御出身が財界の御出身でありますから、あまり農村のことや肥くさい百姓の肥料のことなどには御関心がないかもしれませんが、実際輸出産業としてのそのものまでを無視しようとは思いません。しかし、現行法をこのように換骨奪胎をはかっていかなければならない理由が、一体どこにあるのでありますか。企業家もある程度成り立たなければなりますまい。だといって、農民の犠牲のもとにいわゆる食い逃げをしていく、そういう考え方は、農基法に資材対策という言葉がたった二字だけありますが、元来、農基法は資材対策というものを完全に軽視しておるきらいがあります。そういう面からもはなはだ遺憾に思います。この基本的な考え方。  それから一度に申し上げますが、この新しい構想に基づく新法は、もうすでにそれは法律としてできましたか、完成しておりますか、もしこれを提案されるという場合におきましては、いつごろでありますか。また、肥料二法は厳存しておる。これを附則等でこの肥料二法を廃止するなどということは、私どもは断じて許しがたい。厳存しつつある。しかも、二年もあり、相当の効果もあった。また、これは厳存せしめるべきだという声が、全国の有識者なり、消費者であるところの農村、農業団体、農民組織、あげてその廃止に反対をしておる。これの取り扱いをどうしようとお考えになっておりますか。  第三点は、新しいその構想には、通産大臣のお言葉にもあったように、円滑に需要者に不便を与えないように、数量的にも価格的にも流すんだ、それが目的だという。安い肥料を農民にということは、どこにもありません。一体、それはどういうことによって安い肥料を農村に——この新法の構想は、どういう構想によって、農民に安い肥料を、しかも品質のいいものを流そうという構想が、どこにどういう形で考えられておりますか。この三点、基本問題と新法の構想、それから新法の一番欠陥ともいうべき、私どもが約得のいかない、安く農村に肥料をという問題を解決し、これを実行に移す条項は、一体どういう点に盛られ、どういう構想でありますか。時間がありませんので、三つの点について……。
  49. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知の通り、肥料は、農業生産の基本的な資材であって、それが非常に農村の経済生活に影響いたしますことは、これは当然なことでございます。その点に十分留意しなければなりません。また同時に、現在におきまして、肥料が輸出工業として成立しており、また、特に東南アジア方面に対する日本の経済協力の上から申しましても、輸出産業としての価値あるものである、これは申すまでもないことであります。この問題につきましては、農村を代表して農林大臣が、また製造工業を代表して通産大臣が、現在お話し合い中でございまして、私どもはそのお話し合いの結果を待っておるわけでございます。  なお、通産省の案につきましては、軽工業局長からお話し申し上げたいと思います。
  50. 倉八正

    ○倉八政府委員 お答えいたします。今の三点、足鹿先生からお尋ねがありましたが、第一点は、今藤山長官からお答えになりましたから、二点、三点についてお答えいたします。  法律案としていつ国会に提出するのかというお尋ねでございますが、今の段階におきましては、まだ法文の条項を整理しておりまして、その整理に時間を要する。それからまた、自由党のいろいろの政調の審議会、こういうところにもまた折衝を要し、また御審議を受けなければいけないということで、法案としてわれわれの事務的にできるのは、あとの十日もあればできると思いますが、いつ提出できるかということは、今のところは、はっきり申し上げかねる状態でございます。  それから第三点の、円滑に、安く需要者に供給をしなくてはいけないが、それはどういう保証があるかということであります。今の肥料というのが、御承知のように、国内の充足をして十分余りあるのでありまして、三割ないし四割は輸出しておるというような、潤沢な数量的な供給をやっておりまして、数量的には決して心配はないというふうに言い切れるんじゃないかと思います。それから安価にどうやって供給するかという問題でありますが、これは今の構想の中には、価格としては自由でありますが、農林大臣がその価格が適正でないとお認めになった場合は、その価格の協定の改定を命じ、あるいはその破棄を命ずるということが法文の条文の中にうたわれるかと思います。  それから、合理化全体でありますが、今の合理化というのは、法律をもって強制するという以上に、業界の各自の非常なる合理化意欲とその競争によって、どしどし下げておりまして、その競争に勝たなければとうてい自由企業として成り立たないというのが、非常に徹底しておるとわれわれは信じておりますから、そういう理由からもいたしまして、今後は肥料の値段というのはどしどし下がっていくだろう、こうわれわれは考えております。
  51. 足鹿覺

    足鹿分科員 この問題は、容易な問題ではありませんので、相当時間をかけなければなりませんが、あとに食糧庁長官に重要な問題でお尋ねしたいことがありますので、ただいまの御答弁では決して満足するものでもなく、質問を端折りますが、一応申し上げておきます。農林大臣あるいは通産大臣の、団体交渉による価格取りきめについて、それがいろいろな条件の場合を予想して、変更の命令が出されるという構想があるようにおっしゃった。確かに、私どもの聞いたところでは、五つないし六つのその条項があるようであります。たとえば肥料工業の振興に著しい支障を与えるおそれがないこと、要するに、これは価格が安くなったときにはまた変更をやり、さらに、農業経営の発展に著しい支障を与えるおそれがないこと、これは要するに高くすることに対する場合を言っておるようであります。その他いろいろなことがありますが、このような抽象的なもので、はたして勧告あるいは命令権の発動というようなことがあり得るのか、また、その命令権はどの程度拘束力を持つものなのか。原則として、いわゆるカルテル化し、協定行為を独禁法の除外例を設けて、団体と団体が交渉するという形に法の考え方はなっておるようであります。とすれば、自由に各個で取引契約を結ぶということができるので、初めて価格はそこに下がり、また、それを契機として合理化も進むではありませんか。団体と団体が交渉してきまったものを、農林大臣、通産大臣がいかような見地からこれに命令を発するとはいえ、民主的にきまったことであるゆえをもってこれを突っぱねようとすれば、一方は賛成でも、一方は反対をするということになって、結局、その命令権というものは全く無力なものになってしまう。ただ法の体制上の問題として一応取り上げられているにすぎない。要するに、このようなことでは問題になりません。また、技術的に言っても、現在のいわゆる内需優先の立場をとって、バルク・ラインをもって価格を算出していく、これをやめて、一つの平均コストで一つの基準価格が各社平均のものがおそらく出てくるでしょう。そうなってくると、現在より以上に上がっていくことは必至であります。絶対に上がることはあっても下がることはありません。このようなことは自明である。何人といえどもよく承知しておるところなんです。これをあえておやりになろうというところに、私が先ほど指摘しましたように、企業家擁護をいろいろな手段、方法をもってはかろうとしておるのにすぎない。何ら、農民に対して安い肥料を潤沢に、円滑に供給する保証はどこにもないのであります。現在のもとにあってもなかなか容易でない。がしかし、遅々たりといえども君子の成果を上げつつある。それを外国の価格を比較にとったり、いろいろな比較をとって、日本の国内価格は必ずしも高くない、こういう考え方をとっておられるようでありますが、最近の硫安協会の安西会長の方言は、われわれは聞くにたえない。中共には一俵も売らぬなどと放言をし、そして、アメリカの域外買付の問題からは締め出しを食っても、これは一言の言葉もなく、そして、最近においては、世界的な肥料企業のカルテル化を提唱するなどは、全く僭越しごくな態度、傍若無人の態度と言わざるを得ない。いわゆる日本の肥料工業は、今日まで内需に依存をして、そしてその上に立って今日まで成長をしてきたものを、今過剰傾向が出てきておるから、内需については上げることはあっても絶対に下げさせない、こういう考え方裏づけとしての新しい構想だと私は断ぜざるを得ません。こういう全く農村を最大の消費者としておるところの硫安企業家が、農村に正式に挑戦するがごとき態度を業界としては一方に大きく宣伝をし、大きな圧力をかけて、そしてまた、その圧力に屈して、あなた方がこのような新しい構想を練っておられるとしかわれわれは考えざるを得ません。先ほど私が申し上げた二法は、現に昭和三十八年度までは有効なんですよ。例年でいけば、今ごろは肥料審議会委員の懇談会を開き、いろいろと意見の交換も慣例として行なわれておる。本年は全然知らぬ顔をしておる。そして一方においては、二法の廃止を揚言してはばからない。しかも、それにかわる新しい新法は、今言った性格のものである。これはいわゆる農村に対する大きな裏切りであると私どもは申し上げたいのでありますが、先ほど御答弁がありませんでしたが、この新法に関連して、あなた方は二法をどういう形にして取り扱われようとしておるのでありますか。附則としてこれを廃止していくという考え方ですが、二法は少なくとも二年の存続期間がある。しかも、これを附則で解決するというようなことは、全く暴挙にひとしいことと言っても言い過ぎでありませんが、それはどうなるのでありますか。そうして、二法そのものは形においてはなくなるが、輸出会社は、形を変えてこの構想によりますと残るのですよ。実際において廃止になるのは臨時硫安需給安定法だけじゃないですか。肥料安定法だけが事実上においては廃止になるんじゃありませんか。その安定法自身が、農村にとっては一番大事な問題ではありませんか。これは性格の問題や、大きな問題でありますから、通産大臣や農林大臣のいる機会を見て申し上げますが、あなた方事務当局としては、どういう指示を大臣から受けられて、この二法の取り扱いを新構想に盛られておりますか。その点だけを一つ御答弁願いたい。
  52. 倉八正

    ○倉八政府委員 今いろいろ先生から御質問がありましたが、今の御指摘は、どういう指示を受けてやっているかということについての質問であると思いますが、われわれとして今いろいろ考慮しておりますのは、旧法を廃止しまして新法を制定しろ、その内容と申しますのは、旧法において今までのバルク・ラインを御承知のように強行して参りまして、非常に値段が下がって、一五%ぐらいすでに下がりまして、今、先生のお言葉にもありましたように、世界で一番安いぐらいになった。しかしながら、片一方には、輸出産業としての性格を持って参りまして、非常な赤字をかかえて日本の肥料業界が困っておる。肥料業界が困っておるということは、結局、再生産が将来おぼつかなくなる、あるいはその派生というのが農民の方にもいくだろう。そういうことで今の法律を見直しまして、新しい観点から法律考えよ、こういう指示を受けておるわけであります。
  53. 足鹿覺

    足鹿分科員 事務当局として私の質問に答えていただきたい。それは、二法はやめなければ新しいものはできないでしょう。あなた方の腹はそうなんでしょう。ただ、その二法はまだ二年も有効なのですよ。それをどういう形にして廃止するのですか。
  54. 倉八正

    ○倉八政府委員 形式的には附則でやめることになります。それで、この形式の問題については、法制局と今検討中であります。
  55. 足鹿覺

    足鹿分科員 この問題で時間をとりますと、あとの食糧庁の質問ができないことになりますので、一つだけ申し上げますが……。
  56. 赤澤正道

    赤澤主査 非常に重要な質問でして、これは他日通産大臣にやっていただくことにして、あと一問にとどめて下さい。
  57. 足鹿覺

    足鹿分科員 申し上げておきますが、合理化資金の融通は、そのまま肥料安定法の精神に基づいてこれは残す。それから肥料輸出会社は、名前を変えて日本化学肥料輸出会社として残す。ちゃんと企業家にとって有利な、必要なところだけは残していく。コスト・ダウンにより利益が多くなれば、それはみんな輸出振興の名前によって企業家のポケットに入る。こういう構想では、何人といえども私は納得がいかないと思う。片手落ちではありませんか。これは議論になるかもしりませんが、要するに、少なくともまだ二カ年間ある二法の存続期間中にこのようなことを考え、これを具体的にもう十日もすれば法律を整備して、いつ出すかは時間の問題だというお話でありますが、不遜もはなはだしい。私は、この問題につきましては、いずれ機会を得まして徹底的に申し上げたいと思いますが、きょうはこの程度で一応終わっておきます。  あとに大きな問題が一つあるわけであります。自由化に伴いまして大きな影響を受けます大豆、菜種の問題、それから麦の問題を、時間がありませんので、ごく簡単に申し上げますが、三十五年産の大豆については、政府は交付金の算出方法の未決定のために、いまだに交付金が未払いとなっております。生産者に多大の迷惑をかけております。当該年度の予算に基づいて計上されたにもかかわらず、何ゆえに支払いができないのか。三十六年においては三十億の予算が計上されておりますし、本年度、昭和三十七年度におきましては二十五億円余の予算が計上されております。このことは、農林、大蔵の意見の対立があるといわれておりすが、それは事実でありますか、食料庁長官並びに主計局から御答弁願いたい。
  58. 大沢融

    ○大沢(融)政府委員 御承知のように、三十五年度産の大豆の取引が大体終わりましたのは、昨年の八月ごろだと思います。三十五年産につきましては、法律施行以前の問題でございますが、基準価格をきめまして、ただいま手数料の問題でありますとか、あるいは流通経費等の問題について、大蔵省と、今後の新しい例でもございますので、いろいろ議論を詰めてやっております。また、農業団体側にもいろいろ意見がございますので、そうしたところとも相談をしながらやっております。特に大蔵省と私の方で意見の対立があるというようなことではなくて、いろいろの点についての問題を詰めて、今後の法律施行の場合にも問題のないようにしていきたいということでやっております。なるべく急いで、早く交付金が出せるようにという努力をしております。
  59. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 ただいま食糧庁長官から御答弁になりましたように、交付金の原則については、もうすでにわれわれと農林省との間に意見の相違はございませんが、算定についていろいろ技術的な点がございますので、その点について目下意見の交換をいたしておるような次第でございます。
  60. 足鹿覺

    足鹿分科員 意見の対立はないが、調整がついておらぬということのようですな。これはうわさでありますから、僕はどこまでもそれが真実とは考えませんが、昭和三十五年以来、この問題については福田、南條、周東、河野と四代の大臣が関与をしておる。実力者といわれる河野さんが就任されてから十カ月近い日子が流れておるが、いまだに片がつかない。要するに、歴代の大臣が、農家庭先で三千二百円、政府が全量買い上げるという答弁を続けてきたにもかかわらず、大蔵省主計局方面は、大臣が何と言おうとも、われわれが納得いかぬのだということを放言、揚言をしておると伝えられておりますが、大臣が四人かわり、しかも前三大臣は、はっきり三千二百円ということを国会の議事録の上にも明言した記録があるのですよ。それがなぜきまらぬのでありますか。うわさにあまり重点を置くことはどうかと思いますが、間々ありがちなんですね。大臣が何と言おうとも、自分たちが実権を握っておるのだという、その思い上がった態度がもしあったとするならば、これは大臣たるもの、少なくともその存在意義が薄くなるわけであります。特にこの菜種につきましても、去る二月一日に、関東各府県の代表者を集めて、法律、政令等の説明会を食糧庁が開いた。そのときに、中西さん、あなたのあいさつの中に、基準価格は三千百八十円が歴代農林大臣の発言であるけれども、それを事実上にあいてくつがえすようなごあいさつの一節があったとわれわれは聞いておりますが、大蔵省といい、農林省の事務当局といい、そういう大臣の言明が、しかも四代の農林大臣にわたって言明されたことが、いまだに実行されない。しかも、事務当局は、大臣の言明をくつがえすがごときことを言明してはばからない。そうして基準価格の性格なり、そのきめ方について、一方的に農業団体や農民に押しつけていく。農民はいわゆる総和平均のことなどはわかりません。自分の出した大豆が、大体農安法に基づき——あるいは米の場合でも、麦の場合でも、三等建値基準ということは、これは今日までの農産物に対するところの通念ですよ。それを大豆、菜種に限っては、しかも、自由化に伴う大豆生産者、菜種生産者の保護を目的とする法律の建前からいっても、このようなことが許されていいのでありますか。私どもは、この問題は、本日農林大臣の出席を要求しておったのでありますが、御出席がありませんが、そういうような下剋上といいますか、大臣の言明などというものがそのように全く信ずるに足りないものであるとするならば、食糧庁長官の権限においておきめなさい。大臣などに御相談なさる必要はないでしょう。大臣が今まで何べんやっても、あなた方が、大蔵省意見調整がつかぬとかいろいろなことで遷延今日に至り、三十五年から本日に至るまで解決していないなどということは、あまりにも無責任きわまることではありませんか。その点を、食糧庁長官に御意見があれば承りたい。現に私どもの持っております資料によりますと、三十七年一月十六日の、食糧庁長官名による三十六年産なたねの交付金要綱に基づく農家手取り基準価格についてというので、「製油用なたね三等六〇キロ、包装込三一八〇円」、こういう通牒を出しながら、この間の関東会議においては、あの通牒は出し直すのだ、撤回するのだというようなことを係の人が放言して、農業団体を非常に困惑せしめております。政府が出した通牒を、今度は法令の説明においては、それはもうやめるのだ、歴代の農林大臣委員会で言明したことは、言明したとしてもわれわれ事務当局は承知しないのだ、一体そういうことで、国の農政を預かっている農林大臣の立場も全くゼロでありますが、あなた方の行き過ぎではありませんか。そういう点を一つ伺いたい。
  61. 赤澤正道

    赤澤主査 簡単に願います。  それから足鹿君にお願いいたしますが、残余の質疑は別の機会にお願いいたします。  食糧庁長官、中西部長並びに大蔵省主計局次長の答弁を求めますが、簡単に願います。
  62. 大沢融

    ○大沢(融)政府委員 ただいま、会議で通牒の再提出のお話があったということでございますが、そのようなことはございません。御承知のように、大豆、菜種の問題については、大豆の自由化と関連しまして、自由化以前の農家の所得、大豆を生産する農家の所得水準を維持していこうという趣旨でございますので、そういう御趣旨であの法律を運用して参りたいと思います。三十六年産の菜種についての三千百八十円、製油三等というのは、その通りでございます。
  63. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 私、今価格保証のお話を伺いましたけれども、たとえば三千百八十円の中で、大豆について三千二百円というその方針そのものに、何もわれわれ反対しておるわけではありません。その基準価格をきめますについてはいかなる規格をとるか等等について、技術的な要因があるわけであります。これらの問題についてはわれわれの意見のあるところを申し上げて、できるだけ詰めて、生産者の皆さんが御迷惑にならないようにと思っておりますけれども、そういう技術的な問題については、われわれ事務当局にまかされたいろいろな問題がございます。この点については、われわれは詰め合って検討しておるわけであります。こういうふうにお話を申し上げておるわけであります。
  64. 赤澤正道

    赤澤主査 質問はやめにして、御要望ならいいですけれども、はなはだしく超過しておりますから、要望だけして下さい。一問だけやっていただきます。
  65. 足鹿覺

    足鹿分科員 では、残余の質疑は明日に譲りたいと思います。  麦の問題にも関連するのですが、麦は、昭和三士五年に麦対策協議会が発足をして、減反方針がとられた。そして当時、食糧庁長官名、あるいは次官通牒、あるいは振興局長、あるいは振興局長並びに長官との連名等で、数次の通牒が出されて、減反成績が上がった。それに基づきまして、御存じのよに、減反の実績は著しいものがあるわけであります。作付面積は、法律は流れましたが、大、裸麦の作付転換が、三十六年度では大麦五万六千四百町歩、裸麦十万五百町歩、三十七年産の作付におきましては、大麦五万町歩、裸麦四万八千町歩の減反が見込まれます。以上をトータルしますと、三十九年度までにあなた方が期待した二十六万町歩は、すでに三十七年産麦において目的を達成しておるのです。ということになりますと、食管会計にはこれは大きな形になって現われてきます。つまり、ことしの食管会計を見ますと、著しく、内皮についての需給の見通しという点から大きく影響してきまして、大麦においては十億七千万円の政府買い上げ減、裸麦では二十一億八千万円の減、計三十二億五千万程度のものが食管赤字会計々免れるわけですね。逆ざやが解消するわけです。一方小麦がこれに反してふえております、転換を指導した立場上。ということになりますと、こういう大きな損失を政府自身は食管会計で免れておりながら、法律が流れたという立場から、三十億の、反当二王五百円の麦転換奨励金を大蔵省へ返納するような話が最近ちらちら聞かれますが、あなた方は本気でそういうことをやっておるのですか。法律は流れておりますが、あれは、食管法四条の麦の規定を後法、前法の関係でこれを消す。そういう点に難点があって、与党の諸君も賛成されて流れたんですよ。しかも、今お聞きのように、大豆、菜種の交付金の法律成立するまでに、ずっと行政措置において交付金その他を支出する、行政指導町によって予算が計上されておったではありませんか。法律が流れたからという理由のもとに、三十億の、農民が自発的に、そしてあなたたちの行政指導によって二十六万町歩も減反した農民に、転換補助金を出さぬのですか。出さないとすれば、これは全く大きな公約違反ですよ。その点は、われわれは絶対に看過し得ない大きな問題だと思うのです。大蔵省もおいでになっておるようでありますが、法律が流れたから、大豆、菜種はずっと行政指導でやっておいでになったのでありますが、まだそれが交付済みでないものの、法律はなくとも政策を実行していく上に必要を認めた場合には、これは行政措置でもずんずん今までやっておられる。今度の場合だって同じじゃありませんか。減反目的は三十九年度において達成できるものが、すでに三十七年度で終わり、国家財政の食管財政には大きなプラスになっておるのですよ。それをほおかぶりして、大蔵省への返納論がこのごろ聞かれることは、われわれは重要な問題だと思いますが、どのように現在長官としてはお考えになっておるか、また、大臣なり大蔵省とはどういう折衝過程になっておりますか、この点だけをお伺いいたしまして、残余の具体的な問題は明日に譲りたいと思います。
  66. 大沢融

    ○大沢(融)政府委員 麦作の転換奨励金の問題は、この席でほかの委員の方から一度御質問があって、大臣からお答えしたのを私も聞いております。いろいろ考え方があろうと思いますが、あのような奨励金を出して転換をする、あるいは買い上げの価格については価格のきめ方を変えていくというような、一体として法律の御審議をお願いしたわけでございますけれども、残念ながら通過ができなかったわけであります。そのようないきさつもありますので、ただいま予算に三十億ですか組んではございますけれども、それをそのまま今までの考え通りに使うということは、なかなかしにくいというふうに考えております。  それから、食管会計の数字がふえるというような問題はもちろんございますけれども、それとこれとを必ずしも兼ね合わせて考えるべき筋のものでもないように私は感じております。
  67. 赤澤正道

  68. 本島百合子

    ○本島分科員 お昼の時間も過ぎて、おなかがおすきになっておることと思いますが、総理府の統計局で三年前に発表しました統計の中で、日本の全人口の中で、四・一%というものが栄養不足であるなんという統計が出ております。そこで、ボーダー・ライン層約二千万に近い人々、こういう人々が今日の物価騰貴で非常に苦しんでおりますので、物価問題について少しお尋ねをし、なおかつ、今後の物価安定に企画庁としても大きな力を出していただきたい、このような見地から御質問して参りたいと考えておりますので、しばらくの時間御猶予を願いたいと存じます。  そこで、政府は昨年経済の見通しを非常に誤って、国際収支の赤字ということにもなり、今国会では一番問題になったところでありますが、昨年の消費物価については大体一・一%を見込んでおられたわけなんです。ところが、現実には五・七%と大きく食い違って値上がりをしたわけなんです。季節的に見ますと、昨年等におきましても、一〇・一%というような大幅な値上がりがあったということで、勤労家庭の家計簿は非常に狂ってきたわけなんであります。そこで、今年度予算におきまして、大体二・八%くらいということを見込んでいられるようでありますが、現実には、過日の日銀の発表によりましても、経済企画庁の御意見等によりましても、ことしこの一丁八%の値上がりというものが、この程度にとどまるかどうかということは非常に疑問である、こういうことが言われておるわけなんです。そういたしますと、昨年の例にならいまして、私どもは、この二・八%というものが、やはり昨年以上に五・七%か六%になるというふうなおそれを非常に抱いているわけなんです。そこで、この二・八%というものは、一体どういうものが値上がりする見込みでなされたものであるか、なおかつ、この程度でおさまらないだろうという企画庁考え方、それはどういう点にあるのかということを一つ明確にしてほしいと思うわけであります。
  69. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 一応二・八%をどういうふうにして見積もったかということだけ、まず御説明申し上げさせます。
  70. 羽柴忠雄

    ○羽柴説明員 ただいまの御質問は、昭和三十七年度の消費者物価の値上がり見込みということと思いますが、本年度に比べまして二・八%値上がりをするという見込みを立てましたのは、三十五年度と三十六年度の比較をいたしまして、三十五年度に対しまして三十六年度は若干予定よりは上がっておりますが、さらにその上がったところより三十七年度を推定いたしますと、われわれの推定によりますと、一番大きな値上がりといいますのは、もちろん食料品関係というものが一つあるわけでございます。ところが、昨年、すなわち昭和三十六年度でございますが、そのときにおきましては、特別な季節的な、たとえば台風であるとか、またいろいろなできごとによって、野菜等があまりにも高騰いたしまして、これは毎年の標準にするということはできにくいかと思います。さらに、値上がりいたしました大きな要因といたしましては、教養費であるとか、あるいはまたそのほかのサービス関係の物価というものが相当値上がりをいたしておるわけでございまして、そういうようなものをさらに三十七年度に——今特に値上がりの大きいものを申し上げたのでございますが、こういうものを推定いたしまして、大体三十六年度に比べまして二・八%の値上がりということに推定いたしたわけでございます。しかしながら、これも物価を野放しにしておきまして、二・八%でおさまるかどうかということになりますと、相当問題でございますので、われわれといたしましても、いろいろな施策を講じまして、その程度におさめたい、かように考えておるわけでございます。
  71. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 二・八%という数字を出しましたのは、今申し上げたような理由から推定しておるのでございまして、本年度五・八%から見て、この程度上がるんじゃないかというようにわれわれ見たわけであります。これをできるだけ小さく見ることが望ましいことでございますけれども、残念ながら必ずしも昨年のように、ただいまの見通しではそう小さく見るわけにいかないので、これを出したわけでございます。しかし、これは、それじゃこのままで推移してよろしいのだということではないのでありまして、できるだけこの以内におさめていこうという努力をして参らなければならぬので、本年度の経済見通しは、あらゆる面におまきして、私は努力目標と申しておるのでございます。輸出についても輸入についても、同じことを言っておるのでございますが、これについても、努力目標として、これ以内におさめていくだけの努力をしていかなければならぬ。そこで、政府といたしましても、本年度の重要課題は、輸出貿易を促進すると同時に、あわせて物価の安定を期していかなければならぬということで、ただいま物価の総合的な施策というものを作って、その線に沿って各省一致して推進をしていく、そうしてこの目標以内にできるだけおさめるように努力をしていきたい、こういうふうに存じておるわけでございます。
  72. 本島百合子

    ○本島分科員 昨年は努力目標という言葉があまり使われておらなかったのです。従って、野放しであったから、見込みより非常に高騰した、こういうことが言えるのだろうと思いますが、本年は努力目標という言葉を使って逃げておるという感じがするのです。しかし、国民の側からいたしますと、なかなかそう実感がこない。むしろ、昨年よりは上がるのじゃないか、所得倍増よりは物価倍増だ、こういう声が強くなっておるということも、こういう点にあると思うのです。そこで、物価の抑制ということをただいまおっしゃったのですが、物価が値上がりする原因は、大体基礎物価あるいはまた公共料金等が上がる場合において、必ず上がってくるということになる。そういうことで考えて参りますと、過日、長官は、私鉄十四社の運賃値上げはやむを得ないだろうという観点から、三年下旬ごろには十四社一斉に値上げをするというような形をとっていくだろう、これは結論的には政治的判断を下す以外に方法がない、こういうことを発表されておるのですが、私どもの立場からいたしますと、物価の抑制ということを考えていられるやさきに、こういう公共料金となるべきものが上がるということになれば、これは物価抑制ではなくて、当然これが一つの誘因となって、ことしは昨年より上がるだろうというふうに思われるわけですが、私鉄運賃を政治的判断のもとにやむを得ない措置として上げなければならぬだろう、そういう長官の気持というのは、一体どこから考えられたことか、そうして同時に、どうしてもこの三月末をもって上がるということになるかどうか、この際言明していただきたいと思うわけです。
  73. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 三月末に上がるかどうかということについては、まだ十分な検討をしておる最中でございますから、何とも申し上げかねます。ただ、私、物価問題を取り扱ってみまして、物価というものは、総合的な各般の事情の集積からくる点が非常に多いのでございます。むろん、当面の、たとえば野菜の出荷というような問題につきまして、交通機関の整備によって流通過程で改善していく、あるいは緊急輸入によって改善していくというような、当面の問題に対する対策もございますけれども、長い目で物価問題を見て、そうして将来の安定をはかって参るということを考えて参りますと、やはり輸送関係の整備ということが非常に重要になってくることは、どうも事実であろうと思います。従いまして、この面からの施策もあわせて考えて参らなければならぬ点が多分にございます。今日の物価の異常に上がりました状況を考えてみますと、一方では著しい景気の上昇を見たということ、また同時に、日本の構造上の問題があって、それに関連してアンバランスが起きた結果として起こってくるというような面もございます。従って、輸送を強化していくということは必要でございまして、もしそしれらのものをある時期に改善をしておかなければ、将来一年なり二年なり先の物価に影響してくるという問題も起こってくるわけでございまして、そういう点等をあわせ考えてみますと、この際公共料金等をできるだけ抑制して参らなければならぬことは当然でございますが、しかしながら、そういうような長期にわたって改善すべき必要のあるものについては、若干訂正をしていかなければならぬ面もあるわけでございます。そこらを考えてわれわれとしては処置して参りたいと思うので、単に単純な赤字ということだけでなしに、将来の輸送の改善によって、今日非常に困難を来たしております都市交通関係の問題の改善ということが物価の上にも非常に影響がございますから、そういう点が解決できるならば、必ずしも抑制一本だけでなくて、考慮すべき点もあるのではないか、こういうふうに存じておるのであります。
  74. 本島百合子

    ○本島分科員 先ほども申し上げましたように、物価の上がっていく過程というものは、大体公共料金が上がってくる、そうすると、それを追っかけてほかの諸物価が上がる、こういうふうになってくるわけです。しかも、今度私鉄が政治的判断のもとに値上がりされるということになれば、そのあと追っかけて電気、ガス、こうなってくる、ちょうどそれが追っかけっこ、追っかけっこになっていくのです。いつの場合にこの公共料金が安定してくるかということは、非常に疑問になってくる。これはかつて私どもがたびたび街頭に立ち、また、署名運動をちょうだいして、公共料金の値上げ反対ということをやり、そうして国会にもその署名を提出したわけなんでありますが、一向にそのきき目がなくて、最近は公共料金ばかりでなく、あらゆる一切の物価に対する値上がりに対して、全国的な主婦の運動が続けられてきたわけです。にもかかわらず、その意表をついて上がってきたというのが、昨年の傾向であったわけです。ですから、ここで私鉄運賃の値上げということになれば、非常な大きな不安を国民に与えてくるわけです。ですから、どうしても上げなければならぬ、今藤山長官がおっしゃったように、将来への見通しとして、どうしてもある時期にはなさなければならぬということであるならば、国民が納得いけるように、なぜ私鉄がこういう理由によって上げなければならないのだという、納得のいくまで一つやってもらわない限りにおいては、またここで物価値上がりを政府みずからが行なってくるという考え方は払拭できないと思うのです。ですから、そういう点で、物価抑制と、この公共料金の値上げというのは、全くうらはらのことですから、いま一度長官のお考え方を的確におっしゃっていただきたい、なぜ政治的判断を下しても上げなければならぬかという理由を。
  75. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 政治的判断を下してというと、語弊があるわけでございますが、将来の経済発展の立場に立って、公共料金が上がって参らないことは、むろん必要なことは申すまでもございません。過去数年の間、公共料金が改定されないで推移してきました、そういう状況も考えられております。従って、今日、以上の状況を考えてみまして、むろん、国民生活の向上も一面で行なわれておるのでございまして、従って、私鉄そのものの改善、改良ということも必要であり、特に私鉄というものは、都市周辺において大きな役割を県たしておるものでございますから、それらのものが十分将来の経済運営の上に貢献するような改善が行なわれて参りませんければ、その点について将来の物価に影響を及ぼすということも、考えなければならぬわけでございます。そういう点についてわれわれ十分に考慮をいたしまして、単に経営が粗放である、そのために赤字であるというようなことだけの問題から私どもはこれをもし改定するような場合には、そういう理由だけで考えない。私鉄経営者が十分に経常内容について合理化し、そうして経営の諸般の経費を節減して、なおかつ将来の輸送関係の円滑化、たとえば今日のような、ほとんど乗れない、あるいは乗ることができても非常な困難な状況にあるというような状況も改善していかなければなりませんでしょうし、あるいは踏み切りその他の設備等も場合によればしなければならぬ点も多々ございますし、あるいは都市の事情等によりまして、一般的な各種の必要な方策も考えられるわけでございます。そういうものに対する施策を十分にやる上において、必要最小限度のものがもしあるとするならば、そういうことは考えていかなければならぬ。こういうことをはっきり国民に納得していただいて、そしてこの問題を処理して参りたい、こう存じております。
  76. 本島百合子

    ○本島分科員 新聞の報ずるところによりますと、運輸省あたりはまだ検討中である、こういうようなことであった。経済企画庁長官はそれを先行いたしまして、これを上げるのが至当だというような発言があったということ、これは非常に国民に疑惑を持たしております。ただいまの御説明によりましても、四年間ばかり上げておらないから、こうおっしゃったのですが、そうすると、経済の不況というのが、御承知の通り、四年目ごとに今日本はやってきているわけですね。昨年の暮れあたりからことしにかけてその不況がやってきている。この不況のさなかに公共料金を上げる、こういうことになると、公共料金は四年目ぐらいになっている。そうすると、不況になってくる、公共料金を上げてくるというのが、一緒の時期に引っかかってくるという感じ方、そこで、物価は抑制されるよりももっと上がってくる、こう考えていくのも至当だと思うのです。ですから、ここに大きな不安が出てくるということは、近くまた大きな反対運動が起きてくるだろうと思いますが、そういうような点について、公共料金に対する取り扱い方はもっと慎重であるべきだ、こう思うわけです。そういう意味合いからいたしましても、ことしのような経済変動の時期だ、あるいはまた変動というよりは、むしろ再編成、統合の時期だなんということをおっしゃる経済企画庁長官としては、私は、やはり公共料金の取り扱い方に対しては多少軽率であったのではないだろうか、こう思うわけなんです。この点はただいまの御説明等によりましても、見解の相違ということもあるでしょうが、しかし、国民の側から言わせれば、私が言っている方が正しい感じ方だと思うのです。また、率直な素朴な考え方はこういうところにあるということを一つしっかりとお考えいただいて、この取り扱いについては十二分な注意を払っていただく。なおまた、経営のずさんなるものについて上げる必要はないのだし、また、経営のずさんをじゃどの線で引くのかということになれば、非常にむずかしいところじゃないでしょうか。運輸省で現にそれを検討しておりながらも見当がつかないでいるということを言っているようでございますから、そういう点から見れば、私は、藤山長官は少し軽率に早く発表なさり過ぎたのではないか、こういうように思うわけであります。この点について——何かおっしゃりたいようですが、とにかく公共料金の値上げと、それから基礎物価の値上げということについては、よく慎重にやっていただかなければ、すべてのものの物価騰貴の誘因になっていくと  いうこと、これはどんなことをおっしゃってもなるわけですから、その点をもう一度何かおっしゃりたければおっしゃって、国民に明確にしてもらいたいと思います。
  77. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 どうも何か新聞の表題を見ますと、私が折れたとか出ておりますが、その内容をごらんいただいても、そうすぐに折れたわけでもない、十分考慮して、そしていきたいということをあれしているわけであります。そしてやはりこういう問題については、今本島さんのお話のように、もしわれわれがこういうものを取り扱う場合には、十分理由を説明して、国民に納得していただく。よく、何か国会が終わってしまった時期にやったらいいのではないかとかなんとか言われますが、そういうようなことよりも、かりにもし上げる必要があるなら、私は、国会中でも上げて、そして皆さんに説明して納得していただくという方が、むしろ公明なんじゃないかという気持があるわけでございまして、決して、何か暗いような気分で、国会がない自分にさっさとやるのだというつもりじゃない気持でいるのでございまして、私鉄の内容その他についていろいろわれわれもさらに検討いたします。公共料金の影響するところは大きいのでございますし、ことに私は、来年は二・八%以内に努力目標を置いて、上げないと言っている立場から言いますと、そうぽかぽか上げていったのでは、来年の国会で、お前の言ったことと違うじゃないかということになりますので、私としては、もちろん慎重にこういう問題については考えて参りたいと思います。
  78. 本島百合子

    ○本島分科員 その物価問題と関連いたしまして、御承知の通り、ことし税金が多少下がったということになるわけですが、税制調査会から千七百億円くらいを減税に充てた方が至当であるという答申があったように聞いております。ところが、自民党では千五百億円という案を持ち出された。いろいろな折衝の過程で、普通は大きくなるはずなのに、ことしは逆にしぼんで九百八十七億円程度になってしまった。そうすると、この中で所得税の減税というのは、地方税の算定基準の引き上げ等によって、減税分がそれ相応に減税されないということが計算の上で出るわけです。それから間接税の点については、免税点の引き上げあるいは税金の引き下げというようなことで、物価は多少下がるだろう、この間接税の抑制において物価の抑制をするのだというようなことが説明されたわけでありますが、現実はそれと逆になっておるわけです。税金の面では、税制調査会が、かつて、日本の税金の負担率は、国民所得に対して大体二〇程度が適当であろうということであったのでございますが、ことしは二二・二%ですが、これだけの負担率になっておるのです。そうすると、減税という言葉より、むしろ税負担の過重という重圧感が残されてきておるわけです。こういう場合において、間接税が多少免税点の引き上げとか税金の引き下げというようなことで、物価が下がっていくというふうにお考えになるでしょうか。今いろいろな商品等を調べておりますと、質や量において多少の変化をもたらしても、その減税分あるいは免税点の引き上げ分等についての、それに相応する価格の引き下げはあり得ないということを業者が言っておるわけです。そうすると、この施策が物価抑制に対しては何の効果ももたらしてこなかったということが言えるわけでありますが、こういう点はどういうふうにお考えになりましょうか。
  79. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知の通り、税制改革にあたりまして、先ほどお話のございました、大衆的な課税をできるだけ軽減することも一つの方向でございます。従って、今度は間接税の引き下げが行なわれたわけでございますが、この間接税の引き下げというものが直接物価にそのまま反映してくるように処置していきますことが、当然望ましいことでございます。また、そうなければ、物価政策の上からいってそう言えないのではないかと考えております。従って、大蔵省等にも十分お話をいたしまして、これに対する万般の施策をしていただくようにいたしておりますし、また、通産省の所管関係のメーカーその他にも集まってもらって、通産大臣からそれらの指導をしていただいておるのでございます。いずれ、それらの点につきましては、大蔵省方面から、こういう方法でこの程度に指導をして、また下げるような状況になっておるということが、発表に相なるかと思うのでありますけれども、私ども経企庁といたしましては、物価政策の上からいいまして、そういう点について、十分各省に対して指示をしておるのでございます。
  80. 本島百合子

    ○本島分科員 各省に対して指示をされることはいいのですが、指示だけで実際問題としては下がらないだろうといわれております。特に今回の広範な物品税の引き下げ等もあるわけですし、免税点の引き上げ等もあるわけですから、そういう点については、やはりそれ相応の値下げになっていくということが明確になっていかないと、先ほど申し上げたように、公共料金の引き上げもあるのだから、当然これもまた上がってきて、その税金の恩恵は、ほとんど消費者に対しては効果がなかったのだということになりかねない今の趨勢であることをよく御認識いただきたいと思います。  先ほどから国際収支の問題についても申されておったようですが、国内の問題として、通産省に私の方の井堀議員が質問しておりましたけれども、中小企業団体というものが、本日も危機突破大会あるいは要求貫徹大会というものを二カ所で開いておるわけであります。この人たちの言っておることを聞きますと、結局金融引き締めにあえぎ、なおかつ、貿易の自由化ということに伴って、価格の規制だとか、いろいろな輸入抑制だとか、そういうことが全然言われておりませんので、資本の脆弱なところほど心配が多い。特に下請ですから、中小企業は、御承知の数が四十二万五千事業所となっておりまして、大企業というのは千事業所くらいしかないのだ、こういう、日本の特殊な産業構造の中から見ましても、当然非常な危機を感ずるというのはあたりまえのことだと思います。そして井堀代議士の質問に、国民金融公庫から融資を受けておるのは四一%とかいうようなことを答弁されておったようでありますが、実際面から言わせると、非常に少ないわけであります。現実に破産、倒産しておるわけです。そこで、私、このことについていろいろと御相談も受けるし、大会に参ったりして聞きますと、非常に税金を滞納しておるわけです。そうして、手形は長期ということになっておりますから、現金が入ってこない。特に零才業あるいは小企業というところに滞納が多いわけです。それが三十六年と過年度分と合わせまして、件数にして四百四十九万二千件となっておるわけです。金額にしまして千三百六十八億五千八百万円となっておる。滞納されておる人たちがどういうふうに解消されていくのかいかないのかということは、非常に問題になってくると思います。これだけのものをかかえていながら、そういう金融政策の面では零細小資本というものに対する恩恵が少ないということで、ことしの一月は例年にない、不況で、破産、倒産をしたと言っておるのです。これは業者が言っておるわけですが、企画庁ではどのくらいにこれを把握しておられましょうか。
  81. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 税金の滞納問題につきましては、大蔵当局から御説明をいただくのが適当だと思います。ただ、全体として、たとえば引き締め政策をやって参るというような場合に、中小企業にそのしわが寄るということは、どうしても起こりやすい現象でございまして、これを何とかして防いでいかなければならぬ。また、自由化をいたします場合に、自由化そのものが、貿易を拡大する上においては非常に有効な手段であろうかと思いますけれども、しかし、そのこと自体日本の中小企業に影響をするということも、また現実の問題でございます。従って、自由化と並行して中小企業の基礎を確立していく、また、それに対抗し得るような方法を通産行政の上でとっていただかなければなりませんし、あるいは金融の面において、そうした対抗をするような措置ができるような金融運営をしていただかなけはばならぬのでございまして、そういう点について、企画庁としては、十分な留意をいたしてこれに対処していかなければならぬという意見を常に申しておるのでございます。  なお、滞納の処置をどうするかというような問題につきましては、大蔵省から御答弁願うことにいたします。
  82. 本島百合子

    ○本島分科員 私は、滞納をどうするかということを聞いたわけではなくて、それを一つの例としてあげたのです。そうして、戦後二番目に破産、倒産が多いということを業者たちは言っておるわけですから、それをどの程度に把握しておられるかをお尋ねしたわけです。ことしの一月のことですから、役所としてはなかなか把握しづらいことでございましょうが、私どもの周辺におきましても、破産、倒産、転業というものが非常に多いわけですから、そういう点については、中小企業に対する育成ということを大きく打ち出していかなければ、この貿易の自由化に即応しての日本の生産者を犠牲にしてやらざるを得ないのじゃないか。先ほども貿易の自由化に対して、農産物価格についての御質問があったようですが、やはり農産物価格もその通りであると同時に、農業化席においても言えることだと思うのです。最近何だか石油等については石油業法というような法案を出して、何とか措置するのだというようなことが言われておるようですが、これは石油ばかりでありません。不況産業といわれている繊維だとか、金属だとかあるいは石炭、プロパン・ガス——これは家庭の面では一番よく使われているものなんですが、こういうものが不況産業に入っておるのです。そこへ石油なんかがどっと入ってきた場合に、不況産業がもっと、石炭等においては影響をこうむってくるということは、火を見るよりも明らかだということになる。そういうことによって日本産業が倒されていくということをこれは如実に示していることだと思う。ですからこそこういう中小企業、零細企業というものに対する育成強化、あるいは融資というようなことについて特段の施策がない限り、私が先ほどから申しておるように、日本の経済の成長というものは、政府考えているようには考えられないのじゃないか、こう思うわけですから、そういう点については、経済企画庁としてはどう考えていられるかということを承っているわけなんです。
  83. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本産業の大きな割合を中小企業で占めておることは、御指摘の通りでございます。しかも、それがはっきりした堅実な立場をとりませんければ、日本産業の総体的な成長が期待できないことも、これまた当然でございます。従って政府としましても、その点については、相当に引き締め政策をとりながらも留意をいたしているのでございまして、商工中金初め、その他中小企業金融機関に対する融資あるいは出資等につきましても、あるいは政府の引き揚げ超過に対する買いオペの手段等についても、できるだけそういう面には留意をいたして、対処いたしておるわけでございますけれども、御指摘のように、なおそういう点については十分な注意をわれわれもいたして運営して参らなければならない、こう存じております。
  84. 本島百合子

    ○本島分科員 それではあと一点お尋ねしたい。  今、もう少し詳しくお尋ねしたいと思っておりましたが、時間がないそうでございますので。三月一日から牛乳、バターが値上がりすることは御存じであろうかと思うのです。特に牛乳等につきましては、乳幼児にとっては主食と同じような形のものなのです。これが一円上がるといって、わずか一円じゃないかと言われますけれども、乳幼児にとってはそれは米と同じ性質のものである。そうして御承知の通り、低額所得層が約三千万人近くあるということになれば、この人たちの乳幼児というものは、栄養不足をしておるというところから考えていって、この牛乳に対しては値段を上げない、一定のもので押えて、いろいろ生産工程その他において、どうしても上げなければならぬということになった場合においては、差額支給という形において、米と同じように、二重米価政策のような形をとってでも補償すべきだと思うのです。それが、今まで申請されておって、いろいろの面で原料等が上がったからやむを得ない、こう言われて農林省あたりでは三月一日から上げると言われるのですが、こういう点について企画庁長官はどう思われるか。同時にそういう牛乳等について、乳幼児の米とひとしいこのものについては、何とか差額支給を政府が見るとかあるいは補助をするとか、そういう形において値上げさせないという方策がとれないものか。こういうことが、物価の問題を最初に質問したように、二・八%の中に含まれてのものであったのかどうか。そのらち外であるとすると、二・八%というものは努力目標でございましたけれども、それ以上にぽんぽんすでに出てきておるということになれば、昨年の五・七%以上の引き上げがことしのうちにあるということになるわけなのです。物価政策から見ても、いろいろの観点に立って考えても、現在政府がやっていることはしりからしりから物価の上がることをやっているのです。ですからそういう点について、企画庁長官としては、また企画庁としては、それに対する抑制はできないのか、どれだけの権限を持っているのか、権限のない役所であるのかどうか。私どもがたよっておるのは、そういう見通しの上に立って値上げさせないために企画庁というものは設置されたのだ、こう考えておったのですが、それがここ数年来逆な方向に行っておるものですから、企画庁というものは、もう必要でないのだという声さえ上がっておるということを長官は認識していただいて、こういう問題についての根本的な考え方一つお述べいただきたいと思うわけであります。
  85. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 生活に直接関連をいたしておりますものの値段が高くない、なるべく安い値段で安定をしておるということが望ましいことでございまして、たとえば外国の例を見ましても、そういう面は相当に——ぜいたく品なんかずいぶん高いものもあるが、しかし生活のほんとうの必需品、それは大体安く安定しているということはあるわけでございまして、そういうことが望ましいことは当然でありますし、またそうしていかなければならぬ。ただ、ただいまお話のありました牛乳とバターの問題というような直接の問題になりますと、これは農林行政上の非常な大きな問題でございまして、将来の構造改革の上からも、将来の価格引き下げには、どうしたら牛乳をたくさん供給して、価格引き下げができるかという観点もあろうかと思います。従ってそういう点については、私から今何らかの愚見を申し上げることは、農林御当局の施策に対してどうかと思いますので、申し上げかねると思います。しかし、それでは二・八%の中にこういうものが含まれているかといえば、何も個々の物資がどれだけ上がるかということを、一々積み上げ計算をやったわけではむろんないのでありまして、大きな一つの傾向から判断をいたしまして同時に総合的な面からこういう予想をいたしておるのでございますから、特にこれこれこういうものが入っているとかいないとかいうことは申し上げにくいと思います。
  86. 赤澤正道

    赤澤主査 午後二時三十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時四十九分休憩      ————◇—————    午後二時四十三分開議
  87. 倉成正

    ○倉成主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  赤澤主査が所要のためおくれますので、その指名により、私が主査の役を勤めます。  武藤山治君。
  88. 武藤山治

    武藤分科員 私は実は理事を通じて農林大臣に御質問をいたそうと思っておったわけでありますが、きょう農相は出席しない予定のようでありますので、せっかく予定を立てていただきましたので、企画庁長官に少しくお尋ねしてみたいと思うわけであります。  今、国民すべてが日本の経済は非常な困難に直面しておるという感じを抱いておると思うのです。私の方は経済危機という言葉を使って、この政策の失敗を批判しておるわけでありますが、経済危機というわれわれの主張の中で、特に企画庁長官は、どういう点に具体的に矛盾が現われてきておるか、たとえば国際収支の逆調の問題あるいは物価騰貴、さらに所得格差、階層別格差、そういうような問題にその矛盾が端的に現われておる、そういうような特に最重点だと思わせるような点を、最初にお聞かせいただきたいと思います。
  89. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今日の事態にはいろいろな原因はございますけれども、一番の重要なポイントと申しますのは、貿易の収支が合わないということであります。それは輸出が伸びるかあるいは輸入が抑制されるかして貿易の収支が合うということが、基本的な問題だと存じております。
  90. 武藤山治

    武藤分科員 最重点的な問題点というのは国際収支の逆調だと言いますが、私はそれだけをあまりにも重大視し過ぎて、他とのバランスなり他の資本主義経済の矛盾の現われというものを的確に把握しておらないところに非常な混乱がある、さように考えるわけです。そこで、物価騰貴が非常に急上昇しておる、さらに先ほど足鹿委員もその他の委員もるる質問をしておりますが、都市と農村の所得格差が非常に開いておる、あるいは大企業と中小企業の格差も非常に開いておる、そういうような階層間における格差の拡大、これも私は一つ政府の政策の失敗から出てきた大きな現われじゃなかろうかと思うのです。第四には、五・四%の経済成長率という考え方でいきますと、どう首をひねってみても生産過剰という現象が内在をしておる、このままで行くと、かなりの生産設備が休まない限り五・四%という成長率とつじつまが合わなくなって来はせぬか、そういうような生産過剰傾向に対する具体的な対策、そういうものを十分考えないで、国際収支の逆調という点だけにあまりにも重点を置いてしまって他を忘れるということになりますと、非常な慢性的国際収支の赤字というものが続いて、さらにだらだら不況というような形に日本経済が引きずられていくのじゃないか、そういうような心配を持ちますが、そういう点については長官どうお考えですか。
  91. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 当面一番まず解決しなければならぬ点は、先ほど申しましたように貿易バランスの関係でございますけれども、しかしそれ以外にそれでは解決しなければならぬ問題がないかといえば、たくさんございます。ことに日本経済の今日までのいわゆる二重構造と申しますか、ゆがみと申しますか、つまりあまりに成長が急速過ぎたために、そういう面にいろいろなひずみを出して、そのひずみが大きくなってきておるということが言えるのでありまして、まあ貿易バランスの面もそれから来ていると申しても差しつかえない。従って安定的な成長を続けていきながら、その中でそれぞれのゆがみ、ひずみというものを直しながら進んで行くということが必要ではなかろうか、こう考えております。
  92. 武藤山治

    武藤分科員 安定的な成長をはかるために、そのゆがみを取り除いていかなければならぬというのですが、実はそのゆがみが取り除かれる方向でなくて、どうもますますゆがみが拡大されるような状況にあるのが、三十七年度の予算ではなかろうか、そういうような感じを受けるのです。たとえばこういう経済を調整しなければならぬという場合には、できるだけ予算を編成する際にも、有効需要の抑制なり、あるいは金融引き締めなどをやりながら、どうしてもこれだけは必要だという面には、かなりの資金を流さなければならぬわけですが、どうも政府の三十七年度の予算を見てみますと、前年に比較しても、一般会計で、当初予算との比較で二四・三%、財政投融資などで一七・八%の増、こういうような形で、個々内容に当たってみましても、どうもこれは景気調整という作用をする予算でなくて、逆に景気を刺激するような要素の方が、ウエートが大きいような気がするのですが、そういう点について長官はどうお考えでしょうか。
  93. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたようなゆがみ、ひずみというものがございますから、それを一方では外貨バランスを合わせながら、一方ではそういうことを直していくことを進めて参りませんと——外貨バランスが、かりに輸出四十七億ドルの目標はなかなかむずかしいという議論もあり、またそう簡単ではございませんが、達成していかなければならない。達成した場合にでも、あるいは輸入四十八億ドルで押えられた場合にでも、他の輸入によります、たとえば輸送関係の問題、道路関係の問題、そうした問題が解決されておりませんと、その面からまた問題が起こってくるということにもなるわけでございます。また一方では、社会福祉等の問題についても十分な手当てをしておきませんと相ならぬわけでありまして、従ってそういう面において、全体の予算そのものを抑制いたしますことは必要でございますけれども、ある程度そういう施策を並行してやって参らなければならぬと思うのでございます。そうして貿易バランスが回復したときに、並行して将来の安定的成長に行くようにできるだけ持っていかなければならぬ。ただしかし、当面こういうような貿易情勢の場合に、これだけの予算を組むことが非常な害になりやしないかどうかということになりますけれども、まずこの程度のところまでならば私は差しつかえないじゃないか、そして状況を見ながらその運営について十分な配慮をして参りますれば、差しつかえないのじゃないか、こう存じております。
  94. 武藤山治

    武藤分科員 この程度の予算なら、そう内需を刺激したり、景気刺激の要素というのは少ない、運営の妙を得れば心配ないとおっしゃいますが、しからば一体国際収支の黒字基調は、長官の見通しで、いつごろには国際収支の安定ということが考えられるか、そういう点を一つはっきり聞かせてもらいたいと思います。
  95. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 大体目標といたしましては、本年秋の各月にそのままバランスがつきませんでも、将来つくだけの基本的な立場が回復されるということになりますれば幸いじゃないかということで、そこにわれわれとしては目標を置いて努力していく、こういうふうに考えておるわけでございます。
  96. 武藤山治

    武藤分科員 御承知のように、国際収支の危機からこれを回避するために、アメリカの三銀行から二億十万ドル、アメリカの輸出入銀行から一億二千五百万、ドル、さらに四ドイツから二千万ドル、国際通貨基金のクレジットが三億五百万ドル、合計六億五千十万ドルという一応借款を予定して、そうして今日の国際収支を何とかつじつまを合わしていこう、こういう基本方針でございますが、これは大蔵大臣も申しておるように、アメリカ三銀行から借りたのと輸出入銀行から借りるものは、一年後には返済しなければならぬ、こういう約束になっておる。そうなると、ことしの秋——秋といっても、秋深まったときと、秋始まったときと、いろいろ幅がありますが、一体こういう借入金を返済するということも考慮に入れて、大体秋を目途に国際収支というものはもう心配なくなるのか、その点どうでしょう。秋といっても、大体何月ごろ、長官の見通しでは、まあ心配なくなると言えるのでありましょうか。
  97. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私どもとしましては、大体秋といっても、そう九月とかというふうには考えません。十一月ぐらいで——承知の通りちょうど十一月に、アメリカの三銀行から第一回の金を借りているのです。そういうことでございますから、その辺を目標にしてできるだけ収支を合わしていくということをやって参ることが必要だろう、こう思っております。
  98. 武藤山治

    武藤分科員 それは、借入金というものの返済を考えても、国際収支は黒字基調になったという判断か、それとも、借入金を数字の中に入れておいての、国際政支の基調が黒字になるという見通しなんですか、そこらを一つ……。
  99. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 つまり通常貿易のバランスが合ってくる、そういたしますと、ある程度返済をいたしましても、それから引き続きバランスが合ってきますれば、今手持ちの外貨がそう減っていかないという状況になって参るわけであります。そうすると貿易のための資金に事欠くことはないであろう。また同時に、そういう状況になりますれば、場合によれば借りかえ等も、信用を得てできる場合もございましょうし、そういうことでございますから、その辺までに日本経済の基調が固まってくることが、世界的信用を得るゆえんでもございますし、また日本国内の政策がその辺ではっきり打ち立てることにもなろうかと思うのであります。その辺までにできるだけの処置をとっていくべきじゃないか、こう考えます。
  100. 武藤山治

    武藤分科員 あまり長官を信頼しないというのは失礼でございますが、実は政府の見通しというのは全く信頼できないのですね。去年の一月に、私ども大蔵委員会で大臣に質問をいたしますと、ことしは二億ドルの黒字が大体見込まれる、低金利政策をとるんだ——そうしてまず零細な郵便貯金の預金者の金利まで引き下げておいて、ふたをあけてみたらとんでもない国際収支の逆調だ、こういうのがつい一年前の政府の見通しだったものですから、あなたが今、十一月ころには何とか通常貿易のバランスがとれるようになるだろうという見方をしておりますが、それの具体的な根拠が聞かしていただければありがたいのです。いろいろ数字の上で無理があろうと思いますが、もしさしつかえなかったら、その見通しが確実に、こういう根拠で、こういう基礎で収支バランスがつくんだ、これを聞かしていただければ一つ聞かしていただきたい。  そこで、きのう、おとといあたりの新聞を見ましても、日本の貿易がそう伸びるという可能性がないのですね、僕らの判断では。というのは、アメリカの議会自体が、ドル防衛を積極的に進めなければならぬということを言い出したわけです。特に、日本で言えば来年度の、アメリカ経済というものは、相当締めていこう、当初の国際収支の赤字がかなり上回って、十二億ドル程度の赤字をアメリカは出しそうだ、こういうことで、すでにジロン財務長官は、金利の引き上げ、さらに公定歩合の引き上げ、こういううことを検討しなければならぬということを、新聞で言明しておるわけです。アメリカ経済が、本年はそういう形にかなり締めてかかってくるという情勢を見ると、今の日本の貿易構造からいって、どうも長官考えるような甘い、経常貿易収支というものが黒字基調になるということは、ちょっと楽観し過ぎるような気がするわけですが、そういう点心配ないと確信を持って言えるかどうか、一つ……。
  101. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 例年の見通しがどうであったかは別といたしまして、私は本年はこのままの状態で、こういうふうに安易にいくんだという見通しを実は立てておりませんで、皆様方からしかられておりますけれども、私は努力目標だ、こういうことで、あらゆる努力をそこに集中していかなければならない。従って総合的な対策も立てて、そうして安易な立場でなくて、お前はどちらかといえば消極的過ぎるじゃないかと言われるかもしれませんけれども、少なくともある程度改善をするまでは、消極的な立場でもって、十分にこれに対処して参らなければならぬと思うのでございます。アメリカ経済にいたしましても、アメリカの経済のリセッションから立ち直りまして、そして今日若干上向きつつございますが、しかしこれとても、アメリカは自然的に景気が過熱するような状態に持っていこうとは思われません。やはり安定的な成長を遂げるように政策の指導をしていくと思いますから、非常にむずかしい点があろうと思います。ただ、アメリカのドル防衛という問題については、アメリカが、通常貿易の問題で、非常にアメリカ自身AIDの問題とかシップ・アメリカンだとかいっておりますが、もうちょっと根本的にアメリカの問題があるんじゃないかと実は見ておるのでございまして、アメリカ貿易のバランスというものは日本の貿易バランスと同じような状態、それだからドル防衛をやるというのではなくて、むしろEECができまして、アメリカの大きな資金——かつてはアメリカに集まった資金というものがヨーロッパに投資されるし、輸出もしているというような、むしろ日本でいえば通常貿易の面で非常に困った問題が出てきた。アメリカでは通常貿易というよりも、むしろ資本収支の上と申しますか、ヨーロッパが非常に大きくなったために、ドルの地位に根本的には問題があるんじゃないか。従ってやはりアメリカにも、通常の貿易その他については、もう少し考えてもらう必要もあるんじゃないかということを思うのでありますが、しかしそういうことは別にしまして、アメリカの経済そのものが非常な過熱状態になろうとは思いませんし、従ってそう安易に対米貿易を楽観するわけにはいかないが、しかし三十五年度から三十六年度中間にかけて出たような状況よりは回復されることは、考えられると思うのでございます。
  102. 武藤山治

    武藤分科員 その見通しが当たるか当たらないかは、まだあなたが国会議員をやっている間に答えが出ますから、そのときに、なるほど藤山さんの見通しが確実であったということになるか、あるいはやはり大へん狂っておったから引責辞職をする、それくらいの政治的な決意を持って事に当たってもらいたい、そういう希望を申し上げておくわけであります。  第二に、国際収支の基調が黒字基調に変わる十一月ごろ声目途にして努力をする一もし十一月ごろにもう黒字になるという基調が明らかになった場合には、今の金融引き締めという事態を、金融正常化の方向に直ちに戻していいかどうか、その点が一つ。けれども、もし戻せないとしたら、今後どのくらいの期間、金融引き締めというものは続けるか、それを企画庁の立場から、あなたはどういう見解を持っておるか、聞かしてもらいたい。
  103. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 秋の状態を想定していろいろ申しますことは、若干危険があると思うのでございまして、御承知のように貿易バランスがある程度改善されるといっても、通常貿易の面と資本収支の面とございます。従いまして、資本収支の面が非常によくなる——たとえばユーロ・ダラーがうんと入ってくるとか、特殊のケースがあるというようなことから、国際収支だけが合うというような場合もございます。あるいは貿易バランスそのものが改善されて、資本収支の面では若干のマイナスがあっても、そこらの状態で金融問題に対するそのときの立場というものが変わって参りますのであれですけれども、たとえば一カ月や二カ月、何かよさそうであっても、すぐにゆるめるというのはいかがかと思います。ある時期だけは見ていかなければならぬ。そうかといって、真に基調が変わってくるような状態でありますれば、しいて金融の非常な窮屈な抑制を続けていく必要もないかとも思いまして、その辺が非常に実際はむずかしい扱いになるんじゃないかと存じます。
  104. 武藤山治

    武藤分科員 資本主義のオーソドックスな考え方で少し議論をしてみたとすれば、こういう経済をどうまかなうかという場合に、あくまで自由競争の資本主義経済システムという今日の日本の経済の場合は、財政や、あるいは企画庁政府というものの干渉するウェートよりも、やはり金融そのもの、あるいは企業間そのもの、そういう財界や金融界の態度によって、資本主義経済というものは一番大きく動かされる。これは間違いないと思うのですが、そうだとするとどうも今の日本の金融の情勢というものは、景気調整策と比較して、非常に逆な現象があちこちに見えている。あとでだんだん述べますが、そう私は考えるわけなんです。そこで長官は、今でも池田総理の言明しておる低金利政策というものは推し進められておるという状況にあると考えるかどうかということを聞かせてもらいたいと思う。
  105. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 非常にむずかしい御質問だと思いますが、少なくも今日の状況で低金利政策が進められておりますここは事実でございます。ただしそういう抑制をしております関係上、やみ金融と申しますか裏金融と申しますか、そういう面の弊害があるのではないかというふうに思うのでございまして、そういう点は、実は金融が必ずしも正常化しておらぬというような点から、過度の経済の発達があり、しかもそれをある程度急激に押えたというところから、そういう面が起こっておるように思います。従ってコール等も相当に高いとかいう問題は、御承知の通りであります。そういう点をわれわれは介意して参らなければならぬと思います。
  106. 武藤山治

    武藤分科員 長官は低金利政策が行なわれておるというのですが、資本主義経済の自然の流れからいって、そういう過度の高度成長によって、いわゆる設備過大によって今日のような状態が出てきた。これをノーマルな形で解消していくには、低金利政策ではなくて、逆に金利を上げて設備を抑制するなり内需を押えるというのが、本来の金融操作の姿だと思います。それが低金利政策が行なわれておるかおらぬかは、また論争になりますが、私は行なわれておらないと見ておるのですが、今大蔵省の銀行局が指導している立場というのは、長期の貸付金は低利で短期の貸付金は高利、こういう方針をとっておるわけですね。長期の貸付は低利にするということは、それだけ設備投資というものを促進する役割を果たすわけです。そういうような問題について金融面からもっとメスを入れて、金融全体というものをスムーズに動くような形に直さぬことには、私は、今の経済成長率の見通しだの輸出入だの、あるいは国際収支の逆調とかいうことは、そう簡単に解消できないような要素が、あちこちにころがっているような気がする。そういう点、今政府がやっている低金利政策というものをこのまま推し進めていいだろうかどうだろうか、そういう点を一つ率直に、景気調整という立場からのあなたの見解を聞かせてもらいたいと思う。
  107. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 根本的に申しますと、日本の経済が発達して参ります過程におきまして、金融の正常化というのは、実はおくれておったと思います。オーバー・ローンとかオーバーボローイングとか、いろいろな問題が必ずしも十分に解消いたしておりません。従って、資本蓄積がもう少し進んで行っておりますことが必要ではないか、そうしてそれが金融正常化の助けになっていくのではないか。でありますから、そういう意味において、今後金利政策というものが検討に値する問題だと存じております。
  108. 武藤山治

    武藤分科員 金融正常化というものが一番望ましい自由主義経済の基本的な姿のわけですが、長官の認識で、その金融正常化が日本では行なわれないという最大の原因は何ですか。
  109. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 戦争ですべてが破壊されまして、蓄積された資本というものが一応飛んでしまったというのが、戦後の出発点だったと思います。ところが、やはり建設を非常に急いでいくというようなことから、資金的需要もまかなって参らなければ経済の発展もし得られませんし、従って、そこにおのずから資金量不足というものを補うためには、オーバー・ローン問題が出てくるというような問題もございます。これなども、一時相当大きな問題だったことは、もう武藤さんも御承知の通り。ところが、問題になりましても、必ずしもそれがその後適当な解決策がなくて、あれは石橋内閣のときでありましたか、こうしたらオーバー・ローンの問題が解消するのじゃないかというようなことが取り上げられて、論議されたことがありましたが、その後若干なれっこになりまして、もうこれがあたりまえのような状態で、これでいいんじゃないかというようなことで、比較的論議も少なくなったのですが、もう一ぺんそういう論議もしてみることが必要なんじゃないか、こう私は思うのでございまして、そういう点について、今後ともやはり研究すべき題目だ、こう存じております。
  110. 武藤山治

    武藤分科員 私はやはり国会のいろいろな議論を聞いたりしておりまして、何か、資本主義経済を動かしておるファクターというものに対するメスの入れ方が非常に足りない、ただ単に予算規模なり財政面だけで、今日の景気調整をやろうなどといってもできるものではない。一番大きな力を持っているのはやはり金融ですから、この金融の正常化ができないというようなガンは何かということを、もっと追及する必要がある。今の長官の御答弁では、建設を急ぎ過ぎた、別な言葉で言えば、経済成長が早過ぎたということ、こういうことだと思うのです。その経済成長が非常に急テンポでありますから、どうしてもそれに付随して社内資本というものが自分の力ではできない、あるいは証券市場がまだ未成熟な日本でありますから、借入金に依存する、こういうことで、金融機関からの借り入れというものがものすごい勢いで増高してしまう、こういうところに金融正常化ができなかった大きな原因があると思うのです。本来的な資本主義経済に早く直すためには、この原因がわかったとしたら一体どうしたらいいか、これが私はこれからの対策として大きな問題だと思うのです。長官は、まず日本の経済があまりにも急激に高度に進み過ぎたということが原因だということを言われるのですけれども、これを今度は具体的に金融の面から、あなたはどうしてもらいたいと希望しますか。
  111. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 金融の正常化を考えます上においては、やはり私は、ごく平凡なことではありますけれども資本の蓄積ということだと思います。資本の蓄積ということは何かといえば、個人でいえば、できるだけ貯蓄するということによっていく、会社自体におきましても、自己資本をできるだけ充実するようにする。それは自分自身の利益を社内に蓄積すると同時に、その蓄積の力によって、銀行から借り入れるよりも、自己資本を充実する基礎にしていく、そういうようなことがやはり必要なことじゃないか、こういうふうに考えております。
  112. 武藤山治

    武藤分科員 資本の蓄積ということが重大だ、貯蓄の増強ということが重要だ、二つの答えを長官はお出しになったのですが、まず貯金の問題にちょっと触れてみたいと思う。政府は去年低金利政策と称して、二月に郵便貯金の預け入れる方の預金利子を下げたわけです。その後だんだん国際収支の逆調というものの大きさがはっきりしてき、これは内需を押えなければどうにもならぬという現象がはっきり出てきた。そこで内需を押えるためには労働者の賃金を押えるとか、農産物の価格を押えるとかいろいろな方法があるでしょうが、やはり一番本来的な姿とすれば、私は預金の増強ということだと思う。その場合一年前とことしの十二月の物価指数を見ると一〇・二%も物価高になっておって、預金金利はそのまま据え置きだ、こういうちぐはぐな施策が、本来的な金融正常化の方向とか、あるいは内需を押えるとかいう立場から見た場合、逆の方向を向いて歩いておる、そう私は認識するのですが、長官、その点はどうですか。
  113. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 内需を抑制してある程度消費を抑制し、貯金をしていただく、きょうの貯金が明日の購買力になるということがむろん望ましいので、きょうのすぐの購買力になるよりも、長期にわたって購買力として維持されてくることの方が望ましいことだと思います。でありますから、そういう意味におきましては、物価の安定ということが重要な問題であることは申すまでもないのでありまして、私どもの取り組まなければならぬ一つの大きな問題は物価の安定であって、たとえば、かりに合理化によって耐久消費財だけ下がって参りましても、全体としての物価が上がって参りますと、必ずしも貯金性向というものを大いに奨励するわけにいかぬし、また、した結果が値打ちが下がった金を持つ、つまりそれはインフレにつながる道でありますから、そういう点はできるだけ避けていかなければならぬ、こう存じます。
  114. 武藤山治

    武藤分科員 そこで今みたいなときにこそ、私は預金金利の引き上げということが、非常に大きな作用をする景気調整一つのかなめとも言えるほど、金融方面の立場から見たならば必要なときじゃなかろうかと思う。そういうときに低金利政策をまだまだ続ける、どうもそういう点は逆だと思うのですが、それはどうですか。逆であるか逆でないか、そういう姿勢でいいのかどうか。
  115. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知の通り、日本の工業技術の改善というものは著しいものがあったわけでございます。従って、製品の性能と申しますか、あるいは優秀性というものは著しく改善された。ある程度外国品と競争できるもの、あるいはそれ以上の優秀なものもできてきた。また一方からいえば、国民生活を向上さしていく、労働賃金も上げていかなければならぬ。上げていくけれども、それは合理化で吸収さしていくということによって、外国との競争力も出てくることになってきますと、世界的な水準に金利を持っていくことが、将来の一つの競争力であるということは申すまでもない。武藤さんもこれはおわかりいただけることと思います。ただ、それをどういう時期にどういうふうにやるかということが、実は問題であったと思います。でありますから、そういう意味においては、金利政策というものは重要な検討すべき問題であるというふうに、私はただいま考えております。
  116. 武藤山治

    武藤分科員 重大な研究を要する課題だと言うだけで、さっぱりあなたの見解を述べてくれないので、これは質問しても仕方ありませんが、きょうの日本経済新聞にも大蔵省等の態度が明らかに出されておりますが、含み貸し出しが非常に多い。幾ら日銀が貸付をこの程度にせいという査定をしても、含み貸し出しでもって、どんどん出ていってしまうのでは、幾ら藤山さんが景気調整は心配ないのだ、十一月にはこうなるのだと言っても、私はそういう点がしり抜けだと思うのです。そこで、そういうような含み貸し出しが非常に多額に上っているという今日の状況から見ても、私は、やはり金利操作というものを、この辺の段階でぴしゃっとやらぬと、国際収支の赤字というのはほんとうの慢性化して、あとでもって、やああれは失敗したということになりはせぬかという心配の方が強いような気がするのです。そこで去年の銀行側の会合なども、市銀の懇談会などでも、預金金利は上ぐべきだ、預金者を保護すべきだ、物価の上昇に対する埋め合わせと同時に内需を抑制するというねらいもあるし、そういう点から預金金利を上げてくれということを、銀行側が強く主張しておったようであります。そういう主張に対して、一体、閣議なりあるいは企画庁なりで、日本経済全体の立場から、政策は今どうしたらいいだろうかというような検討をしたことがございますか、そういう銀行側の要望などについて。
  117. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 預金性向を上げますこと、御指摘の通り今日のような物価の状況では、ただ単に金利政策だけではだめだと私は思います。従ってまず物価を安定させることが必要であって——若干、昨年から今年にかけて、物価が高い位置になりましたけれども、高い位置でもいいが、とにかく安定をさせていくことが、預金性向を刺激する一つの大きな契機だと思います。同時に、そういうものが進んで参りますれば、今言ったように、金利の問題は考究すべき問題であるというふうに考えます。
  118. 武藤山治

    武藤分科員 だめじゃないですか。物価を抑制すると言いながら、新聞で報じておるように、私鉄運賃の値上げやむを得ないというような形でしり込みしそうな様子だの、さっぱり具体的な物価抑制策というものを立てられない。そういうものも必要だが、最もオーソドックスな経済の動きというもの、流れというものを基本的な立場で検討をした場合には、何といっても金融の問題が第一に考えられなければならぬ、その際には、預金金利の引き上げということは、当然まっ先に検討すべき段階だろう、私はこういうことを言っているわけなんです。  そこで、金利政策という点は、企画庁としては、大蔵省の銀行局と日銀にまかしてあるから、われわれは全く検討はしてないのだ、そういう回答ならそれでもよろしいのです。その点はどうですか。
  119. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん金利の問題については、当面大蔵省が主管しておられることでございますし、大蔵省としていろいろお考えがあろうと思います。しかし企画庁としたとて、景気全体の動向を見て参る役所でございますから、当然その問題については検討を要するのでありまして、私が検討を要する問題だと申し上げたこと自体が、そのことを現わしていると御了承願いたいと思います。
  120. 武藤山治

    武藤分科員 どうも私がそういう質問をいたしました理由がよくわからぬと思うのですが、端的に申しますと、たとえば日証金融の問題にしても、あるいは買いオペレーション、預金金利の問題、こういう問題になりますと、何だか、池田総理のお声がかりで、日銀も自主性を失って主張すべきことも主張できない、こういう経済の非常にオーソドックスな問題を、何か政治的な発言によって曲げられている、私はそう受け取っているわけなんです。だから、非常に重大視しているわけなんです。たとえば、十二月の中旬の日銀と大蔵省と市銀の懇談会の席上で、預金金利をぜひ上げてほしいということを銀行側が主張いたしますと、そのときに日銀総裁は、時間をかければ実現の可能性がある、こう言っておる。ところが、その後に池田総理大臣が低金利政策をぶち出しておるんで、そういうことはむずかしい、無理だ、金融界の努力で世論をもっと唆起してほしい、こういうようなことを日銀総裁が言っておる。これじゃ池田総理のお声がかりがあれば、金融上の最も基本的な重大問題までが途中でもってパイプが通らない、こういうようなあり方で、一体日本の経済ができるだけ早い機会に正常化の姿になれるだろうか、そういう心配は単なる危惧でありましょうか。そういう点について企画庁長官はどう思われますか。
  121. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん金融を担当している方々その他にも、いろいろ御議論もあろうと思います。いろいろの立場からの御議論もあり、また過去の経緯からの御議論もあろうと思います。われわれは、今日の経済におきまして必要な、あるべき意見については、むろん池田総理に率直に進言すべきであり、またそれにやぶさかでないのであります。私といたしましては、金利問題は検討すべき問題と考えております。総理自身も、先般予算委員会等でも、この問題は、将来検討する必要があるのじゃないかというような答弁をされたように私は聞いたのですが、とにかく今後の情勢から見て、むろんわれわれとしては十分な検討をする必要がある、こう考えております。
  122. 武藤山治

    武藤分科員 それでは、預金金利の引き上げの問題については十分検討に値する、検討する、こういう答弁でありますが、大体政治家の答弁というのは信用できないという慣例のようでありますが、大体いつごろまでに、その必要性を感じて企画庁として検討結論を出せるものと受け取ってよろしゅうございますか。
  123. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 これは、経済の推移とにらみ合わせて、われわれも意見をきめて参らなければならぬのでございまして、いつごろまでということを申し上げることは差し控えたいと思います。しかし、ほんとうにそういうことが日本経済の上に必要な場合には、私は率直に総理に進言することは当然しなければならぬ、こう思っております。
  124. 武藤山治

    武藤分科員 突然企画庁の方への質問になったために、金融の専門家でないと、いろいろ答弁に困るような問題だと思いますので、あまり詳しくはやりません。ほとんど答弁をしてくれませんので、質問をしても結論が出ない、こう思います。  第二の大きな問題は、今回の政府予算の中で、財政投資面でどうしても資金が足りぬということで、公募債借入金をやろうということが出ております。その金額は千四百八十二億円、この公募債借入金で、金融引き締めのさなかに市中銀行からそれだけの金を吸い上げる、こういうことになりますと、これは、事業家の需要を満たす上において非常に障害になると私は思う。まずその点は長官はどう思いますか。
  125. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 金融の操作自体については、単に公募債という立場だけでなしに、ただいま、御承知の通り税金による吸い上げというものが非常に多いわけでございまして、政府の揚超という状況がますますずっと続いていくとさえ——ごく短期の、たとえば米の資金の場合のようなときは相当払い超になりますけれども、揚超が続いてくるような状況でございますから、そういうものと関連して操作を考えて参りませんと、そうならないのじゃないかと思うのでありまして、それはむろん金融の面からいえば大きな問題だと思います。
  126. 武藤山治

    武藤分科員 藤山さん、大きな問題だということだけでは答弁にならぬのです。公募債借入金をこんなにも多額に、景気調整段階で、そういう年にあたって、公債まで一応出して予算規模を拡大しなければならぬという必要性が一体あるのか。かりにそういう必要があっても、この際には景気を調整する上で、できるだけ縮めたいのだということで、こういう公募債借入金などはさせないことが、私は本来的な立場だと思うんです。こういうものをやられたら、かなりこれは影響があると思いますが、影響は全然ないと思いますか。もし影響があるとしたら、どういう方面に影響があると判断しておりますか。
  127. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように、今のような非常に大きな、たとえば三千億というような揚超であるときの状況から申せば、今のような公募債の範囲というものは、必ずしも非常に大きな金額だとは、率直に申して私は言えないと思います。従って、それの運用というものは十分戒心をしてやって参ればいいのであって、そういう問題も非常に重要な問題であることは申すまでもございませんけれども、一体こういう財政資金の揚超というような問題を、どういうふうにもう少し金融面の上で円滑にしていくかということを考える必要があろうと思うのであります。一面から申せば、たとえば政府民間設備を押えていくというような場合に、政府自身のアンバランスになっている公共投資その他について若干の補足をする意味民間資金を活用するというのは、正常な状態でありますれば、別に抑圧政策に反する政策ではないと思います。しかしながら、こういうような状況になって参りますと、金融が非常に不正常な形でございますので、そういう面から、御指摘のように問題がある場合にはございますので、むろん慎重にやるべきだと考えております。   〔倉成主査代理退席、主査着席〕
  128. 武藤山治

    武藤分科員 公募債借入金というのは、日銀が全部それをそっくり引き受けるのじゃなくて、市中銀行へ買わせるわけですからね。そうなりますと、それでなくとも市中銀行は企業の需要というものをまかない切れない、非常に資金が足りないと言って今困っておる、そういう状況のときに、政府の方の公募債借入金の方に資金を吸い上げられていきますと、中小企業に影響はないか、その点はどうですか。
  129. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん、無策に何かそういうことをやりますれば、中小企業にも及ぶだろうと思います。従って、中小企業に対する特段の金融というものは十分考えていかなければならぬので、市中銀行等におきましても、大蔵大臣がたびたび言われておりますように、中小企業の金融ワク、あるいは金融の操作等については市中銀行方々とも十分な話し合いをしながら行っておりますから、その面に特段の影響のないように、こういうことが行なわれる場合には考えて処置されていくであろう、こう存じております。
  130. 武藤山治

    武藤分科員 中小企業に影響のないように処置されるであろうという期待を述べておるわけですが、事実は、この間日銀総裁に私が質問をしたときにも、こういう調整期に公募債借入金というようなことをやるということは、全く経済の事実を認識しない逆な方向だということを総裁も答弁しておるんです。だから、こういうように予算規模をどんどん大きくするために、とうとう借金をしなければ国自体がまかない切れない、こういう予算の編成の仕方は、結局金融引き締めに輪をかけて、中小企業を圧迫する要因になると私は思うわけです。だから、こういうものは一年間事業量を圧縮して繰り延べるくらいの腹をきめなかったら、今日の景気調整策というものに対して、国民がほんとうに協力しないと思うのでありますが、そういう点は、全く心配ないからこのまま千四百八十二億円の借り入れはやるのだ、閣議などでは、あなたはこういう予算の編成の仕方に賛成をしていくつもりですか。
  131. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知の通り、今回の予算編成の場合には、景気に対応して予算をどう編成するか、最初にはある程度たな上げ資金という問題もあったわけでございます。しかし、今後の運営におきまして、今申し上げましたような点については、実行にあたって景気の動向とにらみ合わせながら、むろん公募債その他の問題について弾力的な運営を予算の上でいたして参りますことは当然のことであります。大蔵大臣としても、そういうことで弾力的に運営していくということでございますので、われわれとしてもそういう趣旨に賛成しておるのでございます。
  132. 武藤山治

    武藤分科員 そこで、先ほどの国際収支が十一月ごろには見通しが明るくなる。こういうものは、そういう見通しが明るくなってから一つ借入金の処置をしていこう。それまではできるだけ引き延ばした方がいいのだ、そういうような態度はとれないですか、長官としてはどうですか。
  133. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私としては、単にこの問題だけでなしに、編成予算全体にわたって、少なくも上半期の動向を見ながら、十分弾力的な運営をしてもらいたいということ々、大蔵大臣には希望いたしておるわけでございます。
  134. 武藤山治

    武藤分科員 中小企業の金融の動向というものが、政府は中小企業には絶対に心配はかけない、大幅に融資ができるようになっておる、再三再四そういう言明をいたしておりますが、貿易自由化を前にして中小企業の近代化も強く要請されるときでありますが、中小企業金融が全体の中で占める比率というものが、昨年以来大へん好ましからざるパーセンテージに低下をいたしております。長官はその点どのように認識しておりますか、もし数字がわかっておったらその数字も発表してもらいたい。
  135. 中野正一

    ○中野(正)政府委員 ちょっと数字を申し上げますが、中小企業向けの金融がどういうふうになっておるか、今ちょっと手元にございませんので、数字を調べまして御説明いたしますが、現在のところわかっておる数字で申し上げますと、中小企業向けの設備投資あるいは運転資金、あるいは全体の金融機関の中小企業向けの貸し出し残高というようなものから見ましても、少なくとも昨年の十一月ごろまでの数字を見ますと、それほど中小企業が圧迫を受けておるというふうにはわれわれは見ておりません。これを三十二年、三十三年に比べまして、あのときは、御承知の通り中小企業に対して非常に影響があったわけですが、これは大蔵省におきましても、昨年の九月景気調整策を出したときに、中小企業向けの金融が圧迫されないように、また金利も上がらないようにと、これはわれわれが見ましても相当強い行政指導をしております。なお、御承知のように中小企業向けの買いオペ、あるいは政府関係金融機関の三機関に対する財政投融資の追加ということで、約一千億ばかりの措置を、昨年の末からことしにかけてやっておりますので、われわれは、まだ今のところはそれほどとは思っておりませんが、ただ最近の傾向から見ますと、ちょっと数字が古いかと思いますが、十一月までの数字で申し上げますと、設備資金の貸出残高から見て、中小企業向けの貸し出しの比率がどうなっておるか、これに世間でも一番注目しておりますが、昨年の四−六月あたりは四割であります。それが少しずつ下がってきまして、十一月には三割を一割る、二八・六%ということになっておりまして、そういう点で、相当これは残高が落ちつつあることは間違いありません。ただ三十二、三年のときと比べますと、これは一〇%とか一五%程度にまで落ちておるわけでございます。それから運転資金につきましても、大体同じような傾向が見られるんじゃないか。それから規模別の全金融機関の貸出残高で言いましても、今言いましたような三十二、三年のときほどひどい数子には今のところなっておりません。
  136. 武藤山治

    武藤分科員 三十二、三年あるいは二十九年などのあの当時の景気循環を基準にされて中小企業の問題なんか考えられたのじゃ、これはもう大へんな時代錯誤です。米の食えぬ者は麦を食え、中小企業の二、三軒倒れてもいいというような、ああいう感覚でとられた政策のときと、今日とでは比較にならない、いろいろ別な意味での要素が加わっておると思う。だからそういうものはもう比較にならぬ。ただ昨年の中小企業向けの金融の傾向を見ただけでも、四月−六月四〇・五、それが七月−九月は三九・四、十月は三九、十一月は二八・六、このように一年足らずの間にずっと落ちていることだけは、もうはっきりしておる。だから中小企業が金融に非常に逼迫しておるということは、私どもはいなかにいますと、もうしょっちゅう聞かされておる。ただ申し込みができない状況にあるのです。ところが銀行の方では、申し込みを受け付けたものだけを一応需要として、そのうち融資したものは幾らというような統計を出すから、そう困っておらぬように考えておるが、実際中小企業は非常な金融難です。そういう点は今の数字の上からも傾向がわかるわけですから、このまま行きますと、あるいは昭和三十二年ごろの一〇何%に落ちないとも限りませんよ。もうすでに二八・六%という降下が出てきておるのですから。そこで、そういうような中小企業の金融というものを十分一つ長官にも認識してもらって、ほんとうに万遺漏のないようにするという基本的態度に立って、一つ閣議などでがんばってもらいたい。さらに先ほどの公募債の借入金の問題も、こういうものを市中銀行に出すことによって、さらにこの傾向が激しくなってくる、私はこういう認識を持つのです。従って公募債借入金の問題についても、中小企業にしわ寄せのいかぬような十分な配慮の上で、これを行なわなかったら大へんなことになるということも十分警告をいたしておきたいと思います。  もう委員長から、先ほどから時間だ、時間だと言われておりますので、質問はあと残しておきますが、また機会のあるときにいたしたいと思います。
  137. 赤澤正道

    赤澤主査 御苦労さんでした。  中嶋英夫君。
  138. 中嶋英夫

    中嶋分科員 昭和三十四年に本州製紙の江戸川工場で、工場排水、汚水問題で、当時漁民が殺到しまして、大きな社会問題となって、これが契機となって水質保全、工場排水の規制の二つの法律が当時の国会を通ったのです。その際に、当時の商工委員会は附帯決議をつけました。また当時の三木長官から、汚水に限らず、今後塵埃、煤煙、騒音、ガスその他排気、こういったものについて、公害の除去について、すみやかに立法措置を講ずる、こういうお話があったわけです。その後、工場排水の問題も大きな問題ですけれども、一千万、二千万というたくさんの人々に直接はだに、呼吸器に影響のある大気の汚染、この問題についての規制をどうされるかということに期待を持っておったのです。最近ようやく大気汚染防止法というものが出されるんだという話は聞いていますけれども、いまだ提案をされていない。この前の水の問題の際には、たしか水質保全は経済企画庁の担当であり、工場排水の方は通産省の所管だ、両省で調整をとって進めていこうということのようであります。たしか昭和三十二年ころでしたけれども、当時、厚生省が大気汚染防止の法案を準備しました。これが新聞に出ましたら、二日ほどして当時の経済団体の方から反対の決議が出されて、間もなく、これが日の目を見ないで流産したという経過があるわけです。本来、住民の健康に大きな影響を持つ問題でありますだけに、厚生省がこの問題に真正面から取り組むことが必要だと思います。一面、産業との関係が深いことですから、そういう面から通産省も無関心ではあり得ない。その関心の持ち方が従来は、厚生省はぜひこれを解決したい。通産省は、それはそうだろうけれども産業発達のブレーキになってはいかぬのであって、むしろ必要悪ではないかというような考え方で、この立法については通産省はむしろ抵抗してきたというのが、過去の経過だと思います。たしか産業革命後のイギリスにおいて、この煤煙問題が非常に大きな問題、特に霧の深いときにスモッグとなって、一夜にして二千人の人が死亡したという重大な場面になった。その当時、やはり大気汚染の防止運動というものがそこに大きく展開された。ところが当時ある人は、これはもう工業都市市民のスープだ、煙突の煙が多いということは、町の発展する証拠なんだ、こういうような反論があって、一時その運動が、それもそうだというような——昔の話ですから、そういう考えもあったのでしょうけれども、立ち消えになったという経過がある。これは日本にもあったのですね。仁徳天皇以来、大阪では煙都というのは、むしろ誇りだというような、煙のあるのがいいのだというようなことが残っている。それが特に通産省、産業界に強く残っている。幸い新聞あるいはラジオ、テレビという機関を通じて、大気汚染というものはゆるがせにできない。特に子供たちの健康調査をしてみますと、明らかに眼疾、呼吸器疾患というものが煤煙の多い地域には多発している。こういう問題は放置できない。それですでに地方自治団体においてこの問題を国が動く前から取り上げて、大阪、東京、神奈川その他静岡県も最近作ったようでありますけれども、公害防止条例というものを作って規制をしていこうと努力をしており、ある自治団体のごときは、煤煙防除の設備を取りつける場合には補助金すら出している。こういうように推進している状態の中で、ようやく国も取り上げるだろうと思うのですが、この所管がまだどうもはっきりしていないと聞いているわけで。水の場合にも経済企画庁関係されておりますけれども、いわゆる住民の側に立つ厚生省と、発生源であるところの工場、事業場の側に立つ通産省との調整上、経済企画庁としては大きな役割があるのではないかと考えるわけですが、とりあえずこの問題に対しての長官のお考えをお伺いしたいと思います。
  139. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 煙害その他の問題は、これは非常に大きな将来の問題、また現に起こりつつある問題で、特に過大都市ができて参った場合には、必ずしも工業都市だけでなしに問題が起こるわけでありまして、そういう意味においてはこれから急速に取り上げていかなければならぬ問題だと、一般的には考えております。現状におきましては、目下、厚生省がこれを熱心に検討されておると同時に、通産省も、こういう時世になって参りまして、この事態を従来通りの考え方でやっていくわけにもいかぬだろうというので、ただいま厚生省と通産省とで、いろいろ御相談になっておるわけであります。両省の話し合いがつきまして、調整ができることをわれわれ望んでおるのでございますが、かりに調整がつかぬような場合には、おそらく各省間の調整ができないものについては、経済企画庁として御相談に乗る場合があろうと存じます。そういうときには、十分慎重な態度をもちましてこの問題を処置して参りたいと思っておりますが、現在はまだその段階に至っておりませんので、ここで一応申し上げるわけにいかないのであります。
  140. 中嶋英夫

    中嶋分科員 先ほども申し上げましたように、三十三年に厚生省が立案をして、経済団体が反対の決議をしたらすぐにつぶれてしまった、こういう経過がありましたけれども、当然調整は容易じゃないものがある。従って長官の取りまとめが必要になってくると思うのです。これは非公式ですが、前から調整局長にも十分関心を持っていただきたいと言っている。と申しますのは、漏れ聞いた通産省の考え方というのは、すでに幾つかの府県で行なっております公害防止条例の内容程度のものを考えておる、これは規制をして、どうも煤煙が多いという場合に、その設備を改善することを勧告する、あるいは新しい工場を作る場合には、その規模なり設備の内容をチェックして、こういう産業にはこういう施設を作ることを勧告する、その勧告が入れられない場合、誠意がない場合の罰則は最高十万円。実際あった問題ですけれども、設備に二億もかかるから、罰金を十万円払った方がいい、こう放言したある事業所があった。これは非常に重大な問題で、社会的な批判の中で反省をして取り消しましたけれども、そういう例があります。その程度のものなら、それぞれの府県にもあるのですから、それを一歩進めたものでなければならぬと思う。そこで当然問題になってくるのは、実際煤煙というのは除去できないのかというと、技術的にはきめ手ができておるのですね。機その他の多くの除塵装置は非常に進歩しております。問題は資金なんです。その資金を国がめんどうを見ないで、ただきびしくしても、これは、実際今言ったように、罰金を払えばいいだろうということになってくる。すでに火力発電あるいは製鉄関係では、一つの施設に何億、あるいは二、三日前には日本鋼管の鶴見製鉄所が二十三億を投じて改善する。もっとも二十三億というのは、その除去設備だけではなくて、また同時に効率が上がるように炉を変えるのです。その設備費を含めてですけれども、純然たる除去の施設としても二、三億は当然かかるだろう。こういう問題について、地方の自治団体では、少額とはいえどもすでに補助金すら出しておる。従って、これに対して低利長期の資金を国としてめんどうを見る。これがそれぞれの府県でプールされて、窓口となって、府県もこれにさらに加えて、初年度三十億ほどのものを出して、五、六年の間次次に十億なり二十億出していけば、補助金でなく、その回転だけで、おそらく規制をしなくても、直さなければならぬのだということは最近ずいぶん進んで参りましたから、そういうめんどうを見てもらえるならば、さっそくやろう、たとえば火力発電所の場合などでは、あのダストはフライ・アッシュといって、コンクリート工事のはだをきれいにする役割があるとか、廃物利用以上のものもあるわけです。特に害をなしているところのカーボン・ブラックの場合などは、製品を飛ばしているわけですから、その防止によって歩どまりがよくなるわけです。こういう利点があるわけですから、積極的に集塵、除塵の装置は進んでくると思う。従ってこの調整をなさるときには、厚生省はきびしい、通産省はそれでは困るのだというときに、両方相待って解決する道として、そういう資金的な問題までお考えを願いたい。  次に、そういう除塵装置、大気汚染防止のための諸施設、諸機械については、税制面でも御考慮願いたい。固定資産税の免除とか、こういう点までお考え願いたい。うるさいから何とか格好をつけなければならぬだろうという取り上げ方ではなくして、これを機にほんとうに裏打ちのある、しかも親切な、実効の上がるものとして国会に出されることを、この機会にお願いしたいと思います。  それからもう一つ問題になってきますのは、自動車の排気ガスの問題です。特にディーゼル・エンジンのバス、トラックの排気ガスはタール性物質であり、肺臓ガンの原因になるわけです。これは工場、事業場と違いますけれども、通産省の所管でしょうが、こういう問題も、工場の問題だけではなく、あるいは暖房のボイラーの煙だけではなくて、そこまで入った、ほんとうにみんなの健康を守るのだという内容のものとして提案されることを希望する。両省の意見が一致したらば、こっちは知らぬ、一致しないときに私が出ていくのだという消極的な態度ではなくて、重大な関心を多くの人が持っているわけですから、積極的な取り組み方を期待したいのですが、これに対してもし御決意なりお考えがあれば伺いたい。
  141. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今中嶋分科員からいろいろな点について有益な示唆をしていただきまして、われわれも大いに得るところがございました。国民の健康保持ということは、翌日の再生産の上にも必要でございますし、あらゆる面において、将来の青少年問題の上にも影響がある問題でございます。相当に費用のかかる、あるいは困難な問題であろうと思いますけれども、工夫をこらしますれば、そういうものを克服して改善する道も、今の御示唆の上からもわかるわけでありまして、われわれとしてもできるだけこの問題につきまして十分な努力をしていくことにいたしたいと思います。
  142. 中嶋英夫

    中嶋分科員 今私は、地域住民の健康の問題だけ申し上げましたけれども、企業と企業の間でも問題が起きているわけです。たとえばある酸性のガスをたくさん出す工場の隣では、屋根がもたぬから、その企業によっては自分の方が引っ越さなければならぬというような、企業と企業、産業界同士の間でも問題があるわけですから、その点をも含めて御検討願いたいと思います。  以上で私の質問を終わります。
  143. 赤澤正道

    赤澤主査 楯兼次郎君。
  144. 楯兼次郎

    ○楯分科員 私二点だけ、おそらく予算総会あるいは当分科会でも議論をされておりましたので、常識的にちょっとふに落ちませんことをお聞きしたいと思います。  第一点は、こういうことです。特に池田総理の話を聞いていますと、日本の経済はものすごい成長をしたということで、非常に今日まで宣伝をしてお見えになりますが、一人あたりの国民所得というものが非常に少ない。これは国会におります者はよくわかっておりますけれども、どうも国民には納得できないわけです。政府がお出しになりました「国会統計提要」を見ましても、これはドル建一人当たり所得になっておりますが、三十九カ国中、アメリカの一二%、イギリスの約四分の一、西ドイツの三分の一、イタリアの六〇%。だから、日本経済はものすごい成長である、特に鉱工業生産は、中国に次ぐ世界第二であるということが、盛んに太鼓をたたいて宣伝をされておるのだが、一人当たりの国民所得は、この表で見ますとスペイン、メキシコ並みの二十二位である。さらに一人当たりの消費水準というのはなお低いわけです。一体これはどういうわけでしょう。一つ御解明を願いたいと思います。
  145. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知の通り国民所得というのは、単に工業生産だけでないわけでございまして、農業方面の生産の拡大あるいは農業の進歩、発達というようなものにも関係をして参ります。また同時に、たとえばイタリアのごとく観光収入が非常にふえてくるということは、やっぱり国民所得の上に響いてくるわけでございまして、鉱工業生産だけから言うわけには参らぬと思うのであります。しかし鉱工業生産が伸びることは影響がある、これはむろんのことでございます。
  146. 楯兼次郎

    ○楯分科員 非常に正確な数字を出すことはむずかしいと思います。私もそれはよく承知をしておるのですが、先ほど申し上げましたように、日本の経済がものすごい発展をしておるという宣伝を政府はされるのだが、一人当たり所得を国際的に比較をしてみますと非常に少ない。その計算の仕方というものはいろいろむずかしい点がありますから、正確には私は出ておらぬと思います。常識的に見て政府の宣伝とわれわれ個人々々の宣伝は、このような開きがあるというのが国民の受けておる常識的な印象だと思います。われわれ社会党は、池田さんは成長率を宣伝されるのだ、成長率は一流国で生活は三流だということを言って反発をしておるのですが、なぜこういう現象になるかということを、具体的に常識的にお聞かせ願いたいと思います。
  147. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど申し上げたように、農業とか、あるいは観光収入とか、そういうものを別にしまして、工業だけの面で考えてみまして、やはり高度に発達と申しますか、高度に成長したものは比較的、輸出産業等を見ましても、マージンが多い場合が多いのじゃないか、あるいはそういうことによって付加価値というものが増加し得るのだ。従ってそういうものを、たとえば消費者あるいは経営者、労働者自体に分配するにしても、付加価値の多いものはどうしたってよけいに分配できるということで、比較的低度のものになりますと、そういうようにはいかぬ場合がある。従って工業がただ生産が拡大したといっても、頭脳的な付加価値が加わってくる、あるいは技術的な付加価値が加わってくるということになって、私はそういう所得と申しますか、生産における所得のプラスが出てくるのじゃないか、こういうふうに考えております。
  148. 楯兼次郎

    ○楯分科員 いろいろのことが言えると思います。原因があると思いますが、私どもが言わんとしておるところは十分おわかりと思いますが、この分配国民所得の構成比の国際比較を政府の統計によって比較いたしましても、勤労所得がきわめて少ない、それから法人所得が極端に多い、こういう事実はお認めになるでしょうね。どうですか。
  149. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 極端にというほどかどうかよく存じますんけれども、割合法人所得が今日まで多くて、個人所得が少なかった、漸次改善されつつあるということは言えると思います。
  150. 楯兼次郎

    ○楯分科員 私の方も、これは政府の統計でありますが、三十四年度の——これはおそらく言われたことと思いますので内容を省略いたしますが、この構成比を見ましても非常にアンバランスである。特に勤労所得をオランダ、フランス、カナダ、アメリカ、イギリスというところに比較をいたしましても、非常に低いわけですね。この事実はお認めになりますか。たとえば日本の構成比の勤労所得は五一%である、ところがオランダは五五・四%、フランスは五九・八%、カナダ六八・六%、アメリカは約七一%、イギリスは約七四%になっておる。これと比較をいたしますと、半分まではいかないのですけれども、ほとんどそれに近い勤労所得である。こういうことが、これは私どもではない政府の統計によって、はっきり出ておるわけなのです。時間もないようでありまするから、結論を申し上げますが、私どもは、経済の成長に見合う勤労所得がきわめて少ない、従ってこれは与野党の立場、政府社会党の立場でなくて、円満なる日本経済発展のためには、勤労所得の拡大ということを真剣に考えていただかなければ、こういうアンバランスが永久に解消しないじゃないか、こういうことを申し上げたいわけです。どうですか、この点お認めになりますか。
  151. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今のお話の数学は、大体その数字なんでございまして、そういう傾向が、工業生産国として低い日本において、将来の工業発展のために基礎的な必要から、ある程度企業自身の所得がふえていくということもやむを得ない場合があろうかと思います。しかしながら、逐次そういうものが是正されてくるという傾向にもございますし、また将来確立して参りますれば、当然是正される方向にいく、こう考えております。
  152. 楯兼次郎

    ○楯分科員 私ども予算総会へ出席をしておりまして、今私が申し上げましたことが、三十六年度の政府の年次経済報告にも出ておりますね。国民総支出に占める個人消費支出の比率は三十五印度で五〇%であるから、戦時中より悪い。これは社会党の連中が、本会議あるいは予算総会で、再三総理に質問しておるわけです。ところが総理の答弁は、何だかわけのわからぬ数字をべらべらやられてしまって、そのときには持っておらないから、帰って速記録と政府の統計と合わしてみますと、べらぼうに違っておるわけなんです。こういう点が政府の資料によって、個人消費支出が戦時中より悪いと書いてあるのだから、率直に認めて、しかし将来は、あるいはこういう原因があったというふうに、まじめに説明をし、答弁をされるのがほんとうだと思うのです。総理に質問をする機会がございませんので、担当の藤山さんにお伺いするわけですが、この点どうですか。
  153. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 おそらく設備投資が非常に大きいので、比率的に下がっているのではないかと思いますが、内容的に必ずしも戦時中よりも低下しているということは、言えないのじゃないかと思います。しかしお話のように、こういう問題をごまかしてみましても、しょうがないことなんでございますから、われわれとしては、将来ともそういう点については十分ほんとうな話し合いをしながら、それを改善する必要があれば改善するし、方針を立てていくべきものは立てていくということにいたして参りたいと思います。
  154. 楯兼次郎

    ○楯分科員 率直な御答弁だから、この問題については、これ以上お聞きしないことにいたします。  そこで、これは二、三質問があったと思いますが、新聞の答弁の記事あるいは総会に出ておっても、理解のできないことが一つあるわけです。それは、政府がお出しになっております経済見通し、これはあなた方の答弁を聞いておりますと、われわれはまじめに、この数字を見て将来のことを論議するのがあほらしくなってくるのですよ。おそらく、二、三日前の新聞では、二行ばかりわが党の堀君が質問しておる項目が出ておりましたので、詳細にわたってやっておるかもしれませんけれども一つお聞きをいたしたいのは、この設備投資の稼働生産増加の数字が違いますね。予算総会でもわが党の井手君が九千億円くらい数字が違うじゃないか、こういう質問をしたときに、藤山さんはいやそれは合理化だ、あるいは遊休工場も出るだろう、操短も考えられる、従ってそういう数字が出たのだ、局長さんか藤山さんか、どちらかちょっと記憶がありませんが、こういう答弁をしておられるのです。そうすると、この総生産に現われた数字の根拠というものは、ほかに資料があるわけだと思うのです。なぜお出しにならぬのですか。これを見て、われわれ質問すると、合理化のための設備投資に対する二年後の稼働生産増加が六〇%だ、企画庁でもそういう計算をやっておりますと、こう言いながら、そうでは九千億合わぬじゃないか、こう言いますと、やれ遊休だ、操短だ、あるいは合理化だ、これじゃ、議論にならぬし、われわれは架空の数字を一生懸命調べて、あなた方と漫才のような議論をしておる、こういう結果にしかならないと思うのですよ。従ってこの総生産の数字は、今申し上げましたような他の要素の資料があって、少なく見積もられておるのであるかどうか、こういう点を一つお聞きしたいと思います。
  155. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は数字に大へん弱いものでございますから、調整局長から……。
  156. 中野正一

    ○中野(正)政府委員 今の点を申し上げますが、われわれの方の、三十七年度の国民総生産の見通しというものは、御承知のような一番大きいのは個人消費の伸び、あるいは輸出の伸び、あるいは設備投資の伸び、在庫投資の伸び、この参考資料に載っておりますが、そういうものが大体どういうふうな傾向になりまして、来年度それがどういうふうにいくだろうかということを、いわゆる個々に需要要因ごとに積み上げまして、総生産というものがこうなるであろうという数字を出しておるわけです。その結果、今御指摘にありましたように、三十六年度から三十七年度にかけては、国民総生産は九千億ふえております。その九千億ふえてきたものは、三十六年度に比べると五・四%ふえるのじゃないか、こういう数字を出しまして——もちろんこれの前提には、この程度の総生産に押えることができれば、国際収支は下期に均衡するであろうということで、別にこの総生産に対応する輸入の規模、輸出の規模というものを出しまして、それから五・四、九千億という数字が出ておるわけであります。  それから今御指摘にありました一兆八千億なり二兆ということを、たしか予算委員会で井出先生だったか言われたのは、これは世間でいわゆる産出係数であるとか、要するに一ほど投資をしたらそれが幾らの生産力効果があるかというので、これを逆にひっくり返した数字が、いわゆる資本係数ということになるわけでありますが、そういうもので、かりにこれを検算してみたらどうなるかという御質問がございましたので、私がお答えしたわけであります。そのときには井出先生は、大体二年前の設備投資が顕在化するのじゃないか、生産が増加するのじゃないか、こういうことを考えますと、三十五年度約三兆の設備投資をやっておりますから、これに〇・六をかけると、一兆八千億というものが三十七年度には生産能力化するのじゃないか、そうすると片方の総生産は一兆八千億までふくらましてもいいのじゃないか、それを九千億しかやっていないのはどういうことなんだ、こういう御質問があったわけでありまして、われわれの方は、今申し上げましたように大体積み上げで、国際収支という観点から数字を出して、それに応ずる鉱工業生産は、五・五%くらいしか国際収支の関係から言うと伸び得ないのじゃないか、その程度に調整をしなければいかぬじゃないか、こういうことで数字を出したわけであります。しからばどういう結果になるかといいますと、各国民総生産の需要度のふえ方がありますので、たとえばこれが鉱工業生産にどう響くか。今言いました国民総生産というのは、鉱工業だけでなくて、第三次産業なり農業なり、全部のあれを含めての話でございます。そのうちで、それが鉱工業にどう響くかというものは、別にこれは通産省の方で作りました限界影響係数というものがありまして、それで鉱工業生産に幾ら響くかを出してみると、九千億程度の総生産がふえるのであれば、鉱工業生産は五・五くらいの伸びでおさまるのじゃないか。その結果は、鉱工業生産だけについて言いますと、達観して、どちらかというと供給力が多くて需要の方が足らぬのじゃないか、これは鉱工業にどう現われるかというと、実際に操業率が悪くなる。現在大体八四、五というフル生産ということでございますから、それが七〇とか七五とか、これはいろいろ計算がございますが、操業率が下がってくる。従って、各企業が来年度は相当苦しい経営状態になるのじゃないか。しかし、その場合にも比較的古い稼働を先に落としますので、この角度だけから鉱工業生産がどうなるということは、はっきりは申し上げられないわけでありますが、傾向としてはそういうふうになる。従って一兆八千億円総生産がふえてもいいというのは、産出係数、資本係数というもので検算をした数字でございます。われわれは、それに合わせて総生産をふやせば、それは鉱工業生産はえらくふえることになってしまう、そんなばかなことはできない、こういうことで、総年産も鉱工業生産も国際収支均衡のために来年度は成長率を落とせということを申しておるわけです。
  157. 楯兼次郎

    ○楯分科員 そういたしますと、この総生産は年度ごとに、今あなたの言われたような前提に立って計算をする、こういうことなんですね。つまり三十六年度の総生産に対して、新たな需要を積み上げない、こういうやり方なんですね。三十六年度を基礎数字にして、これに対して新たな条件を積み上げていかない、マイナスになる場合もあるでしょうが、そういうことですか。年度ごとに新しい、今おっしゃったようなやり方で作っていくのだ、こういうやり方ですか。どうもちょっとわからないのです。
  158. 中野正一

    ○中野(正)政府委員 ちょっとわかりづらいかと思いますが、第一表の参考資料のところを見ていただくとおわかりになりますが、要するに先ほど言いましたように、たとえばことしは個人消費が一四%くらい伸びているわけです。それが、来年は雇用がどうなって、賃金のベースがどうなる、公務員のベース・アップがあったからどうなるということをずっと積み上げまして、消費性向はどうなるかということで、消費指数は八・四%くらい伸びるだろう、それで九兆五千二百億という数字を出しておるわけであります。設備投資はことしより来年は落ちるであろうということで、各事業項目ごとに総生産、すなわち総支出の内容を出しまして、それを集計したものが三十七年度の見通しになるわけですから、三十七年度現在の現況に来年の要するに経済情勢というものを織り込んで、それじゃ、ことしほど来年は個人消費支出が伸びるというふうにはだれもお思いにならぬと思いますが、そこらはいろいろな積み上げでいろいろな計算をやりまして、その数字を算出しておるわけであります。
  159. 楯兼次郎

    ○楯分科員 もうやめます。
  160. 赤澤正道

    赤澤主査 質問者の順序は次は小林君ですけれども、待ってもなかなか入場されませんので、一応棄権されたものとみなします。  川俣君にお願いします。大臣の在席は五時までといたします。事務当局はあとに残ります。川俣君。
  161. 川俣清音

    ○川俣分科員 藤山長官に、ごく簡単にお尋ねをいたしたいと思います。よく政府民間も、最近企業の能率を上げるために、技術革新と合理化を徹底させなければならないと抽象的にいってる、抽象的そのままだと思います。それでよろしかろうと思うのです。ところが、どうも技術革新からもほど遠いし、合理化もできていない部分がたくさんあるのじゃないか。たとえば工場を設置するときに、工場の敷地などというものに対しての考え方が、決して合理的な考え方の上に立っていないと思う。これが金融業者であるとか、生命保険会社のようなものでありますと、土地並びにピルは一つの投資であるというふうに考えますから、この地価やビルの建て方については、一応合理的であるかもしれません。しかし工場などを建てるときには、土地が比較的安いとか高いとかいうことで論ずるのですけれども、企業の上から、一体安いのか高いのかということを、経営の中に入れての考え方でないと思うのです。だからこれは決してこの工場が相当合理化されておるなんて——あなたのところの土地は、一体幾らで買って今幾らになっていますか、さあ、そいつはわかりません、こういうことです。それでは土地の値上がりを企業の利潤に見るのか、いや、そういつもわかりませんということなんです。そうすると、工場の設置や土地の価格なんかについては、あまり合理的でないように思うのです。特に、時間を急ぎますために申し上げますけれども、電力会社などが、末端の施設などについては最近非常に合理主義をとってきております。けっこうなことだと思います。しかしながら一番大きな問題は、一番大きな固定資本のかかっております。ダム効率については、最近やや関心が深くなっては参りましたものの、まだ依然として旧態のままであります。窮鼠猫をかむようにいたしまして、ダム効率を上げるために、下の土砂吐きをあけまして、ダム効率を上げる。その結果下流に水害を起こしているというようなこともございます。そこで、一体ダム・サイトを作って、水をとめて、それからその水を有価値にするわけです。上流は無価値であって、そこから有価値にするわけですけれども、なぜそこから有価値になるのかというと、ダム・サイトを作って設備をしたから有償になるのだ、こういう考え方のようです。無償のものを受け継いだだけで有償になるというのはどこから出てくるのであるか、こういうふうに私は疑問に思うのです。そらならば初めからもっと上流地帯から、一体水をどう引いていくべきものか、こういうことを考えなければ、合理的だとは言えない、私はそう思うのですが、長官どうでしょうか。
  162. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御指摘のような点が、私は一般的に前段でお話しございましたような点が、工業の場合にあるのじゃないかという感じがいたします。私はいつも、ちょうど横浜から戸塚、大船を通りまして藤沢まで参りますと、あの周辺に非常な中小企業の新しい工場ができておりますけれども、ほとんどどういう道路から入るのかわからぬようなところに、実は工場を建てておられるようであります。道がないとは申しませんけれども、あれが設備の効率としていいかどうかというふうな問題を、あそこを通ってよく考えさせられるのでございますが、お話のようなダムの問題につきましても、これは知識がございませんから、何とも申しかねますが、これは十分な検討はむろんされておると思うのでございます。ことに今日まで非常に大きな金を使い、あるいは国家の援助を受けてやることでございますし、技術的にも、そこのダムを作ります、堤防を作りますところの地質の問題その他非常な要素がございますから、必ずしも狭いところだけがいいとも言えませんでございましょうし、あるいは上流がいいか下流がいいかという問題も、そういう面からも非常に技術的にも問題があろうと思います。しかしそういう点については、将来とも十分な立場に立って検討してきめることが当然であろう、こう思います。
  163. 川俣清音

    ○川俣分科員 私はここもう約十年、経企長官に対しましてこの問題を論じております。いつでも私が問いますときには、今後大いに検討するとかなんとかと必ず言われる。電力料金のときでも、結局ダム効率から計算をいたしてくるわけですが、その効率が高いか低いかなどということについても検討が足りないのです。ただ結果的に、幾ら幾らの経費で幾ら幾らの数量よりないから幾ら幾らだと、こう言う。それが御承知の通り、大正年間から今日までいろいろな発電ダムを作っておりますが、中には三つくらいは能率がなくなりまして、停止しているところもございます。十五年か二十年であれだけの経費を償却できるものでもない、それを償却すること自体が無理なんです。やはり三十年か五十年の償却率を見なければならない、そうしてこなければ、非常に高い電力料金にならざるを得ないと思う。それじゃどうしてそういうことが起こるかというと、結局ダムに土砂が流れ込んで、ダムの効率を下げておるという結果になる。それならば、さらに上流の雨量調査などを建設省に——これは雨量調査はしておるのですが、しかし雨量はもちろん大切でございますけれども、集中的にある季節だけにある雨量があるのか。一年中、平均に降っている雨量なのか、雨量の計はありますけれども、ある季節の雨量だけを調べるということではない。一年間幾ら、総計だけで見ている。そうすると、上流の渓谷の保安林の散布状態、または植林の状態などによって、雨量が地表からさらにしみ出して沢に流れるまでの時間が、山の状態によって違うわけです。四日かかるところもある、五日かかるのもある、六日かかるのもある、一度にどっとくるのと、徐々に来るのとでは効率が非常に違ってくるわけです。それなどの計算は、ほとんどしておらない。電力会社はむろんのこと、建設省もやっていない。これはどうしてもあなたの方の所管で、こういうものについては十分な関心を要するのだということにならなければならないと思う。これは普通は農林省の林野庁の仕事だとこう言いますけれども、林野庁は最近は木材価格の高騰に押されまして、木を切って植えるというだけです。農林省の調査によりますと、この世界の調査が、ごく一部より出ておりませんけれども、もちろん土壌にもよりますけれども、植林をして四十七年間くらいはそう保有能力がない、こういう調査が出ております。もちろん三年より五年、十年とふえることによって、幾らか保有能力は違ってきますけれども、やはり自然の保安林ほどの効率はないのだ。ところが最近、何でも木を植えれば山くずれを防ぎ、しかも保水能力ができて、水源林涵養になるのだとこういう説明をされておりますけれども、むしろときには逆でありまして、木を植えるということは、山肌を動かすことなんです。開墾するようなものです。この土壌を動かしたということによって、むしろ山くずれを起こしている例さえあるのです。こういう点についての検討が、ただ木を植えればいいのだというだけで、保安林地帯は木を植えればいいのだということには、必ずしもならない。特に集中豪雨などがあったところの災害を見てみますと、植林したがために災害が起きるという事態が起こっている。むしろ土壌が動いて不安定になっているところに、災害の発生の余地さえ与えておる。だからして、木を切った跡に木を植えればいいのだということではないはずです。こういう点について、総合官庁としてよほどの指導をしていかなければならないと思う。林野庁の技師になりますと、木は植えればいいのだ。植えて何十年かの能力と、今植えた能力とは違うことは明らかなんです。ところが、あまり木材の需要に応じてともかく切る、それもいいでしょう。しかしやはり水源地帯については、一体どう保存していくことが日本経済全体の上によろしいのか。木材のためにはこれがいいけれども、全体のためにはどれがいいのかということを、検討していかなければならぬのじゃないか、それはやはりあなたのところの仕事じゃないかと思うのですが、この点……。
  164. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 まことにごもっともな御意見を伺うわけでありまして、それぞれ各省といたしますと、電力開発をする場合には、電力開発に対して十分な力をいたす、しかしその水源保存については、建設省の部面だからある程度知識もないし、あるいは軽視するというようなこともございましょうし、あるいはただいまお話しのように、植林さえすればいいんだろうというと、土壌の関係で、植林したところに影響が起こるというような場合もございましょう。企画庁としても、総合的な各省庁の調節をいたす立場でございますから、今後そういうような点につきましては、十分そういうものの建設の場合に、この点は土砂くずれが山奥で起こらないのか、あるいは植林をすればどういうふうにいいのかというようなことについては、企画庁も技術的な立場では、若干実は組織からいえば弱いのでございまして、あまりえらいことも申しかねるかもしれませんけれども、常識的な判断の立場に立ちまして、そういう点については注意いたすようにいたしたいと思います。
  165. 川俣清音

    ○川俣分科員 技術的な立場に立てばというのですが、私らも技術的な立場に立てば弱いはずなんです。ただ、災害が起きましたり、ダム・サイトの土砂吐きをあけたりいたしまして下流に水害が起きたという事態を見に行くたびに、現実にぶつかるわけです。なぜ起きるかというと、今申し上げたように、電力会社は、従来過去何年間の雨の量は幾ら幾らであった、従ってこの流水量はどのくらいであろう、こういう計算はしておる。それに対応できるようなダムの設備をする。一時に降ったのか、どの沢で降ったのか、それによって違ってくるわけです。圧力も違ってくるわけです。土砂を含んで流れた場合の圧力と、徐々に流れてきた場合の圧力と、一時にどっと来た力と、徐々に来た力と違うわけです。雨はどのくらいの量だからどうだ、この計算だけです。従って集中豪雨等が起きますと、大きな災害が発生する原因がそこに出てきておると思うのです。特に今後、電力料金の問題等が問題になります場合、この上流に対する計画が十分でなかった分は、これは政府が負担する、電力会社が責任負担をしなければならぬのじゃないか。これを決して消費者に転嫁すべきものではないのではないか。ダム・サイトのダム効率が悪いという分の経費は、当然計画の中に織り込まれていなければならないものを、失敗したために消費者に転嫁するというようなことは、合理的なことではないかと私は思うのです。技術革新とかいわれておりますが、工場の内部であるとかあるいは発電所の内部はかなり合理的になっておりましても、問題の根本については合理的でない部分がある、その部分を消費者や産業人に転嫁していくことは避けなければならぬ。そのことがより合理的であると思うのです。だから技術革新なり合理化なりは、そこまで徹底していなければ、ただ無責任に消費者に転嫁をして、物価高を来たすところの誘因になるのではないかということです。この点について……。
  166. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ダム等を建設いたします場合に、少なくともその場合における建設当局者の過去の最高の経験と、当時におきまする最高の技術を持って建設をするわけでございまして、むろんそういう意味においては万全を尽くしておると思います。ただしかし、今お話しのように、自然的条件というものは、非常にいろいろな変化が起こるものでございますから、従って予測しないような事態が惹起されることもあるし、また、そういうことが起こったことによって新しい研究が進んで、将来の改善にも資していけると思うのでありまして、それ自体をすぐに消費者に転嫁するというわけではないと思いますけれども、しかし、それでは非常な粗漏な計画を立てて、そうして全部会社に責任があるんだというふうにだけは言えない点がある。当時の事情からいえば、最善を尽くしたのではないか、こう考えるのであります。
  167. 川俣清音

    ○川俣分科員 電力料金のコスト計算の場合に、計画は何キロ、現実は何キロ、従ってこのコストは幾ら、こういう計算をする。計画通りの計算でいきますと、コストが安くなるわけですけれども、現に能率が上がらないということで、コスト高になっておるということは、計画が悪かったということになるんじゃないでしょうか。これだけの計画でこれだけのキロワットを出すのだ、こういうことで国から融資も受ける、電源会社も融資を受けてやったものの効率が悪ければだれの責任か。消費者の責任じゃないと思う。政府の責任でもないのじゃないか。各社全部調べてごらんなさい、当初計画通りの発電力を持っていないのです。ところがみな持っていないのはあたりまえだということになっている。それでコスト計算がされているのですよ。これは不合理じゃないか。ことに電力料金等は、あらゆる物価に先行するものです。近くまた電力料金値上げ等の問題が起こってくる形勢があるわけです。今からこれを問題にしておかないと、そういう危険も出てくるというところから、あえて質問しておるのでありまして、大臣の、特に注意を喚起しておきたいゆえんなんです。  次に、問題は先ほど申し上げた地価の問題ですが、農村の地価と都市の地価とに非常な格差がある。この格差は何によって起こるかというと、所得格差から起こってくる格差だ、こうもいわれるのですね。うちを建てて住居をするために要する土地です。農村であろうと都市であろうと、その用途は同じなんです。どうしてそれだけの地価の相違が出てくるかというと、それは都市におる人の所得と、農村におる人の所得との相違が、地価になって現われてくるんだと見る人もあるのです。これも一つの見方だと思うのです。この都市と農村の間の地価の相違は、何人にも大体わかるのです。都市は大体どのくらいだ、農村は大体どのくらいだ、この相違はどこから出てきたかというと所得格差からだ——所得格差があるかどうかということは議論がありますが、この地価を見れば、確かに所得格差から出てくるんじゃないかと思われる要件を含んでいるように思うのですが、大臣はどうですか。
  168. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ごく単純な、原始的な意味からいえば、そういうことがいわれることもあると思いますが、しかし今日の地価の問題は、必ずしも所得格差という問題からでなく、特に都市においては、所得というようなこと以上に、いろいろな投機的要素が加わっておるというような点もございます。従って、たとえば農村地帯におきましも、新しい何か道路ができ、あるいは工場が一つできると、その辺の地価が非常な勢いでしがるというようなことで——工場ができたらすぐに農産物がよくできるかというと、できるわけじゃない。しかし地価が上がるというようなことは、必ずしもその所得からくるのではなくて、将来何らかの形でそういう方面に都市の形成が行なわれるのじゃないかというような問題から、価格の変動が起こるわけでありまして、ごくプリミティブに考えれば、所得の格差の違いで高いものが出せるのだというように思いますけれども、しかし今日の所得の格差だけが原因になるのではなくて、将来の収益の問題も入り、それが投機的になる場合もあります。あるいは土地の交通の関係等から見まして、交通の非常に有利な場所というようなものが著しく高いという、いろいろの条件が加わっておるのだと思います。
  169. 川俣清音

    ○川俣分科員 私これを問題にしたのは土地価格というものはどうして生まれてくるのであろうか、この土地価格というものをある程度押えることを考えないと、今後都市の近所にできまする生鮮食料等の値上がりに、非常な影響をするであろうというところからこの問題を出したのであって、別に大臣と地価論を展開しょうというわけでは決してないので、今後都市が異常な膨張をいたすことによっていわゆる地価が上がる。地価というものは、どういうところから形成されるかということを別にいたしまして、上がっていく。そうすると、ここに生ずるところの生鮮食料品というものが上がっていく、あるいは運賃が高じてくる、あるいは流通機構が複雑で中間経費が多くなるということで、生産費に見合わない消費価格が止まれてくる。こういうことで政府が頭を悩ましておられる。やはり基本的に、年産基盤である土地をどういう程度に押えていくのがいいのかということが、ひいては今後の公共事業の土地価格にも影響してくることでありましょうし、やはり総合官庁として地価政策というものが立てられなければならない。にわかに起こってくる物価だけを追っておっても、なかなか根本解決にならないのではないか。少なくとも企画庁は、こういう先行するすべての問題について検討していかなければ、あとあとから物価対策を講じてもとうてい対抗できないのじゃないか。経済の流れをあとからながめていって批判することだけでは、十分ではない。いろいろ批判して分析することは、将来の施策を立てるための必要な分析でなければならないのだと私は思うのですが、これ以上あなたと議論しても問題の解決にはならないわけです。  最後に二点、どうしてもお聞きしておきたいことは、今の自由経済においては、幾分でも統制が加わることを非常にきらう傾向がありますが、業界自体でも、これだけ複雑した機構になって参りますと、お互いが牽制しなければならないことになる牽制ということは業界の一つの統制みたいなものでしょう。国民経済等から見まして、ある産業はやはり一つ調整を試みなければならぬことが起こってくると思う。それが、統制という言葉が当たるかどうかわかりませんが、国民生活のしから、ある程度の調整をしなければならぬということになるのであろうと私は思います。そこで大臣が先般、独禁法などについての運用について、なかなか見識のある発表をしておりますが、通産省や農林省がこれについていけるかどうか、非常に疑問のようですが、これは大臣、どう御解決になりますか。非常に高い見識を持っておられるのですが、あとの閣僚がついていかなかった場合には、一体どう処理されるのか、この点だけをお尋ねしておきたいと思う。
  170. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私自身が別に高い見識を持っておるわけでございませんで、全体として有能な各省大田がおられることでございます。ただ当面実施の衝に当たっておられる方などについては、いろいろ具体的な問題もあろうかと思いますので、そういう面を解決しながら、そうした物価問題その他に対する公正取引その他についての御議論が出るわけでありまして、そういう点は、われわれも実際的に考えながら、しかし、そうしたものが効果を上げるようにお互いに話し合いをしながら進んで参りたい、こう存じております。
  171. 川俣清音

    ○川俣分科員 企画庁は確かに実施官庁ではない。しかし、物価が上がるというと、責任は大臣のところだ、こう責められますよ。いや、おれのところじゃない、実施官庁はおれのところじゃないと言ったって、物価の上がったところの責任は追及されなければならない。そうでしょう。そうすると、やはり企画庁は、総合経済の上からこうあるべきだということを打ち出されるのが当然な責任だと私は思う。これをやらなければ、企画庁何しているんだということになりますから、当然の責務として、こういうものが打ち出されてくるのが当然だと思います。ただ、実施官庁がついていかなかった場合に、これは責任は実施官庁にあるのかといえば、そうじゃなくして、やはり責任は、経済の総合成長といい、物価といい、全部経企がこれをかぶらなければたらないという立場に置かれておるわけです。あくまでも、やはり全体の経済の上からの総合官庁でありますから、有力な大臣がおるからやるであろうかということですが、やらないために非難があなたのところに来るわけでしょう。やってもらえばあなたのところに何も来ない。実施官庁がうまくやっておれば、あなたの方へ一つも非難が来るはずがない。非難が来るというのは、実施官庁がやっていない証拠なんです。そうでしょう。実施官庁がうまくやっていれば、問題は起きてきませんよ。生鮮食料品にいたしましても、はかの物価にいたしましても、うまくやってくれれば、何も藤山さんのところに、こんなことはけしからぬ、どうするんだということが起こってくるわけがない。政府全体が責任をとられることはないのです。実施官庁があまりに旧来の陋習にとらわれて脱皮できないところに、非難が内閣全体あるいは経済企画庁にかぶってくるのだ、私はそう理解いたします。その理解は間違いでしょうか。
  172. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その通りでありまして企画庁としても十分各省に対して、経済の問題につきましては率直な意見を申して、そうして各省と協力して進んでいくことにいたして参りたい、こう思って努力をいたしておるのでございます。
  173. 川俣清音

    ○川俣分科員 そこでせっかく藤山さんがみんなの期待に沿うような案を出されておるので、今度はうまくやるだろうというところに拍手を送っておったところが、どうもほかの実力者と申しますか、実力者かどうか知りませんけれども、業界に引かれて実力者になったのか、それは別にいたしましして、ブレーキをかけられておったのでは、あなたの方の使命が果たせないということになるのじゃないでしょうか。総合官庁が一番実力を発揮しなければ政治の運用がうまくいかないのじゃないか、経済の運用がうまくいかないじゃないかということを一つお尋ねしているだけなんです。どうかその意味で、独禁法などについても私は長官に期待するところ非常に大きいのであります。これは後退されるようなことがありまするならば、経企庁の責任者としては不適当だということになるのじゃないかと思うのです。どうか一つ御勉強願いたい、こう思いまして、私の質問を終わります。
  174. 赤澤正道

    赤澤主査 小林君。——小林君に申し上げますが、一応は棄権だとみなしたのですけれども、せっかくおいでになったので、していただきます。淡谷さんみたいなまじめな方もおられますので、淡谷君に免じてやっていただきますが、一つ時間には御協力をお願いいたします。  それからなお、あなたの御要求の食糧庁長官を呼んでおります。企画庁長官は五時までここにおりますからどうぞ。
  175. 小林進

    小林(進)分科員 それはどうも。五時まで企画庁長官に質問せよというお言葉ですが、神わざをもってしても困難なことでございまして、民主主義と常識を尊ぶ国会において、そういう非常識な強制を主査がおやりになるということはまことに残念でありますけれども、できるだけ協力いたしたいと思うのでございますが、なかなか企画庁長官に私ども質問する機会がございませんので、あるいは企画庁の問題でないかもしれませんけれども一つ、まげて御答弁をお願いいたしたいと思うのであります。  今までのわが日本経済というものは、大別いたしまして、金と物を中心にして経済というものが企画せられ、運用せられて参りましたが、もう二十世紀も後半に入りました今日のこの段階においては、しかもわが日本においても、民主政治もこうやって終戦後十六年もたったわけであります。この構想はここで一つ改めて、今度は人の経済、いわゆる労働力であります。この世の中で一番尊いものは人間であることは、私が申し上げるまでもなく大臣も御承知の通りであります。その一番尊い人間が働くことによって物が生産せられ、社会は進歩していくのであります。この人間というものを中心とした経済、特に人間が働くというこの労働力を中心とした経済というものを私は真剣に考えていくべきじゃないかと思いますが、そういうことを企画庁長官としてお考えになったことがありますかどうか、お尋ねをいたしたいと思うのであります。
  176. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この経済の発展におきまして、労働というか、今のお話で言えば、人間という言葉の方が適当かもしれません。人間の力が重要であることは申すまでもないのでありまして、古いオーソドックスの経済から言いましても、そういうことに相なろう思うのでございます。決してそういう点をないがしろにするわけではございません。
  177. 小林進

    小林(進)分科員 昨年も私、ずっと外国を回って参りまして、これは私の率直な所感でありますけれども日本ほど人間の安いところはないということを痛感して参りました。日本ほどいわゆる労働を安く買っているところはないということを私は実感をいたしてきたわけであります。今所得倍増などということを盛んに叫ばれながらも、依然として日本では労働力というものは、別の言葉で言えば賃金でありますが、非常に安い。これは私が言うのじゃありません。これは労働省の基準局長でも呼んで、ここで証明すればよろしいのです。基準局長みずからも基準監督署長会議を開いて言っております。それは一面には、藤山さんなんかが経営されているような大企業の方は、一応内面は別にいたしましても、政府のPRをもってすれば、若干国際的なレベルにいっているところもあるかもしれませんけれども、しかし、その反面には、そういう大企業には必ず臨時工だとか社外工だとか日雇いというものがあって、これが景気、不暑気の調弁役を勤めながら、低賃金によってこれが押えられておる。これが中小企業にいきますと、大企業から見れば三分の一強程度の低賃金労働者がまるで充満をしているという状況でございまして、一年間働いても、まだ年収八万円にもならないような労働者が、われわれの調査だけでも四百二十万日本におるという状況でございます。日本ほど労働のロスのあるところはない、人間を粗末にしているところは、私はないのじゃないかと思う。こういうような低賃金を払って、人間を粗末に扱って、わが日本が先進国として伸びることは私は不可能だと思います。大臣の前にそんなことを申し上げたら釈迦に説法で、こなまいきなことを言うなとおっしゃるかもしれませんが、まあ聞いて下さい。私はアメリカに行ってロスアンゼルスに回った。あそこにはミリオンダラース・ストリートといって、アメリカじゅうの金持ちが全部別荘を作っている通りがあるのです。これは当時のロスアンゼルスの総領事館から聞いた話でありますから、受け継ぎであります。その別荘が、私ども通ったときにみなこわされている。あるいは売りに出ておる。どういうことかということを聞きましたら、それは金持ちは金に困っているわけじゃない。一体アメリカにおいては労働力が足りない。この別荘を維持するための女中さんもいない、あるいは下男と言いますか、庭掃きもいない。いないわけじゃなくて、非常に高くて、そういうような庭掃きとか女中さんだとか庭師ということで人を雇うことはもうアメリカの経済では許されないのだ。いかに金持ちでも許されない、それはそうですよ。最低賃金だって、一時間女中さんがアルバイトで子守に来ても一ドルです。一ドルは申し上げるまでもなく三百六十円。日本が今政府の扱っている最低賃金で払われている賃金は幾らですか。業者問協定で払われている賃金は今でも二百円ですよ。百二十万人が業者間協定の中に入って、賃金は業者間協定で最低賃金が実施されておりますけれども、二百円から最高二百七十円です。これは八時間で、一日分。アメリカは一時間。今度はケネディが一ドル二十五セントにすると、これは幾らになりますか、四百八十円。一時間四百八十円と一日八時間労働で二百三十円、これは十六分の一であります。十六分の一の賃金になっているじゃありませんか。それを日本政府はPRしないで、国際的な賃金に日本がいっている、そんなばかなことを言っている。比較するなら日本の最低賃金とアメリカの最低賃金と比較してもらえばよろしい。こっちの業者間協定という政府の作った最低賃金は二百円から最高二百七十円です。アメリカの最低賃金は今申し上げるように一時間四百八十円じゃないですか。やみで言えばもっと高いけれども、公定で言っている。そうすると十六分の一です。比較するならばそういう比較をしてもらわなければ困る。これは日本がいかに人間をロスに使っているかという——それはだんだん所得倍増のおかげさまで出前持ちやらそういう職業も、日本では払底いたしまして、こういうことから人間の価値が上がりつつあるかと思いまするけれども、僕はその意味において、人間の労働力をロスに使うとか、人間に最低賃金を、人並みの賃金を払えないような事業は、これは事業として成り立たないという、こういう一つの規格を企画庁あたりで組んでもらえないかと思っている。今、中小企業者あたりなんか、金と物があれば人間なんてものを勘定に入れないですぐ事業をやる。そして日経連あたりのものの考え方は、いわゆる賃金の原則は事業ワクの中で、利潤の中で賃金を払うというのが経済の原則だと言っておる。大臣、言っておりますね。大臣、言っていないとおっしゃるなら、日経連の言葉をここで証明します。いかなる場合にも賃金は支払う能力のワク内において考えるべきである、こういうことですね。だから事業が利益が上がらなければ、なに一日使っても、百円でも八十円でも払っていくのが経済の原則だ、事業の原則だという、こういう原則を日経連あたりは掲げている。そしてみんな人間を痛めつけて牛馬のごとく使っている。これは経済の原則として私は非常に間違っていると思う。まず事業を起こすならば、金や物よりも、人間の労働力をどう考えるかということが、近代的な産業においては事業の原則にならなければいかぬと思うものでありますけれども、これはかつて商工会議所の会頭でもあり、また日本の企業を代表されておりました藤山先生はいかようにお考えになりましょうか、一つお聞かせを願いたい。
  178. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 人間を尊重し、それから一国経済が発達いたしまして人間生活を向上さしていくというのが最終の政治の目的であることは申すまでもございません。ただ御承知のように、日本は、日本全体の国土がカリフォルニア一州にしかすぎないような狭い国土でございまして、その中でほぼ一億に近い人間がともに生活をして参らなければならぬわけでございまして、これの生活を向上し、あるいは給料を上げる、改善して参りますということは、これは非常な大事業と申しますか、大きな仕事でございます。そうしてそれが政治の終局的な目的になることもまた当然だと思います。近代産業がだんだん発達して参りまして、そうして多くの職場改作っていきます過程におきましては、ある場合やむを得ない低賃金ということも起こるわけでございます。御承知の通り、日本において今日ある部面には人が足りないという面がございますけれども、また過去の家族制度の関係から、農村等にはいわゆる潜在失業者というような種類の人たちもないとは言えないのでございまして、こういう人たち全体のレベルを上げて参りますということは並み大ていのことではございません。従いまして、産業を今一気にアメリカなりあるいはイギリスなりと同じ賃金に持っていくということは、不可能なことだと思うのでありまして、そういうことをやりましたならば、日本経済そのものが破滅をして将来の希望を失うことになるのではないかと思います。しかし、そうかといって、徐々にこれを上げていくことは必要でございます。また同時に、三百六十円の為替だけでもって賃金を比較していただきますことは、外国人はよくすることでございますけれども、生活の内容等から比較して、三百六十円換算だけでは必ずしも適当な評価にならぬのではないか。決して日本のあれが高いとは私は申しません。しかし、外国人の言うように、三百六十円の為替で比較してというわけには参らぬ点があろうと思います。従って、今お話しのような大きな理想を同時に持ちまして、そうして徐除に日本の経済を充実し発展させ、そうして政治上の目的を達しますために、今日こういうふうに与野党が論争もし、国会において大いに勉強をいたしておるのであります。
  179. 小林進

    小林(進)分科員 大臣もお急ぎのようでございますから、大臣の御答弁に私は決して賛成をするわけにいきませんけれども、問題を次に延ばしていきたいと思うのでありまするが、いま一問は、日経連の白書なのでありますが、その白書の中に、自由貿易、輸出の赤字を克服するために、日本はやはりコストを下げていかなければならない、これは至上原則だ。そのコストを下げるためにやはり賃金のベース・アップは困る。だから賃金を押えていかなければならぬというのが終始一貫した考え方です。経済企画庁長官として、こういう日経連の賃金白書をごらんになりまして、一体大臣はどうお考えになりますかということなんです。私は実にこの中に矛盾を感ずるのです。なぜかならば、彼らはこう言っております。いわく第一番目に、今まで消費ブームということで物が非常に売れているときば、事業家は内需に重点を置いて、そうして輸出というものを軽視をした、それがこのたび赤字になって、壁にぶつかった一つの原因である。これは労働者の賃金のためでないことは明らかですね。これはいわゆる日経連の白書の中でみずから自白していることなんです。みずからの誤れることを自白をしておる、間違いありませんな。自分たちの経営の悪さを労働者の低賃金に押しつけてくるということは間違いなんです。お思いになりませんか。いま一つ、日経連の白書の中に、日本はどうですか、日本くらい近代産業の盛んな国において、こんなに高利子の国はありません。これくらい高い利息で銀行なんかから金を借りて、しかも利潤をあれくらい上げ得る産業日本にあるということ、これは日本の経済自体がまだ正常な姿じゃないと私は考えますが、大臣いかがでございましょうか。そういう矛盾を彼らは克服しようとはしない。そうして高い利子を払い、利潤を上げている。過去二年、三年間の高利息と高率の利潤の上げ方という点で、世界に日本産業に匹敵するものはございません。その利潤を上げるときの労働者の苦労なんというものは並み大ていのものではございませんけれども、それを彼らは一つも言わないで、今自分たちの事業が輸出の面において壁にぶつかってきたときにも、その利息を直そうとしない、利潤を節約しようとはしない。しかも今申し上げたような、自分たちが内需にのみ力を入れたという経営の仕方の反省をしようとしないで、賃金一方で押えようとする。こういうものの言い方は、いかに経営者横暴なりといえども私はけしからぬじゃないかと思う。  特に私は、この際、時間がありませんから、つけ加えて大臣にお尋ねしたいと思いますのは、日本の生産と消費の水準でございます。生産のこまかい数字は大体わかりましたけれども、六〇%くらいまで消費の水準が近代産業では高まっている。ところが欧米先進国では、生産と消費水準の比較は七〇%少しで、数字は少しは狂っているかもしれませんが、日本よりは消費水準が高まっている。しかし、日本の消費水準を厳格に内容を見ると、昨年度で投資の総額は三兆七千億ですか、ことしも大体三兆七千億という投資をする。その投資の内容です。その投資の内容をこまかに見ますと、私は大臣のように生まれがよくない、貧乏人ですから、非常に貧乏なところに根性がいくのでありますけれども、その中には、いわゆる接待とか招待とかいって、外国のお客さんが来た、役所にお客さんが来た。経済企画庁はお客さんを接待することはないでしょうけれども、接待をするということで、やれ新橋だ、赤坂だ、ミカドだ、幌馬車だ、赤馬車だということで、こういういんしんのちまたが、夜ともなれば世界第一等の歓楽と消費のちまたを発現するわけです。これが会社にいけば、その費用は消費じゃない。実際は、これは事業の勘定にはみな投資として勘定されているはずです。けれどもその内容は、決して材料費でもなければ設備費でもなくて、いわゆる接待に浪費されている。一つの例ですけれども大臣聞いて下さい。私の選挙区ではありませんけれども、燕という洋食器の町がありまして、アメリカに行かない、みんな斜陽産業で倒れかかっている。倒れかかって労働者を首にしながら、燕の町から三里離れた三条という町に、御殿のようなりっぱな家を作っている。だれがあそこに御殿のような家を作ったのかと思って、私はわからなかった。そうしたら、これは洋食器を買いにくるアメリカのバイヤーを接待するためには、三万や五万くらいの都市では料理屋も宿泊所も満足なものがないからというので、特にアメリカのハイヤー接待用に設けたのだというのです。あすあさってにぶつ倒れるような、労働者に労働賃金も払えないような諸君が、そういう接待供応用の御殿のような高楼を作って、なおかつ歓楽のちまたを発現している。日本においては、労働者の賃金よりも、設備費よりも、材料費よりも、そういう接待や供応や買収が事業経営に一番重要な要素に勘定されている風習がある。それがみんな設備投資の中に計上せられている。だから三兆七千億の投資をしたといっても、その投資の中には、そういう全くむだな消費がおそらく三割ぐらい含まれているのではないか、こういう経営の不合理さです。こういう経営の不合理さを大臣企画庁長官として追及されたことがございますか。これを勘定したことがございますか。そうしてその中には汚職あり、堕落あり、犯罪あり、あらゆる資本主義の悪が渦を巻いている。そういうことを経営者自体が反省もしないで、自分たちの事業が盛んなときには、試用工だ、臨時工だといって夜を日についで一生懸命働かして、一たん不況になれば、大根を切るようにすぽっと首を切っている。そうして労働者にしわ寄せをして、労働者の賃金は上げられない、輸出コストが大事だ、こういうことが通りましょうか。あなたは生まれながらにして経営者の血しかない。労働者の血はあなたの中には入っていないけれども大臣の良識をもってすれば、私の申し上げていることに御共鳴願えると思うのでございますが、大臣いかがでしょう。
  180. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 いろいろ例をおあげになりまして、おもしろいお話を伺ったわけでございますが、むろん私自身経営者の中から出てきた者でございます。過去におきましては、日経連あるいは経団連、会議所等にも関係して参ったのでございますが、その経験から申しまして、私は、今御指摘のようなことが全部が全部とり行なわれているとは思いません。むろん、たまにはそういう人もあるし、あるいは傾向として若干そういうことはあると思います。ですから、そういう点は資本家が直していかなければならぬ、経営者自身が直していかなければならぬということも必要なことだと思います。がしかし、同時に、やむを得ない面もあるのでございまして、これは決して反撃を申し上げるわけでも何でもございませんけれども、たとえば合理化の設備をして、そうして百人使っていたところが、化学機械工業等においては、新しい設備をやりますと、アメリカのように二十人で済むというような場合もございます。ところが、なかなかその八十人の職場転換が困難でございまして、企業が拡大することによってそういう者も解雇しないで吸収していかせようということのためには、非常な努力が要るわけでございます。また、そういう点について御協力をいただける組合もございますけれども、なかなか御協力をいただけない組合があって、経営者が困る場合もあるわけでございまして、資本家あるいは経営者の悪いところは十分直して参らなければなりませんが、同時に、労働組合側におきましても、そういう点については十分な御協力を願っていきますれば、円満に進行していくと思います。ただいま燕の例をお引きになりましたが、どうも日本人は外国人に対して接待が非常に上手であって、来た外国人が大がい喜ぶ。日本人同士がそういうことをすることはあまり適当でないと思いますけれども、ある程度外国人には、単価にならない程度においては、こういうことによってもし燕市の洋食器に対する理解と同情が出ますれば、適当な場合もあるわけでございまして、一がいにそれだけを非難するわけにも参らぬかと思います。ことに燕のようなところは、必ずしも大資本家が集まった都会ではございません。中小企業の方々が営々辛苦して、そうして自分の販路の拡張のためにそういう設備が必要だったということであれば、これは今御説のような悪い意味からでないように思うのでありまして、そういうような点は御理解をいただくことが必要じゃないかと思うのであります。しかし、全体として、今日日本の経済を伸展させますために、お互いが気をつけて、そうして足らざるを補い、お互いに反省しつつ進んで参ることは必要だと思いますので、そういう点については、われわれ政府にありまして民間を指導する場合に、十分配慮していくつもりであります。
  181. 小林進

    小林(進)分科員 大臣はお急ぎのようで、どうせ大臣と私は平行線でございまして、とうてい御一致願うわけにはいきませんから、もうこれでやめますが、私の申し上げましたのはそんなわけで、そういう財政投融資の中に含まれているものも、消費に回せば、日本の消費水準は欧米先進国よりもむしろ高まるのではないか。そうしてその中にはずいぶんむだな浪費があるのではないかということを申し上げたかったのでありますが、大臣は、悪い意味じゃないのだから、大いに飲み食いせい、接待せいという意味でもないのでしょうけれども、御否定にならなかった。これはけっこうでございます。この問題はまた場所をあらためて、一つどうしても私は結論を出したいと思っていますので、日にちをあらためてお尋ねすることにいたします。大臣もお急ぎのようでございますからいま一問でございます。  実は農業問題でございまするが、企画庁は、各省にまたがったときの調整をおやりになるというから、これも大臣にお聞きするが、どうも所得倍増の陰に農民がだんだん追い込まれて参りまして、その結果、兼業農家というものがだんだんふえて参りました。兼業農家は別にいたしましても、農村の所得が四十一万ばかりでございます。一戸平均が、三十五年度でございますけれども四十一万、そのうらの四六・七%は農業以外の収入でございまして、農業による所得は五三・三%です。これはもう他の所得ですから、だんだんこれは、私の言葉をもってすれば、農民が農民でなくなりつつある。百姓が百姓でなくなりつつある。これが私の持論なんでございまして、これは別にいたします。その中に第二種兼業農家と言いまして、これは御承知のように、生活の主たる収入を農業以外の他の収入、労働賃金あるいは小商売によって収入を得ているものです。そうして農業はアルバイトだ、農業に従事して得る収入はほんの家計の補助にしかすぎない。農業をやるものは、これは第二種兼業農家などという言葉を使っておりまするけれども、これを正式な職業の区別をしていったら、私はこれは農業じゃないと思う。農民じゃないと思うのであります。農業従事者じゃないと私は思う。むしろ、その人が賃金を主体にして収入を得ているのならこれは労働者、商業を主にして農業が従なら、これは商人でなければならないと思うのでありますが、こういう人たちがだんだんふえて参りまして、現在では第二種兼業だけでももう農民の、いわゆる農家と称するものの中の三二%から四〇%くらいに上がってきたのです。三割以上を占めています。そうすると、この農民にして農民にあらざるものを、これは当然所管がえをして、これはもういわゆる農林省の対象からはずすべきものではないかとさえ私は思っているのです、まず主管の問題から。それからいま一つ、こういう人たちのめんどうを一体どこの官庁で見てくれるか、どこで一体始末をされるかという問題です。大臣は、こういうことをお考えになって、この人たちに対する処遇、待遇を一体企画されたことがあるかどうか。企画庁長官が、農民の三割五分を占めるこういう人たちのことをまさか企画しなかった、考えなかったなどということは、私はないと思うのでありますが、具体的にして有効な策を一つお聞かせ願いたいと思うのであります。
  182. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 農業を主体にしておらぬで、たとえば商業を主体にしている、あるいは勤労生活をしてささえている。そうしてその間に、ある意味からいえば園芸的と申しますか、そういうことをやっているということであれば、必ずしもそれは農業の範疇に入らない。主たる収入がそういうことであれば、むしろ場合によると、一家の食糧を自給する程度以上には農業として貢献してないということであれば、それはおのずから農家の範疇からはずれてくると思います。ただ現状において、そうはっきり分けられるかどうかということは、まだ問題ではないかと思うのでありまして、そういう点については、今後行政の上で十分農林省が農業基本法の運営を始めて、そうして選択的拡大その他によって農業改革が行なわれると同時に、それらの方々が行く道がおのずから定まってくるのではないか、こういうふうに考えております。
  183. 小林進

    小林(進)分科員 大臣よろしゅうございます。以後の質問は今度農林省に一つ……。  今私が企画庁長官に質問をいたしました問題でございます。私は、農業あるいは労働者あるいは商工業者等の区別は、その生計を保つ主たる収入を何によって得ているかによってその職業はきまると思っている。第二種兼業農家というがごときは、一家を償う経済の主力あるいは生計を保っている主たる収入というものは農業以外の収入によって得ているのであります。これは単に農村に住んでいるというだけであって、純粋の意味における農民、農業従業者ではないと私は判断するのでありますが、いかがでありましょうか。
  184. 大沢融

    ○大沢(融)政府委員 ただいまの御質問、おっしゃいますように、農林統計で農家を扱います場合に、専業農家、兼業農家、二つに分けまして、兼業収入のあるものは兼業農家ということで扱っておる。特に兼業農家の中で、兼業所得の方が多いものを第二種の兼業農家、こういう扱いをしておるわけであります。従いまして、第二種兼業農家については、農業所得の方が農家としては少ないわけですから、これは農家でない扱いをした方がいいというような、あるいはそういう御意見もあろうかと思いますけれども、ただいまのところは、兼業農家の第一種、第二種、専業ということで考えまして、農業施策あるいは兼業農家の兼業機会を作り出すとか、よそに就業する人については労働省がめんどうを見るとかというようなことで、農林省のみならず、各省が一体となっていろいろのお世話をするという形で仕事をしておるわけでございます。
  185. 小林進

    小林(進)分科員 今大津さんですか、あなたは食糧庁長官と、それから審議官と両方を兼ねておいでになりますな。まだ二またのわらじをおはきになっているわけですね。それは前の食糧庁長官が参議院へお立ちになるためにおやめになって、急に人事の異動があったわけでありますから、急遽二またのわらじをおはきになった、こういうわけでございます。それで、今の御答弁は、食糧庁長官としての御答弁ではなくて、審議官として御答弁願っておりますね。けれども、私は、今あなたの御答弁の中に、やはり第二種の兼業農家として農林省もめんどうを見る、主たるめんどうはやはり農林省が見るということでございましょう。あとは労働省あるいは他省で見ると言いまするが、具体的に一体この零細なる第二種兼業に対してどういう策をお持ちになっておりますか。私は大臣がおいでになったらお尋ねしたいと思ったのでありますが、農業基本法の第二十条には、今おっしゃったように、あるいは文教政策、あるいは職業訓練所、あるいは社会保障等々で農民のめんどうを見るということを麗々しくうたっておいでになりまするけれども、その内実においては、何もこういう諸君のめんどうを見ていないではありませんか。具体的に農林省はどういうめんどうを見ておいでになりますか。労働省はどういうめんどうを見ていらっしゃいますか。社会保障の面においてどう今年度からめんどうを見るような施策をお持ちになりましたか。お聞かせを願いたいのであります。
  186. 大沢融

    ○大沢(融)政府委員 労働省なり厚生省、あるいは文部省というところの施策について私からお話し申し上げますことはどうかと思いますが、御承知のように、第二種兼業農家というようなものは、御承知だと思いますけれども、むしろ農家の中でも収入がいいというような傾向があるわけでありまして、私ども、農家の所得を総体的に上げていくということのためには、一人前のりっぱな農家になろう、あるいはなり得るというようなものについては、基本法で申しておりますように、自立農家、自立経営に仕上げていくということをいろいろ施策をやるわけでありますが、そういうふうにはなかなかなりにくいというようなものについては、農家というようは、中途半端な農業をしておってなかなか手が抜けないというような場合には、むしろ協業をお勧めをして、労力も節約する、浮いた労力はほかの産業に従事をして収入を上げるというふうなことをやっておるわけでありますが、一例でございますけれども、農林省のとっている施策としてはそうでございます。あるいは、労働省等については、職業紹介というようなこと、あるいは職業安定の協力員を農村に配置する、あるいは農村向けの教育というか、農村の人に適応するような職業訓練の科目をだんだんふやしていくというようなことを労働省ではおとりになっておるようであります。まあほかの役所にもいろいろあるようでございますが、私からお答え申し上げますのは不適当と思います。そういうことでございます。
  187. 小林進

    小林(進)分科員 今の零細農家といいまするか、兼業農家の方の収入が、標準農家といいましょうか、一町から一町五反に至る程度の専業農家よりはむしろよいということをおっしゃっている。それは私認めます。それは認めますが、そのよいという内容はどうかといえば、今申し上げますように、農業以外の収入によってむしろ内容のいい生活をしているのです。ところが、その農業以外の収入によって標準農家よりは収入はいいということは、これは一般の水準よりもいいということではないのです。言いかえれば、農村における一町ないし一町五反の標準農家の所得、収入が非常に低いから、この諸君よりはやや内容が楽だというだけのことでございまして、しからば、こういう零細な農家が一体農業以外の収入で得てくる収入はどうか。今あなたは他省のことだからあまり言わぬと言いましたけれども、労働省は一体何をやっていますか。今協力員なんておっしゃいましたが、これは、今年度の国家予算に辛うじて頭が出てきて、三十七年度からでもやろうかという単なる一つのペーパー・プランにしかすぎない。予算化されてくればどういうことになるか知りませんけれども、事実上職業訓練にどういう訓練をいたしておりますか。そういうようなことであなたたちはみんな零細農家の今切り捨て策を講じている。そういう第二種兼業農家が季節労働者あるいは日雇い、臨時工、社外工になって働いておって、そして職場々々の中の一番下っ端で働いているのだけれども、それはもう農林省の関係ではないのだ、われわれの役割ではないのだ、その生活の内容はむしろ標準農家よりいいじゃないか、労働省、厚生省におまかせしますから、私どもは答弁の限りではございません、いわばそういうものの言い方。これはわれわれに言わせれば残酷非道であります。手を下ださずして人を殺すような残酷非道な行動であると私は思わざるを得ないのでありまして、むしろ、私は、こういう方々にこそ、何か一つ、まだ農林省がいわゆる第二種兼業農家として農林省の農業政策のワクの中にとどめている限りは、もっと具体的な策というものを出していかなければいけない。協業とおっしゃいましたけれども、どこに一体協業の実績があがっておりますか。単に各県によって、協業でもやれば近代化貸金の利息でも個人でやるよりは少し安目に貸してやろう、六分で貸すところを四分ぐらいで貸してやろうとか、たった一つそんなものがあって、それも何も農林省本省が出された計画ではない。各県によってそういうことがまれにあるということであります。何もないじゃありませんか。何もないから協業の実績なんか一つもあがっていないじゃありませんか。あなたは、小林君というのは大きな声を出しているけれども何も知らないから、ちょこちょことごまかしておけばいいだろう、こうお思いになるかもしれませんが、私も、これが商売で、これで飯を食わしてもらっている限りは、そう簡単にごまかされません。零細農家に対してどういうふうに具体策をお持ちになっておるか、お聞かせ願いたいと思います。
  188. 大沢融

    ○大沢(融)政府委員 今申し上げましたように、協業のこと、どういう政策をとっておるかということをおっしゃいましたが、いろんな協業を進めるために補助費等を出してやっている仕事もございますが、基本法に基づきまして協業の助長をするということで、前国会ぐらいから農地法の改正あるいはまた農協法の改正というようなことで農業生産法人を作って、協業がうまくいくようにというような道を開こうということなども一つの努力の現われであります。おっしゃいますように、私ども、こうした問題を、単なる今までの農業政策の狭いワクの中に閉じ込めておったのではなかなか解決のつかないことだと思います。そういう意味で、農業基本法も、もっと広い立場で、単に狭い意味の農業政策ということだけでなくて、もっとワクを広げて労働政策、あるいは社会福祉の政策というようなものにまで及んで農村をりっぱなものにしていく、所得を上げていくということのために、ああいう法律もせっかくできて、これからそれに基づいていろいろ施策が行なわれようという段階に来ておるわけでありまして、そういう意味で、ただいま申された零細農家の問題も、そうした観点から解決をはかっていかなければならないと思います。
  189. 小林進

    小林(進)分科員 農地法とか農協法を改正するとおっしゃいましたけれども、またこんなことで議論を広げていくとだんだんおさまりがつかなくなりまするから、私はそこまでもいきませんけれども、農地法の改正は私ども反対いたします。農協法の改正も反対です。しかし、反対するしないは別にいたしまして、今一体地主の補償制度なんというものをちゃかちゃかやり出して、そうして地主の補償が当然なようなことを、これは農林省のお役人はおっしゃらぬかもしれませんけれども、もう大臣なんかも旧地主の補償要求がある程度筋が通るようなことをおっしゃる。そんな農地法の改正なんかこの際なおさらやっていただくことは困難です。けれども、それは別にいたしまして、私は、結論としては、今の兼業農家の面は、これは藤山さんがいられたら私は言うけれども、労働省や農林省や企画庁が入って何かの審議会などを設けて、この取り扱いを真剣に一つ協議してもらう何かの一つの会を持ってもらいたい。これはどこも手をつけていません。あなたは労働省と言ったって、労働省は何もしてません。そのしていない一つの具体的な例が季節労働者だ。  そこで、私は、今度はこの兼業農家について季節労働者の問題に移りますが、結局この人たちは働きに出るのですが、一体この働きに出ている兼業農家の新しい職場を把握している省はどこなんですか。今日この時点において私はお尋ねしますが、季節労働者が今総数どのくらいいますか。一つお聞かせを願いたい。
  190. 大沢融

    ○大沢(融)政府委員 私、正確な数字を今覚えておりませんので、後刻調べてから申し上げたいと思いますが、今言われたように、確かに農業の問題というのは、農業政策のワクの中だけでは解決がつかないので、労働省でやっておられます就業構造の改善でもいろいろな施策をやっておられる、そういうことと相待って農業の問題も解決し得ることだ、こういうふうに考えます。
  191. 小林進

    小林(進)分科員 ともかく、この兼業農家というものは、農村においても労働政策から置き去りを食っている。あなたが何とおっしゃっても、置き去りを食っている。実にこれは惨たんたるものだ。こういうところに各省の間にはさまった政治の盲点がありまするから、今あなたがおっしゃったように、これを何かの問題として取り上げて、各省間の話し合いをつけながら具体的な対策を作っていただきたいと思うのです。私はこれをお願いいたします。  今の第二番目の季節労働者の問題ですが、これは、関西や関東、九州中国の方には関係ないかもしれませんけれども北海道から東北北陸、信越等にとりましては実に重大な問題であります。秋がしまえば、雪の降るのを待たずして早々みんな仕事に出るのでありまして、特に自民党の所得倍増計画にあおられてから、だんだんこれが激しくなって参りまして、私どもの周囲におきましても、もう若い者はいなくなっちゃった。一農村で夏場は五十四人もおりました青年団が、今一人もいない。五十何人全部出かせぎに行ってしまった。あるいは農村の消防団が編成できない。若い者が全部働きにに出ちゃった。働きに出なければ食えないのです。そうして、彼らは何と言っているか。私どもは地球の修理に行って参ります、地球の修理というのは、土方でもって土を掘ったり削ったりしますから、なるほど地球の修理をしているわけでございましょうけれども、私どもは地球の修理に参りますと言う農村の青年の言葉の中には、切々として胸を打つ哀調が含まれておって、農村行政に対する、政府の冷酷な政治に対する恨みが彼らの言葉として現われているのです。大沢さん、これは笑いごとじゃない。地球の修理工という言葉の中には、あなた方に対する切々たる恨みが込もっているわけです。この地球の修理工をだれが一体把握しているのですか。私が労働省にお尋をいたしましたら、労働省は、職安を通じて働きに行った者が、三十五年度は男が十二万二千人、女が五万五千人、十七万七千人だけを把握いたしましたと言う。こんな十七万や十八万ではございまいません。農村から出ていく季節労働者というものは大へんな数字です。あなたは、調べてみなくちゃわからないと言う。労働省は、職安を通じたものの数だけ知っているわが、あとは知らない。この人たちの一体労災はどうなのか。この人たちの一体保険はどうなのか。この人たちの失対賃金はどうなのか。たまたま新聞紙上を見ると、あの飯場において、あの土建屋の足場においてこれだけのけが人ができた、これだけの負傷者が出た、あんな季節労働者がやってきたからこんなけがになったといって毎日の新聞紙上に出ておりますけれども、だれもこの実態を把握しているものがないというような、そんな一体無責任な政治がどこにありますか。いま少し一つ責任ある回答を私はお聞かせ願いたいと思うのであります。
  192. 大沢融

    ○大沢(融)政府委員 農林省でも、就業動態調査で、出かせぎの人間がどのくらいあるかというような調査をしておると思います。ただ、こういう方々についての労働条件その他につきまして、お世話をするというところが必ずしも明確でないということは、確かにおっしゃる通りだと思います。私どもも、農業の問題を扱います場合に、もちろん農業内部にいろいろな問題がありますけれども、農業を取り巻くむしろ外部の諸条件、これがよほど適正なものになっていかないと、なかなか解決のつかないという矛盾をしばしば感じます。そういう意味で、私、全く労働問題等についてはしろうとで、何も申し上げられないのでありますけれども、就業条件あるいは就業構造というようなことについては、確かに今後いろいろな改善をしていただきたい面が農業の立場からもあると思います。農業基本法というのはそういう気持でできた法律なんですが、私どももそういう気持で一つ行政には当たって参りたい、こう思っております。
  193. 小林進

    小林(進)分科員 私は、あなたのお言葉を聞いておりますと、むしろ農業内部よりも農業を取り巻く周囲に問題があるということで、言いかえれば、やはり、社会保障の面の厚生省、労働政策の面の労働省等で農村からはみ出された諸君に対する施策がうまく行っていないという、何か責任を他に転ずるというふうな話、転ずるという気持はないでしょうけれども、農林省の管轄はここまでなんだ、これから先はわれわれの管轄じゃないから、やりたくたって手が出ないから仕方がないという、そういう話、これはあなたの立場に立ってみればあるいは当然かもしれませんけれども、われわれの立場から言うと実に無責任きわまる。いわゆる農村に階層分裂の政策を今農林省は盛んに進めているじゃないか。私はまたあとからお聞きしますけれども、五年か十年ばかり前は、標準農家を作るといって、大体一町か一町五反の農家を標準にして、そこに一生懸命農業政策を進めてみたり、これはわれわれはいわゆる三割農政と言って一生懸命に農林行政を非難いたして参りました。三割の農民だけを中心にしてあんなでたらめの農業政策をやっている。ところが、所得倍増計画でだんだんほかの方の物価が上がってきて、もう一町や一町五反じゃ農業が追いつかなくなったから、今度は農業十カ年計画だ、二町五反の自立農家を百万戸作るという、いつの間にやら二町五反にすりかえて、あとは用事がないから農村から出ていけ。出ていけとは言わぬけれども、いわゆる階層分化を奨励して、日雇いでもいい、臨時工、社外工、あるいは失対事業でもよろしい、それはもうわれわれ農林省の管轄ではございません、それは労働省がよろしくないのである、厚生省がよろしくないのであると言うが、これは実に血も涙もない農林行政であると私は考える。不作為の作為という言葉があるけれども、まことにばさりばさりと人の首を切る、これは近代的首切り法と称するものであります。近代的殺人法とも言うべきおそるべき農業政策を進めているのでございまして、そういうことでは私はいかぬと思う。これは、農林省が二町五反の自立農家を百万戸作るというならば、そこからはみ出されている農業に対して協業でおやりなさいなどという紙一ぺんの辞令じゃなしに、やはり、その人たちの行く末もちゃんと見てあげるという政策がこの農業基本法の裏について回らなくちゃいけない。それが何もないように私は思う。お手上げでできないならば、これは昔の兼業農家で、とても農業じゃない、本質的にもうこの人たちは農業以外の収入で飯を食っているのだから、労働省の管轄でございますからよろしく一つお願いいたします、そうさっぱりとけじめをつけるか、さもなければ、やはり、この人たちの行く末に対してあたたかい施策を持つか、二者択一の方法によらなければならない。それを、どっちもとらないで、しゅうとさんが嫁をいびり出すような格好でこの弱い農業をそのまま放置しているのはけしからぬじゃないかということを私は申し上げておるのですが、いかがですか。一つ、大沢さん、大臣になった気持で答弁して下さい。
  194. 大沢融

    ○大沢(融)政府委員 繰り返して申しますが、私ども政府の施策というのは、単に農林省と労働省というようなことじゃなくて、有機的に一体となって施策が行なわれていくということによって農業の問題本解決されるのだと思います。そういう立場から私ども考えていきたい、こう思います。
  195. 小林進

    小林(進)分科員 大沢さんが大臣でないのはまことに残念でありますけれども、どうか、それならば、各省、各官庁とそういう有機的な体制を作り上げて、こういう人たちのめんどうを最後まで責任を持ってやっていただくように御努力を願いたいということを私はお願いいたします。  次に、農業基本法の問題について少しお伺いをいたしたいと思います。  農業基本法の中に、自立家族経営の標準農家をお作りになられる、こういう基本線が出ておる。先ほど私が申し上げましたように、二町五反、百万戸の農家をお作りになるということで、けっこうだと思います。それで、その農家をどう二町五反に集約して百万戸を十年間にお作りになるか、その具体的な実行方法を一つお聞かせ願いたいと思います。
  196. 大沢融

    ○大沢(融)政府委員 所得倍増計画の中で、将来の自立経営というのが二町五反でそれが、百万戸くらいになるだろうというようなことで、実はこれは近代化小委員会というのがありまして、非常に大胆に述べておりますけれども、私ども基本法において、構造改善ということで自立農家の育成ということを具体的な姿で一つ取り上げているわけです。この自立農家、自立経営というものは、今にわかに、何町歩のものがこれに該当するか、あるいは計画的に五年なり十年の間に何万戸を育成するのだというようなことで考えておるわけではないのです。基本法の中にもございますように、自立経営農家というのは、フルに働いて、能率よく働いて、ほかの産業従事者と同じような生活ができるというような経営を考えているわけですが、そういうものをできるだけ多く育成するということでやっておるのでありまして、何年後に何町歩のものを何万戸育成するという考え方はとっておらないのであります。
  197. 小林進

    小林(進)分科員 今のあなたの答弁は少しごまかしがありまするけれども、時間が過ぎていますから、次に一つ簡略に言いますが、今、地方に参りますと、農地の委託制度というものが盛んに行なわれております。どういうことかといいますと、今までたばこをやったり畜産をやったりしておった農家は、もうその意欲を失いまして、私の知っている範囲ではだいぶたばこをやめた。何ぼやってもだめだ、もうたばこはやめよう、畜産も飼料が値上げになって生産費が高まるというのでみんなやめて、今までだまされたと言って、みんな季節労働に出ております。そういう反面、今まで兼業で勤めていた人たちが、今度は兼業をやめまして、これを全部委託生産に出しておる。こういう制度が今盛んにはやっておる。この点、審議官御存じでありましようか。
  198. 大沢融

    ○大沢(融)政府委員 私、必ずしも事情を詳しく存じておりません。
  199. 小林進

    小林(進)分科員 これは、燎原の火のごとく今行なわれているのを御存じないというこの一事だけでも、農林行政がいかに血が通っていないかということの一つの例証です。これは非常にはやっています。昔の小作制度の復活であります。たとえば、今までやっておりましたたんぼを私があなたに預けて、一反歩について収獲が済んだら、四斗俵で三俵あるいは四俵で委託耕作をやってくれ、こういう形の制度が今盛んに行なわれておりますが、これ御存じありませんか。いま一点お尋ねします。
  200. 大沢融

    ○大沢(融)政府委員 どういう形で委託をされておるとかいうような詳しいことを私知りませんけれども、そういうふうなことがあり得ると思います。あり得ればこそ、農地法等の関係もございましょうし、私どもは、農地は持っているが手放したくはない、しかし農地は耕さないで働きに出たいという人のために、農地法、農協法を改正して農地の信託の道を開く、協同組合で公的な管理をして、あとに残る人のための農業構造改憲に資するような使い方をするというような道を開きたいと思うのは、そういう基盤が農村にあるからやろうということで考えておるので、そういう道を開いて今のようなことを軌道に乗せていきたいということを考えているわけでございます。
  201. 小林進

    小林(進)分科員 私は、農協法を改正いたしまして信託制度をとる、農協が土地々預かって、耕作に適した人にそれを委託するというような、そういうあなたたちの考え方をお聞きしているのではなくて、現実にまだ農地法も改正にならないし農協法も改正にならないときに、いわゆる小作制度の復活とは言わぬけれども、委託耕作という新しい名目をつけて耕作農民が耕作をやめて他にそれを貸し付けて、小作料とは言わないで委託料と称して三俵なり四俵のいわゆる小作米を取っているということの現実の姿をあなたは御存じになっているか、あるいは、御存じにならなければならないでいいが、これを合法的なものとしてお認めになるかどうか、これをお聞きいたしているのであります。
  202. 大沢融

    ○大沢(融)政府委員 法律問題としは、軽々に結論を出すべきでなくて、よく実態を見きわめて結論を出さなければいけない、こういうふうに考えます。
  203. 小林進

    小林(進)分科員 実に官僚的な、実に巧妙な御答弁でございまするが、実情を見るも見ないもないです。私が申し上げましたこのことが一体違法であるか違法でないかを私は聞いているのであります。耕作権を譲渡もしないで、耕作はしない、ただ預けた、そうして小作料を取る、委託料と称して小作料を取る、これだけの話です。これが一体農地法の違反ではないかどうか、この解釈をあなたにお聞きしているのであります。
  204. 大沢融

    ○大沢(融)政府委員 軽々しく判断をして間違うといけませんから、よく実態を調査して結論を出したい、こう思います。
  205. 小林進

    小林(進)分科員 私は実態を申し上げているのではないですよ。けれども、こういう問題が違法かどうか聞いているのですけれども、あなたもがんこだから。何も間違ったからといって、あなたの食糧庁長官の首を切ろうというのではないのだから、勇敢に答弁されればいいけれども、答弁できなければ仕方がない。それでは一つ実情を早く見て下さい。  食糧庁長官、先ほどあなたは、農業従事者の季節労働者の数は、農林省にあるから後刻私に知らせるとおっしゃった。ごめんどうでもあすまでにその資料をいただきたい。私は、その資料をいただいて、それに基づいてまた予算委員会で一般質問をやります。急ぎますから、明日中に一つこれはいただかしてもらいたい。それから、今申しました委託耕作の問題も早急に調べていただいて、できればあすあたりにまで一つ御答弁をいただきたいと思うのでございますが、あす困難ならばあさってくらいまでに一つ御答弁をいただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  206. 大沢融

    ○大沢(融)政府委員 農地局所管の問題でございますので、農地局長によく連絡をいたします。
  207. 赤澤正道

    赤澤主査 小林君に伺いますが、あと何問くらいであなたの御質問はおさまりますか。
  208. 小林進

    小林(進)分科員 実は、私は、きょうはゆっくりやってよろしいというので、今晩は十二時ころまでやらしていただくつもりで資料をまとめてきたのでありますが、しかし、私どもの方の理事もおりまするので、理事の方から指令がありますれば、私はただいまでも質問をやめたいと思います。
  209. 赤澤正道

    赤澤主査 一時間をだいぶ超過しておりますから……。
  210. 小林進

    小林(進)分科員 それでは、国民健康保険の問題ですが、国民健康保険の対象者は四千九百万人おります。若干減ったかもしれません。四千八百万ですか、そのうちの七一%か二%が農民です。あとの二九%が五人以下の労働者を使っている零細業者で、これは家族を含めた営業者、商人ですね。商工零細企業家です。でありまするから、国民健康保険の対象者はまずまず農民と断定してもこれは過言ではないわけです。でありまするから、農林省といたしましては、この国民健康保険の趨勢については最も深く注目を払ってもらわねばなりません。その国民健康保険の中に含まれておりまする七一%の農民の所得収入はどうかといいましたら、これは、四千九百万ですから、そのうちの七一%だと三千五百万人が農業従事者、農民になるわけですが、その三千五百万人の農民の所得収入を調べてみましたら、一年間で所得二十万以下が八八%です。それから、一年間で十二万円以下の所得者が一二%。固定資産税を納めている者がわずか五%であります。それで、各種の保険が七種類くらいありますが、その七種類くらいある保険の中で、社会保障、医療保障ですね。医療保険の中で、日雇い健康保障よりもさらに零細所得者のみを包含しているものが国民健康保険であると言っていいわけです。だから、これは一番零細企業者を含めての健康保険、農民がそうだという結論になります。今自民党、政府が一番力を入れておる問題として、所得再配分をやる、こういうことを盛んに言っておられる。そして、他の農民以外の六種類の健康保険、組合健康保険、国家共済保険、あるいは政府管掌保険、船員保険、被用者保険などは、本人が病気になったときは全部ただです。ところが、この一番零細な農民だけは、病気になったときに、窓口払いといって半分だけ現金を持っていかなければ医療保障はしてもらえない、医者にもかかれないのです。しかも、このほかの人たちは、入院すれば入院もただ、食費もただ、お医者さんが往診してくれば往診料もただです。ところが、一番気の毒な農民の場合は、いわゆる食費も自分で持たなければならぬ、入院した寝具代も自分で持たなければならぬというような、いろいろの制限があって、言葉の上では国民皆保険と言いながら、現実の面においては、農民と、家族だけでやっているような零細業者だけには、医療保障というものが行なわれていないという現実です。どうして一体農民だけこういう差別の社会保障を受けなければならないのか。しかも、農民だけがこれほど冷酷な社会保障を受けておるにもかかわらず、農林省はそれを黙って見ておられるという理由は一体どこにあるのですか、一つお聞かせを願いたいと思います。
  211. 大沢融

    ○大沢(融)政府委員 私がお答えするのには、あまりにどうも大きな問題過ぎるように感じますけれども、確かにおっしゃるように国民健康保険は農家の占める割合は多いと思いますが、私どもの聞きかじっている範囲内では、療養給付費の負担率を多少引き上げをするというような努力があるように聞いております。しかし、この点については、私がお答えするのにはあまりに大き過ぎる問題だ、こういうふうに思います。
  212. 小林進

    小林(進)分科員 あなたは大臣になりかわってみな答弁するとおっしゃったから、私はこうやって一生懸命になって質問をしているのに、問題が大き過ぎる、大き過ぎるとおっしゃるけれども、やはりこういうことは、農林行政に携わって農民の世話をしようという方々ならば、これくらいの矛盾はちゃんと見ておいてもらわなければいかぬと私は思うのです。今あなたは、医療給付費をことしからいささか引き上げたとおっしゃったけれども、どこを引き上げましたか、それは町村単位ですから、東京都のごときは、ああやって本人には医療給付は七割給付する、家族は五割だ、だから、本人は三割現金を持っていらっしゃい、家族は五割の現金を持っていらっしゃれば医者で診療してあげます、治療してあげますということになっております。ところが、全国の農村は、平均で五割は現金を持っていかなければ、診療もしてもらえない、治療もしてもらえないという状態です。でありますから、国平均で見ますと、審議官、あなたは高級官吏だから別だけれども、一般の国家共済に入っている人たちは、大体一年間で一万二千円くらい医療給付を受けておる。あるいは組合健康保険の人たちも、やはり一万二千円くらい受けておる。これは間違っておるかもしれませんが、日雇い健康保険でも、医療給付は八千円ばかり給付を受けておる。ところが、国民健康保険の対象のお百姓さんだけは、一年間でわずかに三千円前後の医療給付しか受けておらない。それじゃ一体お百姓さんは病気をしないのか、医者に行く必要はないのか、健康体なのかといったら、そんなことはありません。朝から晩までたんぼの中で苦しんでおりますから、職業病といって腰も曲る、手もしびれる、足もしびれる。ほんとうに病気が多いのであります。一番多いその農民の方々に、いわゆる国民皆保険と称する日本政府は、農民以外の方々には、一年間に一万円前後の医療給与をこうやって全部社会保障で与えておきながら、お百姓さんだけにはたったその三分の一、一人平均三千円の医療給付費も与えていないということなんです。こんな社会保障の矛盾はありますか。一番所得の少ない、一番気の毒な階層に、医療給付を、普通の人並みの給付の三分の一も与えていない。それをあなたは、ことしから給付は上げたはずだというようなことを言って、鬼の首でも取ったような答弁をされることは、いわゆる農林行政をあずかる農林省の高級官僚としては、あまりにもお百姓さんに対してお気の毒ではないか、私はかように考えるのでございまして、その点一つお答えを願いたい。しかし、あなたが、参っている、とてもきょうはだめだから、かんべんして下さいとおっしゃるならやめますけれども、さもなければかんべんできません。
  213. 大沢融

    ○大沢(融)政府委員 よく勉強させていただきます。
  214. 小林進

    小林(進)分科員 勉強するということだけでは困ります。私が質問しているにもかかわらず、私の質問に対して、勉強しますじゃ全く困る。百姓のめんどうを見る親方が、百姓の健康問題や医療給付問題で、しろうとの私が質問するのに、これから勉強させてもらうじゃ、どろぼうをつかまえてなわをなうと同じです。そんなことがありますか。私はもっと言う。普通の人は、健康保険に入っておりまして、けがをすると……(「それは厚生大臣じゃないか」と呼ぶ者あり)いや、農林省は百姓をあずかっているじゃないですか。しかも、私が先ほどから言っておるように農業基本法の第二十条に、社会保障でちゃんとめんどうみますよといっておるじゃありませんか。私はその農業基本法に基づいてお尋ねしている。農業基本法の第二十条に、社会保障でめんどう見ますと書いてありませんか。どうですか。
  215. 大沢融

    ○大沢(融)政府委員 第二条の施策の一つとして、そのような表現はございます。そういうことでございますので、たとえば今御指摘のありました農民の健康の問題というようなことにも、単に狭い農林省ということでなくて、政府の立場から注意を払い、たとえば年次報告でもそういうことに触れて、今後の施策としては、ただいまおっしゃったような点について、特に注意を払って進めていくということになろうかと思います。私は狭い農業の範囲だけの担当でございますけれども、そういった意味で、今後農業基本法を中心にして、そうした発展があることを期待しております。
  216. 小林進

    小林(進)分科員 審議官はあまりおわかりにならないようですから、質問はやめますが、一つだけつけ加えておきます。百姓以外に与えられた健康保険は、おぎゃあと子供を産めば、出産手当をもらうのですよ。そしてほかの健康保険は、けがをすれば、傷病手当といって六カ月なり三年なり、寝ている間はちゃんと手当をもらえる。出産手当も、そういうけがをして倒れても、一銭もその傷病手当をもらえないのは百姓です。それから死ねば、農民以外の健康保険は、全部埋葬料から墓場へ入れる手当金までちゃんともらうようにできております。百姓だけは、死んだところで一銭も金をくれない。埋葬料もくれない。これは国民健康保険だけです。百姓と、家族だけでやっている零細営業者だけにこれがない社会保障であり、健康保険です。これくらいの大きな格差をつけておきながら、農業基本法を作って、そして、農業政策で及ばぬところは、いわゆる健康保険でめんどう見ます、社会保障でめんどうを見ます、あるいは職業訓練でめんどうを見ますと、言うことだけぱっぱっぱと吹いていて、何もやっていない。こういうような社会保障の二重構造を一番零細な人たちに与えているという、こんな残酷非道な数字を与えておきながら、あなたたちはこれからこれを勉強するなどということでは、私はとうてい現在の農林省の農林行政というものを信用することはできないと思う。これは後日日をあらためて、この問題はぐんぐんと私はやって、猛省を促さなければだめだと思いまするが、あなたも御存じないようですから、この質問はやめまして、あとはほんの事務的な問題だけを一つやって、委員長の御指示に従いたいと思います。  きょう全国の農民が一万名ばかり参りまして、食管制度を一つ存続してくれ、地主補償には反対だということでやって参りまするが、この食管制度は、御承知のように、生産者農民が今命をかけてこれを守り抜こうとしておる。消費者の方も、やはりこの制度は存続してくれ、なぜ一体廃止されるのかと、ずいぶん質問されたと思いますから、これは一言でいいのですが、これをお聞かせ願いたい。農林大臣は、赤字をなくすためにこの食管制度をやめるのではない、こう言っておられるのですが、七百億、八百億、千億の赤字などは問題ではないとおっしゃるならば、私どもは、まず両方とも存続してくれというこの問題を、これを廃止をなさるお気持というものはわからぬわけです。
  217. 大沢融

    ○大沢(融)政府委員 食糧管理制度を廃止するというようなことは、私の方としては全然考えておりません。
  218. 小林進

    小林(進)分科員 地主補償制度について、何か大臣は、補償はまた当然なるかなというようなお考えでございますが、審議官、いかがでございますか。
  219. 大沢融

    ○大沢(融)政府委員 私にはその点はわかりません。
  220. 小林進

    小林(進)分科員 それではこの制度審議会が、何か先般、あれは中間報告ですか、結果の報告ですか、出しておられた。やはり旧地主は、決して一般地主その他の農民に比較して生活程度は悪くない。農村において中間以上の生活状態を保っておるという、そういう新聞の発表をいたしておりますが、この制度審議会の発表に対して審議官はどのようにお考えになっておるか、お聞かせ願いたいと思います。
  221. 大沢融

    ○大沢(融)政府委員 地主補償等の問題につきましては、私の所管外でございますので、発言を差し控えさしていただきます。
  222. 小林進

    小林(進)分科員 これで終わりますが、これは現在都市近郊の農地の転用について起こっておる問題でございまして、これについては、たしか今週の「週刊新潮」にも載っておりますが、それは、解放を受けた新地主が、いわゆる住宅地やあるいは工業地等にその土地を売りました場合には、その売上代金の中から最高一割ないし七分・三分というものを、十五年ばかり前に解放をせられた旧地主に払い戻しをする——払い戻しと言いますか、寄付をすると言いますか、贈呈をすると言うか、そういう習慣と言いますか、慣習と言いますかが今盛んに行なわれております。たまたま「週刊新潮」に載っておりますのはその一部でありまして、ところが、その住宅公団か何かに土地を売ったが、その売上代金の中から、旧地主側は、新地主の方でその一割くらいは持ってくるだろうと思ったが、三分しか持ってこない。三分では少ないということで、今訴訟問題を起こして、旧地主が新地主と訴訟をして、てんやわんやの大騒ぎをやっておる。こういう問題が起きておりますが、そういう一割なり三分なりを新地主が旧地主に支払うやり方、それを請求する旧地主の要求が一体正しいのか、至当なものであるかどうか、あなたの御見解を承っておきたい。
  223. 大沢融

    ○大沢(融)政府委員 所管外のことでもございますので、よくわかりませんし、発言は差し控えさしていただきたいと思います。
  224. 小林進

    小林(進)分科員 私は一生懸命に質問をいたしましたけれども、残念ながら、終始一貫、私が納得するような答弁を一つも得なかったということは、まことに残念しごくでございます。しかし、もうこれ以上何を問うても、貝にものを問うようなものでございまして、効果がないと私は判断いたしましたから、残念ながら、これをもって私の質問を終わることといたします。
  225. 赤澤正道

    赤澤主査 大沢審議官、おそくまで大へん御苦労さまでございました。  本日はこの程度にとどめ、明二十七管全部についての残余の質疑を行なうこととし、これにて散会いたします。    午後六時二十六分散会