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1962-02-22 第40回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十二日(木曜日)     午前十時二十一分開議  出席分科員    主査 赤澤 正道君       井出一太郎君    仮谷 忠男君       倉成  正君    八田 貞義君       三浦 一雄君    淡谷 悠藏君       岡田 利春君    加藤 清二君       川俣 清音君    兼務 永井勝次郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  佐藤 榮作君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    中野 正一君         農林事務官         (大臣官房長) 昌谷  孝君         農林事務官         (大臣官房予算         課長)     桧垣徳太郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      坂村 吉正君         農林事務官         (農地局長)  庄野五一郎君         農林事務官         (振興局長)  齋藤  誠君         農林事務官         (畜産局長)  森  茂雄君         農林事務官         (蚕糸局長)  立川 宗保君         食糧庁長官   大澤  融君         林野庁長官   吉村 清英君         水産庁次長   村田 豊三君         通商産業事務官         (大臣官房長) 塚本 敏夫君         通商産業事務官         (大臣官房会計         課長)     井上  猛君         通商産業事務官         (通商局長)  今井 善衞君         中小企業庁長官 大堀  弘君  分科員外出席者         総理府技官         (北海道開発庁         農林水産課長) 青山  俊君         水産庁長官   伊藤 正義君     ————————————— 二月二十二日  分科員高田富之委員辞任につき、その補欠と  して岡田利春君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員岡田利春委員辞任につき、その補欠と  して高田富之君が委員長指名分科員選任  された。 同日  第四分科員永井勝次郎君が本分科兼務となつた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十七年度一般会計予算経済企画庁、農  林省及び通商産業省所管  昭和三十七年度特別会計予算農林省及び通商  産業省所管      ————◇—————
  2. 赤澤正道

    赤澤主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  本日は、昭和三十七年度一般会計予算中、経済企画庁農林省及び通商産業省所管、同特別会計予算中、農林省及び通商産業省所管を議題といたします。岡田利春君。
  3. 岡田利春

    岡田(利)分科員 きのうの残りの時間をもって主として農山漁村電気導入関係について御質問いたしたいと思うわけです。  実は、農山漁村電気導入促進法が制定されて、未点灯部落解消に実効をあげておるわけであります。ところが、最近の傾向として、せっかく未点灯部落解消されて電気導入されておるわけなんですが、その後非常に長い期間を経過をして、導入した電気施設老朽化をしておる。しかも、一般電力会社移管ができませんから、どうしてもその施設更新をはからなければならぬ、こういう時期に来ておるようであります。そこで、この施設更新の場合には、これはそれぞれの組合もしくは受益者負担によってこの施設更新をしなければならない。しかしながら、今日の農電関係実態を検討して参りますと、実に負担額は月額千五百円以上にも上っておる、こういうような点で、この施設更新を自力で行なうということは非常に困難な条件にあると考えられるわけです。しかも、このまま放置をしておきますと、せっかく未点灯部落解消を促進いたしておるのでありますけれども、再び未点灯部落に逆戻りしなければならない、こういうきわめて重大な時期に今日来ておるのではないか、このように私は判断をするわけです。従って、この問題を解決をするためには、やはり、従来の新設だけに対する国庫補助ワクを広げて、特にこの施設更新施設改良事業に対する国庫補助を考えていただかなければならぬ時期に来ておるのではないか。しかし、今年度の予算の中にもこの点については実は対象になっていないわけです。しかし、今年もしくは来年に早急に解決しなければならぬ問題であるというふうに私は理解するわけですが、この点についての見解を承りたいと思います。
  4. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 北海道におきましては、僻地電気導入事業につきまして、昭和二十五年以来公庫融資を中心にして行なって参ったわけでございます。その後、昭和三十四年度から離島開拓地と同様に助成対象にするということにいたしたわけでございます。ただいま先生の御質問になりました施設更新につきましては、おそらく二十五年以来公庫融資施設を設けたものが更新期に来ておる、それに対する修理等助成をすべきではないか、こういう御質問ではなかろうかと思うのでございます。現在、北海道以外のところにおきましても、このような更新期に来ておるものもあるわけでございます。そこで、本来の形といたしまして、先般の当委員会におきましても御質問があったわけでございますが、われわれといたしましては、できるだけ一般受電方法で進めていくことが一番望ましい。一般受電になりますと、施設を作るときには助成いたしますけれども、一般電力会社がその施設を引き取りまして、その後における維持管理については会社負担するということに相なるわけでございます。そこで、今後そういう方向で行くように一般的には指導して参りたいと思っているわけでございます。しかし、北海道は、そうは言っても、一般電力会社で引き受ける方法を全部について採用することはなかなかできないという実情にもございますので、現在では、北海道だけにつきまして共同受電の形で助成をする、つまり、新しい施設を作った場合におきまして、電力だけを一般電力会社から買って、維持管理は農協が負担する、こういう方法をとっておるわけでございます。  そこで、北海道におきまする今後の電力導入を考えてみますと、いまだ三万五千戸ぐらいが全国で残っておりますが、その約半分ぐらいを北海道対象として今後考えて参る。しかも、その場合におきましては、内地におきましては、今申し上げましたように、一般受電方法導入が大体可能であるということに相なっておりますが、北海道については、今申し上げたような事情から、共同受電方法をも加えてやっていくということに相なるわけでございます。そこで、われわれといたしましては、新しく共同受電方法も他方において認めていく、しかも、共同受電をやっておりましたものについて、更新期が来たためにそれの助成までもやるということになりますについては、今後の行き方をどうするかということを考えてみる必要があろう。そこで、実は、共同受電方法をとっているものを一般受電に切りかえます場合に、電力会社としては、切りかえるにあたって一定の補修なり改善なりを加えてもらいたい、そうすれば引き取ろう、こういうことで、実は、九州につきましては、従来共同受電であったものを一般受電に切りかえるということを条件といたしまして、その維持補修についての助成を見ることに、やっと三十七年度からなったわけでございます。従って、一般論といたしましては、北海道におきましても、一般受電に切りかえられるような措置を裏打ちといたしまして、どうしても補修が必要である、何が必要であるということであれば、助成対象にするということも考えやすいのではないだろうか。ところが、北海道ではそういうことはまだ考えられない、共同受電はやはり共同受電として新設を認めてもらいたい、それから、古いものについても同様に更新助成してもらいたいということでありますと、われわれといたしましては、早くとにかくつけるということが先決であろうと考えますと、新規需用の、新しく導入する地域に対する助成をまず優先的に考えていかざるを得ない。更新につきましては、融資や何かに対する措置ということは考えられると思いますけれども、共同受電も新しくやる、それから、従来の融資でやったものについての助成もやるということになりますと、相当財政的な負担になるのではなかろうかということも考えられますので、その辺をもう少し研究さしていただきたいというのが現在の態度でございます。
  5. 岡田利春

    岡田(利)分科員 現在の未点灯部落地帯をずっと各電力会社別に検討して参りますと、北海道の場合には、北海道の総世帯戸数に対して未点灯世帯数の率は三%の高率を実は示しておるわけです。それ以外で高率なのは、東北の〇・九%、さらに九州の〇・八%、あとはもう問題にならぬ非常に少ない数字なわけです。特に北海道の場合には三%でありますから、北海道を除けば全国では〇・三八%程度の未点灯部落よりないわけなんです。だから、実はどうしても北海道の問題を重点的に解決の必要に迫られておるわけです。しかし、今説明のありました共同受電の場合には、当時非常に資材が不足で、十分な優良資材を購入できなかった。こういうような実情の中で、更新をしなければならぬ対象のいわゆる電柱の切りかえ、あるいはまた送電線張りかえは非常に高額に上るわけなんです。大体試算をしてみますと、更新費電柱だけで十四億八千六百万円、それから、電線の張りかえ、これは実はおもに北海道の場合資材難で鉄線を使っておるわけです。これを銅線張りかえるとするならば、これだけでも実に三億七千四百万円程度の額が出て参るわけです。ですから、合算をいたしますと、これらの更新に要する経費だけで十九億六千六百万円という数字が実は出ておるわけです。これは単に受益者だけの力によってとうてい解決できるものではないわけです。そうしますと、これをそのまま放置することは、再び未点灯部落に逆戻りするという結果になることは、火を見るよりも明らかではないか。ですから、戦後の特殊性で、資材そのものの購入が非常に困難であった、優良資材がなかった、こういう実情のもとに未点灯部落解消のために電気導入しておるわけですから、そういう実態政府は正しく把握して、これに対する対策を立てない限り、ある程度積極的な補助をしない限り、むしろ未点灯部落に逆戻りをする、こういうことに私はなるのではないかと思うわけです。ですから、もちろん電気会社移管するのはいいのでありますが、北海道の場合には非常にそれが困難なわけです。これはやはり北海道特殊性から来る降雪あるいは風雪の被害が非常にありますから、基準も相当厳格にやらなければ移管ができない。ところが、移管する場合でも、当然これ以上の経費が、さらに範囲が拡大されますから、かかるわけです。そうすると、これも融資だけではとうてい解決でき得る現状ではないわけです。融資返済状況を見ても、むしろ停滞をしているというのが実績数字として出ておるわけです。  ですから、私は、むしろこの問題は農林省だけでは解決は困難ではないか。北海道総合開発政策が今日政府でとられておるのでありますから、むしろ、この北海道農電関係は、農林省の今日の農山漁村電気導入促進法に基づくものと、あわせて、北海道の場合は特に半分以上を占めておるのでありますから、北海道開発行政の一環として、農林省開発庁で力を合わせてこの問題は解決をはかるということでなければ、一般論としてこの問題を評価することは、実際問題として、幾ら善処すると言っても、できないのが実情ではないか、このように考えるのですが、これは農林省北海道開発庁見解を承りたいと思うわけです。
  6. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 御指摘の通りでございまして、本来のあり方といたしましては、当然一般電力会社公益性に基づきましてできるだけ電気点灯部落解消をはかるようにサービスをしていただくのが一番望ましいわけでございます。ただ農林省といたしましては、そうは言っても、現実問題としては、電力会社独立採算制だとか、あるいは非常に遠距離であるとかいうようなことで、いつまで待ってもなかなか電気導入施設が設けられない、それが農民の負担関係であるというような点に着目いたしまして、必要な助成をいたしておるというのが現状でございます。従って、助成後におきましても、今申し上げましたように、できれば早く一般電力会社に引き移す方向でやっていくというのが一番望ましいのではないかというように考えるわけでございます。今後とも、そういう方向で、直接電力会社の監督なりあるいは電力行政を担当しておる通産省とも協議いたしまして、そういう方向で進めるようにわれわれも努力いたしたいと考えております。
  7. 青山俊

    青山説明員 開発庁といたしましては、今農林省から御答弁がございましたように、北海道の未点灯農家につきましての電気導入ということにつきましては、今後ともより一そう努力して参りたいというふうに考えております。それにつきまして、北海道開発第二次五カ年計画が三十七年度で終了することになっておりますので、三十八年度から新しい開発計画を立てることになっておりますが、その中でこの問題も取り上げまして、十分農林省等と御協議いたしまして推進して参りたいというふうに考えております。
  8. 岡田利春

    岡田(利)分科員 現在の都道府県別に未点灯部落の検討をいたしてみますと、全然未点灯部落がないというのが六都県あるわけです。それから、百戸以下が十四県、二百戸以下が七県、五百戸以下が九県、千戸以下が四県、それから、千戸以上三千戸という間が五県、北海道は一万五千戸、これは五戸以上の集団部落です。開拓地あるいは離島を除いてもこういう数字になるわけです。これを電力会社別に見ると、北海道の場合には電力会社は一本でありますが、未点灯戸数が三万二千戸程度、五戸以上の部落についての数字だけでも一万五千戸ですね。こういう数字があるわけなんです。ですから、農林省予算を検討しますと、特に北海道の分は別ワクにして、全国比率から見ても五〇%以上の予算をつけておるわけなんですが、それでもこれは解決できないわけです。今度自治省で僻地振興予算要求で、三十五億の補助金要求を、電力あるいは学校あるいはまた診療所等要求をしたのでありますけれども、これが全額削除をされて、十億円の起債ワクで一応起債を認めるという消極的なものに終わっているわけです。ですから、抜本的な解決策としては、やはり、電気の問題は民主主義社会の善政の第一番目に取り上げなければならぬ問題ですから、今開発庁でも第二期の計画があるとすれば、そういう総合的な中でこの問題解決のために努力してもらいたいと思うのです。  それから、特に当面問題になっておりますのは、実は、新しく開拓関係電気導入する場合に、現在九万円までは国庫補助対象になるわけです。ところが、すでにもう僻地になって参っておりますから、この九万円の対象ワクをはるかに越しておる。平均大体十三万から十五万、この程度施設費負担しなければ電気導入できない、このような実態にあることは御承知のことと思うわけです。農林省当局としても、九万円以上についても国庫補助をする、こういう当初の考え方があったようでありますけれども、これは今度の予算では残念ながら実現がされていないわけです。しかしながら、これをやらなければ、幾ら電気施設導入を促進すると言っても、これは不可能に近いのではないか。この実態認識は、私と農林省認識は変わらないのではないか、こう思うのですが、この点についてどういう実態認識をしておるか。しかも、九万円の限度ということは今日もう実情に合わぬではないか、こう思うのですが、御見解を承りたいと思います。
  9. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 対象となる事業規模として、現在では御指摘のように九万円というものを一応限度に置いて考えております。九万円について多いか少ないかということでありますが、現在のところ、全国的に平均しますと、まだ九万円以下においても十分やっていけるものが多いのではないだろうかというふうに思っております。しかし、同時にまた、北海道や何かにおきまして、実際には九万円ではとてもできないというところもあることも承知いたしておるわけでございます。従って、現在におきましては、市町村が一万とかあるいは二万とか負担してやっているところもございます。また、九万円以下のところもございます。反面、十五万円かかるというようなところもあるということも承知いたしておるわけでございます。従って、全般的な今の九万円の限度引き上げということについては、なおわれわれとしては検討すべきものがあるとは思いますけれども、現状におきまして、まだまだ九万円以内においても新設導入を可能とする地域がうんと残っておるわけでございますので、そういうところをまず優先的にどんどんやって参りたい。  それから、第二には、町村負担をいたしておる部分につきましては、これは、今お言葉の中にもありましたように、僻地に対する今回起債の十億というものが認められておるわけでございますから、町村負担分についてはこの十億円の中から起債対象にするという道も新たに開けることになったわけでございます。そういうような方法によりまして、現在導入を希望されておる地域についても、現在の仕組みの中でできるだけ早期にやって参りたい。どうしても最後には、いろいろ問題として残る地域があるかもしれません。そういう事態におきましては、われわれももう一度検討してみることも必要じゃないかというように考えておるわけでございます。ことしも実は八千九百戸というものを助成対象として上げたわけでございまするが、この単価につきましても、実は去年も単価改定し、また三十七年度におきましても単価改定をいたしたのでございますが、前年度の実績に基づきまして単価改定をやって、ことしの予算をそのまま計上いたしたのでございますから、われわれとして、まだまだ実情としてはこれでも相当いけるところが十分ある、こう思っておるわけであります。
  10. 岡田利春

    岡田(利)分科員 離島関係については、特に離島開発を促進するための特別立法措置議員提案でなされて、特に電気の問題もその分野でその解決を進めておるわけです。そこで、特に北海道の場合の現在の電気事業経営実態というものはどういう実情にあるかということを、やはり今までやったものを一応振り返って見るということで考えることが一番大事ではないか、このように思うわけです。特に、北海道の場合、年間二万円以下で経営できるというのは百二十七地区で一万三千九十四戸、これは大体戸数では三七%に当たるわけです。あとは全部一万円以上でなければ経営ができない。一万円以上の経費が実はかかっているわけです。特に一万五千以上の経費を要するのは百二十地区で、一万四千百八十八戸あるわけです。さらに、比率で見ますと、全体の地区数の三八%、戸数で四〇%を占めておるわけです。おそらく、私は、北海道を除いて一万五千円以上の経費を要するこういう膨大な比率を持つ都道府県はないと思うわけです。北海道はあくまでも特殊条件ではないかと思うわけです。その理由は、やはり、開拓農家でも、今日一戸にすれば大体二十町歩単位農地が与えられるわけです。ですから、当然一戸当たり経営費もかさまっていくことは間違いありません。さらに、政府集団酪農農家の育成、こういう政策を通じてさらに所有農地面積が拡大されていくわけです。パイロット・ファームの計画では、大体二十六町歩程度農地を与える、こういう計画でありますから、特に北海道の場合の特殊条件というものが広域なるがゆえに浮かび上がってくると思うのです。従って、こういう経営状況が非常に悪化して、他面において償還延滞が出てきておるわけです。これは大体他の都道府県の場合はほとんどそういう例がないのでありますが、北海道の場合には、現在元利を含めて四千六百二十四万九千円という金が延滞になっているわけなんです。しかも、あなたが言われたように、これは地方自治団体助成をし、ある程度協力をしながらなおかつこういう現状にあるわけなんです。そういたしますと、先ほど申し上げましたように、施設更新については十九億に及ぶ金がかかる。一方、現在の経営しておる経営内容というものは、一万五千円以上かかるものが四〇%を占めておる。しかも、市町村である程度援助しながらも、実際に元利償還延滞がこういう膨大な数字になって出ているわけです。ですから、私は、今の予算政策ではこの問題はとうてい解決しないのではないかと思う。ですから、農林省としても、この問題については、従来の考え方を改めて、第二次北海道開発計画の中に積極的に織り込んで、北海道特殊事情として解決をはかるというむしろ進んだ態度の方が望ましいのではないか、このように思うわけなんですが、いかがでしょうか。
  11. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 確かに、北海道におきましては、一戸当たり経営費がかかるだろう、たとえば電柱の本数をとってみましても、内地よりは電柱の数が多くなるだろうというようなことが考えられますので、当然維持管理等についても、内地よりも負担が多くなるであろうということは想像にかたくないわけでございます。ただ、そういう意味におきまして、今後そういう問題を含めてわれわれが考えてみます場合、ある意味において、施設費は国が出しておりますけれども、同時にまた、北海道全体の電力関係についてはそういうことを織り込んで一つの経営というものも考えられておるのではないだろうか。これは私直接電力会社に対する内容を承知いたしておりませんけれども、たとえば、内地におきましては、ある程度電力会社は、九万円以上の場合も負担しておるというようなこともありますし、そういうこともありまして、内地の場合はできるだけ早く電力会社に引き継いでもらう、当初の施設だけは国が助成して作るが、できるだけその後においては一般電力会社に引き継いでもらう、こういうことでずっと参りまして、北海道年次計画で三十七年度から引き継ぐようにいたしたい、こういうことにやっております。それ以外の県におきましては、ほとんど一般電力会社でやっていくことになっておるわけでございます。ですから、北海道の場合におきましても、現在電力会社ではいろいろ基準を設けられておるようでございまして、一戸当たり何本までは引き受ける、あるいは一戸当たりどのくらいの額までは引き受けてもよろしいというような一応の基準を作っておられるようでございますけれども、やはり、われわれの立場から見ますれば、ある程度公益性を持っておるわけですから、できるだけ共同受電から一般受電に切りかえられるような方向に考えていただいて、そうして、一般受電に切りかえることに伴って、どうしてもその際更新のための改善なり補修なりが必要だということであれば、それに対する助成ということも非常に考えやすいわけなんです。ところが、未点灯部落解消ということで、一方において、まだまだ北海道は、さっき御指摘がありましたように、一万五千戸も残っているわけですから、これをいち早く解消することが当面の問題だ。そうして、現在すでについた施設についてどうするかというのが、いわば二次的といいますか、ということに考えられるわけでございます。そこで、方法といたしましては、今申し上げたように、一般受電に切りかえるということに伴って何らかの施設が必要であるというようなことに全体の計画が立てられれば、われわれとしては、それに対する助成をどうしてやったらよいかということも検討しやすいのではないか、こう思っております。しかし、実際は、現実は現実としてそういう必要が起こっておるわけでございますから、なお融資その他の方法において十分研究はいたしたい、かように思っております。
  12. 岡田利春

    岡田(利)分科員 今言われたことは、一般論として私は全く同感なわけです。ただ、一般論では律しられないところに問題が出ているのだと思います。特に北海道の場合は、根釧原野あるいは道北の場合、その付近は非常に困難な条件にあるわけです。御承知の別海村という村がありますが、この村は人口一万弱で、面積は三重県一県の広さに匹敵する村であります。一つの村と一つの県が同じ広さのわけです。そうすると、今あなたが言われたように、一般論としては同感ですけれども、一般論ではどうしても解決できない問題があるわけです。ですから、施設更新の問題にしても、施設更新をして移管する以前の問題として問題が発生している。まして、電力会社移管するということになりますと、さらに経費がかさむ。ですから、全くお手上げという状態が現地においてあるわけです。ですから、一般論としてあなたの言われることは、私も非常に同感でありますけれども、それではこの問題はいつまでたっても解決されない。ですから、アブノーマルなところは、できものができれば切開するわけですから、その部分を局部的に手当をしなければならぬ、局部的にこの部分に対する政策を進めなければならぬ、こういう問題がやはり農業電気の場合には出てきておると思うのです。ですから、今あなたが言われたことは、一般論としては私は理解しますけれども、そういうアブノーマルな問題については、地域がはっきりしておるわけですし、しかもこれは都道府県別に見てもはっきりしておる。まして、国の所得倍増計画地域格差の解消や、あるいはまた僻地の生活の安定、あるいは文化を僻地にまで及ぼす、こういう今日の政府政策から言っても、重点施策としてこの中で取り上げてやらない限り、私は解決しないと思うのです。ですから、こういう問題は、やはり大胆に取り上げて論議をする。あるいは農林省だけで解決できないとすれば、開発庁という、そういう一つの国の政策の中で考えていく。特に、北海道の場合には、北海道電力会社電気料金は九電力会社のうちでも非常に高いが、それでもさらに電気料金を値上げしようとしておるわけです。大口電気料金が高いために、北海道にはなかなか工場が来ない。一方小口料金については、あまり差はありませんけれども、やはり一円や二円の差というものは出てきておるわけです。東京電力と比べまして北海道の場合には非常に高いわけです。大体四国と北海道が、全国の九電力電気料金中の最高を示しておるわけです。私は先般川島北海道開発庁長官に北海道における電気の問題の解決について質問したことがあるのですが、やはりこれは、単に電気会社にまかしておくのではなくして、国の積極的な施策を通じてのみ解決されるのだという認識は、どのように検討しても私は変わらないわけですが、こういう点についてはいかがでしょう。
  13. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 ただいまの御意見、まことに私も同感でございますが、ただ、電力行政一般につきましては、実は農林省で所管していない分野でございますので、われわれといたしましては、開拓地だとか、あるいは僻地の農山漁村であるとかいうところで現実に困っている無点灯部落に対して早く電灯をつけてやりたい、こういうことから、限られた助成をいたしておるわけでございます。今お話しになりましたようね全般的な今後の予算につきましては、私どもは答弁する地位にございませんので、関係省とは十分また協議をいたしまして、努力いたしたいと考えております。
  14. 岡田利春

    岡田(利)分科員 もう一つ質問して終わります。  実は、酪農地帯の農道整備の問題でありますけれども、特にこれも東北、北海道の場合に非常に大きな問題になっておるわけです。特に酪農地帯の農道の整備が非常におくれているために、道路と言うよりも道路予定地と言った方が早いと思うほどです。しかし、一般の農道と酪農地帯の農道とは、その果たす役割というものが当然異なっていると考えるわけです。それで、牛乳を生産する場合には、これは三百六十五日、乳の出るのを休む間がないわけですから、毎日牛乳を運搬しなければならないわけです。ですから、そういう意味では、私どもは常識的にそういう農道を酪農道と俗称で呼んでいるわけです。この問題も、既存の入植者あるいはまた開拓入植者は、当時の食糧政策のもとに営農したのでありますけれども、農家の生活安定、自立安定という面では、今日酪農を政府は奨励している。あるいは北海道としても酪農への転換がどんどん奨励されている。こういう中において酪農に転換したけれども、その生産された牛乳を運搬する道路が非常に整備がされていないために、運搬が不可能であるという状態が半年も続くという現状が、東北、北海道の場合に非常に多いわけであります。私は、この酪農地帯の農道整備の問題は、ある程度重点的に、普通の農道整備と違った視野に立って検討しなければ、今日政府の唱えている酪農生産体制の基盤を確立するという点は非常に困難ではないか、このように考えているわけであります。従って、それらの酪農地帯における農道整備について、特にこの問題を取り上げて、酪農振興という面とあわせて重点的にこの問題を解決する具体的な対策をお持ちなのか、あるいはまた、これらの問題にどう対処されていくか。今の年次計画ではとうていこの問題は解決できないと思うので、この点特に農林省開発庁見解を承っておきたい。
  15. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 酪農地帯の農道整備の点についての御質問でございますが、ただいま、農道の整備につきましては、農地局におきましては、一般の団体営の中の耕地整備事業の中で、農道開設事業という項を設けまして、その中で、平坦地区の農道は内地二割、北海道はこの補助率が上がっております。そのほか、急傾斜地帯の農道、こういった農道の整備事業をいたしております。なお、別途、開拓事業の関係といたしましては、従来から、御承知の通り、開拓道路というものを作りまして、開墾建設工事の中で開拓道路を開設いたしていく、こういうようなことで農道の整備をいたしております。特に、われわれといたしましては、御指摘のように、今後の成長農産物の新しい選択的拡大をやっていく建前から、酪農を中心に置きました農道の開設ということにつきましては、計画し、あるいはまた構想を持って三十七年度に臨みたいということで、主産地形成のために必要な農道開設といったようなことで、大蔵省とも折衝をいたした次第でございます。まだそこまで実現を見るに至らないという状態でございますが、とりあえずは、開墾でやっております開拓道路の整備ということと、それから、一般の団体営でやっております農道の整備事業ということで、そういった新しい酪農とかあるいは果樹といったような地帯の出荷あるいは資材の搬入といったような点のために必要な農道の整備をやっていきたい、こういうことでありますから、主産地形成のために必要な農道というものは、将来としては考えたい、こういうふうに考えております。
  16. 赤澤正道

    赤澤主査 三浦一雄君。
  17. 三浦一雄

    ○三浦分科員 今、岡田委員の御了解を得まして、ちょうど今御質問する方が適切だと思いますから、電気導入について簡単なことを承りたいと思います。  私、今の岡田分科員の質疑の中の北海道関係等につきましては、われわれとして非常に考えさせられる問題があると思います。そこで、これに関連してお尋ねしたいのですが、第一に、予算編成は北海道庁と相談の上に出しているということでございましょうか。その次に、そうしますと、施行は北海道庁、開発庁に移しかえで実行する、こうなっていますか。予算の実行は農林省が直接やっているのですか。ちょっとそれを説明して下さい。
  18. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 毎年度の予算対象になるべき地区数あるいは計画数におきましては、これは府県並びに道庁から上がったものを基礎にして予算を編成いたします。三十七年度について見ますると、道から上がってきたものをそのまま予算として実現いたしておるわけでございます。それから、実行につきましては、これは、開発庁でなく道庁を通じて、事業主体は農協でございますから、道庁を通じて農協に出す、こういう格好でございます。
  19. 三浦一雄

    ○三浦分科員 私はこう思うのです。北海道の広大な地区にありますところの無電灯部落というもの、これは容易じゃないと思う。そこで、これはむしろ北海道開発計画の一環としてそっちの方面からも予算を出す、むしろ分離した方がその効果をあらしめるように考えるのですが、農林省としましては、それを分離して北海道開発計画に入れて、そこで規模を拡大し、そうして適切な実行に移すことは、必ずしも悪いわけじゃない、むしろ支障がない、こう考えるのですが、振興当局としての考えでいいですから、その点、差しつかえないか、あるか、簡単に一つ……。
  20. 齋藤誠

    齋藤(誠)政府委員 今、電気導入のやり方としては三本建に実はなっております。一つは離島電気導入方法であります。もう一つは開拓地に対する電気導入、それから、今御議論になっております僻地電気導入、この三本建になっております。  それで、開拓地の方につきましては、ここに農地局長がおられますけれども、これは改修まで含めた開拓地区についての助成対象ということになっております。私の方は、既存の僻地に対する電気導入ということでやっておりますが、今お話しになりましたように、北海道の広大な地域に対して早急にこれをやっていくということになりますれば、御指摘のように、開発計画として含めて新しい計画を立てられることは差しつかえないのじゃないか。ただ、開発庁としては、従来公共事業を中心にしてやっておいでになりますので、事業をやる場合には、やはり道庁、農協を中心にやって参る。もちろん、これが農協以外の事業主体でやるというふうなことが考えられますれば、これまた新しい考え方でやっていくことも考えられる。たとえば市町村がやるというような場合は、これは、農林省としては直接市町村に対する助成を建前といたしておりませんで農協を事業主体として考えておりますが、しかし、全体の計画としては北海道開発計画の中に入れて仕事をしていただくことは望ましいと考えております。
  21. 赤澤正道

    赤澤主査 淡谷君。
  22. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 農林大臣、いよいよ日ソの漁業交渉が始まる時期になったようです。昨年はだいぶ時期がおくれましたので、地元も大へん困りましたし、また、政府も大へん気をもんだことだろうと思いますが、その方面のベテランである河野農林大臣は、腹中すでに成算をおさめておられるだろうと思います。もとより、これは外交交渉でございますから、全部をお話し下さいとは申し上げませんが、非常に心配しております問題だけに、大体の交渉の見通し、並びに、隘路がございましたら、その隘路の点を率直に教えていただきたいと思います。これは別段かまをかけるわけではございませんから、御用心なさらなくともよろしい。私どももこれは心配しておりますから、野党といえども及ばずながらプッシュする気持は持っておりますから、その点は一つ率直にお話し願いたいと思います。
  23. 河野一郎

    ○河野国務大臣 私、昨日もお話し申し上げたのではないかと思うのですが、もう日ソ交渉もだいぶん年を重ねておりますから、まだ最終的に技術調査は済んでおりませんけれども、とは申しながら相当に調査も重ねているわけであります。お互いにこの仕事の実態についてはそれぞれ相当の理解を持っているわけであります。従いまして、ただいたずらに相手国という立場で話をいたさぬで、お互いの職域においていかにこの魚族を保護し、それぞれの関係漁民諸君が永遠にこの漁業について操業を続けていくことができるというところに基本の方針を置いて、そうしてお互いに理解と協力をもって話しますことができますならば、私は、もうことしあたりからそろそろそうもめずにいけるのではないか。ただ、しいて考えますことは、最初において、ソ連側も日本側も、あまり魚族が戦後豊富でございましたので、多少とり過ぎた傾向があるのではないかということは、今日何人も否定できないことだと思うのであります。これまでのようにとれるだけとるという格好で双方が参りますれば、年々魚族は悲観の一路をたどらざるを得ないということも、私はある程度立証されていると思うのであります。もっとも、昨日もお話がございましたが、ほかに海流、水温の関係、他のニシンとかイワシとかいうものとの関係等から考えまして、科学的に調査いたしましたら他に原因があるかもしれません。あるかもしれませんが、いずれにいたしましても、他に原因があることはあることといたしましても、とにかく経過としてそういう経過をたどっていることは間違いないのでございますから、これに対しては、日ソ両国において、いかにしてこの資源を確保し、そうしてお互いにこの漁業を永遠に続けていくことができるようにするかという共同の責任に立っているという自覚を持たなければいかぬと私は思うのです。この点については、最初からソ連側は、魚族の保護ということをしきりに言うのでございますから、わが方におきましても、今年あたりは、私は、魚族の保護という立場に立って、そうして自主規制をわが方の良識において十分にいたしまして、ソ連側をしてわが方の真意を理解せしめ、そうして結論を出すという態度で処理いたしたい、こう思っているのでございます。
  24. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 伺いまして、なるほどとうなずかれる面がたくさんございます。実は、この前に鳩山元総理が非常な病気を押して向こうに行かれまして、河野農林大臣また御苦労なされましたすぐあとに、一年ほどあとでしたか、私どもソ連へ行きまして、ここに出ております永井委員なんか同じでございましたが、やはりこの問題でいろいろ向こうと折衝をした経験がございます。そのときに、ばかに河野さんは受けがよろしい。鳩山さんもむろん受けがよろしい。見ますと、フルシチョフなんという人は河野さんと非常にうまが合いますね。どこか腹で話し合うことができるような人なんで、これはうまくいったんだなと思ってきましたけれども、今のお話を聞きますと、なるほどそれじゃ交渉はスムーズに進むわけだなという感じを持つ。確かに、この資源の保護については、向こうはこっちで考える以上に考えているようであります。  そこで、河野農林大臣の方向がそうだとすると、われわれも非常に賛成できるのでございますが、その交渉をプッシュする意味で二、三点お伺いしておきたいのは、資源保護の問題を盛んに向うで言う。私どもの方ではずいぶん資源保護をやっているのだが、日本側はとるばかりでさっぱり資源保護をやっていないんじゃないか、こういう話が出て参りました。今度は高碕さんあたりが先発されるようでございますが、いろいろ、昨日の御答弁でも、稚魚の育成放流については御心配になっているようでございますが、ソ連側の資源保護の実態は一体どうなっているのか。私たちにもはっきりつかめないで帰ったのですが、大臣何か御研究なさったことがございましたならば、お聞かせ願いたいと思います。
  25. 河野一郎

    ○河野国務大臣 この点は、私も親しく現地の調査を自分でしたわけではございませんけれども、第一に考えられますことは、先方はわが方の現地調査を少しも拒否する態度はございません。いつでもいらっしゃい、見ていただけばけっこうだという態度でありますことが第一でございます。第二には、放流についても相当の考慮を払ってやっておるという跡が見られるような説明を聞いております。第三番目には、これはすぐおわかりいただけまするように、年々、漁獲量につきまして、わが方が減って参ったと同様の率において先方も漁獲量が減っておる、減らしておる。これは、わが方から何もお前の方はどうせいということをやかましく言ってのことではなく、交渉の結果、わが方の漁獲量について先方とわが方との合意を得るために、御承知のような経過をたどって一致を見たのでございますが、わが方が下げたのに続いて、先方も下げておるという事実は、私は、これはわが方としても相当の考慮を払う必要があると思うのでございます。そういう意味において、少なくとも昨年の専門家会議においてはある程度の意見の一致を見ております。これらは私は非常な進歩だと思います。従いまして、今年度におきましては、わが方におきましても、これらの技術調査の経緯にかんがみまして、相当な自主規制をまず行ないまして、そうして、みずからこの程度に自主規制をするならば魚族の保護ができるという確信を持って先方との間に話し合いをするという態度で臨むべきではなかろうか、こう思っております。  さらに、これ以上必要と考えますることは、オホーツクにつきましては、全然今わが方は出漁いたしておりません。ここの調査等についてはその後いたしておりません。従いまして、オホーツク海における魚族の関係がどうなっておるかというようなことについても、進んでソ連側との間に共同調査をする必要があるだろう。また、ソ連は、カムチャッカの各川につきましても、かつて戦前は非常に豊漁をうたわれた川が、今日では、先方の説明によりますと、もう一尾のサケ、マスが上らない、従って、漁場を閉鎖しておるというようなものもあると向こうでは言うております。決してこれはうそではなかろうと私は思います。  そういうような状態で、相当にこれらについても異動もあるわけでございますから、双方においても、もうことしあたりからそろそろ真剣に一つ理解のある調査、そうしていかにして魚族を保護するかという積極的な面に協力していくという態度で臨みますならば、私は、日ソの間にはむしろその問題がなくて、この理解をわが国内の漁民諸君に得ることにむしろ問題があるというふうに考えるのでございます。さればといって、非常に厳格にしなければならぬというわけじゃございませんけれども、そこには、よく技術者の意見等も聞きまして、そして、また、出漁されまする各——たとえば、御承知の通り、制限区域内の漁業をどの程度にするか、さらにまた、区域外をどういうふうにするかというような、総合的にこれらを調査して、わが方の態度をどうすべきかというようなこと等についても一つ十分案を立てて、私は双方理解のある妥結をいたしたい、こう考えております。
  26. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 ちょうど私たちが参りましたときも、フルシチョフ初めミコヤン、イシコフ、ガバノフの諸氏と率直に腹を割って話し合いました。これは、むろん、政権を持っております総理、農林大臣のようにはいきますまいが、社会党は社会党として、何らか向こうの真意がわかるんじゃないかということで、ずいぶん聞いたのです。これは向こうはあまり複雑に考えていないらしいんですね。現在とっている高が去年より減ったか増したかぐらいがやはり魚族が少なくなったという大きな理由になっているらしい。このままでいきますというと、大体三千年ぐらい後にはサケ、マスがなくなるのではないか。日本の方では、三千年どころか、来年どうなっても、ことしとれればいいという態度でやってきたために、大臣もおっしゃる通り、今日の非常に困難なところが現われてきた。これは私たちも率直に思う。  そこで、今の大臣のお話にもありましたが、向こうの魚族資源の保護の政策ですが、話の裏からしますと、どうも日本のやっているような孵化あるいは放流というほどにも進んでいないんじゃないかと何か想像される。いわば、サケ、マスが自然にさかのぼって来やすいように川そのものの条件を整えている程度じゃないかと思うのです。日本では、今後もまた、資源保護の立場から、水産資本がやるにせよ、あるいは国自体もやらなければならぬと思いますけれども、まだサケ、マスの増殖をはかる方法というものははっきりきまっていないんじゃないかと思うんです。放流したものであっても、これは大きな他の魚によって食われてしまって歩どまりが悪い、ある程度まで大きくしてから放流した方がいいじゃないかという説もございますし、いろいろ説がございますが、そういう研究も大事でございますが、さしあたり、自然に上ってくる河川の保護などについても十分考えなければならないと思うのです。これは、経済成長もけっこうですけれども、北海道あたりの川は、特にダムその他でどんどん改修が進みますというと、そういう点でまた非常に向こうに言質をとられるようなおそれがあると思う。これは、放流、孵化も大事でありますが、そういう自然のままの自然保護の立場で大臣にお考え願いたいと思うのですが、その点いかがですか。
  27. 河野一郎

    ○河野国務大臣 ミコヤン氏の話によりましても、すでに千島をわが方で領有いたしておりました当時に千島でやっておりました放流の施設等は、その後も引き続きやっておるということを言うておりますから、先方もある程度はそれに関心を持ってやっておる事実はあるようでございます。  それから、ただいまの北海道の河川の保護でございますが、これは、鮭鱒関係の業界の諸君が非常に強く要望して、先日も見えられました。そこで、私は、もちろんけっこうなことであるけれども、まず業界の諸君が相当の金を集めて、それはサケ、マス業界の諸君がとるだけでほかの者はだれもとらないんだから、一つ諸君が大いに放流をやってもらいたい、放流をやる施設、放流をやる資金ができれば、それに順応して政府の方としても河川の保護をやるということは当然である、従って、これは官民一体になって大いにその実をあげるようにしよう。今お話しの通り、どの程度放流したらそれがどういう歩どまりになるかということについてはまだ研究中でございます。しかし、いずれにしても、相当の成績をあげておるということについては、これまた見のがすことができないのであります。でございますから、これは一つ大いに河川の保護、放流というものをあわせて資源確保のために積極的な施策を講じていく必要があるというふうに考えております。
  28. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 その点でさらに一点お伺いしたいのは、ソ連の方の考え方としては、日本の国民が実際生活上食糧として食べるならばこれはとってもいいが、日本では、国民が食べるのではなくて、何か母船式で海に出て行って、どんどん他の国に輸出をするために乱獲をしているのだということが非常に気になっているらしいのです。これは、国際収支が赤字の場合に輸出を伸長するのはけっこうでございますが、その点でやはり資本主義国の日本と社会主義国のソ連との間では若干意見の違いがある。これは河野さん抜かりはございますまいけれども、今言ったように、乱獲の原因が大きな生産資本の貿易利潤の獲得にあるのだという点を頭に入れておかれませんと、とんでもないあげ足をとられるようなことになるのじゃないか。  それに関連しまして、独航船の問題。これは、いろいろ海域を制限される現状にございますけれども、その制限された海域が、従来の独航船の漁獲の区域まではみ出すようなしわ寄せがちょいちょい見える。これは、やはり、独航船は独航船で、大資本までいかない非常に苦しい立場がございますので、この点なども、いろいろ独航船の方の動きもあるようでございます。この点御配慮を願いたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  29. 河野一郎

    ○河野国務大臣 その点は、もちろん、制限区域内の漁業といわゆる区域外の以南の独航船の漁業とは全く分けて考えておるつもりでございます。ただ、はなはだ遺憾なことは、昨年も区域外の以南の漁業が少しとり過ぎまして、今多少問題になっておるのでございますが、これらにつきましては、今年は大いに一つ関係業界の諸君の御協力を得まして、これはほかにだれもとりに行くものはないのだから、今関係しておられる諸君がとるだけなんだから、みな自分の田や畑をきれいにし、よくすることと同じなんですから、その点を一つ十分これらの諸君に御理解を願い、御協力を願うようにいたしたい、こう考えております。
  30. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 きのうまでの大臣の御答弁で、大体沿岸漁民に対する施策も進めていかれるような方向をとっておられるようでございますが、大へんけっこうなことだと思います。ちょうど、独航船というのは、沿岸漁民と遠洋漁業の中の沖合い漁業のちょっと大きくなったような形がございますので、これが一つの谷間となって、なおざりにされるおそれがございます。いずれまたこれは農林水産の方でも問題になると思いますから、一つ十分御配慮を願いたいと思います。  それから、これは多分大臣にも向こうで言ったと思うのですけれども、日本では、太平洋をまっ二つに割って、太平洋の西側の方では盛んに自由な漁業を要求するけれども、東側半分に漁業を伸ばしていかないのはどういうわけか、アラスカ沖にもカナダ沖にもサケはいるのだが、こちらの方にはさっぱりサケ、マスをとることを要求しないで、ソ連側の方だけにこれを要求するのは少しおかしいじゃないかというので、実はにたりと笑われた。これは、アラスカの沖、カナダの沖のサケ・マス漁業に対する日本側の進出ができないものかどうか、これをお尋ねしておきたい。
  31. 河野一郎

    ○河野国務大臣 たまたま今御指摘の場所の鮭鱒の漁業につきましては、日米加の条約がございまして、日本の方は入っていかないという約束をいたしておるものでございますから、鮭鱒漁業に関する限り入っていかぬことにしております。しかし、御承知の通り、私は、サケ、マス以外のものは大いに行くがよろしいということで、カニ、タラ、底魚というようなものにつきましては、積極的にこれらの漁業を奨励して、そうして、やりたいという人にはどんどんやらせるという施策をとっております。
  32. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 きょうは、大臣大へんお疲れのところ無理を言っておいでを願ったのですから、一つ大臣に自由な放言をやっていただいて、一つ骨休みのつもりでお願いしたい。  それから、これは、カナダあるいはアメリカとの間にサケ・マスに関する協定があるそうでございますが、その資料を一つあとでぜひお出しを願いたい。これは主査からもお答え願いたいと思います。
  33. 赤澤正道

    赤澤主査 善処いたします。
  34. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 そこで、具体的な形として、北洋漁業の大資本の生産業者が、随時この海域を狭められているという実態はどうも動かしがたい。今までの乱獲のあおりもありまして、ある程度まであきらめているのじゃないかということも若干感ずるのですが、その結果、やかましく言われております大生産資本の上陸作戦という、畜産あるいは果樹方面に思い切って資本を注ぎ込むという形も出てきておる。これはやりようによっては日本の農業の大へんな進歩だと思う。こういう水産資本の進出と、新しい構想に立つ農業の行き方、これについて一つ大臣から、あと私に与えられました時間の範囲内で率直にお聞きいたしたい。  私たち、いろいろ予算委員会などでは農林行政についてはずいぶん詳しく末端まで行き渡って議論いたしまするけれども、農政の基本をついた話というのは、最近の農政論議にはあまり出てこない。めずらしく、河野農林大臣は、河野農政というのを打ち出すほど農政のベテランで、あとの農林関係の皆さんがとても口を出せないくらいに、あなたは優秀な河野農政の構想を持っていると思いますので、その点大へん話の伺いがいがあるのでございますが、大体、農業基本法に基づいたグリーン・レポートとグリーン・プラン、この二つの構想について若干お伺いしておきたいと思うのです。  私たち、農業基本法でずいぶん議論したのですが、農業基本法でうたわれた方向と、今度のグリーン・プランとの間には、少し方向転換が見られると思うのです。むしろ、この前に農林大臣の時代におやりになりました新農村建設の方向がかなり色濃く出ているのが今度のグリーン・プランだと私は見ているのです。これは若干御意見があるかもしれません。私はけっこうだと思いますよ。前にやったことは知らぬふりをして、全然責任がない方向でいくよりは、五年前に言ったこと、四年前に言ったことは正しいのだということで踏襲されていくことが私はむしろ賛成です。しかし、このプランに現われました方向を見ておりますと、これは、実際に農村の構造改革であるとか、あるいは技術の改革とかいうよりは、一つの試験計画というものを大型に広げたという意味にとれる。まことにパイロット・ファームのものである。これは、きのうまでの大臣の答弁にもございましたけれども、一気にはできるものではないので、やはり準備が要る。やはり準備時代の予算のように、率直に言って私は思うが、大臣、いかがでございましょう。
  35. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御承知のように、わが農政の置かれておりまする立場というものが、はっきり申せば、時代おくれと申しますか、逆の方向に今まで進んで参っておりました。逆の方向と言うと誤解があるといけませんから、言葉をつけ加えておきますならば、国家目的、国家要請にこたえて農業というものが営まれておった。そこで、非常に保護農政は徹底しておったが、その保護農政たるや、農家の諸君がこれによって営農の最小限度の保障を得られる程度の保護であった。従って、零細農業というものも認められておった。しいて言えば零細農業を奨励しておった時代もあったのじゃなかろうかと思うのであります。それが一変して、御承知のように、自立農業ということに変わっていくべき世代に変化が来た。でございますから、ここに農業政策としてはいまだ経験しないところの未知の分野に進むのでございますから、そこにはあらゆる困難もございましょうし、冒険もあると私は思うのであります。従って、農業のようなものは冒険というわけにも参りませんから、非常にそれの前進がおくれる、進展がおくれる。そこで、しいて申せばパイロット・ファームということでやっていくことも一つの構想だと私は思います。しかし、それだけの年限をかけてよろしいか。一方において見ますと、他産業の進歩もしくは国際的な影響、国際農業との関係を見ますると、非常に急がなければならぬ立場に置かれておるという矛盾に逢着しておる。慎重にいかなきゃならぬ農業でありながら、それが一方急を迫られておるということでございますから、そこに、私は、しいて申せば、——こういうことを申して、またおしかりを受けるかもしれませんが、今考えておりますことは、第一次農業構造計画だと私は申し上げたいのであります。これで日本の農村が全部自立できる農業構造に変化ができるとは私は考えておりません。さらに一回り回ったあとで、おのおの地元の諸君も自覚もせられましょうし、研究もせられましょうし、そこに第二次の要求、第二次の要望というものが農村から起こってくる。当然それを期待しなければならぬ。だから、第一次が回り終えてから第二次にかかる。第一次が進行中に第二次への前進について保護し施策していくような必要も起こってくるのではなかろうかと思いますが、何にいたしましても、申し上げますように、現在置かれております日本農業の立場が、一面において従来の保護農業を続けつつ、行くべき進路を発見するために今努力いたしておるというのが現状であるという現状分析を私はいたしておるのであります。そこで、行くべき道を発見するために、大いに技術の面で研究をし、さらに、成長農業と言われますけれども、これは消費の面で刺激があるから成長農業であって、そこに技術的なものを持っておるわけじゃないと私は思います。従って、消費の要求というものについても時に変化がある、国際的な問題も起こってくる、そこに貿易の自由化がある。欧州共同体の問題が起こってくるというような客観性の変化というものを考慮しつつ、日本農業の将来について私は考えないわけにはいかぬと思っております。そういうような客観性の変化がございますから、そこに基本的なものを、これでというようなものが立てにくい。従って、私は、手探りをしながら、各方面の地域の特質に合わせつつ構造の改善を前進して参る。そうしてやっておるうちに国際的な方向もわかるでしょうし、日本農業の優越性も保持することができるというようなところまで前進することができますれば、そこで初めて日本農業の確立ができるのではなかろうか。  そこで、つけ加えて申し上げますと、もちろん、その際においても、第一に順序として考えることは経営規模の拡大。これは私は社会党の皆さんがおっしゃることとわれわれはちっとも変わらない。それが共同化であろうが協業であろうが、その経営形態はどういうことであろうが、それは地元民の要求によって満たされるべきものだ。また、土地の造成についても、私は、皆さんのおっしゃるように、原始林の開発、林野の開墾、これは全く同じ方向でいくべきものと思います。あらゆるプラスすべきものを総合して、そこに経営規模を拡大し、そうして経営規模を拡大すると同時に、研究課題でございますが、兼業農家の育成というものが、産業の地方分散とともに、どういうふうにこれが固定していくだろうかということについても考慮する余地があるだろう、そうして、その間に主産地を形成していくということも考えられるだろうというふうに、しいて申せば、きめのこまかな、それぞれの地域に適合した農業を育成して参るということでいくべきものじゃなかろうかというふうに考えておるものであります。
  36. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 きのう、岡田委員の北海道以北の漁業についての何かソ連との間の安全操業の問題の質問に対して、大臣は、これはいいとも悪いとも答えられないと言ったことは、大へん残念な御答弁でありますが、これは正直な話だと思うのです。ただ、漁業だけじゃなくて、農業についても、率直なところ、どうしていいか見当がつかぬというのが実態だろうと私は思う。それは率直に言い切った河野農林大臣の勇気を私はむしろ買うものであります。農政も、今おっしゃったように、農民の声も十分聞くべきは聞いて、これから一つ方向を打ち立てていこうという根本的な態度は、私はむしろ敬意を表します。  そこで、具体的な問題を一、二お伺いしたいのですが、水田に関する問題。これは、食管法をいじるということで、いろいろな誤解もありましたろうが、大へんな抵抗がございまして、一応たな上げになったようであります。私は、米が十分とれておるから、これでもう日本の水田、米麦に対する政策をやめていいとは絶対思ってない。今、日本の米が十分になったのは、その裏に、非常につらい農民の労働と、それから苦しい生活と、貧しい文化の犠牲があるのです。その犠牲が長い間続いていまして、被買収農地の地主諸君が金を失ったからといって犠牲者づらをしておりますけれども、もしほんとうに政策のあやまちのために犠牲を償ってもらおうというならば、長い間高い小作料とひどい小作条件でいじめられた今の自作農、元の小作農が何千年にわたって払った犠牲の補償を要求する権利さえあると私は思っておる。やっとこの国の需要を満たすようになった今日では、米の産額よりも、農民の生活を楽にして、若い諸君でも進んで水田作業ができるような方向にこの辺で切りかえをしなければ、とてもその時機はないと思う。これは、食管などをおいじりにならないで、むしろその方面でもう一ぺん水田農業に対して近代性を与えるために見直していただきたいと思う。これは、ことしだけの主張じゃありませんで、私は毎年やっておる。幸いこのプランは大胆な打ち出し方だと思います。抵抗はあると思いますが、乾田直まき法、これなんかを打ち出されたことは大へん勇気がある方向だと思います。これは抵抗を食います。抵抗を食いますが、この点については農林大臣得意の押しをもって押し切られるように私は要望したい。そうして、その方向によって、水田そのものが機械化され近代化された場合、日本の農業の構造は相当大きく変わってくると思う。確かに成長産業は果樹であり畜産でありましょう。けれども、現実に日本の農村の意識を決定しているのは大多数の水田農家なのです。この点、今非常に小さく頭を出しておりますけれども、これはぜひとも農林大臣の強い押しをもって、研究でかまいませんから、徹底した方向で行っていただきたいと思う。  それから、試験研究の方向ですが、これは確かに保護政策によって国が非常に大きな犠牲を払ったつもりでおりましょうけれども、逆に申しますと、農民の方では逆な現象が出ておる。この保護政策を行なった場合の試験研究というのは、やはり小農自立主義です。小農自作農主義に立って、従って、研究の方向が全部小農の経営についてである。技術そのものにも階級性がある。大農の技術と小農の技術は違っておる。農民の生活を主体として、これを楽にするような技術、まあ生活はどうでも、収穫を上げればいいという技術方向とは明らかに違っていると思う。小農をあまりに大事にし、自作農をあまりに大事にしたという技術方向が、転換期にあたって役に立たなくなっているというのが実態だと思う。その意味で、試験研究も大事でございますが、新しい科学的な農業、新しい農場的な農業のために一生懸命試験研究を急ぐ必要があると思いまするが、この点はどうでございましょうか。
  37. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御指摘の点、私も大体同感でございます。たとえば今のじかまきにいたしましても、さらに前進いたしますれば、水田と畑との作付の区別というようなものまで、ときによれば一緒に考えていくべきじゃないかというような議論をする技術者もございますが、私は、これとても将来の課題として大いに研究すべきだと考えております。  そこで、今お話しでございますが、確かに私は、国家目的を達するための農業ということを先ほど申し上げましたが、その裏づけをする技術というような意味におきまして、技術の研究が、たとえば一町二、三反を適正規模農家といたしまして、その適正規模農家の経営の裏づけになるところに研究の重点が置かれておった、これは間違いない事実だと私は思います。そこで私は、就任以来なるべく多い機会に、試験研究所の責任者、場員諸君と会談いたしまして、とにかく現状を正確に把握して、農業の向かうべき方向を把握して、これに合うような飛躍的な技術の刷新を要請いたしております。私は、まず、できることならば、技術の革命によって農業の前進することが一番やさしいあり方だと思います。従って、これを一番強く期待しておるという意味におきまして、明年度の試験研究所の予算にしましても、私は実は、必要があればもっと大幅にふやしたいと考えておったのでございますが、これは試験研究所の関係者の諸君の要望をその通りに、一銭の査定もしないでそのままいれた予算でございます。従って、予算的には何らの制約はいたしてありません。試験研究所でございますから、おそらく一年に何か生まれるということは無理でございましょうけれども、こういう機運を醸成して参りますことによって、数年のうちに何らかのものが生まれてくるのじゃないかということを、私は強く期待をいたしております。その方向は、もちろんただいまお話しの通りのような方向で行くべきものだと考えるものでございます。
  38. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 特に果樹、畜産などというのは、水田農業を中心とした日本の保護政策からは置き去りにされまして、民間の非常な苦労によって打ち立てられた技術が多いのです。今度の園芸局の構想もございますが、これは頭を出しただけでけっこうでございまするけれども、頭を出しただけで胴体ができていないということは、大臣も率直にお認めなされるだろうと思います。また胴体のつけようがない。果樹に対して一体どういう手を打ったらいいかわからぬということを聞いております。私も、しいてそれを促進させろと言っても無理なのじゃないかと思いますから、一応園芸局というものが頭を出しただけでも一歩前進だと思っておりまするが、民間技術をかなり大胆に取り入れる必要がある。民間技術のあぶないところは、技術のない者が技術者づらをするのが一番あぶないのです。とんでもない間違いを起こしますから、これを国がやります試験施設の中に取り入れる場合に、適当な判断をすることが必要なのです。同時に、学閥とかその他の試験場閥なんかを離れまして、新しい意見を率直に検討してみるという窓口を開くことが、これから大事だろうと思う。私もいろいろ国の方で、試験場とは仲よくやっておりまするけれども、試験場の中で二つの意見に分かれることがたびたびございます。そのときには、やはり農政の根本に立った新しい技術を大胆に入れるというふうにおやりになることが適当だろうと思いまするし、特に今度のプランで見ますと、草地改良事業なども公共事業によって一万五千四百町歩、あるいは農業構造改善事業促進対策としてやはり草地が一千七百町歩、加えて一万七千百町歩、ほんとうはちょうど手ごろな試験場ですね。これをもって草地改良とか構造改革とか言ってもらいたくない。このプランにうたわれておりますのは、ことしはまず第一段階として試験場、具体的に経営にタッチし、新しい農政の先端を切り開いた試験場の構想としてこれを受け取っていただきたい。私もそう見ております。そうでなければ手のつけようがない。従来試験場のガラスの中でやっておりました試験を大胆に圃場に生かして、ここで新しい農業の試験をするんだ、この構想に大胆に立ってもらいたいと思いますが、その点いかがですか。それ以外にこの予算は扱えないのです。
  39. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御指摘でございますが、実は私は昨日も申したことでございますが、予算をとって政府が出すまでは、これはできます。しかし、ほんとうにそれをこなしていただけるかどうかという点になりますと、なかなかむずかしい。それは一つ民間の方が、予算が少ないじゃないかという、議論でなしに、現実の場所で、もしくはそういう精農家、篤農家が出てくることを期待いたしまして、今お話しの通りに、ことし道を開いた。これに対して全国にどの程度の御要望、御要請があるか、それにこたえて明年は、もし計画がたくさんありますならば大へんけっこうでございますから、予算は幾らでもふやします。もし場合によったら、こういうものは予備費を使ってでも、補正を必要とあれば予算の際に入れてでも、その要請にこたえるだけの努力はするつもりでございます。しかし、そう言いましても、場所はあるようでございますが、さてやるとなれば、やる人もなかなかないのではないかということを私はむしろ懸念しておるものでございまして、それは一つ全国の農民諸君が、これにこたえて、各方面から予算要求をして、足らないというふうになることを私はむしろ期待するものでございます。  先ほどもお話がありましたが、園芸局の問題にしましても、たとえば、このごろ皆さんと御一緒に都内の市場の視察に参りましたが、草花の市場に至りましてはもっともひどいということをかねて考えておりまして、東京都内にあります草花の市場にしても種々雑多、一ぺん見に行ったらどんなことになるかと思っておりますが、これらについても、まず園芸局で取引の改善というような面からでも手をつけて、そして組合によって生産から消費まで合理的に動いていくというようにありたいものだと考えております。
  40. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 近代化資金にしましても、消化したいと思いますが、実は消化のしようがない。今度五百億のワクをとるために、大蔵省では大へん抵抗があったようでありまして、三百億を消化し得ないものがどうして五百億が消化できるかということを盛んに言われたようですが、三百億だから消化できない。五百億でもあるいは消化できないかもしれない。非常にたくさんある農民にちょこっと出したのでは、なかなか大へんです。みんな一応ほしいんです。ですから、やはり大臣おっしゃる通り、農民が大胆にこれを使おうと思えば、農民の数にふさわしいような大きな予算を大蔵省に要求してほしい。私も大いに応援します。ロッキードをやるのは、二百七十億の金がどこにいくかわからないというのでは、今の乏しい農林予算ではとうてい黙っておられないから言っている。前大蔵大臣の佐藤さんもいらっしゃいますが、この点、大臣大いに勇気を持って、超大型予算でもかまわないから、とっていただきたい。これをまずお願いしたい。  なお、あとは役所の方々にお聞き願いたいのですが、下手にパイロット・ファームなんという名前をつけましても、試験研究の形にするんだということに踏み切らないと、とんでもない混乱が農村に起こるということを私は申し上げたい。今農村で大きいのは格差の問題です。農民というと、みんな一色にひどい生活をしている、こう申しますが、このひどい生活をしております農民の中にも非常な階層がある。農民というのは階級じゃなくて層、農民層だといわれております。農民層の中におのずから階層がある。もしもこの資金散布によりましてある農家が一回に百万円の融通を受ける、ある協同組合が何千万かの融資を受けまして、しかもそれがほんの一部分、村の数からいっても少ないでしょう。全部に当たらない。ましてその村に一つや二つのパイロット・ファームができた場合に、パイロット・ファームとしてあとの農民に影響を与えるような方向へいくならば、これは悩みはございませんけれども、もし資金を借りたのをいいことにして、近代的な農業を一農家だけでやった場合に、どういう心理的な影響を与えるかというと、これは大へんなものです。最近では、成長財の果樹にしてもあるいは畜産にしても、金があり、資金の融通を受けることができる農家はどんどん新しい畜舎も立てるし機具も入れます。機具でも肥料でも農薬でもえさでも、あるいは技術でも、住宅、生活態度まで大へんな格差があるのです。この格差を詰めるように配慮しませんと、大臣が非常な配慮を持ってなされております農村の政策が、逆に農村の中に新しい階層の対立、新しい階級の対立、不平を呼ぶことは必至なんです。一つの例として最近の水産資本の上陸作戦にしても、実際一般の豚をやっておる、牛をやっておるものは太刀打ちできない形になって入っていることは、私再々申し上げておりますから繰り返しません。この農村に現存する農民間の階層、農民間の格差というものをなくするような方法でかなり大型の融資を行ないませんと、これは大臣、いかに要請されましても、あまり少なくて使えないという形が出る。これはもちろんおわかりでございましょうけれども、御注意申し上げておきたい。あえて大臣にこれはお断わりしておきたい。  それから、これは私ども社会党としては非常に言いにくいことですが、農民の人口の問題です。これはおそらく進歩した形で、今のままの形で農業人口を農村にかかえ込むことはどなたがやっても無理だろうと思う。私たちも無理だと思っている。首切り論を言うのじゃない。そこで人口問題の混乱があるのです。農村にある者がことごとく農業をしなければならないといったような、過去の農村人口論では私は間に合わないと思う。新しい人口論はそうじゃありません。上陸した産業に対して農村が太刀打ちできないのは、いつまでも生産の利益だけ追って、加工、貯蔵、販売の利潤を追求するに道がないという形の中に、幾らがんばっても農民の所得が落ちつかないわけがある。豚の下落がそうでしょう。これは大きな施設を持った資本的な豚の飼育をやりますと、もう安いときは売らないでカン詰にし、あるいはハムにし、そうしてこれを売り出して、貯蔵、販売一貫した中において完全な利潤をおさめている。農民はそれができない。それがやはり農業人口というもの、農村人口というものを、単なる生産農業の形だけにおいてつかむところにある。その意味において、あなたの方でおっしゃる協業、私の方で言う協同化、農民自身の蓄積された資本、あるいは国家から与えられた資本をもって、単なる生産じゃなくて、加工、販売面まで農民が押し出していって、そのために農民が動員されるということをとりませんと、正しい人口問題が首切りになってしまう。確かに今でも農業の所得というものは農外所得を含んでおります。あるいはこれは農外所得も取らなければなりませんでしょう。農村における労働問題も発生するでしょう。しかし、このはみ出した農村の人口が現実にどうなっているかということ、これを見ていただきたい。大臣も市場なんか御視察になったりして大へんけっこうですが、私どもは、そういう仕事をしたものとして市場を見ておりますが、これは確かにおっしゃる通り、草花の市場でもあるいは果物の市場でも肉の市場でもめちゃくちゃなんです。ただし、そのあとの小売段階においてもっと複雑な問題があります。私は、やはり農外収入、特に協業、分業が盛んになりまして、自然に若い人たちが農村から出るような状態になりましたならば、この農業からはみ出した人口がどうなっていくかという過程を、大臣にもう一ぺんこれを見ていただきたい。成長産業、成長経済、成長ムードにつられて、最近では農村からどんどん若い諸君が来ていることは、これは大臣御存じでございましょう。これは来るのはあたりまえです。前から農民は、農業半分、労働半分という形をやっておりました。私よく見ておりますけれども、鉄道あるいは郵便局なんかに行っておりまして、下の下働きなんかさせられて、ひどい労働をして帰ってくる諸君が、うちへ帰って服をぬいで野ら着に着かえて、夕方からもう一ぺん畑に出かけて行く。二度朝がある、これが農外収入の実態です。これを見ております若い諸君が、農村に喜んで居つくはずがない。それがこの経済成長のムードにつられて東京に出てきている。私も相談を受けておりますが、このムードにつられて就職期待権とでも申しましょうか、来てみた者がついた形を一ぺん見てやってほしい。きのうも話が出ましたけれども、十五日に締め切って、翌月の五日に賃金を払う。日雇い労務者です。夜業をさせられている。二十日間は全然労働の賃金をもらわないでやっている。その圧迫で非常に苦しんでいるというようなのが再三出てきております。従って、確かに農業人口あるいは農村人口の再編成は大事でございましょうが、これは首切りなどしないで、全部吸収して何らかの職業体系の中に当てはめていきませんと、正しい意味で農村の発展はない。特にことし差し迫った問題——加藤委員の御質問の時間の関係もありまするし、また機会もございましょうからやめておきますけれども、この差し迫った問題、一つだけ大臣に御質問を申し上げたいのでございます。  農村の労働力の不足の問題ですが、今言ったように、定まった目当てもなく流れていきますので、現実にもう労力不足が農村に現われてきている。ことしの田植えどきにおける労力不足、あるいはは果樹なんかの袋づけなどにおける労力不足——これは昨年から出てきている。それが農村労働賃金の高騰及び労力不足を生みまして、どんどん果樹を切るという形で現われてきている。この具体的な対策を立てておきませんと、幾ら成長産業といっても、果樹や畜産の伸び方に悩みがある。何か具体的な対策を立てておられたらお聞きしたい。
  41. 河野一郎

    ○河野国務大臣 だんだんお話しになりまして、一々ごもっともでございます。私も大体そういう考えで注意を怠らずやっていかなければならぬと考えております。ただいまお話しの季節の問題、たとえば取り入れどき、植付どきに、期間的に労銀が非常に高騰している、労力の不足に困っているという事実も現われておりますことも承知いたしておりますが、これらにつきましても、何らか手を打たなければならぬということは考えておりまして、まだそれをどういうふうにどうという具体的なものを持っておりませんが、すみやかに一つ組合とか団体とかいうものの活動を促しまして、対処する必要があるだろうと考えております。遅滞なく対策を講ずることにいたしたいと思います。
  42. 淡谷悠藏

    ○淡谷分科員 農業の問題は非常にむずかしい問題でありますが、むしろ私は、農林大臣が考えがついていないということを率直に言われることが非常に好意が持てる。どうか一つ窓を大きく開いて、私たちも——むろん政府の出しております農業基本法には反対です。これでは足りないと思っている。この農業基本法の形が若干今度は方向転換しまして、かなりいい芽が出ておりますから、われわれも、通った基本法に対しては率直に意見を述べるが、大臣も、わからぬことはわからぬとはっきり言われますから、けっこうだと思いますが、これから農林水産委員会その他でわれわれは機会あるたびごとに具体的な進め方についての意見を十分言うつもりでおります。その際は、一つ大臣持ち前の放胆さと勇気を持って大胆に正しい意見は受け入れて、ほんとうに日本の農村を立て直すためにがんばっていただきたい。きょうは激励演説をやりました。
  43. 赤澤正道

    赤澤主査 農林大臣は十二時半にタイ国の要人と会見いたします。よって十二時二十分に退席の希望でありますので、これを許しますについては、皆さんの持ち時間は二十分しかないわけです。そこで、永井委員の関連質問を許しますが、約束の通り一問五分間、あと十五分は加藤君の時間といたします。
  44. 永井勝次郎

    ○永井分科員 日ソ漁業の関係について農林大臣に一言だけお尋ねをいたしたいと思います。  淡谷君が先ほどお話しになりました通り、ともどもソ連に参りまして、漁業問題等について今日本に来ておるフェドレンコやミコヤン、フルシチョフなどといろいろ交渉したわけであります。われわれは、日本は樺太、千島を失った、この関係の漁民は生活のかてを失っているのだ、これらの零細漁民のために、戦災の被害を受けた漁民の生活権を確保するために、隣国として考えてもらってもいいではないかという立場で向こうと話をいたしましたら、ミコヤンなどは、それは理由のあることだ、暮らしを立てるという立場で考えるならば、それはこちらとしては大いに考えなければならない問題の一つだ。またもう一つは、日本の国は蛋白資源がなくなって、国民全体の食糧問題解決として漁獲量をふやしたいという要求ならば、それも一つの理由のあることだ。これらの理由のあることならば、お互いに両国の間の条約の範囲内においていろいろできるだけのことはやっていくことにやぶさかではない。しかし、今、北洋漁業の実態を見るとそうではないではないか。私たちが参りましたときは、ちょうど大会社のサケ、マスのカン詰がストックされて輸出が動かない、こういうことで在庫金融についていろいろ金融の問題がこちらで問題になっていたと思います。そういうことが向こうではすっかりわかっていて、これは母船の仕事ではないか、沿岸漁民の生活権を確保するために漁業の権利が与えられてはいないのではないか、また国民の蛋白資源としての食糧として、この漁獲物が国民に回っていないのではないか、少数の資本漁業が独占的にこれをとってカン詰にして、国民に食わせないで海外に輸出して、金もうけのためにやっていることではないか。金もうけのためにやることならば、これはあなた方の言っていることと違うではないかということであります。そういうことでいろいろ話をしたのでありますが、今、日ソの漁業の交渉にあたりまして、両国民族の間におけるものの価値判断あるいは心理的な感情、そういうようなものもわれわれが交渉する上の判断の材料にして接触していかなければならないのでありまして、北洋の漁獲量がふえないという状況の中で沿岸漁民の密漁関係を取り締まって、そうして漁獲量を母船のために確保するという方向に動く、あるいは以南の漁民に対しては密漁取り締まりが強化される、以北については母船が中心になって独航船等が自由になるというふうに、この弱い者を締めて、大きなところに集約するという方向へ日本の国内の政策がいけば、向こうは、そういう密漁があるのではないか、どうこう表面では言いますけれども、その政策をこちらが受け取って、国内政策としてどういう方向にこれを打ち出していくかというところに、向こうの、日本はどういうふうにするだろうという皮肉なものの見方があるのではないか。そういうことで、いよいよ沿岸の零細漁民の取り締まりが生活権を取り上げる方向に動いてきておるのではないか、あるいは以北が母船に集約する方に動いておるのではないか、こういうふうになりますと、ものの価値判断が正面からぶつかるから、円滑に交渉が運ばないのではないかということを心配するわけであります。でありますから、そういう立場に立って、抜かりはないでありましょうけれども、これからの国内における政策、対策を十分考慮しながら、折衝を進めていただくことが必要であろう、こう思うのであります。これについて大臣の御所見を伺いたい。
  45. 河野一郎

    ○河野国務大臣 永井さんはむろん御承知と思いますから、数字を申し上げる必要はないと思いますけれども、万一誤解があるといけませんから、この機会に私は数字の概略を申し上げてみたいと思います。  以南の零細漁民という言葉が非常によく使われます。ところが、独航船が資本漁業と関連して出漁しておりますから、これが資本漁業かというと、そうじゃない。しかも、制限区域内に出漁しておりまする独航船の数もしくは以南へ出漁しておりまする数は、御承知の通り大体同じでございます。漁獲量は御承知の通り以南の方が多うございます。そういたしますと、一隻当たりのとり高は一体どういうことになるか、収益はどういうことになっておるかと申しますと、決して以南に出漁しておられる諸君が零細漁民であるという言葉は当たらないのじゃないかという気持がいたします。今後以南もしくは制限区域内、これらを自主規制いたします際に、ものの考え方がございますから、明瞭に割り切っておかなければならぬ。過去の実績に徴しましても、少なくとも以南で、いわゆる沿岸漁民とか零細漁民とかいう言葉が使われておられる諸君の方が収益は多かったのではないか、現に多いのではないか、内容もいいのではないかということが事実である。ソ連の方で、これに対する認識が間違っておったならば、非常な誤解である。母船として出漁しておりまするものは確かに資本漁業である。しかし、今、申し上げますように、四百隻前後の独航船を同行いたしまして、魚をとるのはこれに従事しておりまする沿岸漁民でございます。御承知の通り、富山県から北、東側で申せば茨城、福島辺から北、ここの沿岸漁民諸君が独航船に従事して、この漁業に参画しておる。そうして母船との間には、とった魚について合理的な取引が行なわれておるということは事実でございます。従って、ソ連が言うところの、制限区域内の漁業は、今言う通りに日本の資本家の漁業じゃないか、資本家を守るわけにはいかぬというところまでソ連からとやかく言われる覚えはない。この点私は明瞭にいたしておきます。  同時にまた、蛋白資源の点にいたしましても、むろん一部はカン詰にしてイギリスに売ります。これは外貨獲得の意味において売ります。しかし、それはわが国内におきまして、沿岸でとれますもの、独航船でとれますもの、これらに相関連して、カン詰にいたしますものは紅サケでございますから、これが制限区域内で漁獲するものの大部分ではない。全体の数字から言えば、これが決して国民の蛋白資源を脅かすほどのものじゃないという点は、この機会に私はソ連側に明確にいたしておきます。もし永井さんにソ連側から注意を喚起するというような意味合いで言うたことがあるとすれば、その点はわれわれも十分配意しつつ国内の指導はいたして参るつもりであります。御注意の点は深く留意いたしまして、今後の指導においてあやまちのないようにして参り、また、ソ連から再びそういう誤解が起こらぬようにいたしつつ日ソ交渉を進めて参るという所存であることを、この機会に御了承願いたいと思います。
  46. 赤澤正道

    赤澤主査 加藤清二君。
  47. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 国会正常化に協力する意味におきまして、主査の言に従って、私はまず河野農林大臣に問題を集約したいと思うのです。理論的にいって順序が狂うのでございまするが……。  第一点は、先刻来お話のございました日ソ漁業協定についてでございまするが、高碕氏が選ばれたということは、私は今日的に言えば最も当を得たものであると喜んでおるわけでございます。ネズミは多うございまするけれども、ネコの首に鈴をつけ得る方はこの人をおいてはほかによい人を見ないと思うほどでございまするが、漁業協定が行なわれるにあたりましては、おそらく漁業問題だけではなくして、経済協力の面とか、あるいは貿易推進の面とか、いろいろな問題がここに惹起されるのではないかと予測されるわけでございます。従いまして、高碕さんのこのたびの任務と権限、これについてまず承りたい。  次に日ソ貿易のわが国の基本方針、これについて明らかにしていただきたいと存じます。
  48. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御承知の通り、高碕君が今回政府代表としてソ連に参りまする任務は、日ソ漁業交渉に関し政府の委任を受けて参られるわけでございますから、従ってその任務の範囲は漁業交渉の範囲でございます。  次に、日ソ貿易のことでございますが、これは隣邦友好国家としてますます貿易の拡大を企図いたしておるという点に間違いないと思います。
  49. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 残余の問題は通産大臣及び経企長官にお尋ねいたします。  農林大臣にあと二問でございまするが、愛知用水の受益者負担が高いではないか、従って何とかしていただきたい、こういう声が多うございます。これについて大臣としてはどのように対処されようとしていらっしゃいますか。  さきの国会で約束をいたしましたところの愛知用水の人家密集地帯におけるオープンの危険除去のためのさく、これを作ることがさきの国会で約束になっているわけでございますが、それは一体どうなっているのか。その点について伺いたいと思います。
  50. 河野一郎

    ○河野国務大臣 愛知用水の農民の負担が重いじゃないか。軽いとは申し上げませんけれども、決して私は重いとは考えません。初めから計画してやって参ったのでございまして、いずれも地元の諸君も非常に歓迎してやっていただいた、御協力願ったということでありますから、これを今さら重いの軽いのと言われたのでは、できちゃったら重いということではいけないと思います。その他は農地局長からお答えいたさせます。
  51. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 愛知用水の事故防止の対策でございますが、今御質問のように、人家密集地帯あるいは道路が水路と並行したり、交差したりする、そういうところにガードレールを作る、あるいはトンネルの入口に金網を張るとか、あるいは立ち入り禁止の有刺鉄線を張るとか、そういうことにつきましては、かねてから十分意を用いてきまして、ただいまのところでは、そういうガードレール等を含めますと約七千メートルを越す程度のものが設置してございます。  なお、先般来通行人の自転車の事故がありました。そういう問題がございますので、その後も地元の町村なりあるいは警察とも十分連絡をとりまして、ただいま申しました七千メートルを越す以上に、今年の三月末までにさらにガードレールが約四千メートル近くできますが、そういうガードレール、さくとか、立て札を設ける。あるいは救命のテープといいますか、水路を横切りまして、あやまって落ち込んだときに、それにつかまれるようにするとか、あるいは水路の壁が非常に急傾斜いたしておりますので、そこにタラップをつける、そういった問題、あるいは通行どめの表示をやって夜間でも見えるように夜光塗料をつける、そういうような施設を本年三月末までにさらに拡充して参りたい、こういうことにいたしております。
  52. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 事務当局の答弁は時間の関係あと回しにしていただきたいと存じます。  農林大臣は受益者負担は高くない、初めから予定しているから、こうおっしゃるのですが、実はその初めの予定がだんだんと狂いまして、どんどん高くなっておるのですよ。初めは反当大体二万円からせいぜい三万円でいけるだろうというのが、今日では四万四、五千円になるのじゃないか、かように言われております。石当たり一万円の米価に換算いたしまして、はたしてこれで営農ができ得るのかできないのかという面、農産物価の不安定な今日、牛、豚特に卵等の安い今日、はたして営農可能なりやいなやということで非常に苦慮いたしておるわけでございます。従って、さきの国会においては、時の大臣は、研究して何とか考慮をいたしますという答弁があったわけでございます。同時に、水は大臣も御存じの通り、農業用水のみならず、飲料用水に使われるのでありますが、これがなんと一立米二十四、五円になるわけでございます。ところが同じ木曾川の水を飲みながら、名古屋の用水は十円以下で済むわけでございます。いや、金利が高くなったとかどうとかという答弁がございますが、同じ時期に同じ工業用水に使いますと、これは四円か五円で済む。にもかかわらず、民間がこれを利用いたしますと二十四、五円になる。これでは高過ぎるじゃないかという声でございまして、これは必ずしも与党、野党の問題でなくして、与野党一致した考えであり、そういう民衆の声でございますから、一つよく御考慮に入れていただきたいと存じます。  次の二問目は、農地を転用なさる場合の基本方針でございますが、愛知用水を作って農地を造成しようという矢先に、次から次へ美田がくずされていくわけでございます。それについて一体どんな方針で臨んでいらっしゃるのか。またその方針がはっきりしておるならば、でき得べくんばそれを早く周知徹底させてもらいたい。こういうことでございます。先般もNHKが、おくれたがために地元が大へん困っているというその状況をローカル放送をいたしておったわけでございますけれども、すでに売買契約ができてしまったあとにおいて中止命令が出たり、あるいは延期命令が出ますと、困りますのは工場側よりも、むしろそのおかげで牛も売ってしまったり、たんぼも売ってしまって、もう作づけを考えぬ、よその工場に雇われることになったというような方々が実際は困っていらっしゃるわけでございます。従って、基本方針が固まっておりますならば、早く周知徹底方をお願いしたいのでございます。私の考え方からすれば、工場の用地あるいは住宅用地も大切でございますが、せっかくの美田をなるべくつぶさないようにしたらどうか、これでございます。大臣の御所見を承りたい。
  53. 河野一郎

    ○河野国務大臣 今のお話は大へん迷惑いたします。何か当局が非常に周知徹底させないから農民が迷惑しておるようにおっしゃいましたけれども、農民諸君の方が法律を無視して、法律の順序、手続通りにおやりにならないで、勝手に売買の契約をし、金をお取りなさるからそういうふうなことになるのであります。元来農地法の示すところ、転用の許可があって、しこうして売買が行なわれるべきものであって、それをなさらないで、自分勝手に売買しちゃって、あとから手続をするというような法律を無視したことをなさるから、そういう迷惑をなさるのであって、そういうことは一つよくお確かめ願いたいと思います。私は逆だと思います。従って行政の方向としましては、今加藤さんがお示しになりましたように、農地として転用が適当であるかないかということを十分調査いたしまして、そしてこれに必要な所要の手続があります。その手続を経た上で、これは工場敷地もしくは住宅地として地元の委員会、県の委員会等の調査を経て、そしてこれが大規模のものであれば各農地事務局長の許可ということに従来の手続はなっております。その手続を経て利用されるということでございますので、その手続を怠って、書類はあとからでいいじゃないか、先に売ろうじゃないか、買おうじゃないか、金をもらおうじゃないかということになるから、そういうことになるのであります。そのことは、地元の農地委員会に十分管理していただけばそういうことはないと思います。  この基本の方針につきましては、すでに新聞、ラジオ等で再三申しました通り、昨年度におきまして設備投資の過剰というような事実があり、一部には思惑的に工場敷地として農地の転用を申し出ておるものもあるというような事実もございましたので、それが地方の土地の高騰にもなり、各方面に悪影響があるというようなことから、一時農地の転用につきましては、各農地事務局長に従来権限を委任いたしておりましたものを、中央に集めまして、農林省農地局長の手元で全国を平均して、方針の二途に出ないようにする。その方針は、第一は公共用に使用する用地、第二は輸出産業に必要な用地、この二つについてはこれを従来通り許可する。その他のものについては、貿易のバランス等も見て、そうして設備の行き過ぎ等を押えるという意味において、なるべく消極的に農地の転用を抑制して参るという方針をとっておるわけであります。これは、今の見通しでは、年末くらいまでに経済が正常に復しましたならば、従来通り各農地事務局長にそれぞれ認可の権限を戻すということを明瞭にいたしておるわけであります。
  54. 赤澤正道

    赤澤主査 加藤委員、大臣はお約束ですから、あとは事務当局に……。
  55. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 ただ私が遺憾に思いますことは、大臣の言たるやまことによしでございますけれども、周知徹底は必ずしも十分とは言えないということでございます。必ずしもこれは地元の農民が勝手に先行して、許可を得ずに物事を運んだという事例ではございません。大臣は大へんお忙しいというから、あとは次に譲ります。  きょうは総裁ダービーと申しましょうか、三人総裁候補がおそろいでございます。私も一生懸命にお尋ねをいたしますので、そのおつもりで御答弁のほどをお願いいたします。  まず経企庁長官にお尋ねをいたします。水資源開発公団が四月から発足するということを聞いておりますが、まず第一はこの人事について、特に総裁決定の経緯についてお尋ねしたい。
  56. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 先般法律が通りまして、水資源開発公団を発足させて参らなければなりませんので、諸般の事情を考慮し、十分な公団の運営に適当な人を選びまして、総裁、副総裁を決定いたしたのでございます。
  57. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 理事は選定されましたですか。これからということであれば、その基本方針を承りたい。
  58. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 総裁、副総裁を内定いたしまして、そうして総裁、副総裁等の意向等もお伺いしながら今後理事の選任をいたして参りたい。こう考えておるのでございまして、理事は実際に公団の運営をいたしていく人でございますから、その人選については十分な注意をもっていたして参りたい、こう存じております。
  59. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 人事機構については。
  60. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま準備をいたしております段階でございまして、どういうふうな職制あるいは機構かというようなことは、今後これから定めて参るのでございます。
  61. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 本年度の事業計画についてはいかが相なっておりますか。
  62. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 事業計画の大綱は、むろん水資源公団を設立いたす準備としていたしておりますけれども、御承知の通り、発足にあたりまして準備はいたしておりますけれども、今後の運営等につきましては、審議会等の御意見もございますので、それらを待って最後に決定いたすのでございます。
  63. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 聞くところによりますと、当初計画は淀それから利根、この二水系と聞いておりますが、それは決定済みでございますか、ございませんか。今年の予算に現われておるのは一体何と何でございますか。
  64. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 一応公団の発足にあたりまして取り上げるべき地域と水系ということになりますと、まず緊急を要する問題として利根川水系並びに続いて淀川水系ということになると存じておりますけれども、これらの最終的な問題は、審議会等の御決定に待つわけでございます。
  65. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 しからば今日の段階ではまだ未決定ということでございますか。
  66. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 一応の方針は作りつつございますけれども、最終的な決定はまだいたしておりません。
  67. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 いつごろ決定いたしますか。
  68. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知の通り、三月には公団が発足をいたし、あるいは公団発足と関連いたします審議会その他の全部の整備をいたしますから、それから発足する、こういうことになると思います。
  69. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 いや、私は発足のことを聞いておるのではなしに、事業内容でございますが、これは法律によれば公示、発表をしなければならぬことに相なっておるわけです。これが四月ごろに行なわれるということであるならば、もはやわかっているはずでございます。従って、私は委員会においてお尋ねしているわけでございます。
  70. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今申し上げましたように、一応この公団法を通します場合におきましても御説明申し上げたと思いますけれども、対策の緊急を要します地点として利根川水系並びに淀川水系ということを考えておるわけでございまして、そういう意味において若干の準備をいたしておりますが、最終的決定は、御承知の通り審議会の決定によってきまる、こういうことでございます。
  71. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 しからば木曾三川、木曾、揖斐、長良は一体どうなりますか。
  72. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 現在の段階におきましては、ただいま申し上げました通り、まず利根川水系並びに淀川水系について考慮をいたしておるのでございまして、将来の問題としては、法律御審議の際にも申し上げましたように、九州地方あるいはお話の中京地区における問題等についても逐次考慮すべき時期があろうかと考えております。
  73. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 愛知用水公団は水資源に合併をさせる計画でございますか、そうではない計画でございますか。
  74. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 水資源公団ができましたらば、愛知用水公団はそれに吸収されるということが最初の計画でございました。しかし、水資源公団の発足が非常におくれましたものでございますから、愛知用水公団は豊川用水の関係もございまして、引き続いて存続して豊川の問題を今日取り上げておるわけでございます。将来こういうものを統合するという従来の関係については、今後も推移を見ながら進めて参ることでございます。
  75. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 あなたの答弁とさきの経企庁長官の答弁とは食い違っておるようでございます。迫水経企庁長官は、去年の五月三十一日の委員会におきまして、私の質問に対して「中京地区につきましては木曾川、長良川、揖斐川、これも当然指定水系になるのでございまして、先ほどちょっと申し上げたと思いますが、調査の完了次第昭和三十六年度中にも水系として指定したい、こう考えております。」と言うて、次にその理由を述べておられるわけでございまするが、そのときの経企庁の計画と今日の計画とは変わったのでございますか。
  76. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 別段変わってもおりませんし、食い違いもないと存じております。むろん、水資源公団が発足いたしますと、かなり膨大な仕事をいたすわけでございますから、公団発足以来十分な準備と組織ができませんければ、いたずらに多くのものをかかえましても進行ができないと思います。従って、当時からむろん利根川水系及び淀川水系というものはまっ先に考えられておるわけであります。そうかといって、じゃそれだけかといえば、そうじゃないということをわれわれ申し上げておりますし、他の水系等につきまして十分調査をして、将来の工業用水確保あるいは都市水道の確保というような問題について、逐次公団の整備と進行の状況によって進めて参るので、方針として別に変わってはおらないのであります。
  77. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 方針は変わらないけれども仕事が遅延している、こういうことでございますか。
  78. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 遅延している、何か仕事を着手してそのまま放置しているというのではないのでありまして、逐次そういう問題を取り上げていく。御承知の通り、公団が発足いたしまして大きな仕事をやることでございますから、そう何もかも最初から手を広げますことも能率的ではないと思います。従って、そういう意味で申し上げているわけであります。
  79. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 同じ問題につきまして、昭和三十六年五月十七日に大平長官は、「水資源公団設立後直ちに吸収することは困難であろうと思います。従いまして、世銀の了解が得られ、水資源開発公団への移行の準備が整いました段階で、すみやかに必要な法律上の手続をとりまして、吸収いたしたい、そういう方針でおります。」しかも、その前に池田総理は新聞発表を行なわれまして、愛知用水公団なるものを水資源開発公団に合併する旨のことをはっきりと述べておられるわけでございます。これはもう池田内閣の基本方針と見て間違いございませんですね。
  80. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今お話がございましたように、愛知用水公団の仕事が終わりましたが、新しい水資源公団の設立というものが臨時国会まで延びたわけでございます。その間、御承知の通り豊川用水の問題が出まして、そうして愛知用水公団が豊川用水の仕事を引き受けたのでございます。従って、そういう意味で進んで参ってきておるのでございますけれども、大平官房長官が言われましたように、愛知用水公団は世銀の借款等もございます。そういうものの準備もいたさなければならぬのでございまして、そういう基本的な方針が別に変わっておるわけではございません。
  81. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 基本方針さえ変わらなければ異議はございませんですけれども、長官、誤解しちゃいけませんよ。この愛知用水公団は確かに豊川用水の事業を受け継いだのです。しかし、だからというて、基本方針が変わるはずはないのです。なぜかならば、この愛知用水公団が豊川用水事業を継承する前にこの水資源公団の問題が審議されているのですよ。そうして後並行審議となりまして、豊川用水事業は継続するということはわかりながらなおこういう答弁をしておられるのです。わかっておるのです、愛知用水が豊川用水の仕事を継承するということは。そういう前提のもとにこの話が行なわれているわけです。愛知用水が豊川用水の仕事を受け継いだからしばらくほっておいてよろしい、こういう問題にはならないと思うのです。その点を誤解されると困ります。その理由の一つとして、なるほど豊川用水の水が名古屋の工場地帯のコンビナートに来るというならば問題は少ないでございましょう。しかしながら、そこへは来ないのです。しかもなお、名古屋港東海岸のコンビナートだけでもって水の需要はどうか。三十七年度は十六万トンに過ぎませんけれども、これは東海製鉄一社だけでもって目標年度、すなわち、四十年には二百万トン近い水が要るわけです。いわんやコンビナート総体になりますと、四十年には六十三万トン、四十五年には百十七万トン要るわけです。東海製鉄の三百万トンというのは海水を合わせての話なんです。あとのコンビナートは淡水だけなんです。かくのごとく水の需要が追っかけてきている。大体池田内閣の所得倍増計画の失敗の一つは、民間企業の投資の速度と公共投資の速度がちんばになったというところにある。常に政府事業が民間事業におくれている。ここに問題があるわけなんです。道路、港湾、工業用水、すべてそうなんです。ここに長官としては思いをいたして、早急にこの需要に応ずるの措置に出でていただかないことには、投資ロスになることは、あなたも経済家ですからよく御存じのはずです。はたしてこれで貿易の自由化に対処できましょうか、御意見を承りたい。
  82. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 加藤委員のお話、中京地区におきます工業の非常な拡大、それに対する水の要求というものは、将来の日本の工業立地の問題を考えまして、私どもも加藤委員と同じように考えております。ただ、むろん日本の工業地帯には北九州の工業地帯もございまして、これまた水の資源には非常に不足をいたしておることも事実でございます。従いまして、今日緊急を要します利根川あるいは淀川水系をやりましたあとで、今の加藤君の御意見のような中京地区の重要性もかんがみながら、また他面北九州におきます水の問題等も考えながら、それらのものについてできるだけ善処していくということが、政府がやらなければならぬことだと考えております。
  83. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 それでは私は次の問題に移りたいと存じますが、通産大臣と経済企画庁長官の御両所に御意見を承りたいのであります。  貿易の自由化繰り上げ、これは今日の段階からすればやや早期に過ぎたではないか、言うなれば失敗の跡の方が多いではないかと思われますが、はたして十月一日から九〇%の自由化、このことは妥当でございましょうか、いかがでございましょうか。
  84. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知の通り、世界の貿易を拡大するという見地から、貿易の自由化というものは世界的な大きな問題になっておるわけでございまして、その趨勢というものは過去四、五年来著しく進んで参ってきておることは、加藤委員も御承知の通りだと思います。日本もこれに対処して参らなければならぬことは当然でございまして、貿易を拡大して参るという立場から考えますれば、一日も早く自由化をして参るということが必要だと思います。ただ自由化をいたします場合に考慮して参らなければならぬことは、日本産業の現在の段階におきまして、それに対処し得るような力が日本の産業にあるかないか、まだないとすれば、それを助成して、そうしてそれが自由化に対応し得るような態勢になるように、国内経済政策を進めて参るということが必要でございまして、自由化自体は日本の貿易拡大に十分な効果、利益があるもの、ただその影響するところに十分に対処して参らなければならぬ。こういうことでございまして、世界の趨勢から見まして、私は、いつ踏み切るかということになりますれば、今日ではすでに踏み切りながら国内の態勢を整備していくということが適当だ、こう考えるものであります。
  85. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 今の長官のお答えでございますと、十月一日九〇%自由化は妥当である。従って、それはどのような事態が出来ましても強行するのだ、こういうことでございますか。
  86. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 十月一日に自由化をしていくということについて妥当かどうかという御質問はあると思います。むろんこれは、妥当であるかないかということについて、じゃ、いかなる時期に自由化をいたしましても、困難な事態が国内の産業の上に全然起こらないとは私は考えない。しかし、それに対して、ある程度対処していくということによってそれを踏み切っていくことが必要である場合が起きて参ることは、これはまた当然なことだと思うのでありまして、そういう面について十分な対処をして参って、そうして日本の産業の競争力あるいは日本の産業の力というものを養って参るということを早期に考えて参りますれば、十月一日に既定方針通りやりますことが必要ではないかと、こう考えておるわけであります。
  87. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 十分な対処をするとおっしゃっておられますが、貿易の自由化の内容を見ますと、日本が買うことの自由を急ぎ過ぎて、日本が売ることの自由、つまり売る障害の除去ということについては一向に手がついていないように思われます。従って、貿易の自由化とは何ぞやというたら、買うことの自由であり、日本国内に外国人が投資することの自由であり、株を取得することの自由は解放されている。しかし、はたして日本の売ることの自由はどこに解放されていますか。私は、先般あなたが病気でお休みになりましたので、外務大臣にお尋ねしたわけでございまするが、たとえばアメリカ市場を見ましても、綿製品の問題を初めとして、何と数十品目に上るものが制限をされ、数量制限、関税アップというようなことで問題にされて、そのつど日本の低姿勢によって妥協していかなければならぬ、こういうことに相なっておる。はたして日本の自由化というものが、相手国と同等に、互恵平等の立場において行なわれているのでございますか。
  88. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 外務大臣もしくは通産大臣からお答えすることがあるいは適当かと思いますけれども、私は、日本が自由化をいたしました場合に、買うことだけの自由で、日本が圧迫を受けるだけだというふうには考えておりません。御承知の通り先般イギリス、フランス等との通商協定をいたしました際に、日本の自由化品目の進むにつれまして、イギリスにおきましても、フランスにおきましても、かなり広範囲な日本品に対する制限を解除することになっておるのでございまして、そういう意味から申しますと、日本が買うことだけが自由化されて、売る方の自由化は進んでおらないということではないと私は思います。ただ、御指摘のような対米関係におきまして、いろいろな過去のいきさつから見て、これは自由化だけの問題ではないと私は考えるのでございますけれども、いろいろな問題が起こっております。それらについては適当な処置をしていかなければならぬことはむろんでございます。
  89. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 自由化に対して対処するとおっしゃられました。通産大臣にお尋ねしますが、いかなる対策を立てていらっしゃるのですか。
  90. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 貿易・為替の自由化の基本的な問題は、企画庁長官の先ほどお答えした通りでございます。加藤委員の不安というか御心配は、今日までの自由化は、比較的問題の少ない部門だ、あと残っておる部面の自由化は、わが国の産業としても比較的国際競争力の弱いものではないか、そういうものを自由化することが産業に影響を与えるだろう、こういう御心配だろうと思います。私どもの苦心も実はその点にあるわけであります。今日まで七五%自由化した、これらのものは多くの場合に国際競争力の強いものであります。従って順調に参ったと思います。ところで残っておるものをいかに処理するか、先ほど企画庁長官からもお答えいたしましたように、具体的問題として処理をしていかなければならぬというお話であります。そういう意味では業態のあり方、実情を十分つかんで、しかる上に処理をいたして参るわけであります。今後の問題は、多くの場合に今日まで、いわゆる国際競争力強化という意味においての合理化なり、あるいは品質、価格等の面でできるだけの工夫をこらして参っておりますが、なおそれだけでは不十分でございましょうから、計画通りの自由化を進めていく場合においては、あるいは関税の面であるとか、あるいは数量の面等において、外国品が国内にどんどん入ってきて国内業界を撹乱しないように、保護的な処置を当然考えて参らなければならぬ、かように実は考えております。  なお、これらの問題を、自由化をいたして参ります場合に、相手国との間にももちろん交渉を持っていく。昨年一部自由化を進めました際に、ただいま答えがありましたように、イギリスやフランス等といろいろ交渉を持ちましたように、残っている部分の自由化に際しても、これを交渉に移していく余地は多分にあるわけでございます。  そういうような実情にありながら、なおかつ自由化を進めていくということは、一体どうだという基本的なものの考え方でございますが、今日まですでに政府は自由化の方針を公表し、経済界の協力を得て今日まで参っております。それぞれの業界は、自由化が行なわれるものだという立場において準備を進めておりますので、この種の事柄は、これを軽々しく変更すべきではない、もしもこれを軽々しく変更するというような事態が起こると、せっかく協力しておるいわゆる正直な業界というものが非常に不利な立場に立って、正直者がばかを見るということになるおそれがあると思います。従いまして、われわれはあらゆる対策を立て、そして、自由化は計画通り進めて参りたい、かように考えておる次第でございます。
  91. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 その自由化の対策、具体策はいかんということについてのお答えがなかったように思います。
  92. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 それぞれの業界についてそれぞれ対策を立てて参らなければならない、そういうように具体的な方策を立てるということを申しておるわけであります。基本的には、国際競争力強化という方向で業界も指導していく、こういうことであります。
  93. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 つまり、国際競争力の強化のために、設備増設、生産性向上、コスト・ダウン、これがいわゆる所得倍増計画の基本だと思いまするけれども、そのことがこのたび延期ないしは一時ストップという政策をとられたわけなんです。今度の金融引き締め政策はこういうことになってきたわけです。親工場だけは設備ができたけれども、パーツを作る子工場はストップになってしまった。延びていくわけです。こちらの方は、あなたのおっしゃるところの対策は延期されてくる。ところが、自由化は同じ速度でいってしまう。もともと予定通りの速度でいってしまう。最初の計画が正しかったとしても、私は、ここに一つの矛盾が生ずると思う。  もう一つの問題は、大蔵省に尋ねてみますると、保護貿易だと、こうおっしゃる、関税貿易だと、こうおっしゃる。はたしてこれがそのように行なわれるかどうかについて、私は次の質問を試みなければなりません。すなわち、EECに近づくと池田さんは言うておられます。ケネディさんも近づくと、こうおっしゃった。ケネディさんは直ちに具体策を発表された、八〇%のものは全廃するとか、五〇%関税ダウンをするとか、そうやって近づくのだ、こう言われた。池田さんは近づくとおっしゃったのですが、具体策は何でお近づきになりますか。
  94. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 その第二段の方でお答えいたします前に、第一段の点について誤解のないように申し上げておきたい。  加藤さんは事情をよく御承知でありながら、独断的に、調整に入ったからこれが全部ストップしたんだ、これだけおくれていて何の自由化だ、こうおっしゃいますが、この設備抑制は、そこにむずかしさがある。私どもは、必要な設備投資を頭から押える、一律に何もかも押える、こういう乱暴な処置はとっておりません。現に中小企業等について特別に資金のめんどうを見ている等も、中小企業が近代化等に特に努力をしている、それについての協力でございます。あるいは大産業等の面におきましても必要なる設備抑制、これはあらゆる工夫をして、そうして産業の発展をおくらせないように、注意は今日までして参っておる考えでございます。この点は誤解のないように願いたいと思います。  第二段の問題といたしまして、EECへの接近の問題であります。今日までのところ、EECに対するアメリカの態度と日本の態度はやや違うと思います。今日までの関係から見まして、アメリカのEECに対する関係は、今日まで非常に密接であります。従いまして、ほとんど経済状態も同様だというようなことでございますから、EECの経済拡大即アメリカの経済拡大と歩調が合う、こういうような見解もありましょう。そういう意味から、関税の大幅引き下げ、いわゆるEEC内部の、関税同盟としてのEECの性格にアメリカも対応する政策を示したもの、かように私は思います。日本の場合は、EECとの関係におきましても、おそらく加藤さん後に御指摘になろうとするのだろうと思いますが、三十五条の援用の問題があったり、過去において非常な差別的待遇を受けておる。そういうEECに対しての接近の問題でありますから、アメリカとは行き方が違う、こういうように私申し上げたいのでございます。
  95. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 そこで、EECのことは、私が申し上げるまでもなく、政府ではよく御調査のことだと存じまするし、特にこのごろ新聞雑誌がそれに集中して記事を書かれております。日経などは続きもので書いておられるようでありまするから、よく御存じだと思いまするけれども、とにかくそれを、私は時間がないので、簡単にするために、図面に書いてきたのです。   〔図面を示す〕 域内の関税の撤廃の計画が、この図によりますると、予定よりははるかに進歩の度が早いということです。このことは、結果として域内の依存度を非常に深めている、こういうことが言えるわけなんです。それは数字で出ておりますが、特に軽工業品の域内流通の度合いが非常に伸びてきている。数字がありまするけれども、時間の関係上……。これはお認めでございますね。すると、次に、今度域内の関税の、対外共通関税の問題でございまするが、ここに近づくにあたって、一つの危険信号をわれわれ読み取らなければならぬと思う。すなわち、この対外共通関税は、西独、ベネルックスは低い。イタリア、フランスは高い。ところで、イタリアは、あなたのよく御存じの通り三百品目、言うなれば、日本の輸出のほとんどの商品に対して、制限ないしクレームをつけてきておるわけです。フランスまた百四十六品目つけておる。日本品を拒否するという手に出ているわけなんです。これが対外共通関税ということになりますれば、一体どういう態度に出るかは、これはもう明らかなところなんです。ところで、日本のお得意さんはどちらかといえば、同じEECの中でも西独なんです。これは拒否品目は六品目しかない。次にベネルックスはやや多いのですが、二十八品目、これらの国々は日本に対しては低い関税できていたわけです。これが対外共通関税ということになりますと、これが引き上げられる可能性が非常に多い。取捨選択は自由である。こういうことになりますと、一体日本の貿易はどうなるか。しかも、さっきのこの図でわかります通り、軽工業品の域内依存度がふえているわけです。日本の輸出品は、この地区においては何かというと、軽工業品なんです。近づこうとして、はたして相手がそのように受け取ってくれるか、くれないか。アメリカとは事柄が違うとおっしゃいましたが、違うも違う、天地雲泥の相違なんです。それに対する対策いかんということなんです。
  96. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいま加藤さんの御指摘になった点が、今の一番の重要なポイントでございます。これは、わが国のあり方を一つもう一度見ていただきたいと思うのです。先ほど自由化についてのお話をなさいました。今ようやく自由化を七五%、あと九〇%のときはどうなるか、こういう日本の国柄ですね。ところが、EECの諸国は、域内では自由化はもうすでにとうの昔に済ましてしまって、そうして、さらにそれが共通関税にまで発展してきている、あるいは特別な個々の品物についての関税交渉というようなことをしないで、品種別の関税交渉までしようという、よほど進んだ姿でございます。そういう状況でございますから、先ほど日本の自由化は一体どうだというお話がございましたが、これに接近するためには、どうしても私どもも自由化を進めていかなければならない。昨年の自由化の拡大の際には、幸いにしてイギリスやフランスと交渉を持つことができた。これは十分ではございませんが、やや商権の拡大ができた。いわゆる差別待遇をなくする方向で、それらの国も努力してくれる。それで、御指摘になりましたイタリアだけは残っている。イタリアについては、この三月一ぱいまでの間に日伊間の交渉を持つということになっている。その交渉の経過に私どもは期待を寄せております。それからまた、最近の繊維の長期取りきめ等では、ひとりアメリカに対する綿製品の輸出の問題のみでなしに、EECに対しましても、将来明るい見通しが持てるような、拡大ができるようなことがいわれております。しかし、加藤さんが御指摘になるように、EEC自身は域外のものをシャット・アウトするという考えはなくとも、域内貿易を拡大するという方向には必ず努力される。そうした場合に、日本などがそれに参加する余地があるのかないのかという問題であります。これは十分各産業のあり方を精査してみないとわかりませんけれども、抽象的に申しますならば、EECあるいはアメリカにいたしましても、自国の産業を拡大していくという場合に、その団体だけの力で自国の産業を拡大していくことはまず困難だ、必ず域外の協力も得なければならない。これは現に、まあ日本のような場合は特別でありますが、非常に国外に依存するところが強うございますが、アメリカにおいても同様である。経済が成長をする、EECも経済の成長をする、そういう場合において、必ずみずからの持つ力には限度がある、そこへ私どもが参加し得る余地があると思います。しかし、私は、そうかといって、楽観していいと言うつもりはございません。今加藤さんが指摘されていますように、EECが共通関税にまでなれば、域内で品物を調達する、これが非常に強く出てくる、これに対する警戒が必要である、かように私も思います。ただ、産業的に、あるいは分業的な方向への指導が可能であるならば、その意味においては日本の参加もまた可能なりと、こういうことも言える、こういうように思います。
  97. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 そこで、近づくと一口に言っても、非常に困難があり、なおかつ、努力のいかんによって効果が心配であるというのが現状なんです。そこで、心配であること、あるいは貿易の障害を除去すること、これにまず努力しなければならないと思うがゆえに、これも時間制限があるので、私は一覧表を書いてきたのです。さあ、これで違うか違わぬかは、あなたの方で調べていただきたい。   〔図を示す〕  第一番にこれでわかりますことは、通商条約がない国が多いのです。戦前には全部あったのでしょう。ところが、戦後、通商条約ははたして結ばれておるのですか。一体、経済外交は何をやっているのです。戦後はたった二つしかないのですよ。そこへもってきまして、ガット三十五条の援用をしておる国がほとんどなのです。それで、藤山さんが、先般大へんな御努力をなさって、少々の効果を上げなさったわけなんですが、この三十五条の援用、この除去は、はたしていつの日に行なわれるのか、向こうは喜んで手を差し伸べていないということなんです。次に、その他の協定はと見ると、やはりこの三国しかない。ほかは協定が結ばれていないということは、EECに対しても、経済外交は戦前通りには進んでいなかったということなのです。貿易は伸びた伸びたと言うけれども、それはアメリカ向きには買いがぐんと伸びて、売りが少し伸びて、あとの方はおろそかにされていたという何よりもの証拠なんです。これはあとで条約局長にはっきりと、この現状及び将来の分析について承りたいと思いますが、条約局長、これは違いますか。——来ていないそうでありますから、それでは通商局長が来ておられますから、通商局長に伺います。
  98. 今井善衞

    ○今井(善)政府委員 お示しの通りだと思います。
  99. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 そうしますると、過去において、この地域に対しては経済外交を推進するの努力に欠けていた——欠けていたということがいけなかったならば、努力はしたけれども、効果が薄かった、こう言っておきましょう。非常に効果が薄かった、努力したけれども、なお効果が薄いということになりますと、今後はますます努力が必要である、こういうことになるわけなんです。近づくとおっしゃいましたが、まず、近づき方のスケジュールなり計画があるでございましょうから、それを承りたい。
  100. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 過去いろいろ努力をしてきたが、ただいまお示しのような状況になっております。これはあるいは外国の、ことに欧州の日本に対する認識、評価、そういう事柄を意味しておると思います。ここに私どもの悩みというか、非常に努力をすべき点が、実はあるわけであります。これは政府だけではございません。業界あるいは与野党とも、こういう事実を認識された場合に、一体、日本の産業というものについて、あるいは経済力というものについて、あらためて認識せざるを得ないのではないかと思います。この点では大へん悲観すべき状況でありますが、明るい状況から申せば、ただいま日英間の通商協定なども、それぞれ改定の話が進捗いたしつつございます。これがまず解決を見れば、一番先に、イギリスとの関係においての三十五条の問題も解決してくるであろうと思います。これを私どもは強く期待をいたしておるわけでございます。今日の関係において、一つ一つ片づけざるを得ないというのが実情でございます。EECへの近づき方は一体どうしたらいいか。いろいろ政府部内でも、移動大使を出すとか、特派使節をオランダへ常駐させるとかいうような話があったり、あるいは経済界の双方の交歓と申しますか、訪問というか、そういうような事柄により近づく、それを作りたいというお話がそれぞれあるわけでございますが、まだこれがきめ手という具体化したものがあるわけではございません。具体化はいたしておりませんが、将来の方向としては、もっと密接な関係を作ること。昨年もEECのレイさんが来て、これによって日本に対する認識も改めていただいた。また、藤山長官が向こうへお出かけになって、十分連絡をとられ、実情を話された。それぞれ政府としても手を打たないわけではございません。これは国にとりましても大へん重大な問題でございますので、そういう意味の御鞭撻を私はお願いしてやみません。
  101. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 つまり、わが国は貿易の自由化をするわけでありますけれども、片や貿易の大宗として頼んでいるアメリカは、たくさんの障壁を作っている。近づこうとするEECも、これまたたくさんの障害がある。差別待遇を除去していない。こういうやさきにあたって貿易が自由化されるという。その貿易の自由化の国内保護対策は、生産性の向上と関税障壁である。しかるに、生産性の向上をどんなにしても、先ほど大臣のおっしゃったように、EEC諸国と比べてみてもなお劣る産業がたくさんにある。世界じゅう大手を振って日本品が歩けるのは、繊維及び繊維機械、あるいはそれに属するものと、近ごろはやり出したところの軽電機関係です。さてそれで、関税障壁ときたけれども、EECは先ほどの図面の通り、関税をずっと下げつつあるわけです。アメリカもこれに呼応して下げてくる。五〇%に、あるいは八〇%のものはなくすという。最恵国待遇であるところの日本は、日米友好通商航海条約によれば、互恵平等の待遇を受ける、そのかわり、こっちもそれにつれてついていかなければならない。そうすると、関税は下げなければならぬ。EECに近づくにあたって、関税障壁で近づけますか。アメリカが、たとえば繊維製品についてイタリアから買うという。それを八〇%のものはなくし、あと五〇%下げるという。それならば、日本だけが上げるというわけにはいかないのです。アメリカが下げたら、日本も下げなければならぬということになる。そうすると、今日の政府政策の関税障壁というものは、ここからくずれていくおそれが十分にある。さて、そういう段階において、何をもって日本の産業を保護しようとなさるのか、手を承りたい。私のポイントはここなんです。
  102. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 加藤さんは誤解していらっしゃらないかと思いますが、関税障壁を設けると申しましても、今ガットの基準がございますから、それをこわして勝手なものをやれば、これは報復をやられることになり、そう簡単なものではございません。だから、今日本でやりますのは、あらゆる面においてある程度の保護はございますけれども、それは、国際共通のガットの原則を守るべきだという建前でございます。そこで、今のEECやアメリカの関税引き下げは一体どうなるか、それらの国々が関税を引き下げさえすれば、日本からの品物は入りやすくなるということであります。そこで相手国としては、日本から品物が入りやすくなるのだから、今度は、日本に対しては、その日本との関係において特別な交渉を持たざるを得ない。日本の品物を安く入れれば、今度は、アメリカやあるいはEECの品物のうち、これこれの雑貨は安く日本は入れろ、こういうような交渉を実は持つことになるということを申しておるわけであります。アメリカとEECの間はほとんど同じでありますから、双方が利害衝突しない。しかしながら、後進国の日本の場合は、その関税にはなかなかついていけないし、また、相手国も日本に低関税をそのまま適用するという考えはもちろん持っておりません。それをもって日本の商品がどんどん入ってきたら困るのです。だから、むしろ逆に、日本がアメリカとの間の最恵国約款でその関税引き下げに均霑しようとすれば、必ずそこに日本と交渉を持つ。ちょっと待て、日本は均霑さすにしてもこういう条件を入れろ、こういう交渉になるということが考えられるわけであります。でございますから、今やられております日本産業に対する保護というものは、これが相手国に対して、日本商品に非常な力を与えておるとすれば、これは、日本に外国の品物が入ってくる場合には、日本の国内産業に対する保護が一つの障壁になる。しかし、外国へ今度日本商品が出ていく場合は、この国内産業に対する保護は、輸出に対してのドライブでもあるわけだ。だから、相手方がそういうものをそのまま受け入れるわけはないから、そういう意味の交渉をそこで持つことになるわけであります。
  103. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 大臣が何と御答弁なさろうと、EECの現状は、関税を引き下げるという方向なんだ。それに近づくアメリカも引き下げるという方向なんだ。ところが、大蔵省はどちらかというと、自由化に対処して、去年の国会においては、千四百品目余の税金アップをやっておる。また、今度関税定率法が今の国会に出ておる。その内容を見ると、アップ、アップだ。アップ、アップしておる。みんなアップだ。ところが、これは今日では通るか知りませんが、来年の今ごろになったら大へんだということになってくる。なぜかならば、こちらに近づく方針をやめたらいい、名誉の孤立をすればよろしいけれども、しからざる場合は、近づく以上は下げなければならぬ。日本は後進国だから許してくれると大臣はおっしゃるかもしれませんが、去年繊維製品の関税アップのおりに、イギリスがどういう態度をとったかは、藤山さんならよく御存じでありましょう。去年、各製品の一部関税アップをすると言った。それもイタリア向けのものに対して関税アップをするという。今井通商局長一番よく御存じだ。にもかかわらず、目標はイタリアだったけれども、イギリスまでが出てきて、それでは困るじゃないか——だから、その結果どうしたか。日本政府はついに外貨割当をでんと広げてしまったじゃないですか。そうでしょう。つまり、日本の関税に対して、イギリスもアメリカもEEC諸国も決して無関心ではない。だから、相手が下げるというならば、こちらも下げていかなければならぬ。下げるにあたっては、日本の自由化との関係において、はたして経済の歩調がうまくいくかいかないかという問題です。ほかに何ぞ日本の産業を守る手がございますか。
  104. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 日本とEECあるいはアメリカが同じような経済状態なら、日本も、EECが下げるからこちらも下げる、それで済んでいいわけでございます。ところが、先ほど来申し上げますように、日本は今まだ自由化もようやくことしの十月になって九〇%やろうという、それほど実はおくれておるわけであります。そういう国柄において、EEC並みの関税を日本国内に行なうわけにはいかない、これは御了承がいただけるだろうと思います。だから、それまでも犠牲にしてでも無理やりに下げよとは、おそらく加藤さんもおっしゃらないだろう。その関税は、ガットで了承のできる範囲だということであります。それからまた、一国の商品だけをシャット・アウトする方法のないことは、これは今の国際の関係から申して当然なことであります。だから、イタリアから入ってくる品物を、これは困るからそれだけを締めるのだというわけにはいかないと思います。ここらは各国とも平等に扱わなければいけない。だから、日本が今日関税を引き上げて、そうして、自由化に対処する国内産業を保護し、育成する、この期間が一体いつまでかかるかということです。問題は、EECやあるいはアメリカのように、われわれもさらにテンポを早めなければいけない。そうすれば、二、三年たてばEEC並みに私どもも関税を下げることが可能になる、そういう方向へ持っていくということであります。EECが下げたから、今日すぐこちらも下げろ、これは言われても無理な話であります。
  105. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 もう与えられた時間がちょうど参っておりまするので、残余の質問は別の機会に譲ります。  そうして、最後に、一点だけお尋ねいたしまするが、ソ連との貿易——それをお尋ねする前に、今日の貿易の傾向は、この前も申し上げたことですが、原材料の売買は、どちらかというとキャッシュ・オン・デリバリー、そうして、加工されたものはクレジット、これが傾向のようでございます。と同時に、後進国に対しましては、昔は搾取の対象になっておりましたけれども、今日では援助ということを最初に持ち出さないとなかなかにできない。しかも、フィフティ・フィフティを要求する、これが世界の波のようでございます。  さてそこで、ソ連に対しての貿易でございまするが、ただいまソ連からのオファーはどのくらいきておりますか。
  106. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 もうすでに御承知だと思いますが、ソ連からスパンダリアン一行が参っておりまして、日ソ間の通商取りきめ交渉をいたしております。大体、一両日のうちに妥結を見るのではないかと私は考えております。これはもう相当新聞等に出ておりますから、御承知のことだと思います。そこで、共産圏の貿易を一がいにあるいは保守政党は反対するのではないかということを言っておられる向きがあるようでございますが、それは偏見で、そんなことはございません。私ども貿易拡大にはあらゆる努力を尽くすつもりでございます。ただ、その際に誤解のないように願いたいことは、やはり貿易でございますから、できるだけ双方が出超だとかあるいは入超にならないという、バランスのとれた貿易が望ましいのであります。ソ連との間の貿易は、過去の通商取りきめの結果を見ますと、相当高く、五千万ドル近い入超になっております。大国ソ連に対しても入超五千万ドル、アメリカに対しても入超、こういうことは日本の経済としては困るものですから、今回の日ソ通商協定におきましても、できるだけ貿易は拡大する、しかし、バランスがとれるようにしてくれ、こういう当方の主張をいたしまして、そうして、大体過去の赤字等も今後の貿易でこれは決済可能なように、ソ連側が日本の商品をやや多目に買ってくれそうな通商協定が、実はできそうでございます。そういうことができると、これは順次正常に移っていくということが言えるのではないかと思います。  で、もう一つ、ソ連の話がありましたので、時間のないのに長話をして恐縮でございますが、私どもは中共貿易についても同じような考え方をしております。ことに七億に近い人口でございますから、中共貿易というものを私ども無視できないことはよくわかります。ただ、人口だけではどうも貿易額は判断ができない。その国民の生活程度が一体どういうところか、ここに貿易の拡大のねらいがあるわけであります。非常に生活程度が高く、私どもと同様であるならば、それはEECやアメリカに対する貿易と同じように、私どもも貿易拡大の余地が多分にあると思います。しかし、今日はそういう基礎的な条件以外にも、政治上の問題であるとか、あるいは決済の金の問題だとか、いろいろの問題がありまして、中共貿易も思うように拡大できておりません。その点はまことに残念です。しかし、日ソ間の方は、双方で通商の取りきめを進めておりますし、もう決済方法も、かつてのバーターから今日は現金決済になっておりますから、そういう意味では、今後の拡大に期待が持てるのではないか、かように思います。
  107. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 共産圏との貿易については、大臣のおっしゃいました通り、なるほど入超になっている。しかし、これは三十五条の援用をしたとか、あるいは数量制限をしたとか、つまり、相手国の制限によるがゆえの原因ではなくして、むしろ、こちら側が制限をしておるからなんです。つまり、チンコム、ココムの関係で、それの優等生で——いや、どんなに首を振られても、優等生なんだ。で、共産圏を口にするというと、中には、あれは共産党じゃないか、赤だからああいうことを言うんだろう、こういうことまで考え及んで、つまり、おっかなびっくりで貿易をしようとしているその姿勢そのものが、このような入超にさせておるのであって、事実、あなたはきのうもソ連大使フェドレンコですかと会談をしていらっしゃるはずでございますが、あなたが何回会われたって、あなたは共産主義にはならない。利口な労働者は、何回ソ連の労働者と会ったからといったって、共産主義化したり労働運動をひずませるようなことはないということは、先日の公聴会で日碍の社長が述べておられる。これは事実なんです。それをおっかなびっくりといいましょうか、後生大事といいましょうか、アメリカに対するひげのちりを払うといいましょうか、そういう立場に立っての及び腰の貿易だから、こうなる。事実あなたが御存じの通りだ。すでにオファーとして船、パルプ工場、紡績工場があるでしょう。化学工場、発電設備等々のオファー、これなどをすれば、相手国から原材料を買う金額よりは、はるかにこちらからの輸出の方が伸びるはずなんです。それをやらないということは、つまり、向こうから注文があるけれども、こちらからは売らない、こういうことなんです。あるいは売れないと言った方がいいかもしれぬ。そこで、ほんとうにそれをやる気がありますか。
  108. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 どうも加藤さんはそれほど間違った認識だとは思わなかった。今言われましたようなものは、何もとめるものではございません。これは繊維だろうが、発電の機械だろうが、鉄鋼だろうが、どんどん——船だって今注文を受けております。それはもう心配は要らない。相手方がどういうわけでこういうようになったんだ、こういうものについて、日本はどうも価格が高い、こう言うのですが、私は、日本はそう価格は高いとは思いません。思わないけれども、そういう結果になってきておる。それからもう一つは、私どもの方で向こうへ売れないものが一つある。それは外国からパテントをとっているもの、それを売ってくれと言ったって、これは日本が売るわけにいかない。そういうものがありますが、だから、よく話をすれば、事情はわかってきている。どうもこの前ミコヤンさんが来たときにオファーしたものや何かは、ほんとうに買うつもりだったかどうかがまず疑問です。リストはいただいたけれども、その後の注文は一つもない。それからもう一つは、やはりああいう大国でありながら、日本に対して延べ払いを要求したりしている。支払い条件もそういうこと、ここらにはよほど今後詰めていかなければならぬものがあるわけです。今言われるように、私がごちそうになったからといって容共だとも思わないでしょう。そういう意味で話は非常にうまくできるわけです。だから、今加藤さんなどが、日本が売らないのだとか、チンコムだとかココムだとか、そんなことをまだ考えている、そういうふうに言われちゃ大へんなことだ。その認識だけは改めていただきます。
  109. 加藤清二

    ○加藤(清)分科員 最後に、私の認識の誤りであれば、国家にとってまことにしあわせなことだと思います。が、遺憾ながら、おそらくこの次の参議院の選挙にあたっても、お宅の方の方々は、必ずチンコム、ココムはおろか、共産貿易を口にするだけで共産党ときめつけて、平家にあらざる者は人にあらざるがごとき印象を与えられるでしょう。それはそれとして、あなたがそれほど進歩的であるというならば、そんなけっこうなことはございませんので、一つ承りたいのですが、しからば延べ払いはおやりになれますか。
  110. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 そういうふうに延べ払いをやっている。私どもは、延べ払いをやめろ、そういう買い方をしないで、どうして日本から現金で買ってくれないのか——現に延べ払いをやっている。私は、大蔵大臣のときに、向こうから参りました公団の総裁と数回交渉しました。延べ払いだ、わざわざ買いにきて延べ払いだと言っているのです。また、そういう例が幾つもございます。だから、これは、日本はよほど共産圏貿易については熱意があると一つ御了承いただきたいと思います。
  111. 赤澤正道

    赤澤主査 本日はこの程度にとどめ、明二十三日は正午前十時より開会し、経済企画庁及び通商産業省所管についての質疑を行なうこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十三分散会