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1962-02-28 第40回国会 衆議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十八日(水曜日)     午前十時二十三分開議  出席委員    委員長 山村治郎君    理事 愛知 揆一君 理事 重政 誠之君    理事 床次 徳二君 理事 野田 卯一君    理事 保科善四郎君 理事 淡谷 悠藏君    理事 川俣 清音君 理事 小松  幹君       青木  正君    赤澤 正道君       井出一太郎君    井村 重雄君       今松 治郎君    臼井 莊一君       上林山榮吉君    仮谷 忠男君       北澤 直吉君    倉成  正君       田中伊三次君    中村三之丞君       中村 幸八君    西村 直己君       羽田武嗣郎君    藤本 捨助君       松野 頼三君    三浦 一雄君       山本 猛夫君    井手 以誠君       石田 宥全君    加藤 清二君       木原津與志君    阪上安太郎君       楯 兼次郎君    辻原 弘市君       堂森 芳夫君    中島  巖君       永井勝次郎君    野原  覺君       松井 政吉君    山口丈太郎君       山花 秀雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 植木庚子郎君         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  佐藤 榮作君         運 輸 大 臣 斎藤  昇君         労 働 大 臣 福永 健司君         建 設 大 臣 中村 梅吉君         自 治 大 臣 安井  謙君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         内閣官房長官  大平 正芳君         法制局長官   林  修三君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君         建設事務官         (都市局長)  前田 光嘉君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ――――――――――――― 二月十九日  委員中曽根康弘君、木原津與志君高田富之君  及び永井勝次郎辞任につき、その補欠として  井村重雄田口誠治君、島本虎三君及び安井吉  典君が議長指名委員選任された。 同日  委員島本虎三君、田口誠治君及び安井吉典君辞  任につき、その補欠として芳賀貢君、木原津與  志君及び永井勝次郎君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員芳賀貢辞任につき、その補欠として高田  富之君が議長指名委員選任された。 同月二十日  委員木原津與志君高田富之君、辻原弘市君、  堂森芳夫君、永井勝次郎君、横路節雄君及び井  堀繁男辞任につき、その補欠として安宅常彦  君、広瀬秀吉君、西村関一君、田口誠治君、西  村力弥君、滝井義高君及び受田新吉君が議長の  指名委員選任された。 同日  委員安宅常彦君、田口誠治君、滝井義高君、西  村関一君、西村力弥君及び広瀬秀吉辞任につ  き、その補欠として山口鶴男君、横山利秋君、  赤松勇君、河野正君、二宮武夫君及び角屋堅次  郎君が議長指名委員選任された。 同日  委員角屋堅次郎君、河野正君、赤松勇君、二宮  武夫君、山口鶴男君及び横山利秋辞任につき  、その補欠として戸叶里子君、村山喜一君、横  路節雄君、永井勝次郎君、木原津與志君及び堂  森芳夫君が議長指名委員選任された。 同日  委員戸叶里子君及び村山喜一辞任につき、そ  の補欠として芳賀貢君及び辻原弘市君が議長の  指名委員選任された。 同日  委員芳賀貢辞任につき、その補欠として高田  富之君が議長指名委員選任された。 同月二十一日  委員木原津與志君高田富之君、辻原弘市君、  受田新吉君及び門司亮辞任につき、その補欠  として久保三郎君、岡田利春君、小林進君、稲  富稜人君及び井堀繁男君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員岡田利春君、久保三郎君及び小林進辞任  につき、その補欠として西村力弥君、肥田次郎  君及び岡本隆一君が議長指名委員選任さ  れた。 同日  委員岡本隆一君、肥田次郎君及び西村力弥君辞  任につき、その補欠として中村重光君、楢崎弥  之助君及び高田富之君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員中村重光君及び楢崎弥之助辞任につき、  その補欠として角屋堅次郎君及び島本虎三君が  議長指名委員選任された。 同日  委員角屋堅次郎君及び島本虎三辞任につき、  その補欠として田口誠治君及び畑和君が議長の  指名委員選任された。 同日  委員田口誠治君及び畑和辞任につき、その補  欠として辻原弘市君及び木原津與志君議長の  指名委員選任された。 同月二十二日  委員木原津與志君高田富之君、堂森芳夫君、  山花秀雄及び稲富稜人君辞任につき、その補欠  として、田中織之進君、岡田利春君、緒方孝男  君、山口鶴男君及び内海清君が議長指名で委  員に選任された。 同日  委員緒方孝男君、田中織之進君、山口鶴男君及  び岡田利春辞任につき、その補欠として滝井  義高君、角屋堅次郎君、西村関一君及び高田富  之君が議長指名委員選任された。 同日  委員滝井義高君、角屋堅次郎君及び西村関一君  辞任につき、その補欠として稻村隆一君、木原  津與志君及び山花秀雄君が議長指名委員に  選任された。 司一日  委員稻村隆一君辞任につき、その補欠として坪  野米男君が議長指名委員選任された。 同日  委員坪野米男辞任につき、その補欠として堂  森芳夫君が議長指名委員選任された。 同月二十三日  委員山本猛夫君、木原津與志君高田富之君、  楯兼次郎君及び山花秀雄辞任につき、その補  欠として田村元君、兒玉末男君、堀昌雄君、足  鹿覺君及び小林進君が議長指名委員選任  された。 同日  委員足鹿覺君、小林進君、兒玉末男君、堀昌雄  君及び田村元辞任につき、その補欠として、  東海林稔君、田口誠治君、島本虎三君、有馬輝  武  君及び山本猛夫君が議長指名委員選任さ  れた。 同日  委員有馬輝武君、島本虎三君、東海林稔君及び  田口誠治辞任につき、その補欠として岡田利  春君、岡本隆一君、楯兼次郎君及び山花秀雄君  が議長指名委員選任された。 同日  委員岡本隆一君及び岡田利春辞任につき、そ  の補欠として勝澤芳雄君及び高田富之君が議長  の指名委員選任された。 同日  委員勝澤芳雄辞任につき、その補欠として木  原津與志君が議長指名委員選任された。 同月二十四日  委員井手以誠君木原津與志君及び高田富之君  辞任につき、その補欠として楢崎弥之助君、肥  田次郎君及び田中武夫君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員田中武夫君、楢崎弥之助君及び肥田次郎君  辞任につき、その補欠として島本虎三君、田口  誠治君及び坂本泰良君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員島本虎三君、坂本泰良君及び田口誠治君辞  任につき、その補欠として芳賀貢君、木原津與  志君及び井手以誠君議長指名委員選任  された。 同日  委員芳賀貢辞任につき、その補欠として久保  田豊君が議長指名委員選任された。 同日  委員久保田豊辞任につき、その補欠として高  田富之君が議長指名委員選任された。 同月二十六日  委員木原津與志君高田富之君、永井勝次郎君  、野原覺君、長谷川保君、山花秀雄君及び内海  清君辞任につき、その補欠として松井政吉君、  足鹿覺君、島本虎三君、村山喜一君、滝井義高  君、田中織之進君及び本島百合子君が議長の指  名で委員選任された。 同日  委員足鹿覺君、島本虎三君、滝井義高君、村山  喜一君及び本島百合子辞任につき、その補欠  として武藤山治君、田邊誠君、河野正君、湯山  勇君及び受田新吉君が議長指名委員選任  された。 同日  委員河野正君及び武藤山治辞任につき、その  補欠として石村英雄君及び中嶋英夫君が議長の  指名委員選任された。 同日  委員石村英雄君及び中嶋英夫辞任につき、そ  の補欠として長谷川保君及び小林進君が議長の  指名委員選任された。委員小林進君、田中  織之進君、田邊誠君、松井政吉君及び湯山勇君  辞任につき、その補欠として高田富之君、山花  秀雄君、永井勝次郎君、木原津與志君及び野原  覺君が議長指名委員選任された。委員高  田富之君、辻原弘市君、堂森芳夫君、山口丈太  郎君、井堀繁男君及び受田新吉辞任につき、  その補欠として多賀谷真稔君、滝井義高君、武  藤山治君、森本靖君、玉置一徳君及び内海清君  が議長指名委員選任された。 同日  委員賀谷真稔君、滝井義高君、武藤山治君及  び森本靖辞任につき、その補欠として兒玉末  男君、田口誠治君、堂森芳夫君及び安宅常彦君  が議長指名委員選任された。 同日  委員兒玉末男君、田口誠治君及び安宅常彦君辞  任につき、その補欠として勝澤芳雄君、辻原弘  市君及び山口丈太郎君が議長指名委員に選  任された。委員勝澤芳雄辞任につき、その補  欠として高田富之君が議長指名委員選任  された。委員高田富之君、永井勝次郎君、山び  内海清辞任につき、その補欠として阪上安太  郎君、中島巖君、松井政吉君及び西村榮一君が  議長指名委員選任された。 同日  委員松井政吉辞任につき、その補欠として石  田宥全君議長指名委員選任された。 同日  理事青木正君同日理事辞任につき、その補欠と  して床次徳二君が理事に当選した。  ───────────── 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任の件  昭和三十七年度一般会計予算  昭和三十七年度特別会計予算  昭和三十七年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 山村新治郎

    山村委員長 これより会議開きます。  この際お諮りいたします。  理事青木正君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山村新治郎

    山村委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。  つきましては、これより理事補欠選任を行ないますが、これは先例によりまして委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山村新治郎

    山村委員長 御異議なしと認めます。よって理事床次徳二君を指名いたします。      ――――◇―――――
  5. 山村新治郎

    山村委員長 昭和三十七年度一般会計予算昭和三十七年度特別会計予算及び昭和三十七年度政府関係機関予算を一括して議題といたします。  この際、分科会主査より、それぞれ分科会における審査報告を求めます。  まず、第一分科会主査西村直己君。
  6. 西村直己

    西村(直)委員 第一分科会における審査経過並びに結果について御報告申し上げます。  本分科会は、昭和三十七年度総予算中、皇室費国会、裁判所、会計検査院、内閣、経済企画庁を除く総理府、法務省及び大蔵省所管並びに他の分科会所管事項以外の予算につきまして、慎重に、審議いたしました。  審議は、まず二月十九日、各省、各庁当局よりそれぞれ所管予算説明を聴取し、翌二月二十日より昨日まで、七日間にわたり質疑を行ないました。質疑応答の詳細につきましては、時間の関係もありますので、会議録に譲ることといたしまして、ここではその中の若干についてごく簡単に申し上げます。  まず大蔵省関係につきまして、EECの発展及び米国EECへの接近のわが国経済に与える影響及びこれに対する政府対策いかんとの質疑が行なわれました。これに対する政府答弁は、日本としてはイギリス、フランス等差別待遇撤廃等、まず個別的に問題解決努力し、EECの域外に対する関税統一後は、わが国関税政策を変えてこれに歩調をそろえ、EECに接近する体制をとっていくつもりである。しかし、自由化計画実施のためには、わが国産業の現状からして関税引き上げねばならず、当分は逆行的となるが、長期的には関税引き下げの方向にもっていくつもりである。また米国EECとの交渉の結果は、当然にわが国にも影響すると思うが、その影響については目下研究中であるということでありました。  次に、ガリオアの返済方法について質疑があり、特に見返り資金開発銀行に対する出資の裏づけとなっている旧復金貸付のうち、炭住関係貸付約二十二億円が回収不能であること、また開発銀行海運貸付利子を徴収猶予する計画があることの二点のため、返済が円滑にいかないのではないかとの質疑がありましたが、政府は、炭住関係貸付金回収不能分は、開発銀行全体の損益の中で十分カバーできるから、開銀の納付金にひびは入らない、この納付金を主たる財源として債務を返済していけば、見返り資金資産そのものには手をつけないで済むわけだ、また海運関係についてはまだ決定していないが、この納付金中心返済計画が立てられていることは十分に考慮されるはずだから、これによって支障を来たすことはないとの答弁でありました。  次に総理府所管の中では、特に防衛問題に質疑が集中し、騒音対策及びナイキ導入に伴う違憲問題等について、政府の見解がただされたのでありますが、これに対する政府答弁は、騒音対策については毎年予算増額を行なっているが、今後も一そう予算増額努力し、その万全を期したい。しかし一割の地元負担については、地元の受ける利益等からしてやむを得ぬと思う。ナイキ導入については、発射台アジャックス及びハーキュリーズ両用のユニバーサル型を受け入れるが、弾体はあくまでもアジャックスを受け入れるもので、ハーキュリーズは受け入れる計画はない。世界各国趨勢からハーキュリーズを受け入れて核武装するのではないかとの疑念もあるようだが、政府は核武装しないと、終始一貫した方針を堅持しており、将来とも変わりはないということでありました。  また沖縄問題につきまして、日本沖縄に対して潜在主権を持つというが、その実態は何か、また沖縄関係予算については、会計検査は十分に行なわれていないのではないかとの質疑がありました。これに対する政府答弁は、潜在主権については、日本平和条約第三条により米国施政権の行使を認めているが、領土権は保有しており、将来米国施政権を行使しなくなった場合に施政権を行使できる。また沖縄住民日本国籍を有するということは、日米間で外交上、正式に文書を交換するまでもなく明らかな点である。会計検査については、三十五年度までは国内における書面で十分できたが、現地調査等の必要があれば、米軍も十分協力すると言明しているということでありました。  以上のほか、公式制度等皇室費に関する問題、国会予算等執行に関する問題、酒税、物品税等引き下げに伴う小売価格等引き下げ問題、財政投融資資金計画問題、公務員の待遇改善問題及び治安対策ロッキードF104Jの単価問題、麻薬取り締り、行政機構改革問題、予算の単価及び積算の基礎等、種々の問題につきまして終始熱心かつ活発に質疑応答が行なわれたのであります。  かくて昨日質疑終了後、本分科会討論採決は本委員会に譲ることに決定した次第であります。  以上御報告いたします。(拍手)
  7. 山村新治郎

    山村委員長 次に第二分科会主査中村幸八君。
  8. 中村幸八

    中村(幸)委員 第二分科会における審議経過並びに結果について申し上げます。  第二分科会は、昭和三十七年度総予算外務省所管厚生省所管労働省所管及び文部省所管予算でありまして、十九日審議を開始し、昨日議了いたしました。まず十九日政府説明が行なわれ、二十日から外務省厚生省労働省文部省の順にそれぞれ二日間、慎重なる審査が行なわれたのであります。審議内容の詳細は会議録に譲ることとし、質疑の若干を御紹介いたします。  まず外務省所管についてであります。その一つは、政府出資二十八億円の日本海外移住振興会社は三十六年度末までには八億八千万円の欠損を出し、また三十六年度末、為替差損二億四千万円の多くはこれまた赤字と見込まれる上に、会社出資伯国二法人は昨年末、累計一億五千万円の赤字を出している。会社設立に際しては、この種の会社放漫経営に流れやすいので、事業内容にきびしく制限を付し、また赤字経営とはならないとの確約の上に成立した経緯があるが、全く異なった結果を招来している事実をいかに考えるか。  また竹島領有権問題について、政府は、竹島は領土問題であるから、国交回復後、国際司法裁判所に提訴して解決するとし、日韓交渉議題とはなっていないと言うが、かつて応訴を呼びかけたとき韓国は拒否したのであるから、日韓交渉妥結後も応訴するとは限らないと思うがどうか。以上の質疑に対し政府は、会社設立後の事情の変化として、ブラジルにおけるインフレ激化のための為替差損の問題、また当初予定した貸付利子一〇%は三十三年農林水産委員会における貸付基準引き下げの要請をいれ、五%に改定したため、米銀借款利子との開きがなくなり、送金、回収等管理費がかさみ、これが経営に大きく影響したこと、また土地投資は当初制限された事業であったが、パラグァイで満植のためとられた例外的なものであったことなどがあげられる。今後経営の再建をはかると同時に、当初の予想とは異なった困難な問題をかかえていることも事実であるから、国策会社としてのあり方について移住政策にあわせて再検討したい。竹島問題は、韓国が八年前応訴を拒否したときの事情と異なり、国交回復信頼感が回復すれば、応訴を期待できると思うとの答弁がありました。  なお、国連警察軍とある予算課目は、国連緊急軍と正しい訳語に訂正すべきであるとの指摘がありましたが、今後検討したいとの答弁がありました。  以上の問題のほか、日米文化教育会議在外公館の邦人旅客取り扱い、経済担当外交官能力強化遺骨収集問題等が取り上げられました。  厚生省所管におきましては、その一つは、社会保険相互の間及び保険内部のアンバランスの問題であります。これに対する政府側答弁の一、二点をあげますと、国民健康保険については三十七年度国庫負担率引き上げを機会に、給付制限の行なわれている市町村に対し、従来の指導をより強化して、一、二年の間に撤廃したい。また国保と健保の間の給付には開きがあるので、まず国保負担能力実態を把握することとして調査費を新たに計上した。また厚生年金給付については次期改正の時期である三十九年度を待たず、三十八年には改正の実現をはかるため、保険局の増員を行ない、また社会保障制度審議会年金部会での検討をお願いしてある。  その二は、社会福祉施設関係として、施設費人件費、食費、教育費等、多くの角度から質疑があり、さらに行政の手の及んでいない施設を出て就職する青少年の就職支度金の問題、精薄成人対策欠除等指摘に対し政府は、福祉政策努力の結果ようやく整備の段階にきたが、今後努力すべき点は率直にこれを認めていきたいとの答弁がありました。  その三は、船員法改正につきまして、この改正によれば、現行規定医師強制乗船衛生管理者に変えることとなるが、乗客船員に病人が出た場合、衛生管理者が医療を施せば医師法違反であり、船員船員保険が使えず、乗客船員は生命の危険にさらされることになるが、厚生省がこの法案に反対しなかった理由は何か。これに対し政府は、現在においても医師不足等、法が確実に運用されていないので、現実に即応したやむを得ないものとして認めたが、この影響最小限度にとどめるため、政令の制定あるいは航路を指定する場合、運輸省は厚生省と相談することになっているし、また船主ともよく相談したいとの答弁がありました。  以上のほか看護婦不足対策、屎尿、ごみ処理対策の問題などが取り上げられました。  次に労働省所管でありまするが、最近の米国綿製品賦課金問題等の底流には、低賃金国との認識があると思うから、政府はすみやかに全国一律の最低賃金制度を実施すべきである。これに対し政府は、わが国賃金は、戦前と比較してはもちろん、最近は著しく改善せられている。箱根会談において米国側認識を深め、賃金情報交換等を緊密に行なうことになった、最賃制は当面業者間協定方式を進めたい、また最低賃金は相当引き上げられているとの答弁がありました。  以上の問題のほか、最近の経済情勢に伴なう農村労働移動等の迅速なる統計把握の問題、ILO条約関係国内法改正案の問題、駐留軍離職者対策、失対賃金と民間の日雇い賃金とのバランスの問題、山林労務者の出来高払い賃金問題等質疑が行なわれました。  最後に、文部省所管について申し上げます。まず私学振興費は三十二億円が計上さてれいるが、要求額も大幅に削減されており、国立学校運営費七百七十六億円と比較し、あまりに少額であり、ために私立授業料入学金の大幅な引き上げを余儀なくし、国立との格差はいよいよ開いている。政府私学助成をどう考えるか。  その二は、高校生急増対策では、公立八十万人に対し私立は約半数の四十三万人を予定しているが、必要な総経費としては、公立五百五十億円、私立には十分の一にも満たない四十億円である。これでは急増対策のしわを私立に寄せているがごとき結果となる。また急増対策は、三十八年度をピークとして百二十三万人を計画の対象としているが、高校進学率は三十五年度の六〇%をとっている。しかるに三十六年度は六六・三%になっているから、高校進学希望が年々増加する一般趨勢にあるとき、これでは進学できない不幸な子供が出るのではないか。以上の質疑に対し政府は、私学振興費努力がなお不十分であったことは認める。最近の私学入学金負担金引き上げについては憂慮しているが、運営費まで国が見ることは私学独自性をそこなうおそれがある。三十七年度は従来の施設費低利資金の供給、理工系設備のための助成等増額のほか、教育等に対する個人の寄付について所得税控除制度の創設は重要な役割を今後に期待できる。また将来は相続税などにも及ぼすことが考えられる。  二、急増対策私学生徒数は、各県の報告私学計画を積み上げたものでは、さらに大きい数となったが、四十三万人にしぼった。また、公立の総事業費に比較して少ないのは、校舎の新設はなく、学級増であるためである。また、急増対策百二十三万人の基礎として、三十六年度の進学率をとらなかった理由は、三十六年度の生徒終戦児の激減した異常の年であり、都道府県においても、高校入学を勧誘した事実があることからしても、急激に増加を予想される中学卒業生進学率は、生徒数の多かった三十五年度の進学率をとることが妥当であろう、もちろん、無理に押えるという考え方ではなく、三十九年度は六一・五%、四十年には六三%、倍増計画最終年次には七二%と、漸次増加するものと推定している、との答弁がありました。  以上の問題のほか、都市農村学力差解消僻地教育定時制同校通信教育に対し、礪波、ことにテレビ教育効果的利用の問題、また、これと関連したNHK、民放の番組の民主的規制の問題、義務教育父兄負担ないしは社会保障の問題、教科書法案の問題、最近の学校火災、高専の試験用紙盗用等問題等が取り上げられました。以上が質疑の大要であります。  昨二十七日、質疑終了後、分科会討論採決は、先例によりまして本委員会に譲ることに決定した次第であります。  以上をもって、第二分科会報告を終わります。(拍手)
  9. 山村新治郎

    山村委員長 次に、第三分科会主査赤澤正道君。
  10. 赤澤正道

    赤澤委員 第三分科会における審査経過並びに結果を御報告いたします。  本分科会は、昭和三十七年度総予算中、農林省、通商産業省及び経済企画庁所管につきまして、去る十九日、まず各省庁当局より説明を聴取し、続いて質疑に入り、昨二十七日まで、日曜を除く八日間にわたって慎重なる審議を行なったのであります。時間は通算四十二時間で、その大部分は野党の新人に発言を求め、三省大臣の在席延べ三十三時間、各分科員の御協力を得て、円満に、しかも活発に質疑を行なうことができました。その詳細につきましては会議録をごらん願うこととし、以下若干のものについて御報告いたします。  まず、農林省関係について申し上げます。質疑の対象は、農林漁業全般にわたっておりますが、その一は、農業の構造改善につきまして、三十七年度は、農業基本法実施の初年度であるが、その目的である農業近代化や経営規模の拡大を進めるには予算が少ないのではないか。今回政府が作成したグリーン・プランは、農村の構造改革と試験計画を大きく取り入れ、新農村建設の方向を強く打ち出しているが、これがためには事前の準備が必要なのではないか。   〔委員長退席、愛知委兵長代理着席〕  また、農業技術の研究は、新しい農業に適した方向へ転換させる時期にきているのではないか、との質疑に対しまして、政府は、農業基本法実施の初年度としては、まず計画立案のための調査準備に重点を置き、予算措置をしている。構造改善による自立農業育成は、他産業の進歩や国際農業との関連でなるべく急がなければならぬ。しかし、反面、慎重な態度で、従来の保護政策を堅持しつつ、貿易の自由化等、客観的条件の変化とにらみ合わせて、各地域の特質に合った構造改善を進めていく、パイロット・ファームもその一つである。農業技術の研究を飛躍的に発展させることはぜひとも必要であり、この予算では、研究所関係の要望を全部取り入れている、との答弁でありました。  その二は、砂糖の問題につきまして、政府は、国内甘味資源の根本対策をどのように考えているか、また、過年度の輸入砂糖の超過利潤はどのような方法で受け入れるのか、との質疑に対し、政府は、国内甘味資源対策は、根本的に考え直さなければならない。そこで暖地ビートについては、全国にわたって適地の基礎調査を行なうとともに、暖地ビート研究については、すでに二回にわたってイタリアへ調査団を派遣したが、三十七年度も第三次調査団をイタリアへ派遣したい。また、砂糖会社が価格差益金を拠出する法的根拠はないが、各会社が拠出に同意してくれたので、公正な機関を作り、それに受け入れる、さらに納付については、各会社にまかせてあるが、過年度の価格差益金を損金に計上して、将来の利益から拠出するのは妥当でない、いずれにしても将来の問題としては、輸入糖について、国内甘味資源対策を含めて、総合的に再検討し、対処するつもりである、というのでありました。  なお、当面大きな問題であります日ソ漁業交渉につきまして、交渉に当たる政府の基本的態度がただされました。これに対しまして、政府は、魚族資源の調査は相当進んでいるが、まだ完了していない。日ソ双方とも従来魚族を多少とり過ぎた傾向があることは否定できない事実である、両国ともいかにすれば魚族を保護し、永遠に漁獲を続けることができるかを考え、共同の責任に立つことを基本として、相互の理解と協力をもって話し合いたい、との見解を表明しました。  以上のほか、僻地農山漁村の電気導入促進、肥料、畜産振興、沿岸漁業振興、土地改良、開拓、林野の利用区分、水資源開発公団と愛知用水公団との関係、大豆なたね交付金、出かせぎ、農畜漁産物の流通機構改善等につきまして質疑が行なわれました。  次に、通商産業省関係について申し上げます。  その一は、EECへの接近と貿易自由化につきまして、政府EECへ接近するというが、EEC各国は、日本と通商条約のない国が多く、ガット三十五条援用国ばかりであって、しかも対外共通関税の問題もあるのに、はたして接近できるのか、さらに、アメリカやEEC関税引き下げの方向にあるが、これに接近するとなると、日本も下げざるを得なくなり、貿易自由化から国内産業を保護するための関税政策はくずれるのではないか、また、自由化を控え、設備の増設、合理化が急がれているとき、金融引き締めによる設備投資の抑制が中小企業にしわ寄せされている、このような段階で十月から九〇%の自由化実施は早過ぎるのではないか、との質疑に対しまして、政府答弁は、EECへの接近は、日本も自由化を進め、経済外交を強化する中で可能性はある、昨年の自由化でイギリスやフランスと差別をなくする方向で話し合いができたし、イタリアとも三月中に交渉を持つことになっている、EEC自身も産業拡大のためには域外の協力が必要となるので、そこへ日本も参加する余地がある。自由化に対処し、国内産業を保護育成しなければならない今、日本EEC並みに関税引き下げるわけにはいかない。また、設備投資の抑制は、大企業についても行なっており、中小企業についてもまた特別の融資をはかっている。自由化については、すでに政府がその方針を公表して、国際競争力強化のために業界を指導し、経済界の協力を得て今日に及んでいる。自由化は計画通りに進めていきたいというのでありました。  その二は、ジェトロと特定物資輸入臨時措置法についてであります。すなわち、ジェトロがその業務として、事業計画にも明らかにされていない雑豆や外車輸入の差益金吸収を行なうのは妥当であるか、さらに、国庫に納入されない外車輸入による差益金はどのように管理保管しているのか、また、特定物資輸入臨時措置法は本年六月で失効するが、差益金の徴収はどうなるのか、との質疑に対しまして、政府答弁は、ジェトロが外車輸入による差益金吸収を行なうのは、本来の業務から問題があるかもしれないが、ジェトロ法に基づく付帯業務として、国家の監督のもとにやむを得ず行なっている、三十五年度の差益金収入は八億円である。ジェトロに入った金は、通産省の指示により見本市委員会が造船所へ支払うとき逐次委員会に交付する。また特定物資輸入臨時措置法は延期しない。従って差益金の徴収はできなくなるという答弁でありました。  以上のほか石炭対策、石油業法、貿易の振興、中小企業対策、街路灯の免税、独禁法の改正などの諸問題につきまして質疑が行なわれました。  最後に経済企画庁関係について申し上げます。  国土総合開発について、今までの国土総合開発は地域開発促進法によって、各地域ごとに計画を立てて進めてきた。今や全国的総合開発計画と地域的総合開発計画とを調整することが急務であると思うが、どうか、また現在開銀を通じて地方開発資金を融資しているが、今後も続けるのか、との質疑に対しまして、政府は、確かに国土総合開発は、全国の開発計画と地域の開発計画とを調整する段階にきている。今後の国土総合開発計画草案も、各地域の意見を聞きながら全国的視野から立案する。また三十七年度においては開銀の地方開発資金として二百億円計上されているが、今後開銀の地方ワクが大きくなれば、全国的な地方開発専門の金融機関を作ることも考えられる、との答弁でありました。  以上のほか物価対策、国際収支と経済の見通し、公共事業の地域格差、東北開発株式会社の経理、煤煙などの諸問題につきまして質疑が行なわれました。  かくて昨日午後七時質疑を終了し、分科会の討論、採決は本委員会に譲ることと決定いたしました。  なお本分科会を通じ与党の三浦、倉成、八田、仮谷の各委員、社会党の加藤、淡谷の両委員は終始席にあって審議に参加されましたことをあわせて御報告いたします。
  11. 愛知揆一

    ○愛知委員長代理 次に第四分科会主査羽田武嗣郎君。
  12. 羽田武嗣郎

    ○羽田委員 第四分科会における審査経過並びに結果について御報告を申し上げます。  本分科会昭和三十七年度予算案中運輸省、郵政省、建設省及び自治省所管について、去る二月十九日より昨二十七日まで、日曜を除く八日間にわたり、質問者四十九名、三十七時間四十分余りをもちまして、熱心かつ慎重に審査いたしたのでございます。  まず審査の順序は、十九日及び二十日は自治省所管、二十一日及び二十二日は運輸省所管、二十三日及び二十四日は建設省所管、二十六日及び二十七日は郵政省所管について審査質疑を行なったのでございますが、質疑の詳細につきましては時間の関係もございますので、会議録に譲ることとし、ここではその大要について簡単に御報告を申し上げます。  まず第一に自治省所管については、地方財政の問題につきまして次のような質疑がございました。すなわち、今日住民の税外負担額は、昨年十二月自治省が発表している住民の税外負担及び市町村の府県に対する法令外負担の現況という資料によって明らかなごとく、昭和三十五年度において三百五十三億円の巨額に達しておる。この税外負担は、表面的には住民が自発的に寄付したような形をとっているが、実際には本来県や市町村が負担すべきものを住民に転嫁し、はなはだしきは市町村が計上した予算額よりも、住民の税外負担額の方がはるかに多いという例が少なくない。特に消防関係、学校関係、道路関係及び公民館建設関係等の強制的割当寄付が目立っている。政府は、近来地方財政は好転したというが、このような状態を放置した地方財政のあり方は、きわめて不健全であり、政府はすみやかにこれらの税外負担解消をなすべきである。また国の予算における公共事業関係予算単価、なかんずく公営住宅、学校建築の単価など、一般の実情に即していない。これがため年々地方団体へのしわ寄せははなはだ大であり、従って地方団体における実行予算と自治省の地方財政計画との間には大きな開きを来たしているというのが実情である。   〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕 この問題は、従来から地方財政にとって大きな問題となっているが、一向に改まる傾向にない。地方財政健全化のため、政府はこれらの予算単価を真に実情に即したものに改むべきであるとの質疑があったのであります。  これに対しまして自治省当局から、住民の税外負担が多額に上っている現状は、地方財政の健全化、また地方行政の運営上から見て好ましい姿とはいえないので、極力これが軽減、解消のため努力しているが、いまだその成果を示していない点、はなはだ遺憾なことと思っている。自治省としては、去る三十五年度の交付金において九十億円、三十七年度の交付金において百億円をそれぞれ基準財政需要額に算入するほか、三十五年には地方財政法を改正して、特定のものについての税外負担を禁止する措置を講じた。さらに三十七年度には税外負担の実態調査を綿密に行なうための予算を計上し、的確な実態の把握に努め、これらの軽減、解消に万全を期したいと考えている。現在のところ、府県が市町村に転嫁していた経費は大幅な減少を示しているが、依然として残っている税外負担は、教育費が中心をなしている実情にあるので、今後はさらにこれらの負担の解消という方向で、特段の努力を払って参りたい。  建築費の予算単価の問題につきましては、昨年来建築費がかなり高騰した実情にかんがみまして、昨年の補正予算において単価の引き上げ改定を行ない、さらに三十七年度予算においても引き上げを行なっているのであるが、いまだ十分実情に即したものとは言いがたい。地方財政計画を作成するにあたって、国の予算との関係予算単価を基準にして作成するため、自治省だけの努力では解決できない問題である。今後大蔵省を初め関係各省とも十分連絡の上、漸次適正単価に是正すべく努力して参りたいとの答弁がございました。  消防力の組織拡充の問題につきましては、農村における消防団員の確保、待遇の改善、機動力の整備等の問題について、多数の分科員からきわめて熱心な論議がありました。  その他奄美群島復興開発事業の期限延長の問題、ネックになっている県境町村合併の促進、地方公務員共済年金の問題等、地方行財政各般の問題につきまして活発に論議が展開されたのであります。  次に運輸省所管につきましては、委員から次の質疑がなされました。すなわち海運対策の問題につきましては、政府昭和三十七年度予算において海運企業整備計画審議会を設置し、第十五次計画造船以前の融資残高の利子相当額を五カ年間たな上げするという、いわゆるうしろ向き政策を実施しようとしておるが、今日わが国海運界はみずから経営の合理化等、再建への熱意を欠き、もっぱら政府の保護、救済政策にのみたよろうとする態度である。このような実情からして、わが国海運企業は、もはや私企業としては成り立たないのではないか。この際政府は思い切って海運企業の整理統合という前向きの政策をもって、強制的に指導すべきであるというのであります。  これに対する政府答弁は、わが国の船腹の拡充強化は、国際収支改善の上からもぜひとも必要なことであり、これがため海運造船合理化審議会の答申に基づいて、昭和四十年度まで五カ年間に四百万トンの造船計画を推進し、海運企業の再建に努力しておる。自由主義経済のもとで海運企業を整理統合するということはなかなかむずかしいことであり、経済界にも微妙な影響を及ぼす問題でもあるので、法律をもって町村合併を促進するようなわけには参らない。運輸省としては、今般海運企業の基盤強化対策の一環として、新たに海運企業整備計画審議会を設置して検討を進める考えであり、これによって間接的に整理統合の機運が出てくることはけっこうであるが、政府みずからが積極的に整理統合を指導する考えはない。いずれにせよ、審議会の結論によって適切な措置を講じて参りたいということでございました。  私鉄運賃値上げの問題につきまして、去る二十日経済企画庁長官は、大手十四社について一斉に値上げするような印象の発言をされているが、これは公共料金の値上げ抑制、さらに物価抑制という政府の基本方針に全く反するのではないかとの質疑がございました。これに対しまして運輸大臣は、従来しばしば言明しているごとく、経営内容のよくない私鉄、輸送力増強に役立つための設備投資を必要とするものについては、最小限度の値上げはやむを得ないものと考え、目下それらについて検討中である、値上げを各社一斉に行なうか、個々別々に行なうかについては、いまだ結論に達していないと答弁されました。  その他、国鉄輸送力強化の問題について、地域格差是正のため、特に開発のおくれた地域の地方幹線の復線化を急ぐ必要があり、もって滞貨の一掃に努力せよといった問題、港湾、空港の整備、都市交通対策等について、いずれも熱心かつ建設的な質疑がございました。  次に、建設省所管につきましては、都市交通の緩和対策、なかんずく東京都の交通緩和対策につきまして、多数の委員から質疑がございました。  その要旨は、東京都内を走行している自動車の数は、今や八十万台に及び交通事故もおびただしい数に上っているのが今日の実情であり、近く行なわれるオリンピックを控えて、これが緩和対策は喫緊の急務である、政府にこのような実情にいかに対処しようとするのか、抜本的な対策を示せということでございました。これに対しまして建設大臣から、都市交通の緩和対策には応急的な対策と恒急的な対策を講じて参らねばならないので、まず応急的対策としては、道路利用の拡大、駐車場の設置の増加ということで実施を進めている。恒久的対策としては道路整備専業の推進はもとより、できるだけ平面道路を避けて、高速道路、地下鉄の建設を促進する一方、既成市街地再開発の構想をもって、専門家の知恵も借りて、その万全を期したいと考えている。高速道路は昭和四十年までに完成する予定で、目下施行中であるが、特に三十九年度に行なわれるオリンピックまでには、一号線、四号線を完成して交通の緩和に役立たせたい。さらに都内二十三路線について月下スケジュールを立てて整備促進をはかっており、このために、三十六年度の補正予算においても、特に予算措置を講ずる一方、三十八億円の国庫債務負担行為をもって、スケジュール通りの道路整備を完成しようと努力しておるので、応急的対策と相待って、やがて緩和の方向に向かうものと考えておる。なお、交通閣僚懇談会のメンバーに大蔵大臣、通産大臣、経済企画庁長官等を加えて、なお一そうの強力な交通対策に万全を期して参りたい、との答弁がございました。  また三十五年に立案した治水十カ年計画は、その後の資材の値上がり、物価の高騰などから見て、この際根本的に新たに改定した長期計画を樹立すべきではないか、少なくとも、三十八年度予算編成にあたっては新計画で臨むべきであるとの質疑がございました。これに対しまして建設大臣から、三十七年度は事業の繰り上げ実施によって、治水関係事業費は八百十七億円になっておるが、前期五カ年計画の残り二カ年を均分すると、七百七十億円程度となり、三十七年度の事業費をはるかに下回ることになるので、国の財政が許すならば、三十八年度から治水事業計画は改定の必要があるとは考えるが、財政面から見てなかなかむずかしいのではないかと思う。なお検討してみたいとの答弁がございました。  さらに、首都圏整備の問題につきまして、去る三十一年に整備法制定当時と今日とでは相当に事情が変化しているから、新たな見地に立って、たとえばロンドンのニュー・タウンなどを参考にした構想で出直すべきではないかという、きわめて建設的な傾聴すべき質疑や意見があり、その他有料道路の整備促進、大阪の地盤沈下対策、踏切道の立体交差化の促進等の問題につきまして、きわめて熱心な質疑がございました。  最後に、郵政省所管につきましては、数名の委員から、電電公社の第三次五カ年計画の立案にあたっては、支障のない万全なものを作るように、特に従来から各地においてとかくのトラブルを起こしている特定局郵政職員の配置転換、要員確保の問題等については、円滑な対策で臨まれたいとの要望がありました。これに対しまして電電公社総裁から、従来の経験にかんがみて、要員問題は最も重要なファクターであるので、計画立案に際しては十分検討の上、支障のないよう万全を期して参りたい旨の答弁がありました。  さらに、分科員から、町村合併に伴って各地で発生している同一行政区域内の電話料金は、すみやかに市内料金並みに扱うべきであるといった問題、その他国際電電会社の料金引き下げ、FM放送の免許方針、ラジオ、テレビによる教育放送の充実強化、郵便遅配の解消、郵便局舎の整備促進、簡保資金の被保険者への還元給付の増大をはかれ等々の問題につきまして、分科員各位よりきわめて貴重な意見の開陳及び質疑が熱心に行なわれたのでございますが、その詳細につきましては、時間の関係もございますので、ここでは割愛させていただきたいと存じます。  かくて、本分科会は連日きわめて熱心かつ円滑に審議を進め、所管予算全般の審査を終了いたしました。  討論採決は、これを本委員会に譲ることといたした次第でございます。  以上、はなはだ簡単でございますが、第四分科会報告をいたした次第でございます。(拍手)
  13. 山村新治郎

    山村委員長 以上をもちまして分科会主査報告を終わりました。  暫時休憩いたします。    午前十一時七分休憩      ――――◇―――――    午後一時十七分開議
  14. 山村新治郎

    山村委員長 休憩前に引き続き、会議開きます。  昭和三十七年度総予算に対する質疑を続行いたします。阪上安太郎君。
  15. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私は、この際、二つの問題について御質問申し上げたいと思います。その一つは、交通問題であります。それからいま一つは、東京都の特別区における区長の公選問題、この二つについて質問申し上げます。  最初に、区長の公選問題についてお伺いいたしたいと思います。御案内のごとく、去る三十二年の八月、東京都の渋谷区議会で行なわれました区長選挙をめぐった増収賄事件であります。このことに関しまして、私は贈収賄の問題を取り上げようとするのではなくして、東京地裁の判決が、この問題をめぐりまして、区長公選に対するところの地方自治法のきめ方が、違憲であるという判決が下されておるわけであります。地方自治法は、御承知のように地方自治に関する基本法といってもいい非常に重要な法律であります。その地方自治法が、この点に関して無効である、違憲である、こういうことになったのでありまして、これは大へんな問題であろうと考えます。  そこで、この際自治大臣にお伺いいたしますか、この区長公選の問題につきまして自治大臣としてはどういうふうに考えておられるか。すなわち、現行の自治法は憲法違反でないので、従って現在の通り任命制でもって行なっていくべきものである、こういうふうにお考えになるのか、それとも、この問題は去る十三国会において、非常に騒がれたこともあります。その当時も違憲の論議が出ておったのであります。この際、これは下級裁の判決でありますけれども、これに基づいて何らかの新しい態度をとっていこう、こういうふうにお考えになるかどうか、この点をまずお伺いいたしたいと思います。
  16. 安井謙

    安井国務大臣 お答えいたしますが、区長の公選問題は、御承知の通り長年にわたっていろいろと論議をされてきておる問題でございます。結論的に申し上げますと、せんだっての地方裁判所における判決が違憲判決ということになっておりますが、私どもこれを当時変えましたときのいきさつから、種々の憲法学者その他の議論を伺いましたところでは、大部分がこれは違憲じゃない、こういうふうな解釈になっております。私どもとしては、今でもこれは違憲にあらずというふうに確信をいたしておる次第でございます。さらに、しかし区長公選問題について、一体どう考えるのだ、こういう御質問に対しましては、これはなかなか重要な問題でございまして、私ども慎重に検討しなければいかぬ。ただ、公選というだけの角度じゃなくて、今日東京都と二十三区とのあり方といったような問題とも関連をして、これはこれから将来十分検討しなければならぬ、こういうふうに考えております。従いまして、今地方制度調査会へもこの方の御検討、答申をお願いし、その検討の結果を待って、私どもの態度をきめたい、こういうふうに思っております。
  17. 山村新治郎

    山村委員長 阪上君、参考までに申し上げますが、あと持ち時間約五十分であります。御注意申し上げます。
  18. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そこで、お伺いいたしますが、自治省としては憲法第九十三条、これと区長の公選制の問題について、どういうふうに憲法第九十三条を解釈されておるか、これを伺いたいと思います。
  19. 安井謙

    安井国務大臣 憲法九十三条の二項でいっておりますところは、普通の完全な自治体はその長及び議員を住民の直接選挙で選ばなければならない、こう規定しておるわけであります。それじゃ自治体というものはどういうものであるかということは規定がないわけであります。これは自治法上どういうものが普通自治体であり、どういうものは制限された自治体であるといったような区画は、自治法できめれば足りることであろう。こう思っております。
  20. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それでは、地方自治法にありますところの第二百八十二条の二項の区長の選任問題でありますが、これにつきまして問題の基準となりますのは、おそらく特別区が地方公共団体であるかどうか、こういうことになろうと思うのでありますが、これは法律が示しておりますように、明らかに地方公共団体であるということは言えると思うのであります。御承知のように、地方公共団体には、普通地方公共団体と特別地方公共団体とがあることになっております。都道府県は普通地方公共団体、市町村もまたこれは普通地方公共団体である。そして特別地方公共団体には、特別区及び各市町村の組合、こういうものが特別地方公共団体である、こういうふうに言われております。しかしながら、この法律の構成から見ましても、普通地方公共団体も特別地方公共団体も、これは地方公共団体であるということについては変わりないと思う。この点どうでしょうか。
  21. 安井謙

    安井国務大臣 広い意味の地方公共団体であるという意味では、それは当てはまるであろうと思います。しかし二十三区、今自治法できめておりますのは、財産区とか、そういうものについては制限をされた自治体であるという規定の上に立ってあの区長の選任方式もきめておると思っております。
  22. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そこで、今特別地方公共団体については制限されたものである、こういう解釈をするというその解釈の根拠は何であるか、特別地方公共団体に特別区を入れたということ自体は、これは法律が入れたのであって、はたして憲法が考えておるところの地方公共団体、それと特別区というものが一致しているかいないかという問題を先ほどから私は聞いておるのでありまして、これは法律が入れたのでありまして、そのこと自体がすでに違憲の仕分けである、こういうふうに考えられないこともないと思いますが、この点どうでしょうか。
  23. 安井謙

    安井国務大臣 これはやはり法律が勝手にきめたから、これでいいのだというふうなものでないことは、御承知の通りであろうと思います。二十三区を見ました場合に、自治体として本来基本的に持っておるべき行政上の権限、たとえば消防でございますとか、あるいは課税権、あるいは財政権、こういうふうなものは、全部自治体である東京都が握っておるわけであります。従いまして、二十三区の持っておる権限というものは、非常に限られた、制限された自治体であるというふうな実態からも、自治法はこういうふうに制限された自治体であるというふうにきめておるわけであります。
  24. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私がお伺いしておるのは、そういう制限された自治体に持っていったのは、法律が持っていったのであって、憲法の指向しておる考え方とは違うのじゃないかということを私は聞いておるのです。
  25. 安井謙

    安井国務大臣 これはいろいろな沿革もございまして、二十三区は、御承知のようにかつての東京市の内部の行政区であったわけであります。これが都制に変わりまして、そういった二十三区というものが、ある意味では都制の中でばらばらになっておるといったようなものはございます。そこで、その二十三区に対して従来の考え方としては、そういった制限された行政権しか与えていないということになっております。しかし、これが将来いいかどうかという問題につきましては、これは非常に検討を要すると思います。今の区長公選の問題だけでなくて、そういったいろいろな行政権の移譲を、むしろ東京都が各区にやるべきではないか、こういう議論も非常に有力に出ておりますし、私どもも、これは将来相当考えなければならぬ、こういうふうに考えておりまして、これもせっかく検討中でございます。
  26. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私が伺っておるのは、憲法が考えておる地方公共団体、それと特別区というものは、特別区を設置したこと自体が憲法に違反するのではないか、こういうことを伺っておるわけです。あなたは今この問題については歴史的な経過がある、これは私も存じております。しかし東京市が東京都になり、その間に特別区が設置されたという歴史的な過程において、少なくとも東京市は完全自治体であったことは事実であります。その完全自治体であったものが、直ちに東京都という包括的な地方自治体の中に入ってしまって、そして基礎的な自治体であるところの東京市というものは、どこに残されておるかということなんであります。これが特別区の中に残されておるということであるならば、むしろこの特別区というものは、当然、基礎的な地方自治体としてのいわゆる権限、権能を備えたものでなければならぬ。そうでなければ、東京都を地方自治体としてながめたときに、これはまるでドーナツのような格好になってしまっておる。まん中だけが穴があいてしまって、空白を起こしてしまっておる。そして包括団体であるところのものだけが、普通地方公共団体として存在しておる。肝心かなめの基礎的なものが、東京市が都制になる場合に、逆にそういう権能というものは、むしろ基礎的な、もう一つ下の段階である、今言われておるところの特別区の権能として、これが存置されなければならなかったはずのものである。従って、自治法でもって特別区というものを、特別地方公共団体として規定されたこと自体が憲法違反だ、私はこの点をあなたに問うているわけです。どうなんです。
  27. 安井謙

    安井国務大臣 御説のような議論もあるいは考え方の一つとして立ち得るかと思います。しかし私どもは、あの当時市が解消されて、むしろ東京都へ市の権能が移管された。従いまして、従来行政区であったものが、市というワクがなくなったので、ある程度の自治体たる権限を付与はされてきた。しかし、本来持っておった東京市の持っておる権限というものは、当時は都へ移管されたものである、こういうふうに私どもは考えておるわけであります。   〔委員長退席、重政委員長代理着席〕  それから憲法は、確かに地方公共団体というばく然たる言葉を使っておりますが、憲法は、これとこれはこうでなければならぬというふうには規定しておりませんので、この点は、地方自治法で解釈を明らかにしていけばよろしいと考えておるわけであります。
  28. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それでは伺いますが、地方自治法の第五条に「普通地方公共団体の区域は、従来の区域による。」こういうふうに規定されております。その二項に「都道府県は、市町村を包括する。」こういうふうにうたわれております。そういうことになりますと、今大臣が言われたようなものの考え方によると、全く基礎的な地方自治体のないところに包括的なものだけがあるという状態になっていくのでありますが、これは憲法十四条との関係でどうなりますか。この点一つお伺いしたい。
  29. 安井謙

    安井国務大臣 東京都制というものは、一つの一特異の性格のものでございまして、これは従来持っておりました東京市の行政区画というものも自治体として持つと同時に、市町村といったものを包括して持っておる。一種の二重性格を東京都自体が持っておるというふうに私どもは解釈いたしております。
  30. 阪上安太郎

    ○阪上委員 この五条にもはっきり「都道府県は、市町村を包括する。」こういうふうにうたわれておるのであります。従って性格が他の道府県とは違う、こうおっしゃっても、こういった自治法の見解によりますと、これは市町村を包括するところの包括団体であることには間違いないと思うのであります。従って、東京都にも市町村があるわけなんです。市があるわけなんであります。そこで問題になってくるのは、特別区が一体どちらの側にあるのか、こういうことなのであります。しかしながら在来の姿から見ても、特別区というものは、当然これは基礎的な地方自治体として認められるべき歴史的な姿をとっておる、こういうことなのでありまして、これを特別区に入れて、そうしていろいろと事務上の規制を加えていくということ自体が違憲ではないか、こういうことなんです。もう少しこの点明確に一つお答え願いたい。
  31. 安井謙

    安井国務大臣 今の御議論でございますが、東京都が東京市の性格をそのまま移行して持っておるという点は、自治法の附則の二条でもその趣旨がうたってあるわけでありまして、私は現在の制度のもとにおいて、この解釈あるいはこの運営は、決して憲法違反じゃないということを言っておるのであります。しかし、将来これがどうあるべきかという問題につきましては、私ども慎重に今検討いたして、さらにいい方法があれば考えたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  32. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そこで、先ほど私が最初に御質問申し上げているように、この問題を契機として、政府はこの公選問題をどう取り扱っていくか、将来一つ研究しましてと、こうおっしゃっているのですが、いつまで研究するのですか。この点一つ伺いたい。
  33. 安井謙

    安井国務大臣 将来の問題といたしましては、先ほど申し上げましたように、二十三区というものの行政権能が現在非常に弱いわけであります。私は、これは一千万からの人口をかかえた東京都が、すべてのそういった本来自治体の細部にわたる行政まで握っておるということ自体に、非常に不自由があると思っております。従いまして、そういった事業はでき得る限り区へ移していくという方向で考えると同時に、公選問題をいかに考えるかというのをあわせて今後検討したい、こう思っております。
  34. 阪上安太郎

    ○阪上委員 これは地方自治法の初っぱなの条文なんですが、第一条、これに「地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的とする。」これは憲法九十二条にある地方自治の本旨に基づいてこういう第一条が出てきたわけなんです。そこで私はお伺いいたしたいが、今のあなたのお説を伺っておりますと、きわめて能率的な行政をやるために、こういう言葉を今使われておりますが、この第一条の「地方公共団体」云々の項についてのあなたの所信は一体どうなんですか。
  35. 安井謙

    安井国務大臣 これは行政能率の面から見ましても、十分考慮しなければならぬ問題でありますと同時に、制限された自治体であるにしろ、自治体的な機能を持つ二十三区というものが将来どういうふうにあるべきか、これはまたそれ自体としても考えていかなければなるまいと思っております。
  36. 阪上安太郎

    ○阪上委員 質問が少し粗雑であったかもしれません。私が言っているのは、この第一条の解釈は、つまり民主的な基盤の上に立って能率的な事務をやっていくように、自治法の目的がここに定められているのか、それともあなたが言うように、能率的な事務をやるために民主的な運営をしていかなければならぬ、こういうように考えられておるのか。これは大へん重大なポイントだと思いますからお伺いをいたしたい。
  37. 安井謙

    安井国務大臣 これはおっしゃる通り、民主的な基盤の上に立って、同時に事務能率というものもあわせて考えていかなければなるまいと思うわけであります。
  38. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そうしますと、先ほどあなたからお答えいただいているように、何か東京都からの事務配分というものを今後さらに区の方へ多くもたらして、そうして名実ともに備わったところの完全自治体に持っていった場合に、あるいは区長の公選制というものが考えられる、こういうふうな説明のように私は承った。事務の都合によって、そういうものの考え方を持っていくということは、これは憲法の地方自治の本旨に反するのではないか。そうじゃなくて、この第一条に規定されていることは、地方自治の本旨に基づいて、民主的な基盤の上にまず立って、その中で事務能率というものを上げていくのだ、こう解釈しなければこれは大きな誤りを犯してしまう。先ほど言いましたように、特別区というものを特に特別地方公共団体のワク内に入れてしまったという考え方も、そこからきている、私は、そういうふうに解釈するのです。だから、あなたがさっきお話しになったように、事務配分を先にやれば、それでいいのである、それからあと公選制の問題だ、こういうようなものの考え方というのはおかしいのです。もともとこれは公選制であったのでしょう。それを事務配分を勝手に都の方に権限を移譲さしてしまって、そうして残ったところの区は、これは完全な自治体としての姿を得ていないから、従って公選制をやる必要がない、あなたはこういうような論理の進め方をしておられる。これはおかしいのではありませんか。
  39. 安井謙

    安井国務大臣 先ほどのは多少誤解があったかもしれませんが、民主的な基盤の上に立って、しかも身のある、行政能率の上がる運営を考えたいという考え方に間違いはないわけであります。  それから、今の区長の問題でございますが、区長は決して今世間でよく言われておりますような、任命制でも何でもない、これはやはり区民が選んだ区会議員が、その区民の直接の代表である区会議員が区長を選任をする。あとは知事の認証を求める、こういう手続なのでありますから、一般政府で言う任命制ともいささか趣を異にしているわけであります。従いまして、単に二十三区という非常に密接な関係を持った区が、ばらばらで独立の区長公選を行なうのがはたして真に民主的な運営になるかどうか、そのためにはほかにどういった付帯的な条件を考えなければならぬか、こういう点を目下われわれは検討中でございます。
  40. 阪上安太郎

    ○阪上委員 憲法九十三条の二項には「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。」こう規定されてある。従って、これは直接選挙でないことは事実だと思う。従って現在の選任の方式が、間接的な選挙であるということは、これは私も知っております。かといって、それがこの憲法九十三条のこの条項に違反しないかどうかという問題については、明らかにこれが直接でない以上は違反するじゃありませんか。この点どうですか。
  41. 安井謙

    安井国務大臣 これは先ほども申し上げましたように、普通地方、自治体というものに対して、憲法は、これとこれが地方公共団体といいますか、地方自治体であるという規定はしていないのであります。従いましてその解釈は、これは自治法に譲る以外に現在のところ仕方あるまい、そうしてその考え方につきましては、憲法学者の大部分の人はこれを肯定しておられるのでありまして、憲法違反だという説をとられている学者はきわめて少ない数であるということは申されると思います。
  42. 阪上安太郎

    ○阪上委員 この間も実は予算委員会で、あなたに御質問を申し上げたのですが、一体、地方自治の本旨とは何かということを御質問申し上げたのです。私が先ほどから言っているのは、この地方自治の本旨に基づいて考えたときに、少なくとも、この間はまだ結論は出ておりませんけれども、地方自治が団体自治であり、住民自治である、こういうことは否定できないと私は思う。そうすると、住民自治という観点から考えていった場合に、この九十三条との関係において、当然それは公選制でなければならぬということが言えるのじゃないかと私は思う。それを先ほどから何回も私は言っているのですが、あなたは地方自治法で勝手な解釈をして、憲法の地方公共団体というものは、何も具体的に示していない、従って何を作ってもいいのだ、何を特別地方公共団体に入れようと、それは差しつかえないのだ、こういうことでありますならばお伺いいたします。最近多少消えておりますけれども、昔は大へん大きな問題になりました知事の公選制のような問題ですね。こういった問題につきまして、あなたの解釈からいけば、知事は公選をやめて、知事の官選に持っていっても差しつかえないという理論になると思うのですが、この点どうでしょうか。
  43. 安井謙

    安井国務大臣 現在の都道府県というものは、完全自治体という組織になっております。従いまして、これは知事を公選とするという建前を変えるわけには参るまいと思います。
  44. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それはおかしいじゃないですか。なぜならば、完全自治体になっておられるということは、これは地方自治法においてきめたのですよ。あなたがさっき言われたのは、憲法はそういったものを認めていない、何が地方公共団体であるかという具体的なものを示していない、こういうことを今おっしゃっておる。しかも都道府県というものは、現在のところ完全自治体である、だから今のところ知事の官選制というものは考えられない、こう言われているのですが、これはおかしいじゃないですか。それは自治法がこうきめたのでしょう。憲法ではきめていない、自治法できめたというならば、私が先ほど言ったように、自治法を改正すればそれでいけるでしょう。どうなんですか。
  45. 安井謙

    安井国務大臣 憲法でいっておりますところは、普通に考えられる完全自治体というものをさしておると思いますが、それについての明確な規定はない。そこで、その制限された自治体といったようなものをどう扱うか、といったような点については、これは自治法できめていいのだというふうに考えておりますが、これは法律論でありますので、法制局長官からも御答弁を……。
  46. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいまの問題は、実はだいぶん前の国会でも、私も、あるいは私の前任者の佐藤達夫氏も、理論上の問題としてお答えしたことがあるかと思います。これは御承知のように、憲法九十三条は単に地方公共団体といっておりまして、つまり地方公共団体が何であるかということは、直接にはいっていないわけでございます。しかし、当然に憲法は、いわゆる地方公共団体が存在することはもちろん予定しているわけです。ただし、この場合において、地方公共団体の組織が必ず二段階なくちゃいけないということは、私は憲法は直接にはいっておらないと思います。従いまして、住民と直接に基盤を連結するいわゆる基礎的な地方公共団体、こういうものの存在を抹殺することはできない。またこういうものを、直接公選からはずすことはできないと思います。ただし、いわゆる上部的な地方公共団体、これはやはり何と申しましても、沿革的に申しましても、とにかく明治以後の存在でございます。そこにいわゆる住民等の、基礎的な地方公共団体という色彩は、必ずしも私は本質的なものじゃない、ある意味においては作られたものだという観念があると思います。従いまして現在の都道府県は、もちろんこれは完全な地方自治体の組織をとっております。こういう組織をとる限り、これはもちろん公選制でなければいけませんけれども、たとえば都道府県というものを完全に廃止して、市町村一本でいくことが違憲かといえば、私は違憲じゃない、かように考えざるを得ないと思います。
  47. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そこで私は先ほどから伺っておるのですが、基礎的な地方自治体がない、その上に包括的な地方自治体がある、このことは、東京都の場合一体どうなんですか。
  48. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは東京都の場合、特に特別区の存在する区域につきましては、戦前でございますが、いわゆる東京市を廃して東京都というものを作った際において、やはり首都――大都市の特殊性として、つまり従来の府と市が、この特別区の存在する区域においては一体的な公共団体であることが実際に即する、そういう考えで、大都市の特殊性として、こういう制度がとられたものと私は思います。その際において、いわゆる基礎的な地方公共団体の機能も、二十三区に関する限りは都が果たす、こういう建前でできたものと考えるわけであります。これはやはりこの首都あるいは大都市の特殊性からきているもの、かように考えるわけでございます。これは多少は違いますが、たとえば大阪市とか京都市についても、一時特別市の制度が考えられたことがあるわけでございます。つまり大都市においては、やはりそういう府県的な従来の包括的な団体、基礎的な団体を合一した一つ基礎的団体であり、かつ包括的な上部団体である組織を一括した方がいいのだ、こういう考え方が立法政策としてとられ得る、そういう場合には、都は同時に基礎的団体でございますから、その下にある特別区が、かわって基礎的な団体になるというものではございません。特別区というものはやはり一つの作られたものである、かように考えるべきものだと思います。
  49. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そうしますと、結論はどうなんですか。知事の官選というものをやったとしても、地方自治法を変えることによってこれは違憲でない、こういうふうに考えられるのですか。
  50. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは、立法政策論は全然別にいたしましてのお答えになります。純粋に憲法論でいけば、先ほど申しましたように、たとえば都道府県というものを廃して道州制を置くことも、私は憲法違反ではないと思います。その道州制を地方公共団体でなくすることも、また憲法違反では必ずしもない、これを国の行政区画にする、そのかわり、今の都道府県の持っている機能を全部市町村に移す、今、都道府県が地方自治体として持っている機能を国に移して、しかもそれを単純に、たとえば官選にしてしまうというようなことは、これは私は相当問題であると思います。しかし、たとえば都道府県が現在持っておる自治的な機能を全部市町村に移して、しかも地方団体を一段階にして、そして、たとえば都道府県を単純な行政区画にするということは、必ずしも憲法の地方自治の本旨にもとるものではない、かように考えるのであります。
  51. 阪上安太郎

    ○阪上委員 大臣に伺いますが、そこで、東京地裁のこの判決にあるように、現在の東京特別区というものは、公選制を認めていないけれども、これを認めない限りはやはり自治法は無効である、こういうようなものの考え方に立っておるのでありますが、もちろんこれは下級裁の判決でありますので、それぞれ最終的には最高裁にまで持っていかれる問題じゃなかろうかと思うのであります。最高裁に持ち込まれて、その判決が依然としてこれは憲法違反であるという結論が出たときには、自治大臣はどういうふうに考えますか。
  52. 安井謙

    安井国務大臣 私どもは現在の段階におきまして、これは憲法に違反するものでないという確信を持っておりますが、最高裁等でこの判決が確定いたしまして、これが違憲であるということになりますれば、これは当然自治法を改正する、こういうことになろうと思います。
  53. 阪上安太郎

    ○阪上委員 この問題につきましては、私はこの程度にとどめたいと思います。  次に、交通問題につきまして若干の質問をいたしたいと思いますが、御案内のごとく、政府総理府に交通対策本部を設けております。あるいは最近に至りまして、関係閣僚懇談会を設置されまして、対策を樹立しつつあるような状態でございますが、私どもの目から見ますとこれは大へんおくれているように思うのであります。そこで国会の方では、ついに運輸、地方行政等において都市交通問題であるとかその他道路交通問題等を取り上げまして、これを審査するために小委員会までを作っておる。同時に、過般の本会議におきましては、院議でもって交通の円滑と安全のための決議までいたしております。そこで私お伺いいたしたいと思いますのは、こういった交通問題を発生せしめた原因が一体奈辺にあるのか、このことにつきまして一つ通産大臣にお伺いしたいと思います。
  54. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 御承知のように車が多くなると混雑いたします。車がどういうわけで多くなったか。もちろん経済が発展し、同時にまた国民生活も改善された、向上した、そういうことを示している、かように思います。
  55. 阪上安太郎

    ○阪上委員 どうも大へん唐突に質問しまして申しわけないのですが、実は私が通産大臣にお伺いしたのは、もう一つの別の答えを得たい、こういうふうに思ったのであります。それは何かと言いますと、経済企画庁長官等においても、高度成長政策を樹立される場合に、当然交通問題は取り上げられると思ったのです。その場合に高度成長政策に基づく成長年率と、各貨物輸送あるいは旅客輸送、こういったものの増加率というものを、当然はじき出しておられたと思うのであります。そういった数字をはじき出しておられて、しかもその数字が、経済成長年率よりもはるかに上回っていくということを、すでに御承知であったと私は思うのでありますが、それを考えておられたかどうか知りませんが、対策にそれを持ち込まなかったというところに、今日の交通の混雑が出てきているのではないか、こういうふうに私は考えますので、一体その当時、どのくらいにそれを見ておられたか、こういうことを私は伺いたいのであります。
  56. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 お答えいたします。最近の交通の混雑といいますか、いわゆる輸送の需要に対して供給が足りないという問題も、御指摘のように日本の経済の成長と、それに伴う輸送力がアンバランスの結果ということは御指摘の通りであります。運輸省関係におきますいわゆる鉄道あるいは軌道、または自動車等によります輸送の増加は、おおむねここ二、三年は五%ないし六%という計画で進めて参っておったわけであります。ところが経済の伸びが非常に急激に進みましたために、御存じのようにこういうふうになっておるわけであります。御承知の経済の成長は、大体九%くらいの伸びの予定であったのが、一〇%を上回って一五%、一六%になってきたというところに、この事態が都市においてもあるいは港においても起こっておる、こう言えると思います。
  57. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいま事務当局に伺いましたが、ちょうど阪上さんのお尋ねになるような問いにぴったりするような数字を持ち合わせておりません。従いまして、これはお許しを得たいと思いますが、ただ経済成長、所得倍増の際に、幹線運送についての計画、たとえば鉄道の計画であるとか、あるいは港湾計画だとか、こういうものはそれぞれ持っておるわけでございまして、そういう意味の対策は立ち得る。問題は、道路交通のいわゆる一兆円予算、その後の改定道路計画、これと都市における経済活動、この相違、ことに個人の持つ、乗用車といいますか、そういう面は、想像以上のものが実はあるようでございまして、その道路が改善されず、そういう意味の混乱を来たしておる、かように思いますが、経済の点から申せば、港湾整備あるいは鉄道幹線整備という大筋のものをまず第一に取り上げ、そういう計画は立てていた、かように御了承いただきたいと思います。
  58. 阪上安太郎

    ○阪上委員 実は私は数字を持っておるのであります。しかしこれは企画庁から出ている数字であります。しかしそれが昭和三十三年のときに考えられたところの、四十五年までの間の数字であるかどうかということについては、どうもはっきり確認できないものですから、私は先ほど質問したので、決して意地悪で言っているのではない。  そこで、私の手元にあります数字によりますと、貨物輸送について、特にトラック輸送の増加率は、たしか当時だと思いますが、一一・八%くらいの増加率を見ておった。もちろん鉄道と内海運の関係は、これはむしろ経済成長率よりも低いところで見ておられる。それから旅客輸送については、バスでやはり一〇・五%という増加率をその当時すでに見込まれている。あるいは乗用車につきましては、今のお説の通り、当時ですらもうすでに一九%というものを見ておられた。航空については、これは三〇・八%という高い増加率を見ておられた。国鉄、私鉄については、それぞれ五・五%ないし私鉄は五・一%という、これは経済成長率よりも下回ったものを見ておられた。私はこれは妥当じゃないかと思うのです。このくらいのところじゃないかと思うのであります。そういうことがわかっておって、急激に経済成長率よりも増加していくであろうという予想を持っておられた部門について、ほとんど配慮がされておらなかったのではないか。もしそれがされておったとしたら、今のような交通の状態というものは、私はもっともっとこれは緩和できたのではないか、こういうふうに思うのです。私はこの点で、政府の交通問題に対するところの態度というものは、非常にあやふやであって、非常に熱意がなかったのではないか、こういうように思うのであります。過般の交通閣僚懇談会において東京都知事を呼ばれて、どうも東京都は交通問題についてとかく情熱がないというようなことを言っておられたように新聞で拝見いたしておりますが、   〔重政委員長代理退席、委員長着席〕 もちろんそういう情熱のなかったのは国自体ではないか、私はこういうふうに言いたいのですよ。特に運輸大臣は、先ほど若干の説明がありましたが、もう少し具体的に、こういった数字に基づいて、何らかの措置というものを今日までとってこられたかどうか、これを伺ってみたいと思います。
  59. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 運輸省といたしましては、運輸省の担当いたしておりまする鉄道あるいは地方鉄道等につきましては、大量輸送の増強をはかって参っておりまして、大体今おあげになりましたように、五%前後の増強をはかって参ったわけであります。昨今、特に今御指摘のように、交通の需要もふえて参りましたので、来年度の予算におきましては、今までの伸び率よりももっと高い伸び率で、地下鉄にいたしましても、あるいは国鉄のいわゆる都市における省線等の旅客輸送の増強に役立つように予算を要求し、また認めていただいて、今御審議を願っておるわけでございます。
  60. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それじゃ運輸大臣に一つお願いしたいのですが、三十三年当時と非常に違ってきておることはわかりますが、それならばごく最近において運輸需要の推計をされておると思いますが、その数字をお持ちでありますか、あったら一つここに出して下さい。
  61. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 東京都における需要でございますか、あるいは全国ですか。
  62. 阪上安太郎

    ○阪上委員 全国です。
  63. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいま持ち合わせておりませんから、後刻取り寄せましてお目にかけたいと思います。
  64. 阪上安太郎

    ○阪上委員 ちょっと委員長にお願いしたいと思うのですが、後刻、取り寄せるということですが、私は全国的なもの、それから特に東京の交通規制の問題をあとで、取り上げてみたいと思いますので、それについてこの資料が必要なんですが、取り扱いを一つお願いしたいと思います。
  65. 山村新治郎

    山村委員長 阪上君に申し上げますが、そういう数字的な資料は、前もって御要求になっておかないと、すぐには無理だと思うのです。従って、あなたの持ち時間もあと十六、七分しかないのですが、何とか、後刻あなたの方へお届けすることで御了解いただけませんか。
  66. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それでは、もう時間がないようでございますので、できるだけ急ぎたいと思いますが、答弁も非常に長いのです。一つ委員長、その点、同情ある態度でお願いしたいと思います。
  67. 山村新治郎

    山村委員長 わかりました。
  68. 阪上安太郎

    ○阪上委員 今、東京都で交通規制をやろうということで、警視庁が作案いたしております。それに対しまして、私の承るところによりますと、あの第一次交通規制というものは運輸省では納得できない、こういうような意思表示をされておる。そしてその後調整が行なわれておることも事実でありましょうが、本日の新聞等によりますと、陸運局が警視庁と折衝した結果、双方にまだ意見の調整ができていない、警察になお難色がある、こういうようなことになっておりますが、一体どうなんでありましょうか。ああいった産業、経済、都民の生活に直接影響をもたらすような交通規制が発表された事後において、なお調整をしなければならぬ、つまり事後において調整をして、そしてさらに本ぎまりに持っていかなければならぬ、こういうやり方がはたしていいのかどうか。私はああいう問題を警察が一方的にこれをぶつけて、そうして都民に対して非常に不安と動揺を与えた、こういうことについて、非常に軽率であったというふうに考えるわけであります。しかしながら、私は規制を必ずしも否定するものじゃありません。けれどもああいうやり方、そして今日までその後の状態を見てみますと、何か運輸省は業者の側について反対している。それから国家公安委員会の方では警察の側について、もちろんこれは推し進めていこうとする。こういうようなことになっておって、全く不統一じゃないかと私は思うのです。そういった固まらないものを、ああいうふうに発表して、しかも警察の発表によると、三月中旬には告示をする、四月一日からこれを断固として行なうんだ、こういうようなことを言っておられるけれども、この経緯は一体どうだったのですか。
  69. 山村新治郎

    山村委員長 閣僚諸君に申し上げます。質問者からのせっかくの要求ですから、簡単に願います。
  70. 安井謙

    安井国務大臣 きわめて簡単に答弁いたしますが、あれは素案として、あれを中心に各関係方面と検討いたしたい、こういう趣旨であの案を作ったわけでございまして、公式に発表したものでも何でもございません。
  71. 阪上安太郎

    ○阪上委員 あなたは公式に発表したものではないと言われるが、警察庁の西垣課長等が、新聞記者団にこれを正式に発表していることは事実であります。しかし交通閣僚懇談会として発表したものじゃない、こういう意味じゃないかと思うのです。この問題について、ああいったことを警視庁が決定をすることについて、警察庁も了解済みのことだと思うのでありますが、国家公安委員会はこの問題について了承を与えておったのでしょうか、どうでしょうか。
  72. 安井謙

    安井国務大臣 ああいうものを基礎案として、さらに各方面と折衝してよりいい案を作成していこう、こういう意味で了解を与えております。
  73. 阪上安太郎

    ○阪上委員 その後の交渉、折衝の経過を見ますと、全く警視庁と、それから運輸省の出先であるところの陸運局とが折衝をしておる、こういう状態であります。私はこういうやり方は、非常にものを間違ってくるんじゃないかと思う。何も東京都だけのためにのみ、交通規制というものが行なわれるべきものじゃなかろうと思うのであります。東京都に近接したところの各県の交通事情等も勘案しなければ、ああいう程度のああいうやり方の規制というものは私は不合理だと思う。従ってそういう他府県にわたるような問題を処理していくのは、警察行政から見たら、公安委員会の直接の責任じゃないかと思うのです。従って警察庁自体が、そういった問題と取り組んでいくなら話はわかる。従って国家公安委員会がこれと取り組むというなら話はわかるけれども、ああいったふうな出先の一小部分のところでそういう問題を調整していく、こういうやり方は大きな間違いがある。ことに閣僚懇談会の了解を得たとかというような形において、警察が警察権を行使していく、警察行政権を行使していく、こういう考え方も私は間違いだと思う。国家公安委員会が、必然、これを自分で取り上げていかなければならぬ問題だと思うのですが、なぜ警視庁だけにまかしておるのか。ほかの府県は一体どうするのですか、この問題について。
  74. 安井謙

    安井国務大臣 交通全般の規制という問題につきましては、決して地方の公安委員会にまかせ切りにしておるわけじゃございません。全体の指導あるいはやり方というものにつきましては、国家公安委員会が十分検討いたしておるわけでございます。ただ個々の実態をどうきめるかというのは、御承知のように今の警察制度は、地方公安委員会がそれぞれ権限を持ってきめることに相なっておりますので、そういった交渉をやっておるわけであります。
  75. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私が申し上げておるのは、個々にきめることは、個々の場合そういったものを積み重ねていくことはいいのでありますけれども、しかしこの交通規制は、東京都だけの問題じゃないということなのであります。むしろ他府県の方が迷惑する問題ではないでしょうか。周辺のバス・ターミナルなりその他の将来のことを考えたならば、むしろ東京都に近接する県の方が問題を起こしてくる。そういった問題を警視庁だけで考えていくような考え方が間違っておる。そういった間違った考え方に導いているのは、公安委員会がぼんやりしているからだ。なぜ他府県にわたるような問題について、公安委員会が率先してこの処理に当たっていかないかということを私は聞いている。今承りますと、まるで東京都の個々の問題のようなものの考え方をされている。そんな考え方でこの正大な交通規制をやられたら、たまったものじゃない。私は交通規制は反対じゃありません。やるべき交通規制というものは、どうしてもやらなければならぬ、こういうふうに思うのでありますけれども、今言ったような手続では大きな間違いを犯しておるのではないか、こういうことを申し上げておるわけであります。しかし、時間がありませんから次に移ります。  そこで伺いたいのでありますが、これは運輸省も、それから警察も、その他閣僚懇談会等もはっきり言っておられるのでありますけれども、この交通規制については、これは最小限の犠牲においてやって、いきたいんだ、そのために、われわれはなお今検討中だ、こう言われております。そこで最小限でこの交通規制をやるという、その方法は一体どういうことか。ただ単に規制の対象になる車の数を広げていくとか狭めるとかということが、私は交通規制の犠牲を少なくするということにはならないと思う。何かそれ以前に打つべき手というものを打って、できる限り緊急に打つべき手を打って、あとの残った、万やむを得ないところのものを規制に移していく、こういうことであると思うが、その打つべき手というものが何であるか、それを打たれておるかどうか、この点についてお伺いいたします。
  76. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 運輸省といたしましては、大量に人なり貨物なりを運ぶ施設を増強いたすことがまず第一だ、かように考えております。しかしこれには時間も要します。従って運輸省の対策のみならず、他の道路その他も同様でございますが、緊急に行なうものとして、まずさしあたりというものが今の警視庁あるいは警察庁の考えているものに出ているわけでありますが、運輸省といたしましては、そういうような考え方でいっております。そしてまた実際の指導も、交通混雑時でないときに運んでいいような品物は、そういうような時期に運ぶように、たとえば路線トラック等も指導をいたしておると申し上げたいと思います。
  77. 阪上安太郎

    ○阪上委員 最小限の犠牲で交通規制をやるということになれば、最近まで各方面の常識となっておりますところの周辺におけるバス、トラックのターミナルの増設であるとか、その他いろんな方途というものを先に講じなければいけない。それを講ぜずしていきなりこういう規制をやっていくという考え方は、間違っておる。そういうことが規制を最小限にとどめることになるんじゃないか、こう思うのであります。ところが今伺ってみると、運輸省では大量輸送計画というようなものを持っておると言われたと思いますが、私はそれでは伺いますが、今までの運輸省のいろんな発言あるいは運輸の小委員会におけるところの答弁等を伺っておりましても、何か交通緩和ということを考えておられる。そうして高度経済成長に伴うところの積極的な大量輸送計画というものは、おそらく持ってないんじゃないかと私は思うんです。それが証拠に、現在の東京都の中にありますところの、あるいはこれと関連を持っておりますところの運輸機関の整理統合などというのは、一回も発表されたことはないと私は思うのであります。今世界各国の交通対策について考えてみましても、一番問題になっているのは、この大量輸送計画の問題だと思いますが、その場合に大都市並びにその周辺に対するところの、都市圏の中における交通機関の整理統合ということを、まっ先にみな取り上げているんです。運輸省は、そういう交通機関に対する整理統合の問題に、真剣に今取り組んでおられるのですかどうですか、この点を伺いたいと思います。
  78. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 整理統合とおっしゃいますのは、おそらく自動車輸送の部門であろうと存じます。私はこの点も、将来考えていかなければなるまいかと思っておりますが、ただいまはまだ着手をいたしておりません。
  79. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私は、ただ単に自動車輸送だけを言っておりません。御承知のように、東京都に例をとりましても、かなりな輸送量を持っておりますところの各私鉄は、山手線を起点として、そこでとどまってしまっておる、こういう状態でしょう。あるいはまた四路線ありますか、地下鉄、高速鉄道の問題にいたしましても、一体どういう状態にあるかということを考えてみたら、住宅から通勤、通学等、直接に職場なり学校なりにつながっている直通の路線というものはないでありましょう。そして外から入ってくるバスは都内に入ることをとめている、都内のバスは外に出ることをとめる、各所で乗りかえを繰り返さなければならぬ、こういう状態にあるわけであります。こういった路面電車であるとか、あるいは国電も私鉄もバスも含めて、こういったものを相互乗り入れしたところのいわゆる交通機関の整理統合ということをこの際なぜやらぬか、こういうことなんであります。
  80. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私鉄と地下鉄あるいは国電等の相互乗り入れば、ただいま計画をいたしております。このためには相当施設を要しますので、着々と今準備をいたしております。またバスは郊外から都心に現に乗り入れをいたしております。お説のように、郊外から都心まで、人の輸送はそういう面でやって参りたい。貨物の輸送は、どうしても国鉄等の輸送力を増強いたしませんと、自動車による貨物輸送がだんだんふえて参ります。従って、できるだけ軌道による貨物輸送の増強をはかっておりますことは、御承知の通りであります。
  81. 阪上安太郎

    ○阪上委員 次に、交通安全対策についてお伺いいたしたいと思いますが、交通安全施設をこの際緊急に整備拡充しなければならぬ、かように考えるわけであります。恒久的には大量輸送計画等を着々実行されるとともに、緊急措置といたしまして当面問題になるのは、次々に失われていく人命の問題でありますので、少なくとも緊急な交通安全施設の整備拡充ということをやらなければならぬ、こういうように思うのであります。ガードレールであるとか安全さくであるとか、こんなものは全国の都市、主要道路に思い切って整備しなければならぬ。結論は、そのためには多くの金が要ると思うのであります。こういったものを実施していくところの実施団体は、地方公共団体である。ところが今年度の地方財政計画等をながめてみましても、これほど世間で大騒ぎしているところのこの問題について、びた一文の予算も計上されていない。財政措置というものはほとんど講ぜられていない。一体こんなことで、幾ら閣僚懇談会を開いたところが、何の役に立ちますか。こういった問題について、なぜ本年思い切って、地方財政計画の中に、それが交付税であろうとあるいは一般債であろうと、数百億をこの中にぶち込んで、当面の急場を、何とか人命だけでも守っていく方向というものを、なぜ打ち出さなかったか。この間閣僚懇談会で東京都知事を呼ばれて、あなた方は、東京都にはそういう熱意が少ないということで、今回さらに国と地方自治体の折半によるところの財政措置を講じようというところまで国が出てきたけれども、しかしこれは軒並みに地方公共団体に出てはまる問題ではなかろうかと思います。各地方公共団体は、今日までの間に五十数市でありましょうか、交通安全都市宣言などをいたしておりますけれども、その財源措置をながめてみましたら、ほとんどない。これではただほんとうに観念的な宣言にすぎない。こんなことでは、私は、人命は守れない、交通安全ははかれないと思うのでありますが、どうですか。この際お伺いいたしたいのは、交付税なりあるいは地方債なりによって、思い切った交通安全施設の整備拡充のための財源掛冠をやっていくという考え方が、自治省にあるかどうか、この点どうでしょうか。
  82. 安井謙

    安井国務大臣 御説の通りに、事故防止につきましては、自治体の持っておる役割は非常に大きいと思います。それで、それぞれの交付税の配分等につきましても、道路その他につきまして、でき得る限り国の計画と合わせた財源配分の計算はいたしておるつもりでございますが、さらに道路につきましては、今の起債の問題が、特別財源が別にあるということから認められておりません。従いまして、将来は起債という問題を道路にも押し広げていく必要があるのではなかろうか、そういう点も今後検討していきたいと思っております。
  83. 阪上安太郎

    ○阪上委員 安井さん、今後検討するなんということでは、だめなんですよ。この問題はもっと切迫した問題なんですよ。この点は一つ真剣に考えていただきたいのです。全然予算措置を講ずることはできないようになっておりますよ。交付税で見ておるとおっしゃるけれども、それは例年の道路対策である。私の言っているのはそうじゃないのですよ。都心部なんかは思い切ってガードレールをしき詰めて、そうして横断歩道というもの以外には渡れないというところまで持っていこうというものの考え方を持たないと、この交通安全対策はできないということを言っておるのです。だからそのためには――何ですか、そんな将来考えるなんというようなことを言って、三十七年度に考えなければこれは、だめです。二百億や三百億の金をひねくり出すのは何でもないじゃありませんか。この点をあなたは真剣にお考えになっていただかぬと、地方自治体はから念仏ばかり唱えておって、いつまでたったって交通安全対策なんてできっこないのです。信号灯一つだってどうですか、全部受益者負担じゃないですか。あれほどやかましく言っておる信号灯一つにつきましても、地元負担で、ある程度のものを寄付してくれたならば作るけれども、そうでなければ作らないなんてのんきなことを地方自治体は言っておる。こういった交通安全対策、安全施設をやるためには、少なくとも政府は、これだけ交通問題と取り組んできたのですから、いつまでもそういった念仏を唱えておってはだめだと私は思うのであります。ここに東京都の首都交通対策審議会の答申書がありますけれども、東京都だって、今、閣僚懇談会なんかで調査をやっているようなこういったものにつきましては、この中に全部入っている、こんなものはとっくに作っておるのです。なぜこの答申案を東京都が実施できないかということなんですよ。はっきり言うと金がないからですよ。地方自治体のために自治省がこの問題を取り上げて考えてやらぬという手はないのだ、どうなんですか。ことしやりますかやりませんか。
  84. 安井謙

    安井国務大臣 お話のように、ガードレール等につきましては、単独事業の面についても交付税等は十分見ておるつもりでございます。ただ、今の大都市につきましては、交付税の対象になっていません。しかも起債の対象にもなっていない建前になっておりますので、従いまして、特別な措置を国が現在の組織ではやるわけにいかない。でありますから、これを今検討いたしまして、決して閣僚懇談会というものは新しいデータや調査を今やっておる段階じゃありませんので、おっしゃる通りに、こういう必要なことがなぜできないか、その原因を確かめまして、それができるような政治的な手を打とう、こういうことを今やっておりますし、自治省も、今後も十分東京都の相談に応じて、三十七年度にもさらに増額して、こういった施設をやるつもりでございます。
  85. 阪上安太郎

    ○阪上委員 ただいまおっしゃったように、ほんとうにこの問題は真剣に取り上げて、三十七年度にやはりそういう財政処置をして下さい。特にこのことをお願いしておきたいと思います。  それからいま一つ、こういう交通問題の隘路の中に地方開発の問題があろうかと思います。幸い今回、その内容はいかんであるかということについては問題がございましょうけれども、新産業都市建設促進法というものも出されております。ところがあの法律の内容を見ますと、交通問題、交通政策、交通対策というものが、どうもあの中に画然と入っていないというようなうらみがあるわけなんでありますが、この点について通産大臣、どうでございましょう。
  86. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいま提案いたしております法案の御審議をこれからいただくわけでございますが、最近の新しい情勢に対応するものを考えなければならぬと思います。もちろん道路の整備計画、あるいは工業用水の確保計画、あるいは港湾の整備だとか、それらのものは一応は入っております。  ただいまガードレールのお話が出ておりますが、在来の道路規格でなくて、やはり新しい情勢に即応した道路規格が必要になる、こういうことも今後は建設に際して考うべきであろう、かように思います。
  87. 山村新治郎

    山村委員長 阪上君に申し上げますが、時間がちょっと超過しております。
  88. 阪上安太郎

    ○阪上委員 もう少しで終わります。  新産業都市建設と関連いたしまして、交通の側から見たら、わが国の産業配置が悪い。これは御存じの通りだと思います。そういうことで、大都市の集中排除をやっていこうという考え方に立っております。これはいいと思います。しかしながら、あの法律の内容を見ると、はたしてそういう措置が十分とれるかどうか、問題だろうと思います。しかしこの問題はおくといたしまして、あと最後に一つだけ、建設大臣、来ておられないですね。では佐藤大臣から伺っておきたいと思いますが、最近ニュー・タウンというのがどんどんできております。しかし地域経済開発の観点から私ども考えた場合に、あれはニュー・タウンと称すべきものではないのじゃないか。全く産業配置がこれに伴っていない。そして大都市の周辺に若干のグリーン・ベルトを隔てて隔離されたこれらのニュー・タウン、いわゆるはっきりいって住宅団地です。ベッド・タウンにすぎないだろうと思います。そういうものが今巨大な金を使ってどんどん建てられておる。そのことのために、そこへ住む人は大都市から隔離されて住むのじゃなくて、大都市へ通勤するためにこの場所から通ってくる、こういう状態になっております。一体どうなんでしょうか。これは建設省所管かもしれませんか、ああいうものの位置の選定のやり方で、ほんとうに今問題になっておる交通対策というものを処理することができるだろうか。あれではますます交通は複雑化し、混雑化していくのじゃないか。諸外国のニュー・タウンの例なんかとりましても、相当思い切ってグリーン・ベルトを隔てて五十マイル、六十マイル――わが国は面積が狭いから、そう大きな距離をとるわけにいかないにしても、完全にこれは大都市から隔離して、そしてその周辺に中小企業団地その他の産業配置をやって、そして、そこからは大都市には一歩も通う必要がないような状態に建設されてこそニュー・タウンとしての値打が出てくる。そして交通対策としての価値も出てくる。ところが今のようにどんどん建てる。そしてそういった交通計画、対策などというものは全然頭に置かずにああいったニュー・タウンをどんどん建てていく。その結果が東京都においても大阪市においても、ターミナルにおけるところの交通の非常な混雑を来たしておる。ああいったものに対するところのやり方は間違っておるのじゃないか。ああいうことではいつまでたってもますます交通を複雑化していく、こういうことになろうと思いますが、建設大臣、一体これはどういうふうにお考えになりますか。
  89. 中村梅吉

    中村国務大臣 確かにいろいろな新しい住宅団地等が郊外に建設されまして、その結果、ラッシュの時間に非常に通勤困難の状態を来たしておりますことは事実であると思います。ただ、住宅公団等が発足いたしまして以来、家賃との関係もございますので、地価の高いところに建設することがきわめて困難である事情から、自然団地等が離れたところにできて参ったのでございます。今私その計数は持ち合わせておりませんけれども、全体としての郊外にできる住宅の戸数に比較いたしまして、団地による住宅の数というものは全体の一割ないし二割程度の範囲であると思うのであります。従って、一般の住宅も地価との関係で郊外に伸びていきつつある現状でございますので、われわれとしましてはもっと都心部の高度利用をはかりまして、住宅の外へベッド・タウンとして伸びていく姿を改善いたさなければならない、こういう考え方に立ちまして、今国会に住宅金融公庫法の改正等も行ないまして、都心部にもっとげたばき住宅等ができますように、今後こういう弊害を是正するために善処して参りたい、かような考え方で努力いたしておる次第でございます。
  90. 山村新治郎

    山村委員長 阪上君、よろしゅうございますか。――御苦労様でした。  続いて石田宥全君
  91. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 私は、わが国農業の基本的な問題について、政府の所信を伺いたいと思うのであります。  まず最初に、最近世界経済が各ブロック別に強化されて参りまして、EECのごときは第二段階についに踏み切って、特定多数決制を採用するに至っておるのでありますし、またイギリスのごときは、昨年以来EEC参加の態度を決定しておるわけであります。そういう中にあって、アメリカもまた、本年の春のケネディ大統領の年頭教書以来、いろいろな面でEECに接近をすべきであるという態度を明らかにいたしております。こういう情勢の中で、日本はどういう態度を将来とって進もうとしておるのか、こういう点について経済企画庁長官の御意見を伺いたいと思います。
  92. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま石田委員のお話のように、世界の各地におきましてブロック化と申しますか、経済の共同的な行為によって結合をしていこうという動きが相当活発でございますし、しかもそれが着々緒についておる。特にEECのごときは第二段階に入りまして、農業政策等につきましても打ち合わせていくという段階になっております。こういうような広域的な経済の結合になって参ります場合に、日本といたしましてもそれに対処して参らなければならぬと思います。特にそれらの広域経済圏と域外との関係、域外における日本の競争というような問題についても、今後問題がいろいろ起こってくると思います。日本といたしましては今日東洋に位置をいたしておりますので、従ってこれらのEECでありますとか、また一方ではその他の経済圏等と十分な接触を保ちながら参らなければなりませんと同時に、他方におきましてはアジア諸国とも緊密な連絡をとりまして、そうして互いに経済の発展に協力をしていくということが必要であろうかと考えております。
  93. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 政府は、エカフェのアジアにおける経済協力機構についての共同宣言の草案が示されたのでありますが、これに対して、この宣言案は時期尚早であるという閣議の決定が行なわれたという報道が伝わっておるわけでありますが、アジア経済協力機構についての共同宣言を発するということについて時期尚早であるということはいかなる理由に基づくものであるか、これを伺いたいと思います。
  94. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知の通り、先般エカフェの事務総長の方から域内加盟国に対しまして、いわゆるOAECと申しますか、そういうような構想についての素案が参りまして、可能ならばエカフェの総会においてこれを採択したらどうだろうかということでございました。各国はそれぞれただいまその問題について政府自体検討いたしております段階でございまして、日本といたしましてもアジアの共通の問題につきまして極力共同をして、そうして経済開発をやって参りますことは必要と考えておりますけれども、現在のアジア各国はそれぞれ発展段階が異なっておりますし、それぞれの事情によりまして、あの素案だけを今すぐにエカフェの総会等で宣言をするということはいかがであるか、もう少し事務的にも、あるいは各国の閣僚等が寄って、そうしてさらに検討をした上でこれを進めていくのが適当だろうということでありまして、いわゆる前向きの施策のもとにこういう問題を将来検討していきたい、こういうことでございます。
  95. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 EEC日本との関係でありますが、これはかなり間接的な影響の大きなものがあるのではないかと考えるわけでありますが、またアメリカ国内の経済評論家やあるいは大学教授などの中には、日本EECに接近すべきであるという意見が述べられておるようであります。これについては政府はどういう所見を持っておられるか、伺いたいと思います。
  96. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 EECがすでに第二段階に入りまして、経済的な非常な強固なつながりが進められてきております以上は、日本といたしましても、それに対して十分な関心を持ち、EECの経済政策がいかように今後発展していくかということに対しては、これに十分な接近をいたしまして、そうしてやって参らなければならぬと思います。ただアメリカとEECとの関係と、日本EECとの関係はおのずから若干経済発展の段階が違っておるのでございますから、その点は十分考慮しながらEECに接近をし、あるいはEECの政策を注視していくことが必要であろう、こう考えております。
  97. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 本論に入るためにあまりこれに時間をかけたくないと思うのでありますが、ヨーロッパがEECの内部における共同農業政策の段階に入り、また鉱工業方面におきましても、最近聞くところによれば、ドイツ、イタリア等は中国の市場に対して硫安その他化学肥料を百万トンの成約ができたと伝えられておるのでありますが、そういうことが、日本でも、肥料二法案を廃止して、新しい肥料産業振興の法案を出そうというようなことに関連をしてくるのではないかと実は考えるのでありまして、日本EECに接近をするということは、これはわが国の農業に対しては非常に大きな影響をもたらす危険性がある。イギリスがEECに参加を決意するに至った動機あるいはその決意を述べた中には、イギリスの農業を含めて、三〇%程度の産業を犠牲にしてもやむを得ない、将来のために参加をしなければならないということが述べられておるのでありますが、日本がここでEECに接近をする、その接近をする仕方にも問題がございましょうが、しかしやはり関税引き下げや貿易の自由化というものは一方的なものではございませんので、EEC諸国との取引についても折衝が行なわれておるようでありますから、これは相互的なものでありまして、日本から向こうへ輸出をする量をふやし、あるいは関税引き下げを要求すれば、向こうから入ってくるものにもやはり対等の待遇をしなければならないということになるわけでありまして、そういうことのわが国農業に及ぼす影響というものが非常に大きなものがあると思うのであります。ことに農産物などにつきましては、直接どの程度の影響があるかは別といたしまして、カナダやオーストラリア方面からの小麦やあるいは酪農製品などのダンピングということも、当然考えられなければならないと思うのでありまして、そういう面について少し詳しく経済企画庁長官の所見を承ると同時に、これは河野農林大臣から、日本の農業に及ぼす影響についてお伺いをいたしたいと思うのであります。
  98. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知のようにEECの工業力というものは、相当高度に発展をいたしております。従いまして、先ほど私が申し上げましたように、アメリカとEECとの工業関係と、日本EECとの工業関係が違うのでございますから、従って接近をするということは、無条件で同じような態度をとるという意味ではなしに、向こうの実情を十分了承しながら、日本もそれに対する対策を立てる意味において接近をしていくというのが日本の態度であるべきだと思います。  農業の問題につきましては、むろん乳製品その他等の問題が、EEC諸国と日本との間に関連はいたしておりますけれども、日本の農業の問題としては、むしろ将来東南アジア方面との関連が重要な問題ではないかと考えるのでございまして、そういう面につきまして、重要性をその面に大きく考えるべきだ、こう考えております。
  99. 河野一郎

    河野国務大臣 藤山大臣からお答えになりましたように、将来の日本農業を考えます場合には、当然そのことをある程度予期いたしまして、できるだけこれが防除に努めるような農業政策を樹立して、用意を怠らないというようにいたしておかなければなるまいと考えます。
  100. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 ただいまお話がございましたように、やはりそれとの関連において、世界の経済、世界の農業の中における日本の農業としてこれからの日本の農業は考えなければならないことは、言うまでもないことでございますが、政府、与党は、昨年年の国会で、農業基本法についてごらんのように一方的にきわめて強引にこれを押し切られたのでありますが、河野農林大臣は、農業の今後の方針については農業基本法にプラス・アルファがなければならないということを、よく言っておられるのでありますが、河野さんの考えておられるプラス・アルファとは何であるか、これを一つ伺いたい。
  101. 河野一郎

    河野国務大臣 具体的にそれは何だということになりますと、いろいろ考えられると思うのでありますが、根本は農業基本法でございます。今もお話が出ましたように、私は僭越でございますけれども、数年前からEECについて一つの見解を持っておりまして、これが貿易の自由化以上にわが国の各種の産業に影響を及ぼすものである、そうなった場合に、相手方の立場、つまり国際情勢の変化というものを勘案しつつ日本の農業政策を立てていかなければならないということを考慮いたしまして、ただ、くどいようでございますけれども、従来でございますれば、貿易の自由化というものの中には、国際通念として、その国の農業を守る意味においては独得の考慮は認められておった。ところが今申し上げるように、双方の合意によって、共同市場と申しますか、貿易の共同化と申しますか、そういうような段階に入りますと、わが国わが国の他産業の育成強化のために、助長のために、国内における農業との関係を考えなければならぬ場合が起ってくる。それは今もお話に出ましたように、イギリスにおいてもそのことがある。欧州共同体が昨年におきましては、今日のようにイギリスが共同体に踏み切って参るというようなことには、まだ当分かかるだろう、こう思っておったのが、ここに国際情勢の一つの大きな変化があるわけでございます。そういうものも順次今後推移を見て、わが国農業の上におきましては、ただ単に農業基本法ということにプラス国際情勢の変化を勘案しつつ施策を講じていく必要が起こってくるということを考えておるのでございます。
  102. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 国際情勢についての見方でありますが、今の河野さんの答弁によると、昨年農業基本法が成立した当時と国際情勢が著しく変化をしたかのように御答弁になっておりますけれども、実はすでに昨年の基本法審議にあたりまして私どもはその点を強く指摘をいたしておったのであります。一例を申し上げますならば、政府は基本法審議にあたりましての資料の中に、たとえば所得倍増計画という閣議決定の文書の中で構造改善の点に触れておるのでありますが、構造改善については、十年間の計画で二・五ヘクタールの自立経営農家、粗収入百万円、こういう農家を百万戸造成するのだ、こういうことが資料として提出されておるのでありまして、これにつきまして、私どもは、国際的に見れば、すでに十五ヘクタールないし二十ヘクタールという単位ではないか、フランスのごときは十九ヘクタール以下の農家に対しては、トラクターの購入資金は制度金融としては貸付をしないというふうに、大体の標準は十五ヘクタールないし二十ヘクタールという標準ができておるのに、日本だけが二・五ヘクタールで、しかも十年計画でそのようなことをやっても全くナンセンスではないかということを、われわれは指摘をしておったのでありますが、当時総理大臣も、当時の農林大臣も、二・五ヘクタールの自立経営農家を育成するのだということを強調されておったわけであります。それだけ政府、与党の考え方というものはズレがあったのです。非常なズレがあったわけです。今河野さんの答弁によると、今日になって情勢が変化したかのように言われるけれども、われわれは昨年すでにそれを指摘しておったわけです。今日なお、河野さんは二・五ヘクタールの自立経営農家を百万戸育成するのだという具体的な政策を進めようとお考えになっておるのかどうなのか、それでいいとお考えになっているかどうか、これを一つ承りたいと思います。
  103. 河野一郎

    河野国務大臣 およそ政治の考え方は、対応すべき条件に対処してしかるべく変化していくということは、これはやむを得ぬことだと思うのであります。たとえば国際的に日本が孤立しておる経済もしくは孤立しておる場合の農業政策と、国際情勢に一般産業的に溶け込んで、そしてその中の農業として、国際農業の中で勘案しなければならぬ場合との問には変化がある、それは当然のことだと思うのであります。  そこで私は、たびたび申し上げますように、経営規模を拡大するという考え方は、可能な範囲においてこれは基本的なものである、経営規模は大きい方がよろしい、これは基本的なものである。しかし日本の場合において、これだけによるべきじゃない。これははなはだ御無礼な申し分ですが、この点においていささか石田さんと所見を異にするかもしれません。しかし私は、経営規模は拡大すべきである、すべきであるけれども、日本の場合においては、客観性を考慮して経営規模の拡大だけによるべきじゃない。その中に重点を経営規模の拡大にも置かなければなりませんけれども、あわせて技術の刷新にも重点を置かなければならぬ。さらにまた資本を投入してこれに施設を加えていき、利用度を高めるということも考えなければならぬ。農業経営は、申すまでもなく、土地が広いだけが農業経営の規模が大きいというわけではなかろうと思うのであります。そういう意味において、私は、土地、資本、技術というものを合わせてそこに自立農業の経営と高度の農業経営を創造して、そしてこれら国際農業の中に日本農業の優位性を保持するようにしていくということが、これから進めなければならぬ点じゃなかろうか、こう考えております。
  104. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 あまりよけいなことを言ってもらわなくていいのです。二・五ヘクタールの自立経営農家を十年間で育成するのだということを閣議決定の所得倍増計画の中に書いてあるのだが、やはりその通り進めるのか進めないのか、それでいいのかどうか。われわれは昨年指摘したが、今ごろになって政府与党さんの方は初めてわかったのかどうか、こういうことなんです。それは情勢が変化すれば、いろいろ内容は変わるでしょう。それはいいけれども、十年計画ですよ。一年の計画ならこれはかまいません。しかし十年計画なんです。だからその点、要点だけを一つ答弁して下さい。
  105. 河野一郎

    河野国務大臣 そこで、申し上げました通りに、経営規模を拡大するということは変えておりません。それはその通りやりますが、今の情勢の変化によって、技術の刷新も大いにしなければならぬ、そうして他国と日本農業との間に競合しないような点についても考慮を払う必要がある、これが広域経済に処する道だ、こう考えておるというのでございます。
  106. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 河野さんはだいぶはぐらかそうとしておられるのだけれども、二・五ヘクタールの自立経営農家の育成をやるのだ、こういうことを認めておられるようでありまするから、先に進みたいと思うのでありますが、実は昨年の農業基本法再議の当時、政府はいろいろな指導をなさった。基本法との関連で将来二ヘクタールないし二・五ヘクタール程度の自立経営農家を育成するのだということを行政面で指導されまして、各地方にそういう見取図ができた。これは昨年も私は指摘をしたのでありますけれども、私のすぐ近くの新津市などでも、一ヘクタール以下はこれは切り捨て農家だ、一ヘクタールから二ヘクタールまでは兼業農家だ、二ヘクタール以上は自立経営農家だ、こういうような見取図を作られた。そのときに二ヘクタールないし二・五ヘクタールを作っておる農民は、われわれは自立経営が可能なんだという一つの安易感を持って実は安心しておった。ところが、一年もたたないうちに、去年の暮れになって、二・五ヘクタール程度の農家は非常に生活が苦しくなり、経済が苦しくなって、これじゃもうやっていけないということで農民が動揺し始めておる。一体政府は二・五ヘクタール程度の自立経営農家を育成するのだと言ったので安心しておったが、もうこんなことでは二・、五ヘクタール程度の農家ではやっていけないじゃないかということで、今われわれの地方の平場地帯の相当大きな面積を耕しておる農民諸君は大動揺を来たしておるわけです。そういたしますると、今大臣が答弁されたように、やはり二・五ヘクタールの自立経営農家を育成するのだなどということを言っておられても、農民は安んじて農業に従事するわけにいかないということなんですよ。私がここで申し上げたいのは、そういう不安、動揺にかられておる農民に将来の青写真を示して、こういうふうにやっていけば、この程度の農業ならやっていけるのだという青写真を示す責任があるのではないか。農業基本法をあのように強引に、社会党は社会党の案を出して、そうして社会党としては、社会党案について修正の用意があるという意思表示までしたにもかかわらず、一方的に強引に押し切られたが、それは非常なずれがあった。これはもう大臣が認めておられる通りなんで、そういうときに、将来の日本の農業についての青写真を、政府は農業基本法に基づいて示す責任がある。だから所得倍増計画が間違いであったなら間違いであったと率直にこれを認めて、そうしてこれは間違いであったから今後はこういう農業にするのだということを示す責任がある、こう考えてこの問題を質問をしておるわけです。どうですか。
  107. 河野一郎

    河野国務大臣 私ははなはだ迷惑いたしますが、石田さんがひとりで結論までお話しになって、われわれの考えておることはこうなんだ、ああなんだ、間違っているので言えとおっしゃっても、それはそういうわけに参らぬです。だから、決してそんなことを考えていませんし、そういうことを言ったこともない。御承知の通り、私は、青写真を出せ出せとおっしゃるから、青写真は出しております。構造改善というものをしていくのでございます、こういうことを申し上げておるので、全国の農民諸君は非常にこれに期待いたしまして、それならうまくいくというので非常に喜んでおります。ということでございますから、これは広い日本農村でございますから、石田さんがおっしゃるような土地柄がときにないとは私は申し上げません。まだ十分に徹底していないうらみもございますけれども、また一方においては非常に期待が多うございまして、現に構造改善に一つぜひ村を指定するようにということの御要望がありますことは、皆さんも選挙区で御承知の通りでございます。でございますから、決して青写真を出さぬわけでもなければ何もせぬわけでもない。また今お話しの、広域経営を云々、経営規模拡大を云々、それは現に困っておるじゃないか、動揺しておるじゃないかとおっしゃいますけれども、私はこの点は、政府におきましても調査をいたしまして、確かに一ヘクタールないし二ヘクタール、いわゆる従来適正規模農家といわれた程度のところの所得が少ないことは認めます。それはその通りでございます。だから、これがもうちょっと多くなった方がいいのじゃないかということも私は考えます。しかし、いずれにいたしましても、先ほど申し述べました通りに、経営規模の拡大というそのことだけではなかなかやっていけない、そこにはいろいろな要素を加えて、そうして初めて経営規模が拡大し、技術を刷新し、そうして構造を改善し、多角経営をしていかなければいかぬということは間違いない事実だと私は思うのでございます。
  108. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 私は何も独断で言っているのじゃないのであって、そういうことを農民の大部分の諸君が訴えておるから、だからその点を指摘しておるのであります。しかし、あまりそういう議論ばかりしておると前に進みませんから、少し前に進みたいと思うのであります。  構造改善については、あとで触れますが、最近の農村の状態については、これは大臣もよくおわかりですから、あまり多くのことは触れませんが、池田さん、がよく農村は民族の苗しろだと、こういうことをおっしゃる。これは河野さんが言っていることじゃないから別だと言われれば、これはまた別の問題になりますけれども、最近の農村の人口の移動は、これは農林省の調査を見ますると、農業人口の減少は、昨年一月から九月までで約五十万人減少しているわけです。   〔委員長退席、重政委員長代理着席〕 その減少率は前年に比較して六〇・四二%、これほど減っておる。ところが皮肉なことには、六十才以上の人口は、前年に比較して一〇・三%増加しておるわけですね。そうすると、なるほど池田さんはいいことをおっしゃっておるわけですが、農村は民族の苗しろだと、こう言う。若い労働力はどんどん都市に集中され、工業人口に吸収されておって、そうして老齢にして、もう労働力もきわめて劣悪になった者が、今度は逆に農村に帰ってきておる、こういう状態になっておる。そこで、中学校や高等学校の卒業者は、御案内のように九三%から九四%も農村から離れておるわけですが、こういう優秀な労働力は、農民と農村の負担によって育成されて、そうしてそれが低賃金で鉱工業方面に収奪される、こういう現状にあるわけですね。農民は苗しろというものを非常に大切にしまして、いわゆる親田といって、一年間作付しない地方が多いのでありますが、政府はそういう農村に対して一体どんな取り扱いをしておるかというと、これもまた河野さん御存じの通りなんです。こういう状態の中で、農村に対する政府の基本法に基づく施策というものがまことに貧弱そのものなんです。しかも、これはあとで触れるわけでありますけれども、構造改善の政策などは矛盾撞着のはなはだしいものなんです。河野さんが経営規模の拡大ということをしきりに繰り返しておっしゃるけれども、経営規模の拡大を阻害するような行為を次々とやっていらっしゃるわけです。こういうふうな矛盾撞着のはなはだしい政策をおやりになっておる農政というものは、一体何を物語るか。私は少なくともすなおに考えて、構造改善というものは、やはり経営の形態、なかんずく土地の保有の状態、こういうものが特に大きな問題であって、経営規模の拡大をするというならば、経営規模の拡大のできるような政策を打ち出すことが問題なんです。ところがそれに逆行するような政策が出ておる。たとえば旧地主に対する補償の問題でありますが、経営規模の拡大をしようとするときに、むしろこれを阻害する要因を強化しようとする。こういうふうな点について、これから一つ質問をいたしたいと思うのでありますが、旧地主に対する補償問題の前に、河野さんのおっしゃる構造改善というものに農民は非常に希望と期待を持っておる、こういうお話でありますけれども、今私が申し上げたような点を除いて、今まで戦時中おやりになったところの経済統制であるとか、あるいは標準農村の建設であるとか、河野さんが昭和三十年以来やってこられた新農村建設などと、一体どこがどう違うのか。ちっとも変わらないじゃないか、予算の規模が少し大きくなっただけではないか、こういうふうに考えるのでありますが、どこがどう違っておるのか、そしてそれは構造改善とは一体どうつながっておるのか、これを一つ伺いたいと思うのです。
  109. 河野一郎

    河野国務大臣 はなはだ恐縮でございますけれども、またお小言をちょうだいするかもしれませんが、速記録を読んだ人にわかるように、私にもしゃべらしていただきたいと思うのであります。  今石田さんのお述べになりましたように、統計を自分の理論に合うようにお使いになったら、これはどうかと私は思うのであります。特に、農村に老齢の方が多くなった、これは労働力が非常に老齢化してだめじゃないか、これは私をして言わしむれば、社会施設等が徹底したから、農村の老人が従来早死にだったものが長く生きるようになったので、非常に好ましいことであって、大へん私は農村のために慶賀にたえないことだと思います。若い者がみんな出かけるじゃないか、これはその通りでございます。その通りのものはその通りとして私は肯定いたします。しかし、これは御承知の通り農村が今曲がりかどに来ておる。これはだれでも言います。そして非常に不安動揺を来たしております。そのために一部の農村の青年は、都市の産業界が今日非常にいんしんで、設備投資等も旺盛でございますのにつられて、都会に走り、また都市の方からこれに対しての非常な誘引もある。従ってそういう事態になっておりますけれども、それでは困るから、ここで農村青年が自立して、そしてみずから希望を持って農村にとどまり、みずからの施策によって自立農家を育成するように、及ばずながら相談相手になっていくということがわれわれの一番の務めじゃなかろうか、こう考える。この点については、お示しのようなこともありますけれども、それに対処して政治は遅滞なく善処して参る必要がある、こう私は思うのでございます。  第三番目には、農業基本法をやったけれども、なっておらぬじゃないか、こうおっしゃるけれども、これはまた私は皆さんに申し上げたい点がある。法律というものは、出してから一体どのくらいたったら効力が出るものですか。農業基本法の通ったのは昨年の六月でございます。今年初めてこの農業基本法に裏づけをして、そうしてこういう方向で、この農業基本法によってわれわれ政治をやって参りますということを始めたのは、今国会に提案いたしております予算であり、また各種のわれわれの施策を皆さんに申し上げて、徐々にこの方向で行くということを打ち出してスタートを切ったところでございます。従って今からいいの悪いのということを言っては気が早過ぎるというのが、私たちの考えでござます。そこでもう一つ申し上げたいことは、イデオロギーで農村施策をいいとか悪いとかきめるものじゃない。この点は理論の議論をしたところで、これはおなかがくちくなりません。そうじゃない、日本農業のような場合におきましては、きめをこまかく総合して施策をしていく必要がある。その中におのずから自立する農家を求めていく必要がある。そこで、私は先ほど申し上げたように、地域農業の確立だ。だから社会党さんのおっしゃるように、農業の共同経営を私は決して否定いたしません。けっこうだと思います。さればといって、われわれが主張いたしますように、大方の農村におきましては、農村の協業ということも私は非常に推奨いたします。それは、地方々々で民俗、風俗がこれだけ違うわが日本農業でございますから、言葉まで違う地力がずいぶんある。従ってそれぞれのやり方、経営の仕方等について非常に違いがあるのだから、その地方に向くように、またその地方の適地適作というものを勘案して指導し、相談相手になってやることが必要である。従来の日本の農業、軍国主義時代の日本農業とこれからの農業の違いは、そこに私は発見しなければいかぬと思うのでございます。従って矛盾があるじゃないかとおっしゃれば、矛盾もあるでしょう。矛盾を超越して、いろいろなものを総合して、多角経営を推奨するところに農業の自立性が起こってくる、こう思うのでございまして、これを一本で割り切って、白と黒以外にない、ネズミ色はけしからぬとおっしゃっても、私はそうはいかぬと思う。はなはだ意見が違って恐縮な点があるかもしれませんが、御了承いただきます。
  110. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 河野さんは、老人が農村に帰ってくるのは社会施設がよろしきを得て長生きをするようになったとおっしゃるけれども、これは、社会保障制度が貧弱であって、都会に出て生活をしておって、さて年寄りになっても生活の保障がない、やむを得ず農村に帰ってくるのであって、これは政府与党の社会保障制度に対するその貧弱さを物語っておると思うのであって、これは議論になりますからこれ以上はいたしませんが、農業基本法は去年できたばかりだ、こうおっしゃるけれども、第一歩が大事なんです。ことしがその第一歩なんです。その第一歩を河野さんははき違えていらっしゃる。構造改善の専業費はなるほどついておる。これは新農村建設の延長程度のものがついておる。しかし私は、構造改善の政策を樹立しなければならないその第一歩を踏み出す年なのであって、その成果は数年後にしか期待できないでしょうけれども、実際のその第一歩が重要なんであって、この点はあとで詳しく申し上げます。  それから共同経営の問題でありますが、河野さんはイデオロギーを超越してとおっしゃるが、実は去年は社会党は共同経営という言葉を強調しておった。今日なお強調しておる。河野さんは共同経営というものを是認しておられるけれども、昨年の基本法審議にあたって、与党の諸君は共同経営というものはソ連のコルホーズのようなものだ、中国の高級合作社のようなものだ、人民公社のようなものだと何日もねばって、共同経営というものを否定する態度をとっておられたわけです。この点は与党の考え方と河野さんの考え方が違うようでありまするから、これは河野さんの考え方の方が社会党の主張に大いに接近されたものとして、私は歓迎したいと思うのであります。  そこで構造改善の問題でありますが、パイロット地区の問題はこの問九十地区を指定されましたが、これは来年度で終わることでありますから、私は取り上げません。この構造改善の事業として一地区一億一千万円の事業をやる、補助事業は九千万円で、三割推進で五割補助だから、一千三百五十万円の補助金を出す。融資が四千、五百万とさらに二千万円の低利資金上の融資をする、こういうことでありますけれども、これは先ほども指摘したように、全く前の新農村建設の事業と違っておらない。そこで私は河野さんに反省してもらいたいことは、新農村建設というものがどういうことであったかということ、今日この新農村建設計画のプランに乗ってやった諸君が泣いておる。泣いておる地方が非常に多い。これは一番無難であったのは有線放送くらいなものです。あるいはまた畜産共同飼育であるとか何かの名目で、部落の寄り合い所のようなものを作ったところが比較的無難です。私の地方のすぐ近くに二つございますが、これは大へんなことになっておる。もみの乾燥場ができた、保守党のある代議士があっせんをされた、そうして三年ほど前にでき上がった。今日は赤字続きであって全く処置がない。借金が返すに返されないで部落がてんやわんやの大騒動をやっておる。もう一つは、これも自民党の代議士さんがあっせんをされて牛乳の処理場を作られた、農林漁業金融公庫や中金から金を借りてお作りになった。これも初めから赤字続きで、今二千万円の赤字がある。農林漁業金融公庫と中金から当時の理事の諸君が差し押えを受けている。農地や宅地や家屋の差し押えを受けておる。これもてんやわんやしておるわけです。そういう事例が私のすぐ近所で二つ出ておるわけです。こういうように今度の構造改善事業というものは、市町村は補助金目当てで騒ぎ回る。それを与党の議員さんがあっせんして票かせぎをおやりになる、助成金に便乗したりやっておる、全く中途半端で混乱してしまう。農民はとまどうばかりで、あとには借金が残るだけだ、こういうことになると思う。今までの例がそうなんですから、今までの新農村建設の規模を大きくしただけじゃないですか。構造改善というものは、さっき言ったように、経営の規模を拡大するとか経営構造を改善するとかいうなら話はわかるけれども、そうじゃないです。与党の諸君が票かせぎにあっち引っぱりこっち引っぱりする、それが落ちではないか、そして残るものは農民の肩に借金が残る、こういう結果になることは、だれが考えたって明瞭じゃないですか。大きなことを言っておられるけれども、もう五、六年たってごらんなさい、河野農政なんだということになる、初めっからわかっているようなことをあまりえらそうなことを言うのは、私はどうかと思うのです、どうですか。一つ反省して下さい。
  111. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、石田さんから事例をあげて御説明を拝聴しまして、何と新潟県にはよからぬ人物がいるものかと驚いたわけであります。これは全国の例を聞きますと、実は新農村の場合におきましても、今日なおかつ全国から非常に期待をされまして、実は三月の十日、十一日には、京都で新農村建設当時の、全国で非常に強烈な運動をし働かれた諸君の大会がございます。そういうことで、決して私は農村全体を通じて、このことでも、今おっしゃるようにみなそれは票かせぎではないか、あとへ借金が残るじゃないか、そういうものも絶無とは私は申し上げません。絶無とは申し上げませんが、まあまあそういうものがあるからといって、今日の農村の期待にこたえて、せっかく農村が協力し努力しようと思っているものを、そういって頭から罵倒されなくてもいいのではないか。一緒に手伝って、わが日本農村の構造改善のために御協力なさっていただけるというだけの雅量を、党派をこえてお持ちをお願い申し上げたい。足らない面がありましたら、御注意いただきますれば、幾らでもわれわれは改善いたしまして、どこをどう直したらよろしいということであれば、幾らでも御注意を拝聴して直していくという所存でございますから、せっかく一つ御注意をちょうだいして、りっぱなものになるように御協力いただきたいということをお願い申し上げるものでございます。
  112. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 次に、私は構造改善を進める経営規模を拡大をするということに対して、政府が今度旧地主に対する融資を決定された、このことは経営規模の拡大に対する重大な阻害要因となっている、あるいはまた選択的拡大についても、重大な阻害要因となっているのであります。そこでまずこれについては大蔵大臣にお尋ねしたいと思うのでありますが、旧地主の融資制度でございますが、これはどんな内容のものをいつごろ国会に御提案になる予定でありますか。
  113. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 まだこの貸付の方法というようなものは最終的にはきまっておりませんが、大体国民金融公庫に二十億円のワクを作って、旧地主の中で、生業資金を普通銀行から借りられないというような人に限って、そのワク内で融資の道を開いてやろうということでございますので、金利も今のところいろいろな、それに類した金利との比較というようなものを検討しまして、六分五厘ぐらいの金利が適当じゃないかというふうに考えておりますが、これは、今これから私どもが国会に御審議をお願いしようとしております、国民金融公庫へ二十億円一般会計から出資をしたい、それに関する改正案をこれから提出するつもりでございますが、この出資は、出資したものを直接旧地主への金融の資金にするというのではございません。これは国民金融公庫全体への出資でございまして、全体の貸付資金の中から特別に二十億円程度の貸付ワクを作ろうというのが、大体今の私どもの考え方でございます。
  114. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 国民金融公庫法に基いて融資をされるということであるならば、旧地主というものに限定をする必要はないと思うのでありますが、旧地主に特にひもつきの資金を二十億該当させるということは、これはどういうわけです。
  115. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御承知のように、旧地主についてはいろいろな問題もございまして、調査会ができておることも御承知の通りと思います。私どもはその結論いかんにかかわらず、過去から旧地主の問題はいろいろな要望が出ておって、ただいまでは一つの政治問題化しているというような状態でございますので、何らかの考慮をすることが妥当だと考えた結果、旧地主に対して純金融ベースにおける金融の道を開くということぐらいが適当ではないかというふうに考えまして、いわばこの問題に対する政治的配慮からきめたことでございます。過去におきましても、引揚者に対する貸付とか、いろいろの国民図に特定をした特別の貸付の道を開いておりますから、それと同じように、旧地主というものを限定した一つの融資の道を特定してやろうというわけでございます。
  116. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 これは言うまでもなく、昭和三十五年に、農地被買収者問題調査会設置法という法律ができまして、それによって調査会が設置をされたわけです。それは本年の七月で答申が行なわれる予定になっておるわけであります。その調査会の調査の途上において、その答申を待たずに、こういう措置をされるということは、それとは別であるとおっしゃるけれども、これは決して別であろうはずはございませんので、これはなぜ一体、調査会があるにもかかわらず、それと別だというようなことで、故意にここで単独でそういう融資の方法を講じようとされるのか、私どもは、調査会の内情から見て、調査の進行状況から見て、どうもその答申は、補償なり融資なりをすべきではないという答申が行なわれそうだということが予想されるので、それであわててこういう措置をやられたのではないかと考えるし、またそういう観察の人が多いのでありますが、それらの関連はどういうふうにお考えなんですか。
  117. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 全然そうではございません。調査会ができておりますので、調査会は調査会としての研究をしておりますから、将来答申が出るかもしれませんが、この旧地主の問題はもう古いときからの問題でございます。ことに最近は、やはりいろいろな農業政策との関連もございましょうが、場合によったら都市に出て、今のままではやっていけないから転業をしたいという者も相当あると聞いておりますが、ひとり農業経営のための生業資金というだけでなくて、適当な仕事に転業するという希望者もございますので、特に旧地主に対して、そういうふうに金融の措置ぐらいをここでとってやることが政治的な配慮としては一応妥当じゃないか。別にこのことは答申の案を待たなくてもやれることでございますし、またそれを待ってやる必要があることでもないと思うのです。災害があった場合には、いろいろ調査会ができたりなんかしましても、とりあえずの措置として、災害者に限って融資の道を開くとか、そのつど政府としてはいろいろなことをやっておりますので、そういう施策のやはり一環として、この純金融ベースの措置ぐらいは、私は別に調査会の結論を待たずにもできることであろう、こういう判断からそういう措置をとろうと考えておる次第でございます。
  118. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 農林大臣に伺いますが、農林大臣は、この前農林大臣をされたときに、やはりこの問題が取り上げられまして、旧地主に対する補償は一切しない、あるいは交付金を交付するとか、あるいは給付金を給付するというようなことは一切しない。こういうようなことを言っておられますし、さらに歴代の総理大臣または農林大臣は、いずれも補償または融資の措置はとらないということを言っておるのであります。しかるに、今大蔵大臣から答弁がありましたように、今度はまず融資をするということになったのでありますが、農林大臣の所見を伺いたいのであります。
  119. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知の通り、前回、私は農林大臣をいたしましたときには、確かに今御指摘のように、これは賠償も補償もいたさぬということを議会でお答え申し上げております。当時そういうふうに考えておりました。ところが、政治というものは、客観性であるとか社会性であるとかいうものが変化して参ったならば、それに対応して、ものの考え方が変わってくるということは、これは常にあると思うのであります。大蔵大臣がお話しになりましたように、この問題については、いろいろ各方面に御議論もあり、御要望もあり、それに対してわが与党から、こういうふうにした方がよろしいという党議をもって御決定がありましたので、私は、この党議の決定に従って大蔵大臣が処置をされたことは適当である、こう考えております。
  120. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 河野さんにも似合わない歯切れの悪い答弁をしておられるのでありまして、二月六日の農林委員会答弁でも、やはり何か割り切れないような答弁をしておられるわけです。時間がありませんから、速記録を朗読するのをやめますが、結論を申し上げると、河野さんは、党の決定だから、これは党の決定に従ったんだ、こういう答弁のようでありますが、その通りでありますね。
  121. 河野一郎

    河野国務大臣 その通りでございます。
  122. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そこで伺いたいのでありますが、河野さんは十月二十日の閣議決定のあとで記者会見をやられまして、必要とあれば三十七年度予算に盛り込むよう研究中である。こういう談話を発表し、その中で、今度の国会に農地法、農協法の改正法案を出しているが、これは不在地主を認めたり、農地の保有制限をゆるめたりしようとしている。従って、農地改革当時の厳密な自作農主義が時の流れとともに変わろうとしておる。こういうことを言っております。農地法、農協法の改正との関連で旧地主に対する補償を考えてもいいのだということを当時考えておられたようです。今は変わったようでありますけれども、一体農地法、農協法の改正と、旧地主の融資や補償というものとはどういう関係があるのか伺いたいと思うのです。
  123. 河野一郎

    河野国務大臣 今御指摘になりました通りに、農協法の改正、農地法の改正を、今国会で提案いたして、継続審議中になっておりますのも、これは厳密に申しまして、現行農地法との間にはある程度の前進があり、経営規模拡大の必要性から法律を出しておりますことは、間違いのない事実でございます。そういうことになりますると、たとえて申しますれば、わずか一反か三反を持っておって、出征しておった不在地主であったということで、これを強制買収したということ、それが今回の信託と申しますか、農協法の改正等々を考えますと、そこに幾分の相違があるにいたしましても、また一連の関連性があるということも私は否定できないと思うのであります。そういうふうな客観性からいたしまして、これに対しての議論がまた出てきた。そこで今お話の通りに、わが党といたしましても、党において慎重にこれを検討いたしました。検討の過程におきまして、今私が申し上げましたような、これをどうしようかというような委員会の空気等も、私は委員長等からも承りまして、委員会の決定にはわれわれとしては従って善処いたしますというようなつもりでおりましたから、そういうふうな話をしたことも事実だと私は考えます。それが、最終的に、党の党議がこういうことで行こうということできまったから、その党議に従って、今大蔵大臣がおとりになりましたような措置をとることにわが党としてはしたし、政府としてもその方針を確認いたしておるということでございます。
  124. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そういたしますと、自分個人の考えは考えであるが、党の決定であるから、党の決定にはもちろん従わざるを得ないということで党の決定に従ったものである、こういうふうに理解してよろしいですか、どうですか。
  125. 河野一郎

    河野国務大臣 その通りでございます。
  126. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そういたしますと、今回は、やがて国民金融公庫からの融資についての法案が提出されるということでありますが、実は自民党の方では、すでに党内で、三十七年度予算編成にあたりまして、旧地主対策として、交付金交付までの暫定措置として旧地主に対する融資をする、それから農業構造改善のための農地金融の中で旧地主に対する国債の交付をする、旧地主への報償交付金を交付する、報償交付金交付の財源として解放農地の譲渡に利得税をかけるということを党の総務会で決定をしておる。こういうことが新聞にも報ぜられておりますし、自民党の農地問題調査会の各位が強くこれを主張しておられるのでありますから、河野さんの今の答弁から推しはかりますと、この党の総務会の決定というものがやがて具体化しまして、そうして旧地主に対する補償の法案もすでにかなり準備が進んでおるそうでありますが、党の方の決定があれば、旧地主に対する補償金を交付するというふうにせざるを得ないことになると思うのでありますが、その通り理解してよろしいですか。
  127. 河野一郎

    河野国務大臣 そういう意見の方があるようには了承しております。しかし、わが党の党議が決定いたしておるようには了承いたしておりません。いずれにいたしましても、石田さんもわれわれもお互い政党人として、党議が決定いたしますれば、その党議に従って政治をやるということは、どの党でも同じだと考えますから、私も、党議が決定し、党で方針がきまれば、内閣としてはその方針によって、農林大臣をしておりますれば農林省関係のことはその方針に従って政治をやるということでございます。
  128. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 この点はきわめて重要でございまして、今、全国民が注目をいたしておるところでありますが、ただいま河野さんの答弁では、総務会で決定したと聞いておらないとおっしゃっておられますけれども、これは綱島議員その他数名の人たちが総務会の決定済みであるということを主張し、そうして報償交付金の交付に関する法律案というプリントまでもできておることは御承知だろうと思うのであります。これがさらに具体的な案が党議としてきまれば、旧地主に対する補償をするのだ、こういうふうに理解をして差しつかえなかろうと思いますが、さらに念のために答弁をわずらわしたいと思います。
  129. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま申し上げた通り、党議として決定しますれば、それはもう党の方針でございますから、政府がこれを実行する。これはどの問題に限らずその通りでございます。ただし、ただいまの問題は、私は、党内においてそれほど前進いたしておるようには聞いておりません。
  130. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 これは河野さんがよく御承知になっておらないかどうか存じませんけれども、もうすでに新聞やあるいはまた印刷物に出ておりまして、党の総務会の了解済みであるというふうに伝えられておるのでありまして、党議の決定というものは、自由民主党では総務会の決定が党議の決定であるというふうに私どもは考えておるわけでありまして、そういうことになりますと、私は、さっきからお話を申し上げております構造改善の政策としての一番大きな経営規模の拡大という問題に対して大きな阻害要因になることを憂えるのであります。これはなぜかというと、旧地主に対する融資が決定をされたということだけでも、連鎖反応として及ぼすところの影響はきわめて大であります。それはすでに旧地主の団体では、この融資は実は暫定措置であって、融資は直ちに補償に切りがえられるのであるということを強調いたしておるのであります。関係団体の諸君はいずれもそのように理解をしておるのであります。そういたしますると、これは農林大臣よく御承知のように、すでに政府は、農地法第四十四条に基づいて政府が開墾適地として買い上げをいたしました未開発地約四十八万数千ヘクタールあるわけでありますが、それらのものに対して、旧地主の政治勢力が強化いたしましたために、現に農民が増反のために、あるいは採草牧野等のために売り渡しを要請いたしましても、旧地主の勢力が町村の農業委員会と結託をし、あるいは農業委員会を動かし、あるいは県庁の係員を動かしてこれを阻止いたしておるのであります。同時に、また香川県等におきましては、旧地主が小作地取り上げの実力行使をやっております。あるいはまたこの間の週刊誌にも出ておりますように、農地を転売した者に対して、これは東京都下の話でありますが、北多磨郡の久留米町に住んでおる小寺哲主さんという人が一億八千万円の請求の訴訟を起こしておる。これは農地法第八十条に基づいて返せということでありますが、これは法律的には筋が通りません。通りませんが、とにかくそういう連鎖反応が至るところに起こっておりまして、未開発地であって開発適地である土地さえも売り渡しができないという状態に置かれておる。また政府が、ことしは採草放牧地等についての予算措置をされたことはけっこうであります。畜産を盛んにするために、飼料の自給度を高めるために採草放牧地を拡張するという予算増額されたのはけっこうでありますけれども、一体旧地主の政治勢力が強くなって参った場合に、はたしてその未開発地に手をつけることができるか。私は絶対に不可能になると思う。そういたしますると、先ほどから河野さんが、経営規模の拡大とかなんとかおっしゃるけれども、かえってそれを逆の方向に持っていくところのてこ入れになるのじゃないか、こういうことを私は心配をいたすのであります。従って、そういう内容を含むところの農地法の改正というようなものは、日本農業を逆行させる大きなてこ入れになる以外の何ものでもないというふうに考えておるのでありますが、なおそれでも、未開発地の政府買い上げの土地だけじゃなくて、さらに新しい開発の可能である土地が五百五十二万ヘクタールあるということを昨年の二月政府は発表いたしておるのでありますが、これらの土地に一体いかようにして手をつけ、いかようにしてこれを開発することができるのか。農地法四十四条を発動してやるなどということは夢にも考えられないことではないかとわれわれは心配をするのでありますが、いかにして採草放牧地等の開発に手をつけようとされるのか、具体的に一つ所見を伺いたいと思います。
  131. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほど大蔵大臣もお述べになりましたように、また私といたしましても、今回の処置、また今後におきましても、今御指摘になっておりますような地主層の諸君が地方における勢力を回復して、再び地主勢力によって農村を保守化しようというようなものがわれわれの考えておる対象ではないのでございます。銀行その他から金融をしようとはかっても、生業資金の入手に困っておる人がおる。そういう者に対して生業資金を供与しようということでございまして、決して今石田さんの御心配になられるようなことはわれわれ考えておりません。また私は、今後の処置といたしましても、あくまでも理解と協力を得て、国家再建のために農村再建のために御協力を願うという処置で進みたいと考えておる次第でございます。
  132. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 それは実際の問題として、すでに旧地主の勢力というものが政治的に与党と結託をいたしまして、先ほど私が指摘いたしましたように、市町村の農業委員会も動きがとれないのです。県の役人もなかなか開発ができないでおるのです。そういう状態のもとに、はたしてそういう未開発地に手をつけることができるか、どうやって手をおつけになるつもりか。農地法四十四条によって他へ賢い上げをするというような措置ができないじゃないか。また現に東京都内の杉並の農業委員会などでは、農地を転用転売をした場合に、その売り上げ代金の中から三〇%も旧地主に対して贈与せしめておる、こういう事業すらある。農業委員会というのは最近全く地主勢力の前には権威を失ってしまっておる。地方などに参りましても、市町村の農業委員会の一部には上地ブローカーと化しておるようなものがきわめて多いのです。そういう中において、一体具体的にどうやってその未開発地に手をおつけになるのか、これを聞いておるのです。
  133. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、石田さんなどがやっていらっしゃる日本農民組合の勢力こそ非常に強い勢力であって、これが農村を非常に強く指導していらっしゃると私は考えておった。ところが、今石田さんから、自分の勢力は非常に過小評価されて、そうして非常におたおたしておる地主の団体が強いというようなことを聞く。私は、これは適当なバランスかなという気持が今しておったのでございます。決して今の農村については、地主勢力がそんなに強力なもので、このために農林行政を遂行するのに支障、不安を感じておるような感じは全然持たぬ。むしろ私は、石田さんなどの勢力が非常に強いので、この勢力に非常に私は不安を持っているような気持でございます。
  134. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 それでは端的に伺いますが、農地法四十四条によって未開発地の政府買い上げをなさるおつもりかどうか。
  135. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほど来申し上げます通りに、理解と協力を得て、円満のうちに協力を願うという処置でいく、これで農林行政は遂行できるという所存でございます。
  136. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 それでは前に進みますが、今、日本の農業経営の中で、特に経営規模の拡大をするために莫大な農地の移動を行なわなければならない、一番これを阻害しておるものは農地の価格が高過ぎるということです。そこでまた一面からいうと、農地価格が高いということは農業経営を困難にしているということ、これは言うまでもないことなんですが、政府は、農業基本法をお作りになって基本体制を進められるにあたって、この重大な問題に手をつけられる用意があるのかないのか。端的に言えば、昭和二十五年の法改正で農地価格の統制がはずれておって、それがために非常な暴騰をしておるが、ここで基本法体制を前進せしめる重大なポイントとして、農地の価格統制をおやりになる用意があるのかないのか、これを一つ伺いたい。
  137. 河野一郎

    河野国務大臣 価格統制をやる意思はございません。
  138. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 農地価格を統制するかしないかということは、さきの地主勢力が政治的に大きくなるかならないかということとこれは関連のある問題でございまするし、また旧地主がいろいろ補償の要求を出すところの原因にもなっておるわけでありまして、私は、日本の農業をほんとうに将来希望の持てる農業にするには、ここらあたりで一つ農地の利用区分というものを明らかにし、そうして農地価格を統制することが一番大きな要因の一つであると思うのでありますが、これに対して農林大国は、別に統制をする意思はないということでありまするから、これは議論をいたしましても平行線をたどるだけになると思うのであります。  ここで建設大臣に伺いたいのでありますが、最近都市周辺を中心といたしまして、宅地あるいは工場敷地等の土地の価格が異常な値上がりをいたしておるわけであります。これをこのまま放置いたしまするならば、一般の人たちがわずかな宅地を手に入れようとするにも非常な困難が伴うわけでございまして、これに対しては何らかの措置が必要なのではないか。私は、ここで一つの意見を述べて建設大臣の御意見を伺いたいと思うのでありますが、たとえば都市の中でもずいぶん山林原野のようなところがあるわけでありまして、そういう土地に対して空閑地税のようなものを創設することによって土地の利用度を高めるという政策についてはどうか。あるいはまた、これは西ドイツあたりでやった例でありまするが、宅地を買って一年以上建てないでおる場合には二〇%の課税をするというような措置がとられております。これはやはり一つの方法だと思う。それからまた西ドイツでやはりやった例で、政府が市町村に土地の売り渡し命令をすることができる。これはどの程度実効が上がったかは存じませんけれども、何らかの措置をとりませんというと、なかなか土地が手に入らないという実情でありますが、これらの問題について具体的に一つ御意見を承りたい。聞くところによれば、建設省は宅地造成法のようなものをお考えになっておられるということでありますが、あわせてこれらについても、どういう構想のもとで今国会に御提案になる用意があるのかどうか、伺いたいと思います。
  139. 中村梅吉

    中村国務大臣 土地の価格の問題が、近時ごらんのような状態で、われわれとしましてもいろいろ研究いたしておるわけでございますが、また今国会に具体的に提案をする具体策というものは生み出し得ない状態でございます。西ドイツあたりでは、今御指摘のありましたような方法やら、あるいは都市の高度化をはかって、土地を高度利用するために、低い建物を建てますと、かえって土地の税金をよけい取られて、高い建物を建てれば税が安くなるというような、均一課税の措置も講じておるように聞いておりますが、いずれにしましても、現在地価が非常に上がって参りますということは、一面、公共事業との関係もございます。公共事業を行ないますために、一定の目標年次で事業をやりたいということのために、どうしても高く買収をしなければならない。こういう点につきましては、適正な評価鑑定制度を確立いたしたいということで、現在、公共用地審議会に諮問をいたしまして、学識経験者の方々に御研究いただき、近く答申をいただく予定でございます。それに基づきまして、適正な鑑定をして適正な買収をするというふうにやっていきたいと思っておりますが、かたがた、土地が和光に投資の対象といいますか、投機的に利用されておる向きがかなりあるように思うのであります。これが一面において地価のつり上げになっておる。これをいかにして抑制するかというような問題、あるいは空地の、御指摘のありましたような問題等もございまして、これは税制上の問題、評価鑑定制度の問題、あるいは法律上の他の問題等ございますので、われわれ事務的には外国の資料あるいは国内のいろいろの研究をいたしまして、問題点をつかんでおりますが、役所だけの考え方で打ち出してはたしていいものかどうかについて疑問がございますので、今国会に宅地制度審議会設置の設置法改正案を提案いたしておりまして、この成立をま見ましたならば、審議会を設けていただいて、われわれの問題点を学識経験者の方々のお集まりを願っておる審議会に付議いたしまして、十分濾過していただいて、立法化の余地があれば立法化して、何とかこの地価の高騰を抑制して参りたい、こう思っておるわけでございます。  一面、現在の制度としては、住宅金融公庫が資金を持ちまして、地方公共団体にそれを貸し付けて、利潤を伴わない宅地造成をする、あるいは住宅公団も同じような方法を講ずるというようにいたしまして、利潤の伴わない宅地をできるだけ大幅に造成をして、分譲することによって、一般の地価の牽制をやる、こういうことも必要でございますので、この点は、来年度も前年度予算に比較しまして大幅に増強いたしまして、大いに進めて参りたいと思いますが、現在のところでは、そんなようなことで宅地制度審議会が生まれて、早くわれわれのつかんでおります、考えております問題点を濾過し、御研究願うことを急いでおる、こういう段階でございます。
  140. 重政誠之

    ○重政委員長代理 石田宥全君に申し上げますが、持ち時間はあと二分であります。結論をお急ぎ願います。
  141. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 できるだけ御協力を申し上げたいと思います。  それで、次に農林大臣に伺いますが、今度の予算を見ますと、機械化促進などというものができておりまして、ヘリコプターで農薬を散布するような措置がだいぶできておるわけです。またコンバイン農業についてもいろいろと検討が行なわれておるようでありまして、まことにけっこうなことだと思うのでありますが、その前提となるべき土地改良事業というものの進行がきわめて危ぶまれておるような状態であります。これについて、まず第一点は、従来政府は圃場の区画を三十アール程度の区画でいこうということを考えておられるようでありましたか、今後なお三十アール程度のものでよろしいとお考えになっておるのかどうか、私は少なくとも一ヘクタール程度のものでなければ、今後の国際農業の中における日本農業の機械化というものにはそぐわないのではないかと考えておるのでありますが、これについてまずお伺いをしたいと思います。
  142. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知の通り、従来は一反歩、二反歩というような区画をして参りましたが、今後は機械化の関係もございますので、三反歩程度にして参りたいと考えております。
  143. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 三反歩区画というようなことでは、私は、これからの機械化には適さないのであって、これが来年になると、さっきの基本法の論議のお話のようにまた変えて、今度は一ヘクタール以上でなければ機械化が十分できないというようなことになるのではないかと思うのでありまして、三反歩区画などでいくということはもうすでに適切なものではないと考えておりますが、まあこれはその程度にいたしておきましょう。  そこで、先般この委員会に土地改良卒業の進展の状況が、それぞれ区別されまして、国営、県営あるいは団体営というように、その進捗率の表が出されまして、これは手元にありますからここでは申し上げませんが、私は、少なくとも、今後のわが国農業の機械化を進めていく、新しい構造改善をするという前提として、土地改良専業というものをもっと積極的に進めなければならないと考えておるのでありますが、大臣の所見はどうですか。
  144. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほど来申し上げます通りに、構造改善をいたしますにつきましても、経営規模を拡大するということが前提でございます。これは十分に推進をして参らなければならぬと考えております。従いまして、土地の造成は、これを十分にやって参りたいと考えております。
  145. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 私どもは数年前から、この土地改良事業を進める上においては、従来のような、きわめて雑多な土地改良団体の設立の状況では、なかなか事業が思うように進まないのではないかということを指摘して参っておるのであります。その第一は、水系別に土地改良団体の統一をはかる必要がある。その第二は、現在土地改良団体は一万三千有余に及んでおるのでありますけれども、小さなものは三名ないし四名でやっておるものがあり、あるいは農業協同組合がやっておるようなところもあり、きわめて雑多でありまして、今日、その中で約一万ぐらいの土地改良団体というものは事業がきわめて不振の状態に陥っておるのであります。これは農林省の調査で明らかでありますが、特に最近では、それがために約七百ほどの土地改良区が債務の償還が延滞をしているということも、政府の調査で明らかであります。私どもは、少なくとも、この土地改良団体の整備が土地改良事業を進める上における前提とならなければならないということを多年主張して参ったのでありますが、土地改良団体の整備についての大臣の所見を伺いたいと思います。
  146. 河野一郎

    河野国務大臣 お話でございますけれども、御承知の通りに、わが国は地理的条件等からいたしまして、大規模の開墾、大規模の土地造成も可能でございますし、また時によっては小団地についても手をつけなきゃならぬ事情もあることは御承知の通りでございます。たまたま石田さんの新潟のようなところは、一町歩に区切ってもけっこういけるところ、もしくは大規模の土地改良区のあるところにおいてでございますが、これも山陰、山陽の方面に参りますと、なかなかそうはいきにくいところもあるために、不振の土地改良団体のありますことは、私たちも非常に憂慮いたしておるところでございます。これにいたしましても、各農家の経営が近年とみにいろいろ動揺いたしておりますことと同様に、この土地改良の負担金の供出等についても不振をきわめておるところもあることは、やむを得ない事情と考えられるものもあるわけでございます。   〔重政委員長代理退席、委員長着席〕  従いまして、私といたしましては、明年度において十分これらの事情を調査いたしまして、そしてその調査の結果、それぞれ適切な施策を講じて、そしてこれを一つ解決をしなきゃならぬと考えておるのであります。
  147. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 地域的にはいろいろな事情もございましょうが、中には、これは新潟県だけではございません。愛知県等にもございますが、同じ土地に土地改良団体が二重にも三重にも重複して負担金を取られておるというようなところがある。はなはだしきに至りましては、新潟県では水利組合が、水害予防組合が三つかかっておって、土地改良区が四つかかっておる。同じたんぼに七つの負担が加わっておる。こういうようなところがある。二重、三重にかかっておるところがたくさんあるわけです。ところが、その土地改良団体が七つあれば、七つ分のやはり事務、人件費というものがあるし諸雑費がかかる。そういうものは、これは政府が補助金や助成金を出し、あるいは融資のあっせん等をされる。政府の方針いかんではこれは容易に統一することができるわけです。ところが、それを今日全然手をつけようとされておらない。これは私どもは納得できないのです。これから調査などということでは日が暮れてしまうのです。そういうものを早急に整備をし、再建をはかるということは当然なすべき仕事であると思うのですが、どうですか。
  148. 河野一郎

    河野国務大臣 御指摘のような地方につきましては、行政指導によりまして、今のお話のようにすみやかに善処する方針で行政を指導いたしたいと思います。ただし、先ほど申し上げましたのは、全国にわたって土地改良区の非常な経営不振というようなものにつきましては、相当に施策をいたさなければならぬものもあるわけでございますから、そういう意味において申し上げたのでございます。
  149. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 農林大臣は、省内で土地改良法の抜本改正をしなければならないという意見があるにもかかわらず、そういう問題に手をつけると、なかなかこれはむずかしい問題だから、今国会には手をつけてはならぬというような御指示をされたと伺っておるのでありますが、これはもってのほかだと思うので、これは一つ早急にやらなければならないし、事今日に及んで、なお調査をいたしますなどということは、私はこれは政府の怠慢だと思う。河野さんが農林大臣になられてからまだ日が浅いからすべて河野さんの責任だとは言いませんけれども、私は政府の怠慢だと思うのです。私は、きょうは土地改良法の抜本改正の問題については、時間の関係で割愛いたしますけれども、そういう点については、これはやはり本格的に取り組んでもらわなければならない幾多の問題があるわけでありますから、これはこれから調査研究ということでなしに、直ちに一つおやりを願いたいと思いますが、どうですか。
  150. 河野一郎

    河野国務大臣 よくわかりました。
  151. 山村新治郎

    山村委員長 石田君、だいぶ時間が超過しておりますから、お含み願います。
  152. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 まだ超過しておりません。
  153. 山村新治郎

    山村委員長 超過したことは間違いございません。だいぶ超過しております。御注意願います。時間を守る約束です。当委員会の……。
  154. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 そういう押し問答をしておる間に質問を続けた方がいいのではないかと思うのでありますが…。
  155. 山村新治郎

    山村委員長 そんなことはない。時間ですから。
  156. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 もうあとわずかですから協力をいたすつもりでありますが、そこで土地改良の問題についてもう一問だけ申し上げておきたいと思うのでありますが、これはさっき申し上げたように、今日の土地改良団体というものは非常に堕落をしておる。もう端的に申し上げると、全国至るところでありますが、国営事業が一地区行なわれると、その地域には料理屋が三軒育つ、県営事業なら、一地区行なわれると料理屋が一軒育つ、こう言われておる。まっ昼間から料理屋で騒いでおるのは大体農業団体の諸君だ、ことに土地改良団体の諸君だと言われるほど堕落をしておるわけです。これは大臣も耳に入っておると思うのでありますが、そういう点との関連において、私は、やはり団体に対する規制を厳重に行なうべきであると思う。私、先ほど指摘したように、補助金をくれたり助成金をくれたり、融資をあっせんしてくれたりしておる政府の規制が一番よく届くわけです。そういう点については、ぜひ一つ十分おやりを願いたい。  それからもう一つは、今全国の土地改良の府県の連合会などの経費の賦課の状況を見ておりますと、大部分が国の補助金の頭をはねて、そうして連合会の維持費に充てておるという実情です。そういう安易な、補助金の頭をはねるというような賦課金の徴収の仕方は改めなければならないと思う。それはどういうふうに改めるかということは、いろいろ問題もございましょうが、少なくとも全国連合会に対しては、最近相当予算措置もありますけれども、半ば公共事業である土地改良事業については、県段階までやはり政府が相当めんどうを見てやる必要がある。そうしなければやはり規制ができないのではないか。これを一つ送球に行政指導をやるべきであると思うのでありますが、大臣の所見はいかがですか。
  157. 河野一郎

    河野国務大臣 御趣旨に従いまして厳重に行政指導いたします。
  158. 山村新治郎

    山村委員長 それでは、石田君、結論ですか。
  159. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 最後にもう一つ労働大臣に。先ほど私が申しましたように、農民が最近の農政というものに対して不安を感じて、非常にたくさんの数の若い労働力が都市にどんどん流れ出ておる。これも時間がありませんから数字などはあげませんが、きわめて低い賃金で、労働条件などもよくありません。これもある意味において私は政府の指導監督というようなものに期待をしたいと思いますが、私が特に今ここでお伺いをいたしたいことは、そういう農村から離れて都市に就職をするような人の問題のほかに、農閑期における臨時出かせぎの問題、これはもう非常な数に上っておりまして、私どもの地方では、相当面積を耕しておる農民でさえも、一戸に一名ぐらいずつ臨時の出かせぎをやっている人がおるわけであります。これもまあ一々申し上げませんが、ただ非常によく表現されておる一つの話がありますから、これで了解をいただきたいと思うのであります。  私の地方に水原という駅がある。この駅の駅長に、この間話を聞いたのでありますが、ここでは、この駅を中心といたしまして、およそ四、五百名の臨時の出かせぎが出る。その夜具ふとんその他の送り出しから受け入れで、倉庫が足らなくて、今倉庫の建設にかかるのだという話なんです。そこで、その駅長の話では、おおよそ臨時出かせぎをする人の三〇%程度は、一文なしで帰ってくる。中にはオーバーの一枚も着て帰ればいい方だというのが三〇%くらいある。こういう話です。それからはなはだしきに至っては、都会に出て、土方仕事などをやって、下請やら何やらで責任の所在が明らかでないために、賃金の不払い等のため、そのまま帰ってくる。帰る旅費がなくて、車掌の証明で、運賃先払いで帰ってくる人が数名あった。これは極端な話でありますけれども、やはりそういうものが出ておるわけです。だんだん聞いてみると、なかなか臨時のこの土方仕事というようなものについては、受け入れ側の宿舎の設備というようなものがほとんど考慮されておらない。また、労災保険等すらも適用されていないで、けがをしたままで帰ってくるような人たちもできておる。こういうふうなことを数たくさん聞いておるわけです。六カ月以上たたなければ失業保険の対象にならないことは、これは法律の建前でありますからやむを得ませんけれども、少なくとも臨時で農村から出かせぎをするような者に対して、やはり職場で一定の受け入れ態勢というものを労働省の方で対策を講じていただきたい。ことしは、かなりいろいろな面で労働省の……
  160. 山村新治郎

    山村委員長 石田君、結論を出していただきます。
  161. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 予算もふえておるようでありますけれども……
  162. 山村新治郎

    山村委員長 石田君。
  163. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 まだそういう点については全く手が届いておらないようであります。聞くところによれば、労働省でも、その臨時の出かせぎというようなものに対するその数字すらもはっきりつかまれておらないということでありますが、これに対して、今後は、農閑期は毎年のことでありますし、また、暮れから春にかけてだけではございませんで、お盆休み等にも相当出るわけでありまするから、受け入れの方については、十分一つ労働省の責任においてこれを監督し、また指導し、やっていただきたい。いろいろ具体的なお考えがあれば一つ承りたい。  それから農林大臣に伺いますが、今申し上げたような臨時の者については、これは農村労力調整委員会というようなものもできておりまするけれども、どの程度出ておるかということの数字もやはり把握されておりません。これについては、やはり市町村なり、市町村の農業委員会なり、農協なりが送り出しをする場合に、ただ、ばらばらで出すのでなしに、やはり統制をとって、行き先を明らかにし、待遇や条件を明らかにして、そうしてそれは団体で送り出すというようなことにしなければ、さっき申し上げたように、帰る汽車賃もないというような事態が起こっておるのでありまするから、これについては、農林省の方で、やはり適切な指導を行なっていただかないと、これは今後大きな問題になるわけでありますから、これを一つ。労働大臣に、受け入れ態勢について、それから農林大臣に、送り出しの方の態勢と準備について、それぞれ御答弁をわずらわしたいと思います。
  164. 福永健司

    ○福永国務大臣 御指摘のような事態についての受け入れ態勢の改善は、極力これを行なっていかなければならぬと存じます。前段御指摘の、ごく最近において農村から工業地帯へ移っていく人が相当に多いというようなことから、全般的には給与等が一般の者に比較して低いような意味での御発言がございましたが、御承知の通り、日本賃金体系が年功序列型でありますために、同じ事情の者を比較すればさしたる差がない者でも、全体として把握していくと、そういう傾向にあろうかと思います。しかし、これは年を追ってもちろん改善されることであるし、そういうことにつきましては、労働省としてもよく関心を持って基準法上の監督等も行なっていかなければならぬと思います。季節的な出かせぎの労務者につきましては、御承知のように、そういう労務の性質上、建設業とか、その他割合に限られた仕事に従事している者が多いのでありますが、しかし、これらについて、先ほどから御指摘のようなことのないように十分監督を厳にいたしまして、受け入れ態勢をよくして参りたい、こういうように考えております。  なお、全体といたしましては、漸次産業も地方の方へ年産施設等が移っていくような傾向等もございますので、これら全体をながめ見渡しまして、逐次、御指摘のようなことにつきましては、全般的な改善が行われる、こういうように見ておるし、またそういうことになるように施策を進めて参りたいと存じます。
  165. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知のように、一部農村におきましては、団体の季節労働につきましては、農業団体問であっせんをいたしておるものもございます。しかし、そうでない地力もあるやに私は聞いております。従って、御指摘の点につきましては、今後各団体間その他におきまして十分話し合いをするように善処いたしたいと思います。
  166. 山村新治郎

    山村委員長 中島巌君に発言を許します。  委員の諸君、特に質問者の方に申し上げたいと思いますが、当委員会におきましては、はっきりと時間を守る約束を全会一致でされておるわけでございます。委員長といたしましても、しゃくし定木な時間の解釈をしたくはございませんけれども、ただいまのように、委員長の注意を聞かないような場合におきましては、場合によりましては発言を中止させることがあるかもしれませんから、その点、あらかじめ御了承をいただきます。  中島巖君。   〔「よけいなことを言わぬでもいい」と呼ぶ者あり〕
  167. 山村新治郎

    山村委員長 重大なことです。委員会の権限です。
  168. 中島巖

    中島(巖)委員 委員長は、だいぶ私に対してきつい時間の制限を言われたのでありますが、前の者に非常に時間を寛大にしておいて、私にばかり時間の制限をするということは……。
  169. 山村新治郎

    山村委員長 申し上げます。私は決して中島さん一人に御注意申し上げたわけじゃございません。委員の諸君全部で時間を守る申し合わせをあくまでも尊重したいということを申し上げた次第でございます。
  170. 中島巖

    中島(巖)委員 私は、関係大臣に対しまして……。この東京都の現状が、交通問題その他にいたしましても、非常に重大な麻痺状態の段階に来ておるわけです。そこで、政府は、たしか昨年の三、四月ごろだと思いましたけれども、首都圏整備委員会では、教育機関などを郊外へ七十万移すとかというような構想を発表いたしましたり、また、昨年十月は、これは川島さんの構想のようでありますが、官庁機関を七十八カ所ですか、これを移すというようなことも言われておるのであります。   〔委員長退席、重政委員長代理着席〕 それから時差出勤であるとか、最近においては警視庁で車種別の東京乗り入れの制限をする、こういうような問題で現在非常にもめております。これは、東京都で三十万近くも毎年人口が増加をして、すでに十数年になるにもかかわらず、歴代政府が放任しておいたところに大きな原因があって、現在のこの東京都の動脈硬化の状態というものは、これはむしろ、全く歴代政府の失政によってこういう状態になったのである、こういうふうに私は考えるわけであります。ロンドンは、二十一年前にすでに例の大ロンドン計画を立てまして、ニュー・タウン政策を実施いたしまして、現在のロンドンへ入る人口はほんとうに微々たる一万人程度のものである。それから全世界の首都を見ましても、ニューヨークにおきましても、ベルリンにおきましても、あるいはモスクワにおきましても、ロンドンにおきましても、このような異常な人口増加はない。ただ、全世界において一番人口のふえているのは上海であるけれども、これは過去の統計から見れば、年間七万くらいなものである。東京都は、平均いたしまして二十七万数千人というものが、この十数年間を通じて年々ふえておる。こういうふうな状態になることは、すでに何年か前からわかっておるにもかかわらず、きょうまで放任をしておいた。このことは、非常な重大問題であり、そしてまた、きょうも政府はこれに対して何らの一定したところの政策というものがない、こういうような状態だと私は考えるわけであります。そこで、首都圏整備委員長であり、建設大臣でもある中村さんにお伺いすることは、この動脈硬化になり、そして、毎日のように交通事故が新聞、テレビ、ラジオなんかに報道されておる今日において、政府はいかなるところのこの東京都の対策をお持ちになるか、この点をお伺いいたしたいと思うわけであります。
  171. 中村梅吉

    中村国務大臣 御承知の通り、首都圏整備法が制定されまして、首都圏整備委員会が行政委員会として推進をいたしておりますのは、東京都への過度の人口の集中を排除いたしますために、周辺に衛星都市をできるだけ作りまして、その衛星都市は定着人口にする、要するに、工業都市を中心にいたしまして、そこに所要の住宅、教育機関その他の施設をいたしまして、定着人口を作りまして、東京への過度の流入をそこで食いとめるような構想で出発をいたしたわけでございます。自来、相当数多くの衛星都市の指定をいたしまして、その育成に努めておるわけでございますが、私ども、この段階まで参りますると、結局、もう少しさらに前進をする工夫をする必要があるのではないかということで、首都圏整備委員会としてのあり方なり、あるいは衛星都市育成の方法なりについて、具体策を検討いたしておる次第でございます。イギリスのニュー・タウンなどは非常に早く育成されたように思いますが、それでも発足以来十年以上を要しておりまして、一二ュー・タウンの人口大体五万前後を中心にやっておりまするようで、これもやり方を見ますると、一二ュー・タウンに特殊会社を作りまして、そこに政府の助成金といいますか、政府資金を大量に投入しまして、六十年賦で償還をさせるという行き方のようであります。わが国においても、できれば同様の道を活発に行ないたいのでございますが、国の財政なり経済力の関係等もございまして、行き悩みつつ進行しておるというのが現段階でございます。しかしながら、国力の進展に伴ないまして、私どもとしましては、できるだけすみやかに衛星都市の育成を行ない、かたがた、この既成市街地への流入を防止するために、今やっておりまするような工場その他の施設を新しくふやさせないという規制措置をだんだん強化いたしまして、所期の目的を達するように努めて参りたい、こう思っておる次第でございます。
  172. 中島巖

    中島(巖)委員 今、建設大臣の御答弁をお伺いいたしますと、まだこれというはっきりした方針がないようでありますが、それについては後刻順次お尋ねいたしたいと思いますけれども、この首都問題に対しましてはどこが主管でやられておるのか。たとえば建設省であるか、あるいは首都圏整備委員会であるか、あるいは行管であるか、この点をはっきりしていただいて、それからお尋ねいたしたいと思うわけであります。
  173. 中村梅吉

    中村国務大臣 首都圏整備事業は、首都圏整備委員会が中心になって進めておりますが、首都圏整備委員会はプランを立てまして、その作りましたプランを各関係の行政機関あるいは国家機関に流しまして、その実施を推進するという建前でございまするから、実行の上におきましては、あらゆる国家及び地方公共団体等の御協力をいただいておるわけでございます。
  174. 中島巖

    中島(巖)委員 今大臣の御答弁によると、この計画は首都圏整備委員会でやる、そうして首都圏整備委員会でその計画を流して、それに基づいて各官庁が行なう、こういうようなお話でありました。そこで、首都圏整備委員会は、首都圏整備委員会報告書というものを今まで何回か出しておるわけでありますが、この首都圏整備委員会報告書の第一号は、たしか昭和三十三年一月に、当時の委員長の根本さんの名前で出してあるのですが、これによると、都市の整備圏内の昭和五十年の人口はどうなるかということをはっきり出しておるわけであります。それによりますと、二千六百六十万人、このうらで、市街地が千百六十万人であって、東京都は八百八十五万人、神奈川が二百六十万人、埼玉が十五万人、つまり、市街地の人口は昭和五十年にはこういうことになる、この想定のもとに一切の計画を立てておるわけでありますが、すでに昭和五十年の八百八十五万というものを、現在三十七年において二割も突破しておるというのが現状である。従いまして、首部圏整備委員会の構想というものは根本から狂っておる。従って、ここに新しい構想を立てねばならぬ、こういうように考えるのでありますけれども、大臣のお考えはどうであるか。
  175. 中村梅吉

    中村国務大臣 首都圏整備委員会が発足いたしました当時、各種の資料に基づきまして検討されて、今お読み上げになりましたような推定を下したわけでございますが、それよりも東京への人口集中が見込み以上に一そう多くなっておることは事実と思います。ただ、そこに八百八十五万とうたいましたのは、区部の既成市街地の人口数をさしておるのでございまして、東京都全域ではないと私は記憶いたしております。
  176. 中島巖

    中島(巖)委員 それから、そのときの首都圏整備委員会が、東京都におけるところの昭和四十一年の交通量というものを発表いたしておるのでありますが、昭和四十一年の交通量の推定量、これは国鉄八本、私鉄十五本、二十三本に対して発表いたしておるわけであります。つまり、昭和四十一年には、この国鉄八本、私鉄十五本に対して、一時間の最大交通量はこれこれの数字になるということを発表いたしておるわけであります。ところが、昭和三十四年におきまして、この四十一年の推定交通量というものをはるかに凌駕しておる。この国鉄八本のうちで、四本はこの数字を上回っておる。四本は低いながら、わずかにその数字に迫っておる。さらに私鉄十五本のうちで、一本はこれより下回っておりますけれども、十四本はこれらの数字をはるかに上回っておる。すなわち、昭和四十一年の交通推定量というものに昭和三十四年ですでに達しておる。こういうような状況でありますけれども、これに対してどういう御見解を持っておるか、お伺いしたいと思うわけであります。
  177. 中村梅吉

    中村国務大臣 首都圏発足当時の推定も、首都圏整備委員会独自でやったことではないと思います。それぞれの関係機関の意見を徴して推定をいたしたものと思います。現実には御指摘の通り、非常にオーバーしておりますことは事実でございますので、今われわれとしましては、交通機関その他諸問題につきまして、あらためて再検討を行ないつつある段階でございます。
  178. 中島巖

    中島(巖)委員 これは非常に重大な問題でありまして、確認をしておいていただかねばならぬのでありますけれども、当時首都圏整備委員会が「既成市街地内の路線別交通需要の推定」というものを発表いたしておるのであります。すなわち、昭和四十一年においては、私鉄十五線、国鉄八線のうちの一番混雑するところの、最大通過人員というものがどういう数字になるか、すなわち、四十一年においてはこういう数字になる、こういうことを発表いたしておるのですが、すでに昭和三十四年でこれをオーバーしておる。たとえば一つの例を申し上げますれば、北池袋から池袋の東武東上線においては、一時間の交通量は昭和四十一年には二万一千四百人になるという推定を出しておる。これに対して、すでに昭和三十四年で二万六千一百人というように、はるかにオーバーした数字になっておる。ことに私鉄十五線は、一線だけがかつかつで、あと十四線はすでに非常にオーバーしておる。こういうことになりますと、首都圏整備委員会の土台となるところの人口の問題であるとか、交通量の問題であるとか、こういうものが根本からゆるんでしまっておるのでありますから、従って、今後の東京都に対する政策も改めねばならぬ、こういうように考えるのでありますが、大臣の率直な見解を承りたいと思うのであります。
  179. 中村梅吉

    中村国務大臣 全くその通りでありまして、われわれとしましては、根本的に考え直さなければならないと思っております。
  180. 中島巖

    中島(巖)委員 それから昨年の四月六日でありますけれども、首都圏整備委員会の事務局でもって、学園都市建設構想の試案というものを発表されておるわけであります。これは閣議決定にもならなかったようでありますけれども、この発表は、東京から五十キロぐらい離れた土地に大学を移してしまう、大学の関係の人口は四十二万だ、そして第二次産業の大学についていくものは十万人だ、第三次産業は十八万人だ、計七十万の学園都市を作る、こういうことを発表いたしまして、当時相当新聞をにぎわしたわけでありますけれども、現在この構想はどのようになっておるのか、この点詳細に御報告をお願いいたしたい。
  181. 中村梅吉

    中村国務大臣 東京への人口集中の大きな要素をなすのは、教育機関に集まってくる人口が一つでございます。特に戦後向学心が一そう盛んになりまして、東京の各大学は増設また増設、それの上に押すな押すなの状況で、教育関係の人口集中というものは、他の増加率に比較して一番多いように、われわれ数字の上でも見ておるわけでございます。かような角度から、教育機関は必ずしも混雑する都会にある必要はないわけでありますから、むしろ、教育環境のよろしいところに立地する方が理想である、こういう考え方に基づきまして、各都心部にあります大学を外に出したならば一体どういう姿になるだろうかという想定をいたしまして、それにはどのくらいの施設が要り、どのくらいの経費が要り、あるいはどういう人口構成になるかという検討をいたしました。しかし、この大学移転という問題は、政府の力をもってしては容易に片づく問題ではございませんので、一応の研究として資料を整えたわけでございます。当時、たまたま首都圏整備関係につきまして、最近大学の教授の中にも、都市問題を熱心に御研究されておる方々が非常に多いので、これらの人たち二十数名にお集まりをいただきまして、御高見を拝聴する懇談会を催しました。その席上で、一つのアドバルーンを上げる意味で、今研究いたして集めた資料に基づくものを御説明をしてみようということで、首都圏整備委員会としては御説明をいたしまして、それが非常に話題を呼んだわけでございます。もともと政府の力だけでできる問題でございませんので、一つの機運醸成の意味で話してみようということで出しましたので、この機運醸成の意味では相当効を奏しまして、近時、各大学等が、増設分につきまして、あるいはその他外部に出ていこうという機運が相当できつつありますることは事実であろうと思うのであります。かような程度の軽い意味で、学識経験者のお集まりを願いました懇談会の席上で考え方を述べたというのが、今御指摘になりました大学の外への移転の問題であったわけでございます。
  182. 中島巖

    中島(巖)委員 そうすると、今大臣の御答弁は、そういうような機運醸成の意味で、学識経験者などを呼んでこれを発表した、従って、この案というものは、もう消えてなくなって、そして首都圏整備委員会では何ら考えておらぬ、こういうように了解してよろしいのであるか。それから、大臣は、こうした機運を醸成したために、各大学なんかが都会の外に、東京の外に出ておる、こういうようなことをおっしゃいますけれども、大学のような相当広大な敷地の要るところは、もう東京におりたくてもおられぬから、機運醸成ではなくして、やむを得ず出た、私はこう解釈をいたしておるわけであります。それとは別にいたしまして、この問題は、今大臣のおっしゃったように、もう跡形もなく消えておる問題である、こういうように了承してよろしいのであるか、あるいはこの問題が生きておるとすれば、現在どういう段階にあるか、この点をお伺いいたしたいと思うわけであります。
  183. 中村梅吉

    中村国務大臣 実態は今申し上げた通りでございますが、かたがた、その後、それに引き続きまして、当時、やや同じころかと思いますが、工場等制限法を作りまして、この工場等制限には、名称は工場等になっておりますが、工場、学校が主でございます。そして、一定坪数以上の増築、新設は許さないという方針を立てまして、現在既成市街地における新設を許さないようにいたしております。これをさらに強化する立法措置を講じたいと考えまして、目下準備をいたしておる次第でございますが、さような結果、今御指摘のありましたように、実際建てたくも建てられない、増設をしたくも増設ができないというようなことになりましたのが、また一面、学校が外に出ていく機運の一つの助成方法にもなっているかと思うのであります。  この案は一体どうなったのかということでございましたが、われわれとしましては、世間の協力をいただいて、機運が醸成されて、国の力もかせるところはかして、実行できるものならば、今日といえども実行に移したい意欲は持っておりまするが、それはなかなか容易なことではないという自覚をいたしておるわけでございます。当時並行して考えましたのが、最近やはり話題になっておりまする、官庁付属機関を一括して地方に出したらどうか、ちょうど学校の問題と同じころに、並行して研究をいたしました。この方ならば、政府の腹のきめ方一つで実行に移せるわけでございますから、行管とも御相談を申し上げ、あるいは閣議の席上にも話題にいたしまして、実はわれわれとしては着々準備を進めておるという段階でございます。三十七年度は、大蔵省と折衝の結果、調査費もつけていただきましたので、三十七年度中にこの調査費を最も有効適切に利用いたしまして、具体的に運ぶ方法を固めて参りたい、こう思っておるわけでございます。
  184. 中島巖

    中島(巖)委員 今建設大臣から官庁移転の問題がお話がありましたが、これは新聞なんかを通じて拝見いたしますと、川島さんの構想だ、こういうようにわれわれは了解いたしておるのであります。川島さんが行管の長官にすわられて、そしてこういうような方面に異常な関心を持たれたということは、とにかくその構想たるや、現在の東京都の大きなエネルギーの爆発に対しては、これはほんとうにごく微々たる計画であると私は思うのでありますけれども、しかし、こういうような実力者の力がこれに関心を持たれたということに対して、私は非常な期待を持っておるわけであります。そこで、新聞で見るところによりますと、十月九日にこの新官庁都市は閣議決定になった。そして政府の研究機関など七十八カ所のお役所が移転をするんだ、職員は二万三千八百四十四人だ、関係者合わせて十八万人だ、こういうようなことが発表されたわけでありますけれども、今建設大臣の答弁によると、本年度調査費がついた、こういうような話であります。これは川島長官にお伺いいたしますけれども、大体長官としてはお考えがあるだろうと思うのですが、どこの場所へこれらを移転するお考えであるか、そしてこのわずか十八万の新官庁都市を建設することによって、東京都の交通問題を初めとし、あらゆる動脈硬化になっておる状態が救えるというお考えであるか、この二点について、川島さんのお考えを伺いたいと思うのであります。
  185. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 私は行政管理庁長官になりましてから、東京都の問題につきまして特に関心を持ちまして、いろいろ考えておるのでございます。東京都問題を解決するのに、現在ある首都圏整備委員会ではたして適当かどうか、この権限、組織等についても考慮しなければならぬのではないか。本年の予算編成期にあたりまして、首都圏整備委員会は首都圏整備庁という役所にしたいという申し出もありましたが、この程度では問題解決の役には立たぬと思いまして、私はそれは了承しなかったのでありますが、現在膨大な組織を持っておる東京都政との関係はどうなるかということも、相当考究する問題がございます。そうした根本問題を考えながらも、着手し得るものは順次着手していきたい、こういう考えのもとに、中村建設大臣と相談いたしまして、とりあえず東京にある官庁のうち、首都になくてもいいもの、試験場、研究所、学校の一部、それから末端の行政官庁などを地方に移転しようという考えになりまして、閣議決定をいたして、実行に移す端緒を得ておるわけであります。先般、行政管理庁から各役所に対しまして、今のところそれぞれの役所で、どの程度の官庁が移転可能かということを照会いたしましたところ、今日まで返答が来ているのはわずか二十七にすぎません。職員として一万人程度であります。首都圏から発表しました約三万人近くの末端官庁というのは、ただ役所の職員の数だけでありまして、私ども構想しているのは、もっと理想的の文化都市を作りまして、そこに末端官庁を入れると同時に、一般の国民もそこに行きたいという魅力のある都市を作ろう、こういうことなのであります。いまだ場所は決定いたしませんが、今日のところ移転するという希望が少ないことは、0場所もわからず、どういう都市ができるかということもまだわからぬからして、移転を希望する官庁が少ないのでありますが、理想的な文化都市ができるということがはっきりいたしますれば、相当数の官庁が進んで移転したいと言うんじゃないか。同時に、従来公務員であって恩給など取っている人も、東京にいるよりもそっちに行きたいと言う魅力のある都市を作りたい、こういうことを考えて構想を練っている最中であります。
  186. 中島巖

    中島(巖)委員 この問題については私も川島さんに非常に期待するところが大きいのですが、どうもこういうような学園都市を作るとか新官庁都市を作るとかいうこそくな手段では、この東京都の問題は解決できないと思う。そこでなぜ東京都へかような過度の人口が集中するか、いわゆる東京へエネルギーの爆発する原因をはっきりとつかまねばいけないと思うんです。こういう見地から考えますと、東京都へ過度の人口集中をするのは、東京都がこの関東平野の広大な地域を控え、さらに海運の便がよい、つまり産業都市として伸びる可能性が多いということが、まず第一点であると思うのです。そのほかの一つの点といたしましては、日本の中央集権的の官庁機構が、東京都にあるということだと思うんです。これは各県に見ましても、この官庁機能のある県庁の所在地というものは、非常な発達をしておる、こういうような事例から見ましてもそれであると思うのです。従いまして、いわゆる人口集中の誘因となるこの二つの口のうちの一つをいずれかへ分けて移す。そうすれば、ちょうど密バチの巣に新しい女王バチが産まれて古い女王バチが抜け出ますと、これに対して何万という子バチがついて集団して移動するわけでありますから、いわゆる女王バチ方式とも言うべきところの根本的な政策をとらねばならない、こういうように私は考えるわけであります。そこでこの方式をとるとすれば、結局東京都から、国会であるとか官庁であるとかいう行政機能、そして先ほどから問題になっておりました教育機関、いわゆる文化の面、この二つを適当なある場所を探して移す、こうすれば残ったところの東京もさらに完全に産業が発達しますし、また分かれたところの文化関係、行政府等のものも発展する。すなわちそれは東京都から百キロ以内くらいに、現在の東海道交通から言えば三十分か三十五分くらい、あるいは高速道路から言えば四十分くらい、そしてこれは遷都となると非常な問題でありますけれども、広域都市として、広域首都として、行政区画なんかの変更はせねばなりませんけれども、これは可能な問題ではないか、こういうように考えるのでありますが、これに対してどういうお考えか。特に東京都に人口の集中する誘因は何であるかというようなことについて、建設大臣と行管長官とお二人の御意見をいただきたいと思うわけであります。   〔重政委員長代理退席、委員長着席〕
  187. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 御意見としてはまことに傾聴すべき問題だと思います。アメリカのようにワシントンとニューヨーク、ああいう関係になることが望ましいのでありますが、現在の東京都は、江戸以来数百年の歴史と沿革があってでき上がっておるのでありまして、お説のようにこれを解決することにつきましては、幾多の困難もあります。その困難を打開して問題を解決するのでありますから、相当の研究を要するというふうに私は考えております。御意見に直ちに賛成とはいきませんけれども、根本的にそういう考えでいくということは、まことにいい考えであると考えております。
  188. 中村梅吉

    中村国務大臣 ただいま御指摘の点につきましては、川島国務大臣と同様に考えております。私どもとしましても、慎重に研究をしてみたいと思っております。  そこで、東京への人口集中の要素を、かつて首都圏で調査をしたことがございますが、大体産業人口というものが一番幅を占めておるわけであります。次いで教育関係、かような関係上、われわれとしましては、工場都市を衛星都市として周辺に育成をいたしまして、都心部にあります工場をできるだけそちらの方面に吸いつけていく、こういう考え方で進めておりますわけで、従って新しく作ります衛星都市に、工場団地ができて分譲等をいたします場合には、既成市街地から移転をする工場であることを第一条件にいたしまして選考をいたし、かたがた、反面において既成市街地への工場の新設、増設を押えていく、こういう道を訓じておるわけでございますが、ただ衛星都市の育成の面においてまだ欠くる点がございまして、われわれから見ましても十分でございませんので、できるだけ急速に改善の道を講じて、工業衛星都市の育成に努めて、そうしてこういうような過度の流入を排除する根本策を講じていきたい、こう思っておるわけでございます。
  189. 中島巖

    中島(巖)委員 今、建設大臣の御答弁を聞いておりましても、目先のわずかなことだけにこだわっておって、将来東京都はこうなるのだから、こういう施策でもって打開するのだというような、太い大きな見通しのある方針は遺憾ながら何らつかみ出せぬわけなんです。  そこで、建設大臣にお尋ねしますが、これはこまかいと言えばこまかい問題でありまして、もしよくおわかりでなければ都市局長でもけっこうでありますけれども、建設省は、東京都の過度の人口集中とかあるいは交通問題とかいう見地から、前の国会に市街地改造法案を出して、この事業に着手し、たしか三十六年度は東京都の三軒茶屋と大阪駅付近とのこの二つに着手したように思っております。そこで三軒茶屋の改造はどうなっておるか、あるいは三軒茶屋を改造すれば、どの程度の人口を対象としてやっておるのか、それから三十七年度もたしか四、五カ所こういうようなお考えがあると思いますけれども、その対象の地域はどこなのか、そしてこれを改造すれば、これの対象の人口はどのくらいであるか、この点をお伺いいたしたいと思うわけであります。
  190. 中村梅吉

    中村国務大臣 中島さんも御承知になっておりまする大阪の市街地改造は、最近関係住民の御理解を得まして着々順調に進み始めております。ただ三軒茶屋のところは、人口的にどのくらいの分量かということでございましたが、放射四号のオリンピックに関連をしました拡幅に伴っての市街地改造でございますから、人口と申しまするよりは道路の拡幅関係ということに相なります。当初、表の商店街の人と市街地改造に該当いたしまする裏側の人との意見の食い違いがございまして、なかなか調整がつきませんでしたが、最近裏側の人たちも次第に理解をされまして話し合いが進行いたしておりますから、近くめどがつくのではないかと期待をいたしておる次第でございます。三十七年度の分につきましては、これから具体的に検討しまして、どこを実施の対象にするか進めて参りたいと思っております。
  191. 中島巖

    中島(巖)委員 今の質問中、対象人口はどのくらいであるか、この点を、三軒茶屋の分及び三十七年度施行の個所、この二点をお伺いしたいと思うのです。
  192. 前田光嘉

    ○前田(光)政府委員 三軒茶屋の市街地改造につきましては、ただいま大臣から御説明がございましたように、街路の拡幅に関連するものでございますので、その地区につきましては、地区の面積は八万平方メートル予定しております。ここに現在おります人口は、正確な数字は持っておりませんけれども、たしか三千名程度じゃなかったかと記憶しております。
  193. 中島巖

    中島(巖)委員 今都市局長から報告のありましたように、年間三十万近くも人口の増加するのに、一年かかって三千名程度の都市改造を行なっておったところが、これは追っつくものではないのです。従いまして、根本対策を立てねばならない、こういうように考えるわけでありますが、川島長官が非常にお忙しいようでありますから、いろいろ建設大臣や運輸大臣のお話をお聞き願って、最後に川島長官から御意見を承りたい、こういうように考えておったのでありますけれども、結論が先に出るようになりますが、川島さんに二、三お伺いいたしまして、川島さんにお帰り願っていただきたいと、こう考えるわけであります。  そこで交通の問題が都市と言わず、いなかと言わず、現在ほど重要になってきたことはおそらくないと思うのです。それから東京都は道路面積というものが、世界各国都市に比較して非常に狭いわけであります。たとえばワシントンなんかは道路面積が四五%を占めておる、あるいはニューヨークなんかは三五%を占めておる。ところが東京はわずかに一〇%、あるいはその他のヨーロッパの諸国でも、一番小さいところでも二三%ぐらい占めておる、従ってこの道路面積が非常に狭いということ、さらに公園面積が非常に狭いということです。もうここに絶対量が不足いたしておりまして、私の考えとしては、東京都の内部改造ということはもうできぬのだ、こういうような考えを持っておるわけであります。たとえば道路面積について申し上げれば、先ほど申しましたように、ワシントンが四五%、ニューヨークが一二五%、ウィーンも三五%、ロンドンのあの古い都の道路面積の少ないところでも二三%、こういうようなわけになっておりまして、ことに、三五%も道路面積を持っておるニューヨークですら、近時自動車の台数の激増に対して、何とかせねばならぬという状態になっておるわけであります。さらに四年前の調査によりますと、自動車の保有台数――これはあとで運輸大臣なんかからお聞きいたしたいと思うのでありますけれども、これは四年前の話でありますけれども、その後の新しい統計は持っておりませんが、四年前は百人に対して、アメリカは四十台の自動車の保有数、日本はわずかに一・五ぐらい、一番自動車を持っておる東京でさえ、百人に対して三人四分というような、こういう数字が出ておるわけであります。四年前でありますから、おそらく現在は倍近くにもなっておると思いますけれども、こういうような状況から考えてみて、自動車の数のふえるということは、過去大体四年において倍になっておりますけれども、今後もその趨勢でふえると思う。こういうような見地から考えると、どうしても東京都に対して恒久対策を樹立せねばならぬ、こういうような段階にきておるのじゃないかと思うのであります。そこで新聞なんかで行政の簡素化とか、人員整理とかいうようなことで、だいぶ問題になっておるように拝見いたすのでありますけれども、諸外国の例を見ましても、交通行政というものを一元化されておるところが非常に多いわけです。たとえば鉄道と高速自動車その他の国道、これらを一元的の行政機構の上で行なわぬと、これほど自動車が発達してきた場合において、所轄管掌がばらばらになっておってはどうかと私考えるわけです。なかなかこれは官庁の抵抗も強いと思います。けれども、こういうような観点から、いわゆる交通関係を一元化したところの交通省というようなものを設け、さらに公共事業関係を、たとえば建設省の事業であるとか、あるいは農林省の事業であるとかいうものを一括したところの公共専業の官庁、こんなふうに官庁機構を改組することによって交通問題その他も円滑にいくのじゃないか、こういうように考えるわけでありますが、川島長官のお考えを承りたいと思うわけであります。
  194. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 交通行政の一元化は一つの世論でありまして、各方面からそういう意見がいろいろ出されております。私もそれを検討いたしておるのであります。地方行政委員会でも取り上げて、検討しているようでありますし、最近発足いたしました臨時行政調査会でも検討願うのじゃないかと思っております。ただどういう仕事をどこから持ってきて、どういう役所を作ろうということは、なかなか問題がございまして、ここで内容まで申し上げることはできないのでありますが、ある程度の一元化は必要じゃないかということは痛切に考えております。外国を見ますとまちまちでありまして、西ドイツのように交通省という役所を作ったところもあるし、また連絡調整機関の役所を作っておるところもあるし、一様ではございません。日本の実情に適した適当な行政機構を作り上げたい、こう考えております。
  195. 中島巖

    中島(巖)委員 そこでさらにもう一点、きょうの締めくくりの最後にお伺いいたしたい問題であったのでありますけれども、ただいま建設大臣と私との一問一答の中において、長官も大体のことはおわかりだと思いますけれども、遺憾ながら東京都対策というものに対しまして、大きな見通しと申しますか、柱が政府にないわけなんです。そしてこの東京都の内部改造をして、東京都を動脈硬化から救って更正するか――この問題も、今市街地改造なんかの点に触れましたけれども、これも遺憾ながらとうてい再生するところの道はない。しからば外に向かって広げるかというような問題につきましても、学園都市の建設、これも一つの構想であって、またこれがかりに実現いたしましたところでこれは根本対策にならない、こういうように非常に意見がまちまちで、この重大な問題が、ここまで動脈硬化の状態にきたにもかかわらず、一貫した方針がまだ政府で樹立できない、これが率直な私の見方であります。しからばこれに当たるところの政府の機関はいかなる機関であるかといえば、先ほど建設大臣からお話がありましたように、首都圏整備委員会がこれに当たっておるわけであります。しかしながら首都圏整備委員会のいわゆる人口に対する構想も、また交通量に対する構想も、あまりにも現実から離れて浮いておる。しかし浮いておるからといって、また案を立て直せば他を直さねばならぬわけでありますけれども、なぜ首都圏整備委員会がもっと根本的な対策を樹立でき符ないかというと、これは一種の行政委員会、従って、行政委員会という性格から考えますと、どうしても現状を土台としてどういうふうに改良するか、これにとどまることは当然なんです。つまり言えば、改良主義的な政策しか首都圏整備委員会としては打ち出されぬ、これは当然だと思います。従ってそういうことに制約されることと、もう一つは、この東京都の異常な人口集中ということで、これらの土台となるべき根本の考え方に非常なそごを来たしている、こういうように私は考えるわけであります。先ほども申し上げましたけれども、ここにもいろいろな表があるので申し上げてもいいのでありますけれども、各国の各都市の人口関係について簡単に申し上げますと、ニューヨークなんかは最近人口が減っておるのです。それからその他の大都市においても、ごくわずかに伸びておるだけであって、ただ上海が異常な伸び方といたしましても、先ほど申し上げましたように年間七万近いところの人口増であるわけであります。たとえばニューヨークなんかは、十カ年間に八千六百人も減っておる。それからロンドンは、年間一万三千八百人程度しか過去五カ年間に平均してふえておらない。パリも一万八百人程度しかふえておらない。こういうような状態で、日本だけが三十万近いところの人口がふえておる。従って、これに対応するような根本対策を立てねばいけないのであるけれども、遺憾ながらそういう対策が立っておらぬ。市街地改造もやらねばならぬ、あるいは学園都市、あるいは官庁移転もやらなければならぬという、とにかくこの動脈硬化の行き詰まった東京だ対して、何かやらねばならぬという、こういう現われはあるけれども、一貫した大きな方針が樹立していない。ここが問題であると思います。  従いまして今政府としては、首都圏整備委員会の方針を柱としてやらねばならぬのでありますけれども、ただいま申し上げた通りだし、これは行政委員会であらゆる面が拘束されておって、現在の改良的な仕事しかできない。しかも反面におけるところの人口の過度の集中は、ただいま申し上げましたように世界の各都市と比較しても、とうてい比較にならぬようなものすごい集中をしておる、こういうことになるわけであります。  そこで大臣にお伺いいたしたいのは、つまりこの東京都の対策あるいは首都建設問題の調査会のようなものを設置しまして、そして学識経験者であるとかあるいは衆参両院議員であるとかいうものを入れて、この首都圏整備委員会のいわゆる行政委員会、すなわち現在の改良程度でなしに、抜本的に東京都をどうしたらいいか、こういう研究機関を、政府は責任を持って設置すべき段階にきておる。その研究機関も、あるいは一年とか二年とかいう期限をつけて、そして研究の結果を報告させて、ある程度その報告政府を拘束して、この報告に基づいて首都圏整備委員会などがその専業実施をやる、こういう方策を立てるべきところの段階にきている。ややもすると首都圏整備委員会と重複するような考えをお持ちの方がありますけれども、いわゆるこの過度の人口集中に対しましては、抜本的、革命的な案を立てなければ、これが打開できぬ。それがために、ただいま申しましたような調査会を設置すべきである、こういうように考えるのでありますが、川島長官のお考えはどうか。この点お伺いしたいと思うわけであります。
  196. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 東京都の体質改善のために審査会を作れという御意見であります。実はただいまある首都圏整備委員会のあり方、活動等につきましては、中村建設大臣としばしば話し合いをいたしておるのでございます。首都圏整備委員会の権限としましては、都の総合的計画を立ててこれを推進するということになっております。しかもその中には審議会が設けられまして、衆参両院の方々並びに各方面の技術者を網羅した機関もあるのであります。これをフルに動かせば、御指示のような活動があるいはできるのじゃないかということも考えられるのでありまして、今直ちに審議会を作ることに、私は賛成の意思表示をするわけにはいかぬのでありますけれども、しかし策京都の問題は何とかして軌道に乗せたいと思っておりますから、主管大臣とも相談をして、一つ善処したい、こう考えております。
  197. 中島巖

    中島(巖)委員 もう一度川島長官に、話が重複してくどいようになりますけれども、首都圏整備委員会と、私が今川島長官に要請しましたところの首都対策調査会と、どういうふうに性格が違うのであるか、この点について申し上げたいと思うのであります。  確かに長官の言われるように、首都圏整備委員会には委員があり、審議会もありますけれども、これは一つの行政委員会でありまして、現状を離れたような抜本的な方針というものは、打ち出すわけにいかないのであります。従いましてこれとは違いまして、このものすごいエネルギーの東京都の爆発に対して、抜本的な何かの対策を講ぜねばならぬ。それがためには、首都圏整備委員会のごとき行政委員会でなくして、もっと強力な、学識経験者や衆参両院議員を集めたところの調査会を設置して、その調査会でもって首都圏整備委員会その他の官庁にも調査資料を十分出させて、東京都は内部改造でもってできるものであるか、あるいは内部改造でできぬとすればどういう政策をとらねばならぬかというような、いわゆる抜本、革命的な調査をさせるところの調査会を設置して、この調査会で結論の出た場合においては、それは首都圏整備委員会におろして、首都圏整備委員会がその実行段階に移る、こういう性格のもので、前部圏整備委員会とこの調査会とは、二つありましても、決して重複するものではなくして、この現在の東京都の情勢に対処するには、そういう調査会がぜひとも必要であるというように考えるわけであります。現在の首都圏整備委員会の機能をもってしてはあまりに仕事が大き過ぎます。それでくどいようでありますが、行政委員会としての現在を土台とした改良主義以上の仕事のできぬことも明らかになっておるという状態下において、調査会を作ることが必要である、私はこういうように考えるわけでありますけれども、長官は、首都圏整備委員会で十分この機能が果たせるのだ、今までの、過去の例から見ても信頼していけるのだ、それで東京都のこのような異常な過度人集中でも、この委員会において処理できていけるのだ、こういうようにお考えかどうか、この点もう一度お伺いしたいと思います。
  198. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 現在の首都圏整備委員会でも、先ほどお答えした通り審議会がついておりまして、その審議会は相当有力な方が審議委員になっておりますから、これが活発に活動すれば、ある程度御希望に沿えるのじゃないかと考えておるわけであります。首都圏整備委員会は、首都圏の総合計画を立てるとはっきり官制に書いてございます。今までの活動が鈍いといえば、それはそうかもしれませんが、これは人的構成並びに予算構成等を変更すれば、りっぱに活動し得るような機構になっておるのではないかと思いますが、実はきょう突然のお話でありまして、私はそれに対して明確な答弁ができないのははなはだ相済みませんけれども、御意見の点はよく考えてみます。
  199. 中島巖

    中島(巖)委員 だれもこの古都閥整備委員会がある以上、そういうような常識的な考えがあるのでありますが、あまりくどくなるので申し上げませんけれども、首都圏整備委員会と私が提唱するところのこの調査会とは、決して重複するものでもなくて、これはどうしても根本的な政治的な事業をやるには、この調査会が立案して、立案できた場合には政府へ渡して、政府はまた首都圏整備委員会にそれを渡す、こういうような機構であり、またこの行き詰まった東京都の状況を打開するには、それより方法はないと思うわけであります。この点川島さんに今後も一つ御研究を願っていただきたいということと、それからわれわれこの東京都をいかに打開するかということに――私、建設委員でありますが、携わっておる者は、川島さんのような方が、幸いに行政管理庁長官としてこの方面に関心を持たれるということに対して、非常にわれわれは力強く思っておるわけでありますから、今後一つ御研究を願って、何とかこの打開の方途を見出していただきたい、こういうことを川島さんにお願いいたします。  次は、運輸大臣と、自治大臣でなくて公、安委員長さんとにお伺いしたいと思うのでありますが、実は私、数日前に、社会党の東京都の交通対策委員会の一員として現地視察をいたしまして、たしか大森付近の警察署だと思いましたが、あそこで、警察署長から交通の状況をお聞きしたわけでありますが、そのとき、署長さんの言うのには、あそこの交通量は大体十七万八千台くらい、十八万台近く通っておる。もし一日あそこでその自動車をストップさせれば、おそらく三島の先まで自動車で埋まってしまうだろう、こういうことを言われたのでありますけれども、そういうような状態になっておるのです。そこで最近新聞で問題になったり、国会で問題になったり、非常な陳情団などもあるところの、東京都内の交通に対して、自動車の車種別制限をするというような問題があるわけでありますけれども、この車種別制限をすることによって、この交通が緩和できるのかどうか、この点をお伺いいたしたいと思うわけであります。
  200. 安井謙

    安井国務大臣 車種別規制というものは、いずれにしろ何かの形で実施しなければなるまい、こう思っております。ただその実施計画につきましては、目下具体案を検討中でございます。
  201. 中島巖

    中島(巖)委員 いろいろ質問いたしたいのでありますが、時間がだいぶ切迫いたしましたので、ごく簡単に質問いたしたいと思うのであります。この東京都内の自動車の台数の推移についてお伺いしたいのでありますけれども、私のところには昭和三十四年までの数字しかないのです。これを見ますと、昭和三十年には二十四万七千七百七十一台という台数で、昭和三十四年は五十一万六千三百五十三台という数字になっておりまして、この四年間に自動車の台数は倍になっておるわけです。これは東京都交通局から出した資料でありますから、間違いはないだろうと思うのであります。その後昭和三十五年、三十六年はどうなっておるか。そして現在の東京都の台数はどのくらいの台数になっておるか。今後の増加の見込みはどういうようなお見込みであるか。これは公安委員長にお伺いするか、運輸大臣にお伺いしたがいいか、ちょっとわかりませんけれども、どちらでもけっこうでありますので、これに対して御答弁をお願いしたいと思うわけであります。
  202. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私の方で自動車の登録と車体検査の統計から調べてみた数字を申し上げます。  東京都の自動車数は三十四年の三月現在で四十一万台、三十五年の三月が五十一万台、三十六年が六十二万台、三十六年の末、ほとんど現在では七十二万台、そういう数字になっております。大体ここ三年、年二〇%前後の増加ということになっております。今後さらに同じ調子で伸びていくかどうかという点は非常にむずかしゅうございますが、一方経済企画庁のいろいろの推計から推定をいたしてみますと、三十七年、今年もやはり二〇%くらい伸びるのじゃなかろうか。来年くらいからは若干自動車数の伸びの率が落ちるのじゃないだろうか、かように考えております。
  203. 中島巖

    中島(巖)委員 これも運輸大臣に質問していいのか公安委員長に質問していいのかわかりませんけれども、東京都の交通問題は、毎日、新聞なんかに書き立てられたり、テレビなんかいろいろ問題になっておるのですが、この交通難は自動車がふえ過ぎるのでこういうことになるのか、あるいは道路の状況が悪いのでこういうことになるのか。これはどういうように警視庁や運輸省はお考えになっておるか。この点をお伺いしたいと思います。
  204. 安井謙

    安井国務大臣 道路も逐次拡張もされ、改善もされておりますが、それを上回って車の台数がふえておるというのが現況であろうかと思います。
  205. 中島巖

    中島(巖)委員 運輸省の見方はどうでしょう。
  206. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 運輸省も同様でございます。
  207. 中島巖

    中島(巖)委員 それは公安委員長も運輸大臣も大きな間違いだと思うのです。これは先ほども申し上げましたように、車の台数がふえるから交通が混雑する、こういうような今の御答弁でありましたけれども、これはとても大きな間違いで、この四年前の、先ほどもちょっと申しましたけれども、世界各国の自動車の百人に対するところの所有台数は、アメリカが四十台、その他イギリスなんかが十八台ぐらいになっている。ところが日本は一台五分である。一番たくさん持っている東京でも三台何分しかない。四年たつと大体倍数になるから、あるいはその倍になっているかもしれぬけれども、各国も日本のような異常なふえ方はせぬであろうけれども、やはり百人に四十人持っているものは五十人とか五十五人とかいう数字になっている。従ってわが国の現在の自動車の生産数からいってもあるいは所得からいっても、各国のこの数字に近寄る伸びを示すことは当然なんです。従いまして、自動車の台数がふえるから交通が混雑するというようなお考えは、これは非常な認識不足で、まだまだこれから非常な勢いをもって三、四年で倍ぐらいな台数にふえる、こういうように私は考えているわけであります。この考えはおそらく交通に関心を持っている者なら、だれも持っている考えじゃないかと思うのです。そこでこういうような観点からすると、いかに運輸省がお骨折りになっても、いかに警察の方々が渾身の力を入れましても、根本的に無理があるのでありますから、これはどうしても先ほどから建設大臣や川島さんと一問一答しておったような根本的の問題を解決せぬ限りは解決はできないと思うわけであります。そこで自動車一万台当たりの自動車事故を見ますと、この資料は「高速道路」の三巻の六号、一九六〇年の五月に出た資料でありますけれども、一九五八年には、ニューヨークでは、一万台当たりに対して四人五分の死者があるわけであります。先ほども申し上げましたようにニューヨークは三五%道路面積がある。それからシカゴは三人一分になっている。デトロイトは二人五分になっている。ところが東京は二十人四分になっている。大阪はさらにひどくて二十二人四分、こういうように自動車一万台当たりの死者数が出ているわけです。大体、これは何に比例しているかというと、道路面積に比例している。そこの市街地に対するところの道路面積の低いところほど多い。ことに東京と大阪とは、東京は一〇%でありますけれども、大阪は九%足らず、こういうような数字になっておって、東京よりは大阪の方が一割も死者が多い、こういうような状態でありますから、やはり根本問題はこの道路面積の問題にある、こういうように考えるわけであります。  そこでお伺いしたいことは、このような車種別の制限であるとか、あるいは警視庁がさらに人間を増員してこの交通整理に当たる、こういうようなことのみで、この交通事故は防止できるお考えであるかどうかということが一点と、さらに四年ぐらいたてば、現在の七十一万台が百四十万台になるということは大体推定できるのでありますが、その場合にある程度の交通が可能のお見込みがあるかどうか、この二点について、公安委員長にお伺いいたしたいと思うわけであります。
  208. 安井謙

    安井国務大臣 御説の通りに、車種規制でありますとか、あるいはこの交通の流れを整理していくとか、あるいはまた道路の路上整備といったようなものにはおのずから限度があります。従いまして、これだけで決して将来解決するとは思っておりませんが、今日道路計画というものは相当な急速度で進んでおります。さらに、これは建設大臣の御所管でございましょうが、もっと多角的な高速道路の計画あるいは幹線道路の拡充というものは、今後東京都に政府も協力しながら進めていきたい。そういう意味での財政措置も、ことしからさらに格段のものを考えたいということで、川島長官中心の臨時都市交通閣僚懇談会でも目下協議中でございます。
  209. 中島巖

    中島(巖)委員 建設大臣にお伺いいたしますが、先ほど市街地改造の状況についてお伺いいたしまして、この市街地改造は、昨年度三軒茶屋のこともいろいろと行き悩みになっておる、かりに完成しても対象となるのは三千人程度である、こういうようなことをお伺いいたしたわけであります。そこで道路整備の関係が、今交通問題と関連して非常な大きな問題になっておるわけであります。ただいま安井自治大臣は、この道路方面に相当の公共投資をしておるから緩和されるであろう、こういうような御意見であったのであります。しかし私は、確かに現在首都高速道路公団によって高速道路の工事なんかは進められておりますし、また運輸省におきましては、中央線の複々線化をめざして今工事をやられておる、こういうような状況でありますけれども、とにかく年間三十万近い人口が過度集中する場合に、ことに東京都の郊外のいわゆる市外地の人口の現在のふえ方は実におびただしいもので、この地区がベッド・タウン地区になっておるわけであります。東京に入ろう、入ろうと思って入れずに、様子をうかがっておるところの人が非常にたくさんこの周辺におる、こういうような状況なのであります。そこで、これは運輸大臣と建設大臣と両方にお伺いしたいのでありますが、運輸大臣にお伺いしたいことは、この東京都の中央線の複々線化が実現できれば、どの程度の交通緩和になるか、この問題であります。私の考えは、このものすごい過度集中の人口は、かりに中央線の複々線が完成して、そして現在の交通難が若干でも緩和されれば、八王子あるいは三鷹、あの周辺のあき地にすぐ人家が建ってしまう、そして二年か三年たてば、やはりもとのもくあみの交通難時代が必ず現出する、こういうような見方を私としてはいたしておるわけであります。  それから建設大臣にお伺いいたしたいことは、首都高速道路公団によって高速道路ができれば、これは現在の自動車の台数とすれば若干緩和するでありましょう。しかし、自動車の台数が今申し上げた通り三、四年でもって倍になってくるということになれば、これももとのもくあみであるのみならず、その高速道路からはき出されたところの自動車を、現在の市街地でどういうようにさばいていくか、これはすぐに、ちょうど動脈だけはあいたけれども、その他の血管は全部ふさがれた、こういうような状況に私はなると思うのでありますけれども、この二つの点について、お見通しを両大臣にお伺いしたい、かように思います。
  210. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 中央線の複々線化が完了をいたしますならば、今日の現状よりも交通事情は、この線に関する限りは緩和をすると思いますが、しかしながら都心内においてさらに通勤、通学を要する需要がふえて参れば、これはそのふえ方によりますが、また直ちに一ぱいになってしまうということは考えられます。現在といたしましては、都心にそういう需要をあまり起こさないような施策を建設省の都市政策としてとりつつあられるわけでありますが、この効果いかんにかかると思っております。
  211. 中村梅吉

    中村国務大臣 先ほど御指摘がございましたように、東京の道路面積が非常に少ない、これは全く事実でございますが、この自動車交通をどういうふうにしてさばくかということについては、いろいろな考え方があると思うのです。昭和の初めに、相当たくさんの都市計画、路線計画というものがありましたが、これも戦争中あるいは戦後の状態で塩づけになってきております。これらを開発して道路面積を広げるというのも一つの方法でございましょうが、しかしこれをやりますのには、非常にたくさんの用地買収や移転や事業費を要しますので、こういう方法がいいのか、あるいは現在やっておりまする高速道路をできるだけ早く完成をさせまして、少なくとも通過自動車は高速道路を通って、地回りの用足しをする者は平面道路を通るようにすることがいいのか、いろいろ考え方はあると思います。私どもとしましては、現状をできるだけ早く解決いたしまするのには、高速道路を発達させるということが先決問題じゃないかと思っております。しかし現在の八本の高速道路計画は、御承知の通り関連道路をつけまして、見方によりましては非常にしゃれた構造の設計でございます。すべてこれを今後やっていこうということは、必ずそれには用地買収が伴い、補償が伴いまして、現在も難航いたしておりますが、なお難航を続けなければならぬと思います。そこで、それならばそれにかわるべき方法として、幹線道路と二階建道路を作りまして、用地買収をしないで、通り抜け車両を通過させるという方法もあるのじゃないかと考えまして、こういう点につきましても、設計上あるいは実施上どういうことになるか、具体的に実は事務当局に研究をさしておるわけでございますが、なかなか一発でどうもてきめんにきくという方法はございませんので、あらゆる知能を動員し、工夫をこらしまして、この困難な状態を打開していくように努めなければならない、こういうような考え方をもちまして、われわれとしましては何とかしてこの現状を打開していきたいと思っておるわけでございます。
  212. 中島巖

    中島(巖)委員 まだいろいろお伺いして、それから結論に入りたいと思うのであります。時間もだいぶ迫ってきまして、どうも委員長の顔も険しくなってきましたので、結論に入ってお伺いいたすことにいたしますけれども、私は先ほども申し上げましたように、この道路面積の点あるいは公園面積の点、その他あらゆる条件の絶対量の上において、内部構造ではどうしても東京都というものは、いかなる手段を施してもこれは再生できない、こういうような考えを持っておるのであります。また昨年東京都の交通審議会の答申案は、この東京都の道路改良だけで二兆四千億かかる、こういうことを答申して、東知事もこの答申を尊重してやる、こういう声明をされておるわけなんです。そこで先ほど私は川島長官にも申しましたけれども、この東京都への人口集中のものすごい爆発的なエネルギーの誘因というものは、官庁の所在地であることと、それから産業業都市の適地であるということにあるから、従ってこの中から官庁と文教関係、文化機関、これだけを引き抜いて富士山ろくへ持って参りますれば、富士山ろくは私が申し上げるまでもありませんけれども、東海道高速自動車道の本年度予算で作る分は、あの御殿場を通るわけであります。また中央自動車道も富士吉田を通ることになっておる。新しい東海道新幹線もあの近くを通ることになっておる。そうして東京都の面積はたしか二千二十三平方キロだと思いましたけれども、あそこにはこの東南の神奈川県の一部、静岡県、それから都留郡を中心にいたしたところの山梨県の一部分を加えますれば、海抜千メーター以下のところで三千数百平方キロの空地があるわけなんです。そしてこれらの中には官有地であるとか県有地であるとかいうところが非常に広いわけである。そこでまず政府は一大方針を立てて、そうして恒久対策としてこれをやるべきだ、私はこういうように考えるわけであります。ブラジルは首都を例のブラジリアに移したのでありますけれども、これは前の首都とは千キロ以上も離れておる。そうして鉄道も道路も何にもないところへ首都を移したわけであります。ブラジルは未開発資源の開発というような考えもありましたけれども、とにかくブラジルのあの国力でもってこの大事業を敢行したわけだ。ブラジルの人口は約七千万でありまして、年間国民総所得は六億何千万ドルというような額でありまして、日本の財政事情から考えれば国民総所得にしても半分以下であります。この国でちょうど東京から北海道の果てか九州の果ての遠隔の地へ首都を移した、こういう状況であります。ここと、たとえば富士山ろく周辺でありますれば、この富士吉田周辺の富士五湖周辺にいわゆる大学、教育機関その他を移し、そうしてこの南側のはるかに太平洋を望めるあの秀麗な地に国会だとか官庁だとかいうものを移す。そうして面積も十分余裕がある。こういうような大構想を立てるべきだ、こういうふうに考えるが、建設大臣のお考えはどうであるか。  それから運輸大臣にお伺いしますのですが、富士吉田まではたしか九十七キロだと思いましたけれども、東海道新幹線と同じような鉄道を引いたら、どのくらいの予算が要るのか、また時間は何分くらいかかるのか、これは設計しなければ出ないでありましょうが、東海道新幹線と比較してみてどんな見当になるか、これがおわかりになったらお伺いいたしたいし、もし大臣でおわかりにならなければ、関係局長からでも大よその見当をお伺いしたい、こう思うわけです。
  213. 中村梅吉

    中村国務大臣 先ほどこの問題につきまして川島国務大臣がお答え申し上げましたように、まことに傾聴すべき御意見とは思いますが、数百年来の歴史を持った東京でございますし、われわれとしましても、簡単に、まことにごもっともですとは、なかなか申しかねるような大問題であると思うのであります。そこで、この東京の過度集中を排除するためにはいろいろな手段を講じなければならないと同時に、私ども大局的に考えますと、日本の国は、産業的に東京と大阪が全国民からの魅力あると都市ということになっておりますから、はたして官庁だけが移転しましても、産業立地がそういうようになっておる東京の過度集中というものがなくなるかどうかという大きな問題もあろうかと思うのであります。どうしてもこの過度の集中を排除しますのには、排除するいろいろな考えられる手を講じますと同時に、地方にやはり魅力ある都市を、できるだけ産業立地を考えまして作っていく。それによって東北なり九州なり遠隔の地におられる方々が、直通で東京や大阪に出てこないように、やはり近くに魅力のある都市があるということが、私はこの二大都市への過度の人口集中を避ける非常な要点ではないだろうか。こういう意味から、現在御審議を願っております新産業都市建設促進法のごときも、今後の運営いかんによりましては、非常な効果を上げることができるのではないか、かような期待を持っておりまする次第で、私どもとしましてもいろいろな角度から研究はして参りますが、ただいまの御質問に対してまっ正面からお答えをすることができないことを御了承いただきたいと思います。
  214. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 岳ろくから東京まで東海道新幹線と同じようなものを引くとしますと、東海道新幹線は大体建設費、車両費全部含めまして一キロ約四億円でございますから、従って約百キロといたしまして四百億あるいは五百億程度と、かように存じます。もちろん新宿までにするか、都心までにするかで非常に違いますが、四、五百億、かように考えます。時間は新幹線の特急百七十キロ出すといたしますると約三十五分、普通急行の時速百三十キロといたしますと四、五十分、かように考えます。
  215. 中島巖

    中島(巖)委員 今運輸大臣の御答弁をお聞きいたしますと、東海道新幹線と同じものを引いて建設費は約四、五百億、時速百七十キロの東海道新幹線の計画であるから、これと同じスピードだとすれば三十五、六分、こういうお話であります。これらから見ましても、現在の混雑しておるところの三鷹付近から都心に入るだけの時間で富士山ろくまで行ける。そしてあそこは、先ほど申しましたような官有地やいろいろの県有地がたくさんある。そうしてここでいわゆる道路整備をやり、下水道をやり、そうして電線なんかも全部地下へ埋めまして、そして幅員百メートルのような道路をとれば、全く絵にかいたような理想通りの都市が建設できるわけであります。重複するようではありますけれども、先ほど申し上げましたように、東京都の交通審議会が、東京都の交通網を整備するだけで二兆四千億かかるということを昨年発表しておるのであります。すなわちこの公共投資は先行をすることによって非常に金が安く上がりますし、それからあとからあとからいわゆる後進性の公共投資をすると、そのギャップが大きければ大きいほど金がかかって効果が上がらぬことは、これは当然でありまして、実にその最も典型的なるものはこの東京都である、こういうように私は考えるのでありまして、東京都の内部改造よりは、ただいま申し上げましたような思い切った政策をとるべきだ、こういうように考えるのであります。この考えに対して建設大臣は、いわゆる東京都御出身の建設大臣として、また現在の地位でもって軽々しくこれに対して賛成だとか、御意見ごもっともだというようなことは言えぬでありましょうか、こういうような方向も研究していただきたい、かように考えるわけであります。  そこで、官房長官がお見えになりましたので、官房長官にお伺いいたしますけれども、この東京都の状態が交通問題を主体といたしまして非常な問題になっておる。極端にいえば動脈硬化の症状をすでに呈しておる。ことに交通問題に対しましては、毎日、新聞やテレビ、ラジオでいろいろなことを言っている。また警視庁も車種別乗り入れの制限を近く行なわんとして、これに対する反響が非常に大きい。政治問題になっておる。そして政府は、首都圏整備委員会で、昨年の三月でありますか、例の学園都市の七十万、大学などを移転するところの構想を発表した。あるいは最近川島さんの構想による政府機関七十八をどこかへ移す、こういうような構想を発表している。これはいずれも現在実らずにおるのでありますけれども、私の考えとしては、かかるこそくな小さな問題で年間三十万ずつもふえていくところの東京都の問題の解決にはならない。それからさらに世界の各都市の人口の増加を見ますに、すでにロンドンでは二十一年も前にいわゆる大ロンドン計画、ニュー・タウンに続く計画をその当時発表して、ロンドンの過度集中を防ぎ、そして現在は約一万二、三千しか年々人口増加になっておらぬ。ニューヨークはむしろ人口が減っておる。その他モスクワなどを見ましても、わずか一万二、三千の人口増加です。ところが東京は、すでに十数年にわたって三十万近い、正確に言いますれば二十八万人近いところの人口の増加を示しておる。これに対して政府が何らの政策を現在も持たぬということは、これは政府として大きな失敗である。そして、ただいまの質疑応答を通じてみましても、これに対して何らの政策の持ち合わせがない、こういうような状況下であります。  そこで、官房長官にお伺いいたしたいことは、現在首都圏整備委員会はありますけれども、これは行政委員会でありまして、いわゆる現状の改良程度の構想しかできないわけです。従いまして、政府は、この際、東京都が内部改造でもってはたして更生ができるものであるかどうか。あるいは政府がたびたび発表するような官庁都市だとか、あるいは学園都市だとかいうような、そういう構想も持たねばならぬものであるかどうか。持つとすれば、どの程度郊外都市をこしらえるべきものであるか。こういうようなものに対して、いわゆる民間の学識経験者や、衆参両院の議員を集めたところの調査会を設置して、その調査会によって抜本的な研究をして、その調査会の答申案というものはある程度政府を拘束し、この答申案に基づいて首都圏整備委員会に出して、首都圏整備委員会がその事業の推進に当たる、こういうようなことは現状に最も即した方法ではないか、こういうふうに考えますが、調査会をお作りになるようなお考えがあるかどうか、この点をお伺いいたしたいのであります。
  216. 大平正芳

    ○大平政府委員 御案内のように、古都圏整備法ができまして、この法律に基づきまして、人口の流入を伴う施設の新しい増設を防止したり、あるいはただいま十六地域あると承っておりますが、衛星都市と申しますか、新市街地の開発区域を指定いたしまして、そうして流入する人口をせきとめたり、あるいはそこに収容するというようなこともすでに始めておるわけでございますが、同時に最近におきましては、今御指摘がございましたような学校、研究所等の移転ということにつきましても実行の細目を検討いたしておるわけでございます。今御指摘の、新しい調査会を作りまして新しい構想で一つ進めたらどうかということでございますが、なるほど首都圏整備委員会は行政委員会でございますけれども、そこには首都圏整備審議会という大きな審議会を持っておるわけでございます。これには都知事初め関係県の知事、学識経験者、国会議員等最高の知能を集めておるわけでございまして、私どものただいまの考えといたしましては、この審議会を活用して、今述べられたような構想の御検討をいただくということでよろしいのじゃないかと思うわけでございますけれども、貴重な御意見でございますので、なお検討さしていただきます。
  217. 山村新治郎

    山村委員長 中島君、だいぶ時間が超過いたしました。御注意申し上げます。
  218. 中島巖

    中島(巖)委員 今官房長官の言われたようなことを先ほども川島さんからお聞きしたわけであります。  そこで、首都圏整備委員会と調査会との性格の違いなどを詳しく申し上げたわけでありますが、委員長から時間がだいぶ経過したという御注意もあり、私も国会正常化のために大いに時間を守りたいと思っておりますので、あまりくどくは申しませんけれども、とにかくこれ、だけの状態になったのでありますから、どうか政府も真剣に一つ取り組んでいただきたい。それがためにやはり調査会を設置して、そして首都圏整備委員会のいわゆる改良主義的なものでなくて、抜本的にどうすればいいか、こういうようなことを研究して、その結論によってある程度政府を拘束してやっていく。もうそうした動脈硬化のこの状態を革新的に歴史的に対処するには、これよりほかに方法がないと思うわけであります。ぜひ慎重に御研究をお願いしたい、こういうことを希望いたしまして、私の質問を終わります。
  219. 山村新治郎

    山村委員長 それでは委員会は暫時休憩いたします。    午後六時十分休憩      ――――◇―――――   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕