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1962-02-07 第40回国会 衆議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月七日(水曜日)     午前十一時四十七分開議  出席委員    委員長 山村治郎君    理事 愛知 揆一君 理事 重政 誠之君    理事 野田 卯一君 理事 保科善四郎君    理事 淡谷 悠藏君 理事 川俣 清音君    理事 小松  幹君       相川 勝六君    赤澤 正道君       池田正之輔君    井出一太郎君       今松 治郎君    臼井 莊一君       上林山榮吉君    仮谷 忠男君       北澤 直吉君    倉成  正君       周東 英雄君    瀬戸山三男君       田中伊三次君    床次 徳二君       中村 幸八君    中村三之丞君       西村 直己君    羽田武嗣郎君       八田 貞義君    濱田 幸雄君       藤本 捨助君    船田  中君       松浦周太郎君    松野 頼三君       三浦 一雄君    山口 好一君       井手 以誠君    加藤 清二君       木原津與志君    高田 富之君       楯 兼次郎君    辻原 弘市君       堂森 芳夫君    野原  覺君       長谷川 保君    山口丈太郎君       山花 秀雄君    横路 節雄君       田中幾三郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 植木庚子郎君         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君         通商産業大臣  佐藤 榮作君         運 輸 大 臣 斎藤  昇君         労 働 大 臣 福永 健司君         建 設 大 臣 中村 梅吉君         自 治 大 臣 安井  謙君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         総理府総務長官 小平 久雄君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    中野 正一君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君         大蔵事務官         (理財局長)  宮川新一郎君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 二月七日  委員山本猛夫君、中曽根康弘君、井堀繁男君及  び田中幾三郎辞任につき、その補欠として濱  田幸雄君、瀬戸山三男君、稲富稜人君及び西村  榮一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員瀬戸山三男君、濱田幸雄君及び西村榮一君  辞任につき、その補欠として中曽根康弘君、山  本猛夫君及び田中幾三郎君が議長指名委員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十六年度一般会計予算補正(第2号)  昭和三十六年度特別会計予算補正(特第3号)      ————◇—————
  2. 山村新治郎

    山村委員長 それでは、これより会議を開きます。昭和三十六年度一般会計予算補正(第2号)及び昭和三十六年度特別会計予算補正(特第3号)を一括して議題といたします。これより質疑に入ります。小松幹君。
  3. 小松幹

    小松委員 私は、日本社会党を代表して、昭和三十六年度一般会計予算補正(第2号)及び昭和三十六年度特別会計予算補正(特第3号)に関連して、総括質問を行ないたいと思います。まず第一に私が総理大臣にお伺いしたいのは、かねて、沖繩の復帰の問題ないしは施政権返還の問題については、沖繩の住民はもとより、われわれ日本国民もあげて強い熱望をしてきたはずでございます。現実にこれが具体化しておらぬのはまことに残念でございますが、そこで、あなたは沖繩復帰の問題、日本施政権を返す、こういう問題は、日本憲法改正ないしは再軍備体制の強化というものとからませて、これができなければ沖繩返還はできないという考えを持たれておるのかどうか、総理にお伺いいたしたい。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 沖繩施政権返還の問題は、国民こぞっての悲願でございます。機会あるごとに私は要求をいたしておるのであります。しこうして、返還についての条件憲法改正とかあるいは再軍備、このものとからみ合うということは、私は全然ないことだと考えております。
  5. 小松幹

    小松委員 それではさらにお伺いしますが、こういう、国民の朝野をあげて、全国民悲願である問題を、もしアメリカのいわゆる首脳部が来た場合に、あなたはどういう態度沖繩返還の問題について臨んできたか、あるいはこれから臨もうとするか、その意思とその方法をお聞きしたい。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、あらゆる方法であらゆる機会に常に言っております。しこうして私は、この返還を要求すると同時に、それまでにおきましても、沖繩住民の方々の福祉増進に積極的に力を進めていく、そうしてまた、アメリカもこれに協力するよう交渉していく、これで来ておるのであります。
  7. 小松幹

    小松委員 アメリカがこれに協力するという前提のもとで、日本返還前提として協力するという内容をお含みかどうか、その内容は再軍備あるいは憲法改正、こういうものとのいわゆる協力が必要なのかどうか、この辺をさらにお伺いしたい。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げたように、全然関係ございません。そういうことは私は必要事項とは思っておりません。
  9. 小松幹

    小松委員 それでは総理は、沖繩返還に関しては条件というものは何も考えていない、しかもその条件の、向こう協力してもらうがこちらも協力するというその中で、日本の再軍備体制あるいは憲法改正というものは露ほども考えていない。それではさらにお伺いします。あなたは自民党総裁でもありますが、自民党総裁として今度はお聞きします。その点は同一意見でありますかどうですか。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど来申し上げておる通りに、沖繩施政権返還につきましては、われわれの悲願であり、そうしてこれをどういう条件でということは私は考えておりません。これは私個人としても総裁としても、内閣総理大臣としても同じでございます。
  11. 小松幹

    小松委員 それでは、私は総裁としてここで池田さんにさらにお尋ねをしたいのでありますが、昨日自民党政調会長である田中角榮氏がアメリカケネディ司法長官会合した場合に、田中君は二つの問題を取り上げて、沖繩返還は安保と再軍備とがからまって、日本の再軍備あるいは憲法改正というものが条件になるのだ、こういうことを言われました。さらに第二としては、もしアメリカが中共、ソ連に巻き返すために、日本沖繩を渡すとなれば、日本の再軍備なりあるいは憲法改正をサゼスチョンしてくれ、こういうようなことを言われておるが、あなたはそれを党の総裁として御確認になるのか、それが党の方針なのか、その辺をお伺いしたい。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほどのお答えでおわかりと思いますが、沖繩返還につきまして、日本の再軍備とか憲法改正条件にするということは毛頭考えていないと、こう言っておるのであります。で、おわかりいただけると思います。
  13. 小松幹

    小松委員 池田さんはそうおっしゃるけれども、自民党主要幹部であるところの、田中角榮君は政調会長でありますが、その方がしかもアメリカの現在の首脳部司法長官会談をした際の公式の意見として述べられておるのに、この沖繩返還日本の再軍備憲法改正一体のものであるということを言われておるのですが、この点についてあなたは党の責任者として田中君の意見をどういうように考えますか。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 私はまだ田中君の意見につきまして、十分読んでおりません。知っておりません。従って田中君の個人意見にきまして、今私が調べずにとやかく申し上げることは私は差し控えたいと思います。
  15. 小松幹

    小松委員 これが単なる自民党の一代議士の発言ならば、それもそうだと済まされるかもしれませんけれども、党の重要幹部である政調会会長田中君の発言だから問題になるわけです。もしあなたがそれを聞いておらぬというならば、今この席で田中君を呼んで、あなたが聞く意思があるかないか、それをお伺いします。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 今即刻この席でということは、私はできないと思います。重要な予算案審議でございますから、十分調べてから後にお答えすべきで、まだその機会はあることと思います。
  17. 小松幹

    小松委員 この問題は重要だから、そうしてしかも深く考えることはないでしょう、あなた自身がはっきりしておるのでございますから。もし田中君があなたの意思と違うことを新聞に報道されたように言ったかどうかということをあなたが知らなければ、事は重大であります。これは国際的な問題ではありませんか。向こうは、ケネディ司法長官米大統領関係の人でありますが、この人の公式会談においてかようなことを言っているということは、これは即刻私はあなたが聞く必要があると思う。それをまだ聞いていないということは無責任じゃないですか。新聞を読まなかったのか、それとも意図的に聞かなかったのか、聞く必要がないと思っているのか、その三つをどうお考えになっているか。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 田中君が個人資格でいろいろ話しておるのを今すぐ取り上げてどうこうということは、私はする余裕もございませんし、その機会がないので、いずれ田中君にその真意を聞いてみたいと思っております。
  19. 小松幹

    小松委員 田中政調会長個人資格ではありません。はっきり自民党政調会長としてものを言っている。自民党の議員を十二人従えて、やっておるのです。それを次の機会に譲る必要はないと思う。これはこの席であなたが田中さんを呼んで、ここで一つはっきりして、この問題を取り上げたときにこういう問題をはっきりすることは、その瞬間にはっきりした方がいい。いつまでも延ばしてうやむやにするというよりも、この席上で田中さんをあなたが呼んで調べる必要があると思う。その点はっきりしてもらいたい。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 せっかく大事な予算委員会でございます。また昼の時間もあります。私は次の適当の機会に聞いてみようと思います。聞く聞かないは私の考えで、あなた方がお聞きになりたいというのなら、正式の手続でお聞き下さったらいいと思います。
  21. 小松幹

    小松委員 そういうものの言い方がありますか。あなたたちが聞きたいのなら聞け、聞きたいからあなたに聞いておるのです。それは単に田中君の問題じゃない、重大な問題ですよ。聞きたいなら田中君に聞けとは何事ですか。あなたは党の総裁ですよ。党の総裁が、政調会長の言うことをここで聞けというのに、聞きたかったら勝手に聞けということは何ですか。私はこれでは、この返答では審議は進められない。   〔「休憩々々」「そんなものの言い方   はない、休憩して呼べ」と呼び、   その他発言する者多し〕
  22. 山村新治郎

    山村委員長 静粛に願います。理事の諸君が相談をいたしておりますから、どうぞ静粛に願います。   〔離席する者多し〕
  23. 山村新治郎

    山村委員長 申し上げます。ただいま総理大臣から御発言がございます。
  24. 池田勇人

    池田国務大臣 毎度お答え申し上げますが、私は、田中君はわが党の政調会長という公式の資格でロバート・ケネディ氏と会ったのではないと考えます。自由民主党の四十代の人が、若い人の集まりというので、側人資格で会ったと思います。しこうして、その田中君の発言内容につきましては、私は十分知っておりません。しかし問題が起こりましたので、私は自分自身として、この予算委員会が済みましたならば、呼んで真意を聞くことは先ほどお答えした通りでございます。しかし今すぐここへ呼べ、呼んで確かめろとおっしゃいますから、大事な予算委員会でございますから、もうしばらくお待ちを願いたいということを言ったわけございます。それでもいかぬとおっしゃるから、それならば、何か呼ぶ方法をお考えになったらどうか。しかし私の真意は、個人資格でしゃべったかしゃべらぬことを、すぐこの委員会で問題にして、そうしてそれを参考人として呼ぶということはいかがなものかという気がございましたので、なかなかそういうことはやり得ないのが今までの慣例でございます。従いまして、しいてどうしても呼べというのならば、これは正式の手続で呼ぶのが至当だと思いますが、今までの慣例にも反しますので、こういうことは、私が本人を呼んでから真意を聞いて、そして午後の分ででも答えることが予算委員会の運営上適当かと、こう考えるのであります。
  25. 小松幹

    小松委員 総理の御答弁を聞いていますと、この問題はありふれた単純な問題だから、こういう気がまえのようでありますが、事は重大であります。これは国際的な問題、沖繩国民に与える影響も多いだろうし、われわれ国民悲願としておるところの沖繩復帰を、日本の再軍備というものとひっからませておる、そういうような発言を、今与党を形成して、政府を形成しておるところの与党政調会長が言うたのを、単なる個人意見だと言うて、これにほおかぶりをしていこうとする総理考え方は、私は最もいかぬと思う。単純な問題じゃないじゃないですか。これは問題によりけりです。問題によりけりですけれども、この問題は私はもっと重大な問題だと思う。しかも私的な会合、私的な会合と言うけれども、アメリカ司法長官ケネディも、遊び半分に日本へ来たわけじゃございません。ちゃんとそれはそれなりに、政治的意図なりあるいは国際的な一つ目的を持って来ております。その目的を持って来ておるケネディに対して、自民党政調会長目的を持ち、あるいは遊びに行って会談したんじゃないと思う。これは公式の会談である。あるいは正式の会談であってもいいはずです。その公式の席上においてこれを取り上げられたから新聞にも書かれ、あるいは私たちも事が重大だというので取り上げておるわけであります。これを即席でなくて、あとから聞いた、まだ新聞も読まなかった、こういうような態度でいくならば、私はこのまま審議はできません心だから、今の総理発言に基づいて、私は委員諸公考えて返事をしますから、その間休憩をお願いします。
  26. 山村新治郎

    山村委員長 どうされますか。小松さん、質問をやめられるのですか。
  27. 淡谷悠藏

    淡谷委員 議事進行について発言を求めます。今の小松委員質問に対する総理答弁は、まことに穏当を欠いたと私は思う。従って、たとい個人で言ったものにせよ、個人と公人とを巧みに使い分けるということは、これは非常な波乱を招きます。少なくとも政調会長という与党の大幹部が、外交にも関係がある、特に日本憲法にも関係があることを軽々しく発言したということについては、総裁としての池田勇人氏にもこれは大いに責任があると思う。従って、今の御答弁に基づきまして、午後の審議劈頭において、田中政調会長と会って、その発言を確かめた上で、満足のいくような御答弁を願いたいと思います。
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 まことにけっこうな議事進行でございます。私もそういう考えを持ちまして、田中君から十分意見を聞いて、そして書面にいたしまして、次の劈頭に私から田中君の真意を申し述べることにいたします。ただ、ここで申し上げましたことは、先ほど言っているように、私は総裁とし、そして党員といたしまして、沖繩施政権返還につきまして、再軍備とか憲法改正などということを条件にすべきものでないということは、はっきり申し上げておきます。
  29. 小松幹

    小松委員 では、この問題はあとにいたしますが、ちょっと、この問題を一応あらかた含めて、もしあなたがすぐ、それから田中政調会長に会うならば、私の意見も、一つこういう意図だということを聞いて行かれたいと思うのです。特に田中氏が言われておる二点で、沖繩返還日本の再軍備憲法改正、さらに日米共同防衛体制とが確立せなければできない、こういうことを言われておる。もう一つは、これは最も悪いことで、しかも非見識なことであると思いますが、アメリカ日本沖繩を返すにあたって、憲法改正、再軍備アメリカ日本に要請せよ、提起してもらいたい、こういうことを言っておる。結局言うならば、アメリカ日本に再軍備憲法改正をサゼスチョンせよ、こういうようなまことに売国的な言い方である。非見識もはなはだしいと思う。子供じゃあるまいし、一国の国を代表するようなケネディに、日本の多数の政党である、政府を形成する与党政調会長の言うべき発言じゃないと思う。こういうことは、俗論で言っても、これは仕方がないと思うけれども、俗論とこういう会合の席上の言葉は違う。特に第二項は、日本にそういう問題を提起してサゼスチョンしてこい、こういうような言い方というものは、まことに私は慨嘆にたえない。これは与党、野党の問題じゃない。国民として、沖繩返還というものは、これは長い歴史の過程における戦争というものの落とし子になって沖繩がああいう形になっておるのだから、われわれは何としてもこの沖繩住民をわれわれの目の黒いうちに返還さして、日本の中にあたたかく抱きかかえていかねばならぬと思えばこそ、今日まであらゆる努力をしてきておる。アメリカが再軍備をサゼスチョンするならばというような考え方は、私はまことにざんきにたえぬ考え方だと思うのです。その点を強くあなたに真し上げて、田中氏の意見真意を承りたい。私もこれを見たときに変に勘ぐりました。ということは、何で田中君は今こんな問題を突如として出したのであろうか。何か作為があるのか、疑ってみれば、沖繩の問題について、アメリカも何だかそのゆえに日本に来たのではないか、こういうように疑わざるを得なくなってくるわけです。それを総理に聞けば、何の、それは個人発言だと言うから、それほど勘ぐることもないと思うけれども、事は重大であります。どうかその点について、一つ十分確かめていただきたいと思います。  そこで、この問題は一応中断いたしまして、経済問題に移りたいと思いますが、総理は最近この席上で、経済は長い目で見てくれ、長い目で見てくれということを繰り返し繰り返し言っておるようでありますが、この発言を承りますと、どうも責任のがれの面葉としか受け取れない。予算は単年度である。予算は単年度で、経済政策も単年度で出してきたと私は思うのです。そうして、ちゃんと経済見通しなりあるいは予算なりを立てて、こうなるこうなると数字まであげて、一応一年間の見通しなり経済政策の連行としてやってきた。それを失敗したからというて、長い目で見てくれ、長い目で見てくれというのは、どうも総理の逃げ口上に聞こえるおけなんです。経済学者ならば、十年とか五年とか、長い歴史を見て、その経済学の中でまとめ上げることもできると私は思う。長い目で見ることはできると思う。あるいは会社の社長さんだったら、いや、今は貧乏してちょっと金を借りておるけれども、まあ三年先には何とかなるからということで、五年くらいの期間を持つこともできると思う。ところが、一国の総理といものは、私は、日本国民一億のトップに立っている人だと思う。しかも、政治というものはきびしい。あなたのよき政治が行なわれるか、あるいは政策失敗するかというのは、長い目では見られない。その日その日が国民生活に直結しているわけです。その国民生活にその日その口がはっきり直結しておる場合に、総理の言うべき政治責任は、長い目で見てくれというようなことでのがれることがいいのかどうか。私は、もう少し政治責任というものをはっきりしていかねばならぬ、こう考えますが、総理は、一体経済政策だけは何年間の間に見てくれと言っておるのですか。長い目で見てくれというのは、一体何年間に総理政治責任をとろうとするのですか。その点を二つだけお伺いいたします。
  30. 池田勇人

    池田国務大臣 経済というものは、その日その日の現象に惑わされては施策を間違えるのであります。しかし、それだといって、その日その日の現象を無視するわけにはいきません。私は、十年待ってくれとか、五年待ってくれとか、三年待ってくれとかいうことを言っておるのじゃございません。たとえば昨年の九月、十月、あるいは十一月ごろになって国際収支が非常に赤で、日本の信用が地に落ちて十二億ドル切れる、あるいは中には九億ドル切れるというような説もあったのであります。もう足元から烏が立つような議論が行なわれました。しかしそれは当たっておりましょうか。私はそうではない。今年度末におきましては、十四、五億ドルの外貨は確保すると、その方向で言っておる、そうして何ぼ長くても、とにかく秋ごろまでには国際収支見通しはつきます、こう言っておるのであります。私は何も、経済はもちろん、一般政治責任をのがれようなんという気持は毛頭ございません。日夜自分責任において、私は国民協力を得ながら進んでおるのでございます。長い目でということは、十年も五年もという意味じゃはございません。その日その日の実情に幻惑されることなく、長い目というのは、この落ちつく先はこういうふうになってくる、こういうので言っておるのでありまして、五年、十年を言っておるのではございません。
  31. 小松幹

    小松委員 私は、予算を出して経済政策を出してきた以上は、一応予算年度主義に基づけば、一年の経過を見て論ずべき問題だと思うのであります。そういう意味から考えたら、何だかあなたは失敗をしていないような口裏でありますけれども、あなた自身施政演説で言ったように、タイミングを失したのだ、あらかじめ起こり得るべき問題を予測できなかったのだとみずから顧みて反省しておるときもある。同時に、国際収支は一応年末までには何とか十五億ドルを確保する、こう言っておるけれども、それはあなた借金でしょう。だれだって借金すれば大かたとんとんになります。借金までして、しかもその中には多くの経済政策失敗がある。単に単純にこう言っておるわけではないでしょう。あなたは所得倍増あるいは経済成長と大へんな勢いで言ったのだけれども、途中で半年たたぬうちについに抑圧政策に変わってきたでしょう。そうして実際はデフレ政策に変わってきて、金利体系はこわれ、物価は上がる、この一年間、何一つとってもあなたが経済施策に大へん成功したという例はないでしょうが。あなたはいかにも何だかそれから先の力がいいのだ、今までのところは失敗しておるが、先はいいのだ、まあ先を見てくれ。芝居だったら三番叟があって、あとは本舞台が出てくるのですけれども、現実政治というものは、そんな、三番叟があって本舞台が出てくるのではない。毎日々々が本舞台です。あなたが経済学者ならば、それは数字を当たってどうということはあるが、あなたは政治最高責任者ですよ。あなたは国民の一切をまかせられておると言ったじゃないですか。生かすも殺すも私の一存だというふうに過去も言ってきた、そういう大なる責任がある。実際総理大臣というものは最大の権限を持っておる。天皇以上の権限を持っておるじゃありませんか。その者が一年間の経済政策を顧みて政治責任をはっきりするということは当然だと思うのです。それをあなたははっきりしていない。五年も十年もではない、それなら何年ですか。一年か二年に責任をとるのですか。あなたは実際そういう責任を感じていませんか。どうも感じていないように思うが、その点どうなんですか。
  32. 池田勇人

    池田国務大臣 責任を感ずるとか感じないとかいうことは、私の答弁でおわかりいただけると思います。今の私の施政演説、起こり得べき事態とこれに対します対策が十分でなかったということは認めるけれども、私の経済政策、いわゆる所得倍増基本政策は変える意思はない、こう言っておるのであります。私は起こり得べきことも言っております。もう昨年の今ごろ、設備投資が非常に進み過ぎた、何とかこれを押さえねばならぬということは考えて、四、五月ごろからやるということは言っております。そうして輸入を押さえる対策も講じました。そうしてまた今年度末には、外貨の保有高は十四、五億ドル、こう言っておった。借金をすればだれでもできるじゃないか、こういうおしかりでございますが、これは日本経済が設備拡張その他ずっと生産力を上げてきておる。ちょうど個人経済で言えば、工場その他原材料を少し買い過ぎて、そうして工場を大きくし過ぎた、こういうときに借金するのはあたりまえです。しかし、なるべくなら借金も少なくするように、従って工場の拡張もほどほどにしようというのが、その通りにいかないから、国際金融を確保する意味において、そうして日本の築き上げた国際信用によって、みんなが安心のいくようにすることは当然なことです。これは、私は借金もいたしますが、預金もいたしております。そうしてまた、貸付金も相当あります。投資もあります。私は、一億ドル近い赤字がある月に出たからといって、何もそう騒ぎ立てることはない、ゆっくり見ていって下さい、こういうのであります。私は、十分ではなかったけれども、私の政策に大した誤まりはないと考えて、そうして国民とともにこれを切り抜けるように努力いたしておるのであります。
  33. 小松幹

    小松委員 私は借金をしたことをとがめてはおりません。しかし今の発言はおかしいと思う。私はとがめぬけれども、あなたは借金するのはあたりまえだと言う。借金するのがあたりまえだという常識はどこから出てくるのですか。経済の原則は、借金をすることが当然の原則になっていますか。そういう言い方が問題だというのです。一国の総理が、借金するのがあたりまえだというようなことを、正式の会議場で出すから問題なんです。できるだけ借金をせないようにしていくのが当然の考えじゃないのですか。何も私はそれを責めておるのじゃない。借金をしたから悪いということは一つも言うていない。しかし借金するのがあたりまえだなんということになれば、私も開き直ります。第一、あなたは施政演説の中でも、タイミングを失したけれども、私の経済政策の進路が誤まりであるというような見解については承服できない、こういう言い方をしておる。これは野党の私たちに言うならいいですよ。総理、承服できないといって社会党に向いて言うなら仕方ないが、施政演説というものは国民に向いて言うもんですよ。それに何ぞや。経済政策に文句を言うのは承服できぬというようなことを、国民に向かってあなたは言っておる。それがあなたの一番の欠陥の、いわゆる傲慢な態度なんです。経済政策を論ずるならば、私はタイミングを失したけれども、——こういうように裏から言わないで、もう一回表から前向きに言ったらどうなんですか。承服できないなんということを国民の前でぽんと言うよりも、もう一回経済成長政策を続けてやっていくとすなおに養うたらどうなんです。それをすなおに言わないで、おれに文句を言うことには承服できないというようなことを施政演説で言っておるじゃありませんか。こういう態度そのものが、あなたの基本的な問題として問題になるわけです。経済はおれにまかせろ、まかしてみな物価は上がる、こういうようなことだからいろいろ国民は追及しておる。そうではなくて、施政演説で、いやそういう御批判もありがたいけれども、私は私の信念でもう一回やると言うなら、だいぶ読みごたえがある。聞いても聞きいいですよ。それをなんか居直っておるじゃないですか。まっすぐ言わない。まっすぐ言わないで裏から言うておる。反語を使うておる。私は、また高度成長政策をやるのだということを、裏から言うておるだけじゃないですか。国民に向いてそういう施政演説のやり方がありますか。社会党に言うんじゃないですよ。こういうことを考えると、あなたの政策は常に無理をするのだ、どこかに無理をする。かつて日本に米がなかったときには、もう米のない貧乏人は麦飯を食えと言った。これは無理を言うたんだ。ドッジ・ラインがしかれたときにディス・インフレ政策をやった。ところがあなた自身は、ディス・インフレ政策をとりながらデフレ政策をやって、中小企業はぶつ倒れた。中小企業の五人や十人は倒産しても仕方がない、こういう無理を言うてきた。今日物価はどんどん上がってきておるじゃありませんか。この前あなたの与党であるところの田中さんの発言でもわかるように、おかみさんが菜っぱ一本あるいは大根を半分に切って買うという話が出た。こういうことを言うと、こういう居直り方をすれば、菜っぱが高ければ軍でも食えといいかねないですよ、この態度は。こういう何だか思い上がった態度というものは、私は総理の最大の欠陥だと思う。それが一年間に大へんいい政治をやっておればいいですよ。ただ先の見通しがどうだこうだと言うて、先の見通しはまだわかりませんよ。とにかく過去の実績としてはあなたは一応落第です。何を言うても落第です。はっきり落第です。私が言うんじゃない、数字が示しておる。論より証拠、今度出した新しい三十七年度予算、いわゆる経済見通しでもみずから九%の成長率を五・四%に落とされておるじゃありませんか。あなたは落としたくなかったかもしれぬけれども、落とされておる。IMFの国際通貨基金の借金をするためには、どうしてもここまで落とさなければしょうがなかった。外部的な面子にとらわれて落とさなければしょうがない。鈴木理事が帰ってきて、結局この高度成長政策で無理をしたって金は借り出せぬぞということになったから、あなた自身も、そのときの発言を聞いてみると、日本は国際的にものを考えねばならぬから、こういうような言い方をして、経済企画庁の案、通産省の案を全部押えて、結局五・四%の%に落としたということは、みずから語っておる、私はそう思う。あなたが幾ら強弁しても、私はこの前の臨時国会でも成長率は五%の線にしかならない、こう言ったのを、みずからあなたは最後に五・四%に落としたということは経済政策において失敗したんだ、こういうように考えるが、あなたはやはりそういう傲慢な態度で、これを乗り切っていこうと思うておるのか、御答弁をお願いします。
  34. 池田勇人

    池田国務大臣 施政演説をお読み下さればおわかりと思いますが、私の経済政策が進路を誤ったという見解には承服できない、こう言っておるのでございまして、私は誤ったという議論に対して承服をしない、こう言っておるのであります。私は文章をこういうふうに書いた方が、はっきり私の気持がおわかりいただけると思って書いたのであります。これについての批判は私は甘んじて受けます。私の真意はそこにあったのであります。  それから三十七年度の五・四%の成長率は失敗だったと、こうおっしゃいまするが、私は経済政策というものはこういうものなんだ、だから九%というのは三年間平均九%でいくと——しかも昭和三十八年には、十七兆六千億を目標に党は立てておるのであります。そのとき一〇%も、名目で一四%も上がった実情を見て、平均九%といったのを、どうしても九%で三十七年度もいかなければいかぬというような案を立てたならば、それは私は経済政策を知らぬとおしかりを受けてもよろしゅうございます。しかし名目で一四%も昭和三十六年度にいったのに、平均九%といっておる私の公約上からも、これは五%程度に落とすのがほんとうなんです。だれがどうこう言ったじゃございません。これが各省大体〇・五%から一%くらい違いますが、大体五、六%というところが、これは当然出てくることなんで、私が昔から言っておることをずっとやっていけば、私はこれをしたことが進路を誤ったとか、失敗だったとかは自分考えておりません。
  35. 小松幹

    小松委員 あなたの高度成長政策は、当初はさようなものではなかった。目的を示して大体七%の成長率平均をとっていって、経済企画庁はこれでいこうと、自信満々だった。ところがあなたは当初三年間は九%の成長率でいくんだと大みえを切ったじゃありませんか。三年間はという条件がついておるじゃありませんか。それを今になって、あのとぎに最初は一一%、二年目には五%にするんだなんて言いはしなかったでしょう。今になって具体的にそういう現実が起こったから、そういうことを言うのであります。そこで私は高度成長政策所得倍増政策というのは、これは机上のプランとして参考資料にはなる。しかし現在の日本経済政策としては不適当であると申し上げます。なぜなら計画の初年度、しかも初年度も初めの方に大きくこの計画が狂うような経済計画は、それが五年、六年やった後に狂ったというなら、まだ話がわかるけれども、十年計画の初年度の半年目に狂うような経済計画は、今日世界のダイナミックな律動の中に、はたして立ち行かれるかどうか、日本の管理通貨の中で、温床の中で育って、無理やりに無理をしていくならばあるいはそういうことも、あなたのような無理をすればできる可能性も出てくるかもしれぬ。それもなかなか容易ではない。ところが、もはや日本はことしからそういう温床の中でいくわけにはいかない、そういう情勢が出てきておる。貿易自由化あるいは関税引き下げ、こういうような世界の各国々との、もっと動的な交流が出てきておる。そういうときに、この半年でつぶれるような経済計画で、これから十年もいこうなんということは、もってのほかです。これは間違いです。あなたが何と強弁しようと、それはもうこれは参考資料にしかならぬ。少なくとも日本は輸出貿易というものを中心に成長政策考えていかなければならぬ。投資やあるいは在庫や、GNPだけでものを言うても始まらぬ。何というても国際均衡における輸出の増加ということを、ほんとうに頭の中に入れて成長政策考えて、そこから出た高度成長政策なら、これは味があり賛成もできるが、そういうところは全然ほったらかしにして、単なる計数的な高度成長政策というものは、私は意味ないと思う。これはどこだってそうでしょう。アメリカケネディが今度成長政策を出したが、やっぱり五・四%程度、OECDの第一回のパリ会議でも、一九六一年の協議でも、経済成長率というものは五〇%を十年で、これは年率に直すと五・四%程度のものなんです。そんなに九%も七%も毎年毎年いくような、そういう経済計画なんということは、これは特殊的な事情、そのときの、去年、おととしの特殊的な事情であり、これから先はそう簡単に問屋がおろさぬ、そう考えざるを得ないのです。この辺についてあなたは一体どう考えるか。封鎖された日本経済のときと違って、将来はもっと国際的にダイナミックな経済体制に入っていく場合に、これで押し通せる自信があるのかないのか、もう一ぺん聞きたい。
  36. 池田勇人

    池田国務大臣 十カ年倍増計画というのは、わが党ばかり言ったのではございません。社会党さんも民社党さんもおっしゃったと私は記憶しております。ただ社会党さんは計画経済でやっていくのだ、こういう前提があるようでございます。計画経済でやって、そうして十年間に倍増ということは私はどうかと思います。自由主義経済の方が伸び率がいいということは、私は確信を持っております。しこうして日本の十カ年倍増計画というのはとんでもない話、アメリカの五%というのなら妥当だと、こういうお話でございます。またOECD二十カ国の十年間五割増し、しかしその数字をおっしゃる前に、アメリカは今までの成長はどういう数字でございますか。二%とか二・五、六%でずっといっております。それを今までの成長率の倍にしようとしておる。またイギリスその他につきましても、今までの成長率の実績よりも、その成長率を倍にしようとしておるのであります。日本はどうでございましょう。今までの成長率は十年間に倍です。私はこの倍の実績を、今後はなかなかむずかしいけれども、その実績を保っていこうというのでございます。外国の例をごらん下さい。日本の実績をお考えになってみましたならば、私は政治の目標として、しかも勤勉であり、頭のいい日本人が、世界の先進国に比べて所得が七分の一だとか、あるいは三分の一だとか、こういうふうなときに、十カ年倍増計画を立てたということは、私は無理ではないと思う。もちろん輸出も必要でございます。日本の置かれた立場からいって、輸出は絶対必要でございます。ことに今のようなときは必要でございます。しかし、日本経済全般の均衡ある発展には、やはり国内の国民の健全な消費もまた忘れることはできない。私は両方見ながら、輸出にできるだけの力を向けて、そしてこの計画を推し進めていこうというのが、われわれの考えであるのであります。
  37. 小松幹

    小松委員 アメリカの例を引かれましたが、アメリカは貿易の収支は常に黒字です。アメリカの泣きどころは援助、いわゆる経済援助の問題が泣きどころになっておるのです。だから国際収支のドル防衛というものを打ち出したのは、国際収支のいわゆる経常収支の赤じゃない、いつもこれは五十億ドルの愚なんです。それの経済成長日本経済成長は違う。どちらかというと日本の場合は、英国の経済成長の型をとっている。ところが英国はずっと低い。それを上げようとしてもなかなか上がらないのが英国の実情なんです。島国である英国、島国である日本の場合、しかももっと条件アメリカと違う。資本主義社会におけるところの経済成長というものは、これは十年の波もありましょう。経済学的には十年の波もある。あるいは三年なり二年の経済循環の法則もあると思う。あるいはかって経済企画庁が山高ければ谷深しというようなことも言ったように、その谷間はある。これは間違いない。経済成長は、その中にあっていかにしてその谷の深さを埋めていくかという、安定均衡の成長であってこそ国民に喜ばれる。それが山が高くて、谷が深くて、ことしはこうだけれども来年はどうなるとか、株に投資したら、とたんに株がすとんと下がって、自殺をした婦人もあるじゃありませんか。こういうような政策というものは、高度成長政策のムードから出ておる。大体公社債投信でも行き詰まったじゃありませんか。あなたにあとから聞こうと思うが、公社債投信の市場を去年一月に始めましたけれども、三ヵ月もたたぬうちに、すでに公社債投信市場というものはつぶれ去ってしまって、もう流通ができぬので膠着状態になっておる。株は、証券は大暴落をして——最近はだいぶ上がってきましたけれども、こういうように波があり、谷がある。この間に経済成長政策というものは、いかにしてその谷を埋めていくかということが大事なんです。特に日本の場合は私はアメリカと違うと思うのです。日本の場合は中程度の工業国、あるいは高度の工業国としてもいいが、何といっても鉱工業の生産が、いわゆる原材料というものを全部輸入に仰いでおる。鉄、石油あるいは原綿、こういうものをすべて輸入に仰いでおる。しかもその輸入に仰ぎながら、なおかつ輸出を拡大していかなければ日本というものは成り立たない、そういう宿命なんです。日本経済構造の宿命なんです。日本に、石油が出、鉄鉱が出るならば、あなたが言うような経済成長政策というものは可能であるかもしれぬ。しかし、今は何といっても鉄鉱が日本に出るじゃなし、石油が出るじゃなし、綿ができるじゃなし、工業国として発展するためには、どうしてもこれを輸入しなければならぬならば、まず成長政策の基盤というものは、この輸入原材料を、どう輸入で確保して、国際収支に合うところの輸出をするかというのが、まず最大で、最後のひっくくりなんです。これを忘れた経済成長政策なんて意味ないと私は思う。この点をあなたは少し間違っておる。そこの辺がどうしてもこれはあなたの論理あるいは下村さんの論理でもわかるが、いわゆるあなたの論理の中には、国際均衡と国内の均衡をとった場合には、国内の需要を増大すれば国内均衡で繁栄は持てる、輸入依存度は一〇%ないしは二五%程度に見れば、何とか輸入依存度は済むから、まず内需をどんどんあおって、そして内需の拡大をすることによって経済は成長するんだ、国際均衡よりも国内均衡の方が重大だという論理で進めてきた。ところが今やこれは行き詰まった。少なくとも今までの封鎖経済ならば別だ。ところが国際的にもっと門戸を開放して、そしてユーロ・ダラーを入れ、あるいは短期資金を入れ、あるいは国際通貨基金から借り入れをするというダイナミックな国際社会においては、国際均衡というものを中心にものを考えなければ、私は繁栄も何もそのときそのときの出たとこ勝負になると思う。ここにあなたの経済成長政策の論理的な最大の矛盾があったと思う。この点はどう考えますか。輸入依存度をどう考えているか、あるいは国内均衡か、国際均衡かの過去のあなたの所論についてどう考えるか、お尋ねします。
  38. 池田勇人

    池田国務大臣 国内均衡は国際均衡と離れて存在するというような見方をすることは、大へんな誤りです。国際均衡なくて国内均衡はございません。日本はお話のように、貿易で立っている国でございます。これは当然のことで、私は、そういう別の問題として考えたことは今までございません。  それから輸入依存率、こういうことをいろいろあれいたしますが、輸入依存率というものはそのときによって違います。また依存率も、国内の輸入原材料の在庫等から考えなければならぬ問題でございます。私は輸入依存率が一がいにどれだけという数字は、なかなか出にくいと思います。
  39. 小松幹

    小松委員 あなたの答弁は私の答えにはなっていませんけれども、さらに私はあなたに申し上げますが、あなたは日本の買切依存度の評価を軽く見て、内需の拡大と国内均衡の上に高度成長政策というものの夢を託したのだ。それは夢だったのだと私は極言したい。その夢は善なる夢であったと思う。まことにいい夢であったけれども、それは甘い夢だ。内需拡大という国内繁栄を中身に持った高度成長政策であったがゆえに、こういう今日のようなシビアな現象が出てきた。第一国内がどんどんわいてくれば、輸出は、輸出マインドも加わらなければドライブも加わらぬということは当然なんです。それをどんどんドライブをかけていかせるためには、そういう甘いムードではできない。もしこれから先あなたが今までのような甘いムード、夢を持って経済成長政策を落とさぬように何か面子だけでやっていくならば、これは国際均衡はまだ長引きますよ。のみならず、私は輸出という力はどこにも出てこないと思う。アメリカケネディが大統領になって、何もかも全部アメリカ国民にさらけ出して、アメリカこそドル防衛をしなければならぬ、ドルを防衛せねばならぬと、世界に訴え、アメリカ国民に訴えたと同じに、あなたはやはりこの輸出というものを最も重大に考えて、訴えるだけの謙虚さと気魄がなければならぬ。それに何かこう居直ったような、私の経済政策の進路は誤っていません、文句を言うのには承服できぬというような、そういう出し方の経済成長というのは、私は再びまた失敗すると思う。経済成長見通しをとってみても、これは総理に聞いても企画庁に聞いてもいいが、今鉱工業生産は大体去年の十二月から、どんどん落ちていく情勢でしょう。これは落ちていったらどこまで落とすつもりですか。総理、それはどこまで落とすか。
  40. 池田勇人

    池田国務大臣 おととしの十二月と去年の十二月と比べますと、大体一割五、六分くらい上がりております。二割近く上がっております。今三十年を一〇〇にいたしまして、十二月は二九九でございます。これは月の換算にしまして二九六、七だと思っております。十二月は二九九だった。だから去年に比べますと二割近く上がっておる。だから、これがどの程度に落ちるかというと、私は落ちていくと思います。十二月はちょっと十一月より落ちている。どの程度に落ちるかということは、これは銀行の貸し出しか、あるいは企業者の考え方等による。政府としては、大体落ちていくだろうという見通しでおります。横ばいでいくか、あるいはある程度落ちるかというところでございます。大体閣僚内でもある程度……(小松委員「いつまで落ちるかと聞いておる。」と呼ぶ)いつまでも落ちるかということは、計画経済ではないのでございますから、われわれは落ちていくことを期待するというところで、予算経済政策を立てている。どの程度まで落ちるかということは、これはだれにもわからない。見通しとしましては、横ばいから落ちる。そうして何月ごろまで落ちるかという問題、まあ三、四月の説もあります。五月、六月ぐらいまでも落ちる。ただ、ここでこの前議論いたしました輸入素原材料につきまして、ずっとふえ続けております。そうすると私は、輸入原材料消化のため、あるいは操業率の確保のためとかいうので、あまり落ちないんじゃないかという気がしておりますが、われわれとしては、ある程度落ちる。二九九がどの程度まで落ちますか、これはなかなかむずかしいことで、責任ある地位としては言えませんが、横ばいか、さもなければ下降傾向を四、五月ごろか六月まではとるんじゃないか。それからだんだん上がっていくんじゃないか、こういう見方をしております。
  41. 小松幹

    小松委員 経済企画庁長官にお尋ねいたします。鉱工業生産はどういうふうになっていくのか、そこら辺をはっきり伺います。
  42. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 大体三十六年が、鉱工業生産におきまして、三十五年に比べまして一九%くらいの水準増になっております。内訳を申しますと、機械工業が三一%、鉄鋼業が二五%、非鉄金風一六%程度でございます。そこで、今後の三十七年度の予想をいたすわけでございますが、御承知の通り抑制政策をやっておりますので、むろん今までのような伸びを期待するわけにはいきませんし、むしろある時期には、生産そのものが低下するという状態も起こってくると思います。従いまして、年間を通じてどの程度に予想をするかということは非常に困難な問題でございますが、われわれ全般的な経済の抑制政策をやっております上から見まして、大体五%半ぐらいな伸びが、年間を通じて予想されるわけでございまして、まず申し上げましたような輸入、輸出の努力目標を置いて、それが達成する過程においては、その程度ではないだろうか、こういう考えでございます。
  43. 小松幹

    小松委員 経済見通しによりますと、大体今現実数字は下がっております。これを経済見通しでとれば、大体年率一〇%程度予想より下がる。経済企画庁の藤山大臣はその底をいつか言わなかったが、いつまでも底がないというわけはないと思うのです。同時に、在庫の食い減らしもしておると思う。これは原材料の輸入を制限もしておる。それだから在庫は食ついぶされつつある、あるいは原綿のように食いつぶしておるのもある。そうなれば、一体いつが鉱工業生産のはね上がる時期か、あるいは在庫が減って食いつぶされて、そうしてどうしても在庫投資をせねばならぬような時期がいつくるのか、これを聞いている。
  44. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今のお話の原材料の在庫を、大体どの程度の時期に食いつぶしていくかということでありますが、原材料の在庫の数字というのは、実は非常に正確には把握しにくいものでございます。ただ昨年夏に比較的原材料の在庫というものが、思惑的に多かったのではないということを申しておりましたけれども、今日では、やはり原材料が引当あったのだという結論になっております。そうして現状では、それを食いつぶしていく。従って、今のような生産がまだあまり落ちておらぬ状況から見ますると、輸入の方の状況からあわせ考えまして、原材料を食いつぶしつつあるのじゃないかというふうなことが予想されるわけであります。従って、そういう状況でございますれば、原材料の見積もりというものがどの程度になるかによって、食いつぶす時期あるいは生産の数壁等とかみ合わせましてきまっていくわけでございますが、今の大局的な見通しからいえば、やはり五月前後までは原材料の食いつぶしということが行なわれるのじゃないかというふうに、われわれは見ております。ただ正確な数字的な裏づけというものは、先ほど来申し上げておるようなことで明確でございませんから、若干予想的なものにならざるを縄ないのでございます。
  45. 小松幹

    小松委員 五月、六月が底になって、大体それまでに鉱工業生産も下がるが、その間には在庫も食い減らしをして、だんだん減る。そうなった場合に、五月、六月、あるいはそれが通産省の発表では、けさの朝日新聞では少し延びる、七、八月ぐらいになるのだと、こういっているが、まあ通産省と企画庁はだいぶ意見が違うようでありますけれども、それは予測ですから、意見が違うのも当然あり得ることだと思うが、いずれにしても五月か六月、七月、八月ごろには一応在庫投資の時期に入ってくると思うのです。  そこで、これからが問題なんです。これまでは何とか調整の段階でいくと思うのです。数字を見ながら一喜一優していればいいでしょう。ところが、これから在庫が減って在庫投資をするようになった場合に、一体どの程度の輸入を認めていくか、そこが問題だ。私は、今の段階では、この反動的な輸入の在庫投資が非常に大きな力でいくのじゃないか、今の五・五%の成長率をもっても、相当に輸入というものが五月、六月、七月以降から上がってくると思う。ところが池田総理の言うような高度成長政策の基本をとっていけば、私はもっと輸入がふえていくと思うが、この辺の輸入のとり方によってどうなるのか、これを総理にお伺いしたい。
  46. 池田勇人

    池田国務大臣 小松さんのおっしゃる在庫投資というのは、輸入素原材料の在庫投資でございますね。これは輸入素原料の在庫投資の状況をどうごらんになっておるかということが、先決問題だと思います。絶対輸入量は、やはり生産の増強によりまして相当ふえております。三十年ぐらいに比べまして二七〇−二八〇と思っております。そうして生産が伸びるにつれて輸入原材料もふえておりますが、その在庫率は先月は一〇四です。そうして今月は減ってくると思ったところが、きのうかきょうの新聞で一〇五・六になっております。輸入原材料の在庫率が上がっておるわけです。これはどこに原因があったかと申しますると、われわれは去年の春から夏にかけての輸入に対しまして、そう思惑輸入はなかったと思ったのですが、かなりの思惑輸入があった。これはこの前議論になりまして、二億ドルぐらいあったのじゃないかというようにいわれております。なぜかというと、それは統計の不備もありましょうし、あるいは揚荷の荷役の関係もございましょうし、いろいろな点がありまして、閣僚間では少なくとも二億ドルという程度になっております。しかしこの一月の通関数量を見ますと、かなり多いのです。だからこの一〇五という在庫率は、日本の今までの輸入原材料の在庫率の最高が、ある一カ月が一〇七だったと思いますが、それに次ぐものでございます。在庫率が一番低いときは去年の一月で、九一、二というところもあるのでございます。そこで一〇五という二番目の最高の在庫率を食いつぶす、食いつぶすといって、どこまで食いつぶすかというのが問題なんです。一〇〇になるか、あるいは九七になるか、最低の九一、二まではいかぬでしょう。そこをどう見るかということは、これからの生産の状況その他で、まあ意見は違うでしょうが、六月になったら今度はまた在庫が非常に減って、九二、三までには減らぬと思いますが、どの程度の輸入が行なわれるかということは、これからの生産の増強と金融のあり方、そうして今国内の生産者在庫が相当ふえつつあります、販売者在庫は減っております、こういう点を見ながらでないと、早く言えとおっしゃっても、なかなか言えないのです。私は、ここではっきり申し上げられることは、昨年の秋ごろに言っておったよりも、輸入原材料は相当大幅に輸入せられてたくわえられておる。これの食いつぶしがどういうふうにいくかということにつきましては、四、五カ月前の私の考えよりも割に安心していいんじゃないか。相当多かったということでございました。そして今つぶしたから、今度は六月ごろから輸入がずっとふえるという点になりますと、こっちの生産者在庫、販売者在庫等とからみ合ってくるのでございます。私はその六、七月ごろから輸入がわっと上に上がるということのないように、その点はもう去年の状況で、相当輸入商社も生産者も考えております。そして輸入担保率の問題もございますので、多く食いつぶしたかというと、食いつぶしてもそう大したことはない。ずっと輸入が伸びるということも、そうひどい伸び方はしない、これが私の見解でございます。
  47. 小松幹

    小松委員 在庫率が多い、思惑輸入があったからという、これは引き締め政策のかげんでもあるし、今鉱工業生産が少しずつ落ちているかげんもあるが、これは行きつくところまで行きつくと思うのです。おそいか早いか知らぬが、三月か五月か六月か、ただ時期を延ばすだけで、それがもしあなたが言うように、いつまでも在庫投資というもので輸入を拡大していかなければ、不況の現象はずっと続くということになる。あなたは結局貿易の収支ということを勘案しながら、金融で抑えて、不況政策をずっと続けるということにしかならない。結論は、これはどっちかにこうなるわけだ。そこで問題は、今輸入だけをとってみればそういう格好になるでしょう。輸入だけ見れば、それを抑えて在庫投資がまあまあというのでいけば、やがてはこれは不況がいつまでも続くということになるが、かりに今度輸出の方をとってみた場合にはどうなるか。少なくとも過去三年間の設備投資の実力というものは、相当なものだと思うのです…国民総生産、GNPの中におけるところの設備投資の比率も相当多い。一三%ぐらいだと私は思っている。GNPに示すところの設備投資の比率も相当大きいのです。そういうことになれば出産力というものはどんどん上がってくることは間違いない。過去の三十三年のときよりももっと大きな勢いで生産過剰の態勢になってくる、供給過剰に私は持ってくると思うのです。これはもう設備投資が過去にたくさんあったのだから、必然のコースとして遊休にしておくわけにいかぬから、やはり生産の拡大になってくると思う。そうした場合にこれをそのままそっくり輸出に持っていけば、これは確かにいいでしょう。そのころ輸出が伸び、輸入も伸びるからいいでしょう。ところが問題はここにある。あなたはことし三十六年度補正、三十七年度予算案は、まことに財源のあるだけを出し尽くした大型、放漫な予算を作り上げた。いい悪いは別です。私はこれは大型だから悪いとか、小型だから悪いとかそういうことを言っているのじゃない。放漫な出し尽くした予算を作ったならば、四月からすぐにその予算は財貨サービスとして散らばってはいかないけれども、少なくとも五月、六月、七月、八月の年度の中ごろになれば、どんどん国内需要の方に回ることは当然でしょう。いわゆる財政の予算が回らなければ別ですよ。あるいは財政投融資が回っていかなければ別ですが、これは何ぼ抑えても——大蔵大臣に言わせれば、これは相当最初の方は手かげんするから手かげんするからと、こう雷っているけれども、手かげんすると言ったって、来年のしまいまで手かげんするわけにいかないから、いつか手を放さなければならぬ。そのときに内需がぽっと出たときに、片や生産力が生産過剰になる、片一方は手がゆるんだ、こうなった場合に、今の消費水準、少なくとも予定された二・八%、昨年は八・八%だ、合わせると一〇%消費物価は上がるのですが、そういうときに、ぼんぼん予算が出て、そして内需を刺激して生産過剰になったときに、この生産過剰と内需とが抱き合って、国内の一つの繁栄ができると思うのです。そうなったときに、私はいわゆる輸出に行く力は弱まると思う。だからここが泣きどころになると思う。生産過剰であるから何とかこれをせなければならぬ、だから予算で放漫にぶつ散らかして、それで何とか吸収する、そこまではいい。そこまでは何とか均衡になるでしょう。ところがそれから先に内輪だけで食いつぶして、外に輸出ができないという態勢が出てきたときが問題である。これは過去にもあった。だからもっとひどいことを言う人は、輸出を伸ばそうと思えば国内を不況にしろという意見まで出る。それはそういう意見が出るのはあたりまえです。ここで問題は、片一方では輸入のカギが出てくる。そうして今度はその次に輸出の力が出ないで、内需に生産過剰が回ったときには、また再び輸入過剰の態勢になる。もしそうならないようにするならば、この抑圧政策あるいは不況政策あるいはデフレ政策というものは、ずっとこうあなたが長い目で見る、その長い間、全部不況政策で続かなければならぬ。あなたがどこまで不況政策をやるかということは、私はそれが一番の関心事なんだ。いつあなたがこの輸出と輸入のバランスをこわすか、あるいはしんぼう強く不況政策デフレ政策を続けていくか、ここが問題のところでありますが、この点について総理のお考えはいかがですか。
  48. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の点がはっきりわからないのですが、不況政策という点は、少し大げさじゃございますまいか。昭和三十二年、三十三年をいわゆる不況だという考え方もございますが、生産はあまり落ちていない。生産はやっぱり伸びている。雇用も落ちていない。ただ物価が下がった。物価が昭和三十二、三年は下がりました。しかし一般には不景気で、池田は大へん罪悪を犯したというようなことを言われておるのですが、今度のときも大体生産は伸びます。雇用もそう減らないでしょう。そうしてわれわれは、卸売物価は下がるだろうし、消費者物価は極力上げないようにする。ある程度はやむを得ない。こういうところなんでございまして、あなたがおっしゃるように、デフレ政策だとか不況政策だとか、そういうふうに私は見ていないのですよ。だから答えようがない。不況政策というのは、——五・四%の増強は不況政策です。雇用の非常に詰まっているのが、雇用の流通ができて、失業者がそうたくさん出ない、そして卸売物価が下がる、消費者物価は上がるだろう、上げ方を少なくします。これをデフレ政策あるいは不況政策とおっしゃいますと、なかなか私は答えがしにくいのでございます。そこで私は、こういう去年、おととしのような行き過ぎを、ここで行き過ぎないように前向きに進みますが、息切れのしないというところで行っておるのであります。これでお答えにしていただきたいと思います。不況政策というものはどうかということならば、また御答弁申し上げます。
  49. 小松幹

    小松委員 それじゃ、今のような抑制の政策はこれは何政策です。高度成長政策ですか。逆に私が聞きたい。今のはどういう政策になりますか。
  50. 池田勇人

    池田国務大臣 行き過ぎの政策を調整している安定調整政策です。不況政策とは私は考えておりません。
  51. 小松幹

    小松委員 調整政策とは、まことにいいことを言っておりますけれども、やることは、これは、そこへ例が出ましたが、女を婦人と言うてみたり女と言うてみたり娘と言うてみたりするのと同じで、やることは成長政策であるということで、しかもあなたの成長には高度がついている。そして、言いわけは、調整政策。まことに新語を作るけれども、実際やることは、あなた、抑えて、抑制しているでしょう。輸入をしようとしてもそれを押える。金を借ろうとしても押える。もっとひどいことをしているでしょう。あなたがしておらぬかもしれぬけれども、あなたの裏打ちをしておる金融界というのは、これはもう大へんなことなんです。銀行のオーバー・ローンを見なさい。日銀の発券高を見なさい。預貸率を見なさい。大へんなものじゃないか。預貸率なんか百何十%になっておる。こんな、もうちょっとすれば銀行は破産するというところまで貸し出しをしているようなこういう政策を、単に調整政策と、こう言うて、こう何か奥歯にもののはさまったような適当なことでごまかしていくことは、そのごまかしが政治を誤ると思う。少なくとも、今は鉱工業生産も下がっていく。押えていけば、一応政策というのは高度成長政策ではないことは間違いない。これを私はデフレ政策とこの前から言っている。やることはデフレ政策をやっている。それは見解の相違にもなるかもしれませんけれども、そういうごまかすような言い方をしないで、現実はそういう足並みを整えていっているのですから、その点を一つごまかさぬように、調整政策なんて新語ばかり作って、はなはだもういかぬ。(「そういう政策がなぜ悪い」と呼ぶ者あり)だれも悪いとは言っていない。  そこで、次に予算に移りますが、予算が膨張しておる。これは、補正予算でもそうだが、自然増収というものにあぐらをかいて予算を編成しておる。こういう予算編成が一番楽です。今ごろの大蔵大臣なんて一番楽なんですね。金がないときに金を見つけてきてどうかするというのならむずかしいけれども、金のあるときに放漫予算を作ることはやすい。大蔵大臣はこんな楽なことはない。ただ、やかましく言って来るからうるさいだけの話で、これは自然増収の上にあぐらをかいている予算を作っている。ということは、自然増収というものを信用インフレのいわゆる所産であると私は思う。この三十七年度予算でも自然増収を非常に多くとっておるが、この信用インフレというこの著しい予算を、こういうものにあぐらをかいて、そして予算をどんどんつけていくのを、これを健全財政と言いますか。大蔵大臣、その辺の見解を承りたい。
  52. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは、三十六年度の当初予算に比べて来年度の自然 増を四千八百億円前後、こういうふうに私どもは今度は見たわけございますが、これは当初予算でございます。その後、御承知のように、この三十六年度は非常に自然増収が多く見込まれておりますので、一次、二次のこの補正をやりましても、まだ相当今年度は剰余金が出るという情勢でございます。大体、今の見込みで見ますと、当初予算に比べて三千二、三百億円の自然増があることになるのではないかと私どもは見ております。そうしますと、この三十六年度の歳入実績というものを見ますと、二兆三千億円、これが三十六年度の実績になると思うのです。そう見ますと、三十七年度の二兆四千二百億円という歳入の見積もりは、この三十六年度の実績に比べてわずか千五百億円ぐらいの増としか私どもは見ておりません。もし減税を行なわないで、現行税法のままで歳入の見積もりをいたしますと、積み上げ計算によってやりますと、前から御説明しておりますように、ほぼ一千億多い歳入が見込まれるということでございます。私どもは三十七年の経済の伸び方を五・何%という程度に見ておりますので、こういう点を勘案してここで一千億円の減税をするということをいたしましたので、実質的には三十六年度に比べて千五百億円前後の増加しか見ていないということでございますから、そういう点で、私どもは、そう予算のワクが大き過ぎるというふうには今考えておりません。
  53. 小松幹

    小松委員 自然増収が多い。自然増収が多ければ、これはこのまま使えば大へんな予算になっていく。私は、先ほども言ったように、大型予算だから悪いとは言っていない。問題は、ここで池田さんにお尋ねするが、タイミングの問題です。片一方では、ことしは、あなたの言葉で調整、あるいは経済企画庁の言葉では抑制、どっちでもいいが、調整か抑制政策をとる。私に言わせればデフレ政策に変わっておる。そういうような抑制政策をとるというときに、こういう大型放漫と言うちゃ大そう失礼でありますが、あるだけ出し尽くした、三十六年の高度成長のときよりも二四・三%も大きい予算を組んだというのは、経済ではシビアに押えよう、調整しよう、抑圧しよう、こういうのと、予算では取るだけ取れ、出すだけ出せというこのギャップとは、どう解釈したらいいのか、これを財政政策上どう解釈するか、総理の御答弁をお願いします。
  54. 池田勇人

    池田国務大臣 健全財政ということは、第一義的には、通常の歳入によって歳出をまかなっていくことが第一の要件であります。第二は、経済の大きさに従って適当なワクを作るというのが、健全財政の第二であります。これで十分じゃございませんが、大体これでいけると思います。そこで、抑制政策あるいは調整政策をとっているのに、財政が当初予算に比べると二四%ふえた、これは悪いとは言わぬけれども膨大じゃないか、こうおっしゃるのですが、日本の今の経済の大きさをごらん下さい。そして、国が施策しなければならぬ重要事項を考えるときに、歳入によってやっていくということは当然のことで、健全財政だ。しかも、内容を見ますと、昭和三十五年度の自然増収によりまして国債償還も数百億円しておるのです。この内容によって——私はほかの機会に言っておりますが、ことし自然増収が千七、八百億円、そうして不用額が立って、来年度このままでいったならば、もう何もしなくても財政規模は二千億ふえるわけですね。自然増収の前々年度の分が入ってくるから当然ふえる。そういうような要素をこの三十七年度も持っておるわけです。そして数百億円の国債償還をしておる。どこの国にこんな健全な財政がございましょうか。私は、どこから見ても、とにかく、歳入超過とは申しませんが、国債を償還するような財政であるのであります。財政規模、内容から申しますると、われわれの政策をほとんど全部盛り込んで、社会保障、文教、そして国土保全、減税、こうやっておる。規模から申しますと、経済規模が大きくなれば、歳入歳出の予算はそれに連れ合って大きくなる。比例は、経済規模が大きくなると、増加比率は財政規模が大きくなることが自然の理でございます。福祉国家建設のためには、国民所得あるいは総生産の増加割合よりも財政規模が多くなるということは当然です。だから、各国の例を見てごらんになると、小松さんは博学ですから御存じでございましょう。先進国と比べますと、地方税を加えまして大体総生産の三〇%前後でしょう。三四、五%の国もあります。二八、九%もあります。日本は、財政規模から申しますると、国家予算では一六、七、地方予算を加えまして二四、五でしょう。規模から申しまして、そうむちゃに大きなものでない。先ほど申し上げましたように、国内の福祉国家へ向かってのいろいろな施設をしていくときにおきまして、この程度のものは、私は、健全財政で、りっぱな予算を作ったと大蔵大臣に感謝しておる状況でございます。
  55. 小松幹

    小松委員 私が聞いたのは、予算だけを切り離して健全だといってほめたたえることを聞いておるのじゃないのです。よく聞いて下さい。片一方の経済見通しあるいは経済政策では抑制政策をしながら、予算ではけっこうな大型予算を作ったという、そこに関連性があるのかないのか、経済というものはそんなに切り離してものを考えることができるかどうかということを聞いている。その聞いていることに答えてもらいたいということがまず一つ。  その次に、あなたは、健全だ健全だ、国債を償還したとか言うが、国債を償還していますか。内国債は償還してないじゃないですか。借りかえしているじゃないですか。そういうことをあなたはごまかしている。実際、ごらんなさい。全部借りかえ。今度初めて、大蔵大臣に聞いたらわかるが、これは三分の一だけ、十三億くらい払っただけで、あとは全部借りかえです。そういういいかげんなことを言っちゃなりませんよ。国際的にはガリオア・エロアは返したけれども、内国債は一つも返してないじゃないですか。そうして、みな借りかえ借りかえでいっているじゃないですか。だから、国債を返した返したなんて大きなことを言ったって、それは実際は返していない。そういううそを言うてごまかしちゃいかぬですよ。幾らあなたが数字に強いといったって、それはうそだ。それは、大蔵大臣、内国債を全部返したか返さぬか、答弁して下さい。
  56. 池田勇人

    池田国務大臣 経済の行き過ぎは押えます。行き過ぎは押えて、適正な成長に向かっていく。経済の行き過ぎを押えるからといって、財政規模も押えなければならぬという理屈はないのです。財政規模はこの程度の上昇でいい、進み過ぎた経済は調整していく、こういうことでございます。それを勘案しながらやっておるのであります。  それから、国債を償還した。私は数百億と申しましたが、これは、前年度剰余金の半分は国債法によって国債償還資金に入れるのです。そうして万分の百十六を償還に充てる。私は、国債を償還している、——もちろん、期限が来たときに、全部償還しない場合には借りかえということはあり得ます。しかし、これは、法規によりまして予算に計上して、そうして財政法その他によって国債償還をしていると私は思います。それは借りかえもいたします。借りかえしたのは、その借りかえの額は……。(小松委員「借りかえは償還のうちに入るのですか」と呼ぶ)借りかえは償還ではございません。国債全体が減っておれば償還です。それは、いろいろな年限の来るのもありますから、そうして交付公債の分を先に償還する場合もありましょう。借りかえしたから国債を償還していないということはあり得ないと思います。法律上、私は、大蔵省はやっておると思います。
  57. 小松幹

    小松委員 これはあとで大蔵大臣に聞いたらわかるが、私は何も国債のことを聞いたのじゃないのですよ。あなたみずから、健全財政の説明に、国債を払ったのだと、全部払ったような口ぶりで言うけれども、全部払っていない。これは、期限が来たやつを、当然払うべきものを払わないで、内国債はいつも切りかえ切りかえで行っているじゃないか。だから、国債というのは、国外の国債だけでなくて、内国債もあるでしょう。銀行あたりの内国債はほとんど借りかえ借りかえで行っているでしょう。ことし、十三億くらい、幾分払ったのがあるだけ、だから、大蔵大臣、それはどうなんですか。期限が来たやつは払っていませんよ。
  58. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、内国債、外国債を私は言っているのじゃございません。日本の国債は、法規によりまして、前年度剰余金の半分、それから発行額の万分の百十六、これは払う規定になっているのです。だから、内国債四千何百億円、それから外債も相当ございます。額にいたしまして四億ドルくらいございます。これを、内国債、外国債を適当に払っていくのであります。外国債につきましては、償還期限が来るものがございますから、償還期限の分は外国債の方をまず先に払う、国内の内国債は借りかえていくという手もあります。国債資金のあれをごらん下されば、私は、払っておる、こうお答えいたしておるのであります。
  59. 小松幹

    小松委員 あなたがいかにも国債をみな払ったと言ったって、期限の来ないのを払わぬのはわかるけれども、期限の来たやつまで全部払った、だから健全だというような言い方をされたけれども、そうじゃないですよ。内国債は、期限が来ても借りかえ借りかえで行っている。だから、払っていない。少し今度十三億くらい払った。それは大蔵大臣が答弁すればわかりますよ。答弁して下さい。
  60. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 大体その通りです。内国債は今借りかえ、外国債の方を先に払っているということでございます。今総理が言われましたように、前年度の剰余金、前々年度の剰余金の半分は国債償還に充てるというふうに資金は充てておりますが、こういうときに内国債を払うことの意義ということになりますと、経済の景気調整、こういうような立場から見ましたら、これをすぐ国民に払ってしまわないで、借りかえていくという方が今の場合は健全な政策でございますので、そういう意味合いでございます。
  61. 小松幹

    小松委員 池田さんはいいかげんなことを言っている。大蔵大臣の方が正直なことを言っているのです。実際は、自然増収があって、半分あったけれども、借りかえして、払っていないのです。というのは、どういう意味か、金が足りなかったか何か知りませんけれども、今大蔵大臣が、こういう際に内国債まで払わぬでも、調整しているのだから、その分は借りかえで行こうということになったと言うなら、そこにやはり財政と抑制政策のつながりが幾分出たところなんです。それを説明せぬでおいて、あなたは、金は払ったのだから健全だなんと言う。そういうごまかすような言い方はしてもらいたくありません。私は国債の問題で質問したのじゃなかったけれども、あなたが言い出したからこうなったのです。  そこで、問題は、あなたが先ほど言いましたね。歳入があるのだからそれを全部使ってもあたりまえだ、こういう言い方をなされた。歳入があった、それは過去にはあった。これから先もあるでしょう。ところが、歳入というのは税金なんです。その税金を、歳入があったからというような前提で、一体政治ができますか。自然増収が何千億出たときに、それを減税にどれだけ充てるかというのが政治のモメントになる。今度わずかに九百八十億の減税を見ておりますが、こういうことではたして減税が満足できるのか、いいのか。自然増収が何千億とあるのだから、もう少し減税をすることが正しいのではないか。あなたの言うのは、歳入があったから使ったのだと言う。借金は払った、それはうそだ。しかも、うその上に、金があったから使ったと言う。あったのは、税金をわずかしか下げないからで、そうして、金があったから使った、健全だなんという、そういう言い方は論理が矛盾しています。自然増収があるならば、取り過ぎたのだから、それをできるだけ国民に返す、返すためには減税をする、減税も、九百八十億の減税でなくて、もう少し減税をする、こういう態勢に持っていったときに初めて健全ということが出てくる。国債も借りかえじゃなくして払っていく、そうして税金も負ける、その上で歳入があればそれをフルに使うというなら健全でしょうけれども、金も、借りかえで払わないで、税金は九百八十億しか下げないで、あったからフルに使うということが必ずしも健全かどうかというのは問題だと思うのです。この点、どう考えるか。
  62. 池田勇人

    池田国務大臣 私はうそを言っていないつもりでございます。この国債整理基金特別会計に、前年度剰余金の半分を入れる。そうして、その分はもう国債償還資金でございます。これは健全財政というものの説切に申し上げたのであります。とにかく、剰余金を国債償還の基金に入れるということは、私は健全財政の証拠だと思います。相当多額の金額であります。  それから、自然増収があったらこれにみな使う、こういうあれでございますが、みな使ってはおりません。平年度千二百億円、初年度千億円前後、これが、関税の関係で、千四十一億といい、九百八十七億、こう言っておりますが、千億円の減税です。私は、従来、財政当局におりますときには、常に減税ということを一つの大きな旗がしらにして行っておるのであります。施政演説につきましても、昭和二十四年にはちょっとでございましたが、昭和二十五年、六年、七年におきましては大体平均千億前後をやっておる。今まで地方税を通じまして、一兆円をこえる減税をやっておるのであります。しこうして、今回もやりました。昨年もやりました。しかし、自然増収があったからすぐこれを減税に充てるということは、減税はわれわれの基本方針として変わりはございませんけれども、福祉国家建設のために非常に必要な金が多額に要るのでございますから、私は、減税にも充てますが、その他緊急の歳出にも充てる、これが私は適当なやり方と考えておるのでございます。
  63. 小松幹

    小松委員 大蔵大臣にお伺いしますが、税制調査会は税負担の率を二〇%以内に押えたらという答申をしたのに、あなたは、二二・三%として、答申を受けて立たなかったのはどういうわけか、どうして減税をもう少しやらなかったかという点について御説明をお願いします。
  64. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 減税の幅は、今総理が言われましたように、両方の考えから、これは適当な幅がきめらるべきものだと思います。そこで、三一六年度予算は、御承知のように、当初におきましては国民の税負担が二〇・七%という見込みでございましたが、実績から見ますと、これが二二・八%ぐらいになるのじゃないかと今見込んでおります。来年度の三十七年度の見込みは、減税をしなかった場合を考えてみますと三三・二%ぐらいになるというのが私どもの見込みでございましたが、この減税をすることによって二二・二%、減税で国民の負担率が一%下がるということになりますが、よく言うことでございますが、結局、税の負担率がどれくらいが適当かということは、国民の所得水準によってきまっていく。所得の少ない、水準の低い場合には、かりに率が小さくても国民生活には負担になりますし、国民所得が多い、国民所得の水準が高ければ、税の負担率が高くても国民生活は圧迫しないということになりますので、税の負担率というものは、結局国民所得の水準によってきまる。先進国は、御承知のように国民所得の水準が高いのですから、日本の税負担率よりははるかに多くなっています。しかし、日本は所得水準が低いために、今の負担率でもまだ税負担は重いというふうに考えておりますので、国民所得をふやす政策に伴って、だんだんに税負担率を上げていくという方向がこれからの方向だろうと思います。そういう意味におきまして、二〇%にいつまでもくぎづけすべき問題ではございませんで、国民所得の増大に伴って税負担率は少しずつ上がっていくというのが方向だと思いますので、今年度の二二%前後は、私は適当な負担率じゃないかと思っております。税制調査会は、ずっと前の、二、三年前の国民所得の現状から見た負担率は、二〇%ぐらいが適当と言ったわけでございまして、これを動かしちゃならぬということは言っていませんし、徐々に上がるべきものだと思いますので、ことしは一%下げるという減税はやりましたが、ここらがやはり今の国民所得の現状から見て適当じゃないかと思っております。
  65. 小松幹

    小松委員 今大臣が言ったことで、一つちょっと聞き落としてならぬことは、税金の負担率はだんだん上がっていくのだというようなことを言われたと思うのですが、そういう考えですか。これは、ちょっと考えると、だんだん負担率は上がっていくのですか。そうすると、しまいには五〇%にも七〇%にもなる、こういうことですか。
  66. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いわゆる先進工業国と言われている国は、三〇%前後の税負担率になっております。きのうも質問がございましたが、社会保障費と国民所得の割合を見ましても、日本が五%前後なのに、外国は一〇%以上で、なぜ日本はそんなに少ないかという問題がございましたが、これも結局国民所得水準の問題でございまして、所得がふえるに従って、社会保障費福祉国家を目的としている以上は、この費用は、今後どんどんふえなければならぬ費用でございます。そうしますと、国民生活が高度になっていくに従って、そういう社会保障費そのほかの関係経費、財政が負担すべき、財政の使命とすべき経費というのは、年々ふえていくことが高度国家の実態でございますので、そういう点から考えますと、こういう必要経費をまかなうためには、今後やはり国民負担というものは、それによって、率で見ましたらふえていくというのが本筋だろうと思います。ですから、先進諸国は、日本よりも全部税の負担率は国民所得に対して多いというのが実情でございますが、日本は低くありながら、なぜそれではこれでもまだ負担が喰いと言うかといいますと、問題は、やはり国民所得の水準が低いからだ。今程度の国民所得でありましたならば、日本はやはり二一%、二%というところが大体妥当だと思いますが、国民所得が今の倍になるというような水準が来ましたときには、やはり日本も、西欧諸国並みの税負担率になっていくんじゃないかと私は考えております。
  67. 小松幹

    小松委員 私は、税制調査会の、負担率は二〇%以下にとどめるということが正しいと思う。これは、自然増収の上にあぐらをかいて予算を出して、そうして減税をしないから、こういういわゆる税負担がだんだん上がってくる。そうして結局大型予算を作る。大型予算を作った結果として、それが内需の刺激剤になる。そうすれば、引き締め政策とうらはらな、いわゆる二律相反するところの予算が作られた、こういうように考える。  そこで、私は、次に金融政策にいきますと、これはもう全く、私に言わせれば、池田さんの金融政策はなってないと酷評したくなるわけです。というのは、あなたは、すべて財政は放漫にやるだけやりっぱなして、そうして、そのしりぬぐいだけ、いわゆる調整というものは全都金融にまかせる、そのしりぬぐいは一切金融にまかせて、しかも意欲だけは経済高度成長、こう言っているのだから、非常に欲は深い。この点について、金融についてはどういう政策をとっているのか、今のような放漫な政策をとっているのか、もっと違う政策をとっているか、その辺を池田さんからお答えを願います。
  68. 池田勇人

    池田国務大臣 政府が金融政策に関与する領域というものはよほど少ないのでございます。日銀が主としてやっておるのでございます。政府が全然関与していないということはございません。たとえば預金部資金とか、いろいろな財政投融資関係でございまするが、金融というものは、御承知の通りに、日本銀行が主としてやっておるわけです。財政と金融とのつながりということはございます。それは、現に今起こしております財政の一−三月の引き揚げ超過によって金融が逼迫しておる、こういう状態はございます。これは財政から来る当然の帰結でございます。しかし、政府が金融政策についてどうこうということは、今の法制のもとにおきましては、あなたがごらんになるように、政府はほとんど関与していないのです。金利政策の問題にいたしましても、金の貸付にしましても、あるいはいろいろな点におきまして、日銀がおおむね中心としてやる。政府はわき役というような状態であるのであります。しかし、日銀の相談を受けます。公定歩合なんか相談を受けることになっております。また、政策委員会には大蔵省並びに企画庁から出ております。関連は持ちますけれども、金融政策について政府が主導的にどうこうという領域は、割に少ないと私は考えております。しかし、いずれにいたしましても、財政・金融に対しまする一般責任は、大蔵大臣並びに内閣が持つのであります。われわれは、この金融の正常化に努めるべく戦後十数年間いろいろ努力いたしておりまするが、何と申しましても、自由主義経済のもと、今の銀行制度、日銀法の関係から申しまして、なかなか意に満たぬところもありますし、また、これを正常化のために強力な措置というところまでいけるほど措置ができておりません。いろいろなこまかい点には努力いたしております。今後、経済の安定と同時に、できるだけ早い機会に正常化する。もちろん、順金金利その他につきましては、銀行と相談してあらゆる手を尽くしておりますが、大体において、財政は政府でございますが、金融は、銀行——日銀を中心として、われわれわき役ということで、御了承願いたいと思います。
  69. 小松幹

    小松委員 池田さんはいつでもそういうことをおっしゃるけれども、あなたほど金融にせいをかけて——それでは、一体、あなたの抑制政策というのはだれがやるのですか。あなたの調整政策というのはだれがおやりになるのですか。大蔵大臣は予算を放漫にして、これは調整も抑制もやっていないが、あなたの言う調整政策というのはだれがやるのですか。おやりになる人を言って下さい。あなたがじかにやるのですか。
  70. 池田勇人

    池田国務大臣 政府でやるのは、今の調整政策の最たるものは、いわゆる輸入担保率、為替関係の分でやって、しこうして、本筋はやはり日本銀行の貸し出し等によってやっておる。そして、日本銀行の方針は日本銀行がきめますが、やはり大蔵大臣との連絡はとってやっておるのであります。
  71. 小松幹

    小松委員 表向きは日銀と政府とは違うことはわかっておりますが、あなたほど日銀に自分意思を押しつけて無理押しをしておる政治家は少いと私は思う。しかも、高度成長政策を出し、そして行き詰まった。そのしりぬぐいを全部金融に持ちかけて、そして、公定歩合を上ぐるというときも、タイミングを失わせ、いいですか、今度は貯金金利を上げようとすれば、あなたのツルの一声で預金金利はびしゃっと上がらぬようになってしまって、言うならば、あなたは低金利政策だと言うが、ほんとうに低金利政策をやっておるならだいぶいいけれども、コールなどはぼんぼんしがる。抑制政策をしておって、そして預金金利は上げない、だから、コールはどんどん上がる。流通機構は行き詰まる。そういうような、いわゆる金利体系というものも実に行き詰まってしまっておる。その元凶というものはあなたです。預金金利など上げないという一つの方針を出したのは、あなたのツルの一声だ。  そこで、あなたは、少なくとも一国の総理として、現在の銀行の金融のあり方に対してどんなお考えを持っているのか。日銀信用の拡大というものを利用してやることはいいとしても、あまりにもひどい金融のオーバー・ローンでありませんか。このオーバー・ローンをどうして解決するのか。このままで過ごしていくのか。先ほども言ったように、骨銀行の預貸率は一一〇%などになっておる。こういう状態は、企業だったらオーバー・ボローイングで、企業のことまであなたに責任を追及するわけにはいかぬけれども、少なくとも、銀行の今日の貸出超過、日銀券の発行よりもまだ多く貸し出しをするというような状態に対して、あなたはどういう政策を持ら、どういう所信を持って対処しているのか、お伺いします。
  72. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 オーバー・ローンの問題は、根本的には設備投資の行き過ぎと経済の伸び過ぎというものが根本的だろうと思います。もう一つは資本の蓄積が足らないということでございますので、今政府は貯蓄の奨励についてのいろいろな措置をとっておるところでございますが、今後もこれは一つ国民運動にして推進しようと思っております。そこで、この設備投資の行き過ぎというものが根本的であるといたしましても、今のオーバー・ローンの問題の中には、やはり日銀の通貨供給方式と関連する問題が多分にございますので、日銀の貸し出し一本やりの方式をやはりここで変える必要があろうと思います。そこで、オペレーションということによる通貨供給方式ということを新しく私どもは考えたいと思っております。そういう供給方式を変えることによっても、オーバー・ローンの姿というものは直って参りますし、もう一歩根本的には、今言ったような蓄積が少ないときにこれだけの経済の行き過ぎを起こしておるのですから、これを抑える、調整するという行政指導をこれから強力に——今現にいろいろやっておるときでございますが、これとの関連において、この形を直していくというふうにするよりほかは仕方がないだろうと考えております。
  73. 小松幹

    小松委員 日銀の通貨供給方式が問題だ、その通りです。そこで、一つの例として買いオペ政策が出た。あなたの口から出ましたが、単に通貨供給方式を買いオペに肩がわりするという小手先で今日の銀行のオーバー・ローンは解決できると思っているのかどうか。そのいわゆる買いオペ政策一つ方法だろう、日銀の通貨供給方式も一つ方法だろうが、このオーバー・ローンをそういう小手先だけで解決できると思っているのかどうかというのが問題なんです。そこのところをお伺いします。
  74. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは、今申しましたように、行き過ぎを抑えるということと、全部銀行におんぶしておるいろいろな長期資金というものを、別個に調達する場を育成していくというような、いろいろなことを、一連の施策をやらなければこの形は直っていかないと思います。
  75. 小松幹

    小松委員 そこで、最後に、今大蔵大臣から出ましたが、三月の揚げ超に対する資金づけとして買いオペ政策を出しておりますが、その中に証券オペを加えると、公社債市場育成の第一歩として大蔵大臣が先般だれかの答弁にも言っておりますが、それは大蔵省どう考えているのか、その点お伺いします。
  76. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御承知のように、二月二日に七百億円のオペレーションをやりましたが、さらに揚げ超に対処するために、三月に追加のオペレーションをしたいと思っております。その場合に、オペレーションの対象の範囲を拡大するかどうかというような問題につきましては、私どもが施政方針のときも申し述べましたように、公社債の流通というようなものをこれから私どもは一つの課題として考えていきたい、そういうようなものとの関連において、オペレーションの対象に、たとえば公社債投信に組み入れられている政保債というようなものを対象にするかどうかというような問題もございますので、それは研究してもらいたいということを申し出てございまして、今日銀に研究してもらっております。それで対象を、範囲をどこに広げるかというような問題は、今のところ、私どもは日銀にその運用をまかせてある、こういう状態でございます。
  77. 小松幹

    小松委員 この問題は、やはり公社債投信のいわゆる全体の市場をどうするかという問題に関係があると思うのですが、総理大臣は、特に証券会社との関係があって盛んにこれを買いオペの対象に入れろ入れろと大蔵省に言っているそうですが、それもいいでしょう。しかし問題は、これを滞貨金融として認めるのか、単なるその場の流通として認めるのか、あるいは公社債投信をもとからやり直すという態勢で出てくるのか、私はここが問題だと思うのですが、これは私たちが逆に推量すると、公社債投信等の最初の応募のときは、相当四社が過当競争をして、そして公社債投信が去年一月発足してから三カ月に千億くらい、ぽんと新規の組み入れができた。そして経済が行き詰まってとうとうこれが固着した。結局、四社の過当競争によって今日こう行き詰まって流通が悪くなっている。そういうもののしりぬぐいをどういう格好でするのか、この辺の筋をかっちり通してもらいたい。この点についてどういうお考えを持っているかを一つと、公社債投信の今後のいわゆる発券の状態をどうするかという二点についてお伺いします。
  78. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 金融が不正常になっておるときには、公社債の流通市場の問題どころじゃなくて、発券も行き詰まるという状態になっておりますので、この形は、当然私どもは考えなければならぬことだと思っております。さっき申しましたように、そういう意味で、すぐに公社債流通市場というものは今のところできません。コールがこういう高いときには、証券会社が公社債をコール資金によって持たせられるというときには、逆ざやになってしまいますし、またこれを買う人もございませんので、一挙に市場を作るというようなことでしたら、社債の暴落とかいろいろな問題もございまして、金融正常化をある程度やり遂げなければ、ほんとうの市場というものはできませんので、問題は金融正常化の問題と結びつく問題ですから、それはそれとして私どもは考えたいと思っております。しかし、当面こういうときに、この社債流通の道を次々に開いていくという何らかの措置は必要だと考えておりますので、こういう点について、オペレーション等も関連して、研究を日本銀行に願っておるというわけでございます。
  79. 小松幹

    小松委員 これで質問を終わりますが、私は最後に、今度の経済政策の実態を見ますと、経済見通し予算、金融それぞればらばらな方向にばらばらに組み立てられておる。そうしてその中に矛盾と撞着がひそんでおる。その矛盾と撞着を解決せないままで無理押しをしておるその元凶は池田総理である、このことをつけ加えて私のきょうの質問を終わります。(拍手)
  80. 山村新治郎

    山村委員長 それでは午後は三時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時五十五分休憩      ————◇—————    午後三時十五分開議
  81. 山村新治郎

    山村委員長 それでは休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十六年度一般会計予算補正及び同特別会計予算補正を一括して議題といたします。  この際、内閣総理大臣より発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣池田勇人君。
  82. 池田勇人

    池田国務大臣 先刻本委員会における小松幹君の質問に関連し、田中角榮君と会い、その真意を確かめましたところ、一、沖繩、小笠原は早急に返還してほしい、それが日本国民の願望である。二、アメリカがこの返還を実現する前提条件として、かりに日本憲法改正、再軍備等の問題の解決を日本に求められると大へんである。そうなると日本側の受け入れも困難になるということであります。従って、沖繩返還する、しかし、前提条件として憲法改正と再軍備を求める旨を米側より日本に提起する方がよいと言ったようにとられることは、はなはだ迷惑であり、真意を伝えるものではないということでございました。
  83. 小松幹

    小松委員 今の総理の報告を承りますと、文書報告だろうと思いますが、私はここに読売新聞、東京新聞、毎日新聞を持っておりますが、そういうような発言一つもありません。全く今言うたのは、私に言わせれば作りごとを持ってきたのだ、そういうこととしか受け取れません。これは言いのがれにすぎぬと思います。そこでさらに質問を続けるが、あるいは新聞社が間違っておるというのならば別ですが、田中発言新聞社との食い違いが出ている。これは新聞側が間違っているのかどうか、もう一回尋ねます。
  84. 山村新治郎

    山村委員長 総理大臣からはっきりと今答弁されたわけでございます。従って、これに対する疑点を御質問願いたいと思います。あれば御質問願います。しかし、小松君の時間は相当超過しておりますから、その点、お含み願いたいと思います。
  85. 小松幹

    小松委員 疑点といえば、これはこの新聞の報道と全然性格が違うし、文章も違うし、言った内容も逆になっております。特に私は、ここではっきりしたいというのは、一、二と言われた二の項ですが、「一つ方法として、日本の国情とも合い、ソ連・中国に対する巻き返しの意味からも、アメリカが一本に沖繩を返すにあたっては憲法改正、再軍備アメリカ日本に提起し、日本がそれを受け入れることが必要だと思う。」、今のは読売でございますが、この毎日の方も同じ趣旨のことが全部書かれてあります。そうすると、今の総理がお読みになったところの分章は、真意が逆になり、表現も逆になっておる。これは文章のごろが違うとかなんとかいうことではない、内容がすっかり違うわけです。そうなると、この新聞が全部うそで、今言うたのがほんとうだということになるわけです。それはどうも私は承知できない。この点さらに答弁をお伺いします。
  86. 山村新治郎

    山村委員長 どなたに答弁を求めるのですか。——答弁は先ほど総理大臣からはっきりされておりますが……。
  87. 池田勇人

    池田国務大臣 午前中の委員会で、親しく田中角榮君と会って、そして真意を確かめてくれ、こういうお話でございましたので、私は、官房長官も入れまして、田中君に会いました。そして真意を聞いて、私も官房長官も、田中君の真意はこうである。田中君もとういうふうに言っておるので、それをお伝えしただけであります。
  88. 小松幹

    小松委員 自民党なりあるいは総理の立場としては、そういう隠しごともできるかもしれませんが、事がここまで運んでくれば、私はそういういいかげんな、その場のがれのことで済ますことはできません。そこで、私は、この各社が書いていることがあやまちであるならばあやまちであるように、総理並びに田中政調会長新聞社とはっきり会って、対決の日をきめるか、さらに、私が承るところによると、その会議は中曽根君の日本青年委員会が主催したそうでございます。そして、その日本青年委員会は、テープをとっておるそうでございますから、そのテープをここに出してもらう、以上二点をここに提示しますから、委員長これをお諮り願いたい。それでなければ、全く反対のことが報告されて、このまま私はそうですがと下がるわけにはいきません。   〔発言する者あり〕
  89. 山村新治郎

    山村委員長 そのままお待ち下さい。
  90. 小松幹

    小松委員 総理がそういう報告をしたのだから、総理総理としての責任を果たしたと言われるでしょうけれども、聞く方の身になってみれば、こういう問題は、今報告されたようなことと新聞に報道されていることでは、全然中身が違うのです。全く反対のことが言われている。それを、そうでございますかといって下がられますか。幾分言葉が違うとか、ニュアンスが違うというなら別ですけれども、全く反対のことを報告されて。このままで下がるわけにはいかない。だから、私が言うように、新聞社と田中君とわれわれの前で対決するか……。
  91. 山村新治郎

    山村委員長 小松君に申し上げますが……。
  92. 小松幹

    小松委員 あるいは、日本青年委員会のテープを持ってきて、はっきりさせようじゃありませんか。
  93. 山村新治郎

    山村委員長 社会党がおやりになるのは、それは御随意でございますが、当委員会としては、それを取り上げるかどうかは、皆さんと相談しなければ取り上げるわけに参りません。(発言する者あり)理事会を開きましょう。  それでは、このまま暫時休憩いたします。    午後三時二十三分休憩      ————◇—————    午後三時三十四分開議
  94. 山村新治郎

    山村委員長 それでは、開会いたします。  ただいま理事会の話し合いの結果、小松君が続いて二、三点の質問をされるということで、この問題につきましては、時間も超過いたしましたので、終局の話し合いがつきました。続いて小松君に発言を許します。小松君。
  95. 小松幹

    小松委員 先ほどから池田総理田中角榮君との話し合いの報告がありましたけれども、その報告は、公器である新聞の報道とは似ても似つかない全く反対の内容でございます。  そこで、私は総理にお伺いします。もしあなたが今報告されたそのことがほんとうなら、ここに出ている——まあ寡聞にして多くは知りませんが、読売、毎日、東京新聞内容は、これは間違った報道であるとおっしゃられるのかどうか、この点を総理にお伺いいたします。
  96. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、先ほどもお答えしたように、まだそういう新聞を読んでおりません。しかし、そのところを午前中のあれで……   〔発言する者あり〕
  97. 山村新治郎

    山村委員長 御静粛に願います。
  98. 池田勇人

    池田国務大臣 田中君本人の真意を聞いてくれ、こうおっしゃいましたので、それで、承知いたしましたというので、ただいま、お会いいたしまして、真意をお伝えしたのでございます。私は田中君の文をここに報告しただけでございます。新聞の信憑性につきましては、私はまだ読んでおりませんから申し上げかねます。   〔淡谷委員池田国務大臣新聞   を示す〕
  99. 山村新治郎

    山村委員長 小松君、質問は続いてございますか。
  100. 小松幹

    小松委員 総理はお忙しいからだであるから、新聞もそうはごらんになるひまがないと思いますが、ほかのことならば私はそれを問いません。しかし、事は沖繩施政権の問題であるし、これはアメリカ日本の少なくともトップに近い人の政治家の公の話で、しかもその内容アメリカに内政干渉をお願いするような問題があるわけなんであります。しかも、一番大事になっている、国内では最も大事になっている再軍備あるいは憲法改正のものをアメリカから提起してもらいたい、こういうような内容のことでございますから、おひまはないと思いますが、今即席そこでお読みになって、そのことが間違いか、今あなたが報告されたことが間違いか、そこで一つ御判断を願いたいと思う。ほかのこととは別でございます。しかも、きょうは、この委員会はほんとうに重大な委員会で、これほど問題になっている問題、それをお読み下さらぬでほおかぶりでいこうといっても、そうはできません。この点は一つ総理も謙虚な気持で、新聞をわざわざ持って行かれたんですから、お読みになって、そうして、この新聞があやまちであるならばあやまちだと、こう言って下されば、私の方としても、総理の御意見通り新聞はあやまちだと、これで納得します。その点一つ……。
  101. 池田勇人

    池田国務大臣 それは御無理じゃございませんか。私もあれしますが、あなたは、田中角榮君のこの問題に対する真意はどうかということを言われたのであります。従いまして、私は田中君と会いまして、真意を聞き、ここにお伝えしたのであります。しこうして、新聞田中君の真意が違っておるか違ってないかということは、あなた方でおわかりになることではございますまいか。私はそれが常識だと思います。私に、それがいいか、ほんとうかうそかということを言えということは、少し御無理なようなことで、それはあなた方で御判断なさることが必要じゃございませんか。私は真意を聞くだけでございます。
  102. 小松幹

    小松委員 総理が、私が言うことが無理だとおっしゃれば、無理でもかまいません。私はこの際無理をお願いしたい。これは無理をお願いするのです。あえてお願いするのは、こういう重大な問題を、新聞もごらんにならぬで、しかも田中君と会っているんでしょう。だったら、田中君の真意は、今言った報告あるいはそれ以上のことをあなたが知っておられれば、その真意を見て、そうして新聞をごらんになれば、これは新聞の記事が真意を伝えてない、誤りだ、こうおっしゃるならば、それでいいんです。ところが、新聞はそこに置かれて見もしないで、そうして真意真意はと言っても、それは内容が接近していれば別ですよ。ずいぶん離れた内容を報告されているのです。そうすれば、新聞は西と書き、あなたは東と報告したのですから、あまりにも違う報告を受けて、このままそうですかと下がられないでしょう。これは良識で下がられない。幾ら委員長が時間だ時間だと言っても、この問題は西と東に分かれて、下がれといっても下がられないわけです。だから、大かたまん中に歩み寄りができれば、それならそれでいいですけれども、今のところこれは全く内容が反対なんです。それならば、田中君の真意をあなたが聞かれたならば、あなたの判断で、これはどうも新聞はひどい、新聞の書き方が誤っている、こうおっしゃって、それはその通りあなたの御判断で報告なさればいいのです。その点をおっしゃらないで、真意を伝えたんだから、あなたが無理だ、そう言っても、私の方も無理を承知でお願いしているのですけれども、あなたも時には無理も——無理といっても、私は筋の通った無理だと思う。むちゃくちゃな無理を言っているわけじゃないのです。だから、この点をお答え願いたい。
  103. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、沖繩、小笠原の問題につきまして、私個人、あるいは党の総裁とし、また内閣総理大臣として、はっきり午前中に申し上げておるのでございます。そうして、私に与えられたことは、田中君の真意をを聞いてくれ、こういうお話でございましたから、真意を聞きまして、田中君の真意をここにお伝えしたのであります。しこうして、片一方の、新聞に載っておることはまだ読んでおりませんが、読んでみてそれの価値判断をしろとおっしゃることは、あなたのお言葉の通り、少し無理だと思います。ことに、内閣総理大臣として、非公式の会場で言ったことをもって、そうしてそれが新聞に載って、それの価値判断をしろとおっしゃるのは、私は無理だと思います。内閣総理大臣として、この予算委員会でその価値判断を求められても、それはお答えできません。
  104. 小松幹

    小松委員 価値判断を私はいろいろ言っているのじゃない。報告された内容と、公器である新聞の報道とが全然内容が違うから、それで事が重大だからお尋ねしているのです。だから、あなたがそれで、どうも田中君の真意からするとその新聞は誤りであろうと、その真意を伝えていないのであろうと、それはいないのであると、こういうように言い切ることができるかできないかは別にして、とにかく、一応あなたは問われておることを——あなたは単なる池田さんとして問われておるわけじゃないのです。今問われておるのは、あなたは自民党総裁、そうして、この問題を世間にまき、新聞報道をされ、国際的にも散らばり、沖繩にも散らばった問題を出しておるのは、党の幹部である政調会長田中角榮君だ。(「個人だ」と呼ぶ者あり)個人であろうが何であろうが、党の総裁として、私はあなたに、その真意からして、その新聞真意を伝えていないとか、あるいは間違っておるとか、そういうことが出ない限りは、これはあなた、そんなまるきり反対の報告を聞いて、そうでございますかと下がられますか。だから、総理は、その新聞を見て、これは間違いだ、いや、田中君の真意を伝えていないんだと、言うなら、それでいいです。
  105. 池田勇人

    池田国務大臣 新聞には新聞の立場もございましょう。そこで、私がこの新聞についての批判を内閣総理大臣とし総裁としてすることは、私は差し控えたいと思います。しこうして、田中君の真意として申し上げておりますように、かくかくの旨を米側より日本に提起する方がよいと言ったようにとられることは、そういうふうにとられるととははなはだ迷惑であり、真意を伝えるものではないと、田中君はこう言っております。
  106. 小松幹

    小松委員 私に言うならば、それは真意でないという報告でいいでしょうが、私が聞いておるのは、公器である新聞に書かれてある、第三者的になっておるところのそういうものに対して、あなたは自民党総裁としてどういうような御返答をなさいますかと言っているのです。この新聞真意を伝えていない、あるいはこの新聞は間違っておるならおると、それを言いなさい。あなた自身がこの沖繩施政権返還あるいは復帰の問題についてどのように考えておるかということは、先ほど朝から聞きましたから、そのことはいいです。ただ、田中君の意見を受けて立ったあなたが、その新聞内容真意を伝えているのかいないのか、間違っているのか間違っていないのか、そこの点をはっきりして下さいと言っている。
  107. 池田勇人

    池田国務大臣 どうも徹底しないようでございますが、私が新聞の記事を批判するよりも——批判はしたくございません。私、まだ読んでもいないし、また、田中君の真意も今聞いただけでございますから……。しかし、御当人の田中君はこう言っているのでございますよ。こういうふうに言ったようにとられることははなはだ迷惑であり、真意を伝えるものでない、この真意を伝えるものでないというのは、田中君から見た新聞の記事でございましょう。これでいいじゃございませんか。それを私がどうとかこうとか内閣総理大臣として言うことは、私は差し控えたいと思います。国民はよくわかってくれると思います。
  108. 小松幹

    小松委員 私はどうもそれじゃ引き下がれません。というのは、これを真意でない、そういうことでこの問題を過ごすことはできないのです。これは、総理と私、田中君と私という一個人の間に介在したことならば、ああ、そういう真意でありましたか、それは私の思い過ごしでございましたでしょうと下がることもできましょう。しかし、事は、こうして公になった問題でございます。だから、この新聞真意を伝えてないなら、率直に言ったらいいじゃないですか、あなたの御判断で。おれは自民党総裁だ、おれの判断で、田中君に聞いたところでは、どうも新聞真意を伝えていない、それならそのことを言えばいい。
  109. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、沖繩問題に対しましての総理大臣としての考え方を申し上げることは、国民に対しての義務でございます。田中君が非公開の席上で言って、新聞の記事と違うとかというお話でございます。そこで、田中君の真意を伝えたものでないと新聞を言っておるのですから、私がこれ以上介入することは迷惑でありますし、国民もまた私の立場を了承してくれると思います。
  110. 小松幹

    小松委員 今総理は、田中君の報告は、新聞も加えて、真意を伝えておるものではない、こういうようにおっしゃられました。そうですか。その辺のところをはっきりして下さい。
  111. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、この問題につきましては意見を申し上げない。田中君は、自分真意を伝えるものじゃないと言っおります。それで、私が午前中にあなたから命令されたことは、真意を聞けということだけであって、批判をしろとは、私は命令を受けておりません。
  112. 小松幹

    小松委員 そこで、私は、それならばもう一回盛り返して、先ほどの新聞の記者と田中料とを差し合わせるようなお計らいを、委員長、していただきたい。
  113. 山村新治郎

    山村委員長 小松君に申し上げます。委員長に対して申し入れがございましたから申し上げますが、それは委員会としてやるべき問題じゃないと思いますが、一応委員会にお諮りいたします。その上において、委員会の意向を聞いた上で善処したいと思います。よろしゅうございますか。
  114. 小松幹

    小松委員 それならば、今私言ったことを……。
  115. 山村新治郎

    山村委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  116. 山村新治郎

    山村委員長 委員の諸君に申しげます。  ただいま理事諸君との話し合いの結果、社会党の淡谷君が関連質問をされることに相なりました。従って、淡谷君の発言を許します。淡谷悠藏君。
  117. 淡谷悠藏

    淡谷委員 けさからいろいろこの重大な自民党政調会長発言が問題になっておりました。幸いに、総理は、午後の会議劈頭、約束通り田中さんの言ったことの真意をお伝え下さいましたが、その内容というのは、今朝来非常に問題になっております各新聞記事とは大へんな相違があります。それを今承りますというと、総理は、田中さんがこれは真意を伝えるものじゃないと言っているという。ほんとうならば、総理は、短かい新聞記事ですから一応目を通されまして、田中さんと同じような気持なのかどうか、田中さんは真意を伝えるものじゃないと言ってお乙けれども、総理は、この新聞記事が真意を伝えているかどうか、これははっきりした御返事があってしかるべきだと思いますが、その点はどうですか。ちょっと読めませんか。
  118. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、沖繩に対しての問題は、はっきり午前中お答えいたしております。そうして、田中君が、あの席上、非公開と聞いておりますが、そこで個人意見として言ったということにつきまして、どういうことを言ったのだ——新聞の記事と違うじゃないかということは私は言いません。どういうことを、言ったのだ、どういう気持だったと聞いたわけでございます。そうして、こういうふうに書いてきたわけなんでございます。田中君の真意はこうこうである。そうして、田中君が、あの新聞の記事は自分真意とは——新聞の記事とは書いてございませんが、真意を違うように取られておるということを田中君が言ったのでございまするから、私は、総理大臣として、今新聞を読んで、この関係はどうだという意見を言ことは差し控えたいと思います。私はこれで十分じゃないかと思います。
  119. 淡谷悠藏

    淡谷委員 田中さんは真意じゃないと言っている以上は、これはやはり新聞記事をさしていると思うのです。その新聞記事が真意を伝えるものでなければ、——これは明らかに田中さんは誤報だと言っている。言った本人自身が誤報だと言っている。それを総理がなお一点の疑いがあるならば、総理自身の判断を待つより仕方がないと思う。田中氏が誤報だと言うことを総理は率直にそのまま認められるかどうか。
  120. 池田勇人

    池田国務大臣 誤報か真報か、私はそこにはいないのでございますから、それがほんとうかうそかということは、田中君の真意を聞くよりほかはございますまい。田中君の真意は読み上げた通りでございまして、私に対する小松さんの御要求はこれで果たしたものと私は考えております。それ以上にどうこう言うことは、総理大臣として差し控えます。
  121. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その場にいないからわからぬと言いますが、さっき小松君が言っている通り自民党の中曽根さんが主宰しております日本青年委員会ではテープを取っている。もしこの問題をほんとうに政治的な責任を持って解決しようという御意思があるならば、即刻このテープはお取り寄せになって、真相をはっきりさせるのが、われわれに対する責任ある回答と思うのですが、昼そういうことをおやりになりましたか。
  122. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、テープがあるとかないとかいうことも知りませんから、そんな問題であの昼の短時間に、ほかの用事もたくさんございまして、そんな余裕はございません。そういう問題は、田中君の真意をここへ伝えるだけで、あとはあなた方だけで判断されたらけっこうではないかと思います。
  123. 淡谷悠藏

    淡谷委員 われわれの判断はきまっているのです。われわれは新聞を信用しています。少なくともわれわれは新聞を信用していますよ。われわれは新聞を信用しているのに、田中氏は、これは真意を伝えるものじゃないと言っている。これに対して、あくまでも総理は言葉を濁しまして、そういう明瞭なことさえ回答ができないというのであれば、われわれはこの審議をするわけにいかない。  最後に申し上げますが、田中氏が言うごとく、新聞真意を伝えていないということを総理として言い切れるかどうか、はっきり答弁を求めます。
  124. 池田勇人

    池田国務大臣 総理がこの問題に価値判断を出すべき筋合いのものではございません。田中君の言がどうだということを聞いてこいと言われたので、田中君の真意を聞いてあれしたわけです。それで、新聞を読んで、田中君の真意新聞の記事が違っておった場合において、これはどっちがほんとうかとかなんとかいうことは、私として荷が重過ぎます。そういうことをおっしゃるのは無理だと思います。
  125. 淡谷悠藏

    淡谷委員 あなたは首相ではありますけれども自民党総裁ですよ。三役が、はっきり、新聞真意を伝えていないと言う場合に、あなたは、真意を伝えていない新聞に対して取り消しを要求するのがほんとうじゃありませんか。
  126. 池田勇人

    池田国務大臣 それは私が要求すべきじゃございません。しゃべった当人の判断でやるべきでございます。
  127. 淡谷悠藏

    淡谷委員 当人が真意を伝えていないと言うのですから、総理自身もやはり本人の言うことを信ずるならば、新聞真意を伝えていない、新聞は誤報であったと、こう言い切れませんか。
  128. 池田勇人

    池田国務大臣 その問題に関係していない私が、新聞を批評するということはよくございません。
  129. 山村新治郎

    山村委員長 淡谷君、この程度でよくはございませんか。同じ議論の繰り返しになりはしませんか。
  130. 淡谷悠藏

    淡谷委員 何ですか。
  131. 山村新治郎

    山村委員長 同じ議論の繰り返しになりはしませんか、先ほど来の小松さんの議論と。
  132. 淡谷悠藏

    淡谷委員 責任のある答弁が得られなければ……。
  133. 山村新治郎

    山村委員長 責任ある答弁は、さっき田中君の真意を伝えてございます、内閣総理大臣は。
  134. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それじゃ納得できません。
  135. 山村新治郎

    山村委員長 それは別問題です。あなた方が納得されるかされないかは別問題ですよ。それじゃ、どうなさいますか、社会党さんとしては。
  136. 淡谷悠藏

    淡谷委員 ……(発言する者多く、聴取不能)ほんとうならば、新聞は誤報です。
  137. 山村新治郎

    山村委員長 どうですか、理事会と話し合いが違うと思いますが、二、三点の質問でもって終わるという話じゃなかったですか。  そのまま休憩いたします。    午後四時二分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らな   かった〕