運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1962-01-31 第40回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年一月三十一日(水曜日)     午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 山村治郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 重政 誠之君 理事 野田 卯一君    理事 保科善四郎君 理事 淡谷 悠藏君    理事 川俣 清音君 理事 小松  幹君       相川 勝六君    赤澤 正道君       池田正之輔君    井出一太郎君       井村 重雄君    稻葉  修君       今松 治郎君    臼井 莊一君       上林山榮吉君    仮谷 忠男君       北澤 直吉君    正示啓次郎君       周東 英雄君    床次 徳二君       羽田武嗣郎君    八田 貞義君       藤井 勝志君    藤本 捨助君       船田  中君    松浦周太郎君       松野 賴三君    三浦 一雄君       山口 好一君    山本 猛夫君       井手 以誠君    加藤 清二君       木原津與志君    楯 兼次郎君       辻原 弘市君    堂森 芳夫君       永井勝次郎君    野原  覺君       長谷川 保君    山花 秀雄君       横路 節雄君    井堀 繁男君       春日 一幸君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 植木庚子郎君         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  佐藤 榮作君         運 輸 大 臣 斎藤  昇君         労 働 大 臣 福永 健司君         建 設 大 臣 中村 梅吉君         自 治 大 臣 安井  謙君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         人  事  官 神田 五雄君         総理府総務長官 小平 久雄君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    中野 正一君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ――――――――――――― 一月三十一日  委員西村榮一君及び佐々木良作辞任につき、  その補欠として春日一幸君及び井堀繁男君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員井堀繁男君及び春日一幸辞任につき、そ  の補欠として佐々木良作君及び西村榮一君が議  長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和三十七年度一般会計予算  昭和三十七年度特別会計予算  昭和三十七年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 山村新治郎

    山村委員長 これより会議開きます。  昭和三十七年度一般会計予算昭和三十七年度特別会計予算及び昭和三十七年度政府関係機関予算を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。川俣清音君。
  3. 川俣清音

    川俣委員 私は、この際、当面の農政問題について、政府の所見をただしたいと思うのであります。  当面の農政問題の根本的な課題は、経済成長過程において、ほうっておけばますます拡大するであろう農業と他産業との格差を、すなわち、生活水準におきまして、生産性におきまして、いよいよ拡大するであろうこの状態を、どのようにして縮めていくかということが、今日課せられた大きな問題だと思うわけであります。そこで、政府は最近農業の動向に関する年次報告を出しましたが、これを見ますると、いろいろな施策を実行したけれども、その施策に反しまして、この根本課題は解決されない方向にむしろ進んでおるように見受けられます。かえってますます格差が拡大してきたことが明らかになって参りまして、農政の前途は多難であると思われるわけでございます。この拡大して行く格差、これをどのように解決しようとしておるのか、この点を総理並びに農林大臣にお伺いいたしたいと思います。あといずれ具体的に申し上げますが……。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 農業中心とした第一次産業と、鉱工業中心とした第二次産業、そして流通面の第三次産業、これを比較して見ますると、農業生産性向上が、普通の状態では第二次、第三次産業に劣ることは、これはもう歴史の示す通りでございます。理論的にも、普通にほうっておけばそうあるのであります。そこで、私は、高度成長の場合におきまして、取り残されがちの農業について抜本的な施策を講じなければならぬ、こういう考えのもとに、いろいろ誤解を受けましたけれども、農業人口は減ってきて、第二次、第三次に行くのが当然の帰結なんだ、その準備をしなければいかぬというのが、私のおととし、さきおととし来唱えてきたところであります。しこうして、今お話農業状態報告について、お説の通りに、三十五年度は農業自体としては、生産性向上は見るべきものがあった。これは何もしないんじゃない、相当伸びた。しかるところ、その他の第二次、第三次産業は、これまた非常な伸び方でございまして、世界の普通の伸び方の三倍ぐらい伸びている。だから、農業伸びたけれども、片一方が伸び過ぎたために、格差が大きくなったのでございます。だから、私は、そういうことを考えて、農業基本法をこしらえて抜本的な施策を講じて、その差を少なくしていこう。で、第二次産業、第三次産業が、三十五年のごとく名目的に一六%もふえるということはあまりないのじゃないか。ことに鉱工業生産は前年に比べて二〇数%ふえておる、農業も大体一〇%くらいふえたと思います。そこで出てきたのでございまするから、とにかくおくれがちな農業にうんとてこ入れをするというのがわれわれの政策で、しかも、その政策は今始めようとしておるところであるのでございます。だから、一時的にそういうことがございましても、それをもって将来がこうなるんだということでなしに、そうなるから農業をもっと力を入れていこうという考えであるのであります。
  5. 河野一郎

    河野国務大臣 大体総理のお答えになった通りでございます。
  6. 川俣清音

    川俣委員 政府がいろいろな施策を講じたけれども、農業生産も上がったが、他の第二次産業、第三次産業等が異常な成長をしたために、格差がついた、こういう説明でございますが、むしろ、そこに私は問題があると思うのです。一方工業生産が増してくることについて、当然購買力がつてこなきゃならない。それに即応した農業生産力が伴っていかなければ、おそらく工業生産に対して大きなブレーキをかける結果になるであろうし、または労働賃金を異常な高騰をさせまして、みずからやはりブレーキになるんじゃないかと思うのです。そこに、単に農業に同情を寄せた格差を解消しろということではなしに、日本の産業全体の上からこの格差を解消することなしには、順調な産業の発展はできないのではないか、こう考えての質問なのです。そこで、どうも生活水準を高めようとするムードの中で所得倍増論を唱えられました結果、農民負債が非常にふえてきております。特に中農負債がふえてきておる。これは、どうも総理の無責任な所得倍増論農村にびまんをいたしました結果、起こってきたものではないかと思う。もしも総理の意図しないところであるとすれば、総理を親分としてかつぎ回った子分どもがいたずらなムードを起こした結果、消費水準生産に見合わない高騰をいたしまして、そこに負債が非常に免じたのではないかと思うのですが、総理はどのようにお考えになりますか。
  7. 池田勇人

    池田国務大臣 川俣さんは農村に非常に負債がふえたとおっしゃいますが、これは私はそう考えません。農村生活は、都市生活上昇をこえてはおりませんが、農村生活水準は私は相当進んでおると考えておるのであります。そして、農村経済も、昔のようなことではなしに、私は、ただいまのところ農村は不景気でない、健全な着実な上昇傾向をとっておると見ております。農協の版金の状況を見ましても、また都市付近農村就職等考えましても、農村においてこの高度成長政策に対しまして非難をする人は中にはございましょう、しかし、大体として高度成長農民の方々には御理解を得ておると私は確信いたしております。
  8. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいまの川俣さんの尋ねでございますが、百も承知の上で言うておられると思いますが、近時、わが国の農業経営のうちにおきまして、従来適正規模政府が推奨いたしておりましたいわゆる中農――小農の方は、農業を家族にまかして、そしてこれが都市へ参りまして農業外の収入を得ておりますから、そこに一つの安定を得ております。ところが、中農は、半面に、機械化する、もしくは新しい農業成長過程方向にいくというようなことで、一時的に資本が入用であるというようなことで、借入金があるというような傾向にあります。しかし、これとてもこのままでおくことはいかぬのであって、そこで、私は、全体的に構造改善をして参る必要があるということから、御承知のような考え方で進んでおるのでございまして、今申し上げるように、一時的な現象としてそういう事態農村にある、これはなるべく早く安定した農村構造改善する必要があるというふうに考えまして、せっかく施策を急いでおるわけでございます。
  9. 川俣清音

    川俣委員 政府は、米麦農業から成長農業へ転換させよう、すなわち、果樹園芸であるとか酪農へ転換させようという努力を払っておられるわけでございますが、しかし、そこには大きな隘路または障害となるものが多く横たわっておるわけです。その一部は農民勤勉努力研究によってこれを打開することも困難ではないでありましょうけれども、なかなか、今日の自由経済の機構の中におきましては、何とも打開できない障害があるのではないか。これを除くのが政治でなければならないと私は思うのです。農民勤勉努力あるいは研究によって打開する部分もあります。しかしながら、どうしても打開できない問題がなお横たわっておる。これをどう解決するかということです。  そこで、私具体的に申し上げますが、元来、商品性農産物と申しますか、結局企業農業と言いましょうか、商品性の高い農業、昔で言えば換金農業と言ったでありましょうが、今では、これは商品性作物、こう言われておるわけです。あるいは商品性の高いものは畜産物でございましょうが、これが生産者価格が安くて消費者価格が高い。そこで、消費伸びがなくて、はね返って生産者価格をさらに引き下げるという結果、米麦農業よりもさらに商品生産農業打撃が大きいという事態が最近起こってきたのではないか。政府は、米麦農業はだめだ、酪農をやれ、あるいは果樹園芸をやれ、こう言いますけれども、これほど生産者価格消費者価格との開きのあるものは他にないのではないか。他の工業製品にいたしましても、他の産物にいたしましても、この農業上の商品性農産物ほど生産者価格消費者価格との開きの激しいものはないのであります。これは農民努力研究やあるいは勤勉だけでは何ともいたしがたい事態ではないか。これをどう打開されようとしておりますか。これは今の自由経済の中ではいかんともいたしがたい。池田内閣においてはとてもこれはだめなんだというふうに言われるならまた別でございます。何とかやらなければならないと言っておられるからには方策がなければならないと思うのですが、この点一つ明らかにしてもらいたい。
  10. 河野一郎

    河野国務大臣 御指摘の通りでございまして、ただいまお話しのような、別の言葉で申せば生鮮食料品に属するものでございます。従って、貯蔵が困難である、需給の関係計画性が困難であるというようなものにつきましては、確かに、生産者手取り価格消費者価格との間の値開きがあるにもかかわらず、生産者価格が少ない。これが改善は、農政において急務中の急務であるということを私も深く理解をいたしまして、抜本的にこれが改善に乗り出す所存でございまして、昨年秋から品種別調査員を派遣いたしまして、近日のうちにその中間報告がまとまりますので、よく皆さんにも見ていただくというつもりでありますが、これが解決は、二面においては、これらの商品を扱っておりますいわゆる中小企業、これらの形態をどういうふうにあらしめなければならないか、また、これらの中小企業諸君は、どういうふうに経営合理化をはかり、もしくはこの経営をもう少し強めていかなければならないか。従来は、これを純農村の立場で、貯蔵するとか、冷蔵庫を作るとか、これが回送について協力するとかいうようなことをとかくやって参りましたけれども、しかし、根本的には、これが取り扱い業者、いわゆるこれらの中小企業業者諸君の内容を改善していくということが必要であろうというふうに考えると同時に、これについて、たとえば今朝の新聞でもごらんいただいたと思いますが、一番今困っておりますのは豚肉の問題でございまして、卸売価格が暴落しておるにもかかわらず、市中の小売価格が下がらないというようなものがある。ところが、これが組合が十分に強固でありませんので、組合との間に懇談をするといってもなかなかできにくいという面もありまして、将来はこれらの組合の育成もしていがたければならぬだろう、また、同時に、直売所を作るとか、もしくは消費宣伝をするとかいうようなことも必要であろう。あらゆる面において非常に立ちおくれがあるので、施策の欠けておる点がありますので、これについての十二分の施策をして参らなければならぬと思います。何分にも、これらの新しく選択的拡大をされようとする農業につきましては、これらを取り扱っておられる業者、これらの輸送、販売の面において今申し上げたような、面がありますので、これをあわせて努力をして参るという所存でございます。
  11. 川俣清音

    川俣委員 大ていのことであれば、河野さんやり切るということの評判ですが、これはやはりなかなかやり切れないようでございます。そこで不信が起こってきたのではないかと思います。一つ野菜の例を申しますと、神奈川産の大根は、生産地でおそらくキロ八円から十円でしょう。それが市場へ出て参りまして十六円から二十二、三円。これが小売になりますと四十円から五十円。わずか神奈川から築地の市場に来る間にこれだけの値段の相違があるわけです。これが遠くから来るならまた別問題にして、神奈川産の大根ですらそれだけの開きがある。  そこで、野菜のことは別にいたしまして、せっかく豚肉の問題をお出しになりましたから、特にこれは、河野さんは畜産については専門家なんです。昨年臨時国会で、畜産物価格安定法なる法律を作られまして、今後は畜産については価格安定をするのであるからと、大いに養豚熱をあふられ、あるいは酪農熱をあふられたのです。しかも、一頭、二頭の飼育ではいかぬ、多頭飼育をしなければならないということで、大いに激励をされたわけです。価格を安定するのであるからして、多頭飼育に踏み切れということで、畜産局などは大いに宣伝これ努められた。従来であると豚肉が下がるおそれがあるけれども、畜産物価格安定法を作ったのであるから大丈夫だ、こう宣伝されたのではないですか。ところが、価格安定法ができたところからだんだん生産地豚肉が下がりかけてきた。安定法ができて上がるなら、これは別ですよ。生産者価格はますます下がってきたじゃありませんか。去年の七月が最高でございましょうが、キロ三百四十二円が、十月に入りますと三百円台を割りまして二百九十円、一月に入りましてからは、一月の十九日に二百四十円、最近は二百三十円、これは、安定法ができたために価格が下がったという結果になっているのです。しかも、まだまだ下がる危険性を持ってきているのです。それは、まだ肥育の十分ではない、いわゆる小貫物と称せられる小豚――小豚と申しますか、肥育の十分行き届かない、これからもっと肥育するであろうものを、先行き不安で売り出して参りまして、さらに市場を混乱させる状態が起こって参りましたので、畜産局ではあわてまして、この間各府県通牒を出している。何とかならないかという通牒を出されたけれども、もう手おくれ。農民から言えば、全く皮肉の感にたえない思いがするのじゃないか。これは総理どうですか。小売価格が下がっていないのです。もう生産者価格は半分近い値段でたたかれながら、消費者価格が全然下がらない。従って、もう先々が不安ですから、多頭飼育をしておればおるほど持ちこたえられないで、売り出してきております。これがさらに市場を軟化させる原因になってきている。もとのように副業で豚を作っておるなら、一頭売ろうと売るまいと保持できたのですが、多頭飼育になりますと、とてもそんなに持ちこたえられませんから、今のうちに売ろうという空気が出て参りまして、いよいよ値を下げている。もうおそらく種豚すら売り払われる状態になってきたのじゃないかと思うのです。ことしはさらに小豚の入手が困難でないかとさえ思われるわけです。これだと、畜産物を大いに奨励するのだと言いましても、こういう不安が起こって参りましたならば、農業の転換を進めるのだと言っていますが、政府に対する不信の念が、転換できない事態を起こすのではないか。これは結局は、農民の不利益であるばかりではなくして、消費者にとりましても大きな打撃だと思うのです。もう少し安いものを食わせるような方法を講じられないのか、講じてしかるべきじゃないか。そこに私は農業の受け持つ責任があると思う。ただ自分だけが安くなって、消費者価格が下がらなければ、そこに農民の大きな不安が出てくるはずなんです。これは当然のことなんです。これがもしも工業製品だったらどうです。もっともっと騒ぎが大きくなるはずです。農民なるがゆえに泣き寝入りしている、この不満がいつかは大きな爆発をしないとは何人も保証できないと思うのです。この点について……。
  12. 河野一郎

    河野国務大臣 実ははなはだ不手ぎわでございましたが、当時附帯決議がございまして、価格審議会委員議員を加えろということでございましたので、議員諸君委員をお願いして委員会を発足しようというつもりでおりましたが、委員選定が思わしくいきませんで、この価格審議会でどの程度に安定さすかということをきめませんと出発ができませんものですから、いろいろなことでもって手を打っておりましたが、御承知通り、あまりおくれることもいかぬと考えまして、やむを得ず、議員さんからの委員を加えずに、委員会を早急に開いて、安定値をきめて買い入れをやるということにいたしたわけでございます。しかし、今もお話がございますが、確かに小さなものが急に出ましたために、一時的に暴落しております。しかし、ここで政府が無制限買い入れをするということを発表いたしておりますから、また、同時に、府県指導もそれに基づく指導をいたしておりますから、この辺のところで安定をしていきたいという考えでございまして、これ以上暴落することは絶対に避けなければならぬ、また、それは避けることができると確信いたしておるわけでございます。
  13. 川俣清音

    川俣委員 農林省の計算によりますと、豚の生産費は一万四千七百七十二円くらい、キロに直しまして三百十七円くらいだといわれております。そうしますと、三百円台を割ると採算がとれないということになるわけです。しかも、今では二百三十円、しかも、屠殺ができませんで残っておって、だんだん屠殺残高が多くなってきている。これがさらに市場を悪化させている原因になっておると思う。そうなると、将来を憂えまして、いわゆる小貫物を売る、十分な肥育に達しないものを、肥育をあきらめて売るというのが、小貫物の売りなんです。将来を不安ならしめておるのは、政治に対する不信だと言わなければならないと思うのです。行政的に信用されておりまするならば、そんなことはないはずだと思うのです。県をあげて、畜産に転向せいということで、あれだけたいこをたたいておるじゃないですか。それが徹底して飼育を始めたけれども、不安だという。これじゃ農民はどこへいけばいいのですか。しかも、農林省の言われる通り、多頭飼育に入った者が一番危険な状態に陥ってきておる。再び立つあたわざる打撃を受けておる。これが副業であれば問題はないのです。問題ないわけじゃないけれども、売っても売らないでもいい、こういうことでしょうけれども、多頭飼育をしておりますならば、売らないでいいでは済まない。売ることが目的です。商品化目的ですから、先々が不安であれば、全部売るということになるであろうと思うのです。せっかく法律ができたけれども、委員選定がおくれたからうまくいきませんでしたでは、これは済まされない。河野さんは、法律なしでも相当いろいろなことをおやりになるじゃないですか。行政でやるのだといって、いろいろなことをおやりになっている。このくらいなことは、豚の値を何とかするということくらいがやれないのでは、実力者とかなんとかいわれておりまするけれども、私はどうもいただけないと思うのですが、総理大臣、いかがですか。
  14. 河野一郎

    河野国務大臣 今ここで川俣さんに先行き不安々々と言われますと、農家の諸君が心配をいたしますから、一つこれは法律にあります通りに――私といたしましては、法律がございませんければ、しかるべき先輩と相談をいたしまして、この程度で豚の肉の安定はすべきだということは踏み出せますけれども、一応法律があります、現に確定いたしております以上は、法律に基づく委員会開き、その委員会に諮問をして価格決定し、その価格決定に基づいて事業団が発動するということになっております関係から、今申し上げたように、はなはだ相済みませんが、決定がおくれまして、そのために今日の状態にありますが、月もかわりますれば、直ちに委員会を開いて、最低価格決定して、標準価格決定して、そして、それに基づいて公団は出発をいたし、無制限買い入れをいたしますということで、各地方に行なうと同時に、買いましたものについては、学童給食等にこれを消費するということに思い切ってやるつもりでございますから、そこで、私は、豚価の安定ということにつきましては、地方の御了解を得て御協力が願える、こう思っておるのでございまして、決して御心配かけずにこれからは必ずやるという所存でございますから、御協力をいただきたいと思います。
  15. 川俣清音

    川俣委員 総理は……。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 農林大臣が答えた通りであります。
  17. 川俣清音

    川俣委員 それは私は、行政的に手を打てないわけはないと思う。小売価格消費者価格が今百グラム六十円か六十五円くらいしておる。これが四十円台になりますならば、もっと消費が旺盛になってくるであろう。ことに冬にかけまして肉類の売れ行きがいいときです。もしも豚の値をそれだけ下げまして、需要が旺盛になって参りますならば、刺激を受けて、豚の値を上げることは決して困難ではないはずです。ただ、牛肉との関係がございますけれども、比率はございましょうけれども、豚の緊急の措置としては、小売価桁が下がれば、需要が旺盛になりまして、価格の維持は決して困難ではないはずなんです。そのことが国民生活の上からも必要なことなんです。これは審議会委員ができないために手を打たれなかったでは、ほかの大臣ならよろしいけれども、畜産にこれだけ関係の深い大阪としては、どうももう一つふんばりをしていただかなければならぬじゃないかと思う。私は、今先々を不安ならしめるために議論しているのじゃないのです。不安を持っておるから、この際打開をしなければならぬから、ここではっきりして、不安のないようにあなたが説明されることが、国民に対して、農民に対して忠実であると同時に、消費者に対しましても、もう少し安く売るから大いに食ってくれないか、とうやるのが、農林大臣のこの際の責ではないかと私は思うのです。答弁まで言ってしまったけれども……。
  18. 河野一郎

    河野国務大臣 実は先ほども申し上げましたように、豚の小売をなすっていらっしゃる人もしくは卸をなすっていらっしゃる人の組合が、あまり十分でございません。そういう関係で、どなたを相手にしてああのこうのというすべがありませんので、実はいろいろな手違いがございました。そこで、直売場を作ろうというようなこと、もしくは一両日前にも主婦連の会合に私は出席いたしまして、主婦連の諸君の御協力も得て、そして、卸が下がったが小売が下がらぬ、この不合理を主婦連の諸君等の御協力も得てやりたいということ等、各方面を実はやるだけはやっておるのでございます。ところが、先ほど申し上げますように、一般農産物すべてそういうきらいがございます、先ほど大根の話がございましたが、これらも、実は現在の神田にしましても築地にしましても、私はこの中央市場が非常に不満です。東京都に対して、この改善について強く要請をいたしております。何分、大根が築地の市場に幾らきょうは入ったかということにつきましても、市場で掲示はしておると申しますけれども、立会人もしくはそこの仲買い、小売人に、きょうは大根幾ら入っていると聞いても、だれも知りません。知らずにせっているようなことでございます。従って、過去の統計を調べてみますと、大根がたくさん入荷があるにもかかわらず、その日は高い。少ないにもかかわらず、大根の値が下がっておるというようなことであって、少しも公正な市場の動きをしていないというように見られる点もございますので、六大都市の中央市場につきましては、特別に今後検討いたしまして、政府として考えなければいかぬじゃなかろうか、六大都市におまかせしておいて、はたしていいだろうかという点も、実はなくはないのであります。このほか、一般生鮮食料品につきましては、何用はどの程度が標準の価格としてしかるべきものである、これより高いか安いかということが、われわれとしては考慮する点であるということを考えまして、これも近日のうらに標準価格になるべきものを農林省から発表して、それを中心一つ各方面の御協力をいただき、政府としても努力するということでいきたいとせっかく努力中でございます。
  19. 川俣清音

    川俣委員 この際、企画庁にお尋ねしたいのですが、こういう流通機構に何らかの手を加えない限り、小売価格、特に農産物の小売価格高騰を押えることが不可能ではないか、こう思われますが、どのように処置されたらばよろしいか、構想があると思いますから一つ……。小売価格を何とか押えようということは、予算委員会大臣たびたび答弁しておられる。結局これは流通機構の問題で、これに対してどのような手を打とうと考えておられますか。考えてなければ、小売価格を押えますということは、言葉だけに終わってしまうわけです。御答弁願いたいと思います。
  20. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 価格形成の中で、流通機構の問題というのは、特に生鮮食料品等については大きいことはむろんでございまして、従って、その流通機構をどうするか、それから輸送関係をどうするかということは、重要な問題だと思います。われわれとして、そういう点を十分改善していかなければならぬという建前において、それぞれ主管官庁の方の御考察を願い、そうして案を立てていただくようにいたしておるのでございまして、われわれとしては、そういうことが促進されるように、また、価格形成の中でそういう点が非常に重要だということを指摘して、それぞれの主管官庁の御考慮を願うことにいたしておるわけでございます。
  21. 川俣清音

    川俣委員 指摘は私の方で指摘をしておるので、政府の方が処理をしなければならないという意味で指摘をしておるのですが、これをほかの官庁にまかしておるのでは、これはまたあなたがちょうどわれわれ野党と同じように指摘をされただけでは、効果が上がらないと思うのであります。  果樹の場合を見ますと、果実は御承知のように時期的に生産されるものでありますから、生産地においては買いたたきをされる。せっかく果樹園芸という方向農民が向いて参りましたにかかわらず、生産地においては過剰生産のような状態が起きる。そのために買いたたかれる。ところが、小売消費者価格におきましては、まだくだものは高級品扱いで、高いのがあたりまえだということで、消費を抑制されております。旅行であるとかそういうときにはくだものを食うが、普通のときでは高過ぎて食えないものだ、お菓子よりもくだものは高いのだというように印象つけられておる。わざわざみがいて、そうして高いように見せかけておって、消費を抑制しておるのではないかと思われるわけです。そこで、生産地は買いたたかれる。消費地は高級品扱いでばか高い。そこに消費伸び需要伸びがとまってきておる。需要伸びがとまっておるところに生産の拡大をはかろうといたしましても、これは容易にできることではない。ただ政府は、一方において、米麦のみではだめだ、園芸をやれ、あるいは酪農をやれ、畜産物に注意をせい、こう言いましても、現実はそれを可能ならしめる状態ではないのじゃないか。可能ならしめる状態に持っていくことが望ましい。これは政府もそうである。私どもも望ましい。望ましい施策がなければならないと思うのですが、この点企画庁長官どうですか。
  22. 河野一郎

    河野国務大臣 すべて川俣さんのおっしゃる通りですが、御承知通り畜産にしましても、果樹園芸にいたしましても、政府としても、果樹園芸局をこの議会でお願い申し上げておるというようなことでございまして、一般果樹園芸について、確かに菓子よりもくだものの方が安いのだ、事実産地において安いのだ、安いのだからもっとたくさん食べてもらった方がいいんだ、その通りに私どもも考えて行政を進めておるのでございますが、これは一緒になってきておるわけであります。一方において増産をし、一方においては今御指摘のような中間機構、流通過程を改善する、問題が一つになっております。  そこで、生産の方は農家の諸君がどんどん理解し、協力していただいておりますので、われわれとしては専門にこの方にかかっていく必要があるというので、実は先ほど申し上げましたように包装、箱をどうしたらいいか、もしくは輸送の過程はどうしたらいいか、何はどういうふうに貯蔵すべきであるかということが、いずれも今年の課題になっておるということでございます。われわれとしては、これを根本的に掘り下げて、そしてことしの予算には間に合いませんが、来年度予算には、これらについて農林省予算は大幅に御審議を願わなければならぬのではなかろうか、こう思っておるわけでございまして、今後ともいろいろお知恵を拝借しなければならぬと考えておるわけであります。
  23. 川俣清音

    川俣委員 流通過程に手を入れることはなかなか容易じゃないというふうに政府考えておられるようでございます。最もこの内閣の弱いところは、自由経済の中において流通機構に手をつけることが一番弱い面だと思います。なかなかほかの面では勇敢に――反対があるにもかかわらず勇敢にやられますけれども、この面は非常に弱いのじゃないかと思います。しかし、農林大臣、今幾分なりとも市場に対する考え方が出て参りましたから、将来を期待してもいいと思います。大したことはないのじゃないかと思いますけれども、せっかくの熱意でございまするから、これは期待をすることにいたしましょう。  次に、これと同じような問題が林業の林産物あるいは木材にも起こってきていると思うのです。高度成長に伴いまして異常な木材の高騰がありました場合に、これは、法律じゃなかったけれども行政的な手を打たれて、一応は安定してきた。そのうちに引き締め政策で木材が軟調になってきたわけですけれども、しかし、こういう中において、一体今後の林業をどう進めるべきかという段階に来たと思うのです。  私ここへ質問要旨を長々と書いておきましたけれども、これは考えてほしいという意味で書いておったので、今ここで長く述べる時間を避けたいと思いますが、一方において、従来の林業というものは、これは歴史を考えてみるとよくわかる。徳川時代におきましては、木を植えて尊んでこれを切らざるを森という、――森林の森、植えて家計に役立たせるを林という、合わせて森林なんです。いわゆる鎮守の森というのは、あれはあがめ奉って切らないで子孫に残すのを森だという。この森の恩恵で今日蓄積がふえておることも今やはり考えてみなければならぬと思うのです。伐採をするから造林をするとこう言いますけれども、天然資源というものには、人工を加えますと、ときどき人工に対する天然の攻撃が加わりまして、異常な災害をこうむることがあるわけであります。そこで、確かに化学工業の発展に伴って木材の需要はふえては参りましたでしょう。それに即応するに造林といいましょうけれども、ただ一様に造林を始めますと、災害の予防にならない造林ができ上がるのであろうと思うのです。木を植えれば災害を予防できるのだというのは、過伐をした場合にそういうことは言えるのでございますが、ほんとうの事実から言いますならば、やはり濶葉樹と針葉樹とが適当にはえておることによって災害を免れる。木を植え付けたところに災害が起きておるのです。なぜかというと、造林を済ませれば、地上を動かすのですから、災害をこうむりやすい、地すべりを起こしやすい、崩壊を起こしやすい状態を作るわけです。木が悪いのじゃないのですけれども、造林という一つの整地をすることによって土壌を動かすために起こってくる現象なのです。従って、一方においてはますます災害を大きくする危険性が住まれてくるわけです。そこで、緊急の木材対策だけを考えて参りますると、国土保全の上から、あるいは災害予防の上から、非常な大きな事態が起こってくる、こう思うのです。この点は注目を要する点だということを申し上げる。問題は、今後林業をどう利用するか。今後牧野を必要とする酪農畜産物の奨励が入ってくる。木材の必要からして造林が入ってくる。同じ土地でこれは競合が出てくるはずであります。今、林野庁といいますけれども、牧野の方はあまり熱心にやってないということで、大臣だいぶおしかりのようです。けっこうな話だと思います。どうこれは利用させるのですか。ことに山里のようなところをどう利用するのか。畜産に利用させた方がいいのか、造林に利用させた方がいいのか、こういう問題にぶつかってきたと思います。ところが、一方、企業林業ということをさせますと、なかなか牧野にすることを許さない状態が出てくるだろうと思います。そこで、どうこれを処理されるか。ほんとうから言うと、林業基本法が出て参りまして、方向が出てこなければならぬはずですけれども、なかなかここへ踏み切れないで、森林法の改正ということでお茶を濁すに至ったのですが、これはどういうわけでしょうか。あわせて御答弁願いたい。
  24. 河野一郎

    河野国務大臣 御指摘のように、山が多く平地の少ない日本でございますから、山をどう利用するか。一方において台風の非常に参ります、災害の多い日本でありますから、山をどういうように守るかという問題が一時に起こっておるわけであります。そこで、私は、これらを抜本的に再検討いたしまして、一面から申しますれば牧野をなるべく広くいたします。そうして、ここに畜産を取り入れ山をその方面に利用できるようにしていくということもできるだけ推進いたしたい。二面から申しますれば、御指摘のように、災害に対してどういうふうに山を守るかということを、また別の観点から検討する。従来のように、ただ山を、木を植えて、そしてこれを利殖の対象にするというような考え方から一歩前進いたしまして、そうして、なるべく外材の輸入を十分にいたしまして、国土の保全もしくは農地の増大というような面から、山の利用については考えていくというふうにやっていきたい、こう基本的には考えておるのでございますけれども、何分複雑な、または調査の困難な日本の急な山でございますから、そうは申しましてもなかなかそうばかりはできない。要は、保安林等を中心にいたしまして山を十分に守る、反面において利用できるところはなるべくこれを牧野として利用するというふうに、積極的に開拓していきたい、こう考えております。
  25. 川俣清音

    川俣委員 この際大蔵大臣にちょっとお伺いしたいのですが、治山治水十カ年計画がございます。前期五カ年計画、後期五カ年計画がございますが、この五カ年計画が、大蔵省の見解によれば、推捗率が高い、こういうことに答弁されるだろうと思います。しかし、時間がないから前もって申し上げますが、これは臨時の災害の復旧を入れまするから予定よりも治山についての予算がふえた、こういうことになるようです。ところが、臨時の災害というものは、年々災害を平均二十六億程度より見ていないはずです。民有林の前期五カ年計画は五百五十億、それに対しまして今までに約二百数億出ておるようでございまするから、大体順調または進捗率が高いと、こう言われておりましょうが、しかしながら、予定から申しまするというと、三十五年度の災害、三十六年度の災害を入れまするというと、これは予定災害というのはおかしいけれども、予想されておりまする何倍という上昇をみましたために、治山計画においては予算がふえた。こういうことになるのじゃないかと思う。しかし、これは、治山というものは予防でなければなりません。予防を講じてなければこれは追いつくものではないのでございまするから、既定計画に基づいた計画を実施すべきじゃないか。これは、大蔵大臣が常に言われる、法律に従って予算を支出するのだという原則を、みずからあなたが破ることになると思うのですが、おそらく破る考えはないと思いまするけれども、その点ちょっと伺っておきたい。
  26. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 治山治水計画は、御承知のように十カ年計画がございますし、また三十五年度を始期とする五年計画ができております。この計画についての変更その他が災害にからんでいろいろ論議されておりますが、私どもは、せっかく出発した計画でございますので、これをできるだけ事業を繰り上げて実施するというような方向で、今年度の予算におきましては特に私どもは治山治水計画の予算の強化を行なっております。御承知のように治水は五百四十二億円、治山が九十八億円、前年度に比べて百億円以上の予算強化となっておりますし、水資源の涵養とか開発に必要な予算措置、資金措置も今年度は十分とってございますし、一方多目的ダムの予算も相当の強化を行ないましたし、森林開発公団の事業拡大というような点にも予算考慮をいたしまして、全体としてやはり災害対策をすると同時に、この予防対策であるべき治山治水には、この計画に沿うというよりも、むしろ私どもは計画を繰り上げても強化するという方針で予算措置をしたつもりでございます。
  27. 川俣清音

    川俣委員 時間がありませんから簡単に私の方から述べておきますが、最初の計画は民有林において二十六万一千ヘクタールであったわけです。それから新生、新しく災害が発生するのが四千二百ヘクタールというふうに見込んでおったわけでございますが、当時の災害の方が多くて三十五年度は四十八億、三十六年度は百六十億という復旧をいたしておるために、ほんとうの五カ年計画がまだほんとうに軌道に乗っていない点がある、こういうことを注意してほしいと、こういうことでございます。時間がありませんから、弁解があるならもっとやりますが、まあ注意を促しておく程度にいたしておきます。  次に、農林大臣にお伺いいたしたいのですが、食管制度を改革する必要があると言っておられるわけですが、もしも食管制度を変えるならば、米価審議会にお諮りになって御意見を承ることが一番必要なんではないかと思うのです。それを、これは御承知でしょうけれども、米価審議会農林省設置法に基づいて、食糧管理法に基づいて、あえて設置されて、これは予算にも計上されておるのです。それをお使いにならないで、米穀制度管理懇談会なるものを設置されたと、こう新聞では報道されておる。設置というからには、これは法制上の処置を講じられたと思われる。新聞はみんな一様に設置と書いてあります。ところが大蔵省は、法律に基づかない機関であるから設置は認めないということになっておるのじゃないかと思いますが、いずれにいたしましても、どうしてこの法制上の米価審議会をお使いにならないのですか。これはあなたのごきげんに沿わないから米価審議会を使わないでは、情けないと思うのです。言うことを聞く者だけを集める、おどかしのきく者だけを集めて懇談会を作るのでは、これは世間を納得させることはできないと私は思います。そこで大臣の意見を伺いたい。
  28. 河野一郎

    河野国務大臣 設置という字のことをやかましくおっしゃるが……、。
  29. 川俣清音

    川俣委員 いえ、これはこだわらない。
  30. 河野一郎

    河野国務大臣 おこだわりにならなければよろしゅうございますけれども、これは何も農林省で設置したとは言っておりません。米の懇談会を開いてお集まり願って御意見を承っておりますのは、御承知通り米の問題について、こういうふうなことをやったらどうだろうかということを、世上だいぶ議論がありますので、この議論に対して私は私の友人、先輩、識者の諸君に御意見を承って、そうしてこれらの方々の御意見がどういうふうであろうか、その御意見に基づいて私の自分の決意をいたして、そして一つの案をまとめましたならば米価審議会に御相談を申し上げるというつもりでおるのでございまして、まだ私の農林大臣としての方針を決定する段階に至っておりませんので、これらの方々の御意見を承った上で方針をきめていく、こういうつもりでございます。
  31. 川俣清音

    川俣委員 せっかく大臣研究されるとするならば、大いにいいことだと思いまするから、御研究願いたいと思います。しかしこの予算がどうなっておるのであろうか。米価審議会農林省の一般会計でこれを処理しておりますが、どうも懇談会は食管特別会計の中でやっておられるようでございます。その費用は大したことはないようでございまするけれども、食管会計が赤字だと騒がれておりまするときに、研究をされることは非常にけっこうでございまするけれども、生産者にとりましても、消費者にとりましても、この食管制度を変えるということについて異議があり、反対がある、その中の会計で相談をされるということは妥当を欠くのではないか、こう思うのです。大臣が大いに研究されることは、ほんとうにけっこうでございます。大いに勉強して御研究願いたいと思いますが、その食管会計の中で、生産者が売る会計、消費者が買うその会計の中で研究をされるということは、妥当を欠くのではないかと思うのですが、この点どうでしょう。
  32. 河野一郎

    河野国務大臣 今お話しの通り、そうたくさんの金を使うわけでもございませんし、従来とても、実は川俣さんに差し上げたことはないかもしれませんが、お客さんがあればコーヒーを出す、お菓子を出すというようなことは当然あるのでございまして、私、そうやかましくこれを取り立てて、非常に違法な悪いことをしておるというような――いずれも有益な御意見を伺うのでございますから、これらの方々に特に御飯を差し上げる、お茶を差し上げることはしてよろしいのじゃないか、こう考えております。
  33. 川俣清音

    川俣委員 私はごちそうをするなとか、お茶を出すなとか、そういうことを言っているのじゃない。農林省として研究に値するならば、一般会計をどうぞ要求されて、そしてお使いになってはどうだ、こういうことが主張なんです。何もごちそうすることが悪いのということはございません。委員会をやったときにお茶を飲ませるななんて、そんなけちなことを言っているのじゃない。大した金額でないでしょうけれども、会計の筋としては一般会計から出すように要求をされたらどうであろうか、これは新規だからだめだといって断わられたから、行く先がないから食管会計へもぐるというのは妥当を欠く、こういうことを申し上げておるのです。どうですか、大蔵大臣
  34. 河野一郎

    河野国務大臣 これは制度として作りますれば、むろんお話通り取り扱うべきものだと思います。しかし臨時に、しかも皆さんの御意見が、結論が出さえすればすぐにでもそのまま散会するものでございまして、ごく臨時的なものでございますから、私が皆さんの意見を伺うという機関でございますから、お集まりでございますから、そういう意味でやっておるということに御了承いただきたいと思います。
  35. 川俣清音

    川俣委員 総理大臣、この農林大臣考えは非常にけっこうだというふうに総理大臣はお認めになっているのじゃないかと思うのです。食管制度について検討されることは望ましいことだというふうに思っておられると思うのです。それならば堂々とやるように国の予算をつけてやるということが必要ではないか。不必要ならやめさせたらいい、必要ならばやはり、金額は大したことはないと思いますから、予算措置を講じてやることが私は予算の筋ではないかと思うのです、総理どうですか。
  36. 池田勇人

    池田国務大臣 各省に設けられます委員会、法制に基づかざる臨時的のもの、会合でございますから、その予算をそういう臨時的な、ほんとうのお茶を飲むとか、――委員手当なんかあまり出ていないと思います。そういうものの予算の組み方は、その省の予算、一般会計かあるいは関係の特別会計か、これは私は大した問題ではないと思います。なるべく新規のものは一般会計でやろうという原則を立てております。所管の特別会計の方から出す場合も私は往々にしてあると思います。特別にどれだけの金額でどういう格好で食管会計を組んでいるかよく存じませんが、こういう河野農林大臣の言われるような臨時的の会合につきましての予算の問題は、どっちへ組むかということは大した問題ではないと思います。
  37. 川俣清音

    川俣委員 総理は少しあいまいにされた。あなたはできるだけそういう委員会を整理するという方針を立てられておるはずです。(「委員会じゃないじゃないか」と呼ぶ者あり)委員会じゃなくたって、懇談会だって同じじゃないか、国の経費を使っている場合は、委員会と言おうと臨時の懇談会と言おうと、そういうものを整理をしようという方針をとっておられるはずです。行管の川島さんおられませんか。――委員会を整理しようという方針をとっておられるはずなんです。公務員も整理しよう、そういう方向をとっておられるときに、この委員会を整理する方向と違った方向をとっている、わずかだからいいじゃないかというが、これは幾つも重なっておるじゃないですか、一つじゃない。農林省一つか二つでしょうが、外省みなこうなんです。そこで、これを整理されようとする方向であるのか、こういうことは今後とも寛大に取り扱おうという方向であるのか、その方向だけを伺えばいいのです。
  38. 池田勇人

    池田国務大臣 行政組織法に基づきます委員会につきましては、整理する根本方針をきめて、そうしてその方向に向かっております。しかし臨時的の問題は、学識経験者が随時会合されるというのは、これは整理する方面の委員会の範疇に入りません。懇談会と目すべきものだと思います。しこうして懇談会は、いろいろな問題につきまして各界の意見を聞くことは必要でございますから、私はこういうものを整理するつもりはございません。常にやはり行政面におきまして、各界の意見を聞く懇談会は私は大いに開くべきだと思います。
  39. 川俣清音

    川俣委員 あえて総理の答弁でございますけれども、それは臨時に一年に一回とか何か開かれる場合は、これはほんとうの臨時です。これは一つの計画を持っていなければできない懇親会だ、そういうものでありまするから、注意を要するということを申し上げておきましたが、次に移りましょう。  農林大臣地方へ参られて農民に、生産費及び所得補償方式によって米価を算定するのであるから、将来下がる方向ではなくて上がる方向に向いているから心配はないと、こういうふうに御説明になっておるようですけれども、そのようなお考えを今でもお持ちになっておりますかどうか、この点をお伺いいたしたい。
  40. 河野一郎

    河野国務大臣 その通りでございます。
  41. 川俣清音

    川俣委員 ところが農林省などの生産費及び所得補償方式につきましては、三十六年度におきましても四案ぐらいできたはずであります。最低と最高では六百円くらい違っておるはずであります。これを自民党の部会にかけまして、できるだけ最高の方法をとったということになりましょうが、計算方式は生産費及び所得補償方式という命題でありましても、その算定によりましては相当の開きのあるものであります。従って下がらないと言うからには、一定の方式があって下がらないということを言わなければならないと思う。どの方式――いろいろ農林省でとられたでしょうけれども、どの方式を将来とって下がらないというふうに言われたのでありますか。この点、明らかにしておきたい。ちょっとむずかしいかと思いますけれども、ある程度かんべんしますから御答弁願いたい。
  42. 河野一郎

    河野国務大臣 従来とって参った方式でございます。
  43. 川俣清音

    川俣委員 従来大体四方式とってきたのです。それのどれか、ABCDがあるがどれか、こう聞いたのです。
  44. 河野一郎

    河野国務大臣 いずれの方式をとりましても、前年度より高くなると思いますので、それを客観的条件に合わして、われわれはこれを決定いたしております。
  45. 川俣清音

    川俣委員 いずれの方式をとっても、前年より高くはならない。Aをとって今度はDをとれば下がるということになります。ですから常に生産費及び所得補償方式でありましても、A方式ならA方式をとってる、B方式ならB方式をとるというならこれは別の問題ですが、ときによっては予算とにらみ合わせて、B方式をとったりC方式をとったりD方式をとられるから、下がらないというからには、一定の方法があるであろう、こういうことをお聞きしておるのです。
  46. 河野一郎

    河野国務大臣 私は農民諸君の信頼と、しかも安定した考えのもとに増産に御協力を願うということが一番大事だと思います。今、川俣さんのお話しのように、その内容に立ち至って御説明申し上げてもなかなか御理解いただけません。そこで、通念として、出産費補償方式ということにいたしますれば、農家の諸君が非常に安心なさいます。しかもわれわれは、この農家の安心の上に立って農政を進めていくことが一番必要であるという考えのもとに申しているのでございまして、将来といえども特別に異常な経済事情が起こらざる限り、前年度より米価を下げて決定するというようなことはあり得ない、私はこう考えております。
  47. 川俣清音

    川俣委員 この際一つ意見を申し上げておきますが、生産費を補償するというからには、これは三十七年度でありますならば三十七年度の生産費でなければなりませんし、三十八年度の再生産を確保するものでなければならないことば、食管法において明かであります。そこで、実際は、しかし生産が終わらない以前において価格決定するものでありますから、予想を立てるわけですが、これも七月なら七月、六月なら六月の原時点において、前年の生産費を、物資は農業パリティで延ばす、それから労賃は四月及び五月の現在に引き延ばして、その年の将来の米価を算定するということになっておる。従って、本式の出産費を補償するということになりますれば、秋にあるいは生産費を直さなければならない事態が起こるのが、生産費及び所得補償方式の本来の姿だと思うのです。そこで農村に行って生産費及び所得補償方式をとるのだというからには厳密な要求が農村から起こってくるであろうし、また私も起こすであろうことをここに明らかにいたしまして、次の問題に移って参りたいと思います。そうなまやさしくは、なかなか今後の米価問題は解決しないということを注意を起こしておきたいと思う。  次に、肥料の問題でございますが、これは通産大臣にお尋ねをいたしたいのですが、七月の末の肥料審議会におきましては、佐藤通産大臣はこの二法案を改正したり廃止するような考えは毛頭ないということを述べられておるようでございます。次に農林大臣からハッパをかけられまして、ついにかぶとを脱いだのかどうかわかりませんけれども、しぶしぶながら二法案廃止に踏み切られたようでございます。しかし、まだこの廃止後の処置については、お二方の御意見が一致しないようでございますが、閣議で一致されたようなことが起こってきたのでありますか。約半年の間にずいぶん変えられるということは、通産省の方針がぐらついておるということにもなりましょうし、業界というものは、通産省がそうぐらついておりますれば生産は不可能になって参りましょう。大体の方向がきまっていなければ、工業生産などできるものではないでありましょう。こういうふうに法律で縛られておるものは特にそうだと思うのですが、この点についての見解を通産大臣からお伺いしたい。
  48. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 肥料二法の問題でございますが、今、最初改正はしない、こういうお話だったが、その後何か改正に踏み切ったかというようなお話でございます。私、しないというようなお話をしたかどうか、そういう記憶はございません。もしあったとしたら、当時まだ勉強不足でございましょう。私、肥料の問題については、通産省として肥料業界の実情から大へん重大な問題だと考えておりますので、就任以来、農林当局、農林大臣ともいろいろお話をして、肥料審議会の席におきましては政府の一致した意見を表明したと思います。そのときは、農林大臣も私も肥料二法についての取り扱い方を申し上げたと思います。その後いろいろ成案を得べく努力いたしております。近く成案も得るようでございますから、成案を得た上で御審議を願う、かような考え方でございます。
  49. 川俣清音

    川俣委員 それでは外務大臣おられませんか。
  50. 山村新治郎

    山村委員長 外務省いますか、――川俣君、外務大臣はなるべく早く呼びますから、一つほかの大臣でお願いします。
  51. 川俣清音

    川俣委員 それじゃ外務大臣が見えませんので、総理大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、新聞に報じられるところによりますと、朝海駐米大使は二十六日午前に、ハミルトンAIDの長官をたずねまして、肥料問題について懇談をしたようであります。新聞の報じるところによりますれば、朝海大使は一九六〇年八月から六一年の七月までの間、日本の肥料輸出量は硫安八十三万トン、尿素五十四万トン、そのうちAIDによる買付は硫安三一%、尿素三九%を占めている。また、六〇年のAIDの買付額、月間千二百万ドル――鉄鋼、肥料、セメントを含めてでございますが、これが六一年十月に百万ドルに減少したことを指摘いたしまして、日本の肥料業界に大きな打撃を与えるからして何とかしてくれという申し入れをしたということになっておりますが、かような事実はあるのかどうか、また政府がこういうふうに命令したのかどうかということを明らかにしてほしい、こう思っておるのであります。
  52. 池田勇人

    池田国務大臣 アメリカ合衆国のAID買付問題につきましては、朝海大使がハミルトンに申します前に、ハミルトンが日本に来られた一月余り前、そのときに大蔵、通産、外務三大臣に個々に会いまして、いろいろ話をしたのであります。しこうして私はその三大臣にお集まりをいただきまして、各大臣はハミルトンにどういう話をしたかということを聞きました。各大臣ともその立場々々で非常に強硬にこのAIDの買付問題につきまして日本の気持を話しておる。私は、今後様子によっては、自分自身が乗り出してもいいくらいな気持を三大臣に申しました。そうして三大臣考え方を各立場立場で強力に今後も進めていくように、こういうことを言ったのであります。朝海大使が二十六日にハミルトンと会ったということは、外務大臣からは聞きませんが、私は当然なことをいたしておると思います。そうしてハミルトン長官の気持は、相当日本の三大臣の異口同音な強硬態度に感銘したと私は伝え聞いておるのであります。この問題は重要問題でございますので、私は、単に貿易ということではなしに、考え方としてアメリカに反省を求めなければいかぬ。われわれが過去十年、十数年にわたって努力してきた日本の販路を、いたずらにドル防衛のためにやるということは、世界の自由貿易の立場からいっても、日米経済協力関係からいっても、私はがまんできぬことだと思っております。
  53. 川俣清音

    川俣委員 そういたしますと、バイ・アメリカン政策によって台湾だけが残されておるというふうに業界では悲観をいたしておるようでございますが、その杞憂を一掃するために、総理大臣を初め外務大臣努力するであろう、こう見てよろしゅうございますか。
  54. 池田勇人

    池田国務大臣 努力するであろうではございません。努力いたしております。パキスタンの最近の入札につきましては、初めは除外せられましたが、再入札のときには日本が入るということに聞いております。私は非常な関心を持って見ております。努力いたしております。
  55. 川俣清音

    川俣委員 通産大臣いかがですか。これはもう肥料業界にとって非常に大きな問題であるということで、総理を初め非常な努力を払っておられるようでございます。通産大臣、これはぜひやはり必要なことだというふうにお考えになっておりますかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  56. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 主務大臣といたしまして最善の努力を払っておりますし、また今後も続けていく考えでございます。
  57. 川俣清音

    川俣委員 通産大臣にお尋ねいたしたいのですが、そういたしますと、世間に伝えられておるような出血輸出ではなくして、日本の肥料業界にとっては非常に重要なことである、こういうふうに見てよろしいのですか。
  58. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 国際入札に自由な立場で参加できるようにということでございます。御承知のように肥料の国際価格、各国の競争はなかなか激甚でございます。それで、おそらくいずれの国も出血と申しますか、原価を割っておるような形で今日まで行なわれている。比較的に、従来のAIDの資金なぞは価格が有利であった、かように思います。そういう意味からもAIDのうちに参加したい、こういう気持を率直に披瀝しておるわけであります。しかし、現在におきましては、これとても競争入札であることには変わりはないのであります。台湾だけは特別な取りきめによりまして、今比較的業者にも有利な条件のもとに貿易が行なわれておる、こういうことだと思います。
  59. 川俣清音

    川俣委員 日本の商品の販路を確実ならしめるために、また国際市場に進出するために非常な努力を払っておられるようでございますから、その点については敬意を表してよろしいと思う。ただ、日本の肥料メーカーが国際競争に耐え得るような状態にまで合理化されておるかどうか、この点に至りましては問題だと思うのです。対応できていないで、ただ外交手段や努力だけで輸出を継続しようといたしましても困難じゃないか。  問題は、さらに問いただしたいのでございますが、今度の二法案というものは、今日まで五カ年計画でできるだけ国際競争に耐え得るように、六十ドルであったものを五十ドルに、さらに第二次計画では四十三ドルまで下げる合理化を進めて参ったはずであります。これに対して大蔵省の援助は相当莫大であった。おそらく二千二、三百億程度の資金が導入されたり、あるいは税制においての援護がありましたりいたしまして、このぐらいのものはつぎ込まれておると思う。ところが、一向合理化しないで、国際競争に耐え得るような体質改善を行なわないで、いたずらに国内の肥料価格を高めていって、そこで国際競争に耐え得るような改善をしようとすることは、国内の農民に犠牲をしいることになるのではないか、国際価格と国内価格とあまりにも開きがあり過ぎるのではないか。これがもし出血輸出でなくして、しかも相当な利益のあるものだといたしますならば、それに即応するような国内価格もきめらるべきではないかと思うのです。そう思うのは当然のことではないですか。
  60. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 現在の肥料は、総生産の約四割が輸出でございます。輸出価格は、先ほど触れましたように、国際競争がなかなか熾烈だ、まあ大体ダンピングではないか、かように思います。  そこで、日本の肥料業界の実情はどうか、肥料二法を作りましたときのように、数量的に農民が不足を訴える、こういうような事態は、もうすでになくなっておるのでございます。そこで、いわゆる輸出産業として今後の肥料産業を育てたい、そういうことを私どもは実は考えておるわけでございます。  ただいま農民の負担においてとか、あるいは犠牲においてということを言われましたが、私には、それはちょっとわかりかねるのでございます。御承知のように、生産者米価は、コストも一つの基準になっておりますから、肥料自身がどういう価格であろうと、それはやはり米価決定一つの大きな要素だと思います。ただ、消費者自体から考えてみたときに、米価があまり高くならないことが望ましいのでございますから、ただいまのように二重価格を作っておる、これもおそらく限度があるだろうと思います。そういうことを考えますと、生産費はできるだけ安くなる、こういう意味で肥料の合理化を進めていくこと、これが望ましいことだと思います。私は、今日の肥料業界の実情等から見れば、国内で消費されておる肥料価格は、いずれの国に比べましても高い状態ではございません。この意味では、肥料の合理化はよほど進んできておる、かように私は考えます。問題は国際競争、そのいわゆるダンピングにどういう対応をし得るか、これについて輸出産業としての今後のあり方、あるいは税制なりあるいは金融等において特別な考慮が払われれば、必ずりっぱに輸出産業としても立ち行き得る、またそうさせなければならない、こういうことで、ただいま取り組んでおる次第でございます。
  61. 川俣清音

    川俣委員 私は、農民の犠牲においてと申し上げたのは、戦後各工業界が復興に悩んでおったときに、肥料工業は一番早く復帰をいたした、これはもうおわかりの通りであります。これは農民購買力――農地解放によって農民生産力の増大に伴った購買力に支えられて、一番早く復帰をいたしたのであります。それが日本の重化学工業の基礎に今なっておる、非常に大きな購買力の強い支持によって発展をしてきたのであります。それだから、ここで犠牲だとこう申し上げたのであります。首を締めるようですけれども、当時は政府はこれに何にも施策をしておらない。農民生産力が非常な増強をしたのに基づいて肥料業界というものが復興をしてきたことは明らかなのであります。時間がないから、それでは統計は申し上げませんけれども、これは明らかであります。それの恩恵に浴し過ぎて合理化がおくれておったのではないか。ここが盲点なのです。それは、肥料二法案が出ましたときに、通産省は五カ年計画で六十ドルを五十ドルに下げる目標で合理化を行なうのだ、そのためにこれだけの資金措置が必要だし、これだけの税の処置が必要だ、これが達成できれば六十ドルから五十ドルに下がるのだ、さらにこの五カ年政策では四十三ドルに下げるのだということで、予算措置を講じておられるはずなんです。税の面においてもそうです。これだけの援助を受けておるではないですか。ところが、五十ドルに下げるという前期の計画すら達成できないで、三十八年は依然として五十二ドルぐらいの価格農民に押しつけておるのじゃないですか。農民は、これだけの政府の援助がありますならば、もっと肥料は下がるであろうという期待のもとに、税措置についても無条件でこれを応援し、あるいは資金の枯渇の中においても特別にこれだけの融資のワクを与えまして、激励されたはずだと思うのです。ほかは成績が上がっておるのに、どうしてア系肥料だけが成績が上がらないのですか。これは通産省の責任だと思うのです。一つはできるだけ石炭を使いたいという通産省の奨励もあったと思いますが、依然として合成硫安に腰をかけておりまして、設備の改善を過去において行なわなかった責任であろうと思います。将来これではたえられないということで副生産物あるいは回収硫安等によりまして価格を下げていくでありましょうけれども、すでにそういう事態に入ったときには、いわゆる引き締め政策が参りまして、思うような設備の改善ができないで延び悩んでおるのが現状じゃないですか。通産省の責任まことに重大だといわなければならないじゃないですか。政府は何か抗弁がございますか。
  62. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいま数字を申し上げれば、非常に合理化が進んでおることは納得いくだろうと思います。私は言葉をとって議論するつもりはございませんけれども、犠牲だと言われる言葉は、私どもが考えれば協力――協力は大いに得た。しかし、犠牲という、そういう出血はなかったのじゃないか。いわゆる生産者米価等にそういう費用はみな入っておる、かように私は考えております。しかもなおそれが犠牲だと言われるなら、一般の金融措置なり、あるいは税制措置なり、特別措置がとられると、そこに犠牲があるのだ、こういうことかもわかりませんが、私は非常に協力を得ておる――同時に肥料自身が生産を上げるというか、農産物の生産を上げる上から申せば、これは大事なものだということを考えると、これは同時に使用者の協力、また生産者のそういう意味の協力、これが必要だと思います。通産省が肥料工業の生産性向上のために非常に努力をしておりますのも、そういう意味だと思います。また肥料二法がそういう意味において合理化を促進するのに今日まで役立ってきたこと、これは見のがすことはできないものだと思います。ただ先ほど触れましたように、二法ができた当初と今とは非常に実情が変わってきておる。そういう意味で新しい肥料産業についての考え方を確立しよう、こういう方向へ向かっておる。はっきり申しますならば、数量の問題ではなくて、やはり国際競争に負けないように、それを輸出産業としてもり立てることが必要だ、その段階に来ている、かように私は考えております。
  63. 川俣清音

    川俣委員 大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、これは前国会も前々国会も、肥料に対する融資ワクについてお尋ねしたと思います。  国際競争にたえ得るように合理化が進むことを前提として融資のワクを認め、または税制の処置をするのだ、こういう説明であったはずだと思うのです。ところが依然として目標額まで下がってこない、合理化ができていないという事態が起こっておる。これではどれだけ努力してもむだじゃないかと思うのです。必ずしもむだとは言えないかもしれませんけれども、あなた方の恩恵になれて努力を払わないのではないかという不信の念を、大蔵大臣はお持ちになっていいのじゃないかと思うが、この点いかがですか。
  64. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今度の合理化は、質的な合理化へ向かえるものだと、私は思います。従って合理化の資金のワクも、八十億というようなものを特に肥料業界に準備してございますが、今までの合理化は無理もないところもあったと思います。合理化の内容が、量産によってコスト・ダウンをするという方向に向かい過ぎておったきらいがあるので、これがやはり一つの問題であって、現在肥料業界にいろいろな問題を起こしている一つ原因であろうと思います。問題は、質的な合理化へこれから本格的に入る以外にないであろう、今の合理化の資金もそういう方向へ使われることを今期待しております。
  65. 川俣清音

    川俣委員 大蔵大臣、大いに弁護されておりますけれども、本委員会あるいは分科会の速記録を見ますと、量産によるコストの低下だけではとうてい対外的に対応できないから、質の変化を与えていくための合理化政策をとるんだということを説明されております。また二法案の政府提案理由の中にも、量はもちろんのこと、方式を変えて合理化の方へ進むためにこの法案を出すのだという説明になっておる。そうでしょう、二十九年にそういう方針が立てられて、その立てられた方針に基づいて資金ワクが出、税制措置が講じられておると思うのです。それがいまだに達成できていない。これからはいいでしょう。従来、もしもこれだけでもやっていなかったら、大蔵省はもっときびしくなるはずですけれども、寛大である理由がわからないのですが、どうですか。目的達成のために努力は払うということでありますならば、その資金につきましても有効だということになります。効率が上がったということになります。目的を達成できなければ、効率が上がったということは言えないのじゃないですか。効率の上がらない予算については相当きびしくやろう、こういう方針をとっておられたのに成績が上がっておらない、合理化が達成しておらない、コストが下がっていない。確かに量産にはなっておりますけれども、質の転換がおくれておるために、現在国際競争にたえられないような価格である。そこで国際的に損をしたものを国内に転嫁しようという政策がとられている、こうなるんじゃないですか。わずかに六割の国内価格で会社の経営をやっていこうとしておられる。通産大臣にお聞きしますけれども、あなたが出血と見るというのは、通産省の計算が甘いのです。私は証券界から肥料会社の大体の予想をとりました。そういたしますと、これは株屋さんのせいもありましょうけれども、株屋さんによりますと、これは、この計画が進行してこれこれやればこれだけの利潤が上がる、今度は朝海大使が交渉したために輸出がさらに振興するから、もっと株は上がる見込みだということを、詳しく資料を出しておる。通産省はこれは出血だ、こう言うけれども、株屋さんは出血と見ていない。そうして株の値をあおっておる。これはどういうわけですか。通産大臣、株をやったことがないからおわかりにならないかもしれないが、株屋から、各会社の業績、将来の見込みをとってごらんなさい。輸出が盛んになれば利益が上がるということを明確に示しておる。そうすると輸出によって損をするということにはならないじゃないですか。ここであなたが、輸出によって損をすると言うと、株は下がりますよ。証券界では輸出によって株は上がるという方向を打ち出しておる。では、資料を出しましょうか。私は別に株のことを言うつもりはない。ただ外国についてはこう安く売っておるけれども、それを国内に転嫁をいたしまして、国内価格を引き上げて利益をさらに上げようとするところに反省を求めなければならない。農林大臣、大いにがんばらなければならぬ点は、ここにあると思う。
  66. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 国際価格は、先ほど来申しておるように、これはダンピングのせいであります。また株のお話が出ておりますが、肥料の専業会社の株は必ずしもよくないと思います。また肥料を作っておるといっても、肥料だけではございませんので、その会社の収益の状況、パーセンテージから見て、あるいは二割だとか、三割だとか、そういうようなところは、これはあまり肥料自身が影響をしておらない。ただ、今いろいろお話しになりましたが、現在の肥料二法は、申すまでもなく合理化のメリットを上げて、ほとんど価格の引き下げの方向に使っている。だから、これがまずコストに対して幾分かのものを見た価格を国内では使っておりますが、国際価格はそれより安くなるのです。これが各国の競争のダンピングの結果なんです。だから、そこに問題があるわけなんです。しからば国内の農民が使っておる肥料、これをドイツと比べてごらんになっても、あるいはアメリカと比べてごらんになりましても、日本の肥料が安いことは御承知通りであります。先ほどAIDのお話が出ておりましたが、AIDは六十ドルあるいは六十一ドル、そういう値段で売っている。しかし日本が売っておりますものは四十ドルをあまり越したものはないのです。そういうところに問題があるわけなんです。だから、実情そのものから申せば、数量確保が第一段の目的であった肥料二法として、この輸出とマスプロをやる、生産量をふやすことによって、合理化が進んでいく。そうすると、どうしても外国へ出さなければならない。その場合にある程度の損失がありましても、専業自身として国内と外国のものとでその損益が平均化されればいいわけです。ところが現在の状況では、それがその通りにならない。これは大へん農民に対しての特別な考慮が払われている結果、国内肥料は非常に安くなっている。そういうところに問題があるわけでございます。ちょっと先ほど来のお話から申しまして、株の値段等が出ましたが、これはちょっと事情が違うのだ、かように思います。
  67. 河野一郎

    河野国務大臣 ちょっとつけ加えて申し上げておきますが、川俣さん御承知通り、株屋の言うことはその通りでございます。なぜその通りかと申しますと、輸出する場合には、肥料屋は国内価格で計算します。そうしてそれを輸出会社に渡しまして、輸出会社の損計算において国外に出しておりますから、製造会社自身は、輸出がふえればそれだけその会社の業績がよくなってくるという格好が出てくることはあたりまえです。国全体とすれば、それが御承知通り、輸出会社が損失のそろばんで、何十億かそろばんが損の方に立っておるということになっておりますから、その会社の計算を株屋がする場合には、そういうそろばんが出る、こういうことになっておると思います。
  68. 川俣清音

    川俣委員 農林大臣、それだけよく知っておられるなら、通産大臣よりあなたの方が詳しいのだから、もう少し国内の農業資材でありまする肥料を引き下げていって――今後の果樹園芸ということになりますと、米麦よりもさらに肥料の投資量がふえる傾向のものでございます。あるいは高等野菜にいたしましても肥料に依存しなければならない程度が高くなってくるものを奨励していこうということでございますから、コスト高になる傾向でございます。従ってこの肥料を何とかしてもっと下げていかなければならないのが、農林省に課せられた任務だと思う。それをせっかくささえておりまする二法案を廃止いたしまして、ふんどしをとって、いやおれは実力があるのだから、ふんどしをとったって大丈夫だと言いましても、これは相撲でもやはりふんどしくらいは締めておらないと、相撲にならないと思うのですが、農林大臣どうですか。
  69. 河野一郎

    河野国務大臣 言葉が足りませんでしたが、御承知通り国内の販売価格は、合理化の進展によって下げるということになっておりますから、決して国内の販売価格が高くて、肥料会社がもうけておるということにはなっておりません。これは御承知通りであります。従って外国へ売ったらもうかるかといえば、それは輸出会社の欠損においてもうかっておるということだと私は申し上げたのでございます。これは御承知通り、その欠損がだんだん積って何十億になってくる、この欠損をとういうふうに処理するかということが問題になっておる、こういうことでございます。従って、それは農民の犠牲だとか、農家が高い肥料を使っているからということではないと私は思うのであります。  ついででございますから申し上げますが、はずした場合にどうなるか。通産省から、すでに今後の肥料合理化五カ年計画については、その内容は川俣さんも御承知通り、われわれは受け取っております。それによって合理化は進むものと期待いたします。従って、今後五カ年間の肥料の価格合理化される進度はわかっておりますから、その進度のわかっておりますものを国内ア系肥料の標準価格として、農林大臣はそれを持っておればよろしい、そうして全購連もしくは商人団体と肥料会社との間に自由に取引してもらったらいいじゃないか、その値段が、われわれが農林大臣として持っております値段に合意いたしませんければ、高いからもう少し何とかしたらどうだと勧告をする。その勧告をお聞きいただけなければ、輸出についてわれわれは同意しないというこの二点で、私は十分目的は達成できる、こう思うのでございまして、要するに数字的にはもう十分に合う。輸出を押えさえすれば、だぶついて下がるにきまっておりますから、その輸出については、農林大臣が同意をすることを条件にする。国内の取引について価格が問題でございますから、その価格については、もうすでに皆さんも御承知通り、大体肥料の価格はどうあることが合理化の進行によって適当であるか、適正価格についてはもうすでにわかっておることでありますから、農林大臣としてはその価格の点について関心を持ち、そこに合理性を求めさえすればもう十分である。あとは通産大臣合理化を進行していただき、輸出の増進をはかっていただく、通産大臣の所管においてやっていただくということでいいのじゃないか、こう考えておるわけでございます。
  70. 川俣清音

    川俣委員 農林大臣、これで先ほど外務大臣及び総理大臣に、輸出は政府の方針、国の方針としてあくまでも続けていくという方針をとっておられるのかどうかということを、念を押したのです。農林大臣は国内価格の上がることを押える方法として輸出に反対をする、こういうことで国内価格の安定をはかろうとしまするけれども、これは私はなかなかできないことだと思うのです。この池田内閣としてわざわざ朝海大使を使ってまで輸出の振興をはかろうといいますか、肥料の輸出をはかろうといたしておる、これが大勢だと見なければならないと思う。それすらとめろなんということは、私はできないのじゃないかと思う。ただそれは農民をだますということではないけれども、一時安心させる方便としては成り立つでしょうけれども、農林大臣なかなかこの輸出を押えるということは困難であります。それによって価格を安定させるということは、あるいは引き下げるということは、私は情勢上非常に困難じゃないか。困難なことを、安受け合いすることは不安を増すゆえんじゃないかと思うのです。そこで今日の肥料が、二法案ができ、これほど手きびしく肥料の合理化を進めておりながら、なお旧態依然として、まだ合成硫安をやっておるところがあるのです。もう合成硫安の時代ではなくなってきた。重化学工業がこれだけ発展してきたからには、副成硫安であるとか、廃ガスを利用して肥料に回すというような総体的な操業に入らなければならない時代に入ってきて、まだ単味肥料だけを作っておるというふうなことが残されておること自体がおかしい。もうとうにこれは自由競争でありますならば整理されておった。もうこれは合併されるか併呑されるかして、当然もう消滅していなければならなかったはずなんです。肥料価格が割合にいいために温存されておったのです。これを見落としてはならないと思うのです。合成硫安がいまだに続けられておるなんというのは、温存ですよ。外国の例を見ましても、その通りでしょう。もう早く転換されていなければならないのを転換を渋らしておった。それは肥料価格が割合によかったから転換がおくれておったゆえんだと思う。最近ようやく国際競争に勝たなければならないということで転換を始めてきたのでありまするから、将来は安くなるであろうということは言えまするけれども、まだ合成硫安の価格、この有利な価格で、この価格をも認めなければならないという態度をとっている限り肥料は安くなる方向には行かないと思うのです。これはもうやめさせるというわけにいかないかもしれぬけれども、合併、吸収等いたしまして、重化学工業の一部門として成り立つように仕向けていかない限りにおいては、合理化が達成したとは言えないと思うのです。こんなこと、私だってこう言うのですから、通産省で今まで計画しておって言われないわけはない。科学技術庁も早くから通産省に警告を発しておったところなんです。
  71. 河野一郎

    河野国務大臣 一つ見落としがありはせぬかと思うのです。その見落としというのは、一方において輸出会社が何十億、百億の赤字をここにプールして――肥料製造会社が今御指摘のような点があったということは、これは私は否定いたしません。ところが今一方において、だれの責任ともつかずに赤字をここにためておいて、いずれはだれかが処理してくれるだろうという計算で、一方肥料会社が甘いことを考えておった。これをこのまま続けていけば、だんだんそういうことになると思います。そこで、先ほど通産大臣がおっしゃったように、肥料政策は抜本的に考え直すべきときじゃないか、そういう輸出そのもので赤字が出れば、それは赤字は別のところに積んでおくのだ、だれかが片づけるだろう、自分たちは国内価格で帳面づらを合わしていってしまうんだという考え方が、根本的に合理化しないゆえんである。農林大臣、少し甘いじゃないか、輸出を奨励しなければならぬときに、輸出を押えるということはできぬだろうとおっしゃいますが、私は筋として、当然農相として要求してしかるべきことであって、合理化する数字、価格もあらかじめ公表されておる、そういうふうに年々下がっていくように肥料会社はやるべきものだということになっておるのでございますから、これも農林省だけでそろばんを入れて、これから肥料はこう下がるべきものだと言っているのじゃない。この数字は通産、農林肥料委員会でも示されている数字でございます。従って、当然今後の肥料の趨勢は、こういうふうになるべきものだという常識なのでございますから、その通り取引されなければ、要するに輸出が陣雲だということで、輸出に対して異論を差しはさむのはあたりまえのことだと私は思うのでございまして、それよりもむしろ抜本的に輸出の赤を一カ所にブールしておく、この弊を除去することが必要である。御承知通り、何さま作りましたときには、輸出すればもうかった、その時代に作った法律でございます。その時代に作った会社でございます。事情がまるきり逆の時代に作った法律でございます。従って、今日それをしも赤字のままで、だれの責任ともつかず置いておく、政府は何とかしろ、何とかしろと言われても、このままでむやみに赤を積まれたのでは、政府もそう無責任な跡始末をするわけにはいかぬと私は思います。そこで、抜本的に肥料行政は変えなければならぬ時期が来ているのではないか、私はこう申し上げておるのです。
  72. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 やはり数字を申し上げないと御納得いかれないようですが、膨大な資料をもらったので、どこにあるか探したので、大へん失礼いたしました。  それで、多分専門でいらっしゃるから御承知だと思いますが、日本の肥料は五十二ドル二十六セント、これは国内価格であります。輸出する場合の平均が四十一ドル六セント、西ドイツは幾らか、国内では六十二ドル五十九セントで売っております。それが輸出される場合には三十二ドル八十三セント、これは大へんダンピングをやっておる結果だと思います。ただ西ドイツの場合には、肥料会社の値は六十二ドル五十九セントでありますが、政府の補助がありますから、農民には五十五ドル九十二セントで売られておる。しかし日本よりも高いものでございます。それからイギリスは五十七ドル八十七セント、これは国内。ただこれはだいぶ政府農民補助がございますから、国内の農民の負担としては三十一ドル八十三セントとなっております。そうして外国へ売っておりますのは三十七ドル九十三セント、これも明らかにダンピングであります。アメリカ、これは国内において五十五ドル十セント、これは別に補助はございません。だから、五十五ドル十セントで農民が会社から買っていることになります。そのアメリカが外国に売っておりますのは三十一ドル三十五セント、これまた非常にダンピングが行なわれておる。それからイタリア、ここは、ただいま御指摘になりましたように、化学工業の先駆を行くものだという意味で非常に進んでおります。従って、イタリアの国内価格は四十八ドル四十九セント、これが一番安くなっております。それでも外国に売るときは、これが三十六ドル七十セントになっておるわけであります。  ベルギー以下は略させていただきますが、この数字そのものからごらん願うと、日本の硫安は相当合理化が進んできておるということが指摘できると思います。国内価格は、皆さん方に御審議を願って肥料価格を算定しておりますので、審議会の討議を経なければ決定を見ませんが、その場合においては、合理化のメリットはあげて価格の引き下げの方に使っておるということであります。ただ国際的な競争の関係では、やむをえずその原価を割らなければならぬ、これが、先ほど農林大臣が申しますように、今日まで百五十億になっておる。あるいはことしの肥料年度においても、さらにそれがふえるだろうというようなことが心配されておるということでございます。  こういうことを勘案してみますと、やはり肥料というものは、農産物と密接な関係がありますだけに、価格はできるだけ安くすることも努力しなければならないが、同時に、その事業自身が立ち行くように考えなければならない。そういう意味から、その生産の四割が外国に出ておる現状等から見ますと、今後も輸出産業としてこれを育成していく、そういう方向考えていく。もちろん国内の肥料価格は、今後合理化が進んで参りますから、そういう意味では順次安くしていく。現在外国に比べて安いから、もうこれでいい、かように申すわけではございません。いろいろ工夫されておりますので、さらに安くなるだろうが、このままでは、いわゆる赤字を積み重ねていく、それの処理もつかない、こういうことで事業自身が参ってきておるというのが実情でございます。
  73. 川俣清音

    川俣委員 時間がないので、これで打ち切りたいと思いますが、いずれにしても、どんな弁解が行なわれようとも、現状におきましては、まだ依然として合成硫安を作っておる現状なんです。これは重化学工業の将来の発展の上から、当然廃ガスを使った副成硫安あるいは回収硫安にいかなければならない方向なんです。それならば合理化されたということは言えると思います。価格が下がったからとか下がらないとかいうことじゃない。結果的には、農民の側からいえば価格が下がってほしいのですけれども、通産省としては、これが価格が幾らか安くなったから合理化ができたんだということは言えないのではないかと思います。そういう意味で、今後何らかの対策を講じていかなければならないので、新制度を作るということになっていますが、この新制度に基づく予算措置並びに法案等の準備はどうなっておるのですか。
  74. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 冒頭にお答えいたしましたように、法案はただいま整備中でございます。法案を得ました上は、できるだけ早い目に御審議いただきたい、かように考えております。予算的措置は、ただいまのところその必要はないんじゃないか、かように考えておりますので、別に特にそのための予算措置というものはございません。金融あるいは税法等で研究の余地を持っておるというのが現状でございます。
  75. 川俣清音

    川俣委員 これは、あとで同僚委員によりましてさらにこの問題を深めていきたいと思いますし、分科会等において明らかにしていきたいと思いますから、次の問題に移ります。  農林大臣農業共済制度は抜本的改正をしなければならないということで、たびたび国会において論議がかわされ、農林省に補償制度協議会というものを作りましたり、あるいは、現在では、継続審議という形で抜本改正をしよう、こういたしておるわけです。しかし、現在では、自民党の中にも御意見が二つに分かれて、また、野党と与党との間の意見もなかなか一致を見ないで、たなざらしにされておるような格好です。こうなりますと、農民の不安も大きくなると思います。何らかこれは抜本的処置を講じて、すみやかな処置を講じなければならないと思うのです。今までの面子にとらわれないで、一つ出直すだけの勇気を振るって解決をするという方向が望ましいのではないかと思いますが、大臣の所見を承りたい。
  76. 河野一郎

    河野国務大臣 農災制度の改正につきましては、ただいま法案を国会で継続審議願っておるわけでございますけれども、何分、この制度は、ただいま御指摘の通り、協議会の答申も多少修正いたし、わが同僚の中にも必ずしも意見の調整がまだ終わっていない点もありますし、社会党さんのことを申し上げて恐縮ですが、社会党さんの方にもいろいろまだ御意見もおありのようでございます。さればといいまして、この法案についてこれを基礎にして審議をこれ以上進めて参るということが一般農民の非常に期待するところかといいますと、この点についても異論が相当に農村各地にあるわけでございます。従いまして、できることならば全国農民諸君の期待にこたえて任意加入に踏み切ることが一体できないのかどうなのか。そうして、政府は、従来この制度のために必要とした予算、経費はそのまま継続することにいたしまして、基本的に、改めて申し上げますれば、政府の負担は従来通り負担することにいたしまして、大方の農民の御希望であります任意加入、この二つの柱を根幹として、全然別途考究したらばどういうものが生まれるか、あらゆる角度か一ぺん抜本的に検討してみようという所存を私は持ちまして、今せっかく各方面の、この制度について特に深い御関心を持っていられる方々の御意見を拝聴いたしておる段階でございます。一通り各方面の御意見を拝聴いたしました上で、あらためて、このまま進むか、法案を出し直すか、すみやかに結論を得て対処いたしたい、こう考えておるわけでございます。
  77. 川俣清音

    川俣委員 すみやかに一つ結論を出されまして、方向を打ち出してほしいと思うわけでございます。なかなか、この農業共済制度については、少しぐらいの改正では、また解散運動などが起こってくる状態でありまして、よほど抜本改正をしない限り、なかなか認容されない問題だと思う。国も相当な金をつぎ込んでいながら、両方から評判の悪い制度になっておる。それでは、不必要かといえば、必要な制度だということになっておるのでありますから、そこで、今農林大臣の構想もございますから、私どもも抜本改正のために御協力申し上げたいと思いますから、すみやかに態度をきめてほしいと思うのです。そうでないと、これは農林委員会にかけてもとうとうこれまた審議をしないでこのままで終わってしまうという結果になるだろうと思うのです。与党、野党一致しないというけれども、与党の中で一致しないのですから、ほんとうにこれは見通しがつかない状態。何とかこれは解決をしなければならない。農林省は解決つかないからと見のがすわけにはいかない問題だと思う。そこで、おそらく英断をふるわざるを得ないだろうと思いますから、御期待申し上げるのであります。  ただ、大蔵大臣にも一言注意を喚起しておきたいと思うのは、災害がなかった場合も相当多くありまして、共済制度ができまして、ここ三十年から六年間に共済に出された金が戻ってきておるのが二百三億ぐらいあるはずです。使わないで戻っておる金、こういうような金は、災害が起きないから仕合わせだったということは言えるのですけれども、農民から言いますと、掛金は災害が起こることを予想して高い掛金をかけさせられておる。政府の方は災害がなかったということで戻しますけれども、農民には戻っていないわけであります。起こるであろうという災害を予想したそのままになっている。これでは、保険制度から言いましても、また共済制度から言いましても、掛金のかけっぱなしで、何にも利用するところがないという不満が起こってくるのは当然だと思います。歩戻しするかしないかということは別にいたしまして、この制度につきましては、根本的に一つ検討することに大蔵省も協力されまして、農民の期待に沿うように努力してほしい、こう思いますが、大蔵大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  78. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今農林大臣お話では、さらに検討するというお話でございましたが、私ども、一応これは継続審議になっておりますし、ただ、実施期日がことしの二月からということになっていましたので、昨年の予算はそれに基づいた予算を計上してございましたが、期日が変わりましたので、今度の補正予算でこれを修正いたしまして、そして三十八年度の二月から事業団出発を見られるというような措置をとる必要があると思いますので、根本的の検討はともかくとして、政府としては、期日の変更だけは、継続審議中の法案の修正をやることになるだろう、こういう予想のもとに、これに基づいた予算を三十七年度予算には計上してございます。
  79. 川俣清音

    川俣委員 それでは、時間を守って、これで終わります。
  80. 山村新治郎

    山村委員長 それでは、午後は一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      ――――◇―――――    午後一時五十一分開議
  81. 愛知揆一

    ○愛知委員長代理 休憩前に引き続き会議開きます。  昭和三十七年度総予算に対する質疑を続行いたします。臼井莊一君
  82. 臼井莊一

    ○臼井委員 私は自由民主党を代表いたしまして若干の総括質問をいたしたいと存ずるのであります。  総理は、去る十九日の施政方針演説におきまして、その初めに、「真の繁栄は、豊かな経済を基礎としつつ、これを貫くに高い精神、美しい感情、すぐれた能力をもってして初めて実現される」、「この意味において、私は、文教の刷新と充実、特に次の時代をになう青少年諸君の育成が現下最も重視すべき要務であると信じます。」、かように強く述べられておりますことは、まことに現在のときにおきまして時宜を得たことでございまして、私は心から賛意を表する次第でございます。なおまた、閣議におきましても、文教の問題を大きな柱の一つとして予算の編成に当たられたということも、私ども非常に喜んでおるところでございます。  この文教問題について顧みますと、明治五年に学制が発布せられましてから九十年になるのでありますが、今日におきましては、文盲率の少ないこと、それからまた就学率が非常に高いこと、また九カ年の義務教育制である、その点においては世界的な最高の水準を行っておると申してもよろしいと思うのでありますが、九十カ年間のこのような教育、国民も熱心であり、政府も非常にこの施策において努力をしたというこの努力があったればこそ、その教育の基礎において、明治から大正、昭利にかけてのわずか一世紀間以内でこれだけ発展して、かつては世界の列強の上の方から勘定せられるところまでいったのであります。しかし、戦後においても、このようにすみやかに、あらゆる面で、国力においても文化においても回復したということは、これはやはり、私は、教育の基礎があったからである、かように考えるのであります。従いまして、今後において、いわゆる文化国家、福祉国家を築いていく、また経済成長をより一そう伸ばしていくという上において、何といってもりっぱな教育が基礎になければならない、かように私は考えるのでありますが、この機会にあらためて総理の御所信を伺いたいと思います。
  83. 池田勇人

    池田国務大臣 施政演説で述べた通りでございます。そして、あなたの今のお言葉は、私全く同感でございます。ほんとうに、日本の教育は、過去数十年間、世界のどこの国にも負けないほど、すぐれたところも劣ったところもありますが、全体的には、世界各国に比べまして決して負けてはいない、こういう教育をやってきたのであります。ただ、その間におきまして、一つは、個人よりも国家中心の教育になった。また、敗戦後はちょっとはき違えた自由主義で個人主義的になった。しかも、前のあつものにこりてなますを吹くといいますか、少しわきに寄った、少しかどうか相当寄った点もございますが、そういう誤った方面に今まで来たということは、私痛感するのです。もちろん、戦前のような国家主義にしようとは思いませんが、今までのような誤った個人主義的なことばかりでもいかぬから、やはり、経済の伸展に伴ってりっぱな教育、そこに申しました商い精神、美しい感情、そうして、能力ある、いわゆる人間形成にこれからうんと力を入れていかなければならぬ、こういう気持を持っておるのであります。
  84. 臼井莊一

    ○臼井委員 ただいま総理の重ねての強い表明で、私ども非常にうれしく存じますが、今お話しのように、日本の教育の歴史を振り返ってみると、明治五年に学制が発布せられてから、そのときには、お話しのように非常に個人主義的な点がありまして、要するに、教育というものは、一部士族のため、士族が国のためというような考えでなく、自分の身のためである。学問をすることによって身を立て家を立て、一つの立身出世のもとになるのだからうんと皆勉強しろというふうに太政官布告にも出ているのですが、ところが、明治十九年に森有礼が文部大臣になりましてから、これが非常に変わって、今お話しのように非常に国家主義的になって、しかし、そのとぎに、ほんとうの日本の学制といいますか、小・中・大学というようなものが整ったのでありますが、西欧に例をとったのでありましょうか、非常に国家主義的になった。ということは、一つは、私は、いわゆるその後の日清戦争、日露戦争の経過等を見てもわかるように、諸外国が日本に対するいろいろの交渉をする段階において、これは何といっても国を強めなければいかぬということから始まったことであると思うのです。ところが、これが行き過ぎて、あまりに国家主義ばかりで滅私奉公に過ぎてしまったというところに、戦前の教育の一つの行き過ぎというものがあった。戦後は、今度は逆に、お話しのように、人間の尊重といいますか、個人の尊厳ということ、これは大切であるけれども、そればかりが強く主張されるような形になってきて、公共とか国などということについて、特に愛国心などと言うと何かすぐ戦前の超国家主義的な愛国というふうに誤解せられて、その点が、むしろ、戦前の国家主義的に過ぎたのが、今度は逆反動であまり個人主義過ぎてしまった。そこに私は問題があるというふうに思う。ということは、今でも、日本は非常に平和憲法で、国内でも言葉では非常に平和々々と言われております。また、世界でも平和という言葉はあるけれども、現実には、やはり、戦いといいますか、国際間の激しい、ことに米ソの対立ということから、両国家群、また、その内部においてもそれぞれの強い争いがある。日本もこれに超然とばかりはしていられないというような現在でありますので、やはり、ある程度の民族意識、国家意識というものも必要であるし、特に、公、社会に奉仕するといいますか、そういう精神が必要であろう、こう私は考えるのでありますけれども、それは総理から今お話がありましたから、それでけっこうでありますが、教育の目的は、今総理お話しのように、人間形成にある、これは、私、その通りであると思います。とともに、また、今私が申し上げた社会的な見地から見ても、また教育を受ける本人の立場から見ても、教育というものが、いわゆる人的資源といいますか、人間能力の開発ということに非常に大きな意義がある。かつては日本の人口が多過ぎて困った。一体、領土は半分になり、海外からも引き揚げてきて、人口が非常にふえるので、もうこれが一番ガンだというふうな考え方が一時あったのですが、最近では、これがすでに、経済成長ととも、一部では労働力の不足というような、まあ全般を通じてはそうでないですけれども、一部にはそういう面も現われてきたということは、人間の能力というものが一つの大きないわゆる資源である。でありますから、これを開発するということが教育の大きな目的と言ってもよろしい、そこに意味があるというふうに私は考えるのでありますが、この点について一つ総理の御見解を伺いたいと思います。
  85. 池田勇人

    池田国務大臣 全くその通りでございまして、人口の多いということは非常にあらゆる方面の力の大きさを示すものであります。そうして、また、その数が多いということだけでは十分じゃございません。質をよくしなければならない。そこで、どうやっていくかということになりますと、やはり、教育の内容をよくする、そうして、設備を拡大し、そうして、能力のある人がとにかくその能力を発揮し得るように、教育の機会均霑、この三つが根本をなすと私は考えておるのであります。多い人口に、そうしてりっぱな素質と能力を持つ者があれば、それが倍加、数倍加する、幾何学的に伸びることであるのでございます。私は、今後もその方向で進んで参りたいと思っております。
  86. 臼井莊一

    ○臼井委員 人間能力の開発ということは、これはアメリカでも問題になりまして、最近、コロンビア大学のエリ・ギンズバークという教授が、人間の能力の開発ということで本を出しました。これは私は企画庁の大来さんの訳で読んだのですが、その中にも、ただいま人間の質をよくする、能力を上げるという総理お話がありましたが、こういうことが書いてある。もしもより多くの労働者が代数と三角をあやつることができ、青写真を読むことができ、そうして物理学の基本的な法則をある程度理解できたとしたら、どれだけ産業の進歩が促進されるであろう、こういうことを述べておりまして、やはり、基礎教育からして、技術教育、科学教育という方面の重要さをここに述べておると思うのでありますが、この点については、アメリカでも、今次大戦の途中で徴兵検査のときに一千八百万人のアメリカ青年を検査したところが、そのうち五百万人以上が重大な精神的あるいは性格的、肉体的の欠陥のためにこれを徴兵に採用することができなかったという。それ以来、米国でも、いわゆるマン・パワー・ポリシーということが非常に問題になったというふうにいわれております。今総理のおっしゃった、質を高めるという上においては、これは、ひとり教育ばかりでなく、厚生方面といいますか、そちらの方面でも、労働方面でも、その中の教育部面ではありますが、政府全体、各省にわたってこの点を注意して、成人の教育というか、予算におきましても、勤労者の教育については、定時制の教育から、社会教育から、青年学級から、婦人教育、婦人学級、こういうふうに年々予算においても努力をせられておりますけれども、そういう面が私は必要であろうと考えます。すでに現在の内閣は各実力者の方がみなおそろいで、みな将来の総理になられるような方がこの中にお含まれになっておるのであります。従いまして、私は、そういう意味においてこの点を特に強く申し上げるとともに、もう一つは、民主主義教育ということが、何か、いわゆる教育の機会均等ということで、広く平らにはなってきたのですが、英才教育といいますか、すぐれた能力のある者はそれに適した教育を早くから伸ばしていくという、ことに、芸術とか、あるいはあとで触れますけれども発明とか発見とか、そういうようなことについて、割合に能力のすぐれたそういう方面の人の力に待つことが多いので、従いまして、英才教育とともに、もう一つは、今度は逆に、不具者であるとか、能力が足りぬという方も、そういう意味においてやはりできるだけそういう教育をして、そうして能力を十分活用するようにしなくちゃならぬと思う。それは、私は、決して今の民主主義教育にはずれているんじゃなくて、むしろ民主主義教育の趣旨にも沿っておると思うのでありますが、この点について総理のお考えを承りたいと思います。
  87. 池田勇人

    池田国務大臣 なかなかむずかしい問題でございまして、英才教育ということを主にすることは、私はあまり賛成いたしません。これはやはり機会均等でいくべきである。えてして、その英才というものも、たとえば、十で神童、十五で才子、二十過ぎればただの人ということもございます。(笑声)なかなかむずかしい問題でございます。たとえば、いろいろな絵なら絵のことを見ましても、その特別の教育を受けずに非常に伸びる人があります。日本画で言いますれば、もう十七、八から三十ぐらいで非常な高い水準に達する人もあります。しかし、また、そう若いときにはあまりりっぱな絵をかかないが、五十過ぎて六十、七十ぐらいになってその人の真価がずっと出てくる人もございます。だから、根本の方針としては、何かにつけましても全体的にずっと行き渡ることが主であって、ほんとうの天才は、その間からみずからの天分とみずからの努力によって出てくるんじゃないか、私はこれが原則だと思います。しかし、教育が全般に行き渡って、特に英才教育というような制度をその上に設けるということは、私は一つの方法であろうと思いますが、英才教育を主眼にして教育問題を解決しようというのは、これは逆じゃないかと思っております。
  88. 臼井莊一

    ○臼井委員 さすがに総理はなかなか識見をお持ちだと思って、私は敬服いたします。私の申し上げるのは、やはり、何か特にそういう一つの道、一つの窓をあけることが必要ではないかという意味において申し上げたわけであります。  そこで、総理の施政演説にごさいますように、健全な青少年の育成が大切である。ところが、最近、いわゆる虞犯少年といいますか、ティーン・エージャーの連中の犯罪が非常にふえてきた。いわゆる不良化防止といいますと消極的でありますが、健全な青少年を育成するということの対策が非常に問題である。そういう意味におきまして、どうしたらそういう目的を達するかということなんですが、これは、私は、学校教育ばかりでなく、社会、家庭、みなこぞってやらなければならぬ、こう思います。それは私が言ってしまうと何かお答えになったような形になるかもしれませんけれども、一つは、どうしたらどういうような希望を青年に持たせることができるかということに問題があると思います。総理経済成長ということを強く述べられて、いわゆる所得倍増を言われたのも、私は、国民に明るい希望を持たせよう、こういう一つの意味があったのではないかと思うのであります。私が先ほど、教育においても公共とか民族とか国を相当考えるような方策をしなければ内容においていかぬじゃないかということを申し上げたのも、あまりに日本は環境に恵まれ過ぎているという安全感において――総理は東南アジアへいらっしゃいましたが、私も実は八月に国会からあちらの方にやっていただきました。私がそのときつくづく感じたのは、日本という島国であることが何とまあありがたいことであるかということを感じた。あちらの方に参りますと、ビルマあたりでも、タイでも、数千キロにわたる国境を持っていて、そして、その間で絶えずいろいろなトラブルがある。インドにおきましても、パキスタンとの国境あるいは中共との国境、そこでごたごたがある。また、ベトナムにおいても南北の国境からいわゆるベトコンが隣の国のカンボジアを通じてでも浸透してくる。そういう国境というものが実に争いの一番もとになるというふうに考えます。その点は、私は、日本が島国であって、かつてのナポレオンでさえもあのドーバー海峡を渡れなくて、また、ヒトラーでもあのドーバー海峡を渡って英国には攻め込めなかったというようなことを考えても、日本の島国であるということが自然の城壁をなしていて、大きな堀をなしていて、安全がある。そこで、自衛隊も要らないじゃないかというような議論までが出てくるもとだと思うのですが、私は、かりにそういう国境的な争い――それでも、李ラインなどというものが引っぱられて、あそこで日本の漁船が韓国に拿捕されるというような問題とか、あるいは北の方でソ連の方に日本の善良な漁船が拿捕されるというような問題が起こるのでありますけれども、いずれにしても、日本はそういう点ではいいが、しかし、大きく考えると、これは、思想戦といいますか、そういう面では国境がなくて、たとえば、私ども、寝ていても、朝まくら元のトランジスター・ラジオをひねってみると、そこにモスクワ放送がすぐに耳に入ってくる。電波攻撃というものがある。また、経済の上においても相当強い競争、ある程度の戦いと言ってもいいようなきびしいあれがあるのです。こういう点を国民にやはりもう少し強く自覚をしてもらって、大いに奮発していただくことが必要ではなかろうかと思うのです。孟子の言った言葉に、外敵、外患なきものは国常に滅ぶという言葉がある。そう言っています。これを私は中共が実行していると思うのです。要するに、日本は中共に対してかつて国民の一人として敵対的な意見を戦後において持ったことはないと思う。むしろ相済まないことを戦前においてしたと思っている。ところが、中共の方は、日本が敵視している敵視しているということを盛んに、あの中共の国民の中にも宣伝しているように私は見受ける。そらアメリカが攻めてくるぞ、台湾が攻めてくるぞ、日本も敵視しているぞ、国民しっかりしろというのが何か中共の宣伝のごとく思われる。さすがに孟子の言葉を中共が実行して、注意を外国に向けて、そして国民の苦しさというものを耐えさせる。戦前、戦時中の日本の、勝つまではがまんしましようというような行き方が、私は中共が一つやっているあれではないかと思って、この点非常に残念に思いますが、日本は何もそういうふうに外敵がどうだということは絶対に言うべきではなくて、またそういう必要もないのでありまするけれもど、平和的な気持を持ってやるにしても、やはり、日本の国が自衛隊をある程度持っていると同じように、国民としては、努力の目標として腹の底に置くあれは、そういう油断ができないという気持というものが必要であろうと思います。この点になると少し精神的になりますけれども、さすがに、アメリカの大統領ケネディは、大統領に当選すると、あの持てる国であったアメリカでも、ドル防衛で努力をしておる、あるいは、ニュー・フロンティア精神で、後進国に共産主義が浸透していくから、国民は平和部隊を作って若い人は出ていってもらいたいというような、強いそういうあれを国民に訴えて、青年の奮起を促しておるのであります。そういう意味で、何か青年に対する――日本は一つの平和を作ろうという理想はあるのでありますが、平和というものはただ漫然としてできるものではない。繁栄は、総理のおっしゃったように、やはり国民の努力によるということをおっしゃっておられましたが、何か訴えるようなものが一つほしいと思うのでございますが、総理はどういうようなお考えでございますか。
  89. 池田勇人

    池田国務大臣 孟子の言われた言葉を全面的にとって、国滅ぶるとまでは私は申しませんけれもど、国栄えずということは言えるのではないかと思います。せっかくのあれでありますから申し上げますが、昭和二十七年にメキシコで、日本、ドイツの参加した国際通貨基金の会議がございました。私は、エアハルト経済相、シェーファー大蔵大臣と話をして、戦後のドイツと日本のいろいろな点を比べ合わしたことがあります。昭和二十五年、二十六年には日本は相当減税いたしました、そしていろいろなものの国内的な自由化を、米以外はほとんどやってしまった。その話をしたら、エアハルト経済相あるいはシェーファー大蔵大臣は、それは、日本には東シナ海、朝鮮、日本海があるから、池田君、君は減税ができたり統制撤廃もできた、ドイツは道一重で共産主義と戦っている、これがドイツが君の方に負けたゆえんだ、こう言う。これはあなたの御意見と同じでしょう。その翌年私はドイツに参りました。そして、ドイツの今申し上げたシェーファー大蔵大臣、予算局長と会いました。向こうの予算を見ますと、当時は二百六十五億マルクで、防衛費を九十億マルク使っておる。三分の一近くであります。今はもう四百億マルクくらいになっておりまして、その三分の一にはなっておりませんが、相当の軍事費であります。これは大へんではないか、しかし、アメリカ、イギリス、フランスが守ってくれなかったら、これの倍くらい要ります。だから、われわれまだ占領に甘んじているのだ、こういうことを言っております。こういうのは、やはりあなたと同じような考え方であります。東南アジア各国を回ってみましても、パキスタンにおきましても、あるいはインドにおきましても、中共との関係あるいはカシミールとの関係、そしてタイにおきましても、共産主義のなにで非常に為政者は真剣に考えております。ビルマはそれでもその程度ではございません。これにて私は、ビルマをどうこう言うわけではございませんが、立ちおくれております。これは私はビルマの首相にも、あるいは軍当局者にもお話ししております。そういう、どこに国を立てる焦点を置くかというときに、政治家はえてして外国との対抗ということをよく使っております。そういう国は相当あると思います。しかし日本では、今のお話しのように敵にする国はございません。まあ幸いにして、エアハルトの言ったように朝鮮あるいは東支那海、日本海があるから切実に考えないのかもわかりません。しかし私は、これを切実に考えるということで今引っぱっていくような格好をすると、日本人は過去の経験で反発いたしますから、自分の気持から上がってくるようなことをやっていかなければならない。それで私は、いわゆる経済倍増政策をやり、希望を持たし、そうしてその間において自分を信じ、自分の力を伸ばすように盛り上がる気持をやっていくのが、今の日本としてはそうじゃないか、こう考えております。私は今もうちょっと外国のある雑誌を読んだのですが、やはり日本は非常によくなったけれども、政治家が少ない、それで、日本の力を持っているときにりっぱな政治家が出たならば、世界における地位がもっとよくなるであろう、われわれはそれを期待する、こういう意見を読んだのですが、しかし、日本の実情を申しますると、政治家があまりに世界を考えたり何かする時間が少な過ぎる、国内にあまり引っぱられ過ぎている。どこの政治家を見ましても、国会というものはもちろん大切でありますが、もう国会開会中は、総理が何もほかのことはできぬというような国はあまりございません。ということで、私は言いわけではございませんが、そういう点をずっと考えて、国会の正常化をして、国民が盛り上がるような気持を私は育成するように努力いたしておるのであります。外国人が、りっぱな政治家がない、能力のある政治家がいないと言われることは、まあこれはしばらくかぶとを脱ぐと申しますか、もう少し勉強し、考えていかなければならぬと思いますが、とにかく政治家としては、お話のように国を立てる意味において、外国との関係を主としていっておるのが通例でございます。しかし日本の今の場合はそこまではいけません。反発があってはいかぬ。だから私は、とにかく国を思うことは、九千四百万国民が一つになる。思い方にいろいろな違いがありましょうけれども、思い方の違いがあるだけで、国を思うという気持は一つになってもらわなければいかぬ、それが私は組閣以来念願で、それに向かって努力をしておるのであります。
  90. 臼井莊一

    ○臼井委員 私もまことに同感でございます。ところが事実はどうも総理が御苦労されているような、たとえば外交問題でも、あるいは教育の問題でも、日本の国内にいわゆる三十八度線の国境を作るがごとき行動がある。これらについてはお互いに十分国民として考えなくちゃならぬ問題であると思います。実際政治家が考える時間がないというのは、これはひとり総理ばかりではございません。われわれまでが、やはり地元のことがあるかと思うと、いろいろ陳情等を頼まれる。地方の県会議員さん、市会議員さんのやることまで頼まれるとか、あるいは開会中でも、これは当然のことでありますけれども党務の仕事がある。党務は当然でありますけれども、あまりに平素からそういう――それは私は一つは選挙のやり方、これは今選挙制度等をお考えのようでございますけれども、やはり英国流に党が選挙をやって、個人はそうあくせくせぬでもよろしい、こういうことになって、ほんとうに政治のことに専念努力ができるような環境が私は必要だと思うのであります。  それではさらにお伺いしたいのは、これは厚生大臣にちょっと伺いたいのでありますけれども、麻薬の対策でございます。というのは、ヒロポンがかつて国民の中にだいぶいろいろあって、これが対策をいろいろ努力して、これは一応鎮定した。ところが、最近ヘロインというものを常用する者が民間にだいぶんございます。これは私は菅原通済さんの話を聞いたのでありますが、何でも四、五十万くらいこの常用者がいるであろう、これの密輸等で第三国人の手に渡る金が年間六百億くらいある。こういうことなんでありますが、これに対して厚生省においてはどういう見解を持ち、また取り締まりを行なわれておるか、伺いたいと思います。
  91. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 麻薬の問題でございますが、最も頭の痛い問題の一つでございます。現在麻薬関係で検挙せられます人員は、過去三カ年の平均をとってみますると、大体二千人程度でございます。その中で青少年が五・五%くらいに上っております。それからまた麻薬中毒者として発見せられております者が、これまた大体二千人ぐらいでございます。その中で青少年の占めております率が三・五%ぐらいになっておるかと思うのでございます。ただ、これは現われた事象だけでございまして、隠れた事象が相当ある。また麻薬中毒者の数も、表面に出ておりますもの以上にかなりたくさんおるということは、これは推定できるところでございます。当人のしあわせという点から申しましても、非常に大きな問題でございますし、また日本国民の資質という点から考えましても大問題でございますし、またいわば社会の平和といいますか、安寧秩序という点から申しましても、最も恐るべき一つの禍因をなしておると思うのであります。この対策といたしましては、いろいろ努力はいたしておりますけれども、なかなか実効を上げることがむずかしいので頭を痛めておる次第でございます。  御承知のように、かなり大がかりな密輸団というものもございます。その手口も非常に巧妙をきわめておりまして、これが追及に非常に苦労をいたしておるわけでありますが、警察あるいは海上保安庁その他の御協力をいただきまして、厚生省といたしましても、犯罪検挙件数の多いような地方に対しましては、取締官を置いて専門的にその取り締まりに当たらしておる。全国約八カ所の事務所を置きまして、百五十人ばかり取締官がおります、また八都道府県には、同じく全額国庫負担でもって百名ばかりの取締員を置いて、犯罪の検挙その他に当たらしておるわけでありますが、なかなか実績を上げるのに苦労しておるのが現状でございます。供給源を断つということも、もちろん大切なことでございますが、一番根本的なことは、麻薬の需要の源を断つということが何よりも大事なことだと思うのであります。これについても、中央においても連絡会を随時開きまして、研究もいたしております。また検挙件数あるいは中毒者の多いような地方につきましては、麻薬対策推進委員会というものを設けまして、その地方その地方に応じた対策を樹立をさせ、また相談員というふうなものを置きまして、中毒者の相談に乗るとか、環境の浄化をはかっていくとか、いろいろ苦心をいたしておるのが現存の状況でございます。何さまむずかしい問題でございますが、事柄が非常に将来にわたって大きな災いを及ぼす問題でございますし、日本の社会に一つの暗い面を形成しておると思いますので、取締事務所の強化整備をはかっていきますと同時に、社会教育、学校教育を通じまして、国民全体の方々の御関心を呼び起こす必要もございましょう。また今申しましたような諸対策をさらに徹底して進めていくべく、極力努力して参りたいと覆えております。
  92. 臼井莊一

    ○臼井委員 いろいろ対策をお講じのようでありますが、何か聞くところによると、それの取締官が非常に不自由しながら、身の危険も冒してこれをやらなければならぬ問題だそうであります。なぜ私がこの問題をここで取り上げるかというと、非常に青少年に、ことにぐれん隊がいろいろ青少年あるいは特に婦人等にひもをつけるには、ヘロインを注射するというと、それがほしいために、ほかの麻薬も同様でありましょうが、どんな犯罪でも、売春でも、かっぱらいでも、何でもやる、こういうところにあるのです。ヘロインも中毒にかかると、骨ががたがた笑い出すといへような、これはどういう苦しさかわれわれにはわからぬのですが、あるいは数行のムカデが皮膚の下をはいずり回るような、これはわれわれそういう言葉を聞いただけでもむずむずするような気がするのですが、そういうふうなPRを国民に十分訴えて、知らず知らずにそういうような常習にならぬようにしなければならぬと思うのです。供給源を絶つというところで、これは何か聞くところによると、中共においてヘロインが生産されている。ところが中共の国内ではそういう常習者とか売買者は死刑に処する。しかしながら、これを海外には輸出してよろしいのだというような、これはまことにおかしいと思うのですが、それが事実なんでありましょうか。そういうことであれば、これは一つそういうことのないようにしていただかなければならぬと思うのです。まさかそういうことは、平和を唱える中共さんですから、ないと私は思いますが、それを一つお伺いしたいと思います。
  93. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題はきわめて巧妙に行なわれておる悪事でございますので、なかなかその真相を把握することは困難だと思います。大体私どもの承知いたしておりますところでは、日本に入っております麻薬の供給源は、どちらかと申せば、南方の諸地域のように伺っております。それが香港を経由いたしまして日本に入ってくる、これが一番大きいように聞いておるわけであります。国際的にも非常に大きな悪徳であろうと思うのでありますが、いずれにいたしましても、くぐりくぐって入ってくる問題でございますので、なかなか取り締まりは困難であります。極力国内態勢を整備いたしまして、御期待に沿うようにいたしたいと思います。
  94. 臼井莊一

    ○臼井委員 この問題は一そう御努力を願うことにいたしまして、次には、国民の結束というか、大いに若い人の社会意識というものを強調するというふうに解されるかもしれませんが、現在ある農村建設青年隊、これは農林省にあるのですが、それから建設省には産業開発青年隊というものがある。これは非常に効果を上げて、そうして共同生活あるいは規律をその中で学びとる、あるいはその技術を学びとるということで、非常にこれは評判がいいのでありますが、私はこれをもう少しというより、現在成人式があって、成年になると、まあ式だけやりますが、どうもそういう形式だけでなく、たとい何週間でも、からだの、また能力の方面に応じて義務制と申しますか、共同生活して、職業とかあるいは貧富とか、そういうものを越えて、視野を広くするような、交友の機会もふえる、そういう意味で、これをもう少し拡大していくことが必要ではないか。ということは、先ほど申し上げたように、アメリカでも徴兵検査の際に、初めてそういう五百万の、ものの役に立たないような人があったということで問題になっておりますが、そういう機会に、各人の能力とかあるいは性格とか、適性をそれぞれ指導する機会にもなると思うのですが、この点は憲法の関係もございましょうが、この点についてはいかがな御意見をお持ちですか、伺いたいと思います。
  95. 池田勇人

    池田国務大臣 農村建設青年隊、これは十年近く前にできたかと存じております。また建設省関係産業開発青年隊ですか、これもでき、農村建設青年隊というのは、その当時の事情は、次男、三男対策が主になっておる。次第に農村の事情も変わって参りまして、そして建設青年隊の使命はますます倍加しております。私は、こういうものを統合するかどうかという問題は、もっと研究してみますが、これを拡大していくことが必要であろうと思います。そういう意味においても、百歩進んでと申しますか、青年の能力検査なんかということは、これはまだちょっと早いのじゃないか。私は、国内での建設青年隊も伸ばしていく必要がある。日本の青年が外国の事情を十分に知り、そして青年を通じて日本を知ってもらう。こういうことは非常に必要でありますので、文部省の予算を組みまして、先年来やっております。今後も拡大していく考えでございます。婦人教育関係についてもそれを実行しておりますが、そういうふうなことは、学校教育以外の社会教育と申しますか、あるいは国際的の教育と申しますか、どしどし進めていきたいというふうに考えております。
  96. 臼井莊一

    ○臼井委員 これは今後広めていくということでありますから、それでけっこうだと思いますが、この点は、義務制にするということは憲法上の問題ではなかろうと思うことは、私はむしろ憲法に沿っていると思うわけです。憲法の第二十七条の「すべての国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」この「義務を負ふ」ということがどこで実現されているかということに問題があると思うのです。従いまして、たとい何週間でも、できれば何カ月でも勤労のとうとさと申しますか、そういうものを体験するということが必要なので、もしできれば、将来は私はそういうような方向に持っていって、そして健全な国民、能力のある国民、視野の広い国民になる。これは一つの社会教育の拡大でありますけれども、そういうふうに一つこれを広げるようにお願いしまして、この問題をおいておきます。  それから次に、高校生の急増対策の問題ですが、この点は総理と藤山企画庁長官に伺いたい。というのは、この高校急増につきましては、すでに同僚諸君からも御質問がありましたから、私は対策についてはとどめておきますが、ただ今日まで学校の教育面で、小学校のいわゆるすし詰め教室といって長年騒がれた問題、それから中学校になりますと、中学校の急増対策、高等学校もそう。ということは、戦後の人口が、ことに海外引き揚げあるいは兵の帰還等で急にふえてきて、子供が三年くらいの間に急にふえた。これが三つの波頭で、ずっと押し寄せてきているわけですね。それがいよいよ高等学校に来る。高等学校を終わりますると、大学の問題がある。大学へ行くまでもなく、高等学校あるいは中学校でも卒業する。これの就職の問題。ことに高等学校を出てから大学に入る。この大学をまた広げるという問題が出てくるわけです。また、大学を出てからの就職。就職して、さらに適齢になるから、これはそのほかの方も結婚する。結婚すると住宅問題、子供がまた生まれる。これはこの世代ばかりでなくて、次の世代までも、波が低くなるにしても、この三つの波というものがずっと続いていく運命にある。運命をになっている方々だというふうに思うのです。これに対しては、やはり相当に今から、所得倍増計画とどういう関係を持たせておられるか、その点をお伺いいたしたいのでありますが、倍増計画ばかりでなく、やはりそれに対して今から考えておかなければならぬと思うのでありますが、それにつきまして総理と藤山企画庁長官に一つお伺いいたしたいと思います。
  97. 池田勇人

    池田国務大臣 お話しの点、よくわかるのでございまして、私が倍増計画で当初の三年間九%と言ったのも、私はその点も頭に入れてやっておるのであります。小学校に入ったときにはすし詰めで、それがまた中学校に来ると、ずっと三カ年の波が来ることはお話通りでございます。しかし、前にお話し申し上げた通りに、そんなに青年が多く生まれたことは非常にいいことだ、そしてそのたくさんの青年を今度教育をいたしまして、りっぱな成人をさすことは、これは国の務めであり、これまた非常にいいことでございます。それを見越して今後もやっぱり計画を立てたいと考えております。そして住宅の問題もお出しになりましたが、やはり十カ年計画で、今の三年のふえた分が結婚なんかする場合の準備もいたしまして、住宅建設十カ年計画も立てておるのでございます。十分ではございませんが、そういう当然来たるべきことは頭に入れて政策を立つべきであり、また立てておるつもりでございます。
  98. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 所得倍増計画の基礎は、もちろん人口の点に基礎が置かれておるわけでありまして、三十八年から四十二年というのは著しく増加する年でございます。従って、それに対応して、今総理が言われましたように、前期の五カ年計画というものを相当活発にやるように組み上げておるわけでございます。明年度労働人口が百八十万くらい急増いたします。そういうものに対する対策等につきましても、産業拡大の中でそれを吸収していこうというので、倍増計画の中には大体そういうことを織り込んで進めておるわけであります。
  99. 臼井莊一

    ○臼井委員 その点は十分お考えのようでございますが、現在はしかし、まだ学校などでも、いわゆるベビー・ブームの中にあるお子さんなどは、お母さんはどうもひどい、いやなときに私を産んでくれたというような、親に恨み言を言う子供さえも出てくるという。これは親に言っている時分は親で済みますけれども、社会へ出てから失業問題等があると、社会を恨むことになるのですが、そういうことのないように、またそういうことに教育の面でも乗ぜられないように、十分一つ努力をしていかなければならぬと思います。  次に、教育の施設、設備は、従来も、政府においても民間においてもいろいろ努力してきておりますが、さっきも内容の面に触れましたが、総理もこの点はすでにお話しのようで、内面の教育内容というものが大いに重大である、こういうことでありますが、それについては、人命の尊重というようなことが、個人の尊厳というようなことが言われておる反面に、どうも現在の世相においてはないがしろにされておるのではないかと思うのです。これらは、やはり教育においても道徳教育でやらなければならぬのに、道徳教育というと、それはまた反対する。先生方が先へ立って反対する。それは、全体の中で道徳というものは教えるべきだということは教育として当然なんですが、しかし、その全体の中で、教育全体でやるという意味においては、全体においてやらないということもあり得るので、そこで道徳教育の特殊時間から始まっても、これに対しては反対する。ですから、今は所得倍増もけっこうであるが、道徳倍増、しかし道徳は地に落ちたんだから、倍増じゃ間に合わないで十倍増じゃなくちゃ間に合わぬだろう、こういうことまで言われておるわけでありまして、この点について、戦後の教育というものが、アメリカの占領政策によって、当初が非常にゆがめられていた。独立国であるけれども、弱い小さな国にしておけばいいんだというような占領政策であったように思うのでありまして、そういう点で非常に問題があるわけですが、その点になると、やはり先生方のあり方というものについて、これはよほど考えていただかなければならぬことが多いのであります。有名な日教組の問題ということにもなるのでありますけれども、山口日記事件に始まって、勤務評定闘争、道徳教育反対、それから教育課程の改訂反対、安保闘争、学力テスト反対、選挙になれば選挙闘争、こういうようなことで、日教組の従来の行き方というものは、どうも闘争々々に過ぎていたように思うのでありまして、この点は非常に私は残念であります。  そこで、この点については私、今さら繰り返す必要もないと思うのでありますが、ただある学者の、ある学校の学長の言葉を一つ申し上げて、そして公正な意見として、そういう点で組合にも反省を願いたい。こういう闘争をやる、そこで文部大臣の方では、日教組のばかやろう、こういうことになる。売り言葉に買い言葉みたいになりますけれども、やはりそれは反省をしてもらうという意味において大臣もそういう強い言葉を使っておるんだと思うのでありますが、その意見というのは、こういうことが書いてある。「終戦後における教師の近代的職業人化は、彼らの指導者を左翼組合運動におもむかせただけでなく、彼らのうちに、労働者意識を育て上げる機運を作った。そうして、このことはこの組合が左翼的な方向をとり、左翼政治運動に乗り出したことと密接な関係がある。かつて日教組は「教師の倫理綱領」十カ条を発表したことがあるが、その第八には「教師は労働者である」としるしてある。そして教師が学校を職場とする教育労働者であることは、あらゆる機会に最も強調されているスローガンである。ところで、ここに「労働者」とあるは、不用意に考えられるように、単に働く人とか勤労者とかいう意味ではない。それはマルクス主義にいうブロリタリエル、すなわち労働者階級、プロレタリアートの構成者である近代的賃金労働者をさすのである。このことは日教組が階級組織であることを誇りとし、かような階級組織である総評傘下の有力組合であり、階級政党を以て任ずる社会党左派の強い支持者であることからも、またその宣言、綱領やその他文章を読んでも、そのデモやその他の実践行動の有様を見ても、直ちにわかることであろう。教師を近代的賃金労働者と規定することが学問上正しいか。教員大衆が実際にそのように意識しているかどうかは別として、この組合指導者が、教師は上記の意味で労働者であるという前提に立って組合指導していることは疑いのないようである。」こういうようなことで、現在の教育の異常というものが、やはり一番ここに根ざしているということは、ほかの大学の学長あたりも示しておるのであります。これにつきまして、あらためて伺うこともないと思うのでありますが、しかし、質問でありまするから、一つ総理の御見解を伺いたいと思います。
  100. 池田勇人

    池田国務大臣 どなたがお書きになったか存じませんが、私は、大体において同じ感じを持つものであります。
  101. 臼井莊一

    ○臼井委員 この点は、でたらめを言っているというふうに思われてもいけませんし、総理もどなたからというお話でありますから、はっきりここで申し上げておきますが、それは広島大学の学長森戸辰男先生、かつて片山内閣の文部大臣をお務めになられた人であることを、はっきり申し上げておきます。  そこで、次は、私学の振興でありますが、これもいろいろ取り上げると問題はありまするけれども、私学でありましても、ひとしくやはり国民を教育するという立場においては、国立、公立と何ら異なるところがないわけでございます。従いまして、これに対しては、やはり国としては極力の援助をすべきものである、かように考えるのであります この点は、総理より一つ文部大臣に伺いますが、現在、国立大学生の一人当たり年間の費用と、私立大学のやはり国のそれに費やす年間の費用はどうなっておりますか、その点を一つお伺いしたいと思います。
  102. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。  国立大学の学生一人当たりの経費は、十七万七百四十三円、私立大学におきましては六万七千九百五十九円、これは最近の実数がちょっと入手いたしかねまして、三十四年度の決算に基づいて申し上げた数字でございます。
  103. 臼井莊一

    ○臼井委員 私立大学と国立大学では、その国の費やす費用が十万円ばかり違うおけであります。これは見ようによってはもっと多くも見られるのでありましょうけれども、一応そうといたしましても、やはりそこに相当の差があるこれは私立で、自分で勝手にやっているのだからというわけにはいかない問題で、もちろん、これにつきましては、政府の方におかれても、私立大学の振興会を通じ、あるいは理科の特別助成とか、それから学生に対する奨学資金とか、いろいろな面でいたしておりまするけれども、ところが、最近、新聞で見ますと、今度の四月からの入学には、入学費等がまた値上げになるということで、安いところでも、入学するには十万円ぐらいの金がないと、なかなか学校にも入れない、こういうわけで、少し多いところでは、五、六十万ぐらいかかるのはざらであるというようなこと、そういうことでありましては、まことに教育の建前上、非常に残念だと考えるのであります。  そこで、私立学校のためにどうしたらいいか。これはやはり私立も金がなければ経営できないのでありますから、そこで、政府がもし直接なかなかそこまではできないとするならば、今度も個人の寄付というものはある程度認めるようになったようでありまして、法人は前からある程度認めておりますけれども、これをもっと思い切って拡大して、教育に寄付する篤志家に対しては、免税措置を思い切って広げる、こういうことが、私は、私学振興の上から必要だ、かように考えるのでありますが、この点につきまして、一つ総理と大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。
  104. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 将来においてはそういうふうに拡大することもいいと思いますが、今までは、個人について、学校の寄付金というようなものについての優遇方法を持っていませんでしたので、今年度からこの制度を開くことにいたしました。この内容をさらに拡大するかどうか、これからの問題でございますが、いずれにしろ、そういう道をことしから開くことにいたしました。
  105. 臼井莊一

    ○臼井委員 これはぜひ大幅に広げて――もっとも、これは特殊というか、何か記念事業で学校を広げるとか、あるいは理工学部を新しく設けるというようなときには、指定寄付等でこれは大蔵省でも認められておるようでありますが、これをもう少し広くして、できるだけそういう――まあ、大蔵省の意見から言えば、とれるものからはとって、出すものは出すのだということでありますが、今までのところは、とれるものからはとって、出すものは出さぬというような、どうもそういう傾向が多分にある。こういう点については、たとえば教科書無償の問題にいたしましても、やはりそういう考え方、それから給食の問題にしても、やはり出せるものには出させてもいいじゃないか、こういう御意見のようでありまするが、しかし、教育というものは、特に義務教育などにおいては、そういうことでなく、やはり貧富の家庭の子供を差別をなくして、自由な気持で教育が受けられる、これが義務教育の本旨で、従って、義務教育は無償とするという憲法の規定というものが、そこに浮び出ておるが、ただ、現在、学校教育法で、この無償というのは授業料であるぞよと、こう要っております。これは何も戦後でなくして、明治三十年か四十年ごろから、私は、授業料というものは無償になっていたと思うのでありますが、そこで、できるだけその教育の本来のあれに沿って、教育の義務を父兄にも課す以上は、少なくとも義務教育では、とれるものからはとるということでなく、とれるものからとるのは別の税金の方で一つとっていただいて、そうして、義務教育は一つ児童の家庭個々からとらぬようにしていただきたいということ、それが教育の本旨であります。  そこで、次に、大学の問題を一つ、これは大学の問題は、非常に大きな問題ですから、時間もございませんので、問題点を一、二……。というのは、すでに教育課程等の問題においても、内容においても、小学校から高等学校までは、ある程度教育課程の内容が変わってきた。ところが、大学は現在従来のままである。しかも、地方の教育界で相当いろいろなトラブルの起こるときにも、大学の教授や何かの指導というものが、相当大きな役割をしていることにも問題がありまするが、それでなくても、現在の大学の中に、経費の問題でも、私は、いろいろの問題点を含んでいると思う。たとえば大学の助手などが現在無給でございますが、これは文部大臣にお伺いしますが、この大学の助手というのは、勉強も研究もするのだからただでいいというようなことであるなら、これはおかしいと思うのです。この点一つ、そういう考え方について――というのは、卒業してからお医者さんならお医者さんにしても、応用面の方には喜んでいくけれども、基礎研究の方にはどうも喜んでいかないということですね。この点は、ひとり医学ばかりでなくて、大学全般に言えることで、大学院に残る学生は定員にも満たぬというところがあるように聞いているのでありますが、これらの問題について、一つ文部大臣の御意見を伺いたいと思います。
  106. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 大学の助手には、十分ではございませんが、一応の手当は出ておるようであります、なお、おしなべて助手の数が足らない。従って、また、大学における研究もその意味から十分でない、あるいはレントゲンその他の近代的な機械の操作等の技術職員も数が足りない等のこともあるようであります。従って、今後の増員対策というものを十分に考えねばなりませんが、当面研究費等が、今度の予算で幾らか増額するということはいたしておりますが、いずれにしましても、十分でないことは御指摘の通りだと思います。今後の努力に待ちたいと思います。
  107. 臼井莊一

    ○臼井委員 その点は、助手は幾らか出ておるようでありますが、あるいはその下の副手とかなんとか、そういうのは何か徒弟制度のような考え方にもなるわけで、やはり大学に残って研究するようにしなきゃいかぬ。この京については、実は毎年文部省の方から大学院に対する育英資金の貸与、これを給与にすべきである、こういうことで予算の要求をいつも出しているのですが、どうもその点がまだ御理解願えないのか、やはり貸付だ。そんなものを借りてまで研究しないでも、会社にいけばかせげるんだというようなことから、優秀な研究者というものがどうもそこに残らないようになる、こういうのですが、こういう点については、一つ大蔵省でも十分お考えをいただきたいと思うのですが、大蔵大臣のお考えを伺いたいと思います。
  108. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ことしの予算のときも、この問題は出ました。今年度は大学院の博士課程の学位には月一万五千円ずつ貸付するんだ、こういうことにしたわけです。これを給与にしてもらいたいということですが、その目的は、やはり教官の確保ということにございまして、これがよそへ行かれてしまっては困るということから出ているのですが、一律に給与にしましたら、よそに行かれる方がもっと多くなる。もし教員として残ってもらえたら、この貸与したものは全部棒引きにして、一切返済を要しないというような措置にしておいた方が、事実上確保できるのではないか。給与制度にはいろいろ問題がございまして、大きい会社になりますと、事実上向こうから給与して研究させているのが実情でございますし、これはもう教員確保という意味には最初からなりませんし、どうしても教官を確保するというのでしたら、一律にみな貸与制度にして、残ってくれた人に特に免除するという措置が実際的ではないかというようなことで、本年度は増額して、やはり給与制度というものは見合わせるということにした次第でございます。
  109. 臼井莊一

    ○臼井委員 付属病院なども、これは山村先生が入院されて入ったときに私聞いたのですが、大学あたりでも、民間の大学の病院はある程度広げていける方法もあるが、大学付属の病院などは非常にに施設がおくれているということで、研究にも治療にも非常におくれるというようなことでございますが、今大津はそういう点も御注意されているようですから、これは問題を指摘するだけにとどめておきます。  それから教員の養成と再教育という問題ですが、この点については、文部大臣、今後どういう方針ですか、問題点だけちょっと伺います。これも大きな問題過ぎるので、時間の制限がありますから伺いませんが、ただ、この機会にちょっと伺いたいのは、先地の中に相当共産党員が増加しつつある、こういう問題についてどのくらいふえたのか、そのあれがおわかりでしたらお伺いしたいと思います。
  110. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 先生の中に共産党員が何人おるかは、正確には私は存じません。ただ、公安調査庁の調査結果を引用しますれば、昨年までは大体日教組だけをとりまして三千人。一年たった今日では約千人ばかりふえておる。これは、昨年の暮れの文教委員会における公安調査庁からの報告の内容でございますが、その他の大学等を含めた一般教職員の中にどれだけいるかは私にはわかりません。
  111. 臼井莊一

    ○臼井委員 今伺うと、推定されるものが四千人、これは先生だって共産党員であって差しつかえないのですが、ただ、それを表面に隠して、そうして、いわゆるさっき申し上げたような偏向的な教育を徐々にされるということであると、これは大きな問題である。ことに、学問の自由について憲法に保障があるのをたてにとって、教育は自由である、教育は自由でいいのだ、これは権利だというふうに渇きかえているというようなのは、非常に間違いで、大学におきましては学問の研究研究の――中にはもちろん発表もありますが、これはいいとしても、義務教育などで、教育の自由を保障している、こういうふうに考えるのは、非常に間違いだと思うのですが、この点大臣の御意見を伺いたいと思うのです。
  112. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 教員がどういう思想なりあるいは研究なりをするかは、原則として、義務教育以外は自由だと存じます。ただ、その政治的な考え方が、教育それ自体に具体的に影響をもたらすということありせば、そのことは弊害があろうかと思います。特に義務教育の場においては許されざることだと思います。
  113. 臼井莊一

    ○臼井委員 次は、科学技術者の養成の問題ですが、これはまあ、今も、研究費の増額とか、それから大学院の育英の問題には触れましたけれども、先生が第一に確保できないということの問題で、これは給与を上げることも必要ですが、給与ばかりでなくて、たとえば教師になる者には、どうせ国等の配慮で住宅公団等が住宅を建てるのでありますので、そこで建設大臣にお伺いいたしたいのですが、先生などの住宅というものは、優先的にそれを配慮するというようなことをおやりであるか、あるいはやってなければ、それをやり得るものであるかどうか、これを一つ建設大臣にお伺いしたいと思います。
  114. 中村梅吉

    ○中村国務大臣 お答えいたします。別段、公営住宅等におきましても、特に引揚者でございますとか、そういうものについては優先的な配分をいたしておりますが、その他は万事公正に、公平に住宅の供給をする、こういう建前をとっております。
  115. 臼井莊一

    ○臼井委員 公平という点においては、それは建設省の建前で言えば、あるいはそれがほんとうであるかもしれませんが、しかし、やはりさっき申し上げたように、教育というものは、国民全体、政府全体で努力をしなければならぬという建前に立つと、そういう面で、給与ばかりでなく、環境でもよき環境を先生に与える、こういうことで、でき得ることであれば私はそういうことをしたい。もちろん、さっきいろいろ申し上げましたけれども、大多数は、日教組といったって、これは先生方が悪いわけではないので、ただ一部の指導者のやり方というところが問題であるわけです。ところが、これがいろいろああいう激しい運動をやっていると、先生になって尊敬されるというようなことが、希望が持てないということで、私は、先生の志願者の人々が少なくなる傾向一つはあるのではないかと思う。いずれにしても、あらゆる面でよき先生を確保するようなことを努力すべきである、かように私は考える次第であります。  それから技術者の養成におきまして、ソ連の大学の卒業者は、六〇%が科学技術の卒業者、アメリカでは二五%、イギリスでは五五%、日本は三〇%となっておりますが、これは計数が日本のが少し少ないようでありますが、これは将来あれでございましょうか、文部大臣、今度の諸般の計画でも、将来何%くらいにこれがふえる見込みでございましょうか、その点をちょっとお伺いしておきたいと思います。
  116. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 今のパーセンテージは、何に対しておっしゃったのですか、失礼ですけれども。
  117. 臼井莊一

    ○臼井委員 それは卒業生のうちのパーセンテージですね、大学の卒業生のうちでの。
  118. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 ちょっとパーセンテージで申し上げる数字を持ち合わせておりませんので、他日に譲らしていただきます。
  119. 臼井莊一

    ○臼井委員 次に、経済問題について、少しお伺いいたしたいのでありますが、公共投資と私企業の投資との調和ということがどうであるか。どうも多分に公共投資の面で日本はおくれているというように聞いておるのであります。その一番いい例は道路ということになります。学校なども大きな公共投資の一つでありますけれども、ところが、これが自由主義経済でむずかしいところなんでございましょうが、所得倍増だというと、また、国際競争力を増すのだ、こういうことになると、各社が急いで設備投資の方を努力をする。国全体から考えると、行き過ぎるまでの設備投資をやる力があるのでありますから、それを何とかもう少し公共投資の方に回すようなことが、自由主義経済の中でも――私は、昔のような自由放任である自由主義ではあるべきではないので、できるのじゃないかと思いまするが、この点につきまして、一つ総理からお考えを伺いたいと思います。
  120. 池田勇人

    池田国務大臣 従来、公共投資と一般民間投資とにつきまして、いろいろ議論がございました。昭和三十二年の予算を組んだとき、こういう景気のいいときに大きい予算を組んだならば、これはますますインフレになるじゃないか、こういう一般の議論だったのです。私は、そのときに、こういう景気のいいときには財政投融資をふやさぬと、いわゆる社会資本をふやさぬと行き詰まってしまうのだ、こういうことを言ったのでございます。今でも、その私の考え方から言うと、財政は景気を調整するのだから、一般の景気がいいときには財政は縮小しなければならぬという、ちょっと今の時代に合わぬ考え方が、まだ相当あるようであります、私は、一般論としてはそうですけれども、日本の経済高度成長しておるときには――そういう今までの時代に沿わぬ考え方があったから、社会資本がおくれてきた、こういうことに私はなっておると思うのであります。どこに通じても誤らないということはございませんが、私は、景気のいいときに財政を抑えるのだという考え方は、今の日本には合わない、こういう気がいたしております。それを是正する意味において、今回も社会資本等には力を入れております。しかし、一般に社会資本と申しまけが、道路とか、港湾、あるいは今言っている河川その他の改修、これは社会資本に、公共投資に間違いございません。たとえば電力会社の投資、こういうものは、これは民間の企業というわけにも実はいかないのであります。今の状態では、私は、道路を作ったり港を直したりするのと同じようなウエートを持つべきじゃないか。それがやはり消費者価格に影響する。そうすると、今度は私鉄の関係はどうか。鉄道なんかへ入れるのは公共投資だが、私鉄へ入れるのはどうか。私鉄でも、地下鉄は公共投資にしております。財政投融資。一般の私鉄会社への投資は、これは民間投資、こう言っておる。しかし、電力会社ほどではございませんが、電力会社と道路とどれだけ違うかという問題、そうなってきますと、私は、電力のような基幹産業であり、そうして公共の福祉に一番関係のあるものについては、少し考え方を変えるべきじゃないかと言っております。今一番民間の方で金に困っておるのは電力でございましょう。これをそのままほうっておいていいか。まあ、大蔵省を中心に相当金融家の方も力を入れてやっておりますが、これなんかも公共投資の範疇に属するのではないか。私鉄よりはもっと電力会社の方が大きい。私鉄なんかでも、これは、私は、公共投資的に考える必要がだんだん出てくるんじゃないか、地下鉄のそれのごとく。港を修築することは公共投資だと思い込んでしまっておりますが、こういう公共投資でも、受益者負担というものを昔からやっておるわけであります。だから、この公共投資というものについてのあり方と、その内容につきましては、私は、物価の問題とも関連して研究していかなければならぬ問題だと思います。  少し余談に触れましたが、公共投資というものに対する日本のここ二、三年前までの考え方は、私は少し誤っていたんではないか。また私の議論に反対する人もおられますが、私は高度成長の場合には社会資本がおくれてはいかぬ、おくれることが民間資本をあれする、資本の投入の効果を薄くする、こういう意味におきまして、社会資本、公共投資につきましては、予算でごらんの通りの力を入れておるのでございます。今後は公共投資の範囲ということについて検討を加えていかなければならぬ問題と思います。
  121. 臼井莊一

    ○臼井委員 国際収支の改善問題でお伺いいたしたいのですが、先に総理にお伺いしたいのです。  私は国際収支の悪化ということは、からだにたとえれば、一つの病気になって熱が出てきたんだ、これは一つの危険信号であると考えるのであります。そこで昨年十一月いろいろ対策を講じて、なおアメリカ市中銀行から一億ドルでございましたか借款をした。これは一つ薬を飲んだといいますか、まあそんなような程度のもので、これはいつか返さなければならぬ。今年の十一月ころになると、また毎月工千万ドル返さなければならぬということになります。そうなるとこれは薬のききがなくなってきた。しかしそれではまた足りないからというので、三億五百万ドルでございますかIMFから借りるということで、それによって外貨の事情は一応つじつまは、運用はつくけれども、それだけで安心していられないで、それで病気の根本のあれを直すようにしなければならぬ。そこで問題は輸出をふやすということ、それからまた輸入は減らす、しかし生産に必要な原料資材というものは買わなければならぬということになりますので、消費の面において国産を十分に愛用する。この問題は、国産愛用ということは、言い古されている言葉なんですが、どうもちょっと景気がいいと国民みんな忘れちゃう。私はきのうひょいと川柳でもないけれども、何かごろ合わせみたいなことで「赤字にて愛用と国産まかり出る」とこう出た。赤字になると愛用々々と国産のあれが出てくるけれども、平素においてはどうも国産品愛用ということがさっぱり出てこない。これは川柳にもならぬような下手なものでありますけれども、しかしどうもそういう傾向がある。  今の若い人たちの間で三種の神器という言葉があるのですね。これは何だというと、ロンソンのガスライターとオメガの時計とパーカーの万年筆だとこういうのです。この三種の神器で、これは必要なものには違いないけれども、何で舶来の名前だけをこう並べるかというところに、これは産業界でも反省しなくちゃならぬ。やはりこのものはまだ日本よりいいということもあるでしょうけれども、何もこういう舶来品をやらなくても私は日本の品物でいいと思う。この点で私は総理が非常に用意せられておるというか敬服にたえないのは、南方においでになられたときに、みんな国産品をつけていけということを何か官房長官から回されたというのですが、これは日本人が行く時には頭のてっぺんから爪先まで日本品をつけていくということは、私は大いに重要なことだと思う。私自身も自分のことを言ってはおかしいが、東南アジアに行くときに千円の万年筆を買っていった。そうしたらこの会社はやはり向こうで工場を作っておりまして、われわれが持っていって、われわれも気をつけているのだと言っただけでも、非常に士気の鼓舞になるのですが、やはり国民はできるだけそういうようなことが必要で、舶来品を珍重するというような考え方は捨てなければならぬと思います。ところが実際を言うと、私は日本の品物でやはり工夫が足りないところがあるのじゃないかと思う。これだけ人口があって相当頭が進んでおるのだが、たとえば日用品のかみそりなんかでも、近ごろはふたのあくようなかみそりとか、あるいはエバー・シャープというようなあのバレーとか、そういうものでも、どうも日本人の工夫というものが――非常に諸外国の方が便利なものを作っておる。かみそりをやるのでも差し込めるようにしてある。そういうような点で科学技術の奨励ばかりではなくて、いろいろ考えておる特許庁が、そういう実用新案あるいは発明品等のいいものをすみやかに実用化するというような、そういう努力なり工夫をされておられるかどうか、この点を一つ通産大臣にお伺いしたいと思います。
  122. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 いろいろ示唆に富んだお尋ねでございますが、最後の特許庁がどういう仕事をしているかという点について、お答えしたいと思います。  特許庁は、御承知のように、特許、実用新案等の審査をしておる役所でございます。今日までに、どうも非常に審査に時間がかかっておる、そういうことで、あるいは三年、あるいは長いのはもう少しかかっているので、できるだけ定員等もふやし、能率を上げて、そして今の産業の要望にこたえたい、かように考えております。同時に、御承知のように、技術庁というものがございますので、そちらの方におきましては、発明等につきましても先導的な役割をする、こういう意味で、民間の協力を求め、みずからも発明に手をつけていく、そうして、その上でこれの実用化等の試験も進めていくということで、ただいまお尋ねになりましたような御趣旨に沿った行政をいたしておるわけでございます。しかし今日まで、先ほどお話しいたしましたように、非常に時間がかかっているという欠点がございますので、一そう気をつけて参りたい、かように思います。
  123. 臼井莊一

    ○臼井委員 もう一つ、通産大臣にお伺いいたしたいのは、過当競争の問題ですが、海外に行って聞いても、日本の商社は、たとえばミシンならミシンにしても、各社が競争して安く過当競争でたたき売るというような、そういうことで向こうの商社の方からばかにされる、こういう点もあるのですが、国内を見ても非常に過当競争的なというか、やはり設備の過剰ということもあるでしょうが、たとえばガソリン・スタンドを見ましても、自動車がずいぶんふえたにしても、非常に豪華なスタンドが道の要所々々、方々にできている。これはわれわれからすれば使う方では便利なようですが、昔私も実はガソリン・スタンドをやったことがあるのですが、賞品に手袋だのバットだのを出さなければお客さんがとれなかった。またそういうような、お客の奪い合いというようなことにならなければけっこうなのですけれども、どうもそういう面――これも自由競争であるし、自由主義であるからやむを得ないというものの、何か最近ガソリンそのものにも非常な競争の面が出てきておる。これに対しての何か方策なり指導といいますか、ございませんものですか。その点をお伺いしたい。
  124. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 自由主義経済のもとで、競争が経済の発展なりあるいは産業の発展に役立っておることは申すまでもないことだと思います。と申しましても、これがはめをはずすようなことになりますと、御指摘の通り弊害のみ残るのであります。ことに貿易等の面におきまして、日本から品物を買うのはおそいほど安くなるとか、あるいはまた日本に品物を売る場合には、だんだん競争して買いあさるから、おそいほど工合がいいのだ、こういうような批評を受けたり、また国内等におきましても、ただいまガソリン・スタンドのお話がありましたが、大企業を見ても二重あるいは三重投資というか、重複投資がある。これなどはいわゆる健全な発展を阻害するものだと思います。ところでこれを政府が統制する、こういう考え方はただいま私どもにはございませんし、また片一方で不況カルテル等の制度はございますけれども、多くの場合は業界の自主的調整にまかすということでございます。ことに最近輸出振興等、貿易の面で海外市場を開拓して商権を拡大するというような場合におきまして、商社同士が競争することは害が非常に大きく出て参りますので、努めてそういうことのないように自粛自省、そういうことを業界に要望いたしております。そして独占禁止あるいはカルテル等に違反しない範囲で、適正な、健全な経済のあり方ということを、行政的に指導しておる次第でございます。
  125. 臼井莊一

    ○臼井委員 この園庭愛用の問題で総務長官にちょっとお伺いしておきたいのですが、かつて新生活運動というのが一時いろいろあれされたのですが、今何かそういうものの影が薄くなってしまっているようです。ところがやはり予算にはある程度そういう項目を見受けるのですが、やはり国産愛用というようなものについては平素から教育の面でもやらなければならぬけれども、国民運動とかそういう方面でもやらなければならぬと思うのです。やはり新生活運動等のあれはやっておられるのでございましょうか。その点を一つ総務長官にお伺いしたいと思います。
  126. 小平久雄

    ○小平政府委員 お答え申し上げます。  新生活運動の方は、主として地域あるいは職域におきます生活の環境改善、あるいは公衆道徳の向上、こういうむしろ一般的な面に重点を置いて、現在でももちろん運動をやっております。一方国産品の愛用につきましては、社団法人であります国産愛用推進協議会、あるいは財団法人であります国産品の普及向上本部というようなものがございまして、これは国産愛用それ、自体を目的として運動をいたしておるわけであります。この間、国産愛用を主目的にいたしまする団体の役員が、新生活運動の協議会の方の役員等にもなっております。そのように、人的にも相協力し、また運動の面におきましても、これらの両者が相提携して今日まで進めて参っておるわけでありますが、御承知のように特に国産愛用の重要な時期でもありますので、三十七年度におきましては、これらをさらに積極的にやるように一つ指導いたして参りたいと考えております。
  127. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 国産品愛用の問題につきまして、通産省といたしまして特に力を入れておる点を御披露しておきたいと思います。  先ほど来いろいろみずから範を示されたお話が出ておりました。もともと国産品というものについて、十分性能なりあるいは品質が優良だということが理解されておらない、こういうところにあらためて愛用運動であるとか、あるいは普及向上運動をやることは、実はどちらかと申しますと非常に情ない感じがいたすのでありまして、これは一般の感じの面から申しましても、外国品について、特別ないい物だとか、あるいは外国品を見せびらかすというような気持が、国民の間からなくなるということが第一だと思います。すでに御承知のように、わが国の製品が、四十七億ドルの輸出目標、これを達成しようというような状況でございますから、国産品はどんどん外国に出ておるのでございますから、そういう意味から申しましても、十分国民に勧めるだけのりっぱな値打のあるものでございます。  そこで、ただいまも生活改善向上の意味の各種の運動の話がありましたが、通産省といたしましては、商工会議所を中心にしての国産品普及向上本部、この民間団体に対して補助をいたして、そうして普及運動を展開いたしております。  同時にまた機械等について、外国の機械とこれを比べてみて、性能について劣らない、そういう意味の政府の検定といいますか、そういうものが必要だろうというので、検査委託を受けて、そうして性能等を国民に知っていただくように、そういう措置もとっておるわけであります。  また規格そのものにつきましても、最近は外国の模倣であるとか、あるいはデザイン等の問題もございますが、みずからが意匠等についての工夫をするようにいたしたいものだと思います。とかく国産愛用というようなお話をいたしますと、日用雑貨等について直ちにこれが浮かぶのでございますが、私どもが特に推奨いたしたいと思いますのは機械類でございます。トランジスターにいたしましてもカメラにいたしましても、あるいは時計等にいたしましても、また先ほどお話しになりました万年筆等にいたしましても、その他家庭用の機械等においては、もう外国に負けないものができております。これらのことを十分理解していただいて、また身の回り品あるいは化粧品等につきましても、日本人の体質、皮膚に最もふさわしいものが日本でできておるはずでございますから、そういう点もよく理解していただきたい。こういうことで、これは貿易収支の改善というばかりでなく、本来の姿に返す、そういう措置をとりたい。またこのことは、どこの国に対しましてもちっともさしつかえないことでありますし、官庁等が率先して国産品を使う、こういうような事柄は今後一そう徹底さすべきじゃないか、かように思っておる次第でございます。
  128. 臼井莊一

    ○臼井委員 私も、ベトナムに参りましたときに、あそこの織物工場が新設されたのが、日本の機械が全部入っておるので心強く思ったのですが、そこで東南アジア方面への技術者の援助――きのう総理もおっしゃっていましたように、タイでの電気通信訓練センター、あれとか、ビルマでの農業機具サービス・センター、これは通産省から何か九百六十万ばかり助成されて、機械屋さんがあちらへセンターを出しておる。これは各地へジーブにまで乗って方々やるので、非常に評判がいいということでございました。あちらの南方への援助も、甘木で科学技術者を――現在内地でも足りないくらいですけれども、将来は技術者を十分出す、こういうことが私は必要だと考えるのですが、一つ総理の御意見をお伺いしたいと思います。
  129. 池田勇人

    池田国務大臣 その通りでございまして、私も実地に見て参りました。いろいろな教授の仕方等もやっております。タイの電気通信は八人おりますが、英語で教えておりまして、なかなか忙しいようでございます。今でも大体技術者は、コロンボ計画と合わせまして八十人ばかり現在出ております。来年度は百人くらい出るのじゃないかと考えております。
  130. 臼井莊一

    ○臼井委員 との問題については、通産省あるいは文部省でもいろいろ案がおありになるようでございますが、時間がございませんので、次に移ります。  一つ問題になっておるのは、給与ベ-ス、いわゆる春闘でベース・アッフの運動がまたあるようでありますが、人事院で給与ベースを決定する際に、民間側では、給与の増額については、利益が上がる、また生産性向上する、そういうことから給与を上げるのですが、しかしそれと比例してベース・アップを公務員にする、単にその比例だけで見るということはいかがなものか。ベース・アップを公務員にすることはもちろんけっこうなんですけれども、当然能率を増進するという、いわば生産性向上のような、それの方法が官庁側でも十分とられておるか。たとえば最近郵便局などでも相当機械化でやっておりますけれども、民間のあれに比較して、各官庁でこういう最新のいろいろの機械を利用して、人手をできるだけ省くという工夫がとられないと、私はただ仕事に必要だから人手をふやす――郵政省でも今度はだいぶ人数をふやしたようでありますが、これは従業員の意欲によっては、たちまち郵便の滞貨も一掃するということなのでありますけれども、この点について給与担当大臣としての、そういう面を考慮してのベース・アップをやられておるのかどうかを福永大臣にお伺いしたいと思います。
  131. 福永健司

    ○福永国務大臣 賃金の上昇生産性向上と見合いつつ、かつまた経済全体の中においての適当な均衡を保ちつつ行なわれることは望ましいわけであります。もっとも生産性向上の成果は、全部が全部賃上げという方向へいくべきものではありません。一部そういうところへいくし、また企業の体質改憲等にも向けられ、さらにまた一般国民へ製品を安くすることによってのサービス、大きく分けて三つの方向にいかなければならぬわけでありますが、公務員の場合等におきましては、この生産性向上というものが不明確である。一般産業等におきましては、生産性向上が明確であり、十分可能であるというようなものが多くあるのでありますが、公務員の場合は性質が違いますので、従って民間給与の状況を考慮して、現在はわが国では人事院制度によって、御承知のような方法によって賃上げをやっておるというわけであります。しかしお説のごとく公務員の場合において、能率の向上ということは常に必要である。わけて賃上げをする場合においては、特にこの点が考慮されなければならぬことは申すまでもございません。過去において幾たびか賃上げをいたしました際に、そのつど、閣議決定で賃上げをするについて、行政運営の能率化等につきまして、かなり詳細な申し合わせ等もいたしておるのであります。この効果を十分あげていかなければならぬ。今例におあげになりましたような機械化を促進する等の措置等も――ちょうど今雇用状況が割合にいいときであります。失業者が非常に多いときでありますと、その種の措置はなかなかとりにくいのでございますが、ある意味では今非常にいい時期であります。若年労働者、技能労働者等が非常に不足しているというときでもございますので、お説のようなことにつきまして、十分留意いたしまして、成果を上げたいと思っております。
  132. 臼井莊一

    ○臼井委員 もう時間がございませんから、農業問題で二、三農林大臣にお伺いしたいのですが、貿易の自由化で農業者が不安に思っているのは、南京豆、ノリとか、酪農製品が入ってきて非常に困るではないかというその問題。もう一つ、あわせてお伺いいたしたいのは、学校給食で生乳をせっかく飲み出しておるのに、今度それをおやめになったということでありますが、やはり生乳などでも品物の需要が多くなって、供給が足りぬということであるのかもしれませんが、この二点についてお聞きしたい。
  133. 河野一郎

    河野国務大臣 実は例年でございますと、夏場が過ぎますと順次生乳が余って参りますので、これを学童に給食しておった、そういうことをやって参ったのでございますが、たまたま昨年の夏から秋にかけまして、市乳の需要が少しも減退いたしませんで、現に今日では生乳が足りないから、これが対策をどうしようかというような現状になっておりますわけでございます。従ってもしこれ以上生乳が不足するならば、一部原料を粉乳等の輸入でもしなければならぬではなかろうかというような事態にありますので、学校給食の方は粉乳の方に譲りまして、一時これを取りやめている、こういうことでございます。  また前段お尋ねの貿易の自由化と一部特殊農産物という問題につきましては、ごく特殊なものにつきましては、むろん自由化になりましても、これを保護しなければならぬという立場をとっております。これは列国とも、貿易の自由化ということと特殊農産物の立場ということは、その国の特殊性を認めているのが通念でございますから、私も日本の農産物の中の特殊なものにつきましては、自由化になりましても、特別にこれを考えなければならぬというふうにやって参る所存でございます。
  134. 臼井莊一

    ○臼井委員 それでは時間がございませんから、最後に一つ都市対策の中で根本的な解決といいますか、そういう問題で、これは総理にお伺いしたいのですが、それはいろいろ交通の対策で閣僚懇談会等でもおやりになっておりますし、きょうは時間がないから省きますが、将来のずっと先のことを考えますと、なかなか都市に集まってくる人口を防ぐということもできない。そこで官庁の移転というような問題がありますけれども、一部移転というくらいでは追っつかないのではないか。むしろ私は国会あたりから、政府機関から全部どっかへ移る。それには富士のすそ町がよかろうというような意見もありますが、私どもも実は昨年一月七日にそのことを書いた。学生も一つ、北海道は勉強するのには寒くていいけれども、北海道が遠ければ仙台あたりへでも行って、そうすれば国会のまわりに全学連も来ないし、よかろう、こういうようなふうに考えたわけでもないのですけれども、これは今考えるとばかばかしいようですが、なかなかそうでないということは、かつて関東震災のとき、私ども深川で出くわして車を引いて逃げた。ところが車引いてちゃ、夜具を持って逃げても追いつかないので、それを捨てて、かける早さと同じ早さで火が追いかけてくるから、すたこらかけて逃げたのですが、今度は自動車が大正十二年のときから比べると、表を見ても大へんです。東京都だけでも大正十二年には四千四百五十九台だったが、これは今は二百倍ほどにはなっていないでしょうが、七十一万三千百三十台か、こういうあれですね。もし今度ああいう震災にでもあったら、トラックにみな荷物を積んで逃げることを考えますから、これは人が逃げるどころじゃなくて、大へんなことになる。トラックに載せてある荷物に火がみな移りまして、大へんなことにかる。そこでやはりニューデリーヘインドが首都を移したとか、あるいはブラジルがブラジリアに都を移したとか、あるいはフィリピンでもケソンでございますか、あそこへ役所を移しておる。それには官庁だけ行ったってなかなかいけないので、国会初め行って、あそこのきれいな空気を吸いながら、富士山でも眺めながらやったら、いい知恵が浮ぶじゃないか、いい政治家も出てくるのじゃないかというように考える。関東震災のときにも、道をうんと広げろと言ったら、後藤さん、そんなことは夢じゃないかと言って反対した。今度の戦災のときも、私は千葉の市会議員をやっていたから、道路を広げなさい、私はこういう経験があるのだ、大きなことを言わぬから、せめて千葉でも将来複々線を作ってもらいたいから、両国から東京駅の方にずっと道路だけとっておいてくれ、道路にしておいてその上に高架をかければいいと言ったら、そのときの国鉄の役員の話では、われわれの方でも考えています、錦糸町に地下鉄も何も持っていって、あそこに駅を作るから安心なさいということを言ったけれども、何もできやしないでしょう。千葉の駅の移転が、やっと去年の暮れから着工したというようなことで、非常に大きな機会を私は逸してしまったと思うのです。これはなかなか将来のことでありますけれども、しかし戦争で東京都が焼かれちゃった、関東震災でもぶっこわされた、もう一度ぶっこわされたということに、かりにすれば、どこかに移そうということくらいはできることであり、それをやることによって東京は商業、工業の都市となり、政治の方の都市は向こうに作る、学園都市は遠くの方に引っ越し、勉強をうんとできるようなところに作る、こういうようなことも今からでも考えておいて、将来、国会においてこういう議論もされたというくらいのことも、私は必要だろうと思って、この機会に申し上げるのでありますが、それについて一つ総理のお考えを伺いたい。
  135. 池田勇人

    池田国務大臣 私はあなたのお考え方はわかりますので、各方面にわたって関係閣僚と相談いたしております。まず研究所をどうするか。そしてその次は学校をどうするか。役所でもほかに移し縛る役所がある。私は今のところ、新しい政治部市というところまで言っておりませんが、今の状態のままではいけないということは、各閣僚とも考えております。具体的に検討を進めております。
  136. 臼井莊一

    ○臼井委員 この問題は、私が一月七日に地方の新聞に書いたら、それから一週間たって、東京のある学者がやはり東京紙に書きまして、政治家はこんな妙なことを言うと思うかもしれないという話でしたが、われわれもそういうことはもちろん考えているわけです。一つ十分慎重に御研究をいただくことをお願いいたしまして、長時間にわたって、お答え、ありがとうございました。(拍手)
  137. 愛知揆一

    ○愛知委員長代理 次会は明二月一日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。   午後三時五十六分散会