○堀昌雄君 私は、
日本社会党を代表して、
公職選挙法等の一部を
改正する
法律案に対する
社会党提出修正案の提案の
趣旨説明を行ないます。(
拍手)
七月一日に予定されておる
参議院選挙を前に、今
国民が最も大きな関心を持って見詰めておりますのは・この
公職選挙法改正の行方であります。一昨年行なわれた第二十九回総
選挙は、解散前の臨時
国会で、
公明選挙実現のための
決議を行なったにもかかわらず、
選挙犯罪は、件数において七割、人員において六割も激増を示し、検挙された者は、三万二千七百六十八人に達しまさに未曾有の汚れた
選挙となったのでございます。このような汚れた
選挙が行なわれたことに対しては、
国民各層は強い憤りを覚え、言論界はあげて
選挙法の
改正によって、この根本的な誤りを正すべきを主張いたしました。私どもが、今、この
立場において課せられておる任務は、まことに重大なのであります。
そこで振り返って、
選挙制度の問題に立ち返りますと、
昭和二十四年、
選挙制度調査会が設けられまして、七回にわたる
答申が
昭和三十四年十二月までに行なわれておりますけれども、ほとんどこれらが十分に取り上げられた例はございません。特に、
昭和三十四年十二月には、
選挙制度の
改正に関する件、さしあたって必要とする措置というものを、総理
大臣はこの調査会に諮問いたしました。十一月五日に諮問をして、十二月二十六日に
答申を求めるという非常に困難な
審議を求めながら、この内容については、一点たりとも
政府は提案をしなかった過去における歴史があるのであります。これらの実情にかんがみて、
国民世論の前に、ついに
政府は、昨年
選挙制度審議会を設置して、過去の自分たちの誤りを反省するかのごとく、
答申を尊重する項を第三条に設けて、
国民の前に
選挙制度を
改正することを約したのでございます。ところが、この
選挙制度審議会において、昨年六月以来約半年にわたって、各界の有識者が非常な
努力をもって検討されました
答申案が、昨年の十二月二十六日
答申されまして以来
国会に提案されるまで、約三カ月、この間、
自由民主党と
政府当局は、あるいは憲法に抵触するところがあると称し、あるいは
立法技術上の困難があると称して、
選挙制度審議会の真意を曲げることにきゅうきゅうとし、ようやくこの三月この
国会ここの法案が
提出されることとなったのであります。
そこで、この問題の中で最も重要な一点は、この
政府及び
自民党によって
修正されました
政府原案が、はたして
選挙制度審議会設置法にいうところの、
審議会の意見を尊重したものであるかどうかという点であります。私どもだけに限らず、
日本の新聞報道機関のすべては、この問題について、
政府・
自民党の反省を促し、一日も早く
審議会の
答申がそのまま
政府案として
提出されることを望んでおりますけれども、事実は、た
だいま加藤
委員が述べたように、いろいろな術策の結果として、あのような提案となったのでございます。
われわれは、この事態にかんがみ、
答申の線を尊重するべく、
高級公務員の
立候補制限、
連座制の
強化、
政治資金の取り扱いの
強化について、三点の
修正案を提案いたすのであります。
そこで、私どもの提案は、今
委員長も述べましたように、
答申の線をまともに受けておるものでありまして、との
考え方と、
政府原案及び去る二十五日に
提出されました
自民党修正案のいずれが、
国民の
期待する
選挙法の
改正の方向であったかを
考えてみなければなりません。
この問題は、一昨日の
委員会におきまして、早稲田大学の吉村正教授が、いみじくも指摘されておりますけれども、この
選挙制度審議会の
委員であり、わが国における
選挙問題の権威である吉村教授は、意見がもし対立をして——自分は
社会党修正案が
審議会の意見をすべて尊重しておるものと
考えるが、
与党の皆さんはそうお
考えにならない、意見が対立をしておるならば、そのいずれが
審議会の意見を尊重したものであるかは、まず、
内閣が設置された
審議会に尋ねられるのが至当であろうと答えられておるのであります。さらに、もしこれに尋ねることができないのであるならば、このいずれが尊重しておるかを判断するのは
国民でありますから、すべからく
国会を解散して、この問題について、いずれが
国民世論を代表するかを正しく
選挙に問うべきであると答えられておるのでありまして、まことにわれわれの
考えと一致したところでございます。(
拍手)
次に、この問題について、
高級公務員の
立候補制限をわれわれが主張しなければならない具体的な事実に触れておきたいと思います。
第一回の
昭和二十二年に行なわれた
参議院選挙以来、
昭和三十四年の第五回の
参議院選挙に至るまで五回の参議院の
選挙において、驚くべきことは、林野庁長官の職にあった者が毎回必ず立候補して、五回当選をしている事実でございます。さらに、建設次官は、この五回の
選挙中三回立候補して当選をし、国鉄総裁あるいは専売公社、電電公社等の幹部役員も、いずれもほぼ三回ないし四回当選をしているという事実でございます。一番多くこれらの
高級公務員が当選をしたのは、まさに十二人に達しておるのでありまして、いかに
自由民主党の参議院の勢力の減少をおそれるがゆえの
答申の否定になったかは、この事実から見てもきわめて明らかでございます。(
拍手)
われわれは、単にこの過去の事実にとどまらず、さらにおそるべき事実は、今回、航空自衛隊の幕僚長であった源田空将が、その職を辞して、
自由民主党公認として、参議院全国区に出るとの問題でございます。この問題は、私は、単に
高級公務員の
立候補制限の問題を越えて、わが国における自衛隊のあり方にきわめて重大なる問題を及ぼすものでありまして、道義上はもとより、
政治的にも、多数党である
与党がかくのごとき取り計らいをすることは、今後に重大なる危険をはらむものと申し上げておかなければなりません。(
拍手)
次に、
政治資金の関係でございますが、先ほど同僚の
岡本議員の
発言中、
与党の騒然たる問題がございましたけれども、私は、ここに二、三の具体的な事実を申し上げて、
国民の前に、この問題のおそるべき危険を指摘しておきたいと思うのであります。
昭和三十五年における
自由民主党の
政治資金は、自治省の官報による告示によりますれば、十八億九千万円でございます。その中で、公認料として一人約五十万円、合計一億六千二百万円が計上されております。その次に、貸付金として、二億七千六百万円が貸付をされております。これを当時の立候補者三百二十人で割ってみますと、一人当たり百三十七万円が、正規に
自由民主党からこれらの候補者に渡っておるものと
考えられます。ところが、その他の
政治資金を調べてみますと、たとえば宏池会には、これは池田さんの
後援会のようでございますが、三億九千六百万円で、
自民党系
後援会の最高でございます。次は佐藤さんの周山会本部が三億二千九百万円、岸さんの十日会が二億一千四百万円、このような形で一千万円以上の
寄付の集まったものの総計は、実に十九億八千九百万円に達しておるのでございます。現在の法定
選挙費用はおおむね百万円から、最高で二百万円にしかなっておりません。
自由民主党は、正式に一人当たり百三十七万円の金を渡して、そのあとで各派閥及びこれに連なる
後援会が集めた金が十九億八千九百万円、一人当たり約六百万円の金が
昭和三十五年の後半に費消されておるという事実は、これはいかがなものでありましょうか。(
拍手)この金が
選挙に使われていないのならば、皆さん方は貯金をして大金持ちになっておられるはずでございます。もし皆さんが金持ちでないならば、これは明らかに
選挙に使われたのに相違ございません。
昭和三十五年の六月から十二月までの間に、都合一人当たり七百三十七万円の金が使われておるというこの
現実は、この間の公聴会で、
政治資金と
選挙資金の区別がつくかと私が各党推薦の公述人に伺ったところが、すべての公述人は区別ができませんとの話でございました。われわれは、との
昭和三十五年六月一日から十二月三十一日までの間に、皆さん方が平均すれば七百三十七万円の金を一体何のために使われたのかということを、皆さん
自身がここで答えていただかない限り、われわれにわかるはずはありませんけれども、おおむねのことは先ほどの
岡本議員の
発言にあったごとくではないかと思われるのでございます。(
拍手)われわれは、このような事実をもとにして
考えるならば、どうしても
政治資金というものが規正をされなければならない。単に
選挙に関することだけでは規正ができないという事実を明らかに知るかゆえに、今頃の
改正案において
政府原案に
反対をして、
審議会の
答申通り、
政治資金を含めて規正することを提案をしているわけでございます。
最後の
連座制強化の問題でございますけれども、時間がございませんから、あまり多くを触れたいとは思いません。ただ、このことは私は皆さん方が非常な恐怖症にかかっておられるのではないかということが痛切に感じられるわけでございます。なぜならば、私どもが
修正案で提案をしておりますように、
連座がきまりまして、重要な総括主宰者その他の関係者の有罪がきまって、即時に問題が解決をされるというのであるならば、皆さん方の中にも非常な危険にさらされることがあるかもわかりません。しかし、今回のようなやり方で、
現実には
選挙が終わったあとで検事が公訴するなどということになりますならば、五年も、六年も、七年も、これは判決が確定するためにはかかるのでありますから、過去の例においても一人も
連座で失格になった例はないのであります。
連座で失格になった例がないにもかかわらず、いろいろなしぼりを
かけるということは、一体これは何でありましょうか。皆さん方の単なる気休めであるとしか言えないと思うのであります。われわれは、このようなことであってはならないと思いまして、先ほど申し上げました
腐敗した
選挙を正すためには、なるほど望ましい方法ではありませんけれども、やむを得ず
修正案によって、これらの多額の資金の行方が正しく守られるような方向に
考えていかなければならないと思うのであります。私とものこれらの
修正案に対して、
自由民主党の方は——われわれは
審議会、
国民の声の方向に、
自由民主党はこれに逆行する方向に
修正案の
提出をされたのであります。
リンカーンはかつて、「少数の
人々を永久に欺くことはできる。すべての人を一時だけ欺くこともまた可能である。しかし、すべての人を永久に欺くことはできない」と申しておりますが、私は、たといいっときなりとも、このような皆さんの取り扱いが
国民をだませるものだとは
考えておりません。われわれの前に控えておりますところの
参議院選挙の中で、この問題についての黒白は、
国民の手によって明らかにされると私どもは信じておるのであります。
どうか皆さん、この
国民の公正な
選挙に対する声に従って、わが党
修正案が万場一致可決をされ、
日本の民主主義がますます発展するように、皆さんの御協力を得たいと思うのであります。
以上をもって提案の
趣旨の説明を終わります。(
拍手)
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