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1962-04-25 第40回国会 衆議院 法務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月二十五日(水曜日)    午前十時二十五分開議  出席委員   委員長 河本 敏夫君    理事 稻葉  修君 理事 田中伊三次君    理事 林   博君 理事 牧野 寛索君    理事 坪野 米男君 理事 松井  誠君       有田 喜一君    池田 清志君       一萬田尚登君    上村千一郎君       唐澤 俊樹君    岸本 義廣君       小金 義照君    千葉 三郎君       馬場 元治君    松本 一郎君       猪俣 浩三君    田中織之進君       田中幾三郎君    志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 植木庚子郎君  出席政府委員         警  視  監         (警備局長)  三輪 良雄君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         検     事         (訟務局長)  濱本 一夫君         公安調査庁長官 齋藤 三郎君         公安調査庁次長 関   之君         郵政事務官         (郵務局長)  西村 尚治君  委員外出席者         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 四月二十五日  委員片山哲辞任につき、その補欠  として田中幾三郎君が議長指名で  委員に選任された。 同日  委員田中幾三郎辞任につき、その  補欠として片山哲君が議長指名で  委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  行政事件訴訟法案内閣提出第四三  号)  行政事件訴訟法施行に伴う関係法  律の整理等に関する法律案内閣提  出第一三五号)  法務行政及び検察行政に関する件      ————◇—————
  2. 河本敏夫

    河本委員長 これより会議を開きます。  行政事件訴訟法案を議題といたします。  本案につきましては、前会において質疑を終了し、松井誠君外八名より修正案が提出され、その趣旨説明も聴取いたしておりますので、これより原案及び修正案を一括して討論に付します。上村千一郎君。
  3. 上村千一郎

    上村委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、昨日当委員会において日本社会党から提出されました本案に対する修正案反対し、政府原案賛成の意を表せんとするものであります。  本案は、昭和三十年以来七年間の長きにわたって法制審議会行政訴訟部会において十分の検討、論議が尽くされ、かつ各行政庁意見を調整の上、ようやく本国会に提出されたものでありました。先般、私は質疑の際、当局のこの長年にわたる労苦に対しまして、深く敬意を表した次第であります。  本案の内容は、国民権利の伸張、行政の適正なる運営を期する上に細心な注意が払われ、適切妥当な条項が新設せられてありまして、本案施行の暁には相当の効果を期待し得るものと存ずるのであります。過日、当委員会における参考人意見を承ってみましても、ほとんど全部の方が本案の一日も早く成立することを希望しておられたことは、皆様御承知通りであります。  さて、ただいま提出されておりまする日本社会党修正において、全面削除せんとする内閣総理大臣異議制度は、現行特例法にもすでに規定があるのでありまして、今回の改正が執行停止の前後を問わず異議を述べることができることといたした点が問題となっているようでございますが、元来この執行停止裁判は、訴訟における終結判決とは異なり、判決前の暫定措置としてなされる行政処分的性格のものでありまして、内閣総理大臣がその政治的、行政的責任においてこれに対して制約を加えても差しつかえないことは、純然たる司法作用に対する場合におけるものと異なるわけであります。しかも異議理由において、公共福祉に重大なる影響を及ぼすおそれがある事情を具体的に示すとともに、緊急かつ真にやむを得ない場合でなければ異議を申し述べてはならないこと、及び異議を申し述べたときには、次の常会において国会にこれを報告しなければならないことなどの新たなる規制をいたし、もってこの異議制度がいやしくも国民権利救済を不当に阻害することのないよう配慮されておることは、まことに妥当な措置と言わなければなりません。  以上の理由をもちまして、私は日本社会党提出修正案反対し、政府原案賛成せんとするものでございます。  私の討論を終わります。
  4. 河本敏夫

  5. 松井誠

    松井(誠)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、行政事件訴訟法案に対する修正案賛成をし、原案反対をいたすものであります。  その理由は、昨日修正案提案理由で申し上げました通り、われわれの修正案の基本的な考え方は、現在の日本で必要なのは、行政能率を上げるというそういう立場を重んずることではなくて、国民権利救済により重点を置くということでなければならないと思うのです。権利救済を重んずるということと、行政能率を高めるということとは、形の上では、あるいは現象的には矛盾をいたすわけであります。そのときにどちらに重きを置くかということになりますけれども、われわれは日本の現在の民主主義が未成熟だという、そういう現況においては、やはり国民権利救済により重点を置かなければならない。行政能率を上げるということで、やはり民主主義原則というものが失われて、独裁政治というものへの道を開く、そういう危険性をはらんでおる限りは、われわれはやはり国民権利救済というものに十分な比重というものをかけなければならないと思うわけであります。そういう点からわれわれの修正案提案をされたのでありまして、一つは訴願前置の問題、訴願前置を廃止するという基本的な方針には、もとよりわれわれは賛成であります。しかし、多くの例外を設けて、今後の運用のいかんによっては例外原則になり得るような、そういう道を開いておるということ、これはやはり私たち反対をいたさなければならないわけであります。やはり行政救済司法救済とは国民の任意の選択にまかせるということが、よりよく国民権利救済に役立つであろうと思うからであります。  なお、出訴期間の点でありますけれども、これは現行法と違って三カ月に短縮をされております。短縮をされておること自体問題でありますけれども、より問題なのは、それにもやはり多くの例外が設けられて、従って、出訴期間について法律によれば非常に区区になっておるということであります。これはそのような実情にうとい国民を困惑させて、権利救済障害になるであろう。従って、三カ月という原則はあくまでもやはり例外なく守るべきであるというのがわれわれの主張であります。  もう一点は、いわば技術的な修正でありますけれども、この法律案では、抗告訴訟というものの類型というものをあげまして、提案理由によれば、それ以外の抗告訴訟を認めない趣旨ではないということは書いてはございますけれども、しかし、法律の条文を一読いたしますと、それが法律学者さえも、もうこれだけに限られるのだという、そういう誤解を受けるような規定の仕方になっております。なぜそういう規定の仕方になったのか、われわれには解せませんけれども、それをはっきりと、これは限定するのではなくて単に例示をするのであるという趣旨のことを入れようというのであります。ただいま自民党上村委員からの御意見では、このような点については全然お触れになりませんでしたけれども、少なくともこういう点については、むしろ御賛成いただくのがほんとうではなかろうかということを私は考えるわけであります。  ただしかし、われわれが修正案の中で一番問題にし、従ってこの法律案の中で一番反対をすべき問題は、言うまでもございませんけれども総理大臣異議権の問題であります。この異議権の問題は、御承知のように現行法にも出ております。しかし、現行法と比べましていろいろな点が違う。現行法自体はもとより問題でございますけれども、さらに現行法異議権制度というものを一歩進めまして、執行停止決定後でも、裁判後でも異議権行使をなし得るというように改める。これは、そのような裁判の前とあととでは、実は裁判の本質から見まして非常に重要な問題を含んでおるわけであります。われわれがこのような異議権の問題について反対する第一の点は、やはり憲法との関係であります。違憲疑いが非常に濃いということであります。今上村委員お話では、執行停止行政処分だからというお話でございましたけれども行政処分司法処分かという、そういういわば形式的な観念的な区別が問題であるのではなくて、それが現実裁判官裁判に具体的に介入しておるかどうかということが問題であると思うのであります。御承知のように、憲法では、日本国民裁判所による裁判裁判官による裁判を受ける権利を持っております。そうして裁判官法律によって裁判を行なうということになっております。従って、そういう点から考えますと、執行停止というものが終局判決と非常に密接な関係を持っており、そしておそらくは多くの場合に、終局判決で効果的な結論を出してもらうためには執行停止というものがどうしても必要だという意味で、一体不可分になっておる場合が多いわけであります。そしてそのような場合には、この異議権が存在するということ自体、実は国民に対して執行停止申請そのものをチェックをするという役目を果たしております。そうして異議権によって、これが有無を言わさず取り消されるということになりますと、国民が求めておる行政事件判決そのものにもちろん重要な影響を及ぼしてくるわけであります。そういたしますと、これが行政処分であるか司法処分であるかということではなくて、現実にこれが終局判決にそういういろいろな形で影響を及ぼすという意味で、これは行政官司法権に対する不当な介入である。憲法三権分立の、少なくともその精神というものを乱しておる。そういう意味十分違憲疑いがあると思うのであります。このような違憲疑いがあるにもかかわらず、なおこういう制度を入れなければならないという積極的な、どうしてもやむを得ないという理由が一体あるのかどうか。これは残念ながら、われわれの国会審議の過程において、どうしてもわれわれの納得し得るような理由というものを発見することができなかったわけであります。いわば唯一のおそらく合理的な理由としては、裁判所のやる執行停止というものは、多くの場合あるいは往々にして信用できない、公共福祉ということに対して非常に近視眼的である。ところが、行政官のそういう判断については、より大局的でより巨視的であるというような意味があろうかと思うのです。そういう意味でも考えなければ、この異議権というものの合理的な理由というものはどうしても発見できない。しかし、残念ながら、そのような行政官に対する信頼、公共福祉というものに対する考え方について、われわれは裁判官行政官と、そのような本質的な違いがあるということはどうしても考えられない。それはこのような異議権行使が、過去に現実に果たしてきた役目というものを一瞥するだけで十分であると思うのであります。その点については、もう詳しく申し上げるつもりはございません。それでは、そういう行政官に対する乱用防止について、具体的に法律的な保障というものはできておるか、これは残念ながら幾ら法律の上でその乱用防止規定を積み重ねましても、問題はこういう制度があるということ自体、実はもう乱用への道を開いておる。そういう現状であろうと思うのであります。  最後に、私は一言申し上げたいのでありますけれども、このような異議権というものを認めるということに根本的には賛成であるという、そういう立場にお立ちになっても、私は、この異議権規定の仕方には当然異論があってしかるべきではないかと思う。と申しますのは、この異議権行使は、いわば行政権に対する百パーセントの優位というものを認めておる。しかし、そうではなくて、この異議権というものの必要性というものをかりに認めるにしても、それが行政権司法権をいわば圧服をするという、そういう形ではなくて、相互のコントロールという形でもしこれを処理しようとするならば、このような規定ではなくて、もっと規定の仕方があったであろう。ところが残念ながら、そういう規定の仕方については、考慮さえも払われなかったということが御答弁ではっきりいたしたわけであります。少なくとも裁判官に対してその異議理由ありやなしやという審査権を与える、あるいは国会に対する単なる報告ではなくて承認にかかわらしめる、何かそういうことによって行政司法と立法とのこの困難な問題というものを、そういうコントロール原則で処理することはできなかったか。少なくともそういうことでない限り、私たちはどうしても承服するわけには参らないわけであります。  以上の理由によって、われわれは社会党修正案賛成をし、原案反対をするものであります。
  6. 河本敏夫

  7. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました行政事件訴訟法案並びに社会党から提出されました修正案に対して討論を行ないます。  結論から申しますならば、社会党修正案賛成原案反対であります。この審議を通じて最も論議の集中されたのは第二十七条の内閣総理大臣異議の点であります。これは社会党委員からも述べられましたが、これは旧法を一歩前進した改悪である。旧法の時すら、最高裁判決によりますと、むろん旧法によって執行停止処分があった後には総理大臣といえども異議申し立てができない。少数意見として、真野裁判官は、この規定自身がすでに違法であるという御意見を述べられておるのであります。先ほど上村君が、この総理大臣異議介入行政措置であると申しましたが、行政措置であるならば、なおさらこの行政措置によって裁判官の行なおうとする決定が阻止されるものでありますから、裁判官裁判権行使というものは、行政措置によって妨害をされるわけであります。これは三権分立趣旨からいって許すべからざる改悪であると私は思う。そういう意味合いにおきまして、私は、この規定旧法を一歩前進して、その停止の前後を問わず、総理大臣異議を申し述べれば裁判官執行停止ができないというこの規定はよろしくない。のみならず、今松井君も述べられましたが、この二十七条によっても非常に疑問が出て参るのであります。内閣総理大臣異議申し立て条件として、「処分効力を存続し、処分を執行し、又は手続を続行しなければ、公共福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある」これの基準が非常にむずかしいと思うのです。一体何を基準にして「公共福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある事情」と認めるのかどうか、抽象的な規定です。のみならず、真に「やむを得ない場合でなければ」できない。これも非常に抽象的な規定でありまして、総理大臣異議申し立て二つのかような抽象的な条件が付してあります。実際問題として、これが施行された後に、総理大臣異議があったが、真に公共福祉関係があるかどうか、やむを得なかったかどうかということを判断せずに、無条件裁判官がその停止取り消しをしなければならぬかどうかということは、実務にあたっては、私は非常にむずかしい問題だと思うのです。異議申し立てがあったときに、その条件があるのでありますから、その二つ条件が真に異議申し立てするに値するやいなやということを判断せずに、裁判官はおそらく決定ができないのじゃないかと私は思う。もしそうでありますならば、非常にこの規定のために混乱を来たす。もっとすっきりしないと、実施した暁によってわかるでしょうけれども裁判官が不見識に、総理大臣異議申し立てれば、何でもかんでも取り消し決定あるいは続行の停止決定を取り消す、こういうようなことは常識からいっても考えられないことです。ですから私は、この規定は、単に改悪であるのみならず、実施にあたっても非常にむずかしい現実の問題が生じてくるであろうということをおそれるのであります。従いまして、社会党修正案を出して、中心になっております二十七条というこの修正案はまことに妥当なものである。法自体は前置主義を廃して訴訟主義をとるのですから、われわれはこの点は賛成します。しかし、どんなに健康な人であっても、どんなきれいな人であっても、ガンがあってはからだ全体がだめになる。私はこの二十七条というものは——非常にいい法律ではあるけれども、この二十七条というガンを抱いてこの法律が通っていきますならば、この法律はもはや健康なものではありません。ですから、このガンを取ることをわれわれは希望したのでありますけれども、こういうガンを抱いてこの国会を通っていくという本案全部に対して私は反対せざるを得ない。  かような意味で、私は社会党修正案賛成政府原案反対をするものであります。
  8. 河本敏夫

  9. 志賀義雄

    志賀(義)委員 日本共産党を代表して、この行政事件訴訟法案に対して反対します。あわせて社会党修正案、一番重要な点について修正がありますので、その点はよろしいのでありますが、なおそのほかにそこから当然導き出されるべき点で、修正案として不十分なものがあるので、その点には私ども賛成するわけには参りません。その立場から討論いたします。  原案は、法制審議会で長年にわたって検討したものでありますが、その結果、十分国会審議もしなくてやってよろしいという結論にはならないのでありまして、これは法務委員会権威国会権威にかけても、もう少し十分、次の国会までかけて審議して差しつかえないものであると思います。その点が十分に守られていないので私は反対するものでありますが、問題の主要点は、第二十七条の内閣総理大臣異議権を認めたことであります。これについては、現行特例法内閣総理大臣異議権があるのは、もともと占領下GHQの圧力のもとに作られた条件であって、これはむしろ省くべきものであります。というのは、今まで安保条約に関する行政協定で、五件ほど異議権の発動があったのでありますが、その経験からしてもこれは当然省くべきものであります。ましてこれが、上級裁判所下級裁判所判決をくつがえす、やり返す、こういうことはあり得るのでありますが、行政権の首長が、裁判所判決に対してこれをひっくり返すというようなことになりますと、これは近代の民主主義根本原則を破壊することになるのであります。これは日本内閣行政府独裁権を認めることになるばかりでなく、これまでの行政協定実例をもってしても、アメリカ軍の不当な権利を守る、こういうことになるのでありまして、現に砂川事件最高裁判決は、安保条約は高度の政治問題だから、裁判所判断を示すことができないのだなどと言って、憲法にのっとることさえやらない。こういう事態が生れているのでありますから、これまでのそういう実例と関連して、この第二十七条が、今後の日本政治においてきわめて危険な結果をもたらすものとして反対しなければならないわけであります。  次に第二十五条第三項で、「執行停止は、公共福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、することができない。」こうあります。「理由がないとみえるとき」というのは申すまでもありませんが、問題は前段の「公共福祉」であります。これは一般的には執行停止すべきだけれども、そして執行停止しなければならないのだが、特に行政事件であるから、行政府の方で必要と認めた場合には公共福祉ということでこれを排除しようということになるのであります。私どもはこういうことには賛成するわけに参りません。  さらに第三十一条のいわゆる事情判決であります。この点を、社会党は第二十七条に反対されているのでありますから、当然修正されるべきものと思いますが、その点に触れておらないのは遺憾でありますが、第三十一条は、これはまことに驚くべきものであります。行政庁のやったことが違法である、処分または裁決が違法ではあっても、それを取り消す場合、公の利益に著しい障害を生ずる場合には、裁判所の方は請求を棄却することができる。こういうふうになっておりますが、その上に「この場合には、当該判決主文において、処分又は裁決が違法であることを宣言しなければならない。」と書いているのであります。猪俣白石判事参考人として参りまして、非常にこの点で不満を示しているのは当然のことであります。裁判所には、処分または裁決が違法であることはわかりきっているのに、それを判決主文に明記して、しかも請求を棄却しなければならない。これでは今の流行語で、わかっちゃいるけどやめられないということを裁判に持ち込むことになるのであります。まことに言語道断と言わなければなりません。なぜ私がこう申しますかというに、この行政事件破防法公安調査庁の行為も対象になるのであります。破防法第二条には、この法律解釈適用という条項に、「公共の安全の確保のために必要な最小限度においてのみ適用すべきであって、」とあります。そうなりますと、この第三十一条で、破防法は全く行政事件訴訟から免れてしまう結果にもなるのであります。従って、この第三十一条では、実は行政事件訴訟法行政事件から国民を締め出してしまう、こういう結果になるのでありまして、私どもはこういうことに賛成するわけに参りません。  さらに第十四条の出訴期間の問題でありますが、六カ月の出訴期間を三カ月にする。中には六十日、八十日というようなものもありますので、かえって三カ月に延ばしたということになりますけれども、私どもは、まだ国民はこういう行政事件訴訟になれない。非常に相手が大き過ぎるし、おっくうだ、見当もつかないというような場合も考えて、むしろ、出訴期間を六カ月からすべて一カ年に延長すべきものであると考えております。まごまごしている間に三カ月では時間が足りない。重要な事件ほど時間が足りなくなるというおそれがあります。この点、社会党が問題にされていないのは私としても遺憾であります。特に原案については、こういう意味からして私は絶対に反対するのであります。  次に、本法第三十六条の無効確認訴えに関する規定でありますが、現行法のもとにおける最高裁判所決定は、行政処分無効確認訴えを提起することが許されておる。行政庁を被告として提起することができることになるのであります。ところが本案によりますと、行政庁に対する無効確認訴えを事実上制限することになります。というのは、三十六条には、「当該処分若しくは裁決の存否又はその効力有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができないものに限り、提起することができる。」となっております。これは明らかに制限でありまして、この点については、参考人猪俣幸一判事がはっきりと指摘し、なお白石判事は、これは旧憲法的な考え方から出発したものであることを具体例をあげて痛烈に述べているのであります。私は、この制限は当然取り去るべきものであるという立場から原案反対するのであります。なぜ私がこのことを指摘するかと申しますと、猪俣判事も若干触れておりますが、現に問題になっている農地対策の結果、農地に関する問題に関係しているからであります。今日旧地主は、いろいろと土地に関する補償を要求しております。現にきょう私が国会に参りますときにも、池田さん党議を守れというようなことで、あそこでハンストをはでにやっております。この法案法律として成立しますと、どういうことになるか。現に自民党の中には二千八百億円の交付金を出させよう、こういうことをやっているのでありますが、農地所有者に対し、所有権存在確認訴えあるいは旧地主所有権確認訴え、つまり旧小作人相手訴えを提起することができる道を開くことになります。今までのように政府に対してこれができなくなる。必ず全国的に小作人相手の旧地主訴訟が続出することになります。現に起きておりますが、これが大規模になって参ります。これは実に重大なことでありまして、これは国民を守るどころか、農業基本法で六割の農民を切り捨てる。われわれや社会党が指摘することが、決して空虚なものでないということを、この法律によって証明することになるのであります。私はこういう意味において、この法案反対するわけであります。ことに何か内閣総理大臣並びに行政庁に対し、これほどの重い権限を与え、法体系の上に超越して、この上にあぐらをかき、これを指揮するというような権限を与えながら、憲法第十五条には公務員罷免の権利がある、そういう条項でもって制限をするという思想が、この法案には全くないのであります。これでは行政権の専制を免れない、こういう立場から私は反対します。  社会党の案に関しては、第二十七条をあげられたことは非常に賛成でございます。その他について、そこから論理上当然導き出される点について、現実に配慮がまだ足りないと思いますので、あわせて、これにも反対する次第であります。
  10. 河本敏夫

    河本委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず本案に対する松井誠君外八名提出にかかる修正案について採決いたします。  本修正案賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  11. 河本敏夫

    河本委員長 起立少数。よって、本修正案は否決せられました。  次に原案につきまして採決いたします。  行政事件訴訟法案賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  12. 河本敏夫

    河本委員長 起立多数。よって、本案原案通り可決すべきものと決しました。      ————◇—————
  13. 河本敏夫

    河本委員長 次に、行政事件訴訟法施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案を議題といたします。  本案に対する質疑は前会において終了いたしております。  これより討論に入りますが、討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  行政事件訴訟法施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案について採決いたします。  本案賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  14. 河本敏夫

    河本委員長 起立多数。よって、本案原案通り可決すべきものと決しました。     —————————————
  15. 河本敏夫

    河本委員長 次にお諮りいたします。  すなわち、ただいま議決されました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 河本敏夫

    河本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  17. 河本敏夫

    河本委員長 次に、法務行政及び検察行政に関する件につきまして調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。猪俣浩三君。   〔委員長退席、林委員長代理着席〕
  18. 猪俣浩三

    猪俣委員 証拠書類並びに証拠物の公判前の閲覧の問題につきましては、これは在朝在野の法曹間に多年論議せられている問題であるのみならず、学者間におきましても相当の議論がある問題でございます。ことに実務といたしまして公判に関係している者から見まするならば、これは弁護団と検察あるいは裁判所との相当の論議の的でありまして、訴訟遅延、訴訟困難の一大要因をなしておることは一般の人も認知しているところであります。しかるにこれの問題につきまして、最近大阪地方裁判所の西尾裁判長から、検事の手持ちの証拠を全部裁判所に提出せよという命令が出たこと、及び松川事件におきまする証拠の提出問題に対して多大の疑惑が出てきたことから、一そうこの検事の手持ちの証拠の閲覧あるいは提出の問題につきまして、大いなる世論が上がっているわけであります。学者によりますと、この問題が解決できないのは国会が無能であるからである、国会がその機能を果たしておらないからである。これは立法的にも解決しなければならぬ問題であるにかかわらず、今日まで国会では十分論議さえしておらない。かような非難を浴びせている始末でありまして、国会権威にもかかわることだと存ずるわけであります。そこで私は、この問題につきまして、最近世論に大いなるショックを与えました松川事件判決に関連いたしまして、政府当局の所見を承りたいと思うわけであります。  まずこの問題の法律的、具体的な問題につきましては、帰納的に申し上げることにいたしまして、松川事件公判に現われました検事の証拠問題に対する態度につきまして、私は法務大臣以下の諸公の意見を承りたい。しかし、私が問題にいたしますのは、結局仙台高裁の差し戻し判決、門田判決に指摘せられましたことを素材といたしまして御所見を承りたい。  これはいろいろ民間その他でただ伝わっていることではない。いわゆる門田判決において指摘しておること、私も在野法曹として三十数カ年従事いたしておりますけれども、今回の松川差し戻し判決のような判決が過去にあったかどうか、寡聞にして知らない。この中に、検事に対しまして徹底的なる非難を浴びせておる。一体法務大臣以下の諸公は、この松川判決、門田判決をどれだけ検討せられたものであるか。非常に大部なものでありますので、私どもこれを全部精読することは大へんな骨でありますけれども、驚くべきことが書いてある。検事のあり方について、何としてもこれは黙視できないことが書いてある。しかも今日十年間も監獄に呻吟しておられました人たちが、何が原因でかようなことになったかというと、検事の態度である。検事は、あらゆる被告の有利なる証拠を持っておりながら、これを裁判所に提出せずして、しかも第一審検事は十名に死刑の求刑をし、三名に無期懲役の求刑をし、三名が十五年、三名が十三年、一名が十年、わが国裁判史上実に驚くべき重刑を多数課している。無責任きわまると申さねばならぬ。それが現在みな無罪である。これの責任はどうするのであるか。私どもは、実にこの判決を見て鬼気迫るものを感じたのであります。被告人のアリバイを証明すべきものを出さずして、そうして死刑の判決を受ける。これはいわば殺人の間接正犯ではありませんか。情を知らざる裁判官をして死刑の判決をなさしめる。そういう行動を検事がやったと言われても弁解のできない行動をやっている。門田判決に指摘されていることには驚くべきことがあるのであります。  まず最初は諏訪メモの問題でありますが、実に最高裁判所の提出命令によってようやくこれが公判に現われる。これが一つのきっかけとなって、最高裁判所においては、事実誤認の疑い濃厚にありとして破棄差し戻しされたことは御存じの通りである。そこでこの諏訪メモのことでありますが、こういう被告のアリバイを証明するような諏訪メモと称するところの証拠物件を、一体検事は何がゆえに法廷に出さなかったか。最高裁判所の命令があるまでこれを出さなかったのであろうか。その理由を承りたいのであります。私は、きょう検事総長の出席を要求しておりましたが、出てこない。こういう問題はやはり検事総長自身が出るべきものだと思う。こういう最高裁判所の提出命令があるまで、何がゆえにこの証拠を出さなかったか。それをまず御答弁いただきたいのであります。
  19. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 諏訪メモにつきましては、被告の一人であります佐藤氏のアリバイが成立するということになるというのが弁護人側の主張でございますが、検察側の主張は、会社側の証人の証言その他の証言によりましてアリバイ問題は解決できる、こういうふうに考えているものでございます。従いまして、諏訪メモにつきましては、将来あるいは必要になってくるかもしれないけれども、今さしあたって、破棄差し戻し前の一審、二審の公判を通じまして、検察側としてはこの資料をもって立証する必要はない。こういうことで手元に置いたのでございましたが、すでにこの委員会で御説明申し上げましたように、事件が上告に参りましてから、最高検察庁がその事件を担当しておる過程においていろいろ調査をいたしました結果、領置しておく必要はないという考えに立ちまして本人に引き渡した、こういうことになっておるのでございます。
  20. 猪俣浩三

    猪俣委員 当局側がそんな答弁をしておっちゃいかぬと思うんだ。皆さんはミスはミスとして明らかにして、今後どうあるべきかということを検討しなければならぬ。そんな重要じゃない証拠と検事が認識しておったなら、何がゆえに大沼副検事なる者をして一このあとで問題にしますが、この人間が自分の任地が変わっても、その諏訪メモだけははだ身離さず持って歩いた、そういうことは一体どう説明ができるのか。大沼という副検事が、自分の任地が変わっても、その諏訪メモだけは保管して持って歩いた。大沼という人物は、当時の福島の検事正のふところ刀であったことは明らかなんです。彼が任地先からわざわざ副検事にして福島に連れてきた人物である。そうしてこの安西という検事正が今日捜査の中心となって驚くべき活動をしておったことは明らかだ。第一線の検事以上に彼は捜査の中心をなしておったことは明らかだ、この人物の腹心である。高知県かどこかから、わざわざ任地から副検事にして連れてきて自分の手元に置いたこの人物が——これはこの判決にも指摘されておる。転々と任地が変わっておるにかかわらず、その証拠だけは持って歩いた。これはどういうふうに説明すればいいか。そんな今のあなたの答弁のようにはいかない。これは最も重大なものであるから、他人に渡さずしてこの男が持って歩いた。そういう証拠の保管問題について、あとでお尋ねしますけれども、あなたのそういう答弁は納得できない。  なお、これは法廷でありませんから、そういうことをこまかに申しておるあれはありませんが、これは被告に有利であって検事に不利な証拠であることが明らかなことは、すでに最高裁判所で認定されており、あるいはまた、いわゆる門田判決において指摘されておる。検事の間違いは間違いとしてお認めになって、監督権を発動しなければならぬじゃないですか。それを今になってまだそういう答弁を繰り返されるということは、私どもははなはだ不可解である。法務大臣は政党出身の大臣だ、こういうふうな重要な証拠を持ち回って隠匿して、最高裁判所の命令が出るまでは隠匿しておるということを、あなたは一体どう考えるか。
  21. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 問題の諏訪メモをだれかが特に保管をして持ち回った云々の事実については、私はまだ存じませんが、検察当局といたしましては、御承知通り新しい刑事訴訟法の精神にのっとりまして、犯罪を立証するために必要な証拠力のあるものを選んで、そうしてそのうちから自分の証拠としてこれを提出する。しかし、それがどうも証拠の価値が十分にないと認定したものについては、これを出さないということは、これは現行法制の上で認められておるところでございます。従いまして、当時の関係検察官は、やはり公正な判断のもとに、その証拠力の有無ということを十分考えて、そうしてその上で、あるいは提出しあるいは提出しなかったものもあるかと存じます。しかし、その提出しなかったもののうちで、差し戻し審において裁判長の要請があり、その要請に対して、なおこれを検察官の見るところでは必要がない、証拠力がないというふうに考えたものであっても、それをしいて出さないことによって疑いを差しはさまれることは適当でないという考えのもとに、後ほどに至ってそれぞれ相当膨大なる資料を出した、かように私は承知しております。従って、私の考えますところでは、由来検察官は、当然公益の代表として法令の定むるところによって行動すべきものでございますから、それぞれその立場として公正に、場合によっては、かりに検察官の主張に不利な材料であっても、要望があれば出さなければならぬ場合ももちろん出てくる。かように考える次第でありまして、本件の事実、その問題については、私は内容をよく承知しておりませんのでお答え申し上げかねる次第でございます。
  22. 猪俣浩三

    猪俣委員 私は、大臣としてもよく御研究いただきたいんだ。今、大沼副検事なる者がこの重要な証拠を持ち回っておったことについて存じておらぬような御答弁である、はなはだ遺憾であります。これは重大な問題ですよ。裁判のあり方、検察官のあり方に対します致命的な問題なんです。ことにこの問題につきましては、弁護団から検事の鈴木久学、山本諌、田島勇を公務員職権濫用等事件で告発しているわけです。これに対しまして福島地方裁判所の刑事部で判決をしておる。これは、結論としては検事を無罪としておりますけれども、この判決理由の中にこういうことを書いてある。「大沼副検事の不可解な行為はそれのみに止らない。」前にたくさん書いてあるんだ。「同人は仙台高検の事務補助を解かれ、勤務地である盛岡区検察庁に赴任する際にも諏訪メモ等をたずさえ、同庁に継続保管し、次いで釜石区検察庁に転勤するに際してもメモ等を携帯し同庁に保管」ていた。この間福島地検の証拠品保管責任者に対して全く何の連絡もしていない。同人が赴任した盛岡区検察庁及び釜石区検察庁が松川事件と何の関係もないことは無論、大沼副検事が仙台高検事務補助を命ぜられて諏訪メモが福島地検より持ち出され、そして再び返戻するまでの四年九カ月間メモは終始同人の掌握下にあったということになるのであるが、しかも福島地検で何人もかかる事情にあることを知らなかったということであるが、このような証拠品の取扱は一体許されるものなのであろうか。」こういうふうに判決がきめつけているのです。こんなことが法務省は——だから検事総長を呼んだんですよ。あなたがかわって出る以上は、こういうことをやはり答弁していただかなければならぬ。だれが持っておったか知らぬということでは答弁にならぬ。そうしてそれが今竹内政府委員の説明によると、どうもそんな大した被告に有利も不利もないものであるから出さなかった、そんな証拠を持ち歩いたというのは一体どういうわけだ。悪意がある証拠じゃないですか、判決で指摘をしているのです。これは争われる意思はないと思うのだ。これは裁判所判決ですよ。われわれがただ言っているのじゃない。だからそんなあなたが答弁したような簡単なものでないことは明らかです。されば最高裁判所の提出命令となって出て、しぶしぶ出した。そこから差し戻しになったじゃありませんか。しかし、それはいい。今法務大臣の説明によれば、いろいろ弊害があるからついに出さしたというように、責任は果たしたようなことを言っているわけです。そのために被告は十年青春をむだに費やしているじゃないか、それはどうするのだ。ですから、検事というもののやり方を私どもはお尋ねしている。皆さんは、やはりいけなかったことはいけなかったこととして、今後大いに気をつけるというふうに言ってもらいたい。こういう証拠を検事がそのまま出したならば、一審で無罪になったかもしれぬ。それを出さぬでおって最高裁判所まで持っていく。なお差し戻し判決のときに千六百点新しい証拠を出した。その証拠の中から珠玉のような貴重な証拠が出てきたために無罪ということになったと門田判決は指摘しているじゃありませんか。無罪になったことはこれは喜ばしいことでありますが、そのためにすでに十年間監獄へぶち込まれ、一審、二審とも死刑の判決を受けている。さような行動が検事の行為から起こってくる。そこで私どもは聞いているのですが、検事というものは民事訴訟における原告、被告の弁護人と立場が違うと思う。一体訴訟の当事者主義というものに対して、法務省自身が誤解しているのではないか。これは後に議論しますが、なお、さっき申しましたような、三人の検事が証拠物を隠匿して職権を乱用したということで裁判になった。そして関係者が福島の裁判所判事の取り調べを受けておる。その中に神山欣治という検事がいる。これは現に最高検の公安部長か何かやっている人じゃないかと思う。この人が少しも反省している色がない、驚くべき証言をやっている。これは東京地方裁判所の民事部の一室で、昭和三十五年六月五日に、福島地裁の宮脇辰雄裁判官が質問しておる。答えているのは最高検の公安部の神山欣治、一体諏訪メモは諏訪親一郎という提出者に返す方針をきめたのはどういうわけですかという質問に対して、神山検事は「わいわい騒ぐし、検察の威信も落ちるし、遵法精神を麻痺させることを狙うのですから、法律上は差支ない事であっても、後で取返すことのできない程に威信を失墜してはと思い、法廷も開かれるし、一応予想もできるので、この際これ以上持っていてはということで返したのです。」こう答弁している。これは裁判所で口頭弁論を開くことを決定してからの話だ。自分たちが持っているとまずいというので、急に提出者の諏訪親一郎氏に返すようにやった。騒がしい、わいわい騒ぐというので、それで裁判官が「騒がしいのでは弁護人の方ですか。」と言ったら、神山検事は「それだけでなく、アカハタと商業新聞にも同調者がいますから。」こう答弁している。それで裁判官が「国会法務委員会の問題も一つの理由ですか。」と言ったら「そうです。」、それで裁判官が「騒いでいる中に入るのですか。」と聞いたら、「入ります。」、こう言っている。だから、国会法務委員会の質問がわいわい騒ぐ中に入っているんだ。これは判事がわざわざ聞いているのですよ。「国会法務委員会の問題も一つの理由ですか。」——これは国会法務委員会志賀委員が質問しているのです。そうすると、「そうです。」と言っている。なお判事が「騒いでいる中に入るのですか。」と質問したら、「入ります。」、われわれもわいわい騒ぐ中に入れられている。「検察の威信ですか。」答えが「信用、権威が失墜されることがないように、そういう趣旨を入れてですね。」こう言っている。「結局騒がなければ返さない訳か。」と判事が聞いたら、「それはそうですよ。」と言っている。これは一体何ということだ。これが最高検の公安部——今何の部長ですか、答えて下さい。この人は何をやっているのか。
  23. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 神山欣治検事は、最高検の公安部所属の検事でございます。
  24. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは、ちゃんとここに調書の謄写を持っています。こういう答弁をしたことは明らかになっている。写真まで持っているんだ。こういう検事が公安部の検事をやっておられて、われわれも国会なんかやると、すぐわいわい騒ぐ、こう言われる。一体センスが、頭が違うんじゃないですか。騒がなければ出さぬ。そうして大沼なんという副検事にはだ身離さず持たして歩いている。実に言語道断だと僕は思うんだ。これに対してどう考えるのです。法務大臣答弁いたしなさい。
  25. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 ただいま御指摘になりました神山検事ですが、その証言の筋が、ただいまの御指摘の通りであろうと、猪俣委員のお言葉を信用して申しますが、その通りであるとしますれば、言葉ははなはだ不穏当であり、また考え方としても、もっともっと慎重に考えるべきものであって、やや軽率じゃないかというふうに感じます。従って、こうした問題については、ことに本事件が全体に大きな問題であり、多数の容疑者の方々に対しても大きな迷惑をかけている問題でございますから、この問題全般に関して関係者が十分慎重なる態度で臨むようには常に指図をしておるところでございます。
  26. 猪俣浩三

    猪俣委員 僕は、この人物などは全く悪意のある人物であると思うのです。騒がなければ出さぬ。すでに最高裁判所で提出命令まで出、差し戻し判決でもって徹底的にこれに対して反駁せられておる。その際に、なお彼自身が裁判官に対してこういう供述をしているのです。国会やアカハタや商業新聞がわいわい言うので出したという。では、わいわい言わぬと出さぬか、それはそうです、こう言っている。被告に有利な証拠であることは現在明白になっておる。これが破棄差し戻しの原因になっておる。だから、重要でなかったなどと思っているはずはない。何も大沼副検事にはだ身離さず保管させておるはずがない。だれかの目に触れちゃ大へんだというので、徹底的に口をつぐんでこれを押えておる。隠匿しておる。一体、被告のアリバイに対して非常に有利な証拠を、検事がことさらに出さないでおるということは適当なことと考えるかどうか、法務大臣はどう考えるか。
  27. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 その問題につきましては、被告に有利な材料であるということが、なるほど後になってそうした指摘をされ、また世上にはっきり現われてわかったことでございましょうが、しかし、おそらく当時の検察官の考え方としては、先ほど刑事局長からも申し上げましたように、アリバイの問題については、それぞれ検察側としては、十分立証し得る材料がほかに、その他の資料もあって、この諏訪メモそのものについては、これが特に価値があると考えなかったというところにあろうと思います。従って、その判断そのものが適切であったかどうかということは、いろいろな批判もできましょうし、また裁判官はそれらの点も詳細に検討の上で最後の結論を下されると思いますが、検察官は他のたくさんな証拠物件その他を十分審査して検討しておるのでございますから、その検討の上に立って、このメモについては特に提出する必要がない、こういうふうに判断しておったものと私は承知もし、おおむねさような報告を受けておる次第でございます。
  28. 猪俣浩三

    猪俣委員 とにかく最高裁判所でも、この点については重視して、提出命令を出しておる。差し戻し判決におきましては、これを徹底的に不当だと言うて判決の中に書いてあります。そういうものを検事は出さぬで何とも差しつかえないと考えておったとすれば、この検事は検事の能力がないんですよ。もしあなたの言うように悪意ではなかったというのなら、低能なんだ。検事の資格はありませんよ。最高裁判所でも、仙台の高裁でも、これは重要なきめ手の証拠だと言われるものを、検事は、何もそんなものは大した証拠じゃないと判断したとすれば、これは検事の能力がないのだ。能力のない者が最高検察庁にいるのなら困る。しからば、なおお聞きしますが、これはやはり門田判決に指摘されておる佐藤一という男のアリバイの証明なんでありますが、佐藤一が、この問題になりました汽車転覆の謀議をしたという十五日の日のアリバイの問題なんです。松川から福島の国鉄の労組の事務所へ行って汽車転覆の謀議をした、それが十五日だ、十五日の正午ごろからやったのだということになっておる。ところが午前中は団交をやっておった。その団交のメモはちゃんと出ておる。それが諏訪メモだ。それを出しても出さぬでもいいと思ったというような答弁であるならば、しからばこの佐藤一のアリバイですが、十五日団交で彼は弁じ立てて、お昼にそこから五十メートルくらい離れております八坂寮という東芝松川工場の寄宿寮に行って彼は昼飯を食べておる。これは東京から行った人物ですから、宿舎で昼飯を食べると、みんな食事伝票というものに名前と代金を書いてある。それから代帳という帳面にも書いてある。そういうことが明らかになったのでありますが、佐藤一は十五日にこの八坂寮の食堂で食事をしておることをたくさんの人が証言しておる。そしてその食事伝票、代帳というものが存在しておったことも明らかになった。そして食事伝票、代帳を菊地という刑事が調べて調書に書いてある。これは当時の八坂寮の管理人及び給仕をしたまかない婦その他その食事時間に佐藤一に面会したと称する数人の人々がことごとく証言しておる。食事伝票を見れば一見して明瞭なことです。しかるにかかわらず、この食事伝票、代帳というものは現在まで出していない。しかしこれは調べられたことは門田判決が指摘しておりまして、十月二十五日、菊地調書に徴しても、当時の食事伝票を見て記憶を起こすよう刑事さんに申された云々とある。当時八坂寮の宿泊、食事関係につき伝票、代帳の書面が作成されておることが明らかにうかがわれるのである。しかるに、それらの食事伝票、代帳類が押収されていない。あるいは押収されても提出されていないという事実は、疑問を抱かせずにはおかないというふうに門田判決は言っておる。もし諏訪メモが、これは出さぬでもいいと思ったとかりにしても、しからばこの佐藤一が昼飯を食べたという、それはちゃんと記帳されておるという食事伝票、代帳類をなぜ出さぬのか。しかもそういうものが存在しておることを証言しておる人を、その調書をなぜ出さぬ。そのアリバイを証明するのにこれほど的確な証拠はないはずです。このまかない婦その他がみな証言しておるにかかわらず、それは出さない。これは被告のアリバイを証明する、その人の生死にかかわる重大な証拠ではありませんか。それを大したものじゃないと思って出さなかった。しかも大したものじゃないと思いながら、大沼などという副検事に、どこまでもはだ身離さず持ち歩かしておる。何としても奇怪千万で、門田判決が疑問を抱かさずにはおかないと書いてある。これはあんたどうしたことか。
  29. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 多数の御意見が入っておりますので、お答えを申し上げたことが寸足らずになって申しわけなかったわけでございますが、まず最初にお断わり申し上げておかなければならぬことは、本件の捜査につきまして、検察側に、技術的に見ましても、方法その他につきましても、全く欠陥がないのであって、ただいたずらに問題をかまえて争っておるというふうには私ども考えておらないのでございます。欠陥は欠陥、落ち度は落ち度として、これを認めるのにやぶさかではないのでございます。また、そういう考えで私どもとしてはこの問題に対処して参りたいと思っております。  そこで、そういうことを前提条件として、一つ弁明をさしていただきたいと思うのでありますが、ただいま御指摘のありました調書なり、あるいは押収すべきもの——押収してあるじゃないか、まだ隠してあるのじゃないかというような点につきましても、門田判決に、そういう疑いを投げられておる部分の判決がありますことは、私ども承知いたしておりますが、これは今日十年たってみて、一審、二審、三審と上告までいき、さらに差し戻しを受けて、また詳細な二審の公判をやる。その間に事実審理というものを何回も繰り返しておる。こういうようなことになって参りますと、あとから見まして、あれはあのとき押収すべきものであったとか、あるいは調書を作っておくべきであったとかいうようなことは、幾多反省されると思うのでございますが、私がはっきり申し上げたいのは、押収すべきものであったものを押収しなかったものもあるということでございます。捜査におきましては、猪俣先生もとくと御承知のように、取り調べたら必ず調書を作らなければならぬというのではなくて、調書に書いて答申書にすることもありますし、また聞いただけで参考にとどめてしまう場合もあるのでございまして、そういったような場合が、今日になって見ますと、あのときに調書を作っておけばよかったというようなことも、反省される点も多々あろうと思いますが、そういうことで、今御指摘のような点につきましては、証拠物として押収してない、それは出しようがない、それからまた調書を作ってない、それは出しようがないというようなものもあると思います。そういう点を前提に私ども考えておるのでございますが、いずれにいたしましても、それらの事実認定、つまりアリバイが立つか立たぬかというような問題は、ここで先生との間で議論を申しましても、判決の上に影響するものでもございませんので、これはもうすべて全部おまかせをして、裁判所の公正な判決に待たなければならぬと思うのでございます。現在それらの証拠の採否の問題等につきましても、上告で判断を受けるべく検察官としても用意をいたしておるのでございますから、いずれその点は上告審で明確に裁判されることと期待をいたしておる次第でございます。
  30. 猪俣浩三

    猪俣委員 私どもは、あなた方のそういう立場として検事を擁護しなければならぬ立場があるかもしらぬが、やはり非は非として将来の方針を考えてもらいたいのだ。それは捜査官が調書を作る場合もあるし、作らぬ場合もある、出すものもある、出さぬものもある。そんなことはわかり切ったことです。しかし本件は、検事は、十人死刑を求刑されているのですよ。そのかなめになるのは佐藤一ですよ、謀議の議長をやったのだから。その佐藤一のアリバイというものに対しては全力をあげなければならぬじゃないですか。ほかのことは全力をあげて、おびただしい検事、警察官を動員して、今言ったような安西検事正が陣頭に立ってやっておる。しかるに、この被告人のアリバイについては、とにかくこういう重大なアリバイについての証拠を出さないということは、実に不可解千万なんだ。判決の指摘している通りじゃないですか。死刑の宣告をせられておる人間が、謀議に出席したかどうかということは重大な問題です。生死にかかわる問題だ。その人間がその時間にはどこそこにおったというアリバイというものは、調べても、調書を作っても作らぬでもいいようなものなんですか。そうじゃないでしょうが。そうでないからこそ彼らは出さぬわけなんです。出せば彼らの基礎が全部崩壊するから。ようよう十年たった今日、そういうものがある程度明らかになってきた。それで無罪になったわけだ。落ち度と言うけれども、落ち度ではないのだ。今言った当事者訴訟主義を曲解して、公益の代表者である立場を忘れて、何でもかんでも有罪の証拠だけを集めるという検事の闘争主義、本家本元のアメリカでもそういう方針は変わってきている。真実発見主義です。当事者主義は真実発見主義からきている。目的は真実発見にあるので、当事者主義というのはその手段なんだ。しかるに今の検察官は、手段のために目的を忘れている。自分の起訴を維持せんがためにあらゆることをやる。死刑者にとってアリバイの証明ということ以前の重要な証拠がありますか。しかも十五日にどこそこで食事をしたというような、その食事伝票をあとから書き込んだかどうかすぐわかるわけだ。そういうまかない婦や管理人、あるいはその十五日、真の間というところで佐藤と会談をしたという人も、三人も四人も出ている。そういうことをなぜ明らかにしないか。裁判所がそれを採用するかしないかは第二として、検事としてやはり明らかにする必要があるのではないか。もし被告人に不利なことばかり検事が集めて、有利なことを黙殺するというようなことでは、われわれは人権の保障も何もありません。なぜならば弁護人は強制捜査権がないのですからわからないのです。それから諏訪メモのことも、偶然のことから、諏訪が調べられ、調書ができてメモが押収されていることが偶然のことでわかった。検事が最後まで黙っていたらわからなかったでしょう。裁判所までもわからない。そういったようなことで私どもが安心しておられるかということです。これがもし彼の犯罪行為立証のための証拠となるなら、何をおいても、こういう食事伝票、代帳類を検事は出すでしょう。これを出すとアリバイの証明になると思ってこれを隠しておった。こう考えても仕方がないじゃありませんか。門田判決は、それをちゃんとついているじゃありませんか。それをあなた方は、それは間違っておった、今後は気をつけると言うことはいいけれども、調書を作る場合もあれば作らぬ場合もある。そういう答弁では、今後どうするかということの相談ができなくなる。私が勝手に弁護人みたいに言うているのではない、判決に書いてあるのだ。あなた、この判決を読まれましたか。こういう判決を読まなければ検察行政はわかりませんよ、徹底的に批判しているじゃありませんか。その判決文の中に批判している言葉を私はとって言っている。これこそ検事の威信を害するものだと思う。神山検事は国会で威信を害するみたいなことを言っているけれども、こういうことをやることが威信を害するのじゃないですか。それに対してどうも法務省の研究が足りないし、私は反省が足りないと思うのだ。だから検事総長に来てもらいたかったのですよ。あなた方は、かわって出てくる以上は、第一線の検察庁の代弁をしなければならぬ。こんなことは検察庁として答弁はできないと私は思う。  なお、赤間勝美の自白の信憑性につきましても、門田判決は詳しく論じておって、徹底的に批判しておる。事件発端のもとになったのは、赤間勝美という十九才のチンピラ男、これが警察の拷問にかけられてべらべらしゃべって、これからみんな連累者が逮捕せられるようになった。その赤間勝美のアリバイという明白な証拠があるにかかわらず、これも出さない。しかも、これも差し戻しの判決に口をきわめて論じられております。これをお読みになって、この判決が指摘してあるようなことに対してどういうふうにお感じになるか、私は聞きたいと思う。内容について一々述べる時間がありませんけれども、彼がその犯行の日の十二時ごろ家へ来て寝ていることは、明らかな証拠が出ているわけだ。その証拠を全部隠してしまった。「赤間自白について」という条項で、この判決はこう言っています。「第一に、誰が考えても、赤間が検挙されるや、真先に、その家族について赤間の当夜のアリバイ関係を、厳重に調査するのが常識であろう。いわんや、赤間は逮捕された直後に、武田巡査部長に対し、自己のアリバイを訴えたことは、当の取調官武田証人の自ら証言するところなのである。」彼は九月十日に逮捕せられている。ところが赤間のおばあさんである赤間ミナという人の調書が九月十七日できている。その間一週間何をやっておったか。最初調べられたときに、勝美は家に来て寝たと証言しておった。それを調書にとらない。それから勝美は帰ってきませんという証言をした。それを調書にとっている。赤間勝美はその晩帰ってきて、十二時か一時前後に、親類の子供で泊まりに来ておった小野寺悦子の髪の毛を引っぱったために、その子供がちゃんと覚えておる。そういう証言をしている。この小野寺悦子なんというのは重要な証言だ。この判決意見はこう書いてある。「小野寺悦子は、赤間アリバイの上で、決定的重要性をもつ参考人である。」しかるに、この小野寺悦子に対する調書がない。なお勝美の母親が午前四時から四時半に父親を職場に送り出しておる。警察側や検察の主張では、赤間は爆破工事を終えて朝の四時か四時半ころ家に帰ったということになっておる。ちょうど父親が出かけるときと一致している。そうするならば、その父親を送りに出た勝美の母親を調べることは当然のことだが、母親に対しても調書を作っておらぬ。奇怪しごくのことなんだ。いやしくも今度起訴された連中のアリバイについては、全部証拠を隠滅するか、あるいは口で言うか、変造までして、そうして有罪の立証に供しておる。判決が言っているのですよ。これでもやはりこういうことがあり得るのですか。判決は、「誰が考えても、赤間が検挙されるや、真先に、その家族について赤間の当夜のアリバイ関係を、厳重に調査するのが常識であろう。」と言っているのだ。それをやっていないのですよ。これはどうなんです。
  31. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 御指摘のように、この捜査の初期における検察活動に、今日から振り返ってみまして遺憾の点が少なからずあるように私も考えるわけでございますが、だからといって、アリバイのある者を無理に起訴して死刑の求刑をするというような考え方を検事がするはずがないのでございまして、私どもといたしましては、有罪な者を有罪にし、無罪の者を無罪にするというのが検察官の公益の代表者としての立場でございます。従いまして、捜査の当時アリバイがはっきりしておるものを起訴するわけはないのでございますが、当初といたしましては、今問題となっておる諸点につきましては、捜査官は、現在起訴されておるような形においての心証をとって、有罪と信じてやったものというふうに考えておるのでございます。
  32. 猪俣浩三

    猪俣委員 一体こういうふうに最高裁判所あるいは門田判決等においてことごとく指摘せられているにかかわらず、なお検察庁は、この検事のやり方は間違っておらない、あるいは多少誤ったかもしらぬが悪意はなかった。おかしいですよ。これが民間人の何か犯罪行為なら、これをもって犯意がなかったなんて言われませんよ。こういうことはたくさんある。悪意がないなんて言われませんよ、これは。  なお、さらに驚くべきことは、調書を改ざんしている。検事が調書を改ざんしているということを門田判決に指摘しています。この判決の百八十九ページに、門田判決が長く調書の改ざんをした跡があるということを指摘している。「即ち、当審に現れた新証拠によると、赤間の弁解するような事実のあったことを思わせる疑いが濃厚であって、到底その疑いを払拭し去ることができないのである。その理由は次のとおりである。」といって、山本検事の調書「山本調書は、問題の二九項の記載されてある紙から以後は全部その契印部分の折目が左折りとなっており、その前から先きの紙は全部右折りとなっている事実が、新たに発見された。これは明白で何人も争えない動かすことのできない事実である。従来、10 1山本調書は二九項の前後でインクの色や契印に何ら異常は認められないとされてきた。」ところが調書の折り方が違ってきている。「もとより、調書の紙数が五〇枚以上になったような場合、はじめに紙を右折りにして契印し、終りごろになって契印をやり易くするため、紙を左折りにする場合もあり得る。しかし、次に述べるような諸事情を総合すると、問題の二九項のある紙から契印部分の折目がそれまでと逆の方向になっている事実(書き改められた場合には、そのようにしなければ契印が困難になるのである)は、決して単なる偶然とは考えられない。」「以上を総合すれば、10 1山本調書の二九項は、赤間の弁解するように、後日書き加えられたものとみられる疑いが甚だ濃厚である。」これも私は、こういう判決というものは見たことがない。検事が改ざんしている。裁判所判決の中にそれをはっきり指摘しているじゃありませんか。これもうそですか、どうなんですか。
  33. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 ただいまお読みになったような判決文が書いてあります。私も実に意外に存ずるわけであります。検事が改ざんするということ自体が、私にとっても、三十年私も検事をいたしておりますが、さようなことは私は先輩からも聞いたこともないし、全く意外なることでございます。それを判決で、そのような疑いも存しつつ記載しておる判決も私不敏にして見たことがないくらいでございまして、その点、猪俣先生の感じと全く同じでございます。  しかしながら、この点につきまして、当の検事はもちろんさようなことはないと申しておりますし、さらに検察庁におきましても、もちろんそれは重大なことでございますので、いろいろと調書を見ておるようでございますが、その結果によりますと、今裁判官が指摘しておるような事情ではなくして、その調書の契印、筆跡、墨の色等を調査しても、そこに異質なものはないのであって、さらにこれも内部でございますけれども、鑑定もさしておるようでございますが、客観的にも異質なものであるというようなことは出ていないようでございまして、私どもといたしましては、変造したなどということは全くあり得ないというふうに今も考えている次第でございます。
  34. 猪俣浩三

    猪俣委員 最高裁判所判決の中にもあるじゃありませんか。太田被告の、三笠検事の調べた調書、「太田自白における不自然と不合理は、原判決が本謀議を認定する証拠として挙示している三笠調書に至って極まっている。」これだけでも、最高裁判所判決でこんなことを言われた検事というのは一体どう処置すればいいのですか。「三笠調書に至って極まっている。同調書はその形式に奇異な点があるばかりでなく、その内容においても甚だ不自然なものを持っている。」これは最高裁判所判決ですよ。「すなわち、これには「二三ノ二」項なるものがあり、同項の末尾には供述人太田省次の署名拇印があって、更に二四項以下がこれに続いているのであるが、二三の二項以下はその前とは紙質も墨の色さえも異ったものがあるように見受けられ、また契印にも疑いがある」これは最高裁判所判決ですよ。なおまた土屋警部の調書、この門田判決の中の「第七に、土屋調書の作成者土屋元美の名下に押捺されている印と、契印又は訂正印との印肉の色が明白に異り、しかも、土屋元美名下の印と契印又は訂正印の印とは、仔細にこれを検討すると、別の印であるとの疑いがある。土屋調書は、前記重要部分の省略や曖昧不合理な附加部分を除けば、比較的にミナの供述を素直に良心的に録取したものと認められる。そして、名下の印と契印の印の印肉が異る場合もなくはなかろうが、前記のような重大な欠陥のある調書であってみれば、右の印の点は看過し難いのである。」こういうふうに言っている。それは一応検事が変造するなんということは考えられないが、考えられないことが起こっている。それだから十名も死刑だし、三名も無期懲役になったものが一切無罪になるというようなことになったじゃないですか。容易ならざることですよ。こういうことでもなければなる道理がない。日本の保守的と言われる最高裁判所、高等裁判所において、そういう判決をすることはよくよくのことであったに違いない。それでもあなた方は検事には何も責任がないと言い張るのであるか。ただ捜査の方法がまずかったなんという問題と違うと私は思うのですよ。相当犯罪意思がある。それは認められないのですか。
  35. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 検察官には、このような批判を受けたことにつきまして責任がないとかいうようなことを私どもは少しも思っておりません。責任のあるべきものは追及しなければならぬとむしろ思っておるのでございます。ただいまの段階におきましては、長期にわたって関係者御迷惑ではありますけれども訴訟手続の法の命ずるところに従って、事件はまだ最高裁に係属中でございます。これらの事件は、事件としての終末を見た上で、責任の存すべきものは明らかにして、問うべき責任は問わなければならぬというふうに考えているのでございます。
  36. 猪俣浩三

    猪俣委員 もちろん、これは国会でも国政調査権に基づいて徹底的に私は調査しなければならぬ問題だと思うのです。その前提として、法務省の御見解あるいは検事総長の見解を私は聞きたいと思ったのでありますが、きょう出てこられない。なお、現在でも齋藤千、これも死刑になった被告でありますが、これに対するアリバイを証明する書類が五点ばかりやはり出しておらない。斎藤千は今度無罪になったからいいようなものだけれども、とにかく郡山警察署が調べたものを福島地検が取り上げて、自分のところに押収しておって、ずっと隠匿し、現在福島県の警察部の刑事部にあるそうです。それを一つ調べていただきたい。それはこういうものなんです。あなた方書いておいて、調べて出してもらいたい。斎藤千のアリバイ証明のものです。それは郡山警察署に、犯罪を犯したときに斎藤は面会に行っておる。来訪者芳名簿というものがある。それから郡山警察署の巡査にも会っていろいろ話をしておる。警備勤務表というものがある。ちょうど被疑者で郡山警察に入っておる人間のためにこの斎藤が行ったわけです。その被疑者と斎藤が並んでいるときに斎藤は写真をとられており、被疑者との写真がある。それに斎藤の顔は写っている。それから、留置している者に対して食事をやる場合に、監食者支給名簿というものがある。そうすると、その被疑者某という人間が入っておったかわかるわけである。それからなお被疑者を詳しくとった写真帳があるわけだ。だから斎藤が主張するような被疑者がその日に郡山警察にいて、斎藤がそれをたずねて行っておったということは明らかになるのです。アリバイが立証されるわけであるのにかかわらず、いまだにこれを出さない。そして現在は福島県の警察部の刑事部の奥深くにそれがしまわれているというような話です。この隠匿者は福島地検です。こういうとにかくアリバイを証明するものをことごとく隠匿してしまって出さない。そこで検事の手持の証拠書類並びに証拠物、こういうものの公判前の閲覧あるいは提出ということについて、これは何とも立法的に解決しなければいけない時点に立っていると思うのでありますが、この検事の公判前の証拠閲覧権の問題、こういう問題について、法制審議会あたりで何か刑事訴訟の改正問題として論議されておりますかどうか。
  37. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 法制審議会にはまだ刑事訴訟法の改正問題は提案されておりません。法制審議会としても、まだその問題を論議いたしておりませんが、私ども部内におきましては、その問題はつとに研究もし、論議もいたしておるところでございます。刑事訴訟法の改正問題の一環として慎重に検討いたしておるのでございます。
  38. 猪俣浩三

    猪俣委員 いつか私が法務省の政府委員に聞いたときに、竹内さんであったか、検事の当事者主義というものを非常に強調されておったようです。ところが、さっき申しましたように、検事は民事訴訟法の原、被告の弁護人のようなものと立場が違うということは、検察庁法の第四条で、検事は公益の立場で仕事をするというふうに規定されていることからもわかる。真実発見のために当事者主義というものが採用されているということは明らかでありますが、近時検事は、まるで法廷闘争の民事訴訟の弁護人のようなつもりでやっている傾きがある。この松川事件のごときは最たるものだ。これがいつも弁護人との間にトラブルを起こしまして、訴訟遅延の最大の原因になっている。ことに、それは必ず公安事件です。ほかの事件じゃあまりない。公安事件だというとそれを起こしている。それで、先ほど申しましたように、大阪の地裁におきましてもほとほと困ってしまって、検事に対して、検事の手持ちの全証拠を提出せよという命令を出した。それに対して検事は不服で抗告をやって、最高裁判所では、検事には現行法上手持ち証拠を全部出さなければならぬという義務がないからそういう命令はできないようにして、結局は裁判所の見解を退けておるのであります。しかし、その前提におきましては、検事の公益の代表者であるという立場、そしてあらゆる被告に有利な証言を出さなければならぬ、証拠も出さなければならぬということを認めておる。検察官が公益の代表者として、訴訟において裁判所をして真実を発見させるため被告人に有利な証拠をも法廷に提出することを怠ってはならないことは、その国法上の職責である。また訴訟の集中、迅速審理には、弁護人と同様特別の事情のない限りこれに協力することが望ましいことである。しかし、現在においては命令をするだけの法規的な義務づけが検察官にない。これは立法上解決しなければならぬというふうな最高裁判所の判定であります。ただ、検事の公益の代表者として被告に有利な証拠も出さなければならぬことは国法上の職責であると言われている。今度の松川事件等に対しても、法上の職責を彼らが尽くしているとは思われない。たといそれがどうあろうとも、諏訪メモのごときものを出さないという理由が成り立たない。十一時十五分の汽車に乗らなければ、正午から始まったという福島における謀議には参画できないはずだ。ところが、この諏訪メモを見るならば、佐藤一なる被告が長々と議論をやっておって、十一時十五分の汽車になんか乗れる状態でないことがはっきりしているのですよ。何時に終わったかということはメモに書いていないにしても、発言の内容が大体書いてあるから、その時間を推しても、十一時十五分の汽車になんか乗れなかったことは明らかなんだ。それだからこそ検事は出さないのです。あなたが幾ら言ったところで、そうじゃない。そうでなければ出すはずだ。それだから出さない。そうしてある副検事に、任地が変わっても、それだけはしょっちゅうはだにつけさせて持たせて、外部にそれが出ることをおそれておった。一体そんなやり方がありますか。それは悪意がないということはとうてい言えない。とにかく最高裁判所におきましてもかような態度をとっている。これはもっともなことだと思う。また、大阪地裁の西尾裁判長の命令を下す際の理由ももっともで、検事の証拠閲覧権はもう明らかになっている。検事側がいつもトラブルを起こしている。私がいつも言う通り、現在の刑事訴訟法の起訴状一本主義を作りますときに、この事務はGHQのオプラーか何かが局長でやっておったが、私どもそこに行って、起訴状一本主義は困難である、弁護人の事務所が充実していないから無理であるということで緩和を懇談に行ったが、いや、弁護人の請求する証拠は検事の調べたあらゆるものを全部出すようにすればいいじゃないか、今度の法律はそういう趣旨なんだという説明で引き下がった。初めのうちはそのようでありましたが、だんだん公安事件が頻発すると、検事はそれを出さないようになってしまった。そうして現在に至ってこれが訴訟遅延の最大の原因をなしていることはおわかりであると思う。訴訟を迅速にして、しかも真実を発見するということのためには、検事が公益の代表者であるという立場に立って、手持ちの証拠は有利不利にかかわらずことごとくこれを裁判所に出すように協力する。そうして、弁護人との間に見せろ見せないということで長い間法廷をもむというようなばかげたことは避けなければならぬ。この意味において、検事の事前証拠閲覧権の問題について立法措置をしていただきたいと思いますが、法務大臣の御所見を承りたい。
  39. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 ただいまの問題につきましては、あらためて申すまでもなく、先刻来私の申し上げている趣旨は、検察官は公益の代表者であるということについて、その点を十分意に体して行動すべきは申すまでもないのであります。過去の問題について十分な反省を加え、そこに誤りがあったとか、あるいは不行き届きがあったとかいうような問題については、将来の戒めとして十分考えなければなりません。あるいはまた、明らかに刑事責任を負わなければならぬとか、あるいは行政上の責任を負わなければならぬとかいう問題については、全体の事件がはっきりいたしましてから、その点も十分考究いたしたいと思うのであります。しかし、先刻来猪俣委員の仰せになりました御意見の中に、門田判決において指摘されたところと御同感のゆえをもって御質問がございましたけれども、われわれの検察当局で見ておりますところでは、あの判決の全部にわたってあれが真相そのものであるという点については、疑問を存しております。その点、その事件が非常に長引いておっただけに、上告すべきかどうかについても十分研究いたしました。しかながら、遺憾ながら門田判決趣旨そのものに全面的に承服することのできない点が少なからずございますので、それで今上告もしておるようなわけであります。従って、上告において今後十分審理を経た上において、検察当局の主張なり意見なりというものが全部間違いであったか、あるいは門田裁判判決趣旨が全部その通りであるかどうかということは、そのときになっておのずから初めてわかると思うのであります。将来、最高裁の上告審の判決の結果によって善処することは申すまでもありませんけれども、事の途中におきまして、なるほどこれは不十分であったとか、これは不行き届きであったとかいうようなものについては、現在でも会合のたびごとにお互いに反省もし合い、議論もし合って、今後いかなる事件についても、こうした間違いが起きないように相戒めておるような次第でございます。この点は御了承を願いたいと思います。  先ほど来いろいろ御非難もございましたけれども、私は、それはあまりにも当然なことでございますから、将来に向かってどうとか、反省するとか、今後に向かって相戒めるという問題については、いずれまた申し上げる機会もあろうと思いまして、先ほどは申し上げませんでした。しかし、検事といえども神じゃございません。時には間違いもあろうかと思います。ことに、いわんや故意でもって不都合な——たとえば先ほど御指摘の調書を隠しておったとかいうようなことがありますことは、これはいいことじゃない。当然これはその責任も考えなければならぬ。しかしながら、証拠物件の、いわゆる証拠力の価値判断等において判断の違いがあり得ることは、これはやはり人間で——これは非常に慎重に考えなければならぬ問題でありますけれども、時にはあり得る。そういう場合には、やはりそれに対しての、もし間違いであるとかいうようなことは、今後十分戒めていかなければならぬ、こう思うのであります。私は、少なくとも現在の検察官諸君が、それこそやはり公益の代表者として真相の究明に当たるということを基本に、あくまでもその精神で仕事をしておってくれるものと確信しておりますので、ただいまのところにおきましては、将来に対することは十分戒め、今日の問題としても十分過去の反省をいたさせますが、しかしながら、今回の問題が、門田判決の主張をそのままお前ら受け入れるべきじゃないか、こうおっしゃられると、私は必ずしもまだそうは言えない。かように思いますので、この際ちょっと申し上げさしていただきます。  また、今御質問の、公判前にいろいろな書類について云々のお話がございました。これは刑事局長もお答えいたしましたように、法制審議会でまだ正式に議題として取り上げてはおりませんし、まだあまり問題になってはおりませんが、しかし、事務当局としては、こうした問題も考えるべきではないか、また十分検討すべきではないかということで、寄り寄り話はいたしておりますので、さらに検討を進めまして、適切なる処置を講じて参りたい、かように考えます。
  40. 猪俣浩三

    猪俣委員 この検事の証拠閲覧事件については、すでに昭和二十八年に、日本弁護士連合会から詳細なる案が政府当局に出されておるし、自由人権協会から、海野普吉氏が代表として、これも詳細な案が出ておるわけなんです。それをまだ全然検討もしないでいる。検察庁からつき上げられて法務省は音が出ないんだという巷間のうわさもある。大体法務省というのは、検察庁がなかなか強いのである。だから私、検事総長の意見を聞きたかったのです。お互いに真実発見のために協力しなければならぬ。いわんや、検事は公益の代表者だ。それを検事が手持ちの証拠を出ししぶっているなんていうことは、いろいろの理屈は言うが、私は成り立たぬと思うのです。しからば弁護人にも強制捜査権を与えてもらいたい。そうすれば対等なる当事者主義ができます。片方は警察及び検察庁を使って、国家権力をもって強制捜査する。弁護人は何にもありませんよ。何の権限もありません。そうしてみれば、公益の代表者として立っておる検事の調べた手持ちを見せてもらうことは当然のことなんです。立法当時はそういう趣旨であったのです。それを検事が、まるで民事訴訟の弁護人のような頭になって、そして何としても有罪を裏づけることに奔走し、今日いかに法務大臣が答弁しても、彼らは故意に被告のアリバイを証明する証拠をみな隠匿をしたと思わざるを得ない。門田判決をそのまま受け入れないというのはもっともでしょう、上告しているんだから。私は、大体検察庁は上告するのもけしからぬと思っている。これだけの大失態を起こして、そして完膚なきまでに門田判決に指摘せられて、実に意を尽くし条理を尽くしていますよ、この判決は。これだけの判決だ。どういう理由で上告したかわからぬ、一体どこが上告の趣旨になるのかわからぬが、上告して最高裁判所でまだ争われるであろうが、この門田判決が認められ、検事の上告が棄却された際に、検事はどういう責任を負うのですか。
  41. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 われわれ法務当局、ことに私法務大臣といたしましては、検察当局の上告に同意を与えておるのでございますから、従って私は、おそらく門田判決の結果と同じような結果が出るものとはむしろ考えておらない。最高裁当局によって真相の把握に十分努力していただいて、それによって初めてある程度真相がはっきりわかってくるのじゃないか、こう思うのであります。従って、今、それがそうじゃなかった場合にどうするかと言われましても、これは単に抽象的なお答えになって恐縮でございますが、私は、その判決の結果いかんによって、初めてそこで十分理非が明らかになり、また捜査上あるいは公判の維持上における理非曲直がはっきりするというように考えますから、その際には、その事実によって十分法務当局として検討を加え、責任を負うべきものについては責任を負わなければなりません。そしてまた、そうじゃないものについてはそれぞれの適当な措置を講じ、検察行政全体にわたっての反省という制度上の問題等についても十分考えていかなければならぬ、かように考えておる次第であります。
  42. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお、この検事の証拠保管方法でありますが、これは菅生事件についても、私は竹内さんに再三質問しておる。あれは交番が爆弾をしかけられた事件です。その前に、お前のところ爆破するぞという脅迫文がきた。その脅迫文なるものが紛失したというのであります。だれが紛失させたか、いまだにその責任が明らかでない。警察庁長官と法務省側とは同じこの委員会で肩を並べて、法務省側は警察にまたその証拠を戻したと言う。そうすると警察側はそんなの受け取らぬという答弁をやっておる。戻したについては、何か戻した証拠があるかというと何もない。前の刑事局長の井本氏、今度この事件にも公安部長か何かで関係しておる井本氏は、事件に大した関係ない証拠だと思ったから気にとめなかったというような答弁をして、私は非常に怒ったわけです。交番が爆破せられて、その前に爆破するぞという脅迫文がきている。それが爆破事件関係がないなんて、それはどういう意味なんですか。とほうもない答弁をやった。これは一体だれが紛失したんだか、いまだに明らかにされていないし、責任者も責任をとっておらぬ。また鹿地亘事件におきましても、唯一絶対の証拠である鹿地が三橋という電波男にはがきを出したというはがき、これも警部が持って歩いていて落としたと称して、本物がない、写真だけあるといって、本物は出さない。それだけですよ、物的証拠というのは。それを紛失した。しかも公判が始まっているから検察庁の保管でなければならぬのを、警部が持って歩いておって、目黒の駅で新聞を見ようとしてカバンからずり落ちて、どっかへいってしまったという話です。それがあることによって生死に関係するような重要な証拠をどっかにやってしまった。実に危険千万じゃないですか。それがあれば無罪になるようなものを検事が押収していって、それを紛失した。その脅迫文は、あとからわかったが、警視庁のスパイである男が書いた。その発覚をおそれてかどうか、それをどこかへやってしまった。とにかくこの証拠保管というものに対してはなはだ疑惑がある。今度のこの松川事件についても、この福島の裁判所判決をしておるように実に奇怪だ。他に転勤されて、何ら関係のない一副検事がこういう重要な証拠を持ち歩いて、福島地検にも何も連絡しない。全くの隠滅だ。最高裁判所で、偶然のことから弁護団では諏訪メモなるものがあることが発覚して、裁判所に強く要求して、最高裁判所の提出命令となった。それまで隠しておった。尋常じゃありませんよ、あなた方何と言っても。こういう重要な証拠書類の保管ということはどういうことになっておるのか、それを説明していただきたい。
  43. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 御指摘のように、証拠品の取り扱いというものは正確を期さなければなりませんことは当然でございまして、数百万と申してもいいほど年間事件を受理しておるわけでございますけれども、ただいま御指摘のようなことで問題を起こす事例はめったにないわけでございますけれども、かりに一件でありましても、そういう事故が発生したということになりますと、きわめて責任は重大だと感じております。例の菅生事件につきましては、まだ未送致事件について、前の送致になった既送致事件の、取り調べの便宜上その証拠品を警察から借り出して調書にまで援用したのでございますから、その証拠を見たということは検事の調書によって明らかでございますけれども、まだ未送致事件でございますので、検事側は返したと言うし、警察側はそのものは受け取っていないというようなことに相なって、今日までその所在がはっきりしない点はまことに申しわけないのでございますけれども、そういう次第でございまして、責任をはっきり明らかにし得ない状況でございますが、その他の事件で証拠品を紛失したというような事例につきましては、それぞれ適切な行政上の懲戒処分に付してその責任を明らかにしておるのでございます。しかし、それはできてから後の処分でございます。それではとうてい万全を期しがたいのでございますので、従来この証拠品の取り扱いにつきましては、各検察庁ごとにおいて、それぞれ保管、受け渡し等の規則をきめて検事正命令でその扱いをしておりましたが、さらに法務省におきましては、そのような事件にかんがみまして、詳細に取扱規程を検討し、さらに全国的に同一のやり方で、相互間の受け渡しに際しても過誤なきを期するために、法務大臣訓令をもちまして証拠品事務規程というものを作り、訓令されて、ただいまでは全国一律どの検察庁に参りましても、その訓令の趣旨に従って、証拠品の受け渡しの正確を期しておるのでございま渡しの場合の責任者がはっきりいたしますし、さらにその間に、受け渡し、移動の機会に紛失するとか、あるいは不正な行為をする余地ができないようないろいろこまかい規定を設けまして、その措置の万全をはかっておりますので、今後はそういうふうな事故は起こるまいというふうに考えておる次第でございます。
  44. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、松川事件で起こりましたこの大沼新五郎という副検事が、まるで任地が変わっても、その松川事件の証拠を持って歩いたということは、どういう責任になるのですか。
  45. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 ただいまの証拠品事務規程によりますと、そのような取り扱いは一切許されないわけでございまして、なぜそういうような処置をしたかということにつきましては、十分究明されなければなりませんが、証拠品事務規程に照らしますと、そのような取り扱いは一切許されない建前になっております。
  46. 猪俣浩三

    猪俣委員 福島地裁の判決が出たのが三十六年の七月四日です。その中に、この大沼の問題について「松川事件が第二審に係属して後の諏訪メモは大沼新五郎副検事の独断からする同人の完全な掌握下にあり、被疑者等の支配からは脱落していたと認められるのである。尤もそのような管理方法が異常であって、非難に値することは何人の目から見ても明らかなのであるが、そのような管理方法を被疑者等が指示し又は右管理方法を諒知していたと認めるに足る証拠は存在しないのである。」こう言って、この山本、鈴木、田島らに対する公務員職権濫用等被疑事件に対しては裁判所はこう言っているのです。「そのような管理方法が異常であって、非難に値することは何人の目から見ても明らかなのである」。ところが、この裁判所で調べたときの、検事正の安西光雄氏も調べられておるわけです。その証言によれば、安西が命じたことになっておる。自分の子飼いの男であって、最も確かな男であるから、大沼もそう言っておる。この安西という人物は弁護士になっておるらしいが、一体こういう者の責任はどうなるのです。
  47. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 法律上の責任ということになりますと、その当時は各庁の長が証拠品の取り扱いについての規定を定めることになっておりましたので、安西検事正が検事正の立場においてそのような特別な取り扱いをしたということになりますと、その取り扱いが客観的に不当であるということになりますれば、そういう命令をしたことが批判をされるわけでございますけれども、建前としては検事正にまかされておるという事項になっておったように思うのであります。今日から見ますれば、そういうことは許されないことは先ほど申した通りであります。
  48. 猪俣浩三

    猪俣委員 検事正は自分の管轄区域内だけで、ほかのところに行ってまでもそんな指揮権はないと思う。こういう不当なことをやっておる。諏訪メモ、こんなものは出しても出さぬでもいいものだと思ったなんていう検事の申し立てば成り立ちませんよ。保管方法が異常なんだ。裁判所が言っておる。異常であることは論議を要せず明白だと指摘しておる。それに対して、どうも法務省はまだそういうことを弁護するような立場に立っておる。間違いは間違いとお認めになって責任を明らかにしてもらいたいのだ。大沼というのは今どうなっておりますか、大沼新五郎という副検事は。
  49. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 この事件発生当時には福島にいたわけであります。その後盛岡に転任し、さらに釜石支部にも勤務したようでございます。現在どこに勤務しておりますか、ちょっと調べまして正確にお答えをしたいと思います。
  50. 猪俣浩三

    猪俣委員 今警察庁も出ておられるから一点申し上げますが、警察官が証人として法廷に出て偽証をやっておる。これは門田判決に詳しく指摘しております。うそを言っておる。その最たるものは、本件の捜査のときの中心人物であった玉川という警部だか警部補、この男は今やめておりますけれども、偽証しているのです。判決を警察庁は御研究になりましたか。偽証したことを指摘されている、そのことをどう考えますか。私は詳しくこれを調べてある。
  51. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 担当の者が今検討中でございますが、私はまだ十分詳細を読んでございません。
  52. 猪俣浩三

    猪俣委員 警察官が証人として出て偽証していることは、判決に指摘されているのだが、研究してないのですか。
  53. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 まだ十分私としては研究いたしておりません。資料を持ち合わせてございませんので、調べまして、機会を見てお答えいたします。
  54. 猪俣浩三

    猪俣委員 だれが研究しているのですか、この門田判決を。
  55. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 地元警察並びに警察庁におきましても、担当の警視がこれを検討いたしております。
  56. 猪俣浩三

    猪俣委員 それならば、判決にこのごとく偽証していると言われる。公判廷の偽証は犯罪です。警察官がそういうふうに判決に書かれておるのです。これに対して知らぬ顔をしているという話はないと思う。調査してどういうふうになったか。今玉川という人はやめているそうですが、それでやめたのかどうかわかりませんが、調査をしてもらいたいのだ。私はあらかじめ質問の中にそれを入れておったと思うのだが、あなた方は何にも調べないで来てしまった。偽証していると判決に書いてある。それを警察が知らぬ顔をしているのはおかしい。至急研究して、どういうふうになっておるか、明らかにして下さい。  私はまだたくさんありますが、またにして、これでやめます。
  57. 林博

    ○林委員長代理 田中織之進君。
  58. 田中織之進

    田中(織)委員 公安調査庁の長官が見えておりますから、長官は最近かわられておりまするので、最初に公安調査庁全体のことについて新長官のお考えを伺っておきたいと思います。  破防法との関連で設置されました公安調査庁が、近年機構が拡充強化され、ことに私ども非常に問題になると思う調査に対する協力費等の名目によるところのいわゆる機密費というようなものも、年々われわれの反対にもかかわらず増額をされておると思うのであります。しかしながら、公安調査庁設置の一番重要な基本法であります破壊活動防止法の関係を見ますると、当時左翼団体のいわゆる暴力革命というようなことによって政府を転覆するというようなこと、もっと端的にいえば、共産主義活動というものを在来の日本の軍国主義時代の考え方のままに、反国体的な思想であるとかそういうような関係で、これを取り締まる目的のために、これもわれわれの反対を押し切って制定したのであります。皮肉なことに、過般の川南何がしなどを含むいわゆる右翼のクーデター未遂事件が、最初の破壊活動防止法を適用した事犯だということで、一応起訴されている。これも公判の結果どういうことになるかわからぬというのですが、左翼の、特に共産党を取り締まる目的でこしらえた破壊活動防止法が、たまたま右翼になるところの政府転覆計画だとか、あるいは現内閣の主要閣僚の暗殺計画だとかいうような、少なくとも今明らかになっているところでは、まるきり茶番劇のようなそういう事件に初めて適用しなければならぬというようなことも、ちょっと皮肉な現象だと思うのです。私はあえて皮肉を申し上げておるわけじゃないが、客観的に言ってそういうことになっておると思う。公安調査庁ができたときからの藤井長官がやめられまして、斎藤さんでありますか、新長官に就任せられたようでありますが、私、本日これからお伺いいたしまするように、公安調査庁の活動に伴うところの人権侵害というような問題、かつての特高警察の復活のような、国民民主主義活動に対する不当な干渉あるいは不愉快な印象を与えるというような事態が、公安調査庁の機能が強化せられてくるにつれてますます続出しているような感じを実は深くいたすのであります。長官としてこの重要な、その意味において民主主義を伸張させるということとはいささか矛盾するようなデリケートな機能を持つところの公安調査庁の長官に就任せられたについては、何らかやはりこれらの調査庁が設置されて以来の実情というようなものも検討されてお引き受けになったことだと思うのでありますが、今後公安調査庁を統括し、運営されていく上について、基本的にどういう考え方で対処せられようとするのか、そのお考えをまず伺いたいと思うのであります。
  59. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 私は二月下旬に新しく公安調査庁に参りました。どういう方法で公安調査庁を統括していくかという御質問でございますが、私どもの役所は、申し上げるまでもなく破壊活動防止法及び公安調査庁設置法によって設置されており、またそれによって活動しておるのでございまして、立法当時のこまかいいきさつは存じておりませんが、公共の安全を確保するために破壊活動を防止する。そのための調査権は、二十七条にもございますように、全く任意の調査によってやる。しかもそのことは基本的な人権に影響するところがあるから、さようなことのないように十分注意して、かつ必要最小限度の調査にとどめるべきである。かような規定がございます。さような方向で進んで参りたい、かように考えております。また人員及び調査活動費の問題につきましては、公安調査庁の側から申し上げますと、開設以来あまり増加いたしておりませんで、最近の共産党の党勢の拡張とか、またそれに対応しまして右翼の活動が相当活発になってくる、こういうところを調査するために、必要最小限度の増員なり増額を今国会にお願いをしておるような次第だと存じております。
  60. 田中織之進

    田中(織)委員 公安調査庁設置法及び破壊活動防止法等に基づいて、調査庁の活動も方向が考えられていることは私も承知いたしておるのでありますが、ただいま、たまたま予算、人員の関係で、共産党の党勢拡張が行なわれておるのであるけれども、それに対応するような公安調査庁の予算、人員の増加というようなことについては、調査庁側の期待に沿うような充実は行なわれていないということを御答弁になったのですが、私は、あげ足をとるわけではないのでありますが、公安調査庁がその意味において共産党の活動を調査対象にしているということは、それは破壊活動防止法なり、あるいは公安調査庁設置法のどこから出てくるのですか。そのこと自体が、公安調査庁というものが一つの間違った方向に——われわれが最初これが設置されるときに十分国会でも議論し、その後機会あるごとに言っておることを、あなた方がまた、新長官が就任された早々ではありますけれども考えられております。公安調査庁自体としての活動については、共産党の活動というものは、それ自体としては直接調査の対象になるという明文の根拠はないものだと私は思うのです。その点は、今の長官の御答弁では私理解できないのでありますが、その点はどういうようにお考えでありましょうか。
  61. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 私の言葉が足らなかったために誤解を与えたかも存じませんが、公安調査庁は、これまで国会でも申し上げております通りに、左翼の五団体及び右翼の五団体を対象として調査をいたしております。また、日本共産党を調査対象の団体としておることにつきましてはこれまでも国会で申し上げているところでございまして、昭和二十六年、七年のころの各地に起こりました破壊活動、これと日本共産党が深い関係があるものではないかというような疑いを持っております。また、さようなことが、将来その意思が継続される、あるいは反覆されるおそれがありはしないか、全然ないとは言えない。かような関係で十団体の一つとして調査をいたしておる次第でございます。
  62. 田中織之進

    田中(織)委員 その点が問題なんです。左翼の五団体というのは、それでは具体的にどこどこをさすのですか。また、そういうようなことは公安調査庁設置法なり破壊活動防止法の関係から見て、左翼の五団体が公安調査庁の調査対象だということをあなた方は答弁のできる法律の明文の根拠がどこにあるか、お示しを願いたい。
  63. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 右翼の団体といたしましては護国団、大日本愛国党、治安確立同志会、日本青年連盟、全アジア反共青年連盟、それから左翼の団体といたしましては、日本共産党、在日朝鮮人総連合、それから全学連、社学同、共同と言われておる学生の三団体でございます。
  64. 田中織之進

    田中(織)委員 重ねて伺いますが、それらの左翼団体、右翼団体もそうでありますけれども、それは五団体あるいは全部で十団体ということのようでありますけれども、それを調査対象にするということをどこでおきめになったのか、それは法律上のどの条項に基づいてそういう調査対象におきめになったのか、その点についてのお答えをいただきたい。
  65. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 これは調査権から自然に発生する問題ではないか、私はかように思いまして、格別他の機関の決定を待ってするということにはなっていないと思っております。それはやはり公安調査庁がいろんな調査と申しますか、調査の予備的な段階でいろんな事象を検討いたしまして、調査を向けるべきかどうかということを法務大臣の御指揮のもとで決定する、かように存じております。
  66. 田中織之進

    田中(織)委員 長官は就任早々ですから、まだ公安調査庁設置法あるいは公安審査委員会というようなものについて十分研究されていないのではないかと思うのです。特に破壊活動防止法の問題に関連をいたしましてこれを適用する、あるいはそういう活動の場合に、具体的な問題が起こった場合に、何がゆえに公安審査委員会というものを法律に基づいて設置したか、こういう点をお考えになられましたならば、公安調査庁設置法によって与えられている調査権に基づいて公安調査庁が法務大臣の指揮のもとにそういうことがきめられるのだという考え方自体が、私は、あなたたちが調査庁設置法というものに忠実でない証拠だと思うのです。その点について重ねて御見解を伺います。
  67. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 なるほど私、できるだけ勉強したつもりでございますが十分だとは存じておりません。その点は御了承願いたいと存じますが、ただ御指摘のうちの、公安審査委員会があるからそれとの関連で決定すべきではないかというふうな御意見であったかと存じますが、私どもはさようには存じておりませんで、公安審査委員会は、いわば裁判所的な中立な機関である。そこの意向を受けて調査をする、また請求するということでは私は意味がないのではないか、これはあくまでも公安調査庁長官が法務大臣の御指揮のもとで、監督のもとでさような調査を進めていくのが本筋ではないか、かように存じております。
  68. 田中織之進

    田中(織)委員 私は、直接的な問題について伺うのが本日の目的でありますから、その点について多くの議論をしようという考えは持っておりませんけれども、特に破壊活動防止法による団体として指定するというような重要事項について、公安審査委員会なるものを法律に基づいて設置した趣旨も、調査庁の活動についてやはり大きなブレーキをかけなければ、これは憲法で保障されている民主主義、人権というものに対する障害になる、あるいは憲法で保障された結社その他の自由に対する大きな制約になるという考え方のことなんです。私は、調査庁長官が従来踏襲してきておる——調査庁も設置されて十年になるわけでありますから、その間における一つの既成事実の上に立って、まるきり昔の特高警察のような形のものをやられるということについては、根本的に考え直してもらわなければいかぬ。その具体的な問題として、私は一つ二つの事実を指摘して当局の見解を伺いたいと思うのであります。  そこで私は本日お伺いをいたしたいと思いますのは、中国からの帰還者に対しまして、いわば、端的な言葉で言えば調査庁の手先になってスパイとして活動することを強要した昭島市に起こりました事件については、私、一昨日長官あての抗議書を、日中友好協会の第十二回大会の決議を持って伺ったのでありますが、実は長官なり次長に面接をいたしたいということで受付を通したのでありますが、非礼にもそういう関係の人が出て参りませんで、私と御婦人三人と参ったのでありますが、約二十分近く玄関わきの応接間にほうり込んでおくというあまりにも非礼な取り扱いだということで、そのときにたまたま他の面会人が来られて、それと私と間違えて入って参りました関東調査局の総務課長とかいうのが廊下を通っていたので、一体われわれをここへ案内したまま、長官がおるのか、もし長官がいなければ関次長でいいからということで面会を申し込んでいるのに対して、一言の連絡もなしに玄関わきの応接間にとじこめておくような非礼な態度は何かということで私が詰問をしたら、ようやく第二部長とかいうのが出てきたのであります。長官に伺いますけれども、私が出したあなたあての抗議書はあなたはいつ受け取られて、それをどういうように検討され、この事態についてあなたはどうお考えになっておるかということを、長官からお答えを願いたいと思います。
  69. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 一昨日、二十三日午後に田中先生以下御婦人がお見えになりまして、ちょうど私ども外出をいたしておりまして、当面の直接の責任者と申しますか、関係者でございます担当の公安調査局の第二部長がお目にかかったのでございますが、手違いのために大へん御不快を与えた点は恐縮に存じております。今後は十分注意をいたします。  その抗議書は直ちに私に手交されまして、拝見をいたしました。事情を調査いたしました。私どもの調査の結果の概要を申しましょうか。
  70. 田中織之進

    田中(織)委員 ええ、お伺いいたしたいと思います。
  71. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 それでは申し上げます。本年の一月、中共に長くおられた馬田貞子さんという方が引き揚げになられまして、足立区にあります都の引揚者の寮にお入りになっておられるということで、いろいろとあちらで見聞されたことをお聞きしたいというようなことから、関東公安調査局の坂井という調査官がその大谷田荘に馬田さんを訪問いたしまして、二時間ほどお目にかかっております。その際、坂井調査官は法務省の者であるということを申し、身分、氏名を明らかにいたして、そしてお話を承りたいというふうに申したところ、快く御承諾下さいまして、いろいろお話もあって、それでその次の面会する機会をお約束いたしまして、第二回目は三月の十四日に、これも二、三時間ほど、その大谷田荘に、これは坂井調査官と川俣調査官が二人で、あらかじめ電話で御都合を伺い、御了承のもとでお目にかかっております。第三回目は、これも電話であらかじめ連絡をいたしまして、四月三日の午後、昭島市に——これはお引っ越しになったようでありますが、昭島市の東中神駅でお目にかかりまして、ちょうど食事時分でございましたので、駅前に軽食堂といいますか、簡単な食堂がありました。そこで、そこの「夕立」とかいう食堂で天どんを食べながらいろいろお話を伺ったということでございます。  それで第四回目に、四月の十日に御連絡の上伺ったところが、中学の方に子供の入学の手続か何かあるので、そちらの方に行かなければならぬということで、馬田さんの誘導のもとに駅前から百五十メートルほど歩いて行ったところ、突然うしろの方から六、七名の方に呼びとめられ、いろいろと難詰を受け、同時に前面に二台車がとまっておりまして、そこからも十名ほどの人が見えまして、そうして取り囲まれていろいろと詰問された。一時間ほどいろいろさような状況にあって、結局昭島警察署に行ってそこから帰ってきた。こういうことがあったそうでございます。
  72. 田中織之進

    田中(織)委員 関次長も斎藤長官も外出しておられて会われないということは、残念ながら聞くことができなかった。そこで私は、当面の責任者だということで、背の小さい男でありますけれども、きわめて傲岸不屈な態度で出て参りまして、元の憲兵隊司令部というところに公安調査庁というところが入っておるということも、私はあなたたちの活動のためにもマイナスになると思うので、この点は、法務大臣もおられるから、もう少し明るい建物にかわるように考えた方がいいんじゃないかと思うのです。まるきり何というか、犯罪者か何かを受け付けるような形で不愉快千万ですよ。あなたが長官になられた機会に、とにかくそれは僕は改めるべきだと思う。  それから、私どもが抗議を申し入れたことについて、下部から聞かれたことをそのままお答えになったのでありますが、私どもが調べたこととは事実が違います。その第一の問題は、一番最初にたずねて行ったときに、一月八日だそうでありますが、法務省の者であるということを身分を明らかにして協力を求めた、こういうことでありますけれども、身分を明らかにしたのは、長官が今お答えになりました四月十日、昭島警察の福島派出所で、日中友好協会の関係の諸君などが、あまりしつこく馬田貞子さんという女性に公安調査局の者だと称する人間がつきまとう。ちらちら身分証明というようなものをちらつかせてはおったけれども、明らかにしないので、何かためにすることをやるのではないかということで警察へ同行したのでありまして、そこでなかなかはっきりと名前等も——これはあとで調べたのでありますが、小金沢という調査官だそうでありますけれども、名前も告げなかった。ようやく警察官が取り調べた結果、関東調査局の小金沢であるということがそこで判明したのでありますが、それは言っていない。  私はここで、一月八日には確かに足立区の引揚者寮の大谷田荘というのへ落ちついた直後に、横浜入管事務所の係官の松尾という人間がたずねて行っているのですね。従って、これは法務大臣も幸いおられるわけなんですが、きょうは入管の関係の諸君を私は来てもらっていないのでありますけれども、おそらく横浜に上陸をしたという関係がおありなんだろうと思うのですが、入国管理事務所の公安係というようなものがあって、やはりこういう共産圏からの引揚者だとか旅行者だとかいうことになれば、入管からこういう思想調査のようなあるいは事情聴取——あなたたち立場でいえば調査に協力を求めるということなんですが、それをやられておるというのが実態なのですか。私は、そういうことになれば出入国管理令というものに基づいてやっておる行動としては理解できないし、たまたま長官はそれは坂井何がしなる調査官が行ったのだということでありますが、本人の馬田貞子さんから私ども事情を聴取したのには、横浜入管事務所の係官の松尾という者だということで本人に会いに行っているのですが、その点はどうなんですか。
  73. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 一月八日に横浜入国管理事務所の松尾という人が行ったかどうかということは初めて伺いまして、私どもは、公安調査庁の者が伺った最初は二月の二十六日に坂井調査官が行ったのが初めでございまして、そのときに破防法にも書いてあるように、調査の相手方から要求されたときには証票を示すということになっておりますが、その証票を示して身分氏名を明らかにした。こういうような報告を受けております。
  74. 田中織之進

    田中(織)委員 それでは法務大臣に伺いますが、入国管理事務所というものは、共産圏からの帰国者というような者については、そういう事情調査のために活動するということは現在行なっているのですかどうですか。私どもが聞いたところでは、大谷田荘に落ちついたところ、早くもその直後に、横浜入管事務所の公安係官の松尾と名乗る男が訪れ、中野区内の木村屋食料店という親類に就職を紹介する、一緒に帰国した三世帯のために家も借りてやるし、子供の学費も、食費も全部見た上で一万円出すと持ちかけて、馬田さんがあまりうまい話なのでかえって怪しんで断わったところ、その松尾は、なおシンガポール帰りの二世に中国語を教えてやってくれ、金は幾らでも出す、こういうことで、第一回もどうも公安調査庁の人間がそういう形でたずねてきたのではないかという疑いを持っておるのでありますが、たずねてきたという事実があるのでありますが、そういう点は入管にそういうことをやらしているのかどうか。今長官は、公安調査庁の坂井何がしが行ったのは二月の二十六日で、その前のことは公安調査庁としては知らない。こういうことなんですが、その点は一体どこの者が行ったのですか。
  75. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 実は、ただいま田中委員の御質問になりました松尾某の行動につきましては、何ら報告を受けておりませんので、追って適当な機会に取り調べの上で明らかにお答え申し上げたいと思います。入管事務所が海外から帰ってきた人、あるいは入ってきた人たちについて、そうした調べができるかどうかについては、これは協力の意味においては、もちろん官庁間の協力ということで、公安調査庁から依頼があり、包括的にできる場合に、できるだけ出入国の際に気づいたところ、あるいは聞き知ったところを連絡してもらいたいというような意味のことは、これは当然だと思います。しかし、法規上の問題として、入管事務所がそうした調査ができるのかどうかは、実は私、まだ残念ながら不敏にしてよく研究しておりませんので、その点はなはだお答え申し上げにくいのであります。いずれ、これまた研究の上で、もし行き過ぎがあるならば十分注意をして参りたい、かように考えます。
  76. 田中織之進

    田中(織)委員 私は、入国管理事務所はそういうことをやる組織だとは実は考えない。たとえ役所間の連絡の問題にしても、これはもちろん不法入国であるとか、密入国であるとかいうようなケースであれば、それはおのずから別問題ですけれども、成規の手続をもって出てきている者を、かりに共産圏から帰った人間だといって、入管がたまたま職務上知り得たことを、幾ら役所だからといって、公安調査局へ連絡するということは、これは入管事務所の権限を越えていることであって、私は断じてやらせるべきではないと思う。その意味で、この一月八日に松尾なる公安係員という者がたずねた——密入国等の取り締まりをやっているところでありますから、公安関係の者がおられることは私もわかりますけれども、だからといって適法な形で帰って参りました人たちに、入国管理事務所から始まってつきまとうというようなことは、これは明らかに日本国民に対する人権侵害だと思うので、これはやめてもらわなければならぬと思うのです。  そこで二月の二十六日に坂井七郎なる人がたずねて、地図などを持ち出して中国事情を聞かれたということは私どもも聞いております。そのときに、馬田さんは知っている限りのことはお話しになったのだろうと思うのでありますが、こえて三月十四日に参りましたのは、実はこれもはっきり場所は言わないのですね。名刺ももちろん置かないし、あとの段階になりまして、ちらちら身分証明のようなものを見せているけれども、ただ電話番号を言って、この電話に何か連絡しろ、こういうような形でやっておるので、おととい二部長なる男に会いましたときにも、こそこそやらずに堂々とやったらどうか、おかっぴきみたいな量見を捨ててやったらどうかということの忠告はしておいたのですが、これも私はやり方がいけないと思う。そこで三月十四日に川俣なる男と来られ、そのときに就職のお話が出たのでありますけれども、私は別にお世話していただかなくても自分で仕事を探すということで、このときにはきっぱりお断わりになっていると馬田さんは私どもに話をしているのです。   〔林委員長代理退席、牧野委員長代理着席〕 ところが四月三日に坂井が、係長の小金沢と称する男と二人で馬田さんを青梅線の東中神駅前の料理屋「夕立」に案内をして、こういうことを言っているのです。馬田さんに、友好協会の常任理事で組織部長をやっている三好君、あるいは日中貿易促進会の鈴木一雄君という人々にあなたが一つ頼み込んで、どこかの貿易商社に入って、中国の事情であるとか、日中貿易の内容というようなものを一つ調べてくれないかということで、調査の協力について、実は具体的な相談を持ちかけておるのです。そうするならば、月に大体四万円程度のものを確保してやるからということで、子供二人をかかえて、中国人の御主人と生き別れて引き揚げてきて、現在生活保護法の適用を受けておる女性に対して、経済的な、物質的なものを振りかざして協力を求めるというような態度は、それは調査官として協力を求めたい、ことに馬田さんが中国のある地方の人民委員会の、いわゆる県庁に勤めておったという点から、やはり相当事情を知っておるのではないかということで、マークして執拗に追っかけたという点はわからないではないのでありますけれども、そういう話を持ちかけておるのは、これはどうしたって、協力を求めるという点から見て、明らかに金銭をもって、端的にいえばスパイをやれということをか弱き女性に押しつけているということになるので、この点は調査庁の活動として、私どもはやはり認めるわけには参らないのでありますが、この点について長官はどういうふうにお考えになりますか。
  77. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 ただいま四万円云々というお話もございましたが、私どもが報告を受けたところでは、馬田さんから、三好さんにお願いしてあるのだが、なかなか就職がきまらない。神戸に行きたい、神戸に行ったならば一万円ぐらいの収入があるだろう。それで子供を保育所か何かの施設に入れて、そうしてそこに勤めてやっていきたい。こういうようなお話があったときに、参りました坂井調査官と小金沢調査官が、保育所といってもすぐにははいれないでしょうし、こちらの方で何か貿易商社にでもお勤めになれば、二万円くらいの収入はおありになるんじゃないですかということを助言的に申し上げた。こういうふうに報告を受けております。
  78. 田中織之進

    田中(織)委員 その点は、後ほども伺いますけれども、私が参ります前に、今月の十三日の正午に、共産党の中央統制監査委員の沼田秀郷君、川村千秋都会議員、それから弁護士の松本善明君等が、この問題で実は関東公安調査局へ抗議に行っておるのです。そのときの応待と、一昨日私が行ったときの応待とは、大きく食い違うわけなんです。そういう点から見て、一昨日私が行ってから長官が事情を聞かれておるのですけれども、それは沼田さんが私どもに言っている。そのときには共産党の関係の諸君に、端的に申し上げると、三ッ木というのですか、二課長は、坂井と小金沢のやったことは局の命令でやったことではない、これは個人的な問題だ、こう言うて逃げているのです。それからそのときに、三ッ木課長も来ているので課長に会わせるということで、これは四月十日のことでありますが、立川まで来ているんだということで馬田さんを引っぱり出しておるのです。課長が立川へ行ったのかどうかということを二課長に聞いたところ、立川にはいなかったのだ、中国の実情を聞くのは、調査官個人が自分の知識を高めるためにやったのだろう。こういうように共産党関係の諸君には答えられておるということが、これは十五日付の共産党の機関紙のアカハタに載っておる。ところが一昨日私が行くと、頭から二部長なる男が、非礼にも僕に名刺も出しませんでしたが、村上さんという一緒に行った御婦人が名刺を出して、こちらも名刺を出しているのだから、あなたは身分を明らかにする意味で名刺を出すことくらいは礼儀じゃないかと言われて、だれかの名刺に自分の名前を書いておりましたが、この二部長なる男は、小金沢及び坂井などがやったその意味において、私どもはこれは少なくとも調査に協力を求めるにしても行き過ぎである、ことに相手が女性である——そういうことに対して、それをやるのは正当な行為だということを言い切ったのです。それだから、調査に協力を求めるということはあなたたちの仕事ではあるかもしらぬけれども、やはり行き過ぎということは場合によってあり得るのではないか。現にこういう点はどうだ。夕立というのは、軽食堂だということを長官わざわざ断わられましたけれども、夕立という名称から見て、またそういうことについて隠密のうちに、いわばスパイを引き受けてくれという話を大衆食堂でやるばかはいない。これは明らかに小料理屋か何かで、そういうところへ三十三才の年令の女性を調査局の者が案内をするということ自体、通例の役所の人間がやる行為としてはあまりにも常識をはずれた行為だと思うのです。だからそういう点については、やはり馬田さんの、二月二十六日に地図を示されて事情を聞かれた点については、何の気はなくお話をされたと思うのでありますが、三月十四日、四月三日と、執拗に就職あるいは金銭的な利益をもって調査庁の手先になることを求めるから、馬田さんがこれを拒否しておるのであります。私どもはその意味で——四月五日に重ねて電話で連絡をして、小金沢係長などが呼び出そうとしたものでありますから、馬田さんが友好協会の本部に連絡をとって、あまりしつこくつきまとうので一つ追っ払ってもらいたいということで、たまたまその中には昭島市の市会議員の大竹猛という、これは共産党関係の方だそうでありますが、参って、福島の派出所におもむいてその小金沢なる男を同行した。ところが、初めは小金沢は自分の身分をあかさず、スパイ強要の事実はないと開き直った。事実をあげて追及していくと、中国の事情を聞こうと思って三ッ木秋太郎課長と二人で立川まで来て、課長は立川駅前の喫茶店で馬田さんを待っているのだということをようやく認めた。ところが、その身分については、初めは小林正、四十六才ということを言ったのでありますが、昭島署の福島巡査派出所の鈴木巡査が取り調べたところ、横浜市神奈川区白幡町、小金沢徳衛、大正二年二月十五日生、関東公安調査局二課職員だということをそこで自供して初めてわかった。これは私どもは馬田さんから聞いておるし、また馬田さんの言ったことが私はその通りの事実であると思う。こういうような事実を掲げて共産党関係の諸君が十三日に公安調査局に行ったときには、あたかもその事実を、それは調査官の個人的な活動のようなことを言っておりながら、私がおととい行けば、やったのが何が悪い、あたりまえのことじゃないか。こういう開き直り方という点から見て、調査庁長官が今お答えになったのは、私らが抗議を申し出たことについて下から聞いた事実をそのまま述べられておると思うが、これは実際に調査官がやった行為の実体を上司に報告したものではないと思うのです。この点については、あなたは立ち入ってお調べになったことがあるのか、あるいはこれからでもそれを調べられようとするのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  79. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 ただいまいろいろお話がございまして、初めに四月十三日に共産党の方が来られた際には、個人的な用事として行ったのだということを言っておきながら、一昨日おいでのときには、これは公務執行として行ったのだと申したことは、事実その通りであります。これはおそらく四月十日につるし上げを受けた際に苦しまぎれに言って、それがあとを引いてかようなことになったのではないかと私は想像いたしておりますが、いろいろと御意見もあり、お話もございましたので、十分調査はいたしたい、かように存じております。また、調査活動はフェア・プレイでいった方がいいじゃないか、そういうことができますならば、まことにけっこうなことで、そうすべきだと存じますが、事案によりましては、なかなかさようにも参らないこともあるのではないか。それにしても御指摘のように女性の方に対していろいろとお話を願う際には、十分注意しなければならぬということはその通りに存じております。十分注意いたしたいと存じます。  ただ、本件におきまして、御指摘のございました四月三日に昭島市の駅前の「夕立」というところに参った。これはそんな秘密なことを話をするんだから、小料理屋じゃないか、ただお前は部下からの報告をうのみにしているのじゃないかという御指摘でございましたが、私は写真を見たのでございますが、まことにちゃちなものでありまして、表の入口にはのれんがかけてあって、おでん、お酒などという字が書いてございました。内容、中の模様を聞きますと、土間で、片っ方がカウンターで、片っ方にいすが一つくらいあるというようなところ、だそうでございまして、さような点から私は軽食堂ということを申し上げた次第でございまして、いわゆる奥まった料亭というものとはよほど違った種類の食堂というふうに存じております。
  80. 田中織之進

    田中(織)委員 軽食堂であるという点をこだわっておられるのでありますけれども、食事どきであったから話を聞くということについてそういうところへ誘った。通例のことならそれは理解できないではないのでありますけれども、その前二回にわたってお断わりをしておるのでありますから、その意味でやはりそういうところへ、女の立場から言えば連れ込まれた、あなたたちの方から言えば案内したということになるのだろうと思うのですけれども、これは、何も知らない第三者が聞けば、そういう女の人をそういうところへ案内するということ自体私は非礼なことだと思う。しかもそういうところで話をしよう——一昨日参りましたときにも、たまたま中国から帰られて、やはり母子家庭の村上さんという方が見えられたのでありますが、その方の近所へも最近公安調査庁から村上さんの動静についていろいろ聞きに回るそうです。昔の特高の聞き込みと同じような形で、妙齢の娘さんがおるので、何かお母さんが悪いことでもしているので、警察か何かにつきまとわれているように見える。娘の縁談に差しつかえがありますから、もしたずねてこられるのなら私のところに堂々と来て下さいということを寮長が言われておりましたから、その女性も言われておったのでありますが、そういう寮におられるということであれば、寮長もおられるし、そういうところでやはりなにすべきなので、執拗に外へ呼び出して、しかも大事なことについてと頼まれるものですから、そこでこれは尋常なことではそういう協力を求めることを退けるわけにはいかないということで、協会の本部へ行ったわけです。今になってみれば、おとといもそうです。二十名からの人間が集まってつるし上げみたいにしたのはけしからぬというのですが、だれがその種をまいたかということです。しかも警察では小林何がしだということで、警察官の取り調べに対しても最初は偽名で通そうとしたじゃないですか。その点はちょうど幸い警察庁の三輪警備局長もお見えになっておるのでありますが、昭島警察でのこの件についての取り調べの状況がどういう状況であったのか、この点を伺いたいと思います。公安調査庁としてもそういう意味で、これはあなたの方の役所だけの問題ではなくて、片一方は所管の違う警察庁の関係で、その小金沢君が、あなたの方からいえば大ぜいの者に取り囲まれて交番へ連れて行かれてつるし上げを受けたのだということになるかもしれないが、問題は第三者の立場から見れば、警察が介在しているのですから、警察について事情を聞かれて、そのことの真相をあなたがお答えになるのが私はほんとうの筋だと思う。きょうは便宜警察庁の三輪局長においでいただいておりますから、三輪局長から昭島の件についてお調べになった事情を簡略に御説明願いたい。
  81. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 福島巡査派出所まで見えました点については、先ほどお話があったようでございます。福島巡査派出所に参りまして、調査官の方は、大ぜいの人に取り囲まれてばりざんぼうを受けたというようなお話でありますし、それから大ぜいの人の方の言い分では、この者が婦人にうるさくつきまとっておるから連れてきた、こういういきさつでありました。ちょうどその申告を受けました派出所に、交通事故処理のために小杉という巡査部長が来ておりまして、両方からこういうことを言っておるという事情を報告をいたしましたところが、それでは署の方で詳しく事情を聞こうということで、本署から刑事防犯一課長らがジープで派出所に到着いたしました。そうして当事者と代表二名、これはお言葉にありました昭島市会の大竹議員、それから田島という方のようでありますが、この四人の方を本署に同行しまして、小金沢、馬田両氏から事情を伺っておるのでございます。当初別な偽名を述べたというお言葉でございましたが、私どもの方に入っておりますのは、調書などを見ましても小金沢ということで出ておりまするので、さきにどういう偽名を使ったかということは、私は承知をいたしておらないのでございます。調べました事情は、両方を別々に調べておりまして、お互いの主張に違いはございますけれども、大体の事情は、先ほど公安調査庁のお答えがございますような事情であったろうかと思うのでございます。まだこまかい点は後ほど……。
  82. 田中織之進

    田中(織)委員 長官もお聞きの通り、最後はやはり昭島警察署の刑事防犯課長がジープで現場にかけつけるというような形で、やはり警察で収拾をしておる問題なんです。その意味で長官も認められたのでありますけれども、十三日に共産党の諸君が行ったときには、すでにそういう結末をつけているということは、あなたたちの関東公安調査局の首脳部としても報告を受けているはずなんです。ところが、特に共産党関係の諸君が、弁護士もついて行ったときのことについては、それは個人的にやったのだということで出ておる。個人的にやったのだということになれば、私は警察の方にも伺わなければならぬのですけれども、個人としてやることの限界を越えていると私は思う。限界を越えて明らかに人権を侵害しておる。その立場から警察は、人権侵害の問題としてこの小金沢君を取り調べて責任を追及しなければならぬ義務が残されておると思うのです。ところが、共産党から抗議を受けたあとではあったでありましょうけれども、おととい私が行くと——まあ下をかばう気持はわかりますよ、先ほどの猪俣君の質問に法務大臣や竹内刑事局長が検察官をかばったような発言をされている気持も共通すると思うから、それはわかりますけれども、こう然として、当然のことをやっているのにそれが何が悪いんだ、こういう開き直り方は、私は理解できないのです。  そこで警察庁の三輪局長にもう一つ伺いますが、昭島警察で取り調べの過程において、馬田さんからの調書についてはだれがお調べになったか知りませんけれども、問題は、小金沢などと、坂井などとの個人的な交際だった。馬田さんが、あべこべに二人を誘惑したが、誘惑に乗らなかったので、あべこべにスパイを押しつけてきたんだ、こういうことに開き直ったのだというようなことを警察官か調書に書いてある。これに印をつけと言うから、それは話が違うじゃないか、私が申し上げておる点はわざと落として、まるきりあべこべに女の方から公安調査局の人間に誘惑をしかけて、色じかけでひっかけようとして、それが目的が達しないから、いや、私にスパイを強要しているのだということで開き直ったんだという意味の調書を警察が書いている。それは警察へ大竹君なんか行って抗議をした結果、その部分は削除するか訂正をして調書ができ上がったといういきさつがあるということを私は聞いているんですが、そういうことについてはお聞きになっているかどうか。もし警察がかりそめにもそういう取り扱いをしたということになれば、警察の取り扱いの態度自体も許すことのできない問題だと私は思うのであります。関係者からのことでありますから、それが真相ではないかと思うのでありますが、この機会に、これは記録に残ることなんですから、明らかにしていただきたいと思います。
  83. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 お言葉にございましたような事実は、実は誤解でございます。実はいかなる場合も、被害者の届け出がございますと、その被害事実を被害者からこまかく聞くというのは当然の手続でございます。そこで、その当日馬田さんから事情をお聞きしかけたのでございますけれども、どういう関係でございますか、あべこべに馬田さんが逮捕されるという誤解があったのかもしれないのですが、ついてこられた二十数人の人が、馬田さんが釈放されるまではわれわれ絶対帰らぬというようなことを言っておられるというので、馬田さんにもお話をして、またあした出てこようというようなお話でございましたので、最初の日は調書にいたしておりません。翌日お見えになりまして、事情お話しになりましたので、調書にとったわけでございます。ところが最後になりまして、調書を読んで聞かせましたところ、私の話した中で、たとえば調査官が中国事情について聞いたというように簡単に書いてあるけれども、肝心なところだからもっと詳しく入れてもらいたい。たとえば中国軍隊のこととか、軍需工場のこととか、日中友好協会の人のこととかいうことを具体的に書いてもらいたいというお話があって、その日は署名をされませんでした。   〔牧野委員長代理退席、林委員長代理着席〕 そこでその翌日もう一ぺんおいでを願うということで、それまでに従来のそういったこまかい点も書き加えまして、翌日またおいでになったときに、今回はその調書を全部ごらんになって、これで私の言った通りだということで署名捺印をされたのでございます。  それではなぜ最初にそういう点を省略をしたと申しますか、詳しく記載しなかったかと申す点でございますけれども、これは事前にどういうことを、今まで何回かお会いしたということは、これは警察が刑事事件として扱いますこの事件には、実は直接関係がないと言ってはおかしゅうございますけれども、警察に訴えがございまして、事件を扱いましたのは、この四月十日に、この男がこの女性につきまとっておるということから始まったことでございます。従いまして、その日の事実を先に聞いて書いたのでございまして、従来のいきさつというようなものについては、そう一々詳しく書かなかったということが真相のようでございますが、そういう御希望でございましたので、翌日さらにその部分だけ書き改めたものについて署名捺印をされたというふうに聞いております。
  84. 田中織之進

    田中(織)委員 部長の最後に言われた、十日の日にこの男がつきまとうので警察へ連れてきて、警察の方でしかるべく処置してもらうのだということは、私は事実だろうと思います。たまたまおととい関東公安調査局の二部長に会ったときにも、それは馬田さんが応援を求めた方から、これは軽犯罪法違反だ、こういうことで交番へ突き出したのじゃないか、こういう言葉が出てきているんです。私は、その点から見ると、あながち——三輪部長が、これも下からの報告に基づいて言われるのだと思いますが、馬田さんがやはりなにされるように、ただ単につきまとったということではないのでありまして、それをあたかも関東公安調査局の方でも、軽犯罪法違反だということで交番へ突き出されたという言葉の中に、何か調査官の方では、あべこべに、この女がおれを誘惑しようとしてこうしたのだ、こういうようなことが出て、それがたまたま警察官の調書に出ておったのではないか、はっきりと本人がそう言っているのですから、これではまるっきり事件をすり違えておるから、私どもは、やはり調査の協力を求めるにしたって、月四万円という多額の金が入るようにしてやるから、こうこうこういうルートでこうしたらどうかということは、明らかにスパイになることを求めておると思う。これはあなた方が調査に協力を求める正当な役所の行為だということは、だれが聞いたって認めるわけには参りません。そういうことのひけ目があるもの、だから、あわよくばそういうことで逃げようとした問題ではないか。この協力の限界を越えておる違法な行為という考えもありますけれども、私は、警察の段階へいったときにも、もし馬田さんが言うておるような取り扱いを、かりに警察なり、あるいは公安調査局の問題になった調査官がそういう行動を警察で申し述べることによってその場をのがれようとするような態度は、これこそ全く相手の人権を無視した許すべからざる行為だ、このように考えるのでありますが、その点については、あるいはまだお調べになってないかもしれないけれども、長官なり次長は、これをお調べになって明らかにするお考えがあるかどうか。また警備局長の方では、その点についてさらに調査することを求めたいと私は思うのですが、やられる意思があるかどうか。
  85. 関之

    ○関政府委員 お尋ねのようなある事実があって、その事実を免れるために他のありもしない事実に難くせをつけて弁解をする、こういうことはもちろんフェアな態度じゃありませんから、警察の方でどういう事実があったか、もう少し事実を調べて善処いたしたいと思います。
  86. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 お言葉は、私どもが思い違いをしておるのかもしれませんが、調書を調べました中で、馬田さんの方から誘惑したと思われるようなことも、どちらからも別に出ていないのであります。そういうことは調書には一切ございません。ただ、先ほど長官がお話しになりました事情の中で、馬田さんの方は、四、五百メートル歩いたところで、もう一緒に来ては困る、こう言ったときに、いいじゃないかというので何か手を二、三回押えたということを言っておられます。それから調査官の方は、そこで同行しながら行ったところが、他の者から呼びとめられたということを言っておるのでございます。そういうことはありますけれどもお話のように、一方から誘惑をしてかえってあべこべの結果になったということは、どちらも言っておりませんし、もちろん警察でもそんなふうには考えておりません。
  87. 田中織之進

    田中(織)委員 この問題については、なおあなた方のお答えになる点と私ども事情を聴取した点との間に食い違いがあるので、私の方も重ねて調べますけれども、根本的な点で今回のケースを、細部の点は別問題として、見た場合に、公安調査庁として調査に協力を求めるという調査官の活動として、あなた方はこれでいいとお考えになるのか、その点はいかがですか。
  88. 齋藤三郎

    ○齋藤(三)政府委員 公安調査庁は、全国でわずか千三百数十人の調査官が全国的な調査をいたしておりますので、どうしても直接調査官自身の活動だけで調査はできませんので、その方面の詳しい知識を持っていらっしゃる方の御協力を得るということは必要であろうと存じます。ただ、その調査のやり方は、あくまでも相手の御承諾のもとにやるということは十分注意していかなければならぬところだろうと思います。また本件のような女性の方の場合には、とかく男性は、私どももそうでございますが、十分思い至らぬ点もございますので、そういう点につきましては、今回の事件ども十分に参考にして注意して参りたい、かように考えております。
  89. 田中織之進

    田中(織)委員 長官が最初に述べられましたように、設置法の関係からいたしましても、調査に対する協力というものは任意なんです。本件の場合のように、再三断わられているのに、手を変え品を変えて、ことに金銭的なもので協力を求めるという態度は、私はやめなければいけないと思うのです。あなたもせっかく協力というものは任意だということをやはり言われる以上は、もう二回、三回にわたって断わられているものを、相手の女性が中国側の事情に詳しい立場にあるから、何としてもやはり口説き落とそうという気持もわからぬことはないけれども、それは相手の意思ですから、相手の意思を尊重しなければ、これこそあなたたち調査庁が国民から黒い目で見られることをさらに強化することですから、私はやめてもらわなければいかぬと思う。その意味において、この問題についてはさらに私は事情を調べて、また別の機会にあるいはおいで願わなければならぬかもしれませんが、一応その点だけを申し上げておきます。  もう一つ、これと関連する問題で、郵政省から担当者が見えておられれば、これも日中関係の問題でありますけれども、一月の初めに、都内墨田区の光和商事株式会社というのが一月十五日付で北京へ商用の手紙を出したのであります。ところが、それが向こうへ着いてみますると、何者かによりまして、これは台湾政府関係のものでありますが、中華民国第十一年のカレンダー、これは大陸反攻を呼号するところのきわめて反中国的な、いわゆる中華人民共和国に敵対するような露骨なことを表に書いたところのカレンダーですが、これがこの手紙の中に封入されて向こうに着いている。あて名は北京市の西郊二里の中国外輪代理公司というのに出した。ところが、こういうものが入っておるので、中国側から、こんな非友好的なことをされては困るということで、この現物を入れたものを送り返してきておるのです。これは四月十一日ごろに着いておるのでありますが、中国との間には国交回復もできていない関係から、郵便物の関係について、例の万国郵便条約の関係というようなものも、国交未回復国であります関係から十分にいかない点も私は考えられるのでありますけれども、もし日本の郵便局の関係においてこういうものが入れられておるということになるといたしまするならば、これは憲法で保障されておる信書の秘密を侵されたことになるし、きわめて重大な問題だと私は思うのであります。時日ははっきり記憶いたしませんけれども、一昨年でございましたか、中国向けの郵便物に何者かが反中国的な文書を入れておるという事件がありまして、これが逓信委員会で問題になった。実は大阪方面の関係であったかという記憶があるのでありますが、最近またそういう問題が起こってきております。一体中国向けの郵便物はどういうことになっておるのか。問題の郵便物は、一月十五日の十時半ころに東両国郵便局へ差し出した。これのスタンプを見ると本所局のスタンプになっておるのでありますが、どうもその点の事情が私どもにのみ込めないのであります。もし何かそういうようなものが日本の国内で郵便局の関係でやられるようなことがあるということになれば、これはきわめて重大な問題になると思うのでありますが、この点についての郵政当局の御見解を伺いたいのであります。
  90. 西村尚治

    ○西村政府委員 お話しのようなことは、実は私は初めて耳にするわけでございますが、私ども立場といたしましては、ちょっと想像もできないような事柄でございまして、少なくともこれは日本の郵便局で引き受けて羽田の空港郵便局から差し立てますまでの間に起こった事柄とは考えられないのであります。羽田の空港郵便局からは、日本の航空機あるいは諸外国の一番早い航空機に載せまして、香港にあてて差し立てるわけでありますが、香港にあてて差し立てます場合には、郵袋をかたく締め切りまして、その口をゆわえまして鉛で封縅いたしまして、あとで途中でだれかがそれに手を加えてこれを開封した場合には、はっきりわかるような仕組みに相なっております。  それで台湾は別といたしまして、中国向けの郵便物は、差し立てのあて名を北京、上海、広東の三カ所あてに最初から締め切りまして、香港郵政庁は仲介はいたしますけれども、ただ仲介するだけで、絶対に開披はいたしません。そのまま今度は中継ぎをいたしまして、目的地の北京なり上海なり広東なりに区分けして差し立てることに相なっております。ただ香港郵政庁に着きましたときに、もしその郵袋の封縅に異状がありますれば、すぐに日本の郵政省の方に通知をしてくることになっておりますし、また、それは北京あてでございましたか、北京あてですと、北京郵便局が最終目的地になるわけでありますが、北京郵便局でその封縅に異状を認めますれば、これはおかしいということで異状通知をこちらにしてくることになっておるわけであります。そういった事実も実はまだ聞いておりませんし、もしその郵便物をちょっとお借りできますれば、普通通常ですと、ちょっと調査の方法がありませんけれども、書留郵便物でございますれば、差立局あるいは中継局ごとで記録が残っておりますから、一応調査してみたいと思いますが、いかがでございますか。
  91. 田中織之進

    田中(織)委員 これは五十円の切手を張ってある普通の航空便のようであります。これが途中で何者かによって入れられたカレンダーですが、聞いてみますと、これを入れると五十円では郵税は不足するので、百円張らなければならぬことになるそうです。そういう関係があるので、途中で何者かによってやられたのではないかという疑いを持っておりますが、中国側からやはり公文書で、一月十五日のこの書簡にこういうものが入っておる、これはきわめて不信な行為ではないかということで、今後こういうことをやめてもらいたいということを言って、これを送り返してきておるので、御検討下さるということであれば、普通航空便でありますけれども、お願いしたいと思います。  私は、今郵務局長ですかのお答えになるようなことであるということになれば、日本を離れた外での問題ではないかということもうかがわれるのでありますけれども、たまたま公安調査庁の問題に関連して、日本政府の側においても、中国側の事情なり、反中国的な動きがきわめて目立つものですから、何らかそういうことが日本内地でもし行なわれているとすれば、これはゆゆしい問題だ、こういう考え方から真相について究明していただく意味においてもこれを取り上げたわけでございます。書留ではございませんが、しかし、向こうへ配達されてみて、こういうものが入っているということが出て参りました。これは友好商社ということで日中友好協会等から推薦を受けて取引をしておる貿易商社でございますから、中国側が日本側の商社の意向をなにするという意味で、向こうの手で細工をされるというようなことは絶対に考えられない問題なんです。このカレンダーは中国大陸災胞救済総会——中国大陸は飢饉だとかなんだとかいう逆宣伝が行なわれておるので、その関係から入れた文書のようにとれるのでありますが、その点は調べの方法がありましょうか。
  92. 西村尚治

    ○西村政府委員 先ほども申し上げましたように、書留郵便物でございますと、引き受けましてからずっと経過地の引き継ぎの記録が残っておりますから、どこでどういう事故があったということの取り調べは可能なのでありますけれども、普通通常郵便物でございますと、そういう記録がございませんので、十分な調査はできないかと思います。ただ普通通常郵便物でございましても、郵袋に対する封緘はやはりいたすのでありますから、香港郵政庁まではもちろん無傷で行ったでありましょうし、香港郵政庁でどういう事故がございましたか、条約上に規定された義務から言いますれば、そこに着きましたときに異常がありますれば、すぐこちらに通報する義務があるわけであります。その通報してきた事実が、実は初めて聞きますので、あったかないかもまだわからないのでありますが、あったとすれば、そこで何かが考えられるかもしれませんし、的確な調査はできないかもしれませんけれども、その差し出し月日、それから差し立てました航空機、そういったようなことによりましてあるいは見当がつくかもしれません。もしお差しつかえがございませんでしたら、拝借でさましたらと思います。  それから日本郵政省の取り扱う過程におきましては、万々なかったはずだと私も思いますし、先生もそういう御意見のようでございましたが、と申しますのは、それが入りますと料金不足に相なるはずでありますから、これは引き受けのときに引き受けるはずがございませんし、羽田郵便局で差し立てますときにも、料金の面は点検いたしますので、その二つの関門を無事に通過したという点から考えますと、こちらの管轄外で、あったとすればあったのじゃないかというふうに考えられるわけでございます。
  93. 田中織之進

    田中(織)委員 この点は、この手紙をお見せいたしておきますから、お調べを願いたいと思います。  そこで最後に、法務大臣もおられるし、公安調査庁の長官もおられますので、一点だけ私、希望意見を述べておきたいのでありますが、先年、中国の招待等によって渡航する関係の費用を日中友好協会あてに送って参りましたので、そういう関係から、何か中共から政治資金が日中友好協会にも入っておる、こういうことを今行方不明を伝えられる辻参議院議員がどっかの小さいパンフレットに書いたという問題を契機といたしまして、前の長官の藤井さんにも、何かそういう色めがねで日中友好協会というものを——これはもちろん共産党員もおれば、自民党関係の、たとえば野原正勝君等は私どもの会員で、役員になっていただいておるわけでありますが、そういう超党派的なものであります。たまたま共産党関係の者が多い、相手国が共産国だということで、公安調査庁が特に目をつけられるということは、私ども心外なことでありますし、避けてもらいたいということでございます。最近、今月の二十日、二十一日、二十二日と大会をやったのでありますが、大会へ出かけるんだってね、というような形で、友好協会の会員に、調査庁の地方局で事情を聞きに参りました。いろいろそういう形のものがある。あるいは友好商社の関係について、いろいろどうも、公安調査庁関係からだということを関係業者は申しておりますけれども、中共などと貿易するとろくなことはないというようなことが言われる。これはいずれ具体的な事実を集めて参りまして、また取り上げたいと思いますが、そういうことがひんぴんとして私どもの中に入って参ります。友好協会は、私もこの間までは副理事長をしておるし、会長は私どもの党の松本治一郎氏であります。私も現に常任理事をいたしておるわけであります。私どもが知り得る限りの中国関係事情その他のことについては、公安調査庁であろうと、どこであろうと、お知らせすることについては決してやぶさかではないのであります。従いまして、協会の下部の会員などについて、昔の特高みたいな形でつきまとうというようなことは、今後やめていただきたい。私どもは会計も公表しておる団体でございます。決して秘密団体ではないのであります。そういう意味において、この手紙の問題、あるいは先ほど申し上げました馬田さんの事件、また全国からこういう問題を全部この機会に一挙に一掃する意味で資料を集めておりますから、いずれまた別の機会に質問も申し上げたいと思います。そういう趣旨の友好団体でございまするから、どうか一つそういうことについて、色めがねをもって見られないように、この点は特に要望いたしまして、私の質問を終わります。
  94. 林博

    ○林委員長代理 志賀義雄君。
  95. 志賀義雄

    志賀(義)委員 きょう午前猪俣委員から質問がありました松川事件については、この四月三十日にまた最高検察庁で上告趣意書を出されるということであります。先ほど植木法務大臣の方からも、それを出すことについて同意をされたということであります。この事件の無罪を証明することは、最高裁判所に提出された諏訪メモ、またこれが差し戻し判で仙台高等裁判所でも有力な証拠として取り上げられて、結局無罪になったのでありますが、このことは昭和三十四年の鈴木、山本、田島検事に対する公務員職権濫用等被疑事実に関する起訴強制事件についての判決の中で、この問題が昭和三十三年八月九日の衆議院法務委員会において志賀義雄委員から取り上げられ、自後数回にわたって政府側の説明員の説明を受けた、こういうふうになっております。そして「同年十月二十九日の委員会で愛知国務大臣から「検察庁では法廷に提出すべきものは全部提出し、還付すべきものは全部還付して現在検事の手元には一つも残っていないという話である」」、こういうふうになっておりました。これは諏訪メモを返したということでありますが、その諏訪メモに関連して最近また新しい非常に遺憾な事実が出たのであります。これは準起訴事件と申しまして、昭和三十五年二月十九日に大沼新五郎福島地検副検事、同二月二十五日山本諌福島地検次席検事、五月三十一日には現在弁護士である最高検公判部長の安平政吉検事、六月一日には井本台吉最高検検事、現在公安部長、それから六月四日には現在弁護士の、最高検公判部検事福島幸夫検事、六月五日には神山欣治最高検公安部検事、最後に十二月三日になって、現在弁護士であり当時福島地検の検事正であった安西光雄、これらの人々が調べられた。その文書の写真がここにあります。これについては先ほど猪俣弁護人も言及され、自由法曹団編集の「人権のために」一九六二年十一、十二号合併号にも一部は出ているのでありますが、このことについて私は当時、昭和三十三年八月九日に、愛知国務大臣に、これは人命に関する重大な問題だ、死刑を受けているから、この証拠を出すように、法務大臣というものは指揮権を検察庁に対して持っているから、それを出すように、こういうふうに請求したのでありますが、そのときに愛知国務大臣は、「指揮権のありますことは、私もよく存じておりますが、そういう具体的なことに証拠書類を出すか出さぬかということに至りますまでのようなこまかい指揮権は、発動したくないのが私の心情でございます。検察官諸公の良識に待ちたいと思います。」、こう言っております。ところが、その検察官諸公が何とまあ良識のないことをやっているのであります。  その事実を若干申し上げてから質問に入りたいと思うのですが、安西光雄元検事正が大沼副検事を非常に重要視しておったことは事実であり、また大沼副検事にこの諏訪メモをはだ身につけて持たせておる、ずっと他の、たとえば釜石の区検に行ったときにも持たせておった。この安西検事正は、「わたしは検事正ですからね、そんなもの、ふところに持っておるわけがないし。」、こう言っているのです。そうすると自分が持ってないことのように聞こえますが、そうでないのです。吉良検事は、「検事正が中心で采配を振っていた。」と言っております。また、「安西検事正から諏訪メモを渡されたと思う。」と述べております。「「こういうものがあるから参考にして調べろ」といわれた」、こう言っております。安西検事正からですね。そんなものはふところに持ってないが、持ってないものを出して渡したか。少なくとも安西検事正がこれを采配を振り、諏訪メモを手渡し、これを参考にして調べろと言ったことは明らかであります。しかもこの安西検事正は諏訪メモは直接見ていないということになります。そうしますと、先ほど竹内刑事局長が言われたことで非常に問題が起こります。どうして大沼副検事がこんなことをしたかわからないけれども、これはとんでもないことだ、こういうふうに言われております。そうすると、これはどうもどこかで合作があって、検事正までやった人を今さらその責任を問うことは困るので、大沼副検事に対して何もかもしわ寄せをしてこの事件の結着を何とか切り抜けようという気持がおありなのか、それからそういう答弁が出てきたのかどうか、その点をまず伺いたいと思います。
  96. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 大沼副検事に責任を一切負わせるというような考えは、おそらく検察庁も考えておらないと思いますし、私もそうあるべきではない、その真相を明らかにいたしまして、その負うべき責任者が責任を負うべきである、こういうふうに考えております。
  97. 志賀義雄

    志賀(義)委員 そうすると、負うべき責任者が負うものだということをはっきりおっしゃったのですね。では、その安西元検事正がやはり準起訴事件でこう言っております。「(大沼は)自分勝手にですね、もち歩くような男じゃないですよ、一番よく大沼の人物を知っているのはわたしなんです。」、こう言っております。それから吉良検事は、「メモは全体会議で検討されたと思う。」、同じく「鈴木、田島(両検事)は必ずでていましたし、きいておりました。」、さらに井本最高検公安部長は、「松川事件の特殊性と大沼の特殊な地位とに鑑み、とがめだてしなくともよいだろうという結論になりました。」とあります。こういうことを井本君が言っているわけです。ここにちゃんと証拠がありますからね。写しがあります。そうしますと、大沼君が勝手に持ち歩いたものでないとすると、持ち歩かせたのはだれでしょう。これが一つ。次に、「松川事件の特殊性」と井本検事が言っている特殊性とは何か。第三に、同じく井本君の言っている「大沼の特殊な地位」とは何か。この三点についてお答えを願います。
  98. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 井本さんが証人として述べられたことにつきましては、私はどういう趣旨で述べられたか明らかにいたしておりませんので、その趣旨を私がかわって申し上げるわけにはいかないのでございますが、だれが持たしたかということは、私もまだはっきり承知いたしておりません。それから大沼さんの特殊な地位という意味は私にもわかりませんが、おそらくはこの事件に最初からずっと終始関係しておられた方であるということと、それから検事正の方は、その後何回も異動がございましてかわっておられます。次席も同様でございます。そういったようなことで、この事件が長引いておりますので、当初から関与しておったという特殊な地位という意味ではなかろうかと想像——これも想像にとどまります。
  99. 志賀義雄

    志賀(義)委員 私はなぜあなたに伺うかというに、最初にこの問題を伺おうと思ったら、あなたが欠席をしておられて課長がおられた。そしてそのあとであなたに伺ったのですが、そのときに、これは昭和三十三年九月二十六日、このときに初めてあなたの口から諏訪メモは御本人に返しましたということをそこで言明されて、日本の報道機関の間でも大問題になったのです。そのときにあなたはこう言っておられる。私はまずこう聞きました。最近返しましたかと言ったら「最近です」と、こう言われておる。「日取りははっきりいたしませんが、」と、こうなっておって、では「八月九日に私が伺ったあとで」と、こう尋ねたのに、竹内説明員として、「さように私どもは理解しておるわけでございますが、時日はあるいはそれより前でありましたか、とにかく私どもはやいやい申しましてから後だったと思います。」、あなたが最高検に対してやいやい言われた。思うに諏訪メモは早く返さないととんでもないことになるぞということを言われたのに違いない。証拠が別にあります。「志賀義雄に検察当局の責任を追及されたようになってこれに対する態度をいろいろと集まって話したことはある。」「井本、神山、私の三人で話合った。」、私、つまり福島の三人で話し合った、こう言っているのです。さらに「国会でいんとくが問題にならなかったら返えさなかったかもしれない。」、こう言っているのです。そうして返したことについて「そうです外部の情勢もあずかって力があります。」。これについて判事の方から「それは神山検事等三人協議の意見ですか。」と言ったら「そうです。」、こうなっておる。つまりあなたが私に言われた通り、やいやい言ったので三人が相談して、どうも志賀義雄あたりから追及されて困った。本来は出したくないのだ、諏訪メモを出すと無罪になるから出したくないのだが、ここまで追及されて、竹内刑事局長も、おれの立場にもなってくれとやいやい言うものだから出すことになった。そうでしょう。今のずっとたどってみると、そういうことになるじゃありませんか。
  100. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 その当時諏訪メモを……。
  101. 志賀義雄

    志賀(義)委員 これは私の主観は入っておりませんよ。
  102. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 それは御判断は御自由でございますけれども、当時の私の記憶に基づいて今お答え申し上げますと、この委員会の席上で諏訪メモが問題になったことがございますが、その当時諏訪メモを隠しておるというふうに疑われておったのでは困るではないか、どうして押えておるのかということで、もし押えることが訴訟進行上どの程度に必要であるか検討してもらいたい。もし必要でないという判断に到達するならばすみやかに返してやるのが相当ではないかということは、全く訴訟法の建前からそういう申し入れをしたことは事実でございます。それに基づいて、今お読みになった三人の検事がどういう内輪で話をされたか、それは私の知るところではございませんが、最高検の公式の見解として承っておるところは、その後、先ほど申しましたように、事件を検討した結果、諏訪メモを引き続き領置しておく必要がないというふうに考えたから返しました、こういう通報を受けましたので、その後の国会の席上だったと思いますが、今お読み上げになったように、私から、お返ししたはずですと、こういうお答えをしたつもりです。
  103. 志賀義雄

    志賀(義)委員 あなたがそういう気持で尋ねられたことは記録に出ております。昭和三十三年九月二十六日の会議録にあります。「諏訪メモというのは、実はこの前志賀委員から御質問があって、そういうメモがあったのかなということを私は知ったような次第で、」あなたはそのとき初めて知られた。「それが事件に非常に重大な関係があるかどうか、私つまびらかにいたしておりませんが、それを隠すことによって問題を伏せてしまうとか、あるいは有利な証拠を検察側においても妨害するとかいうような意図ではなかったというふうに聞いております。これは全くそのまま不要なものとして預っておったように私は聞いておるわけであります。」あなたはそう言ったでしょう。ところが、今秋が読み上げましたように、安西検事正の宣誓書が記録の最初にあります。「宣誓書良心に従って、ほんとうのことを申上げます。知っていることをかくしたり、ないことを申上げたりなど決していたしません。右のとおり誓います。安西光雄」となっておる。これは、あなた方は検事をおやりになっているから、こういうものはよく御存じでしょう。そうして私がさっき読み上げたようなことが出ておるのです。「国会でいんとくが問題にならなかったら返えさなかったかもしれない。」「外部の情勢もあずかって力があります。」「志賀義雄に検察当局の責任を追及されたようになってこれに対する態度をいろいろと集まって話したことはある。」こういうふうにある。しかも「井本、神山、私の三人で話合った。」こうなっております。そうなりますと、ここにはどちらでもいいものだからというようなことは一つも出てきていないのです。大したものじゃないけれども、これだけの記録の中に。いずれもそうそうたる検事ばかりである。ちっとも出ていない。先ほども猪俣委員も聞き、私も今問題を出すように、大沼副検事が年がら年じゅう持って歩いた。だれが持って歩かせたか。これは調べて下さるか、法務大臣いかがでしょうか。
  104. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 大臣からその点をお答え申し上げるわけでございますが、その前に、三人の検事が相談をされたという内容でございますが、これはどういうふうに内輪で相談をし、それを証言の際に述べられたか、そこは私、その真意のほどはわかりませんが、隠したものじゃないというふうに、はっきりと私はその通り承知しておるわけであります。隠したものでないということであれば、法律上領置しておく必要があれば置かなければなりませんし、必要がなければすみやかに返してもらう、こういう申し入れに対して、最高検で検討した結果、この段階においてもはや必要でないから返すようにした、こういう正式の答えでございます。私はそれを信ずるほかございません。
  105. 志賀義雄

    志賀(義)委員 ところが、私がここで質問した昭和三十二年八月九日までに、二百四十三人の弁護人が連署でもって、法律に従ってこの諏訪メモを見せてくれということを請求したのです。これについて、今審理係属中だから見せられないという答弁があった。そうして、どうにもこれが打開できなかったので、初めて当法務委員会において取り上げたものであります。あなたは今、何でもないものなら返す、こう言われましたね。返してくれと言われた。ところが、何でもないものならもっと早く返すはずでしょう。二百四十三人の弁護人が、なくなられた仙台の自民党の有力者である袴田弁護人を初めとして請求しても出さなかった。そうしてとうとううるさく言われる、国会でも言われるから出した。こういうことになっているでしょう。どういうことが国会について言われているか。まだこのほかに、「騒がしいのは弁護人の方ですか。」、「それだけでなく、アカハタと商業新聞にも同調者がいますから。」、私が取り上げたのは昭和三十三年八月九日、朝日新聞が取り上げたのは、その一年以上前の昭和三十二年六月のことであります。私が取り上げて新聞が同調したんじゃないのです。一年以上も前のことなんです。判事も、これはだいぶ辛らつな判事とみえて、こういうことも聞いております。「国会法務委員会の問題も一つの理由ですか。」「そうです。」「騒いでいる中に入るのですか。」「入ります。」「検察の威信ですか。」「信用、権威が失墜されることがないように、そういう趣旨を入れてですね。」こう聞いています。「そういう趣旨ですか。」「そういう趣旨も入れてです。」「結局騒がなければ返さない訳か。」「それはそうですよ。」と答えている。そうしますと、あなたのおっしゃることとだいぶ違う。これは菅生事件でもあったでしょう。今だから私がここではっきりあなた方に申し上げなかったことを申し上げます。私が昭和三十年二月の総選挙で出てきて、すぐ法務委員になりました。一つの目的がありました。それは昭和二十五年から三十年にかけて朝鮮戦争があり、われわれが追放され、われわれが地下にもぐることを余儀なくされているその前後から、いろいろと事件が起こりました。松川事件がその一つであります。最後は大分県の菅生事件であります。こういう事件が次々に成功すると、これを謀略としてやる側は、何をやっても成功するという慢心が起こります。だから最後の菅生事件のやり方というものは、実に粗雑きわまるものになっておった。私に対しては、松川事件が重大だから取り上げてくれ、こういう要請もありました。しかしながら、松川事件を最後の目的とするけれども、最初は、やはりこの一番粗雑な事件を取り上げれば全貌が明らかになるというので、二年間この菅生事件を扱いました。そうしたら案の定、菅生の交番を爆破したのは警察だったでしょう。そのときに、さっき名前の出た井本公安部長ですね、そのときはあなたの前任者で刑事局長でしたが、ここであの市木春秋という戸高公徳の書いた脅迫状、これは証拠としてとるに足りないから出しませんでしたと言った。次には追い詰められると、あれは証拠として受け取ったものでないから出しませんと言った。ところがその隣に当時の警察庁長官、今の柏村君の前任者の石井君がおられた。石井君は何と言ったか。確かに証拠として出しまして、その領置書、受取書までもらっておりますと言ったので、井本君も窮地に陥ってしまった。ああなると、役人同士でも自分の頭に火の粉が降りかからないためには、やはりほかの役所がどうなったっていいということを示すものですよ。やはり追い詰められたら足並みが乱れてくるんですね。人のことをかまっちゃいられない。そういうようになって、あの事件の全貌が明らかになった。これはあの当時の一連の事件全部が謀略だ、こういうことを日本人全体が確信するようになりました。それから一年半たって、この法務委員会で、初めて松川事件というものが取り上げられてきたのです。その間にも、ずっとこの問題は、菅生事件自体も発展しておったのであります。そういうことで取り上げてきたのであります。これは今まで私、黙っておりましたが、きょうははっきり申します。疎漏な問題からやると、最初にやった緻密のような事件の内容でもばれてくる。ねばり強くやっておりますと、こういうふうな、検事が宣誓したものが、のっぴきならない証拠になって出てくるでしょう。あなたは、何も重要なものではないから、返せと言ったら返したのだと言われるけれども、検事が今この文書の中で言っているじゃありませんか。外で騒ぐから、隠匿だと言われるからやむなく返したのだ、こう言われている。これも弁護人がそのときに——あなたは何と言われた、弁護人が請求しているでしょう、だから検察庁にあるのだから、これを出せばいいです。しかも、この諏訪メモは実に戸高公徳の足取りと同じことで、昭和二十七年九月中旬から二十八年七月までは仙台高検公安事務室に保管されておった、保管者は稲辺検察事務官。昭和二十八年七月から二十九年四月までは盛岡区検検察官室、全然事件関係のないところで大沼副検事が預かっておった。昭和二十九年四月から三十二年六月下旬までは釜石区検検察官室、大沼副検事。昭和三十二年六月下旬から同七月十二日までは福島地検庁舎、これは六月に諏訪メモのことを朝日新聞が書いたのでこういう処置をとったのです。事実は符合しております。そして昭和三十二年七月十二日から三十三年四、五月まで最高検庁舎、最高検神山欣治検事が保管しておりました。そのあと私が質問したのですね、そうしたらあなたが答弁された。最高検察庁にあるとあなたは言うけれども、調べてみたらない。いいですか、それからが、あなたは何と言われているかというと、「最高検においては、うちの方は持ってないということでありましたが、それではどこにあるの、だろうということで、順次、当時捜査に当りました福島地検、仙台高検——二審の公判がありましたので、そういう方面にはないかということで、いろいろ調査しました結果、正確な日付は今宙に覚えておりませんが、先般、福島の検察庁の事務官ですか、副検事ですかがお預かりしているということであったそうです。それはすぐ返さなければいかぬというので、お返しをしたというふうに私聞いております。」そのときにこういうふうにあなたが答えられて、本人に返した。弁護士が請求しているのに、弁護士に提示せずに、諏訪本人の方に返したわけですね。こういうことであります。そしてそのあとで、昭和三十三年九月四日に諏訪親一郎に還付されるまで、あなたの言われる検察事務官というものは、島倉保検察事務官、名前を伺ったが、あなたは名前を御存じなかった。こういうことになっております。そうなりますと、どう考えてみても、これは検察庁が必死になってこの諏訪メモを隠しておった。法務委員会で言われ、その前に二百四十二名の弁護人から請求され、新聞にも騒がれる。それでもうやむなくこういう処置をとった。事実はこういうことになっております。どうして今申し上げたようにこの書類が方々渡り歩いたのか、あなたは決して大沼副検事に責任をおっかぶせようとは思わないということになります。私が伺うのは、だれが責任者かということを法務大臣は御存じないかもしれない。それならそれでよろしいから、だれがこの責任をとるのか調べていただきたい。法務委員会において前任者の井野法務大臣ははっきりこう言っています。昭和三十四年の八月十日です。「松川事件に対しましては、本日最高裁判決があったようでございますが、私はまだその内容を詳しく聞いておりませんが、破棄、差し戻しをしたようであります。従って、裁判は再び仙台へ移ると思います。検察官の責任について御質問でございますが、検察官としては今まで自分の信ずるところをもってこの事件に処して参ったと思います。従って、その間に人権じゅうりんのいろいろの問題があったり、また不当なことがございましたら、これは検察官の適格審査会において十分審査されるべき問題であって、責任も明らかにされると思います。」こう言っております。もちろん検事が主張しても、判決、最高判決で検察当局の思い通りにいかないことは間々あるものでございます。そういうことを私一はかれこれ言うのではございません。この場合は、きょう猪俣委員も申しましたように、今まででも検察庁が、弁護人に当然示すべき証拠閲覧権というものを全然認めないで、勝手に自分たちが被疑者あるいは被告人を有罪に判決するような材料を出してくる。それに不利な材料、被告にとって有利な材料は出さないというので、ここでは自民党の方で弁護士をしておられる委員も、その点についてはこの際明らかにしておかなければいけないという御意見もあって、きょうこの委員会で、松川事件についての諏訪メモその他証拠閲覧の弁護人の権利を全然無視してやってくる検察庁の態度、これをこの際はっきりしていかなければならない、こういう問題になったのであります。こういうことで、検察官適格審査会で責任を明らかにするということまで前任者の井野法務大臣も申しておられます。これは松川事件最高裁判決当日のことです。そしてきょう法務委員会で、そういう証拠閲覧権云々について、検察庁と同じ権利を持ち得るようにしなければならない、こういう弁護士たちの共通の要求、こういうことがあるのであります。その点について法務大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  106. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 第一点の大沼副検事のこの問題において占めました地位あるいは行動等については、それに関連する関係官の分もあわせて今後ともなお十分調査をいたしまして、井野元法相の仰せの通り真相を明らかにして、責任を負わすべき者があれば当然責任を負わすことが必要であろうと私も考えます。  また証拠物件その他事前の証拠閲覧権というのですか、権と言えるのかどうか、私よくその言葉を存じませんが、事前に弁護人が検察当局の持っておる書類等を閲覧する問題については、いろいろと一般弁護人側の方で御要望のあることは承知しております。従って、先ほども申しましたように、今後この問題についての制度的な改正をどうするかは十分検討して参りたいと思う。もっとも、今日までのところにおきましては、そういう要望があった場合に、検察当局に出さなければならぬ義務があるか、その証拠を閲覧せしめなければならぬ義務があるかどうかということについては、むしろ逆に判例がございまして、そういう義務はないということになっておることは、これはもちろん御承知だと思いますが、今日まではその取り扱いになっております。しかし、これは今後とも大事な問題でございますから十分検討して参りたい、かように考えます。
  107. 志賀義雄

    志賀(義)委員 ところが、まだ出ていない証拠があります。たとえば佐藤一に関する証拠、東芝八坂寮の管理人木村ユキヨの当時保管していた食事伝票、宿泊代帳がまだ証拠として出されていない。この前やいやい言われたら検察庁が出しましたね。どうです、竹内刑事局長、出させるようにもう一度やいやい言って下さるか。
  108. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 その証拠を出す出さぬということは、やはり訴訟手続に従ってやるべきことなんで、私も、前の諏訪メモのときも、訴訟手続を無視して絶対に返してやれという趣旨でやいやい申したのではない、その訴訟手続の取り扱いに妥当を欠くことがあってはならぬという点ではやいやい申しました。しかし、その今の伝票が立証上どれだけの価値があるものであるか、また検察官として見せるべきものであるのか、現に押さえておるのかどうかも存じません。押収しているかどうかも存じませんが、押収しているもので見せないというのか、押収していないために出せないのであるか、その辺の事情もわからぬから、結論的に申し上げることはできないのでございますが、この段階になりましたので、私はできるだけ関係者に、もしあるならば見せて、そうして適正な裁判を受けるというふうにしていくのが相当だということは、これは抽象的には私はかねがねそういうふうに考えている一人であります。
  109. 志賀義雄

    志賀(義)委員 竹内刑事局長のような法律の実務上の専門家に対して、できないことをやいやい言えと私はそそのかしませんよ。またそそのかされるようなあなたでもなかろう。ところが、今申しました食事伝票と宿泊代帳は、差し戻し審の判決でこの点を指摘しているのですよ。これが一つ。もう一つ、それによってわれわれに明らかになったことは、当時捜査官が明らかにこの食事伝票と宿泊代帳を確認し、かつこれを使って調書を作っているのです。いいですか、捜査官の方ではこれを証拠に使っているのですよ。調書を作っておきながらそれを出さない。差し戻し審の判決でもその点を指摘されている。だから明らかに訴訟上のルールに従ってそういうものを出すべきである、私はこういうふうに言うのです。あなたがやいやい言って下さればきっと効果がある。だからやいやい言ってくれますか、こう聞いている。どうです。
  110. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 御質問の趣旨はよくわかりますが、先ほど猪俣委員の御質問に対してもその点に触れましたが、さらにそれを敷衍して私が申し上げますと、取り調べに当たった警察官がその伝票を見たと思います。そうしてそれに基づいて調書も作ったと思いますが、その調書を作ったから、その当時押収すべきであったという議論は出てくると思いますが、たまたま押収していなかったか、あるいはその調書はそういう証拠を伴っていない調書でありますために、検察官としては、それ自体は当然には証拠能力がございませんので出さないことにしておったのを、今度の門田差し戻し審においてとにかく出せということで、立証の趣旨も、事実認定のための証拠としてではなくて、自供等の変遷の経過を示すもの、あるいは述べておる供述についての何らかの価値に増減をもたらす趣旨の証拠になるであろうという意味で、つまり刑事訴訟法の三百二十八条に基づいて千六百通から出しておるようでございます。そういうのを見て、裁判所の方では、すべかりしであったとか、あるいはこういうときには押収しておくべきであったとかいうような御意見がその判決の中に盛られておるようでございますが、それは捜査が拙劣であったという点の御非難としてはともかくも、現実に押収してなければ出しようもないわけでございまして、そういう点を私、先ほど猪俣委員のときも、抽象的でございましたが申し上げたわけでございます。
  111. 志賀義雄

    志賀(義)委員 どうも肝心の点逃げられる。いいですか、差し戻し審で、捜査といろいろな経過を示すために、検察庁に有利な証拠としてそういう調書が出されたのでしょう。それならば、この際、こういうことが差し戻し審でも、今こういうものがはっきりみんなに出ていなかったじゃないかと仙台高等裁判所から指摘されたくらいですから、それならばその点を明らかにするために、これは当然出さるべきものだ。出さるべきものだから、あなたがやいやい言われれば出せる。だからその事情の説明を聞いているのじゃない、あなたがやいやい言うかどうかということを聞いているのだ。ほかのことは要らないからそれだけ答えて下さい。
  112. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 私はやいやいは申しませんが、志賀委員から仰せの点は合理的に説明をしてお伝えをいたします。
  113. 志賀義雄

    志賀(義)委員 やいやいというのは私が言っているのじゃないのだ。あなたが速記録で前に言ったことですよ。それを私が引用しているにすぎないのだ。  そこで証拠の保管について重大な問題があります。いろいろと言われるけれども、また法務大臣言われましたが、安平元最高検公判部長はこう言っているのです。「秘密事項があって部内にも教えず、松川事件の内容は公安の代表的なものでした。」秘密事項で部内にも示さない。「公安は特殊な領域にあり秘密事項は全然教えてくれません。」諏訪メモについて聞かれたときに、「とにかく被告人、弁護人にとって重大なものであることは分りました。」こう言っているのです。最高検公判部長であった安平元検事が、裁判所の調べに対してこういうふうに告白しているのです。いいですか、先生はこう言っているのです。ですからそういうこともありますから、あるいは法務大臣もつんぼさじきに置かれておわかりにならないところがあるかもしれない。これを一つ調べて、とにかく今、やいやいは言わないが合理的にやると言われたから、一つ法務大臣、よく刑事局長を指揮して出させるようにして下さるかどうか、その点を一つ伺いたいと思います。
  114. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 御意見、御要望の存するところはよくわかりましたから、十二分に検討いたします。
  115. 志賀義雄

    志賀(義)委員 三輪さんが来ておられますが、これはずいぶん古い新聞の昭和二十六年三月十八日、晴れの表彰状授与、松川事件の玉川警視らにと、ここに玉川警視が賞状をもらっている写真があります。ところが井野法務大臣は、玉川警視であろうと何であろうと、法律に基づかない不当なことをしたら必ずこれを明らかにすると言っております。近く判決も出ますが、それで私どもはこの勝訴を疑いませんが、そうした場合にこれはどういうことになりますか、三輪さん。
  116. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 先ほどもお答えいたしました通り、玉川警視の偽証については、私まだ十分研究しておりませんので、お答えの段階でございませんことは、先ほどお答えをいたした通りでございます。
  117. 志賀義雄

    志賀(義)委員 それで最後に、きのう柏村警察庁長官に会って話しましたが、須磨公園で開かれた共産党の決起大会に、遺憾ながら兵庫県警の方からいわゆるスパイを出して、そしてスパイをしたことは悪かったということを本人も言って、名刺を交換して、本人の身分を証明する警察手帳の問題が事件になりまして、翌日百名以上の機動隊が来て、立会人もいない、弁護人の立ち会いのないところで、兵庫県委員会を捜索したというようなことがあります。須磨公園は御承知のように一ノ谷の下のあたりにある。まるで一ノ谷合戦を再現したような大騒ぎをやらかした。完全武装でやった。あまりひどいことをするので、共産党の代表が兵庫県の公安委員長室に参りましたところが、ここにも機動隊がおりまして、三分以内に退去を命ずる、退去しなければ逮捕するといって押し出したそうであります。このことについては報告はありましたか。
  118. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 今ごく簡単にお述べになりましたことにつきましては、私も報告を受けております。それからなお、共産党の中央の責任者の方が警察庁の本多警備一課長に面会をされて抗議をしておられる内容も私は承知いたしております。それらにつきまして、さらに重ねて現地に報告を求めました。  そこでお尋ねの点をかいつまんで簡単にお答えをいたしたいと思いますが、第一に、百名余りも連れてきて捜索をしたということでございますけれども、当初ほぼ三十人の者が捜索に参りましたところが、次第にその周囲に党員の方でありましょうか、あるいは他の人も含めてでありましょうか、二百名くらいにもなり、非常に喧騒をきわめたという状態でございます。御承知のように、前日は須磨公園で五人の警察官が暴行を受け、傷害を受けておるのであります。こういうことのために、またこの捜索が無事に終わりませんということは困りますので、機動隊を七十人あとから現地に派遣したということでございます。  第二に、令状を示さないで捜索したということでございますが、これは委員長の多田留治氏に令状をお示しをいたしてございます。従来令状を示さないで差し押えたというような御批判が再々ありますので、私ども、そういうときには令状をお示しして写真をとることにいたしておりますが、これは多田委員長にお示しした写真でございます。  それからなお、差し押え、捜索にあたりまして立会人がないというお言葉でございますが、多田委員長、それから宿直の方、これが一階、二階について立ち会いをしていただいております。その状態も写真がございます。それから三階は立花さんもお見えになって立ち会いを願っておるのであります。  それから、すぐ県警本部に抗議に見えたことは御指摘の通りでございます。ちょうど本部長は会議のためにお目にかかる時間がないということでお断わりをいたしましたが、本部長を出せということでそこで強く御主張になる。しかし、こういう事情でお会いできないということで係の警視がお引き取りを願うように申したということでございます。そういう報告を私は受けております。
  119. 志賀義雄

    志賀(義)委員 今、写真まで示されましたがね。捜査に行った警察官が捜査令状を示していると言われました。それは捜査を済ませたあとでとった写真です。最初にとった写真じゃないのです。そうして部屋が幾つもあるのに、これに一々立ち会っていられないのに、全部捜査をしているのです。そういうこともあります。  それで問題は、私ども抗議するのは、やがて今国会が終わって参議院の選挙に入るのであります。各党ともその準備の前段階にある。そういうときに六名にも逮捕状を出して、こういうことをやる。明らかにこれは選挙に入る態勢に対する妨害にもなります。いろいろな理由からして、私どもは皆さんのやり方について昨日も柏村警察庁長官に抗議をしたわけであります。この件については、自民党の両院議員総会が三時からあるそうでございますので、きょうはこの辺で打ち切りますが、なお公安調査庁に対するきょうのスパイ強要事件なんかもありますから、これは別の機会にやります。とにかく植木法務大臣の在任中に、松川事件のようなことが起こったのですから、先ほどお約束なさったことはやっていただきたいと思います。  私の質問はこれで終わります。
  120. 林博

    ○林委員長代理 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時二分散会      ————◇—————