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1962-04-18 第40回国会 衆議院 文教委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月十八日(水曜日)    午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 上村千一郎君 理事 臼井 莊一君    理事 竹下  登君 理事 八木 徹雄君    理事 米田 吉盛君 理事 小林 信一君    理事 村山 喜一君 理事 山中 吾郎君       伊藤 郷一君    中村庸一郎君       濱野 清吾君    松永  東君       淡谷 悠藏君    杉山元治郎君       高津 正道君    三木 喜夫君       鈴木 義男君    谷口善太郎君  出席国務大臣         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君  出席政府委員         文部事務官         (大臣官房長) 宮地  茂君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局長) 清水 康平君  委員外出席者         総理府事務官         (公正取引委員         会経済部長)  竹中喜満太君         総理府事務官         (公正取引委員         会審査部第二審         査長)     野上 正人君         検     事         (刑事局刑事課         長)      羽山 忠弘君         文部事務官         (大臣官房総務         課長)     木田  宏君         文部事務官         (初等中等教育         局教科書課長) 諸沢 正道君         文化財保護委員         会委員長    河原 春作君         文 部 技 官         (文化財保護委         員会事務局美術         工芸課長)   松下 隆章君         専  門  員 丸山  稲君     ————————————— 四月十七日  委員井伊誠一辞任につき、その補欠として勝  間田清一君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員勝間田清一辞任につき、その補欠として  淡谷悠藏君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  学校教育に関する件  文化財保護に関する件      ————◇—————
  2. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 これより会議を開きます。  学校教育及び文化財保護に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、この際これを許します。高津正道君。
  3. 高津正道

    高津委員 今問題になっております佐野乾山、最近は新乾山という言葉で呼んでおるそうでありますが、この新乾山の問題について所有者から審査申し出がありましたか。
  4. 清水康平

    清水政府委員 名古屋に住んでおられます森川という方の父子二名の連名で、去る七日の日に開封されたまま、新聞記者科学調査をしてもらいたいという請願書文化財保護委員会に届いております。
  5. 高津正道

    高津委員 それは書類上に不備があるのですか。
  6. 清水康平

    清水政府委員 文化財保護法上こういうものについて何も規定はございませんが、行政法上不備とか不備でないとかいう問題の内容ではないと私は思います。
  7. 高津正道

    高津委員 この前にこの問題を文教委員会で扱った場合に、所有者森川さんの方から審査申し出があったら審査をするけれども審査申し出がないのに文化財保護委員会が立ち入って審査をする、そういう権限はないと思います、申し出があったら審査をするという御答弁をあなたから私は確かに聞きました。今申し出があるのだから、あったらそれを受けて審査を始めるべきであると思うが、あなたのお考えはいかがですか。
  8. 清水康平

    清水政府委員 この前高津先生から、所有者から科学調査の依頼があったならばするかしないかというような御質問がございました際に、私といたしましては、こちらから積極的にやる意思はございませんが、もしそういう申し出があった場合はその際あらためて検討いたしますというような意味のことを申し上げたことを記憶いたしております。このたび森川父子から科学調査をしてもらいたいということが参ったのでございます。これは私はこの前にも申し上げたと思いますが、また昨年私どもの手落ちで、例の永仁のつぼの際にもそういう話が出たのでございますが、こういう美術品の鑑識と申しますか、こういうようなものは、何と申しましても原則といたしましては、美術に関する学者研究者が多年にわたる経験と勘によってこれを一般普通社会にも問うて、そうしておのずからきまるのが原則でありまして、科学的調査はむしろ補助手段であるのじゃなかろうかということを申し上げたことを記憶いたしておるわけでございます。従いまして、このたびのいわゆる佐野乾山の問題にいたしましても、その方面の専門技官なり研究者なり学者がおのれの良心に従って研究をしていけば、おのずから帰すべきところに帰して結論が出てくるのではないかと私どもは思っておるのでございます。特に昨今は展示もされたし、また先日は討論も行なわれておりますので、これから次第にそういうふうに検討いたしまして、おのずから結論が出てくるのじゃないかと思うのでございます。従いまして私どもといたしましては、直ちに科学的調査を実施しようという意思はただいまのところは持っておりません。またただいま申しましたような工合で、それぞれの専門技官学者がまず研究していかなければならぬ。それが本義でございます。またこのたび森川父子から私どもの方に科学調査請願が出ておりますけれども、その中にもこういう言葉がございます。「乾山真作かいなかを決定する方法美術史的見地や正しき美術鑑定の角度から行なわれることが第一義と存じまする」云々ということもございますので、私どもといたしましては、やはり第一義としては、専門家がじっくりと研究をし、批判をし、そうしてしかる後に結論が出てくることを期待しているようなわけでございます。
  9. 高津正道

    高津委員 その請願書の中に、科学的調査は補助的なものだ。第一義専門家がやるべきだ。そういうような意味文句が書いてあるのですか。
  10. 清水康平

    清水政府委員 この請願書の中にはただいま申し上げましたことが第一義と存じまするがと書いてございまして、科学的調査補助的手段だということは書いてございません。
  11. 高津正道

    高津委員 この問題は今や美術批評家世界でも、古美術商の間でも、こんなに大きな問題はないというので大問題になっており、テレビ会社案内状を見ても、今や社会問題として大きくクローズ・アップされておる。テレビ放送特別番組を組んだというような案内状にもそういう文句があり、他の新聞ども今や社会問題になった、こういう扱いです。そのような大きな社会問題が現われたのでありまして、これは唐九郎の永仁のつぼよりははるかに大きな問題であって、このような場合にこそ、美術行政を担当している文化財保護委員会が乗り出してでも調査せねばならない責任があるのだろう、このように考えるのでありますが、申請が出ているけれども扱わないというのは、職務怠慢にもなるのではないか、このように考えますが、相変わらず自説を固持していこうとされますか。
  12. 清水康平

    清水政府委員 私どもといたしましては、いわゆる佐野乾山に関して重大関心を持っていることは申し上げるまでもないことでございます。従いまして各専門技官などは、個人立場から現品の一部を見たり、いろいろ研究はいたしているのでございますが、いわゆる佐野乾山がこの世の中に現われて問題になりましたのは、わずか数カ月前の問題でございます。なるほど紙面社会では問題になっておりますが、窮極はやはり学問研究の問題でございますし、文化財保護委員会といたしましては、永仁のつぼのように国でもって指定したものでもございません。従いまして文化財行政上から積極的にこれに乗り出さなければならぬというふうには、ただいまのところは考えておらぬのでございます。
  13. 高津正道

    高津委員 この間は国の指定したものであるとか指定したものでないとか、そういうことでなしに、森川父子の所有する新たに現われた二百数十点の佐野乾山、それについて質問をしたのに対して、願い出があれば審査するが、願い出がないから審査しない、こういう御答弁であったのですよ。指定という言葉指定品でないからという理由はきょうあらためて聞く言葉であって、指定品でなくても扱わねばならぬのではないですか。
  14. 清水康平

    清水政府委員 まだ私の言葉が足りないのかもしれませんが、建前といたしまして、文化財保護委員会専門技官は常に研さんをしていかなければならぬのですから、いろいろな場面にぶつかりますと、それぞれの立場から研究は怠っておりませんが、国の行政機関として文化財保護委員会そのものが積極的に乗り出して調査する場合は、御承知のごとく多年にわたってこれは非常に尤品である、これを重要文化財なり国宝に指定しなければならないというふうにだれもが考えた場合、そういう場合には積極的に文化財保護委員会そのもの調査に乗り出すのでございます。あるいはまた指定している物件がどうしても修理しなければならぬというような場合にも乗り出しているわけでございます。しかしいわゆる佐野乾山の問題は、先生おっしゃいましたように、非常に今日大きな問題になっておりますので、文化財保護委員会としては大きな関心は持っているわけでございますが、もう少し詳しく申し上げますと、これはまだ学問世界でいろいろと論議されている時代であり、またこれは指定している物件でもございませんし、またかりに科学調査を行なうというような場合におきましても、実はわれわれとしてもいろいろ検討はいたしているのでございますが、これにはいろいろの科学調査をする技術的な難点が予想されるのでございます。そういう意味合いから、今直ちに科学的調査を実施しようというのはちょっと考えておらぬということを申し上げている次第でございます。
  15. 高津正道

    高津委員 科学的調査技術的難点というのはどういうようなことですか。
  16. 清水康平

    清水政府委員 科学的調査の困難と申しますか、技術的な難点があると申し上げたのでございますが、その点はどういうことかという御質問でございますので、要点だけを申し上げてみたいと思います。  これにはいろいろやり方があるのでございますが、エキス線螢光分析というのがございます。それから位相差顕微鏡による検査もございます。それからもう一つ残留磁気による検査というのがございます。この点いろいろ検討いたしているのでございますが、なかなか右とも左ともつかないような、結果が出るか出ないか、疑問を持っておるのでございます。  ちょっと詳しく申し上げますと、エキス線螢光分析は、御存じのごとく、焼きもの表面釉薬に含んでおりまする若干の元素がございますが、元素の比率を検出いたしまして、それを互いに比較する方法でございまするけれども佐野乾山の場合には、検査する場合には、多種多様のいろいろな種類佐野乾山と思われるものの作品を多く集めまして、それからまず基礎的なデータを集めなければならない。そのあとで問題の作品から得たデータと比較しなければならぬのでございまするけれども、今日の場合には、いわゆる佐野乾山基準となる作品がないということが、何といってもこの方法を用いる上からいって非常に大きな難点になるのでございます。昨年のいわゆる永仁のつぼの際には、これは一つの例として申し上げるのでございますが、あの場合には類似品がたくさんございました。瀬戸の完形品もございます。破片もございます。あの場合は、完形のものは九十一個、破片は百四十九片集めまして、様式、技法のほかにこの検査をいたしたのでありますけれども、いわゆる佐野乾山につきましては、私の聞いたところによりますと、いわゆる佐野でできたものは一体どこにあるのか、あるようなないような、類似品を集めるだけでも非常に困難だ。このようにこの佐野乾山基準となる作品がないということが、非常に困難である一つの原因でございます。  次に、位相差顕微鏡による検査でございますが、これは御承知のごとく、焼きもののでこぼこでありますとか、あるいはきずでありますとか、あるいはアルカリ性の釉薬炭酸ガスによって腐蝕する度合いを調べるという方法でございます。このたびのいわゆる佐野乾山は、聞くところによりますと、佐野の旧家に長い間保存されておった、倉庫に大切に保存されておったといわれておりますが、そうなると、ただいま申しましたような表面にあるきずや腐蝕というものが自然少ないと思われるのでございます。いわゆる永仁のつぼのような出土品でありませんので、この場合にも、出土品の場合のような有効な検査の結果が得られるかどうか、かえって得られないのではないだろうかと思うのでございます。  それからもう一つ方法は、残留磁気による検査がございます。これはちょっとくどくどしく申し上げて恐縮でございますが、地球が一つ磁場だといわれておるのでありますが、この磁極の方向が百年、二百年、何百年の年代によって変化しているのだそうでございますが、制作当時、焼きものの内部にできた鉱物磁気方向を調べて制作年代を推定して決定しようというのが残留磁気による検査でございます。ところが、この佐野乾山の場合は——もちろんこれはもっと調査しなければわからぬのでございますけれども、普通の焼きものに比べまして焼成温度が非常に低い、人によりますと、楽焼きだと言っておりますが、非常に焼成温度が低うございます。その温度が七百五十度以下になりますと、焼きものの中に含まれておる磁気方向が必ずしも一定の方向に向かないおそれがある。いわんや、もし、その焼きものの中の土の中に鉄分が含まれない、あるいは少ないということになりますと、磁気が結局微弱になりましてこの方法はあまり有効ではないのではないか。いわんや、文化財保護委員会付属機関にあります保存科学部で持っておりまする施設としては、磁気磁場が一様の方向になっている瓶子のようなものならば比較的楽なのでありましょうが、いわゆる佐野乾山はさらのようなものが非常に多いようでございます。こういうような平面的な場合にはあまり効果が期待できないのではなかろうかというようなところまで、われわれとしては検討しておるのでございますが、先ほど来申し上げたような事情で指定もしておりませんし、また科学検査の上から申してもいろいろと難点がございまするほか、いわゆる佐野乾山世の中に出てきてわずか数カ月でございまして、目下学界において専門家の間においていろいろ論議されておる最中でございますので、あれこれ考えまして、文化財保護委員会といたしましては、ただいまのところ、今直ちに科学的調査を実施しようというような気持はないということを申し上げた次第でございます。
  17. 高津正道

    高津委員 永仁のつぼのような瓶子でないから、残留磁気の多少という点からも科学的審森が非常にむずかしい、それから出土品でないからきずが多いか少ないかというその年代調査もむずかしい、もう一つはまた初代乾山の真正な基本になるべきものがないのだから、比べるのに非常に困るというような理由をおあげになりましたが、今度の新乾山に対して疑念を持つ側が、その他たくさんの間違いないという点をあげておるのでありますから、それらの点を考証し、調査すれば、結論が出るので、磁気の点の調査ができなくても、初代乾山本物がなくても、この出てきたものがにせものであるかどうかというその審査はできるから、根本の本物がなければ調査ができないというのは理由にならないと思っていますが……。
  18. 清水康平

    清水政府委員 今高津先生のお話にございました、だれが見ても佐野でできたというようなものが一体幾つあるものか、そういうようなものと比較しないと、資料の収集がまたできないし、困難だと申し上げたのでございますが、現在いわゆる佐野乾山につきまして専門家その他学者が、今日展示会も行なわれ、討論会も行なわれておりますので、それなども頭に入れて常に研究いたしておりますから、その結果は自然にわかってくるのじゃないだろうかと思うのでございます。そういう点につきましては、文化財保護委員会そのものとしては発動しておりませんけれども、各個人専門技官が一部見ておりますし、またいろいろ研究いたしてはおります。しかし文化財保護委員会としては、結論をここでもって右にする、左にするというようなことは、今のところ考えておりません。
  19. 高津正道

    高津委員 この佐野乾山なるものが二百点、三百点もたくさん出たときに、文化財保護委員会のあなた方の下僚の中で、これは本物なりというちょうちんをかついだといいましょうか、東西の両権威と認められておる——その東の権威というのは、東京国立博物館林屋晴三さん、あれは陶磁室長でしょう、それから京都では美術工芸室長藤岡了一氏、他にも名前をたくさん出しておられるが、そういう人が新乾山に対して、これはいいと言っておるわけです。それからバーナード・リーチを紹介して、連れていって、これはすばらしいと言わせたのも藤岡さんが案内役を勤めておるのです。それから森川さんを最初米政へ案内していったのは林屋さんなんです。すなわちみんな東西の両権威と認められる人が大いに動いて、これはいいものだと宣伝したのです。それは作品についてでありますが、今度はそれと表裏一体をなす関係にある佐野手控帳なるものがたくさん出てきた。それに対しては東大の有名な、これを専門研究しておる人が、これは本物だということを言われたわけです。そのくらい役所関係本物説にみな回ったわけであります。  そこで問題はまだ残るが、出所がどうかということが一番大事なんです。私はある社の好意によって、きょう御出席淡谷悠藏代議士、それから早くも勇気を持って、これはにせものだということを言われた山田多計治氏、——兵庫県の芦屋に住んでおられます、それから京都加納白鴎氏は学者でもあり、制作者でもあり、こっちの大丸などで個人展覧会どもやっておられる人だと聞いておりますが、そういう人と一緒に約二十点の現場の作品を兄、そうして佐野手控帳も詳細に森川さんから説明を聞いたのであります。三時間以上でありました。それで、それが済んだあとで、私がまたその本物説をとっておられる有力な社の——社が違うのですよ。二人の方にきめ手は何ですかと、こう聞いた。その場合に第一は、「東西の両権威」という言葉は使われなかったが、東西の両権威がこの作品を認めておるじゃないか、本物説ではないか。第二は東大の助教授が文書を本物と認めているじゃないか。第三に、そんなに大量にできるかできないかという疑問があるが、それに対しては京都工芸技術指導所有吉栄三郎という技師が証明しておるので間違いはない、問題は出所である。そこでわれわれは二人、その佐野周辺を、この家から売ったという家を、森川さんから聞いたところをずっと歩いてみた。みんな蔵が二つも三つもあるうちだ。そうして写真を並べて、どれを売ったのですかと言えば、かるたを上手にとる人のように、これとこれを売りましたというふうにはっきり言うから、出所は非常に明らかであって、われわれはこれは本物だと信ずる。きめ手は何かと私が最後に聞いた場合に——今の三時間われわれが聞いたその席ではないですよ。別の席だが、きめては何かと聞いた場合に、ざっと四つ材料が出たのであります。役所関係が三種類保証に立っておるし、片方はりっぱなジャーナリストの足で一緒にかけめぐって、間違いなかったという出所保証があるわけです。それを聞けば大ていの人は本物と思ってしまうが、反対側を聞けば、また全くもっともであって、たとえば第一に、佐野手控帳につきましては、これは虫穴を避けて書いてあるのはどういうわけだ。たとえば虫が食っていますね、そこに「の」の字を書こうとして、穴までいったのじゃしようがない、穴の前でとめてあるが、筆だからどうしてもそこにしっかりこぶができるじゃないですか、とめたあとが非常に、露骨にわかって、その虫穴をおそれてその前でとめてあるわけです。それから片方の「の」の下が曲がるようにしてあるか、いかに言ってもこれは細工だということがわかる。こういう反対論が出ております。これは奥田直栄という専門家がそういうことを説いておるのであります。これは刑事問題ですよ。ヨハネ伝ですかな、「初めにことばありき」というのにならえば、「初めに虫食いの古い紙ありき」、あとでものを書いたということになる。これはもう近作であることは明らかであるでしょう。あなたの言われるような残留磁気でわからなくても、真偽の鑑定は私はできると思うのです。そういう反対論がありますし、また「みそかの月のさえにけるかも」というような歌が出てくるが、「みそかの月」ということはない。ないものの材料に「みそかの月」という言葉が使われておる。こういう席で恐縮ですけれども、「女郎のまことと卵の四角あればみそかに月が出る」というように、それはないもののたとえになっておるのですからね。それは新暦と旧暦の取り違えであって、現代の人がこしらえるからそういうことになるんだ。それから手控帳を読んでみるとあまりにも多く現代がながある、これはもうにせだとその国文学者が言うのであります。だから残留磁気だけにたよって、あるいはきずそのものが合っておる、合っておらぬというようなことは、その議論からいけば消えるのですよ。それからまた、そのもの自体についても、われわれは森川さんに三時間も質問しておりますから、そのために——その間じゅうずっと、さきに言った加納という陶芸家はめがねを出したりして見ておりますから、私はその鑑定書を求めたのです。その鑑定書がきたので、ほんの一部だけ読みますと、「この十九点の軟陶器の胎土は全部同一種の原料粘土が用いてあります。それらは現在愛知、岐阜、滋賀県下より量産される完全に配合精製された陶土であって今日普通に新陶器が造られつつある原料土であると思っていただければ間違いありません。」ニワトリの混合飼料みたいな標準なものが出回っているわけです、その分でやったんだ、こういうのです。「この合成土化学成分は既に行われていることですが、その産出地域も勿論数百年前の発見以来より継続採掘され来ったのであって、偶然に他の地方よりも産出したという事があってはならないのであります。さて乾山京都在住の頃に乾山以前の陶工があまりやらなかった手法を用いて書画陶表面書画を描く効果を目的とした陶器)に適当な陶生地を造ろうとして化粧がけ方法を始めたのであります。つまり火力に対して弱く変色する鉄分など夾雑鉱物の多い下手な陶土で成形した器物の表面へ、泥状の白土を塗り或いは掛けることによって失透明な紙絹に似た状態の陶生地を造成することであります。」それで佐野伝書江戸伝書から証拠を一ぱい出して書いてありますけれども、それを読んでも時間がかかりますから読みませんけれども、あの土というものはもう普通のものだということを名誉と責任とをかけてその人が鑑定しているのですよ。そういう品物自体についてもそういう反対論がはっきり出ております。  それからもう一カ所、絵具というかそれについても、「今回の作品に於てはかき色であるべき部分は近代調の赤色或いは紅色が感ぜられ、黒色には大正黒とも俗称されている純黒色或いは灰黒色が使われているように見受けました。其他の釉色についても意見はありますが、繁を避けて省略して」云々というのであります。だから絵具も新しいし、土そのものも市販されている分である、これは間違いないというそのもの自体についての反対論であります。  このように賛成論反対論が両方合掌立ちしているのでありまして、美術行政を受け持っておるところの文化財保護委員会というものは、残留磁気が、どうにも比べるべき真品初代乾山本物、それがどこにあるかわからぬから調べられぬということは言えない。やはりこれは乗り出してきっぱりけじめをつけなければならぬ問題であろうと思うのです。一点百万円ならば二百以上というのだから二億数百万円という値段のものになり、これがにせものだということになれば、そういう値段はなくなるのでありまして、問題は非常に大きくて、早く解決しなければいけないのであろう、このように考えます。問題は大きいので乗り出しなさい、乗り出すべきだ、こういうことを私申し上げたわけです。御意見を承りたいです。
  20. 清水康平

    清水政府委員 ただいま高津先生からまことに貴重な御意見をつつしんで拝聴いたしたわけであります。先ほど来申し上げました通り、私どもといたしましては、美術品というものの調査ということはあくまでも学者専門家の多年にわたる貴重な研究、尊い経験に基づいて、そうして正しい鑑識が行なわれるということが本義でございまして、科学的調査は全くの補助的手段と思っておる次第でございます。従いまして文化財保護委員会といたしましては、指定物件ではありませんが重大関心を持っておりますけれども文化財保護委員会そのものが活動するということはただいまのところ考えておりませんが、それぞれの技官は、それぞれの立場から調査研究しておると同時に、民間におきましてもその方面の大家、学者が現在甲論乙駁、いずれそのうちには帰すべきところに帰するのではないかと、深くこれを期待しておるような次第でございます。
  21. 高津正道

    高津委員 どうもあなたの下僚の人が、初めあまり積極的に本物説で動き過ぎておられるので、それにけがのないように白黒を自分で出さないで——これはとても長い間果てしない議論になりますよ。この論争はずっと続きますよ。それで本気に調べるということになるときめ手が出るが、民間の論争にまかせておいたのでは両方とも長い間論争するので、あなたの方が乗り出さないのは下僚をかばうためではないか、こういう疑いを受けることはないでしょうか。
  22. 清水康平

    清水政府委員 文化財保護委員会事務局あるいは国立博物館あるいは文化財研究所にもそれぞれの専門の技官があるわけでございます。先ほど林屋晴三氏の話が出ましたが、林屋技官は東博の陶磁室長ではございません。陶磁室長は別に田中作太郎氏がおられるわけでございます。文化財保護委員会のそれぞれの専門技官も、それぞれの信ずる道によって進んでおるのでございまして、一部の意見にもいろいろありましょうし、いろいろ意見を持っておるのでございますが、それがまだ集大成して文化財保護委員会の意見というところまでいっておりません。それぞれの立場から真剣に自分の意見を発表し、これに対して他がまた批判をする。反対意見がまたある。世論の反対も受ける。またそれに対して学者的良心に従って自分の研究を発表するというところによって次第に研鑽が深められ、学問も進められ、しかる後にやがてはこの問題も帰すべきところに帰するんじゃなかろうかと私どもは信じておるような次第でございます。決して専門技官研究をはばむとかなんとかというような気持はございません。それぞれの立場から活発にやっておることと思っておる次第でございます。
  23. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 村山喜一君。
  24. 村山喜一

    ○村山委員 大臣も時間がございませんので、簡単に、簡潔に質問をして参りますから、答弁も明快にお答えを願いたいと思います。  まず第一の問題は、先般来教科書汚職の問題に関連いたしまして、参考人の方々においでを願いまして、いろいろ反省の事情をお尋ねをいたしたわけでございますが、これに関連いたしまして、行政上の問題として、大臣に決意を承っておきたいと思う点があるわけでございます。私の手に入れました資料によりますと、文部大臣の所管下にあります国立国語研究所、ここの近代語研究部長をしておいでになります林四郎という方がおいでになりますが、この方は昭和三十七年の二月二十二日、熊本県の小中学校の国語研究会に出張をしておいでになります。その研究会を東書の九州の支社の営業課長の中島肇という人と、それから熊本県の近藤駐在員という人が世話をして、その林四郎さんを飛行機で往復さす旅費を負担しておるようでございますが、このスポンサーは東京書籍株式会社、こういうことになっております。出張の旅費は、国語研究所の庶務課の方を調べてみましたが、国の方からは旅費は出ておりません。その会場の模様は、第一会場は熊本大学の教育学部で行なわれて、県下から約五百名の参加があった。ところが、第二会場の熊本市の新市街の銀丁というところの日本間で懇親会があったのだろうと思うのですが、そのときに東書の教科書がどういうふうに使われるかというようなことで、いろいろ教科書の採択の問題について懇談会が行なわれたという資料が入っております。こういうようなのは、やはり大臣は当然行政の責任者として所管をされなければならないわけでございますが、その付属中の西木長久という先生に対して、中島営業課長から、この研究会は金が足らなかっただろうというので、千円札を幾らか手渡しをしている現場を目撃したりしている事情が、そこに資料として出されているわけでございますが、こういうような状況、あるいは教科書の公正取引の関係にきわめて思わしくないと思われます事項といたしまして、都道府県の教育委員会の職員、これは静岡県の例等もここに具体的に名前まで、だれとだれがどういうような関係にあるというようなことを持っておりますが、それを一々読み上げませんけれども、そういうようなもの、あるいは全国の各市町村の教育委員会、そういうようなところに駐在員の役割を果たしていると思われるところのリストを私はここに持っておりますが、そういうようないわゆる教育委員会の教育委員、長であるとか、あるいは教育長であるとか、そういうような人たち、このような人たちが特定の会社の駐在員と目される活動を現実に行なっている、こういうような場合における行政指導について、今日まで大臣はどういうような行政指導をやっておいでになったのかをお尋ねしておきたいと思うわけでございます。  なるほどきょういただいた、文部省の初中局長の福田さんから、知事あて、あるいは国立の高等学校長、さらに小中学校、高等学校を置く国立大学の学長あてに、さらにまた教育委員委員にあてまして通達をお出しになっていらっしゃるようであります。そこで今日教科書汚職の問題がひんぴんとして起こりまして、関西方面に起こりました以外に、日本全国の中においては、これは汚職に間違いないと思われるようなものが、東北方面にもそういうような事情が出ております。そういうようなものに対して非常に警戒をしなければならないと同時に、特に来年は高等学校の教育課程が改正になって、新しい教科書が発行される、こういうような段階を迎えておりますので、さらにここで徹底したところの行政指導というものをなさなければならないのじゃないか。それが先ほど申し上げましたように、私の調べた数字によりましても、三十数名の各地教委の教育委員長であるとか、教育長であるとか、こういうような者や、都道府県の指導係長であるとかいうような、そういう行政に直接携わっておるような人たちが、そういうような一定の会社の駐在員と目されるような行為を行なっている。こういうようなことに対して、どういうような今後の措置をとられるかを伺っておきたいと思うわけであります。
  25. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 私自身直接、今御指摘のような問題について関与し、あるいは指示をしたことはございません。さようなことは行なわれないはずだという考え方のもとに、格別なことはいたしておりません。また教育委員会とかあるいは教育に関係する公務員が、教科書会社の過当競争の渦に巻き込まれて、御指摘のようなことがもしありとすれば、むしろ好ましからざることでございます。今御指摘のように、局長名義での通達で第一段階の警告を発したわけでございますが、今後に向かってさようなことの絶滅を期したいという考えでおります。具体的にどういうふうな措置をするかは、今後検討いたしたいと思います。
  26. 村山喜一

    ○村山委員 大臣もお忙しいので、この際私は、こういうような行政当局が駐在員の仕事の役割を果たしつつあるような方向にいくならば、これはまことに憂うべき状態になると考えますので、そういうような方向に発展をしていくということは、やはり採択権の問題が大きな問題として考えられなければならないと思うわけであります。統一採択の方向というものがどんどん発展をしていくに従って、実質的にそれを牛耳っているところの教育委員、あるいは特定の校長、教頭、そういうような人たちが今日の汚職を引き起こした。こういうようなことから、さらに行政当局が今度採択について関与していくという格好に発展をしていくのではないか。こうなって参りますと、統一採択イコール行政官僚の統制によって、教科書が一定の方向に導かれていくということになってくると思うのであります。やはりこの方向を防いでいく道は、そういうような汚職が起こらないような状態に教科書の採択というものも置かなければならない。各学校に採択権があるということにおいてこの問題を処理していかなければならないと思うのでありますが、ひんぴんとして起こりつつありますこの教科書汚職の問題に対しまして、大臣は採択権の問題をどういうふうに今後お考えになっていくかを、これらの実例の上からこの際承っておきたいと思うわけです。
  27. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 採択権の問題は、以前の委員会におきましても御質問に対してお答えいたしましたように、教育委員会が採択権を持つという現行の制度を変えようとは思いません。それから、採択権がかりにどこにあらしめるようにいたしましょうとも、問題はその関係する人々の心がまえが第一でございまして、先生であれ、校長であれ、教典であれ、教育委員会の関係者であれ、あるいは文部省の直接の者であれ、心がまえがしっかりしておれば過当競争などに巻き込まれるというはずがない。そういう方向に注意を喚起して誤りなからしめることを考えることが第二の対策だろうと思います。従いまして、今申し上げましたように、そのことによって、御指摘のような事柄に関連を持って採択権をいろいろと考えねばならない、直接にそれに結びつく課題としては私は考えておりません。
  28. 村山喜一

    ○村山委員 その関係者が自覚することによってこの汚職を防いでいくということで、それに対する行政指導をやっていこうというようなことをお考えになっておいでになるわけでありますが、ただ、そういうようないわゆる一般的な考え方で、通達を流すだけで行政指導ができ得るというふうには、私たちは考えないのです。やはりもっとこれらの問題に対してはメスをふるってもらって、どこに教科書汚職の原因があるのか、それを根だやしにしていくためにはどうすればいいかということを、やはり行政の責任者である大臣としてはお考えを願わなければ、あなたの所管の中にあります国立国語研究所、そういうようなところからの職員でさえも疑いの目を持って見られている向きがあるのです。そういうようなことがだんだんに教科書の問題について官僚統制を強化していく方向に発展をしていく以外に道はないと思うのです。この問題につきましては、ただいまの答弁は私は不満足に考えますので、後ほど教科書課長がおいでになりますから、具体的な問題をその後において取り上げて参りたいと思います。  なおこの際法務省の刑事課長がお見えになっておりますのでお尋ねをいたしておきますが、仙台におけるところのそういうような汚職の問題が、新聞には出ておりませんけれども、資料として私の手元に参っておりますが、これらの事情について御承知であるかどうかということを承っておきたいと思います。
  29. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 仙台におきますお尋ねのような点につきましては、まだ報告に接しておりません。
  30. 村山喜一

    ○村山委員 その内容については後ほど取り上げて参ります。  そこで大臣が出席をしておいでになりますので、私は教科書の問題は一応おきまして、先般小中学校の学級編制の基準に関する法律案を私が提案をいたしておりますので、それに関連をいたしまして、大臣の決意のほどをこの際承っておきたい点がございます。それは御承知のように、参議院の方から議員提出法案として、事務職員、養護職員を各学校に配置をする、こういうような法律案が提案をされました。参議院におきまして委員会としての決議が行なわれました。養護教員については学校教育法の百三条を削除して定数改正を行ない、事務職員については法二十八条のただし書きの削除、こういうようなことをやって今後の充実計画を立てていく。そこで養護教員については、養成計画とともにその教職員の配置の関係がありますので、それに対しては、大まかに五カ年間で工千二百玉十名、さしあたり三十八年度において二千二百七十人、三十九年度においては一千八十三人、こういうような数を具体的に参議院において御提示になっておいでになるわけです。事務職員につきましては、三十八年度において二千人を充実いたし、これに対して昭和四十二年までに純増六千名を考えておる、こういうような具体的な養成計画なりあるいは充実計画というものが示されて参りました。これはまことにけっこうなことでありまして、こういうような方向において学校教育一つの柱になります事務職員あるいは養護教諭の充実をはかっていくということは望ましいことでございます。そこでこの充実計画を進めていく場合においては、三十九年度以降においては法律の改正が当然必要になって参るわけであります。こういうような点から考えて参りますと、現在の義務教育諸学校におきますところの学級編制と教職員定数の標準に関する法律の教職員の算定の基準の中には、学校の校長あるいは学校の教壇に立って教えております教員、それに養護教員、事務職員、あるいは専科の先生、こういうようなものが算定の基礎として入っているわけでございます。そういうような専門的な養護教諭であるとか、あるいは教育の片一方の車輪をになって走るところの事務職員の養成計画、充実計画というものは参議院において明示されましたけれども、まだはっきり大臣の決意が示されていないのは、学級単位の教員なりあるいは教科担当の教職員、これについての年次計画であります。養護教諭なり事務職員の充実の必要性というものは私も同感でありますが、同時に現在の学級編制の実情並びに新しい教育課程に即応したところの時間の配当の上から考えた教師の負担量の問題、学力向上の問題、こういうような問題を考えて参りますときに、片一方においては、児童数が漸減をしていく、生徒数も漸減をしていくという方向にあるわけですが、それらの中にありまして、大臣としてはこの両方を充実していくという計画をお示しになる必要があるのではないか、こう考えますので、この教員の配置計画というものに対して、どういうふうに具体的に今後計画を作り、そして方向を定めて努力をしていかれるのかを、この際承っておきたいと思うのであります。
  31. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 御指摘のように、養護教員あるいは事務職員の充実と同時に、一般の先生方の定数を学級編制とにらみ合わせまして充実していく、これは当然のことと心得ております。ただ御承知の通りに今までは、すし詰め学級の解消、さらには生徒急増対策に追われまして、手一ぱいでございました。今年度一ぱい十分検討をいたしまして、今の教職員定数関係を、見通しを具体的に立てて年次的に進行していけるようにいたしたいと思っておるのであります。さしより三十八年度には一学級五十人以下にするということを目標にいたしております。今後新教育課程の実施の状況、あるいは教師の需給関係等考うべき要素はいろいろあろうかと思いますが、それらを今年度一ぱい、今申し上げた通り十分検討を加えまして、そしてもっと具体的な見通しを立てながら前進して参りたい、かように思っております。
  32. 村山喜一

    ○村山委員 養護についても事務職員についても、三十八年度についてはたとえば養護の場合には二千二百七十人、事務職員については二千人、こういう数字が具体的に示されるその背景といたしましては、こういうように文部省がただ単に考えているというのではなくて、これらの問題は当然事務的な段階として大蔵省あたりとそれぞれ話し合いが進められた上で具体的な数字というものが出たのだろうと私は思うのであります。そうでなければ、この五千二百五十名とかあるいは六千名とかという増員計画というものが、これを実行性のある年次計画として大臣が決意を表明されるまで進められていくためには、人件費もこれによって相当ふえるわけでありますから、予算的には増額になるというような点から、大蔵事務当局とは内々そういうような話し合いがついたものが出されているのだろうと思うのであります。そうなって参りますと、養護についても事務職員についても、そういうような養成計画なり充実計画というものがなければならないわけでありますが、それができ上がっていない。一方一般の教員についてはそれはことしから検討を進めていくのだ、こういうようなことでは少しバランスがくずれているのではないかと思うのでありますが、三十七年度においてこの問題をどの程度具体的に検討をし、そしてどこまでやっていくのだという一つの見通し、計画があるのであれば、この際お示しを願いたいと思うのです。
  33. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 今御指摘のようなコンクリートな計画はございません。ただ三十八年度五十人以下にするということだけは確保したいと思います。一二十九年度以降、年次的にそれがどうなっていくのだ、むろん学級編制は生徒数が減る方向に維持していくことは当然といたしまして、それからまたその編制次第によって、生徒急増の時期が終わりますれば、今までの学級編制の定数でいけば先生が余るという現状ですけれども、首を切らない、そして単級編制をより合理的にしていく、その方向づけを前進していくのに、三十九年度以降どうなるかというようなことを、御指摘のような具体性をもってお答えする段階にきていないという意味合いを申し上げたのであります。そのことを今年度中に検討を加えまして、もっと具体性のあるものにして実現をはかっていく考えでおります。
  34. 村山喜一

    ○村山委員 その場合に一学級の学級編制の基準を五十名以下にするということはよくわかりますが、その際に新しい教育課程によって教員の一人当たりの授業時数がふえているわけであります。望ましい基準として国の方から一つ基準性をはっきり要求をしておられるわけでありますから、それにふさわしい教員の数というものが見合いとして出されなければならない。すでに高等学校の場合には一人当たりの授業時数というものを十八時間以内ということでこの前の定数法はできております。そうなって参りますと、中学校の場合は二十時間、小学校の場合は二十二時間以内というのが大体教育界の要望の線であり、またそうすることによって、学力の向上を期待し得ると思うのであります。そういうような場合において、この新しい教育課程に即応するところの人員配置、これは授業数の上から、教師が受け持つ労働量の上からも、いわゆる換算係数を用いた数字も検討をされるだろうと思いますが、それらについてはどういうふうにお考えになるかを、この際承っておきたいのであります。  それと同時に、小規模学校の場合には、授業時数は当然ふえて参ります。一般の適正規模における学校よりも、教科面においても、いろいろの学級編制の上から複式の場合等は、当然教師の教授時数というものがふえなければならないし、中学校の場合におきましても、それは当然総時数はふえてくるという格好になるわけでありますが、そういうような僻地にある小規模学校の教職員の配置基準というものが、今日当面している一番大きな問題として解決を急がれなければならない問題であると、私は思うているのでありますが、それらの問題についても検討をされる意思があるのかどうか。こういうような問題について、これはきわめて重大な内容を含んでおりますので、文部省の中にそれらの問題について検討をしていくための委員会のようなものでもお作りになって、あらゆる面から各教育界の代表の人たちの声であるとか、あるいは学識経験者の人たちの声であるとかいうようなものを聞いて、十分に研究を重ねながら、りっぱなものを作り上げていくという一つの科学的な計画性を立てたものを今後お考えになっているのか。とにかく五十名以下にやるのだというようなことで、通り一ぺんの考え方ではなくて、十分な対策を講じていく決意であるのかを、この際大臣から承っておきたいと思うのであります。
  35. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お示しのような意味合いで検討していきたいと思います。三十八年度五十人以下という目標でおることはさっき申し上げましたが、できれば四十二年までには四十五名の編制ぐらいにぜひ持っていきたいものだと思います。その場合、お話のように小規模学校の充実をまず第一に取り上げるという考え方に立って、総合的に検討を進めて参りたいと思います。まだ大蔵省等と十分な話し合いはむろんいたしておりませんので、私からもっと具体性のあるお答えは今日の段階では申し上げかねることを申し添えます。
  36. 村山喜一

    ○村山委員 最後に確認をいたしてみたいと思うのでありますが、この問題は、教育財政の上から考えましても、あるいは今日無定量の勤務原則みたいに押しつけられております教職員の勤務時数、労働密度、こういうような問題から考えましても、あるいは教職員に対する超過勤務手当を支給をするということの是非の問題、あるいは学力向上を期するためにはどういう程度のところまで教職員が必要であり、それはどういうような教科の面について免許状を持っておった場合がいいかというような教師の免許状の問題、いろいろな問題にまたがって、この問題については検討を要すると思うのでございます。そうなって参りますと、初中局の財務課あたりで、この問題について取り組まれるとは思うのでありますが、文部省の中に、それらの小中学校の教育を振興していく上において、こういうような問題を全般的な立場から検討をしていく、そういう委員会なり覇あるいは研究会といいますか、そういうものをお作りになって、今後この問題の検討を進めていくというお考えはないか。この際大臣にそういうような構想がありますれば承ってみたいと思うのであります。
  37. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 今お話しのような委員会等を作るという考えは、私自身念頭にございません。というのは、検討すべき課題にいかなるものがあって、その内容がどんなふうなことが想定されるか、私自身が知りませんから。ただし事務当局では、総合的に検討するとなれば、既存の課だけでもって処置できないという意味で、お話しのようなことを検討しておるかもしれません。いずれにしましても私が今すぐ申し上げる形においては委員会を必ず作りますと申し上げる段階にはきておりません。おそらくそういうことが必要であろうと想像だけはいたしております。
  38. 村山喜一

    ○村山委員 この問題につきましては、今日の児童生徒数が漸減いたして参ります条件のもとにおいて、日本の教育水準を西欧並みに引き上げていくために、そうしてまた日本の児童生徒の学力を向上させていくためには、ぜひ真剣に取り組んでいかなければならない重大な問題であると思いますので、大臣も三十七年度にそれらのものについて、他の養護教員、事務職員と同じような立場において、そして日本の教育水準を引き上げていくような意味において、十分対策を練って検討を重ね、大蔵当局等とも打ち合わせをした上で具体的な案を作りたいという御決意であるようでございますので、それらの問題について国民の期待が十分に満たされるような方向に努力されますことを要望を申し上げまして、私の大胆に対する質問は終わりたいと思います。
  39. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 高津正道君。
  40. 高津正道

    高津委員 文化財保護委員会清水事務局長は、民間の論議が遠からずおのずから真贋を決定する、それを待っておる、こういう御意見でありますが、私はそれは見当違いであろうという情報を持っておるのであります。御参考に申し上げておきますと、森川勇氏は本物説の張本人でありますが、日本光学株式会社で位相差顕微鏡をもってした検査の結果、新乾山は新しいものではないことがわかったといって写真をずらっと並べて人々に見せておるのであります。また千葉大学の鉄と砂のゼミナールという研究グループに新乾山調査してもらったところが、その結果は陶器の嵌入——表にできておる、裏にもあろうが、そのひびですね。その嵌入にたまっているあか、ほこりの程度から見て、これは百年以上ないし百五十年以上以前の作品だとわかったとも発表されておるのであります。しかし反対側の人々は、それは第三者が立ち会っていないのだから、どんな材料をこれとこれを比較して下さいといって持っていたかわからぬじゃないか、一番いいものはこれこれだといって——二百もこれが正しいと森川さんは言っておるのだから、その中のものを持っていかねば意味がないので、どれをこわして持っていったのだかわからぬ、だから権威がないのだ、こういってそれを一蹴しておるのであります。また、これも私の意見を強めるために、参考のために申し上げておくのですが、今森川さんの持っておる作品の表と裏と四方の正面の天然色写真を出してくれれば、あれと同じものをわれわれはこしらえますということを申し出ている専門家があるのです。だから審査する方法はいろいろあるのであります。またさらにこういうことも言うのですよ。二百数十点も佐野近傍で出たというが、今までこの家から買ったといって森川さんの発表している分はまだまだ少なく、ほんの一部にすぎない。残りが全部証明されなければ、あれは本物だとは言えない。   〔委員長退席、上村委員長代理着席〕 こういって論争している事情でございますから、この論争でもう遠からず真贋の結論が出るから、われわれの方が手出しをする必要はないのだ、こういうお考えは見通し違いではあるまいか、こう思うのであります。私の質問はこれで終わります。
  41. 清水康平

    清水政府委員 この問題は官民を問わず、学問の分野の問題でありますので、文化財保護委員会の事務局、博物館、あるいは研究所のそれぞれの専門技官がそれぞれの立場から、また民間の学者あるいは大学の学者、その人たちが冷静な研究態度によって、やがてそのうちには落ちつくべきところに落ちつくのではないかと思っているのでございます。私どもはもちろん無関心ではございません。文化財保護委員会としては重大関心を持っておりますが、この真偽のほどを文化財保護委員会が直接乗り出してやるというには、あまり専門的、あまりに学問的でありますので、各研究者学者の良心と真摯な態度に私どもは信頼いたしている次第でございます。
  42. 上村千一郎

    ○上村委員長代理 淡谷悠藏君。
  43. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この間高津先生のおともをしまして、例の佐野乾山の実物といっておりますものを拝見いたしました。またその前から芸術新潮、週刊誌あるいは有力な新聞の黒説、白説というものについていろいろと実は見ておったのでありますが、私はこの問題をいろいろ考える上において、真偽という問題以外に、非常に日本の文化財保護の上に大きな問題を投げているのではないかという考えを持つのであります。これはもちろんおっしゃる通り、本物であるかにせものであるかを十分これから審議されるでしょうが、第一に、佐野乾山という問題のつかまえ方がどの程度進んでいるのか、さかのぼって尾形乾山という人の一生が明らかにされているのか、それの日本の美術史における位置がどういうふうにきまっているのかという点について、現在判明している点だけでもお話し願いましたら、この問題に対してわれわれしろうとが常識をもって判断する場合に、非常にいい参考にもなるし、明らかにされますと、今後の両論についての判断を大へん助けるのじゃないかと思いますから、お手数でもできるだけ詳しくおっしゃって下さい。現在わかっております点をお話し願いたい。
  44. 清水康平

    清水政府委員 非常に専門的、学問的でございまして、私から一知半解のことを申し上げるのは恐縮でございますので、たまたまここに文化財保護委員会の事務局の松下美術工芸課長が見えておりますので、松下課長から御説明させていただきたいと思います。松下技官は主として絵画の専門でございますが、さりとて全然無関係でございませんので、御了承願いたいと思います。
  45. 松下隆章

    ○松下説明員 それでは乾山について御説明申し上げます。  手元にこまかい資料がございませんので、正確な年代等は申し上げられないと思いますが、乾山は御承知のように尾形光琳の弟としまして、京都の呉服屋の息子として生まれたのであります。兄の方は御承知のように絵画の方に進みまして、日本でも有数な画家になったわけでございます。弟の乾山の方は兄とちょっと違いまして、陶器の方へ進んだわけでございます。そうして初め京都の鳴滝へかまを開きまして、それから後に京都の丁字屋町の方へ移り、それから六十を過ぎてから江戸に参ったのであります。それから死ぬ八十一才まで江戸で暮らしたわけであります。  陶器の方は、私の知る限りで申し上げますと、大体現在のところ京都の方で作りました作品はかなり確実なものがあるわけであります。しかも江戸へ参りましてから佐野へ非常に短い間行ったわけでありますが、その佐野へ行ったということも、これが発見されましたのは比較的近年のことでありまして、佐野でも当然焼きものは焼いたろうと思いますが、現在のところ万人が認める、これなら佐野乾山の代表的なものだというのはほとんどないといわれるように私は聞いております。  江戸におきましては入谷に住みまして、入谷乾山というようなものもあるように聞いておりますが、大体陶器の方につきましては、従来は京都で作りましたものが標準の作品になっているようでありまして、その時代には兄の光琳と合作をいたしまして、そうして兄の光琳が絵をかき、弟の乾山が焼いたもの、いわゆる合作の類がかなり残っております。そしてその中の一点は重要文化財にも指定されているわけであります。  一方やはり兄の影響もありましたか、絵画もかきまして、絵画もなかなかいい作品を残しておりまして、重要文化財にも二件くらいなっているわけでございます。  江戸時代の日本の芸術家の中ではいわば日本調を、これは光琳もそうでありますが、いわゆるやまとぶりと申しますか、日本調を復興して、しかもその間に非常に装飾的な効果をあげた画家でありまして、焼きものの方は、先ほども高津先生の御指摘のように独特の焼きものを作り出して、焼きものの方では非常に高く評価されている人であります。
  46. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大体乾山というもののアウトラインが、これまで伝えられました通りやはり文化財保護委員会等でもお認めになっているようでございますが、さてこの乾山の歴史の中で、こうなってきますと非常に大きな穴があいておりますのは佐野ということになるらしい。これは当然佐野乾山が問題になっている証処でございましょう。私この方面には全くのしろうとでございますけれども、芸術作品というものはその時代において有名になるものもありまするけれども、後年になって有名になるものも相当ある。しばらくたってから有名になって、その跡が次第に探される人もあるのでございます。重要文化財に数点指定されておりますような乾山作品が、佐野に来てからの作品が全然わからないとなってくれば、これは真偽は別として、新しく発見された新乾山なるものに対して、これは学界なりあるいは報道人が、非常に失礼な言い分ですが、興味を持って立ち向かうという根底は十分にあるのでございますが、この点を一つお聞かせ願いたい。
  47. 松下隆章

    ○松下説明員 今の御質問の、佐野乾山が新しく出たということは、これは学界でも非常に重要な問題にもなっております。先ほども申しまたように、その時代というものはほとんどわからない時代でございまして、乾山というような、日本で有数な芸術家の生涯の重要な部分を示すのに重要な資料となると思うわけでございます。従ってわれわれもその研究調査にかなり大きな関心を持っておるわけであります。
  48. 淡谷悠藏

    淡谷委員 高津先生がこの前の委員会で質問され、またきょうも御質問されておりますように、やはりこの重大な文化財の研究調査については、文化財保護委員会としてももっと真剣に取り組まれた方がいいのじゃないかということを私も考えるのです。高津先生永仁のつぼでみごとあのにせのつぼが発見できたものですから、またやっているのではないかというような疑いがあるようでございまして、裏返しして考えますと、永仁のつぼのにせと本ものを誤認するような文化財委員会の活動でございますと、逆に本ものをにせものととらえるというような危険性もあるのじゃないかというようなことも、これは検討の上ではやはり相当に強調すべき点だと私は思うのです。これはいろいろおっしゃる通り、目下むずかしい論争が行なわれ、真剣な論議をかわされておりますので、これは真偽いずれにせよ、本気になって取っ組むという態度が今日に至っては非常に大事だろうと思うのです。そのためには清水さんのおっしゃるように、この鑑識あるいはその他の調査方法に対して雑音を受ける必要があるだろうと私は思う。乾山が持っております独自の美術的な価値に対する関心もさることながら、一つ百万円という値段なんですが、これはやはり骨董界、陶芸界ではただならない問題だと私は思うのです。これがたくさん出てきた場合と少ない場合とで希少価値がだいぶ違ってくると私は思う。これはやはり国の機関としてはそういう利害得失を離れまして、純美術的な観点に立って徹底的に調査される必要があると思いますが、この点はいかがでございましょうか。
  49. 清水康平

    清水政府委員 だんだんといろいろな御意見を拝聴いたしたわけでございますが、私個人の気持といたしましては、おとといの新聞でございましたが、この問題がとかく感情と勘定に巻き込まれ、そのカンジョウというのは心の感情それから金銭の勘定、そこにいろいろなマスコミも入っておりますし、これは学問世界でございますから、冷静に、落ちついて、良心に従ってやっていくべき問題ではなかろうか。文化財保護委員会の事務局といたしましても、それぞれの技官がそれぞれの立場から真剣にこれを見ております。また考えてもおり、研究もいたしておりまするので、私はその方面の冷静なる判断と結論を期待いたしておるわけでございまして、決して私ども関心でおるわけではないわけでございます。
  50. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その点においては私もしごく同感なんでございますが、ただ私ども、政治の世界でも圧力団体がありますように、美術界というものも非常な圧力団体があるように考える。おっしゃる通りまさに感情と勘定で、計算の勘定の方が強いという面が、これは発掘されたものは本ものかにせものかということに集中されて言われるほど、これは大きな比重を占めていると私は思う。  そこで私ども国政を担当するものの立場から、文化財保護の法律もございますから、この法の運用なりあるいはまた文化財保護委員会の活動が円滑に本来の目的にかなうような素地を作ることが非常に大切な任務だと心得ております。この間も私は高津先生一緒焼きものを拝見しております際に、加納さんという人が私の顔を見まして、しろうとの方と看破されましたのか、どうも焼きもの世界はむずかしいでしょうと言われましたから、焼きもの世界もむずかしいでしょうけれども焼きものをめぐる世界の方がもっとむずかしいよと私は答えておきました。非常にむずかしい問題があるようでございますが、それだけに文化財関係の職員の方あるいは委員の方々は、これは慎重に冷静に純粋の学問的な立場から、この美術の問題には対応する必要があるだろうと私は思う。  そこで伺っておきたいのは、永仁のつぼの場合にもいろいろ活動したようでございますが、陶磁協会というのがございます。これは一体どういう団体でございますか。私、一応は調べてみましたが、文化財保護委員会としてのつかまえ方をお話し願いたいと思います。
  51. 清水康平

    清水政府委員 陶磁協会のお話がございましたが、これは多分財団法人かと思っておりますけれども、いずれにしましても、民法法人といたしましても、文化財保護委員会とは全然関係のない、民間のそういう方面の人たちが集まった団体と心得ております。
  52. 淡谷悠藏

    淡谷委員 あの当時は、永仁のつぼのにせものの方をかつぎ回った協会ですが、今回は新乾山にせものと唱えておるようであります。これは文化財保護委員関係でここの役員をしている方はございませんか。
  53. 清水康平

    清水政府委員 現在は、私の承知する限りにおいて、そこの理事とかという役員をやっている人はないと承知しております。
  54. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この団体のメンバーはどういう人たちが入っておりますか。広範な層を含んでおりますか。
  55. 清水康平

    清水政府委員 私、つまびらかにしておりませんが、在野の磁陶関係研究者が中心になって開いている団体と思っております。
  56. 淡谷悠藏

    淡谷委員 梅沢彦太郎さんという人がたしかこの団体に関係しているのじゃないですか。
  57. 清水康平

    清水政府委員 梅沢彦太郎さんは陶磁協会の会長をしておられると思っております。
  58. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは「陶磁」という雑誌を出しておられるそうでありますが、これはやはりこういう文化財関係では非常な権威を持った団体とわれわれ考えてよろしいのでしょうか、民間団体としては。
  59. 清水康平

    清水政府委員 陶磁研究としての民間団体としては、代表的なものじゃないかと思うのでございますが、内容についてよく存じません。
  60. 淡谷悠藏

    淡谷委員 梅沢さんは、たしか専門審議委員をやっておられると思いますが……。
  61. 清水康平

    清水政府委員 梅沢彦太郎さんは、文化財保護委員会の諮問機関である専門審議会の委員としていらっしゃいます。
  62. 淡谷悠藏

    淡谷委員 大和文華館というのがあるようでございますが、これはどういうものですか。
  63. 清水康平

    清水政府委員 お答えいたします。大和文華館というのは、財団法人大和文華館として、奈良県にございます美術館を主として経営している財団法人でございます。
  64. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは何か近鉄関係の援助がだいぶあるように聞いておりますが、間違いございませんか。
  65. 清水康平

    清水政府委員 大和文華館は、近鉄が基本財産ですか、そういう金を出しましてああいうものを作って、財団法人が設立されたと聞いております。
  66. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この大和文華館のこの問題に対する態度なども、やはり聞くべきものが非常に重要なのでございましょうが、何か意見を持っておりましょうか、こういう団体は。
  67. 清水康平

    清水政府委員 いわゆる佐野乾山との関係でございますか。
  68. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そうです、その関係……。
  69. 清水康平

    清水政府委員 おそらく何もないのじゃないかと思っております。あれは美術を展覧する美術館でございます。
  70. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そこで私は、文化財の指定の問題で少しお聞きしておきたいのです。指定するのは指定しますけれども、これは議員立法でございますから、われわれにも責任があるわけでございますが、指定したあとの文化財の措置が当を得ているかいないかということが問題になると私は思う。たとえば小さな絵画とかあるいは彫刻は別としまして、お寺のような大きな文化財になりますと、修繕その他の問題で非常に苦労していると聞きますが、こういう点はございませんか。
  71. 清水康平

    清水政府委員 社寺にあります国宝または重要文化財の建物は、修理いたします際にお寺の負担能力によりまして、社寺によりましては非常に自己負担の点におきまして苦労いたしておるところもございます。しかし私どもといたしましては、定められた予算の範囲内におきまして、負担能力に応じまして補助率が相当幅があるようにいたしておる次第でございます。
  72. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これはいろいろ文化財保護委員会との関係においても検討してみたいのですが、文化財に指定されますと、お寺などの場合は観光的価値の生ずるのは、国の補助よりもはるかに大きな経済的価値なんですね。どんどんバスも通るだろうし、見物人もたくさん来ますと、従ってこれは収入もふえてくる。けれども、ほんとうに国の美術保護の観点から申しますと、私はそういう経済的観念を離れて、美術的価値のあるものはむしろ経済力がなければないほど、これは国が保護してやるのがこの法の精神だと思う。具体的に申しますと、奈良の海龍王寺というお寺がありますね、これは非常に荒れております。門などもこわれて子供が遊んでいるという形で、ほっておきますとこれは崩壊するような形になっております。それから般若寺というお寺が奈良にございますが、これは例の大塔宮の遺跡のあるお寺で、これなども大へんな荒れ方であります。それから秋篠寺という、これは吉祥天女のあるお寺ですが、こういうような観光価値がなくても美術品として残っておりますのは、純美術的な観点から徹底した保護が必要じゃないかと思いますが、その点も一つあなたの方から御意見を伺いたいと思う。
  73. 清水康平

    清水政府委員 御指摘の点はまことにごもっともの点があるのでございます。たとえば海龍王寺は無住持ではございません、住職が一応おることになっておりますが、あの建物はここに詳しい資料はございませんが、二むね重要文化財指定されて、一つは国宝となって、これは小さな建物でございますが奈良博物館にございます。あとの二つの重要文化財はその場所にございますが、先年修理補助をいたしました。もう一つは今修理の時期に来ておりますので、高額の補助を出します。ただし補助でございまして、金額補償というわけに参りませんが、あとの地元負担と申しますか、お寺で持つ負担をなるべく少なくいたしております。ただいろいろな写真とか——決して私言いわけを申し上げるのではないのですが、先般テレビを見ますと、私見てびっくりしたのですが、へいとかいろいろな壁がこわれておりまして、これは一体どうしたのかといって調べましたところが、それは指定してある建物じゃございませんので、指定してあるものにつきましてはそれぞれ年次計画を立て、ことに海龍王寺のような負担能力の少ないところは相当高額の補助を出しておるわけであります。それから観光の場合非常に収入の多いというところも、補助率をその場合には彼此勘案いたしておるわけでございまして、なるべく負担能力のあるところは少なくし、負担能力の少ないところは属領の補助をいたすように努力いたしておる次第でございます。
  74. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは文化財保護法関係から申しましても、そういう一般的な経済価値を離れて、やはり美術の方の価値というものを見るのは当然だと私は思うのです。これはお寺だからあるのですが、小さいものだったら売りたくなるのです。だから、文化財審査関係委員やあるいはその他の関係者の方に、私は非常におそれますのは、そういう文化財を持っておる人たちとの私的なつながりが非常にこわいのです。率直に申し上げます。これは非常にこわいのです。一つ指定に関してのつながりです。文化財に指定した場合は、これは観光価値も生ずるだろうし、また骨董価値も生じてくるだろうと思う。従って、いかようなことがあっても、国家の機構に入っております文化財の審査は、そういう一切のつながりを断つような心がまえが大事じゃないかと思う。佐野乾山につきましてもその通りです。本物であると主張する側にも、あるいはにせものであると言って主張する側にも、完全に独立した立場から、これはやはり審査する必要がある、絶対必要だと私は思う。調査研究する必要もあるだろうと思います。特に最近は海外の日本の文化に対する関心が非常に高まっておりますので、重要文化財指定されればされるほど、これを輸出したいという人が出てくるようであります。実は若干資料を持っておりますが、きょうは私は具体的に名前を申し上げません。従って、これは現在のこの委員会の方々を疑うわけじゃございませんけれども、そういう関係がつきやすい地位にいられるということを、文化財保護委員会としても十分念頭に置いていただきたい。一つ指定する場合の悪いつながり、一つは解除する場合の悪いつながりです。これはあなたも大体お聞きだろうと私は思うのです。聞いておりませんか。きょうは言うのをやめますが、そういうふうな疑いが非常に入っておりますので、文化財保護委員会をめぐって美術品収集家あるいは道具屋、骨董屋といった人たちの暗躍が非常に激しいことだけは否定することのできない最近の傾向と思いますが、その点はいかがでございましょうか。
  75. 清水康平

    清水政府委員 非常に貴重な御意見を拝聴したのでございますが、私事務局長として、業界その他のつながりにつきましては常日ごろ注意いたしておるわけでございます。ただいま御指摘の指定の際の問題でございますが、これは昨今特に慎重にやっておりまして、価値判断の問題でございますので、専門技官がそれぞれ調査をした結果を討論し検討いたしまして、そこでまた専門技官会議を開き、課の全体会議を開く、そして慎重にやっておりますので、一私人がやってもらいたいというような申請はときどき参りますけれども、それを顧慮しないように、あくまでも公平に審査をして、そして結論を出すべきものであるというふうに努力しておりますが、今後なお私どもとしても考えて参らなければならぬと思っております。解除の点につきましては、そういう点は私どももよほど永仁のつぼのような問題でもない限り、よほど間違いでもない限り、あるいは天然記念物などでもってりっぱな木を指定しておりましたけれども、枯れてしまったということでございますと、これは自然消滅でございますから解除ということもございますが、そういうことにはわずらわされないように努力していかなければならぬ。ただし、今御指摘がございましたような民間のいろいろな人とのつながり、これが、専門家でありますけれども、やはり国家公務員でありまして、一定の限界がございますので、それぞれの良識に従って行動するよう、常に注意いたしておるわけでございますが、そんな疑いのないように、そういうような御質問のないように、今後ますます努力して参りたいと思っている次第でございます。
  76. 淡谷悠藏

    淡谷委員 先般松方コレクションが返されてきました場合に、例の美術館を建てる問題で、内閣委員会で当時委員長をしておりました今の福永労働大臣に要請を出しておきましたが、松方コレクションを返してもらうのもいいけれども、日本の古い美術品で海外へ売られたものは相当の数があるだろうと私は思う。これも返してもらうというわけにもいきますまいが、買い戻すくらいの努力をしませんと、戦争後相当にこれは出ていると思います。これはにせもの本物か知りませんが、ボストンの博物館に仁徳天皇の鏡というのがあるようであります。これは一時問題になったことがあるでしょう。多分お聞きのことだろうと思いますので、一ついきさつをお話を願いたいと思います。
  77. 清水康平

    清水政府委員 美術工芸課長から御説明申し上げさせたいと思いますので、お許しいただきます。
  78. 松下隆章

    ○松下説明員 そのお話は、ボストンにはその鏡はあるようでございます。それはもちろん文化財保護法ができる前に輸出されたものであります。それが最近はっきりわかりまして、ボストンへ返してくれということはなかなかむずかしいので、何かほかのものと交換はできないだろうかということを、まだ委員会として公式に言っているわけではありませんけれども専門の方がお話し合いをしておるようなことを承っております。もちろん指定してはございません。
  79. 淡谷悠藏

    淡谷委員 一時交換の話がきまりそうになった場合に、急にとわれたといったようなことをお聞きになりませんか。
  80. 松下隆章

    ○松下説明員 そのことは私まだ伺っておりません。
  81. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは文化財保護委員会を離れてそういうふうな動きがあったように聞いております。特に青銅器に関する指定はまだ十分行なわれていないのじゃないですか。陶器などにつきましてはやりましても、青銅器に関する文化財の指定は十分じゃないといううわさを聞きますが、その点はどうですか。
  82. 清水康平

    清水政府委員 私の承知いたしております範囲内におきましては、青銅器の指定——価値のある、ないは別といたしまして、現在指定してあるところから見ますと、青銅器の指定は非常に少ないと承知いたしております。
  83. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これなども、この際、乾山の縁によりまして、新しい眼をもってやはり見る必要があるだろうと私は思う。  それから五人委員会の構成でございますが、法律を見ますと政党に関する警戒が非常に強いようであります。政党に入った者が三人以上入ったらだめだということをいっておるようですが、私は政党の関係よりも、さっき言いましたが、最近の骨董ブーム、古物ブームに乗って、外部とのつながりの強いことがはっきりしている者は、私はやめてもらう方がいいと思う。むしろこれも、きょうは名前を申し上げませんが、かなり確実な——乾山にせもの本物論とは別でございますけれども、そういううわさも聞きますし、美術品の鑑賞というのは非常にむずかしいだけに、少なくとも純粋な美術性を汚すような計算的な観点から判断を左右するような人物については、政党人以上の警戒を払っていただきたいと思う。政党人なんというのは美術に対して甘いものですから、私は大してあれも要るまいと思いますが、こういう計算と関係のある者は、非常にあぶないと私は思う。特に海外の美術品を買い戻す場合には、国内のそういう輸出、輸入の関係の大きな骨董や古物商との間の関係が疑われるのです。こういう点からも、私は佐野乾山というものの真偽の明らかになるということは、いろいろな意味において、日本の美術に大へんな貢献をもたらしておる。さっき高津先生から言われましたように、文化財保護委員会の中に本物説をとっている方がある、それはそれでいいと思うのです。本物と思うなら本物でいいと私は思う。あるいはまたにせもの説をとる人はにせもの説をとってよろしい。純粋な観点からやるような、勇気をもって大胆率直にやるべきだと私は思う。何か騒ぎが大きくなってから、こわいものに触れるようで、厄介なものには手を触れるなといったような気持が見えるのですが、あなた方の態度さえ純粋であれば、にせもの論けっこうです、本物論けっこうです。少なくとも発掘されなかった佐野乾山に対して、率直に勇気を持って立ち向かう態度がほしいのですが、その点はいかがでございましょうか。
  84. 清水康平

    清水政府委員 全くおっしゃる通りでございまして、私ども世の中の雑音に阻害されないで、自己の信ずる道に従って、学問的良心に従って、明朗濶達に、大胆に自分の研究成果を発表する心持を持ってやって参りたいと思っております。
  85. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私は日本の貴重な文化財の保護を考え、また埋もれた美術品世の中に紹介することは非常に大きな意義のある仕事だと思いますからあえて申し上げますが、新しく発見された佐野乾山についても、全部がいいのかどうか、悪いものかどうか、それは白紙で立ち向かって、この際あなた方が主になって、高津先生もおっしゃる通り顕微鏡試験けっこう、科学的な試験けっこう、ただし試験だけでは結論が出るとは思いません。高津先生のおっしゃるにせもの論の中には、現在できたものだという説もあるようでございますし、明治にできたという説もあるようでございますし、徳川時代という説もあるようでございまするが、科学的な試験では時代が新しい古いはわかっても、乾山乾山でないかはわかるはずがない。やはり最後は乾山研究家の純粋な美術の鑑識眼に頼るほかないので、どんな威厳にも屈しない、また権威にも屈しないような鑑識眼を持っている人は、この際大胆に意見を主張して、乾山というものをもう一ぺん見直すべきが至当じゃないかと思います。バーナード・リーチがあの乾山を見たという話も聞いておりますが、私は若いころ白樺派でやったもんだから武者小路やバーナード・リーチは知っております。リーチ自体の作品もしばしば見せられて、あの人の美術品に対する鑑識眼も知っております。また人柄も知っておる。あの人たちがいいということになれば、にせものとしても投げ捨てられるものじゃないから、にせもの本物はそのうちきまるかもしれませんけれども、この際乾山研究の新しい資料として率直に立ち向かうべきじゃないかと思う。これは反対論もあるでしょう、賛成論もあるでしょう、それはいいじゃないですか。むしろあなた方を鼓舞激励する意味におきまして、勇気を持って、大胆にこの問題に取っ組んでいただきたい。高津先生がおっしゃる通り、科学的試験けっこうです。そのほかに学者の信ずるところによって十分所信を述べたらよろしいと思う。何かはれものにさわるような態度では、かえって文化財保護委員会は疑われます。どうですか、立ち向かう勇気ございませんか。
  86. 清水康平

    清水政府委員 文化財保護委員会専門技官も博物館、研究所の専門技官も、それぞれ自分の信ずる道に向かって今やっておるところでございます。ただ文化財保護委員会行政法上乗り出すところまで行っておらないということでございます。
  87. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この間高津先生出席されたようでございますが、日本テレビの討論会があったようでございます。承りますと、そのあとに長く論争があったそうであります。大へんおもしろかったそうですか、私は残念ながら聞きませんでした。テレビ討論だけは拝見しましたが、テレビが一時間も時間をさいて放送するくらいに国民が関心を持っておる問題です。よしんば文化財保護委員会の説が二派に分かれましても、欲得離れた議論ならばかまわないです。これは与党、野党と同じような工合に、にせもの論、本物論ということを堂々とやった方が文化財のためにいいと思う。自分が純粋に識見を持っておる、見識を持っておるという自信さえあれば、堂々とやった方がいいと思う。ただ美術の鑑識というものは、私から申し上げるまでもなく主観性の強いものです。顕微鏡なんかでわかるものじゃないのです。従って、その人の持っている鑑識眼を公表されて初めて正しいか正しくないかわかる。おれはこう信じるからということだけでは普偏的な認識になりません。これを公開して堂々と議論し、討論しておのずから決するものは決するだろうと思う。それをやらないでおっては、なかなかいくものではないと思う。ここまで大衆化した議論であればわれわれも政治的な責任を感じます。これは十分文化財保護委員会あたりが中心になりまして、乾山に対して新しく取っ組んでいただきたい。  この際御警告申し上げたいのは、利権などの動きに絶対に乗らないということ。もう一つは権力に屈しないこと。これは昔からの美術批評家も鑑識家も最後まで正しい意見が得られないこともあります。時代をずっと過ぎてから初めてそのよさがわかった例もありますから、絶えず強く自信を持った態度をとることが、文化財を審査する人の当然の責任でもあり義務でもあると思うのです。幸い文化財保護委員会の中にはそういう人もおられましょうし、むろん一般の民間の鑑識家も、この問題に十分本気に取っ組むようにしていただきたい。何かこの新乾山を収集しておる方から正式に審査の要求があったということを聞いておりますが、ございましたか。
  88. 清水康平

    清水政府委員 去る七日の日に、本人が参ったわけじゃございませんが、一知人を通じまして科学的調査をしてもらえぬかという願望書が参りました。
  89. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これはさっき高津先生からも要求がありましたが、文化財保護委員会調査研究をする義務があるのですから、やはり、やってくれというものはやってあげたらいいんじゃないですか。高津先生のおっしゃる通り、この間のテレビの討論会あとでは写真まで出しているらしい。これは、あなた方の立場がそれに狂わされては困りますけれどもにせものといい、本物というなら、それぞれ重大な意見があるだろうと思うのです。乾山であるないは別として、出された審査請求に対しては応じてやるのが妥当だろうと思うのです。これは高津先生と同じように考えるのですが、その点はどうです。
  90. 清水康平

    清水政府委員 先ほど高津先生に申し上げたのでありますが、こういう美術品は、森川氏がこちらに請願書を出された趣旨にもある通り、また私ども従来から守っておるわけでございますが、あくまでも多年にわたる研究、とうとい経験、そういうものの総合判定の上から正しく鑑識せられるのが第一義でございます。科学的調査ということはむしろ二義的な、付属的な問題ではないかと思うわけであります。しかもいわゆる佐野乾山は国で指定した重要文化財でもございません。数カ月前に世の中にこつ然と現われたもので、現在、学者研究者研究しておるばかりでなく、先ほど申しましたような感情と勘定が入っておるようなことになっておりまして、まず第一に、そういう人たちのうちでほんとうに大胆率直に研究され、美術雑誌等にも書かれ、そうしてやっていけば、おのずから帰するところに帰するんじゃなかろうか。またかりに科学的調査をやるにいたしましても、先ほど来詳しく申し上げたのでございますが、種々技術的な難点も予想されるので、それにばかり依存することはかえって危険ではなかろうか。むしろこの際、各方面の真摯な研究によって、何ものにも災いされない、雑音に災いされないような、大胆率直な、学者研究者研究の結果を待たなければならぬ。それが第一義じゃなかろうか、かように思っておる次第でございます。
  91. 淡谷悠藏

    淡谷委員 どこからも災いされない場所といったら、あなたの方しかないのです。あとはみな災いされます。何といったって欲もあるだろう、いろいろなものがありましょう。やはり乾山所有者を離れ、あるいは関係者を離れて、日本の乾山あるいは色陶器の新しい研究のためにも、立ち向かわれるのはあなた方しかないんじゃないですか。審査請求があって、これは乾山であろうかなかろうか、古いか新しいか見てくれといったら、見てやったらいい。意見も述べたらよろしいのであります。これだけ大衆化しますと、私たちも政治的な責任を感ずる。国がちゃんとした文化財保護委員会等を持っておるし、りっぱな専門審査員もおって、それくらいのことにどうも意見が述べられないとなればおかしいと思うわけです。研究しているから熱がさめるまで待とうという態度じゃ、万一本物だったらどうします。散逸しますよ。これはリーチなども、ある場所では非常にほめて、日本が放すならばほしいと言っているらしい。こういうところから私は日本の美術品は散逸すると思う。にせものだったらなおさら大へんです。それは君たちできめてくれ、おれたちは知らぬという態度はやはり非常にとらない点である。きょうはいろいろ御相談もございましょうから、あえて結論は追及いたしませんけれども、私たちもこの問題に対しては真剣に、真摯に見守っていきたいと思います。どうぞ文化財保護委員会も、その使命の重大さを考えて、純粋にしかも勇敢にこの問題に取り組んでいただきたい。この要望を申し上げまして私の質問を終わります。
  92. 上村千一郎

    ○上村委員長代理 村山喜一君。
  93. 村山喜一

    ○村山委員 教科書問題について先ほどの質問を続けて参りたいと思います。  先般来、関西方面に起こりました教科書の汚職の問題で、不公正な取引方法が行なわれ、独禁法違反事件として今審査を進めている段階であるということを御報告をいただいたわけであります。そこで私はその問題について内容をさらに検討をいたしてみますと、公正取引委員会事務局経済部調整課の編集の「教科書業における特殊指定の解説」、これをお出しになっているのです。この中にこう書いてあるのです。特殊指定の違反に対して、公正取引委員会は独禁法第十九条違反として一番目に審査をやる。二番目に違反事実が認められたときは勧告または審判の開始をやる。そして審判の手続、審決、制裁、こういうような順序で書いてありますが、その中に「第十九条違反には直接罰則が設けられていないことである。これは、不公正な取引方法の具体的内容が法律で定められておらず、公正取引委員会の指定にゆだねられていることのほか、実際問題として、直ちに刑罰を課するとなると、事件の処理も極めて慎重にならざるを得ず、迅速なあるいは弾力的な運用ができ難くなることが少なくないが、不公正な取引方法のような問題は、違反者に直ちに刑罰をもって臨むより、機敏に問題を解決した方が実益があることが少なくないことにもよるものであろう」。こういうような解説を経済部の方でやっておられるわけです。ところがこの事件が出ましてから今日までもう半年、この前の三木委員質問に対しましては、審査の段階である、こういうようなことでございますが、いつまであなた方は審査だ、審査だということで引っぱっておいて、その審判の手続を進め、そして審決に持っていこうとしておいでになるのか、一応の見通しがなければならぬ。こういうような汚職の問題が出てきて、不公正取引が行なわれた、それをこの法律が示すように実効性を期する意味においては、直接の罰則はないんだから、この際早くそういうような結論を急いで出すことによって、ことしの六月、七月に行なわれます来年度の教科書の採択に間に合わしていく、そしてその場合に再びこういうような汚職が起こらないようにやっていくというのが公取の立場でなければならないのではないかと思うのです。それと同時に来年度には御承知のように高等学校の教育課程が改正になりますので、高等学校の新しい教科書というものが来年度は生まれてくるわけです。その問題をめぐって、もうすでに業界の関係者の間において汚職のはしりが見えている。そういうようなものを抑制をしていくためには、汚職を起こした、不公正取引を行こなった六社に対して、こういうようなものが再び起こらないように審決を急いでいかなければならない。そのためには、審査の段階からさらに審判手続を進めて審決に持っていっていただかなければ、この法律を作ったところの実効性というものが期待できないのじゃないか。そういうような意味において、あなた方が今日までこの委員会において答弁をされたことと、この公取の方から出された解説書の中に書いてあることとは実情が違うじゃないか。これは一体どういうことに相なっているのか。そこら辺の事情を説明されて、一応の見通しをこの際明確に委員会を通して国民の前に明らかにしていただきたいと思う。
  94. 竹中喜満太

    ○竹中説明員 この本に書いてありますことはまさにその通りでございまして、大体こういうことで私の方でやっておるのでございますが、今回審査部で問題になって、おります事件は、御承知のように非常に広範囲でございまして、調べております府県が九府県ございます。それからこれに関係しておるというものが非常に多いものですから、昨年の暮れより審査をいたしまして、やっと審査が終わりまして、明後日委員会に諮りまして、委員会で方針を決定するという段階になっております。
  95. 村山喜一

    ○村山委員 審査が終わったそうでございますので、方針を決定されてすみやかに審決をされ、そして必要に応じては差しとめの命令もされて、この業界の粛正という意味からやっていただかなければ、先ほど申し上げたように、高等学校の採択の時期が迫っているわけでございますから、法律の効果が生まれて参りますように御処理を要望申し上げておきたいと思います。  そこで、私の手元に参っております具体的な問題を少しかいつまんで申し上げて、これに対する法務省の刑事課長のお答え並びに公取の経済部長の御見解も承っておきたいと思うのであります。東書の関係でありますが、東北地方におけるところの採択の拠点は仙台にある。その仙台における状況は、全県的な教員の人事を左右するくらいの実力を持った人が会社の責任者あるいは顧問というような形ですわって、そうして県下の校長会を開いて、年二回の会合に対しては五千円くらいの饗応を行なっている。これは不特定多数に対してやっているわけでありましょうが、その饗応を行なう場所がAクラス、Bクラス、Cクラスと分かれて、瑞鳳閣というのがAクラス、五橋旅館というのがBクラス、木田旅館というのがCクラス、こういうようなことでそのふるい分けをやって、凸版の東北支社見学という名前で、多数の教職員を招待をしている。そして採択時期において、仙台市内の小中学校の校長を、毎年六月の中旬から七月の上旬にかけて二回ないし三回招集して、東書の教科書を採択することを要請をしている。その場合に、仙台市の教育委員会の庁舎が狭いので、東書の仙台支社の会議室を利用させ、特に採択時においては、市の教育委員会指導主事が、ここを根拠地にして執務をしておる。現場教師を招致して採択を依頼しておる。昭和三十五年七月に、全焼したとき、仙台市の小学校三十九校の教科書をオール東書にした際のいきさつは、第一希望から第三希望までを記入投票をさした。その集計のときに立会者を置かないで、各担当の指導主事が、集計数字を明らかにしないままに、最後には東書ということにした。その数字は現場の先生の方から報告が来ておりますが、一回目の投票の、これは数学の場合ですが、一回目は学図が二十七票、東書が二十六票、二回目は学図が四十二票、東書が三十六票、こういうような順序で多数の二つの会社を選び出して、それでやったわけですが、その投票の結果は、ほんとうにこの投票の通りに行なわれていないで東書が採択をされている、こういうようなことになっているわけであります。こういうような事情を知った音楽教育図書の責任者である三浦さんという人が、多数によってはかるということを言いながらけしからぬじゃないかというので、音楽だけは、市の教育委員のところにねじ込んで二本立にさした、こういうようなことが、資料として私の手元に参っております。三十六年の七月に、仙台市で、中学校の教科書をオール東書に統一をした。その際、やはり市の教育委員会は、教科主任の投票を総括をして統一をしているわけでありますが、その場合においても、先ほど申し上げました数学の場合のように、多数をとったものが必ずしも統一をされないで、二位にあるものが統一をされた。こういうような採択をされる格好であります。しかも教科の会長に対しては十万円ないし三十万円、幹部主任クラスに対しては一万円ないし五万円程度の金が渡されているといううわさがある。そして昭和三十七年の二月の二十四日、仙台市の瑞鳳閣において、小学校用の国語編集会議という名のもとに打合会をして、仙台及び周辺の校長、教頭、主任を十数名集めて盛大な会合をやり供応を行なった。一名五百円程度、交通費として五百円ないし一千円とみやげものを渡した。これは二月の二十四日、仙台市の瑞鳳閣、Aクラスの人たちを集めるところであります。こういうような具体的な事実がもしあるとするならば、こういうのは当然不公正な取引方法に該当すると思う。そしてまた、これは教科書汚職の問題につながる問題であると思うのでありますが、この事情について、事実はまだお調べになっておいでにならないでしょうから、おわかりにならないと思いますが、一般的な問題として、その問題についての見解をお聞かせ願いたい。
  96. 竹中喜満太

    ○竹中説明員 ただいまお話しになりました事実を私の方で調べまして、教科書の使用または選択を勧誘するために金銭、物品その他の経済上の利益を供与しておるという事実の認定ができますれば、独禁法の違反の疑いはあると考えております。
  97. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 一般的な問題としてという御質問でございますので、その趣旨でお聞き取りいただきたいと思うのでございますが、贈収賄と申しますのは、通常の場合、何もないときに持ってくるというのが、その巧妙なやり方ということになるわけでございます。たとえば教科書の採択の期日がいよいよ迫ったときに、この教科書を採択してもらいたい、ついてはこれを差し上げますといったような愚かな提供の仕方をいたすのはないのでございまして、今日の事件につきましても痛切に感ずるのでございますが、たとえば教員の研究会というようなところに何となく寄付をするとか、あるいはその出版会社で出しております雑誌に原稿などを依頼いたしまして、その原稿料として金を渡す、その金が、われわれの目から見ると、多少過分の感じがいたす例がないわけでもないのでございますが、そういうように特に教科書採択問題に関係しないような形で親密の度を加えておく、この段階におきまして、はたしてそれが贈賄、収賄という犯罪を構成いたしますかどうか、これはなかなかむずかしい問題でございまして、今その点を判断いたしますためには、さらにいろいろ具体的な事情を捜査いたす必要があろうかと考えますが、そのようにいたしました上で、いよいよ採択に関連いたしまして金品を持ってくる。そのときには、もはや先生の方では、それは困るというふうに拒否することができないようになってしまっておると考えるのでございまして、たとえば原稿を書いておるとか研究会のときに寄付がきたとか、そういう前段階におきまして非常に警戒しなければならないというふうに考えるのでございます。
  98. 村山喜一

    ○村山委員 仙台における唯一の報道機関であります河北新報、こういうような言論機関に対しましても相当手が打ってあるようでございます。全然そういうような不利な記事は出ないように仕組まれておる、こういうようなことも聞くわけであります。私は、やはりこういうように問題が出て、それらの採択について不公正な取り扱いがあり、しかも供応、買収というようなものが行なわれている、そういう懸念がある、これらの実情についてはやはり適切な調査を進められるのが当然であろうと思うのでありますが、その用意がございますか。
  99. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 仙台の件につきましてはかなり具体的に承りましたので、関係の最高検察庁の方に連絡いたしたいと考えております。
  100. 村山喜一

    ○村山委員 そこで今度は文部省の教科書課長にお尋ねをいたしますが、後ほどこの資料はお渡しをして調査を願いたいと思いますが、鳥取県の境港市の教育長、島根県の、これは市の教育委員会の指導主事、岡山県の県教委の指導主事、山口県の教育事務所長、山口市の教育委員会の指導主事、岐阜県の県教委の指導主事、埼玉県の県教委の指導課長補佐、茨城県の地教委の教育委員長、栃木県の市の教育長、静岡県の町の教育長あるいは県教委の指導課長補佐、さらに教育事務所の指導主事、市の教育指導主事、愛知県市の教育長、宮城県の県会議員、群馬県の地方教育事務所の指導主事、福岡県の教育委員長、鹿児島県の村の教育委員長、名前もわかっておりますが、こういうような教育委員会の現職者でありながら、特定の会社の駐在員としての役割を果たしている。これは駐在員となることに対しては、地公法やその他の法令に違反をしなければ、別にその活動が特殊指定によって駐在員を置いてはならないということにはなっていないと思うのでありますけれども、こういうような現職の、特に採択に関係のあります教育委員会の職員が駐在員としての役割を果たすということになりますと、教科書行政の上から見てきわめて不公正な結果を招来をするし、また望ましいことではないと思うのでありますが、これはどういうふうにお考えになり、どういうような指導をしていこうとお考えになっているのか、お伺いをいたしておきたいと思うのであります。  それと先ほど取り上げました国立の国語研究所の国家公務員が特定の教科書会社の主催にかかわります講演会、講習会に参加をするということは、これは別に出張の名目で行っているのかもしれませんが、旅費その他の実費弁償を受けることは差しつかえないといたしましても、そういうような国立の国語研究所の職員が、そのような特定の会社が主催をする研究会等に行くことがはたして望ましいかどうか、これらの問題についての御見解もこの際承っておきたいと思うのであります。
  101. 諸沢正道

    ○諸沢説明員 御質問の第一点の駐在員の問題でありますが、文部省の従来の指導といたしましては、各発行会社が駐在員を置くということ自体につきましては、これは全面的に禁止するということは、実際の問題としてできないことでありましょうし、またある意味では公正な宣伝活動の一部にもなり得ることでありますが、ただその駐在員として宣伝活動に当たる者が教職関係者あるいは公職関係者ないしはそういったような前歴のある者で、採択自身に非常に影響を持つというような人たちがこの駐在員、あるいは名称のいかんを問わずとにもかくにもそのような宣伝活動に従事することは、結果としては公正な採択を疑わしめる場合もあり得るので、これはしてはならないということで指導をして参りました。事実そのような関係者は、昭和三十三年の三月末日限りをもちまして廃止をするということで、各発行社も廃止したわけであります。そういたしまして、私どもが今持っております一番新しい駐在員の名簿といたしましては、昨年の五月一日で調査をいたしましたものがございますが、これには今おっしゃったような現職の教育関係者、あるいは公職関係者は載っていないのでございますが、御指摘のような事実がもしありますれば、厳重にまた調べました上で指導をいたしたい、かように考えるのであります。  それから第二点の国家公務員である、文部省ないしはその所轄機関の職員が教科書会社の主催するような講習会に参加することが適当かどうかという御質問でございまするが、この点につきましては発行会社が関与いたします講習会について、文部省の指導としては、一つは五、六、七の採択の時期に当たる期間は発行会社は一切その講習会等の開催に関与してはならないということと、それから年間を通じて講習会に関与する場合にも、講師の派遣とか、資料の提供とかいったような内容的な面での援助を目的とせず、単に資金の援助といったような形での関与はまかりならぬという行き方をしておるわけでございまして、個々の人間が、文部省関係の者がその講習会に講師として出席するということ自体については、従前そういうようなことについては触れておらないのでありまするが、問題は、その講習会自体が純然たる教育内容の研究であり、そしてそういった面での活動の助長をはかるものでありますれば、これはあるいは一般論としては、文部省の関係の者がそこに講師として行って指導をするということも、とがむべき筋合いのものではないかと思いまするが、その講習会等の活動自体が、特定の教科書の宣伝活動の場としょうというようなものでありまするならば、これは当然国家公務員としてはそのようなところに出ていくことは控えるべきではなかろうか、私はかように考えます。
  102. 村山喜一

    ○村山委員 この国立国語研究所の林さんが熊本に行かれたことは事実であります。二月二十二日に会議があったことも事実であります。私はこれを調べてみたのですが、やはりこういうようにスポンサーが、特定の教科書会社がやり、しかもその結果、採択に影響があり得るような方向において——営利会社ですから、そこの駐在員なり営業課長は持っていくわけです。善意の立場に立ってその林四郎さんは行かれただろうと思うのであります。しかしながら、結果的にはそういうようなことが教科書会社の宣伝に使われていくという格好になりますと、これはやはり文部省の国立国語研究所というのは特定の教科書会社の宣伝機関として利用されるという結果になると思うのであります。そういうような上からやはり内容的にこれはどうかと思われるようなものに対しては、文部省はやはり注意をして、それらのものに対しては、できるだけ参加をしないというようなことにされなければ、自分たちのところまで火の粉が飛んでくるということに私はなってくると思うのであります。そういうような点で一つ十分に今後は内容的にも調査をしていただくと同時に、それらの問題に利用されているというようなことがないように、今後の対策を講じていただきたいということをお願いをしておきたいと思いますが、特にこの際、ことし問題にしなければならないのは、高等学校用の新しい教科書が、三十八年度から、教育課程の改定によって使われるわけです。すでに高校用の教科書の未検定本、白表紙の見本を全国各地にくまなく頒布いたしまして、編集上役に立たないアンケートをその中へ入れて、これにお答え下さればお礼をいたします、そういうような形で、高校関係は従来はあまり乱れていなかった採択関係が、そういうような白表紙戦術といいますか、そういうようなものが使われ始めてきている。そして高等学校の採択に対して、またこの次には警察の御厄介にならなければならないような事態が出かかっているわけであります。こういうような、いわゆる未検定木を各学校に提供して、それによって役に立たないアンケートを求めて、しかもそれを出してもらった場合にはお礼をいたします、こういうような形で教科書の売り込みを特定の会社がはかっている事実がありますが、これは公取の不公正な取引であり、そして特殊指定に触れる行為であると思うのでありますが、いかがでありますか。
  103. 竹中喜満太

    ○竹中説明員 事実が教科書の使用または選択を勧誘するために金銭を供与しておるということでありますれば、独禁法上問題になる疑いは当然あります。
  104. 村山喜一

    ○村山委員 文部省は、そういうような未検定木が参考にというような形で各学校に広く提供をされているという事実を調査をして知っておられるかどうか、その点についてお答えを願いたいと思います。
  105. 諸沢正道

    ○諸沢説明員 具体的な事実は知っておりません。
  106. 村山喜一

    ○村山委員 われわれのところには、そういうような資料がやはり各地から集まっております。ところが文部省の方は監督官庁であるからというせいもあるのでしょうが、何ら具体的な資料は集まらない。そしてどういうような人がどういうようなふうにしてある会社のために働いているというようなことも資料としてつかんでおられない。そしてまたいろいろ問題が出てきて初めてその通達を出して、これで事終われりというようなことでは、私は教科書行政というものは、文部省が考えておる善意の方向へ持っていこうとされる結果とは反する結果になってくるのではないかということを考えるわけです。もっとあなた方は、今日激烈な競争を行なっております教科書会社のそういう実態というものをはっきりとらえていただいて、それに対する適切な手を打たれなければいけないのではないかと思うのですが、何かそういうようなものに積極的に取り組んでいく御意思がございますか。
  107. 諸沢正道

    ○諸沢説明員 もちろん私といたしましては、できるだけ宣伝活動の実態を知りたいという気持は持っておるわけでございますが、ただ御指摘のような点になりますと、実際調査方法なり、やり方なりにつきまして、いろいろむずかしい点もございますので、今日まで的確な資料が得られない面もあったわけでございますが、気持としては努めてそういったようなものについて十分調べて今後の資料にしたいという気持を持っておるわけでございます。
  108. 村山喜一

    ○村山委員 私の質問はこれで終わりますが、この教科書問題につきましては、先般参考人を招きまして、教科書に対する汚職が出ないように決意を披瀝していただきました。しかしながらやるやると言いながら、現実には自分たちの商売だということで、こういうようなことが繰り返されておったのでは、これはもういつまでたってもこの問題の解決はできないと思います。これを解決していくためには、先ほど公取の方でようやく審判の段階になってきたとおっしゃったが、そういうような過去において現われました現象を早く是正させるという手と同時に、この教科書の問題について採択の権限が一体どこにあるか、その統一採択を進めていく過程の中においてこれらの汚職の問題が大きく浮かび上がってきているわけですので、そういうような採択権の問題についても、今度の教科書調査会でいろいろ検討をされることになっているようでありますが、この顔触れを見ましても、やはり文部省の言う通りのものしか生まれてこないような感がしないでもありませんけれども、しかしながらこの問題についてどうすればいいか、公取の方では、統一採択になったら、当然そういうような公の教育委員会等の関係が採択に関与してくるようなことになることも指摘をされているわけであります。汚職と統一採択とはつきものです。その汚職が出ないような教科書行政というものを十分に検討願いたいということを要望申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  109. 上村千一郎

    ○上村委員長代理 三木喜夫君。
  110. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 この間じゅうから教科書汚職につきまして、非常にわれわれは心を痛めているのであります。そして当局あるいは業者の方を参考人として来てもらって、どのようにすればこうしたことが根絶できるかというところに焦点を合わせて種々論議もして参りました。しかしながらきょうのところまでは、遺憾ながら、その確たるものが得られない。また大臣も局長も、また公取の局長も、刑事局長もおいでになっておりませんので、もう一度こうした機会を持っていただいて、徹底的にわれわれはこの問題を納得のいくまでお聞きし、対策を考えなければならない。結論的にはそう思うわけです。なぜそのように申し上げるかというと、過去において公取がいろいろ調査され、指導された事実の中に、教科書汚職に連なって一番問題になる点、供応、金品の贈与、こういう面につきまして、過去一回も指導あるいは勧告もされていない、この事実がこの前のときに明らかになったのですが、なぜ今日このように汚職が花盛りになっておるか、子供たちの取り扱います教科書をめぐってなぜこれだけ大きく論議されるようになったかというと、過去に根がなかったことはないのです。過去に必ず根がある、あるいは事実がある。それがこのようにして表へ現われなかったからということによって指導されていないところに問題があると私は思う。これがまず一点。  従って過去の問題あるいは現実に起こってくる現在の問題を処理していただきたいというところからわれわれは問題にしておるわけです。幸いに今度の事件につきましては、審査の段階であって、その終結ももう近い。その結果によって指導なりあるいは業者に対してのいろいろな働きかけができるということでありますので、まずこの点はその結果を見なければわからないと思うのです。  次にわれわれが問題に思っておりますことは、そのように現実に事が運んでおるにもかかわらず、次の汚職の芽が、今村山委員から指摘されましたように現実に発生しつつある。これでは何にもならない。文部省は何をしておるか、公取の方もそんな事実をみんな黙殺されておるのかというような論さえ起こってくるわけです。一般ではこういうままにほっておけばぐるではないかというようなことを言い出すわけなんです。この前の委員会でも私は某新聞が指摘しました点を申し上げておきました。すなわちこういう汚職が各般にわたって起こっております。教科書だけではありません。野党の議員でさえ追及の手をゆるめておるではないかということを新聞に書かれるようになっては、まことに私たちは残念だと思う。特に純真な子供が取り扱う教科書であるというところになおさらの感じがするわけなんです。そういう過去、現在、そして将来に向かってなお汚職の根が絶えない、絶ててないという私たちは認定の上に立って、そうして皆さん方にお考えを願っておるわけでありますので一現実に皆さん方をやかましく追及しておる、このようにお思いにならぬように一つお願いしたいと思います。  以下そういう観点に立ちましてお聞きしたいと思います。  文部省から「昭和三十八年度使用教科書の採択について」初中局長の通牒によって、県知事、国立の高等学校長、それから都道府県の教育委員会、それから各教科書発行会社、社団法人教科書協会あてそれぞれの通牒をお出しになっております。このことは新聞では、異例の措置で非常に早く出したといってほめてありますけれども、文書だけ幾ら早く出してみたところでその事件の内容や事実をつかまえないで、それも知らぬというようなことでは、私は通牒は、たびたび申し上げますように作文行政になっておると思う。はたせるかな、私は過般来教科書課長に対して資料をたびたび要求いたしましたけれども、根っからその資料をまだいただけない。このことにはいろいろ思い違いや行き違いがあっただろうと思いますけれども、こうしたところにも私は熱意を疑わざるを得ないわけなんです。今そんなことに取り合っておりますと時間がありませんので、これは教科書課長直接に今後当たっていきたいと思うのですが、この中にこういうことが書いてあります。まず注目すべきこととして「採択の公正を疑わしめる事例があったことはまことに遺憾であります。」このことは認めておられます。そこで教科書の採択というものは、採択関係者が緻密な研究の上で慎重に行なうべきものである、そして三十七年度の高等学校の一年生の教科書を採択するにあたっては厳正公平な立場でやらなければならない、「いやしくも過当な宣伝行為に誘発されてみだりに採択換えを行なう等、いささかでも採択の公正を疑われることのないよう御指導願います。」大体どの通牒を見ましても大同小異のことが書いてある。要点はそれだけだと思います。従って私はその教科書の採択問題について現実を申し上げたいと思います。あなた方はこのようにしておけば、教師あるいは教育委員会は厳正な措置で臨んでやってくれる、このようにお思いなんですが、その点から一つお聞きしたいと思います。教科書課長お願いします。
  111. 諸沢正道

    ○諸沢説明員 もちろんこの通達を一本出しますればそれで目的が達成される、そういうふうには考えておらないわけでございまして、その趣旨とするところを、十分また今月の二十日にも指導部課長会議等もございますので、そういった際に徹底させていきたい、かように考えております。
  112. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 ずっと以前の採択の問題について、わが党の長谷川委員から引例されました言葉を私は申し上げたと思うのです。採択にあたっては展示会でやります。その展示会に対して教師が行って、そこで教科書が初めてわかる。そしてどの教科書がよいかということは、その次に審議する。そういう段階を経るわけなんですけれども、長谷川委員言葉では、教科書の展示会に行くよりもその他のところに行く方がよほど効果的である。非常に含蓄のある言葉で言われてあります。これは教科書課長としては何を意味しどこに原因があるとお思いになりますか。
  113. 諸沢正道

    ○諸沢説明員 現在教科書センターは全国で約六百、それに分館等を入れますと千近くになります。また採択の時期は臨時分館を設けられますので二千カ所くらいになるわけでありますが、私どもがその利用状況を調査いたしますところによれば、必ずしもそう軽視されているというふうには考えておりません。しかし御指摘のようにそのセンターの実際の分布状況なりその他を考えますれば、あるいは十分にこれを活用し得る先生方のみではないのであって、おっしゃるようにその点では必ずしも実効を上げ得ない点もあろうかと思いますので、今後ともそういう点につきましては改善に研究をしていきたい、かように考えておるわけでございます。
  114. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 ちょっと私の申し上げておることに対しての答えになっていないと思うのですが、端的に申し上げますと、これはある教科書業者の話を聞いたのですが、先生方は展示会に行っても、私たちはそれを採択するのに、言葉をはさむことができない、事実、展示会に行ったことを活用さしてもらえるパートがないということを言っているんですね。そうして、たとえばその一市に五十校があって、そして五十人社会科なら社会科の主任があるとしたら、社会科の主任ばかり寄って、その見てきたところのものを中心にして熱心に討議をするならばいいけれども、採択というものはそのうちの八人とか十人に限られて、それの意見が通ってしまうというようなことなので、十人か八人、それらの人々に教科書会社として働きかけたらいいのだということを言っておるわけです。そういう結果がそこに出てきておりますし、教師が子供とともにそれを使用しなければならない教科書というものが、教師の意思をとらないいうところにこの事件が起こってきておるということを、再々申し上げておるわけなんです。まずこの点を一つよく考えていただきたいと思う。そういうことを言っております。私も現場におりましたから、非常に教師が無気力になってしまっておる。これは採択制度、採択のやり方の上に問題があって、われわれとしてはこの権限が教師にありということを再々申し上げておる。実質教える者はどの道具をもってやれば教えてよいかということは、その教師教師によって違うわけなんです。そこで最大公約数をそこに見出そうとするのが主任会であり、採択委員会であるというように持っていってもらうならば、教師の一人々々の意思が生かされてくることにもなり、汚職が絶滅するのじゃないか。私はこのように思う。この点について課長の御意見を承りたいと思います。
  115. 諸沢正道

    ○諸沢説明員 教科書の採択の権限がどこにあるかということは、再三大臣並びに局長も答弁しておりますように、私どもはこれは所管の教育委員会である、こういうふうに考えておるわけでございまして、ただその教育委員会がどの教科書を採択するかというその過程におきましては、これは十分に現場の先生方その他の御意見を生かされるようにして、それを慎重に取り入れた上で最終的には委員会が決定する、こういう建前で、またそのように指導をして参っておるわけでございます。従いましてそういったような意味で個々の教育委員会なり採択の団体なりがどういうふうな意見の取り入れ方をするかということは、今のところは特に御承知のように特定の規定もあるわけではございませんので、実情に合ったような方法でやっておるということでございます。
  116. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 あなたの方は局長、大臣が公式的に言われておることだけを復唱されておりますけれども、事実教育委員会が民主的にそのようにやっておると思っておられるところに認識の不足があると思う。実際民主的にやっておるところは、今村山委員が説明しましたように、投票でやっても、その投票はひっくり返されておるわけです。そういうことをやらないところの方が多いわけなのです。これはどうか実情把握の上に立っての御指導を願いたいという一つの例でありますので、よく御銘記願ってその御指導をお願いしたいわけであります。  それから一言触れておきたいのは、時間がありませんですから簡単に触れたいと思うことは、教科書汚職の問題が起こりまして現場の教師が処罰されております。行政的にも刑事的にも処罰されております。このことは私はよいとは言いません。まことに悲しむべきことで、現場の教師としても反省すべき点であろうと思いますけれども、ただ遺憾に思いますことは、この問からあなた方の論法でしますならば、現場の教師は採択権がないのに処罰をされておる。私たちは採択権があるのだから処罰されるのだというけれども、採択権がないのに処罰をされている。そうしますと、あなた方の御説明では、それは行政的に命令が下されてある、あるいは辞令を用いても用いずとも、こうしてもらいたいという命令が下してある。従ってその命令に反しておるから処罰しておるのだと言われますが、これは異質のものです。命令に違反しておるということは業務命令に違反しておることであって、採択権に違反しておる問題じゃないのです。採択権による汚職ではない。また、公務員としての汚職かもしれませんけれども、採択に関係しての汚職ではないわけです。この間から採択権がいずこにあるかということをめぐって混線しております。その点も明確な指導をしていただいて判断をしていただきたいと思うのです。これは法務省の方にもお聞きすべきだと思うのですが、まずその点を申し添えておいて、文部省の方に対する質問はおきたいと思うのです。あと教科書の無償制度の調査会に対して若干お聞きしたいと思いますが……。  次に公正取引委員会にお聞きしたい。  先ほど申しましたように、過去においては一度もそうした金銭、物品の贈与に対して、あるいは酒食の供応に対して指導がなされていないことは、公正取引委員会から出していただいた資料ではっきりしたわけでありますが、公正取引委員会が公正取引協議会の指導をされておるということをたびたび伺ったわけなのですが、私はこの指導に対して非常に疑問を持っているので、その点について質問をさしてもらいたいと思います。  まず公正取引協議会というのは、業者の自主的な規制によって、自覚によって、そうしてそういう汚職が起こらないようにしようじゃないか、そういう不公正な取引が行なわれないようにしようじゃないかというのがこの協議会の趣旨だろうと思うのです。しかしはたしてそれがその通りに行なわれておるかどうか、その点についての御指導をどのようにしておられるかお聞きしたいと思います。
  117. 竹中喜満太

    ○竹中説明員 これは不公正取引方法一般について申し上げますと、教科書に限ったことではないのでございますが、大体公正取引委員会の従来の方針が、もうすでに御存じであると思いますけれども、まず第一段階として業界の自主的な規制で問題を解決してもらう、第二段階として経済部でこれを指導する、第三段階として審査部で審査手続をするというような方針をとって参ったわけでございます。これはどうしてそういうことになりますかと申しますと、私、一カ月半ばかり前まで、審査部長をやっておりましたのですけれども、違反事件を処理する場合に、カルテルその他の問題は職権で探知が、容易にできるのでございますけれども、不公正取引方法というものは公取の職権では探知することが非常に困難である。それでありますから、不公正な取引方法を用いられておる相手方とかあるいは用いておるものの同業の競争者から申告がないとなかなか問題として取り上げにくいというようなこともございまして、できる限りは内部的に業界で処理するのがいいのではないかということで今日まで来たわけでございます。それで従来は、私かわったばかりで詳しいことをあまり知りませんけれども、公取の意を体しまして、協議会の方で終始連絡をとりながら不都合の事態があればそれを解決するように持っていっておったものと存じます。
  118. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 時間がありませんから端的に申し上げますと、こういう事態にいよいよなってきて、公正取引協議会というものが会合を数次持つ、その数次の会合も人が集まらなくて三回も流会しておるのです。事実熱意がないじゃないですか。これはあなた方に関係あるかないかわかりませんけれども、この間からの御答弁では、公取協議会とよく連絡をとり指導してという通り言葉で逃げられておられますから申し上げますが、流会しております。それからいよいよこういう大詰めの問題、あなた方の方で審査なさっておるような問題を、業界が自粛の中でどういうふうに処理するかといったら、お手上げだという、そんなことは聞いておられますか、こういうことだったら、世の中を欺く一つのアクセサリーでしかないということなんですね。こんな上に、これはアメリカ式だから、これほど優秀な方法を採用しておるのだとおっしゃいますけれども、事件は次から次に続発している。それはもうお互いにノー・コメントだ、そんなことは言い合いしまい、自主規制なんか考えられもしないことなんです。そうして中央管理委員会ですか、そういうものを作ってその責任者となろうとする人が、聞くところによると、私はこの仕事はできない、もうやめたいと思いますといって辞意を表明しております。私はその中のメンバーの一人に聞いてみました。監視員を置いて監視するという言葉が書いてあります。たとえば研究会の問題も今出ましたが、研究会をいろいろやって、その研究会をやるのに行き過ぎたようなことがあってはいけないということで監視をするというのです。その監視員も、やれますかというと、それはやれません、こういうのです。それでは私は、公取の方でもしこれを育てていこうというお考えがあったら、文部省がこれを育てるべきだというようなお考えがあるとするならば、こういう実情は全くなっていないと思います。  それから四月十六日の午後一時から教科書協会の方で会合が持たれました。そして午後五時から赤坂の賀寿老という料亭で会合が持たれております。公取あるいは文部省の方としてはその会合に出席されましたか、お聞きしたいと思う。
  119. 竹中喜満太

    ○竹中説明員 初めの方の問題でございますけれども、従来のいき方は、ただいま申し上げましたように、また公取の者がただいままでも申し上げておりますように、なるべく協議会を指導して、これと連絡をとりながらやっていこうという方針だったと思います。しかし、私最近担当課長などとも話しておりますけれども、昭和三十五年、三十六年のああいう事態を見ますと、教科書の特殊な、ほかの商品と違う性格あるいは教育に及ぼす影響等を考えますと、はたしてまかしておいて効果が上がるかどうか、はなはだ疑問があるということを申しております。そうなりますと、協議会の方で一生懸命おやりになるのはけっこうでありますけれども、私の方としましても、従来よりさらに積極的に問題を取り上げてこれを調べていかなければならぬのじゃないかと思います。  それから、あとの点につきましては、私初めて伺うので、全然存じておりません。
  120. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 だれが出ておるか、調べて下さい。文部省はどうですか。
  121. 諸沢正道

    ○諸沢説明員 協会の理事会には出ておりません。
  122. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 晩の方も出ておられませんか。
  123. 諸沢正道

    ○諸沢説明員 夜の懇親の会には出ました。
  124. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 だれが出たのですか。
  125. 諸沢正道

    ○諸沢説明員 局長、高山審議官、それから私であります。
  126. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 教科書協会というのは教科書の業者の会合であります。私はむしろ午後一時から行なわれておるこの会合にあなた方が出て指導すべきだと思うのです。夜の懇親会というのは一ぱいの席ですよ。こういう席上へあなた方が出られて何をなさるかということなんです。言うなれば、委員会でこういうことを追及しよったけれども、あれはあの程度でよろしいわというようなことくらいで話が終わるとすれば、私たちが声をからして教科書汚職が起こらないようにと言っておるにもかかわらず、ざるに水を入れたようなものじゃないですか。こういうようなところに出ることを、私は悪いとは言いません。指導はむしろ午後一時のときにやってもらいたいということなんです。しかしその内容については、私は担当の局長、大臣がおいでになったときに、もう少し伺いたいと思います。  まあそのようなことで、教科書の問題につきましては次々と問題が発生しておるのに、一体どこがくさびになってこれをせきとめるか、だれがくさびになるかということについて、私たちはもはや法務省、検察庁以外になくなったというような気さえするのです。両、三年起こりに起こって、なおかつやまらなくて、これが今なお続こうとするところの気ざしが出ておる。これでは一体何になるのです。私はもう少しその責めにおる人が作文行政あるいは口先の行政、世の中をごまかすようなこういう文書だけを出して、そして裏では業者と一緒に一ぱい飲んでおるというようなことは厳に戒めてもらいたいと思うのです。そうでなかったらいつの日にかこれがおさまるのです。そして末端の需要者である生徒、児童、これからも疑惑を受けられる教師も傷ついておるのに、依然としてそれに指令をしたところの大手筋会社の幹部は追及の手からのがれておる、それは一緒に酒を飲んでいるからのがしておるわけなのですよ、極端にいえば……。  そこで、私は、時間がありませんけれども、以下その事実を出しますから、両方ともよく聞いておっていただきたいと思います。  今度法務省刑事局の方にお聞きしておきたいと思いますが、この間うち起訴された汚職の問題として、私たちは二十一件に及ぶのじゃないかと思ったのですが、にもかかわらず九件、これは今法務省から出していただいた資料によりますと九件ですか、なっておると思うのです。これは法務省にいたしましても検察庁の刑事局の方にいたしましても、その選定というものを九件で終えておこうという——私の聞いておるのでは二十一件ぐらいに及ぶのじゃないかということを聞いておるのですが、全部出してみて、そうしてこれは軽微なものだからのけておこうというのがいいじゃないかと思うのですが、最初からこのくらいのところでおさめておこうというとような考え方はどういうもんだろうかと思うのです。  それから法務省から出ておる資料ですが、私はできれば今度起訴になった、略式刑でもけっこうですから、どういうことになったかということをお聞きしたがったのですが、姫路を中心にして起こっている事件だけしか資料は出していただいていない、これはどうしたことかと思うのです。私の言い方が悪かったのか、その点が明確でないので、最初にそれをお聞きしておきたいと思います。
  127. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 まず最初の点でございますが、この事件が起きましたときに全国に連絡をいたしまして、内定の段階のところもすべて報告をとったのでございます。結局証拠がつかめずに今回のような結末になったようでございます。  それから、ただいまの資料の点は、連絡をいただきましたところでは、あるいは聞き違えたのかもしれませんが、姫路市立東光中学校関係ということで資料を出しておりますので、もし御必要でございましたら、あとでまた……。
  128. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 それはだれがそういうことを連絡されましたか。私はそういう資料の要求をしていないのです。これはまあ後ほどでけっこうですが、できましたらその起訴になった可能な範囲の資料をいただきたいということを申し上げたのですけれども、これは一つ誤解のないようにしていただきたいのですが、公取にその資料を要求しました、文部省にも要求しましたが、事件中であるからよう渡せないということで、両方とも出してくれなかった。そうして法務省にお願いして出してもらいたい。それで了解されたということで私は了としておったわけなんです。それはそれにしておいて、できるだけ可能な範囲で出していただきたい。  それから、もう時間がいよいよありませんからして端的に申し上げたいのは、仙台で今事件が起こっておる。あるいは熊本でこれも不公正な取引になりそうな事件が起こっておる。それから白表紙を配って、それによるところの不公正な取引の疑いがある。この四件が出ておるわけなんです。これは村山委員の方から提示されたのですが、法務省としてはこれについて実質的に取り調べていただけるわけですかどうですか、その点聞きたい。
  129. 羽山忠弘

    ○羽山説明員 先ほど申し上げましたように、関係の検察庁の方に連絡いたしたいと考えております。
  130. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 時間がありませんし、責任者がおられませんので、私の申し上げた点が焦点ですから、もう一ぺんその責任者に短時間でもけっこうですから出ていただいて、私はその点を申し上げたいと思います。それはおいておきたいと思います。  そこで、新たに私の方から提起したい事件としましては、こういうことがあるのです。これを御銘記願いたいと思います。文教委員会で今までいろいろなことが話されておるけれども、要するにわれわれとしてやっておるのは——これは業者の方ですが、公取あるいは文部省に対するところのゼスチュアである、事実は過当競争になろうが、しっかりやれというような、ゼスチュアだというようなことを言っておるわけです。そういう会社の幹部があるということを聞いておるわけです。今まで自分たちはまことに相済まぬことをしたというような考え方はないわけです。そこで、私たちはそういうことが言われておるということを聞いて、これではまだ改まらないということを思うわけです。そして、資料によって調べてみますと、会社の中で昨年度よりもそうしたことに使う運動費というものが二割もふやされておるという事実がある。これは文部省あたりもよく検討していただきたい。あなた方は会社の業務成績を三十三年、三十四年、三十五年、三十六年、こういうように原価計算するような格好で、売上高と純利益とが一体どういう比率になっておるかという比率をとって、むずかしいものをあげてきておられますけれども、こんなところの分析がなされていない。ただ教科書値上げをするところの理由を見つけようとして三十三年から四カ年かの統計を出しておられる。そして教科書会社が文部省にへばりついておって値上げをしてくれということでがんばっておる。そういう材料に使われただけでありますからして、どういうところから資金が出てきてどういう工合に流れているかということを文部省、公取の方でもよく御検討願いたいと思う。そういう疑いのある資料を私は持っている。第三番に申し上げたいのは、その金をどのように使うべきかという計画までなされている。現地の先生の名前まであがっているが、その先生はまだ知らない。その先生にこういう工合にしていくべきだと、地方の所長の権限下においてそれがなされておるわけなのです。私はもってのほかだと思うのです。特に申し上げるのは、会社の幹部が行って、傘下の業者を集めて、これはゼスチュアであるから過当競争をやってもよいのだ、やらなんだったわしらつぶれてしまうのだとのうのう言ってのけておるというようなことを聞くのは遺憾であると思います。そういうことが行なわれておるように聞きます。こういう点は責任の方に出ていただいて検討すべき余地があると思いますが、きょうは時間が来ましたので、一応これで終わっておきたいと思います。
  131. 小林信一

    ○小林(信)委員 これはいよいよ重大問題で、質問を申し上げて問題解決に当たりたいというような希望を持っておったのですが、もう二時ですからきょうはやめますが、今三木さんが言われたように、また機会を持ちまして、さらに責任者に来てもらって問題の追及を深めていってもらいたいと思うのです。それについて一言申し上げたいのです。文部省の態度は、何とか質問を避ければよいというようなことでいるように思うのですが、もっと根本的にこの問題を解決する方策というものを立てなければいけないと思うのです。今課長さんの御答弁なんか聞いておりますと、この教科書の汚職問題が教育にどういうふうな影響を及ぼすかという点を十分に考えての御答弁ではない。ほんとうに熱意がない、私はそういうふうに受け取っているわけなんです。これは法務省、検察庁、あるいは公取、こういう方たちにもつと根本的な問題を出してもらって、この問題の解明に当たるくらいの態度をとってもらわなければいけないと思うのです。生まれてきた事象について責任者としてどう対処するというふうな考えがあれば——先ほどお話がありましたように、原稿料を出すとか、あるいは講習会に何か便宜をはかるとかいうふうなことで巧みにやっておれば、贈賄あるいは収賄にはならないというようなことになれば、もう取り締まることは全然不可能だと思うのです。というのは、さっき三木さんが言ったように、自粛ということを公取が第一の手段として選んでおられるといいますが、もう社長が部下に命令するのに、自粛というのは文部省に対するゼスチュアなんだ、公取に対するこれは一つのカムフラージュなんだ、こんなことにこだわったら商売ができないぞと厳命を下して仕事をしておられる。それを公取がまともに受け取って、自粛させる、こんな態度で取り締まりをやろうったって、できないことなんです。検察庁あるいは法務省の方は、贈賄、収賄ということは非常に取り締まりが困難だといいますが、それくらいのことは業者も十分承知をしておる。私はその指令書というのを見せてもらったのですが、講習会、研究会、同好会だとか、そういうふうなものの数が網羅されて、何十と及んでいるわけです。地方のボスをねらえとか、あるいは取引店をこういうふうに工作せよとか、そういうふうなものを見たときに、あなた方が幾らがんばっても根本的にこれを是正することはできない。教科書問題をこういうところで取り上げておりますけれども、これが父兄や善良な教師たちにだんだん浸透して参りますときには、教育そのものが崩壊すると言ってもよい。これは一文部省の教科書課の問題ではない。文部大臣の問題でもない。現内閣の大きな責任問題になるほどのことだと私は思うのです。それが文部省当局においては、先ほどのお話のように、こういうふうに問題になっておる業者の会合へ夜出て、そうして酒食の供応を受ける、こういうことが国民に知れたらどうなりますか。それにつけても勤評問題あるいは学力テストの問題、これは、表面的には文部省は公正な一つの行政として、常々と行政上の問題として述べておりますけれども、これが大きな禍根を持っておる。こういうところにも問題があるわけなんです。ということは、教育委員会等は勤評の問題、あるいは学力テストの問題等については、彼らとしては一つの判断を持っている。必ずしも文部省の大臣のような考えに従っておらない。しかし、やはり権力に従っておくことの方がいいというふうな簡単な考えから文部省に協力をするその反面、今度は、こういうふうな問題については、幾ら局長からこんな指令が出ようが問題じゃないのだ、大体文部省の意図に従っておる点からすれば、こういうふうな問題も大目に見るだろうというような形でもって、今文教行政の中のこういう教科書問題も、腐ってきておるとも考えられるわけなんです。従って、こういうふうな問題について強い指令を出すけれども、これに対して文部省が、ほんとうに道義心に訴え、教育の良識に訴えて行政をするというふうなことができなくなっている。そういう問題まで公取なりあるいは検察庁、法務省というふうなところが考えて、こうしなければこの問題は解決できないのだというような率直な意見を述べ合わなければ、私は問題は解決できないと思う。文部省が、当面の役人が教科書協会の供応に応じておるというふうなこんなことは、たといその中でもってどんな話をしなくても、ごちそうになった以上は、やはり大目に見なければならぬとかというようなことは当然のことであって、これが国民に知れたら、教科書問題というものはますます深みに入っていくだけなんです。そういう意味からしても、もっと公取にしましても、あるいは法務省、あるいは検察庁にしましても、徹底的に問題を究明して解決してもらわなければならぬと私は思うのですが、そういうことについて、次回もしこの委員会が開かれます場合には、責任者がそういう根本的な問題を話していただいて、そうして文部省に重大な反省をさせなければだめだと思うのです。そうすれば、結局業者もこれは大へんだということになってくるわけです。一つそこまで掘り下げられるように、私は皆さんの御努力を願いたいと思うのです。私たちの方には全く山のように資料が集まり、地方からいろいろなことについてどうかこの問題は今後なくなるように御努力願いたい、そういう切実な要望がたくさんにきているわけです。しかし私たちは、何とかそういう問題をここでもって暴露するのでなくて、どうしたら教科書の不正事件がなくなるか、どこに方法があるか、根処があるか、これが根本で、きわめて地味におとなしくきょうまで質問を続けてきたのですが、いささかもそういうふうな態度が文部省に出てこない。ほうっておいたら、私は文部省だけの問題じゃないと思う。大きな政治責任の問題になってくると思うのです。そういう点で私たちは当たっておるのですから、きょうのような話のわからない態度でもって進むならば、そこまで私たちはいかなければならぬ。こういう決意を持っているわけですから、せっかくおいでいただくわけですから、どうかその意図で今後も臨んでいただきたくお願いを申し上げる次第です。
  132. 木田宏

    ○木田説明員 ただいま諸先生から、いろいろと私ども改善すべき点についての御指示と御鞭撻をいただきました。教科書の問題につきましては、担当の局を中心といたしまして、今後なお検討しなければならぬ点も、御指摘のようにいろいろとあるように私も考えにているわけでございます。  ただ一言、私も直接の担当でございませんので、的確にというわけにも参りませんが、三木委員の御指摘の中にありました、教科書の関係者から会合へのお招きがありましたことについては、こういう集まりがあるから、局長もかわったことであるし、せっかく集まるので、一つ出席を願いたいということで、実は昼の会合の連絡は全然なかったようでございます。ですから夜の席であったようでございますけれども、そのときにいろいろな関係者にお目通りを願うということで、新局長等出席したように私は聞いておるわけであります。  なお、教科書の採択の問題につきましては、教育委員会が最終的な責任を持つということでやっておるわけでございますけれども、しかし教育委員あるいは教育委員会の関係者だけが、教科書の問題について知っておけばいいということではございませんで、やはり教科書センター等を設けまして、できるだけ多くの方々に教科書の内容についての判断を求め、それを正しく集約して参りまして、最終的な責任を教育委員会が間違いなく運用していくようにする、こういうことで年来努力をいたしておるわけでございます。従いましてそういうふうな関係から、それぞれこの教科書の採択問題に関連して参ります教職員の方々も、かなり手広くなっておるという実態にあるわけでございまして、その中に今御指摘のように思わしくない事例というのが出ていることも、私ども否定できない現実の事実でございます。これを、今のような思わしくないものをすみやかに是正をいたしまして、そして多くの方々の意見を教育委員会の責任のもとに集約をして、適正な採択ができるという方向に、これは教職関係者を初めまた業界の方々等も、一緒になって直していかなければならぬことじゃなかろうかというふうに考えているわけでございます。  きょうは、まことにやむを得ない事情等もございまして、政府委員その他出ておりませんが、いろいろと御指示のありましたところは、また私からも確実に伝えまして、次会しかるべく御審議に資するようにしたいというように考えております。
  133. 小林信一

    ○小林(信)委員 そういう弁明でごまかそうとあなたはなさっているように私たちは受けるのです。今教育委員云々の問題があったのですが、やはり教育委員会のあり方の問題なんかも、あなたたちはほんとうに検討しなければ、この問題は解決できない。そこまでいかなければいけないと思います。あなたも総務課長として、相当地方の教育委員会のあり方等については御存じであるし、ことに勤評等の問題で、相当地方教育委員会等とは折衝を持たれておって、今私が申し上げたようなことについては、ある点うなずけられるような点があるのじゃないかと思うのです。教育委員会のあり方なんかも、政党関係の者なんを入れないというふうに、新しい委員会法には出ている。しかし実際においては、それがどういうふうに運営されているか。ほんとうにあの法律の通りに教育委員という者が選ばれているならばいい。ほんとうに良識ある者が出ているならいい。ところが公選制から任命制になったそのときに、私たちが指摘したように、そこの市長が自分の権力的な考えを持ったり、あるいはいろいろな政治的な配慮をして、そうして教育委員を作るというふうなことが行なわれれば、幾ら問題が教科書であっても、その採択においては不公正なことが、不公平なことが行なわれる。ただこれは教科書だけの問題ではない。一般教育の人事の問題だとか、予算の問題だとか、いろいろなことが出てくるのだ。そのときにあなたたちは何と答えたか、絶対にそういうことはさせない、できない、ないのだ、こう言っておるけれども、きょうあたりの教科書の汚職問題というものはそういうところから出ておる。そういう根本問題についてあなた方が反省をし、制度を変えろとは言いませんが、しかしあの制度を作った文部省がその意図通りに教育行政を行なうように努力することが、あなたたちの責任だというふうに自覚されることを、私たちはこの教科書問題からも考えてもらわなければならぬというようにも問題は発展しようとしているわけなんです。そのときに、単に会合へ出たことがどうのこうのとか、たまたま出たのだとか、そんな答弁でもってこの問題をごまかそう、解決しようとしておるのだったら、私たちの意図とはおよそ違うというところに私は一言申したわけです。大体今日教科書問題がこういうふうに論議されておるわけです。決して小さい問題ではない。今の教科書問題は世相だ、日本の社会全般の縮図の問題であって、こんなことはあたりまえのことなんだ、物を売り買いするのにリベートをつけるのはあたりまえだというくらいまで解釈されてしまったならば、この教科書なんかどんなことになるかわからぬという私たちは配慮をしておるときなんです。文部省もこの点を考えて、疑惑を受けるようなそういうことは避けるべきであって、まことに申しわけなかったというのがあたりまえだと思うのです。たまたま出たとか、きょうの教科書問題に対する政府の出方をごらんなさい。どうせろくな質問もないだろうから、何でも質問をごまかしておけばいい、そんな気持でもって私たちはこの問題に当たっておるわけではない。ほんとうに与野党一致して何とかしてこの問題はきょうこの時期に防がなければ今後どうなるかわからぬ。小中学校の教科書が新しく採択される問題について大きな反省をし、今高等学校の教科書の新しく採択されようとするときに臨んで、せめて高等学校の問題だけでもこういうことがないようにわれわれは考えているわけなんです。あなたたちもおそらくそういうことは承知しておる。承知して見のがしているのじゃないか、こういうふうに私たちは疑わざるを得ないようになってきているのです。私がこの前申し上げたように、今までは高等学校の教科書というものは割合に小さい会社がやっておった。それが大資本、大企業の教科書会社が進出しようとしておる。三千六百万部の数を現在獲得しておりながら、ことしは四千万部を獲得せよという指令が出ているわけなんです。公取がどういうふうな話をしょうが、どんな自粛協議会が相談をしょうが、そんなことは一切無視されて行なわれているわけです。あなたたちもそういうことはつかんでいると思うのです。それに対して何ら手を打たない。こんなことでもって——もう今までの経験からして、こんなことは役をしないのだという態度があなた方に少なくともなければならぬ。それで一片の紙を配ってわれわれ議員をごまかそうというようなつもりだから、今のような何か釈明をしようというような態度になってくるのじゃないかと思うのです。もう少し真剣に考えて、この次には文部省の態度はこうでございますとはっきり言って下さい。今のような答弁でもってごまかすということは私は国会軽視だと思う。次にお願いいたします。
  134. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 法務省に対しまして先がた私申しましたことで間違いがありましたから訂正します。要求しました資料は、出してもらった通りの資料を要求しております。一応訂正したいと思います。その上再度要求しました点は御配慮願いたいと思います。よろしくお願いいたします。
  135. 上村千一郎

    ○上村委員長代理 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時二十五分散会