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1962-02-14 第40回国会 衆議院 文教委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月十四日(水曜日)    午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 臼井 莊一君 理事 竹下  登君    理事 八木 徹雄君 理事 米田 吉盛君    理事 小林 信一君 理事 村山 喜一君    理事 山中 吾郎君       伊藤 郷一君    上村千一郎君       小澤佐重喜君    田川 誠一君       松永  東君    南  好雄君       杉山元治郎君    高津 正道君       前田榮之助君    谷口善太郎君  出席国務大臣         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君  出席政府委員         文部事務官         (大臣官房長) 宮地  茂君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         文部事務官         (管理局長)  杉江  清君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局長) 清水 康平君  委員外出席者         文部事務官         (初等中等教育         局財務課長)  岩間英太郎君         文部事務官         (初等中等教育         局特殊教育主任         官)      辻村 泰男君         文部事務官         (管理局振興課         長)      平間  修君         文 部 技 官         (文化財保護委         員会事務局美術         工芸課長)   松下 隆章君         専  門  員 石井  勗君     ————————————— 二月七日  委員池田正之輔君松山千惠子君及び井伊誠一  君辞任につき、その補欠として中曽根康弘君、  山本猛夫君及び佐々木更三君が議長指名で委  員に選任された。 同日  委員中曽根康弘君及び山本猛夫辞任につき、  その補欠として池田正之輔君及び松山千惠子君  が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員上村千一郎君及び松山千惠子辞任につき、  その補欠として小川半次君及び石田博英君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員石田博英君及び小川半次辞任につき、そ  の補欠として松山千惠子君及び上村千一郎君が  議長指名委員に選任された。 二月十三日  高等学校生徒急増対策に関する請願木村守江  君紹介)(第九〇四号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第九七三号)  同(唐澤俊樹紹介)(第一〇三八号)  同(中島巖紹介)(第一一一一号)  同外一件(鈴木義男紹介)(第一一四三号)  同(鈴木善幸紹介)(第一一八六号)  同外一件(村山喜一紹介)(第一二一四号)  総合制高等学校増設等に関する請願外一件(花  村四郎紹介)(第九〇五号)  同(坪野米男紹介)(第一〇五九号)  同外一件(井伊誠一紹介)(第一四一号)  同外六件(鈴木義男紹介)(第一一四二号)  同外五件(村山喜一紹介)(第一二一五号)  同(坪野米男紹介)(第一二一六号)  高等学校増設等に関する請願花村四郎君紹  介)(第九〇六号)  小、中学校教科書無償配布に関する請願外四  件(牧野寛索紹介)(第九〇七号)  同外六件(牧野寛索紹介)(第九五五号)  同外一件(牧野寛索紹介)(第九九三号)  同外六件(牧野寛索紹介)(第一〇二九号)  長野市に国立工業高等専門学校設置に関する請  願(羽田武嗣郎紹介)(第九七四号)  同(唐澤俊樹紹介)(第一〇三九号)  同(中島巖紹介)(第一一一二号)  公立義務教育学校学級編制及び教職員定数  の標準に関する法律の改正に関する請願羽田  武嗣郎紹介)(第九七五号)  同(唐澤俊樹紹介)(第一〇四〇号)  同(中島巌紹介)(第一一一三号)  へき地手当指定期限延長に関する請願(上  村千一郎君外一名紹介)(第九八七号)  日本学校安全会鹿児島支部職員増員等に関す  る請願池田清志紹介)(第一一四〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  盲学校聾学校及び養護学校への就学奨励に関す  る法律の一部を改正する法律案内閣提出第七  号)  学校教育に関する件  文化財保護に関する件      ————◇—————
  2. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 これより会議を開きます。  学校教育に関する件等に関し調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。村山喜一君。
  3. 村山喜一

    村山委員 先般高校急増対策の問題につきまして大臣から答弁をいただいたわけでございますが、まだどうも納得ができない点がありますので、引続いてお答えを願いたいと思います。  今回地方財政計画が出されましたが、この中で高校急増分として、普通建設事業国庫補助を伴わない分といたしましては百三十三億が予定をされている。この百三十三億の地方財政計画の中に示されておりまする数字の中には、私立学校に、都道府県側私立学校協会との間に高校急増に対する協定を結んで、資金あっせんとかその他やっているようでありますが、そういうようなものまで含めて考えておるものかどうか、この点が第一点でございます。  先般の大臣答弁では、地方交付税の中において二十億円程度私立学校関係経費として考えて、それを地方財政計画の中に入れ込むように今努力いたしているという話でありました。ちょうどその質問をいたしましたその日に地方財政計画がまとまって、国会の方に報告がなされたわけですが、その内容を見てみますと、従来五億円程度ありました私立学校助成都道府県経費が、倍額の十億円ということにとどまっているようであります。そういたしますと、私立学校の四十万人を収容していくところの、急増期における文部省が従来考えておりました急増対策計画がくずれていくのではなかろうか、こういうようなことを考えるわけですが、十億にとどまってもなお支障はないかどうか、こういう点について第二の点は承りたいわけです。  それからその地方交付税の中で急増分として認められております十億円というのは、その他経費に入ると思うのでありますが、先般高等学校教職員標準定数配置基準法律が通過いたしましたが、それに伴いまして、これはもちろん公立学校だけが規制をされるわけでありますけれども教育条件を引き上げていかなければならない、こういうようなことで、当然私立学校の場合も影響を受けるわけです。それに伴う経費が大体どの程度見込まれておるのかということでございます。その点を明らかにしていただきたい。  それと、実際三十七年度において、初め計画をされております高校急増対策文部省計画は、坪当たりの単価幾らに抑えてやっていくかということであります。というのは、私立学校振興会の方の貸付金積算坪単価は、予算に計上されました文部省計画をしております五万五千円に対しまして、六万三千円だということを聞いているわけです。現実はそれよりももっと上回って坪単価は実際必要になるわけですが、私立学校振興会の方は積算基礎が六万三千円で貸付の対象を考える、片一方公立学校の場合には五万五千円という単価計算でやられているというところに、構造比率関係から当然最近の傾向といたしましては鉄筋校舎が多くなりつつあるわけですが、文部省が初め考えておりました木造と鉄筋あるいは鉄骨の構造比率急造分については大体半々というふうに見積もっておったものが、今日実勢といたしましては、とうていそういうような格好ではないのではないか、こういうふうに考えて参りますと、そこには当然資金的な量において、なお今後において需要が増大をしていくという結果をもたらしているのではないかということを考えるわけです。そうなりますと、現在、私立学校の昨年の実績でもよろしいわけですが、どういうふうにして学校建設しているのだろうか。これは一番大もとになるのは振興会貸付金でありましょうし、あるいは自己資金学校収入あるいは補助金、さらに都道府県補助金というようなもので、これがこの急増対策に対して三十六年度においてどういう実績を示しているのかということを説明を願いたいと思うわけです。  なお話を聞きますと、当該年度において生徒急増いたしますが、高校対策として、三十七年度建設をする施設の面については、その年度になってから建設をするという計画が立てられているやに聞くのであります。そうなりますと三十八年度からの分は三十八年度に入ってから建設計画を進めていくということになりますと、学校の授業その他を考えた場合には、そういうことは実際的に不可能ではないか、こういうような点を考えるわけですが、はたしてそうでなければよろしいわけですけれども当該年度増員分はその年度内において消化をしていくという文部省計画であるのかどうか、それが実情に即しないということになるならば、当然三十八年度急増分は三十七年度に前向きの形で、先行投資の形で教室が建設をされなければならないと思うのでありますが、そういうふうになった場合に、文部省の方で私立学校関係急増分として予定をしております経費が現在の計画よりもはるかにふえてくるということになるのではないかと思うわけです。そうなって参りますと、ここに文部省の案がございますが、三十六年度実績はどういうことになるのか、また三十七年度は四十四億程度考えておいでになるようでありますけれども、その四十四億ではたして足りるかどうかということについては、非常に大きな問題点があるのではないかと思うわけですが、その点はどういうふうになっているかということを明らかにしていただきたいと思うわけです。  なおこの際お尋ねをいたしますが、私立学校振興について各都道府県とその地区にあります私立学校協会との間において、急増対策についての協定を取り結んでおるところがあるようであります。これは私立学校校舎建築をしていく場合において、当然振興会貸付金が足りませんので、あるいはまた学校収入金入学金やその他の寄付金によってまかなうことも現実的に非常に困難である、こういうようになりますと、外部からの借入金によって建設をしていかなければならない。この場合に都道府県なりが資金あっせん方法を講ずるかあるいは利子補給をやるような、そういうような債務保証を行ないまして、それによって学校を建てていく、こういうようなことが言われているわけでありますが、これが地方財政計画との問題、あるいは地方財政運営の上においてどういうような影響をもたらしているのかということについて、御承知の範囲内においてお答えを願いたいと思うわけです。
  4. 杉江清

    杉江政府委員 御質問が多岐にわたっておりますが、まず御質問お答えいたす前に、ちょっと私理解しにくい点がございましたので、百三十三億というのはどこからお取りいただいた数字でございましょうか。公立学校需要総量は百五十四億と私ども計算しておりますので、その数字のことでございましょうか。
  5. 村山喜一

    村山委員 これは二月の五日に自治省から出しました「昭和三十七年度地方財政計画における主要な増減経費は第二表のとおりである。」というその増減の中に、高校急増対策費として総額百三十三億、一般財源が百三十三億という表が出ているわけです。それに基づいて私は質問しているわけです。
  6. 杉江清

    杉江政府委員 わかりました。公立学校急増対策の三十八年度需要総量は百五十四億でございますが、その中から国の補助金を除いた部分を百三十三億として計算してございます。これはもちろん公立だけの部分でございます。  それで私立につきましては総額四十億と計算いたしております。そしてそのうち十六億円を私学振興会からの貸与、それから産振の補助金が約二億七千万、その他につきましては、これは都道府県がいろいろな形で助成することを期待し、その裏づけ地方交付税でみております。それが十億でございます。これは昨日の閣議決定になりました地方交付税法の一部を改正する等の法律案にすでに出ておりますが、私立高等学校増加生徒数一人について三千六百円という基礎をもって計算されているわけでございます。そこで一応その四十億円についてはただいまのような措置がなされているわけでございます。繰り返して申し上げます上、私学振興会からの貸与産業教育振興法に基づく補助金と、そのほか都道府県利子補給その他の形によって助成いたします分の交付税での裏づけ、そのほかにもちろん自己資金もあるわけでございます。  以上のように措置してございますが、先ほどお話しの、その他行政費の中の十億でございますが、これは高校急増分とは直接の関連のない経費でございまして、先ほど申し上げました私学急増対策としての十億のほかに、今まで一般助成として考えられている分大よそ五億をふやして十億にいたしたのであります。従来とも私立学校振興につきまして都道府県各種の形で助成を行なっております。そのいわゆる一般助成裏づけを増加したわけでございます。それが十億でございます。この一般助成部分につきましては、これは公立学校における定数法の成立に伴う教員の充実、それに見合う私立学校運営費増等の事情をも考えて、私学に対する一般助成を一そう強化していかなければならぬ、こういうふうな見地から考えておるわけであります。私立学校についてはその一般助成高校急増対策の十億、合わせて二十億をもってその助成をはかる、こういう考え方をとっておるわけであります。  次に、三十七年度高校急増対策における単価が、公立が五万五千になっているが、私学は六万五千になっている、それはどうしてそういう差があるのかという御質問かと思いますけれども、この六万五千は、大学を含めた単価として計算されておりますので、そのようにふえておるわけでございます。  それから私学高校急増対策計画は、前向きにやっているかという御質問でございますが、これは計画としては前向きで考えております。  それから私学高校急増対策として総額四十億という計算で足りるかということでございますが、この点は、私ども一応こういう計算をいたしておりますが、御指摘のように、単価計算等において、私どもはいわゆる明年度予算に計上されております予算単価をもって計算してございます。私ども計画としては、そうすることが適当だと考えて、そのようにいたしておるのでありますけれども、そのような単価実情と合わないという面は私は率直にあると考えます。この点は今後の問題点でございますけれども、しかし一応全体の状況を把握する際に、そのような予算上認められます単価をもって計算し、それが実情において著しく大きな隔たりがあるとも考えられないのでありまして、一応このような計算で処理できるものと考えております。それから府県の段階におきます私学助成の問題でございますが、それにつきまして、県と私学の諸団体とのいろいろな協約とか話し合いとかが行なわれており、そうしてまた都道府県私立学校に対する助成を次第に強化しております。それは現実の趨勢でございますが、私どもも今後ともそういった都道府県私立学校に対する助成はこれを奨励していきたいと考えております。交付税積算基礎も引き上げられましたから、それに応じた都道府県助成が当然ふえて参るものと期待しておりますけれども、なお今後とも各種の機会にそのような助成を奨励して参りたいと考えております。  もう一つ、ちょっと省略いたしましたが、私学への財政援助について、前年度との比較について具体的に示せという御注文がございましたが、この点については、おそれ入りますが担当課長に説明させていただきたいと考えます。——ただいま担当課長に伺いましたところ、今その資料を手元に持ち合わせていないということでありますから、追ってその資料を調製して提出いたしたいと考えます。
  7. 村山喜一

    村山委員 大体わかりましたが、三十六年度実績計画が十四億になっておりますね。文部省計画は十四億六千六百万円です。この文部省計画に対して実績はどうなっておりますか。
  8. 杉江清

    杉江政府委員 昨年の計画十四億というのが、ちょっと私どももつかみにくい数字でございますが、これはどこからその数字をおとりになられましたか。
  9. 村山喜一

    村山委員 この数字は、私立学校中高協議会というのですか、急増対策中高協議会、あそこの方で、文部省の案としてことし文部省は四十四億、こういうようなことを計画をして、昨年は先行投資意味において十四億六千六百万円、この内訳等もわかっておりますが、そういう計画が立てられておるわけでしょう、私立学校関係はどうするということで。
  10. 杉江清

    杉江政府委員 ただいまの数字急増の問題でございましょうか。といいますのは、昨年度一応四億と私ども考えておりまして、総事業量は約六億くらいになるわけでございます。
  11. 村山喜一

    村山委員 数字が食い違うようですので、その点はあとで調べていただきたいと思いますが、とにかく三十六年度実績は、高等学校急増時を来年度から迎えるということで、先行投資意味で、それぞれ私立学校では、金はないけれども外部からの資金を借り入れてでもこの際作っていこうということで、大体実績は五十億くらいになっているはずだということを聞いているのですが、これは私学振興会の方からの数字として出てきていると思うのですが、その財源内訳までも大体わかっておるわけです。そういうような場合に、ことし四十億程度ということでお考えになっておりますが、この四十億の投資をやって、ことし幾ら生徒を収容する計画になりますか、何万名ですか。
  12. 杉江清

    杉江政府委員 先ほどの五十億というのは、いわゆる高校急増対策分でなく、一般整備部分総額に該当するかと考えておりますが、先ほど来の御質問数字については、私どもの方でも調査いたします。  なお高校急増として私学についての生徒数の増をどのように見ているかという御質問お答えいたします。
  13. 村山喜一

    村山委員 杉江さん、あとでけっこうですから、公立学校都道府県収容計画数、それから私立学校計画数、これを一覧表にしてお示し願いたいと思うのです。それに基づいて後日論議したいと思います。  私が主張をいたしたいのは、四十億円という資金計画が一応成り立っているように聞くわけですが、とても四十億では足らないということを主張をしているわけです。というのは、ことし大体八十億くらい金をかけなければ私立学校で引き受ける分は急増対策の分としては十分ではないのじゃないか、そうなった場合に、私立学校の現在の経営状態からいった場合に、急増期を迎えたがためにますます借入金が多くなって、将来学校経営基礎がこわれてくる、そうして利払いに追われてにっちもさっちもいかぬような状態がおとずれるのではないか、そういうような場合において、補助金が足らなければ低利の資金を何らかの方法考えていくような方向がとられなければならないのではないかということを主張をいたしたいわけなんです。今私学振興会貸付金の中から十六億円を回すということでありましたが、これは可能だろうと思うのです。しかしながら、今度の出資金は全部で十二億円ですから、そうなりますと、回収分を当てなければならないということになって参ります。その回収分ももちろん当てるだろうし、あるいは私立学校共済組合の方からの借入金も当てるような方向によって資金量を確保していくような方法はとられるだろうと思うのですよ。それで私立学校についてはこの四十億で大体間に合うのだ、こういうようなふうにお考えになっておりますと、実情はそうではなくて、非常に苦しい。それの倍くらいのいわゆる資金計画というものが必要になるのじゃないかということを懸念いたしておりますので、そういうものの文部省公立学校の場合と同様にあとでよろしいですから、一つその急増対策年次計画表をお出し願いたい。それに基づいてまた後日論議して参りたいと思います。きょうはこれで一応保留いたします。     —————————————
  14. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 高津正道君。
  15. 高津正道

    高津委員 尾形乾山の新作品と称せられる新発見の大量の名陶の真贋論争が始まっておるのでありますが、政府美術行政に関する質問を数点いたしたいと思います。混乱を避けるために、また私の時間を短くするために、覚書を書いてきましたが、質問の趣旨をよく理解してもらうために、私がどんなふうに見ておるかを初めに序論的にちょっとだけ述べて、それから幾つか質問をしたいと思います。  最近栃木佐野地方の旧家(複数)から、二百数十点に上る大量の尾形乾山作品発見されまして、これをめぐり、わが国の古陶器世界では学者、古美術商収集家などの間に大きい波紋を描き、世間の注目を集めております。すなわち、本物説主張者は、ちょっと数えてみますと、一、京都国立博物館工芸室長藤岡了一氏と同室の技官全員断定、二に、わが国にも広く知られる日本陶器研究家であってちょうど日本に来ておる英国の陶芸家バーナード・リーチ氏が本物だという断定をしておるわけです。三に乾山研究家作家青柳瑞穂氏が、またその主張者であります。それから四に、東京国立博物舘林屋晴技官がそれであります。ただしけさになって読売新聞で、自分は本物だと言うておらぬのだということを言っているが、今までずっとそれできておるのは明らであります。第五、最近見つかった佐野手控帖、いわゆる佐野乾山ほんもの説の根拠の一つになっておるものですが、それを調査した東京大学の日本美術史山根有三助教授。第六、佐野乾三と称される作品を大量に所持するに至った京都森川勇氏、四十七才。その父、森川勘一郎氏、七十六才、元文部省文化保護委員。この六人が中心でほんもの説を主張しておる。にせもの説主張者を次に見ますと、一は、佐野市の古美術商川村一郎氏。二、乾山研究家として知らるる、兵庫県芦屋市山芦屋一五三、元大阪機械製作所社長、山田多計治氏。三、佐野市天神町、栃木文化財保護委員長篠崎源三氏。こういうところであります。  尾形乾山は一六六三年に生れて一七四三年に死んでおるが、御承知のようにわが国陶芸界の三大陶工の一人として、陶工木米野々村仁清とともに内外にその名を知られておるのでありますが、その作品が低い温度で焼かれて、陶器と土器との中間であるところから、偽作が非常に容易で、後世諸名工の写しが多く、真作を得ることは困難とされており、これは尾形乾山ものに対する定説となっております。  しかしそれにもかかわらず、現在学界で乾山色絵陶芸と認められるものは大小合わせて約二百点で、一点百万円近くはするだろうといわれております。しかもこの約二百点という数字は、乾出作品はこれでもう発見され尽したという意味で使われているのであります。  ここに一点につき百万円に近い価格を持つといわれる乾山の古陶器があって、しかして偽作は容易なりという実情がある場合には、にせものを作ってほんものなりとして売って、不当なる利益を得ようとする者が現われ、またそのにせものであることを知りつつ本物なりとして売買して不当な利益を得ようとする者も出現する道理であります。以上のようなことを考えて私は御質問申し上げるわけです。  第一点、尾形乾山作品は、わが国世界に誇り得る定評ある古陶器であって、今日新発見の二百数十点の真偽が長期間にわたって判別されないままでいるという現象は、わが国の有する古陶器鑑定力がいかに未熟で、未発達の状態にあるかを世界に知らしめる結果を招くに違いありません。それは国際的不名誉であります。この点から政府は直ちに本問題解決のために乗り出して、しかるべき措置を講ずべきであると思いますがいかがでしょうか。御見解をお伺いします。
  16. 清水康平

    清水政府委員 ただいまいわゆる佐野乾山作と称せられるものが突如数百点世の中に出て、そしてその真贋について各方面において議論の的になっておるというお話でございました。しかも尾形乾山は大体今までわかっておりまする点数が二百点くらいであったにもかかわらず、こういうものが出てきたということは、今まで一体どういうことをしておったのか、この際国は積極的に乗り出してこれが解決について努力すべきではなかろうかというような意味のお話があったのでございますが、実はこの問題が私どもの耳に入りましたのは昨年の暮れからでございます。これの真偽は別として、どうしてこういうようなものが突如として現われてきたのかと調査いたしてみますると、日本の国柄でもございましょうか、事実これが一部の人が言われる通り佐野地方の旧家の倉深くしまわれておったということになると、その真偽は別といたしましても、これは今まで調査が不十分というにはちょっと無理なのではなかろうか。現に日本世界でも御承知のごとく社寺にいまだに門外不出の未調査のものが相当あるのでございまして、この点はすみやかに調査いたさねばならぬというわけから、本年も実は総合調査を、たとえば延暦寺とかいうものについていたしたいと思っておるのでございますが、今まで旧家に奥深くしまわれておった、それが事実としたならば、そのものがはたして乾山であるかないかは別といたしましても、やむを得ないのじゃないかと思います。しかしそれについて巷間いろいろの論議がありまするが、国が、しかも文化財保護委員会が乗り出しまして、ここで真偽を鑑定するということがはたしていいのかどうか。これは価値問題であり、学説、学者の問題もありますので、私どもといたしましては、これを広く公開をいたしまして、いわゆる乾山作品がたくさんございますが、それとも一緒に公開をして、そうしてこの焼きものの歴史でありますとか、あるいは焼きものの技術あるいは文様でありますとか、そういうようなものを比較考量して、一般天下の人々に見ていただいて、そしておのずからそこに帰するべきものが、結論が出てくるのではないかと思っておるのでございまして、今直ちに文化財保護委員会が乗り出してその鑑定をしていいとか悪いとかいうふうに考えて、そういうことをいたしたいとは思っておりません。
  17. 高津正道

    高津委員 第二にお尋ねいたしますが、現在の本物説にせもの説の勝敗を自由なる論争の推移にまかせて、結局誤った結論に達し、売り手買い手のいずれの側にせよ、莫大な利益または損害を与えた場合、また後に至ってさらに今出た結論がくつがえった場合、売買当事者の利益と損害は今度は逆になるわけです。今回の真偽論争を見るに、一つの重大なる特徴が看取されます。すなわち本物説主張者の中には実に多くの文部技官が含まれておることであります。これに反してにせもの説主張者はほとんどが在野の人であります。そこでお尋ねいたしますが、国の給与を受けて古美術を研究し、鑑定し、保護策を講ずる文部技官は、その主張が誤っていた場合に、この佐野乾山事件の責任をとる必要はごうもないものだとお考えでしょうか、また責任をとるべきだとすれば、その程度なり形式なりはいかようなものであるのですか。これが第二問です。
  18. 清水康平

    清水政府委員 博物館あるいは文化財研究それ自体は一種の研究機関でございまして、それぞれの技官がいろいろの自分の調査研究に基づいて個人的な意見を発表したのがただいまのお話となったと思うのでございますが、これはあくまでも博物館、研究所、あるいは文化財保護委員会としての発言ではなく、美術に関する一研究の立場からの発言と考えている次第でございます。 それから私どもが内々調査いたしましたところによりますと、いわゆる佐野乾山と言われております数百点のものが、はたして、佐野乾山作であるかないかは別といたしましても、これは非常におもしろいものだ、これはおもしろくないものだということがあり得たろうと思うのでございまして、これは非常におもしろいものだというものにぶつかると、その研究技官は、これは非常にけっこうでおもしろいと言われたに違いないと思うのでございましてこれが公式の意見として、もし文化財保護委員会あるいは博物館あるいは研究所としての意見として発表した場合、後いろんな意見がもし出てきた場合にはこれは別でございますが、今日までは各個人の研究の結果を個人的な立場から発言したものである、と私ども考えている次第でございます。
  19. 高津正道

    高津委員 今の第二問についてもうちょっとお伺いいたしますが、博物館は研究機関であるから、博物館やまた研究所の人が研究の結果の個人的見解を述べたにすぎないので、文化財保護委員会の発言ではない、こういう御意見を承ったのでありますが、前に永仁のつぼの問題があり、それからいろいろな事実が、たとえば毎日新聞でいえば三回も詳報をしている。第一回を見ても非常に発言を慎まねばならない事態だと思いますが、それなのに次から次へずっとその見解を支持してこられたのであって、これはやはり個人的見解を述べるといっても影響するところが非常に大きいのですから、その発言は非常に穏やかでないと思います。文化財保護委員会の意見として発表したとか研究所の意見なりとして発表したというのではないが、個人的見解にしても、たとえば林屋晴三氏のごときは博物館の古陶器の第一人者であるかもしれません、そのように見られている人であるから、そういう国家の機関におる人が個人的見解をぼんぼんと出されれば、本物説がずっと勝つわけですよ。三、四日前までは本物説が勝っておったのですから。きのうに至ってそのにせもの説というのが、証拠がだいぶ出て、きのう活字の上ではひっくり返ったのですから、責任はないということが言えますかね。そんな官吏が、国の最高の担当関係者と見られている人間が、個人的見解だから、影響はどうあろうとも見解を述べるのはかまわないのだ——東京国立博物館は文化財保護委員会の下部機構でしょう。それで事務局長文化財保護委員長は統率の責任ということはどうなるのですかね。
  20. 清水康平

    清水政府委員 ただいまの高津先生の御指摘は、それは全くおっしゃる通りでございます。私といたしましては研究に従事している技官といえども、その発言が慎重でなければならぬということは全く同感でございまして、その点は注意を促している次第でございます。ただ、大へん言いわけがましくなって恐縮でございますが、この研究者として長い間研究をし、自分の信念に基づいて発表する場合、どの程度これを押えていくと申しますか、これは要するに私どもといたしましてはできるだけ慎重にするように、他に迷惑を及ぼさないようにと言っておりまするが、結局は本人の良識に待つ以外にはないと思うのでございますが、たとい個人的な意見だったとしましても、ただいま御指摘のように及ぼす影響が大きいということは、私として特に考えてもらわなければならぬと思いますので、今後その点は特に十分注意するようにいたしたいと思っている次第でございます。
  21. 高津正道

    高津委員 では第三問に移りますが、昭和時代の作品たるいわゆる永仁のつぼを、国が鎌倉期の永仁時代の作品であるとして重要文化財に指定したことは誤りであったのでありますが、その指定取り消しに、あたっては初めて位相差顕微鏡やエキス線螢光分析などの科学調査を採用したのであります。今回こそまず第一に、さきにあざやかに威力を発揮したこの科学調査を、問題の新発見佐野乾山ものに適用すべきであると思います。これは常識だと思うのです。なぜ直ちにその手段を採用なさらないのか、なぜそれがおくれているのかという理由をも、この質問とともに答えてもらいたい。
  22. 清水康平

    清水政府委員 エキス線螢光分析、位相差顕微鏡というようなものによりまして、その材質なり経過年数を調べるということは、今日科学的な管理方法として非常に大切であることは申し上げるまでもないことでございますが、これも文化財保護委員会といたしまして、現在数百点ありますが、だれのところにどういうものがいっておるかというようなことは具体的にはわかっておらないのでございまして、もし所有者があるいはその他の人が、ぜひこれで検査してもらいたいということになりますれば、もちろんその求めに応ずるつもりではおります。ただしこれはたとえば年代が今から二十年前のものであるとかあるいは三十年前のものであるとか、あるいは三百年前のものであるとかいうような結果が出るのでございまして、位相差顕微鏡それ自体から当然乾山であるとかないとかいうことは出てこないと思っております。たとえば年代が三百年ごろのものであるとかあるいは二十年前に焼いたものであるとかいうことは、もし求めがございますればもちろんこれによって検査いたしても差しつかえない、こう思っておる次第でございます。
  23. 高津正道

    高津委員 だれのところにどの品があるかわからないし、向こうから申し出れば調べる、こういうお答えでありますが、ルートもちゃんとわかっておるのだし、それからバーナード・リーチに、京都森川勇氏が、ある新聞は六十点といい、ある新聞は百二十点というが、それを見せて、これは絶品だと言い、本物だと言ったということも、有力な信用ある新聞は書いておるのですから、所在がわからないと、いうことは言えないだろう。たった一品じゃないでしょう。佐野市の旧家の倉庫の奥に何があるかわからぬ、それが出たということもあり得るので、そういう非常に本物説に同情するような言葉を局長は吐き続けておられるのでありますが、求めがないから調べないんだ、科学調査の方法を使わないんだ、これはちょっとわからぬと思うんですよ。年代はわかるが佐野乾山であるかどうかはまだわからないという言葉もあるけれども、年代が最近のものであれば乾山でないということは、ちゃんともう年代がわかれば証明になると思うのです。そうであれば、あなたは首を縦に振っておられるが、速記には載りませんけれども、そうなればあなたの答弁はわからなくなってくるし、年代がわかれば乾山でないということはわかると思うが、その論理はどうですか、私の論理を認めますかどうですか。
  24. 清水康平

    清水政府委員 前もって申し上げておきますが、私はこういう学問的価値判断につきまして、いわゆる佐野乾山なるものが本物であるということに同情もいたしておりませんし、そうかといって非同情でもございません。あくまでも中立的な立場をとってりっぱな学者たちの検討の結果を待とうと思っておる次第でございます。  それから今位相差顕微鏡その他エキス線のお話がございましたが、反射的な結果として、たとえば二十年前ということであれば、たといその作りはおもしろくてもいわゆる佐野乾山でないということはわかるのでございまして、そのことを申しただけでございまして、その点は一つ御了承願いたいと思います。
  25. 高津正道

    高津委員 それでは第四の質問に入りますが、美術行政は文部行政の一部分であってその善悪、その行政の結果、あるいは誤ったとか正しいとかということに対して、最終的には文部大臣に責任があるものですか。ないものならばその法律的根拠をお示し願いたいし、この点に対する清水局長の御理解をお尋ねするのです。
  26. 清水康平

    清水政府委員 申し上げるまでもなく、文化財保護委員会は文部省の外局として置かれておりまする合議制の行政機関でございます。これは議員立法に基づく文化財保護法の規定を見ましてもおわかりの通り、文部大臣から独立いたしましてこの文化財行政を処理していくことに相なっておるわけでございます。主としてその内容は専門的あるいは価値判断的のものが多うございますので、そういう日常の判断の最後の国家意思は、文化財保護委員会が文部大臣から独立して行なうということに相なっているのでございますが、このような価値判断の最後の国家意思の問題につきましては、やはり文化財保護委員会が当然責任を負うものと考えておる次第でございます。ただし文部大臣は主務大臣といたしまして、教育文化、学術の最高の責任として一般的な統括権は持っておることは申し上げるまでもないと思うのでございます。
  27. 高津正道

    高津委員 第五問に移りますが、美術行政の領域には、表面化していなくとも、われわれが積極的に調査をすれば、重大性において乾山ものの大量新発見と同程度のものがあると言われております。そして今後もこの種の重大問題は表面化すると見てよいのであります。その場合の措置は全部国の文化財保護委員会ないし同委員長が行なうべきものであって、なぜならばあなたの説明によれば、事は技術的な問題であり、価値判断の国家意思の決定は文化財保護委員会の合議によって決定するのである、こうも言われるから、文化財保護委員会なり、その委員長が行なうべきものであって、文部大臣文化財保護委員会ないし同委員長に対し、職権を持ってその措置を命ずることはできないし、すでに何らかの措置に出ておる場合にはそれに関与する権限も少しもない、こう事務局長はお認めになっておるのですか。
  28. 清水康平

    清水政府委員 個々の、主として価値的判断、専門的な事項について文化財保護委員会は文部大臣と独立して行なうのでございますが、教育、学術、文化については主務大臣としての責任を負われますので、個々の行政事務は別といたしましても、一般的な統括権はあると私は解しておるのでございます。従いまして一般的な勧告権というものは文部大臣にあるのではないかと思っておる次第でございます。  なお御承知のごとく国有財産法、財政法、会計法の立場からいたしますと個々の価値的判断とは違いますので、やはり文部大臣がそういう点において責任を持っておるのでございまして、たとえば国有財産法の各省、各庁の長といった場合にはもちろん文部大臣が入るのでございまして、文化財保護委員会の委員長は入らないというところから見ましても、一般的な統括権、従いまして概括的な勧告権はあると私ども解釈しておる次第でございます。
  29. 高津正道

    高津委員 それについてもうちょっとそこをお尋ねしますが、法務大臣は検事総長の個々の起訴、不起訴いろいろな問題に対しては言えない、しかし指揮権発動で他の理由があればそれに待ったという権限があることは事実においてわれわれは見ておるのであります。行政権のそのような発動を知っておるのであります。それと同じように理解して、個々の鑑定とか、個々の文化財指定とか、個々の行政措置に対しては文部大臣に権限がないが、しかし事が天下の大問題となって、常識からいっても一体政府というものは美術行政をやっておるのがないのかどうしたのだ、こういうような事態になって、これは創価学会と他の宗教とのけんかのような、大きい暴力ざたにはなりますまいけれども、非常に国の名誉を損壊するという事態が起きた場合に、文部大臣は個々の問題には及ばぬのだというのですか、指揮権発動のようにじゃんじゃん措置命令を出して、国の名誉を維持することができるのかどうか、その点をもう少しお答えいただきたい。
  30. 清水康平

    清水政府委員 文部大臣は一般的な統括権に基づきまして概括的な勧告を行なうこともできるし、説明を聞くこともできると思いまするので、その判断に基づきまして文部大臣は適宜せられるものと私どもは信じておる次第でございます。
  31. 高津正道

    高津委員 そうすると、文部大臣は、文化財に関する個々のあなた方のやられる行政措置に対して説明を求めることもできるし、勧告もできるのである、そういうお言葉をはっきり私は聞いたのでありますが、そういう御答弁なのですね。聞き間違いがあってはいかぬから……。
  32. 清水康平

    清水政府委員 文部大臣のお立場から、どういうことを勧告したらよろしいかという説明を聞いて、どうしたらよいか、具体的な問題は文部大臣において判断せられて、われわれに対して勧告なり説明を求められるものと思います。
  33. 高津正道

    高津委員 では次の第六問に移りますが、たまたま今年は尾形乾山生誕三百年にあたっているので、世界平和委員会ではさきに顕彰したる雪舟、光琳に次いで、近くこの乾山世界的に顕彰せんとする計画がございます。そのように承っております。  さらに京都の森川氏父子には、前述の英国の著名な陶芸家バーナード・リーチ氏らとともに、近く乾山図録を作製して出版する計画があると聞いております。政府はこれらの進行に対し、森川勇氏及びその父勘一郎氏について、この出版計画について調査をされたことがございますかどうか。
  34. 清水康平

    清水政府委員 乾山、雪舟それから光琳の日本代表の三大芸術家についての顕彰云々のことにつきましては、新聞記事以外に私は聞いておりません。ただしいわゆる今度突如として現われた佐野乾山の作といわれている——はだして真偽のほどはわかりませんが、このものについて森川氏であるかどうか知りませんが、それを一つの図録にしようというような案あるやに、これはわきから聞いたのでございます。それに対しましては、文化財保護委員会と直接関係しておりませんが、説明、解説というような問題につきまして、文化財保護委員会関係の人にもし編さんをしてもらいたいというような場合には、よほどその人は慎重な態度をもって、良識によって行動するようにというふうに、私から申し伝えたことだけは記憶しております。
  35. 高津正道

    高津委員 それでは次の第七問ですが、図録を出版し頒布することは、国内へはもちろん、世界への発表であるから、もし反対する民間人側の意見が正しくて、文部技官たちの多い賛成説が誤っていた場合には、その誤れる鑑定の国家的恥辱というものは一そう大きいものとなることは、一民間人ではないのですから明白でありますから、科学的調査を大急ぎで実行して、その結果が判明する日まで——それはあまり日時は要しないわけでありますから、その出版の刊行を待つべきであろうと、図録出版の計画者に勧告しておくべきではあるまいか。とりあえず病気の進行しないように注射を打っておくというような意味であります。森川氏父子についての御調査の有無とともに、あわせてこの点をもお伺いします。
  36. 清水康平

    清水政府委員 もしかりに、具体的な話は聞いておりませんが、図録の話の内容ももう少し調査してみませんと、今ここで何とも言えません。いわゆる尾形、佐野乾山といわれているものという意味で出すのか、指定されている尾形乾山作が四点ございますが、そういうものと一緒にして、もう初めから尾形乾山として出すのか、その図録の内容その他を調査しませんと、何とも言い得ないのでございますが、私どもといたしましては、民間でやる場合について、行政的にチェックはできないと思いますけれども文化財保護委員会職員がタッチするかしないか、した場合どうするかということについては、よほど慎重な態度で臨みたいと思っている次第であります。
  37. 高津正道

    高津委員 われわれ文化財保護委関係者はむろん、博物館や文化財研究所などを含めてわれわれ関係者は、監修などを頼まれても受けないようにしようという意味をすでに伝えておられるのですか。
  38. 清水康平

    清水政府委員 恐縮すが、ちょっと聞き漏らしたのですが……。
  39. 高津正道

    高津委員 われわれ文化財保護委関係者及び東京、京都の博物館や文化財研究所に働く文部技官、その関係者は監修などの申し入れがあっも、それには手を出さないようにということをすでに申し伝えてありますというように私はお聞きしたのでありますが、そうでしょうか。
  40. 清水康平

    清水政府委員 この監修という態度でやるのか、あるいは説明者として記入するのか、その辺は具体的には聞いておりませんし、また現実に博物館の人たちや、どういう程度か聞いておりませんが、身分上の直接の監督者は、博物館長の副署を受けてありますので、私どもとしては、慎重な態度でもって、良識に従って処置するようにというふうに館長を通じて申し伝えておる次第でございます。
  41. 高津正道

    高津委員 それでは第八問ですが、きのう、すなわち二月十三日にも有力新聞の一つが「本社の調べでは次のようである。」という前置きで読者にこういう報告を書いておるのであります。「三十四年十一月ごろから斎藤素輝氏が米田政勝氏に「佐野市の旧家から発見した」と佐野乾山銘入りの陶器数点を持ち込んだ。その後も数点ずつ、約二百点を「米政」に売りつけた」。——米政というのは米田政勝、骨董屋さんです。もう一つ「キメ手を握る斎藤氏はどうしたことか所在がはっきりしない」またこの新聞は「この一、二年来「佐野乾山」をめぐって妙な動きがありすぎる」として、「佐野市で「乾山」を発見したはずの斎藤素輝氏(五六)=東京都中野区上高田三の二二=が佐野市内で「乾山」をつぎつぎに売り歩いていることである。」という事実をも報道しています。かりにこのような三つだけの事実があるとしても、この三つの重大な事実を無視して、ただ斎藤素輝氏、米田政勝氏、森川父子の経路で大量に流れてきている新発見の大量の「佐野乾山」そのものだけに科学調査を行なうにとどまらず、この種の重要なる状況判断的調査対象に対しても調査すべきだと存じます。何某という固有名詞が次々と現われている以上、招くなり訪問するなり、手分けしてやれば、科学的調査と同時に行ない得る事柄でありますから、それをなぜ実行なされないのか、それをお伺いしたのであります。
  42. 清水康平

    清水政府委員 この問題につきまして、文化財保護委員会が法律上はもちろん、行政上調査するという権限と申しますか、そういうものはないのでございまするけれども申し上げるまでもなく、私どもにとりましては実に大きな重大関心事でございまするので、調査権とかなんとかいうことでなく、いろいろな情報は常日ごろ集めておるのでございます。それがはたして十分であるか不十分であるか、今後まだそれを続けていきたいと思っております。  それから、科学的な器械で至急やったらどうかという御意見でございますが、全くそれは一つのりっぱな御意見と思いまするけれども、それがよきにつけ悪きにつけ、そういうことを抜きにいたしましても、それもやはり行政権を発動して、これを取り上げて検査するというわけに参りませんので、そういう人たちが進んで一つ検査してみてくれぬかというようなお話があれば、もちろん進んでそれに応じたいと思っておるわけでございます。
  43. 高津正道

    高津委員 次の問題に移りますが、真贋の論争に終止符を打つところの有力なるきめ手として「佐野乾山の作品と覚書の全部を公開し、陶磁史、陶磁技術、絵画文様、美術史などの各専門家が鑑定する」という方法をあげているのがあります。初めに事務局長は大体そういうことを今やりつつあるような、そういうような意味お答えがございましたが、政府にはそういう権限はないようにもまたいわれておりますが、しかし今、忍び寄る静かなるインフレというものが全世界をおおっておるのでありまして、無限に富を有するやからが、そのインフレをおそれて、国宝級のものを世界的に集めておる傾向がございまして、それに乗じて、たとえば重要文化財あるいは国宝、それを文化財保護委の手ではずしもらえば、海外へそれを売って高くもうけられるという事実が論理上あるわけであります。そこで古美術商あるいはそれの今の収集家というものは、文化財保護委員会の一顰一笑というか、その権威の前にはおそれ入っておるのであって、ちょっと目くばせをされれば、あとがこわいし、いろいろお世話にならねばならぬ関係筋でございますから、生殺与奪の権を握っておられるのでありますから、そこから言われれば、すぐそれらのことは権限はなくても事実上実現できると思いますが、その場合それをおやりになるかどうか。私は美術行政の今の常識といたしましてそういう実情だと思います。それをおやりになるのかどうか。だいぶやかましくたくさんの学者に立ち会わせて、公開でやるという案です。それをおやりになる気かどうか、やればやれる実情ではないか、こう申し上げるわけです。
  44. 清水康平

    清水政府委員 佐野乾山について今まで指定されたもの、あるいは間違いのない二百点はもちろんのこと、今度突如として現われたいわゆる佐野乾山作といわれるものを一緒にして、公開して、そうしてそこで、各方面の学者や研究家が検討するということは、私は非常に大切なことだと思っておりますが、それの主催者といいますか、スポンサーといいますか、それを文化財保護委員会でやった方がいいかどうかという問題、この種のような問題は文化財保護委員会では今まではやったことがないのでございまして、文化財保護委員会が公開でやる場合には主として博物館——博物館というよりは、むしろ適当な展覧会場を利用しておるのではないかと思っております。そういう点については重大な関心を持っておりますが、今のところ文化財保護委員会がイニシアチブをとってやるという気持は持っておりません。
  45. 高津正道

    高津委員 本日はこれだけでございます。      ————◇—————
  46. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 盲学校、聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。  ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  47. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 速記を始めて。  質疑の通告がありますので、これを許します。山中吾郎君。
  48. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 盲学校、聾学校及び養護学校への就学奨励に関する法律の一部改正の法律案について御質問いたしたいと思いますが、この盲聾、養護学校の高等部の修学旅行の実態は、どういう程度に修学旅行が行なわれているかお聞きしたい。
  49. 福田繁

    ○福田(繁)政府委員 現在いろいろ盲聾学校等の高等部におきまして、修学旅行をやっておる学校が多うございますが、一般の学校と同じように、大体二泊三日というような、あるいは三泊の場合もあるかも存じませんが、関西方面に相当旅行する、そういうことが行なわれておるようでございます。
  50. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 目の見えない生徒、こういうのが修学旅行を二泊三日とかやる場合のいわゆる事故、あるいはその他のことについて特別の方法考えないと、無条件にこれを奨励すること自体に疑問があるわけですから、その辺修学旅行を実施する学校としての特殊の考慮が払われておるかどうか。また今までの事故その他にいて、お聞きしたい。
  51. 福田繁

    ○福田(繁)政府委員 その点につきましては、もちろん普通の子供と違うわけでございますから、一般の学校におきましても、修学旅行の場合には学校側としては万全の計画を立てまして、指導教官がついていくのが通例になっておるようでありますが、特にこういう盲聾養護学校につきましては、教育委員会におきましてその点をさらに厳重にして、特につき添い人その他の要員も十分つけてやろうというような慣例になっております。特に盲聾学校の修学旅行だから事故が起こったというようなことはないようでございます。
  52. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 この場合都道府県は今まで修学旅行について補助を出しておりますか。野放しでやっておりますか。
  53. 福田繁

    ○福田(繁)政府委員 高等部に対しましては、これは従来補助金もありませんので——ごくわずかな県で出しておる例もございますけれども、一般には出してないようでございます。
  54. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 そうしますと、この法律は、都道府県が支弁する経費の二分の一ですね。従って都道府県が五分の一とか非常にわずかのものを出しておる場合は、その半分だということになるのでしょう。ほとんど意味のない法律にならないですか。
  55. 福田繁

    ○福田(繁)政府委員 その点は従来と変わりまして、国が二分の一の経費を持つということになりますと、従来出すのが若干困難であったというような県も出してくるわけでございます。従って、従来は少ないけれども、こういう措置ができますとい一般の学校と同じような修学旅行の計画というものが立ちやすくなります。また実績も今後ふえていくことと考えておりますので、意味は非常にあると考えます。
  56. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 それではこの法律がもし成立しますと、行政指導をいい意味において相当強くしてやる必要があると思う。そうでないとこれは意味がないと思うのですよ。  おそらく盲聾学校の修学旅行に県はほとんど出していないのじゃないかと思うのです。資料があったら教えていただきたいと思うのですが、二分の一というから私たちいいように思うのですが、実際は行政指導がまずければ十分の一もない、下らぬ法律のような感じで、真剣に審議して心から賛成といって通すような気力が出ないわけです。ことに盲聾学校は貧乏な学校が多いのですから、この法律を施行することによって、実質上修学旅行費の全額の二分の一くらい、国と県合わせてやる、そういう実績が出るならば非常に張り合いがあるのですが、その辺の見通しをもう少しお聞きしたいと思います。
  57. 福田繁

    ○福田(繁)政府委員 小学部、中学部の場合におきましても、当初はおっしゃるような傾向があったのでございます。しかし三十五年に小学部、中学部の修学旅行に対します奨励補助が出ましてから、各県とも相当普及しておりまして、小学部、中学部におきまする修学旅行も相当ふえてきております。従って高等部におきましても、来年度こういう予算措置ができますと、もちろん私どもも適切な指導をやって参りたいと考えておりますが、相当ふえてくるものと考えております。その場合に、単価の問題が一応問題になるかと存じますが、この場合におきましては、大体一人当たり二千六百円というものを見込んでおりますので、現在行なわれております実際の修学旅行の場合の単価と比較いたしますと、あまり差はないと考えております。従って、その点から申しますとさしあたり高等部におきます修学旅行の場合の経費について十分いけるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  58. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 目の見えない生徒の場合に、文化財とか名所旧跡というところにいって、一体修学旅行が意義あるようにするのにはどういうふうにしたらよいのでしょう。
  59. 福田繁

    ○福田(繁)政府委員 それはいろいろあると思いますが、やはり指導教官がいろいろ解説したり、十分な指導をしてやるということが一番大事な点だと思います。養護学校の高等部もございますので、盲だけではありません。従って従来行なわれております旅行の実績から考えますと、やはり相当効果があるということを各府県とも申しております。
  60. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 大体わかりましたけれども、おそらく盲の場合とかろうの場合は、修学旅行に違った性格を持たせて、盲の場合は温泉に連れていくとかいうことになっていると思うのですが、それは別として、いま一つ関連してお聞きしたいのですが、前の委員会のときにも大臣答弁をもらったのですけれども、ろうあの場合二歳から五、六歳までのいわゆるろうあ幼稚園というのですか、その教育を徹底すると普通の小学校に入れることができる。もちろん知能指数が普通の場合でないといかぬですけれども、とにかくそれを徹底するとろうあ学校を作らなくとも小学校に入れて普通教育ができるということを、あとで実際の先生あたりに聞いてみると確信を持っているというのです。そうすると満二歳から五歳まで教育しておけば、もうこういう特殊の聾学校などは要らないというふうな結論になりつつあるので、私はすばらしいことだと思うのですが、これを一つ、今年はもう予算はないので来年度までに全国に一カ所くらい、東京のどこかに幼児のろうあ学校を作ってみて、幼児のろうあ教育を徹底することによって、小学校以上はなくしていくということを一つ具体的に研究していただくといいのじゃないか、念を押して大臣からこの問題についてお答え願っておきたいと思います。
  61. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 この前の委員会でたしか山中さんから同一趣旨のお尋ねがございまして、即席ではございますがお答えしたように記憶いたします。検討しますと申し上げることは、具体的にいえば御指摘の通り、できることならば三十八年度に国立のろうあ学校というがごときものをモデルケースとして作り上げまして、それで検討を加えて、必要数を全国に普及する足がかりにするという構想があってしかるべきだと私どもは想像いたしておりましたが、体系的にお話し申す段階ではございませんので、構想を示唆していただいた意味において、ありがたくお受けをして研究したいと思います。
  62. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 ぜひそういうふうにお願いしたいと思います。こういうことの中にほんとうの文教政策の刷新があるので、質を向上するようにお願いしたい。そういういい方法が世論になってきておるわけですから……。質問を終わります。
  63. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 小林君。
  64. 小林信一

    ○小林(信)委員 大体いいと思うのですが、この二分の一を支給すると同時に——高等学校生徒の中にも相当貧困な家庭があるのです。そういうものには、また貧困な家庭として救済する修学旅行の費用というものが出るのですか。そういう特別なものについては、もうこれ以上出ないのですか。
  65. 福田繁

    ○福田(繁)政府委員 ただいまのお尋ねは一般の生活保護の問題かと存じますが、生活保護法の対象になります場合におきましては、そういう旅行費も含めて支給されることになっております。
  66. 小林信一

    ○小林(信)委員 それは高等学校生徒にも適用されるわけですか。
  67. 福田繁

    ○福田(繁)政府委員 ちょっと間違えましたが、これは小中学校の場合でございまして、高等部の場合には、生活保護の中の教育扶助、それからその他のものは、今申しましたよう修学旅行の経費は入っておりません。
  68. 小林信一

    ○小林(信)委員 盲ろうの高等部というのは、大体小中学校でこれを学習したのでは一人前の生活を維持するような状態にならないわけなんです。だから貧困の家庭といえども、普通の中小学校の子供が高等学校に行くのと違って、どうしても高等部まで履修しなければ、生活の道が得られないわけなんです。従って、盲ろうの学校へ行ったものは、普通の子供と違って、無理をしてでも高等部に進学しようとするものが多いと思うのです。そうすれば、一般のものと同じに取り扱って、高等部であるから、要保護の家庭のものがあっても、これは認めることができないというようなことになれば、実態には即しないと思うのですよ。やはりそこまで配慮しなければ、二分の一出したから非常にいいのだというだけでは、私は済まないと思うのです。やはり盲ろうの高等部の特殊事情というものを考えたら、二分の一だけでなく、ほんとうに貧困の家庭というものは、中小学校の要保護、そういうものに適用されるものがこれに準用されなければ、私はほんとうの修学学旅行の補助にならないと思う。ということは、これは中小学校に今まであったのですが、修学旅行が、二分の一の補助でもって行けるようになった、そうすると、どこの学校でも実施するでしょうし、そういう場合には無理をしても行くと思うのですが、しかし貧困なるがゆえに行けないという子供は、かえってこういう補助金が出たために友だちは行くけれどもおれは行けないという、そういうさびしさを与えるような結果になりはしないかと思うのです。そこまで配慮することが、盲ろうという特殊な学校の高等部に対する措置だと私は思うのですが、こういう点に対しましては御検討があったのかなかったのか、お尋ねしたいと思います。
  69. 福田繁

    ○福田(繁)政府委員 おっしゃる意味は非常によくわかります。そういう御趣旨に従って私ども考えたいと思っておりますが、高等部の就学奨励につきましては、ただ修学旅行費というだけでなく、家庭の状況に応じまして段階をつけまして、そして要保護基準の標準とそれからそれぞれの家庭の収入額というものをにらみ合わして、御承知のように一類、二類というような類型を立てまして、そういう家庭の状況に応じまして、全額あるいは半額というような差があるわけでございます。従って、図書購入費あるいは給食費あるいはまた交通費といったような就学奨励費全般につきまして、そうい実情うに応じたような支給方法考えているわけでございます。修学旅行費だけから考えますと、おっしゃるようにうちが貧困で修学旅行にも行けないというような場合がありますので、今回は修学旅行費に特に新しく国が二分の一を負担してやるというような考え方になったわけでございます。これは就学奨励費全般の問題としてやはり考えなければならない点ではないかと考えておるわけでございます。
  70. 小林信一

    ○小林(信)委員 それだけ考慮してあれば、なお一歩前進したものを完全なものにするという配慮が必要だと私は思うのです。これは実際盲ろうの学校実情を見れば、私は、そういう点もさらに考慮してもらいたいというような希望が出てくると思うのですよ。先ほど申しましたように、普通の中小学校の子供が高等学校に行くのと違って、盲ろうの子供は、高等部に行かなければ、自分が生存する道を開くことができないというのが、高等部の特殊な価値だと思うのですが、それを生かしてやるには、そういうところまで配慮して、二分の一やったからいいというだけでなくして、もっと前進しなければならないと私は思うわけなのです。  そこでお聞きしますが、現在の盲ろうの中小学校の場合は、実際においては普通の中小学校の子供たちの修学旅行のようでなくて、相当取り残されるものが多い。というのは、親が、行ったってて見えないじゃないか、行ったって口が聞けないじゃないか、事故でもあったらどうするかというようなことを理由にして修学旅行に参加させないものを私はたくさん聞くわけなのです。文部省ではどういうふうに統計をとっているか知りませんが、実際においては少ないということを考慮すれば、なお私はこの問題では盲ろうの学校のことに対しては特別な考慮をしなければならぬと思うのです。さらにおそらく盲ろうの学校の先生も普通の中小学校高等学校と違って相当先生のつき添いというものが多くなると思うのですが、こういう人の旅費等につきましては教員の旅費の中に考慮されておるかどうか。
  71. 福田繁

    ○福田(繁)政府委員 そういう点も考えまして教員の旅費等につきましては、交付税の財源措置等におきまして、これは一般的なものとあわせまして考えておるわけでございます。
  72. 小林信一

    ○小林(信)委員 その交付税のものが十分に割り当てられておるかどうか、文部省はどういうふうに確認されておりますか。
  73. 福田繁

    ○福田(繁)政府委員 従来の実情から見ますと、大体こういう特殊な学校につきましては、教育委員会も旅費その他につきましては、一般の学校よりも特に考慮するという方針でいっているようでありますので、その点は一応支障なく行なわれているものと考えております。
  74. 小林信一

    ○小林(信)委員 これは中小学校の場合もそうですが、一体交付税というのは、地方の自治体ではなかなかあなた方がおっしゃるように満足に出しておらないわけなのです。だから特殊な子供たちを扱うのだから相当考慮するだろうというふうにお考えになっておられると、とんでもないことであって、かえって見るに忍びず、先生が自費を出して生徒の旅費まで支弁する、自分はもちろん犠牲的に旅費をみずから出すというふうなことが多いわけなんです。今のような自信を持っておらずに、実情というものをしっかり見ていただいて、こういう制度が出た以上はこれが完全に実施されるように、先生にも子供にもその家庭にも十分恩恵を受けられるように私は考慮すべきだということを申し上げて質問を終わらせていただきます。
  75. 村山喜一

    村山委員 関連して、一言お尋ねいたしますが、この法律の改正案が通りましたあとで政令をお考えになっていらっしゃると思うのです。その中で現在御承知のように収入額が生活保護法の定めるところの需要額の二・五倍以上の場合には、これは支給しないように法律の施行令で定めてあります。そうなりますと、当然高等部の生徒にかかわる修学旅行の場合でも補助をしないということになると思うのですが、その点はどうですか。
  76. 福田繁

    ○福田(繁)政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、生活保護基準を標準にしまして二・五倍未満の場合はすべてこれが支給されることになるわけでございます。従ってそういうおっしゃるようなことにはならないと考えております。
  77. 村山喜一

    村山委員 二・五倍以内の場合には支給せられるようになるわけですよ。だけれども、それ以上の場合にはならないわけなんです。そういうことになる。私がお尋ねしたいのは、施行令の第二条の第一号の中で生活保護の基準に対して一・五倍未満の場合は、六号までは全額負担をする。その考え方の中には、そういうような生活の程度の低い場合でも修学旅行については収入の多い、少ないにかかわらず半分しか負担しないんだ、こういう考え方があると思う。そういたしますと、ここで高等部の生徒にかかわる修学旅行費が新たに二分の一負担の対象になるようにするということはきわめていいことだと思うのですが、それと同時にそういうふうに生活の程度に応じて修学旅行の場合等は、やはり他の経費については全額負担をしている場合もあるのですから、生活の程度の低い者については、そのようなふうに政令の中で規定づけられることが正しいのではなかろうか、こういうふうに考えますので、その政令をお作りになるときのお考えを承っておきたいと思う。
  78. 福田繁

    ○福田(繁)政府委員 ただいま御説明申し上げたのは少し誤解があったかと存じますが、全額支給の場合は、生活保護法の基準に対しまして保護者の収入額が一・五倍未満の場合でございます。これは全部支給するわけでございまして、保護者の収入額が二・五倍未満の場合には、これは半額支給するという建前で、その他のものにつきましては教科用図書の購入費だけは全員に支給されるわけでございます。従ってそういう一般の基準と同じように修学旅行の経費も建前として支給されることになるわけであります。
  79. 村山喜一

    村山委員 私の持っているのは、これは古いのかもしれませんが、施行令の第二条の第一号の方に掲げてあるのは、「第一号から第四号まで及び第六号」というふうに書いてあるのですが、そうすると、修学旅行の場合は、需要額の一・五倍未満の場合もこれは当然全額の対象にならない、第二号の一・五倍以上二・五倍未満の場合に同じように適用されるわけで、先ほど福田初中局長お答えになったのが正しいのであって、今お答えにはなったのは間違いじゃないか。そういうように前の政令六八号は解釈されるのじゃないですか。
  80. 福田繁

    ○福田(繁)政府委員 政令六八号でなくて、政令一五七号でございます。
  81. 村山喜一

    村山委員 政令一五七号の第二条の第一項ですよ。そこでは「第一号から第四号まで及び第六号に掲げる経費の全額」ということで、前条の第七号の修学旅行費というものについては、全額負担の対象になっていないわけなんです。
  82. 辻村泰男

    ○辻村説明員 ただいまの点でございますが、政令で二条の一項の一と申しますところが、これが生活保護法の一・五倍未満でございます。これは現在は全部やるという建前でございまして、そして高等部の場合には「第一号から第四号まで及び第六号」と現行で書いてございますのは、高等部の場合には、つき添い人の交通費は出さないということで五号を抜かしておるわけでございます。この点は変わりがないわけでございます。そこで今回法律が改正されますと、政令の方も「第一号から第四号まで及び第六号」そこに七号が入るわけでございます。そういう改正を予定いたしておるわけでございます。要するに修学旅行費も一番貧困なら全額出します。それからその次の段階であれば半額出します。こういう建前に政令をも変えるつもりでおります。
  83. 村山喜一

    村山委員 そういうふうに改めていただくのであればけっこうです。今もこの一五七号では、どんなに見ても、これがミスプリントでない限りは、二分の一負担ということになりますので、それでは高等部にそれだけ適用範囲を広げていこうというせっかくの大へんいい意見が貧しい人たちには反映をしないのじゃないかという結果になりますので、そこら辺をお尋ねしたわけです。
  84. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 他に質疑はございませんか。——他に質疑がないようですからこれにて本案に対す質疑は終了いたしました。     —————————————
  85. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の通告もありませんので、直ちに採決いたします。  本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  86. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決いたしました。  ただいまの議決に伴う委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  本日はこの程度とし、次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午後零時四十一分散会