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1962-04-27 第40回国会 衆議院 農林水産委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月二十七日(金曜日)    午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 秋山 利恭君 理事 小山 長規君    理事 田口長治郎君 理事 山中 貞則君    理事 足鹿  覺君 理事 石田 宥全君    理事 片島  港君       安倍晋太郎君    飯塚 定輔君       浦野 幸男君    大野 市郎君       亀岡 高夫君    仮谷 忠男君       草野一郎平君    倉成  正君       藏内 修治君    小枝 一雄君       坂田 英一君    田邊 國男君       谷垣 專一君    寺島隆太郎君       内藤  隆君    中山 榮一君       福永 一臣君    藤田 義光君       本名  武君    松浦 東介君       米山 恒治君    角屋堅次郎君       栗林 三郎君    東海林 稔君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       西宮  弘君    芳賀  貢君       安井 吉典君    湯山  勇君       稲富 稜人君    玉置 一徳君  出席国務大臣         農 林 大 臣 河野 一郎君  出席政府委員         農林政務次官  中馬 辰猪君         農林事務官         (大臣官房長) 昌谷  孝君         農林事務官         (農林経済局         長)      坂村 吉正君         水産庁長官   伊東 正義君         水産庁次長   村田 豊三君  委員外出席者         農林事務官         (農林経済局農         業保険課長)  中野 和仁君     ————————————— 四月二十七日  委員飯塚定輔君、綱島正興君、寺島隆太郎君、  松浦東介君及び山田長司辞任につき、その補  欠として篠田弘作君、亀岡高夫君浦野幸男君、  藏内修治君及び芳賀貢君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員浦野幸男君、亀岡高夫君藏内修治君、篠  田弘作君及び芳賀貢辞任につき、その補欠と  して寺島隆太郎君、綱島正興君、松浦東介君、  飯塚定輔君及び山田長司君が議長指名委員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  漁業法の一部を改正する法律案内閣提出第一  三二号)(参議院送付)  水産業協同組合法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一三三号)(参議院送付)  沿岸漁業等振興法案内閣提出第一四四号)  農業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出、第三十九回国会閣法第四七号)  農業保険事業団法案内閣提出、第三十九回国  会閣法第四六号)      ————◇—————
  2. 野原正勝

    野原委員長 これより会議を開きます。  いずれも参議院送付にかかる、漁業法の一部を改正する法律案及び水産業協同組合法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。     —————————————     —————————————
  3. 野原正勝

    野原委員長 提案理由説明を聴取いたします。中馬農林政務次官
  4. 中馬辰猪

    中馬政府委員 漁業法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  わが国漁業は、総じて申しますと、戦後漁場拡大技術の進歩によりまして目ざましい発展を遂げておりますが、漁業経営体の大部分を占めます沿岸漁業は、一部の養殖業を除き不振であり、また、沖合い遠洋漁業は、漁業種類により、経営規模によりまして生産性格差が著しく、その経営は必ずしも健全とは言いがたい状況であります。これに加えて近年遠洋漁場における国際的制約も年々きびしさを増しており、また、近時漁船性能向上による稼働範囲拡大等に伴い、沿岸沖合い漁場における漁業調整も次第に困難の度を加えて参っておる実情であります。  このような事態のもとにおきまして、今後のわが国漁業の健全な発展をはかりて参りますためには、沿岸漁業の中の発展的漁業のより一そうの伸長を期し、不振漁業漁業転換を促進する等弱小経営の体質の改善をはかるとともに、沿岸沖合い漁場における漁業調整広域化合理化を推し進める等の諸施策を強力に実施し、漁場利用合理化漁業経営近代化を推進する必要があると存ずるのであります。  このような考えのもとに、政府はかねて水産庁漁業制度調査会を設置し、漁業制度改善に関し調査審議をお願いして参りましたところ、昨年三月その最終答申を得ましたので、今回この答申を参酌し、これに広く各界の意見を加味して、この法律案を取りまとめ、今国会提出した次第であります。  次に、法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、漁業権制度に関する改正であります。まず第一点として、現行法制定後における漁業事情推移に応じ、特定区域における定置漁業の一部、真珠母貝養殖業小割り式養殖業等を、漁業協同組合等管理する場合に優先的に免許するいわゆる管理漁業権に加える等、漁業権分類を再整理することといたしました。  第二点といたしまして、いわゆる組合管理漁業権につきましては、漁業協同組合組合員がこれを平等に行使することに伴う経営規模零細化弱小経営乱立の弊を是正するため、従前の実績を有する者等の同意を前提としつつ、漁業権行使し得る者な特定資格を有する者に限ることができることを明確にいたしました。  第三点といたしまして、漁業免許優先順位に関する規定改正し、定置漁業につきましては資本導入経営合理化を促進するため、地元漁民の大多数が直接構成する漁業協同組合等のほか、これらの漁業協同組合等議決権出資の過半を占める法人にも免許の第一順位を与えることとし、また、新規漁場におけるノリ・カキ養殖業等組合管理区画漁業につきましては、地元沿岸漁民のこれら発展的漁業への転換吸収を容易にするため、地元沿岸漁民の大部分を含む漁業協同組合等を最優先とすることとし、さらに新規漁場における真珠養殖業免許につきましては、地元漁民の大多数により構成され、真珠養殖業経験者を含む漁業協同組合がこれを営もうとする場合には、従来最優先された真珠養養殖業者と同順位とし、いずれに免許するかを知事の勘案にゆだねることといたしました。  以上のほか、定置漁業権及び管理漁業権以外の区画漁業権について、経営上の要請を考慮して、当該漁業経営に必要な資金融通のためやむを得ない限度において抵当権設定等を認めることとし、これに伴って、漁業権の移転の制限を一部緩和する等の点につきまして所要改正措置を講ずることといたしております。  第二は、漁業許可制度に関する改正であります。まず第一点として、従来大臣許可漁業根拠規定及び許可方式が必ずしも統一的でなかったのを改め、指定漁業として政令で指定するものにつき、今後の漁業の健全な発展に資するような形においてその許可方式を統一的に規定し、あわせて許可事務の適正円滑な処理をはかることといたしました。すなわち、その許可は、指定漁業ごと許可すべき隻数その他一定事項を公示して行なうものとし、許可申請隻数公示隻数を上回るときは、当該漁業経営安定合理化不振漁業転換漁業従事者経営者としての自立の促進等の諸要請を政策的に判断して許可基準を定め、これに基づいて許可をするものとし、また、指定漁業ごと許可期間の一斉更新制を採用して、許可ワク漁業実情に即して修正し得るようにする等、適切な漁業調整を確保する措置を講ずることとしております。この場合、実績尊重規定を設け、従来許可を受けて漁業を営んでいる者の経営の安定を不当に阻害することのないよう配慮いたしております。従来指定漁業について、許可船舶承継に伴い広い範囲で認められている承継許可につきましては、許可権利化集中化を可及的に排除する見地に立ち、その範囲をできるだけ限定することといたしました。なお、母船式漁業につきましては、母船及び独航船等が船団を構成し一体として行なう漁業である実態に応じ、その許可方式等を整備することとしております。  漁業許可制度に関する改正の第二点は、いわゆる大臣ワク知事許可漁業に関してでありますが、中型まき網漁業につきまして、都道府県相互間の入会状況を考慮してその一部を大臣許可に移すとともに、国際関係から問題のある小型サケマス流し網漁業を新たに大臣ワク知事許可漁業に加えることといたしました。  第三は、漁業調整機構に関する改正であります。近年における漁船稼働範囲拡大等に伴い、広域的な漁業調整をはかる必要性が強まっておりますため、政府は、別途、海区漁業調整委員会の海区の範囲原則として一県一海区程度に整理統合することを目標に諸般の準備を進めておりますが、その一環として海区漁業調整委員会委員の定数を増加しますとともに、あわせて選挙委員選任委員の比率、委員任期等につきましても、所要改正を加えることといたしました。なお、そのほか、県間の入会関係が錯雑している玄海漁業調整円滑化をはかるため、水産庁付属機関として現地玄海連合海漁業調整委員会を設置し、その漁業調整に当たらせることといたしております。  以上がこの法律案提案理由及び主要な内容であります。何とぞ慎重に御審議の上すみやかに御可決下さいますようお願い申し上げます。  次に、水産業協同組合法の一部を改正する法律案につき、その提案理由を御説明申し上げます。  水産業協同組合は、漁民協同組織として全国の津々浦々において活動を続けており、わが国漁業発展漁民の経済的、社会的地位向上に重要な役割を果たしているのであります。  しかしながら、近年における沿岸漁業及び一部の沖合い漁業における経営の不振を打開し、漁業振興のための諸施策を推進するには、漁業協同組合その他水産業協同組合経済活動強化し、その健全な発達をはかることが必要と考えられるのであります。そのためには、従来とられて参りました組合育成強化措置をより強力に推進するほか、組合組織漁業漁民実態に即応するものとし、かつ、組合運営が一そう活発な経済活動を行ない得るように、組織及び運営に関する制度を改める必要があると存ずるのであります。  このような観点から、かねて水産庁漁業制度調査会を設置いたしまして、水産業協同組合制度を含めた漁業制度全般につきましてその改善策を御審議願っていたのでありますが、昨年三月に最終答申がなされ、この答申を参酌し、水産業協同組合組織及び運営等につきまして所要改正を行なわんとするのが、この法律案提出いたしました理由であります。  次に、法律案の主要な内容につき御説明申し上げます。  第一は、漁業協同組合組合員資格についての改正であります。その第一点は、漁業協同組合構成員の純化をはかり、その活発な活動を期するため、漁民の正組合員資格要件である漁業日数の下限を引き上げ、またいわゆる地区漁協にありましては、正組合員漁業経営者に限る組合を設立し得る道を開き、また業種別組合にありましては、経営者組合としての性格を明らかにしたことであります。その第二点は、最近個人経営法人経営へ移行する傾向があることにかんがみ、従来准組合員でありました漁業生産組合及び小規模漁業を営む法人を正組合員に引き上げ、かつ、准組合員につき漁業を営む法人資格制限を緩和するほか、小規模水産加工法人及び漁業協同組合相互の加入の道も開いたのであります。  第二は、組合管理及び運営についてでありますが、これらにつきましては、役員の義務及び責任の明示、商法の所要規定の準用、剰余金出資割配当限度の引き上げ、総代の総会外における選挙制採用等を行ない、組合運営円滑化をはかるほか、設立の認可の基準にある程度の行政庁の裁量の余地を設けまして、弱小組合乱立の弊を防止することといたしているのであります。  第三は、漁業を自営する漁業協同組合及び漁業生産組合につきまして、漁村における近年の漁業労働事情及び資本導入必要性等を考慮して、組合の営む漁業に従事する者のうち組合員の占めるべき割合を三分の二から二分の一に緩和し、生産組合の一組合員が有することができる出資口数制限を廃止したのであります。  第四は、漁業協同組合連合会につきまして、会員たる漁業協同組合または同連合会が主たる出資者または構成員となっている法人准会員資格を与えるほか、信用事業を行なう連合会につきましては、その事業漁業協同組合組合員が直接利用できる道を開くとともに、その事業農林中央金庫等代理業務を加えることにしたのであります。  以上申し上げました諸措置のほか、行政庁監督規定を整備する等、組合の健全な発達を確保することにいたしております。  以上がこの法律案提案理由及び主要な内容であります。何とぞ慎重に御審議の上すみやかに御可決下さるようお願いいたします。      ————◇—————
  5. 野原正勝

  6. 中馬辰猪

    中馬政府委員 ただいま提案されました沿岸漁業等振興法案につきまして、その提案理由を御説明いたします。  わが国漁業は、その漁獲高において世界最大であり、動物蛋白質食糧の重要な補給源として、国民経済上重要な役割を果たして参りましたが、その生産の態様は多様であり、大きく分けますと、大規模漁業中小漁業及び零細な沿岸漁業三つの類型になると考えられるのであります。このうち、漁業経営体の九割以上を占めている沿岸漁業は、一部の養殖業を除き、他産業と比較してその生産性及び従事者生活水準がかなり低い状態にあり、また、漁業生産の中核をなしている中小漁業は、漁業種類経営規模等により種々格差がございますが、不安定なものが多い現状でありまして、ことに最近における国民経済成長発展に伴い、このような沿岸漁業等傾向は、いよいよ顕著となってきているのであります。  また、一方、国民経済成長発展は、わが国就業構造に著しい変化をもたらし、漁業就業人口も減少しており、能率的な漁法、漁具導入等によって生産性の高い漁業を育成していく契機が生じてきております。  このような沿岸漁業等及びこれを取り巻く条件変化等を背景といたしまして、沿岸漁業等従事者の自由な意思と創意工夫を尊重しつつ、沿岸漁業等近代化合理化をはかるとともに、あわせて沿岸漁業等従事者が他産業従事者と均衡する健康で文化的な生活を営むことができるようにするため、沿岸漁業等に関する国の基本的施策方向を示し、その重点的施策を明らかにすることを内容とするこの法律案提出した次第であります。  次に、この法律内容について、概略説明申し上げます。  第一点といたしまして、この法律は、さきに述べました通り沿岸漁業等生産性向上、その従事者福祉増進その他沿岸漁業等近代化合理化に関し必要な施策を講ずることにより、その発展を促進し、あわせて沿岸漁業等従事者が他産業従事者と均衡する生活を営むことを期することができることを目途として、従事者地位向上をはかることを目的としているのであります。そしてこの目的を達成するための国の基的本施策方向といたしまして、水産資源維持増大生産性向上経営近代化、水産物の流通の合理化加工及び需要の増進並びに価格の安定、災害による損失の合理的補てん等による経営の安定、近代的な沿岸漁業等従事者としてふさわしい者の養成及び確保、沿岸漁業等従事者及びその家族の転職並びに沿岸漁業等経営にかかわる家計の安定、漁村の環境の整備等による沿岸漁業等従事者福祉増進の八項目を明らかにし、国は、その政策全般にわたり、これらの事項に関し、必要な施策を総合的に講じなければならないこととするとともに、これらの施策が画一的でなく、地域的に自然的、経済的、社会的諸条件を十分考慮して行なわれるべき旨を定めたのであります。  さらに、このような国の基本的施策を実施するため政府は財政上の措置等を講じなければならないこととするほか、これを受ける沿岸漁業従事者等の自主的な努力を助長する旨の規定沿岸漁業等について政府が講じた施策に関する年次報告等についての規定等を定めているのであります。  次に、第二点といたしまして、これらの基本的施策にかかる重点的な国の具体的施策といたしまして、以下の四つの施策を明らかにいたしております。  第一は、沿岸漁業についての構造改善事業であります。この事業は、沿岸漁業構造改善をはかるため生産、流通等広範にわたる事業を考えておりますが、沿岸漁業は、その規模が零細であり、従ってまた、生産性生活水準も低い現状にかんがみ、特に国は、都道府県沿岸漁業構造改善事業に関する総合的な計画を立て、これに基づいて構造改善事業が実施される場合に助言及び助成等の強力な援助を行なう等沿岸漁業構造改善事業が総合的かつ効率的に行なわれるよう必要な措置を講ずることとしております。  第二は、中小漁業振興のための措置であります。中小漁業不安定要因としましては、水産資源利用の問題、漁船及び漁具漁撈装置問題等種々考えられるところでありますが、国がその業種に特有の改善すべき基本的事項を定めて公表するとともに、その改善を行なう中小漁業者等助言指導資金融通のあっせんを行なう等中小漁業振興に関し必要な措置を講ずることとしております。  第三は、沿岸漁業等を対象とする試験研究機関の行なう調査及び試験研究充実等に関する措置であります。沿岸漁業構造改善事業及び中小漁業振興のための施策の実施にあたってはもちろんのこと、およそ沿岸漁業等発展をはかるためには、その前提といたしまして十分な水産漁源調査及び試験研究が必要であります。そこで、国の試験研究機関の行なう沿岸漁業等に関する調査及び試験研究事業充実をはかるとともに、他の試験研究機関と協力して効率的に実施する等の必要な措置を講ずることといたしております。  第四は、沿岸漁業等改育普及事業に関する措置であります。現在、都道府県には、沿岸漁業等技術及び知識の普及または従事者生活改善指導を行なう改良普及員とこの改良普及員指導専門的事項に関する調査研究を行なう専門技術員が置かれていますが、国は、これらの都道府県の職員の設置及び養成につき助言及び助成を行なう等必要な措置を講ずるものとしております。  最後に、この法律の施行に関する重要事項につきましては、中央漁業調整審議会意見を聞くことといたしております。  以上がこの法律案提案理由及びその内容概略であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。      ————◇—————
  7. 野原正勝

    野原委員長 引き続き、漁業法の一部を改正する法律案及び水産業協同組合法の一部を改正する法律案一括議題とし、補足説明を聴取することにいたします。伊東水産庁長官
  8. 伊東正義

    伊東政府委員 私から、今政務次官から御説明のありました提案理由につきまして、若干補足説明をさせていただきます。  まず、漁業法から御説明申し上げます。  漁業法改正をいたすのでございますが、今、政務次官から御説明がありましたように、わが国漁業は、その漁獲高では世界有数水産国としての実をあげておりますが、沿岸漁業は、一部を除きまして非常に低い生産性にとどまっておる。また沖合い漁業も、いろいろな生産性の格差が著しい上に、中には不安定な経営が多いということ、また近来わが国遠洋漁業等につきましては、国際的な制約の強化あるいは中小漁船の性能の向上等に伴いまして漁業調整もますます困難になってくるというように、内部には多くの問題がございます。今後わが国漁業の健全な発達をはかりますためには、各種の漁業振興施策のほかに、漁場利用改善合理化がどうしても不可欠であることは、今、政務次官から御説明のあった通りでございます。このような事情にかんがみまして、政府は、先般の漁業制度調査会答申もありましたので、この答申を参酌しながら、所要立法措置を講ずることにしたわけでございます。  内容につきまして概略御説明申し上げますと、大きな点は、漁業権制度の問題と、大臣許可の問題と、漁業調整機構の問題と、三つに分けることができます。  第一点の漁業権制度改正でございますが、その中で、まず第一番目には、漁業権の分類と内容を整理したことであります。定置漁業につきましては、実は現地側からの要望も非常に多いのでございますが、青森県の陸奥湾におきまする定置漁業は、その行使方法等におきましても、ほとんど現在の第二種共同漁業であります小型定置に類似しております。また敷設されておる場所の水深は、深いところにはございますが、ほとんど共同漁業と同じような輪番行使というようなことになっておりますので、これを共同漁業として取り扱うことといたしました。また、北海道には定置漁業の中で、ニシンイワシ、マス、サケというものを主たる漁獲物といたしますものは、一定の水深、二十七メートルでございますが、これよりも浅いところにあるものでも、現行法では定置漁業として取り扱って、組合が優先的に持ちます共同漁業と別になっていたのでありますが、最近魚群の回遊状況がだいぶ変化して、サケを除いては、ほとんどこれらを主たる漁獲物でありますイワシニシン、マスというものが減少しております。また網の規模も小型化しているというようなことがございますので、この際はサケを除きまして、これは全部共同漁業権内容にしまして協同組合漁業権管理をする方がいいのじゃないかというような改正をしました。  次に共同漁業でございますが、共同漁業の中にシイラづけ漁業というのがございまして、これは漁場沿岸からかなり沖合いに出ております。また免許になっておるところと許可になっておるところと大体半々くらいございます。そういうような関係もございまして、他の漁業との調整もだいぶ出ておりますので、これは共同漁業からはずしまして知事許可漁業にした方がいいだろうということにいたしました。  また内水面におきます共同漁業につきましては、増殖義務のあります第五種の共同漁業と、増殖義務のない第二種から第四種までの共同漁業とが競合する場合が多いので、これはすべて第五種の共同漁業といたしまして一本に統合したわけでございます。  それからもう一つ、現在の漁業権定置、区画、共同の三種類に分割されておりますが、漁業免許適格性優先順位ということに関連しまして、団体管理することになじみますいわゆる団体管理漁業権とその他の漁業権とに分類されているわけでございますが、団体管理漁業権内容につきましても漁業の実情の推移に応じまして若干整理を加えることにいたしたわけでございます。現在はこの中に入っておりません真珠の母貝でございますとか、藻類養殖でございますとか、そういうものを追加するというようなことをいたしました。また最近はやっております小割り式魚類養殖等もこの中に実は入れまして、しかし内水面の魚類養殖は若干団体管理になじまないというようなことでこれから落とすというようなことで、団体管理漁業権内容につきましても種々整理を加えております。  それから漁業権の大きな問題の第二点でございますが、これは行使方法を従来と違えまして適正化するという措置を講じたことでございます。これは従来は団体管理漁業権につきましては定款に定めてあります通り組合員各自が行使権を持つということになっておりまして、そのために管理主体であります漁業協同組合が平等の原則というようなことで、その漁業権の平等な行使という面からくる弊害としまして経営規模が非常に零細化しているという事例も一部にございますので、今度の改正案におきましては漁業権行使規則というものを作りまして、行使権者の資格をまず規則で限定するというようなことをいたしております。それから行使規則の制定変更にあたりましては、特に第一種共同漁業権にありましては、これは地先の貝類を取るとか、藻類を取るとかいう漁業権でございますが、こういう漁業権につきましては関係地区内に住所を有する組合員たる沿岸漁業者の、あるいは区画漁業権の場合にありましては地元地区内に住所を有しまして当該漁業を営んでおる組合員たる漁業者のそれぞれの三分の二以上の書面の同意をとるというようなことをいたしまして、少数者の保護をはかりますとともに、またこの経営規模零細化を防止するというような措置を講ずることといたしたのであります。漁業権行使規則を作ります場合にはもちろん知事さんの認可が要るというようなことにいたしております。  漁業権の問題で第三番目は、優先順位に関します規定改善をはかったことでございます。まず定置漁業につきまして、従来の定置漁業につきましては沿岸漁業が若干制約されるというような事情から、その見返りといってはなんでございますが、これらの漁業を営みます地元の漁民には定置漁業の漁利を均霑させるという原則のもとに、地元の漁民の大多数が直接構成員となっております漁業協同組合でありますとか、その他の法人並びに人格なき社団というものに対しましては、今までのようなものでございますが、人格なき社団に対しましては第一順位免許するということにしていたわけでございますが、最近の漁業実態からいたしまして、資本の導入ということをある程度はかる必要があるというような考え方からいたしまして、地元漁民経営の支配権が確保できるという場合には、そういう資本も入れて経営合理化をはかっていこうということで漁民会社といっておりますが、そういうものに対しましても免許優先順位を与えるというようなことで改正をいたしております。  また現在、先ほど申し上げました人格なき社団というものが第一順位になっておるのでございますが、これは法人格を有しておりません。また構成員全員の共有名義で免許を受けておるというようなことになっておる関係上、地元漁民があとからこの人格なき社団に加入するということはほとんど閉ざされておりますし、またこの人格なき社団というような、どちらかというと古い形のものを残しておくことは、定置漁業の漁利均霑というような思想からしまして適合しないような事態も生じますので、今度の法改正にあたりましては、こういう人格なき社団には優先権は認めないということにしたわけでございます。そのかわりに、先ほど申し上げましたように、漁民会社的なものには優先順位を与えるということにしたことでございます。ただ人格なき社団につきましても、すぐにこれをだめだといってしまいますことは、やはりある程度地方においてこういうものが行なわれております関係上、附則で当分の間は従来通りに取り扱うというような経過規定を設けておるわけでございます。  次に、ノリ、カキというような団体管理区画漁業でございますが、これはいずれも今後発展して参る漁業でございますので、今後は積極的に沿岸漁業構造改善等によりてこの新規漁場を開発しまして、なるべく生産性の低い沿岸漁業者を振興していくというようなことを考えているわけでございますので、新規の漁場につきましては、こういう団体管理区画漁業免許につきましては、やはり協同組合等にこれを優先して与えていった方がいいのじゃないかというようなことを考えて、新規漁場についての規定を変えておるわけでございます。  その次に、真珠養殖業でございます。真珠養殖業につきましては、実はその法律を作りますときにいろいろ問題がございましたが、現在の法律でも経験者優先という原則になっております。これは真珠の商品的な性質その他からして、私どもはそういう形で免許されるのが適当であるというふうに考えまして、原則といたしまして、やはりそういう方針を貫いておるわけでございます。ただ新規の漁場——過去一年間にそういう免許がなかったものにつきましては、そういう漁場につきましては、これはまた別の見地から、全然新しいものでございますので経験者、それから地元漁民の大多数が直接構成員となっております法人あるいはその法人構成員としているその他の法人というものにつきましては、これは経験者が一人でもその中に入っておれば従来の経験者と同順位にとりまして、知事さんがどちらに免許するかということを考えるというふうにしたわけでございます。  それから第四点は、一部の区画漁業権につきまして、その存続期間の延長をはかったことでございます。現在は区画漁業権定置漁業権みな五年でございますが、区画漁業権の中で一部のもの、すなわち真珠、それから大規模魚類養殖業というものにつきましては、資本回転等も相当おそい、なかなか五年間には何回も生産をあげることはできないというような事情がございますので、これを十年にしております。  そのほか区画漁業権につきましては、現在法律更新制度がございますが、附則でその規定を停止をいたしております。何年かたちましたら、この漁場をどういう漁場として使ったらいいのか、定置がいいのか、共同漁業がいいのか、あるいは区画漁業がいいのかということを総合的にその段階で判断して、その上で漁業権免許をすべきじゃないか。その場合には当然海区調整委員会も関係いたしますし、関係者の意見も聞きますので、そういうことにした方が適当であるというふうに考えまして、その規定は附則とともに削除しているような次第でございます。  漁業権の最後は定置漁業権管理漁業権以外の区画漁業権抵当権の設定、移転というものにつきまして制限を一部緩和するわけでございます。これも全部緩和するというようなことでなくて、知事の認可を受けるというふうな場合に限りまして適格性優先順位をきめておりますので、知事の認可がある場合には若干の移転を認めて、それは適当な人にまた売れるというようなふうに現在の制限を一部緩和したことでございます。  それから次は大臣許可の問題でございますが、現行法におきましては、大臣許可は指定遠洋漁業、それから法律の第六十五条にございます省令できめる大臣許可、二つに分かれておるわけでございます。指定遠洋漁業というのは法律に書いておりまして、大型捕鯨業、トロール漁業、以西底びき網漁業、遠洋カツオ・マグロ、この四つを指定いたしまして指定遠洋漁業というふうにいたしておるわけでございますが、このほかに六十五条で、たとえば母船式鮭鱒等につきましては指定遠洋漁業ではなくて、省令で規定するというふうな特別な取り扱いになっております。  今の法律が指定遠洋漁業という制度を設けております趣旨は、これが他の漁業に比較しまして、その当時はおおむね資本制漁業だろうというふうに見られておった。その場合に、資本と漁船に着目しまして、対物許可というような考えで許可方式をとっておるのでございます。それで資本と船舶という要件さえあれば、すべて平等にだれにでも許可を与えるという原則のもとに、新規許可に当たり、ワクに制限のある場合はくじ引きをするというようなことで、そこに政策的にものを考えるということでなくて、資本と船というものがありますれば、新規の場合にはくじ引きというようなことを考えておるわけでございます。また、その許可した船舶の使用権を承継した者は原則としてだれでも継続許可がもらえるというようなふうに現在はなっております。しかしながら、この漁業法ができましてから十数年たちましていろいろ漁業の事情も変わってきております。今申し上げましたトロールとか底びきとかカツオ・マグロとかそういうものだけを資本制漁業というふうに考えますことも実態と合わなくなってきておりますし、対物許可という方式は、許可権利化でございますとか、あるいは資本の集中というようなことも見られます一面に、またこういうものがございますと、たとえば沿岸沖合い漁業から遠洋へ出て行きたい、あるいは水産資源の保護、漁業調整の見地から地の漁業へ転換をしていくというようなことをやろうといたしましても、これが円滑にできないというような弊害も見受けられますので、今度の改正案におきましては、現在の指定遠洋漁業というものを廃止いたしまして、六十五条の大臣許可漁業と指定遠洋漁業法律的に統一するするというような特別な扱いはしないことにしたわけでございます。  まず許可漁業の第一点の問題でございますが、大臣許可を要する漁業は一体どういうものかということでございます。これは法案にも書いてございますが、水産動植物の繁殖保護あるいは漁業調整漁業者とか船舶について統一的な規制措置を講ずる必要であり、かつ、政府間の取りきめあるいは漁場の位置その他の関係上どうしても大臣が統一して措置を講ずる必要があるような漁業につきましては、政令で指定をする。この政令を出します場合には、中央漁業調整審議会の意見を聞いてきめるわけでありますが、政令で一つ一つ許可漁業を指定するという形をとろうと思っております。でありますので、この指定された漁業を営もうという希望者は、船舶ごとに大臣の許可を受けるというようなことになるわけでございます。  この許可をいたします場合には、原則として一定期間、大体三カ月を考えておりますが、一定期間前までに水産動植物の繁殖保護とか、漁業調整とか、先ほど申しました点に支障を及ぼさない範囲で、現在当該指定漁業を営んでいる人がどのくらいいるか、その経営の状態はどうなっているかというようなことを考えまして、許可すべき船舶の総トン数別に隻数とか申請期間をきめまして公示をするというふうな考え方をとったわけでございます。今まで大臣許可をいたしますときに中審にもかけずに相談するというようなことはいたしておりませんが、今度は中審にどういう漁業を指定するかということのほかに、指定漁業にしました上にこれについてどのくらいのワクを許可するかというような公開制、オープンにして、その公示に基づいて許可をしていくような制度にしたわけでございます。ただその場合に、申請された隻数が公示した隻数を上回るような場合には、従来はある考えのもとに許可基準を定めまして許可するということでございましたが、その場合の許可基準といたしましては、たとえばカツオ・マグロでございますと、カツオ・マグロの中の一ぱい船主の安定合理化というようなことを考えますとか、あるいは資源保護とか漁業調整沿岸経営改善のために漁業の転換をする、あるいは現在の漁業従事者が独立して経営者になりたいというようなこと等いろいろございますので、そういうことを考えまして、その要請にこたえるように許可の基準を定めるということにいたしております。でありますので、先ほど現行法は新しい許可の場合新規のワクについてはくじ引きがあるということを申し上げましたが、今度はくじ引きというようなことはなくて、ある一定の基準を設けまして、そういう方針のもとに許可いたしたいと考えております。原則は今申しましたように公示に基づく許可でございますが、特例的に公示に基づかない許可ということも若干考えております。一つは、許可船舶の入れかえでございます。漁船を滅失したとかあるいは沈没したというようなことで船舶について許可申請をした場合には当然例外として認めて参りますし、第二番目は、許可船舶使用権を承継した者が当該船舶について許可の申請をした場合でございます。これがいわゆる承継の許可でございます。これは現在は非常に大幅に認めておりますが、今度の法律では公示に基づく許可の原則の例外でございますので、そう大幅に認めないということにしたわけでございます。これは譲り受ける者の人的要素ということを十分考慮に入れる必要があるということ、また許可権利化集中化というようなことを防ぐということも考えておるわけでございます。その場合にはどういう工合に譲るかという、譲り渡しを受ける人の資格でございますが、これは個人経営共同経営とかあるいは法人経営にするというふうな相続合併に準ずるような場合には、これは考えております。また小規模漁業者がある程度経営規模を拡大したいというような場合も例外として考えております。それから先ほど言いました沿岸漁業構造改善とか資源の関係から漁業転換に必要だ、あるいは漁業従事者が独立して自営をするというような場合には、例外としてこれを認めていくというようなことを考えているわけでございます。そういうふうにいたしまして、承継許可というものにつきましては、非常に限定をしたというのが一つでございます。  それから第三番目の許可の期間は、現在では大臣許可の期間はばらばらでございますが、許可の期間をある時点で一斉に更新をいたしまして、その時点で資源の事情あるいは漁業調整上必要があるというふうに考えまして、一斉更新制度をとったわけでございます。でありますので、たとえば中型底びきでございますれば、何年かすれば、その際に何千隻というものが一斉に許可の更新になるというようなことがあるわけでございます。ただこの場合に一斉更新はいたしますが、従前の実績者につきましては、その人が善意、無過失、あるいは漁業法違反がないというようなことでやっておる人につきましては、ワクがある限りは公示のときにもそういうことを頭に置いて考えますし、ワクの範囲で、そういう実績者については優先的に考えてあげて、経営が不安定にならぬようにというふうにいたしております。  それから大臣許可の第四番目の問題でございますが、先ほど中央漁業調整審議会にいろいろなことを御相談するということを申し上げたのでございます。先ほどちょいちょい申し上げましたが、ワクの設定でございますとか、あるいはどういう漁業を指定するとかいうことにつきましては、審議会の意見を聞きましてやっていくということを考えております。また審議会につきましては、もっと許可をしてもいいじゃないかと思われるときに農林大臣が何もしないというようなときには、これは許可すべきじゃないかというような建議も農林大臣にしてもらうというような建議権も認めたような次第でございます。  それから中審の委員等につきましても、漁業者並びに漁業従事者委員を増員することにいたしました。それから主務大臣が会長をやっていたのでございますが、会長をやめまして、会長は委員の方の互選でやって参るというふうに考えております。従事者がどのくらい委員になるかという問題は、いろいろ参議院で問題がありましたが、従事者等につきましては、私どもまたいろいろな実情に見合って考えて参りたいと考えております。   第五番目は母船式漁業でございます。母船式漁業は従来は省令がございまして、それで母船が許可を受けますと、母船とそれにつきます付属船の使用承認を受けてやっていくというふうになっておったのでございますが、それが今度の母船式漁業では、母船と独航船、これは一体となって操業しておりますので、母船もそれからそれにつく独航船等も、両方許可をもらえる。ただその場合に、これは一体として操業いたしておりますので、母船はどういう独航船を連れていくという独航船まで書いた許可をもらい、独航船は今まで許可をもらっておりませんが、今度は許可をもらいます。その場合にはどういう母船に自分はついていくのだという母船の名前を書いた許可をもらうということをはっきりいたしまして、従来よりも独航船の地位につきまして法律上はっきりしたというようなことが改正の要点でございまして、大臣許可漁業につきましては、実はだいぶ改正をしたわけでございます。  次に知事許可でございますが、これは大臣許可に比較いたしますと、改正いたしました点は少なうございます。  第一点は、大臣のいわゆるワクづけの知事許可漁業というものが現在ございますが、この中で実はまき網につきまして、従来は六十トン未満の船舶によるまき網は、大臣許可ワクづけになっていたのでございますが、今度は四十トン以上というふうにいたしまして、四十トン以上は大臣の許可を得る。実は四十トン以上になりますと、大体二県以上にまたがっておりまして、一県の知事さんの許可ということでは漁業の実態に合いませんので、四十トン以上を大臣の許可といたしたことが一つでございます。  もう一つは、これは北海道で特に問題になることでございますが、現在は三十トン未満の小型のサケマス流し網漁業知事許可ということだけでございますが、これはいろいろな見地から、大臣が統一的にやった方がいいだろうというようなことでワクづけ漁業に入れたことでございます。  最後に漁業調整機構の問題でございますが、これは現在の漁船の性能等から考えますと、海区調整委員会というのが一県にかなりございますが、こういうものは一県一海区程度にする方がいいのじゃなかろうかというようなことを考えまして、これはもちろん例外を考えております。委員の数をそのかわり十人から十五人にするというようなことにいたしました。また委員の任期も二年では短か過ぎるということがございまして、これは公的な性格もかなり帯びておりますので、いろいろ考えまして任期を四年というようにいたしたわけでございます。  そのほかに、これは地域的な問題でございますが、長崎、福岡、佐賀の玄海のところに漁業調整上いろいろ問題がある海区がございます。ここにつきましては、有明とか瀬戸内ということと同じに、玄海の連合海区調整委員会というものを設けたわけでございます。  内水面につきましては、これはほとんど改正はいたしておりませんが、ただ一つ漁業権者と遊漁者との間の関係がございますので、遊漁規則を作りますときには、知事許可を受けて、不当に高い入漁料をとると、漁業者を圧迫するということのないように実は考えた次第でございまして、先ほど申し上げたように、漁業法漁業権制度改正、それから大臣許可に非常に大きな改正を加えましたことと、漁業調整機構につきまして一部改正を加えたということでございます。  それから次に水産業協同組合法の一部改正につきまして若干申し上げます。  この法案は、今御説明申し上げました漁業法の一部を改正する法律案と大体一緒に漁業制度調査会答申をもらいまして、一部改正を加えたわけでございます。近年の漁業の実態あるいは漁民協同組織というものをどういうふうにしたらいいかということからいたしまして、協同組合を経済団体として健全に発達させるということで、組織運営とか監督につきまして必要な改正を行なったわけでございます。  その第一番目でございます。これが一番大きいのでございますが、協同組合組合員資格を改めたことでございます。これは議決権と選挙権な持っております、正組合員資格につきまして、従来は下限は三十日それから九十日の程度で定款で定めることになっていたのでございますが、これを正組合員として、漁業者として考えていくには、一年で三十日漁業をするのではいかにもこれはおかしいのではないかということからしまして、九十日から百二十日の間で定款で定めるというようなことにいたしまして、相当程度これを引き上げまして、資格を引き上げたわけでございます。そしてこれは経済事業団体として大体その構成員が利害関係を同じくするところの者で、均質の漁民で構成していこうというようなことで、一つ改正した点でございます。  もう一つは、法人漁業生産組合等は現在は協同組合准組合員でございますが、これは現在の実情を見ますと、一個の漁業経営体といたしまして、これは漁業協同組合の正組合員にしてもいいんじゃないかと思われるものが相当漁業生産組合にございますので、これを正組合員にしたわけでございます。それからまた最近の法人成りの傾向からいたしまして、法人につきましてもある程度の規模のものは個人と差別をする必要はないのではなかろうかということで、ある程度のものを、三百トン、従事者三百人以下というものは、これは正組合員にするということにいたしました。これは現行法では准組合員になっております。  それからそのほかに議決権、選挙権を有しておりません准組合員資格についての改正でございますが、これは准組合員につきましては、近年漁船の大型化というようなことがございますので、大体千トン、従事者三百人までの法人につきましては、これは組合員として漁業協同組合の施設の利用というようなこともはかってもいいんじゃないか、またそうすることが組合を強化していくことだろうというようなことで、これにつきましては新しく准組合員資格を与えるというふうにしたわけでございます。今のは地区の漁業でございますが、業種別の組合につきましては、今の点を引き上げまして、三百人、二千トンということまでいたしました。二千トンということにいたしますと、大体七、八割の法人はこれは准組合員としていろいろな施設の利用ができるというようなことになるわけでございます。  さらに水産加工業者につきましては、これは水産加工業協同組合に加入していても、漁業協同組合のこれはまた准組合員資格を与えまして、あるいはまた小規模な水産業加工の法人につきましても、個人と区別する必要はございませんので、准組合員資格を与えるというようなふうにいたしておるわけでございます。そのほか自営組合等につきまして、たとえば何かカツオ、 マグロの自営をする組合がカツオ、マグロの組合に加入することが今はできないということになっておりますが、これは今度は准組合員として他の漁業協同組合に加入することができるというふうにいたした点でございます。  もう一つ、先ほどの説明でちょっと落としましたが、従来従事者につきましてはこれは正組合員に当然なれることになっていたのでございますが、今度の改正では定款で特別決議いたしました場合には、地区の漁業でも従事者につきましてはこれは准組合員にすることができる、いわゆる経営者だけが組合を作ろうと思えば作れるというようなことにしたわけでございます。そういうことをいたしましたので、その人たちが不当に正組合員でなくされてしまうということに、全然組合員から排除されるということになりませんように、これはあくまで准組合員として当然残り得るというような附則の改正をしております。またそういうような組合員にいたします場合には、これは法律施行後二年以内にこれを改正するというふうに附則で規定しているわけでございます。  第二番目は、組合管理及び運営円滑化の問題でございます。だんだん漁業協同組合につきましても合併を奨励いたしております。合併によりまして地区が拡大するというようなととも出て参りますので、そういう場合には総会がなかなか開きづらいというようなことがございますので、総会の成立の困難というものを緩和していくというような見地から、総会出席につきまして代理人が人の代理をし得る員数を若干上げましたり、また総会の招集期間を短くいたしましたり、またあるいは法定議決事項の中で漁業権に関係ないようなものにつきましては、法定議決事項から落としますとか、いろいろ管理運営につきまして便法を考えておるような次第でございます。  それから漁業協同組合の役員でありますが、役員につきましては従来若干規定が足りないように思われるところがございますので、執行機関としての義務と責任を強化明定するというような必要がございますので、他の協同組合のそういう構成とかあるいは商法の規定を準用いたしまして、この役員につきまして義務と責任を明確化するというようなことをいたしたわけでございます。  それから組合に関しまして第三番目の問題でございますが、従来の配当につきましてはこれは五分ということになっていたわけでございますが、これは配当の限度を八分以内というようなことで、農基法の改正とも歩調を合わせまして政令できめていこうというふうにした点が一点ございます。  それから漁業協同組合の設立の問題でございますが、漁協は農協と違いまして若干漁業権管理主体というようなことになり得る関係上、漁業権というものを頭に置いて組合が非常に小さいものが多くできているということがございますので、これを経済団体として考えていきます場合には、なかなかむずかしい問題でございます。それで今度は設立認可に際しまして、事業経営の基礎を欠くんじゃないかというふうに考えられます場合には、行政庁の裁量で認可をしないこともあるというふうな規定を実は作りましたり、また認可後一年以内に登記を怠っているという場合には、その認可を取り消すというようなことにいたしたわけでございます。  それから改正の第三番目でございますが、漁業自営組合あるいは生産組合につきまして、現在若干きついような制限がございます、これは近年漁村の労働事情がだいぶ変わって参りましたので、これは制限を緩和しまして、常時その漁業に従事する者のうち組合員が占めるべき割合が従来は三分の二以上なければいかぬのを二分の一に制限を緩和いたしまして自営とか漁業生産組合がやりよくするというふうにいたしました。また生産組合員でも出資口数の限度につきまして実は現在制限があるのでございます。この制限につきましてもそれをとりまして、資本が入りよくするというような形にしまして、生産組合、自営というものがやりよいようにというような規定改正をしたわけでございます。  次が連合会のことでありますが、連合会の一は構成員でございますが、漁業協同組合が出資しておりますような法人につきましては、准会員資格を与えますとか、信用漁業協同組合事業の中に中金とかあるいはその他の大臣指定金融機関の代理業務を加えまして、漁民の便宜をはかったことがございます。それから現在は信連から直接個人には貸せなかったのでございますが、そういたしますと、現在の資金需要等から見ましてそういう制度では不便がございますので、定款に定めがございます場合には一段飛びまして個人が組合連合会から直接借り得るというような制度を設けたわけでございます。  以上が大体改正点のおもな点でございまして、その他水産加工業協同組合連合会あるいは協同組合共済会に関する規定を若干改正いたしましたり、あるいは独禁法の適用除外を、現在水産業協同組合法では一部は適用を受けていたのでありますが、今度は水産業協同組合法につきましては、全部独禁法の適用から排除いたします。そのほか監督等につきまして、若干規定の整備をするというようなことにしたわけでございます。  だいぶ長くなりましたが、以上が水産業協同組合法改正提案理由政務次官から御説明がございました点の補足説明でございます。     —————————————
  9. 野原正勝

    野原委員長 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。角屋堅次郎君。
  10. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 大臣には五月一日に訪ソをされるということで、過般の閣議で正式に決定を見て、非常にあわただしい時期におられるわけですけれども、御承知の通り、高碕さんが三月の二十八日に訪ソされまして、数次にわたりまして、高碕・イシコフ会談を通じて日ソ漁業交渉の当面の問題についての妥結のために大へん御努力を願っておるわけですが、規制区域の拡大問題その他をめぐって大へん難航の事態になりまして、過般私が本委員会でもお尋ねしましたときにも、大臣は、率直に、向こうから求めがあれば訪ソをしたいという意思の表明がございました。その後正式に閣議で決定を見て、五月早早訪ソされるわけですが、この機会に、訪ソされるにあたって、大臣の日ソ漁業交渉に臨まれる御心境についてまずお伺いいたしたいと思います。
  11. 河野一郎

    ○河野国務大臣 ただいまのお話の通り、高碕君が非常に努力をされて今日まで交渉を続けて参っておりますが、ソ連側の態度は規制区域の拡大、これがすべての前提をなすものだから、この問題についての意見の一致を見ないうちは他の問題には入らない、いわゆる規制区域内四十八度以北、もしくはその以南の漁獲量については、一切交渉に入らないということで交渉に入っておりません。御承知の通りに、以南の漁期はまさに切迫と申しますか経なと申しますか、これまでの経緯から見ましても、一日をもゆるがせにできない事態に立ち至っておりますが、依然以南において幾らとるかという話も実はいたしていないというようなわけでございます。そのときに、高碕君からぜひモスクワに来て、ともども交渉に当たるようにという要請がありましたので、出かけることにいたしたのでございますが、事情が今にして思いますと、ソ連側の言い分といたしましては、第一回に私が訪ソいたしまして取りきめましたときには、いわゆる以南の漁業というものはほとんど零細な漁民諸君であった。副業とはあえて申しませんけれども、今日のような専門の大型の漁船で漁獲をいたしておりましたものは、いわゆる独航船でございまして、以北の制限区域内の漁業であった。従ってこの以南の方は全体の量を通じましても、沿岸漁業をすっかり通じましても、おそらく当時二、三万トンのものである。従ってこれを規制するということは当たらないという議論で、ブルガーニン・ラインの南四十五度線まで下げて第一回の取りきめはいたしたのであります。ところが、その後年々漁業の情勢が変化いたしまして、今日は御承知の通り以南におきまして、規制区域内よりもむしろ漁獲量は増大しておるというような現状にあるのみならず、昨年の事実からいたしましても、ソ連側としてこの規制区域を拡大するということは、この漁業協定締結当時に返ってもう一ぺん考え直してみたい、その当時と全然事情が違うのであるから考え直したい、こういう主張をいたしておる、その主張にも私は聞くべきものが多いと思うのであります。さればと申して、しからばわが方の立場はどうかと申しますれば、今日依然として大型の独航船もむろん行っております。むろん漁業に従事いたしておりますが、沿岸の零細な漁民漁業も依然として実は以南におきましてはあるわけでございます。これらの間を、日ソ両国で共同に規制区域として監視するというような立場になりました後における実情はどうなるだろうかということを考えますると、いたずらにトラブルを重ねるばかりであって、決してその結果は両国のために私はとらざるところである。であるから、あくまでも自主規制の線を強めまして、そして魚族の保護、維持に、ソ連側の信頼にこたえるような強力な自主規制を実行することが、この問題を解決するゆえんであるという立場を持って、今日まで私は臨んできたのでございますが、私先方に参りまして、意のあるところを十分申し述べまして、そしてソ連側の了解を得て、従来通りの線で、あくまでも以南については自主規制を強化するということで了解を得て、円満に妥結をはかることが両国国交の上においても望ましい姿であるというふうな考えのもとに、交渉に当たってみようと思っておるのであります。
  12. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 ただいま大臣から、向こうに参りましての基本的な考え方についてお話がございましたが、ことしの交渉の経緯から見て、最も難航をしておる規制区域の拡大問題が、大臣の訪ソによって、ただいま大臣からお話しのような線で、規制区域の拡大については向こう側としてはやらないというところで問題が結着をするということになるかどうかは、今後の推移に待たなければなりませんが、大臣としては、規制区域の拡大問題については、やはりあくまでも譲歩できない、こういう強力な立場に立って、今お話しのように規制区域外の問題で従来の方針通り自主規制をもってやっていく。しかも、この自主規制の問題については、実情に即して、場合によっては漁獲量その他全体の資源の状況等から見て、自主規制を強化しなければならぬというふうなことであれば、日本国自体の立場において自主規制をやっていくということであって、規制区域の拡大問題については一歩も譲歩できない、また一歩も譲歩しない、こういうことで最後までやられるつもりであるかどうか、この焦点の問題について再度お伺いいたしたいと思います。
  13. 河野一郎

    ○河野国務大臣 私は、ただいま申し上げましたように、先方が魚族の保護をする意味において規制区域を拡大するということにも理論はあると思う。その理論のあることは、私は認めることは適当と思います。しかし、翻って考えますのに、この規制区域を拡大することは、今後の取り締まりの面から参りまして、いたずらに両国の間にトラブルを惹起する危険がある、そういうことは両国国交調整の上において適当でないという立場に立って、十分の理解と協力を得ることに努力する、この機会に規制区域を拡大することは絶対に認めない、あくまでもそんなことはだめなんだという立場を主張するよりは、わが方としてとるべき自主規制強化について、あくまでも自分の責任においてやる、そのことが両国国交調整の上においてとるべき道であるという立場を強く主張するということでいきたい。あらかじめ出発にあたって、ここでこういう点は認めるとか、断じて認めぬとかいうようなことを今申し上げて出かけることは、私はこれも交渉の前途に対して適当な表現でないと考えますから、その点は御了承いただきたいと思うのであります。
  14. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 大臣は五月一日に訪ソされることになるわけですけれども、大臣の訪ソ前に、断を下すといいますか、方針を明らかにして措置しなければならぬ問題——先ほどの大臣の御方針の中にもお話が出ましたように、四十八度線以南の流し網漁業関係の漁期というものは、昨年の場合たしか四月十九日に出漁しておる、もうすでにその点から約十日を経過する事態になっておる。大臣が訪ソして向こうに参られましてから交渉の期間は大体二週間を予定しておるというふうに承っております。そういう交渉の経過の進展とともにというのでは、実際漁期としては非常におくれてしまう。現実の問題として十日おくれたことによって、ある意味では自主規制の一部が実際に実施された姿になってきておる。もともと現在の条件のもとにおいては規制区域外の問題であって、日本の自主的な規制の立場であくまでもいきたいという政府の方針からいたしまして、やはりこの問題については、大臣が出発前に、場合によっては、新聞でも報道されておるようでありますけれども、月末には自主的に出漁する、こういうような方向にいくのではないかというふうに判断されておるわけですが、この問題は大臣が出発までに措置されなければならぬ一つの重要な問題であろうと思う。私どもも、漁期の問題が、すでに現実に昨年よりもおくれておる事態の中で出漁を待っておる四十八度線以南の流し綱の実態を見て、この問題は交渉全体に対してどういう影響を与えるかというような点については慎重に考慮しなければならぬという面がありますけれども、しかしこれは大臣が訪ソされましてから、こちら側の措置等についても十分誠意をもってお話を願って、事後の交渉に対する悪影響を与えないというふうな前提に立って、あらかじめこの問題については措置される御意向であろうと思うわけですが、その点については御方針はいかがでございましょう。
  15. 河野一郎

    ○河野国務大臣 以南の業者の出漁の問題につきましては、ただいまお話の通りのような実情にあるわけでございます。しかしながらいやしくも高碕代表とソ連との間においてこの問題について交渉しております。交渉の過程において出漁するということはなるべくとりたくないと思うのでございます。従って、私といたしましては、この高碕君の交渉の推移を十分注意いたしまして、しかもこちらの出漁の期日をぎりぎりまで待って、そしてこれをどうするかということをきめることが一番必要である、こういうふうに考えまして、今せっかくモスクワとの打ち合わせをしつつ最後の措置をどうするかということをきめておるのでございまして、今申し上げるように、出かけるのであるからどうとかこうとかいうこともむろん考える問題でございますが、出漁の期日がぎりぎりどのくらいまでは待てるだろうか、また交渉の推移はどうなっているだろうかということと見合わして最後の決定をいたしたい、こう考えております。
  16. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 再度今の点についてお伺いをいたしたいと思います。ソ連に行っておられる高碕さんの交渉の経緯等もあろうかと思うのでありますけれども、政治的判断として大臣訪ソの前に出漁というものもあり得るということでございますか。
  17. 河野一郎

    ○河野国務大臣 むろんさようでございます。
  18. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 大臣が訪ソされるということに相なりますれば、閣議決定後の新聞記者会見でも、向こうに行ったならばフルシチョフ首相ともできれば会いたい、あるいは、おそらくイシコフのみならずミコヤン副首相とも会われるということに相なろうと思いますが、新聞記者会見等では、当面の漁業交渉あるいは今後の漁業交渉の問題に限定をして話し合いをいたしたい、こういうふうに新聞報道では伝えられておるわけであります。せっかく池田内閣のいわば実力者的な存在ともいうべき河野さんが政府代表として行かれるということになりますと、やはり日ソの諸懸案の問題についても、正式の会談ということでなくても、隔意なき意見の交換ということは当然考えられておるはずであるし、またそういう点については、率直に訪ソの機会に話し合いをするということが必要ではなかろうか。もともと日ソの平和条約問題という当面の重要な課題についても、なるべくすみやかな機会に日ソ平和条約を締結するための前提としての政治的ないろいろな話し合いというものも、あるいはフルシチョフ首相と会った際、あるいはミコヤン副首相と会った際にも、隔意なき意見の交換というものはやられるであろうと思うわけですが、新聞の発表では、当面の漁業交渉あるいは今後の漁業交渉に焦点を置いていく——焦点を置くことは、これは訪ソの目的からいたしましても当然であろうかと思いますが、そういう各般の問題については、そういう問題を含めて隔意なき意見の交換をいたしたいということで臨まれるわけでございましょうか。その辺のところを一つお伺いをいたしたいと思います。
  19. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御承知の通り、今回私が訪ソいたします目的は、当面いたしております漁業交渉でございます。従って、政府より全権の委任を受けて私が交渉に当たります問題も、この当面いたしております漁業交渉でございます。私はこの問題に限って交渉をいたす、これは基本的に間違いないことでございます。ただし、旧知の仲でありますソ連の首脳部に面談いたします機会がありますれば、私の方からこれはどうだのあれはどうだのというふうなお話を申し上げて、そしてソ連がどうだのこうだのいうことを確かめて帰るとか確かめようとかいう意図は、私持っておりません。それは私の使命ではございません。しかし先方から話が出て、それは私はその話はできませんと言って帰らなければならぬ筋合いのものではなかろう。私は私なりに世界の平和に寄与する意味で私の立場において発言することはあるだろうと思うのであります。
  20. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 訪ソ直前でありますから非常に慎重な発言でありますけれども、われわれの立場から御要望申し上げれば、正式会談ということでなくても、フルシチョフ首相なりミコヤン副首相等に会われる場合には、日ソの全体的な懸案問題等も含めての隔意ない意見交換、そしてさらに将来一歩前進できる努力というものについては、せっかくの機会でございますからぜひやっていただきたい、こういうふうに要望申し上げたいと思います。  そこで本論の問題にさらに関連をしてお尋ねをいたしたいわけでございます。従来日ソ漁業交渉の問題は本年でたしか六回に相なると考えております。しかもその間、あるいは共同調査問題、あるいは専門家会議、こういうような形で新しい形式を取り入れて、資源に対するところの共通認識の上に立って、なるべく政治交渉ということではなくて、いわば科学交渉といいますか、技術交渉といいますか、そういうことで問題を処理したいということでありますけれども、現実の姿は、依然として百日交渉という非常に難航した姿になってきていることは、御承知の通りである。ここでせっかく河野農林大臣が行かれるということになったならば、過去六回にわたる日ソ漁業交渉の経過、並びに出漁直前あるいは出漁時期を過ぎてもなおかつ双方の話し合いが妥結しないというふうな交渉の実態から見て、今後の日ソ漁業交渉のあり方という問題について河野農林大臣から新しい提案をされる、こういうふうなお考えがあるのではないかという判断をいたします。たとえば新しい提案という中では、もちろん従来から取り上げられておる共同調査の問題なり、あるいは専門家会議の問題なり、その後における本会議の持ち方の問題等技術的な問題もありましょうけれども、毎年の漁獲量というものについて毎年きめていくというふうな問題についての、いわゆる長期の資源保護あるいは資源増殖というふうな全体的な判断の上に立って、豊漁年あるいは不漁年、こういうものにおけるところのいわば基準漁獲量的なものについてはある程度話し合いできめて、その年の資源状況その他各般の問題から見てそれを修正するというふうなことを通じての、日本側からいえば北洋漁業の安定的運営、安定的操業というふうな問題等も含めて、新しい構想のもとに提案されるのじゃないか、こういうふうなことが予想されておるわけでございますが、今後の日ソ漁業交渉のあり方の問題について、大臣の過去の経験からするお考え等についてこの機会に承っておきたいと思います。
  21. 河野一郎

    ○河野国務大臣 少なくともこれまでの交渉の経緯を翻って考えてみますと、常に日本側の提案とソ連側の提案とを加えて二で割ったところに妥結点が、どういう回り合わせか落ちつくようになっております。こういう姿というものは、一方において科学的調査を行ない技術的に専門家会議をやっておりますこの会議の妥結としては、必ずしも適当でないと思われるのでございます。しかも交渉の初めにおきましては八万トンといい十万トンといいました。その翌年は御承知の通り十何万トン、そして十何方トンが数年後には六万トンというように、非常に山と谷が大きいのであります。こういうことは、必ずしも、両国が意図するところの魚族の保護をするという純粋な意味において、私は過去において正しかったかどうかということについては、お互いに反省しなければならぬ段階にきているんじゃなかろうかと思うのでございます。そういう意味において、今年は高碕代表が提案されます数字についても、過去のような轍を踏まないように、こちら側としても、このくらいはどうだろうかという数字を初めから持って出た方がいいんじゃなかろうかというような話し合いをして、高碕さんも向こうに出かけていっておられるわけでございます。しこうして、その後の交渉の経緯を見ましても、今お話しの通り、毎年やらないで、この際、今後三年間にわたってきめたらどうだろうか、もしくは科学調査はどうやろうかというような問題については、相当に突っ込んだ話し合いをいたしております。いたしておりますが、これらはいずれも架空な話でございまして、先ほども申し上げた通り、本質的には規制区域の問題で膠着いたしておるのが今の姿でございます。従って、私が向こうに参りまして、事新しく問題を提起して、これでどうだというようなことを今考えておるようなことはないのでございまして、これまでの数年来の経緯並びに高碕君が先方に参りまして話し合いをしたその範疇において、将来に向かって両国が完全に魚族の保護ができ、繁殖の方法についてどういうふうにしていくかというような建設的な話し合いをすることがいいんじゃなかろうか。ただ、しいて申しますれば、長期にわたって取りきめをします場合には、相当に漁獲量を安全性を持ってきめなければならぬという数字が出るわけであります。はたしてそういう急激な変化が両国の現状に照らしていいかどうか、実行できるかどうかという問題もございます。それらの点をも勘案しつつやるのでございますから、理想はいろいろ持っておりますけれども、現実にはなかなかそう簡単に——毎年ことしこそこうありたいものだと考えておりますけれども、毎年なかなかそうなりかねておる。現にことしのごときはソ連側も協力いたしまして、昨年の暮れに専門家会議も終わっております。決して長期の交渉をやろうというような心がまえで出ておりません。おりませんが、現実はこういう事態に相なっております。従いまして、先方に参りましたならば、諸般の情勢を十分話し合いまして、何とかうまく妥結点を見出して、それが両国国交調整の糸口にでもなれば望外のしあわせだと考えておる次第でございます。
  22. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今大臣がお話しのように、日ソの漁業交渉の第一回以降の日本側の漁獲量というふうなものを見てみますと、一九五七年の十二万トンから、自来十一万トン、七万五千トン、六万七千トン、六万五千トン、そして本年度漁獲量がどこにきまるかというふうに、当初の一九五七年から見れば一九六一年は約半分というふうな形に日本側の場合にもなっておりますし、ソ連側の方も一九五七年の十四万五千トンから昨年は八万トン、半数まではいきませんけれども、歴年減少してきておるわけでございます。そこでそういうふうな漁獲量の減少傾向という問題は、反面資源増殖という立場から見て、これは高碕さんもそういう内容のものも含んで話し合いをしておられると思いますけれども、日本側の場合においても、人工孵化放流その他各般の長期にわたる資源増殖の問題については、やはり積極的に取り上げてやっていかなければならぬ、また同時にソ連側においても、やはり北洋漁業における長期安定的な漁業の維持発展というものから見れば、ソ連側としても積極的にこれを取り上げてもらわなければならぬ、こういうことであろうかと思う。こういう今後の資源増殖という面から見て、従来日本側でもやってきておるわけですが、さらにこれを拡大強化をし、またソ連側においても積極的にこの面を取り上げてやってもらう、こういうふうな話し合いは当然河野さんが行かれても話し合いの焦点の一つであろうと思うわけでありますが、こういう点についてはどういうお考えで臨まれるわけでございますか。
  23. 河野一郎

    ○河野国務大臣 それらの点につきましては、すでに高碕君からも十分説明してありますし、両国の立場は決して背反するものではございません。話し合いはおそらく円満に建設的に進んでおるものと考えます。また日本側としても、すでに増殖計画等については相当具体的に案を持っておるわけでありますから、これらは着々と進めて参らなければならないと考えております。
  24. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 国内問題に入りまして、御承知の母船式の一割休業、あるいは流し網関係等における二割休業等の問題に関連をいたしまして、それぞれ関係団体から、この問題に対する強い反対の意向等が当初出、これはもちろん三月七日の水産庁の自主規制案というものの出る経緯あるいはその内容あるいはそれに伴う善後措置等、各般の問題が関係業界における強い反対の意見というようなものを醸成したと思うわけですが、その後いろいろ関係業界とも折衝せられた今日の時点において、大臣は五月一日から約二週間ソ連に行って国際的な話し合いをされるわけですが、国内問題としては、自主規制問題に伴うところの今後の措置をどうするか、こういう問題がやはり国内問題としては焦点の一つになるわけですが、これはその後各方面との話し合いによってどういうふうな御意向を持っておられるのか、この辺のことについてこの機会にお考えをお伺いしておきたいと思います。
  25. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お話しの通り、規制区域内、いわゆる独航船の問題につきましては、一割規制をもって円満に業界の協力を得ることになっております。もっともこの方は一割と申しましても、漁獲量が厳守されるわけでありますから、その数がきまった際にあらためて独航船自身がどうなさるかという問題は別だと私は思います。この方は円満にいくと考えます。  以南の問題でございますが、以南の方も、代表者が先方に参られまして交渉の経緯等についても十分知っておられるわけでありますから、帰られましてから組合内部においていろいろ御協議の結果——ただいまもこちらに参るのがおくれましたのは、いろいろ事情説明を承っていたのでありますが、ただ、しいて申し上げますれば、私は、われわれといえどもただ業者を困らせようとか、ほうり出しておいて、何でもいいのだというような考えは毛頭ございません。両国の立場からよって生ずる影響でございますから、なるべくその被害を分散するということに努力をし協力してあげなければならぬことについては、決して人後に落ちるものではございませんけれども、さればと申して、本来は日ソ交渉の協議の問題によって生ずる問題でございますから、基本の点につきましては、先ほど来申しますように、あくまでも自主規制でやることがこれら業界の諸君もとるべき道であると私は考えるのでございまして、これが自主規制によらずして制限区域内の漁業ということにでもなりますと、この形態が変わってくるということになりますので、これは業界のあらゆる努力によって、政府と一体となって実現を期することに協力を願わなければなるまいと思うのでございます。だんだんそれらにつきましては御理解も得ておりますので、第一に、これら出漁を見合わせる諸君に対してどういう補償方法をとるか、その補償に必要な資金についてどうするかというような問題、これについては、十分資金内容等を検討いたしまして、必要なやむを得ざる資金については政府においても十分御協力を申し上げるというつもりでおります。またマグロ・カツオ等に転換の問題につきましても、マグロ・カツオ等との調整をとりつつ、円満に転換できるように御協力申し上げたいと考えておる次第であります。
  26. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 さらに後ほど同僚議員からもいろいろ質問があるわけでありますから、この点等についてもこの程度にしたいと思いますが、最後に、御承知の通り、数日前にアメリカが太平洋地域におけるクリスマス島の実験を実施をいたしました。国内的に非常に大きな反対の世論を巻き起こすような今日の事態にあるわけですが、特にこの実験に伴うカツオ、マグロ等の水産関係に与える影響というものを重視しなければならぬかと思います。現にもうすでに、実験再開後、築地の市場等においてはカウント試験等もやらなければならぬ、あるいはまた、現実に危険区域の周辺には、ちょうど今日時期的に見て相当数の漁船が出る時期でありますから、大体五十隻前後の船はそういう海域において操業をしておるという状態であろうかと思うわけです。当然今後の実験の状態いかんによっては、やはり相当な漁業関係に対する被害を及ぼしてくる。われわれとしてはこういう実験は、政府もそうでありましょうし、ぜひ一つやめてもらわなければならぬ、こういう強い希望を持ちまして、きのうもアメリカ大使館等にも訪れて強く要請をするという運動を展開をいたしておるわけでありますが、これらのアメリカのクリスマス島における実験の問題に関連をいたしまして、漁業補償、いわゆる損害賠償問題、こういうものも今後生ずるでありましょうし、当面とらなければならぬ水産関係の諸措置というものもあろうと思うわけです。大臣は近く訪ソされるわけでありますが、この機会に、アメリカの水爆実験再開における漁業方面に対するところの問題に関連をしての御見解を、一つ承っておきたいと思います。
  27. 河野一郎

    ○河野国務大臣 実験再開はわれわれが断じてとらざるところである、その熱意におきましては御同様でございます。しかし一たびこの実験を再開いたしました以上は、われわれといたしましては、すでにこのことが万々一あることを予期いたしまして、それぞれの注意はいたしておるわけであります。第一は、アメリカに対してこれによって生ずる損害の請求は請求権を留保して、それが集計できましたならば当然請求する、これは基本的のものであります。第二は、今お話しの通り、築地市場において昨日来カウントの試験をして、それがどういうふうになるか、先ほど科学技術庁長官の御報告によりますと、成層圏において実験したのであるから、その灰が降下してくるのは非常に長期にわたるだろう、現地付近にはごく一部が落ちるかもしれぬという程度であるというようなお話でございましたので、影響がどういうふうになるかということについては予知が困難でございます。しかしあくまでもその近海に出漁するものについての警戒た通り、昨年にしても七万トンで約束したら七万トンで自粛すべきであったものを、調子に乗ったといいますか、予想外にサケがたくさんおるからとってしまったというようなことで、非常にオーバーした数量を漁獲してしまったということがまた一つの原因になっておるというようなことで、はなはだ好ましくないことでございますけれども、スタートにおいて困難性がすでにあるということでございます。  私は、先ほども申し上げたのでございますが、ほんとうに平塚常次郎君が言うように、太平洋のサケはカムチャッカまで行かないのだというような意見が正しいのか正しくないのかということが、どのサケはどこへ行くということがはっきりわかっておりません。一体それをどのくらいとるからどういうふうに減ってくるということも、私はわかっていないのじゃなかろうかと思います。しかし何にしても戦争中に非常にふえたサケが、戦後の乱獲によって急激に数量が減ってきたことは間違いない事実でございます。この事実は無視するわけに参りません。してみれば、今後一体どのくらいの程度をとっておればこれが続いて参るかということについても、まだ専門家の間に一致した意見が出ておりません。というようなことでございますから、あとから見れば、今お話しの通り、交渉がどうもおかしいじゃないかということになるかもしれませんが、それぞれ担当されました諸君は最善を尽くしておやりになった。ただ一つ、ここに誤解があるといけませんから、老婆心ながら申し上げたいと思いますことは、漁獲量が少ないときには当該業者のふところはよろしい。関係業者は大小にかかわらず決して悪くない。ただ影響を受けるものは国民全体が高いサケを食わされるということだということでございます。この点ははなはだわれわれとして遺憾なことでございまして、一体漁獲量が多くきまったから当該業者がそれで非常にいいのか、多くきまってそろばんに乗るわけでもなければ、少ないからそろばんに乗らないわけでもないというのがここ数年来の実情だと私は考えます。
  28. 安井吉典

    ○安井委員 大臣はこの条約そのものの最初の締結者でありますが、今のようないろいろな問題が含まれている際、今度の話し合いの中で、条約そのものの持つ問題点にまでお話し合いを進めるお気持がおありなのかどうか、それを一つお伺いいたします。
  29. 河野一郎

    ○河野国務大臣 今私はそういうことを考えておりません。
  30. 安井吉典

    ○安井委員 北洋における特に歯舞、色丹とかその他の安全操業の問題につきまして、やはりおいでの際十分お話し合いをなすっていらっしゃることが必要ではないかと思うわけでございますが、いかがですか。
  31. 河野一郎

    ○河野国務大臣 この問題は、外務当局におきまして、十分遅滞なく話し合っておる問題でございます。従って私があらためて参ります際に、この問題を解決するというようなことは私自身考えておりません。
  32. 安井吉典

    ○安井委員 全鮭連が今日まで自主規制の問題につきまして大へん反対をしておりましたが、最近に至りまして、交渉の進展に伴いまして、政府の規制措置に協力する態度に変わったわけでありますが、その際幾つかの要望事項を出しております。きょうは大臣にはこまかな問題につきましてお尋ねはいたしませんが、ただこれに対する政府の態度の問題であります。  今日まで政府は、交渉の段階であくまでも自主規制で問題を解決するのだからということでソ連側にお話をされていたはずであります。従いましてこういうふうな全鮭連の要望に対しましても誠意を持って解決をしていくという態度、こういうようなことが、ほんとうに日本の政府は自主規制でやる気になっているのだということをソ連側に知らせる上においても私は非常に大切なことだと思うわけであります。そういうような意味で、これから具体的な話し合いがいろいろ進むのだろうと思います。たとえば廃業者に対する優遇措置だとか、残存者に対する経営安定措置、漁獲量の国内配分率について昨年よりも下回らないように確定すること、許可期間は他漁業同様五カ年とすること、その他、これらの要望に対して誠意を示すことが今日の交渉を有利に導く一つの道だ、私はかように考えるわけでありますが、いかがですか。
  33. 河野一郎

    ○河野国務大臣 私は全鮭連の当該業者の諸君が、少し考え方を変えていただきたい。失礼な申し分かもしれませんが、私、率直に申し上げて、そういう気持を持っております。これは災害によって沿岸漁民諸君が被害を受けたという問題とは、問題が違います。しかも出漁される諸君は、ただいまも申し上げます通りに、少ないものをとってくればそれだけ高く売れるから、もうかるにきまっております。ないものの中から助け合っていってくれというような無理を、決して私は申し上げようとは思いません。しかもこの負担を、日本国民全体の負担においてこれを解決するということは、他の国民諸君が了承するでしょうか。私は少なくとも国家負担においてこの問題を解決するという意思は持っておりません。それでなかったら——これは他の問題と問題が違う。出漁される人も相当の利益を見込むことができる。従って休まれる諸君に対しても、そこに相互扶助の立場において、組合内部においてやれる問題じゃなかろうか。また、さらに広く申しますれば、マグロ・カツオの地域においてもだいぶん反対の声が強うございますが、同じ漁業者の中において、一部にそういう問題が起こったらば、助け合ってやろうという気持も持っていただきたい、ということで解決すべき問題であって、これをみだりに、国家負担においてこれらに対して云々するということは、私は正しい考え方ではないというふうに思うのでございます。ただし今後の推移によりまして、どういうふうに問題が起こってくるかわかりませんけれども、その問題が起こってきました場合々々によって考えなければならぬと思いますけれども、根本の考え方としては、たとえば一時に金が入り用だ、救済資金が入り用だ、その資金をお互いに今出し合うことは困るから、資金融通を協力してくれ——当然して差し上げるべきであります。しかし今申し上げるように、それに対して補助金を出せとか、政府がこういうふうな負担を見てやれというようなことについては、私はやるべきではない、それぞれの業界においてなすべきであるという考えを持っております。のみならず、この際政府は、外に向かって自主規制をもって強く臨むのだから、業界に対しても最善を尽くすべきだ——もちろん最善を尽くさなければなりません。最善は尽くすべきでございますけれども、業界御自身も、政府と一体になってこの交渉の成果を上げることが、業界それ自身のためであるという深き御認識を得たいと私は思うのであります。それでなければ、私いかに努力をいたしましても、所期の目的を達成することは絶対にできないと思うのでございます。これを国民全体の負担において買い上げ、そして減船をして、そしてやるのだというような安易な道は私は選ぶべきじゃない、重ねて申し上げますが、そういう信念でございます。
  34. 安井吉典

    ○安井委員 そこで自主規制という言葉が使われておりますけれども、これは業界が政府に対して自主規制というふうな表現で、そういうふうな意味合いで用いられている言葉じゃなしに、つまり対ソ交渉の段階において、ソ連に対して日本政府の自主規制——それはもちろんやるのは、政府がやるというよりも、実際漁民の人たち自身の問題でありますけれども、対外交渉という姿の中からこの自主規制という問題が生まれてきているわけであります。従いまして、単に漁民同士の問題で、政府にも何にも無関係にそういうような問題が起きたとすれば、これは私は大臣のおっしゃる通りだと思うわけでありますけれども、しかしながら問題は、そういう対外交渉の間から起きた問題だというような点において、やはり政府が誠意を示されるということは必要であろうと思います。具体的にそのあり方がどうだということは、さらに水産庁長官からでも、後ほどの機会によく伺いたいと思いますけれども、やはり交渉を有利に進めるその姿の中で、一体日本の政府は、ほんとうに、業界を真に納得させた形で、自主規制なるものの実効を期しているのかどうか、あるいはまたいいかげんに、業界の頭をたたいて、おまえらやめろというふうな形でやっていたならば、またさらに規制措置が効果を現わさないのではないだろうか、そういうようなことで、先方も疑心暗鬼を生ずるというようなことにもなろうと思うのであります。やはり誠意を持った形で問題を処理されることが、交渉を有利にされる道であろうというような意味から私は申し上げたわけであります。  時間が過ぎますので、角屋君もお触れになりました、二十五日に行なわれましたアメリカの核実験の問題でございますが、漁業の損害の問題につきまして、大臣から、一般的な問題のとらえ方をされた御答弁があったわけでありますが、私は、ここで生ずべき漁業の損害というものは、いろいろ複雑な形で現われてくるのではないかと思うわけであります。たとえば今度行なわれるのが、南太平洋のカツオ・マグロの有力な漁場でありますために、新聞の報道によりましても、たとえば高知県のカツオ・マグロ漁協組は、約百隻が漁場変更というような打撃を受けたというふうな報道もあります。そういうような漁場を変更せざるを得なかったというふうな打撃、さらにまた危険水域を避けて漁場に向かうために、船足が長くなるという問題があります。そういうふうな問題についても、これは当然今度の核実験の結果生じた問題だということになると思うわけであります。あるいはまた、前回のビキニ水域の死の灰をかぶった第五福竜丸事件が、今思い出されるわけでありますけれども、マグロの売れ行きがそういうふうなことで減ってしまう。こういうようなことも漁民にとって非常に大きな打撃になるのではないかと思います。こういうふうな一般的な立場から詳細な調査が行なわれ、それに対しての損害賠償をアメリカに当然要求すべきものだと思うわけでありますが、その点はいかがですか。
  35. 河野一郎

    ○河野国務大臣 御指摘のような点については政府も十分勘案いたしまして、よって生ずる損害がありました場合にはアメリカに堂々と請求する所存で、その用意をいたしておるわけであります。ただし、はなはだ困ると思いますことは、先ほども申し上げました通りに、非常な上空で実験しておる。従ってこの灰が落ちてくるには、どこへどう落ちてくるのかということがなかなか把握困難であります。たとえばソ連があれだけの大きなものをやりました。成層圏を回り歩いた、どこの宇宙かというようなうわさもあります。しかしそれがはたしてソ連の灰かアメリカの灰か、もう今日になってはおそらくわからぬのじゃなかろうか。どっちも全くの成層圏であって、科学技術庁長官の発表によれば、その何%ぐらいのものがその近域に落ちるだろう、その他のものは日本の上空までくるのにざっと計算して二十日くらいかかるだろうという計算だそうです。どこでどういうふうにするのか知りませんが、従ってどういうものが結果として出てくるかというようなことも非常に遺憾なことだと思うのでありますが、また一方損害等につきましてはどういうふうにしてこれを把握するかという点についてもなかなかむずかしい。しかしいやしくも、よって生ずる損害と認定できる問題につきましては、あくまでも請求するという立場をとるべきであろうと思うのであります。ただ、今お話しの通り、太平洋で実験したからそれがマグロに云々という誤解があってはいけませんから、昨日から築地においてこれらの実験をいたしまして、これを政府の保証のもとにその影響のあるなしということを確認いたして、販売等に支障のないようにいたしたいとやっておるわけでございます。  なお一言、先ほどのお話に、自主規制は政府が使った言葉じゃないか、政府はソ連に対して自主規制——これは申し上げるまでもなく漁民の諸君も、政府も同じ立場に立っておるわけであります。政府の都合で自主規制をやるわけじゃございません。自主規制をして結論が地域の拡大にならなくすること、そのことがここで出漁をされる諸君のためにも非常に便益であるということのために政府はやっておるのでございまして、これを政府目的政府の都合で自主規制するのだ、おれら自主規制であってもなくてもいいんだというようなことには参るまい。当然業界自身が自主規制をしていただいて、去年はこれだけとり過ぎてまずかった、大へん御迷惑をかけた、そのためにことしの交渉はこういうことになって相済まなかった、よってわれわれは当然自主規制をして、そうして日ソ双方の理解協力の上に立って、この魚族保護を永遠にできるように協力いたしますという立場をおとりいただくことが、当該業者のなすべき当然の義務ではなかろうか、こう思うのであります。それをみずから自覚なく、おれはとるだけとればいいんだ、あとは政府が勝手にやればいいんだというような立場は、国民全体どなたも御共鳴なかろうと私は思うのでございまして、この点は私は深く関係業界の自覚を待ちたいと思うのでございます。
  36. 安井吉典

    ○安井委員 今の核実験の問題につきましては、まだ具体的な事例なり結果が現われていない段階でございますから、きょうはこの程度にいたしたいと思いますが、あくまでも汚染の問題等につきましては、完全な予防、そしてまた損害等についての的確な調査、そしてその結果に基づいて強力な交渉を続けていただく、このことが非常に大切だろうと思います。それを要望いたしておきます。
  37. 野原正勝

    野原委員長 本会議散会後再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後零時五十四分休憩      ————◇—————    午後四時三分開議
  38. 野原正勝

    野原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農業災害補償法の一部を改正する法律案及び農業保険事業団法案の両案を一括して議題とし、審査を行ないます。
  39. 米山恒治

    ○米山委員 この際動議を提出いたします。  農業災害補償法の一部を改正する法律案及び農業保険事業団法案に対する質疑を終局せられんことを望みます。
  40. 野原正勝

    野原委員長 米山君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 野原正勝

    野原委員長 御異議なしと認めます。  これにて両案に対する質疑は終局いたしました。   〔「まだ一人しか質問していない   じゃないか」と呼び、その他発言   する者、離席する者多し〕     —————————————
  42. 野原正勝

    野原委員長 この際倉成正君外一名より、自由民主党及び民主社会党共同提案にかかる農業災害補償法の一部を改正する法律案に対する修正案が提出されております。     —————————————     —————————————
  43. 野原正勝

    野原委員長 趣旨説明を許します。倉成正君。
  44. 倉成正

    ○倉成委員 お手元に配付いたしてあります農業災害補償法の一部を改正する法律案に対する修正案の提案の要旨を御説明申し上げます。  その案文は、お手元に配付してある印刷物の通りでありますので、その朗読は省略し、以下修正案の趣旨につきまして簡単に御説明申し上げます。  政府は、農業災害補償制度改正し、本制度を農家とのつながりにおきまして従来より一そう強いものとするため、農業災害補償法の一部を改正する法律案及び農業保険事業団法案提案され、ただいままでに本委員会におきまして慎重に審査が行なわれ、政府からの御説明もあったところであります。  本制度の最近における運営状況を見まするに、最近の農業災害の発生の実態から遊離する面が見られ、このため、農家の本制度に対する不満が高まり、一部には事業運営にも支障を与える事態をも生じている現状であります。従いまして、本国会におきましてぜひとも成立をはかり、この点の解決を期する必要があると考えるものであります。もちろん今回の本制度改正は農家の立場からいたしましても十分のものとは言えず、なお問題を残している面が多いと考えられるのでありますが、これらの点は将来の検討に待つこととし、とりあえず政府提案関係法律案の利点を生かし、とれに事業運営円滑化を期し、災害発生の実態に即するよう若干の修正を加えようとするものであります。  修正の要点はおおむね次の四点であります。  すなわち、まず第一に農業保険事業団の設立を取りやめることであります。農業共済事業の実施機構のうち、農業共済再保険特別会計のみを切り離して中央にのみ事業団を設立することは、現状に比べまして機構がかえって複雑になるばかりでなく、事業の実施面におきましても、いささか危惧の念を禁じ得ないものがあるのであります。すなわち、本制度の根幹ともいえる損害評価の体制が必ずしも十分に整備されるものとは認められず、かくては事業運営が適切かつ円滑に行なわれるとは考えられませんので、この事業機構については今後さらに抜本的に検討することとし、今回は事業団の設立を取りやめることとしたのであります。  第二は、農業共済組合連合会に農作物共済についての通常責任の一部を保有させることであります。農業共済組合の責任の強化拡充をはかることは、今回の制度改正における最大の眼目であり、かつ、制度運営円滑化についての利点の一つでありますが、事業団の設立を取りやめた場合において、政府と農業共済組合との中間機関として都道府県段階の農業共済組合連合会に引き受け、損害評価等について国に対する責任ある協力を得る必要があると思うものであります。このためには、連合会一定事業責任を保有させることによってその成果を期待することができると考え、通常責任を組合連合会とが分担して保有することとしたのであります。  第三は、農家単位方式を一筆単位方式に改めることであります。農家単位方式においては、一筆単位方式に比較して共済金の支払いを受ける機会が少なくなり、かけ捨てになる可能性が多くなるという農家の不満が多く、かつ、事業団の設立を取りやめた場合に、農家単位方式のもとにおける損害評価の体制が必ずしも十分整えられるとは認められないほか、とりわけ市町村段階において、損害評価のための経費及び労力が増大するおそれがあると認められますので、災害時の農家所得補てんの観点からすれば、理論的には農家単位方式の方が望ましいと考えるのでありますが、現実の農民感情をも考慮に入れて、現段階におきましては現行通り一筆単位方式とすることとしたのであります。  第四は、制度改正による共済掛金率の変更のための農家負担の軽減について暫定措置を講ずることであります。今回の制度改正によりまして、共済掛金率の設定の方法及び共済掛金の国庫負担方式が変更されたことがおもな原因となりまして、地方によっては共済掛金率のうち農家負担に属する部分が引き上げられるところが若干出るようであります。今回の制度改正は農家負担の軽減をはかることが、そのねらいの一つでありますから、このような事態の生ずることは、むしろこの目的とするところに沿わないものとも考えられますので、この際、このような組合については農家負担が増加しないよう暫定措置として農家に補助金を交付することとしたのであります。  以上が修正案の要旨であります。何とぞ満場の御賛成をお願いいたします。(拍手)
  45. 野原正勝

    野原委員長 これにて修正案の趣旨説明は終わりました。  本修正案は予算の増額を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、この際内閣に対し意見を述べる機会を与えます。河野農林大臣。
  46. 河野一郎

    ○河野国務大臣 農業災害補償制度改正の問題は、長い間の懸案でもあり、この修正案は、農家との共済関係に関する限り、政府原案とその趣旨において大差ないので、この際やむを得ないものと考えます。ただし、この改正による農家負担、掛金率の増加に対する補助措置内容については、財政上の関係もあり、十分検討いたしたいと思います。
  47. 野原正勝

    野原委員長 修正案に対する質疑の通告がありますが、質疑者がおりませんので、修正案に対する質疑は放棄したものと認めます。     —————————————
  48. 野原正勝

    野原委員長 これより修正案及び両原案を一括して討論に付します。  討論の申し出もないようでありますので、これより直ちに採決に入ります。  まず、農業災害補償法の一部を改正する法律案について採決を行ないます。  初めに本案に対する倉成正君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  49. 野原正勝

    野原委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  続いて、ただいま可決いたしました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  50. 野原正勝

    野原委員長 起立総員。よって、本案は修正議決いたしました。
  51. 野原正勝

    野原委員長 次にお諮りいたします。  ただいま農業災害補償法の一部を改正する法律案を修正議決いたしました結果、内閣提出農業保険事業団法案については議決を要しないものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  52. 野原正勝

    野原委員長 起立総員。よって、本案は議決を要しないものと決しました。
  53. 野原正勝

    野原委員長 なお、両案議決に伴う委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 野原正勝

    野原委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  明日午前十時より本委員会を開くことといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十三分散会      ————◇—————